約 3,137,234 件
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/2527.html
あれから長門の携帯に連絡すると、「待ってる」という返事を戴いた。 春先とは言え風呂上りに外出すると風邪をこじらせるかもしれないが、 未来のことより今は目の前の異常事態を解決しなけりゃならん。 纏わりついてくる妹を追っ払うと、俺はパーカーを羽織って玄関のドアを開けた。 長門が住むマンションに着き、インターホンを押す。 無言の応対に俺だという事を告げると、玄関が開いた。 もうこのやり取りは何回目だろうね。 馴れた操作で708室をノックすると、制服のままの長門が出迎えてくれた。 「事態は把握している」 流石長門。話が早いな。どうすれば元に戻る? 「しかし私ではどうすることもできない」 なんですとー!? じゃあ俺は変化するへんてこりんな体のままってことなのか。 「そう。あなたの体の異変は昼に読んでいた本が原因と思われる。 涼宮ハルヒの力が元凶である以上、情報統合思念体でも対処は困難。 しかし」 そこで一旦言葉を区切ると、長門はお茶を一口含んだ。 「現状のままでも観測に影響はないと考えられる。 大丈夫、あなたは私が守る」 その心遣いは非常にありがたいが、俺はちっとも嬉しくないぞ。 何回も長門に助けられているとはいえ、俺だって男なんだから意地というものがある。 今は時々女になるけどな。 「1つ確認したいことがある。きて」 そういうと長門は立ち上がって、俺を奥へと手招きした。 確認したいこと? はて、一体何だろうな。 「入って」 長門が招き入れたのはなんと浴槽だった。 ちょっと待て。俺がお湯を被ると女になって、水を被ると男になるのは知ってるだろ? しかも服のままって濡れるじゃねーか。 「その心配はいらない。しゃがんで、頭を下げて」 どうやら逆らうことは無理のようだ。 コピ研との対戦した時のように有無を言わせない迫力がある。 俺は観念して長門が言われた通りに座り込んで頭を垂れた。 「これでいいか?」 「いい」 俺の視界はタイルの床しかないので状況がよくわからないが、 恐らくシャワーを手に取った長門が蛇口を捻った。 間髪置かず温かい雨が俺の頭に勢いよく降り注ぐ。 肩と顔に髪の毛がかかり、また俺は女になったことを知る。 そう言えば、この髪の毛はどれくらい長いんだろうな。鏡を見る勇気がないからわからん。 「まったく、何がしたいんだ長門って・・・おい!」 長門はすぐに蛇口を捻ってシャワーを止めたかと思えば、 俺の目の前に座り込むと突然俺の胸を掴んだではないか。 待て待て待て! いったい何の冗談だ、長門。 「確認」 「は? ちょ、揉むんじゃない!」 無言で胸を揉み始める長門。髪から垂れる水で服が濡れても気にしない。 落ち着け長門! 今は女の体をしているが俺は男だぞ。 お前までハルヒの手癖がついたんじゃないだろうな。 このままだとマジやばいって! 「・・・・大きい」 「へ?」 突然言われた形容詞にまぬけな返事をする俺。 だが、長門の声は真剣というより怒りが混じっているような――。 「私より、大きい」 そう言えば、長門の胸より大きい気がするが・・・って確認したい事ってこれなのか! 「そう、私はあなたの胸部に失望している」 「俺が望んだわけじゃねーぞ。ってだから揉むなぁ!」 また無言で俺の胸を揉み始める長門。 だから恨めしそうに俺を見るんじゃありません! はぁ、いったい俺はいつになったら戻れるんだろうね。
https://w.atwiki.jp/ddserror/pages/158.html
【初めての仲魔(1周目14日)】92 :1 ◆2iCIL1BZZQ:2011/02/06(日) 20 22 19 ID r64RTPOc IIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIII ┏─────────────┓ II 20XX年12月14日(日)―朝― II │MAG:84. ¥:50000 .│ II 柔速荘201号室 やる夫の部屋 .II │探索:0/0 │ IIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIII ┗─────────────┛ ___ . ´ `丶 .イ ヽ / '. ノイ / , i '. i _,. .-‐Ⅵf.イ}/j∧ハ i ハ{ .イ f 从ィ芒 , 芒从/. _,. イ i ∨ ト . - r个j`ヽ. r< l ∨ ! 厂 /.j ハ { ` j ヾ | リ / / i ヽ f⌒ '7 \ { / /. イ l ヾf´ ̄ つ ' zー-ミァ´ l ! ヽ、__〉 ;__/ i l ! / . ィ/, ! l ! / // ./ .厂`ヽ! | / / / ハ ,___/ l | { /i f l /. ! |. ヾ / ! l| l 'ヽ、 ! | ヽ∠__ j八 l / \ ! |. 乂㌫=j ′ `''1 | ` ̄l ハ l! j l f! '. l Y―1 l ハ '. l | ! f´三辷ヽ j l 丶 | } ̄ ` ー‐ '′l_f´~ヾ〉 `ー‐'′┏┓長門 ┏┓┗╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋┛ ┃私は天使エンジェル。 ┃ ┃道に迷いし人の子よ。主の光で貴方の行く先を照らしましょう。 ┃ ┃ ┃ ┃ちなみに固体名は長門。どう呼ぶかはサマナーに任せる。 ┃┏╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋┓┗┛ ┗┛※安価↓※Q、エンジェルのことはどう呼ぶ?1、エンジェル2、長門3、その他(具体的にどう呼ぶかも書いてください) ※3を選択 愛称「ながもん」に決定【ながもん(1周目14日)】100 :1 ◆2iCIL1BZZQ:2011/02/06(日) 20 31 29 ID r64RTPOc IIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIII ┏─────────────┓ II 20XX年12月14日(日)―朝― II │MAG:84. ¥:50000 .│ II 柔速荘201号室 やる夫の部屋 .II │探索:0/0 │ IIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIII ┗─────────────┛ / . / .. | . l . ヽ ヽ、 、\ //. / / .. ! . ! . ヽ ヽ ヽ ヽ、 ヽ //. i / .. i | . ', . !. ', ヾ、 ノノ!. | , / / / / ! | . | . | i | ! | / / /i / } ハ ハ l ! . | | l ', | _!ム_∠__/;/ ! / l / ! /i /! | ! i! r‐t |/_ //`ヽ / / _,,ム'-‐lメ‐| / | ! ヽ', !/`! !,r=〒〒ミ==ヽ/' ,,r'===ヾ-、! /l ハ ! ヽヽ(_! . |《 i、ヒ''ィノ ゝ-‐-《 !;;.q,ノ ´/レ | i .l / ヽ{ トヘ . | \  ̄ ノ ヘ_. ̄ / ノ /! l ! / `ヽト、 l  ̄ ̄ ̄ `;  ̄ 7 / .i / / ハヽ l\ r_ァ /! / / /ハ ト、! ` 、 _, < |イ / ' わかった。 /. rノ. \ ` ‐r-‐< 'l / _,, -'".. l {、ヽ . \ ',/ 今後はそう呼ばれても返事をする。. ____________________________________ |┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓| |┃長門は特に反応を示さない。 ┃| |┃好感度変化なし。 ┃| |┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛|.  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄┏┓やる夫 ┏┓┗╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋┛ ┃じゃ、「ながもん」って呼ぶお。 ┃ ┃これからよろしくだお、ながもん! ┃ ┃ ┃ ┃ ┃┏╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋┓┗┛ ┗┛ 【耐性:冗談無効(1周目14日)】181 :1 ◆2iCIL1BZZQ:2011/02/06(日) 23 38 56 ID r64RTPOc IIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIII ┏─────────────┓ II 20XX年12月14日(日)―昼― II │MAG:84. ¥:30000 .│ II 秋葉原 ミリタリーコスプレ「萌え燃え」 .II │探索:0/0 │ IIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIII ┗─────────────┛ Ⅵ . . | . i . . . . . l .i . . ./| . . . . i . . | . / . ./ ! ./ // /' | .i .| . | . . / , | / ! . . . .l . . .| . .i/ / / | .! .| . | . . . / / l .| l . . . .| . . ! . l ' |ハ| , | . / / ! ! l . . . .| . . .ll l ,... ´i ' l / | .∧′ || ! . . . | . . l l l ‐,-' .ハ l.――く′| ′ ! . . . l . l ! ! /´ . / } ! ・・・次はない。 、 〉 . .! |` ll /l . . ./ j/ 、 / . . . | ! `´ ! . ,' /' \ i . | l .i . . .\! . | !l . . . . . .\ | !三≧=- 、 . . . . .ヽ _ /´〉,、 | ̄|rヘ三三三三≧ 、 i i i iヽ l、 ̄ ̄了〈_ノ _/(^ーヵ L__」L/ ∧ /~7 /)三三三三三\≧ 、 .Ⅹi i i ヘ 二コ ,| r三'_」 r--、 (/ /二~|/_/∠/三三三三三三\三\ . .Ⅹi i ∧ /__」 _,,,ニコ〈 〈〉 / ̄ 」三三三三三三三ヽ 三 \ Ⅹ i ∧ '´ (__,,,-ー'' ~~ ̄ 三三三三三三三∧三三\ .Ⅹ i l 三 三 三三三三三∧三三ニ\ Ⅵ. ____________________________________ |┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓| |┃昼の行動を終了した。 ┃| |┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛|.  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄┏┓やる夫 ┏┓┗╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋┛ ┃は、はいっ。わかりましたおっ! ┃ ┃(ながもんこえぇぇ…。 ┃ ┃ 冗談が通じないって覚えとくお。) ┃ ┃ ┃┏╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋┓┗┛ ┗┛ 【教えて長門先生(1周目14日)】308 :1 ◆2iCIL1BZZQ:2011/02/09(水) 22 31 29 ID pB772B2Y IIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIII ┏─────────────┓ II 20XX年12月14日(日)―夜― II │MAG:75. ¥:20000 .│ II 代々木公園 II │探索:0/0 │ IIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIII ┗─────────────┛ / / / l | l l ヽ i / ;イ i | l|; li; |、; l l .l / l | /! | li lヽ l. ヽ; l l | l | | -i-L;;_l .|!i l ヽ l ヽ、__;;;; | l | ! .| l __;;;|_ l l`ヽヽ; l ヾ;レ‐'''゙゙´\ | l l! .| / ___ノ,ィ'ト|''=ミ、 ヾ! ,r-=fニミ;;弍;;| l~゙'i l/ ,/ト、 l゙__゙ヾ ii |ヽ ,/ .| illi ゙ii/ | j¨゙ l /⌒ヾ、|/`fト l ゙K);j .l'⌒''h. K);;;;ッリ l / .ノ /‐-、 `iノ /'ヽ|、 ノ ヾ、 ,/ | /=7゙ ./ 、. ヽ |゙V,_ l i、 ̄ 丶 ゙''ー-‐'' ,l /| ;/ i '゙ヽ_j-' .| |.\ ‐- ,,イ / ,l/ ヽ ヽ jl l. ヽ、 , ''゙ / /゙`ヽ、 ヽ、. /ヽ | ,,`=ー '''i´ / ;/レ'〉; ; ; ; ,.,\ / /. ヽ | ,,r''゙,.; ; ;r''゙~ノ /イ /; ; ; ; ; ; ; ; ; ;┏┓長門 ┏┓┗╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋┛ ┃それは魔貨(マッカ)。 ┃ ┃私たち悪魔の使う貨幣。 ┃ ┃そのままだと悪魔との交渉にしか使えないけれど、一応金貨だから何処かで ┃ ┃何処かで換金して貰えるかもしれない。 ┃┏╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋┓┗┛ ┗┛ ※長門先生はスレッド初期、ストーリーのナビゲート役でした【仲魔強化とMAG不足(1周目14日)】331 :1 ◆2iCIL1BZZQ:2011/02/09(水) 23 55 10 ID pB772B2Y IIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIII ┏─────────────┓ II 20XX年12月14日(日)―夜― II │MAG:88. ¥:20000 .│ II 柔速荘201号室 やる夫の部屋 .II │探索:0/0 マッカ:28 │ IIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIII ┗─────────────┛// ∧ l| ∧ ∨ {/ i {i l| l| ヽ |l ヽ \ l| i} {i l{| ', {i } \ \ / {| i}, i} {i| ∨ ヾ i} }ー __\ _ / {| |{\ {ト、 {{ \ {,\ |} |i l}  ̄'/ {i| |l \ |{ ヾ、 {i \{ ヽ i} i} l| | i} {| \ ヾ \ { __,,ר´ ヽ l| l| | } i| | ヾ ' , } \ {ヘィァィ 二二ニ=ュ\ | { 、 | {! i`¨二=≡\ ' ,ム \ ヾ  ̄ } }¨| \ i ∧{ {l {! {| ̄ } {\{ ,> ' ,¨三二三≦.