約 4,251,886 件
https://w.atwiki.jp/idolversus/pages/122.html
《ハロウィン》のカードリスト 《ハロウィン》のカードリストパワフルパッション [部分編集] パワフルパッション 【ハロウィンぷちデビル】双葉杏+
https://w.atwiki.jp/madelineanimation/pages/63.html
前 リスト 次→ 鬼のお面をかぶりましょ おばけもいかが? 今日はハロウィン! かぼちゃのちょうちん笑い出し こうもり飛び出た 今日はハロウィン! ブーウー! おばけだぞ! 楽しいハロウィン! ブーウー! おばけだぞ! ハロウィンだぞ! ごちそうしないとイタズラするぞ 決まりの言葉 今日はハロウィン! ブーウー! おばけだぞ! 楽しいハロウィン! ブー!ウー! おばけだぞ! ハロウィンだぞ! ブーウー! おばけだぞ! 楽しいハロウィン! ブーウー! おばけだぞ! 楽しいな!
https://w.atwiki.jp/pixiv100/pages/156.html
一年中がハロウィンの世界「ハロウィンランド」と現実世界との扉が 10月の間だけ開放されて自由に往還できるのだという。 そんなハロウィンランドの住人、世界観、そこに紛れ込んだ人間などを描く ハロウィンが待ちきれない企画主による企画。「オリジナルのハロウィン絵ならなんでもOK!」 キャラクターイラストを描く場合は最初の一枚は 名前・特徴を明記した全身像(人間の場合は仮装していない姿)とし 「ハロラン・住人」または「ハロラン・迷い人」のタグを付ける。 参加作は「描いてもいいのよ」扱い。 「pixivハロウィン with ハロウィンランド」として公式イベントとリンクしており、 ハロウィンランドに参加すると自動的にハロウィン公式イベントにも参加する形となる。 ハロウィンランドとの扉は閉じたが、どちらの世界も生活は続くということで アフターストーリーなどの投稿は引き続き可能。 また来年も扉が……? + 見出し 公式使用タグ 派生タグ 関連タグ 関連ページ 関連公式企画 企画内企画ハロランお茶会関連タグ ハロランパレード使用タグ 参考企画 企画主 87 企画告知イラスト 【企画】ハロウィンランド【10/31まで!】 補足説明イラスト 【企画】ハロウィンランド補足説明 企画用素材 【企画】ハロウィンランドロゴ 開催期間 2008.10.1〜31 代表タグ ハロウィンランド 企画目録 「pixivハロウィン with ハロウィンランド」企画目録 公式使用タグ ハロウィンランド ハロラン・住人 - ハロウィンランドの住人たち。いたずらはするが危害は加えない。 ハロラン・迷い人 - ハロウィンランドに迷い込んだ人間たち。 仮装させていいのよ - 迷い人を仮装させてほしい時に付けるタグ。 仮装させてみた 派生タグ パンプキン城住人 ハロラン・美人 関連タグ ハロウィン/ハロウィーン/Halloween(OR) お菓子 かぼちゃ/カボチャ 魔女 ほうき/箒(OR) コウモリ/蝙蝠(OR) お化け/おばけ(OR) 月 関連ページ タグ/季節のタグ 関連公式企画 pixiv HALLOWEEN 2007 pixivハロウィン with ハロウィンランド - 正式に相互乗り入れ ハロウィンランドの住人たち 迷い人 } 以上、参加作から 企画内企画 ハロランお茶会 ハロウィンランドにやって来た迷い人を「歓迎」すべくパンプキン城でお茶会を開催! お菓子は城でも用意するが原則持ち寄り。お城のキッチンも利用可能。 迷い人をお連れする際は正装(仮装)を推奨。 企画主 87 企画告知イラスト 【ハロラン】お茶会のお誘い【棺桶掲示板】 開催期間 2008.10.6〜31 代表タグ ハロランお茶会 告知イラスト 「ハロランお茶会」参加作より 関連タグ お茶会 ハロランパレード テンプレを使用して自分のキャラクターを描き ハロウィン当日に1枚の盛大なパレード絵にしようという企画内合作企画。 参加は1人3枚まで。1枚の中に入れるキャラクター数には制限なし。 企画主 87 告知イラスト 【ハロラン】ハロランパレードのお知らせ【棺桶掲示板】 企画用素材 【ハロランパレード】テンプレ 完成イラスト 【ハロラン】ハロランパレード!!! 開催期間 2008.10.19〜27 使用タグ ハロランパレード ハロランパレード参加 参考企画 pixivパレード pixiv電車ごっこ 「ハロランパレード」参加作から
https://w.atwiki.jp/netwatch-ishiguroaya/pages/43.html
ハロウィン2008 ようたはてんとう虫・そなはウサコちゃん・りむはプリンセス魔女 りむちゃん・そなちゃんのハロウィンの衣装は、約1年9ヶ月前の学芸会の衣装 ようたは年少時のりむちゃんの学芸会の衣装 それに加え、3人とも足元は衣装と合っていないクロックス 2008-10-31 ハロウィンの様子 http //s03.megalodon.jp/2009-0630-0150-24/ameblo.jp/ishiguro-aya/archive5-200810.html これらは幼稚園の学芸会用に、母親達が公民館で集まって作ったものらしい 2007-02-09 年長時りむちゃんの衣装 http //s01.megalodon.jp/2009-0630-0155-23/ameblo.jp/ishiguro-aya/day-20070209.html 2007-02-03 年少時そなちゃんの衣装 http //s01.megalodon.jp/2009-0630-0212-48/ameblo.jp/ishiguro-aya/day4-20070203.html 2007-03-13 年少時りむちゃんの衣装はてんとう虫(衣装写真なし) http //s01.megalodon.jp/2009-0630-0216-11/ameblo.jp/ishiguro-aya/day4-20070313.html
https://w.atwiki.jp/trivia-mike/pages/3016.html
渋谷区にあるスクランブル交差点で行なわれる妖怪のコスプレをする、通称 コスプラーが ただ歩くだけの自然発生したイベント。ハロウィン仮装パーティの俗称だ。主催者はなく、バカ騒ぎする身勝手なコスプレ大会。 東京にあるが渋谷。なんだろ! 誰が始めたかは定かでないが認知され始めたのは2010年からとされている。 仮装は様々で当初はゾンビなどハロウィン仕様だったが今やハロウィンと全く無関係なものが乱発しているのです。 その仮装レベルは仮装を経験するやつほど次第にグレードアップしている。 集団は年々その数を増やし、ついに警察もスクランブル交差点一帯を交通規制し車の進入が制限されるんだ。 そのとき誘導要員として流暢なカタリベDJポリスが配備されたぞ! 一方、ゴミを持ち帰らない輩が多く、たびたびゴミが散乱し社会問題となる。 2018年、ついに参加者が暴徒化し もう世紀末だという。 これについてアメリカ生まれなケーシーは『渋谷ハロウィンだな。一言でいえばウンザリ。二言でいえば『うざい。腹立つ』……。うん? これじゃ一言、二言じゃなくて、三言になるのか? まあ、いい。とにかく お前らいい加減にしろ!と思う。騒ぐのは別にいいんだけどな。渋谷は元々そんなに静かな場所じゃないし、激しく夜遊びしたい人の集まる場所だしな。しかしそれにも程がある。ゴミをポイ捨てすると、捨てた人が帰った後に他の人が拾うことになる。それでもポイ捨てするか?はっきり言って大人失格だな。大人失格なら子どもだろ。まだそんなに子どもなら、遅くなる前に帰ってママにオムツ変えてもらっておねんねしてな、クソガキか?』と語ったあ!トラック横転については『特に今年は軽トラの横転ビデオを見て、うわっ、こりゃもうダメなんだな』と思った。普段はしちゃいけないけど、渋谷でのハロウィンならやっていいよね!ってアホくさい論理が成り立ってしまっている。今まで政府・警察側からマナーを守りましょうと呼びかけていたが、今度からもっと強い手を打たないと、本当に収拾がつかなくなるぞ』と語る 。 迎えた2020年、新型コロナウイルスが収まる気配のないなか仮装行列が行われよう。2021年も同じく。ああ、各自で仮装しているため主催者がいないため中止できぬぅ!
https://w.atwiki.jp/ljksscenario/pages/344.html
東京都チェイテ城内。 ハロウィンドレスに身を纏った少女のキャスター、エリザベート・バートリーは飾り付けを終えて満足げであった。 一体どうして彼女がハロウィン風味に変貌しているか。 経緯などは長くなってしまうので少々省く。 エリザベートの目的は一つのみ。ハロウィンを楽しむ事。 準備をしっかりしておきつつ、エリザベートは不満を漏らしていた。 「全く! 私(アタシ)がここまで手間かけなくちゃ駄目ってどういうこと?! どうしようもないカボチャのブタどもね! マスターもそう思わない?」 彼女のマスターは、いわば肥満体形の中年男性であり。 エリザベートに要求されて制作した菓子を並べていたが、皮肉籠った返事をかえす。 「お前が散々頼むから仕方なく作ってやってるんだ。前にも話したが、俺はもう菓子なんかこりごりなんだよ」 「わ、分かってるわよ。アナタのお菓子だってサーヴァントにしか食べさせないから!」 それに……… 如何にもハロウィンらしい飾り付けと、それに似合った飴細工のドラゴンや豪勢なケーキなど。 手間暇かかったであろうパーティー会場。 エリザベートは言う。 「何だかんだマスターも気合い入ってるじゃない! お菓子だって、本当は作りたかったのね」 「………はぁ。そうだな。最初は好きで作ってたんだよ……こんな風にならなきゃな」 やれやれと溜息ついて力を抜いた小太りの男性が、肩を回す。 「俺は少し休むよ。文字通り、腕を振るったのは久しぶりだ」 「そうね。あとはかわいいブタたちをここへ招待するだけ……ありがと、マスター」 マスターである男性が立ち去った後。 エリザベートが魔力を込めれば、菓子の幾つかに異変が発生する。 使い魔となったソレらはハロウィン一色へ染まった東京都へと徘徊を開始するのだった……… ◎ ◎ ◎ ハロウィンシーズン到来! 偽りの東京都に突如として出現したチェイテ城の主により、ハロウィンが開催されたのである。 近現代の最先端都市は一夜にして幻想と神秘、恐怖と狂気に満ち溢れた空間へと変貌。 あちこちでかぼちゃ頭のスケルトン。クッキーで構成されたゴーレム。 ホラーを演出するドラゴン。魔女の容姿をしたスケアクロウゴースト。 腹をすかせたハングリーウルフが平然と徘徊するようになった。 そんな最中。 救世主のように東京都民を救うのは召喚された『24騎』のサーヴァントたちであった。 ハロウィンらしい吸血鬼や人喰い、怪物の英霊など恐怖ではなく、これ以上にない主役。 キャンディで悪いモンスターを破壊するランサー。竜殺しのセイバー。 子供に人気のロボットアーチャー。ゴーストを従えるキャスター。正義の味方と称し活躍するかぼちゃ仮面と大トカゲに乗ったライダー。 ……という具合に、東京都はお祭り騒ぎなのだ。 だが――― 「こ、こんなところで死にたくない~~!!!」 不運にも、この時期の日本に帰国してしまった アメリカにある世界最高峰の研究施設『ER3システム』を抜けた天才女子高生(ギフテッド) どこかの世界ではアイドルをやっている『一ノ瀬志希』という少女が夜道を全力疾走する。 彼女は前述にあったモンスターたちに追われている。 別に理由なんかない。 犬や猫、鳥や魚の思考回路のように、モンスターたちは通りかかった志希を襲っているだけに過ぎない。 愉快で楽しいハロウィンだが、全てが全て順風満帆じゃない。 モンスターは都民に襲いかかるし、ゴーストは家に入って来る。 警察もそうだが、住職もてんやわんや。 モンスターによる死傷者の数だって日に日に大きくなっていくのは事実。 つまり、志希のような犠牲者は日常茶飯事なのだ。 「もう犠牲になった的な扱いは止めて~! ふにゃー! どうしよ、逃げ場が無いー!!」 彼女が逃げ込んだ路地は行き止まりだった。 途方に暮れる少女。 哀れ! 一ノ瀬志希の人生はここまでなのか!? ―――― ―――― 「な、なに?」 志希は驚愕する。 突然、モンスターたちに異変が発生した。 ゴーストは成仏よりか完全四散し、ドラゴンとウルフは悪寒を感じて一目散に逃亡。 スケルトンはその場でただのかぼちゃに戻り、ゴーレムもただのクッキーとなったのである。 夢から現実に引き戻された感覚だ。相変わらず街の風景はハロウィン一色ではあるが……… 「………死なせるつもりではなかったが」 通行人のように気付かぬ間に居合わせたらしい男性が、ポツリと呟く。 長身の細身。黒い裾出しシャツを着こなす彼の容姿で異色を放っているのは腰に下げた日本刀。 だけど、きっと何かアニメキャラのコスプレだろうと志希は指摘すらしない。 むしろ、初対面相手にくんくんと動物みたいに匂いを嗅ぐ。 男は怪訝そうな表情で尋ねた。 「そんなにかび臭いか?」 「んー? かび成分の匂いは全然しないよ! キミはいい匂いさせているからいい人だって!! アタシのこと助けてくれて、ありがと~!!」 「……今の内に逃げた方がいいぞ」 「あ、そうだね~!」 それじゃあと明るく元気に走り抜けていく姿は、ある意味アイドルらしさを醸しだしている。 噂によれば、チェイテ城の主はアイドルを自称するという。 志希のようなアイドルか。もしくはアイドルを強引に解釈しているのか。 「……俺が表に出されたのは、この事態をどうにかしろ。という命令か。……置物の俺に解決できるのやら」 その男。 ハロウィンにおいてイレギュラーの存在。『25騎』目のサーヴァント。 クラスは『ルーラー』である。 ◆ ◆ ◆ 私立不動高校。 ここも活気づいて(というか調子乗って)ハロウィンパーティーなんて催しを学校が企画していた。 殺人事件が発生した知名度にあやかって催しを実行に移すなど、度胸だけは認めても良い高校である。相変わらずイカれた魔境だ。 何より。 この学校には巷で噂のサーヴァントを従えるマスターが複数存在する事で有名となり。 冗談半分で開催されたハロウィンパーティーは一般人には好評だった。 「はぁ……ハロウィンか」 マスターの一人、安藤という高校二年生の少年が落ち着きない校内を見回す。 彼自身、なんだかここに居たくないものの。 無暗に街へ出て見ればモンスターがうじゃうじゃいるのだ。 サーヴァントが無数に存在する不動高校が皮肉にも安全地帯である。 霊体化している安藤のサーヴァント、カインが尋ねた。 『マスター。何故、マスターの身分を隠しているのでしょうか?』 『だって……変に注目されるのは変な気分になるんだ。カインも無暗に実体化できないし』 『……それもそうですね』 申し訳なさそうにカインが(霊体化しつつ)頷く。 カインの能力のせいで、かぼちゃからお菓子まで全て台無しになってしまう。 安藤も、自身の経験から無暗やたらに能力を明かすのは躊躇していた。 