約 228,406 件
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/3651.html
・涼宮ハルヒの再会(1)
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5823.html
角膜に映しだされている光景を、俺は夢だと思いたかった ハルヒと朝比奈さんが …… 血まみれで伏しているというのは 一体どういう冗談だ…? 気付くと俺は二人の前にいた 考えるよりも先に体が動いてしまったらしい 「大丈夫かよ!?おい!?!しっかりしろ!!!!!」 「キョ…キョン…!!みくるちゃんが…!!みくるちゃんがあ!!!!」 「しゃべるな!!お前だってケガしてんだろ!!?」 「違う…!!あたしはケガなんてしてない!!…みくるちゃんが…あたしを…あたしをかばって…!!!!」 …… え? じゃあ、ハルヒの服にべったり付いているこの血は何だ? …… 全部…朝比奈さんの血…… …!? 「う…ぅ、ぅぅ……!」 悲痛な様で喘ぐ…彼女の姿がそこにあった 「朝比奈さん!!!!しっかりしてください!!!!…朝比奈さん!!!!」 「ょ…ょかった…すず…涼宮さんがぁぶ、無事で…!」 「朝比奈さん!!?」 「わた…し…やくにた…てたかな…ぁ…ぁ…!」 理解した 彼女は秒単位という時間の中で自らハルヒの盾となった あのとき奴の一番そばにいた…彼女は 『ねえキョン君…私って本当にみんなの役に立ってるのかな…?』 つい先ほどの彼女の言葉が頭でこだまする 朝比奈さん…あなたは…そこまで思い悩んでいたんですか…!? 「あ…あたしのせいだ…!!あたしがボーっとして動こうとしなかったからみくるちゃんが…!! あたしのせい…あたしのせいでみくるちゃんが…っ!!いやあああああああああああああ!!!!」 頭を抱え絶叫しだすハルヒ 「よせ!!ハル」 言いかけてやめた。ふと、気付いたからだ…俺の横へと立っている人物の存在に。 「あなたは涼宮ハルヒを連れ、ただちにこの場を立ち去るべき。周囲の急激な悪化により 彼女の精神は極限状態。これ以上の錯乱は彼女の自我そのものを崩壊させる。 神としての記憶を覚醒しかねない極めて危険な状況。」 長門… …… …!! 今の俺に長門の声は届かなかった 「長門…!!お前…!!」 気でも狂ったのか、俺は長門に掴みかかっていた。 「…銃で必死に迎撃してくれてた古泉と違って…お前は一体何をしていた!? お前なら…!!今の攻撃からみんなを守ることなど造作もなかったはずだろう!? …なぜそれをしなかった!?答えろよ長門ッ!!!!答え」 頬に鈍い痛みが走った 俺は古泉に殴られた 「てめえ…!何しやがる!?」 「あなたこそ…こんなときに何をやってるんです!?涼宮さんを連れてただちに逃げろと… 今長門さんに言われたばかりでしょう!?どうしてそれに従おうとしないんです!?」 「お前…!!!今にも死にそうな朝比奈さんは無視か!?それに長門は…!」 「おいおいおい、九曜さん。ちょっとやりすぎじゃ?死人がでそうな状況なんだが。」 「…関係のない人に重傷を負わせてしまったぶん多少の罪悪感はありますが…ま、仕方ないですね。 ある意味当然の報いですよ。なんせ、私たちは問答無用で先ほど殺られそうになったわけですから。」 「-----------身の程を-------------------------------知るべき」 炎上した隣家の方角から歩いてくる… 不快な言葉を発する三人組が… …… そして、俺はこいつらの顔を知っている 未来人藤原 超能力者橘京子 天蓋領域周防九曜 …藤原。やっぱりてめえらの仕業だったわけか…! 「…長門さんと同程度か、それ以上の力を有する周防九曜…。天蓋領域という名の化け物に 彼女は…長門さんは情報操作をかけられ、一切の身動きがとれない状態でした。」 !! 「それでも彼女は抑圧されてもなお、力を行使し被害を最小限にとどめました… 朝比奈さんを助けることが叶わなかったのは…彼女の力が不完全だったためです…。 もちろん、僕の力量不足でもありますがね…。逆に、その不完全な力さえもなければ今頃僕も、 そしてあなたもタダではいられなかったでしょう。最悪の場合死んでいたかもしれません。」 …ッ! …よくよく考えてみれば、長門や古泉が死に物狂いで頑張ってる中、俺は何をしていた?? 自分を守ることで精一杯だったじゃないか…!?いくらハルヒと朝比奈さんとに 距離があったとはいえ…、、、、そんな俺に、長門を批判できる資格なんかない…!!! 「長門…俺はお前にひどいことを…!本当に申し訳ない!この通りだ…!」 俺は長門に…誠意をもって謝罪した。 「…私が周防九曜に対し後れを取ったのは事実。だから、あなたが謝ることは何一つない。」 「しかし…!」 「私のことはどうでもいい。一刻も早く涼宮ハルヒを連れてここから立ち去るべき。」 …さっきも言われたな。頭に血が上ってたが、確かにそんな覚えがある。 …… ああ、わかってるさ。そうせねばならないほど窮した事態だってことは だが 「朝比奈さんはどうすんだ!!?重体の彼女を放置して、俺とハルヒだけ逃げろってのか!!?」 「…朝比奈みくるは、これから私が全力を尽くして治療にあたる。」 「!確かにお前にならそれが可能だな…だが、あいつらの相手はどうすんだ!? お前が治療に専念する間……、、!!まさか古泉一人に戦わせるつもりか!?無茶だ…! 相手にはあの天蓋領域だって」 「…幸か不幸か、涼宮さんの重度の乱心により…この場は閉鎖空間と化しつつあります。 となれば、僕も超能力者として…本来の力を存分に行使できるようになります。」 古泉… 「わかってんのか!?それでも1対3には変わりねーんだぞ!?」 「…涼宮さんにもしものことがあれば世界は終わりです。あなたもそれは十分承知のはず。」 「しかし…!」 「…以前ファミレスにてみんなと誓ったではありませんか。我々は協力して…みんなで涼宮さんを守る!…とね。」 …こいつは、自分の死を覚悟しているのか?仲間を守るために… …… 長門も同様にそうだろう。 朝比奈さんにしてもそうだ、命を擲ってでもハルヒを守ろうとした。 みんな覚悟を見せつけている 絶対に3人の覚悟は無駄にできない!!!!なら、俺にできることは一つ 「ハルヒ!来い!」 強引にでもハルヒの手を握り、連れて行こうとする俺。 「嫌!!放してよ!!!!放して!!!!みくるちゃんが!!!!! みくるちゃんがああああああああああああッ!!!!!!」 ハルヒもハルヒで相当つらいんだろう…気持ちはわかる。だが、今は我慢するんだ…! みんなの意志を…覚悟を…どうか酌みとってやってくれ!!! そして…みんな… どうか死なないでくれ!!!! 俺は3人に背を向け、ハルヒとともに走りだした。 「…はん、ようやくお喋りは終了か。じゃ、とっととそこをどいてもらおうか。計画に支障が出る。」 「その先にいるターゲットに私たちは用があるんで。早くしないと逃げられちゃいますしね。 それに、閉鎖空間と化したこの場で猛威を揮えるのは…決してあなただけではないってことも どうかお忘れずに。だって、私も同様に超能力者なんですから。」 「それくらい承知の上です。それでも、あなた方が何を言おうと僕はここを通しません…!」 「古泉一樹…朝比奈みくるの治癒がもう少しで終わる。 そのときまで、どうか耐えしのいでほしい。終わり次第、私も参戦させていただく。」 「それは頼もしいですね。ぜひともお願いします。」 …… 「一応忠告はしてあげたんですけど。じゃあ、仕方ありませんね。」 「結局こうなるのか。面倒なヤツらだ…。」 「---------邪魔」 「「はぁ…はぁ…はあ!」」 一体どれくらい走ったのだろうか…、俺たちはすでに息をきらしてしまっている。 行く宛てもなく…ただただ走り続けた。藤原たちから離れることだけを考え…ただただ走り続けた。 轟音爆音が鳴り響く 火の手が上がっている …俺たちが先ほどまでいた場所からだ。 …… ところで、俺にはさっきから妙な違和感がある。市街地を走りぬけていて気付いたのだが… 人一人歩いていない、というのはどういうわけだ?確かに、時刻は夜の10時をとうに過ぎてしまっている。 ゆえに、人通りが少ないのは理解できる。だが、人一人見当たらないのはどう考えたっておかしい。 …これも長門、ないしは周防九曜の情報操作に起因したものなのだろうか? それともさっき古泉が言っていたように、この世界が閉鎖空間と化しつつあるから…? っ! ふとハルヒの手が放れる。酷く塞ぎ込み、その場にしゃがみこむハルヒ。 「もう…あたし…、走れない…!」 「…そうだな…随分走ったし、ちょっと休憩するか。」 「…ねえキョン」 「何だ?」 「そもそもさ…何であたしたちこんな必死になって走ってんの…??」 「……」 「さっきまでさぁ…あたしたちお菓子とか食べながらみんなで騒いでたじゃないのよぉ…!? あれは一体何だったの!!?夢!?どうして…こんなことになってるの…!!?」 「……ハルヒ…」 「この状況は一体何よ!??家が吹き飛ぶわ、破片が飛び交うわ…そのせいでみくるちゃんが…!!」 …ハルヒの疲弊は、どうやら単なる息切れによるものだけではないらしい。 「ち、違う…!!あたし…あたしのせいでみくるちゃんが!!みくるちゃんを助けないと!!」 「落ち着け!!落ち着くんだハルヒ!!気持ちはわかる!!わかるから…どうか落ち着いてくれ!!」 「嫌ぁ…!放して…!みくるちゃんが…みくるちゃんがぁ…!!」 ……、 最悪の状況と言っていい。俺は…どうすりゃいいんだ? 極限状態なまでに錯乱した…今のハルヒに一体どんな声が届くってんだ…?仮にハルヒの立場だったとして、 今頃俺はどうしていただろうか?発狂していたのだろうか?だとして、そんな半狂乱な俺を… 俺はどうすれば救ってやれる??何をすれば救ってやれる!? その瞬間だった 「あ…、ああっ…、……」 卒倒するハルヒ …… …ハル…ヒ? 「ハルヒ!?おいしっかりしろ!!!!大丈夫か!!?ハル」 !? 何だこの揺れは…?地震…??規模こそ小さいが、一昨日見た夢を思い出さずにはいられなかった… …… …冗談がすぎるぜ…世界が滅ぶのは12月23日の段取りだったはず… 今日はまだ12月1日だぞ…!?今日で…終わるのか?何もかも…!? 「今のハルヒの失神は…、まさか!覚醒しちまったのか!?」 …何なんだこの展開は…??ここまで頑張ってきたのに…頑張ってきたってのに、 全部水の泡で終わるのか?そんな…そんなこと…ッ! しかし いくら威勢を張ったところで、もはやどうしようもないことには変わりない。 ここまで【絶望的】という言葉が似つかわしい状況もない。 …… とりあえず、地震は収まったようだが… 俺が放心状態であることに、変わりはなかった… 「た、大変!!涼宮さん…その様子だと、神としての記憶を取り戻してしまったんですね…!」 はて、この場には俺とハルヒしかいないはず。ついに俺も幻聴が聞こえるなまでに廃物と化してしまったか。 「ふう…あなた達のこと探したんですよ…って、キョン君聞こえてますか…?大丈夫ですか!?」 !! 「あ、あなたは…」 「よかった…あなたまでおかしくなってたら、それこそ終わりだったわ…!」 「朝比奈さん!!」 いつしかお会いした大人朝比奈さんが…俺の目の前に立っている。 光明が射すとはこういうことを言うのだろうか? 例えるならば WW2独ソ戦にて、モスクワ陥落を【冬将軍到来】により間一髪のところで防いだソ連。 池田屋事件にて、維新志士らにによる窮地を別動隊の【土方歳三ら】に助けられた近藤勇。 日露戦争にて、物資・国力ともに限界だったところを【敵国の革命運動】により難を逃れた日本。 関ヶ原の合戦にて、数による劣勢を【西軍小早川秀明の裏切り】により勝敗を決した徳川家康。 元寇にて、大陸独自の兵器や戦法で撹乱する元軍を【神風(暴風雨)】により撃退した鎌倉幕府。 キューバ危機にて、米ソによる核戦争を【ケネディ大統領の働き】で回避した当時の世界。 ワールシュタットの戦いにて、【オゴタイ=ハンの急死】により領土を守り切った全ヨーロッパ諸国。 2・26事件にて、不運にも義弟の【松尾伝蔵陸軍大佐の身代わり】で暗殺を逃れた岡田啓介首相。 1940年にて、【杉原千畝リトアニア領事によるビザ発行】でナチスによる迫害から逃れたユダヤ人。 クリミア戦争にて、【フローレンス・ナイチンゲールの必死の看護】により命を救われた負傷兵たち。 …挙げればキリがない。 それくらい、絶望的渦中にある今の俺からすれば…彼女の存在は例文の【】に値する。 「朝比奈さん…俺は…。俺は!どうすればいいんですか!!?」 彼女が今ここにいるということは、間違いなく何かしらの理由があるはず。そうでもなければ、 朝比奈さん小の上司でもある彼女が…自らこの時代へとやって来ることなどありえない。 だとすれば、彼女は知っているはずだ…俺が今何をすべきなのかを…! 「落ち着いてキョン君!まずは状況をしっかりと把握しましょう。それによってあなたの成すべき事も… 決まってくるわ。だから、涼宮さんがこうして倒れるまでの間一体何があったのか…私に話してほしいの。」 話す内容によって、彼女が俺に与える助言もまた違ってくるのだろうか。 俺は…事の一部始終を洗いざらい打ち明けた。 …… 「なるほど…つまり、あなた達は藤原君たちに追われていたのね?」 「はい…そのせいでこの時代に来ていた朝比奈さんが…重傷を負ってしまって…っ!!」 「…それは。さぞかし大変だったのでしょうね。」 「なぜ驚かないんです!?彼女が消えてしまえば、大人であるあなたも消えてしまうんですよ!?」 「そのくらい心得てるわ。でもね…逆に言えば、今大人である私が この場にいる…生きてるってことは、つまり彼女はまだ死んでないってことよ。」 ! 「そして、あなたと涼宮さんがここまで逃げてくるまで随分な時間が経過してる。 ともなれば、私だけでなく長門さんや古泉君も無事だってことが推測できるわね。」 「意味がよくわかりません…どうして長門や古泉までも無事だって言えるんです!?」 「考えてもみて。私は…自分で言うのもなんだけど、戦闘に関しては全くの素人。ゆえに、 殺されるのも容易いわ。万一私の傷が完治したとしても、その後無事でいられる可能性は極めて低い。」 「……?」 「つまり、長門さんや古泉君が死んで私が生きてる状況ってのは 常識的に考えて絶対にありえないのよ。 だってそうでしょう?彼らは私なんかより桁違いに強いんだから。まあ…逆は可能性として十分ありえるけどね。 私が死んで彼らが生きてるっていうのは…自分で言っててちょっと悲しいけど。」 なるほど、確かに理屈に当てはめて考えればそうなる。…実に的確な指摘だった。 「ありがとうございます朝比奈さん。3人が生きてるってことがわかって…俺、安心できました!」 「ふふ、さっきよりも落ち着きを取り戻したようで何よりね。状況の把握は大切に…ね。」 朝比奈さんはこれを見越して話してたってのか…?さすが大人の貫録だ。 「それで藤原君たちは…どんな様子だったの?」 「どんな様子って、俺たちを殺しにかかってきたとしか…。」 「一体誰を殺そうとしていたのかしらね、彼らは…」 「…?ハルヒを除く俺たち全員なんじゃないですか?それからハルヒを拉致でもして… おおかた記憶を覚醒させるつもりでもいたんでしょう。…結果として覚醒しちゃいましたけど…。」 「でも…彼らがあなたたちの殺害、ないしは涼宮ハルヒの拉致を明言したわけではなかったんでしょ?」 …… 彼女は彼らの目論見について、何か知っているのだろうか…? 「…キョン君、今あなたが言った推理は、おそらくはずれよ。」 …はずれ??どういうことだ? 「単に、あなたたちは成り行きで彼らの障壁となってしまっただけ。彼らからすれば、 初めからあなた達は眼中になかったわ。ましてや、殺害など論外ね。」 …?彼女の言っている意味がよくわからない。 「じゃあ、藤原たちの目的は他にあったってことですか??…それは何ですか!?」 「…混み合った話はまた後にしましょう。涼宮さんをこのまま放置したまま話し続けるのも…胸が痛むわ。」 …確かにそうだ。倒れてるハルヒをどうにかせねばなるまい。 「とりあえず、彼女を背負ってこっちに来てくれないかしら?いつまでもここが安全とは限らない。 閉鎖空間と化しつつある現状では先ほどの地震といい、何が起こったっておかしくないもの。」 朝比奈さんの言う通りだ。 …俺は彼女の言うことに素直に従い、ハルヒのもとへ駆け寄った。 「…ハルヒ、大丈夫か…??」 …… 返事がない…どうやら本当に気絶してしまっている。俺は連れていくべく…ハルヒの肩を担ごうとする。 その時だったか ? 背中が妙に熱い …… …何だこの不快感は? いや、不快なんてもんじゃない…これは 生物に 本来あってはいけないものだ 「う…!!あ!!!!が…ああ…っ!!!!!」 猛烈な激痛 混沌とする意識 一体 何が起こった 俺は 背中を手で 触ってみる …… 何だ このどす黒い 赤い液体は 意識が 朦朧とする 「キョン君…さっき私に聞いてましたよね?自分が今成すべき事を。それはね、 死ぬことよ。」 「冥土の土産に教えてあげる。藤原君たちの本当の狙いはね、私の抹殺よ。」 「まさか、涼宮ハルヒを昏睡状態に陥れた犯人が 私だったなんて想像もしなかったでしょ。」 俺 を 立って 見下ろす こいつは 誰? 「まさか、ここまで上手く事が運ぶなんてね。アハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!」 俺 を 見下し 笑う こいつは 誰? 意識が途絶えた …… ここはどこだ?辺りが真っ暗で何も見えない……そうか、あの世か。俺は死んじまったのか 2012年12月1日22時23分 俺は朝比奈みくるに刺殺された
