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サンバーンの腹心 ブレッシングプリキュアの先鋒。 他シリーズでいえば、ピーサードとかカレハーンとかギリンマとかみたいな人。 つまりは最初の犠牲者でもある? ネーミングの由来は太陽フレアに基づく。
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夏の夜は、なんだか街灯の光までもがあたたかい。こんな夜だから、尚更なのかな。 アタシはシフォンが居なくなって急に寂しくなった両手を、胸の前で組み合わせた。 「ラブちゃんは、やっぱり凄いね、美希ちゃん。」 隣りを歩くブッキーが、ゆっくりとささやくように言う。 「そうね。」 アタシは短くそう答えながら、さっきの光景を思い出していた。 ――もしよかったら、このままうちにおいでよ。 せつなに、そう力強く声をかけたラブ。 そんなラブの言葉を支えるように、穏やかに頷いてみせたおじさん。 戸惑い俯くせつなを、その涙ごとやさしく包み込んだおばさん。 あの三人なら、きっと心から、せつなの家族になっていくだろう。 そして――。 「ラブはもちろん、凄いけど・・・」 アタシはそう呟いて、空にひときわ強く輝く星を見つめる。 「せつなも、凄いわ。」 管理された世界――命すら自分のものではない世界で、懸命に生きてきた子。それなのに、信じていたものに裏切られ、捨てられた。頼りにしていたものが崩れ去ってしまう哀しみと虚しさは、ほんの少しなら、アタシにもわかる。 それでもせつなは、新たに知った大切なものを、守っていくと決めた。ひとつひとつやり直していくために、精一杯頑張ると言い切った。その真っ直ぐさ、ひたむきさが、アタシには眩しい。 「・・・うん。そうだね。」 ブッキーが、いつもより一層やさしい眼差しを、アタシに向ける。 アタシたちはそれきり黙ったまま、空の光と地上の光が照らし出す夜のクローバータウン・ストリートを、それぞれの家へと、静かに向かったのだった。 四つ葉になるとき ~第1章:届け!愛のメロディ~ Episode2:夕焼けとメロンドーナツ 「へぇ。せつなさんの机は、おじさんが作ってくれたの?」 「ええ。」 ブッキーの言葉に、せつながニコリと笑って頷く。 「確か、ラブの机もそうだったよね。もう、日曜大工の域を超えてるんじゃない?」 「えへへ~。」 美希たんににんまりと笑い返して、あたしは隣りに座るせつなの顔を、チラリと見やる。お父さんのことをほめられるのは、嬉しいって言うより照れくさいけど、今はせつなが幸せそうなのが、何より嬉しい。 公園を吹く風が、昼間に比べればほんの少し、涼しくなってきたみたい。今日は一日、タケシ君とラッキーの運動会の練習に付き合って、これから四人でお疲れ様のドーナツタイムだ。 「いいなぁ。うちのお父さん、そういうの、からきしダメだから。この前なんて、病院にある棚を直そうとして、逆に壊しちゃったの。さすがにしばらく落ち込んでた。」 「うちは、ママとアタシじゃあ、どうにもならないから・・・。あ、そういえば前にラブのお父さんが、うちの店のマガジンラック、直してくれたってママが言ってたわ。」 そこでせつなのいぶかしげな視線に気付いたんだろう。美希たんがこちらに顔を寄せて、小声で尋ねてきた。 「ラブ、せつなにまだ話してないの?うちのこと。」 「あ、うん・・・まだ、その・・・。」 あたしがもごもごと口ごもっているうちに、美希たんはせつなの方に向き直ると、微笑を浮かべながら、さらりとした調子で言った。 「うちはね、両親が離婚してて、ママとアタシの二人暮らしなのよ。」 「・・・離婚?」 「そう。アタシがまだ小さい頃にね。」 「そうだったの。」 テーブルに視線を落とすせつなに、美希たんは顔の前で手を振って、明るい声でこう付け足した。 「ああ、でも、パパとはそれきり会ってない、なぁんてわけじゃないのよ。現に、今度の日曜日にも、会いに行くことになってるし。 今は弟の和希と隣町に住んでるから、一カ月か二カ月に一度は会いに行ってるの。弟とは、もっとしょっちゅう会ってるしね。」 「そう。」 これ以上なく短いせつなの言葉。でもその中に、何だかあったかい響きが混じっている気がして、あたしはせつなの横顔に目を向ける。と、そのとき、テーブルを見つめていたせつなが、顔を上げてまっすぐに美希たんを見た。 「それで、どうして美希と美希のお母さんじゃ、どうにもならないの?」 「え?何の話?」 一瞬ポカンとした美希たんに、せつなは小首を傾げながら、真剣な顔で続ける。 「日曜大工・・・って言うんだったかしら。それって、男の人じゃないと、できないものなの?」 「ああ、その話。いやぁ、そんなわけじゃ・・・。」 美希たん、なんか焦ってヘンな顔になってる。せつなは別に、責めてるわけでも何でもなくて、ただ疑問に思ったことを質問しているだけなのに。 「ほ、ほら!ママは美容師だから、手を怪我したら仕事出来なくなっちゃうでしょ。アタシもモデルだから、怪我するわけにはいかないのよ。」 「え・・・日曜大工って、怪我するの?」 美希たんの説明を聞いて、さっきとは一転、心配そうに眉をひそめるせつな。その顔を見て、美希たんの慌てっぷりがピークに達した。 「あ、ああ、違うのよ、せつな。おじさんみたいに上手な人は、怪我なんかしないから!ほら、アタシやママは慣れてないから・・・いや、アタシだって、慣れれば・・・ううん、気を付ければ、大丈夫なのよ。だから、心配しないで!」 「美希ちゃん・・・日曜大工、やるつもりなの?」 ブッキーがいたずらっ子のような目をして、美希たんの顔を覗き込む。思わずブッと吹き出すと、ブッキーもこらえきれなくなったのか、フフッ、と笑いを漏らした。恨めしそうにあたしとブッキーを見ていた美希たんも、やがて照れ笑いから、そのまま笑顔になる。 一人だけ状況が掴めずにポカンとしているせつなに、さて何て説明しよう・・・と思っていると、 「はい、お待ちどうさま~。」 タイミング良く、カオルちゃんがドーナツを入れたバスケットを持ってやって来た。 「あれ?カオルちゃん。この緑色っぽいドーナツは、なぁに?」 ブッキーがバスケットを覗いて尋ねた。バスケットの中には、あたしたちが頼んだドーナツセットのほかに、薄い緑がかった色をした小ぶりのドーナツが四つ、窮屈そうに押し込まれている。 カオルちゃんが、サングラス越しにあたしの顔を見て、ニヤッと笑う。 「これ、お嬢ちゃんには一度食べてもらったよね。試作品のメロン味。あのとき反応薄かったから、おじさん頑張っちゃって、ずいぶん改良したんだよ~。」 グハッ!といつもの調子で笑うカオルちゃんの顔と、バスケットの中身に何度か目をやって、あたしはやっと思い出した。 そう、あのときだ。せつながイースだったって知って、悲しみに暮れていた、あのとき。美希たんに強い言葉をぶつけられて、思わず家を飛び出してしまった、あのとき。どこをどう歩いてきたかもわからないまま、気が付いたら、ここまでやってきていたんだった。 そういえば、確かにカオルちゃんに、ドーナツの感想を訊かれたような気がする。 「ごめ~ん、カオルちゃん。あのとき、あたし色々考え込んでて・・・。」 「いーのいーの。悩みは青春のビタミンだよ。さっ、こっちもビタミンたっぷりだから、食べてみてよ!」 そう言われて、あたしたちは揃ってメロン味のドーナツに手を伸ばす。一口食べると、甘いメロンの味と香りが口いっぱいに広がって、全員がぱぁっと笑顔になった。 「う~ん、美味しい!」 「ドーナツなのに、メロンの味が濃厚だわ!」 「すっごく美味しいよ、カオルちゃん!せつなっ、せつなも美味しい?」 「ええ、とっても美味しいわ!」 あたしたちの反応に、カオルちゃんが満足げに頷く。 「なるほど、本物のメロンの果肉を使っているわけか。贅沢よね。」 美希たんが、かじりかけのドーナツをじーっと見つめて、感心したようにつぶやく。ドーナツの中には、ジャムのように煮込んだメロンが入っているのだが、これが結構たくさんで、切り方も大きい。メロンの味をしっかり感じられるのは、このためみたいだ。 「高級感もあるし、何より美味しいし。お土産なんかにも、ぴったりなんじゃない?」 「でも、カオルちゃん。」 弾んだ美希たんの声とは裏腹に、ブッキーが少し心配そうに、カオルちゃんの顔を見上げる。 「これ、いくらで売るの?こんなにたっぷりメロンが入っていたら、それなりに高い値段じゃないと・・・」 「う~ん、そこが問題なんだよね~。」 カオルちゃんが、太い眉毛を八の字にして、顎に手を当てる。 「赤字にはできないけど、おじさん、値段上げるの嫌いなんだよねぇ。ドーナツって、ただでさえ揚がっちゃってるから~。グハッ!」 「やっぱり、売るとなったら色々難しいわけね。」 ぼそっとつぶやいた美希たんの顔を、せつなが真面目な顔で見つめている。それを見て、あたしは密かにドキリとした。あ、ヤバい。ひょっとして、せつな、また何か疑問に思って・・・。 あたしが話題を変えようと、思い切り息を吸い込んだそのとき。ブッキーがパッと顔を輝かせて、のんびりと言った。 「あ・・・。ほら見て!きれいな夕焼け~。」 吸い込んだ息をはぁっと吐き出して、後ろを振り返る。ブッキーの向かいに座っているあたしからは、丁度背中に当たる方向。うっそうと茂る公園の木々の向こう側に、もこもこした雲を真っ赤に染めた夕焼けが広がっている。 「ホント。きれいねぇ。」 穏やかにそう言う美希たんの横顔も、気が付けば夕陽を浴びている。それを見ていたら、何だか不思議な気持ちになった。 どうしてだろう。美希たんのお父さんとお母さんの離婚の話が出ると、決まってあの頃に見た、夕焼けに染まる街の景色を思い出す。さっきもそうだった。 実際は、夕陽に照らされていたのは美希たんじゃなくて、美希たんのお母さんのレミおばさんなんだけど。目に焼き付いているのは、美希たんの名前を呼びながら、夕暮れの通りを駆けていくおばさんの後ろ姿だ。 (ちょうど同じ頃の出来事だから、きっと記憶が繋がっちゃってるんだね。) そう思ったとき、 「ラブ?どうかした?」 当の美希たんに、怪訝そうな声で呼びかけられた。 「い、いやぁ、何でもないよ。」 あたしは笑ってごまかすと、手に持ったままだったメロンドーナツの残りを、一気に頬張った。 ☆ その日の夕ご飯が終わったときのこと。 「今日は、デザートにいいものがあるんだよぉ。取引先の人から、頂いたんだ。」 お父さんがそう言って、嬉しそうにあたしとせつなの顔を見つめた。 「パッションフルーツって、知ってるかい?二人とも。」 途端に、お茶を飲んでいたせつなが盛大にむせた。 「おい、せつなちゃん。大丈夫かい?」 「あらあら。お茶、熱くなかった?火傷したりしてない?」 驚いて声をかけるお父さんとお母さんに、せつなは真っ赤な顔で、しきりに頷いてみせる。 「ご、ごめんなさい。大丈夫。」 「あははは~。せつな、そんなに慌てて飲むからだよぉ。」 あたしはこみ上げてくる可笑しさを引きつり笑いでごまかしながら、せつなの背中をトントンと叩く。お母さんが、そんなあたしたちを見て安心したように微笑むと、席を立って、冷蔵庫へ向かった。 「じゃあ、早速頂きましょうか。」 「ああ、食べ頃だっていう話だったしな。切り方、わかるかい?」 お父さんが、いそいそとついていく。そんな二人の後ろ姿を眺めながら、嬉しくなったあたしはつい、余計なひと言を言ってしまった。 「わーい、パッションフルーツだって。熟れたてフレッシュだねっ、せつな。」 その瞬間。せつなの右足に向こうずねを直撃されて、あたしは声も出せずにテーブルに突っ伏して呻いた。 「ラブー。これ、そっちに運んでくれるぅ?」 何も知らないお母さんの呑気な声。 「は、は~~いぃ。」 あたしは、澄ました顔で食器を片付けているせつなを涙目でにらむと、そろそろと台所に向かった。 その夜、パジャマ姿のせつなが、あたしの部屋にやって来た。 「さっきのことなら、別に謝らなくてもいいよーだ。」 そう言って口をとがらせてみせると、せつなはクスクスと笑ってから、 「別に謝るつもりはないわ。」 と、相変わらず澄ました顔で言った。ちょっと憎たらしい。 タルトとシフォンは、またゲームに夢中になっている。夜更かししないように、ちゃんと言っておかなくちゃ、と思いながら、せつなと並んでベッドに腰掛けた。 「そうじゃなくて、美希のこと。」 笑ったことで口が軽くなったのか、そこまではすんなり言えたせつなだったが、そのあと、しばらくためらった。 「ねぇ、ラブ。昼間言ってた、美希のご両親の離婚の話なんだけど。」 せつなが上目遣いに、あたしの顔を見る。 「どうして、離婚することになったの?」 せつなの瞳に、哀しみの色が浮かんでいる。最近のせつなは、イースだった頃のことを思い出して、時々こういう目をしていた。でも今のは、自分のことじゃなくて、美希たんのことを思っての哀しみだろう。 あたしは、膝の上に置かれたせつなの手に、自分の手を重ねると、その深い朱を帯びた瞳を覗き込んだ。 「離婚の理由は、あたしも知らないんだ。そういうことって家族の問題だから、いくら美希たんと幼馴染でも、簡単には訊けないことだし。」 「そうなの。」 「でもね。」 あたしは俯きかけたせつなの瞳を、もう一度覗き込む。 「どういう理由があったとしても、おじさんとおばさんは、きっと家族のこれからの幸せを、一生懸命考えて決めたんだと思うよ。」 「どうして?家族がバラバラになって、寂しくないの?家族みんなで一緒に暮らせることが、幸せなことなんじゃないの?」 せつなは、あたしの顔をにらむようにしてそう言ってから、フッと膝の上に視線を落とした。 