一方……安藤と同じクラスにいる來野巽は、セイバー・ジークフリートの存在で異常に際立っている。 会場である高校周辺を警備していた巽が、出現したモンスターに驚愕する。 「上空に竜……あれ、かなり大きくないか!!?」 「謂わば、リーダー格の竜だな。どうやら個々ではなく一群を率いて攻めて来たらしい」 恐竜に等しい規模の竜。 正真正銘恐怖の塊と呼ぶべきものが、平然と東京上空を飛来する。 だが、相手は竜殺しの異名を持つ英霊。巽が興味本位で取り囲んでいる野次馬を払いながら、ジークフリートに命じた。 「ジークフリート! 宝具で一掃してくれ!!」 「ああ!」 闇夜を切り裂く閃光――『幻想大剣・天魔失墜』が発動する最中。 不動高校一年生の教室の店番を担当しているアイリスと神原駿河。 唸りながらアイリスはふと呟く。 「ジャパニーズの『メイド喫茶』というのは知ってたけど、これってファッションショーみたいなものじゃない?」 そこは有名な『メイド喫茶』ではなく『コスプレ喫茶』である。 馬鹿真面目にメイド服を着るアイリスを傍らに、駿河は部活で使用している運動着だ。 駿河が熱烈な語りをした。 「分かっていないな……メイドや執事が萌えるのは、もはや常識レベルの話なのだ。 時代は最先端を往く。運動着や制服、大正ロマンなどジャンルが幅広く展開されている」 「あぁ、ブライト博士も言っているくらいだし。流行が変化したってことね?」 「うむ、例えば軍服などはデザイン性が非常に優れているぞ。今度、アヴェンジャーにも着させたいのだが…… そういえばセイバーはどうしたのだ? ツンデレ具合を確かめようと私は登場を心待ちにしているが」 「ごめんなさい。セイバーは用があるって……多分、こういう場所が嫌いなのよ。スルガのアヴェンジャーは?」 「アヴェンジャーはそもそも参加しないと。正直困った話だ。アヴェンジャーが宣伝すれば集約数学年一位を獲得できた筈…… お互いツンデレサーヴァントを持つ者同士、苦労が絶えないな……」 「え? ツンデレってこういう意味?? なんかもっとこう、カワイイ感じがしたわ」 二人が会話を繰り広げていると。 安藤の弟である潤也が、自らのサーヴァント・ライダーのジャイロを引き連れて現れる。 「全然客きてねーじゃん! なぁ、暇なら二人とも手伝って欲しいんだけど……」 「構わないが。どうすればいい?」 すると、ジャイロが嫌々しい表情を浮かべて答えた。 「クッキーのゴーレムとか、倒したら菓子になるモンスターがいるだろ? あれ食おうって話さ」 流石にアイリスも困惑の表情で「止めた方がいいんじゃ」と言う。 決して、潤也やジャイロも好き好んで提案している訳ではないのだ。 周囲にはそういう声が絶えない。 片づけるのに邪魔な使い魔の死骸の処理方法の一つとして確立しよう……そういう周囲の意見である。 とは言え。されど少し前まで生きたモンスターな訳で…… 駿河も眉を潜め、腕を組みながら意見した。 「可能ならば率先してやってもよさそうだが、人体に害はないのだろうか」 潤也が携帯端末でSNSを確認しつつ、教える。 「それがさ、勝手に食ってる奴らが居るらしいんだよ。情報がマジなら何ともないって」 「ええ……?」 アイリスはSCPの類を熟知している為、改めて状況を見直す。 「多分……あの城に住んでいるキャスターの能力で動いているモンスターよね? 直接確かめた方がよさそうかも」 「あーそっか! でも、あの城。こっから距離あるんだよなぁ」 潤也が悩むところ。 廊下を走り、何かを探す生徒が一人。 生徒会長で有名だった三年の遠野英治である。主従関係者である潤也達がそこに居た為、咄嗟に英治は問う。 「みんな! 僕のバーサーカーを見かけなかったかい!?」 「む? 遠野先輩のバーサーカーは、また無断に、いや勝手に高校から出て行ってしまったのか?」 「あぁ……申し訳ないけど、見かけたら止めておいて欲しい」 命令をさせるにしたって意思疎通不可能なバーサーカー相手に難しい話だ。 幾ら遠野英治が好青年で、優秀な魔術であっても、彼のバーサーカー・ジェイソンを完璧にコントロールするのは不可能。 ある意味、彼は貧乏くじをひいてしまったのだろう。 苛立ちと疲労を浮かべながら「頼んだよ」と立ち去る遠野は情けなさがある。 「このままでいいのか……?」 そんな光景を眺めていた安藤。 何か……何か良くない気がする。平穏が肌に合わないというか、非現実的すぎて感覚麻痺を起しているのか。 安藤自身、理解に苦しむ。 アテもなく安藤は、念話でカインに尋ねた。 『なぁ、変わった事ってあるか? なんかもう色々と起こり過ぎているけど』 『そうですね……どうやら新たにサーヴァントが召喚されたようです』 『サーヴァント?』 『随分と強大な魔力を感じました……いえ、正確には今も感じられるのですが。 これほど距離がありながら、私にも感知できる魔力……元より膨大な魔力を保有するサーヴァントなのでしょう』 つまり、非常に目立つという事。 それだけでも面倒なサーヴァントに絡まれそうなのだが…… 安藤は切っ掛けが欲しかった。新たな変化を取り入れる為の切っ掛けを。 ◇ ◇ ◇ ハロウィンの夜は長い。 何ら討伐クエストを設けられた訳でもなくジークと彼のサーヴァント・ランサーのブリュンヒルデは、 街で徘徊し続けるモンスター退治に明け暮れていた。 永遠に続くハロウィンなどありはしない。10月31日が終われば、奇妙で愉快なお祭りは終わりを告げる……筈だ。 「どういうことなんだ? あの城にいるキャスターの仕業なのだろうか……」 ジークは戸惑っていた。 何時まで経過してもハロウィンは終わらない。 永遠に31日がやってくる……きっと、否。紛れも無く犯人は、城にいるハロウィンのキャスターだ。 だが、一体目的はなんなのか。 しかし、ハロウィンが人々を楽しませる催しだと理解したジークは、思い詰めている。 ブリュンヒルデが言う。 「一先ず、彼女に使い魔たちの件で話し合ってみましょう」 「そうだな。俺もハロウィンを中止したい訳じゃない。彼女も人々を楽しませる為にやっている」 足を運ぼうとするジーク達を観察していた主従が一つ。 適当に、魔女っ子のコスプレを楽しんでいた女性の体を乗っ取ったジャック・ブライトが やれやれといった具合で、溜息を漏らす。 「クッキーのゴーレムを倒すと道路がクッキーまみれになるのは、どうにかしないのかね。私はうっとおしくて堪らないよ」 ブライトのサーヴァント・幽々子は「そうね」と同意した。 「でも、実際攻撃してくるんだから仕方ないじゃない。 そこらにいる幽霊も、私の能力で集めたところで収集がつかないのよね。ハロウィン仕様に成ってるせいで魂食いできないし」 「あの桜の木に捧げればいいんじゃないかな?」 「ハロウィンのキャスターが『季節はずれにもほどがあるから撤去しなさい!』って言ったじゃない」 ただ――幽々子だからこそ感じ取った異変が一つある。 彼女がそれを語ろうとした傍ら、自棄に騒がしい声が聞こえる。 人々に囲まれている金髪の少女・メアリーが面白そうにお菓子を貰っている。 隣では「凄いコスプレだ!」とサーヴァントとして認知されていないものの、人気者扱いされてるアイザックことザックが居た。 「本気でやってますね! そのメイクどこでやったんですか!?」 「写真撮らせて下さい!!」 「名刺交換しませんかっ!」 今日に至るまで、こんな風に注目された事ないザックは、気持ち悪く感じて。 害虫を払うように集って来る人間を蹴散らしていった。 「あー」と疲労感漂う溜息をつくザックに、メアリーが話しかける。 「ザックもお菓子食べる?」 「食い飽きた。つーか……なんか物足りねぇっていうか」 ザック自身、何か違和感を覚えながら。 先ほどジーク達が倒したゴーレムの残骸を拾って食べる子供たちを目にした。 誰かから貰う菓子ならともかく、いくら食べられるとは言え使い魔の死骸を食うのはどうかしていると呆れる。 「……何か忘れてるよーな………」 そんな事をぼやくザックの目の前で、突然。 ――――バン!!!―――― 「………あ?」 「ひっ………!?」 ザックは目を丸くし、メアリーは恐怖に支配された。 『子供が一人、前ぶれも無く爆発した』……のである。 文字通りの爆発四散。血肉が四方に飛び散って、骨の破片が凄まじい勢いで建造物に衝突。凄まじい破壊を巻き起こす。 それに巻き込まれ怪我を負った子供が数人泣き喚く。 突然の事態に現場は戦慄が走った。慌てて戻ってきたジークは叫ぶ。 「何が起きた!?」 「うえ、えええええん………」 恐怖のあまり、連鎖的に泣き続ける子供。その一人が、またもや爆発。 いよいよ、周辺で立ちつくしていた人々も未知の恐怖に逃げ惑い始めた。 メアリーも涙目ながら、ザックに訴える。 「ざ、ザック! 早く逃げようよ!! きっとサーヴァントの仕業だもん、こんなの!!」 「……そうだ」 血まみれの光景。破壊的な情景。 ザックは周囲の状況などおかまいないしに、ある事実を思い出す。 不敵な笑みを浮かべながら、瞳の死んでいないメアリーに対して呼びかけた。 「信じられねぇぜ、肝心な事を忘れてたなんてよ! おい、メアリー!! アベルの野郎探しに行くぞ!」 「え? 誰?? あ、待って! ザック!!」 そそくさと逃走するザックとメアリーを余所に、ジークは周辺を警戒するが理解できない。 サーヴァントの攻撃ならば、何らかの反応があるだろう。一切、感じられない。 使い魔が原因? なにがどうして爆発が? 使い魔を捕食したよるものならば、他の捕食を行った人間に影響がないのは一体?? ジークは拳を握りしめる。 「原因が分からない……使い魔のせいなのか? いや、とにかく使い魔達に近寄らないよう注意を促そう。ランサー」 「ええ、それが最善です。マスター」 一連の光景を意味深に眺めるブライトと、思う幽々子。 幽々子は、最近召喚された例のサーヴァントの件を重ね合わせる。 ジーク達もザック達も、個人の考えの下行動を開始してしまったので、仕方なく遅めの提案をブライトに持ちかけた。 「ブライト? 一つ話があるのだけど……どうしたの?」 「あぁ……もしかして、と思ったんだけど確証が無くてね。それより何か妙案でもあるのかい」 「ええ。きっと役立つ作戦よ。でも、私と貴方だけじゃ……ちょっとね?」 「?」 ● ● ● 東京都内は各々の仮装を纏った子供たちがあちこちで見かけられた。 ここにもまた一人。 子供ながらも、マスターの一人である少年。今剣が通りかかった人々に対し告げる。 「とりっく・おあ・とりーとです! おねがいします!!」 偶然、今剣が声かけた下校途中の中学生・二宮飛鳥と先導エミの二人もまた、マスターだったが。 彼らはここで初対面になったばっかりで、これといって関係もない。 最早馴れた様子でエミが学生鞄からお菓子を差し出す。 飛鳥はお菓子とは言い難いが、のど飴が入っていたのでソレを渡してやる。 今剣を笑顔で見送ったものの。エミは溜息つく。 「はぁ~……もうお菓子がなくなっちゃった」 呆れたエミのサーヴァント・ブルーベルが霊体化を解いて、不満げに顔を膨らませた。 「もー! 調子に乗って渡し過ぎるから、そうなっちゃったのよ! アイチ達に渡す分はどーすんの!! 「うん……どこかで買うしかないよね。飛鳥ちゃん、途中でお菓子屋に寄ってもいい?」 「まぁ、仕方がないさ。ボクもついでに買おうかな」 しかし、飛鳥は念話で霊体化しているアサシン・零崎曲識と会話する。 『本格的なハロウィンは想像以上に大変なものだね…… 街に徘徊しているモンスターだけじゃなく、お菓子を求める子供たちにも気をつけないとは。 ボク自身もまだまだ子供とはいえ、ああいう風にお菓子を求める年頃ではないよ』 『ふむ……マスターは慎んでいるが、お菓子を求める側に回るのも悪くない。積極的に祭りごとに一歩踏み出す勇気が必要なのだ』 『そうかい? 少し考えてみようかな。ところでアサシン。 キミはエミのキャスター……ブルーベルと違って実体化しないようだけど、何故だい?』 『あぁ、それか。ハロウィンというのはアレだ。遊園地や行楽地とは大いに異なる。 家族連れではなく、子供達のみで構成された群れで行動する点だ。更に加えてソレらが向こうからやって来る…… 僕にとって目に毒以上に、人体に毒と称するべきイベントだと思い知らされたものだ』 『……? つまり、子供が嫌いなのかい?』 『いや、嫌いではない』 厳密には少女を殺したくなる。 少女のマスターには暴露できない性癖を抱えた殺人鬼にとって、ハロウィンほど都合のいい(殺人的な意味合いで)祭り事はない。 欲求不満な曲識が、周辺を探ればまた一人の少女の姿が確認できる。 洒落た喫茶店にいるゴシック系ドレスを着こなす、死人の肌を持つ少女・桐敷沙子。 彼女は馴れないハロウィンに戸惑うマスター達とは異なり、この世界に感動していた。 「本当に夢みたいだわ……これほど素敵な世界ありえないもの」 寝ても覚めてもモンスターが踊る夜。 例え人を喰っても何ら不満をぶつけられる訳じゃない。 どんな種族ですら、ショッピング街を堂々と走り抜けて楽しめる理想の塊。 ハロウィンを開催したキャスターは、決して沙子の願望を叶えたつもりはない、利害が一致したに過ぎないのだろう。 しかし、残念な事に沙子以外の屍鬼の仲間はここにはいない。 「全員でここに住めたらいいのに……バーサーカー?」 コーヒーしか飲まない、向かいで座る狂った梟は指を咥えて、沙子の話を聞いているか定かではなかったが。 喫茶店を覗き込む小説家の高槻泉の姿を目撃し「なんだアイツ」と本音で呟く。 ガラス越しで手を振る高槻に気付いた沙子は、少々驚きながらも。 沙子や梟がとやかく動作する前に、店内に入って来たのである。 「ちゃんスナ~♪ その服、めっちゃかわいいねー。あ、店員さん、アイスコーヒーよろしく~~」 「高槻さん? 今日はどうしたのかしら」 「いやぁ、事件だよ。ちゃんスナ……ちょっと滝澤くん、奥につめてよ」 「スナコの隣に座れよ」 赤の他人を追い払うかのような梟の態度に呆れつつ、高槻は沙子の隣に腰掛けて話を進めた。 「今日、自棄にゴーストがいないと思わないかね?」 「幽霊(ゴースト)? 言われてみれば、そうね……」 チェイテ城の主に酷似したハロウィン風のゴーストが日常のように徘徊していたのを、沙子は知っているが。 指摘されれば、確かにアレはどこにもいない。 むしろ。 現在、沙子たちのいる周辺地域には使い魔の姿すら確認されていなかった。 それ故に、今剣を含めた子供たちがお菓子を求めて行進が行われているのだろう。 現実的では当然で、ハロウィンにおいては不可思議な現象に、高槻が運ばれてきたアイスコーヒーを飲み干しながら話す。 「最近、新たにサーヴァントが召喚されたんだけども……知ってる?」 「何となく知っているわ。いえ……何だか嫌な感じがするのよ。本能的に謙遜してしまうような」 「お、流石ちゃんスナ。ご名答! どうやら『奴』が原因であるのは間違いないのだよ」 即ち。 ハロウィンにとっては『イレギュラー』な存在。 使い魔たちの消滅でハロウィンの雰囲気が損なわれてしまう。 否、彼らの存在は『東京』において住人は必要不可欠であるのと同意義なのだ。 でもまぁ。高槻が続ける。 「私のアヴェンジャーも迂闊に近付けないほどでね。誰かと協力したいのだけど……」 「……アベルは?」 