| \ }ヽ | } {i i} ヾ{{≧二三 二 / \{ "" l |i `} | l} i /{| i} \三 / \_ | i}. , j | i} i, { {〔.| ヾ ヽ \ ` ュ | i} // |/ ハ ヘ i} \ ゝ 〕 | i},,/ / { ∨ \{ \ {\| ∠_ | } / i ∨ ト、 {i | ∧ { _,,, -‐- ._ ,| | {i`' , ∨| \i l} |\ r=ニ -‐=‐--`ュ ゞ / | | /リ 私はともかくこなたも強化できない。 \ { { { {\ ¨ ̄> / } |/ | ハ .{マ >- __ / / / ∧ サマナーは甲斐性なし・・・。 { | .i .l \\ ァ‐- _`〕 _ -‐ ´ /// リ {| { ! \∨ ハ∨//// ̄ / // {/' リ } } リ∨///// / i |/ ´ ∨/// / |i、 } // / ヽ`ー- 、┏┓やる夫 ┏┓┗╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋┛ ┃すみませんお…。 .┃ ┃明日はもっと頑張るんで許して欲しいお…。 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃┏╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋┓┗┛ ┗┛ 【一緒に朝ご飯(1周目15日)】390 :1 ◆2iCIL1BZZQ:2011/02/11(金) 19 45 51 ID rvDiY7Vo IIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIII ┏─────────────┓ II 20XX年12月15日(月)―朝― II │MAG:68. ¥:20000 .│ II 柔速荘201号室 やる夫の部屋 .II │探索:0/0 マッカ:28 .│ IIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIII ┗─────────────┛ / . / .. | . l . ヽ ヽ、 、\ //. / / .. ! . ! . ヽ ヽ ヽ ヽ、 ヽ //. i / .. i | . ', . !. ', ヾ、 ノノ!. | , / / / / ! | . | . | i | ! | / / /i / } ハ ハ l ! . | | l ', | _!ム_∠__/;/ ! / l / ! /i /! | ! i! r‐t |/_ //`ヽ / / _,,ム'-‐lメ‐| / | ! ヽ', !/`! !,r=〒〒ミ==ヽ/' ,,r'===ヾ-、! /l ハ ! ヽヽ(_! . |《 i、ヒ''ィノ ゝ-‐-《 !;;.q,ノ ´/レ | i .l / ヽ{ トヘ . | \  ̄ ノ ヘ_. ̄ / ノ /! l ! / `ヽト、 l  ̄ ̄ ̄ `;  ̄ 7 / .i / / ハヽ l\ r_ァ /! / / /ハ ト、! ` 、 _, < |イ / ' 私に人間の食事は不要―― /. rノ. \ ` ‐r-‐< 'l / _,, -'".. l {、ヽ . \ ',/ ――だけど、感謝する。 _,,_-'"‐、 ヘ ___ ___ i . `ーt、_. ____________________________________ |┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓| |┃長門の分も用意したやる夫を見てこなたは満足そうに頷いた。 ┃| |┃こなたの好感度が1上がった。 ┃| |┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛|.  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄┏┓こなた ┏┓┗╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋┛ ┃いいじゃん、いいじゃん。 .┃ ┃人はパンのみに生きるに非ず、ってね。私たち悪魔だけど。 ┃ ┃美味しい物を食べると幸せになるしさー? ┃ ┃ ┃┏╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋┓┗┛ ┗┛ 【気晴らしとMAG贈与(1周目17日)】915 :1 ◆2iCIL1BZZQ:2011/02/12(土) 18 24 27 ID 4wyG2z4U IIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIII ┏─────────────┓ II 20XX年12月17日(水)―朝― II │MAG:94 ¥:15000 │ II 柔速荘201号室 やる夫の部屋 .II │探索:0/0 マッカ:84 ....│ IIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIII ┗─────────────┛ / / / l | l l ヽ i / ;イ i | l|; li; |、; l l .l / l | /! | li lヽ l. ヽ; l l | l | | -i-L;;_l .|!i l ヽ l ヽ、__;;;; | l | ! .| l __;;;|_ l l`ヽヽ; l ヾ;レ‐'''゙゙´\ | l l! .| / ___ノ,ィ'ト|''=ミ、 ヾ! ,r-=fニミ;;弍;;| l~゙'i l/ ,/ト、 l゙__゙ヾ ii |ヽ ,/ .| illi ゙ii/ | j¨゙ l /⌒ヾ、|/`fト l ゙K);j .l'⌒''h. K);;;;ッリ l / .ノ /‐-、 `iノ /'ヽ|、 ノ ヾ、 ,/ | /=7゙ ./ 、. ヽ |゙V,_ l i、 ̄ 丶 ゙''ー-‐'' ,l /| ;/ i '゙ヽ_j-' .| |.\ ‐- ,,イ / ,l/ ヽ ヽ jl l. ヽ、 , ''゙ / /゙`ヽ、 ヽ、. /ヽ | ,,`=ー '''i´ / ;/レ'〉; ; ; ; ,.,\ / /. ヽ | ,,r''゙,.; ; ;r''゙~ノ /イ /; ; ; ; ; ; ; ; ; ;┏┓長門 ┏┓┗╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋┛ ┃……サマナーとしての命令なら従う。 ┃ ┃ただ、私個人としては、そういう事は二人きりでしたいと思う。 ┃ ┃それに、悪魔と交わればMAGを吸われる……覚悟の上? ┃ ┃ ┃┏╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋┓┗┛ ┗┛※安価 ↓5※Q、長門は乗り気ではないようだ。どうする?1、ごめん。やっぱなしで。2、たまには役得を味わってもいいじゃないか! ※1を選択して好感度UP【長門の贈り物(1周目18日)】609 :1 ◆2iCIL1BZZQ:2011/02/19(土) 21 36 24 ID A5uEZ/Mw IIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIII ┏─────────────┓ II 20XX年12月18日(木)―昼― II │MAG:168 ¥:32000 ....│ II 井の頭公園 .II │探索:0/0 マッカ:124 ...│ IIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIII ┗─────────────┛ //. ; . . . 、 ヽ .ヽ . . ヾ. / , / \丶 .\. .ヽ \ ‘, .‘, . ',、 〃, / { ト 、ヽ\ 丶 \ \Ⅵ i. | . . ',\ / / / / ; / !|; { \ \ \ 丶 ヾ!| l. | !| / / / / /. | . .i . !| ∨ ‘,丶 \ \ \ \ . | l. | !ト \ , ./ / / / .i | . !| ∨ ヽ ヽ\\__\―、-- . | | | .,小 `\ | ' i ; i .i Ⅳ ! .!|、 Ⅳ ∧\\´\ `ヽ\\! !ヘ } .i i| ! | |i .| | | i | |_Ⅳ_∨ ∧ \\ ,ィ斥云ミメ リ ! `V .!| リ | || | | | i /| .j/ `\\\ ,/´ イ匁h 爿}イ jノ ノ !| ' | 八 i| | | | .| ir===ミ、 {{. V辷り'Y ! 厶イ! .从 / |/ V i | |. | Yハ代h 心Y⌒ヾ , ´"¨゙`丿八 / . |乂 . リ |! ∨ |∧! {{ヘ`ヽVrソ } ` ー― ´ / // i|Уノ ! ∨ |\ヽ乂`ヽ´"¨´/ノ / 〃八 八 \ |\ | ! >一 ` _ ノ / / / リ乂 Ⅳ .\ /分 、 ゚ / / / |`ヽ 提案を聞き入れてくれて ノ∨ ∧/ / . ハ> . イ/ _....-─┴  ̄ ̄`ヽ ありがとう。 V/ ∨. /ハ ` ー 、./x≪ / 八 ∨ { ,x≪ i【好感度】LV2(4/5)→LV3(0/0) \ / ! /ィ7/////ハ; {. ____________________________________ |┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓| |┃長門との約束を守った。 ┃| |┃長門の好感度が1上がった。長門との関係が協力者から仲間へ成長した! .. ...┃| |┃長門からアクセサリー「ワイズリング」を貰った。 ┃| |┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛|.  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄┏┓長門 ┏┓┗╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋┛ ┃サマナー、仲魔の言うことに耳を傾ける貴方は好ましい。 ┃これは私から貴方への信頼の証。受け取って欲しい。 ┃今後ともよろしく…。 ┃┏╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋┓┗┛ ┗┛ 長門に戻る 2周目の長門へ飛ぶ
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/2828.html
(※長門vs周防のつづきです) うだるような暑さが、じりじりと肌を焼く。すっかり梅雨もあがり、本格的な夏が到来したのだ。 俺は汗をだらだら流しながら、だるい身体を引きずるように公園の並木通りを歩いていた。妹にジャンケンで敗北し、コンビニへアイスを買いに行くはめになったのだ。あそこでグーさえ出さなけりゃ。グーさえ出さなけりゃ。 あつい…。 ボーっとする頭の中で後悔の念がぐるぐるサーキットのように回り続ける。ため息をもらした俺は、流れる汗を手でぬぐい、空になったコーラの缶を公園のゴミ箱へ放り込んだ。 ふと、ゴミ箱に目をやる。なんだ、あのゴミ箱からはみ出ている棒は? ゴミ箱からにゅっと突き出ている白い2本の棒が妙に気になり、俺はゴミ箱に近づいた。なんだこりゃ。マネキンの足じゃないか。 まったく。どこの誰だかしらないが、公園のゴミ箱にマネキンを捨てるなんて。まあ路上に放置したり川に流したりするよりはマシとはいえ、こんなところに放りこむなよ。俺はまたため息をもらし、ゴミ箱に背をむけた。 その時、がさりと視界の端でマネキンの足が動いたような気がした。びくっとして俺は再び横目でマネキンの足を一瞥する。 マネキンが動くなんてわけないよな。うん。俺の気のせいだ。きっと。そもそも人間がゴミ箱の中に入っているわけなんてないから、ここから突き出ている足は、マネキンの足に違いないのだ。 人間の足であるはずなど、断じてない。 「………犬神家の人々」 背中のむこうにあるゴミ箱の中から、非常に聞き覚えのある声がした。 聞こえなきゃよかったのに。 しかし聞こえてしまったものはしょうがない。俺はゴミ箱の前に立ち、冷蔵庫の中にある腐臭を放つキャベツを除去するような手つきで、おそるおそるゴミを漁った。 嫌な予感が的中した。そこには、足をゴミ箱の外へ放り出してぐったりした長門有希が、身体を二つに折り曲げて納まっていた。 「………ほぅ」 第49回日本ミステリー大賞受賞作を彷彿とさせるセリフを口にする長門をゴミ箱の中から抱き起こす。その身体は茹で上がったタコのように熱い。 あっつ! 熱いな!? おい長門!? どうした、しっかりしろ! 傷はあさいぞ! 「ピピルピルピルピピルピ-」 なんかヤバそうなエラー音がしてるぞ!? 大丈夫か!? 見るからに大丈夫そうじゃないんだが!? 「………水……つめたい水を…」 水だな!? よし分かった待ってろ長門! 俺は長門の身体をゴミ箱の中から担ぎ出すと、担いだまま走り出した。すぐ近くに、半年前に朝比奈さんと一緒に亀を投げ込んだ川があるんだ。 すぐさま川にたどり着いた俺は、担いでいた長門の体を持ち上げ、いきおいよく川へむかって放り込んだ。 よみがえれ、長門おおぉぉぉ! 音をたてて水中に頭から落下した長門は、つきささった杭のように腰から下を水面上に突き出し、体からしゅわしゅわと水蒸気をあげ始めた。ああ、そういやこんなシーン、刃牙の中国拳法大会編でもあったな。刃牙が黒糖水を14kg一気飲みする場面。 なんとかエラーの直った長門と一緒に、俺は公園のベンチに座って休憩していた。まあ、長門の事情も聞かないといけないしな。 何があったんだ、長門。 「………うかつだった」 絵に描いたような迂闊な格好だったよ。それは十分理解している 「………私は、自分の力を過信しすぎていた。そのおかげで、不覚をとってしまった」 長門が顔を伏せてぽつりとそう呟いた。 まさかお前、またカマドウマとか情報素体みたいな、俺たちの想像も及ばないような外敵と戦っていたのか? 「………そう」 無理するなよ。お前が世界存亡の危機のために身体を張ってくれるのはありがたいんだが、いつかきっとお前自身が倒れちまうぜ。そんな事態にはなってもらいたくないんだ、俺たちは。だからさ。俺たちのことも頼れよ。 そりゃ頼りにならない足手まといかもしれないけど、それでも何かの役には立つと思うぜ? たぶん。 「………それじゃ、聞いて」 ああ。話してみろよ。 「………周防九曜がたおせない」 なに、またあの天蓋領域が!? 雪山の山荘といい、なんでそんなに長門ばかり……ねらって……… その時、俺の脳裏にある光景がフラッシュバックした。まだ梅雨まっさかりの頃のことだ。そういえば、前にもこんなことがあったな。あの時は、長門が川を流れてて…… ああ、いけない。そういえば俺、お遣いの途中だったんだ。じゃあな長門。マンションに帰ってしっかり休んでおけよ。 そう言って立ち上がった俺の手を、長門がひかえめにつかんだ。 「………力をかしてくれるんじゃなかったの?」 あ、いや。そのつもりだったんだけどさ…。またあれだろ? フードバトルで負けたとかなんとか言うんだろ? 「………ちがう。フードバトルで彼女に負けたのではない」 じゃあ何で負けたんだよ。まさか本当に常人には推し量れない宇宙的なバトルで負けたっていうのか? 「………町内恒例の我慢大会で負けた」 離してくれ。