約 1,944,526 件
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/110.html
タムリエルの各地方 タムリエル帝都は九つの帝都地方を包含する:スカイリム、ハイ・ロック、ハンマーフェル、サマーセット島、ヴァレンウッド、エルスウェーア、ブラック・マーシュ、モロウウィンド、そして古の帝都地方であるシロディール, 中でもモロウウィンドは最後に、征服ではなく条約によって統合されたため、モロウウィンドはグレートハウスの前例に沿ってその土地の秩序定義を決める特別な力を保有している。 オールド・キングダム、またはファーザーランドとしても知られるスカイリムは、タムリエルの中でも最初にアトモラ大陸からの人間達によって入植地化された地方だ: たくましく、勇敢で、好戦的なノルド。彼らの子孫は今なおその荒れた土地に住み着いている。先祖にあたる蛮族と比べれば控えめで行儀がいいが、純血のノルドは今でも戦争や大胆な探検においては男らしい美徳に秀でている。 ハンマーフェルは主に都市と臨海の地方だ。人口の多くはセンチネルとストロスメカイの巨大都市に住み、その他は島々の港や海岸沿いにて生活をしている。内陸部にはまばらに人が居る程度で、そのほとんどが貧しい小農家や牧夫だ。レッドガードの移動や冒険や船旅に対する情熱が、彼らを船乗りや傭兵や冒険家として帝都全土の港へと分散させた。 ハイ・ロックは大ブレトニー園、デレッセ島、ビョルサエ・リバー族、そして伝統的には聖域内の多くの土地とクランを包含する。荒れたハイランドの砦と隔離された渓谷の定住地は多数のブレトンクランの独立を促し、この論争好きな部族気質により、完全には地方や帝都の一部としての意識が浸透していない。いずれにせよ、彼らの言語や詩の伝統や英雄伝は彼らを一つにまとめる共通の遺産である。 サマーセット島は緑に囲まれた住み心地の良い、肥えた農地と森林公園と太古の塔や荘園の土地だ。ほとんどの定住地は隔離されており、通常、その土地の有力ウィザードが部族軍長によって支配されている。島には良い自然港が数える程しかなく、土地の人々は外来者を好まないため、古くから伝わるアルドメルの騎士道文化はインペリアルの物質主義の影響をあまり受けてはいない。 ヴァレンウッドの大部分は居住者のいない未開の森林地帯だ。海岸沿いはマングローブが生える沼地に覆われる熱帯雨林であると同時に、大雨が内陸部の温暖な雨林を育む。ボスマーは沿岸部や内陸部に点在する材木クラン住居で生活しており、これらの敷地はお互いに未開発の林道のみによってつながれている。小さな定住地が散開するこの広い密林の土地を横断するインペリアル街道は少なく、貿易の量は微小で、交通量はないに等しい。 南エルスウェーアジャングルと河川地域に定住したカジートは、古くからの商業主義の伝統とサトウキビとソルトライス農園をもとに、安定した農業貴族社会を持つ都会人である。対照的に、乾燥した北部荒野や草原地帯を遊牧するカジートは攻撃的で、定期的に部族軍長のもとで連合し、領土略奪を行う。南の定住者たちは素早くインペリアルのやり方を取り入れたが、北の遊牧族は好戦的な蛮族の伝統に執着している。 ブラック・マーシュのアルゴニアン先住民の大多数は、内陸水路上と出入りが困難な南内陸の沼地に閉じ込められている。道路は少なく、たいていの移動は舟によって行われる。沿岸部と北西高地の大部分に居住者はいない。長い間、ダンマーたちは奴隷を得るためにブラック・マーシュを侵略してきた。帝都はこの行為を違法としたが慣習は存続しており、アルゴニアンとダンマーの間には、お互いへの積年の憎しみが存在する。 ダンマー人の母国であるモロウウィンドは、タムリエル帝都内の最北東に位置する地方である。大多数の人口は、モロウウィンド中部の高地や肥沃な川谷、特に内海付近に集まっている。ヴァーデンフェル島は内海によって囲まれており、巨大な活火山赤き山とその灰による荒れ地がその土地を占めている。島の住民の大多数は相対的に快適な西と南西の海岸での生活を強いられている。 シロディールはタムリエルにおける高度な人間のインペリアル文化の発祥地である。大陸上、最大の地域であり、たいていの部分は深いジャングルで覆われている。帝都は中心地、肥沃なニベネイ渓谷にある。人口が密集している中央低地は降雨林によって囲まれ、雨林が水を注ぐ大きな川はアルゴニアの沼地やトパル湾に流れ込んでいる。地形は、西に向かって緩やかに上昇し、北へは急に険しくなる。西の海岸と中央低地の間には落葉樹林とマングローブの沼地がある。 地理・旅行 茶1
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/242.html
評論・ザルクセスの神秘の書 第2巻 マンカー・キャモラン 著 アルタドゥーン この文書を見つけた者が誰であろうと、兄弟と呼ぼう。 解答は解放へとつながり、ヌマンティアを知ることになったマルビオージの奴隷たちは、ザルクセスの神秘の書がアーケインと呼ぶ看守王マズティアックを打ち倒したのである。マズティアックの死骸は彼に仕えた生ける死体たちによって市中を引きずり回され、その肉は岩場に広げられ、彼を愛した天使たちは「すべての者たちに自由意志を知らしめ、したいようにさせるがいい!」と叫び、もう彼の甘い霊液を飲もうとはしなかった。 兄弟よ、君が来ることは神デイゴンの刃の書に予言されていた。偶像が一人また一人と去ったせいで、君はここに来ることになったのだ。まだ君に注がれてはいない瞳の視線の中で、君は称えられている。田舎の若者であった君は旅慣れた者となり、覆いの破壊者となる。兄弟よ、君は私と一緒に楽園に座り、すべての未知なるものから解放されるのだ。私は君に神の書と、多くの羽毛がついて汚れた注釈書を渡そうと思う。そうすれば君はすでに知っていることを記号に当てはめることができる。つまり、破壊の球体は、奴隷にされていない者の乳に過ぎないということを。君がつまずいたとしても私は責めたりしない。それは予期されたことだし、油によって神の恩寵を与えられている。私は君の失墜を強く望んだりはしない。たとえ、君が失墜しなければ、来たるべき世界において君が永遠に私をしのぐことになろうともだ。神デイゴンが君に望むのは災難ではなく、極めて重要な事柄だ。神が望むことなら君も望むべきだ。神の書から次のことを学ぶがいい。これが求めの儀式だ。 地にささやけ。地中にいるおせっかい屋は、血の中にしか石を受け入れない。血こそが血なのだから。そして骨の亀裂にも。骨こそが骨なのだから。ゆえに、1と1の前に、亀裂を入れ、答え、落ちるために、私は兄弟として、王として、君をドラゴンと呼ぶ。 ドゥルーの皮:7と7、一口分の油、1と1、濡れたディベライトによって描かれた円:3つの同心円、卑しい血が流れるままにし、クロウタドリに見守られた出生:先に暖火。聴覚が不明瞭になってきたら、以下の呪文を唱えよ。 有頂天となって、その者はようやく記録から消される。 記録されて、奴隷たちは知ることなく輪を回す。 奴隷となって、オルビスの子供たちは皆、そのままでいる。 神話・宗教 紫1
