約 2,458,821 件
https://w.atwiki.jp/medakabox/pages/196.html
「7932兆1354億4152万3222個の異常性」と「4925兆9165億2611万0643個の過負荷 」 合わせて「1京2858兆0519億6763万3865個のスキル」。 現在までに813個のスキルを確認。 そのほかのスキル。 1京分の1のスキル 1京分の1のスキル(刀剣系スキル編) 1京分の1のスキル(格闘系スキル編) 1京分の1のスキル(精神系スキル編) 1京分の1のスキル(生物系スキル編) 1京分の1のスキル(ラスボス系スキル編) 1京分の1のスキル(銃火器系スキル編) 1京分の1のスキル(忍者系スキル編) 1京分の1のスキル(主人公系スキル編) =:文字通りの意味やことわざや用語をそのまま使用したもの。?:不明 № スキル名 説明 元ネタ 1 間違いなく放火(エキシビションマッチ) 火を司るスキル エキシビションマッチ+火をつけるマッチ 2 水肢体(ウォーターボディスラム) 水を司るスキル 水死体+肢体 3 千脚万雷(ボルトレッグ) 雷を司るスキル 千客万来 4 風の吹くまま(ウインドウショッキング) 風を司るスキル ウインドウショッピング+ショッキング 5 業苦楽情土(ヘヴンイズノットヘヴン) 土を司るスキル 極楽浄土 6 人生花逆理(フラワーパッド) 花を司るスキル 人生花盛り 7 闇夜に肘鉄砲(ダークエルボー) 闇を司るスキル 闇夜に鉄砲+肘鉄砲 8 怠るの光(サボタージュビーム) 光を司るスキル 怠る+蛍の光 9 春の食罪(スプリンググロッサリー) 春を司るスキル 食材→食罪 10 夏の虫氷を笑う(ノイジーサマービートル) 夏を司るスキル = 11 秋の独書(ロンリーオータム) 秋を司るスキル 読書→独書 12 冬の脳漿軍(ウインタージェネラリスト) 冬を司るスキル 冬将軍+脳漿 13 時間体(タイムアウト) 夜を司るスキル 時間帯 14 疾患護(ホスピタルゲノム) 病を司るスキル 疾患+看護 15 喉響曲不幸和音(グラウンドサウンド) 音を司るスキル 交響曲不協和音グラウンド⇔サウンドで韻踏み 16 窒息死(ニトロゲンプレス) 窒素を司るスキル =窒素+駆使 17 破天荒な髪型(センセーショナルヘア) 天気を司るスキル 破天荒と天候をかけて 18 頭薬物(ハードラックストア) 毒薬物を司るスキル 投薬→頭薬ハードラック(不幸)+ドラッグストア(薬屋) 19 温湿口花(ドライサウナ) 湿度を司るスキル 温室効果 20 躯重力(グラビト) 重力を司るスキル 駆動(駆→躯、動→重力) 21 大把乱(グリップカオス) 波動を司るスキル 大波乱 22 人間の羽衣(マニアックカーテン) 布を司るスキル 人間+天女の羽衣 23 屈折した愛情(エモーショナルターニング) 反射を司るスキル = 24 影踏み(シャドウステップ) 影を司るスキル = 25 配下振りの娘(シンデレラシンドローム) 灰を司るスキル 灰被りの娘(シンデレラ)シンデレラ⇔シンドロームで韻踏み 26 霧々妹(ミストシスター) 霧を司るスキル きりきり舞い 27 芸術家の審美眼(ペインターコンテスト) 絵を司るスキル = 28 細胞壁(ウォールペーパー) バリアを司るスキル = 29 三々駆動(アルコールサンド) 砂を司るスキル 三三九度 30 落齢穴(フリーフォールホール) 穴を司るスキル 落とし穴フリーフォール⇔ホールで韻踏み 31 血未魍魎(モンスターレッド) 血を司るスキル 魑魅魍魎 32 公募筋(マッスルコレクション) 菌を司るスキル 酵母菌 33 取っ手おきの網(マグネットストリーマー) 磁力を司るスキル 取っ手おき→とっておき 34 雲の上の浮遊層(ゴールデンクラウド) 金を司るスキル 浮遊層→富裕層 35 二番手を吟じる(シルバーオピニオン) 銀を司るスキル 二番手に甘んじる(?)、二の舞を演じる(?) 36 器の中の胴体着陸(エマージェンスコッパー) 銅を司るスキル コップの中の嵐コッパー(銅)+コップ(器) 37 破壊身空(デストスカイ) 空を司るスキル 破壊+若い身空 38 真空癇(スカイトゥルー) 真空を司るスキル 真空管 39 指害線(サンスロッシング) 太陽を司るスキル 紫外線 40 目印ずらし(ポラダイムシフト) 北極星を司るスキル ポラリス(北極星、方角を知る目印)+パラダイムシフト 41 宇宙戦火星号(マザーズマーズシップ) 火星を司るスキル 宇宙船地球号マザーシップ(母船)+マーズ(火星)マザーズ⇔マーズで韻踏み 42 王座奪還(ナインプルート) 冥王星を司るスキル =(第9惑星だった冥王星が惑星から外されたことにかけて) 43 隕咳落下(メテオネック) 流れ星を司るスキル 隕石落下 44 大海を片手で塞ぐ(マイシーチップ) 海を司るスキル 大海を手で塞ぐ 45 沼女(スワンプガール) 沼を司るスキル 沼男(スワンプマン) 46 身川死(リバース) 川を司るスキル 身躱しリバース(逆)+リバー(川) 47 石血帝(エンペラーストーン) 石を司るスキル 意志決定 48 抱石箱(ハングアップジュエル) 宝石を司るスキル 宝石箱 49 意外な連鎖(ウロボロスコネクト) 災いを司るスキル =ウロボロス(自分の尾を噛んで輪の状態になっている蛇または竜) 50 零距離視斜劇(アングルオブオペラ) 角度を司るスキル 零距離射撃 51 発破六重死(アハトアハトデッサン) 爆発を司るスキル 8×8=64、88ミリ砲アハト(ドイツ語で8の意味) 52 人肌の温もり(スキンフォーレスト) 森を司るスキル =(温もり→森) 53 八十八夜の泣きにしもあらず(アベレージクライングナイト) 星座を司るスキル 八十八夜の泣き霜+無きにしも非ず 54 味発見の財宝(トレジャーテイスティング) 味を司るスキル 味+未発見 55 世界の鍵(キーワールド) 鍵を司るスキル キー(鍵)+ワールド+キーワード 56 超舌弦理論(ハイパーストリングセオリー) 糸を司るスキル 超絶+舌+超弦理論 57 北風の吹き替え(ノースブレス) 声を司るスキル 北風が吹く+吹き替え 58 嚥距離恋愛(ドリンクレンジ) 距離を司るスキル 遠距離恋愛 59 拒絶犯脳(オーバーリアクション) 化学反応を司るスキル 拒絶反応 60 芳しい両拳(バトルスメル) 匂いを司るスキル やさしい両手(歌謡曲) 61 深淵で水泳大会(ディープシンク) 深さを司るスキル ? 62 味覚認物体(ニュートリノコンプライアンス) 栄養を司るスキル 未確認物体 63 二重視点(ステレオグラム) 凹凸を司るスキル 二重思考(?) 64 死の歩道橋(デストリアンデッキ) 道を司るスキル =デス(死)+ペデストリアンデッキ(歩道橋) 65 他愛ない読み聞かせ(リーディングマジック) 呪文を司るスキル = 66 盲従使い(アニマルユーザー) 動物を司るスキル 猛獣使い 67 魔手鏡(ミラーエフェクト) 鏡を司るスキル 魔手+手鏡 68 強い語り手(ストロングストーリー) 強い力を司るスキル =ストロング⇔ストーリーで韻踏み 69 弱い殺し手(デリケートデリート) 弱い力を司るスキル =デリケート⇔デリートで韻踏み 70 自我速度(マイスピィド) 速度を司るスキル 自我+加速度 71 活舌性(アクティブトーク) 活性を司るスキル 滑舌→活舌 72 豹の眼(レオパルドアイ) 邪眼を司るスキル 映画「豹の眼」 73 読舌(リーダビリティ) 字を司るスキル 毒舌 74 心証膨大(モストインパクト) サイズを司るスキル 針小棒大 75 硝子体(テクタイト) ガラスを司るスキル = 76 見えなくてもそばにいる(ニアパイシースルー) 精霊を司るスキル = 77 揺れ動く心(ペンジュラムハート) 振動を司るスキル = 78 即興合唱(イージーコーラス) 歌を司るスキル = 79 燈虹彩(レインボーランプ) 色を司るスキル 搭降載+燈+虹彩 80 遊煙(プレイスモーク) 煙を司るスキル 遊宴 81 心の足し算(ナンバーフット) 数を司るスキル 心の足し+足し算ナンバーフット(数字)+足=足し算) 82 素足算(プライムフット) 素数を司るスキル 素足+足し算プライムナンバー(素数)+フット(足→足し算) 83 情熱暴走(ハンドリングバーサーカー) 暴走を司るスキル 情熱+熱暴走 84 咆哮音痴(デスボイスナビゲーション) 方角を司るスキル 方向音痴デスボイス+ボイスナビゲーション 85 困ってなくても神頼み(セルフィッシュリクエスター) 祈りを司るスキル 困ったときの神頼み 86 幻の幻覚(ファンタジーイリュージョン) 幻を司るスキル 幻の言葉遊び 87 哲学者の蒐集癖(ワイズマンコレクション) 知恵を司るスキル = 88 火山の意志(マグマストーン) 火砕流を司るスキル 他山の石+火山+意志 89 家中の悲働(ビニールハウスサバイバル) 家を司るスキル 渦中の人 90 夢人(ビッグチームドリーマー) 夢を司るスキル 無人 91 息止まり(チョークボード) 塀を司るスキル 行き止まりchoke(息を塞ぐ)+Chalkboard(黒板) 92 情報操査(シークレットリサーチ) 情報を司るスキル 情報操作 93 破目殺しの窓(ウインドウゲイズ) 窓を司るスキル はめ殺し+破風の窓(小説) 94 血管戸当て(ブラッドバスストップ) 出入り口を司るスキル 血管+欠陥+戸当て 95 点火吹雪(ターニングポイント) 点を司るスキル 天下布武+点火+吹雪 96 投降線(スローライン) 線を司るスキル 投降+等高線 97 首輪をもって責となす(ネックリングホールド) 輪を司るスキル 和を以って貴しと為す 98 一印性双生児(ジェミナインプレッション) 印を司るスキル 一卵性双生児 99 未来は変えられる(アンフィックスドフューチャー) 未来を司るスキル = 100 ある魔法の一生(マジカルライフ) 魔法を司るスキル 或阿呆の一生(小説)
https://w.atwiki.jp/vip_witches/pages/872.html
野戦指令部天幕 大きなテーブルにこの辺り一帯の地図。 乾いた熱風が頬をこする中、卓上の古びたラジオからは穏やかな声と共にニュースが流れていた。 『引き続き、頭頂部の欠落が確認されたクフ王ピラミッドの情報をお送りいたします』 『第31統合飛行隊の報告により判明した今回の事件』 『確認したウィッチからの情報による「ネウロイの接触」の線が濃厚とエジプト政府は意見をまとめ』 『政府はアフリカ部隊へのより一層の支援を発表しております。しかし、目撃者によれば――――』 ロンメル「…見事なものだったな。キャップストーン」 モンティ「………そうだな」 パットン「…ああ、頂点から引き摺り下ろされて尚、美しい」 モンティ「ポエムを語っている暇があるなら指示を出さんか!!」 エル・アカキール ≪よう!どの位持ちそうだ!?≫ 少佐「分からん!だがここを押し返せば、エル・アラメインが見えるぞ!!」 ≪いよっしゃ、待ってろ!10秒で行ってやる!!!≫ 雑音混じりの通信を切り、少佐は火炎瓶の詰まった木箱に走る。 兵士の気力で保たれていたこの隊も、そろそろ限界が近い。 箱に手をかけた途端、壕の中に大地を揺るがす爆発音と切羽詰まった若者の叫びが響いた。 兵士A「指令!アハトアハトがもう…!!」 少佐「後10秒で虎が来る…総員突撃するぞ!!」 兵士A「…ッ了解!!」 少佐「俺も出る。他の隊に後れを取るなよ!そして死ぬな!今日はアフリカの星が帰って来るんだぞォ!!」 壕から駆け出し、弾丸の嵐へ飛び込む。 火炎瓶を放りながら駆ける指令に、男達は一様に頷き、喊声を上げて続く。 兵士C「中尉が帰って来るってのに死んでちゃもったいねえ!オラ、地雷持ってこい!」 兵士F「持ち堪えるぞ!防衛陣地を再構築!!怪我人を守れ!」 兵士D「アハトアハト後20門!撃ち惜しむなよ!んで避けろ!!」 兵士B「男の意地って奴を見せてやれ!接近してブチ込むぞ!」 兵士達が迫り来る陸戦型ネウロイに接近して地雷を叩きこむ。 熱砂を巻き上げ、唸りを上げて襲い来る機銃の波を越え、火炎瓶を多脚の隙間にぶつけながら走る。 立ち止まった瞬間撃ち抜かれる。極度の緊張と恐怖の中、陣地をじりじりと侵して行くネウロイの群れを縫って攻撃を当てる。 生き残る為に、この僅かな力が人類の未来を繋げると信じ、地雷で陸戦の装甲を弾き飛ばす。 絶妙なタイミングで放たれたアハトアハトの弾が陸戦と共に砂を抉った。 一人13体の陸戦を屠らなければこの師団は終わる。 隊が一つでも退けばエル・アラメインは攻略できない 少佐「馬鹿野郎、行き過ぎるな!後少しなんだぞ!!」 兵士B「気を抜いたら押し戻されます!少しでも、少しでも数を!!」 兵士F「五体満足で帰れたら万々歳さ!第3小隊、突っ込めぇえええ!!」 兵士I「やく…早く来てくれ虎ぁあああ!!!」 頭を掠めた弾丸に慄きながら兵士が叫ぶ。陸戦に突っ込んで行った仲間達が倒れ行く姿が陽炎に歪む。 ドロドロと音を立てて近寄る陸戦に、無意識に涙が溢れた。 兵士E「畜生!!こんなに長い10秒は始めてだ!後いくつだ!?」 絶望を吐きだす様に天に叫ぶ。1秒が鉛を背負っているかの様に重く、苦しかった。 目の前から目を逸らし見た砂原の果てより、刹那、金色が瞳に映る 「待たせたな!兄弟!!」 轟と唸る風より早く、眼前の陸戦に金色の虎が襲いかかった。 真っ向からの拳を理解できぬまま陸戦は装甲を喰い破られ、弾ける火花がEの視界を埋める。 兵士E「はっ…馬鹿野郎、早かったじゃねえか……!」 崩れ落ちながら強がるEを一瞥し、俺は鋭い牙をぎらつかせて笑う。 俺「さすが俺の兄弟達だ…その心意気や良し!」 ぎちぎちと陸戦が俺の腕を体内に残したまま再生を開始する。 赤い光が点滅を繰り返し、ネウロイは俺から逃れようとその身を捻じる。 俺「おおおおおおおおお!!!」 僅かな動きも、逃げる事も、倒れる事も許さず、俺が鉄の体を抉りながらコアを握る。そのコアを握りしめ、唸りを上げて腕を抜き去る。 その勢いに吹き飛ばされた陸戦は、砂に飛び込んだ瞬間砕け散った。 この作戦の為に補充された兵達にとっては始めて見る虎の戦闘。全てを蹂躙する圧倒的な力。 目を剥いて俺の戦闘を見る兵達の目に再び闘志が揺らぎだす。 兵士G「す、すげえ…」 少佐「良く見ていろ、お前達。アイツこそが今のアフリカを支える要が一人…」 掌に掴んだままのコアを捻り潰し、今だ戦闘を続ける陸戦に向かって吼え猛る。 唸りを上げる大気を纏い、迫り来る陸戦に牙を剥く。 少年に帰った様な瞳で俺を見る兵士達に少佐が誇らしげに続けた。 少佐「ロマーニャの虎…俺少尉だ!」 俺「行くぞ、兄弟!何も考えずに着いて来い!!」 咆哮に続いて起こった鯨波を背に、数多と蔓延る黒の渦に飛び込む。 右に左に上に前。全ての陸戦と飛行杯の照準が己に向くのを肌で感じ、虎は口角を上げた。 俺「ハッハー、大歓迎って奴だな…嬉しいねェ!!」 