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一 章 Illustration どこここ そろそろ梅でも咲こうかというのに、いっこうに気温が上がらない。上がらないどころか意表をついたように雪を降らせる気まぐれの低気圧も、シャミセン並みに寒がりの俺をいじめたくてしょうがないようだ。朝目覚ましが鳴ると、いっそのこと学校を休んでしまおうかと考えるのが日課になっている。俺は窒息しそうなくらいにマフラーをぐるぐる巻きにして家を出た。 結果はともあれ本命も滑り止めも無事に受験が終わって、学校では三年生をほとんど見かけなくなった。生徒の三分の一がいなくなり、校舎の一部がガランとして静まり返っている。一年生も二年生も残すところ、憂鬱な期末試験だけだ。三年生でも朝比奈さんだけは、SOS団のためにまじめに通ってきているようだが。 その日の朝、教室に入ると俺の席の後ろで机につっぷしているやつがいた。ハルヒが珍しくふさぎこんでいる。 「よっ、どうしたんだ?」 「どうもしないけど、今朝からずっと耳鳴りがするのよね」 お前もか。俺も今朝起きたときからずっと妙な感覚を感じていた。どこがどう妙なのか分からなくて説明のしようがないんだが、視界がぼんやりしているというか、嗅覚が妙に生っぽいというか。まあ原因も分からないし、気にはしない風を装っていた。 二限目の英語の授業中、突然教室の前のドアがガラリと開いた。誰が入ってきたのかと全員がそっちを見た。俺もつられて教科書から目を上げると、隣のクラスにいるはずの長門が飛び込んできた。 「ちょ、有希どうしたのよいきなり」 長門はハルヒの首筋にちょっと触れ、ハルヒはそのままがっくりと意識を失った。 「おい、何があったんだ」 「……急いで、時間がない。涼宮ハルヒを背負って外に出て」 俺は言われるままに気絶したハルヒを肩にかついだ。教師とクラスメイト全員が唖然としている中を、ちょっとお騒がせしますね、と言いつつ廊下に出た。 「やあ、どうも」 廊下には古泉も待っていた。長門はドアをピシャリと閉めた。 「……時空震の初期微動を感知した。フィールドを張る」 長門は右手を上げて詠唱をはじめた。四人を包む、直径三メートルくらいの青く光る球体が生まれた。 「朝比奈さんは無事なのか」 「……間に合わない。無事を祈る」 そう言うが早いか、球の外の映像がブレはじめた。この感覚、前にもあった。一昨年の十二月十八日、俺が校門前で朝倉に刺されたときだ。改変された世界が元に戻るとき、これに似たような大規模な時空震が発生した。 「原因は何だ?誰かが歴史を書き換えようとしてるのか」 「……分からない」 数分してまわりの景色は元に戻り、俺たちを包んでいた青い球体は消えた。 「もう、大丈夫」 「そうか。教室に戻っていいか?」 「……いい」 「ありがとよ」 「……お礼ならいい。わたしはしばらく調査する」 長門はそういい残して廊下を走り去った。 「今日の長門さんは颯爽としていますね」古泉が言った。 あいつが危機感を持つのはよっぽどのことなのだろう。 「じゃ、後ほど部室で」 手を振って去っていった。脳天気だなこいつ。 さて、気絶したハルヒをかついで教室に戻るのに、どう説明したものかな。しかしハルヒ、重いぞ。 その日の放課後、午前中にあった時空震のことが気にはなっていたのだが、長門がその後なにも言ってこないのでとりあえずは安心していた。 部室棟の階段を登ると、文芸部部室がやたら騒がしい。またハルヒが新人勧誘でもおっぱじめたのか。ドアを開けるなり「キョン君!」と聞きなれた声がエコーして聞こえた。なんだこの五・一チャンネルサラウンド並みの音響効果は。 俺はそこにあるものを見て我が目を疑った。あ……朝比奈さんが、「朝比奈さんが十一人いる!」 「長門、ちょっと状況を説明してくれ」 「……次元断層によって複数の分岐が同時に生まれた。複数の未来軸が発生」 「つまりですね、調査に訪れた朝比奈さんが十一人いる結果に」 古泉が肩をすくめた。なんてこった。時空震動で人が増えるとあっちゃ、お役所の戸籍係が混乱しかねん。この先の少子化にも歯止めがかかるだろう。 「キョン君」「困った」「ことに」「なっちゃい」「ましたぁ」 十一人の朝比奈さんのうるうる瞳に囲まれて、俺はパニックなようなパラダイスなような複雑な気分に襲われた。 「お願いです、誰かひとり代表してしゃべってもらえませんか」 「誰か」「って」「誰が」「代表に」「なれば」「いいんで」「しょしょしょしょ」 最後のは完全にこだましていたな。 ちょっと朝比奈さんには失礼して、俺と長門、古泉だけで円陣を組んで対応を協議した。 「長門、この中のどれが本物だろうか?」 「……正直言って分からない」 「ホクロを調べてみてはいかがでしょうか」古泉が笑いをこらえている。 「お前、堂々と朝比奈さんに胸を見せてくれと言えるのか」 「僕の口からは言えませんね。あなたなら角が立たずに確認できるんじゃないでしょうか」 「お前この状況を楽しんでるだろ」 「分かりましたか」 「……ひとりずつ、コスプレさせるのがいい」長門が口のはしで笑っている。 「しかし十一人分の衣装が……って長門、お前まで悪ノリするんじゃない」 俺は部屋の中を右往左往する朝比奈さん達に向かって言った。 「えーと、朝比奈さん、じゃなくて朝比奈さん達。とりあえず自分の時空に戻っていただけませんか。こんなところをハルヒに目撃されたら、説明のしようがありません」 「それもそうですね」 ゴスペルのコーラスでもやれそうな十一人の声が同時に応えた。 「でも、誰かが残らないといけませんよね」 そりゃそうだ。ひとりは残らないとこの時間平面から朝比奈さんがいなくなってしまう。 「じゃ、じゃあ失礼ではありますが、誰が残るかくじ引きで決めたいと思います」 俺、もしかしてこの状況を楽しんでないか。 どこから用意したのか、長門が爪楊枝を握っていた。市内不思議パトロールの班分けと同じく、十一本中、一本にだけ赤い印が入っている。 「赤いのを引いた朝比奈さんが残ってください」 朝比奈さん達は、まるでワルキューレの杯を煽るかのように真剣な面持ちで一本ずつ引いた。 やがて外れた朝比奈さんはひとりずつ消えていった。俺に手をふりふり、涙さえ浮かべて。なんかすごく悪者になった気分だ。赤い爪楊枝を引いた朝比奈さんだけが満面の笑みを浮かべていた。 「やれやれだな」 「失礼ながら、時間旅行をする者の悲しいサガ、とでも表現しましょうか」 古泉が愉快そうに笑っている。 「ひどいわ古泉君」 朝比奈さんは苦笑していた。俺にも似たような経験はあるんだ。時間を超えて行った先に俺がいたんだからな。 可憐なる文芸部室の天使をまとめて十一人も拝むことができ、俺は十一日分の癒しを得たような心持だった。晴れやかなるニコニコ気分で朝比奈印のお茶をすすった。だがそれで終わりではなかった。 帰宅後、朝比奈さん達がコスプレでサッカーをしているところを妄想していると、めずらしく長門から電話がかかってきた。 「……全員集まってほしい」 「なにがあったんだ?」 「……詳しくは、後で」 長門が召集をかけるからにはよっぽどのことなのだろう。 「分かった。古泉と朝比奈さんには俺から連絡を入れる」 「……待っている」 古泉に電話をかけると、タクシーで朝比奈さんを拾ってから直接行くと言った。