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公園の片隅に、一人の少女が立っている。 時折、腕にはめた時計を眺めては、辺りを見回している。誰かがその姿を見ていれば、待ち合わせをしていると 容易に想像が付いただろう。だが同時に、首を傾げるかもしれない。どうして、こんなところで、と。 公園の、片隅。誰も来ないような場所。しかも彼女が立っているのは、公衆トイレの前なのだから。 少女自身、早くここを立ち去りたいと思っているのだろう。そわそわと落ち着きが無い。 やがて、彼女に取って永遠にも感じられる程に長い時間の後。 「お待たせ――――美希」 かけられた声に、しかし、美希は顔をしかめる。その表情に、待ち焦がれていた人間が現れたことによる安堵や 喜びは無く、ただただ嫌悪ばかりが溢れていた。 それでも、声をかけた少女は、嬉しそうに微笑む――――その微笑みの中には、妖しくも暗い感情が透けて見えていたのだけれど。 「さ、見せて?」 主語を省いたのは、それでも美希には伝わると知っていたから。その言葉に、彼女は顔を屈辱に歪める。気の強い 少女がわずかに涙目になっている様を見ながら、少女は――――東せつなは催促をする。 「ほら、早く」 彼女の台詞に、美希は仕方なく、ロングスカートの裾をつまみ、ゆっくりと持ち上げる。露になる真っ白な膝、 太もも、そして――――秘所。彼女の髪の色と同じ濃い蒼色の恥毛が、吹く風を受けて微かに揺らぐ。 「ちゃんと、言いつけは守れたみたいね」 言いながらせつなは、美希の太ももをそっと撫でる。ビクッ、と美希は体を震わせるが、何も言わない。 下着を着けてくるな。 呼び出しと共にメールに書かれていた命令に、美希は愕然とした。だが、すぐに諦める。ある意味で、想定の範囲内 だったから。 もう何度、せつなに抱かれたか。彼女自身、わからない。 ことあるごとに、彼女は美希を呼び出す。呼び出して、その体をいたぶる。飽きるまで、あるいは美希が力尽きるまで。 徐々にエスカレートしていく要求に、何度、心が折れそうになったことだろう。もう許してと言いそうになっただろう。 それでも、美希は決して、負けなかった。 未だ嬌声は、口にしていない。体がどんなに熱くても、何度、絶頂を経験させられても、決して。 無論、それがせつなをさらに過激な行動に走らせているのだと、美希もわかっている。 それでも、負けるわけにはいかないのだ。ラブと、祈里の為に。 だからこそ、下着をはかないで街を歩き、ここまで来た。 そして感じたのは、いつも身に着けているものが無いことが、こんなにも心細く思えるのか、ということ。誰かに 気付かれるかもしれないと恐れおののき、そしてそんな心配をしなくてはならない自分が情けなくて、悔しかった。 今日もまた、辱められるのか。この少女に。 「さ、行きましょうか」 そんな彼女の葛藤をよそに、スカートの中から手を抜き出したせつなが歩き出す。 「どこに、行くの?」 低く、冷たい声で尋ねると、彼女は振り返りもせずに言った。 「いつも通り、私の部屋よ」 その答えに、美希はホッとする。このまま、街に出る等と言われるのではないかと思っていたから。もしもこんな 姿をしているところが見つかったら、どんな噂が立つか。 「ほら。早く」 苛立つようなせつなの声に、慌てて美希は彼女を追いかける。無駄に逆らう必要は無い。今はただ、虎視眈々と 逆転の機会を待てばいい――――思いながら、隣に並び、せつなの顔を見て、美希は。 息を、飲む。 思いつめたような、横顔。目の下に隈があるのは、眠れていないのだろうか。余裕の一つも感じられない少女の 様子に、美希は思う。 一体、彼女に、何があったというのだろうか。 Eas of Evanescence VI 女性同士の睦み合いは、異性のそれとは違う。男が果てれば終わりなのに対して、女性は幾度でも高ぶることが 出来ると云う。無論、普通ならば、元々少ない体力が削られていくから、限度というものはあるけれど。 だがせつなことイースと美希のそれは、普通ではなかった。 イースは、時の許す限り、何度も美希の体を貪った。幾度も幾度も美希を果てさせ、それでも飽き足らぬかのように、 責め続けた。それは彼女がラビリンスの兵士として育てられ、体を鍛えられていることもあったかもしれない。 だが一番の理由は、イース自身が達することが無いからだろう。 少女の体を支配しながらも、彼女は決して、美希に自分を触れさせない。 そのことが、美希には少し、意外だった。自分の言葉に従うように、と命令された時から、奉仕させられることも 覚悟していた。想像して、嫌悪感を抱いたけれど、逆らうことは出来ないだろうから、と。 だが、彼女の予想とは異なり、イースは一度もそれを求めてきたことは無かった。 感じていないわけではない。彼女が自分を責めている時に、その目が愛欲に曇っているのを、美希は何度も見て いる。それでも、イースは自分の体を高ぶらせることを、美希に命じたりはしなかった。 だからいつも美希を責めるばかり。その分、責めは苛烈なものになるのだけれど。 そして、今日もまた。 「――――――――っ!!」 唇を噛みながら、美希は体を跳ねさせる。シーツを掴んだ手が、ギュッと強く握り締められて。 何度も何度も、繰り返し襲い来る波。その度に口から溢れそうになる声を、彼女は何とか抑え込む。 「フフ。またイッちゃったの? 感じやすくなってきてるのね、美希の体」 そしてイースの笑い声に、腸が煮えくり返る程の苛立ちと、その言葉が事実だということに悔しさを覚える。 普段ならば。 そう。普段ならば、だ。今日のイースは、少しおかしかった。 「――――――――――――」 彼女は、何も言わなかった。いつものように陵辱を始めてから、ひと言も口にしていない。 そしていつもより、その責めが荒々しかった。いつもは強弱を付けながら胸を揉む手も、今日はまるで掴み取るか のよう。痛みすら覚えるその責めに、美希はさすがに悲鳴をあげてしまうが、それでも彼女は止めようとしない。 まるで抱くことよりも、美希を壊すことの方が目的のようにも感じられて。 それでも。 「――――っ!! ――――っ!!」 数え切れない程に肌を重ねたことで知られてしまった弱点を巧みに責められ、その粗暴とも言える扱いにすら、 彼女の体は反応してしまう。