「私ね、ラブ。」 せつなが顔を上げずに、ぽつりとつぶやく。 「家族なんて、持てるだけで幸せなんだから、たくさん居たって、そのうちの一人しか居なくたって、同じだろうって思ってたの。でも今は、家族のうちの一人が欠けても、とっても寂しいと思う。 家族はひとりひとり、それぞれ違って、それぞれ大切なんだって、私、この家に来て教わったわ。」 「そうだね。」 あたしの手に、力がこもる。パッションフルーツを囲んでみんなで笑い合った、さっきの食卓の風景がよみがえった。 「ホント言うとさ。美希たんのお父さんとお母さんが離婚したって聞いたとき、あたし、レミおばさんに頼みに行こうとしたの。もう一度、おじさんと和ちゃんを呼び戻して、って。」 この話は、美希たんにはもちろん、ブッキーにも話したことはない。 「結局、お母さんに止められて、悲しくてわんわん泣いちゃった。そのとき、お母さんに言われたの。」 「さっき、ラブが言ってたこと?」 「そう。それとね、家族のカタチはそれぞれみんな違うんだから、家族の幸せのカタチも、みんな違うのよ、って。」 小さなあたしにそう言い聞かせたお母さんの顔を、あたしは今でもハッキリと覚えている。怖いくらいに真剣な顔だった。言われた言葉の意味は、あのときはさっぱりわからなかったのに、その内容をちゃんと覚えているのは、そのせいなのかもしれない。 「幸せの、カタチ・・・。」 小さくつぶやくせつなに、あたしはそっと笑いかける。 「ねぇ、せつな。前に、話したことあったよね。あたしたちは生きてるから、どんどん変わっていっちゃうよね、って。」 「そうだったわね。」 あれは、あたしたちが入院しているときだった。少し辛そうに顔をそむけるせつなの手を、あたしは想いを込めて、もう一度握り直す。 「幸せのカタチも、家族のカタチも、そうなのかもって、あたし思うんだ。不幸はいつでも幸せに生まれ変われるんだもの。 美希たんは、寂しい思いもいっぱいしたと思うけど、おじさんや和ちゃんと会える時間を、今では凄く大切にしてる。それって、今の美希たんにとっての、家族の幸せのカタチだからなのかもしれないよ。あたしはそんな美希たんの幸せを、応援したいんだ。」 途中からじっとあたしの目を見て話を聞いていたせつなが、また少し俯いて考え込む。 「ねぇ、ラブ。もうひとつだけ、訊いてもいい?」 しばらくして、せつなが俯いたままで口を開いた。 「美希は、寂しい思いをどうやって、家族の幸せのカタチに変えていったのかしら。」 その言葉を聞いたとき、あたしの目の裏にまた、夕焼けに染まる街の景色が、鮮やかに広がった。 ――隣町の公園の方が、すべり台も大きいし、ブランコも待たないで乗れるんだって! そんなことを言い出したのは、あたしだったような気がする。小さな三人でテクテク歩いてたどりついた公園は、広い割に人が少なくて、あたしたちはしばらく夢中になって、すべり台やブランコで遊んだ。 そのうち三人でかくれんぼを始めて、しばらくしてから、事件は起こった。美希たんが、いくら探しても見つからなかったのだ。 夕方になり、半べそをかきながら帰ってきたあたしとブッキーの話を聞いて、レミおばさんは大慌てで飛び出して行った。やがておばさんに連れられて帰ってきた美希たんは、公園でずっと隠れていた、と言った。ブッキーと二人で、あんなに必死になって探したというのに・・・。 でもあの後から、美希たんが――おじさんと和ちゃんが居なくなって、ずっと元気がなかった美希たんが、少しずつ――ほんの少しずつだけど、明るくなったような気がした――。 「あたしもそれは、よく知らないんだ。」 あたしはパチパチとまばたきをして、小さい頃の光景を再び胸に仕舞うと、せつなに向き直る。 「だから、せつなが直接、美希たんに訊いてごらんよ。」 「私が?」 驚くせつなにニヤッと笑いかけて、あたしは言葉を繋ぐ。 「あ、今すぐにってわけじゃないよ。せつなと美希たんが、もっとお互いのことをよく知って、いろんな話が出来るようになったら・・・そのときは、そういうことも話せるようになるんじゃないかな。」 昼間の美希たんとせつなの会話を思い出す。美希たんは、何だかやたらと焦っていたけど、今日はあたしも知らない、美希たんの別の顔が見られた気がした。 そう。友達のカタチだって、みんな違う。四人居れば・・・えーっと何通りだっけ、とにかくそれぞれが、違うカタチを持っている。 そして、それは変わっていく。変えられる。そのことは、あたしもせつなも、よく知っていることだ。 「私に・・・出来るかしら。」 不安そうなせつなの声に、あたしはここぞとばかりに、力強く頷いてみせる。 「もっちろん!」 明らかに力が入りすぎたその声に、せつながクスッと笑う。 「じゃあ私、精一杯がんばるわ。」 穏やかなせつなの目に、今はもう、哀しみの色は無かった。 ☆ 次の日も、あたしたちはタケシ君とラッキーの練習のお手伝いに、四つ葉町公園へやって来た。 「よぉ、お嬢ちゃんたち。今日も、ワンちゃんの練習かい?」 開店準備をしているカオルちゃんに、声をかけられる。 「うん。終わったらドーナツ食べに来るからねっ、カオルちゃん!」 そう言って行き過ぎようとしたあたしは、立ち止まったまま動かないせつなに気付いて、慌てて足を止めた。 「・・・あっ、あのっ!」 よっぽど思い切って声をかけたんだろう。握ったせつなの拳が、ブルブルと小さく震えている。 「ん?どしたの~、お嬢ちゃん。」 カオルちゃんの声は、相変わらず呑気そのものだ。 「昨日の、メロン味のドーナツ・・・あれ、もう作らないんですか?」 (え?せつな、そんなにあのドーナツ、気に入ったんだ・・・。) 一瞬あっけにとられたあたしは、続いて聞こえてきたせつなの言葉に、ハッとした。 「少しだけ・・・もう少しだけ、作ってくれませんか?せめて・・・今度の日曜日まで。」 (今度の・・・日曜日?あっ!) ――現に、今度の日曜日にも、会いに行くことになってるし。 ――お土産なんかにも、ぴったりなんじゃない? 昨日の美希たんの言葉が、よみがえった。 「お嬢ちゃん、そんなに気に入ってくれたんだ。嬉しいねぇ~。」 カオルちゃんはそう言いながら、ワゴンの中から大きな鍋を持ってきて、ほら、と蓋を取る。 鍋の中にはとろりとした薄緑色のジャムが入っていて、つやつやした角切りメロンが、たくさん顔を覗かせていた。 「いやぁ、昨日は大好評だったからさ。あとはお客さんに食べてもらいながら、もっともっと美味しいの作るよ~。最高傑作が出来るのは・・・そうだなぁ、今度の日曜日くらいかな?グハッ!」 カオルちゃんの言葉に、せつなの頬がうっすらと赤く染まる。 ちょうどそこへ、あたしとせつなの名前を呼びながら、美希たんとブッキーが駆けてくるのが見えた。 「やったね、せつなっ!ほら、美希たんに教えてあげなくちゃ。」 「え?ラブ・・・気付いてたの?」 きょとんとするせつなの手を取って、あたしは走り出す。 「おーい、美希たぁん!ブッキー!」 まだまっさらな朝の光が、あたしたちを背中から照らしている。今日も、暑くなりそうだ。 ~終~ 新-985へ
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四色に塗り分けられた、四つ葉のクローバーの留め金。 それを外してパカリと蓋を開け、ゆっくりとハンドルを回す。 中央のクリスタルが柔らかな光を放ち、四つのハートがくるくると動き始める。 そして滑るように紡ぎ出される、軽やかで優しい旋律。 「いい音色だよねぇ。曲も素敵だし。」 ラブが後ろから覗き込んで、嬉しそうに言う。 「あ・・・う、うん。」 少し恥ずかしくなって、ラブの顔を見ずに頷いた。 こうやってこの音色に聴き入るのは、今日だけでもう何度目だろう――そう思ったから。 私にとって「音」というものは、耳で捉えることのできる、単なる情報でしかなかった。 言葉としての情報。状況を把握するための情報。危険を察知するための情報。 音を聴くために、音を聞くなんて――音の響きや連なりを、ただ楽しむなんて、 そんなこと、この世界に来て初めて知った。 もっとも、私が最初に知った音楽はダンスの曲だったから、 はじめはメロディよりも、リズムやテンポばかりを気にして聴いていたような気がする。 初めてクローバーボックスの音色を聞いた、あのときの不思議な気持ち。 豊かで澄み切った音は、まるで耳なんか通さずに、 直接心に流れ込んでくるみたいだった。 音は私の中で奏でられ、あたたかく語りかけるようにメロディを紡ぐ。 それに答えて、何だか私の心も一緒に歌っているような、そんな気がした。 「音楽って、音を楽しむものだからさ。 きれいな音楽を聴くと、一緒に歌っちゃうものなんだよ。」 あのときの気持ちを伝えたくて、下手な説明をした私に、ラブが言った。 もしそうなら、私の心も――音楽なんて、まるで知らなかった私の心も、 このオルゴールの曲に乗せて、歌うことが出来るんだろうか。 休み時間の教室の楽しい雰囲気や、晩ご飯の食卓の明るさや、 今、私の隣りにある、笑顔のあたたかさを。 ふわりとやって来たシフォンが、オルゴールの曲に合わせるように、 いつもより優しい声で、キュアキュア~と囁く。 クローバーボックスと、シフォンと、私の心。 何だか三つの心が、歌で楽しく語り合っているように思えて、 私はハンドルを回しながら、知らず知らずのうちに、微笑んでいた。 四つ葉になるとき ~第2章:響け!希望のリズム~ Episode9:四つ葉町、15時16分発 「せつな~、お待たせ。」 クローバータウンストリートの、天使の像の前。五日前と同じ場所に、同じように立っている彼女に、美希は駆け寄る。 「私も、今来たとこ。」 そう言って、少しはにかんだように笑うせつなに、美希もニコリと微笑んだ。 この前と違っているのは、二人とも制服姿だということと、時間が既に午後三時過ぎだということ、それに、二人のこの表情だ。 あのとき結局買えなかった美希の服を買うために、美希とせつなは、今度は最初から二人きりで、学校帰りに待ち合わせたのだった。 商店街を歩く二人の足取りも、今日は軽やかだ。そしてこの前よりも時間が無いだけに、歩調が速い。 「少し急げば、四時にはお店に着けるかしら。」 「この時間なら電車の本数も多いし、大丈夫よ。」 そう言って、美希はちらりと隣を見て、内心あれ?と首をかしげた。何だかいつもより、ヤケにせつなの背が高いような気がしたからだ。 せつな、今日は学校の革靴よね・・・不思議に思って、そっと足元に目をやる。途端に驚きの表情で顔を上げた美希は、せつなの頭の向こうに何があるかに気付いて、今度は思わず、ぷっと吹き出した。 百面相さながらのその表情に、気付いているのかいないのか、せつなは澄まして前を向いたままだ。 美希は、そんなせつなを見つめてニヤリと笑うと、さっと彼女の後ろにまわって、その両肩を上から、くいっと押さえ付けた。 「な・・・なに?」 「そ~んな爪先立ちで歩いてたら、足痛めるわよ?身長だけは、アタシと張り合おうったって、ム・リ・ム・リ。」 「そんなこと・・・。」 せつなが少し悔しそうに、口を尖らせる。が、肩越しに囁いた美希の言葉に、見る見るその顔が赤くなった。 「ありがとう。もう大丈夫よ、魚屋さんの前は通り過ぎたから。」 この前二人でここを通ったとき、店先の水槽の中にアレを見つけて、思わず、ひっ!と声を上げてしまったことを思い出す。せつなはそれを覚えていて、美希の視界に水槽が入らないように、盾になってくれたのだろう。 それも、身長が足りない分を精一杯背伸びして、爪先歩きでカバーするという、単純だけど誰にも真似の出来ない方法で。 やり方は強引だけど、それがいかにもせつならしい・・・そう思って、美希はしみじみと嬉しくなる。 美希の手の下にある肩の高さが、ガクンと下がった。靴の踵をそっと地面につけたせつなが、はぁっと溜息をついて、美希を振り向く。その何とも照れ臭そうな表情に、もう一度ニヤリと笑みを返して、美希はせつなの手を取った。 「急ごう。せつな、走れる?足が痛いなんて、言わないわよね。」 「当然でしょ!」 クスリと笑い合って、駅を目指して走り出す。少し秋めいてきた風が、手を繋いで走る二人の髪を、柔らかく揺らした。 まだラッシュアワーには間があるが、平日の午後だけあって、電車はそこそこに混んでいた。二人並んで、つり革につかまる。 目の前の座席には、大学生らしき若者が座っていて、イヤフォンで音楽を聴きながら、雑誌のページをめくっている。それをちらりと眺めてから、美希はせつなの耳元に口を寄せた。 「せつなにあんなに心配されるんじゃあ、アタシもそろそろ、克服しなきゃダメかしら。」 「何を?」 こちらを見上げて問い返すせつなに、一瞬グッと詰まってから、美希はさらに声をひそめる。 「もうっ!わざわざ言わせなくてもいいでしょう?」 「名前も口に出せないものを、克服なんて無理ね。」 クスクスと笑ってから、せつなは少し真顔になった。 「ねぇ、美希。怖いものって、やっぱり克服しなきゃいけないのかしら。」 「そりゃあ、モノにも拠ると思うけど・・・。」 せつなが告白した“一番怖いもの”を思い出して、美希は口ごもる。 「ごめんなさい、おかしなことを言って。怖いものは、有るよりは無い方がいいわよね。でも・・・。」 せつなは美希の顔から目を逸らし、少し言いづらそうに言葉を続けた。 「私、美希にも怖いものがあるって知って、ちょっと嬉しかったの。それを美希が教えてくれたのが、もっと嬉しかった。」 そう言って、せつなの顔が下を向く。 「そんな風に思うのって、やっぱり私・・・意地が悪いのかしら。」 「ちょっ、それは・・・」 美希が口を開きかけたとき、電車がホームに滑り込んだ。