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/93.html
バレンジア女王伝 第1巻 スターン・ガンボーグ帝都書記官 著 第二紀の後期、バレンジアはモーンホールド王国(現在の帝都州モーンホールド)の王女として生まれた。バレンジアは5歳まで、ダークエルフの王女にふさわしい贅沢と保護の下で育った。その頃、タムリエルの初代皇帝、タイバー・セプティム1世閣下はモロウウィンドの堕落した王たちに対し、彼の帝都支配下に加わるよう要請したのだった。自らの魔力を過信したダークエルフたちはその要請を拒み続けたため、ついにタイバー・セプティムの軍は国境まで迫ってきたのであった。結果としてダークエルフは停戦に合意したが、そこに至るまでにはいくつかの戦があった。その一つは、モーンホールド王国のがれきの山と化していた、現在のアルマレクシアにて繰り広げられた。 幼い王女バレンジアと乳母は、戦のがれきの中で発見された。ダークエルフでもあった帝都将軍シムマチャスは、その幼き子を生かしておけば後に役立つかもしれないと皇帝に進言した。こうして、バレンジアは元帝都軍兵に預けられることになった。 元帝都軍兵であるその人物、スヴェン・アドヴェンセンは、引退した際に伯爵の位を授かっていた。彼の領地、ダークムーアはスカイリム中心部にある小さな町だった。セヴン伯爵とその妻は、自らの子供のように王女を養育し、なによりも帝都の一員としての美徳、すなわち遵法、分別、忠誠、信仰などを教えこんだ。その結果、彼女はすぐにモロウウィンドの新しい支配者の一人としてふさわしい資質を身に付けた。 バレンジアは美しく、気品と知性にあふれた少女に育った。彼女は優しく、また養父母の誇りでもあり、養父母の5人の息子たちもみな彼女を姉として慕った。彼女には、見た目以外にも他の少女にはない特質を持っていた。森や野原と心を通わせ、ときどき家を抜け出しては自然の中を歩き回るくせがあったのだ。 16歳までバレンジアは、とても幸せな毎日を送っていた。そんなある日、仲良くしていた厩番の孤児の不良少年から、セヴン伯爵と客のレッドガードとの間で行われた話を聞かされたのであった。どうやら妾として彼女をリハドへ売り飛ばすことを企んでいるらしいことを。ノルドやブレトンは肌が黒い彼女と結婚したがるはずもなく、ダークエルフでさえも異人種に育てられた彼女を嫌がるに違いないという考えを伯爵は持っているというのである。 「どうすればいいのかしら?」と、バレンジアはふるえながら涙声で言った。まっすぐに育った彼女は、友達である厩番の少年が嘘をついているなんて思いもしなかったのである。 そのストロウという名の不良少年は、彼女の護衛を買って出て、貞節を守るべく一緒に逃げることを勧めてきた。悲しげにバレンジアはその計画を受け入れた。 そしてその夜、目立たぬよう男装をしたバレンジアとストロウは、ホワイトランの町へ逃げたのだった。 ホワイトランに着いてから数日後、彼らはある隊商を護衛するという仕事に就いた。このいかがわしい隊商は帝都の街道を通ると通行税がかかるため、脇道を通って東へ向かおうとしていたのである。そして、隊商とともに彼らは追っ手に見つかることなくリフトンの町へ辿り着き、しばらくその地に身を置くことにしたのだった。彼らはダークエルフが珍しくないこのモロウウィンドとの境界に近い町に、束の間の安らぎを感じたのであった。 歴史・伝記 茶4 バレンジア女王伝 第2巻 スターン・ガンボーグ帝都書記官 著 第1巻では、バレンジア女王の生い立ちから、タイバー・セプティム1世閣下に背いた彼女の父がモロウウィンドを滅ぼしたところまでを紹介してた。皇帝の寛大なはからいにより、幼い彼女は死を免れ、ダークムーアの帝都貴族であるセヴン伯爵夫妻に育てられた。彼女は美しく信心深く成長し、養父母に対する深い感謝を持っていた。ところが、その信じる心をセヴン伯爵の屋敷の厩番をしていた孤児の不良少年に利用され、作り話で騙された彼女は16歳のときにその少年とともにダークムーアを飛び出したのだった。道中でたくさんの危険に襲われながら、彼らはモロウウィンドにほど近いスカイリムの町、リフトンに辿り着いた。 厩番の少年ストロウは、根っからの悪人ではなかった。彼はバレンジアのことを自分勝手にではあったが愛していて、彼女を自分のものにするには嘘をつく以外にないと思っていたのだ。もちろん、バレンジアは彼をただの友達としか見ていなかったが、ストロウ自身はいつか彼女の愛を得ることを信じ続けていた。小さな農場を買って彼女と家庭を持つことを夢見ていたが、彼の少ない稼ぎはその日の食料と宿にすべて消えてしまうのだった。 二人がリフトンに来てまもなく、セリスという名のカジートの悪党が、町の中心地にある帝都指揮官の家を押し入る計画をストロウにもちかけた。セリスが言うには、帝徒に敵対するある人物がその家のもつ情報に大金を払うというのだ。バレンジアはその計画を漏れ聞き、震えあがった。彼女はその場をそっと離れ、外へ飛び出した。帝都への忠誠と仲間への愛情の間で彼女の心は引き裂かれていたのだった。 最後には、帝都への忠誠を選び、彼女は帝都指揮官の家へ行き、彼女の素性を明かした上で友人の計画を伝えたのであった。指揮官は彼女の話に耳を傾け、その勇気を称え、彼女には決して危害が及ばないことを約束した。だが、なんとその人物こそが、あの指揮官シムマチャスであった。彼はバレンジアを探し続け、ある情報を聞きつけてやっとの思いでリフトンに辿り着いたばかりであった。彼はバレンジアを保護し、真実を告げた。売り飛ばされるどころか、18の誕生日に再びモーンホールドの女王になることを知るのであった。その日が来るまで、バレンジアは政治を学び、皇帝に拝謁を賜るために新しい帝都でセプティム家とともに過ごすこととなった。 そして、帝都に迎えられたバレンジアと治世の半ばにあったタイバー・セプティム皇帝は親交を暖めた。タイバーの子供たち、特に長男ペラギウスは彼女を姉のように慕った。吟遊詩人たちは彼女の美しさ、清純さ、知恵、そして教養を称え歌い上げた。 