約 2,287,789 件
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/3508.html
夏休みも終盤に差し掛かり、当然のことに宿題がまだ終わっていない俺は焦っていた。 去年もそうだったから、それを察することはハルヒにも容易にできたのだろう。そう、今俺はハルヒの家で宿題を手伝ってもらっている。 「お前が俺ん家に来いよ」という俺の願望的提案も「いやよ、暑いし」というハルヒの一喝によって一掃されてしまった。 宿題をやり出して二時間、よくぞ俺もここまで集中力が切れていないな、と自分に感心している俺はハルヒの部屋のテーブルで黙々と宿題をしている。 そして三十分前から部屋の片隅のベッドで可愛い寝息をたてて寝ているハルヒが、ちょっとばかし今の俺の癒しアイテムとなっている。 ま、今の俺の状況説明はこんなもんでいいかな。 宿題が飽きてきたところで気晴らしにでも思って、ハルヒの部屋の押入れらしき襖を開けてみた。そこ、最低とか言うんじゃない。 その中のダンボールから出てきた何枚かの作文用紙……なるほど、こりゃハルヒの昔の作文だな。つまらないとか言ってた割には、こういう物を取っておいてるのかよ。 「何々……? 『しょうらいの夢』二年一組、すずみやはるひ……可愛い文字だな。」 しょうらいの夢 二年 一組 すずみや はるひ あたしは、しょうらいすてきなおよめさんになりたい……なんてことは、ぜったい言わない。 恋なんて、いっしゅんの気のまよいであって、何かのびょうきの一種なのよ。 あたしの夢は、ずっと楽しく生きて、一生を終えること。それが、あたしの夢。 ……終わりかよっ! 随分短い作文だな……しかもなんだ、この小学二年生に有るまじきこの可愛くなさ。 まあこいつらしいと言えば、こいつらしいけどな。次見てみるか。 最近のこと 一年 一組 涼宮 ハルヒ この前、あたしは学校のグラウンドに宇宙人へのメッセージを書いた。すごい時間がかかっ たのよ?とてもあたし一人でなんかできなかったわ。でも、そんなあたしの元に一人の変態が 来たの。なんか、女の子一人背負った高校生みたいな奴だったわ。どこかの誘拐犯かもしれな いわね。でも、その変態はあたしのメッセージ書きを手伝ってくれたのよ。この世にはおかし な奴も居たものね。 中学一年の時の作文か……作文の短さも内容も全く進歩していない。しかもこの変態って……いや、やめておこう。 先生も呆れていたんだな。元から諦めていたに違いない。 さて次の作文で最後か。どれどれ? これは……高校一年のものか。 恋 一年 五組 涼宮 ハルヒ 恋。それはあたしにとって、一生無縁なことだと思っていた。でも、それは…もしかしたら 違うのかもしれない。いや、別に今あたしが恋をしてるわけじゃない。というか、元々恋とい うものはどんなものなのか、よく分からなかったりする。 今年の春。あたしは、ある男と出会っ ……ここまでが俺が読み取れた範囲である。何故これ以上読めなかったのかって? 文字が汚かったわけでも、紙が破れていたわけでもない。 ハルヒの制止によって、俺の行為は妨げられたからである。 「何してんの? …って、あっ、それ!!」 一気に作文を全て取り上げられた。まずい、怒らせちまったかな? 「こ、このバカキョン!! これ、最後まで読んだの!?」 「いや、途中までしか…」 ハルヒは動揺していた。何故顔が真っ赤なんだい? 団長さん。 「途中までって、何処よ!!」 「…さあな、忘れちまった。」 「勝手に人の作文見るなんて最低っ! 今すぐ出てけーっ!!」 ハルヒは走るチーターのスピードの如く俺を追い出した。そんなに嫌だったのか? …そうか、そうだよなぁ。 少し反省しつつ、俺は家に帰っていった。新学期、謝っておくか。 一方、ハルヒの部屋 「作文の最後の文章……『あたしがこの男に抱いている感情こそが、恋なのかもしれないわ。』……こんなの見せられるわけないじゃない! なんでこんなの書いたのかしら……自分が自分を許せないわよ、もうっ!」 おわり
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1800.html
(これは涼宮ハルヒの憂鬱を 格闘ゲーム化したら どんなふうになるのかを 予想したもの・・。) キョン -KYON- 「投げつけ」 【↑+A】 「叩きつけ」 【↓+A】 「空中蹴り」 【↑+↑+B】 「カウンター」 【←+B】 注意「技はゲージがMAX時しか使用不可能」 ━技名「蹴り殴キョンキョン」━ 「蹴り」 【B】 「2回蹴り」 【B+A】 「+強パンチ」 【↓】 みくる -MIKURU- 「みくるビーム」 【→+A】 「チェーンソー」 【接近して ↓+B】 「熱湯茶こぼし」 【→+B】 「エアガン発砲」 【B (連続押しで連発)】 「包丁切りつけ」.【B+A 同時押し】 ───技─── ━鉄パイプ刺し━ (ゲージMAX時) 通常に腹に刺す 【A】 顔に刺す 【+B】 即死刺し 【↓+A の後 →+B】 出現方法 「ハルヒ でSTORY MODE をクリア」 小泉一樹 - Koizumi - 「アナル槍刺し」 【背後で相手の方向+B】(女には無効) 「シイタケ殴り」 .【A(連続押しで連殴攻撃)】 「テドドン発射」 【↑で大きくし ↓+Aで発砲】 「テドドン射液」 【B(8回まで可能・行動停止する)】 「空中シイタケ」 【空中で A+B+B+A】 ─技─ (ゲージMAX時) 「キョンたん奪うYO」 【キョンに接近しA】 チームバトルのとき、 これを使うとキョンが仲間になる(キョンが敵の場合) 「シイタケ究極フィア」 1回目【A+↑】 投げ飛ばし 2回目【B+B】 (空中で) 射液2回 3回目【A+→】 とどめ 出現条件 「VIPスレッドタウン でVIPPERを9人犯す」 「キョン でホモハウスへいく」 長門 -NAGATO- パソコン投げ 【→+A】 ムチ攻撃 【A】(小泉にやるとシイタケカウンター) 銃発砲 【B】(連発可能。最大30発) ショットガン 【↑+B】(近ければ大ダメージ) マシンガン 【→+B】 マウス投げ 【↑+A】(連投可能) ─特殊攻撃─ 連続攻撃処理 【↓+B】 (連続攻撃・必殺技を相手が使っている 最中に押す) ───技─── ゲージMAX時 「情報連結解除」 【↑+→+↓+←+B】 10秒後発動。成功すれば相手消滅。 涼宮ハルヒ - HARUHI- かなりの最強キャラ 強蹴り 【A】(大ダメージ) ぶん殴る 【B】(大ダメージ) チェーンソー 【→+A】 (みくるのチェーンソーよりもダメージ大) 首絞め 【↑+A】(Aを連打すれば一時行動停止) 椅子攻撃 【↓+A】(中ダメージ。連打不可能) 日本刀斬【→+B】(大ダメージ。連打可能) ──技── (ゲージMAX時) 大波動砲 (火炎) 【A】 火炎放射の強化版発砲 大波動砲 (爆発) 【B】 (火炎)を撃った後に可能。即死。 ここから先は敵キャラになりまする ダーク古泉 =DARK HOMO= 最初 【殴攻撃 → 空中投げ →アナル砲】 ダメージ中【殴攻撃連続】 ダメージ小【即死攻撃 or 空中シイタケを連発】 死ぬ寸前【自爆。このときHPが少ないと死亡】 ゲージMAX キョンの場合 【アナル槍刺し。キョン即死。回避不可能】 長門の場合【戦闘終了。(長門は死亡しないで、)】 みくる・ハルヒの場合【↑と同じ。】 ラスボスの手下 「 1」 最初【スレ建て(HP回復)を行い、攻撃】 ダメージ中【豚投げ】 ダメージ小【VIPビーム】 死ぬ寸前【防御をずっと行う。】 ラスボスの手下2 「鶴屋さん」 【ハンドガン発砲】 受けるダメージは大きい 【ロケットランチャー】 1発使い捨て。食らうと即死 【ガトリング】 ダメージが少なくなるとずっと連発する 【にょろ】 34回、連続で殴る。1回のダメージは最小 LAST BOSS(キョン編) 「ダークハルヒ」 装備:血濡れ刀 【首斬り】ジャンプし、落下すると同時に首を斬る。即死 【心臓刺し】物凄い速さ。即死。しかし使用回数1回。 【振り回し】 左右に適当に振り回すwww -武器が【チェーンソー】に切り替わった時- 【首斬り】 即死。 【上下振り】 かなりの大ダメージ。食らうとHP1 【肩斬り】 肩にチェーンソーを乗せる。即死 LAST BOSS(長門編) 「朝倉」 【長槍刺し】 即死。長いので危険。 【生命処理】 謎の光に包まれると一発で即死 【武器処理】 されると、武器攻撃不能。技で我慢する 【足処理】 動けなくなる。(一時だけ、) 【生首入手】 首を斬られる。無論、即死。 LAST BOSS(ハルヒ・みくる・小泉) 「谷口」 【蹴り】 0ダメージ 【首絞め】 0ダメージ 【殴る】 0ダメージ 隠しキャラ みくる(スーパーコスチューム) 【↑+A】 みくるビーム・上 【↓+A】 地震マグニチュード9.0起こし ダメージ大 【→+A】 一回転蹴り 【←+A】 バルカン発砲 【A+A】 みくる雷ビーム 【B】 蹴り。(連発で40蹴り) 出現条件 「古泉 がキョンを犯す」 「涼宮ハルヒ ~ファイターズ・メモリ~」 税込み9800円 未発売中!!