https://w.atwiki.jp/fertcg/pages/821.html
R6-020 レア ミルラ/MYRRH マムクート Lv.10 飛行系 ブレス 装備Lv:- 気力4 攻撃0 反撃0 イラスト/ちぇりぃ 装備:竜石 【竜化】 攻撃で消費するチップ+2。反撃で消費するチップ+1。与えるダメージ+5。魔物系にはさらに+2。受けるダメージを-する効果無効。 【竜鱗】 受けるダメージ-2。 魔物系はこのユニットに反撃できない。 父:ムルヴァ 支援:ドズラ(雷) 聖石の【風】 飛行系の移動範囲に移動できる。 聖魔仕様のマムクート。 2チップ5ダメージ、2点軽減のユニット。 【竜化】は強制的に行われ、常にダメージ-2である。 なお、反撃時は反撃しない、を選択すれば1チップは消費しない。 受けるダメージを-する効果無効は、魔物以外にもすべての相手ユニットに有効。 ムルヴァより気力が1低い、女性なのでエリス(人間関係)が使えないという弱点がある。 自身が飛行ユニットなので聖石の【風】は一見意味がないが、支援相手に与えることができたり、聖石能力を持っていることが利点となることがある。 (双聖器を維持したり、聖石の庇護の条件を阻害しないといった効果がある。) 支援もあるのでうまく使い分けよう。 単純に、ユニットかぶり対策として、両方とも使うのもいいだろう。 ダメージ-2は一見固いが、確殺されるケースも多い。 王家の武器+【力】、双聖器、神将器、ネルガル、リオン、火竜、氷竜、マリク+【勇者の風】 上級弓兵、イドゥン、ファ、フォデス、ゼフィール、封印の剣といったところである。 イラストが非常に可愛いので、ぜに手に取ってみてほしい。 RP-110 Boxプロモ ミルラ/MYRRH マムクート Lv.10 飛行系 ブレス 装備Lv:- 気力4 攻撃0 反撃0 イラスト/輪久・霜月匠 装備:竜石 【竜化】 攻撃で消費するチップ+2。反撃で消費するチップ+1。与えるダメージ+5。魔物系にはさらに+2。受けるダメージを-する効果無効。 【竜鱗】 受けるダメージ-2。 魔物系はこのユニットに反撃できない。 父:ムルヴァ 支援:エフラム(炎) 聖石の【風】 飛行系の移動範囲に移動できる。 支援相手がエフラムに変わっている。よってデッキによって使い分けよう。
https://w.atwiki.jp/medtwo/pages/24.html
以下テンプレ タイム(プレイヤー):コメント:画像(サムネ別画面表示) 画像のコピペ用: blankimg(ここに上げた画像のURLを入れる,width=102,height=76ハンカクカッコトジ (よく分からない人は挑戦ルールを読みましょう) 【対CPU Spoiler無】 対霊夢 ☆ 6 32(Arnest):暫定基準値:Vpatch使用 リプレイ ◇ △ 対魔理沙 ☆ ◇ △ 対妖夢 ☆ ◇ △ 対咲夜 ☆ ◇ △ 対優曇華 ☆ ◇ △ 対チルノ ☆ ◇ △ 対リリカ ☆ 5 16(Arnest):埋めましょうそうしましょう:Vpatch使用 リプレイ ◇ △ 対メルラン ☆ ◇ △ 対ルナサ ☆ ◇ △ 対ミスティア ☆ ◇ △ 対てゐ ☆ ◇ △ 対射命丸 ☆ ◇ △ 対メディスン ☆ ◇ △ 対幽香 ☆ ◇ △ 対小町 ☆ ◇ △ 対映姫 ☆ ◇ △ 【対CPU Spoiler有】 対霊夢 ☆ ◇ △ 対魔理沙 ☆ ◇ △ 対妖夢 ☆ ◇ △ 対咲夜 ☆ ◇ △ 対優曇華 ☆ ◇ △ 対チルノ ☆ ◇ △ 対リリカ ☆ ◇ △ 対メルラン ☆ ◇ △ 対ルナサ ☆ ◇ △ 対ミスティア ☆ ◇ △ 対てゐ ☆ ◇ △ 対射命丸 ☆ ◇ △ 対メディスン ☆ ◇ △ 対幽香 ☆ ◇ △ 対小町 ☆ ◇ △ 対映姫 ☆ ◇ △ 【対人】 対メルラン ☆ ◇ △ 対ルナサ ☆ ◇ △ 対ミスティア ☆ ◇ △ 対てゐ ☆ ◇ △ 対射命丸 ☆ ◇ △ 対メディスン ☆ ◇ △ 対幽香 ☆ ◇ △ 対小町 ☆ ◇ △ 対映姫 ☆ ◇ △
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1585.html
元ネタ:涼宮ハルヒの憤慨 「で、続きは?この娘とはこのあとどうなったの?」 「だから何もねぇよ、それに架空の話だ」 「嘘!あんたにそこまで文才があるわけないじゃない!現国だってあんなに悪いくせに!」 痛いところを突いてきやがる 「仮に実話だったとしても、お前には関係ないだろ?」 「あるわよ、団長だもの」 何だそりゃ?今更だが無茶苦茶だな おい。 俺が何も言わずに沈黙を続けていると、ハルヒもついに諦めたのだろうか 「もういいわよ。考えてもみたらあんたに恋の経験があるわけないし、これからもなさそうだもんね」 「んなことねーよ」 「え?」 しまった…今のは適当にあしらうところだろう…何言ってんだ俺。 「ってことはあんた…誰かに恋なんてしてるわけ?」 もはや隠し切れんな。俺はしばらく考えてから言った。 「……ああ」 「だれ?あたしの知ってる人?」 「ああ」 「みくるちゃん?有希?それとも鶴……」 俺はハルヒの言葉を遮って言った。いい機会だ、いっそのこと言っちまおう。 「おまえだよ、ハルヒ」 「えっ?……それ、どういう…意味……?」 さすがのハルヒも動揺しているようで、その表情戸惑いを隠し切れていない。 「別に、そのまんまの意味だ。俺はな、ハルヒ…お前のことが好きなんだよ」 本当はまだ言う気はなかった。もう少し時間をかけてからでいいと思っていた…でも、俺はもう言ってしまった。後悔などはしていない。 「すまん、急に変なこと言っちまったな。続きは家で完成させて明日持ってくる……じゃあな、ハルヒ」 そして俺はハルヒに背を向け、部室を出ようとした。 すると 「ま、待ちなさいよ!」 「いざ」 そう言うとハルヒは、しずかに刀を抜いた。ハルヒの愛刀「村正」……なるほど、本気のようだな 「尋常に」 俺も刀を抜いた。我が家に代々伝わる「正宗」を…… そして互いに抜刀の構えをとり 「……勝負」 勝負は一瞬で決まった 俺とハルヒの刀はたった一撃で、修復不能なほどボロボロになってしまった。 「腕を上げたわね……キョン」 「俺だってそれなりに鍛練は積んで来たさ…」 そして俺たちは握手した。互いに健闘を称え、共に生徒会長を倒す道を進もうと 「さぁ、行くわよキョン!あたし達の戦いはまだこれからなんだから!!」 「ああ、わかってるさ。お前となら…どこまでだって行けるさ」 「キョン……ありがとう」 「まさかお前に礼を言われるなんてな」 「なによ!あたしだって言うときは言うわよ!」 俺たちは顔を見合わせて笑った。 言葉なんていらなかった… 俺たちは手を取り合い走った…どこまでって? 決まってるだろ? 世界の平和までさ!!! 完 ~別バージョン もっとカオス~ 振り替えると、ハルヒが俺の手を掴みうつむいていた。 「自分ばっかり言いたいこと言って…何よ…」 「……すまん」 「謝んなくていいわよ!………ただ、あたしの話も聞いてよ…」 ハルヒはいつになく小声で言った。 「ひでき……」 後ろから声がする。再度振り返るとそこには 「…ちぃ……どうしてここに!?」 「ひでき、晩御飯…」 「そ、そうか、もうそんな時間だったか」 「キョン……あんた…その娘とはどういう……?」 「このことはな、ちぃって名前なんだ。最近拾った新しいタイプのパソコンでな、隣に住んでる新歩さんに使い方を教わった」 「使い方って…まさか?」 「ああ、通常の情報処理能力に加えて、性欲処理能力もそなえている」 「し、信じられない……これほどの能力を備えたパソコンを拾うなんて……誰が落としたのかしら?」 すると長門が入ってきた。 「今北産業」 「ちぃ ひでき 晩御飯」と、ちぃが答えた。よくできたな、ちぃ。 「把握した」 「それにしてもすごいパソコンね…もしか」 ちぃは爆発し、世界は闇に包まれた。 なるほど、白雪姫………そういうことだったのか……朝比奈さん………… 俺たちはちぃの爆発で死んだ………かに思えた。 「ん?生きてる……?」 目を開けると長門が爆発を抑えてくれていたようだ。 「長門!?大丈夫か!?」 「平気」 「ふふふ、あの爆発に耐えられるなんて中々のものね。でも、もう無駄よ……あなたもジャンクにしてあげる」 ちぃ、バグっちまったのかよ!?くそっ!!やっぱりあのとき、山田に感染していたんだ! このままだとマズイ!ハルヒを逃がさないと! 「ハルヒ、お前だけでも逃げるんだ!」 「甘いわね」 「なに!?」 すると辺りが灰色の世界に変わった。閉鎖空間だ…!まさかハルヒ、お前! 「あたしは鍛練の末、任意でこの空間を発生できるようになったわ。今のあたしはどの(萌え)属性も100%発揮できる!! 絶 対 萌 時 間!!」 「ハルヒ、そうか……なら俺も………システム・イド 発動!!」 「私もこの空間では統合思念体を無視し、本気を出せる……マテリアライズ!!! 武刀『れいき』」 「ふふふ……来なさい、憐れな子羊達……次元のはざまに送ってあげるわ!!」 「ちい……教えてくれ。何がお前をそうさせたんだ?山田か?」 「ふふふ……天国を追放された天使は、悪魔になるしかないのよ。あなたこそどうして?私の味方だったと思ったのに…」 「俺はただ……覚めない夢を見てるだけさ」 「キョン!来るわ!!」 「彼女のオーラ力が上昇している…」 「ふはははは!行くわよ!!」 「終わりにしようぜ……ちぃ!」 そして世界は核の炎に包まれた 完
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/5478.html
(これでも三訂版) ・サイレントヒルとのクロスオーバー。グロ描写注意。 「これ、返す」 「おう、やったのか」 有希がキョンに何かのゲームソフトを渡すのが見えた。有希もゲームをするのね、ちょっと意外。どんなのかしら。 「それ、何?」 「ああ、零だよ」 キョンがソフトをこちらに見せた。いかにもなパッケージをしているところからするとホラーゲームみたい。あたしが好きなジャンルではないみたい。 「お前はこういうのが好きじゃないみたいだな」 キョンがそう言ったのでびっくりした。 「な、なんで分かったのよ」 「期待して損した、みたいな表情をしてたからな」 そんな表情してたのかしら……。こいつ時々鋭いから困ったものだわ。 「で、有希、それをやってみてどうだった?」 「人間の想像力は……恐ろしい」 いつもより小さな声でそういうと俯いてしまった。 「どうしたのよ有希。まさか、怖かったの?」 「違う」 即答だった。必死さを感じたのは気のせいかしら。 「そんなことはない。決してトイレに行くことが出来なくなったり、布団に潜ったまま翌朝まで身動き出来なくなった訳ではない」 有希……全部言ってどうするの……。 「貸しておいて何だが……スマン」 「いい」 やがて古泉君やみくるちゃんがやってきた。古泉君がそのソフトの箱を見るなり言った。 「まさか貴方がそのような分野のを持っているとは思いませんでした」 「興味本位でな。あの怖いCMがちょっときになってな」 すぐにどんなのか判ったってことは古泉君もやったことあるのかしら。ちょっと内容が気になるけど……怖いのよね。 「そんなの怖くてできないです……」 そう呟いたみくるちゃんに同意せざるを得ないわ。 「キョンってどんなジャンルのゲームをするの? まさかそんなのしかないとか言わないでしょうね」 「さすがにそれはねーよ。妹もいるんだしな、パーティゲームとか大衆向けのももそれなりにあるぞ」 「ふーん、じゃあ週末はキョンの家でゲーム大会ね」 「え、ん、まあいいが」 「じゃ決定ね。ということだからみんなよろしく!」 その後、有希は読者を再開していたし、古泉君はキョンとチェスを始め、みくるちゃんは紅茶を選んでいた。 あたしは特に何をするということもなく、適当に検索して開いたページ眺めてた。 さっきの零とかいうソフトについて調べないのかって? 冗談じゃないわ、あんなアブノーマルなのあたしには向いてないもの。 「あ、あれ……?」 気が付くと、あたしは真っ暗な駅のホームに立っていた。 何で? さっきまで部室にいた筈なのに。 慌てて辺りを見回すけれど、ホームどころか駅の周辺からも人の気配が全然しない。 「どうなってるのかしら」 ホ-ムを改めて見回してみる。見たくなかったけれど。 蛍光灯だけが照らしている構内は随分と汚くて、柱なんて赤錆でボロボロになっている。地面のコンクリートが赤いのもそのせいよ。 そのせいよね……。 ここはどこの駅なのかしら。全く見覚えがない。外に明かりはなく、この駅以外は永遠に続きそうな真っ暗闇しかない。 一体何が起こったのかさっぱり分からない。あたしは一歩も動けずに 「いやああああああああああああああああああああ!!!」 その突然の叫び声にあまりに驚いたあたしは、一瞬呼吸を忘れてしまった。 「何!? 何なの!? さっきの悲鳴は何なのよ!?」 パニック寸前のあたしは一刻も早くここから出ようと、改札口へ走った。自分の荒い息遣いと壁に反響した足音だけが聞こえる。 周りを見ている余裕なんてなかった。後で思うと、見なくて正解だったかもね。 恐怖からの逃避を図ったその先で、あたしは地獄を見た。心臓が縮み上がった。全身から血の気が引く音がした。 改札口の辺りは血痕だらけになっていた。床も壁も天井も……、一体何をすればこんなに飛び散るのだろう……。 そして改札機のそばには何かが 「……みくるちゃん!?」 どうして? どうしてこんなことになってるの!? 血まみれになって倒れているみくるちゃんはあたしの声に気付いてこっちを見た。 「みくるちゃん! 何があったの!? しっかりして!」 「涼宮さん…………逃げて下さい…………。この世界は…………もう…………」 「何言ってるの!? みくるちゃん! 」 「……じ………く…………」 「 !」 「………………………」 もうみくるちゃんが何を言ったか聞き取れなかったし、自分が何を言ったかさえ覚えていなかった。 「 !」 「」 「」 「」 「」 「 「 「 「おい、ハルヒ? ハルヒ?」 あたしは気付くと、机に突っ伏して寝ていたみたいだった。額は汗でびっしょりになっていた。 ゆ、夢? そうよね、あんなこと現実にはあり得ないもの…………。 「どんな夢を見てたんだ? 随分と苦しそうだったが、大丈夫か?」 キョンはまだ呼吸の整っていないあたしを心配しているみたい。 視線を移すと、心配そうにこちらを覗くみくるちゃんが見えた。ちゃんとメイド服を来てるし、勿論血なんてついてない。 あたしは立ち上がると、何か話しているキョンを無視してふらふらとした足取りでみくるちゃんに近付いた。みくるちゃんは少し驚いた表情をしていたけどね。そんなのどうだっていいわ、さっきのが夢だっていう証拠が欲しかったから。 「みくるちゃん、何も起こってない……よね……?」 「え? は、はい、いつも通りですよ」 あたしはみくるちゃんに抱きついて泣いていた。 「す、涼宮さん?」 「ちょっと……怖い夢を見ちゃったから……。うん、大丈夫よ……」 みくるちゃんは、優しくあたしを撫でてくれた。ちょっと恥ずかしかったから、悪夢を見たのをキョンのせいにして解散した。 家に帰ってからは、一晩中なんだか怖かった。それはもうキョンから借りたゲームの所為で動けなくなった有希といい勝負だったかもしれない。 けど、何も起こらなかったし、あの夢も見なかった。 