兵士B「少尉!後ろは我々にお任せを!」 兵士E「おうよ!まっ、マルセイユ中尉とまでは行かねえがな!!」 背後に立つ大勢の兵が気合充分に叫び、武器を構えて不敵に笑う。 俺「当然!さあ、嬢ちゃん達が来る前に終わらせるぞ!!」 砂埃の中蠢く陸戦に、腰のベルトからポテトマッシャーを取り出し放る。爆発で吹き飛ぶ脚やら欠片はマントで防ぐ。 後ろから悲鳴が聞こえたが何とかなるだろう。罵声も聞こえるし。 兵士D「虎てめぇ、死ぬだろうがあああ!!」 兵士C「バカヤロー!お前の所為で死んだらかーちゃんになんて言えばいいんだ!!」 俺「叫ぶ元気があるなら投げろ!オラ左だぁああ!!」 火炎瓶と地雷の飛び交う中で、砂塵に紛れた飛行杯が地上への掃射を開始する。 急いで射程内でスコップを振っていたCの首根っこを引っ掴んでブン投げ、再びベルトからポテトマッシャーを投げて爆破する。 俺「ッハァ、危ねえな!」 兵士C「ゲホッ…はっ、助かった……」 俺「少佐!地上への砲撃増やせ!なーに、こいつ等は気合で避けらぁ!」 インカムを叩いて陣地で指揮を執る少佐に吼え、空を隠す飛行杯を睨み付ける。 丁度陸上競技のスタートの形を取り、ふうっと息を吐く。 兵士I「えっ少尉!?」 俺「俺は―――制空権を獲って来る!!」 思い切り砂を蹴り、風を引き連れ、弾をばら撒きながら走る陸戦にジグザグに進路を変えながら突進する。 足元に弾丸が刺さっても頬を裂いても尚速く。目の前で機銃を放つ陸戦の前面に飛び乗った。 軍靴は装甲に沈み、ごしゃりと歪な音が鳴る。 脚の筋肉を縮小させ、金の炎を脚全体に灯す。そのまま上空の飛行杯に狙いを定め、全身の筋肉をしならせ跳ね上がった。 踏み台にされた陸戦が板金で捻じ曲げた様な形で砂に叩き伏せられたのが脚から伝わる。 風が唸る。大気の擦れが耳に届く。それさえも構わず空を、天に居座る飛行杯を目掛けて一直線に飛ぶ。 突然大砲の様に飛んで来た物体に、驚き揺れる飛行杯の上にがんと飛び乗る。 急な重さに高度を下げ、日後輩が暴れるが、俺は器用に尾でバランスを取りながら黒い鋼に鉤爪を突き立てる。 俺「激しいのがお好みかァ?……ッハァ、お望み通り、激しくしてやるよ!!」 燃える輝きと共に前肢に力を込めて更に爪を深く立て、黒い鋼を力任せに引き裂く。 眼下に輝く赤い塊を踏み砕き、再び金色を纏う。 崩れ始めた飛行杯を蹴り、近くの飛行杯にしなやかに飛び出した。 黒い鋼に爪を立て、辺りを見渡す。 俺「チッ、掃いて捨てる程いやがる。将軍達もここまで計算して無かったか…」 ≪ストライカーも無しに飛ぶ人間も計算外だよ!!≫ 突然頼りの飛行杯に弾丸が突き刺さる。 砕け散る前に慌てて違う飛行杯へと飛び出し、脚部分にぶら下がった。 俺「わったった…ライーサ?もう終わっちまったのかよ!?」 ≪他の地区は全部攻略完了。ここが最後!ケイ、先に行くね!≫ ≪今全部隊がここに向かって来てます!…ケイさん!≫ ≪分かってる。制空権を一気に獲るわよ!地上部隊!気合入れて行け!!≫ 少佐「……ありがたい!聞いたかお前達!かわい子ちゃん達が俺達の為に来てくれるぞ!!」 兵士「「「「「「イェアアアアアアアアア!!!!」」」」」」 砲撃音が再び激しくなり、ネウロイ達を押し返して行く。 俺「ハッ、現金な奴らだぜ…マミ!コイツを撃ち落とせ!」 ≪ええ!?俺さんがくっ付いてて危な――――≫ 俺「ハッハッハ!射撃の腕は上がってるはずだぜ?ほら、撃ってみろ!」 ≪大丈夫よ真美。アハトアハト位じゃ俺は死なないわ≫ ≪……了解です。しっかり避けてくださいね≫ ≪行くわよ……発射!!≫ 歪む陽炎から飛び出した弾が上で暴れる飛行杯の上半分を吹き飛ばす。 連戦の疲れもあるのだろう。だが着々と命中に近付く弾痕に口元を緩める。 ≪あ……また……≫ 俺「安心しろ。コアが出た」 そう言ってコアを砕こうと拳を作った瞬間、俺のぶら下がる飛行杯に槍が突き刺さる。 ばちりと大きく火花を散らすと、飛行杯は落下しながら黒い体を白へと変える。 ≪慢心は死を招くぞ、虎≫ 俺「マティルダ!?ッお前の攻撃で死にそうだ!!」 ≪そんなんで死なれちゃ困るわ。全車、行進!!≫ 一際大きくなった喊声に落下しながら下を見れば、次々と陸戦を撃破していく陸の魔女達の姿。 そしてスリングで陸戦を破壊するマティルダが見えた。 俺「お前等……良く来た、なッ!!」 彼女の前に飛び出した陸戦を、抜いた槍で重力と共に串刺しにする。 連鎖する様な爆発音と共に砕ける装甲の上から素早く飛び去り、マティルダの隣に着地した。 マティルダ「鷲の使いの命が無ければ何もしない…槍を返せ」 俺「あいよ。んー…もう一仕事ってとこか?」 マイルズ「あの大型二機を吹き飛ばせば終了よ!俺、片方頼んだ!」 アビゲイル「じゃあ俺は右の奴ね。応援してるわ」 俺「おいおい、アレを一人でやれってか?」 大きな駆動音と共に近付いてくる大型陸戦型ネウロイ。 周りには陸戦型がちらちらと、上空には飛行杯をくっ付け、さながら戦艦の様にどろどろと近づいて来る。 マイルズ「安心しなさい。シャーロットを付けるわ」 シャーロット「ええええええ!!?わっ私!?」 俺「いよっしゃ!虎虎コンビの完成だな!!」 ペットゲン(ネーミングセンス……) マントを風に靡かせ、ティーガーの平面装甲を叩く。ちょっとへこんだが問題ない。 マイルズが上空の三人に合図を送り、素早く陣形を整える。 右の大型を俺、シャーロット、加東からの押しで稲垣の超火力で撃破。左をそれ以外の全員で撃破。 一部から反論が聞こえたがこの作戦が一番成功率が高い筈だ。 先行した左への部隊を見ながら『虎虎猫トリオ』がたたずむ。 隊長の俺がぐいぐい準備体操をする横で稲垣とシャーロットが弾の装填に勤しんでいた。 俺「野郎共!援護射撃開始!!俺はいいが、嬢ちゃん達には当てんなよ!」 稲垣「覚悟…完了です」 シャーロット「ja.いつでも行けるよ」 スタートの体勢を作り、炎を纏う。 突撃進路上にある障害物は約16。半分以上壊せば行ける。 俺「虎虎猫……ファレッズ、突貫!!」 稲垣・シャーロ「「了解!!」」 咆哮と共に砂を撒き散らし、大型との距離を一気に詰める。 途中陸戦が機銃を放って応戦してきたがマントを脱ぎ去り盾にして弾丸を防ぎ、更に速度を上げる。 ≪俺さん!後で修繕しますからマントは回収してください!!≫ ≪ルコー!前見て、前!!≫ ≪みゃあああああ!!?≫ 俺「馬鹿ルコ!自分の戦闘に集中しやがれ!!」 シャーロット「ちょっと向こうの奴等片付けて来る!俺はゆっくり来てね!」 稲垣「上空の飛行杯、残り5です!」 陣地から飛んでくる榴弾に陸戦を誘導して撃破する。 前を行ったシャーロットを見つつ、稲垣からの報告を付近の陸戦の爆風に乗って上昇して確認。 俺「おおっ意外と飛べるもんだな!」 稲垣「わあっ!?俺さん、掴まってください!」 俺「心配無用!!」 マントを使って爆風と共に上空に上がった俺は、二機の飛行杯に爪を立て、そのまま砂原に叩き落とす。 叩きつけられた二機が圧力で砕ける。俺は稲垣に合図を送りながら砂上の陸戦目掛けて落下する。 爆音が轟き、背後の陣地から歓声が上がる。 どうやら右の大型は撃破したらしい。残るネウロイは後僅か 稲垣「……地上への援護、開始します!」 俺「イナズマァ…キィーックゥ!!」 急降下からフルパワーで下にいた陸戦にキックを叩き込む。 エーテルの共振で辺りの5,6機が衝撃波に巻き込まれて爆発。しなやかに着地を決め、再び大型へと突進を開始する。 俺「…高いな……シャーロットォオ!!!」 シャーロット「俺!?…了解!ティーガーの砲身を台にしてね!」 稲垣「上空の飛行杯0!障害物無し!!」 ≪陸戦は全部私達に任せなさい!!≫ ≪行っけえ!そいつを倒して帰るわよ!≫ シャーロット「この辺かな……来ーい!俺ぇ!」 俺「いっくぜぇええええ!!!」 熱砂を踏み抜き、ティーガーの砲身へ飛び出す 大型まで数十m。高さは5mか 呼吸を整え、シャーロットは足の着くタイミングを見計らう。 足が着いた瞬間、唸りを上げてティーガーを操り、俺を大型の真っ正面に弾き飛ばす。 砲弾の如き速度で飛ばされた俺が、輝きを増す砲門に吸い寄せられる様に突っ込む。 響く鯨波を背に受けて、右腕を力の限り振りかぶる。 空間を占める黄金が煌めき、俺の右腕が輝きを増して行く 俺「喰らえよ鉄クズ!…喰いきれるモンならなァ!!」 赤い光が溢れると同時に金を纏った拳が砲門に突き刺さる。 衝撃と熱とが交差しながら無差別に空間を粉砕し、大型の装甲を引き剥がす。 相対する俺にも同様の衝撃が襲い来るが、微量の魔法力を操作し、拳と同じ膜を造りだして衝撃を相殺する。 肉を裂き、骨を砕く銅鑼如き衝撃波を体内で反響させ、尚も拳を突き出し、鉄の内部を喰い荒らす。 焼ける鉄を左手で掴み、体を支えながら炎熱に歪む最奥に手を伸ばし、コアを握り潰した。 俺「ハッ……てめぇの、敗けだ……!!」 白く爆ぜた空間を眼底に閉じ込め、俺は、爆風と共に熱砂に叩きつけられた。 「っつぅ~~…まーた湿布と包帯まみれの生活かよ……」 「無茶するからだ。まったく、これだから虎は…」ハァ 「るっせえ。しかしここは埃っぽいなァ…」 お古のBf109F-4Tropを二人でいじくり回す。きらきらと塵が昼の太陽に照らされ幻想的だがストライカーの魅力には劣る。 加東「あなた達がしっかり掃除すればいいだけの話でしょうが」ゴンッ 俺「カトー…功労者に向かって何すんだ!」 整備班長「いってぇえええ……氷野兵長に言いつけてやる!」 加東「ええい、ストライカー弄ってないで働け!ご飯あげないわよ!?」 整備班長「ひぃッ!それだけはご勘弁を!」 俺「ひどいぜカトー!腹と背中がくっ付きそうな位腹減ってんのに!」 加東「…あなた達の頭を殴ったのは何だったのかしら?」 両手に持った銀のお盆を二人の前に出す。 大盛りのミートボールスパゲッティに班長には水、俺には酒。 俺「…格納庫に閉じ籠るのも悪くない…だが、貴女と一緒にランチを食べる方が俺は嬉しいね」グッ 整備班長「ああ、麗しの少佐…毎日貴女にご飯を持って来ていただきたい」キラキラ 加東「ええい、手を握るのをやめろ!変な目線を送るなぁああ!!」ガンッゴガンッ!! 清掃班、整備班、設営班、観測班を中心に男達がバタバタと駆けまわる。 現在作戦はスパーチャージ作戦を経てエル・アラメイン攻略に成功。 貫徹で進められた作戦は昼前には終了し、ウィッチ、兵士達は治療、睡眠などを思い思いに取っていた。 基地を後退した際に残してきたロマーニャ軍基地に移し、長く砂に晒された内部、滑走路の清掃が慌ただしく進められている。 パットン「なんだ、こんなところで飯食ってたのか」 モンティ「おうおう、せっかく作戦が成功したってのに少なくないか?」 俺「あん?晩に食うからこん位で良いんだよ」 なるほどと言って俺の横に座る。 右から加東、整備班長、俺、パットン、モントゴメリーとすごいメンツだ。 格納庫に部品を搬入に来た兵士達がぎょっとして敬礼をしようと身構える。 俺「ハッハー、やめろい。飯食ってる時位面倒な事は無しだ」モグモグ パットン「阿呆が…儂より先に言うな」 加東「え、良いんですか?」 モンティ「構わんさ。そんな事よりこのミートボールうまいな」モッサモッサ 整備班長「あれ?ロンメル将軍は置いて来たのですか?」 先程から影も見えないロンメルに整備班長が気付く。 そう言えば今回は珍しく三人とも前線に出ず、後方の天幕で指令を送っていたらしいが。 モンティ「あいつならノイエ・カールスラントに帰ったぞ」 俺「…はぁ?」 唐突に告げられた言葉で固まる三人を尻目にモントゴメリーがうまそうにパスタを食べる。 パットン「おいおい固まるなよ。モンティ説明が足りんぞ」 モンティ「違うぞ?病気が少し悪化したから国に戻って治すらしい。それと本部への報告だ」 加東「…なるほど。いつ帰って来るんですか?」 モンティ「一、二週間はかかるだろうな…ああ、補給で欲しいものがあったら頼んで置いたらどうだ?買って来てくれるだろう」 整備班長「さすが我等の親父殿!懐の広さが違いますな!」ハッハッハ ソースを口にべったり付けた整備班長が笑う。 早速欲しい物をがりがりと万年筆で書きだす整備班長の横で俺が酒をあおった。 俺「ったく、体調が悪いなら先に言えってな」 加東「言わない誰かさんもいるけどね」 パットン「はっはっは!そうだな。まったくそうだ!」 俺「俺はいつでも健康だ」グビ モンティ「今回はどうしてもあいつがこの作戦だけでもと言うのでな…マルセイユ中尉の仇打ちと言った所か?」 今回の作戦の途中で離脱を余儀なくされたマルセイユ。 同国の者として、命令を下した者としては何としてでも責任を取りたかったのだろう。 軍港で船が見えなくなるまで注意事項などを叫んでいたロンメルを思い出すと笑いが込み上げてくる。 モンティ「ロンメルと入れ替わりにマルセイユ中尉が帰ってくる方が嬉しいがな」ムフフ 俺「そりゃ仕方ない。ロンメルには早く復帰してもらわねえとなァ」 加東のミートボールを奪いながら俺が答える。すかさず加東がボディブローを叩きこむ。 俺「い゙っ!?……カトォ…そこは縫ったとこだぞ?」 加東「私のミートボールを食べたあなたが悪い!返せ!楽しみに取っといたのに!」 俺「ハッハー!口移しで返してやろうか?」 加東「この…一人でアレクサンドリアまで言って来い!!」 爆笑する俺に加東がフォークを突き付ける。作戦のおかげでしっかりとしたご飯を食べていなかった為、 現在食欲に対する耐性は基地全体で下がっているのだ! 俺「ほら、パットンのミートボールやるから怒るなって」ヒョイ パットン「…俺、貴様少将に言いつけるぞ……?」 俺「はっはっは!最高だね!久しぶりに閣下に会えるぜ!」 加東「将軍、頂きます!」モグモグ パットン「…………」 モンティ「ほらパットン。これやるから……」つミートボール食べかけ パットン「……いらない」 ―――――――――――――――― ――――――――― 久しぶりの休息にぐたっと砂っぽい格納庫に寝転ぶ 周りでは加東とパットン、モンティが作戦会議と軍港への入港管理を、整備班長は整備兵達と共にタイガーバウムの組み立てを急いでいる。 整備班長「俺ー!寝てないで手伝え!」 俺「おう!もうちょっとか?」 整備班長「組み立てはそろそろ…残るは調整だ。ったく派手にぶっ壊しやがって」ガチャガチャ 俺「ハッハ、もともとオーバーホールの予定だったからいいじゃねえか」ガチャン 整備班長「前のは後20時間は飛べたの!それを……まあ中尉が助かったからいいけど…」 目の前に鎮座するタイガーバウムを整備班長が見上げる。 前回の出撃の際にエンジンから何から何まで壊れてのを聞いた少将が新しい部品を手配してくれたのだ。 「よくやった」と一言書かれた紙切れと共に。 それを見た俺が嬉しそうに頬を緩めていたのを思い出す。 まるで親に褒められた子どもだと思って、思いっ切り背中をブン殴ったのは良い思い出だ。 その所為でスパナを3つも犠牲にする破目になってしまったが…。 整備班長「そういやお前、戦闘時間が延びたな。