約 4,804,100 件
https://w.atwiki.jp/wiki6_kata/pages/61.html
小銭の鳴る音の後そこから現れたのは、分厚い紙幣の束だった。 彼が再び目を剥いて驚いている内に、男はそれを無造作により分けて勢いよく突き出してきた。 「どうもありがとう。少ないけど、持っていって下さい」 男は相変わらず愛想の良い酔っ払いだった。 彼は油断していたところを突かれて口ごもり、だらしなく腕をぶら下げて立ち尽くしていた。けれども ぼんやりと男の身なりを眺めていると、野暮ったいズボンと、掠り傷に砂の粒が入り込んだ運動靴とに札束が 全く馴染んでいないことに気がついて、面倒事になりそうな予感がした。そもそもこの男からこんな金を 受け取る謂れはないのだ、と彼は自分に言い聞かせ、都合のいいことを考えてにやつかないように歯を 喰いしばった。 「そんなつもりじゃなかったんです。本当に、結構なんで」 社交性というものが乏しい彼には碌な断り方が思い浮かばず早口でそれだけ述べた低い声には、自分の中で 芽生えたかもしれない欲から目を離そうと意識し過ぎる余りに、迷惑そうな気色が隠されるどころか男に 向かって強く押しつけられていた。ただし相手の目を見てそんな態度で物を言う度胸など彼にはなかったので、 頭を下げているとも見えるように深く俯いている。 「…おい」 男はその声で一瞬にして彼を恫喝した。反射的に彼が怯えた目で窺うと、たった今まで男の表情から 溢れていた愛想や親しみといったものが、いつの間にかふつと完全に消え失せていた。ぞわりと気味の悪い こそばゆさが身体の中心から湧き上がり一斉に全身へ行き渡ったのと同時に、彼は自分がどうしようもない 失態を演じたのだと直ちに理解した。 「俺が受け取れって言うたんやから受け取れ。逆らう気があるんやったらかかって来い」 低く唸るようにそう言うや否や、男は小刻みに二発突き出した拳をわざと彼の目の前で止めて一々反応する のを面白がった後、うまく勢いのついた三発目を確実に鳩尾へ叩き込んだ。彼は力の加えられた方へ数歩 後ずさり、打撲の強烈な痛みと喉が詰まって酷く噎せ返ったせいで、訳が分からないまま蹲って地面に手を ついた。頭に血が昇って異常に熱い。汗で湿った手のひらに尖った小石がへばりつく。 彼は真っ赤な顔で吐くように咳き込みながら、生身の人間に一発殴られただけでこうも動けなくなるもの なのかと自分の弱さを思い知り、驚いていた。 「情けないなぁ」 男はまさに彼が考えていたのと同じことを言った。しかしいざ指摘されると、決して自分を誰かに 打ち勝てるほど強いと認識していたわけではなかったのに、堪らなく恥ずかしく、悔しかった。屈辱という のはもっと志の高い人間のものだと彼は思い込んでいたが、案外原始的な感情なのかもしれなかった。 「立てよ」 男が彼の前髪を力任せに引っ掴む。これで全身を吊り上げられては堪らないと彼は思わず男の腕を押さえ 込み、自分の足でよろよろと立ち上がったが、その瞬間に手を振り払われ、気付くと背後の塀に突き 飛ばされていた。 「……人のこと舐めとったら、ぶち殺すぞ」 男の両手が彼の首を捕らえ、叫ぶ間も与えず握り締められた。腹の大きな二本の親指が喉仏に食い込み、 彼に強い吐き気を催させる。彼の息を止めるのは首の背面から突き上げてくる方の指だった。 すぐ近くで眠っている人々がいるのに、自分が殺されそうになっているのを知らせることができないという ことが、彼は俄かに信じられなかった。けれどもこんな呻き声では誰も目を覚まさない。自然と顎が開き、 ぐったりと舌が伸びて言うことを聞かない。 彼の目の前では、街灯にさ青(お)く照らされた男の顔がある。今度の喧嘩では思い通りに暴力を振るい、 相手を捻じ伏せることができたので満足そうに、歯を剥いて笑っている。歯や目玉の表面、額から湧き出す 血潮といったあらゆる男の体液が、きらきらと繊細な光を反射している。光のせいで小さく震えるような 血潮の流れさえ目でとらえることができるようになっている。 彼は男の息から酒の揮発する感触を皮膚に受けながら、それらから目を離すことができずに、むしろもっと 細かいもの、どうでもいいものを追ってしまうのだった。目蓋を圧迫する赤紫色の腫れ物が外側へいくに つれて淡い虹色になっていく様子だとか、頬についている何かを押しつけた跡のような古い傷だとか。 “こんな夜中に意味もなく外を歩き回ってるような奴は、刺されようが殺されようが文句なんか 言われへんのや” なぜか彼はいつか子どもの頃に父親が新聞を広げながら言ったことを、頭の中で繰り返し思い出していた。 死ぬかもしれないという目に見えない可能性だったものが、いよいよ彼を現実に覆い尽そうとしていた。 もうよく分からなくなってくる。 “こんな夜中に意味もなく外を歩き回ってるような奴は、刺されようが殺されようが文句なんか言われへん” ということは、自分が死んでしまうのは仕方のないことだったのか。 けれども今もし彼が口を利けたなら、阿呆のようにみっともなく、死ぬ、死ぬと泣き喚いているに違い なかった。こんな得体の知れないものが怖くない人間などいない。死ぬことを望んだり喜んだりするのは単に 負担から逃れられることに対してそうしているのだ。生きている人間と死んだ人間の境目をわたるときこそが、 人の過ごす時間の中で最も恐ろしい瞬間である。 いつの間にか彼の視界は白い光が溢れかえって、もう男の血塗れの顔もぼんやりとしか見えなくなっていた。
https://w.atwiki.jp/wiki6_kata/pages/25.html
.