大学生の隣の席に座っていた、サラリーマンらしい二人連れが席を立つ。 「・・・座ろっか。」 美希が気を取り直したように、せつなを促す。そして、二人並んで座席に腰掛けると、さっきよりも一層近くなった横顔に向かって、おどけた調子で囁いた。 「もしそうなら、アタシもせつなに負けないくらい、意地が悪いってことになるわね。」 「え・・・?」 驚いたようにこちらを向くせつなに、美希はパチリと片目をつぶる。 「それに、ホントに意地が悪い相手に、アタシが弱みを見せるわけないでしょう?だってアタシ、完璧だもの。」 「美希ったら。」 せつなが少しうるんだ目でそう言ったと同時に、電車がガタンと大きく揺れて発車する。美希は思い切りバランスを崩して、せつなの肩にもたれかかった。 「ゴメン。完璧・・・じゃないわね。」 「クスッ。ううん、頼りにしてもらえて、嬉しいわ。」 せつなが珍しく、ニヤリといたずらっぽく笑う。そして、わずかに揺らいだ上体を元に戻すと、反対隣の席に向かって律儀に会釈した。そのとき、隣の彼が読んでいる雑誌が目に入って、せつなは、あ・・・と小さく声を上げた。 「ねぇ、美希。今までに、楽器の演奏を習ったことって、ある?」 「え?楽器?うーん、学校の音楽の授業で、リコーダーを吹いたくらいかな。ラブもブッキーも、そう変わらないと思うけど。それがどうかしたの?」 せつなの唐突とも言える問いに答えながら、美希はせつなの隣で広げられている、雑誌のページにちらりと目をやる。なるほど、どうやら音楽雑誌らしい。誌面を大きく飾っているのは、最近ニューヨークで話題になっているジャズピアニストが演奏している写真だ。 せつなは少し考えてから、おずおずと口を開く。 「お店に着く間に、少し聞いてほしいことがあるんだけど・・・いいかしら。」 そう言って、少し上目遣いに自分を見つめるせつなに、美希はここぞとばかりに、ニコリと完璧な笑顔を見せた。 「もっちろん、いいわよ。何でも言って。」 途端に身体ごとせつなに向き直られて、ほんの少したじろぐ。せつなはそんな美希にはお構いなしに、考え考え、ゆっくりと話し始めた。 「あのね。昨日の放課後のことなんだけど・・・」 ☆ 昨日――この日はせつなにとって、初めての日直の日だった。 四つ葉中学校では、日直は二人一組で担当する。授業が終わるたびに黒板を消したり、移動教室のときに窓とドアを閉めて電気を消したり、ひとつひとつは取るに足りないことだが、細かい仕事が朝から放課後まで続く当番。そもそも、「日直」という言葉を初めて聞いたせつなには、戸惑うこともさぞかし多いだろうと思いきや・・・。 「せつなっ!日直のことなら、どーんと任せて!まずねー、朝、先生が入って来たら、『起立!』って号令かけて・・・」 「違うわよ、ラブ。その前に、職員室に学級日誌を取りに行くんでしょう?東さん、わからないことがあったら、ラブじゃなくてわたしに、何でも訊いて。」 「東さん!チョークの粉で指が汚れないように、黒板消しは、僕が責任を持って掃除しておきますから!」 「いーえ、東さん。何だったら、明日は板書は無しってことで、僕が先生に掛け合いましょう!」 「・・・お前ら、いい加減にしろよ。東さんと日直をやるのは、俺だぞ!」 「それが一番、許せないんだぁぁぁ!!」 既に前日の時点で、ラブを筆頭に、次から次へとせつなの世話を焼きたがる級友たちが現れて、一緒に日直をやる男子生徒もたじたじ、というありさま。お陰で当日は、さして大変でもない日直の仕事よりも、そんな周囲の反応の方に大いに戸惑いを覚えつつ、せつなの初めての日直の日は、何だかワイワイと過ぎて行った。 そして、日直の最後の仕事である学級日誌を書き終えて、職員室へ届けに行った、その後のこと。 教室に鞄を取りに戻ったせつなは、人がまばらになった廊下を流れてくる音に気付いて、足を止めた。コロコロと軽快に転がるような、澄んだ音色。音楽の授業で、何度か聞いたことのある音だ。 (あれはピアノの音ね。きれい・・・。誰が弾いているのかしら。) 一緒に日誌を届けに行った日直の相棒と教室の前で別れ、音を頼りに歩き出す。辿り着いた先は予想通り、音楽室だった。半開きのドアの陰からそっと窺うと、ピアノの向こうに見える真剣な表情。弾いていたのは、せつなのクラスメイトの由美だった。ラブと仲良しで、まだ学校に慣れていないせつなを、いつもさりげなくフォローしてくれる子だ。 漆黒の髪を柔らかく揺らして曲のリズムを取りながら、右手ではゆったりと流れるようなメロディを、左手では軽快で正確無比な和音を奏でる。演奏のテクニックについてはわからないせつなにも、その両手から紡ぎ出される音の豊かさは、その耳で確かに感じることができた。 やがて曲が終わり、由美が楽譜から目を上げる。そして、ドアの陰のせつなに気付くと、嬉しそうな、困っているような、何とも複雑な表情になった。 せつなの方も、照れ笑いの表情で音楽室に入り、由美に近付く。 「ごめんなさい。教室の前でピアノが聞こえて、あんまりきれいだったから。」 「あ、ありがとう、東さん。教室まで聞こえてたんだ・・・。ドアが開いていたもんね。」 由美が赤い顔をして、ドギマギと言った。 「今度、地域の音楽祭で、合唱部が歌うことになっていてね。その伴奏を頼まれたの。いつもピアノを弾いていた子が、お父さんの転勤で、急に転校しちゃったものだから。」 「そうだったの。こんな素敵な伴奏なら、きっと合唱もうまくいくわね。」 せつながそう言って、ニコリと笑う。が、当の由美は、それを聞いて視線を泳がせると、ピアノの鍵盤に目を落とした。 「うまく・・・いかないの。わたし、どうしてもみんなの足を引っ張っちゃって。」 「どして?あんなにきれいに演奏してたじゃない。」 驚いて目を見張るせつなに、由美は顔を上げて、真剣な眼差しを向けた。 「東さん、お願い。今度は、そこで最初から聴いていてくれる?」 せつなが頷くと、由美はおもむろに手拍子を始めた。 「このテンポで、手拍子をしながら聴いてほしいんだけど。」 「わかったわ。このテンポね?」 せつなが由美と入れ替わりに手拍子を始める。由美は目を閉じて、その音に耳を澄ませてから、静かに鍵盤に指を乗せた。 由美の右手が流れるようなメロディを奏で、左手の指が三つの鍵盤で和音を作りだす。 曲が始まると、せつなの手拍子が、自然と四拍子になった。身体の動きを音楽の流れに合わせる――ダンスレッスンで、いつもやっていることだ。 (でも、何だかさっきとは違う。何だろう。) 手拍子をしながら、せつなは目をつぶって、じっと音に神経を集中する。 (さっきよりも、音が――硬い?) パッと目を開いて、ピアノの前の由美を見た。その顔は、さっきよりさらに真剣そのものに見えたが、メロディに乗っているような表情ではない。リズムを取っていた黒髪も、今は指の動きを見張っているように、左右に動いているだけだ。 やがて、曲がガラリと雰囲気を変え、左手がトリルの連打となる。その部分で、由美のテンポがせつなの手拍子と明らかにずれ、修正しようとした途端、音が飛んだ。 由美の表情が、さらに険しいものとなる。何とか止まらずに最後まで演奏できたものの、そこからの音はさらに硬く、メロディもリズミカルではなくなっていた。 「ごめんなさい、東さん。わたし、歌が入るとどうしても緊張してしまって・・・。だから合唱部のみんなとも、別々に練習してるの。手拍子だけなら、何とかなるかと思ったんだけどな。」 由美が、力なく肩を落とす。 「本番は一回きりだから、もしも大きな失敗でもしたら、って考えたら怖くって・・・。もう、あと十日しか無いのに。」 独り言のように呟く由美に、せつなは何も言えず、ただ、楽譜と鍵盤とを、じっと見つめるだけだった――。 ☆ 「それで?せつなは、どうしたいの?」 美希が、話を終えたせつなの顔を覗き込む。 「由美の役に立てることがあるなら、役に立ちたいんだけど・・・。」 せつなはそう言って、膝に置かれた自分の手を見つめた。 失敗が許されない状況――それは、せつなにとっては嫌と言うほど経験がある状況だ。そして、そういう時にこそ平常心が大切だということも、身に沁みて知っている。 平常心を保つためには、毎日の訓練を地道に積み上げて、常に平常心で居られるだけの自信を付けるしかない。逆に言えば、毎日の訓練を通して自分の力を正確に把握し、あらゆる事態を想定して対策が立てられれば、緊張して動けなくなるようなことはない――それが、せつなが経験から導き出した結論だった。 「そこまで判っているなら、その子にそう言ってあげればいいじゃない。勿論、練習は必死でやっているんだろうけど、こういうことって精神的な部分が大きいもの。誰かにアドバイスしてもらえれば、違ってくると思うよ?」 「でも・・・。」 美希の言葉に、せつなはちらりと顔を上げ、また膝の上に視線を落とす。 「私がそう思うようになったのは、ピアノや合唱とは程遠い経験を通してだもの。そんな経験と、同じに考えて良いワケが・・・」 「何言ってるの。同じよ。」 確信に満ちた力強い声が、せつなの顔を上げさせる。そこには、あのときウエスターに真っ向から啖呵を切ったときと同じ、強い光を湛えた美希の眼差しがあった。 「せつなの話を聞いて、モデルの仕事も同じだなって思ったもの。人前に立つのって、やっぱり怖いのよ?だから、毎日の努力の積み重ねが大事なの。そうでなければ、とてもじゃないけどモデルなんてやれないわ。」 小声ながらもきっぱりとそう言い切ってから、美希はせつなの目を見つめて、ゆっくりと、優しい声で言った。 「どんな経験にもさ。いろんなことに通じる大切なモノって、何かしらあるのよ、きっと。ううん、辛かったり寂しかったりした経験からこそ、そういうモノを掴んでやらなくちゃ。だってその時間も、アタシたちの大事な人生なんだもん。」 あっけにとられたように蒼い瞳を見つめていたせつなが、ゆっくりと、口元に小さな笑みを浮かべる。それを確かめてから、美希は内緒話でもするように、せつなの耳に顔を近付けた。 「もうひとつ、人前で緊張しない、とっておきの方法があるわ。そこに居る人たち全員が、自分のファンだ、って想像すればいいのよ。」 「ファン?」 不思議そうに小首を傾げるせつなに、美希は必死で言葉を探す。 「えーっと・・・みんながみんな、自分のことを大好きな人たちだって、想像するの。合唱部の仲間たちも、顧問の先生も、見に来てくれたお客さんも、み~んな、ね。大好きだって思ってくれる人たちの前なら怖くないし、一緒に音楽を楽しもうって思えるでしょう?」 せつながハッとしたように、美希の顔を見つめた。 「・・・そうね。音楽って、まずは楽しむものよね。ありがとう。大事なことを、忘れるところだった。」 美希はニコリと笑ってから、チロリと小さく舌を出す。 「まぁ、ホントのこと言うと、今のはママの受け売りなんだけどね。」 「さすが、元アイドルね。でも・・・。」 感心したように頷いてから、せつなは困った顔になった。 「由美に、そんなこと出来るかしら。彼女って、美希ほど完璧に図々しくは無いような気がするんだけど。」 「完璧に図々しいって・・・こら、せつな!」 美希が、小さく拳を振り上げる。そのとき、電車がスピードを落とし、車内アナウンスが高々と、二人が降りる駅の名前を読み上げた。 「あっ、着いた・・・。危ない危ない、アナウンスを聞き逃してたら、乗り過ごすところだったわね。」 美希が慌てた様子で席を立つ。せつなも急いでそれに続きながら、何だか不思議な気がしていた。 五日前にも同じ駅まで電車に乗ったはずなのに、今日はあのときよりずいぶん早く、到着したような気がしたから。 ☆ その翌週の日曜日。 「おはよう、美希。」 四つ葉町公園のドーナツカフェを訪れていた美希は、後ろから駆け寄って来る人影に、笑顔で手を上げた。 「おはよう、せつな。ドーナツ買いに来たの?」 「そう。由美と合唱部のみんなに、差し入れしようと思って。」 そう言って、せつなは嬉しそうに美希の姿を眺める。 「その服、今日も着てくれているのね。」 「ええ。今日は面会日なの。やっぱりパパにも、娘の新たな魅力を、発見させてあげなくっちゃね。」 美希が着ているのは、大きなチェック柄の赤いワンピースに、白いサマーニットのボレロ。この前一緒に出かけたとき、せつなが選んだ服だ。澄ましてポーズを決める美希に、せつなも笑顔になる。 面会日。それは、隣町に暮らす父と弟に、美希が会いに行く日だった。甘い物が好きだというお父さんに、いつものようにお土産のドーナツを買いに来たんだな、とせつなは納得する。 「差し入れって・・・そっか、今日は音楽祭の本番だっけ。」 美希がふと気付いたように、せつなに尋ねた。 「そうなの。ラブも一緒に行くんだけど、ラブったら、なかなか起きないもんだから・・・。今頃、きっと大慌てで支度してるわ。」 穏やかに微笑むせつなの表情が、その後の練習の充実ぶりを物語っている。 実際、あれからせつなは、ダンスレッスンの無い日には、由美と合唱部のメンバーと過ごすことが多かった。と言っても、せつな自身は音楽室の隅に座って、練習を見ているだけだったのだが、せつなが見に来ているというだけで、ヤケに張り切って練習する連中が居たことも、確かだ。 ワゴンの中でドーナツを袋に詰めていたカオルちゃんが、せつなの顔を見て、ニヤリと笑った。 「メロンドーナツの次は、マロンドーナツだよ~ん。メロンとマロン、名前だけは似てるよねっ。味は全然違うけど~。グハッ!」 二人でドーナツの袋を抱えて駅に向かう。二つの袋を何気なく眺めたせつなは、二重に折り返された袋の口が、どちらも左側の角だけ三角に折られているのを見て、小さく微笑んだ。 カオルちゃんの宿題――最悪にばかり目が行くのが『心配』なら、最高の最高にまで目が行ってしまうものは何か――。