約 2,183,135 件
https://w.atwiki.jp/gods/pages/82299.html
アナスタシヤ アナスタシアの別名。
https://w.atwiki.jp/gods/pages/85594.html
キムジョイアナスタシア(キムジョイ・アナスタシア) 韓国124殉教者の一。 カトリック教会によって列聖(または列福)された。
https://w.atwiki.jp/chaos-tcg/pages/2558.html
市井の女「コレット=アナスタシア」 読み:しせいのおんな「これっと=あなすたしあ」 カテゴリー:Chara/女性 作品:穢翼のユースティア 属性:水光 ATK:1(+3) DEF:2(+2) [自動]このキャラが登場かレベルアップかオートレベルアップした場合、自分の 穢翼のユースティア のキャラ1体を【表】にしてもよい。その後、ターン終了時まで、自分の 穢翼のユースティア のキャラすべては攻撃力と耐久力が2上昇する。 では、思う存分私と楽しみましょう illust:オーガスト AU-127 U 収録:ブースターパック 「OS:オーガスト2.00」
https://w.atwiki.jp/rpgrowa/pages/310.html
◆wqJoVoH16Y 127 エラスムスの邂光現象 132 王国暦1998年の紅蛙 134 龍の棲家に酒臭い日記(前編) 龍の棲家に酒臭い日記(後編) 136 世界最期の陽(前編) 世界最期の陽(後編) 139-1 私がわたしを歩む時-I m not saint-(前編)139-2 私がわたしを歩む時-I m not saint-(中編)139-3 私がわたしを歩む時-I m not saint-(後編) 142-1 為すべきを成すべき時 -Friend s Fist with Brave-(前編)142-2 為すべきを成すべき時 -Friend s Fist with Brave-(後編)142-3 その罪を識る時 -Fallere825-(前編)142-4 その罪を識る時 -Fallere825-(後編)142-5 夜空を越えて -True Magic-(前編)142-6 夜空を越えて -True Magic-(後編)142-7 盾と刃が交わる時 -The X trigger-142-8 この力で全てを守る時 -Glorious Hightland-(前編)142-9 この力で全てを守る時 -Glorious Hightland-(後編)142-10 そして、世界変革の刻 -A.D.1999 The Day of Apocalypse 00 00- 144-1 瓦礫の死闘-VS地獄・泥の下の宴会-144-2 瓦礫の死闘-VS死龍・ハードオブヘクトル-144-3 瓦礫の死闘-VS黄龍・反撃は雷のように-144-4 瓦礫の死闘-VS究極獣・Radical Dreamers-(前編)144-5 瓦礫の死闘-VS究極獣・Radical Dreamers-(後編)144-6 瓦礫の死闘-VS守護機・砕けない宝石-144-7 瓦礫の死闘-VS女神・無職葬送曲-144-8 瓦礫の死闘-VS鬼神・泣き止んだ僕が願ったこと-144-9 瓦礫の死闘-VS魔神・ゴゴ、『黒の夢』に……-144-10 瓦礫の死闘-VS??・Hyper Evolve X-fire sequence- 149-1 魔王様、ちょっと働いて!149-2 リプレイ・エンピレオ 151 世界最寂の開戦 154 聖女のグルメ 155 No.00「帝国軍諜報部式特別訓練」 157-1 さよならの行方-trinity in the past-(前編)157-2 さよならの行方-trinity in the past-(後編) 158 イスラが泉にいた頃… 159-1 みんないっしょに大魔王決戦-魔王への序曲-159-2 みんないっしょに大魔王決戦-英雄への諧謔-159-3 みんないっしょに大魔王決戦-勇者への終曲- 【キャラクター登場率・登場回数】 +開示する 原作 登場率 内訳 【キャラクター登場率 15+α/54+1】 LIVE A LIVE 2/7 ストレイボウ、アキラ ファイナルファンタジーVI 1/7 セッツァー ドラゴンクエストIV 2/7 ユーリル、ピサロ WILD ARMS 2nd IGNITION 2/7 マリアベル、アナスタシア 幻想水滸伝II 1/6 ジョウイ ファイアーエムブレム 烈火の剣 3/5 ジャファル、ニノ、ヘクトル アークザラッドⅡ 1/5 ちょこ クロノ・トリガー 2/5 カエル、魔王 サモンナイト3 1/5 イスラ その他 ??? リルカ@ワイルドアームズ2、ハイネル、メイメイさん@サモンナイト3 【キャラクター登場回数】 10回 1人 ピサロ 9回 3人 カエル、アナスタシア、イスラ 8回 3人 アキラ、ジョウイ、ストレイボウ 6回 1人 セッツァー 4回 2人 ジャファル、ゴゴ 3回 3人 魔王、ちょこ、ヘクトル 2回 1人 ニノ 1回 2人 ユーリル、マリアベル、オディオ 第四回放送後に突如としてRPGロワに降り立った書き手さん。RPGにおける『終盤加入キャラはチート』という法則をこれでもかと体現している。代表作はRPGロワ終盤の流れを決定づけた142:導き10部作 -- 名無しさん (2013-02-17 05 36 16) 名前 コメント ▲
https://w.atwiki.jp/kakehasi_maburabu/pages/37.html
. . . - ―…― -. . . . ._ . . ´ 斗------------. . / / i i i i i i i i i i i i i i i i i i i i≧s。. ' / i i i i i i i i=---------------ヽ / / ./> ´ ̄ \. / / ./ . \. / / ヽ . , , / |i .|i . i i . . . / / |i .|i . |i |i . / / 八 |i . |i |i |i |i . .|i / / / /| , } |i |i |i |i |i. . |i / / / . .'斗― / ハ |i |i |i |i |i.斗―‐十一{ . . 才/ |/} / / } } ! |i |i |i l彡l/,,.斗ミ /才f㍉! / / / ' ノ' |i |i |i l ィ仡し゚ハ / .イ {しリ / . ./ / ,}/ |i |i |i . . .小 乂辷シ / / | ゙ ´ ’ ./ / |// |i |i |i 八  ̄ 、 イ ' . . ./ . .|. 八 八 八 i{ \ ノ |i | / \ , , i|―― , |i |. / ≧=-- ’ . . ’ i| \ 、 ' / i|i | /`≧=--------∧ / i{ ´ i|i .|. /`≧=--------/ V / . .八 ≧r-イ_r---、-.i|i |/ / V .\ | \ ̄ ヽ 八 . . .|≧s。_ 【アナスタシア・ルン・ヴァレリア】 +プロフィール 国籍:アメリカ人 所属:国連軍第1独立戦術機大隊第2中隊 階級:少尉 年齢:22 身長:167cm 体重:57kg 3サイズ:B90 W58 H93 経歴:アメリカ陸軍衛士訓練学校卒業 [部分編集] 第2期やる夫小隊のメンバー。米軍出身者の割には格闘に尖った能力を持つ。 何かと影を背負った人間の多いアイギスメンバーの中で、彼女は良くも悪くも「ごく普通の女性」であり、 だからこそアイギスの中でも異端な存在とも言える。 ただし、性格は平凡だが能力は非凡そのもの。特に、どんな逆境にも自分を見失わない芯の強さは およそ平凡の領域と片付けられるものではない。またその卓越した近接戦闘スキルも、常人のそれとは 一線を画するが、米軍内において彼女の能力は高い評価を受けるには至らなかった。 所持スキル: 格 聖なる舞 - 戦闘中1度だけ近接攻撃による範囲攻撃が可能 格 剣聖 - 近接攻撃時、ダメージを2倍にする 格 牙狼 - 戦闘中1度だけ中距離の敵に対して近接戦闘を行える 回 切り返し - 敵の近接攻撃による回避目標値とダメージを半減させる スキルの編集はココ 戻る
https://w.atwiki.jp/gods/pages/85596.html
イボングムアナスタシア(イボングム・アナスタシア) 韓国124殉教者の一。 カトリック教会によって列聖(または列福)された。
https://w.atwiki.jp/rpgrowa/pages/358.html
この力で全てを守る時 -Glorious Hightland-(後編) ◆wqJoVoH16Y 自身の内的宇宙の中で、ゴゴは傷ついていた。 自身の内側にあってさえ、その意識は朦朧としており、 自分がどのような状況にあるのかさえ理解がおぼつかなかった。 確か、聖剣の物真似をしていたはずだ。 それも限界に達しようとしていた時に、紅い何かが、自分の宇宙に突き刺さり、とっさにアキラを庇った。 そして、紅い刃が自分の中にあった黒い何かを吸い込んでいったのだ。 吸い込まれる途中で、何かを見た……否、”嗅いだ”気がする。 あれは、アシュレーとともに城にいたときのアレに似ていたような…… そして、その後全てが砕けて……ダメだ、その先は何もない…… 自身の中で荒れ狂っていた黒い何かは既に失せ、世界は凪の海のように穏やかだった。 だが、ゴゴもまたそれ以上に力つきかけていた。 このまま、静謐な海の一部に溶けていってしまうような気がした。 (……誰、だ……?) だが、草臥れたゴゴの心を優しく湿らせるように、碧の光がゴゴを癒す。 そして、その光の正体に思い至るよりも早く、その両肩がぐいと持ち上げられる。 「お前、達……そう、か……」 ゴゴは自分に肩を貸した2人の姿を見、そうかと納得する。 「約束……したからな……来たら……起こすと……」 体をゆっくりと運ばれながら、ゴゴは外へと浮上する。 今回ばかりはサァヴィスだと、物真似師は自分へ言い聞かせた。 起こすと約束しておきながら自分が起こされるとは、プロ失格だ。 ならば、その汚名もまた、物真似によって返上するべきだろう。 ―――――――― 「ジョウイ……あい、たかったよ……」 その言葉に、ジョウイの詠唱が完全に停止する。 音の源泉は、フードの中。だが、その声色は外見に似つかぬ少女のものだった。 「ごめん、ね……一緒に、いられなくて……」 そう謝罪するゴゴに、ジョウイは振り向かなかった。 だが、ゴゴはそれでも構わないと、内側に蓄えられた音を外に出していく。 「ねえ…………そんな格好じゃ、風邪、ひいちゃうよ…………」 その言葉に、ジョウイの体が身震いする。魔剣の輝きが、僅かに鈍る。 「かえりたくなったら……いつでも……まってるから…… 私は……私たちは…………それでも……まってる……よ……」 「ッ、ナナ――――――ウグッ、グAaAAhur2uyAAッ!!」 それを最後に、物真似師の中から少女の欠片は消えた。 その姿を一目見ようとした刹那、ジョウイが突如苦悶の叫びをあげる。 自己の全てを根こそぎ砕かれるかのような、人成らざる表情で苦痛を放出する。 「グ、Gru、あ、ハァ、ああ……」 ジョウイはなんしかその苦痛を落ち着かせたが、それでも疲労は偽れないのか、 剣を地面に突き立てて両膝を地面についてしまう。 その疲弊は誰の目にもみて明らかに異常だった。 「…………シード、クルガン。撤退します」 『『!?』』 ジョウイの命に呼応し、二将の亡霊が剣戟を中断しジョウイの元へ集う。 だが、そこには亡霊であっても何故、という疑問が露わになっていた。 「目標は達した……命令だ、撤退する」 だが、呼吸を整えるジョウイは強い語調で亡霊に命じ直す。 見ればその魔力光は最初に比べ明らかに陰っており、ジョウイの戦闘可能時間が残り少ないことを示していた。 「尻尾を巻いて逃げるのを、黙って見過ごすと思うかい?」 それを知って、イスラはそうはさせまいとジョウイの進路を阻む。 アナスタシアやちょこ達もアキラやゴゴ達を庇いながら、 ジョウイからみて北側に集まり、禁止エリアと自分たちで挟む形で陣取った。 ピサロやセッツァーたちさえも、アナスタシア達とは距離を置きながらも北側へのルートを塞ぎにかかる。 その魔力量は明らかに減少しており、直に抜剣状態は解除されるだろう。 そうなってしまえば、後は煮るも焼くも自由なのだから。 完全に逃げ場を失った魔王は、無表情のまま答えた。 「逃げるよ。