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「今日はこれで終わり! みんな解散よ!」 窓から入ってくる夕焼けに染められたわけではないだろうが、ハルヒの黄色く元気の良い声が部室内に轟く。 この一言で、今日も変わったこともなく、俺は古泉とボードゲームに興じ、朝比奈さんはメイドコスプレで居眠り、 長門は部屋の隅で考える人読書バージョン状態を貫き、年中無休のSOS団の一日が終わった。 正直ここ最近は平凡すぎる日常で拍子抜け以上に退屈感すら感じてしまっているのだが、まあ実際に事件が起これば二度とご免だと思うことは確実であるからして、とりあえずこの凡庸な今日という一日の終了に感謝しておくべき事だろう。 俺たちは着替えをするからと朝比奈さんを残しつつ、ハルヒを先頭に部室から出ていく。どのみち、朝比奈さんとは昇降口で合流し、SOS団で赤く染まったハイキング下校をするけどな。 下駄箱に向かう間、ハルヒは何やら熱心に長門に向かって語りかけている。 それをこちらに注意を向けていないと判断したのか、古泉が鼻息をぶつけるぐらいに顔を急接近させ、 「いやあ、今日も平穏無事に終わりましたね。こうも何もないと返って不安になるほどですよ。 まだまだあの神人狩りに明け暮れていたときのくせが抜けていないようでして」 「ないことに越したことはないね。犬が妙な病気になったことを相談されたりされるぐらいならちょうど良い暇つぶしにはなるが、事と次第によってはとんでもない大事件の場合もあるからな」 俺は古泉と数歩距離を取りつつ返す。古泉はくくっと苦笑を浮かべると、 「何かが起こった方が楽しい。だけど、その影響範囲を含めた規模や自分にとって利益不利益どちらになるかわからないなら、いっそどちらとも起きない方が良いというわけですか。実にあなたらしい考え方と思いますよ。 恐らく涼宮さんとは正反対の思考パターンですが」 「あいつの場合は、自分にとって楽しいことだけ起こればいいと思っているんだろ。世の中そんなに甘くはねぇよ。 ま、命を狙われたり世界を改変されて孤立したりしたことがないんだから、当然っちゃ当然だな」 大抵、人間ってモノはどこかで何かが起こることを期待しているもんだ。俺だって昔は宇宙人とか未来人とか超能力者がいてくれればいいなぁとか、映画並みのスペクタクルが起きたりしないかと思っていたしな。ただ、実際に目の前でそんなことが起これば考え方も変わる。少なくとも、もう俺はタヒチのリゾートにあるような透明度の高い純真な期待感なんて持たないだろう。 そんな俺に古泉はさらに苦笑いして、 「おや、ひょっとして今まで多くのことを経験しすぎて、一生分のインパクトを消化してしまったんですか? 前途ある十代の若者にあるまじき枯れっぷりな考え方ですよ」 うるせえな。一度ヒマラヤの頂上に届きかねないびっくり仰天事やマリアナ海溝以上に深いどん底に突き落とされる経験しちまうと、何だかんだで海抜ゼロメートルプラスマイナス数百程度が一番いいと思い知らされただけだ。 そんな話をしている間にようやく下駄箱に到着だ。ハルヒの長門に対する語りかけは、もうヒトラーの演説、テンション最高潮時な演説と化している。もっとも当の長門は相づちを打つように数ミリだけ頭を上下させるだけなんだが。 しかし、そんな自分に酔っているような話し方をしながらも、ハルヒはちゃっちゃと下駄箱から靴を取り出し下校の準備を進める。全く口と身体が独立して稼働しているんじゃないか? もう一つの脳はどこにある。やっぱりあそこか。 「遅れちゃってごめんなさい」 背後から可憐ボイスが背中にぶつかる。振り返れば、いそいそと北高セーラ服に着替えた朝比奈さんが小走りに現れた。 背後にある窓から夕日が入り、おおなんと神々しいお姿よ。 俺がそんな神秘的情景を教会で奇跡がおきるのを目撃した神父の如く感涙して(していないが)いたところへ、 「ほらっキョン! なにぼーっとしてんのよ! とっとと靴履いて帰るわよ!」 いつの間にやら演説を停止したハルヒ団長様からの声で、幻想的光景から強引に引きずり出された。 全くもうちょっと堪能させてくれよな。まあ、当の朝比奈さんもとっとと俺を追い越して、靴をはき始めているから俺も続くかね。 そんなわけで俺は自分の下駄箱を開けて―― 「…………」 すぐに気がついた。俺の靴の上に一枚の紙切れ――手紙じゃない。本当にただの一枚紙である――があることに。 朝比奈さん(大)の仕業か? またいつもの指令書か…… しかし、違うことにすぐ気がつく。朝比奈さん(大)はもっとファンシーで可愛らしくいい臭いがしそうな封筒入りを使うが、今ここにあるのはぴらぴらの紙一枚。こんな無愛想なもので送りつけるような人じゃない。それに書いてある内容が 『あと30分以内に●●町の公園に来なさい。一人で』 とまあ何とも一方的な内容である。しかも命令口調。まるでハルヒからの電話連絡みたいだ。 ふと、これはハルヒが書いて何か俺に対してイタズラでもしようとしているのでは?と思ったが、 「なーにやってんのよ! さっさとしなさい!」 当のハルヒは俺につばを飛ばして急かしてきている。大体、こんな手紙なんていう回りくどい手段をあいつがとるはずもなく、誰もいなくなったところで俺のネクタイ引っ張って行きたいところに走り出すだろうな。 じゃあ、これはなんだ? ラブレターの可能性は否定できないのも事実。せっかくだから行ってみるのも悪くないか。 時計を確認する。ここから指定された場所まではゆっくり歩いて30分もかからない。帰りに道に寄ってみるかね。 俺は他の団員に見つからないように、その紙をポケットにねじ込んだ。 ◇◇◇◇ さて、下校途中に他の連中と別れた俺は、とっとと目的の公園に向かう。初めて行く場所だったので、 その辺りにあった看板の地図を見ながら向かった。 が。 「……全く」 おれは嘆息する。さっきから背後をハルヒたちが付けてきているからだ。どうやら、あの紙をもらってからの俺の挙動が不審だとハルヒレーダーが捕らえていたらしい。相変わらずの動物並みの嗅覚だよ。 しかし、別に俺はやましいことをしているわけでもないんだから、このまま放っておいてもいいか。 俺はそう割り切ると、俺は背後のストーカー集団を無視して目的地に向かった。 ◇◇◇◇ 俺はようやく目的地にたどり着いた。時計を見ると、あの紙切れを読んでから20分程度。指定された時間には間に合っている。 平日夕方でぼちぼち日が落ちつつあるためか、指定された公園には人一人おらず、閑散とした静けさに覆われていた。 どこからともなく流れてくる夕飯の香りが俺の空腹感を刺激する。 ふと、背後を突けていた連中がいなくなっていることに気が付いた。なんだ? 捲いたつもりはなかったから、 途中でハルヒが尾行に飽きたのか? 俺はそんなことを考えながら、あの紙切れをポケットから取り出して―― この時、初めて俺はここに何の警戒心も持たずのうのうとやってきてしまったことを後悔した。見れば、その紙の文面が 『付けていた連中はいないわよ。邪魔だったから追っ払っておいたわ』 そう変わっていた――ちょっと待て。この紙はずっと俺のポケットに入ったままになっていたはずだ。 それを書き換えるなんていう芸当ができるのはごくごく限られた特殊能力を持つものしかあり得ない。 つまり、俺を呼び出した奴は一般人ではなく、宇宙人・未来人・超能力者――あるいはそれに類する奴って事だ。 ちっ。これで呼び出したのが朝倉みたいな奴だったら、洒落にならんぞ。 すぐに携帯電話を取り出し、とりあえず古泉に―― しかし、時すでに遅し。俺の周りの景色が突然色反転を起こしたかのようになり、次第にぐるぐると回転を始める。 やがて、俺の意識も落下するように闇に落ちていった…… ◇◇◇◇ 「いて!」 唐突に叩きつけられた感触に、俺は苦痛の悲鳴を上げた。まるで背中から落ちたような痛みが全身に走り、 神経を伝って身体を振るわせる。 そんな中でも、俺は必死に状況を探ろうと密着している地面を手でさすった。切れ目のようなものが規則的に感じられ、コンクリートや鉄ではなくそれが木でできている感触が伝わってくる。 ようやく通り過ぎた痛みの嵐に合わせて、俺は閉じたままだった目をゆっくりと開けた。まず一面に広がる教室の床が視界を覆う。同時についさっきまで俺に浴びせられていた夕日の灯火が全くなくなっていることに気が付いた。 俺を月明かりでもない何かの弱い光を包み込んでいる。その光のせいか、俺のいる部屋の中は灰色に変色させられ―― 気が付いた。この色合い、以前に見たことがある。あのハルヒが作り出す閉鎖空間と同じものだ。 俺は痛みも忘れ、飛び上がるように立ち上がり、辺りを見回した。 出入り口・黒板・窓の位置。俺がいるのは文芸部室――SOS団の根城と同じ構成の狭い部屋だった。 ただし、ハルヒの持ち込んだ大量のものは一つとして存在せず、空き部屋の状態だった。ただ一つ、見慣れた団長席と同じように窓の前に置かれた一つの机と、その上に背中を向けてあぐらをかいて座っている一人の人間を除いて。 「……誰だ?」 自分のでも驚くほど落ち着いた声でその人物に語りかける。窓から見える景色は、薄暗い闇に包まれた灰色の世界だった。 やはりここは閉鎖空間なのか? しかし、誰だと語りかけた割には、俺はその机の上に座っている人物に見覚えがあった。いや、そんな曖昧な表現ではダメか。 北高のセーラ服に身を包み、肩に掛かる程度の髪の長さ、そして、あのトレードマークとも入れるリボンつきのカチューシャ。 該当する人間はたった一人しかいない。 こちらの呼びかけに完全に無視したそいつに、俺は再度声をかける。 「俺を呼び出したのはお前なのか? ここはどこだ?」 「黙りなさい」 ドスのきいた声。しかし、殺気に満ちたそれでも、俺はその声を知っていた。 ………… ………… ………… 長らく続く沈黙。俺はどう動くべきか脳細胞をフル回転させていたが、さきに目の前の女がそれを打ち破った。 「――よしっ!」 そう彼女は威勢のいい声を放つと、机から身軽に飛び降りてこちらをやってきた。そして、問答無用と言わんばかりに俺のネクタイをつかむと、 「成功したわ。奴らにも気が付かれていない。今回はちょっと難易度が高かったから、失敗するかもと思っていたけど、案外簡単にいったわね。そういうわけで協力してもらうわよ」 おいちょっと待て。なにがそういうわけだ。その言葉には前後のつながりがなさすぎるぞ。 「そんなことはどうでもいいのよ。あんたはあたしの質問に答えれば良いだけ。簡単でしょ?」 「状況どころか、自分が一体全体どこにいるのかもわからんってのに、冷静な反応なんてできるわけねぇだろうが」 ぎりぎりとネクタイを締め上げてくるそいつに、俺は抗議の声を上げた。 