催淫効果のある香りを使わなくなって、もうだいぶ経つというのに、だ。 「――――――――――――」 だが、それにしても。 今日の彼女は、明らかに普段と違っていた。開発されてしまった美希の体、そのの許容範囲を越えて、責め続けて くる。 敏感過ぎる体をまさぐられても、嫌悪感すら抱かない。これまでのイースは、それをわかっていたからだろう、 美希が限界まで果てれば、少しの休みを挟んでいた。だが今日の彼女には、それすらない。 果てても、果てても。 波がひかぬ内から、責められて。 狂いそうになる。 それでも美希は、声を殺し、殺し続け。 その行為が、余計に自分の体力を削り、イースの嗜虐心をそそっているとわかっても、決してやめることなく。 結果、意識を保っていられる限界を越えて、暗い闇の世界へと沈み込んでしまったのだった。 それは、泥のような眠りだったのだろう。 目を覚ました時、美希は疲れが全く取れていないことをすぐに悟った。 だから、半分だけ目を開けて、辺りの様子を窺う。 眠い。とても、眠い。 今は、だから彼女の相手をしている余裕はない――――だから、もう一度。思いながら、重い瞼を下ろそうとした瞬間。 「うん、そうね。そう思うわ」 『でしょ? やっぱり、せつなもそう思うよね~』 耳に飛び込んできたのは、親友の声。電話の向こうにいるからだろうか、少しくぐもってはいるが、その声を聞き 間違う筈も無い。これは、ラブの声だ。 薄く目を開けて、もう一度、辺りを見回す。ぼんやりとしていたせいか、さっきは気付かなかったが、せつなが 椅子に座っていた。こちらに横顔を向けながら、電話を握っている。 『や~、やっぱりアタシ、せつなと話してると超タノシイ!! 幸せゲット、って感じだよ』 あまりに静かな部屋だから、だろうか。あるいは、ラブがはしゃいで大声になっているからというのもあるかも しれない。ともかく、携帯から漏れるラブの言葉が全部、耳に入ってきて。 何、お気楽なこと言ってるのよ。美希は横になったまま顔をしかめる。ラブ、貴方が話してる相手は、あたし達の 敵よ。イースなのよ。 思いながら、彼女の横顔に目を向けて、美希は。 「ふふ。そうね。私も、ラブと話してるの、とっても楽しいわ」 また、息を飲む。 せつなは。 穏やかに、笑っていた。微笑んでいた。 けれどそれは、とても悲しそうで、苦しそうで。 まるで、涙を我慢しているかのように見えて。 『あーっと、そろそろお母さんのお手伝いしなきゃ。それじゃあね、せつな』 「うん、わかったわ、ラブ」 見たことのない、彼女の顔。イースの面影を全く感じさせない程に、切なさに満ちていて。 声は、楽しそうなのに。その唇は、悲哀に満ちていて。 『あ、せつな』 「なに、ラブ?」 『へへへ――――大好きだよ、せつな』 その言葉を聞いた瞬間、彼女の目は、大きく見広げられて。口を何度も、開けて、閉めて。 何か、言いたそうな言葉がある筈なのに、それを我慢して。 最後に、ようやく彼女が答えた言葉は。 「ありがと、ラブ」 ただ、それだけだった。 そして通話が切れた後、せつなはぼんやりと手に持つ携帯を見下ろしている。 長い髪が、微かに流れ落ちて、横顔にかかり。 窓から差し込む夕焼けの光に、少女は赤く染まり。 美希の心が、震える。 敵の筈の、異世界ラビリンスから来た彼女が、まるで。 まるで。 弱い少女に、見えてしまったから。 5-566へ
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ラブ「雨ばっかでつまんないなー」 せつな「そう?私は好きよ」 ラブ「どうしてさー。遊びに行けないしダンス練習だって出来ないじゃん!」 せつな「ふふ。相変わらず子供なんだから。」 ラブ「へ?」 せつな「こうして二人っきりになれるじゃない。」 ラブ「あ…」
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「せつなとね、付き合うことになったの」 今まで本を読んでいた彼女がふいに顔をあげてそう言った。今日は暑いわねとでも言うように。だから私の頭はその言葉を処理することができなかった。 「へ?」 「告白したら返事もらえたの」 私は口に半分頬張っていたドーナツをぽとりと落とす。蒼い瞳がそのドーナツを追い、行儀が悪いわねと苦笑した。 私はハッとして表情を作る。 「びっくりしちゃった。美希ちゃんとせつなちゃんが付き合ってるなんて」 「うん。ずっと好きだったから」 「そうなんだ。いつから付き合ってるの?」 「3週間くらい前。ごめん……黙ってて」 「ううん、女の子同士だしそりゃあ、すぐすぐ言えないよね」 驚いて、でも味方だよと彼女を安心させるように言葉を紡ぐ。 スラスラと出てくる心にもない言葉たちに気づかず、彼女は照れ臭そうにありがとうと言った。 その笑顔に、私のどろどろと濁る心に少しだけ光が差し込んだ。 3週間前。 ああ この間二人で遊びに行った時にはもう恋人だったのか。 彼女が自身の趣味とは違うアクセサリーを見ていた時に気づくべきだっただろうか。 無理に決まってる。 あの時、彼女にゲーセンでぬいぐるみを取ってもらっただけで一日中幸せな気持ちだったのだから。 「やっぱり祈里とラブには言わなきゃって思って。昨日せつなと話してね、せつなはラブに伝えてると思う」 こういう時だけ「祈里」。それでも嬉しいと感じてしまう。 「電話で」 「ん?」 「昨日せつなちゃんと」 「ああ、せつな泊まったの」 きょとんと、私の質問の意図がわからない彼女が首を傾げた。慌てて私は話題を変える。 昨日の夜メールしてた時には、彼女の隣には黒髪の美少女がいて。私のメールの内容といえば、動物の話、学校の話、彼女を褒める内容。 滑稽過ぎて笑えてしまう。 「ラブちゃんも驚いてるかな」 「多分。あの……あたしたちその、まだキ、キス、しかしてないから」 私の先ほどの質問を誤解したらしい彼女は、クールな見た目とは裏腹に、吃ってそんなことを言い出した。彼女がそんな風にやるとツンデレに見えてしまうのは私だけだろうか。 「キス、したんだ」 「あ!?や、その、うん」 余計な情報を与えた彼女に、私はもう少しで阿呆と怒鳴るところだった。 「美希ちゃんってさ、初恋だよね?」 「あ、そうかも」 小さい頃からその容姿と大人びた物腰で告白されることが多かった彼女。誰一人として振り向かせたものはいないけれど。 