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休息 外ではサイレンが鳴っている。 建物達の外観は、見ただけで異変が起きている事がわかる変貌を遂げていた。 そんな中に、人の気配のする建物が1つ。 「現実的で残酷な話と、楽しい自己紹介。圭一、お前どっちがいい?」 新藤は席に付くなりこう切り出した。 現在彼等はバブルヘッドナースの群れから逃れ、近くのカフェで一休みしているのだった。 アレ等に見つかる訳にはいかなかったため、適当に椅子を持って厨房に移動した次第である。 (この状況での情報収集は必要不可欠よ、彼らから話を聞きましょうミク) 霊体であるヨーコ・スズキが口を出す。 傍目から見ると異様だが雛咲深紅にとっては普通な事だ。 「あ…あの…新藤さん…達の事、教えてもらえないでしょうか、その…。」 「あぁ?俺はお前には聞いてねぇぞ。俺はまだ、お前を信用した訳じゃねぇからな。」 「……。」 妙な気配もするしな。 新藤誠は心の中でそう付け加える。 霊感があったり見えたりする訳ではないが、それなりに存在を感じることのできる新藤は深紅に対して少なからず不信感を持っていた。 「やめようぜ新藤さん、雛咲さん怖がってるじゃないですか。」 圭一が止めに入る。 何故か一人が周囲から攻め立てられる光景を、前にも見た気がしていても立ってもいられなかったのだ。 年下に気遣われるのも情けない話なのだが、新藤の見ただけで人を殺せる様な睨みに対して引っ込み思案な深紅がここまで話せたのはかなり頑張っている方だ。 「で、結局どっちにするんだ?」 「…雛咲さんもこう言ってるし、自己紹介からにしませんか。」 「へっ、そうかよ…。」 多少ぎすぎすしながらも自己紹介は始まった。 圭一は過去の経験から話したくない事は話さず、主にいつもの部活の事を面白おかしく話した。 口先の魔術師を自称するだけはあり、先程までとは打って変わった明るいムードを作り出すことに成功した。 しかし新藤の胸中は深紅や圭一とは異なる盛り上がりを見せていた。 「へぇ、トラップマスター…ね。強いのか?その北条って奴はよ。」 意外にも新藤が最も興味を持ったのは沙都子についてだった。 新藤にとって他の4人は自身の所属する『殺人クラブ』のメンバーとほとんど変わらないように感じた。 密かに漁夫の利を狙う奴なら福沢や荒井がいる。 恐ろしくポテンシャルを秘めた女なら岩下がそうだろう。 リーダーシップで日野に勝てる奴なぞ思い浮かばない。 しかしトラップ使いなんてものは聞いた事も見た事も無い、全くの未知数。 小学生とはいえ大人でも引っ掛かるトラップを使う相手。 一度戦ってみたい。 新藤はそう感じた。 「ああ、強いぜ沙都子は。きっと軍隊だって相手できるんじゃないかって位にな。」 「あはは、そうか。なら俺も一度会ってみたいもんだな。」 『殺ってみたいもんだな』 とは、流石に言わなかった。 さっきも圭一が居なければ確実に死んでいた所だ。 まさかこの状況ですすんで孤立を選ぶ奴などいまい。 一方、圭一は『ロリコンか?』 と思ったがそれは口には出さず、胸の奥にしまうことにした。 次は深紅の番だった。 彼女は氷室邸での事は口には出さなかった。 さすがに会ったばかりの人を信用することは出来なかったのだ。 その代わりこの地に来て会った人、その目的を引き継いだ事を話した。 「で、その薬品ってのは何に効くんだよ?」 「えっと、それは…え?………そんな!!」 深紅はヨーコにT-ウィルスの概要を聞かされ、この薬は人間が化け物にならないために必要な物だと分かり驚愕する。 そして完成しなければ自分がゾンビと化す事も…。 端から見れば突然うろたえ始めたように見えるだろう。 圭一が声を掛けても 「大丈夫、大丈夫ですから。」 の一点張りである。 そんな中放送が始まった。 チラシで大体の事を知らされている新藤と違い、二人は大いに驚く。 「なっ…なんだよこれ…!今の放送、最後の問題ってもしかして…。」 「…ヨーコさん。私、どうしたら…。」 「はっ、俺が言う前に、なんだかよく分からねぇ奴に言われちまったな。」 新藤はチラシを出し二人の中央に置く。 「これがこの町のルールなんだそうだ。ま、よく読んどく事だな。」 二人はチラシに目を落とし放送の信憑性を確かめる。 「なんでこんな、クソっ!」 「……そんなっ!」 新藤は険しい表情でポケットから何かを取り出し、ヒラヒラと空中に泳がせる。それは地図だった。 「さっき見つけたこの地図にも同じ事が書いてあった。だがそんなことは正直どうでもいい。」 「どうでもいい?それはどういう…。」 「問題は、今の放送で確実に殺り始める奴らがここに来てるってことさ。裏を見てみろ。」 呆気にとられながらも置かれた地図の裏を見ると名簿のようなものが見てとれた。 『呼ばれし者』という名目で連なる名前の中には圭一や深紅の見覚えのある人物もいた。 新藤は休まず続ける。 「さて、そういう訳で足手纏いはできるだけ減らしたいからな。お前、覚悟がないならここに残れ。」 それは深紅に対して途方もなく辛辣な一言だった。 「待ってくれ新藤さん!何もそこまで言うこと無いだろ!?三人で一緒に…。」 「うるせぇ、緊急事態なんだよ。こいつ等と闘うってことは、命を懸けなきゃいけねぇって事なのさ。」 もちろん新藤に部員同士で争うつもりなど毛頭無い(もちろん相手から向かってきたら別だが)、つまるところ深紅を試しているのだ。 圭一がどう新藤を説得したものかと考えていると、その横で立ち上がり声をあげた者がいた。 その顔はかつて兄を救おうと苦心した時のような、覚悟を決めた顔だった。 「お願いします、この薬は…ここに書いてある全ての人に必要な物かもしれないんです。協力してください!」 その鬼気迫る表情に、新藤も少し見直したような素振りを見せる。 「へぇ…。思ったより根性あるじゃねぇか、……悪かったな、置いてく云々は冗談だ。薬については考えといてやるよ。」 こいつらが危険なのは冗談じゃないがなと念を押し、話を進める。 「さて、闇雲に動き回ってもしょうがねぇからよ、トランプでもやりながら気楽に行き先を決めようぜ。」 ポケットからさっきどさくさに紛れてカフェのカウンターから取ったトランプを取り出す。 しかし地図といいトランプといいさっきから手癖の悪い事この上ない。拾えるものは何でも拾う主義だとでもいうのだろうか? トランプを見た深紅は小さい悲鳴をあげる。 「それ……!何だか、嫌な感じが…。」 その様子を見てニヤリとする。 ちょうど次の七不思議の集会ルールで狩る時のために用意してたネタがカード絡みだった事を思い出したからだ。 丁寧にシャッフルをしながら語り出す。 「このトランプは曰く付きなのさ。これのジョーカーは男の顔だけどよ…ま、やりながら話してやるよ。学校であった怖い話を……。」 【D-6バー/一日目夜】 【新堂誠@学校であった恐い話】 [状態]銃撃による軽症、殺人クラブ部員 [装備]ボロボロの木製バット [道具]学生証、ギャンブル・トランプ(男)、地図、その他 [思考・状況] 基本行動方針:殺人クラブメンバーとして化物を殺す 1 目的地を決めて少し休む 2 それにしても名簿の人数増えてねぇか? 3 ひとまずこの状況を楽しむ 4 他に殺人クラブメンバーがいれば合流して一緒に殺しまくる(化け物を) 【前原圭一@ひぐらしのなく頃に】 [状態]銃撃による軽症、赤い炎のような強い意思、L1 [装備]悟史のバット [道具]特に無し [思考・状況] 基本行動方針:部活メンバーを探しだし安全を確保する 1 目的地を決める 2 新藤さんとこの5人の間に何が…… 3 やっぱりみんなここに来てたのか! 4 部活メンバーがいれば連携して事態を解決する 【雛咲深紅@零~zero~】 [状態]T-ウィルス感染、右腕に軽い裂傷 [装備]アリッサのスタンガン@バイオハザードアウトブレイク(使用可能回数7/8) [道具]携帯ライト、ヨーコのリュックサック@バイオハザードアウトブレイク [思考・状況] 基本行動方針:ヨーコの意思を引き継ぐ 1 あのトランプはいったい… 2 ヨーコから意見を聞き目的地を決める 3 ヨーコさんの仲間は皆死んでしまったの?それとも… 【ギャンブル・トランプ@学校であった怖い話】 外見は普通のトランプだが、カード背面のイラスト部分が半分人間半分骸骨の絵柄になっている。 男女対になっており、分岐によって効果が変わるがこれは『骨董品屋』で買った使っても『特に実力の変わらなかった』時のトランプとしてください。 その際のトランプの効果は女の方は『幸運を呼び込む』 男の方は『単体では普通のトランプだが、女の方と一緒に持つとこれまでトランプで得た幸運をそれ相応の不幸をもって支払わなければならない』 というものです。 back 目次へ next 雲上海下(うんじょうかいか)前編 時系列順・目次 Close Encounters of the Third Kind DOG 投下順・目次 愛と罪が集う街(前編) back キャラ追跡表 next 戦士の心 新堂誠 Doppelganger 戦士の心 前原圭一 Doppelganger 戦士の心 雛咲深紅 Doppelganger
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闇けるぶ -- 暴犬 (2011-03-19 17 50 09) すげー! ケルブなのに可愛いとは! -- 名無しさん (2011-03-19 19 52 04) 腐ってもわんこですもの! -- 暴犬 (2011-03-19 21 43 35) 名前 コメント