少佐が驚いてたぞ?」 俺「まあな…魔法力の細かい配分をやってみたんだ。疲れるけどよ」 整備班長「良く出来たもんだ。これで作戦の幅が広くなるし……腕が鳴るぜ」ニシシ 俺「もうちょい改良しないとな…まったく女の子達はすごいよ」 整備班長「あの子達は普通にやってるしなぁ」 俺「ハッハ、弟子入りしないと……ん?」 急に俺が耳を出して上を見上げて目を細める いつもネウロイを探知する時と同じ動作に整備班長は思わず身構え、無線を取りだす 整備班長「…敵か?」 俺「…!ッハ、帰って来やがった!!」ダッ 整備班長「なっ、ネウロイが!?」 俺「馬鹿野郎!見ろ!!」 急いで報告を入れようとする整備班長の肩を叩いて外に連れ出し、びしりと天の一端を指差す。 黒い影ときらりと反射する太陽光、僅かに響くエンジンの音… 整備班長「……Ju…52!!」 俺「先に行くぜ!班長!」 再び肩を叩き、俺は飛ぶが如く滑走路へと駆けて行く。 他の兵士達も同様に空を見上げ、嬉しそうに笑い合っている…が、瞬時に青褪めて行く。 整備班長「…反射光が小さすぎる…?…まさか!!」 喧騒が大きくなる中、急いで双眼鏡を取りだして輸送機を見上げた。 加東「班長!まさか……」 整備班長「そのまさかですよ……!」 急いで駆けて来たこの人には超視力で見えているのだろう。窓の反射にしては小さい反射光…つまりゴーグルの反射光。 双眼鏡の向こう、Ju52側面の扉には少女が一人と必死に止めようとする兵士が二人。 何か大声で叫んでいるが少女は涼しい顔で受け流し軽々と大空へ飛び出した。 兵士a「しょ、将軍!飛びましたよ!!?」 パットン「ここの魔女達はなんて天真爛漫なんだ!!受け止めろ!」 加東「あんな破天荒なのは一人で充分です!」 モンティ「お前達受け止めろ!傷の一つも付けてくれるな!!」 兵士『イエッサァー!!』 付近にいた兵を滑走路へと向かわせるがどう受け止める?モントゴメリーは考えた。 慎重に、徹底的に、しかし考えている間にもどんどんと高度、速度は大地に迫る。 しかしその目が俺を捉えた瞬間、全てが杞憂である事を悟り、ポケットから葉巻を取り出した。 俺「お前等ぁ!道開けろォ!!」 道を塞ぐ兵士達を撥ね退け押し退け、濁流の如く走り、降って来る女神の真下に躍り出る。 抵抗を作るシールドから猛禽の鳴き声の様な音が溢れだし、巻き上げられた砂塵が辺りを埋め尽して行く。 俺「来いよハンナ!…俺の胸に飛び込んで来い!!」 声高く吼え、伸ばされた手を掴むように右手を天に掲げる。 空気が圧迫されて軋みだす。後少しまで詰まった距離の中で、彼女がゴーグルを取った。 輝く笑顔で飛び込んで来た女神に、全身に衝撃が走った。 受け止めた衝撃のまま、豪快に転んで背中を打ちつける。 うっと、息が詰まるが構わず、馬乗りになった彼女へ声を掛ける。 俺「おかえり、ハンナ」 マルセイユ「ふふん、ただいま」 腹辺りに馬乗りになった彼女の頭を撫でると、くすぐったそうに笑う。 楽しくて続けていると、起こした上体にむぎゅっと抱きついて来た。 マルセイユ「相変わらず傷だらけだな…聞いたぞ?生身で大型を仕留めたって」 俺「なんだ?もう情報が行ってるのか?」 マルセイユ「輸送機の中で聞いたんだ。さすがじゃないか」 俺「ハッハ、お前のいない間を任せられたんだぞ?これ位当然さ」ニシシ マルセイユ「だが勝ち逃げは良くないぞ?勝負だ。俺」 自信に満ちた顔でマルセイユがニッと笑う。早く飛びたくて仕方ないと言う様な雰囲気だった。 俺は愛機を壊してからずっと砂を蹴っていた事を思い出し、まったくと笑って答えた。 俺「おうよ、いつでも受けて立つぜ」 マルセイユ「そうと決まれば急ぐぞ。ほら立て」 俺「このままでもいいんだがなァ…」ニィ マルセイユ「…立て!」ベシッ 俺「ッふぐぅ゙!?」 俺の首に回していた手を解き、横っ腹に手刀を入れる もがき苦しむ俺を睨んで手を差し出す 俺「…っつ~…嬉しいなら嬉しいって言えよ…」マッタク マルセイユ「お前は何を言っているんだ!…ほら格納庫に行くぞ」 俺「あいよ……ハンナは一週間何してたんだ?」 返事の後、少し考え込むようにして一歩隣を歩くマルセイユに問う。 背後では輸送機が着陸したらしく、操縦士達の死にそうな声が聞こえてくる。 後ろの声にくつくつ笑いながら、彼女は少し考えて口を開いた。 マルセイユ「んー…始めは上に報告して、罰も何も無かったからそのまま契約に行った」ピョコン 俺「…先代と一緒か」モフモフ 出て来た耳羽をもふもふする。綺麗な鳥の子と鳶色の羽は若々しく、力強かった。 先代の様な神さびた雰囲気はまだ無いが、先代と同じく気高い艶を太陽光に輝かせる。 マルセイユ「くすぐったいからやめろ。それに、先代の子どもだからな」フフン 俺「そんな事もあるんだなぁ…しかし良かった」 再び頭を撫でる。しばらく会わないうちに随分と香が変わった様に思い、絹糸よりも綺麗な髪を指に絡ませた。 それを見たマルセイユは薄く頬を染め、あうあう言いながら言葉を探した。 マルセイユ「……その後は妹の見舞いに行ったり」 俺「妹がいるのか?」 意外な言葉に驚く。冗談ではなさそうだった。 よほど可愛いのだろう。マルセイユは慈しむ様に目を細めた。 マルセイユ「ああ、妹が一人に兄が一人、後は両親だ。妹は病弱でな」 俺「へぇ…歳はどの位離れてんだ?」 マルセイユ「私と二つだから…12歳だな。兄は17歳だ……お前っていくつだ?」 俺「ん?……あー…19位だな」 マルセイユ「適当な…」 一週間の出来事を簡単にぱらぱら話しているうちに格納庫に着いてしまう。 将軍二人も滑走路に駆けだしていた連中も、誰もがみんな集まって嬉しそうに笑っていた。 加東「遅い」 マルセイユ「ふふん、私が居なくて寂しかったか?ケイ」 加東「まったく…言いたい事は沢山あるけど、まとめるから感謝なさい」 せぇの!と加東が後ろに向かって声を掛ける。 その瞬間、今か今かと待っていた背後の全員が待ってましたと言わんばかりに口を開く。 『おかえりなさい!マルセイユ中尉!!』 マルセイユ「……ただいま」 照れくさそうにはにかんだマルセイユに兵士達が歓喜の雄叫びを上げた。 再び煮え滾る様な熱気が風に混ざる。 暑苦しく心地好い風が基地に帰って来た。 ――――――――――――――――――― ―――――――――――――― 息を一吹きするたびに、炎はその身をより大きく、強く輝かせる。 熱を、赤を、純粋な力を見せつける様に揺らぐ炎をまた、一吹き。 俺「カトー湯加減は?」 加東「もうちょい熱めが好みね」 俺「ったく、無茶した罰とかよぉ……素直に風呂に入りたかったって言えよ!」 加東「黙りなさい。動じないあなたにビックリよ!」 ドラム缶風呂の中の加東が必死に火を大きくする俺の頭をに湯をかける。 あの後マルセイユと模擬戦でもとタイガーバウムに飛び乗ろうとした俺を引き摺り、明日にしろと二人に説教。 その後俺にクーヘンを運転させ、見張りと言う名目で海辺に連れて来たのだ。 俺「あの時初心な反応見せといてそれ言うかァ?」 加東「…お盛んでしたね俺少尉」 俺「嫌がられた奴にまた手を出す程馬鹿じゃねえよ…こんなモンか?」 加東「バッチリよ……はふーお風呂最高!!」バシャン 俺「おうおう、そう言う親父くせえ事してっから男があっつぅ!!?」 加東「余計な事言う虎は洗わないとね」ザブザブ 熱くなったお湯が俺の頭にかかり、急いでゴーグルを掛けるが白く曇って役に立たない。 立ち上がって加東にうなる。 俺「カトォ!誰が水継ぎ足すと思ってんだ!!」 加東「あなたに決まってるでしょう?」 俺「………っち」 加東の目を見詰め、負けを悟った俺が草地に座る。 夕焼けが海に片足を突っ込み、夜は背後まで迫っていた。 加東「ねえ俺」 俺「んだよ」 加東「あなた、マルセイユの事好きなんでしょ?」 ばしゃっとお湯が揺れ、加東が俺の方を向く。 夕焼けに顔を染めた俺の表情が一瞬揺れたと思うと、すっと穏やかになった。 俺「………なんで分かった?」 加東「…あなたの目、幸せそうだったもの」 ――――――――――――――― ――――――――――― 診察室 整備班長「はぁ…こんなもので怪我するなんて……」 軍医「しかし良くできてますなぁ…」 軍医の日に焼けた手に握られているのは奇抜な色をした蛇。しかもかなりリアル。 やたら鱗も綺麗だし、すべすべだし…最近のおもちゃはすごい。 軍医「まあ、周りに注意を配っていればよろしい」 整備班長「ははは、申し訳ない」 ビックリして切ってしまった手にしっかりと包帯を巻いた班長が立ち上がり、扉に手を掛けた瞬間、バンと、扉が吹き飛ぶ。 整備班長「え…っちょ痛い、いったあああ!!?って中尉!?」 マルセイユ「ドクター…どうしようドクター……」 向こうに立っていたマルセイユが、手に思いっ切り扉があたってもだえる班長に手を貸しながら呟く。 やたら深刻な顔をしたマルセイユを整備班長が椅子に座らせ、その横で衛生兵から再び包帯を巻いてもらう。 軍医「どうかしましたか?中尉。ホームシックですかな?」 深く刻んだ皺を緩ませ、揃えた白髭を撫でながら穏やかに笑う。 たまにじじいと呼んでしまう軍医だがこういう余裕はさすが爺さんだと整備班長は思った。 そんな軍医にマルセイユが詰め寄り、一息に言い切った。 マルセイユ「どうしようドクター!私は病気なんだ!健康には気を使ってたのに!牛乳もたくさん飲んでたのに!!」 軍医「ふむ、どんな症状が出ますか」 真新しいカルテに名前とどんな様子かを万年筆で書き込む。 マルセイユは軽い怪我以外で来た事が無かった為、新しく作らなければならないのだ。 マルセイユ「その、俺といると気まずいんだ」 軍医「はて…仲はよろしい様に見えましたが……」 マルセイユ「一緒にいる時はそれほどじゃないんだが…なんだか恥ずかしいし…落ち着いてられないんだ!」 マルセイユ「手汗もかくし、鼻がツンとして、苦しくて、少し怖くて…それに……」 万年筆のペン先が歪む。インクが真っ白なカルテを染めていく。 軍医「……はい」 マルセイユ「…どきどきするんだ」 ほんのりと頬を染め、真っ向に軍医を見る。 後ろでは班長と衛生兵が間抜けた顔で固まっている。…いや、周りで聞き耳を立てていた全員が固まっていた。 窓の外の将軍も絶句したまま動かない。 軍医は溜息をつきながら真剣にこちらを見るマルセイユに結果を告げた。 軍医「…処方箋はありません。少尉のそばにいればよろしい」 マルセイユ「そ、それが出来ないから!」 軍医「大丈夫。戦闘では支障はありません」 マルセイユ「違う!私はっ!」 顔をばら色に染めたマルセイユが反論しようと肩を掴むが、軍医は楽しそうに目を細めて笑うだけ。 軍医「ほっほっほ…心配は要りません。その病気は、時間が治してくれますよ」 ――――――――――――――― ――――――――――― 海辺 俺「幸せ…か」 加東「ええ、マルセイユもあなたの事好きみたいだし……まさか手は―――」 俺「出さねぇさ。あいつまだ14だろ?」 加東「噂通りで安心したわ…」 俺「手を出せば良いってモンでもないしなァ」ファア 加東「そうね。さすが艶福家は違うわ」 俺「まあな」 眠そうに言葉を滑らせた俺が立ち上がる。 やっぱり背が高いなと、ぼんやりと考えながらその背中を見た。 そのまま夕焼けを眺める俺に声をかけようとした瞬間、低い囁きに遮られた。 俺「聞け、カトー」 加東「何?」 俺「最近、瘴気が濃くなってる…少しずつ、だがな」 加東「…巣が近いからじゃないの?」 俺「あ……そうか」 加東「あなたは本能のまま動いてた方が勘が利くわよ?」クスクス 俺「ハッハ、そうかもなァ」グビッ こちらの言葉を笑ってまた酒をあおる。 琥珀色のとろりとした液体が夕焼けを通し、ひどく儚く、幻想的に見えた。 加東「まっ、参考程度にはしておくわ。ありがとう」 俺「おうよ」 いきなり話を振っていつもの様に笑って終わらせる。 いつだって朗らかなこの男は、いったいどんな気持ちで周りを見渡しているのだろうか。 そう思って、加東は背中を見せたままの俺の顔をのぞいた。 ぴたりと、海風が止んだ。 ぞっとして俺の顔から目を離す。獣の眼だった。鋭く眼を細め、光る双眼が海を越えた欧州を睨み付けていた。 帰って来た風が、再び音を連れて来る。 俺の周りを蠢く見えない何かがうなりをあげた。 海の向こうに、まっくろい雲が見えた。 見渡せば各各に点在す黒。ときおり雷光を光らせながら不気味にさざめいていた。 寒い。この空間はヒトのいる空間ではない。点在する黒が揺らめき、虎を誘う。 圧倒的な黒に背筋が凍る。加東は言葉を忘れてその光景を見た。 激烈な黒が風に乗って夕日の赤を取り込む空の下、陸の金が牙を剥き天を威かす。 天に吼える愚か者。それは束の間、加東に魂の欠片を見せた。 ページ先頭へ
https://w.atwiki.jp/gcmatome/pages/6023.html