その彼女を振り向かせ告白までさせる人が現れるとは。 「初恋って実らないって言うのにね」 悪戯っ子のように笑って嫌みに聞こえないように。彼女は案の定からかわれたと思い、もぅと頬を膨らませた。 「叶ったんだからいいの」 「せつなちゃんに女王様は扱えるかな」 「女王って誰よ」 そんな風に形容したけど、ほんとは女王様とは程遠い。 見た目はクールビューティで澄ましてみえるのに、蓋を開ければ、頑張り屋で優しくてフェミニスト。 完璧じゃないところが可愛くて仕方ない。 「もう。ブッキーも好きな人とかいたら応援するから」 「ほんと?」 「うん」 ありがとう そう言葉をかけて私は微笑む。 カランとコップの中の氷が小さく音をたてた。 「そろそろ、帰りましょう」 「そうだね」 彼女が立ち上がり鞄を手にした。私は立ち上がった瞬間よろけてしまう。思った以上に脚にきていた。 「わっ、大丈夫?」 ふわりと抱きとめられ、私はきゅっと制服を掴む。 「ブッキー、大丈夫?」 「ん、へーき」 俯き続ける私を彼女が覗こうとして………… んちゅ 「応援しなくていいから」 ドンッと身体を押して私は走る。 きっと彼女は呆然としているだろう。 好きだから ずっと好きだったから 「くっ、ひく、ばぁか……」 流れる涙を拭うことすら忘れて、私は走り続けた。 END
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「せつ……な……」 また、せつなを呼ぶ自分の声で目覚める。 時々見る、まったく同じ夢。 せつながあたしから離れて、遠くへ行ってしまう夢。 それは夢なんかじゃなかった。まごうことのない、現実。 あたしは確かにそれを受け入れたんだ。 お互いがんばろうねって、笑いもした。 けどそれは、ふり。受け入れた、ふり。 頭では理解していても、心では納得ができないでいる。 あたしはせつなを想う。夏になった今も、なお。 「ラブ、おはよ」 「おはよ、由美」 「放課後、昨日言ってたケーキ屋さんにみんなで行くの。七夕スペシャルパフェ。ラブも行くでしょ?」 「そうだね」 「蒼乃さんや山吹さんも誘う?」 「どーかな、ふたりとも忙しそうだから」 「そっか、残念だね」 予鈴を合図に、あたし達は席に着く。 あたしは授業に没頭する。 この春、著しく成績が下がって、お母さんは学校から呼び出しを受けた。 けど、お母さんは何も言わなかった。それが、かえって辛くて、あたしはお母さんに八つ当たりをした。 そんなあたしに、お母さんは言った。 「ラブ、せっちゃんの所に行きたいなら、構わないのよ」 「えっ……」 あたしは言葉を失った。 「ラブの気持ちくらいわかるわ。これでもあなたの母親だもの。 けど、約束して。いつかせっちゃんとまた会える日のために、自分を磨いておいてほしいの。 あなた達が再会した時、せっちゃんがもっとラブを好きになるように」 お母さん、ありがと。あたし、ちゃんとするよ。 いつか、せつなと一緒に居られるようなあたしになるために。 それからだ。あたしの成績はぐんぐん伸び、気づけば勉強が面白くなっていた。 せつなと暮らしていた頃の特訓で、基礎は叩き込まれていたらしい。 両親や先生だけでなく、美希たんやブッキーにも誉められた。 それでも、相変わらず夢は見た。 離ればなれになったばかりの頃は、毎晩のように見ていた夢。 回数こそ減ってはいたが、時々思い出したように定期的に見てしまう。 まるで彼女の居ない現実を、目の当たりにさせるかのように。 せつなの夢を見た日は、なかなか寝付けない。 朝の夢の残滓を引きずるように、ベッドの中で悶々とする。 せつなの声を、指を、舌を、あたしの身体は痛いくらいに覚えてる。 今夜もそうだった。 あたしは、パジャマにそっと触れる。 せつなのとおそろいの、ピンクのパジャマの中に、優しく手を差し入れた。 これは、せつなの指。 胸の突起を転がす。物足りない。唾で指を湿らせ、もう一度つまびいた。 これは、せつなの舌。 「ふ……」 愛しい人を思い出し、声がもれる。 胸への刺激は続けながら、もう片方の手を下着の中に差し入れる。 熱い潤いを感じ、塗り広げていく。中心に息づいた芯を、中指で左右に押しながら揺さぶる。 快感が全身に伝わってゆく。 「せつなっ!せつなあっ!」 何度も腰が跳ね上がり、あたしは果てた。 せつなを感じ、せつなをなぞる行為に夢中になった。 だから、気づかなかった。一瞬、赤い光が部屋を満たしたことに。 「はあ……はあ……」 まだ息の荒いあたしの脚に遠慮がちに触れる、誰かの細い指。 余韻に震えるあたしに生まれる、驚きと戸惑い。 その指は、ぴんと突っ張るように伸ばしていたあたしの脚を開く。 暗闇であたしの中心を探り当て、忍び込む。 馴染みのある感覚。この感じ、あたしのここは覚えてる。 愛しい指は、ノックするように抜き差しを繰り返した。 「ううっ、あん!あん!」 声を押し殺し、啼く。叫ぶ。大きくなる確信。沸き上がる歓喜。こぼれ落ち、シーツに染み込む涙。暗かった世界は、真っ白になった。 ぐったりしたあたしに、せつなはキスの雨を降らせる。 「帰ってくるなら連絡してよ……」 「恥ずかしいラブの姿を見たかったから」 「もう!」 「ふふ、驚かせた?ごめんなさい。けど連絡はできなくて。何故かメールも電話も繋がらないの。今、原因を調査中」 「今日は休暇?初めてだね、会いに来てくれるの」 「ええ。今日だけは絶対帰るって、行く前から決めてたから。ウエスターやサウラーも呆れてたけど」 せつなは楽しそうに笑った。 たくさん話した。せつなの仕事、ラビリンスの様子。 復興を最優先にするために、リンクルンを鍵のかかる場所にしまいこみ、その鍵をサウラーに管理してもらっていたこと。 復興が一段落し、いざリンクルンを取り出してみると、電話もメールもできなくなっていた。 けど、せつなはがんばれた。 七夕には帰る。あたしに会いに。そう決めていたから。 そして……。一人寝の夜のこと。あたしを想い、せつなもひとりで苦しんでいたんだ。 あたし達って、似た者同士なのかな。 「これからもっと忙しくなるの。でも、必ずまた来るわ」 「あたし、せつなが」 「待って。わたしに言わせて。いつか、いつか大人になって、ラブが自由にどこにでも行けるようになったら……ラビリンスに来てほしいの!」 「……」 「返事は?」 「……ずるい」 「何が?」 「あたしが先に言うつもりだったのになー。いつかラビリンスに、せつなの側に行かせてほしいって」 「ラブ……約束よ?」 「もちろん!せつなの側がいい。せつなの側じゃなきゃ、いやなの」 抱きしめたせつなから、想いがあふれてる。たぶん、あたしからも。 たとえ住む場所は離れてても、心は離れない。 誓いの口づけ。七夕の夜に、将来を誓い合う恋人たちのシルエット。 織姫と彦星も、きっと天の川から見てる。 あたしはこの夜を、一生忘れない。