でも、翌朝にそれは起こった。 あの悪夢はただの夢だったことにほっとして、何時ものように学校に向かっていたあたしは、突然目眩に襲われて倒れた。 気がつくと、ほほにアスファルトの感触がある。その場に倒れたままだった。 「ったく……誰も助けてくれないなんて薄情な……」 ここは一通りの多い通学路なのに、人の気配が一切なかった。 そして辺りは真っ白な霧で覆われていて、5メートル先も見えない状態だった。 「え? なに……これ……」 何より不安を誘うのが、全くと言っていいほどに音が無いことだった。 音がしないなんて雪が降った日みたいだけど、今は凄く不気味に感じる。 無響室に入れられた人は不安感を抱くとかいう実験について聞いたことがあるけど、今のあたしはそれに近い環境下におかれているのかもしれない。 ここは毎日通る道なのに、どう進めばいいか分からない。電柱とか、特徴がある家とか、そういった目印を探しつつ学校へ向かった。もう家を出てしまった以上、学校に行った方が安全だと思ったから。 そうして何とか進んでいた時、私は不意に足を止めた。 白い霧の中に、ぼんやりと影が見える。その形からして、路上に誰か倒れているようにしか見えなかった。 あの時のよく似た状況の記憶が頭を埋め尽くす。 嫌、見たくない…………。 それでも、あたしには前に進むしかなかった。 重い足取りでも、確実にそれに近づいていた。 やがて霧の中から見えてきたのは、血溜まりに倒れているキョンだった。 「……え…?」 今回は夢じゃない。体を流れる血が冷たく感じた。 「嘘……でしょ……?」 キョンを揺さぶっても、全然反応しない。手も首も、だらんと重力に負けたまま……。 「嘘って……、言ってよ……ねえ!」 あたしの両手が真っ赤になっていた。キョンはおびただしい量の血を流して、温かさを失っていた。 「どうすればいいの……!」 救急車を呼ぼうと思い立って、慌てて震える手で携帯を取り出した。 「……どうして?」 圏外という赤い二文字が画面に表示されていた。助けは来ない、あたしにも助けられない。 キョンは死んでしまった? これはみくるちゃんの時と同じ「夢」……よね……? でも、このべっとりとした嫌な感触や、鉄の臭いは…… ………… ………… あたしは狂ったように泣き叫んだ。声が裏返り、しわがれても構わずに叫び続けた。 「…………!」 あたしは泣くのをやめた。 足音が聞こえた。しかもそれが段々と近づいていた。 「だ、誰……誰なの!?」 あたしは虚空に向かって叫んだ。虚勢でも張っていないとおかしくなってしまいそうだった。 すると、返事が聞こえた。 「涼宮さん!?」 あの声は、古泉君! 良かった……。 霧の中から姿を現したのは間違いなく古泉君だった。 「涼宮さ…………」 古泉君はキョンの亡骸を見て言葉を失った。 「これは……」 「あたしが来た時には、もう……」 「朝比奈さんに続いてまさか彼が……」 その言葉にはっとした。 「みくるちゃんも!? どういうことなの?」 「朝比奈さんは、先日、駅の改札口で」 「何ですって!?」 古泉君の話していた内容は、あの時の夢と全く同じだった。 あたしは頭を抱えた。ひどく混乱していた。信じたくないことばかりがぐちゃぐちゃになって頭の中を掻きまわしていた。 どういうことなの? あれは夢じゃなかったの? 「このままでは、この世界は……終わってしまいます」 それは、みくるちゃんと同じ台詞だった。 『この世界は…………もう…………』 「古泉君、この世界って何なの? 何でみんな殺されたの? この世界はどうなっちゃうの!?」 あたしが古泉君に掴みかかっていたその時、後ろから声がした。 「あら、揃ったのね」 振り向いたけど霧しか見えない。 「誰よ!」 「あら、名前なんて言わなくても分かるでしょ?」 霧の中から、うっすらと影が見えてきた。 「彼を殺したのはあたしよ。話を面白くするには良い演出でしょ?」 笑っているような口調だった。 「ふざけるな!」 あたしはそいつに向かって怒鳴った。 「ふざけてはないったら。彼もあの子も必要な犠牲なんだから」 まさか、みくるちゃんもこいつが……。そう判断した瞬間、自分自身でも驚く程の激しい憎しみという感情を抱いていた。 「良いわねぇ……、良いわその表情……。あたしを殺したいの? 出来るかしら?」 あたしは呼吸が荒くなっているのが分かっていたけれど、それを抑えることはしなかった。 「悔しいのなら、学校で待ってるからいらっしゃい。面白いものを見せてあげるから」 そう言って、そいつは霧の中に消えた。 キョン…… そいつが消えた頃にあたしはようやく落ち着いた。古泉君が霧で真っ白の世界を見回しながら呟いた。 「僕自身も、裏世界にいるのは初めてなんですが……。この霧の世界……、まさにサイレントヒルですね」 「それって……あたし達はホラーゲームの世界に放り込まれたってこと? 冗談じゃないわ!」 本当に冗談じゃなかった。ホラーの世界が現実になったら……とてもじゃないけど、主人公みたいに生き残れる自信なんて……。 「しかし、このままでは何も進展しません。ここで敵の襲撃を受ければ助かる見込みはありません」 あたしは決意した。キョンの仇を取らなきゃ。 「……分かったわ、あたし達が主人公になってやろうじゃないの。主人公は不死身なんだからね」 あたしは別の世界の涼宮ハルヒだと説明すると、古泉君はあっさりと理解してくれた。 なんで不思議に思わないのだろう……。 古泉君によると、この世界のあたしは数日前に失踪してしまっている。それ以来、裏世界と呼ばれるおぞましい空間が発生し、そこで殺人事件が起こっているらしい。 その犠牲者はキョンやみくるちゃんを含めて20人を超え……。 そして、今いるのがその裏世界。惨劇の舞台に、あたし達はいる。 「つまり、狙われてるってこと?」 そう思いたくなかったけど、そう思わざるを得なかった。 あたし達はあの女のいる学校へ向かうことにした。 何かが襲ってこないか不安だったけども、静寂を破るようなことは起こらなかった。 どれくらいの時間が掛ったのだろう、霧の中を歩いて、ようやく学校に着いた。 でも、古泉君は入るのを躊躇っていた。 「どうしたの?」 「裏世界の詳細をご存知ですか?」 「どんな世界なの?」 「その世界の建物の内部はとても凄惨なことになっています。最もおぞましいと言われる程だそうです。覚悟をしないと、精神的に参ってしまいます」 あたしは頷いて学校へと入った。 覚悟はしていたつもりだった。 でも、古泉君が言っていた通り、入った瞬間に食道がケイレンを起こした。 「ぅ…………」 あの時の駅より酷い、酷過ぎる。 「大丈夫ですか?」 何もかもが赤錆と血飛沫でどす黒い赤色になっていた。血の臭いがする……。この学校のあらゆる場所で殺し合いがあったような状態だった。 「ええ。なんとかね……」 蛍光灯は全部割れていて、外の霧が唯一の明かりになっていた。 「かなりの邪念を感じますが……、とりあえず、進みましょう」 「ええ、そうするしかないわね……」 昇降口 まず、自分の上靴の場所を調べる。 履き替えるつもりなんて勿論無い。血でこんなに汚いんだから、土足でも構わないだろうし。 二度と触りたくないくらいに汚い上履き以外は、変わった物は入っていなかった。 「おや、これは心強いですね」 古泉君が見つけたのは、ショットガンだった。弾も幾つか見つけたみたいだった。 古泉君は、弾をポケットに入れると、その一つを装填して構えた。手慣れたように見えたのはどうしてだろう。 「頼れる武器があると、やはり落ち着きます」 こんな物騒なものを手にして落ち着くなんておかしいけど、今は命の危険に晒されているのだから、古泉君が正しいと思う。 「この世界がゲームと同じなら、武器はいろいろと見つかる筈ですね」 なるほど、だから学校にそんなものが置いてあるのね。 あたしも何か役に立ちそうなアイテムはないかと見回すと、傘立てに傘に混じって何かが立ててあった。 手に取ると、日本刀だった。鞘に紐がついていたので、それを腰に巻いて結んだ。 「いいものを見つけたみたいですね」 ショットガンを持った古泉君が言った。 「僕も近接武器が欲しいですね。ショットガンには弾に限りがありますから。銃身で殴るには少々重たいですし」 ズズッ…… その時何かの音がした。 「おやおや、歓迎でも来たようですね」 勿論そのままの意味でないことは知ってる。敵でしょ。 廊下で何かが動いていた。 それが這ってこちらに来ている。だんだんとその姿がはっきりと見えてきた。 ゾンビというのかは分からないけど、人の形をした血まみれの気持ち悪い生き物が近付いていた。 「涼宮さん、下がって下さい」 「いえ、その必要はないわ……」 あたしは刀を鞘から引き抜いて、銀色に輝く刃を見つめた。 決心したんだもの、あたしはキョンの仇を討つまでは……いえ、討っても死ねない! 「弾はもしもの時の為にとっときなさい!」 あたしは目の前の敵に向かって走った。 あたしの姿を認めるとそいつは何やら呻いていたけれど、そんなの気にせずに素早く背後に周りこんで、これでもかという位に斬りつけた。 背中から血を噴き出してもがいていたけど、蹴りを一発お見舞いしたら動かなくなった。 「す、凄いですね涼宮さん」 古泉君の視線で、あたしは大量の返り血を浴びていた事に気付いた。それを見たから、古泉君は少し驚いたのだろう。 「この調子ならノーダメージでいけそうね」 「では、行きましょうか」 1F 薄暗い廊下を歩いて行く。目的地は分からないけど、学校のどこかにアイツはいるから順番に回っていけばいつか見つかるだろうし。 古泉君が腕を組んで壁とにらめっこをしていた。 「これは……困りました。ここには手洗い場があったはずなんですが」 確かに、ここにはトイレがあった筈なのに、真っ赤で気味の悪い壁しかない。 「どういうこと……?」 「特に仕掛けもないようですし、配置が変えられていると考えるのが一番かと」 配置が変えられているだけじゃなかった。とても学校とは思えないくらいに廊下が入り組んでいた。 「なによこれ、迷子になっちゃいそう」 迷宮のような廊下を真っ直ぐ進んで行くと、机と椅子が山のように重なっていて行く手を阻んでいた。 「」 「これはどかしようがありません。仕方ありませんので、引き返しま……」 振り返った時に、あたし達は硬直した。 おぞましい生き物が天井からぶら下がってこちらを見ていた。 さっきのとは形が少し違う。天井から人間の上半身が生えているようだった。 あたしは思わず叫んだ。そして、 「よくも脅かしてくれたわね……!!」 冷静さを失っていた。 刀でこれでもかと言う程に斬りつけた。 「涼宮さん……落ち着いて下さい!」 古泉君があたしを止めた時には、その生き物は原形を止めない程になっていた。 説明してほしい? 簡単にいえば乱切りよ。それ以上は言いたくないから。 あたしは肩で息をしていた。なんでこんなにムキになっていたのだろう。 「冷静になることも必要ですよ。体力も消耗しますし」 古泉君は少し怯えた表情であたしを見ていた。自分の言動で逆上されることを恐れているようだった。 なんだか腫れ物に触るような扱いに感じて悲しくなった。 行き止まりから引き返す途中、あたしのクラスの教室を見つけた。 「何で気付かなかったのかしら」 ちょっと期待してたけど、中に入るとあたしの席もキョンの席も、やっぱり血がべっとりとついていた。 キョンの机の中から何かがはみ出ていた。出してみると箱があり、その中に拳銃と幾つかの弾倉が入っていた。 「何でわざわざ箱に入れてあるのかしら」 疑問に思いながらも拳銃をポケットにしまった。 「おや、これはこれは」 「どうしたの?」 古泉君が掃除用具入れから鉄パイプを見つけていた。 「手頃な武器が見つかりました」 感触を確かめるようにパイプを振っていた。 「ねぇ、おかしいと思わない?」 古泉君は表情を引き締めた。 「ええ、確かに招き入れた割に大した罠もなく、かつこれだけ武器が用意してあるというのは少々不自然です」 「だとすると、この世界にあたし達の味方がいるのかしら」 「そうとも考えられます。しかし過度の期待は禁物です。このように武器を提供するので精一杯なのかもしれませんから」 2F 階段を上ったところでいきなり現れた巨大化したゴキブリみたいな虫の大群に対し、古泉君の鉄パイプが早速活躍した。 古泉君が何とかしてくれていなかったら、あたしは卒倒してたかもしれない。想像してごらんなさい、でっかいゴキブリが顔めがけて飛んできてかじりつこうとしてくるのよ。生きた心地がしないわ。 虫の大群はいまや抜け殻の山となっていた。それを蹴散らして廊下を進み、部屋を確認していく。 「……あった!」 こんな所に部室があった。SOS団と書かれた紙に希望が膨らむ。 でも、扉をあけて中に入るとやはり酷い有り様だった。 「うわ……」 本が棚から崩れ落ちたままの状態で埃をかぶり、みくるちゃんの衣装までもが血で染まっていた。 だけどそんな中で唯一、パソコンだけが血を浴びずに綺麗なままだった。 それには二人ともほぼ同時に気付いた。 「古泉君、あのパソコン」 「何かヒントがありそうですね」 「やっぱり味方がいるって考えで正解みたい。よかった」 スイッチを押すと、黒い画面に文章が現れた。 『このメッセージは条件を満たすと表示されるものであり。そちらとの疎通は出来ない』 あらかじめ用意されたプログラムってことかしら。 『裏世界と呼ばれるその空間は現実から隔離されている別の世界』 これは古泉君から聞いたから知っている、でも、その後に表示された一文にあたし達は首をかしげた。 『しかし、神がその世界を支配すれば、その世界が現実となる』 ……つまり、この気持ち悪い世界が現実と入れ替わるってこと? 冗談じゃないわ。 それより、気になる単語があった。 「神とは何のことでしょうか……」 「少なくとも、良い神じゃなさそうね」 パソコンは神ついて詳細を述べることは無かった。でも、そいつにこの空間を支配されたらおしまいってのは分かった。 『クリーチャーは貴方達の憎悪や恐怖が実体化したもの。冷静さを保てば遭遇する頻度は下がると予測される』 つまり、あたしがもっと冷静になれば厄介な敵は現れなくなるってこと? 「ごめんね古泉君、こっからはもっと落ち着いて行動できるように気をつけるわ」 「いえいえ、謝らなくて結構ですよ」 *** 朝学校に来ると、ハルヒがいなかった。珍しく遅刻をしているようだ。 あくびをしながらその空席を見ながら座った時だった。 喜緑さんが教室にやって来た。そして真っすぐに俺のところに歩いてくる。喜緑さんが俺に用があるということは何かでっかい事件があったということだろうか。 「涼宮さんが登校途中で倒れて病院に運ばれました。これは緊急事態です」 いきなりのことに、俺は仰天した。 「なんだって……?」 俺は机上に置いたばかりのカバンを再び持つと、喜緑さんと一緒に教室を出た。授業? サボりというやつだな。 外で朝比奈さんが待っていた。 「キョン君……涼宮さんが……」 「喜緑さんから聞きました。早く病院に行きましょう」 「こちらに来てください」 喜緑さんに手招きされて近づいた瞬間、世界が一変した。 「へ?」 「ん?」 いつの間にか病院の前に立っていた。空間移動をしたらしい。 って古泉はいないが置いて来たとかそういうことはないですよね。 「既に病室にいます。詳しい話は皆さんが揃ってからに」 病室に入ると、ベッドでハルヒが眠っていた。その傍で古泉が待っていた。 「待ってましたよ」 「ハルヒは一体どうしたんだ」 「目撃者の話では、歩いていて突然全身の力が抜けたように倒れたそうです。その原因は……」 「それは私が説明します」 喜緑さんが割って入った。そんなに難しく深刻な話なのだろうか。心配になってきた。 「現在、涼宮さんの精神は抜き取られて別の世界に閉じ込められているようです」 別の世界って……。 「その空間に干渉しているところですが、情報改変が殆ど出来ていません。彼女にヒントや武器を与えることが精一杯です」 武器? どういうことだ、そんなに危険な世界なのか。 「簡単に言うと、サイレントヒルの裏世界、という表現が貴方がたには一番分かりやすいと思います」 「ぇぇっ?」 隣で朝比奈さんが俺以上に驚愕していた。朝比奈さんも知ってるんですか? 「はい、ホラーゲームの初期作の一つとして有名ですから……。でも、あんなゲームの世界に閉じ込められるなんて……」 そこで朝比奈さんがハッとした表情を見せた。 「もしかして昨日の……!」 「昨日ハルヒがうなされてた悪夢のことですか?」 「はい、それが何なの予兆だったのかもしれないです」 「そんなことがあったのですか。