約 1,947,307 件
https://w.atwiki.jp/gods/pages/131906.html
マリーフランツィスカデパウラテレジアヨーゼファ(マリー・フランツィスカ・デ・パウラ・テレジア・ヨーゼファ) ドイツのリヒテンシュタイン侯の系譜に登場する人物。 関連: アロイスニセイ(2) (アロイス2世、父) フランツィスカキンスキーフォンヴヒニッツウントテッタウ (フランツィスカ・キンスキー・フォン・ヴヒニッツ・ウント・テッタウ、母) フェルディナント(12) (夫)
https://w.atwiki.jp/shingeki/pages/107.html
トップページ - 用語辞書 - 課金 課金 課金とは、実際の現実のお金(円)を利用して、ゲーム内のガチャやアイテム等を購入する行為を指します。 「進撃の巨人モバゲー」における課金では、モバゲーで提供されているモバコインを消費する事になります。 進撃の巨人モバゲー課金種類 主に課金の種類は、以下の通りとなります。 モバコイン数:課金内容:お勧め度:備考: 100コイン:ゴールドガチャレア(初心者):お勧めできる(通常より1/3でガチャできる):ユーザー1回目の課金のみ。おまけはつかない。 100コイン:ゴールドガチャレア(123ガチャ1回目):お勧め(通常より1/3でガチャできる): 200コイン:ゴールドガチャレア(123ガチャ2回目):そこそこお勧め(通常より1/2でガチャできる): 300コイン:ゴールドガチャレア(123ガチャ3回目):お勧めできない(普通のガチャと変わらない): 300コイン:ゴールドガチャレア(2回引き直し可):お勧め(最大で3回試行できるため): 300コイン:ゴールドガチャレア(ダブル):そこそこお勧め(ゴールドガチャを2回できるため): 300コイン:ゴールドガチャレア&1500絆ポイント:お勧めできない(絆ポイントは無課金でも手に入る): 300コイン:ゴールドガチャレア&回復薬1個:お勧めできない(回復薬1個は他特典に比べれば価値が低い): 300コイン:ゴールドガチャレア(レベルMAX):お勧めできない(レベルMAXは無課金でも出来る): 300コイン:ゴールドガチャレア(属性別):そこそこお勧め(格闘シリーズや制服シリーズ等、貴重で強力なカードが手に入る事がある): 1500コイン:駿馬パック:そこそこお勧め(貴重な駿馬が必ず出る):過去に1回だけ行われた。駿馬&レア+の兵士1枚&レアの兵士9枚&回復薬&トラップのパック。 1500コイン:立体起動装置パック:お勧め(駿馬よりも貴重な立体機動装置が必ず出る):過去に1回だけ行われた。立体機動装置&レア+の兵士1枚&レアの兵士9枚&回復薬&トラップのパック。 3000コイン:清掃パック:あまりお勧めできない(清掃シリーズは貴重ではあるが、戦力としては強くない):過去に1回だけ行われた。レア+以上の清掃シリーズの兵士1枚&レア以上の清掃シリーズの兵士or兵士9枚&回復薬&トラップのパック。 課金方法 主に課金の方法は、以下の通りとなります。課金される際は、様々な方法を比較・検討して下さい。 ■キャリア決済(携帯代請求) メリット:手続きが最も楽。携帯代の支払いをクレジットカード決済にしていれば、支払いサイトを最も遅らせる事が出来る。携帯のポイントとクレジットカードのポイントを、二重に付ける事も出来る。 デメリット:課金しやすいので、ついつい課金しすぎないように注意が必要。また、携帯代の支払いを自分以外が行う場合(親や奥さん等)、お金の出所が自分の財布では無い場合は、トラブルになりやすいので注意が必要。課金制限がある(携帯の利用実績により1~5万程度)。 ■WebMoney ウェブマネー(電子マネー決済) メリット:サブ携帯でも課金できる。使いすぎてクレジットカードなどのブラックリストに入る事がない。家族にバレにくい。業者やヤフーオークション等で安く手に入れる事が出来れば、5%~10%引きと課金効率が高い(リスクあり)。正規ルート(コンビニ等)で購入すると、よくキャンペーンを行っていてウェブマネーが当たる事もある。セブンイレブンにて、クレジットカードチャージされたnanacoで支払いが可能で、正規ルートでも課金効率が良い。 デメリット:先払いとなる。手続きが面倒。 ■BitCash(電子マネー決済) メリット:サブ携帯でも課金できる。使いすぎてクレジットカードなどのブラックリストに入る事がない。家族にバレにくい。業者やヤフーオークション等で安く手に入れる事が出来れば、5%~10%引きと課金効率が高い(リスクあり)。正規ルート(コンビニ等)で購入すると、よくキャンペーンを行っていてBitCashが当たる事もある。 デメリット:先払いとなる。手続きが面倒。 ■クレジットカード決済 メリット:サブ携帯でも課金できる。自分のカードでなくても課金できる。クレジットカードのポイントが付く。支払いサイトを少し遅らせる事が出来る。携帯代の課金制限を超えて、クレジットカードの枠内で課金できる。 デメリット:クレジットカードの明細に「モバゲー」と表記されてしまうので、課金行為がバレやすい。支払いを自分以外が行う場合(親や奥さん等)、お金の出所が自分の財布では無い場合は、トラブルになりやすいので注意が必要。課金制限がある(携帯の利用実績により1~5万程度)。使いすぎて支払いが出来ないと、ブラックリストに入ってしまう。 ■銀行ネット決済 メリット:サブ携帯でも課金できる。使いすぎてクレジットカードなどのブラックリストに入る事がない。家族にバレにくい。支払記録がずっと残るので管理しやすい。 デメリット:銀行の振込手数料がかかる場合があり、課金効率が悪い。先払いとなる。手続きが面倒。 課金の末路 トップページへ戻る
https://w.atwiki.jp/saimau_erena/pages/29.html
■ サイマウ年表 ■ (1993年生まれ説による) 2016年8月21日版 1993(平成5) 0歳 9/13誕生(仮) 1994(平成6) 1歳 1995(平成7) 2歳 1996(平成8) 3歳 1997(平成9) 4歳 1998(平成10) 5歳 1999(平成11) 6歳 2000(平成12) 7歳 小学校入学 2001(平成13) 8歳 2002(平成14) 9歳 2003(平成15) 10歳 2004(平成16) 11歳 2005(平成17) 12歳 2006(平成18) 13歳 中学校入学 2007(平成19) 14歳 2008(平成20) 15歳 ・再生2ちゃんスレ荒らし日記 http //i.imgur.com/7cwaOPk.jpg http //i.imgur.com/IyUtkGU.jpg 2009(平成21) 16歳 ・夜通し再生の対抗カプ荒らしで第一志望の高校に落ち、他の高校入学(和国23期生?) ●2012(平成24) 19歳 高校卒 ・1月4日、三井名義でツイ垢が登録される @321xs (のちのmai@x321s→mai@hanjiloveee) karagamixxx@yahoo.co.jp yahoomail登録メアド li**@ezweb.ne.jp 登録生年月日1989年09月13日 ・3月9日、三井名義で再生個人サイト立ち上げ http //karagami.web.fc2.com/karagami/txt.html このサイトの再生小説のうち「白鳥の湖より第2幕「情景」」など15作品でパク発覚(2016年6月27日現在) パク詳細→http //saimaukensyou.tumblr.comパスワードはまとめスレのテンプレに記載 三井の再生サイトの日記(webアーカイブ) http //web.archive.org/web/20130630053924/http //karagami.jugem.jp/ ・3月20日、イタリア旅行 以下はイタリアレポート(前半4ページのみ、後編は書かれないまま放置) http //karagami.web.fc2.com/karagami/text/repot/repo.html http //karagami.web.fc2.com/karagami/text/repot/repo2.html http //karagami.web.fc2.com/karagami/text/repot/repo3.html http //karagami.web.fc2.com/karagami/text/repot/repo4.html ・7月31日、立花@suguuunkを登録。のちのST監視垢と思われる、立@suguuunk ・10月7日・8日の同人イベントで、おそらく最初で最後の個人誌を愛李に委託 http //karagami.web.fc2.com/karagami/tokusetu.html ・2012年10月12日、三井名義でtwitter裏垢を登録 @123xs のちの@vumnli ・12月、再生仲間の駆らんが三井の家にお泊りし、三井手作り胡麻団子をもらうも紛失(駆らんのブログによる) ・12月20日、駆らんとともに再生同人企画サイトJMT48を立ち上げ http //jmt48.web.fc2.com/ ・このころには「三井」名義でpixiv垢を持っており、その後「m」という名前に変更した模様 pixivID1593800 フィードID ilovexs ●2013(平成25) 20歳 ・2月17日、JMT48にウナ名義で「奈良」を投稿後、当サイトを放置 48作品を網羅するはずが10作品のみの掲載にとどまる。うち三井名義が5作品、ウナ名義(pixivID 6140981)が1作品 三井名義の小説「山梨」、「岡山」でパク発覚(2016年7月1日日現在) パク詳細→http //saimaukensyou.tumblr.comパスワードはまとめスレのテンプレに記載 ・ウナ名義の携帯サイトhttp //74.xmbs.jp/xsxsxs/は「規約違反により」サーバー側から削除されている (時期不明。長期間放置程度でこのような文言によるエラー表示になるのかは不明) ・6月10日、横山/サイマウ名義でジョジョのリゾプロ同人活動はじめる サイマウ名義字垢 pixivID 7404400 フィードID ykymrp 横山名義絵垢 pixivID 6592573 フィードID enporiop Twitter @nhmank ya****@yahoo.co.jp 横山名義のジョジョツイピク http //twitpic.com/photos/nhmank (他の例からこれもパクと予想されるがラレ未発見) ・6月25日~7月1日のpixiv小説ルーキーランキングの2位にジョジョ小説「Prisoner Of Love」がランクイン、最終的にブクマ800超え のちに捏造スクショ事件でサイマウとして登場したのはこれが自己最高ブクマ数だったからでは? ・この年、進撃に興味を持ち始めたとの情報あり ●2014(平成26) 21歳 ・3月24日、この時点ですでに進撃巨雑スレに常駐していた疑いあり http //kohada.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1395665106/638からのエレンアンチ書き込み「インチン」連投による ・4月、@vumnli垢で撮影時期の不確かなプライベート画像投稿 http //p.twipple.jp/fKw5n http //p.twipple.jp/loo7n ・5月8日横山名義でゴンキル用ツイ垢を登録、ゴンキル同人活動はじめる 横山@ykym_gk のちにID変更を繰り返す →のなめ@nanashi_el(エレリワンドロに参加) →さすらいびと@lelele_loveee(リヴァイ受けワンドロに参加) sa*******(saimauxxx)@yahoo.co.jp gv**********@ezweb.ne.jp ※捏造スクショ事件で登場する「J」がpixivゴンキル垢を登録 pixivID 10606823 フィードID gkxxx ・6月29日、巨大掲示板の進撃巨雑スレにエレナとして初書き込み。同日公式ツイへの凸開始。 えれ@misat1192 (この日に登録) http //i.imgur.com/GPrhAzb.jpg http //i.imgur.com/18vt6A3.jpg ・夏コミでジョジョ胆石参加とのツイ発言(エアの可能性あり) ・ゴンキルツイ垢では他ジャンル(どのジャンルかは不明)で参加 ゴンキル本完売発言(エアの可能性あり) ・8月頃からST百合赤にハマり、横山名義でpixivに投稿しはじめる 絵垢 pixivID 4932606 フィードID rrxs 字垢 pixivID 5800976 フィードID bbxs ・9月5日、馬渕名義でSTツイ垢が登録される @yrak_ yr********(yrak******)@yahoo.co.jp ・同時期?ST映画用ツイ垢が登録される @no_zyama ・10月、STで百合赤結婚式を企画し叩かれる ・時期は不明だが、pixivに半ナマ二次同人もオープンにして盛り上げるべきという趣旨の画像投稿をして叩かれる ・12月8日、のちに進撃エルリ廃となるカンのツイ垢が登録される @exl_aot gf********@yahoo.co.jp ●2015(平成27) 22歳 ・1月4日 ガッキーくん撮影会in大阪にてSTプチ主催とツーショット http //i.imgur.com/Hcbv515.jpg ・2月、ピクブラにST横山名義の垢登録 https //pictbland.net/yrakxxx この垢でもパク多数発覚 →http //saimaukensyou.tumblr.com ・2月、春コミ合わせで百合赤プチオンリーで5冊出し・指輪ノベルティを予告 ・同月、ST荒らしツイ垢「はがき」などが公式凸、STサークルに嫌がらせ発言・作品晒し はがき@hagakkikun ステラ@suttelago ・横山が荒らしの嫌がらせを理由に春コミ欠席するもアンソロには寄稿、 5冊予定のオフ本はすべて入稿前、3桁納品済みの指輪は本人のツイ発言のみで画像なし なお、のちにアンソロ寄稿情報イラストはパクが発覚、寄稿小説からも多数のパクが発覚 http //i.imgur.com/XtmPxJJ.png http //i.imgur.com/33zLkao.png ・3月9日、進撃巨雑スレでリリおはとしての初の書き込み ・4月28日~8月2日、進撃巨雑スレで名無しとしてSTはがき荒らし騒動に触れ、底辺サークルが嫉妬ではがきとして荒らした と語る。(のちに複数の元ST者などからはがきの正体は不明だったとの証言あり) ・5月5日、進撃巨雑スレでネイリストとして最初の書き込み・画像晒し ・6月15日、「別ナマ!」第五回でエレン廃を装い痛い発言と自演叩きを繰り返した疑惑 http //i.imgur.com/N7Rw740.png ・6月、「ウ」のpixiv垢(再生ウナのpixiv垢)でリヴァハン晒し叩き記事を投稿して垢BANされる pixivID 6140981 (サイマウの別垢と判明したのは2016年6月) ・同時期にm名義の再生pixiv垢が停止されたらしいことが最後のブクマの時期から確認される pixivID1593800 フィードIDilovexs ・6月28日、名無しのまま進撃巨雑スレでイラスト投稿開始(のちにほぼ全作品が韓国人からのパクと判明) ・7月、進撃巨雑スレで◆3XKDbhYwt1j/として書き込み・画像投稿を始める ・7月6日、進撃巨雑スレでネイリストとして最後の書き込み・画像晒し ・8月、進撃巨雑スレで梅田オフの話が持ち上がり、「5135bba」を名乗って発起人に立候補するがオフ会自体は未開催 5135bba Twitter @fgvstg ←ジョジョ横山が前の@nhmankのツイート・フォロー・フォロワーを全消し垢リサイクルしたもの ・8月27日、進撃巨雑スレで◆3XKDbhYwt1j/の神発言・荒らし自認発言 http //i.imgur.com/MR7uIrj.png ・11月、mai垢(元三井垢、@hanjiloveee)でエレリワンドロ管理人2代目に立候補し、@ereri60_kari垢を取得して活動を始める ereri60_kari@yahoo.co.jp er**********@ezweb.ne.jp 電話番号末尾10番 http //togetter.com/li/982162 ・11月18日、進撃巨雑スレで下着と水着 本棚画像晒しにより、全裸=◆3XKDbhYwt1j/と判明する ●2016(平成28) 1~4月 23歳(今年) ・1月1日、進撃巨雑スレでリリおはとして最後の書き込み ・2月11日に進撃同人注意喚起垢登場、エルリ・エレリにpixiv荒らし注意喚起ツイをする 進撃同人注意喚起垢 Twitter @aot_chuui ←ジョジョ横山@nhmank・@fgvstgからの垢リサイクル ・2月、KN名でエレリ小説「お花畑のチェレステ」投稿、ブクマ12 pixivID 4982113 フィードID aaxs ・2月7日、進撃巨雑スレにワッチョイID導入 ・3月24日、進撃巨雑スレのリヴァエレ晒し荒らし「コピバ」が初の容量オーバーによるスレ潰し これ以降、連日スレ潰しを行うようになり進撃巨雑スレ住人が激減、おーぷん避難所に住人多数流入 ・4月、リヴァイ受けワンドロ垢ができる(サイマウとの関係は未確定) ・4月28日、さすらいびと名義でリヴァイ受けワンドロにモブリヴァ絵を投稿するものちにパクが判明 ●2016(平成28) 5月 ・5月15日、捏造スクショ事件 詳細→http //togetter.com/li/982162 http //www65.atwiki.jp/ntzohgi513/ ・同日、ぐるこがpixivに捏造スクショによる記事を投稿 pixivID16608284 フィードIDguruguruguruko すかさず投稿記事のコメント欄に「J」、「サイマウ」が登場 (Jは7月31日のタグ荒らし事件においてサイマウと同一人物であると確定。ぐるこはサイマウとの関係ドリル待ち) ・同日、「春雨」がtogetterに捏造スクショを用いてM叩き記事を投稿、コメント欄に「おすし」「ロッコ」登場(この3名は全員gmail) ・同日、pixivの捏造スクショ投稿が運営により削除され、ぐるこ垢がBANされる ・同日、進撃同人注意喚起垢 Twitter @aot_chuui が鍵垢になる ・5月17日、2015年11月時点でサイマウの絵垢のpixivID 6592573によるリヴァエレ作品のusersタグ大量削除が発覚 ・サイマウがジョジョ小説を非公開にし、その後pixiv垢削除 ・このころ、進撃用ツイ垢のカン @exl_aot の過激な発言が有志の目にとまり、ツイピクから数々のイラストパク発見 http //i.imgur.com/TBOzhhg.png 韓国人からのパクであること、「タコの吸盤の如し」などの特徴的な比喩の共通性によりカンがサイマウであると確定 ・この前後にカン垢 @exl_aot が鍵垢になる ・サイマウのST用pixiv横山垢の2つのpixivフィードID「rrxs」「bbxs」からの予想により「KN」垢が発見される pixivID 4982113 フィードID aaxs ・KNの唯一の小説作品「お花畑のチェレステ」(ブクマ12)が、モザイク再現実験により捏造スクショのusersタグ・賞賛タグの 加工元であるとほぼ確定、この前後にこの作品はKNにより非公開となった ST横山の作品も同様のモザイク再現実験により捏造スクショのもう一方の加工元であるとほぼ確定 ・5月21日、進撃同人タグ荒らし冤罪事件と関連騒動まとめwiki記事が投稿される http //www65.atwiki.jp/ntzohgi513/ ・5月25日、再生/三井がエレリワンドロ管理人であることが判明 詳細→http //togetter.com/li/982162 ・同日、サイマウ/横山が再生/三井と判明 ・同日、再生/三井のイタリア旅行画像から三井が◆3XKDbhYwt1j/と判明 ・5月27日、エレナが巨大掲示板のサイマウ専スレで結婚間近であると報告 ・5月29日、エレリワンドロ管理人が3代目から4代目に引き継がれるも、ほどなく4代目もサイマウであることが発覚 ●2016(平成28) 6月~ ・6月1日、togetterに「盗作・荒らし「サイマウ(横山)」のまとめ」が投稿される http //togetter.com/li/982162 ・6月3日、偽注意喚起垢 @waityanisgodによるtogetter記事が投稿され、通りすがり@pugyo1のコメント、 支援するしゃな@rorotan327の進撃サークルへの凸行為により先のサイマウまとめ記事の正確な周知が妨害される ・6月21日、「別ナマ!」season2 7月号放送後におーぷん巨雑避難所スレでエレンアンチしつつエレン廃の痛い発言を捏造した疑惑 http //i.imgur.com/N7Rw740.png ・7月5日、エレナ(@misat1192)が巨大掲示板進撃バレスレに自室画像を投稿、◆3XKDbhYwt1j/と別人であると主張するが、 下痢の半裸画像背景と同じ部屋であると指摘後に自室ではなくホテルの部屋であり、2週間の一人旅中であると弁明 http //imgur.com/A5CunG5.jpg ・7月9日、サイマウが現在もエレリワンドロ管理人であり、かつてpixivにリヴァハン叩き投稿をしたウであることを注意喚起する togetter記事が投稿される http //togetter.com/li/994180 http //togetter.com/li/994186 http //togetter.com/li/993732 ・7月17日、エレナが投稿した画像の脚の傷が下痢と一致したことによりエレナ=◆3XKDbhYwt1j/が確定 ・7月21日、サイマウの盗作まとめtogetter記事が投稿される http //togetter.com/li/1002731 盗作・盗用の全容については@Yucatan65mを参照のこと ・7月31日、M主催アンソロサンプルページのタグが荒らされて通報される ・数時間後、ST横山の絵垢「.」 