午後八時、俺は自転車を飛ばした。マンションの入り口で長門が教えてくれていた四桁の番号を押す。七階まで上がり、部屋の前でインターホンを鳴らそうとしたらドアが開いた。長門はドアの前で待っていたようだ。 「……入って」 「古泉と朝比奈さんはまだ来てないのか」 「……まだ」 あの事件からこっち、長門の部屋に入るのは久しぶりだった。部屋の様子が少しだけ変わった。カーテンが暖色系の花柄に変わっている。それから花瓶に花がさしてある。長門が花を活けるなんて珍しい。だいぶ人間っぽい雰囲気がするようになった。元々が殺風景すぎたんだが。 「部屋、明るくなったな」 「……そう」 長門がお茶を運んできた。少しだけ微笑っぽいものが浮かんだ。 「……飲んで」 「ああ、サンキュ」 この部屋に最初に訪れたときには、正直寒くてとても人が住んでるとは思えない空間だったが。そんでもって情報生命体やら宇宙論やらを聞かされた日にゃ、痺れの来た足ともどもさっさと帰りたい一心だった。なんとなくだが、今俺はこの長門空間を気に入っている。こうして、湯飲みからゆったりと立ち上る湯気と、どこを見てるでもなく静かに座っている長門。 インターホンが鳴った。古泉が到着したようだ。長門は立ち上がってインターホンの映像に向かって「入って」と言った。 「どうも、遅くなりまして」 「あの、長門さん、お邪魔します」 古泉の隣で朝比奈さんが小さくなっていた。長門が二人分のお茶と羊羹を運んできた。四人がなにを喋るでもなく、ただただお茶をすする。部屋を暖めるエアコンの音だけが静かに流れていた。 「長門、そろそろ本題に入ってもらっていいか」 「……もう少し待って。もうひとり来る」 もうひとり?誰だろう。そのとき、インターホンが鳴った。喜緑さんが入ってきた。清楚な感じのレディ、この人のやさしい笑顔を見るのは久しぶりだ。 「皆様、こんばんわ」 「どうも喜緑さん。いつぞやはいろいろお世話に」 「いえいえこちらこそ。お元気そうでなによりですわ」 キッチンからお茶と羊羹をもう一組運んできて、長門は口を開いた。 「……本題に入る」 長門は和室のふすまを開けて、奥から熱帯魚の水槽のような感じの、立方体のガラスケースを持ち出してきた。中に本らしきものが浮いている。これは……思い出すもおぞましい、あの文庫本じゃないか。長門はそっとこたつの上に置いた。 「……これは、涼宮ハルヒとその周辺について書かれた本」 「なんですかこれ、涼宮さんって作家になったんですかぁ?」 「はて、そのような事実はなかったような気がしますが」 二人とも、前と同じ反応をしているな。 「涼宮ハルヒの著作物ではない。情報統合思念体では、以前にも同じ現象を観測した。これに関する情報は禁則事項となっていた。全員の記憶は、消去されているはず」 実は俺だけは覚えてるんだが。 「これより説明する。禁則が一時的に解かれる」 長門は喜緑さんに視線をやった。喜緑さんはうなずいた。長門の禁則解除のキーって喜緑さんだったのか。 長門は去年の十二月に起こった出来事から、谷川流氏のいた世界にスリップし、戻ってくるまでを話しはじめた。俺とアパートで出会ったシーンからは省いたが。 「そんなことがあったなんて……」 「つまり、この本に書いてあることが僕たちの世界の動向を左右するわけですか」 「俺の手にあった本は向こうに置いてきたよな」 「……それとは、別の一冊」 「長門に直接送られてきたわけか」 「……そう。前回直接手で触れたが、それはきわめて危険。クロノ放射を検出した。重力子フィールドで覆ってある」 クロノ放射が何なのか知らないが、ケースに入ってるのはそのためか。 「本来ならこれは見えていないはず」 長門曰く、フィールドの壁越しになんらかのエネルギーが漏れている。そのために肉眼で見える、のらしい。よく見ると、ゆっくりと回転する本の向こう側が透けている。 これはいったい、誰が何のために用意したのか。 「今朝の時空震も関係あるのか」 「……情報量が限定されているが、その可能性は高い」 「それで、本の出所は分かったのか」 「……今のところ不明。もしこの本が氾濫したら、次元のパラドクスが生じる」 「またもや世界は消滅の危機ですか」 「……消滅はしない。歴史を上書きするか、無限ループが生じるだけ」 「で、俺たちを呼んだ理由は」 「……防衛線を張るために、全員で同行してもらいたい」 「ということは、わたしたちが向こうの世界に行っちゃうんですか?」 「……そう。著者とのコンタクト、本の出所、送付者の敵性判断を含めた調査」 「行くなら厚着していったほうがいいな。あと生活用品とかも」 こないだはほとんど何も持たずに行ったからな。あの状態なら何を持っていっても役に立たなかっただろうが。 「向こうの世界は特殊な環境なんですか」 赤道の反対側で季節が逆だからとかじゃなくて、十二月に飛ぶからなんだが。 「……こちらとほとんど変わりない」 「では、必要な物資は僕のほうで揃えましょう。なにがご入用ですか」 「……全員分の身分証明書、レーション、救急医薬品」 「世間は未成年には冷たいからな。身分証明がなくてなにかと苦労した」 「じゃあ免許証を手配します」 「それから金も多少あったほうがいい」 まだこないだの金、返してなかったな。戻ってきたらバイトしないと。 「かしこまりました。武器はいりますか?」 「武器の携帯は厳禁です……あぶないですぅ」 「冗談ですよ」 古泉はふっと含み笑いをした。 「バナナはおやつに入りますか?」 この非常時になにを言っているのかと、全員の冷たい視線を浴びた。古泉は自らを恥じるように詫びた。 「す、すいません。ちょっと言ってみたかったもので」 なんだかこいつだけは不必要に楽しそうだな。緊張を楽しむタイプか。 「……決行は明日、部室にて」 長門はメンバーを見回して、異議がないことを確かめたのか、ひとこと呟いた。 「……解散」 俺たちはそれぞれ帰宅した。 やっぱり出発は部室なのか。古泉が前にも言ったことがあるが、あの文芸部部室はいくつかのエネルギーが飽和状態にあり、いつでも流出しやすい状態にあるという。長門によれば、遠く銀河を離れても、時間平面を超えても観測できるらしい。そんなところで部活動を展開している俺たちもどうかしているが。 週末のSOS団部室、もとい、文芸部部室だ。 俺は六限の終わりを待たず、珍しく授業をさぼってさっさと部室に行った。遠足の前日のようなワクワク感を抑えられなかった。授業もどうせ必修科目じゃないし、三学期のこの時期だけにやる気もないし。 部室のドアを開けると長門しかいなかった。さすがに今日は本を開いていないようだ。 「よっ。今日は早めに来たぜ」 もし俺だけに知らせておくことがあれば、あるいは前もって検討しておくことがあればと思って余裕を持って来たのだが。長門はそんな様子は見せなかった。 なにをしてるのかは分からないのだが、長門はハエか蚊を捕まえるような仕草をしていた。 「なにを捕まえてるんだ、虫か?」 「……素粒子」 「素粒子って、あの黒い球のやつか」 「……緊急用の素粒子球を全員に配る」 あんな重たいもん持たせても荷物になるだけな気もするが。長門は俺の顔の前で、サッと見えないなにかを捕まえた。俺は長門の手を凝視した。まさかチェレンコフ光が見えたりはしないだろうけど。 