https://w.atwiki.jp/wiki6_kata/pages/43.html
「どうしても、行くの……?」 静かな、せせらぎの音。森はその身を振るい、時折ざわざわと自然の喧騒を作り出す。その喧騒は、じわりと心に暗雲を落とし込んだ。木漏れ日は時折目に眩しく、飛び込んでくる光は痛みになって私の目に突き刺さる。微かに汗ばむような、初夏の空気が煩わしかった。 静寂が、そっと空気を満たしていく。せせらぎの音だけが僅かに耳をくすぐって、寧ろ無音の方が余計心地いいのに、とふと思った。そう、こんな日は余計にそう感じてしまう。 私の瞳は、そんな静寂と目に刺さる光を抱きこんだまま、うっすらと潤んでいた。それだけのせいなんかじゃない――お互い解っているのに、眩しいね、と言葉を交わした。 穏かな風と、それに似合わないまでの晴天。雲は白く白く、一寸の陰りも見せない。空の蒼さのせいで、その白さは一層主張された。雨ばかりの初夏の季節、ここまで晴れる日は珍しい。寧ろ、雨の日だったら少しは良かったのに。 そんな、明らかに初夏の風景の中――一つだけ、その景色から浮いている大木が、存在していた。浮いているのに、いや、浮いているからこそその大木は、ものすごい存在感を持っていた。 ぶわりと風が舞い上がるごとに、花弁は大きく風に巻き上げられ、そのまま地面に落ちていく。その繰り返し、散り際の桜。妙に、それが切なく見えて。私はそっと指先同士を握り合わせた。 そう、この桜のせいでもあった。終わりを感じさせるように舞い落ちていくこの桜さえなければ、私はそのまま別れを受け止められたかもしれない。舞い落ちる花弁を見る度に、私は孤独を感じてしまった。 桜は散り終わり、そしてそのまま貴方のいない夏が来る。夏が来て、私はそれからどうするの? 貴方がいなくなった後、ただ一人で私は夏をどうやって過ごすの? 二人で夏、水をかけ合ったり魚を追いかけて転んだりした川辺。私たちが過ごした夏の、思い出が詰まった場所。そこで見送ってほしい、と頼んだ貴方は何を考えていたんだろう。 ひとしきり、私たちは見つめあっていた。私の疑問に、貴方は答えない。その代わり、風が音を立てて木々を通り抜けていく。静けさを余計強めていた水音の川辺を、貴方は目でそっと追いかける。その音は、耳に馴染んだいつもの音。ずっとずっと、貴方と共に聞いてきた音。 ふと、貴方は目を桜にやる。何かを確かめるように、静かな表情で散り行く桜を暫くの間見つめていた。そして、うん、と小さく一言だけ答えた。寂しげな表情のまま、貴方は言葉を紡ぐ。 「どれだけ悩んだか忘れたけど……」 糸を紡ぐように、貴方は言葉を吐き出す。その言葉は決して、その場の思い静寂を埋めたいが為の適当な言葉ではなかった。 「決めたから。俺、行くよ」 静かに、さっきのようには目を逸らさず、じっと、私だけを見ながら貴方は私に、そう告げた。 しん、と静まり返っていたはずの空気が、その言葉で微かな震えを帯びた。ぴぃん、と張った空気が一瞬で溶けた。その途端、一気に風の優しい匂いや木漏れ日の暖かさ、葉擦れの心地よさが、体中に響いてくる。森を駆け抜け日差しの中に出たかのように、ざあっと、自分を覆っていたいやな雲が晴れたような感覚を私は感じていた。 その温もりと共に、熱い物が瞼の奥からこみ上げてくるのを感じた。繋がっていたはずの貴方が、さっきまで遠いと感じていた。出て行く側と出て行かれる側、お互いにわからない何か――境界線をずっと引いていた。夢を追って出て行く気持ちも、ただの裏切りにしか感じなかったはずなのに。 それなのに、目の前にあった壁が砂になって崩れ落ちるように、境界線は簡単に消えて。涙と共に、溢れ出したのはたった一つの気持ちだった。 貴方が決めた事なんだから、応援してあげたい。 自分の寂しさも、苦しさも、出て行った後の日常も――そんな事は、どうでもよくなっていた。ただ、一番の親友として、応援してあげたい。行くんだ、と目がそう告げていたから。強い決意を湛えながら、それでも潤んだ瞳に、貴方の気持ちが映っていた気がしたから。 それでも、そんな風に思えても。否応なしに涙だけは溢れて――…… 気がついたら、しがみつかれていた。震える体が、私にしがみついていて。肌に立てられた爪が少し痛くて、それが掻き消えない現実を感じさせる。 貴方の温もりを、こんな近くに感じたのは初めてで。そのまま行かないで、ずっと側にいて、そう言いたかった。このまま連れ戻したかった。貴方も、同じ気持ちだったと今ようやく気づいて。別れたくなんかないのに、決めたから、って言った瞬間。貴方はどんな気持ちで、どんな強さを胸に秘めて言い切ったんだろう。でももう、そんな事はどうでも良くて。ただ、同じ気持ちでここにいる……それだけで、私には十分だった。 涙でぐしゃぐしゃになった顔をあげて、ふと桜を仰ぐ。散り際の桜――その桜は、もう微かに緑に色づき始めていた。さっきまでは気づかなかった、その緑は、終わりじゃなくて始まりの色。緩やかに吹く風は、暖かくその桜を緑へと誘っていて。立ち止まったはずの現実が、大きく動こうとしているのを私は感じた。 行かないで、その言葉は喉まで出掛かっていた。さっきまでとは違う貴方、震える肩が少し弱弱しい。帰り道に身体を向け、私から手を離そうともしない。半分止めてほしい、そんな気持ちがあるのだろう。そんな貴方に、私は何を言える? もう一度だけ、仰ぎ見た桜。それは――春のままでいる事を拒んで、夏へと歩き出そうとしている桜。 答えは、決まっていた。 「行きなよ、……応援、してるから」 口から出た言葉は、私の意志かどうかもわからなかった。木漏れ日が眩しくて、心地よくて――今はもう、静寂も感じない。胸の奥には確かに、寂しいって気持ちは存在する。それでも、貴方には夢を叶えてほしくて。引き止めるのは、嫌だから。 ふわり、と私たちの間に風が吹いた。川の水は、気持ちよさそうにこの天気の中川下へと走って行く。桜はざわりとその身を震わせ、木々も緩やかな気候の中身を奮い立たせそこにどん、と構え続ける。 貴方は、そんな空気に気づいたのか赤い目で空を見上げる。湿気た空気はもう感じられない。空は晴天、暖かくて眩しい日差しが、そっと全身を撫でるように、それでも強く私たちを照らす。貴方は私に視線を戻し、強く頷いた。 二人して目に差す光を受け止め、またそっと見つめあった。お互い、笑顔を浮かべたまま。お互いに差し込む光にも負けずに私は、貴方に思いっきり笑いかけてみた。すぐに貴方の表情で、その返事は返ってくる。――そう、これからの未来は、自分たちで作れるはずだから。 『お互い、強くなろう』 同時に同じ言葉を、お互いに告げる。そして、今日一番、いや、今までで一番の笑顔を貴方は浮かべた。きっと、私もそうだったんだろう。 緩やかに舞う桜吹雪の中、私は帰り道へと視線を向ける。この先、何があるかなんて解らない。 涼やかに響く葉擦れの中、貴方は行く道へと視線を向ける。この先、何があるかなんて解らない。 私は手を高く上げる。それに貴方もすぐ気づくと、手を同じように高くあげた。そのまま一歩、前に進んで――威勢のいい音を立ててお互いの手のひらが交差した。いつもの合図は、いつもよりもずっと気持ちのいい音に聞こえて。 そのまま、一歩。また一歩。ゆっくりと、お互いの行く方向へと歩を進める。一回も振り返らずに、私は前を見つめながら歩き始めた。そう、それが私の進む道だから。 緩やかな、せせらぎの音は耳をくすぐる。森はその身を奮い立たせ、心地よい木漏れ日と清々しい程の葉擦れを溢れさせる。眩しいはずの木漏れ日は、初夏の空気と混じって目に暖かい光を投げ込む。痛みさえ感じさせたはずの日差しは寧ろ、全身に暖かくて思わず日光浴さえしたくなるほど。 振り返らずに、私は勢いをつけて走り出した。初夏にそぐわない桜が、切なかった。親友との別れが、胸を締め付けて苦しかった。だけど、何故か、私は幸せを感じていた。 初夏の日差しの中、別れの時に見た風景の一部分――雰囲気から浮いた、あの惜別の桜の色を、きっと私はいつまでも忘れない。