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/725.html
少女達の放課後 A Jewel Snow (ハルヒVer) ダーク・サイド 繋ぎとめる想い 涼宮ハルヒの演技 涼宮ハルヒと生徒会 HOME…SWEET HOME 神様とサンタクロース Ibelieve... ゆずれない 『大ッキライ』の真意 あたしのものよっ!(微鬱・BadEnd注意) ハルヒが消失 キョウノムラ(微グロ・BadEnd注意) シスターパニック! 酔いどれクリスマス 【涼宮ハルヒの選択】 内なるハルヒの応援 赤い絲 束の間の休息(×ローゼンメイデン) ブレイクスルー倦怠期 涼宮ハルヒの相談 お悩みハルヒ 絡まった糸、繋がっている想い 恋は盲目(捉え方によっては微鬱End注意) 涼宮ハルヒの回想 小春日和 春の宴、幸せな日々 春の息吹 おうちへかえろう あなたのメイドさん Day of February ハルヒと長門の呼称 Drunk Angel ふたり バランス感覚 Swing,Swing,Sing a Song! クラス会 従順なハルヒ~君と僕の間~ B級ドラマ~涼宮ハルヒの別れ~ ハルヒがニート略してハルヒニート 涼宮ハルヒの本心 涼宮ハルヒのDEATH NOTE 思い込みと勘違い 束の間の休息・二日目 束の間の休息・三日目 涼宮ハルヒの追想 涼宮ハルヒの自覚 永遠を誓うまで 涼宮ハルヒの夢現 Love Memory 友達以上。恋人未満 恋人以上……? 涼宮ハルヒの補習 涼宮ハルヒの感染 雨がすべてを 涼宮ハルヒの天気予報 キョンに扇子を貰った日 涼宮ハルヒの幽霊 隠喩と悪夢と……(注意:微グロ) Close Ties(クロース・タイズ) の少し後で セカンド・キス DEAR. 涼宮ハルヒの独白 寝苦しさ 涼宮ハルヒの忘却 涼宮ハルヒの決心 ティアマト(ハルヒ×銀河英雄伝説) 式日アフターグロウ 微睡の試練 涼宮ハルヒの大騒動シリーズ young 神の末路(微グロ注意) 涼宮ハルヒの奇妙な憂鬱 夕日の落ちる場所 涼宮ハルヒの抹消 トラウマ演劇 涼宮ハルヒは夜しか泳げない ハルヒ「釈迦はイイ人だったから!」 (グロ ナンセンス) ハルヒとボカロオリジナル曲の歌詞をあわせてみた 涼宮ハルヒの共学目次 word of thanks 赤色エピローグ 夏の日より 朝比奈さんの妊娠 疑惑のファーストキス 機関の推測(微エロ注意) 涼宮ハルヒの切望―side H― 憂鬱な金曜日 それでもコイツは涼宮ハルヒなんだ
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/4183.html
エピローグ あれから二ヶ月が過ぎた。ハカセくんは無事大学に合格し、実験を再開している。進捗状況はあまり目を見張るほどのものではなさそうだが、一歩ずつ時間平面について勉強しているようだ。あれこれ苦労しているハカセくんを長門と朝比奈さんが温かく見守っている。ハルヒの目が温かすぎてプレッシャーにならないようにいろいろと配慮はしているのだが。 「そういえばキョン、メモリカードどこにやったの?」 「あのメモリカード壊れてるぞ。今のパソコンだとちゃんと読めない規格だったらしい」 「むー」 ハルヒは口を尖らせて、どうしてもあの続きを見たい風だった。 「続きはそのうち分かるだろ、少なくともお前自身なんだから」 「そうね。未来のあたしが満足してるなら、それでいいわ」 なんとかあきらめてくれたようだ。ワームホールも無事閉鎖したし、しばらくはおとなしくしてくれると助かる。すくなくとも次の「ひらめいた」の号砲が出るまでは。 しばらくして朝比奈さんは自分の時代に戻ることになった。ハルヒのタイムマシン開発は俺と長門と古泉でコントロールできそうなので、問題はないだろうということだった。 「とりあえずは安全だということが分かったので、帰りますね」 「そうですか。俺としてはずっといてくれたほうが心強いですが」 「わたしがいなくても大丈夫よ。でも、あまり急いでタイムマシンを作ってしまわないようにしてね」 今すぐにでも欲しがっているハルヒを抑えるには、それはもっとも難しい問題ですが。 「また来るわ。必要なときが来たらね」 「ええ。じゃ、未来で」 朝比奈さんは右手をニギニギしてニッコリと笑った。俺が瞬きをすると、もうそこにあるのは可憐な姿の名残だけだった。 就業時間が過ぎ、日が暮れたので帰ろうとしたが長門の姿が見当たらなかった。カバンはまだ机の足元に置いてある。古泉もハカセくんも知らないと言っていた。 「有希ならエレベータの前で見たわよ。三階に行ったんじゃない?」 俺がさっき開発部の連中とミーティングしていたときにはいなかった。たぶん屋上だろう。俺は紙コップのコーヒーを二つ持ってエレベータに乗った。 今日の長門は少し変だった。なにか思いつめているような、俺にしか分からない微妙な感情のゆれがあった。 「長門、こんなところにいたら風邪ひくぞ」 ヒューマノイドインターフェイスがかかるようなウィルスがあったら、人類は壊滅してるかもしれない。などとどうでもいい突込みを思い浮かべつつ、長門にコーヒーを渡した。 「……」 長門は手すりに寄りかかって遠くを眺めていた。 「どうしたんだ?」 「……考えごと」 長門が思案にふけるなんて珍しい。 「愚痴だったら聞くぞ。心配ごとでもいい」 「……試算のこと。数々の失敗のこと」 「試算って、時間が分岐した二十九パターンのことか」 「……そう」 タイムマシン開発をどうやって進めるか、あの二十九回繰り返した時間は長門の手の中で行われたテストのようなものだった。 「時間をループさせるってどうやってやったんだ?」 「……正確にはループではなく、この銀河のスナップショットを取って当該ポイントに復帰させただけ」 簡単に言ってるが、えらく壮大な話だ。膨大な情報量だろう。 「失敗って、ひどかったのか」 「……時間移動技術によって文明が崩壊したパターンもあった」 「そうなのか」 「……人生が大幅に変わった人もいた」 「朝比奈さんに子供が生まれたときは正直驚いたが」 「……すまなかったと思っている」 「たしか本人は幸せそのものだったぞ。白馬の王子様みたいな人と結婚できたんだから」 「……あなたが覚えているのは、わたしがパラメータを変更してやり直したパターン。失恋する朝比奈みくるも存在した」 「そうだったのか」 「……」 いつになく、元気がない。どう慰めていいのか分からないが、俺の記憶にない部分でかなりこみいった経験をしたらしい。 「長門がどういう視点で歴史を見ているのか俺には分からんが、昔からよく言うだろ、後悔先に立たずって」 「……そう。時間は、やり直せないから価値があるのかもしれない」 「そうかもしれん。だから失敗しないように努力するのかもな」 簡単に修正できるなら、間違いもないだろうが成長もしないだろう。 「……わたしたちは十分に成長していないのかもしれない」 長門は夜空を見上げて言葉を継いだ。 「……時間を操作するほどには、まだ」 時間がなんなのか俺には分からん。それぞれの心の中にあるものなのか、それとも誰かが決めた一分一秒という単位なのか。本当はそんなものは存在しなくて、俺たちが時間だと思ってチクタクと長さを計りながら過ごしているだけなのか。 もしかしたら、誰かのコーヒーカップの上でぐるぐると渦を巻いているミルクの中の、小さな粒子のひとつのように人生を過ごしているだけなのかも。 「……そうかもしれない」 ── わたしたちの存在は、もっと大きななにかの一部に過ぎない。 長門のその言葉には、自戒と反省と懺悔と、それから未来へのなにかが込められていた。 「まあそう気に病むな。自分で言ったろ、お前はお前の思うところをやればいいんだと思う。未来における自分の責任は今の自分が負う、だったっけ。それが、」 「……わたしたちの、未来」 冷たい風に混じって粉雪が降り始めた。俺はコートを開いて長門の体を包んだ。二人で、舞い降りてくる雪をじっと見つめていた。 END 目次へ戻る
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/3549.html
「お久しぶりね、キョン君」 ん・・・?この声は・・・?まさか!? そう、俺は、一番聞きたくない奴の声を聞いて目を覚ましたのだった。 「朝倉!?どうしてお前らがここにいる!?というかこれはどうなっているんだ!?それに・・・そこにいるのはハルヒか!?おい、ハルヒ!無事だろうな!?」 場所は今、文芸部部室、もといSOS団アジト。いつもの平穏な空気など微塵も残っておらず、今や部室内は一面が闇に包まれ、暗黒に染まっている。 その中で、ひとつの闘いが、今まさに幕を閉じようとしていた。 「なんか彼、ごちゃごちゃうるさいけど、覚悟はできてるわね?それじゃあ本当に終わりにしましょうか、涼宮さん?いくわよ?・・・・・の攻撃!プレイヤー涼宮ハルヒにダイレクトアタック!!!」 何も言わずにモンスターの攻撃を喰らって吹っ飛ぶハルヒ。そしてライフも0になった。 「大丈夫か!?ハルヒ!?」 駆けつけようにも情報操作でもされているのか、俺の体はピクリとも動かない。 クソ・・・なんでこんなことになっちまったんだよ!? なんで朝倉が復活してるんだ!?こりゃあ一体どうなっているんだ!?これもハルヒの力のせいなのか!? なぁ、ハルヒ。本当にお前がこんな状況を作り上げたのか? 俺は、『闇のゲーム』に立ち会うこととなった原因へとフラッシュバックした。 ・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・ 俺は、相変わらず自分に搭載されているコンピューターでは解析不能な「英語」という名の謎の文字列の授業を、素晴らしき「夢」という名の世界に旅立つことによって克服し、SOS団のアジトと化した我等が文芸部室へ歩みを進めていた。 ハルヒはハルヒで、授業が終わるや否や教室を台風の通り過ぎるようなスピードで飛び出していった。たしか手に何か本みたいなのを持っていた気がするな。あまりのスピードでよくわからんかったがな。本なんかアイツに似合わんが一体どうしたんだ? なんて、そんなことを考えているうちに俺の足は文芸部室のドアの前についていた。 コンコン、とノックをする。もしかしたら、麗しのマイスイートエンジェル、朝比奈さんがお着替え中かもしれんしな、うん。たまにはノックをし忘れたことにしてそのお姿を拝見してみたい、なんて考えたことないぞ。本当だ。本当だからな。 「はぁ~い、どうぞぉ~」 天使のような声が耳をうずかせる。どうやらもう着替えは終わっているようだ。ちょっと残念・・・なんて思ってないからな。 かちゃり、と戸を開けると、そこにはいつもの席で石像の様に静かに本を読み続ける宇宙人、小動物のように愛くるしい未来人、0円スマイルを貼り付けてニヤニヤしている超能力者、そして、我等が団長、涼宮ハルヒがいた。 「すぐにお茶を淹れますから、ちょっと待ってて下さいね~」 いつもいつもありがとうございます、朝比奈さん。もう俺はあなたのお茶なしでは生きていけませんよ。 「うふふ、ありがとうございます。お世辞でもうれしいです」 そういうと朝比奈さんはちょこちょことお茶を淹れにいった。教室で少し様子のおかしかったハルヒは、というと、相変わらず、まるで長門のように本のようなものを読み漁っていた。 その本が何かって?そんなの俺にも分からんさ。なぜならカバーをかけているからな。 それに、険しい顔して読んでるもんだから、聞く気にもならんしね。 「おい古泉、ハルヒのやつ、また機嫌でも悪いのか?授業の時からずっとあんな感じなんだが」 「いえ、そういう事はないようです。僕のところにはなんの連絡も入っていませんし」 まあ古泉がそういうんだ。間違いはないだろう。触らぬ神に祟りなし、というやつか。 「それはそうと、久々にアレ、やりませんか?実は結構楽しみにしてたんですよ」 別に構わない、というより実は俺も結構楽しみにしていたぞ。最近ご無沙汰だしな。だが手加減はせんぞ。俺の無敗伝説をコレでも更新したいからな。 「今回は甘く見ていると痛い目にあうかもしれませんよ?」 望むところだな、それじゃいくぞ! 「「決闘(デュエル)!!!」」 結果から言ってしまうと俺の勝利だった。マイスイートエンジェル、朝比奈さんの前で醜態を曝す訳にはいかないからな。長門もちらちらと見てたし。だが、古泉は古泉でなかなか強かった。 少しでも手を抜いていたら下手したら負けてたかもしれん。 「今回は結構自信があったのですが。