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※ゆっくりが普通に現代社会にいる変な世界観です。 ※同作者の現代社会ものとは大体世界観を共有していますが時々矛盾が生じています。 ※作中で矛盾していることも多々あるので細かいことは気にしないでください。 数年前に突如現れ、急速に社会に浸透していった(ような気のする)ゆっくりと呼ばれる新たなる生命体。 人間の生首が膨張したような容姿のそいつらは饅頭のクセに生きていたり、どこから来たのは全く不明だったりとあまりに謎が多すぎる。 が、目新しいものや珍しいものを好む人々はその「ゆっくりしていってね!」とか「ゆーっ!」などと珍妙な鳴き声をあげる未知の存在をあっさりと受け入れた。 そして、社会にある程度浸透した以上、人間の真似事をさせて間違った可愛がり方をする輩がいるのもある意味では必然であった。 ~ゆっくりのことはゆっくりに~ そんな信念の下に設立されたのがこのゆっくりのためだけの学校だ。 学校とは言うものの、寿命も能力も根本的に異なる以上、人間のように何年も通い続けるわけには行かない。 だから、1週間ほど施設に泊り込んで飼いゆっくりにゆっくりとしての教育を施すことがこの学校の目的となっている。 今回のカリキュラムは記念すべき第1回目。 それだけに教師陣のゆっくり達も気合十分。きらきらと瞳を輝かせて生徒達がやってくるのを心待ちにしていた。 「れいむぅ!どんなこたちがくるのかな?」 「ゆっ!きっとみんなゆっくりできるかわいいこだよ!」 小さな、とは言ってもゆっくりには十分すぎるほど大きな学校のグラウンドで人目もはばからずにいちゃいちゃする2匹。 一方は平均的な大きさのゆっくりまりさで、もう一方もこれまた平均的な大きさのゆっくりれいむだ。 「ひ、ひるまからあおかんだなんて・・・いなかものね!?」 「むきゅ~・・・なにもしてないのにあおかんとかいうのはとかいはなの?」 「ありすはへんたいなんだねー、わかるよー」 「ゆゆっ!あ、ありすはゆっくりしたとかいはなれでぃーよ!」 人目をはばからないれいむ達の横でそんなやり取りをしているのはありすにぱちゅりーにちぇん。 ここにいる5匹のゆっくりが子ども達を見守るゆっくりの学校の教師達だった。 午前9時、カリキュラムの最初のイベント『校長先生のお話』の時間。 運動場には飼い主や親に連れられてやって来た30匹あまりの子ゆっくりと先ほどの教師達。 壇上では校長先生ことゆっくりゆかり、通称ゆっかりんがふんぞり返っていた。 「いまからこうちょうせんせいのおはなしだよ!」 「みんな、ゆっくりしずかにきいてね!」 先生達は運動場で沢山の同年代に囲まれて浮かれている子ども達を諭すが、子ども達の耳には全く届いていない。 あるものは近くにいた子とおしゃべりを始め、またあるものは運動場で仲間と遊び始めてしまった。 先生達がその場を何とか収めようにも流石に子ども相手でも30匹も居るとなると一苦労。 どれだけ「ゆっくりおはなしをきいてね!」と叫んだところで一向に事態が終息する気配を見せない。 そうこうしているうちに子ども達の世話をするはずのれいむが「どほぢでいうごどぎいでぐれないのおおおお!?」と泣き出してしまった。 「ゆ っ く り し て い っ て ね !!」 運動場に響き渡るひときわ大きな声の主は校長先生。 児童達や他の先生達もゆっくりの本能に従って「「「「「ゆっくりしていってね!」」」」」と返す。 返事が返ってきたのを確認したところでゆっかりん校長は話を始めた。 「ここはゆっくりするばしょじゃないよ!ゆっくりしたゆっくりにゆっくりなるためのばしょだよ!ゆっくりりかいしてね!」 「「「「「そうだよ!ゆっくりりかいしてね!」」」」」 「「「「「「「「「「ゆゆっ!ゆっくちりかいちたよ!」」」」」」」」」」 本当に理解できたのかいささか怪しいところだが、とにかくこうして1週間の学校生活が始まった。 1日目はれいむ先生によるお歌の練習の日。 「みんな、おうたさんはみんながゆっくりするのにとってもだいじなんだよ!」 「だかられいむといっしょにゆっくりおうたのれんしゅうをしようね!」 「「「「「「「「「「ゆっくちれんしゅうしゅるよ!」」」」」」」」」」 子ゆっくり達の元気の良い返事を聞いたれいむ先生は早速自慢の歌声を披露し始める。 人間にしてみればリズムも音程もあったものではないような歌声なのだが、子ゆっくり達はその歌声に聴き惚れていた。 「ゆ~♪ゆ~ん、ゆ~~ゆぅ~♪ゆん~~~ぅゆ~ゆ~♪」 「ゆゆっ!せんせー、すごくゆっくちしたおうただよ!」 「ゆぅ~♪ゆ~ん・・・ゆっ!みんなもいっしょにうたってね!」 不思議なものでこの場に居るゆっくりの大半は人間に飼われており、大抵のものはゆっくりよりも人間の歌のほうが優れていることを認めている。 つまりは人間と同じ評価基準を持っていることは紛れもない事実なのだが、どうやら「ゆっくりとしての上手さ」というまったく別の評価基準を持っているらしく、 1匹たりとも「おねーさんのほうがじょうずだよ!」などと言い出すものは居なかった。もちろん、空気を読んだわけでは断じてない。 「「ゆ~ゅ~ゆぅぅぅうう~ん♪」」 「ゆ~~~~~ゆぁ~~~~~~ゆぅ~~~~♪」 「ゆっ♪ゆ~♪ゆゆゆゆゆゆゆ~♪」 「「ゆ~~♪ゆゆゆ~♪ゆ~ゆゆ~♪ゆ~ゆゆ~ゆ~♪」」 「ゆゆゆ~♪ゆゆゆ~♪ゆゆゆっゆ~♪ゆゆゆっゆ~♪ゆゆゆゆ~♪」 先生に促された子ども達も一緒に歌い始める。 一緒に、と言っても自分たちの思い思いの歌を好き勝手に謳っているだけなのだが当人らは楽しそうだ。 そうして、思い思いのメロディーを口ずさんだゆっくり達は歌い終えると満足げな笑みを浮かべた。 何かをやり遂げたもの特有のどこか誇らしげで、非常に輝かしい表情だ。 「ゆ~っ!とってもゆっくちできたよ!」 「「「ゆっくちできたよ!」」」 「もっとゆっくちおうたうたうよ!」 皆で歌ったのがよほど楽しかったのか、子ゆっくり達はもっと歌いたいと主張しながら飛び跳ねている。 が、れいむ先生は「おうたはあとでもっとゆっくりうたうから、せんせーのはなしをゆっくりきいてね!」と言って子ども達を静かにさせる。 それから、ゆっくりにしては真剣な面持ちで子ども達に語りかける。 「れいむたちのゆっくりしたうたごえはね・・・てんしさんのうたごえなんだよ!」 「ゆぅ、てんししゃんの?てんししゃんってなに?ゆっくちできるもの?」 「てんしさんはね、いいこをゆっくりできるばしょにつれていってくれるゆっくりしたものだよ!」 「「とってもゆっくちできるんだね!」」 「れいむたちはね、にんげんさんのてんしなんだよ!いつもゆっくりしていないにんげんさんをゆっくりさせてあげられるんだよ!」 「ゆゆーっ!れいむたちはしゅごいんだね!」 「すごくゆっくちちてるんだね!」 妙に自信満々に「自分たちは人間をゆっくりさせてあげるために舞い降り天使だ」と力説するれいむ先生。 その意味をどれほど理解できているかは怪しいところだが、ここに居る子ゆっくりの大半は飼い主が大好きな飼いゆっくりだ。 みんな、自分が飼い主をゆっくりさせてあげられると思うと嬉しくてぴょんぴょん飛び跳ねながら微笑んでいる。 そんな子ども達を諌めながられいむ先生は更に続ける。 「でもね、にんげんさんたちだけがゆっくりするのはずるいよね?」 「ゆゆっ!まりしゃたちもゆっくちちたいよ!」 「だからね、にんげんさんにたべものかおかねさんをおねだりするんだよ!」 「おかねってなに?ゆっくちできるもの?」 「おかねさんはね、おいしいおかしをたくさんかえるんだよ!」 「ゆーっ!おかし!おかしっ!」 「れいむたちにゆっくりさせてもらったにんげんさんからはたべものかおかねをもらうんだよ!ゆっくりりかいしてね!」 「「「「「「「「「「ゆっくちりかいちたよ!」」」」」」」」」」 虐待界隈の人たちが聞いたら「ひゃあ、我慢できねェ!」を通り越して発狂しそうなれいむ先生の言葉をしっかりと心に刻む子ども達。 それから2,3度「お歌でゆっくりさせてあげたにんげんさんからおかねをもらおうね!」と復唱し、また皆で楽しくお歌を歌った。 お歌の授業は約2時間ほど続き、それが終ったところで今日の授業は終了。子ども達は仲良くなった子と一緒に遊び始めた。 昼食を食べ、遊い、お菓子を食べ、お昼寝し、お菓子を食べ、遊び、夕食を食べ、遊び、お菓子を食べ、夜更かしし、眠くなったら寝て・・・1日目が無事終了した。 2日目は朝の9時からまりさ先生によるご挨拶の練習の日。 「みんなごあいさつのしかたはしってるかな?」 「「「ゆゆっ!とうぜんだよ!」」」 「「「「「ゆっくちちていってね!」」」」」 「「「「「「ゆっくちちていってね!」」」」」」 まりさ先生の簡単すぎる質問にみんなで声を揃えて答える子ゆっくり。 元気いっぱいの子ども達の様子にまりさ先生はうんうんと頷くき、それからまじめな表情で語りだした。 「そうだね!ゆっくりしていってね、だよ!でも、みんなのそれじゃまだまだだよ!」 「ゆっ!まりさのゆっくりしていってねのどこがだめなんだぜ?」 「そーよ!ありすのゆっくりしていってねはすごくとかいはよ!」 「じゃあ、そこのありすとまりさ、まえにでてゆっくりしていってねっていってみてね!」 「「ゆっくりりかいしたよ!」」 2匹は意気揚々と子ゆっくり達の前、まりさ先生の隣に行くと思いっきり息を吸い・・・ 「「ゆっ・・・「ゆ っ く り し て い っ て ね !!」 「「「「「「「ゆっくちちていってね!」」」」」」」 元気いっぱいに「ゆっくりしていってね!」と挨拶をしたが、まりさ先生の挨拶によってかき消されてしまった。 それだけじゃない。まりさ先生は挨拶するときに満面の笑みを浮かべて可愛らしくぴょ~ん!と跳躍した。 隣にいた子ありすと子まりさはたった1回の実演で圧倒的な実力差を思い知らされた。 子まりさも子ありすも大きな声で挨拶する事にこだわり過ぎた為に、そのときの表情がゆっくりしていなかったのだ。 それに比べてまりさ先生のはどうだろうか? とても聞き取りやすい元気な声に、ゆっくりした表情、とても活力に満ち溢れてゆっくりした跳躍・・・全てが完璧だった。 「ゆゆっ!せんせーしゅごいぜ!」 「とってもとかいはだわ!」 「ゆっへん!みんなもがんばればすぐにまりさみたいになれるよ!」 「「「「「ゆっくちがんばりゅよ!」」」」」 まりさ先生の言葉に元気良く返事する子ゆっくり達。 とってもゆっくりした挨拶をするかっこいいまりさ先生に皆メロメロだった。 そこにいる誰もが同じことを思っていた・・・先生みたいになりたい、と。 「まずはぴょ~んぴょ~ん、だよ!まりさといっしょにゆっくりはねてね!」 「「「「ぴょ~んぴょ~ん!」」」」 「「「ぴよ~んぴよ~ん!」」」 「「「ぴょんぴょん、だよ!」」」 先生に倣ってぽよんぽよんと跳ね回る子ゆっくり達。 その真剣な姿につられて先生の指導にも熱が入る。 「さあ、もっとだよ!ぴょ~んぴょ~んぴょ~ん!」 「「「「ぴょ~んぴょ~んぴょ~ん!」」」」 「「「ぴよ~んぴよ~んぴよ~ん!」」」 「「ぴょんぴょんぴょん、だよ!」」 「つかれたよ!ゆっくちやしゅむよ!」 ちょっと疲れた子どもは休憩したりするが、まりさ先生は自主性を尊重しているらしく何も言わない。 そうこうしているうちにまりさ先生にも疲れの色が見えてきて、彼女が飽きたタイミングで跳躍の練習が終った。 「つぎはえがおであいさつするれんしゅうだよ!みんな、ゆっくりがんばってね!」 「「「「「「「ゆっくちがんばるよ!」」」」」」」 子ゆっくりの元気の良い返事を聞いたまりさ先生はにっこりと微笑むと、元気良く声を張り上げた。 「ゆ っ く り し て い っ て ね !!」 「「「「「「ゆ っ く ち ち て い っ て ね !!」」」」」」 「ゆ、ゆっくちちていってね・・・」 「ゆゆっ!ぱちゅりー、おこえがちいさいよ!」 まりさ先生の言うことを聞かずに小さな声で挨拶をする子が1匹。 その子はゆっくりぱちゅりーで、注意された途端「むきゅ~~~ん」と泣き出してしまった。 「どうしておおきなこえをださないの?せんせーにゆっくりおしえてね!」 だが、まりさ先生は優しい先生だ。 言うことを聞かないからと、頭ごなしに怒鳴りつけたりはしない。 先生の優しさに触れたぱちゅりーはもそもそと話し始めた。 「おねーさんのおうち・・・あぱーとなの。だからね、おおきなこえをだしゅとおこられちゃうの・・・むきゅぅ」 「ゆゆっ!それはおねーさんのかんちがいだよ!」 「むきゅぅ、しょうなの?」 「きのうれいむにきいたでしょ?まりさたたいはねぇ・・・にんげんさんたちをゆっくりさせてあげるてんしさんなんだよ!」 「むきゅ~?」 「だったらまりさたちがげんきじゃなかったらぱちゅりーのおねーさんはゆっくりできないでしょ!」 「むきゅ!さすがせんせいだわ!」 「ゆっくりりかいしたら、おねーさんのためにもいっしょにごあいさつのれんしゅうだよ!ゆ っ く り し て い っ て ね !!」 「「「「「ゆ っ く ち ち て い っ て ね !!」」」」」」 まりさの言葉のおかげで元気になったぱちゅりーは皆と一緒に笑顔でご挨拶の練習を続けた。 それからもまりさ先生の授業は続き12時くらいに終了した。 それから、子ゆっくり達は昼食を食べ、遊び、お菓子を食べ、お昼寝し、お菓子を食べ、遊び、夕食を食べ、遊び、お菓子を食べ、疲れていたので早めに寝た。 3日目はぱちゅりー先生と一緒にお勉強する日。 「むきゅ~、きょうはみんなでおべんきょうよ!」 「おべんきょうなんてゆっくちできないんだぜ!」 「「「「ゆっくちできないよ!」」」」 「む、むきゅ~・・・」 マッハで出鼻をくじかれたぱちゅりー先生、しょんぼり。 彼女の話を聞こうとしているのは最前列に陣取った同じぱちゅりー種だけで、他の子ゆっくり達は近くの仲間と遊び始めてしまった。 が、まがりなりにも彼女だって先生だ。こんなことでへこたれては居られない。 「むっきゅ~!おべんきょうしないとゆっくりできなくなっちゃうわ!」 「「「ゆゆっ!?」」」 「「ゆっくちできないの!?」」 「「「ゆっぐちぢだいよぉ・・・?!」」」 機転を利かせての「ゆっくり出来なくなる」発言は子ども達の心を十分以上に捕えたらしい。 友達と遊んでいた他のゆっくり達もすぐさまぱちゅりーのほうに向き直り、話を聞く体勢になった。 「むきゅ~・・・だいじょうぶよ!せんせいのおはなしをきくこはゆっくりできるわ!」 「「「「「ゆゆっ!ゆっくりおはなちをきくよ」」」」」 「みんなとってもゆっくりしてるわ!ぱちゅりーがおしえるのはかずのかぞえかたよ!」 「ゆゆっ!かずなんてかんたんだよ!いち、にー、しゃん、たくしゃんだよ!」 別にお約束のボケをかましたわけではない。ゆっくりの知能はせいぜいこんなものなのだ。 「むきゅ~・・・もりのなかでゆっくりするならそれでもいいけど、にんげんといっしょにくらすのにそれじゃだめよ!」 「「ゆぅ?どうちて、ダメなの?」」 「「「「かずなんてかじょえなくてもゆっくちできるよ?」」」」 「むきゅ!かずをかぞえられないとおしごとやこそだてでこまるのよ!おおきくなってからゆっくりできないのよ!」 「ゆぅ、どういうことなの?ゆっくちおちえてね!」 「にんげんのなかにはゆっくりできないひとがいるから、かずをかぞえられないとだまされてゆっくりできないのよ!」 最も数を数えられたところで時蕎麦程度の引っ掛けで簡単に騙されてしまうのだが、そこまでは頭が回らないらしい。 それに数を数えられる程度では大した効果もないのだが、その辺にも頭が回っていない・・・というか人間の知能をきちんと理解出来ていないようだ。 それでもぱちゅりー先生は妙に自信満々といった風な笑みを浮かべて、ふふんと偉そうに胸を張って話を続ける。 「せんせーもだまされそうになったことがあるのよ!おかしさんをごまいくれるっていったのによんまいしかくれなかったのよ!」 「「「ゆぅ、ごまいとよんまいってどっちがおおいの?」」」 「ごまいよ!」 「「ゆゆっ!ちょっとしかくれないなんてひどいよ!?ゆっくちできないね、ぷんぷん!」」 「「かわいいまりしゃたちをだますだなんて、ちんじられないぜ!」」 「でもぱちゅりーはかずをかぞえられたからだまされなかったわ!」 おおっー!と子ゆっくり達から歓声が上がる。彼女達の目には強くて大きくて賢い人間相手に対等以上に渡り合ったぱちゅりー先生への敬意が宿っていた。 もっとも、実際のところは相手が飼い主で、たまたまぱちゅりーに数の大小が理解できるのかを調べていただけなのだが。 が、そんなことは露ほども知らない子ゆっくりとぱちゅりー先生は上機嫌で授業を続ける。 「せんせいにつづいてじゅうまでのかずをかぞえるよ!」 「「「「ゆっくちりかいちたよ!」」」」 その後、1から10までの数字の発音の練習をし、何度か暗唱して、とりあえず全員が5まで数えられるようになったところで終業の時間になった。 子ゆっくり達は昼食を食べ、遊び、お菓子を食べ、お昼寝をし、お菓子を食べ、遊び、夕食を食べ、遊び、眠くなったら眠り、3日目も無事終了した。 4日目はゆっかりん校長と一旦お休みしてゆっくりする日。 事実上、寝泊りするための場所でしかない校舎に集まった子ゆっくりと先生たちは皆ゆっくりとしていた。 「ゆぅ~ん、ゆっかりしてるわぁ~・・・」 「まりさぁ~、きょうはいっしょにゆっくりしようね!」 「ゆっくりしようね~♪」 「せっそうなくいちゃいちゃして・・・いなかものね!?」 「しっとだねー、わかるよー」 「むきゅ~・・・こどもたちもゆっくりしてるわ~」 校舎の隅っこに待機して、いつでもどこでも子ども達を見守っている先生達。 一方、先生に見守られている子ども達は非常にゆっくりとした様子で仲間達とじゃれあっている。 「ゆゆっ!つぎはれいむがおにしゃんだよ!」 「ゆぅ~!ゆっくちつかまえるよ!」 「「ゆっくちにげるよ!」」 一番やんちゃで、活発なグループは鬼ごっこをしていた。 そのグループのリーダー格のまりさにタッチされたれいむが鬼になり、今度は仲間達を追い掛け回す。 「ゆーっ!きれいなおはなさんだ!」 「ゆふふっ!さっきおそとでみつけてきたのよ!」 「すごくとかいはね!」 「むきゅ~、とってもゆっくりできるわ!」 「ち~っんぽ!」 こっちのグループのリーダー格はありすで、皆して彼女の持ってきたお花を眺めていた。 どうやらこの集団には共通して女性的とされる気質があるらしく、子ども達の目はきらきらと輝いている。 やがて、誰とはなしに「おっはなさん♪お~は~なさんっ♪」と歌い始め、気がつけば皆で合唱していた。 「むきゅ~・・・せんせー、ぱちゅりーもっとべんきょうちたいわ」 「ちぇんもべんきょうちたいんだよー」 「ありすももっととかいはになりたいわ!」 「むきゅ~、せんせーゆっくちおべんきょうをおしえてね!」 そんな事を言いながらぱちゅりー先生に群がっているのはぱちゅりーを筆頭にしたお勉強好きのグループ。 しかし、先生は彼女達をなだめると、にっこり微笑んで諭した。 「むきゅ、ゆっくりするのもだいじなおべんきょうよ!」 「「「ゆぅ?」」」 「かしこくないとわるいにんげんさんにだまされるわ!でも、ゆっくりしてないといいにんげんさんをゆっくりさせてあげられないでしょ?」 「「ゆゆっ!」」 何も大した事は言っていないのだが、子ゆっくり達は感銘を受けたといわんばかりの表情を浮かべる。 口々に「せんせーはとってもゆっくちちてるね!」と彼女を褒め称え、それから「ゆっくりゆっくりのおべんきょうするよ」と言って仲間同士で遊び始めた。 「みんな、ゆっくりしてるかしら?」 「「「「「「「「「「とってもゆっくりしてるよ!」」」」」」」」」 「「「「「「せんせーたちもゆっくりしていってね!」」」」」」 そんな風にゆっくりしている子ども達を眺めているだけでゆっかりん校長や先生たちは幸せな気分になった。 子ども達も優しい先生たちに見守られながら思いっきり仲間達と遊んだ。 それからお菓子を食べ、遊び、昼食を食べ、遊び、お菓子を食べ、お昼寝し、お菓子を食べ、遊び、夕食を食べ、遊び、お菓子を食べてから眠りについた。 5日目はありす先生からお食事のマナーを学ぶ日。 「きょうはありすせんせいがとかいはのたべかたをおしえてあげるわ!」 「ゆゆっ!ありすはとっくにとかいはよ!」 「ゆふんっ、じゃあここでこのおかしをたべてみてね!」 先生の指示に従って、1匹のありすが他の子ゆっくり達の前で都会派の食事を実演する。 食事中は喋らないように、食べ物を撒き散らさないように、決してがっつかず落ち着いて一口一口咀嚼する。 彼女の食べ方は床を汚さない理想的な食べ方だった。が・・・ 「ちがうわ!そんなのとかいはのたべかたじゃないわ!」 「ゆゆっ!?そんなことないよ!おねーしゃんがとかいはだっでいっでだもん!」 いきなり自分の食べ方を全否定されて涙目になる子ありす。 ありす先生はそんな彼女ににっこりと微笑みながら、慰めるように頬ずりをし、それから話を始めた。 「きっとみんなもこんなふうにたべろっていわれてるとおもうわ!」 「ゆかをよごすからきりぇーにたべなさいっておにーさんがいってたよ!」 「そんなんじゃだめなのよ!そんなのゆっくりしていなくていなかものなのよ!」 「「「ゆゆっ!?」」」 今までの常識を覆すような発言に驚愕する子ゆっくり達。 ありす先生は彼女達の驚きの表情を伺いながら少し得意げに話を続ける。 「だってそうでしょ?にんげんがたべものをこぼさないのはてがあるからなのよ!」 「で、でもれいむたちもこぼさずにゆっくちたべられるよ!」 「だけど、それはほんとにゆっくりしているのかしら?」 「「「ゆゆっ!?」」」 思い当たる節があったのだろう。またしても子ども達は驚愕の表情を浮かべる。 「それにむーしゃむーしゃ、しあわせ~っていわないようにたべてしあわせなの?」 「「「「ゆゆゆっ!?」」」」 「ゆぅ・・・まりしゃほんとうはうめぇ、めっちゃうめぇっていいながらたべたいよおおおお!ゆええええん!」 「「れいむもちあわせ~したいよおおおおおお!」」 「「ありすもとかいはなちあわせ~がちたいわ!」」 今まで我慢してきた気持ちが溢れ出し、子ども達は泣き出してしまう。 そしてアリス先生は子ども達が泣き止むまで笑みをたたえながら、その様子を見守っていた。 「「「「「「ゆっぐ・・・ゆっぐ」」」」」」 「みんな、もうなきやんだね?じゃあ、せんせいといっしょにむーしゃむーしゃ、しあわせ~しようね!」 そう言いながらありす先生は子ども達にビスケットを配ってゆく。 途中、1匹のぱちゅりーが「でも、おうちじゃちあわせ~できないよぉ」というのを聞くと、子ども達にこう言ってのけた。 「にんげんさんはたべちらかすなっていうけど、そんなのむしすればいいんだよ!」 「「「「「ゆゆっ!」」」」」 「で、でもぉ・・・そんなことしたらおこられるよ!