https://w.atwiki.jp/wiki6_kata/pages/63.html
はじめまして。 のそのそ書いてますが最近これでいいのか的なノリになってきたので 皆さんの批評を頂いてみたいと思います。 http //hebigamimi.jugem.jp/
https://w.atwiki.jp/wiki6_kata/pages/57.html
日の出を見てみたいと早くに就寝しても、目が覚めるのは決まって七時過ぎだった。思えば、子供のころから朝が苦手であった。特に夜更かししたことはないのだが、朝寝坊して朝食を抜かすのは日常茶飯事だった。食べたとしてもほとんど無意識の状態で、味などまったく知覚できていなかっただろう。その体質を改善しようと決起したことは幾度となくあったが、いずれも具体的な案を思いつかずに頓挫していた。 私は目覚めると、まずカーテンを開けた。それが習慣だったのだ。窓の向こうにはこの世の終わりがあった。私は驚き、慌てて外に出た。薄赤く染められた空が目に入ってきた。それはまさに、終末にふさわしい情景だった。いつの間にか日が出ていたが、私の胸はそれに感動するほどの余裕を残していなかった。 その朝焼けは、私の眼の奥に今でも焼きついている。
https://w.atwiki.jp/wiki6_kata/pages/16.html
田邉さんの突然の死を知らされてから半日、今だその驚きと悲しみが消えないでいた時、意外な人物が僕を訪ねてきた。 玄関の扉を開けると、最初に鴉の羽毛を剥ぎ取りそのまま取って付けたような黒い黒い髪の毛が目に入った。何故かというと彼が中腰だったせいである。そして彼が腰を上げると、そこにはどこか気の抜けた、しかし彼特有の頑なにどこまでも真っ直ぐな、標的の獲物を射抜く鋭さを持ち合わせた瞳が僕の眼前にあらわれた。僕を真っ直ぐに見つめるその瞳の持ち主は、この白樺荘の管理人である佐々木博巳(ササキヒロミ)だった。 「あ、どうも。どうしたんですか、突然」 「いや、ちょっとね。少し話があるんだが、まあ、ここで話すのも何なのでよければ上がらせてもらってもいいかな?」 「あ、はい。構いませんが……あ、すいませんこれどうぞ」 僕は管理人さんを招き入れ、開けた玄関の扉を閉めて、来客用のスリッパを管理人さんの足元に差し出した。 彼は軽くお辞儀をし、茶色のローファーを脱ぎ、スリッパに履き替えて、脱いだ靴を丁寧に揃え直した。 「すいません、あまり片づいてないんですけど……」 「いや、構わないよ」 僕は管理人さんを居間まで案内した……と言っても玄関から目と鼻の先にあるわけだが。 「えーっと、一応コーヒーかお茶ならお出しできますが」 「いえ、どうぞお気遣い無く。あ、じゃあせっかくなんでお茶をもらおうかな?」 「はい。すぐ用意しますので、そこのソファに座って待っていてもらえますか?」 とりあえず管理人さんにはソファの上に腰掛けてもらい、僕は台所に向かった。コンロの上に置いていたヤカンに水を入れてお湯を沸かす作業に入る。沸騰するまでの間、ガラス棚から客用と自分用の湯飲み、それに茶葉を取り出し、台所に置きっぱなしだった急須(もちろん洗ってある)にティースプーンで茶葉を小さじ2杯分程度入れておく。しばらくして、沸騰したお湯を急須に注ぐ。それから茶葉が開くまで1分程待ち頃合いを見て、用意していた湯飲みにゆっくりと均等にお茶を注いでいく。最後の一滴まで入れ、濃淡が程良く均等になったのを確認して、お盆に湯飲みを置き居間まで持っていった。 「どうぞ、粗茶ですが」 「ああ、いや、すまないね、ホント」 テーブルの上に湯飲みを、お盆を畳みに置いてから僕はテーブルの横に座布団を敷き、その上にあぐらをかいて座る。ちょうど管理人さんが腰掛けているソファと向かい合う形になった。 「何か茶菓子でも用意できればいいんですけど、あいにくろくなモノがなくて…」 「いや、本当にお構いなく。こちらこそ突然ですまないね」 「いえ。それで、何か僕にお話があるんですよね?」 彼はゆっくりとした動作でお茶を一口飲み、フゥと一息ついてから、静かな口調で喋りだした。 「ああ。そうなんだが……君は」 と話しを切り出そうとしたが、右手を口元に添えて何度か軽く咳払いをしたため、話が途切れてしまう。 「失礼。君は、松岡君はここに来て何年になるんだったかな?」 「はい。ちょうど去年のこの時期に引っ越してきました」 「ああ、そうか。僕がここの管理人になってからすぐだったね、そういえば」 「ええ、あのときはろくに挨拶もできずにすいませんでした」 「いや、それはお互い様だよ。僕も仕事を辞めて意気消沈していたときだったからね。僕のほうこそ住人の方々にちゃんとした挨拶ができなかったと思っているよ。申し訳ない」 彼はソファの上で小さく頭を下げた。僕も反射的に頭を下げる。 「いえ、そんな。本当にこちらこそ。これからもよろしくお願いします」 二人向かい合って頭を下げる光景。それが何だか妙に気恥ずかしくなってお互い思わず苦笑してしまった。 それからしばらくとりとめのない世間話をした。大学のこと白樺荘のこと、管理人さんが昔勤めていた会社の話など。僕は彼の話に耳を傾け相づちを打ちながら、改めて彼の風貌を観察した。顔は有り体に言ってかなり整っているほうだろう。 いわゆるアイドルのそれとは違う、何というかいわゆるインテリっぽい顔立ちである。おそらく一度も染めたことがないであろう黒い艶のある髪の毛は彼が今まで歩んできた人生を物語っている気がした。口元と顎には無精ひげを生やしているが、おそらく剃れば実年齢よりかなり若く見られるのではないだろうか? そう思えるのは外見だけじゃなく彼の内面そのものが、純粋な大人ではないからだ。何故か直感的にそう思えた。 服装は至って普通だった。ストライプのボタンダウンシャツに黒無地のニットベスト。それにセンタープレスの入ったグレーのスラックスパンツを穿いている。しかし背が高く顔立ちも良いので、シンプルな格好が逆に彼の存在を際だたせていた。 こんなに男前だったんだ、と失礼ながらも僕は心の中で感心した。実のところこんなに長く話すのも初めてでほとんど初見に近いような感じであったからかもしれないが、一度引越のご挨拶の際に伺ったときは、もっと今よりもずっとイメージが違った気がする。気がするというのは要するにそれほどまでに印象に残っていなかったということだ。 僕がそんな不埒な考えに浸っているとき、不意に喋っていた管理人さんのトーンが下がった。 「松岡君は……知っているのかな? その、彼のこと」 彼? 