フラックアタック 【ふらっくあたっく】 ジャンル 縦スクロールシューティング 対応機種 アーケード 発売・開発元 コナミ 稼働開始日 1987年8月 配信 Game Room【Xbox360】2010年9月15日アーケードアーカイブス/838円(税込)【PS4】2016年3月25日【Switch】2020年4月9日 プレイ人数 1~2人(交代プレイ) 判定 なし ポイント 異様に熱いBGM当時の観点から見ても地味ゲー大自然の脅威 概要 システム 問題点 評価点 総評 余談 概要 コナミ発売の縦スクロールシューティングラフアニス国の最新鋭戦闘機「MX5000」(*1)(見た目は「F-15」戦闘機に酷似)を操り、世界制覇を目論むテザリス帝国の巨大中枢コンピュータ「Zeda-X」を破壊する事が目的となる。全10ステージだが、ステージ6~10は少し難易度が上がった2周目という形となり、実質、ステージ5までを2周する事でエンディングとなる。 システム 空中物を地上物を撃ち分ける『ゼビウス』タイプの縦スクロールシューティング。 本作独自の要素として経験値のようなパラメーターが存在し、空中物を破壊すると「PLANE」が、地上物を破壊すると「TANK」のメーターが伸びていき、満タンになるとメーターのリセットと共にパワーアップアイテムが画面上部より出現する。 あくまで出現するだけなので、アイテムを出した後、取る前にやられてしまうと経験値稼ぎをやり直すことに・・・。 ミスをした場合はメーターは持ち越されるが、パワーアップは全て失う。また、ステージをクリアするとメーターは全てスコアに換算されて0に戻る。 スクロールが固定されるボスシーンではメーターを満タンにしてもパワーアップは出てこないが、自機がやられた瞬間に出るという嫌がらせがある(当然メーターは0に戻る)。 パワーアップは三段階存在し、対空ショットはアイテムを取る度に「通常のショット」→「レーザー」→「ツインレーザー」とパワーアップする。 「レーザー」は『グラディウス(AC)』のようなレーザーではなく、貫通力のある短いレーザーを放つのでコンシューマー機版に近い。 対地ショットも同様に、「1-WAY」→「3-WAY」→「5-WAY」と三段階にパワーアップする。 敵を倒した際に「スピードアップ」を落とすことがあり、入手する事で自機のスピードを上げる事が出来る。 ステージの最後のボス戦では、自機が縮小し、360度動き回れるようになり、同社の『タイムパイロット』と似た操作性に変わる。 また、ボスは全て地上物なので対地ショットしか通用せず、対地攻撃が攻撃の要になるという変わったスタンスになっている。 問題点 当時の観点から見ても地味 同時期の同社のゲームの『グラディウスII』や『沙羅曼蛇』といった傑作や、本作の約4ヶ月後に出た同系統の『A-JAX』に比べると明らかにグラフィックやゲーム内容に差があり数年出遅れたゲームという印象を受ける。 ショットや爆発などは小さく、ド肝を抜くようなボスや演出は皆無。 前述の『A-JAX』は、本作同様の『ゼビウス』タイプのSTGだが「拡大縮小や回転面を駆使したド派手な演出」や「画面全体を覆うボンバー」といった要素がある為、本作は相対的に地味な印象を受けやすい。 盛り上がるはずのボスシーンも突然自機が小さくなってチョコマカ動くという印象でショボく感じてしまう。 STGとしての完成度も微妙な所がある 敵の種類が少なく、さらにはそのほぼ全ての敵が飛行機か戦車なのでバリエーションに乏しい。 敵のアルゴリズムも練り込みが甘く、「サインカーブを描くだけの戦闘機」や「バウンドしながら前に弾を撃つだけのヘリ」といった単調な動きばかりであり、プレイヤーを検知して動く敵は少ない。 また、多くのシューティングで見られる「あまりにプレイヤーが近くにいる場合は敵の出現を控える」「敵が完全に出現し終わるまで当たり判定がない」といった配慮がされていない事が多く、弾や敵の発生源に近づくのは自殺行為。 二周目にあたる6~10面もほとんど内容が同じなのでダレやすく、スクロールも遅めなので1ステージ1ステージが冗長に感じる。 復活がしづらい パワーアップしていない状態の自機が弱く、さらにはメーターを溜めきらなければパワーアップ出来ない為、復活は厳しめ。 特にボス戦でやられてしまうと対地攻撃の弱体化が響き、一気に難しくなる。 メーターの量が引き継がれるので、ミスを続けてもいずれはパワーアップのチャンスはあるのだがコンティニュー回数は有限なのであまり猶予はない。 一部の鬼畜なトラップ ステージ2(7)の火山地帯に入ると背景一面がマグマ地帯になり、溶岩弾がところ構わず現れて自機を襲ってくる仕掛けがある。 『グラディウス』におけるザブ的なものだが、溶岩弾が背景とほぼ同色なので見辛い上に、出始めから当たり判定があり、運悪く自機の真下に出ると即死。 ステージ3~4(8~9)では何の脈絡もなく画面全体を覆い尽くす雷があらわれ、当たると死亡。音を聞いてから避けるのは不可能なほど一瞬で画面を覆うので、ほぼ確実に殺される初見殺しの見本となっている。 どちらもパターンは固定で、安全地帯を覚えれば容易に抜けることはできるが、前述の通り唐突に起こるため初見の際は苦労することになる。 評価点 難易度は控えめ コナミのシューティングの中では難易度は易しい方。初心者でもワンコインで長時間遊べる作りとなっている。 パターンゲームではあるが敵弾の数や速度が控えめなため、初見でもさくさく進むことが出来る。 自機のパワーアップも強いのでパワーアップを維持できれば一方的に敵を倒す事が可能。 ボタンに連射機能がデフォルトでついているのも珍しく、押しっぱなしだけで適度な連射が効くので指にも優しい。 地上物も対地ショットの着弾点に合わせる必要はなく、飛んでいる弾に当たれば命中になる為、正確に狙わなくともよい点もゲームのハードルを下げている。 上述のように難はあるものの、バグやゲームとしての破綻部分はなく、ルールもシンプルなので遊びやすい。 BGMが神曲揃い 当時の他のコナミのSTGと同様にBGMの質が高く、特に本作は全てのBGMが良曲揃い。その為「BGMが異様にカッコイイ凡作」という評価を受けやすい。 火山地帯のステージ2では熱い曲が、ジャングル地帯のステージ3は軽快な曲が流れ、最終ステージボスではスクロールが固定する所でサビに入るといった、場面にマッチした上で様々な雰囲気のBGMが流れる。 1曲あたりのループも長めであり、冗長に感じるステージもBGMを思う存分聞くことが出来るので苦にならない。 本作と関係のない同社の『餓流禍』にもステージ5のBGMがアレンジされて使われたり(*2)、『セクシーパロディウス』のBGM「マニアック・オブ・シューティング」にもステージ1のBGMがチョイスされている。 曲を手掛けているのは『シティボンバー』や『ホットチェイス』、『Snake s Revenge』(NES)の曲も手掛けた小倉努氏 + 参考 (名曲揃いのBGM) http //www.nicovideo.jp/watch/sm6663825 総評 ゲームとしての完成度は高いとは言えないが、一部を除いて理不尽に難しすぎることもなくゲームとしての敷居は低め。 だが、同時期のコナミのゲームには良作が多く、その中に割って入れるほどのパンチ力がない事もたしかであり、 結局本作は「知る人ぞ知るマイナーなSTG」という立ち位置に収まってしまった。 余談 本作はなかなか移植やサントラに恵まれず、「ゲーム内容はイマイチでもBGMは神曲揃い」という点でカプコンの『アレスの翼』と似ている。 2010年にXbox360の「Game Room」の1タイトルとして移植されたが、肝心のBGMが著しく劣化した(音色がおかしく異様にスローテンポ)劣化移植であった。その後、「アーケードアーカイブス」にて移植され、こちらは良好な移植である。また、海外版である「MX5000」も収録されている。プレイするにはタイトル画面でコナミコマンドを入力するとタイトルが海外版に切り替わる。 自機「MX5000」は、『エアフォースデルタ ブルーウィングナイツ』に隠し機体として登場。本作の対地ショットをあちらのシステムに合わせアレンジした「マルチロックオンミサイル」を備える。
https://w.atwiki.jp/sekaihoukairpg/pages/35.html
フラックス・アシッド(Flux Acid) 【由来】flux(流転、融剤、溶剤)、acid(酸) 【題材】万物流転、日本人の高い協調性のデメリット、過去との対話、トラウマの直視、酸性雨、環境破壊 【様相】男、20歳、身長174㎝、翡翠色の瞳、黒髪、キリッとした端正な顔立ち、目は細め、芥川龍之介または長谷川博己さんのような雰囲気 【技能】妖刀「玉虫」、超能力「融解」 【性質】勤勉で潔癖症。殺人を犯した父グリムのことを憎みつつも、優しかった昔の父のことが常に脳裏にあった。夢中病の父を治す方法を探すため、ペリクル大学医学部へ進学する。 虹色の刃紋 刃紋のイメージ
https://w.atwiki.jp/vocaloid_utattemita/pages/185.html
ハト 代表的PV 原曲削除済 歌ってみた動画 【初音ミク】ハト【オリジナル】に萌えたので歌ってみた ぽてこ 07/12/22 【ハト】を歌わせていただいた@こなつぶ こなつぶ 07/12/22 『ハト』歌ってみた ver.あこ あこ 07/12/22 血迷ってマジメに『ハト』歌ってみた 変態姉 07/12/24 【初音ミク】ハト【オリジナル】を仲良く歌ってみた。 07/12/25 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/wolfpedia/pages/134.html
マイミスライムスレによく出没する舞美顔の珍獣。泣き声は「がぁ♪」だがめったに鳴かない。 恐らく舞美がかつて保険会社のアフラックのCMに出演したことに由来していると思われる。 (`ヾ""´) `(*・ゥ・) o(o,,uu 2009-03-17 02 22 11 (Tue)編集 タグ AA 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/animal_k/pages/73.html
ハト(鳩) ここではハトについて紹介していこうと思います。 ハトとは ハト目ハト科の総称。日本にはアオバト、カラスバト、キジバド、シラコバト、ドバトなどがいる。 寿命は10~20年ほどで環境状態さえそろえば年7、8回の繁殖が可能である。雑食。 平和の象徴というイメージが一般的だが軍事利用されていた事もある。 首を振って走る「首振り歩行」も特徴的である。 ハトの名前は羽音の「ハタハタ」という音から来てるといわれている。 ハトの文化 軍事利用として カワラバトを改良したドバトは、戦前・戦中の軍事用、戦後の一時期には報道用に伝書鳩として大いに活用された。 地磁気などにより方角を知る能力に優れているとされ、帰巣本能があるため 遠隔地まで連れて行ったハトに手紙などを持たせて放つ事によって、情報をいち早く伝えようとしたのである。 デンショバトは500~1000kmの距離を帰巣する能力を持っており、これについては 太陽コンパス説、 磁力説、視力説等の多くの学説があるが、まだ十分に解明されておらず、 定説はない。 ハトのお話 ハトは、その群れを成す性質から、オリーブと共に平和の象徴とされることもしばしばである。 これは旧約聖書のノアの方舟の伝説にも関係している。ノアは47日目にカラスを放ったがまだ水が乾く前であったからすぐに戻ってきたハトを放ったところ オリーブの葉を咥えて戻ってきた。これによりノアは水が引き始めたことを知ったと言う。 また、ギリシア神話においてハトは、愛と美の女神アプロディーテーの聖鳥とされていた他 イーアソーンを始めとする英雄たち(アルゴナウタイ)が乗るアルゴー船が、互いに離れたりぶつかり合ったりを繰り返す二つの巨岩シュムプレーガデスの間を通り抜ける際 試しにハトを通り抜けさせて安全を確認するエピソードや、狩人オーリーオーンがプレイアデス(巨神アトラースの七人娘たち)を追い回した際 それを不憫に思った主神ゼウスが彼女たちをハトに変え、更に星へと変えたエピソード等が存在する。 日本では、神社のおつかいとして(八幡さまのハトといわれるように)いにしえより親しまれてきたが、八幡様は戦の神様で かならずしも平和とは直接結びつかなかった。戦後西洋的価値観が入ってきて、タバコのピースのデザインのようにハト=平和のシンボルと言うイメージが定着した。 中国では鳥を放つと幸運が訪れるという民間信仰があり、祭事・祝い事の際にはハトを放つ習慣があったが 現在では都市部でハトが繁殖してしまっているため、放鳥が禁止されている地域もある。 首振り歩行 ハトは歩行時に首を前後に振りながら歩くことで知られている。この動作はハト科以外の多くの鳥でも見られるが ハト(特にドバト)は、警戒心が非常に弱く、歩いている状態で身近に見かける機会が多いため、多くの人々から「首を振る鳥」として認知されている。 この首振り歩行は、暗闇や、ベルトコンベア上を逆向きに歩かせたときは行われず 胴体が前進しているときでも頭部だけはなるべく長時間にわたって空間内で静止するよう首を前後させているため 視覚情報(あるいは聴覚、平衡感覚なども)を安定して得られるように行われているものと考えられている。 また、首振りのタイミングは、体重を片脚で支えている間も重心が安定する位置に来るようになっている。 それゆえに「安定して歩行するため」という説もあるが、ハトも高速での歩行時では首振りを行わないため、やや疑わしい。 ハトの歩行を連続写真に収めてみると見えてくることがある。まず、首を伸ばすときには後についた足で地面を蹴り 片足立ちのときには、首を縮めて頭部を空間的に静止させている。 このような歩き方をすると、歩行の効率と安定性が高まる。 片方の足で地面を蹴ると、左右に体が揺れたり回転したりする。 そこで、地面を蹴るときに首を勢いよく伸ばして進行方向の運動に勢いをつけると、揺れや回転を小さくすることができる。 片足立ちのときに頭を静止させていることも、安定性を高める効果がある。 なぜなら、頭には視覚や平衡感覚器である、目と内耳の三半規管があるからである。 頭が安定すると、これらの平衡感覚器への情報入力が正確になり、体のバランスを取りやすくなるからだ。 歩行と首振りの関係は詳しく言えばもっと複雑だが、単純にはこのような理由によって、首振りは歩行の安定性と効率を高めると考えられる。
https://w.atwiki.jp/oreqsw/pages/1065.html
野戦指令部天幕 大きなテーブルにこの辺り一帯の地図。 乾いた熱風が頬をこする中、卓上の古びたラジオからは穏やかな声と共にニュースが流れていた。 『引き続き、頭頂部の欠落が確認されたクフ王ピラミッドの情報をお送りいたします』 『第31統合飛行隊の報告により判明した今回の事件』 『確認したウィッチからの情報による「ネウロイの接触」の線が濃厚とエジプト政府は意見をまとめ』 『政府はアフリカ部隊へのより一層の支援を発表しております。しかし、目撃者によれば――――』 ロンメル「…見事なものだったな。キャップストーン」 モンティ「………そうだな」 パットン「…ああ、頂点から引き摺り下ろされて尚、美しい」 モンティ「ポエムを語っている暇があるなら指示を出さんか!!」 エル・アカキール ≪よう!どの位持ちそうだ!?≫ 少佐「分からん!だがここを押し返せば、エル・アラメインが見えるぞ!!」 ≪いよっしゃ、待ってろ!10秒で行ってやる!!!≫ 雑音混じりの通信を切り、少佐は火炎瓶の詰まった木箱に走る。 兵士の気力で保たれていたこの隊も、そろそろ限界が近い。 箱に手をかけた途端、壕の中に大地を揺るがす爆発音と切羽詰まった若者の叫びが響いた。 兵士A「指令!アハトアハトがもう…!!」 少佐「後10秒で虎が来る…総員突撃するぞ!!」 兵士A「…ッ了解!!」 少佐「俺も出る。他の隊に後れを取るなよ!そして死ぬな!今日はアフリカの星が帰って来るんだぞォ!!」 壕から駆け出し、弾丸の嵐へ飛び込む。 火炎瓶を放りながら駆ける指令に、男達は一様に頷き、喊声を上げて続く。 兵士C「中尉が帰って来るってのに死んでちゃもったいねえ!オラ、地雷持ってこい!」 兵士F「持ち堪えるぞ!防衛陣地を再構築!!怪我人を守れ!」 兵士D「アハトアハト後20門!撃ち惜しむなよ!んで避けろ!!」 兵士B「男の意地って奴を見せてやれ!接近してブチ込むぞ!」 兵士達が迫り来る陸戦型ネウロイに接近して地雷を叩きこむ。 熱砂を巻き上げ、唸りを上げて襲い来る機銃の波を越え、火炎瓶を多脚の隙間にぶつけながら走る。 立ち止まった瞬間撃ち抜かれる。極度の緊張と恐怖の中、陣地をじりじりと侵して行くネウロイの群れを縫って攻撃を当てる。 生き残る為に、この僅かな力が人類の未来を繋げると信じ、地雷で陸戦の装甲を弾き飛ばす。 絶妙なタイミングで放たれたアハトアハトの弾が陸戦と共に砂を抉った。 