18歳になった日、帝都中の人々が街道に出て故郷へ戻る彼女の送別パレードを見守った。誰もが彼女との別れを惜しんだが、モーンホールド女王としての輝かしい運命がバレンジアを待ち構えていることを皆は知っていた。 歴史・伝記 茶4 バレンジア女王伝 第3巻 スターン・ガンボーグ帝都書記官 著 第2巻では、バレンジアが新たに建てられた帝都に温かく迎えられ、一年近くの間、まるでずっと行方の知れなかった娘のように、皇帝一家から愛されたところまでを紹介してきた。数ヶ月間、帝都領地の女王としての義務と責任を学んだあと、シムマチャス将軍が彼女を護衛してモーンホールドへ送り届けた。この地でバレンジアはシムマチャスの手引きを得て女王として国を治めた。そして彼らは少しずつお互いを愛するようになり、やがて結婚した。彼らの結婚と戴冠を祝う盛大な式では、皇帝自らが司祭として儀式を執り行った。 数百年の結婚生活を経て、息子ヘルセスが生まれ、祝賀と喜びの祈祷で迎えられた。後になってわかったことだが、このめでたい出来事の直前、モーンホールド鉱山の奥から混沌の杖が持ち去られていた。盗んだのは謎めいた吟遊詩人で、ナイチンゲールと呼ばれた男だった。 ヘルセスが生まれてから8年間、バレンジアは娘を生んだ。シムマチャスの母親の名をとってモルジアと名づけられた。夫婦は幸せに満ちていた。しかし、その直後、不可解な理由から帝都との関係が悪化し、モーンホールドに不穏な空気が漂い始めた。原因究明と関係修復の努力は無駄に終わり、バレンジアは子供たちとともに帝都へ行き、皇帝ユリエル・セプティム七世と直接話すことにした。シムマチャスはモーンホールドに残り、不満を訴える領民や不安がる貴族たちに対応し、反乱を食い止めることになった。 皇帝との謁見の際、バレンジアは魔力を使って皇帝の正体を見抜き、その瞬間、恐怖と困惑に襲われたのであった。なんとあの混沌の杖を盗んだナイチンゲールではないか! だが彼女はつとめて平静を装った。その夜、シムマチャスは農民の反乱に敗れ、モーンホールドは反逆者の手に落ちた。バレンジアは誰に助けを求めたらよいのか途方にくれてしまったのだった。 だが、まるで今までの不運を埋め合わせるように、天はその運命の晩、彼女に味方した。皇帝とシムマチャス両方の旧友であるハイ・ロックのイードワイヤー王が訪問してきたのであった。彼はバレンジアを慰め、友情と協力を誓い、彼女の言うとおり皇帝が偽者であると断言した。皇帝になりすましているのは帝都軍の魔闘士ジャガル・サルンであり、ナイチンゲールは彼が持つ様々な顔の一つであるという。ターンは隠居し、彼の任務は助手リア・シルメインが引き継いだと言われていたが、そのリアは後に謎の死をとげたのであった。どうやらなんらかの事件との関連が疑われ、処刑されたこになっていた。しかしリアの亡霊はイードワイヤーの夢に現れ、真の皇帝はターンに拉致され、別次元に監禁されていると告げたのだった。そのことを元老院に知らせようとした彼女は、ターンに混沌の杖で殺されたのである。 イードワイヤーとバレンジアはともに、偽皇帝の信頼を得るために画策した。そのころ、偉大な力を秘めたチャンピオンという名でしか知られていないリアのもうひとりの仲間が、帝都の地下牢に閉じ込められていた。リアは彼の夢に現れ、逃走の準備が整うまで待つように告げるのであった。こうして、彼は偽皇帝を倒す計画を練り始めたのだった。 バレンジアは引き続き偽皇帝に近づき信頼を得た。彼の日記を盗み読みし、混沌の杖を8等分にして、それぞれをタムリエル各地の遥か彼方に隠したことを知った。バレンジアはリアの仲間の牢獄の鍵を入手し、看守を買収し偶然を装って彼の手の届くところに置かせた。バレンジアとイードワイヤーにすら名前のわからないチャンピオンは、リアが衰えつつあった力で開けた辺ぴな通用門から脱獄することができた。ついにチャンピオンは自由の身になり、すぐさま偽皇帝の打倒にに立ち上がった。 数ヶ月かけて盗み聞いた会話と盗み見た日記から、バレンジアは混沌の杖8つのかけらを探し当て、リアを通じてチャンピオンにそれぞれの隠し場所を伝えた。そして、一寸たりとも時間を無駄にすることなく、計画を行動に移したのであった。まず、ハイ・ロックにあるイードワイヤーの祖先の領地ウェイレストへ向かった。そしてターンが送り込む手下たちを回避し、復しゅうを図ることに成功した。ターンは、(バレンジアからは見透かされていたかもしれないが)、決して愚か者ではなく、非常に狡猾な男であった。彼は考えうるだけの策を弄してチャンピオンを突き止めて消そうとしたことは確かであった。 今日では周知のとおりだが、あの勇敢で不屈の精神を持つ名もないチャンピオンは、混沌の杖のかけらを全て集めることに成功し、混沌の杖によってターンを倒し、真の皇帝ユリエル・セプティム七世を救い出した。そして王政復古の後に、セプティム王朝を長年統制してきたシムマチャスを称える記念式典が帝都で行われたのである。 バレンジアとイードワイヤー王はともに苦難と危険を乗り越える中で互いに惹かれあい、帝都からそれぞれの領地へと帰ったその年に結婚した。バレンジアと前夫との間に生まれた2人の子供も、彼女とともにウェイレストへゆき、彼女の留守中はモーンホールドによって摂政が代理で統治することとなったのである。 今も、バレンジア女王はヘルセス王子とモルジア姫とともにウェイレストに暮らしている。イードワイヤーが他界すれば、またモーンホールドへ戻るだろう。 結婚したとき、イードワイヤーはすでに老いていた。従って、エルフと違って残念ながら世を去る日はそう遠くないとされている。しかし、それまでは、イードワイヤーとともにウェイレストを治め、やっと手に入れた平穏で幸せな生活をバレンジアは送ることとなるだろう。 歴史・伝記 茶4
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/238.html