俺はさっさと帰って、涼しいクーラーの下でダラダラしながらアイスを食べ、明日のために英気を養うんだ。つきあってられないぜ。 「………待って。聞いて。あなたにとってはどうでもいい青春の1ページかもしれない。けれど、私にとっては人生に関わる一大事。この世に生をうけて4年の月日しか経過していないのに、人生に関わる一大事が起こっているという不条理に同情してくれるなら、聞いて」 同情しないから離してくれ。我慢大会に出るくらいなら家でのんびり本でも読んでろよ。 「………私が我慢大会で周防九曜に負けたままならば、来週末あたりには世界は崩壊する」 またその極端な理論かよ!? もういいから。図書館にでも行けよ。涼しいぞ、あそこは。熱にやられてそんなことを口走るようになっちまったんだ。頭をひやしてこい。な? 「ブブ....ブブブブブ....この操作を....完了するのに十分な記憶域....ブブブがありません....ブブブビー.....レジストリデータベース....がピピピブ壊れています.....ピピピーピルピピ」 うおおおぉぉぉい!? また口からエラー音もれてるぞ!? こわいな! なんかいろいろデータベース壊れちゃまずいだろ! 「早食い大会の次は、我慢大会ですか。いやはや。チャレンジャーですね。長門さんも」 なんとかしてくれ、古泉。俺がいくら「プライベートなことなんだから自分で解決しろ」って言っても、エラー起こしたふりして脅かすんだ。反則だろ、実際。いい年したじいちゃんが夕食後に「メシはまだか?」とか言ってくるようなもんだぜ。シャレにならないことは言わないでもらいたい。ようやく胃の痛みもひいてきたっていうのに。 「我慢大会? 我慢大会って、今度の日曜に銭湯である、サウナの我慢大会のこと?」」 団長席にすわってネットサーフィンしてたハルヒが耳ざとく聞きつけ、俺たちの方へ視線を送っている。 ああ、その我慢大会のことだ。長門がその我慢大会にひどくご執心なんだが、その大会にどうしても負けたくない相手が出場するから興奮してるんだよ。長門がひとりで。 「ふーん、そうなんだ。私はあまり興味なかったしわざわざこんなクソ暑い時期にサウナなんて行きたくもなかったからスルーしてたんだけど。有希ってそういうのが好きだったんだ」 「………現代は飽食の時代で、身の周りになんでも便利なものがあふれている。自分の家から一歩も出ることなく生きていくことも可能な時代。我慢することもなく、また我慢することを知らない人間が大勢いる昨今。自らあえて困難の道に身を投じることで、物や他人に頼らず生きて行くことができる強い人間に成長するための鍛錬修養でもある。そしてまた、そういった現代社会に対するアンチテーゼでもある」 いいこと言ってるようで、まったく脈略ないよな。 「そ、そうだったの……。分かったわ、有希。あなたがそこまで深い考えを持って我慢大会に挑んでいたなんて」 いや、絶対そこまで考えてなかったと思うぞ。 「そこまで有希の意思が固いのなら、止めないわ。いえ、むしろ私も応援するわよ! 有希だけを戦地に送るようなことはできないもの。私たち全員で我慢大会に臨むのよ! SOS団の結束はダイヤモンドの共有結合なみに固いのよ!」 おいおい、本気で言ってるのかよ!? ダイヤモンドは熱に弱いんだぜ? 「ものの喩えよ。それくらい分かりなさい。それじゃ、私はSOS団全員の参加申し込みをしておくから。日曜はみんなで銭湯に集合よ!」 全員で臨むって、まさか俺たち全員が参加するのかよ!? 勘弁してくれよ…。いいかげん暑苦しい季節だってのに…。 しかし、いくら俺が反論してもハルヒは聞きやしないんだろうな。あんなに楽しげに笑ってるあいつが、ほいほい意思を翻すわけがない。 「まあ、たまにはいいじゃないですか。涼宮さんを退屈させないためにも、たまにこうして日常レベルの刺激を与えておくことは大事だと思いますよ」 そう言われればその通りなんだが……。やれやれ。まあ、いいか。長門もなんだか楽しそうだし。 そうして、ついに大会当日がやってきた。 「入るのはサウナだけど、新しい水着を買ってきたからちょっと楽しみだな。我慢大会だけどあんまり無理せずに、楽しくできたらいいですね」 「なに言ってるのよ、みくるちゃん。我慢することが目的とはいえ大会なのよ、大会。負けは許されないわ。気張っていくのよ!」 まあそう言うなよ。朝比奈さんが熱で倒れてしまってもいけない。俺たちはあくまで長門のサポートって立場なんだ。辛くなったらすぐに棄権すればいいのさ。 それよりも、肝心の長門がまだ来てないぜ。遅いな、あいつ。なにやってるんだ? 「あ、長門さんがきたようですよ」 銭湯の前に集まる人ごみの後方に控える俺たちは、一様に古泉の指差す方を見た。 「………お、遅くなった…ハアハア。ハアハアハア…。ま、間に合ったハアハアハア……」 俺たちの元へ、汗みどろになって荒い息をもらす長門がやってきた。 長門さん? なにやってるんですか? あれですか。もうすでにサウナでよろしくやってきたんですか? 「………ハアハア違う。これはハアハアハア、ウォーミングアップハアハアハア」 そんなの必要ないだろ!? なんでサウナに入る前から肉体を酷使してホットになってるんだよ!? やる気あるのか!? 「まあいいじゃない、キョン。これが有希流のサウナ我慢術なのよ。ところで前から気になってたんだけど、この我慢大会の優勝商品ってなに? 物によっては私たちもより一層奮起できるかもしれないわ」 だからあまりハッスルする必要もないんだが…。ええと確か、サウナの利用券と、商品券5000円分だったかな。 「なにそれ。普通ね。あんまりやる気にもならない商品じゃない」 しょうがないだろ。しょせん、商店街のお遊びみたいな催し物なんだ。期待する方がどうかしている。 「そうだ! 大会をより盛り上げるためにも、私たちの間での優勝者に贈る景品を作りましょう。そうねえ…。景品とはちょっと違うけど、SOS団の中の誰から優勝でたら、団員の中から誰かひとりとデートできる権利なんてどう?」 デート? SOS団内の誰かと? 「そうよ。不思議探索パトロールの時みたいにみんなで行動するんじゃなくて、2人っきりで遊びに行くことができる権利よ」 町内我慢大会で勝利しないとデートもできないとはな。しかし、誰かさんに気を遣うことなくデートできるというのは確かに魅力的ではあるな。 「………デート…」 「デートかぁ…」 どうかしたのか、長門、朝比奈さん? その時だった、ミーティングする俺たちの隣に人影が近づいてきた。 「──────はあはあはあ────はあはあはあはあ──────」 現れたな、周防九曜!? って、お前……なんだそのしめり具合は。行水でもしてきたのか? 「──────ふっ─────ハンデ──────はあはあはあ──────」 お前もウォーミングアップかよ。無理するなよ。宇宙人ってなんでこんなバカばかりなんだろうと時々思う。 「………それしきのウォーミングアップでハンデ面しないでほしい。私の方がパンプアップでより多くの汗を流している」 だから張り合うなって。 大会開始の時刻となった。参加者たちは全員水着に着替え、男女の別なく広いサウナ室内に入っていった。参加者数は俺たちSOS団も含めて、20名くらいだろうか。 「いいわね、SOS団の知名度を上げるためにも、絶対に勝つのよ。特に有希。あの頭の大きなライバルに、絶対勝つのよ」 「………もとより、そのつもり」 だいぶ盛り上がってるようだな。一部の人間が。 「私も、せっかくの機会だしダイエットのために頑張ってみようかな」 朝比奈さんは全然ふとっていませんよ。理想の体型というやつです。 「ダイエットのためにサウナに通うという方がいますが、正直いってサウナにダイエット効果はあまりありませんよ」 「えぇ!? そうなんですか!?」 「そこ、うるさい! 勝負はもう始まっているのよ! 静かに我慢に集中しなさい!」 やれやれ。ハルヒは完全に勝負師モードに入っちゃってるようだな。長門と周防もにらみ合いながらじっと暑さに耐えているようだ。 室内温度は110℃。サウナだし、こんなもんだろう。しかし暑いな…。それに息苦しい…。 「もう10分は経ったでしょうかね。そろそろ辛くなってきたので、僕はこのへんで失礼させていただきますよ」 ああ。お疲れ。 古泉が出て行ったことで安心したのか、他にも何人か参加者がサウナを出て行った。10分入っていれば十分だろう。俺もそろそろ出ていきたい気分ではあるが、長門と周防の2人も心配だし、それに朝比奈さんが途中で倒れたりしないかどうかも心配だ。もう少しねばるか。 大会開始から20分経つ頃には、サウナ内には参加者が数人のこっているだけだった。ちなみにその数人というのは俺以外に、ハルヒ、朝比奈さん、長門、周防の4名だ。 どうやら他の十数名の参加者は本気で我慢大会をするつもりはなく、物珍しさかタダでサウナに入れるという庶民的心理からの参加だったようだ。 まあ、それでいいと思うよ。実際。無用の我慢なんてわざわざするものじゃないしな。 ただ問題は、長門と周防の主役2名が、サウナ室の出入り口前でもじもじするように押し合いへし合いしているということだ。ひょっとして、出たいけど出るに出られない状況なのか? 「………出たいんでしょ? 早く出れば?」 「──────私は──────まだ余裕──────あなたこそ無理は禁物──────」 「………無理なんてしていない。私はあと2時間はいける。ただ少しトイレに行きたいなと思っただけ。でもそっちもまだ我慢はできる」 「──────私もちょっとのどが──────かわいただけ──────でも3時間は我慢できる──────」 やっぱ出たいんだ。出たいけどライバルが出ないから出られないんだ。あんなドアの直前でそんな見え見えのウソついてもバレバレだろうに。 「………私だってあと4時間はここにいられる。トイレに行きそびれたとしても、勝負を捨てるつもりはない」 行けよ! 勝負にこだわるよりトイレに行きそびれる方がプライド傷つくんじゃないの!? 「──────のどがかわいたって死にはしない──────私は一生ここに住んでもいいくらい──────」 いや、死ぬって。のどかわき過ぎたら死ぬよ。宇宙人は死なないのかもしれないけど、こんなところに一生住むなよ。どんな経歴の人だよ。履歴書に「住所:サウナ室」とか書く気かよ。 大会開始から30分。サウナ室内には、もう俺とハルヒと朝比奈さんしか残っていなかった。 結局あのメイン2人はあの後、2人仲良く肩を並べるようにサウナ室を出ていった。最後まで言い訳がましくトイレがどうこうのどの乾きがどうこう言っていたが、今は2人ともサウナ室のガラス向こうの廊下で取っ組み合いの大喧嘩をしている。 おい、トイレと水分吸収はいいのか? やっぱウソだったのか? まあそんなことはどうでもいい。我慢大会の生き残りは全員SOS団のメンバーになったんだ。もう誰が優勝したっていいだろう。これ以上苦しい思いをする理由もなくなったことだし、帰ろうぜ。 と言いながら席を立ち上がりかけた俺は、20分が経過した後はじめて、ハルヒと朝比奈さんを見たことに気づいた。 ハルヒと朝比奈さんは長椅子に腰かけ、ヒザの上に腕を置いてぐったりうなだれた姿勢でかたまっていた。 「デートデートデート」 「デートデートデート」 なにか訳の分からないことをブツブツ呟いている2人。おい、大丈夫か!? 脳にきてるわけじゃないよな!? 俺が隣にいたハルヒに手をさしのべた時、ハルヒはその俺の手をいきおいよく払い飛ばした。 「デートの邪魔するんじゃないわよ! そんなに出たいんならさっさと出ていきなさいよ! そんな根性なしはこの戦場じゃ生き残れないんだから!」 うわっ!? な、なに怒ってるんだよ? デート? なに言ってるんだ? デートじゃなくて我慢大会だろ? 本格的に暑さでヤバくなってきたんじゃないか? 「キョンくん…。悪いことは言わないわ。これ以上ここにいるのは、危険です。民間人は早々に立ち去りなさい」 信じられないくらい低音のハスキーボイスで朝比奈さんが俺を上目遣いに睨みつけた。なに、民間人って。確かに民間人だけどさ。 大丈夫かよ、2人とも!? しっかりしてくれよ! サウナ室のガラスをノックする音がした。見ると、古泉が廊下から困った表情で両手をひろげていた。古泉が指差す方を見ると、長門と周防の2人が例の高速早口でなにかを呟きながら組み合っているのが見えた。 お前らこんなところで何やってるんだよ!? 変な呪文つかうなよ! <早口言語約> 長門「いいえ、絶対私の方が後で出ました!」 周防「私です。私の方が出るの2秒遅かったです。サウナ室から右足を出すのがあなたより2秒後だったですぅ!」 長門「はい、見え見えのウソ発見。ダウト。見てたよ、私。あなたが後ろ足をサウナ室の敷居から外に出すの見てから、その後で私は自分の後ろ足をサウナ室から出したんだから。間違いなく私の方が後でした。はい決定」 周防「いいえ私の方が後でした。あなたの方が私よりも2秒早く外に出たんだから、あなたの負けです。後ろ足がサウナ室から出たんじゃなくて、先に足をサウナ室から出したあなたの方が負けなんです。言い訳で八つ当たりするのやめてもらえる? うざいんですけどー」 長門「八つ当たりじゃありませんー。私はすごい我慢強い方だからあれくらいのことは平気でしたー。私は内へ内へいろいろためこんで行くタイプだから、我慢も内へ内へ溜め込んでまだまだいける予定でしたー」 周防「私も内へためこむタイプだし、あなたより容量が多い分我慢もできてましたー。だからあなたの方が先に出てたんですー」 長門「いいえ身体全部がサウナ室から出きった方が負けだから、あなたの負けです。屁理屈こねて腕つかむのやめてもらえる? 暴力反対ー。口で勝てないからって、暴力で物事を解決しようとしないでくださいー」 周防「してませんー。あなたが先に私につかみかかってきたんですー。だから仕方なく私も自衛のためにあなたの腕をつかんでるんですー。あなたが離したら私も離すつもりなんですー」 長門「じゃあ私も離すから、あなたも離しなさいよ。せーので離すのよ、せーので」 周防「先に手を出したあなたがなんでそんなに高圧的なの? 勝手に話をつくって進めないでよ。何? あなた仕切りたがり? どうでもいいけどさっさと離してよ。私はそっちが離したら離すって言ってるじゃない」 長門「仕切ってるんじゃありませんー。あなたが人の言うことを聞いてくれないからですー。私は妥協案を出しているだけですー。あなたが人のことをもう少し信用していれば、こんなことは言わずに済んでたんですー」 周防「他人に責任をなすりつけるのはやめてくださいー。マジうざいんですけどー」 古泉「……2人は一体、何をしようとしているのでしょう…。おそらく、僕たち一般人には想像もつかない超人的な戦いが2人の間で繰り広げられているのでしょう…」 ゴクリ かれこれ我慢大会が始まって1時間が経っていた。もう俺は頭が熱でくらくらするんだが…。 ハルヒと朝比奈さんはまだ白くなった矢吹ジョーみたいな体勢でぶつぶつ言っている。早く出ようぜ。さっさと出てファンタ飲もうよ2人とも。 「みくるちゃん、あんまり我慢しない方がいいわよ。我慢は身体に毒だから」 いや、我慢してるのはお前もだろ。 「涼宮さんこそ、早く出たらどうです? サウナでいくら汗を流してもダイエットにはならないんですよ」 それはさっき古泉から聞かされたことじゃないですか。 「別に私はダイエットのためにやってるんじゃないのよねー。ほら、私って負けるのがすっごく嫌いじゃない?」 「実は、けっこう私も負けず嫌いなんですよ~。黙ってましたが」 「へー。でも早く棄権した方がいいわよ、みくるちゃん。私ってすっごく我慢強いタチだからさ~」 「奇遇ですねぇ。私も我慢には自信があるんですよ。もう1年以上もある人にいじられ続けてますから。