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【参加者】47/47 [男子]26/26 ○蒼浦誠都(◆sWPde7Q8zk)/○芦原浩之/○天野正/○荒神健児(◆ymCx/l3enU)/ ○池田潤一郎/○小川海斗/○沖崎翔/○小野高貴/○神田恭一 ○菊池健夫/○岸本禅/○銀丘白影(◆xzYb/YHTdl)/○黒沼光貴(◆YcpPY.pZNg)/ ○斉藤五郎正彦/○佐藤彰/○佐藤和人/○白逆紹(◆VxAx.uhVsM)/ ○白畑章一/○朱神栄光(◆6LQfwU/9.M)/○富樫剣/ ○福沢正也/○松岡醸/○緑川暁里(◆YR7i2glCpA)/○宮崎黒鷹/○森聖/○柳秋梧 [女子]21/21 ○阿蘇部亜紀/○井岸由那/○伊藤遺/○御阪ひかり/○加藤美幸/○木村夕/○九柳祠織/ ○九柳やよい/○逆打裕美/○清水阿子/○須田リル/○空野未那(◆8nn53GQqty)/○反口操/○柄部霊歌/○戸井仲鬱/ ○納倉昭歩/○灰影万里(◆meUMrrZs9o)/○濱野マナ/○真崎静/○水戸円/○夜坂文香 【主催者】 ○黒崎刑梧
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アニメキャラ・バトルロワイヤル3rd part2... (2009-10-13 17 05 19) アニメキャラ・バトルロワイヤル3rd part3 (2017-12-13 02 05 22) アニメキャラ・バトルロワイヤル3rd part4 (2017-12-13 02 05 57) アニメキャラ・バトルロワイヤル3rd part5 (2017-12-13 02 06 26) アニメキャラ・バトルロワイアル3rd part6 (2017-12-13 02 06 53) アニメキャラ・バトルロワイアル3rd part7 (2017-12-13 02 07 18) アニメキャラ・バトルロワイヤル3rd part8 (2017-12-13 02 07 43) アニメキャラ・バトルロワイヤル3rd part9 (2017-12-13 02 08 05) アニメキャラ・バトルロワイヤル3rd part10 (2017-12-13 02 08 24) アニメキャラ・バトルロワイアル3rd part11 (2017-12-13 02 08 42) アニメキャラ・バトルロワイアル3rd part12 (2017-12-13 02 09 01) アニメキャラ・バトルロワイアル3rd part13 (2017-12-13 02 09 18) アニメキャラ・バトルロワイアル3rd part14 (2017-12-13 02 09 38) アニメキャラ・バトルロワイアル3rd part15 (2017-12-13 02 09 49) アニメキャラ・バトルロワイアル3rd part16 (2017-12-13 02 10 06) アニメキャラ・バトルロワイアル3rd part17 (2017-12-13 02 10 23) アニメキャラ・バトルロワイアル3rd part18 (2017-12-13 02 18 28) アニメキャラ・バトルロワイアル3rd part19 (2017-12-13 02 18 54) アニメキャラ・バトルロワイアル3rd part20 (2017-12-13 02 19 19) アニメキャラ・バトルロワイアル3rd part21 (2017-12-13 02 19 44) サイト名 URL
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アニメ・ロワイアル第一回放送までの死者 アニメ・ロワイアル第二回放送までの死者
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【オープニング】 No. タイトル 登場人物 000 Rの開幕/悪夢の始まり 加頭順、ルイ・サイファー、マンセマット
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ミリオンライブ・バトルロワイアルへようこそ! 【俺ロワ・トキワ荘】にて進行中の【ミリオンライブ・バトルロワイアル】をまとめる為のサイトです。 以下の点をご了承していただいた方はこちらのオープニングからどうぞ。途中から読みたい場合は、右メニューの一覧から該当項目をお選びください。 ・パロロワとは バトルロワイアル(著・高見広春)をモチーフとした、アニメ、漫画作品などのキャラクターが登場する二次創作(小説が通例)です。 当バトルロワイアルでは、ソーシャルゲーム【アイドルマスターミリオンライブ】のキャラクターが登場するパロロワとなります。 キャラクター同士が殺し合うという内容上、ファンには不快な思いをさせることがありますので、読み進める際には注意をお願いします。 原作者、及び高見広春氏とは一切関係がありません。 ・各キャラクターの扱い 上記の通り、この企画は各キャラクターが殺し合いに参加していることが前提で進んで行きます。 なので読み進めていくと愛着あるキャラクターが死んだり、時には死ぬよりも惨い事態に陥る可能性があります。 キャラクター同士でも扱いに格差が生じる可能性もあるでしょう。 加え、闇堕ちや悪堕ち、逆に浄化など、原作ではありえないようなキャラクター改変も時には起きるかもしれません。 もしそれでも読む場合は、寛大な心をもって読んでいただくことを推奨致します。 誤字脱字やミス等見つけましたらこちらに報告をお願いします 名前 コメント 検索用 ミリマスロワ、グリマスロワ、ミリオンライブバトルロワイアル、パロロワ 編集用リンク 【全参加者名】 【名前アイコン】 【名前アイコン2】 ▲上へ戻る
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テラカオスバトルロワイアル外伝にようこそ! 当ロワはテラカオスバトルロワイアルの定番何だか よく目にするだかのキャラクターで一風変わった世界で殺し合いをするスレのまとめです。 その辺のことに興味がない人は直ぐ様プラウザのページを閉じでくださいませ。 予約制導入しました。今までどおりのゲリラ投下もOKです。 本スレ http //engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1331112556/l50 避難所 http //jbbs.livedoor.jp/otaku/14746/
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「どうなってんのコレwwwwww意味不明すぎワロタwwwwwww」 そこは薄暗い通路の中であった。 等間隔に電灯は設置されているものの、長い長い通路の全てを照らしきるには至らない。 長く幾多にも枝分かれしている通路の真ん中で、ガンダムエクストリームVSプレイヤー・セシールは笑っていた。 「極限の絶望をくれてやるwwwwwwwwwだっておwwwwwwwww なwwwwwんwwwwwでwwwww具現化しちゃってんすかwwwwwww中二病はwwwwwwwゲームの中だけにしろwwwwww」 大爆笑という言葉がこれ以上似合う表情もないだろうという勢いでの笑顔。 それもその筈、自分が慣れ親しんだゲームのキャラにいきなり殺し合いをしろと告げられたのだ。 夢にしても酷過ぎる。思わず笑えてしまう。 「あぁ……ワロタ……」 まぁ、そんな笑顔も実のところを言うとカラ元気満載の無理やりなものなのだが。 最初は冗談ですんだ出来事も、実際に眼前で人が一人死ねば話は違う。 セシールも流石に夢と現実くらいの分別は付く。 現状は異常だった。 いや、異常という言葉では片づけられない程の、まるで映画のなかのような出来事だ。 「相方ェ……どうなってんだよ、これ」 先のエクストリームガンダムがいた場にて、共に笑い合っていた相方。 その姿を思い出し、思わず助けを求めるように名を呼ぶ。 正直に訳の分からないことだらけであった。 いきなり始まった殺し合い。この時点で既に訳が分からないとか、そういう域を超越している。 何故、しがない一市民である自分をこんな殺し合いに参加させるのか。 何故、本名ではなくゲームのプレイネームで名前が登録されているのか。 そもそも先のエクストリームガンダムのコスプレ野郎は何だったのか。 てか、本当にさっきの人は死んでしまったのか。あれ、そういえば何だか本名思い出せなくない? などと、もう本当に訳が分からないことだらけであった。 思わずその場にへこたれてしまうセシール。 余りに理不尽かつ理解不能な事態に、思わず口から長い長い溜息が吐かれる。 「あぁ、笑える……笑えるなぁ、兄弟」 と、暗い通路で一人ごちるセシールであったが、彼の身に起きているもう一つの『異常事態』に気づくのはもう少し先のことであった。 その『異常事態』に気付くよりも先に、彼は一つの出会いをなすこととなるのだから。 「……ガン、ダム……?」 「うおおっ!?」 そう、それは奇妙な出会いであった。 セシールにも何処か聞き覚えのある声が薄暗闇の中から飛んできたのだ。 いきなりの他参加者との接触に、セシールは驚愕し跳ね起きる。 兎にも角にも距離をとり、何をどう出来る訳でもないがファイティングポーズを取るように身構える。 そして、見た。 その声の主を正面から。 見て、セシールは呆然とした様子で言葉を零していた。 「は……? せ、刹那……刹那・F・セイエイ……!? えええ! マジでか!?」 そう、その人物は彼がゲームの中やTVの中で何度となく見てきたキャラクターの一人。 刹那・F・セイエイ。 機動戦士ガンダムOOの主人公にして、歴代有数のネタ的な側面を有したキャラその人であった。 「うおお、何だこれ!? 訳が分からねーぞ! ふんすに引き続き、何でせっさんまでも!? マジか、俺は何時の間にか二次元の壁をボソンジャンプしていたのか!!?」 驚愕はもう止めることができなかった。 興奮と驚きとがブレンドされ、セシールの口を動かす。 そんなセシールを見詰めながら、刹那は肩を震わせていた。 「違う……」 「……は……?」 わなわなとした揺れは、遂には身体全体を支配する。 震える体から紡がれた言葉には、怒気が含まれていた。 「違う!!」 「うお! いきなり怒鳴るな!」 「俺は刹那・F・セイエイなどではない!! ガンダム・刹那・FF・セイエイだ!!!」 「いや、何だよそれ」 目の前の刹那・F・セイエイはよくよく言えば、セシールの知る彼とは違っていた。 ガンダム馬鹿である刹那・F・セイエイ。 そんな、彼が知る刹那よりも数段上のガンダム馬鹿―――それが眼前の人物であった。 「そもそもお前は何だ!」 「何だって言われても……俺はセシールっていうんだけど」 「そういうことを聞いてるのではない! お前は……」 と、再度口を開いたところで刹那が押し黙る。 それまでの饒舌ぶりは何処へ行ったのか。 どうにも刹那はその質問を口にしたくない様子であった。 何のことだか分からないセシールは、刹那の言葉を待つ。 「お、お前はその……………………………………………………………………ガンダムなのか?」 「は? あー、いや違うと思うけど」 いやに溜められて放たれた問いに、セシールは僅かに答えあぐねる。 刹那・F・セイエイにとっての『ガンダム』がどういったものなのかは、知っている。 争いを止める存在―――それが『ガンダム』。 セシールだって争いを止めたいとは思う。だが、しがないゲームプレイヤーでしかない自分に何ができるのか。 力がある訳ではない。頭だって特別良いわけではない。 こんな自分が何をできるのか。いや、できる訳がない。 精々殺し合いにのった人々から逃げ惑うことくらいだろう。 「そうか、違うのか」 「いきなり冷静になるのな」 「ああ、外見がどうであろうと、お前がガンダムじゃないのなら興奮する必要もないからな。むしろ腹立たしさで一杯だ」 「はぁ、何でだよ?」 「ガンダムでもない貴様が、何故そのような姿形をしている。それはガンダムに対する侮辱でしかない」 「……はぁ? 外見がどうとか姿形がどうとか、どういう意味だよ」 「気付いてないのか? そこの角を曲がった所に洗面所がある。見てくると良い」 言葉に従い、セシールは角へ姿を消した。 そして数秒後、 「はああああああああああああああああああああああああああああああ!!?」 「!?」 物凄く大きな叫び声が轟いた。 これまで上げた驚きの声の中でも、段違いで格別の絶叫。 さしもの刹那もビクリと身体を震わせ、洗面所へと向かう。 そこには鏡の前で自身の顔に両手を当て、驚愕に絶句しているセシールがいた。 「ど、どうした」 「な、何で、何で俺が……俺が、ガンダムに……!?」 そう、鏡に映ったセシールの姿は彼もよく知るものであった。 だが、いつも見慣れた自身の姿とはまるでかけ離れている。 言ってしまえば、まるで機械のような造形。 『ガンダム』。それが今の彼の姿であった。 「違う! お前はガンダムではない!! さっき自分でそう言った筈だ!!」 「い、いや、そうなんだけど、それで合ってるんだけど! で、でも、この見た目はどう見ても完全にガンダムじゃねーか!」 「ちがああああああああう!! お前はガンダムではない! 俺が、」 「な、何で……何で俺が、」 混乱極める洗面所にて、二人のガンダムの声が響きあう。 セシール……ガンダムエクストリームVSプレイヤーにして、今現在は姿がガンダムとなっている青年。 刹那・F・セイエイ……ソレスタルビーイングのガンダムマイスターにして、自身をガンダムと言い切る青年。 二人のガンダムが、バトルロワイアルの場にて交差する。 「―――ガンダムだ!!」「―――ガンダムに!?」 そう、お前が、お前達が―――ガンダムだ! 【一日目/深夜/A-1・プトレマイオス艦内】 【セシール@セシール&相方(EXVSプレイ動画)】 [状態]健康、ガンダム [装備]なし [道具]基本支給品一式、ランダム支給品×1~3 [思考] 基本:死にたくないけど、殺し合いになんか乗れない 0:何だ、こりゃあああああああああああああ!? 1:相方を探す [備考] ※姿はガンダムでありますが、どの機体かはまだ不明です。 【刹那・F・セイエイ@武力介入できないCB】 [状態]健康、ガンダム [装備]なし [道具]基本支給品一式、ランダム支給品×1~3 [思考] 基本:俺が、ガンダムだ! 1:ガンダムとして行動する 2:セシールはガンダムではない! 動画紹介 セシール&相方(EXVSプレイ動画) ガンダムEXVSやガンダムVSガンダム、ガンガンNextなどの(ネタ)プレイ動画。 援誤という造語を作り出す程の(ネタ)プレイや最大ダメージの検証などを主とする動画。 ネタ面もさることながら、普通にプレイヤーの腕も高い リアル隠れんぼ 投下順 対ちょっぴり強いモンスター戦(ゴンさん視点) GAME START セシール お前のガンダムねぇから!! ~ガンダムマイスターVS絶対鬼畜防御兵器~ GAME START 刹那・F・セイエイ お前のガンダムねぇから!! ~ガンダムマイスターVS絶対鬼畜防御兵器~
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甲斐 雅人 (かいまさひと) 参加歴 広島東洋カープバトルロワイアル 広島東洋カープバトルロワイアル 2005 選手データ 1982年 4月 12日生 投打右投右打 身長186cm 体重78kg 血液型O型 高鍋高→13年広島D4位 広島東洋カープバトルロワイアル 殺害: なし 所持品:不明 死亡:金本知憲による殺害 物語内略歴 末永真史?、田村彰啓?、長崎元?と合流する約束をしていたようだが、その場に現れた金本知憲によって殺害された。 見所 (未編集) 登場章 第11章 投げられたコイン 広島東洋カープバトルロワイアル 2005 殺害: 所持品: 物語内略歴 (未編集) 見所 (未編集) 登場章 (未編集) 名前 コメント