その答えが、あれから少しずつ形となって、せつなの心の中にある。 幼い姿のラブに、ラブという名前に託した想いを語って、元の世界へ送り返してくれた、源吉おじいさん。 自分のせいで割れてしまった宝石の欠片を磨いて、国政に携わる人々に渡したい――ジェフリーの祈りとも言える提案を受け入れた、めくるめく王国一家。 千香ちゃんが元気になるようにと願いを込めて、懸命にアサガオを育てた女の子。 そして、仲間が居なくなることが怖いと告白した自分に、一人ぼっちにはならないと、力強く励ましてくれた美希。 相手の最高の姿を思い描いて、そうなって欲しいと願うとき、人は「頑張れ」と呼びかける。励ましの声を、応援の気持ちを、相手に精一杯届けようとする。その『応援』を受け取ったとき、最高を示す「右の角」は、さらに高いところへ、明るい方へ、進んでいけるものなのかもしれない。今、そうせつなは思う。 勿論、正解はひとつではないのだろう。人間はひとりひとり、皆違うのだから。 でも、誰かを笑顔に出来る方法のひとつは、ここにあるような気がしていた。 そしてもしかしたら、自分も誰かに応援の気持ちを伝えて、最高の姿を見ることが出来るのかもしれないと、せつなはそっと、由美の笑顔を思い浮かべた。 「じゃあね。その、由美っていう子の晴れ姿、せつなのお陰で緊張を克服した姿を、ちゃあんと見て来て。」 美希が楽しそうにそう言って、せつなに小さく手を振る。今日は、二人の行き先が反対方向なのだ。 「ありがとう。美希も、何か克服したいものがあったら、何でも手伝うわ。」 真面目とも冗談ともつかない様子で、まっすぐに見つめてくるせつなに、美希はゴクリと唾を飲む。それを見て、せつなが堪え切れずにクスクスと笑い出したとき、改札口の方から、明るい声が響いて来た。 満面の笑みを浮かべたラブが、息せき切って走って来る。 「せーつなっ、お待たせ!はぁ、やっと追いついたぁ。あれ?美希たん!今日はお出かけ?」 そこでラブは、美希とせつなを交互に眺めると、途端にキラキラと瞳を輝かせた。 「わっはー!今日の美希たんとせつな、何だか見た目までそっくりだよぉ。な~んか凄~く、仲良しって感じ!」 言われて二人は、慌てて互いの姿を見比べる。 無地とチェックの違いがあるとは言え、二人とも赤いワンピースに白いボレロという出で立ち。おまけに揃ってドーナツの袋を抱えている姿は、確かに見た目まで、実に近しい雰囲気で・・・。 「な・・・何言ってるのよっ!!」 美希とせつなの声が、ぴったりと揃う。もしも声に色があるのなら、二人の声は、それぞれの服の色と同じのはずだ。 「ほら、ラブ、急ぐわよ。早くしないと音楽祭が始まっちゃうわ!」 せつなが美希に照れ臭そうに微笑んでから、いきなりラブの手を引っ張って、階段を駆け上がる。 「わ、わ、わ・・・。み、美希たん、またね!」 ラブはせつなに引きずられるようにして、それでも何とか、美希に手を振ってみせた。 「まったく。しょうがないなぁ、もう。」 美希がやっと、いつもの調子を取り戻す。そして、二人の親友の後ろ姿を見送ると、反対側のホームへの階段を、ゆっくりと、優雅な足取りで上がって行った。 ~終~ 新2-143へ
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【11月11日】 『ただ、一瞬のために』 ミユキ「十二月のコンサートに向けて、毎日トリニティで特訓してるのよ」 タルト「ミユキはんらでも、そないに練習せんとあかんのやろうか?」 祈里 「プロだからこそ、練習は欠かせないのよ、タルトちゃん」 タルト「せやけど、同じ練習ばっかりで、退屈するんやないか?」 ミユキ「同じじゃないのよ。少しづつイメージに迫って、完成に近づいて行くの」 ラブ 「作り上げる喜び、練習だって楽しいんですよね!」 美希 「完璧は一日にして成らず」 せつな「精一杯頑張るのみよね」 【11月12日】 『ありのままに受けとめて』 サウラー 「イチョウ並木は、黄色いじゅうたんの上を歩いているみたいだね」 ウエスター「おう! これを見せたかったんだ。綺麗だろう」 サウラー 「夕日を浴びて、落ち葉もキラキラと光ってるよ」 ウエスター「それに積もってる上を歩くと、フワフワして気持ちいいぞ」 サウラー 「四季とはいいものだね」 ウエスター「なんだ? 今頃気が付いたのか? 俺はずっと前から知ってたぞ」 サウラー 「時々君が、実はとても聡明な人間なんじゃないかって、錯覚することがあるよ」 【11月13日】 『似ている二人』 タルト「うぅ~! だんだん寒なってきたけど、みんな風邪ひいてへん? 気ぃつけてな」 ラブ 「タルトこそ風邪なんじゃ? なんだか顔色悪いよ」 タルト「それが朝から寒気がしてなあ……、体が震えるんや。はくしょん!」 せつな「やっぱり風邪ね、横にならないと」 祈里 「大変! 家から薬持ってきてあげるね」 美希 「これで、ラブに続いて二人目の風邪ひきさんね」 せつな「ラブもタルトも、人一倍元気そうなのに……」 ラブ 「あ~、今、二人して、馬鹿は風邪ひかないんじゃなかった? とか思ったでしょ!?」 美・せ『思ってないわよ』 ラブ 「そっか、ゴメン」 美・せ(顔に出てたかしら……?) 【11月14日】 『タコ尽くし?』 せつな「秋祭りに行きましょ、美希!」 美希 「オーケー! でも、タコ焼きだけは勘弁して~」 せつな「そういえば、ラブたちには秘密なんでしょ? バレないように気をつけないと」 ラブ 「美希たん、たこ焼き食べようよ!」 美希 「ゴメン、アタシそれ苦手なのよ」 祈里 「美希ちゃん、タコせんとタコの軟骨食べよ♪ それと、ハイッ! タコのお面」 美希 「……………………」 せつな「本当にみんな知らないのかしら?」 【11月15日】 『健やかな成長を祝って』 ラブ 「今日は七五三のお祝いだね! あたしもお祝いしてもらったなぁ~」 せつな 「女の子は三歳と七歳の時よね。ラブは両方祝ってもらったの?」 ラブ 「うん、そうだよ。写真見る?」 シフォン「らぶ、かわいい」 ラブ 「ありがとう。シフォンはいくつなんだろう?」 シフォン「キュア~?」 タルト 「三歳くらいとちゃうかなあ……よう知らんけど」 あゆみ 「みんなで、シフォンちゃんのお祝いに行きましょうか?」 ラブ 「やったね! シフォン。美希たんに頼んで、晴れ着用意してもらおうか?」 せつな 「どうして、私まで着物を着るの?」 あゆみ 「せっちゃんもお祝いしたことないんでしょ? 一緒にして、みんなで記念写真を撮りましょう」 【11月16日】 『し・あ・わ・せ・の合言葉』 せつな「ダンスのステップが、どんどん難しくなってきたわ。精一杯頑張ろうっと!」 ラブ 「トリニティの振り付けと同じだもんね。そりゃあ難しいはずだよ」 美希 「同じじゃないみたいよ。ミユキさんが四人用に書き直してくれてるから、もっと……」 祈里 「わたし、できるかなあ……」 ミユキ「こーら、弱気にならない! できないと思ってたら教えないわよ」 ラブ 「こんな時は、いつもの口グセで元気出そうよ。みんな、いくよっ!」 ミユキ「ハイ、休憩時間お終い。時間ないんだから、さっさとレッスン再会するわよ」 四人 『はぁ~い!』 【11月17日】 『せつなとシフォンの観察日記』 シフォン「シフォン、公園でどんぐり、いっぱい、集める~」 美希 「はりきってるわね、シフォン。でも、どんぐりって使い道ないのよね……」 祈里 「アクセサリーにしたり、コマにしたり。一応食べる方法もあるらしいけど」 美希 「それはちょっと……」 ラブ 「いっぱい拾って、心の中の宝箱にしまっておけばいいんだよ」 祈里 「ラブちゃん、いいこと言う!」 ラブ 「えへへ~って、せつなまで夢中で拾ってる!?」 せつな「たくさん拾って、庭に植えてみようと思うの」 ラブ 「ドングリって、植えて、芽が出るものなの?」 祈里 「難しいけど、無理じゃないと思うよ」 せつな「精一杯、頑張って育てるつもりよ」 【11月18日】 『謎の質問のお葉書、その②』 美希 「アタシ、チーズケーキを作るのが得意なの! ママも大好きなのよ」 せつな「ここで質問のお葉書よ。『どうして美希には、取ってつけたような設定が多いのですか?』ですって」 美希 「だから、そんなお葉書はどこから来るのよ……」 せつな「他には、タコが恐いってことかしら。チーズケーキ、確かに美希がお菓子を焼くイメージはないわね」 美希 「アタシは何でも得意なのよ。二話で完璧な朝食作ってたでしょうがっ!」 せつな「私はその頃はイースだったし、映画でタマネギ刻んで泣いてた記憶しかないわ」 美希 「グッ、わかったわよ。明日、家に来て。とっておきのチーズケーキ焼いてあげるから」 せつな「楽しみにしてるわ。催促したみたいで悪いけど」 【11月19日】 『寒い夜は』 ラブ 「ホットココアで、寒いの寒いの飛んで行けぇ!」 せつな「良い香りね。立ち昇る湯気を見ているだけで、とっても幸せ」 ラブ 「でもちょっと冷めちゃったね」 せつな「そうね、温め直してくるわね」 ラブ 「まって、いいから動かないで。せっかくせつなの身体があったかいのに」 せつな「誤解されるようなこと言わないでったら! 同じ毛布被って、リビングでドラマ見てるだけよ」 ラブ 「誰に向って言い訳してるの? せつな」 【11月20日】 『ふわふわでもこもこ』 祈里 「最近、寒くなってきたわね。お気に入りのセーターを着ようかな」 祈里 「えへへ、似合うかな? 美希ちゃんたちに見せに行こうかな」 ネコ 「ニャー~」 祈里 「きゃっ! ちょっと、今はダメ、セーターが汚れちゃう」 イヌ 「ワン! ワン! ワン!」 祈里 「ダメだったら、お散歩は後で着替えてからね」 動物達「ガリガリ、スリスリ」 祈里 「もうっ! そんなにセーターが好きなら、みんなにも着せちゃうよ?」 動物達「シーン……」 祈里 「わたしので遊ぶのは好きだけど、自分で着るのは嫌なのね……」 新-597へ
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【2月11日】 『苦手じゃないもん』 四人 「今日は建国記念の日!」 祈里 「ラブちゃんちに集合して、クッキーを焼くのよ」 せつな「みんなでクッキー作るのって、楽しい」 美希 「せつなは手際いいわね。ブッキー……は、何してるの?」 祈里 「あっ、えっと、砕けた卵の殻が中に入っちゃったの。ガシャン!」 四人 「…………………………」 ラブ 「大丈夫だよ、ブッキー。はじめからやり直そう」 せつな「そうね、一つくらい苦手なものがあったほうが可愛いわ」 美希 「どうして、そこでせつなはアタシを見るの……」 祈里 「ごめんね、ほんとうに今日はたまたまなの……。ガシャン!」 四人 「…………………………」 ラブ 「なんだかんだで完成~! ブッキーの作ってくれた動物の型が超可愛いよ!」 祈里 「みんなごめんね」 美希 「どんまい、ブッキー。苦労した分、より美味しく感じるわ」 せつな「本当に、こんなに美味しいクッキーは初めてよ」 【2月12日】 『一流は全てに通ず?』 ミユキ「お仕事の合間に、カオルちゃんのドーナツ食べに行こ~っと!」 カオルちゃん「やあ、いらっしゃい。ミユキちゃん」 ミユキ「ん~やっぱり最高! そうだカオルちゃん、ちょっと見てもらいたいんだけど」 カオルちゃん「そうだねえ、今のステップの重心がほんの少し左に偏ってるかな」 ミユキ「やっぱ、そうか~。ありがとう! カオルちゃん」 タルト「カオルはんて、ホンマ何者なんやろうか……」 【2月13日】 『女の子です!』 カオルちゃん「明日はバレンタインデーだから、カオルちゃん特製チョコドーナツ、大売出しだよ!」 タルト「わいも、イリュージョンショーで盛り上げたるでぇ!」 ラブ 「あれっ? 特製って、いつものチョコドーナツと同じに見えるよ?」 カオルちゃん「真心が十倍入ってるのよね、想いが届くの間違いなしよ! ぐはっ」 ラブ 「あはは、じゃあ帰ってせつなと食べるよ。またね~カオルちゃん」 カオルちゃん「兄弟……。完売なのにむなしいのは何故だろうねえ」 タルト「わいもや……。アズキーナは~ん」 シフォン「キュア~♪」 カオルちゃん「これ、おじさんに?」 タルト「シフォンからもらえるなんて……おおきに!」 【2月14日】 『間に合ってます?』 ラブ 「今日はバレンタインデーだよ!」 せつな「ふふふ、ラブは自分がチョコレート食べてばっかりね」 ラブ 「らって、おいひいんらもん」 せつな「食べながら話すのはやめなさい」(ってよく言うわね、私も……) ラブ 「ブッキーはもらう方が多いからって、おすそわけなの」 せつな「実は私もなの……どうして女の子からもらうのかしら」 ラブ 「はい。あたしからせつなへ、愛を込めて!」 せつな「ええっ?」 ラブ 「友チョコだよ」 せつな「びっくりした、紛らわしい言い方しないで。それに大きすぎるわ」 ラブ 「大きな気持ちを伝えたいから! あたしも食べるの手伝うよ」 せつな(もう、色々渡しにくくなっちゃったじゃない) 【2月15日】 『命を守るお仕事だから』 祈里 「お父さんと一緒に、子牛が生まれるところを見たの。とっても感動したわ」 ラブ 「どうだった? 可愛かった?」 祈里 「もちろん可愛いけど、そう感じる余裕なんてないくらい大変だったの」 美希 「子牛って大きいわよね、やっぱり苦しいのかしら」 祈里 「うん、涙流してたし、鳴いてたから。最後はお父さんが子牛の足を掴んで引っ張り出して」 せつな「生々しいわね。ブッキーは大変なお仕事を目指しているのね」 祈里 「うん。