約 5,085,057 件
https://w.atwiki.jp/indexorichara/pages/315.html
【ブラックウィザード】 新興勢力ながら、一気に勢力を伸ばしているスキルアウト。 能力開発に利用される薬物をコネクションから違法に入手し、『レベルが上がる』という謳い文句で売りさばいている。 ただその中には快楽性、中毒性の高い物も含まれており、大量のリピーターが彼らの収入源となっている。 もともと彼らの活動地域は積極的な反能力者活動をしない穏健派のスキルアウトが一帯をまとめていたのだが、 『ブラックウィザード』が台頭し複数のスキルアウトを吸収合併、穏健派スキルアウトを押しのけて一気に代表格へと成り上がっている。 複数の能力者を薬の力により支配下に置いているため、単純な組織戦闘力でもずば抜けている。 薬を配る相手や量などは細かく調整されているのだが、最近一部の人間が暴走し、無差別に配り始めているのが悩みの種。 何回か組織内での『粛清』も行われている。急激に勢力を伸ばしたためか、スキルアウトとは思えないようなコネクションを持つためか 中には腹に一物抱えたメンバーも・・・ 彼らは『ブラックウィザード』の象徴としてどこかに黒を用いた服装をしている。一部着用していない者もいるが、 『ブラックウィザード』の印入りの黒のウィンドブレーカーやジャケット、バンダナを着用している者が多い。 主なメンバー リーダー 東雲真慈 幹部 網枷双真 伊利乃希杏 阿晴猛 永観策夜 蜘蛛井糸寂 構成員 中円真昼 風路鏡子 片鞠榴 仰羽智暁 戸隠禊 西島放手 風間鋲矢 江刺桂馬 麻貫日刺 狗下端娯 手駒達(ドールズ) ブラックウィザードの各種薬物により、洗脳および身体強化した薬物中毒メンバーの総称。 主に幹部の蜘蛛井糸寂が取り仕切っており、彼らに用いる薬品は調合屋(バーテンダー)独自の秘蔵ブレンドによるもの……らしい。 『ブラックウィザード』内での『粛清』とはこの「手駒達」強制加入の隠語である。頭に刺した小型アンテナで操る。 つまりアンテナを取られたり薬が切れると無力化する。いろいろな意味で暗部組織テキストの死人部隊の劣化版。 協力者 調合屋
https://w.atwiki.jp/pazdradraz/pages/478.html
図鑑 No.141 ブラックウィザード図鑑説明文 入手方法 コメント欄 図鑑 No.141 ブラックウィザード No.141 編集 タイプ レベル 1 最大 主な生息地 スキル レア度 HP 進化前 Lスキル 属性 攻撃 進化後1 必要チップ1 経験値 防御 進化後2 必要チップ2 図鑑説明文 入手方法 コメント欄 名前
https://w.atwiki.jp/pazudora-z/pages/266.html
モンスター図鑑 > ブラックウィザード 基本データ No.141 ブラックウィザード 属性 闇 タイプ 竜人 レア ★3 進化前 闇の魔剣士 進化1 常夜の魔神・クロウリー 必要アイテム: 進化2 必要アイテム: 進化3 必要アイテム: 入手方法 ■出現ダンジョン:闇の神殿、伯爵の館、ガルムの迷宮、夜天楼 ■進化:闇の魔剣士 スキル ハートチェンジ・闇 闇ドロップをハートドロップに変える リーダースキル あんこくのまじゅつ レベル HP 攻撃 防御 1 (最大)
https://w.atwiki.jp/indexorichara/pages/1236.html
とある男子高校生と『ブラックウィザード』① ―“幕開け”― とある男子高校生と『ブラックウィザード』② ―What is a hero?― とある男子高校生と『ブラックウィザード』③ ―“ゲコ太マン”VS“剣神”!!― とある男子高校生と『ブラックウィザード』④ ―風路兄妹の変遷― とある男子高校生と『ブラックウィザード』⑤ ―実績の重み― とある男子高校生と『ブラックウィザード』⑥ ―背水の陣― とある男子高校生と『ブラックウィザード』⑦ ―邂逅― とある男子高校生と『ブラックウィザード』⑧ ―“世界(ちから)に選ばれし強大なる存在者”― とある男子高校生と『ブラックウィザード』⑨ ―過程と結果― とある男子高校生と『ブラックウィザード』⑩ ―電話で繋がる人間模様― とある男子高校生と『ブラックウィザード』⑪ ―秘かに蠢く『黒き力』―
https://w.atwiki.jp/indexorichara/pages/1554.html
とある男子高校生と『ブラックウィザード』23 ―日常が日常で無くなり始める、そんな黎明期― とある男子高校生と『ブラックウィザード』24 ―判明した事実、見誤った事実― とある男子高校生と『ブラックウィザード』25 ―逆鱗― とある男子高校生と『ブラックウィザード』26 ―“ヒーロー”。それは、愚者になり得る在り方㊤― とある男子高校生と『ブラックウィザード』27 ―“ヒーロー”。それは、愚者になり得る在り方㊦― とある男子高校生と『ブラックウィザード』28 ―“人才”足る“天才”㊤― とある男子高校生と『ブラックウィザード』29 ―“人才”足る“天才”㊦― とある男子高校生と『ブラックウィザード』30 ―心(おもい)の整合。それは、時に矛盾を生む。人それを・・・撞着と呼ぶ― とある男子高校生と『ブラックウィザード』31 ―自分勝手な生き物・・・故に人間― とある男子高校生と『ブラックウィザード』32 ―兄貴の意地。そして・・・“ヒーロー戦隊”『ゲコ太マンと愉快なカエル達』降臨!!― とある男子高校生と『ブラックウィザード』33 ―蟻と蛬― とある男子高校生と『ブラックウィザード』34 ―Again!!What is a hero!?― とある男子高校生と『ブラックウィザード』35 ―『太陽の園』攻防戦決着!!― とある男子高校生と『ブラックウィザード』36 ―もう1つの“Xデー”― とある男子高校生と『ブラックウィザード』37※『R-18』要素が散見される為注意 ―“閃光の英雄(ヒーロー)”光臨~Welcome home hero!!~―
https://w.atwiki.jp/indexorichara/pages/1664.html
