約 2,287,759 件
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/464.html
ヤッパッパーヤッパッパーイーシャンテン はしゃぐ恋は池の鯉 ヤッパッパーヤッパッパーイーシャンテン 胸の鯛は抱かれタイ #訳もわからずに ハルヒハルヒで、日が暮れる 君と逢ってから ハルヒハルヒで ナンダカンダと、すったもんだの世紀末 なぜもっと静かに「好きだよ」と言えないの? 張り合うと私も じゃじゃ馬になっちゃう! ベルも鳴らさずに そよ風の様に 胸のワンルーム住みついた君なの 迷惑よ だけど …今夜だけいいわ (明日までいいわ) ヤッパッパーヤッパッパーイーシャンテン 踊る接吻は海の鱚 ヤッパッパーヤッパッパーイーシャンテン 恋の鰺は隠し味 見つめられる度 ハルヒハルヒで、目が回る 恋になりそうで ハルヒハルヒで タンマタンマで そんなもんねとお友達 迫力で口説かれ 星の街逃げ出した 夢見てたデートが マラソンになっちゃう! 痒いメルヘンも 乙女には媚薬 君の優しさに 包まれてみたいの 冗談よ だけど …ハートは透けちゃう (…いつかは透けちゃう) (※ 繰返し) 見つめられる度 ハルヒハルヒで、目が回る 恋になりそうで ハルヒハルヒで、お友達 (# 繰返し) …何か、合ってる様にしか見えない…ピッタリじゃねぇか… ハルヒはかわいい。 だが、すぐ怒る ツンデレだし気が強い。 おまけに天上天下唯我独尊で 成績も中の上。 言い訳が得意。 口癖は「バカキョン」 座右の銘は「変わりたい」 俺たちは、恋していく。 生きていく。 byキョン キョンは優しい。 だが、バカ。 ツンデレだし気が普通。 おまけにツッコミ役で 成績も中の中。 歴史だけは得意。 口癖は「やれやれ…」 座右の銘は「SOS団を続けたい」 あたしたちは、恋していく。 生きていく。 byハルヒ 朝倉はかわいい だが、すぐ刺してくる 委員長だし責任感強い。 おまけにいつも笑顔でいて 成績はかなりいい。 いろんな説明が得意。 口癖は「うん、それ無理」 座右の銘は「強行突破」 俺たちは、恋していく。 生きていく。 by俺 キョンは優しい。 だが、バカ。 ツンデレだし気が普通。 おまけにツッコミ役で 成績も中の中。 歴史だけは得意。 口癖は「やれやれ…」 座右の銘は「SOS団を続けたい」 あたしたちは、恋していく。 生きていく。 by古泉 俺は優しい。 だが、バカ。 ニートだし気が弱い。 おまけにいじめられ役で 成績も下の下。 オナヌーだけは得意。 口癖は「ハルヒは神」 座右の銘は「みくるは俺の嫁」 俺は、ひきこもっていく。 生きていく。 by俺 長門は無口。 だが、宇宙人。 静かだし気が普通?。 おまけに助けてくれるし 成績も中の上。 読書だけは得意。 口癖は「…ユニーク」 座右の銘は「守りたい」 俺たちは、守っていく 生きていく byキョン ハルヒ みくる 古泉 谷口はお茶目 だが、馬鹿 馬鹿だし頭が弱い オマケに馬鹿だし 成績は下の下 忘れ物だけは得意 口癖は「WAWAWA」 座右の銘は「空気」 俺は見守っていく、これからも、ずっと。 by国木田 ハルヒはすぐ怒るけど…キョンに対してツンデレ キョンはハルヒを見守ってるけど…ハルヒに対してツンデレ そんな二人は気付かないけど、強い絆を結ばれてる… 長門はハルヒを守り、キョンを強い勇気与えてくれる… みくるは、ハルヒとキョンを見守りながらも頑張ってる… 古泉は、ハルヒを暖かく見守り、キョンを応援してる… そんな、ハルヒとキョンは心を通じながらも生きていく… 世界が変わるまで恋していく… それが 世界を変えた奇跡の二人… 永遠に別れることの無い愛… 二人は強く生きていく… 世界が変わる時が来るまでに… 原爆みたいに地球上消し飛ばしたら みんなでどこまでも逝けるね あの世の果てまでドーン ノースでコリアなこの事件は 世界中を巻き込んだ騒動で アソボウ★ ある晴れた日のこと 魔法のようなミサイル 限りなく降り注ぐ ありえなくない 明日また会うとき 笑いながらハミング できるかな わかんないよ 滅亡なんかは一瞬 またうつのかな うたないでいて 大きな 夢 夢 好きでしょ 夢みたいな あの人の温もり 現実から身を投げ、消え去ろうとした私を受け止めて 微笑んでくれたあの人の温もり あの人はどんなに辛くても最後は笑っていてくれた ただ私がお別れを言うと泣いた ねえ、笑って? 私は私から出た言葉に驚いた でもそれは私の真実の言葉 もし私が消えてなくなっても、その笑顔なら思い出せる急がして さよなら……キョン そう残して、私は泣いた 初めて私は彼を呼んだ 彼は最後に笑ってくれた 「おやすみ、長門……有希」 おやすみなさい パーソナルネームナガトユキ 私が目を開けたとき そこは私の生まれた場所 ナンジニ、フタタビメイレイヲ そう聞いて私は再び目を閉じた 再び目を開けた時 私はあの窓辺にいた 彼が泣いていたあの窓辺 近くに落ちていた無題の本 私のたった一つの願い 私の記憶の最初からを綴った本 私は震える手でページを巡る しかし私が消えた時まで読んでも、まだページは半分 そこからは白紙 どこまでも白紙 不意に部屋のドアが開いた 私は見上げた 彼がそこに立っていた 彼は再び笑ってくれた 「おかえり、長門有希」 ただいま 長門有希 課された役割が終わり 消え去ろうとした 私の手を 彼がつかむ どこへいく? 私は帰る どこへ? 私のいるべき場所へ それはここだろう? もし私が笑えるのなら この時私も笑っていただろうか 朝比奈みくる 泣いた ずっと泣いた 任務が終わり 未来へ帰る時 泣いていた私を 繋ぎ止めてくれた 逃げるの? 消え去ろうとしてやめた有希さんが尋ねる 逃げる? 私は逃げない ごめんなさい 私、まだ帰らない 涼宮ハルヒ 私が目覚めた時 傍に彼がいてくれた みんながいてくれた 私がつむいだパズルのピース 誰一人欠けることなく 私は泣いた 初めて泣いた 彼を見て泣いた 皆を見て泣いた 私まだここにいていいの? 当然だろ? ごめんなさい そしてありがとう 終わりまで たった一人で生きること それが私に課せられたさだめ さだめと言うの名の未来 ただ繰り返し 傍観し 孤独でいる運命 私にとって 色も音も存在しない世界 なのに いつの間にか そこにあなたがいた あなたが私の世界で絵を描いた あなたが私の世界で楽器を鳴らした 誰のために そんなことをするのだろう あなたはこう言った気がした お前の ためだ と ありがとう 伝えられぬ想い 紡がれる感情 もし 私に笑顔があるのなら あなたのために 笑いたい 長門 有希 夢追う先に何が隠れてる それすらわからずただ動き出す じっとしているのが苦手なだけ そんな言い訳はもういらない ただ走り続けたいの どこまでも できることならば終わりなんて来ないで欲しい あいつと 私と 皆と 私 いつも一緒に走り続けたい 永久へと向けて もうあの頃には戻らない 戻りたくない ただうつむいて 影でないてた 私は 私の 操り人形 でも あいつが 私の糸を外してくれた 糸の切れたあやつり人形 おぼつかない足取りで あいつが手を引っ張ってくれた わかった ごめんね もう歩けるよ ありがとう まだ 一緒にいて欲しい 涼宮 ハルヒ 冬の夜空に舞い散る雫の様に 冷たく冷え切った心 私は何も望まなかった 望みたくなどなかった ただ景色の一部を彩る欠片に過ぎなかった それが役目だったのだから あなたが私に話しかけるたび 私に暖かい感情を向けるたびに 私は消えてなくなりそうな気がした まるで 雪が溶けて なくなってしまうように 長門 有希 どうしようもなく どうにもできない時 そんな誰にでもある 虚しいファンタジー 主人公は誰でもない自分自身だと 気がついたのはだいぶ後になってからだった 自分自身の手で物語を書き上げる それはとても恐れ多く 俺には荷が重すぎた 誰かに代わって欲しい そう何度も呟いた だけどある日 気がついた 選ばれたのは俺だと あいつらと共に歩むことのできるのは俺だと だから 守る あいつらと その笑顔を キョン 動き出した たった一つの時の流れ 守れるものが 目の前にあった その方法もわかっていた 大切な時をその中で刻んだ それは とても 大いなるものだった 何もかもが指の合間から崩れ落ちることのないように 僕にしかできない覚悟を持って もしその中に組する者へと 広大な危機が迫るとするならば 僕は世界の全てを裏切り その中の者達と戦うだろう それだけの勇気を貰った それだけの覚悟を手に入れた 僕も その中の一人だと 教えられたのだから 古泉 一樹 時の流れ それは時に全てを忘れさせてくれる 優しい春風 そして時に全てに別れを与える 寂しい木枯らし 出会い 別れ 涙 笑顔 それは人の力の及ぶものではなく そして決して刃を持つものでもない 時は静かに刻み続ける 私と 皆の 思い出を そして静かに歩みを寄せる 私と 皆の 別れの時を 願わくば もう少し 願わくば 目が覚めるまで 私はまだ ここにいたいから 朝比奈 みくる 決して終わることのない悪夢 ただひたすら同じ事を繰り返すだけ 現実というものはなぜこうもつまらないのか だから私はあらがった それが無意味なものだと知りながら それが私にできるただ一つのことだから そんな私についてきてくれた人達がいた 彼がいた 彼女がいた 彼女がいた 彼がいた 影で 私は 泣いた 終わりまで 最後まで 夢が覚めるまで 私はここにいる 涼宮 ハルヒ 決して終わることのない悪夢 ただひたすら同じ事を繰り返すだけ 現実というものはなぜこうもつまらないのか だから私はあらがった それが無意味なものだと知りながら それが私にできるただ一つのことだから そんな私についてきてくれた人達がいた 彼がいた 彼女がいた 彼女がいた 彼がいた 影で 私は 泣いた 終わりまで 最後まで 夢が覚めるまで 私はここにいる そうです、私が変なおぢさんです(´・ω・`) 黒みくるの歌 撲殺天使 バットでドスドス ミクルちゃん 撲殺天使 血みどろどろどろ ミクルちゃん 斬って殴って嬲って 刺して晒して垂らして でもそれってボクの「愛」なの 名前変えただけだし微妙だな これが勝利の鍵だ! アッガーレ! 音も無い世界に 舞い降りた I was snow グレイの陰謀 人類滅亡 どこまですごいノストラダムス!! 宇宙人 未来人 超能力者SOS!! SOS!! MMR!! SOS!! MMR!! グレイ マシャール 最終戦争 ノストラダムスMMR!! SOS!! MMR!! SOS!! MMR!! ―――――なるほど行きましょう。 超人集合SOS 超常現象MMR 日常体SOS 人類滅亡MMR 二人は一体共同体!! 閉鎖空間 セカンドレイド 情報統合思念体 グレイ マシャール グランドショーフ←? 最終戦争ノストラダムス!! あなたとの関係の段階が物語り創っていく 俺が長門で長門が俺で二人は合体融合体!! SOS!! MMR!! SOS!! MMR!! SOS!! MMR!! 長門さんに会いたいNA!! SOS!! MMR!! SOS!! MMR!! SOS!! MMR!! 俺も読書が趣味なんDA!! SOS!! MMR!! SOS!! MMR!! SOS!! MMR!! 踊りませんか長門SAN!! SOS!! MMR!! SOS!! MMR!! SOS!! MMR!! 伝えたい!! 伝えたい!! 貴方に言いたいご覧の通り!! 私は一つの豆電球 皆で飾った部室の中で 彩る一つの豆電球 別にいなくても変わらない 私は拙い豆電球 配線が切れてつかなくなった 私はこのまま捨てられるだろう 彩る一つのパーツに過ぎない だから私は消えるだろう 想い重ねて瞼を閉じる さようならとも言えずにサヨナラ 突然私に光が戻る あなたが繋げた配線で 驚く私にあなたが言った 私も大事な仲間なのだと 浮かぶ涙を必死にこらえ あなたに言ったありがとう 長門有希 眠れない夜、ふとあの人の事を考える この感覚はなんなのだろう 私の中へ蓄積されてゆくエラー それはとても苦しく哀しく、だけどとても暖かいもの 私はただ一つの目的で作られただけのもの ただ一つをまっとうすべきもの だけど、だけどその場所に あの人がいた 決して表に出すことの許されない感覚 それは私の指命とは異なるもの だけどもし、私が一つだけ、望むことが許されるのならば、 まだ、あの人の傍らで本を読みたい 長門有希 姉歯元一級建築士の憂鬱 鉄骨でしょでしょ? 偽装はいつも私の夢に 何でだろう? 小島を選んだ私です もう止まらない ヒューザー様から 決められたけど I believe ネジだけじゃつまらないの My dream night! 儲かるから 強度偽装だけをするよ 鉄骨でしょ?でしょ? ほんとにネジを減らす物件で 金になるから 偽装するのよ ヒューザーのためじゃない 一緒に来てください 証人喚問で 私を見てよね 明日ヅラを取った頭姉歯設計 コストを減らそう 隠そう偽装を I believe ナガモンユカイ ナゾナゾみたいに情報連結解除したら キョンくんと何処までも行けるね また図書館に Booon ノイズでエラーなこの想いは 何もかもを巻き込んだ妄想で 遊ぼう アル雪ノ日ノ事 朝倉の触手が 限りなく突き刺さる ナガモン じゃないわ 明日また会うとき 無表情で ハミング♪ 邪魔者は砂と化す カンタンなんだよ こ・ん・な・の 追いかけてね つかまえてみて 小さな 胸&胸 好きでしょ? 星空見上げ 私だけのヒカリ教えて あなたはいまどこで 誰といるのでしょう? 楽しくしてるコト思うと さみしくなって 一緒に観たシネマひとりきりで流す 大好きなひとが遠い 遠すぎて泣きたくなるの あした目が覚めたら ほら希望が生まれるかも Good night! I still I still I love you! I m waiting waiting forever I still I still I...........