pixivID 4932606、エレリ垢KN pixivID 4982113、ゴンキル垢J pixivID 10606823 の3つの垢が消されているのが見つかり、上記タグ荒らしはこの3つの垢を使用し、BANされる前に自ら消したと推測される。 (BANされて垢が消えると垢の跡地に「停止されています」との不名誉な文章が残るのを避けるためかと推測される) また、これによりJがサイマウの別垢であったと確定 タグ荒らしと前後してコメント欄にも「健(数日後に松井と名を変える)」 pixivID19435020 フィードID ionaionaiona3 が荒らし書き込みを行うが、サイマウとの関係は不明 ・8月6日23時以降、ジリワンドロ終了時間を数分遅刻して告げたのち8月13日まで作品をRTせず放置 ・8月9日、進撃原作でエルヴィン死亡 ・8月12日、夏コミ進撃スペースの買い専の列の間でサイマウ・エレナ・エレリワンドロの話題が飛び交っていたとの報告あり ・8月13日、20分以上開始宣言が遅れたエレリワンドロのお題「憎しみ」で参加者は激減、時間終了宣言なしと主催やる気なし ・7月31日現在、サイマウ=馬渕=5135bba=進撃同人注意喚起垢=横山=三井=カン=mai=のなめ=さすらいびと =「.」=KN=「m」=エレリワンドロ2~4代目管理人=◆3XKDbhYwt1j/=リリおは=ネイルBBA=ウ=ウナ=立 =エレナ=J まで発覚 ────────────────────────────────────────────────── ■サイマウの使用した各人格の設定・状況とTwitter・巨大掲示板への投稿画像の年表 2012年 ・3月、三井名義で再生サイト始動 ●三井設定 →再生ザンスク廃。ネットで対抗カプを荒らして第一志望の高校受験に失敗した設定。 (高校の学生証に別人疑惑があり、第二志望以下の高校に入学したかどうかは不明) ・3月、イタリア旅行に妹?と出かける。高額なイタリア直行便ツアーではなく関空→アムステルダム経由のツアー。 ・12月、再生友達の駆らんが三井(サイマウ)宅に一泊のお泊りで「ザンスク部屋」を訪問、 三井手作り胡麻団子をもらうも紛失する(駆らんのブログによる) 2013年 ・6月頃、横山・サイマウ名義でジョジョリゾプロ活動開始 ●ジョジョ横山・サイマウ設定 →高卒。帰国子女。マネージャーがつくレベルのモデル・誕生日にはクルーズでパーティー・モデル業でしょっちゅう 国内を飛行機で移動・2020年までには25歳を超える発言・誕生日は9月13日・彼ピいる・梅田住み発言 2014年 ・5月頃、横山名義でHUNTER×HUNTERゴンキル活動開始 ●ゴンキル横山設定 →祖国はイギリス(しかし英語は不得手である模様)・横山のエロ漫画の原稿に口出しし、イベントの売り子をする彼ピあり ・6月29日、巨大掲示板の進撃巨雑スレにエレナとして初書き込み。同日公式ツイへの凸開始。 http //i.imgur.com/GPrhAzb.jpg http //i.imgur.com/18vt6A3.jpg ●エレナ設定 →六大学法学部卒の東京住み。2016年に30歳の設定。大学で第二外国語に中国語を履修していた設定。 リヴァエレのエレン廃でエルリアンチ設定。(しかし買ったフィギュアはリヴァイのみ、東京住みとわかる画像は皆無) ・8月頃、横山名義でST百合赤活動開始 ●ST横山設定 →マネージャーがつくレベルのファッションライター(周囲にはラノベ作家と思われていた模様) ・黒人で日本語が片言の彼ピがいる設定・病弱設定・仕事でパリやグアムに行った発言(現地画像なし) (7月31日タグ荒らし発覚数時間後に絵垢「.」を自ら削除) ・12月、客を招待してのクリスマスパーティを開催した設定(クリスマス関係画像で複数パク発覚) http //i.imgur.com/HSnzHYY.jpg ・12月8日、のちに進撃エルリ廃となるカンのツイ垢が登録される ●カン設定 →大学生。居酒屋でバイト。のちにエルリ沼に落ちる。(他カプdisでエルリマウント発言多数) ツイにイラスト投稿多数(大半が韓国人からのパクリ) パク詳細→http //togetter.com/li/1002731 2015年 ・2月、ST横山として春コミ合わせで百合赤プチオンリーで5冊出し・指輪ノベルティを予告 http //i.imgur.com/3LtRHlw.png ・同月、巨大掲示板のST同人スレ・ST同人ヲチスレで「はがき」の荒らし話題とともに横山への非難書き込み多数 この時にはST内でももろもろの言動により横山が在日韓国人ではないかとの疑惑あり。 ・同月、ST横山が荒らし被害を理由に春コミ欠席、個人誌5冊は入稿前、3桁納品済みの指輪は本人のツイ発言のみで画像なし アンソロには参加するものちに小説パク発覚 http //i.imgur.com/33zLkao.png ・3月9日、巨大掲示板の進撃巨雑スレでリリおはとしての初の書き込み ●リリおは設定 →リヴァイ廃のヲタ充(しかし見栄で拾い物の画像を貼ることも)。仕事についている設定と矛盾する言動多数。 カーペットの床にホールケーキを置いて撮影する。イギリス村旅行(画像あり)、タイ旅行(画像なし)。 ・5月5日、進撃巨雑スレでネイリストとして最初の書き込み・画像晒し ●ネイリスト設定 →ネイルアートのためにフランスに留学。(注・ネイルアートの最先端は日本である) ・6月2日、進撃巨雑スレでUSJ 足画像晒し http //i.imgur.com/n7Z6lG8.png http //i.imgur.com/atiGC1yl.jpg ・6月16日、進撃巨雑スレでネイル晒し ・6月、ウ垢でpixivにてリヴァイヘイトであるとしてリヴァハン批判投稿。ほどなく記事は削除され、ウ垢はBANされる。 ●ウ設定 →リヴァイ受け廃、リヴァイ攻めアンチ。なぜか好き好んでリヴァイ攻めサークルのツイや掲示板を見に行く。 ・同時期、三井→mに名前の変わっていたサイマウの再生垢がBANされていることが判明。 ・6月28日、名無しのまま進撃巨雑スレでイラスト投稿開始。(のちにほぼ全作品が韓国人からのパクと判明) ●巨雑絵晒し設定 →22歳、彼氏・友達なし(アドレス帳家族のみ3件)、ニート、同人描き三大カプ中手(友達発言として)。 学生時代に何度も告白されたがお高くとまってたせいで処女との発言。 ・7月、進撃巨雑スレで◆3XKDbhYwt1j/として書き込み・プライベート画像投稿を始める。 ● ◆3XKDbhYwt1j/設定 →リヴァイとリヴァイ受けヘイトのエレン廃。(実はリヴァイ攻めヘイトでエレンアンチのリヴァイ廃と判明) ・8月5日、進撃巨雑スレで性病相談 裸晒し (閲覧注意)ブラ http //i.imgur.com/Lj9FPCW.jpg (閲覧注意)裸横 http //i.imgur.com/dR0sZdC.jpg (閲覧注意)裸前1 http //i.imgur.com/BxDFxEp.png (閲覧注意)裸前2 http //i.imgur.com/MgU7peu.png PC画面 http //i.imgur.com/aH6BHpI.png ・8月13日 進撃巨雑スレで300人ヲチリスト晒し http //i.imgur.com/Tk5RkDh.png ・8月21日、進撃巨雑スレでリリおはスパプー書き込み・画像晒し http //imgur.com/auoEBJs.jpg http //imgur.com/9OWVO91.jpg(こちらの画像は撮影日の矛盾の指摘あり) ・8月27日、進撃巨雑スレで◆3XKDbhYwt1j/の神発言・荒らし自認発言 http //i.imgur.com/MR7uIrj.png ・9月13日、進撃巨雑スレで誕生日鬼電スクショ晒し http //imgur.com/9giHiAT.jpg ・9月29日、進撃巨雑スレで再生指輪晒し http //i.imgur.com/9A7ldAI.jpg ・9月29日、進撃巨雑スレでリリおはとしてスーパームーン忍び返し画像晒し http //i.imgur.com/gqDZHQ0.jpg ・10月2日、進撃巨雑スレでリリおはとして巨人展リリティー画像晒し http //imgur.com/EqiwR0H.jpg ・10月3日、進撃巨雑スレでリリおはとしてイギリス村画像晒し http //i.imgur.com/BYiQKPP.jpg ・10月5日、進撃巨雑スレでリリおはとして鳥羽三泊二日旅行画像晒し http //imgur.com/RCK63fc.jpg http //imgur.com/xRvkKJm.jpg(こちらは拾い物の偽画像と判明) ・10月8日、進撃巨雑スレで汚部屋 脛毛晒し http //i.imgur.com/gJ8fOOS.jpg http //i.imgur.com/kxXiAA7.jpg http //i.imgur.com/jqzRVFJ.jpg ・10月12日、進撃巨雑スレでスーツ 2巻晒し http //i.imgur.com/WwyyS0V.jpg ・10月29日、進撃巨雑スレで本棚とストラップ付きパスポート画像晒し http //i.imgur.com/pJOkMgV.jpg ・11月15日、進撃巨雑スレでパスポート 学生証 浴衣写メ 本棚画像晒し パスポート http //i.imgur.com/t4TiWRa.jpg 学生証 http //i.imgur.com/ZfzLN7G.jpg 浴衣写 http //i.imgur.com/sHoOgyj.jpg 本棚+パスポート http //i.imgur.com/DvnZ8QB.jpg 本に錐 (閲覧注意)http //i.imgur.com/xCoPRbT.jpg ・11月18日、進撃巨雑スレで下着と水着 本棚画像晒し、この時点で全裸=◆3XKDbhYwt1j/と判明する 水着 http //i.imgur.com/ZmFO9kM.jpg 謎の本棚 http //i.imgur.com/LgqBHIu.jpg 進撃の本棚 http //i.imgur.com/qrAof8o.jpg ・11月20日、進撃巨雑スレで汚部屋画像晒し http //i.imgur.com/zqnFlxG.jpg ・11月、mai垢でエレリワンドロ管理人2代目に立候補し、@ereri60_kari垢を取得して活動を始める ●mai設定 →元再生/三井。リヴァハン廃設定。のちにワンドロ垢でエレリオフ会に参加すると公言 ・11月30日、進撃巨雑スレで脛毛画像晒し (閲覧注意)http //i.imgur.com/VR740MI.jpg ・12月4日、進撃巨雑スレでリリおはとしてスイパラ画像晒し http //imgur.com/NoUqWFI.jpg ・12月16日、進撃巨雑スレでナース服画像晒し http //i.imgur.com/dpl0ByY.jpg ・12月17日、進撃巨雑スレでへそ毛脛毛画像晒し (閲覧注意)http //imgur.com/5JGIBvw.jpg http //imgur.com/GJnjI9H.jpg ・12月25日、進撃巨雑スレで脇毛乳首画像晒し (閲覧注意)http //imgur.com/r4qz7cS.jpg http //imgur.com/ihWEIup.jpg ・12月25日、進撃巨雑スレでリリおはとしてケーキ床置き画像晒し http //i.imgur.com/QPHbi4W.jpg ・12月26日、進撃巨雑スレで◆3XKDbhYwt1j/と疑われる足と左手親指の画像晒し http //i.imgur.com/Ke6Vf1P.jpg 2016年 ・2月、KN垢でpixivにエレリ小説「お花畑のチェレステ」を投稿。のちにMONSTERZ二次小説の使いまわしと指摘されている。 ●KN設定 →エレリ廃。(「お花畑のチェレステ」はのちに捏造スクショの加工元となったとほぼ確定している) (7月31日タグ荒らし発覚の数時間後pixiv垢を自ら削除) ・4月28日、さすらいびと名義でリヴァイ受けワンドロにモブリヴァ絵を投稿するものちにパクが判明 http //i.imgur.com/E7NTbrf.png ・5月15日、捏造スクショ事件で「J」が被害者エレリサークル、「サイマウ」が被害者エルリサークルとして登場。 ●J設定 →ゴンキルは前ジャンル垢、進撃エレリからも撤退済み設定。「よろしくね」にタグ削除されたとコメント。 繰り返しusersタグ削除の嫌がらせを受けて同様にエレリから撤退した知人が数人いると明言し、 彼女たちから得る予定のタグ削除IDスクショ晒しを予告したまま沈黙していた。 (7月31日タグ荒らし発覚の数時間後にpixiv垢を削除したことにより、サイマウと同一人物であったことが確定) ●進撃サイマウ設定 →ジョジョリゾプロは前ジャンル垢、現ジャンルは進撃エルリ。 進撃ヲチスレにてリヴァエレサークルにusersタグ削除荒らしを繰り返されたと発言し、リヴァエレサークルの内紛を 匂わせるような発言をしていた。(逆に自分の別垢でリヴァエレ作品のタグ荒らしをしていたことが発覚後pixiv垢削除) ・5月19日、さすらいびと名義でリヴァイ受けワンドロにモブリヴァ絵を投稿するものちにパクが判明。 http //i.imgur.com/3iSq8Hp.png ・5月25日、サイマウ/横山が再生/三井と確定。 ・同日、再生/三井のイタリア旅行画像から三井が◆3XKDbhYwt1j/と確定。 ・5月27日、エレナが巨大掲示板のサイマウ専スレで結婚間近であると報告。 ・5月下旬、竜座としてサイマウからエレリワンドロを引き継ぐ()。 ●竜座設定 →pixivの字書き。エレリ廃。(しかしこの人物を知っているというエレリ者たちの証言一切なし) ・7月17日、エレナが投稿した画像の脚の傷が下痢と一致したことによりエレナ=◆3XKDbhYwt1j/が確定 ・7月31日、M主催アンソロサンプルページのタグが荒らされて通報された数時間後に、ST横山の絵垢「.」 pixivID 4932606、 エレリ垢KN pixivID 4982113、ゴンキル垢J pixivID 10606823 の3つの垢がBANされているのが見つかり、 タグ荒らしはこの3つの垢を使用した行為だったと推測される。 また、これによりJがサイマウの別垢であったと確定。 ────────────────────────────────────────────────── ●1989年生まれ説を採用した場合(出来事は各年1行のみ抜粋) 1989(平成元年) 0歳 9/13誕生(仮) 2005(平成17) 16歳 ・第一志望の高校に落ち、他の高校入学(和国19期生?) 2008年(平成20) 19歳 ・再生2ちゃんスレ荒らし日記 ←中学生を擬態? 2012(平成24) 23歳 ・1月4日、三井名義でツイ垢が登録される 2013(平成25) 24歳 ・2月17日、JMT48にウナ名義で「奈良」を投稿後、当サイトを放置 2014(平成26) 25歳 ・3月24日、この時点ですでに進撃巨雑スレに常駐していた疑いあり 2015(平成27) 26歳 ・1月4日 ガッキーくん撮影会in大阪にてSTプチ主催とツーショット http //i.imgur.com/Hcbv515.jpg 2016(平成28) 27歳 今年 ・1月1日、進撃巨雑スレでリリおはとして最後の書き込み
https://w.atwiki.jp/coyote/pages/60.html
当然ながら、ギルドに入るまでは、の前置きが必要だが、ペトルッツィは信心深い男だった。 彼はギルドに所属すると直前かそれと同時に、信仰心を諸々の道具、聖書や変型の十字架、燭台、香炉などと一緒に投げ捨てた。 理由には、うんざりするほどの諸説がある。彼が敬虔な信者だったことは確かだった。艦の誰もが知っていることだった。 彼がドブに信仰心を投げ込んだ理由には、八百宇宙ドルの賞金まで掛けられている。 しかし誰一人として面と向かって聞いた者はおらず、副官のボルツマンも、関係のあるようなことは一言だって口にはしなかった。 が、それは一先ず置いておこう。彼の秘密に掛けられた賞金のことも、彼の秘密のことも。兎に角彼は信仰を捨てた。 かなり強固な意志でもって、完膚無きまでに己の心と魂から破棄した。後には大して残らなかった。精々欠片が残ったくらいだろう。 そのペトルッツィが、感謝していた。忘れた筈の神に感謝していた。彼自身おかしいと思ったが、感謝の念の渦は止まらない。 跪く彼の目の前には白い塔が聳え立っている。かつて足繁く通った建物を思い出した。穏やかな人々の為の場所。血と暴力と快楽は無い。 唇の痛みに気が付いた。血が出ている。破片で切れたのだろう。彼は手で拭い、この状況をどうにかすることにした。 立とうとする。艦の激しい動揺。近くの黒い何かにしがみ付いて耐えた。揺れが収まる。退避することを考えた。 縋っていたものを見る。吐き気がした。部下だ。ヘルメットが外れた上、電子機器から出た炎で焼灼されたようだ。 顔が……本当に顔なのか、これは? ペトルッツィは考えるのを止して立つことにした。 手が強く当たってぐずぐずになった『何か』が、ごろりと赤と黒の塊が下に転がり落ちる。視線が釘付けになった。白いものも見えた。 何とかして視界の中から引き剥がし、辺りを見る。生きている部下は? せめて、負傷者はいないのか? 耳をそばだて、目を皿にして探す。周囲は物音が無かった。周囲には動きが無かった。周囲には健康なままの生者は見えなかった。 だが一人、仰向けになって、微かに息をしている。生きている。艦長は逃げることを後回しにして、彼を助けなければならないと思った。 誰でもいい、誰でもいいから、自分以外の人物に助かっていて欲しかった。助かって欲しかった。 大声で呼び掛け、ヘルメットを脱がす。彼は運が良かったとペトルッツィは考えたが、それは間違いだった。 背中に手をやって体を起こす。ぬるりと感触。ずるりとも。装甲服は破壊されていた。背中に傷を負っているのだ。 助かりそうには無かった。実際、彼はじきに痙攣を起こして、少しするとすっかり動かなくなった。 死体を手の中から落とし、踵を返して艦橋から逃げ出す。白い塔ことミサイルから逃げ出す。 足元がふら付いた。数分後には耳鳴りも起こりだした。吐き気もぶり返し始めた。壁に体を寄せて歩く。最悪の気分だった。 向こうから兵がやって来た。話し掛けて来るのを遮る。頭に響いて耐えようが無いほどの痛みをもたらしたのである。 荒く息を四、五度吐いて、顔を右手で覆う。再び荒い呼吸。困惑した部下がそこから離れようとした時、彼の肩が掴まれた。 「被害報告」 訝しげな顔をする。艦長は、聞き取れなかったのだと判断して再度ゆっくり、はっきりと、分かり易く繰り返せる精神状態では無かった。 両手で肩を掴んで揺らし、顔をくっつくほど近づけて大声で叫ぶ。 「被害報告!」 びくりとして兵が直立不動になり、着弾箇所と兵の被害、投下する予定だった弾薬燃料などの物資の喪失を告げ、 それからペトルッツィが最も聞きたくなかったことを教えてくれた。 機関部のエンジンが暴走直前で、稼動を中止せざるを得なかったそうだ。補助機関にも損傷多く、とても艦を支え切れないらしい。 近くの窓に寄って、外を見てみる。緩慢な降下を始めていた。十分二十分の時間で、市街地か何処かに不時着することになるだろう。 崩壊だ。指揮官は呟いた。彼らは頭を殴りつけた。我々は哀れにも地に倒れ、止めを刺されるのを待つしかない状況なのだ。 通達を兵に託し、彼は移動することにした。通達は機関士たちと操艦室に対するもので、 どうにかして市街地には落とすなという命令だった。市街地に落とせば、良くて敵に包囲突入制圧、 悪いと落ちた時点で機関が破損、暴走、爆発。よって艦は吹っ飛ぶ。何処まで飛んでいくものか、見当もつかない。 機関の暴走と爆発は、どでかい爆弾を並べて狭い部屋に押し込み、纏めて起爆スイッチを押すようなものだ。 何もかもを薙ぎ倒し消滅させる威力がある。ペトルッツィは、今のところ死にたいとは思っていなかった。 * * * 俺は天使を見たことが無い。神も。仏も。宗教的な何事をも、この年になっても信じる気は無かった。 けれど天使の存在は認めるしかないようだ。黒い天使。通信で、三十ミリ機関砲四門とミニミを二挺、拳銃二挺を持っていると知った。 随分重武装な天使もいたものだ。それで空を飛び、軽やかな動きで地上からの砲火を回避し、敵を微塵にしている。 美しいと思った。周りの仲間たちも同じ思いだった。聞かなくても分かる。共通の思念が我々の間には存在するのだ。 黒煙を上げる敵艦に、俺は拳を突き上げて雄叫びを上げた。致命的な行動だったが、銃撃は無かった。 考えるに、アンドロイド兵も含めて敵艦の墜落に誰もが驚いていたのだろう。仲間も奇声を上げて騒いだ。 上空をギルドスカイが通って行く。十二姉妹専用機だ。誰かな? マーチ様に尋ねると、ジューン様だと分かった。 ジューン様に、我々のいるビルとホテルを伝える。誤って爆撃されては敵わない。マーチ様には連絡済だ。 彼女は心強い了解の言葉を寄越した後に戻って来て、羽を振った。本当に、心強い。空の援護が二人もいる。 天使たち二人によれば、オーガスト様とオクト、ノヴェ、ディッセ様率いる歩兵部隊が肉薄しているとのことで、安心は余計に深まった。 母艦の兵、北部の弾薬調達班の兵、それに十二姉妹の内の四人もいるのだ。どうして不安になる。その上、上には十二姉妹二名。 おっと、フェブ様も含めなければならない。彼女も生きていると聞いた。これで七名。半分以上いる。 