約 525,945 件
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/2388.html
閉鎖された戦場――リニアレール車両内に、嵐が吹き荒れていた。 「うおおおおおおおぉっ!!」 青い髪の破壊神――スバルが雄叫びを上げながら敵陣の中心に飛び込み、車両を占領するガジェットの一体に掴み掛かった。 コード状の触手をしっかりと掴まえ、スバルは捕獲したガジェットをハンマーのように振り回し、手近な敵に容赦なく叩きつける。 咄嗟にAMFを展開するガジェットだが、高度な対魔法防御も原始的な物理攻撃には何の意味も無く、鈍器代わりに使用された仲間共々に破片を撒き散らしながら砕け散った。 「次っ!!」 獰猛な光を瞳に宿し、スバルは次なる獲物へと魔の手を伸ばす。 ローラーブーツを噴かし、背後から抱きつくように新たなガジェットを捕まえたスバルに、残りの敵が一斉に光線を放つ。 降り注ぐ魔力弾の集中砲火にスバルは不敵な笑みを浮かべ、捕獲したガジェットを盾のように前方へ突き出した。 迫り来る凶弾の雨を認識したガジェットは防御プログラムを作動、AMFを展開する。 味方の展開したAMFに阻まれ、ガジェット達の攻撃はスバルに届くことはない。 「わはははは! 無駄無駄無駄ぁっ!!」 敵の攻撃を敵の障壁で無効化しながら、スバルは勝ち誇ったように哄笑する。 あらゆる魔法を打ち消すガジェットのAMF、敵に使われれば確かに厄介極まりない「壁」だが……自分で使う側に回ってしまえば、これ程便利な「盾」は無い。 更にガジェット本体の強度やスバル自身の腕力も相まって、魔導師にとっての最悪の「敵」は、今やスバルにとっての最適な「武器」と化していた。 敵の集中砲火が止んだ瞬間、今度はスバルが攻勢に回った。 手元のガジェットを力任せに放り投げ、敵にぶつけて牽制する。 敵が怯んだ隙に距離を詰め、術式を纏わせた拳で全力で殴りつける。 「リボルバーキャノン!!」 咆哮と共に零距離から撃ち出された衝撃波が、ガジェット達を粉微塵に消し飛ばした。 「あたしを誰だと――へぶっ!?」 高らかに勝ち名乗りを上げかけるスバルの背中に、ガジェットの放った光線が容赦なく突き刺さった。 バリアジャケットのおかげで光線自体によるダメージは皆無であったが、着弾の衝撃スバルの身体は前のめりに倒れ込み、顔面を強かに床に打ちつけた。 「っつぅー……」 痛む鼻頭に涙目になりながらスバルは上体を起こし、決め台詞を邪魔した無粋な敵を憤怒の表情で睨みつける。 「お前ら……」 幽鬼のようにゆらりと立ち上がり、スバルは額に青筋を浮かべながら口を開いた。 右手首のタービンが獲物を追う獣のように獰猛に唸りを上げ、全身から溢れ出る魔力が竜巻のように渦を巻き、荒れ狂う嵐となって車両内を吹き荒れる。 ライトニング隊との合流というティアナの指示も、リニアレール奪還という自分達の任務そのものも、既にスバルの頭から消え失せていた。 今の自分のやるべきことは唯一つ、空気の読めない馬鹿共の抹殺――今のスバルの思考回路は、その一点に支配されていた。 「――全員、極刑!!」 スバルの怒号と共に空間が爆砕し、衝撃で車両天井が弾け飛ぶ。 この瞬間、戦場は処刑場へとその名を変えた。 リニアレール第五車両、戦闘続行中。 リニアレール車両内を、一陣の風が駆け抜ける。 ≪Sonic Move≫ 合成音声の無機質な呟きとほぼ同時に、車両中央に浮かぶガジェットが細切れに解体される。 ≪Sonic Move≫ 再び響く合成音声と共に、振り下ろされた鋼の塊が車両後方を飛ぶガジェットが叩き潰し、更に返す刃でもう一体、敵がAMFを展開する前に一瞬で斬り捨てる。 ≪Sonic Move≫ 三度紡がれる死刑宣告。 次の瞬間、今度は車両前方のガジェットを、赤い髪の死神――エリオの槍が貫いていた。 動きを止めたエリオをガジェット達が素早く取り囲み、一斉に光線を撃ち出した。 ≪Sonic Move≫ 迫り来る光線の集中砲火に、エリオのデバイスが四度目の呟きを発する。 次の瞬間、突如エリオの身体が霞のように掻き消えた。 標的を見失った光線は直進を続け、その先に浮かぶ仲間の身体に無慈悲に突き刺さる。 遅い、余りにも遅くて欠伸が出る……同士討ちして爆発するガジェット達を背中越しに一瞥し、エリオは軽やかな音を立てて床に着地した。 鋭く正確なガジェットの光線攻撃だが、キャロの加速補助を二重に受け、しかも高速機動魔法を発動した今の自分の敵ではない。 破片の散らばる床を蹴り、壁を、天井を、そしてまた床を……車両内を縦横無尽に駆け回り、エリオは踊るように生き残りのガジェット達を翻弄する。 ガジェットがエリオを捕捉し、内蔵武器を起動する――その一瞬の隙に敵の懐に飛び込み、光線を放たれる前にデバイスを突き立てる。 AMFを発動させるべく敵が動きを止めたその刹那、ガジェットの背後に回り込み槍を一閃させて斬り伏せる。 魔法を無効化するガジェットのAMFも、鋭いが遅い敵の攻撃も、使われる前に倒してしまえば気にする必要は無い。 圧倒的とも言えるエリオの猛攻を前に、生き残りのガジェット達は撤退を開始した。 卵のような身体を反転させ、脱兎の如く逃げ出すガジェット達だが、しかしその必死な行動を嘲笑うかのように……、 ≪Sonic Move≫ ――敵を遥かに凌駕する神速の動きで正面に回りこんだエリオが、槍を携え立ち塞がる。 更にエリオの隣にもう一人、桃色の髪の伏兵――キャロが姿を現した。 「錬鉄召喚、アルケミックチェーン!」 キャロの呪文発動と共に床面に魔方陣が展開され、その中心から出現した無数の鎖がガジェット達を絡め取る。 「フリード」 捕縛したガジェット達を油断なく見据え、キャロは傍らの相棒に呼びかけた。 主の命令に応えるように、フリードが口の中から火球を生み出す。 同時に隣のエリオも槍を構え、穂先に魔力を集束させる。 「ブラストレイ」 キャロの号令と共に炎の弾丸が、 「ルフトメッサー」 エリオの怒号と風の刃が、 「「――シュート!!」」 撃ち放たれた。 同時に撃ち出された炎と風の魔法は互いに干渉し、力を増幅させながら混ざり合い、最終的に巨大な火球となってガジェット達を飲み込んだ。 まるで赤い絨毯を引いたように車両中が火の海に包まれ、防火装置の作動した天井から人工的な雨が降り注ぐ。 スプリンクラーの水滴を全身に浴び、消えていく炎の海をどこか名残惜しそうに一瞥してから、エリオとキャロは互いの健闘を称え合うように笑いながらハイタッチを交わした。 リニアレール第十車両、制圧完了。 「あの馬鹿共が……」 各車両に設置された防犯カメラからリアルタイムで送られてくるスバル達の戦闘映像を横目に見遣り、ティアナは苛立ったように舌打ちした。 「馬鹿スバル! 遊んでないでとっとと先に進みなさい!! エリオにキャロ! 車両燃やしながらはしゃぐな!!」 調子に乗る同僚達を通信回線越しに怒鳴りつけ、ティアナは続いてロングアーチへと通信を繋ぐ。 「スターズF、五両目で戦闘中。ライトニングF、十両目を奪還」 自分は何をしているのだろう……列車の停止作業と並行して、いつの間にか現場管制の真似事をしている自分自身に呆れるように、ティアナは重い息を吐いた。 管制など訓練生時代に軽い講義受けただけで演習すらも行った経験は無く、そもそも複数の作業を両立出来る程の処理能力は自分には無い。 現に今自分は現場の状況報告と司令部からの指示伝達との中継に追われ、肝心の車両制御の方は中々進展していない。 本来どちらかに集中するべき――否、現状を鑑みればどちらに集中するべきかは明らかなのだが、どちらとも中途半端に進んでしまっているので切り捨てるに捨てられない。 結果どちらにも集中出来ないまま時間だけが浪費されていくという本末転倒な状況が続いているが、自分を変えようにもつまらない意地が邪魔をして中々一歩を踏み出せない。 大体このような作業はリイン曹長の仕事だろうに……出撃の際に隊舎に残った上司に八つ当たりするように恨みの矛先を向けながら、ティアナは黙々と己の仕事を続ける。 手元に展開したウィンドウ――緊急操作マニュアルを慎重に確認しながら、掲載された過程の一つ一つを丁寧に消化していく。 『ティア! 五両目のガジェットは全部潰したよ!!』 『ティアナさん、十両目の鎮火を確認したので次の車両に進みます』 スバルとエリオからの報告を受け、制御パネルを操作しながら該当する車両の防犯カメラの映像を呼び出す。 ……マニュアルを読み間違い、操作手順を一つ飛ばしてしまいエラー表示が出た。 「スバル、六両目のガジェットは五体。七両目の重要貨物室には敵はいないみたいだから、さっさと潰してとっととちび達と合流しなさい。 エリオにキャロ、九両目の敵は九体、ちょっと数が多いけど気合いと根性で乗り切るのよ」 操作をやり直しながらしながら現場のスバル達に通信を繋ぎ、激励の意味を込めて指示を出す。 ……パスワードを打ち間違い、エラーの壁にぶつかった。 「スターズF、五両目を奪還。ライトニングF、九両目に突入」 再度パスワードを入力し、ロングアーチにも状況を報告する。 ……指が誤って削除キーに触れ、これまでの苦労が白紙に戻った。 ティアナの中で、何かが切れた。 「だああああああああああああっ、もう! このポンコツ列車がああああああああっ!!」 髪の毛を両手でかき回しながら絶叫し、ティアナは八つ当たりするように操作パネルに拳を叩きつけた。 緊急操作マニュアルに羅列された二十以上の手順を再び最初からやり直し……自身の過失が原因とはいえ、これは流石に気が滅入る。 大体電車などどうせ走るか止まるか車内放送を流すか程度の機能しか存在しないというのに、その操作に何故ここまで煩雑な手順が必要となるのか。 犯罪防止のためか何かは知らないが、無駄なハイテクなど害悪以外の何物でもない。 やってられるか……据わった眼でマニュアルのウィンドウを睨みつけ、ティアナはデバイスを取り出した。 クロスミラージュの銃身が怯えたように一瞬震えるが、頭に血が上ったティアナが気付くことは無かった。 わざわざ正攻法で付き合ってやる義理など、考えてみれば無いではないか。 目には目を、ハイテクにはハイテクを――クロスミラージュを制御システムに介入させ、ガジェットと同じやり方で車両の制御を乗っ取ってしまえば万事解決。 インテリジェントデバイスに搭載されたAIは戦闘用、しかもクロスミラージュは最新型……ガジェットのような訳の解らないメカに出来て、自分の相棒に出来ない道理は無い。 デバイスの装甲をこじ開け、必要な配線を引き出す。 機械の扱いは簡易デバイスを製作する際に多少は勉強した、ハードウェアを繋げるだけならば自分でも簡単に出来る。 ソフトウェアの接続と掌握――言い換えればハッキングの作業自体は完全にクロスミラージュ頼みであるが、そこは相棒の性能を信じるしかない。 ≪M……master?≫ クロスミラージュが困惑したように声を上げるが、ティアナは無視して作業を続ける。 ガジェットの残骸から拝借したケーブルにデバイスを繋ぎ、制御機器に接続して準備完了。 「クロスミラージュ! ちょっとハッキングでメインコンピュータを乗っ取って、大至急列車を止めなさい!!」 