イヤでも我慢強くなっちゃったんですよねー」 「私なんて小6の時からずっと退屈な毎日に耐えつづけてきたんだから、我慢にはすっごい自信あるのよ。世界レベル?」 などと言いながら、2人はやおら立ち上がり、じりじりとサウナ室のドアに近づいていく。とうとう決着の時か!? 「もういいのよ、頑張らなくても。華々しい優勝は団長である私が飾ってあげるから。みくるちゃんは先に外でカルピスでも飲んでなさい」 「いえいえ。ここは年長者として私が。どうぞ涼宮さんはお先に外でジンジャーエールでも飲んでいてください」 ドアを開けてまで何をやってるんだ2人とも。もう俺の我慢も限界だぜ。さっきから異常なくらい頭がくらくらしてるんだ。いいからさっさと出させてくれ! 俺はドアの前で互いに道を譲り合っているハルヒと朝比奈さんの背中を後ろからドンと押した。 2人が体勢を崩しつつも外に出たことで、ようやく俺もサウナから脱出することができた。密閉されたサウナに閉じ込められて、実に1時間10分の死闘であった。外の空気がやけに新鮮で心地よい。ああ、シャバの空気はうまいぜ! あれ、なんかみんなが俺を見てる。なんだ? おい、古泉。どうしたんだ? 「おめでとうございます。あなたが、この我慢大会の優勝者ですよ!」 え? あ、そういえば。サウナを最後に出たのは俺だから……俺が優勝ってことなのか! 次の日。SOS団の部室には異質な空気が流れていた。 「キョンくん、今日は最高級のお茶を持って来たんですよ。飲んでくださいね」 「キョン。よくぞ優勝したわ。おかげでSOS団の知名度は急上昇よ!」 なんだかいつもと違う部室の空気に、俺は怪訝そうに文芸部室内を見回した。ハルヒと朝比奈さんが妙に猫なで声なのもさることながら、長門が本から目をあげてじーっと俺を見ているのも気になる。 なにかあったのか、古泉? 「我慢大会に出場する前に、我々の間でかわした約束事を覚えていないんですか? 優勝者はSOS団の団員1人と、2人きりでデートできるという約束です」 ああ。そういえばそんなことも言ってたな。じゃあ何か? デートだかなんだか知らないが、俺と一緒に遊びに行きたいって、みんなアピールしてるのか? わざわざデートなんてしなくても、しょっちゅう一緒にいるんだからいいじゃないか別に。 「ダメよキョン! 確かにわざわざデートだなんてお膳立てする必要ないかもしれないけど、一度決めたことはしっかり守らないと。約束は守るためのものでしょ。し、しかたないから、私がデ…一緒にあそびにいってあげるわよ!」 「キョンくん、お茶の葉が切れちゃったんですよ。デートとまでは言いませんが、一緒にお買い物に行ってくれませんか? 2人きりで」 何かしらないが、ハルヒと朝比奈さんと長門がエネルギーのこもった眼差しで俺を見つめている。この3人、そんなに俺のことを……。 って、んなわけねえか。どうせ俺に、この機に何かおごってもらおう、なんて思っているんだろう。 しかしそう思うと、それはそれで腹が立ってくる。なぜ出たくもなかった我慢大会に出場させられた挙句、デートと称して俺がいろいろ出費しなければならないのか。実に不条理じゃないか。 「キョン、早く選びなさいよ! 誰とデートに行きたいの?」 何でそんなに高圧的に決定を迫られるのか。それが分からない。これって優勝者に与えられた自由権利じゃなかったのか? 強制的に行かされる、いつもの不思議探検パトロールの延長みたいなものだったのかよ? 「うっさいわね。気になるじゃない。早く選んでよ」 「キョンくん、早くおしえてください」 「………決めて」 3人がぐいぐいと俺に決定をせまってくる。 「さあ」 「さあ」 「………さあ」 うるさい! そんなに押し付けるなよ。これじゃまるで罰ゲームじゃないか。やめだ。デートなんてしない。俺は帰る。 「な、なに言ってるのよ! 優勝者はデートってもう決めてあるのよ!?」 ああそうかよ。わかったよ。決めてやるよ。デート相手はSOS団の団員なら誰でもいいんだよな。 おい古泉、帰るぜ。駅前のゲーセンにでも寄るか。 「優勝者のあなたがそう言うのなら。僕に拒否権はありませんからね」 ああ。こんなバカバカしいことになんか、つきあってられるか。古泉と下校してお茶をにごしておけば、もう文句を言われることもないだろう。 肩にカバンを担ぎ、キョンが出て行った部室内で、ハルヒとみくると長門はそれぞれ落胆の表情で、無言のまま立っていた。 「キョン…」 「キョン……」 「悪いですね、皆さん。それじゃ、僕はこれから彼とデートということなので」 「…ま、仕方ないわね。なんか、私たちそわそわしちゃって彼にプレッシャーをかけちゃったみたいだし」 「そうですね。反省です……。でも、相手が涼宮さんや長門さんじゃなくて、古泉くんでよかった」 「そうね。ああ、変に気をもんでつかれたわ」 「それじゃ、僕はこれで。また明日、お会いしましょう」 ふふふ。計算通りですよ。 マッガーレ ~完~
https://w.atwiki.jp/yaruoaaintroduction/pages/624.html
., l / \ l. ' , ,イ7/ ト、 /{ ' , l ' ., / // l \ / l ', ト、 ' , .l {' l V / l ',} V, ' , l V~ヽ、} } l lγヾ } ' ., {` 、/ (~/ / { ヾう〈 ). ' , __\ { ./ ム {ヾ \ ) /_ ' , \ニゝく二_/そ つ\___)'彡´/ .'. , <ニヽ_二>'´~ l l l l l l \_ `ミ、.' ., iゝソ-十' -l-― l-l==-- .l i l-==--l-l l.l l \___,イ ̄ ' , l ll ll l l l l l ll l l .l l l l l l l l l l ' , l l l l l l l ト、 !__!___!!___!__!___!__!_!.l l l l ll ll l .' , .l l l l .l l l トヤ ̄てニう`` '´て三了~ -.l l l l l l ll l ' , .l l l l l l .l l ヽ 乂_ン 乂_ン/ } l l l l l l l l ' , L! L! L! l l', ,'l l l l l .L! L! ' , - '´`ー、 / .;' .l ゝ、 ' ム' l l L! ', , - '´ `ー、/ .;' l l '., / } l l ','´ / ;' l l ゝ、 - - ノ l l l .',. / / l .l ` ..、 ,. . '´ l l l ', / / l l I` 、 _ '´ I、 l .l l ', ./ / l l, -'´ ̄~(\ /) ``ー―十 .l l .', / / γLi i l \\_// .l ノ!/ヽ ', , - '´`X / / lヽ ! l > < !/ V ン´ 名前:長門(ながと) 性別:女 原作:アズールレーン 一人称:余/わたし 二人称:お主/あなた 口調:古風 あ行-あ-アズールレーン-戦艦-戦艦その他.mlt マンジュー、ヨンシー共同開発、ヨースターより配信、艦船擬人化STG『アズールレーン』のキャラクター。 イベント「墨染まりし鋼の桜」で実装された長門型戦艦1番艦・長門を元にしたKAN-SEN。 重桜四代目連合艦隊旗艦のKAN-SEN。 巫女服姿の狐耳を持つ黒い髪の少女で頭部の左右に鳥の頭飾りを付けている。 重桜の巫狐として祭事を取り仕切っている。 10年前に戦争に関しては反対派だったため、押し切られた上に連合艦隊旗艦を降ろされてしまう。 そして長門はセイレーンの動向を探るべく重桜の木の下で眠りにつくのだった。 その後瑞鶴、三笠達新生連合艦隊の来訪で…… 重桜では敬われている存在であるが、三笠には大先輩として憧れを抱いており、「あなた」や「三笠様」と呼んでいる。 陸奥に対しては身内にして姉として砕けて会話を行っている。 また立ち振舞や喋り方で威厳を出そうとしているが、近寄りがたい空気ができてしまい寂しい想いをしているらしい。 平和な世界線の「CW」では2023年時点で未登場の大和に自分の役割りをいくつか譲った模様。 政敵関係だった赤城とも協力し合っている。 動画 キャラ紹介 本編 Wikipedia(史実) アズレンWiki アニヲタWiki ニコ百 ピクペ 運用法 AAは3枚。 泣いているAAもあり一応簡単な会話には使える程度。 和風世界の半モブ的な亜人の姫や貴族の娘等辺りが起用先の最有力候補。 歴史スレの実在人物という手もありうる。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1135.html
キョン「いでで・・・」 朝倉「あら、ごめんねキョン君。あなたを巻き込むつもりはなかったの」 キョン「なっ!朝倉!」 朝倉「フフ、ずいぶん驚いてるわね」 キョン「な、何しに来たんだ!」 朝倉「誤解しないで。もうあなたを殺そうなんてしないわ」 キョン「っ!!」 朝倉「私がここに来たのは情報統合思念体の裏切り者を消しに来ただけよ。キョン君には何の危害も与えないわ。」 キョン「う、裏切り者?」 朝倉「そ、もう何となくわかるでしょ?」 キョン「・・・長門のことか?」 朝倉「大当たり♪さっすがキョン君」 キョン「くっ・・・」 長門「・・・私は情報統合思念体の意思に反した行動をしたつもりはない」 朝倉「フフ、ならなぜ、この部屋に防壁情報を張っていたのかしら?」 長門「・・・」 キョン「・・・防壁情報だと?」 朝倉「長門さんはね、この部屋を外部から一時的に遮断するようにプログラムしてたの」 キョン「長門が・・・」 朝倉「この情報空間を特定するには相当の時間が必要だったの。で、キョン君に少しお手伝いしてもらったのよ」 キョン「お手伝いだと?」 朝倉「あれ、まだ気が付かない?さっきの電話よ。あれ、私がここの空間を特定する為にかけたコードなの」 キョン「なっ!」 朝倉「助かったわキョン君♪ありがと」 キョン「て、てめぇ・・・ウッ!」 朝倉「ごめんねキョン君、少しの間だけそこでじっとしてて」 キョン「なっ・・・またかっ!」(体が動かない!) 朝倉「さて・・・と」 長門「・・・」 朝倉「長門さん、もうあなたはこの世界に必要とされてないみたいよ?」 長門「・・・」 朝倉「情報統合思念体はあなたを危険視してるわ。だから私がここにいるの。わかる?」 長門「・・・涼宮ハルヒの第一観察責任者はあなたではない。 それにあなたは私を情報連結解除できるほどの権限を持っていないはず」 朝倉「そんなこともうどうでもいいらしいわ。上の人たちはとにかくあなたを消したがってるの」 長門「・・・なぜ」 朝倉「なぜって?そんなこともう分かりきってるじゃないの」 長門「・・・」 朝倉「長門さんらしくないわね。もうあなたの役目は終わったってこと」 キョン「!?」 長門「役目・・・」 朝倉「そ♪だから消えてもらうしかないの」 長門「ここは私の情報制御下」 朝倉「だったら何?」 長門「・・・容赦はしない」 キョン「な、長門!?」 朝倉「・・・残念だわ長門さん。本当に自律神経を持ってしまってたの」 長門「パーソナルネーム、朝倉涼子を敵性と判定。自己情報結合解除を開始する」 朝倉「フフ、本当にやるつもりなのね。あなたには何のバックアッププログラムがないのよ?」 長門「・・・」 朝倉「あーあ、本当は手荒な真似はしたくなかったんだけど・・・仕方ないわ」 長門「・・・大丈夫、すぐに終わる」 キョン「長門!?」 長門「心配しないで」 キョン「おいっ!やめろっ!」 長門「・・・」 朝倉「フフ、いいわ・・・死になさい♪」 続
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/2923.html
(※長門vs周防のつづきです) うだるような暑さが、じりじりと肌を焼く。すっかり梅雨もあがり、本格的な夏が到来したのだ。 俺は汗をだらだら流しながら、だるい身体を引きずるように公園の並木通りを歩いていた。妹にジャンケンで敗北し、コンビニへアイスを買いに行くはめになったのだ。あそこでグーさえ出さなけりゃ。グーさえ出さなけりゃ。 あつい…。 ボーっとする頭の中で後悔の念がぐるぐるサーキットのように回り続ける。ため息をもらした俺は、流れる汗を手でぬぐい、空になったコーラの缶を公園のゴミ箱へ放り込んだ。 ふと、ゴミ箱に目をやる。なんだ、あのゴミ箱からはみ出ている棒は? ゴミ箱からにゅっと突き出ている白い2本の棒が妙に気になり、俺はゴミ箱に近づいた。なんだこりゃ。マネキンの足じゃないか。 まったく。どこの誰だかしらないが、公園のゴミ箱にマネキンを捨てるなんて。まあ路上に放置したり川に流したりするよりはマシとはいえ、こんなところに放りこむなよ。俺はまたため息をもらし、ゴミ箱に背をむけた。 その時、がさりと視界の端でマネキンの足が動いたような気がした。びくっとして俺は再び横目でマネキンの足を一瞥する。 マネキンが動くなんてわけないよな。うん。俺の気のせいだ。きっと。そもそも人間がゴミ箱の中に入っているわけなんてないから、ここから突き出ている足は、マネキンの足に違いないのだ。 人間の足であるはずなど、断じてない。 「………犬神家の人々」 背中のむこうにあるゴミ箱の中から、非常に聞き覚えのある声がした。 聞こえなきゃよかったのに。 しかし聞こえてしまったものはしょうがない。俺はゴミ箱の前に立ち、冷蔵庫の中にある腐臭を放つキャベツを除去するような手つきで、おそるおそるゴミを漁った。 嫌な予感が的中した。そこには、足をゴミ箱の外へ放り出してぐったりした長門有希が、身体を二つに折り曲げて納まっていた。 「………ほぅ」 第49回日本ミステリー大賞受賞作を彷彿とさせるセリフを口にする長門をゴミ箱の中から抱き起こす。その身体は茹で上がったタコのように熱い。 あっつ! 熱いな!? おい長門!? どうした、しっかりしろ! 傷はあさいぞ! 「ピピルピルピルピピルピ-」 なんかヤバそうなエラー音がしてるぞ!? 大丈夫か!? 見るからに大丈夫そうじゃないんだが!? 「………水……つめたい水を…」 水だな!? よし分かった待ってろ長門! 俺は長門の身体をゴミ箱の中から担ぎ出すと、担いだまま走り出した。すぐ近くに、半年前に朝比奈さんと一緒に亀を投げ込んだ川があるんだ。 すぐさま川にたどり着いた俺は、担いでいた長門の体を持ち上げ、いきおいよく川へむかって放り込んだ。 よみがえれ、長門おおぉぉぉ! 音をたてて水中に頭から落下した長門は、つきささった杭のように腰から下を水面上に突き出し、体からしゅわしゅわと水蒸気をあげ始めた。ああ、そういやこんなシーン、刃牙の中国拳法大会編でもあったな。刃牙が黒糖水を14kg一気飲みする場面。 なんとかエラーの直った長門と一緒に、俺は公園のベンチに座って休憩していた。まあ、長門の事情も聞かないといけないしな。 何があったんだ、長門。 「………うかつだった」 絵に描いたような迂闊な格好だったよ。それは十分理解している 「………私は、自分の力を過信しすぎていた。そのおかげで、不覚をとってしまった」 長門が顔を伏せてぽつりとそう呟いた。 まさかお前、またカマドウマとか情報素体みたいな、俺たちの想像も及ばないような外敵と戦っていたのか? 「………そう」 無理するなよ。お前が世界存亡の危機のために身体を張ってくれるのはありがたいんだが、いつかきっとお前自身が倒れちまうぜ。そんな事態にはなってもらいたくないんだ、俺たちは。だからさ。俺たちのことも頼れよ。 そりゃ頼りにならない足手まといかもしれないけど、それでも何かの役には立つと思うぜ? たぶん。 「………それじゃ、聞いて」 ああ。話してみろよ。 