だが、この時点で俺は確信を持った。今むちゃくちゃな態度で俺に接してきている人物。容姿・声・性格全て合わせて、完全無欠に涼宮ハルヒだった。ああ、こんな奴は世界中探してもこいつ以外一人もいないだろうから、 そっくりさんということはないだろう。 俺の目の前にいるハルヒは、すっとネクタイから手を離すと、腰に手を当てふんぞり返って、 「全く情けないわね。少しは骨があるかと思っていたけど、どっからどうみてもただの一般人じゃない」 「当たり前だ。今までそれは嫌というほど見せつけてきただろ」 俺の返した言葉に、ハルヒはふんと顔を背けると、 「あんたとは今日初めて合ったんだから、そんなことわかるわけないでしょ」 あのな、初対面の人間に一方的に問いつめるのはどうかと――ちょっと待て。なんだそりゃ、俺の記憶が正しければ、お前とはかれこれ一年以上の付き合いになるはずなんだが。しかも、クラス替えまでしてもしっかりと俺の後ろの席に座り続けているじゃないか。 「それはあんたの所のあたし。あたしはあんたなんて知らないし、こないだ平行時間軸階層の解析中に見つけるまで存在すら知らなかったわ」 このハルヒは淡々と語っているんだが、あいにく俺には何を言っているのかさっぱりだ。しかも、話がかみ合ってねえ。 このままぎゃーぎゃー言っても時間の無駄だろう。 俺は一旦話をリセットすべく両手を上げてそれを振ると、 「あー、とりあえず話がめちゃくちゃで訳がわからん。とにかく、まず俺がお前に質問させてくれ。 それで状況が把握できて納得もできたら、お前に協力してやることもやぶさかじゃない」 俺の言葉にハルヒはしばらくあごに手を当てて考えていたが、やがて大きくため息を吐くと、 「わかったわよ」 そう渋々承諾する。よし、とにかくボールはこっちが握った。まずは状況把握からだ。 真っ先に俺が聞いたのはこれである。 「お前は誰だ?」 俺の質問に、ハルヒはあきれ顔で、 「涼宮ハルヒよ。他の誰だって言うのよ」 「巧妙に化けた偽物って可能性もあるからな。俺の周りにはそんなことも平然とやってのけそうな連中でいっぱいだし」 「それじゃ、証明のしようがないじゃん。どうしろっていうのよ」 ハルヒの突っ込みに俺は返す言葉をなくす。確かに疑えばどうとでも疑えるのが、俺を取り巻く現在の環境だ。 となると、これ以上追求しても意味がない。それに俺の直感に頼る限り、今目の前にいるのはあのわがまま団長様と人格・容姿ともに完全に一致しているわけで、それを涼宮ハルヒという人間であると認識しても問題ないだろう。 だがしかし、先ほどの言い回しを見ていると、俺が知っている『涼宮ハルヒ』ではない。 「えー、聞きたいのはな、お前がハルヒであることは認めるが、俺の知っているハルヒじゃなさそうだって事だ。 なら俺のつたない脳を使って判断すると、ハルヒが二人いるって事になるんだが」 「そうよ」 そうよ、じゃねえよ。そこをきっちり説明してくれ。 「あー。あんたの頭に合わせて言うと、別の世界のあたしってことよ。平行世界って言葉ぐらい聞いたことあるでしょ? ここはあんたのいた世界とは似ているけど別の世界ってことよ」 簡単すぎてかえってわからんような。まあいい、いわゆる異世界人ってことにしておこう。このハルヒから見れば、俺の方が異世界人なんだろうが。 ……しかし、ついにでちまったか、異世界人。しかもよりにもよって別の世界のハルヒとはね。こいつは予想外だったぜ。 ここでふとハルヒが口をあんぐりと開けて呆然としているのが目に入った。 「ちょっと驚いたわ。随分あっさりと受け入れるのね」 「最初は本意じゃなかったが、いろいろ今までそういう突拍子もない話は聞かされまくったから、 いまさらここは異世界で自分は異世界人ですっていわれても、今更驚かねえよ。異世界人については今まで伏線もあったからな」 俺の言葉にハルヒは興味深そうに目を輝かせている。何だ? こいつも宇宙人・未来人・超能力者のたぐいを求めているのか? まあいい。俺は次の質問に移る。 「ここはどこだ?」 「時間平面の狭間よ」 ……何というか、ハルヒが真顔で朝比奈さんチックなことを言うと違和感がひどいな。それはさておき、それじゃわからん。 わかるように説明してくれ。 「何よ、そんなことぐらい直感でピンと来ないわけ? 呆れたわ。未知との遭遇体験に慣れているだけで、 肝心の理解能力は本当に凡人なのね。まあいいわ、ざっと説明すると、あたしが作った空間で誰も入って来れず、誰も認識できない場所。これくらいグレードを落とせばわかるでしょ」 いちいち鼻につく言い回しなのもハルヒ独特だよ。確かにわかりやすいが。って、なら俺が今ここにいるのは、 お前が招待したからってことなのか? 「そうよ。もっとも周りの人間に悟られずにやるのには、それなりに細工が必要だけどね」 なら次に聞くことは自然に出てくる。 「で、一体俺を何のためにここに連れてきたんだ? 何が目的だ?」 これが核心の部分になるだろう。自己紹介は終わった以上、次は目的についてだ。 ハルヒは待ってましたと言わんばかりに、にやりと笑みを浮かべ、 「それは今から説明してあげる。長くなるから、そこの椅子に座って聞きなさい」 そうハルヒは、また窓の前にある俺的に団長席の上に座る。そして、すっと手を挙げると、床から一つのパイプ椅子が浮かび上がってくる。 ここまでの話で大体予測していたが、このハルヒは普通じゃない。いや、確かに俺のよく知っているSOS団団長涼宮ハルヒも変態的神パワーを持ってはいたが、自覚していないため自由にそれを操ることはできない。しかし、この目の前にいるハルヒは自分の意思で長門レベルのことを今俺の目の前でやってのけたのだ。 やれやれ、これはちょっと異世界訪問という話で済みそうにない気がしてきた。 俺はハルヒの頼んでもないご厚意に甘えることにして、パイプ椅子に座る。 「さて……」 ハルヒはオホンと喉の調子を整えると、 「あんた、宇宙人の存在は信じる?」 このハルヒの言葉に何か懐かしいものを感じた。あの北高入学式のハルヒの自己紹介。ただ、いくつか欠けてはいるが。 俺は当然と手を挙げて、 「ああ信じるよ。少なくとも俺の世界ではごろごろ――とはいかないが、結構遭遇したしな」 「……情報統合思念体の対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインタフェースに?」 返されたハルヒの言葉に、俺は驚く。何だ、このハルヒは長門のパトロンのことを知っているのか? 「当然よ。あいつらの存在、そして、どれだけ危険な連中かもね。実質的にあたしの完全無欠な敵よ」 ――敵。ハルヒの口から放たれた声には明らかに敵意が混じっていた。 どういうことだ。俺が知っている限り、奴らは内部対立はあるとはいえ、主流派は黙ってハルヒを観察することにしていたはず。 あからさまな敵意を見せてはいないんだよ。 「何ですって……? まさか……いや……」 ハルヒは予想外と言わんばかりに思案顔に移行するが、軽く頭を振ると、 「まあいいわ。とにかく、あたしと情報統合思念体は対立関係にある。というよりも、情報統合思念体が一方的にあたしを敵視して排除しようとしているだけなんだけどね。こっちとしても、敵意さえ見せなければ別に相手にする気もないんだけどさ」 ハルヒはあきれ顔でふうっとため息を吐いた。 排除しようとしているとは、まるで俺の世界とは正反対の行動じゃないか。 「何で対立しているんだ? いや、どうして情報統合思念体はお前を排除しようとしているんだ?」 「細かいレベルでの理由は知らない。とにかくあたしの存在を勝手に危険と認識して、襲ってくるのよ。 それも狙うのはあたしだけじゃない。この星ごと消滅させようとするわ。そんなの許せるわけないじゃない」 「星……ごと?」 何だか話がSF侵略映画っぽくなってきたぞ。情報統合思念体が地球を攻撃するとは、まさにハリウッド映画。 ――ここでハルヒは思い出に浸るように天井に視線を向けると、 「三年前――いや、あんたのいた時間から見れば四年前か。その時、あたしは自分が持っている力に気が付いた。野球場に連れられていったあの日、自分の存在がどれだけちっぽけな存在であるか自覚したとたん、体内で何かが爆発したような感覚がわき起こり、この世の全ての存在・情報がどっとあたしの中に流れ込んできたのよ。当然、その中に情報統合思念体についてのこともあった」 ここで気が付く。さっきまで俺は灰色に染まった教室の中にいたはずなのに、いつの間にかまるで360度スクリーンの映画館のような状態になっていることに。そこには野球場の人数に圧倒されるハルヒ・電卓で野球場の人間が地球上でどのくらいのわりあいなのか計算するハルヒ・ブランコで物思いにふけるハルヒの姿が映し出される。 「きっとその時に向こう――情報統合思念体も気が付いたんでしょうね。あたしはその巨大な存在に触れてみようとした。 そのとたん……」 ハルヒの言葉に続くように、今度は宇宙から眺める地球の姿が映し出される。そして、 「嘘だろ……」 俺は驚嘆の声を上げた。まるで――そうだ、長門が朝倉を分解したときみたいに、地球が一部が粉末のように変化を始めた。 それは次第に地球全土へと広がっていき、最後には風に飛ばされるようにちりぢりにされ消滅してしまった。 呆然と見ることしかできない俺。と、スクリーンに星以外に一つだけ残されているものがあった。 「無意識に自分のみを守ろうとしたんだと思う。気が付いたとき、あたしは宇宙から消えていく自分の星を眺めていた。ただその恐ろしさと悲しさに泣きじゃくりながら何もできずに」 ハルヒだった。まだ幼い容姿のハルヒが宇宙空間で座り込むような格好で泣きじゃくっている。 目の前で淡々と語るハルヒは決してそのスクリーン上の自らの姿を見ようとせず目を閉じながら、 「何でこんな事になったのか、この時は理解できなかった。いや、今でも完全に理解できた訳じゃないけど。 あたしはただ情報統合思念体という大きく魅力的に見えたものに触れようとしただけ。なのに、奴らはあたしどころか、周囲全てを巻き込んで消し去ろうとした――許せるわけないじゃない。あたしは何の敵対行動も取っていないのに」 その声には怒気どころか殺気すら篭もっていた。確かに、なにも悪いことをした憶えもないのに、いきなり攻撃されてしかも無関係な人たちまで抹殺したんだから怒って当然か。しかし、何でそこまでして情報統合思念体はハルヒを消そうとする? 「知らないわよそんなこと。とにかく、その後あたしは情報統合思念体からの次の攻撃に備えていた。 あたしの抹殺に失敗した以上、また仕掛けてくると思ったから。でも、いつまで経っても襲ってくる気配はなく、 ただ時間だけが過ぎたわ。おかげでその長い時の間に大体自分ができることがわかったわ。