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「おやすみなさい、ラブ」 部屋に戻りカーテンを閉める。電気を消す。 訪れる静かな暗闇。 かつては私の心の象徴だった闇も、今は、こんなに優しく温かい。 ラブが選んでくれたパジャマと枕。 おかあさんが干してくれたんだろう。布団がぽかぽか温かく良い匂いがする。 愛情に満ちた部屋。調度品の一つ一つが語りかけてくる。 ――幸せになりなさい――って。 名も無き少女時代、ただ震えて泣き叫ぶばかりの毎日。 私はここにいるわ。 誰か気がついて! 誰か私を――私を見て! ただ抱きしめて欲しかった。必要だと言って欲しかった。 ひとりきりで生きていくには、私の心は――弱すぎた。 どうしても必要なのに、手に入らないのなら、憎むしかないじゃい。 悲しくて、苦しくて、辛いのなら、考えるのをやめるしかないじゃない。 「我が名はイース! ラビリンス総統メビウス様が僕」 不安を忠誠に、寂しさを憎しみに変えて戦い続けた日々。 信じていた。いつか、きっと、お前が必要だって、そう言ってもらえると信じていた。 結局与えられたのは、凄まじい苦痛と、苦悩と、孤独なままの死。 アカルンがくれた新しい命と、そして知る本当の絶望。 何も持っていなかった私が、唯一持っていたもの。持っていたはずだったもの。 無垢な心と、人を愛する資格。それすら失ってしまったこと。 あるはずのない希望の光。その先にあなたが居た。 生きる資格も、優しくされる資格もない私に、溢れるばかりの愛情や喜びを与えてくれた。 ラブ、あなたが好き。 あなたに出会えてよかった。 とても感謝してるの。そして、愛しているわ。 「せつな、いいね?」 「ええ、もう大丈夫よ。何があっても後悔はしないから」 緊張した面持ちで話す私に微笑みかける。そんなに固くならなくてもいいよ。寂しさをまた一 つ埋めるだけだからって。 恥ずかしさに震えている、薄明かりに照らされたラブの裸身。 引き締まって張りがあって、生命力に満ち溢れていて。そして、美しかった。 ラブも怖いんだ。恥ずかしいんだ。そして不安なんだ。 本当に、こんなことをしていいのかって。 ラブの覚悟を感じる。 分かち合うつもりなんだ。私の寂しさも苦しみも。自分がこれから掴んでいく喜びも幸せも何 もかも。 一緒に生きていこうって。一緒に幸せを掴もうって。これはそのための儀式。 「せつな。綺麗だよ」 自分の容姿に興味を持ったことなんて無かった。でも今は感謝しよう。ラブにそう言ってもら える姿に生まれたことに。 優しさと思いやりに満ちた眼差しで見つめられる。体から力が抜け、ラブの体に吸い寄せられ る。 ラブの瞳が迫ってくる。均整の取れた美しい顔。ラブの匂いは太陽の香り。 おかしいわね、太陽に匂いなんてない、でもそう感じるの。 唇が触れ合う。それだけで体に電流が走る。 何度目かのキス。そこから伝わる想い。 愛してる――愛してる――大好きだよ――いっしょに幸せになろうねって。 ラブの舌が唇を割って入ってくる。そっと差し出した私の舌と絡み合う。繋がっていく。 二人の想いが溶けていく。 夢中になって求め合った。何かに急かされるように。足りない、足りない、まだ足りないのっ て。 互いの肌を頬でなぞる。滑らかさを確かめる。匂いに浸る。体温を感じあう。 指で、舌で、敏感な部分を刺激しあう。 「せつな。心臓の音、すごく激しくなってる。ドクン、ドクンって」 「ラブだってよ。ずっとこうして聞いていたいくらいに」 ラブの唇が私の胸の先を捉えた。吸って、歯で軽く転がして、もう片胸をつまんだり、爪で軽 く引っかいたりした。 「うっくっ、つぅぅ――――あっ、あっ、んん~~くぅぅ」 行き場の無い快楽が蓄積し、切なさと共に苦しみに変わる。その手前でラブは動きを止める。 荒れる呼吸を静めながら、今度は私が責める。同じように。優しく、奏でるように。 「あっ、いぃ、せつなっ、そこっ、うっ、あっ、あ、あっ」 精一杯膨らんだラブの小さな突起。唇で引っ張り、舌で嬲り、指で弾く。その都度、ラブの体 はしなり、仰け反り、悶える。 ラブの体はラブのもの。本来はラブが意識し、動かすもの。 今は私が動かしている。私の意志がラブの中に入りこんでいる。互いの意識が交じり合い、結 び合い、一つになる。 私の体はラブのもの。ラブの体は私のもの。 もっと繋がりたい。もっとくっつきたい。溶け合って一つになりたい。二度と寂しさなんて感 じないくらいに。 知識なんて無い。テクニックなんてあるはずもない。 でも互いに同じ年の女の子。感じた場所をすぐに相手の体に返す。伝え合う。 喘ぎ声が漏れる。体に眠る本能が呼び起こされる。夢中になって感じた。感じさせた。 もっと、もっとって。 空気は冷えているのに、体はどんどん熱を帯びる。その熱を奪い合うかのように激しく求め合 った。 まるで――そう。まるで、どっちが相手のことをより好きか――競い合っているみたいに。 ラブの真剣な視線に、一瞬我に返る。 「ねえ、せつな。あれから――自分で――した?」 「えっ、ええっ――――。そんなこと、しないわ」 この前教えてもらったこと。それは……自分ですること。 女の子の体は、刺激を繰り返すほどに敏感になっていく。感じやすくなって、昇り詰めやすく なるんだってこと。 でも、私はできなかった。自分の中の何かを汚してしまうような気がして。裏切ってしまうよ うな気がして……。 私の体はラブのもの。だから、ラブだけが自由にしていいんだって。 「しょうがないな、せつなってば」 「ごめんなさい……」 怒られてしゅんとなる。また迷惑をかけてしまったのかもしれない。一緒に感じようって約束 したのに。 「大丈夫だよ。だけど、荒療治するよ?」 「うっ、うん、頑張るわ」 ラブの体が私の体を滑るように下がっていく。ベッドから落ちるんじゃないかってくらいに。 