「王者」 レヴェン 著 読者諸君、この連続物語の3巻、「物乞い」「盗賊」「戦士」を読み、記憶に留めていない場合は、結末へとたどり着くこの最終巻に書かれている内容を理解することは難しいだろう。お近くの本屋でのお求めをお勧めする。 前回の物語は、いつもの如くエスラフ・エロルが命をかけて逃走しているところで幕を閉じた。彼は多量の金と非常に大きな宝石を、ジャレンハイムのスオイバッドという名の富豪から盗んだ。その盗賊は北へと逃げ、盗賊らしくありとあらゆる非道徳的な快楽のために、金を湯水の如く使った。この本を読んでいる淑女や紳士を動揺させてしまうような内容なので、詳しくは述べないことにする。 手放さなかったのはあの宝石だけである。 愛着があって手放さなかったわけではなく、彼から買い取れるほどの金持ちを知らなかったからである。何百万もの価値がある宝石を手にしながら、無一文という皮肉な状況に彼は陥っていた。 「これと交換で、部屋とパンとビールの大瓶をくれないか?」あまりにも北すぎて、その半分が亡霊の海に面する小さな村、クラヴェンスワードの酒場の店主に彼は聞いた。 酒場の店主はそれを疑わしげに見た。 「ただの水晶だよ」と、エスラフはすぐさま言った。「でも、きれいじゃない?」 「ちょっと見せて」鎧に身を固め、カウンターの端にいた女性が言った。許可を待たずに彼女は宝石を手に取り、見つめ、そしてあまり優しくなさそうな笑みをエスラフに向けた。「私のテーブルで一緒にどう?」 「実は、ちょっと急いでいるので」と、宝石に向かって手を伸ばしながらエスラフは答えた。「またの機会に」 「友であるこの酒場の店主に敬意を表して、私も部下も皆、ここにくるときは武器を置いてくる」宝石を返さず、カウンターに立てかけてあったほうきを手に取りながら、何気なく彼女は言った。「でも、これだけは断言できるわ。私はこれを武器としてかなり有効に使える。もちろん、武器ではないけれど、気絶させるたり骨の1本や2本を折る程度、そして── 1度中に入ったら……」 「どのテーブルだい?」エスラフは即座に聞いた。 その若い女性は、エスラフがいまだに見たことがないほど大きなノルドが10人座っている、酒場の裏にある大きなテーブルへと彼を連れて行った。彼らはエスラフのことを、踏み潰す前に一瞬の観察に値する奇妙な虫であるかのような無関心さで見つめた。 「私の名前はライスィフィトラ」と彼女は言い、エスラフは瞬きをした。それはエスラフが逃走する前に、スオイバッドが口にした名前であった。「彼らは私の副官たち。私は気高い騎士たちから成る大きな独立した軍の指揮官。スカイリム最高の軍よ。つい最近、ラエルヌと言う男が我々の雇い主がスオイバッドと言う男にブドウ園を売り渡すことを強要するため、アールトにあるブドウ園を攻撃する仕事を与えられたわ。我々の報酬は、とても有名で間違えようのない、飛び抜けた大きさと質の宝石のはずだったの」 「依頼通りにやり遂げ、スオイバッドの下に謝礼を受け取りに行ったら、彼は最近泥棒に入られたために支払えないといったわ。でも最終的には私たちの言うことを聞き、貴重な宝石の価値に匹敵するくらいの金を支払った。彼の宝物庫を空にはしなかったけれど、結局はアールトの土地を買えないことになったわ。よって、私たちは十分な支払いを受けられなかったし、スオイバッドは金銭的な痛手を負い、ラエルヌの貴重なジャズベイは一時的に意味もなく台無しにされたの」ライスィフィトラは続ける前に、ゆっくりとはちみつ酒を1口飲んだ。「さて、よく分からないから教えてくれない? 私たちが手に入れるはずだった宝石を、どうしてあなたが持っているの?」 エスラフはすぐには答えなかった。 その代わり、左にいる髭を生やした蛮族の皿からパンを1切れ取り、食べた。 「すまない」と口をモグモグさせながら彼は言った。「いいかい? 宝石を取ることは、やめたくてもやめられないし、実際のところ別に構わない。そして、どのようにして私の手に入ったかを否定するのも無駄なことだ。要するに、これは、あなたの雇い主から盗んだ。もちろん、あなたや気高い騎士たちに被害を加えるつもりはなかったが、あなたのような人にとって、盗賊の言葉など相応しくない理由も理解できる」 「そうね」ライスィフィトラは答え、顔をしかめたが、目は面白がっているようである。「相応しくないわね」 「でも私を殺す前に──」エスラフはパンをもう1切れつかんで言った。「教えてくれ、あなたのように気高い騎士が、1つの仕事で2度報酬を得るのは相応しいことなのか? 私にはなんの名誉もないが、支払いのためにスオイバッドが損害を被り、今はその宝石を手にしている。よって、あなたの莫大な利益はあまり誇れるものではないと思うのだが」 ライスィフィトラはほうきを拾い上げ、エスラフを見た。そして笑い、「盗賊よ、名は?」 「エスラフ」と、盗賊は言った。 「今回は我々に約束されていたものなので、宝石はいただくわ。しかし、あなたは正しい。1つの仕事で2度支払いを受けるべきではないわ。なので──」ほうきを置きながら女戦士は言い、「あなたが我々の雇い主よ。我々に、何をさせますか?」 多くの人々は自分の軍隊にかなりの使い道を見出すであろうが、エスラフはその1人ではなかった。頭の中を捜してみたが、最終的には、後に支払われる貸しにしておくことに決まった。彼女の野蛮性にも関わらず、ライスィフィトラは素朴な女性であり、彼女が指揮するその軍に育てられたことを彼は知った。戦闘と名誉が彼女の知るすべてであった。 エスラフがクラヴェンスワードを離れたとき、彼には軍の後ろ盾があったが、1ゴールドすら持っていなかった。近いうちに何かを盗まなければいけないのは分かっていた。 食べ物を拾い集めようと森の中をさまよっていると、彼は奇妙な懐かしさに襲われた。ここはまさしく子供のころにいた森で、当時も空腹で食べ物を拾っていた。道に出たとき、彼は優しく間抜けで内気な召使い、デゥルスバによって育てられた王国に戻ってきたことに気付いた。 彼はエロルガードにいたのだ。 そこは彼の幼少期よりもさらに絶望の深みへと堕ちていた。彼に食べ物を拒否した店の数々は皆、板が打ち付けられ放棄されていた。そこに残されている人々は皆、うつろで絶望した姿であり、彼らは税金、専制政治、野蛮人の侵略によってやつれきっていて、弱りすぎて逃げることすらできない人々であった。エスラフは、若いころにここから出られた自分がどれだけ幸運だったかを実感した。 しかし、そこには城があり、王者がいる。エスラフはすぐさま公庫に侵入する計画を練った。普段どおりその場を注意深く観察し、警備や衛兵の習慣などを記録した。これには時間がかかったが、結局、警備も衛兵も存在しないことに彼は気付いた。 彼は正面の扉から中に入り、がら空きの廊下を下って公庫へ向かった。そこは、何もなさで満ちていた。1人の男が居る以外は。彼はエスラフと同年代だったが、さらに老けて見えた。 「盗むものは何もない」と、彼は言った。「かつて存在したこともないがな」 王者イノップは年齢以上に老けているが、エスラフ同様の白金髪、そして割れた硝子のような青い眼を持っていた。その上、スオイバッドやライスィフィトラにも似ていた。エスラフは破滅させられたアールトの地主、ラエルヌとは知り合いにこそならなかったが、見た目は似ている。当然のことである。彼らは兄弟なのだから。 