やはり狙われていたようですね」 喜緑さんの言う『狙われていた』というのはどういうことなのだろうか。 「閉じ込められている目的は何なのですか」 喜緑さんは古泉の質問に一切のタイムラグなく回答した。 「彼女を閉じ込めた相手はあくまで本気のようで、ゲームの様に楽しませる積もりは毛頭ないようです。相手の目的は、彼女を生け贄にして神を生み出し、その力で裏世界を現実と入れ替えることと推測されます」 生け贄……? おいおいまてよ。 それって、つまり……。 このままじゃハルヒが殺されるのか!? 「なんとかして助けられないんですか!?」 「何度も裏世界の改変を試みましたが成功していません。また相手の正体は不明で、神がどのような力を持つかも推測に過ぎません」 「そういえば、長門さんはどうしたんですか?」 朝比奈さんの一言で思い出した、長門がいない。なんでこんな時にいないんだ。 「長門さんは……隣の病室にいます」 なんだって? 「彼女は裏世界への侵入を試み、現在涼宮さんを捜索中です」 *** 涼宮ハルヒの精神が隔離された空間への侵入を試みたところ、突然「目眩」という症状を起こし、気付くと学校にいた。 しかしそれは全く似て非なるものであった。配置が著しく変えられた校舎内はどこも血痕だらけで、とても禍々しい光景だった。 ここに涼宮ハルヒがいる。 ……おかしい、統合思念体との連絡がとれないので現在の状況すら把握出来ず、おまけに情報操作が全く行えない。 有機生命体の五感を頼る他ないようだ。 前方に何かがいた。 *** 3F 階段を登り終えたときから古泉君の様子がおかしい。 さっきから落ち着きがないし、まるで風邪を引いたみたいに震えて呼吸も荒い。 「古泉君、大丈……」 思わず後ずさりしてしまった。 古泉君の腕が、ところどころカビのように黒くなっているのが見えた。 「こ、古泉君?」 もう、古泉君は古泉君ではなくなっていた。 「亜阿あああぁ唖あああああああああ!!」 古泉君は意味不明な言葉を叫ぶと持っていた鉄パイプであたしを殴りにかかった。 あたしはなんとか避けたけど、古泉君はまだあたしを狙っていた。 走って逃げたけど、向こうも走ってくる、逃げるのは無理みたい。 振りかぶった隙に鉄パイプを奪い取ることには成功したけど、古泉君は素手での攻撃を止めない。何度も何度も掴み掛ろうとする。 「ちょっと…………やめ……て……」 「ぁぁぁぁぁぁぁ………………あはははははは……!」 古泉君があたしの首を締めようとしてくる。あたしはポケットから拳銃を取り出した。古泉君を突き飛ばしてその隙に距離をおき、構えた。 「ごめんなさい!」 拳銃の弾は、古泉君の頭を貫いた。糸が切れた操り人形のように倒れ、もう動かなかった。 「古泉君……何で……?」 なんでさっきまで味方だったのに突然こうなったの? しばらくして落ち着きを取り戻してから、古泉君の服のポケットからショットガンの弾を取り出す。 その時、何かが光っているのが見えた。古泉君の首に紐に通された鍵がかかっていた。 鍵には「体育館」と書いてある小さな紙が貼ってあった。 *** 痛い……? 寂しい……? 怖い……? 様々なエラーが発生し、私は歩みを止めた。 理解不能、私にはそのような「感情」など……。 では、どうして呼吸が乱れている? どうして過度に背後を警戒する? どうして前進を躊躇う? どうして? それらの自問に答える事が出来なかった。 幾度となく殲滅させた筈のクリーチャーが再び現れた。彼らは執拗に私を喰らおうとやってくる。 それに対して、箒を分解して金属製のパイプのみにしたものを応急的な武器としているが、簡単に折れてしまいもう箒の残りは少ない。持久戦になればこちらの劣勢は明らか。 早急に新たな戦法を練らなければならない、そう思った時だった。 机の上に、いつの間にか機関銃が置いてあるのが視界に入った。 それを手に取った瞬間、メッセージを受信した。 『私達に出来るのはこれ位だけど、これで思いっきりやっちゃいなさい!』 「朝倉涼子……」 統合思念体の干渉はこれが精一杯のようだ。しかし……、 「充分」 私はその機関銃を手にすると、向かってくるクリ―チャ―を飛び越えて走った。 この裏世界はゲームではない。 たとえチートと言われようと構わない。 あらゆる手段を尽くして、この世界を終わらせる。 *** しばらく目を閉じていた喜緑さんが目を開けた。 「裏世界の観測が可能になりました」 待ちに待った知らせだった。ここに来て数時間ずっと気になっていたことをぶつける。 「ハルヒは、長門はどうなってるんですか!?」 「現在は二人共に大丈夫のようです。しかし、裏世界ではキョンさん、古泉さん、朝比奈さんは死んでいます」 「なんだって……?」 「あくまでもあの空間は仮想のものであり、そっくりにコピーしたものです。しかし、世界が入れ替わった場合はそれが現実となり、その時にはあなた方は消えてしまいます」 俺達三人は固まってしまった。 十数秒たってから、その静寂を破るように、朝比奈さんが消えそうな声で言った。 「消えちゃうんですか……」 「……くぅっ……」 ハルヒがまた苦しそうな声をを漏らした。 自分に何もしてやれないことに腹が立つ。俺達はハルヒに触れることすら許されない。接触すると相手に何かされる懸念があると言う。 目の前で苦しそうに顔を歪めながら眠っているハルヒを見てやることしか出来ない。 頼む、頼むから、無事に目覚めてくれ……。 俺達には祈ることしか出来なかった。 *** 体育館 「やっと来たのね」 古泉君の持っていた鍵で扉をあけると、体育館で待っていたのは予想通りアイツだった。 ここも照明は機能してないけど、霧がわずかな明かりとなってアイツの顔を照らしていた。 ここに来るまでに、アイツの正体はなんとなく分かっていた。 アイツの声は聞いたことがなかった。何故なら、それが自分の声だったから。 「アンタがこの世界のあたしなの?」 「そう、だったら何?」 「何でこんな事をしたの」 「この世界は唯のコピー、いつかは消される運命にある。それが気に入らないの。だから神の力でこの世界と貴方の世界を入れ替えてこの世界を本物にするの。みんな、神を生み出すのに必要な犠牲だったのよ」 神……? 「紹介するね、これがこの世界の神よ」 暗くて気付かなかったけど、アイツの隣に巨大な化け物がいた。 あたしが想像する神は、宗教とかそんなの抜きでももっと綺麗なものだった。 けど、目の前に現れた神は、とても神とは呼べないものだった。 5メートルはあろう神だという生物は、人の形はしているがひどく痩せていて、やはり血まみれだった。 「神は絶対的な存在よ、全てを支配するの。だから、人間は神にはなれないの」 アイツが話を区切る度に静まり返る体育館。「神」がこちらを見ている。その視線を受けたあたしは一歩も動くことが出来なかった。 「この神はまだまだ未熟だから、憎悪という感情が足りないの、だから貴方が神に必要な生け贄に選ばれた。そんな貴方がちょっとでも強力になってもらう為にあの男を殺したの」 あたしの怒りを増すためだけにキョンを殺したなんて……。 でもあたしは何も言えなかった。それに対して怒れば相手の思うつぼだし、こんな魔物の生け贄に選ばれたことがショックだった。 「神に逆らうことは許さない。例えあたしでもね」 突然、「神」はアイツを手にとり、じっくりと舐めるように眺めていた。 「あら、神は貴方よりあたしを先に欲しいみたいね」 「な、何言ってるの? アンタも殺されるのよ」 「いいえ、光栄なことよ。神のヴィクティムになるのだから……」 神は我慢できなくなったのか、突然そいつをまるでスナック菓子のように喰らいついた。 アイツの身体が噛み切られて……。これ以上言わせないで。 「う……わ……………………」 あたしはとっさに目を瞑り、耳を押さえた。それでも骨の砕けるような嫌な音が響いていた。 しばらくして音がなくなった。 どうやら食事が終わったらしいので目を開けるた。「神」は血をぼたぼたと垂らしながらあたしを見ている。 次に喰われるのはあたし。 アイツへの復讐は出来なかった。でも、この「神」とやらをなんとかしないと、この世界は終わらない。あたしは、ショットガンを構えた。 「くたばりなさい!!」 引金を引いた瞬間、強い衝撃で肩に痛みが走った。 あたしのような体格では、反動の大きなショットガンは身体に負担がかかることは百も承知。 でも、これは遠距離からでもダメージを与えられる数少ない武器だから、それくらいは我慢。 肩の痛みを堪え、次々と弾をこめては頭を狙って撃ち続けた。 ダメージがあったのか、「神」は呻き声を上げている。 「やったかしら」 油断してしまった。次の瞬間、その長い腕でなぎ払ってきた。 避けようとすることすらできなかったあたしの身体は宙に浮き、十数メートル飛ばされて叩きつけられた。 何とかして立ち上がったけれど、全身が打撲で痛い。ショットガンもどこかに飛んでいってしまった。こんなに暗い中ではすぐには見つからないから諦めるしかない。 「いっ……たいじゃない………………!」 あたしはふらつきながらも再び「神」と向き合い、拳銃を撃ちながらショットガンを探した。 でも「神」は怯むことなく迫ってきて、またその腕に弾き飛ばされた。 「ぅう……」 床に叩きつけられたときに頭を強く打ってしまい、立ち上がることが出来なくなっていた。 拳銃も暗闇の中に消えてしまった。 近づいてくる「神」から逃げようと痛む四肢を必死に動かして床を這ったけど、すぐに追いつかれてしまった。 あたしはとうとう「神」の手で押さえ付けられてしまった。腰には日本刀があるけど、激しい痛みで手が動かなくなっていた。 血でべとべとの「神」の手に圧縮される気分は最悪だった。 苦しい、息が出来ない。こんな化物に食べられるなんて……。 「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」 叫んでもここには誰もいないから無駄なことは知ってる。けども、最後までこいつに抗っていたかった。 その時、「神」の荒い呼吸に混じって、誰かの足音が聞こえてきた。 「させない」 ……有希!? 銃声が絶え間なく響いていた。「神」はたまらず悲鳴を上げてのけぞり、あたしはなんとか手から解放されたた。 視界が開けて、音のする方向を見ると有希がマシンガンを撃ち続けているのが見えた。 何十発撃っただろう、「神」は遂に倒れた。それでも有希は「神」が完全に動かなくなるまで攻撃をやめなかった。 マシンガンの音が止む。そして、ガシャンという大きな音を立てて床に落とした。 そしてこっちに駆け寄って、あたしの身体を支えて立たせてくれた。 「涼宮ハルヒ」 「有希……、ありがと」 「いい、私も……一人で心細かった……」 あたしと有希は抱き合ったまま、静かに泣いた。 窓から眩しい光が射している。霧が晴れて、青空が見えた。 外に出ると、校舎は相変わらずだったけど、空気はよどみがなく透き通っていた。 太陽が眩しい。あたしと有希は、その光に包まれていった。 *** 涼宮さんが目を覚ましたようです。 状況説明が困難な為、長門さんが隣の病室にいることは涼宮さんには内緒になっています。 「…………」 涼宮さんと同時に目覚めた長門さんは、ぼんやりと自分の手を見つめていました。 「どうしました?」 「大量のエラーが発生している。身体の制御すら上手く出来ない」 彼女の手は震えていました。 「もう大丈夫ですよ」 私はそっと彼女を抱き締めました。彼女は私に顔を埋めていました。おそらく、泣いていたのだと思います。あくまでも推測ですよ。 数分間そのままでいましたが、長門さんが離れました。 「エラーの削除が完了した」 「では、そろそろ涼宮さんの所へ行きましょう。貴方は涼宮さんにプリンを買いに行ったことになっています」 「……分かった」 「では、情報操作を始めますね」 その時、彼女が小さな声でありがとうと言いました。少し恥ずかしそうでしたね。 情報操作により、私以外は今回の事件についての記憶を失い、長門さんは涼宮さんの見舞いに来たことになりました。これは、トラウマと呼ばれる精神状態に陥らない為の救済措置です。 さあ、私はこの病院にはもう用はないので学校に戻りますね。 それでは失礼します。 inspired SILENT HILL 3 おまけ 長門有希がビビりプレーヤーだったら 痛い……? 寂しい……? 怖い……? 様々なエラーが発生し、私は歩みを止めた。 それらのエラーを言語化するならば……、 「帰りたい……」 いっつも助けてくれるパパ(統合思念体)との連絡がとれないから、一人でなんとかするしかない。 でも、この間キョン君に借りたゲームをしたばっかりだから怖さ倍増なの……。 どうしよう、有希泣きそうだよ……。 「こわいよパパ……」 あー来る、こういう所絶対何か来る。ドッキリ要素というものが絶対ある。 こういう時は……、歌を歌おう。 「ある~はれ~たひ~のこt」 ガッシャーン! 突然ドアを突き破ってクリーチャー登場。 「POOOOOOOOOOO! ふっざけんにゃよ! もーやだ! 無理! 終了! 終了!」 私は走りながら思い切り泣いた。いいもん、誰も見てないから……。 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁんパパァァァァァァァァ~~!!」 MISSION FAILED... おまけ 2 あのEnd マシンガンの音が止む。そして、ガシャンという大きな音を立てて床に落とした。 そしてこっちに駆け寄って、あたしの身体を支えて立たせてくれた。 「涼宮ハルヒ」 「有希……、ありがと」 「いい、私も……一人で心細かった……」 あたしと有希は抱き合ったまま、静かに泣いた。 突然、窓から眩しい光が射した。 「なにあれ!?」 空中に浮かぶ複数の円盤、それは……、 ま さ に U F O 「有希! UFOよUFO! これは調査しなきゃSOS団の名が廃るわ! あたし達の活動を全世界に広められるチャンスよ!」 あたし達は外に出た。グラウンドに着地していたUFOは合計三機。中から出てきたのは、期待通りの宇宙人! 「ユ、ユニーク(タコさんウインナー……)」 「ねえあなたたち! どこから来たの?」 「 %*#\$@=-@!」 「な、何言ってるのかサッパリね……」 「意思疎通は困難と思われる(おいしそう……)」 「+ |\ ; *// #!」 宇宙人が取り出したのは、光線銃? ビビビビビビビビビ いきなり有希が撃たれて倒れた。有希は痺れて動けない様子だった。 「………………ユニー……ク…………(一口だけでもかじってみたかった……)」 「有希ー! 有希ー! ユニークとか言ってる場合じゃないわよ! アンタ達! 何するのよ!」 「 *#/(^^) $/-!」 すると今度はあたしに光線銃を向けた。 「な、何よ! やめなさ……いやあああああああああああああ!!」 そして動けなくなったあたし達はUFOに乗せられて…… ユニーク(笑)
https://w.atwiki.jp/stampcatalog/pages/296.html
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5820.html