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完全なる傲慢者 「アレを全て破棄しろだって?まったく無茶苦茶いうよなあの女は、いくら僕でも出来る事と出来ないことがあるよ・・・」 遊園地入り口にある土産物屋を物色しながら風間はブツブツと独り言を言っていた。教会で会った女の言っていた赤い物体だか水だかは入り口でいやというほど見たが湖いっぱいの水なんぞどうしたら消す事が出来るのか。 などと考えている内にお目当ての物を発見する。 「お!あったあった、これだよこれ。この大きさならなんとかなるかな。ま、僕の趣味じゃないけどしょうがないか」 ――数分前 しばらく休んで冷静さを取り戻した彼は自らの獲物を他の(主に今自分がお近づきになりたい普通の人)が見たら多少不味い風貌である事に気づいた。化け物が縦横無尽に跋扈するこんな場所で相手に警戒されるという1ステップを省略出来ることはかなり有用に思える。 それにこの先両手にこんなに重いものを持ちながら移動してたら急に襲われた時対処しにくい、(宮本武蔵じゃあるまいに鉈と斧の二刀流など僕には出来っこないからね。持ち運び出来るバッグかなにかあればいいんだけどな、ブランドものの・・・)と、風間は思いあたりふと背後の土産物屋に思い当たったのである。 それから入り口付近とはいえ遊園地にまた戻るかどうかという彼なりの葛藤があったのだが・・・・それはさておき開かなかったドアを斧で壊して入り込み、彼は狙い通り旅行鞄を手に入れたのだ。その他にも食料やお菓子、日用品と何故かさも当然のようにぬいぐるみ置き場にあった医療品も詰めれるだけ詰めた、収穫は上々である。 「さて、どうするか。まずは、もしかしたら学生が誰か残ってるかもしれないし学校に行くとして。あとは・・・・」 なおも小声で呟いていると、何処からか。 コツーン、コツーン、と・・・・足音が聞こえてきた ビクゥッ!! 風間は突然の足音に驚き咄嗟に身を隠した。 もしやまたあのウサギが来たのか?恐る恐る様子を見る・・・・・ 「チェッ、なんだあの女か。関わるのも面倒だし、このまま様子を見るか」 内心恐怖に呑まれていた彼はほっと胸を撫で下ろす。 しかし何か様子がおかしい、女はとても苦しそうに腹を押さえているではないか。風間は怪訝に思いそっと後を追う。湖の薄明かりの恩恵もありかろうじて姿の判別出来る遊園地の門の影から見ていると突然ストンとあの女が座り込んだ。やはり具合が悪かったらしい何か変なものでも食べたのだろう。そこらに成ってるアケビとか。 “いいぞ、自業自得じゃないか!この僕に妙な事をした罰だと思え!” そう思いながら気取られないように笑いを圧し殺し、尚も様子を見守る。 “お、誰か来たな。はは、また神の導きがどうたらとか言ってるよ。ん?もう一人いるな、バッグから何か・・・・” タァーーーン!! 「え!?」 突然の銃声と光に思わず驚きの声を出してしまったため慌てて口を塞ぎ身を隠す、が、発砲した2人組には幸いにも気付かれていないようである。 一瞬の銃火の中見えたのはいかにもチンピラ風な黒髪の男としたり顔で人に向けて銃を撃つ金髪の女だった。もしや銀髪の女の方は不意討ちをくらって死んでしまったのかと耳をそばだてるもそれは杞憂に終わった。憤りと悔しさを噛み殺したような声が聞こえてきたからだ。 「アレッサ・・・・いや、ヘザー・・・・ッ!また貴女なのね・・・・」 「いいえ、どちらも違うわ。確かに名簿にはそう書いてあるけど、私には父さんがつけてくれたシェリル・メイソンという歴とした名前があるもの。さ、立ちなさいクローディア。詳しい話は教会に着くまでにじっくり聞くから、さ、行くわよアベ」 そう言いながらシェリル(ヘザーかアレッサかもしれないが)と名乗った女はクローディアを銃口でつついて進ませ阿部と呼ばれた男と共に闇の中へと溶けていった・・・・ 「こ、ここには殺人ウサギ以外にあんな騙し討ちする奴等もいるのか・・・・僕ら以外にも探せばいるもんだな、いやまてよ・・・・」 風間はチラシを取りだし、思考を始める。 あんなワケわからんおばはんでも(おそらく)顔見知りを容赦無く殺そうとする奴よりはもしかしたらかなりの当たりクジだったのかもしれない。いや、それどころか殺人が正当化されているこの場ではさっきのように人を気遣う素振りを見せる奴の方がヤバイかもしれない。 ―――例えばここに曰野が来ていたらどうだろう?きっとあいつは善人面して近寄って冷静に冷徹に獲物を暗殺しにかかるだろう。 まぁ意外とルールを読んでハイになってミスをするかもしれないが。 そういった人物を避け、ここから迅速に脱出するためには多少強引な方法でも安全確実に信頼出来る他人との関係を築かなければと―――― ◆ ◎ ◇ ◎ ◆ 【美浜奈保子】 サイレントヒル 雛城高校校庭 18時30分18秒 【美浜奈保子】 サイレントヒル 雛城高校校庭 18時30分19秒 【美浜奈保子】 サイレントヒル 雛城高校校庭 18時30分20秒 カチャ、カチャ・・・・ 銃を撫でる音がする、愛でるように猟銃を構え眼下を狙う景色が見える。 はぁー、はぁー、ハッはハハはッ! おぞましい笑い声が聞こえる、懐中電灯で足元を照らし虎視眈々と獲物を待ち構えているのだ。 ザッザザザザ――― 「チッ!!まったくどいつもこいつも・・・・」 そして彼女は、美浜奈保子はというと木の影に隠れその様子を彼らの視点から『視』ていた。 雛城高校のグラウンドは以外と広く流石の幻視といえど全景をつかむ事はできないが大体の配置はわかる。 まず玄関前は校舎から3~3,5メートル程の幅がある高台でありそこから先はグラウンドより目測高さ1メートル、横幅1メートル程度の傾斜になっている。校舎中程の傾斜に階段が一つ、高台の傾斜手前には樹木が等間隔で植えてあり今自分が隠れている場所は階段から見て左2つ目の場所だ。 あの村で見慣れた奴等は立ち止まっているのが高台の両端に1体づつ、片方がやたらゴテゴテしたハンドガン、もう一方はアイロンを持っていてグラウンド、階段側、校舎横を順繰りに見ているようだ。3階の窓から狙撃しようと待ち構えているのが3体、これが厄介で2体は猟銃を持って左右近い方の仲間と階段を交互に監視しているため階段を降りる事はできない。挙げ句の果てにもう一体は “ロケットランチャー・・・・な、訳無いわよね?” 何かデカイ筒を担いで他の2体が見ていない階段から数えて左右三番目の木を見ている、が、得物が重過ぎるのかやたらゆっくり振り向くわ不定期に先端を床に置くわでタイミングを計るのが面倒臭いったらない。 それとさっきの銃を乱射してきたのが今1階の探索を終え2階の階段を見つけたといったところか。 問題なのは狙撃手と、グラウンド----- ・・・・・ 「この視界はなに・・・・・?」 1つは謎の視界、いや謎の生物と言った方が正確か。 汚水の様に濁った幕か、さもなければ使用済み油を凝縮したゲルのようなモノで完全に視界が遮られている、唯一解るのはすぐ下が床という事だけ。ここから推察するに光が無い場所でこれだけ見えるということは相当な夜目が利くということだが、はっきり言ってこの状態では全くの無意味である進化を中断して別のやり方を探したとでもいうのだろうか?下水道が下を走っているのかと考えもしたがそれでは校庭全体そこら中にいる理由がわからない。 もう1つはトラックがトラックを走っている事・・・・・洒落ではない、というか洒落にならない。何故なら目を閉じているなら暗い画面が写るはずだがそれもない、肉眼で確認できる位置まで近づいて来るのだがどうしても見えない。謎の生き物のせいで視界が合わせ難いからかもしれないが集中してもいるべき場所に何もいない・・・・ 運転席に何もいないのだ。 不安要素とアンノウンしかない状況。しかしここにいても状況は悪くなるばかりだろう。ここは石を投げて銃を持っていない方に近い『生物』を刺激し、猟銃を持っている奴と右側の奴の注意を引き付けその間に中央階段からトラックに飛び移り外に逃げだすのが無難か・・・・ と考えをまとめ、足元の石を拾ってさらにもう一度、丁寧に確認しておく。やはり1パターンの秒数を数えてみても中央突破の隙が見当たらない。生き物がどんなものかもわからないし乗り気ではないのだが木の影を利用しながら少しずつ右端に近づいていった。 しかし突然好機はやって来た、なんと右側の屍人が勝手に校舎の裏手に引っ込んで行ったのである。うまい具合に右上の奴も異常に気がつきじっとそちらを窺っている。 後は石を引っ込めあくまでも慎重に元の位置に戻りタイミングを計りトラックの荷台に飛び乗るだけ ザッザザザザ――― 今だ!! 彼女の作戦は成功し悠々とグラウンドを抜けていく、勿論身を屈め彼らから見えにくい位置に移動するのも忘れずに、虎視眈々と次の策を練り。 彼女は優雅にトラックから飛び降りて・・・・ 拘束された。 ここは学校近くの民家、学校前で手足を縛られた女は不審者でも見るような目でこちらを見てくる。女性を拘束など通常ならほとんど有り得ないんだけど・・・・と、このやたら胡散臭い男、風間望は思う。あんなものを見せられては仕方ない、女だろうと男だろうとまず縄で縛ってから話を聞くとそう決めていたのだから。まず名前からか・・・先ずは真摯に話始める。 「あ~君、さっきはいきなりすまなかったね。こんな状況だし用心したいんだ、分かってくれるね?僕の名前は風間望、君の名前は?」 「・・・・・」 ピクッ・・・眉間にシワがよる。疲労も相まって少しイラッとしたがまぁ持ち物はもらったし許してやる事にした。 「ははっ、おいおい。人の質問にはキチンと答えるもんだぞ?あと質問に質問で返すのもダメだ。ま、僕はそこらの凡々人よりも遥かに寛大だから許してやらない事もないけどね。じゃあ次の質問、君はこのルールを知ってるか?」 「・・・・・知らないわよそんなの」 女は鼻息一つの後そっぽ向き不機嫌だということを主張する。 ピククッ!今度ははっきりと答えたのだが態度が気にくわない、ただ彼女は見たところあのウサギの化け物ではない貴重な話が通じる人間なのだ、殺すのは惜しい。それにこれくらいは覚悟して拘束したのだ大目に見てやるのが筋というものだ。と思いなおし風間は話を続けるために女のバックを漁り始めた。 「……お、これはすごい!いいトライアングルじゃないか。ムムム、わかるわかるぞ。僕にはこれの……」 「私のバックに気安く触ってんじゃないわよこのクズ!」 ブチッ!場を盛り上げてやろうとしたのにこの言い方、風間は今にも浮き出た青筋が破裂しそうな顔を近づけ最後の、いや最期のチャンスを与えた。 「…君ねえ、ずいぶんじゃないかな?僕は、暴力に訴えるの嫌だからさ。穏便に話させてもらうけどさ。君は自分の立場を分かっているのかい?僕のようなカッコマンが、君のような汚ならしい奴にこんなにも話しかけてやっているのに君はそんな態度をとって良いとでも思っているのかね?」 次は美浜奈保子がキレる番だった。それはなんだかヘラヘラとしたお調子者の雰囲気を持つ相手を縛らなきゃ話もできない小心者に汚ならしいと言われた事は屈辱の極みでという事もあったし、風間望という人間が傲慢の権化であるように彼女もまた自分を中心に世界が回っていなければ生きていられない人種だからという事ある。しかし何よりももはや正常な考えを持てないほどに赤い水の進行が進んでいた事が大きかった。 「アンタみたいなやることの汚い奴に汚ないとか言われたくないわよ!このクソガキが!!」 唾を吐きかけ顔を蹴飛ばしてやれば少しは反省するだろう、と甘く見ていたのが運のつき。唾は当たった、しかし蹴りは思い切り床に叩きつけられてしまう事となる。