とある男子高校生と『ブラックウィザード』38 ―“血祭”開幕!!~A “strange” boy by science~― とある男子高校生と『ブラックウィザード』39 ―“英雄”VS“怪物”~Personal and desperate struggle!!~― とある男子高校生と『ブラックウィザード』40 ―“ヒーロー”。それは、勇者になり得る在り方― とある男子高校生と『ブラックウィザード』41 ―戦場。それは、思い通りにならない領域― とある男子高校生と『ブラックウィザード』42 ―誤算― とある男子高校生と『ブラックウィザード』43 ―混迷が深まり始める戦渦― とある男子高校生と『ブラックウィザード』44 ―咆哮― とある男子高校生と『ブラックウィザード』45 ―呉越同舟。それは、群雄共が錯綜を重ねる激しくも面白き血風場― とある男子高校生と『ブラックウィザード』46 ―救済の象徴(かたち)― とある男子高校生と『ブラックウィザード』47 ―世界は『いわれなき暴力』を振るう“弱き者”を決して許容しない。それは、時に『いわれある暴力』を振るう“強き者”の意志すら蹂躙する― とある男子高校生と『ブラックウィザード』48 ―“風嵐烈女”の決断― とある男子高校生と『ブラックウィザード』49 ―闇夜の制空決戦!!― とある男子高校生と『ブラックウィザード』50 ―電脳世界を駆ける勇者と歌姫― とある男子高校生と『ブラックウィザード』51 ―反省。それは、正論を胸に自分を省みること。愛。それは、正論を呑み込む『純水』足る独善― とある男子高校生と『ブラックウィザード』52 ―少女よ。今こそ『勇ましい者』・・・すなわち“ヒーロー”と成れ!!!~Scarlet cherry's heroine come into the world!!~― とある男子高校生と『ブラックウィザード』53 ―『漢』の落とし前― とある男子高校生と『ブラックウィザード』54 ―“孤独を往く皇帝”― とある男子高校生と『ブラックウィザード』55 ― 黄道十二宮ヲ守護スル星ヨ―― ― とある男子高校生と『ブラックウィザード』56 ―“血祭”閉幕!!― とある男子高校生と『ブラックウィザード』57 ―夏休みを舞台に繰り広げられた少年少女の熱き戦いのエピローグ―
https://w.atwiki.jp/indexorichara/pages/1329.html
とある男子高校生と『ブラックウィザード』⑫ ―電脳世界からの使者― とある男子高校生と『ブラックウィザード』⑬ ―各々の胸に去来するモノ― とある男子高校生と『ブラックウィザード』⑭ ―信頼。それは、信じること。そして、頼ること― とある男子高校生と『ブラックウィザード』⑮ ―待機・再開・始動― とある男子高校生と『ブラックウィザード』⑯ ―Q.どうすれば、人は成長できる?A.日々の積み重ね 時々 運命― とある男子高校生と『ブラックウィザード』⑰ ―憧れる者。憧れられる者― とある男子高校生と『ブラックウィザード』⑱ ―Masquerade Ball― とある男子高校生と『ブラックウィザード』⑲ ―“辣腕士 ハスラー ”― とある男子高校生と『ブラックウィザード』⑳ ―“ヒーロー”が背負う幾星霜の歴史(おもい)~『Personal Planet of the Astrological Signs 黄道十二宮の守護星 』~― とある男子高校生と『ブラックウィザード』21 ―とある電脳世界の日常― とある男子高校生と『ブラックウィザード』22 ―出会いという名の偶然―
https://w.atwiki.jp/indexorichara/pages/371.html
学園都市、第10学区通称ストレンジ… 「なら俺を倒してみろ!」 「では私が。」 狐月は双真に向かって、地面に落ちていたコンクリートの塊を飛ばした。 「な!?」 しかし、その塊は不自然な軌道を描き何もない場所で止められ地面に落ちると、さっきまで何もなかった場所に廃材の山が出現したのだった。 「残念だったな…」 「正解はこっちなんだろ?」 「なに!?」 稜は知っているかのように閃光真剣を構えて障害物がある方に向って走り込むと、その障害物の幻影が消え、ただの道になった。稜はそのまま双真との間合いを一気に詰め、勢いそのままに、閃光真剣で水平斬撃の軌道を描いて双真に斬りかかった。 双真はそれをたやすく躱し、後ろに跳び退った。しかし、稜はそれに驚くことなく冷静に言う。 「《偏光塗装(トリックコーティング)》ってさぁ…《偏光能力(トリックアート)》と同じで、《見えている対象物の反対方向に実像がある》んだよな?だから狐月の飛ばした物が不自然な軌道を描いて止まった」 双真は稜に虚を突かれ、目を丸くしていた。 たった一回の攻撃で、そこまで見抜かれたのは初めてのことなのだろう。 「フッ…なら一つだけ告白して、大人しく逃げさせてもらおう」 「あ?」 「俺の以外にも、他支部にスパイがいると思え」 双真はそう言うと鏡子を連れて一目散に逃げていった。 「あ!待て!!チッ、逃げやがった」 「でも、この先にあいつらの本拠地が…」 「先に進むしかないな…行こうか二人とも。」 狐月の意見に、二人は無言で肯いた。 時は少し遡り、三人がストレンジに乗り込んだ頃。176支部では… 「大変です!スキルアウトがこの近辺で暴力沙汰を…」 「あたしが行くわ!たまには先輩らしいとこも見せないと!ほら!麗も行くわよ!!」 「了解!!」 三人の留守を狙ったかのように176支部の管轄内でスキルアウト絡みの事件が頻発していた。 「ちょっと遠いけどすぐにあたしたちだけで片付けてやるわ!」 そんな意気込みを口にすると、雅と麗は事件現場に向かった。 そして、二人が出て行ってから数分後、 ゆかりがデータの処理していたときに来客を知らせるチャイムが鳴った。 「はーいちょっと待ってください!」 ゆかりはいつもの調子で扉を開けると、そこにいたのは一人少女だった。 そして少女はにこやかに言った 「ちょっと一緒に来てもらうよん♪」 「え?う…」 少女はゆかりの腹部にスタンガンを押し込み気絶させた。 「ふふっ…いい顔で寝ちゃったね?ふぅ~、《真慈》もずいぶん慎重ね…」 そう呟くと少女はゆかりを抱えどこかへ去って行った。 当然防犯カメラはジャミングされ、カメラの中では何も起きてはいなかった。 そして、二人が戻ってきたときには無論誰もいなかった。 