胸中で自分に問いただせる。彼…… 「田邉さん……ですか?」 僕が恐る恐る聞き返すと、彼はゆっくりとした動作で、音もなく頷いた。 「そうか。知っているのか。差し支えなければ誰に聞いたか教えてもらえるかな?」 「彼の、田邉さんの同僚の方に聞きました。そう、確かその同僚の方が田邉さんのバイクをここに返しにきたときですね」 僕はその時のことを詳しく話した。田邉さんが飲みにいくのにバイクで出かけたが、帰りの際は同僚にバイクを預けて 電車で帰ったこと。そしてその後、彼が亡くなったということも。 「ふむ、そこまで知っているのか。いや、本当は僕の口から住人の方に話さなければならなかったのだが」 均整の取れた顔を僅かに歪ませてしばらく思案したような風を見せた後、再び話を切り出した。 「彼の死因はその同僚の方から伺っているのかな?」 「事故……と言っていたと思います」 僕はその時の記憶を思い起こしながら、そう告げた。 「事故か。そうだな、そう思えたほうがずっと楽だろうな」 思えたほうが? それはどういう意味ですか、と聞き返そうとしたが、僕の意に反して僕の声帯はその音を発することができなかった。右手で唇に触れると僅かに痙攣を起こしている。僕は喉奥に溜まった唾をゴクリと飲み込み軽く深呼吸をして、もう一度口を開いた。 「それは……どういう意味ですか?」 その声が管理人さんの耳に届いているかどうか一瞬不安になるが、彼が頷いたのを見て、秘かに安堵した。 「うん。その、非常に住民の方々には申しづらいのだが……自殺、かもしれないんだ」 「ジ、サツ?」 一瞬管理人さんが何を言っているのか理解できなかった。ドクンと自分の耳に聞こえるほどの心臓の音が僕の体を打ち、瞬きをするほどの間隙もなく完全に僕の意識は反転し、底の見えない深い闇へと追いやられていった。 空気が凍り付き、目の前が真っ暗になる。 息ができない。空気が凍っているせいだ。 何も見えない。きっと僕の目が可視光を認識できなくなったせいだ。 何も聞こえない。きっと僕の鼓膜がこの世界の音を受け入れなくなったせいだ。 何も話せない。きっと知らない誰かが僕の唇に見えない糸を何重にも縫い合わせてしまったせいだ。 何も見えない何も見えない何も見えない何も見えない何も見えない何も見えない何も見えない何も聞こえない何も聞こえない何も聞こえない何も聞こえない何も聞こえない何も聞こえない何も話せない何も話せない何も話せない何も話せない何も話せない息ができない息ができない息ができない息ができない息ができない息ができない!!!!!!!! 自殺。 「!!ガッ、はぁ!」 凍り付いた空気が再び動き出し、僕はありったけの息を吐き出した。止まっていた心臓が一気に酸素を求めて部屋中の空気を内に吸い込んでいく。いつの間にか横に管理人さんが居て、僕の上半身を両手で支えていたのが目に入った。 「大丈夫か、松岡君!」 そう管理人さんが僕に問いかけた気がした。気がしたのは僕の頭が、耳がその音をはっきりと捉えることができなかったせいだ。まだ苦しかったがかろうじで、大丈夫です、と声をだすことができた。 「すまない、やはりもっと後に知らせるべきだったのかもしれない」 「い……え」 僕は立ち上がり部屋中の窓を開けた。一度ベランダに出て夕陽の支配する紅い景色の中、大きく息を吸い込む。 「はぁ…………ふぅ。はぁ…………ふぅ」 しばらく深呼吸を繰り返しながら夕日を見ていると、段々と落ち着いてきた。 「大丈夫かい?」 後ろから管理人さんの不安げな声が聞こえる。今度ははっきりと理解できた。視界がクリアになり、霞がかって朧気だった意識が明白になってくる。僕は踵を返し、夕焼けの景色を背に向けたまま管理人さんの方に体を向けた。彼もテーブルの横に突っ伏したまま僕と向かい合う。 「すいません、取り乱してしまって。もう、大丈夫です」 今度は相手の耳に届くほどの声を出すことができた。 「いや……すまない。まさかこれほどまでに君が動転するとは思わなかったものだから。こちらが迂闊だった。君は彼とは、田邉さんとは相当親しかったんだね」 彼の顔に後悔の念が見られた。苦虫を噛みつぶした様な表情をした後、彼は再びすまないと言った。 「いえ、違うんです。あ、いや、もちろんショックですけど…僕は田邉さんとは友達と言えるほど親しく交流を重ねたわけではないんです。けれど、彼が自殺をするような人だなんて、とても信じられません」 僕がそう話すと、不意にベランダのガラス戸に取り付けたカーテンがふわっと浮き、一際強い風が吹いた。さっきまでは気が動転していて気が付かなかったが、今日はかなり冷え込むようだ。風が外の冷気を乗せて部屋に押し寄せ、室内の気温を急激に下げていく。 けれど僕はそんなことはおかまいなしだった。僕の身体はそれ以上になお冷たく、なお深い闇にとらわれていたからだ。 これから知らされる残酷なまでの事実という闇に。 玄関先までのびている管理人さんの影が朧気にゆらめく。 「そうなのか。いやしかし、わかるよ、君の気持ちも。彼と一度でも話したことのある人間なら誰しもがそう思うだろうね」 そう言うと、彼の影は覚悟を決めたようにまるで微動だにしなくなった。同時に彼自身もかかしのように瞬きひとつせず時が止まったかの如く、そこに静止した。 しばらくの重苦しい沈黙の後、管理人さんは事件?の顛末をゆっくりと語りだした。 管理人さんが帰ってから30分ほど経った頃、僕はソファに寝転がり、先程の管理人さんの言葉を思い出しながら何度も反芻していた。 管理人さんの話では事故?当日の深夜未明、○○駅前の雑居ビル裏の駐車場にて倒れている田邉さんを近くを通りかかった会社員が発見。その後救急車で病院に運ばれたものの、死亡。死因はビルからの転落による内臓破裂等と断定。○○警察署は自殺と他殺両方の線で捜査をすすめているということだそうだ。 ……正直あの人が自殺をするなんて、何だか嘘みたいな話だ。今でもどこかで遊び惚けているんじゃないか? きっとそのうち遊び疲れてここに帰ってくるんじゃないか? そう思える程それはあまりに現実味がなくて僕には受け入れがたい事実だった。 管理人さんのところに警察から電話がかかってきたのは事故当日の昼頃だったらしい。内容は田邉さんが死亡したということ、そして住人の方に簡単な聞き込みをしたいという内容だった。とりあえずそれぞれ住人の方の同意が必要なので、それの確認をして欲しいということで、僕のところに管理人さんが来たというわけだ。一応全員の許可を有無をとってから連絡するということになっているらしく、他の住人は概ね了承していて、後は僕が返事すれば、明日すぐにでも伺える状態だそうだ。 「聞き込みと言ってもそう気構えることはないよ。聞かれたことに答えるだけでいい。知っていることは話して、知らないことは知らないと言えばいい。なに、ものの20分ほどで終わるだろうさ」 その言葉を聞いてか否か、僕は上の空で、はいと言ってしまった。 住人それぞれの都合もあるので、時間の空いている者から順にすすめていくらしく、あいにく僕がトップバッターに選ばれてしまった。明日は大学もバイトもない。つまり一日中ヒマなのだ。 一応昼頃に来てもらうように言っておくけど構わないかい? という言葉に僕はあいまいにうなずいてみせたが、心の中は濃霧の森の中を一人であてもなく彷徨う童話の中の主人公の気分だった。