一人13体の陸戦を屠らなければこの師団は終わる。 隊が一つでも退けばエル・アラメインは攻略できない 少佐「馬鹿野郎、行き過ぎるな!後少しなんだぞ!!」 兵士B「気を抜いたら押し戻されます!少しでも、少しでも数を!!」 兵士F「五体満足で帰れたら万々歳さ!第3小隊、突っ込めぇえええ!!」 兵士I「やく…早く来てくれ虎ぁあああ!!!」 頭を掠めた弾丸に慄きながら兵士が叫ぶ。陸戦に突っ込んで行った仲間達が倒れ行く姿が陽炎に歪む。 ドロドロと音を立てて近寄る陸戦に、無意識に涙が溢れた。 兵士E「畜生!!こんなに長い10秒は始めてだ!後いくつだ!?」 絶望を吐きだす様に天に叫ぶ。1秒が鉛を背負っているかの様に重く、苦しかった。 目の前から目を逸らし見た砂原の果てより、刹那、金色が瞳に映る 「待たせたな!兄弟!!」 轟と唸る風より早く、眼前の陸戦に金色の虎が襲いかかった。 真っ向からの拳を理解できぬまま陸戦は装甲を喰い破られ、弾ける火花がEの視界を埋める。 兵士E「はっ…馬鹿野郎、早かったじゃねえか……!」 崩れ落ちながら強がるEを一瞥し、俺は鋭い牙をぎらつかせて笑う。 俺「さすが俺の兄弟達だ…その心意気や良し!」 ぎちぎちと陸戦が俺の腕を体内に残したまま再生を開始する。 赤い光が点滅を繰り返し、ネウロイは俺から逃れようとその身を捻じる。 俺「おおおおおおおおお!!!」 僅かな動きも、逃げる事も、倒れる事も許さず、俺が鉄の体を抉りながらコアを握る。そのコアを握りしめ、唸りを上げて腕を抜き去る。 その勢いに吹き飛ばされた陸戦は、砂に飛び込んだ瞬間砕け散った。 この作戦の為に補充された兵達にとっては始めて見る虎の戦闘。全てを蹂躙する圧倒的な力。 目を剥いて俺の戦闘を見る兵達の目に再び闘志が揺らぎだす。 兵士G「す、すげえ…」 少佐「良く見ていろ、お前達。アイツこそが今のアフリカを支える要が一人…」 掌に掴んだままのコアを捻り潰し、今だ戦闘を続ける陸戦に向かって吼え猛る。 唸りを上げる大気を纏い、迫り来る陸戦に牙を剥く。 少年に帰った様な瞳で俺を見る兵士達に少佐が誇らしげに続けた。 少佐「ロマーニャの虎…俺少尉だ!」 俺「行くぞ、兄弟!何も考えずに着いて来い!!」 咆哮に続いて起こった鯨波を背に、数多と蔓延る黒の渦に飛び込む。 右に左に上に前。全ての陸戦と飛行杯の照準が己に向くのを肌で感じ、虎は口角を上げた。 俺「ハッハー、大歓迎って奴だな…嬉しいねェ!!」 兵士B「少尉!後ろは我々にお任せを!」 兵士E「おうよ!まっ、マルセイユ中尉とまでは行かねえがな!!」 背後に立つ大勢の兵が気合充分に叫び、武器を構えて不敵に笑う。 俺「当然!さあ、嬢ちゃん達が来る前に終わらせるぞ!!」 砂埃の中蠢く陸戦に、腰のベルトからポテトマッシャーを取り出し放る。爆発で吹き飛ぶ脚やら欠片はマントで防ぐ。 後ろから悲鳴が聞こえたが何とかなるだろう。罵声も聞こえるし。 兵士D「虎てめぇ、死ぬだろうがあああ!!」 兵士C「バカヤロー!お前の所為で死んだらかーちゃんになんて言えばいいんだ!!」 俺「叫ぶ元気があるなら投げろ!オラ左だぁああ!!」 火炎瓶と地雷の飛び交う中で、砂塵に紛れた飛行杯が地上への掃射を開始する。 急いで射程内でスコップを振っていたCの首根っこを引っ掴んでブン投げ、再びベルトからポテトマッシャーを投げて爆破する。 俺「ッハァ、危ねえな!」 兵士C「ゲホッ…はっ、助かった……」 俺「少佐!地上への砲撃増やせ!なーに、こいつ等は気合で避けらぁ!」 インカムを叩いて陣地で指揮を執る少佐に吼え、空を隠す飛行杯を睨み付ける。 丁度陸上競技のスタートの形を取り、ふうっと息を吐く。 兵士I「えっ少尉!?」 俺「俺は―――制空権を獲って来る!!」 思い切り砂を蹴り、風を引き連れ、弾をばら撒きながら走る陸戦にジグザグに進路を変えながら突進する。 足元に弾丸が刺さっても頬を裂いても尚速く。目の前で機銃を放つ陸戦の前面に飛び乗った。 軍靴は装甲に沈み、ごしゃりと歪な音が鳴る。 脚の筋肉を縮小させ、金の炎を脚全体に灯す。そのまま上空の飛行杯に狙いを定め、全身の筋肉をしならせ跳ね上がった。 踏み台にされた陸戦が板金で捻じ曲げた様な形で砂に叩き伏せられたのが脚から伝わる。 風が唸る。大気の擦れが耳に届く。それさえも構わず空を、天に居座る飛行杯を目掛けて一直線に飛ぶ。 突然大砲の様に飛んで来た物体に、驚き揺れる飛行杯の上にがんと飛び乗る。 急な重さに高度を下げ、日後輩が暴れるが、俺は器用に尾でバランスを取りながら黒い鋼に鉤爪を突き立てる。 俺「激しいのがお好みかァ?……ッハァ、お望み通り、激しくしてやるよ!!」 燃える輝きと共に前肢に力を込めて更に爪を深く立て、黒い鋼を力任せに引き裂く。 眼下に輝く赤い塊を踏み砕き、再び金色を纏う。 崩れ始めた飛行杯を蹴り、近くの飛行杯にしなやかに飛び出した。 黒い鋼に爪を立て、辺りを見渡す。 俺「チッ、掃いて捨てる程いやがる。将軍達もここまで計算して無かったか…」 ≪ストライカーも無しに飛ぶ人間も計算外だよ!!≫ 突然頼りの飛行杯に弾丸が突き刺さる。 砕け散る前に慌てて違う飛行杯へと飛び出し、脚部分にぶら下がった。 俺「わったった…ライーサ?もう終わっちまったのかよ!?」 ≪他の地区は全部攻略完了。ここが最後!ケイ、先に行くね!≫ ≪今全部隊がここに向かって来てます!…ケイさん!≫ ≪分かってる。制空権を一気に獲るわよ!地上部隊!気合入れて行け!!≫ 少佐「……ありがたい!聞いたかお前達!かわい子ちゃん達が俺達の為に来てくれるぞ!!」 兵士「「「「「「イェアアアアアアアアア!!!!」」」」」」 砲撃音が再び激しくなり、ネウロイ達を押し返して行く。 俺「ハッ、現金な奴らだぜ…マミ!コイツを撃ち落とせ!」 ≪ええ!?俺さんがくっ付いてて危な――――≫ 俺「ハッハッハ!射撃の腕は上がってるはずだぜ?ほら、撃ってみろ!」 ≪大丈夫よ真美。アハトアハト位じゃ俺は死なないわ≫ ≪……了解です。しっかり避けてくださいね≫ ≪行くわよ……発射!!≫ 歪む陽炎から飛び出した弾が上で暴れる飛行杯の上半分を吹き飛ばす。 連戦の疲れもあるのだろう。だが着々と命中に近付く弾痕に口元を緩める。 ≪あ……また……≫ 俺「安心しろ。コアが出た」 そう言ってコアを砕こうと拳を作った瞬間、俺のぶら下がる飛行杯に槍が突き刺さる。 ばちりと大きく火花を散らすと、飛行杯は落下しながら黒い体を白へと変える。 ≪慢心は死を招くぞ、虎≫ 俺「マティルダ!?ッお前の攻撃で死にそうだ!!」 ≪そんなんで死なれちゃ困るわ。全車、行進!!≫ 一際大きくなった喊声に落下しながら下を見れば、次々と陸戦を撃破していく陸の魔女達の姿。 そしてスリングで陸戦を破壊するマティルダが見えた。 俺「お前等……良く来た、なッ!!」 彼女の前に飛び出した陸戦を、抜いた槍で重力と共に串刺しにする。 連鎖する様な爆発音と共に砕ける装甲の上から素早く飛び去り、マティルダの隣に着地した。 マティルダ「鷲の使いの命が無ければ何もしない…槍を返せ」 俺「あいよ。んー…もう一仕事ってとこか?」 マイルズ「あの大型二機を吹き飛ばせば終了よ!俺、片方頼んだ!」 アビゲイル「じゃあ俺は右の奴ね。応援してるわ」 俺「おいおい、アレを一人でやれってか?」 大きな駆動音と共に近付いてくる大型陸戦型ネウロイ。 周りには陸戦型がちらちらと、上空には飛行杯をくっ付け、さながら戦艦の様にどろどろと近づいて来る。 マイルズ「安心しなさい。シャーロットを付けるわ」 シャーロット「ええええええ!!?わっ私!?」 俺「いよっしゃ!虎虎コンビの完成だな!!」 ペットゲン(ネーミングセンス……) マントを風に靡かせ、ティーガーの平面装甲を叩く。ちょっとへこんだが問題ない。 マイルズが上空の三人に合図を送り、素早く陣形を整える。 右の大型を俺、シャーロット、加東からの押しで稲垣の超火力で撃破。左をそれ以外の全員で撃破。 一部から反論が聞こえたがこの作戦が一番成功率が高い筈だ。 先行した左への部隊を見ながら『虎虎猫トリオ』がたたずむ。 隊長の俺がぐいぐい準備体操をする横で稲垣とシャーロットが弾の装填に勤しんでいた。 俺「野郎共!援護射撃開始!!俺はいいが、嬢ちゃん達には当てんなよ!」 稲垣「覚悟…完了です」 シャーロット「ja.いつでも行けるよ」 スタートの体勢を作り、炎を纏う。 突撃進路上にある障害物は約16。半分以上壊せば行ける。 俺「虎虎猫……ファレッズ、突貫!!」 稲垣・シャーロ「「了解!!」」 咆哮と共に砂を撒き散らし、大型との距離を一気に詰める。 途中陸戦が機銃を放って応戦してきたがマントを脱ぎ去り盾にして弾丸を防ぎ、更に速度を上げる。 ≪俺さん!後で修繕しますからマントは回収してください!!≫ ≪ルコー!前見て、前!!≫ ≪みゃあああああ!!?≫ 俺「馬鹿ルコ!自分の戦闘に集中しやがれ!!」 シャーロット「ちょっと向こうの奴等片付けて来る!俺はゆっくり来てね!」 稲垣「上空の飛行杯、残り5です!」 陣地から飛んでくる榴弾に陸戦を誘導して撃破する。 前を行ったシャーロットを見つつ、稲垣からの報告を付近の陸戦の爆風に乗って上昇して確認。 俺「おおっ意外と飛べるもんだな!」 稲垣「わあっ!?俺さん、掴まってください!」 俺「心配無用!!」 マントを使って爆風と共に上空に上がった俺は、二機の飛行杯に爪を立て、そのまま砂原に叩き落とす。 叩きつけられた二機が圧力で砕ける。俺は稲垣に合図を送りながら砂上の陸戦目掛けて落下する。 爆音が轟き、背後の陣地から歓声が上がる。 どうやら右の大型は撃破したらしい。残るネウロイは後僅か 稲垣「……地上への援護、開始します!」 俺「イナズマァ…キィーックゥ!!」 急降下からフルパワーで下にいた陸戦にキックを叩き込む。 エーテルの共振で辺りの5,6機が衝撃波に巻き込まれて爆発。しなやかに着地を決め、再び大型へと突進を開始する。 俺「…高いな……シャーロットォオ!!!」 シャーロット「俺!?…了解!ティーガーの砲身を台にしてね!」 稲垣「上空の飛行杯0!障害物無し!!」 ≪陸戦は全部私達に任せなさい!!≫ ≪行っけえ!そいつを倒して帰るわよ!≫ シャーロット「この辺かな……来ーい!俺ぇ!」 俺「いっくぜぇええええ!!!」 熱砂を踏み抜き、ティーガーの砲身へ飛び出す 大型まで数十m。高さは5mか 呼吸を整え、シャーロットは足の着くタイミングを見計らう。 足が着いた瞬間、唸りを上げてティーガーを操り、俺を大型の真っ正面に弾き飛ばす。 砲弾の如き速度で飛ばされた俺が、輝きを増す砲門に吸い寄せられる様に突っ込む。 響く鯨波を背に受けて、右腕を力の限り振りかぶる。 空間を占める黄金が煌めき、俺の右腕が輝きを増して行く 俺「喰らえよ鉄クズ!…喰いきれるモンならなァ!!」 赤い光が溢れると同時に金を纏った拳が砲門に突き刺さる。 衝撃と熱とが交差しながら無差別に空間を粉砕し、大型の装甲を引き剥がす。 相対する俺にも同様の衝撃が襲い来るが、微量の魔法力を操作し、拳と同じ膜を造りだして衝撃を相殺する。 肉を裂き、骨を砕く銅鑼如き衝撃波を体内で反響させ、尚も拳を突き出し、鉄の内部を喰い荒らす。 焼ける鉄を左手で掴み、体を支えながら炎熱に歪む最奥に手を伸ばし、コアを握り潰した。 俺「ハッ……てめぇの、敗けだ……!!」 白く爆ぜた空間を眼底に閉じ込め、俺は、爆風と共に熱砂に叩きつけられた。 「っつぅ~~…まーた湿布と包帯まみれの生活かよ……」 「無茶するからだ。まったく、これだから虎は…」ハァ 「るっせえ。しかしここは埃っぽいなァ…」 お古のBf109F-4Tropを二人でいじくり回す。きらきらと塵が昼の太陽に照らされ幻想的だがストライカーの魅力には劣る。 加東「あなた達がしっかり掃除すればいいだけの話でしょうが」ゴンッ 俺「カトー…功労者に向かって何すんだ!」 整備班長「いってぇえええ……氷野兵長に言いつけてやる!」 加東「ええい、ストライカー弄ってないで働け!ご飯あげないわよ!?」 整備班長「ひぃッ!それだけはご勘弁を!」 俺「ひどいぜカトー!腹と背中がくっ付きそうな位腹減ってんのに!」 加東「…あなた達の頭を殴ったのは何だったのかしら?」 両手に持った銀のお盆を二人の前に出す。 大盛りのミートボールスパゲッティに班長には水、俺には酒。 俺「…格納庫に閉じ籠るのも悪くない…だが、貴女と一緒にランチを食べる方が俺は嬉しいね」グッ 整備班長「ああ、麗しの少佐…毎日貴女にご飯を持って来ていただきたい」キラキラ 加東「ええい、手を握るのをやめろ!変な目線を送るなぁああ!!」ガンッゴガンッ!! 清掃班、整備班、設営班、観測班を中心に男達がバタバタと駆けまわる。 現在作戦はスパーチャージ作戦を経てエル・アラメイン攻略に成功。 貫徹で進められた作戦は昼前には終了し、ウィッチ、兵士達は治療、睡眠などを思い思いに取っていた。 基地を後退した際に残してきたロマーニャ軍基地に移し、長く砂に晒された内部、滑走路の清掃が慌ただしく進められている。 パットン「なんだ、こんなところで飯食ってたのか」 モンティ「おうおう、せっかく作戦が成功したってのに少なくないか?」 俺「あん?晩に食うからこん位で良いんだよ」 なるほどと言って俺の横に座る。 右から加東、整備班長、俺、パットン、モントゴメリーとすごいメンツだ。 格納庫に部品を搬入に来た兵士達がぎょっとして敬礼をしようと身構える。 俺「ハッハー、やめろい。飯食ってる時位面倒な事は無しだ」モグモグ パットン「阿呆が…儂より先に言うな」 加東「え、良いんですか?」 モンティ「構わんさ。そんな事よりこのミートボールうまいな」モッサモッサ 整備班長「あれ?ロンメル将軍は置いて来たのですか?」 先程から影も見えないロンメルに整備班長が気付く。 そう言えば今回は珍しく三人とも前線に出ず、後方の天幕で指令を送っていたらしいが。 モンティ「あいつならノイエ・カールスラントに帰ったぞ」 俺「…はぁ?」 唐突に告げられた言葉で固まる三人を尻目にモントゴメリーがうまそうにパスタを食べる。 パットン「おいおい固まるなよ。モンティ説明が足りんぞ」 モンティ「違うぞ?病気が少し悪化したから国に戻って治すらしい。それと本部への報告だ」 加東「…なるほど。いつ帰って来るんですか?」 モンティ「一、二週間はかかるだろうな…ああ、補給で欲しいものがあったら頼んで置いたらどうだ?買って来てくれるだろう」 整備班長「さすが我等の親父殿!懐の広さが違いますな!」ハッハッハ ソースを口にべったり付けた整備班長が笑う。 早速欲しい物をがりがりと万年筆で書きだす整備班長の横で俺が酒をあおった。 俺「ったく、体調が悪いなら先に言えってな」 加東「言わない誰かさんもいるけどね」 パットン「はっはっは!そうだな。まったくそうだ!」 俺「俺はいつでも健康だ」グビ モンティ「今回はどうしてもあいつがこの作戦だけでもと言うのでな…マルセイユ中尉の仇打ちと言った所か?」 今回の作戦の途中で離脱を余儀なくされたマルセイユ。 