ゆっくちできないよ!?」 「ゆふふっ、だいじょうぶよ!ありすたちはとってもかわいいんだよ!」 「ゆぅ?」 「しあわせ~してるありすたちのゆっくりしたかわいいすがたをみたらにんげんさんはめろめろなんだよ!」 「「「「ゆゆっ!?」」」」 「だからおかたづけくらいよろこんでしてくれるよ!だって、にんげんさんはありすたちをゆっくりさせるためにいるんだよ!」 「「「「ゆゆゆゆゆっ!?」」」」 その言葉を聞いた子ゆっくりはにこにこと笑みを浮かべるようになり、「じゃあ、おうちでもたいわせ~できるんだね!」と大喜び。 あるものはぴょんぴょん飛び跳ね、中には「ちあわせ~できるなんてちあわせ~」と泣き出すものまでいた。 「それじゃあ、みんな!いっしょにしあわせ~しようね!・・・むーしゃむーしゃ、しあわせ~!」 「「「「「むーしゃむーしゃ、ちあわせ~!」」」」」 「「「「うっめ、これめっちゃうめぇ!」」」」 くちゃくちゃ、がつがつと音を立てながらありす先生と子ゆっくり達はゆっくりビスケットを食べた。 そうして、皆がしあわせ~な食べ方をきちんと習得した頃にちょうど就業のベルが鳴った。 それから遊び、昼食を食べ、遊び、お菓子を食べ、お昼寝し、お菓子を食べ、遊び、夕食を食べ、遊び、お菓子を食べてから眠りについた。 6日目はちぇん先生と一緒に狩りの練習をする日。 「みんなー、だんごむしさんをうんどうじょうにまいたからさがしてつかまえてみてね!」 「「「「「ゆゆっ!ゆっくりりかいしたよ!」」」」」 ちぇん先生の指示に従って元気良く運動場に飛び出す子ゆっくり達。 石をのけたり、木の裏側に回り込んだり、雑草を引き抜いたりしながら必死になってダンゴ虫を探している。 運動神経の良いまりさ種とちぇん種はあっという間にダンゴ虫を見つけては、先生に見せにやってくる。 続いてやや鈍いれいむ種と都会派意識のせいか汚れるのを嫌がるありす種がちらほら成果の報告にやってきた。 が、非常に体の弱いぱちゅりー種は途中で力尽きてしまい、先生の傍で休んでいた。 今のところダンゴ虫を捕まえたぱちゅりー種は1匹もいない。 「どうしてだれもつかまえられないの、わからないよー」 「む、むぎゅぅ・・・だんごむしさんをみつけるまでにつかれちゃうのぉ・・・」 「だんごむしさんがはやくておいつけないよぉ・・・」 「だったらおともだちにきょうりょくしてもらえばいいんだよー」 「「むきゅ!?」」 その発想はなかったわといわんばかりに目を見開いたぱちゅりー達は早速友達に声をかけてダンゴ虫狩りに再出発した。 そして、友達の協力のによってあっという間にダンゴ虫を捕まえてみせた。 それどころか、ぱちゅりーがダンゴ虫のいそうな場所を教え、あらかじめ逃げ道を塞ぐことで他の子ゆっくりも効率よくダンゴ虫を集めることが出来た。 「ゆゆっ!せんせー!いっぱいとれたよ!」 「「「ゆっくちいっぱいあつめたよ!」」」 「むきゅ~・・・みんなのおかげでむしさんをとれたわ!」 「ゆっくりありがと~」 「まりさもぱちゅりーのおかげでいっぱいとれたんだぜ!」 それからも先生の指導を受けながらダンゴ虫を集めた子ども達は達成感に包まれながら満足げな笑みを浮かべている。 予想以上の成果を上げた子ども達の笑顔を見守るちぇん先生もまた満足げな笑みを浮かべ、彼女達の話しかけた。 「おうちにかえってもむしさんをみつけたらちゃんとつかまえるんだよ!」 「「「「ゆっくちがんばるよ!」」」」 「にんげんさんはむしさんがきらいだからむしさんをつかまえてあげたらよろこぶよー!」 「「「「ゆゆっ!よろこぶの?ごほうびもらえるの!?」」」」 「ごほうびじゃないよー!みつぎものだよー!」 「「「「みつぎものぉ?」」」」 「ごほうびよりずっとゆっくりできるものだよー!」 「「「「「ゆゆっ!ごほーびーほしいよ!」」」」」 「にんげんさんがわすれないようにちゃんといってあげるんだよー!」 「「「「「ゆゆっ!ゆっくりりかいしたよ!」」」」」 そう言って帰宅後にご褒美を沢山貰う自分の姿を想像して嬉しそうに跳ねる子ども達はきっと今の言葉を忘れないだろう。 教えるべきことは教えた。しかし終業のベルまでまだ結構な時間があり、流石に今終るわけには行かない。 そこで、ちぇん先生は子ども達にこんな提案をした。 「みんなー、おにごっこをするよー!せんせーがおにだよー!」 「「「「「「「ゆっくりりかいしたよ!」」」」」」」 子ども達は返事をすると元気良く運動場に散らばって行く。 終業のベルが鳴るまで、子ゆっくりとちぇん先生は時間を忘れて駆け回った。 それから昼食を食べ、遊び、お菓子を食べ、お昼寝し、お菓子を食べ、遊び、夕食を食べ、遊び、お菓子を食べてから眠りについた。 7日目はゆかりん校長のおうちを確保と防衛の練習の日。 「きょうはゆっかりんがとくべつにせんせいをしてあげるわ!」 「「「「「ゆっくちちていってね!」」」」 「ゆっくりしていってね!」 「きょうはゆっかりんがとくべつにおうちをじゅんびするほうほうをおしえてあげるわ!」 「「「ゆぅ?おうちならあるよ?」」」 「それはまだにんげんさんたちのおうちよ!ゆっくりしてないにんげんのおうちじゃゆっくりできないわ!」 「「「「「ゆーっ!ゆっくちできないのはいやだよ!?」」」」」 「だったらゆっかりんのおしえをちゃんときいてね!」 「「「「「「「ゆっくちがんばるよ!」」」」」」」 元気に飛び跳ねながら返事をする子ども達の様子に満足したゆっかりんはおもむろに近くにあった木の棒を咥えた。 そして、その場でくるりと円を描くように這いずって移動し、棒で運動場に小さな円を描いた。 「みんなもえんをかいてね!」 「「「「「「「ゆっくちかくよ!」」」」」」」 ゆっかりん校長の指示に従って小さな円を描く子ども達。 皆がんばっているものの、その円はいびつで四角に近い形になっているものまであった。 が、重要なのはサークルを描くことなので、ゆっかりんは皆がサークルを描き終えるのを待った。 「「「「「「「ゆっくちかいたよ!」」」」」」」 「それじゃあ、みんなえんのなかにはいってね!」 「「「「「「「ゆっくちはいったよ!」」」」」」」 「それじゃあ、ゆっかりんのまねをしてね!」 ゆっかりんは軽く深呼吸をしてから、元気良く大声を出した。 それに倣って子ども達も深呼吸をしてから、元気良く大声を出す。 「ゆっくりしていってね!ここはゆっかりんのおうちよ!ゆっかりんがみつけたおうちだよ!」 「「「ゆっくちしていってね!ここはれいむのおうちだよ!れいむがみつけたおうちだよ!」」」 「「「ゆっくちしていってね!ここはまりさのおうちだぜ!まりさがみtけたおうちだぜ!」」」 「「ゆっくちしていってね!ここはありすのとかいはなおうちよ!ありすがみつけたおうちよ!」」 「ゆっくちしていってね!ここはぱちゅりーのとしょかんよ!ぱちゅりーがみつけたとしょかんよ!」 「ゆっくちしていってね!ここはちぇんのおうちだよー!ちぇんがみつけたおうちだよー!」 「ちーんっぽ!!」 更に深呼吸をしたゆっかりんは再び大声で叫ぶ。 そして、子ども達もゆっかりんに倣って元気良く叫んだ。 「ゆっくりしたかったらおかしをもってきてね!ゆっくりできないおにーさんはゆっくりでていってね!」 「「「ゆっくちしたかったらおかちをもってきてね!ゆっくちできないおにーさんはゆっくちでてってね!」」」 「「「ゆっくちちたかったらおかちをもってくうんだぜ!ゆっくちできないおにーさんはゆっくちでてってね!」」」 「「ゆっくちちたかったらとかいはなおかちをもってきてね!ゆっくちできないいなかもののおにーさんはゆっくちでてってね!」」 「ゆっくちちたいならごほんをもってきて!ゆっくちできないおにーさんはとしょかんからでてってね!」 「ゆっくちしたいならおかちをもってきてねー!ゆっくちできないおにーさんはでてってねー!」 「ちーんっぽ!ちんぽーっ!」 もう一度、ゆっかりんは深呼吸をしてから大声を上げてから空気を吸って膨らむ。 子ども達もそれに合わせて大声を上げてから空気をふって膨らんだ。 「でていかないとゆっかりんおこるわよ!ぷんぷん!」 「「「でていかないとれいむおこるよ!ぷんぷん!」」」 「「「でていかないとまりさおこるぜ!ぷんぷん!」」」 「「でていかないとありすおこるわよ!ぷくぅ!」」 「「でていかないとぱちゅりーおこるわよ!ぷく・・・ゲフゲフ!?」」 「でていかないとおこるよー!ぷくぅ~!」 「ちーんっぽー!ちんちん!」 止めとばかりにすぅ~っと息を吸い込むと最後の言葉を口にした。 勿論、子ども達も彼女に続く。 「ゆっくりできるならおにーさんをおうちにおいてあげるわ!だからゆっくりしないでおかしをもってきてね!」 「「「ゆっくちできるならおにーさんをおうちにおいてあげるよ!だからゆっくちちないでおかちをもってきてね!」」」 「「「ゆっくちできるならおうちにおいてあげるぜ!だからゆっくちちないでおかぢをもってきてね!」」」 「「ゆっくちできるならおにーさんをとかいはなおうちにすませてあげるわ!だからゆっくちちないでおかちをもってきてね!」」 「「ゆっくちできるならおにーさんもとしょかんにいてもいいわ!だからゆっくちちないでごほんをもってきてね!」」 「ゆっくちできるんだねー!ならおかちをもってきてねー!」 「ちーんっぽ!ちっーんぽ!」 激しい授業だったが、やり遂げた・・・そんな満足感に浸りながら、ゆっかりんは微笑を浮かべた。 子ども達も厳しい授業に耐え切ったことで自信に満ち溢れた力強い笑みを浮かべている。 呼吸を整えたゆっかりんはそんな彼女達に優しく語りかけた。 「がっこうはきょうでおわりだけど、ここでまなんだことをいかしてゆっくりしてね!」 「「「「「「「「「ゆっくりがんばるよ!」」」」」」」」 こうして子ども達の学校生活は無事終わりを迎え、子ども達は親や飼い主に連れられて家路に着く。 1週間を共に過ごした先生たちは少し寂しそうに、しかしそれ以上に嬉しそうな笑みを浮かべて子ども達を見送っていた。 ゆっくりのがっこう・後編?
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前作 ゆっくりいじめ系159 ゆっくり飾り Part.1 ※このSSには俺設定があります。別の書き手の設定が使われています。 「ほいほい」とはゆっくりを捕まえる為に掘られた落とし穴のことです。 穴が完成してから一週間がたった。 3mの深さがあった穴も、すでに3分の1が埋まっていた。 死んだゆっくりは完全に踏み潰され、堆積し、穴の底に溜まっていくからである。 中では今でも殺し合いが続いている。 異端ゆっくりに釣られたゆっくりが、次々と穴に落ちるからだ。 その度に穴の中にいたゆっくり達は、傷ついた身体にムチうって「新人」に襲い掛かった。 子供は真っ先に踏みつぶされ、親は噛みつかれ、吹き飛ばされた。 「どおしてええ なんででいぶのごどもをつぶすのおお 」 「きずついたまりさもかわぶっっ!!!!」(←潰された) 「ちーーーーんぽ!!ちーーーーんぽ!!!」 「うるさいよ!おまえたちがいるとゆっくりできないよ!さっさとしね!しね!」 「ちーーんぽしねえ!」 「ゆっくりするにはころすしかないんだよ!わかってるよおお!」 「ゆっくりできないやつらならしねええ!」 「よくもれいむのごどもをををを!!!!」 「なんでこんなことするのおおお!!」 最初は攻撃されるがままの「新人」たちも、家族を殺された憎しみ、理不尽な扱いに対する怒り、 そして生命の危機から反撃を開始した。 こうして殺し合いは続く。 その間にも新たな新人達が落ちてくるが、そういった新人達も否応無しに殺し合いに巻き込まれていった。 「みんななにしてるの?ここはくらくてせまいから、はやくここからだしべっっ!!」 状況判断が遅いゆっくり程、さっさと殺されていった。 1日目に落ちたゆっくりは2日目に全滅し、 2日目に落ちたゆっくりは3日目に全滅し、 3日目に落ちたゆっくりは4日目に全滅し、 . . . こうして激しい世代交代が繰り返されていた。 穴の中では 「最後の一人だけがゆっくりできる」 というただ一つのメッセージだけが受け継がれていた。 そんな日々がクリを繰り返すある夜のこと、 ゆっくり達を思わぬ敵が襲っていた。 「ゆ”っ!かゆいよ!」「からだがむずむずする」 それは虫だった。 通常、虫はゆっくり達の恰好の餌となる。 しかし、傷ついて中の餡子が剥き出しになったゆっくりにとって、虫ほど怖い存在はない。 身体が食べ物そのものであるゆっくり達は、野外で暮らす限り、 傷が塞がって餡子が外に出なくなるまでずーと虫につけ狙われるからだ。 だから、完治するまで傷口に葉っぱを貼り付けて、餡子が漏れないようにするゆっくりも多い。 少しでも眠れば、どこからともなく蟻や小さな虫達が忍び寄ってくる。 雨のせいで、穴に堆積した餡子が地面に染み出し、土中の生物を呼び寄せてしまった。 落とし穴の壁に貼り付けた木の板と、セメントの間から虫が這い出してきているのだ。 今まで、ゆっくり達には夜中に数時間程休める時間があった。 夜になれば新しく落ちるゆっくりがいない上に、 穴の中のゆっくりの数がある程度減り、 互いにある程度の距離が出来るからだ。 おまけに、夜中の3時ぐらいになれば、どんなに体力のあるゆっくりも 完全に体力を使い果たし、動けなくなることもその理由の一つだった。 しかし、死んだゆっくりの数が増え、穴に餡子が溜まり始めたことで 虫が集り始め、今度こそ少しもゆっくり出来なくなっていた。 身体に虫が侵入したあるゆっくりは、身体から追い出そうと暴れだし、 傷口に蟻が集りだしたもう一つのゆっくりは、それを潰そうと飛び跳ね始めた。 それに反応したゆっくり達は、それを攻撃と勘違いしてパニックに陥った。 「がゆ”い”よ”お”!!」「つかれてるんだからゆっくりさせてよお!!」「ねむいからしずかにしてね!!!」 「ぶつからないで!あんこがあ!!まりさのあんこがああでちゃううう!!!!」 真夜中のことなので、姿も見えず、互いにぶつかったりぶつかられた、踏みつけられたりの状況が続いた。 結局、早朝になり、虫が侵入して暴れまわるゆっくりが潰されるまでそれは続いた。 この騒ぎで、昨日までに生き残ったゆっくりの内、2匹が失餡子多量で息絶えた。 無論、他のゆっくりたちも睡眠不足と戦闘でボロボロである。 野生のゆっくり達を誘き寄せる異端ゆっくり達も。 最初は怖がったり文句を言っていたが、日数が経つにつれ慣れてきたようで、 野生のゆっくり達が自分めがけてつっこんで穴に落ちていく様子を楽しむ余裕もでてきた。 「ゆっくりできないゆっくりはしねええええええええ」 「しねええええええええええええええ」 必死の形相で襲い掛かってくる野生のゆっくりを見ては、 「ゆっくりできないゆっくりはしねだって、おおこわいこわい。 ゆっくりしてないのはそっちでしょ?ばかなの?」 ニヤニヤして馬鹿にしていた。 もちろん、一度、透明の箱に入れられ、穴の上に吊るされると夕方まで一日中放置される為、 太陽の下、飲まず喰わずで過ごさなければいけなかった。 死臭を出す為と、呼吸の為に穴がいくつも空けてあるが、 夕方になって箱から出したときは、いつも生きも絶え絶えの状態になっていた。 ホイホイにも大量の餡子が溜まり、そろそろ底までの距離が2mぐらいになっていた。 そんなある日、畑仕事をしているとドス魔理沙がやってきた。 ドスといっても2mぐらいで、ドスの中では小さいほうだ。 ドス魔理沙というのは、長い間ゆっくりし、知識と経験を蓄えたゆっくりのことで、力も人間よりある。 ただ、基本的には単なるデカイゆっくりで、ドススパークとかゆっくり光線なんてものは出せないし、 信頼の証として他のゆっくりから飾りを受け取ることもない。 おそらく、近くの里の長だろう。ホイホイに落ちて出て来れないゆっくりの数が多いから、直々に 探しに来たのだろう。 「ゆっくりできないゆっくりがいるよ!」 「ゆっ!かざりのないゆっくりはしねえ」 周囲の小さいゆっくり達も、ドスに続いて侮蔑と怒りの声を異端ゆっくりに投げかける。 だが、ホイホイのせいで近づけないので、代わりに石を投げているようだ。 「ゆっくりできないゆっくりが、ドスのなかまをゆっくりできなくしたんだよ」 「ゆっくりできないゆっくりはしね」「ゆっくりごろし!」 後ろからこっそり近づくと、 「おりゃああああああああああ」 背中を押し付け、体全体でドスをホイホイに突き落とした。 「ぶべっっ!」 ドスには体全体にタップリつまった餡子と、それを包み込む厚い皮がある。 それ故に重量があり、他の小さなゆっくりのように高く飛び跳ねることが出来ない。 これだけの重量では、飛び上がることも、人の手で引き上げることも無理だな。 「じっじいいい!!ゆっくりひきあげろおおおおお!」 「ゆっくりできないじじいはしねえええ!!」 そうだ。たしかコイツら、餡子そのものが胃みたいなものなんだよな。なら・・・ 穴の周りにいた、五月蝿いゆっくり達を蹴り落としていく。 「ゆぎゃっ!」「とかいはのすることじゃないわああ!!」 「いたいよーわかないよー!」 その後、俺は家の脇に立てかけてあったシャベルを持ち出すと、 ホイホイに落ちたドスまりさの帽子を取り上げ、頭頂部をくりぬき始めた。 「ゆ”ゆ”っ、じじい”い”い”い”や”め”ろ”お”お”お”お”!じね”え”え”え”え” い”だい”い”だい”い”だい”い”い”い”い”い”い”い”い”い”!!!!」 ぽっかりと開いた穴から、ドスの中身の餡子が良く見える。 これで準備完了。 落ちたゆっくり達は、最初は飛び跳ねて抗議し、餡子に刺激を与えてドスを苦しませる。 だが、次第に飛び跳ねる高さが低くなってくる。 徐々に底面から吸収されているからだ。 「ゆっ?へんだよ?あしがうごかないよ」 「うごけないよ~!わからないよ~」「ありすは」 やっと自分達が喰われてることに気づいたか。 「だじでえええええええ!じにだぐないいいいいい」 「」 「うごげなけよおお!!とめられないよ!お”に”い”ざん”、みんなをゆっぐり”だしてあげてねぇぇぇぇ!!」 こんなときだけ「おにいさん」呼ばわりかよ。 「どすのばがああああ」「しょくゆっぐりき~」 「わがらないよ~わがらないよ~」「どがいはなのにいい!!」 結局、夜になるまで恨めしい声は続いた。ドスは自分の大切な仲間を強制的に食べされられることになった。 それからというもの、異端ゆっくりを攻撃する為に突進してホイホイに落ちていったゆっくり達は、 否応無しに、ドスの餌に変わっていった。 「そらそら!ドスの餡子を平らげないと喰われちまうぞ!」 「ぐぐっぐゆゆゆゆ・・・もうだべられないよおおおおお・・」「おがあしゃんうごげないよお!だずげでよおお!!」 ある親れいむは、限界までドスの餡子を食べ続け、ついに動けなくなったところを、 ゆっくりとドスの餡子に吸収されていった。 体の小さい子ゆっくりは、親の目の前でドスの餡子に飲まれていった。 吸収されるゆっくり達は、口々にドスに対して恨み言を言いながら一部になっていった。 ドスは、そんな自分に対する恨みや憎しみがたっぷりつまった餡子を毎日大量に吸収する羽目になった。 ある夜には、れみりゃがやってきた。 「う~! すごくおいしそうなにおいがするんだどお♪ あまあまがいっぱいだどお~!」 こんな巨大な餡子の塊があるんだから、気づくのもあたりまえか。 れみりゃの背後から近寄ると、地面に引き倒し、羽や手足をもぎ取った。 「いだいんだどおお!!!!れみりゃのぷりちーなからだがあああああ!いだいいだいいだいいいいいいい!!」 あまりの痛みに暴れる(胴だけだったので大して動けないが)れみりゃを ほいほいに突き落とした。もし、ほいほいの中が空だったなら、 れみりゃは自身の再生能力のおかげで、間違いなく次の朝までに脱出できただろう。 だが、れみりゃが落ちたのは、ドスまりさの剥き出しの餡子の上だった。 ドスは日中の苦痛に耐え続け、すっかり精神的に参って眠りに落ちていた。だが、眠りに落ちてからも 強制的に吸収してしまったゆっくりの餡子が持っていた強烈な感情(怒り・憎しみ・悲しみ・恐怖・絶望もろもろの負の感情) がドスに悪夢を見せて苦しませていた。そんなドスは、れみりゃの落下という苦痛をともなった強烈な痛みによって、 再び現実に引き戻された。 「うぎぎぎ!!!やめてね!!うごかないでね!!」 「う~!ごごからだずんだどおお!!れみりゃばごーまがんのおじょーざまなんだどおお!」 人間にしてみれば、脳や内臓をかき混ぜられるのと同じだから、相当な痛みや不快感が ドスまりさを襲っているのだろう。 れみりゃは、しばらくの間、喚いたり芋虫のように体を強引に動かし続けたりした。 だが、徐々に冷静になるにつれて、自分の体がだんだん餡子に埋もれていっていることに気づいた。 「うーーー!へんだどおお!!うごげないんだどおお!からだがしずむんだどおお!!! しゃくやーー!こーまかんのおじょーさまをたすけるんだどおお!!!」 そんなれみりゃの悲鳴を聞きつけて、なんと、ゆっくりふらんまで現れた。 「う”-!!ゆっくり死ね!ゆっくり死ね!!」 「れーばていん」と呼ばれる棒切れをもったゆふらんは、狂気に満ちた顔でほいほいのそばまで降り立った。 俺はガン無視かい。 俺はゆふらんに近寄ると、棒切れを奪い取り、羽を引きちぎり、突き落とした。 ただし、今度は手足を引きちぎらない。 「う”ーごろじでやるううううう」 そう憎しみのこもった目で俺を睨み付けるが、すぐに近くにいたれみりゃに意識が向く。 そして、れみりゃの上に馬乗りになり、上から殴り続けた。 「う”ー!!じねええ!!じねええええ!!!」 「やめるんだどおお!れみりゃば、ごーまがんおおじょーざまなんだどお!!じゃぐやにいいづけるどおお!!」 ゆふらんは、思いっきりれみりゃを痛めつけて、食べようと考えたらしい。 だがゆふらんは気づかない。 ドスの餡子に密着している足の部分から、徐々に吸収されていっていることに・・ 「うー!ゆっぐりしないでじねええ!!」 手足がないため、抵抗することできずに殴られ続けたれみりゃは生きも絶え絶えだ。体の半分以上は 餡子に埋まっているか。ふらんのほうも、殴ることに夢中で、足が完全に餡子に埋もれていることに気づいていなかった。 だが、さすがに足の自由が利かなくなっていることに気づいたのか、強引に足を引き抜いた(ただし、存在したのは脚だけで、 足の部分は完全に吸収されて無くなっていた)。 そして、れみりゃを食べることも忘れて不機嫌そうに暴れ始めた。自分が閉じ込められているということや、 吸収されているということに苛立っているのだろう。 「うーー!!ここからだせえええ!だせえええ!!!ゆっくりしないでだせえええ!!」 「ごごがらだずんだどおお・・・じゃぐやああゆっぐりじないでだずげるんだどおお・・・」 ゆふらんは、脚だけの状態になりながらもほいほいの中を歩き回ったり、腹をすかせるとドスの餡子をほじくり返して 食べたりしている。これはゆふらんが完全に度すの餡子に吸収されるまで続いた。 「ゆっぐりだぜええええ・・じねえええええじじいいいい・・・」 「しゃ・・・・ぐ・・・や・・・」 当然、この間も途切れることなく延々と苦痛がドスにもたらされていた。 そんな出来事があったりした数週間後、ついにドスから提案があった。 提案というより切実な願望か。 「もうごろじでええ!がゆい!ぐるじい!じにだい!」 吸収するたびに、負の感情が詰まった餡子が蓄えられてゆき、自身の餡子(脳)が締め付けられる。 さらに、ドスのブ厚い皮にも、底辺や側面から這い出してきた虫達が侵食しているようだ。 ゆっくりの皮は炭水化物だからか。 それにドスの声もそろそろ耳障りになってきたし、農閑期に入るし、 埋 め る か 俺は異端ゆっくり達を突き落とし、ドスに吸収させると、シャベルで穴を塞ぎ始めた。 ドスは、これから土に含まれる虫や微生物達に分解されるわけだが、 無論、あれだけの量の餡子が分解されるのはいつのことになるのやら。 ドスが完全にゆっくりするまで、まだまだ時間がかかりそうだった・・・ Part.1から何ヶ月たったんだろ・・・ ※俺設定として、ドスの能力が単に大きかったり、賢さだけになっています。それから別の書き手の方の 設定をつかって、ゆふらんが「れーばていん」という棒切れを振り回します。 written by 御湯栗