沙子が一言口にしてみれば梟が不敵に笑みを零す。 「アベルくんは協力しないだろ」 「そうね……ごめんなさい。私には心当たりがないわ。放っておきたくは無いけど」 「うーん、残念。となれば他を当たるしかなさそうかな」 如何にも惜しそうに高槻がわざと述べていると。 突然、店内に破裂音と悲鳴が響き渡る。 それは外にいた飛鳥たちにすら聞こえるほどの騒ぎで、何が発生したかと言えば客の一人の『肉体』が爆発したのだ。 文字通り、爆弾のように。 戦慄が聞こえる状況で、今剣が不安げに言う。 「よいち、いまのは……サーヴァントのしわざですか!?」 『いえ。こちらからでは何とも言えませんが』 霊体化した状態ながら、今剣のサーヴァント・アーチャーの那須与一が冷静に告げた。 与一を含めたサーヴァント全員が魔力らしいものを感じていない。 マスターの所業が浮上していた。 ○ ○ ○ 「……あれか?」 『ルーラー』が半信半疑で睨んだのは、現代の東京都には似つかわしくない、すっかりハロウィン仕様となったチェイテ城。 全ての元凶があそこにいるとは、少々目立つというか。 逃げも隠れもしない。何を考えているか共感すら難しいのだ。 相変わらずの気だるい態度でルーラーはやれやれと溜息を漏らす。 「素直に引き下がってくれそうにないか……だが、事を解決しなければ、俺も蔵に戻れないんでな」 「蔵? どこかで聞いた事ある! 蔵くらしのナントカ? ひょっとして未来からやってきた人型ロボット~?」 「………」 沈黙したルーラーの代わりに、居残っていた少女・一ノ瀬志希が説明する。 「あの城って、アタシが来る前にはあったらしいけど。誰が住んでいるかは皆知らないみたいだよー そもそも、住んでいるかも定かじゃない。正真正銘のミステリーホラーっていう?」 「……おい。なんでいるんだ、逃げたんじゃないのか」 「んん~~不思議な事に、キミの周りはモンスターがやって来ないんだー! よく分からないけど安全地帯にゃ♪」 志希の言葉通りで、彼女は逃げようにも。 悠々自適に徘徊するモンスターのいる街中をわざわざ突っ切るよりかは、マシだ。 だが、残念なことに安全な場所なんて東京には存在しない。 家にいれば何にも巻き込まれないと過信するようなものである。 呑気な志希に対し、苦悶の表情を浮かべるルーラー。 「むしろ逆だぞ。この状況からして、俺が召喚された原因は何かと面倒な奴だ。俺に関わらない方が良い」 「召喚って何?」 「……遅かったか」 現代においては異常な、ハロウィンにおいては日常的な冷気が漂えば 一人の武人と人喰いの主従が現れる。 決して、ルーラーが呼び出した訳じゃないし、むしろ彼らはルーラーから離れるべき種族であろう。 にもかかわらず、目の仇にして憤りを抱いた様子なのは、奇妙奇天烈なハロウィンの影響なのだ。 重装備の鎧を纏ったランサー・ヴラド三世がルーラーを睨み、叫ぶ。 「なんと忌々しい『気』か! 貴様……何者かは知らぬが、鴉すら死へ葬るとは………余程この地獄の具現を邪魔したいようだな」 ルーラーが沈黙を守るのに。 ランサーのマスターであるカナエが命令を下した。 「ランサー。あの小動物が奴のマスターだろう。あれを仕留めるだけでいい」 「御意のままに。必ずや、あの血肉を貴方に」 「え? え!? なんだか変な勘違い発動中……!?」 困惑する志希と殺意に満ち溢れたランサー。 双方を眺め、いよいよルーラーが腰にさしていた日本刀を引き抜く。 周辺で漂うだけだったゴーストや、飛行するドラゴンも本能に合わせて避けて行った。 ランサーの宝具『串刺城塞』が志希とルーラーを地中から襲いかかるものの、物ともしない愚か。 ルーラーの斬撃によって一掃されたのだった。 絶大な威力に、ランサーも唸る。 「成程……! その刃は血で穢れていないと云うか!!」 「試し斬りぐらいだったら、したことはあるがな」 「戯言を!!」 カナエが上空からおびただしい蝙蝠の群れを発見し、舌打ちをする。 何も、邪魔が入らないとは慢心してはいないが――現れたのはランサーの異なる側面・バーサーカーのヴラド三世である。 瓜二つとも言えず。 全てがそっくりじゃない。 それでも二人はヴラド三世である矛盾した状況。 ランサーの方が苛立ちを隠し切れておらず、憤慨を露わにしていた。 「よりにもよって貴様が邪魔をするとは……!」 「勘違いをするな。余は妨害の前提でここに至ったのではない。そうだろう、マスター」 ルーラーの膨大な魔力に惹かれて現れたのは、やはりサーヴァントとマスター。 そして、バーサーカーのマスター……馳尾勇路の登場により、彼が確信めいた言葉をぶつける。 「お前だな! ハロウィンを邪魔しやがってる〈潜有者〉(インキュベーター)は!!」 「インキュベーター? 魔法少女の契約する人だったかな……」 そのように惚ける志希を余所に、バーサーカーの方が勇路に指摘する。 「冷静になれ、奴はサーヴァントだ。貴様には何か見えないのか」 「サーヴァント? ……ルーラー? アヴェンジャーみたいな基本クラスじゃねーもんか?」 「ほう、裁定者か。ならば本来、この場を取り仕切る存在であろう。何故、このような妨害をする」 まだ寛容性のあるバーサーカーからの問いかけは有難いが。 ルーラーは、呆れてどう反論すればいいか、言葉に迷う場面なのだ。 顔をしかめたルーラーが、至極冷静に返答……否、彼らに問いかけたのである。 「だったら言わせて貰うが……アンタらこそ『聖杯戦争』を放棄して何をしている?」 「?」 聖杯戦争の知識のない志希はともかく、揃った主従全員がルーラーの質問が理解できなかった。 まるで『聖杯戦争』とは何事だと言わんばかりの。 聖杯戦争を取り戻そうとするルーラーこそが敵であると称するような。 漠然とした空洞が口を開いて待ちかまえていた。 当然のことだ。 これは聖杯戦争だ。聖杯戦争の途中だった。ハロウィンパーティーなんて本来はやっていないし、元々東京の季節は春。 しかも四月の上旬の時期。桜が咲き乱れて、花見を楽しむべき頃。 ところが……どういう影響なのか、彼らは聖杯戦争を放棄し、ハロウィンを満喫している有様だ。 謎めいたルーラーの話をカナエが一蹴した。 「何を分からん事を……裁定者であろうが場違いなのには変わりない!」 「ふわぁー!?」 最終的に彼らは攻撃を仕掛けて来る。 無数に襲いかかるバーサーカーの使い魔や、ランサーの槍の森。 四方を挟まれ攻撃されては、志希じゃなくとも成す術ない。 だが、ルーラーが刃に魔力を込めた斬撃を振るえば、触れただけで使い魔は消滅し、槍は薙ぎ払われた。 何より――バーサーカーはルーラーの発生させるただならぬ魔力に、悪寒を感じた。 それはランサーも同じく。 双方が自らにとって危険な攻撃であるのは明白で、バーサーカーはマスターである勇路にも危機が迫るものだと察する。 「お~……? 何とかなったカンジ?」 志希が顔を上げれば、殺意を燃やしていた敵の姿は全ていなくなる。 とはいえ。ルーラーも容易に『宝具』を展開してしまうほど、厄介な状況であった。 早急に事を解決させなくてはならない。 ルーラーの使命はきっと、聖杯戦争を取り戻す事なのだ。 刃を仕舞ったルーラーが志希に告げる。 「分かったか? 偶然巻き込まれただけでは済まされないからな」 「うーん。とんでもない匂いがプンプンするから一緒にいるよ!」 「おい……」 「だって、あの人達。まだ近くに居ると思わない? それにキミがこの事件解決してくれるなら、手伝った方がいいと思うんだよね!!」 改めて志希が言う。 「アタシは一ノ瀬志希ちゃん! 日本に帰ってきたの、最近なんだー帰国子女って奴~! 君の名前は?」 「………『大典太光世』」 「え? 『オール電化は三○』?」 「…………」 「にゃーっはっは! 嘘だよ、ちゃんと聞こえてるから♪ おおでんた? すっごい珍しい名前~!」 「ルーラーと呼んでくれ」 所謂、志希は名もなき東京都民の一人でしかない。 格別ルーラー……大典太光世も彼女を単純に巻き込もうとも、引き込もうとも考えていない。 しかし、どうやら彼女は立ち去る気配が無い。 ゴーストや使い魔であれば、問答無用に払う能力でどうにかできるものの。 仕方が無いので、ルーラーは説明した。 「待ちに徘徊する使い魔を発生させているのは紛れも無く、あの城にいるサーヴァントの仕業だろうな」 「サーヴァント?」 「……あそこに住んでいる奴だ」 「ふんふん、城に住んでる魔王様を倒せばステージクリアー、ってことだね!」 「あぁ……全てが『元通り』だよ」 元通り。 即ち『聖杯戦争』が再開される―――ハロウィンは完全に消滅し、全てが無かったことにされる。 夢のような物語は、きっと志希の記憶にも戻らないだろう。 聖杯戦争で血で血を洗うハメになるよりかは、断然マシな世界。 されど、夢から覚めなければらない。ルーラーも、夢を打ち砕く為だけに召喚された。 志希の足取りは軽いが、ルーラーは重い。 双方それぞれの思惑を抱く一方。 離れた位置から超人的な聴力で全てを聞き取った不審なかぼちゃを被った男が、拳を握りしめる。 「なんと……! 全ての元凶、全ての悪とは城に住むキャスターだったというのか!!」 男は聖杯戦争のマスターが一人・平坂黄泉。 ハロウィン仕様の為に被っているかぼちゃはさておき、彼は共に行動していた幼女のライダーに言う。 「今こそ正義が立ち上がる時! 共に行くぞ!!」 ライダーは力強く頷き、マスターと共にルーラー達よりも早く街を駆け抜けて行ったのだった。 ▼ ▼ ▼ 「えぇ? 人体爆発ぅ? まさかセイバーちゃんのせいじゃないよね??」 『私の場合は、ドカーンってやって粉々にするから肉片は高速で飛んで行かないわ』 「そっかー良かった~……って、良くないけど!」 SNSで噂になっている人体爆発事件。 しょうもない情報によって松野トド松のサーヴァント、フランドールの仕業じゃないと証明されたものの。 使い魔たちが襲いかかるならまだしも、正体不明の攻撃に襲われるのは誰もが御免である。 東京都内。折角のクリスマスのような、折角のハロウィンに。 釣り堀にいるトド松とカラ松。 霊体化しているが、フランドールとカラ松のサーヴァント、宮本明も居た。 しかしまぁ。 カラ松は微動だに動かない竿を眺めつつ、話した。 「物騒な事から逃れるには、最近召喚されたサーヴァントの近くに居れば安全って訳だ。そろそろ行くぞ、トッティ」 「行くって、アテはあるの?」 「勿論! ノープラ――― 『魔力を辿って行けば簡単だろうな』 お決まりを遮った明の念話に、少々フリーズしたカラ松。 気を取り直して、続ける。 「……例のサーヴァントは魅力を解放しきっているようだ。俺のアサシンとトッティのセイバーによるシックスセンスで――」 「もー、僕は先に行くよ? トド松兄さん」 「待て! 最後まで聞いてくれ!!」 トド松も、フランドールが魔力を探ると念話で助言した為、そそくさと目的地へ向かう。 揃いも揃って兄弟二人の作戦とは。 マスターである彼らは使い魔などサーヴァントによって倒してしまえば、それで解決である。 だが、サーヴァントが戦闘を行えば魔力が消費される。 一般人の松野兄弟にとって、魔力消費は滅多にしない肉体労働も同然。 なので――勝手に使い魔たちを払う能力を持つサーヴァント(ルーラー)に頼ろうと云う話だ。 情けないクズっぷりである。 それにしても、トド松は呟いた。 「モンスターを追い払ってくれるサーヴァントって……陰陽師?」 「おお、日本なら『安倍晴明』じゃないか!? 尚更、頼って問題ないな!」 最早、頼る前提のクズマスターはさておき。 念話で明がカラ松に話す。 『ありえなくない話だが……それならキャスターのクラス。最悪、東京都全土に何らかの術式を施すだろう』 「な、なんだ。不安になるような事を………だったら他に心当たりの英霊はいるのか、アサシン」 『そうだな……「大典太光世」じゃねぇかと思っている』 「オール電化? 凄まじい名前だが聞いた事ないぞ」 『いや、刀の名前だ。宝具と言った方が正しいか……魔除けの霊刀であり天下五剣の一本だ』 それを所持する英霊? しかし、その宝具が原因とも断定してはならない。 何であれ彼らは、例のサーヴァントと接触する方針に揺らぎは無かった。 最も、兄弟二人は自分の安心のため。 サーヴァントの二騎は、何故このタイミングでサーヴァントが召喚されたのかを不信に思って。 そんな彼らの前に登場したのは、使い魔退治に明け暮れているロボのアーチャー・ひろし。 今日は、珍しい事にマスターであるアダムの姿もあった。 アダムが少々血相を変えて、通りかかった松野兄弟二人に声をかける。 「あぁ! 君たちは確かマスターの……マスターの二人かね? すまない、何分見分けが出来ないものでね……」 トド松は「そうですけど」と答えて問いかけた。 「何かあったんですか?」 「君たちも噂で聞いていると思うが、人体爆発の事件……あれの原因が判明したんだ」 「本当ですか!? やっぱりサーヴァントの仕業……?」 「恐らく――信じがたいがマスターの仕業だ。街に徘徊するモンスター……あれを捕食する事で人体に影響を及ぼす」 「……ほっ!? 食べるって、アレ食べた人がいるんですか!?」 驚愕というより呆れた突っ込みをするトド松。 確かにお菓子で作られたモンスター。クッキーやケーキ、ドラゴンも飴細工の欠片があったり…… だけど、それを食べようなんて発想は馬鹿のやることではないか。 トド松の理解を凌駕する馬鹿が、東京にはいたらしく。 アダム曰く、原因はそれなのだとか…… 「何。食べた人間はすぐ爆発する訳ではない。3日ほど時間が経過する必要がある。 一先ず、君たちも使い魔を食べないよう注意を促して欲しい」 心良く頷く場面なのだが、カラ松の顔色が自然と悪いものへと変化していた。 「まさか」とトド松が察する。 「カラ松兄さん……アレ、食べちゃったの!? 馬鹿なの!?!?」 「あ……その……」 『冗談じゃねぇぞ!? マスター!』 カラ松の記憶では数日前、近所の住人が明の倒した使い魔の死骸を片づけるついでに、食べているところに遭遇し。 流れに流され、ついつい使い魔の残骸を口にしてしまったのである。 味は意外といけていた気がしたが、もはや関係ない。 ロボットながら焦るひろしは、カラ松に尋ねた。 「おい、全部食っちまったのか!?」 「い、いや。クッキーゴーレムの一部だけしか食べていないぜ……」 「はぁ………良かったな。爆発は全部食べなきゃ発揮されねぇよ」 「フッ。流石は俺……運だけで危機を乗り越えるとは………」 「一歩間違えば死んでたの、分かってる?」 トド松からの冷たい突っ込みに「アッハイ」と小さく返事をするカラ松。 とはいえ人体爆発の原因が早期に判明したのは、アダム自身、原因を把握する人物であったから。 これがサーヴァントではなく、マスターだと断言できた理由の一つだ。 霊体化していたフランドールが実体化しつつ、確認する。 「つまり、どうするつもり?」 「ハロウィンは中止にする訳にはいかない……使い魔を東京に放つ事を禁止して貰うか。あるいは――」 アダムの言葉を先読みしたトド松が答えた。 「最近、召喚されたサーヴァントですか? 僕たちもその人を探しに行くところだったんです」 「あぁ……ならば行こう。最悪の事態が起きてしまう前に」 カラ松が落ち着きを取り戻しつつ、眉をひそめる。 