再び、ストレンジにて 「「はぁ…はぁ…」」 「ったくなんだってこんなに罠仕掛けりゃ気が済むんだよ…」 三人はこれまで双真が仕掛けたトラップに翻弄されていたのだった。中でも、特に難関だったトラップはワイヤーを利用したトラップだった。まず見えなくなっているワイヤーを1本踏むと、それが引き金となり無数のワイヤーが一気に三人の行く手を阻むなど、体力を無駄に消費するような仕掛けが施されていたのだった。 「とにかく、もう何も無いと言うことは、本拠地が間近ということなのだろう。」 「だな…」 「せ、先輩、あれがそうですか?」 「ん?…!?」 緋花に促され、稜が見たものは《ブラックウィザード》の印が描かれている廃ビルだった。 「目と鼻の先だったとは…」 「行くか…」 「ええ!」 三人は心の準備が整うと、一歩づつ歩き出した。 「「「風紀委員だ!!」」」 という掛け声と共に、三人は《ブラックウィザード》の本部に勢いよく乗り込んだ。 「薬物不法取引及び」 「高中毒性薬物所持によって」 「現行犯で拘束する!!お前ら全員、務所にぶち込んでやる!!」 しかし、ブラックウィザードのメンバーは誰一人ビクともしなかった。 そして、ビルの一番奥から一人の男が現れた。 その男こそが、ブラックウィザードのリーダー、東雲 真慈(しののめ まじ)だ。 「ようこそ、風紀委員の方々、戦闘の意思があることは察するが、その前に、見せたいモノがる…これだ」 「な!?」 「うそ!?」 「!?」 そこに居たのは縄で上腕拘束状態で捕まっている、ゆかりの姿だった。。 「先輩…たす…て…さい…うぅ…」 「葉原!!…。汚ねぇぞてめぇら!!!」 「どうとでも言え、俺たちはお前たちみたいにお人よしではないからな!」 「ねぇ、真慈…私があの閃光真剣のコ、殺っちゃっていい?」 「好きにしろ。そいつがお前のおもちゃになろうが、死のうが、そこまでのやつだったってことだ」 「ええ、じゃあ、そうさせてもらうわ♪ウフフ…」 女はそう言うと一歩前に出て、稜を見て言った。 「ねぇ、アナタと私で掛けない?」 「…ものによる…」 稜は女を睨んでそう言った。 「んもう、素直じゃないわね。そうね~、じゃあ、アナタが勝ったらそこのアナタのかわいい仲間を返すわ。で、アナタが負けたら、そうねぇ~、フフ…こっち側の人間ね♪」 不敵な笑みとともに女はそう言った。しかし、稜はまゆ一つ動かさずに答えた。 「ああ…分かった…あんたに勝てばいいだけなんからな…」 稜が啖呵を切るように言うと、狐月と緋花は呆れた顔になり、《ブラックウィザード》側は、「斬れー!!」「殺せー!!」などと物騒なことを喚き、ギャラリー気分と化していた。そして、女の方は一瞬だけ面食らった顔をしたが、すぐに不敵な笑みを浮かべて言う。 「フフ…この私、伊利乃 希杏(いりの きあん)の暗器を舐めないでよん♪」 「あんたも…俺を舐めないほうがいいかもよ?」 稜がそう言うと、二人はほんの数十秒間、睨み合う。そして、稜は閃光真剣を片手直剣に形成し、希杏は背中から日本刀を取り出し、お互いに構える。そして一瞬の静止。次の瞬間… 「シッ!!」 稜は短い掛け声とともに一気に希杏との間合いを詰め、勢いそのままに閃光真剣を振りかぶり、斜めの斬撃剣線を描いて希杏に斬りかかる。 「フッ」 希杏はそれをギリギリのところで躱すが、あまりの速さに受身を忘れバランスを崩してしまう。稜はそれを見逃さなかった。 稜は再び一気に希杏との開いた距離を詰め、今度は斜めからの斬撃剣線を描いて希杏に斬りかかる。しかし… 「同じ手は効かないわよ!!」 「な!?」 こんどは希杏も日本刀を構え、稜の剣が希杏の左肩に当たろうとした瞬間、希杏は稜の攻撃を日本刀でパリィ(受け流し)して見せた。そして、そのまま逆に稜にへ切りかかろうと日本刀を振り上げようとしたとき、稜が左手を背中に回し、そのまま剣を振り下ろすような気配を見せたため、希杏はやむなくその攻撃を躱すように左へ体重を掛けた。そこで、今度は希杏が隙を作る結果となった。 「あ!」 なんと、稜は《出現させてない二本目の閃光真剣を抜き撃ちする》という余りにも真に迫ったフェイント・モーションを繰り出し、その稜の動きにまんまと騙された希杏が反射的にそれを躱そうとした。その結果、希杏のバランスが崩れ、稜が一瞬の内に希杏の背後へ回り込み、閃光真剣の柄頭で希杏の背中に一撃を入れた。 「痛!!…んもう!!」 希杏は背中をさすりながら稜から距離を取るように飛び退り言った。 「ちょっと!なによ!!今のは!」 「だから舐めるなって言ったんだよ…」 その様子を見て、《ブラックウィザード》側はさっきまでとは打って変わって沈黙し、狐月は何かを確信したかのように緋花に言った。 「あ~、もう神谷君、スイッチが入ったようだ。」 「スイッチ…ですか?」 緋花が狐月に聞き返すと、狐月は解説をするように言った。 「ええ。あの目つきからして、まだ全力ではないが、本気だ。」 「へ?そうなんですか?…」 そして、緋花が視線を二人の方に戻すと、希杏が空いている左手でジャージのチャックを開け、胸元をまさぐっていた。 「アナタに接近戦は無理ってこと解ったから、遠距離から行かせてもらうわ」 「!?」 希杏が胸元から取り出したのは、ハンドガンのグロック17だ。 希杏は稜の右肩を狙って引き金を引くと、バキューン!!と発射音を発し、銃口から弾丸が一発飛び出して稜の右肩へと真っ直ぐに飛んでいった。しかし… 「…」 銃口から火花が飛び散ったのが見えたその瞬間、稜は閃光真剣を一閃させた。そして、弾丸は稜に当たらず、二箇所からカラカラン!と弾丸が床に落ちる音が聞こえた。そう、《斬った》のだ。あの高速で飛んできた小さな弾丸を一寸の狂いもなく一刀両断して見せたのだ。 「な!?え!?」 それを目の前で見せられた本人も、周りの人間も驚愕の表情が見えている。そんな中、狐月だけは、呆れた表情をしてぼそりと言う。 「はぁ~、君はどれだけ規格外な動きをすれば気が済むんだか…。」 そして、当の本人はこれ見よがしに希杏との距離を一気に詰めるようにダッシュしながら、閃光真剣を構えている。 「どうせマグレでしょう?今度は出来ないはずよ」 今まさに、自分に向かって突っ込んでくる稜の頭に銃口を向け、希杏は二発の弾丸を射出した。だがしかし、またしても稜はその二発の弾丸に当たるところか、閃光真剣のまばゆい閃光が剣線を二本描き、自分のほうへ飛んできた弾丸を真っ二つにし、そのまま勢いに乗せ、斜めからの斬撃剣線を描いて希杏に斬りかかった。 