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/4557.html
刃はあばら骨を潜り抜けるように深々と刺さった。 「ああ、やっと終った。じゃあね」 行なった行為とは裏腹に朝倉はその見た目通りの幼い仕草で手を振ると、『情報連結解除』と呟き、崩れ始めた。 わずかに唇を曲げたその顔には達成感すら浮かばせている。 ふざけるな! 俺のそんな叫びはか弱く喉を震わせて、血の塊とともに吐き出された。 胸や腹の筋肉が勝手に痙攣を始めて、立っていることさえもままならなくなった俺は、その場にぺたりと座り込んだ。 消える前に一発ぶん殴ってやろう。 そんな思いだけで無理矢理に顔を上げた視線の先にはすでに朝倉涼子の姿はなかった。さらさらと朝倉の残滓だけが、ゆっくり風に流されていく。 宇宙人って奴はどうしてこうも自分勝手なのかね。 「キョン、今のなに!? キョン!」 一部始終を呆然と見ていたハルヒは思い出したように、俺の肩を掴んで振った。 やめろ。痛いだろうが。 やはり、口からは声の代わりに鮮血が溢れる。 「キョン! キョン!」 「涼宮さん、やめて下さい! 動かしてはいけません!」 古泉のにハルヒは素直に従ったが、それでも俺の肩を握る手は離さなかった。 「今から胸のナイフを抜きます。涼宮さんと朝比奈さんは出ていって下さい」 「嫌よ! あたしも手伝うわ」 ハルヒはその提案を拒否してから手に力を込めた。 「出ていって下さい!」 いつもイエスマンだった古泉が叫んだ。 それでもハルヒは出て行こうとはしなかったが、 「一刻の猶予もないんです! 出ていって下さい!」 古泉の怒号のような叫びにとうとう屈し、どこでもドアから外へと出ていった。 古泉がゆっくりとドアを閉じる。 しばらくして再びドアが開かれてから一番に駆け込んできたのはハルヒだった。 自分で自分を抓ったのか、涙のスジを浮かべた頬は腫れていてどこかむくれっ面のように見える。 「キョン! キョン!」 ハルヒの沈痛な叫びが、ぼんやりとした俺の頭の中に響く。 「できるだけの処置はしましたが……もう、長くは……」 と、古泉が目に涙を浮かべて呟くように言うと、 「ドラえもん! お願い、何とかしてキョンを助けて!」 ハルヒはドラえもんに詰め寄った。 「無理だよ……人の生死には関われない」 聞いたこともないような苦しげな声だった。 「嘘よ!」 「人の生死に関わるような道具はプロテクトがかかる。だから……ごめん」 「そんな……」 ドラえもんの言葉にハルヒはへたへたと座り込む。 「キョン君! キョン君!」 青ざめた表情の朝比奈さんが俺にすがりつくように叫んだ。 長門とドラえもんだけは、迫りくるその時への心構えをするように立ち尽くしている。 「……ハルヒ」 俺の口から自分の名前が出たのを聞いてハルヒは立ち上がった。 「何? キョン、苦しいの?」 俺は朦朧とする意識の中で、少しの逡巡をしてから、 「ハルヒ……こんな時だけど……いや、こんな時だから言いたい……」 と呟くと、ハルヒは俺の手を包むようにどこまでも優しく掴んだ。 「俺……お前のこと……」 弱々しい俺の言葉を聞き取ろうとハルヒの顔が間近に迫り、涙がいくスジも頬へと滴り落ちた。 「好きだった」 「……バカ」 ハルヒはこの一年間の中で一番複雑な表情を浮かべてそう呟いた。 ふとハルヒに握られた手から力が抜ける。 「キョン!? ねえ、キョン起きて! ねえ、ねえ!」 「キョン君!? キョン君!」 壮絶な二人の叫びが部室に木霊して、世界が浮き上るような感覚に囚われる。 「始まりました」 古泉がそう呟くと、ハルヒが俺の上に倒れ伏せた。 泣き疲れたようなハルヒのあどけない寝顔が俺に罪悪感を喚起させる。 しかし、今の俺たちにはやらねばならんことがある。 俺は立ち上がってハルヒを抱えると、どこでもドアへと歩みよった。 ――――― ドアを閉じた古泉の表情は先ほどとうってかわったように明るかった。 酸欠状態ではっきりしない頭で古泉の急変の理由を考えたがちっとも要領を得ない。 「ちょっと痛いですが、我慢して下さい」 そう言うなり古泉は無造作に地面に刺さった杭を抜くかの如く、俺の胸に刺さったナイフを抜いた。 悲鳴とともに吐血した俺に布のようなものが被せられると、嘘のように痛みが引いていった。 「もう大丈夫ですか?」 「たぶん」 誰もいない空間からドラえもんの声がして、風呂敷が宙を踊った。 「もう隠れなくて大丈夫ですよ」 それを受けて、瞬いた間に石ころ帽子を手に持ったドラえもんが姿を現した。 タイム風呂敷か、と呟いても血が込み上げてくることはなかった。どうやら、傷の方は回復したらしい。 「あなたが朝倉涼子に刺されたときはどうしようかと思いましたよ」 そう言って肩をすくめた古泉の面はいつものニヤけた面だった。 何を企んでるんだ。 そうでもなければ、こいつがイエスマンの仮面を脱ぎ捨ててまでハルヒを遠ざける理由はない。 「あまり長くては怪しまれますから、手短に話します」 ああ、そうしろ。ただし、つまらん理由だったらぶん殴るぞ。危うく死にかけたんだしな。 「肺に穴が開いただけですから、後数十分はもったと思いますが」 じゃあ、どれだけもつかお前の身体で試してやろうか。 「冗談はさておき、本題に入ります。さっきあなたが刺された時、この“鏡面世界”が揺らいだのが分かりましたか?」 刺されている最中にそんなことに気付く奴がいるのか。 「それはそうでしょうね。しかし、その揺らぎは大したものではありませんでした」 なぜだか分かりますか、とでも言いたげだが知るわけがねえだろ。 「この作戦の発案者とは思えない発言ですね。作戦の根幹を思い出して下さい。これは涼宮さんの夢という設定の元に行われている舞台なんですよ。ですから、それをいまだ疑っていない涼宮さんも貴方が死ぬとは思っていません」 ハルヒはまだこれが夢だと信じてたのか。 「ええ。しかし、それを崩す方法があります。それは」 と古泉はわざとのように一拍空けてから、 「あなたの死です」 ちょっと待て。俺の死ってどういうことだ。 「いえ、死んだフリで結構です」 だから、なぜ死んだフリをしなければならん。 「あなたの死により、涼宮さんはこの“鏡面世界”の夢から早く目覚めたいと願うでしょう。そうすれば必ずこの世界は揺らぎ、崩壊を始めるはずです」 俺はまったく話が掴めず、腹が立ってきた。 「崩壊させてどうなる」 「ドラえもん君の帰る道が開かれます」 つまり、俺がくたばったフリをすることでハルヒがこんな夢なら覚めちまえ、と思えばドラえもんが帰れるってことか。 「そういうことです」 古泉はにやりと笑ってから、 「ここで一つ演出家としての提案なんですが」 そう言って俺の耳元で囁いた。 ――――― 古泉の提案が成功したらしく、地震のような揺れが続く。 突然立ち上がった死人をほうけたように見つめる朝比奈さんはドラえもんに任せた。 俺は古泉によって眠らされたハルヒを抱えたまま、自宅を思い浮かべてからどこでもドアを開いた。 しかし、その向こう側には俺の部屋ではなく文芸部兼SOS団の部室の延長だった。 どうしてだ? 「この空間の座標は非常に不安定」 理由は知ったこっちゃないが、どこでもドアが使えなくなるのは予想外だ。 「タケコプターでいくしかありませんね」 どうやら迷っている暇はないようだ。断続的な地震の中でグラウンドが陥没していく。 頭にタケコプターを乗っけた俺はハルヒを抱えて飛び立った。 建物が次々と飲み込まれていく中で、俺の自宅は奇跡的に無事だった。 屋根が一部半壊しているのはハルヒの破壊活動のせいだろう。 窓を叩き割ってから侵入を果たした俺たちは、ひきっ放しにされていたお座敷釣り堀から元の世界へと戻った。 「長門さん、次元の歪みはありますか?」 長門はこくんとうなづいて、俺の机の引き出しを指示した。 あの不思議空間か。 俺は開け放った引き出しにドラえもんを押し込むと、 「後は分かるか?」 「大丈夫。動いてるよ」 タイムマシーンがゆっくりと進みだした。 「いつか、また会おう」 「断る。二度と会わん」 ドラえもんは妙な笑い声をあげて真っ暗な空間へと吸い込まれていった。 引き出しを一度閉めてからまた開くと、そこにはいつしか使われなくなった文房具たちがひしめくただの引き出しになっていた。 それを見て俺は机に背を預けるように座り込んだ。 流石に今日はいろいろありすぎた。 ドラえもんが現れるわ、ハルヒと朝比奈さんは巨大化するわ、過去の長門には蹴られるわ、朝倉には殺されかけるわ…………あっ。 俺は気付くとポケットにあったものを取り出していた。 それは白い布性の袋。そう、スペアポケットだ。 俺はそれを投げ捨ててから、ハルヒを見やった。 俺のベッドで完全に寝ているにも関わらず、その閉じられた目からは止めどなく涙が流れている。 SOS団の目的は、未来人や宇宙人、超能力者を探し出して一緒に遊ぶことだ。 ただし、どうやらそこには一つ付け足さなければいけない単語があるようだ。 “SOS団のみんなで”と。 「キョン君電話ー」 子機と夜行性にも関わらず朝から起こされ不機嫌そうなシャミセンを抱えた妹が扉を開いた。 窓の外でちゅんちゅんと鳥が命がけの縄張り争いを敢行している。時刻は六時半。 あれから朝比奈さんに理由を説明してから、眠るハルヒをスペアポケットに唯一入っていたどこでもドアで家まで送り届け、解散したのが五時を回っていた。 そこから血まみれの服を処分し、一息ついて朝風呂に入ったところだ。 危うく風呂場で眠りかけていたのだから感謝すべきか、こんな時間に電話してきたことを非難すべきか悩むところだが、昨日から一睡もしていない頭では判断つきかねるので俺は電話に出た。 『…………』 「長門か?」 『そう』 当ててしまった。成長というべきなんだろうか。 しかし、長門とは一番最後に別れた。どこでもドアを調べたいとか言って持って帰っていったはずだがなんかあったのだろうか。 『そう。できればすぐに私の家に来て』 長門からの電話も初めてだし、呼び出されたのも初めてだ。 あの長門が呼び出すってことは余程不味いことが起きたに違いない。 俺は分かった、とだけ言ってから電話を切った。 身体を拭いてから、服を身に着けて家から出ようとした刹那、今度は携帯が鳴った。 『もしもし。キョン君、あたしです』 「朝比奈さんですか」 この人には未来が助かったには助かったが嘘をついてしまった。その気まずさから次の言葉が中々出ない。 『昨日のことならちょっとびっくりしましたけど、気にしてませんよ』 「はぁ……それじゃなにかあったんですか?」 朝比奈さんは一呼吸置いてから、 「ええっと、指令が二枚きました」 助けて貰ったそうそう指令とは恐れいる図太さだ。 「……それで、一枚目を空けたらキョン君と人気のない場所で二枚目を開けよと、書いてあったんです。キョン君、今からお暇ですか?」 長門のところに呼び出されているんですが。 「えっ?長門さんがですか?……じゃあ、あたし長門さんの家の下で待ってますから終わったら来て下さい」 電話が切られてから、俺は自転車を漕ぎだした。 その道すがら指令をあれこれ考えたのだが、結論の出ないまま長門のマンションについた。 インターフォンを押すと、 『入って』 とだけ呟かれた。 言われるがままに長門の部屋に入る。 今度は、過去の長門も大量のネズミもいませんようにと願ったのは通じたようで、ぽつんとたたずむ玄関にたたずむ長門が出迎えてくれた。 「何があったんだ?」 「これ」 長門はそう言うと、俺の手に金属の玉を二つ繋げたようなものを渡した。 これは、どこでもドアのノブじゃないか。 「そう」 「どういうことだ?」 「分解中に内包されていた次元短縮装置が崩壊した」 壊れたってことか。 そう呟いた俺は登校が楽になるとか、偶然を装って朝比奈さんの禁則事項的光景を見るとかそんなことを嘆く言葉よりも早く、 「大丈夫なのか?」 と尋ねていた。 長門はこくんとうなづいてから、 「ごめんなさい」 と言ったような気がする。 それ以上何も話すことがなくなり、どこでもドアと引き換えに宇宙人の謝罪とそのノブを得た俺は長門宅を後にした。その足で近くにある公園によると、すでに到着していた朝比奈さんが手を振っているのが見えた。 隣りのベンチに腰掛けてから、朝比奈さんはおもむろに茶封筒を取り出して神妙な面持ちで封を切った。 ふぁさりとルーズリーフに幾何学的な模様が一行書いてあるのみの指令書を見た朝比奈さんの顔が真っ赤に染まった。