「やあ、遅くなりました」 古泉が清々しいスマイルとともに現れた。まだ授業は終わってないだろ。なんだその膨らんだリュックは、登山じゃないんだぞ。 「出発するのに必要な物資です。用意するのに手間取りまして」 こいつがキャンプに行くときは必ず食料隊長を買って出るんだろうな。 古泉は長テーブルの上にゴトゴトと物資とやらを並べ始めた。コンパス、GPS、その妙な天体観測器具みたいなのは六分儀か、いつの時代の旅行だよ。食料は水とカロリーメイトと、レーションはNASAで開発のアレか。 「それから身分証明書です」 免許証を受け取った。写真の写りはいまいちだが、よく出来ている。普通自動車だけか。 「大型特殊とか牽引二種とかがご入用でしたか」 そんなもんあっても運転できねーだろ。普通自動車でもあやしいのに。 「あら、皆さん早いんですね。遅れちゃってごめんなさい」 通学カバン以外に旅行用のバックも下げている朝比奈さんが現れた。いいんですよ、俺はあなたが来ることが分かっているなら日が暮れても待ちつづけますから。 「あの、制服のままでもいいんでしょうか。いちおう旅行用の服も用意してきたんですけど」 「いいんじゃないでしょうか。必要なら向こうで着替えられると思います」 旅行用ってまさか、エジプトでミイラの発掘をするようなコスプレではあるまい。それはそれで見てみたい気もするが。俺は通学カバンに必要最小限の衣類だけを詰め込んで、教科書の類は机にしまったままだ。 しかし、全員が一度に現れたら谷川氏はいったいどんな顔をするだろう。今から楽しみだ。 「長門、喜緑さんは一緒に行くのか」 「……彼女は連絡要員として残る」 「じゃあ、これで全員だな」 長門はうなずいて、カバンから小さな包みを取り出した。丁寧に包まれた銀色のシートのようなものを開くと、あの文庫本が出てきた。 「もしかしてそれを読むのか」 「……この本の位相情報を使って転移するだけ」 そうか、よかった。あのループする感覚は頭がおかしくなりそうだからな。 長門は朝比奈さんに向かって言った。 「……次元転移の後、時間移動が必要」 「わたしの出番ですかぁ?ええっと、待ってください。上司に聞いてみないと……」 朝比奈さんは少し視線をさまよわせたが、今度は困ったような顔をした。 「あの……前例がないので判断しかねる、らしいです。どうしましょう」 まるでどっかの頭の固いお役所だな。窓口が三時に閉まらなくてまだマシだ。 「よその世界での時間移動なんて、こちらにはさして影響ないでしょう」 古泉がフォローしたが、投げやりだな。まあそうとも言えないんだが。 「それもそうですね。なにがあってもわたしの責任じゃないですよね」 朝比奈さん、無責任なことをそんなに嬉しそうに言わないでくださいよ。 「……そう。では、はじめる」 長門は文庫本を開き、空中に放り投げた。それは床には落下せず、宙に浮いたままゆっくりと自転した。これ、重力に逆らってるのか。長門が右手を上げて詠唱をしようとしたとき、突然ドアが開いた。 「……あ」 「あ……」 「あんたたち、あたしに内緒でなにしてんのよ。そんなリュックなんか背負って、夜逃げでもする気?」 まずいときにまずいところを見られた。今日は掃除当番じゃなかったのか。 「す、涼宮さん」 「ええっと、僕たちはですね、春休み中の合宿を検討していたんです」 「そうなんです。わたしたち、遠足の予行演習をしていたんです」 朝比奈さん、あなたは来月に卒業する身分ですよ。 「団長のあたしを差し置いてそんなミーティングを開くなんて、免職処分だわ。よくて減俸ものよ」 俺たち給料もらった覚えはないんだが。ボーナス払ってもらえるなら今すぐやめてやってもいいぞ。 ハルヒの眉毛がピクピクと動いた。腕組みをして一同を睨みつける姿は、部下の陰謀に気が付いた戦国の武将のようだ。 「僕達で計画して涼宮さんを驚かせようと思ってですね」 「そんなたわ言は聞きたくないわ。本当のことを話しなさい」 今回ばかりは古泉の必殺爽やかスマイルも役に立たないようだ。全員が、いったいどうしようと互いを見た。 「なによその、示し合わせるような視線は」 俺はハルヒの腕を取った。 「ハルヒ、お前も一緒に来い」 「来いってどこによ」 「でも、そんなことをしたら」古泉が俺を制しようとした。 「置いていったらアレが出るぞ」 古泉は黙った。アレといったらアレ以外ない。 「ハルヒ、今は説明してる暇がないんだ。向こうで説明するから来い」 俺はいつも、厄介事はあとに回すのが習慣なのだ。 「あとは俺が責任を持つから、長門、やってくれ」 「……分かった」 ずっと右手を上げたままだった長門が、ハルヒの呪縛から開放されたかのように呪文を唱えた。 あのときのような白い光には包まれなかった。まわりが暗闇になり、うっすらと見える青い光に包まれた。ドアがあったと思われる方向から、ひとつの青い光の輪がやってきて俺たちを包み、そこにいる五人の姿を照らして、やがて窓があったと思われる方へと消えた。続いて同じ輪が次々と現れは消え、現れては消えた。青い光の輪が並ぶトンネルをくぐるかのように、そして動く歩道の上で移動しているような感覚に襲われた。 ゆっくりと浮かび上がった長門の影が、ドアのほう、光のやってくる方向を指差した。まず長門が、それから俺が続いてそっちへ歩き始めた。まるで暗いトンネルをくぐるかのように。数歩歩いてから、ふと気が付くと正門前にいた。西宮北高だった。 「……到着した」 時間移動にも時空震動にも、似ても似つかない現象だった。今しがた潜り抜けてきた一風変わった風景に、全員が呆然として黙りこんでいた。 朝比奈さんが思い出したように口を開いた。 「ええと、じゃあわたしの番ですね」 行き先の日付は俺がここを離れた十二月二十四日、だいたい夜九時半から十時ごろだろう。朝比奈さんは全員が手を繋いだことを確かめてうなずいた。風景がぐるぐると回りだした。俺も朝比奈さんもハルヒに目を閉じていろというのを忘れていた。三半規管がツイスト状のドーナツみたいになったような不快感に襲われ、足元が天井に張り付いたような重力逆転の幻覚を見てから、ようやく落ち着いた。 「着きました。午後九時四十五分です」 ハルヒを見ると手で口を抑えている。無理もない。奇妙な模様が走るトンネルを歩かされ、テーマパークの絶叫マシンでも体験できないような気分を堪能したのだからな。 「おい、こんなとこで吐くな」 俺は全員を促し、人目を避けてともかくグラウンドに入ることにした。俺はハルヒを水飲み場へ連れて行った。ハルヒは顔をジャブジャブと何度も洗い、俺が渡したハンカチで鼻をかんでようやく落ち着いたようだった。 二日酔いで青ざめたような顔をしたハルヒが口を開いた。 「それで、いったいここはどこなのよ」 さて、ハルヒにどう説明したもんだろう。今までこいつにはいろいろとその場しのぎの嘘をついてきたが、今回ばかりはどう説明すればいいのか見当もつかない。いっそのことタイムトラベルと言ってしまえば、まだ救いようはあるんだが。じゃあどうやってやったのと深く追求されたら、朝比奈さんの秘密を明かすしかなくなる。 「それに、なんで夜なの?まさかタイムトラベルしたの?」 「まあタイムトラベルではあるんだが、ここは俺たちの住んでる世界とは違う、簡単に言ってしまうと異世界だな」 「は?そうなんだ」 ハルヒはぽかんと口を開けた。