俺は目を覚ました。 ん?ここは… 俺の部屋だ。 携帯で時刻を確認する。 ……14時20分… なんと、俺はこれほどまでに爆睡してたというのか。いや、違うな…昨夜はファミレスでSOS団メンバーと ずっと話してたんだっけか。そして寝たのが朝の6時くらいだったことを考慮すると、然しておかしなことでもないな。 …そういや、俺は先ほどまで船上にいたんだよな。そして、ハルヒからいろいろと悩みを打ち明けられたんだ。 いつもの俺なら【あれは夢だ】と断じてそれで終わりだろう。が、今の俺には到底そうは思えない。 おそらくあれは実際に起こったことなんだ。あの世界の【俺】が最後に泣きこぼしてた言葉が… 鮮明に頭に残ってる。転生…即ち生まれ変わるって意味だが、一般常識で捉えた際に、まず前世の記憶は なくなるというのは間違っていない。つまり、本来なら2012年という時代に生きる俺が過去の【俺】の記憶を 取り戻すなんてことは絶対にありえないのだ。そのありえないことが現に起こってしまっている。 言わずもがな、ハルヒの能力があってのことだろう。連日俺が見た夢…いや、正しくは 実際に未来で起こりうる最悪のケース、そして世界が崩壊する様…それらをハルヒは無意識の内に 俺に見せてくれた。ならば、俺がさっきまで見ていたあの世界の記憶も…造作ないことなのであろう。 『普通の一人間として生きたいから、神に通じる能力は全て消し去りたい』そんな趣旨のことを ハルヒは言っていた。だが、ヤツのそういうとんでもパワーがなかったら、そもそも俺は過去の【俺】と… いや、俺だけじゃない。過去のハルヒのこともそうだが、一生知らぬまま生きていったに違いない。 そう、何も真相を知らぬまま… だから、俺は深く感謝したい。過去の記憶を垣間見ることができたハルヒの能力に。 …… ん?電話だ…古泉からか。何の用だろうか…まさか…!? 「もしもし!」 「おや、さすがにこの時間帯となると起きてらっしゃったみたいですね。ぐっすり眠れましたか?」 「俺のことはどうでもいい!それより何の用だ?ハルヒに何かあったのか!?」 「いえいえ、別にそういうわけではないですよ。とりあえず落ち着いてください。」 取り乱すような由々しき事態ではなかったらしい。とりあえず腰を下ろす俺。 「少々あなたとお話したいことがありましてね…急で申し訳ないのですが、 今から学校近くの公園に来てはいただけませんか?すでに長門さんもいらっしゃってます。」 「ん?昨日のことで何か話し足りないことでもあったか?」 「まあ…そんなところですね。」 今電話で話せよ…と言いたくもなったが、長門もいるとなると話は別だ。 おおよそ専門的なことでも話すのだろうから、みんなとしたほうが都合が良いって流れだな。 三人寄れば文殊の知恵…いや、ちょっと意味が違うか。 「そうそう、俺のほうでもお前らに話したいことがあったんだよ。だからちょうどいい。」 「そうなのですか?それは楽しみです。」 もちろん話すこととは、【あの世界の記憶】である。 真相を語ってやるのは、これから協力していく仲間にとっては当然のことであろう。 「じゃ、すぐ行くから待ってろよな。」 電話をきって、ただちに着替える俺。腹ごしらえに朝飯…いや、今は昼だから昼飯と言うべきか。 昼飯でも食ってから行こうと思ってたが、いかんせん目覚め時なんでいまいち食欲が沸かん。 まあ、後回しにしてしまっても大丈夫だろう。死ぬわけじゃないしな。 洗顔、歯磨き、髪の手入れ…とりあえず、最低限の身だしなみを整えた俺は 自転車に跨り、公園へと走るのであった。 「よう、待たせたな。」 「いえいえ、むしろ急に呼び出したこちらが悪いんですから。」 「……」 とりあえず、ベンチに座る俺たち三人。 「…昨日は眠れた?」 「え?」 「昨日は眠れた?」 なんと、長門さんが人間味ある暖かい言葉を俺に投げかけてくれているではないか。 「ああ、大体8時間睡眠ってところだな。ぐっすり眠れたぜ。」 「そう…よかった。」 「それで、そんときに見た内容なんだがな…。」 俺は記憶の一部始終を話した。 …… 「「……」」 長門はともかく、古泉まで黙ってしまっている。あまりの内容に面喰ってしまったのだろうか。 「これは…素晴らしいですよキョン君。涼宮さんのお気持ちがこれでようやくわかったのですから… 自称涼宮さんの専門家としては、情けないことこの上ないですけどね。」 「…私もここまでは把握していなかった。 涼宮ハルヒのカギたるあなただからこそできた所以。感謝する。」 「いやいや、感謝とかそんな大袈裟な。」 だが、長門と古泉の言いたいこともわかる。確かに俺たちは昨日涼宮ハルヒの軌跡を辿っていたわけだが、 あくまでそれは史実…つまり単なる事実に過ぎなかった。その過程の中でハルヒがどんな思いで 神の代行者として奔走していたのか…それを無視して結果論にしがみつくだけでは、 事実こそわかれど真実には到底辿り着けないだろう。 「それにしても驚きです。まさかあなたの前世がノアの一族の一人だったとは…。」 「なあ古泉、まさかとは思うが…もしかしてこれはアレか、 いわゆる世間一般で知られてる【ノアの方舟】ってやつなのか??」 「その通りです。旧約聖書の『創世記』、6章-9章に出てくるかの有名な洪水伝説のことですね。」 「あの洪水がまさか第三世界崩壊時のそれだったとはな…って、ちょっと待て。そういやノアの方舟って… あれは神話じゃなかったのか??もっとも、記憶を確かめた今となっては今更な疑問かもしれねえが…。」 「確かに、神話と捉える説が学会では有力です。しかし実際は…、長門さんお願いします。」 「【ノアの方舟】で知られている大洪水は…約3000年周期で地球を訪れる地球とほぼ同じ大きさの氷で 組成された彗星天体Mによるもの。地球軌道に近づくにつれ、天体Mは水の天体となり、地球に接近した時には 大音響と共に地球に約600京トンの水をもたらした。その津波は直撃地点付近で8750メートルとなり、 地球全域を覆い、地球上の海面を100メートル以上上昇させた。」 …… 実際にありえたってことかよ… 「3000年周期で地球を訪れる…これ自体は単なる自然現象であって涼宮さんの力とは 何ら関係なのでしょうが…問題は、それが地球軌道に大接近してしまったということでしょうか。」 「つまり、それが涼宮ハルヒこと、神の力によるものだと。」 「そういうことですね。それと、その話を聞いて2つ、わかったことがありますよ。」 …新たな情報を入手した途端にこれか。相変わらず、その理解力には脱帽と言っておこうか。 ヤツがわかったということは、おそらく長門も気付いてるんだろう。 「1つはフォトンベルトの正体…といったところでしょうか。」 「正体?どういうことだ??」 それについては散々昨日お前たちが説明してくれたじゃないか?まさか、またあのバカ長い 理解不能な 難解講座を受けるハメになるんじゃなかろうな…?それだけは勘弁してもらいたい… 「まあまあ、そう陰鬱そうな顔をなさらないでください。さすがに一から フォトンベルトの定義をしようなどとは思っていませんよ。話はごく単純です。ねえ?長門さん。」 「そう。」 まるで答えが決まってたかのごとく、長門は即答した。古泉もそれを確信していたようだし、なんとも凄まじい ツーカーの仲だな…頭の回転が速い者同士、ゆえの結果なのだが…そういう意思疎通能力が羨ましくもあった。 ちょっとでいいから俺とハルヒにも分けてほしいもんだな。というか、とりあえず話は単純そうで安心した。 「昨日長門さんがおっしゃったように、本来フォトンベルトというのは涼宮さんの力無しでは物理的には 存在しえない…しかし、そんな涼宮さんの意志とは別にフォトンベルトに近しい何かが接近している、 というのもまた事実でした。」 そういやそんな話だったな。 「僕が言いたいのはこの『近しい何か』の部分です。これについて、僕も長門さんも予兆こそできていましたが… ただ一つ、肝心な涼宮さんとの関連性が…どうしても見いだすことができなかったのです。なぜこんな得体の 知れないものが涼宮さんの意志とは別に存在しているのか?最大の謎でもありましたし、同時に戦慄さえも 感じていました。しかしここで大切なのは…涼宮さんは神というよりはむしろ、その代行者的性格のほうが 強かったということです。特に、あなたと出会ったときがそのピークだったといえるでしょう…精神的な意味でもね。 彼女自体は世界崩壊を望まないどころか神そのものに嫌悪さえ感じてたわけですし、 なれば涼宮さんと神は全く別の、独立した存在だと考えても差し支えはないわけですよね?」 古泉が確認をとるように聞いてくる。まあ…そうなんだろうな。というか、間違いない。 ハルヒと神が全くの別々の個体だということはまさに、俺がハルヒに対し説いた言葉そのものなのであるから。 「一方は世界の崩壊を望み、一方はそれを望まない。相殺されてるように見えますが… しかし、どう考えても力は神本体のほうが強いはず。すると、どうなりますか?」 「!」 ようやく気付いた。というか、なぜあのハルヒとの夢を見てこれに気付けなかった? それもそのはずなんだ、だってハルヒがそれを望まなくたって… 「宇宙のどっかにいる神が、勝手にフォトンベルトを作っちまうってことかよ??」 「その通りです。」 …なんてハタ迷惑な話なんだ…。 「しかし、かといって神の思い通りになる…というわけでもない。」 ここで長門が口を挟む。 「どういうことだ?」 「確かに、数値的にも総合的にも神の能力が涼宮ハルヒのそれを上回るのは明白。だからといって、 涼宮ハルヒの力そのものがゼロになったというわけではない。少しながらでも神に影響を与える。 その過程が、結果として不完全な疑似フォトンベルトを作り上げるのに至ったのだと、私はそう考えている。」 「…それが『近しい何か』の正体だと?」 「そう。」 なるほど、聞いてみれば確かに単純だった。しかし…神からしてみればそれは計算外だったんだろうな。 ハルヒの能力だって、元々は神がハルヒを代行者として縛りつけるための代物だったはずだ。それが、 まさかめぐりめぐって自分の首を絞めることになろうとは。滑稽とは、こういうときに使う言葉なのかもしれん。 「それと、これは憶測ですが…佐々木さんのことです。」 …… 古泉よ…急に話題を変えるのは無しだぜ?予想外の人物の名前に、 思わず心臓が跳ね上がりそうになったじゃないか!!? 「おいおい…どうしてそこで佐々木の名前が出てくる??」 「あなたは一連の話を聞いてみて思わなかったのですか?彼女のことを。」 「いや、だから俺には意味が…。」 …そういえば。なぜあいつがハルヒと類似した能力を有しているのか、それについて俺は今まで考えたことが あったろうか?ハルヒの能力、いや、ハルヒの正体が明らかになった今、当然ともいえる疑問が佐々木に向かう。 ヤツは一体何者なのか?という問い…どういうことだ?あいつも代行者なのか??いや…ハルヒから 自分以外にそういうのがいるなんて話は聞いたことがない。じゃあ何なんだ??まさか… 「まさかとは思うが…神が自分の言うことを聞かないハルヒを見限って、別の新たなる 代行者的存在として佐々木を選んだとか、そういうオチじゃねーだろうな!?」 そんなことになったらどうする…??佐々木がハルヒの前に立ちふさがることになるのか!? 当然、ヤツが全面に出てくれば橘、周防、藤原たちとも衝突せざるをえなくなる。ちょっと待て、 まさか藤原はこのために暗躍を…などと、底なし沼のごとくどんどんネガティブな方へと 発想をめぐらしていた俺を…古泉・長門の一言が現実に引き戻す。 「ははは、それは考えすぎというものです。」 「そこまで思いつめる必要はない。」 「……」 脱力する俺。しかし、次の瞬間にはこう言っていた。 「よかった…。」 当然だろう?最悪ともいえるケースが否定されたんだ。歓喜の一言も言いたくなるさ。 「というか、それまたどうして?なぜ2人はそう思うんだ?」 「落ち着いて考えてみればわかると思いますが…誰かを自分の傀儡に仕立て上げ、それを操るというのは まさに人間の発想ですよ。長門さんの話を聞く限り、神には創造・維持・破壊の3概念しかないように思われます。 大方、細かいことは全て涼宮さんに一任していた、と言ったところでしょうかね。いや、そもそも概念なる存在が あるのかどうかも疑わしい。生き物というよりは、一種のプログラムだと見なしたほうがいいのかもしれません。」 そう言われればそうだが…少し抽象的なような気もするぞ? 「長門はどう思うんだ?」 「人間的行為の是非は私にはよくわからない。しかし、古泉一樹のそれとは別に、私には考えうる理由がある。 内面的にも外見的にも涼宮ハルヒと神は互いに独立した存在とはいえ、それはあくまで最近の話。 元々は、双方は一つの存在だったはず。客観的役割で見れば彼女は代行者といえるが、 実質はもう一人の神、分身といってもいい。裏を返せば、それこそが代行者たる資格だといえる。」 「つまり、神の代行者というのは涼宮さん以外には存在不可能というわけですよ。 彼女の記憶から自分以外のそういった存在がなかったことからも、それは明らかです。 もちろん、佐々木さんがその縁者というわけでもありません。彼女はごく普通の一般人ですから。」 『彼女はごく普通の一般人』それをすぐさま確かめたかったのか、俺は長門に食いかかっていた。 「長門!それは本当か!?あいつは… 一般人でいいんだよな??」 「彼女は一般人。涼宮ハルヒと似た能力こそ持ち合わせているが、 私たちのような特異的存在とは明らかに異なる。」 「…そうか。」 …安心した。ひどく安心した。どうやら、佐々木は本格的にこの事件には関わっていないらしい。 これだけでも、俺の中で1つの不安材料が消えた。あいつをこんな得体の知れない事件に、 巻き込みたくはなかったからだ。しかし、そういうわけで結局話はふりだしに戻ってしまう。 「じゃあ、一般人なのなら、あの能力は一体どこからやってきたんだ?? まさか、自らそれを習得したわけでもあるまいし…。」 滝に打たれ、四書五経を丸覚えし、断食をし、仏道修行に励み等…様々な苦行を重ねたところで、 とてもではないが閉鎖空間構築といったトンデモ能力が開花するとは思えん…ましてや佐々木が そんなことをしてたなんて話聞いたことない、というか、個人的願望としてそんな佐々木は見たくない。 「結論から申しますと、彼女の能力は涼宮さんにより分け与えられたものなのではないか、僕はそう考えてます。」 「は??」 過程をすっとばして結論だけ聞く、その恐ろしさをまじまじと体感できた瞬間だった。 『ウサギとカメが競走しました、結果カメが勝ちました、めでたしめでたし。』 と、先生に二言で昔話をしめられた幼稚園児のごとく心境だったと言っておこうか? 「おっと、少し誤解があったようです。正確に言えば、涼宮さんにその意図はないわけです。 分け与えたという表現も不適切でしたね。水平面下で望んでいたというのが正しいです。」 「いや、訂正されても意味わからんが…というか、ますますわからなくなったんだが!?」 長門ーッ!助けてくれーッ!!と、期待をこめ彼女を見てみる。しかし 「心理的領分というのは私にとって専門外。残念ながらあなたに助け舟を出すことはできない。」 と一蹴されてしまった。まさか長門でもわからないことがあったとは…って、ちょっと待てよ?心理的領分?? 「もしかして古泉、お前は憶測だけで佐々木のことを言ってるんじゃあるまいな?」 「だから最初に断っておいたじゃないですか。これは憶測ですが…と。」 確かにそんな記憶がある。しまった、やられた… 「まあまあ、そんなに悲観しないでください。僕だって何も無責任にこの持論を展開しているわけではありません。 確固とした根拠こそありませんが、この推論でいくならば佐々木さんの能力についてもすんなり説明が 通りそうなのですよ。もちろん、証拠がないので可能性の1つとしてしか成りえないのもまた事実ですが。 とりあえず、非難されるのは聞いてからでも遅くないと思います。」 …そこまで言うからには聞いてやろうじゃないか。 やれやれといった表情で、とりあえず俺は首を縦に振ってやった。 「ありがとうございます。では、お話ししますね。まずは…いつから佐々木さんにその症状が現れ始めたのか という点について。それは4年前、あなたが過去へ時間遡行し中学時代の涼宮さんと会われたときだと 考えてます。そして、そのとき彼女の意識に何らかの変革が起こった。」 ああ、例の七夕の日か。そういや、あのときからハルヒはすでに団長様だったな。 俺を不審者だと罵ったり、白線引くのにコキ使ったりだとか…とにかく忙しかった印象しかない。 「で、ハルヒの意識がどうしたって?っていうか佐々木との関連性が見えんぞ。」 「あの世界の夢を見て、まだお気付きになりませんか?彼女からすれば、あの出会いは 一種のターニングポイントです。いかにそれが重要で衝撃的なものだったか…あなたにはわかるはずですよ。」 「……」 鈍感な俺でも、さすがに古泉の言わんとしてることはわかる。 ------------------------------------------------------------------------------ 「言葉通りの意味よ。あんたも転生できれば…!」 「ちょ…ちょっと待て。それは神と縁あるお前だから成せる技であって俺みたいな人間なんか…」 「そうね…でも、やってみる価値はあると思うの。…まあ、どれほど無謀な行いかってのはわかってる。 仮にあんたをあたしと同時代に転生できたとしても世界は広い…会えなきゃそれで終わりよ…だから、 そういった意味では可能性はゼロに近いのかもしれない。でも、あたしは諦めない。神の束縛に甘んじて 自身の意志で生きることを諦めていたあたしに…勇気をくれたキョンのことを、あたしは絶対諦めたくない!」 ・ ・ ・ 「言わんとしていることはわかるさ、そこまで俺も鈍くない。それでもし 何か悪いことが起こったって…そんときはその世界の俺がきっとハルヒを助けに来るはずだ… だからさ、お前は安心して転生に専念してりゃいいんだよ。」 