「な、なんで!?」 希杏はそれを間一髪で躱しながらそう言うが、誰にも本人以外に説明は不可能とも言える。そういう意味で、彼の身体能力は異常だと言えるのだろう。そんな彼の以上とも言える身体能力の元は、過去に稜がトラウマと言いたくなるほどの火川麻実との《特訓》の経験が、今の稜を助けているのだった。 「さぁな、環境じゃね?」 「そう…なら…」 希杏は立ち位置が変わると同時に後ろに跳び退り、右手の日本刀と左手のグロック17を投げ捨てジャージの背中の裾に両手を入れて言った。 「これで行かせてもらうよん♪」 そう言って、希杏が背中から引き抜いたのは二丁のMP5A5だ。それを見た瞬間。稜は閃光真剣の柄を強く握り、一気に希杏との間合いを詰めるようにダッシュをした。 「!?」 希杏は少し驚きながらも、真正面から突っ込んでくる稜に標準を合わせると、両手の銃の引き金を同時に引き絞った。すると、カタタタタタ!!と軽快な銃声と共に火花を散らしながら飛んでくる無数の弾丸が、稜の間近まで迫ってきていた。 「い…けッ!」 稜は自分に叫ぶとともに思い切り地面を蹴り飛ばし、右手の閃光真剣で前方を斬りつける。その瞬間、稜が描いた剣線の中でキッ、キンッ!!と音を立て、鮮やかなオレンジ色の火花を散らして複数の弾丸が落ちていった。すかさず次の弾丸も切り落とす。その動作を一瞬も休めることなく高速で繰り返しながら、希杏との間合いを詰めていく。 「う…うそでしょ!?」 綺麗なラインをした希杏の下顎がかくんと落ち、驚愕の声を漏らしながらも引き金を引く指を戻すことはしなかった。そして、二丁のMP5A5の残弾数はゼロになり空撃ちなった瞬間、稜は勢いよく飛び上がりその勢いに乗せて剣を振り抜くかのように右手を後ろにやる。 「んもう!この銃きらーい!!」 そう言いながら、希杏はその動作を見た瞬間に両手の銃を投げ捨て、素早く右手でジャージにチャックを下ろし開かれた胸の部分に左手を入れ、コルトガバメントを引っ張り出した。 「げ!?まだあんのかよ?!」 「油断したわね?この状態で避けることは不可能でしょ?」 「だろうな…避ける気ねぇけど…。シッ!!」 そう言うと、稜はいつの間にか閃光真剣を片手直剣からダガーに形成し直していて、それを逆手持ちし、短い気合とともに一気に振り抜いた。すると、閃光真剣は水平斬撃の剣線を描き、銃身をスパァン!!と綺麗に横に真っ二つにしてみせた。 「うそ?!なんで…」 稜のずば抜けた判断力と反応力。それに加え、自分はいくつもの暗器を駆使して戦いを有利に持ち込めるはずが演算という能力で作られた、たった一本の剣だけでここまで追い詰められたという事実は、少なからず彼女のモチベーションをガタ落ちさせるのには十分すぎるくらいだった。 「チッ、引け!希杏!!…。野郎ども!!そこの三人を囲め!!」 真慈に促され、希杏が煙幕を出すと、幹部以外の者は稜たち三人を取り囲んだ。 「逃がすか!!…。うわ、煙幕かよ!」 「これではエリートの私ですら追えない。」 「とにかく、この場を何とかしましょう!」 煙が蔓延する中で、三人は下っ端のメンバーを次々と気絶させていった。そして、数十分に及ぶ戦闘の末、下っ端のメンバーは全員をノックアウトさせたが、その頃には真慈を含め幹部以下構成員全員がいなくなっていたのだった。 「くそ…逃げられたか…。…そうだ、葉原は」 稜たちは慌てて周りを見渡すと、拘束されたままのゆかりが居た。稜はゆかりの近くまで駆けつけ、閃光真剣でゆかりを拘束している鎖を切断した。すると、ゆかりは解放され、脱力したのか崩れるように稜の肩に倒れかかった 「おっと…」 「ごめんなさい…神谷先輩…迷惑、掛けてしまって…」 ゆかりはそこで言葉をと切らせたかと思うと、目を閉じて寝息を立てていた。 「え?ゆかりっち!?」 「…寝てるだけだ…」 「はぁ~…よかった~」 「とりあえず。支部に戻るとしよう。」 「だな…」 三人はこのことを報告するため、176支部へと戻っていった。 176支部にて… 「詳しく話してちょうだい」 「はい、実は…」 三人は今までの経緯を雅たちに話した。 「…そう…まさかそんなことが…」 「でも一番の衝撃は…」 「風路鏡子の成れの果て…」 「嘘見たいよね?前まで誰よりも正義感が強かったのにあのバカ…」 「これじゃあ、あいつに顔向けできないよ…」 「風路 形慈(ふうろ きょうじ)ですね?あの時は、まだ証拠も不十分でしたし、何よりも、彼女があの場所にいたことすら予測外でした。」 「それに網枷も…」 不穏な空気が、176支部全体を包んでいた。 END
https://w.atwiki.jp/indexorichara/pages/946.html
『ブラックウィザード』編第一部 ―新時代の幕開け― 『ブラックウィザード』編第二部 ―迷走する少年少女― 『ブラックウィザード』編第三部 ―“Xデー”― 『ブラックウィザード』編第四部 ―夏に相応しい祭が始まる。“血祭”という名の冷酷無慈悲な宴が― 【登場人物】(敬称略・順不同) シンボル 界刺得世,不動真刺,水楯涙簾,仮屋冥滋,形製流麗,月ノ宮向日葵,春咲桜 風紀委員会 カンファレンスジャッジ ☆警備員 緑川強,橙山憐,九野獅郎(協力者) ☆風紀委員 ○第159支部 一厘鈴音,鉄枷束縛,湖后腹真申,破輩妃里嶺,佐野馬波,厳原記立 ○第176支部 加賀美雅,斑狐月,神谷稜,鏡星麗,一色丞介,葉原ゆかり,焔火緋花,網枷双真,鳥羽帝釈,姫空香染 ○第178支部 秋雪火明,固地債鬼,殻衣萎履,真面進次,浮草宙雄 ○花盛学園支部 抵部莢奈,篠崎香織,冠要,幾凪梳,渚月理,六花牡丹,閨秀美魁,山門撫子 ○成瀬台高校支部 初瀬恭治,押花熊蜂,椎倉撚鴃,勇路映護,速見翔,寒村赤燈 救済委員 ○穏健派 啄鴉,ゲコ太マスク,仲場志道,花多狩菊,灰土勇 ○過激派 雅艶総迩,麻鬼天牙,峠上下 ブラックウィザード 東雲真慈,網枷双真,伊利乃希杏,阿晴猛,永観策夜,蜘蛛井糸寂,中円真昼, 風路鏡子,片鞠榴,仰羽智暁,戸隠禊,西島放手,風間鋲矢,江刺桂馬,調合屋 紫狼 外野道郎,ウェイン・メディスン 軍隊蟻 樫閑恋嬢 テキスト 持蒲鋭盛 その他キャラ 荒我拳,梯利壱,武佐紫郎,風路形慈,免力強也,盛富士泰山,春咲林檎,真珠院珊瑚, 焔火朱花,立川奈枯,火川麻美,電脳歌姫,臙脂勇,情報販売,薦道進矢,御前肖像, 泉光陰,兜仲明,銅街世津 ,銀鈴希雨,アルバート=コリングウッド,清廉止水