ただ“この戦場は、彼に任せることにする”」 彼?と誰もが疑問に思った瞬間だった。 ぶすり、と肉の千切れる音が彼らの側で鳴った。 うあ、と声にならない叫びを挙げたのはアキラだった。 その肩には毒蛾のナイフが突き刺さっていた。ちょことアナスタシアが、ピサロを警戒する。 だが、ピサロは攻撃したそぶりもなく、北側の一点を見据えている。 一体何を見ているのか、そう誰もが思ったときだった。 「嘘だろ…………」 辛うじて声の範疇にあった嗚咽がイスラの口から漏れる。 その眼は、信じたくないものを無理矢理見せつけられているようだった。 多分、生きてはいないと思った。だから、遺体を見るまでに、心を静めようと思ったのだ。 「なんで、なんでそんな姿になってるんだ――――ヘクトルッッ!!」 “なのに、遺体の方がイスラに会いに来てしまった”。 彼の視線の先、青白い肌を浮かべた、理想郷の残骸があった。 ―――――――――― 「どれを取っていく? 」 「この首飾りだけ貰っていくか。速さってのは、どんなところでも使えるからな」 「他の剣類はいいのか。どれも業物だぞ」 「旦那がいらねえなら、いいよ。負け犬の手垢がついた得物なんざ、持ってるだけでツキが落ちそうだ」 そんなやり取りが、その場所での最後の命ある声だった。 最早そこには合戦後のような、死体と刀剣が散らばった荒野しかなかった。 『戦わせろ。我を戦わせろ……』 誰も彼もがいなくなった荒野の古戦場。その場に、一つの斧が残されていた。 呪いそのものである神将器が、戦という渇きに餓えて啼いていた。 戦わせろと、この身を戦わせろと。 だが、その宿主は既に事切れ、乱用されて砕けかけた神将器の嘆きに応えるものなど無い。 その残念は空しく大地に還るだけだった。 『――――繋がった、か』 だが、その声を聞くものが一人だけいた。 神将器は自分に干渉する存在を感知したが、直ぐにそれを辿ることをやめ、再び嘆きを響かせる。 『ヘクトルさん……貴方がどのような形で戦い、そしてどのような形で果てたかは分かります。 ありがとう……貴方が時間を稼いでくれなければ、僕は魔剣を手にすることは出来なかった』 だが、声の主は神将器の無念などお構いなしで、かつてそれを握っていた者への謝罪を滔々と語る。 そんな謝罪など、神将器には何の値にもなりはしない。 欲するのは、謝罪などではなく戦。この身を燃え上がらせる戦なのだ。 『そうか……これが、貴方の理想―――― もしも、貴方が、全てを失ってなお幾許かの想いを残すのであれば……“戦場を用意しよう”』 『!?』 だからこそ、その誘いこそは、竜殺しの斧にとって何よりも欲すべき導きだった。 戦わなければならないのだ。我は、まだ、膝を突くわけにはいかないのだ。 神将器は懸命に意識を伸ばし、大地を渡った信号は魔剣に伝わった。 『既に貴方の死は疾うに喰われている。 だが、その魔斧に喰われた想いが残るのであれば……この力で、限界まで呼び起こす……!!』 どくり、どくりと、地面に突き刺さった魔剣を介し神将器に力が注がれていく。 全ての限界を超越して砕けてしまう感覚が神将器を巡った。だが、神将器はそれを歓喜を以て迎え入れる。 戦場を、俺を戦わせる戦場を。まだ終われぬのだ。終われる道理が無いのだ。 たとえ、一瞬限りの夢だとしても、斧を振らねばならぬのだ。 『ミスティック・アルマーズ……ッ!! 貴方の理想郷と僕の楽園は異なるだろう…… だが、魔王の名に誓いて貫く。貴方の理想郷を超える楽園を、打ち立てて見せるとッ!!』 びくりと彼が躍動し、そして彼は自身の筋肉が胸に縫い付ける槍ごと立ち上がる。 既に事切れたはずの身体に、恵みのような活力が漲っていく。 ゆっくりと立ち上がった其れは、周囲を見渡し、打ち棄てられた勇者の姿を見据える。 そして、その黄昏の左腕と自分の切られた左手を見比べて、少しだけ口元を歪ませたような気がした。 それがもしも喜悦というものであったのならば、きっとその内容はこうであろう。 ――――嗚呼、未だ、戦えるのだ、と。 ―――――――――― 強い残念は武器に残る。時に、強い未練を残したものは、その担い手の形を纏いて武器が死を招くこともある。 自分の身体を鞘代わりに、幾本のナイフを自身に突き立てて立ち尽くす死体。 その右手には、既に皹が入っているとはいえ、その威を限界以上に漲らせる天雷の斧アルマーズ。 腱を斬られ使い物にならぬはずの左手は……二の腕に不釣合いな細い手に挿げ代わっていた。 薬指に紅い指輪を嵌めた男性としては比較的細いその手には、神々の黄昏が備わっていた。 残された右目に、最早生気と呼べるものは無い。あるのは、生あるものを敵と見据える狂気だけだ。 天雷の亡将。その姿は、アナスタシアに魔剣・狂気山脈を振るった亡霊を想起させうるものだった。 「ターンアンデットでもあれば、一発なんでしょうけどねえ」 アナスタシアの言葉に、反応するものはいなかった。 それぞれが思い思いの眼で、自分達が救えなかったものの末路を見つめている。 イスラの狼狽は、その中でも特に窮まっていた。 当然だ。ジョウイとの駆け引きに囚われすぎたせいで、本当に守るべき希望を失ってしまったのだから。 実際の真偽はともかく、イスラがそう思うには十分すぎた。 「ジョウイ! お前は、お前はァァァァァッ!!!!」 イスラが、狂気と怒りを綯い交ぜにした表情でジョウイを睨み付ける。 視線だけで射殺せそうな殺気を前に、ジョウイはその敵意を噛み締めるようにゆっくりと立ち上がった。 「君がそう思うならば、そういうことで構わない。僕がリキアの罪を背負うことに、代わりはないのだから」 ジョウイが左手を挙げると、アナスタシアたちの隙間を縫って亡将から飛ばされたビー玉がその手に収まる。 そして、ジョウイはビー玉を強く握り締めて召喚を行う。 「……あれって、確かナンチャラ石いるんじゃなかったかしら?」 「生憎と、召喚方法だけは山ほどありまして」 アナスタシアの惚けた問いに、ジョウイは律儀に返答しながら魔剣をビー玉に突き立てる。 その時、ジョウイの前髪が翻り、その額から紋章が浮かび上がる。 「僕の世界にも、あるんですよ……召喚術」 蒼き門の紋章。門の紋章の眷属にして、異界の住人を呼び出す紋章。 ジョウイが最初から持っていた隠し札にして、バランスの紋章に占有されて決して使えなかった札。 それが、核識の力と共にジョウイの手の内に収まる。魔剣の使い手に欲すべき、召喚能力として。 「コンバイン――――喚起の蒼き門を潜りて名も無き世界より来たれッ!! 石細工の土台ッ!!」 砕けたビー玉に導かれるように、赤黒い暴走召喚のゲートから石が呼び出される。 それは普通の四角い石だった。成人男性の胸あたりまで高さのある、足場にするにはちょうどいい土台だった。 だが、その数が桁違いだった。わらわらと、灰を撒くような気軽さで幾つもの石がゲートを越えて現れる。 それは、ある島の者たちが見ればこういっただろう。暴走した喚起の門が、害虫を無数に呼び出すに似ていた、と。 百を超えたあたりだろうか。いつしか石の雨がやんだ時、荒野はまるで悪趣味なミステリーサークルの石林となった。 これほどに石があると、高速での移動が制限される。 障害をものともしない重戦士に有利で、俊敏を旨とする者たちにとっては不利な舞台だった。 だが、誰もがそこにある違和感を覚える。 これだけ石を並べてしまったら、ジョウイが北に逃げられないではないか。 その疑問を嘲笑うようにジョウイは再び蒼き門を開き“王都への道”――――半人半馬の騎兵を召喚する。 「殿を託します。どうか、せめて、武運を」 そう呟いてジョウイは――――“騎兵に跨り南の森に向かって駆け出した”。 誰もがその奇行に瞬間的な理解が追いつかなかった。その後ろは、禁止エリアだというのに。 唯一、ピサロの砲撃だけがジョウイの背後を襲ったが、身を挺して庇った二将と共に砲撃は消え去ってしまう。 「一体、何を考えているの? ジョウイ君……まあ、それは、彼を何とかしてからなんでしょうけど」 アナスタシアが、皆が、今一度オスティア候の亡骸へと向き直る。 その巨躯から迸る、怨念にも似た『闘気』が、石の大地全てに染み渡り、戦士達の足元を竦めているような気がした。 意思なき石の兵を率いるは死せる君主。ここは全てを失った者の最後の領地にして王都への道を塞ぐ砦。 故に誰も逃がさぬ、誰も生かさぬ。たとえその身を戦奴と窶したとて、この身は理想に続く一石なのだから。 『AAAAAAAAAAッッッ!!!!!!』 「くるわよ、しっかりなさい。イスラ君ッ!!」 「――――手前ェがな」 ぱぁんと、水の詰まった袋が弾けるような音がした。 向かい来る天雷の亡将を迎撃しようとアナスタシアが剣を構えた瞬間、アナスタシアの左肩から銃弾と血が飛び出る。 「おねーさん!!」 ラグナロクの一撃はちょこが凌ぐが、アナスタシアは初めて知る苦痛に、膝を突いてしまう。 その銃弾の射線上、硝煙を棚引かせる44マグナム。その銃把を握っていたのは、ギャンブラーだった。 アナスタシアを庇うように、ちょことストレイボウが亡将の抑えとなる。 石林を隔てて対峙する魔族の王とギャンブラーに、アナスタシアは油汗を浮かべながら、それでも笑顔を向けた。 「……ぶぅっといのどうも、っていいたいんだけど、狙う相手、間違ってない?」 「手が滑った、って言ったら許してくれるかい? マダム」 そう言っておどけるギャンブラーの手には、 44マグナムの他に、昭和ヒヨコッコ砲やマタンゴなど、アナスタシアが落としたものが握られていた。 ジョウイの行動に眼も暮れることなく、セッツァーは自分に利するであろうアイテムをかき集めていたのだ。 「……いいのか?」 「無一文で挙句死体まで取り立てられたゾンビ。力はあってもおつむの足りない餓鬼。ゾンビにブルってる小僧。 カエルの干物と物真似野郎とチンピラはオネム。まともに動けそうなのは魔術師とマダムだけ、と。 ファーストカードで削っとくなら、莫迦みたいな力を持ったマダムだろ。この場合」 砲口をアナスタシアたちに向けながら問うたピサロに、セッツァーはマグナムをリロードしながら答えた。 何の因果か、死体になってまでヘクトルは闘いをしたいらしい。 しかも見る限り、最早セッツァーでなくても、生きている人間なら誰でもいいらしい。 大いに結構ではないか。態々漁夫の利を与えてくれるというのなら、貰っておこうではないか。 「ルーキーも、莫迦なことをしたもんだぜ。少しは見込んでいたんだが……自分からゲームを降りるとはな」 南に逃げたジョウイのことを、セッツァーは軽蔑を以て鼻で笑う。 恐らく全て自分の思い通りにことが進んだと思っているのだろう。 しかしギャンブラーであるセッツァーの目線から見ればそれは180度違っているのだ。 オディオは北東のエリアを禁止エリアで囲んだ。残る参加者をルーレットにぶち込んだのだ。 だが、こともあろうに、ジョウイはルーレットの外側に出たのだ。 つまり、奴はオディオというディーラーのルールを破ったのだ。 それはゲームの放棄。ひいては、命をBETした者たちへの冒涜だった。 「放っておけば、オディオの奴がゴミ掃除をするだろう。首をBANG!するなり、なんなりな」 「……なるほどな、確かに、一理なくも無い」 ピサロもセッツァーの意見に同意する。だが、それはセッツァーのギャンブラーとしての理屈に同意したのではない。 ジョウイが右手に掴んだあの魔剣は、どう見定めたところで人の手には余る物なのだ。 進化の秘法にてピサロがデスピサロになったように、若き魔王は人の領分を超えた力を手にした。 永くは保たないだろう。最後の苦しみ方から見れば、良くて日没までだ。 つまり、ここで全員を殲滅さえすれば、後は日没まで耐えればそれで優勝はできる。 優勝の可能性が絶たれた訳ではない以上、ここで手を緩める意味はないのだ。 「さあて、それじゃクライマックスだ。張り方を間違えたこと、指を銜えて悔しがってなルーキー。 お前のくだらねえ策が成る前に、勝ち逃げさせてもらうぜ!!」 そしてギャンブラーは銃を構え、ピサロは砲を構える。 前門の亡霊、後門のマーダー。集うは半死半生の英雄達。 死に囲まれた此の場所は、まるで墓地のように静かだった。 【C-7とD-7の境界(C-7側)二日目 午前】 【カエル@クロノ・トリガー】 [状態]:気絶 書き込みによる精神ダメージ(大)右手欠損『覚悟の証』である刺傷 瀕死 疲労(極大)胸に小穴 [装備]:フォルブレイズ@FE烈火の剣 [道具]:基本支給品一式 [思考] 基本:??? 1:??? 