「何をするの?」 「せつなの、大事なところにキスをするんだよ」 「えっ、嫌っ、ダメよっ! それはダメ、嫌っ、汚いもの!」 ラブが構わず舌をすべらせる。下腹部からあそこに向けて。 嫌悪感と恐怖感で気が変になりそうになる。 嫌っ――嫌っ!――やめてっ! 私がっ――私がラブを汚しちゃう! おへそから走った舌は、私の大事な部分を避けるようにふとももに下りていく。そこだって、 濡れていたはずだ……。 再び上がり、焦らすように、また下りていく。 羞恥で顔が、意識が真っ赤に染まる。頭を、体を振って懸命に逃げようとする。 ダメッ、やめてっ、それだけはダメッ。抵抗したい気持ちと、しちゃいけない義務感。 意識の葛藤とは裏腹に、期待を込めて秘部は蜜を溢れさせ、まだかまだかと待ち構える。 ついにラブが動いた。割れ目の下の部分から、溢れる蜜を吸い取るように動く。 丁寧に丁寧に舐めていく。 『つぅぅ――むぅぅ――いやっ! あっ、あっ、あん、あん、あん』 「柔らかいね、せつな。こんなに……柔らかいんだね、女の子のここって」 優しく、丁寧に、だけど容赦なく私を責める。指でぴっちり閉じたつぼみを開き、舌を差し入 れてくる。 与えられる快楽だけでも壮絶なのに、私のあそこがラブの口を汚している。そう考えると、罪 悪感が更に私を苦しめる。 「もうっ、もういいっ、やめて、ラブ。もういいの、もういいからっ」 私の嘆きに反応するように、さらにラブは激しく舌を動かした。割れ目の上に到達して包皮を めくり、核を舐めた。 上から下に。あるいは押し込むように。咥えるように。 全身に何かが走る。今まで感じてきた電流のような、そんな生優しいものじゃなくて。 真っ白な閃光。あるいは槍のような、巨大な何かが私を串刺しにする。 まぶたの裏が眩い光にあてられたかのようにチカチカする。 もう何をしているのか、何をうめいているのかも認識できない。 全身を溶かされて舐められてるような気がした。快楽と呼ぶには激しすぎる衝撃。 頭がおかしくなり自分が壊れてしまう気がした。 突然、上空に放り出されたような感覚に襲われる。次の瞬間には奈落の底に落下していく。 巨大な快楽の嵐の通過に、体が狂ったように痙攣し、あそこはビクンビクンと勝手に動いてい る。 「どうだった?」 ほんの一瞬だけど、意識を失っていたのかもしれない。気がついたら心配そうに私を見つめる ラブがいた。 「今のがね、イクってことだよ。ごめんね、無理させちゃって。びっくりしたよね」 優しくラブが私を抱き寄せてくる。私の髪を、頭を撫でてくれる。 「今夜はもう、このくらいにしておく?」 ラブの瞳に吸い込まれそうになる。優しい目。私の幸せへの願いに満ち溢れていた。 それに安心して、やっと状況が理解できた。 ラブは、イッたことのない私のために、あんなことをしてくれたんだ。 一緒に感じようって約束したのに。 「大丈夫よ、ラブ。まだ頑張れるわ。今度は一緒に、そう約束したもの」 「うん、そうだね、そうだったよね」 力の入らない体に鞭を打ってラブを愛でた。敏感になった肌がこすれあうだけで喘ぎ声がこぼ れる。 そしてラブが動いた! 自分のあそこを私のあそこにくっつけるようにして位置を合わせる。 お互いにまだほとんど生えてもいない。濡れてやわらかくなった剥き出しの粘膜がこすれあう。 胸の先が互いにぶつかり合い、倒しあい、固く尖る。 ひだがひだを割り、複雑な形の秘肉が刺激しあい、想像を絶する快楽を生み出した。 「うぅ、くぅぅ、いぃ、くぅ。ラブぅ、ダメっ、もうダメッ!」 「せつなっ、あん、あっ、あん、あっ、あっ、うぅ~~~~!」 何も考えられない。ただ迫り来る快楽に身を任せる。ただ一つ確かなこと、それは私がラブの 腕の中に居ること。 体が震える、自分の意志と関わらず。 来る! 快楽の槍に全身を突き上げられ、投げ出され、突き落とされる。 ハァ――ハァ――ハァ――ハァ 荒い呼吸が、静まり返った部屋に響き渡る。 でも、落ちた先にはラブがいた。いつだって側に居てくれる。私の――大好きな人。 ラブの体も震えていた。痙攣していた。お互いの震えを抑えるかのように、力の入らない体で 抱きしめあった。 「どう……だった、せつな。良かった?」 「馬鹿――――もう、疲れたわよ」 二人で笑いあった。そして、初めて肌を合わせた時のように、全身を寄せあって寝ることにし た。 心地よい疲れと充実感。愛しい人の火照った体に包まれた、これまでの人生で最も幸せな眠り だった。 「おはよう、せつなっ!」 「おはよう、ラブ」 手を繋いで登校した。肩や頬を寄せ合うことが多くなった。見つめあう時間が増えた。 これまでと少しだけ違った毎日の訪れ。 「どうしたのラブ、せつな。なんだか様子がおかしいわよ」 「いつも本当に仲が良いよね、うらやましくなっちゃう」 美希やブッキーにもからかわれた。本当のことはもちろん内緒だけど。 「ねえ、ラブ。私たちって恋人同士になったってことかしら?」 「そうだね。でも、せつなの思うように考えてくれたらいいんだよ」 「私の思うように?」 「愛し合ったと思ってくれてもいいし、いけない遊びだったと思ってもいいんだよ。 あたしの、あたしたちの想いを伝えあっただけ。せつなは何も失ってないんだからね!」 なら、私の答えは一つしかない。真っ直ぐ見つめて、言葉をつむいだ。 「私はラブが好き。愛してるわ。ずっと一緒に居たいの」 「あたしもせつなが好き。せつながいいんだ。もちろんずっと一緒だよ」 ラブの最高の笑顔を心に刻みながら思った。 私はもう寂しくない。 愛している。愛してくれる人がいる。 手を取りあって、生きて行きたいと思える人がいる。 本当にずっと――いっしょに居られたらいいのにね。 先のことはわからない。だから、今を精一杯生きよう。そして愛していこう。 私は心の中でそう誓った。 避2-176へ