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「ふたば系ゆっくりいじめ 973 続々続ゆっくり研究/コメントログ」 続いてくれ -- 2014-09-29 20 40 42
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不良品の証 13KB 制裁 小ネタ 自業自得 家族崩壊 飼いゆ 都会 独自設定 風呂敷広げておいてごめんなさい ※独自設定垂れ流し。 ※設定文章が多くてごめん。 ※36番あき様の「きんのまりさ と のられいむ」10頁目よりインスパイアされています。 ※36番あき様愛しております。いつもシビれる展開でイきまくりです。 「不良品の証」 必殺引篭り人 「…おい、まりさ。これはなんの冗談だ?」 お兄さんは呆然としていた。飼いゆっくりのまりさと一緒にいたもの。それは野良れいむ。しかも 頭には4匹の赤ゆっくりを実らせている。 「ゆっ、おにいさん!れいむをしょうかいするよ!まりさのたいせつなぱーとなーだよ!」 お帽子に金バッジが燦然と輝いているまりさ。その笑顔もまた輝いている。 「…金バッジ試験で勉強したこと、もう忘れたのか?」 「もちろんおぼえてるよ!」 「じゃあなんで野良とすっきりーしてんだ?」 「ゆっ!のらじゃないよ!れいむは『とくべつなのら』だよ!ゆっくりりかいしてね!」 「はあ?野良には違いないだろ?お前、金バッジゆっくりは野良とすっきりーしちゃいけないって あれだけ教えただろ!」 「ゆゆぅ!だかられいむはのらじゃないよ!『とくべつなのら』だよ!まちがえないでね!」 まりさは真剣だ。どうやら自分が選んだれいむはただの野良ではなく特別な野良ゆっくりであって、 すっきりーしても野良ではないから大丈夫、ということらしい。 お兄さんは脱力してしまった。あれだけ苦労して、やっととった金バッジ。それなのにあっという間に その努力をぶち壊してくれたのだ。 お兄さんは怒っていいのか、悲しむべきなのか、それとも滑稽すぎて笑えばいいのか、わけの分からない 理屈で野良じゃないと言い張る浅はかさにあきれればいいのか、まったくわからなかった。もしかしたら その全部なのかもしれない。 まりさの後ろにいるれいむはどうやら控えめな性格らしく、野良らしからぬおとなしさだ。さすが にゆっくりを見る目だけは曇ってはいなかったようでそこだけは安心した。これででいぶなど連れて 来られた日には即潰している所だ。 「…特別だろうがなんだろうが、バッジを持ってないゆっくりとすっきりーしたら金バッジじゃなく なるんだよ。それも教えただろう?」 「おにいさん!まりさはきんばっじさんなんだよ!だからとくべつなんだよ!とくべつなまりさが えらんだれいむは、やっぱりとくべつなんだよ!ゆっくりりかいしてね!」 まったく話にならない。増長しているわけでも、ゲスになっているわけでもない。マジで信じ込んでいる らしい。 まりさはペットショップ出身だった。しかもバッジなしの格安品。銀バッジ取得用の教育を受けていた にも関わらず、試験に落ちてしまったゆっくりなのだ。お兄さんは別にバッジにこだわっていたわけでは なかったので、安くなっていたまりさを選んだ。 飼ってみてわかったのは、まりさがかなり浅はかな性格だということだった。深く考えることをせず、 ほとんど脊椎反射のようにあっさり決めてしまうのだ。これでは銀バッジ試験に落ちるだろう。 しかしお兄さんは気にしなかった。馬鹿な子ほど可愛い、というわけでもないがあまり賢すぎても つまらん、と思っていたからだ。 そんなまりさが自分から金バッジをとりたい、と言ってきたのには驚いた。どんな心境の変化があったの やら、金バッジ取得に意欲を燃やすまりさに触発され、お兄さんは強力に後押しをした。 金バッジ取得のためにお兄さんは参考書や問題集を読みまくった。まりさも試験に向けて毎日の猛特訓 に励む。 金バッジゆっくりは野良から疎まれたりうらまれたりしやすい。そういうゆっくりからの攻撃から身を 守るため、ゆっくりとしてのもっとも重要な特性、クセを矯正する訓練を行うのだが、そこで いきなりつまづいたのだ。 お飾りを取られて動揺させる、バッジ取得ゆっくりに対する攻撃はこれがもっとも多い。何よりお飾り を大事にするゆっくりである。そこを攻撃されると弱い。 お飾りを盗まれても動揺しないよう、まりさは毎日家の中でお帽子を脱ぐことを義務付けられた。 はじめはジタバタと泣きわめいてお兄さんを困らせていたまりさ。この時点で金バッジ取得をあきらめる ゆっくりも多い。 次に多い攻撃は「ゆっくりしていってね」のお返事を狙われること。ゆっくりはこのセリフを言われたら 必ず返事を返してしまう。そこを狙われる。そのため金バッジゆっくりは決して返事を返さないよう 矯正される。 まりさはここでもつまづいた。何度やっても返事をしてしまうのだ。そのたびにお兄さんからビンタを くらう。 銀バッジ教育を受けているとはいえ、まりさはやはり浅はかな性格でなかなか勉強がはかどらない。 普通のゆっくりであればこのようなゆっくりできない日常を嫌い、バッジ取得をあきらめるところだ。 しかしまりさはあきらめなかった。弱音を吐くこともあったが、それでも金バッジに向けて日々努力 していた。そんな姿に、お兄さんも心打たれていたのだ。 それが今日、打ち砕かれた。 おそらくこのれいむとは金バッジ取得前から知り合いだったのだろう。金バッジ取得にあれだけ こだわったのは、れいむと番となり一緒にこの家でくらすためだったのだ。 まりさにゲス資質はなかった。それは一緒に暮らしていたから確信している。ゲスではなかったが 思慮が足りなかった。足り無すぎた。金バッジという特別なゆっくりになればれいむと一緒になって も問題ないと考えたのだろう。 お兄さんは無表情のまま呆然としていた。まりさはそんなお兄さんを必死に説得し続ける。ただ その内容は金バッジゆっくりだから~、とかれいむは特別だから~、とかまったく説得力のない ものだったが。 呆然としながらもお兄さんは考えていた。ともかくなんとかしなければ。 お兄さんはまりさの帽子から金バッジをはずす。 「おっ、おにいさん!かえしてね!まりさのきんばっじさんかえしてね!ゆわあああん!」 「…。」 「それはまりさのだよ!まりさががんばったからとれたんだよ!かえしてね!」 お兄さんの心にふつふつと怒りがわいてくる。自分のもの、だと? お兄さんは無言で部屋を出て行く。静かな怒りをたたえたまま、お兄さんは工具を探し、金バッジの 裏に刻印されていた数字をすべてつぶしていった。 部屋に戻るとまりさがいまだに泣きわめいていた。やれ自分のものだの、お兄さんはひどいだのと いった感じだ。泣きわめく後ろで、頭に茎を生やしたれいむがおろおろしていた。 お兄さんは金バッジをまりさの帽子にもう一度つけて言った。 「もうお前はうちの飼いゆっくりじゃない。今からお前は野良だ。」 それを聞いて、まりさは泣くのをやめた。 「…おにいさん、まりさをすてるの?」 「当然だろう。金バッジゆっくりの決まりを守れないようなゆっくりは飼いゆっくりじゃない。」 「ちがうよ!まりさはきんばっじさんだよ!ゆっくりりかい」 「しないよ。本当に馬鹿だなお前。飼いゆっくりってのは飼い主の言うことを守るものだ。守らない のは飼いゆっくりじゃない。せめて殺さないでやる。あとは自分でどうにかしろ。」 「ゆっ!かいゆっくりをすてるのはほーりつできんしされてるよ!」 「そういうことは決まりを守ってから言いな。」 「まりさをすてるとおにいさんがひどいめにあうよ!」 「…ぷっ。そうか、酷い目に会うか。じゃあ試してみようか。 ともかく、お前は捨てる。野良になって世間の厳しさを勉強して来い。」 そういうとお兄さんはまりさとれいむをダンボールに入れ、人気の少ない空き地に捨てた。お兄さんは まりさに、家に戻ってきたら加工所に連れて行くと言って去っていった。 「まりさぁ…、これからどうするの?」 「しんぱいしないでね、れいむ!まりさはきんばっじさんだよ!だからすぐにあたらしいかいぬしさん がみつかるよ」 「…そうだよね!れいむのまりさはきんばっじさんだもん!だいじょうぶだよね!」 「それにこんなにかわいいおちびちゃんたちがいるよ!これをみせればどんなにんげんさんでも すぐにかいぬしさんになってくれるよ!」 「ゆゆっ!そうだね!じゃあさっそくかいぬしさんをさがそうね!」 「「ゆっ、ゆっ、おー!」」 まりさは落ち込まなかった。大好きなれいむとのこれからがあったからだ。そう、どこまでも 浅はかだった。 人通りの多い道。まりさは道を歩く人たちに声をかける。 「おにいさん!まりさはきんばっじさんだよ!だからかいゆっくりにしてね!」 声をかけるまりさを見守るように、れいむは道のはしっこに寄っていた。 「おねえさん!まりさをかってね!れいむとのかわいいおちびちゃんもいるよ!」 しかしまりさが何度声をかけても、誰もまりさを飼おうとする人はいなかった。たいていの人は 金バッジと聞いただけで去っていった。 たまに金バッジを手にする人も現れた。まりさはそんな人に見てもらおうと帽子を向ける。しかし バッジの裏側を確認すると、全員が立ち去っていった。 「なんでだれもまりさたちをかってくれないの…?」 「ゆうぅ…。どうするの、まりさ?もうまりさがもってきてくれたごはんさんがないよ…。」 「どのにんげんさんもみるめがないね!まりさはきんばっじさんだし、れいむはこんなにびゆっくり でおちびちゃんたちもすごくゆっくりしてるのに!」 「まりさ。かいゆっくりになれないならせめてごはんさんをもってきてね。そうじゃないとれいむ おちびちゃんたちにえいようがあげられないよ…。」 エサがなくなって2日目。れいむはだいぶ弱ってきていた。赤ゆっくりに栄養を吸われているのだ。 しかたなく雑草を食べてはいるが、まずい上に消化するのに逆に栄養を使ってしまう始末だ。 まりさは必死で道行く人に声をかける。しかしことごとく無視され、しまいには蹴り飛ばされる。 パリっとした自慢の帽子はぐしゃぐしゃ。きれいな金色だった髪はすすけている。どこから見ても、 立派な野良へと転落していた。 もうれいむは連れて来ていない。れいむが弱ってきていることも理由だが、番がいるというと即座に 人間が話を聞かずに帰ってしまうことに気づいたからだ。 「おにいざん!ばでぃざをがっでぐだざい!」 「うわっ!なんだコイツ!?」 「ばでぃざはきんばっじゆっぐぢでず!なんでもでぎばず!ゆうごどなんでもぎぎまず!だがら…。」 「服が汚れるだろ!」 人間の足にすがりつくまりさ。しかし逆に蹴り飛ばされてしまう。 「ゆべっ!…いだいよぉぉ…。」 だれもまりさを助けてくれる人はいなかった。 「おにいさぁぁん…。」 まりさは結局、お兄さんの家に戻ってきた。加工所に送る、と脅されていたがここしかもう行くところ がなかったのだ。後ろについてきているれいむはやせこけて飛び跳ねることもできなくなっていた。 「まりさ。何で戻ってきた。加工所に送ると言っただろう?」 「ぐすっ、まりざ、だれにもがっでもらえながっだよ…。ゆわーん! どうじで!?どうじでだれもがっでぐれないの!ばでぃざ、きんばっじざんなのにぃぃぃ!!」 その言葉にお兄さんは呆れ顔だ。 「…本当に思慮が足りないな、お前は。金バッジだからだれも拾ってくれないんだよ。」 「…ゆっ?」 「ゆっ?じゃないだろう。よく考えろ。金バッジゆっくりが番を連れて飼い主を探しているなんて ありえないだろう。勝手なすっきりーをしないのが金バッジゆっくりの約束なんだから。 つまり番がいる時点で勝手な行動をするゆっくりだってことがバレバレなんだよ。」 「…ゆぅぅぅ!?」 「それに金バッジが捨てられるってことはさ、捨てられるような酷いことをしたってことだろ? そういうことをするようなゆっくりを飼いたいバカがいるかよ。 バッジの裏を確認して立ち去った人間がいるだろ。あれは俺が捨てゆっくりのしるしとして バッジの裏の登録番号を潰しておいたからだ。 だから迷いゆっくりと勘違いする奴もいなかったろ?」 「ゆゆゆ…、そ、そんなぁ…。」 「だいたい、バッジを奪って自分がバッジ付きゆっくりだって身分詐称する野良がいるってのも バッジ試験の勉強で教えただろう?自分がバッジ付きだって言えば言うほど人間は疑うんだよ。 本当、こんな簡単なこともわからないんだな。…金バッジ試験、受かったのって奇跡だよな。」 「ま、まりさ…。なんで…、かんたんなこと…、わからないの…?まさか、きんばっじはうそなの?」 れいむはまりさの金バッジを疑い始めていたらしい。 「で、でいぶ、ぢがうよ!ばでぃざは、…ばでぃざはきんばっじざんだよ!じんじでね!」 「まあほとんどウソみたいなもんだよな。こんなバカなのに受かったなんて。何かの間違いだな。」 まりさは泣きながら必死で主張している。 「おにいざん!でだらめいばないでね!ばでぃざがゆーしゅーだったからうがっだんだよ!」 「優秀なら金バッジが自分のものだって言わないんだよ。」 そういうとお兄さんはまりさの帽子からバッジをはずした。 「ゆ゛っ!がえじでね!ばでぃざのきんばっじがえじでね!」 「そこが間違いなんだよ。金バッジはお前のものじゃない。人間のものだ。」 「うぞいわないでね!ばでぃざがどっだんだがらばでぃざのものだよ!」 「あのな、これも試験の勉強で教えただろう?人間の世界じゃ、飼いゆっくりってのは人間の所有物、 つまり『モノ』なの。その『モノ』が性能を証明するのが金バッジ試験。で、バッジは証明書。 ある人の所有物が確かに高い性能をもっている、そういうことの証明書として人間に発行されるのが 金バッジなんだ。飾りに取り付けるのはそのほうが分かりやすいから、無くし難いからってだけ。 バッジはゆっくりのものじゃないんだ。人間のためにあるんだよ。」 「…ゆっ、ゆぇぇぇぇん…。」 自分の信じていた一切が否定された。まりさはどん底だ。 「…わかったか?どんなに自分が浅はかだったか。」 お兄さんはそんなまりさをやさしくなでた。 「世間の厳しさにもまれて、少しは賢くなったか…?」 「ゆっ…、おにいざぁぁん…。ばでぃざがばぢがっでばじだ…。」 「…そうか。ようやく学んだか…。」 「ゆん…。まりさ、これからはいいかいゆっくりになるよ…。だから、もういちどまりさをかってね!」 お兄さんはその言葉にポカンとした。 「…え、何で?」 「……ゆっ?」 「いやだからなんで『ゆっ?』なんだよ。よく考えろってさっきもいっただろ? お前みたいな浅はかでバカなゆっくり、飼うわけないよ。 じゃ、これからも野良のゆん生を精一杯生きろよ!」 お兄さんはまりさとれいむを掴みあげると、力いっぱい外へと放り投げた。 「「おそらをとんでるみたいー!!」」 その後、まりさとれいむはエサもとれず、街の野良ゆっくりにも迫害され、逃げるようにして街を 出ることになった。さりとて郊外ではエサもなく、そのふがいなさを責められたまりさは、 「…さあ…、おたべ…なさい…。」 なけなしの体力を振り絞り、れいむと赤ゆっくりのための栄養となった。 まりさを栄養とし、赤ゆっくりはなんとか生まれたものの、当然ながられいむもエサを取ることが できない。そして同じく。 「おちびちゃんたち、さあ、おたべなさい!」 れいむも赤ゆっくり達の栄養となった。 赤ゆっくりはれいむを食べてすくすくと成長し、郊外のゆっくりが等しくたどるゆん生をおくった。 「からしゅしゃん!ゆっくちやめちぇね!」 「まりしゃのかりゃだをたべにゃいでね!」 「れいみゅおこりゅよ!ねこしゃんあっちいっちぇね!…ゆぎゃぁぁぁぁ!?」 …すんません。「バッジシステムの考察」とか大風呂敷ひろげておいてこの体たらくです。 次回はもっと自分に素直に、パッションの弾けるままをぶつけようと思います。 過去作品 ふたば系ゆっくりいじめ 563 エコを目指す加工所 ふたば系ゆっくりいじめ 551 真実を知るということ ふたば系ゆっくりいじめ 544 モチモチを生かして ふたば系ゆっくりいじめ 509 おかされいむ ふたば系ゆっくりいじめ 464 ゆ身売買 ふたば系ゆっくりいじめ 387 れいむはよげんしゃ ふたば系ゆっくりいじめ 248 ゆっくりできない理由 ふたば系ゆっくりいじめ 216 子まりさの反乱 ふたば系ゆっくりいじめ 182 どすすぱーくをうつよ! ふたば系ゆっくりいじめ 177 人間の畑だと説得してみよう ふたば系ゆっくりいじめ 147 陰口 ふたば系ゆっくりいじめ 111 効率化の道 必殺引篭り人の作品集 トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る れいむは生粋の野良なのになんで自力でエサ取れないんだよw -- 2017-01-18 01 37 56 最後のチビワロタ -- 2016-02-14 23 09 07 ととと特別な野良(笑) -- 2012-02-03 07 55 33 ↓でもれいむも当然ながらエサを取ることができないww どっちも馬鹿 -- 2011-10-14 22 15 35 こりゃれいむのほうが頭いいかもな -- 2011-09-30 12 30 42 この展開はゆっくり出来るね! 飼いゆが野良ゆと勝手に番になって捨てられる展開を初めて考えた人って マジで天才だと思う -- 2011-03-03 15 43 23 バッジシステムの評価方法に疑問しか感じないぜ! -- 2010-11-16 06 16 54 馬鹿の悲劇は可哀想と言いたい所だが… まりさをすてるとおにいさんがひどいめにあうよ! 何て言う糞饅頭には同情する気にもならんなw 膨らませて欲しいのには同意。もっと面白くなりそうです -- 2010-10-18 23 40 00 でもゲスでもないこのバカまりさじゃ制裁シーンがあってもあまり面白くなさそうだな -- 2010-09-04 09 17 09 もっと馬鹿まりさを酷い目にあわせてほしかったな。もっと悲惨なゆん生を送らせてほしかった。 -- 2010-09-03 11 44 03 次回作に期待するよ。 -- 2010-07-29 09 11 07 まぁ、勝手に番を作った上にすっきりー、挙句に自分が特別と勘違い、ただのゲスじゃん またはゲス予備軍、くたばって当然 -- 2010-07-12 01 55 57 ゲス制裁は仕方ない。バカの悲劇はかわいそう。 -- 2010-07-12 01 09 47 簡単にまりさを終わらせないでもっと悲惨な目に遭うのを見せれば・・・ -- 2010-06-26 02 02 56 もっとふくらませてよ・・・。 -- 2010-06-10 00 28 26