「………周防九曜がたおせない」 なに、またあの天蓋領域が!? 雪山の山荘といい、なんでそんなに長門ばかり……ねらって……… その時、俺の脳裏にある光景がフラッシュバックした。まだ梅雨まっさかりの頃のことだ。そういえば、前にもこんなことがあったな。あの時は、長門が川を流れてて…… ああ、いけない。そういえば俺、お遣いの途中だったんだ。じゃあな長門。マンションに帰ってしっかり休んでおけよ。 そう言って立ち上がった俺の手を、長門がひかえめにつかんだ。 「………力をかしてくれるんじゃなかったの?」 あ、いや。そのつもりだったんだけどさ…。またあれだろ? フードバトルで負けたとかなんとか言うんだろ? 「………ちがう。フードバトルで彼女に負けたのではない」 じゃあ何で負けたんだよ。まさか本当に常人には推し量れない宇宙的なバトルで負けたっていうのか? 「………町内恒例の我慢大会で負けた」 離してくれ。俺はさっさと帰って、涼しいクーラーの下でダラダラしながらアイスを食べ、明日のために英気を養うんだ。つきあってられないぜ。 「………待って。聞いて。あなたにとってはどうでもいい青春の1ページかもしれない。けれど、私にとっては人生に関わる一大事。この世に生をうけて4年の月日しか経過していないのに、人生に関わる一大事が起こっているという不条理に同情してくれるなら、聞いて」 同情しないから離してくれ。我慢大会に出るくらいなら家でのんびり本でも読んでろよ。 「………私が我慢大会で周防九曜に負けたままならば、来週末あたりには世界は崩壊する」 またその極端な理論かよ!? もういいから。図書館にでも行けよ。涼しいぞ、あそこは。熱にやられてそんなことを口走るようになっちまったんだ。頭をひやしてこい。な? 「ブブ....ブブブブブ....この操作を....完了するのに十分な記憶域....ブブブがありません....ブブブビー.....レジストリデータベース....がピピピブ壊れています.....ピピピーピルピピ」 うおおおぉぉぉい!? また口からエラー音もれてるぞ!? こわいな! なんかいろいろデータベース壊れちゃまずいだろ! 「早食い大会の次は、我慢大会ですか。いやはや。チャレンジャーですね。長門さんも」 なんとかしてくれ、古泉。俺がいくら「プライベートなことなんだから自分で解決しろ」って言っても、エラー起こしたふりして脅かすんだ。反則だろ、実際。いい年したじいちゃんが夕食後に「メシはまだか?」とか言ってくるようなもんだぜ。シャレにならないことは言わないでもらいたい。ようやく胃の痛みもひいてきたっていうのに。 「我慢大会? 我慢大会って、今度の日曜に銭湯である、サウナの我慢大会のこと?」」 団長席にすわってネットサーフィンしてたハルヒが耳ざとく聞きつけ、俺たちの方へ視線を送っている。 ああ、その我慢大会のことだ。長門がその我慢大会にひどくご執心なんだが、その大会にどうしても負けたくない相手が出場するから興奮してるんだよ。長門がひとりで。 「ふーん、そうなんだ。私はあまり興味なかったしわざわざこんなクソ暑い時期にサウナなんて行きたくもなかったからスルーしてたんだけど。有希ってそういうのが好きだったんだ」 「………現代は飽食の時代で、身の周りになんでも便利なものがあふれている。自分の家から一歩も出ることなく生きていくことも可能な時代。我慢することもなく、また我慢することを知らない人間が大勢いる昨今。自らあえて困難の道に身を投じることで、物や他人に頼らず生きて行くことができる強い人間に成長するための鍛錬修養でもある。そしてまた、そういった現代社会に対するアンチテーゼでもある」 いいこと言ってるようで、まったく脈略ないよな。 「そ、そうだったの……。分かったわ、有希。あなたがそこまで深い考えを持って我慢大会に挑んでいたなんて」 いや、絶対そこまで考えてなかったと思うぞ。 「そこまで有希の意思が固いのなら、止めないわ。いえ、むしろ私も応援するわよ! 有希だけを戦地に送るようなことはできないもの。私たち全員で我慢大会に臨むのよ! SOS団の結束はダイヤモンドの共有結合なみに固いのよ!」 おいおい、本気で言ってるのかよ!? ダイヤモンドは熱に弱いんだぜ? 「ものの喩えよ。それくらい分かりなさい。それじゃ、私はSOS団全員の参加申し込みをしておくから。日曜はみんなで銭湯に集合よ!」 全員で臨むって、まさか俺たち全員が参加するのかよ!? 勘弁してくれよ…。いいかげん暑苦しい季節だってのに…。 しかし、いくら俺が反論してもハルヒは聞きやしないんだろうな。あんなに楽しげに笑ってるあいつが、ほいほい意思を翻すわけがない。 「まあ、たまにはいいじゃないですか。涼宮さんを退屈させないためにも、たまにこうして日常レベルの刺激を与えておくことは大事だと思いますよ」 そう言われればその通りなんだが……。やれやれ。まあ、いいか。長門もなんだか楽しそうだし。 そうして、ついに大会当日がやってきた。 「入るのはサウナだけど、新しい水着を買ってきたからちょっと楽しみだな。我慢大会だけどあんまり無理せずに、楽しくできたらいいですね」 「なに言ってるのよ、みくるちゃん。我慢することが目的とはいえ大会なのよ、大会。負けは許されないわ。気張っていくのよ!」 まあそう言うなよ。朝比奈さんが熱で倒れてしまってもいけない。俺たちはあくまで長門のサポートって立場なんだ。辛くなったらすぐに棄権すればいいのさ。 それよりも、肝心の長門がまだ来てないぜ。遅いな、あいつ。なにやってるんだ? 「あ、長門さんがきたようですよ」 銭湯の前に集まる人ごみの後方に控える俺たちは、一様に古泉の指差す方を見た。 「………お、遅くなった…ハアハア。ハアハアハア…。ま、間に合ったハアハアハア……」 俺たちの元へ、汗みどろになって荒い息をもらす長門がやってきた。 長門さん? なにやってるんですか? あれですか。もうすでにサウナでよろしくやってきたんですか? 「………ハアハア違う。これはハアハアハア、ウォーミングアップハアハアハア」 そんなの必要ないだろ!? なんでサウナに入る前から肉体を酷使してホットになってるんだよ!? やる気あるのか!? 「まあいいじゃない、キョン。これが有希流のサウナ我慢術なのよ。ところで前から気になってたんだけど、この我慢大会の優勝商品ってなに? 物によっては私たちもより一層奮起できるかもしれないわ」 だからあまりハッスルする必要もないんだが…。ええと確か、サウナの利用券と、商品券5000円分だったかな。 「なにそれ。普通ね。あんまりやる気にもならない商品じゃない」 しょうがないだろ。しょせん、商店街のお遊びみたいな催し物なんだ。期待する方がどうかしている。 「そうだ! 大会をより盛り上げるためにも、私たちの間での優勝者に贈る景品を作りましょう。そうねえ…。景品とはちょっと違うけど、SOS団の中の誰から優勝でたら、団員の中から誰かひとりとデートできる権利なんてどう?」 デート? SOS団内の誰かと? 「そうよ。不思議探索パトロールの時みたいにみんなで行動するんじゃなくて、2人っきりで遊びに行くことができる権利よ」 町内我慢大会で勝利しないとデートもできないとはな。しかし、誰かさんに気を遣うことなくデートできるというのは確かに魅力的ではあるな。 「………デート…」 「デートかぁ…」 どうかしたのか、長門、朝比奈さん? その時だった、ミーティングする俺たちの隣に人影が近づいてきた。 「──────はあはあはあ────はあはあはあはあ──────」 現れたな、周防九曜!? って、お前……なんだそのしめり具合は。行水でもしてきたのか? 「──────ふっ─────ハンデ──────はあはあはあ──────」 お前もウォーミングアップかよ。無理するなよ。宇宙人ってなんでこんなバカばかりなんだろうと時々思う。 「………それしきのウォーミングアップでハンデ面しないでほしい。私の方がパンプアップでより多くの汗を流している」 だから張り合うなって。 大会開始の時刻となった。参加者たちは全員水着に着替え、男女の別なく広いサウナ室内に入っていった。参加者数は俺たちSOS団も含めて、20名くらいだろうか。 「いいわね、SOS団の知名度を上げるためにも、絶対に勝つのよ。特に有希。あの頭の大きなライバルに、絶対勝つのよ」 「………もとより、そのつもり」 だいぶ盛り上がってるようだな。一部の人間が。 「私も、せっかくの機会だしダイエットのために頑張ってみようかな」 朝比奈さんは全然ふとっていませんよ。理想の体型というやつです。 「ダイエットのためにサウナに通うという方がいますが、正直いってサウナにダイエット効果はあまりありませんよ」 「えぇ!? そうなんですか!?」 「そこ、うるさい! 勝負はもう始まっているのよ! 静かに我慢に集中しなさい!」 やれやれ。ハルヒは完全に勝負師モードに入っちゃってるようだな。長門と周防もにらみ合いながらじっと暑さに耐えているようだ。 室内温度は110℃。サウナだし、こんなもんだろう。しかし暑いな…。それに息苦しい…。 「もう10分は経ったでしょうかね。そろそろ辛くなってきたので、僕はこのへんで失礼させていただきますよ」 ああ。お疲れ。 古泉が出て行ったことで安心したのか、他にも何人か参加者がサウナを出て行った。10分入っていれば十分だろう。俺もそろそろ出ていきたい気分ではあるが、長門と周防の2人も心配だし、それに朝比奈さんが途中で倒れたりしないかどうかも心配だ。もう少しねばるか。 大会開始から20分経つ頃には、サウナ内には参加者が数人のこっているだけだった。ちなみにその数人というのは俺以外に、ハルヒ、朝比奈さん、長門、周防の4名だ。 どうやら他の十数名の参加者は本気で我慢大会をするつもりはなく、物珍しさかタダでサウナに入れるという庶民的心理からの参加だったようだ。 まあ、それでいいと思うよ。実際。無用の我慢なんてわざわざするものじゃないしな。 ただ問題は、長門と周防の主役2名が、サウナ室の出入り口前でもじもじするように押し合いへし合いしているということだ。ひょっとして、出たいけど出るに出られない状況なのか? 「………出たいんでしょ? 早く出れば?」 「──────私は──────まだ余裕──────あなたこそ無理は禁物──────」 「………無理なんてしていない。私はあと2時間はいける。ただ少しトイレに行きたいなと思っただけ。でもそっちもまだ我慢はできる」 「──────私もちょっとのどが──────かわいただけ──────でも3時間は我慢できる──────」 やっぱ出たいんだ。出たいけどライバルが出ないから出られないんだ。あんなドアの直前でそんな見え見えのウソついてもバレバレだろうに。 「………私だってあと4時間はここにいられる。トイレに行きそびれたとしても、勝負を捨てるつもりはない」 行けよ! 勝負にこだわるよりトイレに行きそびれる方がプライド傷つくんじゃないの!? 「──────のどがかわいたって死にはしない──────私は一生ここに住んでもいいくらい──────」 いや、死ぬって。のどかわき過ぎたら死ぬよ。宇宙人は死なないのかもしれないけど、こんなところに一生住むなよ。どんな経歴の人だよ。履歴書に「住所:サウナ室」とか書く気かよ。 大会開始から30分。サウナ室内には、もう俺とハルヒと朝比奈さんしか残っていなかった。 結局あのメイン2人はあの後、2人仲良く肩を並べるようにサウナ室を出ていった。最後まで言い訳がましくトイレがどうこうのどの乾きがどうこう言っていたが、今は2人ともサウナ室のガラス向こうの廊下で取っ組み合いの大喧嘩をしている。 おい、トイレと水分吸収はいいのか? やっぱウソだったのか? まあそんなことはどうでもいい。我慢大会の生き残りは全員SOS団のメンバーになったんだ。もう誰が優勝したっていいだろう。これ以上苦しい思いをする理由もなくなったことだし、帰ろうぜ。 と言いながら席を立ち上がりかけた俺は、20分が経過した後はじめて、ハルヒと朝比奈さんを見たことに気づいた。 ハルヒと朝比奈さんは長椅子に腰かけ、ヒザの上に腕を置いてぐったりうなだれた姿勢でかたまっていた。 「デートデートデート」 「デートデートデート」 なにか訳の分からないことをブツブツ呟いている2人。おい、大丈夫か!? 脳にきてるわけじゃないよな!? 俺が隣にいたハルヒに手をさしのべた時、ハルヒはその俺の手をいきおいよく払い飛ばした。 「デートの邪魔するんじゃないわよ! そんなに出たいんならさっさと出ていきなさいよ! そんな根性なしはこの戦場じゃ生き残れないんだから!」 うわっ!? な、なに怒ってるんだよ? デート? なに言ってるんだ? デートじゃなくて我慢大会だろ? 本格的に暑さでヤバくなってきたんじゃないか? 「キョンくん…。悪いことは言わないわ。これ以上ここにいるのは、危険です。民間人は早々に立ち去りなさい」 信じられないくらい低音のハスキーボイスで朝比奈さんが俺を上目遣いに睨みつけた。なに、民間人って。確かに民間人だけどさ。 大丈夫かよ、2人とも!? しっかりしてくれよ! サウナ室のガラスをノックする音がした。見ると、古泉が廊下から困った表情で両手をひろげていた。古泉が指差す方を見ると、長門と周防の2人が例の高速早口でなにかを呟きながら組み合っているのが見えた。 お前らこんなところで何やってるんだよ!? 変な呪文つかうなよ! <早口言語約> 長門「いいえ、絶対私の方が後で出ました!」 周防「私です。私の方が出るの2秒遅かったです。サウナ室から右足を出すのがあなたより2秒後だったですぅ!」 長門「はい、見え見えのウソ発見。ダウト。見てたよ、私。あなたが後ろ足をサウナ室の敷居から外に出すの見てから、その後で私は自分の後ろ足をサウナ室から出したんだから。間違いなく私の方が後でした。はい決定」 周防「いいえ私の方が後でした。あなたの方が私よりも2秒早く外に出たんだから、あなたの負けです。後ろ足がサウナ室から出たんじゃなくて、先に足をサウナ室から出したあなたの方が負けなんです。言い訳で八つ当たりするのやめてもらえる? うざいんですけどー」 長門「八つ当たりじゃありませんー。私はすごい我慢強い方だからあれくらいのことは平気でしたー。私は内へ内へいろいろためこんで行くタイプだから、我慢も内へ内へ溜め込んでまだまだいける予定でしたー」 周防「私も内へためこむタイプだし、あなたより容量が多い分我慢もできてましたー。だからあなたの方が先に出てたんですー」 長門「いいえ身体全部がサウナ室から出きった方が負けだから、あなたの負けです。屁理屈こねて腕つかむのやめてもらえる? 暴力反対ー。口で勝てないからって、暴力で物事を解決しようとしないでくださいー」 周防「してませんー。あなたが先に私につかみかかってきたんですー。だから仕方なく私も自衛のためにあなたの腕をつかんでるんですー。あなたが離したら私も離すつもりなんですー」 長門「じゃあ私も離すから、あなたも離しなさいよ。せーので離すのよ、せーので」 周防「先に手を出したあなたがなんでそんなに高圧的なの? 勝手に話をつくって進めないでよ。何? あなた仕切りたがり? どうでもいいけどさっさと離してよ。私はそっちが離したら離すって言ってるじゃない」 長門「仕切ってるんじゃありませんー。あなたが人の言うことを聞いてくれないからですー。私は妥協案を出しているだけですー。あなたが人のことをもう少し信用していれば、こんなことは言わずに済んでたんですー」 周防「他人に責任をなすりつけるのはやめてくださいー。マジうざいんですけどー」 古泉「……2人は一体、何をしようとしているのでしょう…。おそらく、僕たち一般人には想像もつかない超人的な戦いが2人の間で繰り広げられているのでしょう…」 ゴクリ かれこれ我慢大会が始まって1時間が経っていた。