https://w.atwiki.jp/indexorichara/pages/1278.html
時は昨日の夜に遡る。 「頼む!!アンタの力を俺に貸してくれ!!!俺の・・・俺の妹、風路鏡子を『ブラックウィザード』から助け出して欲しいんだ!!!!!」 突如として界刺達の前に現れ、その場で土下座しながら懇願する風路。 「『ブラックウィザード』だと?」 「師匠。これは・・・」 「・・・確か、傷が癒えた峠が今も調べてんじゃなかったっけ?」 『ブラックウィザード』という言葉を耳にした啄・ゲコ太・仲場は、救済委員として思考を纏め始める。 「『ブラックウィザード』!?ま、まさかあなたの妹さんが『ブラックウィザード』に捕まったんですか!?」 「あ、あぁ。捕まったって言葉は少し語弊があるんだけどよ・・・。頼む、界刺・・・さん!!アンタにしか、もう俺は頼る相手がいねぇんだ!!!」 「・・・!!!」 葉原の質問に風路は顔を歪めながら答える。その答えが、“風紀委員である”葉原の矜持を刺激する。 「そ、それなら私達が対応しますよ!!今私達風紀委員は、『ブラックウィザード』に関する捜査をしているんです!!」 「・・・風紀委員だと・・・!?」 「・・・仮屋様(ボソッ)」 「・・・うん(ボソッ)」 風路の目付きが変わった。それに気付いた界刺は、隣に居る仮屋に合図を送る。 「そうです!!こ、これで『ブラックウィザード』の捜査も進展するかもしれない!!やっと有力な情報が・・・」 「・・・どこの支部だ?」 「えっ?す、すみません!申し遅れました!!私は風紀委員176支部に所属している葉原ゆかりと言います!!」 「176支部・・・!!!」 「はい!!よろしくお願い・・・」 「テメェ!!!」 「キャッ!!?」 葉原が176支部に所属すると言った次の瞬間に、風路がポケットに入れていた収納式ナイフを少女に突き付けようとする。だが・・・ ガシッ!! 「なっ!?」 「もう。危ないな~」 「か、仮屋先輩・・・?」 その凶行を仮屋が防ぐ。『念動飛翔』による高速移動でナイフを持つ風路の右手首を抑える。 「は、放せ!!」 「何で放さないといけないの?こんな危ないモノを女の子に突き付けようとしたのにさぁ?」 「こ、こいつだけは!!176支部の人間だけは絶対に許せねぇんだよ!!!網枷の居るトコの風紀委員だけは!!!」 「えっ・・・。網枷先輩が・・・あ、あなたに何の関係が・・・!?」 自分に凶器を突き付けようとした男の口から出た同僚の名前に、葉原は強い疑問を抱く。冷静に見れば、目の前の男は“不良”と言われるような格好をしている。 もしかして、過去に網枷の手で補導でもされたのかと葉原は考える。しかし、彼の口から出たのは、葉原の頭を思いっ切り打ち付ける程の衝撃を与えた告白。 「ハッ!!とことん176支部の人間は能無しだな!!網枷の野郎が、お前等が捜査してるって言う『ブラックウィザード』の一員ってことにも気付いて無ぇんだからな!!!」 「・・・・・・・・・えっ?」 何を言っている?目の前の男は今何と言った?自分と同じ支部に所属している網枷双真が、『ブラックウィザード』の一員と言ったのか?この風路形慈という男は? 「鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしてんじゃ無ぇよ!!テメェ等風紀委員は、つくづく馬鹿が集まってる組織だな!! 人様の妹を薬物中毒に陥れて拉致した人間を、今でも同じ仲間として扱ってるんだからよ!!」 「・・・網枷先輩が?・・・あなたの妹さんを?」 何を言っている?目の前の男は今何と言った?自分と同じ支部に所属している網枷双真が、男の妹を薬物中毒にさせた挙句に拉致したと言ったのか?この風路形慈という男は? 「・・・本気で頭に来るぜ!!!テメェ等みてぇな偽善者を、俺は絶対に許さねぇ!!今ここで俺が落とし前を・・・!!」 「は~いはい!そこまでそこまで!!」 茫然自失の葉原とヒートアップし続けている風路の間に界刺が割り込む。 「風路・・・って言ったか?お前さぁ、俺に用があったんじゃないの?何勝手にヒートアップしてんの?そんなんなら、俺はもう行くよ?」 「ッッ!!す、すまねぇ!!つ、つい血が頭に上っちまった!!本当にすまねぇ!!だ、だから行かないでくれ!!!頼む!!!」 カッとなって周囲が見えなくなっていたことを詫びる風路。一方、葉原は甚大なショックで立ち尽くしたままだ。 それ等の様子を見て、界刺は溜息と共にある提案をする。そもそも、こんな路地裏で話していい話題じゃ無いのだ。 「ハァ・・・。とりあえずさ、場所を変えようぜ?こんな所で話してたら、誰かに聞かれる可能性だってあるだろう? 丁度人気の少ない場所を知ってるからさ、そこで話そう。ハバラッチ。君も来い。どうせ、このままじゃ帰れないでしょ?」 界刺の案内の下一行が辿り着いたのは、近辺に大きな建物が存在しない夜の公園。人気は無く、公園内の外灯だけが煌々と煌いている。 ちなみに、葉原と風路以外はこの公園に一度は訪れたことがある人間ばかりである。 「ここなら大丈夫だ。風路、お前の頼みってヤツを聞こうじゃねぇか。承諾するかしないかは、それからだ」 「・・・この風紀委員は何とかならねぇのか?」 「ビクッ!!」 「何か不満でもあんの?」 「・・・・・・わかったよ。こっちが頼んでる側だしな」 どうやら、界刺は葉原の同席を求めているようだ。網枷の後輩であるというこの少女からも、何か情報を引き出す狙いがあるのかもしれない。 そう考え直した風路は、重たい口を開く。本当なら思い出したくも無い記憶。だが、それでも打ち明ける。 「俺の妹・・・風路鏡子は176支部に所属する風紀委員だったんだ」 風路鏡子。能力はレベル3の『風力切断』。映倫中学に通う生徒であった彼女は、同時に176支部に所属する風紀委員であった。 正義感に溢れ、どんな不正も許さない風紀委員であった彼女の意志の強さは、中学入学と同時に試験を受けるほどの熱意からも見て取れる程であった。 そんな彼女は支部の中でもマスコット的な人気者として扱われ、鏡子自身も能力を活かしてそれなりに活躍していた。 彼女の活躍は兄である風路形慈の耳にも時々入り、その度に兄として妹の在り方に誇りを抱いていた。 