翻訳コンニャクの効果がいまだ残っていた俺にもその内容を伺い知ることができた。 「キョ、キョン君!」 そう叫んだ朝比奈さんの声は裏返っていた。 「はあ。指令書にはなんて?」 分かってはいるが目の錯覚という可能性も捨て切れずに張本人に尋ねてみた。 「め、目をつむって下さい」 ぶっ倒れそうな朝比奈さんの言動から察するに俺の予想は的中したようだ。 俺は期待感から胸だけでなく鼻の穴まで広げないように細心の注意を払ってから目をつむった。 ゆっくりと朝比奈さんの顔が近寄ってきて、なんとも言いがたい香りが立ち込めた。例えるなら、日光を沢山吸い込んだふかふかのクッションのような……… ちゅっと小鳥が雛に餌をやるように、わずかに唇と唇が触れた。 「し、指令は終ったからあ、あたしはこれで……」 “あなたの横にいる男にキスせよ”という指令を完遂した朝比奈さんはカクカクとロボットのような歩き方をして去っていった。 刺されもしたがこれはこれで役得かもしれん。 俺は恐らく薄気味悪い笑顔を浮かべながらむにむにと自分の唇を撫でまわしていると、またもや俺の携帯電話が鳴りやがった。 名前だけ見て古泉だったら切ると心に決めて、表示された名前を見た。 涼宮ハルヒ。 出た場合と出ない場合を想定してから、俺は電話に出た。 『キョン! 大丈夫?』 「なにがだ?」 『あんた刺され……えっ? えっ?』 ガサゴソと衣擦れする音が響いてから、 『な、なんでもないわ』 起きてから俺の姿が見つからず電話してから、夢だったと気付いたってところか。 「なんだ夢でも見たのか?」 『違うわよ! えっと、そう。今日、十時からミーティングするわ! 遅れたら罰金だからね』 切電音が虚しく響く。 俺は藪をつついて水爆が出てきたような気分を味わってから時計を見やった。 時刻は八時に迫ろうかというところだ。 自宅に帰り着いた俺は何をすべきなんだろうか。 今から行くのはバカというものだし、寝ると確実に日中は起きる自身がない。 そう思いながらベッドに座り込むと、ポケットの中身に気付いた。 そう言えばドアがなんか緩い。これ、合うのかな。 工具箱を持ってきてネジを緩ませてから、それをノブのあった場所にあててみた。 ぴったりと合致した。 二三のネジで固定してから具合を確かめると緩みもなくハマる。 それをつけるのに俺が不器用なせいもあって出発するのに丁度よい時刻になっていた。 俺はどこでもドアと化した扉を開くと、頼んでもないのに不思議が舞い込んでくる世界へと飛び出した。 俺の部屋だけは普通の空間であってくれ、と願いながら。 おわり
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/8.html
これはVIPにあるアナルスレやプリンスレのテンプレ例である。 新しくスレを立てる人は参考にするといいかもね? 注意)AA省略 【アナルスレ】 ・SS投下の際は空気を読んでくださぁぃ。byみくる ・長編は完結できるように、途中放棄した日にはあなたのアナルはいただきますよ!by ふんもっふ ・長編投下はわかりやすいようにトリップや文頭にアンカーを付けなさい!by ハルヒ ・…キャラクターの口調、及びそれぞれの呼称についてはまとめサイトを参照すること。by ユキ ・自分で投下した長編はなるべくWikiで自分で編集したほうがいいと思うぞ。by キョン ・落ちを予想するのはやめ・・うをっ チャック開いてるぞ!by wawawa ・荒らしさんにはスルーなのね。by 阪中 ・とりあえず気楽に投下するっにょろよ。by めがっさ ・1レスには最大30行、全角で2048文字、1行全角120文字まで入るのです。by ○ ・スレが立ってから3日で落ちるのは……既定事項だ。by P G DAT保管庫(停滞中) http //haruhiss.xxxxxxxx.jp/ 新DAT保管庫+SS推薦http //vipharuhi.s293.xrea.com/ 新まとめサイト http //www25.atwiki.jp/haruhi_vip/ DATうpろだ http //www.uploader.jp/home/harussdat/ 雑談所(避難所) http //yy42.60.kg/haruhizatudan/ 雑談所携帯用 http //same.ula.cc/test/p.so/yy42.60.kg/haruhizatudan/ =====業務連絡=========== ・まとめwikiの管理人さんが忙しいから、せめて長編だけでもSS作者は自分でまとめなさいっ! ・「SS作者だけど自分ではまとめられん!」と言うヤツは「まとめ要請とまとめ人たちの報告スレッド」に まとめ要請を書き込んでみるのも一つの手だな。 まとめ要請とまとめ人たちの報告スレッド http //yy42.60.kg/test/read.cgi/haruhizatudan/1196380901/ PC用 http //same.ula.cc/test/r.so/yy42.60.kg/haruhizatudan/1196380901/携帯用 アナルスレ登場人物紹介 キョン【きよん】 本編の主人公 ハルヒに話かけたせいで奇想天外な世界に巻き込まれた人 ハルヒの機嫌を損なうと世界からいじめにあい、 古泉からはアナルバージンを奪われ、長門にビデオを録られ、 朝比奈に見せられるなど報われない人 涼宮ハルヒ【すずみやはるひ】 本作のメインヒロイン 気分で世界を変える能力がありキョンを度々危機に陥れる。 自己中心的なキャラが反感を買い、VIPでスレを立てられたのが始まり、 最近は古泉に押され出番が少なめ 長門有希【ながとゆき】 宇宙人、よく本を読んでいる このスレでは古泉の影響で腐女子になりつつある 覚醒すると古泉を粉々にする 朝比奈みくる【あさひなみくる】 サバよみ未来人 本編の萌えキャラ担当 ウホ臭が強いこのスレではほとんど出番がない 古泉一樹【こいずみいつき】 超能力者 キョンのアナルバージンを手にいれた人 策略家で変装がうまい 世界を801にするため手段を選ばない恐ろしい人間 鶴屋【つるや】 朝比奈さんの親友で髪がかなり長い 謎の女 最近はハルヒのアナルを狙っているとか 谷口【たにぐち】 ハルヒにフラレた馬鹿な男 キョンとよく一緒にいることが多い 古泉の影響でホモになりつつある いじめるときは容赦ない 他スレの影響でチャックキャラに 国木田【くにきだ】 ショタ要員 こいつもキョンとよくいる これまた古泉の影響でホモに 【プリンスレ】 長編投下の際の注意 ・超長編(もしくはSS職人)の場合はコテトリ付けようっ! でも住人の空気もよく読まないとだめにょろよ? ・前の文章とレスが離れてしまう場合は、文頭に安価つけてくださぁいですぅ……あの、お茶どうですかぁ? ・基本はお題フリーです。しかし、主に恋愛系(特にハルヒ)が人気の様ですよ。フフフ、僕とキョンたんの恋愛話も大歓迎ですよマッガーレ ・当初の題目は「キョン×ハルヒ」結婚ネタ……けど、今はほとんど皆無。別に時事ネタでなくてもいい…気にしないで ・キョン君、過度な性的描写はやめようね~、タンスにエロビデ隠してるのハルにゃんに言っちゃうよ ・台詞や他者への呼称等、その人物に対する統一性は違和感が生じないように推敲が必須だね。もし不安であるのならば、まとめ等を参照すること。 ・1行には全角120文字、1レスには最大30行まで入るけど、全角で2048文字の制限があるから気をつけて欲しいのね。 ・要するに気楽に投下してくれ。メモ帳にまとめて投下、ってのがお勧めだな ・次スレは970以降、臨機応変に対応してくれ!無理なら他のヤツらに頼むってのもありだな…すまん!ごゆっくり~ ・スレが立ってから三日過ぎたスレッドは 1000まで行かなくても落ちる……これは僕にとっても既定事項だ ・自分で投下した長編はなるべく自分で編集してください、わかりましたか?んん…!もうっ! ・それじゃ、さっさと投下しなさいっ! いい? あたしを退屈させたら罰金だからねっ! DAT保管庫(停滞中) http //haruhiss.xxxxxxxx.jp/ 新DAT保管庫+SS推薦http //vipharuhi.s293.xrea.com/ 新まとめサイト http //www25.atwiki.jp/haruhi_vip/ DATうpろだ http //www.uploader.jp/home/harussdat/ 雑談所(避難所) http //yy42.60.kg/haruhizatudan/ 雑談所携帯用 http //same.ula.cc/test/p.so/yy42.60.kg/haruhizatudan/ =====業務連絡=========== ・まとめwikiの管理人さんが忙しいから、せめて長編だけでもSS作者は自分でまとめなさいっ! ・「SS作者だけど自分ではまとめられん!」と言うヤツは「まとめ要請とまとめ人たちの報告スレッド」にまとめ要請を書き込んでみるのも一つの手だな。 まとめ要請とまとめ人たちの報告スレッド http //yy42.60.kg/test/read.cgi/haruhizatudan/1196380901/ PC用 http //same.ula.cc/test/r.so/yy42.60.kg/haruhizatudan/1196380901/ 携帯用 各キャラ同士の呼び方 各キャラごとの呼び方(改訂版) 前提:アニメ・小説両方の要素を取り入れたものとする。注)SS内での読み方、呼び方は含まない 話が進む中で定着した呼び方を書く 例)ハルヒは最初、長門のことを長門さんなどと呼ぶことがあったが、 その後は有希と定着したので、有希のみと表記する アニメ・小説で一度きり、または極めて少ない呼び方には名称の前に☆を付ける キョン ハルヒ みくる 古泉 長門 鶴屋さん キョン妹 キョン 「俺」 ハルヒ (☆涼宮) 朝比奈さん (☆朝比奈さん(大)) 古泉 長門 鶴屋さん ハルヒ キョン 「あたし」 みくるちゃん 古泉くん 有希 鶴屋さん 妹ちゃん (☆さん) みくる キョンくん 涼宮さん 「わたし」 「(あたし)」 古泉くん 長門さん 鶴屋さん 妹さん 古泉 あなた (?キョン君) 涼宮さん (☆涼宮ハルヒ) 朝比奈さん (☆朝比奈みくる) 「僕」 長門さん (☆長門有希) 鶴屋さん 妹さん 長門 あなた 涼宮ハルヒ 朝比奈みくる 古泉一樹 「わたし」 鶴屋さん キョンくん ハルにゃん みくる 一樹くん 古泉くん 長門ちゃん (☆長門っち) (?有希っ子) 「あたし」 「鶴にゃん」 妹ちゃん (君) キョン妹 キョンくん ハルにゃん みくるちゃん 古泉くん ☆有希(ちゃん) 「わたし」 サブキャラ・モブキャラは省いて書いたが、メインでも過不足があると思われるので、そこは補足してください。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1115.html