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※登場する人間達に名前があります。嫌な人は注意。 ※あまりいじめてません。 ※世界観・設定の描写がだるいので斜め読み推奨です。 要するに近代の田舎にゆっくりがいる設定です。 ゆっくりと小学校(前) U市郊外に位置するこの町は多くの山と川に囲まれ、自然を色濃く残している。 都市に近く、閑静な住宅街と綺麗な空気に恵まれた土地は人間にとっても、 数年前から現れだした生物風にいえば「ゆっくりできる」場所であった。 だが、町の開発が進んだ為か、環境問題の影響か 近頃では麓でも大型の鳥獣を見かけることは無くなった。 代わりに山に棲み付いたのが、「ゆっくり」と呼ばれる生物(ナマモノ)である。 「ゆ?」 「ゆっくりしていってね!」 何の前触れも無く全国に現れたこの「ゆっくり」の生態は不可解極まる。 「ゆっくりしていってね!」に代表されるように、ある程度の人語を操る。 出来の悪い生首のような体を持ち、不思議な力で跳ねて移動するが運動能力は低い。 そして、驚くべきことにその体は饅頭で出来ている。 「ゆっくり」が現れて以来、様々な議論が飛び交ってはいるが 殆ど皮と餡子で構成された生物がどうして生きているのか、 そもそもナマモノではなくイキモノとして扱うべきかという問題すら解決していない。 「「ゆっくちしていってね!!!」」 が、普通のの人にとってはそんな難しい話はどうでもよかった。 最初こそ大騒ぎになったがゆっくりが珍しい存在ではないと分かり、 それぞれがそれぞれの付き合い方を見つけていった。 畑を荒らされ踏み潰す者、一緒に遊んだりゆっくりする者、 食料として扱う者、ペットとして飼う者、人には言えない趣味に使う者、 ゆっくりと関わる人向けのビジネスに携わる者など、多種多様である。 「うん、ゆっくりしていってね。やっぱりかわいいなぁ。でもそこにいると・・・」 「えっへん! おねえさんはゆっくりできるひとd ゆっくりは主に自然が豊かな土地に棲む。 都市部はゆっくりにとってあまりにもゆっくりできない場所であった。 ゆっくり出来ない人や鉄の獣が飛び交い、潰されずにいるだけでも精一杯。 おいしい食べ物、きれいな水、ゆっくりできるおうち、どれも手に入らない。 全てが手にはいるゆっくりぷれいすを見つけたゆっくりは燃えるゴミと成り果てた。 自然豊かな土地に棲むというより都市で生き残れなかっただけかもしれない。 「ゆびゅっ!?」 そこに何も無かったかのように少女の目の前を車が通り過ぎて行った。 親れいむがいた所に残されているのは、親ゆっくり1匹分の餡子と皮。 ゆっくりが現れてからは珍しくない光景だ。 後に残されたのは子ゆっくり2匹と、登校中の少女が一人。 ソフトボール大の子れいむと子まりさは目の前の状況に頭が追いついていないようだ。 「「・・・ゆ?」」 「・・・」 いくら郊外とはいえ、道路の上に饅頭がおいてあればこうなる。 「ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!! おかあさんがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」 「ゆうううう!!? どお゛ぢでえええええええええ゛え゛え゛え゛!!!!?」 「・・・・・・ごめんね、気づいてあげられなくて」 「ゆっぐ、ゆっぐ」 「ゆうぅうぅ・・・」 落ち着いたようなので、話を聞いてみることにした。 「どうして道路でゆっくりしてたの? 危ないよ?」 「どうろなんてしらないんだぜ! ・・・ゆっくりおやについてきただけなんだぜ・・・」 どうやらこの家族は車道についての知識がなかったらしい。 詳しく聞けば、以前は親まりさとたくさんの姉妹がいたが、 今日までに親れいむ1匹に子ゆっくり2匹の3人家族までに減ってしまったらしい。 あ、もう2匹か。 山でゆっくりできなかった家族が、ゆっくりを求めて降りてきたといった所か。 ゆっくりという生物は人間は元より、同サイズの野生動物と比べても脆弱であり、 子ゆっくり2匹がこの先生きのこるのは絶望的といえた。 「まりさ・・・。これからどうしよう?」 「ゆ・・・。ごはんのとりかたもわからないんだぜ・・・」 状況を察した少女が声を掛ける。彼女には当てがあった。 「ねね」 「「ゆ?」」 「良かったら私たちの学校に住まない? クラスで2匹、ゆっくりを飼う予定なの 君たちが来てくれれば、ちょうどいいんだけどな~」 「かうってなんなのぜ?」 「ゆっくりできる?」 少女が通う学校では命の尊さを学ぶため、学級毎に動物を飼うことが推奨されている。 彼女の学級では担任の愛子先生の強い希望で、近々ゆっくりを飼う事になっていた。 「うーん、毎日いっぱいご飯もらえて、みんなにかわいがってもらえると思うよー」 「「ゆゆ!!」」 途端に目を輝かせる子ゆっくり達。 明日からどうやってエサを確保すればいいのかも分からないゆっくりにとって、 これ以上ないほどゆっくり出来る条件に思えた。となれば乗らない手は無い。 「「ゆっくりつれていってね!!」」 「うん、任せて」 この子たちだけはゆっくりさせてあげよう。 そう思って少女は子ゆっくり達を力いっぱい抱きかかえた。 あの車のような理不尽な暴力から守ってあげる、と言わんばかりにきつく・・・。 「・・・!」 「・・・!」 「・・・・・・!!」 「・・・・・・!!」 「愛子先生なんていうかな~?」 「愛で子先生っ!おはようございますー!」 「おはよう。早いわね梨香さん。でも、メデコじゃなくてアイコ先生って呼びなさい」 「えー、でもその方が愛で派っぽくて先生らしいですよ~」 「・・・・・・出目金みたいでかわいくないじゃない(ボソ)」 「? なにかいいました?」 「なんでもないわ。ところで、さっきから抱えてるのって・・・」 「あ、はい! 実は・・・ってわあ!青くなってる!?」 慌ててホールドを解く少女。 「お゛ね゛え゛ざん゛の゛ゆ゛っぐり゛ごろじい゛い゛い゛ぃぃぃ!!!!」 「どぼじでごんなごどじだの゛お゛お゛お゛お゛!!?」 「ゆ゛っぐり゛あ゛や゛ま゛っでね゛ええ゛え゛え゛え゛!!!?」 「ご、ごめん、ごめんね? わざとじゃないの、ごめんなさいっ」 理不尽な暴力から開放されたゆっくりは梨香に罵詈雑言を浴びせ 少女・・・梨香はひたすら謝った。 「なるほど、それで拾ってきたのね」 「はい、ちょうど2匹ですし、他に家族もいないみたいで・・・」 「分かった。そういう事情なら野良ゆっくりを捕まえるより良いわよね」 「ありがとうございます!」 「じゃ、予定通りとりあえずはウサギ小屋に連れて行きましょう」 「あれ? 教室には連れて行かないんですか?」 「教室でおうち宣言されると困るからね。ウサギ小屋じゃ満足出来なくなるわ」 「なるほど。さすが元ブリーダーですね!」 これからのゆっくりライフに思いを馳せる2匹は、 頭上の会話などこれっぽっちも耳に入っていなかった。 「はい、ここが今日からあなたたちのおうちでーす」 「ゆー! ひろいね! ゆっくりできそう!」 「ゆゆ! わらさんがいっぱいあるよ!」 「まだ夜は寒いから寝るときはそれを使ってね。水のみ場はこっち」 「「ゆっくりりかいしたよ!!」」 「気に入ってくれたみたいね」 「ええ、よかったです」 「ゆっ? ごはんがないよ? ごはんがないとゆっくりできないよ!」 「おねえさん! まりさたちにごはんをもってくるんだぜ!!」 「後で係りになった子が持ってきてくれるから、その時にね」 「「ゆぐぐ・・・ゆっくりりかいしたよ!」」 「じゃあ、それまで3人で仲良くね!」 そう言って教師と生徒は去って行った。 「ゆゆ? さん? れいむたちはふたりだよ? おねえさんばかなの?」 「れいむ! おねえさんはいのちのおんじんなんだぜ! ばかなんていうなだぜ!」 「ゆゆっ! れいむがわるかったよ!」 「わかればいいんだぜ! れいむはゆっくりした子なんだぜ! すーりすーり♪」 「ゆゆー♪ おかあさんのぶんまでゆっくりしようねぇ! すりすりー♪」 すりすりする2匹の背後で、藁の山が、音を立てた。 「・・・そういうわけで、今日予定していたゆっくり取りは中止して、・・・」 子ゆっくりが最初に会った人間が梨香だったことは、幸運だった。 この町に限らず、山間の町村では愛で派の人間は少ない。 特に農家の人間には嫌われている。 現在でこそそれなりに対策されているが、 かつては田畑や「おうち宣言」の被害が数多くあった。 もしゆっくりが出会ったのがその被害者であったなら、最悪潰されていたかもしれない。 「梨香も物好きね~。わざわざゆっくりを拾ってくるなんて」 「久美ちゃんはゆっくり嫌いだっけ?」 「別に嫌いじゃないけど・・・。轢かれたのが猫とかじゃなくて良かったわ」 今月のゆっくり飼育係は、先生の話を聞いていなかった2名に決まった。 がさがさっ 「「ゆ!」」 「・・・」 白い体に赤い目を持った生き物が、こちらを見つめていた。 「ゆゆ? どこから入ってきたの!?」 「ここはれいむとまりさのおうちだよ!!」 「ゆっくりでていってね!」 「でていってね!!」 白い生き物-この小屋の先住民であるウサギは、だまってゆっくりを観察していた。 ひくひくひくひく 「きいてるの!! ゆっく・・・ゆぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛!?」 「どうしたのまりさ! ・・・ゆああああああ゛あ゛あ゛!?」 ウサギの鼻は結構高速で動く。 ゆっくりからしてみれば、とてもゆっくりしていない。 直視に耐えられる光景ではなかった。 ひくひくひくひくひくひく... 「ゆっくりしてね! ゆっくりしていってね!!」 「ゆっくりやめていってね!! もっとゆっくりうごいてね!!」 ヒクヒクヒクヒクヒクヒクヒクヒクヒク... 「「どぼじてゆ゛っぐりじでぐれない゛の゛お゛お゛お゛お゛!?」」 ウサギにゆっくりの言葉が通じるはずもない。 目を逸らせば良さそうなものだが、全く気づいていないようだった。 「ゆっくりー、どうしたの?」 「ゆっくりしてないなー」 心配そうにウサギ小屋を覗き込む少女と、どうでもいいと言わんばかりの態度の少女。 「お゛ね゛え゛ざん゛ん゛ん゛!! どういうごとな゛の゛おおおお!?」 「しろいのがいでゆっくりできないよお゛お゛お゛お゛!!!」 「ここからだして!! おうちかえる!!」 「あれ、言ってなかったっけ。ゆっくりを飼える大きい部屋がここしかないの」 ここから出ても生きていけないことを知っている少女達はゆっくりをなだめる。 「落ち着いて、ウサギさんは怖くないよ」 「ほら、エサ持ってきたよ」 「ゆ! やさいさんだ!!」 嘘泣きをしている子供よりも切り替えが早い。 「すごくゆっくりできるたべものだよー!!」 どうやら野菜の味を知っているらしい。 他の家族が全滅した理由と関係があるのだろうか。 「はい、どうぞ」 金網越しに、小屋の中へ細長く切った野菜を差し入れられる。 「ゆー! ゆっくりたべりゅぶっ!?」 「れいぶう゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛!?」 野菜の前で待機していたれいむを踏み台に、ウサギが野菜にかじりついた。 「あ、ウサギさんにたべられちゃった」 「どおしでごんなことする゛の゛おおおおお!?」 「いや、もともとウサギのえさだし。喧嘩すんなよ」 「ごめんね、でも大丈夫。いっぱいもってきたから」 「ゆぐぐ・・・。おねえさん! つぎはまりさたちにちょうだいね!!」 「ゆ゛・・・はやくおりてええぇえ゛ぇ!」 「うさぎさんはあっちいってね!!」 「まりさのごはんとらないでね!! とらねいでねえええ!?」 「ゆぎゃ!!」 「いつまでたべてるの゛お゛お゛お゛お゛お゛!!?」 それから、何度えさを差し入れても、全てウサギが食べてしまうのであった。 「えさ、なくなったね」 「うー、こんなはずじゃなかったんだけどな。ごめんね?」 「ゆっぐりでぎな゛い゛い゛い゛い゛い゛!!」 「たべさせてよ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!」 「次から小屋の中で直接あげよっか」 「そうする・・・」 元ブリーダーの先生がいれば、もっとうまく面倒を見ることが出来る。 しかし、これは生徒達が命の尊さを学ぶ為に与えられた機会。 生徒達が試行錯誤し、自ら成長することこそが重要で 結果的に生き物が死んでしまったとしても、有意義な経験になる。 そのため、愛子先生を含めた職員達は、基本的に手を出さないことになっているのだ。 「じゃあ、また放課後に来るね」 「ゆ゛!? おいでがないでね゛え゛え゛え゛え゛!?」 「ほんとにうるさいなー。あんなののどこが好きなの?」 「まだごはんたべでないよお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!?」 「んーとねー・・・」 「「ゆ゛っぐりざせでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!!」」 2匹の叫びを聞くものは同居人のウサギだけだった。 つづく このSSに感想を付ける
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※かなり俺設定があります ※人と共存しているゆっくりがかなりいます ※虐待分は少ないです このSSは僕が初めて書いて投稿したやつです。 いろいろと設定とかに矛盾とかあったり、駄文で目を汚すかもしれませんが、どうか長い目でよろしくお願いします。 ゆっくりに関して一般人よりも思い入れがあるお兄さん達がいる。多少の違いはあれど、大まかに分けるなら、彼らは俗に3種類に分けられる。 愛でお兄さん 虐待お兄さん 虐殺お兄さん 愛でお兄さんはその名の通り、ゆっくりを愛してやまない人のことである。 多くの愛でお兄さんはゆっくりを愛でる協会「ゆっくりんピース」に所属していることが多い。が、いいゆっくりと悪いゆっくりを両方とも区別せず愛するというわけでわない。 前者はしっかりと愛でるが、後者は愛でず無視したり罰を与えたりする。(無視すると家、もしくは畑の被害が増すため主に罰したり捕まえて山に返したりする。さすがに、ゆっくりを愛でているため命まではとらないようだ) 虐待お兄さんは読んで字のごとく。ゆっくりを虐待するのに生きがいを見出す人である。その虐待方法は筆舌しがたく、ゆっくりに対する虐待を人間にしたら、尋問か拷問のスペシャリストへとスカウトされるかもしれない。 が、基本ゆっくりしか虐待しないし、虐待方法はゆっくりにしか通用しないので、ゆっくり虐待から人間の尋問or拷問への転職をしたなど、そういった話は今のところ出ていない。 いいゆっくりより悪いゆっくりを主に虐待する。いいゆっくりはペットというよりも家畜として利用するようだ。無論、平等に虐待するお兄さんもいる。 虐殺お兄さんは説明するまでもないが、虐殺することにのみ喜びを感じる人である。いいゆっくりだろうと悪いゆっくりだろうと関係なく、平等に殺戮する。 3人の中では最も筋骨隆々。どうでもいいが、筋肉順位的には「愛で<虐待<<虐殺」である。ウホッ、いい筋肉。 主に農場を襲う野生ゆっくり虐殺のほかにも、山へ登った人達の用心棒や猟師として活躍したりするので、虐殺以外にも仕事をする。(無論ほかの二人も仕事はするが、二人は労力の半分以上をゆっくりに注いでいるのに対し、虐殺お兄さんは半分である) 3人の中では最も人口が少ない。 とある村では、その3人を混ぜたような存在がいる。 よく言えば「万能」、悪く言えば「中途半端で腹黒」。 これはそんな「万能お兄さん」とよばれる人のお話である…。 山で山菜を取っている青年がいる。彼の傍らにはゆっくりぱちゅりーときめぇ丸(胴付き)がいる。 「さすがに知らないところまで探検すると、世界が違って見えるなぁ。」 彼は万能お兄さん。冬を越すための食料を集めるため、山菜を取っている。いつもとは違う、まだ足を踏み入れていない場所へと今回は足を伸ばした。 ここいらには妖怪はでないが、まれに熊が出るため油断は禁物である。だが新たな発見があるかもしれないし、なにより村の人たちの知らない高級山菜(マイタケ、マツタケ)などが見つかるかもしれないので、胸を躍らせながら 探検している。 「むきゅ、ご主人様、あそこにワラビがあるよ」 見逃していた山菜をゆちゅりーが見つけてくれた。 「おお、ぱちゅりーありがとう」 「むきゅん!あと、あそこのきにあけびが、その下に薬草があるよ!」 「あ、本当だ。いつも助かるよ、ぱちゅりー。きめぇ丸、悪いがあけびをとってくれないか?」 「了解でーす」 きめぇ丸が空を飛べるのを利用して、お兄さんの手に届かない果物などを取ってくれる。 「この薬草は頭痛薬になるわ、本でみたもん」 「へぇ、そうなのか。そういや虐殺お兄さんの弟さんが、頭痛で寝込んでいたっけな。彼のところにもっていこう」 薬草を採取しながら話す。3分の1は後のことを考えて残しておくことは忘れない。ちなみに、このゆちゅりーは頭脳が普通のゆちゅりーより高いので漢字を使うことができる。 「ご主人様、取ってきました」 きめぇ丸が袋にあけびをたくさん入れて戻ってきた。 「たくさん取ってきたね、よしよし」 お兄さんに頭を撫でられ喜びの表現として頭をはげしくシェイクした。 「あとご主人様、さきほどゆっくりの群れをみつけました」 「本当か?規模はどれくらい?」 「少ししか見えませんでしたが、かなり大規模な模様です。ドス級の存在も確認しました」 「ドス級か、ううむそれはちょっと問題あるかもなぁ」 お兄さんが頭を抱えた。 野生のゆっくりのほとんどは群れを作る。だが中には群れが群れを吸収し、ひとつのコミュニティまで成長する群れもある。そういった大規模な群れには必ずといっていいほど、リーダー格の「ドス」や「クイーン」とよばれるものが存在した。 縄文時代や弥生時代のような村と村が合体して、王ができるのと同じ原理だ。 ドスはとにかくでかい。普通のゆっくりの大きさがサッカーかバスケットボールなみだとすると、ドスは5倍かそれ以上ある。 2,3mは優に超えているほか、ドスならではのドススパークや動きを封じ、相手を意のままにあやるつゆっくりオーラなどは脅威だ。どちらもドスの体内にあるドスキノコが源となっている。 その化け物じみた巨体と必殺技は人を殺せるほどの威力があるのはすでに確認済みだ。人間にとっては十分脅威であった。 ここでお兄さんはひとつの考えをだした。 「きめぇ丸、偵察してきてくれないか?ドスの今後の思惑とゆっくりの数、食料の備蓄などもできるかぎりの範囲で調べてきてくれ」 「了解しました、ご主人様。」 「あと、これ」 そういうと、きめぇ丸が先ほど取ってきたあけびと、お兄さんが取った山菜をいくらか渡した 「お前はほかのゆっくりから嫌われているからな、食べ物を渡して敵意がないことを示せば大丈夫だろう」 「さすが私のご主人様、では行ってきます」 そういうと、きめぇ丸は群れへと飛んでいった。 「さて、ぱちゅりー。僕らはおやつのあけびでも食べてのんびりしようか」 「むきゅきゅーん!!でもご主人様は頭が切れるのかのんびりなのかわからないわ」 「はっはっは、よく言われるよ」 お兄さんは朗らかに笑いながら石の上に座り、ゆちゅりーをひざの上に乗せてあけびを食べ始めた。 群れにたどり着いたきめぇ丸は挨拶をした。 「まいど、おなじみきめぇ丸です」 「ゆっ!きめぇ丸がきたんだぜ!!みんなドスのもとににげるんだぜ!!」 きめぇ丸をみたゆっくりたちは逃げるようにしてドスまりさの元に集まる。きめぇ丸自身もゆっくりが大嫌いなので助かる。 そして群れを束ねるドスまりさがでてきた。大きさは優に3m以上はある。 「ゆっ!!なにしにきたの!!まりさたちをいじめにきたのならどっかにいってね!!みんなをいじめるならただじゃおかないよ!!!」 「とんでもない、私に敵意はありませんよ。それよりあなたたちと仲良くなりたいのです、その証拠にこれを差し上げましょう」 といって、万能お兄さんからもらったあけびや山菜などを友好の印としてあげる。 「わーい!おいしそうなごはんだー!!!」 「くだものもあるよ!!」 「ゆっ!!どうもありがとう!!あなたはいっしょにゆっくりできるね!!ゆっくりしていってね!!」 「「「「「ゆっくりしていってね!!!」」」」」 ドスは山菜などをもらえたのもうれしかったが、木に登ることができないのであけびがたくさんもらえたのはもっとうれしかった。 「気に入っていただけたようで何よりです」 本来、きめぇ丸はうれしいと頭を高速で動かす。この動きはゆっくりたちにとってゆっくりできないので、きめぇ丸が嫌われる原因でもある。 しかし、このきめぇ丸はそう返事しただけで頭を動かさなかった。お兄さんから躾けられているおかげである。 ゆっくりたちはこのきめぇ丸が頭を高速シェイクしないのでさらに気に入った。 「ところでドス、これから冬篭りですか?」 「ゆっ!!そうだよ!わたしたちはかずがおおいからしょくりょうをあつめるのもたいへんだよ!!」 「数はどれくらいですか?」 「うまれたばかりのあかちゃんもかぞえると200はいるよ!!」 きめぇ丸はざっと見渡した。ここにいるのはせいぜい50くらいだ、後のほとんどは食料を取りに行っているか、巣の中にいるのだろう。 きめぇ丸は、お兄さんからもらったカメラを使い写真を撮った。 「ゆっ!!なにしゃしんをとっているの!!かってにとらないでね!!!」 「いやぁ、あなたほどの偉大な方がこの大勢のゆっくりたちを束ねていると知ると感動しちゃってつい記念に撮っているんですよ。いけませんでしたか?」 「ゆっ!!それほどでもないよ!!じゃあ、あなたはわたしたちのなかまだからとくべつにとっていいよ!!きれいにとってね!!!」 「ドスのよさをわかっているなんて、ほかのきめぇ丸とはちがうぜ!!」 「このおねーしゃんとはゆっくちできるね!!」 ドスは相当慕われているようだ、ドスをほめただけでまわりのゆっくりたちがきめぇ丸をさらに信頼し、ついには仲間と認めた。 ドスは新たに仲間に加わったきめぇ丸をゆっくりたちに紹介した。 「このきめぇ丸はほかのきめぇ丸とはちがういいゆっくりだよ!!みんないっしょにゆっくりしようね!!」 「どうもきめぇ丸です」 「「「「「ゆっくりしていってね!!!」」」」」 ドスはきめぇ丸に仲間を紹介した。 親子でなかよくすごしているれいむ、行動役のまりさ、知能の高いありすなど。このゆっくりたちの顔は皆笑顔にあふれている。よそのゆっくりの群れを強制的に襲ったり略奪などはしていないようだ。きわめて平和だ。 「ところでドス。巣を見てもよろしいですか?これほど大規模な群れを程となるととてもおおきい。あなたの偉大な巣が見てみたいのです」 「ゆっ!!いいよ、きめぇ丸はなかまだもん!!すのなかをみせるね!!」 巣の中は広かった。ドスが住むくらいだから当たり前といえば当たり前だが。主に親子グループが巣の中にいる 巣の中を見渡すと、れいむのこどもたちが毛玉であそんでいた。熊の毛だ。おそらく熊が冬眠していた穴を利用しているのだろう。 ドスが入れる理由も理解した。 巣の奥にはさらに穴があった、新しく掘られたようだ、奥には食料が詰まれて山のようになっている。 「ドス、あれは冬篭り用の食料ですか?」 「ゆっ!!そうだよ!まだかずがたりないからしんぱいなんだ!!」 「では、冬篭り前に食料がたまらなかったらどうするのですか?」 「だいじょうぶ!なんとかなるよ!!いつもまりさたちはそうやってのりこえてきたもん!!」 たいした自信だ、さすがはドスの貫禄、といったところだろうか。 「さすがはドス、とてもかっこいいです。あなたは偉大です」 「ゆっ!!てれるよ!!」 おだてながら、きめぇ丸はシャッターを切る。ついでに巣の中も撮らせてもらった。無論偉大なドス、さすがドス。さいこうのゆっくりぷれいすなどおだてることを忘れない。 「ではドス、わたしも冬篭りの準備を始めますので失礼します」 「ゆっ!!わたしたちといっしょにくらさない?あなたならかんげいするよ!!」 「しかし、ドスたちの食料は足りていません。私が加わればさらに圧迫してしまうので、遠慮しておきます。でも、あなたたちに出会えてよかった。ご好意に感謝します」 「ゆぅぅ、ならしかたないね!!またあそびにきてね!!かんげいするよ!!」 「わかりました、またくるときはおみやげをもってきますね」 「きっとだよー!!」 そういって、きめぇ丸とドスまりさ率いる群れは別れたのだった。 きめぇ丸がいなくなったのを確認したドスまりさは改めて食料を見た。まだ冬篭りするための必要な量の半分ほどしか達していない。このままでは半分ほどしか生き残れないだろう。 「ゆっ!ドス!!ふもとにむらをみつけたんだぜ!!」 どうやら食料調達にいってきたまりさたちが帰ってきたようだ。そして見つけたことを報告する。 群れを率いる者として、長年の経験からして人間達と争うことはなんとしてでも避けたい。もし争うことになったら全滅は免れないからだ、ドスまりさは村を襲ったゆっくりの群れが全滅にあうのを何回も見てきた。 だがこのペースではどうしても間に合わない。村を襲い、群れ全体がゆっくりできるようにするのと、群れに多大な犠牲を払い、わずかな数だけ生き残るのとどちらの道がいいか。 彼女はしばらく悩んだ挙句、群れ全体に命令を下した。 「やまのふもとにむらをみつけたからあそこをおそうよ!!」 この発言に全員が驚いた。