見上げた時に見た顔は、さっきまで惚けた顔をしていた男とは思えぬほどに恐ろしく冷徹、怒りを通り越したという事を表す体の震え、侮蔑と殺意に満ちた表情、例えるならば貴族がこじきを見るような顔に近い。ポケットティッシュで唾を拭き取り、風間は口を開いた 「ははは………僕でもね、限度というものがある。それに僕は紳士だからね、だからもうそろそろ……… 期待(リクエスト)に応えてやるよ」 言うが早いか恐怖を感じる間もなくゴシャ、という鈍い音と共に奈保子の顔面に靴底がめり込む 「な゙・・・んで、こどずん・・・・・!」 鼻血が溢れうまく喋る事ができない、が、止めようと思っても手は縛られているためだらしなく垂れ流し続けるしかなかった。そして流れて行く血と同じ様に彼も待ってはくれない、髪を掴んで顔を上げさせなおも詰め寄る。 「嬉しそうにわめいて………そんなに殴られたかったのかい?案外君って変な趣味持ってるじゃない、そんな下衆をお供にするつもりはないからさ、せめて付き合ってくれた例をしてやるよ。ほらっ!これでっ!どうだい!?ほらっ!!」 何度も何度も足蹴にされたお陰で肌は血で濡れ、骨は軋んでガタガタ、あれほど高くそびえたプライドもポッキリと折れ、ここまで来ると次第に自分はこれから死ぬのだという思いがボンヤリと頭の中に現れる事となる。そこで彼女は願いを言った。 「かをは・・・顔は止へへお願ひでふか・・・は・・・」 彼女が、女優として最期に願ったもの。それは最低限顔の原形を留めて死ぬこと、それはこの場に着いた当初よりも遥かに見劣りする願いであったが絶望で濁ってしまったその瞳の奥は心なしか以前より純粋になっているようでもある。 「へーそう、顔はやられたくないのかね?よっぽどナルシストなんだなぁ。ほれ、顔を拭いてやるからありがたく思いたまえ」 さっきの唾付きティッシュで顔を拭かれる普段なら憤死しそうなことであるが今はもうそれでいい、これはきっと自らの美貌が守られるという事に違いないのだから。 しかし現実は非情である。 「さて、じゃあさっさとその不細工な頭を綺麗な輪切りにしてやらなきゃな。止めてほしかったらそうだな、これを降り下ろす間に100回ほど謝れたら許してやるよ」 風間はニヤニヤ笑いながら斧を持ち出し首を足で押さえてきた。たった今宣言された事に恐怖しながら振り向く奈保子に深呼吸しながら真顔で言い放つ。 「光栄に思いたまえ…………僕に殺されることを光栄に思いたまえよ!!ア゙ァー!?」 喉を押さえられているせいでまともな声は出ないが必死に赦しを叫んだが100もの懺悔を一瞬で片付ける事はどれ程足掻いても出来るものではない。 だが―――― 「止めろ犯罪者め!!」 「ぐえっ!!何をする!!」 祈りは届いた。 顔が粉微塵に潰されるよりも前に人が来てくれた。 「アンタ!大丈夫か!?」 暖かい声が聞こえる、前を向いた奈保子は霞んだ視界の中にあるものを捉えにじんだ思考を始めた。 スポットライトだ!スポットライトのひかりだ!ひかりがわたしにむかっている!わかった!わかったわ!がんばってあやまる!あぁそれにしても あぁ・・・・きれい・・・・ ◇ ■ ◇ ■ ◇ 「駄目だ、死んじまったよ」 「・・・・・そうか」 現れた2人の男、ジムとハリーは風間達と同様近場の家で情報交換していたのだが外から罵声が聞こえてきたため駆けつけたのだった。ジムはライトを女性へ向け生死を確認していたが結果的に首を横に振った。風間はハリーが後ろ手に拘束しているため苦しそうである。 「く……苦しい。離してくれよ。死んじまうだろ?」 いつものハリーなら人に暴力を振るう事などしないだろう、だが今は目の前の男に思い付く限りの汚い言葉を投げ掛け、泣くまで殴ってやりたかった。 「貴様のような奴のせいで娘は・・・・!」 「ぐえっ!痛い!このド……!顔は止めてくれよ!!」 思いの外早く泣いたので余った時間で娘の事を聞こうとしたのだが後ろから声で中断されることとなる。 「ウッ!?こ・・・・これは」 「どうし・・・・!?」 ハリーが振り返るとさっき死んだはずの女性が血涙を流しながら謝り続けているではないか。風間はこれ幸いと状況を好転させるべくハッタリをかますことにした。 「そう!実は僕は霊視の能力を持っていたんだ!そいつは今ようやく本性を表したのさ、ははっ!」 しかし状況はより悪くなったと言わざるを得ない。ジムはすっくと立ち上がりどこか悲しげな憤怒の形相でこちらに近づいてくる。 「ハリー退いてくれ!そいつは俺様がぶち殺してやる!!」 「ええっ!?」 しかしハリーは退かなかった。諭すように少し厳しめに言う。 「気持ちは解るが落ち着くんだ。君までこいつと同じになってしまう」 「けど・・・・けどよぉ・・・・・」 ジムは少しの間悔しそうにうつむいていたが暫くすると 「クソッタレ・・・・」 と言いながら元の位置へ戻りリビングデッドと化してしまった女性へライトを向け、感慨無量な面持ちで彼女の目の前に座り込んだ。彼はウィルスの影響で刻々と化け物への変身を余儀なくされているのだという。きっと彼女と自分を重ね合わせているのだろう、怒るのも無理はない。そして私もまだ完璧には化け物にはなっていない理性ある生者を殺ろすような極悪非道な人間もこの町に居合わせているのかと思うと娘の事で胸が痛くなった。こんな青年に出会っていてほしくないが一応尋ねてみようか。 「なんなんだよまったく……」 などとブツブツ言っている青年の腕を一層締め上げる。 「・・・・君は私の娘に会ったか?黒髪でチェックの服を着た小さな可愛らしい女の子なんだが」 「し……知らないよ!此処に来てから会ったのはクローディアとかいうばあさんとチンピラとヘザーだかアレッサだかシェリル・メイソンだか分からん奴だけで他には……」 「シェリル!?シェリルだって!?」 「ハッハァ!ビンゴだな!」 いつの間にか中腰の体勢で背後にいたジムがバシィッ!と私の背中を叩く。いきなり背中を叩かれた事にもビックリしたが何よりも驚いたのは立ち直りの早さだ。あの様子では後暫くは落ち込んだままかと思ったのに。 「・・・・もういいのか?」 「チームのムードメーカーが何時までも暗い顔してちゃマズイだろ?それにこの野郎のバックから見つけた地図に研究所って書いてあってよ、もしかすると抗ウィルス剤が手に入るかもしれねぇんだ!」 嬉しそうに語ってはいるがどこか辛そうにも見える、何はともあれシェリルの行き先をこの青年に聞かねばなるまい。 「シェリルは何処に行くと言っていた?」 「………教会って言ってたけど、本当にアレが君の娘かい?どう見ても特徴が一致しなかったと思うんだけどな」 「確かに別人かもしれない、だが私が娘につけたシェリル・メイソンという名前は、この世に2つと無い誇り高い名前だ。偽物だとしてもそいつが本物のシェリルの居場所を知っているかもしれない。立つんだ。詳しい話は教会に着くまでにじっくり聞く、行こうジム」 後ろから銃を突きつけられながら、風間は思った。 (絶対親子だ!!前に似たような台詞聞いたぞちくしょう!!でも考えようによっては護衛が二人ついたって事かな?ははっ・・・・流石、僕はついているなぁ・・・・) 「はぁ……栄養ドリンク、もらってもいいかい?僕は疲れてしまったからね。捕虜になってやってるんだからそれくらいしてくれても構わないと思うんだ」 「確か学校前にバスがあったはずだよな?あれで行こうぜ」 「そうだな、その方が早いだろう。他の車と同じようにドアが壊れて無ければいいが・・・・・」 玄関から出る時あるものを見つけ、私はふと立ち止まった。メモ帳だ。これに何か書いておけばもしも私がシェリルと出会えなかったとき、ひょっとして誰かが探して保護してくれるかもしれない。結びの一文は、そうだな・・・・・ 「・・・・ジム、すまないが少しの間彼を見張っていてくれないか?」 ―――いつか誰かの目にとまるかもしれない。今までの奇妙な出来事をここに書き記しておこう――― 【A-3雛城高校周辺/一日目夜】 【ジム・チャップマン@バイオハザードアウトブレイク】 [状態]:強い疲労、風間への怒り [装備]:26年式拳銃(装弾数6/6 予備弾4)、懐中電灯、コイン [道具]:グリーンハーブ:1、地図(ルールの記述無し)、 旅行者用鞄(鉈、薪割り斧、食料、ビーフジャーキー:2、栄養剤:5、レッドハーブ:2、アンプル:1、その他日用品等) [思考・状況] 基本行動方針:デイライトを手に入れ今度こそ脱出 1:教会まではハリーと一緒に行く 2:その後できるだけ早く研究所へ行く 3:死にたくねえ。 ※コインで「表」を出しました。クリティカル率が15%アップしています。 ※T-ウィルス感染者です。時間経過、死亡でゾンビ化する可能性があります。 【ハリー・メイソン@サイレントヒル】 [状態]健康、強い焦り [装備]ハンドガン(装弾数10/15) [道具]ハンドガンの弾:34、栄養剤:3、携帯用救急セット:1、ポケットラジオ、ライト、調理用ナイフ、犬の鍵、奈保子のウエストポーチ(志村晃の狩猟免許証、羽生田トライアングル、救急救命袋、応急手当セット) [思考・状況] 基本行動方針:シェリルを探しだす 1:教会にシェリルの手がかりが! 2:青年(風間)から話を聞く 3:他にも機会があれば筆跡を残す ※サイレントヒルにシェリルがいると思っています 【風間望@学校であった怖い話】 [状態]:数箇所を負傷、かなり疲労 [装備]:制服 [道具]:ルールの書かれたチラシ、ティッシュ [思考・状況] 基本行動方針:脱出方法を模索する。 1:とりあえず結果オーライかな? 2:他の人間を脱出に利用する。 3:邪魔者は排除する 4:“赤い物体”については、とりあえず記憶に留めておく程度 5:遊園地には二度と行きたくない 【美浜奈保子@SIREN 死亡】 ※高校のグラウンド内に弧狸理の札で動く車@流行り神が走っています ※美浜奈保子(屍人)が民家内に放置されています ※セーブしました、美浜奈保子(屍人)のいる家の玄関にメモ帳が置いてありドアは開け放たれています back 目次へ next 神隠し 時系列順・目次 混ぜるな危険 堕辰子様に叱られるから 投下順・目次 魔弾の射手 back キャラ追跡表 next Close Encounters of the Third Kind 風間望 罪物語‐ツミモノガタリ‐ DOG ハリー・メイソン 罪物語‐ツミモノガタリ‐ Implication ジム・チャップマン 罪物語‐ツミモノガタリ‐ 咆哮 美浜奈保子 死亡