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せつなの声。 せつなの仕草。 せつなの笑顔。 そして、せつなの涙。 あたしが失ってしまったもの―――――大切にしていたもの。 せつなと過ごす時間。それは温かくて、愛しくて、儚いもの。 これ以上ないと思っていた、あたしの幸せの価値観を塗り替えてしまったもの。 チュン――チュン――チュン 小鳥のさえずりに耳を澄ます。今朝は目覚ましのお世話にならなかった。 軽く背伸びをして元気に飛び起きた。 軽やかに身支度を整えて、朝食を済ませ、学校に向かう。 「おはよう、せつな。今日も頑張ろうね」 せつなの写真に向かって語りかける。 「おっはよ~~美希たん、ブッキー。まったね~」 最近張り切ってるねって? また明るくなったねって? そりゃそうだよ。いいことがあったんだもの。 もう、あたしの胸につけられた印は消えちゃった。 理想すら超えた未来のせつなも、鮮明には思い出せなくなってきている。 唇の跡、写真に撮れば良かったかな。絵が書けたなら、せつなの姿を残したかったな。 でも、いいんだ。 もう、あたしは明日に希望が持てるから。 明日に繋がる未来に、再び会える日が来ることを信じられるから。 ねえ、せつな。せつなは今、何をしているの? きっと、誰かのために、精一杯頑張ってるんだよね。 ときどき、寂しくて泣いてるのかな。あたしもそうなんだ。 でも、今なら思えるよ。 引き裂かれた日々だって、宝物にできるって。 会えない時間が、二人の想いを育てられるって。 だから今は貯めようね。 寂しい気持ち。会いたい気持ち。大好きだって気持ち。 大人になったせつなは、とても綺麗だったよ。優しかったよ。素敵だったよ。 だから、あたしも魅力的な女性になるんだ。 せつなが大人になったあたしと出会った時、想像以上だって思ってもらえるように。 せつなの明日と未来に、希望を持ってもらえるように。 大人になったせつなと、共に歩めるあたしであるために。 あたし、精一杯がんばるよ。
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「うわぁ、やっぱりお正月は人が多いよねっ!この神社にこんなに人がいるところなんて、お正月以外には見たことないよ~。」 「こら、ラブ。そんなにはしゃがないの!ここに初詣に来るのは、初めてじゃないんだから。」 「だって、美希たん。いつもは家族で来るから、三人で来るのは初めてだよぉ。あ!綿あめの屋台が出てる!」 「ラブちゃん、まずはお参りをしてからね。ほら、あそこで手を洗って。」 はしゃぎまくるラブを、呆れた顔でたしなめる美希。苦笑しながら、準備良くコートのポケットからハンカチとお賽銭用の小銭を取り出す祈里。 中学一年生の三人は、初めて三人だけで、地元の神社に初詣にやって来た。 三人それぞれに何事かを一心に祈ってから、お正月だけは開く社務所で、お守りや破魔矢を見る。そのうちラブが、おみくじを引こうと言い出した。 「せーのっ!」 神社の境内の隅で、三人同時に自分のおみくじを開く。 「やったっ!あたし大吉!」 「あ、ラブちゃんも?わたしも!」 嬉しそうに声を上げる二人に、美希は目を丸くする。彼女の手の中にあるおみくじは・・・これまた大吉。三人引いて三人とも大吉なんて、この神社のおみくじには大吉しか入っていないのか?しかし、一瞬浮かんだその疑問は、あちこちから聞こえてくる声で、すぐに打ち消された。 「お母さん、吉だって。これって、いいの?悪いの?」 「お前、中吉か。いいなぁ。俺なんて末吉だよ~。」 (別に、みんながみんな大吉ってわけじゃないのね。とすると、やっぱりアタシたちって、今年は揃いも揃って、それだけ運がいいってことなのかな・・・。) 「どしたの?美希たん。」 「ひょっとして、あんまり良くなかった?」 心配そうなラブと祈里の顔に、美希はハッと我に返る。 「そ、そんなことないわよ!アタシも大吉だったわ。」 「えーっ、その割りに反応遅かったけどぉ?ちょっと見せて!」 いつになく疑わしげなラブに、美希はしぶしぶ、手に持ったおみくじを見せる。 「うはぁ、ホントだ!凄いね。今年は三人揃って、幸せゲットだね!」 打って変わって底抜けの明るさを放つラブの声に、美希もようやく笑顔になる。が、今度はやけに得意そうな声が聞こえてきて、再び顔が引きつってきた。 「なになに?勉学!怠り無く精進せよ。うーん、まぁ頑張れってことだよねっ、美希たん。失せ物、って何?なくし物?えーっと、遅かれど出る。良かったね!それから・・・いえ・・・いえうつり?北は凶。あ、北の方に引越ししちゃダメなんだって。やっぱり寒いってイメージだからかなぁ。それからぁ、れんあい・・・」 「ちょっと、ラブ!なに人のおみくじ勝手に読んでるのよっ!アタシ別に何もなくしたりしてないから。それに、勝手に人を引越しさせるんじゃないわよっ!」 美希は自分のおみくじを引っ込めて、代わりにラブのおみくじを強引に三人の目に触れさせる。 「ほらぁ、ラブのだって、いろいろ書いてあるじゃない。勉学、ただひたすら精進せよ。これって、とにかく必死で頑張らないと知りませんよ、って意味なんじゃないのぉ?」 「ええっ、美希たん。そんな殺生なぁ!」 「まだあるわよ。争い事。勝ち難し、退くが利。」 「ど、どういう意味?」 「えっと、喧嘩したって勝てなくて怪我をするだけだから、意地になって何度も向かって行ったりしないで、さっさと逃げなさい、って意味ね。」 「とほほ・・・。ブッキー、こんな短い言葉なのに、意味はそんなに長いのぉ?」 「それからぁ、待ち人は・・・」 ラブの泣き顔にいたずらっぽく微笑んでいた祈里が、その次の美希の言葉を聞いて、急に驚いた顔をして自分のおみくじを見た。 「わたしのも・・・。待ち人って、良いとされている方角はラブちゃんと一緒。しかも、必ず来るって。」 「えっ?アタシのは・・・多少遅かれど来る。あっ、方角は二人と一緒だわ。」 さすがにここで三人、顔を見合わせる。 「全員・・・同じ方向から待ち人がやって来るのかな。」 「まさか、三人揃って?あ、でも美希ちゃんは「遅かれど来る」なんだから、一緒には来ないのかしら。」 「え~・・・どうしてアタシだけ遅いのかしら。失せ物も、遅かれど、って書いてあるし。」 「美希たん、なくし物なんて無いって言ってたじゃん。」 「そ、そうだけど、書いてあったら気になるじゃない!」 ひとしきり騒いだ後で、改めて顔を見合わせる三人。 「でもさぁ、何だか不思議だよね!揃って大吉だっただけじゃなくて、こんなところに共通点があるなんて。」 「そんな呑気なこと言って~。ラブのが一番意味深じゃない。心して待て、なぁんてさ。」 無邪気な笑顔を見せるラブに、わざとらしく真面目な顔を作ってみせてから、美希はさっきから気になっていたことを、祈里に質問してみた。 