同国の者として、命令を下した者としては何としてでも責任を取りたかったのだろう。 軍港で船が見えなくなるまで注意事項などを叫んでいたロンメルを思い出すと笑いが込み上げてくる。 モンティ「ロンメルと入れ替わりにマルセイユ中尉が帰ってくる方が嬉しいがな」ムフフ 俺「そりゃ仕方ない。ロンメルには早く復帰してもらわねえとなァ」 加東のミートボールを奪いながら俺が答える。すかさず加東がボディブローを叩きこむ。 俺「い゙っ!?……カトォ…そこは縫ったとこだぞ?」 加東「私のミートボールを食べたあなたが悪い!返せ!楽しみに取っといたのに!」 俺「ハッハー!口移しで返してやろうか?」 加東「この…一人でアレクサンドリアまで言って来い!!」 爆笑する俺に加東がフォークを突き付ける。作戦のおかげでしっかりとしたご飯を食べていなかった為、 現在食欲に対する耐性は基地全体で下がっているのだ! 俺「ほら、パットンのミートボールやるから怒るなって」ヒョイ パットン「…俺、貴様少将に言いつけるぞ……?」 俺「はっはっは!最高だね!久しぶりに閣下に会えるぜ!」 加東「将軍、頂きます!」モグモグ パットン「…………」 モンティ「ほらパットン。これやるから……」つミートボール食べかけ パットン「……いらない」 ―――――――――――――――― ――――――――― 久しぶりの休息にぐたっと砂っぽい格納庫に寝転ぶ 周りでは加東とパットン、モンティが作戦会議と軍港への入港管理を、整備班長は整備兵達と共にタイガーバウムの組み立てを急いでいる。 整備班長「俺ー!寝てないで手伝え!」 俺「おう!もうちょっとか?」 整備班長「組み立てはそろそろ…残るは調整だ。ったく派手にぶっ壊しやがって」ガチャガチャ 俺「ハッハ、もともとオーバーホールの予定だったからいいじゃねえか」ガチャン 整備班長「前のは後20時間は飛べたの!それを……まあ中尉が助かったからいいけど…」 目の前に鎮座するタイガーバウムを整備班長が見上げる。 前回の出撃の際にエンジンから何から何まで壊れてのを聞いた少将が新しい部品を手配してくれたのだ。 「よくやった」と一言書かれた紙切れと共に。 それを見た俺が嬉しそうに頬を緩めていたのを思い出す。 まるで親に褒められた子どもだと思って、思いっ切り背中をブン殴ったのは良い思い出だ。 その所為でスパナを3つも犠牲にする破目になってしまったが…。 整備班長「そういやお前、戦闘時間が延びたな。少佐が驚いてたぞ?」 俺「まあな…魔法力の細かい配分をやってみたんだ。疲れるけどよ」 整備班長「良く出来たもんだ。これで作戦の幅が広くなるし……腕が鳴るぜ」ニシシ 俺「もうちょい改良しないとな…まったく女の子達はすごいよ」 整備班長「あの子達は普通にやってるしなぁ」 俺「ハッハ、弟子入りしないと……ん?」 急に俺が耳を出して上を見上げて目を細める いつもネウロイを探知する時と同じ動作に整備班長は思わず身構え、無線を取りだす 整備班長「…敵か?」 俺「…!ッハ、帰って来やがった!!」ダッ 整備班長「なっ、ネウロイが!?」 俺「馬鹿野郎!見ろ!!」 急いで報告を入れようとする整備班長の肩を叩いて外に連れ出し、びしりと天の一端を指差す。 黒い影ときらりと反射する太陽光、僅かに響くエンジンの音… 整備班長「……Ju…52!!」 俺「先に行くぜ!班長!」 再び肩を叩き、俺は飛ぶが如く滑走路へと駆けて行く。 他の兵士達も同様に空を見上げ、嬉しそうに笑い合っている…が、瞬時に青褪めて行く。 整備班長「…反射光が小さすぎる…?…まさか!!」 喧騒が大きくなる中、急いで双眼鏡を取りだして輸送機を見上げた。 加東「班長!まさか……」 整備班長「そのまさかですよ……!」 急いで駆けて来たこの人には超視力で見えているのだろう。窓の反射にしては小さい反射光…つまりゴーグルの反射光。 双眼鏡の向こう、Ju52側面の扉には少女が一人と必死に止めようとする兵士が二人。 何か大声で叫んでいるが少女は涼しい顔で受け流し軽々と大空へ飛び出した。 兵士a「しょ、将軍!飛びましたよ!!?」 パットン「ここの魔女達はなんて天真爛漫なんだ!!受け止めろ!」 加東「あんな破天荒なのは一人で充分です!」 モンティ「お前達受け止めろ!傷の一つも付けてくれるな!!」 兵士『イエッサァー!!』 付近にいた兵を滑走路へと向かわせるがどう受け止める?モントゴメリーは考えた。 慎重に、徹底的に、しかし考えている間にもどんどんと高度、速度は大地に迫る。 しかしその目が俺を捉えた瞬間、全てが杞憂である事を悟り、ポケットから葉巻を取り出した。 俺「お前等ぁ!道開けろォ!!」 道を塞ぐ兵士達を撥ね退け押し退け、濁流の如く走り、降って来る女神の真下に躍り出る。 抵抗を作るシールドから猛禽の鳴き声の様な音が溢れだし、巻き上げられた砂塵が辺りを埋め尽して行く。 俺「来いよハンナ!…俺の胸に飛び込んで来い!!」 声高く吼え、伸ばされた手を掴むように右手を天に掲げる。 空気が圧迫されて軋みだす。後少しまで詰まった距離の中で、彼女がゴーグルを取った。 輝く笑顔で飛び込んで来た女神に、全身に衝撃が走った。 受け止めた衝撃のまま、豪快に転んで背中を打ちつける。 うっと、息が詰まるが構わず、馬乗りになった彼女へ声を掛ける。 俺「おかえり、ハンナ」 マルセイユ「ふふん、ただいま」 腹辺りに馬乗りになった彼女の頭を撫でると、くすぐったそうに笑う。 楽しくて続けていると、起こした上体にむぎゅっと抱きついて来た。 マルセイユ「相変わらず傷だらけだな…聞いたぞ?生身で大型を仕留めたって」 俺「なんだ?もう情報が行ってるのか?」 マルセイユ「輸送機の中で聞いたんだ。さすがじゃないか」 俺「ハッハ、お前のいない間を任せられたんだぞ?これ位当然さ」ニシシ マルセイユ「だが勝ち逃げは良くないぞ?勝負だ。俺」 自信に満ちた顔でマルセイユがニッと笑う。早く飛びたくて仕方ないと言う様な雰囲気だった。 俺は愛機を壊してからずっと砂を蹴っていた事を思い出し、まったくと笑って答えた。 俺「おうよ、いつでも受けて立つぜ」 マルセイユ「そうと決まれば急ぐぞ。ほら立て」 俺「このままでもいいんだがなァ…」ニィ マルセイユ「…立て!」ベシッ 俺「ッふぐぅ゙!?」 俺の首に回していた手を解き、横っ腹に手刀を入れる もがき苦しむ俺を睨んで手を差し出す 俺「…っつ~…嬉しいなら嬉しいって言えよ…」マッタク マルセイユ「お前は何を言っているんだ!…ほら格納庫に行くぞ」 俺「あいよ……ハンナは一週間何してたんだ?」 返事の後、少し考え込むようにして一歩隣を歩くマルセイユに問う。 背後では輸送機が着陸したらしく、操縦士達の死にそうな声が聞こえてくる。 後ろの声にくつくつ笑いながら、彼女は少し考えて口を開いた。 マルセイユ「んー…始めは上に報告して、罰も何も無かったからそのまま契約に行った」ピョコン 俺「…先代と一緒か」モフモフ 出て来た耳羽をもふもふする。綺麗な鳥の子と鳶色の羽は若々しく、力強かった。 先代の様な神さびた雰囲気はまだ無いが、先代と同じく気高い艶を太陽光に輝かせる。 マルセイユ「くすぐったいからやめろ。それに、先代の子どもだからな」フフン 俺「そんな事もあるんだなぁ…しかし良かった」 再び頭を撫でる。しばらく会わないうちに随分と香が変わった様に思い、絹糸よりも綺麗な髪を指に絡ませた。 それを見たマルセイユは薄く頬を染め、あうあう言いながら言葉を探した。 マルセイユ「……その後は妹の見舞いに行ったり」 俺「妹がいるのか?」 意外な言葉に驚く。冗談ではなさそうだった。 よほど可愛いのだろう。マルセイユは慈しむ様に目を細めた。 マルセイユ「ああ、妹が一人に兄が一人、後は両親だ。妹は病弱でな」 俺「へぇ…歳はどの位離れてんだ?」 マルセイユ「私と二つだから…12歳だな。兄は17歳だ……お前っていくつだ?」 俺「ん?……あー…19位だな」 マルセイユ「適当な…」 一週間の出来事を簡単にぱらぱら話しているうちに格納庫に着いてしまう。 将軍二人も滑走路に駆けだしていた連中も、誰もがみんな集まって嬉しそうに笑っていた。 加東「遅い」 マルセイユ「ふふん、私が居なくて寂しかったか?ケイ」 加東「まったく…言いたい事は沢山あるけど、まとめるから感謝なさい」 せぇの!と加東が後ろに向かって声を掛ける。 その瞬間、今か今かと待っていた背後の全員が待ってましたと言わんばかりに口を開く。 『おかえりなさい!マルセイユ中尉!!』 マルセイユ「……ただいま」 照れくさそうにはにかんだマルセイユに兵士達が歓喜の雄叫びを上げた。 再び煮え滾る様な熱気が風に混ざる。 暑苦しく心地好い風が基地に帰って来た。 ――――――――――――――――――― ―――――――――――――― 息を一吹きするたびに、炎はその身をより大きく、強く輝かせる。 熱を、赤を、純粋な力を見せつける様に揺らぐ炎をまた、一吹き。 俺「カトー湯加減は?」 加東「もうちょい熱めが好みね」 俺「ったく、無茶した罰とかよぉ……素直に風呂に入りたかったって言えよ!」 加東「黙りなさい。動じないあなたにビックリよ!」 ドラム缶風呂の中の加東が必死に火を大きくする俺の頭をに湯をかける。 あの後マルセイユと模擬戦でもとタイガーバウムに飛び乗ろうとした俺を引き摺り、明日にしろと二人に説教。 その後俺にクーヘンを運転させ、見張りと言う名目で海辺に連れて来たのだ。 俺「あの時初心な反応見せといてそれ言うかァ?」 加東「…お盛んでしたね俺少尉」 俺「嫌がられた奴にまた手を出す程馬鹿じゃねえよ…こんなモンか?」 加東「バッチリよ……はふーお風呂最高!!」バシャン 俺「おうおう、そう言う親父くせえ事してっから男があっつぅ!!?」 加東「余計な事言う虎は洗わないとね」ザブザブ 熱くなったお湯が俺の頭にかかり、急いでゴーグルを掛けるが白く曇って役に立たない。 立ち上がって加東にうなる。 俺「カトォ!誰が水継ぎ足すと思ってんだ!!」 加東「あなたに決まってるでしょう?」 俺「………っち」 加東の目を見詰め、負けを悟った俺が草地に座る。 夕焼けが海に片足を突っ込み、夜は背後まで迫っていた。 加東「ねえ俺」 俺「んだよ」 加東「あなた、マルセイユの事好きなんでしょ?」 ばしゃっとお湯が揺れ、加東が俺の方を向く。 夕焼けに顔を染めた俺の表情が一瞬揺れたと思うと、すっと穏やかになった。 俺「………なんで分かった?」 加東「…あなたの目、幸せそうだったもの」 ――――――――――――――― ――――――――――― 診察室 整備班長「はぁ…こんなもので怪我するなんて……」 軍医「しかし良くできてますなぁ…」 軍医の日に焼けた手に握られているのは奇抜な色をした蛇。しかもかなりリアル。 やたら鱗も綺麗だし、すべすべだし…最近のおもちゃはすごい。 軍医「まあ、周りに注意を配っていればよろしい」 整備班長「ははは、申し訳ない」 ビックリして切ってしまった手にしっかりと包帯を巻いた班長が立ち上がり、扉に手を掛けた瞬間、バンと、扉が吹き飛ぶ。 整備班長「え…っちょ痛い、いったあああ!!?って中尉!?」 マルセイユ「ドクター…どうしようドクター……」 向こうに立っていたマルセイユが、手に思いっ切り扉があたってもだえる班長に手を貸しながら呟く。 やたら深刻な顔をしたマルセイユを整備班長が椅子に座らせ、その横で衛生兵から再び包帯を巻いてもらう。 軍医「どうかしましたか?中尉。ホームシックですかな?」 深く刻んだ皺を緩ませ、揃えた白髭を撫でながら穏やかに笑う。 たまにじじいと呼んでしまう軍医だがこういう余裕はさすが爺さんだと整備班長は思った。 そんな軍医にマルセイユが詰め寄り、一息に言い切った。 マルセイユ「どうしようドクター!私は病気なんだ!健康には気を使ってたのに!牛乳もたくさん飲んでたのに!!」 軍医「ふむ、どんな症状が出ますか」 真新しいカルテに名前とどんな様子かを万年筆で書き込む。 マルセイユは軽い怪我以外で来た事が無かった為、新しく作らなければならないのだ。 マルセイユ「その、俺といると気まずいんだ」 軍医「はて…仲はよろしい様に見えましたが……」 マルセイユ「一緒にいる時はそれほどじゃないんだが…なんだか恥ずかしいし…落ち着いてられないんだ!」 マルセイユ「手汗もかくし、鼻がツンとして、苦しくて、少し怖くて…それに……」 万年筆のペン先が歪む。インクが真っ白なカルテを染めていく。 軍医「……はい」 マルセイユ「…どきどきするんだ」 ほんのりと頬を染め、真っ向に軍医を見る。 後ろでは班長と衛生兵が間抜けた顔で固まっている。…いや、周りで聞き耳を立てていた全員が固まっていた。 窓の外の将軍も絶句したまま動かない。 軍医は溜息をつきながら真剣にこちらを見るマルセイユに結果を告げた。 軍医「…処方箋はありません。少尉のそばにいればよろしい」 マルセイユ「そ、それが出来ないから!」 軍医「大丈夫。戦闘では支障はありません」 マルセイユ「違う!私はっ!」 顔をばら色に染めたマルセイユが反論しようと肩を掴むが、軍医は楽しそうに目を細めて笑うだけ。 軍医「ほっほっほ…心配は要りません。その病気は、時間が治してくれますよ」 ――――――――――――――― ――――――――――― 海辺 俺「幸せ…か」 加東「ええ、マルセイユもあなたの事好きみたいだし……まさか手は―――」 俺「出さねぇさ。あいつまだ14だろ?」 加東「噂通りで安心したわ…」 俺「手を出せば良いってモンでもないしなァ」ファア 加東「そうね。さすが艶福家は違うわ」 俺「まあな」 眠そうに言葉を滑らせた俺が立ち上がる。 やっぱり背が高いなと、ぼんやりと考えながらその背中を見た。 そのまま夕焼けを眺める俺に声をかけようとした瞬間、低い囁きに遮られた。 俺「聞け、カトー」 加東「何?」 俺「最近、瘴気が濃くなってる…少しずつ、だがな」 加東「…巣が近いからじゃないの?」 俺「あ……そうか」 加東「あなたは本能のまま動いてた方が勘が利くわよ?」クスクス 俺「ハッハ、そうかもなァ」グビッ こちらの言葉を笑ってまた酒をあおる。 琥珀色のとろりとした液体が夕焼けを通し、ひどく儚く、幻想的に見えた。 加東「まっ、参考程度にはしておくわ。ありがとう」 俺「おうよ」 いきなり話を振っていつもの様に笑って終わらせる。 いつだって朗らかなこの男は、いったいどんな気持ちで周りを見渡しているのだろうか。 そう思って、加東は背中を見せたままの俺の顔をのぞいた。 ぴたりと、海風が止んだ。 ぞっとして俺の顔から目を離す。獣の眼だった。鋭く眼を細め、光る双眼が海を越えた欧州を睨み付けていた。 帰って来た風が、再び音を連れて来る。 俺の周りを蠢く見えない何かがうなりをあげた。 海の向こうに、まっくろい雲が見えた。 見渡せば各各に点在す黒。ときおり雷光を光らせながら不気味にさざめいていた。 寒い。この空間はヒトのいる空間ではない。点在する黒が揺らめき、虎を誘う。 圧倒的な黒に背筋が凍る。加東は言葉を忘れてその光景を見た。 激烈な黒が風に乗って夕日の赤を取り込む空の下、陸の金が牙を剥き天を威かす。 天に吼える愚か者。それは束の間、加東に魂の欠片を見せた。 ページ先頭へ