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S&Wシグマ@現実 90年代に有名な銃器メーカーであるS&W社が経営再建の為に開発したプラスチック製自動拳銃。 実用性は高く、公的機関向けに開発されたのだが、グロック17と内部構造が似ているという点でグロック社に起訴され、多額の賠償金を支払う羽目になったという不幸な拳銃。現在は生産も停止されている。 使用弾薬は9mmパラペラム弾(ハンドガンの弾)。装弾数は15発。
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Vicious Legacy Obscure Characteristic 「イヒッ、イヒヒヒヒヒヒ」 常人と呼ぶには程遠い笑い声を伴って、その男――ヒトという種類であるかどうかは定かではない――はこちらに近づく。 「あんたらにも教えてやるよ。真っ黒な夜の醍醐味ってやつをさ」 男が握っている鉄パイプが床を引き摺っている。ガリガリという音とわずかに生じる土煙にケビンは不信感を示しつつ、 銃口を男の頭部に向けた。駅に入った時と同様、ポイントマンである自分がまず対処しなければならない。 「両手を頭の後ろに乗せろ。それから足を交差させて座れ」 相手が人間かどうか。それも大切な分水嶺だが、何も人間すべてを保護することが警察官の本分ではない。 ここにくるまでもそうだが、基本的に保護対象は善良な市民だけであり、それ以外――暴徒や盗人の安全に配慮する必要はないのだ。 かりに目の前の男が“人間”だったとしても、守るに値しないならばそれまでだ。 こちらの指示に従わない、こちらに危害を加える――そういう場合は、いつも通りの対処をすればいい。 「イヒ、イヒヒヒヒィィィィィイイ!」 右手で振り上げられた鉄パイプをケビンは苦もなく銃身で受け止める。 この程度の衝撃――腕力なら大したことはない。ラクーンシティで相手にした化け物に比べれば、こいつの相手は子守のようなものだ。 「ジムはどうした」 「知らねェナァ。ま、どうせゾンビの餌にでもなってるだろうさ。あいつはどんくさいからなァ……イヒヒ」 「ああ、そうかよ」 期待など最初からしていない。一応聞いただけだ。 銃身を滑らせ、相手の眉間に銃口を突き付ける。 「動くな」 「ヤダねェエエ!」 あまった左手がケビンの顎目掛けて飛んでくる。警官は舌打ちひとつでそれをかわし、右膝を相手の腹にめり込ませた。 内臓にめり込む時の特有の感覚。奇妙な柔らかさによる不快感。駅員の手から鉄パイプが転げ落ち、金属独特の音をたてる。 「ゴウッ……!」 「悪いが手錠もロープも持ち合わせがねえんだ。連行も逮捕もできねえ以上、てめえにはしばらく地面とキスしてもらわなきゃならねぇ」 膝を突いた男の首筋に、ケビンは容赦なく踵を叩き込む。無様な悲鳴と転倒。それきり駅員は静かになった。 警告はした。それでもこいつは襲ってきた。軽犯罪あるいは公務執行妨害――鎮圧する理由にはそれで充分だ。 「クソッ、どうなってやがる」 目下の問題はそこではない。たしかにこいつは死んでいた。完全なる死体だったのだ。 プロフェッショナルの自分がそう判断したのだから、それはほぼ確かな情報だと信じていい。 仕事でも災害でもああいうのは嫌というほど見てきた。 しかし、現にこいつは動きもしたし、喋りもした。ゾンビとは違う。さらに言えば、ラクーンシティで遭遇したどのモンスターとも性質が異なっている。 あえて呼ぶならば、『賢い死者』といったところか。単純で化物然としていたあの町のゾンビよりタチが悪い。 なまじ人間性があるものだから、明確な敵かどうか判断しにくいのだ。下手に信用して背中を撃たれるのも、善人を撃って罪悪感に塗れるのも御免だ。 (ベトコン相手にするのって、こういう気分なのかもな) ボリボリと頭を掻いて、目の前の鉄パイプを拾い上げる。この男がいつ目覚めるかわからない以上、こういうものは遠ざけておいた方がいいだろう。 「ケビン!」 「大丈夫だ、問題ない」 ジルの声に振り返ると、彼女は自分を見ていなかった。線路が続いているであろう空洞をともえと一緒に覗き込んでいた。 「電車が来たわ」 「……オーライ」 少しは心配してくれたっていいんじゃないか? ケビンは少量の不満を胸中でぼやきながら、徐々に光が満ちていくそこへ歩いていく。 「ジル、嬉しいのはわかるがな、電車にはしゃぐ歳でもないだろ?」 笑いながらそう言うと、彼女は不機嫌そうな顔でこちらを見た。 文句のひとつでもぶつけるつもりなのか、その口がわずかに動く。 「……ん?」 突然、自身を包む影が、闇が濃くなった。光を遮る何かが頭上にでもあるかのような感覚。 ジルの顔が引きつっている。遅れてこちらを向いたともえの顔色は青い。 「避けて!」 どちらの叫びかはわからない。それを判別していられる程の余裕はなかった。 The penalty for humankind 電車が線路を軋ませる音で気付けなかった。視界が悪いのも祟った。 その存在には気付いていたというのに! 「ケビン!」 「俺のことはいい! エスコートは頼んだ」 衣擦れのような音とともに、そいつは床を滑った。 ケビンを狙ったと思われる攻撃、その対象が実は倒れている男だったことにジルは一時的に安堵する。 所々禿げたような緑色の皮膚。忘れようのない大きさと圧迫感。 駅員を丸呑みしたそいつはゆっくりと振り返り、こちらを見下ろす。 ジルはその巨大なヘビとの遭遇に、奇妙な郷愁と少量の恐怖を感じた。 そんな風にしか動かない感情に、自分は随分遠いところに来てしまったな、と憂鬱になりつつ、 彼女は背後で停車した電車と大蛇を交互に視界に入れた。電車は鈍い音を立てて扉を開き、大蛇は自分とともえを凝視している。 餌の品定めでもしているのだろうか。あるいは、自分のことを覚えているか。それとも単純に数が多いからか。 ――今はそんなことどうでもいい。 「電車に乗って逃げるわよ」 来た道は蛇によって塞がれている。何とか突破したとしても、前後を気にしながらの逃走はともえがいる以上厳しい。 鉄の箱による高速での離脱――電車が通常通りの働きをしてくれればの話だが――が現状では最も賢明だろう。 「そうしてくれ。――オイ、ヘビ公! 人間の女に色目使ってんじゃねえ!」 二発の銃声。こちらを睥睨していた顔に銃弾が浅くめり込む。その鋭い視線はケビンへスライドし、巨体はそちらを這っていく。 「行くわよ」 呆然としているともえの着物の手を取り、電車へ入ろうとすると、「待って」と女の声。 「きっぷ……」 「なに……?」 「“きっぷ”がないと電車には乗れないはずでしょ……?」 笑うか焦るか怒るか――ジルは数瞬悩んだが、無言で車内に引きずり込むことにした。 箱入り娘とは、こうも扱いが難しいのか。ジルは場違いな感慨を心のどこかで感じながら、電車の中を見まわす。 暗い車内で、ジルのライトが何かを捉えた。身につけているナースキャップや白い服から、生存者かも知れないと思ったが、 彼女はすぐにその可能性を放棄した。奇怪な肉声と動作、そして面相。ここに来て遭遇した怪物と同じような性質がある。 看護婦は奇声を発し、持っていた銃を二人に向ける。ジルの背後でともえが小さな悲鳴を漏らした。 ナースの銃口がジルの頭部を狙う――直後、ナースの肩に銃弾が飛び込む。 怪物が絶叫し、銃を握っていた腕がだらりと垂れる。ジルの放った銃弾がその手を穿ち、否応なく拳銃を落とさせる。 最後の一発。正確な射撃がその異形の頭部を貫いた。支えがなくなったかのように、ナースはその場に体を投げ出す。 「切符代よ」 番人を沈黙させ、安全を確認したジルは素早くリロードし、ドアから車外に身を乗り出す。 それとほぼ同時に、ケビンが車両へ飛び込んできた。彼女は慌てて道を開ける。 「ヘビは?」 「何とかなった」 「まさか、倒したの?」 ジルが薄闇にライトを走らせると、警官はハッと笑った。 「ゲームじゃあるまいし、そんなことする必要はねえよ」 闇の中でのたうりまわる緑色の巨体が見えた。苦しんでいるようだが、外傷はなさそうだ。 口を大きく開け、見えない何かと戦っているようにもがいている。 いや、よく見ると、口の中で光を反射しているものがある。 「思い付きだったが、案外うまくいくもんだな。あれでしばらくは周りを気にしてる余裕はないだろうよ」 鉄パイプだ。鉄パイプがヘビの上顎と下顎の間に直立し、つっかい棒となっている。 大蛇に四肢がない以上、あれを自力で取るのはほぼ不可能だ。 開いた時と同じ音を立て、扉が閉まった。電車はそれに連動して動きだし、徐々に加速していく。 ジルはヘビがこちらを追う気がないのを確認してから、ようやく安堵のため息をこぼした。 「おいおい、安心するのは早いぜ。行き先が安全だって保証はないんだからな」 「だとしても、一歩前進よ。あなたのおかげでね。洋館事件の時にあなたがいてくれれば、リチャードは……」 「止せよ。過去のことは事実でしかない。そこに“もしも”なんて存在しねえよ」 苦々しげにジルの言葉を制し、ケビンは不衛生なシートに腰を下ろす。 彼女に救えなかった命があるように、この男にも助けられなかった人はいる。 仮定の話をしたところで何の意味もない。後悔と願望が横たわるだけだ。 ジルにもそれはわかっている。わかってはいるが、そう簡単に割り切れるものではない。 「今俺たちがしなきゃなんねえのは、職務怠慢な警察署へのクレームだろ?」 「……そうね。ごめんなさい」 「それから、そこのお嬢さんを無事にジパングまでエスコートしなきゃな」 茶目っ気たっぷりにウィンクをするケビンに、ともえは仰々しく頭を下げた。 「ありがとう。このお礼はいつか必ず」 「ヒュー! そいつは楽しみだ」 制服の男が上機嫌に口笛を吹くと、着物の女はあっ、と声を上げ、 「夜に口笛を吹くとヘビが出るのよ」 「……もう出たでしょ」 ジルの呟きに二人は笑った。 【A-2/地下鉄/1日目夜中】 【ケビン・ライマン@バイオハザードアウトブレイク】 [状態]:身体的疲労(小) 、T-ウィルス感染中、手を洗ってない [装備]:ケビン専用45オート(装弾数3/7)@バイオハザードシリーズ、日本刀、ハンドライト [道具]:法執行官証票 [思考・状況] 基本行動方針:救難者は助けながら、脱出。T-ウィルスに感染したままなら、最後ぐらい恰好つける。 1:警察署で街の情報を集める。 ※T-ウィルス感染者です。時間経過、もしくは死亡後にゾンビ化する可能性があります。 ※闇人がゾンビのように敵かどうか判断し兼ねています。 【ジル・バレンタイン@バイオハザード アンブレラ・クロニクルズ】 [状態]:健康 [装備]:M92Fカスタム"サムライエッジ2"(装弾数15/15)@バイオハザードシリーズ [道具]:キーピック、M92(装弾数15/15)、ナイフ、地図、ハンドガンの弾(24/30)、携帯用救急キット、栄養ドリンク、ハンドライト [思考・状況] 基本行動方針:救難者は助けながら、脱出。 1:警察署で街の情報を集める。 ※ケビンがT-ウィルスに感染していることを知っています。 ※闇人がゾンビのように敵かどうか判断し兼ねています。 【太田ともえ@SIREN2】 [状態]:身体的・精神的疲労(小) [装備]:髪飾り@SIRENシリーズ [道具]:なし [思考・状況] 基本行動方針:夜見島に帰る。 1:ケビンたちに同行し、状況を調べる。 2:事態が穢れによるものであるならば、総領の娘としての使命を全うする。 ※闇人の存在に対して、何かしら察知することができるかもしれません。 back 目次へ next Significant Commitment 時系列順・目次 メトロ・サヴァイブ ALONE IN THE DARK 投下順・目次 ジャックス・イン back キャラ追跡表 next Creep ジル・バレンタイン メトロ・サヴァイブ Creep 太田ともえ メトロ・サヴァイブ Creep ケビン・ライマン メトロ・サヴァイブ