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戦士のエチュード グリフィスは川岸にいた。ザフィーラの埋葬の場所を探して。 「とにかく、ザフィーラを埋葬しよう。でないと報われない」 傍らにはザフィーラの遺体。右手には木刀、左手にはデイバックを持っていた。 「ザフィーラ…、あなたはもしかしてあの娘を…」 ザフィーラの遺体の近くにいて、ザフィーラを殺害したと思われる少女。 もしかしたらあの娘は自らの身を守っただけでは? だとしたらザフィーラは殺し合いに乗ったというのだろうか? そんなことを考えながらも埋葬場所を探していた。 「だとしたら、あなたも彼女も罪を問われるべきなんだろうな…」 真面目な彼はそんなことを考えていた。 移動しようと、デイバックを持っていく為にザフィーラの側から離れた瞬間、赤い熱線が先程までいた場所を抉りザフィーラの遺体を消し去った。 (なんなんだ、一体) そう考え、上空を見ると、そこには身体に大きな傷を負った、魔導師だと思われる人がいた。 グリフィスがザフィーラの遺体を川岸に運んだ頃、少年エリオ・モンディアルは川の対岸にやって来ていた。 彼は、戦う相手を求めここまでやって来たのだ。 ヤクトミラージュを握りしめ、マジンカイザーを使い。 そして、エリオは見つけた。新たなる敵を、グリフィスを。 本来グリフィスは非戦闘員。しかし、今のエリオにはそんなことはどうでもよかった。 ただ、戦えればいいのだから…。 だから放つのだ無慈悲の閃光を。 「ファイヤーブラスター!」 しかし幸か不幸かグリフィスは移動し、閃光は外れた。 エリオにはこう移った避けたのだと…。 「次はあなたが相手をしてくれるんですか?グリフィスさん」 グリフィスは焦っていた。突然の襲撃者に。今、自分に武器はない。木刀は先程の攻撃の衝撃で落としてしまった。 どのみち、木刀では魔導師には勝てない。 グリフィスは先程の攻撃で断定した。相手は魔導師だと。 そして今の自分に魔導師と戦う力はない。ならば方法は一つ。 逃げる、とにかく逃げきることである。 幸い近くに森がある。森の中なら相手が飛んでいようと関係はなくなる。 しかし、エリオはそれも許さないかのように射撃をしてくる。 「うわッ!あ、眼鏡が」 激しい攻撃にふとした拍子に転び、眼鏡とデイバックの中身が放り出された。 グリフィスは急いで立ち上げろうとする。 その右手にカードデッキをつかんでいることに気付かず。 地面に放たれた魔力弾の光。それは眼鏡に反射しグリフィスとカードデッキを写した。 そして、グリフィスの腰にバックルがセットされる。 「これはもしかして…」 グリフィスは考える。これはこの箱の力を引き出すものではないのか、と。 しかし、エリオは待ってくれない。 「鬼ごっこは終わりですか?」 「一か八かだけど、ウオォォォ!」 エリオの放つ魔力弾が迫る中、グリフィスはデッキをバックルにはめこんだ。 そして、 「やっぱり戦いはこうじゃないと」 そこには緑の鎧を纏った戦士がいた。グリフィスである。 戦士の名はゾルダ。 神崎が作り上げたデッキの力を纏った姿である。 「早く戦いましょうよ。ねっ!」 「狂ってる…」 【1日目 現時刻AM2 46】 【場所 I-5 森付近】 【グリフィス・ロウラン@リリカルなのはFeather】 [状態]健康。疲労(中)ゾルダに変身中 [装備]マグナバイザー、カードデッキ(ゾルダ@マスカレード [道具]遊戯王カード「バスターブレイダー」「魔法の筒(マジックシリンダー)」「光の護封剣」@リリカル遊戯王GX [思考・状況] 基本的にこのゲームには乗らない。 1.目の前の魔導師の拘束しなければ 2.部隊長…、どこに…。 〔備考〕 ※カードデッキの制限については知りません。 ※魔導師がエリオだとまだ気付いてません。 【1日目現時刻AM2 45】 【場所 I-5 森付近】 【エリオ=モンディアル@リリカル遊戯王GX】 〔時間軸〕第六話終了後 〔状態〕左胸上部から右脇腹への裂傷、デュエルゾンビ化、魔力消費大、体力消費大 〔装備〕マジンカイザー@魔法少女リリカルマジンガーK s ヤクトミラージュ@NANOSING 〔道具〕支給品一式 レヴァンティン@スーパーリリカル大戦(!?)外伝 魔装機神 THE BELKA OF MAZIKAL ローザミスティカ@ヴィータと不思議なお人形 [思考・状況] 基本 戦いを楽しむ 1.グリフィスさんと戦おう。 2.なのはさんを探す 049 本編投下順 051
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4 :代打名無し:02/09/20 01 19 ID CQNLX22D これまでの人物動向を整理。 【生存者】 福留&荒木(名古屋第一赤十字病院) 井端(東山公園付近から移動中) 川上(東山公園付近) 落合&正津(名大病院) 遠藤(中区?) 大西?(救急車で移動中に行方不明) 井上(中区?) 藤立(中区) 中里(ナゴヤドーム) 【その他の登場人物】 山田久志(?) 星野仙一(名古屋市内) 古田敦也(ナゴヤドーム) リナレス&バルガス 今中&中村(ナゴヤドーム内スタジオ) 前田章宏(地下鉄浄心駅構内) 【禁止エリア(現在は停電で停止中)】 東区、南区、西区 5 :詳しいまとめ:02/09/20 01 30 ID y5fv+nZg 【生存者紹介】 福留孝介 この話の主人公。 序盤から荒木と行動を共にして数々の修羅場をくぐり抜けて来た。 山崎を殺してしまい自分が人殺しになった事への罪の意識から 悩み苦しんでいたが、ギャラードに襲われた時における山崎の幻影との対話により吹っ切れて前に歩き出した。 所持品は日本刀とコルトガバメント。 荒木雅博 常に福留と一緒に行動する名パートナー。 ずっと立波につけ狙われていたが、立波は荒木を殺す事なく久慈の復讐に燃える関川によって命を落とした。 福留だけでなく井端もまた荒木の事を気遣っていた。 所持品は拳銃? 井端弘和 序盤自分を見失って錯乱していたが、久慈からのメモにより正気を 取り戻す。 その後荒木を守る為に立波にくっついて行動していたが、立波亡き後は 信頼する川上と合流するが川上は井端を受け入れてはくれなかった。 現在は目的もなく名古屋の街をさまよっている。 川上憲伸 序盤は朝倉、中里と共に行動しメールを通じて前田と連絡をとっていた。 その後井端と出会うものの、チームメイト達への不信感から井端とさえも別れて単独行動を選ぶ。 前作のヒーローも今作はいまいちヘタレ気味…? 落合英二 序盤には若手選手達をかくまい、まとめ上げていた人格者。 ゴメス達に襲われた際に右手を負傷してしまう。 霊感が強く、バルガスの登場を示唆する正夢をみた。 所持品はボーガン 正津英志 序盤から落合と行動を共にする。 銃を持った谷繁にお鍋の蓋と包丁で応戦している所が印象的だった。 でも、いまいち地味な存在。 6 :代打名無し:02/09/20 01 32 ID y5fv+nZg 遠藤政隆 マウンド上でもバトロワでも持ち前のチキンハートを披露。 だが、関川、久慈、藤立らとの別れ、裏切りを経て少しずつ成長してきて いる?現在は失踪した大西を探している。 所持品はベレッタ。 大西崇之 序盤は藤立と共に行動していたがナゴヤドーム侵入の際に肩をバルガスに撃たれ意識を失う。 遠藤が運転する救急車の荷台に寝ていたはずだったが、遠藤が一時救急車から離れている間に失踪。 所持品はレーダー。 井上一樹 守山区の自衛隊駐屯地から大量の武器弾薬を入手し、ただ生き残る為だけに戦う危険人物。 立波に撃たれた腕の傷を教訓に完全勝利を目指す。 藤立次郎 プログラムを終わらせるため戦うヒーロー、と思いきや実はNHKに通じる スパイ。NHKと通じている有利な自分の立場を活かして自らを英雄に仕立てあげ、パリーグの人気回復のために 身を尽くそうと考えている。 所持品は煙幕、NHKに支給された無線と武器? 中里篤史 序盤は川上、朝倉と共にパソコンを使って現状の打破を試みていたが、 プログラムの狂気に犯されてしまい、さらに朝倉を殺した事で完全に精神がいかれてしまった。 谷繁との撃ち合いで負傷するが、古田の手の者に手当てをうけている。 所持品はワルサーP38 7 :代打名無し:02/09/20 01 34 ID y5fv+nZg 【その他の主な登場人物】 前田章宏 2軍のメンバーと共に長島温泉にいたが、川上と連絡をとるうちに名古屋に赴く事に。 昇竜館では父と慕う紀藤と出会いしばしの休息をとった。 地下鉄浄心駅構内で謎の男(星野仙一?)に協力を要請される。 山田久志 名古屋ドームで主催者の監視下にあったが、佐々木恭介を昏倒させ脱走する。 現在の居場所は不明。 星野仙一 現実では中日ファンに愛想を尽かされた感のある阪神星野監督だが、 作中ではかつてファンに愛された星野仙一のままの姿で描かれている。 日本各地の元中日の選手の所を回った後、自らも名古屋に乗り込む。 しばらく行方不明だったが前田?と思われる選手と一緒にいる場面が テレビに映った所を広島カープナインが目撃している。 古田敦也 紀藤を自らの手にかけるなど冷酷に試合を仕切るプロ野球選手会会長。 だが、その裏にはヤクルトに対する愛が見え隠れする。 リナレス 仁村コーチによって呼ばれた外国人助っ人。 1人50万という破格の値段で契約し、まず筒井を血祭りにあげた。 バルガス 同じく仁村コーチに呼ばれた外国人助っ人。 藤立、筒井、森の集団に攻撃をしかける等冷徹に仕事をこなす。 藤立の事はNHKのスパイとして理解しているらしい。 今中慎二 記録より記憶に残る中日の元エース。 解説者としての初めての仕事がこのバトルロワイアルだった。 山本昌との別れを経て、なんとかこのプログラムを中止させようと 苦闘している。 中村武志 横浜から山本昌説得の為に駆け付けるが、悲劇的な結末になってしまった。 その後は解説者として名古屋に残った。 昌の想いを継ぎ、今中と共に強大な力と戦う。 11 :書き手A:02/09/20 03 01 ID gHQ2A6q+ 1さん、まとめの皆さん乙です。 ついでに現在の所持武器もまとめておきます。 【参加者】 福留 日本刀(山崎より奪取)、デザートイーグル.50AE(ブレットの死体より入手) ※支給品のコルトガバメントM1911A1は破損したため破棄? 荒木 バット(支給品) 井端 コルトパイソン357マグナム(鈴木より奪取)、ナイフ(久慈に渡される) ※支給品のゲイラカイトは破棄 川上 金槌(支給品) 落合 銀の矢とボウガン(支給品) 正津 包丁(熱田神宮にて入手) ※支給品の携帯ラジオは妨害電波のため使用不能? 遠藤 ベレッタ92F(支給品) 大西 レーダー(支給品) 井上 S W M66(支給品)、スコープ付き64式小銃など銃器多数(自衛隊守山駐屯地にて入手) 藤立 煙幕(支給品)、スタッフ側より支給品? 中里 ワルサーP38(支給品/弾切れ)、スタッフ側より支給品? 【非参加者】 リナレス モーゼルHSc(スタッフ側支給品) バルガス 銃(スタッフ側支給品/詳細不明) 今中 ニューナンブM66(スタジオにて入手) 中村 S W M36(山本の死体より入手/残弾数1) 15 :代打名無し:02/09/20 13 32 ID tcN6xgrd 1さん、まとめの皆様乙です。 ついでに今まで出てきた元ドラ選手と他球団選手をまとめてみますた YB 種田仁 L 清水政治 M 吉鶴憲司 M 椎木匠 M 酒井忠晴 M 山本保司 C 鶴田泰 H 鳥越裕介 OB 牛島和彦 C 金本知憲 C 黒田博樹 C 前田智徳 C 山本浩二 C 佐々岡真司 20 :代打名無し:02/09/21 23 17 ID bHwQL1EP 156 ナゴヤドーム丑三つ時 首輪システム復活の報が古田の元に届いたのは、 午前の二時を幾分過ぎた頃だった。 「お待たせしました」 言ったスタッフの顔には、深い疲れが刻み付けられていた。 目許には黒々とした隈も見て取れる。 「ああ…ご苦労さん」 しかし、温かく労ってやる余裕はない。 古田もまた、疲れていたのだ。とても。 この三日間でどれほどの睡眠が自分に許されていただろう? ブンという低い電子音に視線を上げると、死んだように何も映していなかった巨大なモニターに、 選手たちの現在地が浮かび上がっていた。 大体はカメラの映像から目星を付けた場所の通りだ。 禁止エリアも、タイマーも、全ては元あった姿に戻った。 だが、奔走していたスタッフの中から歓声は上がらなかった。 本来なら喝采が沸き起こりそうなものだが。古田は苦笑した。 同時に、どっと疲れが体に圧し掛かる。 「さて…中里に、荒木の居場所を教えてやらなあかんな」 21 :代打名無し:02/09/21 23 22 ID bHwQL1EP 「中村区の、第一赤十字病院、ですか」 長椅子から身を起こし、中里は噛み締めるように復唱した。 運ばれてから一時間ほど経ち、体力はだいぶ回復している様子だ。 「そうや。ただし、福留が一緒やで」 「問題ありませんよ。あんなヘラヘラした奴、いてもいなくても同じですから」 そう言って唇の端を歪める若い投手の目には、今や異常な光が宿っていた。 古田は知っている。これは血に酔った狂気の光だ。 しかし、利用できるものは全て利用してプログラムを押し進める心積もりに変わりはない。 「そんならええけど…ああ、お前の銃、弾無くなっとったやろ。これ貸したるわ」 紀藤を殺した時に使ったH K MP5A5を差し出すと、中里は目を見開いた。 驚きではなく、むしろ喜びが、その顔にははっきりと表れていた。 「これ、サブマシンガンじゃないですか」 「嫌なら拳銃にしたるけど」 「い、いえ、いいです、これを使わせて下さい」 疲れているだろうに、その眼光の強さは尋常ではない。 狂気に犯された者しか発揮し得ない体力と精神力の強靭さを、古田は垣間見た気がした。 「…今から行けるんか?」 「はい」 そうか、と言おうとしたが、声が掠れて言葉にならなかった。返事をする気力さえ失われていることに今更気付く。 草木も眠るこの時刻、正気の者は疲れ果て、力を得るのは狂ったものばかりだ。 【残り11人】 22 :書き手A:02/09/21 23 24 ID bHwQL1EP 武器のまとめ、やらかしてました。 今中が持っている銃はニューナンブM66ではなくM60です。 M66だとサブマシンガンになってしまうので、訂正しときます。 ×今中 ニューナンブM66(スタジオにて入手) ○今中 ニューナンブM60(スタジオにて入手) しっかし、sports3鯖重いなぁ… 30 :代打名無し:02/09/25 18 01 ID LTQ/Ut4h 157 地獄からの解放 川上の中に、もう時間の感覚はなかった。 ただ頭上の月はまだ傾いていないから、夜明けが遠いであろう事だけはわかる。 出刃包丁を握り締めた右手は冷えて悴み、 金槌を握った左手も寒さに感覚を失くし始めていた。 出刃包丁は、もともと朝倉に支給されていたものだ。 そんな当然の事実さえ、思い出さなければ忘れてしまいそうだった。 朝倉の死体に触れるのは嫌だったが、 川上は武器が欲しかった。それで仕方なく血溜りの中に踏み込み、 冷えたその手から包丁をむしり取った。 哀れを催すこともなく。 いや、これは朝倉ではない、と思った。 いつも笑っていた、前向きで明るかった朝倉と、 地面に倒れ付して冷たくなっている朝倉が脳内で結び付かなかったので。 これはただの死体で、武器になるものを持っている。 生きた自分が活用して何が悪いものか。 川上は芯まで冷えた体を暖める事さえ、もう忘れかけていた。 ただ周りを見回し、耳を澄ませることのみが確かな「すべき事」になっていた。 31 :代打名無し:02/09/25 18 06 ID LTQ/Ut4h 人が来たら、戦わなければ…誰も味方などではありえないのだから。 そう思い、改めて両手に力を込めた時だった。 足音が、川上の耳に届いた。地面に座り込んだ全身が緊張する。 敵だ。敵だ。敵だ敵だ敵だ敵だ。 足音は無駄なく自分の方に近付いてきている。 川上はふらりと立ち上がった。心臓が激しく鼓動を刻み、手のひらに汗がにじんだ。 ゆっくりと後ずさり、背後の木立の中に身を潜ませるべく体を屈めた。 喉が破れそうなのを堪えて息をことさらゆっくりと吐き出す。 木と木の中に体を滑り込ませると思ったより大きな音がたったが、何、紛れて奥に入ればそう簡単には見つかるまい。 ほぼ全身が木々の合間に隠れた頃、川上は近付いてくるユニフォームの白を視界に見止めた。 相変わらず、こちらに向かって歩いてきている。 先ほどまで川上が座っていたあたりで足を止めた、その背番号を読もうとして息を呑んだ。 44。 「誰」 思わず呟いた。 呟きは銃声にかき消され、川上以外の者の耳に入る事はなかった。 痙攣したように上体が揺らぐ。 咄嗟に川上は右手にあった木にしがみ付いたが、すぐに力が抜けてずるずると倒れた。 死ぬのか… やっとこれで、自由になれる。 最期に川上の胸に満ちたのは、無念でも恐怖でも悲憤でもなく、安堵だった。 【残り10人】 35 :代打名無し:02/09/26 21 14 ID l+X66C4H 158 快楽への階段 中里はまだ暗い道を第一日赤に向かって歩いていた。 本当は古田から「まだ待ってくれ」と言われていた。 先に行われたリナレスによる川上の射殺が思ったような反響を得られなかったのだ。 真夜中を過ぎて明け方に近付いた時間では視聴者数も少なく、また見ていた視聴者からも「画面が暗すぎる」というクレームが相次いだこともあって、夜が明けてからの展開が望まれた。 それと中里の思い描くショーに必要不可欠な井端を第一日赤方面に向かわせるのに時間がかかりそうだからということだった。 井端を示す赤い点は第一日赤からは遠い。 本部が係わっていると視聴者に知られないためにはスタッフが拉致して連れて行くわけにもいかず、徒歩で向かわせなければならない…となれば時間が必要だ。 だから全ての手はずが整うまでもうしばらく養生しておけ、というのが古田の言葉だった。 しかし中里はそれを拒否して部屋を出た。 もちろん古田の言うことは理解していた。 新たな展開は日が昇ってから、というのも。井端が来るまで時間が掛かる、というのも。 でも中里は逸る気持ちを抑えられなかったのだ。 これから自分が行うことを思えば、ワクワクしてどうしようもなかったのだ。 中里はじっとしていられなくて自分で歩いていくことを選んだ。 歩いていくうちには時間もそれなりに経つだろう。 手はずも整えてもらえるだろう。 わざと自分で巻きなおした包帯を引きずりながら、中里は高揚した気分で歩を進めた。 新たに貰った武器の重さが頼もしく心地良い。 労せず最高の舞台を整えてもらえる。 そしてその主役はこの自分だ。 笑いがこみ上げてきてもう抑えられなかった。 怪我からくる熱なのか、興奮からくる熱なのか、火照る体に春のまだ冷たい風が気持ちいい。 たまらない。 ゾクゾクする。 ああ、早く夜が明けてくれ。 そして早くこっちへ来い、井端。 俺をナメたこと後悔させてやる。 はは、皆殺しだ。 皆殺しだ! 【残り10人】 38 :代打名無し:02/09/27 07 11 ID 9yk2S2A/ 159 再び戦場へ 身体も心も疲れ果てていながら井端は眠ることが出来なかった。 足の向くまま歩いてきて身体を休めたバス停のベンチ。 これからどうするべきか何も思いつかなかった。 立ち上がる気ももう起きなかった。 何をする気力もなかった。 ただ早くどうにかなってほしかった。 この身も。 このプログラムも。 暗い暗い闇の中で、このまま溶けてしまえばいいとさえ思った。 息を潜めて隠れるでなく、大声をあげて何かに挑むでなく、 井端の心も身体も周りの闇に同化していくようだった。 しかし時は過ぎていく。 井端はふと顔をあげた。 