俺はてっきり、何バカなこと言ってるの、ちゃんと説明しなさいよね、と首を絞められるかと思っていたのだが。 「ということはよ、ここに住んでる人たち全員、異世界人なわけね」 お前、なに目んたまキラキラさせてんだ。 「異世界人は俺たちのほうだろう」 「まあ、外国に行けば自分が外人になるようなもんだけど」 分かりやすいな。 「それで、ここはどういう世界なの」 「どう説明すればいいか分からんのだが、俺たち以外の人間はふつうに存在してふつうの日常を暮らしてる」 「つまり、あたしたちがいないわけ?」 「まあ、そういうことだ」 「分かったわ。こういうことね、異世界人を捕まえてあたしたちの世界に連れて行って人体実験しようってのね」 「そんな地球外生物みたいな真似するかよ。お前が異世界人に会いたがってたからツアーを組んだんだ」 いい兆候なのか悪い兆候なのか、やっと俺らしい出任せが口をつくようになった。 「あたしに黙って行こうとしてたじゃない」 「これは調査旅行のはずだったんだよ。いきなり団長を連れていってトラブルになったら申し訳ないだろ」 「まあ、それもそうね。ロケハンは下っ端のやることだしね」 やっと納得したか。ほかの三人もほっとしたようだった。長門が唱えていたアレはなんだと聞かれなかっただけでもありがたい。俺、段々とハルヒをごまかすのがうまくなってきてるような気がする。勉強はそっちのけでそんなどうでもいいような技術を会得してるなんて、かなり鬱だ。 二章へ
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(山口県)長門(俵山)郵便局 郵便番号:〒759-42 集配地域:山口県長門(ながと)市の旧・大津(おおつ)郡俵山(たわらやま)村域。 1.jpg 俵山郵便局局舎 2.jpg 俵山郵便局取集時刻掲示 達成状況[20**年*月**日現在] 普通のポスト ●マッピング済**本。撤去**本。 コンビニポスト ●マッピング済**本。撤去**本。 ポスト考察 ●編集中 ポスト番号考察 ●編集中 設置傾向考察 ●編集中 取集時刻考察 ●編集中 取集ルート考察 ●編集中 時刻などの掲示 ●編集中
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439@1152448190 06/07/10(月) 【ハンドル名】 パートナーが長門の人 ◆M4A1CEL9ZY (仮:パートナーが長門の人 ◆xwa99qk6v.) 【パートナー・ガイド】 長門有希. 【初成功までの訓練期間】 一週間程度 【離脱回数/頻度】 不定期 【離脱方法】 仰向けに布団に入る→何も考えないようにする→勝手に浮き上がってくるイメージを傍観→振動、耳鳴り、金縛り→離脱 【離脱直後の状態】 特に異常なし 【集中開始から離脱までの時間】 20~30分 【禁則事項】 【離脱前後の状態】 [精神面] 特に変化なし [肉体面] 疲れが取れる 【備考】 449 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします おべぱるす聞くのって何がいい? 630 名前:パートナーが長門の人 ◆M4A1CEL9ZY 投稿日:2006/07/10(月) 21 32 14.68 ID JRBK7lUr0 449 俺は5.0~6.0だな 630 名前:パートナーが長門の人 ◆M4A1CEL9ZY 投稿日:2006/07/11(火) 11 36 21.41 ID VAwzv16pO 俺も就寝時より昼寝の時の方が圧倒的に成功確率が高いよ 今朝も睡眠欲求に打ち勝つ事が出来なかった… 630 名前:パートナーが長門の人 ◆M4A1CEL9ZY 投稿日:2006/09/14(木) 13 43 26.33 ID nSqbUD6GO (´・ω・)コテ変えてみたがな 630 名前:パートナーが長門の人 ◆M4A1CEL9ZY 投稿日:2006/11/20(月) 20 35 17.85 ID jFSmhzFV0 11月19日 23時 最近はオベパルス無しで離脱に挑戦していたが、今日はテンプレ通りにオベパルスを使用。 数十分後に金縛りが来て、順序よく離脱。 ―――ここから名倉――― 相変わらず離脱直後は浮遊状態…とりあえず地に足をつけ、部屋を見回す。 自分の部屋の窓から日差しが差していたから時間帯は昼頃だろうか。 しばらくたって、まだパートナーを見つけてなかったことを思い出す。 何故名倉では一番にやりたいことがなかなか思い出せないんだろうか? そんな疑問を抱きつつ…パートナー探しの為、鏡のある洗面所に向かう。 名倉で鏡を見るのは緊張感溢れる行動だと思えるのは俺だけか? ――結論から言おう、鏡の中には長門がいた! こいつがパートナーなのだろうか?興奮気味の感情を抑えつつ、振り向いて長門の存在を確認して質問。 「………そう」 しばらくの沈黙のあと、長門は答える。 短い質疑応答の後、家の外に出た。 630 名前:パートナーが長門の人 ◆M4A1CEL9ZY 投稿日:2006/11/20(月) 20 41 56.82 ID jFSmhzFV0 天気は、雲一つ無い快晴だった。 俺のあとをついてくる長門はとにかく無表情だ。だがそれがいい。 車が一台も走っていない街を眺めてしばらく歩いていると…ふと ”パートナーと戦闘する”事を思い出し、実験することにした。 ついでに具現化能力も試してみたかったしな。 その旨を伝えると長門は無表情に答えた。 「………わかった」 ―――ここから戦闘開始――― 630 名前:パートナーが長門の人 ◆M4A1CEL9ZY 投稿日:2006/11/20(月) 20 42 53.38 ID jFSmhzFV0 場所はビルの屋上。 とりあえず俺は右手に日本刀を具現化する。 意外とリアルに具現化出来るんだな… 俺は刀を構えて無表情に立つ長門に向かい、地面を蹴った――― 自分でも驚くほどの速度で長門に迫り…刀を振り下ろす。 鋭い金属音が響き、振り下ろした刃は不可視の壁に止められる。 ……( ゚Д゚ ) 唖然とする俺。長門は容赦なく具現化した日本刀を“分解”した。 俺はとっさに後ろへ飛び、新たにアサルトライフルを具現化する。 先程から微動だにしない長門に照準を合わせ引き金を引く――と同時に長門の姿が消えた。 弾を発射することなく銃は“分解”され、瞬時に俺との間合いを詰めた長門を視認したと同時に後ろに吹っ飛び、屋上のフェンスに激突。 そりゃねーだろ長門サン……そして名倉での意識はフェードアウト。 ―――名倉ここまで――― 追記:最近は互角に戦ってます 760 :パートナーが長門の人 ◆M4A1CEL9ZY:2006/12/23(土) 20 21 39.65 ID fPzKPNHZO 754 離脱したときにパートナーが俺の上に騎乗位の状態で乗っかってた事もあったかな あれって結構レアなイベントだったのか 長門?よく分からんけどボコボコにしてやんよ ∧_∧ ( ・ω・)=つ≡つ (っ ≡つ=つ / ) ババババ ( / ̄∪ 562 名前:パートナーが長門の人 ◆M4A1CEL9ZY [] 投稿日:2006/12/24(日) 20 12 38.13 ID 77orVajZO 離脱が怖い? そんな事を言う奴らは先入観に支配されすぎだな… それに名倉はなかなか面白いと思えるぜ? 