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クリムゾン・ヘッド・プロト1 クリムゾン・ヘッドへの突然変異を遂げた初の個体。この個体の発見により、V-ACT活動 が発見された。通常のクリムゾン・ヘッド以上に凶暴で攻撃力が高く、発見時に周囲の 人間を一瞬で惨殺するほどの凶暴性を有していたため、アンブレラ研究者は研究サンプル として有用だと判断、捕獲に取り掛かった。捕獲後、冷凍保存し、安全性を保った上で 生体の研究を開始。プロト1より得た変種体T-ウィルスを培養生産した。 危険な個体であるため、洋館ホール裏墓地の地下室に、厳重な仕掛けを施した上で、棺桶に入れて保管されていた。その後、アークレイ研究所の生物災害でプレイヤーの手により、封印を解かれることになる。研究所の生物災害後も、アンブレラはプロト1に興味を示していたようだが、アークレイ研究所に勤めていた研究者が全員死亡し、研究所も崩壊したため、調査は挫折してしまった。
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Phantom 【理】 ◆◆ 六◆ ◆ ◆ ◆ ◇ ぼくが取るべき行動は――――――――― ピッ ⇒ 近くの施設を探索することだ この場で何か使えそうなもの探すことだ 「とりあえず、この近辺の施設を探索してみましょう」 「施設の探索……日野達の捜索、という事でありますか?」 「それも目的の1つではありますが……そうですね、その説明の前にまずは現状をまとめます」 棚は崩れ、商品は乱雑に散らばり、荒れ放題に荒れている雑貨屋内のカウンター周り。 ぼくは顎に当てていた手を下ろし、ぼくの言葉を待つ3人の顔を見回した。 「えーと……まとめるだなんて言いましたが、正直な所ぼくには今何が起こっているのかは分かりません。 ただ、日本に居たはずの小暮さん、霧絵さん、梨花ちゃんとアメリカに来ていたぼくがこうしてここで出会っている。 常識で考えれば有り得ない事ですが、これは紛れもなく現実です。 何が起こっているのかは分かりませんが、確実に何かが起きてしまっている。それは認めなくてはいけません」 「何かが……ですか……」 「ええ。想像も出来ない程の大掛かりな仕掛けを用いた人為的なものなのか。或いは人知の及ばない怪現象なのか。 それも今はまだ何とも言えませんが、その何かはこの街にぼく達を集めて殺し合いを扇動、強要しています。 同じ街中とは言え、別々の場所にいたはずの全員が――ぼくを除きますが―― それぞれが誰かに襲われ危険な目に合っている事から、これも確かでしょう」 「むむむ……どちらにしてもやはり俄かには信じられませんが……」 小暮さんは青ざめた顔でそう言った。『怪現象』の方を具体的に想像してしまったようだ。 ぼくが思うに小暮さんの怖がりの原因の1つにはその豊富な想像力があるのだが、だからと言って想像するなと言うのも無理な注文だろう。 「梨花ちゃん。あのルールと名簿の用紙を貸してくれるかい?」 「はいなのです」 「ありがとう。――――これが、この街のルールだそうです」 梨花ちゃんから2枚の用紙を受け取り、カウンターに置いた。 霧絵さんにも見易いようにと用紙の角度に気を使う小暮さんだったが、やがてあんぐりと口を開けて固まった。 「こんな、ものが……」 「霧絵さんの……いえ、日野という男が話した内容と一致はします。 そこから推測するに、おそらく街中に似たようなものがばらまかれているはず。 ……だとしたら街に人の気配がない事も頷けます。 おそらく真っ当な住民は皆、街のどこか安全な場所に避難しているか、こんな事態になる前に逃げ出したかしたのでしょう」 「あの……私も先程それと同じ物を……」 霧絵さんは袖口に手を差し込むと、2枚の用紙を取り出して置かれていた名簿の横に並べる。 紙質は違うが、一枚は梨花ちゃんの持っていた名簿と同じ内容の物。 もう一枚は、どうやらこの街の地図のようだ。 さっきの住宅でぼくが見たものとは随分地形が違っている様に見えるが、 警察署までの道程以外はあまり良く確認していないしはっきりと覚えてはいないから、それは気のせいかもしれない。 「やはり、街中にばらまかれているようですね……。 ちなみに、この中には霧絵さんの知り合いの方の名前はありますか?」 霧絵さんはほんの少し眉を潜めると、おそらく、と前置きしてから2つの名前を口にした。 その2人が本当に知り合いのものなのかは霧絵さんにも分からないらしいが、 『深紅』という名の女性と、その名前の妹を持つ男性には心当たりがあると言うのだ。 『雛咲真冬』と『雛咲深紅』。ぼくもこの名前は覚えておこう。 「しかし……先輩。本当に殺し合いなどが行われているのでしょうか? これが何かのいたずらという事も考えられるのでは?」 「いたずらにしてはいくら何でも大掛かりすぎますよ。 まあ確かにこの名簿やルールを作った人物の意図は読めないんですからその可能性が0だと断定は出来ません。 ですが、現時点ではこれがいたずらかどうか。作った人物の意図はあまり問題じゃない。 問題なのは、ルールを信じて行動している者達が多数存在するという事です」 それは日野や老人だけの話ではない。警察署でも大規模な戦闘が行われていたのだ。 その事実を伝えると、小暮さんはもはや言葉もなくしたようだった。 「警察署まで……!?」 「ええ。それだけじゃありません。梨花ちゃんによると、その……人が怪物のように変貌する事もあるそうです」 「か……怪物!?」 小暮さんは、梨花ちゃんに大きく見開いた目を向ける。まるで梨花ちゃんを怪物だと思っているかのような目を。 梨花ちゃんはたじろぎながらも頷くが、そんな顔付きで見られてはたまったものではないだろう。 「小暮さんはコックリさん事件を覚えていますか?」 「は……。私立花峯高校で起きた連続殺人事件ですな。勿論であります! 先輩と出会うきっかけとなった事件を自分が忘れるはずありません!」 「では、あの事件の犯人の事も覚えていますね?」 「や……はぁ……」 小暮さんの誇らしげにピンと張られた胸は、力ない相槌と共に急速に萎んでいった。 流石に忘れてはいないようだ。いや、あの時の犯人を忘れられるはずがない。 華奢な細腕で、しかも片手で男性を吊り上げていたあの女子高生の異様な姿と光景は、未だに目に焼き付いていて離れない。 「梨花ちゃんはここで、あの時の神山由香のように変貌した人物に襲われたらしいんです。それも…………」 「……仲良しの刑事さんになのです。赤坂は怪物になってボクを殺そうとしたのですよ」 ぼくが少し言い淀むと、梨花ちゃんは淡々とした様子で言葉を引き継いだ。 感情のこもらないその声は、むしろ心の痛みを堪えているようで逆に痛々しい。 失敗した。梨花ちゃんの負の感情に触れるような事は避けなくてはならないというのに。 鬼化の事もあるが、こんな小さな子の傷口を抉るような真似は、ぼくはしたくない。 「ですが……こんな小さな子が、あんな怪……い、いやいや、あのような凶暴な者からよく無事に逃げてこれましたな」 「いえ、神山由香の話はあくまでも例えです。 ぼくが言いたいのは……この街にいる人間は、それが誰だとしても正気を失って襲いかかってくる危険性があるという事です。 ……考えたくはありませんが、兄さんや人見さんだって例外じゃないと覚悟しておいた方が良いでしょうね」 「先輩! いくらなんでもそれは――――」 驚きを隠そうともせずに声を上げる小暮さんの言葉を遮り、ぼくは言った。 「いえ、小暮さん。その心構えは必要なんです。 梨花ちゃんを襲ったのは、梨花ちゃんが信頼していた警察官です。 誘拐された子供を救い出す為に命をかけた事もある強い人間で、とても子供を殺そうとするような人じゃない。 そんな人なのに……そんな人がここでは変貌して梨花ちゃんに襲いかかってきた。 なら、兄さん達がおかしくならないという保障はどこにもありません。 兄さん達だけじゃない。ぼく達にだっていつ赤坂さんと同じような事が起きるか……」 無論、この意見には『梨花ちゃんの言葉を全て信用すれば』という前提がある。 赤坂さんが本当に信頼できた人なのか。そもそもあれは赤坂さんなのか。 ぼくには証明は出来ないし、突っ込まれたら反論しようがない。 だけどぼくは本当の姿を見せてくれた梨花ちゃんを信用すると約束したんだ。 だから梨花ちゃんの言葉は疑わずに、それを考慮した上で方針を組み立てなくてはならない。 それが、どんなに辛い推論に基づいた方針でも。 「うーむ……正直信じたくはありませんが……。 ですが先輩がそう仰るのでしたら、自分もそれに従うであります」 顔を顰めて唸りながらも、小暮さんはそう言ってくれた。 こんな時、無条件でぼくを信じてくれる小暮さんの存在はとてもありがたい。 そんな小暮さんに、ぼくはどれ程助けられてきただろう。 「……ありがとうございます、小暮さん」 「い、いやいや! とんでもないであります! 上司に従うのは部下の当然の勤めであります故」 素直にお礼を言うと、小暮さんは赤面して恐縮する。 その様子を大層気に入ったようで、梨花ちゃんが小暮さんをからかい始めた。 「小暮がまっかっかのタコさんなのです。ホントに風海のことが好きなのですね。 これがBLというやつなのです。にぱー」 BL? と小暮さんもぼくもついでに霧絵さんも、聞き慣れない言葉をオウム返しに呟いた。 梨花ちゃんはなんでもないのです、とにこにこ笑っているだけで意味を教えてはくれない。 決していい意味ではなさそうな予感はするが、まあ置いといて話を先に進める事にしよう。 「少し逸れましたね……話を戻します。 