「何も持っていないのか?」と、エスラフは優しく聞いた。 「この王国以外は何もない。忌々しいことだが」王者はぼやいた。「私が玉座に就くまでは強力で、富んでいたのだが、私はそのどれも相続しなかった、ただ称号のみ。私の全人生に責任がのし掛かっていたが、それを正しく推し進める資質を持ったこともなかった。生得の権利であるこの荒野を見渡すと嫌になる。もし王国を盗むことが可能であるならば、それを止めたりなどしない」 結局、エスラフは王国を盗むことにした。それからしばらく後、エスラフがイノップとして知られるようになったが、それは身体的な相似から容易な偽装であった。本物のイノップはイレキルヌと名を変え、喜んで彼の領地を離れ、最終的にはアールトのブドウ園で素朴な労働者となった。初めて責任から開放された彼は、心から喜んで新しい人生に取り組み、そして長い年月が彼から溶け出した。 新しいイノップはライスィフィトラへの貸しを回収し、彼女の軍を使ってエロルガード王国に平和を取り戻した。安全になった今、商売や交易がその地に戻り、エスラフは税額を下げ、それらの成長を促した。それを聞き、常に富を失うことを恐れているスオイバッドは、生誕の地へ戻ることを決心した。彼が何年か後に死ぬとき、彼はその強欲から相続人の指名を拒否したため、王国が彼の全財産を受け取った。 本物のイノップからいい評判を聞いたエスラフは、その財産の一部を使ってアールトのブドウ園を購入した。 これによってエロルガードは、王者イッルアフの5人目の子によって以前の繁栄に返り咲いた── エスラフ・エロル、物乞い、盗賊、お粗末な戦士、そして、王者。 物語(歴史小説) 茶2
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/125.html
2920 真央の月(6巻) 第一紀 最後の年 カルロヴァック・タウンウェイ 著 2920年 真央の月2日 バルモラ (モロウウィンド) 「帝都軍が南に集結しております」キャシールは言った。「二週間の進軍でアルド・イウバルとコロチナ湖に到達するでしょう。それと、きわめて重装備でありました」 ヴィヴェックはうなずいた。アルド・イウバルと湖の対岸の姉妹都市、アルド・マラクは戦略の要地とされる城砦だった。ここしばらく、敵が動くのではないかと懸念していた。ヴィヴェックに仕える将軍がモロウウィンド南西部の地図を壁から引きはがすと、開け放しの窓から舞い込んでくる心地よい夏の海風と格闘しながら、手で撫でつけてまっすぐに伸ばした。 「重装備だと言ったな?」と、将軍は訊いた。 「はい、将軍」キャシールは言った。「ハートランドはベサル・グレイにて野営しておりました。どの鎧も黒檀製やドワーフもの、デイドラものばかりで、上等な武具や攻城兵器も確認できました」 「魔術師や船は?」と、ヴィヴェックは訊いた。 「魔闘士の軍団がおりましたが──」キャシールは答えた。「船はないものかと」 「それほどの重装備なら、ベサル・グレイからコロチナ湖までは確かに二週間はかかる」ヴィヴェックは地図をじっくりとながめた。「さらに北からまわり込んでアルド・マラクへ向かおうとすれば、沼地にはまってもたつくことになろう。となれば、この海峡を越えてアルド・イウバルを攻め落とそうと考えるにちがいない。それから湖岸沿いに東進し、南からアルド・マラクを奪おうとする」 「海峡を越えてくるなら、やつらは袋のねずみですな」と、将軍は言った。「半分ほど渡りきってしまえばもうハートランドには引き返せない。そこで一気に襲いかかるのです」 「またもやそなたの機知に助けられたようだ」ヴィヴェックはそう言い、キャシールに笑いかけた。「今一度、帝都の侵略者どもを撃退してやろうぞ」 2920年 真央の月3日 ベサル・グレイ (シロディール) 「勝利しておきながら、かように帰還なさるおつもりですか?」ベサル卿は訊いた。 ジュイレック王子はまるでうわの空だった。野営地の後片づけをしている軍隊に意識を集中させていた。肌寒い森の朝だったが、雲ってはいなかった。午後の進軍は暑さとの戦いになりそうだった。これだけの重装備ならなおさらだ。 「早期撤退は敗北してこそするものでしょう」と、王子は言った。遠くの牧草地で、支配者ヴェルシデュ・シャイエが、村の食料や酒、それに女を用立ててくれた執事に謝金を渡しているのが見えた。軍隊とはじつに金がかかるものだ。 「しかしながら、王子……」と、ベサル卿は不安げに訊いた。「このまま東進なさるおつもりですか? それではコロチナ湖の湖畔にたどりつくだけでしょう。南東から海峡へ向かわれたほうがよいのでは」「あなたは村の商人が約束の報酬をもらったかどうかを案じていればいい」と、王子は笑みを浮かべて言った。「軍隊の行き先は私が考えましょう」 2920年 真央の月16日 コロチナ湖 (モロウウィンド) ヴィヴェックは広大な青い湖面の向こうをながめた。みずからと軍の姿が青い水面に映りこんでいた。が、帝都軍の姿は映り込んではいなかった。森で待ち受ける災難を嫌って、とっくに海峡へ到着しているはずだった。羽のように薄っぺらなひょろ長い湖岸の木々が邪魔になって海峡の様子はほとんどうかがえなかったが、かさばる重装備に身を包んだ一団が誰の目にもとまらずに音もなく移動することなど不可能だった。 「もう一度地図を見せてくれ」ヴィヴェックは将軍を呼ばわった。「他の進路があるとは考えられないか?」 「北の沼地には哨兵を配備しております。浅はかにも、やつらが沼地に入ってもがいている可能性もないとは言えませんからな」と、将軍は言った。「少なくとも報告があるでしょう。が、湖を越えるとしたら海峡を抜けるより他はありません」 ヴィヴェックはまた湖面に映った影を見つめた。彼をからかうようにゆらゆらと揺れていた。それから、ヴィヴェックは地図に視線を戻した。 「スパイか……」ヴィヴェックはそう言うと、キャシールを呼びつけた。「敵軍は魔闘士の一団を引き連れていたと言ったが、どうして魔闘士だとわかったのだ?」 「灰色の法衣に謎めいた紋章を身につけておりましたから……」と、キャシールは述べた。「魔闘士だと直感しました。あれだけの大人数でしたし。軍が治癒師ばかりを同道させているとは思えませんので」 「浅はかなやつめ!」ヴィヴェックは怒鳴った。「やつらは変性の技巧を学んだ神秘士なのだぞ。水中呼吸の魔法を全軍にかけたにちがいない」 ヴィヴェックは手ごろな見通しのきく場所へ走って、北の方角を見渡した。水平線に浮かぶ小さな影でしかなかったが、対岸のアルド・マラクから襲撃の火の手があがっているのが見えた。ヴィヴェックは怒りの雄たけびをもらした。