もう俺は頭が熱でくらくらするんだが…。 ハルヒと朝比奈さんはまだ白くなった矢吹ジョーみたいな体勢でぶつぶつ言っている。早く出ようぜ。さっさと出てファンタ飲もうよ2人とも。 「みくるちゃん、あんまり我慢しない方がいいわよ。我慢は身体に毒だから」 いや、我慢してるのはお前もだろ。 「涼宮さんこそ、早く出たらどうです? サウナでいくら汗を流してもダイエットにはならないんですよ」 それはさっき古泉から聞かされたことじゃないですか。 「別に私はダイエットのためにやってるんじゃないのよねー。ほら、私って負けるのがすっごく嫌いじゃない?」 「実は、けっこう私も負けず嫌いなんですよ~。黙ってましたが」 「へー。でも早く棄権した方がいいわよ、みくるちゃん。私ってすっごく我慢強いタチだからさ~」 「奇遇ですねぇ。私も我慢には自信があるんですよ。もう1年以上もある人にいじられ続けてますから。イヤでも我慢強くなっちゃったんですよねー」 「私なんて小6の時からずっと退屈な毎日に耐えつづけてきたんだから、我慢にはすっごい自信あるのよ。世界レベル?」 などと言いながら、2人はやおら立ち上がり、じりじりとサウナ室のドアに近づいていく。とうとう決着の時か!? 「もういいのよ、頑張らなくても。華々しい優勝は団長である私が飾ってあげるから。みくるちゃんは先に外でカルピスでも飲んでなさい」 「いえいえ。ここは年長者として私が。どうぞ涼宮さんはお先に外でジンジャーエールでも飲んでいてください」 ドアを開けてまで何をやってるんだ2人とも。もう俺の我慢も限界だぜ。さっきから異常なくらい頭がくらくらしてるんだ。いいからさっさと出させてくれ! 俺はドアの前で互いに道を譲り合っているハルヒと朝比奈さんの背中を後ろからドンと押した。 2人が体勢を崩しつつも外に出たことで、ようやく俺もサウナから脱出することができた。密閉されたサウナに閉じ込められて、実に1時間10分の死闘であった。外の空気がやけに新鮮で心地よい。ああ、シャバの空気はうまいぜ! あれ、なんかみんなが俺を見てる。なんだ? おい、古泉。どうしたんだ? 「おめでとうございます。あなたが、この我慢大会の優勝者ですよ!」 え? あ、そういえば。サウナを最後に出たのは俺だから……俺が優勝ってことなのか! 次の日。SOS団の部室には異質な空気が流れていた。 「キョンくん、今日は最高級のお茶を持って来たんですよ。飲んでくださいね」 「キョン。よくぞ優勝したわ。おかげでSOS団の知名度は急上昇よ!」 なんだかいつもと違う部室の空気に、俺は怪訝そうに文芸部室内を見回した。ハルヒと朝比奈さんが妙に猫なで声なのもさることながら、長門が本から目をあげてじーっと俺を見ているのも気になる。 なにかあったのか、古泉? 「我慢大会に出場する前に、我々の間でかわした約束事を覚えていないんですか? 優勝者はSOS団の団員1人と、2人きりでデートできるという約束です」 ああ。そういえばそんなことも言ってたな。じゃあ何か? デートだかなんだか知らないが、俺と一緒に遊びに行きたいって、みんなアピールしてるのか? わざわざデートなんてしなくても、しょっちゅう一緒にいるんだからいいじゃないか別に。 「ダメよキョン! 確かにわざわざデートだなんてお膳立てする必要ないかもしれないけど、一度決めたことはしっかり守らないと。約束は守るためのものでしょ。し、しかたないから、私がデ…一緒にあそびにいってあげるわよ!」 「キョンくん、お茶の葉が切れちゃったんですよ。デートとまでは言いませんが、一緒にお買い物に行ってくれませんか? 2人きりで」 何かしらないが、ハルヒと朝比奈さんと長門がエネルギーのこもった眼差しで俺を見つめている。この3人、そんなに俺のことを……。 って、んなわけねえか。どうせ俺に、この機に何かおごってもらおう、なんて思っているんだろう。 しかしそう思うと、それはそれで腹が立ってくる。なぜ出たくもなかった我慢大会に出場させられた挙句、デートと称して俺がいろいろ出費しなければならないのか。実に不条理じゃないか。 「キョン、早く選びなさいよ! 誰とデートに行きたいの?」 何でそんなに高圧的に決定を迫られるのか。それが分からない。これって優勝者に与えられた自由権利じゃなかったのか? 強制的に行かされる、いつもの不思議探検パトロールの延長みたいなものだったのかよ? 「うっさいわね。気になるじゃない。早く選んでよ」 「キョンくん、早くおしえてください」 「………決めて」 3人がぐいぐいと俺に決定をせまってくる。 「さあ」 「さあ」 「………さあ」 うるさい! そんなに押し付けるなよ。これじゃまるで罰ゲームじゃないか。やめだ。デートなんてしない。俺は帰る。 「な、なに言ってるのよ! 優勝者はデートってもう決めてあるのよ!?」 ああそうかよ。わかったよ。決めてやるよ。デート相手はSOS団の団員なら誰でもいいんだよな。 おい古泉、帰るぜ。駅前のゲーセンにでも寄るか。 「優勝者のあなたがそう言うのなら。僕に拒否権はありませんからね」 ああ。こんなバカバカしいことになんか、つきあってられるか。古泉と下校してお茶をにごしておけば、もう文句を言われることもないだろう。 肩にカバンを担ぎ、キョンが出て行った部室内で、ハルヒとみくると長門はそれぞれ落胆の表情で、無言のまま立っていた。 「キョン…」 「キョン……」 「悪いですね、皆さん。それじゃ、僕はこれから彼とデートということなので」 「…ま、仕方ないわね。なんか、私たちそわそわしちゃって彼にプレッシャーをかけちゃったみたいだし」 「そうですね。反省です……。でも、相手が涼宮さんや長門さんじゃなくて、古泉くんでよかった」 「そうね。ああ、変に気をもんでつかれたわ」 「それじゃ、僕はこれで。また明日、お会いしましょう」 ふふふ。計算通りですよ。 マッガーレ ~完~
https://w.atwiki.jp/777townforandroid/pages/754.html
デザイン 機種 フィーバー涼宮ハルヒの憂鬱 アニメーション あり スキル効果 200回転の間、通常の確率より2倍当りやすくなる 消費SP 38 入手方法 チームイベント景品(だった気がする) LvMAX経験値 ? 限界突破素材 長門有希(バンド) x 1突破珠(青) x 5 限界突破先 長門有希(バンド)+1 限界突破元 備考
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/2642.html
長門有希の憂鬱Ⅰ 四 章 長門有希の日記 こちらの世界へ来て二年が過ぎた。 情報統合思念体からの連絡はない。支援もない。誰も助けに来ない。 このまま時が過ぎれば、わたしの有機サイクルはいつか性能の限界に達し寿命を遂げる。 それまで、色がない世界でわたしの思考回路は物理的に機能するだろう。 それならばわたしはいっそ、目を閉じ、耳を塞ぎ、口をつぐんだ生命体として生きようと思う。 わたしは長期の待機モードを起動させた。 果たして奇蹟は起きるのだろうか。 タクシーの運転手に住所を棒読みで伝えると、十分くらいでそのアパートの前に着いた。 二階建ての二階、二〇五号室……。郵便受けにもドアにも表札らしきものはなかった。 呼び鈴を押した。こんなにドキドキするのは久しぶりだ。 赤の他人だったらなんとごまかすか、新聞の勧誘にするか、布団の販売にでもするか。 反応がない。もう一度呼び鈴を押した。やっぱり違うんじゃないか?。 それから郵便受けに戻り、周りに誰もいないことを確かめてからフタを開けた。 テレクラやらヘルスやらのチラシが詰まっているだけで、宛名を書いた郵便物は入ってなかった。 三度ノックして反応がないので俺はドアの前に座り込んだ。尻にあたった床のセメントが冷たい。 ここにいるのが長門でなければ、俺はこれからどうしよう……。 そんな先のことを考える気力はもう残っていなかった。 谷川氏の家にやっかいになりつづけるわけにもいかないよな。 長期戦になるかもしれない。とりえあずバイト探して、アパートでも借りるか。 向こうの世界はよかった。なんだかんだいって俺はあの生活が気に入っていた。 ハルヒはどうしているだろう。古泉は。俺がこのまま帰らなかったら向こうの世界はどうなるんだろうか。 もう日はとっくに暮れていた。 俺は長門のマンションにいた。長門が荷造りしていた。 どこかへ引っ越すのかと尋ねると、情報統合思念体のところに帰る、と答えた。 おい待てよ、俺を、ハルヒを置いていくのか。長門の腕を握った。 「自分が来たところに帰る」 「待ってくれ。いきなり帰るなんて言わないでくれ。お前がいなかったらSOS団はどうなるんだ。俺は!?」 長門はそれ以上何も言わなかった。そして一冊の本をくれた。 それからおもむろに和室に入ると、ふすまを閉めた。 俺がふすまを開けると、そこにはもう長門はいなかった。 俺の手にはエンディミオンがあった。 長門はさよならも言わずに消えた。 そこで、目がさめた。 見上げると、暗い藍色の空から雪が降っていた。 あたりはシンと静かで、すべての雑音を消してしまいそうな白いカケラが舞い降りてくる。 誰かが階段を上がってくる足音がした。怪しまれてはまずいとは思ったが隠れる場所もない。 このまま寝たフリをするか、あるいは立ち上がって今しがた尋ねてきたフリをするか。 階段を上り詰めた足音がはたと止まった。俺は立ち上がってそっちを見た。 「キョ……」 長門だ。やっと見つけたのだ。 俺はなにも言わず、長門もなにも言わなかった。 下げていた買い物袋を床に落とし、ゆっくりとこちらに歩いてきた。 なにかを言いたげな複雑な表情をして、俺の背中に細い腕をまわし、そして胸に顔をうずめた。 いつもの長門らしくない衝動に、俺は少しだけ動揺した。胸に暖かく濡れたものを感じた。 長門の髪に、綿を連ねるようにゆっくりと雪の切片が舞い降りた。 「長門……泣いてるのか」 「……」長門は顔をすりつけたまま動かなかった。 「あちこち探したぜ」 長門よ、お前もずいぶんと人間くさくなっちまって、俺は嬉しいよ。 俺と知り合った頃は無表情で無感情だった宇宙人製アンドロイドも、SOS団の連中と付き合ううちに、 人間特有の性質が身についてしまった。本人は気がついてないかもしれないが、俺はずっと観察していた。 情報統合思念体から見れば有機生命体の人間なんて、 ネズミとドングリの背比べ的な知性の低さを見て取っているかもしれないが、 人間それだけじゃないものもある。だからこそ稀有な存在なのだろう。 宇宙的にユニークと言った、長門よ、お前もそうなりつつあるんだよ。 「寒いから部屋に入れてくれないかな」 俺はかじかんだ手で長門の背中をさすった。 「……」 長門は手のひらで涙をぬぐって、表情を見せないようにそっぽを向いた。 ドアを開けると、六畳ひと間の、古びたアパートの部屋につつましい生活空間があった。 マンションに住んでた頃も元々モノ持ちなほうではなかったが、家具はほとんどなかった。 ぎっしり詰まった本棚を除いて。 それから俺は、長門がこっちの世界に来てからどう過ごしていたかを聞いた。 「わたしがこちらの世界に来たのは、約五年前。 ここでは情報統合思念体が存在しない。涼宮ハルヒという人間も存在しない。 そのためにわたしは長期の待機モードに入った」 いわば宇宙探査船が未知の星に漂着し、資源を節約するため乗組員が低温スリープに入るようなものか。 「身よりもなくてどうやって食ってたんだ?」 「……パチンコ」 パチンコ!?生活力あるなお前。 「この付近一帯で採用されているパチンコ台はすべてクリアした。スロットの目押しも習得した」 目押しって神業だぞ。 財布の残りをいつも心配していた俺より、ずっとたくましいよ。 「毎日、本を読んで過ごした」 俺は改めて部屋を見回した。 相変わらず本が好きなようだ。部屋の壁が本棚で埋め尽くされている。 「あの文庫本を書いた作家に会ってみたよ。事情を話すと協力してくれてな、ここまで来れたんだ」 「谷川流には前に接触を試みた。だがコスプレと思われて門前払いされてしまった」 なんてこった。谷川氏が言ったとおりだったか。 「それ以降、谷川流に接触する人間を監視していた。二年が経過した時点であなたは現れないと判断した」 「向こうの世界とこっちの世界の違いは何だ?接点は谷川氏だけなのか」 「限定された情報から推測すると、この世界はわたしたちがいる世界の平行世界。 ただし、わたしたちは谷川流の脳内にだけ存在する」 「それがこっちの世界の俺たちか」 「そう」 「そうか……俺もよく分からないんだが、なんでお前だけ五年前に飛ばされたんだ?」 「情報が限定されすぎていて分からない。 でも、位相変換がはじまったとき、わたしが無理に止めようとしたために時間軸が狂った可能性はある」 「古泉も言ってたんだが、敵対する組織とかいうやつらの罠じゃないか」 「その可能性もある。危険を回避するために、この時空でのわたし自身のアイデンテティを消した」 要するに身元を消したってことか。 「こちらの世界では、長門有希は創作上の人物でしかない。それをノイズとしてうまく身を隠すことができた」 なるほど。どおりでなかなか探し出せなかったわけだ。 俺はとりあえず谷川氏に電話することにした。 「もしもし谷川さんですか、キョンです。長門を見つけました。ええ、無事です」 谷川氏は驚嘆していた。まさか自分の作中の人物が実在するとは、聞かされていたとはいえ衝撃だろう。 「ええと、今日はここに──」マイクを押さえて長門に向き直った。「今日ここに泊めてもらっていいか?」 「……いい」 「ここに泊まります。じゃあ、明日伺います」 俺は電話を切った。長門は心なしか喜んでいるようではあるが。 「これからどうする。向こうの世界に帰る方法はあるか?」 「分からない」 忘れていたことがあった。 「これ、喜緑さんから預かったんだが」俺はバックパックから、例の黒い球を取り出した。 「……」長門は目を丸くした。 「渡せば分かると言っていたが、これはいったい何なんだ?」 「これは……空間を封じ込める技術」 「すまん、なんだって?」 「空間がこの球の内側に折りたたまれている。位相変換せずに次元を超えて物質を転送したいときに使う」 それで喜緑さんか。 「何が入ってるんだ?」 「素粒子がひとつだけ」 「素粒子って、宇宙を飛んでる、原子より小さいアレか。たったひとつだけ?」 「そう。この状態を維持するには莫大なエネルギーが必要。この大きさでは素粒子一個が限度」 「これを何に使うんだ?」 「おそらく緊急通信用。素粒子は通常、粒子と反粒子のペアになっている。 片方の素粒子に与えた情報は他方に伝わる。このペアのもうひとつは、情報統合思念体が観測しているはず」 つまり、異次元間での通信用か。 「ただし、一度しか使えない。この素粒子が情報を持って向こうの素粒子に遭遇すると消滅してしまう」 「助けを求めるチャンスは一度きりってことか」 「そう」 数年分の物理の授業を受けたような気分だ。とりあえずは帰る切符はあるということか。 気が付けば腹の虫が鳴いていた。 「もうこんな時間か、腹減ったな。どこかに食べに行くか?」 「……晩ご飯、作る」 そう言って、さっきの買い物袋を広げた。冷蔵庫を開けると材料はあるようだ。 長門の手料理は久しぶりだ。 いつだったか朝比奈さんと三人で食べたのは缶カレーの大盛りだったか。 味噌汁に魚の塩焼きに、肉じゃが、か。見る限り、あれから料理も習得したらしい。 「……おいしい?」 「うん。うまい。いい嫁さんになれそうだ」 ふつうならここで女の子がポッとか顔を赤らめてくれそうなんだが、長門には通じない。もくもくと食っている。 長門はふとなにかを思い出したように箸を止めた。 「この世界にひとつ、謎がある……」 「なんだ?」 