奴らへの対抗措置もね」 「何で連中は追撃してこなかったんだ?」 「あとで奴らの内部に侵入して確認したときにわかったんだけど、最初の攻撃時にあたしは無意識に情報統合思念体に対してダミー情報を送り込んだみたい。あたしは強大な力を手にした。だけど、あたしはそれを自覚していないという形でね。 だから、奴らは地球を抹殺した理由がなくなり、どうしてそう言った行為を取ったのかわからない状態として処理されていた。 そこにあたしは目を付けた」 ハルヒの言葉に続き、周囲のスクリーンに無数――数えることのできないほどのガラス板のようなものが並列で並んでいる映像が映し出される。その一枚一枚には無数のカラフルな丸い点が描かれ、様々な形に変化・縮小・拡大・消滅・発生を繰り返している。 「あたしは地球抹殺の理由の接合性がなくなっていた情報をさらに改ざんした。あたしは自分の力を自覚していない、だから情報統合思念体は何の行動も起こさなかった。だから地球は消滅していないと。 地球自体は消滅前の時間軸に残されていた情報をコピーしてあたしが再生した。幸い、連中も脇が甘いのか、 そういったことは多々にあるのか、あっさりとあたしの情報改ざんは成功したわ。おかげであの日の惨劇はなかったことにできた。 ただあたしが力を得たという情報まで奴らから消去することはできなかった。結構希少な情報だったせいか、前例として広域な情報に関連づけられていたから、これを改ざんすると他への影響範囲が大きすぎて、全部改ざんなんて不可能だったから」 あまりのスケールの大きさに呆然と耳を傾けることしかできない。 「……ここじゃそんなことがあったのかよ」 俺は聞かされた衝撃的な話に疲れがたまり、パイプ椅子の背もたれに預ける体重を増加させる。 ハルヒは続ける。 「とりあえずリセットはできたわ。状況はあたしは力を得たが、それを自覚していないと情報統合思念体は理解している。 この状況下でどうすれば奴らの魔の手から逃れることができるのか、次はそれを模索する必要ができたのよ。 あたしが力を得たことで奴らに目を付けられた以上、うまくやり過ごなければならない」 ここでスクリーンに映し出された一枚のガラス板がアップになる。 「一度でうまくいくとは思っていなかったあたしは、一つの時間平面――このガラス板一枚があたしたちのいうところの『世界』と認識すればいいわ――を支配することにした。こうしておけば、いざ奴らにあたしが力を自覚していることに気が付かれてもいつでもリセットできるし、情報統合思念体には同じようにダミー情報を送り込めばごまかせるから」 「で、どうなったんだ?」 俺の問いかけに、ハルヒはいらだちを込めたように髪の毛を書き上げ、 「それがさっぱりうまくいかないのよ。どこをどうやっても途中で奴らに力を自覚していることがばれて終わり。 その度にリセットを続けて来ているけどいい加減手詰まり状態になってきて……」 ここでハルヒはびしっと俺を指差し、 「そこであんたを呼び出したって訳よ」 「何でそうなるんだよ?」 俺が抗議の声を上げると、ハルヒは指を上げて周囲のスクリーンに別のガラス板――時間平面とやらを映し出す。 「手詰まりになったあたしは別の時間平面に何かヒントがないか調べ始めたのよ。そこであんたたちの存在を知った。 同じようにあたしが力を得ながら、情報統合思念体が何もせずにずっと歩み続けている。力を自覚した日から、 4年も経過しているってのに。それはなぜなのか? どうしたらそんなことができるのか? 詳しく別の時間平面を調査していると奴らに気が付かれる可能性があったから、とりあえず一人適当な奴を こっちに連れてきて教えてもらおうってわけ。とはいってもあたし自身を連れてくるとややこしいことになりそうだから、事情を知っていそうな奴を選んだけど」 そういうことかい。で、唯一の凡人である俺が選ばれたって事か。 ここでハルヒは机を飛び降り、また俺のネクタイをつかんで顔を急接近させると、 「さあ、白状なさい。一体あんたの世界のあたしは何をやったわけ? どうやったら情報統合思念体は手出しできなくできる?」 「何もやっていない。少なくとも俺の知っているハルヒは自分の力を自覚していないからな」 「は?」 ハルヒの間の抜けた声。が、すぐに眉間にしわを寄せて額までぶつけて、 「そんなわけないじゃない! 例えなんかの拍子で自分の力に自覚していなくても、周りに情報統合思念体がいるならどこかでちょっかい出してくるに決まっているんだから、すぐに気が付くはずよ!」 「だが、事実だ。情報統合思念体はハルヒがその状態を維持することを望んでいるし、それに俺をここに呼び出す前に俺を付けていたハルヒと一緒にいた小柄な女の子はその対有機生命体ヒューマノイドインターフェースだ」 「バカ言わないで! あたしがあいつらと一緒に仲良く歩いていられるわけがないじゃない!」 ハルヒはつばを飛ばして言ってくるが、そんなこと言われても知らんとしかいいようがない。 それにしてもこのハルヒが持っている情報統合思念体への敵意は痛々しいまでに強く感じる。 「じゃあなんであんたはあたしの力について知っているのよ!」 「長門――情報統合思念体とかその他周囲から教えてもらった」 「じゃあなんであたしに教えようとしないわけ!?」 「一度言ったが、信じてくれなかった」 とりあえず事実だけ淡々と返してやると、ハルヒの顔がだんだん失望の色に染まっていった。やがて、ネクタイから手を離し、机の前まで戻ると、 「……だめだわ。それじゃだめよ。ただ運良くそこまで進んだだけじゃない。とくにあたし自身が自分の力の自覚がないのは致命的だわ。自覚したとたん、情報統合思念体に星ごと抹殺されて終わり。そして、リセットもダミー情報による偽装もできない。 あんたの世界も長くはないわね」 そうため息を吐く。 このハルヒの言葉と態度に、俺の脳天に少し血が上り始めた。まるでいろいろあった俺のSOS団人生を 簡単に否定された気分になったからだ。 「おい、俺のやってきたことをあっさりと否定するんじゃねえぞ。確かにお前みたいに壮絶じゃなかったかもしれないが、俺は俺で色々やってきたんだ。大体、俺のいる世界を全部見たって言うなら、俺たちのその後もわかっているんじゃないのか?」 「あのねぇ、時間平面ってのは数字に表せないほど大量にあるのよ。そこから無作為に検索をかけて、 偶然見つけたのがマヌケ面のあんたがあたしと一緒に歩いている姿を見つけただけ。その後の様子まで確認している余裕はなかったわよ。あまり長時間の時間平面検索は奴らに察知されかねないから」 それを先に言えよ。ってことは、このハルヒは俺たちSOS団についてもさっぱり知らないって事になる。 そこで俺はこのハルヒに対して、俺を取り巻く環境についてかいつまんで説明してやった。 情報統合思念体の対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインタフェースである長門有希。 未来からハルヒについての調査・監視を命じられてやってきた朝比奈みくる。 ハルヒの感情の暴走を歯止めする役目を与えられた超能力者古泉一樹、そしてそれを統轄する組織、『機関』。 ………… だが、ハルヒは話自体は信じたようだったが、やはり俺たちがその後も平穏に進むということについては 懐疑的な姿勢を崩そうとしなかった。 「まさかあたし自らそういう連中とつるんでいたとはね。それも自覚がないからこそできる芸当なんでしょうけど、 とてもじゃないけどリスクが大きすぎてできそうにない。それに皮一枚でぎりぎりあたしに気が付かれていないだけにしか感じられない以上、いつ自覚してもおかしくないわね。その時点であんたの世界は終わりよ」 「なぜそんなに簡単に否定できるんだよ?」 ハルヒはわからないの?と言わんばかりに嘆息し、 「まず『機関』とやらは、情報統合思念体に逆らえるだけの力があるとは思えない。あんたと一緒にいた色男――古泉くんだっけ? ――が、機関の意向よりあたしが作ったSOS団とやらを優先すると言っても、個人で何ができるわけもなし。 未来人については、同じ時間平面上なら移動可能ということは使えそうだけど、そもそも情報統合思念体はそんなことなんて朝飯前。対抗手段としては物足りないわね。最後の情報統合思念体の対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインタフェースについては論外。 奴らの支配下から離れて独立しつつあるとか言われても、信じられるような話じゃない。所詮は操り人形なんだから」 その言葉に俺はいらだちを募らせるばかりだ。まるで外部の人間にSOS団の存在意義を必死に説明してみせているような気分になってくる。いや、このハルヒは確かに俺たちについてまるっきり知らない――それどころか、情報統合思念体に対して明確な敵意を見せているので余計たちが悪い。 だが、俺はSOS団として満足して生きてきていたし、危険も感じていない。長門のパトロンはさておき、 長門自身には信頼を寄せているし、古泉はSOS団副団長という立場の方がすっかり似合っている状態。 朝比奈さんはもうマスコットキャラが板に付きすぎて抱きしめて差し上げたいぐらいだ。そして、皆ハルヒとともに 平穏無事にいたいと願っている。 それの何が問題だというのだ? このハルヒは自分の力を自覚していないとダメになるということを 前提に語っているようにしか見えない。 その後も必死に説明した俺だったが、ハルヒは聞く耳を持たない。 「悪いけど、これ以上議論しても無駄よ。あんたを元の時間平面に送り返すわ。一応礼を言っておくけど、 そっちもかなりぎりぎりの状態ってことはわかったんだから――」 「そうはいかねえよ」 「え?」 元の世界への機関を拒否した俺に、ハルヒはきょとんとした表情を浮かべた。 俺は正直このまま元の世界に戻るような気分じゃなかった。このままSOS団を完全否定されたっきりでは、 気分が悪いことこの上ないし、そもそもこのハルヒのいる世界は破滅とリセットのループを繰り返している。 だったら、俺の世界と同じようにSOS団を作れば同じように平穏に過ごせる世界が作れるはずだ。 俺にはその絶対の確信があった。 「何度でもリセットできるんだろ? だったら、俺の言うとおりに動いてくれ。そうすりゃ、俺たちの世界が どれほど安定しているか教えてやれるし、ここの世界の安定化も図れる。お前だって手詰まり状態だって言っているんだから、 試す価値はあるはずだ。少なくともお前が到達できない場所に俺たちは到達できているんだからな」 「…………」 ハルヒはあごに手を当てて思案を始めた。 ふと、他人の世界にどうしてそこまでするんだという考えが脳裏に過ぎる。しかし、すぐにその考えを放り捨てた。 ここまであーだこーだな状態になっておめおめと引き下がるほど落ちぶれちゃいない。 「……わかったわよ」 ハルヒは渋々といった感じに了承の言葉を出した。しかし、すぐにびしっと俺に指を突きつけ、 「ただし! 条件付きよ。あんたのいう宇宙人・未来人・超能力者にまとめて接触はしない。一つずつ試していくわ。 情報統合思念体の目はどこでも光っているんだから、変に手を広げて取り返しの付かない事態にならないよう 石橋をハンマーで殴りつけながら進ませてもらうわ。あと、あたしは自分の力の自覚はそのままにする。 この一点だけは譲れない。これがダメというなら即刻あんたを元の世界に送り返すから」 条件付きというわけか。はっきり言って、3勢力がそろわないとSOS団には成り立たないが、この際贅沢はできない。 一つずつ接触しても俺のいた世界のSOS団と同じぐらいの平穏な関係は築けるはずだ。 力の自覚については仕方ない。ハルヒは自分がそれを理解していない状態を極端に恐れている節がある。 それに、これに関してはうまい具合にハルヒが黙っているだけで済むから大丈夫か。 「わかった。それで構わん」 「じゃ、決まりね」 こうして別の世界でSOS団再構築という壮大なプロジェクトが始まった。 ――そして、俺がどれだけ甘い考えをしていたのか、嫌と言うほど思い知らされることになる。 ~~涼宮ハルヒの軌跡 機関の決断(前編)へ~~