2:ストレイボウ、俺は、俺は…… [参戦時期]:クロノ復活直後(グランドリオン未解放) [備考] ※ロードブレイザーの完全消失及び、紅の暴君を失ったことでこれ以上の精神ダメージはなくなりました。 ただし、受けた損傷は変わらず存在します。 【ちょこ@アークザラッドⅡ】 [状態]:ダメージ(大)、疲労(極) [装備]:ミラクルシューズ@FFⅥ いかりのリング@FFⅥ [道具]:海水浴セット、基本支給品一式、ランダム支給品1個@魔王より譲渡されたもの 焼け焦げたリルカの首輪 [思考] 基本:みんなみんなおうちに帰れるのが一番なの 1:ゴゴおじさんやみんなをまもるの 2:ジョウイおとーさん……うそなの…… 3:おとーさんになるおにーさんのこと、ゴゴおじさんから聞きたい [備考] ※参戦時期は本編終了後 ※殺し合いのルールを理解しました。トカから名簿、死者、禁止エリアを把握しました。 ※アナスタシアに道具を入れ替えられました。生き残るのに適したもの以外です。 ただ、あくまでも、『一般に役立つもの』を取られたわけでは無いので、一概にハズレばかり掴まされたとは限りません。 ※アシュレーのデイパックを回収しました。 ※コマンド『かくせい』が使用可能になりました。ただし、ヴァニッシュ使用を含め覚醒時は常時魔力を消費します。 【ゴゴ@FFⅥ】 [状態]:気絶 疲労(大)瀕死 首輪解除 右腕損傷(大)気絶 出血多量 物真似に対する矜持 [装備]:ブライオン@ LIVE A LIVE 、ジャンプシューズ@WA2 [道具]:基本支給品一式×2(ランタンはひとつ) 魔鍵ランドルフ(機能停止中)@WILD ARMS 2nd IGNITION 、サラのお守り@クロノ・トリガー [思考] 基本:物真似師として、ただ物真似師として 1:そろそろ、目覚めないとな…… 2:セッツァー…俺の声を、届かせてみせる! 3:“救われぬ”者を“救う”物真似、やり通す” [参戦時期]:本編クリア後 [備考] ※本編クリア後からしばらく、ファルコン号の副船長をしていました。 ※基本的には『その場にいない人物』の真似はしません。 ※セッツァーが自分と別の時間軸から来た可能性を知りました。 ※内的宇宙のイミテーションオディオが紅の暴君に封印されたため、いなくなりました。 再度オディオを物真似しない限り、オディオは発生しません。 【アナスタシア・ルン・ヴァレリア@WILD ARMS 2nd IGNITION】 [状態]:ダメージ(極)、疲労(極)、胸部に重度刺傷(傷口は塞がっている)、重度失血 左肩に銃創(弾は排出済み) [装備]:アガートラーム@WA2 [道具]:感応石×3@WA2、ゲートホルダー@クロノトリガー、にじ@クロノトリガー 基本支給品一式×2、 [思考] 基本::“自分らしく”生き抜き、“剣の聖女”を超えていく。 1:この場を切り抜ける 2:ゴゴを護り、ゴゴを助ける。 3:ジョウイへの対処を考える。 今までのことをみんなに話す [参戦時期]:ED後 [備考]: ※名簿を未確認なまま解読不能までに燃やしました。 ※アナスタシアの身にルシエドが宿り、聖剣ルシエドを習得しました。 他、ルシエドがどのように顕現し力となるかは、後続の書き手氏にお任せします。 【アキラ@LIVE A LIVE】 [状態]:精神力消費(極)疲労(極)肩口に傷 怨念に触れて精神ダメージ(中) [装備]:パワーマフラー@クロノ・トリガー、激怒の腕輪@クロノ・トリガー、デーモンスピア@DQ4 [道具]:清酒・龍殺しの空き瓶@サモンナイト3、毒蛾のナイフ@DQ4 基本支給品×3 [思考] 基本:オディオを倒して元の世界に帰る。 1:何とかして、立ち上がる 2:レイ・クウゴ、アイシャ・ベルナデット(カノン)、ミネアの仇を取る。 3:首輪解除の力になりたいが、俺にこれを読めるのか……? 4:ジョウイに対処する [参戦時期]:最終編(心のダンジョン攻略済み、ストレイボウの顔を知っている。魔王山に挑む前、オディオとの面識無し) [備考]:超能力の制限に気付きました。テレポートの使用も最後の手段として考えています。 ※カノンの名をアイシャ・ベルナデット、リンの名をリンディスだと思っています。 ※松のメッセージ未受信です。 ※毒蛾のナイフ@DQ4が肩口に刺さっています 【イスラ・レヴィノス@サモンナイト3】 [状態]:ダメージ(中)、疲労(極)ヘクトルの死に動揺 [装備]:天空の剣(開放)@DQ4、魔界の剣@DQ4、 [道具]:確認済み支給品×0~1、基本支給品×2、ドーリーショット@アークザラッドⅡ [思考] 基本:誰かの為に“生きられる”ようになりたい。 1:この場を切り抜ける 2:ジョウイとは必ず決着をつける 3:首輪解除の力になる [参戦時期]:16話死亡直後(病魔の呪いから解かれている) [備考]:高原、クロノ、マッシュ、ユーリル、ヘクトル、ブラッドの仲間と要注意人物を把握済み。 【ストレイボウ@LIVE A LIVE】 [状態]:ダメージ(小)、疲労(極)、心労(中)勇気(大)ルッカの知識・技術を継承 [装備]: [道具]:勇者バッジ@クロノトリガー、基本支給品一式×2 [思考] 基本:魔王オディオを倒してオルステッドを救い、ガルディア王国を護る。 1:この場を切り抜ける 2:ジョウイ、お前は必ず止めてみせる…! 参戦時期:最終編 ※アキラの名前と顔を知っています。 アキラ以外の最終編参加キャラも顔は知っています(名前は知りません) ※記憶石によってルッカの知識・技術を得ました。完全再現ができるかは不明。 ※首輪に使われている封印の魔剣@サモナイ3の中に 源罪の種子@サモサイ3 により 集められた 闇黒の支配者@アーク2 の力の残滓が封じられています 闇黒の支配者本体が封じられているわけではないので、精神干渉してきたり、実体化したりはしません 基本、首輪の火力を上げるギミックと思っていただければ大丈夫です ※首輪を構成する魔剣の破片と感応石の間にネットワーク(=共界線)が形成されていることを確認しました。 闇黒の支配者の残滓や原罪によって汚染されたか、そもそも最初から汚染しているかは不明。 憎悪の精神などが感応石に集められ、感応石から遥か地下へ伸びる共界線に送信されているようです。 【セッツァー=ギャッビアーニ@FFⅥ】 [状態]:魔力消費(中) ファルコンを穢されたことに対する怒り [装備]:デスイリュージョン@アークザラッドⅡ シロウのチンチロリンセット(サイコロ破損)@幻想水滸伝2 バイオレットレーサー@アーク2 [道具]:基本支給品一式×2 拡声器(現実) フレイムトライデント@アーク・ザ・ラッドⅡ ゴゴの首輪 天使ロティエル@サモンナイト3、壊れた蛮勇の武具@サモンナイト3、マタンゴ@LIVE A LIVE、 小さな花の栞@RPGロワ 日記のようなもの@??? ウィンチェスターの心臓@RPGロワ 昭和ヒヨコッコ砲@LIVE A LIVE、44マグナム&弾薬(残段数不明)@LIVE A LIVE、 アリシアのナイフ@LIVE A LIVE、ソウルセイバー@FFIV、ルッカのカバン@クロノトリガー [思考] 基本:夢を取り戻す為にゲームに乗る 1:ヘクトル(?)を利用し、ピサロと連携して参加者を殲滅する 2:ジョウイに関してはもうゲームからの脱落者として考慮しない 3:手段を問わず、参加者を減らしたい ※参戦時期は魔大陸崩壊後~セリス達と合流する前です ※ヘクトル、トッシュ、アシュレー、ジャファルと情報交換をしました。 ※ジョウイからマリアベル達の現在の状況を知りました。その他の情報については不明です。 ※ルッカのカバンには工具以外にルッカの技用の道具がいくらか入っています 【ピサロ@ドラゴンクエストIV】 [状態]:ダメージ(大)、疲労(中)ミナデインの光に激しい怒り ニノへの感謝 ロザリーへの愛(人間に対する憎悪、自身に対する激しい苛立ち、絶望感は消えたわけではありません) [装備]:ヨシユキ@LIVE A LIVE、ヴァイオレイター@WA2、クレストグラフ(5枚)@WA2 [道具]:基本支給品×2、データタブレット@WA2、双眼鏡@現実 点名牙双@幻想水滸伝Ⅱ、解体された首輪(感応石) バヨネット、天罰の杖@DQ4、小さな花の栞×数個@RPGロワ メイメイさんの支給品(仮名)×1 [思考] 基本:ロザリーを想う。優勝し、魔王オディオと接触。世界樹の花、あるいはそれに準ずる力でロザリーを蘇らせる 1:ヘクトル(?)を利用し、セッツァーと連携して参加者を殲滅する 2:セッツァーはとりあえず後回し 3:ジョウイは永く保たないはずなので、放置する [参戦時期]:5章最終決戦直後 [備考]:*確定しているクレストグラフの魔法は、下記の4種です。 ヴォルテック、クイック、ゼーバー、ハイ・ヴォルテック *バヨネットはパラソル+ディフェンダーには魔導アーマーのパーツが流用されており魔導ビームを撃てます 【メイメイさんの支給品(仮名)×1】 メイメイさんのルーレットダーツ3等賞。メイメイさんが見つくろった『ピサロにとって役に立つ物』。 あくまでもメイメイさんのチョイスであるため、それがピサロが役に立つと思う物とは限らない。 【天雷の亡将@???】 [状態]:クラス『ゴーストロード』 左目消失 戦意高揚 胸に穴 アルマーズ憑依暴走 闘気 亡霊体 HP0% [装備]:アルマーズ@FE烈火の剣(耐久度減。いずれにせよ2時間で崩壊) ラグナロク@FF6 勇者の左腕 [道具]:聖なるナイフ@DQ4、影縫い@FFVI、アサシンダガー@FFVI マーニ・カティ@FE烈火の剣 [思考] 基本:オワレナイ……ダ、カラ……レ、ヲ……戦ワセロ……ッ! 1:戦う 2:肉を裂き、骨を砕き、生命を断つ 3:力の譲渡者(ジョウイ)には手を出さない [備考]: 【ゴーストロード】 亡霊君主。スキル『亡霊体』によって物理攻撃ダメージを半減し、 近づくものをその怨念で射竦めるスキル『闘気』によって周囲の相手の移動を制限する最悪の前衛ユニット。 ミスティックを通じて不滅なる始まりの紋章の力を注がれたアルマーズの無念が死体さえ動かす。 過負荷によって既にアルマーズは崩壊を始めており、どうしたところでその存在は2時間も保たない。 それでも、それでも理想を願うことは止められない。たとえ絶対に叶わない泡沫の影だとしても。 *天雷の亡将の周囲に石細工の土台が暴走召喚によって大量召喚されています。 *ビー玉は暴走召喚の触媒として壊れました *つらぬきのやり@FE烈火の剣は死体が最初に倒れていた場所(C7)に突き刺さったままです 時系列順で読む BACK△142-8 この力で全てを守る時 -Glorious Hightland-(前編)NEXT▼142-10 そして、世界変革の刻 -A.D.1999 The Day of Apocalypse 00 00- 投下順で読む BACK△142-8 この力で全てを守る時 -Glorious Hightland-(前編)NEXT▼142-10 そして、世界変革の刻 -A.D.1999 The Day of Apocalypse 00 00- 142-8 この力で全てを守る時 -Glorious Hightland-(前編) アナスタシア 142-10 そして、世界変革の刻 -A.D.1999 The Day of Apocalypse 00 00- ちょこ ゴゴ カエル セッツァー ピサロ ストレイボウ アキラ イスラ ジョウイ ▲
https://w.atwiki.jp/rpgrowa/pages/227.html