別々の学校に通うこともあって学生寮も別々だったが、それでも時たま顔を覗きに行ったりもした。 鏡子からは『お兄ちゃんって、ホント心配性だよね』等と言われていたが、鏡子自身も満更でも無さそうだった。兄妹関係は、至極良好であった。 何時までもこの関係が続いて行く・・・そう信じて疑わなかった兄妹。だが、世界は時に非情な試練を人間に与える。 「去年の11月の下旬辺りに、俺は鏡子の寮を訪れた。だが、アイツはいなかった。俺は、何とも言えねぇ胸騒ぎがした。急いで寮の管理人に問い合わせをしてみた。 そしたら・・・鏡子が薬物中毒になって、一般人に危害を加えようとして、逮捕されて、入院して・・・風紀委員から除籍されたことを知った」 入院先の病院で目の当たりにした愛しき妹の変わり果てた姿に、風路は絶句した。 彼女の体には様々な医療器具が付けられ、焦点の合わない瞳を無造作に動かしたりしていた。自意識が無い状態である。 医者や風紀委員に話によると、11月上旬に鏡子は急性薬物中毒を発症、暴走した挙句に一般人へ向けて能力を行使しようとした。明らかな暴行目的であった。 幸いにも近くを通った風紀委員の手によって、一般人への凶行に及ぶ前に鏡子は取り押さえられた。 急性薬物中毒の原因は、薬物の大量摂取。しかも、一度に・・・である。そのせいで、脳神経にまで異常が発生した彼女が入手した薬物の出所の調査は行き詰っていた。 彼女の普段の行動を洗っても、薬物を入手するような場所やタイミングは見当たらない。 記憶を読む能力者の力を借りようにも、脳神経に異常が発生している状態ではすぐに精密な探索を行うことは不可能であった。 だが、事態が事態である。風紀委員による一般人への凶行未遂は、多くの目撃者が存在していた。 故に、事態を重く見た風紀委員の上層部は即座に鏡子の除籍を決定した。風紀委員会を開催するまでも無く決定されたために、 一部の風紀委員からは反対の声が挙がったが、『影響を最小限に抑えるため』という正論を盾に押し切った。 自分の誇りであった妹の姿に、風路は幾度も涙を流した。『何故こんなことに・・・?』そう思い続けていた。しかし、事態は更に急展開する。 「11月の終わり頃に、鏡子は入院先の病院から失踪した。院内の監視カメラからは、鏡子が医療器具を外して外へ出ようとしている姿が映っていた。 その際に能力を暴発させて、病院にも損害を与えた後に何処かに消えちまった。 病院の周辺には建物が無かったせいか、監視カメラ網に空白地点が存在していたことも痛かった。 その後の捜索は警備員の手に委ねられたが見付からない。当時の俺は、絶望の底を歩いているような錯覚に陥った」 11月の終わり頃、鏡子は病院から消えた。その足取りを掴むための情報が、とことん不足していた。 彼女が入院していた病院の近辺には建物の類が無かったために、監視カメラ網に空白地点が存在していたこと、 鏡子が能力を暴発させたことで院内の監視カメラの一部が破壊されたことが捜査の大きな妨げになった。 空間移動系能力者が関与している(=拉致)可能性等も考えたが、学園内に存在する空間移動系能力者には全てアリバイが存在した。 鏡子の失踪は、所謂迷宮入りの様相を呈して来た。風路自身も学園都市中を駆け回ったが、妹の姿を発見するまでには至ることは無かった。 「そんな時に、ある男と出会った。その男からの情報で、鏡子が『ブラックウィザード』と呼ばれるスキルアウトに居るのを目撃したという情報を得た。 同時に、176支部の網枷らしき男が『ブラックウィザード』の一員であるという情報と、連中がヤバイ薬に手を染め始めたという情報も得た」 12月下旬頃に、風路はある男と出会った。その男の情報で鏡子や網枷が『ブラックウィザード』の一員であるらしいという情報を得た。 あくまで目撃証言なので、確証自体は無かった。当時の『ブラックウィザード』は拠点を定めていなかったので、その足取りを追うのは困難であった。 だが、風路にとっては一刻も早く妹を救い出したかった。だから、風紀委員への通報を考えた。 ここで障害となったのは、網枷の存在。176支部員の失踪事件なのだから、普通は176支部に通報するのが当然である。 しかし、網枷が176支部で風紀委員として活動していることから、他にも『ブラックウィザード』の手先が176支部に存在するかもしれない。 この危険性を考えた風路は情報を貰った相手のアドバイス(有料)もあって、ある風紀委員に全てを委ねることにした。 “風紀委員の『悪鬼』”として、事件解決のためならどんな手段でも使うと言われている男―現在のように徒に上級生を押し退けるような真似はしない程度の『悪鬼』だった頃の―固地債鬼に。 「“風紀委員の『悪鬼』”と呼ばれる男なら、仲間内の悪行も庇うことなく断罪する。そう考えた俺は、奴が1人になった頃合いを見計らって訴えた。 鏡子のことを!!網枷のことを!!『ブラックウィザード』のことを!!だが、あの男は証拠不十分として一蹴した。 俺は失望した。後で、固地が暴れた鏡子を逮捕した風紀委員であることを知った時には、怒りしか湧いて来なかった」 風路は、固地に直接訴えた。自分が持つ限りの情報全てを。風路の訴えを聞き終えた固地は、彼の訴えを一旦預かった。 そして数日後、固地からの返答があった。それは、『証拠不十分』という(風路にとっての)非情な通告であった。 失意のどん底に叩き落された風路に、更なる追い討ちが加わる。以前から情報を得ていた男から、固地が暴れる鏡子を逮捕した張本人であることを知らされたのだ。 風路は悟った。『固地は、自分の手柄を失いたく無いから自分の訴えを一蹴した』と。それ以降、彼は風紀委員や警備員を一切信用しなくなった。 公的機関である組織の腐敗を目の当たりにしたために。それからの彼は、単独で『ブラックウィザード』に挑み続けた。 学校にも全く通わなくなった。全ては妹を救い出すために。だが、その牙は『ブラックウィザード』には殆ど通じない。 僅かな損害を与える程度で、殆どは返り討ち。未だに生き続けられているのが不思議なくらいの綱渡りを何度も歩んで来た。 結果として、風路は追い詰められた。このままでは、自分が自滅してしまう。もし自分がいなくなれば、一体誰が鏡子を救えるのか? そう考え、今日風路形慈は界刺の前に立つ。妹を救い出せる可能性を持つ『シンボル』のリーダーに、己が希望の全てを託すために。 「・・・ってわけだ。俺は、もうアンタに頼むしか無ぇんだ!!