敵には心から同情する。相手にしなければならない敵は強大だ。打ち倒せる敵じゃない。迂回して行くしかない壁だ。 だというのに壁は彼らを覆っている。ぐるりと、高く、棘付きだ。どうすることも出来ない。彼らは衰弱して死ぬ。 窓から外を眺める。三十ミリの巨大な弾丸が地面を抉り、敵兵を粉砕しているのが見えた。アンドロイド兵も何名か掻き消えた。 彼らは必死で敵を撃墜しようと銃を振り回し射撃する。無駄だよ、諦めろ。俺はいい気分だった。敵を倒すのはいつだっていい。 負け戦は忌々しいが、負け戦の後の勝ち戦ほど晴れやかでスカッとするものは無い。戦死者がいなければ、もっとスカッと出来るのに。 銃の弾倉を換える。周りの仲間も俺に呼応して換えた。窓に近づき、整然と列を作り、狙いをつける。銃の槍襖。射程距離は長いぞ。 外すと格好が悪いので良く狙う。ギルドスカイの飛行音。ミサイルを発射するのだろう。しっかりと銃を保持する。 時間が止まったようだった。集中は時間を引き延ばす。知っていたし、体感したこともあったが、ここまで引き伸ばしたのは初めてだ。 たったの一秒が、無限大の時間になったかのような感じだった。全ての動きが停止する。 白い糸が地面に突き刺さるのが速かったか、俺の指が引き絞られるのが速かったか。後者の方だと思う。 爆発は敵を風の前の粉雪の如く舞い上げさせた。それは放っといて、地にへばりつく虫共を穿り返す。 耳元での銃撃はうるさいことこの上無かったが、止められる状況では無かったし、俺も誰かの耳元で銃を撃っている。お互い様、だ。 右の耳は聞こえなくなるだろうが、左の耳は無事だしいい。お互い様の精神は大事だ。美徳でもある。 上からの三十ミリとミサイル、それに機銃掃射。横からの突撃銃での地面を耕す鉛弾の壁。生き残った者は余程運がいいのだろう。 屋上の無反動砲もフルに活用された。装甲車二輌の内、一輌を撃破した。対空装備強化型かどうかは遠くて判断出来なかった。 いいさ。残りの一輌も撃破してしまえば、どっちが強化型でも同じことだからな。 ジューン様のギルドスカイかマーチ様が発見や撃破してくれればいいのだが。無反動砲は動けない。装甲車を探しに出て行け? 馬鹿。 心配を抱きながらも撃ち続けていると、慌しく色々と蹴っ飛ばしながら伝令がやって来た。 何でもジューン様が、こちらに向かって進撃してくる六、七百の敵兵を発見したらしい。装甲車もいたとか。全て通常型だそうだ。 銃撃が一方的では無くなって来た。あちらも、援軍が来たと知って勢いを回復したのだろう。 クソったれが。大人しくぶち込まれてれば良かったものを。抵抗なんかしやがって。いいだろう、皆くたばらせてやる。 何分経った頃か知らないが、敵の増援を確認した。敵の最後っ屁だ。こいつらを撃破すれば全部終わる。 増援はまだだろうか? とっとと来てくれるといいのだが。無線連絡しようにも、肉薄した状態で音を立てるようなことも出来ない。 小さな物音から作戦が失敗することもある。我々は持ち堪えられるのだから、彼らを待たなければならない。 連絡するのはいよいよとなってからだ。最終手段って訳だな。俺たちは最高の働きをすることが求められている。 「ベッドでぐっすり眠れるのはいつかな? 俺はそれより、読み終えてない本を読みたいな。持って来てるから帰りにでも読むか」 左で、トラックの運転手をしていた男が言った。本を読むだけの体力があるのは羨ましい。 誰かが続けて言った。これはちょっとしたからかいというか、冗談の一種だと思う。眠る、に反応したんだろう。 「誰をも待っているその森は優しく暗くて深いから、きっと充分に安らぐことが出来るのだから」 読書好きの男がすかさずやり返す。 「でもまだ約束の仕事がある。眠るまでもう少し、眠りにつくまであと少し」 君ら二人が古典詩が大好きなのは分かったから銃撃てよ早く。 * * * ジャニアリーは状況報告を聞いて、歯軋りした。新型と交戦したエイプリルとメイが重傷を負った? 有り得ない、と否定したかった。 彼女はエイプリルを、十二姉妹の現リーダーをライバルと認識している。 いずれは殺害以外の手段で、己の方が優れていることを、立場の交代を認めさせたいと思っている。 当然、ジャニアリーの中ではエイプリルは打倒し難い存在であり、その親友のメイに関しても、戦友としての観点から強さを知っていた。 それが二人してたった一人の新型に重傷を負った? とてもじゃないが、受け入れられない事実だ。 トラックは要請を受けて、数名の兵を乗せて出発した。選りすぐりの精鋭たる十二姉妹隊の中でも特に優れた男たちだ。 道中で年末型や敵ギルド兵の襲撃を受けても心配は無い。難なくとは言わないが、撃退、撃滅出来る。 これで彼女たちの心配は要るまい。帰って来たら、ニルソン様に診て貰えば良い。死ぬような傷ではないだろう。 両手を握り締める。右手に力が入らない。見てみる。ああ、そう言えば自分は小指を失っていたのだ。 邪悪な哄笑を最後に姿を消したあの同型機のことを思い出す。殺さねばならない。自分は、あれを、殺さねばならない。 しかしそれは今ではなかった。今は、艦の指揮をしなければいけない。指揮官不在では危険過ぎる。 マーチの報告通信がやって来た。内容に少し気を良くして、息を吐く。艦は東の空き地に向かって、緩やかに降下しつつあるそうだ。 空き地は十分な広さがあるだろうか。確か余り広いとは言えない土地だったが、艦は収まるだろうか。 どうすることも出来ない。祈るだけだ。何に? 自問し、答える者は己一人なので、答えようとする。 ──ジャニアリーお姉様、部隊の配置を終了したから、後は攻撃を始めるだけだよ! オーガストの声。優秀な妹だ。彼女は上手くやるだろう。結果が楽しみだ。ジャニアリーは十分後の戦闘開始を命じる。 こんな戦闘は初めての筈なのに、この小さな英雄は自信満々に返答を返し、指揮官を安心させてくれた。成長を感じさせる行動だった。 オクト、ノヴェ、ディッセも一応報告を送って来たが、彼女たちはいつも通りだ。 ただ、声が大人びたというか、何らかの強い意志、使命感を感じさせる声になっていた。これにも成長を感じる。 戦術地図を見て、戦闘は収束を開始していると判定する。ならば一気に押し込んで、潰してしまわなくてはならない。 我々の勝利はぐらつく梯子の上に現状存在する。誰かが下で支えなければ落ちてしまう。誰が支えるかは言うまでも無く、妹たちだ。 『ジャニアリー、私だ』 ジューンの声が響いた。ギルドスカイの無線機を使ったようで、ジャニアリー以外の兵も音の方向に顔を向けた。 『弾薬が切れた。補給に戻る』 「了解。くれぐれも、着艦の際にアクシデントの無いようにお願いしますわ」 『大丈……ミサイル!』 爆発音がして、無線が途切れる。ジャニアリーは体の芯が冷たくなって行く感覚に囚われた。 ジューンに限ってそんなことは無いだろう。だろうが、それなら無線の連絡を寄越さないのは何故だ? 回避にそこまで時間の掛かることもあるまい。もしかしたら被弾したのかもしれない。そうなれば十二姉妹とて、生存は難しい。 脱出に間に合わなければそこまでだ。後はセプと同じように、何処が何処なのか分からなくなるほどに破損し、服の切れ端が残る。 お願いだから無線連絡を寄越してくれ、生きているなら、お願いだから。 そんなことを呟きながら必死に、ジューン隊所属で艦への援軍として来た男の一人が、彼の隊長のギルドスカイに接続を試みている。 彼の手が止まった。ごくりと喉を鳴らし、彼の目を見て、顔を見て。 「通信、復帰しました!」 暫定指揮官は飽きが来ていたが、溜め息を吐いた。今日だけで何度溜め息を吐いたことやら。 『済まない、心配を掛けたようだ』 「機体は大丈夫ですの?」 チェックの音が無線に乗って流れてくる。深刻な被害が出ていないといいのだが! 『大丈夫だ、着艦出来る。ああ、尾翼が少し欠けた。整備兵にすまないと伝えておいてくれ』 「オーケーですわ。もう、ジューンったら、びっくりしたじゃありませんの」 彼女は小さく笑った。ジャニアリーは久しぶりに激情家の一面を露にした。 * * * 「ヴィンス、彼の具合はどうなんだ?」 「駄目だ。いや、まだ生きているが。ありゃ助からないよ」 シグリッドはベッドの上で、ついさっき手術を終えて目を覚ました戦友に尋ねた。 彼の右には英雄的働きをして、その末に撃たれた男が眠っている。シグリッドはヴィンスの左にいた。 顔を歪めて哀悼の意を示す。戦友を失う辛さは何度体験しても慣れないものだ、と言ってから、続ける。 「可哀想に、いい奴だったのにな。こいつがいたから俺たちは生きてるようなもんだ」 「死んだ奴は皆いい奴さ。例えミスターでもな」 シグリッドの左のベッドで休んでいたフェブ隊小隊長のフレデリックが言う。ヴィンスは彼を睥睨して言った。 「彼とあんな奴を一緒にするな。ミスターは死んだってミスターさ」 「ああ、お前もな」 激昂して、ヴィンスはベッドから起き上がろうとする。慌ててその体を、傍にいた衛生兵が押さえた。 汚い言葉を喚き散らす彼を、冷ややかな目で見つめ返す。彼が何を考えているのか、誰も分からなかった。 数秒して、はっとした目に変わる。泣きそうな顔で、今の言葉を詫びる。ヴィンスも彼の変貌に口を閉じた。 「どうかしてたんだ、どうかしてたんだ、俺は。彼……彼は死なないさ。君もだ。死ぬもんか」 衛生兵が食事と薬を持って来たので、言い合いと奇妙な居心地の悪さはそこで終わりを告げる。 シグリッドの偽らざる本心と多少の罪悪感が混じった考えからすると、食事は普通だったが最低だった。流動食の方がマシだと思った。 何せ彼らは艦に戻って来たが、心は戦場にある。体も切り替えを済ませられていない。 そこに、突然前触れなど無しに普通の食事を持ってこられたのだ。彼ら負傷兵の多くはその後、吐き気と戦闘を繰り広げることになった。 だが調理した兵の名誉の為に言っておけば、彼の作ったマッシュポテトは非常に好評だった。 食事の中でそれだけはレーションと同じメニューだったことを考えれば、名誉は挽回されていないかもしれないが。 また、この臨時救護所には問題も多かった。衛生兵の数と、尿瓶などの数だ。ベッドは幾らでもあった。 足りなくなれば、兵の寝所から固定を外して調達した。部屋も多かったので、その辺りは心配がなかった。 ある時負傷者でも軽傷に分類され、吐き気とも戦わずに済んだ幸運かつ強健な者の内の一名ヴィンスは、急に小便に行きたくなった。 が、軽くとも撃たれて傷ついた者が勝手に行動して良い訳が無い。それに、ベッドからは離れてはならないと言われていた。 彼は衛生兵を呼び、尿瓶を取って貰い、ベテランならではの経験で器用に自分一人で用を足した。 けれどすぐに、次の生理的欲求に気付いた。折りしも、衛生兵が全員薬の調達や食事の用意などの用事でいなくなった時である。 「なあ、シグリッド」 彼は自分の身の危険さにも気付いていた。このままでは、かなりマズい。 「どうかしたのか?」 くっくっく、と笑いながら言う。笑っている場合ではないのは分かっていたが、おかしくて止まらなかった。 「クソがしてえ」 げんなりとした顔になって、シグリッドが距離を取ろうとする。だがベッドの端っこに行った程度で止まらざるを得ない。 何とか衛生兵を呼ぼうと頑張るが、一向に来る者は無い。 異常事態の発生を感付いたフレデリックが騒ぎ出し、部屋に伝染する。 そこでやっと、騒ぎを聞きつけた衛生兵がやって来た。これで大丈夫だ、とシグリッドが思った瞬間、ヴィンスが言った。 「ヤバい」 シグリッドの状況説明は恐らく、早回しか何かだったのだろう。衛生兵には彼が何を言っているのかさっぱりだった。 代わりにフレデリックが最大限短い文章で、彼にヴィンスの便意を伝えた。衛生兵は頷いて、ヴィンスを手早く運んでいく。 かくして、彼は「人としての尊厳を失わずに済」んだのであった。 * * * 攻撃開始の時が来た。ビルに隠れた私は手榴弾を取り出し、両手に握った。無線の回線を浸透した部隊全員に開き、横にいた部下に渡す。 意図を尋ねる彼に、何か気の利いた、士気を高める演説か何か、それらしいことを言ってくれと頼む。 東部戦線救援隊に相応しい戦闘開始の合図が欲しかった。我侭かもしれないが、それくらい許して貰えるだろう。 彼は戸惑っていたようだったが、やがて無線に向かって口を開いた。流石は私の隊員、オーガスト隊の隊員だ。 「諸君、反逆の同志諸君」 無線からは聞いていることを伝える、電子音が流れて来る。 「東部戦線において、我々の同胞が包囲されている」 再度電子音。 「我々の同胞が死の危険に曝されているんだ……今こそ我々の手が必要だ、銃が必要だ、力が必要だ!」 今度は味気ない電子音ではなかった。驚くほどの声が同じ言葉を唱和した。 『必要だ! 必要だ! 必要だ!』 満足気に部下が宣言する。 「宜しい、立ってそこから出て戦いたまえ! 進撃だぞ!」 部下たちの歓声が伝達された。私は装備を持って、同じビルに隠れていた兵たちと合流、一目散に走る。 オクト、ノヴェ、ディッセ、それにフェブお姉様の姿も見える。お姉様はマーチお姉様に対する情報支援を行いつつの進軍だ。 二つのことを一挙にやってのける辺り、やはり凄いのだと思わせられる。普段は正直なところ、余りそういう風には見えない。 銃撃は中々始まらなかった。一体何がどうなっているのか分かっていなかったんだと思う。好都合だった。 敵のいるビルに近づき、ポテトマッシャーの紐を右手の指に引っ掛けて、そのまま思い切り投げる。こうすればより遠くまで飛ぶ。 投擲は成功した。埃で見えない窓を割って手榴弾は内部に到達して、爆発した。新しい手榴弾を握る。 ようやく銃弾が飛び始めた。部下たちは瓦礫やビルなどの陰に隠れながら進軍する。私もだ。 反撃し前に進む。途中遭遇したトーチカ化建物には全て、手榴弾を数個投げ込んでから八名の制圧班が目的遂行の為に飛び込んで行った。 O型の包囲陣の一部の破壊が終わったことを確認する。U型になっているようだった。けれど、十分ではない。もっと穴を広げる。 この時点での私の評価では、敵は包囲網を構築しながらも、色々な面で打ち負かされ受動的になっているように見えた。 受動的になった部隊は役立たずと同義だ。戦局を見る目は濁り、至極簡単な理論的思考さえも間違いだらけになる。復活は難しい。 油断はしないが、勝利の可能性は高くなった。順番に食い尽くして行けば、包囲を必要なだけ破壊出来る。その後は最後の戦闘だ。 「三時方向、北北東にトーチカだ」 誰かが叫んだ。 「無反動砲を確認、危険だぞ」 「建造物の合間に隠れて進むか、中を通って接近するんだ」 これで何度目だったか、制圧班が銃撃をものともせずに冷静な観察眼で安全な接近経路を選び出し、通り、接近を開始する。 ならば心配の必要は無い。あのトーチカはじきに沈黙するだろう。これは贔屓目無しの評価だ。 出来る限り多くの味方を指揮出来る位置を探しながら進む。敵に姿を曝すのは危険だと思ったが、危険なのは兵も一緒だ。 無反動砲が火を噴いて、近くに着弾しても考えは変わらなかった。手榴弾を両手に握っていつも兵士たちの中にいた。 敵の立て篭もるビルやアパートを攻撃する時は最先頭に立って真っ先に武器を投げ込み、 釘付けにされた部下がいればやはり敵方に手榴弾をばらまいて彼らを助け出した。 「装甲車だーッ!」 「無反動砲か何か無いのか!」 だから、装甲車が突然私たちの横腹を突いて来た時だって、一番最初に攻撃を開始したのは私だった。 手榴弾を仕舞い込み、対戦車擲弾を取って投げつける。当たりはしたが、撃破には至らない。 見つけられると凡そ同時に、速射砲での攻撃が始まった。瓦礫と瓦礫の間に体を挟みこんで避ける。 と、私の反対側の瓦礫に隠れた一人の兵を見つけた。彼に呼び掛け、対戦車擲弾を示す。彼は一度の説明で飲み込んでくれた。 二つの擲弾を持ち、一つをその兵士に投げ渡す。砲塔が旋回する音。今だ。私は身を乗り出して投げつける。兵も投げた。 間一髪だ! 銃眼から射撃を受ける直前に、私は瓦礫の厚い庇護の下に逃げ込めていた。気持ちを落ち着けて、瓦礫の隙間から敵を見る。 今しも爆発するところだった。燃料に火がついたのか、弾薬に火がついたのか、それともその両方か、砲塔が空高く舞い上がった。 流石にもう止めよう、単身で装甲車に挑むのは。危うく死ぬところだった。幸運だった。 一緒に撃破した戦友の方を見る。……彼は私ほど幸運ではなかったようだった。警戒しながらも走って近づき、脈を確認。 無い。私は彼を背負えないので、位置を記憶してそこを立ち去った。後で絶対に連れ戻す。 * * * 東部戦線におけるギルド粛清部隊通常兵の現場指揮を任されたその男は、私の言葉に何も言えなくなった。 絶句している相手を見ているのはちょっと前なら好きだったが、今では最早、面白くも何とも無い。退屈なだけだ。 このビルの中から一刻も早く出て行きたい。一秒でも、コンマ一秒でもいい。こんなことにしかならないと知っていれば来なかったのに。 「つ、つまり、戦闘に手は貸せないと?」 私は必要以上に分かり易く言ったのだが、それでも聞き返して来るか。苛々する。こいつの顔面潰してやりたい。 爪を掃除しながら、「つまりそういうこと」だと答えた。相棒は後ろに立っている。 どんな顔だろう。振り返ると、つまらなさそうな顔だった。やはり考えることは同じか。 「何故なんだ? 我々が勝利を収めるには、ここで敵を打ち倒さないと──」 「うるさい」 爪の汚れに集中したい。次にお姉様方と会う時、きっちりとした格好でいないと戦闘どころか恥ずかしさで死ぬ。 汚い爪では品性を疑われもするだろう。マルチアーノ十二姉妹は、いつだって品を失ってはならない。 例え服が汚れていようとも、立ち振る舞いには輝くものが無ければならないのだ。 私にはその輝くものがあるかどうか疑わしいので、せめて身なりだけでもきちんとしようと前から思っていた。 わなわなと震える男の体。装甲服なので擦り合わさって耳障りな音を立てる。その音で、あの狙撃手のことを思い出してしまった。 一気に不機嫌になる。別に一発食らわせられたのはいい。私の体はバレットで貫通出来る強度ではないからだ。 貫通したけりゃ戦車砲でも持って来いというものだ。それこそ当たらないだろうけど。 邪魔されたのも腹立たしいが、ま、それも我慢しよう。私は大人であろうと努めている。大人は邪魔も良しと流せる包容力を持つものだ。 どうにも我慢出来なかったのは彼がメイお姉様をずりずり引き摺ったのと、まるで中世の騎士の如く現れた辺りだ。 前者の怒るポイントは言うまでも無く引き摺ったところ。待て待て待てと思った。引き摺るんじゃないと止めたくもなった。 後者は嫉妬に似ている。きっと彼は二人のお姉様から高評価を頂いたに違いない。羨ましい。死んじゃえ。 「あんた、あんたは……」 ちらと形だけは仲間ということになっている男を見て、視線を爪に戻す。 一瞥の観察故に正確ではないが、彼は頑張って耐えているのだと考えていいだろう。 右手の銃がこちらに動いたり戻ったりで目障りである。二度と動かないようにしてやろうか。 彼はくるりと背を向けた。諦めてくれたようで嬉しい。不機嫌が少し直った。顔にも微笑みが浮かぶ。 そうそう、私には笑いが必要だ。お姉様に仏頂面を向ける訳には行かない。最高の私を見て貰いたいし。 呟きが聞こえた。 「クソったれの人形め」 確かにそう言った。この罵倒は酷いと思う。私どころか、お姉様たちまで侮辱している。怒りで冷めた感覚で、周囲をさっと確認。 三人の兵が三角形を作り、中心に罵倒した隊長さん。許せない? 私は通信で相棒に一言尋ねた。彼女は頷いた。 よって、私は彼の言葉に感じたことを行動で表すことにした。彼に近づき、頭をがっと掴む。そのまま地面と熱烈なキスをさせた。 敵となった三人の兵を見る。反応はそれなりだが、お姉様たちに比べれば芋虫の速度。比べるまでもない。 二人は相棒が葬った。一人は私が葬った。一発も銃弾を使いたくなかったので、私のやった一人は壁とキスすることになった。 埃が服についてしまったので、お互いに払い合う。背中は協力しなければ取れない。彼女がわざと強く叩いた。 私は拳銃の銃把でやり返した。彼女はやり過ぎだと不平を言うが、何がやり過ぎだ。最初に始めた者が言えることか。 黙らせて、櫛を出すように言う。ぶつぶつ言いながらお気に入りの櫛を渡してくれた。近くの瓦礫に腰掛けて、相棒を膝の上に誘う。 あからさまに警戒をしていたので、もう一発殴った。愛情表現だと言って文句を封殺。恐る恐るといった様子で膝に座る。 私とお揃いの三つ編みを一度解いて、優しく櫛で梳いてやる。さっきのご褒美だ。世に言う飴と鞭である。 あれだけ警戒していた癖に始まると気持ち良さそうに目を細める彼女に呆れる。切り替わりの早いことだ。 梳きながら、一つ思った。早くここから出ないと面倒になるんじゃあないかな。 最も近いドアの方に目をやる。とっとと終わらせてそこから出ようと思った矢先、がちゃりと音がして開いた。 あー。 * * * 黒い天使は少し前から、地に舞い降りている。圧倒的火力で敵兵をミンチにし、装甲車が慌てて駆けつけた時には彼女は消えた後だ。 マーチはいい気分だった。この調子を維持して行けば、勝利も遠くは無いだろうと考えた後、維持出来たなら、と付け加えた。 悲観主義的な思考だという考え方も出来るが、戦闘とは楽観的思考で勝てるほど易しいものでは無い。非情にならねばならない時もある。 部下を見殺しにしなければならない時だってある。今回はそうではなかったが、楽天的な行動では助けられるものもそう出来ない。 ──十一時方向の赤いアパート、三階の窓に敵兵の反応多数。座標送信。 フェブの冷たい声が聞こえる。この戦場では彼女こそ神だ。マーチは代理人に過ぎない。フェブは彼女の地図の上で敵を探し、見つける。 そうして、彼女は座標送信と共に死の宣告をするのだ。彼らには死んで貰わねばならない。それで終わり。それが終わり。 後は、実に手際良く彼女のパートナーが仕事を終わらせてくれる。全く、マーチを天使と言い表すなら、フェブは神そのものだった。 ──三時方向、大きな給水タンクのあるビルと半壊したアパートの間。座標を送信。 マーチにとって、機械のように何か作業をしていくのは楽しかった。ゲームにも思えた。彼女は敵を撃つのに夢中になった。 ──注意、六時方向。無反動砲複数ですわ。座標送信。 地面に固定用の補助脚を片方突き立てる。機動形態だったマルスはぐるりと補助脚を中心に一回転した。そこでもう片方を刺す。 刺さったら射撃開始だ。三十ミリ機関砲の連射は建物の壁など簡単に貫通する。瓦礫も満足なカバーにはならない。 たちまちの内に、四つの無反動砲が破壊された。弾薬が誘爆したものもあった。マーチはそれを見て笑った。 ──ナイスショット。次の目標は六時方向に三ブロック直進後、右に曲がれば見えます。座標は送信しておきますわね。 補助脚を外し、機動形態に戻って目標の視認出来るところまで進む。フェブの言葉通り、三ブロックの直進後右に体を向けると見えた。 それも沢山、大量にだ。八十人くらいはいる。数十発の銃弾が傍を掠めるが、その認識よりも前にそれより多くの銃弾を返礼する。 ピンクの飛沫が上がる。首が空を舞って地に落ちる。手足がもげて道に飛んでいく。運の悪い者はそうなっても死ねないで苦しむ。 楽しんでやったマーチも、当然の報いだとは思わなかった。彼女は苦しむ兵に最後の慈悲を掛けた。 ──弾の無駄、とは言いませんわ。でも、次からは止めるように。それは敵の反感を買いますのよ? 無防備でもありますし。 マーチの行動を逐一チェックしているフェブがそう言ったが、彼女は無視した。自分の行動は自分で決める。 判断材料を受け取ることがあっても、結局は自分の意思で行動する。決して言いはしなかったが、フェブは知っている筈だった。 パートナーはどうやら自分を心配しているようだと結論し、鼻の先で笑う。不必要な行為だ。心配しても何も変わらない。 ノイズが入って、荒い音声の銃声や指示の大声と一緒に、はきはきとした声が伝わって来た。味方が無線で話し掛けているのだ。 『こちら燃料調達班の指揮官のユーリー・ダニロフ、敵の抵抗は弱まっています。その調子でお願いします、マーチ様』 ──十時方向、左に二ブロック進んで更に左折して一ブロック、その後右にもう一ブロック。 何か気の利いた台詞を返そうとしたマーチに、フェブの指示が覆い被さる。彼女に空気を読めと言って、マーチは機体を移動させる。 左折しようとした時、緊迫したフェブの声が響いた。 ──五時方向に敵無反動砲発見! マーチ! 黒い天使は慌てなかった。冷静に、ある兵装を使用した。軽い音と共に、何かが排出される。 何かは排出された勢いで無反動砲周辺に移動し、地面と接触すると爆発した。瓦礫が細かな破片となって、敵の体を貫き殺す。 空中散布式の爆弾だ。ニルソンがS-Meinとか何とか言っていたことを、マーチは思い出した。 フェブが息を吐いて、流石ね、と褒めたが、彼女は何も言わないで移動を再開しただけだった。 目的地では敵が四つのビルを占拠してトーチカとしていた。最優先で破壊するべき拠点だ。知らずに通れば全滅する。 マーチは補助脚を二つとも地面に刺して体勢を固定した。 ──敵兵の全座標を取得、送信。やっちゃっていいわよ、マーチ。 片っ端からロックオンして、発砲する。みるみる内に、ロックオン表示が減っていく。それが意味するのは、敵が死んだ、ということだ。 二つのトーチカを破壊し終わる頃には無反動砲が確認出来る状況になっていたので、一先ず移動することにする。 無反動砲の発射音。移動での回避は間に合わなかったか。舌打ちして、片方の補助脚を抜いて動く。 機体が回転し、無反動砲弾はすれすれのところを避けていった。固定し、移動など止めて撃ちまくる。 六つの銃砲から生み出される弾幕は、残り二つのビルも易々と破壊した。 ──お陰様で肝を冷やしましたわ。もう二度とあんなことをしないと約束して欲しいものですわね。 フェブの言葉にかちんと来て、言い返す。 「相変わらず臆病」 回線の向こうで硬直するフェブ。その様子を想像して、マーチはまた笑った。 * * * 「足の具合はどうだい?」 「全て問題ありませんわ、ニルソン様」 彼は大きく頷いた。私の言葉に嘘は無い。以前と一切変わらない具合だ。 「それは良かった。メイはどうかな?」 「アタシも大丈夫です。戦線に復帰出来ます」 メイのボディは軽傷とは言えなかったので、ニルソン様は信用したものか迷っている顔だった。 けれど、最後には信用するつもりになったのだろう。僅かな憂慮は見えたが、メイの復帰を許可した。 それが数分前だ。現在、私は艦橋にいる。メイはすぐにでも東部戦線に向かいたがったが、またあの新型と遭遇しないとも限らない。 彼女の代わりに、ジューンが補給を終えて出て行った。マーチの健闘は彼女の通信記録と現地部隊の通信記録で分かる。 メイが態々向こうまで出向く必要性は感じられない。よって不許可とした。彼女は不満そうだったが、了解してくれた。 ジャニアリーは十二姉妹の総指揮官としては不適格だったようだが、まずまずの成功は収めていたらしい。 東部戦線の敵兵は減っていたし、敵艦まで落としてしまうとは思わなかった。敵艦はそろそろ不時着するそうだ。 機関が暴走しないかどうかは気が気でないが、気にしたところで変えられることでもない。 それよりも、機関と言えば我々の艦の機関こそを気にするべきだ。修理を始めよう。今はその余裕がある時だ。 命令の通達を行い、十五名の兵を割り当てる。足りなければ更に人数を増やす許可を出しておいた。 この戦闘中に機関が直らなくても別にいいが、戦闘後に機関がまだ直っていませんというのは困る。 我々は速やかにこのクーロンから立ち去らねばならない。共闘しているコヨーテ共はまだしも、していないコヨーテ共が面倒だ。 彼らがこちらの持ち込んだごたごただと思えば、戦闘になる。それで時間を取られればミスターの帰還も懸念せねばならない。 十二姉妹はカートゥンのヒーローではない。出来ることには限りがあり、その範囲のことを全てやり遂げるからこそ精鋭と呼ばれるのだ。 ミスターの相手とギルドからの独立、これはどちらも片手には余ることだ。両手を使わねばならない。 となれば、今はミスター如き一個人を相手にしている場合ではない。ギルドからの独立が最優先で達成するべき目的だ。 コヨーテたちと戦うことになれば、彼らがどんな手段でミスターと連絡をつけることか。彼がどんなに急いでやって来ることか。 私たちは不本意ながら、彼から逃げなければならない。かなり不本意ながら、そうしなければいけない。 戦闘が終われば可能な限り急いで荷を積み、弾薬を補給し、次の目的地に向かう。その時、機関が直っていなければ、酷い目に会う。 ジャニアリーは何を考えていたのだろう、この件に関して? 少し考えれば分かる筈だ。それとも、後からでもいいと思ったか。 大きな間違いだ。是正すべく動き出したからいい、とは行かない。十二姉妹は結果オーライなどと優しいことは言わないのだ。 回線を開き、彼女の考えたことを聞く為に質問を幾つか送る。彼女が私の思いが到らなかったところに気付いた確率だってある。 無視して頭ごなしに叱咤するのは良いやり方ではない。相手の考えたことを聞き、論理的な答えでもって言い負かす方がいい。 ジャニアリーのようなタイプはそちらの方もそちらで逆効果になりそうだが、彼女も十二姉妹の一員だ。分かってくれることと思う。 が、返答は無かった。回線の状態を確認。繋がっている。偶然何か起こったのかもしれない。もう一度送信する。 やはり答えは無し。無視している。嫌な気分だった。二人目のジュライは勘弁して欲しい。 仕方なく、フェブに回線を開いて事情を伝え、サーチして貰う。もしも彼女が裏切ったなり離反なりしたなら、こちらでは捉えられまい。 フェブは快諾してくれた。頼りになる妹だ。数十秒の間が開いて、発見を伝えてくれる。 ──発見しました。座標等送信しますわ、お姉様。 礼を言って受け取り、その受け取った彼女の現在位置を示す座標などを見て、私は溜め息を吐いた。 彼女のサーチで判明したのは、ジャニアリーが繁華街西部で、単独行動を行っているということだった。 何でこんなことを? 疑問が頭に浮かぶと同時に、そのジャニアリーが私に回線を開いた。 色々な質問を浴びせかけようとする私に切羽詰った感じの声で何か言う。私は一度目、聞き取れなかった。 二度目を要求する。ジャニアリーは繰り返した。 ──繁華街西部にて、セプ同型機を発見。傍に銀髪もいますわ。返り血が付いていますけれど、こちらに新型による死傷者は? 私は答えを返せなかった。逃げるように言った。彼女は溜め息を吐いて、回線を切断した。 * * * 服にさえ返り血が付けてしまったのは痛かった。お姉様たちに眉を顰められたらどうしよう。私の心は暗澹たる状態だった。 先程までは愚痴を相棒に漏らしていたが、彼女は耐え切れなくなったか辺りに敵兵がいないか確認するというのを口実に逃げた。 次からは彼女がそんな寝言を言えないように調教しておこう。二度と言えないように。 横を見る。彼女は愚痴を漏らすには不適当な仲間だ。私が素手で殺害したあの十名ほどとは物分りの良さで天地ほどの開きがあるが、 何分喋らない。全然喋らない。この前一緒に食事した時など、気付いてみれば私の独演会みたくなっていた。 私はその後で抱き枕に抱きついて少し泣いた。以来、彼女はほぼ完全な無口なのだと理解し、会話はY/Nで答えられるようにしている。 そこだけを除けば、後は殆ど完璧なのだが。容姿が死んでしまったセプお姉様にそっくりなのもいい。見ているとうっとりする。 彼女はそれを嫌がってか視線を感じるとすぐぷいと横を向いてしまうが、それもまたぞくぞくする要因だ。 ところで、この寡黙なお姉様と瓜二つの仲間に関係する行為で最近私が嵌っているのは、 食事中にいきなり後ろから胸を鷲掴みにすることである。相棒は私のことを変態とか親父臭いとか罵るが、これが面白い。 胸の感触は言うまでも無く、その時ばかりは普段全然驚いたりもしない彼女が飛び上がる。水を飲んでいる最中にやって、 彼女の目前で食事をしていた相棒に水がぶっ掛けられたこともある。多分それが罵る原因。 さて、食事中でなければどうなるのだろう。私は降って沸いた興味に抵抗するつもりにならなかった。 チャンスは一回しかない。二度目からは警戒される。一度のチャンスを難なく掴むのが十二姉妹なら、私もそうせねばならない。 彼女が取る反応をリストアップしてみる。一番オッズが高いのが無反応。低いのが声を上げる。夢も何もあったものじゃない。 前を行く彼女が突然立ち止まった。ぶつかりはしない。二メートルの間隔を隔てているから、ぶつかる訳が無い。 どうしたのか尋ねようとして、沈黙するように手で抑えられる。言葉を遮られるのは良い気分ではないが、彼女には逆らえない。 立場的には私が上だが、彼女の顔といい手のひんやりとしたところといい、見たり感じていられるなら遮られてもどうとも思わない。 通信回線が開かれる。相棒だ。何処にいるのやら。彼女は何も言わずに座標を送信した。何のことだ? 近くだったので、そちらを見る。 おお。おお。彼女の調教云々の件は忘れることにしよう。こういうこともあるものだな。 「ジャニアリーお姉様、ですわね?」 瓦礫に隠れて金髪が見え隠れしていた。びくりと揺れるかと思いきや、そうならない。私だったら腰を抜かすかもしれないな。 横の無口女が銃に着剣する。おっと、幾らなんでもそれは駄目だ。ここは私が行きたい。私が、交戦したい。 第一、最初に見つけたのは私なのだ。私に交戦権を優先して渡すのが物の道理という奴ではないか。 彼女は考えているようだった。その間に、お姉様が瓦礫から身を曝け出した。 服は各所が汚れているものの、闘志に陰りは見えない。これこそ十二姉妹、という良い見本だ。私もああなりたいものだ。 しかし残念なことには、彼女の殺気を孕んだ眼は、私の隣に向いている。仕方ないと言えば仕方ないのだが、ただただ残念だ。 ここはさっきの計画を実行して私のことにも気付いて貰う他無い。すすっと斜め後ろに移動する。二人は睨み合っている。 握っていた拳銃をホルスターに戻して、手を動かす。うんうん。意味も無く頷いて、関節をこきこき鳴らしてみた。 一切お構いなしに、二人はねめつけあっている。あ、そう。徐に脇の下から腕を突っ込み、二つの膨らみを揉みしだいてみる。 ……ジャニアリーお姉様の視線は奪えたが、反応は無かった。何も言わずに手を払い除けられただけだった。 でも負けない。人はチャレンジするものだ。試練には挑戦するものだ。私は厳密には人ではないが。 反省したふりをして横に並ぶ。どうでもいいけど、二人とも睨み合ってばかりで面白いのだろうか。それとも、もう既に戦闘始まってる? 横顔を見てみるが、感情は見えない。微かに笑みを浮かべたかのような気もしたが、気のせいかもしれない。 何だか退屈だ。幾らなんでも、ここまで疎外されれば私も退屈になる。声を上げてみることにした。 「お姉様ー、ジャニアリーお姉様ー」 無反応。最高の笑顔を作ったのに視線も貰えなかった。この場には私の存在価値無いのかしら? 姿を消した方が良いのかも。 最後の手段だ。いきなりぶっ放してみよ──駄目だ。相棒は銃を持ったまま何処かに行ってしまったのだった。私の銃は拳銃しかない。 もういい。私は完全なお邪魔虫のようだ。最後に何かやらかしてから逃げよう。それこそ、二人両方から狙われるくらいのことを。 顎を引っ掴んでくるりとこちらに回し、唇を奪う。この距離では発砲も出来まい。 前後左右に繋がりが無い行為だが、お姉様への挑発にはなるだろう。これで撃って来たらいいのだが。 横目で見ると、お姉様の表情の変遷が面白かった。最初は驚き、次に困惑し、その次にふつふつと煮え滾る怒りに打ち震える。 彼女は下を向いた。口から途切れ途切れの言葉が聞こえる。 「ふ」 ふ? 「ざ、ける、なッ!」 顔を上げて銃を向ける。今気付いたが、一挺M14じゃないか。セプお姉様のものだと思う。説明し難いが、映画みたいだ。 それより、ジャニアリーお姉様の顔が凄く怖かった。泣きそう。私は早々に逃げ出そうと口を離す。 駆け出す背中に銃弾が降り注いだが、M14らしい弾が二発同時に着弾したのはどういうことだろう。いや、分かっているのだが。 * * * 艦長の逃げ込んだ第二艦橋からでも、地面は明瞭に見えた。下で交戦している部隊が、装甲車が、潰されるトーチカもが明瞭に見える。 その時彼、ペトルッツィに、かつてボルツマンに語った時のような敗北しつつあることへの想念は無かった。 何が「可及的速やかな再起と勝利へ向かう歩みの開始」だ。何が「素敵」だ。ふざけるな。敗北は悪夢だ。 それら二つの言葉は敗北を経験したことの無かった指揮官だからこそ言えたのだと率直に肯定していれば、 ペトルッツィは優秀な指揮官になれたかもしれなかったが、彼は救いようの無い人間であった。凡人に限り無く近かった。 彼は頑強な意思でもって敗北を欠片さえ認めず、己の間違いも認めず、だが敗北の足音だけはしっかりと聞いていた。 この不運にも指揮官になってしまった男は、この期に及んで抵抗と勝利を信じていたらしい。 艦を要塞とし、搭載されている実弾兵器によって可能な限りの弾幕を作り、穴には歩兵部隊を配備、敵の撃破撃退を目論んでいた。 が、余りにも人員は少ない。機関士だってギルド兵であることには変わりはないので、銃は持てる。コックだって持てる。戦える。 でもそれが二線級の人員であることも、変わらない事実だ。ペトルッツィの意思さえもそれは否定出来なかった。 十数分前からギルド上層部の連絡が引っ切り無しに入っているが、彼はその全てを無視した。生き残り勝利することの方が重要だ。 あんな呆けた老い耄れの集団は放っておけ。彼が第二艦橋付通信士に言い放った言葉である。忠実な通信士は首肯し、以後無視を続けた。 『艦長、そろそろです。対衝撃姿勢を取り、出来れば体をベルトか何かできつく固定して下さい』 機関室からの言葉が伝わり、それを皮切りに周囲の全兵士が職務を一時中断して対衝撃姿勢を取った。ベルトを締められる者は締めた。 発言者も体を固定し姿勢を変更したらしく、声の響きが僅かに変わった。マイクから口が離れたのだろう。 『全ギルド兵に通達。我が艦は墜落する。不時着の際に大きな衝撃を受けることが予想される。 座り、頭を膝と膝の下に入れ、後頭部を手で保護せよ。ベルトを締められる者は締めよ。装甲服は絶対に脱いではならない。 既に脱いでいる者はヘルメットのみでも被るように。我々は墜落しつつある。我々は不時着する。繰り返す。全ギルド兵に通達……』 ふと、副官のボルツマンはどうなっただろうかという考えがペトルッツィの頭に浮かぶが、無視した。 運が良ければ生き残るだろう。悪ければ死ぬ。大抵の場合、人というのは運が悪いものだが。 営倉には何も無いので、逆に助かる可能性が高まるかもしれない。机や椅子があると、それに激突して死亡、負傷することが多い。 通達放送が終わり、エンジンの小さな音だけが響く。弱弱しいのは距離が離れているからだと分かっていても心細い。 静けさを破るのは高度警報だった。恐怖心を掻き立てるサイレンのような警告音に、男性の声で『艦首を上げろ』。 サイレン二回に声一回の割合だ。無機質な音声が、平常心を奪う。啜り泣く声が増えた。何人かは悪態を吐いた。 また何人かは歌い慣れた行進歌、流行歌、景気のいい歌を歌って自らを励まそうとしたが、すぐに黙った。 サイレンと声に、更に言葉が混じる。 『警告。このままでは墜落します。このままでは墜落します。警告』 こちらは女性だった。サイレンと声二セットの後に一度入る。 誰かが遂に声を上げて泣き出した。聞き取れない言葉で誰かに何かを言おうとする。 恋人の名前か、母親の名前か、何かの名前らしいが、辺りの誰にも分からなかったし、分かろうとする余裕のある者はいなかった。 波紋のように泣き声が増え、子供のように泣く屈強な兵士たちを見ても、ペトルッツィは敗北を許可しない。 姿勢などクソ食らえと両手両足で暴れ、泣き、叫ぶ。まるで子供がお菓子を強請る時のようじゃないか。ペトルッツィは笑えなかった。 彼らの思いは一致していた。これ以上無いほどに一致していた。 「死にたくない」 多少落ち着いた誰かがぽつりと漏らす。他の落ち着いた者に、またも伝染する。 「まだ死にたくない」 「生きたいよ」 ペトルッツィは目を瞑って膝で耳を塞ぎ、歯を噛み締めた。衝撃はきっかり三十秒後に始まった。 * * * 繁華街東部戦線で戦うコヨーテの一人である私は、歓喜の声を上げ、高らかに腕を突き上げて本日二度目の勝利宣言をした。 勿論ながら、敵地上兵力は増強され、抵抗は激化している。しかし供給源たる敵母艦が、東の空き地に墜落した。 懸念されていた機関の暴走と爆発は起こる気配も無く、十二姉妹隊の者から聞いた情報だと、敵が出て来る様子も無いそうだ。 もしかすると、というレベルの話だが、衝撃で全員が死亡か気絶してしまったのかとも考えられる。 何はともあれ私たち、というか十二姉妹は敵の巣を破壊した。兵員補充が無ければ、姉妹兵の練度と体力それに状況判断能力、 そして何よりも十二姉妹の力を考えるに、ギルド粛清部隊の勝利は無い。こちらにも被害は出続けるだろうが、戦闘の常だ。 全く、それにしても、こんな経験は初めてだ。元であるにしてもギルドと手を組んで戦うとは。最初は心配だったが、今ではそうもない。 寧ろ安心して背中を任せられる。気取った風な態度が気に入らないのも数名いるが、十二姉妹隊に所属しているという誇りからだろう。 私は誤解をしていたと認めるしかないようだ。コヨーテならば仕方ないのかもしれないが、 ギルドにいる、もしくはいたというだけで誇りの無い家畜野郎だと考えるのは早計だったのだ。多少話してみるだけで分かった。 彼らは誇り高く、しかし愚鈍で無知な理想主義者ではなく賢明かつ冷徹な現実主義者で、必要なら手を血で汚しても眉一つ動かさず、 そうしろと言われたならボウル一杯のクソにも顔を突っ込む覚悟と忠誠がある。まあなんだ、有体に言えば立派な奴らだ、全員。 コヨーテの誇りとは少々違うことは確かだが、間違い無く彼らにも彼らなりの誇りは存在する。 不思議なことだが、私は彼ら仇敵だった筈の十二姉妹とその兵士を好きになっていた。 厳密に言えば姉妹たちに対する好意は微妙な値で止まっているけれど、兵たちには心から好意を抱いていた。 その微妙な値だって、あの緑髪のSFに出てきそうな黒いパワードスーツもどきを着込んだ少女を見ていれば、 ぐんぐん上がって行きそうなものだ。彼女の上空を飛び、時折的確に機銃掃射やミサイルでの攻撃を敢行してくれるあの航空機を見て、 どうして大いに信頼を寄せずにいられるだろうか。力強さ、心強さを感じずにいられるだろうか。そんな奴は最低のピーナッツ野郎だ。 銃を握る手にも力が入る。安心感は適度の緊張をもたらして、体を解して咄嗟の場合の敏速な動きを可能にしてくれる。 また今、マルスとか言う名前の対空ユニットが目の前を通り過ぎて行った。行き掛けの駄賃に十名近くの敵兵を消し去って。 後方からは姉妹四名に率いられた救援部隊が敵と我々に迫りつつある。銃火の騒音と、時々入る無線連絡がそれを証明している。 既に装甲車含む有力な敵と交戦、撃破を繰り返しながら進んでいるのだとか。装甲車二輌を撃破とも聞いた。一輌は姉妹がやったらしい。 降下した装甲車の数を思い出す。九輌だったと思う。撃破したのは二足す二で四だ。後五輌残っている。内一輌が対空車輌。 通常型と対空装備強化型の見分け方は、車体に付けられたミサイルの位置と、不確実ながら砲口制退器の有無だ。 ミサイルの位置は簡単なことで、通常型には四発ミサイルが砲塔の左右に二発ずつ付いているが、 対空型のミサイルは砲塔上に空に向けて十六発もの対空ミサイルが搭載されているらしい。 砲口制退器での判別が可能な理由は、一部の通常型には建物やトーチカへの攻撃力増強の為に速射砲ではない、 通常の砲を装備させたものがあるという話だが、その場合T字型砲口制退器がついているので、 それがついていれば例えミサイルが見えなくても通常型だと分かるそうだ。流石彼ら自身の所属していた組織の兵器だと感じる。 砲の利点欠点、装甲の厚さや薄い場所、乗組員からの死角、銃眼の数と位置、何もかもを教えてくれた。聞かなくてもいいような話まで。 何でも、整備を少し怠るだけでエンジンが動かなくなることが頻発するようになるそうだが、 そういう時は誰かがレンチで殴りつけると何故か動き出すのだとか。