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基本情報表紙 タイトル色 その他 目次 裏表紙のあらすじ 出版社からのあらすじ 内容 あらすじ「序章・夏」 「エンドレスエイト」 「序章・秋」 「射手座の日」 「序章・冬」 「雪山症候群」 挿絵口絵 挿絵 登場人物 後に繋がる伏線「雪山症候群」(伏線) 刊行順 基本情報 涼宮ハルヒシリーズ第5巻。2004年10月1日初版発行。 表紙 通常カバー…鶴屋さん、キョンの妹 期間限定パノラマカバー…森園生、キョンの妹、シャミセン、鶴屋さん タイトル色 通常カバー…青 期間限定パノラマカバー…緑 その他 本編…319ページ 形式…短・中編集 目次 序章・夏…P.5 エンドレスエイト…P.7 序章・秋…P.86 射手座の日…P.88 序章・冬…P.181 雪山症候群…P.183 あとがき…P.324 裏表紙のあらすじ 夏休みに山ほど、遊びイベントを設定しようとも、宿敵コンピ研が持ちかけてきた無茶苦茶無謀な対決に挑もうとも、 ハルヒはそれが自身の暴走ゆえとはこれっぽっちも思っていないことは明白だが、 いくらなんでもSOS団全員が雪山で遭難している状況を暴走と言わずしてなんと言おう。 こんなときに頼りになる長門が熱で倒れちまって、SOS団発足以来、最大の危機なんじゃないのか、これ!? 非日常系学園ストーリー、絶好調の第5巻! 出版社からのあらすじ 思えばハルヒに振り回された一年間だったわけだが、 遊びすぎな夏休み、パソコン部の逆襲、そして命懸けの冬休みまで味わった俺は、来年の苦労を思うと封印した言葉が出そうになるよ……。 絶好調シリーズ第5弾! 内容 短中編集の巻。収録されている「雪山症候群」は、後のストーリーに大きく関わってくる。 なお、「雪山症候群」以外はアニメ化された。 あらすじ 「序章・夏」 文庫化にさい書き下ろされた「エンドレスエイト」への導入部分。 「エンドレスエイト」 +... 大変だった夏合宿から帰ってきた後、しばらくハルヒ他SOS団のメンバーと会うこともなく、平和な夏休みを過ごしていた。 しかし、夏休みも後半に差し掛かった頃、ハルヒから突然集合命令の電話。 集合したSOS団のメンバーに「夏休みを全力で遊ぶ!」と宣言。その通りに毎日超過密スケジュールを強行するハルヒ。 だが、キョンには前にも一度体験したような既視感があり、その答えは想像以上に恐ろしいもので、朝比奈みくるや長門がキョンに言う。 「夏休みが終わらない」 長門によれば、夏休み後半を何千回とループしているのだという。古泉は、この原因はハルヒにあり、夏休みを終わらせたくないと思っているのだという。 ハルヒのやり残したこととは、一体何なのだろうか……? 「序章・秋」 文庫化にさい書き下ろされた「射手座の日」への導入部分。 「射手座の日」 +... 文化祭も終わり平和な日常を過ごしていた所にやってきたコンピ研部長他部員一同。 彼らは強奪したパソコンの返却をかけて自作のPCゲームで勝負を申し込んできた。 勝負事が大好きなハルヒは当たり前のようにその勝負を呑む。しかしコンピ研は負けたら、さらにパソコンをSOS団に進呈するという。 こうしてSOS団VSコンピ研のPCゲーム一本勝負が開始された。 「序章・冬」 文庫化にさい書き下ろされた「雪山症候群」への導入部分。 「雪山症候群」 +... 冬休み、鶴屋さんの招待で雪山にある鶴屋家の別荘に招待されたSOS団一同。 しかし、スキーを楽しんでいる最中、天候が急変。遭難しかけたSOS団一同の前に館が現れ、SOS団一同は館に入る。 だが館の中にいると次々と不可解な現象が起こる。脱出しようにもできない。そんな館にSOS団は閉じ込められてしまった。さらに熱で倒れてしまう長門。 古泉はSOS団を閉じ込め、長門を危機に陥れた犯人は情報統合思念体以上の力を持った何かだと推測しているが…… 挿絵 口絵 SOS団(エンドレスエイト) ⇒ 涼宮ハルヒ、朝比奈みくる、長門有希(エンドレスエイト) ⇒ 涼宮ハルヒ、朝比奈みくる、長門有希(エンドレスエイト) ⇒ 朝比奈みくる ⇒ 挿絵 「序章・夏」 挿絵なし 「エンドレスエイト」 P.37…涼宮ハルヒ、朝比奈みくる、長門有希 ⇒ P.47…朝比奈みくる ⇒ P.67…涼宮ハルヒ、朝比奈みくる ⇒ 「序章・秋」 挿絵なし 「射手座の日」 P.93…SOS団 ⇒ P.103…キョン、朝比奈みくる、古泉一樹 ⇒ P.109…涼宮ハルヒ、コンピュータ研究部部長、コンピュータ研究部部員 ⇒ P.123…SOS団 ⇒ P.141…キョン、涼宮ハルヒ ⇒ P.157…長門有希 ⇒ P.173…キョン、長門有希、コンピュータ研究部部長 ⇒ 「序章・冬」 挿絵なし 「雪山症候群」 P.221…鶴屋さん、キョンの妹 ⇒ P.277…朝比奈みくる ⇒ 登場人物 涼宮ハルヒ キョン 長門有希 朝比奈みくる 古泉一樹 鶴屋さん 谷口 国木田 コンピュータ研究部部長 キョンの妹 新川 森園生 多丸圭一 多丸裕 後に繋がる伏線 「雪山症候群」(伏線) キョンの謎の記憶(古風な格好をしたSOS団) ⇒未回収 SOS団を異空間に閉じ込めた犯人 ⇒第9巻『分裂』で回収 古泉の「長門が窮地に追い込まれるようなことがあったとして、それが『機関』にとって好都合なことなのだとしても、一度だけ『機関』を裏切ってキョンに味方する」という台詞 ⇒未回収 刊行順 <第4巻『涼宮ハルヒの消失』|第6巻『涼宮ハルヒの動揺』>
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放課後部室で俺と古泉がオセロをし、長門が窓際で読書、 朝比奈さんがお茶の用意をしていると俺より先に教室を出たはずのハルヒが ドアから勢い良く登場した。そのままズカズカと入り込んで団長席に腰掛けると、 ぐるっと椅子を回して古泉に視線を向けた。 ハルヒの表情は新しい獲物を見つけたようにギラギラと輝いている。 あー嫌な予感がする。 「ねぇ古泉くん、土曜日川岸近くの遊歩道で一緒に歩いてた子って誰? 手繋いでたみたいだったけど、ひょっとして彼女?」 土曜日っていうと俺が古泉に頼まれて彼方此方振り回されてた日だな。 女になってショッピングしたり、昼飯食べたり、 狙撃されて逃げ回ったりと散々な目に遭った。 遊歩道ではクレープを食ったりしたな。食べ終わる前に襲撃されて、 古泉が慌てて俺の手を掴んで――ってソレ俺じゃねーか! 「御覧になっていたのですか」 少し驚いた顔をしてハルヒを見る古泉。 そりゃそうだな。俺達が狙われる原因であるハルヒが傍にいたんだから。 ん、待てよ。連中はもしかしてハルヒがいたから古泉を狙ったのか? 「ちらっと見かけただけよ。 なんか急いでるみたいで、すぐ二人ともいなくなっちゃったから。 で、どうなの? もしかして彼女って北高の生徒だったりしない?」 ハルヒも女の子らしく恋バナが好きなんだな。少し意外だ。 恋愛は精神病の一種なんて言ってたくせに、他人の恋愛には興味あるのか。 古泉はこのルックスだし、浮いた話が1つや2つあってもおかしくはないが。 「彼女はこの学校の転校生になるはずだった生徒です。 制服も購入して先日から学校に来る予定でしたが、 不幸にも地方に住んでおられるご両親が体調を崩されてしまい、 通学が困難となってしまった為に決まっていた入学を取り消されたのです」 は? 突然何言い出すんだコイツ。 それは対ハルヒ用に用意していたシナリオなのか。随分と用意がいい事だな。 「それは可哀想ね。でもその子に兄弟とか親戚はいないの?」 ハルヒが食いついてきたのをいい事に、演技がかった仕草で古泉は話を続ける。 「彼女は年の離れた妹さんがいらっしゃるそうです。 親戚の方々は相次いで亡くなられておりまして、 両親と妹さんの面倒を見るのは彼女しかいないのです」 ふぅと肩を落として落胆の意を魅せるところまで完璧だ。 釣られたハルヒは友達のように心配した表情を見せる。 「じゃあその子はお世話をするために転入を諦めたってこと? なんだか理不尽な気もするけど仕方ないわね。 でもなんで土曜日は一緒にいたの? ってか古泉君とどんな関係?」 それは俺も聞きたい。 「ちょっとした昔馴染みですよ。なにぶん急な出来事だったので 荷物やら全部こちらに置きっぱなしのままだったそうで、 土曜日に引越し手続きをするために戻ってきてたんです。 あの時は久々の再会でしたから昔語りをしながら散歩をしてたんですよ」 昔馴染みねぇ。彼女って言われるのは御免被りたいが ちょっとだけ残念だと思うのは俺の気のせいだな。うんそうだな。 「ふ~ん、それにしても可愛い子だったわね。 そうそう、ポニーテールがすっごく似合ってた」 そのポニーテールは古泉がやったんだ。 髪が邪魔だったからまとめてくれって言ったら 僕が好きな髪型にしますね、なんて言い出して。 俺もポニーテールは大好きだが、自分がやるとは思わなかったよ。 「彼女が聞いたらきっと喜ぶと思いますよ。 今度会う機会があれば伝えておきましょう」 今度どころか今聞いてるだがな。 何故か古泉は何のサインか知らんが俺にウィンクを投げてくるし。 だからその気色悪いのはやめろ! 男にやられても嬉しくねぇよ。 