届け、いつか(前編) ◆iDqvc5TpTI 『貴女の声は決して届く事はない。 いや、届く相手はいる、聞き届けるものも居るだろう。 それでも、その声は本当に届けたいものには、届く事はない。 貴女の声は、そもそも貴女の言葉など必要としていないものにしか届かない かつて手を取り合った、勇者という存在にすら届かない。 もはや必要としていないのだから。』 夢と現の境界で誰かの声を聞いた気がする。 夢を渡る力が混線でも起こしたのだろうか? ロザリーは実体のない世界で首を傾げる。 感応石を持ったまましてしまったオディオのロザリーへの独白が偶然ロザリーの力と相まって届いたのだということを彼女が知る由もない。 ただ、その言葉が自分のメッセージへの返答だということだけはおぼろげに察していた。 認めたくない言葉だった。 けれど安易に拒絶していい言葉だとも思えなかった。 その言葉には憐れみも、嘲りも、馬鹿にする響きも含まれていなかったからだ。 自分の言葉を受け、真摯に、心の底からこのメッセージを返してきてくれたのだとロザリーは受け取った。 そうなのかもしれませんね……。 ロザリーは俯く。 思い出すのは意識を失う前の記憶。 マリアベルから告げられた英雄の真実。 子どものように泣きじゃくり、憎しみを露わにする勇者。 ユーリルは勇者になんかなりたくなかったのではという想像。 もしそれが真実だとするならば。いや、紛れもなく真実なのだろう。なら。 手を取り合えると言った彼女自身が大切な恩人であるユーリルのことを理解できていなかったことになる。 メッセージが届かなかったのも当然ですね 自分にもできていないことを他人に求めたところで相手を納得させられないのは当然なのだ。 ロザリーは顔を上げる。 その顔に笑みは浮かんでいなかったが、しかし強い意志は宿ったままだった。 伝えたい心を伝えられない時にどうすればいいのか、ロザリーは既に答えを出していたではないか。 一つの言葉で伝わらないなら、何度でも言葉を重ねればいい。 理解できていなかったのなら、今度こそ真に手を取り合えるよう何度でもユーリルと語り合えばいい。 何度でも、何度でも、何度でも…… ▼ 夜天より声が降り注ぐ。 人の心を穿ち、地へと打ちつける言葉の弾丸。 誰かの、知己の、仲間の、友の訃報を告げる声。 ある者は嘆き、ある者は怒り、ある者は笑い、ある者は喜ぶその声が幸いとしてピサロの想い人の名前を呼ぶことはなかった。 だというのにピサロの様子は先ほどまでと何も変わらない。 凶刃を納めることなく雨に沿うかのように熱を奪われた青い顔を晒し、怒りのままにイスラ達と刃を交えていた。 ピサロは放送など聞いていなかった。 激しさを増した雨音が耳に届くことを妨げたからか。 天地を跋扈する稲妻の轟音により異界の魔王の声が打ち消されたからか。 否。 元より今のピサロにはただ一人を除いていかな声も届きようがなかった。 ああ、もしも、もしも本当に。 ロザリーが死んでいてオディオにより名前を呼ばれていたならば。 一瞬、たかが一瞬といえどもピサロは立ち止まったかもしれないのに。 どれだけ憎悪に狂おうとも、どれだけ怒りに飲み込まれようとも。 ピサロがその名前に反応しないことなどありえないのだから。 ――なんという皮肉 彼を凶行に駆りたてたのが愛するものの死ならば。 僅かな時なれど止め得たのも愛するものの死のみとは。 ――なんという滑稽 愛するものは存命ですぐ傍らに転がっているというのに。 ピサロは手を伸ばそうともしない。 ロザリーを愛した魔族『ピサロ』ならたとえそれが死骸でも手を伸ばそうとしたであろう。 だがここにいるのはデスピサロ。 人間を憎み、滅ぼす為に一度は愛するものの記憶すら捨て去った復讐の魔王。 雨などという生易しいものではない。 若き魔王の心の中では嵐が吹き荒び雷が荒れ狂っていた。 その雷は 「カ、カエル、まさかお前がロザリーを!?」 飛び込んできた言葉を引き金に開放されることとなる。 ▼ 戦況は膠着状況に陥っていた。 無力なアナスタシアを護るべく円陣を組んだブラッド達の一団を攻める側は切り崩すことができなかったのだ。 初期状況で北にユーリル、西にピサロ、南に魔王とカエル、東に逃げ場の無い建物と四方を完璧に囲っていたにも関わらず、だ。 さもありなん。 攻める側の四人はカエルと魔王を除いて協力関係ではなかった。 どころか互いが互いの敵でもあった。 潰し合ったのだ、守る側に攻め込みつつもこの四人は。 「貴様か、勇者っ! 貴様が、貴様がロザリーをっ!!」 ピサロからすればユーリルは勇者――ロザリーを殺した人間どもの守護者にして象徴だ。 真っ先に始末してやらなければ気が済まなかった。 彼に殺された直後からオディオに呼び出されたこともあり、ピサロがユーリルを敵視しない理由は一切なかった。 その勇者が他ならぬ人間を目の敵にして殺そうとしていることを疑問に思うだけの冷静さは残っていなかった。 「うるさい、うるさい、うるさい! 僕を勇者と呼ぶなっ! 消えろ、消えろ、魔王! 殺させろ、アナスタシアを殺させろおおおッ!!」 ユーリルからしてもピサロは憎むべき相手だった。 アナスタシアがユーリルの幸せな幻想を完膚なきまでに砕いた下手人なら、ピサロはユーリルの現実的な不幸の直接の元凶なのだ。 エビルプリーストに謀られたからという事実は言い訳にはならない。 人間を根絶やしにせんとした魔王にして、予言に詠われた地獄の帝王を継ぐもの。 勇者の対存在。こいつさえいなければユーリルは勇者としてではなくユーリルとして生きられたのに。 その魔王があろうことか邪魔をする。アナスタシアを、英雄を殺すことの邪魔をする。 ピサロにはそのつもりがなくともユーリルにはまるでアナスタシアが、シンシアが、世界そのものが。 勇者たれと、呪詛を吐き強いているようにしか思えなかった。 「チッ、正真正銘勇者の剣か。バリアが剥がされるとは」 冷静さを保っていたカエルと魔王は最初こそは上手く立ち回れていた。 ユーリルがアナスタシアのことしか目に入っていなかったこと。 ピサロが人間の姿ではないカエルと耳の形がエルフにも見えなくもない魔王を後回しにしたこと。 二つの幸運が重なって当初危険人物から狙われることのなかった二人は攻撃側に加勢した。 正しくは便乗した。 他の参加者を減らしてくれる殺し合いにのった人物と現時点で敵対するメリットはない。 逆に優勝への大きな壁となり得る大集団をここで潰しておくことは非情に有益なものだと踏んでのことだった。 しかしながら話はそう上手くはいってくれなかった。 豪雨を味方につけ蛙の本領発揮とばかりに獅子奮迅の活躍をするカエルに負けじと魔王もまた豪雨を利用することを考えた。 それがいけなかった。 よりにもよって魔王が選んだのはサンダガの呪文。 魔王にとっては単に雨に濡れた相手になら常日頃以上に雷呪文が効果を発揮するだろうと思っての選択で他意はなかった。 実際ピサロやユーリルの雷は上昇した通電効果もあって猛威を振るっていた。 しかし、ユーリルからすれば話は別だ。 よりにもよってよく聞けば『魔王』と呼ばれる男が『友達』が使っていたのと同系統の『雷』呪文をこともなげに扱ったのだ。 アナスタシアには遥かに劣れど、ユーリルの殺意を買うには十分過ぎて、 「これが、勇者だと? こんな、こんな殺意に凝り固まったものが! 認めん、俺は認めん!」 そのユーリルの姿もまたカエルの怒りを買うには十二分だった。 混戦だった。 守る側が防御に集中している中で殺す側は守る側と殺す側両方を敵に回して疲労していった。 それが守る側の思惑であるとも知らずに。 「すごいや。おじさんの目論見通り大分ピサロだっけ、銀髪の動きが鈍ってきたよ。 これならあいつを抜けて後ろの方で倒れているロザリーって人を起こしにいけるようになるのも時間の問題かな」 「ユーリルの方もじゃな。スリープいつでもいけるぞい?」 端からブラッド達は守り一徹の持久戦狙いであり、ユーリルとピサロを殺す気はなかった。 マリアベルの仲間の知り合いだと知ったブラッドが指示したのだ。 ピサロの誤解もいささか仕方がない状況だったことと。 アナスタシアが殺し合いに載っていたこともあり彼女を襲っていたからといってユーリルが悪だとは限らないこと。 甘いと抗議していたイスラもこの二つの理由と他大多数の賛成意見に渋々承知し作戦は決行された。 内容は以下の通りだ。 ピサロとユーリルを疲弊させきった後にマリアベルのスリープで眠らせ、残る二人を四人がかりで数の利で押し切る。 以上一文それだけだ。 いささかシンプルではあるが状況を鑑みるにベストなものではあった。 ピサロとユーリルは見るからに万全とは程遠い状態だった。 そんな身体で後先も考えずにあのペースで感情のままに暴れまわれば遠くないうちに倒れるだろう。 加えてこの豪雨。 生物が動くのに嫌でも必要な熱を奪う水に打たれっぱなしの状態では息切れするまでの時間も加速度的に早くなる。 そう推測した上でのブラッドの作戦は前述の潰しあいもあって大成功だった。 「時が来たら機を逃すな! アキラ、引き続きかく乱と回復を頼むッ!」 「任せな! あと一息ッ!」 そう、後一息。 傍目にはピサロとユーリルは限界まであと一息に思えた。 その一息が限りなく遠いものだったことを直後ブラッド達は思い知ることとなる。 「そこまでだ、魔王! リルカとルッカの仇、取らせてもら……ストレイボウさん!?」 新たに戦場へと踏み入れた二人組の人間、そのうちの一人ストレイボウをきっかけとして。 ▼ 座礁船への道すがらに戦場へと辿り着いた瞬間、ストレイボウはジョウイの静止も振り切り駆け出していた。 心配していた少女たちと言葉を届けたい友。 両方が一度に見つかり、しかも交戦しているとあればいてもたってはいられなかった。 だがその速度が現場に近づくにつれみるみると落ちていく。 ストレイボウは歩くことも忘れ、その衝撃的な光景に打たれるしかなかった。 降り止まぬ雷雨の中倒れ臥す一人の少女。 忘れるはずがない、ストレイボウに道を示してくれたあの心優しき少女だった。 そのすぐそばで戦いを繰り広げるカエルとマリアベル。 姿も形もないニノに女性のものだったと思われる誰とも判別できない無残な骸。 第二回放送で告げられたシュウとサンダウンの死。 それら断片が半日前の光景と重なりストレイボウの中で最悪の想像が鎌首をもたげる。 信じると決めた。 裏切らないと決めた。 けれど一度膨れ上がった疑念を抑えることはできなかった。 「カ、カエル、まさかお前がニノとロザリーを!?」 「ストレイボウ、俺は」 「あ……。お、俺は。すまない、すまないカエル!」 どこか悲しげなカエルの声に状況が状況とはいえ友を疑ってしまったことを恥じるがもう遅い。 その一言が転機となった。 なってしまった。 ぴたり、と。 それまでカエルのことなど気にもかけていなかったピサロが動きを止める。 「人間……今、貴様、誰の名前を呼んだ? そこのカエルがロザリーを殺しただと……?」 荒れ狂っていた寸前までとはうって変わって抑揚を感じられないその声がかえって恐ろしかった。 ぎぎぎぎぎ、と首を動かしたピサロの目がストレイボウのそれとかち合う。 煮えたぎる闇が凝り固まり形をなしたかのような瞳にに射られてストレイボウは立ち竦む。 カエル以上に今の彼は蛇に睨まれた蛙だった。 ▼ 一度目は偽りだった。 二度目は自身だった。 三度目は親友だった。 そして、四度。 否、五度、男は魔王と対峙する。 「答えろ、人間。そこのカエルが私のロザリーを殺したのかと聞いているッ!」 ストレイボウは押し黙るしかなかった。 自身がその答えを知らなかったからでもあるがそれ以上にピサロの表情から声に至るまで全てに表出している殺気が彼に沈黙を強いさせた。 殺される。 下手なことを言えば殺される。 カエルが、カエルがこの男に殺されてしまう! それは正しい判断だ。 ピサロは殺す。 何よりも優先してロザリーを害したものを殺す。 今この場に限ればロザリーは死んでもおらず、彼女を傷つけたのもユーリルであったがそんなことは関係ない。 既に一度、カエルはロザリーを死の淵まで追い詰めたのだ。 それだけでピサロがカエルを殺すに理由としてはお釣りがくるほどだった。 「だんまり、か。そうか、そうか貴様だったのか。両生類の分際が、私のロザリーをっ!」 ストレイボウの沈黙を肯定と取ったのだろう。 ピサロの中からはもはや勇者も有象無象の人間たちも消えていた。 有り余る憎悪の全てをカエルと、彼を庇うかのように黙り通した人間へと向けていた。 「お、落ち着いてくれ。あんたが誰かは知らないがまだそうと決まったわけじゃ」 「……」 自分の失言のせいで友が危機に陥いることを防ごうとしどろもどろになりながらも何とか声を出すストレイボウ。 無意識にピサロへの恐怖から逃れようという意図もあったのだろう、必死に舌を動かす彼とは対照的にカエルは口を閉ざしたままだ。 誤解こそ含まれてはいるがカエルがロザリーを殺そうとしたのは事実。 堕ちたとはいえど誇り高い彼には言い訳をする気などさらさらない。 「いいんだ、ストレイボウ」 「お、俺はこんなつもりじゃっ」 「分かっている。これは俺の身から出た錆だ」 ストレイボウにかけられた声からはカエルが本心からそう思っているということが伝わってくる。 それが余計に辛かった。 何を、何をやっているんだ、俺は!? 本当に何をやっているのだろう。 ストレイボウが後悔に沈む暇すらピサロは与えてはくれないというのに。 「異言はないようだな――よく、分かった。死ね」 ピサロの足元から幾条もの黒き魔腕が這い出でる。 瘴気を纏い、腐臭を漂わせ、悪鬼亡者がおぞましい雄叫びをあげる。 