まるでイソギンチャクのように無数のコードやケーブルに繋がれ、急造のハッキングツールと化した己のデバイスに、ティアナは高らかに命じた。 こいつはデバイスを一体何だと思っているのだろーか……所有者の破天荒な行動に些か呆れながらも、クロスミラージュは主の命令を忠実に実行する。 ――メインシステムにアクセス、プロテクトを突破 ――制御プログラムに介入、システムの掌握完了 リニアレールの制御奪取を完了させたクロスミラージュが停止シグナルを送信し、列車が急ブレーキをかけて減速する。 まるで地震でも起きたかのように車両が大きく揺れ、窓の外の景色が動きを止める。 ≪Order complete≫ 「ご苦労」 命令完遂を報告するデバイスに労いの言葉を短く口にし、ティアナは大きく安堵の息を吐いた。 さて……クロスミラージュに繋いだコードやケーブルを引き抜きながら、ティアナは今後の段取りを思案する。 まずはロングアーチに列車停止を報告、ついでにスバル達の戦闘状況も伝えておけば効率的だろう。 その後はスバルと共にエリオ達と合流……否、先にスバルを合流させて後から追い着いた方が良いだろうか。 各車両内の映像を映すウィンドウ群を見回すティアナは、その時ふと眉を顰めた。 エリオ達の戦う第九車両からの映像が、いつの間にか途絶えている。 受信機の故障か、それとも戦闘の余波でカメラが壊れたのか……十中八九後者だろーなーとエリオ達の荒っぽい戦い方に嘆息を零しながら、ティアナは二人に通信を繋ぐ。 「エリオ? キャロ?」 二人の名を呼びかけてみるが、しかし通信機から返るのは雑音のみ……念話でも同じことを試してみたが、結果は変わらなかった。 敵のジャミング……ティアナの顔から血の気が引いた。 AMFを全開にすれば、通信魔法の妨害など造作も無い。 その思考に至らなかった自分自身を責めながら、ティアナは唯一通信の繋がる仲間――スバルに叫ぶ。 「スバル! エリオとキャロを助けて!!」 同時刻、エリオとキャロは半壊した第九車両で、巨大な敵と対峙していた。 比喩ではない……自動扉を周囲の壁ごと突き崩し、ガジェット掃討も佳境に入っていた第九車両に、それは突然姿を現した。 車両の幅の半分以上を塞ぐ球形の巨体――これまで自分達が倒してきたガジェットとも、外でなのは達が戦う敵とも異なる、しかし明らかにその面影を持つ新手の敵。 ガジェットの新型、卵型の通常タイプをⅠ型、三角形の航空型をⅡ型とするならば、これはさしずめⅢ型と言ったところだろうか。 この車両に残存していたガジェットⅠ型数体を周囲に従え、威圧するように自分達と相対する未知の敵に、エリオ達の顔が緊張に強張る。 ガジェット達も敵を警戒しているのか、攻撃を仕掛ける様子も先の車両に進攻する気配も見せない。 まるで時が止まったかのように続く沈黙、しかしこのまま永遠に睨み合いで時間を浪費する訳にもいかない。 「キャロ、頼むよ」 「任せて、エリオ君」 パートナーの言葉に力強く首肯し、キャロは呪文の詠唱を始める。 エリオの足元に薄桃色の魔方陣が展開され、くるくると独楽のように回転しながら輝きを増していく。 「What I want is the chain of bonds, What I wish is the sword of justice.(我が請うは縛めの鎖、我が求めるは正義の剣) What I hope is the bliss of my edge, what I desire is ruin of my enemy.(我は望む幸運を我が刃に、我は欲する破滅を我が敵に)」 朗々と紡がれるキャロの言の葉を聞きながら、エリオは腰を落としてストラーダを構えた。 両脚にぐっと力を込め、穂先の切っ先に魔力を集束させる。 穂先の付け根のカバーがスライドし、カートリッジの空薬莢が排出される。 放物線を描いて落下する空薬莢が、からりと音を立てて床に転がり……瞬間、エリオが動いた。 地を穿つような勢いで床を蹴り、デバイスのブースターを点火する。 ほぼ同時に、キャロの呪文も完成していた。 「アルケミックチェーン・デュアルブーステッド!!」 車両内に凛と響き渡るキャロの声と共に、床に敷かれた魔方陣から数本の鎖が〝高速で撃ち出され〟た。 術式構成の段階で「加速」と「突撃強化」の補助効果を組み込まれ、無機物操作の魔法によって召喚と同時に矢のように射出された錬鉄鎖が、ガジェットⅠ型を正確に射抜く。 一つ眼に灯る光が消え、鎖に貫かれたまま力なく床を転がるガジェットⅠ型に一瞥も向けることなく、エリオはただひたすらに目の前の敵――ガジェットⅢ型へと突き進む。 ≪Sonic――≫ デバイスの無機質な呟きと共に、エリオの世界がギアを切り替えた。 音が消え、まるで早回しのビデオのように加速しながら流れ過ぎる景色……神速の領域、時の流れから切り離された孤独な世界で、エリオはただひたすらに前進を続ける。 走る、奔る、駆ける、翔ける……。 敵の懐に飛び込む、己の間合いに捻り込む……辿り着いた。 床を踏み締める、槍を振り上げる、そして……飛ぶ! ≪――Move≫ 再度耳朶を打つストラーダの声……音を取り戻し、世界は正常な時の流れに帰還した。 一瞬でガジェットⅢ型の頭上に移動したエリオが、渾身の力を込めてデバイスを打ち下ろす。 大上段から振り下ろされたエリオの斬撃を、ガジェットⅢ型は帯のようなアームを交差させて受け止めた。 魔力の刃と鋼の鎧がぶつかり合い、火花を上げて拮抗する。 堅い……予想外の敵の頑丈さに歯噛みしながら、エリオは更に槍を捻じ込む。 魔力を纏った鋼の切っ先が敵のアームを貫通し……刹那、逆三角形に並んだガジェットⅢ型の三つ眼が不気味に輝き、放たれた光線がエリオの身体に突き刺さった。 「ぐぁっ……!」 呻き声と共に吹き飛ぶエリオを、ガジェットⅢ型のアームが絡め取るように拘束した。 容赦なく身体を絞めつける敵の拘束に骨が軋み、エリオの口から苦痛の声が漏れる。 「エリオ君!」 捕われたパートナーに悲鳴を上げ、エリオの元へと走り出すキャロの足に、黒い触手が絡みついた。 転倒するキャロの目に映ったものは、身体を貫く鎖を引きずりながらゆっくりと起き上がる、破壊した筈のガジェットⅠ型。 倒し損ねていた……キャロの瞳が愕然と凍りつく。 再起動したのか、最初から死んだフリをしていたのかは定かではないが、どちらにしても形勢が逆転してしまったことに変わりは無い。 危機に陥る主の前にフリードが盾のように立ち塞がり、口元に火球を生み出す……が、生成された炎の弾丸は、しかしその直後に魔力レベルで霧散した。 AMF……キャロの顔が絶望に染まった。 必死に術式を構築しようと試みるが、魔力は欠片も結合しない。 足掻くキャロを嘲笑うように、ガジェットⅠ型は触手をのばしながら獲物ににじり寄った。 割れた単眼が鈍く煌き、コード状の触手が嬲るようにキャロの身体を這い回る。 「い、やぁ……!」 掠れたような悲鳴がキャロの口から漏れ、大粒の涙が頬を零れ落ちる。 その瞬間、エリオの中で何かが切れた。 「ゴミ屑風情が……キャロを、放せええええええええぇっ!!」 怒りに染まった咆哮と共に、突如エリオの全身から激しい電光が迸った。 まるで爆発するようにバリアジャケットが弾け飛び、衝撃でガジェットⅢ型のアームが千切れ飛ぶ。 敵の拘束から解放されたエリオはガジェットⅢ型に背を向け、キャロを陵辱するガジェットⅠ型へと走り寄った。 狂犬のように牙を剥き出し、猪のように直線的な突進を仕掛けるエリオを嗤うように、ガジェットⅠ型が光線を放つ……が、 「鬱陶しい!!」 怒号と共にエリオの体から放たれた電撃の牙が、まるで食い千切るように敵の光線を消し飛ばした。 守りたいと思った人がいた、護ると決めた人が出来た。 いつも笑っていて欲しいと願った、だから自分がその笑顔を守ろうと誓った。 故にエリオは……キャロを泣かせたあの敵を、全力全開で殺すことを心に決めた。 どくん……と、ストラーダの奥で何かが鼓動したような気がした。 「うおおおおおおおおおおおおっ!!」 雄叫びを上げながらエリオはガジェットⅠ型に肉薄し、デバイスを力任せに突き刺した。 体内の魔力の全てを電気に変換し、ストラーダ表面を伝えて敵の体内に叩き込む。 内部機構を直接破壊され、黒煙を吐きながら完全に機能を停止したガジェットⅠ型を、エリオは槍に突き刺したまま振り上げ、まるで鉄槌を振るうように床に叩きつけた。 まるで硝子細工のように粉砕され、破片を撒き散らしながら爆発するガジェットⅠ型に、キャロが安堵したように吐息を零す。 「ありがとう、エリオ君……」 涙の残る顔で控えめに笑うキャロに応えるように、エリオは荒い呼吸を整えながら満面の笑みで親指を立てた。 その時、エリオによる仲間の破壊を静観していたガジェットⅢ型が、再び動いた。 無機質な――しかしどこか獲物を狙う猛禽のような鋭い光が三つ眼に灯り、撃ち出された三条の光線がエリオの背中を襲う。 しまった……迫り来る敵の攻撃に、エリオは愕然とした表情を浮かべた。 キャロを助けることで頭がいっぱいで、背後の敵のことまでは考えていなかった。 身を護るバリアジャケットは既に無く、回避も電撃による相殺や防御陣の展開――魔力が残っていれば、の話であるが――もこのタイミングでは間に合わない。 やられる……自身の甘さと現実の残酷さに歯噛みするエリオの前に、青い影が突如滑り込んだ。 「スバルさん……」 まるで盾になるように自分の前に立ち塞がる白い背中、まるでヒーローのように自分の窮地に颯爽と現れた仲間――スバルの名を、エリオは思わず呟いていた。 ≪Protection≫ 術式発動を告げるデバイスの声と共に、スバルは掌を前方へと突き出す……が、AMFが展開されているのか防御陣が出現することはなく、三発の光線が正面からスバルを直撃した。 「ぁ痛っ!?」 「「スバルさん!?」」 予想外の事態にスバルは小さく悲鳴を漏らし、エリオとキャロは唖然と声を上げる。 しかし第五車両の時には敵の不意打ちにあっさりと吹き飛ばされたスバルだったが、その際の教訓を生かしたのか、今度は踏鞴一つ踏まずに持ち堪えてみせた。 文字通り身を盾にして仲間を守り抜き、スバルは背中越しにエリオ達を振り返る。 「二人とも、よく頑張ったね。もう大丈夫だよ!」 笑いながら紡がれたスバルの科白は、根拠も説得力も――数秒前に本人があっさりと敵の攻撃を喰らったこともあり――皆無だったが、何故かエリオ達の心に染み入った。 格好良い……と、素直に思えた。 「さぁ、二人とも……皆で玉コロ退治といこーか!!」 不敵な笑みと共に轟くスバルの号令と共に、反撃が始まった。 天元突破リリカルなのはSpiral 第10.5話「初めて会っていきなりだけど、一緒に頑張ろうね(後編)」(続) 戻る 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/subaru_levorg/pages/45.html