いやはや、やはりあなたはお強いですね」 いつもより一割くらい減ったニヤケ具合で話しかけてくる。お前はそんなに俺に負けたのが悔しかったのか?でもお前も十分強かったぞ。 「あなたが僕のことをそういうなんて珍しいですね。僕もまだまだ捨てたもんじゃないってことですか」 調子に乗るな。そういうのは俺に勝ってから言え。挑戦は受けてたつぞ。 「ではお言葉に甘えまして、もう一勝負どうです?今度は負けませんよ?」 いいだろう、相手をしてやるよ。来い、古泉! 「それでは・・・」 「「決・・・」」 闘と続けようとしたが、突如、 「覚悟はいいわね、キョン!!!滅びの呪文、デス・アルテマっ!!!」 との言葉とともに後頭部に激痛が走る。あまりの痛みに、少しの間、頭を抱えたまま悶絶する。そしてしばらくして後ろを見ると、モップの柄をもって、目をキラキラ輝かせながら団長様が仁王立ちしていた。 「痛ってえな!なにしやがる!」 「何ってデス・アルテマよっ!あんた、聞いてなかったの?」 そういう問題ではない。俺が聞いているのは何でお前がモップの柄で俺の頭を叩いたのかってことを聞いているんだ。ただでさえ赤点レーダーギリギリ低空飛行な俺の頭がこれ以上悪くなったらどうするんだ? 「あんた、もうあんまり悪くなりようがないじゃないのよ。そんなことよりやっぱりデュエルモンスターズは王国編よね!ストーリー的にあれが一番面白いわよ!」 そうかい、俺の話はもうスルーかい。そしてお前が今日ずっと読んでいたのはアレだったのか・・・。それと古泉、お前、見えてたんならあいつをちゃんと止めろよ。俺は痛いこととか苦しいこととかはまっぴらなんだからな。 「すみません、不注意でした」 そのニヤニヤ顔で言われても全く誠意が伝わってこないのだが。 「ごごご、ごめんなさい、キョン君・・・」 いえいえ、あなたが謝るなんて、とんでもないですよ、頭を上げてください、朝比奈さん。悪いのはハルヒの馬鹿なんですから。 「…………」 お前も気にしなくていいぞ、長門。 「あんたを差し置いて誰が馬鹿よっ!それにあんたねぇ、もう過ぎたことを気にしても遅いのよ!ちゃんと前を見なくっちゃ、前を!」 やれやれ、当の本人がなんとも思っちゃいないなら意味ない、か。 「それよりもキョンに古泉君、あんたたちがやってるのって、デュエルモンスターズよね!?私もいまデッキあるのよ。さあ!どっちか決闘しなさい!」 そういって、ハルヒは自分のポケットからデッキを取り出した。目には炎を灯らせてな。しかもなぜか腕章には『決闘王』の文字が。 悪いが古泉、続きはまた今度になりそうだな。 「そうですね。残念ですが仕方ありません」 「そこっ!コソコソしゃべらない!じゃあ・・・そうね、キョン。あんたが相手しなさい!」 やれやれ、もうすっかりさっきのことを忘れてやがる。仕方ない、カードで軽く仕返しでもしてやるか。 「分かったよ、こい、ハルヒ」 「あんたなんかに絶対負けないんだからね!」 こうして俺たちの決闘は始まった訳だが、思惑通りあっさり勝負は決まってしまった。 「・・・え?嘘よ・・・こんなの嘘よ・・・もう一度勝負よ!」 構わんぞ。何度やっても変わらんと思うがな。それに俺の鬱憤晴らしにもなるしな。 その後、三回ほど決闘し、俺が全勝したところで長門がパタンと本を閉じて、お開きとなった。俺に数連敗してぶつくさ言いながらぶーたれているハルヒをよそ目に俺はカードを片付け、デッキをしまおうと鞄をあけた。そうしたら中に何のラベルも貼られていない謎のディスクが入っているではないか。ここに来る時は確かなかったよな?古泉とやるために鞄を開けたときは・・・・覚えていない。が、恐らくその時にでも紛れ込んだのだろう、と思って他の部員に声をかけた。 今思えばあんな怪しいものはないのだが、そのときの俺はなんとも思わなかったのかね。出来る事なら過去に戻って面倒なことになるからやめろ、と過去の俺に言ってやりたいくらいだ。残念ながら俺にそんな記憶はないので、できない話なんだろうがな。 「このディスク、誰のだ?俺の鞄に入っていたんだが」 古泉、お前か? 「いいえ。違いますよ」 じゃあ長門か? フンフンと頭を横に1ミクロンくらい振る。 なら朝比奈さん、あなたのですか? 「ふえっ?何ですか?え~と、そのディスクですか?う~ん、違う・・・と思いますよ」 ということは消去法でハルヒ、お前のだな? 「違うわよ。でも何か怪しいわね!キョン、これの中身調べるわよ!」 と言ってディスクを俺の手から奪い取った。 「なぁ、長門、あのディスク、大丈夫なのか?」 「……分からない。あのディスクには高度なプロテクトがかけられている。それを解くには情報操作が必要」 と言ってチラッとハルヒを見た。そうか、アイツがいるからそれができないんだな? そう聞くと長門はコクッと頷いた。古泉もこの話を聞いていたらしく、アイコンタクトを送ってくる。ピコッ、とパソコンの起動音がした。 「さぁて、この中身はなんなんでしょうね!?もしかして宇宙人からのメッセージが入ってるとか!?あ!まさか!キョン、実はあんたのディスクで、中にいやらしい画像とかが入ってるんじゃないでしょうね?」 馬鹿かお前は。もし本当に自分のだったらいちいち人に聞かんぞ。 「さぁ、どうかしら?あ、ついたついた」 そういって起動したパソコンに目を移す。長門は少し緊張した顔をしている。古泉もいくらか真剣な目をしていた。 カチッ。 その音を聞いて俺は自分の意識を突如として失った。 ================================================================= 「一体何よこれ!?どうなってんのよ!」 ディスクのデータをクリックして起動させたとたん、部室一面が闇に覆われてしまった。 ぱっと見、前に見たキョンと二人っきりの夢の世界に似てるけど・・・ ううん、ぜんぜん違うわね。あの巨人こそいないものの、なんか禍々しいものを感じるというか・・・ 「ね、ねぇキョン?」 これどうなってんのよ!?と言いかけてあたしは言葉を失った。 だってそこにはさっきまでいたはずのキョンが、いや、キョンだけじゃない。有希やみくるちゃんや古泉くんといったみんなが、どこを見回しても影も形もなく消えちゃってるんだもの。 もう一度パソコンに目を移す。だってこれをやってからおかしくなったのよ?だったらもっかいなにかをやれば元に戻るはずよ!そう思ってパソコンに手を伸ばしたとき、突如あたしの後ろから声がした。 「ふふふ、お久しぶりね、涼宮さん?」 ハッとして後ろを振り返る。 「あんたは・・・朝倉?!いつの間に!?いったいどこから!?」 「あら、せっかくの再開なのに、その言い様はないんじゃないの?」 「そんなことどうでもいいのよ!それよりも、ねえ、あんた、みんなのこと知らない!?」 「知ってるわ。だってあたしが閉じ込めたんだもの。」 「ならさっさと解放しなさい!」 「いいわよ。ただし、命をかけた『闇のゲーム』でわたしに勝てたら、だけどね。もちろん決闘で」 そういって朝倉は左手をガッツポーズの形にした。その腕にはいつの間にか決闘盤(デュエルディスク)がついている。一体いつの間につけたのかしら?それに『闇のゲーム』って・・・まさにあたしが今日読んでたあたりじゃない!でも今はそんなこと気にしてる場合じゃない。 「なんだかよく分かんないけど、その勝負、乗ってやろうじゃないの!このあたしに決闘を申し込んだことを後悔させてやるわ!」 そう言ったとたん、急に左手に重量を感じた。なんと、あたしの腕にも決闘盤が。 ほんと、これこそまさに不思議よね。・・・てそんな場合じゃなかった。 「分かったわ。それじゃあいくわよ?」 「「決闘!!!」」 掛け声とともにあたしたちはデッキから5枚のカードを引いた。 「ふふふ、闇のゲームの始まりよ!わたしの先行、ドロー!そうね、ここはリバースカードを2枚セット、さらにモンスターを守備表示でセット。これでわたしのターンは終了」 朝倉がカードをセットするのと同時に巨大なカードのビジョンがブォンという音と一緒に部室内に現れる。何よこれ!超おもしろそうじゃないの! 「それじゃいくわよ!朝倉!あたしのターン!ドロー!あたしはヂェミナイ・エルフ(攻1900/守900)を召喚!」 さっきと同じように、ブォンという音とともにフィールドに双子エルフのヴィジョンが出現する。 「それじゃ、いくわよ!ヂェミナイ・エルフであんたのモンスターを攻撃!」 エルフの姉妹の息のあったコンビネーション技が相手に決まり、セットされたモンスターがパリーンという音とともに撃破される。凄いじゃないの、これ!!! 「やったわ!どうよ、朝倉!さっさと観念しなさい!」 「ふふっ、ありがと、涼宮さん。あなたの攻撃したモンスターはリバースモンスター、メタモルポット(攻700/守600)だったの」 メタモルポット・・・確かアレは・・・ 「あなたの攻撃でメタモルポットは表表示となり効果発動!お互いのプレイヤーは手札を全て捨てて、新たにデッキから5枚引く」 やっぱり!?せっかく手札にいいカードがあったのに!ううう、悔しいわね。 「あんた、よくもやってくれたわね!?」 「ううん、本当はこれからなのよ?」 といって朝倉が微笑む。それを見たあたしは、なんだか嫌な予感がしたの。まあそれは奇しくもあたることになるんだけど・・・ そして突然、ウヲヲヲヲヲヲという地獄の底から響いてくるような雄たけびが聞こえ、暗黒の渦が現れ、雷とともに中から一体の白銀の悪魔がフィールドに舞い降りた。 なんで!?なんでこんな強そうなモンスターがいきなりでてくんのよ!? 「このカードは暗黒界の軍神シルバ(攻2300/守1400)。このカードは他のカードによって手札から墓地に送られたとき、フィールドに特殊召喚することができるの。あなたがメタモルポットを攻撃してくれたおかげよ。そのおかげでデーモンの召喚が墓地にいっちゃたんだけどね。一応お礼を言わせてもらうわ」 何よそれ、反則じゃない。いきなり2300とか対抗できるわけないじゃないの! 「だ、だったらリバースカードを1枚セットしてターン終了よ!」 朝倉、かかってきなさい!あんたなんか次のターンでボコボコにしてやるんだから! 「わたしのターン、ドロー!まずは手札から魔法カード、未来融合-フューチャー・フュージョン-を発動!このカードが発動したとき、わたしは融合モンスターを指定して、それの融合素材をデッキから墓地に送る。そして2ターン後のスタンバイフェイズ時にその融合モンスターを特殊召喚することができるの。ちなみにわたしが選ぶモンスターは有翼幻獣キマイラ。よって、デッキから幻獣王ガゼルとバフォメットを墓地に送るわ」 ううう、厄介なカードね。でもなんでキマイラ?あれはそこまで強くないじゃない。 「そして手札からシャインエンジェル(攻1400/守800)を召喚!」 リクルーターね。戦闘で破壊してもデッキから特殊召喚してくる嫌なカードだわ。 「ふふふっ、それじゃバトルフェイズね。いくわよ!暗黒界の軍神シルバでヂェミナイエルフを攻撃!」 やっぱり来たわね。でもこの攻撃をくらうわけにはいかないのよ! 「今よ!リバースカードオープン!攻撃の無力化!よってシルバの攻撃は無効よ!」 「なんですって!?」 「残念だったわね、朝倉!これであんたのバトルフェイズは終了よ!」 「やるわね。ターン終了よ」 ふう、危なかったわ。エルフが破壊されてたら結構やばかったかもね・・・いくわよ!朝倉! 「あたしのターン!ドロー!あたしは手札から魔法カード、召喚師のスキルを発動っ!このカードは、デッキから星5以上の通常モンスターを手札に加えるカード。あたしはこの効果で真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)を手札に加えるわ。」 「あら、あなたのフィールドにはモンスターは1体しかいないわよ?どうやって出すつもり?」 「まだあたしのメインフェイズは終わってないわ!今度は手札から黒竜の雛(攻800/守500)を召喚!」 「ふふっ、なぁに、そのかわいい竜は・・・ん?・・・・はっ!そ、そのカードは!?」 「ようやく気がついたようね、朝倉!あたしは黒竜の雛の効果を発動!表表示でフィールドに存在するこのカードを墓地に送ることによって、あたしは手札から真紅眼の黒竜を特殊召喚することができる。出でよっ!真紅眼の黒竜((攻2400/守2000)!」 フィールド上にいた可愛らしげな雛が閃光に包まれたかと思うと、疾風とともに中から大きな黒竜が現れた。くううう、かっこいいじゃない!あたしのレッドアイズ!!! 「えっ・・・ここで一気に形勢逆転されるなんて!?」 朝倉の顔に驚きの色が浮かぶ。いくわよ、レッドアイズ! 「バトルフェイズに入るわ!