「わたしが誰かの配偶者だという情報を多く見かけた」 「そうなのか」 「“長門は俺の嫁”って、何」 「なんだそりゃ」 「コンピュータネットワーク上でよく見かける」 「さあ、なんだろう。初耳だが。だとするとお前の旦那は大勢いるってことだな」 「……」 長門は無言のまま複雑な表情で食い続けた。 「水が沸いた。水温40℃」 「ああ、風呂か。今日はほこりだらけだからな。ありがたい」 浴室を見ると、石鹸やらシャンプーやらナイロンタワシやらが一切ない。 「お前はふだん風呂に入らないのか?」 「わたしにはナノマシンによる自浄機能がある。通常、風呂は必要ない。 ……それにレディにそんな質問をしてはいけない」 「そ、そうか、禁則事項だよな。すまん」野暮なことを聞いた。 「コンビニで入浴セットを買ってくる。歯ブラシも」 俺はどうも、長門の人間っぽい面とそうでない面のギャップについていけてないようだ。 この後がちょっと問題だった。 「布団が一組しかない」 「じゃあ俺は毛布かなんかあればそれでいいよ」 「……風邪を引きかねない。一緒に寝ればいい」 「それはいくらなんでも困るぞ」 「なぜ」 いやまあ、なんというか。俺もいちおう男だし、健康な男子だし、 というか長門とひとつの布団で寝るというシチュエーションが嫌だというわけじゃないが、 長門とあらぬ関係にでもなったら情報統合思念体に殺されかねんわけで、 ハルヒに知られたら三度殺されて三度蘇生されて三度埋められるだけじゃ済まない。 などと俺がブツブツ言っている横で、長門は押入れから布団を出して広げた。 ともあれもう十二時だ。昼間の疲れと、やっと会えた安堵も手伝ってか、睡魔が襲ってきてどうしようもない。 俺は迷いつつ布団に潜り込んだ。長門に背を向けて。 長門は蛍光灯のスイッチを引いて、音を立てずにそっと布団に入ってきた。 目をつぶること三十分。あれほど眠かったはずが待てど暮らせど眠れない。頭の後ろに長門の視線を感じる。 朝比奈さんが長門のマンションに泊まったとき、 寝てるときに長門に見られてる感じがして落ち着かない、と言っていたのを思い出した。 「長門よ」 「……なに」 「頼むから眠ってくれ。見つめられてると落ち着かん」 「……分かった」 長門が孤独に暮らした五年間を思えば、それくらい我慢してやれという誰かの声がした。 妥協案として長門のほうに向き直り、手を握ってやった。 そこからの記憶はなく、泥のように眠った。夢は見なかった。 「起きて」 長門の声で目を覚ました。昨日までの出来事が夢ではないことを確認するために周りを見回した。 「ああ」それからちゃんとズボンを履いたままであることを確認して安心した。かなり寝苦しかったはずだが。 「おはよう。今何時だ?」ちゃぶ台の上に朝飯が用意されている。 「八時二十四分十五秒」 「今日の予定は、とりあえず谷川氏に連絡してどうやって向こうに帰るかを話し合うことだな」 「朝ご飯、食べて」 「お、おう」 なんだか昭和四十年代の歌謡曲に出てきそうな風景だが、ひとつだけ言わせてもらえば、長門の味噌汁はうまい。 「長門」 「なに」 「ボクの髪が肩まで伸びたら、元の世界に帰ろう」 「……分かった」 そこ、笑うとこ。 俺は長門を連れて谷川氏のお屋敷に行った。 おばあちゃんが出迎えてくれた。 「めっさかわいいお嬢ちゃんじゃないかねっ。寒かったろう。さあさあ、おあがり」 「……」誰かの面影があることに長門も気が付いたようだ。 座敷に通された。 「谷川さん、長門を連れてきました」 「はじめまして谷川です」谷川氏は少し照れたような、感激したような微妙な表情を浮かべた。 「……長門有希」長門は少しだけ頭を下げた。 二人とも無言だった。どうも空気が固まっている。 「ええと、長門がこっちに来たのは五年前で、存在を知って一度は谷川さんに会おうとしたらしいです」 「ああ、やっぱりそうなのか」 「……あのときは制服を着ていた」 今日は珍しくタートルネックの黒のセーターを着ているが、それでか。 「それで、俺たちがどうやって向こうに帰るか、なんですが」 「そう、それが問題だね」 「いちおう、向こうの世界と連絡は取れるらしいんです」 俺はバックパックから、例の黒い玉を取り出して見せた。 「これは?……重いね。何かなこれ」 「向こうの世界の素粒子が入ってるらしいんです」 「ほう……そんなことができるんだ?」 「向こうの情報統合思念体が俺に託したんです。連絡用らしいですが」 長門が人差し指を立てた。 「連絡は……一度」 「ニュートリノと反ニュートリノが遭遇するとき、向こうに情報が伝わるってわけだね」 さすがSF作家だ。 「連絡はつくとして、どうやって向こうに帰る?物理的な転移が必要だろうけど」 長門は谷川氏に向き直り、 「あなたが小説を書けば、そのとおりになる」と言った。 「僕が?」 「わたしと彼は、あなたの書いたストーリーの上を歩いてきた。 帰るための手段も、それに従う」 「ええと、じゃあきみたちを元の世界に返す方法を僕が決めればいいわけか」 「……そう」 「これからの展開の中にそれを含めて出版されればいいわけだね」 「そう。ただし十三巻には時空の歪みが内包されている。 向こうの世界からこちらの世界への接触はできないように書き直してほしい」長門が答えた。 こちらの世界の情報は、わたしたちがいた世界に漏れてはならない、 情報は一方通行でなければならない、長門はそう言った。 「分かった。今回の現象も含めてプロットとして書いておこう。で、きみたちは同じ手順で向こうに戻る」 「同じ手順と言うと?」 「その地上絵をもう一度登場させて、向こうの世界への扉が開く」 長門がちょっと考え込んで言った。 「その場合、扉は、向こうから開かなくてはならない。情報統合思念体の支援が必要」 「どうやって支援を頼むんだ?」俺が聞く。 「この素粒子球で座標を伝える」長門が黒い球を指した。 「そうだ。これはそのために用意されたんだね」谷川氏がうなずいた。 パズルのピースがすべてはまった。決行は、今夜だ。 「あの、ひとつだけお願いが。できれば今後、ハルヒにはあまり無茶をさせないでください」 「分かったよ。ほどほどにする。ただし読者を満足させられる程度には」谷川氏は笑った。 近頃の読者は、登場人物の血を見ないと満足しないから怖い。 「鉛筆……買って」 「何にするんだ?」 「信号を送るのに必要な材料」 「鉛筆でいいのか」 「地上絵の信号を素粒子球を通じて送る。 それには広い場所と光を放つ発火性の物質が必要」 広い場所は北高グラウンドでいいだろう。東中は一度やってるんで怪しまれるとまずい。 「発火性の物質って、花火みたいなもんか?」 「そう。大量の水と空気。鉛筆を二十キロ。それらから核融合する」 「二十キロ分か」核融合って……そんな簡単にできるのか。 空気はそのへんにあるとして、水はプールのたまり水を使おう。 この時期はだいぶ汚れてるだろうが。 導火線変わりに使うという灯油を二缶、谷川氏に頼んだ。 ええと鉛筆一本が十グラムくらいか。とすると二千本必要だな。十二で割ると……。 「鉛筆は百六十六ダース必要」考えていると先に言われた。 文房具店をいくつかハシゴしないといけないな。 俺と長門は、とりあえず北口駅まで買出しに出かけることにした。 百貨店のテナントで半分の量の鉛筆、さらに別の専門店で残りを調達した。 突然の大量購入は断られるかと思ったが、店員は喜んでいたようだ。 鉛筆を大人買いしたのははじめてだ。 俺は段ボール箱いっぱいの鉛筆を抱え、汗を垂らしながら歩いた。 帰りの道すがら、長門がふと足を止めた。 「……行きたいところが、ある」 「どこに?」 「……」南西の方を指した。 長門は黙って歩き始めた。 この方角は……、勘は当たっていた。図書館だった。 中に入ると暖かい空気が二人を包んだ。 紙とインクの匂いと、それから何か分からない安心させるこの雰囲気は、どこの世界でも同じかもしれない。 そういや、受付のお姉さんに頼みごとをしたままだったな。 俺はカウンターまで行って、長門を指して無事会えたので、と伝えた。 お姉さんは俺と長門を交互に見つめ、微笑んでいた。 「あなたの学生手帳、貸して」 「いいけど、何するんだ?」 長門は黙ってなにかの書類に記入し始めた。それをカウンターに持っていって、数分して戻ってきた。 「これ……記念に」長門の差し出した手に貸し出しカードがあった。 「ああ、ありがとう」 二年前、同じことを長門にしてやったな。そのお礼か。 何の記念だか分からないが、とりあえず受け取っておいた。たぶんもう、借りに来ることはあるまい。 それから長門は、あのときと同じように本棚の群れの間をさまよっていた。 俺も同じことをするか。空いてるシートに腰掛けて居眠りを決め込んだ。 夜九時、俺たち三人は十分に暗闇が降りてから行動を開始した。 車で学校の前を通り過ぎ、離れた空き地に止めた。 俺は大量の鉛筆を抱え、谷川氏は両手に灯油のタンクを抱えていた。 あきらかにタンクのほうが重いので変わりましょうかと言ったのだが、谷川氏はたまには運動しないとねと言って譲らなかった。 タンクを抱えての柵越えはちょっと大変だった。 正門から忍び込むと明らかにあやしい集団に見えるので、西側まで回って入り込んだ。まあどこから入っても十分あやしいんだが。 タンクはグラウンドに置いておき、先にプールへ向かった。懐中電灯で照らすと、水はあるようだ。 「鉛筆を入れて」長門が言った。 俺は箱を崩しながら鉛筆をバシャバシャ放り込んだ。長門は箱もいっしょに放り込んだ。 「紙もいいのか?」 「いい。必要なのは、炭素」 そういえば鉛筆の芯は炭素の同位体だったな。 それから長門はおもむろに右手をかざし、詠唱をはじめた。次の瞬間、プールの真中を軸に凄まじい旋風が起こった。 水が十メートルほど立ち上がったかと思うと、竜巻になり、そして黒い粉のような塊となって落ちてきた。 「ちょ…ちょっと口の中が……」その場にいた俺と谷川氏が、声を枯らしてのどと目を押さえた。 「……す、すまない。うかつ」 長門はあわてて二人をひっぱり、プールから離れた。 「周辺の水まで奪ってしまった。すまない」俺の水分が材料になったってわけか。 長門は学校の外へ走り去ってゆき、缶のお茶を二本持って戻ってきた。 「あー、コンタクトレンズがパリパリ言ってるよ」谷川氏が目をこすった。 「……もうしわけない」 「プールでなにを作っていたの?」 「炭、硫黄、マグネシウム、銅、その他可燃性の金属。そしてそれらの混合物」 「つまり、花火の材料か」 「……そう」 中世に行って錬金術師にでもなれるんじゃないか。 プールに戻ってみると、水と同じ体積の、灰色の粉らしきものが出来ていた。 「これ、どうやって運ぶんだ?」 「……任せて」 長門はもう一度右手を上げて、「今度は、大丈夫」と言ってから呪文を唱えた。 プールを埋め尽くしていた粉が、さっきと同じくらいの高さに立ち上がって球になり、少しずつ小さくなっていった。 最後はソフトボールくらいの球になった。 長門は空になったプールの底に下りていって、その球を拾い上げた。 「分子圧縮した」簡単に言ってるけど、すごいよ長門さん。 それから三人はグラウンドに行った。幾何学と測量の出る幕だ。 まず俺が巨大な正方形の頂点に二メートルくらいの棒を立てる。 暗くて分からないので、棒の先にペンライトを巻きつけた。 まず点を結んで線を引き、正方形を作る。 その頂点に対角線を二本引き、真中を割り出したところで上下左右の辺に垂線を引く。 これで内側に正方形が四つ現れる。 さらにその正方形の内側に正方形を作り、それを繰り返して碁盤状の正方形が出来上がった。 地上絵は、大きく二つの部分に分けることができる。 隣に同じ大きさの正方形をもうひとつ描いた。これで二つの絵が描ける。 あとは長門の指示で各マスの辺に点を置いてゆき、それを繋いでいくと絵が仕上がる。 これ、GPS使ったらもっと簡単にいきそうなんだが。 線に沿って灯油をちょろちょろと撒いた。これが導火線になる。 その上に長門がさっき作った球を持って火薬のウネを作った。 球から延々灰色の粉が流れ出て、長い山になっていった。 球はちょうど文字の最後の部分で消えた。 「警備会社の巡回まであんまり時間がない。急ごう」谷川氏が言った。 「わたしが素粒子球を上空千メートルまで投げる。合図をしたら、火を付けて」 「分かった」俺は手にもった松明に火をつけた。 「そろそろはじめますか」 「今のうちにお別れを言っとくよ。また会おう。作中でね」谷川氏が手を差し出した。 「いろいろとありがとうございました」俺は手を握って振った。 何度お礼を言っても足りない。この人がいなかったらずっとホームレスを続けていたかもしれない。 犀は投げられた。すべての準備が整った。 「谷川さん、カウントしてください」 「いくよ」 三、二、一、GO! 長門の手から勢いよく球が飛んでいく。 「今」 俺は地面に火を放った。まばゆい火柱が足元を走った。 青白く、さらに緑に、そして赤く燃える地上絵がグラウンドに浮かび上がる。 三秒、四秒、五秒……。見えはしないが黒い球が落ちてきているはずだ。 まだか、まだなにも起きない。 「特異点が発生した。向こうの次元が開いた」 長門が上を指差した。上空、百メートル付近だろうか、白い光の球が生まれた。 それが徐々に膨らみはじめ、そして落ちてくる。 長門は強引に俺の手をひいて、地上絵のまんなかに走った。球がちょうど真上から落ちてくる。 白い光はさらに膨らんで、直径三メートルほどにまでなっただろうか。 球が俺たちの上に落ちてきた。二人は球の中へ入った。 「目を閉じて!」長門が叫んだ。まぶたを閉じても強い光が目に飛び込んでくる。 強い地響きのような振動がまわりを包んだ。 俺と長門は互いに強く抱きしめ合い、光の中で、一瞬よりは長い永遠の間、じっと待った。 光が徐々に引いていく。目を開けて後ろを振り返ると、うっすらと消えていく谷川氏が親指を立てていた。 ── アスタラビスタ。 気が付くと、いつもの風景の中にいた。夜の北高のグラウンド。 前には同じ景色の中を神人に追われてハルヒと走った。 俺と長門はどちらとも、しばらくなにも言わなかった。 抱き合ったままだということを思い出して、俺は長門から腕をほどいた。 「俺たち、ちゃんと帰ってきたのかな?」 「こっちの標準時と同期した。今、情報統合思念体と話している。五年分のレポートをアップロード中」 「そうか。長門は無事に取り戻したからと言っといてくれ」 こういう場合の気分だ、少しはヒーローを気取ってみたい。 「伝える」 俺も自分の組織である家に帰ろう。というか、古泉に連絡を入れないとな。 あいつが思い余ってハルヒにすべてをぶちまけてしまう前に。 「古泉か、今帰ってきた。長門も無事だ」 携帯が通じる。どうやら帰ってきたようだ。俺の自宅にいるという未来の俺と遭遇しないように手配を頼んだ。 「マンションまで送っていくよ」 「……」この無言は俺の知る長門の表現では、ありがとうという意味。 俺は夢でも見ているかのように、終始ぼんやりとしたまま坂を下った。疲れてるんだろう。 見知らぬ世界へ行って、そして今帰ってきたという現実に、まだピンと来ていない。 マンションに差し掛かると長門が口を開いた。 「お茶、飲む?」 「さすがにちょっと疲れたから、今日は帰るわ。それに俺を待たせてるし」 何言ってんだろ俺、みたいな気がしたが長門には通じたようだ。 「……そう」 「じゃあ、またな」俺は元気なく手を振った。 長門はいつまでも俺を見ていた。 振り返るたびに小さくなっていく長門に向かって俺は、大丈夫だ、明日も会えるから、と手を振った。 わずか数日留守にしただけだったが、翌朝の俺はずいぶん懐かしい気持ちで学校へ行った。 ハルヒも、クラスメイト全員も、なにも変わっていなかった。 「懐かしいな、谷口」 「なに言ってんだお前、昨日いたじゃねえか」谷口が怪訝な顔をしていた。 昨日か、そんな遠い未来のことは知らん。 