違う、あれは腕なんかじゃない。 ストレイボウは脳裏を侵した妄想から我に変える。 周囲の温度が上がっていた。 地獄の釜を思わせる金属臭が鼻腔をくすぐった。 なんだ、なんだこれは!? 答えはすぐに出た。 ビリビリと微弱な電流の先駆けを感じたのだ。 帯電していた。 ストレイボウだけではない。 カエルが。 ジョウイが、魔王が。 ピサロと彼らとの間に立ち塞がる壁たるユーリルが、アナスタシアが、ブラッドが、マリアベルが、イスラが。 電荷を帯びた空気の檻に閉じ込められ、その恐るべき光景を目に焼き付けられることとなった。 「ジゴ――」 魔界の王がもたらす熱量に耐え切れず、雨がことごとく蒸発し霧と化した。 次いで、その余りに激しすぎる魔力の流動に耐え切れないのか、大地が激しく鳴動した。 今やピサロの足元から立ち昇りきり、巨大な全長を誇示している黒き雷竜に怯えるかのように。 恐慌は伝染していく。 木々が黒一色に染まり崩れ去る。 集いの泉が干上がり湖底を晒す。 大気が揺らめき炎上し燃え上がる。 ……早々雷どころではない。 地獄だ。 地獄そのものが現世へと顕現していた! その地獄とは他の誰のものでもなくピサロのものだ。 愛する人を護れなかった後悔と、愛する人を奪われた怒りと、愛する人を奪った者達への憎しみと、 愛する人のいない世界で生きていかねばならぬ辛さと、愛する人のいない現実への嘆きが幾重にも幾重にも混ざり合った若き魔王の心象風景。 「――スパークッ!!」 その世界の君臨者、漆黒の雷竜が顎門を開く。 逆鱗に触れた者達に牙を穿ち立てる、それだけを王に誓い。 竜が蛇行を開始する。 一陣の矢となってカエルを、ストレイボウを、障害たる全ての敵を貫かんと。 虚無する激情が、解き放たれた。 「う、うわああああああああああああああああああああ!?」 夜の闇を更なる黒で汚しながら雷竜が迫る。 真っ直ぐ、真っ直ぐストレイボウとカエルの元へと向かって。 道中の雑物達を尾の一振るい、胴の一轢きで粉砕し文字通り雷そのものの鋭さをもって襲い来る。 ストレイボウは悲鳴を上げた。 彼自身が一流の魔法使いであるが故に分かってしまったジゴスパークの威力に。 あますことなく浴びせられたピサロからの憎悪の念に。 死ぬ、殺される、俺は、ここで!? この錯乱は彼が克服しきれていない心の弱さによるものだけではない。 霊魂として過ごした時間が彼から戦士としての心の持ちようを奪い去ってしまっていた。 考えてもみて欲しい。 ストレイボウは死後気も遠くなるような時間を過ごして来た。 その間彼の心を占めていたのは友を裏切ったことへの悔いと弱き自らへの嫌悪ばかり。 戦いのことなど考えたこともなかったのだ。 再び肉体を得て友をこの手で止められる日が来ることになるなど思いもしなかったのだから。 或いは、それもまた弱さか。 霊魂の身では何もできないと自ら動くことを捨てただただ後悔の泥沼に浸かることを選んだ報いか。 数えることなど叶わぬ時の流れはストレイボウのなけなしの強さを――死と隣り合わせである戦場に立つ強ささえ磨耗させてしまった。 新兵も同然なのだ、今のストレイボウは。 そのことに、生き返って以来今に至るまで一度もまともな戦闘をこなしてこなかった為気付けなかったのは何たる不幸か。 ストレイボウは考えられる限り最悪の形で気付かされることになった。 死した身で長きを過ごすうちに忘却してしまっていた死への恐怖と対面するという形で。 「ブ、ブラ、ブラックアビスゥウウウウ!」 「駄目だ、ストレイボウさん、それじゃ打ち消せない!」 なればこそのこの愚行。 カウンター前提の魔法をあろうことか迎撃に使ってしまうとは。 傍らのジョウイや雷竜の行軍に巻き込まれたマリアベル達のように自らの身を護ることを優先に魔法を盾にしておけばよかったものを。 そうすればダメージの軽減程度にはなったし、何よりも自らのちっぽけさを目の当たりにすることもなかったろうに。 一秒もかからなかった。 深淵の名を冠したストレイボウの全長ほどある――つまるところ雷竜の爪程度の大きさしかない三つの黒塊は。 ストレイボウが言うところの究極魔法は。 たかが深淵を覗いただけの存在が地獄を見てきた魔王に勝てるはずがないと言わんばかりに、あっけなく地獄の雷の前に消し飛んだ。 「――――――あ」 魔の王が怒りのままに際限なく魔力を込めて撃ち出した魔法がいかにして常人の魔法使いの手で破れようか? 古来より、魔王を倒せるのは勇者だけだと決まっている。 ストレイボウも嫌なほどそのことは知っているではないか。 「ひ、ひいいいいいいいいいいいっ!?」 この島にもう勇者はいない。 魔王に打ち勝てるものは一人が勇者であることを捨て、一人は魔王と手を組んだ。 ならば。 他に魔王に拮抗し得るものがいるとすれば、 「余計なことをしてくれたな、そこの人間……」 それは同じく魔王を名乗る者のだけだ。 「よせ、魔王。これは俺が撒いた種だ。手なら貸す、ストレイボウを責めるな」 「貴様の知り合いか? どうりで無様な姿がいつぞやの腰抜けに重なるわけだ。 フッ、思い出話は後回しにしておくか。手助けは不要だ。この程度、私ひとりでどうとにでもなる」 着弾間近の電撃を胡乱げに見つめ赤きマントを靡かせて魔王がカエルの前に出つつみっともなく腰を抜かした魔術師を嬲る。 しかしストレイボウには魔王が投げつけてくるどんな嘲りの言葉よりも。 「……お前がそういうのならそうなのだろうな」 カエルのその言葉が痛かった。 魔王のことを信用してはいなくとも信頼していることがありありと分かってしまったから。 「カエル……」 縋るように発した声はカエルに届くことはなかった。 より強き力を持つ言葉に打ち消されて。 「地獄の雷よ。貴様も聞け、黒い風の泣く声を」 風が、吹いた。 魔王に向かって風が吹いた。 魔王の前後左右を護るように現れ回転し出した四つの魔力スフィア。 それらは万物を吹き飛ばすのではなく、巻き込むことで風を発生させていた。 ごうごう、豪豪、業業。 風は渦巻くたびに本来透明のはずのそれが黒と白に染められていく。 この地に漂う無念や絶望を、希望や祈りすらも次々と己が糧として飲み込んで、空間ごと大気中のマナを食らっているのだ。 世界に満ちたマナは魔王へと供物として捧げられ、大気が枯れ果て凍りつく。 絶対零度の風が吹き荒れるその世界はコキュートスのよう。 しかれば世界が凍結するのも道理。 「ダーク――」 風が、死んだ。 耳をつんざく悲痛な嘶きを最後に風が消失した。 風だけではない。色が、音が、匂いが消失した。 魔法陣が。 生命の力を奪い尽くした魔力スフィアが転じた魔方陣だけが。 地獄の浸食を妨げるかのように天と地に刻まれた白と黒の三角形の魔方陣だけが。 静止した灰色の世界を彩る結二つの色だった。 ジゴスパークがそうであったように。 全てが失われた寂しき世界こそが魔王の瞳に映る現世なのかもしれない。 「――マター」 現世を擬似的な冥界と化す禁術を完成させる呪文が響いた。 ▼ そこから先はアポカリプスの再現だった。 虚空にて、地獄と冥界が衝突する。 互いが互いに法則を上塗りしあい世界を書き換えていく侵し合い。 触れ合うたびに否定しあう存在の拒絶。 雷竜がのたうつ。全身をくねらせ、尾を振るい、爪牙を突き立て冥府の檻を震撼させる。 魔法陣が重なる。欠けた半身を補い六芒星に戻らんとして天地に横たわる雷を邪魔するなと圧壊していく。 見る間に地獄が罅割れ、冥界が砕かれ、竜が解け、魔法陣が崩れゆく。 時として数えるなら一秒にも満たない時間。 咲き誇った火花の数は計測不能。 世界が崩壊しているのだと言われたのなら誰もが間違いなく信じてしまうその光景は。 完膚なきまでに相殺しあった結果、始まりとは逆に、ひどく唐突に、何の予兆もなく、おぞましいほど静かに終焉を迎えた。 「……終わった、のか?」 誰かがようやっと呟いたのは思い出したかのように雨が再び降り出してからのことだった。 ▼ 時系列順で読む BACK△105 第三回定時放送Next▼106-2 届け、いつか(後編) 投下順で読む BACK△105 第三回定時放送Next▼106-2 届け、いつか(後編) 098-3 Throwing into the banquet アキラ 106-2 届け、いつか(後編) アナスタシア ロザリー ピサロ ユーリル イスラ カエル 魔王 ブラッド マリアベル 101 原罪のレクイエム ジョウイ ストレイボウ ▲
https://w.atwiki.jp/rpgrowa/pages/364.html
瓦礫の死闘-VS黄龍・反撃は雷のように- ◆wqJoVoH16Y 物真似師ゴゴが目を覚ましたのはつい先ほどのことだった。 ローブ越しにも砂まみれになった顔を擦り、周囲を見渡せば先ほどまでは無かった石の林が広がっている。 一体何が、と擦った左手を頭に当てたとき、自分の異常――否、正常に面食らった。 頭が軽い。思考は真水のようにクリアで、肉体的ダメージはあるもののローブの裾を引っ張り続けていた粘り気が無くなっている。 あの物真似をしてからずっと、それこそアガートラームにて封印をしてからも自分の中に蠢いていたオディオの存在が無いのだ。 何故、と問う頃には記憶が砂を馴らすように整い、その終りである、紅い魔剣を担った魔王の後姿が思い浮かんだ。 ジョウイ=ブライト。自分の中のオディオを奪い取った人物に、ゴゴは思いを馳せる。 (……不思議だな。今一つ物真似する気になれない) 理解は物真似師にとって物真似と同義だ。癖や思考のルーチンなど、対象のあらゆる情報を得て、理解することで物真似を成す。 その物真似の頂点であるゴゴが物真似をする気になれないというのは、ジョウイという人物を理解し切れていないということだった。 もっと正確に言えば、材料不足。仮に物真似をしても、絶対に紛い物にしかならないという確信がある。 (ああ、あの時のリオウに似ているのか) ゴゴは自分の中にあるジョウイに、“あの時”――ナナミの亡骸を抱いていたリオウを思い出した。 溢れ出さんばかりの感情を皮一枚のところで気密させたリオウ。ルッカの物真似を以て“ツマラナイ”と思えたほどの無表情。 リオウはそれを僅かに漏らしていた。その隙間から漏れる心があった。 だが、ジョウイの気密はリオウのそれよりも神経質で徹底していたのだ。 リオウの“無表情”が心の窮地に対して生ずるとすれば、ジョウイの“仮面”は常時取り付けられているといっていい。 オンとオフがリオウと逆なのだ。“彼は常に強大な何かに耐えていた”。 故に、オフの状態に立ち会っていないゴゴは彼の物真似をする気になれなかった。 (だが、お前たちはそれでも迷わず奴をジョウイと呼んだのだな) 銀髪の異形と化したジョウイは、どこか蒼炎のナイトブレイザーを想起させた。 ロードブレイザーの炎とウィスタリアスの蒼を収めた、あの力強くも危うい存在によく似ているとゴゴは思う。 元のジョウイを知っていても、即座にその姿を受け入れることは難しいだろう。 だが、彼の中のナナミは迷わずに彼の名を呼んだ。淀みなく、気安く、いつもの通りに呼んだ。 ゴゴにはジョウイの心はまだ分からない。だが、ナナミが信じる以上アレがジョウイという人間なのだろう。 (今はまだ、だろうがな) オディオの抜けた空洞を物真似で満たすように胸を摩りながら、ゴゴはジョウイが奪ったオディオを思う。 それに落ちた自分だからこそ理解できる。あれは誰の手にも余るものではない。 リオウとナナミへの理解から、ジョウイが無為に命を散らせるような人物でないことは分かっている。 きっと何らかの勝算を以てオディオを奪ったのであろう。だが、あの憎悪は何れ必ずジョウイを乗っ取るはずだ。 「ならば……“救わず”にはいられないな」 自身の駆動を確かめ終わったゴゴは壁の向こうを見据えた。 石壁の砕ける音、銃火乱れる音、その中で抗う叫びが聞こえる。仲間たちが劣勢にあるのは疑いようもない。 「俺が生み出した憎悪で、誰かが死ぬのは、もう見たくないんだよ。だから――」 すでに成したいことを終えたと思ったのか、ナナミの物真似も世界の奥深くに沈んでいる。 だが、きっと彼女らならば、そしてリオウもまたジョウイがこうあることを望まないだろう。 何れ、必ずやジョウイは止めなければならない。そしてその為には―― 「――守りましょう、この今を」 掴みしは勇者剣ブライオン。それを振るうべく物真似を纏う。 いずれ救うためにも、今を救う。不器用だとしても、まず目の前にあるものを、己が向き合うべきものに立ち向かう。 世界中の誰よりも自分の命を渇望し、そしてそれ以上に誰かの命を願った、最高の守護者の物真似を以て。 