怖い幻視、幻聴はただの障害物にすぎない。 それを超えて始めて名倉に行くことが出来るようになるのさ 780 名前:パートナーが長門の人 ◆M4A1CEL9ZY[] 投稿日:2006/12/24(日) 23 47 29.86 ID 77orVajZO 人類皆地球という同じ部屋の中に居るじゃないか 923 名前:パートナーが長門の人 ◆M4A1CEL9ZY [sage] 投稿日:2007/01/12(金) 02 40 31.55 ID H682OBt3O 離脱の流れか…ちょっと簡略化して書く まずイメージ法と同じ体制(仰向け)になる。 目を閉じ、リラックスして全身の感覚を徐々に消していく。 そのまま意識が完全に落ちないように維持しつつ瞼の裏に勝手に現れるイメージを傍観する。 暫くすれば前兆(振動、耳鳴り)が来る。 最近は金縛り無しで振動、耳鳴りから解放されるときにフワッと離脱する。 パートナーが椅子に座って本を読んでいるから名倉と認識し、その後は普通に一週間~数年名倉で生活。 案の定帰ってきたらあまり時間は経っていない。 時たま時間感覚がズレたりするが、現段階では現実の生活に目立った異常は無し。 …とまあこんな感じだが、やはり携帯からだと時間がかかるな 待たせたのならすまない(´・ω・`) 360 : ◆M4A1CEL9ZY:2008/01/01(火) 23 19 06.91 ID eOlRxR6A0 「経験してからでなければ理解できないことを、言葉でどう説明すればよかろう? どんな知識や口真似も、何の役に立とう? ただ、あなたは精神を集中し、まず意識を外から内へ向け、次に内にある 意識すらも無くしていくことを努力しなさい。」 365 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/01/01(火) 23 26 29.16 ID yG/Nhj0Y0 360 言葉でどう説明すればよかろう?> 文章力と表現力を向上させればいいと思う。 562 名前: パートナーが長門の人 ◆M4A1CEL9ZY [] 投稿日:2006/12/24(日) 20 12 38.13 ID 77orVajZO 離脱が怖い? そんな事を言う奴らは先入観に支配されすぎだな… それに名倉はなかなか面白いと思えるぜ? 怖い幻視、幻聴はただの障害物にすぎない。 それを超えて始めて名倉に行くことが出来るようになるのさ 最近幽体離脱にはまった24【避難所】より 347 名前: ◆M4A1CEL9ZY[sage] 投稿日:2015/07/28(火) 00 40 52 ID Oe4gJPuw0 様々な失敗例に対するただの私見ではあるが 失敗を繰り返す、離脱しても維持できない最大の要因は、方法ばかりに囚われて向こうの世界観の構築が一切出来ていないからではないのか 目的地が明確に分かってないのに手法だの努力だのなんだのと言ったところで無駄も良いところだろう 何のために体験談を重視しているのかもう一度思い返せ 何処へ行きたいのか何がしたいのか、離脱法を試す前によーく考えて、それを為すために必要な世界観をイメージしてみろ それを繰り返すうちに離脱法なんぞ必要としなくなる 348 名前:幽体かもしれない名無しさん[sage] 投稿日:2015/07/28(火) 00 45 23 ID kh2xWHjM0 [2/7] 微ダンツァーは熟練者に遠慮して教えを請わず、 熟練者は本当は言いたい事色々あるけど押し付けがましい気がして詳細なカキコを遠慮していたが故のすれ違いかね… だったら質問大会したい 1、離脱法と、それを選んだ理由 2、離脱頻度と、安定して離脱するために気を付ける事 3、離脱の質と、質を上げる方法 4、滞在時間と、それを延長する方法 5、使用可能な超能力とその獲得方法 6、名倉の楽しみ方 7、名倉であった超常現象、面白かったこと、判明したこと 8、できそうだけど今はできないこと、できると思ってたけど無理そうな事 9、他のリダンツァーへの疑問 10、離脱に対する私見、言いたい事とか 特にに謎が多い長門さんに聞いてみたい 353 名前: ◆M4A1CEL9ZY[sage] 投稿日:2015/07/28(火) 01 55 29 ID hHiMulaQ0 [1/3] 348 1、離脱法と、それを選んだ理由 かつては光体法+夢からの離脱 理由はそれくらいしかなかったから 2、離脱頻度と、安定して離脱するために気を付ける事 頻度は毎日 安定させるにはまず落ち着くこと 余計なことは思考の外側に投げ捨てろ 3、離脱の質と、質を上げる方法 感覚の鋭さは現実以上 質を上げるには向こうに慣れること 4、滞在時間と、それを延長する方法 時間の尺度ごとぶち壊して制限なし 寝て起きて時間の成り立ちを考えていたら勝手に延びた 5、使用可能な超能力とその獲得方法 時空干渉 念動力 万物創成 細分化すると書ききれんが大まかに分けるとこの三つか 獲得方法は離脱法の基礎の応用 すべては意思とイメージ 6、名倉の楽しみ方 体感時間の延長を利用して少ない睡眠時間で最大限の精神疲労回復 最近は自分の記憶の構造を探ってはいるが、これといって成果はない 7、名倉であった超常現象、面白かったこと、判明したこと あらゆる世界を本にして本棚に保管していれば どんな創作物の世界にも行ける 自分の記憶も本に出来る 8、できそうだけど今はできないこと、できると思ってたけど無理そうな事 どんな創作物の世界にも行けると言ったが、行ったら行ったで案外窮屈 数百年も居たら大抵は物語そのものが壊れるし 宇宙スケールじゃないとダメだな 9、他のリダンツァーへの疑問 強いて挙げるなら長期化するケースが少なすぎることが疑問 もっと増えるものと思っていた 10、離脱に対する私見、言いたい事とか 離脱という言葉は大層な言葉に聞こえるが実際のところ大したもんじゃないから気負わず挑め 356 名前:幽体かもしれない名無しさん[sage] 投稿日:2015/07/28(火) 02 19 49 ID kh2xWHjM0 [4/7] 353 355 長ったらしい質問だけど答えてくれてありがたい しかし…長門の人感覚的すぎる… これが才能だとしたらこれ以上の質問は意味ないかもナ 357 名前: ◆M4A1CEL9ZY[sage] 投稿日:2015/07/28(火) 02 31 21 ID hHiMulaQ0 [3/3] 感覚で突き抜けたほうが楽だしうまくいくもんだと思っているし今後も変わることはないだろう 感覚と意思だけでいろんなものがねじ曲がりすぎる 417 名前:幽体かもしれない名無しさん[sage] 投稿日:2015/07/29(水) 00 04 20 ID aIOWiugw0 [1/2] 410 協力ありがとう なんだか、リダンツァーのブログとか読んで前から感じてたことだけど 離脱でそれなりの自由度を得るとマンネリ化して刺激がなくなるのかな? だらだらして過ごすとか、性欲を発散しておわりとか、やることなくなってる感がある いつまでも飽きない刺激的な遊びがあればいいんだけど… あと、ちょうど高レベルリダンツァーがたくさんいるから聞いてみたいんだが 普通とは違う強力なNPCっているって言うじゃない?パートナーとかがいい例 そういう存在と、精神的に深い関係になった事ってある? 親愛、信頼、尊敬、恋慕、依存、なんでもいいけど それともNPCなんて所詮は無意識の切れ端で自分の下位存在だから、現実の人間関係みたいに大事にする意味はない みたいに考えてる? 419 名前: ◆M4A1CEL9ZY[sage] 投稿日:2015/07/29(水) 00 56 12 ID R5gCiTyM0 [1/2] 417 強力なNPCってのは無意識の切れ端と言うよりも 意識的であれ無意識的であれ自分が求めてる要素の寄せ集めと言うべきかもしれん NPCが持っている要素が自分の思い入れや執着に合致すればするほど強力なNPCとして存在できるんだろう 俺の場合は精神的に深い繋がりと言うよりもほぼ自分の一部みたいなものかもしれん 文字通り融合することもあるし