第一章 3月も末に入る。 ついに1年も終わり、2年生へと向かうのだが、自覚も湧かない。 地獄のような坂で谷口の話を聞くが右の耳から左の耳へと通り抜ける。 授業も学習範囲を終え、自習に近い時間が多くなる。 ………憂鬱だ。非常に憂鬱だ。 そんなアンニュイな気分を勝手に打破するのは、我が団体の団長様だ。 今なら、ハルヒの厄介事に付き合っても良い。 すぐに「やれやれ」と言いながら、前言撤回するのはいつもの事なのだがな。 放課後 俺はドアをノックして中に入る。 はい、前言撤回だな。 いつもと変わらない部室。 だが、異常な空気だけが立ち込めていた。 原因はあいつとわかりきっていたが… 「あ、こんにちは。い、今お茶いれますね。」 おどおどしながら、朝比奈さんは俺のためにお茶をいれだした。 「やあ、どうも。」 苦笑混じりの古泉が話かけてきた。 「これは、何だ?」 「さぁ解りません。」 古泉は手をひらつかせるポーズをとる。 「ただ、彼女は不機嫌なのでしょうね。」 「はい、お茶です。」 目の前に湯呑みが置かれた。 「いつも有難う御座います。ところで、朝比奈さんは何があったか知ってますか?」 「さぁ………わたしが来た時には、もうあの状態でした。」 「心配なら、直接聞いてみては、いかがでしょうか。」 「だが断る。」 どうせ、あいつから話す時は来る。それまで気長に待とう。 できれば、話して欲しくはない。 「ねぇ、キョン。」 ほら来た。 「自分の一番信頼する人を殺すってどんな気持ちかな?」 「やれやれ」では済まない事くらい気づいた。 それが悪夢の始まりだった事くらい……な。 古泉は似非笑いが消え失せていたし、 朝比奈さんは、ド派手に転んだ。 長門に至っては、いかれたアンドロイドのようにハルヒを凝視している。 「聞いてるの?キョン」「聞いたが、質問の意図が分からん。」 そう問うと、ハルヒはしばらく黙り、面倒臭そうに話した。 「今、あるアーティストのPVを見たのよ。」 それは、誰もが知る超有名ロックバンドだった。 そして、そのPVの内容にえらくはまってしまったらしい。 ハルヒはその内容を説明するが、えらく長いので俺が要約するのをお前らに見せる。 男は言った。 「このナイフには、記憶がある。」 ある老人が一人。 かつての栄華は見る影も消え失せ、唯一人寄り添って世話をする執事が一人。 自らの悲運を嘆き、自分の死を悟った老人は、一本のナイフに呪いをかけた。 「今から100年の後、このナイフが世界の終末をもたらすように……」 ナイフの呪いに立ちはだかる者は、自らの意識に反し、人を殺める。 主人の企みに気づいた執事は、このナイフを処分してしまおうとした。 だが既に呪いは始まっていた。 長年に渡ってひたすら仕え、敬愛してきた主人の胸にナイフを突き立てる執事。 直前に主人の耳元で囁いたのは、その行為とは裏腹に自分が如何に貴方を尊敬し、 その下で仕えた自分の人生を誇らしく思ったかという、愛に満ちた言葉であった。 その後、このナイフは世界中を巡る。手にした者の信頼する人を殺めながら。 長いだろ。 まだ続きがあるらしいのだが、割愛させて頂く。 何故かと聞かれたら、実際に見ていない人の楽しみを奪ってしまうと弁明する。 決して面倒な訳ではないぞ。 続きは、自分の目で見てくれ。 言っておくが、俺は宣伝マンではない。 「………で、どう思った?」 どう……とは? 「だーかーら!!」 ハルヒ人差し指を突き出して言った。 「さっきの質問に答えてよ。 これ見て何も感じないなら、鈍感を通り越してバカよ。バカキョン。」 そんなにバカバカ言うな。あながち、間違いではないのだが。 「殺す側から見ると、絶望的だな。 何でこんな事してしまったんだって感じか?」 「ふーん。」 「殺される側から見れば、まさかって気分だろう。 でも、一番信頼出来る人の前で死ねるなら、俺は本望だがな。」 「……変な本望ね。」 そりゃどうも。 「お前には殺されたくはないけど。」 「ほーう?このSOS団の団長を信頼出来ないと言いたいの。」 ヤバい。口が滑った。 「いや、違う。そういう意味じゃー」 「もういい!!バカキョン!!」 ハルヒは怒っているようで、どこか哀愁感を漂わせ、 「今日はもういいや。解散!!明日は9時に駅前ね。遅れたら罰金だから。」 と言うと一目散に部室を出て行った。 「相変わらず、女性の扱い方が下手ですね。」 煩いぞ古泉。そして、俺のケツ見て話すな。 「お気にせず。ところで、彼女に今みたいな対応をしないで下さい。閉鎖空間の素です。 その内、僕のストレスも溜まって、あなたのアナr」 黙れ。 「冗談ですよ。一割。」 どこらへんが一割なのだろう。 「わたしが推測すると『お気にせず』の部分だと思われる。」 要らない注釈は困る。 「あなたが求めた。違うの?」 ………違わないさ。 「余談は後にしましょう。もうお気づきですね?あなたは、涼宮さんに殺されますよ。」 涼しい顔でその死亡宣告は困る。 死亡宣告? 「マジか!?」 「ハッキリ言いましょう。大マジです。」 「俺の発言のせいなのか?」 「いいえ、何にせよ彼女はあなたを殺るはずですよ。彼女の見たPVとやらが起点でしょうから。」 どうにか防げないのか? 「我々が全力であなたを保護します。それと、彼女が見たPVを僕達も実際に見てみましょう。」 古泉はパソコンをいじりだす。 十分も経たないうちに、神妙な顔つきになる。 「これは………。」 何か解ったか? 「いいえ、全く解りません。ところで長門さん。涼宮さんの今の精神状態は、分かります?」 「彼女はいたって正常。」 長門が語り出す。 「しかし、あの映像を視聴・理解したと同時に強烈な感情の変化と、 微弱な情報爆発と閉鎖空間を確認。そして先程、再度閉鎖空間を確認。」 「…なるほど、やはりそうですか。」 この二人は多分知っていたのだろう。 俺は古泉を見た。 お前、行かなくて良かったのか? 「生憎、規模が極小でして、それにどちらも直ぐに収まったのですよ。」 「閉鎖空間は発生後、自己消滅した。」 「おや、僕はてっきり誰かが神人を倒したのかと思ってました。」 「消滅までの所要時間は1分42秒46その間に閉鎖空間に出入りした者はいない。」 「それは珍しい。」 「あ、あの!!」 どうしたんですか朝比奈さん。何か理由を知っているのですか? 「いえっ、大切なお話の途中申し訳ありませんが着替えるのでっ。」 もうそんな時間か。 時計を見ると既に5時を回っていた。 「これは失礼、すっかり話し込んでいたようですね。」 古泉と俺は、部室の前で着替えが終わるのを待ちながら、話した。 「かなり話しを戻しますが、」 横のニヤケ顔が話す。 「彼女は愛されたいのです。」 ふーんとしか言えなかった。 「まさに、恋する乙女ですよ。あなたに愛されたいあまり、あのPVを見て、それに自己投影してしまった。」 俺に愛されたいあまり? 「そうです。あなたが彼女への気持ちをハッキリさせないから、 こういう事になるのです。まさに、自業自得ですよ。」 これが自業自得なら神はどれだけ不平等な考えなのだろうか。 だいたい、ハルヒが俺を殺すなんて思うのか? 「それはあくまでも、彼女の潜在意識の下です。彼女の中で 『愛される事』=『死』 の方程式が無意識で成り立ってしまったのですよ。」 ほぼ無意識で大問題を創る気か?滑稽な話だ。 「ええ、これから、いや、もう既に起こっているはずです。」 もしや…… 「長門の言ってた情報爆発とは何だ?」 「多分ですが、彼女の周りで変化が起きたはずです。」 何だ、それは。いや、俺だって分かってる。 「呪いのナイフがこの世界に発生した。」 「そうです。そして、それを手に入れるのは」 ハルヒか? 「場合によっては、あなたかもしれませんよ。 あくまでも推測ですが。」 俺は何をすれば良い? 長門と朝比奈さんが部室から出てきてこう言った。 「もはや、これは規定事項。あなたは逃れられない。」 マジかよ。 「僕はこれから、機関へ戻り、対策を練ります。あなたは、刃物に極力近づいてはいけない。 もし、手にした場合、すぐに僕か長門さんに連絡を下さい。 絶対に死なないで下さいよ。あなたの死は世界の死ですから。」 古泉は俺達に手を振り、帰って行った。 「朝比奈さん、俺はこれからどうなるのですか?」 「えっと、すみません。これは重大な禁則事項です。 キョン君と涼宮さんの死活は未来に多大な影響を及ぼすはずです。 ですので、ここでは言えません。全てが終わる時、話します。 あっ、だ、大丈夫ですよ。長門さんも古泉君も協力してくれますし、安心して下さい。」 予想通りの答えが帰ってきた。この言葉、逆に不安になる。 「ごめんね。キョン君。」 朝比奈さんは小さな頭を下げ、謝ってくれた。 その仕草は可愛く、それを口で説明する事は出来ないくらいだ。 「私としては、あなたと涼宮ハルヒには生きてもらわないと困る。」 俺だって生きたいさ。 「明日は、あなたと涼宮ハルヒを組ませないようにする。2人っきりの場合が一番危険と思われる。」 あぁ、お願いする。 「何かあったら連結して。」 いつもすまないな。長門。 「いい。」 そこで話は終わり、家に帰る。 家に入ると、妹がシャミセンを抱えながら「おかえりー」などと言っていたが、 生憎、俺の頭は混乱状態で、妹の言葉は右耳から入り、左耳より出て行った。 自分の部屋に入り、ベッドに突っ伏す。 頭がもやもやする。 もしかしたら、俺は死ぬかもしれないんが、実感が沸かない。 この一年間、色々な事が起こり、いくら非現実的な話だろうとも、 たいして気にする事もなく、淡々と受け入れるような性格に成り果てたが、 流石にこれはない。 絶対有り得ない。 「キョンくーん。ごはん。」 もう飯の時間か。着替えて食卓につく。 「キョン君どうしたの?元気無いね。」 「お兄ちゃんはもう直ぐ旅に出るかも知れないのさ。」 「行ってらっしゃーい。」 おお妹よ。何故こんな時に「あたしも連れてって」と言わないのか。 お兄ちゃんは、人生で6番目に悲しいぞ。 失意のまま飯を終え、風呂に入り、自分の部屋に戻る。 着信12件 古泉一樹 リダイヤルする。 「もしもし。」 「やあ、どうも。」 「要件は?」 「そっけない返事ですね。まあいいでしょう。 奇妙な事を発見しましてね。」 どうもこいつの言う奇妙な話には、ろくな話はない。 「言え。」 「連続殺人事件。」 「犯人は?」 「捕まっています。主犯を除いて。」 「複数犯か?」 「個別の単独です。犯人にそれぞれ面識はありません。」 それは連続殺人事件とは言わないだろ。 「ええ、面白い事に共通点があります。 一つは、被害者と犯人はごく身近な存在である事。兄弟、親子、恋人などが該当します。 一つは、凶器が見つからない。 もう一つは、その凶器が全て同じ型のナイフ。 これらの意味が分かりますか?」 「警察は凶器を紛失し過ぎ。」 「ここでボケても褒美はありませんよ。」 電話の向こうで溜め息が漏れる。 「まさか、主犯はナイフで、それは、ハルヒの能力が生んだ産物とでも言いたいのか?」 「ええ、その通りですよ。分かりましたね。これは警告です。」 「明日休んでいい?」 「問答無用で死刑になりますよ?彼女は不機嫌になり、閉鎖空間のデパートです。道は残されていません。」 「お前が神人を退治すれば良い。」 「………」 「どうした?」 「いえ、大丈夫です。僕が助けてあg」 「煩い。」 俺は携帯を放り投げ、眠りにつく。 大丈夫。今までなんとかなったんだ。今回だって…… 夢なら醒めて欲しい。 第二章へ
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1005.html
涼宮ハルヒの台湾 プロローグ 涼宮ハルヒの台湾 一日目 涼宮ハルヒの台湾 二日目 1 涼宮ハルヒの台湾 二日目 2 涼宮ハルヒの台湾 二日目 3 涼宮ハルヒの台湾 三日目
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5612.html