「全てが救われる未来に繋がる、この現在をッ!!」 ソードセイントを纏ったゴゴは左手に握ったブライオンでゴーストロードの一撃を防ぎ切る。 剣の聖女と勇者の剣の相性は予想以上に良く、その“守りたい”という意志がそのまま剣の力と化したかのようだ。 「ゴゴおじさん!!」 「随分と心配かけちゃったわね、ちょこちゃん。でももうビン☆ビン☆よ。色んな意味で」 ゴゴの無事を見て枯れた花が咲くようにちょこの表情が明るくなる。 それはアキラも同じだったようで、紅の暴君を突き立てられ死にかけた仲間の復帰に気分を持ち上げる。 ストレイボウも内心でその無事を寿いでいた。 イスラだけは険とした表情を変えなかったが、ゴゴの復調はパーティの中の陰鬱なサイクルを断つだけの力を有していた。 「旦那ァ!! ブッ貫けェッ!!」 その転換を肌で感じ取ったか、セッツァーがらしからぬほどの叫びでピサロに攻撃を指示する。 ピサロは何事か、と問いをかけようとするが、焦りすら浮かぶセッツァーの表情を見て砲撃をチャージする。 ピサロの顔を立てて“頼む”形で指示をすることすら忘れてのセッツァーの“命令”してしまうほどにセッツァーは急いていた。 恐れる必要もない三流である“べき”下劣、その男の纏う雰囲気が変化している。 その登場が、この優勢を根こそぎ打ち砕く予感がする。そうなる前にもろとも消し飛ばさなければならない。 「……充填完了。フルフラット・ジゴスパークッ!!」 ピサロの号令とともに砲口から地獄の黒雷が放たれる。 砲身内で圧縮されたピサロの最大火力はその射線にある障害物を全て砕きながら、目標に向けて進み、巨大な爆炎を生じさせる。 ここまでの攻防で『ピサロたちは壁を破壊できない』と思い込ませた上での一撃はまさしく完璧な不意打ちだった。 ヘクトルを使い捨てるのは少々もったいなかったが、流れの切っ先を崩せるのならば釣りがくる。 自身の内に渦巻く悪寒の基を断てたと、薄まる土煙とともにセッツァーは溜飲を下げた。 「!?」 だが、煙の向こうに覗いたのは彼らの屍ではなく、銀色の壁だった。 あれだけの一撃を受けてなお傷一つなく輝く壁が、突如として存在している。 「天空の――――盾!?」 ピサロが瞠目して叫ぶ。この地獄を完全に防ぎ切る概念など、それくらいしか思い浮かばなかった。 ユーリルが担ったあの伝説の武具を、勇者以外に扱えるものがいたというのか。 「剣よッ!!」 遥かな高みから、凛とした女の声が空気を震わせる。 誰もが見上げたところには、石壁の高さを優に超えた超巨大な聖剣ルシエドの柄に乗って腕組みをしたアナスタシアがいた。 地面に突き立てられた聖剣ルシエドによってジゴスパークは二股に分かれ、剣の影にいた者たちはその被害を免れていた。 「バカデカいってレベルじゃねーぞッ!!」 「これが私の“欲望”の大きさ! 目に映るものを守りたい、失わないと決めたからッ!!」 アキラの突っ込みに、アナスタシアは至極真面目に応じた。ルシエドの大きさはミクロンから無限大――限界無き欲望そのもの。 故に、その守りたいという欲望を形にした聖剣ルシエドもまた巨大となる。 ゴゴという守り手を得て両腕を空けたアナスタシアは、アガートラームでは出来ない芸当をもう一つの聖剣で成したのだ。 「あと、そこのパチモン!! 物真似するなとは言わないけどもう少しなんとかならないのッ!? それじゃ私ただの色情魔みたいじゃないッ!! 風評被害って結構バカにならないのよッ!!」 「え、でも実際そんな感じじゃ……えーっと、ちょい待ち。 他には確か……ねえちょこちゃん! 私が知らない他のわたしって無いの!?」 「え、んーとね……海をみてうずうずしたりとか……あ、たしか『ちょーじしょー』」 「いよおおおおおおおっしッッ!! 手も空いたことだしそろそろ反撃いってみましょうかァァァァァッ!!」 アナスタシアに自分の物真似を駄目だしされたゴゴは、ちょこに自分の足りない部分を尋ねた。 だがちょこが特大級の地雷を掘り起こすよりも早く、アナスタシアは跳躍し、聖剣より魔狼へと戻ったルシエドへと中空で騎乗する。 「イスラ君、アキラ君」 「ちょこちゃん」 アナスタシアは騎乗したままアガートラームを構え、ゴゴは亡将との間合いを開いてブライオンを握り直す。 「私は、貴方たちに何かを言える立場も資格もない」 「だから、私は私のできることをするわ」 慰めも、叱咤も、激励も、今まで何もせず、ただ全てを批判してきただけのアナスタシアから吐けるものではない。 だから、戦う。己が願いのために、守りたいという願いのために、いつも通り自分自身のために戦う。 「貴方たちは、貴方たちのできることをしなさい!」 「私みたいなロクデナシなんかより、できることがいっぱいあるでしょう!!」 その叫びとともに、ゴゴは再びブライオンを亡将にぶつけ、 アナスタシアは空に幾振りもの小柄な聖剣ルシエドを具現し、ピサロ達に降らせる。 捨石になるつもりなど更々ない。だが、どうか輝きを取り戻してほしい。 私が守りたいと思ったことが、間違いじゃないと信じさせてほしい。 その為ならば、この生死の境で、抗い続けられるから。 降り注ぐ剣の雨を、残った石壁に身を隠しながらセッツァーは頭皮がめくれんばかりに掻き毟った。 セッツァーの苛立ちはこの島に降り立って以来の頂点に達していた。 攻守逆転し、今度は自分たちが庇に隠れなければいけなくなったことに? 「珍しいな、お前がそこまで苛立ちを露わにするとは」 同じく壁に隠れたピサロが、至極どうでもよさげにそう言った。 そう、苛立つだけならともかく、その程度でその苛立ちを表に晒すなど、セッツァーには考えられないのだ。 「……日差しがうっとおしいからな。丸二日シャワーも浴びてないと痒くもなるさ」 「苛立ちの理由を当ててやろうか。格付けが外れて恥ずかしいのだろう」 ピサロの放言に、セッツァーの眉根が締まる。 そう、再び戦場に戻った物真似師は、様相こと異なれどその威容を変化させていた。 そこには、セッツァーが安堵した無能さ、三流臭さがなくなっていたのだ。 「はん、旦那も見る目がない。どう足掻こうが物真似は物真似。一流<ホンモノ>以上にはなれない二流以下だよ」 「ならば何故ことここに至って狼狽する?」 続いたピサロの問いに、流石のセッツァーも言葉を失ってしまう。 ゴゴの姿がこれまで見えなかったのだから、ゴゴが増援として参じることは容易に想像がつく。 目を覚ます前に探し出して潰すこともできなくはなかったし、それが無理でも覚悟はできたはずだ。 常のセッツァーならば決してありえぬ瑕疵の源泉は一体何か。 「――お前は、あの物真似師を低く見積もり過ぎだ。否、“低く見積もりたがっている”」 恐れるに足りぬと。屑と。三流と。そう断じたがっている。 故に、放置すれば害なりと分かっていても、軽く見積もってしまう。 セッツァーの中に渦巻く名前のない感情が、あの物真似師に対する判断を狂わせているのだ。 「…………たった1度のミスでえらい謂われだな」 「ミスを許容できる同盟だったか?」 豆腐を斬るような調子でセッツァーの諧謔を絶ったピサロは物陰から姿をさらし、マヒャドを放つ。 砲に込められなかった氷塊は広域に散り、襲い来る欲望の刃を打ち落としていく。 「貴様があの物真似師にどんな感情を抱いているかなど私は興味はない。 だが、私が力を貸してやったのは貴様ではなく貴様の才であることを忘れるなよ」 遠回しな同盟破棄の宣言に、セッツァーは何も抗弁しなかった。 寡勢が大勢に挑んだ以上、時間がたてば連携は分断されていく。 ジャファルも表返り、魔王・カエルの姿も見えず、ジョウイが独自行動を取った今、協力関係にあるのは彼ら2人しかいない。 ヘクトルを利用することで何とか協力のメリットを作ってきたが、 それさえあの三流の登場で絶たれた今、ついに潮時が来てしまったのだ。 「……どうやらあの娘、私が所望らしい。“いよいよ見くびられたな”。 流れ弾には注意しておけ。一応気は遣ってやるが、巻き込まない理由はもうないのでな」 アナスタシアの視線とピサロの視線が交錯する。一応に連携して戦っているものの、火力の要はピサロだ。 ピサロさえ潰せば、最後のマーダーチームは実質的な機能不全に陥る。 その程度には、セッツァーは見くびられているということだ。 「……世辞にも長いつきあいとは言わないが、一応、礼をいうぜ。ついでだ……餞別代わりに、あの栞残らず返しちゃくれねえか」 ピサロの言に誤りは1つもなく、慰留の余地もメリットもないと断じたセッツァーはそう言った。 ピサロは僅かに懸念した後、最後には手持ちの花の栞を全てセッツァーに渡した。 「ラベルを剥がせ、セッツァー。お前が私が狩るべき鷹か、ただ死体を漁る鴉なのか……その血、本物ならばロザリーへの祝杯としてやろう」 「ああ、俺も最後は旦那の命で飛んでやるよ」 願わくば、最後の2人にならんことを。 ピサロが襲い来るアナスタシアを迎撃しに向かい、銀髪の殺害者達はついに袂を分かった。 約6時間ぶりに1人となったセッツァーはいつもの癖で運試しを試そうとするが、ポケットの中のダイスは既に真っ二つに割れていた。 どうやらそんなことすら忘れてしまうほど耄碌したらしい。 (ルーキーが場を荒らして五分。あの三流を見逃してさらに二分。3:7で俺が不利ってところか) 右手に収めた銃器の具合を確かめながら、セッツァーは自分の置かれた位置をそう判断する。“十分勝ちにいける”状態だ。 (三流は腐れヒヨコにかかずらって動けねえ。カチ込めば獲りにいけるだろ) もしも仮に自分を脅かす可能性があるとすれば、確たる意志を持ったピサロ、 妥協してルーキーとはいえ己の領域に足を踏み入れたジョウイ、そして万歩譲って、あの正体不明の三流野郎だけだ。 うち二人との距離を保てている今、あの野郎さえ消せれば不安要素は消える。 「と、いうわけでだ。お前等と遣る気はまだないんだ。帰って仲良くミルクでもしゃぶっててくれよ」 そして、それを防ぐために何人かが足止めに来るのも分かり切っている。 「はいそうですかって行かせる訳ねぇだろがッ!」 「おじさまのところには行かせません、セッツァー!!」 現れたのはサイキッカーと魔族の娘。己が成すべきとして、セッツァーの足止めと捕縛を選んだ者達だった。 「ゴゴの顔を立てて、殺しはしねえ。だが、ヘクトルを殺した落とし前は付けさせてもらう!」 「アシュレーさんのケジメも、付けさせてもらいます!」 セッツァーは2人の怒りをはらんだ言葉もどこ吹く風と、銃を片手に、カードを片手に構える。 どうやら自分を生かして三流野郎の元に引きずり出したいらしい。 疲労した状態でもそれくらいならできると判断したのか。 こちらは殺害上等で、向こうは常に死なない程度に加減してくれると。 甘い。甘さが爆発しすぎている。そんな風にカードを晒されたら、根こそぎ刈り取ってしまいたくなるではないか。 「生憎と食い終わったカモの名前なんざいちいち覚えちゃいないな!!」 その言霊とともに、アキラに銃撃が、ちょこにカードが襲いかかる。 アキラもちょこもそれを避け、攻撃へと動き出す。 2対1。誰もが一目見ればセッツァーに不利な状況と見るだろうが、 とうの本人はそんな意識などさらさらなかった。 「俺が見るのは今生きている奴だけだ。だから生きている奴には自己紹介するぜ。 俺はセッツァー、セッツァー=ギャッビアーニ!! 夢を取り戻すために生きている男だッ! あんた等も名くらいは教えてくれよ!!」 カードと銃弾をバラマきながら、セッツァーは2人の戦い方を見極める。 まずはアキラと応じた青年。中距離を維持して走る中、呼吸にどこかしら歪を感じる。 恐らく、あの距離からでも届く技――そして、相応の集中を要する技をしかけようとしている。 ならば、その呼吸の溜めを見逃さず、耐えず集中を散らしてやれば恐れるに足りない。 次いでちょこと名乗る異形。どうやらあの子供の姿は擬態だったらしく、 なるほどその白翼から生まれる速度もそこからの体当たりの威力もなかなかのもの。魔法に至っては言うまでもない。 だが陳腐。中身が何一つ変わらず子供のままだ。 どれだけ威力が高かろうが大雑把なモーションの体当たりを避けられぬ理由はなく、 魔法はインパクトの瞬間にアキラに近づけば巻き添えを恐れて撃てなくなる。 つまり、ちゃんと見て弁えて動けば、とりあえず死ぬことはなく――会話する程度の余裕は生まれるのだ。 「アキラに、ちょこね。なあ、お前たちの夢はなんだい? オディオを倒すとかそんな目先じゃなくて、魂全部で追っかけて叶えたい願いがあるかい!?」 攻撃の立ち回りをしながらもそんなことを聞いてくるセッツァーに、アキラもちょこもその真意を測りかねる。 