洗濯機などなら分かるが、エンジンを殴りつける奴があるかと思う。 傍らにある無線が鳴った。周りの皆は銃を撃つ手を休めずにいる。仕方無い、私が取ろう。今までいた窓の傍から離れ、無線機に向かう。 と、離れた瞬間他のコヨーテがその場所を取った。そら、これだから嫌なんだ。私の窓争奪戦に掛けた努力が灰燼に帰してしまった。 他の窓にあぶれたコヨーテと同じように外へ出て戦う方がいいかもしれない。無線機を取る。 『こちら救援隊、応答せよ、どうぞ』 「こちら東部戦線、どうぞ」 『……誰だ、聞いたことの無い声だな。コヨーテか? 救援の進捗状況報告だ。 ああ、それに戦果報告等もあるな。近くに十二姉妹隊の者は? どうぞ』 辺りをぐるりと見回す。手の離せそうな者は一人としていない。相手出来るのは私だけだ。 素直に伝える。この兵の態度は私の気に入るところではなかったが、 私が本来の仲間ではないからと言って嫌悪感などを感じていないのは分かった。 いつも、姉妹で無い限り誰に対しても、こういう喋り方なんだろう。彼は聞き取り易いようにゆっくり言ってくれた。 『我々は装甲車を新たに一輌撃破。ただ、周囲にはまだ敵兵がいる為に近づいて車種を確認出来る状態ではない。 確認殺害戦果は六十四名、戦死者四名。内、装甲車にやられたのが二名、敵の手榴弾で一名。トーチカ破壊作戦時に一名射殺。 遺体の位置と姓名は記録済み。我々は東部戦線包囲網の十時から三時までを破壊した。引き続き破壊し、君らを救出する。どうぞ』 「了解。我々は救出後、共に前進するのか? どうぞ」 彼は考え込み、近くにいたらしい指揮官に話すといって少しの間離れた。一分か二分して戻った彼の言葉はこうだった。 『君たちの内重傷者等戦闘続行不可能な人員は後方の野戦病院に送る。軽傷者と無傷の者は我々に加わり、敵艦への攻撃を行う。 但し、君らコヨーテは君らの指揮官にまず許可を求めろ。指揮系統が違うから、こちらでの勝手な同行許可は出来ない、どうぞ』 「了解し実行する、どうぞ」 尤もなことだ。組織的な行動をする敵にばらばらに立ち向かうのは馬鹿のやることである。 私たちは軍人のように一つの組織を形成する歯車にならねばならない。コヨーテらしく無い戦い方だとは思わなかった。 こちらの仲間が私のこの言葉を聞けば驚くかもしれないが、十二姉妹隊はプロフェッショナルの集団だ。 一緒に戦いたければ、こちらもプロフェッショナルに徹する他無い。 『良し。ところで我々は君たちを助けるべく前進を続けているが、君たちの正確な位置を知らない。 どうせ見れば一目瞭然だろうから必要無いとは思うが、念の為立て篭もっている建物を教えてくれ、どうぞ』 「ホテル・イーノスというホテルと、その隣のビルに……クソっ!」 爆発が起きて、不本意ながら言葉を切らざるを得なかった。私は埃塗れの床に身を伏せた。どうせもう汚れているから、気にしない。 無反動砲が壁に着弾して爆発、壁を吹き飛ばし周囲にいたコヨーテと姉妹兵数人に怪我を負わせたようだ。幾らかは重傷だろう。 死者がいないのだけが幸いだった。私は壁の穴から離れた。狙われるじゃないか。 『良く聞こえない、ホテル・イーノックか? どうぞ』 慌てて訂正する。勘違いされては困るのだ。 「違う、ホテル・イーノスだ! イーノス! E、N、O、S!」 『ホテル・イーノスだな、了解した。爆発があったようだが君も気をつけろよ。 救援が間近に迫ってるのに死ぬのはやりきれないからな。ではまた後で会おう、セプ隊小隊長のヘンドリクスだ。通信終わり』 * * * 銃剣の横薙ぎを顎を引いて避け、同型機の動きが止まった刹那の時間を狙い撃つ。 腰を狙ったつもりだったが、実際に着弾したのは足だった。敵の機動で外れたのだ。ジャニアリーは歯軋りした。 彼女たちの戦いは千日手になり掛けている。どちらも攻めきれず、半端なところで手を止める。 一歩前にジャニアリーが進めば、一歩後ろへ同型機が下がる。同型機が前に一歩進めば、ジャニアリーが一歩後ろに下がる。 互いの間合いに入れば勝敗が決するのに時間は必要無い。だからこそ、彼女たちは慎重にならざるを得なかった。 先程までは徒手空拳のみを格闘の手段としていたジャニアリーが、セプのM14と銃剣を手に入れた今となっては、 如何にこの模造品が策を弄したとしても、そう簡単に肉薄し打撃を与えることは出来ない。 確かにジャニアリーは銃剣術に不慣れであり、繰り出されるのは素人ならではの非効率的な攻撃だ。隙も沢山ある。 だが、幾度と無くそれを突いて反撃する内、このセプを模した形の敵はジャニアリーが隙を突いたくらいで倒れる相手ではないと知った。 彼女はあくまで対人用で、対アンドロイド用ではない。褐色の狂気を孕んだ十三人目の姉妹のように、火力で圧倒は出来ない。 その戦闘データも想定は人間で、ジャニアリーは人間ではなかった。人間の身体能力など軽く超越する、マルチアーノ十二姉妹なのだ。 セプの銃剣付M14を右手に持ったことでそれははっきりした。彼女の戦闘理念は弾幕による弾丸の壁の生成と、敵の撃破にある。 一発必中のセプとは正反対の戦い方だ。火器管制機器もそれに合わせてある。 よってセプの持つ高い正確性も、技巧も、複雑な軌道を描いて鋭く相手に突き刺さる銃剣の扱い方も無い。知らない。 ジャニアリーが持つ偽者に対抗する為の手段とは、M14を振るう右手にあるのは、ただの、そう、ただの、 単純極まりない、ただの強い力だった。剛力だった。 目を見張るような技も、正確さも、蛇の如く絡みつく軌道も持ち得ないジャニアリーだが、彼女の振るうM14に当たれば、 確実に打ち砕かれ破壊され例えアンドロイドと言えど十二姉妹程度の強度ならば致死の可能性すらある。 力故に軌道は見えず、力故に弱点を狙う技術は不必要であり、力故に技は通用しない。全てはただの力の為に。 しかしそれでも、完全にそれだけなら同型機の白い手はジャニアリーを殺す為に動いただろうし、 ほっそりとした足はずかずかと前に進んだだろう。目の前の障壁を打ち破らんと、前進は止まらなかっただろう。 戦いらしい戦いを始め、己か敵か、優れた者が生き残る、闘争と呼ばれる行為を全うするまで手を休めることは無かったろう。 軍服に身を包むこの紛い物がそうしないのは、他の訳があってのことだった。彼女のデータベースにはジャニアリーの性格が入っている。 直情的、思考は第一世代の中では浅く、直感で行動するタイプ。それがジャニアリーへの評価であり、 彼女との戦闘中に次の行動を考える為のパズル・ピースだった。少なくとも、前回の戦闘では。 だというのに、これはどういうことだろうか。彼女は軽い疑念を抱いていた。データは正しかった筈だ。 目前で今相対するこの金髪の女は、戦闘開始時に見せた怒りの発作以外、データベースと一切合致しないではないか。 直情径行のきらいなど見せない。鉄のように冷たく、雪夜の草原のように静かで、刃のように致命的。 十二姉妹より自分たちの方に近い雰囲気でもある……殺しの機械が身に纏う雰囲気、殺人人形の雰囲気、何も感じ取れない。 ほぼ無感情だ。こんなことは考えられなかった。何が一体彼女を変えたのだろうか? 同型機の冷徹な殺人者の頭では分からなかった。 分かるのはジャニアリーの雰囲気が違うこと、彼女が最早自分の顔を訳に攻撃を一ミリも躊躇しないということであり、 そして今彼女が攻めあぐねて千日手になっている理由とは、正にそれだったのだ。 一度は退こうかとも思った。が、逃げる背中にP90の5.7ミリ弾が降り注ぎ穴を作る光景を思い浮かべると、 そんな気は微塵も無くなった。結局、戦うしかないのだ。力と力をぶつけ合わせて、倒れた方が負け、死ぬ。 ここで決着をつけてしまわねばならない──二人は確信していた。逃走は不可能だ。相手を屠らなければ、この場を去ることは出来ない。 生きたければ戦い、殺し、勝たなければならぬ。勝つとは止めを刺すことだ。眉間ではなく目に狙いをつけ、引金を引き、首を刈り、 二度と動かぬ壊れた人形にしてしまうということだ。セプの模造品にはその意思があった。覚悟などする必要は無かった。 でも、この女はどうだ? 親友の姿を使う敵を殺し、名誉を取り戻す気にでもなっているのだろう、この女は? 覚悟があるのか? まさか。まさか、という奴だ。攻撃には躊躇せずとも、殺すことにはそうも行くまい。セプの顔に邪悪な笑みを浮かべる。 きっと最後の瞬間に後れを取る。真実の瞬間に、敗北者となって倒れることになる。その程度の覚悟に違いない。 攻めよう。M14を構える。ゆったりと保持された黒い力の象徴は、使い手の自信の表れでもある。 銃の振られる速さで言えば、彼女の方が上だったことを誰も否定は出来ない筈だ。ジャニアリーは後手に回った。 それでも、防御行動と反撃は非常に早かった。上からの斬撃を左から右に銃で弾き、引き戻しながらその勢いを使って顔面を殴りつける。 殴打に使われた銃床がオイルで汚れた。ジャニアリーが構え直そうとする銃を、セプと同じ左手が、セプと違う感触の殺意を持ち、掴む。 倒れそうな体をそれで引き止め、手に力を入れて彼女の懐に飛び込む。回避の前に、腹部へ左膝がめり込んだ。 身を大きく折ったその首筋に肘が落ちて来る。予期する余裕を持ち合わせていたジャニアリーは、ふいと避けて地を蹴り離れた。 * * * 近づく内に、抵抗はいよいよ強くなってきた。装甲車の姿もちらほら見える。私は対戦車榴弾を持っているだけ辺りの隊員に配給した。 さっきの経験から考えても撃破出来る筈だ。あれは痛恨のミスで、十二姉妹の一人としては情けない失態だったが、まあいい。 「お前たちは西から近づけ。俺はこいつと正面から攻撃して引きつける。六人共、感付かれるなよ」 「了解、そちらも気をつけてくれよ」 部下が死地へと赴いていく。私は見ているだけだ。それしか出来ない。 心が痛むが、これが仕事だ。やらねばならないことがある。やってはならないことがある。 トーチカの数も増える一方だ。あちらこちらから銃撃を受ける。マーチお姉様、ジューンお姉様の支援が無ければ被害は多かったろう。 幸い、彼女たちはこちらの通信を受けると真っ先に飛んできてくれたし、大抵はフェブラリーお姉様が私の言う前に連絡してくれた。 的確な援護もあって、オーガスト隊を中心とする混成隊は、包囲網を四十から四十五パーセント撃破している。後一息だ。 隣の兵が持っていた無線機に通信が入った。送受信機を取る。 『こちら燃料調達班隊長ユーリー、艦の落着を確認していると思いますが、敵の様子はどうなっていますか? どうぞ』 フェブお姉様に尋ねる。彼女は素早く調べ、結果を出してくれた。 「こちらオーガスト。敵の反応、艦内から離れているとは思えず……大丈夫だよ。どうぞ」 『それは良かった! これ以上敵が増えると、過労死しかねませんからね。では、到着を心待ちにしています。通信終わり』 送受信機を返し、溜め息を吐いた。彼らは待っている。心から求めている。我々は急がなくてはならないのに、もうちょっと掛かるとは。 出来ることと出来ないことを判別しなければいけないのは分かっていたが、私は数秒憂鬱な気分に浸った。 それから頭を振って振り飛ばし、職務に復帰する。私の仕事は重要だ。憂鬱な気分など無視するべきだ。 「オーガスト様!」 今度は肉声で連絡。百メートルほど向こうから兵が二人走ってくる。ジャニアリー隊の兵が一人、私の隊の兵が一人。 「装甲車三輌を発見しました、南西です!」 「案内して!」 装甲車三輌とは結構なことだ。一度に撃破すれば、かなりの被害を被らせることが出来る。 願わくば対空型もありますように。速射砲や通常砲の装甲車よりそちらの方が重要度が高い。それさえ潰せばヘリも出せる。 ヘリが出れば装甲車の捜索撃破も今よりもっと簡単になるし、お姉様たちに援護を頼んで時間を割いて貰うことも無くなる。 何よりトーチカへのロケットとミニガンは有効も有効、潰すには最上の手段だ。危険度も突入より低い。 早くも見飽きて来た瓦礫の山、それと敵の死体を幾つも踏み越えて、駆動音に近づく。 「あの倒壊しかけているビルの手前を左に曲がれば見えますが、気をつけて下さい。ご自分の職務を全うすることが最優先ですからね」 部下は心配してそう言う。子供扱いされているようでいい気分ではない。頬を膨らませるが、それが子供扱いの理由だと気付いて止めた。 ビルに背をつけて、確認する為に体を傾けようとして、冗談を言う。 「鏡、ある?」 ある訳が無「ハンス、お前持ってるんじゃないのか?」あるなら言って欲しかった。 ハンスとか言うジャニアリー隊の兵士が小さな手鏡を取り出す。それを握ってちょっぴり突き出す。 角度を変えて捜索。一、二、三。確かに三輌だ。対空型は──無い。残念だ。 詳しく調べると、どの車輌からも見えない接近ルートに気付いた。これは使えるな。 手柄を立てる気は無いが、十二姉妹隊の役に立つ気はある。私は対戦車榴弾を収めて手榴弾一つを持ち、兵士から拳銃を借りた。 ルートを説明する。三輌は非常に実戦的ではない並び方だ。倉庫に並べるように三輌共平行に並べている。 銃眼からの視界と合わせれば大丈夫だと思ったのだろうが、その並びだと人一人の接近には使えるくらいの細い死角通路があるのだ。 背の低い私ならもっと気付かれにくくなる。私が先頭になって、その死角を進んだ。 接近し、近くまで来る。砲塔は真っ直ぐ我ら十二姉妹隊、我々の背中を狙い撃つ気だったのか、横腹を撃つ気だったのか。 どちらにしろ、今から彼らのプランは破壊される。私は部下に体を押し上げて貰った。砲塔のカメラに映らぬようハッチに手を掛ける。 合図すると、二人も上がってきた。彼らは音を立てないように、別の死角を使って他二輌の装甲車の上部へと移動する。 ハッチに全員が手を掛けた。目を見る。二人は頷いた。これが成功すれば十二姉妹隊にはかなりのプラスだ。 手を振る。決行の合図。ハッチを開く。拳銃を下に向ける。引金を引き、黒い装甲服を破壊。仲間の仇に掛ける情けは無い。 十五秒で片がついた。三輌の内二輌は乗組員全員射殺、一輌は素早く投降したものの、ハンスが射殺してしまった。まあ、咎めはしない。 * * * クソったれめ。俺は銃口から立ち上る煙を見つめていた。その先には、血をどくどくと溢れさせて死んでいる敵兵がいる。 数を数えるまでもない。全員だ。掃射した装甲車の乗員たちは、折り重なって死んでいる。装甲服に穿たれた穴から、赤い液体。 オーガスト隊の兵は何と言うか、微妙な面持ちをしていた。彼の気持ちは分からないでもないが、俺は後悔していない。 車体を見ろ。このシャーシを見ろ。十二姉妹隊でも何処の隊でもそうだが、何号車かということをはっきりと書いてあるこの車体を。 俺のいた北部戦線に来た一輌だ。こいつらが俺を殺そうとしたのだと思うと、右人差し指は独りでに動いた。 オーガスト様は何も言わない。お咎めは無しのようで、それより手に入れた三輌をどうやって運用するかを考えているようだ。 だがまずは運ばなくてはならない。無線機で装甲車三輌を鹵獲したことを伝え、ナンバーも伝える。二号車、四号車、五号車だ。 死体を全て放り出し、運転席に座る。使い慣れているとは言わないが、ある程度の経験はある。 我々は大きな力を得たと言って良いだろう。装甲車三輌、しかも敵のものを手に入れたのだ。無事持ち帰られれば更にいいのだが。 燃料をチェックする。良し、当面は大丈夫のようだ。オーガスト隊の兵士が乗った二号車を先頭にして、 間にオーガスト様を挟み、我々は行動を開始する。誰かが勘違いして無反動砲を撃たないことを祈ろう。心から。 安全を期して、無線機で周囲の兵に呼び掛ける。確か、この辺りにはゴッドボルトがいたような気がするな。 「南西から来る装甲車三輌を撃つな。繰り返す、南西から来る装甲車隊を撃つな。 その装甲車隊は十二姉妹のものとなっている。我々は装甲車三輌を鹵獲した。マーキングナンバーは二、四、五。どうぞ」 右手で運転しながら、左手で無線を使う。返答は返って来たが、ゴッドボルトではなかった。 無線音声に雑音の混じりが多く、誰かを特定するには到らない。 『分かった、安全の為、数名の兵を派遣する。彼らが周りにいれば、発砲も無いだろう。どうぞ』 「頼むぞ。我々は乗組員確保の為に北東へと進んでいる。確保し次第、東部戦線へと向かう。通信終わり」 これで心配はいらないだろう。一仕事終えた気分だ。まだまだ残っていることは百も承知であるけれど。 数ブロック進むと、無線に停止要請が入った。周波数は味方のものだ。敵が勘違いして声を掛けたのではないらしい。 止まると、恐る恐るといった様子で一個分隊、十二人が辺りから現れた。見事な隠蔽技術だ。全く気付かなかった。 彼らはジューン隊の兵だそうで、小隊長のアレンが負傷して以降セプ隊小隊長ヘンドリクスの指揮下にいるそうだ。 すると、あの無線はヘンドリクスか。ちょっとした謎が解けてすっきりする。 十二人を三輌の傍に置いておくのは勿体無いので、彼らの内三人に砲手をやって貰うことにした。 それでも九人、仲間たちに味方だと教えるには十分な数だ。俺たちの奪い取った装甲車は、一輌が通常砲搭載型、二輌が速射砲型だった。 俺の搭乗している装甲車は速射砲型だったので一人の砲手がいれば良かった。通常砲型は自動装填装置があったが、 これが壊れ易くてその上右手を巻き込み易いと悪評だらけだったので実戦で使うことはまず無かった。今回も使うことは無いだろう。 その為、更に一人が弾薬装填手として装甲車内に入った。これで周囲の兵は八人。戦線への復帰を急ぐ。 警戒は疎かになるが、付いて来れる範囲でスピードを上げることにした。増援の兵たちは疲れているだろうに、 肉体を動かす余力を何処からか取り出して筋肉に与えているようだった。 訓練の賜物、と言って片付けてしまうのは難しくない。というか、色々な答えの中で、一番分かり易くて否定し難いだろう。 だけれども俺はそれだけではないと思う。彼らの肉体を動かすのは訓練の結果のみではなく、使命感ではないだろうか。 彼らも装甲車三輌が東部戦線に味方として存在すれば、どれほどの同志が助かるか、どれほどの力となるかを分かっている。 仲間の為だ。姉妹の為だ。仮に自分の体など崩れて消えてしまうとしても、その二つの為ならば彼らは力を振り絞れるのだ。 『誇り高く疲れを知らぬ精鋭集団』を筆頭とするお決まりの、中身の無い唾棄すべき賞賛の言葉は出なかった。溜め息一つだった。 心の中で礼を言い、心の中で謝り、走行を続ける。彼らは不平一つ言わず、横についてくる。 一度だけ装甲車の上部に乗って行けばどうかと申し出たが、八人のヒーローは狙撃の的になりかねない行為だとして辞退した。 俺は考えの浅はかさと否定出来ない疲れに情けなさを感じたが、それと対照的にこの仲間が世界で二番目に頼もしく思えてくるのだった。 * * * どうやら私は強かに壁と頭とをぶつけ合わせてしまったようだ。放送を聞いて営倉の隅に縮こまって対衝撃姿勢を取りはしたが、 揺れで弾き飛ばされたのだろう。頭に瘤が出来ていた。酷い見てくれだろうな、今の私は。 立ち上がろうとすると、何処かで爆発でも起こったのか、一時的に揺れが復活した。足がもつれて倒れる。 肩を床に叩きつけてしまった。凄く痛い。仰向けになって、揺れが収まるまで待つ。深呼吸を数回。痛みが薄れ出す。 慎重に、揺れへと備えつつも、立ち上がる。ドアに付けられた格子を掴み、顔を限界まで近づける。誰かいないか? さっきまでは監視の兵が一人いた。廊下を転がって頭を打ってしまったとか? 声を出す。ここから出して貰えることは無いだろうが、 出られる時に出られないのは困る。再三声を掛けるが、答えは返って来ない。せめて気絶していることを祈ろう。 逃げ出したのなら脱獄の手段を考える必要があるくらいだ。分からない以上、その方向で行くしかない。 アイデアは一切無いが、考えることで何かいい案が浮かぶかもしれない。時間もその方が早く過ぎて行く。 生憎とセクシーな映画女優のポスターやロックハンマーは無いし、十年も二十年も掛けていられない。 どうすればいいことやら。考え込んでいると、呻き声が聞こえた。やあ、おはよう。彼、私の看守は目を覚まして言った。 「今……今、何時なんだ? クソ、何だか頭が痛いぞ」 とっとと目を覚ますんだ、君! 私は声を出して、彼を呼んだ。私同様のしっかりしない足つきで、ドアに近寄って来る。 職務までは忘れなかったようで、ドアからは規定された距離を取っている。格子と格子の間に腕を突っ込んでも、届きはしない。 そんなことをする気は更々無いが、警戒心を抱いていることは分かった。艦長は私と大して親しくない者を注意深く選んだようである。 彼も頭に瘤をこしらえていた。見る分には滑稽でいいのだが。私には笑う余裕が無かったが、口の端をぴくりと動かすほどの力はあった。 「どうしたんです、大尉?」 看守の言葉に、脳を活性化させようと努める。私がしなければならないことは何だ。ここからの脱出だ。 その為にはペトルッツィ艦長の命令がいる。口頭でも何でもいい。書面が一番良いが、口頭でも悪くは無いのだ。 彼から命令を受け取るにはどうすることが必要か? 私の正しさを証明し、二人で共同してこの戦闘の収束を図らねばならない。 我々は負けている。艦が墜落する状況で勝っていると言う者がいるなら、そいつは味方じゃなく敵なのだ。 艦長がどうしようもない偏執狂気味の男であるならまだしも、まともなら、私を解放することを選ぶだろう。 頼んで、看守に私の言葉を伝えさせる。彼とは親しく無いだけで仲が悪いのではない。 彼は快く承諾し、頭を撫で擦りながら無線を使った。返答は返って来たので、私は安心することが出来た。 「はい。ボルツマン大尉が──ええ、分かっています。は? ああ、大丈夫です、瘤が出来ただけです。はい」 無線が差し出された。取る。コードが延びて看守の顔に当たり、彼は嫌な顔をしてそれを払った。 『ペトルッツィだ。謝罪でもするのか?』 いきなり落胆させる言葉。ギルドには“彼は自分の過ちを認めない傾向にある”と報告せざるを得まい。 生きて帰られるか帰られないかも判然としないのが問題だけれど、死亡すれば報告はしなくてもいい筈だ。規則にはどうあっただろう。 「まさか。私をここから出して下さい」 言ってしまってから、口を滑らせたと気付く。