が、ドスの命令なので皆は従った。それに人間のほうが食料はおいしいのでいいことづくめだ。 「でもドス、しょうさんはあるの?」 群れの副リーダーでもあるありすが尋ねてきた。ほかのありすよりも大きく、クイーンと呼ばれている。ドスとクイーンは二人で群れを作り上げたリーダーだ。先ほどの食料探索から帰ってきたばかりなので、ドスの発言に驚いている。 「まえもすごくちいさいいえをおそったらかてたもん!!だいじょうぶだよ!!」 「そうだね!!まえおそったいえのじじいはよわかったしね!あそこのむらもせいこうするよ!!」 なるほど、一回成功したから味をしめ、今度も成功すると踏んでいるのか。それにクイーンありすがいるのは気づかなかった。 と、覗いているのはきめぇ丸。飛んでいったと見せかけ近くの所に降り、気づかれないように様子を見ている。もしかして、と思い、食料についていろいろ尋ねてよかった。新たな情報が聞き出せた。 「おお、愚か愚か。よりによってご主人様にたてつくとは」 クイーンの写真を取り、彼女は万能お兄さんの元へ帰っていった。 「ただいまー」 きめぇ丸が帰ってきた。だがなんと、お兄さんとゆちゅりーはあろうことか昼寝をしている! 「ご主人様、起きてくださいな」 きめぇ丸が万能お兄さんを起こす。その姿は子供が親に「おーきーてー」とせがんでいるようだ。 「あぁ…、よく寝た。おはよう、きめぇ丸。あとこれはご褒美だよ」 ゆっくりの群れに偵察を命じておきながら自分は昼寝をする。図太い神経である。目をこすりながら、あけびを一つきめぇ丸に渡した。 「枯葉を敷き詰めて寝てみたら、すごく暖かいね。サバイバルの本をぱちゅりーがよんでくれたおかげだよ」 「むきゅん!!」 主人にほめられ喜ぶゆちゅりー。 「で、首尾はどうだった?」 と、きめぇ丸はあけびを食べ終え、は先ほどのことをすべて話した。 「これが写真です」 「前山小屋に住んでいるきこりのおじさんが村に「数え切れないゆっくりに襲われた!」って言って泣きながら帰ってきたけど、そのゆっくり達はこいつらだったのか。」 撮った写真もすべて見せた。お兄さんはまじめな顔をして考えている。しばらくすると立ち上がり。 「とりあえず帰ろうか、もう夕方だし」 「対策はしないのですか?村を襲うとまで言っているんですよ」 「むきゅん!いつものご主人様らしくないわ!いつもならすぐに対策をねるのに!」 きめぇ丸もゆちゅりーも意外と思い質問する。 「もちろん、対策はするよ。この写真どおりの備蓄量ならあと2週間後には襲ってくるよ、村を目指してね。」 お兄さんが放った言葉に二人は固まる。あと2週間?どういうことだ? 「対策はそこそこでいいよ、このグループは見たところ、ドスとクイーンによって物凄く統率が取れている。ドスも人間に刃向かおうとしているけど、彼女はあくまで非常手段として使うはずさ。伊達にドスはしていないだろうしね。 だからできる範囲で餌を集め、それでもたまらなかったら襲うだろう。」 「「なるほど」」 二匹は納得した。 「じゃあ帰ろうか、あときめぇ丸。群れに行った時頭を振れなくてきつかったでしょ、思う存分振っていいよ」 とお兄さんはきめぇ丸とゆちゅりーを抱きかかえるようにした。二匹はうれしそうに顔を摺り寄せている。きめぇ丸は頭をシェイクしながらほお擦りしている。 万能お兄さんと2匹のゆっくりは山を降りた、ちょうどその頃。 「ドス!むらはいつおそうんだぜ!!はやくにんげんどもをいじめたいんだぜ」 まりさたちが聞いてきた、ゲス根性むき出しである 「みんな!むらはおそうけど、それは2しゅうかんたってもしょくりょうがあつまらなかったらだよ!!それまでにむやみにてをだしたらいけないからね!!」 ドスの宣言により群れ全体が沸き立つ。不満を言うものもいるがドスは気にしない。 これでいい、村を襲うのは非常手段だ。もっとも襲うというよりも食料を分けてもらうように「お願い」をするのだが。 村に帰ってきた万能お兄さんは行きかう人々と挨拶を交わした。彼はこの村では知らない人はいないほどの実力者である。 「おっ!お兄さん、いい野菜ができたよ。いつも世話になっているからあとで持っていくよ!」 「ありがとうございます。でももらってばかりでは悪いので、先ほど取ってきた山菜と交換しましょう」 「あっ、あんちゃんおかえりー!あとでゆっくりたちと遊んでいい?」 「ああ、いいよ!怪我には気をつけてね」 「おっ、お兄さん、後でちょっと手伝ってほしいことがあるんだが頼めるかい?」 「わかりました、でも僕も用事があるので後でそちらに伺いますね。」 村は活気があり、ところどころに飼われているゆっくりも見かける。とてもとても平和な村だ。 お兄さんはある家にたどり着いた。 「おばさん、ごめんくださーい!」 しばらくするとおばさんがやってきた 「あら!万能お兄さん、いらっしゃい!!」 「お宅の次男君が頭痛で寝込んでいるので、薬草を持ってきました」 「あらやだ、助かるわぁ~。さぁさぁ、家にあがってくださいな、お茶も持ってきますからね」 お兄さんは上がらせてもらい、寝込んでいる次男のもとへやってきた 「やぁ、次男君。大丈夫かい?」 「あ、万能のあんちゃん。まだ頭が痛いけど大丈夫だよ」 「君が苦しんでいるから、頭痛薬を取ってきたよ」 「ほんと?ありがとう、あんちゃん!」 「いつもいつも助かるわね~」 おばさんがお茶菓子を持ってきた。お兄さんのだけでなく、きめぇ丸とゆちゅりーの分もある。 「礼を言うのはこいつに言ってください。こいつが頭痛薬となる薬草を見つけてくれたんですよ」 と、ゆちゅりーの頭を撫でながら言う 「本当、ぱちゅりーちゃんありがとね~」 「ぱちゅりー、ありがとう」 二人に頭を撫でられ、ぱちゅりーはとてもよろこんでいた。 「あとおばさん、虐殺お兄さんはいますか?用があるんですけども。あとこれ、山で取ってきたあけびです。食べてください。」 「あらあらいいあけび!本当にありがとうね。あと長男ね、もうすぐ帰ってくると思うわ」 「もう帰ってきたぞ」 と後ろで野太い声がしたので、振り向くと筋骨隆々な青年が立っていた。 「あ、あんちゃんお帰り」 「おう、ただいま。ところで弟よ、頭痛は大丈夫か?」 「さっき万能のあんちゃんが薬草持ってきたんだ、これで治るよ」 「そうか、万能お兄さん。いつもすまないな。」 「気にしないでくれ、心友の弟が困っているんだ。助けないわけには行かないさ、あと薬草はこいつが見つけてくれたから、礼はこいつに言ってくれよ」 とゆちゅりーを指差す。虐殺お兄さんは、ゆちゅりーにむかって大きな手を伸ばし 「すまんな」 といって軽く撫でる。ゆっくりを虐殺する虐殺お兄さんとはいえ、他人のペットを殺したりいじめたりするようなことはしない。心友のであるなら尚更だ。 「ところで用とはなんだ?」 「あとで村の者を集めてくれないか?皆に話があるんだ。虐待お兄さんと、愛でお兄さんには僕が言っておくから。」 「ああ、わかった。ところでどんな話なんだ」 「君の好きなゆっくりについてだよ、久しぶりに虐殺ができるよ」 ニヤリと笑いながら万能お兄さんは話した、虐殺お兄さんはそれを聞いて非常に喜んでいる。 「それは楽しみだな、最近やってないから腕がなまっていたところだ。後で村長も呼んでおくから、村長宅に集合だ」 「ああ、頼んだよ」 そういうと、万能お兄さんは家を離れ、虐待お兄さんの家についた 「おおーい、虐待お兄さん!」 大声で呼ぶと、虐待お兄さんが体を餡子まみれにしながらやってきた 「ごめん、「お楽しみ」の最中だったかい?」 「なんだ万能お兄さんか、せっかく楽しんでいたところだけど、心友をほっとくわけにはいかねぇしな。後でさらに楽しませてもらうぜ」 「ははっ、気の毒なことをしたね」 「後で虐待するゆっくりにな」 そういうと二人はひとしきり笑った。 「ところで何のようだ?」 「後で村長宅に集まってくれ、僕からみんなに話があるんだ。君にとっても悪くない話だよ?」 「へぇ、どんな話だよ。つまんなかったら帰らせてもらうぜ。もっとも、あんたがつまらない話をしたことなんてないがな」 「ゆっくりについてだよ、最近君もゆっくりを虐待したのはいいけど死んで数が減っているから困っているんじゃないか?」 「渡りに船ってやつはこのことだな。わかった、後でいくぜ。あときめぇ丸とぱちゅりー、虐待されたかったらいつでもこいよ」 「「おことわりします」」 「おいおい、僕の大切なパートナーを誘わないでくれよ」 「へっへっへ、冗談だよ、冗談」 次は愛でお兄さんの家にやってきた 「愛でお兄さんやっほー!」 「「やっほー!」」 元気よくお兄さんと2匹が声を掛ける。虐待と虐殺おにいさんは怖いので声を掛けないが、愛でお兄さんはいじめたりしないので、ゆっくりは安心できる。 「やぁ、いらっしゃい、よく来たね。」 村では洋風な家にすんでいる、紅茶の似合う青年が来た。足元にはゆっくりれいむとまりさがいる。 「「万能お兄さん、ぱちゅりー、きめぇ丸、こんにちは!!ゆっくりしていってね!!」」 「「「ゆっくりしていってね!!」」」 お互い挨拶を交わす。きめぇ丸は頭をシェイクしながられいむたちと遊んでいる。普通のゆっくりならきめぇ丸の高速シェイクに気絶するが、そこは愛でお兄さんの教育がしっかりしているのと長年付き合っているせいか、大丈夫なようだ。 4匹が仲良く遊んでいるのを二人は温かく見守りながら会話をする 「万能お兄さん、今日はどんなようだい?」 「じつはゆっくりについてみんなに話があるんだ、あとで村長宅に集合だよ」 「野生のゆっくりかい?困ったものだね…」 愛でお兄さんはゆっくりんピースというゆっくりを愛でる同志を募った協会に所属している。だが悪いゆっくりがいるのは許せないし、人に迷惑をかけるから殺されても文句は言わないが ゆっくりを愛するものとして、死んでいくのを見るのは流石に辛い。それに悪いゆっくりを放置すれば、いいゆっくりにも影響が出るので、複雑な気持ちで渋い顔をして彼は答えた。 「あぁ、野生のゆっくりが村を襲うかもしれないから、皆に話して対策をたてようと思うんだ」 「よくそんなのをつかんだね。さすがは万能お兄さんだ、この村の一番の実力者なのは伊達じゃないな」 「よしてくれ、僕は単に腹黒いだけさ」 「だが、そのおかげで村が発展したんだからさ、おまけにゆっくりを飼っているから私はみんなに変な目で見られないですむよ。前住んでいた村ではゆっくりは敵だといわれてたからね。感謝しているよ」 「ははっ、ありがとう。じゃあ夕方村長宅に来てくれ。」 「ああ、わかったよ。」 「「またあそびにきてね!!」」 愛でお兄さんとゆっくりたちに別れの挨拶を告げ、万能お兄さんは我が家に着いた。 (続き) 選択肢 投票 しあわせー! 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緑に彩られた日光が木々の隙間に差し込み、人の足に汚されていない苔むした地面に恵みを与える。 鬱蒼とした森に風が吹き、隣り合う葉が擦れ合い、ざわざわと喧騒の音を立てる 暗い大気に柱の如く天上から貫く光が間隙を縫う。森が立てる声に釣られるように、 地から無数の影が姿を見せ、日光を浴びて木々と共に騒ぎ出した。 「「「「「ゆっくりしていってね!」」」」 ゆっくり姫 ここはもはや忘れ去られた地。幻想の彼方の、そのさらに奥に、余人を立ち入れずひっそりと暮らす小さな集落があった。 かつて人の世に起きた争いに敗れ、安寧を求めて旅立った人間の子孫が暮らしている。 村の男たちは狩猟により糧を得、女たちは男たちの居らぬ間に家と村を守る。 村を囲む森に住み着いたゆっくりと呼ばれる饅頭 -貿易のために諸国を旅する商人が立ち寄った際にその正体を聞かされた謎の生き物- は、町の近傍に棲むものと違い、無闇と村に近づかず、森で狩人に出会っても声一つ立てずに姿を藪の中に消す。 人とゆっくりの違いを知り、また人の力を知るがゆえに、森のゆっくりは野生に生きることを選んだのだ。 当然それまでに数年の月日と幾万の殺戮があったわけだが。 ゆっくりが現れてから村は少しだけ活気を増した。 獣を狩る術に長けた男達は容易くゆっくりを捕らえ,行商人に売りつけたり 乾燥させたゆっくりを得がたい甘味の補充に充て,または樹液に浸して固め女達の 身を飾る装飾品とするのだ(ゆっくりイヤリング・ゆっくり数珠etc)。 そんな村に起こる難事など、年に片手で数えうる小さな問題でしかなかった。 まして、ゆっくりが人に被害を成す話など、赤子の寝物語に等しいものだった。 そんな村に、この日、考えもしない大事件が起こった。 ゆっくり達の声が異常に騒いでいる。捕食種とされるれみりゃやふらんに襲われたときよりもずっと。それは群れへの警告ではなく,純然とした恐怖による叫びだ。餡子の詰まった中身でも本能は雄弁に,それがどれだけ恐ろしいものかを告げるのだろうか。 森の奥深くから,白靄を払い,押しのけ,それは強引に進んできた。 黒い何かうじゅるうじゅると身を這っている。地に落ち,草花を腐らせ黒い沁みを残してそれはゆっくりと村に近づいていた。 森に棲むゆっくりの殆どはそれに踏み潰されていた。それの速度はゆっくりのその名に等しい歩みなど比にもならず,逃げ惑い絶叫するゆっくりどもをぶちゅり,ぶちゅりと物言わぬ黒ずんだ餡子の屑へと変えた。 しかし,それだけでは済まなかった。潰され,黒い触手のようなものに触れたゆっくりは融けるように短い声を発し,『それ』の身体を覆う得体の知れぬ何かに混じっていく。 『それ』はゆっくりの餡子を身に纏っているのだ。 いつの間にか,絶叫は消えた。ただ這いずる『それ』だけが木々をなぎ倒し村へと走り去っていった。 その村の中を,トナカイのような獣に跨り森の方へと駆けゆく男の姿。 目鼻立ち良く、背もすらりと伸びた姿はなかなかの美丈夫であるが、 長老たち老人一同からは好ましくは思われていなかった。 彼こそは、都に生まれたならば必ずや後世に名を遺しただろう、 いわゆる虐待お兄さん,である。 都ならば珍しくもないが,自然に隔離された集落ではその存在は稀有である。 生まれながらにしてゆっくりの死骸を両手に握りつぶしたまま産声を上げたと云われる 虐待の権化とさえ呼ばれることもあった。 ゆっくりを獣とみなし、森と自然の一部として畏敬する村の習慣を破り、森に出ては人知れずゆっくり知れず、 ゆっくりを狩り殺している。大人たちは所詮ゆっくりのこと故,声を荒げるようなこともない。また,青年の弓の腕前は村随一であった。およそ三町(300m)の距離にあるゆっくりを一打ちで7匹,すべて眼球を撃ち抜いたほどのものである。 青年の名はアシタカ。いづれは村長(むらおさ)の嫡子として長の座に着かねばならぬ身だが、そんな自覚などどこ吹く風で 今日も物置のゆっくりを補充すべく、厩舎に繋ぐヤックルと呼ぶ赤獅子にまたがって森へと駆けていった。 その姿を乙女たちがやや頬を赤らめて見送る。 いつの世もどこにいっても,イケメンは得をする。 垣根を伝い,ヤックルを駆る内にアシタカの前方から籠を背負う乙女の一団に向き合った。 「あにさま!」 一人の乙女が声をかけた。アシタカの妹である。 「ちょうどよかった。ひぃ様が皆村にもどれと。」 アシタカは村を出る前に司祭を務める老婆からの伝言を伝えた。 「じぃじもそう言うの。」 「じぃじが?」 村の重鎮である老人がそういうのならば,何かしら異変が起きようとしているのではないか? ゆっくり狩りに懸想していたアシタカの楽しみは打ち切られたが,異変ならば仕方もあるまい。 「山がおかしいって。」 「鳥達が居ないの」 「獣達も」 「ゆっくりも!」 ゆっくりが居ない?例え姿を隠したとしてもあの騒々しい声が消えるとは…? 「そうか…じぃじの元へ行ってみよう。みなは村に帰りなさい。」 アシタカは乙女達を村に急がせ,自分はヤックルを森の方角へと急がせた。 村より離れ,森の入り口に立つ見張り台。その上にいるじぃじの元へアシタカは向かった。 じぃじは異様な気配を森から感じ,近づいている悪寒に注目していた。 アシタカが見張り台を駆け上がるとき,既に『それ』の気配は入り口にまで達していた。「じぃじ,あれはなんだろう?」 「わからん。人ではない。」 「村ではひぃ様が皆を呼び戻している…」 「きおった!!」 じぃじが鋭く叫んだ。同時にアシタカは背の弓を構え弓をつがえる。 森の入り口が暗く曇った。その光景はなんともおぞましいものであった。 樹が瞬く間に枯れ落ち,黒い触手がうねうねと這い回りながら飛び出てきた。 巨大な,まん丸なものが光る一対の瞳を村へと向け,森から這い出てきた。 それが通り過ぎた後は抉る様に草が枯れ果ててていた。 「タタリガミだ!!!!」 じぃじが絶叫した。 タタリガミと呼ばれたそれが森の影から這い出んとしたとき,黒い触手が日の光を嫌うようにそれの身体から剥がれた。 その姿にアシタカは息を呑む。 見たことのある.いや彼には日常に馴染みあるその形。帽子を無くしているも,泥と餡子に塗れようと,金色の髪を逆立て,憤怒の相で突き進む姿は,ゆっくりのものであった。都の辺りに住まうという,ゆっくりまりさの巨大種,ドスまりさの姿である。 一度は剥がれた黒い触手は,再びドスまりさの身体を包み込み,黒い塊となって村への直進を止めようとはしない。その方向には見張り台があり,下にはヤックルがいた。 ヤックルはあまりの恐怖に身が竦んでしまい,アシタカの声も聞こえない。 アシタカはつがえた矢をドスまりさではなくヤックルの足元へ放った。 風を切る感触に正気を取り戻したヤックルがすんでのところで触手から逃れた。 ドスまりさは全力で見張り台に体当たりし,崩れ落ちる台の上であやうくアシタカはじぃじを抱きかかえて飛び移った。 怯むことなくさらなる直進を続けるドスまりさは真紅に鈍く光る眼をただ村にのみ向けている。 このままでは村が危ない。アシタカはじぃじを置いて自分も駆け出した。 「アシタカー!タタリガミには手を出すな!呪いをもらうぞ!」 じぃじの呼びかけを無視し,ヤックルに飛び乗ってドスまりさを追う。 ドスまりさの進行を遮るように前に出たアシタカはドスまりさを鎮めようとした。 「鎮まりたまえ!鎮まりたまえ!名のあるゆっくりの主と見受けたが,何故そのように荒ぶるのか!」 まさか自分が虐待したゆっくりの仇討ちにでも来たのか?とアシタカは邪推したが,ドスはお構いなしに走り続ける。鬼気迫る,を通り越して凄まじい悪意を込めてドスは村を目指している。 そこに,先程アシタカが出会った乙女達が居た。ドスまりさは乙女達に気づき,進行を変えた。 これはいけない,と乙女達は逃げ出し,アシタカはさらに呼びかけを続けるもまったく通用しない。そのうち,乙女の一人が足がもつれて転んでしまった。覚悟を決め,短刀を抜き払うが,そこに,併走してヤックルの上から,アシタカは弓を引き絞った。 瞬間。放たれた矢は正確に眼と思しき部位に命中した。 跳ね回る触手。暫しドスまりさの動きが止まった。その隙に乙女達は体制を整えた。 触手は天を仰ぐように暴れ回り,いくつかの奔流と化してアシタカの方に伸びてきた。 一部が,アシタカの右腕に絡みつき,力いっぱいアシタカはそれをちぎり取った。 第二の弓をつがえ,触手が剥がれて剥き出したドスまりさの脳天に,矢が突き立たる。 もはやドスまりさに力は潰えた。奔流はべたりと落ち,大地に穢れた澱みを残した。 ドスまりさの身体がぐらりと傾ぎ,横転する。 アシタカは,掴まれた右腕に燃やされるような激痛を覚えていた。濃硫酸を浴びせられたように煙を立てて蒸発する触手の一部に腕をどうにかされたのあろうか。 と,そこに村の一団が迫ってきた。火を焚き襲撃に備えていた彼らはドスまりさが倒れたことを確認するとアシタカに元に駆け寄った。 ヤックルから降りたアシタカは激痛にうめきながら,皆が近づくのを拒んだ。 「触れるな…!これはただの傷ではない!」 一人の村人におぶさり,祭司たるひぃ様がやってきた。 「みんな,それ以上近づくでないよ!」 ひぃ様は瓢箪から水を注ぎ,アシタカに腕にかけた。さらに激痛が走り,必死に耐えるアシタカ。 ひぃ様は倒れたままぴくりともしないドスまりさに近づいた。深く一礼し,語りかける。「いづこよりいまし荒ぶるゆっくりとは存ぜぬも,かしこみかしこみ申す…。 この地に塚を築き,貴方の御霊を御祭りします。恨みを忘れ,鎮まり給え…。」 しかし,ドスまりさは光を無くした虚ろな瞳を向けて呪詛を吐いた。 「うぎぎぎぎぎぃぃ…ぎぎ…汚らわしい人間どもめ…!!我が苦しみと憎しみを知るがいい…!」 ドスまりさの身体は,途端に腐敗を始め,皮だけになり餡子をぶちまけて死んだ。 餡子の臭気が辺りに拡がる。凄まじい悪臭である。 その晩のこと。 貴重な灯油に明かりを燈し,村の重鎮たる者が合議の間に残らず集結した。 居並ぶ姿には沈黙のみ。老人達の視線は,中央に座すアシタカとひぃ様に向けられている。 ひぃ様は,占いを執り行っている。余人には知れぬ不思議な文様の布に,幾つかの石と,木切れ,獣の骨,凄まじい形相で凝り固まった琥珀ゆっくりの欠片を無造作に投げ, その吉兆を何やら伺っていた。 ぱちぱちと空気に弾ける火の粉の音に,やがてひぃ様の口が重く開いた。 「さて,困ったことになった。これは厄介なことだよ。かのゆっくりは,遥か西の国からやってきた。村より遠く,西の都からだよ。 深手の毒に気が触れ,身体は腐り,ゆっくりにあるまじき走りに走り,呪いを集め, タタリガミになってしまったんだ。 それほどの強い憎悪に支えられ,1頭のドスまりさが棲んでいた森を離れてここまでやってきたんだ。」 「アシタカヒコや。皆に,右腕を見せてやりなさい。」 頷いて,沈黙を保ったままアシタカは包帯を巻いた右腕を,ゆっくりと布を解き,居並ぶ老人の視線に差し出した。老人達はわずかに身を乗り出し,くぐもった苦鳴をもらした。 握りしめられた拳からやや上,黒ずんだドスまりさに咬まれた付近から,赤茶色の痣が 拡がっていた。 ゆっくりと吐き出された餡子がこびり付き,拭こうとも洗おうとも取れないのだ。 「ひい様…!これは…!」 「アシタカヒコや。お前には自分の運命を見定める覚悟があるかい。」 「はい。あのゆっくりに矢を射るとき,覚悟を決めました。」 「その餡子はそなたの肉に食い込み,骨まで腐らせる。やがてそなたを殺すだろう。」 ひぃ様のすべてをぶち壊すような宣言に,たまらず一人が叫んだ。 「どうにかならぬのですか!?このような,村をまとめる若者が」 「アシタカは村を守り,乙女達を守ったのですぞ!」 「ただ死を待つしかないのは…」 老人達の嘆きは次々と叫びとなった。かつて村にゆっくりが現れた当初,畑や森を荒らされ苦しめられた記憶を思い出していた。やがて静まるまでにどれだけ被害が出たか。 今,村長を継ぐべき青年がゆっくりの呪いに取り殺されようとは。 悔しさが怒涛のように渦巻いてゆく。 「誰にも定めを変えることはできない。 ただ,待つか自ら赴くかは決められる。見なさい。」 ひぃ様が何かを取り出し,ごろりと転がした。 鉄のようなそれは,丸い塊で,占いに用いる琥珀のゆっくりに劣らぬ苦痛の表情を浮かべていた。確かにそれはゆっくりである。しかし,その表皮のみならず中身までもが異常な硬度と重量を備えている。 「あのゆっくりの身体に食い込んでいたものだよ。骨を砕き,はらわた(餡子)を引き裂き,むごい苦しみを与えたのだ。」 アシタカの顔面に少しだけ興味の色が浮かんだ。虐待お兄さんとしては当然の反応かも知れぬが,明らかに場にそぐわなかった。誰も突っ込まないが。 「さもなくばゆっくりがタタリガミなぞになろうか。 西の国で何か不吉なことが起こっているんだよ。その地に赴き,曇りのない眼で物事を見定めるなら,あるいはその呪いを絶つ道が見つかるかもしれん。」 老人の一人が口を開いた。 「ゆっくりの戦に破れ,この地に潜んでから500猶予年。今やゆっくりにかつての勢いはない。(虐待の)将軍どものやる気も折れたと聞く…。だが我が一族の血も衰えた。 このようなときに,虐待の長となるべき若者が西へ旅立つのは定めかもしれん。」 アシタカは,短刀を取り出すと己の髪に当て,すぱりと髷を落とした。 老人が瞼を押さえる。色々と情けなくて泣き出したのだ。 「掟に従い見送らん。健やかにあれ。」 アシタカは一礼し,旅の準備を整えるべく祭殿を離れた。 ヤックルと共に,静まり返った村を横ぎるアシタカの元に,一人の少女が駆け寄った. 「あにさま!」 「カヤ!見送りは禁じられている!」 「お仕置きは受けます!どうか,これを私の代わりにお供させてください!」 少女が差し出したのは,光る石より作られた小さな小さな小刀であった。ゆっくりの形相が描かれている。否,ゆっくりが埋め込まれているのだ。 「大切な玉の小刀じゃないか!」 「お守りするようゆっくりを埋め込みました!いつもいつも,カヤはあにさまを想っています!きっと…!きっと!」 「私もだ。いつもカヤを想おう。」 アシタカはヤックルを駆り,真っ直ぐ村を離れた。 壮大な森の景色に,やがて朝日が光を撒く。 道なき道を駆け,餌を取りに降りてきたゆっくりを叫ぶ間もなく踏み潰し,餡子溜まりの中を西へと急ぐ。 ゆっくり姫 第一 続く こんにちは あるいはこんばんは もしくはおはようございます ごめんなさい。 VXの人です。 もののけ姫のパロともなんともいえないものを書いてみました。 虐待?でしょうか?なんでしょうか。 僕は疲れています。 このSSに感想を付ける