レッドアイズでシルバに攻撃!」 レッドアイズが口を開き、そこに熱く燃え盛る炎がみるみるうちに集まっていく。 「喰らいなさい!黒・炎・弾!!!」 レッドアイズの口から炎が発射され、シルバを捕らえた。ドガァァァァァンという轟音の後にはもはやシルバは完全に消え去っていた。 「くっ!!!やるわね!?」 よし、朝倉のライフが3900になったわ。このまま一気に攻めるわよ! 「それと、ヂェミナイエルフでシャインエンジェルを攻撃!」 「きゃあああ!!!!」 これで朝倉のライフは3400。このまま一気に押し切るわよ! 「ちょ、ちょっと待ってもらえる?シャインエンジェルの効果を発動するわ」 なによ?なんかあるわけ? 「シャインエンジェルが先頭で破壊されたとき、わたしは攻撃力1500以下の光属性モンスターを特殊召喚することができるわ。だからわたしはもう一度シャインエンジェルを特殊召喚」 リクルーターだったのすっかり忘れてたわ。まぁ盾ってわけね。なかなかしぶといじゃないの。 「これであたしのターンは終了よ」 「それじゃあわたしのターンね。ドロー!そうしたらリバースカードを2枚セット。シャインエンジェルを守備表示に。これでターン終了するわ。かかってきたらどう?涼宮さん?」 なんだ、朝倉ったらよくわからない魔法使っただけで何もしかけてこないじゃない。あのリバースカードは気になるけどね。あたしのライフはまだ無傷だし、攻撃あるのみ、かしら。 「あたしのターン、ドロー。下級モンスターはこない、か。なら戦うしかないわね、いくわよ、ヂェミナイエルフでシャインエンジェルを攻撃っ!」 どうどう?トラップは来るの!?・・・とハラハラしたが、どうやら間違いだったみたいね。だって、苦い顔しながら効果でもう一度シャインエンジェル出してきたくらいだもん。 これってかなりのチャンスよね!? 「続けてレッドアイズでシャインエンジェルを攻撃よっ!黒・炎・弾!!!」 朝倉のモンスターは攻撃表示。特殊召喚されるのは厄介だけど、1000ダメージは大きいわね。なんて思ってる間に黒炎弾がシャインエンジェルに命中し、爆発が起きる。それで出た爆煙がフィールドを埋め尽くした。 でも朝倉が包まれる寸前、その顔に笑みが浮かんでいたのは気のせい、よね・・・? 「どうよ朝倉。1000ダメージは痛いでしょ!?あんたがいくらモンスターを呼ぼうと・・・」 「それ、よんでたわよ、涼宮さん!あなた、自分のライフを見てみなさい」 煙の中で朝倉が笑う。何が言いたいのよ?あたしのライフ4000のままでしょ?減ってるわけが・・・・・ あれ?なんで?なんであたしのライフが3000になってんの!? 「それはわたしがトラップを発動したから」 煙が徐々に晴れ、そのトラップが姿を現した。 「トラップカード、ディメンションウォール。このカードは、プレイヤーが戦闘ダメージを受けたときに発動するカード。その戦闘ダメージを相手に与えることができる。よってあなたに1000ダメージ!」 「くっ、そうくるなんて思ってもみなかったわ」 最初の攻撃で使ってこなかったのは戦闘ダメージが発生しなかったからなのね。モンスターを伏せてこなかったのも、確実にシャインエンジェルに攻撃させるため、か。 ホント強いわね、こいつ。ライフ的には負けてるけど、朝倉の場はリバースカード1枚と未来融合だけ。次の朝倉のスタンバイフェイズにキマイラが出てくるけど・・・ レッドアイズの敵じゃないわね。それにこのカードがあればキマイラなんてちょちょいのちょいよ。しょうがないけど、このターンはもう何もできないかな。 「あたしはリバースカードを1枚セットしてターン終了!」 「いくわよ、私のターン。ドロー!スタンバイフェイズで有翼幻獣キマイラ(攻2100/守1800)を未来融合によって特殊召喚!」 残念だったわね、キマイラは破壊させてもらうわよ! 「今よ!リバースカードオープン!速攻魔法、サイクロン発動!」 相手ターンでも使える速攻魔法。サイクロンはその中でもかなり優秀で、フィールド上の魔法・罠カードを1枚破壊することができる。 未来融合は、未来融合自体が破壊されたら特殊召喚した融合モンスターも破壊する効果も持っていたはず。これで相手のフィールドはほぼがら空きね! 「もちろん破壊するカードは未来融合よ!」 グラフィック化された未来融合のカードに向かって一つの竜巻が迫る。これで朝倉ももうお終いよ! 「惜しかったわね!リバースカードオープン!カウンタートラップ、マジックジャマー!このカードは手札を1枚捨てることによって、相手の魔法カードの発動を無効化し、破壊することができるカード。よって、わたしは手札を1枚捨てて、サイクロンの発動を無効化するわ!よって、キマイラも健在よ。」 竜巻の進行方向に魔方陣が突如として現れ、竜巻を吸い込んでいった。 「ふ、ふんっ。でもあんたのフィールドにはキマイラしかないじゃない。だったら早めにあんた自身で負けを認めなさい!それで、このゲームを終わらせてみんなに会わせなさい!」 あたしがそう言ったとき、朝倉は、ふふふっ、とこれで何度目か分からない笑いをこぼしたの。その眼には狂気の色を浮かべて。 「そうね、このゲームを終わらせるのにはわたしも賛成だわ。でもね、負けるのはあなたよ」 何言ってるのよ、圧倒的に有利なのはあたしのほうじゃないの。 「見てれば分かるわよ。嫌でもね」 その時あたしはなんだかとっても嫌な感じがしたの。何度もそれが何かの間違いであるように願ったわ。でもね、嫌な予感ってのはなかなかはずれないもんなのよね。 「まずは速攻魔法、魔道書整理を発動。これによってわたしはデッキの上から3枚までのカードを見て、それを好きな順番で戻すことができる」 朝倉はデッキの上から3枚のカードをめくり、ふふん、と笑って順番を入れ替えた。何考えてるのかしら?まったく分からないわ。 「残念ね、涼宮さん。あなたの負けはもう規定事項みたい」 は?あんた何言ってるのよ? 「ふふっ。すぐに終わらせてあげるわ。わたしは、墓地に存在する、デーモンの召喚、暗黒界の軍神シルバ、バフォメット、シャインエンジェルの、3枚の闇の悪魔、1枚の光の天使をゲームから除外し、混沌の世界から破滅の使者を呼ぶわ!降臨せよ!天魔神ノーレラス(攻2400/守1500)!!!!!」 そう朝倉が言い放つと、あたしと朝倉の間に闇が集まり、ゲートを作り出した。そのゲートの中心部から一筋の光が放たれ、その中から暗黒の巨体に闇の翼を生やし、髑髏の仮面をつけた、邪悪な魔人が現れた。なんなのよ、コイツは・・・ 「お、大口たたいた割には、出てきた奴はレッドアイズと同じ攻撃力のモンスターじゃない。あんた、まだ本当に勝つつもりなの?」 確かにレッドアイズと同士討ちされて、キマイラでヂェミナイを攻撃されたら痛いわね・・・でもあたしの手札には聖なるバリア-ミラーフォース-があるのよ。次のターンで相手モンスター全滅よ!この状況であたしが負けるわけないじゃない。 「あら、何を勘違いしてるの?わたしはノーレラスでは攻撃しないわ」 じゃあ何のために出したっていうのよ? 「もちろん効果のために決まってるじゃない。あなたを敗北の道に突き落とすための効果をね」 あんた、一体なにを考えてるのよ? 「見せてあげるわ!ノーレラスの効果発動!プレイヤーはライフを1000払うことによって、お互いのフィールド、手札を全て破壊し、墓地に送る!その後、お互いはカードを1枚引く」 ええ!?あたしのミラーフォースが!レッドアイズが!なんてことなの!フィールドと手札がリセットされちゃったじゃない!こんなのって反則よ! で・・・でも何かしら?何か忘れているような気が・・・・ 「あながちそれも間違いじゃないわ」 その言葉であたしは朝倉のフィールドを見て、そして驚いた。 「なんで!?すべてのカードが破壊されたはずなのになんであんたのフィールドにモンスターがいるのよ!」 おかしいじゃない!まだカードだってドローしてないわよ? 「あなた、キマイラの効果、覚えているかしら?」 キマイラの効果・・・?確か・・・キマイラが破壊されたときに、墓地から幻獣王ガゼルかバフォメットを場に特殊召喚できる・・・・・っ!!! 「そうよ。ノーレラスによって破壊されたキマイラは効果を発動!わたしは幻獣王ガゼル(15攻00/守1200)を攻撃表示で特殊召喚!」 あたしには今手札も場もがら空き・・・次のターンまでもつの?! 「それよりも涼宮さん、わたしたちはまだドローしてないわよね?」 ええ、そうね。このドローで次のターンにつなげるしかないもの。 「それと、さっきわたしが使ったカードも覚えてる?」 何だったかしら?確か・・・魔道書整理・・・ってまさか!?今のために!? 「そうよ。全てはこのときのため。それじゃあゲームを終わらせましょうか。あなたの敗北でね。幻獣王ガゼルを生け贄に、偉大魔獣ガーゼット(攻0/守0)を召喚!」 攻守0ですって?そんなカードで何ができるっていうのよ? 「あら、あなたはこのカードの効果を知らないの?なら教えてあげる。このカードはね、このカードを召喚するのにつかった生け贄モンスターの攻撃力の2倍の数値を自分の攻撃力として得ることができるのよ」 そ・・・それじゃあ今、ガーゼットの攻撃力は・・・・・ 「3000、ね。ちょうどあなたのライフポイントと同じね」 あたしは絶望した。この攻撃を耐えることなんて不可能だから。そう・・・あたしの負け、なのね・・・ 「朝倉、あたしの負けよ。でも、ひとつだけお願い聞いてもらえないかしら?」 「いいわよ。どうせこの後消えちゃうんだもんね。わたしにできる範囲なら構わないわ」 よかった。それを聞いて安心したわ。 「じゃ、じゃあ・・・・・キョンに会わせてほしいの」 「あら、そんなことでいいの?いいわよ、会わせてあげる。でもしゃべっちゃ駄目よ?」 分かったわ。会えるだけでも十分よ。それを聞いて朝倉は満足したのか、ポケットからカードを1枚取り出し、なんかよくわからない言葉を早口でつぶやいた。そして、カードが一瞬光ったかと思うと、部室の空間の一角が歪み、そこからキョンが出てきた。 あれから数十分しか経ってないのに、すごく懐かしく感じる。でも、キョンは目を閉じていた。 「ちょっと!キョン、気失ってるじゃない!あんた、何やったのよ!」 朝倉は、大丈夫よ、と言うと、また謎の早口言葉を始めた。なんなのかしら、あの呪文は。 「お久しぶりね、キョン君」 しばらくして朝倉がそういうと、キョンが目を覚ました。 ああ、これでもう未練はないわ。いや、もうすこしこいつと話がしたかったな・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・ 「大丈夫か!?ハルヒ!?」 体が動かせない分、ありったけの声を張り上げる。頼む!無事でいてくれ! 「そんなに心配しなくてもすぐ起きるわ。何もしてないもの。だって彼女、まだ罰ゲームを受けてないからね」 「貴様!これ以上ハルヒを苦しめるな!なんなら俺が相手になってやるぞ!」 俺なりに一番迫力がありそうな眼で朝倉を睨み付ける。身体はエースキラーに捕まったウルトラ兄弟みたいな格好で動かせないがな。そこ、ダサいとか言うな。 「でもこの決闘は彼女も望んでしたこと。きつく言うようだけど、部外者のあなたには関係ないことよ。闘ってみたいっていう気持ちもあるけどね」 な、なら俺と・・・! 「あら、彼女が起きたみたいよ」 俺は、朝倉がそう言い終わるのよりも早くハルヒのほうを向いた。 「おいハルヒ!ここからさっさと逃げろ!逃げるんだっ!」 「・・・あんた、何勘違いしてるの?」 ハ・・・ハルヒ?その顔は冷静そのものだった。 「決闘ってのはね、そもそも古代ローマで、奴隷たちが自由を求めて命を懸けて闘ったのが始まりなのよ?それはあたしたち決闘者も同じ。あたしは負けた。命を懸けた決闘に。その闘いはあたしの望んでしたことだった」 その真剣な表情に俺は何も言い返せなかった。俺にこんな覚悟はできるだろうか。俺はハルヒみたいに何かに命を懸けられるだろうか。 「だからね。あんたには笑って見送って欲しいの」 ハルヒ・・・お前・・・ 「お話中悪いけど、そろそろいいかしら?もともとしゃべらないって約束だったんだし」 「ええ・・・そう、ね。もう時間ってわけか。」 ちょっと待ってくれ・・・頼む朝倉・・・待ってくれ! そんな俺の必死の願いも虚しく、朝倉はポケットから何も書かれていないカードを取り出した。 「それじゃ、さようなら。涼宮さん。罰ゲーム!!!魂の牢獄!!!」 そしてその口から無情な言葉が発せられた。ハルヒの体から光が抜け出し、カードに吸い込まれていく。全ての光がカードに吸い込まれる直前、あいつは言ったんだ。 