「最悪の事態? これ以上、何が起こるっていうんだ?」 「ハロウィンの主催者であるキャスターからすれば、使い魔たちを追い払う例のサーヴァントは邪魔者でしかないだろう?」 「………ということは、つまり―――」 ▽ ▽ ▽ 「何て事をしてくれたんだ! キャスター!!」 「私に言わないでよ! そんなつもりなかったんだから!!」 東京都チェイテ城では一組の主従が喧嘩を繰り広げていた。 城の主であるキャスターのエリザベート。 小太りの男は、彼女のマスターである。 件のマスターの『お菓子』には途方もない、悪趣味かつ異常極まりない性質が施されてしまう。 故に、彼はあまり菓子作りを積極的に行おうとしなかったのだが。 ハロウィンパーティでサーヴァントのみに振舞うとエリザベートと約束が成された為、彼は久方ぶりに腕を振るったと云うのに。 一体どうしてこうなったのだろうか。 エリザベートが渋々話す。 「たっ……確かにそうよ! 私はマスターのお菓子を使い魔にして、街に放ったけど…… でも、それを食べようって神経の方がおかしくない!? 私は食べないと思ったからそうしたのにっ!!」 「ええい! 言い訳はもういい! 何もかもが遅すぎる……!! あああ、クソったれ………!!」 先ほどから得体の知らない苦しみを味わうマスター。 意を決したエリザベートは、えいっと彼を気絶させたのだった。 折角のハロウィンがこのような事態になるとは、エリザベートも浮かない表情で溜息をつく。 「一体どうやって誤魔化そうかしら……それにしても、何で使い魔を食べようなんて――」 「呆れたものだな。予め対応策を考えておけばいいものを……」 「だ……誰!?」 気配なき声に困惑するエリザベート。 それもその筈。声の主は『気配遮断』によって先ほどからの存在をかき消しており。既に城内に侵入していたのだから。 更に、蝙蝠の真似事のように天井に貼りついていたとは、エリザベートも予想外だった。 むしろ。本来は『アサシン』のクラスが適正であるアヴェンジャー・うちはマダラ。 彼の世界は「忍びなのに忍んでいなくない?」な風潮があるが、立派な暗殺者には変わりない。 唐突なマダラの登場に、奇怪な悲鳴を上げるエリザベートを余所に。 華麗に着地したマダラは話を続けた。 「一つ聞かせてやろう。世の中には悪影響を及ぼす外来種が出現すれば 『こいつらは食料化可能なのか、そして美味しいのか』を探る連中がいる。 手間暇かけて駆除し、死体処理するよりかは自分の糧となった方が効率的だからな。つまり、今回のケースがそれだ」 「訳が分からないわ……それがクールジャパンって奴………?」 「そういう事にしておけ。……俺以外に誰か居るようだな」 「………」 マダラに指摘されたことにより霊体化を解いたのは、セイバーのナイブズ。 格別、感情を浮かべていない様子の彼だったが。 どこか忌々しくエリザベートに問う。 「あの使い魔共を撤退させる気は毛頭なさそうだな」 「当たり前じゃない! だって、あれがなきゃ『ここ』でのハロウィンが盛り上がらないのよ?」 反論の内容がナイブズにはいまいち理解出来ないものの。 決して、使い魔が徘徊するのは心良くない。 何故ならナイブズの宝具もとい能力には、存在の消滅に危機を伴う代物だ。 ハロウィンなどで摩耗させなくてはならない理由がどこにも見当たらない。 手っ取り早くエリザベートを始末するべきだろうか…… ナイブズが改めて言う。 「なら、いつまでこのふざけた祭りをやるつもりだ」 「ふざけてないわ! それに………パーティを開催したいのだけど、邪魔者先にどうかして欲しいのよ」 「邪魔者?」 「最近召喚された謎のサーヴァントよ! 使い魔たちを倒すんじゃなくって、消してしまうの」 「……つまり、あのサーヴァントを始末し、パーティとやらを終わらせればハロウィンも止めると」 「最初からそうだって言ってるじゃない!!」 無駄な戦闘を回避できるなら、それで十分か。 ナイブズがあっさりと引き下がったのは、エリザベートがハロウィンを完遂させるのを目的であると確信しているからであり。 更には、エリザベートが話題に上げた謎のサーヴァント。 その魔力は明らかに………『本来の』聖杯戦争には存在しないものだから。 不気味に大人しく退散したナイブズの後を、先ほどの会話に同席したマダラが追跡していた。 しかめっ面のナイブズに、マダラは冷静に話す。 「お前も事の全貌が分かっているなら、余計な手出しをする必要はないだろう」 「……」 恐らくマダラもナイブズ同様。 聖杯戦争の記憶が残っており、ハロウィンなる異常に対抗しようとしている。 例のサーヴァントは、間違いなくエリザベートを妨害する要因だ。 確かに、彼らの出る幕などない……だが。 城内から今までとは異なるかぼちゃの使い魔が、城内から飛び出したのを目にして流石のマダラも不満を口にした。 「ドラゴン娘め、姑息な手を………」 ナイブズは、もしやと直感を働かせ、自らのマスターに念話をするのだった。 ▲ ▲ ▲ 「あの~……マスター。付かぬ事をお聞きしますが、盛り上がってないですよね?」 「『はろうぃん』とやら盛り上がる? 全ッ然。盛り上がる要素、どこにあるワケ? 大体なんだよ、その格好。舐めてんの?」 東京都内にある国会議員の一人、織田信長の自宅にて。 吸血鬼のコスプレもとい。 女吸血鬼だからこそ吸血鬼の格好を着こなす、アーチャーのセラス・ヴィクトリア。 一方、ハロウィンの知識おろか関心もない信長にとっては、奇天烈な祭りごとはあまり気乗りではなかった。 というか。異国の文化なので、馴れないのは当然であろう。 それよりも。 彼の自宅にはもう二組の主従が存在していた。 一組は、シスターの格好のまま居るホット・パンツ。彼女のサーヴァント、ランサーのアクア。 ハロウィンに便乗して、あちこちから貰い貰ったキャンディを口にしながら、アクアが言う。 「アダムのおっさんが人体爆発の件を手っ取り早く伝えるには、お前に頼った方がいいって聞いてきたんだけど」 「そもそも、俺は食品衛生部門の政治家じゃない」 「てか。使い魔を食べるって……食品衛生上の問題なんでしょうか。それ以前の問題だと思うんデスガ」 「第一。なーんでアダムの奴が爆発の原因を把握している。そこが胡散臭いだろ!」 あぁ、とホット・パンツが同意する。 「アダムは機密事項な為、詳細は伝えられないと一点張りだったが……」 アダムの対応には不信感があるものの。 結局、使い魔を捕食しなければ異変は発生しないという訳だ。 セラスが思い出したかのように、ある一枚の紙を取り出す。 「先ほどハロウィン主催者のキャスターさんから討伐令が届きまして……… 何でも使い魔を無力化させてしまうサーヴァントを打倒した後、皆でパーティを開催すると」 「はぁ?」 胡散臭いと言わんばかりの信用しない表情を浮かべる信長。 これまでの情報通りなら、爆発の原因である使い魔を消滅を止めさせろなんてとんだ話だ。 アダムの話が事実であれば、だが。 しかし、信長も例のサーヴァントに気づいており、討伐しろなど言われても。 ジト目でセラスを睨みながら、信長は問う。 「パイチャー。お前、あのサーヴァントには近づいたら死ぬんだったか」 「い、いえ。死にはしませんけど、嫌だなぁ……って感じで。私にとっては天敵だと思います」 セラス――即ち『吸血鬼』には天敵。 やれやれと溜息ついたアクアが腰を上げた。 「どっちにしろおっさんには無理だって訳かい」 「お前がおっさん言うな、ロリババア」 「今度それ言ったらぶっ飛ばすよ。やい、テンション低いそこのマスター。お前のサーヴァントは戦えるんだろうね」 「!」 アクアに声をかけられたのは少女のマスター……ルーシー・スティール。 申し訳そうに。 それでいて緊張気味にルーシーは答えた。 「分かりません……念話をしているんですけど、返事がなくて」 「まーたアベルの奴はほっつき歩いとるのか、マジでお豊の亜種だな」 元より人類には理解不能の思考回路の持ち主だ。 完璧に意思疎通が可能で、完全にコントロール可能だと慢心する毅然とした人間の方がどうかしているか。 だが、自分自身の不甲斐無さにルーシーは意気消沈する。 ホット・パンツは、一つ確認した。 「ノブナガ。お前は誰を倒す? 私は……あのキャスターを倒しても良いと思う。奴がいなくともハロウィンは続行可能だ」 「それが妥当よ。俺のパイチャーを即死させかねないあのサーヴァントとは、最初から戦わん」 アクアが口に含んだアメ玉を噛み砕いて、加わる。 「キャスターもそうだけど……問題はマスターの方じゃないかね。そっちを倒した方が早いよ」 「うむ。事実確認してからでも遅くはあるまい」 キャスター・エリザベートが待ちかまえる城へと向かう信長達に同行するルーシーは、少々奇妙に思った事がある。 それは、勿論アベルのこと。 理解不能な殺戮者であるのは変わりなかったが、何時になく様子が可笑しい。 憤りを使い魔の破壊や人々の虐殺にぶつけていたのは最初で。 今はそのような事が無い。 故に、ルーシーは魔力消費で苦しむ心配はないのだが……アベルは決定的な『何か』を欠如したかのようだった。 △ △ △ エリザベートが、至急に命じた討伐令は使い魔たちによって順調に配られていた。 人体爆発の真相を把握していない者や、ルーラーを心良く思わない存在からすれば願ったりな話。 否、命じられなくてもやってやろうな者だって居るかもしれない。 そんな中――― 東京都の一角。 先ほど人体爆発が発生したおかげで、騒然となった喫茶店のある場所。 マスターの少年・今剣が必死に伝えたのである。 「ぼくは、あのサーヴァントのしょうたいをしっています! だから、いいます。かれは、わるいことをしようとはしません」 それを聞くのは現場に居合わせた飛鳥とエミ、その二人のサーヴァントたち。 戸惑いつつ飛鳥が尋ねる。 「なら……彼の真名を教えて欲しい。もし善人であれば逸話で十分把握できるからね」 「残念ながらそれは難しい話です」 今剣の代わりに、彼のサーヴァント・那須与一が答えた。 「彼とはそもそも人ではないのですから」 驚きを浮かべながらエミが聞き返す。 「えっと、人じゃないって化物とかですか………?」 「真名は『大典太光世』。天下五剣の一つであり、魔除けの霊刀としての逸話は語り継がれているでしょう」 「それはつまり『宝具』じゃないのかい?」 飛鳥は浅い聖杯戦争の知識で導きだす。 英霊の人物が所持する宝具。『大典太光世』はそれに分類される方が正しい。 だが、今剣は首を横に振った。 「いえ、ぼくとおなじです。ぼくは短刀『今剣』の付喪神です………しょうかんされたのは『大典太光世』の付喪神なんです」 「な……何よそれ~! 無茶苦茶じゃない! 宝具がサーヴァントになってるって事でしょ!?」 ブルーベルの言葉通り。 今剣同様『付喪神』であれば、肉体を得てサーヴァントであっても納得できるが。 その前提こそが受け入れ難い話だ。 けれども、飛鳥のアサシン・零崎曲識は霊体化したまま「ふむ」と言う。 『「大典太光世」……僕も聖杯の知識で知ったが、魔除けあるいは病除けとして使用された太刀だ。 何でもソレの保管してあった蔵に止まった鳥は全て死に絶えるらしい。成程、使い魔など接近しただけで消滅する筈だ』 「それはそれで恐ろしい話だね……」 『何より問題は……何故今頃になってソレが召喚されたのかだ』 「確かに……以前から思っていたけど………」 何か理由があるとすれば? 飛鳥が思案する中、ブルーベルが今剣に問い詰める。 「ホントーに大した奴じゃないのよね、そいつ! 余計な願いとか持ってるんじゃないでしょーね!!」 「う、うーん……なんといえば………いつも『俺なんかどうせ……』とかいっています?」 「俺なんかどうせ……」(ブルーベル) 「……俺なんかどうせ……か……うん………」(飛鳥) 「俺なんかどうせ……?」(エミ) 天下五剣の癖してなんだその卑屈精神は、なる突っ込みはさておき。 改めて今剣は方針を語った。 「ぼくは、かれ(大典太光世)とごうりゅうします!」 「……とマスターが申しておりますので、私もそのつもりですが。皆さんは?」 しばしの沈黙の末。飛鳥が口を開く。 「ならボクもそうするよ。理由が何であれ、彼と直接会った方が話は早いんじゃないかな」 エミも「うん、そうね!」と同意した。 意見が固まったところで、突如人々の騒がしさが増加している。 再び人体爆発が発生したのではなく。使い魔たちが雪崩の如く、この地域に押し寄せているのだ。 理由としては、例のサーヴァント(大典太光世)の能力から逃れようと、本能的に逃走した末がここだったのだろう。 ブルーベルが苛立って吠える。 「やっぱりブルーベル達の邪魔してるんじゃないの!?」 「そ、そんなつもりじゃないですよ!」 今剣による苦し紛れのフォローをかき消すかのような乱闘が始まった。 ■ ■ ■ 「討伐令……?」 かぼちゃの使い魔によって運ばれた手記に困惑の声を漏らす巽。 彼以外にも、不動高校に揃っていたマスター達――アイリス、英治、駿河、潤也の手にも同様のものが渡されていた。 討伐対象は近頃召喚された正体不明のサーヴァントと云う。 集結したマスター達の中で、率先して英治が切り出した。 「とにかく、指示に従おう。ハロウィンが中止になりかねないなら仕方ないよ」 まず、アイリスが申し訳なさそうに言った。 「ごめんなさい。セイバーが討伐令には従うなって念話で伝えてきたわ……」 「えっと……どういうことだ?」 疑問を投げかける巽。 アイリスもセイバー・ナイブズの意図を完全に掴めていない。 彼からは、従うなの一言のみだった。それ以上の言葉はなかった。 つねに言葉数は少ないし、駿河も感動するツンデレのテンプレなのかも定かじゃないが。 ハッキリしている事実がある。 「多分、セイバーは協力してくれないわ。スルガはどう?」 「うーむ、私に関しては念話すらない! 実質放置プレイだぞ!!」 潤也が「なんで嬉しそうなんだよ……」と苦笑いを浮かべつつ、答えた。 「俺のライダーは大丈夫だぜ。サーヴァントも魔力が目立ってるらしいから簡単に見つけられるってさ!」 「あぁ、俺のセイバーも問題ないぞ」 巽と潤也のサーヴァントは双方共に指示に従う(貴重な)存在であった。 そして、英治は言うまでも無い。狂ったバーサーカーとは念話すら交わせないのだから。 渋々話を進める英治。 「……どっちにしても二人のサーヴァントが頼りだ。僕たちは出来る限りの事をするしかないね」 「よーし、さっさとサーヴァントの奴を倒しに行こうぜ!」 乗り気な潤也を制して巽が言う。 「対策とか必要なくていいのかな? とは言っても手掛かりはないけどさ……」 「あー……真名とか? 使い魔を追っ払うなら『安倍晴明』かなーって思うな」 「随分とお困りのようだね!」 迷える少年少女を嘲笑するかのように出現した魔女のコスプレをした女性。 もとい、彼女を乗っ取ったジャック・ブライトと幽々子。 彼らも討伐令を受けて、わざわざここまで至ったのである。 幽々子が早速話を切り出す。 「例のサーヴァント、真名なら心当たりあるわ。戦力としては誰が?」 ブライト博士の登場に、嫌な予感を抱きつつアイリスが答える。 「タツミのセイバーとジュンヤのライダー……その二人だけど…………」 「なら十分ね。