視界が薄紫にぼやけていた。 そして次第に白く白く・・・。 それは移り行く朝の色だった。 井端はそれを眺めながら、朝はこうして明けるものかと改めて思った。 そしてどんな状態であっても、どんな思いを抱いていても、 朝は必ずやってくるのだと思った。 姿を見せ始めた太陽が眩しく井端を照らし出す。 『生き延びろ』 生命力に溢れたその陽光を浴びて、久慈の与えてくれた言葉が 再び井端の中で光を放ち始めた。 『生き延びろ』 夜の暗さはその言葉さえ闇にうずめていたようだ。 井端は弾かれるように立ち上がった。 太陽はいつのまにかもうあんなに高い。 行こう。 もちろんどこへ行けばいいかはわからない。 でもこのままここに居てはいけない。 こんな外れの方にいては。 流されていては。 「行こう」 井端はそうはっきりと言葉にして言った。 太陽の光を背に受けて、井端は歩き始めた。 【残り10人】 42 :代打名無し:02/09/27 22 04 ID lJIVfvWm 160 Lost <D48 井端弘和 生体反応なし・死亡> 突然モニターに表れた文字に古田は思わず立ち上がった。 「誰や!? 誰が殺したんや!?」 井端のいた付近には他の誰の反応もなかったはずだ。 一番近くにいたのは川上だったがそれでもかなり離れていたし、既にリナレスに殺されている。 リナレスももう別方面に向かわせている。 井端を第一日赤に促す役目を藤立にさせるつもりで向かわせていたが、それだってまだ近くには着いていない。 付近に設置した監視カメラの映像にも井端の姿はない。 井端の首輪に仕込まれたマイクも何の手がかりも残していない。 もちろん他の選手達の首輪からも井端の状況は何も分からなかった。 古田は大型モニターを見上げた。 既に文字は消え、また市内に散らばる選手達を示す点が広がっていた。 しかしそこにはもう井端の生存を示す点はない。 「事故か・・・? 病気・・・?」 どちらも考えにくい。 一般人はおらず車も電車も通っていないところでどんな事故に遭うというのか。 病気で急死というのも、井端のキャンプ前の健康診断では何の異常もなかったはずだし、 野宿したといって健康を害するほどの気温ではなかったはずだ。 それにさっきまで井端を示す点は普通に動いていたはずだ。 自殺ということも考えられないではないが、序盤は壊れかけていたとはいえ今の井端が自殺なんかするとは思えない。 古田は無線を手にした。 「藤立、井端を探すんや! 草の根分けても探しだせ!」 残る答えは1つ。 井端が何らかの手段を使って本部の監視下から逃れたということだ。 古田は再び椅子に身体を預けてイライラと手指をせわしなく組み替えた。 監視から逃れた井端がどんな動きをみせるか分からない。 どのようにも動ける。まさに文字通りの遊撃手だ。 古田は更に落ち着かない様子でモニターを見つめた。 しかし古田は気付いていなかった。 首輪のシステムが復旧した時から、本当はそこに表れていなければならないはずの点が1つ足りなかったことを。 D58・大西崇之を示す点がモニター上にないことに・・・。 【残り10人】 51 :代打名無し:02/09/30 22 02 ID tZAA88qI 161 希望の鍵 雨戸を閉め切った民家の中、朝の定時放送で自分の名前が死亡者として読み上げられるのを聞いて、 井端はホッとしたように大きく息を吐いた。 しかし自分の前に呼ばれた川上の名前に井端は目を伏せた。 例によって誰が殺したとは発表されないが、やはり中里に襲われたのだろうか? あの時、無理にでも憲伸とともに居ればよかっただろうか。 いや・・・あのまま無理に残っても憲伸は・・・。 「憲伸も助けたかったんだがな・・・。本当はもう少し早く動きたかったんだが」 「監督・・・」 井端は顔を上げて目の前に座る山田を見た。 山田の顔にはこのプログラムを開始前に止められなかったことへの深い悔恨が刻まれていた。 その山田の隣にはやはり沈痛な面持ちで福原峰夫・内野守備走塁コーチが座っていた。 福原の前に1個の小さな金属の塊のようなものが置かれていた。 それは本部側の人間から託された、あの忌まわしい首輪の呪縛から選手を解き放つ磁力キーだった。 いくら本部側に属していてもやはりこのプログラムを平然として受け入れることの出来ない人間はいたのだ。 「子供のころからドラゴンズのファンです。なのに・・・なのにこんなことになるなんて・・・」 誰もいない廊下で近付いてきたまだ年若い男が、震える手でその磁力キーを福原に差し出した。 本部への背信行為は見つかれば厳しい制裁が下ることは想像に難くない。 しかし彼はそれでもその鍵を渡したのだ。 福原も表向きは仁村らとともに本部に従っていたが、やはり選手達がこんな理不尽な殺し合いをさせられているのを 諦めの気持ちで受け入れることは出来なかった。 なんとかしてこのプログラムを壊したい。何とかして・・・。 そんな時に福原は鍵を受け取った。 福原が反乱の機会を伺っていたのを、彼は察していたのだろう。 「いいのか?」 彼はコックリと頷いた。こんな重大事がバレたらただでは済まない。でも彼は強い瞳で福原を見つめた。 そして一礼して彼は去った。 「ありがとう・・・」 52 :代打名無し:02/09/30 22 03 ID tZAA88qI 福原は思ってもみなかった福音を手に入れた。 そして本部内で運良く出会えた山田とともに選手達を救うべく、そしてプログラムを壊すために本部を後にしたのだった。 「大西、具合はどうだ?」 大西を救急車から連れ出したのも山田と福原だった。 大西はまだ横たわってはいたが前よりはるかに気力に満ちた顔を山田に向けた。 「かなり楽になってきました」 「そうか」 山田は深く頷いた。 もう残っている選手も少ない。 このプログラムを成功裡に終わらせることだけは避けなければ。 中日ドラゴンズをめちゃくちゃにされた、その報復はしなければ。 テレビの中で道化者にされて死んでいった者たちのためにも。 そして今まさにこの死闘の中であがいている者たちのためにも。 ・・・自分の身の危険を顧みず、鍵を渡してくれた彼のためにも・・・ 【残り10人】 55 :代打名無し:02/10/01 00 13 ID 4iT6I1wc 162 遺品 「あう、あ、つ、つ、筒井…。」 地面に這いつくばりながら遠藤政隆は嗚咽を漏らした。 大西を捜して周囲をうろつくうちに遠藤は地上に横たわる『何か』を見つけたのだが、それが筒井の死体だと気付いた時には腰を抜かして動けなくなってしまっていた。 その状態で何分くらい経っただろうか、しばしの静寂の後に遠藤は少し落ち着きを取り戻して筒井の死体を凝視する事ができきるようになった。 酷いな……。 それが第一印象だった。 久慈さんの遺体はまだ綺麗なものだったけど、これは…。 いまだ血の跡が生々しく残っているのを見て背筋が寒くなった。 「…こんな気味の悪い所さっさと離れよう。」 それは人間の自然な感情だったのかもしれない。 そう思うとすぐに遠藤は立ち上がり筒井に背を向けて歩き出した。 だが、遠藤の心は晴れなかった。 ………。 このまま通り過ぎていいのか? あのままの状態じゃいくらなんでも酷すぎるんじゃないか? 一応チームメイトだったんだし…。 このままで……。 ……くそっ!! 結局、自分の気の弱さを呪いながら遠藤は道を引き返した。 56 :代打名無し:02/10/01 00 14 ID 4iT6I1wc 「星野監督の甥っ子もこうなっちゃな……。」 身体からしみ出る嫌悪感を押さえながら筒井の遺体を道端の車の中に 移動させた。 そして、死後硬直の始まっているまぶたを無理矢理閉じさせて、手を胸で組ませた。 「筒井、せめてもの棺桶だ。 成仏してくれよ……。 ………。 ……なあ、こんなの絶対間違ってるよな。 死んでも葬式すらあげてやれないんだぜ…。 筒井、そうだよな、間違ってるよな? 答えろよ、筒井。 答えてくれよ!!!!!!!」 筒井からの返事はなかった。 遠藤は心の中に溜まっていたものを吐き出した後、車の横でしばらく呆然としていた。 「…じゃあ、俺大西を捜しに行くわ。 ……ん?」 遠藤が車から離れようとしたその時、何か黒い物が道の隅に落ちているのに気付いた。 「これは……、筒井の荷物?」 筒井を襲った奴はこれと奪っていかなかったのか? 恐る恐る中を探ってみると何かの小ビンが出て来た。 「何だこれ? ……毒薬?!」 銃を持った奴がうろうろしてる中でこんな物持ってたって…。 …でも、一応貰っていくか。 筒井の形見にもなるわけだし……。 「……これ貰ってくぞ、筒井! またどっかで会おうぜ!!」 自分を震い立たせるためにわざと大声を出した。 静寂に響くその声に、遠藤は出棺の時に鳴らすクラクションを思い起こしていた。 【残り10人】 59 :代打名無し:02/10/01 01 46 ID wrb8BzUT 163 狂気のままに 「井端が消えた」 無線機の向こう、古田は乱暴にそう言った。 「消えたって、どういう事ですか」 もう巨大な病院は目の前だ。井端さえここに来れば何もかもが揃うというのに。 「…調査中や。ああ、追加された禁止区域は港区やから、近付かんようにな。 あとはお前の好きにしたらええわ」 「そんな」 それはもうスタッフ側が自分を関知しないということではないのか。 散々サポートするような事を言っておいて今更何なのだ。 ある程度当てにしていたものが急に使えないとなっては、計画が台無しだ。 「荒木を殺すのも、福留を殺すのも自由や。まあ、井端が見付かったら一応連絡したる」 あまりに突き放した言いように、中里は何かが切れるのを感じた。 「…いえ。解りました。もういいです。あんたたちには頼りませんよ」 言い捨てた勢いで無線機を近くの茂みに投げ、そして中里は痙攣するように笑った。 何か、無性に可笑しくてならなかった。 低く篭った笑い声が朝の空気を振るわせていく。 もういい。もういい。 俺は俺一人でヒーローになってみせるさ。 結局古田たちなど、踏み台に過ぎなかったと思えばいいではないか。 そう、ヒーローには柔軟さも必要だな。 ならば、井端は後回しでいい。まずは荒木だ。そして福留。 連中の首を井端に突きつけてやろう。 そして絶望する井端の顔面をこのサブマシンガンで吹っ飛ばしてやる。 …いや、それよりはじわじわと苦しめる方がいいだろうか。 まあ、それはまず荒木と福留を仕留めてから考えよう。 「俺が生き残るに一番相応しいんだよ」 声に出して言うとさらに気分が高揚した。たまらない。 第一日赤の病棟郡に向き直り、中里はゆっくりと歩き始めた。 俺はヒーローだ。俺は天才だ。 だから生き残って、このプログラムの若き覇者として名を残すのだ。 どいつもこいつも俺をコケにしやがって。 今に見ていろ。二度とでかい口を利けなくなるような惨劇を見せてやる。 【残り10人】 60 :書き手A:02/10/01 01 51 ID wrb8BzUT 保管屋さん方は忙しいんだろうか… そろそろ72時間タイマーの時間切れが近いですな。 ついでに書いておくと、ランダム爆破の対象は荒木、遠藤、正津、落合です。 76 :代打名無し:02/10/05 07 45 ID YliGz3+0 164 ブラックスネーク 朝が来たというのに、落合は目を覚まさない。 正津は浅い眠りから覚め、何をするでもなく病室の中を歩き回っていた。 四日目の朝、か。 よくも自分がここまで生き残れたものだ。 熱田神宮で小山や森野と共にいたのが、ひどく遠い昔のことのように思える。 あの頃はまだ、心のどこかで助かるかもしれないと思っていた。 殺し合いの実感など無く、ただ、今この時が安全であればいいと思っていた。 その平穏が何となく続くものだと… 考えてみれば、そんな事はありえなかったのだ。 この逃れようのない「プログラム」という檻に閉じ込められた瞬間から、 自分がのんびりと、慎ましやかに生きていく道など絶たれてしまっていたのだから。 「くそ」 けれど、どうすればいい? 武器が無いわけではない。落合のボウガンと、気休めだが包丁もある。 だが…銃をを相手に、これらが何の役に立つというのだろう。 正津はすでに自分の無力を思い知っていた。 谷繁たちの襲撃を受けたあの時、偶然居合わせた森がゴメスに斬りかかっていなければ、 自分たちは嬲り殺されていたに違いなかった。 放送によれば谷繁もゴメスもギャラードも既に死んだらしいが、第二の襲撃がいつあるか。 なにしろ、あいつらはスタッフと内通していた。 内通者が連中だけだとは到底思えない。 いや、あの時点ではあれだけだったかも知れないが、 スタッフ側は視聴率の為に「やる気」になっている選手をどんどん勧誘しているに違いないし、 誰を犠牲にしてでも生き残りたい奴だっているだろう。 それに、落合の言っていた「黒い大蛇」。 あまりにも不吉なその単語は、何を意味しているのか… 考えつつ、正津はひとまず無人のベッドに腰掛けた。 バン、と廊下に面するドアが乱暴に開け放たれたのはその時だった。 しまった。 廊下に立っていたのは見慣れない黒人だったが、正津は直感した。 この男こそ、黒い大蛇に相違ない。 【残り10人】 89 :代打名無し:02/10/09 19 01 ID ATvH4LK7 165 希望を断ち切る時 静寂を破ったごく微かな足音が、容易に全身を緊迫させた。 ゆっくりとした足取りは、階段を登っているらしい。 右手に銃を、左手に刀を、それぞれ硬く握り締め、福留は立ち上がった。 誰であろうと戦うだけだ。容赦はしない…それがたとえ井端や川上であっても。 福留はもう心に決めてしまっていた。と言うよりも、強く思い込もうとしていた。 甘えも期待も持ってはいけない、自分の双肩には荒木の命がかかっているのだ。 ともすると青臭い連帯感のままに、チームメイトたちを信用したくなってしまうが、 それではいけないのだ。絶対に。 命は限りなく軽く、悲しいほど簡単に吹き飛ぶ。己のミスは荒木の死に直結する。 思い出すのは、プログラム開始直後のナゴヤドーム前で見た、立浪の殺意に満ちた目… 本当はあれを目の当たりにした時点で、割り切らなければならなかったはずなのに。 ずるずるとここまで引きずってきた希望を、ここで断ち切らなければ。 しかし…この部屋で戦うのはまずい。死ぬのは自分だけで十分だ。 荒木、生き延びてくれ。たとえ野球が出来なくなってもお前には生き延びる価値がある。 少なくとも人殺しの自分よりは、間違いなくある。 敢えて声をかける事はせず、黙って荒木の顔を覗き込むと、荒木もまた何も言わずにただ視線だけを投げてよこした。 ひとつ頷き、それから福留はできる限り静かにドアを開けて廊下に出た。 90 :代打名無し:02/10/09 19 01 ID ATvH4LK7 澄んだ朝の空気が冷たく、乾いた喉に突き刺さる。 最後に水を飲んだのはいつだったろうか。もう思い出せない。 何者かの足音は確実に上昇してきている。後ろ手にドアを閉め、一つ息をついた。 まずはこの部屋から離れなければ…荒木がいる事を敵に悟られてはならない。 ではどちらへ行く?階段に近付くか?奥へ逃げるか? 一瞬頭を巡らせたが、どちらにせよ戦いを避ける事はない。 それならこちらから出向いてやろう。 一歩踏み出すと膝が震えていた。構わず歩を進めていくと、手まで震えている事に気付いた。 「今更…」 何が怖いというのか。すでに人を一人殺しているではないか。 わけもなく唇が歪む。 血の匂いを纏った足音は、階段を上りきろうとしていた。 気取られぬよう慎重に深呼吸をしてみる。何とか体は動きそうだ。 …さあ来い。誰であろうとぶっ殺してやる。 【残り10人】 123 :代打名無し:02/10/18 16 09 ID riOtuuXb これまでの人物動向を整理してみますた。 違ってたら指摘よろです。 【生存者】 福留&荒木(第一日赤) 井端&大西 (市内の民家) 落合&正津(名大病院) 遠藤(中区?移動中) 井上(中区?) 藤立(中区?井端を捜索中) 中里(第一日赤) 【その他の登場人物】 山田久志&福原峰夫(市内の民家) 星野仙一(名古屋市内) 古田敦也(ナゴヤドーム) リナレス(?) バルガス(名大病院) 今中&中村(ナゴヤドーム内スタジオ) 前田章宏(地下鉄浄心駅構内) 【禁止エリア】 東区、南区、西区、港区 127 :書き手A:02/10/19 03 46 ID wsD8ep/5 166 バトル 先んずる事だけを考えていた。 相手が銃を持っているかも知れない。爆弾を持っているかも知れない。…そんな事は考えなかった。 いや、複数の事を考える余裕さえ福留には残されていなかったのだ。 壁に張り付いた体勢から大きく足を踏み出して階段の方に向き直り、真っ先に認識したのは銃だった。 銃口が下を向いてはいるが、紛れもない実銃、それもマシンガンの類。 それから、まさに最後の段を上りきろうとしている「敵」。見慣れたユニフォームと深い青の帽子。 情報はそれだけで充分だった。 銃口がこちらを向く前に、左手の刀を捨てて飛び掛った。手ごたえがあった。重力のかかるままに敵の体を押し倒す。 視界が揺れてすぐにわけがわからなくなった。襲い来る幾度もの衝撃と共に、銃声が鼓膜に突き刺さった。 左の肩に熱が走る。すぐに撃たれたのだとわかった。しかし、肩ならいい。肩なら死ぬ事はないのだから。 それよりも、撃ってきたという事は、やはり、これは敵だ。では殺さなければならない。 夢中で両の腕に体重をかけ続け、気が付くと、福留は組み伏せた敵ごと踊り場のすぐそばまでずり落ちていた。 殺意に満ちた目が下から睨みすえてくる。 息が苦しい。全身から嫌な汗が噴き出す。頭はパンクしそうだ。 いや、落ち着け。福留は必死で己に呼びかけた。階段の上という不安定な場所ではあるが、 圧し掛かっている自分の方が有利である事に変わりはあるまい。まずは落ち着かなければ。 「放せっ」 暴れようにも押さえつけられ、さすがに身動きが取れないのか、相手は明らかに狼狽している。 あの物々しい銃はまだ手にしているらしいが、その右腕は福留の左手が押さえ付けていた。