≪その他≫ 順次更新 ■スバル「レヴォーグ」は6月20日に発売延期、「EyeSight(ver.3)」量産を万全に(4/15) http //monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1404/15/news078.html ■熊谷泰典氏が語る レガシィツーリングワゴン そしてレヴォーグの魅力(3/7) http //www.goo-net.com/magazine/editors/201403/14030701_02.html ■先行予約も絶好調の「LEVORG(レヴォーグ)」に試乗--開発責任者が語る魅力とは(3/3) http //japan.internet.com/busnews/20140303/7.html ■スバル・レヴォーグは大ヒットの香り!~河村康彦(2/7) http //auto.hobidas.com/auto/impression/article/139624.html ■【弾丸試乗レポート 第52回】日本向けボディにスバルの最新技術を凝縮した 新型「レヴォーグ」プロトタイプ試乗レポート(1/31) http //magazine.kakaku.com/mag/hobby/id=1515/ ■“レガシィの正常進化版”レヴォーグ試乗レポート(1/27) http //allabout.co.jp/gm/gc/438884/ ■レヴォーグ・プロトに試乗。気になる走りは?(1/24) http //carview.yahoo.co.jp/article/testdrive/101924/ ■ドキュメント スバル「レヴォーグ」生誕の1日(11/25) http //magazine.kakaku.com/mag/hobby/id=1433/?lid=exp_102945_kuruma_top ■デザイナーズ インタビュー 東京モーターショー2013 「スバル レヴォーグ」(12/5) http //carnifty2.cocolog-nifty.com/sugimoto/2013/12/2013-6ad1.html
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/1782.html
Devil never Strikers Mission 07 VS Dante エリオ・モンディアルの武器はスピードだ。 彼を少なからず知っている者ならば、それを否定する事は無いだろう。 そのスピードで彼はダンテに背後から奇襲を仕掛けた。 「最初はエリオか」 隣でフェイトが冷静に言った。 ここまでは予想通り、と言うか予想する必要も無い。 我々が見たいのはダンテの対応のほうだ。 そのダンテは後ろから来たエリオの攻撃を振り返りながら倒れるようにして避けた。 倒れながらストラーダの柄の石突(一番下)に近い所を掴み、エリオについていく形で移動した。 あれは中々いい考えだ。回避と防御が同時に行える。 実際さっきまでダンテがいた場所に、ティアナとキャロの同時攻撃が飛んでいる。 結果から見ればあれは最善手の一つだ。 「あ、エリオ落ちた……うわ、大丈夫かな、あれ」 今言ったのはシャーリーだ。 ダンテがゼロ距離でエリオを撃ち落とし、エリオは近くの木に激突したのだが……大丈夫だろう、きちんと受身をとっていた。 だがエリオは今ので撃墜だ。 ダンテの銃が非殺傷設定だったからあれで済んだが、エリオが撃たれたのは頭、本来なら死んでいるはず。 もっとも部位に限らず当たれば撃墜扱いでリタイアになるルールなのだが。 この模擬戦はダンテの銃、エボニー&アイボリーSの改造者、シャーリーの要望で行なわれている。 作った以上できる限りの面倒は見たいというメカニックとしての考えと、色々な相手との経験を積ませたいというなのはの考えが上手い具合に重なり、新人四人+今日から入るギンガが相手を務めている。 そんな事を考えているうちにダンテは手を放し、数十メートル離れているキャロの額に鉛弾(に見える魔力弾)を当てていた。 「キャロ、撃墜!」 「あの人頭を撃ったよ!?あんな小さい子なのに!?」 審判を務めるなのはの声が訓練場に響き、 陸士108部隊からきたマリエルが信じられないといった声を上げるが、 相手が誰であろうと手加減しないのは相手を対等に見ているからなのだから、あれはあれでフェアだ。 俗に『フレイザード理論』と言われる物に近い。私だったら絶対しないし褒める事も出来ないが理解はできる。 「ふう、次は誰だ?面倒だしまとめて来いよ」 そう言って挑発するダンテ。 その挑発に乗った訳ではないだろうがギンガとスバルが同時に飛び出し、それぞれのリボルバーナックルを突き出すが、ダンテはそれを転がって避ける。 しかしよく転がるやつだ。転がって移動していた時期があったのかと思ってしまうくらいだ。 転がったダンテと拳を打ち込んだナカジマ姉妹。 体制を整えたのはナカジマ姉妹が速かった、銃と拳のリーチは比べるまでも無い、攻撃はダンテの方が先だった。 放たれた銃弾はナカジマ姉妹の額に一発ずつ命中、撃墜。。 この時ギンガはスバルを守ろうとしてスバルとダンテの間に入り、スバルは防御や回避より攻撃と考えたのか前に走った。 「あた!?」 「え!?」 結果、姉妹はぶつかり合い、スバルが下、ギンガが上の形で仲良く折り重なって倒れた。 倒れた瞬間スバルの体が映らないチャンネルにあわせたテレビのように歪んだ。 ふむ、今のを見たかどうかが今後の展開の予想の分かれ目だろう。 さて、残りはティアナだけだが同じ二丁拳銃で勝ち目があるかは怪しい。 ティアナにあってダンテに無い物は幻術と弾丸の使い分けくらいか。 ダガーモードは論外だ。あのダンテに接近戦を挑むなんて…… 「モード2!」 「Set up Dagger Mode」 考えたそばからティアナはクロスミラージュを変形させ、駆け出した。 何を考えている?ダガーモードではリベリオンに対抗できるわけがないしそもそもダンテが接近を許すとも思えない。 無謀としか言いようの無い特攻。当然ダンテはティアナに銃を向け、トリガーを引く。 右手の銃から放たれた魔力弾がティアナに襲い掛かるが、顔の前で構えた魔力刃によって弾かれる。 「お、上手い。でも多分…」 もう今の防御は通じない。シャーリーはそう言いたいらしいが私はそうは思わない。 今のは常に頭を狙うダンテの癖を見抜いたから出来た防御だ。 癖と言っても悪癖ではなく、意識された行動だから防げるのは最初の一発きり。二度目は無い。 だが欲しかったのはその一発だろう。 一発防がれればどうする? おそらくダンテは防がれない攻撃をする。協力だが、少し手間のかかる攻撃を。 「……甘いぜ」 私の予想通りだった。ダンテは銃を構えながらも引き金を引かず、集中していた。 マガジンがある手の中に魔力を留め、集める。 手の中だけでは収まらない魔力は力強い赤い光となりダンテの手から溢れ出す。 その光はゆっくりと手を伝い、手首を越え最終的には肘近くまで到達した。 「これは防げないだろ?」 ティアナを見据えながら銃をくるくる回すダンテ。 確かにあのチャージショットは防げないだろうが、あのスピンには何の戦略的優位性(タクティカルアドバンテージ)もない。 実戦用とパーティー用のスキルは違う。いいセンスだが、あれは役に立たない。 目的は引き付けるまでの時間潰しだろうが、それはティアナに対してのみだ。 後ろから飛び掛るスバルには意味を成さないどころか大きな隙になる。 「スバルが……2人?」 スバルは今ギンガと一緒に撃たれた方とダンテの後ろにいる方の2人がいる。 どちらかが幻術なのだろうが、それはもちろんギンガといたほうだ。 本物のスバルが後ろに接近していた事など考えもしなかったダンテ。 つまり、リボルバーナックルの一撃をほぼ無防備に受けてしまう―――はずだった。 ダンテがスピンの一環として自分の体さえ回していなければ。 銃を上に放り投げ、自身も一回転しキャッチ。 当然その時わずかな間だが後ろを向く。 そのわずかな間でスバルとダンテの目が合ってしまった。 「何だ、後ろからも来てたのか」 見落としてたらかなり危なかったのだがダンテは皮肉な笑みを崩さない。 この時点でティアナを餌にしてスバルで叩く計画は失敗。 別に誰かのミスがあった訳ではない、むしろギンガのスバルを隠すフォローがあった分いつもより良かったはずだ。 それなのに失敗したのは運が悪かったからだろう。本当にそれ以外に理由が見当たらない。 「使うつもりはなかったんだがな……」 そう言いながらダンテは背負った得物に手をそえる。 どうやら大剣を使うつもりらしいが、その前に双銃の回収を済ませるため、上に跳んだ。 空中で双銃を掴んだダンテはそのまま上昇を止めず、真下にティアナが来た辺りでようやく跳躍の頂点に達した。 そのまま頭を下にし、独楽のように回転しながら真下に銃弾を注ぎ込む。 「ティア!」 銃弾の雨の嵐に曝されようとしている親友を守るべく、一瞬遅れて真下に行き、防御魔法を上に展開するスバル。 ダンテの降らす銃弾の雨を防ぐその姿はまさに傘。この傘から出た瞬間降り注いでいる銃弾に蜂の巣にされることは間違いない。 しかも降って来るのは弾丸だけではない、ダンテだっていつまでも重力に逆らえる訳ではない。 弾に比べれば遥かに遅いが、ダンテだって落ちてきている。 このままダンテとの距離が縮まっても接近戦の速度で勝てるとは思えない。 かといって逃げることも出来ない。完全に手詰まりだ。 「ティア!何とか一撃防ぐから!一撃で倒して!」 「まったく、簡単に言うわね……いいわよ、それで行きましょ」 今の会話から二人の作戦――そう言えるのかも怪しいが――は簡単に予測できる。 だがそれがダンテに通じるか?これは本当に賭けだろう。 ダンテとの距離は既に3メートルを切っている。 「面白くなってきたな」 「ああ、小細工のない純粋な力勝負だからな」 シグナムが今日初めて言葉を発した。 それに答えたのは同じく今まで黙っていたヴィータ。 ―――距離はあと2メートル。 「力勝負の何が面白いんですか?」 マリエルの質問は当たり前だ。 今日初めてここに来た彼女には今までなのはが何を教えていたかを知らない。 ―――あと1メートル。 「なのはは今まで、基礎を重点的に教えてきたんですよ」 フェイトが言い、納得するマリエル。 2人はなのはが入隊以来ずっと鍛えてきた物で勝負に出る。 ダンテのような化け物じみた相手に今までの訓練の成果をぶつけるのだ。 これが面白くならない訳がない。 銃口とバリアが触れた瞬間、ダンテは銃口を支点に体を横に倒し、地面に着地した。 ホルスターに銃をしまい、大剣マーシレス――リベリオンと比べて細く、強度は劣りそうだが少し長いので間合いの広そうな剣だ――を抜き放ち、スバルを見据えるダンテ。 ダンテの視線に臆することなく睨み返すスバル。どちらも気合は十分だ。 ダンテは左半身を二人に向け足を肩幅より広く開いて立ち、マーシレスを顔の右で、両手を使い縦に構えた。 分かりやすくいうと野球のバッティングのフォームだ。 ボールはシールドとそれを作っているスバル、そしてその後ろでクロスミラージュを構えているティアナ。 「準備は良いか?」 「ハイ!」 スバルたちが大声で話した作戦はダンテも聞いていた。その上でダンテは勝負に乗った。 もう余計な口を開く事は無い。ここから先は力と力の真っ向勝負。 マーシレスを少し後ろに戻し、そのまま勢い良くシールド目掛けて叩きつける! 大剣とシールドの接触点で赤と青の魔力が激しく争いあい、周囲に突風が巻き起こる。 