https://w.atwiki.jp/ragus/pages/405.html
ナバーチ装束 ナバーチトリコルヌ NAトリコルヌ+1 NAトリコルヌ+2 ナバーチフラック NAフラック+1 NAフラック+2 ナバーチガントリー NAガントリー+1 NAガントリー+2 ナバーチトルーズ NAトルーズ+1 NAトルーズ+2 ナバーチブーツ NAブーツ+1 NAブーツ+2 ナバーチチョーカー ナバーチマント ナバーチピアス
https://w.atwiki.jp/ffwm/pages/264.html
二人の囚人が鉄格子から外を眺めた。 一人は月を見た。一人は星を見た◆yy7mpGr1KA ぼこり、と。 泡のはじけるような音が空間に響いた。 そこは月の海とも、石の海とも異なる魔力の海だ。 魔術師ワイズマン、あるいは白い魔法使いが用意した工房で彼は力を蓄える。 魔術師の工房とは来るものを拒み、去るものを逃がさぬもの。 千客万来の観光施設にソレは本来不適なのだが…… 『水族館』はある種の『監獄』であるがゆえにワイズマンにも望外の適性を見せた。 人の手によって蒐集され一所に囚われた生き物たちの房、人の業そのもの……とまでいうのは悪し様がすぎようが。縛られているのは人も同じくであるし、飼われることで滅びを免れ益を得ている種もある。 例えば、恐竜は今の世には消えて久しい。 鳥へと進化し種として絶えたとも、宙より飛来した隕石が原因で滅びたともいわれるが、どうあれ彼らは生存競争という戦いに敗れ霊長の祖としての座を人に譲り渡した。 同じように人の進歩によって絶滅の危機に瀕しながらも、人の手によって保護されることで命をかろうじて繋ぐヤシガニやカブトエビなどの生き物がこの水族館にも飼われている。 それらは恐らく人が自然を保護してやる、など傲慢なことを言いださなければ滅んでいただろう。 そういう意味で彼らは人に隷属したと言える。 だが人は彼らの絶滅を防ぐために資金や人材で多大なリソースを裂いているのが現状だ。だた生きるだけで、蝶よ花よとまるで愛でられる姫君のように。 そして水族館とは、絶滅危惧種に限らず様々な水棲生物を目当ての客が落とした金で従業員を食わせる施設だ。 なるほど檻に入っているのは水棲生物であろう。だが、彼らに奉仕しているのは人であろう。 サディストの望む姿を演じるマゾヒスト、奴隷がいなければ食事も礼服も日々の生活すらもままならない貴族、真に相手を支配しているのはどちらなのか。 ――――――人も見世物も枷に囚われた『監獄』こそがこの『水族館』だ。 霊地として優れるわけではないが、ワイズマンが魔力を集める拠点に十分と判断する要素がこの地には満ちていた。 ワイズマンの右手でプリーズの指輪が光る。 魔力の授受を可能とするその魔法の指輪と自らの宝具を組み合わせ、彼はガンナーとの闘いでの消耗を補っていた。 宝具とはサーヴァントにとっての象徴、代名詞と呼べるもの。 継承・奪取などにより複数のものの手に渡ることも時折あるが、多くはサーヴァントが独自に持つ逸話や武器であり、その扱い方を最も知るのは彼らである。 額面通りの使い方をするとは限らない、ということだ。 例えば外敵を封じる結界を転じて、自らの魔眼に枷を課す者。 例えばあらゆる監獄から脱獄する宝具を転じて、あらゆる空間へ侵入する者。 ワイズマンもまたそうした応用を可能とする者。 宝具『蝕まれし希望の光、絶望の幕開け(サバト・トゥ・ラスト・ディスパイア)』は本来なら生贄となる魔法使いを糧として広範囲に強制的な魂食いを行い、宝具『賢者の石』を生み出すもの。 その一端を解放し、プリーズの指輪の魔法、五代元素が一つ水属性の特性である吸収も併せ――水族館という場所は魔術的・風水的に水気に満ちておりそういう面でもよい――館内の生命からの魔力徴収を再開していた。 ガンナーが指輪を撃ち弾いた指の調子を検めるように曲げ伸ばしする。 撃たれたのは分身なのだから異常があるわけもないのだが、形代のような呪詛を警戒したか。あるいは彼女の技巧を思い返し警戒の念を強めていたか。 兎にも角にも十全に機能を発揮できるのを確かめると、その指に新しく嵌めたコネクトの指輪を光らせ此方と彼方を繋ぐ門を開く。 門をくぐりぬけた先の水族館の一室――空条承太郎に割り当てられた、なんの変哲もない一室――に笛木奏の姿が現れるとともに部屋の主である承太郎もまた帰室した。 「ようやく済んだか」 「ああ。テメーのおかげで沸いた余計な仕事がな」 笛木が行っていた魔力の徴収は遊び疲れ程度のもの……そう嘯いていたし、事実笛木自身もそのつもりだった。 だが人間相手の加減はともかく魚や水棲生物相手ではさしもの白い魔法使いも完璧とはいかなかったのか、一部の動物の様子にスタッフが異変を覚えたのだ。 その様子を診てほしい、と言われれば仕事としても個人的な責任感としても断ることは難しい。 自分の専門分野ではないなりに平時診ているトレーナーや獣医に混じり確かめて、外傷などなく疲労がたまっただけだろうと意見がまとまるまで少しばかりの時間をとられた。 諸悪の根源であるこの男をどうにかできればいいのだが、言ってやめるものでもなく歯噛みすることしか今の承太郎にはできない。 命さえ奪ってなければいいだろうと言わんばかりの振る舞いはまさしく魔術師の在り方なのだがそれは承太郎の知ることではなく、彼としては『魔術師』よりも『恋人』の暗示の男を思い出していた。 その苛立ちも、吐き気を催す邪悪もどうにかするには濁った気持ちを飲み干して歩みを進めるしかない……ただその一心で承太郎は今マスターとして動きを再開した。 笛木は嫌味を馬耳東風と聞き流してPCを立ち上げ、承太郎は懐から取り出した大学ノートの切れ端をスキャナーに読み込ませる準備を進める。 そこに描かれているのは承太郎が記憶を頼りにスタープラチナで描いた、ガンナーの用いていた銃器のスケッチ。 100%正確な描写ではないかもしれないが、武装の特徴や名称から敵対したサーヴァントの真名を探れまいかと二人は文明の利器を使うことにしたのだ。 「デザートイーグルと、アヴェンジャー。それくらいはおれにも分かるが」 「ふむ。お互い銃になじみの薄い出身に、必要としない身ではな。私もさして変わらない認識だが……」 本来スタンド使い、魔法使いにとっても銃器の類は無視できるものではないのだが、超のつく一流の二人の前ではほぼ意味をなさない。 至近距離の銃弾をつまんで止めるスタープラチナに、凡百の銃などでは傷をつけようもない鎧をまとった白い魔法使い。 加えて二人とも銃刀法の施法された現代日本の出身で、その辺で銃が調達できるようなものでもない。 身近なものではないため正確な推察はかなわないが、それでも知見で補うことはできる。例えば 「最後のアレは恐らく列車砲の類になるのではないか?」 「ん?あー……」 レールウェイ・ガン。19世紀に導入された、大口径の火砲を線路上を走行させることで移動可能とした当時としては画期的な兵器だ。 スケッチの一つに承太郎の視線が落ちる。 ほぼ砲口しか写せていないそれに情報としての価値はさほどなく、規模からの推察の方がマシなアプローチだろう。 口径は……100㎝はさすがにないだろうが、数10cmは下らないように見える。これほどの大火砲は史上においても稀だ。 「なるほどな。そんなもんがあったか……いや、にしてもデカいな。ナチスドイツがバカデカいのを2、3基持ってたと記憶してるが?」 「グスタフとドーラの2つだな。3番目は未完成に終わったはずだ。口径だけで言うならアメリカにより大きなものがあったと記憶しているが、全長から見るにお前の言うナチスの列車砲という推察で当たりだろう」 喋りながらも二人は作業を続け、読み込ませたスケッチで画像検索をかけていく。 大口径の拳銃は想定通りデザートイーグル。 焼夷弾をばら撒いたガトリングも想定通りアヴェンジャー。 近接するキャスターを牽制した、アヴェンジャーより大きな砲門は恐らくアハト・アハト。 指輪を撃ち落としたライフルはスケッチが正確でなかったか、ガンナーが手を加えた特異な逸品だったか、理由は定かでないが詳細は分からなかった。 大口径の砲もやはりスケッチがそも情報不足というのもあって碌な結果ではないが、全長数十メートルに口径が1メートル近い大砲などそうあるものではない。推察を重ねるうちいくつかに候補は自然と絞られるだろう。 「デザートイーグルはイスラエルが製造元でアメリカも関わってたな。アヴェンジャーは米軍の機銃で、アハトアハトはドイツか。第二次大戦で暴れたって聞いた覚えがある。 ライフルはよく分からねえとしても、こいつがナチスの列車砲というのが当たりなら、ドイツとアメリカの銃器が多い。ペーパークリップか何かでアメリカに亡命したドイツ軍人か、あの女?」 「ふむ。国籍を追うとそう見えるが」 最低限の情報は承太郎のスケッチを通してのネット検索で当たれた。 しかしそれだけでは不足と笛木がコネクトの指輪を再度ドライバーにかざし、腕を伸ばして彼方へと届かせる。 そこから腕を伸ばすと数冊の本――どうやら銃器の資料らしい――が握られており、目当てのページをいくつか開く。 「製造年のずれが小さくない。列車砲とアハトアハトは第二次大戦がピークだが、アヴェンジャーとデザートイーグルは70年代開発のようだ。 それに列車砲とアハトアハトは個人兵装ではない。一人の軍人が持つものではないだろうな」 「サーヴァントがそういう大規模な武装を個人で持ち込む、っていうのは珍しくないのか?」 「本来ならば複数人で扱う武器を一人で扱う逸話と考えるなら、古い英霊には珍しくはなかろう。西遊記で孫悟空が振るう如意金箍棒は約8トンの重さで、海の深さを測るときに天井の軍が総出で運んだとか。 だが列車砲を単独運用する軍人というのはとんと覚えがないな……」 一応列車砲についてぱらぱらと書をめくるも、この時代はもはや兵器の時代で単騎活躍の英雄というのは――いないわけではないが――ごくわずかだ。 少なくとも数百人がかりで動かす兵器を一人で運用するのは英雄とかそういう次元の話ではなく土台無理な話だ。 「だが英霊には後の口伝やイメージで生前とは異なる情報が付与されることもままある。無辜の怪物と呼ばれるものであったり……あとはそうだな。 例えば服部半蔵は忍者ではないが、おそらく召喚されればそのような面を付与されるだろうな。 そのように大規模な兵器を単独で扱ってもおかしくないと思われる者となると……」 「開発者か、軍の指揮官という線は?」 「なるほど」 列車砲の仕組みについて承太郎も軽く目を通して、単独での活用は無理だと判断したうえでそのような意見を述べた。 「名の知れた城主や船長やなどであればそれこそ船や城を宝具とするのはおかしくない。アン女王の復讐号、潜水艦ノーチラス、万里の長城やピラミッドであれば持ち主が宝具とすることもあるだろう。 だが、開発者ではない。先も言ったように時代の差異があり、そもそも開発者ではガンナークラスにはなれない。指揮官もほぼ同様。もっと、存在の級位が上だ……」 笛木はつぶやきながらも思考を進め、答えを漁るようにまた指輪を輝かせて彼方へと手を伸ばす。 「人類をもっとも繁栄に導いた発見とは何だと思う?」 「あ?そうだな、いろいろあるだろうが……」 「星の開拓者とも関わる話になるが、それはいい。電気、車輪、鉄、紙、繊維、文字……様々な候補があがるだろう。私は魔術にそれを見出しているが……」 人類の発展において戦争を除いて語ることはできない。つまり、『武器』という概念も人類との発展と共にあると言って過言でないだろう」 そう言いながら笛木が選んだのはギリシャの神々が描かれた本だった。 「君も私同様分野が違うとはいえ命に携わる科学者だ。『プロメテウスの火』を知らないということは無かろう」 「……あらゆる戦争はプロメテウスが人に火を与えたことに起因する、か。また人の手に余る技術のことをそう呼ぶ」 「そうだ。あらゆる武器と戦争の起源は火であるがゆえ、人に火をもたらしたプロメテウスはあらゆる武器を手にする可能性を持つと言えよう」 承太郎のスタンドについて、南米の神々云々と言及したのも推論の要因となった。 それを認識できる、国か時代……おそらくは神話の存在であろうと推論を重ねるうちに笛木は思い至っていた。 その中でも銃器にまつわる神というのは聞き覚えがなく、苦心したが一つの仮説には至れた。 英霊によっても得意分野というのは存在する。 約束された勝利の剣のような、英霊の座に至ったならば誰もが知る高名なものならまだしも、様々な世界・時代の英霊の知識がムーンセルや座から与えられようとその知識を活用するのはサーヴァントなのだ。 馴染みのある知識ならすぐ引き出せようが、不慣れな分野ではそうもいかない。10年以上前に勉強した些末な知識のように思い出すにも苦労する。 魔術や物理学、時代や国を近しくする英霊ならまだしも、神々や精霊に馴染みのない笛木では、シャーマンであるジェロニモのような推察は容易くないということだ。 そうして辿り着いた推論には当然穴があり、承太郎もそれに気づかない男ではない。 なによりプロメテウスは男神であること。プロメテウスの火を武器とすることの是非。そして ―――銃使いのエクストラクラス。結構思い入れがあるから、ちゃんと呼んで貰えると嬉しいわ――― 第七階位(カテゴリーセブン)の、拘り。プロメテウスに銃に思い入れがあるとは思えない。 『プロメテウスの火』というなら銃よりもっと危険な、核は扱いにくいとしてもミサイルくらいなら持ち出してきそうなものだ。 宝具がサーヴァントの代名詞だというならば、それは恐らくスタンドが持ち主の精神性を現すのに近いだろう。 銃を代名詞とする……いや、むしろ 「別の仮説を提唱したい」 「聞こう」 自論の穴は当然承知か、笛木もその先を促す。 「グレムリンってのを知ってるか?」 「なに?」 突然発せられた因縁ある名前に僅かに笛木も動揺する。 だが、あの固体名を指しているのではないのだろうとすぐに思い至りその名の元となった怪物のことを思い浮かべる。 「機械に悪戯をする妖精の一種。ノームやゴブリンの類縁とされる怪物のことで相違ないか?」 「ああ。そのグレムリンだ。じゃあそのグレムリンっていうのは一体いつから存在した怪物なんだ?」 ノームをはじめとした妖精の類は神話の時代から語られる存在だ。 日本でいうところの天狗に近いか。 ではその類縁とされるグレムリンがその時代から語られていたかというと、それは否であろう。 機械に悪戯をする妖精は、逆説的に機械がなければ生まれ得ない。 機械の誤作動という事象が観測されるようになって初めて、機械に悪さをする妖精であるグレムリンが観測され、定義されたのだ。 先ほども述べていた。 服部半蔵が忍者である創作が世に広まることで座にそのように記録されるように、近代となっても英霊や妖精は変異・誕生しえるということ。 