「キョン…ありがとう。」 …… 「神の代行者としての最期にあなたのような人間に出会えて あたしは幸せだったわ…!次の世界でも会えるといいわね…いや、会いましょう!」 ------------------------------------------------------------------------------ 気が遠くなるような悠久の時を経て、俺とハルヒは七夕の日再び出会った。同じ世界、同じ時間平面上で。 俺はともかく、ハルヒからすれば…まさに【初めての再会】だったといえる。これも因果ってやつか? なぜあの日が七夕だったのか…なんとなくわかったような気がした。偶然っちゃ偶然なんだけどな。 「…ああ、そうだな。さぞかし感動的な場面だったろうよ。けどな、当の本人であるハルヒには 第三世界時の記憶がない。意識に変革も何もあったもんじゃねーだろ?」 結局これに尽きる。現に、昨日ハルヒがぶっ倒れるまでそんな予兆は一切なかったんだからな。 「ところが、本人は気付いてなくとも眠っていた記憶が呼応した可能性はあります。あなたにもさっき話したように、 例の不完全なフォトンベルト等がそうですよ。意識せずとも力を行使できる、それが涼宮さんです。 元々神の分身だったということも手伝って、やはりその能力は伊達ではありませんね。」 …古泉の言う通りだ。あいつの力は生半可なものじゃない。神に抗ってまでも転生した…証拠ならそれで十分だ。 『やっぱり物事ってのはやってみるに越したことはないと思ったわ…あたしの潜在能力って案外凄かったみたい。』 何より、自分の口からそう言ってるのを確かに聞いたんだ…俺は。 「僕が言いたいのは、4年前の七夕、涼宮さんがあなたに出会ったことで… 呼応した深層心理が佐々木さんに何らかの影響を及ぼしたのではないか?ということです。」 話が1つとんだような気がする。 「いや、だから…なぜそこで佐々木が出てくるのかと??あの時点じゃまだハルヒはヤツのことを 知ってもいなかったはずだし、それに今だって佐々木の名前こそ知ってるが…ほとんど接点がない といってもいい、それくらい互いの関係は希薄なものなはずだぞ??」 「すみません、言葉が足りませんでしたね。つまり、これから佐々木さんについて話すこと。 それこそが僕がさっき言っていた『憶測』の該当範囲です。その証拠に…長門さん。 今まで僕が彼に話していたことに、何か矛盾はありましたか?」 「ない。理にかなっていた。」 「というわけです。これまでの部分は、憶測という名の非論理的なものではなかった… ということがおわかりいただけましたでしょうか?」 まるで示し合わせてたと言わんばかりに即答する長門と古泉。意志疎通か以心伝心かは知らんが 仲良すぎだろ常識的に考えて…超人的な意味でな。って、そんなこと常識的に考察してる場合じゃなかった。 「長門の保証付きならば、俺から言うことは何もないさ。話を続けてくれ。」 「では。結論から申しますと」 また結論からか! 「涼宮さんは、あなたと過去の自分との関係に、あなたと佐々木さんとのそれを 重ね合わせたのではないか?僕はそう見てます。」 案の定、意味はわからなかった。古泉よ…お前は何度同じ過ちを繰り返せば気が済むのだ…!? 「あのな、だからっさっきの俺の質問に答えろっての!!どうしてそこで佐々木の名前が出てくるよ??」 「別に、涼宮さんは『佐々木さん』という特定の個人を敢えて選んだ、 というわけではありませんよ。偶然そうなったと言うべきか。なぜなら当時… あなたが中学生だったとき、一番仲の良かった異性が佐々木さんだったからです。違いますか?」 「な!?」 つい間抜けな顔をしてしまったかもしれない。ここにハルヒがいなくてよかった…二重の意味で。 「なんてことを聞くんだお前は??誤解ないように言っておくが…決して俺と佐々木はそんな関係じゃねーぞ!?」 「とりあえず落ち着いてください。誰も、付き合ってるなどとは言ってないではないですか。」 「むしろ動揺するほうが…変。何もやましいことがないのなら、あなたは毅然としているべき。」 「……」 あろうことか長門に諭されてしまった。これを驚かずして何と言う。というか長門… 『心理的領分というのは私にとって専門外』って、あれ嘘だろ?どうみても今のお前は…裁判にて無実の被告が ついつい検察に熱くなったとこを諌める弁護人そのものだったぜ…!?心理学の『し』の字も知らない人間が (正確には人間ではないが)どうしてそんなこと言えようか?いや、言えるはずがない…んじゃないか? 「では質問を変えましょう。友達として考えてみてください。そういう意味であるならば、 あなたは佐々木さんと…異性の中ではかなり口数が多かったほうなのではないですか?」 「まあ…否定はしないが。」 「ならば、それだけで十分です。さて…話は戻りますが、もし涼宮さんに記憶があったと仮定した場合、 果たして彼女はあなたと出会ってどういう反応をとると思いますか?彼女の立場になってみて考えてください。」 「記憶があったらだと?そりゃ…まずは喜ぶだろうな。 んで今までどうしてたとか、今何やってるのかとか…互いに質問攻めに遭うんだろう。」 「そうですね。それが常人のリアクションというものでしょう。 しかし…そんな彼女に涼宮さん自身は気付いていないわけです。」 不意に、その言い回しが気になった。 「え…?まさかハルヒの中に過去の自分と今、2つの人格があるってのか??」 「いえいえ、言葉通りの意味で受け取らないでください。今のはあくまで比喩、そういうふうに2人の人物に 分けて考えたほうが理解しやすいと思ったからです。かえってあなたを混乱させてしまったようですね、 すみません。それで話の続きですが…その過去の自分は、即ち傍観することしかできないんですよ。 自らの意志で動くことはできないんです。その場合あなたならどうします?」 「どうします?って…何もできないんじゃどうもこうもねーよ。昔の思い出に馳せるくらいしか」 「ご名答、正解です。さすがですね。」 いや、普通に答えただけで『さすが』って一体どういうことなのかと…それ以前に『正解』の意味もわからん。 「あなた同様、過去の涼宮さんもおそらくは昔を懐かしんだはずです。 懐かしんだ、この時点である意味願望とはいえませんか?」 「…懐かしんだところで何か起きるのか?過去にタイムスリップできるわけでもねえし、 何よりハルヒ本人が気付かんのだから、俺と以前のような関係に戻ることも不可能だ。」 そうだ。ましてやそんな状況でどうして佐々木を… …待てよ?ようやくだが、関連性が見えてきたかもしれない。ここまでくるのに随分かかったな…。 仮にだが、過去の俺たちの立ち位置を…無理やりにでも現在へと投射したらどうなる? あの世界の俺とハルヒは…とりあえず、【仲が良かった】のは事実だろう。そして、そのハルヒは 過去の記憶は失ってる。当人がその立ち位置に入れない…だからこそ、その代わりとなる人物に。 時間遡行してハルヒと出会った時点において…つまり、中学時代の俺が最も【仲が良かった】異性、 そんな彼女に偶発的にも影響を及ぼしてしまったのかもしれない。立ち位置を重視するのであれば、 後は佐々木が神の代行者たる機能を具えていれば完璧だ。俺は昔も今も一般人だから 何も影響が出なかったんだろうが…。 「古泉、お前の言いたかったことはわかったよ。ただ、この推論はちょっと苦しくないか? 仮定に仮定を重ねたようで、少し強引なような気がするんだが。」 「だから言ったではないですか。これは憶測だと。」 開き直ったぞこいつ!?いや、確かにお前はそう言ってたが… これではまるで予防線を張っていたみたいで気分が悪い。 「不完全なフォトンベルト…その生成の過程を見ても、この説はそれなりに良い線いってたとは思うのですけどね。 佐々木さんの能力が涼宮さんのように完成されていないのも、それで説明がつきます。」 「……」 それについては、俺は古泉とは違う見解だった。そりゃ、佐々木の能力が不完全なものだってのは知ってるさ。 橘京子や佐々木本人から散々説明くらったからな。その理由についてだが…俺は知ってんだ。 あいつが…ハルヒが第三世界終焉時、どれだけ自分の境遇、そしてその重圧に打ちのめされてきたのかを。 ならば、その代行者の証ともいえる能力を他の誰かに分け与えたりするだろうか?誰よりもその苦しみを 知ってるハルヒに、果たしてそんな真似ができるのだろうか?佐々木の能力が不完全なものとなったのは、 そんなハルヒの切実な思いが交錯した結果…少なくとも、俺はそうみてる。 「以上で僕の推論は終了なのですが…そんな僕の憶測も、一つだけ証明する手立てがあるのですよ。」 「?どういうことなんだ?」 「即ち、涼宮さんの能力が消滅したときです。それと同時に佐々木さんの能力も完全消滅するのであれば、 この説も、少しは信憑性を帯びるといったものです。」 …なるほど。ハルヒの力に誘発されての結果なのだとしたら、 確かに古泉の言う通り佐々木の能力は消えてしまうことであろう。 「さて、それで2つ目なんですが…」 「は?」 佐々木の話が終わったと思ったら、こいつはいきなり何を言い出すんだ?? これで奴の話は終わったんじゃないのか?さっきの佐々木云々はどうした?? あれは2つ目にはカウントされないのか??まさか、奴は簡単な算数さえできなくなってしまったか?? いや、それか、この歳にしてまさかの痴呆か??お前はそんな奴じゃなかったはずだぞ古泉… とまぁ、今、俺の頭の中は大量のクエスチョンマークで爆発炎上を繰り返していたのさ。 「すみません。さっきのは厳密に言えば憶測だったわけで、2つ目ではないんです。 すぐ終わる話だと思って軽く切り出したのですが…思ったより長くなってしまいました。」 なんて紛らわしい奴なんだ…と、いつもの俺なら怒りでワナワナ震えているんだろうが… 今日は佐々木の件に免じ、特別に許してやる。憶測には違いないが、可能性を示唆できただけでも… 一歩佐々木に近付けたような気がするからな。あいつのことは…大切な友達として、できる限り 知っておきたかった。何か有事が起こった際、何も知りませんでしたじゃ済まされないからな。 能力的にも立ち位置的にも、事件の当事者となりうる可能性は決して低くはないんだから尚更だ。 「で…だ。2つ目だったか?」 真剣な話の連続だったせいか、少々聞き疲れを起こしてしまってる自分がいる。 いかんな…こんな調子で、果たして奴の話をまともに聞けるのか?? 「実はその2つ目とは、あなたのことなんですが…」 一気に目が覚めてしまってる自分がいる。 「あなたって…俺か??俺が一体どうしたと??」 「涼宮さんがこの時代へと転生できたように…あなたも転生できた。それは自覚してますか?」 「…信じられないことではあるが、まあそうなんだろうよ。ハルヒが俺に見せた記憶を…俺は信じてるしな。」 「なら話は早いです。…高校入学時の涼宮さんの自己紹介…あなたは覚えてますか?」 「おいおい、いきなり話が変わりすぎじゃないか??なぜいきなりそんなことを??」 「そう思われるのも無理ありません。しかし、これでも一応話はつなげてるつもりですよ。」 うーむ…そこまで言われては仕方ない。こいつの示唆しようとしてることが いまいちわからんが…とりあえず思い出すとしようか。自己紹介、自己紹介… 確か… 『東中出身涼宮ハルヒ!ただの人間には興味ありません。 この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしの所に来なさい!以上!』 「今ので合ってるか?」 「よくそこまで鮮明に覚えていらっしゃいますね。感服します。」 「そりゃ、あそこまでインパクトある自己紹介はそうそう忘れたりはしないさ…って、お前俺のクラスじゃないのに 何で知ってんだ?いや、それ以前に、そんときはまだ俺の学校にはいなかったよな??」 たまに忘れがちになるが、こいつは一応転校生だった。 「簡単なことです。長門さんに聞いただけですよ。」 長門も同じく俺のクラスではないが…まあ、この長門にかかれば何でもありだ。 なんせ元はと言えばハルヒの監視役としてやってきたようなもんだったし… ならば、あの席での問題発言を傍聴していたとしても何らおかしくはないだろう。 「で、思い出したのはいいが、一体これが何だってんだ?」 「今の自己紹介…何かひっかかるような所はありませんか?」 何を言ってんだ…確かに常軌を逸した自己紹介なだけに 突っ込みどころは有り余るほどあるんだろうが……ひっかかるトコ? …… そういや…このハルヒの言葉は一連の流れとつながってるって、さっき古泉は言ってたよな。 一連の流れ…とは俺が二人に話してた【あの世界の記憶】のことだよな。いや、違う… 古泉はその後、転生の話題を出してきたじゃないか。転生… 『この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしの所に来なさい!』 結果として宇宙人である長門、未来人である朝比奈さん、そして超能力者である古泉がハルヒのもとに集った。 しかし、一つだけ欠けていた…まあ、前々からこれについては疑問に思ってはいたのだが。 異世界人 願望を実現させるハルヒの能力を考えたとき、なぜ異世界人だけハルヒの目の前に 現れなかったのか…それが不思議でならなかった。まあ、特に憂慮すべき問題ってわけでもなかったから 俺自身深く考えようともしなかったが。 そして異世界人たる人物がいないまま今日まで時を迎えてしまったわけだが… …… もし異世界人がSOS団に実はいたとしたら? それは誰だ? …… 転生… 「古泉よ、お前の言いたいことを当てていいか?違うのなら思いっきり笑いとばしてくれ」 「もう察しがついたのですか?さすがキョン君ですね。」 「…言うぞ」 …… 「俺は異世界人だったのか…?」 …… 俺はこれまで自分をごく平凡な人間だと思ってた。どこか変わったところはあったかもしれないが、 それでも自分は長門や古泉、朝比奈さんとは違うごくごく普通の人間だと思っていた。 この時代に生きうる普通の人間としてな。だが…もう、そうも言ってられないだろう。あの記憶を見た 今となってしまっては。俺という人間が…あのときの【俺】の生まれ変わりだとしたら。転生だとしたら。 俺は間接的ではあるが、別世界から来た人間ということになる。つまり、言葉通りの異世界人だ。 古泉は静かに口を開く。 「それがわかったとき、どんな気分でしたか?」 「別にどうもこうもねえさ。ああ、やっぱりな…って思っただけだ。」 どうやら、俺は古泉の言いたいことを当ててのけてやったらしい。 「いつからお気付きで?」 「さあな…微々たる気配とかでもOKなら、それは俺が朝倉に襲われたときだろうか。とはいっても、 それ自体は別にどうでもいいんだ。あの一件以来、俺はあのとんでも話を信じるようになった… マンションに呼び出されて聞かされた…そう、お前の話をな。」 俺は長門の方を見つめる。 「長門よ、涼宮ハルヒには願望を実現させる能力があるって…以前そう言ってたよな? 改めて、お前に確認しときたい。その能力ってのは…実は、この世界に限ったものだったんじゃないか?」 「…そう。」 まさかの当たりか。…なるほど、これで全てに合点がいった。 「となれば、この世界の住人ではないもの…即ち 異世界からの人間は、その影響下には入らないって認識でいいんだよな?」 「…そう。」 「わかった、ありがとな。今まで何か抱いていた…モヤモヤが消し飛んだぜ。」 …… 涼宮ハルヒという人間が願望実現という特異的な能力を有してる時点で、自身の意志でハルヒを どうこうできていた俺の存在そのものがそもそも規格外だったのだ。…まあ、おかしいとは思ってたんだが。 ただの凡人である俺が涼宮ハルヒに選ばれた人間だとか、涼宮ハルヒのカギだとか… 後、唯一ハルヒに意見や口出しできる人間が俺だったってのも…、今となっては納得できる。 俺がハルヒの能力を受け付けない、異世界人だったのだとしたらな。 …… 「おやおや、大丈夫ですか?どうか気落ちしないでください。」 なんと、今の俺は古泉から見て…どうやら気落ちしてるように見えたらしい。 「あなたが涼宮ハルヒの影響下に内包されなかったのは、決して【異世界人だから】という理由だけではない。」 長門が意味深なことを言ってきた。 「そうですよ、考えてもみてください。もしそれだけの理由であれば、極論かもしれませんが… あなたは涼宮さんの単なる他人という独立した存在でも全然問題なかったわけです。 そうである場合、決して涼宮さんのカギたる存在には成り得ません。」 「しかし、あなたは過去の世界で誓った。涼宮ハルヒと再び会うことを。」 そうだ…あの世界の俺はあんなにもハルヒに会いたがってたじゃねえか。ハルヒも同様に…。 「それも当然ですよ。なぜなら、あの世界のあなたが 涼宮さんに対して思っていたように、涼宮さんもまたあなたのことが…」 ? 「いえ、ここは言葉を濁しておくとしましょう。とにかく、あなたと涼宮さんの関係には 論理や理屈では説明できないこともある…どうか、そのことを忘れないでください。」 いつもの俺なら、古泉の言いかけた言葉などわからず仕舞いだったんだろうがな…。あの記憶の中の… 【俺】が遂げられなかった思いを克明に覚えている今の俺には…。容易く予測がつく。 …… なぜだろう?急にハルヒに会いたくなってきた自分がいる。 「…俺は」 「もう僕たちのことはほっといて、涼宮さんの所に行ってあげてはどうですか?あなたもそんな気分でしょう。」 俺が言はんとしてたことを先に言いやがった。洞察力が鋭いってレベルじゃねえぞ…。 「だがな…俺はまだ、お前らの要件を聞いちゃいねえわけで…。」 「そんなことはどうでもいい。今はあなた自身の思いに従うのが賢明。私はそう考える。」 長門… 「わかった。二人とも、どうもありがとな!行ってくる!」 俺は自転車をこぎ出した。 …… おっと、急がば回れと言うじゃないか。 俺は発進していた自転車を一旦ストップさせ、携帯電話を片手にメールを打ち始めた。 「さすがにいきなり来られても迷惑だろうからな…行くってのは一応前もってメールで知らせとかねえと…。」 よし、送信完了。じゃあ再びこぐとしよう。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1596.html