ほとんど無意識のうちに、だが。 更に左手に体重をかけようとし、飛び掛った時に肩を打ち抜かれた事を思い出した。 「ぐ…」 左手に力を入れようとする度、激痛が走り、腕が震えた。濃厚な血の匂いに吐き気までしてくる。 傷口がどくんどくんと怯えるように脈打ち始めていた。痛みで気が変になりそうだ。 「放せっつってんだろ!てめぇ!」 眼下の敵はなりふり構わず抵抗をしてくる。その振動さえ傷を苛んだ。 もし一瞬でも痛みに耐えかねて力を抜けば、とたんに自分の体は跳ね上げられてしまうだろう。そうしなってしまえば…殺される。 128 :代打名無し:02/10/19 03 48 ID wsD8ep/5 左手の助けに右手をやりたかったが、右手も左手と同じように敵の左腕を押さえている。 敵は腕が自由になれば、こちらの頭や鼻を狙うに違いない。銃を封じる事に固執して素手に仕留められては意味がない。 では、足は。 足は今までどうなっているかも気に止めていなかったのだが、どうやら敵の腰か腹あたりに両膝が乗っているらしい。 敵はしきりに足をばたつかせていて、膝に発達した筋肉の動きが伝わってくる。 震えるのを堪えてことさら細く息を吐いた。冷静になれ、冷静になれ。 左肩の事を考えると、長期戦は不利だと言わざるを得ない。賭けに出てでも一気に決めるしかなさそうだ。 しかし、福留の頭の中にはどういう賭けに出るのか、それさえ思い浮かばなかった。 力を抜くわけにはいかないのに、いつまでも力をかけ続ける事も出来そうにはない。ではどうすれば。 「俺が生き残るんだ!それが一番いいんだよ!」 敵は飽きる様子もなく喚き続けている。 「いいって、何がいいんだよ…」 「中日のフロントだってファンだってそう思ってんだよ!お前なんかが生き残っても何にもならねーよ!」 声はまるで遠くから届いているかのように聞こえていた。現実のものではないかのように。 鼓膜が多少痛んで聞こえにくくなっているだけかもしれないが、ともかく、福留は妙に静かな気持ちで迸る声を聞いていた。 「お前が生き残れば、何があるんだよ」 「栄光」 「…栄光?」 「若いヒーローに対する賞賛と羨望と畏怖が俺の周りに集まるんだ」 「それがお前の栄光か…」 どうしようもなく笑いが漏れた。小さい男だと思った。全くもって、呆れるほど小さい男だ。 栄光だと。人を殺してでもそれを得たいのか。いや、人を殺さなければそれを得られる自信が無いのか。 129 :代打名無し:02/10/19 03 48 ID wsD8ep/5 「俺が新しい時代の主役だ、俺が生き残らなきゃプログラムの意味も無いんだ!」 「じゃあ無意味なまま終わらせてやる」 それは本当に、不意に思いついた行動だった。 福留は肩が痛みを訴えるのを承知の上で、頭を振り下ろしていた。吼える若い男の鼻っ柱を目掛けて。 痙攣するように足下の体から力が抜けた。一瞬だったが、福留はそれを逃さなかった。 顔を上げざま、ほとんど右手の位置はずらさぬまま、向きだけを変えてデザートイーグルの引き金を引いていた。 無茶な体制から撃った割には覚悟していたほどの反動は来なかった。 そろそろ聞き慣れ始めた銃声が、しかし轟然と鳴り響く。 小うるさかった顔と頭の一部が見事に弾けた。 しつこそうな手合いだったが、これで間違いなく死んだだろう。赤やピンク色をしたものが辺りに飛び散ったのを見、 掃除が大変だろうなどと思いつつ、福留はぼんやりと立ち上がった。 何故か罪悪感は感じなかった。 このプログラムに意味を見出そうとする愚かさに腹が立ったせいかもしれない。 プログラムは悲惨なだけだ、何の意義もありはしない。あってたまるものか。認めるものか。 それにしても肩が痛い。左なのが救いだ。 とりあえず銃はベルトに挿し、左肩を庇いつつ持ち主を失ったサブマシンガンを拾った。 それから何となく背番号を確認して、ようやくこの敵が中里だったのだと知った。知ったが、特に何とも思わなかった。 そんな事よりも病室に戻って肩の治療をしなければならない。 【残り9人】 130 :代打名無し:02/10/19 04 35 ID wsD8ep/5 167 血の海 まず、あまりに血生臭いのでおかしいと思った。 返り血を浴び、自分も左肩を怪我していながら なお気になるほどの血の匂いなのだから、尋常のものではない。 それで、直後に背筋が冷えた。気管が詰まったように息が出来なくなった。 まず、この病室には荒木しかいなかった。 そして、中里以外にこの病院の、この階への侵入者はいなかった…はずだ。 中里と自分が小競り合いをしている数分の間に何者かが到達するという可能性も無いわけではなかった、が、 それは限りなくありえない事態だったし、もしそうだったところで、荒木に抵抗は出来ないのだから… つまり、この咽るほどの血の匂いが、何故この病室に充満しているのかと考えると。 福留は再び吐き気がこみ上げてくるのを感じていた。 真っ白になりそうな頭の中に、ひとつのフレーズが浮かんだ。 「72時間ルール」。 あれのタイムリミットは、ちょうど今頃ではなかっただろうか。 72時間以内に誰も殺せなかった人間の首輪をランダムに爆破する、と、 アナウンサーだか古田だか、運営側の人間が確かに言っていた。 そんなルールはすっかり忘れていたけれども…もう残り人数もごくわずか、 誰も手にかけていない人間となればますます少なく、的中率はどれほど高くなっていたか。 無論のことだが、荒木は、誰も殺してなどいない。 自分も殺してくれるなとずっと願っていた。何の罪も無いままに生き残って欲しいと願い続けてきた。 まさか、それが。 131 :代打名無し:02/10/19 04 35 ID wsD8ep/5 気が付くと冷たい床の上にへたりこんでいた。とてもではないが足に力が入らなかった。 カーテンの隙間からは陽光が差し込んでいる。 そう、今は朝なのだ。四日目の。あの宣告がされてから72時間目の。 いやしかし、まだ決まったわけではない。福留は必死で最悪の事態を考えるまいとしていた。 生来自分はプラス思考だし、それは常にいい結果を生んできていた、と思う。 もしかしたら、もしかしたら、この血の匂いは何かの錯覚かもしれないではないか。 床を這い、長い時間をかけて福留は荒木の寝ていたベッドに辿り着いた。 期待はあまりにあっさりと裏切られた。 白かったシーツは血に染まり、力なく垂れた手は明らかに血の気を失っていた。 それだけ見るのが精一杯で、とても顔を上げる事が出来ず、福留はそのまま床に蹲った。 気持ちが悪くなったので吐き、泣きたくなってので泣いた。 もう、何を信じていいのかわからない。 信じられると唯一思った友は死んでしまったのだ。 たった一人、こんな寂しい病室の片隅、誰かに恐怖を訴える事も叶わぬままに。 しかし部屋を離れた事を後悔はしなかった。 自分がここにいても、いなくても、中里と戦っても、戦わなくても、荒木が死ぬ事に変わりはなかっただろうから。 つまり…全ては無駄だったのだ。 気が治まるまで福留は笑い、脱力し、嘔吐し、それからやはり泣いた。 あまりに無力な自分を呪って泣いた。 【残り8人】 135 :代打名無し:02/10/19 10 52 ID QItfYD8f 168 恩 「しっ」 首をつき合わせて今後の作戦を話し合っていた山田・福原・大西・井端は、井端の沈黙を促す仕種に口を閉じた。 息を潜めて外界に耳を澄ませる。 息詰まるような時間、たった1分あまりの時間だったが、長く長く感じられた。 しかし何の物音も聞こえはしなかった。 「・・・どうした?」 「いえ・・・今、自分の名前を呼ばれたような気がして・・・」 山田に問われ、井端は答えながら首をかしげた。ただの空耳だったのだろうか。 「いや、待て」 今度は大西が反応した。手元のレーダーに点が浮かんでいた。 誰だろう? 4人は再び押し黙り、神経を集中させた。 「・・・井端ー・・・どこだー・・・」 聞こえた声。4人は顔を見合わせた。 「藤立さんや!」 大西は上半身を跳ね起こした。 プログラムが始まってからずっと一緒にいた、そして自分を助けてくれた藤立がすぐ近くに来ている。 「藤立さんが来とる。助けんと」 「待て、大西」 立ち上がりかけた大西を福原が止めた。 「藤立は・・・敵だ」 「え?」 大西がいぶかしげな顔を福原に向けた。 「藤立は本部と通じているんだ」 「そんな、藤立さんは俺を助けてくれたんですよ。プログラム開始からずっと一緒にいて、そんな素振りはどこにも・・・」 福原の言葉が信じられずに大西はそう言い返した。 プログラムが始まってしまってどうしようかと思っていたところで出会えた藤立。 藤立といることで落ち着いていられた。 それなのに藤立が本部と通じていたとは・・・。 136 :代打名無し:02/10/19 10 52 ID QItfYD8f 「そうです。俺も中日ビルで大西さんと藤立さんに助けてもらったんです。なのに敵だなんて」 井端も言う。福原は2人の言葉に、渋面を更にゆがませた。 「それは・・・」 「たぶん藤立の演出なんだろう。会うやつ会うやつを殺していって頂点に立つよりも、人情を絡ませたほうが視聴者にウケるからな」 福原の言葉を遮って山田が言った。 大西と井端は顔を見合わせた。 まだ納得出来ない表情の2人に、山田は大きく息を吐いた。 「じゃあ何で今、藤立は井端を探してるんだ? 井端はさっきの放送で死亡と言われたんだぞ。なのになんで藤立が井端を探す必要がある? 藤立が井端と特別仲が良かったんならともかく」 藤立は今季移籍してきたばかりだ。井端とはポジションも違うし、年齢も少し上だ。そんな藤立と、井端は個人的に話した事は数えるほどしかなかった。 井端の顔が曇った。 「本部は井端の死亡に疑問を持っているんだ。当たり前だな。何の前触れもなくいきなり反応がなくなったんだからな」 「・・・で、本部に言われて、俺を探してる・・・?」 信じたくはないが、しかし、言われてみればそうとしか思えなかった。 「でも俺、藤立さんを助けたいです」 ずっと俯いていた大西が顔を上げた。 「俺、こんなプログラムに放り込まれて不安やったんです。そやけど、藤立さんがいてくれたんで落ち着いていられたんです。俺が肩撃たれたときに担いで逃げてくれたんは藤立さんなんです。もしそれが本当に藤立さんの演出やったとしても、俺は藤立さんに恩があります」 大西は立ち上がった。福原も次いで立ち上がる。 「監督、藤立は私達にとっても大事な後輩です。首輪を外して本部と切り離してやればヘンなマネもしないでしょう。行ってきます」 大西と福原は山田の顔を見つめた。頷いてくれるのを待った。 「・・・藤立の首輪は外すな」 「監督?」 「本部と繋がったままにして、仲間になってもらう。本部側の情報もほしいからな。だから、上手くやれ」 山田の言葉に福原と大西は頷いて出て行った。 137 :代打名無し:02/10/19 10 55 ID QItfYD8f 169 so late ・・・ 井端は1人、第一日赤の前に立った。 仲間にすることに成功した藤立との、マイクを警戒した筆談の中で、第一日赤に福留と荒木がいること、そして藤立が自分をここに連れて行く役目だったことを知った。 「罠だから行くな」と言われたのを振り切って、井端は近くの民家から車を拝借して、誰もいない名古屋の街を疾走してきた。 これは藤立もよく知らなかったらしいが、中里もこっちへ向かったようだと言われれば不安も増した。 井端は目の前の建物を見上げた。 そびえ立つビル群に圧倒される。 この中に福留、荒木、そして中里もいるのか。 井端は一度頷いて、第一日赤の敷地に踏み込んだ。 静まり返った数々の棟を井端は慎重に、しかし足早に駆け抜けた。 その井端の足が止まった。 「・・・中里!?」 血まみれの死体。胸の番号は28。 誰が殺したのか。やはり福留だろうか。だとしたら、2人は無事なのか。 井端は少し安堵した。 しかしそこから点々と落ちて続く血痕が新たな不安をかき立てた。 「孝介!? 荒木!?」 名を呼びながら井端は血痕を辿った。 それが少し先の病室に消えているのを見て、井端は再び足を止めた。 あそこに居るのは誰なのか。 福留か荒木だと思っていたが、本当は全然別の奴かもしれない。 ここに来たのが藤立からの情報通りの福留、荒木、中里の3人だけとは限らない。 井端は足音を忍ばせながら足を進めた。 138 :代打名無し:02/10/19 10 55 ID QItfYD8f 病室の扉は開いていた。 井端はそっと中を窺った。 血に染まるベッドがまず目に飛び込んできた。 人型に盛り上がった掛け布団。 しかし枕の方へ視線を移して、井端は嘔吐感に襲われた。 真っ赤なグチャグチャがそこにあった。 自分も人を殺した。 死体もいくつか見た。 でも・・・。 「孝介・・・?」 気を取り直し、それが誰だったのかを確かめるために室内に足を踏み入れて、井端はベッド脇に蹲る福留に気付いた。 福留は動かなかった。 「・・・・・」 井端は視線をもう一度ベッドに移した。 状況がそれを、荒木の変わり果てた姿だと、教えていた。 井端の身体がすぅっと冷えた。 その名を呼ぼうとして、唇が震えた。 声は出なかった。 ただ息だけが急速に乾いていく喉を通って、ひゅう、と小さく鳴った。 【残り8人】 144 :書き手A:02/10/19 22 09 ID sSsSJI4V 170 それぞれの選択 「井端さん…」 体を起こした福留の顔は涙と吐瀉物にまみれてひどい有様になっていた。 目は平生の明るい輝きを失い、視線が虚ろに宙をさ迷っている。 「孝介」 「荒木なら死にましたよ」 抑揚のない声。抜け殻、という言葉がまず思い浮かんだ。 虚脱状態の人間とはこんなものなのだろうか。 「孝介、何があったのか教えてくれ」 感情よりも先に理性が働いた。努めて冷静に、井端は声を絞り出した。 「…首輪が」 福留は淡々と答えた。 「首輪?」 「72時間ルール、ってやつにやられて」 「72時間ルール…?」 そんなルールがあっただろうか。追加されていったものも含め、 ルールは全て頭に叩き込んだつもりだったが、全く聞き覚えがない。 「知らなかったんですか?まあ…今更知っても知らなくても関係ないですけど…」 「それ、追加ルールだよな?」 「二日目の朝に、72時間以内に誰も殺せなかった奴を一人殺すって… 五日目の夕方に発表されるって言ってたんですけど、 人数が減ったから、途中で四日目の朝に変更になったんです」 言われてみれば、72時間ルールを48時間に縮める、とかそういう放送があったような気がする。 意味がわからなかったので記憶に残らなかったのだが。 145 :代打名無し:02/10/19 22 15 ID sSsSJI4V 「孝介。わかった。よくわかった。俺はその頃の記憶がないんだ。…だから知らなかったんだな。 …そうか…荒木は誰も殺さなかったのか。そうか…」 悲しみに浸る余裕はない。こみ上げる涙を必死で堪えた。 泣くのは後でいい。全てが終わってからでいいはずだ。 今は一人でも仲間を増やして戦う時なのだから。奥歯を噛み締め、井端は涙の波をやり過ごした。 「俺、こいつしか信じられなかった…井端さんもここに来たら殺そうと思ってた… でももう、体に力が入らないんです」 「なぁ…孝介、俺と一緒に来ないか」 「…一緒に?どうしてですか?」 言葉とは裏腹に、福留の声は興味を引かれた風ではなかった。 むしろ、ほとんど投げやりな調子だ。自暴自棄になりかけているのかもしれない。 その気持ちは痛いほどわかるのだが…敢えて気付かぬ振りをして井端は続ける。 「監督やスタッフと通じてる藤立さんが仲間にいるんだ。プログラムを止められるかもしれない」 「ああ。死んでも嫌です」 強い声が返ってきたのに少しだけ驚いた。一体どこにこんな気力が残っていたのだろうか。 「どうして」 「荒木は運営側に殺されたんです。俺はスタッフと関係してる人とは一緒に行けません」 「孝介」 「行って下さい」 井端はもはや勧誘する言葉を失っていた。荒木を喪った悲しみの深さが理解できるからこそ、押し黙るしかなかった。 「わかった…悪かったな」 「いえ。…俺もこいつの仇を討つつもりです。一人ででも。 井端さんの話を聞いたら、そう思えてきました」 最後に荒木の死体の無残さを目に焼き付け、井端は病室を出た。 絶対に許さない。俺はこのプログラムをつぶすためなら、手段も協力者も選びはしない。 藤立には恩義もあるし、福留ほど子供ではないつもりだ。 【残り8人】 147 :代打名無し:02/10/19 23 06 ID aU4AB12p 新作うぷの嵐キタ- !職人様乙です! 井端は福留の首輪のマイクぜんぜん気にしてないみたいだが…大丈夫なのかな? 149 :書き手A:02/10/19 23 47 ID sSsSJI4V しまった、首輪のマイクを失念していた… すみません、ちょっと書き直します。 150 :書き手A:02/10/20 00 41 ID 25f26Lvr 145の書き直し版です。 -- 「孝介。わかった。よくわかった。俺はその頃の記憶がないんだ。…だから知らなかったんだな。 …そうか…荒木は誰も殺さなかったのか。そうか…」 悲しみに浸る余裕はない。こみ上げる涙を必死で堪えた。 泣くのは後でいい。全てが終わってからでいいはずだ。 今は一人でも仲間を増やして戦う時なのだから。奥歯を噛み締め、井端は涙の波をやり過ごした。 「俺、こいつしか信じられなかった…井端さんもここに来たら殺そうと思ってた… でももう、体に力が入らないんです」 「なぁ…孝介、俺と一緒に来ないか」 「…一緒に?どうしてですか?」 言葉とは裏腹に、福留の声は興味を引かれた風ではなかった。 むしろ、ほとんど投げやりな調子だ。自暴自棄になりかけているのかもしれない。 その気持ちは痛いほどわかるのだが…敢えて気付かぬ振りをして井端は懐からメモ帳を取り出し、 以下のように書き付けて示した。 『監督やスタッフと通じてる藤立さんが仲間にいる。プログラムを止められるかもしれない』 「ああ。死んでも嫌です」 途端に強い声が返ってきたのに少しだけ驚いた。