とくにセイバーがいるなら頼もしいわ」 「俺のセイバーが? ひょっとして竜に纏わる英霊とかなのか」 面白おかしく唸りながらブライトが笑う。 「相手は実戦経験が乏しい……と言えば十分かな? 実力勝負で押し切れるという訳さ。 宝具を甘く見てはいけないだろうが、君のセイバーなら大丈夫だよ! 安心したまえ」 実戦経験のない英霊など意味不明で謎が深まるが。勝機があるならば問題はない。 ハロウィンを継続させるべく、戦地へ誘って見せるべきだ。 不安を一つ感じたアイリスがブライトに尋ねる。 「ねぇ、博士。今回の件、SCPは関わっているの?」 「おや。察しがいいじゃないか、アイリス! まぁ君は心当たりはないだろうけど、とあるSCPが関係しているのは確かだよ」 「やっぱり……じゃあ例のサーヴァントが――」 「そこは残念、ハズレだ。正解は、お菓子の使い魔を捕食した際に発生する人体爆発の異常だ」 「!?」 ハロウィンパーティーに夢中だった彼らは、頻繁に発動する人体爆発の件を把握していなかった。 事件にも衝撃を受けたうえ。 それがSCPの仕業なのも驚きを隠せない。 霊体化を解いたライダー・ジャイロが冷や汗浮かべつつ、言った。 「やっぱり! 止めておいて正解だったじゃねーか、ジュンヤ!!」 「だってさ食って爆発したって話は聞いてないぜ!?」 「ハハハ! そこがこのSCPのタチの悪いところ。捕食して大凡三日後に爆発する仕様なんだ、これが」 それに。 ブライトは少々深刻そうな表情を浮かべて、続ける。 「生憎、私も詳細に把握してなくてね。なんせ……この異常を発生させているのは『SCP-345-JP』…… 日本支部で収容されている人型オブジェクトなんだから」 □ □ □ 「ザック! 待ってよ……一体誰を探してるの……?」 「あぁ? 何言ってんだ、アベルに決まってんだろ。……そーいやお前も様子が変だしよ」 「……????」 必死に追いかける少女・メアリーの瞳を見て、ザックは顔をしかめていた。 彼は思い出したのだ。 だけど、東京は聖杯戦争ではなくハロウィンパーティーを開催。 メアリーの瞳に淀みは無い。 傍らには少々変わった少女・沙子の姿や、気の狂った梟はいないが。殺戮者であるアベルの姿すらない。 彼なりにアベルを捜索し続けるが、一向に発見できないのが現状だった。 馬鹿だが、ザックはどうにか考える。 「あーくそ! アベルの野郎、どこにいんだ!! カインの野郎は殺したのか!? だったら直ぐにでも殺して……待てよ?」 そもそもハロウィン開催を宣言したのは派手なドレスを身に包んだキャスターだ。 なら、彼女を殺せば? いいや、それではアベルとの約束が成立しない。 だけども――彼女をどうにか問い詰めればハロウィンは中止となって、聖杯戦争が、全てが戻るかもしれなかった。 ………それでいいのか? 「良いに決まってんだろ」 一瞬浮上した迷いを振り払うかの如く、ザックは言い放つ。 とにかく、ハロウィンは中止にする。もう一度アベルを殺害する為に、東京を戻す。 ザックの険しい思惑を知らぬメアリーは、そこに通りかかった少年を目撃した。 彼は紙を手にしながら思い詰めた表情だった。 ――討伐令か…… 少年・安藤は、不可思議な状況について考え始めていた。 使い魔を倒されて困る。だったら、今まで他の主従たちがしてきた使い魔退治は不問する訳だ。 何故、あのサーヴァントのみ討伐を求められているのか…… キャスター・エリザベートに関して致命的な鍵を握っているか、どうか? 違う。 もう少し状況を考えろ。安藤は自分自身に言い聞かせる。 確かに、東京中に溢れ返りそうな使い魔たちも全てを倒し切れる訳じゃないのだ。 実際、魔力の都合で巽ですら危険な使い魔だけを集中的に狙っており。 他の主従も同じであろう。 そして――例のサーヴァントは恐らく、壊滅的に使い魔を滅ぼす能力を所持しているという事…… つまり……? 「トリック・オア・トリート!」 「……え?」 メアリーがそう安藤に告げてきたものだから、間抜けな声を漏らして安藤は目を丸くした。 お菓子? 何か持っていたような、持っていなかったかも? 慌ててバッグを探ろうとする安藤。自然とメアリーの傍にいたザックに視線が向かう。 ハッと我に帰る安藤。 (サーヴァント……!?) マスターの安藤にステータスが視認可能なのは当然だ。 しかし、それを躊躇する動作を起こしたせいでザックは自然と鎌を構えていた。 あれは本物だと確信した安藤。 一方で何故、動揺しているのか自身に疑問を抱いても居た。 どうして殺されるなど不吉を感じ取るのか。ハロウィンパーティーの最中だ、サーヴァントやマスターが殺しあえなど……? 『マスター! お逃げ下さい!!』 即座に反応したのはカイン。 実体化した瞬間、ザックが振りかざそうとする鎌の盾となって立ちふさがった。 本来ならばカインが手傷を負う立場の筈が、ザックの腕に傷が生じる。 理解不能な現象も聖杯戦争ならではものならば……! 確信を得た安藤と同様、夢から目覚めた殺人鬼は猟奇的な笑みを浮かべた。 「あ!? いってぇ……やっぱりマスターか! おい、アベルの野郎知らねぇか? あいつを殺す約束してんだよ」 「………!」 よりにもよって聞く相手が間違っているが、カインは決して口を開かない。 アベルがどこにいるかは知らない上。彼を死なせたくない想いが、確かにあるのだから。 安藤は意を決して言う。 「なら……聖杯戦争を取り戻してからだ。ハロウィンを中止する為に、あのキャスターを倒す!」 「……あー何だ。お前、あのコスプレ嬢ちゃんをどうにかするつもりか?」 凶器を片手に悠々と喋るザックは、安藤にとってはかつて命を狙った殺し屋を彷彿とさせた。 しかし、どうやら彼の方も聖杯戦争の関する部分を取り戻しているらしい。 最早、聖杯戦争おろか神秘の隠蔽すら追いつかない状況下だが。 あのキャスターが異常を発生させているならば、倒す他ない。 単純な計画だが、ザックも賢くない頭脳を働かせていた。 「つーか、こんな事。サーヴァントが出来んのかよ。聖杯戦争やってねーし、メアリーも様子が変だしよ」 「私? そんなに変かな」 わざとらしく惚けている様子ではないメアリーを余所に。 安藤は一つの存在に気付いた。 ポツンと不自然なように、少女が一人。こちらに近づいてくる。 けど、きっとマスターの一人だと安藤は確信して。ザックに関しては見覚えがあった。 「アベルの前にイカれ嬢ちゃんの方が先に会ったな。人喰いの奴もいんだろ」 「……私、あなたとは初対面のはずだけど。どこかで会ったかしら」 「はぁ? 何ボケてんだ、テメェ!」 首を傾げる少女・沙子は細かい部分を差し引いて、話を続けた。 「ハロウィンは中止にしないで欲しいの。私はこの世界がいつまでも続いて欲しいわ」 「そんなの……いつまでも続く訳がないだろ!」 厳しい口調の安藤。 少女とは思えぬ眼力で睨む沙子。 馬鹿げた願いは本心から出たものであった。しかし、安藤の言うとおり夢物語が続く保証は無い。 それでも―― 安藤たちの頭上から奇襲を仕掛けてきた人喰いの梟。 少なくとも、安藤やカインは対応が遅れてしまうがザックはどうにか一撃を防ぎきった。 狂ったように笑う梟に対し、苛立ちを爆発させるザック。 「あぁ、そうかよ! このイカレコンビが!!」 瞬間。 安藤達の周辺が暗黒に包まれる。メアリーは未知なる闇に対して、潜在的な恐怖が込みあげて来る。 ザックが時間を稼ぐのを察した安藤は、蹲るメアリーを引っ張り駆けた。 暗黒から抜けても、部分的な闇は広がっており、ザック達の様子は分からない。 安藤とメアリーと共に脱出したカインが我に帰った。 「餓えた木になっているな」 そうこの世のものとは思えぬうめき声と共に、巨大な化物が襲いかかる。 怪獣と称して違和感のない、ビルの合い間を這うように移動するソレは安藤やメアリーの肉体より何十倍ある巨体。 骨のような腕が安藤たちを襲う。 「おおうい。何サマのつもりだ。逃げるなオラァ!」「植えた気になってる「リンゴォ!」「頭がしゃわしゃわしてくる」 触手らしき器官から発生する口がそれぞれ喋り続けるのが、鳥肌が立つ。 攻撃を仕掛けるソレが、サーヴァントではない事実が安藤にとっての恐怖であった。 カインが魔力の秘めた触手の攻撃を受ければ、怪物本来の口内から女性が苛立った声が聞こえる。 「いってぇなぁぁぁぁあぁぁ~~~~~このクソザコボケナスがよぉぉおぉぉぉ」 「………!」 「マスター! 私が時間を稼ぎます!! あの城へ向かって下さい!!」 「あ、あぁ……!!」 止める――あのキャスターを、しかしどうやって!? 安藤はメアリーと共に狂った東京の街を走り続けながら考えるのだった。 ● ● ● 「ふ、ふにゃ……これピンチなんだよね………?」 志希が緊迫気味に焦りを覚えるのは無理もない。 呑気に構えていたつもりじゃなかったが、あれから再び体勢を取り戻したヴラド三世のランサーとバーサーカー。 謎のかぼちゃ頭のバーサーカー……ではなく。行方不明の遠野英治のバーサーカー・ジェイソン。 彼らは問答無用に志希とルーラーに猛襲を続けていた。 ジェイソンは、ハロウィン仕様のせいでアイスホッケーマスクじゃないが、能力は健在だった。 確かに動きは遅いが、幾度もなく復活を果たし。逃げようものなら固有結界を発動させる…… 膨大な魔力を誇るルーラーであっても。消耗戦を強いられては不利だ。 疲労を感じつつルーラーが呟く。 「やはり……置物の俺では…………」 「このまま押し切れ、バーサーカー!」 人々が楽しむハロウィンを中止させては駄目だと、勇路が吠える。 彼らの想いは確固たるものだが、本来――聖杯戦争をやるべきなのだ。 一つ、歯車が狂ってしまっただけ……想いを踏みにじるハメになると分かっていたが―― ルーラーは今まで躊躇していた。だけど、こうなっては致し方が無い。 魔力の具合から、ランサーが反応する。 「もしや、宝具の解放か。僅かな魔力で終わらせようとは―――良し! こちらも応えようではないか!!」 余計な真似をしでかそうとするランサーにカナエが言った。 「ランサー! 調子に乗るな。撤退しろ!!」 「マスターよ……あれも最後の一撃だ。こちらが確実に仕留めようぞ」 ランサーはルーラーの一撃を真っ向から受けて立つ算段だったが、バーサーカーは勇路に促す。 「あれを喰らっては貴様もタダでは済む訳がない。分かっているな?」 「……くっ」 恐らく、勇路の保有する 断章 の影響か。 ルーラーの怪異殺しの一撃を、あるいは波動すら受けてしまったら勇路の死に直結しかねない。 無論それは――吸血鬼のバーサーカーも同じく。 なけなしの魔力を解放したルーラーの宝具――『烏の音が鳴き止む晒され頭の子守唄』。 効果の範囲が及ぶ全土に対して展開される一撃。 逃げ遅れた使い魔たちは全て消滅し、ルーラーの斬撃が敵対するサーヴァントへ向けられた。 だが。 それを受け止める騎士が出現する。 「そうはさせない―――!」 「何!?」 『悪竜の血鎧(アーマー・オブ・ファヴニール)』 その宝具を所有するセイバー・ジークフリートが斬撃を喰らいながらも、物ともせず更なる宝具を解放した。 『幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)』 竜殺しの黄昏の剣気と霊刀の剣気が衝突を巻き起こすのだった。 高濃度の魔力爆発が東京一角で巻き起こり、結果は相殺となった……しかし。 「どうせ……こうなろうとは思っていたが………」 「ルーラー!? ほらほら! 座り込んじゃったら駄目でしょー!?」 志希がどうにかルーラーの気力を回復させようとするが、元よりルーラーは裁定者らしく願いはないが気力もない卑屈精神である。 むしろ、アイドルの可能性を秘めた志希の明るさを眩しく感じるほどに。 遠くに見える城をぼんやりと見つめるルーラーが言う。 「少しは俺が時間を稼ぐ……そのくらいは出来るさ………」 「え、一緒に行こうよ!」 「そもそもアンタは……関係ないんだ。何も心配しなくていい」 「………もー! 分かった!! 志希ちゃんがお城のラスボスにお願いして、ハロウィン中止して貰うから!!」 「おい……」 志希がアイドルにも、海外にも味わえなかった魔王の住む城への突入という珍事に手をかける。 ルーラーが無気力ながら突っ込んだ先。 霊体化して潜んでいたジェイソンの登場に、少女らしい悲鳴を上げる志希。 それを妨害したのはライダー・ジェイロの鉄球だった。 ジェイソンが鉄球により転倒した隙に、志希は必死に全力疾走する。 散々な乱入の末、カナエが割り込んだ。 「何故アレを逃がした! 殺せば良かったものを……!!」 「よく見ろ! あいつはマスターなんかじゃあない。魔力も何も感じなかったぜ……余計に殺さなくて良かったな」 「クソ……」 だったら。 状況を飲み込めない勇路が尋ねる。 「その……ルーラーのマスターはどこだよ? つーか、ソイツ倒せば終わりだ。話はその後でもいいだろ」 「……………」 しかし、皆が一向にルーラーに止めを刺さないのは、彼があまりに無抵抗な態度だったからだ。 宝具を解放する魔力も、万策を尽きたから諦めているうえ。 どうせ殺すつもりなんだろう。な表情と来たものだから、訳が分からない。 果たして、訳の分からないサーヴァントとして倒すべきなのか? 「お……おいおい! 何してんだ、お前ら!!」 慌てて間に合ったロボットのアーチャー・ひろし、それからカラ松のアサシン・明が登場した。 魔力の具合から何が起きたか全て把握している。 だからこそ、明もひろしに続いて言う。 「あの使い魔は危険だ。俺達が倒さなきゃいけねェのは分かっている筈だ、そこのサーヴァントは力になってくれるだろう!?」 呆れた風にバーサーカーのヴラドが答えた。 「キャスター曰く、ハロウィンを邪魔する奴だ。討伐令があるのを知らぬか」 「討伐令だと!? 絶対おかしいだろうが! そんなの!! あの使い魔を食えば爆発させる奴がキャスターの背後にいんだよ!!」 ひろしの熱弁に対しジークフリートが申し訳なく話に加わった。 「すまない……確かにそれは把握している。だが、ハロウィンを危機に追いやる存在ならば倒すべきではないかと、俺達は考えたんだ」 考えた。 とは言うが、ジークフリート自身の意思というよりも、巽たちマスターの総意が込められた結論ではあった。 対して明は「そいつはどうかな」と反論する。 「要するに、そこの吸血鬼のサーヴァントや使い魔たちが居心地悪くなるから倒せとキャスターが言っているんだろうな。 だが、使い魔のいない安全地帯くらい隔離して作るべきなんじゃねェか? 俺はそいつを倒すには反対する」 どうやら現場へ急行した明たちの目的はソレなのだと理解できる。 ハロウィンを平和に継続する為に、ルーラーを利用する……だがルーラーは決して命が助かりたい訳じゃない。 彼の目的は一つ。 すまなそうながら、それで居て面倒そうにルーラーが話を割り込んだ。 「悪いが……俺自身は反対だ。俺の目的はハロウィンの中止だけだ」 ルーラー自ら反対を申し出るのだから。 全員が戸惑う。もとい、これではルーラーは八方ふさがりで自身の危機を悪化させただけだ。 流石に、ジャイロがルーラーに問いかけた。 「だったらお前さん、どうしてそこまでハロウィンを止めさせようとしてんだ」 「……元々ここ(東京)はハロウィンじゃなく『聖杯戦争』が行われていた。 