下校時刻になり、俺は古泉と2人で帰っていた。 ハルヒ達は駅前に先日開店したケーキ屋に行っている。 なんでも3人1組まで食べ放題らしい。 食欲魔人の長門とハルヒにはうってつけの話だな。 隣りを歩いている古泉はいつもより5割増しの爽やかスマイルだ。 「機嫌よさそうだな」 「そうですか? ふふ、そうかもしれません。 僕とあなたが恋人同士に見えたんですから」 ハルヒの話か。その時はお互いそれどころじゃなかったがな。 ん? 俺と恋人同士に見られて何で嬉しいんだ? だって、お前は俺が男だって知ってるだろ? 「ええ勿論知ってます。けど、今回ばかりは涼宮さんに感謝していますよ」 なんだそりゃ、俺はさっさと普通の生活に戻りたいね。 湯船から出たら冷水を浴びるのが習慣化してるし、 お湯に対して異様に警戒するようになっちまった。 ハルヒが望んだからこんな事になっちまった訳だが、一体何時まで続くんだろうね。 「さぁそこまでは。それより」 この手は何だね、古泉くん。 「握手してくれませんか?」 古泉が手を差し伸べてきた。何で今更握手なんだよ。 しかも俺は女の子よりお前と手を繋いでいる回数のほうが明らかに多い気がするぞ。 まぁ、握手くらいならしてやるけどさ。 「うお!?」 手を握ったと思ったら、今度は手をに引かれて 奴の胸の中へと無理やりダイブさせられた。 おいおい握手だけじゃなかったのか。 しかもこの体勢は図らずもあのデートの日と同じ状況ではないか。 あの時と違うのは俺が女の姿ではなく、生来の男の姿であることだけだな。 「古泉?」 台詞まで同じだよ。お前は最近突発的行動が多過ぎやしないか? 「やっぱり抱き心地が違いますね」 そりゃそうだろう。ガキの頃なら大差がないだろうが、 齢16になれば男女の体つきは大分違う。 同じって言われたら別の意味で泣くぞ。 「でも、同じ匂いがします。それにとても暖かい」 ぎゅっと腕に力が入る。古泉は俺よりほんの少しだけ冷たい気がした。 奴に抱き締められるのは嫌ではないが、 ここは往来なので誰かに見られるのではないかと気が気でない。 ホモカップルとして北高に噂が広がるのだけは何としても阻止すべきだろ。 俺が己の安泰な高校生活を送る為に無言で奴のブレザーを引っ張って抗議するが、 哀しいかな古泉は俺の意図を読んではくれなかったらしい。 それどころか俺の肩に頭を乗せると、耳元で 「僕は男性のあなたが好きなんでしょうか? それとも、女性のあなたが好きなんでしょうか。 わからないんです、2人のあなたのどちらが・・・」 と悩ましげに呟くと、古泉はいっそう強く抱きしめた。 息遣いや心臓の音がはっきりと聞こえる。 古泉の手が震えていることだって伝わっている。 俺は何て答えてやればいいのか分からないまま、されるがままに突っ立っていた。 ただ、そうだな。 古泉が答えを見つけるまでは、ハルヒの気が変わらなければいいと思った。 それまでに、俺もこの気持ちに対する答えを見つけておこう。 終
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・涼宮ハルヒの再会(1)
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3.役割 イライラするような、それでいて情けないような気持ちで1日の授業を終えた俺は、部室にハルヒの鞄を取りに行った。 どうせこれから1週間、SOS団は休業だ。団長不在だし、長門と古泉は学校自体を休んでいる。 朝比奈さんは登校するだろうが、部室によるくらいならまだハルヒの病室でメイド服を着るだろう。 あの優しいお方ならそうするさ。 受験生だと言うのに、冬のこの時期に毎日部室に通ってくださっているくらいだしな。 さすがにほとんど勉強しているけど。 朝比奈さんは今のところ、卒業後も時間駐在員としてとどまると言っていた。 朝比奈さん(小)が朝比奈さん(大)になるまでに、本人にはどれくらいの時間が過ぎているんだろうね。 そう思いながら部室の扉を開けた。 「キョンくん」 そこにいたのはまさに今俺が考えていた、かつての部室専属メイドであったお方だった。 ちょっと予想外だった。今回の事件に、未来的な事柄は絡んでいない。 何故朝比奈さん(大)がここに? 「少し久しぶり、かな? 私にとってはそんな前じゃないんだけど」 にこやかな笑顔で朝比奈さんは挨拶した。 「お久しぶりですね、俺にとっては。何故ここに? 今のハルヒの状況はご存じなんでしょう」 そう言うと、朝比奈さん(大)は顔を曇らせた。 「ええ、もちろん。今、わたしも病院に向かっているはずですから」 そう言って顔を上げて俺を見た。 「でも、この時間のわたしにできることはないの。 いえ、このわたしにできることもないと言っていいわ」 うつむいて目を伏せたまま、話を続ける。 「今後どうなるか、詳しく話して頂くのは、やっぱり禁則事項なんですよね」 聞くまでもない。未来的なヒントをくれたことはほとんどないのだ。 むしろヒント無しでやらされたことばかりだった。 未来へのヒントとして暗示されたものは、あの『白雪姫』くらいなものか。 「その通り。禁則事項です。どうしても伝えたいことがあってわたしはここに来ました」 「せめてヒントだけでも……ですか」 あのときの言葉を思い出しながら言った。俺にとっては恥ずかしくも懐かしい記憶だ。 「ヒントというよりは、キョンくんにお願いです」 お願い? 意外な言葉だ。 「ええ、お願い。キョンくんは、キョンくんの気持ちに正直に。それだけです」 俺の気持ちに正直に? 「詳しく言えないのは解ってくれてると思う……だけど、これだけは伝えたかったの。 あんまり考えすぎないで。自分に正直に、ね」 俺は自分を偽っているつもりはないが、今後、何か気持ちを無視した選択が起こりうるということか。 「これは未来人としてのお願いじゃないの。 キョンくんと涼宮さんの友人である、朝比奈みくるとしてのお願いです」 これには驚いた。朝比奈さん(大)は規定事項を優先してばかりだと思っていた。 そんな気持ちが顔に出てしまったらしい。朝比奈さん(大)はくすりと笑って言った。 「わたしはこの時間のわたしと、ちゃんと繋がってます。 だから、今のわたしだってSOS団を大事に思う気持ちはあるんです」 「いや、俺はそんなつもりじゃ……。」 頭を掻くしかない。 「それではもう時間だから。その鞄を届けに行くのでしょう?」 そう言いながら部室の外に向かっていった。もちろんそのつもりです。 「がんばってね」 何を、と聞こうと振り返ったときには、もう誰もいなかった。 俺はしばらく朝比奈さん(大)の言ったことを考えていた。 俺の気持ちに正直に。 これは未来人としてではなく、朝比奈みくるとしてのお願い。 俺の『気持ちに正直に』動かないと、朝比奈さんの未来には良くないというのは考えるまでもないだろう。 そうでないと、朝比奈さん(大)はここに来られないはずだ。 それでも、朝比奈さん(大)は未来人としての立場よりも、俺とハルヒの友人、つまりSOS団の一員としての言葉としていった。 『この時間のわたしにできることはないの』 ああ、そうか。確かに朝比奈さん(大)は朝比奈さん(小)と繋がっている。 朝比奈さん(小)は今かこれからか、俺と同じような無力感にさいなまれているのかもしれない。 「そういうことか」 つぶやいて苦笑する。俺も同じだ。さて、朝比奈さんを慰めなくてはならないときが来るのかね。 今は考えていても仕方がない。 ハルヒの鞄を持つと、俺も入院したことのあるあの病院に向かった。 病院では、相変わらず長門がベッドの側の椅子にちょこんと腰掛けていた。 傍らで朝比奈さんがハルヒを見つめていたが、俺が入ると頭をぴょこんと下げてくれた。 「こんにちは。ハルヒのお袋さんはいないんですか?」 「お仕事があるから、と今日はお帰りになりました。 目が覚めたら直ぐに連絡すると伝えてあります」 そうか。娘がこんなことになってさぞかし心配だろうな。 「長門、ハルヒの様子は?」 最大の懸案事項を聞いてみる。 「変わらない。情報生命素子は検索を中断することはない。 現在、約9.8%終了していると考えられる」 およそにしては細かい数字だが、長門からしてみればコンマ10桁くらいの精度で予測できるのかもしれない。 「お前は休まなくていいのか」 ずっとつきそう気らしい長門に聞いてみる。 「このインターフェースは睡眠・休憩を必要としない。行動の模倣のみ」 なるほど。人間の振り、か。でも長門は人間らしいと思うがな。ところで飯は? 「本来は必要ない。わたしという個体が要求すれば、機を見て接種する」 空腹と食欲ってやつかな。まさに人間的だ。 「食べたいものがあったらおっしゃってくださいね。用意しますから」 朝比奈さんが長門に言う。長門を苦手としている朝比奈さんでも、何かがしたいのだろう。 「わかった」 長門も短く答えた。 自分にできること、か。朝比奈さん、あなたはたぶん十分役に立っていますよ。 むしろ俺が居心地が悪い。 ここにいてもどうしようもないからだ。 ハルヒについていたいというのは単なる俺のわがままだ。 「それでも、涼宮さんはキョンくんに側にいて欲しいと思ってますよ」 朝比奈さん、モノローグを読まないでください。 そう、確かに側にいてやるくらいしかできないよな。 例え俺の自己満足であっても、な。 数日、そんな日が続いた。 俺と朝比奈さんは、毎日面会時間終了までハルヒの病室に行った。 機関関係だから、面会時間なんかどうでもなりそうだったが、どこかで切り上げないと離れられなくなりそうだった。 長門は朝から晩までずっとハルヒの側にいた。 本も読んでいないので、持って来るか聞いたが、わずかに首を横に振るだけだった。 長門なら、ハルヒの状態を観察しながら読書するなんて朝飯前だろう。 そんな気にならない、ということか。 ハルヒが倒れて4日目、古泉が現れた。 心なしかやつれた気がするが、今はニヤケ面が戻っていた。 「深刻な顔をしていても事態が好転するわけでもありませんからね」 そう言ったが、平常心を保とうとするポーズなのは俺にもわかった。 かなり辛い日々だったんだろう。 「休んでなくて大丈夫なのか」 いくら俺でも、この状況なら古泉にだって労りの言葉くらいかけてやる。 「ええ、ある程度の休息は取れています。やはり涼宮さんが気になりますので」 そうか。さすがは副団長だな。 「それに、あなたと少しお話がしたかったので」 俺と? 何かわかったのか。 「ええ、少しいいですか」 朝比奈さんと長門のいる病室じゃまずいのか、エレベータの前にある椅子に移動した。 「以前、僕が涼宮さんの精神状態がある程度わかる、とお話したと思いますが」 そりゃ、お前はハルヒの精神分析の専門家だろうが。