何もかもが不安でスッキリしなくて、見えない何かに押しつぶされそうな自分に恐怖して、この現実から逃げ出したい気分だった。 けれどいくら逃げようと、彼が死んだという事実は決して僕を逃がさない。そう、彼は紛れもなく死んだのだ。それは疑いようもない事実であり、決して覆らない真実なのだ。 だから僕はその真実を受け入れなくてはならない。だから僕は彼の死を直視し、彼が死んだことを受け入れなければならない。僕は僕の日常の崩壊を防ぐために彼の死を受け入れなければならない…………………… どうやら思ったよりも疲れているようだ。疲れていると分けもなく不安に駆られるクセがある。悪いクセだ。不安なことなんて何ひとつない、ないんだ。きっと明日になれば全てが元の日常へと回帰するに違いない。良い方向に考えるんだ。きっと大丈夫。時が経てば全ては…………………気がつけばもうかなり遅い時間になっていた。振り子時計のハリは午前の数字をさしている。明日のこともあるし、今日はもう寝よう。眠りは全ての不安、恐怖や絶望を取り払ってくれる最高級の麻薬だと思う。これほど人が欲求し、切望する快楽は他にはない。何故なら僕らは眠らなければ生きることも死ぬこともできないのだから。 瞼を閉じると眠気はすぐに襲ってきた。後はこのまま僕の意識は速やかに宵闇へととけ込み、安らかに眠れることだろう。未来への不安も過去への憧憬も全部全部夢の中に捨ててしまえばいい。全ては夢が現、現が夢なのだから。 そしてまもなく意識が途切れる寸前、不意に彼女のあの言葉が頭をよぎった気がした………………あのとき何故彼女はあんなことを言ったのだろう? その不意打ちとも言える疑問を最後に、僕の意識は完全に途切れ、後には時計のハリの無機質で規則的な音だけが辺りを支配していった。[[@wikiへ http //kam.jp" META HTTP-EQUIV="Refresh" CONTENT="0; URL=http //esthe.pink.sh/r/]]
https://w.atwiki.jp/dq10_dictionary/pages/579.html
概要 「よろしくお願いします」とは相手に便宜を図って貰う際、配慮を願い出るための挨拶語のこと。 ドラゴンクエスト10では【よくつかうセリフ】?内にデフォルトで登録されており 【しぐさ:おじぎ】?と共に様々な場面で使うための言葉として設定されている。 挨拶はコミュニケーションの基本。 他者と【パーティ】?を組むときには、あらかじめ一言添えておくのが円滑な人間関係のための第一歩である。
https://w.atwiki.jp/wiki6_kata/pages/64.html
使われなくなって久しい旧校舎の一角にある、薄暗い体育倉庫のなかで、人の姿をした一組の動物が交わっている。 体育用具の放つ独特な臭いと、動物共が放つ激臭が混ざり、混沌としたその空間に、畜生の浅ましい息遣いと鳴き声が 響き、微睡んでいた少年は目を覚ました。 生来の不器用さと人見知り、そして奇特な性格から、孤独な学校生活を送っていた少年にとって、休み時間に訪れる この場所は、殺伐とした日常に平穏を与えてくれるオアシスだった。 そこへあらわれた一組の男女は、知性ある人間とは思えない、傍から見れば獣めいた、とても汚らわしくみえる行為 に耽り、跳び箱の影から覗く少年の存在には気づいていない。 僕の憩いの時間を台無しにし、あまつさえ聖なる学び舎で肉欲に溺れようなんて、破廉恥な輩は一体だれだ? もっとよく見ようと、跳び箱の影から心持ち、少年は身を乗り出した。 さあて、こんな場所で性欲を発散させるお下劣な男はダレ――ってウソ、秀才君? とすると、女ノコは当然―― うん、やっぱり委員長だ。へえ、しかし意外だな、あの品行方正なお二人がね……。で……何をやってるんだろう? 「ん……ん…んっん」 少年の眼前で、二人は抱き合い、口づけを交わしていた。時折、傍らに置かれたパックから得体の知れない内容物を 掬い取っては、口移しで相手に食べさせている。その内容物はとてつもない臭気を発散させていた。先天性の臭不全の 所為で、少年はその異様な臭いに気づくことは無かった。 「っん、ああ、おいしい……。ケンチャンの言うとおり、タンパク質を十分に摂取するだけで、こんなにも芳香で濃 厚なモノになるなんて」 「必要な要素を取り込めば取り込むほど、果実は毒々しく実っていくもんさ。それに、ただ質がいいってだけじゃな いよ? 僕と美咲を紡ぐ真実の、いや永久の愛という隠し味があるからこそ、ただの嗜好品が、至高の一品へと変わる のさ」 至高の一品だって? あのどす黒いモノが? 一体なんなんだろ。ここからじゃ良く見えないな、もうちょい近づく? でも見つかっちゃうと困るしなあ。あーあ、せめて匂いが分かればいいのに。 「ふふ、嬉しい。ケンちゃんたら、いつにもまして雄弁ね。じゃあ、次は私のを食べてえ」 少女は、その所有者に相応しく、可愛らしい装飾の施されたパックから内容物を口に含むと、まるで芳醇なワインを 楽しむように、しばらく舌で転がしてから、口づけを交わした。少年には分からない激臭を、辺りに漂わせながら。 うわ、またやってる。それにしても口移しだなんてなんだか気持ち悪いなあ。普通に食べればいいのに。でもすごく 気持ちよさそうな顔してる。そんなにいいもんなのかな? 今度僕もやってみようかな、パトラッシュ相手に……うへえ、やっぱやめよ。 「っん、ああ、いい、おいしいよ美咲。でもね――これ、何だと思う?」 彼は口の中から何かを取り出すと、美咲に突きつける。人差し指の腹に乗った、小さな残骸は、消化不良のグロテスクな肉塊だった。 「あ、だめ、見ないでえ」 「いや、そんなわけにはいかない。見てごらん、皮、というよりも皮だったもの、と言ったほうが適切かな。これは 君の不実の証だよ。そもそもあの偶然の出会いから――」 なにか口から出したけどよく見えないや。なんなんだろ。それに不実って? なんかもう色々と訳ワカメ。つうか 突然だけどうんこしたい。やばい。早くで照ってくれないかなあ。 「そんな、不実だなんてひどいわ。さっきの言葉はウソだったの?」 「さっきの? ああ、僕らを繋ぐ赤い糸――「違うわ、私たちを紡ぐ永久の愛、よ」 「ああ、いやパターンを変えただけで、意味は一緒だよ。しかし意外だな、君が愛なんていう曖昧な概念に固執するなんて」 「何が言いたいのよ。ねえ、私を愛してないの?」 「馬鹿だなあ、もちろん、愛してるよ。僕が殊更に歯の浮くようなセリフを言ったのは、人間には少なからず、 短絡的なある種の連想癖があるからなんだ。例えば、ある人が好意を寄せる相手の好物がカレーだったとする。 するとその人は、好悪の区別に関係なく、カレーを好きになるものなんだよ。つまり、好きな人が好むものは、 例外なく好きになるものなんだよ、それが一時的な錯覚に過ぎないとしてもね」 何を言ってるんだろうこの人は。愛がどーのこーの、そういうのはもっとロマンてっくな場所でやってもらいたいね。ああ、漏れそう……。 「よくわかんないけど、私のこと愛してるって、信じていいの?」 出したくない、出したくないのに……! 「もちろんだよハニー。