「今までありがとね・・・キョン・・・」 静かに、そして悲しい微笑みを浮かべながら。 「ハルヒ!?ハルヒーーーーっ!!!!!!」 ドサッ。 ハルヒが床に倒れる。その瞬間、俺の体も動くようになっていた。その証拠に、その場に俺は泣き崩れていたんだ。 「くそおおおおぉぉおおおぉおおぉおぉ!!!!」 なんで!なんで俺じゃなかったんだ!なんで俺じゃいけなかったんだ! 「ひとつだけ、いい事を教えてあげる」 なんだ・・・? 「涼宮さんがわたしの闇のゲームを受けたのはね?あなたたちのためだったのよ?」 ・・・・・それはどういう意味だ? 「わたしは、あのディスクが起動したとき、対象を全ての能力を封じ、かつ意識を失わせた上で空間閉鎖された亜空間に閉じ込めるようにしたの。あ、いい忘れたけど亜空間っていうのはこのカードね」 そういって朝倉はみんなが描かれたカードを見せてきた。 「もちろん、対象と言うのはあなたたちのこと。」 それじゃあハルヒは・・・ 「あなたたちを助けるためにわたしの決闘を挑んだのよ」 体中に電撃が走ったみたいだった。悔やんでも悔やみきれないとはこのことだろう。そう。この事件は俺が引き起こしたも同然、いや、俺が引き金となって起こったものだったのだ。そのために古泉が。長門が。朝比奈さんが。そしてハルヒが。 それと同時に俺は分かったんだよ。俺が命を懸けれる、懸けなければならないものってのがな。 「・・・・・朝倉」 「なにかしら?」 「俺はお前に闇のゲームを申し込む」 あいつらのためなら、あいつらとの毎日を取り返すためなら、この命、微塵も惜しくはない。 「そうね。いいわよ」 ならば話が早い。いまここで・・・ 「でも条件があるわ」 条件だと?さっさと言え。 「それはあなたがわたしのところに辿り着く事」 はぁ?お前はなにを言っているんだ?全く話がつかめんぞ。ちゃんと言え。 「んん、もう。キョン君が突っ込むのが早いんじゃない。ちゃんと聞いてよね」 ああ。分かった。 「これからあなたにはある島に行ってもらって、その島にあるお城を目指してもらうわ。でもここからが重要。お城に入るには4つの証が必要なの。その4つを持っているのは4人のプレイヤーキラー。1人1つ持ってるから全員倒してもらうわ」 簡単に言うと、全員倒さなきゃお前とは闘えんということか。 「うん。そういうこと。言い忘れてたけど、あなたのライフと命は繋がってるからね」 簡単に言うと、俺のライフが0になったら俺は死ぬってことか。 「うん。そういうこと」 ・・・負けるわけにはいかないな。あいつらのためにも、俺のためにも。 「分かった。それじゃ、俺を島へ送ってくれ」 構わん。俺は勝たなきゃならないからな。いや、勝つんだからな。 「ふふっ。そういうところ、嫌いじゃないわよ。ええ、分かったわ。始めましょうか。」 ・・・・・すぐに助けてやるからな。待ってろよ、ハルヒ、長門、古泉、朝比奈さん。 「「それじゃあいく「わよっ!」「ぞ!」」」 「「決闘!!!」」 そう口にした瞬間、俺は閃光に包まれ目を閉じた。 失ったもの、命を懸けられるもの、その「答え」を取り戻すため。 俺は長く険しい闘いのロードへと足を踏み出したんだ。 ~涼宮ハルヒの決闘王国2へ続く~ ※この作品は「涼宮ハルヒの決闘」を参考にさせていただいております。 このような場所で恐縮ですが、改めてお礼とお詫びを言わせていただきたく思います。 作者様、どうもありがとうございました。そして、許可なく参考にさせていただき、すみませんでした。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1967.html
第一話『古泉一樹の事件』 私達は気絶した彼を引きずりながら 森の外に見える村に向かって歩いていた さっきの彼の行動からか会話がまったくない 人はこれを空気が重いというらしい 実際は空気の質量は変わらないのでそんなことは無い しかし、人間にはそういう風に感じてしまうらしい 説明を長々としていると原作十冊分になると計算結果が出たのでこれ以上はやめておく 「あれ?俺は…?」 後ろで彼が気が付いたらしい 彼を立たせてやる 「俺は一体何をしてたんだ?」 「いわゆる暴走という状態に陥っていた」 「暴走?俺が?本当なのか?」 「長門さんが言っているのは本当よ、斬撃を飛ばして触手ツリー(第一章最後の敵)を倒した後、あなたは明らかにおかしかったわ」 おそらく彼の記憶領域には保存されてないのだろう 私が一通り説明する 「あなたは、予期せぬ自分の能力の開放に混乱した。 混乱によって理性が壊れ、欲望を抑制する機能が無くなった脳は本能で動くようになった あなたの本能は少し特殊で、攻撃することを快感としていた そこで私が、あなたの欲望の源である攻撃手段、すなわち剣を奪い、あなたの正常化を計った 作戦は成功。攻撃する術を失ったあなたは機能を一時停止しその場に倒れた」 「それで現在に至るってわけか…ちょっとショックだな…」 「あなたのせいではない、もし剣を持つことが無かったら今回のようなことは起こらなかった」 「そうか…ありがとよ、長門」 「そう…」 「今の気分はどう?あれだけ暴れていたんだから体が痛いとかないの?」 幽霊である涼宮ハルヒが聞く 余談ではあるが幽霊には痛覚はない、あるのは聴覚と視覚と嗅覚くらい 彼女が人の体を操ればまた話は別になるが 「なんか全身の筋肉痛と倦怠感があるな…誰か俺を運んでくれないか?」 「それ無理♪」 「即答かよ」 「後もう少し歩けば村よ、もうしばらく辛抱しなさい」 「わかったよ、ハルヒ。すぐに宿でも見つけてゆっくりするか」 私達はまた歩き出した 森を抜け、村の入り口まで来た私達は一人の少女を見つけた 「キョンくん!?」 「みくるちゃん!!」 隣で涼宮ハルヒが叫んでいるが、彼女には聞こえてないし、見えてない 「朝比奈さん!どうしたんですか。こんな所で!」 「ふぇぇ…キョンくん、会いたかったよぉ~」 そう言うなり朝比奈みくるは彼に抱きついた 涼宮ハルヒの精神が不安定になっている ほぼ同時に私の内部でエラーの発生を確認した 私が機能停止したエラーとは別物で一時的な物なので無視をする しかしこのエラーの発生は頻発している 特に最近は一日に最低一回は発生している 前の世界に戻ったらエラーの解析を進めておくことにする エラーの話は保留しておく 涼宮ハルヒの表情から不機嫌だということが私にもわかる ~~~~~~~~~~~~~~~~~ キョン視点 えーとこれは喜んでいい状況なのだろうか それとも自分の心配をした方がいいのか 朝比奈さんは俺に抱きついている あの、胸当たっていますが… 「ぐすっ…うぅ…」 よほど恐ろしかったのだろう。朝比奈さんは俺の胸の中で泣いていた 正直言おう、こんな場面を俺は待っていた!! しかしこの状況喜べない! なぜなら後ろにハルヒがいるからだ! ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴという効果音がはっきり聞こえるほど 後ろのハルヒが怒っているのがわかる まてハルヒ、俺が悪いんじゃない すべては朝比奈さんを泣かせたこの変な世界が悪いんだ! しかしそんな言い訳聞いて許してくれるはずがない 後ろで神人が拳を振り上げた音を聞いて俺はこう言った 「いってきます…」 ~~~~~~~~~~~~~~~~~ 再び長門視点 彼は涼宮ハルヒによって殴られ気絶した 「いってきます…」と言っていたが 状況から逝って来ますという漢字をつかうのが適切だろう 「ふぇぇぇ!?何があったんですか!?」 状況把握できてない彼女がおろおろしていた 再び気絶したキョン おろおろする朝比奈みくる ゴゴゴという効果音付の涼宮ハルヒ ガクガクしている朝倉涼子 ユニーク 「彼を棺桶に入れて教会まで運ぶ。手伝って」 「それなんてドラ○エですかぁ?朝倉さんも止めてくださいよぅ!」 「気絶なんだから棺桶に入れる必要はないんじゃ…私が言えるセリフではないけどね…(過去の過ちの事)」 「ふん、こんなやつここで埋葬すればいいのよ!」 それはやりすぎである そういえば朝比奈みくるに涼宮ハルヒを見えるようにしないと そう思っていると朝倉涼子が近づいてきた 「さっきから朝比奈さんを見ていたけど今涼宮さんを見せるのはまずいんじゃない? 彼女に見せたら失神しちゃうわよ」 確かにそのとおりだ 朝比奈みくるの見てないところで涼宮ハルヒにも言っとく必要がある とりあえず村に入ることにする もちろん彼は引きずっていく 村に入った私達は宿を探していた 「安いよ安いよ、今なら新鮮なちゅるやさん1/1人形が150円だ!」 「百発百中!フューチャの占いの館はこの路地裏!」 「最新ゲーム機勢ぞろい!GAMESHOPマシナ本日開店!」 村だというのに見事な賑わい振りである ちなみにこの世界の裏で操っている誰かのネーミングセンスについては触れないでおく 歩いているとINN(宿)とかかれた看板を見つけた 私達はそのドアをノックし、中に入った 古泉一樹がそこにいた 「おや、奇遇ですね。まさかここで会えるとは」 「知り合いですか?」 宿の主人らしき女性が古泉一樹に話しかけていた 「ええ、そうです。ずっと探していた人たちですよ」 「なるほど、だからここに毎日きてたんですね」 おそらく、古泉一樹は私達が宿に泊まることを予想して毎日来ていたのだろう 「しかし、まだ探している人が後一人居る筈なのですが…、代わりの人がいますね」 鶴屋さんのことだろう 「私が紹介する。こちらが朝倉涼子、こちらが古泉一樹。」 「初めまして」 「初めまして、いろいろあってキョン達の道案内していたの。後一人の場所はまではわかってないけど」 「そうなのですか、ところで肝心の彼が気絶していますが…」 「あとで説明する。いまあなたが家にしている場所に案内してほしい」 「わかりました。私の家は豪華ですよ」 「わぁ~楽しみですぅ」 「私も興味あるわね。どんな家に住んでいるのかしら?」 しつこいようだが、朝比奈みくると古泉一樹には涼宮ハルヒの声は聞こえていない 「あの朝倉さんって、この世界ではどこに住んでいるんですか?」 朝比奈みくるが古泉一樹の家に向かう途中、こう言い出した 「大きな城の城下町に住んでいたんだけど、今はわけあって住んでないわ。」 「そうなんですか、私はこの世界に来てから住む場所も寝る場所も作れなくって…」 彼女の人見知りな性格を考えれば当然であろう 「私は涼宮ハルヒ(偽)に指名手配されている。そこで彼の家を隠れ家にしていた時もあった」 「あれ?あ、そうか気絶してたんだ。運んでくれてありがとな。長門」 彼が気が付いたらしい 「別にいい。」 「そうか。」 ~~~~~~~~ キョン視点 長門の状況説明によって現状を理解した俺は 「おや、やっと気付きましたか」 古泉がここにいる理由も理解した 「色々とお聞きしたいことがあるのですが…」 「今ここで話すのは非常に不味い。後にしてくれ」 ハルヒのこと話しても驚くか笑うだけだろう そして古泉の家の前まで来た 「おおっ!!」 その言葉しか出なかったね 昔の洋館とでも言うだろうか 違うのは新築同様にピカピカということ その立派な家が目の前に建っている 「もう気付いているでしょうが、執事もメイドもいます。 もちろん、執事は新川、メイドは森さんです。 同居人として多丸兄弟もいますよ」 ここは孤島じゃねぇぞ 古泉、お前絵に描いたような金持ちじゃねぇか 逃亡生活している俺たちの身にもなってみろよ なんていろいろ考えているうちに古泉が洋館の扉を開けた 「おかえりなさいませ」 そういったのは森さんだ。 「森さん、この人たちが探していた人です。」 「初めまして」 森さんは前にも会ったが、多分覚えてないんだろう 仕方ないちゃ仕方ないが 「古泉さんがいつの間にか友達を作っていたなんて驚きました。」 こいつと知り合ってもう八ヶ月以上なんですがね 「とりあえず、皆さん疲れているでしょうから、部屋に案内します」 古泉に案内してくれたが 部屋数が半端ないな、一人一部屋とっても余るじゃないか 「今日はここを使ってください。トイレはこの廊下の先を右にありますし 内線も繋がっているので何かあったら新川さんか森さんを呼んでください もちろん各部屋鍵がかかりますよ」 「古泉くんはどの部屋にいるんですかぁ?」 「この廊下を左に曲がってくださいすぐに扉があるのでノックしてください。必ず返事します」 「空腹になったらどうしたらいいのかしら?」 朝倉も腹は減るんだな、いやインターフェースも食べるくらいだから当たり前か 「食堂で食べ物を用意します。後一時間後、七時位に来てください」 「凄く豪華ね。古泉くんの家って」 うおっ! いつの間に後ろにいたハルヒ!! 