「明日の9時に駅前に集合よ!!15分前にはちゃんと来ておきなさい。 来ないと死刑だから!」 お前のせいで俺の1週間の内の貴重な2日間の休みがなくなるんだよ!! とは言えるわけもなく俺は青菜に1kgぐらいの塩をかけた状態で家に戻った どうせなら俺と朝比奈さんその他の憂鬱として小説を出してほしいものだ 翌朝、煩くも目覚まし時計のベルが鳴った と同時に妹がニードロップ 毎度騒がしい妹だ 時計を見ると8時40分 やべぇ寝過ぎた!! 俺は闇討ちに遭った坂本竜馬のように焦りながら自転車を漕いだ と同時に不可解な違和感を覚えた とそんなことより急がねば! 駅前に着くと驚愕した 他人が俺の顔を見ればツチノコを見つけた1農民の顔に見えただろう 「遅いじゃない!罰金!」聞き慣れただろう声のトーンが異常に高い ちっさいハルヒがそこにいた 「やぁ、おはようございます」不機嫌な俺をさらに不快にさせる声が聞・・・ 古泉もやけに小さかった 何か[禁則事項]の黒ずくめの男にでも薬を飲まされたのか?おい 「おはようございます、キョンくん」 砂漠で水があれば自分より先に飲ませるであろう人物の声を聞き振り返りまた驚いた 大人みくるがそこにいた 朝から感じていた違和感はまさにこれで ざっと周りを見渡してしたくもないが現状を把握した 大人は子供に 子供は大人になっているようだ しかも高校生以上が子供で中学生以下が大人になっているようだ 今すぐにでも現実逃避したい それと1つだけ疑問に思った なぜみくるさんだけ大人なんだ ロリか!この世の陰謀か!! と嘆いてる時に下腹部に弱い衝撃が走った ハルヒ(小)が俺にドロップキックをしたからだ 「もう!何ごちゃごちゃ言ってるの!さっさと行くわよ」 はいはいと答えた刹那に何故小さいこいつの尻にしかれなきゃならんのだということを心の中で叫び駅を後にした さてこの状況を見た人にどう説明しようか 一見すると美少女にどう見てもかっこいいとは言えない普通の俺―(自分で言っちまった・・・)―の凸凹カップルと その娘2人と息子1人だ っと・・・その前に影みたいな存在のこいつの状況も教えんとな・・・ いたって普通だ 昨日見かけた姿となんら変わりない さすが宇宙人と言うべきか 言わないほうがいいだろうな それよりなんで俺とお前が普通なんだ?またハルヒの迷惑この上ない願いか? 「・・・違う」ではなんだ?まさかお前の力か? 「・・・そう」俺は頭を抱えた まさか黒幕がこいつだったとは・・・ じゃ・・・なんでこのような世界にお前は変えたんだ?何か不満でもあったのか?ハルヒに 「違う」はっきりと断った 「はっきりといえば私ではない 私はこの状態に食い止めてるだけ」 は?と首を捻る フェルマーの最終定理を解いてる学者の姿が想像できたね まぁ俺にはsinθもわからんがな 今日の俺は自虐傾向のようだ もし夢ならば覚めてくれ 「朝倉の来襲」俺は耳を疑った 朝倉はお前が消したんじゃないのか? 「詳しく言えば朝倉馨の力によりこの世界は捻じ曲げられてしまった」 ぷっと吹き出しかけたがこいつの顔を見ると欠伸もできない いや・・・こいつはいつも無表情なんだがな 宇宙人でも新人さんがいるんだな が、俺が命を狙われることもなさそうだ 「そしてあなたの命を狙っている」緩んでいた俺の顔が空気を一気に抜いたペットボトルみたいに強張った おいおい冗談だろ・・・なんでまた俺が狙われなければならんのだ もしかして妹さんとかそういうことじゃないだろうな 「当たり」躊躇なく答えやがった まったく・・・ 神様よ もうちっと普通なところへ命を授けてくださらなかったのか もちろん人間で つうかこんなので当たったって嬉しくとも何ともねぇよ っていうかなんでハルヒや古泉は小さくされてしまったんだ? 「4年前の涼宮ハルヒには世界を改変する力がなかった だからそこに目をつけた 古泉一樹も同じ」 あぁなるほど・・・って納得できるかぁ!!今俺の不満は休日を削られたことからそちらに向けられた やれやれ貧乏くじ引かされてしまった・・・ 「世界を元に戻すにはあなたを狙って相手が姿を現した時に迎撃する そして世界を元通りに改変する」 つまり俺はお前に守られてるから命を落とすことは無いんだな? 「保障はできない」 おい! 「何してるの?早く来なさい!」ったく小さくなっても気は大きいままなんだな こいつはよぉ!! 「ははは まぁそこも魅力の1つでしょう」こいつの笑顔の気持ち悪さも同じだな っていうか顔近い!あと2mmしかねぇじゃねぇか 「なんか 朝起きたらいつもの服着れなくて・・・成長期でしょうか」恐らくあなたは成熟期でしょう というより今は究極体の方があってますよ とまぁハルヒと古泉が小さくなり朝比奈さんが大きくなった以外は変わることもなく・・・とは言い切れないが奇妙な1日が終わった 「明日は休みにするわよ!とりあえず自主活動で謎を探してくること!!解散!」 と今日の憂鬱感の70%を占める原因となった奴の声を聞き俺は帰路についた 長門込みで 「明日駅前に来て」またか・・・んで何時なんだ?「1時」1時かえらい遅いもんだ それならぐっすり寝させてもらうぜ 「朝1時 駅前に来て 恐らくこの現象の渦中の人物が来る それを仕留める」 俺の週末は恐らくBAD ENDで飾られるであろう 予感が的中した 仕方ないなと思い今日は早めに寝た 時計のアラームが鳴りもう少しと考えているうちに1時を指そうとしていた デジャヴだな・・・ってゆっくりしてる暇はねぇ 急いで着替え歯を磨き自転車で飛ばしていった すると途中で「やっほ~キョンくん どうしたのこんな時間に?まさか気になるあの子のところへ?」 貴方はいつでも明るいですね 周りは暗いのに それよりその質問の答えはNOです あながちハズレでもないが 「ははは嘘嘘 やっぱりキョンくんはおもしろいね~」どこが面白かったんだろう この人の笑いのツボが知りたい それよりあなたこそなんでここにいるんですか?「まずはキョンくんから言ってよぉ」 不安を覚えながら体がなまってはいけないのでサイクリングと答えた ハルヒのせいでなまることはないがな 「わたしもちょっとジョギングだよ 体がなまってはいけないからね ははは」 なんだ同じ理由ですか 奇遇ですね やっぱり運動に勝るもの無しですね あぁそれより急いでますので また明日会いましょう とお辞儀するとヒュッと首元を何かがかすった 手で触ると血が出てる 何故? そして次の瞬間安堵が絶望へと変わった「そしてあなたを殺しにきたの」 俺はイマイチ理解できなかった さっきまでフレンドリーな鶴屋さんがこんどは刃物を持って襲って来ただと? えぇっとこの場合某RPGではコマンドが出るんだったな・・・よし「ガンガンいこうぜ」・・・と って俺は何を考えてんだ!! あまりの出来事に気が動転しているようだ 恐らく鶴屋さんではないだろうが念のため聞いてみるか お前は誰なんだ?鶴屋さんではないな? 「あら?この顔の主は『鶴屋』っていうの?今日貴方を探しているときに公園にいたから真似してみたの どう?上手い?」 えぇ上手かったですよ 恐らく将来は主演女優賞をもらえるでしょう その時は俺も招いてくださ・・・って何を考えてるんだ・・・ いかん!いかん! 本当に俺は頭が混乱しているようだ 誰か一発叩いてくれ あとで100円なら払ってやる って眼前の鶴屋さんであっただろう物体しかいないが 「申し遅れました 私朝倉涼子の妹朝倉馨です 実は姉があなたを殺し損ねたそうなので私が代わりに来ました これから殺す相手に目的を告げるのは面倒くさいけど一応私のポリシーです」 これはこれは行儀よく ってまた命を狙われるのか俺・・・ 頼むから誰か来てくれ 谷口でもいいから お前の好きだった朝倉涼子によく似た妹さんがいるんだぞ ル●ンダイブしてでもいいから飛んできてくれ いや実際使えないなあいつは 恐らく縮こまってるだけだろうな 来るな谷口! 脳内から消えろ谷口! 「決心ついた?」 消去法だ・・・ハルヒは駄目だ小さいからな ってか来たって何もできないしな 古泉は使えないな ハルヒ同様小さいし閉鎖なんとかでしか能力を発揮できない 一緒にいるのも嫌だしな 朝比奈さんは恐らく大人でも無理だろう あいつをどこかに飛ばすことはできるだろう でもそのあとは? 最後の綱は長門だが1km以上離れているここはわかるのか? 前みたいに登場はしてくれるのか? 俺はライオンににらまれた猫みたいに震えながら後退りしつつ長門の登場を待った ドンッ 背中が無き壁にぶつかった え? 「ちょっとこの空間だけを切り取ったから逃げ出そうとしたって無駄よ」 今の俺の脳内では長門の顔と谷口の顔が浮き沈みしている えぇぃ谷口!!何故お前は俺にそんなに固執するんだ!!いい加減消えてくれ! 「空間の切り口があまりにも粗雑すぎる 切り屑も消去できていない あまりにも幼稚 だから私に気付かれる」 待ち望んでいた声が聞こえた 空耳じゃないよな? そこには長門がいた やっと来てくれたか長門 それにしてもかなり離れているぞ長門 間に合うのか?「だ」・・・?「いじょうぶ」 うわっいきなり現れるな長門 びっくりするじゃねぇか まぁつべこべ言える立場じゃないんだがな 「あら?こんにちは あなたのことは姉から聞きました あなたに邪魔されたそうですね」 「朝倉涼子は優秀でありながらも穴がありすぎた だからそこを突いた」 「では復讐としてあなたと対峙してもよろしいのでしょうか」「いい ただし勝つのは私」 なぁ俺帰っていいよなぁ もう目的は果たしたんだし・・・今日学校あ・・・今日日曜日だったな 口実にならないようだ とりあえず寝させてくれ・・・俺普通の人間じゃないか ってかなんで俺こんなに弱気なんだ 睡眠不足のせいか よし寝させてくれ 睡眠に勝るもの 「離れないで」俺の愚痴は中断された 「もうっなんでこんなに小さくなってんの?いくら医学が進歩したからってこんな薬なんてありえない・・・ なんでキョンと有希だけ変わってないの?みくるちゃんは大きくなってるし もういいわ明日になれば原因不明の薬も消えるでしょ 効く薬でも効力はいずれは消えるわけだし 明日起きたらキョンに聞いてみなきゃ 何故あんたと有希だけ変わってないの?ってね そしてキョンを脅して元に戻してもらうの この体じゃ駅まで行くのにも一苦労なんだから まぁ子供料金で電車に乗れるというメリットはあるけど そんなに電車使わないし ごちゃごちゃ考えるのはやめ おやすみなさい」 「おやおや建物がやけに大きい思ったら僕が小さくなっていたのですね このままじゃ他人に顔向けできませんよ 寝てる間に直ってることを祈ります」 「え?誰この人?ひゃっ私?何でこんなに大きいんですか・・・これじゃ服が着れない・・・明日買いに行きましょうか・・・おやすみなさい」 後ろで何か幼き時に結構はまっていたシューティングゲームのゲーム音のような音がする 戦況を見たい でも見たくない 俺がそんな葛藤の中で異様に谷口の顔が浮かぶのに嫌気が差した 頼むからお前がスケープゴートになってくれ谷口・・・ ちらっと戦況を目にしてみる さすがに俺1人を抱えて戦うのは無理があったのだろう 朝倉妹相手に苦戦しているようだった なぁ俺を帰らせてくれないか?俺がいても足手まといだろう 「この空間を一時的に元の空間に戻す際 一瞬の隙を作ってしまう そして負ける そうならないためにも帰すわけにはいかない」変な誘拐犯に捕まった気分だぜ 俺を殺そうとしてるのは第三者だがな 「それに・・・」長門が言葉を紡いだ「あなたがいれば戦闘に集中できる」おいおい逆じゃないのか? その問いには答えなかった 俺の後ろで破裂音がした 振り返ってみると朝倉妹が倒れている 「あなたは朝倉涼子より優秀 しかし勝ちを急ぎすぎた それが敗因」 長門は朝倉妹に対し冷静な口調でそう言った 某ゲームのファンファーレが俺の頭でエンドレスに流れている そろそろ眠気こらえるのも限界かもな 朝倉妹より長門のほうが相当痛手を負っている 俺にしてみりゃ長門が負けのように思える 大丈夫、このくらい平気と言い放ち体を再生させた ほんとに便利な奴だよな まったく 人間なんざ指切っただけでギャーギャーわめき、ちょっと頭打っただけで集中治療もんだ 宇宙人になれると広告が貼ってあるならば土曜日と日曜日どっちを休みにしてどっちを探索にするかと訊かれるぐらい迷うな そんときゃ人間を捨てるだろうな いかん思考回路がショートし始めた とりあえず寝させてくれ 頼む 「まだ世界の修復が終わっていない」あっさり断られたようだ 「やっぱり姉が敵わないのに私が敵うわけないよね 姉の言いつけも果たせなかったし」 そういい残すとこれまた姉と同様に砂になって消えていった 透明になるとかそういう消え方を望んだんだが 時計の短針は5時を指そうとしている 早く修復してくれ長門 「かなり複雑 でも半時間あれば修復できる」あと半時間も待たなければいけないのかよ 「待たなければ帰れない」そうだったここは隔絶された場所だった 選択肢は1つしかなかったのだ もういっそのことここで寝るか? 半時間かかるとはよく言ったもんで半時間を10分オーバーして世界が元に戻った すぐにでもベッドインしたかったが命の恩人を置いていくのも気に食わんので長門を後ろに乗せて自転車を漕いだ すまなかったな長門 お前には頭が上がらないぜ「いい」と言って本を読み始めた 眠くないのか?長門 とりあえず長門の住んでいるマンションの前に着くと長門を下ろしてやった 顔の筋肉をミクロ単位で動かし「ありがとう」と言う長門を後にして俺は帰宅した もう6時か 長くて2時間ぐらいだろうな あとは人間目覚しによって布団を剥ぎ取られるだろうな シャミセン お前が羨ましいぜ そういい残し俺は安眠を得た 起きる もう朝か ってか寝るときも朝だったが 時計を見る11時を指そうとしている いけねっ寝過ごした!!何故こんな肝心なときにあいつは起こしに来ないんだよ くそっ! 急いで自転車をこぐ ちくしょう 家の鍵をどこかで落とした方がよっぽどマシだぜ 駅へ着くと誰もいなかった そうだよな やっぱりみんな怒ってるだろうな 古泉なら待たせても何も感じないが朝比奈さんを待たせることはできないな ハルヒもだ 別の意味で しばらくすると眠い目をこすりながら朝比奈さんが来る あれ?どうしたんですか? 「あれ?キョンくん いつもより早いですね 12時集合なのに」 12時?俺は9時と聞いていたはずだが? 「へっ?私の間違いかしら やだぁ また怒られる」と真珠のような涙を浮かべてる それより確かに修復されたようで昨日のような大人な朝比奈さんではないようだ 俺としてはもうちょっと大人みくるでいてほしかったがな そう泣きじゃくってる朝比奈さんをなだめていると 古泉が早朝にもかかわらず他の人が見れば爽快ともいえる微笑みを振りまきながら 駅前へ歩を進めている もう元に戻りやがったのか 小さいほうがハルヒが落ち込んでる日よりも気分が良かったぜ こっちはいろいろあってろくに寝てねぇのになんでお前は寝起きなのにそんなに機嫌がよさそうなんだ 「おはようございます おぉ珍しくキョンくんがいるじゃないですか」いて悪いのかよ (昨日のことは機関の方でも騒がれていました なので僕もそんなに寝ていません) なんでそんなに平気にいられるのかを訊こうとしたが長門到着で訊くのをやめた もともと聞きたくもなかったがな 長門?お前の仕業か?時計の針を早めたのか?「ちがう」じゃぁなんだってんだ? 「みんなが覚えている涼宮ハルヒの決めた集合時間を3時間ずらしただけ」 そうだよな お前も眠かったんだよな 宇宙人でも睡眠時間は必要だもんな と一人で考え込んでいると今日限定食事の幹事兼団長さんがお出ましだ もう小さい姿じゃないらしい 一泡吹いただろうと言いたかったがそんなことを言った2秒後には絞められて逆に吹かされているだろう 「あれ?キョンもめずらしく早めに来てるじゃない ちゃんと昼飯は摂ったわね皆」 そんなの聞いてねぇぞ お前がおごりじゃなかったのかよ「・・・そういうことにした」おい! 「何言ってるの?あたしちゃんと言ったわよみんなに まさか食べてないって訳じゃないでしょうね」 ああ まったくそうだよ「ははぁんつまりあんた今お腹空いてるわけか・・・」 何を企んでいるんだよお前は「ってことで今日はキョンの奢りね あたしたちデザート欲しくなっちゃったから」 勝手に話すりかえんなよ お前の言ったことだろう でなんで朝比奈さんも了承してるんですか 長門そんな目で俺を見るな いくらでも奢るから 財布にあった重量感が消えそうだ 今の俺にとって 平凡な日常はこんなのかも知れない -fin-