この街は、日野の様に殺し合いのルールに乗る者。 梨花ちゃんの知る危険人物、鷹野三四の様にルールに乗り兼ねない者。 赤坂さんの様に凶暴化してしまう者。 ……それから、霧絵さんの言う悪霊……ですよね?」 目を向けると、霧絵さんは控えめながらもしっかりと頷いた。 彼女の話は半信半疑ではあるが、話の流れとしてまるっきり無視するわけにはいかない。 「そういった、人に危害を加える者が徘徊する無法地帯と化しています。 それも治安機関が全く機能しなくなる程の規模で、です。 小暮さん。そんな中でぼく達だけで全ての危険人物に対処出来るでしょうか?」 「それは……現実的には不可能でしょうな」 「ぼくもそう思います。出来れば日野達を拘束したいとは思いますが、 たった数人を拘束しただけでは焼け石に水でしょう。ですから――――」 一旦言葉を切る。 この方針で正しいのか、最後の確認だ。 ……うん、問題はないはずだ。というよりも、今ぼくに出来る事は他にはない。 「ここには危険人物以外にも霧絵さんや梨花ちゃんのようにまともな人だっていました。 きっと他にも多くいるはずです。ぼく達はそういった人達を保護する事を第一に考えましょう」 「なるほど。つまり施設の探索というのは、一般の方を捜索する為でありますな?」 「それもですし、当面立て篭れそうな場所の確保の為でもあります。 保護した人達全員を連れて歩くわけにはいきませんからね。まずは拠点を構えないと」 この殺し合いに巻き込まれた人を救助する為にぼくに出来るのは、それくらいしかないだろう。 無論、今思いつくだけでも問題点を上げればキリはないし、現段階でその問題の全てに有効な対策があるわけじゃない。 だけど、街の治安機関に頼れない以上は自分達で何とかするしかないんだ。 「人を集めたら、その後はどうにか外部に連――――」 そして、ぼくが次の説明を始めようとした丁度その時だった。 何の前触れもなく、ぼくの後方から大きな音が鳴り響いたのは。 【緊】 ボーン 「うわっ!?」 不意に響いた音に、ぼくは思わず悲鳴を上げて立ち上がった。 ボーン。ボーン。と、続けて立てられる音に、この場の全員の視線が惹き付けられる。 音の正体は――――。 「……なんだ。ただの振り子時計か」 崩れて倒れている棚の列の向こうに、骨董品と言っても差し支えない様な古びた振り子時計があった。 小さな子供くらいなら中に隠れられそうな大きさだ。鳴ったのはその振り子時計だったのだ。 みっともなく驚いてしまった事を思い返し、恥ずかしさで顔が熱を帯びていく。 ……それにしても、あんなところにあんなに大きな振り子時計なんてあったかな? どうして今まで気付かなかったんだろう……? 「先輩……。あんなところに時計なんて……ありましたでしょうか……?」 全く同じ疑問に行き当たっていたらしい。小暮さんのその声は、震えていた。 ぼくは慌てて振り返った。 小暮さんもまた立ち上がっていた。その顔は、この暗がりでもはっきり分かる程に青ざめている。 「もしかして……嫌な予感してますか?」 「………………押忍」 小暮さんが嫌な予感を感じる時。それは決まってろくな事がない。 振り子時計が9回目の音を鳴らして沈黙した。 直後、小暮さんの表情が恐怖で歪み、ひきつった声を上げた。振り子時計の方で気配が生じる。 何だ!? 何かがいるのか!? 振り子時計に向き直したぼくの目が捉えたのは、青白く光る何かが壁に消えていく瞬間だった。 今のは、一体? 「……あの子……」 光の正体が何なのか。ぼくがそれについて熟考するよりも早く、霧絵さんが呟いた。 あの子? あの子って……何の事だ。今の光の事なのか? 「霧絵さん、今のが何か分かるんですか!?」 「あれが怨霊にございます! 風海さま、小暮さま、お下がり下さいませ!」 カウンター周りの狭い空間で、霧絵さんはぼく達の前に出た。 袖口から1本の縄を取り出すと、それはまるで生物の様な、縄にしては不自然な動きを見せる。 今のが怨霊……。霧絵さんはあの縄の呪いというやつで戦うつもりなのだろうか。 「いいいいい、いけません氷室さん。その縄は…………」 「いいえ小暮さま、ご安心を。これは呪いではございませぬ。これは、私の――――」 霧絵さんの言葉が中途半端に途切れ、強ばっているその顔がせわしなくあちこちに向けられる。 突然、青白い光が壁を突き抜けて来た。それは青白く発光しているが、確かに男の子の形姿をしている。 そいつは無邪気に笑いながら、乱雑に散らかっている障害物をまるで意に介さずにすり抜けてくる。 狙いは――――カウンター内にいる梨花ちゃんだ。 霧絵さんの縄が振るわれる。棚やカウンターが縄に打たれて弾け飛び、残骸混じりの埃がぼく達に降りかかった。 しかし、その縄は青白い光自体には命中していない。 当然と言えば当然だ。相手は障害物をすり抜けてくるが、 霧絵さんの縄は歴とした物質で、何かをすり抜けられるわけじゃない。 数ある障害物に阻まれれば、軌道が変わってしまうのもやむを得ない。 「危ない!」 そいつは真っ直ぐに梨花ちゃんに走り込んでくる。 梨花ちゃんは咄嗟にカウンターに飛び上がり、怨霊を回避した。意外と高い身体能力に、ぼくは小さく驚いた。 梨花ちゃんに躱されたそいつは、そのまま壁に向かって消えていった。 これが、この街に解き放たれたという怨霊か。 さっきは材料不足で判断し切れなかった霧絵さんの話だが、目の当たりにした今となっては認めざるを得ない。 はやくぅ みつけてよぉ どこからか、奇妙な声が響いてきた。今の怨霊がしゃべっているのだろうか。 その声からは、いわゆる怨霊のイメージとして一般的にある恨みつらみと言った感情は感じられない。 どちらかと言えばそれは、ただただ無邪気なものだった。 「見つけて……? 遊んでいる、つもりなのか?」 「あれは鬼遊びの最中に命を落とした童の霊。 風海さまの仰る通り、まだ友達と遊んでいるつもりなのでしょう」 「霧絵さん、あれに触れられるとどうなるんです?」 「怨霊にも様々な物があります故、一括りには申せませんが、 どうあれ命に関わる事になるのは相違ないかと……」 「……そうですか」 「……ボクはそんな遊び、部活でもごめんこうむるのですよ」 遊んでいるつもりならばそう警戒しなくても済むかもしれないと思ったが、甘かったか。 こうなれば選択肢は2つ。霧絵さんに退治してもらうか、逃げるかだ。 「とにかく、みんな壁から離れて! あいつは壁を突き抜けてくる。 壁越しに不意をつかれれば避けようがありません。出来るだけ中央に移動しましょう! 小暮さん……小暮さんっ!」 「は、はははははいぃ!」 声を裏返らせ、固まっていた小暮さんが再起動する。 「商品棚を少しどかしましょう! 手伝って下さい!」 「お、押忍!」 ぼく達は2人がかりで部屋の中心付近に崩れている棚を動かしにかかった。 出来るだけ中央にスペースを作れば、怨霊を躱すにしても霧絵さんが攻撃するにしても都合がいい。そう思ったからだ。 だが、それも少し甘かった。商品が殆ど床に散らばっているとは言え、棚自体それだけでもそれなりの重量があるのだ。 どうにかそれを起こし上げた時、棚の向こうの壁から、再び青白い光が現れた。 今度は今ぼく達が起こし上げて支えている棚の中を全速力で走ってくる。 怨霊、とは言え子供の足だ。実際にはそれ程早くはないはずなのだが、こいつは何かにぶつかる事を一切気にしないで走り回る。 それ故にか、異常に素早く感じられるのだ。 ぼく達は思わず棚から手を離し、左右に倒れこんだ。 ほぼ同時に怨霊は棚から飛び出し、ぼく達の横を走り抜けた。狙いはまたも梨花ちゃんだった。 支えを失った棚が重力に引きずられてゆっくりと倒れ、耳障りな音を上げて地面を揺らす中、 梨花ちゃんがカウンターの上から出入り口の扉に向かって飛び降りる姿が見えた。 またも突進を躱された怨霊が、やはり壁に消えるのを見て、ぼくは梨花ちゃんに向かって叫んだ。 「梨花ちゃん、外に逃げて!」 怨霊がカウンター側の壁に消えた直後の今なら、少なくとも出入り口の扉方向から襲われる事はないはずだ。 逃げ出すなら今がチャンスのはず。 梨花ちゃんは頷き、木製の扉を開いて外に飛び出した。 続いて霧絵さんが外に出ようとするが、一歩目を踏み出した瞬間霧絵さんの身体がバランスを崩す。 そうだ。霧絵さんは足の指に怪我をしていたんだった。 「だ、大丈夫でありますか!?」 すぐに小暮さんが駆け寄った。 さっきと同じ様にその広い背中に霧絵さんを乗せ、扉から出ようとする。 小暮さんがドアノブに手をかけた刹那――――外から声が響いた。 「何で……私ばっかり追いかけてくるのよ!」 口調こそ素に戻っているが、あれは梨花ちゃんの声だ。襲われているのか!? どうしてあの怨霊はああも梨花ちゃんに固執するんだ!? ……もしかして友達と間違えている? 友達と遊んでいるつもりで梨花ちゃんを追い掛け回しているのか? 慌てて小暮さんはノブを回し、ぶち破るかの様な勢いで扉を開いた。 その後ろから外の様子を窺おうとするが、駄目だ。小暮さんの身体でよく見えない。 ぼくは外に出て、小暮さんの前に回り込んだ。梨花ちゃんの姿は、そこにはいない。 どこだ? どこに行った? 「先輩! あ、あそこ!」 小暮さんが指さした方向に目を向けると、青白い光が遠ざかっていくのが見えた。 暗くて梨花ちゃんの姿は見えないが、あれが梨花ちゃんを追いかけている事は容易に想像がつく。 こうしてはいられない。梨花ちゃんを助けに行かないと! 「小暮さん、行きましょう!」 「い、いや、しかし……」 先行して走り出すぼくだったが、後に続いてこない小暮さんの気配に疑問を抱き振り返る。 小暮さんは困ったような顔をぼくに向けていた。 ……そうか、小暮さんは霧絵さんを背負っているんだ。 いくら小暮さんでも人1人を背負っていては、あれに追いつく事は出来ないだろう。 「いえ、小暮さんは霧絵さんを連れて後から来て下さい。ぼくは先に行って梨花ちゃんを保護します」 「……了解であります! 先輩、お気をつけて!」 こう言えば霧絵さんも変に気を使う事はないだろう。 ぼくは青白い光を見据え、走り出した。 異常に暗い街並みの中で光っているのは、あの怨霊だけ。 一体どの位距離に開きがあるのか。どうにも距離感が掴めず、分かりにくい。 しかし、所詮は子供並みの足だ。 狭い雑貨屋の中では素早く感じたが、外に出てしまえばぼくの方が速いとの自負がある。 光は徐々に大きくなってくる。無邪気な笑い声も再び聞こえ始めた。 梨花ちゃんの姿はまだ見えないが、確実に追いつきつつある。 よし、もう少しで、追いつける。そう思った時――――前方で一筋の閃光が、あの怨霊に向かって走った。 続け様に発生した爆音がぼくの耳を襲う。