「どうかしましたか?」 「いや、なんでもない」 古泉はハルヒのことみえてないからな 「さて話があるので少し食堂に行きましょうか」 食堂に移動した俺たちはこの世界の現状について確認を始めた 「さて、僕たちは一昨日、四日前かも知れませんが この世界に飛ばされました。ここまでに間違いありませんね?」 「間違いない、一昨日城の牢屋で気が付いたからな。」 「私のデータベースでもこの世界が構築されたのは一昨日になっている」 「私も同じです。周りには知らない人しかいなくて怖かったですよぅ」 「私はこの世界が構築されてから作られた存在だから詳しくはわからないけど、 キョンくんの存在を確認したのは一昨日で間違いないわ」 「一昨日の時点で未来や情報統合思念対と連絡取れましたか?」 「現在も含めこの世界が構築されてから一度も情報統合思念体にアクセス出来てない。」 「わたしも同じです。一度も未来には連絡できていません。本当に普通の人間になってしまいましたぁ…ぐすっ」 朝比奈さん、気持ちはよく分かります。誰でも故郷と連絡が取れなくなったら不安なりますから 「この世界には未来や情報統合思念体、機関は存在しません 世界が改変されたため消されてしまったのでしょう 仮に、外部に存在したとしても、この世界にとっては無に等しいです この世界は外部から切り離された世界なのです 今回涼宮さんが起こした行動は情報爆発や時空振動に値する物です。 仮に存在して影響を及ぼすことが出来るなら、未来に、情報統合思念体にせよ、 何らかのアクションを起こしているでしょう」 古泉の長ったらしい解説を黙って聞いていたが、 「それじゃあ、朝比奈さんの故郷や、長門の生みの親は消えたって言うのかよ!?」 「やめて!古泉くんは何も悪くないわ!」 いつの間にか熱くなっていたらしい、当たってもしょうがない相手に当たってしまった ハルヒになだめられた俺はイスに座りなおした 「こうなった以上、仕方ありません。私の仲間と呼べるものもほとんどバラバラになってしまいましたから」 古泉には機関という仲間とも言える存在がいた ところが今はどうだ?一応一つ屋根の下に住んでいるが 前みたいな仲間意識を持ったやつはこの家に住んでいないじゃないか こいつだって寂しい思いしてるんだ 「スマン、熱くなってしまったようだ。」 「いいえ、熱くなって当然です。むしろこの状況下で落ち着いてられる僕自身に自ら怒りを感じています」 一瞬の沈黙 古泉がまた話を切り出した 「朝倉さんは、今この中で一番涼宮さんに近い存在です。何か知っていることがあるなら教えていただきたいのですが…」「今は涼宮さんと関わりは薄いけど、彼女の部下だったのは間違いないわ 彼女の部下のメンバー全員まで私は把握できてないけど、 彼女の知っているメンバーが多いみたい。実際何人か知っている人がいたわ 部下の中にはいくつか階級があって、エリートクラスなどがあるの メンバー総数は数百人、一般兵士は何万といるはずよ」 「では、この中で二つの記憶、つまり、この世界の記憶と前の世界の記憶両方持っている方は?」 「俺は持ってないな。前の世界の記憶だけだ」 「私も同じ。この世界の歴史は、本を読んで初めて知った」 「私もです。いきなり知らない世界に飛ばされてはじめはパニックになってしまいましたぁ。」 「私はキョンくんの存在を確認してから、前の世界の記憶を手にいれたの。はじめは混乱したけどね」 「僕もこの世界と前の世界の二つの記憶を持っています。弓の達人ということもね。 僕の場合、人と接する場面が多いため、矛盾が生じないように作られた記憶を刷り込まれたんでしょう。 朝倉さんの場合はよく分かりませんが、おそらく誰かがそうなるように仕向けたんでしょう。 そうでなければ朝倉さんはこの席にいなかったでしょう。」 「じゃあ俺たち以外に誰かが干渉しているって事か?情報統合思念体や未来は消えてしまったんじゃないのかよ」 「そのとおりですが、現段階で誰が干渉しているかは分かっていません。」 「敵対する存在か?それとも協力する存在か?」 「それも不明です。なぜ朝倉さんの記憶を取り戻すようなことをしたのか、謎ですから」 「長門は何か、わからないのか?」 長門に頼ってしまう癖何とかしないとな 「分からない、今の私は情報収集能力が普通の人間と同じのため」 「つまり、どうゆうことだ?」 「人並みにしか情報が集められない。視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚、全部があなたとほぼ同じ。」 「つまり、情報操作(制限付)を出来る事以外は普通の人間ということか?」 「そう」 なんてこった、通りで異常事態にもかかわらず喋る頻度が少ないと思ったんだ 今回は長門に頼りすぎるのはやめて置こう 「おや、長々と話していたみたいですね。もう七時です。」 壁にかかっている時計を見たら六時五十七分を指していた もうそんなにたつのか。 俺たちはその後ゆっくり食事を取り、 八時頃それぞれの個室に入って鍵を閉めた おそらく皆疲れていたんだろう 隣の部屋から何も聞こえてこない。 俺は速めにベッドに横になり色々考えながらいつの間にか深い眠りについていた ~~~~~~~ 長門視点 コンコン 古泉一樹の部屋のドアをノックする 「どうしましたか?長門さん?」 「涼宮ハルヒについて話がある。少し時間がほしい。」 「ええ、いいですよ。」 中略 「長門さん、大体事情がわかりましたが…いくらなんでも突然すぎます」 「あなたには事実を伝えておく必要があると判断した。」 「涼宮さんが幽霊だったとは…これがあなたじゃなかったら、冗談としか聞こえませんよ。」 「今のあなたは涼宮ハルヒが見えるようになっているはず。横にいるのが見える?」 「ええ、見えますよ。ふわふわ浮いている涼宮さんがね」 「やっと話せるようになったわね。久しぶり古泉くん。」 「お久しぶりです。さっきの話し合いは全部聞いていたんですね?」 「そうよ、前の世界で何があったのかもね。」 「今日はもう遅いですから朝倉さんの隣の部屋を使ってください。 幽霊だから鍵は必要ありませんね?」 「ええ必要ないわ、寝る必要も無いけどしばらく休んでる。じゃあまた明日」 「おやすみなさい」 普段使わない言葉を使ってみた。古泉一樹は少々戸惑ったようだが、 「おやすみなさい」 と笑顔で返してくれた ~~~~~~~ キョン視点 AM6:37 俺は起床した。この世界に来てからやけに早起きしている気がする 俺は風呂場の横にある洗面台に向かった 顔を洗い、さっぱりした俺は部屋に戻ることにした。 眠い、そして頭が痛い。もう少し寝るか。 廊下の奥に朝比奈さんがいるのを見つけた 「どうしたんですか?朝比奈さん?」 「あの、古泉くんが部屋から出てきてないの…」 「まだ寝てるんじゃないのか?」 「いえ、森さんに聞いたらもうそろそろ起きて食堂に来るはずだといわれて見に来たんです。」 俺はためしにノックしてみた 起きているなら返事をするはずだ。 返事が無い… ドアノブに手を当てるとかちゃっと開いてしまった 「誰もいない…?」 「どこ行っちゃったんでしょう?」 「食事時までには戻ってくるでしょう。食堂で待ってましょう」 のんきに考えすぎかもな 「はい」 食堂に行くとハルヒと長門と森さんと多丸さん兄弟が居た。 「古泉さんは起きていましたか?」 「部屋には居なかったですね、それよりも新川さんと朝倉さんは?」 「新川は朝ご飯を作っています。朝倉さんはまだ来ていませんね」 「彼女は朝からナイフを買いに行ってる。七時頃には戻ってくると思われる」 長門の言う通り七時ごろに朝倉は食堂に来た。 「ナイフ良いの無かったわ。研ぎ石見つけたからご飯の後に磨いてみる」 朝倉はそんなことをいいながら席に座った。 「おかしいですね、もう来てもおかしくないのですが」 森さんがそういったので時計を見てみる。七時十二分を指していた 嫌な予感がする。 新川さんのせっかくの食事が冷めてしまうという予感だ、それ以上でもそれ以下でもない 「皆さん、古泉くんの部屋に行って見ましょう。何かあったのかもしれません」 皆と一緒に食堂をでて屋敷の一番端の古泉の部屋まで来た やっぱり中には誰も居ない。 「屋敷の中を捜してくれ!なんだかとてもいやな予感がする!」 森さんと多丸兄弟は二階を探し始めた 俺たちは一階をくまなく探し始めた 捜索から十分後、一階の倉庫前に来ていた 「ここしかないですね…」 鍵がかかっている。それも中から。 本来ここはクローゼット兼試着室だったそうだ 今は物が乱雑に置かれているだけの部屋になっていると森さんが教えてくれた。 屋敷の中に居る場所と言えばここしかいない 「ドアを破るしかないみたいだな… すみませんが三人とも手伝ってくれませんか?」 「いいとも。せーのでいくぞ、準備はいいな?」 『せーの!』 どん! 大きな音共にドアが開く そこで見たものは 「古泉っ!?」 「血・・・?イヤアアアアアア!!」 後ろで朝比奈さんが叫んでいた。 古泉が頭から血を流して倒れていた。 第二話『壊れた信頼』 「古泉っ!?」 「血・・・?イヤアアアアアア!!」 後ろで朝比奈さんが叫んでいた。 古泉が頭から血を流して倒れていた。 それからはもう大騒ぎだった。 森「新川!医者の手配を!」 新川「了解!」 みくる「どうしてっ・・・どうしてっ・・・」 朝倉「警察も呼んで!!明らかに事件だわ!」 キョン「古泉!?おい生きてるよな!?」 多丸祐「この屋敷の防犯システムは最新式なのに!まさかこの中に犯人が!?」 ハルヒ「古泉くんはまだ死んでないわ!応急措置を急いで!」 長門「応急処置を実行、止血をする、清潔な布を持ってきて」 セリフの横に名前をつけたのは俺が解説する暇もなくいろいろとしゃべりだしたからだ たぶんこの後もセリフの前に名前をつけるだろう。誰が何をしゃべってるか重要だからな この後もいろいろあったが省略しておく。長々話すのは俺の性に合わない バタバタが、古泉は一命を取り留めた ただ問題が発生した 古泉が意識を取り戻さない 「冗談かよ」と最初は思ったが医者に言われたら信じるしかない しばらく入院と言うことになっている。 戦闘なんかには参加できないだろうな それで俺たちは古泉屋敷の食堂に集まっている 昨日と同じ席、ただ古泉の席には誰も座っていない 長門「事件について少し整理する。 この事件は、古泉一樹が何者かに鈍器で殴られ、倉庫で発見された」 朝倉「倉庫が犯行現場という可能性は?」 朝倉はいつも冷静だな 長門「限りなく低い、あの場所自体ほこりで足跡がつく位積もっていたのに、誰の足跡もついていなかった。」 流石長門、細かい所まで観察している 長門「おそらく、犯人は古泉一樹の部屋で殴り、倉庫に運んだと思われる」 キョン「待った、俺と朝比奈さんがあいつの部屋を見に行った時血なんてどこにもついてなかったぞ」 長門「おそらく犯人は血をふき取ったと思われる。床がフローリングならふき取るのは簡単」 古泉発見を遅らせるためか、やられたぜ 森「この屋敷にはあの倉庫を除いて、最新式の鍵を使用しています。鍵を持っていなければ入ることは出来ないはずです。」 つまり、屋敷内部の犯行って可能性が高いわけか そして犯人と古泉が知り合いの可能性が高い そうじゃなきゃあいつが部屋の鍵を開けるはずが無い キョン「犯行推定時刻は?俺が六時四十分頃に見に行った時はすでに居なかったぞ」 みくる「古泉くんが殴られてからそんな時間は経っていないと思います。そうでなかったら古泉くんは今ごろ・・・」 まだ涙目の朝比奈さんが考えを述べた 多分彼女には一生物のトラウマだろう。実際、俺もあの現場が目に焼き付いて離れない 長門「彼がまだ生きていることも含めて犯行時間は六時半前後。屋敷内部の人間なら誰でも犯行可能」 キョン「つまり容疑者は、俺、長門、朝比奈さん、朝倉、多丸圭一さん、多丸祐さん、新川執事、森さんの八人と言うことか?」 自分で言うのもなんだが俺も容疑者で間違いない。間違いなく疑われている ハルヒ?あいつは幽霊だから無理だ。スタンドで撲殺は出来てもあの倉庫に古泉を運ぶことは出来ん 長門「おそらく犯人は単独犯、この屋敷は廊下狭いため二人以上で行動していると目立つ」 足音も結構響くからな。犯人にとって協力者は邪魔でしかないだろう そういえば、あの部屋は鍵がかかっていたな キョン「倉庫には鍵がかかっていたよな?あそこには他に出口が無いし 外から中の鍵はかけられないぞ?多分犯人は見つかりにくくするために鍵をかけたんだろうが」 長門「それが一番の謎。これから調べる必要がある」 朝倉「ここで話をしても、何も進まないわ。まだショックを抑えられてない人もいるみたいだし 一回部屋に戻りましょ?」 