そう説明したところで、アンタらは覚えていないだろうが……俺は聖杯によって『聖杯戦争』を取り戻す為に召喚された」 「聖杯戦争……?」 誰もがルーラーの言う話が全く読めていない。 説明しても無意味だとはルーラー自身が察しているのだ。 故に、彼は心底諦めた風で降参を認めている。 「どうせ、俺はここまでだと分かっていたよ。俺以外のルーラーが召喚されて、解決してくれるはずだからな……」 カナエがルーラーを鼻先で笑った。 「こうも殺してくれと言うのだ。殺さない通りはない」 「やっぱり聖杯戦争ってのを理解した方がよくねぇか!? こいつを倒しても別のルーラーってのが召喚されるみてぇだし……」 諦めムードに満ち溢れたルーラーをどうにも納得できないひろしが制止するが。 ハロウィンの中止を断固として曲げない態度に、やはりルーラーは倒すしかないという想いが無意識に生じた。 それを妨害したのは、一発の弓矢。 放たれた矢が的確に殺害の意思を見せたカナエへ吸い込まれようとするのを、ランサーが見逃さない。 次には、巨大なアンモナイトが降りかかり。 衝撃波がその場にいるサーヴァントとマスターに襲いかかった。 「よかった……! ぶじでなによりです!!」 「まさか……」 ルーラーも正直驚いた。 駆けつけたのは彼と同じ『刀剣男士』の今剣とアーチャーの与一。 共に行動していた二宮飛鳥と先導エミ。二人のサーヴァント――曲識とブルーベルが登場する。 思わずせせ笑うルーラー。 「俺の霊力で正体が分かったから助けたのか……?」 「あなたは、わるいことはしません。ぼくはしんじています!」 「今の内に逃げましょう。手数ではこちらが不利です」 与一が冷静に告げる中。 ブルーベルが雨のバリアでバーサーカーのヴラド三世の猛攻を防ぎ合っていた。 飛鳥は、他にも存在するサーヴァント達を確認してから、曲識に言う。 「アサシン。君ならどの程度、時間を稼げるだろうか?」 「精神操作が通用するなら……半分以上は足止め出来るが、最悪僕は逃げ出す」 「ちょっと! こんな状況で逃げる事考えてるんじゃないわよ!! 取り合えず、エミたちは逃げて!」 「うん! ブルーベルちゃん達も死なないで……!!」 しかし、ルーラーが今剣たちと逃走してしまえば。 サーヴァント3騎に対して、対峙する数はどうやっても多い。曲識の精神操作で妨害するにしても―― だが、応援が現れるものだ。 既に遠距離より攻撃は定められていた。 高濃度の魔力により形成された漆黒の槍が走る!! 「ブラックブラックジャベリンズ!」 ランサー・アクアの宝具と共に、彼女と攻撃を仕掛けるのはアーチャーのセラス。 ハルコンネンの砲撃とが襲いかかる状況下。ジークフリートが再び宝具を構えようとした矢先。 魔力放出を発動させて現場に到着したセイバー・フランドールの宝具がぶつかる。 「『汝が継続できない炎の禁忌(レーヴァテイン)』!」 これほどの戦いならば、幾ら破壊をしても構わないだろうと彼女は満を持して宝具を展開させた。 宝具で理解した与一が影となって駆けつけた吸血鬼に声をかけた。 「セラス殿。これはこれは、どういうおつもりで」 「何というか成り行きです! それより――あの魔力を持つサーヴァントは!?」 「それなら僕のマスター達が連れて行った……どうだろうか。この数。手伝ってはくれないか」 曲識は即座に味方と判断したセラスは、しっかりと頷く。 まさしく大乱闘と言わんばかりの状況でひろしが行動を起こす。 彼はルーラーを追跡しようとする。だけど、確固たる意思を持ってだった。 ひろしは、明に言う。 「アサシン! ルーラーを追いかけようぜ! このままじゃ納得いかねぇ!!」 「……アーチャー。奴の目的は確かだと思う。それでも……ハロウィンの中止が正しいと判断するのか?」 「分からねぇよ! だから、ハッキリさせに行くんだ! あのキャスターにも使い魔のことで聞くべきことがあんだろ!」 ひろしの言葉に、ジークフリートが答えを得た。 彼もまた、きっとこれで全てが終わると信じてしまっていた…… あのルーラーが悪だという証拠すらなかったのに。 「俺は……また道を違えようとしてしまったらしい。すまない、ライダー。俺は――」 「おいおい、勝手に話を進めるなよ。聖杯戦争ってのもそうだが……ルーラーの奴を追わなきゃいけねぇからな。俺も行くぜ」 ○ ○ ○ 「これは……どういうつもりなのよッ!?」 東京都内でサーヴァントとマスターによる混乱が生じる最中。 チェイテ城では、エリザベートがキャスター・死神ヨマと交戦していたのだった。 無論、彼にもルーラーの討伐令は届いているし、ルーラーの存在だって認識しているだろう。 ヨマは他の者たちと異なる点は、元よりハロウィンを楽しんでいる訳じゃない事。 エリザベートの宝具『竜鳴雷声(キレンツ・サカーニィ)』とヨマの攻撃が衝突する。 ハロウィンという状況下。 常に満月が上空にある異常状態の為、ヨマの魔法は最大限のものであった。 説明するまでもなくエリザベートは押されてしまっている。ヨマは悠々と話した。 「俺は城を集めるのが……趣味でな………記念すべき100番目の城をお前の城にしようって訳だ………有難く思えよ」 「全然有難味がない! 第一、城を集めるなんてどういう趣味よ! 自分だけの城を持つべきだわ!!」 そんな調子で戦い続けるのでヨマのマスター・あやめは困惑気味だ。 元々、彼女は怪異である為、ルーラーの存在から逃れなくてはならなかった。 だからこそ、エリザベートのいるチェイテ城に足を運んだのに、争いに発展してしまったのは予想外であり、哀しい事である。 あやめが我に返ると、更なる異常が発生していた。 「あっ……!? きゃすたー、城が……!」 「一々口出すんじゃ……………何!?」 何とチェイテ城がまるでお菓子のように巨大な怪獣に捕食され始めていたのだ。 戦いに夢中だったヨマとエリザベートが反応に遅れたのを良い気に、鉄のような不気味の鱗で全身を覆った大トカゲ。 騎乗する幼女のライダーと、彼女のマスター・かぼちゃ仮面を被った平坂黄泉が名乗りを上げる。 「街の平和を脅かす悪き魔女め! 正義の名のもとに、ハロウィンレッドがお前を倒す!!」 「ふざけるんじゃねぇ……! あの野郎……大人しくあのサーヴァント(ルーラー)を殺しに行けばいいものを………!」 「それ、アナタが言う!? でも、このままじゃマスターが危険だわ! 先にあいつを倒させて頂戴!!」 「当たり前だろうが……! 俺の城を食われてたまるか……!」 「私の城!!」 何とも奇妙な共同戦線が誕生するのを、ナイブズが呆れて傍観していた。 どうやら、彼のマスター・アイリスは大人しく待機しており。 令呪を使用する様子もないので、警戒する必要はないのだが…… そうも上手くいかないのが現実。 ナイブズは遠くから城まで一直線に移動していた少年・ジークとランサーのブリュンヒルデの姿を捉えた。 二人のキャスターによる強力な攻撃に、物ともしない愚か巨大化と捕食・破壊の規模を増す『不死身の爬虫類』。 ジークは状況を判断し、令呪を確認していた。 「二騎のサーヴァントが歯に立たないとは……俺達も戦おう」 「マスター。いけません……私が往きましょう。その令呪を使ってしまっては、貴方の命が……」 「しかし――あの城には、恐らくキャスターのマスターがいる筈だ……一刻も早く倒すには――」 ジークの持つ『竜告令呪(デッドカウント・シェイプシフター)』が発動する。 令呪を一角消費する事によって英霊『ジークフリート』の能力を会得するジークだけの特異。 マスターでありながら、三分間のみ全力で戦闘が可能となるのだ。 再現された竜殺しの風貌に、ブリュンヒルデは戸惑う。 構う事なくジークはある確信を持って『不死身の爬虫類』と対峙する。 「俺に任せてくれ! キャスター!!」 「えっ!? もしかして……あの時のかぼちゃなの?」 エリザベートもセイバーの力を得たジークに驚く一方。 ジークは黄金の聖剣『幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)』を怪獣へ解き放ったのである。 ある存在により竜種に分類されてしまった『不死身の爬虫類』に竜殺しの一撃は紛れも無く効果的だった。 恐らく、攻撃に適応しつくしたヨマとエリザベートによる攻撃を凌駕するだろう。 けれども怪物は倒れない! 必殺技を受けてもなお微動だにしない。ヒーローものであれば絶望的な相手である。 平坂は誇らしげに言う。 「我がライダーの友はこの程度では倒れたりはしないぞ! 降参し―― 「『幻想大剣・天魔失墜』!!!」 「ふぇ?」 ジークは追加の剣気を、続けてもう一発の『幻想大剣・天魔失墜』も叩きつける。 ジークフリートとは異なりジーク自身が『ガルバニズム』のスキルを保有しているのだ。 これにより、宝具を連射可能という荒技をやってのける。平坂もこれには動揺を隠せなかった。 「ちょ、ちょ――待って!!」 「もう一撃……! 『幻想大剣・天魔失墜』!!!」 最後と言わんばかりのジークの技を受けた『不死身の爬虫類』は吹き飛ばされた。 肉体の損傷も激しいが、完全に敗北に喫した様子じゃない。最終的に怪物は平坂とライダーの魔力が尽きたことによる消滅で終わりを迎えた。 「おのれ! 覚えていろ、キャスター!!」と最後の気力で退散する平坂は、やはり正義の味方というより悪の手先である。 ジークも魔力を大分消費した為、一息つく。 「まさか……あれほどの竜がいるとは………彼らの魔力が尽きなければ、俺も危うかったかもしれない」 「か……かぼちゃ! アナタ、なかなかやるじゃない! 見直したわ♪」 エリザベートなりの感謝を告げられる。 ジークは、彼女と今回の一件で話がしたかったのだ。 だが、突如として新たな衝撃音が響き渡る。 次は―――ブリュンヒルデが宝具をジークに振りかざそうとしている。巨大化した槍をどうにか避けながら、あまりの状況に。 ヨマが顔をしかめた。 「はぁ? なに……自分のマスター、殺そうとしてんだ……バカか?」 「え?(きゃすたー……)」 彼の言葉に流石の違和感を覚えてしまったあやめの傍ら、ブリュンヒルデは必死に訴える。 「彼は私のシグルドです! ええ、紛れもなく愛しいシグルド……何故、このような場所にいるのですか? 自力で会いに……?」 「しっかりするんだ、ランサー! 俺はシグルドではない……!!」 ブリュンヒルデの振りまわす槍によって発生する風圧。 それが、周囲を過大な影響を及ぼすのは当然の結果であった。 エリザベートのチェイテ城も然り。怪獣によって破壊された部分から、飾りからお菓子まで。 「かぼちゃ! 自分のサーヴァントくらいコントロールしなさいよぉ!!」 「すまない、キャスター! マスターを連れて逃げて欲しい。ランサーは俺が引きつける……!」 「わ、分かったわ」 これほど派手に馬鹿をやっている状況でも、ただ傍観するナイブズ。 しかし、思わぬ乱入者が登場したのだ。 ちっぽけな人間。 聖杯戦争の関係者にいなかった少女・一ノ瀬志希。 爆風が吹き荒れて志希は前進することも満足ではない状況、それでも彼女は崩落しかかってる城へ目指そうとしていた。 「ふにゃーん! 体が動けないよ~!! あともう少しなのに……」 「ランサー! ……っ!!」 やがてジークの肉体は元通りになったが、ブリュンヒルデは無言で攻撃を続ける。 彼女は、どのような姿であれジークを殺しておきたい。願いは覆らない。 分かってはいるが、ジークはバーサーカー・フランケンシュタインの宝具を使用出来たとしても、ブリュンヒルデと完全に渡り合うには―― ブリュンヒルデの大槍が振りかざされる直前、それを受け止める魔力で構成された巨人が出現した。 何事かはともかく志希は、この隙に全速力で駆け抜けた。 仕方なしな態度で宝具を展開させたのはアヴェンジャーのマダラ。 「自らのサーヴァントに殺意を向けられるとは、どんな不満を齎したのやら……」 「アヴェンジャー!? すまない、ランサーは俺に不満があるのではない。話し合わせて欲しい……!」 「これが話し合える状況か? 悠長なものだな。悪いがさっさと始末させて貰うぞ」 マダラの巨人とブリュンヒルデの大槍が衝突する最中。 エリザベートは城にいる自らのマスターを捜索し続けていた。 自分の城なのだが、ここまで崩落が酷いとぐちゃぐちゃで何がどうなっているかサッパリである。 「私が現界してるから生きているんでしょうけど……どこにいるの!?」 「はぁ……はぁ……! 魔王さまをはっけ~ん! じゃない?」 「こんな時に……って、誰よ!?」 エリザベートが突っ込むのは無理もない。志希はマスターでもない一般人だ。 ハロウィンを開催する際、彼女のような人間は決して存在していなかった。 故に、意味不明な人間が割り込むなんて訳が分からないだろう。 しかし、志希は必死であった。 「お願い! ハロウィンを中止して欲しいんだ!! えっと……お城に住んでるお姫様だよね?」 「え? ま、まぁそうね! ハロウィンのお姫様ってことでいいわ……だからハロウィンは中止にしないわよ!!」 「本当にお願い!! セイハイセンソー?っていうのを始めないと行けなくてルーラーが言ってたんだ。 それに、このままじゃモンスターのせいでたっくさ~ん人が死んじゃうよ! 絶対に良くない!!」 「る……ルーラー? 聖杯戦争……うう、いや、でも分かってたわよ。そんな気はしてた……… だけど、ハロウィンはまだ終わらせないわ! チェイテ城でのコンサートもハロウィンパーティーもまだやってない……!!」 「じゃあ、それをやればハロウィンは終わるんだね! ……あー! 駄目駄目!! 皆がルーラーを傷つけるのを止めて欲しいにゃー!!」 「そんな事言ったって……」 エリザベートはルーラーの存在をどことなく把握していた。 所謂、あるべき聖杯戦争を取り戻す抑止力。 彼女もハロウィンを続ける行為を理解したうえで、ルーラーの討伐を宣言させたのである。 ルーラーは問答無用にハロウィンを中止させる。だが――まだハロウィンでやらなくてはならないモノが沢山残っていた! 「悪いけど譲れないわ! アナタだってパーティーに招待していないんだから、帰って頂戴!!」 「志希ちゃんは絶対に帰らないよ! ここで諦めたらルーラーが死んじゃう……!」 聖杯戦争に無関係でも志希は一つの答えを得ていた。 ルーラーは、善良な存在だと。 例えば、この状況のように悪だと見なされたとしても。彼女はルーラーが正しいと考えたのだから。 睨み合う少女たちを馬鹿らしく見下すのは、ヨマ。 舌打ちをしてから、無情に月光で生成された弾幕を産み出す。 「うるせぇな……まとめて死ね」 「!!」 ヨマの攻撃は、サーヴァント相手では無傷に済まされないが、ただの少女である志希が受けては一溜まりも無い。 誰もが息を飲んだ瞬間。 ここで絶叫が響き渡る。 悲劇的な叫びとは異なる―――腹の底から、全身全霊の空気を吐き出すかのような――― 何よりも……叫んだ人物とは、攻撃を仕掛けようとしたヨマだったのだ。 「う、お、お、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」 意味不明な現象に、誰もが困惑する出来事だ。 それを産み出しているのは――マスターの一人、安藤である。 