「キョン、おっはよ」さらに懐かしい声がした。 「お、おう」 俺はハルヒの顔をまじまじと見つめた。 「な、なによ。あたしの顔になんかついてるの?」 「いや、なんでもない」 やっぱりこいつがいないと俺の生活ははじまらない。 俺の居場所は架空なんかじゃない、嫌になるほどリアルなSOS団が存在する、こっちの世界だ。 俺は壁にかかっているカレンダーを見た。 長門がこっちの世界から消えて七日間、俺がこっちを出て四日間、俺の主観時間と一致する。 昨夜、古泉に電話して未来の俺を呼び出してもらい、古泉の家に引き取ってもらった。 未来の朝比奈さんとはまだコンタクトできないらしい。 ということは俺は古泉の家に数日泊まることになるわけか。 あいつの哲学やら能書きやらに何日も付き合うはめになるのかと思うと、今から気持ちが萎える。 耐え切れなくなったら長門のマンションにでも泊めてもらうとするか。 放課後、ひさしぶりの部活である。 俺の学業生活は放課後がメインなんじゃないかと思うくらい、この時間が来ると気分が開放的になる。 「あたし掃除当番だから。先行ってて」 我が団長様は教室の掃除か。ご苦労さま。 俺がいない間も、たぶんなにも変わらない日常が続いていたんだろうな。 こんな平穏な毎日が続けばいい、そう思う。 文芸部部室のドアノブに手をかけたところで、誰かが俺のベルトを引っ張る。 「……話がある」 長門、用があるときは袖を引いてくれと。それから、突然現れるのは心臓に悪いから。 「で、話ってなんだ?」 「情報統合思念体が、向こうの世界に関する記憶を消したほうがいいと言っている。 平行世界との論理的逆説を招きかねない」 「そうなのか……俺はできれば忘れたくないんだが」 あのとき、谷川氏が別れ際に見せた笑顔が忘れられない。 「俺の記憶が消えてもお前は覚えているのか」 「わたしの記憶からも消去される。以降、あの本と谷川流に関する情報は禁則事項となる」 「それはなんだか寂しいよな」 「情報統合思念体のアーカイブには保管される。必要なときに封印が解かれる」 「長門を見つけ出したときの、あの瞬間は忘れたくないんだが」 長門はちょっとだけ考えて、 「希望するなら、そのままでもかまわない。でも、言葉にしようとすると抑制がかかる」と言った。 「分かった。未来人の禁則事項と同じだな」 「古泉一樹と朝比奈みくるの記憶は消去する」 「しょうがない。やってくれ」 「……あなたは外にいて」長門はドアを開けて中に入った。 「な、長門さんなにするんですかぁ!?」 「長門さん、それはあまりに大胆すぎます!うわああ」 部屋の中から、椅子がひっくり返る音、それからキャーともギャーともつかない叫び声が上がった。 な、中で何が起こってるんだ? ハラハラドキドキして楽しんでいると、しんと静まり返った。 おもむろにドアが開いて、いつもより涼しい顔をした長門が出てきた。「……終わった」 「あなたの番」 「き、禁則事項ってどうやるんだ?」まさか脳を切開して取り出したりしねーだろうな。 「……こう」 長門は両手で俺の頭を抱えて「少しかがんで」と言った。俺は言われるままに頭を長門の顔に近づけた。 やわらかく暖かい唇を額に感じた。 ── あなたの中にわたしの記憶があれば、それでいい。 長門、その言葉、忘れないよ。 「もう!有希ったら一週間もどこ行ってたのよ!心配したじゃないの」 ハルヒが珍しく半ベソをかいている。長門の首に巻きついて離れない。 「エルサルバドルの両親に会いに行った。進路のことで」 「だったら連絡くらいしていってよね。だいたいエルサルバドルてどこよ」 「ラテンアメリカですね」聞かれもしないのに古泉が答えた。 「エルサルバドル、中米の小国家。人口約六五八万人。 面積は約二万一千平方キロメートル。国内総生産は百六十六億ドル」 長門、それは詳しすぎて逆にあやしい。 しかしホンジュラスとかエルサルバドルとか、アンドロイドはなんでラテン系が好きなんだ。 「おかえりなさい。無事でよかった」 ドアが開いて喜緑さんが登場した。 長門は喜緑さんと特殊な方法で会話でもしているのか、数秒見つめあった。 「キョンくん、おつかれさま」喜緑さんが笑顔で言った。 「いえいえ、いろいろとありがとうございました」 アンドロイドにもこういう、喜緑さんみたいな感情豊かで優しいタイプがいるんだよな。 「これ」長門がハルヒに向かって、なにやら袋を差し出した。 「あたしにお土産?」 「……そう」 袋の口を開けるとコーヒー豆の缶が出てきた。 「へー。コーヒーの産地だったんだ」ハルヒが嬉しそうに言う。 長門がチラリと俺を見た。これしか手に入らなかったからしょうがないんだ、とでも言いたげな目で。 「どこかでコーヒーメーカーを手配しないとね、みくるちゃん」 「あ、ハイハイ。明日、ドリッパーとマグカップを持ってきますね」 朝比奈さんメニューにコーヒーが追加されましたか。待ち遠しいです。 その後のことを、少しだけ話そう。 長門だが、あいつはふだんと変わりない、いつもの長門に戻ったようだ。 今回のことで、あいつと俺の間に、見えない親密ななにかができたように思う。 「なあ長門、いつかふたりでどこか行かないか」 「……また、図書館に」 「そうか。ほかに好きなところへ行ってもいいんだぞ」 「……図書館」 長門にはそれ以外ないようだ。まあ帰りに映画にでも連れてってやろう。 「ハルヒには内緒でな」 「分かった」 長門はひとことだけうなずいて、また本の世界に戻っていった。 俺の財布には今も、存在しないはずの西宮市立図書館のカードが入っている。 いつか、この禁則が解けたら、長門にも話してやろうと思う。 そう、とりあえずは俺たちを生み出した、谷川氏のこと。 ── また会おう。作中でね。 もう一生、出会うことはないだろう。少なくともこちらの世界からは。 谷川さん、しばらくはハルヒをおとなしくさせてくれたら助かります。 俺は上でもなく東でもなく、どっちか分からないあっちの世界に向かって祈った。 しかしこれもまた、谷川氏も含めた今回の出来事が、 別の世界の誰かの頭の中に存在する物語である可能性を、俺は否定できないでいるのだ。 END 長門有希の憂鬱Ⅰプロローグ 長門有希の憂鬱Ⅰ一章 長門有希の憂鬱Ⅰ二章 長門有希の憂鬱Ⅰ三章 長門有希の憂鬱Ⅰおまけ
https://w.atwiki.jp/kagakyon/pages/962.html
七誌◆7SHIicilOU氏の作品です。 我がSOS団の部室はやけに本棚が多い まぁ元が文芸部室であることを考えれば別段おかしくは無いのだが そういった方向で見るとこんどはコンロだの鍋だの冷蔵庫だのがおかしな存在となる しかし存在そのものがずばりおかしいこのSOS団 これ以上のおかしさを探そうとするのはただの揚げ足取りであろうて で、その本棚であるのだが 最近はなぜか長門の以外の本、しかも小説ですらないものが結構な量立ち並んでおる 漫画と呼ばれる文でなく、絵を中心としたそれらは非常に場所をとる 同じ内容を完全に文章におきなおしたらずいぶんとすっきりするであろうことは間違いない といっても、俺もその漫画をたまに借りてる側の人間 手持ち無沙汰のときは結構ありがたくもあるので 持ってくる人間に今更撤去作業を行えというつもりはない 「ながもーん、あれとって~」 でその本人、まぁ他にも居るのだがこいつが一番の原因だ こなたは机にのべーと張り付いて長門に漫画を取らせてる 「…これ?」 「ちがーう、そっちのー」 「…これ?」 「んー、もちょいこっちー」 俺は鞄から雑誌を取り出してこなたの頭を軽くはたく 「なんだよキョンキョン~」 「コソアド語で喋らず、題名を言え馬鹿」 横着にも程があるというものだ 大体本を読んでる長門の邪魔をしてる時点で俺としてはもう一発お見舞いしてもいい しかし長門はあまり気にしてないようでようやくこなたが所望していた漫画を三冊そこにおく …三冊というと結構少ないな、いつもなら常に五冊は手元において 読んだのを本棚に戻してもう一冊取り出すってのをやってる癖にどうしたんだろうか 「ん、これ三冊で完結なんだよね」 「なるほど、回答を感謝する」 確かにそれではいつものように重ねはられまいて うん、常々その本の山を同時には読めないんだからどうにかしろと言ってきてた俺にしては 今日は静かにすごせそうだ、同じ言葉を繰り返すのは言うのも面倒だ 「ん~そういやさぁ、このキャラってハルにゃんに少しだけ似てるかも」 「そういえばといわれて、俺はこの漫画を読んだことは無い」 作者名は聞いたことある、幽遊白書は読んでいたし 最近は休載がやけに多いあれだろ? いまの連載してる奴に興味はないからどうでもいいがな …レベルE、上から五番目か? 「どの辺が似てるんだよ?」 「どの辺と言われても…、漠然と感じただけだし」 「キャラの名前は?」 「馬鹿王子」 この瞬間俺はピンと来たね なるほど、これは内容があたまに入っていなくとも ハルヒさえ知っていればこの共通点に気付くはずさ 「なに?」 「馬鹿王子とハルヒ、その共通点はなこなた」 俺は一旦間をおいてもったいぶる様に言葉をとめる 視界の端で長門が少しだけ慌てた表情を見せた気がする 「二人とも無能なのに人の上に立ってるということだ! 馬鹿なのに王子、ハルヒなのに団長」 素晴らしいぞ俺、名前を聞いた瞬間にビビッと来たぜ 今日の俺の頭は回りが速い …こなたの顔が強張る、そういえばさっきの長門の表情はなんの意味が その回転の速い頭で考える、結果俺はすばやくその場から立ち退き振り返る すると俺が居た場所にドロップキックをハルヒがかましていた 当然俺は居ないのだからそのままハルヒは直進してしまい さっきまで俺とくだらない議論をしていたこなたに思いっきりヒットした 「ぬわー!」 ドンガラガッシャン こなたの悲痛の叫びと、それでも勢いを殺しきれないハルヒが パイプ椅子を複数犠牲にして転がるように吹き飛んだ 長門は俺をなにか言いたそうな面持ちでじっと見つめていた しかし後の祭り、後悔先に立たず 数十秒の時間を要して立ち上がったハルヒとこなた ハルヒは元よりこなたまでもが俺に殺気のようなものを向けている 「いや、すまんかった、この通りだ」 俺は素で命の危機を察知して、平謝りに徹したが 『問答無用!』 その後、ハルヒの命令により レベルEなるマンガ本のみ撤去された さもありなん、サムハンキンポー
https://w.atwiki.jp/yuriharuhi/pages/45.html
冬休みでだらけきった体が、ようやく学校生活のリズムを取り戻してきたと感じる今日この頃。 我らSOS団は何をしているのかと言うと、何故かまたもや機関紙作りに励んでいたりするわけだ。 と言っても今回は生徒会も古泉も関係ない。 ハルヒの純然たる思いつきによるものだ。 ちなみに今回の俺の分担は幻想ホラー。 はっきり言って何を書けばいいかわからんが、まあ恋愛小説よりは幾分かマシだ。 古泉と朝比奈さんは前回と変わらず、それぞれミステリと童話。 その二人は今はいない。 用事があると言って二人とも帰ってしまった。 そしてなんと言っても特筆するべきは長門の恋愛小説だろう。 俺の知る限り最も恋愛小説とは遠そうな人物であるだけに、興味はあるのだが。 果たして本当に長門が恋愛小説というものを書くことができるのだろうか。 当の長門はここ数日、キーボードを少し叩いてはフリーズして、また少し叩くという行動を繰り返している。 「有希、できた?」 早々に自分の分を書き終えたハルヒが長門の背後からパソコンを覗き込む。 「結構できてるじゃない。どれどれ」 ハルヒは長門の小さな肩に顎を置くと、そのまま読み始めた。 最初はふんふん、と頷きながら文章を追っていたハルヒだったが次第に様子がおかしくなっていった。 顔は軽く紅潮し、声にならない声をあげている。 ハルヒは長門から体を離すと、どこか恥ずかしそうに長門を見つめた。 「有希…あなた、これって」 長門は何も言わずにただコクリと頷いた。 ハルヒは小さく「そう」とつぶやくと更に顔を赤くして固まってしまった。 一体、どんな内容が書かれていたのだろうか? 俺は自分の席を立つと、長門の後ろからパソコンを覗き込んだ。 私の体にエラーが発生したのは、いつの頃からだっただろうか。 正確な時刻は私にはわからない。 しかし、その原因が彼女にあることだけは確かだった。 彼女と最初に会話をしたときのことは正確に記憶している。 彼女は、文芸部の部室で読書をしていた私の前に現れると、唐突に部室を貸して欲しいと言った。 私がそれに了承すると彼女はすぐにまたどこかに行ってしまった。 彼女がSOS団という組織を立ち上げ、私がそのメンバーに入っていることを知ったのは放課後になってからだった。 私は以前より彼女のことを知っていた。 私は彼女を知るために存在していると言った方が正確かもしれない。 そういう意味では、彼女と同じ組織に身を置くということは私にとって悪い話ではない。 彼女をより理解するために観察する日々が始まった。 彼女は感情豊かな人間だった。 感情というものの概念が理解できない私にとって彼女の行動は不可解なことが多かった。 私は彼女の観察を続けた。 次第に私個人としての意思が観察とは別の目的で、彼女の姿を目で追っている事に気がついた。 おそらくエラーが最初に発生したのは、この時からだと思われる。 発生当初は無視できるレベルだったエラーは次第に大きくなっていった。 気がつけば、私の思考の63%が彼女に対する任務とは無関係な事項で占められていた。 自分に与えられた役目をこなすに当たって、良くない影響を与える数値だったが私はエラーを消去できなかった。 消去しようとは思わなかったからだ。 それどころか私はいつの間にか、この正体不明のエラーを心地よく思っていた。 このエラーが何なのか、私は有機生命体によって書かれた資料に答えを求めることにした。 その結果、このエラーが有機生命体における恋愛の概念に酷似しているという結論に至った。 だが私と彼女は生物学的には同じXX染色体で構成されている。 だが子孫を残すためにプログラミングである有機生命体の恋愛は私には当てはまらない。 普通ならば別に原因があると考えるべきだろう。 しかし不思議なことに、何故だか私はこのエラーが彼女に対する恋愛感情であることを確信した。 その後、別の資料によると同姓同士での間に恋愛感情が発生することがあることを知った。 やはり私の確信は間違っていなかったようだ。 私の中のエラー、いや、恋愛感情は日を追うことに増大していった。 気が付けば脳内の仮定の中で彼女を弄んでいる自分がいた。 私は そこで文章は終わっていた。 どうやら、まだ書きかけらしい。 しかしだな、これは……俺はどう反応すべきなのか。 「私には、有機生命体の感情を完全に理解することはできない」 いつの間にかハルヒの前に立っていた長門がそう言った。 「他者の恋愛感情を想定、構築することは困難を極める。よって自己の経験を記すことにした」 見ればハルヒはさっき以上に真っ赤になってやがる。 「有希!」 ハルヒはそのまま絞め殺してしまうんじゃないのかってほどの勢いで長門を抱きしめた。 おいおい、俺がいることを忘れてやしないか? 「ごめんね。有希が私のことそんな風に思っていたなんて、ちっとも気付けなかった」 「いい。今の状況に私は満足している。ただ」 長門は三秒ほど止まってから、言った。 「私はという個体はもっと貴方と触れ合いたいと感じている」 ハルヒは一瞬驚いたような表情をすると、俺の方を睨み付けた。 「キョン、ちょっと出て行きなさい!」 やれやれ、何する気だよ、全く。 さすがに出歯亀する勇気の無い俺はさっさと荷物とまとめて帰りましたとさ。 それからのこと? 悪いが知らんな。 それからハルヒは不思議探索が終わった後、そのまま長門の家に泊まるようになったことだけ付け加えておくよ。