改めてお父さんを見直しちゃった。わたしも精一杯がんばるね」 せつな「ブッキーならできるって、私、信じてる」 【2月16日】 『あたたかな想い』 せつな「今日はおかあさんとブレスレットを作るの。うまくできるかしら?」 美希 「自信あるクセに。もう、嬉しそうな顔しちゃって」 せつな「ちょっと! 私はそんなつもりじゃ……」 美希 「ゴメン、からかったんじゃないのよ。こっちまで嬉しくなっちゃって、ついね」 せつな「なんとなく、誰かに話したくなったの」 美希 「わかるわよ。アタシもちょっとだけ寂しい思いをしてきてるから」 せつな「美希……」 美希 「せつな、良かったわね」 せつな「うん、ありがとう」 【2月17日】 『わたしにまかせて!』 祈里 「シフォンちゃん、あんまり食べ過ぎたらおなか痛くするわよ~」 シフォン「ポンポン痛いのイヤ~」 祈里 「痛くなったら、わたしがこうして治してあげるね」 シフォン「てぶくろもイヤ~!」 祈里 「じゃあ、わかるよね? シフォンちゃん」 シフォン「もう、やめゆ~」 美希 「優しい口調のようで、実はスパルタなのかも……」 【2月18日】 『tarteとtaart』 タルト「タルトっていうお菓子があるんかいな? いっぺん食べてみたいわ~」 美希 「タルトってね、焼いたビスケット生地にクリームや果物をのせたフランスのお菓子よ」 祈里 「タルトはね、カステラ生地に餡を巻いて作る和菓子のことよ」 タルト「どっちやねん……」 ラブ 「あはは、どっちも本当にタルトなんだけど、タルトはどっちのタルトなのかな?」 せつな「なんだか頭が痛くなってきたわ……」 ラブ 「タルトの名前の由来はどっちか、食べに行こうよ!」 美希 「食べてわかるとは思えないけど」 祈里 「行きましょう」 せつな「全くもう、結局そうなるのね」 【2月19日】 『笑顔は一日にしてならず』 美希 「モデルのお仕事で、カメラマンさんに笑顔を誉められちゃった」 せつな「モデルって凄いわ。はい、笑って。なんて言われても私には無理よ」 ラブ 「楽しいことを思い出せばいいんじゃないかな?」 美希 「そんな簡単じゃないのよ。崩し過ぎないようにとか、左右のバランスとか、目の力とかね」 祈里 「綺麗なだけじゃダメなのね」 美希 「そう、結局は日頃のトレーニング次第なの。そうだ、みんなもやってみましょう!」 祈里 「美希ちゃん、なんだか恥ずかしい……」 美希 「つべこべ言わないの。向かい合って声を出しながら顔の筋肉を動かすのよ」 せつな「笑顔って難しいのね。精一杯がんばるわ!」 【2月20日】 『占い館はいいところ』 サウラー 「今度、この館に皆を招待したいな」 せつな 「いつの間に立て直したのよ……」 ウエスター「違うな、同型の館を本国から転送したのだ」 せつな 「どっちでもいいわ。なんか怪しそうだからお断りよ」 ウエスター「怪しくなんか無いぞ! 俺の作ったドーナツをご馳走しようと」 サウラー 「僕もコーヒーを煎れてもてなそうと」 せつな 「やっぱりね……。パスよ!」 ラブ 「なんで? 面白そうじゃん! 行こうよ、せつな」 せつな 「ラブがそう言うなら。じゃあ、美希とブッキーも誘って行きましょう」 サウラー 「実に扱い方がわかりやすい子だね」 避2-631へ
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崩れ落ちた教会の真横で ◆gry038wOvE 孤門一輝が運転するシトロエン2CVの中にも、当然脂目マンプクの放送は響いた。 放送内容によれば、なんでもゴ・ガドル・バはあの時点で確かに死亡したらしい。それについては安心して良いらしく、冴島鋼牙や結城丈二といった犠牲者には申し訳なく思いながらも、ガドルの死を彼は、少しくらいは喜んだ。これ以上、自分や周囲が犠牲になる状況は防げる事になる。 ガドルが死んだならば、ドウコクが仲間になった現状では、危険になるのはあかねだけだ。 残すところ、十四名。──そう、それを聞いたまでは良かった。 「十人……」 正午までに残り人数を十人まで減らさなければならない、という条件が伝えられた。 この条件が、孤門たちにとって最悪なのである。 実は条件そのものが孤門たちの精神に及ぼす影響はそこまではない。ここまで築かれた信頼関係を崩壊させようという気はさして無いからだ。孤門たちの多くは、相互的に犠牲を強いたりする人物ではない。 だが、唯一の問題は血祭ドウコクである。 志葉屋敷に置いてきたドウコクが、果たしてこの条件に乗らないでいてくれるかが孤門たちにはわからない。──いや、むしろ、乗る可能性の方が高いだろう。 あの時点でドウコクを仲間に引き入れたとはいっても、こうした条件が提示された時にドウコクがどう行動するのかは想定の範囲外なのだ。これまでドウコクが自分たちを何度も襲撃してきた記憶は嘘をつかない。 ドウコクが求めるのは効率の良い帰還方法である。そして、その理念に基づいて最も効率的なのかを考え、結果的に仲間になったのが彼だ。この状況下、敵側の条件で勝利を得ようとする確率も否めない。 引き返す、という手段も孤門にはある。 だが、孤門はこのまま引き返す気はなかった。アクセルを緩めず、車は真っ直ぐ前に走っていく。窓は外の景色を置き去りにした。 「ラブちゃん、沖さんに連絡を頼む。ドウコクが暴れていないか、少し心配だ」 真横からラブの名前を呼んだ。 孤門はフロントガラスの向こうを見ていた。向こうには、倒壊した建物の姿が見えた。おそらく、それは教会だ。道路沿いにある施設は、他にない。 崩落した建物の横を走っていると、まるで地震やビースト災害の現場に来ている気分である。人里離れたこの平原に、教会が一つ、支柱を失い傾いていた。 こんな状況では、地に落ちた十字架が何かを暗示しているようにも見えて恐ろしい。 「それなら、引き返したら……」 「悪いけど、今から引き返す余裕はない。こっちもなるべく六時間以内で決着をつけなきゃならないんだ」 シトロエンが走る最中、二人は不安を抱えていた。 引き返さないのには理由がある。 今から引き返したとしても明らかに手遅れなのだ。ここまでの道のりを考えればわかる。何十分かかけて走って来た道なのだ。引き返すのには同等の時間がかかり、その間に物事の決着がつく余地がある。 一也ならば、説得するか、防衛するかのどちらかに成功できるかもしれない。──それに賭けるしか手はないのだ。 残り十名まで減らす、というのは案外難しくない話であるのは少し問題だ。 ここまでの死亡人数を考えれば、六時間に減る人数として妥当でもある。 ドウコクも満身創痍であるが、こちらも同様だ。多くの参加者は傷を抱え、負担を背負い、更に頭の上から疲労と汗を被っているような状態である。隙を突けば脆く崩れるのはお互い様だ。有利なのは、最初から非人にして、科学でも埋められないような圧倒的な身体能力を持っているドウコクだろう。 たった十人が生き残れるとしても、彼らガイアセイバーズは十二人いる。それに加えて、あかねやさやか、マミも助けたいという欲が張っている状況なのが実情だ。 目的全てを果たすと、どう考えてもマイナスが生じてしまう。 それでも彼らは、救える限り全員で生還する必要がある。この殺し合いの黒幕だって捕まえなければならない。────残り六時間で、すべて解決して脱出するのだ。 その為には、まず、それぞれが今すべき事をして、冴島邸に全員で集合するのがベストな手段である。 孤門たちは、すぐに教会の横を通りすぎ、その先へ進んでいく事になった。 ◇ 佐倉杏子の耳には、全て聞こえていた。 彼女は、後部座席で目を閉じながらも、脂目マンプクの言葉を全て頭の内に留めたのである。紙とペンでメモライズする必要はまるでなかった。 (私たちの中から、十人選んで、残りは死ななきゃならない……) 彼女は確かに、死にたくないと思っている。自分の命は当然惜しく、今持っている意思が消えさえる事にも抵抗がある。だが、どっちにしろ近々死ぬ道しかないのが──彼女たち、魔法少女だ。 ソウルジェムの仕組みがその理由である。ソウルジェムが濁れば、元の世界に帰ろうが結局は碌な道を辿れない。他人の犠牲を強いて得た生もまた儚く、ましてそれが次の生を妨害する。それならば、いっそここで命を絶つのも一つだ。 魔女になる前に死ぬ──という最後の機会である。 正午までは時間がある。それまでに犠牲になるべきは、まずドウコク。それから自分自身。本当にあの時に会ったままなら、あかねもそうだ。そして、残念ながらあと一人強いるべき犠牲が要る。 ただ、あと一人という所まで残せば、きっと誰かが犠牲になるだろう。 それが美希やヴィヴィオじゃないのはまず確実だ。それに、つぼみやラブでもない。彼女たちは「女」であり「子供」でもある。守られるべき存在としては至極わかりやすい特徴を持っている。犠牲になるのはおそらく成人男性。名乗り出てくれるであろう男として、一人だけ杏子の頭の中に候補が浮かんだが、──あの男は自分の命を惜しむのだろうか。 (クソ……) 彼女の中に浮かんだのは翔太郎であった。それは今でも全く間違いなかった。もし、彼もまた死にたがりであったのなら、ある意味、彼と心中する羽目になるのだろうか。 いや、今の彼とそうなるのは御免だが──考えてみれば、杏子も本質的には、今思い描く彼と同様の死にたがりであったのかもしれない。同族嫌悪というやつに似ているかもしれないが、その死にたがりな性質が無性に腹立たしくなった。 (──) この状況ならば自分が犠牲になっても良いと、本気でそう思っている自分がいた。 そんな自分が嫌じゃない。 しかし、仮にもし、翔太郎がそれと全く同じ事を考えるのは何故か嫌になる。 (……) 杏子は、目を閉じたまま、外の景色はわからないまま、車の流れに揺られていた。 懐かしい仲間や家族に会うまでの時間が、刻一刻と迫っているのを彼女は感じている。 そうだ。今は何をしなければならないのだったか。 そう、これから、できる限りの手段を尽くしてマミを助けに行くのだ。 救済──それがラブの選んだ手段である。 プリキュアらしい思考であった。ある限りの物は心の隅まで幸で満たそうとする。しかし、今というのは本当にそれが実利的に正しいのかわからない事態だった。マミが救われれば、また一人、犠牲にならなければならない命が増えてしまうのである。 ……だが、杏子の場合、もしかすればマミを救いたいと思うのは、マミにまた生きてほしいからじゃないのかもしれないとも思っていた。だから、ほんのひと時生きていて貰えればいい。昔の事を少し謝りたいのと、マミが人に害を加える存在として散っていくのが許せないからだ。それなら、ひと時でも正気を取り戻してほしい。 それだけなのだ。 一瞬でもいい。その後、一緒に逝くのでもいい。杏子はきっと、未練があるから、その未練を晴らしたいだけなのだ。 車体が緩やかなカーブを走っていく時……ふと、昔死んだ家族の声が聞こえたような気がしてきた。 眠りにつく杏子には、自分の真横で見覚えのある教会が倒壊している事など気づく余地もなかった。 ◇ 桃園ラブは、ショドウフォンでスタッグフォンに電話をしようとしていた。 リンクルンが通信機能を妨害されている以上、使用できる携帯電話はこちらのショドウフォンである。少し使いづらいデザインの携帯電話だが、まあ主な用途が通話と変身ならば仕方がない。 ラブが思い切って使う事は難しそうだ。 「もしもし……」 pllllllllll……。 pllllllllll……。 何度か鳴った後だが、一向にスタッグフォンは応答しなかった。 これがラブの中で、焦りを加速させる原因になる。今、ラブたちが突き進んでいる真後ろでは、ドウコクが暴れ、知っている人たちが死んでいるかもしれない──その不穏が一瞬にして説得力を持った。 電話に出られないという事は、向こうも相応の問題が発生した証だ。一度目ならば、まだ気づいていないだけという事もある。 「もしもし……」 二度発信したが、応答はなかった。 この状況で全く応答がないというのは、一也の身に何かあった証である。一也ならば常に電話を注視するだろうし、何もなければ反応に気づかぬはずがない。ドウコクの首輪を解除している真っ最中という可能性も考えられるが、それならば、翔太郎でも最低限の電話連絡はできるのではないだろうか。実際に彼は片腕で杏子に電話をかけた事もある。 しかし、──仮に何があったとしても、それでもラブたちはこの先にいるマミを助けなければならない。これから先に向かうとして、残り六時間の尺をマミと一也の二つの事に裂く事は難しい話であった。 どちらかを助ける為にどちらかを捨てなければならないジレンマがラブを迷わす。 「応答、ありません……」 そう寂しそうに言うラブの真横で、孤門はいっそう辛さを噛みしめて前を向いていた。 ハンドルを握り、アクセルを踏み、フロントガラスの向こうを見つめている。彼は、車を運転しながらも、一也への心配が晴れぬまま、不安そうであった。しかし、それをかみ殺していた。 「……メールを、入れておいてくれ」 メールが届いたところで、彼らはどうなっているのかわからない。 ただ戦闘中のゴタゴタがあっただけで、ともかく生存はできているかもしれない。 それなら、おそらくメールがちゃんと返ってくるはずだ。小手先の希望を抱きながら、彼らは走った。 「……」 少しだけ、不安の方が大きかった。 ◇ 蒼乃美希は、全て聞きながら、ドウコクの性格について考えていた。 果たして、血祭ドウコクは本当にこの放送を機に行動するだろうか。──結論から言えば、彼女にはそうは思えない。 確かに、最も効率的な判断ができる人間かとは思うが、ドウコク自身、極力、周囲の人間を殺さずに行動しようとしているきらいはある。 