空のような青さを持つ盾と血のように赤い魔力に覆われた大剣のぶつかり合いはいくらか赤が優勢だ。 先ほどの銃弾の雨の嵐より遥かに強力な一撃を全身全霊を賭けて耐えるスバル。 「頑張ってはいるが、負けたなこりゃ」 「…そうだな」 ヴィータとシグナムが言った。 私もその思いだった。どう考えても相手が悪い。 軽く見積もってもAAAはあるダンテの一撃に一瞬で終わらなかっただけ良くやった。 「……て……るか」 スバルが何か言っているらしいがここからでは良く聞こえない。 「…け……まる」 まだはっきりとは聞こえない。 だが口の動きで何を言ってるかは分かった。 「負けてぇ!たまるかぁ!」 その言葉に込められた想いは、おそらくなのはが一番教えてくれた事で負けたくないという意地。 意地という言葉を辞書で調べてみるとあまり良い意味は出てこない。 だが強く、そして気高い意地は『誇り』であると私は考える。 誇りを胸に抱いた人間の力は強く、時に限界以上の力を生み出す。 今のスバルがその状態だ。 咆哮と共に残りの魔力を搾り出し、さらに一歩踏み出しダンテを押し返すその姿は力強く、ダンテにも引けをとらない。 ここにきてスバルはダンテとほぼ互角に近い状態まで漕ぎ着けていた。 勝つのはスバルか、ダンテか。 一度はダンテが手に入れると思われた勝利は、未だその立ち位置を定めず、両者の間で動かずにいた。 だが、決着は意外な形で訪れ、意外な者が勝利を手に入れた。 ダンテの握る大剣、マーシレス。それにヒビが入ってしまったのだ。 このままこの状態が続けばマーシレスは砕け、ダンテの武器は無くなる。 そうすればスバルはシールドを解除し、ティアナが得意の射撃でダンテを撃ち取れるだろう。 状況がスバル側に傾いた瞬間に、何を思ったかスバルは一瞬力を緩めてしまった。 その一瞬で決着は付いた。 ダンテがシールドごとスバルとティアナをフルスイングでかっ飛ばし、2人は上空へと打ち上げられた。 フルスイングを終えたダンテはマーシレスを地面に突き刺した。 そして空いた両手でエボニー&アイボリーを引き抜き、空中にいる2人を狙い撃った。 2人はそれに何の反応も出来ず一発づつ額に受け、今度こそ撃墜となった。 「スバルとティアナ!撃墜!」 なのはが右腕を頭上でぐるぐる回しながら宣言した。今の勝負の影響かかなりテンションが高い。 これでフォワード陣は全滅だ。 ダンテに目を戻すと、地面に突き刺したままのマーシレスを眺めていた。 あのヒビの状態を見ているのだろう。 私がそう思った瞬間だった。どこからか飛んできた火球がダンテの頭に当たったのは。 火球は後頭部に当たったのでダンテは首を大きく前に倒した状態で固まっていてその表情は全く見えない。 「ダンテさん撃墜!」 なのはが言うが一体誰がやったのか分からなかった。 火球が飛んで来た方向を目で追い、やっと理解した。 「キュクル~♪」 「勝者!フリード!」 ……確かにキャロは撃墜されたがお前は違ったな。 お前がいた事に気づいていたのは一体何人いただろうか、 『私』がザフィーラであることに気づいた数の方が多いと願いたい。 「終わった~?」 私の隣で不機嫌そうにヴィヴィオが言った。 ヴィヴィオは私と一緒になのはとフェイト、2人のママを迎えに来ていたのだが、今日はダンテとの模擬戦があったのでいつもより少し終わるのが遅かったせいで待ちくたびれている。 私は頷き、ヴィヴィオに「もういいぞ」と言った旨を伝える。 途端に上機嫌な笑顔を見せ、ヴィヴィオは駆け出した。まったく、子供とは無邪気なものだな。 そんなに勢いよく走ると転ぶぞ……遅かったか。 まあなのは達も見ているし、綺麗に転んでいた、大丈夫だろう。 「さっきから気になってたんだけどあの子って?」 「えっとですねえ」 そういえばマリエルはヴィヴィオの事は知らなかったな。 シャーリーは何と説明するのだろうか、面白がって誤解されそうな説明をしなければ良いが…。 「あの子は…」 『あの子』は今、私の隣にいたはずのフェイトに助け起こされていた。 なのはは自分の力で立ち上がらせたかったらしいが、フェイトの厳しすぎの一言に何も言えなくなる。 どう見ても子供の教育方針について話し合う夫婦にしか見えなかった。 「なのはさんとフェイトさんの子供です♪」 最高のタイミングだった。マリエルが勘違いをするのには。 「そっかー2人の子供かー。ってええええええええ!?」 マリエルの大絶叫。それを聞きながら私は今日の模擬戦をまとめることにした。 ダンテ―――マーシレスは修復不可。模擬戦後にスバルの顔を覗き込み「…金じゃなくて緑か」と呟いた。意味は不明。 スバル―――ダンテに真近で顔を覗かれ赤くなるもその後の呟きで青くなった。 フリード――ある意味今回の主役。今度からは忘れないでいてやろう。 エリオ―――飛んで行ったストラーダを探しに行ったきりまだ帰ってこない。 フェイト――ダンテのあのバッティングフォームに何か閃いたらしい。 総評――――実戦だったらフリード以外死んでいるので高い点はやれないが、あのスバルの爆発力やあえてキャロとフリードを分けた作戦は高評価。 模擬戦の後、我々はは昼食を食堂で食べていた。 普段はアイナさんの目の届く場所で食べているのだが、彼女の事情や、寮の事情、そして大人の事情が複雑に絡み合い、食堂で昼食となった。 もっとも、さっきの模擬戦の参加者や見学者、そして何より私がいるので危険など何一つ無い。 はずだった。 『なのはちゃ~んにフェイトちゃ~ん。ちょっとこっち来てや~』 ピンポンパンポーンと言うお決まりの電子音に続き主はやての声が響いたからだ。 館内放送で呼び出されたママ2人は少しワガママを言い出した娘をなだめ、この場を去った。 去ったのは二人だけではなかった。 「シャーリーさん。ちょっとストラーダを見てもらえますか?」 「あー、海に落ちてたんだっけ?分かった。調整室行こうか。ダンテさんの銃もメンテしなきゃだし」 エリオとシャーリーはデバイス調整室。それにキャロとフリードも付いて行った。 さらにスバルとギンガはマリエルに連れられて健康診断。ティアナは書類仕事。ヴィータとシグナムは食べ終わったらさっさと模擬戦に行ってしまった。 つまり今ここにいるのは私以外にはヴィヴィオとダンテの2人だけ。 ……どんな会話が交わされるのか想像もつかない。 だが私の不安などお構いなしにヴィヴィオは未だデザートを食べているダンテに話しかけた。 「あかいひと?」 「……何がだ?」 ダンテの外見そのまんまだった。『何がだ?』は私もそう思う。 「あ~か~い~ひ~と~?」 少し不機嫌そうに再び問いかけるヴィヴィオ。 頼むダンテ。下手な事は言わないでくれ、完全に機嫌をそこねたらなのはかフェイトを呼ぶしかないんだ。 「それはどんな人だ?」 ダンテの言葉を聞き、少し考えた後にヴィヴィオはテーブルの上のナイフを投げる。 ナイフは誰かに当たって一大事、とはならずに床に落ちる。 そしてヴィヴィオは私の耳の毛を引っ張り、次にナイフを指差した。 取って来いと言う事か?とりあえず従ってみる。 ヴィヴィオは最後に私から受け取ったナイフを右肩の後ろ、つまりダンテが剣を収める場所に持っていった。 「こんなひと~」 ただの危ない人だ。 そんな人と関わるとろくな人間になれないだろう、そいつにはなるべく関わらせないようにしないと。 「……ああ、地下水路で会った嬢ちゃんか、色々変わってて分からなかったぜ」 手遅れだった。 いや、そうじゃない!まずナイフを投げた事を注意しろ! 悪い事を悪いと言え!それをしない大人が増えたから今の社会は大変な事になっているんだぞ! 「あの時はありがとうございました」 「…どういたしまして」 丁寧な言葉ではあるが、そこに堅苦しさはない。むしろたどたどしい言い方が微笑ましいくらいだ。 やれやれ、と言ったため息の後に面倒そうに返すダンテ。 だがようやく恩人に会えたヴィヴィオはかなり嬉しそうだ。 その顔を見ているとここで注意して恩人との再会に水を差すのは忍びないがここは一言言っておかねばならない。 だが私が注意するには人の声を出す必要がある。私は深呼吸し、覚悟を決めた。 「ナ…」 「嬢ちゃん。ナイフを投げるのは良くないぜ、誰かに当たったら怪我するだろ?」 ……そうだ。 …………それで良いんだ。 その夜、私は主はやてに他の仕事が無いか聞いてみた。 そして食堂の新メニューのお知らせを作る仕事があるとの返事を聞いた。 少し迷ったが私はしばらくヴィヴィオを守る仕事を続けることにした。 Mission Clear and continues to the next mission 前へ 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/436.html
スレ住人の皆様 遊戯王系単発SS クロス元:遊戯王 294氏 無題(仮) 294氏 一発ネタ(仮) 301氏 1発ネタ 遊戯vsなのは 294氏 第?話 正義の味方?参上 反目のスバル氏 リリカル遊戯王GX番外編 「最強! 華麗! 究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)~前編~」 反目のスバル氏 リリカル遊戯王GX番外編 「最強! 華麗! 究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)~後編~」 反目のスバル氏 無題(仮) エラッタ氏 無題(仮) 三十七代目スレ403氏 キャロが千年リングを見つけたそうです TOPページへ このページの先頭へ
https://w.atwiki.jp/meguru_inochi/pages/18.html
スイセイ(Suisei) 「貴方たちの正体は知っています! 私にはお見通しですよ!」 「私は、間違ってません…よね…?」 プロフィール 本名:藤川スバル 絵文字:🔯 得意魔法:水 誕生日:4月15日 性別:女 年齢:16 身長:155 Like:パフェ、努力する人 Dislike:努力を認めてくれない人 人物 蓮見学園高等部魔法科1年E組。麒麟団団員。麒麟団唯一の魔法使い。蓮見学園の魔法科に所属しており、魔法科一の優等生。おっちょこちょいな性格が玉に瑕。 気になることはとことん追求する質であるため、部屋の机は常に資料と本で埋め尽くされている。今気になっていることは異能力のこと。 様々な魔法を使えるが、中でも得意とするのは水属性の魔法。気に入っている魔法は、水で巨大な龍を作り出すといった大規模なもの。 + ... 【Data.Q/aboutスバル】 彼女は麒麟団唯一の魔法使い。魔法使いである彼女が異能派である麒麟団に加入するまでの経緯をお話しましょう。ですがその前に、彼女自身の情報を公開します。 スバルは、魔法界隈では有名な藤川家の長女です。彼女には、一人の兄がいます。 そして、彼女の母親は魔法省の大臣です。ニホンを代表する魔導士の一人でもありますね。父親も、母親と肩を並べる魔導士です。 スバルはその間に生まれた子として、魔法科で有名な「蓮見学園」の魔法科一の優等生という立場をとっています。 ですが彼女の兄は、トウキョウで一位二位を争うほどの名門校で好成績を残す、スバルを越える優等生なのです。 すると当然、両親は兄をひいきするようになってしまいます。スバルも負けじと頑張っていますが、両親はそんな彼女に目もくれなかったようでした。 実はそんな状況が何年も前から続いてしまっていたため、彼女は「努力をする意味」を見失ってしまったのです。(それでも尚、学年一位の座が奪われるようなことはありませんが。) そして幾度となく繰り返される無価値な行動により、彼女は一位の座と引き換えにクラスで孤立してしまいました。 家庭にも、学校にも居場所をなくしてしまった彼女。しかし、そこに一筋の光が舞いこんだのはその直後のことでした。 彼女は偶然にも、隣のクラスの1年C組の教室に二人の異能力者を目撃したのです。 本来なら怖気づいて逃げるものなのですが、彼女は怖いもの知らずだったので、その翌日から、その二人の後を追うことを決めたのです。それは純粋な好奇心による決断でした。 そして、二人の異能力者と図書室にて接触した結果、麒麟団の存在を知ることとなったのです。 ※電子ページはここで途切れている。 まだ更新が終わっていなかったのだろうか 【aboutスバル.1 end】