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「物質、エネルギー、そして情報。これが、宇宙を構成する三つの要素」 「情報統合思念体って、どういうものだと思ってる?遠い宇宙の果てのはてにある、銀河みたいな星の固まり?それとも、宇宙に漂う、 何か大きなクラゲみたいなもの?」 「どっちも外れね。情報統合思念体は、この宇宙を構成する情報全て。全宇宙の情報が、時に秩序を形成し、 時に無秩序に増殖する。そして、それらを認識する情報。これが情報統合思念体。率直にいえば、この宇宙全体が統合思念体なのよ。 もちろん、あなたも私も思念体の一部。でも安心して、あなたが自分の体の細胞の1つを認識できないように、 思念体もあなたのことなんか全然気にしていないから。」 俺と朝倉は、今カラオケボックスのベンチシート席に居る。最近のカラオケボックスでは、少人数の客はこうしたベンチシートルーム、 3人掛けくらいのベンチ1台に向かい合うようにマシンが設置された小部屋に案内されるようになっている。今日は団のメンバー抜きでの 朝倉との二人連れであり、世間一般的に見ればまあ非常に羨まれるべきシチュエーションなんであるが、やはり一度なりとも刃物で殺され かかった相手というものはなかなかその恐怖を体が忘れづらい。あと、朝倉、普通に会話するだけなら別にマイク使う必要ないだろ。 事の発端はこうである。 朝倉とSOS団の『懇談会』以来、一段とその頻度、クオリティともに激しさを増した長門のレッスンのせいか、俺は最近思い出し笑い、 思い付き笑いを所わきまえず非常に頻繁に繰り返すような状態になってしまい、だんだんクラスでも浮いた存在になってしまってきている。 最近では谷口も挨拶を一拍置いてから返すようになってきているし、国木田は弁当を別のクラスで喰うようになった。笑いさざめくクラスの ドアを開けて教室に入ると、今まで談笑していた生徒全員が一斉に俺の事を注視する、と言ったことも1度や2度ではない。 ハルヒは一人 「なんか、最近のキョンちょっとオモシロイわ!何ていうかほら、バガボンドの最初の頃に出てきた『不動さま』みたい!」 と盛り上がっているが、うん、まあ、ホントはあんまりおもしろい状態でもないんだろ。俺も自分でわかるからさ… そんな孤独と焦燥のさ中にあって、再びクラスの中心人物に返り咲いた朝倉が 「キョン君、今日放課後空いてる?空いてるなら、ちょっと付き合って欲しいんだけどな♪」 と聞えよがしに話しかけてきてくれた時、俺は1も2もなく飛びついてしまった。誰だってそうだよな? そして、放課後俺は口早にハルヒに団活を休む旨を告げると、下駄箱で待ち合わせした朝倉に手を引かれる様にこのカラオケボックスまで来たという訳だ。 「でもね、涼宮さんは別。あなただって、突然自分の体の一部がチクッと痛んだりしたら、何かな、って思うでしょう? 思念体もそう思ったの。いつもどおりに生活していたら、体の一部が変におかしい。何だろう?と思って立ち止まり、調子がおかしい 箇所をしげしげと見ている。調子がおかしい箇所が涼宮さん。それを見つめている目や、触って調べたりしている指が私たち。」 「そういう訳で派遣されてる私たちなんだけど、まあ、私たちだって完璧ではないわけなのよ。同じ宇宙の構成物なんだしね。 目だって指だって病気になるしケガもする。変なものを見ちゃったり、触っちゃったりしたら。」 そう言って、にじり寄ってくる朝倉。 「涼宮さんみたいな強い存在のそばにいたら、私達端末も影響を受けちゃうのよ。本来の機能からエラーを起こして、 自分で勝手に情報を紡いでいくようになるの…あなた達の体でいったら、ガン細胞ね。心でいったら、何かしら…」 朝倉の顔が近い。つぶらな瞳が、俺を真正面から捕えて離さない。 「いっそ、本人に聞くのが一番早いかも♪」 個室のドアが勢いよく開く。廊下の蛍光灯のまばゆい光を逆光に、小柄なシルエットが目に飛び込む。 『…二人とも、表に出ろ』 長門がいた。いつも通りの、高熱に燃える炎のような青白い表情で。 ------------------------------------------------------------------ 俺達がカラオケボックスにいる間に表は小雨になっており、長門は自分で持ってきたであろうビニール傘を差し、 俺は頑強に拒みはしたものの朝倉の持っていた折り畳み傘に結局引っ張り込まれてしまい、先を行く長門の2メートル ほど後ろを2人でついて行っている。 駅前から離れ、踏切を渡りやや閑静なあたりに差し掛かる。 「この前のカラオケでのキョン君の歌。あれ、歌じゃないわ。心の悲鳴よ。キョン君の。」 朝倉が足を止め、長門に声をかける。 「わかってると思うんだけど、最近のキョン君、ちょっともう限界よ。ここまで彼を追い詰めて、何をしたいの?」 長門も足を止め、傘を片手に雨の中、背中で朝倉の言葉を聞いている。 『…獣は、追い詰められた時に一番良い声で鳴く。赤子の声が一番心を打つのは、その母親を呼んで泣き叫ぶとき。』 『歌は、惚気話でもなければ、自慢話でもない。人間の、泣き声。叶わぬ望みが心に叫ばせるもの』 振り向きもせず答える長門。 『だから、人は歌に心をふるわせる。人が、人の泣き声を聞き過ごせぬよう、人の心は、歌にとらえられる』 「なかなか言うじゃない… …まるで、人間にでもなったみたいに。」 口角を上げて、朝倉が答える。 「でも、長門さん、わかってるかしら?私達、端末よ。そんな感傷、本来の機能にはないの。エラーが溜まりすぎちゃったのね。 システムの処理の、暴走。人によっては、こういう風にも、言うかしら」 「『精神病みたいな、もの』、って」 ビニール傘が転がる。 振り向いた長門の顔。いつも通りの、軽く結んだ唇、澄み切った黒い瞳。その瞳の縁から、小雨に打たれた顔の頬を二筋の流れが伝っている。 「観測用端末の更新が発令されたわ。長門さん、あなたはもうとっくに暴走状態。思念体への報告すら満足に行っていない。 私が来たのは、バックアップのためじゃない。あなたと交代して、私が涼宮ハルヒを観測するの。」 「あなたはもう、観測を行える状態じゃない。復旧すらおぼつかないエラーの蓄積状態で、観測対象の周囲にすら影響を働きかけて きている。これはもう、思念体による観測活動継続の為の、除去の対象。つまり---」 朝倉が傘を手放した。 「パーソナルネーム長門有希を敵性と判定。当該対象の有機情報連結を解除します。」