さんざん聞かされたぞ。 「今回は特殊な例でして、さすがに僕たちにも良く解らなかったんですよ。 ただ、凄いストレスを感じている、としか」 そうだろうな。今ハルヒが置かれている状況なんて、凡人の俺には想像もつかん。 ハルヒはどんな苦しみに耐えているのだろう。 「それでも、涼宮さんはまだ自我を失っている訳ではないので、 やはり感情という物があります」 ああ、それで? 「ここ最近、今まで解らなかった涼宮さんのある感情がはっきりしてきているのですよ。 僕の中でね」 「もったいぶらずに言え。それは何だ?」 「不安、です」 「不安?」 「ええ、涼宮さんは今、とても不安を感じています。無理もありませんが」 そりゃそうだよな。何か訳のわからないものに自分の精神構造を解析されているわけだ。 外界との反応を遮断されてな。いや、反応できなくなっているだけか。 不安を感じない訳がない。 「ええ、そうなんですが、もうひとつ僕に判ることがあるんです」 ハルヒの精神でか。何だ? 「閉鎖空間に入ると強く感じられるのですが……はっきり言いましょう。 彼女はあなたを呼んでいます」 は? 俺をか? 閉鎖空間にか?? 「閉鎖空間は涼宮さんの精神活動によるものです。 別に、彼女はそこにあなたを招待したいというわけではないでしょう。 おそらく、彼女はあなたなら自分の不安を取り除けると思っているのでしょう」 おいおい、随分買いかぶってくれた物だな、ハルヒよ。 お前の不安の原因を取り除けるのは、SOS団の中では長門だけだ。 しかも1回限りのチャンスだぜ。長門なら大丈夫だろうけどな。 「僕以外のいわゆる超能力者たちも涼宮さんが誰かを求めていることは気づいています。 それがあなただと判るのは、僕がSOS団の副団長だからでしょう」 古泉が続ける。しかし何故俺なんだ? 一応聞いてみた。 「今更それをおっしゃるのですか? この間のあなた達の行動を僕が知らないとでも?」 いや、お前らが覗いていたのは知ってるよ畜生。聞いてみただけだよ。 だがな。 「俺にどうしろって言うんだ」 吐き捨てるように言った。俺は無力だ。古泉のような事後処理すらできない。 「今は知っておいて欲しい、と言うのが僕の希望です。涼宮さんがあなたを求めていると」 「誤解を招くような言い方はよせ」 「失礼。でも事実ですから。では僕はこれで」 俺の反論を軽く流して、古泉はそのままエレベータに乗って行ってしまった。 病室に戻っると、長門が何か食べていた。カレーパン? 「わたしが作ったんです」 なんと朝比奈さんお手製のカレーパンであった。 カレーが好きな長門が病室でも食べやすいようにと考えたのだろう。 本当に愛らしいお方だ。 そんな朝比奈さんを見ながら、朝比奈さん(大)の言葉を思い出していた。 『わたしにできることはないの』 そんなことありませんよ、朝比奈さん(大)。 このカレーパンは、長門にとって嬉しい物に違いない。 朝比奈さんの存在は、ちゃんと俺たちを支えてくれている。 今度朝比奈さん(大)に会ったらそう伝えよう。 今回の事件が終わったら、朝比奈さん(大)は現れるのかなと考えながら、俺はハルヒのそばに立った。 相変わらず眠っているだけのような顔。 しかし、その内部はかなり疲弊しているんじゃないだろうか。 疲れすら表に出せない程。 思わず俺はハルヒの手をとって握った。 「……ハルヒ」 呼びかけても答えはない。 「辛くないか?」 辛くないわけがない。その結果が閉鎖空間だ。 「俺は何ができるんだ……?」 「キョンくん……キョンくんがいることは、涼宮さんに伝わってます、きっとです!」 振り返ると、長門と朝比奈さんが俺を見つめていた。 長門は何も言わなかったが、俺を案じてくれているのはその瞳から感じられた。 俺は何も言えなかった。 家に帰ってからも、俺は色々と考えていた。 朝比奈さん(大)の注意事項とも取れるような『お願い』。 古泉は、ハルヒが俺を呼んでいると言った。 だが、ハルヒは俺の呼びかけに答えない。 聞こえているのかどうかもわからない。 俺の気持ちに正直に。 朝比奈さんのセリフを思い出す。 正直な気持ち? そんなの分かり切ってるさ。 ハルヒのために、SOS団のために何かしたい。 長門はハルヒの容態変化を観察しつつ、根本的な原因を排除しようとしている。 古泉は今回のことで大量発生してしまう閉鎖空間で闘っている。 朝比奈さんは、主に長門を、そしてできれば俺や古泉も支えようとしている。 みんな、自分でできることをやっている。 俺はどうだ? 「情けねぇな」 俺にできることなんか何もないんだ。 ただ、長門が助けてくれるのを待っているだけだ。 格好つけてみたってあがいてみたって結局それだけ。 「すまん、ハルヒ。やっぱり俺は雑用しかできないみたいだ」 自嘲気味に言った。 みんな頑張ってるのにこんなマイナス思考で悪いな。 4.窮地へ
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第七章 俺たちは30分ほどで学校に着いた。 そしてやっぱり神人が暴れていて校舎もめちゃくちゃだったし、校庭には神人に投げ飛ばされたと見られる校舎の残骸が投げ捨てられていてこの世の風景とは思えないようだった。 ハルヒはもうどうしていいのかわからないようにこう言った。 「ねえ、キョン。いったい学校に来てどうするつもりなの?」 「わからん。とりあえず校庭のど真ん中に行こうと思う。」 ど真ん中とはお察しの通り俺とハルヒが昔キスをした場所だ。 そこに着けば恐らく何らかのアクションが起きるはずなのだ、そうでなければあの未来人や朝比奈さんが止めるはずである。 俺はハルヒを半分無理やりど真ん中に連れて行った。 そのとき、ポケットに入っていた金属棒が金色に柱のように光りだし、ハルヒと俺を光の中に入れた。何がどうなってるんだ。 俺は慌ててポケットから金属棒を取り出した。 これでハルヒが普通の人間に戻ったのか? もちろんそんなわけは無く、その金属棒にひびが入った。 ピキピキ…割れていく。 中から茶色い棒が出てきた。 俺の嫌な予感は的中し、金属棒の中からポッ○ーが… やはりそうか。 ポッ○ーゲームか、それでキスしろってのか。 ハルヒは察したのか俺からポッ○ーを奪い取り口に加えて目を閉じた。 俺も目をつむりポッ○ーをくわえたそのとき、前のときのような光が世界を包み俺たちを元の世界に返した。 たまたまグラウンドはどの部活も使用してはいなかった。 あれ?朝比奈さんやら古泉やら長門やらはどこに行ったんだ? 閉鎖空間に閉じ込められたのか?だとしたら神人が全部消滅するまで空間は消滅しないはずである。 だとしたら朝比奈さんたちはどうなる。 いやハルヒの能力が消えたのだから閉鎖空間も消滅したのか?古泉は何も言ってはいなかった。 その時、後ろで俺を呼ぶ声がした。 「キョン君!」 朝比奈さんである。あの未来人と(小)方もいる、気絶したまま(大)にかつがれてるが…。 「朝比奈さんたち、どうしてここに?」 「古泉君に言われたんです。学校に向かってくださいと。これも規定事項ですし。」 「そうですか。」 この時ハルヒがあることに気付いた。 「有希は?」 そうだ長門は?朝倉と交戦中のはずのやつはどこに言ったんだ。 その問いには朝比奈さんが答えた。 「長門さんはあと1分ほどでここに現れるはずです。朝倉さんって人を倒して。」 よかった。 じゃあ古泉はどうなったんだ。 まさかあのとんでも空間に閉じ込められたままなのか? 長門がやってきた、古泉の事を聞いてみる。 「古泉一樹は閉鎖空間に残り、自爆して全て倒すつもり。」 自爆?自爆ってあれか?ボーンってなって死んじまうあれか? 「そう。」 古泉はどうなるんだ。 「死ぬ。」 どうにかならないのか。 「ならない。そうしなければ世界が滅ぶ。古泉一樹は世界を守るために死を選んだ。」 くそっ、俺の許可なしで死にやがって。 ハルヒは悲しい顔で「私のせいよ、私が転校生が来て欲しいなんて思ったから。だから古泉君は…」 落ち着けハルヒ。お前は何も悪くないし古泉のことは悲しいが今はこの状況を何とかすることが先決だ。俺たちを助けてくれた古泉のためにもな。 長門。朝倉はどうなった。 長門はいつぞやのカマドウマのとき同様、校門を指を刺した。 「すぐそこ。すぐ倒す。もう余裕は無いはず。」 その直後、校門から高速で何かが走ってきた。勿論。朝倉である。 朝倉は長門めがけて突っ込んできた。 不謹慎かもしれんがターゲットが長門でよかった。 ターゲットが俺なら一瞬でことは終わっていたからな。 長門は校庭のど真ん中で戦闘をおっぱじめた。 轟音が鳴り響く。 轟音で朝比奈さんが目を覚ました。 「ふえ?ここどこですか?あれ?この人私にそっくり。誰なんですか?そっちの男の人も。古泉君はどこいったんですか?」 なんというか、どっから説明していいのか。 とりあえずここで目を覚ますのは朝比奈さん(大)にとって来てい事項なんだろうか。朝比奈さん(大)に目配せしてみる。 朝比奈さん(大)が頷いた。 俺はいまいち状況を理解できていない朝比奈さんに説明した。 「この人は今の朝比奈さんよりも未来から来た朝比奈さんです。恐らく今まで朝比奈さんに命令を出してたのもこの人です。」 「え?そんな、まさか。」やっぱりと言うかなんと言うか、やはり混乱した。一応孤島のときのこともあるので古泉のことは伏せておいた。 朝比奈さん(大)が口を開く「そうです、私は未来のあなたです、いろいろな指令をいつも出していたのも私です。それからキョン君、この騒動が終わったらこの子にこの子がするべきことを全て教えてあげてください。」 「え?わかりました。」どういう意味だろう。七夕のときや一週間後の朝比奈さんが来たときの手紙のことを教えてあげればいいのだろうか。 長門が交戦中にも関わらずこっちを向いて叫んだ。「ダメッ!!」 すると「確かに頼みましたよ。」といって朝比奈さんの後ろで盾になるように大の字になった。 その瞬間である。鉄砲か何か、もしかしたら光線銃のようなものかも知れない。 一線。 俺の盾となってくれた朝比奈さんは倒れた。飛んできたであろう方向からは何も見えない。 血まみれになって倒れた朝比奈さん(大)を支えてあげる。「これも規定事項ですから…」 そう言って朝比奈さんは目を閉じた。 俺はハルヒに叫んだ。「朝比奈さんに見せるな!!!」 ハルヒは急いで朝比奈さんに抱きつき視界をふさぐ。 だが何もかも遅い。朝比奈さんは泣きじゃくり倒れこんでしまった。 ここで突っ立って傍観していた未来の俺が地団駄を踏み口を開いた。 「まさか!クソっ!それで未来を守ったのか。クソっ!」 そうか。朝比奈さんが朝比奈さん(大)を認識することで現在と未来がつながったのか。 それなら俺と未来人の時でも同じことが言えるのだが恐らくハルヒが生み出した不安定な未来なので朝比奈さんが朝比奈さん(大)を認識することで上書きされたのか。 恐らくこの未来人の規定ではここで朝比奈さんが死に、朝比奈さん(大)の存在に矛盾を出すためだったのであろう。 と言うことは未来人戦はこちらの勝利である。大きな犠牲を払ったが。 とち狂ったように未来人が言った。「もうお前ら全員殺してやる。」 おいおい未来の俺よ。なに言ってやがんだ。 その時、突然空が無数の点により暗くなった。 なんだありゃ。いろいろありすぎてわけがわからん。 第八章