頼む!!!」 「・・・・・・」 風路の説明は終わった。彼は、改めて界刺に頭を下げる。対する界刺は無言である。 「・・・界刺よ。どうする?この男が嘘を言っているとは俺には思えんぞ?」 啄が促す。啄にも、風路が必死であることくらいは容易に理解できた。 「・・・・・んふっ。本当に、風紀委員は俺に迷惑を掛けるのが好きだな。自分(テメェ)んトコの後始末くらい自分でできねぇのかよって言いたくなるぜ。こんだけ続くと」 「うっ・・・」 その風紀委員である葉原は、何の弁解もできない。できよう筈が無い。重徳事変は別にするとしても、救済委員事件・『ブラックウィザード』の件等、 ここ最近に起きた・起きている大きな案件に『シンボル』は大きく関わっている。しかも、風紀委員にとってプラスの方向で。 『シンボル』の力が無ければ、果たしてどうなっていたのか・・・。今の葉原には予想できない。 逆に言えば、それだけ風紀委員の抱える案件に『シンボル』が巻き込まれているとも言っていいのだ。 そして、今回の風路が持ち込んだ件。これにも現役の風紀委員が関わっている。しかも、裏切り者の風紀委員が。自分が所属する支部の先輩が。 「その網枷って奴が『ブラックウィザード』の一員か。まぁ、風紀委員の中に内通者が居ることは予測していたけど、こんなにも早くわかるとはな」 「えっ!?し、知っていたんですか!?」 「うん。一昨日、椎倉先輩達が俺の部屋に来たことはハバラッチも知ってるだろ?その時に、俺が風紀委員の中に内通者が存在する可能性を言及したんだ。 あん時の椎倉先輩達の表情は、今のハバラッチみたいだったなぁ。風路の言葉を借りるなら、鳩が豆鉄砲を喰らったような顔だね」 「・・・!!!」 葉原は驚愕するしか無い。それ以外の感情を持ちあわすことができない。 「・・・さすがだな。・・・もしかして、アンタは風紀委員からも助けを請われてんのか?」 「助けって言うか・・・似たようなヤツはもうしたけどね。別に、俺は風紀委員の味方じゃ無いよ?連中に協力する義理は無いね」 「そうか・・・。なら良かったぜ。もし風紀委員とつるんでいるってんなら、俺としても微妙な気持ちになっていた所だからな」 風路は、界刺の“読み”に感嘆する。この男なら・・・本当に妹を救い出せるかもしれない。そう、確信を深めた矢先に界刺から返答が返って来る。 それは・・・かつてと同じような(風路にとっての)非情な通告。 「・・・残念だけど、今はお前の頼みは聞き入れられないな」 「・・・・・・・・・な、何・・・で?」 ようやく出せた声は、疑問。頭に血が上る。思考が単一化する。疑問と共に湧き上がって来たのは、どうしようも無い怒り。 「・・・な、何でだよ!!?アンタは学園都市の人間を守っているんだろ!!?それが『シンボル』なんだろ!!?」 「俺って、別にそれが目的で『シンボル』に入ったわけじゃ無ぇし」 「アンタだって、昔は“閃光の英雄”って呼ばれてたんだろ!!?“ヒーロー”なんだろ!!?」 「・・・それは昔の話さ」 「ざっけんじゃねぇよ!!俺が何のために大金を払ってまで情報を買ったと思ってんだ!!!アンタなら鏡子を救い出せるって聞いたから・・・だから・・・!!!」 「・・・『買った』?」 「ハッ!!・・・い、いや・・・何でも無ぇよ」 風路は口を噤む。あの男―情報販売―の存在を口に出すのは固く禁じられている。それを思い出したためか、風路の思考も幾分落ち着きを取り戻す。 「なぁ、界刺。何で、風路の頼みを聞き入れないのかの理由くらいは教えてやってもいいんじゃねぇか?」 「そうじゃな。風路殿も、このままでは納得するまいて!!」 「仲場・・・ゲコ太・・・」 今まで沈黙を守っていた仲場とゲコ太が、界刺に説明を求める。 「・・・ふぅ。だったら説明してやるよ、風路。俺はな、お前の妹である鏡子が“自分の意思”で薬を服用したのか“他者の意思”で服用したのかがわからないんだよ」 「ど、どういう意味だ?」 「・・・お前の妹は、自分の能力について悩んでたりとかしていなかったか?」 「・・・・・・あっ!そ、そういえば、鏡子があんな状態になる前に会った時に『中々能力が向上しない』とか何とか言ってたけど・・・」 「それと、もう1つ。鏡子が暴走したって言ってたけど、その時の鏡子の暴れっぷりはどんな感じって聞いてる? 能力を暴発させたんだろ?その威力ってのは、もしかしてレベル3に収まるような範囲じゃ無かったんじゃないのか?」 「・・・・・・あの時に警備員から聞いた話だと、監視カメラに映っていた鏡子の能力は凄まじかったらしい。 威力的にはレベル4クラスはあったんじゃないかって話だった。唯、すぐに監視カメラが壊されたから詳細はわからないって言ってたが」 風路は、当時のことを思い出す。鏡子の肉親として警備員に事情聴取を受けていた風路は、鏡子について逆質問も行っていた。 その時に得た情報として、暴走状態の鏡子が発現した『風力切断』はレベル4クラスの威力があったかもしれないというものがあった。 「成程・・・。“レベルが上がる”ってのは、やっぱ本当みてぇだな。なぁ、風路?俺は、2つの可能性を頭に思い浮かべている。 1つは、網枷か別の『ブラックウィザード』の人間に無理矢理か騙されて服用させられた可能性。 もう1つは、鏡子自身が望んで服用した可能性。言っとくが、お前が否定しようが可能性自体は消えねぇ。否定する証拠が無いからな。 お前が債鬼に対して証拠の1つも碌に示せなかったように、俺に対しても何一つ証拠らしい証拠を示せて無いよね?」 「うぅ・・・!!」 界刺の指摘に、風路は言葉に詰まる。確かに、鏡子が薬をどうやって『ブラックウィザード』から入手したのかは未だにハッキリしていない。 風路自身は、176支部の網枷の仕業だと考えているがそれにしても明確な証拠は無い。 その後の追加取引で、情報販売から『ブラックウィザード』に鏡子と網枷が居るという確たる情報―複数の目撃情報から勘案してではあるが―を得ることはできたが、 情報販売の存在自体を口外できないために証拠としては使えない。情報販売は商売が上手い・・・というかあくどいとも言えるが、情報を小出しにする且つ情報料が高額なために、 風路は目撃者と面会することもできていない。そんな証拠を示せない人間の訴えを、他人がどうやって承諾するというのか。 「債鬼の性格を考えると、あいつだって調査はしたと思うぜ?