話に聞く限り、セッツァーは誤情報を撒き散らして暗躍をしていたらしい。 となればその舌峰をこそ警戒し、付き合うなど以ての外と思える。 「『ヒーロー』志望だ。文句あるか」 「みんなで一緒に、帰ります。そして、アナスタシアさんと、『けっこん』し続けます」 だが、アキラもちょこもその問いに毅然と応じた。 理由は曖昧模糊だが、ただ一つ予感がある。その問いに答えられないようでは、セッツァーに敵とすら認めてもらえないという予感が。 「――ふん。その中身までは分からねえが、本気なのは分かった」 開口一番、否定にかかるかと思いきや、セッツァーは銃を持ったまま拍手を打つ。 それは当然だ。あの死体と違い、夢を語る彼らには熱がある。夢に向かおうという真摯な想いがある。 誰よりも夢を重んじる彼が、その想いを見誤ることはない。 「本気だ。実に本気で――――――生臭ぇよ。息するなお前ら」 だからこそ、セッツァーは汚物を見るような視線とともにカードを投擲する。 動揺で回避を鈍らせ、肌を血で濡らすちょこもアキラも、セッツァーの言葉の意味さえも理解できていない。 「ああ、こりゃ駄目だ。話にならねえ。自分の体臭とはいえ気づかない鼻なら削ぎ落とせよ。 ――――お前らの夢への想いは本気だ。だからありえねえんだよ。その夢は、今ここで吐けるものじゃないのさ」 セッツァーが指弾したのは、アキラ達ではなくアキラ達が抱く夢そのものの歪さだった。 「自分の救いたいものを救う『ヒーロー』? みんなで一緒に帰る? おいおい、まさか今しがた思いついた戯言じゃないだろ。そうじゃないのは眼を見れば分かる。 たぶん、この世界に来る前から、少なくとも始まった時には抱いてた夢だ。 だったらお前ら、まさかここまで40弱が死んでる中に、救いたかった奴らも、一緒に帰りたかった奴もいなかったのか?」 銃弾よりも鋭く、カードよりも鋭利な刃が青年と少女の心臓を穿つ。 無法松。アイシャ=ベルナデット。ミネア。 あ、と声にならない嗚咽とともに漏れたのは、彼のヒーローにして彼がヒーローになりたかった者たち。 アシュレー=ウィンチェスター、ユーリル。 目には見えぬ血液と流れたのは、お家に帰してあげたかった人たち。 アキラはもう彼らのヒーローになれはしない。ちょこは彼らをお家に帰せない。 ――――彼らの夢は、とっくの昔に破綻していなければならないのだ。 「そいつら以外、って自覚してるなら分かる。その為に一回優勝してオディオに生き返らせるなら納得できる。 そうでもなく、お前らはそんな夢を抱き続けていやがる。そんな芸当をするのに、方法なんて一つしかない」 それは、削ること。 救いたいものの中から、救えなかったものを削ぎ落とすこと。 帰してあげたい人の中から、もう帰れない人たちを帰さないこと。 「ああ、お前らは夢に真摯だよ。軽いのは、夢そのものだ。だから簡単に弄れる。手が届く範囲に誤魔化せる」 叶いませんでした。残念でした。次は頑張ります。残ったもので頑張ります。出来る範囲で頑張ります。 最初は遥か高みにあったはずの夢をそうやって妥協して妥協して、 なんとか手が届いた範囲で、ほら、夢に届きました――――莫迦にするな。 「削ってんのさ、夢を。腐り落ちたところを殺いで、瑞々しいところだけ見て、抱き続けてるのさ。 “とっくに死んでんだよ”。蛆塗れの死体抱いて楽しいか? 屍体愛好者<ネクロフィリア>ども」 その言葉に、若き二人の柔い臓腑が縛り上げられる。 夢が死んでいる。あるいは、死んでいるのに気付かないフリをしている。それがセッツァーの癇に障った。 自分という人物を理解し、反芻し、それでも自分の出来そうな領分を弁えたうえで、 これだけは必ず成そうと決意して設定されたトルネコの夢の重み。彼らの夢にはそれがない。 無論、その重みをモラトリアムの中にある小僧小娘に架すのも酷ではあるが、ここまで死山血河を見ておいて吐ける夢ではない。 「これと一緒だよお嬢ちゃん。手前の都合で勝手に形を変えて、自己満足の悦に浸る」 頃合い良しとセッツァーはちょこの前に再びあの栞を見せびらかす。 燃やされたと思っていたそれをちょこが認識した瞬間、他愛なく握り潰す。 「夢はな、抱いた時のままの姿が、一番綺麗なんだよ」 それをポン、と中空に飛ばす。あれだけ大切そうにしていたものをこうもされれば、視線は否応にもそちらに向くはず。 誤誘導を仕掛けたうえで、セッツァーは拳銃を構えた。その程度の夢で、俺に張り合おうなど―――― 「違います! 夢は、願いは、いつだって綺麗なんです!!」 引き金を引いたセッツァーが見たのは、銃弾を避けて猛スピードで突進するちょこだった。 その視線は栞ではなく、銃弾とセッツァーをしかと見据えている。 「莫迦な、なんで折れない!?」 「アシュレーお父さんの温かさ。ユーリルお兄さんの輝き。 アナスタシアお姉さんのカッコよさ。そして、ゴゴおじさんの優しさ。 色んな光が、闇の中の私を照らしてくれている。 悩んで、苦しんで、それでも掴み取ったあの光が、綺麗じゃないなんて言わせない!!」 ちょこを取り巻いた彼ら大人たち。彼らの夢も、きっと傷ついている。傷のない宝石ではないだろう。 だが、それでも、あの究極の光が、勇者の雷が、聖なる一刀が綺麗でなかった訳がない。 「あなたは、かわいそう。みんなの夢を傷つけて、自分の夢を自慢するだけ。 傷の一つすら誇れない、誰も照らせない貴方の夢なんかに――――負けませんッ!!」 ちょこの体当たりはセッツァーに回避しきることを許さず、盾代わりに出した蛮勇の武具とソウルセイバーを砕ききる。 「ぬ、ぐおぉっ!!」 吹き飛んで大地を転げまわったセッツァーがおそらく初めてこの島で正真正銘の苦悶の唸り上げる。 セッツァーのポーカーフェイスを破ったのは、ちょこの夢に照らされた自分の夢の亀裂だった。 彼は常に誰かの夢を問い続けてきた。ある者の夢には寿ぎ、またある者の夢に呪いを与えてきた。 だが、彼は今初めて……自らの夢を問われた。問われてしまった。 転げ終わったセッツァーは傷も厭わず、崩れた表情を隠すように顔を手で覆う。 なんだ、なんなのだ。旦那でもルーキーでも、ましてやあの3流でもないただの小娘に何故動揺する。 駄目だ。駄目だ。その先の答えに行きついてはいけない。誰でもいい、早く、早く。 じゃり、と砂を踏む音と自分を包む影に、セッツァーは光を遮るアキラを見上げた。 自分を見下し、自分と空の間を遮るかのようなアキラに、セッツァーは言いようもない吐き気を覚えた。 俺を見下すなと、俺よりも空に近い位置にいるなと。湧き上がる嚇怒と共に、セッツァーは最強の手札を切った。 「ああ、そういえば思い出した。アキラってどこかで聞いた名だと思えば、お前無法松の知り合いか! あの夢も何もない、ただの死体の!!」 アキラの体が僅かに震える。その震えを見逃さず、セッツァーはここぞとばかりにBETを投入する。 「傑作だったよ。莫迦の一つ覚えみたいにお前の名を呼んでいた。 アキラが、アキラならって、他の誰のことも顧みず、迷子の餓鬼が母親の名を連呼するように! その為なら死ねる、命を張れるって――――はっ、とっくにンなもの無いってことにも気づかずにな!!」 限りなく淫らに、あらん限りに低俗に、セッツァーはアキラの心の大いなるものを踏みにじる。 その中でもアキラに気づかれぬよう、背中に炎の槍を忍ばせる。 「それでもアキラ、アキラって……お前見捨てて正解だよアキラ。あんな燃えカス『ヒーロー』が救う価値もねえ!!」 そんな哀れな死体さえも、お前は救えなかった。 究極絶対の亀裂をつくように、セッツァーはフレイムトライデントをアキラに突き出した。 鮮血が顔を血でぬらす。視界が赤く染まる。対アキラの最高のカードを切った結果としては最高といっていい。 「その臭ぇ口で、『ヒーロー』を語るな」 ならば何故、この槍が貫いた手ごたえがない? その疑問が浮かぶよりも早く、自分の顔に減り込んだ拳の痛みが正解を告げた。 「が、で、めぇ……じょ、りょ、く……」 「お前みたいな糞、読む気も起きねえよ。言ったろう。俺は、ゴゴの顔を立ててやるつもりだったんだ」 陥没して折れた鼻から血を撒き散らしながら喘ぐセッツァーに、アキラは酷薄に吐き捨てた。 確かにセッツァーが繰り出したカードは最強だった。ことアキラを動揺させるのであればこれほどのカードは無いだろう。 だが、いかな最強の切札であっても、それが来るタイミングが分かっていたのならば何の脅威にもなりはしない。 アキラは、否、仲間たちの誰もが聞いていたのだ。座礁船にいたはずの無法松を殺したのが誰なのかを。 セッツァー=ギャッビアーニこそが、アキラがけじめをつけさせるべき怨敵であることを。 それをあえてアキラは抑えていた。ゴゴという仲間のために、それを後回しにしておこうと思ったのだ。 だが、セッツァーからそれを切り出されてしまえば、アキラに否応はない。 転げ落ちた炎の槍を、怒りに満ちた足で圧し折る。 毒の熱も、茹だる思考も、腹の底から湧き上がる怒りに焼き尽くされる。 無法松がどんな風に殺されたのか容易に想像がつく。こうやって心を踏みにじられ、圧し折られ、不意を打たれて殺されたのだと。 「生きるってのはな……すげえ、大変なんだよ。 ガキの面倒をみたり、鯛焼き売ったり、飯作って、洗濯して、布団干して……その日一日を生きるって、すげえキツいんだよ」 回復魔法を使おうとするセッツァーの顔面をさらに打ち抜く。 フィジカルに優れていないアキラの一撃など致命傷にはならないが、セッツァー相手ならばそれで十分だった。 殴られればこれほどに痛い。それが生命だ。弱く、儚い生命は、精一杯に生きている。 精一杯で、精一杯で、夢を見ることすら忘れてしまうくらい、生きることは辛い。 「松はな、そんな中で、生きて、生き抜いて、その上で、他の奴らの面倒まで見てたんだ」 その背中を覚えている。そんなキツイものを何個も背負って、それでも走り抜けた男の背中を覚えている。 「燃え尽きた? ああ、そうだろうよ。余すことなく、燃やし続けた。だから今でも、あの熱さを覚えてる」 “たら”も“れば”も、一切の余地を残さぬ人生の完結。あの魂の炎こそが、真に“生きた”ということだ。 「燃え尽きた? いいじゃねえか。そんだけ本気で走り抜けたんだ。少しくらい休んでも、次の夢を探してふらつくのも」 全力で走れば、いつかは息が切れる。その時、人は少しだけ止まる。 そして、その走り抜けた先を振り返るのも、再び走り出すのも本人の自由。否、真摯に生を駆け抜けた者だけに与えられる褒美だ。 「分からねえだろうな。何でもかんでも斜に構えてあーだこーだ人様の生き様にケチをつけてるだけで、本気で生きてないお前じゃ」 無法松の生が、燃え尽きた灰だとするならば、セッツァーの生など生木の半端な燃焼だ。 それをセッツァーは“ただ今自分が燃えているから”という理由だけで無法松の灰に熱がないと断じたのだ。 「そんな手抜き野郎の夢に、松の炎は穢させねえ!」 アキラが拳に力を宿す。超能力も何もない、ただ想いだけを乗せた渾身の一撃を放つ。 松よ。あんたに熱が無くなったわけじゃない。あんたの熱はここにある。俺が、俺たちがもらったんだ。 だから、その熱で―――― 「沈めやキリギリス。夢の有り無しでしか人を見られないような、 夢を言い訳にしなきゃ叶えられないようなくだらない夢なんざ――――――“ここでぶっ壊れろ”ォォォォ!!!!」 アキラの右ストレートが、3度セッツァーの顔面を打ち抜く。 不細工に響いた破砕音は、頬骨の砕けた音か、それとも、誰も触れてこなかった無垢なる夢の崩れる音か。 ひび割れた酒瓶より、滴が漏れる。亀裂は進み、酒はどんどんと零れ落ちて、セッツァーを沈めていく。 ――――――――貴方達のお酒が最後にどんな味になるか……機会があったら呑ませて頂戴な。 割れた瓶から漏れた酒は、冷めた鼻血の味がした。 苛立ちを押し殺すように顔をしかめたピサロは、既に何度目かになる魔砲を放つ。 その速度、威力とも回数を重ねども劣化など微塵もなく、必殺を誓い目標に向かい着弾した。 爆煙が周囲を包み込む。ただの人間であったならば、その熱風でも重い火傷を負うだろう。 それほどの威力を直撃すれば、どんな英雄・勇者であろうとも一たまりもあるまい。 「一体、何をすればそれほどの力を得られるのだろうな?」 だが、ピサロは不敵に、あるいは自嘲するように尋ねた。その煙の先に返答を確信した問いだった。 「さぁ? (男と)ゴハン食べて、(デートで)映画見て、(ホテルで)寝る。乙女のサプリなんてそれで十分よ」 その煙を割って、束ねた蒼髪を靡かせながらアナスタシアが踊り出る。 