謝罪を求めている相手にこんなことを口走れば、交渉決裂は間違いない。 出る手段を一つ潰してしまった。そう思って次の手段を考える私に、ペトルッツィは意外なことを言った。 『出してはやる。やるが、今は駄目だ。待っててくれ』 彼の心変わりは奇妙だったが、出してくれるならそれに越したことは無い。 私はそれに喰いついて、いつ出してくれるのか、尋ねた。彼は答えた。 『ギルド裁判の時にな』 「くたばれ」 私は格子越しに無線を投げ返した。やはり彼は三流指揮官なのだな。 * * * 黒いM14の銃声は途切れること無く続く。二十発の7.62ミリ弾が吐き出されるまでは。 遮蔽物を盾に避け、素早い横移動で回避し、ジャニアリーは反撃の機会を窺う。 現状、攻められているのはジャニアリーだったが、彼女は敵の余裕が消えそうになっていることを悟っていた。 いつまでもしつこく攻めて来るのがその証拠だ。ここで手を引けば相手が反撃して来て、自分を殺すと思っているのだろう。 だから、多少無理な攻撃でも敢行する。せざるを得ないと考えている。それが有効な攻撃でなくとも。 対するジャニアリーは冷静だった。過ぎた怒りは心を冷却する。弾が当たっても、顔をしかめるだけだ。 ボルトの動きが止まる。黒いM14の力が途切れる。コンクリート塀に隠れたジャニアリーは踏み出して攻撃したかったが、 その時ではないと自制した。攻撃をする時は、彼女を殺す時だ。今やっても、意味は無いだろう。殺せる時まで待たなくてはならない。 冷静で、余裕があったからこその思考だった。敵は精神的なゆとりを失っているが、実力があることは違いない。 迂闊な攻撃は墓穴を掘ることにもなりかねない。よって、ジャニアリーの両手に握られた銃は沈黙を守っている。 自分一人で彼女を殺さなくては。失敗は出来ない。エイプリルに増援を求めれば、彼女は誰かを寄越すだろう。 しかしそれは、ジャニアリーにとって到底許容出来る行為ではなかった。この敵は私のものだ。私が殺さないといけない敵なのだ。 東部戦線で戦っている兵士のことを気遣ってとか、そういった建前などは考えもしなかった。 M14が息を吹き返し、塀を打ち崩しに掛かる。右に出るか、左に出るか。左右を見回す。 左に行けば今にも倒壊しそうなアパートやビルが並んでいる。右に行けば、船のドックがある。 どちらに行ってもいいが、攻める時のことを考えて行動しなければならない。左に行けばこちらも右手のライフルを振り回せなくなる。 右にしよう。何処かで見たことのあるようなドックに走る。追従する弾丸は数発を身に受けながらも振り切る。 足音が付いて来るのを確認しながら、施錠されたドアを蹴破って中に入った。コヨーテたちはいない。逃げたか、戦闘の中か。 いないことは幸いだ。敵対行動を取って来たら困る。船があるから何処かに隠れていることも有りうるけれど、 そうなった時はそうなった時だ。必要なら彼らも手に掛ける。軍服姿の偽者よりは簡単な相手だ。 彼女がドアをくぐった時、ジャニアリーはドック奥にある、階段に向かう通路の手前だった。振り返り、発砲する。 数発の5.7ミリ弾が付近に着弾し、跳ね回った。修理用器材やコンテナに身を隠してかわし、同型機はジャニアリーを追う。 通路に到達した頃には、ジャニアリーの姿は階段へと消えて行くところだった。足を止めず急ぐ。階段目指し駆ける。 逃走者はドック四階の作業用通路に逃げ込んだ。内壁に設置された棚のような通路で、転落防止の柵があるだけだ。 ところどころにはそれも無い。作業用なのだから致し方の無いことである。追跡者は階段を上がってすぐにでも追おうとしたが、 ジャニアリーがドアを閉めた上鍵を掛け、辺りの資材器材を粗方ドアの前に置いたのでほんの少し手間取った。一分ほどだ。 ドアを押し開けて、追跡者は戸惑う。この通路はぐるりと四方の壁を巡っており、 下に行きたければ今同型機のいる場所に来なければならないようになっている筈だった。彼女の見たところでは、そうだった。 それが、何処にも姿が無い。何処かに隠れたのかと思い、探す。銃をいつでも構えられるようにしながら、前に進んだ。 呆気なく答えは見つかった。非常用の梯子だ。無駄にした時間を考えて、降りている最中だろう。 辺りに転がったコンテナを飛び越えて、下を覗き込む。いない。体が止まった。一体何処に? 上から網が落ちて来た。それを払い除けるのに一瞬動けなくなる。網の次は、ジャニアリーのしなやかな足が彼女に当たった。 踵が非常用梯子の出っ張りに当たり、体勢を崩し転落する。直前、彼女の目に天井が映った。通気口だ。通気口からぶら下がって蹴った。 コンテナを使ってよじ登ったのに間違い無い。彼女は死を覚悟したが、激突するような感触と共に左手に何かが触った。 掴む。付け根から取れそうな衝撃だったが、死ぬよりはマシだ。M14から手を離し、右手を左手が掴まる何かに向かわせる。 彼女の武器はスリングで体に引っ掛かっているので、落としたりはしない。 高いところからジャニアリーがM14の狙いをつけているのが見えた。四階があんなに高いところに見えるということは、 あれだけの短い時間の間に随分な距離を落下したようだ。周囲を鉛弾が飛び回る。早くここから逃げなければ。 態勢を整えるだけの時が必要だ。その為に、安全に下へ降りなければ。彼女は船に掴まっていたので、艦橋に向かうことにした。 見てみると、掴まっているのは砲身だ。微妙に歪んでいた。次撃てば良くてジャムり、悪いと破裂して自分を殺すだろう。 両手に力を込める。渾身の力で自分自身を引き上げる。左足を砲身に乗せる。右足も。 足を滑らせないように注意して、艦橋を探す。いよいよ狙いが定まって来た。急がなくては。見つけた。 砲塔に登り、整備用の中と外を繋ぐハッチを見つける。鍵が掛かっていたが、蹴ると開いた。しっかりと掛けなかったのかもしれない。 中に入る。これで一先ず大丈夫だ。起動用のコードがあれば、艦に搭載された武装で戦えるのに。追跡者は残念に思った。 左肩から下に、自己診断プログラムを走らせる。チェック項目が埋まって行く。確認し終わり、深刻な損傷が無いことが判明した。 艦に入ったとなると、二階まで落ちたのだろう。かなり急いでも、ある程度は掛かる。迎え撃とう。 イニシアチブを失っていることに気付かない彼女は、弾倉を調べながらそう思った。音を聞き逃すまいと聴覚感度を上げる。 暫くして、ジャニアリーの走る音が響いて来た。入って来ると思いきや、彼女はそのまま下へと向かっていこうとする。 逃げる気だ! M14を引っ掴んで、彼女を再び追い始める。ジャニアリーは追跡に気付きスピードを増す。 巧みに発砲し、逃げる方向をコントロールしようと努めるが、彼女の目論みは成功しなかった。 ただ、ジャニアリーは外には逃げなかった。同型機にはその理由が分からなかったし、 何故非常用梯子を使わなかったのかという疑問も湧いていた。しかし、敵は逃げている。追うしかない。 逃げた先はトイレだった。今回も妨害のせいで数分遅れで辿り着いた彼女は、まず天井を確認した。通気口は一番奥にある。 周囲に弾丸をばら撒いた。が、何も起こらない。二度目は無いか。弾倉を換え、トイレを見る。 個室しかないタイプのトイレだった。小銭を入れなければ使用出来ないタイプでもあった。 果たして、ジャニアリーは小銭を持っていたのだろうか。彼女はそう考えて口を歪めた。 掃除用具入れを通過し、一番奥に来る。在不在を示すパネルは壊れていた。戻り、全てのそれを確認する。どのトイレのも壊れていた。 一つ一つ撃って確認しよう。最奥の個室を撃つ。反応無し。二番目、反応無し。三番目、無し。四番目、無し。五番目、無し。 六番目、無し。七番目、無し。八番目、無し。九番目、無し。最後のトイレ。前に立って、銃を構える。ここだろう。 弾倉を交換する。フルオートになっていることを確かめる。引金を引き絞る。弾切れ。ドアは穴だらけ。向こう側には影も無い。 ドアを蹴り開ける。便器が見えた。便器の上に付着した土くれが見えた。壁に付着した汚れが見えた。向かった先は──掃除用具入れ! 後ろから突き飛ばされて、顔面から壁にぶつかる。ふらりとした足を払われ、便器に頭を突っ込んでしまった。 首を上げようとしても、上から力づくで押さえ込んで来る。息をする必要は無いので死にはしないが、行動が取り難い。 追跡者のスリングが切られた。M14が落ちる。次いで腰の拳銃を奪おうとするジャニアリー。体勢を変えたので、抑える力が弱まった。 隙を逃さず、跳ね上げるようにして拘束から逃れる。銃を奪い取ることを諦めた逃亡者は首元を掴み、引いて反対側の壁に叩きつけた。 同型機の右肩に左手を押し付けて動きを止め、二度、三度と膝で腹部を蹴り上げる。肘が右側頭部に命中し、タイル張りの床に倒れる。 勢いをつけて横腹を蹴った。呻き声一つ上げず、追跡者は手を伸ばす。見つめるのは彼女の銃。 敵を痛めつけるのに夢中になったジャニアリーは気付かない。軽合金製のストックに手が届いた。掴む。引く。ジャニアリーが気付く。 遅かった。銃と同じく黒い銃剣が、彼女の腹部へと向かう。回避不可能な攻撃。咄嗟に銃口を払おうとしたが、間に合わない。 ジャニアリーは銃剣を突き刺される感触というものを、初めて味わった。大きな異物感。それに尽きる。 本来なら弾かれていただろう銃剣は、既に何十発もの弾を受けて疲弊していた彼女のボディを貫いたのだった。 偽者に、笑う余裕が戻ってくる。勝ちを感じた笑いだった。危ういところだったが、競り勝ったのだと思っている笑いだ。 突き刺された復讐者も笑みを浮かべた。敵の笑いが引き攣り、警戒の色を浮かべる。彼女も遅かった。 銃剣で刺すということは、銃を握っていなければ出来ない。銃剣を突き刺したのなら、銃剣と突き刺された者は繋がっている。 引き抜かない限り、突き刺された者と、銃剣と、突き刺した者は、繋がっている。 ジャニアリーは右手を銃から離して、敵のM14のバレルを握った。 赤い炎がP90の銃口から迸った。左腕部を蜂の巣にする。同型機は何とか銃剣を引き抜いて、出口の方向、右に転がった。 さっき撃ったトイレのドアのように穴だらけになった腕を庇いながら、走る。後から追って来るジャニアリーの姿は無い。 大きなダメージを負いながらも、紛い物は満足していた。死ぬ確率の高い争いに生き残ったのだと。 決着をつける気が、引導を渡す気が、つけられそうに、渡されそうになったことは敢えて意識しなかった。 * * * その頃になると、ベッドを離れてはならないという衛生兵の有り難いお言葉は殆ど無視されていた。重傷者を除いて、だ。 最初に無視し始めたのはとあるマーチ隊の負傷兵で、彼は自分の装甲服の無線機で戦闘中の友軍が発する無線連絡を傍受していた。 漏れてくる音声を聞いた仲間がベッドを離れて彼の近くに行き、無視の連鎖が始まった。 この臨時救護所の兵は十数分としない間に、全員無線機を持つ者の近くに集まった。主にマーチ隊、エイプリル隊、メイ隊の兵の周りに。 『左、もっと左だ、この馬鹿! 俺たちを殺す気か!』 『座標、A-B-D-4-5-7。マーチ様、お願いします』 『ジューン様、その区域の掃討は終了しました。援護、感謝します』 人気のある無線の周波数は、やはりマーチやジューンたち十二姉妹との連絡用の周波数だった。 マーチとフェブの言い争いは特に人気で、諍いの合間に敵の撃破報告が入ると歓声が上がる。 『マーチ、そっちは敵勢力圏内ですわよ!』 『知ってる……敵兵十五名排除』 『確認。知っているなら戻ったらどうですの!』 どっちかに集中すればいいのに、とシグリッドは聞いていて思った。彼女らの仲の良さは隊全体でも一、二を争うだろう。 対抗出来るのはジャニアリー・セプ組やエイプリル・メイ組だろうが、セプは永遠に失われてしまった。 ジューン・ジュライ組も中々だろうが、どうだろう。下らないことを考える。安全地帯にいる者の特権だ。 そう言えば、そのジュライは何処に行ったのだろうか? シグリッドは随分長いこと彼女を見ていなかった。 前線で戦闘中なら顔は見ないまでも無線で声を聞くことはあるだろうし、それが無くとも他の兵士の話に出てくるだろう。 艦で指揮を執っているのかもしれないと思ったが、それならジャニアリーがさっきまで指揮を執っていたというのはおかしい。 何をしているんだろう、彼女は? ドアが開き、衛生兵が入って来て、またか、という顔をした。 「どうしたんだ?」 「どの救護所でも皆が無線機にかじりついてるんだ。今のあんたらみたいにな。包帯、尿瓶は必要無いか? 麻酔は? 睡眠薬は?」 兵士の一人が無線機から顔を上げて、冗談を言った。 「モルヒネをくれよ、無線聞いてると心がやたら痛む」 「そいつは御禁制の品だな、ヘイウッド。後で隊長に報告しとくぞ」 笑う。シグリッドも笑ったが、脇腹に受けた銃創が痛んだので顔を歪めた。衛生兵が見咎めて、ベッドに戻そうとする。 それを押し退けながら、彼は一つ尋ねた。ジュライのことだった。 「ジュライ様はどうしたんだ? 影も形も見えないし、声だって聞いてないぞ」 衛生兵はそれまでの笑い顔を急に変えた。口を真一文字に結んで強張った表情になり、 小さい声で機械のように痛むならベッドに戻れよと勧告すると、そそくさと出て行った。 無線を聞くのを中断し、全員がそちらの方を見る。ヘイウッドが言った。 「ありゃ、怒ってるか聞かれたくないことを聞かれたかどっちかだな。何て言ったんだ?」 「いや、大したことは言ってないんだが。ジュライ様はどうしたのかって聞いたんだ」 「なるほど確かに大したことじゃないな。後で別の奴にも聞いて──おっと、誰か来たぞ。聞いたらどうだ」 シグリッドは聞こうとして通路の方を向き、入って来た相手を見てその考えを捨て、慌てて敬礼した。 無線機の周囲の兵も、慌しく姿勢を正し、敬礼する。来訪者は軽く手を振って、楽にしろと命じた。 「どうなさったんですか、メイ様?」 銀髪を揺らしながら彼女は答える。曰く、負傷兵の見舞いだそうだ。その言葉を聞いたヴィンスは、 こんなに元気な負傷兵は今すぐ復帰させるべきだと思った。彼は生理的欲求との戦闘を終えて疲弊していたが、 無線機にかじりついて持ち主が苦情を申し立てても離さないほど戦意を溢れさせている。 頭への銃弾が彼を変えてしまったのだと衛生兵が言っていたのを、フレデリックは思い出した。 メイは救護所の奥でベッドに横たわっている兵の元に向かった。 彼は両手両足を撃たれて、その上手榴弾の破片が体中に突き刺さっていた。死ななくて済んだのが驚きの傷だった。 手足は一切動かせないように固定されていて、軽傷の兵が彼の望みを果たしていた。 衛生兵を呼び、用を足させ、食事をさせ、薬を飲ませる。お調子者の彼は楽なもんだと笑ったが、周りの兵は彼を哀れんだ。 あれじゃ、反抗が始まってもここでお休みしてなくちゃならない。可哀想な男だ。こんなところで寝てなくちゃならないとは。 「申し訳ありません、メイ様、申し訳ありません。敬礼出来なくて……」 彼は泣きそうな顔でそう言った。負傷で気が高まっているのだろう。 メイは彼の言葉を抑えて、良くやったと褒め、逆に敬礼した。彼は泣き出してしまった。優しく頭を撫で付ける白い手。 彼女はそれから十分ほどこの救護所に留まって、次の救護所に向かった。彼女は偉大な指揮官だと、シグリッドたち負傷兵は思った。 * * * 遂に我らが友がやって来た。私はそれを見ることが出来た幸運なコヨーテの内の一人だった。それは感動的な光景だった。 装甲服を着ない、我々と同じ生身の格好で、整然と走って来る姿。後ろからは装甲車が三輌。 何人かが間違えそうになったが、走って来る八名の仲間たちが大声で発砲しようとする者を止めた。 彼らは装甲車を敵の無反動砲を警戒してビルとホテルから一時的に離した場所に停め、駆け足で十五人がホテルに入って来る。 「私たちは先遣隊で、本隊は後から来るの……オクトが指揮中よ」 オーガストだと名乗った少女は、そう言って崩れた敬礼をした。私は十二姉妹隊の者では無かったが、釣られて敬礼を返す。 これがマルチアーノ十二姉妹の一人、オーガストか。私も名前と容姿くらいは知っていたが、生で見るのは初めてだ。 それも、こんなに近くで。彼女たちと戦ったコヨーテで無事に帰った者は少ないので当然といえば当然だろうが、 まさか私の目の前で立って部下と話しているこの少女が、銀河一の殺し屋だとは。先に知っていなければ、誰もそうは思わないだろう。 ホテルの入り口からまた誰かが入って来る。ユーリーだ。彼は忙しなくビルに行って撃ったり指揮をしたり、 それが終わればホテルに戻ってこちらのギルド兵の指揮を執ったりと頑張っていた。彼は挨拶を省いて地図を取り出し、話を始めた。 「兵力はあなたと装甲車三輌に、乗組員を含む十四名の兵ですね?」 彼の差し出した地図を受け取って、何処かを指差しながら彼女は答える。 「そうよ。私の考えでは──」 いつまでも見ていたって意味無い。この可愛らしいお嬢さんを見ていたい気持ちはあるが、 それなら後でだってたっぷり見られるだろう。私は目を外した。戦闘が終わったらすぐクーロンから出て行くのでもあるまい。 銃を構えて、窓からいつの間にか近づいていた敵兵三名を撃つ。一人は倒れた。二人が走って突っ込んで来る。撃とうとした。 ボルトが半分下がって止まる。装填不良? こんな時に! 私は拳銃を抜いた。 強装弾を装填したもので、負傷した十二姉妹兵から借りた拳銃だ。 発砲する。一発、二発、三発、四発。一人が肩に被弾して、もんどりうって倒れた。そこに三発撃ち込む。弾切れ。 最後の一人はもうすぐそこまで近寄っている。弾倉を、と思って貰っていないことに気付いた。敵兵を見る。 銃には銃剣が付けられている。格闘を躊躇ったその寸刻が、侵入を許した。彼の銃剣は一直線にオーガストを狙う。 ユーリーたちが銃に手を掛けるよりも速く、銃剣が彼女の細い喉へと突き出された。 正直に告白しよう。私は、銃剣が白い喉を貫き通すと思っていた。幾ら何でもこれは防げないと思っていた。 甘かったのだ。オーガストは着剣ラグの辺りを右手でぶん殴った。彼は右に銃を逸らされ、何も無い部屋の片隅に突っ込んで行った。 うずくまるようにして倒れた体を、近くの兵たち五、六人が銃で激しく殴打する。動かなくなった後にも、ユーリーが拳銃を撃ち込んだ。 ここも比較的安全ではなくなりつつあるということだ。今のは私のせいでもあるが、それにしても誰も撃たなかったのはおかしい。 コヨーテたちは残念ながら高度な訓練を受けた兵士ではない。 十二姉妹やその部下が戦闘しか出来ない奴らだと言いたい訳ではないが、疲れを知らぬ戦闘機械でもない。 集中力は途切れている。途切れかけているのじゃあなく、途切れている。そりゃもう、完全に。 一部の奴らはそれでも銃を撃ってるし、その中の更に一部の者は微少な集中力を維持しているが、そんなものは数には数えられない。 早く本隊が到着しないと、我々は押し潰されてしまう。装甲車やオーガストのカリスマで何とか戦意を上げられればいいが。 「三輌を歩兵無しで集中運用するのは危険過ぎませんか。 潰されれば士気も下がるし、随伴歩兵と共に三方向に派遣した方がいいのでは?」 「それをすると無線で相手を騙して掻き乱せなくなっちゃうでしょ? 集中運用しないと」 「では、そのように兵に通達します。すぐにやりますか?」 背後での会話だったので分からなかったが、彼女は頷いたらしかった。嬉しそうな声で、彼は言った。 「了解!」 * * * 私が思うに、今日は特別格別ツイているのだ。でなければ、こうも幸運が繰り返されることは無い。 今次の戦いは最大の満足が得られるだろうとの予感に、舌なめずりをする。 バレットを握る右手に、力が篭った。相棒は危険なので遠くに姿を隠させてある。 この敵は、平気で彼女を先に殺しに掛かって来るタイプだ。相棒に死なれたら、誰が私の重い銃を持つ。彼女がいないと私は大いに困る。 よって嫌々ながらも弾倉をポケットや入るところにありったけ入れた。通常弾に徹甲弾、焼夷弾、焼夷徹甲弾と、沢山の種類がある。 どうせ十二姉妹のボディなら通常弾で破壊出来るが、いつ思わぬ邪魔が入るか分からない。 マルチアーノ艦に主力戦車が搭載されているとは聞かないが、コヨーテ共が何を持っているか。 時々奴らは凄いものを持ち出して来るから困る。MBT二輌三輌出して来たって不思議じゃあないことだ。 銃を向ける。避ける気が無いのかと思わせるほどに、体は動かない。焦りも何も無い。私のことを脅威だと感じていない。敵とも。 これだ。これなのだ。これこそが、私を唯一殺せるものだ。脅威だと思わないということが、私を殺す為に必要なものなのだ。 それがあったって、殺されはしないが。 「ジュライ、お姉様ですわね」 細い目は開かれもしない。口は閉ざされたままだ。これはどう考えても、私を斬って捨てる気だ。一刀で。 私と彼女が出会ったのは、私がジャニアリーお姉様と無口女の放つ銃弾と負け確定の追いかけっこを繰り広げている最中だった。 その時、私はいきなり殺されるところだった。気付くのが遅ければ、私は目を貫かれて、その場所でくたりと倒れていたろう。 「ジュライお姉様ですのね、あなたが」 分かり切ったことを繰り返す。部下たちの報告にも何処にも、彼女のことだけがぽっかり抜け落ちていた。 だから会えるとは思わなかったのだ。それだというのに今、二人は出会えた。主よ、奇跡です。私は神を信じないけど。 噛み締めるようにまた、同じ言葉を発する。彼女の刀に手が掛かった。早速やる気だ。もう少し話していたかったのに。 いや、会話になっていないから話とは言えないかもしれない。その場合、話をしたかったのにの方が正しいだろう。 彼女は一歩踏み出した。私も一歩前に出た。初めて、ジュライお姉様の表情に変化が出た。感心するような雰囲気の顔になっていた。 いい気分だ、尊敬する相手に感心されるのは。認められるのも程遠くはない。私が彼女の首を刈る時も、そう先ではない。 故に彼女との戦いは気をつけなければならない。結果を急くことは失敗に繋がる。 攻守進退についても、諦めるべきことは諦め、追い縋らねばならぬ時には追い縋り、臨機応変に対処することが重要だ。 それに、この戦闘では防御は即ち回避しか有り得ない。