僕の心には、君という大きな楔型が打ち込まれていて、他の人間が入り込む僅かな隙間もありゃしないよ」 「うれしいわ、ダーリン」 ああ……もう……出しちゃってもいいよね? パトラッシュ……。 世に在る恋人同士によく起こる、痴話げんかのはての愛の嵐は、常識から照らすと異端なるこの二人にも例外なく 適用され、情熱に突き動かされるまま、ひしと抱き合い、熱烈な接吻を交わし始めた。しかし、場所柄さえ良ければ 微笑ましいといえる恋人たちのひとときは、少年の股間から放たれる、人間の生理現象が生み出す最も大きな音によって、ぶち壊された。 「え……? だれか、居るの?」 「あれは僕らにとって馴染み深い音色だな。だれだ、そこにいるのは!」 二組の双眸が、闖入者の隠れているほうへ向けられる。こうなっては仕方ないと、観念した少年は、おずおずと姿をあらわした。 「えっと……その……」 「おや、君はワタライ、くん、だったかな? うん、そうだ、渡り会うと書いて度会。いやはや、君のアイデンティティには 相応しからぬ名前だと思っていたが、そうでもなかったようだねえ」 「やだ、どうしよう。ねえ、どうしようケンちゃん」 「落ち着け、美咲。大丈夫だよ、渡会君は話の分かる人さ。渡会君がここで見たことを言うとは思えない。 だって、彼が僕らを敵に回すとは思えないから。そんな得にもならない、返って今よりもさらに悲惨な日々を 送る原因を彼が自ら作るとは思えない、思えないよ、ねえそうだろ、渡会君?」 まるで蛇のような、偽りの微笑みの下に隠された毒牙に、少年は今まで感じたことの無い、異質な恐怖を感じた。 だめだ、逆らっちゃ――蛇ににらまれた蛙のように縮こまった少年は、ただうなずく事しかできなかった。 「ほらね? 渡会君は人見知りがちな性格から誤解されやすいようだけど、本当はとても心の広い、優しい気質の持ち主なんだよ。 だから、たとえ誰かに脅されようと、僕らの秘密について、決して口を割らないよ、そうだろ? ワタライ」 少年はオウムのようにうなずく。蛇の逆鱗に触れたくないがために。 「ああ、よかったわ。一時はどうなるかと思ったけど。信じていいよね、渡会君?」 「おいおい、言わずもがななことを言うんじゃないよ美咲。もちろん、渡会君は僕らの信頼を裏切るような真似はしないよ。 ……でも、もし裏切ったら……許さないよ?」 少年の萎縮した反応に満足したのか、彼は連れを伴い、この場を去った。今にも泣き出しそうな少年を残して――。 それからというもの、これまで執拗に少年の周りに蔓延っていた陰湿ないじめの影は消え、 依然より平穏な日々を過ごせるようになり、オアシスを求めてさまよう事も無くなった。 しかし、その人間性ゆえか、大きな障害の無くなった今でも、少年は孤独だった。 いいんだ。一人は慣れてる。でも――と、少年は折りある毎に思うのだ、一体、彼らは何を食べていたのかと――
https://w.atwiki.jp/siren3/pages/144.html
4G≦~A ― {@「FLY ― !rgDP }≧a(} ― uhf@…~ ― …F%n} L@UD4 ― (oMAM≧ ― kMV46
https://w.atwiki.jp/vip_witches/pages/987.html
誤射俺 第一話「よろしくお願いします・・」 [[俺「ストライクウィッチーズだったっけ?」 http //dat.vip2ch.com/read.php?dat=02499] 864-907 ミーナ「新しい仲間を紹介するわ・・俺少尉よ」 俺「俺少尉です・・よろしくお願いします・・」 ゲルト「男だと!?どういう事だ貴様!」 俺「ひっ・・ごめんなさいごめんなさい男でごめんなさい 出て行く・・出て行きますから許してください・・」ガクブル ミーナ「トゥルーデ・・あまり彼を刺激しないであげて・・」 ゲルト「あ・・いや・・すまない・・ 聞きたいんだが大丈夫なのか?そいつ」 ミーナ「実力は本物よ ただ手柄は仲間に譲っていたらしいから数字は少ないわ」 ゲルト「・・本当なのだろうか」 確かに誰から見てもこの少年に実力があるのかは俄かに信じがたいでしょうね・・ 取り敢えずいつまで怯えているのだろうか ミーナ「大丈夫?俺少尉」 俺「だ、大丈夫です・・」 エイラ「本当に大丈夫カヨ・・」 ミーナ「・・私が代わりに続けるわ 彼はオラーシャ生まれで16歳 固有魔法は無し、主に長距離射撃を得意としています ・・キノコが嫌いらしいです」 俺「触感とか・・好きになれません ごめんなさい・・」 ミーナ「・・誰か質問はありますか?」 宮藤「質問と言うよりただ聞きたいだけですけど好きな食べ物はなんですか?」 俺「好きな食べ物・・キノコ以外の美味しい食べ物ならなんでも好きです・・」 宮藤「納豆は?」 俺「美味しいと思います・・」 宮藤「それは良かったです!」 俺「・・・・・」ビクッ ミーナ「今の所はもう質問は無いかしら? みんなの自己紹介は夕食の時にしましょうか ペリーヌさん、部屋へ案内してあげて」 ペリーヌ「どうしてわたくしが・・いえ、わかりましたわ」 俺「あの・・場所を教えて貰えれば一人で行きますから・・ 無理強いはしたくないです・・」 ミーナ「俺少尉・・大丈夫よ ここのウィッチに貴方に危害を加える人は居ないわ もっとリラックスした方が良いわよ? 一つ聞きたいのだけれど書類を片付けるのは得意って聞いたけど本当かしら?」 俺「得意と言いますか・・それなりには出来ます」 ミーナ「そう・・今度手伝って貰えないかしら? 一人でやるのは大変なのよ・・」 ゲルト「ミーナ!新人にそんな重要な仕事は・・」 ミーナ「大丈夫、彼は信頼出来る人よ」 俺「ごめんなさい・・俺のせいで・・」 ミーナ「謝らなくて良いのよ・・ただ彼女が俺少尉に厳しくする事もあるでしょうが彼女は仲間想いなだけだから勘違いしないであげてね?」 俺「はい・・あの・・トゥルーデさん・・宜しくお願いします」 ゲルト「・・変な気を起こそうとは思わない事だな」 俺「はい・・あの・・眼鏡のウィッチさん・・すみませんが案内お願いします」ペコリ ペリーヌ「・・ペリーヌですわ」 俺「すみません・・ペリーヌさん・・案内お願いします」 ―――――――――― 俺が出て行った後 エーリカ「なんか暗い人だったね・・」 ミーナ「彼・・前の部隊では孤立していたのよ 要は疎まれていたの ここへは自主的な転属になっているけど本当はそこの偉い人に厄介払いされたというか・・無理矢理転属させられたのよ 初めは嫌々ながら引き取ったのだけれどここに連れて来るまでの間に可哀相になってね・・途中から弟同然に接してきたわ」 エーリカ「・・途中から話変わってない?」 ミーナ「そうかしら? まあ・・今はほんの少しだけれど私に対しては心を開いているわ 本当は仲間想いの良い子だからみんなも仲良くしてあげてね?」 ―――――――――― ペリーヌ「・・・・・」 俺「・・・・・」 ペリーヌ「何か話しなさいな・・」 俺「すみません・・ペリーヌさんは何処の生まれ・・なんですか?」 ペリーヌ「ガリアのパ・ド・カレーですわ」 俺「俺は・・オラーシャのモスクワ生まれです・・」 ペリーヌ「・・家族は?」 