鼻血を垂れ流しながらも、チェイテ城の上層階でヨマに距離をつめて腹話術をかけていた。 だが、人間とは異なりサーヴァントは呼吸混乱に陥るのだろうか? 否。 安藤はそのようなことは狙っていない。引き続き、腹話術をヨマにかけ続けるだけだった。 「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおあおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」 謎めいた絶叫は冗談のように聞こえるものだ。 遅れてやってきたルーラーと飛鳥達も、この不可思議な状態を把握していた。 戸惑いを隠せずエミが尋ねる。 「これって、どういう状況なの?」 「さぁ……」 気を抜かしそうになる状態。ルーラーは、もしやと何かを察する。 「ここから動くな。戦いに巻き込まれるぞ」 「まってください! ひとりでいくのは、きけんです……!!」 「あのキャスター………自分で叫んでいる訳じゃあない。少々、厄介事になるかもしれないんでな」 相変わらず、絶叫は響き渡る。 ヨマのマスター・あやめはとっくに異常を自覚しているが、原因が分からない以上、途方に暮れていた。 安藤も限界が来るまで、永遠とヨマへの腹話術を止める気配はなかった。 志希とエリザベートすら、どう対応すればいいか困っている。 ナイブズやマダラも、これが安藤の仕業と察しても、彼の意図を掴めずにいるだろう。 ただ一人。 ルーラーだけは嫌な何かを感じ、ヨマの足元に志希が立ちつくしているのを目撃した。 まだ腹話術が終わらない今だからこそ。 「早く逃げろ!」 「あ、ルーラー! 無事だったんだね!!」 魔力が僅かとなっていたせいで接近を感知できなかったエリザベートは、我に返って即座に攻撃態勢へ移る。 「よく分からないけどッ! こうなったらアナタは私が直々に倒すわ!!」 「―――!」 志希ごとルーラーに『竜鳴雷声』を放ったエリザベート。 先ほどヨマと交戦したにも関わらず衰えない彼女の魔力と威力。 ルーラーが、一つの答えを得ながらも、彼女の宝具に対抗する魔力が尽きてしまった以上。 最後だけ――志希を庇い。消滅を果たそうと覚悟を決めた。 そして…… ◎ ◎ ◎ 「はぁ……はぁ………間に合った、ようだな」 「………!」 間一髪。 エリザベートの宝具を『鎧』で防ぎ切ったのは正真正銘・セイバーのジークフリートだった。 先ほどと立場が変わって、庇われたルーラーも驚く。 無論、エリザベートも反論せざるおえない。 「何で邪魔するの!?」 「すまない……だが、無関係な少女に攻撃するのは見逃せない。それと―――俺は事実を教えて欲しいんだ。本当にルーラーは悪なのか?」 「決まってるでしょ!? ソイツはハロウィンを妨害しに来たのよ!」 睨み合う二人に対し。 絶叫をし続けていたヨマが突如として正気に戻ったのだった。 本人は、絶叫していたことすら記憶には欠如していたが……首を傾げて、疑問にも思わず。 エリザベートたちに攻撃を放つ。 「死ね!」 「っ………! セイバー、俺の代わりにそいつを頼む!」 ルーラーの頼みにジークフリートは頷いて、志希をヨマの攻撃から庇ったのだ。 構う事ないヨマの攻撃に、エリザベートも苛立ちが隠せない中。 ジークフリートに気付いたブリュンヒルデは、槍を肥大化させつつ混乱している。 「シグルドがあそこにも!? いえ、いえ……シグルドはここにも、シグルドが二人……!? あぁ、そんな困ります! 私―――」 明らか様な動揺による隙をついて『須佐能乎』が暴走していたブリュンヒルデを気絶させた。 手間をかけさせられたのに、溜息つくマダラにジークは告げる。 「すまない、アヴェンジャー……貴方を巻き込んでしまった」 「そう思うなら、貴様はあの小娘と話をつけて来い。俺には向いていない」 エリザベートが攻撃されている現場では、ジークに命を与えたジークフリートが居る。 彼を追って登場したロボひろしが、ロボットパンチをヨマへ飛ばす。 打撃はヨマには効果的なダメージを与えられないが。 攻撃の意図は、ヨマを遠ざけるものだった。 「遅れちまって悪りぃ、セイバー! ライダー(ジャイロ)とアサシン(明)は誤解されて足止めを喰らってる。後で来てくれるぜ!!」 「すまない、アーチャー。……キャスター、話して貰えないだろうか?」 「そうだぞ! お前のマスターが爆発させる菓子を作ってるのは分かってるんだ!」 「う……そ……それは、マスターのせいでも、私のせいでもないわよ……! ただ、まさか使い魔を食べるなんて想像しなかったの!!」 アナタ達は自分の使い魔が捕食されるイメージがある訳!? と、勢いで主張するエリザベートに、ひろしもジークフリートも言葉を失ってしまう。 即ち、故意じゃなかったのだ。 仕方ないですまされる問題ではないものの。彼女にも、彼女のマスターにも悪意はない。 流れに乗るようなタイミングで、一声がエリザベート達に聞こえた。 「大人しくしたほうがいいぞ、ちっぱいキャスター!」 「イラッとさせる渾名は止めてくれる!? ……あ」 声の主に敵意をむき出したエリザベート。 彼女の意思をへし折るかのように、声の主―――織田信長の姿と共にエリザベートのマスターが捕獲されているのを視認できた。 何故、信長――そして、ホット・パンツとメアリーが、彼女のマスターを捉えたのか? 全ては安藤の思惑通り――。 安藤とメアリーは、エリザベートを倒そうと向かっていた信長たちと合流した時。 この作戦を考えたのだ。 エリザベートが一筋縄で交渉に譲歩する訳が無い。良くも悪くもアイドルである彼女だからこそ、卑怯ながらも有効な手段。 安藤が腹話術で気を惹きつけている内に、信長たちがエリザベートのマスターを確保する。 予想外過ぎる邪魔は幾つも襲いかかったけども。 セラスとアクアがサーヴァント達を妨害し、現場はマダラたちのお陰で収まった。 ルーラーは溜息を漏らす。 彼が不安視していたのがコレだったからだ。一応、数多の戦いの中、エリザベートのマスターの捜索をし続けたが。 安藤達に先を越されてしまった。 事を穏便に済ませたかったルーラーは、気不味そうに頼む。 「マスターを人質にするのは止して欲しいが……」 「仕方ないだろ。使い魔が厄介で堪らんのだ。俺達としちゃ無駄な魔力を消費する上、住人にも危害を加える…… 第一、そいつを倒したところでハロウィンは中止にならんだろ。俺達でも継続可能だ」 「主催者は私よ!? 主役は私! ちゃんと話は聞いてたの!? ルーラーを倒したらパーティーをするって……」 ホット・パンツが仕方なくエリザベートに告げた。 「確かにハロウィンの開催を宣言してくれたのは感謝する、キャスター。だが、お前の役目はそれで終わった筈だ」 「な………」 「ハロウィンの楽しみ方は様々だろう。どうするかは東京にいる人間や私達が決める…… そもそも、雰囲気作りとはいえ物騒な使い魔を徘徊させる理由にはならない」 だがここでエリザベートがいよいよ不満を爆発させたのである。 「……だったら、一つ反論させて貰うわ。 どーして私がハロウィンを宣言したのに全員盛り上がらなかったのよ!!!!」 「―――え?」 ポカンとする一同に対して、エリザベートは彼女が抱え込んでいた想いを解き放つ。 「折角、ハロウィンだっていうのに。アナタ(かぼちゃ)達もそうだけど、ここにいる人間。誰一人歓声の一つも上げなかったのよ! 誰も仮装して街を徘徊しないし! トリック・オア・トリートって言う子供はいないし、飾り付けする家なんてちょっとだけ!! その時の私の辛さ……アナタ達には分からないでしょーね! 折角のコンサートで客が数える程度な気分よ!!!」 「…………」 ★ ★ ★ 「そういえば……最初の頃、こんな盛り上がっていなかったわよね?」 不動高校で残り、ハロウィンの催しに対応するマスター達。 その内、一人であるアイリスが懐かしむように呟いた。 ここは日本の東京。 やはり異国の文化だけあって盛り上がりは希薄に等しく感じられた。 アイリスも自国とは違って、学生寮の飾りがちょこっとだけ。学校に至っては飾りすらない。 部活動でコスプレをするところがあったらしいが、これほど派手にやるまでじゃなかったのだから。 少々、アイリスは驚いていた。 「ははは」と笑う巽が、アイリスに言う。 「池袋で仮装イベントとかやってたくらいだもんな。俺の居た時代じゃ、そういうイベントも珍しかった」 「本当?」 まぁなと話を聞いていた潤也も同意した。 「イベントやっても他人の迷惑だ。皆が皆、ハロウィンを楽しんでるんじゃねーぞ、空気読めって話も良く聞くぜ?」 流石の駿河も、情けなく頷いた。 「確かに楽しいイベントの一つだが日本には馴染みのない文化だ。色々問題が生じる。 いくら日本が比較的安全な国とは言え夜に子供を徘徊させる訳にもいかない。イベントを行えばゴミのポイ捨てなどが問題視されるな。 そもそも、皆がハロウィンが本来『悪霊払い』の祭りである事を分かっていないのだ」 「へぇ……神原君、詳しいなぁ」 関心しつつ英治もアイリスに話す。 「もっと早く日本に伝われば、見方は変わったかもしれないかな」 「そうだったのね……あれ。『悪霊払い』……もしかして」 「あぁ、そうだよ。だからこそ――あのサーヴァントの正体が自ずと分かったのさ!」 ブライトが饒舌に語る。 つまり――ルーラー・大典太光世は聖杯戦争を正す為に召喚されたと共に、 ハロウィンという悪霊払いの催しがある意味の媒体となって召喚した……という事。 何も根拠なしに、ブライトは真名を確定させたのではない。 「つまり『大典太光世』こそがハロウィンの主役だと私は思い至ったのだよ」 巽は自然と疑問が生じた。 「待ってくれ、博士。それじゃあ、俺のセイバーや潤也のライダーに『大典太光世』を倒させるよう指示したのは……」 「ん? そりゃハロウィンを終わりにして欲しかったからさ」 「ちょっと! ブライト博士!?」 「冷静になって考えたまえ、アイリス。ハロウィンは一日限りで十分じゃないか。私は毎日がハロウィンなのは耐えられないよ」 「あぁ……もう………」 呆れて言葉を失ってしまうアイリス。 ひょとしたらセイバー・ナイブズがルーラーの討伐に乗り気ではなかったのは、彼も薄々察していたからだろう。 彼の懸命な判断に有難味を感じるアイリス。 事の重大さを理解した全員が、即座に気持ちを切り替えた。英治が言う。 「安藤君! 來野君! 早くサーヴァントたちを止めてくれ!!」 「は、はい!!」 ☆ ☆ ☆ 「気持ちは……分からなくもないさ、キャスター。ボクもアイドルをやっているからね」 「え!? そうだったの!!?」 エリザベートの話を聞いた二宮飛鳥の言葉に、エミが驚く。 不思議なアイドル同士の共感が生じた末、飛鳥はそのまま彼女に話を告げた。 「まさか、使い魔はそれで放ったのかい?」 「ええ……ええ! だってそうするしかなかったのよ!! 仕方ないからハロウィンの飾りを私が用意したら 邪魔だとか、ゴミだとか迷惑って……ハロウィンなのによ!? むしろ用意してあげた私に感謝するべきじゃないの!? だからゴーストを呼び寄せたり、雰囲気あるかわいい使い魔を放ったら漸くハロウィンらしくなったのよ!!」 「あーだろーな。色んな意味で盛り上がるわなー(パニック的な意味で)」 しょうもないエリザベートの動機を聞いて棒読みじみた発音をする信長。 場が落ち着いたところで、事情を聞いたジークは少々戸惑っている。 「それは……何故なんだ? 皆、ハロウィンに何か抵抗感でもあるのか……??」 「あったり前だろ、お前。俺も現代の日本の空気ぐらい読めるわ。みーんな好き勝手やりたいんじゃボケ」 信長に続いて、エミはフォローする。 「でも、したい人はするわ。皆の迷惑になるから建物の中でやったり……私もアイチ達とハロウィンパーティーする予定だったもの」 「だったら派手にやってもいいじゃない!」 腹話術で息が絶え絶えだった安藤が呼吸を整えて、エリザベートに言う。 「キャスター……気持ちは分かる。でも駄目なんだ! なんというか……日本人は、こういうテンション……… ………海外の波長とは異なるんだ。ノリが合わない、って言えばいいかな……」 「……そもそも日本でハロウィンをやろうとしたのが間違いだったって訳?」 「まぁ………そう言う事だ。どの国も同じような対応、反応をする訳じゃない」 「がーん…………」 やっとのことでエリザベートは納得し、落ち込む。 確かに、日本じゃない。英語圏の国でやっておけば盛り上がりはエリザベートの理想通りだっただろう。 開催地が悪かっただけなのだ。 文化などの違いが、あまりに食い違っていただけで、仕方ない事。 彼女のハロウィンを楽しみたい気持ちは悪ではなかった。 だけど、彼女の気持ちと周りの気持ちに落差があり過ぎただけ。日本ではハロウィンが浸透し始めた程度。実際、特別視されちゃいない。 ジークも「そうか」と理解する。 「文化や人柄が違えば、こういう事もあるのか……」 少し回復したルーラーがエリザベートに告げる。 「キャスター……悪いがもうハロウィンは終わらせるぞ」 「それは駄目よ! 私のコンサートは!? 皆に渡した招待状だってパァに……」 「もうこれ以上、聖杯戦争を中断させるな。俺を倒したところで、俺が同情して手を緩めたところで、また他のルーラーが召喚される」 「………」 エリザベートから奇妙な光が溢れる。 神々しい魔力に「まさか!」とひろしが驚きの声を上げた。 「それ、聖杯か!?」 「……正しくは聖杯の欠片だな」 ルーラーから告げられた衝撃の事実に安藤が珍しく声を張る。 「聖杯戦争の優勝賞品である聖杯の!? どういう事なんだ、ルーラー! 聖杯は何らかの理由で破壊されて……!!」 「アンタ、記憶があるのか。……それは安心しろ。これはアンタらの関わっている聖杯戦争の『聖杯』じゃない」 「え………? 聖杯は複数存在する、のか?」 「まぁ、別の聖杯戦争で優勝品とされた聖杯か……」 だけど、ハッキリするのはエリザベートが偶然これを手にしてしまい。 彼女の願いをどうにか叶えようと聖杯が機能し、東京がハロウィン一色となったのだろう。 欠片でも十分な効力を得られるのは流石である。 「悪いがこれを破壊させて貰う」 「………ええ」 エリザベートも反省したのか、抵抗の様子は無かった。 ルーラーの刃が、聖杯の欠片を砕いた……… ◎ ◎ ◎ 「ええ!? 今度は何が起きてるの!?」 明やフランドールを追っていたアダムとカラ松、トド松。 彼らは東京都内の異常を目撃していた。 明たち、サーヴァントが戦闘を繰り広げた現場に到着した頃。エリザベートによって飾られたハロウィンの雰囲気、装飾。 徘徊していた使い魔が次々と消滅し……上空を見上げればランサーのヴラドが「むっ!?」と反応する。 「何故、夜明けが……!? 霊体化する他ないか……!」 「え? もう朝??」 フランドールも即座に霊体化した。 吸血鬼のサーヴァントが自棄に多いせいで、次々と致し方なしに霊体化していく面々。 それどころではない。 周囲の異変は、突如現れた夜明けや、急に芽吹いた桜じゃない。 他のサーヴァントやマスターたちにも何か光の粒子が纏っていた。 カラ松は一種のパニック状態へ陥る。 「おおおおお、おい!? どうなるんだ俺達はっ! アサシン!! これは何が起きている!?」 