将軍はただちに、城砦を守るべく湖をまわり込むよう軍隊に指示を出しなおした。 「ドワイネンに帰れ」ヴィヴェックはキャシールに向かって言い放つと、戦いに加勢すべく出発した。「わが軍はもはやおまえの力を必要としていない」 モロウウィンド軍がアルド・マラクに迫ったときにはもう手遅れだった。街は帝都軍の手に落ちていた。 2920年 真央の月19日 シロディール領帝都 支配者ヴェルシデュ・シャイエが帝都に凱旋すると、熱烈な歓迎が待っていた。男も女も通りにずらりと並んで、アルド・マラク陥落の象徴である大君主を褒め称えた。王子が帰還していたらこれ以上の群集が出迎えたであろうことは、シャイエにもわかっていた。それでも、彼は大いに気を良くしていた。タムリエルの民がアカヴィル人の到着を歓迎するなど、それまでにないことだった。 皇帝レマン三世は心のこもった抱擁で彼を出迎えると、やおら王子から届いた手紙を突きつけてきた。 「どういうことかね」皇帝はようやく言った。喜んでいながらもとまどっていた。「湖にもぐったと?」 「アルド・マラクは、難攻不落の要塞です」大君主はそう言った。「それに加えて、われらの動きを警戒しているモロウウィンド軍が周囲を巡回しています。攻め落とすには不意を突いて、鎧の頑丈さにものを言わせて攻撃するしかありません。水中でも呼吸できる魔法をかけることで、われらはヴィヴェックに感づかれないうちに移動することができました。水中では鎧の重みもさほど気になりません。そして守備のもっとも手薄な砦の西側の水締めから攻め入ったのです」 「すばらしい!」皇帝は歓声をあげた。「驚くべき戦術家だな、ヴェルシデュ・シャイエよ! そなたの父親にもそれだけの才覚があったら、タムリエルはアカヴィルの領土になっていただろう!」 実のところ、その計画はジュイレック王子が考えたものだった。シャイエとしては、王子の功績を横取りする気はみじんもなかったが、大失敗に終わった260年前の祖先の侵略のことに皇帝が触れたとき、決心したのだった。シャイエは控えめな笑みを浮かべて、おもうぞんぶん賞賛を味わった。 2920年 真央の月21日 アルド・マラク (モロウウィンド) サヴィリエン・チョラックは腹ばいになって壁まで進み、モロウウィンド軍が沼地と砦に挟まれた森の中へ撤退していくのを銃眼からじっと見つめた。絶好の攻撃の機会のように思われた。敵軍もろとも森を焼き払ってしまえばいい。ヴィヴェックさえ捕らえてしまえば、敵軍はアルド・イウバルもおとなしく明け渡すかもしれない。ショラックはその案を王子に持ちかけてみた。 「ひとつ忘れているようだけど」ジュイレック王子は一笑にふした。「休戦交渉中は敵の兵士や指揮官に手を出さないと約束しているんだ。アカヴィルでの戦いに誇りは不要なのかい?」 「お言葉ながら、私はタムリエルで生まれ育ち、祖国を訪れたことはございません」蛇男は答えた。「が、それでも、あなたの流儀はどうも解せない。五ヶ月前に帝都の闘技場で戦ったときも、あなたは金銭を求めようとせず、私は一銭も払わなかった」 「あれは遊びだから」王子はそう言うと、執事にうなずいてみせ、ダンマーの戦士長を迎え入れた。 ジュイレックがヴィヴェックに会うのは初めてだった。この男が神の化身であるという話は聞いていたが、目の前に現れたのはひとりの男だった。屈強で端正な顔した男で、知性にあふれる顔をしていたものの、やはりただの男だった。王子はほっとした。ただの男となら話せる。神であるなら話はべつだが。 「はじめまして、わが称えるべき好敵手」と、ヴィヴェックは言った。「お互いに手詰まりのようだな」 「そうともかぎりません」王子は言った。「あなたはモロウウィンドを明け渡したくはないし、私としてもそれをとがめることはできません。が、外敵の侵略から帝都を守るため、モロウウィンドの沿岸地域はどうしても押さえておきたい。それと、この場所のような、戦略の要地である国境の砦もほしい。アルド・ウンベイル、テル・アルーン、アルド・ランバシ、テル・モスリブラもすべて」 「して、見返りは?」と、ヴィヴェックは訊いた。 「見返りだと?」サヴィリエン・チョラックは笑い飛ばした。「いいか、勝者はわれらだ。おまえじゃない」 「見返りとして」ジュイレック王子は慎重になって言った。「帝都はモロウウィンドを襲わないと約束しましょう。もちろん、そちらから攻めてきた場合は別として。侵略者があれば、帝都海軍が助けに駆けつけましょう。それから、領土も分け与えましょう。ブラック・マーシュから好きな土地を選んでください。帝都にとって無用な土地であればですが」 「悪くない条件ですが」間をおいて、ヴィヴェックは言った。「即答はできかねますな。シロディールが奪ったぶんだけ補償してくれるなど、これまでになかったことですから。数日の猶予をいただけますか?」 「では、一週間後に会いましょう」王子はそう言って微笑んだ。「それまでにそちらが攻撃をしかけてくることがなければ、秩序は保たれるでしょう」 ヴィヴェックは王子の私室をあとにした。アルマレクシアの読みの正しさを感じながら。戦争は終結した。ジュイレック王子は立派な皇帝になるだろう。 時は南中の月へと続く。 物語(歴史小説) 紫1
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/46.html
野生のエルフ キエルジョ・チョルナヴァク 著 タムリエルのほぼ全地方の荒野には、直接ではないにせよ少なくとも思想上はこの地で最初の住人たちの末えいであるアイレイド、通称ワイルドエルフが住んでいる。エルフの亜種のうち、アルトマー(ハイエルフ)、ボズマー(ウッドエルフ)、ダンマー(ダークエルフ)の三種族はタムリエルの新たな文明によく馴染んでいるものの、アイレイドおよびその末えいは文明を疎む姿勢を崩さず、世間の目を避けて古き法を守ることを選んでいる。 ワイルドエルフたちはタムリエル語を嫌い古代シロディール語の一方言を話すため、最も文明化の遅れている他のエルフの亜種に比べても、タムリエルの本流から離れてしまっている。彼らは性格的には陰気で無口だが、これは(彼らが「ペラーニ」と呼ぶ)よそ者たちの観点からの感想であり、同族相手にはその態度も変わってくるものと思われる。 一例として、グウィリム大学屈指の賢者の一人であった、文明に帰化したアイレイドエルフのチュルヘイン・フィーレ(第一紀2790年生、第二紀227年没)が記したワイルドエルフに関する文献には、色鮮やかで活気のある文化が描かれている。フィーレは同族や自分たちの宗教について自由に語った数少ないアイレイドに一人であり、「アイレイドの諸族の気質は多種多様であり、その性格はたとえ隣り合う地域の部族間であっても大きく異なることが少なくない」と主張している(フィーレ、T、アイレイド詩吟の性質について、p.8、グウィリム大学出版部、第二紀12年)。 ワイルドエルフたちは他の異質な文化をもつ種族同様、タムリエルの庶民階級の多くに恐れられている。アイレイドはタムリエルの大陸屈指の大いなる謎であり続けており、その役割を問わず歴史の記録に登場することは稀であり、言及されていたとしても記録者が見かけた直後に森の中に消えてしまう奇妙な人影といった程度である。ありきたりな伝説から架空ながら現実味のある話を抽出してみても、ほとんど何も残らない。アイレイドの神秘は第一紀以前から謎に包まれたままであり、その状態が以後何千年もの間続いたとしても不思議ではない。 民族・風習・言語 赤3