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プロローグ 秋。 季語で言うならば7、8、9月に属するその季節も、時代の進行というか価値観の違いというかで、俺の中では9、10、11月が秋だと認識されている。しかしどういうわけか、今年は秋があったのかどうかを疑うような気温で、これもまたお偉い団長様が何かしでかす予兆ではないかと疑ったが、奴の精神専門である古泉曰く 「彼女の精神状態はとても良いままですよ。閉鎖空間も今のところ、大規模で発生しておりませんし」 らしい。しかし、ハルヒは温厚平和な日常が嫌いなはた迷惑な奴だ。いつ何をしでかすか分からん。秋といえば読書、芸術、食欲。映画が芸術に入るのなら、まだ2つも不安要素が残っている。これは何か来るぞ、と俺はノストラダムスの予言が今更になって頭上に降り注いでくるかもしれないと言った心持ちで待機していた。 つまり俺は、涼宮ハルヒという人物に出会ってから、確実に用心深い人間へと成長していたのだ。 ど素人が作った映画が公開し終わってから早3日。クラスの全員がそろそろ文化祭の余韻が無くなってきた頃辺り、俺はハルヒが授業中良からぬことを作戦立てているのを気配で察知した。これは数々の不思議体験、いや面倒くさい事柄を身を持って味わってきた俺だから分かるものだ。古泉や朝比奈さんより早く感づける自信がある。無論、長門には勝てないが。 「‥‥‥で、今度は何を企んでいるんだ」 「ふっふーん」 教えてくれないのかよ。 「今日のミーティングで発表するつもりよ。キョン、絶対に来るのよ。1秒でも遅れたら罰金だからね!」 ‥‥と、こちらの顔を一度も見ずにせっせと、まるで鶴の恩返しの鶴のようにこいつは何かを作っている。細長い紙の先端の穴の空いた場所からはリボンが、白紙の部分にはSOS団のサインが‥‥。 俺の勘も捨てたもんじゃないな。しかしこの勘がテストの時だけ怠けるのはいただけない。テストで良い点を取っているハルヒが妬ましい。 「じゃっじゃーん!お待たせ!!」 ドアを豪快に開けるハルヒに、誰も待ってねえよ、と思わずハルヒの後ろから声を出しそうになったが、律義にも独りでオセロを研究している超能力者、メイド姿の未来人、本に目を向けている宇宙人らは待っていた。古泉、その薄気味悪い笑みをこっちに向けるな。 「今日のミーティングは、こんな秋ならではの! ‥‥」 キュキュッキュー、とホワイトボードに文字をでかでかと書くハルヒをよそに、俺は古泉の前に座ってから荷物を床に下ろした。一生懸命戦略を練っていたようだが、生憎俺は負けん。お前は序盤で石を取りすぎるんだ。 「何が始まるんでしょうね?」 こいつがこう言う時は、大抵何が起こるか分かっている。だから俺は答える必要無しと最高裁判所の裁判官になったつもりで判断し、無言で目の前にあるオセロを1つずつ取り除いてやることにした。古泉も一緒になって、オセロを手元に戻していく。 「お茶をどうぞ、キョン君」 そう言ってお茶を差し出してくれるSOS団唯一の目の抱擁役である朝比奈さん。夏に別荘でメイドを目にして以来、どうやらメイドというものにいっそう影響を受けたらしい。本当に可憐で愛らしい。先輩とは思えないですよ朝比奈さん。 市販で買ってきたお茶よりも美味い緑茶をすすりながら窓際を見ると、黙々と本を読んでいる宇宙人がそこにはいた。その表情のまま蝋で固められてしまったかのように無表情のままページを捲っていくその様は、大地震が起きてこの学校が瓦礫の山と化しても、微動だにしない文学少女といったような雰囲気を釀しだしていた。といっても、長門ならこの学校が崩れる前に何とかしてくれるだろう。 「いい!? 我がSOS団は読書の秋を記念して―――‥」 すぅーっと、ビックボイスを叩き出そうとするハルヒ。またろくでもない考えを思いついちまったようだ。 「‥――SOS団主催、読書大会を始めようと思います!!」 ……相変わらず文字感覚のバランスが悪い奴だ。会って文字だけ下にいってやがる。 まあそれはともかく。馬鹿みたいにでかい声でそう宣言した後、やはり授業中作ってたのは栞だったのかと俺はひどく痛感した。よりによって読書がくるとは‥‥まあ本を書けと言われるよりはましか。 しかし、その全く持って伝統も歴史もない、部活としてもまともにOKサインをもらっていないこのSOS団が主催する大会が、後々とんでもないことを引き起こすとは誰も知りなどしなかった。 ‥‥もちろん、3学期に文章を書かさられるハメになることも俺は知らなかったことは周知の事実である。 →涼宮ハルヒの分身 Ⅰへ
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==陸中城下町== 谷口「WAWAWA忘れ物~」 町の女の子「あ、谷口様!」 谷口「やあ元気にしてたかいマドモアゼル」 町の女の子「元気ですっ!今日はどんな面白い商品を持ってきてくださったの?」 谷口「フ…そうだな、例えばこれなんてどうかな?」 町の女の子「これなに?」 谷口「ぶどう酒と呼ばれる向こうの酒だよ。口には合うと思うぜハニー」 町の女の子「ごくっごくっ・・・・・おいし~♪ありがとう谷口様!でもこんなもの何処で手に入るの?」 谷口「フ…向こうの商人と一発やるのさ。30代後半の女商人が狙い目でな、 声をかければ意外にホイホイ付いてくる」 町の女の子「きゃー!流石谷口様!!」 谷口「今晩・・・いいかな?」 町の女の子「それは御断りしますわ♪」 タッタッタッタッ 谷口「・・・・・」 ひゅうー…ぽつん キョン「いってえ…ここは?」 古泉「まだ洞窟の中のようです。どうやら別の位置に無事移動成功したようですね」 いきなり喋るな。顔が近いんだよ気色悪い 横を振り向くと、他の女三人衆もどうやら目が覚めたようで辺りを見回していた ハルヒ「ここ・・・何か部屋みたいね」 みくる「何か少し・・・変な感じですぅ」 長門「今までの洞窟内とは全く雰囲気が違う…何かが…来る!」 ==ぞわっ== 突如として背後に凄まじい殺気を感じた俺達は五人一斉に後ろを振り返った ???『船切り』 俺達の目の前に現れる巨大な剣 いや、これはおかしいだろう。術を唱えている暇すら・・・ 長門「炎術・火翔」 間一髪のところで長門の放った術が巨大な剣を止める。 しかしその風圧が俺達五人を大きく吹き飛ばす キョン「みんな大丈夫か!?」 ハルヒ「なんとか・・・っ」 古泉「長門さんのお陰です。正直、危ないところでした」 みくる「な、なんですかあ今の!?」 ???『盗賊共…貴様等に死を』 俺達の目の前に現れたのは巨大な剣を背負った巨大な男だった キョン「…!!」 ハルヒ「なによコイツ…」 海尊『我が名は常陸坊…常陸坊海尊…』 海尊『我が名は常陸坊海尊。何年も前よりこの洞窟に眠る我が主の財宝を守ってきた…。盗賊共よ…与えよう、貴様等に死を。与えよう、死して尚、永遠の苦しみを』 古泉「死して尚、永遠の苦しみ…?・・・・っ!!まさか僕達がこの洞窟で戦ってきた魂火や怨霧は…」 海尊『皆、我が主の財宝を狙いし愚かな輩共の者よ。この洞窟で討たれし者は、永遠に成仏する事も敵わん。』 みくる「そんなひどい・・・」 キョン「こいつ…」 海尊『盗賊共よ…罪深き貴様等にも同じくして、永遠の苦しみを与えよう』 古泉「…どうやら、今までの敵とは桁違いのようです。心してかかりましょう」 キョン「だな、だが俺達は絶対に勝って帰るぜ」 ハルヒ「五人で力を合わせれば負けないわ!!」 みくる「そうですっ!」 長門「油断は出来ない…」 海尊『死ぬがよい。醜い欲を持つ哀れな者共よ』 キョン「行くぜ!うおおおおおおおおお!!!俺の両手に集いし力の結晶よ!その力を今こそ解き放て!!!」 『炎術・双虎牙!!!』 ガオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!! 海尊【『獄裁剣…断罪』】 ズオンッ!!!!!!!! 巨大な破壊音と共に消滅する双虎牙 キョン「何!?」 海尊は一歩跨いでキョンの真正面に入る キョン「はや…」 海尊【『獄門剣・死招』】 古泉「陰陽道・火鬼!」 海尊『!?』 刀が振り下ろされる瞬間、古泉の放つ火の鬼が海尊に直撃し、それを追撃するかの如くハルヒの双剣がうねりを上げる ハルヒ「双剣・閃光双頭切りぃいいいい!!」 しかし海尊はすぐに体制を立て直し、天の術を放つ 海尊【『天術・大空剣』】 巨大なかまいたちは逃げ場を無くし、ハルヒを襲う ハルヒ「きゃああああああ!!」 その刃は彼女の体を容赦なく切り刻み、その場に倒れ込ませる キョン「ハルヒ!!ちくしょう!長門、連携で行くぞ!!」 長門「…了解した」 キョン『炎滅斬!!』 長門『氷術・大氷棘』 横からキョンの抜刀、縦から長門の放つ巨大なつららが海尊に襲いかかる。 だが海尊はつららを剣で切り落とし、抜刀を受けきり、反撃に転ずる キョン「な、なぜ止まるんだ…」 みくる「ああああぶないですうううう!!」 海尊【『獄門剣・閻魔斬』】 キョン「しまった!(避けきれない…)」 古泉『陰陽道・風鬼!!』 放たれた風の鬼はキョンを海尊の間合いから吹き飛ばし、海尊の剣は空を切る。 そこに長門とハルヒが双方から回り込み迎撃する ハルヒ「双剣・舞い切り弐条!!」 長門「地術・地面返し」 海尊【『獄門剣・九衒刹』】 刹那に放たれる閃光の全体切りで、ハルヒの抜刀と長門の技は往なされ、二人ともそのまま吹き飛ばされる [『冥界に蠢く死霊達よ…我が式神に封じられしその力を、今こそ解放されよ!!』] 古泉『陰陽道・幽軍!!』 海尊『!?(強い!?)』 式神から生れし恐ろしい霊の大群が海尊を襲う 海尊『ぬおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!』 怨霊の大群を浴び、錯乱する海尊。 その後ろでは必殺の構えをとるキョンの姿があった 古泉「今です!」 キョン「ああ…準備は完了したぜ・・・喰らえ!!!」 炎上する剣を片手に持ち、キョンは全速力で錯乱している海尊の間合いに侵入する キョン===『『『奥義!!!炎獄緋双斬!!!!』』』