それぞれが部屋に戻っていった所を見送った俺は最後に食堂を出た。 長門「話がある、部屋に来て」 うぉ!って・・・なんかこれデジャブ? ちょっと大げさすぎるリアクションをスルーし、長門は部屋に入っていった 長門の部屋に入る 長門が奥でイスに座っていた キョン「用事は何だ?お前は俺が必要な時しか呼ばんからな」 長門「今回事件にかかわっている人物について少し補足しておきたい」 キョン「よりによってなんで俺を呼んだ?適役なら他にも居るだろ」 長門「いや、あなたが一番犯人の可能性が低く、洞察力が鋭いから一番の適役」 長門が俺を初めて頼ってきた そこまで逸材か、俺? 長門「この屋敷に居る人物の中で私、あなた、朝比奈みくる以外の人物について 情報が少ないため、彼らが何をするか分からない ある程度人格について分かっているなら行動パターンがつかめるがそれが出来ない 彼らは孤島でも会っているが、その時の彼らは演技をしていたため、行動パターンがまったくの未知 朝倉涼子についても同じ事が言える」 キョン「つまり、長門にはこの事件の犯人がまったくわからないと言うことだな?」 長門「そう。色々な情報を集めておく必要があるが、 この屋敷内部に妨害電波を発生してる物があるため、思ったように集められない」 キョン「前に気絶してたあれか。長門がインターフェイスって知ってるやつだな。それよりも長門は平気なのか?」 長門「ある程度波長の解析が出来たため、前のように体の制御を失うことはない」 キョン「そうか」 長門「妨害電波を発生する装置は携帯電話ほどの大きさで ほとんどの場合隠されているため今の私には探査不可」 「きゃあああああああああ!!」 あの声は朝比奈さん!? 何が遭った!? 三部屋隣の朝比奈さんの部屋に急行する 急いでドアを開けた俺。 後ろでバタバタとはしってくる音。 どうやら屋敷に居る全員が駆けつけたらしい そして朝比奈さんを探す。 割れた急須が部屋にちらばっている 部屋の端っこでうずくまっている朝比奈さんを発見。 キョン「どうしたんですか?」 みくる「ぼーっとしてたらうっかりお湯をこぼしてしまって・・・」 圭一「イインダヨ!」 祐「グリーンダヨ!」 新川「疑惑度30%OFF!!」 真性のアホだこいつら。 長門「右手を氷水につけることを推奨する」 みくる「ひゃ、ひゃい!」 長門に話し掛けられて、発音が変な返事をした朝比奈さんは キッチンの方に消えていった。氷はあそこにしかないからな 何もなくてよかった 古泉の事件のあとだからな 朝比奈さんが犯人に襲われたのかと思った 多分他の人たちもだろうが 急須が割れたのは森さんと新川さんが処理してくれることになり、 他の人たちは部屋に戻っていった。 そういえば古泉の部屋は誰も居ないんだよな 一回調べてみるか がちゃ やはり開いた あれから誰もこの部屋に来てないんだろう。 部屋を色々と見ていたが一部分の床がピカピカに光っていた。 おそらく犯人が血をふきとった後だろう 長門の推理どおりだ ん?これは・・・砥石?なんでここにあるんだ? もしかして・・・ 砥石を裏返すと血がついていた これって・・・ 思考の停止(正しくはフル回転)をした俺は 青い髪のクラスメイトの顔が思い浮かんだ・・・ 「ナイフ良いの無かったわ。研石見つけたからご飯の後に磨いてみる」 俺は砥石を置き、皆を呼び、 また部屋に戻ってきた キョン「皆さんを呼んだのは他でもありません。凶器と呼ばれるものを発見しました」 圭一「何だね、その凶器というのは?」 キョン「これです。」 そういうと床に転がっている砥石を拾い上げる そんなに重くなく片手で持てる 朝倉「私の砥石!?」 キョン「朝倉、長門と祐さんと一緒に部屋に行って砥石を探してきてほしい」 朝倉「わ、分かったわっ!」 バタバタと部屋を出て行く三人 みくる「もしかしてキョンくん朝倉さんを・・・?」 キョン「いや、犯人がわざとおいたと考えるのが普通だ。 これじゃ朝倉さんが犯人ですといってるような物だからな」 本当に犯人じゃないとは言い切れないが 新川「血の付き方から見てこれが凶器で間違いなさそうですね。」 圭一「ますます、わけがわからなくなってきた。犯人は何が目的だ?」 森「おそらくこの屋敷を混乱に落としいれるためですね。犯人がみつかりにくくなりますから」 キョン「その通り。そして犯人はここで犯行に及び砥石を捨て、倉庫まで運んだそう考えるのが打倒だろ」 息を枯らした朝倉が戻ってきた 朝倉「ない・・・ないわ!・・・私の砥石が部屋には無かったわ・・・!」 キョン「朝倉、砥石はどこに置いていた?」 朝倉「部屋の机の上よ・・・でも私が帰ってきてすぐに食堂に向かったから犯行時間と矛盾するのよ!」 キョン「いいところに気が付いた。六時半の時点で屋敷内部にあるはずのない砥石が犯行に使われた。 おかしいと思いませんか?」 みくる「キョンくん、田村●和みたい・・・」 キョン「そんなことはどうでもいいんです。で、話の続きですが、おそらく犯人は朝倉さんが砥石を買うと知っていた人物 この村に良いナイフが無いことを知ってる人物、 砥石の売ってる場所を知ってる人物となると犯人がしぼられませんか?」 森「つまり昨日この村に来た四人は省かれますね」 祐「俺たちの中の誰かが犯人!?」 圭一「そうなりますね。」 新川「古泉に、恨みがあった人物と考えれば私達でしょうな」 長門「彼の言うことは矛盾していない。よって彼がこれから事件に付いて調べることを推奨する」 みくる「賛成です」 朝倉「賛成だわ。洞察力するどいもんね」 森「賛成します。将来探偵にでもなってみてはいかがですか?」 キョン「進路の一つにでも入れておきますよ」 祐「子供が探偵!?俺は反対だ」 圭一「そういうな、彼思った以上に有能だ、任せて構わないだろう」 新川「ここまで賛成が多いなら私が言う必要もありません」 どうやら俺が探偵と言うことで決まったようだ 忙しくなるな。やれやれ キョン「森さん、鍵をかしてくれませんか?屋敷の中を動き回るにはあったほうが便利ですし」 森「わかりました。これが合鍵です」 鍵束を渡してくれた 倉庫行ってみるか。あの場所に犯人の手がかりを残しているかも知れんし キョン「長門、ついてきてくれ。お前なら何かわかりそうだしな」 長門「分かった」 他の人たちを部屋に戻し俺たちは倉庫へ行く キィィィ ドアがきしむ音を聞きながら目の前に広がる光景を確認した 床にまだ残っている血痕。これからの人生何度事件のこと思い出すだろうね? また俺と長門は部屋の確認をし始めた。 密室にしたトリックを暴かなきゃならんからな 俺はふとドアの鍵を見る かなり老朽化していて所々錆びている あれ?そういえば壊れてないな?鍵かけた状態でドアを開けたら鍵が壊れると思うんだが 長門「この木の棒は何?」 振り返ると長門が大きな木の角材を持っていた 長門の1.5倍ほどか? こんな形をしている?(<??????> 俺はなんとなくひらめいた ドアを閉め壁と壁にクロスするように立てかける ちょうどドアをふさぐように木が立てかかった 下に固定するように金具があることから間違いないだろう これがドアを開かなくしてた物だ 想像しにくいと思うのでAAをかいてみた(この場合書くか描くかどっちだ? ┌─────────┐ │ .| │┏ . | │ \\ . | │ ̄ \\───┐ ...| │ \\ │. | │ │ \\ │ ...| │ │○ \\. | │ │ \\ ..| │ │ │.┛ | └─────────┘ 長門「上の棚と角材の端と壁に急激に冷えた後がある」 ドアの左には棚が設置してある AAの都合上それまでかけなかったが変わりにドアの左上の線をそれだと思ってくれ それにしても急激に冷えた後? 氷くらいしか思い浮かばんな。 でも濡れてないし・・・ 長門「多分ドライアイスだと思われる。この部屋の二酸化炭素の割合が他の部屋と比べて少し高い」 なるほど、流石長門 頭の回転が速い つまりドライアイスで棒を押さえ 溶ける前に部屋を出れば 後は何もしなくてもドライアイスがとけ 棒が倒れドアが開かなくなる 密室の完成だ。 賢いな、俺も犯人も 一通り考えがまとまった俺は 犯人が誰なのか考えながら部屋に戻ることにした 後ろで長門がドアを閉める音がしたのが気になって振り向くと ハルヒ「あんた、有希の事しか見てないんじゃないの?」 キョン「うぉ!なんだ、浮遊物体Aか」 浮遊物体A「何よ、それ!まるで私が単なる物みたいじゃない!! 第一Aって事はBもCもいなきゃおかしいじゃない!!」 キョン「お前、名前が浮遊物体Aになってるぞ」 浮遊物体A「何よこれ!?責任者でてこーい!!」 作者「責任者ですがなにか?」 浮遊物体A「待ってたわ、私の拳受けなさい!オラオラオラオラオラ!!」 作者「無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!」 付き合いきれん・・・ 気分を変えて食堂に向かうことにした もうすぐ十二時だ 腹が減った。考えすぎたのか頭が痛い 頭痛薬も貰うか あ、タ○フルだけは勘弁な 食堂につくと SOS団メンバー以外集まっていた 森さんに一つ質問した キョン「森さんは今日の朝、新川さんと料理を作っていたんですよね?」 森「ええ、彼のアシスタントをしてました。一人では大変ですから」 キョン「祐さん、圭一さん、六時半頃何してましたか?」 圭一「自分の部屋で仕事してたよ。締め切りが迫った仕事があったからね」 祐「私は寝てたよ君が食堂に来る直前までね」 だめだ、これといっていい情報がない。 犯人はだれだ? 犯人のした行動はわかった。 しかしそれは誰でも出来る行為だ やろうと思えば俺でもやれる。 しかし俺はやっていない なぜ、古泉を殺したのか? これも謎だ。犯人の目的がつかめない 外部犯の可能性は? 無理だ、この屋敷の人は絶対に無理と口をそろえていっている なぜ犯人は倉庫に運んだ? わからない 結局俺にこの事件を解決するのは不可能なのか? 誰かこの迷路の出口を教えてくれ 朝比奈「大丈夫?なんかキョンくん疲れてるみたい・・・」 朝比奈さんが食堂に来ていたみたいだ気付かないほど考えていたのか キョン「朝比奈さん、大丈夫ですよ。右手は大丈夫ですか?」 痛々しい右手を見る 朝比奈「ええ、すぐ冷やしたから平気」 長門「古泉一樹の様子をみてきた。記憶喪失になっている 混乱を招くから今は見舞いに行かない方がいい 左後頭部の怪我は心配ないと医者が言っていた」 俺の中で点と点が繋がった すぐに俺は全否定した しかし否定すればするほど犯人は一人に確定していく これが現実か・・・残酷だな・・・ さて、どこかで覗き見している誰かさんに挑戦だ。 この事件の犯人は誰か? 見事当てたらジュース一本おごってやるよ 第三話、解決そして崩壊 犯人が分かった俺は激しく悩んでいた どうするべきだ? 全員が集まったらすぐ言うべきか? それとも犯人のを自供を誘うべきか? みくる「キョンくん・・・ほんとに大丈夫ですか?」 俺は非常に悩んでいた 隣で誰かが話しているのにもかかわらず 何も聞こえていなかった どうするべきだ?どうするべきだ?どうするべきだ? 同じ言葉が何度も繰り返される ダメだ、犯人がわかった以上長引かせるわけには行かない おそらく全員疑念が尽きてないだろうだからな 今この食堂には全員いる、喋るなら今だ しかし、犯人を指摘した所で犯人がすぐに認めてくれるはずがない やはり犯人を罠に嵌めたほうがいい 行動しよう、そうするしかない キョン「みなさん、今思ったんですがあの時鍵かかってましたっけ?」 森「鍵がかかってなかったらあの部屋は簡単に開くはずですが?」 祐「何当たり前なこと言ってるんだ?鍵かかっていたから体当たりまでしてあけたんだぞ?」 みくる「わざわざ、私が確認したじゃないですかぁ?キョンくん疲れてないですか?」 キョン「みなさん、とんでもない思い込みをしている。 あの部屋の鍵はかかってなかったんです ただあの部屋に開かないように押さえ棒がしてありましたが」 長門以外の全員が驚く 圭一「じゃあ、犯人はどうやってその押さえ棒を使ったんだ? 外側にいたら棒など使えないだろうが」 キョン「押さえ棒にさらに押さえ棒がしてあったんですよ」 朝倉「何を言ってるの?」 キョン「正確にいえば消えてなくなる棒ですが、 冷えていて常温で形が無くなるものです」 祐「氷か?確かにそれならしばらく放置したらドアが開かなくなるが」 みくる「でも、あの場所は濡れていませんでしたよ?溶けたら水に濡れちゃいます」 キョン「確かにあの場は濡れていませんでした なぜならあの現場にはドライアイスが使われたようです しかし現場を一瞬だけしか見てない人がどれだけその時の状況を正確に覚えていられるでしょうね?」 