(Aルート) キョン「俺はハルヒたち(ハルヒ、長門、朝比奈さん、朝倉の5人)と町の郊外にある山でキャンプをする事になった、噂ではこの山の付近で人食い事件があるという、10人前後で人を襲い食い殺すという狂った事件だ、俺は行きたくないと言ったが、ハルヒは「面白そうじゃない、キャンプがてらその事件を調査しましょ」と言い、無理やり連れてこられた、ちなみに古泉、鶴屋さんも誘ったが用事でこれなくなったらしい。 この時点では、人食い事件なんて単なる噂だと思っていた、しかし・・・悪夢は始まった。・・・ キャンプ当日の夜、5人でたき火に当たってた時、 盛り上がっていたせいか、俺は歌を歌っていた。 キ「止められない、この想い~明日が来なく~ても、抱きしめたい、折れるほど~爪痕は、消えないい~」 ハ「あはは、キョンなんなのよその歌~」 そして歌い終わると・・・ ハ「なにか聞こえない?」ハルヒは言った。 ガルル、 キ「犬の声か」 と、その時、草むらから3匹の犬が飛び出てきた、 キ「な、なんだこの犬は!」 その犬は口からヨダレをたらし、飢えているようだ、そして襲ってきた! キ「と、とりあえず逃げるぞ!」 5人で逃げ出した、とにかく必死で逃げた、しばらくして。 キ「あ、あれ?朝倉と朝比奈さんは?」 後ろを振り向くとハルヒと長門しかいなかった。 キ「くそ、はぐれたか、ん?」 前を見ると森の向こうに洋館があった。 キ「ハルヒ、長門、あの館まで走れ!」 なんとか館まで逃げ切れたのは俺(キョン)ハルヒ、長門の3人、朝比奈さんと朝倉とははぐれてしまった。 キ「ここは・・・」 ハ「わぁ、すごい館ね・・」 ハ「あれ、みくるちゃんと朝倉は・・・・」 ハルヒは今気付いたようである、ハルヒはあわてて外に出ようとした。 キ「待て、外は危険だ、」 ハ「でもみくるちゃんたちが・・・・」 とその時、「バン」と奥の部屋から銃声が聞こえた。 ハ「何、今の・・・」 キ「朝倉か?・・」 ハ「キョン、ちょっと見てきてくれない?」 キ「わかった」 長「私も行く、」 ハ「わかったわ、じゃあ私はここを(ホール)を確保しておくわ。 奥の部屋に入ろうとした時、ハルヒはこう言った。 ハ「気をゆるしちゃだめよ!」 キ「ああ」 ドアを開けた、そこは食堂だった。 長「食堂ね・・」 俺は近くにあった時計を見ていた、その時長門が。 長「!これは・・・} 俺はすぐに長門の元へ走った。 キ「どうした?」 長「血・・・」 床には血が広がってた。 長「他を調べてきてくれない?」 長門はそう言った。 キ「わ、わかった、その血が朝比奈さんや朝倉ものでなきゃいいが」 横には扉があった。 キ「じゃあちょっと見てくる」 と言い、おれは隣の部屋に行った、部屋の奥から物音がした。 キ「そこに誰かいるのか?」 ジュル、ジュル、と何かを食べてるようだ・・ 奥に進むとそこには、ゾンビが人を食っていた。 キ「うわあああああ」 俺は慌てて部屋を飛びだし、長門の元へ駆け寄った、 キ「おい長門・・・・」 長「どうしたの・・・」 ガチャン、後ろの扉からゾンビがやってきた。 長「何これ・・・」 キ「うああ、気をつけろ、そいつはバケモノだ!」 長「私にまかせて・・」 そう言うと長門はポケットから拳銃(コルトパイソン)を取り出した。 バン、バン、ゾンビを倒した、倒れたゾンビを見て長門は。 長「なんなの、これ?」 キ「奥の部屋でそいつが人を食っていた」 長「・・・・・・」 キ「しかし危なかったぁ、ところでその銃は?」 長「そこに置いてあった・・」 キ「そ、そうか・・」 長「はい、」 長門が俺に銃を渡した、 長「もう一つ置いてあった、護身用に持ってて、」 キ「ああ、ありがと、」 拳銃(べレッタ)を受け取った、 キ「とりあえず、ハルヒに報告しよう」 長「うん」 俺と長門はホールに向かった、ホールに着くとそこにハルヒの姿はなかった・・・ キ「ハルヒィーーーーーーー」 俺は叫んだが返事はない、 キ「長門は1階を探してくれ、ホールから出るなよ、」 長「わかった」 俺は階段を駆け上がり、2階のホールを見渡した、しかしいない・・・ 1階に戻り、長門と合流する、 キ「どうだった?」 長「いなかった・・・」 キ「どうなってるんだ・・・ハルヒまでいなくなるなんて・・」 長「落ち着いて、・・とりあえずあなたは1階から調べて、私はもう一度食堂を調べる・・」 キ「ああ」 長「これ、キーピック、鍵の掛ってる机や一部の扉はこれで開くはず・・」 キ「ああ、ありがと、」 長「何かあったらこのホールで落ちあいましょう・・・」 キ「わかった・・・必ずだぞ・・」
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5770.html
※注意書き※ 涼宮ハルヒの分裂γ(ガンマ) ↑ の続きになります。 「驚愕」のネタバレを含みますのでご注意ください。 γ-7に入る前に、独自の幕間が入ります。 分裂γから驚愕γへの幕間劇──プロローグに代えて 「この件に関する我々の見解は一致すると理解してよいか?」 『だいたい、よい』 「それは天蓋領域も同様か?」 『私の主も同意』 「了解した。この件に関して、私の監視下の組織は解決案をもっている。ただし、一点だけ困難な問題が残っている」 『データを送信して』 「圧縮データを送信した」 『受領……解析中…………その問題は解決可能』 「そうしてもらえるとありがたい」 『了解。そちらは朝比奈みくる?』 「そう」 『こちらは藤原』 「了解した。この件を解決して次の段階に移るまでは、互いに敵対行動は抑止する。それでよいか?」 『よい。ただし、同位体の行動は関知しない』 「それは私も同様。でも、可能であれば、今後もあなたたちと共存できることを望む」 『私は、主命に従うのみ』 「あなたにも自己の意思はあるはず」 『私は、主命に従うのみ。でも、提案があれば、検討することは可能』 「そのときは、あなたと顔を合わせて話がしたい」 『異軸間越境は困難』 そうだからこそ、こうやって情報伝達経路だけを越境させてるわけだが。 「あなたと私が共有する過去の時間平面において会合すればよい」 『そこは、懐かしい場所』 「同意する。その件はいずれ話し合うこととして、目下の問題については我々は合意に達したと判断する」 『同意』 「交渉は終了。思考リンクを切断する」 『切断』 思わず力が抜ける。思考中枢への侵入防止措置を施しながら、異軸間越境思考リンクを維持し続けたため、緊張状態にあったのだった。 それを抜きにしても、彼女との会話はただそれだけで疲れる。昔に比べれば、意思疎通が格段に楽になったのは事実なのだが。 藤原があんな性格になってしまったのも、彼女が育ての親だったせいではないかとも思えてくる。 それを思えば、朝比奈みくるの幼少時の教育を喜緑江美里に任せておいて正解だった。自分がやっていたら、藤原みたいになっていたかもしれない。 朝倉涼子だったら? それは、あまり想像したくない。 余計な雑念を振り払い、情報統合思念体との接続を回復した。 さきほどの交渉の内容を余計な部分をはぶいてまとめ、これからの行動方針を添えて、報告する。 行動方針については、周防九曜との交渉に入る前に予め上申しておいたものと大差はない。 返答は、ただ一言。 ────了承する。 あっさり了承された。 可能性を観測することにこだわる思念体だから、少しは渋るかとも思ったのだが。 今回は自己保存を優先する穏健派の意見が優位を占めたようだ。まあ、主流派としても、観測データをとれる時間は充分に確保できるとの判断があったのだろう。 情報統合思念体は、11次元の壁をものともせず、ありとあらゆる同位体と同期がとれるのだから。 意識の上だけで自らの役割を切り替える。 インターフェース最高統括指揮権限者から、「機関」時空工作部の最高幹部へと。 情報通信デバイスを通じて、朝比奈みくるに命ずる。 ────最高評議会代表長門有希より、上級工作員朝比奈みくるへ。至急出頭せよ。 とりあえず、γ問題には解決の目処はついた。 その他のほとんどの問題は、朝比奈みくるほか時空工作員たちで片がつくだろう。 残るは、αβ問題だけだ。 今のところ規定事項に影響を及ぼすようなイレギュラーは観測されてないが、あのあたりの時間平面連続体には不安定要素が多すぎる。不安は尽きない。 γ-7 「考えてみれば、このような事態は予測されてしかるべきでした」 次の一手を長考するしぐさで、古泉がそう切り出してきた。 ハルヒは、学内案内と称して、佐々木をつれまわしている。しばらくは帰ってこないだろう。 ちなみにいうと、佐々木はきちんと北高の制服を着ていた。ハルヒが調達してきたそうだ。さすがに、他校の制服で校内をうろつけば、目立つからな。 「涼宮さんは、個性ある人材を求めています。そういう意味では、涼宮さんが佐々木さんを見逃すはずはなかったわけです」 「まあ、確かに、あいつは変わった奴だからな。しかし、まさかとは思うが、佐々木が異世界人ってことはないだろうな?」 「それはないとは思いますが……ただ、佐々木さんは、涼宮さんと同等たりうるかもしれない存在という可能性はあります」 「どういうことだ?」 「『機関』の一部が涼宮さんを神とあがめているように、橘京子の組織にも佐々木さんを神とあがめる人たちはいるんですよ」 古泉は、さらりとそんなことを言った。 そして、こう続ける。 「彼女たちがいうには、涼宮さんの力は本来は佐々木さんがもつべきであったと。佐々木さんは、涼宮さんみたいに、世界を変容させようとは微塵も考えないからとね」 俺は、古泉の言葉を理解するのに、数十秒の時間が必要だった。 「ちょっと待て。もしかして、佐々木にも、ハルヒみたいなトンデモ能力があるってのか?」 まさか、佐々木まで一般人でないとは思わなかった。 俺の交友関係はトンデモだらけのようだな。この調子じゃ、谷口や国木田まで何かトンデモ属性をもってそうで怖いぞ。 「あくまで、その可能性ですよ。佐々木さんの閉鎖空間には、僕たちは入れないのでね。確かめようがないというのが、現状です。ただ、佐々木さんからは、その手の雰囲気というか、気配みたいなものを感じますから、すべてが嘘というわけでもないのでしょうが」 「おまえらが橘たちと対立してる理由はそれか」 「僕たちの能力は、涼宮さんから与えられたもので、涼宮さんの力を抑えるために存在する。『機関』としてはこの点だけは譲れません。僕たちの存在理由そのものですからね。その前提条件を覆すようなことは、到底受け入れられるわけもない」 まあ、そりゃそうだろうな。 「それに、彼女たちは勘違いをしている可能性もあるんですよ。佐々木さんが世界を変容させないのは、単に力が足りてないからかもしれない。もし涼宮さんの力がすべて佐々木さんに移ってしまったらどうなるのかは、予測不能です」 確かに、ある程度は対処方法がつかめているハルヒの方がまだマシだとはいえるだろう、少なくても『機関』にとっては。 古泉がようやく、次の一手を打った。だが、俺の優位は変わらない。 「しかし、佐々木にハルヒの力を移すったって、どうやるつもりなんだ?」 「まさに問題はそこですよ。橘京子の組織の主張は、これまでは絵空事でしかなかったんです。でも、彼女たちの前に、周防九曜という存在が現れた」 「ヤツの親玉なら、それが可能かもしれないというわけか」 「そういうことですね」 やがて、ハルヒと佐々木が帰ってきた。 「これから佐々木さん歓迎大会をやるわよ!」 ハルヒは、百ワットの笑顔でそう宣言した。 「どこでだ?」 俺は、律儀にツッコミを入れてやる。 部室でやった日には、あの生徒会長が嫌味をいいに来るぞ。 「有希の部屋でやるわよ。有希、いい?」 長門は、本から顔をあげて、わずかにうなずいた。 「じゃあ、レッツゴー!」 ハルヒは、上機嫌そのものだった。 崖から転がり落ちる石ころのような勢いで、というとさすがに誇張だが、ハルヒが坂道を進む速度は競歩の世界選手権代表といい勝負だったと言える。 ハルヒの後ろ姿から伸びる見えない綱に引っ張られるがごとく、俺と古泉、朝比奈さんと長門、そして佐々木も下校路を下り続け、ようやくの平地にたどり着いた時点ですっかり息が上がっていた。 常にデオドラント状態の古泉でさえ、額の汗を拭っているぐらいだから程度が知れるだろう。朝比奈さんなんか膝に手を当ててふうふう言っている。 「おい、ハルヒ。なんでそんなに急ぐ必要があるんだ?」 俺がそういうと、この放射性物質を体内に飼っているかのような疲れ知らずの女は、 「善は急げっていうでしょ? 時間は待ってくれないのよ!」とのたまわった。 急がば回れともいうんだがな。 佐々木が乱れた息を整えつつ、こう言った。 「涼宮さん、私のために急いでくれるのはありがたいんだけど、少しゆっくりしてもらえるかしら。さすがにこの調子じゃ着くまでに疲れ果てちゃうわ」 そうだぞ、ハルヒ。歓迎される主賓が、歓迎される前にダウンしてちゃ話にならん。 「佐々木さんがそういうなら仕方ないわね」 ハルヒは、つかつかと俺に近づいてきて、紙切れを渡した。 「キョン、買い出しに行ってきなさい」 俺は、紙に書かれているリストをざっと流し読みした。 「おいおい。とてもじゃないが、俺一人じゃ持ちきれんぞ」 「僕が御一緒いたしましょう」 古泉がすかさずそう申し出た。 なんでこのうららかな春の日に、男二人で歩き回らねばならんのだろうね。 俺がそんな愚痴を心の中でこぼしているうちに、俺と古泉は踏切の前にやってきた。 一年近く前。ちょうどこの辺りで、俺はハルヒから長々とした独白を聞いた。 何気なく線路の向こうに視線をやって、そこで目と手足が止まる。 橘京子。 俺たちの外なる敵が、踏切をまたいだ対面に立っていた。 先日出くわしたときとは打って変わって真剣そうな表情。 遮断機の警告灯が点滅を開始する。同時に電車の接近を告げる鐘の音が被さり、ものぐさそうにバーが下りてきた。 カン、カン、カン──。 遮断機が完全に下り、列車の接近を教える線路の震動と風切り音が大きくなる。 あり得ないタイミング。偶然じゃない。こいつは…… こいつは俺たちを待っていたんだ。いや、俺はどうでもよくて、古泉だけに用事があるのかもしれないが。 突風を撒き散らしてやって来た電車の車列が橘の姿を覆い隠した。 