彼は殺戮を好んでいるだろうが、同時に自分にとってマイナスな殺戮はせずに済ませられる種であった。だから、美希は以前、アインハルトとともにそんなドウコクの性格を突くような作戦を一つ練る事ができたのである。 直感レベルの話だが、説得の範囲で何とかなりそうな相手だとは思えた。 (どっちにしても、最悪の状況という可能性は低そうね……) それから、美希がドウコク以上に評価しているのは、沖一也だ。沖一也は彼らが考えているより、もう少し冷静に行動できる素質のある人間であった。 13 :崩れ落ちた教会の真横で ◆gry038wOvE:2014/08/07(木) 11 40 59 ID V1L9C12Q0 たとえば、「放送が終了するまで首輪を外さない」という判断は容易にできる。 禁止エリアそのものは解除されていないからだ。結局のところ、残り参加者全員が禁止エリアに留まってしまえば、首輪付のドウコクはその後、参加者を十人に減らす行動ができない。そもそも禁止エリアの存在が首輪を装着した参加者には厄介である。首輪という枷がある限り、彼も自由は保障されないだろう。 一也も、放送終了まではドウコクの首輪を外さずに様子を見ていた可能性が高い。 (可能性として考えられるのは、今が首輪を解除している真っ最中か、あるいは説得の真っ最中か……っていうところかしら) 美希は眠りそうな頭でも考える。 放送からすぐは返事が来ないのも無理はないが、ひとまず心配はいらないだろう。 孤門もラブも心配しているようだが、少なくとも問題はないと考えていた。 薄目で杏子を見ると、そちらも少し眠ったフリをしながら、どうも落ち着かない様子で指先を微かに震わせていた。 シートに隠れて見えない場所で、まるで自分が起きているアピールをしているかのようでだった。 ◇ それから、間もなくの出来事である。 「……孤門さん、沖さんからメールが返ってきました!」 ラブが嬉しそうに言うのを、美希は「やはり」と思いながら聞いた。 ほっと一安心というところだろうか。彼女は、暗いムードから明るい方向へと変わった転機を見計らって、ぱっと目を覚ました。 「あー、よく寝た……」 本当は寝ていないが、美希は車内の狭さに気を使いながら伸びをした。正直、この車は狭すぎてストレスも溜まる。女子中学生三人と運転手一人でも随分と狭い。これでマミが加われば余計に大変な事になりそうだ。 「あ、美希たんおはよー」 「おはよう。……で、何が返って来たの?」 「うん? ああ、沖さんからのメールだよ」 二人が心配しているほどではなかったらしく、実際、一也から返って来たのは『心配するな』という内容で、ひとまずラブたちは安心するのであった。そして、そのメール内の一也からの指示通り、バットショットから送信された動画の方にも目を通し、彼女たちもこちらの物語が動いている事を充分に実感していた。 これから戦いに向かう車の中の、ちょっとした出来事であった。 【2日目 朝】 【F-2 倒壊した教会付近】 【孤門一輝@ウルトラマンネクサス】 [状態]:ダメージ(大)、ナイトレイダーの制服を着用、精神的疲労、「ガイアセイバーズ」リーダー、首輪解除、シトロエン2CV運転中 [装備]:ディバイトランチャー@ウルトラマンネクサス、シトロエン2CV@超光戦士シャンゼリオン [道具]:支給品一式(食料と水を少し消費)、ランダム支給品0~2(戦闘に使えるものがない)、リコちゃん人形@仮面ライダーW、ガイアメモリに関するポスター×3、ガンバルクイナ君@ウルトラマンネクサス、ショドウフォン(レッド)@侍戦隊シンケンジャー [思考] 基本:殺し合いには乗らない 0:ラブの案内で図書館の方へ向かう。 1:みんなを何としてでも保護し、この島から脱出する。 2:ガイアセイバーズのリーダーとしての責任を果たす。 [備考] ※溝呂木が死亡した後からの参戦です(石堀の正体がダークザギであることは知りません)。 ※パラレルワールドの存在を聞いたことで、溝呂木がまだダークメフィストであった頃の世界から来ていると推測しています。 ※警察署の屋上で魔法陣、トレーニングルームでパワードスーツ(ソルテッカマン2号機)を発見しました。 ※警察署内での大規模な情報交換により、あらゆる参加者の詳細情報や禁止エリア、ボーナスに関する話を知りました。該当話(146話)の表を参照してください。 ※魔法少女の真実について教えられました。 【桃園ラブ@フレッシュプリキュア!】 [状態]:疲労(小)、ダメージ(小)、左肩に痛み、精神的疲労(小)、決意、眠気、首輪解除 [装備]:リンクルン@フレッシュプリキュア! [道具]:支給品一式×2(食料少消費)、カオルちゃん特製のドーナツ(少し減っている)@フレッシュプリキュア!、毛布×1@現実、ペットボトルに入った紅茶@現実、巴マミの首輪、工具箱、黒い炎と黄金の風@牙狼─GARO─、クローバーボックス@フレッシュプリキュア!、暁からのラブレター 基本:誰も犠牲にしたりしない、みんなの幸せを守る。 0:図書館の近くで魔女になるマミの事を──。 1:マミさんの遺志を継いで、みんなの明日を守るために戦う。 2:犠牲にされた人達のぶんまで生きる。 3:どうして、サラマンダー男爵が……? 4:後で暁さんから事情を聞いてみる。 [備考] ※本編終了後からの参戦です。 ※花咲つぼみ、来海えりか、明堂院いつき、月影ゆりの存在を知っています。 ※クモジャキーとダークプリキュアに関しては詳しい所までは知りません。 ※加頭順の背後にフュージョン、ボトム、ブラックホールのような存在がいると考えています。 ※放送で現れたサラマンダー男爵は偽者だと考えています。 ※第三回放送で指定された制限はなかった模様です。 ※暁からのラブレターを読んだことで、石堀に対して疑心を抱いています。 ※結城丈二が一人でガドルに挑んだことを知りました。 ※魔法少女の真実について教えられました。 【蒼乃美希@フレッシュプリキュア!】 [状態]:ダメージ(中)、祈里やせつなの死に怒り 、精神的疲労、首輪解除 [装備]:リンクルン(ベリー)@フレッシュプリキュア! [道具]:支給品一式((食料と水を少し消費+ペットボトル一本消費)、シンヤのマイクロレコーダー@宇宙の騎士テッカマンブレード、双ディスク@侍戦隊シンケンジャー、リンクルン(パイン)@フレッシュプリキュア!、ガイアメモリに関するポスター、杏子からの500円硬貨 [思考] 基本:こんな馬鹿げた戦いに乗るつもりはない。 0:ラブの案内で図書館の方へ向かう。 1:ガイアセイバーズ全員での殺し合いからの脱出。 2:杏子たちの隠し事については…。 [備考] ※プリキュアオールスターズDX3冒頭で、ファッションショーを見ているシーンからの参戦です。 ※その為、ブラックホールに関する出来事は知りませんが、いつきから聞きました。 ※放送を聞いたときに戦闘したため、第二回放送をおぼろげにしか聞いていません。 ※聞き逃した第二回放送についてや、乱馬関連の出来事を知りました。 ※警察署内での大規模な情報交換により、あらゆる参加者の詳細情報や禁止エリア、ボーナスに関する話を知りました。該当話(146話)の表を参照してください。 ※魔女の正体について、「ソウルジェムに秘められた魔法少女のエネルギーから発生した怪物」と杏子から伝えられています。魔法少女自身が魔女になるという事は一切知りません。 【佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ】 [状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、ソウルジェムの濁り(中)、腹部・胸部に赤い斬り痕(出血などはしていません)、ユーノとフェイトを見捨てた事に対して複雑な感情、マミの死への怒り、せつなの死への悲しみ、ネクサスの光継承、ドウコクへの怒り、真実を知ったことによるショック(大分解消) 、首輪解除、睡眠? [装備]:ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ、エボルトラスター@ウルトラマンネクサス、ブラストショット@ウルトラマンネクサス [道具]:基本支給品一式×3(杏子、せつな、姫矢)、リンクルン(パッション)@フレッシュプリキュア!、乱馬の左腕、ランダム支給品0~1(せつな) 、美希からのシュークリーム、バルディッシュ(待機状態、破損中)@魔法少女リリカルなのは [思考] 基本:姫矢の力を継ぎ、魔女になる瞬間まで翔太郎とともに人の助けになる。 0:ラブとともにマミの死地に向かい、魔女と戦う。 だが、その後はどうする? 1:翔太郎達と協力する。 2:フィリップ…。 3:翔太郎への僅かな怒り。 [備考] ※参戦時期は6話終了後です。 ※首輪は首にではなくソウルジェムに巻かれています。 ※左翔太郎、フェイト・テスタロッサ、ユーノ・スクライアの姿を、かつての自分自身と被らせています。 ※殺し合いの裏にキュゥべえがいる可能性を考えています。 ※アカルンに認められました。プリキュアへの変身はできるかわかりませんが、少なくとも瞬間移動は使えるようです。 ※瞬間移動は、1人の限界が1キロ以内です。2人だとその半分、3人だと1/3…と減少します(参加者以外は数に入りません)。短距離での連続移動は問題ありませんが、長距離での連続移動はだんだん距離が短くなります。 ※彼女のジュネッスは、パッションレッドのジュネッスです。技はほぼ姫矢のジュネッスと変わらず、ジュネッスキックを応用した一人ジョーカーエクストリームなどを自力で学習しています。 ※第三回放送指定のボーナスにより、魔女化の真実について知りました。 時系列順で読む Back 最後の六時間Next The Little Mermaid 投下順で読む Back 最後の六時間Next The Little Mermaid Back HOLDING OUT FOR A HERO!! - You need a hero - 孤門一輝 Next ありがとう、マミさん(前編) Back HOLDING OUT FOR A HERO!! - You need a hero - 桃園ラブ Next ありがとう、マミさん(前編) Back HOLDING OUT FOR A HERO!! - You need a hero - 蒼乃美希 Next ありがとう、マミさん(前編) Back HOLDING OUT FOR A HERO!! - You need a hero - 佐倉杏子 Next ありがとう、マミさん(前編)
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風邪ね、とお母さんに言われた。今日は学校、お休みしなさい、とも。 大丈夫、と強がろうと思ったけれど、お母さんの厳しい目付きを見て、素直に頷いた。 普段は優しいお母さん。でも、怒らせると怖いことは知っている。 「せつな、大丈夫?」 「平気よ。気にしないで、学校に行って?」 遅刻ギリギリに出るまで、ラブは私の側にいてくれた。おかげで髪を梳けなかったのだろう。お気に入りの髪型 じゃなく、下ろしたまんまで走って出ていった。 ごめんね、ラブ。 「大丈夫かい? 今日はゆっくり寝てるんだよ」 「わかったわ、お父さん」 出かける間際に、お父さんも部屋に来てくれた。ゆっくりと頭を撫でてくれる。 なんとなく、ほっとする。大きな、お父さんの手。優しくて、あったかい。 ありがとう、お父さん。 「んー、やっぱり私、今日はお休みしようかしら」 「心配しないで、お母さん。ちゃんと横になってるから」 パートの仕事を休もうとするお母さんに、私は何度も平気と言った。お薬を飲んで、だいぶ楽になったから、と。 ちょっとだけ、嘘。でも、心配をかけたくはなかった。 結局、何度も何度も、何かあったら連絡するのよ、と言って、お母さんは出て行った。 行ってらっしゃい、お母さん。それから、嘘付いてごめんなさい。 お母さんが出かけていってから、大人しくベッドに入っていた私。熱で少し朦朧とする頭。 やがて本当に薬が効いてきたんだろう。 気が付いたら私は眠っていた。 弱気の虫 夢を見ていた。 ラビリンスにいた頃の夢。 灰色の街。どんよりと暗い空。鈍く輝く太陽。 その中を、足並みをそろえて歩く人々。 ただ前だけを見ている。その視線は、けれど、誰も見ていない。 立ち止まった私。でも、誰も私のことなど気にしていない。 それが当たり前だと、思っていた。 人は一人で生きていくもの。友情や愛情なんて言葉は、それが出来ない弱さを隠す為の嘘っぱちだと思っていた。 まどろみから、ゆっくりと目が覚めていく。チク、タクと時を刻む部屋の時計の秒針の音が、やけに大きく聞こえる。 短針が指し示すのは、十三時。長針は、十五分のちょっと前。 「目、覚めたんか?」 「キュアー?」 心配そうな声に、顔を向けると、そこにはタルトとシフォンの姿があった。二人とも、その表情を曇らせていて。 「平気よ、これぐらい」 笑って言ってみるが、自分でもわかるぐらいに弱々しい。私のその様子に、タルト達は余計に心配そうな顔になる。 ほぅ、と息を付きながら、布団の中から手を出して頬に当てる。やっぱり、まだ熱い。汗をかくほど体は熱いのに、 背筋はゾクゾクと寒いまま。そして全身が、気だるい感じ。 「なんかして欲しいことあるか、パッションはん」 タルトの言葉に首を横に振ってから、私はベッドから起き上がる。やっぱり体は重いし、ちょっとだけフラフラする けれど、立てない程じゃない。 「なんや、どないしたんや? 