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「ホワイトカレーよ!カレーなのに白いのよ!不思議だわ! SOS団として、この不思議を見逃すわけにはいきません。 今日はみんなでホワイトカレーを食べましょう!」 今日も無駄にテンションが高い我らがSOS団団長が高らかに言い放った。 要するにお前が食ってみたいだけだろうが。 CMを見た妹が騒いだ我が家では発売から早々に食卓に並んだが、味は結局ただのカレーだぞ。 「はあ……ホワイトカレー、ですかあ……?」 朝比奈さんはしきりに首を傾げている。この愛らしいお方はCMを見たことがないのかもしれない。 「いいですね」 こんなとき決まってハルヒに賛同するのはイエスマン古泉だ。もちろんニヤケ面スマイルつきで。 「ちょうど僕の知り合いがハ○スに勤めていまして、つい最近家に結構な量のルーが送られてきたんです」 お前の話はどこまで本当なのかわからんから俺はもう一々考えたりしないからな。 「じゃあ決まりね。あたしが作るから、古泉君は有希の家にルー持ってきてちょうだい」 「了解しました」 待て待て、長門の家でやることは決定済みなのか? 長門が反対するとも思えないが、それでも一応家主の許可を得てからにしろ。 「問題ない」 ……随分きっぱりと言い切ったもんだな。お前カレーに反応しただろう。 「それじゃあ7時に有希の家に集合ね!遅れたら死刑だから!」 お約束の台詞と共に一時解散となった。やれやれ。 * * * 「……味は普通のカレーと大差ないわね、ちょっと辛さは物足りないけど。 特に不思議な味はしないわ。ま、こんなもんかしら」 自分の作ったホワイトカレーを食べたハルヒは一瞬眉を顰めたが 結局はいつもの満足そうな笑顔を浮かべていた。 「ふわあ~、涼宮さん、このカレーすっごくおいしいです~!」 「ええ、さすがは涼宮さんですね。これほどおいしいカレーは初めて食べますよ」 カレーなんて誰が作ったってそこそこの味はするもんだがな。 それにしてもハルヒの作ったカレーはまったく腹が立つことに半端じゃなくうまかった。 上品にスプーンを口に運ぶ言葉丁寧組二人を尻目に、 ハルヒと俺はすでに二杯目を平らげて三杯目に突入しようとしていた。……ん? 「長門、どうした?具合でも悪いのか?」 長門は大好物のカレーを目の前にしてスプーンすら握っていない。 「有希っ、おかわりならたくさんあるんだから!じゃんじゃん食べちゃいなさい!」 「――こと」 何?よく聞こえなかった。すまんがもう一度頼む。 長門の無感情な目が俺を捉えた。 きっ、という効果音が聞こえたような気がするのは俺の気のせいだ。 何故だろう……長門がとても怖い。 「これは一体どういうこと。今日はホワイトカレーつまりカレーを食べるという話だったはず。 カレーとは日本語で茶色と定義される色もしくはそれに準じる色をしている。 しかしこれは白ホワイトクリーム色もしくはそれに近似する色をしている。 私が知るカレーの色とこの色は決して結びつくことがない。なぜ。 カレーという名がつくのになぜカレーの色をしていないの」 ここで長門は宇宙人カミングアウト時並みのマシンガントークを一旦切りあげ、 俺の答えを待つそぶりを見せた。 え、答えなきゃいけないのか俺? 「それは……ホワイトカレーだから、だろう。」 ホワイトなのに赤や青だったら詐欺だ。 そんなことより長門、ハルヒがぱかーんと口を開けた間抜け面でお前を見てるぞ。 古泉も朝比奈さんも似たような顔になっているし、多分俺もなんだろう。 しかし長門の暴走は止まらなかった。 「それでは理由にならない。カレーの色という概念はカレーという個体を構成する重要な要素のはず。 よってカレーの色をしていないカレーには成り得ない。つまりこれはカレーではないということになる。 ではなぜ。なぜこれはカレーの名を冠しているの。それにあなたたち」 ここで長門はぐるりと俺以外の団員の顔を見回した。 ぎぎぎ、という効果音が聞こえたような気がするのは本当に俺の気のせいだろうか。 「あなたたちはなぜ、これをカレーと呼ぶの。これはカレーではないのにも関わらず」 俺たちは全員震え上がった。あまりの恐怖に声が出ない。 朝比奈さんはともかく、震え上がるハルヒと古泉なんて滅多に見られない。 今日は珍しいことだらけだ、ぜひ別の場面で見たかったね。 今はそんなものを楽しんでる場合じゃないんだ。残念ながら俺も当事者だからな。 「あなたたちの存在、そしてこのホワイトカレーの存在はカレーの概念を狂わせる」 そして長門は決定的な一言を呟いた。 「この世界を私は認めない」 * * * こうして世界は長門によって二度目の改変が行われた。 改変に立ち会った俺たち以外は決してその事実に気がつくことはないが、 この世界はホワイトカレーの存在が綺麗さっぱり抹消された世界である。 ハルヒはというと、ホワイトカレーのことはすぐに忘れて新しいものに飛びついたから問題ない。 ……お前は本当に幸せなやつだよな。 朝比奈さんが言うには、このことによる未来への重大な影響はないそうだ。 古泉によると、カレーが絡んだ時の長門を恐れた各陣営は今回の事態を黙殺することで同意したらしい。 ホワイトカレーをカレーと呼んでしまった俺たちはというと、 古泉が知り合いだか機関だかを通して手に入れた 大量のカレーレトルトパックを差し出すことで許してもらった。 そう、未来への影響はない。 ただひとつ、ハ○スの食品開発者の方々の努力が水泡に帰したことを除いては。 俺と朝比奈さんと古泉はそっと手を合わせた。 ハウ○のみなさん、本当にごめんなさい、と。 終わり。
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長門有希の書肆(しょし) ※この物語は涼宮ハルヒの憂鬱にサブタイトルの小説を掛け合わせてみたものです。クロスオーバーという ほどでもなく、ハルヒさえ知っていれば小説のほうは未読の方でも充分楽しめるものとなっておりますので どうぞお気兼ねなく読んで頂いて結構です。興味がありましたらぜひ小説のほうも読まれるといいでしょう。 [ニューロマンサー] 「涼宮ハルヒに特別な干渉をしているあなたの情報を得たい。協力して欲しい」 無感動な双眸を真っ直ぐ据えた長門はぽつねんとパソコンの前に立っていた。 「お前からのたっての希望ならもちろん吝かじゃあないが、具体的に何をすればいいんだ……」 長門に促されてパソコンの席に座ると、黒いパイル地の汗止め(スウェットバンド)を渡された。 「なんだこれ……」 「皮膚電極(ダーマトロード)」 訝しがっている俺の表情を目に映して長門は説明を始める。 「あなたの情報の入手と同時に幾つかの試験も行いたい。しかし現状次元のままでは情報操作だけでは試しき れず、またそのリスクとは裏腹にあなたが入手する情報量は極めて微少であろうと判断した。そこで、この原 始的なネットワークに私のネットワークをリンクすることによって構築される電脳空間(サイバースペース) にあなたが接続することで、あなたの情報を得ると同時にあなたの意識のみでの模擬実験を試みることにする。 