体に当たっても傷つくことは無いかもしれないが、 絶対発生した隙に付け込んで次の一撃、その次の一撃がやって来る。それらが一回も目を貫かないとは思わない。 銃で防ぐと、高確率で銃自体を叩き斬られることは疑わしくないことだ。ジュライお姉様ならやる。 そうなれば私が勝つのが面倒になる。不可能ではないが、面倒になるのは嫌だ。避けたい。 ところで、戦闘開始のゴングは何が鳴らしたのか、私には分からなかった。が、私が聞き逃しただけで鳴ったらしい。 ジュライお姉様は最低限の動きで射線から外れると、一歩で間合いに踏み込み刀を抜いた。白刃が日光を反射して光る。私に迫る。首に。 私は体と首を左に倒した。すぐ上を通る刀。銃を向けて撃つ。正確な照準はしていられない。距離を詰めれば相手の領域だ。 刀剣での格闘戦に特化した敵を相手に、どうして格闘戦で勝とうなどと思うだろうか。 十二姉妹ではないなら話は別だが、姉妹屈指の格闘戦特化型との戦闘で、得意でない格闘戦で彼女に勝とうとは決して思えない。 自殺行為だ。つまらぬ妹に成り下がる。妹として認められさえしないだろう。悲しみの極みだ、それは。 私は結局、お姉様たちに認めて欲しいのだから。妹だと、私は十三人目の姉妹に相応しい者なのだと認めて欲しいのだ。 ジュライお姉様は意地でも後退しないつもりだ。すれすれのところで避けながら、私に死を手渡そうとする。 けれど私も伊達や酔狂で姉妹となろうとしているのではない。姉妹ならば、それを突き返せなければ。 刺突を皮一枚斬られそうになりながら何とかかわしきり、左手で腹部を殴ろうとする。彼女の左手が妨害した。 その時のお姉様の顔は、私は死んでも忘れないだろう。記憶中枢を新品に変えられたって忘れるものか。 彼女は目を細く細く僅かに開いていた。この私を、戦える敵として認めてくれたのだ。私は心の底から喜びが込み上げて来るのを感じた。 今日は、本当にツイてる日だ。 * * * 白煙。飛来する弾丸、砲弾。回避。爆発。振動。衝撃。眉を上げる。銃を向ける。発砲。着弾。舞う粉塵。 ここ十数分のマーチ付近を短く表現するなら、大体がこんな感じだった。単調でもあり、複雑でもある。 古参兵にとってなら、戦闘とは死に到るほどの単調さだ。新兵にとっては、死に到るほどの複雑さ。理解出来ない戦場の生物めいた動き。 それでも、繰り返す内に人は慣れる。新兵は古参になり、古参は殆どのケースで戦死するか除隊している頃には。 マーチがアンドロイドであることには相違ないが、彼女も戦場には慣れ切っていた。遊び場くらいの認識だ。 轟音。上空をジューンのギルドスカイが通る。対空砲火は追いつかない。彼女は何度補給に戻っただろう? マーチは数えていなかった。 数えていても、途中から忘れていただろう。何せ彼女は単調な作業の中に面白さを見つけ出すことが出来た。 血飛沫が建造物の壁に掛かっている。道の真ん中に誰かの腸が落ちている。一体何処を撃たれたものやら、股座に手をやっている死体。 彼女の見たところもう敵はこの辺りにはいなかったので、銃を下ろしてフェブの寄越す次の指示を待っていた。 ──お疲れ様。次の座標を送信しますわ。 受信して確かめると、それは合流を果たした燃料調達班の横腹だった。どうやら、散り散りになった敵が逆襲を目論んでいるようだ。 フェブに気付かれてしまった以上、燃料調達班にも報告されているだろう。彼らの作戦が失敗に確定した瞬間だった。 補助脚を外し、移動を開始する。途中で僅かな抵抗に遭遇したものの、気にするほどではなかった。 敵の横を突くつもりが自分の横腹を突かれた者の気持ちは、如何なるものだろうか。マーチは彼らの顔が見られないのが残念だった。 四十六名余りの敵兵を屠り、発砲を止める。大漁だ。彼女が参戦した最初の内は敵も戸惑い、反応が鈍かったが、 今では監視兵でもいるのかもしれない、彼女が来ると、そこには既に敵兵は誰もいないのだ。 フェブの広域レーダーは正確ではあるが、一人二人の反応まで拾ってくれない。単独で隠れている敵兵士を探すのは難しい。 良くて十数人を殺せた。悪いと、二人や三人、時には一人や誰も殺せないこともある。地道に探して潰して回るしかない。 どうせ、救援隊の本隊が到着すれば逃げ回っても無駄になる。マーチは墜落して以来沈黙し続ける敵艦の方角に目をやった。 最後はあそこに突入し、制圧することになるだろう。その時が一番危険だ。ギルド兵に死者が多数出る可能性が高い。 出来ればこれ以上死なせたくは無いのだけれど、どだい出来ない相談というものだ。撃たれれば人は死ぬ。刺されても死ぬ。 ──マーチ、聞いてますの? 敵が一箇所に集まりつつありますわ。装甲車も二輌確認しています。一度あなたも退きなさい。 彼女が言うには、マーチの戦闘続行可能時間は猶予が無いらしい。時間をオーバーすれば、動きは鈍る。 人間で言えば集中力が切れているような状態だ。思考能力にも影響が出る。分かり易く、そして別の表現を使えば、疲れているのだ。 が、マーチは自分の経験と腕、それに残り時間を考え、追撃を掛けることにした。フェブは座標を送信しないと言って脅したが、 ちっとも堪えない様子の彼女に負けて、装甲車や敵兵の位置を伝えた。敵兵数は六百八十名。かなり消耗している。 ここでもっと減らせば、後から楽になるのだ。ちょっとした努力を惜しんではならない。 建物と建物の間を抜けて、公園らしい場所の上を通過。商店街に出る。風に舞う食料品。一つリンゴを掴み取り、かじる。 甘くて美味しかった。芯だけ残して果肉を全て体内に収めると、適当に投げ捨てる。 敵との距離はあっと言う間に埋まっていく。音で気付いているのだろう、敵は移動スピードを全力疾走に近いところまで上げるが、 最高時速八十キロのマルスにはとても勝てない。とうとう背後に現れた黒い機体を、振り向いて瞳に捉えてしまった。 潰れる瞳。センチメートルに直すと小さな小さな直径の鉛弾だが、人を殺すには必要以上の威力がある。 瞳どころか、顔全体を潰して弾丸は貫通、隣の兵を傷つけた。それが、到るところで発生している。隊はパニックになった。 調子付いてマーチは、真正面に立ち塞がって足を止める。補助脚が地面に突き刺さり、姿勢が安定する。 三十ミリの機関砲の稼動状態は上々だった。ミニミの5.56ミリでは貫通出来ない遮蔽物も、三十ミリなら容易く貫く。 奇声を上げながら無反動砲を撃とうとする男がいた。慌てず騒がず、三十ミリの砲身を向ける。地面を舐める銃弾。 嫌な予感がしたが、気のせいだった。銃弾が途切れるようなことは無く、男は胸から下を失った。 右に装甲車の速射砲が着弾。動きながらで照準が定まらなかったのに違いない。マーチは素早く補助脚を地面から抜き、向きを変えた。 置き土産にS-Meinを放出する。爆発で粉塵が巻き上がり、照準を邪魔する。衝撃、揺れもだ。 悠々とそこから離れ、逃げた兵を追う。平行に移動しながら、ミニミで建物と建物の間を狙って撃つ。 曲道で同じ方向に曲がる。念の為S-Meinを放出し、それから固定して射撃しようと思ったが、S-Meinは弾切れだった。 どうやら、余り多用されることは想定の内に入っていなかったと見える。マーチはマルスの改善点の一つに付け加えた。 後方防御が疎かになる以上、ここで固定は出来ない。装甲車が後ろに近づいているのをフェブが教えてくれればいいが、 彼女だってその仕事しかしていないのではなく、前進したり、戦闘中などにはレーダーなど見ていられない。 マーチは面倒だったが、安全な位置を探すことにした。装甲車の接近が感知出来、敵兵を狙い撃てる場所……そう簡単には見つからない。 手っ取り早いのは敵兵の真正面に向かうことだった。後方は敵艦だ。けれど高威力の兵器は使えないだろう。味方まで巻き込む。 急加速して敵の前に出ると、地面に補助脚を突き刺した。回転を抑制し、機関砲を向ける。敵の足が止まった。 これで終わりだと、発射する。敵を穿ち、壁を穿ち、地面を穿つ銃弾。ちらっと左に目をやる。抜け出した兵が無反動砲を構えている。 ミニミで撃った。天に向かって発射される無反動砲。落ちて来るのが自分の頭の上でなければいいのだけれども。 装甲車が今頃到着した。敵兵の姿は半分近くに減っている。無反動砲を構えだすのが数人。誰かに撃たれるだろう。 その時、固定していては絶対に当たってしまう。マーチは逃げた方がいいと判断した。右の補助脚を抜き、回転。発射。予想より早い! ぎりぎりの射角で、三十ミリが使えた。向ける。発砲。五、六発が砲弾の近くを通った。それまでだった。マーチは弾切れを知った。 着弾。回転によりマーチに直撃することは無かったが、右の機関砲の付け根に当たった。抗い難い力に押されて、マルスは横転する。 マーチは頭の中が掻き回される感触を知った。二度と忘れることは無いだろう。酷いものだった。 着弾か衝撃で何処かがやられたのか神経接続が途切れ、マルスが力を失う。 十数秒して落ち着いてから、マーチは出て行こうとする。ここから離脱しなければならない。フェブの声が激しいが、うるさいだけだ。 幾らなんでも、こんなところで死ぬような自分ではない。ミニミは両手がしっかり握っていた。弾薬もある。 拳銃だって、確かな信頼のある拳銃、ブローニングHPだ。一本の弾倉に十三発の弾薬が入る。弾倉は六つある。 八掛ける十三で、百四発。それに数える気の湧かないくらい多いミニミの弾薬。弾に関して心配は無い。 心配は無いが、それ以外のことで問題と心配はあった。 心配とはいつ味方がここまで辿り着くかで、問題とは体が挟まれて動けないことだった。 がっちりと挟まれてしまい、パワー型のマーチでも抜け出ることは難しい。出来ないことも無いだろうが、時間が掛かる。 そして見れば、敵兵は近い。近づかれれば手榴弾を投げられて死ぬ。マーチはそこに思いが到った時から発砲を始めた。 息巻いていた兵たちが倒れ、這いつくばり、何かに隠れる。この状態を保てれば……そう思ったが、甘くは無かった。 装甲車が近づいて来る。マーチは戦死を覚悟した。二輌の装甲車だ。一輌は対空型。ずっと隠れていた奴だ。 ──マーチ、脱出出来そう? やけに冷静なフェブの声。無理と一言で答える。フェブは長く──それでも三十秒ほど──沈黙していたが、やがて言った。 ──そう、残念ね。 諦めたか。私のことを諦めたか。そう思ったが、マーチには彼女を責める気は一切無かった。 それよりも、自分の行動を責める気持ちの方が強かった。独断で行動した挙句これだ。 装甲車が近づいて来る。敵兵に対して射撃を続ける。これで一人二人でも減れば、と思ってだった。 思ったように当たらず、苛々する。目前と言っていい距離で、装甲車は止まった。砲塔を動かし始める。ああ、終わりだ。 無音の世界にマーチはいた。白黒の世界でもあった。大昔のサイレント・ムービーみたいだ。違いは白黒でも鮮明であることだけで。 目の前で爆発が起きた。 * * * 臨時救護室の空気は最悪だった。マーチとフェブのやり取りを全て聞いてしまったからだ。 シグリッドも、フレデリックも、ヴィンスも、ヘイウッドも、いても立ってもいられなかった。 真っ先にフレデリックが無線機から離れる。何をするかは分からなかったが、シグリッドもそれに付いていくことにした。 この状況ですることと言えば、マーチ様を助ける為の行動に決まっているじゃないか。そういう考えでだった。 その後ろに先に名の上がった二人も並ぶ。四人か。何が出来るだろう? 彼らは話し合い、決定された。 ヘリを使おう。対空型が不安だったが、今はそれを理由に引っ込んでいるべきではない。ロケットで見つかる前に撃破してしまえばいい。 衛生兵が巡回して来るまで後三十分ほどある。三十分あれば、燃料を注入し、ロケットを積み込み、器材を積み込むことは出来る。 急げば全てが手に入る。マーチ様の命も、欲しい装備もだ。彼らは手分けして行動することにした。 ヘイウッドとヴィンスがヘリに燃料を入れ、ロケットを積み込む。後の二人は器材を持って来る。物資集積室のコンテナにある筈だ。 十分で済ませようぜと言って彼らは別れたが、シグリッドは内心で間に合わないのではないかと思っていた。 十五分後に艦を出られたとして、それからマーチ様の救援に向かって間に合うのか? 通信では、とても間に合いそうにないようだった。 到着した時には、彼女の体は冷たくなっていて、いつも小馬鹿にした調子で喋る口も、小さくて白く可愛らしい手も、細い魅力的な腰も、 何もかもが破壊され尽くして、蹂躙された後なのではないだろうか。それは想像するだけで怖気が走り、反吐が出る光景だ。 まさか、そんなことがあっていい筈が無い。マーチ様のことだ、きっと機転を利かせるとか、そういうので切り抜ける。 彼女のマルスだって、まだオフラインになっては無い筈だ。通信にはそんな言葉、一言も出なかったじゃないか。 三十ミリ機関砲で装甲車を撃ち抜けるかどうか分からないが、砲身に当てれば砲は使えなくなる。 ただの人間には無理でも、マルチアーノ十二姉妹のマーチ様なら出来る芸当だ。シグリッドは言葉を並べ立てるが、それでも拭えない。 物資集積室に入る。またも二手に別れ暫く探す。 「おい、そっちに無いか? こっちのコンテナじゃなかったみたいだ」 探していたフレデリックが言った。シグリッドは目と手を動かすが、動揺と不安が彼の心中に広がっているのは一目瞭然だった。 声を掛けた戦友もそれは分かったが、何も言わない。何を言えばいいのか、分からなかった。 余計なことを言って悪化させるくらいなら、何も言わない方がいいだろう。 「これか? 俺はこれだと思うんだが、見てくれ」 右手が震えていたので、左手で渡す。そっちの方は比較的震えが無かった。フレデリックはちらりと彼を見たが、目を下ろす。 「これだな。予想より速く見つかって良かった。まだ六分しか経ってないぞ、急ごう」 カートに乗せる。部屋の外に出し、走ろうとした時、後ろから声。 「おい、どうしたんだ? 負傷してるじゃないか」 振り返りなんてしない。二人は駆け足でそこから逃げ出した。待て、と声を上げて追って来る。 道中、追跡者の声で寄って来た別の衛生兵にも見つかった。前にいた彼を跳ね飛ばして進む。 格納庫に逃げ込み、ロックした。これで艦を出るまでの時間は稼げるだろう。 ヘリに積み込もうとしてハッチを開くと、さっき見た『偉大な指揮官』がいた。 彼女は気さくな感じの声で、右手を挙げて言った。 「よう」 バレた! 次飛んで来るのが鉄拳かもしれないと思って、二人は身を退く。何も飛んで来ない。 きょとんとしている彼女に、どうしてここにいるのかを恐る恐る聞いた。 メイは相変わらず何が彼ら二人に身を退かせたのか分からないようだったが、答えてくれた。 「いや、なんか音がするから覗いてみたら、救出に行くらしいからさ。手伝ってたんだ」 それなら歓迎だ。十二姉妹が一人いれば、戦闘に関して心配は無い。 「エイプリル様に許可を取って頂けますか?」 フレデリックとシグリッドは器材を積み込んでから尋ねた。ハッチを閉めて、メイは首を横に振る。 ローターが回り始めた。そろそろだろう。そろそろ、行動が始まるのだ。 「何故です?」 「あいつは多分、許可しない。姉妹と兵、どっちも大切にする奴だからな。だがアタシは、平等主義者じゃないんだ。だから行ける」 「ロケットの積載、燃料注入、諸チェック終了、行くぞ、お前ら!」 ヘイウッドが操縦桿を握って言ったが、答える直前に機体が浮き上がったので、シグリッドは舌を噛んでしまった。 * * * 私の目の前で爆発が起きた。起きたのは確かだ。間違い無く、起きたことは起きた。 但し、爆発したのは私ではなく、すぐ前の装甲車で、爆発させたのはジューンのギルドスカイだったのだが。 ──どうやら間に合ったか……支援する! 対空型装甲車が出て来てミサイルを発射するが、ギルドスカイの速度を追尾し切れず何処かに飛んで行った。 敵の作り出す対空砲火をバレルロールと微妙な機動で避けながら彼女は接近する。ミサイル発射。 対空型の底部付近に着弾し、引っ繰り返った。燃料に火がついて燃え出す。私の世界が色を取り戻した。 両手の銃が目を覚まし、最後の時を告げるけたたましい騒音を発しだす。装甲服の敵兵たちは逃げ惑い、幾らかは近くの建物に入る。 彼らはジューンの操るギルドスカイの餌食になった。正しい位置にミサイルの一発を当てれば、建造物は倒壊するのだ。 ──ミサイルが切れた。機銃での援護に移行する。フェブ、救援は? ジューンが多数の回線を開いて話を始めた。あのいけ好かない女は、ジューンが助けに来ようとしていることを知っていたのだろう。 私は帰ったら酷い目にあわせてやることに決めた。よって、まずは帰らなければならない。 ──東部戦線救援隊から十五人を救助に回しますわ。道中敵の抵抗が予想される為、到着予定時刻は二十五分から三十分後です。 上と下の二人で溜め息を吐いた。三十分か。ギルドスカイの弾が持つかどうか。敵が一気に押し寄せてくれば、止められるものではない。 三十分、持たせられるかどうか不安だ。もしかすると、今度ばかりはどうしようもないかもしれない。 と、メイから連絡が入った。艦にいる筈だが、どうかしたのだろうか? ジューンたちにも聞こえるように回線を繋ぐ。 ──マーチ、今救助に向かってる。付近の装甲車はどうなっている? 艦からも救助が派遣されたらしい。私は二輌ともジューンが撃破したことを伝えた。彼女は口笛を吹いた。 彼女が言うには、艦よりの救援隊はヘリで移動中だそうだ。それなら三十分も掛からない。ロケットを積んだか聞くと、肯定の返事。 ますますいい具合にことが運べそうだ。敵の立て篭もる建造物を全て破壊して帰るのもいい。 散開し、近寄ろうとして来る敵。散開でミニミの射撃からは逃れられても、上空から飛来する死は避けられない。 ジューンが抑えていてくれる間に、私も出来ることをしておこう。脱出が予想通りに進むとは限らない。 渾身の力でマルスを持ち上げようとするが、無理だ。力を掛けづらい体勢の為、持ち上げられない。 今までその余裕が無かったので見ていなかったが、何処が何処を挟んでいるのか見てみることにする。 見えづらかったが何とか見て取れた。マルスの尻部分、弾薬やバッテリーなどの入った部分が、私の腰から下を圧迫しているのだ。 私はうつ伏せに地面へと寝転ぶ形になって倒れている。この姿勢で良かった。仰向けだと銃を撃つ時に面倒だ。 弾薬を撃ち尽くした癖に、アーセナルはやたら重かった。二度試した後では、持ち上げる気力すら湧かない。 燃え続ける装甲車の内一台が爆発を起こした。弾薬に引火か。危ないことこの上ない。破片が飛んで来たらどうする。 もう一台の方で動き。銃を向ける。そこで、その銃が弾切れ間近であることに気付いた。拳銃を出す。 火の中から、人が飛び出して来た。爆発で歪んだ装甲車のドアから、やっと出られたようだ。 彼の勢いは飛び出したところで尽きてしまったらしく、ふらふらと黒焦げの装甲服でこちらに寄って来る。 肉が焼ける臭いが鼻をついた。良く見てみる。装甲服のヘルメットを被っていなかった。それでも黒い。ああ、だからかと納得する。 焼死寸前の彼の右手には、煤の大量に付着した大型拳銃が握られていた。それを私に撃ち込みたいらしい。 一歩一歩、亀の歩みで近寄って来る。牛歩戦術みたいだ。私が自身で自身の頭を撃ち抜きたくなって来るまで時間を引き延ばすつもりか。 残り数歩という地点で、歩く足が止まる。とうとう体力が切れたか。前のめりに倒れた。それで死んだと思いきや、まだ生きている。 ぐぐぐ、と上がる右手。拳銃のセーフティを外そうとする指。手が震えて、上手く行かない。それでも何度も繰り返す。 私は彼が外すまで見ていてやろうかと思ったが、眺めるには痛々しかったので撃った。 びしゃりと水音を立てて、色々散らばる。黒く焦げた頭にしてはカラフルで水っぽい色々が。 ──……マーチ? ずっと上空で見ていたと思しきジューンが言った。私は何も言わなかった。こう長く戦っていると、どうにかなってしまいそうだ。 今のは特に、危なかった。精神の拮抗を注意深く保たねばならない。私は殺し屋だが、殺人鬼になってはいけないのだ。 * * * 刀というのは近寄らなければ使えない。どんな武器でもそうだが、その武器の間合いに入らなければ最高の威力は引き出せない。 拳銃なら数十メートル、短機関銃なら百メートルくらい、突撃銃ならその二倍、ショットガンなら二十メートルほど。 それが、有効射程距離であり、間合いだ。私の対物狙撃銃なら千五百メートルから二千五百メートル程度が、本来の間合いだろう。 教本は言う。格闘を得意とする相手と戦う時は、適切な距離を保って銃撃戦で決着をつけろと。私も、尤もなことだと思う。 無理して相手に合わせる必要は無い。自分の戦い方に合わせさせてしまえば流れは完全にこちらのものなのだ。 これは私がトライアルで打ち砕いてきた何人もの何十人もの格闘戦特化型アンドロイドとの戦いで、ようやく分かったことだった。 到るまで、何度の窮地が私を殺そうとして来たことか。何人の死神が私の肩に手を掛けようとしたことか。 私は一度だって負けることは無かった。ここに立っているのがその証拠だ。今回も負けるものか。 例え、そうだとも、例え、敵が十二姉妹の一人でも、どんなに距離を離しても数秒姿を消すとすぐ傍に立っているような相手でも。 勝利を収めてみせる。弾丸は私に当たらない。何故なら、私だからだ。当たる訳が無い銃弾は、幾ら放たれても意味が無い。 意識の問題だ。当たらないと思えば当たらない。当たるかもしれないと思えば当たるかもしれない。当たると思えばあの世行きだ。 面倒なのは彼女が刀を使うことだろう。刀は銃弾とは違う。当たらないと思っていても当たることがある。 それでも十二姉妹でなければ、こうも苦戦を強いられることは無いのだが。ジュライお姉様の強さは折り紙付きだ。武器も刀だし。 再度、お姉様が気配を消した。足を止める。危険が迫っている兆候だ。彼女は驚くべき俊敏さで移動し、音を立てずに攻撃してくる。 避けることは難しい。それら全てを今のところ避けられているのだから、自分を褒めてやりたい。 相棒の働きもある。ビルを点々として、監視塔の役割を果たして貰っている。危ういと思ったならすぐに逃げるように命じてあるが、 彼女の命令不服従癖は私のそれと同じくらい深刻なところまで来ている。実際にそうなった時従うかどうか、自信が無い。 