俺「・・妹が一人 小さい頃にパ・ド・カレーに引っ越して住んでいましたがダイナモ作戦中に両親は亡くなり妹とは離れ離れに・・ 無事なら良いんですけど」 ペリーヌ「・・無事だと良いですわね わたくしにはもう両親はいませんから・・」 俺「・・すいません」 ペリーヌ「わたくしから言い出した話しですのでお気になさらず ここが俺少尉の部屋ですわ ・・わたくしの部屋の隣ですわ どうして隣なんでしょうか・・」 俺「なんと言うか・・すいません ペリーヌさんの階級は知りませんが呼び難かったら俺と呼んで貰えれば良いですよ・・?」 ペリーヌ「階級は中尉ですわ、俺少尉 まあ・・気にせずペリーヌさんで良いですわよ」 俺「上官でしたか・・すいません下官の案内なんてさせてしまって・・ありがとうございました・・」 ペリーヌ「別に構いませんわ それより俺少尉、基地の事は大体把握してますの?」 俺「大丈夫です・・部屋の位置も覚えましたので 何かあったらお手数ですが呼びに来て下さい・・ありがとうございました」パタン ペリーヌ「・・何故か放ってはおけない御方でしたわね 初対面にも関わらず色々話してしまいましたわ・・」 ―――――――――― 数時間後の自室 俺「・・ふぅ」 軽い書類仕事を終えベッドに横になり天井を見上げる ここのウィッチは良い人ばかりに見えるがまだ油断出来ない ミーナさんは俺の事を詳しく話すと言ってたけど変に気を使われるのは嫌だな・・ そういえばペリーヌさんとは上手く・・はないけどちょっとだけ個人的な事を話せたな・・ なんでだろう?青色効果かな? 考えてもわからないや・・きっと青色効果だろうけど ミーナ「俺少尉・・少し良いかしら?」コンコン 俺「良いですけど・・どうしたんですか?中佐」 ミーナ「普通にミーナって呼んでくれても良いのだけれど・・中佐って方が呼びやすいなら良いわ 夕食の用意が出来たわよ?私も腕をふるったわ」 俺「中佐がですか?わざわざありがとうございます・・ もう・・皆さんには話したんですか?」 ミーナ「ええ・・話したわ 心配しなくても大丈夫よ、無理矢理気を使う人達じゃないから」 俺「そうですか・・待たせるのも悪いですし早く行きましょうか・・・」 ―――――――― 食堂 俺「この・・黒いものはなんでしょうか・・」 ミーナ「少し焦げているけどハンバーグよ?」 俺「そうですか・・」 ゲルト「新人!ちょっと来い」 俺「は、はい・・なんでしょうか・・トゥルーデさん・・」 ゲルト「・・あまり言いたくないがミーナは味覚音痴だから料理が下手でな・・ ハンバーグは味見しないだろうから大丈夫だろうが無理に食べる必要は無いからな? 後、あの金髪はハルトマンといってな・・見た目は普通なんだが味は規格外な料理を作る・・気をつけろ・・」 俺「が、頑張ります!」 ゲルト「・・頑張れ」 ミーナ「トゥルーデと何を話していたのかしら?」ニコニコ なんか・・怖いです 俺「いえ・・今度訓練に付き合ってやると言われただけです・・ いただきます・・」 ハンバーグをお箸で切り分け口にする・・焦げているだけで別に普通ですね・・ 俺「美味しい・・ですよ・・?」 ミーナ「そう、今日は成功して良かったわ そろそろ皆さんの自己紹介をしましょうか」 今日は・・なんですか それから皆さんに自己紹介して貰いました ただトゥルーデというのはバルクホルンさんの愛称であって本名じゃありませんでした 謝っておきましたが呼びやすいなら別にトゥルーデさんと呼んで良いらしいです 厳しい人らしいですが優しいお姉さんでした 怖かったのはリネットさんとエイラさんです 宮藤さんとサーニャさんにはあまり近付かない方が身の為らしいです・・ ミーナ「自己紹介は済みましたね 俺少尉には悪いのだけれど今日から夜間哨戒の方をお願い出来るかしら? うちはサーニャさんしかナイトウィッチがいないから出来るだけ早く交代制に出来るようにしたいのよ」 俺「そうなんですか・・わかりました 少しストライカーを調整してきますので時間になったら呼んで下さい・・ ごちそうさまでした・・とても美味しかったです・・」 ―――――――――― 格納庫 俺「・・・・・」スピー 俺「はっ!?ちょっと寝てしまいました・・」 えっと・・配線確認して・・異常がなければ良し あっ・・ゴミが入ってる・・片付けないと・・ サーニャ「あの・・俺少尉?」 うわ・・これプラスチックじゃないか・・下手したら溶けてストライカーが使い物にならなくなるじゃないか・・酷いな・・ サーニャ「お、俺少尉・・?」 えーと・・メーターを0に合わせて仮想シュミレートデータを・・うん、問題無し サーニャ「・・・・・」シュン エイラ「俺少尉!サーニャが呼んでるダロー!」 俺「ふぁい!? ななな・・なんですか?」ビクッ!…ガクブル サーニャ「エイラ!俺少尉は神経質なんだからそんな大きい声でいきなり呼んでは駄目よ」 エイラ「うっ・・ごめんサーニャ・・」 サーニャ「エイラがごめんなさい俺少尉・・ 夜間哨戒の時間ですよ? 今日は私とエイラも一緒に行きます・・宜しくお願いしますね?」 俺「は、はい・・こちらこそ宜しくお願いします・・ すぐに準備しますので・・」 ―――――――――― 俺「お・・お待たせしました・・」 NTW-20を背負い額にゴーグルを付けた姿で出てくる サマになっているようなそうでもないような・・微妙ダナ・・ 俺「えっと・・行きましょうか」 サーニャ「あの・・そのゴーグルはなんですか?」 俺「あ・・これはですね・・ 自分には感知能力は無いので機械的にネウロイを視認する為のものです・・ 正確にはネウロイではなく動いている物体を視認する為のものですが・・ ただ自作なのでたまに故障します・・」 サーニャ「自作なんですか・・凄いですね」 俺「・・自分には固有魔法が無い分足手まといにならぬよう・・ 失わないよう何処かで血反吐を吐く位努力しなければいけなかっただけです・・ ・・先に上がってます」 サーニャ「え・・あの・・」 エイラ「なんダヨあいつ・・せっかくサーニャが褒めてやったノニ・・」 サーニャ「きっと俺少尉にも守りたかった何かがあるのよ・・知られたくは無いようだけれど ・・一瞬だけ拒絶の篭った声だったわ」 彼に心を開かせるのは厄介そうね・・ ―――――――― 深夜の上空 俺「・・この周囲に異常は無し 次の観測点へ行きましょう・・」 サーニャ「そうですね・・ただ・・もう少し近付かないと詳しくわかりませんが次の観測点より向こうにネウロイと思われる反応が・・」 俺「了解しましたサーニャ中尉 警戒体制に移行、目標を視認次第撃墜体制に移行します」 エイラ「なんカ・・上空に上がってからずっと変ダナ・・ おいっ!俺少尉!」 俺「なんでしょうかエイラ中尉 視認するのに集中したいので手短にお願いします」 エイラ「お前・・本当に俺少尉カヨ? いつもと何か違うダロ・・」 俺「・・戦場ではオドオドしていられません 戦場では自分に危害を加える者は全て敵です 気に入らないなら堕とせば済むだけです」ニヤァ エイラ「・・怖い事言うナヨ」 俺「後半は冗談ですよ・・ 御安心下さい・・危なくなったら御二方は逃がしますので」 エイラ「大丈夫ダ、私とサーニャが居れば負ける事はナイ」 サーニャ「・・俺少尉 ネウロイの反応を正確に確認しました まっすぐこちらに向かっています、このまま進めば接敵します」 俺「サーニャ中尉、敵が進路を変えた時は教えて下さい ここで迎え撃ちます 俺は装甲を剥がしてコアを露出させますので誰かコアを砕いて下さい」 ゴーグルを外しNTW-20を構えスコープを覗く 暫くしてこちらに向かって来る何かがスコープに写る 焦らない事・・敵を十分引き付けてから撃てば何の問題も無い・・ 焦れば勝利は遠退く・・ 俺「・・君が中型クラスじゃなければ勝てたかもしれないね 後は単騎でなくても苦戦したかな・・ 撃て、撃て、撃て!」