その接続端子がそれ、額に巻いて」 言われるがままに電極とやらをおでこに巻くとパソコンが起動した。が、HDDやファンが稼動する低めの騒音 は聴こえず、画面には不恰好なハチマキをした訝しがってる男の顔が暗闇の中に浮き出ている。 「眼を閉じて」 眼の裏の、血に照らされた闇の中、銀色の眼閃が空間の端から渦巻くように流れ込み、催眠的映像が、滅茶 苦茶に齣(こま)をつなぎあわせたフィルムのように走り過ぎる。記号、数字、顔──ぼやけて断片的な視覚 情報の曼陀羅(まんだら)。 どこかで自分が驚いているのがわかった。しかし、既に意識だけが空間に浮かぶように佇んでいる。空間は 空きチャンネルのTVの色の空、緑地に等間隔の黒色方形網の床、全方面が見果てのない地平線のみ。 閉鎖空間とは異なるデタラメさが静かに形作っていた。 「ここは……」 「電脳空間」 と長門が後ろで応える。振り向くと、近いんだか遠いんだかわからないところに長門がやはりぽつねんと立 っていた。北高の制服に黒いカーディガンに青地の文庫本で、 「この空間は私のネットワークとの仲介地点を担うパーソナルコンピュータの原始的ネットワーク。ここで私 とあなたを繋ぎ、試験する」 半歩前で長門が広げた両手をゆっくり上げ、ハンマーで殴ったような衝撃が頭上に響く。 燦然と輝く夕日に燃やされた部室は無人のためもあってかひどく淋しげだった。長机や折りたたみ椅子から 伸びた影に縁取られ、部屋は綺麗な黒と淡い紅の妙な縞になっている。かすかなお茶葉の芳香が鼻を掠めた。 椅子に座ったまま何をするでもなくぼんやりしていると、そのうちに黄色い月が空にかかり始めた。色はある が光がない。青白い光が空に流れていて、暗闇にぼやけ始めた室内に蛍光灯の灯りを点す。 真夜中になって外へ出た。下校途中にある家々には暖かい光が溢れていたが、誰ともすれ違うことはない。 十字路の真中に俺の自転車が立っている。鍵は開けられており、どこにも傷や壊れた箇所などはない。暗闇の 深淵の中、俺はそれを走らせてある場所へと向かった。 SOS団御用達の喫茶店には既に見慣れた面子が揃っていた。他の客や店員はいない。 「遅いわよキョン! 罰金ね!」 と怒鳴った我らが団長様の声は静かな店内にはいささか響きすぎる。朝比奈さんの笑顔と古泉のニヤケ顔にも 迎えられたが長門の姿だけはどこにも見当らなかった。 「それで」 俺は朝比奈さんの隣に座りながら、 「何が目的だ……」 「どうしてすぐに気付いちゃったのかしら」 とハルヒはアヒル口を作り、 「勘付かせる間を与えたつもりはなかったはずなんだけど」 「直前の長門の表情からなんとなく、だ。ミリ単位ほどのものだったが明らかに「迂闊」とでも言わんばかり に目を瞠(みは)っていたからな」 「その細微な手掛かりからよくここまでの機微を推察できましたね」 と古泉がオーバーに肩を竦め、 「見事の一言に尽きます」 くすりと朝比奈さんは微笑み、 「でも今回はわたしたちの勝ちですね。現在のキョンくんの脳波は水平線(フラットライン)を示しています。 このまま後数分でキョンくんは死にます」 今回はということは急進派のほうか。九曜の天蓋領域とやらのほうも考えてはいたが、こっちだったか。 「日が暮れたころから脳波が停止しているのなら、もう随分時間が経ってるはずだが」 「こちらの仮想空間の時間に対して現実空間で実際に経過した時間はまったく微々たるものです。あちらのあ なたが死亡するまでには数分のみですが、こちらのあなたは充分一生を過ごすことができるでしょう」 ハルヒが身を乗り出して、 「だからキョン、あんたはここで残りの人生を過ごすことになるの。こんな事をいきなり言われて吃驚するの はあたしもわかるわ。けど安心なさい! 団長様からのせめてもの慰めに、あんたが望むのなら何でもやって あげるわ」 とやたら嬉しそうに言い、 「なんならみくるちゃんも好きにしていいわよ」 とあろうことか朝比奈さんに指を突きつけた。 朝比奈さんがえぇっと赤く熟れていくのを尻目に、 「いや、いい」 と何時の間にか目の前にあったミントティーを口にして、 「じきに長門が助けにくるさ」 ムッとしたハルヒは唇をへの字に曲げてチュゴゴゴとアイスコーヒーを飲み干した。 痛いほど澄み切った空気をカランコロンという鐘音が引き裂く。見ると長門がゆっくりこちらへ近づいてき ており、一瞬だけいつものSOS団活動の心境に錯覚しかけた。 「助けにきた」 と俺の手を取り、 「急ぐべき」 「今度は完璧だと思ったんですが、どうやら失敗のようですね」 と人事のように古泉は言う。 「侵入を許してしまった時点でわたしたちの負けです」 と朝比奈さんは哀しそうな笑顔を向けた。 ハルヒはというと先ほどまでの挙動が嘘のように大人しくなり、静かな瞳で俺を見据えていた。何かを期待 した俺の腕を引いて長門は喫茶店の戸口をくぐる。 「キョン」 反射的に振り向いてしまった。不意に呼ばれたからでもあり、声がとても切なかったからでもある。 「あたしたちは確かに仮想空間に作られただけの複製でしかないけど、その情報源になってるのはあんたの頭 の中の記憶からなの。それは現実的に見ればひどく不完全なものに見えるかも知れないけど、でもある意味で は 究極的 でもあるのよ」 仮想空間という、虚無に等しい世界に0と1の羅列のみで構成されているはずのハルヒが微笑みながら声を上 ずらせている。涙が一筋、右頬を伝った。 「その心は、あたしのこの気持ちは、決して偽りのものなんかじゃないの。だから、キョン──」 「もう駄目」 と長門が再び俺の腕を引いた。先ほどより若干強く。 「これ以上はあなたの生命に関わる。早く。眼を閉じて」 遠ざかる情景を後ろに固く眼を閉じる。ハルヒの最後の声がしばらく耳に纏わりついて離れなかった。 意識が身体へと帰り着いたとき最初に気付いたのは垂れ流しまくった涙と鼻水に、ひどい喉の渇きだった。 次いで、何かが焦げていることに気付きそれが自分のおでこであることわかった。 長門が俺に接続しようとした瞬間を急進派が狙っていたんだそうである。しかし俺の万事を騙すことができ ず、またすぐに長門の解析・侵入が成功したことによって暗殺計画は結実することなく散ることとなる。あの 仮想空間は既に消去されてしまったのだとか。それと数秒間ではあるがやはり脳波は止まっていたらしい。が、 長門が言うには心配ないんだそうだ。 「ごめんなさい」 と長門は一言謝ったが、俺は何も言わなかった。 後日、恒例不思議探索のルーチン化した日程を過ごしたときである。燦然と燃え上がる夕日に照らされて 「またね!」 と言って別れるハルヒの満足の笑みに、 あの時 のハルヒも同じような笑顔であったのだろうかと思い出し、 心臓が握り潰される心持がした。
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永続魔法 「長門」と名のつくモンスターの召喚・反転召喚・特殊召喚に 成功する度にこのカードに長門カウンターを2個置く。 このカードに乗っている長門カウンターを以下の数取り除き、 以下の効果を発動することができる。 ●1個|自分のデッキまたは墓地から「長門」と名のつく カード1枚を手札に加える。 ●2個|自分のデッキまたは墓地から「長門」と名のつく モンスター1体を特殊召喚する。