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前 「ゆ~♪ ゆ~♪ かわいい~あかちゃん~♪」 「おかぁしゃんのおうちゃ、しゅごくゆっくちできりゅよ!」 「もっちょ! もっちょうちゃって!」 「今日はこれでおしまいだよ。ゆっくり寝てね!」 「わかっちゃよ!」 「おやちゅみなちゃい!」 産まれて来た赤ちゃん達。 れいむに似たおちびちゃん。 まりさに似たおちびちゃん。 思ってたとおり、すごくゆっくりした良い子達ばかりだよ。 眠ってしまった赤ちゃん達の顔を眺めながら、れいむは幸せに満ちていた。 まりさに捨てられた時は死ぬ事も考えたが、そのたびにお腹の中の赤ちゃんが動いた。 まだ生きたい。 外に出てゆっくりしたい。 お母さんとゆっくりしたい。 まるでそう訴えるように、何度も激しく胎動した。 れいむは結局死ぬことを諦め、赤ちゃんを産む決意を固めた。 この子達を産んで良かった。 死ななくて本当に良かった。 今なら心から、そう思う事が出来る。 赤ちゃんが産まれて、必要な餌の量は格段に増えた。 いつも朝早くに起きて、餌を取りに行かなければならない。 れいむは今、三箇所のゴミ集積所を回っていた。 日の空く事を考えると、一箇所で集まる量だけでは、とても家族全員の食料を賄いきれないのだ。 だが当然、後の方になるほど、他の生物とかち合う危険性が増える。 それでもれいむは、赤ちゃん達の存在を心の支えにして、危険の中を掻い潜っていた。 れいむは生ゴミの無い日に狩りもしていた。 土手を走り回って昆虫を捕まえ、川辺の小石の下からは川虫を捕まえる。 川岸に大きな魚が打ち上げられていた事もあった。 二日分に値する食料。 あれから毎日のように川岸をチェックしている。 だが残念な事に、今のところその姿はない。 れいむは公園にも通っていた。 最初は、まりさがいるかもと思い避けていたのだが、ご飯の事を考えると背に腹は変えられない。 公園の大きな木の下には、食べられる木の実が落ちているのだ。 いつも入り口から覗き込み、まりさがいない事を確認して中に入った。 ハトのおじさんには、よくお世話になった。 その場で食べずに持ち帰っているのだが、おじさんは気にしてはいないようだった。 ただ、最近もう一人の子が一緒じゃないねと言われた時、れいむは何故だかすごく悲しくなった。 今日は赤ちゃん達と、お家の前でゆっくりしよう。 そう考えたれいむは、一回り大きくなった赤ちゃん達を、巣の外へと連れ出した。 初めて見る外の風景に、赤ちゃん達は大はしゃぎ。 目の前に広がる世界を、思う存分跳ね回り堪能する。 ここなら、どれだけ跳ねても頭をぶつける心配はない。 ここなら、狭く低い天井等ありはしないのだから。 「おかぁしゃん! おかぁしゃん! ばったしゃん、ちゅかまえちゃよ!」 「おねぇしゃん、しゅご~い! しゅご~い!」 「まりさは狩りが上手だね。お母さんにも教えてね」 「ばったしゃんは、はにぇるから、とまっちぇるとき、はにぇればいいんりゃよ!」 「れいみゅもやりゅ! れいみゅもやりゅ!」 姉まりさを追いかけて、妹れいむも一緒にバッタを探し始める。 しばらくすると、ちゅかまえちゃたという元気な声が聞こえてきた。 今度は妹れいむが捕まえたようだ。 すぐ後から聞こえてくる、む~ちゃむ~ちゃちあわちぇ~という幸せの声。 そんな妹れいむの様子を見て、姉まりさは負けじとバッタを追い回す。 二人はまるで競うように、バッタを捕まえては口に運んでいった。 もうご飯が取れるなんて、ほかの赤ちゃんにはマネできないね。 きっとれいむの赤ちゃんが、ゆっくり一ゆっくりな赤ちゃんに違いないよ。 せいかくには、ほかの赤ちゃんの三倍はすごいよ。 れいむの餡子の中に広がる親馬鹿全開思考。 そんな幸せなゆっくり的物思いは、突然現れた人間の声によって破られた。 「見て見て! ゆっくりの赤ちゃんだ!」 「なにこれ、マジかわいいんですけど!」 そう口にした人間の行動は素早かった。三倍どころの話じゃなかった。 瞬きする間に、赤ちゃん達は人間の手の上に乗っかっている。 ああ、れいむは何て餡子脳なんだろう。 人間さんがこんなに近くまで来ているのに気づかなかった。 ゆっくりのゆっくりした性格を、今ほど恨んだ事はない。 ゆっくりした結果がこれだよ! 人間さんはやっぱり油断ならないよ! ちがうちがう、そうじゃないよ。今はそんな事考えてる場合じゃないよ。 赤ちゃん達を取り戻さないとね。今すぐにね。 れいむは人間から赤ちゃんを取り戻す決意を固めた。 「お、おお、おねーさん達! ゆっくり赤ちゃんをはなしてね! ゆっくりいそいではなしてね!」 「これって、どうすればいいの? ゆっくりすればいいの?」 「わかんないよね。不思議だよね」 「い、いいい、いいから、れいむに赤ちゃんかえしてね! 赤ちゃんいやがってるよ!」 「えっ? そうでもないよ?」 「むしろ、よろこんでるよ?」 「わぁ~い、おちょらをちょんでりゅみちゃ~い♪」 「ゆ~ん、しゅごきゅちゃかいよ~♪」 「どぼぢでよろごんでるのおおぉおおおお!?」 白目を剥き叫びながらも、れいむはゆっくりと理解していた。 ああ、赤ちゃん達は嬉しいのだ。 自分達の届かない視点から見える世界を、ただ純粋に喜んでるだけなのだ。 きっと自分だって、大はしゃぎしてしまうに違いない。 だってあんなに高い場所にいるのだから。 それがゆっくりの生き様だよね。 そう考えると、何だか赤ちゃん達が羨ましくもある。 思っていたほど悪い人間ではないのかも知れない。 「ゆぅ……おねーさん達は、ゆっくりできる人なの?」 「よくわからないけど、ゆっくりできるよ」 「うん、ゆっくりできるよね。よくわからないけど」 よくわからないのはこっちだよとも思ったが、うかつに喋って人間を怒らせるわけにはいかない。 今のところ、赤ちゃんに害を与える様子はない。 ひょっとすると、本当にゆっくりできる人間なのかも知れない。 せっかくだから、少し赤ちゃんと遊んでもらおうか? 気がすめば帰るだろう。れいむはそう考えた。 「ゆっ! れいむ、ゆっくり理解したよ。いじめないなら、赤ちゃんとゆっくりしてもいいよ!」 「やった~! 私、この赤いリボンの子もらうね」 「じゃあ黒い帽子のまりさは、私が持って帰るね」 「どぼぢでもっでがえるのおおおぉおおおおおおおお!?」 本日二度目の白目を剥き、れいむはただただ絶叫した。 何を言ってるの? 馬鹿なの? この人間達は馬鹿なの? 会話になってないよ。ぜんぜん会話になってないよ。 もうお家に帰って寝ちゃいたいよ。 でも、赤ちゃんは置いてはいけないよ。 れいむ頑張るよ。お母さんだから頑張るよ。 れいむは最後の気力を振り絞り、人間達に訴えかける。 「お、おおお、おねーさん達! 赤ちゃんはれいむの赤ちゃんなんだよ? ゆっくりするなら、れいむの前でゆっくりしてね!」 「えー、でもうちって大きいゆっくりは飼えないし」 「うちはお父さんがれいむアレルギーでちょっと……」 「どぼぢでれ゛いぶまでいぐごどにな゛っでるのおおおおぉおおお!?」 三度目の絶叫で、れいむは自分の中にある餡子を見た気がした。 もうこの人間達と話すのは嫌だよ。 ハトのおじさんはこんなじゃなかったよ。 まりさのとこのお兄さんはこんなじゃなかったよ。 だいたい人間と一緒じゃゆっくり出来ないよ。 しかし、れいむは知っていた。 この世界で本当にゆっくり出来るゆっくり。 それは人間に飼われているゆっくりなのだ。 人間に満ちたこの世界で、他にゆっくりがゆっくり出来る場所などない。 自由はゆっくりをゆっくりさせない。 れいむは赤ちゃん達にゆっくりして欲しかった。 れいむも本当はわかってるんだよ。 人間に可愛がられてるゆっくりは、すごくゆっくり出来るよ。 あんなだったけど、まりさはすごくゆっくり出来てたよ。 公園で見たゆっくりも、みんなすごくゆっくり出来てたよ。 おねーさん達と一緒に行けば、赤ちゃん達もすごくゆっくり出来るのかな? 「あ、あのね? おねーさん達……本当に赤ちゃんを可愛がってくれるの……?」 「うん! ちょうど、ゆっくり飼いたいって話してたから!」 「うちも、まりさなら大丈夫。れいむは無理だけどね」 れいむはこっそりと赤ちゃん達の様子を窺い見る。 はしゃぎ疲れてしまったのだろう。 白目を剥き続けた親の気苦労も知らず、赤ちゃん達は手の平の上でぐっすりと眠っている。 ゆ~ん、赤ちゃん達、すごくゆっくりしてるよ。 まるで、れいむの側でゆっくりしてる時みたいだね。 赤ちゃん達、そこですごくゆっくり出来るんだよね? おねーさん達と一緒なら、すごくゆっくり出来るんだよね? これまでみた人間と飼いゆっくりの姿を、れいむはもう一度強く思い返した。 人間は飼いゆっくりに優しかった。 人間はすごく美味しいご飯を作る事が出来た。 人間は暖かい家に住み、そこはまさにゆっくりプレイスだった。 飼いゆっくりはどれも美しかった。 飼いゆっくりはだれもが健康そのものだった。 飼いゆっくりはどんな時も、幸せに包まれた顔をしていた。 飼いゆっくりじゃない自分の子達が、飼いゆっくりになれるかも知れない。 母親として、これ以上してやれる事はないはずだ。 れいむは餡子を吐く思いで、その言葉を唇で紡いだ。 「おねーさん達……赤ちゃんね……連れてってもいいよ……」 「本当にいいの?」 「お母さんはダメだよ?」 「れいむは一人でもゆっくり出来るよ! だから気にしないでいいよ!」 一緒に行けるものなら、れいむも赤ちゃん達と一緒に行きたかった。 だがれいむは理解している。この女の子達が必要としているのは、れいむの赤ちゃんだけなのだ。 れいむは赤ちゃん達の幸せを、自分の我侭で壊したくなかった。 れいむに似た赤ちゃん、れいむよりずっと可愛くなれるよ。良かったね。 まりさに似た赤ちゃん、まりさみたいに綺麗になってね。でも性格は似ないでね。 れいむは心の中で、赤ちゃん達とのお別れを済ませた。 ぐっすりと眠っているうちに行ってもらいたかった。 目を覚ました赤ちゃん達とお別れするのは辛かった。 「おねーさん達、赤ちゃん達が起きないうちに、ゆっくりしないでおうち帰ってね! 赤ちゃん達とゆっくりしてね!」 「うん、ゆっくりするよー」 「ありがとねー」 「ゆっくりしてね!」 手の平に赤ちゃんを乗せたまま、女の子達が去っていく。 遠ざかる二人の楽しげなお喋りが、れいむのところまで聞こえてくる。 赤ちゃんの声は聞こえてこない。まだ眠っているのだろう。 起きたられいむがいなくて泣いちゃうかな? それともすぐに忘れちゃうのかな? 今更考えても仕方のない事だ。 未練を振り切るかのように、れいむは身体をブルブルと震わせた。 不思議と涙は出てこなかった。 れいむのゆっくりは、もうほとんど残されていない。 赤ちゃん達と一緒に、身体の中から大切な餡子が転がり落ちてしまった。 れいむはたまに、そう感じる事がある。 ぽっかりと空いた空洞を埋めるように、れいむは以前と同じ生活を続けていた。 身体が赤ちゃんのいた頃と同じ生活リズムを求めている。 今日も朝早くに目が覚めた。ご飯を取りに行かなくてはならない。 本当のところ、ご飯なんて充分に残っている。文字通り腐る程ある。 それでも三箇所の餌場を、以前と同じコースで回る。 一つ目の餌場に着いた。 今日はごちそうの日らしい。 まだ半分近く残った人間のお弁当が、無造作に捨てられている。 もう持ち帰る必要は無い。そのまま、もそもそと身体の中に収める。 二つ目の餌場に着いた。 いつもと変わり映えのない風景だ。 近づいてみると、骨だけになった魚が転がっている。 空っぽの眼窩がこちら見ている気がする。これは犬さんにでもあげよう。 三つ目の餌場に着いた。 そこには先客の姿があった。野良ゆっくりだ。 れいむはもう食べたからいらないよ。ゆっくりしていってね。 心の中でそう呟き、ゆっくりと餌場に背を向ける。 「れ、れいむ! やっぱり、れいむなんだぜ!」 聞き覚えのある声だ。誰だっただろう? れいむがゆっくりと餌場に振り返る。 先ほどの野良ゆっくりが、こちらへと跳ねてくる。 それは変わり果てたまりさの姿だった。 これは本当に、あのまりさなのだろうか? れいむは唖然としながら、目の前のゆっくりに目を走らせた。 真っ黒な帽子は皺だらけで、鍔が所々欠けている。 得体の知れないゴミの絡まった髪の毛は、脂ぎって土色に変色している。 肌はカサカサに乾燥し、今にもヒビ割れてしまいそうだ。 頬はゲッソリと痩せこけて、眼窩が暗く窪んでいる。 満足に食事や睡眠が取れてないのかも知れない。 「あまりジロジロみられると、てれるんだぜ~」 照れているつもりなのか、身体をくねくねと左右に揺らしている。 なんと醜悪なゆっくりなんだろう。 まりさは自分を捨てた最低なゆっくりだ。 だが、その美しさだけは本物だった。 赤ちゃんにまりさの面影を見た時、密かに感謝をしたくらいだ。 そのまりさが目の前のゆっくりだなんて、れいむにはすぐに信じる事が出来なかった。 「本当にまりさなの?」 「まりさにきまってるんだぜ! うたがうなんてひどいんだぜ!」 疑うなと言う方に無理がある。 似ても似つかないその姿は、そこらの野良ゆっくりの方がまだマシだ。 だが、やはりこのゆっくりは、まりさなのだろう。 このどうでもいい性格が、これはまりさだとれいむに訴えかけている。 「……仮にまりさだとして、まりさはれいむに何の用なの?」 「れいむ~、まりさをたすけてほしいんだぜ~。こまってるんだぜ~」 「どうして、れいむが助けないといけないの? 助けて欲しい時に捨てたクセに? 馬鹿なの? 死ぬの?」 「そんなつめたいこといわないでほしいんだぜ~。こうなったのには、れいむにだってせきにんはあるんだぜ~」 「聞き捨てならないよ。ゆっくり説明してね!」 頬に空気を溜め込んで、身体を大きく膨らませ威嚇してみせるが、本当は怒ってなどいない。 そんな気力はとうに失せていた。 ただ、まりさがこうなった理由にだけは興味があった。 叱られた子供のように、まりさがその身に起こった事をぽつぽつと語り始める。 れいむに会うため、毎日のように公園に通っていたまりさ。 ただし、いつもお兄さんと来ていたわけではない。 まりさはお兄さんの目を盗み、一人で公園に来る事もあった。 これは、れいむも承知していた事だ。 愛ゆえの行動だと、バカバカしいほどに信じていた。 だがまりさは、あれで外に遊びに行く味を占めていたらしい。 れいむを捨てた後も、まりさは家を抜け出していた。 初めはこっそりと、公園で他の飼いゆっくりと遊ぶ程度だった。 しかし仲の良いゆっくりが出来ると、少しでも長く一緒にゆっくりしていたくなる。 ある日まりさは、お兄さんの帰宅時間も忘れて、ゆっくりし過ぎてしまった。 慌てて家に戻ると、そこには、すでに帰宅しているお兄さんの姿がある。 必死になって謝りながらも、怒られる、もう外で遊ばせてもらえない、まりさはそう思い困り果てた。 だが、お兄さんは優しかった。愚かしいほどに優しかった。 冒険したい年頃なのだろうと思い、楽しかったかい? お友達が出来て良かったね等と優しい言葉をかけてしまった。 これが、まりさの増長を招いた。 お兄さんが家にいる間でも、堂々と外で遊べる。 好きなだけ外でゆっくり出来る。 怒られないのだから問題ない。 まりさはそう理解した。 まりさの行動は、徐々にエスカレートしていく。 お兄さんの帰宅時間との兼ね合いで、これまで近所の公園までだった行動範囲。 しかし自由を手に入れた今、まりさを縛るものはない。 他の飼いゆっくりの家に押しかけ、心ゆくまでゆっくりする。 まりさは飼い主が留守になる事の多い飼いゆっくりを狙った。 飼い主がいなければ、何をしたって咎められる事はないからだ。 そう、好きなだけ、すっきりが出来る。 まりさは普段、れいむの事を思い出したりしなかったが、すっきりの記憶だけは何度も反芻していた。 れいむとしたすっきりは最高に気持がちよかった。 薄汚い野良ゆっくりとのすっきりでも、あの恍惚感が得られるのだ。 自分と同じ飼いゆっくりとなら、もっとすごいすっきりが出来るだろう。 まりさはそう考えると、居ても立っても、すっきりしたくて堪らなかった。 だが公園ですっきりしようとすると、相手の飼い主に怒られてしまう。 なら、どうすればいい? 答えは簡単だ。飼い主のいない時にすっきりすればいい。 しばらくすると、まりさは複数の飼いゆっくりと、すっきり関係を持つようになっていた。 1日に1すっきりは当たり前。多い日は3人以上とすっきりする事もあった。 当然、帰宅時間は遅くなる。夜半過ぎまで家に帰らない事もあった。 それでもお兄さんは怒らなかった。 まりさが家に帰らない日があっても、お兄さんは怒らなかった。 だが、そんなまりさのすっきり生活も、ある日終焉を迎える事になる。 相手の飼いゆっくりの一人が、にんっしんしてしまったのだ。 れいむの場合は野良ゆっくりだった。 しかし今回は飼い主のいる飼いゆっくり。 怒りが有頂天な飼い主が、お兄さんの家に怒鳴り込んできた。 ひたすら平謝りさせられた挙句、ごっそりと養育費まで取られたお兄さん。 ここまで来ると、さすがのお兄さんも、自分がどんなに馬鹿だったのか気がつく。 まりさを見つめるお兄さんの目は、冷たい輝きに満ちていた。 その時、まりさは言葉ではなく本能で理解する。 このままここにいたら殺される。 まりさは唯一の出口を塞がれる前に、お兄さんの家から逃げ出した。 自分に都合の悪い箇所を端折りながら、まりさはれいむに説明した。 つまりは殆ど端折られた。 れいむが知ったのは、公園に行き過ぎたせいでお兄さんに殺されそうになり、まりさが家を飛び出した事くらいだ。 「おうちに帰れば?」 「そ、そんなことしたらころされるんだぜ! まりさはまだしにたくないんだぜ!」 「じゃあ、まりさはどうしたいの?」 「れいむにたすけてほしいんだぜ~。そうだ! まりさがれいむのおうちにすんであげるんだぜ!」 どこをどうすれば、この発想に辿りつくのだろう? まりさは自分を置いて行った時の事を、まったく覚えてないのだろうか? 実際、まりさはろくに覚えていなかったが、呆れ返ったれいむには、かける言葉が見つからなかった。 「はやくれいむのおうちにあんないするんだぜ! ふたりでゆっくりするんだぜ!」 「まりさは本当に馬鹿なの?」 「そんなことないんだぜ! ゆっくりかんがえたけっかがこれなんだぜ!」 ああ、やっぱり馬鹿なんだ。 れいむはこんなのに餡子をときめかせた事のある自分が、心底嫌になってきた。 このまま、まりさを振り切って、巣に帰る事は出来るだろう。 まりさの身体はボロボロだ。とても自分に追いつけるとは思えない。 だが、しかし……自分が捨てれば、まりさは多分、いや必ず死んでしまう。 別に死んでもかまわないのだが、れいむにはそれすらも、どうでもいい事に思えた。 どうせ巣は空いているのだ。 赤ちゃん達が去ってから、巣の中はれいむ一人で住むには広すぎた。 まりさが一人増えたくらいで、どうとなるものでもない。 なら、まりさがいれば、赤ちゃん達を失った悲しみが埋まるのだろうか? そんな事、考えるまでもない。 まりさはまりさだ。最低なゲスゆっくりだ。 赤ちゃん達の欠片にも値しないだろう。 だが、それでも……れいむは、まりさを巣に連れ帰る事にした。 「わかったよ。れいむのお家で勝手に住めばいいよ」 「さすが、れいむなんだぜ! あいしてるんだぜ!」 大喜びで、れいむの周りを跳ね回るまりさ。 その姿を見て、れいむは何も感じなかった。 まりさとの生活が始まった。 まりさは当然のようにれいむが持ってきたご飯を食べると、当然のようにどこかへ遊びに行った。 まりさがどこに行くのか、れいむは全く気にならなかった。 暗くなると、まりさは巣に帰ってきた。 そしてれいむの取っておいたご飯を当然のように食べると、当然のようにすっきりを求めてきたが、それは丁重にお断りした。 まりさとすっきりすれば、また赤ちゃんが出来るだろう。 可愛い赤ちゃん。 でもそれは、今頃人間の家でゆっくりしてる、あの赤ちゃん達ではない。 れいむの思考は、ゆっくり成らざる物へと変化していた。 れいむにはゆっくり出来る物が残っていなかった。 ある日、れいむが巣に戻ってくると、そこにはまりさともう一人のゆっくりがいた。 だらしない表情をしたまりさが、そのゆっくりに擦り寄っている。 初めて見るゆっくりなのに、その名前が何故かれいむの頭に浮かんできた。 あれは、ぱちゅりーだ。 「どうしたの、まりさ? 