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/71.html
バレンジア女王伝 第1巻 スターン・ガンボーグ帝都書記官 著 第二紀の後期、バレンジアはモーンホールド王国(現在の帝都州モーンホールド)の王女として生まれた。バレンジアは5歳まで、ダークエルフの王女にふさわしい贅沢と保護の下で育った。その頃、タムリエルの初代皇帝、タイバー・セプティム1世閣下はモロウウィンドの堕落した王たちに対し、彼の帝都支配下に加わるよう要請したのだった。自らの魔力を過信したダークエルフたちはその要請を拒み続けたため、ついにタイバー・セプティムの軍は国境まで迫ってきたのであった。結果としてダークエルフは停戦に合意したが、そこに至るまでにはいくつかの戦があった。その一つは、モーンホールド王国のがれきの山と化していた、現在のアルマレクシアにて繰り広げられた。 幼い王女バレンジアと乳母は、戦のがれきの中で発見された。ダークエルフでもあった帝都将軍シムマチャスは、その幼き子を生かしておけば後に役立つかもしれないと皇帝に進言した。こうして、バレンジアは元帝都軍兵に預けられることになった。 元帝都軍兵であるその人物、スヴェン・アドヴェンセンは、引退した際に伯爵の位を授かっていた。彼の領地、ダークムーアはスカイリム中心部にある小さな町だった。セヴン伯爵とその妻は、自らの子供のように王女を養育し、なによりも帝都の一員としての美徳、すなわち遵法、分別、忠誠、信仰などを教えこんだ。その結果、彼女はすぐにモロウウィンドの新しい支配者の一人としてふさわしい資質を身に付けた。 バレンジアは美しく、気品と知性にあふれた少女に育った。彼女は優しく、また養父母の誇りでもあり、養父母の5人の息子たちもみな彼女を姉として慕った。彼女には、見た目以外にも他の少女にはない特質を持っていた。森や野原と心を通わせ、ときどき家を抜け出しては自然の中を歩き回るくせがあったのだ。 16歳までバレンジアは、とても幸せな毎日を送っていた。そんなある日、仲良くしていた厩番の孤児の不良少年から、セヴン伯爵と客のレッドガードとの間で行われた話を聞かされたのであった。どうやら妾として彼女をリハドへ売り飛ばすことを企んでいるらしいことを。ノルドやブレトンは肌が黒い彼女と結婚したがるはずもなく、ダークエルフでさえも異人種に育てられた彼女を嫌がるに違いないという考えを伯爵は持っているというのである。 「どうすればいいのかしら?」と、バレンジアはふるえながら涙声で言った。まっすぐに育った彼女は、友達である厩番の少年が嘘をついているなんて思いもしなかったのである。 そのストロウという名の不良少年は、彼女の護衛を買って出て、貞節を守るべく一緒に逃げることを勧めてきた。悲しげにバレンジアはその計画を受け入れた。 そしてその夜、目立たぬよう男装をしたバレンジアとストロウは、ホワイトランの町へ逃げたのだった。 ホワイトランに着いてから数日後、彼らはある隊商を護衛するという仕事に就いた。このいかがわしい隊商は帝都の街道を通ると通行税がかかるため、脇道を通って東へ向かおうとしていたのである。そして、隊商とともに彼らは追っ手に見つかることなくリフトンの町へ辿り着き、しばらくその地に身を置くことにしたのだった。彼らはダークエルフが珍しくないこのモロウウィンドとの境界に近い町に、束の間の安らぎを感じたのであった。 歴史・伝記 茶4
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/57.html
武具の手引き この小冊子は戦地におもむく帝都の将校を対象とした、ウォーハフト将軍の監修による武器についての解説書である。 当然のことながら、兵士の武器はそのスキルに応じたものが望ましい。刀剣のスキルにはダガー、ショートソード、ロングソード、クレイモアが向いている。殴打のスキルなら片手斧、メイス、両手斧、戦槌が適しているだろう。新兵にとって斧や槌は扱いの難しい武器だと思われがちだが、振りかざすリズムや扱い方、力の入れ方などはどちらもまったく変わらない。弓は射手のスキルを持つ兵のみが装備すべきであろう。 こうした武器のほとんどは盾と併用するのが一般的であるが、クレイモア、両手斧、戦槌は両手で扱うため盾は装備できない。重装の騎士やバーサーカーといった部隊の両脇をかためる兵士たちは両手武器を装備するのが望ましい。 いつの時代であっても、武器は多彩な素材から作られてきた。しかも、それらの素材は重さも強度も値段もそれぞれ異なっている。こうした素材を強度と値段の低い順に羅列すると、鉄、鋼鉄、銀、ドワーフ、エルフ、碧水晶、黒檀、デイドラとなる。厳密に言えば、銀製武器は強度の点でやや鋼鉄に劣るという意見の鍛冶屋もいるようだが、たとえそうであっても、亡霊やレイスや特定のデイドラ系モンスターに対して銀がとりわけ有効であることは疑いようがない。 弓は同種の芯材を薄く重ねて作られる。こうすることで張力が増し、弓を引いたときに大きな力が生まれるのである。矢、特に矢じりは使われる素材によってサイズや貫通力が大きく変わってくるため、武器全体の防具貫通力を決めるのは弓の質と矢の質両方だということになる。 すべての神話や歌で魔力の武器についての言及がなされている。こうした道具の魔力は敵を攻撃したときに発揮され、ターゲットに痛みや苦しみを与えるのである。弓にかけられた魔法は射出時に矢に伝達されるが、あらかじめ矢に魔力が宿っているときはどちらの効力もターゲットに対して発揮される。 魔力がこもった武器に宿っているマジカには限りがある。攻撃するたびにマジカが減っていき、やがて底をついてしまう。魂石という神秘のアイテムを使うことで魔力は回復する。この石に封じられた魂が強力であればあるほど、マジカの回復量も増大する。 兵法・戦術 茶2