無理せんときやー、何か欲しいもんがあったら、わいが取りに行ったるさかい」 いつも以上に多弁になって、私を寝させようとするタルトに、私は小さく、 「おトイレよ」 「あ・・・・・・えろうすんません」 おトイレの後、私はタルト達と一緒に一階に降りる。寝ていたせいで、まだお昼ご飯を食べてなかったから。 本当は食欲はなかったけれど、食べないとお薬を飲めない。だから、ちょっとでもいいから食べなさい、と お母さんに言われていた。 鍋の中のおかゆをあっためて、お皿によそう。 「梅干を入れるとええで」 タルトの言葉に、冷蔵庫の中から梅干を探して、その身をほぐしておかゆに混ぜる。見ているだけで酸っぱくなる 口の中。どして? 「ちぃっと食欲、出るやろ?」 「うん、ホントね」 タルトの言う通り、思っていたよりはすっとお腹に入っていった。心なしか、少し元気になった気がする。 そういえば、お母さんが、冷蔵庫の中にリンゴをすったのが入ってる、って言ってたっけ。 探してみると、ラップがされたお皿があった。それを開けて、食べ始める。ヒンヤリほど良く冷たくて、気持ちがいい。 なんだか熱も下がってきたみたい。 「シフォンも食べる?」 「タベゥー」 小皿によそって、シフォンにもお裾分け。タルトにも、ちょっとだけ。 だいぶ良くなってきたけれど、お薬を飲んで、またお布団に潜り込む。タルトとシフォンは、寝るのを邪魔しないようにと 気を使ってくれて、今は一人きり。 ほっぺに触ってみる。だいぶ、熱くなくなってきた。けど、油断は禁物。私は目を閉じる。 けれど、なかなか寝付けない。 目を開けて、天井を見る。そっと、耳をすませてみても、何の音も聞こえない。時計が時を刻む音以外は、何も。 ぼんやりとそうしているうちに、ふと、気付く。 そういえば、こんな風に病気で寝込むなんて、初めてのことだったっけ、と。 ラビリンスにいた頃に、私は風邪などひいたことがなかった。何しろ、寿命ですら管理される世界。体調だって全部、 管理されていた。病気で寝込む、なんてことはありえなかった。 だから、というわけではないだろうけれど。 不意に、寂しくなった。 ラブがいない。お母さんがいない。お父さんもいない。 タルト達はいる。けれど今はお昼寝でもしているのだろう。呼べば来てくれるだろうけれど、そこまでは。 一人。部屋に、一人。 あれ? 私、こんなに寂しがりやだったかしら。 横になって寝ているだけなのに、どんどんと弱気になってくる。 寂しくなってくる。 イースだった頃。 私は、いつも一人だった。 ウエスターやサウラーと一緒に暮らしていたけれど、それはただ一緒に暮らしていたというだけだった。 干渉されたくなかったし、干渉するつもりも無かった。 一つ屋根の下に暮らしていても、家族なんて言葉とは程遠い。食事だって別々だし、他の二人が何をしてるか なんて、まったく興味がなかった。まったく顔を合わせずにいたことだって、しょっちゅうだった。 時々、ウエスターが思い出したように構ってくることがあったけれど、ウザい、と一言で切り捨てていた気がする。 そんな私が、今は、一人の部屋に、寂しさを覚えている。 不安を覚えている。 もしかしてラブ達は帰ってこないんじゃないか。私はずっと一人、ここにいなきゃいけないんじゃないか。 なんて、そんな馬鹿げた想像をして、勝手に怖がっている。 今までそんなこと、考えたことも無かったのに。なんでだろう、弱気の虫が騒いでる。 私。弱くなったのかしら。 そんなことを考えているうちに、またまどろんでいたらしい。 今度は夢を見なかった。 目を覚ますと、額に置かれた冷たいタオル。ひんやり気持ち良い。 「あ、起こしちゃった?」 小さな声に、私が目を動かすと、申し訳なさそうな顔のラブがいた。 「ラブ・・・・・・帰ってきてたの?」 「うん。割と前にね」 ニッコリと笑う彼女の服の裾を掴む。ギュッ、と掴む。 私のその行為に、少し驚いた顔をした後、ラブは小さく笑いながら言った。 「寂しかった?」 「――――!! ・・・・・・うん」 見抜かれて。 私は戸惑いながらも、小さく頷いた。そんな私の頭を、ラブはゆっくりと撫でてくれて。 「大丈夫だよ」 その笑顔は、優しくて、あったかくて。ちょっと、ラブのお母さんの笑顔に似てる。 キュンとせつなくなる胸。やだ。涙が出そう。たったこれだけのことなのに。 熱が出ると、涙もろくなるのかしら。 「アタシもね、風邪を引いた時、一人で家にいることがあってさ」 ベッドの端に顎を置いて、私と同じ高さの視線で、ラブはゆっくりと言う。 「すっごく、寂しかったんだ。病気なんだけど、なんだか寝付けなくて。けど起き上がれる元気はなくて、みたいな」 ちょうど、さっきの私と同じかしら。 「お父さんもお母さんも、このまま帰ってこなかったらどうしよう・・・・・・って、考えたりしてさ。自分が世界で一人ぼっちな 気がしちゃったりとか」 やっぱり、私と同じみたい。 「意外ね。ラブってそういうこと、考えなさそうなのに」 「うーん、やっぱり病気にかかると、弱気になっちゃうのかも」 苦笑するラブ。普段の元気いっぱいなラブしか見ていないから、そんな彼女の姿が思い浮かばない。 「だから、せつなももしかして寂しいと思ってるかなって、急いで帰って来たんだよ」 ニッコリと、また優しい微笑み。それにね、とラブは続ける。 「多分、今頃――――」 言いながら、彼女は枕元の私の携帯を開いて、覗く。そしてうん、と頷いて、私に渡してくる。 寝る時にサイレントモードにしていたから気付かなかったけれど、いっぱいメールが入っていた。友達や、お父さん、 お母さんから。その中には美希や祈里の名前もあった。 開けてみると、どれも私のことを心配する内容。 「学校でね、せつなが病気で休みだって話したら、皆、すっごくせつなのこと心配してたよ」 頬を涙がつたって、こぼれ落ちる。 やだ。やっぱり私、涙もろくなってる。 胸がジーンとして。一通一通、見るたびにジンワリ涙が溢れてくる。 ああ、そっか。 私、弱くなったんじゃないんだ。 ラブやお父さん、お母さん、友達がいることに慣れちゃってたんだ。 だから、皆がいないことが寂しくなったんだ。 ラビリンスでは、風邪をひくことが無いかもしれないけれど、私を想ってくれる人もいなかった。だって、ずっと一人だから。 けど、この街では、この世界では。 こんなにも皆が、優しい。当たり前過ぎて、忘れてしまいそうになっていたけれど。 だとすれば。 この寂しさも、弱気の虫も、幸せの一つ、と言えるかもしれない。 だって、私に思い出させてくれるから。 貴方はこんなにも愛されているのよ、ということを。 友情や愛情は、弱さを隠す為の嘘っぱちなんかじゃない。 それは時に人を寂しくさせてしまうけれど、でも。 想うこと、想われることは、力になるから。一人で生きていては、絶対に出せない力を。 「ね、せつな。早く元気になろうね」 「ええ――――精一杯、頑張るわ」 治ったら私、皆に言うわ。 一人で生きていたら、絶対に言わない言葉を。 ありがとう、って。
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夜が明ける。学校も仕事もダンスレッスンもない珍しい土曜日。美希は、午前8時という、自分にとっては遅すぎる時間に目覚めた。母親は店の準備を始めていて、娘を起こしてくれなかったようだ。 枕元のリンクルンが、差し込む朝日に負けまいと光っているのに気付き手に取ると、メールが1通届いていた。 そんなはずはないのだが、なんとなく昨夜握り締めていた自分の手の温もりがこの電子機器に残っているような気がして、昨夜のことが思い出された。これが祈里の体温であれば、と思わずにはいられない。メールの相手はその祈里であった。 『美希ちゃん、昨日はごめんね。わたしから電話したのにすぐ寝ちゃって……。美希ちゃんはあの後すぐに眠れた?今日、お休みだって言ってたけど、まだ予定入ってないかな?』 受信したのは今から約1時間前。普段の祈里らしい、控え目で遠回しな言い回しのメール。昨夜有無を言わせぬ甘えた声でどうしても会いたいと言った彼女と同一人物とは思い難い。 人は誰しも二面性を持っているものだが、その差が激しい者ほど、無意識のうちに人は強く惹きつけられるのだという。自分もその一人かもしれないと美希は思った。 『おはようブッキー。ごめんね、ぐっすり寝てたみたいで今起きたの。ブッキーこそちゃんと眠れた?ねぇ、よかったら今日、あたしの家に来ない?1時間後くらいには準備できるけど』 美希は思う。あのような時間に予定がないと言ってから、まだ6時間。その間に予定が入るなんてありえるだろうかと。会いたいと言えばいいのにと。会いたいと言ってくれれば、昨夜叶えられなかった我儘を叶えることができるというのに、と。 数分も経たぬうちに、返信があり、では1時間後に行く、という内容であった。予想でしかないが、もう祈里は美希の家に来る準備を終えていることだろう。 1時間。起きたばかりの状態からの身支度に、決して散らかってはいないが人を招くには抵抗のある部屋の片付け。それを1時間で終えられるだろうか。美希は、自分も大概会いたい気持ちを抑え切れていないなと自嘲しつつ、さっさと準備にとりかかった。 ぴったり1時間後に祈里は美希の家を訪れた。行き慣れた恋人の家ということで非常にラフではあったが、随所に花柄や小さなフリルのあしらわれた女の子らしいスタイルで、特にスカートは美希の前では初めて着用したものであった。 もともとファッションには人一倍以上に興味を抱いている美希である。恋人のそれとなれば見逃すはずもない。 「ブッキー、そのスカート、新しい?」 美希は祈里をなんとか綺麗にした部屋に招くとそう言った。語尾をあげ疑問風ではあるが、表情からはそうに違いないという自信が見える。その指摘に祈里は嬉しそうに、そして少しだけ不安そうに顔を綻ばせた。 「うん、今日初めて着るの。どう、かしら……」 「すごく可愛いわ。それによく似合ってる……まさに完璧よ、ブッキー!」 「ありがとう!美希ちゃんにそう言ってもらえるとすごく嬉しいわ……」 水色の座布団に正座を崩して座り、俯きがちに頬を染め、話題のスカートの裾をきゅっと掴む祈里。その姿が美希の目にどう映ったかは言うまでもない。 飲み物を出すべくすぐにまた部屋を出るためドア附近に立っていたのだが、そんなものは二の次だと言わんばかりにすぐさま祈里に歩み寄り、手を彼女の頬に添えた。 「……!……美希ちゃん……」 待ち侘びたように祈里は美希のほうへ顔をあげた。膝立ちになった美希は、躊躇なく唇に唇を重ねる。昨夜はしたくてもできなかった。キスの始まりの合図として軽く唇を食んだ後は、昨夜行為後に感じた寂しさをぶつけるように、深く深くを求めて舌を絡ませる。 甘みを感じるような気さえする小さな舌を追いかけて味わい、溢れていくのも気にせずに唾液を流し込む。スカートを握っていた祈里の手は、気付けば美希の背に回されていた。キスをするために会ったわけではないのに、そうせずにはいられない。 幾度か角度を変えて繰り返し、いざ唇を離してしまうというとき、冷静さを取り戻しつつあった美希は半ば自分の気持ちを押しつけたかのようなキスを後悔していた。その気持ちも祈里を想う故とは言え、もっと祈里への愛が大半を締めた口吻けを贈りたかったのに。 「…飲み物、持ってくるわ」 ぽふん、と、優しい色をしたふわふわの髪の上に掌を乗せる。うん、と言いながらも祈里は一度、ぎゅっと美希に抱き付いた。そっと両腕をほどかれると、美希は立ち上がって部屋を出て行った。 一人残された祈里は大きく深呼吸して、先程の感覚を思い出すように唇に触れた。昨夜の我儘を叶えようとしてくれた美希。祈里が先に眠ってしまっても、文句も言わずに許し、今日も会ってくれている。 怒っていないかと不安になって打ったメールにも、優しい返事が返ってきた。幼い頃からずっと一緒で、気付けばこんな関係にさえなっていた、大好きな美希。彼女に甘えられることはとにかく嬉しい。 見た目だけではなく中身も常にスタイリッシュでかっこいい。かっこいいとは言っても、彼女はその表記の通り女性であり、その良さは彼女が女性であるが故のものでもある。 美希は祈里にとって完璧な恋人だ。しかし美希は完璧な“彼氏”になろうとしている。祈里は美希を彼氏にしたいと思ったことなど一度もない。 だが、完璧な彼氏になろうとして無駄な後悔をする姿すらも、祈里にとっては愛しく可愛らしい。祈里を喜ばせるという意味では、無駄な後悔とも一口には言えないかもしれないのだが。 とにかく祈里の好きになった美希は“女の子”なのである。 「大丈夫よ、美希ちゃん。美希ちゃんはわたしの完璧な恋人よ」 そう言えば美希は安心するだろう。しかし祈里のために苦悩する美希は乙女心以上のものを持ち合わせていて大変に魅力的なのだ。そんな美希を見ていたくて、祈里は彼女にそれを言わない。だから美希のいない今、抱いた蒼色のクッションに向かって呟いたのであった。 終