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1078.html
第2話 ~ヒーローと目撃~ はっ!!今の夢は…一体?……あれは…ハルヒか?どこかの学校の校庭にいたのは分かったが一体何処の…… 「あぁ~!!キョンくん何でもう起きてるの?」 「ん、ああ。ちょっとな。」 俺は今朝の夢のことが気になってずっとぼーっとして歩いていた。 何だったんだろうな?あの夢は。ハルヒが出てきたような気がするが… 教室に着くとドアを開けた途端太陽のような笑顔のハルヒが俺に突撃してきた。 「キョン!!今すぐ一緒に来なさい!さぁ行くわよ!!!」 「おぉわっ!!ちょっと待て、授業はどうすんだ。」 「そんなもんサボるに決まってるでしょ!」 そう言ってハルヒはいつかのように俺のネクタイを引っ張って無理矢理俺を部室まで引っ張っていった。 ドカン 「ヤッホー!キョン一丁お待ちぃ。」 お待ちって誰が待ってるってんだ…って何でお前ら… そこにはSOS団全員+鶴屋さんが揃っていた。 「それでは皆さん!これよりSOS団七夕緊急ミーティングを開始します!!」 「おいおいそんなもん放課後にやればいいだろ、 何で今授業をサボってまでやる必要があるんだ?」 「必要な事なの!!大体、あんたはどうせ授業何ていつも寝てるんだから関係無いでしょ。」 ま、まあ確かに殆どの授業で寝てるのは確かだが… 「それでは今日の議題は、七夕についてです。」 「で、七夕がどうしたんだ。」 「はいそれじゃあキョン、七夕と言ったら何?」 そりゃあ天の川とか、短冊とかだろ。 「確かにその通りね。じゃあその短冊を掛ける物は?」 そんなん笹に決まってるだろうが。 「そうよ!短冊は笹に付けるものよ。それは万国共通の事だわ。 そんでもって幾ら織り姫と彦星でも全ての人の願いを叶えてあげる事は不可能だわ。」 だからそれが一体どうしたって言うんだ。 「そこで笹よ!!やっぱり彦星もどうせなら 良い笹に掛かってるお願いの方が叶えてあげたくなるもんじゃない? いえ、そうに決まってるわ。」 ……相変わらずこいつの理論は訳が解らん。朝比奈さん、そんな貴重な事を聞いたみたいな顔する必要無いんですよ。 全部デマなんですから。それとも未来には七夕が無いのか? 「と、言う訳で、今日はSOS団プレゼン!!笹取り大会を開催します!!」 あー何だ、ツッコミたいとこは色々あるが 「おいハル「意見のある人は挙手をして発言しなさい!!」 ったく、コイツはそんなに俺にしゃべらさせたくないのか? 「は~い。」 「はい!鶴屋さん!!」 俺が挙げる前に鶴屋さんが挙げてしまった。 「笹取り大会って具体的に何をするんだい?」 確かにそれは気になるな 「そうね…じゃあ2人1組に分けて、それぞれ笹をとって来て一番良い笹をとって来たペアの勝ちってのはどう!」 じゃあって、今考えたのかよ! 「ちなみにペアはくじ引きで決めるわよ。それじゃあ有希から順番に行くわよ!はいっ…」 今回はいつもの爪楊枝に3色の印を付けていた。 しっかしハルヒもまた面倒なことを思い付いたもんだ。 まあしかし、今日の俺は余程ついているらしい。 「…青……」「緑だ。」「青ですね。」「赤にょろっ!!」「ぁ、緑です。」「赤だわ!!。」 今の会話で分かってもらえたかどうかいささか不安だが、 そう俺はなんと俺の天使様、つまり朝比奈さんとペアになったのである。 当の朝比奈さんはと言うと、自分の楊枝の先を少し赤くなりながら見ていたが、 暫くして俺の方を見て、はにかみながら会釈をしてくださった。いや~、心がどんな宝石よりも綺麗になる気がするね。 …ん?いつもだったらここで我がまま団長様がアヒル口で文句の1つや2つ言ってくるのに、何も言ってこないなんて珍しいな。 「それじゃあ皆!時間が無いから早く行くわよ。」 「行くって何処に行くんだ?」 「鶴屋山よ。」 何でも「この前ハルにゃん達が宝探しした山にさ、竹の密生地帯があるからそこを使うにょろ!」だそうだ。 んでもって俺達は今バスに乗っている。俺は朝比奈さんと鶴屋さんと一緒に座ってるハルヒから距離を取り、 古泉と長門に昨日休んだ理由を聞いてみた。 「近頃情報統合思念体は涼宮ハルヒという個体を2体観測した。しかし、涼宮ハルヒの近辺での情報改変は観測されていない。その真相を調査するため休んだ。」 何だと!?ハルヒが2人ってどういう事だ? 「詳しくは解っていない、涼宮ハルヒの能力が人格化し、涼宮ハルヒ本人から離別し行動している。」 え~とつまり、ハルヒの能力に人格が出来てそれはハルヒ本人とは別の意思を持っているって言うことか? 「その通りです。そしてその別の人格が涼宮さん本人とは別の肉体をもち、別の行動をしているようです。」 なる程、じゃあ元のハルヒは能力を失ってるのか? 「はい。しかし今そこにいらっしゃる涼宮さんが能力を持っていない訳ではありません。 なぜなら、彼女、つまり能力を持った涼宮さん、ここでは、そうですね…涼宮さん(能)とでも呼びましょうか。 彼女が現れるのは、涼宮さんが夜中に眠っている間だけだからです 。それ以外の時間は涼宮さん(普)の中で眠っているようです。」 何でそんな事になってんだ? 「それはまだわかっていません。しかし「3年前の七夕が関係している。」 今の今まで空気のように振る舞っていた長門が突然割り込んできた。 独りで歩いてて寂しくなったのか? 割り込まれた古泉はやれやれといったように肩をすくめてみせた。ちっ、様になってやがる 「彼女が出現したのは4年前の七夕のジョン・スミスが深く関わっていると思われる。気をつけて。」 「どう気を付けろというんだ。」 「それは………」 長門は急に俺から目を逸らし、明後日のほうを見ながら 「あなたに託す。」 はぁ、誤魔化したって無駄だぞ長門、要は分からないんだろ。 「やれやれ。」 しかしそんなごまかしたりする長門も珍しくて、なんだか可愛かった。 「さぁ、着いたにょろ!」 そして今俺達は鶴屋山の裏側の中腹くらいにいる。 「こっから山の麓近くまでずっと竹藪になってるっさ!!気にった竹を見つけたら好きに採ると良いよ!!」 採るったって、一体何で採るんです?まさか素手なんて事は…「あっ、そっかそっかぁちょろんと待っててね。」 そう言って鶴屋さんは、山の上の方に向かって歩きだした。ちょろんとっていうのはまた30分程なのだろうか? しかし俺の懸念も空振りに終わり鶴屋さんは2分程で戻って来た。のだが… 「皆さん、お久しぶりでございます。」 何故かその隣に新川さんが居た。何故だ?意味が分からん。 俺がよほど怪訝な顔をしていたのだろう、古泉が突然解説しだした。 「新川さんには良い笹の審査員をして貰います。僭越ながら僕が先ほど呼ばせていただきました。かまいませんか?涼宮さん。」 「ええ、構わないわよ。確かに審査員無しじゃ誰が一番か決められないわね」 じゃあお前はどうやって勝負を決めるつもりだったんだよ。 「ありがとうございます。それでは新川さん。」 「かしこまりました。」 そう言って新川さんは何処から出したのか、 ちょっと大きめの鉈を3つそれぞれ俺と古泉とハルヒに渡した。そして 「それで竹を切って下さい。」 といって、もう1つ鉈を取り出し、 「この様にしてください…」 と言った。そしてふーっと息を吐いたかと思うと、突然カッと目を見開いて 「SUNEEEEEEEEEEEEEEKU!!!!」 と叫びながら鉈を一振りした。 一瞬だった。そして気付くと、新品のトイレットペーパー並みの太さの竹が真っ二つになっていた。スネークって一体…? ハルヒは目を爛々と輝かせ 「スッゴいわねぇ!!どうやったらそんな事が出来んの?」 と嬉しそうに言っていた。 鶴屋さんは爆笑していたし、長門と古泉はいつも通りだった。しかし朝比奈さんはよほど新川さんの顔が恐かったのか、殆ど半泣き状態だった。因みに俺は声一つ出せなかった。 「じゃあみんな!!1時間後にまた此処に竹を持って集合ね。さあ、行きましょう鶴屋さん!!」 「ラジャーっさ!!」 そう言ってハルヒと鶴屋さんはものすごい速度で竹藪に消えてった。 「それでは長門さん、僕達も行きましょうか。」 「………」 長門は3ミクロン程頷いて古泉と歩いていった。 さて、俺達もそろそろいこうかね。 「さ、行きましょうか、朝比奈さん」 「…あ、はい。」 そうして俺達も竹探しに向かった。 しばらく歩いてからのことだった、突然朝比奈さんが俺の方に向き直り、潤んだ上目遣いで俺を見て 「キョ、キョンくん!あ…ぁあの、昨日はごめんなさい。せっかくキョンくんが遊びに来てくれたのに…本当にごめんね。」 と言いながら、頭を腰より下まで下げて謝った。 「そんな謝らなくて良いんですよ。俺は気にしてませんから。」 俺は出来るだけ朝比奈さんをなだめるようにいった。 「でもぉ、自分から呼んでおいて部屋に入れた途端に寝ちゃうなんて、わたし…最低です。」 そういえば朝比奈さん(小)は朝比奈さん(大)に眠らされた事は知らないんだもんな。 そりゃあ朝比奈さん(小)本人にしてみれば、突然寝ちまったようにしか思えないよな。 しかしまずいな、朝比奈さんはもう顔を上げては居るが、今にも泣きそうな顔をしている。 朝比奈さん(大)のことをいうわけにもいかないし……しょーがない。 「じゃあこうしましょう朝比奈さん。今度また改めて俺を家に招待して下さい。それでどうですか?」 「ぇ、で、でも…キョンくんはそんな事で良いの?」 「ええ勿論ですよ。その代わり、その日は朝からお邪魔させてもらいますよ。それでおあいこです。良いすよね?」 俺はこれ以上朝比奈さんに文句を言わせないように言った。 「あ、じゃあ…そんな事で良かったら、今度の日曜にでも、また遊びに来て下さい。」 勿論かまいませんよ。来週の日曜ですね。たとえハルヒの奴が何を言おうが、遊びに行きましょう。 「うふ、ありがとう。キョンくん」 朝比奈さんはもう涙目では無く、とてもこの世のものとは思えない天使のような笑顔で俺を見つめて言った。俺も朝比奈さんを見つめ返した。 ガサガサッ 「ひえっ!!」 突然俺達の横にある茂みから音がして朝比奈さんは俺に抱きついてきた。あ~、このまま天に召されても悔いはないね。 「にょろにょろーん!!」 茂みの中からは鶴屋さんが出てきた。あれ?ハルヒが居ないようだが… 「おーいキョンくん。みっくるぅ!!ハルにゃん見なかったかい?はぐれちゃったんだよ~。」 ハルヒですか?見てませんが… 勿論かまいませんよ。来週の日曜ですね。たとえハルヒの奴が何を言おうが、遊びに行きましょう。 「うふ、ありがとう。キョンくん」 朝比奈さんはもう涙目では無く、とてもこの世のものとは思えない天使のような笑顔で俺を見つめて言った。俺も朝比奈さんを見つめ返した。しかしそんな良い空気の時に…… ガサガサッ 「ひえっ!!」 突然俺達の横にある茂みから音がして朝比奈さんは俺に抱きついてきた。あ~、このまま天に召されても悔いはないね。 「にょろにょろーん!!」 茂みの中からは鶴屋さんが出てきた。あれ?ハルヒが居ないようだが… 「おーいキョンくん。みっくるぅ!!ハルにゃん見なかったかい?はぐれちゃったんだよ~。」 ハルヒですか?見てませんが… 「そおかぁい。そんじゃスモーk「持ってません。」 「にょろーん。まあそんな事より…お熱いねぇお二人さん。はっはっはぁぁ!!」 「ひょ!!だ、だ、だだめです。また同じ穴の二の舞ですぅ」 朝比奈さんはよくわからない事を言って俺からパッと離れ、顔を真っ赤にしてそっぽを向いた。あぁ俺の至福の時が… 鶴屋さんさんは気付いたら消えていた。 5分後朝比奈さんはまだそっぽを向いていた。これじゃ笹が取れないまま帰ってハルヒにどやされちまうな。 「朝比奈さん、そろそろ行きましょう。時間がきちゃいますよ。」 「うぅ。」 顔を真っ赤にして唸りながら振り返り俺の方へ寄ってきた。 その時 「朝比奈さん!危ない!!」 「ふぇ?」 朝比奈さんは小さな崖から足を滑らせバランスを崩していた。 俺はとっさに朝比奈さんを抱き止めたが、結局2人して落ちてしまった。 こうなったら朝比奈さんへのダメージを出来るだけ減らすしかない! そう思った俺は自分の体を下にして朝比奈さんを包み込むように抱き締めた。 「ひょえぇ~~~~~!!!!」 恐怖のあまり朝比奈さんはとんでもない音量の叫び声を上げていた。 崖は10メートル以上もあったが、幸い地面に落ちる直前に一度木に引っ掛かってクッションになったため、大した怪我はしなかった。 しかしこれは暫く動けそうに無さそうだ。 それに俺は今仰向けに倒れており、朝比奈さんは俺の上にうつ伏せに倒れていた。 そう、俺達は今抱き合っているような構図になっている。 いや~何で今日はこんなについているんだろうね? 「ふぁ!!ぁ、ぁ、ごめんなさい!!」 と朝比奈さんは言ってガバッと体を起こした。 あぁ朝比奈さんそれでも今度は馬乗り状態になって別の所がものすごく気持ち、いやっな、なんでも無い!!只の妄言だ。 「ああ、朝比奈さん、大丈夫ですか?怪我は有りませんか?」 俺は朝比奈さんに手を差し向けながら言った。 「ぁ、はい。勿論大丈夫です。」 それは良かった。怪我をしてまで守った甲斐が有ったというものだ。 それから朝比奈さんは俺の差し向けた手を両の手で包み込むようにして取って、 「キョンくんが…守ってくれましたから。……すっごくかっこ良かったですよ。ありがとう」 と言って朝比奈さんは真っ赤になった。きっと俺の顔も真っ赤だろう。 「キョンくんはわたしのヒーローですね。いっつもわたしを助けてくれて、励ましてくれるし。それに今だって、ね?」 朝比奈さんは既に赤くなっている顔を更に真っ赤にして、やっぱりまだぎこちないウィンクをした。 余りの可愛いさに俺は朝比奈さんをどおしようもないほど愛おしく思い、 思わず朝比奈さんの手を引き、また俺の胸の上に倒して、抱き締めてしまっていた。 いかんな。いつもは抑えられるのにな… 「ふ、ふぇ?キョンくん?」 「すいません朝比奈さん。暫くこのままで居させていて下さい。」 「ぁ……はい。」//// そして朝比奈さんは俺の胸に顔をうずめて気持ちよさそうな声をあげた。 俺はそんな朝比奈さんの頭を撫でながら抱き締めていた。 最高だ~。死ねる!!今ならラオウのポーズで死ねる。 しかしキョン達はこの時自分たちを見撃して去っていった存在に気付いていなかった。 そう、鶴屋さんとはぐれたハルヒの存在に。ハルヒが自分たちを見ていた事に。 ハルヒは鶴屋さんを探している時にキョン達が崖から落ちたのを見て、崖の下に大慌てで降りてきたのだが、キョンとみくるが抱き合って居るのを見て走って逃げていったのだ。 ハルヒは普段なら確実にキョンを怒るのに、気付いたら逃げ出していた自分に困惑していた。 「…キョンと……みくるちゃんが?……そんな…なんで?………嘘でしょ?」 誰も気付きはしなかったがハルヒは独り涙を流していた。 涼宮ハルヒの方舟 第2話 ~ヒーロー・目撃~ おわり 第3話へ