あいつが調査した上で網枷を『ブラックウィザード』と関連付けることができなかったってんなら、 それは網枷のタヌキっぷりを褒めるしかねぇわな。さすがは、今現在も堂々とスパイ活動に勤しんでいるだけのことはあるぜ。んふっ」 「界刺・・・。つまりよぉ、その鏡子って奴が自分で望んで『ブラックウィザード』の薬に手を出した可能性があるから動かねぇって言ってんのか?」 胡散臭い笑みを浮かべる界刺に、仲場が確認の意味を込めた問いを発する。 「今の所はね。もし、無理矢理とか騙されてとかだったら考えるくらいはするんだけど。でも、自分が望んでっていう可能性が消えない以上俺は動きたく無いな。 そんなモン、自業自得だろ?能力開発とかに使う正規モノの薬物以外の薬なんかに手を出したらどうなるか・・・普通考えるだろ?」 自業自得。つまり、己の行動によって生まれたモノ全てが己に跳ね返って来るということ。 界刺自身もこれまでに何度も経験していることを、彼は他者にも当て嵌めるだけのこと。 「俺だって、その時の気分次第で人助けをすることはあるぜ?それが切欠で自分に危害が及んだとしても、それは俺の自業自得だ。喜んで対抗しようじゃねぇか。 基本的に、俺はそれを他者にも当て嵌めるだけのことさ。その他者に責任と自覚を持たせるために。 もし風路鏡子が自ら望んで薬物を服用し、その結果が本人の意思に関係無く『ブラックウィザード』に入ることだったとしても、それは鏡子の自業自得。 自分の軽はずみな行動が切欠でそうなったってことだからね。同情心さえ湧かないよ、俺は」 「・・・相変わらず、そこら辺はシビアだよな。桜の時と言い」 仲場は、以前春咲桜が過激派救済委員に制裁を与えられた時のことを思い出す。あの時は仲場も界刺に連絡を取って、事の詳細を確認していた。 そして、界刺から説得されたのだ。『これは、お嬢さん自身が払わないといけないツケだ。だから、手を出すなよ?』・・・と。 「それにさ。風路自身にも注文があるんだよね」 「な、何だよ!?」 「何で、他の風紀委員とかに通報しなかったの?今だって、できない理由って無いよね?」 界刺独自の信念。それが、風路にも当て嵌められる。 「い、言っただろうが!!俺は・・・」 「下手な言い訳はやめとけ。お前は“できること”をしていない。風紀委員や警備員を信じないのは勝手だけどさ、それに何時まで固執してるつもりだい?」 “詐欺師”は気に入らない。目の前の男が、くだらない見栄に固執していることに。 「お前が必死になって妹を『ブラックウィザード』から取り返そうと懸命になっていることはわかる。 例え妹に力を貸そうと思わなくても、そんな妹を助け出そうと打てる手を全て打った上でどうしようもない状況に追い込まれている兄になら、 俺だって力を貸そうと思うかもしれない。だけど、お前は打てる手を全部打っていない。 確かに、当時の風紀委員には一蹴されたかもしれない。だけど、今は違うかもしれないだろ? 例えば、俺が通っている成瀬台高校の風紀委員達は皆バカで、暑っ苦しくて、でもいざって時は一致団結する男ばっかりだぜ? あいつ等なら、お前の訴えをしっかり聞いてくれる筈だ。解決するかどうかは別にしても。 だが、お前はその努力を怠っている。自分の話を聞いてくれる風紀委員を見付けようともしない。何だそれ?アホか?」 「・・・!!!」 「俺以外に頼れない?嘘付け。お前は、見栄を張ってるだけだ。かつて、自分の懇願を一蹴した連中を二度と信じたくないだけだ。 その原因の一端が、証拠も碌に出せない自分にあることから目を背けているだけだ。本当に恥も外聞も捨てて頼むなら、風紀委員にだってもう一度頭を下げられる筈だ。 それをしないお前の頼みを、俺が簡単に承諾するとでも思ってんの?俺の情報を『売った』人間は言ってなかったか?『界刺得世は変わり者』だってよぉ!?」 「(な、何て奴だ・・・!!!俺に情報を売った人間まで、こいつはもう見抜いたってのか!!?)」 風路は戦慄する。情報販売曰く『あの兄ちゃんは、ある意味俺より残酷』。その意味を、彼は心底理解する。 安易な人助けをしない。その不幸が身から出たサビなのならば、その尻拭いは当人に負わせる。 打てる手を打たない人間に対しても、一切の容赦をしない。自分にできることがあれば、まずはそれをやり切れ。話はそれから。 その徹底振りに、風路は己の愚かさと・・・確かな希望を感じ取った。何故なら、自分の話をしっかり聞いた上で、界刺は自分の意見を述べたから。 風路にとって無慈悲な言葉でも、それが紛れも無い真実であると思い知らされたから。久しく感じることが無かったそれは、他者の本音。 『ブラックウィザード』に挑み続ける中で失いつつあったそれは、他者との繋がり。 報復を恐れる余り、常に疑心暗鬼の毎日を過ごしていた彼にとって、界刺の容赦無い本音は心の内に響くものがあった。 「・・・てことは、今は保留状態って解釈でいいんだよな?突っぱねるってわけじゃ無いんだよな?」 「あぁ。その解釈でいいよ?お前の必死さは見てればわかるし。後は、お前が打てる手を打つための努力をするだけだ。まぁ、結構しんどそうだけど」 「・・・今はまだ心の整理が付かねぇけど・・・・・・努力をしてみる気にはなったな」 界刺の思考を理解した風路も、当初に比べて大分落ち着いた。ここからは、文字通り自分との戦い。 風紀委員に一蹴された苦い記憶は、未だに風路の脳裏にこびり付いている。すぐには取り除けないだろう。だが、このままではいけない。 界刺が言うように、自分の訴えを信じてくれる風紀委員を見付けなければならない。 警備員に訴える手もあったが、大人である彼等を真っ先に頼るというのは風路自身が納得いかなかった。 自分が風紀委員や警備員を信じなくなったのは、風紀委員とのやり取りが切欠だ。だったら、それを乗り越えるためにはまず風紀委員に。 打てる手とは別のモノ。風路形慈の譲れないモノ。自分の過ちから目を逸らし続けていた責任を取る意味もある。すなわち、自業自得。 風路の何処か憑き物が落ちたかのような表情を目に映し、界刺はもう1人の関係者に視線を向ける。関係者とはすなわち、網枷と関わる者。 「さて。ハバラッチ。網枷の後輩である君が抱く今の心境を聞こうか? どうだい、自分が所属する支部の先輩が『ブラックウィザード』の手先で、かつての同僚を貶めた可能性があり、今は君達に牙を向けようとしている現状についてどう思う?」 continue!!