「ねぇ、ブッキー。そもそも『待ち人』って何?待っている人、っていう意味?」 さすがに即答は難しかったのか、祈里は鞄の中から小さな辞書を取り出す。 「えーっと・・・『待ち人』っていうのは、『何らかの意味で、来て欲しい、会いたいという出会い全般に関する人のこと。自分の運命を導く人。運命の相手。』だって。」 「運命の相手って・・・ひょっとして、彼氏とか!?」 「か、彼氏って、美希ちゃん・・・。今年中に彼氏ができるなんて、二人はともかく、女子校のわたしには絶対無理だから!」 「あはは、冗談よ、冗談。そもそも『恋愛』っていう項目が別にあるんだから、そうとは限らないんじゃない?」 心なしか饒舌になっている美希と、いつになく顔が赤くなっている祈里。そんな二人をよそに、ラブは目をキラキラさせる。 「運命の人かぁ。きっとあたしたちそれぞれにとって、すっごく大切な、すっごく素敵な人だよね。どんな人なんだろう・・・。なんか、そんな人が現れるのかもって思っただけで、今年も幸せゲットって感じ。」 ラブの言葉に、美希も祈里も顔を見合わせて、ニコリと微笑んだ。 「そうね。アタシたちの運勢、今年は完璧だもの。」 「うん。きっと素敵な年になるって、わたし、信じてる。」 ☆ ☆ ☆ あれから二年。 「穏やかなお正月になって良かったわね。」 慌ただしい昨日までとは、空気まで違って感じられる元日の朝。美希はにこやかに、傍らの親友を見やる。 「ええ、ホントに。」 同じくにこやかに答える祈里は、山吹色を基調にした可愛らしい着物姿。かく言う美希は、遠目には黒に見えそうな濃紺の地に、大ぶりの花模様をあしらった着物を大人っぽく着こなしている。 二人が向かっている先は、四ツ葉町にある、あの神社だ。 「それにしても、あの神社に揃って晴れ着でお参りに行ったら、きっと目立つわね。」 ちょっと肩をすくめてみせる美希に、祈里は相変わらずのんびりとした口調で返す。 「だって、今日は特別だもの。美希ちゃん、ちゃんとアレ、持ってきた?」 「もちろん。ちゃんと『失せ物』にならずに仕舞ってあったわよ。」 美希と祈里は、互いに小さな細長い紙片を手にして、笑い合った。 あの神社に、みんなでお礼参りに行こう。そう言い出したのはラブだ。 去年もみんなで初詣に行ったものの、戦いやその後のダンス大会やら様々なごたごたで、三人ともあのおみくじのことは、きれいさっぱり忘れていた。 今年はぜひともみんなでお参りに行って、ちゃんとお礼を言って来よう。そして、三人のおみくじを神社の木に結んでこよう。そう提案したラブの気持ちは、そのままみんなの気持ちでもあった。 「あ、来たわ。」 向こうから、二人の少女が小走りで近づいてくる。 淡い桃色の地に小花を散らした可憐な着物を着たラブと、もう一人。 エンジ色に金の縫い取りが入ったあでやかな着物姿で、着物に負けないくらい晴れやかな笑みを浮かべている少女は――。 三人のおみくじに共通して書かれていた方角を示す文字をその名に持った、三人の大事な、『待ち人』だった。 ~終~
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初めて見たその大人びた顔に、私は――― ラブと一緒に住める事になり、これ以上ない幸せを私は日々、実感していた。 起きるのも一緒。 歯磨きも、朝食も、登校も下校も。 遊んだり、ダンスをしたり、泣いたり笑ったり。 ねぇ、ラブ。 私と一緒にいて楽しい?私と一緒にいて嬉しい? いつしか、私の心の奥底に宿る感情。 こんな気持ち、初めてだった。 それはどこか、もやもやして。 伝えたいのに―――伝えられない 私はこちらの世界に来て、多くの事を学んだ。 もっともっと知りたい事がある。 知りたい人が…いる。 いや、 知りたい人が―――出来た 「せつなー!ドーナツ食べにいこっ!」 「あっ、あのねラブ。ごめん、先に帰って…」 「えぇ~。今日約束したじゃ~ん。デートするって~」 「…ごめんねラブ。」 違うの。 何かが違う。 それが何かはわからないのだけれど。 いつもと変わらず、明るい笑顔でみんなに接する貴方。 それは私にも一緒で。 嫌。 嫌よ、ラブ。 私には。 私だけには――― あの時。 私だけを見詰めてくれた。 私だけを抱きしめてくれた。 嬉しかった。凄く嬉しかったのよ、ラブ。 幾月が経ち、貴方はいつも、私の傍にいてくれる。 ありがとう。 毎日感謝しているわ。 でも。 でもね? 次のステップに進んでもいい頃だと思うの。 私は最近、図書館で一人本を読んだり、考え事をしたりする。 悩む事はあまり良くないとラブは教えてくれた。 何も言ってないのに、私の表情一つで悟られてしまう。 悩む原因は―――貴方の事を―――愛しすぎてるから がんぼう【願望】 (1)ねがいのぞむこと。がんもう。 「強い?を抱く」 (2)〔心〕 精神分析で、主に意識されていない欲望のこと。 国語辞典を開く時、必ず見てしまう言葉。それが〝願望〟 もっと愛されたい。 もっともっと愛されたい。 愛し続けてほしい。 ―――私だけを でも、これじゃ意識している事になってしまうわよね。 少し頭を冷やさないと。 こんなんじゃ、ラブに笑われてしまうもの。 普段の私、東せつなを演じなくては。 せっかく誘ってくれたデートを断ってしまった。 私の理不尽な我侭で。 謝るよりも、ラブの大好きなハンバーグを作って、笑って許してもらおう。 精一杯の―――愛を込めて ~END~