何でぱちゅりーがいるの?」 「ぱちゅりーはいえがなくてこまってたんだぜ。だからまりさのおうちにしょうたいしたんだぜ!」 いつの間にか、この巣はまりさのお家になっていたらしい。 大方このぱちゅりーは、まりさがすっきり相手として連れ帰って来たのだろう。 毎晩お断りしてたから、まりさはすっきりしたくて堪らなかったに違いない。 れいむはそう考えたが、怒りはどこからも沸いて来なかった。 陶器人形のような表情で、目の前にいる二人を眺める。 「ところでれいむ。ごはんはまだかなんだぜ?」 「ご飯? ご飯はこれでも食べるといいよ」 れいむは頬にしまっていたご飯をペッと吐き出す。 さっき巣の前で何となく捕まえたバッタだ。 何となく捕まったばっかりに、バッタはまりさに食べられてしまう。 目の前のバッタを見て、れいむはバッタと自分のどちらがついてないのだろう? などと考えていた。 「ちょっとまつんだぜ、れいむ。これじゃはらのたしにもならないんだぜ!」 「じゃあ自分で取ってくれば?」 「まりさよりれいむのほうが、かりがうまいんだぜ! それにまりさはいっかのだいこくばしらだから、どしんとかまえておくべきなんだぜ!」 一家の大黒柱。れいむの親まりさは、まさにそう呼ぶべき存在だった。 自ら先頭に立ち家族を支え、そして真っ先に人間に捕まった。 それに比べて、この新たな自称大黒柱は、何と頼りない事だろう。 この巣の中には何も残っていない。れいむの中にも何一つ残っていない。 れいむはゆっくりと巣を後にしようと二人に背を向けた。 「やっといくきになったかなんだぜ! びょうじゃくせっていのぱちゅりーのぶんもたのむんだぜ!」 「むっきゅう、じびょうのぜんそくがつらいわ」 「何言ってるの? れいむはご飯を持って来ないよ。ゆっくり理解してね」 「れいむこそ、なにいってるんだぜ? ごはんをもってこないなら、れいむはこのいえにすむしかくがないんだぜ!」 「それでいいよ。そのお家は二人にあげるから、勝手に使ってね」 れいむは巣の外に出た。 綺麗な夕日が空を赤く染めていた。 後ろの巣穴から、まりさが自分を呼ぶ声が聞こえる。 その声が、れいむのすぐ後ろまで近づいてくる。 「れいむ! さっさと、ごはんもってくるんだぜ!」 ポスンとひどく呆気ない音がして、れいむはまりさに突き飛ばされていた。 土手は傾斜だ。れいむの丸い身体が土手を転がり落ちていく。 この先には川が流れている。 ずっと住んでいた巣の前である。 れいむは誰よりも先に、自分に迫っている危機を感じ取っていた。 足に力を入れれば、今なら方向を変える事も出来るだろう。 だが、れいむは、このままでいいと思った。 最初に家族を失った。これは人間が連れて行ったせいだ。 その次に人間に飼われていたまりさを失った。これは赤ちゃんが出来たせいだ。 赤ちゃんを失った。これは自分のせいだ。 自分が良かれと思い決断したせいだ。 だが、これだけは誇りに思っていいはずだ。 赤ちゃん達は人間とゆっくりし、立派なゆっくりに成長するだろう。 失った物は多いが、自分は未来の幸せを得る事が出来た。 赤ちゃん達、ゆっくりしてるかな? れいむの意識が水に溶けた。 ここは静かな森の中──ではなく、都心に程近いベッドタウンの一画。 川原の土手に掘られた巣の中に、あるゆっくりの家族が住んでいた。 まりさとぱちゅりー二人きり。子供はまだいないが、ぱちゅりーの頭には茎がはえていた。 きっと後数日もすれば、可愛い赤ちゃんが産まれるだろう。 だが、二人にそんな時間は残されていなかった。 「わんわんわん!」 「い、いいいぬさん、やめるんだぜ! たべるんなら、ぱちゅりーのほうをたべるんだぜぇえええ!」 「むっきゅううぅうう!! ま゛りざなに゛いっでるのおおぉおおおお!?」 土手でゆっくりを見つけた犬さんことポチはこう考えた。 後ろの奴は何だか動きがにぶそうだ。まずはこのよく動く方を何とかしよう。 ポチの中で野生が弾けた。 逃げるまりさに飛び掛り、そのまま上から地面に押さえ込む。 これで相手は簡単に逃げられない。 今度は両手の爪をしっかり食い込ませ、動く気力を削いでおく。 「やべるんだぜえぇええ!! ま゛りざはおいじぐないんだぜえぇええええ!!」 何やら叫んでいるが、ポチにはそんなこと関係ない。 帽子が取れてガラ空きになった頭頂を一齧り、二齧り。 抉られた傷痕から、真っ黒な餡子が噴出する。 「ま゛りざのあ゛だま゛があ゛あぁあああああ!!」 あまりの痛みに、まりさはポチの抱擁の中で暴れた。 こいつ動くぞ! ポチはゆっくりのポテンシャルに戦慄した。 しかし、こちらが優勢なのに変わりはない。ポチは負けじと、そのまま頭に齧り付く。 饅頭の皮だけあって、あまり噛み応えがない。じじぃのくれる犬用ガムの方がまだ気合いが入っている。 噛んでは千切り、噛んでは千切り、後頭部の餡子を剥き出しにしていく。 顔面だけ残し抉り取った所で、やっとまりさの動きが止まった。 「ゆ゛っ……ゆ゛っ……ゆ゛っ……」 「わんわんわん!」 どうやらまだ生きているらしい。驚いたポチは、念のためにもう二齧りし、まりさの息の根を完全に止めた。 次のターゲットは、白目を剥いてガクガク震えてるぱちゅりーだ。 ポチは相手がまだそこに突っ立ってた事を犬の神様に感謝した。 一気に間合いを詰め、まずは頭上をふらふら揺れている茎を噛み千切る。 「ぱぢゅり゛ぃのあがぢゃんがあぁああああ!!」 思ったとおりだ。もう一匹になかったアレは、何やら大切な物だったらしい。 これで勝つるわん! ポチは勝利を確信し、微動だにしない相手の顔面に齧り付く。 その時、ポチに電流走る。 さっきのと味が違う! うっめ! めっちゃうっめこっち! じじぃのめしよりよっぽどうめぇ! パネぇわんわんわん。 ポチはガツガツとぱちゅりーに貪り付いた。まさに犬食いである。 だが、そんなポチの幸せも、長くは続かなかった。 「ぽーち、ぽーち! まったくポチは足が速いのぉ。ワシを置いていかないでおくれ──ってナニ食っとんのじゃあああああ!!」 「きゅうぅん……」 飼い犬を放して散歩させるという暴挙をしでかしていた飼い主が、ゆっくりを貪り食うポチを発見したのだ。 ポチは頭をペシペシ叩かれて、思わず尻尾をクルっと丸める。反省の合図だ。 これを見た飼い主はポチを撫でると、ふぅと大きくため息をついた。 「久しぶり散歩コースをもどした結果がゆっくりじゃよ! ポチ帰るぞ! そんなもん食ったら腹壊すだろうに」 「わんわんわん!」 一人と一匹が土手を後にする。 後にはただ静寂とゆっくりの屍だけが残された。 おわり このSSに感想を付ける
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(男とれいむ) 村の外れのあばら家。そこに住む一人の男とゆっくり。 男に身寄りは無く、唯一家族と呼べそうなものは一緒に住むゆっくりれいむのみ。 暮らしは貧しくとも、一人と一匹仲良く暮らしていた。 男は田畑を持たぬ水呑み百姓。この村一番の豪農の下で働いている。 両親が死んで借金だけが残り、自暴自棄な生活をしていたところを拾ってもらった。 それからしばらくして、偶然家の前で動けなくなっていたゆっくりを助け、それ以来一緒に住んでいる。 「ただいま。今帰ったぞれいむ。ひとりで寂しかっただろう。」 「ゆ!おかえりなさい!ゆっくりいいこにしてたよ!」 「今日は疲れた。だが仕事がひと段落ついた。明日は休みだ。朝から一緒に遊んでやるぞ。」 「ゆ!ほんと?」 「ああ、もちろん!」 「ありがとうおにいさん!じゃあきょうはゆっくりやすんでね!」 男はれいむを実の子の様に可愛がり、れいむも男によくなついた。 人づきあいが苦手な男であったが、れいむにだけは気を許し、家には常に笑いが絶えなかった。 ただれいむだけは、昼間男がいない間、森の方を眺めては溜息を吐いていた。 もちろんその理由に男が気づく訳がない。これが偽りの幸せである事を知っているのはれいむだけ。 (突然の来訪者) 翌日。男はれいむと一緒に村の外へ遊びに出かける事にした。 れいむを腕に抱き家の外に出る。するとそこに待っていたのはれいむより一回り大きいゆっくりまりさ。 まりさに気がつくと急にれいむの顔色が変わる。しかし腕に抱いている為男は気付かない。 すっかり青ざめているれいむを無視して、まりさは男に話しかけた。 「ゆっくりしていってね!!!」 「やあ。ゆっくりしていってね。どうしたんだこんな朝早くに?」 「まりさたちはれいむのおともだちなの!ゆっくりあそびにきたよ!」 「おお、そうだったのか。俺のいない間に友達を作ってたんだな。 じゃあ邪魔しちゃ悪いな。俺は家でゆっくりしてるから、れいむは友達と遊びにいったらいい。」 「ゆ・・・おにいさん・・・」 「ゆ!ありがとう!さあれいむ!いっしょにゆっくりしにいくよ!」 一瞬、男に助けを求めるかの様な表情を見せたれいむ。そんなれいむをまりさ達は強引に連れていく。 その様子を特に不審に思わず見送った男は、「計画が狂ってしまったな。さてこれからどうしようか。」 などと考えながら家に入った。一方まりさ達は人気の無い森にれいむを引っ張っていく。 「ゆ。ここらへんでいいか。ここならだれにもきかれないぜ!」 「ひさしぶりだぜれいむ。あのにんげんとはうまくやってるのか?」 「・・・・・・」 「だまってちゃわかんないんだぜ!こどもがどうなってもいいのか?」 「ゆ・・・おにいさんは・・・れいむにとってもやさしくしてくれるよ・・・」 「それはよかったぜ!じゃあいつでもさくせんかいしできるな!」 「『おやぶん』からのでんごんだ!『ひつようなものはそろった。かぎがてにはいりしだい、さくせんかいし!』 これだけじかんをやったんだ。かぎのありかはしらべてあるんだろうな!」 「ゆ・・・でも・・・」 「でも?なにいってるんだぜ。おまえじぶんのこどもがどうなってもいいのか?」 「ゆ・・・わかったよ・・・だいじょうぶ・・・かぎがしまってあるところはわかってるよ・・・」 「わかればいいんだぜ!おまえがしっかりやれば『おやぶん』もこどもをかえしてくれるぜ!」 「・・・・・・」 親分とは村の近くの森をシマとする巨大まりさだ。二年ほど前にこの地にやって来た。 体がでかくて喧嘩慣れした手下共を連れ、あっという間に元々この森のリーダーであったゆっくりを追い出した。 今ではこのあたりのゆっくりは、親分にみかじめ料を払わなければゆっくりする事もできない。 逆らったら人間に売られてしまう。まりさ達は人間に飼われたゆっくりを通じて人間と交渉する事までしていた。 自分達に逆らうものやシマの外に遠征に出かけて捕らえたもの、それを人間に売るのだ。 もちろんゆっくりを高値で買う者などほとんどいない。 まりさ達は村の周囲のゆっくりをしっかりと押さえて、ゆっくりが村の田を襲わぬ様目を光らせていた。 人間はその事への対価としてゆっくりを買い取っていた。 その親分が次のシノギとして選んだのが、村の豪農の蔵に盗みに入る事だった。 自分の商売相手の物、しかも人間の物を盗むなど正気の沙汰では無いが、実は理由があった。 人間の側からオファーがあったのだ。盗みの手順。揃えるべきもの。蔵の鍵を持つ人物。 すべてを教え、その上報酬まで払うと言う。親分はその話に乗った。 今年出産したばかりのれいむの赤ゆっくりを人質にとり、計画を手伝わせる。 れいむが蔵の鍵を持つ男に取り入り、鍵をしまっておく場所を調べる。 その間、食い物で懐柔した身体つきのれみりゃに鍵の開け方を覚えさせる。 そして蔵の中の米を運ぶのに適した、帽子を持つまりさ種を大勢あつめる。 れいむの元に来たのは準備が整った事を知らせる親分の手下。鍵の在り処の確認の為やって来た。 鍵の位置も分かった。いよいよ今夜から作戦決行だ。 まりさ達とれいむは何も知らぬ男の元へ帰る。 「おお、おかえり。早かったね。もっとゆっくりしてきたら良かったのに。」 「ゆ・・・」 「ゆ!もうじゅうぶんゆっくりしたよ!またこんどゆっくりあそびにくるよ!」 「ゆ!またねれいむ!おにいさんも!またあそびにくるよ!」 「じゃあな。昼間は俺がいなくてれいむも寂しいだろうから、時々遊びに来てやってくれ。」 「うん!さようなら!」 (その日の夜) 男の夜は早い。明日も朝早くから仕事があるし、なにより貧乏暮らしには明りに費やす余裕が無い。 その日も日が落ちて暗くなった頃には床につき、しばらくすると鼾をかき始めた。 男が完全に寝入ったのを確認したれいむは鍵を持って家を出る。待っていたのは昼間来たまりさ達。 「ちゃんともってきたか?」 「ゆぅ・・・もってきたよ・・・」 「そうそう。それでいいんだぜ。こどものことがかわいけりゃ、まりさたちのいうことをちゃんときくんだぜ!」 「ゆぅ・・・」 「さあ!かぎはてにはいった!それじゃやろうども!いくぜ!!!」 「「「「ゆーーーーーーーーーーー!!!」」」」 まりさ達は早速仕事にかかった。れみりゃが鍵を開け、駆り集めたまりさ達が米を運ぶ。 親分の手下達は見張り役。荷物が重いと泣き言を言うゆっくりに制裁を加えて働かせる。 ある程度運びだしたら再び鍵を閉め、鍵をれいむに返して元の場所に戻し、森へ帰っていった。 こんな事がしばらく続いたある日、事件は起こった。 (発覚) 「ぐはっ!」 「てめえもしぶとい野郎だな。いいかげん白状したらどうだ?」 「だから!俺じゃありませんって!何で俺が蔵の米を盗まなくちゃならないんですか!」 「惚けるのもいいかげんにしろ!お前以外にこんな事する奴はいねーんだよ! 俺たちゃ大旦那の下で働きだしてもう十年以上経つ。お前以外全員だ。 今までこんな事は無かったんだ。一年前、お前がここで働き始める前まではな!」 「大体俺は元からお前の事が気に入らなかったんだよ。 お前の親父は真面目ないい奴だった。それが原因で騙されて借金背負ったがな。 そんな奴だから俺達は金を出し合って高利貸しからの借金を肩代わりしてやった。」 「あいつは感謝してた。必ず返すって言ってたぜ。嘘は吐かない奴だったしな。だから利子もあまり付けなかった。 それなのに息子のお前ときたら。親父とお袋が死んで、その後なにやってた! 碌に働きもしねえで、ゆっくりを捕まえては殺して遊んでるだけだったじゃねえか!」 「別に金の事を言ってるんじゃねえ。俺たちゃお前のその態度が気に入らなかったんだよ! 確かに大変な額の借金だが、すぐに返せとは言わねえ。真面目に働いて少しづつ返してくれ。 葬式の日にそう言ったはずだ。それなのに・・・お前は!」 「そんなお前を可哀そうに思ったお嬢さんが、大旦那を説得してくれて、 それでここで働くようになったんじゃないか。それなのに・・・ お嬢さんや大旦那の信頼を裏切るなんて、お前にゃ人の心がねえのか!」 「待ってください!だから、蔵の米を盗んだのは俺じゃな・・・ぐえ!」 「いいかげんにしろ!じゃあお前以外にいったい誰が米を盗めるって言うんだ!鍵が壊された跡はねえ。 蔵の鍵を持ってるのは大旦那と若旦那、それに倉庫番のお前しかいないんだよ!てめえがやったんだ!」 「ぐはっ・・・」 「さあ吐け!盗んだ米をどこへやった!もう売ったのか?じゃあ売った代金はどこにある!」 「信じて・・・信じて下さい・・・俺じゃ・・・俺じゃない・・・」 「まだ言うか!!!」 「もうその辺にしないか。」 「あ!若旦那・・・しかし・・・」 「こいつを倉庫番に指名したのは私だ。私にも責任はある。ここは私に預けてくれないか?」 「若旦那がそうおっしゃるのなら・・・」 若旦那に諭され男達は仕事に戻る。 「大丈夫かい?」 「すみません若旦那。信じて下さい・・・俺じゃない・・・俺じゃないんです。 世話になっている若旦那や大旦那、それにお嬢さんを裏切るなんて・・・ そんな事できるはずありません。誓って・・・誓って俺じゃない・・・俺じゃないんです・・・」 「わかっているよ。私はこの一年お前がどれだけ真面目に働いてきたか、ちゃんと知っている。 お前は心を入れ替えた。こんな事できる人間じゃない。皆よく調べもせず勝手な事を・・・」 「じゃあ・・・」 「だがそれでは皆が納得しないんだ。親父は小作の中の誰かがやったと思ってる。 皆はお前が犯人だと思ってる。私一人が信じていても無理だ。いずれお前は犯人にされてしまうだろう。」 「・・・・・・」 「村を出るんだ。心配ない。当分の生活に必要な金は渡す。今夜の内に村から逃げるんだ。 皆には『あいつにはきっちりおとしまえをつけて、村から追い出した』と言っておく。 親父も説得してお前に追手がかからないようにしてやる。 すまないな・・・私にできる事はこれくらいだ・・・無力な私を許しておくれ。」 「とんでもありません。ありがとうございます若旦那。本当に・・・」 「さあ、この金を持って行くんだ。なるべく遠くへ逃げるんだぞ。」 この若旦那がこんなに優しいのには裏がある。若旦那は蔵の米を横流ししていたのだ。 女遊びと博打に金をつぎ込み、借金で首が回らなくなった若旦那は家の米に手をつけた。 元から倉庫番の男にすべてを押し付け村から逃がし、米が無くなった事をうやむやにする計画だった。 この男を倉庫番に指名したのも若旦那。家族も無く、他に頼る身寄りも無い。 犯人に仕立て上げ村から追い出すのに何の障害も無い。 さらに保険も掛けていた。まりさを唆し米を盗ませたのも若旦那の仕業。 万が一、皆が男の無実を信じ真犯人を探し始めたら、すべての罪をまりさに被せるつもりだった。 饅頭共は私の名前を出すかもしれないが、どこの世界に人間より饅頭の言う事を信じる奴がいるだろうか。 もしいたとしても問題ない。簡単に言いくるめられる。若旦那は自分の計画に絶対の自信を持っていた。 結局保険を使う必要もなく、すべては計画通りにいった。 若旦那はこみ上げる笑いを必死で堪えながら男を見送った。 (狂気) 男は家に戻った。そのあまりに早い帰宅にれいむは驚き、困った様な表情を見せる。 「ゆ!おにいさんどうしたの!こんなにはやくかえってくるなんて!」 「ああ。ちょっとな。それよりれいむ。これから引っ越しの準備をするぞ。 この村を出て行かなくてはいけなくなったんだ。」 「ゆ・・・」 「おーい!れいむ!むかえにきたぜ!よかったな!これでこどもとくらせるぜ!」 「迎えにきた?どういう事だ?まりさ。」 「ゆ!おにいさん!どうしてこんなじかんにいえにいるの!」 「どうしてって・・・仕事でちょっと問題があってな・・・ それより迎えにきた、子供と暮らせるってのはなんだ?」 「ゆ・・・それは・・・」 「ゆ!じつはこのまえれいむとあそんだときにあかちゃんができたんだよ! それであかちゃんがぶじうまれたから、いっしょにもりでくらすためにむかえにきたんだよ!ほんとだよ!」 「ふーん。そうだったのか。そりゃ丁度よかったかもしれんな。」 「ゆ?」 「俺は今夜この村を出るんだ。仕事場で問題が起きてな。そのせい出て行かなくてはならなくなった。 れいむも連れていこうと思っていたが、やはり住み慣れた土地で暮らした方がいいだろうな。 れいむの事頼んだぞ。幸せにしてやってくれ。」 「ゆ!まかせてよ!それよりおにいさんのほうこそたいへんだね! どろぼうがはいったせいでむらをでないといけないなんて。」 「ちょっとまて・・・」 「ゆ?」 「なぜ蔵に泥棒が入った事を知っている?俺は『仕事場で問題が起きた』としか言ってないぞ。」 「!!!!!」 「まさか・・・お前達が・・・」 「ゆ!しらないよ!まりさたちはおこめなんてぬすんでないよ!」 「なぜ盗まれた物が米だと知っている!!!!!」 「!!!!!」 「貴様ら・・・」 まりさ達は一斉に逃げだす。しかし所詮はゆっくり。すぐに男に捕まってしまう。 捕まったまりさは観念したのか、それとも自分だけ助かろうとしたのか、すべてを話し始めた。 親分の命令で蔵の米を盗んだ事。 れいむに演技をさせ、男と一緒に暮らすように仕向け、鍵を盗ませた事。 男はすべてを聞くと呆然として固まってしまった。その隙にまりさは逃げ出す。 れいむも一旦は逃げようとしたが、男が心配になったのかその場に留まった。やがて・・・ 「あはっ!あははっ!あははははははははははははははははははは!」 「ゆ!おにいさんどうしたの!だいじょうぶ?」 「あはははははははははははははははははははは ははははははははははははははははははははは ははははははははははははははははははははは」 「ゆーーーーー!しっかりして!」 「ははっ!お前、俺を騙してたんだな!ずっと!そして何も知らない俺の事を笑っていたわけだ!」 「ち、ちがうよ!わらってないよ!しかたなかった・・・しかたなかったんだよ・・・」 「あはは!まさか、まさか身内に騙されるとは!家族同然に思っていたお前に!」 「お嬢さんに救われ、彼女の言う通りにした結果がこれだよ!あははははははは!」 「両親が死んで、借金だけが残った。その借金だって騙されて負わされたものだ。しかも仲間に! あいつは皆の手前、本当の事を言う訳にもいかず、自分が音頭を取って皆で親父を助けたかの様に言ってたが。 そんなのウソっぱちだ!あの野郎、俺が何も知らないと思ってやがる。 高利貸しとグルになって騙したのはあの野郎なのに!」 「おにいさん・・・」 「まあ聞けよ。両親が死んで、俺は生きる気を無くしてた。やり場のない怒りをお前らゆっくりにぶつけてた。 ゆっくりの悲鳴を聞いている間だけすべてを忘れる事ができた。ゆっくりを殺している間だけ・・・ だがな・・・満たされないんだよ、そんな事しても。常に渇いていた。常に餓えていた。 まるで底無しの胃袋を持ち、無限の食欲を持つ怪物の様に。永遠に満たされない。永久に続く地獄。」 「いつしか皆も俺のことを、狂人でも見るかの様な目で見るようになった。 そんな化け物に対して唯一、人間として接してくれたのが彼女だった。 彼女だけが俺を救ってくれた。彼女だけが俺の渇きを満たしてくれた。 彼女の傍にいたい。人間らしく生きたい。そう言った俺に向かって彼女はこう言った。」 「『恨みは何もうみださない。過去を引きずり、いつまでも恨みを持つのではなく、もっと未来を見るの。』 『情けは人のためならず。皆を助けられる人になるの。そしたら皆もあなたを助けてくれるはず。』 彼女に言われ俺は心を入れ替えた。誰かを恨んだり、人生を悲観したりせず、真面目に働いた。 お前を助けたのも彼女の言葉があったからだ。ははっ!しかし、まさか演技だったとはなぁ!」 「はははっ!駄目だ!もう駄目だ!もう何も信じられない!何も信じない! だってそうだろ?彼女の言葉を信じた結果がこの仕打ちだ! 家族と思っていたゆっくりに裏切られ、泥棒のゆっくりにハメられて罪を被り、もうこの村にはいられない。」 「あははは!もう人間には戻れない!人間らしくは暮らせない! じゃあ何になる?鬼か?妖怪か?もののけか?なんでもかまわん! どうせ俺は地獄行きだ。だがな、ただじゃ死なん。お前ら全員道連れだ!」 「お前らを殺す。全員殺す。生まれ変わってもまた殺す。転生してもまた殺す。 二度とゆっくりなどさせるものか!