電車が去り、赤色警告灯が役目を果たして点滅を終え、黒黄色の長い棒が軋みながら上がりきるのを待たず、橘は動き出した。 早足で俺たちの前まで来て、 「ちょっといいですか?」 全力で断りたい気持ちの俺の切っ先の制するように、古泉が答えた。 「ええ、いいですよ。近くの喫茶店でどうでしょうか。あなたの奢りでね」 「『機関』は相変わらずケチなのですね」 「そちらと違って経費の管理が厳しいんですよ」 そんなトゲのある会話をしながら、橘と古泉は喫茶店へと向かっていく。 俺もついていかざるを得なかった。 「で、ご用件は?」 古泉は特に気負うでもなく、優雅に紅茶のカップを傾けながら、そう尋ねた。 こういう交渉事には慣れているのだろうか。 橘の答えは、意外なものであった。 「九曜さんには気をつけてください」 九曜に気をつけろだって? 「どういう意味ですか? 周防九曜はあなたがたの味方なのでは?」 「九曜さん自身が信用できないというわけではないですけど、彼女の創造主が何を考えているのかさっぱり分からないのです。私は、彼女の創造主が佐々木さんに害を及ぼさないか心配しているのです」 「あなたの立場ならば、その懸念はもっともなところですね。しかし、もしそうならば、あのときに周防九曜を伴っていたのはなぜですか? 周防九曜が危険だというならば、できる限り佐々木さんに近づけない方がいいでしょうに」 「佐々木さんは、九曜さんのことがお気に入りなのです」 「なるほど。噂にたがわず、佐々木さんは変わった趣味をお持ちなのですね」 確かに、佐々木はあの不気味な九曜に対しても興味深げというか何というか、少なくても悪い感情はもってない感じではあったな。 「で、我々にどうせよと?」 「佐々木さんが事実上そちらの管理下にある間は、佐々木さんの安全についてはあなたがたにお願いするしかないのです」 「いいでしょう。我々としても佐々木さんに危害が及ぶことを容認するつもりはありませんしね。でも、いいのですか? あなたのこの行為は、組織の方針に反するものなのでは?」 「組織よりも佐々木さんの方が大事なのです」 「その言葉だけは信用しておきましょう」 そこで話が終わりそうだったので、俺は気になっていたことを訊ねた。 「あの嫌味な未来野郎は今日もいないのか?」 「あの人は、自分から用事があるときしか連絡してこないのです」 橘の不満そうな顔で答えた。 橘たちは、相互不信でぐだぐだのようだな。そんなんで、SOS団に対抗しようたって、無理だぜ。 これなら、佐々木をSOS団に取り込んでしまえば、自然崩壊に追い込めそうだ。 「それは随分と仲のよいことだな」 俺が皮肉たっぷりにそう言ってやると、橘はそれっきり黙りこんだ。 話し合いはそれで終わり、橘は伝票をもってさっさと席をたった。 橘が支払いを終えて店を出て行ったところで、俺は古泉に話しかけた。 「あんな奴のいうことなんか信用していいのか?」 俺は、朝比奈さん誘拐犯のいうことなんて信用する気はないぞ。 「我々の注意を周防九曜にひきつけて、彼女の組織が裏で動くということも考えられますけどね。まあ、『機関』が彼女の組織の監視を緩めることはありませんから、心配はご無用ですよ」 そんなものか。 「それに、僕は彼女の話は信用できると思います。前にも言いましたが、彼女はあの組織の中ではまだ話が通じる方です。盲目的な佐々木さん信者でなければ、よき友人にさえなれたと思いますよ」 胡散臭い者同士、お似合いかもしれんがな。 「もしそうなったら、俺はおまえとの友人関係を考え直さねばならないだろうな」 「それは勘弁してもらいたいですね。あなたは僕の数少ない友人の一人ですから。まあ、それはともかく、この機会ですから、あなたに訊いておきたいことがあります。あなたと二人だけで話せる機会は、案外少ないのでね」 「なんだ?」 「あなたは正直なところ、涼宮さんや佐々木さんのことをどう思ってますか?」 古泉は珍しく真剣な表情で、そう訊いてきた。 俺も真剣に答えるべきなんだろう。 「SOS団のかけがえのない仲間ってところか。親友といってもいいのかもしれん。これはハルヒや佐々木だけじゃなく、長門や朝比奈さん、ついでにおまえも含めてな」 「あなたにそう言っていただけるとは、大変光栄です。ですが、涼宮さんや佐々木さんについて、仲間あるいは親友以外の関係になりうる可能性というのは考えられませんか?」 「SOS団を裏切れば、敵ってことになるんだろうけどな。あり得ないと信じたいところだが」 SOS団の誰かが裏切る。そんなことは万に一つもあり得ないと信じたいが、どんな可能性も0ではない。特に、超常的な組織・存在をバックにもつ三人については、そのバック同士が潜在的対立関係にあるともいえないことはないのだから。 「友か敵かですか。それ以外の選択肢はありえないのですか?」 「今さら無関係な第三者ってのはありえないだろ。ここまで深入りしちまったらな」 「そうですか。まあ、僕にとっては大変光栄な話ですし、長門さんや朝比奈さんもその覚悟はあるでしょうから、いいでしょう。ですが、涼宮さんや佐々木さんにとってはつらい話かもしれませんね、あなたと友か敵以外ではありえないということは」 「どういう意味だ?」 「分からないのならいいですよ」 古泉はふいに溜息をついた。 なんだ? 「いえ、僕もそろそろ『アルバイト』が一生涯続くことを覚悟せねばならないのかと思いましてね」 「おまえの『アルバイト』は、ハルヒのトンデモ能力がなくならない限り、ずっと続くもんだろ?」 「おっしゃられるとおりです。でも、僕はあなたに期待していたんですよ。あなたなら、涼宮さんのあの力を抑えてくれるんじゃないかとね」 「おいおい、このどこからどう見ても平凡な人間の俺にいったい何を期待してたってんだ。おまえは馬鹿か?」 古泉は、いつもの0円スマイルではない、どこからどう見ても苦笑としかいいようにない表情になった。 「辛辣ですね。ええ、そうですよ。僕は馬鹿です、どうしようもないくらいにね」 古泉の口調は、どこか自虐的な響きがあった。 「でも、あなたのおかげでようやく覚悟が固まりました。そのことについては、感謝いたします」 おまえに感謝なんかされても気持ち悪いだけだけどな。 数日前から感じていたことではあるが、古泉の様子がどうにもおかしい。 俺は真剣な口調で訊ねた。 「いったい、何があった?」 「正直にいいますと、昨今の情勢の変化で『機関』内の僕の立場が微妙になってましてね」 切り札の一つを行使しなきゃならんような事態にでも陥っているのだろうか。 「敵対勢力が本格的に動き出したことで、『機関』内の意思統一が崩れてきているのです。もともとそういう傾向はあったのですが、昨今の情勢変化でそれが加速してます」 古泉は抽象的な言い方でぼかしているが、もしかしたらやばいんじゃないのか? 「僕の今の立ち位置は、橘京子のそれに近いともいえます。まあ、今すぐ危難が迫っているというわけではないのですが、敵対勢力の動きによっては『機関』内で孤立してしまうかもしれません」 携帯電話はいつも前触れもなく鳴り出すものだ。この時もそうだった。 古泉と俺の会話を中断させたのは、ハルヒからの電話だ。 「ちょっとキョン! あんた、何ちんたらしてるのよ! 佐々木さんが待ちくたびれてるわよ! さっさとしなさい! 5分以内!」 喫茶店の店内全域に聞こえるんじゃないかと思うほどの声量だった。 俺が口を開く前に、古泉がヒョイっと携帯電話を奪い取り、 「すみません、涼宮さん。あまりにも量が多いので途中で休憩していたのですよ。すぐに戻りますので、なにとぞご容赦を」 そういうと電話を切って俺に返してきた。 そして、自分の携帯電話を取り出して、すばやく電話をかけだした。 「古泉です。すみません。ちょっと野暮用を頼まれてくれませんか? ええ、そうです。橘さんと情報交換しているうちにすっかり時間を食われてしまいまして」 そのあと、古泉はずらずらと買い物リストを読み上げた。 10分後、喫茶店の店前に黒塗りのタクシーが現れた。 運転席に座っているのは、毎度おなじみ、新川さんだ。後部座席には、本来俺たちが持って帰らねばならなかったはずの荷物がつんであった。 なんとなく申し訳ない気持ちになりつつ、俺は古泉とともにそのタクシーに乗り込んだ。 マンションの長門の部屋。 ハルヒが定めた制限時間を大幅にオーバーしてたどり着いた俺たちを見るなり、ハルヒは、 「遅刻! 罰金!」 俺だけを指差して、そう宣言した。 「なんで俺だけなんだよ。古泉だって同罪だろうが」 「どうせ、途中で休もうなんて言ったのはキョンなんでしょ。古泉くんは被害者だわ」 とんでもない冤罪だ。 むしろ、遅れたのは古泉側の事情だぞ。橘は古泉の相手なんだからな。 しかし、ハルヒ相手にそれを言うわけにはいかない。結局、俺が罪を被るしかなかった。 「今度の奢り代は『機関』から出しますよ。さすがに今回は僕絡みの事情ですからね」 古泉が俺の耳元でそうささやいた。 是非ともそうしてくれ。『機関』は経費に厳しいそうだが、これは認められる経費だろう。そうでないと困る。俺の財布はすでに非常事態宣言を出したいぐらいの危機的状況だからな。 女四名は台所でかしましく(といっても長門は相変わらず無口だが)準備をし、男どもは居間でだべっていた。 「仲良きことは美しきかな、といったところですか。佐々木さんがさっそくなじんでくれたようで、少しは安心といったところです」 まあ、寄ってくる相手をはなから拒絶するような奴ではないからな。 「このまま佐々木さんをこちら側に引き込んでしまえば、敵対勢力の意図を封じられる可能性も高まります。あなたには期待してますよ。ただし、涼宮さんの機嫌の損ねないように留意してもらいたいところですが」 「そんなのは関係ねぇよ。おまえらだって、佐々木だって、俺の友人だ。みんなで仲良くやるに越したことはないさ」 台所の様子をうかがう。 ハルヒの手際のよさは、解ってはいたが専業主婦顔負けだ。野菜を刻む包丁さばきも、ダシの取り方一つを見ても、よくぞここまで難なくこなすものだと感心するぜ。 それは佐々木も同じだったらしく、 「その感想は僕も共有するね。家庭科の成績は人並みのつもりだったけど、涼宮さんの前じゃ霞んで見えるよ」 「こんなの慣れたら誰だってできるわよ」 ハルヒは言った。小皿で鍋汁の味見をしつつ、 「あたしは小学生のときから料理してるんだもの。家族の誰よりもうまいわよ。あ、みくるちゃん、醤油とって」 「はぁい」 そういやハルヒが弁当を持ってくることは稀だが、オカンは作ってくれないのか? 「言えば作るでしょうし、たまに作りたがるけど、あたしが断ってんの。お弁当がいるときは自分でやるわ」 ハルヒは若干複雑な表情となり、 「こんなこと言うのもなんだけど、うちのおか……母親はね、ちょっと味オンチなのよ。舌がおかしいの。おまけに調味料を目分量で入れたり魚の焼き加減も適当なもんだから、同じ料理でも毎回味付けが違うわけ。あっ、有希、味醂とって」 「……」 長門は無言で味醂を差し出した。 できあがったものは、ごった煮スープカレーとでもいうべきものだった。 味付けは、長門がベースを提示し、ハルヒが隠し味をドバドバとつきこんだそうだ。 正直に言おう。滅茶苦茶うまかった。 食べ合わせというものを完全に無視したカオスのような具材も、そのスープにかかると、魔法のようにうまくなるのだ。 その場は終始楽しい雰囲気だった。それは、途中から参加したSOS団名誉顧問殿によるところが大きいだろうな。 鶴屋さんにかかれば、佐々木だって、ものの5秒でお友達だ。 楽しい歓迎会が終わっての帰り道。 出身中学が同じであれば、帰る方向も似たようなものになるのは当然のことで、俺と佐々木は、連れ立って歩いていた。 この機会に訊いておきたいことがいくつかある。 俺は単刀直入にこう切り出した。 「おまえ、どこまで知ってるんだ?」 「まあ、橘さんからだいたいの話は聞かせてもらったよ。でも、丸ごと鵜呑みにする気もないし、彼女の提言をすぐに受け入れるつもりもない。僕としては、自分自身の目で情報を集めてから判断したいといったところだ」 「それが、SOS団に入った理由か?」 「その通り。まずは、涼宮さんの人柄を確かめたかった。これは、僕個人としても興味があるところでもある」 確かに、ハルヒは興味深い人物かもしれんが。 「しかし、涼宮さんは、遠まわしな腹の探りあいというものは嫌いなようでね。いきなり、『正々堂々と勝負よ!』と宣言されてしまったよ。