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天からこぼれた雫、その最初の一粒が、アスファルトに小さな染みを作る。 やがてそれを追うように、ポツポツと音が生れて。 「雨?」 黒雲に覆われた空を見上げて、せつなはその愁眉を顰める。 おばさまの言った通り、傘を持ってくれば良かった。思ってみるものの、後の祭りで。 降り注ぐ秋雨の中を、せつなは駆け出したのだった。 Rain Drops サーサー。 文字にすれば、そんな音。激しいという程ではないけれど、霧雨とはとても呼べない。雲に覆われた空に太陽の光は踊らず、街は薄闇に包まれる。 パチャパチャと歩道に出来た水溜りを踏みながら、せつなは急ぐ。だが未だ家は遠く、制服はだいぶ湿り気を帯びてきていて。 「せつなちゃん!!」 かけられた声に、彼女は立ち止まる。辺りを見回せば、定休日のお店の軒先に張り出したアーケードの下に、親友がいた。 「ブッキー?」 こっちこっち、と手招きする祈里の元に、せつなは駆け寄る。彼女も同じように急な雨に降られたのか、その髪は少し濡れていて。 「どうしたの? こんなところで」 「雨宿り、だよ。多分、この雨、そんなに長くは続かないと思うから」 だから一緒に待ってよ? 微笑みながら言う祈里の言葉に、せつなは空を仰ぎ見る。 黒の雲に切れ目は無く、はるか彼方まで青の空は見えない。とても、すぐに止むとは思えなかったけれど。 「そうね。そうするわ」 頷いて、彼女は祈里の隣に並び立つ。どうせびしょ濡れになるなら、無理して今でなくてもいい。それより、せっかく偶然、友達に会えたのだから、少しぐらいお喋りをしていってもいい。 そのほうが、きっと楽しいから。 「急な雨だったね」 鞄から取り出したハンカチで髪を拭うせつなに、祈里は空を見上げながら、困ったなぁ、と続ける。 だがその言葉とは裏腹に、彼女の声は少し楽しそうな響きが混じっていて。 「ブッキー、楽しそうね?」 「え? そうかな」 首を傾げてこちらを見る祈里の姿に、せつなは小さく頷く。どして? そう問いたげな顔をしている彼女に、祈里はうーん、と考え込む。 やがて彼女の口から出た問いかけは。 「せつなちゃんは、雨、嫌い?」 「そうね。あんまり好きじゃないわ――――特に、こんな風に急に降って来る雨は」 恨めしげにせつなは、天を仰ぐ。テレビの天気予報は、曇りだけれど雨は降らないと言っていた。それを信じて彼女は、傘を持って出なかったのだけれど。 そもそも、ラビリンスで育ったせつなには、雨が急に降り出すということが驚きだった。 管理国家の名の通り、ラビリンスでは天候も管理されていた。雨だって、必要な時に必要な分だけが降るし、それは事前に全国民に知らされていた。だから、傘を忘れるということはなかったし、急な雨に慌てるなどということもなかったのだ。 だが、この世界では。 「そういえばラブも、雨は好きじゃないみたいだったわ」 「外に遊びに行けなくなるからでしょ?」 窓に張り付いて、憂鬱そうにしている彼女の姿が容易に想像できて、祈里はクスクスと笑う。つられて、せつなも少し笑って。 「ブッキーは? 雨、好きなの?」 「わたし? そうだなぁ、濡れるのは、やっぱり好きじゃないけど」 でもね、と彼女は続ける。 「せつなちゃん。目を閉じて、耳を澄ましてみて」 「耳を?」 コクリ、と頷く祈里はすでに目をつぶっていて。 戸惑いながらも、せつなは彼女に倣う。 ポツポツ。アーケードを叩く雨の音。 ピチャ、ピチャ。地面の上で雫が跳ねる音。 パチャン。木の葉から水滴がこぼれる音。 いくつもの音が重なり合い、旋律が生れる。そこに規則性はなく、それぞれが独立しているにも関わらず、まるで。 「音楽みたいに、聞こえない?」 感じていたことを、祈里が先に口にする。 目を開けて隣を見れば、彼女は優しい微笑を湛えながら、こちらを見ていて。 コクリ、と無言のまま頷いて、せつなはまた瞼を閉じる。 絡み合う幾つもの音色は、耳に優しく、ゆっくりと心に染み渡っていく。 「素敵・・・・・・」 思わず、そうせつなは呟く。雨が生み出すさざめきが、こんなにも綺麗で、穏やかなものに感じられるなんて、知らなかった。 「でしょ?」 祈里は彼女の言葉に満足したかのように、小さく囁く。同じように、目をつぶりながら。 「雨だって、そんなに悪くないよ」 並んで立つ二人。瞳を閉じて、耳を傾ける。 自然が生み出す交響曲。呼吸をする度に、冷たく、だがとても清浄な空気が体を内から浄化する。 少女達の間に会話はない。それでも彼女達の心は、とても満たされていて。 やがて雨脚は弱まり、オーケストラは去って行った。 アーケードから零れ落ちた雫が、せつなの足元で小さく跳ねる。また少しだけ、ローファーが濡れる。けれど、それを憂鬱に感じることは、もうなくて。 どこか満たされた気持ちで、目を開けた二人は。 「――――!!」 「わぁ・・・・・・」 同時に息を飲む。 いつの間にか、黒雲には切れ目が生まれ、そこから日の光が差し込む。 太陽はそこに、奇跡を生み出していて。 七色の橋が、天にかかる。キラキラ、キラキラと輝き、ゆらめき、少女達の心を奪う。 「ホントね」 「え?」 「雨も――――悪くないわ」 微笑み合う二人を、爽やかな風が包み込む。 秋はまだ、始まったばかり。
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ラブ「実はね・・・」 「夏休みの宿題ぜーーーーーーーんぜんっ手付かずぅぅぅぅぅ!!!!!」 三人(ポカーン、、、) ラブ「あはっ。。。申し訳m(__)m」 せつな「何で誤っているの?わからないわ。」 祈里「くすくす。お腹痛いよラブちゃん♪」 美希「呆れた、、、。帰るよブッキー。せつなもおいで。」 ラブ「ちょ、ちょ、ちょ!!!ちょーいまてェ~」 バタンっ ラブ「何もタダで手伝ってとは言いませんよ。無論、お礼も超超豪華☆キラッ」 せつな「何かくれるの?プレゼント?私嬉しい。」 美希「コラコラ。騙されちゃダメよせつな。」 祈里「でもラブちゃん困ってるみたいだし・・・。」 ラブ「さっすがブッキー。私、涙出ちゃう(ウソ」 美希「もう・・・、二人ともお人好しすぎるの。こんなのラブのためにならないのよ?」 祈里「まぁまぁ美希ちゃん(苦笑」 せつな「で、私はどうすればいいの?」 美希「話はやっ!」 ラブ「みんなで手分けしよう、そうしよー♪」 祈里「じゃあ私は作文かなー」 せつな「この計算式なら私出来ると思う」 美希「ったく。私は一番難しいのじゃない(身近な物のデッサン」 ラブ「助かりますです。。。私は日記担当!」 せつな「過去の事とか覚えているの?」 ラブ「感w」 ~数時間後~ 美希「終わった~!めちゃくちゃ疲れた。。。」 せつな「数字書きすぎて腕が痛いわ・・・」 祈里「頭の中文章だらけ、、、」 ラブ「全部曇りにしちゃったwww」 祈里「あ!ラブちゃん、私たちのお礼って何?」 美希「いけない!忘れるトコだった。」 せつな「ドーナツかしら?」 ラブ「コホンっ。驚くなかれー」 「チューしてあ・げ・る♪」 美希「な…ι」 祈里「え!?えぇぇぇ!?」 せつな「?それって日本の伝統なの?」 ラブ「そです。」 美希・祈里「んな訳あるかーい」 お粗末!初めてのパロでしたw