ダンッ!…ダンッ!…ダンッ! 3発の銃弾を放ち前面装甲を剥ぎコアを露出させる そこに二人の攻撃が加わり無事コアを砕く事に成功する あのロケット弾当たったら流石に痛いだろうな・・ エイラ「・・なんで自分でコアは砕かなかったんダヨ 弾はまだ1発残ってるヨナ?」 俺「・・単騎戦闘じゃないんです 味方が居るなら止めは任せたい主義なので・・」 エイラ「・・まあどうでも良いカ 撃墜した事に変わりは無いシナ」 俺「・・・・・」ギリッ サーニャ「?どうかしましたか?」 俺「いえ・・次の観測点が最後です・・ 行きましょう・・」 ―――――――――― 早朝の格納庫 俺「お・・お疲れ様でした・・」 エイラ「・・普段から堂々と出来ないノカ?」 俺「無理です・・ごめんなさい 戦場じゃないと中々虚勢は張れません・・ 中佐には俺から報告しておきますので・・おやすみなさい」 エイラ「・・なんか疲れたナ・・」 サーニャ「眠い・・」テクテク エイラ「ね、寝掛けたまま歩くのは危ないっテ!サーニャ!」 ―――――――――― 執務室 俺「以上が昨夜の戦闘の詳細です・・ 眠っていた所起こしてしまって申し訳ありませんでした・・ 書類仕事は代わりにやりますからおやすみ下さい・・」 ミーナ「構わないわ・・俺少尉も徹夜なんだから休めば良いのよ? 書類仕事はまだあるからそれからでも良いわ・・」 俺「・・いえ、徹夜には慣れてますから・・ 朝食の後には訓練もあります・・今日は夜間哨戒ではありませんし夜には休めます・・ 朝食の時間に寝過ごさないように起きて居たいんです・・ 迷惑・・でしょうか?」 ミーナ「迷惑では無いわ・・ただ無理をさせたくは無いだけよ」 俺「このくらいは大丈夫です・・任せて下さい・・」 ミーナ「そう・・? なら休ませて貰おうかしら・・」 俺「はい・・そうして下さい・・ 出来る限りの事はさせていただきますので・・ おやすみなさい・・」 ミーナさんが部屋を出るのを確認してから書類を整理する 流石にというか当然というかミーナさんにしか処理出来ない書類は多い・・ だがそうじゃない書類は全て処理したい 朝食までに終わるかな・・ ―――――――――― 宮藤「失礼します ミーナ中佐、朝食の用意が・・ あれ?俺さん?」 俺「中佐は自室ですよ・・宮藤軍曹・・ 自分は皆さんが食事を終えてからで結構ですので中佐を起こしに行ってあげて下さい・・」 宮藤「えっと・・何してるんですか?」 俺「中佐の許可を取って書類仕事を手伝ってます・・ 中佐は・・疲れている様子でしたから・・休んで貰いました・・」 宮藤「そうなんですか・・でも朝食はみんなで食べた方が良いですよ? 一人で食べるより美味しいですから」 俺「俺と一緒に食べても美味しくは無いですよ・・ 俺も一人で食べた方が気楽ですし・・」 宮藤「駄目です!美味しいか美味しくないかは別として一人で食べさせる訳にはいきません!」 俺「・・わかりました もう少しでキリの良い所まで終わりますから・・後で行きます・・」 宮藤「皆さん待ってますから早くして下さいね? それでは失礼しました」パタン 俺「・・誰かを待たせて何か言われるのが嫌だから一緒に食べたくないって気持ちわからないのかな・・ わかる訳無いよね・・ そりゃ宮藤軍曹は俺じゃないし・・当たり前だよ ・・一生わからない方が良いとは思うけどね」 ―――――――――― 食堂 俺「すいません・・少し遅くなりました・・」 急いで席に着き謝る 皆さんとはちゃんと距離を取るのは忘れていません 宮藤「大丈夫ですよ、そんなに待っていませんから」 俺「すいません・・ あの・・何時でも構わないんですけど皆さんの戦闘スタイル・・といいますか特徴を書類に纏めて提出して下さい・・」 戦闘中誤って射殺はしたくありませんからね・・ ゲルト「・・何時になるかわからんが出来るだけ早く私がみんなの分をある程度纏めて提出しよう それで良いか?」 俺「はい・・ありがとうございますトゥルーデさん・・」 宮藤「はい、俺さんの分です おかわりありますからね?」 俺「あ・・わざわざありがとうございます・・ いただきます・・」 宮藤「この納豆私が作ったんですよ!どうです?」 俺「・・市販のものより美味しいですね・・」 宮藤「そうですか!よかったー」 俺「・・・・・」モグモグ エーリカ「元気ないねー俺ー 疲れてる?」 俺「いえ・・そんなことはないです・・ いつもこんな感じですから・・」 坂本「梅干し食うか?俺?」 俺「いただきます・・」 美味しい ペリーヌ「・・・・・」スッ 俺「・・ペリーヌさん?」 ペリーヌ「わたくしはこれは食べられませんから美味しいのならあげますわ」 納豆美味しいのに シャーリー「一見優しい様に見えるけど自分の嫌いな食べ物を押し付けただけだよな・・」 俺「それでも嬉しいですよ・・ありがとうございます・・ペリーヌさん・・」 ペリーヌ「・・どういたしまして なんだか罪悪感ありますわね・・」 ミーナ「まあ・・俺少尉は喜んでいるし良いんじゃないかしら」 俺「・・・・・」モグモグ 誰かと食べるのもそう悪くはないかもしれないと少しだけ思った ―――――――――― 執務室 俺「・・・・・」カリカリ ミーナ「・・訓練は良いの?」 俺「この書類だけ終わらせたら・・行きます やらせて下さい・・」 ミーナ「わかったわ・・コーヒーでも煎れてあげるわね?」 俺「ありがとうございます・・ミルクだけで良いですから・・」カリカリ ミーナ「俺少尉・・少しはここに慣れたかしら?」 俺「・・少しは」 ミーナ「そう・・それは良かったわ はい、どうぞ」 俺「ありがとうございます・・」 ミーナ「・・ネウロイに止めをさせないというのは本当なのかしら?」 俺「・・・・・」ピタッ ミーナ「本当なのね? どうしてか聞いて良いかしら?」 俺「昔・・前の部隊には恋人がいました・・ 恋人と言っても手を繋ぐくらいしかしてませんでしたが・・ ある日・・ネウロイに止めを刺そうとして引き金を引いた時に・・射線上に彼女が飛び出して来て・・ 今ではなんとか撃つ事は出来るようになりましたがコアが露出した状態で止めを刺す時にはあの時の事が頭に浮かんで撃てません・・ その時から孤立してましたね・・」 ミーナ「そう・・そんな事が・・ それは辛かったわね・・」 俺「辛かった・・そうですね・・ 彼女が即死だったのは・・まだ救いがありましたね・・ 痛みも無く逝けたのですから・・ ごちそうさまでした・・ 終わりましたので訓練に戻ります・・」 席を立ち廊下に出る為に扉を開く ペリーヌ「あ・・」 俺「えっ・・? えっと・・話聞いてません・・よね?」 ペリーヌ「・・・・・」ダッ 俺「あ・・ちょっと・・ ・・聞かれてしまいました・・」 ミーナ「・・・・・」 俺「出来れば・・中佐以外には秘密にしたかったです・・」 ミーナ「大丈夫だとは思うけど一応他言無用でお願いしてみるしかないわね・・」 俺「じゃあ・・頼んでみます・・ あっち・・だった筈」タッタッ ミーナ「大丈夫かしら・・」