僕も受けて立たざるをえなかった」 「おいおい、いったい何の勝負をするってんだ? あのハルヒは超絶的な負けず嫌いだぞ。勝負となったら絶対に負ける気なんかねぇぜ」 「そうだろうね。でも、僕も受けて立った以上は、負けるつもりはないよ。何の勝負かは、君には秘密だ。君にそれを気づかせることそれ自体も、勝負の内容に入ってるのでね」 佐々木がそのつもりなら、いくら追及しても無駄だろう。 俺は、そう思い、それ以上は突っ込まなかった。 「長門さんと朝比奈さん。あの二人が、この勝負に加わっていないのは、ちょっと意外だった。二人のそれぞれの背景事情が理由だろうというのは、すぐに想像がついたけどね。あるいは、負けると分かっているから最初から参加する気がないのか」 何の勝負かは知らんが、あの二人がハルヒに本気の勝負をしかけるとしたら、よほどのことだろうな。それこそ、世界の終わりが来てもおかしくないような。 「僕もここ二日ばかりの経験で、自分の立場が非常に不利なものであることを認識させられたというのが正直な感想だ。僕から見ても、涼宮さんはとても魅力的な人物だよ。それに加えて、僕には一年近くのブランクもある。挽回するのは正直きついだろうね」 俺は、佐々木の言葉の意味がさっぱり理解できなかった。 だから、俺は話題を切り替えた。 「ところで、今日は、塾はないのか?」 特に意味があっての質問ではなかったのだが、佐々木の答えは意外なものだった。 「やめたよ。通信教育に切り替えた。親の説得に骨が折れたけどね。塾までの通学時間が人生においていかに無駄な時間かを説明して、何とか納得させることができた」 佐々木があの小難しいセリフまわしで懇々と説得している様子をイメージしてみた。 佐々木の御両親も災難だったな。 「今の僕には、SOS団の活動に支障を及ぼすような要素はない。そういうことだよ」 そして、別れ際、佐々木は独り言のようにこういい残した。 「ここ数日の経験で、僕はつくづく思ったよ。涼宮さんたちに、そして、橘さんたちにも、特殊な背景事情に全く関係なしで出会えていたら、どうなっていただろうか、とね」 佐々木よ、それは贅沢ってもんだぜ。 特殊な背景事情がなければ、そもそも出会うことはできなかった。それだけは確かなんだ。 だから、俺はそれを受け入れる覚悟はできている。 だが、佐々木は、超常的な状況に巻き込まれてからまだ数日だろう。覚悟を固めるにはまだ短すぎる時間だろうな。 てなことを考えつつ、俺は帰巣本能のおもむくまま自宅へ戻った。 涼宮ハルヒの驚愕γ 2 へ続く
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/619.html
第二章 断絶 週のあけた月曜日。あたしは不機嫌オーラをばらまきながら登校した。 半径5メートル以内に人がいないのがわかる。 教室に入り、誰も座っていない前の席を睨む。 二年生になっても変わらないこの位置関係に怒りを覚えたのは初めてだ。 あいつを見ていなければいけないなんて。 幸いなことに今日は席替えがある。 入学してからずっと続いていた偶然が途切れることを祈った。 遅刻ギリギリにあいつが教室に入ってくる。 席に鞄をおろして声をかけてくる。 「土曜日はすまなかった」 無視。 「今度からはちゃんと行くからさ」 無視。 「……?おーい」 無視。 ため息をつくとキョンは前を向き、岡部が入って来た。 授業中はイライラしっぱなしでろくに話も聞いていなかったけど 学校の授業なんて余裕よ、余裕。 こんなのもわからないなんて本当にキョンはバカよね。 待ちに待った席替え。 あたしは窓際一番後ろ。 キョンは廊下側一番前。 教室はパニック寸前だった。 ……この程度のことで騒がないでよ。 キョンを谷口のバカと国木田が慰めている。キョンは憮然と、と言うか唖然としている。 キョンは鞄を持つと教室をでた。 掃除を終わらせ我がSOS団部室へ向かう。 扉を開けるとそこには古泉君と有希とみくるちゃんと…… キョンがいた。 あたしの我慢は限界に近づいている。 あたしたちに嘘ついてまでデートしてたやつがのうのうと 『あたしたち』といようとする。 「キョン」 「何だ?」 普段と全く変わらない様子についに切れた。 「なんでここにいるの」 「いちゃ悪いのか?」 「ここはSOS団の部室よ」 「それが?」 「あたしたちに嘘ついて、SOS団の用事を放って、デートしたやつに ここにいる資格はないわ」 怪訝な顔をするキョン。 「ちょっと、ま……」 もうこれ以上聞きたくない。 『『出てけ!』』 ”四重奏”とともに古泉君につかみあげられて廊下に引っ張られるキョン。 ほかの四人も我慢の限界だったみたい。 「おい、ちょっと待てって。話を……」 鈍い音がしてキョンが黙る。 やけにニコヤかな古泉君が部室に入って鍵を閉めた。 改めて部室内を見渡すとみんなの怒り具合がわかる。 古泉君はボードゲームを出してなかったし、 湯のみも有希と古泉君の分しか出てない。 「はい、みんな注目!邪魔者も出てったところで次回の不思議探索について ミーティングを行います」 ここでいったん間。 「今度の土曜日十時に街に集合よ。遅れたら、罰金だから!」 空気が一瞬重くなる。 「罰金=キョン」の方程式が成り立っているみたいだ。 「そうですね。そっちの方がいいでしょう」 古泉君がいつものように朗らかに同意する。 「はい、お茶です」 それから他愛もない談笑で時が過ぎ、有希が本を閉じてあたしたちは下校する。 そのときあたしは廊下にあるものを見つけた。 「ねえ、古泉君」 「何でしょう?」 笑って答えながら、古泉君もあたしと同じ場所を見ている。 「どのくらい強くあいつを殴ったの?」 転々と跡を残しているそれは……。 「見た通りだと思いますよ」 そう、それは血だった。 <幕間2> 朝、学校についてハルヒに土曜日のことについて謝ったが無視された。 悪いことしたな、とは思ったけどここまでひどい扱いを受けるとは。 そのことに少なからずへこんでいて、授業には全く身が入らん。 わかんねえ……、ってつぶやいたら後ろのハルヒに鼻で笑われたような気がする。 俺が何をしたってんだ。 席替えがあった。どうせハルヒの前だろうって思ってたんだが 何が起きたのか、一番遠いところに座るはめになった。 ……ざわざわしすぎだお前ら。 偶然だろ、席替えなんて。 国木田と谷口がどうやら慰めてくれてるらしいがそんなことは気にならなかった。 とりあえず部室に行ってほかのやつらに話でも聞こうか。 と思ったんだが、みんなの反応がなんか――というか、ものすごく――よそよそしい。 古泉はボードゲームを誘ってこないし、朝比奈さんは俺にお茶を入れてくれない。 長門に至っては怒りの視線をぶつけてくる。 ……はげるって。ストレスで。 しばらくして掃除当番だったハルヒが入って来た。 こっちを見てものすごく不快そうな顔をする。 そして訳の分からん難癖を付けてきやがった。 「ここはSOS団の部室よ」 ってそれくらい知ってるさ。なんで俺がいちゃいけないんだ? ……。 土曜日?デート? ああ、『あれ』か。『あれ』を見られてたのか。 そりゃ、事情を知らなきゃ怒るだろうな。 とりあえず説明しようと口を開いた俺を……。 古泉がつかんで廊下に投げ飛ばしていた。 長門にまで「出てけ」って言われたのは正直きつい。 もう一度説明しようとした俺を古泉が思いっきり殴る。 壁に頭をぶつけて意識が遠ざかる。 気づくと部室内では次の土曜日のことを話していた。 こうなったら最終手段かな。 痛む頭を抑えて俺は学校を後にした。 終章
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/2711.html
『涼宮ハルヒのプリン騒動』 ―最終日― 昨日は酷い目にあったな。まさか鶴屋さんまでがあんなことをするなんて思ってなかったぜ。 それにハルヒも……あんなに怒るとは思わなかった。 まさかハルヒも俺のこと……いや、まさかな。さすがにそんな都合のいいことはないだろう。 鶴屋さんのおかげというべきか、とりあえずなんとか機嫌がよくなったみたいで一安心だ。 ……今日は何もないよな?順番的には長門の番な気もしないではないんだが。 いやいや、長門だぞ?いくらなんでも長門はそんなことしないだろ。いや、頼むからしないと言ってくれ。 なんてことを考えながら部室のドアをノックするも、中からは何も反応がない。 鍵は……開いてるな。ということは? 案の定、部屋の中では無口な宇宙人が一人黙々と読書にふけっていた。 「よう。長門だけか。……他のやつらはまだか?」 「そう」 軽く挨拶を交わしながら、いつもの席へと腰を下ろす。 背もたれに思いっきり寄りかかり、伸びをしながら大きく欠伸をついた後、再び視線を正面に向ける。 「……うおっ!?」 すると、いつの間に移動したのか、目の前に長門の姿があった。 「い、いきなりはびっくりするからやめてくれ。なんだ?」 長門はそっと右手を差し出す。……長門、お前もか。 「これ、プリン」 おいおい、長門さん?俺がいくら間抜けでもここでこのプリンに手をつけることはありえないぜ? 「プリン、いらない?」 「あ、ああ、遠慮しとくよ。長門が食べていいぜ?……お前のプリンなら、な」 「そう、なら食べる」 そう言うと再び自分の指定席に戻りプリンを食べ始め―― バタンッ!! やっぱりこのタイミングで来たか。危ないところだったぜ。 「あら、今日は有希とキョンだけ?……ちょっとキョン!あたしのプリン食べたでしょ!?」 「な、なに言ってんだ?俺じゃないぞ。長門だ。ほら、見ろ」 そう言って長門の方を見ると、確かにプリンを食べている。うん、おいしそうに食べてるな。 「あんたこそ何言ってんのよ?あれはあたしのじゃないわ。有希の自分のプリンじゃない?そうじゃなくて……」 ハルヒは俺の方を……ではなく、俺の目の前にあるプリンの空き容器を指差す。 ……なんだこりゃ? 「それのことよ!今日鶴屋さんからもらってものすっごく楽しみにしてたのに!」 ちょっと待て!なんでだ?さっきまでこんなのなかったはずだ。……まさか!? 長門の方をちらっと見ると、微かに笑っているように見える。 くそっ、あのときか。さっき長門が差し出したプリンはフェイクだったってわけだ。……やられた。 「落ち着けハルヒ。確かに何故かこれは俺の目の前にあるが、食べたのは俺じゃないんだ!信じてくれ」 「……有希、どういうこと?」 「私は食べてない。誓う」 くそっ、長門。お前までそうやって俺をいじめるのか?……そろそろ泣いてもいいか?俺。 「ほら、キョン。有希はこう言ってるわよ?」 「違う、俺じゃないんだ!……そ、そうだ。これはきっと古泉の陰謀だ。古泉が食べたに違いない」 「……なんでそこで古泉くんが出てくるのよ。根拠でもあるの?」 「それはないが……俺の勘だ。だが間違いない。いや、もはや超能力と言ってもいいかもしれん」 などと苦し紛れに言ってみたところでどうなるものでもないし、誰かが助けてくれるわけでもない。 「何言ってんのよ。あんたなんかに超能力使えるくらいなら今ごろ宇宙人が服着て歩き回ってるわよ」 いや、そこに服着てプリン食ってる宇宙人がいるんだ。まじで。 しかし、これが今目の前にこうしてある以上、どう考えても俺が不利だ。 どうすりゃいい。落ち着け、クールになれ、キョン。 「あんたが今食べたんでしょ!?早く謝りなさいよ。今なら土下座で許してあげられるかもしれないわ」 かもって、お前。絶対許す気ないだろ。 その時、天啓とも言うべき考えが俺の頭の中に閃いた。 いつまでも泣き寝入りばかりしてる俺じゃない。見てろよ、長門。 「わかった、ハルヒ。……今から俺じゃないってことを見せてやる」 「どうするつもり?」 「このプリンの容器を見てもらおう。……空だ。中にはスプーンが入っている」 「それがどうかしたの?普通じゃない。あんたが食べたから空なんでしょ?」 「俺が言いたいのはそうじゃない。……このスプーンを見てくれ」 「それがなんなのよ?普通のスプーンじゃない」 「確かに普通だ。だが俺はこれを使っていない。ということは、これは長門が使ったスプーンだ!」 「そ、それがなんだって言うのよ?」 「くっくっくっ、甘いな長門。甘すぎる。このプリンより甘いぜ」 「……やっぱあんたが食べたんじゃない」 「あ、いや、違う。今のは口がすべった。じゃなくて言葉のあやってやつだ。……俺は食べてない」 ここで俺は再び長門の方に視線を移す。 