もしこの体が滅んでも、必ず蘇って殺しに戻って来る。 永久に殺し続けてやる!永遠に死に続けろ!」 「まず最初はお前からだ!だがその前に仲間の居場所を吐いてもらう。 ああ、別に素直に話してくれなくてもいいぞ。お前の事だ。どうせ嘘を吐くんだろ? かまわないよ?体に直接聞く。正直に話させる方法はいくらでも知ってる。」 (死) 「おやぶん!どうするんだぜ?あのにんげんはふくしゅうするために、ここにやってくるかもしれないぜ!」 「ゆ・・・にんげんあいてじゃかちめはねぇ。ここは『さんじゅうろっけいにげるにしかず』だ!にげるぜ!」 「にげるためにはじかんをかせぐひつようがある。ここいらのへいたいどもをのこらずあつめろ! やつらをぶつけてまりさたちがにげるじかんをかせぐ。」 「ゆゆこもよんでこい!せっかくえさをやってかいならしたのに、もったいないきもするが・・・ せにはらはかえられん。あいつのきょたいならじかんをたくさんかせげるはずだ。」 「わかったぜ!おやぶん!」 「あはははははは!みーーーーーつけたっ!」 「ゆっ!」 「ははっ!探したよぉ。随分探したよぉ。れいむがこの場所を教えてくれなくってさあ!」 お前達に何か恩義でもあるのかねぇ。」 「ゆ・・・れいむのこどもをあずかってる。きっとこどもをたすけるためだぜ。」 「へえ、子供がいるんだぁ。じゃあお母さんに逢わせてあげないとねぇ。 ほらっ!お母さんだよーーーー♪」 「ゆーーーーーーーーー!!!!!!」 男はれいむから剥ぎ取った皮を被り「あははははははは」と壊れた玩具の様に笑う。 「お、おにいさん・・・おちついて、おちついてはなしをきいてほしいんだぜ。」 「ん~~~~?なあに?」 「まりさたちも、まりさたちもだまされていたんだぜ。こんなことになるなんてしらなかった。」 「あははっ!それで?」 「にんげんがこのけいかくをもちかけてきたんだぜ。きしょうしゅのゆっくりをさがすのを、てつだうかわりに こめをすこしわけてやるって。じぶんがもっていくわけにはいかないから、おまえたちでぬすみだせって。 ばれないようにこちらでうまくやってやるから、なにもしんぱいいらないって。」 「そうか・・・お前達も騙されて・・・本当なら蔵の米が減ってるのに誰も気が付かず、 お前達は米を手に入れ、この計画の立案者とやらは希少種のゆっくりを手に入れ、 俺は泥棒扱いされる事もなかったはず・・・こう言いたいんだな?」 「ゆ!そうだぜ!わかってくれた?」 「あはははは!!!んなわけねーだろーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!! お前らのことだ、どうせ嘘吐いてるんだろ。」 「ほ、ほんとなんだぜ!しんじてほしいんだぜ!」 「つーか、嘘とか本当とか、そんな事もうかんけーねーし!お前ら全員殺すって決めたし! 判決!死刑!即時執行だよっ♪」 「まってほしいんだぜ!さいごに・・・さいごにみせたいものがあるんだぜ!」 「見せたいもの?なんだ?」 「みせたいものは・・・」 「見せたいものは?」 「おやぶーん!みんなつれてきたぜ!」 「みせたいものってのはこれさあ!おまえら!よくやったぜ!」 男の周りをゆっくり達が囲む。100匹以上もいるだろうか。遠くからも声がする。まだ集まって来る様だ。 中には身体つきの捕食種や、男の背丈ほどの大きさのゆっくりもいる。 「さあみんな!だいじょうぶ!これだけいたらにんげんにもかてるぜ! にんげんをたおしたやつは『じきさん』のこぶんにしてやるぜ! しっかりはたらけ!てがらをたてろ!にんげんをたおしたやつは、だれよりもゆっくりさせてやるぜ!」 「「「「「「「「「「ゆーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!」」」」」」」」」」 ゆっくり達が一斉に男に襲いかかる。それを見た男は手に持っていた鉈を鞘から抜く。 急にゆっくり達の足が止まる。手に持った鉈から発する狂気を感じ取ったのか。 この鉈は以前、男がゆっくりを殺す為に使っていたものだ。殺した数は千を下らない。 この鉈にこびり付いた餡子は、ゆっくりだけが感じ取ることのできる死臭を放つ。 「ゆっくりの死」そのものを体現したかの様なその鉈に、ゆっくり達は恐怖し動くことができない。 「お前達にも解るか。数え切れぬほどのゆっくりの餡子を吸ってきたこの鉈だ。 何か怨念の様なものが映っているのかもな。まさかまた使う事になるとは思ってもいなかったが・・・」 「さあ、死の螺旋の始まりだ。これからお前達を殺す。殺し続ける。 駆除しても駆除しても増え続けるお前達の事だ。絶滅する事は無い。どこかでまた生まれ変わるだろう。 だが、生まれ変わってもまた殺す。運良く逃げ延びても、探し出して必ず殺す。」 一閃。男が振った鉈が一番近くにいたゆっくりの頭を切り落とす。 「ゆーーーーーーーーー!!!!!」 「ごめんなさい!ごめんなさい!」 「たすけてよ!まだしにたくないよ!」 「どうじでこんなごどずるのおおおお!ゆっくりしたいだけなのにいいいいいい!」 「ゆっくりしたい?すればいいさ。俺に殺された後に。いくらでも。 生まれ変わってゆっくりしていろ。すぐに殺しに行く。俺に殺されるのをゆっくり待ってろ!」 ゆっくりの群れは大混乱に陥った。泣き声。叫び声。ゆっくりの悲鳴が辺りを包む。 家族を見捨てて逃げ出すもの、親を殺され仇を討つため男に向っていくもの。 恐怖のあまり気が狂って仲間を攻撃し始めるものまでいた。まさに阿鼻叫喚の地獄絵図。 「ゆーーー!!!よくもおかあさんを!!!」 「いやーーー!まりさーーー!たすけてーーーー!!!」 「ゆふふ、ゆふふ・・・」 「このこだけは!このこだけは!」 「ああ・・・まだしにたくないよ・・・」 「ゆーー!まりさはころさないでね!ころすならほかのだれかにしてね!」 「こぼねーーーー!」 「ゆっくりしていってね!!!ゆっくりしていってね!!!ゆっくりゆっくりゆっくゆっくゆっゆっゆ・・・」 「おかあさーん!どこにいるのおおおお!!」 「ゆふふ・・・みんな・・・みんなしんじゃうんだ・・・」 「ゆうう・・・れいむ・・・いまいくよ・・・まっててね・・・いっしょにゆっくりしようね・・・」 「もっとゆっくりしたかったーーーーーーーー!!!!」 一方、親分まりさは森の小道を村へ向かって逃げていた。自分の手下だけを連れて。 「ゆっゆっゆっ!にげるぜ!にげるぜ!だいじょうぶ!にげきれるぜ!」 「ゆっゆっゆっ!しかしおやぶん、うまくにげだせましたね。まったくおやぶんのうそはおそろしい。」 「このかずならかてるだの、『じきさん』にしてやるだの。あいつらすっかりそのきになってたぜ!」 「ゆっふっふ!おかげでじかんかせぎはせいこうだ!」 「で、このあとどうするんだぜ?」 「まず、むらのちかくまでにげる。そしたらおまえたちは『おおだんな』のところへいけ。たすけをもとめるんだ。 まりさはからだがおおきくてめだつから、むらのちかくにかくれてる。」 「『おおだんな』とは、『わかだんなのあくじをしらべてほうこくする』というけいやくをしてるんだ。 そのみかえりとして、なんでもべんぎをはかってくれることになってる。」 「『わかだんな』のあくじをしらべることはできなかったが・・・だいじょうぶ、しんぱいいらない。 まりさたちがやったぬすみを、『わかだんな』がやったことにすればいいぜ。」 「これでけいやくはたっせいしたことになる。『おおだんな』はまりさのたのみをきいてくれるはずだぜ。 まりさたちをとおくににがすことくらいはしてくれるはずだ。」 「おまえたちわかってるな!うまくだますんだぜ!ぬかるんじゃないぜ!」 「おいっ!へんじくらいしたらどうなん・・・だ・・・」 「返事?返事が欲しいのか?じゃあ急がないとな。今から追いかければ、まだ間に合うんじゃないか?」 「ゆ・・・」 「心配すんな。すぐに追いつくさ。あの世で手下共に宜しく言っといてくれ。」 「じゃあな。また会う日まで。また殺す日まで。さようなら。」 「ゆーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」 end 作者名 ツェ 今まで書いたもの 「ゆっくりTVショッピング」 「消えたゆっくり」 「飛蝗」 「街」 「童謡」 「ある研究者の日記」 「短編集」 「嘘」 「こんな台詞を聞くと・・・」 「七匹のゆっくり」 「はじめてのひとりぐらし」 このSSに感想を付ける
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※虐待側も酷い目に遭います ※しかもゆっくりに対する虐待描写は薄め ※「SAW」って小説のパロ ※前置きが長いですがゆっくりしていってね ジゆソウ 作者:古緑 目が醒めたとき俺はコンクリ張りの薄暗い殺風景な部屋にいた 体を起こして周りを見渡すと本当に何も無い部屋だ 部屋に置かれたモノは小さな木の箱が一つ、それだけ あとは離れた所にドアと…壁の下の方に大きな穴が空いている それに後ろの壁にデジタル掲示板のようなものがある 窓も無く、それだけが特徴の部屋だ もちろん俺の住んでいた部屋はこんな牢獄のような部屋じゃない 何故俺はこんなこんな所に? 俺は昨日どこで寝た? 働かない頭で懸命に記憶を辿っていると脚の先でジャラッと音が鳴った 薄暗くて良く見えなかったが脚の先に何か付いてる 鉄の輪だ 輪は右足首にガッチリと食い込んでいる 輪には鎖が付いており 呆然と鎖の先を目で追っていくと壁のパイプに錠で留められていた 「うおおぉおぉぉおぉぉぉぉ!!?」 まさかとは思っていたが これは「ジグソウ」の仕業か!? ちょっと前にアメリカ全土を恐怖に落し入れた連続殺人犯 事前に被害者を丹念に調査した後に拉致・監禁し 『ゲーム』と表して命懸けの無茶な試練を被害者に課す それに勝てば生き残り、負ければ… まさか日本にも来ていたと言うのか!? もしそうだとしたら俺はこれから恐怖の試練を? 何とかこの鎖を外す道具は無いかと体中のポケットを探ると ジャケットのポケットからカセットテープが出てきた ジグソウとそっくりな手口だ 『ゲーム』を始める前にカセットテープ等を通してルールを伝える 恐れていた事が現実のモノとなってしまった 駄目だ…怖くて再生ボタンなんて押せるワケが無い それからどのぐらい時間が経ったのか 数十分かも知れないし数時間経ったのかも分からない どうやらここは見捨てられた廃ビルのようで 人の気配はおろか車の音も聞こえない ここままだと俺は数年後に醜いミイラとなって発見される事になりかねない やるしかない…俺は次第に覚悟を決めていった テープを再生しよう 『ーおはよう○○ 私はジグソウの意思を継ぐ者…ジゆソウだ 今日はゲームをしよう』 まだ若そうな男…俺とそう変わらなそうな歳の声だ 日本語で話している 『お前は月に何度もペットショップで 質の悪く安いゆっくりを買っては自宅で嬲り殺している お前のゆっくりに対する強い憎しみは消える事が無い 今日はお前の命がその憎しみを超えられるか試してやろう 憎しみが死ぬか?お前が生きるか? ルールは簡単だ そちらにゆっくりを順番に4匹送る 制限時間内に全て殺したらゲームオーバー 制限時間の終わりとともに部屋ごとお前は爆破される事になる ゲームが終わるまで一匹でも生かしておく事が出来たら 足輪の錠と扉の鍵を遠隔操作で外し、爆弾を止めよう …あぁ、忘れる所だった お前がゆっくりを拘束したり 暴力を振るったり ゆっくりの口を利けなくさせたら『殺した』と見なす 私は常にお前を見ている ルールはそれだけだ では、ゲームスタート』 ジグソウではない どうやらジグソウに憧れるだけの模倣犯のようだ この手の犯罪者は今までにも何人か現れた このジゆソウを名乗る変態野郎は事前に俺の事を調べたのか 俺が自宅でゆっくりの命を弄んで楽しむ事を知っていた 過激な動物愛護団体の一員かと思ったがそれも違うようで ゆっくりを殺して喜ぶ俺の元へゆっくりを送るのだそうだ 『爆発』と聞いてまさかと思い 箱の中身を覗いたところタイマー付きの爆弾らしきモノがあった 堅い木の箱に固定されて外せないようになっている 実物を見ると少し怯んだが大した事は無い ハッ お粗末なゲームだ ゆっくりを4匹殺したら部屋ごと吹っ飛ばすだと? 制限時間まで我慢したら足輪が解除されるだと? そんなの簡単だ!笑わせやがる ここで制限時間一杯まで黙ってじっとしてりゃそれで終わり! 簡単だ!なんてぬるゲーだ! 見てろ、何が目的だか知らねえが こっから出たらその足で警察に通報しに行ってやる ブタ箱にぶち込まれて酷え目に遭うのはお前だ どうやら『ゲーム』は始まったようだ 既に爆弾のタイマーが作動し始めた 今タイマーは59:20を表示している 制限時間は一時間だ 薄暗くて天井の様子はよく分からないが あの口ぶりからカメラかなにか仕込んで俺を見てるのだろう でかい穴から何かが出てくる 男の言ってた通りゆっくりが出て来るんだろうな ノロノロしやがって…出てきたな あのフォルムはー 「みゃみゃ~!どきょにゃの~?ゆゆっ?ゆっきゅちちていっちぇね! りぇーみゅはりぇーみゅだよ!ゆっきゅちりきゃいしちゃら ばきゃなにんげんはあまあまを」 もう一匹殺してしまった 何がぬるゲーだ? こんなの反則だ 俺はこいつ等ゲス赤ゆっくりが反吐が出るぐらい嫌いなんだ こいつ等の人を舐めつつも媚びきった喋り方を聞くと我を失う 多少ゲスでも成体ゆっくりや子ゆっくりならなんとか我慢出来る だがこいつ等だけはー ーいや、こいつ等だけじゃない 俺が我慢出来そうにないのはこいつ等だけじゃない 俺はこのゲームを甘く見過ぎていたようだ 「憎しみを超える」ね…思っていたより簡単じゃないな 飛び散った餡子を眺めながらそんな事を考えていると 後ろの方で小さな電子音が鳴るのが聴こえた 後ろのデジタル掲示板に『1』と表示されている あと3匹殺すとこの部屋は爆破される運命になるってワケか ここからは決して怒りに自分を任せてはならない …どうやら次のゆっくりが来るようだ ノロノロしやがって…出てきたな あのフォルムはー 「ゆっへっへ…おいくそじじい!よろしくたのむんだぜぇ?」 全力で振り下ろす右腕をギリギリで止める事に成功した 今度はゲスまりさか…かなりでかいサイズだ 俺はこの類いのゲスまりさをショップで買って家に持ち帰ったら 水を含ませたタワシで『無くなるまで』延々と擦り続けるのが大好きだった 振り上げた手に驚いて固まってたこのゲスまりさだが 俺が危害を加えないと分かるとニヤニヤしながら近づいてきた 「ゆ…ゆへへ…!おどかしやがるのぜ…! あのじじいのいったとおりなんだぜ! まりささまにはんこうできないのはわかってるんだぜ? きょうはゆっくりたのしんでやるのぜ!」 最悪の展開だ ゲスまりさはジゆソウにある程度の事情は聞いてるようで 自分が人間に敵わない事は理解しているようだが 構わず攻撃を仕掛けてきた 人間に恨みがあるのか座ってる俺の肩あたりに 鬱憤を晴らすように体当たりを続けてる デカイだけあってちょっと痛い こめかみに浮かんだ血管がドクドク波打つのが分かる 「ゆひょおぉおぉおぉ!!さいこうなんだぜ! おらおらどうしたくそじじい!まりささまのつよさをおもいしるんだぜ!」 ヤバい今にも手が出そうだ…! そうだ!こいつを言いくるめて静かにさせとけばいいんだ! それならルールにも反してない! 「…オイまりさ…!お前がここでこのままゆっくりしてたら 俺が後であまあまを山ほどくれてやる…! それだけじゃない…!最高の美ゆっくりや最高の」 「だまるんだぜ!くちのききかたがなってないじじいだぜ! 『まりささま』ってよぶんだぜ!?このッ!このッ!」 早くブチ殺したい 噛み締めた奥歯が砕けそうだ このクソまりさが…制限時間が終わり次第連れ出して じっくりと!…楽しんでやるぞ…!! 顔を真っ赤にして耐えていると ふとシャツに何かお湯のようなものがかかるのを感じた 「ゆっへへへへ! まりささまのしーしーできたないじじいをきれいにしてやるのぜ! どげざしてじょうずに『おねがい』できたら まりささまのうんうんをたべさせてやるんだぜ?」 『2』と表示されたデジタル掲示板の下で 俺は頭を抱えていた あの後まりさは歯を全て砕いた後 リンゴの皮を剥くように皮を剥いてやった 横でピクピクしてる黒いのが『それ』だ…一応まだ生きてる 非常に気持ちが良かったがそれどころではない もう後が無い! あと2匹殺したらこの部屋は爆破され俺の人生は終わりだ! タイマーはまだ42:44を示している いっそのこと手を潰すか?でも道具も無しにどうやって!? 無理だ!そうだ! ズボンを脱いで顔に巻いて目を隠し耳も塞ごう! ゆっくりの顔を見ず声も聞かなければ怒る事も無い! ズボンを脱ぎさぁ顔に巻き付けようとしたその時 穴からゆっくりが出て来るのが見えた 後になって思ったがこの時出てくるゆっくりを見なければ良かったのだ ノロノロしやがって…出てきたな あのフォルムはー 「ゆ”っ!じじいがごはんをくれるにんげんだね! はやくもってきてね!おちびちゃんがおなかをすかせてるんだよ!」 「とっととよこちぇ!じじぃ!」 でいぶだ 今までの奴等とは格が違う サイズもさっきのまりさよりも一回り大きい しかもゲス赤ゆっくり付きのハッピーセットと来たモンだ 俺にとっては最悪の相手 目の前が真っ白に…否、真っ赤になったものの耐えられたのは 巻き付けたズボンのおかげか学習によるものか それにしてもなんてデカイ声だ ズボンの上から耳を手で押さえ付けても全然効果がない 「はやくもってきてね!れいむはしんぐるまざーなんだよ!? かわいそうだとおもわないの!? もってこないの!?ばかなの?しぬの!? 「ゆ”え”ぇ”えぇぇんおながちゅいだよぉおぉぉ! くちょじじい!はやきゅなんとかちてね!」 散々甘やかされた個体のようで 人間をエサ係としか認識していない いい加減無駄だと悟り顔からスボンを剥ぎ取った 本当に醜いゆっくりだ こんな奴等がいるから…!! 俺がコイツ等を憎むようになったのは このでいぶのようにゆっくりの中で最低の個体が存在するせいだ 俺はかつてゆっくりれいむを溺愛するぐらい ゆっくりの事が好きな人間だった 毎日自分で調理した栄養のある食事と 朝早くのれいむとの散歩 今でもれいむが頬を寄せて来る夢を見る事がある ある日れいむは死んだ 母が夕方のれいむの散歩中うっかり近所のオバさんと 話し込んでる間れいむから目を離し、 その間に母から少し離れたれいむは 中学校の通学路で 悪ガキ共に石蹴りの石代わりのように蹴り殺されたのだ 何故そんな事を悪ガキ共がしたのか? 単純な悪意から小動物を虐め殺した…それだけじゃない 今じゃ俺の住むような田舎じゃゆっくりなんて害虫扱い ゆっくりを飼うヤツはほとんどいない どうしてそうなったのかというと このでいぶのようなゲス共が好き放題暴れたからだ ゲスゆっくりは大抵 群れの中でハブられて居場所を無くした負け犬共で 人の住む所まで降りてきては ゴミ漁り、人の家に侵入、おうち宣言、 路上での交尾、騒音公害、交通妨害、甘味要求、 散々好き放題やってくれるワケだ これは碌な躾も受けず捨てられた元飼いゆっくりも同じ だんだんとゆっくりはゴミ屑だと多くの人に認識され始めた その御陰で迷惑を被ったのが 俺のれいむや自然の中でひっそりと暮らすような 人に迷惑をかけない個体だ 知らなかった事とは言え 悪ガキ共は俺のれいむをゲスゆっくりを駆除するつもりで殺しやがったんだ 奴等は勿論の事だがゲスゆっくり共も許す事は出来ない 間接的にとは言えれいむを殺したのはこいつ等ゲスゆっくり共だからだ それからだ ペットショップの片隅にあるエサ用のゆっくりの中から 特にゲスな個体を見定めて 恨みを擦り減らすように嬲り殺し始めたのは ゆっくりを殺す事を正当化するつもりは無い ストレス解消に、全く自分勝手な虐殺をしてる事は認める だがゲスゆっくりが俺に向かってそんな口を利く事は許さない でいぶごときが『れいむと同じ顔をして』そんな口を俺に利く事は許さない 「きゃわいいれーみゅはおなきゃすいてるんだよぉぉ!?」 「…うるせえ」 「おぢびちゃんがおながすいたっていってるでしょおぉおおぉぉ!? にんげんはごはんもってくるしかのうがないんだからさっさとしてね! りかいできないの?ばかなの?」 「うるせぇってんだよ!!」 デジタル掲示板が『3』を表示した 「おがぁぢぁぁぁぁああぁん!?」 「だじずるのぉおぉぉおおおぉ!!? ぐぞじじい!!でいぶがはんごろじにじでやるぅうぅうぅ!!」 「クズ共が!!よくも俺のれいむを殺しやがったな!! れいむと同じ苦しみを味あわせてからブッ殺してやる!!」 それから後の事は 泣き叫ぶ赤ゆを叩き潰してやった事までしか覚えていない 我に返った俺は 『4』を示す掲示板の下でガタガタ震えていた タイマーは既に残り十分を切り09:33を表示している もうおしまいだ! 残り十分足らずで俺はこの部屋ごと爆破される! 俺は自分のやった事を後悔していた こうなったら自力で爆弾を止めなければならない だがどうやって?俺には着ている服ぐらいしか道具が無い! どうする!? 「…ゆ…ぐぞじじい…はゆっぐり… ね…」 「がわいぞう…なでいぶに…だんでごどずるのぉ…?」 死に損ないのゲスまりさとでいぶが何やらほざいている こいつらの雑音のせいで考える事に集中出来ない デカイ図体して泣き喚きやがって 今からでもその口を利けないように…! デカイ図体? そうだ…! どうせなにも出来ないのなら賭けるしか無い こいつらを使った賭けだ 「ゆ”っ…!ざわるな…!」 「ぼぉやべるんだぜぇ…」 「…かなり痛いだろうがゆっくりしてろよ」 次の日、廃ビルから少し離れた路上で 痩せた青年が逮捕された 偶然男を拉致する現場を目撃した男性が 車のナンバーを記憶していた事によって 素早く事件が解決されたのはまさに男の幸運だった 痩せた青年は男の行きつけのペットショップ従業員で どういうワケか事件の動機を話す事は無かった 爆弾はネットで調べて作り上げたものだと言う 爆音を聴いたとの報告を受け警察が救出に向かい 男はビルから救助された 素人の犯行と言う事もあったのだろうか 犯人の作った爆弾は部屋を吹っ飛ばすような威力は無く、 更に男は部屋の端に体を縮め 二つの饅頭の塊を伸ばして盾にする事で爆風を防ぎ 頭を壁に打つけて針を縫う程の怪我こそしたものの 奇跡的に他は軽傷で運び出された 「ジグソウ」のゲームに勝利し生還を果たした者は 不思議と「ジグソウ」に感謝するようになる事があるそうだが この男は「ジゆソウ」に感謝するようになった ジゆソウが調子に乗ったゲスゆっくりを嬲り殺す事の 快楽を再認識させてくれたからだ 男はこれからまた一層ゲスゆっくりを殺し続けるだろう 担架に乗せられた憎しみと共に生き残った男は 気を失っているにも関わらずその頬を醜く釣り上げていた ー完ー