一体どこにこんな気力が残っていたのだろうか。 「どうして」 訊くと福留が手を伸べたので、黙ってメモ帳とペンを渡してやった。 『荒木は運営側に殺されたんです。俺はスタッフと関係してる人とは一緒に行けません』 「孝介」 「行って下さい」 井端はもはや勧誘する言葉を失っていた。荒木を喪った悲しみの深さが理解できるからこそ、押し黙るしかなかった。 「わかった…悪かったな」 「いえ。俺は一人でやってみますよ。 井端さんの話を聞いたら、そう思えてきました」 メモ帳とペンを受け取り、最後に荒木の死体の無残さを目に焼き付けると、井端は病室を出た。 絶対に許さない。俺はこのプログラムをつぶすためなら、手段も協力者も選びはしない。 藤立には恩義もあるし、福留ほど子供ではないつもりだ。 【残り8人】 156 :代打名無し:02/10/20 19 30 ID GwbSpf89 171 悲しすぎる別れ 福留と荒木は同じ年でプライベートでも仲が良かった。 一緒にメシを食べに行ったり、映画なんかも観に行ったりもした。2人とも情に脆い性格のせいか何度も映画館で泣 いたこともあった。どんなに周りが変な目で見ようとも関係なく2人で大泣きした。そしてお前泣きすぎとか鼻タレてる ぞとかお互いの情けなすぎる顔を見てよく笑った。 そういえばあの時ティッシュが無くなるまで泣き続けたんだっけ? すでに冷たくなったあらきを背負いながら福留は回想にふけていた。 井端たちが去った後、荒木の遺体を慎重に起こし、背負って病室を出た。荒木の遺体は首輪が爆発した首以外は 今までの傷なども多くあったが、比較的きれいな方だった。ただ首は今にもとれそうなほどえぐられている。ユニホ ームに血が付こうが左肩が痛もうがそんなのは気にすることもなく階段を上がり続けた。 一段一段上がるたび自分の肩にぶら下がっている荒木の青白い腕が揺れ、それを見るたび泣きたくなった。 屋上へのドアを開けると朝の涼しい風が顔に当たり、新鮮な空気を久しぶりに感じた。 なぜ福留が屋上へ荒木と共に来たかというと一緒に朝日(今はもう昼近くになってしまったが)を見たかったのだ。 ただそれだけだった。 しかしそれは叶うことが出来なかった。東の空は昨日の中区爆発でまだ煙に覆われていて、ここ第一日赤の屋上 から太陽は隠れて見れなかったのだ。 そんな景色を見て福留はただ立ち尽くした。どこまで俺たちは付いていないのだろうと思い、ふっと笑った。 荒木を降ろし仰向けの体勢にして寝かすと、その隣に座った。 そして遠くでもくもくとたちこめる煙を眺めながら言った。「なぁ、荒木お前は知らないと思うけど・・・俺、1度死のうと 思ったことあったんだ・・・」 随分昔のことに感じてしまうが2日目に山崎を殺した時、自分の心の醜さ、情けなさが許せなくて、苦しくて死んでし まった方がマシなんて考えたこともあった。でも・・・ 「でもな、お前が元気づけてくれただろ?その時思ったよ。お前より先には死ねないってな・・・」 もう二度と動くことがなく、応えることもないとわかっているが荒木に話しかける。 157 :代打名無し:02/10/20 19 31 ID GwbSpf89 殺人ゲームの最初からずっと一緒にいた。蔵本、山崎、井上、ギャラード・・・何度も殺されそうになり、何度も 修羅場を2人で乗り切ってきた。こんな目にあいながらも生き残ってきたのも自分たちだけだと思う。だから そう簡単には死なないと思っていた。しかし荒木はあっけなく死んだのだ。72時間ルールという急に作られた ルールの犠牲となって。 「なのにお前が先に死んでどうするんだよ・・・」 支えを失った福留は声にならない声で叫び、泣き始めた。 「俺はどうすればいいんだ・・・」 隣にいる青白い顔の荒木に訴えても答えることはもちろんなかった。 あの荒木はもうこの世にいないのだから。 【残り8人】 159 :書き手A:02/10/20 23 23 ID SPvu+fRn 「72時間ルール」のリミットを誤って記憶していたので ちょっと訂正を…二日目の朝から72時間後ですから、五日目の朝がタイムリミットでしたね。 ホントニスミマセン(;´Д`)人 130の十七行目の後ろに そして、いつだっただろうか、人数が減ってきたからタイムリミットを一日分繰り上げる… という放送も、あった気がする。 という文を挿入、十八行目は ×そんなルールは~ ○どちらにせよ、そんなルールは~ に変更します。それから131の三行目は ×そう、今は朝なのだ。四日目の。あの宣告がされてから72時間目の。 ○そう、今は朝なのだ。四日目の。繰り上げられたリミットに当たる、48時間目の。 に訂正します。 繰り上げ放送は三日目にあり、爆発や襲撃のどさくさで忘れてしまったのだと思っていただければと… しばらく反省して全体を読み返しつつまとめ作業でもやります… 163 :代打名無し:02/10/21 19 07 ID 1I8NJ9Dr 172 手の平返し 大西は再び藤立と行動を共にしていた。 しかし不用意に発した言葉を藤立の首輪のマイクに拾われることを避けるために少し離れ、また監視カメラに映ることを防ぐために物陰を選んで歩くため、大西はまるで藤立を尾行しているような格好になった。 仲間達は『一緒に固まって歩くと目立つ』という理由から、合流地点と合流場所を決めて、この大西・藤立組、山田・福原組、そして井端単独という三手に分かれて進んでいた。 大西は先を行く藤立が時折振り返って自分を確認してくれると、ちょっと手を振って合図した。 こんな藤立が実は本部と繋がっていたなんて信じられなかった。 無線機を持っていたことそして藤立の持っている情報から、本部とのつながりは目の当たりにしたが、それでも大西はまだ理解したくはなかった。 自分にとって藤立はまぎれもなく命の恩人なのだから。 日はだんだんと高くなっていく。前を行く藤立が不意に立ち止まった。 耳に手をやっている。本部からまた何か指示が来たのだろうか。 大西は少し離れた場所からそれを見守っていた。 藤立が大西を振り返った。目で合図され、大西は付近に監視カメラのようなものがないかを確認して、藤立のもとへと走った。 「え・・・」 大西は藤立の前1m位のところで足を止め、絶句した。 藤立の手の中の銃、その銃口がまっすぐ自分に向けられていた。 「・・・俺たちの仲間になってくれたんやなかったんですか?」 その光景が信じられずに大西はそう言った。 「俺が本気でお前らの仲間になるて思うてたんか?」 藤立の言葉に大西は目を見開いて藤立を見つめた。 あの民家で筆談を交わして、一緒にこのプログラムを潰そうと誓ったではないか。 本部と繋がっていたことを告白し、仲間を演出として利用しようとしたことを詫び、固く握手を交わしたではないか。 それは嘘だったというのか。 164 :代打名無し:02/10/21 19 07 ID 1I8NJ9Dr 「所詮首輪なんかあってもなくても、詰まるところは本部側の手の平の上なんや。せやったらどっちに付いたが得かっちゅうのは分かるわなぁ」 「藤立さん・・・」 あの、自分を助けてくれた藤立が、本当にそんなことを口にするとは・・・。 それでも大西は信じたかった。 「じゃあなんであの時俺を助けてくれたんですか?」 藤立はその問いには答えず、銃を構えなおした。 「そろそろお前ともサヨナラやな。ま、恨まんといてくれや」 「ふ・・・っ」 藤立の名を呼びかけた大西の声は銃声に消えた。 大西は後ろに大きく弾き飛ばされ、撃ち抜かれた胸からはおびただしい鮮血が噴出していた。 大きく見開かれた目はまだ信じたくない気持ちを表すかのようだった。 【残り7人】 166 :代打名無し:02/10/22 00 04 ID a58WwzNo 173 復讐するは我にあり 『追加禁止エリアは中村区です』 定期放送で流れたその一言が、泣き疲れた福留に踏ん切りをつかせた。 ここ第一日赤は中村区。あと二時間留まれば死ぬ。 …その冷酷な事実がなければ、いつまでもこの屋上から動けなかったかもしれない。 荒木の死体から離れられなかったかもしれない。 いっそ死んでしまいたい、とは、実を言えば今でも思っている。 けれども、荒木は自分を「死なせない」と言った。 人殺しの自分を励まし、庇ってやると言ってくれた。 だからまだ死ぬわけにはいかないのだ、きっと。 ここで死ねば荒木を裏切る事になってしまう。 「荒木。ごめんな。また一人にする」 荒木の首に自分の帽子を乗せて傷を隠してやり、福留は立ち上がった。 武器を詰め込んだ二人分のスポーツバッグは思ったより重かったが、 この程度なら移動に支障は出ないだろう。 絶対に生きて、生き抜いて、荒木の仇を討つ。 誰の助けも借りない。これは俺の戦いだ。 もしかしたら死ぬかもしれないし、或いはこのプログラム中にチャンスが掴めず、 何年もかかるかもしれない。 けれども、密室でただ一人で死んだ荒木の苦しみを思えば 怒りと悲しみがこんなにも身を突き動かすのだ。 太陽を背に、福留は歩き出した。 【残り7人】 170 :代打名無し:02/10/22 18 39 ID PRhOvRKf 174 急転直下 遠藤は廃虚となった中区で途方に暮れていた。 「大西は一体どこへ行ったんだよ……。 もうこの近くにはいないか……?」 大西とはぐれた付近をしらみ潰しに捜したけど人が立ち寄った痕跡もなかった。 怪我人の足でそんなに遠くに行けるものなのか? まさか大西はもう……? いや、そんな事はないはず。 大西はレーダーを持っているんだ。 怪我しているとはいえそう簡単には敵に遭遇することはないだろう……あの首輪をつけて ない外国人を除いては。 とにかく、このままじっとしてるだけじゃどうにもならない。 でも、いったいこれからどうすれば……。 『----ガガガガガガ』 「ひ、ひぃっ?!」 ……放送か。驚かせるなよ。 でも、さっき中村区が禁止エリアになったってのがあったばかりじゃないのか? 間隔が短いな。 『ガガガ みんな ガガ 聞いてるか!!俺だ中村武志だ!! ガガガ』 「!?」 『今中と ガガ 司令室に ガ 立てこ ガガガ もって ガガガ ガガガガ 禁止エリ ガガ アは解除し ガガガガガ 今す ガ ぐ ガガガ ドーム ガ に ガガガ 集ま ガガガガガガガガガ-------』 「い、今のって…!?」 【残り7人】 171 :代打名無し:02/10/22 18 40 ID PRhOvRKf 175 決戦の地へ ……確かに中村さんの声だった。 ノイズが混じって聞きにくかったけど確かにそうだ。 禁止エリアがまた解除されたのか…? そんな事って……。 信じれるのか?罠かもしれない。 でも、この状況じゃ信じるしか……。 もし本当ならこれが最後のチャンスかもしれない。 この放送を聞いた生存者はみんなドームに向かうはず。 大西の無事もそこで確認できるはずだ。 とにかく現状を打破する為には向かってみるしかない。 ……だけど、井上さんやあの外国人、藤立さんもこの放送を聞いてドームに向かってたら……。 今度遭遇したら、もう逃げ出せるとは限らないんだぞ……。 ……いや、迷ってる暇はないんだ。 大西と合流するため、そして自分が生き残る為に。 ……散々逃げ回ってきたけど、俺だってこんな所で死にたく無い。 この放送に賭けてみるしかないか……! 「……信じますよ、中村さん。」 遠藤はまだ全弾が残っているベレッタをギュッと握りしめた。 そしてナゴヤドームへと足取りを向けた。 【残り7人】 173 :代打名無し:02/10/22 19 22 ID IExW5Rtf 176 一息ついて 少し落ち着きを取り戻して、福留は今更ながら妙な事に気付いた。 ―――さっき自分が会ったのは、井端さんだった。 しかし井端さんは死んだんじゃなかったのか?――― 朝の放送で確かに井端の名前は死亡者として読み上げられた。 そのとき咄嗟に荒木の顔を見たのを覚えている。 荒木はそのとき目を閉じていた。眠っているようだったが、少しだけ瞼がピクついたのを覚えている。 福留を心配させまいと堪えたのだろう。その荒木の心持ち青ざめた顔をよく覚えている。 でもさっき井端は確かに病室に来た。 ―――幽霊? まさか。 言葉だって交わした・・・言葉?――― 福留はまた奇妙なことに気付いた。 井端とは筆談だった。なぜ筆談だったのか。 井端が言葉を書いてよこしたから自分も書いた。 しかしそれを不思議なことと気付くような状態ではなかった。 でもそこに居たのは井端だった。 ごく普通の、いつもと変わらぬ井端。 いつも球場で会うのと変わらない。 何かが引っかかる。福留は思い出せないものを思い出そうと足掻くように、無意識に首の後ろに手をやった。 「あ・・・」 そう井端は寸分変わらない姿だった。 自分の手に触れているこの忌まわしい首輪。これが井端の首には無かった。 174 :代打名無し:02/10/22 19 22 ID IExW5Rtf ―――首輪・・・これさえなければ荒木は・・・――― 福留は激しく首を振った。 井端のことにはきっと何かカラクリがあるのだろう。 しかし今はそんなことを考えている場合ではない。 再び歩き出した福留の耳にも、ノイズ混じりの放送が聞こえてきた。 「中村さん!?」 福留は空を見上げた。 『・・・今す・・ぐ・・・ドーム・・に・・・』 中村の呼びかけは本当だろうか? 福留はギュッとバッグの持ち手を握り締めた。 【残り7人】 176 :代打名無し:02/10/22 23 07 ID Oqe6oqHB 177 警鐘 次の合流地点の少し手前で井端は前を行く藤立の姿を見つけた。 大西の姿は見えないが自分同様に監視カメラを避けて歩いているのだろうから見えなくても当然だ。 しかししばらく追いかけるように歩くうち、井端はなんだか胸騒ぎがした。 いくら大西が隠れて歩いているからといってこんなにも姿が見えないものだろうか。 大西の存在を知らないならともかく、大西を探すように見ている自分の視界にさえ入らないものだろうか。 少し大きめな道を渡るときでさえ姿が見えない。そんなことがあるだろうか。 透明人間でもあるまいに、特殊な訓練を受けたはずもない人間がこんなに完璧に姿を消せるものだろうか。 それに藤立は一度も振り返らない。 まるで元から一人で行動しているかのように少し速いペースでまっすぐ前を見て歩いている。 本部から悟られないためだとしてもパートナーがちゃんと付いてきているかくらい確認するのではないか。 嫌な予感がして井端は足を止めた。 そして井端は合流地点を目前にして近くのビルの外階段の陰に身を隠した。 確かに藤立には大西とともに中日ビルで助けてもらった。しかし井端は大西ほどに藤立を信用しているわけではなかった。 なぜなら藤立は本部と繋がっていた、いわば裏切り者だからだ。 1度裏切った者は、頭を下げて改心を誓おうとも、悔恨の涙を流そうとも、何度でも裏切るものだと思っていた。 藤立は仲間になったとはいえ、まだ無線と首輪で本部と繋がっているのだ。いつでもまた本部側に寝返ることができる。 井端がそっと覗き見ると、藤立は合流地点に決めた新栄・雲竜FLEXビルのローソン前に立っていた。 やはり大西の姿は見えない。 井端は再び身体を沈めた。そして自分の武器を確認する。 ナイフはこびりついた血を綺麗に拭ってある。 銃もほとんど威嚇に向けただけだったため残り弾はたっぷりある。 もうすぐ山田・福原組が到着するだろう。 その時に藤立はどうするだろう。 出て行くのはそれを見てからでいい。 【残り7人】 ********************************* 178 鳴動 「古田も相当焦ってますね。度重なるルール変更と禁止地区追加、本部直衛の はずの外人二人のカメラの前での投入。この始末、どうつけるつもりか・・・いず れこのツケは大きなものになるでしょう。・・・ああ、その件でしたら独断で福原に キーを渡しておきました。既に山田や一部の選手と合流済です。・・・・はい?久 居と豊川 にも動きが?・・・・わかりました。ではまた連絡します。」 男は電話を切ると静かにその場を離れた。彼の表情は、山田の前で見せたそれ とは正反対のひどく酷薄な物だった。 --と、通路の向こうがなにやら騒がしい。殺気立った怒号が飛び交っているよ うだ。司令室のがある一角だ--男は本部職員の顔に戻り、喧騒の中に 駆けて 行く。無論、間抜けな表情を貼り付けるのを忘れない。 185 :代打名無し:02/10/23 23 58 ID EZAsxF5D 179 裏切り者には死を 『先に行ってください。俺は井端を待ってから行きます』 なかなか現れない井端に、藤立はそうメモに書き付けて山田たちに先を促した。 『分かった。お前の首輪を外していく。そろそろ禁止エリアに入る。危険だから』 そう書かれて藤立はハッとして首輪に手をやった。まだ外されてはまずい。 『ギリギリまで着けてます。近くなった時に向こうの様子が分かったほうがいいでしょう』 藤立がそう書いて見せると、山田と福原は顔を見合わせた。 そんな2人に悟られないように努めて冷静を装った。額に汗が浮かんだ。 まだ本部とのつながりを知られてはまずい。疑われないようにドームに誘導しなくては。 それが現在の本部からの指令だった。 無事にドームまで着けばあとは向こうの奴らが始末に出てくる。 そうしたら俺は応戦するふりをして、そっと逃してもらえばいい。 それにしても本部にたてついて無事で済むはずがないとなぜ気付かないのか。 こうして行動も全て筒抜けだってのに。 大西は思うところがあって先に行ったと、そんな話も俺のこともあっさり信じて、それは指揮官としてもどうかと思うぜ。 そんなことを考えていた藤立の前で山田が再びメモにペンを走らせた。 『じゃあ東区に入る前にもう一度合流しよう。古出来の交差点だ』 藤立は頷いてみせた。 心の中ではもちろん舌を出していたが・・・。 186 :代打名無し:02/10/23 23 59 ID EZAsxF5D 藤立は山田たちが行ってしまうのを見送って、クルリと背を向けた。 その表情は焦りと怒りを表していた。 