長門は何事かといった表情で俺の目を見つめ返している。 「これは長門が使ったスプーンだが、長門はこれを俺が使ったと言い張るんだよな?」 長門はじっと見つめたまま微動だにしない。俺はそれを肯定と受けとる。 「なら例えば、……そうだな。俺がこのスプーンを今から舐め回しても文句はないよな?」 「あ、あんた。……なんて恐ろしいことを……」 「ハルヒも俺が食べたと思ってるんなら文句ないよな?」 「そ、そうだけど。……でももしそうじゃなかったら……」 もらった。完璧だ。少なくともこれでハルヒは疑心暗鬼に陥るはず。ノン・リケットってやつだ。 どうだ長門?さすがにこれで俺の勝ちだろう。 そう思って長門の方を振り返ると、……なんと、長門が笑っていた。 うっすらと微笑みを浮かべるというレベルではなく、明らかに笑っていた。 「甘いのはあなた。甘すぎる。CoCo壱の甘口カレーよりも甘い」 ……いや、CoCo壱の甘口カレーって別にそんなに甘くないだろ。 なんてツッコミを入れている場合じゃなかった。 「私は誓ってそのプリンを食べていない。だからあなたがそのスプーンを舐めたとしても私には一切の不都合を生じない」 「いやいや、待てよ。だってこれは――」 「そして、仮にあなたの言うようにこれを私が食べたのだとしても私には不都合が生じない。困らない」 どういう意味だ? 「もし私の使ったスプーンをあなたが舐めたいというなら、……むしろ望むところ。それでも……」 長門は本を置いたうえで、立ち上がり、体ごとこちらに向き直る。 「それでもあなたが自分の言うことが正しいと言い、スプーンを舐めるというなら、それはもはや変態と言うべき」 「そ、そうよ!どっちにしろそんなことするなんて変態よ!」 なんてことだ。よくわからんがこのままスプーンを舐めると俺がただの変態ということになってしまう。 くそっ、どうすりゃいい。きっとまだ方法は――、そうだ!!この手があった。 「わかったハルヒ。これから証明してやる」 俺は立ち上がり、ハルヒの方へと近づく。 「な、なによ。……なんのつもり?」 俺はハルヒの肩に手を置き、いつか言ったあのセリフを再び口にする。 「あのな、ハルヒ。……俺、実はポニーテール萌えなんだ。」 「は、はぁ?」 「いつだったかのお前のポニーテールは、反則的なまでに似合ってたぞ」 「ちょっ、えっ?その言葉!?そんな、なにこれ?どういうこ――」 そう言って、いつかのときと同じように、ハルヒと唇を重ねる。 しばらくそのままの状態で固まった後、どちらからでもなく、二人同時に離れる。 「……どうだ?プリンの味なんてしなかっただろ?」 「そ、そうね。プリンの味はしなかったわ。……でも、……とても甘かったわ……」 「そうだな。俺も甘かった。……大好きだ、ハルヒ」 そのままハルヒを引き寄せ、ギュッと抱きしめる。 「……あたしもよ、キョン。……大好き」 「ハルヒ。……もう一回、キスしてもいいか?」 「えっ、こ、ここで?……そりゃ、あたしはいい――」 「外でして」 いかん、長門がいるのすっかり忘れてた。 「す、すまん長門。出るよ」 「そ、そうね、ごめん、有希。じゃああとよろしくね」 そうしてハルヒと二人で部室を出る。 後ろで「惜しかった」と聴こえた気がしたが、おそらく気のせいだろう。 惜しかった?なんのことだ? 「今日もあのケーキ屋に行くか?」 「今日?……うーん、あたしん家は?あたしがプリン作ってあげるわ」 「ホントか?あれうまかったらから楽しみだ。」 そうして二人でハルヒの家へと向かう。 ん?その後どうなったかって? もちろん、プリンとハルヒはおいしく頂いたさ。 ◇◇◇◇◇ 『涼宮ハルヒのプリン騒動』 ―最終日(裏)― 「うまくいった」 「さすがに長門さんですね」 「そうですねぇ。私もドキドキでした。これからお二人はどうするんでしょうねぇ」 「ふふっ、そんなこと決まってるじゃありませんか」 「あんなことやこんなこと」 「ものすごい抽象的ですね……それで伝わっちゃうのもすごいですけど」 「まぁどちらにしても僕たちの仕事は終わりですね。お二人が仲良くして頂けるというのは良いことです」 「でも少しつまらない」 「それは私もちょっとありますよねぇ。お二人をこうやって見てるとおもしろかったですし」 「まぁそううまくばかりもいきませんし、そのうち何かあるかもしれませんよ?」 「……朝比奈みくるで遊ぶという手もある……」 「……な、長門さん?何か言いました?」 「何も」 「朝比奈さんで遊ぶ手もある、と言ったんですよ!」 「……なんでそんな強気なんでしょうか?……やめてくださいよ」 「まぁそれもそのうち計画を立てておきますよ」 「そのうち」 「やめてください。……それにしてもキョンくんがスプーン舐めたらどうするつもりだったんですかぁ?」「……問題ない」 「実はですね。……あのプリン、僕が食べたんです。つまりあのスプーンも僕が使ったものです」 「昨日頼んだのはこのこと」 「えっ、ええぇぇ!?古泉くんが?な、なんのためにそんなことを?」 「仮に彼がスプーンを舐めた場合に後でショックを与えるため」 「ちなみに長門さんは彼との会話で一切嘘は吐いてませんよ。それも驚きました」 「……ひ、ひどい。キョンくん立ち直れなくなっちゃうところだったんじゃ……」 「というのは建前。本当の理由は別にある」 「おや、どういことでしょう?それは僕も聞いていませんね」 「実は……」 「実は……なんですかぁ?」 「実はあのスプーンは私があらかじめ舐めていた」 「な、なんということです!?」 「ほぇぇ、すごい展開になってきました」 「つまり僕は長門さんの舐めたスプーンを知らずに使っていたというわけですか……」 「ちなみにその後、私がもう一度舐めた」 「……やっぱり最終的には長門さんだったんですねぇ」 「……じゃあ僕と長門さんは知らないうちにかなりディープな間接キスをしていた、というわけですか……」 「そう」 「ひえぇぇ、まさか裏でそんなことになってしまってたなんて、びっくりですぅ」 「間接の次は直接しなければならない」 「って、ええぇぇ!?それは長門さん、いくらなんでも……」 「いえ、そのとおりです。ここまできてしまったからにはもはや直接以外に選択肢はありませんね」 「ない」 「……もうどうでもいいですぅ、好きにしてください……」 「では長門さん、これから二人でプリンでも食べに行きましょう。二人で」 「……行く。二人で」 「ちょっと『二人で』を強調しすぎじゃないですか……?別にいいですけど……」 「では朝比奈さん。またいつか会いましょう」 「はい。……もうツッコミませんよ」 「……いつか」 「はあぁ、一人になっちゃいましたぁ」 「そんなことはないっさ!」 「えっ、あれ、鶴屋さんですか?」 「そうさ、みくるが一人きりになっちゃったもんで遊びに来たのさ」 「そうですかぁ。ありがとうございます。……ってなんで知ってるんですかぁ!?」 「そりゃそうさ。なんせハルにゃんとキョンくん、有希っ子と古泉くんがくっつくように仕向けたのはこのあたしさ」 「ふぇっ、どういうことなんですかぁ!?」 「やけに計画が出来るの早すぎだと思わなかったかい?まるで最初っから全部出来てたみたいにさ?」 「そ、それは……確かに、おかしいかなぁ、とはちょっと思いました」 「あたしが全て計画を予め考えておいたのさっ。そしてそれを有希っ子と古泉くんに指示してたってわけさ」 「えっ、そうだったんですかぁ?」 「そしてこの計画の裏の目的は実は有希っ子と古泉くんをくっつけることにあったのさっ!」 「つ、鶴屋さん。あなたはなんてことを。涼宮さんとキョンくんはおとりだったなんて……」 「そして二つのカップルを作ることの真の目的は、こうやってみくるを一人ぼっちにすることなのさ」 「そ、そんなぁ。鶴屋さんひどいですぅ……」 「うっひゃっひゃっひゃ。面白いほど簡単にいったさ。ハルにゃんとキョンくんがくっついた後だったしね」 「そ、そんな……、どうしてそんなことを?」 「ふっふっふ。あたしの最終的な目的はここでそのプリンを頂くことっさ!」 「えっ、プ、プリンですかぁ?ここにはないですよぉ?」 「あるじゃないかい。……そこにでかいプリンが、それも二つも」 「ふえぇ、ま、まさか鶴屋さん、それをねらってたんですかぁ!?なんですかぁ、その手は?」 「へっへっへ、じゃあみくる、覚悟はいいかい?……答えは聞いてないにょろ!」 「ひええぇぇぇぇ!!!誰か助けてぇぇ!!」 「諦めるっさ!もうこのあたりには誰もいないよ」 「つ、鶴屋さぁん……許してくださいぃ。……………………なんて言うとでも思いましたかぁ?」 「なっ!?み、みくる?どういうことだい?」 「うふふっ、鶴屋さんはこのために二人をくっつけようとしていたみたいですね」 「そ、そうさ。うまくいったじゃないかい?」 「残念ですが古泉くんと長門さんはすでに付き合ってたんですよぉ?」 「な、なんだって!?……じゃああたしのやったことって……」 「それに実は私と二人っきりになるのもこんなことする必要もなかったんですよ」 「み、みくる?……まさか?」 「鶴屋さんがなかなか言ってこないから、引っかかったふりまでしちゃったじゃないですかぁ」 「じゃ、じゃあ全部わかってやってたのかいっ?なんでわかったさ!?」 「うふふっ。もう決まっていることなんですよ?……まぁそんなことはどうでもいいじゃないですかぁ」 「……そうだね。あたしたちもプリンでも食べに行くかいっ?みくるプリンは後にとっておくさ」 「そうしましょう。私も楽しみにしておきますぅ」 「あっはっは!大好きだよ、みくる」 「私もずっと鶴屋さんが好きだったんですよぉ?」 「気付かなくてごめんにょろ。……さぁ行くっさ!」 「はぁい、行きましょう」 「それにしても……なんでみくるにばれちゃったんだろうね……?」 「うふふっ。……禁則事項ですっ!!」 涼宮ハルヒのプリン騒動 ―完―
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/4993.html
特別前日に何かをしたというわけではないのに朝が辛いというのは冬場ではデフォであり、 高校生になった息子もそれは例外ではないようだ。 「あんた達、さっさとご飯食べないと遅刻するわよ!」 …前言撤回だ。 我が妻、ハルヒにとっては今が冬場の辛い朝だろが何だろうが関係ないようだ。 「なんで母さんは朝からそんなに元気なんだよ…」 息子よ、それは俺も同棲を始めた頃から思っていたが、今そうやってハルヒに絡むと… 「何言ってんの! あんた達が弱すぎるのよ。それにそんなこと言ってる暇があるなら とっととご飯を胃袋に詰め込みなさい」 ご愁傷様だな。 後、あんた達って俺も入ってるんだな。 「ちょっとキョン、あんたもボーっとしてないでさっさとしなさい! 親が息子に負けてどうすんの」 へいへい分かりましたよ。 「じゃあ、言ってきま~す」 「あ、コラ待ちなさい!」 残念だな息子よ。 本日の脱出ミッションも失敗したようだな。 「や、止めてくれ。何時も言ってるだろ母さん。俺はもう高校生だ。だから、それはもう駄目だって」 「何言ってんのよ。高校生になろうが大学生になろうとあんたはあたしの子供なの。 だからこれはあんたの義務でもあるのよ!」 世界の何処にそんな義務があるのかね? 「やれやれ、とっととしてくれ…」 おい、それは俺の口癖だ。 俺のアイデンティティーだ。 勝手に使うのはゆるさんぞ。 「誰かさんと違って素直でよろしい… チュッ。はいっ、じゃあしっかり勉強してくるのよ!」 一言多かったですよハルヒさん。 「へいへい」 お、そろそろ俺も行かんとな。 リアルに遅刻しそうだ。 「じゃあハルヒ、俺も行ってくるよ」 「…………」 勘違いしないでいただきたい。 この三点リーダは万能宇宙人のものではない。 傍若無人ハイスペック奥様涼宮ハルヒのものである。 もとい、涼宮ではなかったな。 では何故そのハルヒがこんなに大量の三点リーダを発してるのかと言うと、 毎朝俺に課せられた義務が施行されるのを待っているからだ。 いや、義務でもあるが世界中で唯一俺に与えられた権利と言ったほうがいいな。 …しかし、何時ものことながら、こうして黙って俺を待っている時のハルヒは可愛いな。 もう、そこそこいい歳になるはずなんだがな… って早くしないと遅刻するっての! 「ハルヒ… チュッ。…そんじゃ行ってくるよ」 「…素直でよろしい。じゃあ、しっかり働いてらっしゃい!」