https://w.atwiki.jp/trinanoss/pages/232.html
SERIES 9. Z will be back.① 落ち葉が、夜風に吹かれて乾いた音を立てながら路面をすべる。 谷を静かに吹き抜ける風が、木々をざわめかせ、町の騒音をおおいかくしている。 夜の峠。 群馬県、赤城山。 平日であり、雪がちらつき始めた季節、夜に騒ぐ走り屋たちは鳴りを潜めている。 そんな中、一台の車が、赤城道路を上っていた。 野太い、大気を殴りつけるような重低音。 スポーツカーに興味を持つ者なら、この音を聞けばいやおうもなく車種を思い浮かべるだろう。 4輪駆動独特の短く鋭いスキール音を鳴らし、その車はブラインドコーナーを立ち上がってくる。 スバル・インプレッサ。 夜の闇に溶け込む紫のボディカラーは、質量を持つ旋風のように、車体を路面に張り付かせるように安定した動きでコーナーを駆け抜けていく。 多くのFR車乗りが楽しむような、テールを大きく滑らせるドリフト走行とは一線を画す、無駄のないタイトな走り。 タイヤをスライドさせるのは少しでもはやくコーナー出口に向かうため、タイヤのグリップをフルに引き出すため。 けして駆動力を無駄に空回りさせてタイヤをすり減らすためではない。 風を切るように、走り抜けた後の草木が揺れる。 紫のインプレッサが頂上の折り返し地点となる観光案内所の駐車場に入ってくると、もう一台の車がすでに先に来て待っていた。同じインプレッサだが、ひとつ新しい型の、青色のボディの車両だ。 ドライバーの少女はフェンダーに腰掛けて待っていた。 「やっぱ来ると思ってたよ、ギン姉」 ショートヘアの少女が、紫のインプレッサのドライバーに呼びかける。 紫のインプレッサは、青のインプレッサの斜め向かいに停め、ターボタイマーをセットしてエンジンを切った。 「久しぶりに一緒に走らない?もうさあ、このインプ買ってから誰もつるんでくれなくて。 あんまり速すぎてついてこれないのかなあ?」 ケラケラと笑う少女に、ギン姉と呼ばれた女は苦笑する。 少女の呼びかけからすると、彼女の姉だろうか。 二人はおそろいのドライビンググローブをはめ、同じ車種を乗っている。 ギンガの車は、GDB型インプレッサの中期モデル。いわゆる涙目インプと呼ばれる車種だ。 インプレッサとしては全体で二代目にあたり、現行のインプレッサは三代目となる。 ギンガの妹は、彼女たちが乗る車のメーカーと同じ名前の、スバルという少女だ。 スバルが乗るのは、同じGDB型インプレッサだが後期モデル。つり目インプだ。 SUBARUは伝統的に、モデルチェンジのサイクルは長いが、同じモデルであっても間断なくマイナーアップを繰り返して性能の向上と完成度の熟成をはかっており、スポーツカー愛好者からの評価は高い。 また、WRCをはじめとしたラリーなどのレース活動にも積極的に参加し、モータースポーツに力を入れている。 なにより、自動車メーカーとしてのSUBARUは彼女たちの地元、群馬県に主要な工場を構え、群馬県民にとっては地元を代表する大企業なのだ。 思い入れはある。 「スバル、あなたも走り回るのはいいけどちゃんと考えて走ってる?言ったわよね、お姉ちゃんの真似をしたくなるのもわかるけどやるならきちんと、って」 「大丈夫だよ!わたしとこのインプはもう敵なしだって!」 ギンガにとっては、スバルはまだまだわんぱくな子供だ。 東京などの都会ならともかく、田舎では日常の移動手段として車が半ば必須なので、ほとんどの者は高校在学中、18歳の誕生日を迎えると同時に普通免許をとり、車を買う。 スバルが免許を取って走り出してから、彼女には類まれなドライビングセンスがあるということは、姉であるギンガがいちばんよくわかっていた。 だが、公道はあくまでも一般車が生活のために走る場所であり、レースのための場所ではない。 公道での走りには、言葉にはあらわしきれない暗黙のルールがある。 そうでなければ、命がいくらあっても足りない。 ギンガは、姉としてせめて、この公道の掟だけを、スバルに教えたいと願っていた。 スバルが先行し、ギンガが後追いで、2台のインプレッサは赤城下りを走り出した。 細かい違いはあるが、2リッターターボの水平対向4気筒エンジンを縦置きしたFRベースの4WDというパッケージングは共通である。 縦置きならではの重量バランスのよさを生かし、インプレッサは身軽で安定性の高い走りを見せる。 赤城道路は、そのコース全長のほとんどが中速コーナーが左右に連続するレイアウトであり、長い直線もほとんどない。 もちろんFR車でドリフト走行を楽しむのにも適しているが、インプレッサのようなトルクフルな4WDマシンにとっても戦闘力を発揮するにはうってつけのステージである。 軽快な運動性と、路面をしっかりつかむトラクションを併せ持つインプレッサは、このような峠のワインディングでは圧倒的な速さを発揮できる。 「おっ……っとと、いきなりここでくるのギン姉」 S字コーナーで早くもギンガはカウンターアタックをかける。 右コーナーへアウトから進入し、イン側についているスバルとアウト側のガードレールとの間にノーズをねじ込んでくる。 だが、ここで抜くつもりではないことを、スバルは車体の動きから読み取っていた。 切り返しの左で、ギンガのインプレッサはすっとノーズを下げる。 さらにテールをなめるようにポジションを変え、ヘッドライトの光を当ててプレッシャーをかける。 「(スバル、あなたはまだ経験が足りない──)」 「つうっ、この曲がれ……!」 フロントタイヤが鈍いスキール音を上げ、ラインがふくらむ。 アクセルとブレーキを小刻みに踏みかえ、スバルはグリップを取り戻そうとする。ノーズがイン側に向き切ったら、プッシュアンダーを出さないように慎重にアクセルを踏み込んでいく。 「(ほらもうそこから踏めないでしょ、じっと息を止めてグリップが回復するのを待つしかない──)」 ゆるやかに下りながらの右コーナーで、スバルがアンダーを出したのを見逃さず、ギンガはイン側へ切り込む。 このコーナーは視界が開けていて、対向車が来ていないことをコーナーに入る前から確認できる。 対向車線を使ってオーバーテイクが可能な区間だ。 コーナー前半で旋回を終え、ギンガのインプレッサはイン側をまっすぐカットしてスバルの前に出た。 スバルはこれに対してラインを変えることができず、アウト側から動けない。 「あーっ、やられたー!」 「(車はセッティングだけじゃ曲がらない、ましてや腕だけでもね……スバル、あなたはまだまだ覚えていかなきゃならないことがたくさんある──」 前に出たギンガは、さらにペースを上げて駆け下っていく。 抜かれたショックから立ち直り切らないスバルを、いっきに引き離しにかかる。 「(ただやみくもに飛ばすだけじゃあ公道は走れない──それは誰に教わるでもない、自分の身に染みて覚えなきゃいけないことなのよ──)」 最後のヘアピンに向かうストレートにスバルが入った時、ゆるやかに左へそれるカーブのブラインドから、対向してくるヘッドライトが見えた。 ヘアピンに入る手前ですれ違う。スバルは車を左車線へ、イン側の護岸につける。 「えっ、うそっ!?もう折り返してきたの!?」 ギンガのインプレッサが、まったくぶれることのないラインですれ違っていく。 オーバーテイクしたコーナーから折り返し地点まで、いったいどれくらいのペースで走っていったのだろうか。 タイムアタックをすれば、いったい何秒の差が出るのだろうか。 このヘアピンから折り返し地点まで、10秒あるかどうか。そこからターンしてさらにあのストレートまで走ってくるには、それこそいったい何秒のリードを広げなければならないだろうか。 スバルはペースを落とし、ふもとへ向けてインプレッサを走らせていった。 ギンガが再び頂上へ着いた頃、ドアのホルダーにかけておいた携帯電話が鳴った。 駐車場に車を止めてから電話に出る。 『あれ、スバル来てないの?走りに出たから一緒だと思ってたんだけど』 「さっきまで一緒だったんだけっどね、もう降りてったんじゃないかしら。そっちはチンクと一緒?」 『うんまあ、じゃゲンヤさんには伝えとくよ、ごめんね運転中だった?』 「大丈夫よ。それじゃ、後でねセイン」 電話を切り、ギンガは赤城山の黒い影を見上げながら、自分たち姉妹と、父ゲンヤのことを思い浮かべる。 父は地元ではそれなりの名士であり、また地元企業SUBARUとも仕事の付き合いがあり、その点は自分たちが走りをするにあたっては好都合なことではあった。 しかし、父は、娘たちがこのような危険な遊びをすることを、少なくとも安心してはいられないだろう。 スバルはいずれ、実家を出て上京するつもりでいる。高校の進路相談でもそのように言ったと聞いていた。 気の早いことで、首都高へも何度か下見に行ってきているらしい。 自分は、どうだろうか。このまま地元で、父の仕事を継いで、一家を受け継いで暮らしていくのだろうか。 地元であるここ赤城山では、“赤城最速のナカジマ姉妹”などと通り名がついたりはしているが、自分とて、いつまでも峠で遊んでなどいられないだろう。いつかは引退しなければならない。 スバルはまだ、この世界に入ってきたばかりで、何もかもが新鮮な輝きに満ちて見えるだろう。 その輝きが絶望の闇に落ちないうちに、生きていく力を、この世界で生きていく力を身につけてほしい。 「こんばんわー」 「おっスバルー、こっちこっちー」 スバルはいつも行きつけのファミレスに入り、呼びかけてきた少女と同じテーブルについた。 呼びかけてきた少女は髪を赤く染め、いかにも跳ねっかえりといった元気さを見せている。 「ずいぶん早かったじゃん、一往復くらい?あたしたちまだ一皿しかあけてないよ」 「いやー、ギン姉と一緒に走ろうと思ってたんだけど、これがアッサリちぎられちゃってね」 「えースバル、あのインプでも勝てないの?」 「もうホント、ギン姉はバケモンだよ。基本的に足ちょっと固めただけでエンジンもボディもノーマルなのに、赤城でいちばん速いんだもんね。ランエボもGT-Rもセブンもギン姉にはかなわないんだから」 「すっげーなあ、さすが赤城の青い流星(シューティングスター)っていわれるだけはある」 「ノーヴェ、そのあだ名はなんか恥ずかしいな」 スバルは照れ笑いを見せた。