一体井端は何をやっているのか。 折角井端を捕捉したというのにまた分からなくなった、などと本部には報告できない。 自分が見失ったことで井端が本部に奇襲でも仕掛けたら、自分の身が危ない。 とにかく一刻も早く井端を見つけねば。 藤立は今来た道を戻りはじめた。 「井端ー、近くに居るのかー」 藤立がそう呼ぶのを聞いて、井端は藤立の再度の裏切りを確信した。 藤立が井端を仲間だと思っているなら、井端の名を呼ばないだろう。 首輪のマイクを通して本部がそれを知るのだから。 自分の潜むビルの横を藤立が通って行くのを見て、井端はその背後からそっと近寄った。 「うぉっ?!」 後ろから足を払うと藤立は声をあげて地面に尻餅をついた。 そこを井端はナイフを握った左手を藤立の首に巻きつけ、右手に持った銃を藤立の背中に突きつけた。 「藤立さん、大西さんをどうしたんです?」 声を出してもどうせ本部は井端の存在を知っているのだ。井端は藤立の耳元でそう尋ねた。 藤立の額に脂汗がにじんだ。 「・・・大西は先に行った」 「ウソですよね? 俺はここに着く少し前から藤立さんの後ろを歩いていましたよ。大西さんはいなかった」 井端は腕に力を込めた。藤立が苦しそうなうめき声を上げた。 「・・・殺したんですか?」 「うぅ・・・」 背中に当てた銃で更に背中を押してやると藤立がビクリと身体を震わせた。 そして藤立は大きく腕を開き身体を揺さぶり、井端の腕を振り解いた。 小柄な井端の身体は藤立のその動作で後ろに倒れかけ、背後に手をついた。 187 :代打名無し:02/10/23 23 59 ID EZAsxF5D 「形勢逆転やなぁ」 起き上がって井端を見下ろし、自分の銃に手を掛けて笑った藤立の耳に、ピ・・・と悪魔の音が聞こえた。 藤立の顔が一瞬にして青ざめた。 「お前はもう不要やから」 イヤホンからも悪魔の声が聞こえた。 「待ってくれ。待って・・・今から井端を始末する。だから・・・っ」 一度作動した装置は止まるはずもない。 首輪から響く電子音は次第にその音の間隔を短くしていく。 藤立の顔がこれ以上はないというほどに引きつった。 無様に足掻く藤立を井端はジッと見上げていた。 「助け・・・っ」 軽い爆発音がした。 井端の身体にも血飛沫が降りかかった。 ああ、こんな風に荒木も殺されたのか。 あの音が自分の首元から聞こえてきたとき、どんなに荒木は怖かっただろう。 井端は唇を噛みしめた。幸い今の自分に首輪はない。こんな風に殺されることはない。 顔に飛んだ血を拭いながら井端が立ち上がった時だった。 ノイズの入った放送が聞こえてきた。 「中村さん?」 井端はその放送に驚きながらも、既に足は走り出していた。 まずは山田たちに追いつくこと。 そして、ドームへ・・・。 【残り6人】 193 :代打名無し:02/10/24 04 45 ID otlBVEgV 180 私闘 福留は瞼を伏せ、中村の声を聞き流した。 スポーツバッグのストラップを握った手に冷たい汗が浮かぶ。 疑ったわけではない。中村の声は真摯そのものだった。 平気で嘘をつけるような人ではないことも良く知っている。 それでも今はドームに行く気になれない。 脳裏に浮かぶのは、今朝の放送でも呼ばれなかった井上の名前。 まだ生きているのだ、井上も。 あの小学校で自分ばかりでなく荒木の命をも狙った男…生かしておくわけにはいかない。 ドームに向かうのはそれからでいい。 仮にプログラムを止める事に成功したとて、井上もまた生き残るのは嫌だ。 もしそうなってしまったら、自分は罪を被るのも厭わず井上を殺すだろう。 しかしこのプログラム中に殺せば、少なくとも法律上は罪にはならない… 「ヘッ」 自嘲の笑みが漏れる。 我ながらなんと自己中心的な考えだろうか。 もう落ちるところまで落ちてしまったのかもしれない。 それでも。 いや、それだからこそ、だろうか。 こんな自分を助け続けてくれた荒木の存在が、ますます得がたいものであったように思えるのだ。 ドームへは、井端たちが行くだろう。ひとまずはそれでいいではないか。 一方で、戦力が多ければ多いほどいいのだということなど、わかってはいたけれども… 自分の中でだけでも、それでいいという事にしてしまおう。 福留はバッグの中からサブマシンガンを取り出した。残弾はある。 井上はあの性格からして、疑っている可能性の方が高い。 安易に動き出そうともしないだろう。 何としてでも探し出してこの手で仕留めたい。 あの強力な武装に対抗できるかどうかはわからないが、やれるだけやるしかない。 それしか荒木に報いる方法はないと思った。 【残り6人】 268 :代打名無し:02/11/02 22 55 ID GTWp0xaQ 181 蛇と男たち 正津は胸を押さえ、声もなく笑った。 口の中に生ぬるく鉄の味が広がっている。頬が冷たいのは床が冷えているからか。 視界は痛みで霞んでいるのに、白い床に真っ赤な血が広がっていく光景だけやけにはっきりと見えた。 これは自分の血だろうか。それともあの「蛇」の? ああ、血とはこうも容易く流れ出るものなのか。 すべての人間、いや哺乳類はこの液体がなければ生きていけないというのに、こう簡単に流出するのでは殺生ではないか。 それを思うと何故か無性におかしく、正津はまた唇だけで笑った。唇は血糊でぬるりと滑った。 俺のささやかな運もここまでか。 胸に銃弾を打ち込まれては助かりようもあるまい。 突然現れたあの男の顔面目掛け、ラジオを投げ付けたところまでは良かった。 しかし、それだけでは男の体勢を崩すに十分ではなかったようだ。 ベッドに置いたままになっていたボウガンを取ろうと目を逸らした瞬間、正確な射撃とは言えないながらも 確かに正津は胸を撃たれた。 くずおれる瞬間、落合まで道連れにする事を悔いたが… 「正津」 聞きなれた声が降ってくる。大した怪我はないようで、それだけでも自分が撃たれた甲斐があるというものだ。 269 :代打名無し:02/11/02 22 55 ID GTWp0xaQ 「…落合さん、俺は駄目です…」 声を出すのも苦しい。何かが喉の奥からこみ上げてくる。 「馬鹿。しっかりしろ。死ぬな」 「…俺が死にそうなのは落合さんが一番わかるでしょう。 盾くらいにはなれたみたいで…良かった」 ベッドの上から落合が男を射たのは、正津が床に膝をついた一瞬後だったらしい。 目の前に、血の気を失った外国人の顔がある。その喉からは生えたように銀の矢が突き刺さっていた。 「俺がもう少し早く目を覚ましていれば、こんなことには」 「いいんです。落合さんの方が…生き延びるのに…相応しかっただけです、きっと」 「…すまない」 落合が床に座り込んだ気配がしたが、もう目をあけていられず、正津は瞼を降ろした。 「ああ、それから…家族のこと、頼みます…妻と娘を…」 ただ一つの心残りは妻とまだ幼い娘のことだが、 日頃から付き合いの深い落合に任せれば悪いようにはなるまい。 「わかった」 「お願い、します…それだけが…」 そこまで振り絞るように喋った時、何かが正津の中で切れた。 急激に胸の痛みが引いていく。不快感も、血の匂いもすべて消えた。 それはとても安らかな気分になるものだったが、同時に正津の体内で全ての器官が活動を停止したという事でもあった。 【残り5人】 353 :代打名無し:02/11/22 00 48 ID 30LrzP7S 182 命をかけて 「ちぃ…なんでこんな事にッ」 司令室から締め出され、古田は全身から冷たい汗が噴き出すのを感じていた。 ほんの一瞬の隙を突いて、中村と今中は司令室を占拠したのだ。 あれほど警戒していたのに…まさか二人だけで突入する覚悟はないだろうと、たかをくくっていたのがいけなかったか。 ここで武装した参加選手たちがドームに乗り込んできたら、すべては水の泡だ。 それに、たとえ暴動を鎮圧できたとしても… 思い出されるのは三月の始め、ある都内のビルに呼び出されたときのやり取りだ。 突然の呼び出しに面食らっていた古田は、さらに恐ろしいプロジェクトの全貌を聞かされ、すぐさま席を立とうとした。 殺人プロジェクトの運営に携わり、さらに進行役まで務めろと言われ、誰が首を縦に振るだろうか。 『どうして僕が…こんなとんでもないプログラムの進行役をやらなきゃいかんのですか!』 『古田君。君の力が必要なんだ。君は頭もいいし、話術にも長けている。知名度もある』 『そんなん関係ないでしょう!だいいち中日のプログラムやないですか、これは。僕はヤクルトの人間で』 『そうだ、飽くまでも「これは」、な』 『…どういう意味ですか』 354 :書き手A:02/11/22 00 48 ID 30LrzP7S 『もし、君がスタッフとして参加してくれず、そしてプログラムが失敗に終わったら… 我々は次の球団を探さなければならない。止むを得ないことだ。 …そうだな、在京球団がいい。それも優勝したばかりなら、なお良いな』 『そんな…馬鹿な』 『どうかね?運営スタッフとして参加してくれるかな? 嫌なら無理にとは言わんよ』 血がにじむほど唇を噛んだ。嫌だなどと言えるはずがなかった。 どうして、ヤクルトを、大切な同僚たちを惨劇に巻き込むような真似ができるだろう。 そうだ。 だから自分は、このプログラムを「成功」させなければならないのだ。絶対に。 「人を馬鹿にすんのもたいがいにせぇよ…」 中村と今中は命を賭してでも中日の選手を守りたいしかもしれないが、 自分とてそれは同じだ。手元には拳銃。周りには鈍いがスタッフたちがいる。 「…どっちの覚悟が強いか勝負したるわ」 負ける気など、勿論ない。 このドアを破ってしまえば勝算はある。 【残り5人】 378 :代打名無し:02/11/29 00 33 ID m6aqAo45 183 ここまでおいで ビルの陰に身を潜ませて、井上は周りの気配に全神経を集中させた。 重苦しい静寂。風の音さえ聞こえなかった。 それにしてもこうした体勢をとるのは何度目だろうか。 井上は朝から一人の謎の外国人にその身を狙われていた。 ―――いや、相手の身上は分かっていた。 キューバの英雄、オマール・リナレス。 井上もその名と顔くらいは知っていた。 謎なのは、そのキューバの英雄様がなぜ中日のユニフォームを身に着けてこのプログラムに参加しているのか、だ。 リナレスは肩に大きなバッグを軽々と担ぎ、手にはその体格でなければ扱えまいと思われるようなゴツいマシンガンが握られていた。 それが自分に向けられたとき、井上は咄嗟に手榴弾を投げつけて逃走を開始した。 背後から手榴弾の弾ける音と、悪魔のような哄笑が聞こえた。 その後、井上がどんなに走り、身を潜め、体勢を整えては反撃出来るスキをうかがっても、リナレスは瞬く間に追いつくとニヤリと笑い、井上の潜む物陰に銃口をピタリと向けてきた。 もっともリナレスのような者が参加しているのはどうせ本部の差し金だろう。 ならば本部を介してリナレスに井上の場所は筒抜けに違いない。 そうして井上を追い詰めながらも、銃弾を撃ち込まずにわざと逃しているようなのも、本部からの指示なのだろうか。 井上は手の平の上で転がされているのを感じながらも、向かう方角は間違わなかった。 もうすぐ自分のアジトに着く。 あの自衛隊駐屯地から持ち出した残りの武器が眠る場所。 あそこまでおびき寄せれば形勢は逆転する。 幸いリナレスはこの追いかけっこを楽しんでいるようだ。 井上がそこに着くまではこのまま追いかけっこをしてくれそうだ。 井上はふと顔を上げた。 遅い。遅すぎる。 リナレスの気配が一向に近付いてこない。 井上は慎重に身体を起こした。それでもリナレスの姿は見えなかった。 いつでも体を翻せるように足を少しずつ残すようにしながら、井上はビルの陰から出た。 不気味なほどの静寂。強い日差しに陽炎がユラユラと立ち昇っていた。 そこで井上は先ほどの変な放送を思い出した。 プログラム生存者へのドームへの集合を呼びかける、ノイズだらけのメッセージ。 379 :代打名無し:02/11/29 00 35 ID m6aqAo45 確かに中村武志の声であった。 しかし井上はその呼びかけに応じる気は全く無かった。 本部側の罠。そう井上は解釈した。 なんで中村がいるのか分からないが、その分からなさが余計に怪しく思えた。 もっともこれに限らず、井上は誰も信用する気はなかった。 プログラムが始まった時からそう決めていたし、そうして井上は生き残ってきた。 その処世は間違いではなかったと自負していた。 それにしてもリナレスの気配が全く無いのが気にかかる。 さっきまでは井上が息を整える頃には必ずリナレスは追いついてきていたはずなのに。 井上の額から汗が一滴伝い落ちた。 ピクッと目元を痙攣させ、井上は再びビルの陰に体を沈ませた。 物陰に飛び込む直前、動くものは陽炎による揺らぎだけだった視界の端で動くものを見た。 あれは、福留孝介。 間違えるはずはない。 そして手にしていたものは、リナレスの持っていた・・・ 途端に激しい音が周囲に響いた。 福留にはさすがにあのマシンガンは扱いきれないのか、狙いが滅茶苦茶なのが幸いだ。 しかし、だからと言ってすぐに反撃にも移れない。 こんな風に撃ちこんでくる福留は以前会った福留とは違うようだ。 井上は大きく息を吸い込んだ。 やはりアジトまでおびき寄せよう。 井上はニヤリと笑うと、ビルの陰を飛び出していった。 【残り5人】 393 :161:02/12/03 22 20 ID Ke5YFBVN 184 選ばれし者達 「第一班、第二班整列しました!」 男達の青ざめた顔を見渡しながら、古田は静かに頷いた。荒事とは程遠い世界で生き て来た者達。既に膝が笑っている者もいる。 急遽現場スタッフの中から選抜した、司令室制圧チームである。第一般は突入、第二 班は--支援と名付けられてはいるが、ありていに言えば督戦隊である。第一班のす ぐ後ろに付き、命惜しさに突入をためらう者がいれば直ちに射殺するのが任務だ。 第一班のメンバーに取っては、無茶は承知で突入するか、後ろから撃たれるかの選択 となる。素人集団に自殺同然の突入作戦をやらせる以上、必要な戦術ではある。彼等 は一気呵成に突入し、今中中村両名を排除せねばならない。その過程でかなりの犠牲 が出るだろう----いや、全滅するかも知れないな、と古田は思った。それならそれ で良い。第一班が全滅したとしても、それで弾薬を使い果たさせてしまえば第二班によっ て楽々と排除できる。どのみちたいした弾数は持っていまい。 所詮は使い捨てのスタッフだ---野球選手達が殺し合いを強要されている今この地 で、スタッフだけは安全に放送業務だけやっていれば良いと思っていたようだが。そん な事は知ったこっちゃない、彼等にも同じように命を的に仕事をしてもらおう。 第二班の指揮を執らせるべく、リナレスを呼び戻している。彼が到着次第、突入決行だ。 そこまで考えた時、廊下の向こうから若いADがこちらにやって来た。 「古田さん・・・・突入は中止です。」 394 :161:02/12/04 00 52 ID kmUukryB 185 修正、そして最後の希望 「困りますなぁ・・・手段と目的を取り違えてもらっては。」 一塁側ベンチ裏に仮設された放送管制室に怒鳴り込んできた古田を迎えたの は、プロデューサーの冷然とした言葉だった。 「ふっふざけるな!このままじゃプログラムの進行がっ?!」そんな古田の怒 声にも動じない。 「ああ・・その件ですがね、脚本が修正されました。」悠然と立ち上がった男は、 古田の肩に手を掛けた。耳元に顔を寄せ、囁くように続ける。 「古田さん、あなたは目立ちすぎたのですよ。本来このプログラムは、選手達 が主役です。彼等の殺し合う姿、葛藤するドラマ、血みどろの戦い。それらを 『売り』に高視聴率を取り、プロ野球界への関心を得る、それが目的だ。」 「だがあなたは、進行を焦り過ぎた。ルールの変更までは良いとしても、演出 用に本部の手先として確保してあった選手に露骨な優遇措置を与え、本部の 関与を視聴者に対し明白にしてしまった。選手でないはずの外国人を殺戮に 投入してしまった。本来裏方であるはずの本部が、悪役としてステージに露出 してしまったのですよ。」 「しっ、仕方ないやろ。視聴率取れ取れって尻叩いて来たのはあんた達や。」 もはや搾り出すような古田の声に、さらに男の声がかぶさる。 「だからそのやり方がまずかったのですよ。これを見て下さい。」 取り出したのはFAX用紙。グラフと数字が並んでいる。 「最新の世論調査です。非難轟々と言う表現すら生温い。視聴率は取れても- --これではもうひとつの目的は果たせそうに無い。いや、それどころか処理 を誤ればプロ野球自体の存続すら危うい。本末転倒です。」 395 :161:02/12/04 00 56 ID kmUukryB 言葉を切り、幹部用ソファにどっかと腰を下ろす。古田にも着席を促し、煙草に 火を付ける。 「同じ穴の狢だったはずの政府も、世論に突き上げられて裏切ろうとする動きが あります。久居と豊川の駐屯地に退避している自衛隊を使ってここを鎮圧、世論 に阿ると同時に我々を殺戮して自分達が関与していた証拠を隠滅。今はまだ押 さえ込んでありますがこの状況が続くといつ実行されるか・・・。」 古田は喉が異常に渇いている事に気が付いた。何か飲み物を持ってこさせよう としたが気が付くとそばには男しか居ない。いつの間にか人払いされているよう だ。耳には男の声が流れ込んで来る。 「こうなったら仕方が無い。あなた方にも正式にステージに上がってもらいます。 悪役としてね。司令室はあのまま占拠させます。ここに突入して来る選手達、そ の戦いのドラマをクローズアップし、最後は涙の勝利で飾らせる。再び視聴者の 注目を選手達に集め、本部の殲滅で溜飲を下げさせるしかもう手は無いんです よ。」 396 :161:02/12/04 00 57 ID kmUukryB 「簡単に言いよるな。そうなればあんたも、ここにいるスタッフも死ぬんやで。」 古田の精一杯の反撃である。だが男は、薄笑いを浮かべた。 「ご心配無く。いよいよとなったら私はヘリで退避します。