「………」 「ヘイ! アサシン!! しっかりしろぉぉ!?」 「マスター………聖杯戦争だ」 「………え」 「俺達は―――聖杯戦争の為に、居るんじゃなかったか」 夢から目覚める。 悪夢のようで楽園のような、ひと時の休息は突如として終わりを告げたのだった。 誰かは思い出してしまう。聖杯戦争のことを。 誰かは思い出す。もう自分は死んでしまったのだと。 誰かが思い出した。自らの願いを……… こんな事をしている場合じゃなかった。いざ、理解してしまうとせき止められた水の如く、全ては大人しくなる。 「君は………相変わらずだな…………」 「……チッ……どこに居たんだよ…………」 刺青男・アベルが満たされた雰囲気を纏い、満身創痍のアイザックのところに現れる。 項垂れている沙子と、どこか哀しげな赴きをする梟。 離れた位置では、高槻と宵闇色の青年がそれらを見届けていた。 周辺の景色もハロウィンの色が失われて、全てが無かった事にされようとしていた。 梟が、ようやっと口を開いた。 「マジでザックきゅんは馬鹿だったよ。アベルくん……まぁ、元々こういう子だから」 「あぁ……!? 当然だろうが! 聖杯戦争とかで呼び出された癖に、殺し合いもしてねぇんだぜ!?」 馬鹿正直に主張するアイザックことザックを傍らに。 沙子が、申し訳なく――それでいて歓喜の混じった声色でアベルに告げる。 「さっき……カインが居たの。アベル、カインは貴方の事―――」 「聞きたくない」 「どうして……?」 納得できない沙子に、アベルは冷淡に答えた。 「関心はない。……どうでもいい」 「……それが貴方の答えなのね………」 所詮、夢の中での記憶などぼんやりと霞んで終い。些細な夢の内容を覚えている者は少ないだろう。 アベルも、バカなハロウィンはそんな程度の価値としか受け止めていない。 だけど……不自然なほど、梟が沈黙をして、ザックも不貞腐れた表情だ。 最初に口を開いたのは梟だった。 「アベルくん……怒ってる?」 「何が」 首を傾げてから「そう」と無関心になる梟。 一方のザックにアベルが聞き返す。 「君は何が気がかりだ」 「あ? ……別に」 嘘ではないが、ザック自身。彼の中で引っ掛かる節を理解出来ずにいるせいで、回答が曖昧なのだ。 仮にザックの答えが異なるものだったら。 ひょっとすればアベルの失望する内容かもしれなかったが、そうじゃなく――ザックの変わらなさに安心したのかもしれない。 「また後で会おう」 しかし、それだけをアベルが確かに伝えれば。 沙子たち。ザックにも、不思議な事で安心できたのだった。 △ △ △ 「あれ………? 志希ちゃんも体が光ってるよ!? これどうなっちゃうの?」 次々とマスター達が消失し、元の東京が復元されている最中。 志希にも異変が発生していた。 NPCとはいえ、彼女も東京で役割を持つ存在。主従同様に記憶は消され、一瞬にして夢物語扱いされる。 ルーラーは冷静に告げる。 「前も言った通り、元あるべき世界に戻っている。つまり、ここに来るべきじゃなかったお前も、本来居るべき自宅に戻されるだろう」 「ビックリ! これどういうファンタジーか分からないけど……もう誰かが襲われる事は無くなったんだね!」 しかし、キャスター・エリザベートの消滅は違った。 彼女は本来東京には存在しない……即ち、聖杯の断片はエリザベートを召喚していた。 それが消失することは、強制的な彼女の消滅も意味するのである。 あぁ、と落胆を隠しきれないエリザベートだったが、彼女はあくまで自分を貫く。 「今回のパーティーは中止しちゃったけど……また、どこかで楽しくパーティーが出来ればいいかしら……ね」 「キャスター……」 と、気絶して信長に拘束されていた小太りの男。エリザベートのマスターが意識を取り戻し、声をかける。 「結果はどうだっていい。話は聞いた。お前は悪気があった訳じゃない……」 「マスター」 「俺も少しの間……お菓子を作って楽しかったのは本当だからな」 両者が完全に光の粒子となった。 すでに安藤達も、皆が全て忘れてしまう。 そもそもハロウィンではなく、聖杯戦争が行われるべきだった場所が帰って来たに過ぎない。 ならば、きっとハロウィンの催しなど。一時期続いた平穏など、無意味だった。無駄で終わる。 だが―――志希はルーラーに告げる。 「キミのことは忘れないよ! ルーラー!! ここであった事も、何だかんだ楽しかったよ!」 「……そうだな」 あくまで悲観させない為、ルーラーはそう返事をしてやる。 やがて、志希もこの場から消滅した。厳密にはあるべき場所へ還ったのだ。もう、彼女は聖杯戦争とは無縁となる。 そして……ルーラーも。 ハロウィンという事件が解決してしまった以上、役目を終えた。 あの殺戮と地獄の東京の再演が始まる――――……… 「待て…………何故、俺は………まだ『残っている』?」 ルーラーこと大典太光世は動揺の声を上げた。 彼の役割は既に終えたのだ、しかし……否………終えた、とは一体どういう事だ? むしろ聖杯戦争を取り仕切るのがルーラー・裁定者としての役割。 どうして、これで終わりだなんて光世は勘違いしていたのか? まさか。 彼は裁定者である以上、役割を見失う訳じゃない。 だったら…… 光世が取り残されているのは、東京の街ではない異なる異質な空間だった。 そして、彼の前に現れるは虚ろな瞳を持つ少年……… <東京虚無聖杯戦争 再開> 【クラス】キャスター 【真名】エリザベート・バートリー〔ハロウィン〕@Fate/GrandOrder 【属性】混沌・悪 【パラメーター】 筋力:D 耐久:D 敏捷:D 魔力:B 幸運:C 宝具:D 【クラススキル】 陣地作成:B 凄惨な拷問・処刑場を作り出すことができる。 彼女は既に拷問趣味を止めているので、アイドルとしてコンサートホールを作る。 道具作成:A 魔力を帯びた器具を作成可能。 【保有スキル】 無辜の怪物:EX 生前の行いから生じたイメージによって、過去や在り方をねじ曲げられ能力・姿が変貌してしまう。 魔力放出(かぼちゃ):A 魔力を自身の武器や肉体に帯びさせる事で強化する。 彼女に力を与えるのは記述されている通り、かぼちゃ。 出演続行:A いかなる状況下においてもアイドルとして現界し続けるスキル。 何度も出てきて恥ずかしくないんですか? 【宝具】 『竜鳴雷声』(キレンツ・サカーニィ) ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:3~30 最大捕捉:500人 ハンガリーに古くから伝わる天候の精霊にして、雷鳴のドラゴンの威風を宝具としてコンバートしたもの。 音と振動を増幅し、共鳴させることで風雨を呼ぶとされるが、 本来の機能は、この宝具を持つ者の声に宿る特性を増幅させて相手の心を蝕んだり、 声量・音量を9の9倍にまで増幅させて相手の体にダメージを与えたりすること。 『鮮血特上魔嬢』(バートリ・ハロウィン・エルジェーベト) ランク:E- 種別:対人宝具 レンジ:3~60 最大捕捉:1000人 エリザベートがその生涯に渡り君臨した居城・監獄城チェイテを召喚し、己を際立たせる舞台(ステージ)とする宝具。 かつて彼女が何百人もの少女を拷問の末殺したとされる魔城そのものである。 【weapon】 フォーク:本来持つ槍から変化したもの。 【人物背景】 吸血鬼カーミラのモデルになった血の伯爵夫人 ……がスキル『無辜の怪物』によって魔人化したもの ……がたまたま拾った聖杯によってハロウィン属性を帯びたもの。 もう訳が分からない。 アイドル文化に傾倒しつつ、お城で夢見るお姫様属性まで追加したてんこもりサーヴァント。 【サーヴァントとしての願い】 ハロウィンを楽しみたい。 【マスター】SCP-345-JP 【人物背景】 捕捉の参照ページにて分かります。 【捕捉】 クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0に従い、 SCP Foundation(日本)においてIkr_4185氏が創作されたSCP-345-JPのキャラクターを二次使用させて頂きました。 ttp //ja.scp-wiki.net/scp-345-jp
https://w.atwiki.jp/snaker/pages/76.html
「アキケット ケルト音楽の旋律とハロウィンイラストコンテスト」とは 主催 SIZUEMON企画 様 後援 東北出版様の秋田市で行うハロウィンをテーマにしたイラスト作品の展示 https //sizuemonplanning.wixsite.com/akiketto 通称 #アキケット snaker出展 作品 【かぼちゃの魔女】 アキケットイラストコンテスト展示会vol.6 ケルト音楽の旋律とハロウィンイラストコンテスト 【展示期間】 日時 202311月22日(水)~29日(水) [休館]11月13日(月) 出展SIZUEMON企画 【展示会場】 会場フォンテAKITA6F あきた文化交流発信センター
https://w.atwiki.jp/noiz111/pages/390.html
+ ハロウィンほうき + 区分 : ハンディーアイテム Lv : 1 + 画像 + + レシピ + サトウキビ × 1こうもりグミ × 1 + 属性 + なし(プレーン) + 売値 + 980 サブレ + レア度 + + 説明 + 魔力を秘めた魔法のほうき + 画像 + + レシピ + ハロウィンほうき(プレーン) × 1スペシャルかぼちゃ × 1 + 属性 + なし(パンプキン) + 売値 + 1200 サブレ + 画像 + + レシピ + ハロウィンほうき(プレーン) × 1こうもりグミ × 1 + 属性 + なし(バット) + 売値 + 1800 サブレ ■ 作れるレシピ アイテム名 レシピ 区分 売値 デビルフォーク ハロウィンほうき(プレーン) × 1南瓜ソース × 1ブラッディハートグミ × 1 ハンディー - ハロウィンほうき ハロウィンほうき(プレーン) × 1スペシャルかぼちゃ × 1 1200 ハロウィンほうき(プレーン) × 1こうもりグミ × 1 1800
https://w.atwiki.jp/seirei_san/pages/978.html
ハロウィン・茨木童子 シークレットレア 必要魔力 24 飛行 攻撃 防御 TOTAL 親愛度MAX 7344 8466 15810 10000 誕生日 11月28日 身長 135cm 体重 36.5kg(ダイエット成功) 3サイズ スキル 鬼の花嫁効果 攻撃力の高い敵を狙ってダメージを与え、一定確率で少しのあいだ混乱させる 親愛度 コメント 低 にーちゃんにーちゃん!じゃじゃーん、ハロウィン茨木童子やで!最高に似合ってるやろ!?にーちゃんに喜んでもらえるように頑張ったんや!さあ恥ずかしがってないで、お褒めの言葉を言ってもええんやで! 中 せっかくウチがデートをしてあげるゆーてるのに、にーちゃんは花よお茶菓子かいな?なんだか、自分だけ舞い上がってるみたいで恥ずかしいやんか…もう〜にーちゃんのアホ! 高 お?なんや?やっとこさウチとデートしてくれる気になったんか?え…?ウチにお菓子をプレゼントするために、お茶菓子を集めてはったん?に、にーちゃん、ほんまええやつやな!ほな、遠慮なく全部いただくで! 嫁 夜の暗闇に、ぽっかりと浮かぶランタンの光。アハハ、ウチ似合あわへん、ロマンチックなムードやな…って、にーちゃん、手を繋いでくれるん!?そんなことされたら、骨の髄までにーちゃんに惚れてしまうやんけ! 親愛度 セリフ 低 にーちゃん!ハッピーハロウィーンやで! にーちゃん、せっかくやからウチとハロウィンデートをせえへん? ウチはお酒よりお茶菓子の方が好きやな ウチって鬼やから、仮装いらずって感じなんよな~ 中 かぼちゃの煮つけは結構好きやね とりっくおあとりーと?ずいぶんと難しい言葉やな… せっかくの祭りなんやからめっちゃ楽しみたいやん? この、しましま靴下がポイントなんや!かわいいやろ! 高 昔はかぼちゃじゃなくて、かぶを使ってたらしいで 一緒にお菓子を食べよな!わけっこや、わけっこ! ウチもにーちゃんのためにお茶菓子をもらってきてあげるわ! かぶのお吸い物が食べたくなってきたわ…どこかにないやろか? 嫁 次のイベントが楽しみやな〜!今からワクワクするで〜! 鬼嫁よりも、お化けのが怖いと思わへん? にーちゃんと一緒なら、祭りが終わっても寂しくないわ!ありがとな! 最初、ハロウィンって、死にはった人たちの祭りだと思っとったわ! スキンシップ後 朝 おっはよー!楽しいハロウィンデートの始まりや! 夜 お化けがきたらウチが倒すから、安心して一緒に寝よな? なでなで なでなでのお礼にお菓子をあげるで! その他 誕生日 かぼちゃケーキ…?そんなおいしそうなもんがあるんかいな! 体重が「ダイエット中や!」から変わっていたので修正 -- 名無しさん (2014-11-06 01 41 40) なでなで なでなでのお礼にお菓子をあげるで! -- 零弐さん (2014-11-06 16 38 48) 信頼度 低 にーちゃん!ハッピーハロウィーンやで! にーちゃん、せっかくやからウチとハロウィンデートをせえへん? ウチはお酒よりお茶菓子の方が好きやな ウチって鬼やから、仮装いらずって感じなんよな~ -- 零弐さん (2014-11-06 17 09 41) 信頼度 中 かぼちゃの煮つけは結構好きやね とりっくおあとりーと?ずいぶんと難しい言葉やな… せっかくの祭りなんやからめっちゃ楽しみたいやん? この、しましま靴下がポイントなんや!かわいいやろ! -- 零弐さん (2014-11-06 17 45 25) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/sentai-kaijin/pages/6088.html
【名前】 はろうぃんワルド 【読み方】 はろうぃんわるど 【声】 松本保典 【登場作品】 機界戦隊ゼンカイジャー 【登場話】 第34カイ「カボチャをトリトリ競技会!」 【所属】 キカイトピア/トジテンド王朝 【分類】 ワルド/キカイノイド 【世界】 ハロウィントピア 【トジルギア】 ハロウィントジルギア 【名産】 ジャック・オー・ランタン 【名物】 トリックオーアトリートンファー 【モチーフ】 ハロウィン、ジャック・オー・ランタン、幽霊、魔女、かぼちゃ等 【詳細】 クダックに「ハロウィントジルギア」を組み込み、「ハッピーハロウィーン!」と誕生したワルド怪人。 魔女っ子風のボロ布で仮装した骸骨という頭部を持つワルド。 口にはペロペロキャンディを加え、頭部にはカボチャを使ったジャック・オー・ランタンを載せている。 よく見ると骸骨の左目はこぼれ落ちており、仮装として見ると可愛らしく思えるが近寄ると途端に怪物になる「お菓子かいたずらか」の2択を迫るハロウィンの催し物を怪人デザインに落とし込んだ秀作。 右手にはトリックオーアトリートンファーという棒付きキャンディーを模したトンファーを持ち、左腕には魔女帽子を被ったおばけを模したトリックローを持つとしっかり武装している。 【余談】 モチーフはハロウィンにまつわる要素の複合。