スバルは小さいころからずっとギンガを慕い、仲のいい姉妹だった。 スバルにとっては、姉ギンガはなにもかもが優れた、人間の見本のような人物に見えていた。 「アイナさーん、パスタ大盛りお願いしまーす!──ところでさノーヴェ、あんた自分の車のサイズ知ってる?」 「ほえ?」 「たて(全高)・よこ(全幅)・ながさ(全長)、トレッドにホイールベース。前にギン姉に言われたのよ、必ずこの数値を頭に入れて走らせろってね。 峠ってのはただでさえ狭い道だから、センチメートル単位で車体を制御できなきゃならないって、そのためには自分の車の大きさを、車体感覚だけじゃなく正確な数値で覚えろって」 スバルはポケットからメモ用紙を取り出して見せた。 そこにはインプレッサの車体数値がギンガの字で書かれている。 「実際に数値にしてみるとわかるんだけど、インプってのは基本的に小さい車なのよ。 3ナンバーになったのは太いタイヤを履くためにフェンダーを広げたからで、ホイールベースや全長はふつーの5ナンバー乗用車よりむしろ短いくらいなのよ」 「へえー……ってことはあれ、あたしのS15より?あれって14からサイズダウンしたはずなんだよね」 「小さいね。特に全長はS15のほうがほんの少し長いよ。確かに意識して走ってるとわかる、車の動きがつかみやすいって。 でもそれでも、あの赤城コースでもてあましちゃう。ギン姉と同じラインを後ろからついていこうとしても、わたしはまだこのインプの大きさを手の内につかみ切れていないってわかるんだ──」 同じころ、スバルたちの父、ゲンヤが経営する工場に、一台のレッカー車が乗りつけていた。 すでに夜は更け、普通ならば陸送の業者も来ない時間帯だ。 ゲンヤはレッカーに積まれたその車のシルエットに、引きつり笑いが浮かぶのを感じていた。 中が見えないようにブルーシートを被せられ、固定のためにロープが巻かれているが、“それ”は今にもその拘束を振りほどこうとしているように見える。 「やあ、ひさしぶりですねスカリエッティさん。突然仕事を頼みたいなんていうから何事かと思えば」 「ああ──どうしてもあんたでなきゃダメなんでね。コイツをもう一度頼むヨ」 スカリエッティはそう言い、レッカーの荷台にかぶせていたシートをどけた。 姿を現したその車、S30フェアレディZの純白のボディが、闇夜に不気味な光を放つ。 神奈川県、川崎市。そのチューニングショップは、今もっとも勢いのあるショップとして知られていた。 あまり派手な宣伝は打たないが、社長をも務める若いメカニックの腕は確かだと、その筋の人間たちには有名であった。 現在、首都高エリアに出撃するスカイラインGT-Rはその多くが、このショップによるチューンを受けていた。 工場には今日も、何台ものGT-Rが入庫し、従業員たちが作業を行っている。 その様子を事務所兼倉庫の2階の窓から見下ろしながら、その女は丸眼鏡をきらめかせた。 「相変わらずにぎやかねえ、儲かって仕方ないでしょ」 その口調は意地の悪さが含まれながらも、どこか憎めない陽気さを持っている。 「いやもう、毎日毎日馬車馬状態だぜ。それか車輪まわすハムスターとかか」 「ふふっ、まあがんばりなさいな若社長クン。ところでコレかしら、前に言ってた“R殺し”って──」 そう言って女は、コートの内ポケットから一枚の写真を取り出した。 写っている車は、ダークレッドのDC2型インテグラ。その中でも特に、スパルタンなセッティングを施された特別モデルであることをあらわす“TYPE-R”のエンブレムが、夜の首都高の照明を浴びてぎらついている。 デジタルカメラのセンサーに、強い残像を残すように“R”の赤い文字がきらめく。 「シルバーカーテンでひたすら処理して、やっとここまで鮮明にしたのよ。これで間違いないわよね、こいつが今環状で噂になってる、“R殺しのインテR”──って」 写真を受け取った男は、名をヴァイス・グランセニックという。 このチューニングショップ『ACE』の代表を務める若きチューナーだ。 「たぶんな。ウチのお客もずいぶんカモられたって言ってる──」 首都高環状線は、一般的な高速道路の印象からすれば明らかに狭すぎる道である。 車線こそ幅はあるが、とにかくカーブが多く、また曲率もきつい。 ビルの谷間をすり抜けるため、地方の山の中を走る幹線道路のように、ゆるやかに曲げるわけにはいかないのだ。 また設計も古く、路面も傷んでいるため、大パワーの車はその速さを持て余し気味になる。 そのような、どちらかといえば有利なコースであるという条件があるとはいえ、そのインテRは、格上であるGT-Rを手玉に取るような、尋常でない速さで環状を走り抜けるといわれていた。 「で、やっぱり行くの?このオレみずからオトシマエをつけてやる、って?いいトシなんだからそろそろ落ち着いたら?」 茶化すように言う女に対し、ヴァイスは苦笑しつつ、目元を鋭くする。 「いやあ、いいトシだからこそだぜ?この商売はナメられたらやってけないからな。オレのつくる車に挑戦するってことは、オレ自身に挑戦することと同じさ。 オレだってものづくり人のはしくれだからな、つくるものの出来で勝負するんだよ」 「まあせいぜい。あ、それともうひとつ、例のS30Zだけどさ──ちょっと知り合い筋で小耳にはさんでね。知りたい?」 「なんだよ?」 「どうも、こないだの湾岸線の事故はあのZが絡んでいたらしいの。空港が一時閉鎖されかけたほどの大事故で、トラックがふっとばされて── ──でそのZだけど、なんと廃車されずに修復されてるっていうのよ」 「ほう……それはオーナーの意志なのかな」 「そこまでは。でも、いずれ復活してくることは間違いないわ。これまでも、そうだったしね──」 「──相変わらず、意地が悪いなクアットロは──」 言いながら、ヴァイスはゆっくりと視線を作業場の方へ移した。 ヴァイスは、GT-Rこそが最強のチューンドだと思っている。GT-Rにほれ込んだ男だ。 悪魔のZ、うわさは聞いたことがある。そして今、R殺しも現れた。 上等だ、両方まとめて受けて立とう──そう、ヴァイスは決意していた。 東京都内、銀座の歓楽街に、その車は停まっていた。 エンジンは切られているが、人を待っているのだろうか、ハザードランプが点滅している。 道を歩く人々は、それぞれの店へ飲みに行くグループ、宴が終わって帰る途中のグループ、それぞれで、道路を走る車や停まっている車に気を留めたりはしない。 路駐をしていたインテRのドライバーは、助手席の座面に放り出していた携帯電話が鳴ったのを聞いて、読んでいた雑誌を閉じ、電話をとった。 室内灯がつけられた車内に、短めのツインテールヘアのシルエットが揺れる。 「もしもし?飲み会終わったの?」 『ああ、あと艦長たちはもう一軒回るって言ってる。僕はとりあえず抜けてきたよ』 「付き合わなくていいの?コネも大事でしょ」 『今日は提督もいっしょだったんだよ。あの人が来るとみんなつられちまうからな』 「自分の母親じゃないの。わかった、それじゃあ新橋駅の北口のあたりで待ってるから」 ツインテールの少女は通話を終え、携帯電話をしまうと、室内灯を消して車のエンジンをかけた。 点灯するヘッドライトに、ダークレッドのボディが浮かび上がる。 サイドスカートには、“TYPE-R”の赤いエンブレム。 リヤエンドに輝く大径マフラーは排気によって小刻みに揺れている。 鋭く発進していく車体の敏捷な動きは、この車がハイレベルなチューニングカーであることを主張していた。 少女の名はティアナ・ランスター。彼女は日本の大学へ通いながら、電子機器の専門技術を学んで幹部候補として軍人になる道を志していた。 先ほど電話をしていた男の名はグリフィス・ロウラン、ティアナに日本留学を勧めたいわば先輩士官で、在日米軍横須賀基地を取り仕切るレティ・ロウラン提督の長男である。 縁故などを頼るつもりはもとよりなかったが、それでも交際を持っていたほうが後々有利だろうという判断で、ティアナとグリフィスは奇妙な付き合いをしていた。 都会の雑踏を、インテRは流れるように走り抜けていく。
https://w.atwiki.jp/sinsougou/pages/1065.html
はやて「さて最近のyagami復権運動を鑑みるに、これは早々にシンとくっ付けという天啓と解釈してええんやな」 なのは「ええわけないよ。現在進行形で頭冷やそうか。っていうかいっそ凍りつこうか」 フェイト「復権運動が実際起こってるかは置いといて、それはちょっと便乗出来ないな」 ヴァイス「おおッ、火花散らしてるね~」 エリオ「あ、ヴァイスさん」 ヴァイス「なんだよ、モンハンやるなら声かけろってエリオ」 エリオ「スイマセン」 ヴァイス「で、景品もとい、シンは何してるんだ?」 くい(エリオ、PSPから目を逸らさずに指差す) ヴィヴィオ「シンパパ~♪」 シン「お、ヴィヴィオどうした~」(駆け寄ってきたヴィヴィオを抱き上げるシン) ヴィヴィオ「んとね、えっとね、ハイ!!」 シン「携帯?」 ティアナ「今日は父の日でしょ?」 シン「もしかして……これヴィヴィオが買ったのか?」 ヴィヴィオ「うん!!」(頬を赤らめつつ頷く) スバル「三人で選んだんだよ?」 シン「赤色か」 ヴィヴィオ「シンパパのお目めの色~」 ティアナ「開いてみなさいよ」 シン「ん」 待ち受けにはシン、シンの膝の上に座るヴィヴィオ、右隣りのティアナ、左隣りのスバルの四人の写真 ヴィヴィオ「シンパパ、シンパパ、お揃いだよ」(ピンクの携帯を取り出しながら) スバル「皆で色違いのにしたんだよ♪」(青い携帯を出しつつ) ティアナ「ま、まぁ、私も一応合わせたわよ。きょ、協調性って大事でしょ?」(照れながらオレンジの携帯を取り出すティアナ) ヴィヴィオ「ティアナママとスバルママもお揃いお揃い♪」 ティアナ「ママって///////」 スバル「何だかくすぐったいね」 シン「ヴィヴィオ~~ありがとうな~~~チュッ」(ヴィヴィオの頬にキス) ヴィヴィオ「きゃう~~~~♪♪」 ティアナ・スバル(*1) ヴァイス「……和むな……」(狩りをしつつ) エリオ「和みますね」(同上) キャロ「微笑ましいですね。出し抜かれてる御三方は脇に置いておいて」(PSPをしつつ) ヴァイス「………キャロは狩りか?」 キャロ「いえ、『戦場の絆~オールガンダム勢ぞろい~』です」 ヴァイス「ジムスナイパーて渋いな………」 yagami「そろそろ決着付けなアカンな。今は亡き偉大なる虎、三沢の魂よ、私のエルボーに宿れ!!」 魔王「刈り取ってあげるの」(フリッカースタイル) 便乗「フェ・イ・ト!フェ・イ・ト!!」(∞の円を描きながら) ツンつん×デレでれ 14話へ進む 一覧へ
https://w.atwiki.jp/sinsougou/pages/800.html