=== 炎に塗れる闘剣は、ついに海尊の胴を捉え、華麗な鋭さを魅せた 海尊『馬鹿な…我が体よ……我が…』 胴の切り口から徐々に光が溢れ出し海尊はその場に倒れ掛ける。 誰もが勝利を確信したその時だった。 海尊『我が命…既に失われし、何人たりとも、我が主には触れさせぬ…』 キョン「何を言ってるんだアイツ・・・もう勝負はついただろう」 古泉「…まさか!!」 海尊『仏よ…我たる命授かりし者に慈悲の恵みを与えたまん・・・』 古泉「・・・やはり!陰陽道・火鬼!!」 海尊[『復元』] 海尊【『獄門剣・旋風斬』】 放たれた鬼の火は時遅くして海尊の剣に弾かれた 古泉「遅かったようです…」 ハルヒ「どういう事!?」 長門「…彼はあの場で、治療術を行使した」 キョン・ハルヒ「!?」 古泉「まさかとは思いましたが・・・彼はどうやら僧兵らしいです。生前のね…」 キョン「なんだと!?」 みくる「みなさあん!きますよぉ!!」 海尊【『獄門剣・閻魔斬』】 五人は素早くかわすも、剣圧でやはり吹き飛ばされる ハルヒ「…っ!あれだけ戦えて治療術まで行使出来るなんてそんな奴聞いたことも無いわよ!」 古泉「…いえ、一人だけ聞いた事があります…」 キョン「…!なるほど、俺も確かにある」 ハルヒ「えええ!?全く分かんないわ」 古泉「義経と共に生き、義経と共に戦った歴史上最高の戦闘能力を持つ僧兵…」 ハルヒ「…! まさか!」 古泉「そう、そのまさかです。彼の真の名は、【武蔵坊弁慶】。紛れもなく伝説の僧兵です」 海尊【『天術・大空剣』】 長門「炎術・火翔」 海尊の放つ巨大なかまいたちに対し、長門は炎の翼をぶつける。 だが、巨大なかまいたちは炎を飲み込み長門を切り刻みかけた、その刹那 古泉「陰陽道・土鬼!」 土の鬼が現れ、身代わりとなり切り刻まれる 古泉「大丈夫ですか長門さん!?」 長門「いっくん…大好き(ぎゅう)」 古泉「ちょ、ちょっと長門さん!来てますから!来てますからって!!」 ビュン!! 海尊【『獄門剣・死走』】 風の力で速度を上げ、海尊は古泉と長門に容赦なく切り込む キョン「炎術・火走!!」 海尊『ぬうっ!』 炎を切り潰し、剣をキョンに向ける海尊 キョン「お前の相手はこっちだ!」 海尊『おのれ…』 古泉「長門さん…離れていて下さい。この術は少々危険ですので」 長門「…わかった」 海尊【『獄門剣・閻魔斬』】 キョン「負けるか!炎滅斬!!」 古泉―『陰陽道-悲観』― 海尊『!!!』 激突の刹那、瞬く間に黒い霧が海尊を覆い、包む込み 古泉「…終わりました」 ハルヒ「えっ!?なにをしたの?」 古泉「彼はあの黒い霧から出てきません。少なくとも、あと数時間はね」 長門「…素敵、いっくん」 ハルヒ「…詳しく説明して古泉くん」 古泉「その前に、あそこで伸びている彼を起こさなくては」 ハルヒ「あ、そういえばキョンのことすっかり忘れてたわ…」 涼宮ハルヒの忍劇8
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涼宮ハルヒの憂鬱レビュー (ジャンル:どたばたラブコメ) 全14話 監督:石原立也 アニメーション制作:京都アニメーション 評価 ストーリー キャラクター 声優 映像・作画 2点 5点 14点 16点 合計37/100点 感想 全体的に単調な展開で、(奴隷キャラがハルヒに従うのみ。) ハルヒに不快にさせられて、終わる方も多いと思います。 ストーリーを主として見る人にも厳しいと言えるかも。 この作品は敢えて、ナレーションをいれてます。 しかし、ただナレーションするだけでは退屈なだけです。 ここら辺の工夫はせずに、別の所ばかり力を入れている。 しかもその力の入れ方が雑で、内容とは関係無い事ばかり。 「珍しさ」だけで この作品を見てました。一部の人間にしか受けないアニメです。 「涼宮ハルヒの憂鬱」アニメ公式サイト SOS団公式サイト
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「さっそくだけど、あたしの名推理を披露するわ!」 腕に「名探偵」という腕章をつけたハルヒがそう宣言した。 「まず状況を整理するわね。古泉君は今来たばっかだし。」 「そうして頂けると、ありがたいです。」 「あたしとキョンは一緒に部室に来た。でも鍵がかかってたのよ。 中でみくるちゃんが着替えてるのかと思ったけど、返事が無かった。 だからキョンと一緒にスペアキーを取りに行ったのよ。そうよね?キョン。」 「ああ、そうだ。」 「でも職員室の前でみくるちゃんと会ったの。だから不思議に思ってね。 あたしとキョンとみくるちゃんの3人で部室に入ったら、コレよ。」 ハルヒは無惨な姿になったパソコンを指差した。 「それで鍵は部屋の中に落ちていたわ。つまりこの部屋は密室だったってワケ。 でも窓は開いてたから、恐らくそこから脱出したと思われるわ。 ロープも下に落ちてたしね。」 「で、でもぉ、ロープで降りたりしたら目立つんじゃぁ……下は人が多い場所ですしぃ。」 「下に逃げたとは限らないわ。犯人は、横に逃げたのよ。」 「横、ですか?」 「そうよ。横の教室は今は使われてないわ。 それを利用して、この部室の窓と隣の部屋の窓にロープで道を作ったのよ。 そしてそのロープを使って隣の部屋に逃げた……そんなとこね。」 「では、この事件の犯人は?」 「私達に恨みを持つ外部の人間ね。まだ特定は出来ないけど、コンピ研部長とか怪しいわね! あとは締め上げて吐かせれば……」 「そこまでだ、ハルヒ。」 俺はハルヒの「名推理」を遮った。もうこれ以上、コイツに推理させるワケにはいかない。 それは、犯人の描いたシナリオに乗ってしまうことになるからだ。 「何よ、せっかくいいところだったのに!文句あるわけ?」 「ああ。このままだと間違った結論に導かれてしまうからな。 このトリックには無理がある。例え隣の部屋だとしても見られたらどうしても目立ってしまうだろ。 それに、ロープ伝いに隣の部屋に移動なんてよほど運動神経が良くなければ危険すぎる。 少なくとも、コンピ研部長には無理な話だ。 お前の推理は間違っている。……いや、あえて『間違えた.』」 「……何が言いたいのよ。」 ハルヒがそう言ってきた。分かったさ、そういうなら言ってやる。 俺は『犯人』を指差した。 「この事件の犯人は、ハルヒ、お前だ。」 俺は他のヤツらの顔を見た。 朝比奈さんは気絶するんじゃないかと言うほど驚いた顔をしている 逆に古泉はそうでもない。ある程度予測はついていたんだろう。 長門は、まあいつも通りの表情だ。 「な、何バカなこと言ってるのよ!」 そしてハルヒ。平静を装ってはいるが、明らかに動揺している。 「思えば始めからおかしかった。お前が俺の掃除を待つ、なんてな。 だが今考えれば納得だ。お前は待たなければならなかった。 何故なら、俺と一緒にパソコンを『発見』しなければならなかったからだ。一人で見つけちゃ意味ないんだ。 部屋が密室状態だったと証言してくれるヤツがいないとな。」 「そうよ!密室だったじゃない!それはどう説明するのよ! アンタが言うには、あたしの説明したトリックはダメなんでしょ?」 「ああ。もっと単純な方法さ。お前は普通に、鍵をかけて外に出たんだ。 そのまま鍵を所持しておく。スペアキーを取りに行った時も、実はお前は鍵を持っていたのさ。 そして部室に入り壊れたパソコンを発見する。そのインパクトに俺と朝比奈さんが注意をひかれている隙に、 お前はそっと鍵を部屋の中に落とし、自分でそれを発見した。 そして自らが『名探偵』となって、間違った結論へ導こうとしたんだ。 あのロープは、お前があらかじめセットしておいたものだな?」 「ち、違……」 否定はするが、もはや態度で分かる。間違いなく犯人はコイツだ。 何故俺がこの真相に気付けたか、それは古泉のおかげだ。 何よりもハルヒを優先する古泉が遅れる理由なんて一つしかない。そう、閉鎖空間だ。 恐らくハルヒはパソコンを壊してしまったことでストレスを溜め、閉鎖空間を発生させた。 更にこのトリックを成功させられるかどうかで不安になり、古泉の仕事を長引かせた。 古泉にはご苦労様としか言い様が無いな。 そして俺は、最後のひと押しをする。 「まだ否定するのなら、職員室に確認をとっても構わないぜ? お前が昼休み、鍵を取りに来なかったか、ってな。」 ハルヒはその言葉を聞くとうつむいた。……これで終わり、か。 「そうよ!あたしが壊したのよ! 昼休みここに来たらコードに足ひっかけてね!悪い!?」 おお、開き直った。 「まあそれは自業自得だから悪くないがな、誤魔化そうとしたのは頂けない。」 「しょうがないでしょ!団長がこんなミスしたなんて知られたくなかったもの!」 「それであわよくばコンピ研のせいにして新たなパソコンを、ってか。」 「う……」 「みんなはどう思う?」 俺は他の3人に意見を求めた。 「……良く無いと思いますぅ。涼宮さんがこんなことするなんて……」 「コンピ研に何の罪も無いはず。無実の罪を押しつけようとした涼宮ハルヒは、私の概念では、悪。」 「今回ばかりは賛同しかねますね……涼宮さんに非があると言えるでしょう。」 それぞれ批難の言葉をかける3人。まともな反応で良かったぜ。 これで世界のためだとか言って俺が悪者にされたらキレてたところだ。特に古泉がやりそうだったからな。 いくら世界を変える能力を持つ人間だからと言って、なんでも許されるワケじゃない。 今回のことはきっちりとけじめをつける必要がある。 「パソコンはお前が全額負担しろ。そんでコンピ研の連中に謝りに行ってこい。今までのことも含めてな。」 で、その後ハルヒを連れて、コンピ研に謝りに行った。 ヤツらはなんのことだかさっぱり分からんという顔をしてたがな。まあ巻き込まれたことも知らんだろう。 古泉曰く、閉鎖空間は発生しなかったということ。 反発では無く、ちゃんと自分の非を認めているからだとかなんとか。 俺の行為が世界を滅ぼすことにならずにすんで良かったぜ。 そして帰り道、俺はハルヒと二人で歩いている。 「ねえキョン」 「なんだ?」 「まだ、怒ってる?」 ハルヒがしおらしく聞いてきた。こういうハルヒも貴重だが、やはりいつものテンションが無いと物足りない。 ……そろそろ許してやるか。また古泉の仕事が増える前にな。 「もう怒ってねーよ。ちゃんと罰も受けたからな。」 「ごめんなさい……」 「もういいから、明日からはいつも通りになってくれ。 しおれてるお前もなかなかレアだが、やっぱいつもの方がお前はいいと思うぜ。」 「……うん、分かったわ!」 今日はやけに素直だな。まあどうせ明日からは引っ張られる日々が戻ってくるんだろうが…… それならそれで構わないさ。だが、今回のようなことはこれっきりにしてくれよな? 終わり