現場責任者はあくまで あなたですからなぁ。使い捨てのスタッフなど惜しくもありません。ああもちろん- --スタッフも本部の火器もこれまで通り自由に使ってくれて構いませんよ。せ いぜい悪役としてドラマを盛り上げて貰わねばなりませんからな。」 そこまで言うと男は立ち上がり、部屋を出て行こうとした。 その背後で銃を構える音。古田が男を撃とうとしている。だが彼は落ち着き払い、 背後に問いかけた。 「いいんですか?お綺麗な奥様がどうなっても?」 「まさか!妻に何をしたっ?!」 「まだ何も・・ですが監視に付いている手の者には変態性欲者もいましてねぇ。ゴー サインが出たら・・・。」 がっくりと銃を取り落とした古田。そのままへたり込む。男はそのまま歩を進めた。 自業自得、か。残された古田は1人ごちた。選手達の命を駒として使う以上、い ずれ自分にも降り掛かって来るべき事だったのだ。無力感が体を苛む。 男がドアを開けた所で立ち止まり、こちらを振り返って言った。 「ああそうそう、勝ってくれてもかまいませんよ。その場合は選手達の『滅びの美学』 ってやつをクローズアップしますから。日本人はそう言うのも好きですからね。その 場合はその後に自衛隊による本部鎮圧がかかりますが---あなたとご家族は行 方不明と言う事にして海外に逃がして差し上げましょう。せめてものご褒美としてね。」 どこまでもこき使うつもりか。そんな約束などアテになるはずも無い。だが古田には そこに一縷の希望を見出す事の他に、選択肢は無かった。 【残り5人】 469 :代打名無し:02/12/27 10 56 ID jG7jjVJw 186 遠かった場所 正面入り口から乗り込む山田・福原と分かれ、井端はドームを囲む区画を半周した。 そしていつも車で通ってくる道まで出て、見慣れた姿のドームを見上げた。 こうして再びドームに来ることがあるなんて思わなかった。 このプログラムが始まった時に、もう二度とここには戻れないと思った。 恵まれた体があるわけでなく、支給された武器もたわいない玩具。 このプログラムを生き抜けるとは思えなかった。 もちろんむざむざ殺られるつもりはなかったが、そういう運命も時間の問題だと思っていた。 それが今もたいした怪我もなくここに生きている。 いつもの入り口はシャッターが下ろされていた。 しかしその隣の通用口は空いているようだ。 少し離れたところから様子を窺うと、警備員もいないようだ。 それでも慎重に、慎重に近付いていく。 「?!」 通用口の脇に男が一人倒れていた。警備員だ。 誰かが先に来ている。 さっきのあの中村の放送を聞いてやはり誰かがドームに戻ってきている。 誰だろうか。 あと残っているのは・・・。 井端はそれが誰かを考えながらその通用口からドーム内に入っていった。 470 :代打名無し:02/12/27 10 57 ID jG7jjVJw 観客用の駐車場は薄暗かった。 非常灯の明かりを頼りに横断しかけたとき、井端はふと遠くがぼんやりと明るいのを見た。 井端はまっすぐに進むのをやめて、円周状の駐車場を右の方へと進んだ。 センターの扉が開かれている。 そこから煌々と光が漏れていた。 そしてあざやかな2色の人工芝。 井端は思わず駆け寄った。扉の前で立ち尽くす。 いつも走り回っていたグラウンド。こんなに眩しいと感じたことは初めてだった。 【残り5人】 471 :代打名無し:02/12/27 10 59 ID jG7jjVJw 187 走馬灯、そして・・・ 井端は目を閉じた。 たった数日のことが長かったと思う。 「死にたくないから」と思いつめた顔で自分に銃を向けた鈴木。 そんな同期入団で仲の良かった鈴木をやはり生きるために殺した、その首から溢れた血の鮮やかさを思い出す。 裏切りを繰り返し、本部に見限られて頭部を吹き飛ばされた藤立の、血飛沫の生温かさを思い出す。 理不尽なルールによって無抵抗のまま殺された荒木の変わり果てた姿。まるで弾けた石榴のようだった。 背番号でしか判別できなかった中里。 その中里に殺された朝倉。 関川が高々と掲げた立浪の生首。 自分が出会ってきたチームメイトの死姿の1つ1つが鮮やかな映像として脳裏に焼きついている。 そして久慈。 今こうして自分がここにいられるのは久慈のおかげだ。 「生き延びろ」という言葉。そしてナイフ。それが井端を支えてくれた。 いや、このプログラムの中だけではない。 ドラフトを経てプロの選手として中日に入団してからずっと久慈からはプロ野球選手として、ショートを守る者としての全てを教わってきた。 そしてレギュラーとしてショートを守るようになってからも、久慈の存在はまだまだ大きなものだった。 その久慈に恩返しも出来ず、礼すら言えないまま、久慈は目の前で立浪の凶刃に倒れてしまった。 久慈の与えてくれたナイフを井端は今一度握り締めた。 そして目の前のグラウンドを見つめた。 472 :代打名無し:02/12/27 11 00 ID jG7jjVJw 生き延びる。 久慈の教えてくれたことを無駄にしないように、久慈の言葉を胸に生き延びる。 そして再びこのグラウンドに立つ。立って野球をやる。 そのためには早く本部を・・・。 そう改めて決意した時だった。 井端は背中に物の当てられる感触に体を強張らせた。 この感触には覚えがある。鈴木に会った時と同じだ。 「お話があります。抵抗せずに従ってください」 聞き慣れない声が背後からそう告げた。 【残り5人】 478 :書き手A:02/12/29 02 27 ID wKjm2XWC 188 赤い病室 ドアを開けた次の瞬間、前田は心臓が止まるのではないだろうかと思った。 「病院に一人くらいおるんじゃないかと思ったが、予想通りだったな」 星野の冷静な声が遠いところから聞こえてくる。 視界が揺れてどうしようもなく気が遠くなった。 血の赤い色だけが、定まらない意識の中に揺らめいている。 「あ、あ…ああ、…死ん、で」 死体があった。目の前に二つ。 一つは、中日のユニフォームを着てはいるが見覚えのない外人。 もう一つの死体は… 「…正津」 苦々しい声が、今はただ、耳のそばで反響するのみで、脳に届かない。 これは何だ?何なんだ? 「気持ちわる…い」 臓腑の底から何かがこみ上げてくる。 前田はたまらず床に両膝をついた。まだ固まっていない血の中に、膝が沈んだ。 最後の理性で吐き気に抗い、歯を食いしばると冷たい汗が脇を流れた。 畜生。苦しい… 479 :書き手A:02/12/29 02 33 ID wKjm2XWC 不意に背中に暖かなものが触れた。それが手だと理解するのに少しの時間を要した。 「吐いたらいい。全部吐き出すんや」 「す、すみませ、ん、監督っ…」 「監督、か」 小さく苦笑が聞こえた気がしたが、前田の意識は嘔吐することに流され、 そのかすかな音をしっかりと聞き取ることは出来なかった。 十八にもなって、人前でこんな醜態を晒す歯目になるなんて。 情けなくて、けれどもただ気分が悪くて、前田は泣きそうだった。 この上、泣いたりした日にはあまりに格好が悪いので涙は堪えたが。 星野は黙って背中をさすっていてくれた。 どうしてこんなに強くなれるんだろう。意識の輪郭がぼやけていくのと格闘しながら、前田は思った。 正津の死体を見て、強く衝撃を受けたのは前田ではなく星野であったはずなのだから。 前田は正津とはほとんど話をしたこともなかった。 チームメイトが死んでいたからショックなのではなく、間近に死体を見たのがショックだったのだ。自分は。 けれどこの人は、こんなにも… 「星野…監督」 どこからか、聞き覚えのある声がした。 しかし、それが誰の声であるのか判別できるほどには、前田の意識は覚醒していなかった。 【残り5人】 517 :暇人:03/01/13 16 47 ID ABwDZ+Pu ageつつ・・・ パワプロで1と2の生き残りを集めてみた 4荒木(1で生き残る) 6井端(両方で生き残る) 8福留(2で生き残ってる) 3クルーズ(無関係) 2谷繁(1では無関係だったから) 5前田新(無関係) 9桜井(無関係) 7土谷(無関係) 代打&控え 藤立(1の後入団した) 前田A(両方で生き残る) 愛甲(現役復帰) 都築(無関係) 森岡(無関係) 田上(無関係) 酒井(無関係) 川上(1で生き残る) 遠藤(2で生き残ってる) 木村・栗山(両方とも無関係) 福沢・矢口(相手にもされなかった) 今中・佐野(現役復帰) 紀藤(1では無関係) よぇぇ 524 :書き手A:03/01/16 04 06 ID s203c5lK 189 大切なものは 血で染まった病室に落合が立っていた。 前田はだるい体を何とか起こして、その事実を脳に送り込んだ。 ほんの少しの間だが気を失っていたらしい。 「前田、目が覚めたか」 「ええ…何とか」 落合の隣には星野。何やら考え込んでいるらしく、腕組みをしたその表情は険しい。 そこまで見回してから自分がベッドに寝かされていたことにようやく気付き、前田は深い自責の念に駆られた。 迷惑をかけてばかりの、情けない己が心底憎たらしい。 「俺は、外で荷物をまとめて…手を洗ってから正津とそこの外人の供養をしようと戻ってきたんだが… 監督とお前がいきなりいたんで、驚いたよ」 「正津さんとは、ずっと一緒に?」 「うん。他にも、小山や森野と一緒だったんだけどな。…今はもう、俺だけだよ」 落合の目に苦しげな光を見、それでもしっかりと両の足で立っていることに前田は感嘆を覚えた。 みんな、どうしてこんなに強いのだろう。 おとうさんも強い人だった。そうだ、おとうさんは無事なんだろうか? 「あの」 「ん?」 「おと…いえ、紀藤さんを見ませんでしたか?」 「紀藤さん?見かけなかったな…でも」 「でも、何ですか?」 そこから先を落合は言わなかった。ただ思い沈黙だけが落ちる。 前田は、その理由を察せないほど子どもではなかった。 525 :書き手A:03/01/16 04 07 ID s203c5lK 「いや、何でもない。思い違いかも」 「…そうですか」 では、きっと確証がないのだ。まだ決まったわけではない。 自分だけは最後までおとうさんの無事を信じ、祈っていなければ。 手首に結ばれたハンカチを見ると気力がわいてくる。 息子と呼んでもらって嬉しかった。必ず期待に応えようと思った。 すべてが終わったら、ナゴヤドームでバッテリーを組むのだ。 「落合。前田」 星野が不意に声をあげた。 「俺はまだ名古屋を回るつもりだ。生き残りを集めたい」 「そんな、監督!もし、攻撃的なやつがいたら」 落合が叫ぶように言った。星野に意見するくらいなのだから、よほど実感を込めての叫びなのだろう。 「そいつらも含めて俺の大切な選手だ。いや、もう俺は阪神の監督だったな。 ともかく信じたい。助けられるものなら助けたい。生き残り全員をな」 前田に異論はなかった。 【残り5人】 539 :代打名無し:03/01/21 20 59 ID s4tvkPnU 190 政府介入 その瞬間、井上は背後から迫ってくる福留のことを忘れた。 目の前の光景はあまりにも異様な光景であった。 自衛隊守山駐屯地。 井上自身が武器庫を爆破して壊滅させたその場所に、無数の人影が動いていた。 プログラム参加者、本部スタッフ、報道スタッフ、それ以外の人物がこのプログラム実行期間内に 名古屋に入れるはずがない。 しかし井上の目の前には多数の人が、その服装からして自衛隊員に違いなく・・・。 瓦礫の中で隊員たちがキビキビと無駄のない動きで忙しく仮設隊舎を設営している。 井上はその光景をスクリーンの中の出来事のように見ていた。 それが事実とは捉えてはいなかった。 だから自衛隊員が2人、自分の方に向かって歩いてくるのも見えていながら、解っていなかった。 「プログラム参加者、中日ドラゴンズの選手の方ですね」 すぐ目の前でそう言われて、井上はようやく我に返った。 そして反射的に逃げようとするのを、隊員の1人が押さえ込んだ。 「先ほど政府により本プログラムの停止が可決されました。現在プログラム運営者に対し停止勧告中です。執行内容に基づき参加者の身柄を一時確保いたします」 それは井上にとってなんと無様な幕切れであっただろうか。 プログラムの勝者となるでなく、また敗者として散るでなく、政府の介入によってプログラムの外へ連れ出されていく。 既に持っていた武器は自衛隊員に取り上げられ、無理やりプログラムに戻ることもできない。 井上はその無様さにうなだれた。 そんな井上を隊員たちは隊舎の方へと率いていった。 それを物陰から見送って、福留は踵を返した。 自分はまだあんな風にプログラムの外へと連れ出されるわけにはいかない。 本部側の人間にあんな風に殺された荒木の無念さをぶつけるまでは、まだ終われない。 【残り5人 内1名離脱】 540 :書き手A:03/01/22 13 17 ID tf2nc6hG 191 鎮圧 「井端さん。あなたはこれから本部に突入する。そうですね?」 耳慣れない声の主はやはり見知らぬ男だった。どうやらプログラムのスタッフらしい。 いやにニヤニヤした、いかにもマスコミ風の風体をした男だった。 その手には拳銃が握られているのだけれども。 ドーム内の倉庫らしき部屋まで連れてこられ、井端は緊張していた。 反抗はばれているだろうとは思ったが…もしや、ここで始末しようという考えか。 そうだとしたら、こちらにも抵抗の準備はある。 「まあ、そう睨まなくても…落ち着いて下さい。 いやね、我々はただ突入を遅らせてほしいんですよ」 「…遅らせる?何故」 油断なく自分を狙っている銃口が忌々しい。 これさえなければ、素人の男に負ける気はしないのだが。 男はやはりにやけた顔のまま言葉を続けた。 「それはほら、テレビ的な事情がありまして。はい」 「言いたいことはそれだけか。そんな理由で」 どこまで人を馬鹿にしているのだ。頭に血が上るのを必死で抑えた。 もしかしたら物陰にでも仲間が潜んでいるかもしれない。 「そうそう。監督をね、預からせていただきましたよ」 「な」 「幸い山田監督はテレビに映っていませんでしたので。 まあ、故意に映さないように心がけていたんですが… 何も突入するなとは言いませんから。ただ少し待ってもらえればと」 541 :書き手A:03/01/22 13 22 ID tf2nc6hG わけがわからなかった。人質をとるリスクを犯してまで、何故? 「何が狙いなんだ」 「もう少ししたら、星野監督たちがドームに来ますよ」 「なんだって…」 そんな話は聞いていない。どうして星野が名古屋に。 あの人はもう…中日とは無関係の人間のはずだ。 「まあ、ラストはやはり派手な銃撃戦で!というのが我々の意向でして。 星野監督たちと合流してから、古田氏と戦ってもらいたいんですよ。ええ。 もちろん、勝っていただいて結構ですから」 「嫌だ、と言ったら」 「あなたにも、監督にも死んでいただくしかないですねぇ」 男はなおも、笑っていた。 「いったい、何が狙いなんだ! 本当に視聴率のためだけにこんなことをするんなら、あんたらは狂ってる!」 「あなたの口からそんな言葉が出るとは。 プログラムが始まってすぐに正気を失ってしまったのはどこの誰でしたかねぇ?」 「…あ」 すっかり忘れていた。いや、忘れようとしていたのだった。 自分が狂気に落ちていたという事実は揺るぎないものだ。 「人間なんてね、簡単に狂ってしまえるものですから。 …さあ、わかったら隣の部屋で待っていて下さい。後で呼びに来ます。 遠藤さんもいますよ」 井端は半ば覚悟を決めていたが、その声を最後まで聞き取ることはできなかった。 突然ドアが開け放たれたと思うや、屈強な男たちが踏み込んできたのだ。 「武器を捨てろ!プログラムは中止だ!」 撮影スタッフでないのは誰の目にも明らかだった。 【残り5人/プログラム停止】 542 :書き手A:03/01/22 17 11 ID tf2nc6hG 192 帰らざる日々 さて、福留は考えなければならなくなった。 このままだと、遅かれ早かれプログラムは止められる。 その間にナゴヤドームにたどり着き、本部を潰せるか?否。 本部には真っ先に政府の手が入るはず。あるいは既に自衛隊員が向かっているやもしれない。 もはや、現時点で自分は井上にも本部にも手が出せないのだ。 むろん一人で自衛隊に立ち向かったのでは勝ち目はないし、犬死しては肝心の復讐ができない。 抱え持っていたマシンガンを手放し、両手を見つめた。 血まみれの手だ。人殺しの手だ。これ以上汚れようもなく汚らしい、犯罪者の手だ。 いまさら元には戻らない。プログラムが終わっても、何も戻ってきはしないのだ… 自分が殺した山崎、中里。本部のルールに殺された荒木。どちらも二度と戻らない。 そして皆で笑い合い、時に馴れ合い集団と揶揄さえされたあのドラゴンズの姿も、永遠に葬られてしまったのだ。 誰が一番悪いというわけでもない。全員で食い合い、壊したのだ。 福留は笑いをかみ殺した。誰もが狂っている。自分もおよそまともではない。 もう元に戻ることはないのだったら、行き着くところまで行ってやればいいではないか? 「俺は復讐がしたい」 口に出して言ってみた。 復讐がしたい。荒木を殺した本部も、荒木に武器を向けた井上も、許せない。 今日、時間が残っていないのなら、明日以降にすればいいのだ。小学生でもわかることではないか。 法はそれを許さないだろうが、どのみち人を殺した咎は一生付きまとう。 政府の介入によって、自分がまっとうな人間として生きていく最後のチャンスは潰されてしまった。 あとはもう…血まみれの道を行くまでだ。それもまたいいかもしれない。 今までずっと、もしかしたらすべてやり直して生きていけるのではないかと思っていた。 我ながら馬鹿だと思う。そんな権利はもうないのに。 福留はゆっくりと荷物を降ろした。もう必要がないものだったので。 どこへ行くあてもなく歩き始める。 名古屋が完全に鎮圧されるまでのわずかな時間を、ただのんびりとすごしたかった。 不思議なくらい辺りは静かだ。まるで夢を見ているようだ、と思う。 けれども。