イージー 朝倉 彼女を選択するといきなりシンとの同居から始まる。 好感度を上げる事は簡単だが、気をつけないと空気義姉妹にフラグを壊され、 彼女達にフラグが立つので注意が必要。 それ以外は危険らしい危険は無いので初心者向け。 ただし、あるフラグが立ってしまうとシンを殺そうとするBADルートに入ってしまう。 ウルトラハード 喜緑 はっきり言って激ムズ。 シンとの好感度はシナリオ内でしか手に入らないので、 如何に他のヒロインを潰し遇わせるかに神経を集中しなければならない。 スケジュールを上手く操り、ヒロイン達とシンをかち合わせる事でシン争奪戦をさせ、 好感度を上手く減らしていかないと途中で即BADエンド。 よって、好感度が上がりやすいスバルや朝倉とフェイトには要注意。 アルティメットハード ティニー 全キャラ中最も難しいキャラ。 喜緑と同じくシナリオ内でしか好感度が上がらないが、 喜緑と違って好感度減らしの手段が無い。 姉のデス子とティアナを上手く煽り操る事で彼女達に他の皆とシンを会わせない様にして、 好感度を上げさせない様にしないといけない。 だが、煽り方を間違えるとシンの好感度上げに行ってしまうので注意が必要。 一度でも他のキャラが自分の好感度よりも上になったら、 そのキャラの為に他のキャラを妨害するBADエンドになるので注意。 このシナリオをクリアすると他のキャラでプレイする時に自分以外のキャラを妨害してくれる様になる。 スィートイージー シア 簡単過ぎてスグにクリア出来るシナリオ。 他のキャラからは空気扱いな為に自滅しあってくれて、好感度アップが容易。 基本的に好感度上がりやすいので、簡単に好感度が上がる。 一応他の義姉妹には要注意だが、好感度が簡単に上がるので心配ない。 ノーマル ギンガ シアと違い中途半端な空気キャラなので相手に認識されてる。 なので、相手キャラ同士の自滅は期待出来ない。 このシナリオはスバルの好感度を上げさせない事が鍵。 基本、どんなに好感度を上げてもスグにスバルに追いつかれる。 彼女に勝つには彼女の周りを上手く利用する事。 スバルがフリーな時は大抵シンと一緒に居るので、必ず二人の邪魔をする事。 でないと気がついたらスバルエンドになっている。 以上に気をつければ、エンディングは簡単にみれる。 一度スバルとギンガをクリアすればナカジマ姉妹シナリオが出てくる。 本編 追加ディスク 隠しモード 続編 続編追加シナリオ 第三作 攻略チャート 一覧へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/2774.html
なのははふらふらと街を歩く。どこにも行く当てはない。ただふらふらしているだけであった。 ふらふら歩いてるなのはは無意識のうちに前にいた人とぶつかる。 「あ、ごめんなさい!」 なのはが少し後ろに下がって謝る。するとぶつかった人はこう言った。 「いいんだよ」 なのははその声に聞き覚えがあった。下げていた頭を上げ、そのぶつかった人の顔を見るとそれは懐かしい顔であった。 ぶつかった人は少女だった。その顔、その赤い髪、少女の着ているドクロがプリントされている服、短いスカートと黒のニーソ。なのはは知っている。 「ヴィータちゃん?」 「久しぶりだな、なのは」 第16話 紅のキバ ドゥーエは潜入をしていた。それは地上本部に対してであった。これは任務ではなく私情だ。 (とりあえず、どこかしらね…) 「あら、ドゥーエお姉さまじゃない」 ドゥーエは突然後ろから声をかけられる。その声の主は自分と同じスカリエッティの戦闘機人ナンバー4のクアットロであった。 クアットロは自分が手塩にかけた戦闘機人でもっともドゥーエを敬愛している。 「バカンスに行ってるとばかり思ってましたけど、こんなところで何をしてるのですか?」 「実はね……」 同時刻、聖王教会指令室では先日の戦闘での経過を確認していた。 「先日グラントルーパーが倒したゼラバイアの消滅地点を中心に重力異常地帯が拡大中」 「やはりあれは重力子撹乱物質のようだな、ロッサ」 「うん、そうだね」 クロノが隣に座るヴェロッサに聞き、ヴェロッサもうなづく。 「重力子撹乱?」 アルトが少し聞き覚えの無い言葉を聞き、ルキノが教えた。 「重力エネルギーを媒介させるのが重力子、それを撹乱する物質の事」 「さすがルキノ、よくわかってるね」 「あれが蒔かれてる地域はとても空間が不安定なの」 その不安定な空間にヴェロッサの嫌な予感はますます嫌になってきていた。 (スバル、急いでくれ) なのは発見をスバルに託すヴェロッサ。 スバルはなのはをノーヴェ達と探すがなかなか見つからずにいたが、謎の通信が入りスバルはその通信を信じて行ってみることにした。 なのははヴィータにある場所につれてこられた。その場所はかつてなのはとヴィータが遊んでいた海鳴公園によく似ている公園であった。 「ここって……」 「似てるだろ? 海鳴公園に…。あそこでよく遊んだよな」 ヴィータが昔を思い出したようにふける。よくなのはとヴィータはヴィータの趣味のゲートボールをして遊んだりしていた。 それにはアリサやすずかも一緒になって遊んだりもしていた。 「あたしと会って、1年くらいだったよな。ヴェロッサが来たのは……」 ヴィータはヴェロッサが来た時の事を思い出す。ヴェロッサが来たのはなのはとヴィータがあって1年、なのはがちょうどユーノと魔法に会って1年が経った時だ。 ヴェロッサを海鳴市で見てからちょくちょくなのはとヴィータが遊んでいる様子を見ていたが、ヴェロッサの姿を見なくなったのと同時になのはの姿も見なくなった。 「あの時は何があったのかわからなかった。お前があいつに誘拐されたのかと思った」 「それは……」 なのはは当時、魔法の事を言うに言えなかったのだ。魔法の事を家族や友人に言えたのはヴェロッサに連れられる時に初めて言えたのだ。 その時なのははヴィータにも伝えようとしたが、都合が悪くヴィータがたまたまいないときであり、時間が無いとの事でヴィータに告げれないまま別れてしまった。 「あたしもお前がいなくなってしばらくして魔法の事を知ったよ。お前がヴェロッサに連れられたのはお前のリンカーコアの中にG因子があるからって事も後で知った。でもそれはあたしも同じだ」 「?」 「あたしも数少ないリンカーコアにG因子を持つ存在だ。でもヴェロッサはお前を選んだ。それはお前の潜在能力を期待したんだと思ったんだが違ったな」 「え?」 「お前はゼラバイアに負けた」 その言葉になのはは驚愕を思い出す。 「Gドリラーのパイロットの一人は死んで、もう一人は行方不明。二人を失ったのはお前の責任だ、なのは…」 「やめて…」 そしてヴィータはもう少し酷いことを言う。 「挙句の果てにお前は責任放棄。これじゃあいなくなったあいつらが浮かばねえぞ」 「やめてよ!」 なのはの目には涙が現れていた。 「わかってるよ! そんな事わかってるけど…」 「なのは、あたしと一緒に来い。あたしならお前といいコンビも組めるだろうし、お前ならグラントルーパーを使いこなせるはずだ。ただお前は戦えばいいんだ」 ヴィータの誘いになのはは乗ってしまいそうになる。その時! 「待ってください! なのはさん!」 スバルがなのは達の前に現れたのだ。 「お前はスバル・ナカジマ……」 その頃ティアナは閉じ込められているような気分で病室にいた。 「早くここから出ないと……」 その時誰かが部屋のドアのロックを解除して入ってくるの感知して急いでベッドに戻る。 そしてドアが開くとそこには三つ編みでメガネをかけた女性が入ってきた。クアットロである。 「あら、ちゃんといたのね。いましたわよ、ドゥーエお姉さま」 (ドゥーエ?) ティアナがドゥーエの名前を聞いて薄らと目を開ける。その目の先にはクアットロとドゥーエが映っていた。 「ドゥーエ!」 ティアナは驚いた。まさか裏切ったはずのドゥーエが自分の前に現れたのだから…。 「しらばくね、ティアナ」 「ドゥーエはわかるけど、そちらさんは?」 「あら、私はドゥーエお姉さまの妹のクアットロですわ」 クアットロは少し嫌味混じりなようにティアナ自分を紹介した。何故クアットロがドゥーエと一緒にいるのかというとドゥーエの話を聞いて面白そうだと思ってやっただけの事だそうだ。 戻って公園ではなのはがスバルに話していた。 「もう私は忘れたいんだ。グラヴィオンの事、教会の事、皆の事も……」 「なのはさん」 「私は人間じゃなくていい。スバルに言われたように悪魔でいいの!」 なのはの目から涙が溢れ出す。 「もう何も感じたくない。何も考えずに敵を倒す機械のようでいい」 「おい、いくぞ」 ヴィータがなのはの手を引っ張ってなのはを連れて行こうとすると、スバルがヴィータが握っているなのはの手を持つ。 スバルの手にはフェイトがしていた黒いリボンがあった。そしてスバルは怒り交じりに言う。 「ふざけないで下さい、なのはさん」 「スバル…」 「フェイトさんの事も忘れる気ですか? これを見ても何も感じないのですか!?」 「もうやめて!」 「フェイトさんも可哀相な人ですね。こんな人の為に無駄死にしたんだから!」 なのはは思わずスバルに思いっきり平手打ちをかました! 「なのはさん…、やりましたね!」 スバルも平手打ちで返す。そしてなのはとスバルは次第に拳で殴りあうケンカを始めた。 「お前ら、なのはやめろ!」 ヴィータが止めようとするも二人はやめない。 「あなた一人で戦って様な顔をしないで下さい。フェイトさんが死んで悲しいのはあなた一人じゃないんですよ」 「黙ってよ。フェイトちゃんは子供の頃から一緒だったんだよ」 「面倒ばかり起こして、心配かけるのもいい加減にしてください!」 「誰も心配してくれなんて言ってないよ!」 「本当に迷惑をかけたと思ってるんなら、リインのそばにいてくださいよ!」 「リインの……」 なのはの手が止む。ヴィータがなのはの元に駆け寄る。 「なのは!」 その時、グラーフアイゼンから緊急通信が入った。 「「「ゼラバイア!!」」」 そうゼラバイアが先日の戦闘で発生した不安定なフィールドから現れたのだ。 そのゼラバイアは最初に現れたのとそんなに変わらない姿だが、違う所があった。それは体を展開させて、左右に自分の体の真ん中を開けたのだ。 「ゼラバイア、地上400メートル付近で静止」 「変形のためか、ゼラバイアを中心とした半径500メートルに空間の歪みが確認されます」 聖王教会で動きをキャッチし、クロノは手をアゴに添えて考えるもヴェロッサはすぐに答えを出す。 「歪み、やはり……」 そしてゼラバイアの展開させた穴はゲート状になり、歪みのゲートから数ヶ月前に倒したゼラバイア達が大量に現れたのだ。 「デストロイヤークラスのゼラバイアを中心に転送空間が発生! 次々にウォリアークラスのゼラバイアが送り込まれていきます」 (カリム義姉さん……) 次元航行空間に浮いている謎の物体にいるカリムはその様子を見ていた。 「美しい、美しいわ、私のゼラバイア。抗ってみなさいロッサ。あなたで脆弱でちっぽけな力を…。見せてみなさいあなたが信じる人の可能性と言うものを……」 「そう言えば、何でスバルはここに?」 スバルの運転するバイクの後ろに乗るなのはがスバルに尋ねる。 「ドゥーエさんから連絡がありまして…、ドゥーエさん、なのはさんの事を調べてたみたいで……。前にいた場所によく似た場所に行くんじゃないかって…」 「ドゥーエが……」 「なのはさんにも思い出の場所ってあるんですね。安心しましたよ。さてと飛ばしますよ! ティアとドゥーエさんが待ってます!」 「うん!」 スバルのバイクはさらに速さを増す。