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AC12.5とAC13で難易度順をあわせてみました。難易度位置が入れ替わりで入ったものは暫定です。 DPによる裏譜面難易度変化はここには記していません。 ★×10 燎原ノ舞 きたさいたま2000 はたラク2000 Rotter Tarmination(裏) はやさいたま2000 十露盤2000 X-DAY2000 mint tears EkiBEN2000 練習曲Op.10-4(裏) 夜桜謝肉祭(裏) タベルナ2000 旋風ノ舞 DON T CUT(裏) Punishment エンジェルドリーム(裏) Kamikaze Remix 練習曲Op.10-4 やわらか戦車(裏) てんぢく2000 The Carnivorous Carnival 亜空間遊泳ac12.5 闇の魂 夜桜謝肉祭 ケチャドン2000 よくでる2000 Tank!(裏) 熊蜂の飛行 幻想即興曲 トッカータとフーガとロック 恋文2000 ★×9 きたさいたま200 もりのくまさん(裏) SAMURAI ROCKET(裏) Rotter Tarmination Tank! もってけ!セーラーふく カレ・カノ・カノン Naked Glow らんぶる乱舞(裏) 戦国三弦 響け!太鼓の達人 キラメキラリ ファミリードンドン 風のファンタジー エンジェルドリーム Many wow bang!(裏) PENETRATION めたるぽりす スターソルジャーメドレー DADDY MULK 百花繚乱 画竜点睛 夢色コースター エゴエゴアタクシ 紅 DON T CUT 止マレ! ハロー!ハロウィン メンクイミラクル さいたま2000 ワールドイズマイン KAGEKIYO~源平討魔伝メドレー~ フューチャー・ラボ メカデス。 ★×8 大改造!!劇的ビフォーアフターメドレー ブルちゃんのおや2 前略、道の上より らんぶる乱舞 I Want エージェント夜を往く Do-Dai SORA-I アースライズ ハレ晴レユカイ ドン・エンガスの笛吹き HELLO! トータル・エクリプス 2035 ~少女の時空皆既日食~ SAMURAI ROCKET バーニングフォースメドレー ねがいごと☆ぱずる 残酷な天使のテーゼ(裏) 「軽騎兵」序曲から さくらんぼ 風雲!バチお先生(裏) きらきらキララ☆彡 トライアングラー TE-20 蛻変~transformation~(裏) スーパーマリオブラザーズ 激動 われら無敵のドコン団 常闇の森 序章「邪神復活の夜」 NIGHT OF FIRE 風雲志士 リパブリック産科 蓄勢~GEAR UP~(裏) ソウルキャリバーIV 88 アゲ♂アゲ♂EVERY☆騎士 俺ら東京さ行ぐだ 塊オンザウィングス にんげんっていいな ロマンス 蓄勢 ~GEAR UP~ Hole in the wall LIFE メルト ウッーウッーウマウマ ポリリズム イケナイ太陽 エレクトリカルパレードのテーマ ★×7 響け!太鼓の達人(裏) Many wow bang! 気分上々↑↑ 伝説の祭り SORA-II グリーゼ581 ユウガオノキミ プルメリア~花唄~ しゅごしゅご! ニホンノミカタ-ネバダカラキマシタ- 風になりたい 残酷な天使のテーゼ 風雲!バチお先生 ピラメキたいそう 太鼓の達人バージョン モンスターハンターメドレー 366日 Stairway Generation 曇天 スタートリゴンのテーマ School Days 嘘 ソウルキャリバーII 天国と地獄 序曲 プリキュア5 フル・スロットルGO!GO! I Was Born To Love You RISE めちゃモテ I LOVE YOU CHU-BURA 蛻変~transformation~ カルメン組曲一番終曲 もじぴったんメドレー 友情ぽっぷ たらこ・たらこ・たらこ 抱いてセニョリータ 花 ウィリアム・テル序曲 創聖のアクエリオン Be your wings Over the Future 神さまのBirthday ミッキーマウス・マーチ O2 はまぐりボンバー 少女S 羞恥心 ★×6 やわらか戦車 ゲゲゲの鬼太郎 ラ・カンパネラ ケロッ!とマーチ アナタボシ 侍戦隊シンケンジャー ドドドドドンだフル! 天体観測 名探偵コナン メイン・テーマ 勇気100% 夏祭り LOVE 2000 勇気りんりん 気まぐれロマンティック Love so sweet ヤッターマンの歌 いぬのおまわりさん 千の夜をこえて W-B-X ~W‐Boiled Extreme~ Dragon Soul ブルーバード キン肉マン Go Fight! Shooting Star Journey through the Decade Lovin Life CHA-LA HEAD-CHA-LA 銀河鉄道999 ハイタッチ! ホタルノヒカリ TRAIN-TRAIN 喫茶レイン Break the Chain Love Forever 虹 海雪 Prisoner Of Love おもちゃのチャチャチャ ★×5 タッチ そばかす パンパカパンツ リンダリンダ 六本木~GIROPPON~ 泣かないで FIREWORKS ひまわり ラブ・ストーリーは突然に きみのあかり 遥か そばにいるね 愛をこめて花束を ★×4 夢をかなえてドラえもん 炎神戦隊ゴーオンジャー LET S! フレッシュプリキュア! 〜HYBRID VER.〜 LET S!フレッシュプリキュア! おどるポンポコリン 踊れ・どれ・ドラ ドラえもん音頭 Together Pure 蕾 ★×3 素直になれたら 愛唄 歩み おしりかじり虫 ドラえもんのうた キセキ 序曲IX アンパンマンのマーチ ★×2 アンパンマンたいそう ★×1 黄ダルマ2000 もりのくまさん コメント
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(美希……いい匂い。) あたしは美希の感触にうっとりした。 手入れの行き届いた長い髪は、さらさらしたシルクのよう。 肌も、何かパウダーでも付けているんだろうか? サラリと乾いていて、するすると指を滑っていく。 せつなの、しっとりと吸い付くような手触りとは違う、でも心地良い感触。 こんなふうに、せつなもあたしと祈里の体の違いを思ったりするんだろうか……。 バッシーン!と顔に強い衝撃。思い切り突き飛ばされて、体が横に吹っ飛ぶ。 焼けつくような痛みと熱さで、思いっきりひっぱたかれたんだ、と分かった。 美希を見ると、目に涙を溜め、真っ赤な顔で大きく喘いでいる。 「なに考えてんのよ!!!」 耳がビリビリするような声で怒鳴られる。 「どうして?美希たん、あたしの事キライ?せつなだったら気にすることないよ、 だって、今頃……」 バシンっと、今度は反対側を叩かれた。 「…いっ…たぁ…。」 てか、これ絶対腫れるよね。やば、口ん中切れてるよ。 「いーーーかげんに、しなさいよ!!!逃げるのも大概にしなさい!」 美希たん、声大きい。ご近所まで聞こえちゃうよ。 「ねぇ、ラブ?聞いてる?何があったか知らないけどさ。 アナタいったいどうしたいのよ?アタシに逃げるつもりだったの? 冗談じゃないわよ!!アナタ達3人でなんかドロドロやるのは勝手だけどさ、 アタシを巻き込まないでよ!」 美希、あたし、猫の子じゃないんだよ。そんな首根っこガクガク揺すんないで。 それに、相談してって言ってくれたじゃん…… どうやら、無意識に口に出してぶつぶつ言っていたらしい。 「相談しろとは言ったけど、誰が襲っていいなんて言ったのよ!」 「………!!!だって!だって!どうしたらいいかなんて、 あたしが教えて欲しいよっ!!」 「うわあぁああぁーーーーん!!!」 あたしは床に突っ伏して、子供のように泣きじゃくった。 逆ギレもいいところだ。美希、きっと呆れてる。 あぁ、美希にまで嫌われちゃう。あたし、一人ぼっちだ。 しょうがないなぁ…、と言う顔で美希がにじり寄ってくる。 ポンポンと頭を叩かれ…、 「……取り敢えず、さ。話すだけでも話してみたら?」 あたしは、美希に話した。今まで誰にも言えなかった事を。 あたしとせつなの事。祈里の事。せつなと祈里の事。そして、今日見てしまった事。 「あっ!あたっ…し、どっ…したら、いっか、わかっ…ないの! せっ、せづなはっ…なんであんな!…あたしっ、あたしの事、すっ好きって… うぅ…うぇっ!」 ブィィーーーン!あぁ、ハナ、ティッシュ一枚じゃ足りないよ…、あれ?もうない…。 あたしの前には丸めたティッシュが山を作っている。 美希が呆れたように、新しいティッシュの箱を差し出してくれた。 さすが、気が利く。あたしは立て続けに二枚、派手な音をたてて鼻をかんだ。 「つまり、ラブはせつなが好き。せつなもラブが好きなはず。 なのにブッキーと、…その、ね…何て言うか…」 「……やってたの…。」 「あぁ…まぁ、ぶっちゃけて言っちゃえばそうよね…。」 「…どうして?」 「…弱み、握られてる、とか?」 「…はぇっ?」 「だから、ブッキーは何かせつなの弱味を握ってる。だから、せつなは逆らえない…とか。」 「…ブッキーが?」 正直、その発想はなかった。なんか、イメージに合わないって言うか…。 それを言うなら、せつなに手を出すこと自体、想定外だったから 何とも言えないんだけど。 「ブッキー、ずっとせつなが好きだったんでしょ?こう言うのも、 恋は盲目って言うの?恋に目が眩んじゃうと、普段からは 考えられないようなコト、しちゃうかもしれないじゃない。」 さっきのラブみたいに!と美希に軽く睨まれ、あたしは縮み上がる。 でも、もしそうなら何となくせつなの態度も腑に落ちるかも。 あたしに何も言えなかったのも、あたしに知られたくない事を祈里に知られて… 「あああーー!!もう!!!」 あたしが自分の考えに沈み込みそうになってると、美希が突然、 頭を掻き毟りながら机に突っ伏した。 「なっ…なに?どしたの、美希たん!」 「…………アタシの、ファーストキスが……」 「……へ?…美希たん、初めだったの?」 美希は美人で大人っぽい。当然めちゃめちゃモテる。モデルやってて 出会いも多いだろうし、キスの1つや2つや3つや4つ…、てかそれ以上やってても 何の不思議も…… そんな思いが思い切り顔に出てたんだろう。 「あのねぇ!アタシ達、中学生なのっ!じゅうっ!よんっ!さいっ!」 美希は両手でテーブルをバンバン叩きながらエキサイトしてる。 ビシッとばかりにあたしを指差し、 「アンタ達が、爛れ過ぎてんのよ!!!」 爛れ……、ってすごいね。でも、まぁ、はい…すみません。 言われてみれば確かにあたしだって、ほんの数ヶ月前までは キスどころか恋愛の影すら……。グループデートが精々で。 考えてみれば、ものすごい急展開だよね。 今となっちゃあ、せつなとエッチしない生活なんて考えられないし。 「……その、マコトに申し訳も……」 「まぁ、それは置いておくわ。ラブも普通じゃなかったし。」 今回のはノーカウントって事で。 ……どうやら、勘弁してもらえたらしい。 「で、どうするの?」 「………なに?」 「せつなとブッキーは現在進行形で真っ最中。これは事実よね?……ああ、もうっ!そんな顔しないの!」 無茶言わないで。思い出しちゃったよ。せっかくちょっと落ち着いてたのに。 グズグズになりかけてるあたしに構わず、美希は言葉を続ける。 「先ずはラブの気持ちでしょ?何でせつなは、とか、何でブッキーが、 とかは取り敢えず考えない。ラブは、どうしたいの?」 「……………。」 「せつなと別れる?何ならブッキーに熨斗でも付けて……」 「絶対やだ!!!」 考えるより先に言葉が出た。そして、ちょっと驚いた。 あたしはめちゃくちゃ悩んでた。ショックで、哀しくて、怖くて。 でも一度も、せつなと別れるとか考えた事もなかった。 ただ、ひたすら怖かった。 せつながあたしを好きじゃなくなったんじゃないか。 せつなが離れて行ってしまうんじゃないかって。 「なんだ、もう答え出てるんじゃない。」 「……美希たん…。」 そうだ、あたしはせつなが好きなんだ。 祈里との関係が分かっても。…あんな、場面を見てしまっても。 泣きたいくらい、せつなが大好き。 「ちょ、ちょっと!ラブ?!」 あたしは力一杯美希を抱き締めた。さっきの事があるせいか、 美希は腰が引け気味だけど、そんな事はお構い無しにぎゅううっと力を込める。 あたし、今、世界で一番美希が好きかも。変な意味じゃないよ? だって美希が、美希だけが昔のあたしを思い出させてくれた。 あたしは勉強もスポーツも苦手。取り柄と言えば明るい事くらい? でも毎日張り切ってたよ。幸せ、ゲットするため。みんなの幸せゲットを 応援するため。 大好きなみんなと笑顔でいたい。そのためなら、どんな事だって頑張っちゃう。 あたしはいつだって前を向いて走ってた。 いつの間にか、そんな気持ちを置き去りにしてた。 暗い穴で踞り、見たくないものから目を背け、耳を塞いでいた。 美希は、そのまま沈みこみそうになってるあたしに、光を思い出させてくれた。 今日美希に会えなかったら、あたし、本当に壊れちゃってたかも。 美希、大好き。美希はあたしが自分の望む姿を思い出させてくれた。 強くなりたい。優しくなりたい。誰かを包み込む手になりたい。 理想には程遠いけどね。 いつも美希だけがあたしを叱ってくれる。 迷いそうになるあたしに渇を入れてくれる。 「美希たん、大好き。」 あたしに他意がないのが分かったらしく、 美希はおずおずとあたしの背中に手を回し、ポンポンとしてくれた。 「もう、そろそろ帰んなさい。ね?」 優しい声。お母さんみたい。って言ったら、また怒られちゃうかな。 「美希たん……。」 「ん?なに?」 ちゅっ! あたしは美希の唇の端っこに口付けた。 「!!!」 「わはっ!美希たんのセカンドキスもゲットだよ!」 「!!!もうっ、せつなに言うわよ!」 「いいよーだ!せつなに怒る権利ないんだから!」 もちろん、冗談。ゴメン、美希。テンション上げるの勝手に手伝ってもらった。 でも浮気じゃないよ?ある意味ホンキだよ?本当に大切だから! 「ありがと!また来るね!」 部屋を飛び出すあたしの視界の隅に、やっぱり呆れ顔の美希が見えた。 早くせつなに会いたい。心から、そう思えた。 3-595へ続く