そして、怨霊の青白い光が爆散するように散り散りになって消滅した。 こ、今度は何が起きたんだ? 一瞬だけ暗闇を切り裂いた閃光の中には、2人の人間のシルエットが見えた気がした。 1つは梨花ちゃんのものだったように思うが、ではもう1人は誰なんだ? 男性の様に見えたが…………梨花ちゃんを助けてくれたのだろうか? とにかく、向かわなくてはならない。 ぼくは気付かない内に止めてしまっていた足を、再び動かした。 梨花ちゃんと、誰かの元へと。 【潜】 ある程度まで近づけば、その人物は警察官の制服を着ている事が確認出来た。 警察官……そうだ。あの暴動のせいで組織としての警察機構の助けは期待出来ないとは言え、 この街にだって警察官はいるはずなんだ。多少なりとも力にはなってくれるだろう。 ほっとして、そのまま駆け寄ろうとしていたぼくの足は―――― 「動かないで!」 その警察官が無慈悲に向けたごつい銃口により制された。 シルエットから何となく男性だと思っていたが、発せられたのは女の声だ。 止まろうとする意思に反して前のめりになる身体。バランスを崩して足がもつれた。 悪寒混じりの緊張が背筋を支配する。 こっちの警察官は制止の声に従わない場合射殺も躊躇わないと聞いた事がある。 いくら何でも今程度の事で撃たないとは思いたいが、もしもあんなもので撃たれたら一溜まりもない。 「ま、待って下さい。ぼくは怪しい者では――――」 「風海を撃っちゃだめなのです!」 梨花ちゃんが銃口の前に出てぼくを庇うように両手を広げると、 その警察官は慌てた様子で銃口を外し、空に向けた。 梨花ちゃんとぼくに、彼女の視線が交互に向けられる。 しばしの逡巡の後、警察官はようやく銃らしきものを持つ右手を下ろした。 ぼくの口から、緊張を含んだ息が抜けていった。 「カザミ……って言った? あなた、カザミ・ジュンヤ?」 「えっ……? はい。そうですが……」 警察官の声に、ぼくは違和感を覚えた。 彼女がぼくの名前を知っている事は、彼女も名簿を見たのだと考えられる。それはいい。 それよりも彼女の言葉。彼女が話しているのは英語のはずだ。そうだ。今の制止もそうだった。 それなのにぼくは彼女の言っている事が理解出来る。英会話は得意ではないのに。 思い返せばさっきの住宅で郵便物の確認をした時もそうだ。ぼくは何故かスムーズに英語を読めていた。 前にいる警察官も同様に、ぼくの日本語をちゃんと理解しているようだ。これは一体……。 しかし彼女の次の一言で、ぼくのそんな違和感は吹っ飛ぶ事となった。 「こんなに早く会えるなんてね。キリサキが心配していたわよ」 「それにしても、今日はジャパニーズに縁のある日ね」 一通りの話が終わると、彼女はぼく達4人の顔を見回しながら、化粧っ気はないが綺麗に整っている口端の左側を吊り上げた。 シビル・ベネット。ぼく達が新たに出会ったこの人物は、このサイレントヒルの隣町で勤務する警察官だと名乗った。 シビルさんは過去に幾度かこの街に足を踏み入れた事があるらしいのだが、 とある用件で南に向かおうとしたところ、この付近の地形が異様に変化している事に気付き、白バイを降りて少し調査をしていたらしい。 その際に梨花ちゃんの声を聞き、駆けつけたというわけだ。 シビルさんが兄さんの名前を知っていた事や地元の人間だという事。 ぼくは期待を込めていくつかの質問をしてみたが、答えはその期待以上のものだった。 現在のこの街に関しては、結局彼女もまた街に取り込まれ殺し合いを強要されているだけの人間の1人に過ぎず、やはり確かな事は何1つ分からないのであるが、 それでも、過去にこの街で何が起きたのかについて。 今この街で起きている現象を引き起こした可能性のある人物について。 そしてぼく達と同じく街に取り込まれていた兄さんの居場所と行き先について。 それらの話を聞けたのはとても大きな収穫だ。 「これからシビルさんはどうするんですか?」 「私はこのまま南に行くわ。まだ用件は済ませてないから」 シビルさんはそう言って白バイに腰を預けると、腕を組んだ。 その動作はとても様になっていて格好良く、何となく人見さんを連想させた。 別に2人が似ているわけではないんだけど。 「あなた達はどうするの?」 「もちろん霧崎先生を保護しに向かうであります! ですよね、先輩?」 シビルさんの問いに間髪入れずに小暮さんが答え、ぼくに同意を求めた。 確かに兄さんの行方が判明した事はぼくも素直に喜べる。 小暮さんもまるで自分の事の様に嬉しそうに話すけど――――でも、ぼくの答えはその反対だ。 「いえ、小暮さん。兄さんのところには……行きません」 「せ、先輩!?」 予想通り、小暮さんは信じられないといった顔をぼくに向けた。 気持ちはよく分かる。ぼくだって兄さんは心配だし、出来る事なら助けに向かいたい。 こんな得体の知れない街に身内が取り込まれているだなんて、不安でたまらない。 でも、だからこそ、ぼくが兄さんを助けに行くわけにはいかないんだ。 「……小暮さん。今は大勢の人が命の危険に晒されていて救助を待っている緊迫した状況です。 そんな状況で、ぼく達警察官が身内の救出を優先しても良いものでしょうか?」 うっ、と小暮さんは言葉を詰まらせた。 そう、危険なのは兄さんだけじゃない。不安なのはぼくだけじゃないんだ。 梨花ちゃんも、霧絵さんも、シビルさんも、身近な人間や知り合いが街に取り込まれている。 ぼくには警察官として、あくまでも身内じゃない一般人から救助する義務がある。 この街の状況をある程度とはいえ把握した今となっては、例え兄さんや人見さんの居場所が特定出来たとしても、 他の人の救助を放り出して2人の元に駆けつけるわけには…………いかないんだ。 「ですが……それで良いのでありますか?」 「仕方ありません。兄さんだってぼくに会ったらきっと同じ事を言うと思います。 ……いえ、兄さんなら逆にぼくを助けに来ようとするかもしれませんが」 ちょっとした冗談も交えるが効果はあまり無いようで、小暮さんの顔は曇りっぱなしだった。 小暮さんは、身内として2人の身を案じるぼくの心中を察しつつ、警察官としてのぼくの立場も理解してくれている。 それ故に、ぼくの意見に対する反論も出来なければ、下手に賛同も出来ないようだ。 どうにも暗い雰囲気が漂い始める。 何かを言わなくてはとは思うのだが、今のぼくが何を言っても痛々しいだけなのかもしれない。 さっき赤坂さんの話をした梨花ちゃんの気持ちが、少しだけ分かった気がした。 「どっちにしても私には関係ないわね」 「……え?」 「キリサキは私の身内じゃない。だから私がキリサキを保護する分には何の問題もない。 キリサキ達のところには私が戻るわ。それなら文句ないでしょう?」 その暗い雰囲気を、シビルさんが真っ向から打ち破る発言をしてくれた。 確かにそれならば文句はない。いや、こちらから頼み込みたいくらいだ。これ程ありがたい事はない。 「シビルさん……もしよろしければ、是非お願いします」 「まあ用を済ませてからにはなるけど、出来るだけ早く戻るつもりよ。 ……大丈夫、キリサキならそう簡単には死んだりしないわ」 シビルさんは白バイにまたがり、エンジンを起動させた。 彼女にも向かわねばならない場所があるというのに、随分時間を取らせてしまった。 これ以上は引き止められないが、これだけは言っておかねば。 「兄の事……どうかよろしくお願いします」 ぼくはシビルさんに深く頭を下げた。「であります」と小暮さんが敬礼する気配を後ろに感じる。 顔を上げた時、シビルさんは唖然としたような顔を見せていた。そしてぼくと目が合うと、その表情は苦笑に変わった。 あれ、おかしいな。変な事はしてないつもりなんだけど。アメリカの人にはお辞儀は奇妙に映るんだったかな? 「そんなセリフは、もっと違うシチュエーションで聞いてみたいものね」 ……そっちか。よくよく考えてみれば確かにそういう言葉にも聞こえる。 勿論そんなつもりで言ったんじゃないけど。 「あなた達もキシイ・ミカと……イツシマ・チサトに会ったらよろしくね」 そう言い残し、シビルさんは白バイを発進させた。 こちらを振り返らずに、一度だけ片手を上げてぼく達に挨拶をくれる。 その姿は間もなく闇に消えていく。エンジン音も徐々に小さくなっていく。 ほんの少しの名残惜しさを胸に抱きつつも、ぼくはみんなを振り返った。 その時――――ぼくの視界の中に入ったのは、みんなの後方に見えたのは、青白い光。 胸中の名残惜しさは途端、焦燥にすり替わり、思わず息を呑んだ。 青白い光は、みんなの後ろで子供の形を取ろうと蠢いている。シビルさんが退治したはずの、さっきの怨霊だ。 何故だ!? 消滅したんじゃなかったのか!? まずい――――ぼくはみんなに知らせる為に、声を上げようとした。 しかし、それよりも早く―――― ヒュンっと風を切り裂き、怨霊を一瞬で縛り付けたのは霧絵さんの縄だった。 そして響く断末魔の叫び声。少年の怨霊は、まるで絞めつける縄と一体化するかのように消えていく。 捕らえてしまえばこんなにあっさりと……。これが……これが霧絵さんの裂き縄の力なのか。 「あ、あの……ありがとうございます。助かりました」 「め、面目ないであります……」 「……小暮さん?」 「氷室さんに汚れ仕事をさせないなどと偉そうに語っておきながら結局お手を汚させてしまいました……。 小暮宗一郎、一生の不覚であります……」 「いいえ、小暮さま。風海さま。謝罪も礼も不要にございます。 先程は言いそびれましたが、彼等の封印は私の使命。これは私がやり遂げねばならぬ事なのです……」 霧絵さんは震える小暮さんの背中の上で、縄を自分の袖の中に戻していく。 「これで今の怨霊はその縄に封印された……そういう事なんですね?」 「風海さまが仰る通りです。もうあの子がさ迷いでる事もないでしょう」 「……その縄以外では退治出来ないという事なんでしょうか?」 「厳密に申し上げるならば、他の手段もございます。 されど、何にせよ刀や鉄砲が通用しない相手である事には相違ないはずなのですが……」 そうなのか。だけど、それでもシビルさんの武器でも効果があったのは確かだ。 専用の道具でなくとも、封印までは出来ないにしても一時凌ぎ程度には使えるという事だろうか。 そして、専用の道具……。ふと、ぼくは兄さんからもらったカメラの事を思い出した。 兄さんはあのカメラで霊を封じ込める事が出来ると言っていたけど、もしかして他の手段の1つではあるのかもしれない。 霧絵さんはあのカメラについて何か知っているだろうか。 そう思い霧絵さんにカメラを見せてみたのだが、彼女もカメラについては詳しい事は知らないようだった。 ただ、このカメラにはやはり怨霊を封印する力があるらしく、霧絵さんも封印されかけた事があるとの話だ。 ……ん? ……封印されかけた事がある? ……ま、まあその辺りの話はあまり深く聞かない方が良いのかもしれない。 とにかく、このカメラがあればさっきの子供の怨霊みたいなものがこの先出てきても対抗出来るんだ。 「せ、先輩! そのカメラは自分に使わせて頂けないでしょうか?」 何て事を言い出すんだ小暮さんは。 小暮さんが霧絵さんを守ると約束した話は聞いている。 多分小暮さんには、霧絵さんがいくら使命と言ったからといって怨霊と戦わせたくないという気持ちがあるのだろう。 だけど、だからといって小暮さんが幽霊に対抗するのは天地がひっくり返っても無理な話だ。 小暮さんでは怨霊が見えた瞬間に身体を硬直させてしまうに決まっているのだから。 「いや、小暮さんは霧絵さんを背負っているんですから、いざという時にこのカメラを使えないでしょう? これはぼくが使います。それならもし怨霊と遭遇しても霧絵さんとぼくとで対処出来ますし。 小暮さんは霧絵さんのサポートに尽力して下さい」 極力傷つけないように申し出を断ると、小暮さんは複雑そうな表情で引き下がる。 すると今度は梨花ちゃんがびっくりするような事を言い出した。 「霧絵。その縄はもう一本ありませんですか? ボクもその縄を使ってみたいのです」 「ごめんなさい。この縄は縄の巫女しか扱えない特別な物なの」 「みぃ……。がっかりなのです。 ボクもそれで悪い猫さんを懲らしめたかったのですよ。グルグル縛ってニャーニャーなのです」 悪い猫さんが怨霊を指しているのか鷹野三四を指しているのかは分からないが、 この子の場合はどこまで本気なのかも分からない。 ……さて、そろそろぼく達も動かなければ。時間はいくらあっても足りないのだから。 「それじゃあ、良いですか? ぼく達も行動に移りましょう。とりあえずは――――」 シビルさんから兄さんの考察を聞いて、ぼく達の選択肢は広がった。 ぼくがさっき考えたように、街に取り込まれた人々を救出する選択。 兄さんの推察に従い、街の謎を解き明かし事態を終息させる為に行動するという選択。 もし後者を選ぶなら、やはりシビルさんから聞いた「アレッサ・ギレスピーと関わりがある施設」の探索に向かう事が事態解明の近道になるだろうか。 となると――――ぼくは霧絵さんから地図を借りる。 それらの施設でここから近いのは……「灯台」か「学校」となる。さて――――。 ◆◆ 六◆ ◆ ◆ ◆ ◇ どうするべきだろうか?――――――――― ⇒ 街の調査だ 救助活動だ ◆ 誰かの意見を聞いてみようか 【C-3/バー西側のT字路/一日目夜中】 【風海 純也@流行り神】 [状態]:健康、梨花の鬼化に対する警戒心 [装備]:拳銃@現実世界 [道具]:御札@現実、防弾ジャケット@ひぐらしのなく頃に、防刃ジャケット@ひぐらしのなく頃に 射影器@零~zero~、自分のバッグ(小)(中に何が入っているかはわかりません) [思考・状況] 基本行動方針:出来る限り多くの人を救出して街を脱出する。 0:どうするべきだろうか? 1:出来る限り多くの人を救出して街を脱出する。 2:水明、人見の救出よりも一般人の救出を優先する。 3:日野という男と老人、鷹野三四を警戒。 ※シビルから過去にサイレントヒルで起きた出来事と霧崎水明の考察等を聞きました。 【古手 梨花@ひぐらしのなく頃に】 [状態]:疲労(小)、L3-、鷹野への殺意、自分をこの世界に連れてきた「誰か」に対する強烈な怒り [装備]:山狗のナイフ@ひぐらしのなく頃に、山狗の暗視スコープ@ひぐらしのなく頃に [道具]:懐中電灯、山狗死体処理班のバッグ(中身確認済み)、名簿、ルールの用紙 [思考・状況] 基本行動方針:この異界から脱出し、記憶を『次の世界』へ引き継ぐ。 0:あの縄があれば鷹野をグルグルニャーなのに…… 1:自分をこの世界に連れてきた「誰か」は絶対に許さない。 2:風海は信用してみる。 3:日野という男と老人を警戒。 ※皆殺し編直後より参戦。 ※シビルから過去にサイレントヒルで起きた出来事と霧崎水明の考察等を聞きました。 【小暮宗一郎@流行り神】 [状態]:やや腹がこなれてきた [装備]:二十二年式村田連発銃(志村晃の猟銃)[6/8]@SIREN、氷室霧絵@零~zero~ [道具]:潰れた唐揚げ弁当大盛り(@流行り神シリーズ)、ビニール紐@現実世界(全て同じコンビニの袋に入ってます) [思考・状況] 基本行動方針:一般市民の保護。凶悪犯がいれば可能な限り逮捕する。 0:出来る事ならあのカメラを使いたいけど使いたくない 1:一般市民の捜索と保護。 2:日野と老人を逮捕する。 3:犬童警部への言い訳。 ※シビルから過去にサイレントヒルで起きた出来事と霧崎水明の考察等を聞きました。 【氷室霧絵@零~zero~】 [状態]:使命感、足の爪に損傷(歩行に支障あり)、疲労(中)、小暮に背負われている [装備]:白衣、提灯@現実 [道具]:童話の切れ端@オリジナル、裂き縄@零~zero~、名簿、地図 [思考・状況] 基本行動方針:雛咲真冬を捜しつつ、縄の巫女の使命を全うする。裂き縄の呪いは使わない。 0:基本的には風海と小暮に従う。 1:小暮達と共に人を捜し、霊及び日野の危険性を伝える。 2:真冬の情報を集める。 3:黄泉の門の封印を完ぺきにする方法を捜す。 ※真冬の名前を知りました ※シビルから過去にサイレントヒルで起きた出来事と霧崎水明の考察等を聞きました。 【C-3/南西部/一日目夜中】 【シビル・ベネット@サイレントヒル】 [状態]:精神疲労(中~大)、肉体疲労(小) [装備]:グレネードランチャーHP LV4(炸裂弾5/6)@バイオハザードアンブレラクロニクルズ、白バイ [道具]:旅行者用バッグ(武器、食料他不明)、SIG P226(3/15)、スタンレー・コールマンの手紙と人形 白バイのサイドボックス(炸裂弾:13、アグラオフォテス弾@オリジナル:23、他不明) [思考・状況] 基本行動方針:要救助者及び行方不明者の捜索 0 スタンレーの手紙に書かれている「ヘザー」に会いに行く 1 その後キリサキ、ユカリと合流する 2 前回の原因である病院に行く ※風海達と情報を共有しました。 ※白バイのサイドボックスに道具が入っているようです。 サイドボックスの容量が普通だとは限りません。 ※鷹野三四に関しての情報は前話風海純也の考察物語で梨花が話していたとさせて頂きます。 back 目次へ next 今はそれどころではない 時系列順・目次 犬とふたりとときどき、警察署 Twilight Deadzone 投下順・目次 Exodus back キャラ追跡表 next 風海純也の考察物語 古手梨花 Edge of Darkness 風海純也の考察物語 風海純也 Edge of Darkness 風海純也の考察物語 小暮宗一郎 Edge of Darkness 風海純也の考察物語 氷室霧絵 Edge of Darkness MachRider HighWaaaaay!! シビル・ベネット 譲らぬ決意
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ビーフジャーキー
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みっくみく -- 暴犬 (2011-04-16 10 06 08) 引っ込み思案な深紅があのノリでダンスを踊っているとは! 兄さんも草葉の陰で涙を流していることでしょう。嬉しいか悲しいかは分かりませぬ。 -- 名無しさん (2011-04-16 10 38 11) 赤い水でハッピーハッピー。ウィルスでオッパッピー! これがカウフマン先生とヨーコ先生の治療法です。 -- 暴犬 (2011-04-16 11 10 46) 名前 コメント
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屍とふたりとときどき、駐車場 隊長! 空から自衛官が! しかし、いくら調べてもまともに動きそうな車はない。 それも当然である。動くのであれば、とっくに避難なり応援なりに活用しているだろうから。 「修理すればどうにかなるかもしれないが……」 工具や材料がない。つまり、修理するとしても、それを調達しなければならないのだ。 そんな余裕が自分たちにあるわけがない。 「他の場所を探しますか?」 「そうだな」 恭也の提案に三沢は頷き、移動を始める。 そこへ、爆発音と微弱な振動。 上の階――地上で何かが爆発したのか? そんなことを考えていると、少し離れた天井が崩れ、建材が廃車や死体に降り注ぐ。 「ガス爆発か何かでしょうか」 「いや、それならあれだけ分厚い層は砕けん。おそらくは、高性能爆薬による発破だ」 ガスの漏洩なら、下りる前に気付けたはずだ。 気付けない程度の量の燃焼ならば、床を焼くくらいで、ここまで届きはしない。 遅れて、何かが落ちてくる。それはボンネットを跳ね、地面を転がった。 土と埃にまみれてはいるが、ここからでも何とか人と判別できる。 (まさか……) 三沢は内心で驚愕しつつ、あくまで冷静にそちらへ向かう。 見慣れた迷彩服、装備、姿…………。 そこにいたのは、行方知れずの部下だった。 【D-2/警察署/一日目深夜】 【須田恭也@SIREN】 [状態]健康 [装備]H K VP70(18/18) [道具]懐中電灯、グレネードランチャー(1/1)、ハンドガンの弾(140/150)、硫酸弾(6/6) [思考・状況] 基本行動指針:危険、戦闘回避、武器になる物を持てば大胆な行動もする。 1.この状況を何とかする 2.自衛官(三沢岳明)の指示に従う 【三沢岳明@SIREN2】 [状態]健康(ただし慢性的な幻覚症状あり) [装備]マグナム(7/8)、防弾チョッキ2型 [道具]照準眼鏡装着・64式小銃(8/20)、ライト、弾倉(3/3)、精神高揚剤、 グロック17(17/17)、ハンドガンの弾(22/30)、マグナムの弾(8/8)、 マシンガン(15/30) 、マシンガンの弾(30/30)、サイドパック [思考・状況] 基本行動指針:現状の把握。その後、然るべき対処。 1.永井頼人なのか……? 2.民間人を保護しつつ安全を確保 3.どこかで通信設備を確保する back 目次へ next Collapse 時系列順・目次 Twilight Deadzone Courage point 投下順・目次 FIGHT THE FUTURE back キャラ追跡表 next 犬とふたりとときどき、警察署 須田恭也 ワルタハンガ 犬とふたりとときどき、警察署 三沢岳明 ワルタハンガ