ティアナとドゥーエの元へ走る! (チンクさん、ドゥーエさんはチンクさんの言ってたとおり冷たい人じゃなかったです。ちゃんと仲間の事を気遣う人なんですね) 「ところで何でここが?」 廊下を走るティアナがドゥーエとクアットロに聞く。 「この子のおかげよ」 「私の能力があればこれくらい簡単なものですわ」 クアットロはウーノよりは劣るものの、情報処理能力はかなりの腕前を持っている。 三人が廊下を走る中、レジアスを発見し、レジアスの護衛の二人を簡単に倒し、ドゥーエは自身の武装の鉤爪「ピアッシングネイル」をレジアスに向ける。 「中将、一緒に来てもらおうかしら」 「お前は……」 そしてドゥーエはレジアスを連行し、クアットロ、ティアナと共に飛行艇を奪い、バイクのスバルとなのはと何とか合流した。 「君達がこんなマネをするとは思わなかったよ」 「私はドゥーエお姉さまについてきただけですわ」 「優雅な暮らしは退屈だったのよ」 「ヴェロッサ・アコースの正体は君も知ってるはず。それでも戻ろうと言うのか?」 「あいつは本気で人類を守ろうとしている。私はそれを見届けようとしたい。それにその思いはレジアス中将あなたと同じよ」 「うーむ」 その頃、ゼラバイアのいるエリアでは避難が完了し、グラントルーパー隊が戦っているものの敵の数は多い。 その様子をなのは達はモニターで見ていた。 「ヴィータちゃん…」 「さすがにまずい状況みたいですわね」 「早く教会に戻ってグラヴィオンで戦わなくちゃ…」 「グランディーヴァは大丈夫なの?」 「マリーさん達が直してくれてる」 「なのは、戦える?」 ドゥーエがなのはに聞く。なのはの目には戦う闘志が戻っていた。 「大丈夫、いけるよ」 スバル達は教会の司令室に通信を入れる。 「こちら、スバル」 スバル達が司令室のモニターに映る。 「スバル、なのはさん!」 「ティアナとドゥーエさんもいるんですね」 「発進するんで、準備お願いします」 クロノがスバルのいつもの元気となのは達の帰還に薄らと笑みがこぼれる。 「ロッサ? どこに…」 ヴェロッサが司令室から出て行くのを見て、クロノが呼び止める。 「僕も、自分の責任を果たさないといけない」 ヴェロッサは後ろを向きながらそう言い、指令室を後にした。 その一方グラントルーパー隊がよく戦うも敵の数の多さにまいってしまい、エネルギー残量は残りわずかであった。 「くそ、エネルギー量が…」 「どうするオットー?」 「このまま逃げても同じなら戦うしかない」 「そうだ、グラヴィオンは必ず来る。それまで持ちこたえろ」 ヴァイスが三人を励ます。 「ヴィータ、戻りなさい」 「嫌だね! あたしは負けないぞ! ヴェロッサにも、なのはにも!」 その頃教会に戻ったなのははグランカイザーに乗り込み、他の皆もグランディーヴァに乗る。Gシャドウには意識がまだ完全に戻っていないリインを乗せて…。 「え、リイン!?」 「なのは、何でリインを乗せた!?」 リインの姿を見たクロノがなのはに怒る。するとヴェロッサから通信が入る。 「行かせてやってくれ、クロノ君」 「ロッサ…」 「なのは、リインを頼む」 「うん」 そしてゴッドグラヴィオンはグランフォートレスに乗り、飛んでいく。 戦場ではもはやグラントルーパーは限界に来ていた。 「数が多すぎる……」 珍しくヴィータが弱音を吐く。そしてヴィータがやられそうになった時、閃光が走った。 「おお、グラヴィオンか!」 ヴァイスが叫ぶ。それはグランフォートレスが行った攻撃だが、その上にはグラヴィオンがいた。 「まずはあのゲートのゼラバイアを倒すけど、空間ごと切断しないとダメね」 「だったら超重剣で……」 「ダメだ! 超重剣はグランナイツ6人が揃わないと本来の力は発揮できない!」 クロノの言う事実に皆驚く。 「嘘!?」 超重剣が使えない今戦況はものすごくグラヴィオン側の不利。それでもグラヴィオンは敵に突っ込んでいくも、グランフォートレスは落とされ、グラヴィオンも敵に挟まれてしまう。 「グラヴィオンの合体機構に異常発生!」 「重力子安定指数20%にダウン」 グラヴィオンはゼラバイアの強力なはさみ攻撃にボロボロになっていく。 「何と!? 堪忍袋の緒が切れた! 許さんぞ、ゼラバイア!」 グラヴィオンを助けようとヴァイス機がグラヴィオンを挟むゼラバイアに向かって特攻をかける。 しかしその特攻も虚しく周りのゼラバイアに邪魔されてしまい、墜落する。 「くそーーーーー!」 ヴェロッサはこの事態を重く見、自分の持つ杖を振り回し、上に向けて叫ぶ! 「炎皇、召来!!」 杖の先から光が飛んで行く! そして戦場に光の矢が飛んで来、次々にゼラバイアが倒されいく。 その光はグラヴィオンを捕まえていたゼラバイアを倒し、グラヴィオンは何とか解放された。 「な、何?」 「今のは?」 皆が驚きを隠せない。すると次は空から光の球が姿を現す。 「輝け、新しい太陽よ。この大地を美しく照らし出してくれ」 その光の中には別のグラヴィオンの姿があった。 前へ 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nouryokukoukou3/pages/116.html
「ということが向こうの世界であったんだ」 昼下がりの学生食堂。そのカフェテリアで、僕とスバルはテーブルを挟んで少し遅い昼食をとっていた。 「向こうでは第三次世界大戦真っ只中なのか…………」 スバルはアイスティーのコップに手を延ばし、大変そうだなぁと呟く。僕は自分のチキンサンドイッチを齧り、咀嚼してから、 「こっちじゃもう4年も前の話だっけ、三次大戦は」 「そうだ。あの時は世界中どこもかしこも大変だったんだ」 そう、そのはずだ。こちらの世界では4年近く前に大戦があって、今なお主戦場だったヨーロッパでは復興作業が続いている。数百万の被害を出した史上最悪の戦争として、復興作業が終わったあとも語り継がれるのだろう。 「こっちも同じようなものだね。開戦前にガス兵器と爆弾テロの大廉売やってくれたおかげで兵力がズタズタ。街も民間人もまた然り」 「酷いな」 「戦争といえどルールはある。奴らはそれを破った」 だから殺す。そう続けようとして、僕は危ういところで押し留めた。この娘の前で吐くには、僕の本音は毒気を帯びすぎ、そして生々しすぎるのだ。そのぐらいの自覚はしているつもりだ。 「でも驚いた。悠里が特殊部隊の隊長さんだなんて」 「キャリアが長いだけだよ」 でも強いんだろ? とこちらに向けられた尊敬の眼差し。僕はチキンサンドイッチをもう一口齧り、ミルクと砂糖たっぷりのカプチーノので、ちょっとした居心地の悪さを飲み下す。 「人並み以上にはこなす自信がある」 「やっぱり悠里はスゴイな」 「スゴイもんか。ただ他人より人殺しの手管に長けてるだけで、そんなものはスゴイ事でもなんでもない」 言い切って、僕は仕立てのいい木製椅子の背もたれに寄りかかる。 カフェテリアは開放感のあるテラスのような作りをしていて、豪華の一言に尽きる能力者高校の敷地を見渡せるようになっている。最近はこのテラスから見渡せる石造りの庭を見下ろすのがお気に入りだ。この学校は全体的に建築物が美しく、どこかヨーロッパ的だ。 昼休みを利用して庭に出て来た生徒たちを眺めていると、「殺すだけならそれはダメだけど、悠里は違うだろ?」と遠慮がちな声が発した。 僕は椅子の手摺に頬杖をつき、 「理念が無いわけじゃない。民間人だろうが軍人だろうが、人が余計に死ぬのが嫌だからさっさと終わらせたいだけだ」 「やっぱり悠里は悠里だよ」 「僕が何なのさ」 スバルの要領を得ない言葉に、僕は思わず苦笑する。 「悠里は……正義の味方だ」 カプチーノのカップを思わず落としかけた。顔に血が昇り、灼熱するのがわかる。こんな事を面と向かって言われたのはどれほどぶりだろうか。あるいは生まれて始めての経験かもしれない。 とりあえずもカプチーノを一口。そしてサンドイッチを齧る。あまりに恥ずかし過ぎて、気が動転しているのが良くわかる。 「悠里、どうかしたか? 顔が赤いが」 「気にしなくていい。少し昔の恥を思い出しただけだ」 頭の上に疑問符を浮かべ、スバルが首を傾げる。よもや自分のせいだとは思っていないだろうし、言ってやるワケにもいかず、僕は溜息に全てを乗せ、吐き出す事にした。 「本当に大丈夫なのか?」 大丈夫だよ、と返すのと、スバルの注文していたパスタをウェイトレスが運んでくるのは同時だった。 大皿に盛られた山のようなキノコの和風パスタが、圧倒的な質量感を伴ってテーブルに置かれる。 レシートを置き土産に去って行くウェイトレスの背中を見、次いで待ってましたと言わんばかりの表情でフォークを手にしたスバルを確かめた僕は、次の瞬間にはフォークを多い尽くす麺と、それを一口で片付けたスバルを見てしまった。 そう、この娘は大飯喰らいだ。朝昼晩と、どうしたらそのくびれたウエストに収まるのかと不思議になるほどの量を片付け、なおかつ大量のデザートを食する大食漢。昔ギャル曽根とかいう大食い芸能人がいたななんて事を考えるうちに、パスタ山の山頂が消え去っていた。 「よく食うな」 「ん…………悠里も食べるか?」 「いや、単純にスゴイなって」 きっと今の僕は口をぽかんと開けた間抜けな表情をしているだろう。少なくともそう思ってしまうだけのインパクトが目の前にはあった。 「よくそれだけ食うよな」 「むしろこれだけ食べないと……」 「燃費悪すぎだよ。そのうち太るぞ」 僕は嘆息し、煙草を取り出す。スバルは至って真面目な表情で、 「トレーニングしているから大丈夫。それに、ボクはいつか悠里より強くなりたいんだ。だからたくさん食べてたくさん訓練しなきゃ」 「君なら簡単に追い抜けるよ」 僕は紫煙を吐き出し、吸い殻を灰皿へ落とす。スバルは首を振って、 「ううん。悠里は強いから……」 「高く買いすぎだよ。訓練積めば越えられる」 「でも強いのは事実だ」 「積み重ねただけだ。無能が54年積み重ねても、君なら簡単に追いつく」 カプチーノのお代わりを注文し、僕はフィルター手前まで吸いきった煙草を灰皿に押し付ける。 「54年も、ずっと戦っているのか?」 返ってきたのは予想とは外れた質問。僕は煙草を取り出す手を止め、18からだからね、と一言。 「辞めようと思った事は?」 「殺し合いの最中になら。でもいざ終わってみるとまだやる事があって、そんなこんなでズルズルズルズル続けてきた」 「そうなのか」 「それに人生の半分以上費やしているからね。これ以外にできる事がないってのもある」 でも、一番の理由は。そう続けるはずの声は運ばれてきたカプチーノに遮られ、代わりにスバルが続きを引き受ける。 「カミンスキィって男が、そうなんだな?」 「うん、あいつが一番の理由だな」 カプチーノに砂糖を追加して、僕は頷く。 「なんとしてもケリをつけたいってのが本音」 「ケリ、つくといいな」 つけるさ、必ず。僕はスバルにそう返し、微笑んで見せる。 「でも、何度も言うけど死んじゃダメだぞ」 「わかってる。相打ちも犬死もナンセンス極まる」 そういえば、なぜこの娘はこんなにも僕は心配してくれるのだろう。そんな疑問が首をもたげ、質問しようと口を開いた時、先にスバルの疑問が発せられていた。 「なあ悠里、悠里はカミンスキィとどういう関係なんだ?」 「ん? ああ、それはなーー」 感想あればどうぞ 名前 コメント