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/37.html
魔術師ギルド憲章 Ⅰ.目的 魔術師ギルドは魔術の専門家に利益を分配し、また魔術の公正な使用に関する規律を制定する。魔術師ギルドは、タムリエル市民の公益に重きを置き、魔術に関する知識の収集、保存、分配にあたる。 Ⅱ.権威 魔術師ギルドは、ヴァヌス・ガレリオンとライリス十二世によって第二期230年サマーセット島に設立され、その後、支配者ヴェルシデュ・シャイエのギルド法令によって認可された。 Ⅲ.規律および処分 ギルド構成員に対する犯罪には、厳罰をもって対処する。ギルド構成員のギルド内における以前の地位への復帰は、アークメイジが決定権を持つ。 補還:第三期431年より有効、ギルドに対する犯罪を犯したギルド構成員は、その場でギルド構成員としての諸権利を差し止められる。差し止めは、魔術師評議会の役員の決定により解除される。複数回差し止めを受けたギルド構成員は、評議会の略式決定に基づき即座に、永久的にギルドから追放される。 Ⅳ.加入資格 魔術師ギルドは、優れた知性と高い理想を持つ者をギルド構成員として受け入れる。候補者は、次に挙げる魔術の主要な分野に精通していなければならない:破壊、変性、幻惑、神秘。また、候補者は、魔術と錬金術に関する実際的な知識を有することも証明しなければならない。 Ⅴ.加入手続き ギルド構成員候補者は、ギルド本部の執事に面会し、考査の上、承認を得なけらばならない。 補還:第三期431年より有効、アークメイジであるトレイヴンの決定に基づき、候補者はギルド本部の全ての役員の承認を得た上で、その旨を速やかに魔術師評議会へ書面で通知しなければならない。 補還:第三期431年より有効、評議会の決定に基づき、帝都州における呪文の販売の収益は、ギルド本部に再分配される。各魔術分野は、下記の支部がそれぞれ担当する。 変性:シェイディンハル 召喚:コロール 破壊:スキングラード 幻惑:ブラヴィル 神秘:レヤウィン 回復:アンヴィル 社会 茶2 魔術師ギルド関連
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/54.html
五年戦争における多兵科戦術 第1巻 コダス・カロヌス 著 カジートが五年戦争でヴァレンウッドと戦ったときに採用した型破りな戦術は、軍事的に学ぶところが多いだろう。私はデューンにほど近い国境沿いのスフィンクスモス駐屯基地に配属され、多くの北方の尖兵を最初に目にする立場にあった。 いわゆる「トーバル大虐殺」をきっかけに戦いが始まった。カジートの主張では、ボズマーが一方的に街を襲撃し、近隣の密林から駆けつけた援軍に撃退されるまでに千人以上を虐殺したという。いっぽうのボズマーは、カジートの蛮族がヴァレンウッドに向かっていた材木を運ぶキャラバンを襲ったため、報復を行ったと言って譲らなかった。 第三紀396年の春になると、戦争の舞台はスフィンクスモス駐屯基地まで迫っていた。私の詰めていた望楼からも戦火を目にすることができた。のちに、この戦いに参加したカジートとボズマーの両者から話を聞いたのだが、その内容はカジートがいかにして地上と樹上の部隊を使い分けて戦いに勝利したのかを知るうえで、重要な手がかりとなるだろう。 カジートは一風変わった方法で戦いを始めた。キャセイ・ラートと凶暴なセンシュ・ラート、またの名を「戦猫」で構成される伐採チームをヴァレンウッドの森の外縁に送り込んだのだ。樹木が刈り倒されている(独特なボズマー信仰では罪とされる行為)という情報を聞きつけると、ボズマーは南の激戦地から射手を呼び寄せた。ボズマーとしては戦力の分散を余儀なくされたわけである。 ボズマーの射手は切り倒されずに残っていた樹木に陣取った。密集していた樹木の枝葉は今や穴が開いたようにすかすかで、陽光が地面を照らしていた。ボズマーは残った樹木を魔法でゆがめて小さな砦をこしらえて、そこから弓で応戦した。 翌朝、伐採チームが到着すると、ボズマーの最初の一斉射撃によってカジート側に数人の犠牲者が出た。そこでカジートはセンシュ・ラートが背負っていた巨大な木の盾を取り出し、間に合わせのシェルターを築いた。カジート側は身体の大きなセンシュ・ラートでさえも、このシェルターと大木のあいだに身を隠すことができた。カジートがシェルターを使っての持久戦に持ち込もうとしていることがわかると、ボズマーの何人かは木からおりて剣と爪による白兵戦でカジートに挑みかかった。 ボズマーがシェルターに近づくと、カジートのひとりが鉄琴のような民族楽器を奏ではじめた。なんらかの合図だったのだろう。と、人のような姿のオームスとオームス・ラートがふたで覆われた林床の穴から飛び出した。数では負けていたものの、背後から不意打ちを食らわせることでまたたく間に地上を制圧した。 樹上のボズマーの射手にも戦いに勝つチャンスはあっただろう。振ってわいたような問題さえなければ。カジートでも馴染みの薄い種族である、テンマーの森の樹上で暮らすダギとダギ・ラートの一団が、魔法で音を消しながら樹から樹へと飛び移っていき、ボズマーが乗ったら折れてしまいそうな高さにある枝に陣を取ったのだ。例の合図とともに、彼らは爪を振るい、松明あるいは炎の魔法(この点では二人の生存者の意見が食い違っている)を使って射手の気をそらした。まさにそのとき、地上での戦いの火ぶたが切られた。射手は逃げることもままならずほぼ全滅した。 ダギとダギ・ラートが広く信じられているよりも高度な魔力を持っていたのは明らかだ。それほどまでに長いあいだ、魔法で音を消していられるのだから。生き残ったボズマーのひとりは、ダギの中に普通の猫がいくらか混じっていて、あろうことか、この猫たちは「アルフィク」と呼ばれる種族で魔法を唱えられるのだと訴えた。が、ボズマーもカジートも話の信憑性で知られている種族ではないわけで、家猫が魔法を唱えるなど信じられるはずもない。 その日が終わったとき、カジート側の死者は50人に満たない戦力のうちの数人だったが、ボズマー側では射手の部隊が丸ごとひとつ壊滅状態に追いやられた。射手の第二陣が到着するまでに生存者の報告が間に合わず、同じ戦いが繰り返され、同じ結末が導かれた。最後になってボズマーは大がかりな軍隊を派遣し、ヴァレンウッドの森の動物たちの助けもあって、カジートを打ち破ってみせた。この最後の戦いとカジートの応戦ぶりについては本書の第2巻で詳しく述べようと思う。 歴史・伝記 茶2