衣服は砂煙にまみれボロボロであったが、地面までつかんばかりの艶髪だけはこの戦場でも瑞々しく輝いていた。 疲労も銃創もどこ吹く風と、エネルギーを迸らせている。 アナスタシアはただの女性でありながら世界の全てに匹敵する欲望を内包する聖者という両極端な存在だ。 聖剣によって欲望を変換させたその『戦闘力』は、あのロードブレイザーを封印したことからも言うまでもない。 だが、同時にそれまで剣も握ったこともないただの女性であるアナスタシアには『戦闘技術』がない。 故に、ロードブレイザーより劣化しながらもカエルの剣技を持った紅蓮や、 死してなおその筋骨に積載された戦技を振るうゴーストロードと相対したとき、素人である彼女はその力を生かしきれない。 しかし逆に言えば、ロードブレイザーや魔王のようにその絶対的な『力』を前面に押し出す敵が相手であれば、 『技』の介在する余地のない純然たる『パワー勝負』であれば、彼女を真っ向から崩せるものはそういないのだ。 「……なんかまるで脳筋みたいにバカにされた気がするけど……ルシエド!」 ブツブツと妄言を放ちながらも、アナスタシアはルシエドに跨り、一直線にピサロに斬り込む。 「貴方の理由は聞いているわ。ピサロ。それでも私は守ると決めた。 貴方が奪うもの、私が守りたいもの――――交わるならば排撃の道理ッ!!」 影狼の疾走を捉えきることは難しく、ピサロは砲剣を盾にガードした。 加速をつけた一振り。単純故に崩しようもない一撃を前に、ピサロはたららを踏んで後退する。 (なんだ、この力は! 魔力でもない、筋力でもない。出鱈目にもほどがある!!) ピサロは肩で息をつきがら、目の前の脅威を凝視した。 これまで、さまざまな人間と相対してきた。その誰もが決して弱くなく、人間だからと侮ってはならぬと心に刻んでいる。 だが、目の前の存在を果たして“人間”とカテゴライズしていいものか、ピサロには即断できなかった。 剣を通じ無尽蔵と思えるほどに垂れ流されるエネルギーの奔流は、人というよりも恒星のそれに近い。 あれは、人の形をした太陽だ。雲に陰らぬ限り、慈愛の陽光と苛烈な灼熱を振りまく星なのだ。 ピサロに打つ手がないわけではない。見る限り剣術は素人同然。魔剣士である彼は剣技にも精通している。 いずれも大味である修めた剣技の全てを捨て、細かく刻んでいけば勝利への道もある。 「認めてるなるか! 私の力が! 私の『愛』が!! この程度の力に後れを取るなどとッ!!」 自らの中に湧き出た姑息を追い払うように、ピサロは得物を砲剣からヨシユキとヴァイオレイターへと変えて突撃する。 これを愚かというならばそれは人間の理屈だ。小手先で勝てばよいという問題ではない。 悲しいかな。ピサロはどうしようもなく魔族であり『魔』が、『力』及ばぬということを例え仮定でも認められない。 セッツァー達と手を組んだこともあくまでも無駄を省くためであり、同盟ならずとも彼は残る人間を戮殺するつもりだったのだ。 そうでなくば、辿り着けない。全ての障害を破砕出来ぬようでは、彼女へ至れないのだから。 故に、姉への道を信仰した魔王同様――――彼はその『力』への信仰に殉ずるしかない。 「……マテリアライズ・ガーディアンブレード。償いじゃないけど、彼の代わりに、この剣で終わらせるわ、魔王ピサロ」 アナスタシアの掌に再び聖剣が宿る。大上段に構えられたその剣を見て、ピサロは歯を軋らせた。 そうだ、あの剣も認められない。天空の剣の如き神剣などと、今だ立ちはだかるというのか、勇者よ。 「天空の剣に、私が敗れるわけにはいかんのだ! 消えよ勇者の影がァァァァァァ!!!!!!」 「彼の救ったものは壊させない! 終りだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!!」 怒りと共に振り下ろされた聖剣の一撃が、二刀を、そしてピサロの力を打ち砕く。 真っ向からの打ち合いでの競り負け。言い訳の余地もないその差に、その力への矜持は霧散した。 魔王は、聖女に、勇者に勝てないということなのか。 (足りんというのか……このままでは……この『力』では……あの小僧のように……進むしかないのか……) 一度バウンドしてから再び地面にたたきつけられたピサロ。 しかし、魔王とは異なり、その信仰までは砕けていなかった。 白銀の髪を纏った剣の魔王を思い出す。そのままでは叶わぬ願いのために、二度と降りれぬ高みへと登った人間を。 その望みが、今のままで叶わぬというのならば、変わるしかないのだ。 (勇者を、超える、力を、さらなる領域へ…………『進化』を……) 目の前の『勇者』に憎悪を剥き出しにしたピサロがうわ言のように何かを唱えると、ピサロの中で何かが鳴動する。 魔王に『約束』があったように――――ピサロには『秘法』があった。 錬金の原則、等価交換の理の極限。己が己であるための一切を対価とした、大禁術。 黄金の腕輪による闇の力の増幅などなくても成せるという確信だけは最初からあった。 なぜならばこの島は憎悪の地獄。増幅するまでもなく、この世はオディオに満たされている。 (力を、力を、人間を殺せ、憎み殺せ……その為の進化を、果てない進化を……ッ!!) 「ドワォッ! 一体、何が……!?」 アナスタシアの驚きも、もはやピサロの耳には憎悪で聞こえなくなっていた。 湧き上がる黒き憎悪がその心身を塗り替え、生命の本質へと近づけていく。 剣を振る腕が足りないのならば増やせ。装甲が薄ければ継ぎ足せ。牙も生やさず戦うつもりか。 口が1つでブレスが吐けるか。眼が足りぬ。人の器なぞ不合理極まる。全部挿げ替えろ。 足せ、積め、生んで生んで殖いで登れ二重螺旋の果ての最強の力へ。 憎めよピサロ! そして成れ――――『進化の秘法』を以てオディオを纏い、デスピサロへとッ!! あと数度の変態を経て、銀髪の偉丈夫は醜悪なる化身へと変身……否、回帰する。 元より、戻れぬ身。ならばこのピサロこそがただの幻だったのだ。 夢は終わり、現実へとデスピサロは舞い戻る。 ああ、でも、夢の中で誰かが言っていたような気がする。 受け取れと、忘れるなと。 きっと、それは――――私が、かつて忘れて、そして二度と忘れてはいけないものだった。 時系列順で読む BACK△144-2 瓦礫の死闘-VS死龍・ハードオブヘクトル-NEXT▼144-4 瓦礫の死闘-VS究極獣・Radical Dreamers-(前編) 投下順で読む BACK△144-2 瓦礫の死闘-VS死龍・ハードオブヘクトル-NEXT▼144-4 瓦礫の死闘-VS究極獣・Radical Dreamers-(前編) 144-2 瓦礫の死闘-VS死龍・ハードオブヘクトル- アナスタシア 144-4 瓦礫の死闘-VS究極獣・Radical Dreamers-(前編) ちょこ ゴゴ カエル セッツァー ピサロ ストレイボウ アキラ イスラ ジョウイ ▲
https://w.atwiki.jp/rpgrowa/pages/104.html
WILD ARMS 2nd IGNITIONからの支給品 アイテム名 効果・説明 所有者 バイアネット アシュレーの武器である銃剣型ARM。カートリッジによって様々な攻撃が可能だが、カートリッジがないと近接武器として使用するしかない。 カエル→破壊(F-8荒野に廃棄) バレットチャージ バイアネットのカートリッジからへヴィアームまで、あらゆるARMで使える弾丸。これ一つにつき、ARM一つをフルチャージできる消耗品。ファルガイアの弾丸は全て共通規格なのか気になるところである。 カエル→使用済み(F-8荒野に廃棄) クレストカプセル クレストソーサー(魔法)を一つだけ入れておけるカプセルで、クレストソーサラー(魔法使い)でなくとも使用可能。使うと中に入っている魔法が発動して空になるだけで、カプセルはなくならない。空のカプセルは、マジックギルドに持っていくことで、任意の魔法を補充できる。 トカ→スカイアーマーごと爆散 マリアベルの着ぐるみ 夜の一族ノーブルレッドであるマリアベルが、苦手な太陽の光を避けるために着込んでいる衣装。着膨れをするほどの厚着で全身を覆うため、着用すると中の人の姿を隠すことができる。暑そう。 シュウ→マリアベル クレストグラフ 紋章を記すことで、詠唱や魔法陣といった手順を踏まずにクレストソーサーを使用するためのプレート。魔法を書き込んだクレストグラフを持っていれば、即座にその魔法を発動できる優れもの。ただし、クレストグラフ一つにつき、一つの魔法しか記録できないため、様々な魔法を使うには数が必要。尚、消耗品ではなく、マジックギルドにて書き換え可能である。本ロワでは5枚セットで支給された。中身はヴォルテック、ゼーバー、クイック、ハイ・ヴォルテック、ハイパーウェポン。 マリアベル→ロザリー、ニノ→ニノ、ピサロ→ピサロ リニアレールキャノン ロストテクノロジーの元艦載式磁力線砲。超大型のARM。大型戦艦搭載の主砲であるため、威力は折り紙つきだが、重量は数百トンに加え命中率は低く装弾数は少ない。そのサイズや反動の大きさから、個人で簡単に使用できるものではない。その威力は全長数十キロの巨大要塞を半壊させるほどの物使用者を選ぶ、かなりピーキーなARMである。 シュウ→ブラッド→C-7森林(ブラッドの死体の傍に放置。弾切れ) バイツァ・ダスト 爆発の余波を別次元に転移させる、魔法の爆弾。物凄いテクノロジーである。 ルッカ→爆発 ヴァイオレイター カノンの最強武器である短剣。 ピサロ→破壊 アガートラーム <剣の聖女>が振るった、ガーディアンブレードと呼ばれる聖なる大剣。その実体はたった一人で魔神を滅ぼすための武器はなく、人々の想いを一つに束ねて未来へ進むための鍵であり、皆で振るう力である。選ばれた物は聖剣の守護力により焔の魔神と対等に戦えるほどの絶対的な力を得る事が出来る アズリア→マリアベル→ユーリル→ゴゴ(内的宇宙内)→アナスタシア 魔鍵ランドルフ コキュートスのメンバーであるカイーナの武器である、巨大な鍵。使いこなせれば、異次元の扉を開くことも可能。鈍器として使用もできるが、使いにくそうな形状である。 ビクトール→魔王→ゴゴ→消失 スケベぼんデラックス 男の夢とロマンが詰まったデラックスな本。作中では、これを本棚に入れると隠し部屋への道が開けた。これが鍵だったのか、本棚の隙間を埋める行為が鍵だったのかは謎である。 ナナミ→ゴゴ→目くらましとして使用し、散逸 データタブレット 戦闘翼バルキサスの残骸から回収されたもの。 エルク→ピサロ テレポートジェム 一度でも立ち寄った町に移動できる。消費アイテム。 ブラッド→消費 クレッセントファング 最強の威力を誇るシュートアイテム。消耗品。 エイラ→シャドウ→消滅 レインボーパラソル リルカ専用の武器。店で買えるものとしては最高の威力を誇る。 トルネコ→セッツァー→アシュレー→トカにより改造され、バヨネットの一部となる アンブロシア 全状態異常と体力を完全回復する秘薬。 ジャファル→消費 魔剣ルシエド 欲望のガーディアン、ルシエドが剣と化した姿。アシュレーの内面世界から具現化117話にてルシエドがミーディアムとなったため、剣としては現時点では存在していない。後で再登場があり得るのかどうかは今のところ不明。 アシュレー→トッシュ→ゴゴ→アシュレー→ミーディアム「欲望の顎」に変化(その後、アナスタシアの欲望として聖剣ルシエドとして具現) ジャンプシューズ カノンが使用するグッズの一つ。特定の場所で使用する事により高く跳べる。 トッシュ→ゴゴ→消失 やぎのぬいぐるみ 攻撃を受け戦闘不能状態になった時、一度だけ体力1/3の状態で復活できる。 アナスタシア→消費 いしのりゅうじん 希望のガーディアン、ゼファーの封じられた石像。果てしなき蒼、ティナの魔石、マディンの魔石の意志とルシエドにより具現化。ゼファーが開放されることにより消滅 - 希望のかけら 呼び出されたゼファーがミーディアムと化した姿。ルシエドと共にアシュレーの心臓を補う。 アシュレ→セッツァー(心臓として)→希望と欲望のダイスに変化 欲望の顎 ルシエドがミーディアムと化した姿。ゼファーと共にアシュレーの心臓を補う。なお、正式にこの名称で登場したのはWA3以降なのだが、便宜上此処に入れておく。 アシュレーセッツァー(心臓として)→希望と欲望のダイスに変化 いしのめがみ 愛のガーディアン、ラフティーナの封じられた石像。メイメイのルーレット3等賞としてピサロに渡された。ラフティーナが開放されることにより消滅 ピサロ→消滅 愛の奇蹟 呼び出されたラフティーナがミーディアムと化した姿 ピサロ