間違いないの現実が一つ。 俺の本当の戦いは、ここから始まるのだ。 543 :代打名無し:03/01/22 19 06 ID QFcCn3Lz 193 最後のあがき [プログラムの中止] それをどれだけ願っていただろうか。 しかし井端はその安堵感に浸ることを許されなかった。 「近付くな!」 そう言って男は井端を引き寄せた。 左腕で井端の首をロックし、井端のこめかみに銃口を押し当てた。 「それ以上入ってくるな。プログラムは停止しない」 井端を人質にされ、入ってきた男達も足を止めた。 「政府からの停止勧告に対する拒否により、武力制圧の令が出た。 おとなしく人質を解放し、武器を捨て、投降せよ」 その部隊のリーダーらしき男がそう言って一歩進み出た。 「来るな! プログラムは続行する!」 「既にドームは自衛隊が取り囲んでいる。無駄な抵抗はやめろ」 そう言ってもう一歩近付く。 そして別方向からも本部スタッフのその男に気付かれないように隊員が近付いていく。 井端はそれを目の端に見ながら、何とかこの男の腕を振り解く隙が出来ないかと窺っていた。 首を締め上げられる格好になっているために時々意識が遠のきそうになる。 「・・・・・」 両者はにらみ合っている。 隊員の足がまた一歩動いた。 この腕が少しでも緩んでくれたら・・・。 しかし井端のその思考は突然停止させられた。 こめかみに更に強く銃口が押し当てられる感触がした後、耳元で鼓膜が裂けるほどの轟音を聴いた。 544 :代打名無し:03/01/22 19 06 ID QFcCn3Lz 至近距離での発砲に井端の頭部は跡形も無く弾け飛んでいた。 そしてその引き金を引いた、井端の血に頭から染まった男も、すぐさま向き合う隊員の発砲により床に吹き飛んだ。 ようやく男の手から解放された井端の体も床に落ちた。 背番号48のユニフォームが急速に血で染まっていく。 その向こうに倒れた男の顔には狂気の笑みが張り付いていた。 545 :書き手A:03/01/22 21 08 ID x0pQAUq6 194 涙 多くのスタッフたちや生き残っていた選手、それに今中や中村、 星野たちの意思などとは何の関係もなく、プログラムは唐突に終わった。 井端の凄惨な死を最後の置き土産として… 非難が集中したために政府が中止措置をとるというお粗末な結末。 命がけで現場にいた男たちは一様に魂を抜かれたような顔になり、 ただ黙って自衛隊員の指示に従っている。 厳重な身体検査からようやく解放された遠藤は一種の虚脱感さえおぼえていた。 武器も荷物も取り上げられ、遠藤たちに残されたのは疲弊しきった体だけだ。 キャンプで十分に整えた体調もぼろぼろ、とても今年のシーズンをやっていく気にはなれない。 「ちくしょ…」 せめて大西を見つけて、助けたかった。 藤立がくれた檄は本心からくるものではなかったかもしれないが、遠藤はそれでも感謝していた。 あの人が怒鳴ってくれたおかげで、俺は最後の最後に臆病者から脱出できたのだ。 それにしても、大西は、藤立は生きているのだろうか? まだ生き残りが何人いるのかさえ知らされていない。 546 :書き手A:03/01/22 21 08 ID x0pQAUq6 状況も飲み込めぬままヘリコプターでつれてこられたここは自衛隊の基地か何かだろうか。 身体検査のあとに遠藤が押し込められたのは、ごく狭い部屋だった。 部屋の隅にニ、三のパイプ椅子が立てかけてある他は、何もない部屋。 打ちっぱなしのコンクリートの壁は監獄を思わせた。 いや、実際、監獄のつもりで放り込んだのだろうか。 余韻で興奮して暴れることを警戒したのかもしれない。 そんな気力が残っているものか。 パイプ椅子をのろのろと組み立てて座り、遠藤は大きなため息をついた。 それにしても生きて帰れるとは思っていなかった。 静かに目を閉じると今までのことが一瞬のように思われる。 何だか視界がちらつくと思ったら、天井に下げられた裸の蛍光灯が、 寿命が近いのだろう、ちかちかと明滅しているのだった。 そう言えば、家の蛍光灯も一つ古くなっていたな、と遠藤は思い出した。 妻は泣いているだろうか。不安に押しつぶされてはいないだろうか。猫の世話を忘れていないだろうか。 自分の無事をいつものように祈っていてくれたのだろうか。 早く会って安心させてやりたい。 遠藤は涙が頬を伝うのを感じた。涙は不思議なくらい暖かかった。 551 :書き手A:03/01/22 23 00 ID x0pQAUq6 195 2002年10月、ナゴヤドーム プログラムの与えたダメージは肉体的なものばかりではなく、 むしろ精神的なものの方が後々まで深く残っていた。 参加させられた選手以外にもそういった精神的ダメージは及んでおり、 チームは低迷の局地にある。 無論のこと遠藤も例外ではなかった。 他に出られる選手がいるなら、すぐにでも代わってもらいたいほどだ。 ブルペンの中の顔ぶれもがらりと変わってしまった。岩瀬がいない、正津がいない。 山井や久本といった若手が必死にこの中継ぎ陣を支えているが、見劣りするのは明らかだった。 それでも何とか10月までやって来たのだ。今日は今年のナゴヤドーム最終戦。 シーズン途中に倒れなかったのは我ながら奇跡的だと言うほかない。 同じくプログラム経験者の前田は「紀藤さんがずっと見守っていてくれますから」と気丈に振舞ってはいたが、 その分疲れがたまったのだろう、9月の半ばにリタイアしてしまった。 谷繁、鈴木両名が死んだためにあの若さで正捕手を務めていた前田を、 責める者は誰もいなかった。どのみちこの戦力では、 どんな天才が捕手をやろうと最下位であることに変わりはないのだ。 いまだ人間不信状態から立ち直っていない井上は戦力にならないし、 落合はフル回転がたたって夏を待たずに失速してしまった。 虚無感さえ漂うチーム状況。早くシーズンが終わればいいと、 最近そればかり遠藤は考えている。 552 :書き手A:03/01/22 23 01 ID x0pQAUq6 そんな中、ただ福留一人だけが、異様なまでに活躍していた。 そう、この雰囲気の中で活躍するほどの気力はもはや異様の域だ。 プログラム中に脚や肩を負傷したというのに無理に試合に出続けている福留。 しかもシーズンが始まって以来、打率は三割を下回ったことがない。 守備も別人のように上手くなり、ゴールデングラブは確実と言われている。 別人、か。言い得て妙かもしれない。 福留は変わった。まるで、この世に野球以外の娯楽はないと思い込んでいるようだった。 あまりにも野球に打ち込みすぎるその姿は、誇張でも何でもなく異様なのだった。 何が福留をそこまでさせるのか…あまり親しくなかった遠藤にはわからない。 もちろんプログラムのせいだろうとは思っているが。 「外、結構お客さん入ってるみたいですね」 静かなブルペンの中、山井がポツリと言った。遠藤は黙ってうなづいた。 この成績でにもかかわらず観客が入っているのは、本拠地最終戦だからではなく、 八面六臂の活躍を続ける福留を見ようというファンが多いからなのだろう。 しかし遠藤には、どうにも福留が遠く感じられる。 何故だろうか。あまりにも人間的なものを感じられなくなったせいかもしれない。 それでも遠藤は福留に何も聞きはしなかった。 今はまだそんな気力はなかったし、どこか近寄りがたささえ感じていたので。 554 :書き手A:03/01/22 23 15 ID x0pQAUq6 中村は横浜に、星野と島野は阪神に、今中は解説者に、それぞれ戻っている。 みな一様に、薄暗い空しさを心の底に溜めたまま、それでも戻らざるを得なかったのだろう。 「悔いは、あります」。 プログラム終了直後、カメラを向けられた今中はうつむいてそう言ったという。 そして古田もヤクルトに戻った。ヤクルトの無事が決定した、ただそれだけで笑っていた男。 大量の死人が出た上、中区が跡形もなくなってしまった廃墟のような名古屋の地で、あの男だけ笑った。 遠藤はその笑いに狂気を見た。 …狂気。狂気と正気の境目はどこにあるのだろう。 プログラムに巻き込まれた人間は、誰もが少しずつ狂ってしまった。 きっと自分も例外ではない。今のところ正気のつもりだが。 「山井」 「はい?」 「もし俺が狂ったと思ったら、遠慮なく病院に連れてってくれ。 俺にはもう…何が正しくて何が狂っているのかわからないよ」 山井の返事はなかった。それは山井が正気だからだ、遠藤は思った。 556 :書き手A:03/01/22 23 29 ID x0pQAUq6 エピローグ その日のニュース番組は、ある爆破事件のことで持ちきりだった。 タイトル獲得者の表彰などが行われるプロ野球コンベンションの会場が、何者かによって爆破されたという。 テレビを見つつ、遠藤は何の驚きも抱かない自分に驚いた。 心のどこかで、いつかこんなことが起こるだろうと思っていたのかもしれない。 ニュースによれば、死傷者の数はおびただしく、しかも犯人がわかっていないらしい。 そして爆破直後の混乱の最中、一人の男が忽然と姿を消したのだという。 男はその日、首位打者として表彰を受けるべく会場にいた。 悪夢から復活し、ヒーローと言われていた選手が何故そんな妙な行動を?と、 画面の中でアナウンサーが首をかしげている。 状況から考えても、犯人がその男であろうことは誰の目にも明らかだろう。 が、何の証拠も出ていない以上は、うかつに犯人扱いした報道はできないらしい。 なにしろ相手は「ヒーロー」なのだから。 やれやれ。遠藤は笑った。笑いながら泣いた。あれがヒーローだと。あいつはただの復讐鬼だ。 やっと俺にもわかった。これが目的だったんだろう、お前は。 あの会場にはたくさんの野球関係者と報道陣がいた。 生活の全てを野球に捧げてまで…お前は復讐を成したかったのか。 そうだとしたら、お前はもう人間じゃない、狂った鬼だ。こんな執念、人間技なものか。 557 :書き手A:03/01/22 23 29 ID x0pQAUq6 遠藤ははたと思い出した。 つい三日前だった。井上が突然死んだのだ。自宅の近くで車にはねられ、あっけなく逝った。 事故死ということになったが、どうも不審な死に方だった。 まるで自分から車の群れの中に飛び込んだような… 背筋が冷える。そうなのか?そうなのか?福留よ。 ふらつく足元に飼い猫が寄ってきた。遠藤はそれを抱き上げ、そしてテレビの電源を切った。 忘れよう。俺は何も知らない。俺はあのプログラムに縛られたくない。 大西と藤立のためにも、新しく生まれ変わって生きると決めたのだから… 明るい妻の声が台所から飛んできた。夕飯ができたことを知らせる声だった。 「ああ」 遠藤はそれに返事をし、飼い猫を床に下ろしてから妻のもとへ向かった。 俺は狂気に負けたくない。そのためには戦い続けるしかない。 プログラムの狂気はいまだ死んではおらず、今も関わった者たちを魅了しようとしているのだから。 魅入られた者は…人として大切なものを捨てることになる、そんな気がした。福留のように。 559 :書き手A:03/01/22 23 36 ID x0pQAUq6 野球関係者を狙っての爆破事件は以後五年近くに渡って断続して起こり、世間を騒がせる。 福留孝介の行方はようとして知れず、やがてその名は忌まわしきプログラムと共に球史の闇の中に消えた。 後年、背番号1が中日の永久欠番になったのは、決して敬いからではなかったという。 中日ドラゴンズバトルロワイアル2002 完 589 :ルーファン:03/02/01 23 59 ID q6JJ+G7g 番外編 「おばちゃん、はよ~!バスが出てってまうでよ!」 「んなもん、ちょっと待たせとりゃぁええんだて!」 中年の女性はきゅうりをスライス状に切りながらそう答えた。 部屋の角、天井の近くにあるテレビではアナウンサーが何かをしきりにしゃべっている。 彼女はその声を聞いているのかいないのか、黙々と作業を続ける。 彼女の息子は野球が好きで、リトルリーグでは四番でエースだった。 だが、多くの少年達がそうであるように、ドラゴンズの選手になる夢は叶えられなかった。 好きなだけでなれるほど、プロの世界は甘くない。 それでも、彼は野球に、それもドラゴンズに近い所で生きたかった。 だから地元のテレビ局に就職できたのは、 その望みをほんの少しだけ叶えることができたと親子ともども大喜びをしたものだった。 590 :ルーファン:03/02/02 00 06 ID yi+6pJMx 不発弾が見つかったので、この界隈はしばらくの間立ち入り禁止になる。 それも広範囲に影響を及ぼす毒ガス兵器らしい。 最初に聞いたのはそんな話だった。 「おそぎゃーもんが近所に埋まっとったなぁ」 近所の人々はそう噂しあった。 だが、彼女は息子から聞いてしまった。 ここでこれから始まる恐ろしい真実を。 がちゃ がちゃ がちゃ がちゃ 物々しい装備をした自衛隊員らしき男達が店の前に来た。 「あなたが最後です。よろしいですか?みなさんをこれ以上お待たせするわけにはいきませんので」 彼女はふっとため息をもらすと、手を止めて大きな声で言った。 「あら、そーかね。それじゃ、そろそろいこみゃーかね」 そしてカバンを持つと、店の外に出た。 「シャッターを降ろさなくていいんですか?」 「ええて、そんなもん。どーせ爆弾は爆発せんのでしょ?」 返答に困った男達を見る事もせず、彼女はバスの方に歩いていった。 バスはナゴヤ球場の駐車場に止まっていた。 「おばちゃん、何しとったかね?」 「ちょっとお土産をね、置いて来たんよ」 彼女が営んでいたナゴヤ球場近くの喫茶店。 その厨房には彼女自慢のサンドイッチが、誰宛てというわけでもなく、置かれていた。 591 :ルーファン:03/02/02 00 10 ID yi+6pJMx 28-29話で舞台となっている喫茶店のお話です。 (もちろん妄想&ニセ名古屋人なので、名古屋弁違ってたらスマソ) お目汚し失礼しますた。 602 :代打名無し:03/02/11 00 21 ID bSfqXij2 番外編・「ほんの少しの意趣返し」 「五番、キャッチャー、古田」 アナウンスと供に打席に入る男を、西山秀二はマスクの下から睨み付けた。 (こいつが、紀藤さんを…) だが、すぐに表情を戻す。 (古田さんも脅迫されていたんだ…恨んでもしょうがない、か) 「古田選手は主催者(既に死亡)にヤクルト球団と家族を人質に取られ、『プログラム』に協力せざるを得なかった」という発表があったのは、プログラムが終わった翌日だった。 実際にヤクルトを対象とした『プログラム』実施要項が押収され、古田の家族を軟禁した人物も逮捕された。 古田の言い分は通り、ドームで射殺された「主催者」が全てを計画し、実行したと認められたのだ。 (古田さんの事情も理解できるが、…何とも言い難い気持ちはあるな。でも、切り替えんと) 西山は軽く頭を振り、座り直した。 マウンド上の佐々岡に向けてサインを出していく。 ストレート、チェンジアップ、カーブ…だが、佐々岡はそのどれにも頷かない。 「…?」 バッテリーでサインが決まらないなんてことは滅多になかった。 困った顔で佐々岡を見、じゃあ何が投げたいのか、と身振りで聞いてみる。 一瞬の間の後、出されたサインは、今まで佐々岡から出したことは一度もない物、だった。 (故意死球のサインだと?!) 603 :代打名無し:03/02/11 00 22 ID bSfqXij2 「タイム!」 マスクを投げ捨ててマウンドに駆け寄り、佐々岡に詰め寄る。 「ササ…!どういうつもりなんだ?」 「ニシ、俺はどうしても納得いかないんだ。」 「…紀藤さんのことか?古田さんは脅迫されて…」 「わかってる。でも」 下を向いて黙り込んだ佐々岡を見て、西山は一つ溜息をついた。 納得行かないのは自分も同じ。ならば。 「…今回だけだぞ。今後は切り替えてくれ。いいな?」 そういって、佐々岡の肩を一つ叩き、マウンドを降りる。 「すまん」とマウンドで佐々岡が呟くのが聞こえた。 紀藤さんは死んだ。古田さんは生きている。 …ボール一つくらい当てたって、罰は当たらないだろ? 西山は思いきりインコースに構えた。佐々岡が振りかぶるのが見えた。 この年の古田の死球数は、リーグ一だったという。 644 :代打名無し:03/03/04 23 48 ID DYodw9TH もう誰も見てないだろうけど、番外編書いたので一応うp。 番外編「夢」 「あと一人、あと一人!」 名古屋ドームが、沸いている。 (なんだってこんなに盛り上がってるんだ。まるで優勝決定戦みたいじゃないか) 福留は顔をしかめ、心の中で悪態をついた。 自分の心に浮かんだ「優勝」という言葉に気付き、皮肉な笑みを漏らす。 この状態で優勝なんか出来るわけが無い。それは福留自身が一番よく知っていた。 優勝は出来なくとも、試合に集中する必要がある。…復讐のためにも。 気合いを入れ直して内野を見やる。 セカンドベース上には、見慣れた背番号2。 福留は目を見開いた。 「荒木…まさか?!」 荒木はもういない。あのとき、確かに荒木は死んだ。 慌てて周囲を見る。 1塁にゴメス、3塁に立浪、ショートには井端。山本昌と谷繁のバッテリー。外野に大西と井上。 ベンチでは、もはや記憶の中にしか存在しないはずの選手たちが、優勝の瞬間を待っている。 645 :代打名無し:03/03/04 23 49 ID DYodw9TH ああ、そうか。俺は夢を見てるんだ。 白球が鋭くはじき返され、ライトに飛んでくる。 抜けたら長打になるだろう。福留は一か八か飛び込んだ。 夢でもいい。 荒木と、このチームメイト達と優勝という喜びを分かち合えるなら。 目一杯伸ばしたグラブに、確かな感触。 その瞬間、ドーム中が歓喜に包まれた。 「…今日こんな夢を見られるとはね」 福留は起きあがると、左手を広げてみた。 まだ、捕球した時の感触が残っているような気がする。 最高の、そして決して叶わない夢。 この夢を奪った連中を俺は許さない。 「荒木、待ってろ。…復讐の、始まりだ」 プロ野球コンベンション会場爆破事件が起こるのは、それから数時間後のことである。