「ロビンソン・クルーソーは読んだことあるか?ああ、おれもガキの頃の夏休みにあれを何度も読み返したよ。 あの中にフライデーっていうのがいた。遅れて島に流れ着き、ロビンソンに仕えた召使だ、分かるよな。 フライデーはロビンソンの持つ銃が何だか理解できず、音がすると何だか分からないが鳥が死ぬもの、としか思えなかった。銃に理解が及ばなかったフライデーは、その銃口が自分を害しないように何をしたか……祈ったのさ、銃にな。どうか自分を傷つけないでください。どうかこれからも獲物をお恵みください、と。つまり、だ」 「銃に対する信仰……付喪神か」 「ああ。付喪神、あるいは九十九神。そう呼ばれ出したのは室町のころだったと思うが、グレムリンよりは先輩だ。銃が一つの信仰を獲得するのにゃ十分。刀剣信仰の一種としちゃあそんなに可笑しなものでもないしな」 「戦神ならぬ、銃そのものの神といったところか、なるほど……」 そんな存在に何か覚えがあった気がして、笛木はまた指輪を輝かせ彼方へと手を伸ばす。 「ところでお前、さっきからどこから本を引っ張り出してる」 「これか。昨夜監督役が言っていただろう、聖杯戦争は幾度も行われていたと。この月でも行われていた、その名残だ。 バーサーカーかそうでないにしても聖杯由来の知識を活用できないサーヴァントを宛がわれたマスターへの救済も兼ねてだろう。こういったサーヴァントの来歴を調べるのに適した書物が図書館に配置されている。私のようにムーンセルにアクセスできるウィザードならばすぐその存在に気付くはずだ」 「図書館……そりゃサービスのいいことだ」 「一長一短でもある。敵について調べる環境が整っているということはこちらのことを知られる危険性も増すということだ。そしてさすがは管理の怪物というべきか、書物の移動はできても破壊はかなわないようにプロテクトされている」 笛木が図書館のことを知ってまず考えたのは当然自分の史跡の抹消だった。 語られることの少ない反英雄ではあるが、情報量が1と0では天と地の差だ。 だがかつて同じように自らのサーヴァント、太陽を落とした女の航海日誌を抹消しようとしたマスター同様隠ぺいが精いっぱいというところ。 二人の技量の差はそれこそ月とスッポンだが、本物の月を前にしてはどんぐりの背比べでしかないらしい。 「つまりお前にまつわる資料もあるってことか、キャスター」 「正確には私の英雄譚ではないが、ね」 そう言って笛木が懐を漁り、いくつか見える本の中から一冊を選んで承太郎に放ってよこす。 「『指輪の魔法使い』……?」 「そう。私は彼に打ち倒された反英雄だ。様々な英雄譚が観測されるが、白い魔法使いがハルトという青年に指輪を与えて魔法使いとし、その青年に敗れるのが編纂事象、全ての歴史の基軸のようだ」 アーサー王の物語は時代によって変遷している。ランスロットやトリスタンが登場するものしないもの、剣を主武装としたもの、槍を主武装としたもの、あるいはその性別までもが異なることもあり得る。 だがそれでも、大筋は変わらない。王を選ぶ剣を引き抜いたアーサーは国を守るべく粉骨砕身するも、ブリテンの神秘の枯渇という時代の変化に抗いきれず、嫡子モードレッドの裏切りによって命を落として幕を下ろす。 またクウガと呼ばれるリントの戦士に変身するユウスケの物語も単一ではない。 英雄はただ一人でいいと笑い続けたもの、人類の進化種アギトとの因縁を紡いだもの、世界の破壊者と肩を並べたものなど。 同じようにハルトの物語も複数あった。 笛木のよく知るものであったり、またその笛木の知る晴人から指輪を与えられたものであったり、またも世界の破壊者と縁を結んだものであったり。 そのうちの一つが今承太郎の手の中にある。 「私の能力を詳しく話せと言っていたな。否はない。だがいちいち口頭だけで説明するのが非効率だというのにも否は無かろう。 指輪の魔法使いの使う魔法はほぼ私の産み出した魔法石に由来するものだ。ドラゴンが強く出たものとインフィニティーは私にも作れないが、それ以外なら問題なく扱える。 いちいち指輪を一つ一つ提示して説明するより参考文献にまとまっている方が職業柄分かりやすかろう」 そう言うと笛木は工房への門を開き、話を打ち切るように戻ろうとする。 「私は回復がてら書籍の封印と調べものだ。お前の言う銃の神に何やら覚えがある気がするのでな。お前のスタンドについては後で詳しく話してもらう」 「待ちな」 それを承太郎は短く、しかし強く呼び止める。 一瞬沈黙が奔るが、笛木は振り返りそれに応じた。 二人が向き合うと承太郎の背後に青い人影が浮かぶ。 「生命・精神のエネルギーが像となって現われる。傍に立つことから能力全般を『スタンド』と呼ぶ。 おれの能力の固有名は『星の白金(スタープラチナ)』、あるいはスタープラチナ・ザ・ワールド。射程距離は2m。パワー、スピード、精密性についてはそれなり……のつもりだったんだがな。どうもここのところ自信をへし折られてばかりだ。一応至近距離からのショットガンくらいならなんてこたねーし、トラックくらいなら力比べで勝ってみせるが。 それから要の能力が、時を止めること。体感にして、5秒程度。世界の時を止め、その中をおれだけが動くことができる」 「…………」 咀嚼するように笛木が息をつく。 あとでいいと言ったのになぜ今、と思わなくはないがそれでも能力はシンプルなもので確かに時間を置くほどのものではないかもしれない……伏せている札がなければ、だが。 「名というのは宝具の真名解放か、魔術の詠唱のようなものか?」 「さて、深い意味はあるかもしれんしないかもしれん。友人の占い師がタロットを引いてつけてくれた、おれの運命の暗示だそうだ」 「では止める時間が5秒程度というのは?どうにも曖昧だが」 「止まった時の世界じゃあ針は刻まず、砂はこぼれず、水も流れない。その中で正確に時間を測るアイディアは随時募集してるぜ?」 「…………南米の神というのに覚え、はないようだな」 「おれもそれは気にかかっていた。またあの女に聞く機会があればいいんだが」 笛木の投げかけた疑問に対してまともな答えが返ってきたとは言い難い。 伏せている札があるために答えを渋るのか、逆に全て出し切ったゆえこれ以上話すことがないのか。 いっそメイジのように洗脳してしまうか、という考えが首をもたげるが…… 「わかった。ひとまずはそれでいい。続きは後だ」 改めて話を切り上げて工房へ入り、まず懐にしまっていた指輪の魔法使いの物語を簡素であるが工房内に封印していく。 敗北の歴史に思うところがないわけではない。 暦のために必要だったとはいえ、自由意思を持った指輪の魔法使いがいたのが自分の敗因の一つだったのは間違いない。 (だが空条承太郎の自由意思を奪うのは上策ではないだろう) 関係が致命的に変化するというのあるが、それ自体は些事。 問題は自分が操作する空条承太郎は、彼自身の足で立つそれよりも確実に戦力で劣るということだ。 魔術の素人であったメイジが玄人である自分の影響下に置かれるのとはわけが違う。 すでにして歴戦のスタンド使いである戦士――敵わないとはいえ自分や第七階位のサーヴァントと戦えた実力者――をスタンドの素人である自分がわざわざ操作するのは愚の骨頂だ。 スタンドが精神のエネルギーだというならどんな影響が及ぶかもわからない。 (リスクは承知。それでも人間とファントム両陣営を渡り歩くに比べればたかが一人、渡り合ってみせる) 侮りはしない。 グレムリンと操真春人を見誤った失態を二度犯すわけにはいかない。空条承太郎は二人以上にしたたかな熟練の戦士だ。 (『私』の物語はここに封じた。もう誰の目に着くこともない) 英霊ならば平等に存在する最期の逸話。 協力者の裏切り。『屍殻穿つ魔杖(ハーメルケイン)』という凶器。空条承太郎がこれを知れば……宝具を握り敵対することでこの要素はするりと埋まってしまう。 そして (口裂け女。グレムリンと同じ、現代に産まれた怪物) スノーフィールドで不審な情報を集めれば、意図せずとも飛び込んでくる怪奇情報、口裂け女。 起源は異なるが構成する要素としては笛木の最期を彩った怪物に近しい。 もしこれがディルムッド・オディナに対する猪のような天敵となってしまうのなら、たかが知れた幻霊モドキの都市伝説と言えど油断はできない。 この『指輪の魔法使い』の封は二度と解くまい。最低限の情報は得た。 (タイムの指輪。やはり、それでは暦は救えないか……) 笛木の死後の指輪の魔法使いの物語。 彼の遺した魔道具と操真春人より産まれた魔法使いは、タイム――時を超える魔法――を使い暦を救おうとした。しかしそれは叶わずに終わる。 英霊となってみればそれも当然と思えた。 量子記録固定帯(クォンタム・タイムロック)……世界の残酷な決定を人の身で覆すことは出来はしない。 だからこそ人の身ならぬ聖杯が必要なのだ。 (――――――私にとっても、この戦いは娘を救う最後の希望なのだ。空条承太郎) 気を許すつもりはない。だが――― 正位置の星、それは希望の暗示。魔術師にとって名前というものは大きな意味を占める。 死後に掴んだカードの名は無意味ではないと思う程度には彼は魔術師であった。 【F-6(?) 水族館内、笛木の工房/1日目 午後】 【キャスター(笛木奏)@仮面ライダーウィザード 】 [状態] 健康、魔力消費(中・回復中) [装備] 『詠うは白き慟哭の声(ワイズドライバー)』 [道具] なし [思考・状況] 基本行動方針:聖杯を掴み、暦を幸せにする 1.娘のために空条承太郎を利用し、聖杯戦争を勝利する 2.失われた魔力の回復に努める 3.ガンナーのような強敵とは、本体は陣地外での交戦を避ける 4.『第八階位』は…… 5.ガンナーを銃の付喪神と推察、調査。 [備考] ※承太郎の意向に関わらず自活するだけの力を得た、という発言が事実であるかどうかは後続の書き手さんにお任せします。 笛木と別れた承太郎は、さっそく渡された『指輪の魔法使い』に目を通していた。 悲哀の彩りに満ちた、されど希望にあふれた胸躍る英雄譚、それを目にしての感想はというと (ヤツの持っていたものと微妙に異なるな。やはり死因については隠したがったか) 即座に一通り目を通し、その内容を咀嚼する……笛木の隠したものと比較して。 そう、承太郎は笛木の隙をついて彼の物語に一瞬だが目を通すことに成功した。 用いたのは当然スタープラチナ。 立ち去る寸前の笛木を呼び止め、時間停止。 わずか5秒、されど5秒。 スタープラチナの速度と精密性ならば本のページを一つ一つ丁寧に、されど一瞬で捲り切ることができ、そしてそれを見極めることができる。 目当ての本を引けたか、この物語が笛木のものかは承太郎には確信できない。 だがその可能性は高いと踏んでいる。 ―――『悪霊』だよ。『悪霊』が持ってきてくれるんだ。必要なものをな――― ―――スタンドはエネルギーのイメージ化した姿だ――― できて当然と思うこと……引かれるように、そうまるで引力に導かれるように承太郎は操真春人の物語を手に取り、一瞬だが目にした。 抜きとった本は懐に戻す……階段を上ったと思ったら降りていたと勘違いするように、淀みなく精密に元に戻した。 そして問答を終え、今に至る。 スタンドに関する問答で当然承太郎は全てを話してはいない。 まず今後の肝となる『聖杯符』と『天国』の可能性。これは現時点で不確定な情報だから伝える必要がなかったとも言えるが、切り札である以上明かすわけにはいかない。 また時間停止の中に踏み込んでくるものがいる可能性。動くものが敵か味方かによって意味の大きく変わる情報であり、またそもそも止まった時の中で動くということを認識させれば自分のように入門してくる可能性があるため、積極的に伝えようとは思えない。 そして承太郎にとっては話すまでもない、されどその他の者にとっては最大の肝。 敵対者に曰く、無敵のスタープラチナはもとより本体の承太郎こそが最も厄介であると。 一流イカサマ師のセカンドディールに気付く観察力があっても、その行為の意図が分からなければ指摘できない。 シャッフルしているトランプを見極める動体視力があろうとも、順序を記憶できる知能がなければ意味はない。 僅かな時間で操真春人の物語を速読するのはスタープラチナだが、それを記憶できるのが空条承太郎という男だ。 (ヤツの宝具がそのまま死因か。伏せたがるのも分かるってなもんだ) それならば無理に聖杯符を狙う必要はないか……否、先を見据えて戦うと決めた。 プッチという邪悪に然るべき報いを与えると決めた。 であれば伸ばす手を止めるつもりはない。 まるでそうしろと運命が告げるように、パーツは揃いつつある。 (指輪の魔法にまさかこれほどうってつけのものがあるとはな) グラヴィティのリング。 そして笛木の持つ宝具の一端であるエクリプスリング。 日食を引き起こす魔法、というのがどの程度のものかは分かりかねるが、日食とは新月の時にしか起こらないもの。 つまりこれは『新月の時』を満たす魔法というわけだ。 さらに必要ならグラヴィティによる調整があれば、天国の時は成るだろう。 (やれやれだ。今更ながらおれがあいつらの野望と同じ道を追おうとするなんてな) 月の聖杯戦争にて、新月を求める。まさしく月の導きであろうか。 ―――月の正位置、その暗示は迷い、不安ある旅路、信仰。そして、裏切り。 【F-6 水族館内、待機室/1日目 午後】 【空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険 Part6 ストーンオーシャン】 [状態] 漆黒の殺意、若干の迷い、疲労(小)、精神疲労(中)、全身に打ち身等のダメージ(小) [令呪]右手、残り二画 [装備] なし [道具]『指輪の魔法使い』の物語(操真晴人の物語とは微妙に違う、リ・イマジ的なもの) [所持金] [所持カード] [思考・状況] 基本行動方針: 『最初』に邪悪を滅ぼす。『最後』には…… 0.やはりキャスター(笛木)は信用できない…… 1.キャスターを利用し、目的を果たす 2.スタンドはサーヴァントにも有効、だが今のパワーでは心許ないらしい 3.聖杯符を入手し、可能ならスタンドを進化させる。キャスターの魔法、重力と日食も利用できるか? [備考] ※スノーフィールドでのロールは水族館勤務の海洋学者です。 ※『第八階位』のステータス及び姿を確認しました。 ※『第七階位』のクラス、ステータス、宝具及び姿を確認しました。 ※操真晴人の物語に目を通しました。少なくとも笛木奏の死因周りについては重点的に記憶しましたが、他どの程度把握・記憶しているかは後続の方にお任せします。 【全体備考】 ※スノーフィールドのどこかに図書館があり、Fate/EXTRAのようにサーヴァントについて調べることができます。ただし『指輪の魔法使い』に関する資料は笛木が全てとは限りませんが目に付く限り隠ぺいしたようです。 013 静寂を破り、芽吹いた夢(前編) 投下順 015 ブラックパンサーズ 時系列順 010 止まる『世界』、回る運命(前編) 空条承太郎 キャスター(笛木奏)