風の音が変わった。何処かで遮られた時の音だ。私は後ろに跳んだ。上から落ちて来るガラクタ。騙された。 跳躍の後の硬直時間を無為に過ごせるとは思わない。着地の勢いを利用して背後にバレットを振る。 外れ。ジュライお姉様は予期していたのだ。場数の違いがこういうところで出る。 彼女は優しい笑いを浮かべて、バレットの届く範囲より一歩遠くにいた。銃口をその顔に向ける。引金を引く。 恥ずかしいことに、今に至っても、有効打は全然与えられていなかった。私は遊ばれているようだ。赤子扱いで。 焼夷弾が最初の一度だけ驚かせたが、二度目からは反応が無くなった。一度の使用で炎の広がる範囲を大体掴んだらしい。 今回の射撃も、当たりはしなかった。かわし、お姉様は距離を詰めようと前傾姿勢を取る。宜しくない。 接近を許すのは駄目だ、それだけは回避しなければならない。今でさえ刀の間合いに入っているのに、体術まで混ぜられては敵わない。 地を蹴って近づいて来る。跳躍にまでは至らないのが曲者である。跳躍中なら狙い撃ちの的に出来るのだが、 駆けている彼女を撃って射止められることが有り得るものか。当たる気で動いていない限り、外れる。 右に回避。左に回避すると刀で斬られる。ミサイルが追尾するように追従してきた。左手でワルサーを抜いて、発砲。 彼女の左手が弾丸を弾く。跳弾が小気味いい音を立てる。刀が私の体をぶった切らんと振りかぶられて、胸目掛けて斬撃──火花。 刀身が肩の傍を通って行った。私は何があったか理解した。ジュライお姉様の右手に銃創。 十二姉妹に対して、通常の銃ではダメージを与えられない。それが可能なのは余程の小口径高速弾か、大口径弾か。 MP7を持っていたのは誰だったか? 考えなくとも分かることだ。私の荷物持ち。私の戦友。可愛い可愛い、お邪魔虫だ。 命令不服従の罪を裁くのは私ではないので、彼女に大口径弾をくれてやることは止めた。 私は戦いの結果を素直に受け止めるタイプだ。ジュライお姉様に殺されるのなら本望だったし、殺すのもまた本望であった。 それを邪魔されたのは非常に苛立たしい。彼女が善意でやったことがまあ分かるから、余計に苛立たしい。 彼女は分かっていないのだ。私がどうして戦っているのかを。私がどうして敬い愛する姉を殺そうとするのかを。 何度でも繰り返すが、私は認められたかったのである。つまり、マルチアーノの姉妹として。 そして、難敵である彼女たちを打倒する──要は抹殺する──ことによって、己の強さを確信したかった。 私はオリジナル的存在ではない。マルチアーノ十二姉妹の存在あっての私だ。彼女たちの存在が無ければ、私は無かった。 故に彼女たちは神にも等しい存在である。部下たちはそう思わなかったようだが、私はそう思っている。 神を殺して私が、という訳ではない。単なる確信の為だけだ。自分の力を信じたい。自分の強さを信じたい。 お姉様たちとの戦いは、丁度いいと言うと悪い気がするが、タイミングのいいものだった。 我々二人と睨みあって動いていなかったジュライお姉様が刀を構え直す。目はちらりと闖入者に。マズい、逃げなさい! * * * 無反動砲が着弾して、私たちのいるアパートが揺れた。続けざまに当たるので、少しの間地震のように揺れが続く。耳障りな音も。 突破されそうだ。もう駄目だ。我々は突き破られる。破壊される。我々の負けだ。いい勝負だったが、負ける。 だが、それはなんていい響きなんだろう。敗北! 敗北だ! 考えの浅い者はそれを嫌うが、敗北も闘争の一形態なのだ! 迫って来る敗北の足音! 芳しい死の匂い! 心が揺れる。魂が震える。抗い難い誘惑だ。 銃声。またもや同胞が一足先に逝ってしまったか。頭から赤いオイルを撒き散らして倒れる。楽しそうな顔で死んでいた。 体のそこかしこに貫通銃創と砲弾の破片が食い込んでいる。私は彼女の銃と弾倉を貰った。 可哀想に。可哀想に。もっともっと戦いたかっただろうに、死んでしまった。戦闘の狂喜を共に享受する筈だったのに。 これで残った同胞たちは八十と四人くらいになった。一個小隊か。一個小隊の仲間たちと負けて殺されるのか。 何ともはや、素敵だ。仲間たちと戦って死ぬなんて。銃を持って戦おう。戦って死のう。皆で死のう。一人で死のう。前に進んで死のう。 益体も無いあの私たちと同じくらい戦闘機械的な人間たちの手でばらばらに引き裂かれ、ぐちゃぐちゃに鉛弾で体中を犯されて死のう。 或いは腕を切り落とされ、足をもぎ取られ、首を刈り取られて死のう。腹部に切り傷を作られ、内容物を引きずり出されて死のう。 処刑などでもするかのように、目に拳銃を突きつけられ無造作に発砲されて死のう。爆発で、あったことすら分からなくなって死のう。 殴られて殴られて、かつてそれが意思を持った一人の私だったと分からなくなるまでに殴られて死のう。自爆して死のう。 鹵獲されて、あちこちを弄られて、果ては十二姉妹の為のパーツ取りで死のう。じわじわと死のう。あっという間に死のう。 地面に這いつくばって、命乞いしながら醜く死のう。高潔にも自ら頭を撃ち抜いて死のう。縛り付けられ、射的の的になって死のう。 一糸纏わぬ裸にされ、股間から口まで鉄筋で貫かれて、晒し者になって死のう。磔にされて死のう。焼かれて死のう。 朝日に包まれて死のう。昼の明るく黄色い光に包まれて死のう。夜まで耐えながらも、冷たく無慈悲な夜の女王に見下ろされつつ死のう。 クーロンの湖の中に突き落とされ、いるかどうかは知らないが恐らくはいるだろうおぞましい大魚に食われ、 かつてそこに立っていることが当然と思っていた、二度とは戻れぬ地上を夢見、最早見られることは無い太陽を望みながら死のう。 目を潰され、前後左右も分からぬ状態で、高層ビルの屋上から突き出された一本の板の上を歩かされ、呆気無く落ちて死のう。 コヨーテ共から十二姉妹に対する積年の恨みを転嫁され、陵辱汚辱の限りをこの小さな体に尽くされてから惨めに一発の銃弾で死のう。 手の指や足の指、耳や目を削ぎ取られたり切り取られたりして、屈辱と塗炭水火の苦しみに耐え切れず泣き叫び赦しを願いながら死のう。 誰かの盾になって死のう。誰かの盾にされて死のう。集団で掛かって来た奴らに、多勢に無勢で押し潰されるように死のう。 もっと、もっとだ! 私が死に唯一望むことは、数限り無い数多の死の中から、最高の一つを得られるようにしてくれることだ! それこそ私の幸せなのだから。それこそが私たちの幸せなのだから。退くだと? そんなことはあの二人の言葉でなかったら従うものか。 私たちは勝利と敗北、生と死を同時に望んで戦う。どちらを得られても私たちは喜ぶ。死は今のような例外もあるが。 勝利には新たな戦いの到来の喜びがあり、敗北には壊される喜びがある。生は一時の享楽がもう暫く長続きすることであり、 死は未知の体験だ。未知とは恐怖ではない。未知とは欣喜雀躍の極みをもって受け入れるものである。 視界の端に見慣れた姿が映った。平然とした顔つきで、左肩に受けた傷を押さえながら銃撃戦の中歩いて来る、我らが指揮官の一人。 お姉様だ! お姉様、戦場での輝きの一つ! 私のお姉様、私たちのお姉様! 勝利の象徴! 彼女は私の近くに来ると、他の者を集めるように私に命じた。直接何かを言いに来ただけなのだろうか? インカムが壊れてしまったのかと思ったが、どうやら我々の士気を高める為の行為だったようだ。 私は辺りの仲間を集め、それから別の部屋にいる者を集めに行った。 普通に通信で言っても良いのだが、お姉様の傍に自分だけでいると緊張で何も手に付かなくなってしまう。 何処に誰がいるかは把握しているので、すぐに済んだ。何人かが私の気持ちを理解して手伝ってくれたから、というのもある。 トイレの横の部屋で、何だか臭いが酷いと文句を言いつつ戦っていた数人のところへ移動。これで最後の筈だ。 私は狙いをつけて慎重に撃ち続けていた彼女たちを慌しく走らせた。戻ろうとして、一人がまだ狙っているのに気付く。 集中の余り聞こえなかったのだろう。私も良くある。それでお姉様に注意されたのも一度や二度ではない。 肩を叩いた……ああ、そうか。残りの同胞は八十と三人だったということか。彼女の銃と弾薬を持って戻る。 彼女の仲間は何故私が彼女の銃を持っているか理解出来ないようだった。どうしたのか聞かれたから、私はただ一度首を横に振った。 それで通じる。聞いた仲間と私は、沈痛な面持ちでお姉様の方を向いた。突っ込むのだろうか。今から。皆で。一斉に。 命令は──私の待った、待ちに待った、激しい戦闘の中で念願し強く望み希った命令は──また撤退? 全て完全に了解しました、今すぐ撤退行動に移行します。お姉様、お姉様もお気をつけて! * * * 残った敵は別ルートを通って艦に撤退して行った。ジューンも撤退する彼らを深追いしなかった。 艦の対空装備が詳細不明だったし、破損は軽微で、オンラインかもしれない。この上彼女まで撃墜されると本当に手が足らなくなる。 ──そろそろ燃料が危ういな。フェブ、周囲を索敵してくれ。危険なものを排除し、一度艦に戻る。 ──了解。索敵、開始。 結果を待つ。その間にも、目を動かして近づいて来る敵兵がいないかを見張る。 ──反応、半径二百五十メートルに無し。半径三百メートル、無し。半径三百五十メートル、無し。続きを? ジューンはマーチと相談してから、断った。機首を艦に向けて、補給の為に戻って行く。 ヘリの到着までには、数分のじれったく、いつ敵が訪れるか分からない不安な時間を要した。 ようやく救助対象にもローターが聞こえて来る。彼女は体から力を抜いて、マルスによって小さく切り取られた空を眺めた。 『これから着陸します。砂が舞うでしょうから、目を瞑っておいて下さい』 操縦手からそういう注意があったが、マーチは無視した。特に理由は無い。空を眺めていたかったから、というのが精々だ。 風が吹き込んで来る。砂が服や首元に入って来る。不愉快なことこの上無いが、我慢した。 着陸したようだ。時間が掛かるだろうことを予測してか、ローターの回転が止まった。 「マーチ!」 真っ先に飛んで来たのはメイだった。首を横に向けて、彼女を出迎える。メイは安心した様子だ。 器材を持って負傷したギルド兵が駆けつける。彼らの一人がマーチに、マルスを切断して救助するがいいかと尋ねる。 が、マーチはそれを許さない。時間が掛かってもいいから、何とかここから出せないかと言った。フレデリックが答える。 「それなら、マルスを持ち上げるしかありませんね。シグリッド、器材からワイヤーを出してヘリとマルスに結べ。 持ち上がるかどうか、やってみよう」 「了解。メイ様、マルスを持ち上げる時には力を貸して下さいよ」 手分けしてワイヤーを結び、ローターを始動する。再度飛び込んで来る砂。今度は目にも入った。何度も瞬きしたり、涙で洗い流す。 メイは浮き上がるヘリを見ていたが、ローターが隣のビルに接触しそうになる度にぱっと目を逸らした。 とはいえ、操縦しているのはギルド精鋭兵だ。つつがなくビルの上空まで上がる。ワイヤーがぴんと張った。 ここからが問題だ。マーチは全身に力を入れる用意をした。メイもマルスの本体に手を掛けた。 操縦しているヘイウッド以外の兵も、マルスを持ち上げる努力をする準備をしている。 『三で持ち上げるからな。手伝い、頼んだぞ』 息を呑んだ。ヴィンスは右手の甲で、額の汗を拭った。 『一』 銃声が遠くに聞こえる。実際はそうまで遠くは無い筈なのだが。 『二』 手に浮かぶ汗を、シグリッドが急いで衣服で拭った。先程から、すぐ汗が出て来て困る。 『三!』 ヘリが上昇を始めた。メイが声を出して、マルスを持ち上げようと渾身の力を振り絞る。 マーチも出来る限りの努力を試みた。体勢的な不利はあったが、少しでも助けになろうと力を込めて持ち上げようとする。 シグリッドも、汗でぬるぬるになった手で頑張った。 『頑張れよ、持ち上がるまでもう少しだぞ!』 彼が知っていてそう言ったのかどうかは分からなかったが、言葉通りだった。 ぐらりとマルスが動く。マーチは重圧が揺らぎつつあることを悟った。このまま行けば、脱出可能だ。 フレデリックの肩の銃創から血が流れ出す。痛かったが、力は緩めない。寧ろ、より強く込める。 マルスに取り付いた全員が大声を上げて、マーチの脱出の為に力を振り絞る。端から見ていたなら異様な光景だ。 だが、彼女と彼らには、妹を助ける、十二姉妹の一人を助けるという崇高な目的があった。 遂にマルスがその巨体を大きく動かし始める。下敷きになっていたマーチがずりずりと這って移動を始めた。 「もうちょっと……後少し……出た」 立ち上がり、マーチが手を貸す。驚いたことに、そうするとマルスが小石であるかのように軽々と動いた。 マルスを正しく立ち上がらせる。神経接続を試すマーチ。生きていた。マルスは未だ、その命を終えていない。 三十ミリ機関砲の内、着弾があった右側が動かないが、発砲は可能である。非常に簡単に礼を言って、マルスは動き出した。 『マーチ! 今すぐ戻りなさい!』 語気を強めて、フェブが言う。相変わらずの無視かと思ったが、マーチは答えた。 「まだ戦っている姉妹や、兵がいる。私だけ戻ることは出来ない」 珍しいことに、彼女は二度目の礼をメイと兵士たちに言った。敬礼三つと、手を振っての返答。 機動形態で、東部戦線の前線に向かって進んでいく。砂埃を後に残し、彼女は角を曲がって消えた。 それでもヘイウッドは二、三分ほど上空で彼女の進む道を眺められていたが、地上からの罵倒で着陸することにした。
https://w.atwiki.jp/shingekititan/pages/10.html
『進撃の巨人』の英語タイトルは『attack on titan』である。 この英語タイトルには連載当初から疑問が呈されてきた。 「Attack on ○○」では「○○への攻撃」という意味にしかならず、原題の「巨人が進撃する」という意味には解釈できないからである。 一応、titan=巨人と考え、この英語タイトルは人類の巨人への反撃という意味だと言われてきた。 しかし、これはミスリード、またはダブルミーニングである。 『進撃の巨人』の特徴の一つは、手掛かりを事前に提示する点である。 『進撃の巨人』の製作チームは、「ほら、読者が答えに辿りつけるように、フェアに描いてるだろ?」と挑戦しているのである。 これは素直に「タイタンへの攻撃」という意味だと考えればよい。 すなわち『土星の衛星タイタンへの攻撃』という意味である。 つまり、①エレンたちのいる世界が土星の衛星タイタン、または②今後エレンたちが攻め込むのが土星の衛星タイタンだという意味である。 現在のところ、エレンたちの反撃が物語の中心であるため、後者の意味(エレンたちがタイタンを攻撃する)だと考えるのが妥当だと見るべきだろう。 そしてタイトルがダブルミーニングだとすれば、最終的にはエレンたちが巨人になって土星の衛星タイタンに攻め込む(巨人がタイタンに進撃する)展開が想定される。 もう一つの可能性は、エレンたちが巨人=人間である場合だ。 この場合、ライナーたちが「巨人=人間への攻撃を開始した」という意味になる。
https://w.atwiki.jp/linkwith/pages/14.html
内容 コンテンツの流通に関して、どのような政策が検討されているか おもに、総務省の研究会や政策をもとに検討する 参考 u-japan 「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会中間取りまとめ」(pdf) 「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会」 話の流れ 通信法と放送法の統合 ユビキタスネット社会をめざす その課題の一つに、デジタルコンテンツの流通の促進 これは、コンテンツの創造・流通・利用促進のため 「こんなのあるんじゃない?」というのがあれば、教えてください。 ほかに意見など、歓迎します。 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/vahren_ency/pages/988.html
オリジナルシナリオの名前 -- 名無しさん (2023-11-24 22 42 07) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/asahino-shironekodan/pages/20.html
僕の彼女九尾狐 役職 メンバー 一言 11月29日 CBTから参加するゲームとしては初めてとなります。よって、とても楽しみです。 まだ職は決まってませんが、、無難に剣士で行こうか。。。。。 んまあ、マイペースでガンバって行こうと思います。。 ん?名前が長すぎるって?ドラマからつけたからしょうがないじゃんw だから九尾狐でいいってw このドラマからつけましたw↓
https://w.atwiki.jp/grasoturismo/pages/53.html
グランツーリスモHDコンセプト 英名 Gran Turismo HD Concept 2006年12月24日(世界同時) ハード PS3 定価 タダ プロデューサー 山内一典 概要 PS3世代初のグランツーリスモ。当初はPS3のハード性能を活かした『GTHDプレミアム』と、GT4をベースに走行台数増加とツーリストトロフィーからのバイクを加えた『GTHDクラシック』のふたつのモードを 入れるつもりだった が予定を変更し小粒なダウンロードゲーに方針変更。プレミアムカーとスタンダードカーの括りやGT4のコースデータはこの頃の名残だった。『当初の予定の物』も遊びたかったんですが……。 当初の予定だったもの ちなみに、『スパイダーマン』とコラボしているPVも。今見るとMAD動画っぽいけど。 また、『GTHDプレミアム』になる予定だった高品質な車種が登場するトレイラーも存在する。 1997年式のカストロール トムス スープラやAP2型S2000、フォードGTや599より先駆けて初公開となったフェラーリ・F430といった車種が登場しており、GT6まで使われたPS3世代モデルでは最古ともいえるだろう。 そしてこのトレイラーにはモデリングがされていながらも収録はおろかゲーム内で走ることすら叶わなかったR33 GT-RのR-Tune仕様が存在しているため、一見の価値あり。 収録車種 グランツーリスモHDコンセプト/収録車種を参照。
https://w.atwiki.jp/shingekititan/pages/256.html
最終話である第139話「あの丘の木に向かって」では、多くの伏線が回収されませんでした。 エレンの保有する進撃の巨人の力は、未来の継承者の記憶を見る能力です。 他の巨人は捕食によって過去の継承者の記憶を見る事ができますが、進撃の巨人だけは未来の継承者の記憶も見ることができます。 元ネタは星野之宣の『ヤマタイカ』。 『ヤマタイカ』では二千年前の「火の民(=日本人)」の巫女王フィミカ(ヒミコ)が、自分の後継者となる「未来の全ての巫女」と精神で繋がって会話をしたり、エネルギーを送ることすらできる。 進撃の巨人の継承者は、あたかも時空間旅行のように全ての継承者の記憶の中に入り、その場にいるかのように見る事ができます。 この時空間旅行にはエレン以外の者を同行させる事も可能であり、実際にジークに過去の記憶を見せています。 一部の者を除き、その場にいる者はエレンの存在を認識できません。 逆にエレンを認識できる者は、気配を感じたり、姿を見たり、言葉を聞くこともできる模様。 また、進撃の巨人継承者にとっては過去も未来も同時に存在するため、継承者の精神は著しく混乱するようです。 エレンが保有するもう一つの巨人は「始祖の巨人」です。 始祖の巨人の能力は大きく分けて2つです。 (1)巨人支配能力 全ての巨人を支配し、操作できる能力。 具体的には、攻撃(捕食)目標を指定し、襲わせることが可能。 12巻第50話「叫び」で巨人になったダイナと接触したことにより発現。 また、始祖の巨人の力を介して、全てのユミルの民に自分の意思を伝える事も可能。 私は始祖の巨人は「SISOの巨人」であり、いわば放送局で、全人類はテレビに相当すると考察していましたが、このエレンの意思放送により、この考察がほぼ的中していた事が確定。 軍隊で言えば司令官、あるいはドローンのリモコンのような存在。 (2)記憶改竄能力 全てのユミルの民=エルディア人の記憶を改竄できる能力。 ただしアッカーマン一族は記憶改竄できません。 最終話第139話で、最終決戦前にあらかじめアルミンたちに別れを告げておき、記憶を改竄して、決戦が終わるまで忘れさせていたことが判明しています。 エレンは進撃の巨人と始祖の巨人の力により、未来を含め進撃継承者がいる時空間に飛び、エルディア人と巨人の行動を操作する事が可能です。 要するに「作中の重要なシーンに見えないエレンがいて、展開に影響を与えている可能性がある」のが漫画『進撃の巨人』の最大のトリックです。 舞台劇に例えると、役者の中でエレンだけが台本を最後まで読んでおり、台本を読めない他の役者を、台本通りに動くように演出していた可能性があるわけです。 私は進撃の巨人を舞台劇の脚本家のような能力と考えていたが、プロンプターや歌舞伎の黒衣(クロゴ)の役割も担当していたとも言えそうです。 以上の点から、『進撃の巨人』の伏線の一部は、「あらかじめ未来の記憶を見ていたエレンが、進撃の巨人の力を使用して時空間を飛び越え、始祖の巨人の力でその場にいるエルディア人や無垢の巨人を操作し、未来の記憶(台本)通りの展開になるように調節していた」ということで説明できます。 エレンは登場人物たちが台本通りに動くように、将棋やチェスの駒のように操作していたわけです。 つまり、「エレンはエルディア人を操作してできる範囲の工作は可能」なのですが、これでは説明できないことがあります。 たとえば、「訓練兵時代の立体起動姿勢制御訓練」で、エレンが破損した装備で一時姿勢を保つことができた理由を説明できません。 加えて、伏線の説明すらないものも多数存在します。 たとえば、レイス関係の伏線はほぼ説明なし。 サシャ関係の伏線もほぼ説明なし。