みくる「!!」 全員が一斉に朝比奈さんの方を向く 発見当時彼女は古泉を見た瞬間 顔に手を当てそのまま泣いていた その後も森さんに連れられてやっと自分の部屋に入ったほどだ 当然彼女が正確に現場を覚えているはずがない しかも泣いているのだ 濡れているかどうかなんて判断が出来るはずがない そう、朝比奈みくるは現場が濡れていない事を知っていたのだ 朝倉「朝比奈さんあなたもしかして・・・」 キョン「あなたが犯人です、朝比奈みくるさん。」 みくる「!!・・・でもそれだけじゃ疑う理由にならないんじゃないですか?」 キョン「もちろん、誘ったのはちゃんとした理由があります。 それも含めてあなたがした行動の推理を聞いてください。」 俺は一通り周りを見渡す ほとんどの人が驚いているようだ。当たり前である キョン「朝早く起きた朝比奈さんはまず、ドライアイスを倉庫に運んで食堂に向かいました そこで森さんと会い、古泉くんを呼んでくるといって部屋を後にした。 もちろんアリバイ作りのためです。時刻はたぶん六時二十五分頃だろうと思います」 森「確かに六時半前には朝比奈さんは食堂に来てましたね。」 キョン「そして古泉の後頭部をあらかじめ用意した砥石で殴って倉庫まで運んだ。その後ドライアイスで倉庫が密室状態になります」 圭一「それは誰でもできるのでは?」 キョン「ええ、そうです。ただ朝比奈さんはここで一つミスを犯しています。 ドライアイスに直接触れてしまったんですよ、おそらく右手でね。」 朝倉「それって・・・」 みくる「!!」 キョン「そう、あなた今右手に凍傷おこしていますね? おそらく事件後の火傷騒ぎもそれを誤魔化すため。 そして、氷水で冷やしてくると見せかけて朝倉の砥石を盗み出したんだ。 長門、古泉一樹が殴られた所は?」 長門「左後頭部」 キョン「もし右手で殴ったなら右後頭部に殴られた後があるはず なのに左後頭部、これは犯人が左手で殴ったことを示しています そして、今ここで朝比奈さんの部屋を調べれば盗んだ砥石があるはずです。」 長門・朝倉・森「調べてくるわ!!」 三分後・・・ 朝倉「あったわ、間違いなく私の砥石よ。自分の名前が書いてあるし」 キョン「言い逃れできますか?朝比奈みくるさん」 みくる「素晴らしい、戦闘能力だけでなく知能も高いとは!」 なんだ?急にふいんき(なぜか変換できん)がかわったぞ みくつ?「ますます、涼宮ハルヒ様の部下にふさわしいことが分かった。」 ここで無理にでも連れ去るべきだな。」 キョン「お前・・・別人だな!?」 おそらく朝比奈もどきが喋っているハルヒとは偽者の方だ 新川「今までに数々の修羅場をくぐってきたがここまで危機感を感じたことはいまだかつてない・・・!!」 森「何?何をする気なの・・・?」 圭一「さらに存在感薄くなってしまうではないか。」 祐「それはもともとじゃないか?」 どうでもいい会話をしているやつらはほっといて こちらは戦闘準備を始めている みくる?「遅い!」 うぉ、まだ鎧着終わってないって ひょい あれ、朝比奈さんっておれを持ち上げるほど頑丈な体の作りしてましたっけ? 長門「対象の有機結合の解除を申請。」 朝比奈「無駄よ、私のほうが情報操作の能力が高いわ。」 長門「キャンセルされた・・・?」 朝倉「これだとうかつに攻撃できないじゃない」 浮遊物体A「結局名前直してもらってないし・・・(前話参照)」 えーと今朝比奈?さんに捕まってる俺がなんとかした方がいいよな・・・ 俺はブランと垂れ下がっていた自分の左手を顔めがけて殴りかかった。 ぱしっ! みくる?「無駄よ。能力開放をしてないあなたが私に抵抗することはできないわ。」 むかつく野郎だ。おそらく村の入り口で会ったときから演技してたんだろう まんまと騙されていたわけだ。 じゃあ偽ハルヒにココの場所が知れているって事だろう くそ、また俺は何もできないのか! 長門「対象の―――能力の―――開放を―――実施―――」 朝倉「なに・・・?長門さんの雰囲気が変わった・・・?」 キョン「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 獣のような雄たけびが部屋中に響く それが俺自身の声と認識するのに数秒かかった みくる「まさかっ!」 朝倉「暴走・・・?」 浮遊物体A「なんかどこかで似たような状況を見たような気がするわ。」 作者「いろいろとネタ引っ張ってきてますから。」 浮遊物体A「お前は自重しろ!」 作者「サーセンwwwww」 えーとだな・・・ 朝比奈さんが泣くまでやめてくれないような連続パンチを続けている俺だが・・・ 俺はココまでやろうとは思わん おそらく本能の暴走とかそういうやつだな 今回もまた大暴れするのか あれ?でもなんで意識がはっきりとあるんだ? ???「よう、キョン」 誰だ?誰が話し掛けているんだ? キョン裏「俺はお前だ、理性のキョン。もちろん他の人間に声が聞こえてるとはおもわんがな」 じゃあお前は本能のキョンとでもいうのか キョン裏「その通りだ。まあ俺自身が出てくることはほとんど無いんだがな」 何しに来た。 キョン裏「何しにって、お前=俺を守るためだが?それ以上に何がある?」 ああ、そうか本能は自分を守るのが最優先だったな。どこかで聞いたことがあるぜ キョン裏「さて、偽みくるはどうするんだ?場合によっては殺そうとも思ってるんだが」 待て、殺す?why?そこまでする必要があるか? キョン裏「流石にまずいか?まあその辺の判断はお前に任せるがな。」 しばらくの沈黙 こうしてる間にも朝比奈?さんへの打撃音はやまない キョン裏「殺すのも拘束するのもお前の自由だ。煮るなり焼くなり好きにしろ。 ただお前がまた窮地に立つような行動をした場合、俺が判断する。」 そういってもう一人の俺はどこかに消えた それと同時に体が殴るのをやめた みくる?「うぅ・・・」 どうする?朝比奈?さんの体すでにボロボロだ。 キョン「長門・・・縄貸してくれ」 長門「―――わかった―――」 場に重い空気が流れる・・・ 長門「―――圭一――祐―――新川―――森―――四人の―――記憶の一部を削除―――及び改変―――」 俺は縄で偽朝比奈さんを縛っていた。 とりあえず両手は後ろで拘束しきつく縛った。 みくる?「不覚だわ、目標の目の前で失敗するなんてね。 でもただでは終わらないわ。」 ボン! 煙幕!? 「けほけほ」 いたるところで咳き込む声がする その煙幕が晴れてきたら キョン「いない・・・!!?」 長門「うかつ―――煙幕と同時に―――テレポートされた―――」 朝倉「おわったの・・・?」 新川「高校生が・・・・信じられませんな」 森「一瞬の出来事でしたね・・・」 祐「朝比奈さんがナイフを持っているのが見えたと思ったら、次の瞬間には朝比奈さんを取り押さえるなんて」 圭一「へたなアクション映画よりも迫力がありますな・・・」 長門・・・GJ 第四話事後処理 キョン「逃がしちまった・・・」 森「逃げられたものは仕方ありません。それよりも色々と片付けなければ。」 ユーレイハルハル「誰か(作者の暴走を)止めて!!」 長門「君がくれた勇気は―――億(ry」 新川「新しいダンボールでも買おうかな」 祐「実は俺ポニーテル萌だったんだ」 圭一「嘘だ!!」 朝倉「いろんな意味でガクガクブルブル・・・」 あえて言おう、カオスであると 元ネタ分かるやつ何人いるんだろうね? 人の事言えないが そんなどうでもいい文章稼ぎに俺はイライラしていた もうちょっとテンポ良く進めよ 古泉一樹が退院した !? いくらなんでも話が進みすぎだ!! 医者「信じられん、数時間前まで生死の境を彷徨っていたと言うのに!!」 よく退院を許可しましたね。 やぶ医者「すまんね、ベットが足らないんだよ。」 説得力無いな 古泉「いやぁ、一時はどうなる事かと思いましたよ。」 キョン「平気なのか?」 古泉「えぇ、長門さんの情報操作で直してもらいました」 長門「妨害電波発生装置の―――破壊に成功―――不可能だった事の一部が可能になった―――」 キョン「雰囲気かわったな?どうした?」 長門「心配ない―――私はいたって正常―――」 圭一「今日の晩御飯は何かな?かな?」 祐「おまえ、キャラ変わったな。」 新川「過度なギャグは命に関わるぞ。」 森「チョココロネってどうやって食べる?」 古泉「今はそれを話してる場合ではないでしょう。」 長門「話が進まない―――強行手段に入る ikuyotagan=dogegahcdogsUJmCCPnat=dog」 長門が例の高速早口をつかった。 さて何が起こるやら・・・ 古泉「そろそろ、鶴屋さんの捜索に向かいたいのですが・・・」 いっている事はまともなんだが顔が近すぎる せめて息が当たらない位置を保ってくれ ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ 地震!? 朝倉「痛ッ!」 朝倉!? 圭一「カナカナカナ・・・」 ひぐらし!? ピタ 変な効果音とともに地震が終わった 古泉「いやぁ~驚きましたね。もしかして本当に怪物でもいるんでしょうか?」 キョン「何だその怪物とやらは?」 小泉「この屋敷には元々吸血鬼が住んでいて、当時は地下室へ続く階段があったそうです その地下室には吸血鬼の妹が『あまりに危険すぎる』という理由で封印されていたそうです もちろん、そんなのは伝説にしかすぎず嘘だと思いますが、 この屋敷の外壁が真っ赤なのは吸血鬼に襲われた人間の血なのかも知れませんね 余談ですが、この屋敷には元々門があったらしくそこにはかわいそうな門番がいたとかいなかったとか。」 キョン「吸血鬼の妹ねぇ・・・仮に本当だったらとしたらこの屋敷は化け物やしきだな」 古泉「そういえば、森さんはいつも、変なところから現れて行動も早かったりしますね」 キョン「化け物の能力引き継いでいるじゃないか?例えば時を操る能力を持っているとか」 古泉「ありえますね」 とりあえず、屋敷の中は事件とさっきの地震のせいで散らかっていたので 掃除するためにしばらく屋敷をでてと森さんと新川さんに言われた 俺は長門とハルヒをつれて村の近くにある森近くまできたのだが・・・ 一人の老人が墓石の前に立っていた なんとなく興味を引かれたので見に行ってみると墓石には名前が書かれていなかった 老人「おや、見かけないかおだねぇ。旅人かい?」 キョン「ええ、ところでこの墓は誰の墓なんですか?」 老人「この墓はね、ある旅人の少女の墓なのさ 村の入り口で倒れているのが発見されてね。どうやらモンスターに襲われたらしいんじゃよ 持ってる食料もなく、やっと見つけた村の前で力尽きてしまったらしいのぅ。 そういえば不思議と長くて黒い髪だけは綺麗だったのぅ」 そんな話を聞いてると隣にいる長門の様子が少し変な事に気が付いた。 黒い瞳をこちらに向ける キョン「どうした?長門」 長門「この墓に妙な感覚を抱いた―――」 なんだかいやな予感がするのは俺だけか? 一応手を合わせすぐその場から離れる事にした 村に戻ってきたが時報を知らせるスピーカーから変なノイズが聞こえてきた スピーカー「ザッザッザッ ザッーーー ザッザッザッ ダンッ」 頭がキーーンとして痛い!! ハルヒ「痛いわよ、この音!!」 長門「不協和音がひどい―――、これは―――」 住人A「やめて!!音がひどいから!!」 住人B「買い物できないじゃない!!まともに!!」 住人C「落ち着かない!これじゃ!」 おまえら倒置法でしゃべるな!わかりずらいから! ボー―ン!! な、スピーカーが爆発して壊れた!? 振り返るとそこには戦車の軍団がいた 戦車兵「これよりこの村は革命軍の占領下にはいる!!」 何だこの展開!? メガホンを持った戦車兵の隣の戦車から出てきたのは・・・ 「やあ、ひさしぶりだねっ!!」 「鶴屋さん!?」 美しい緑の髪の所持者、鶴屋さんがそこにいた 第三章へ続く
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1555.html
「二人のハルヒ 第2部」 さて、土曜日の不思議探しは無事に終わって二日後…つまり、月曜日である。 あと一週間で夏休みだから、生徒達もブーンするかのようにハイテンション上がりずつある。 やれやれ、こりゃあ…二学期最初になると、死人のように帰ってくるだろうな。 「おはよ、キョン」 「あぁ」 いつもの挨拶会話。 ハルヒは何かを企んでるかのように目がキラキラ輝いてる。 「ねぇ、キョン!聞いて!夏休みまで一週間しかないのに、新人の先生が来るらしいよ!」 何だって?一週間しかないのに新人の先生? あり得ない話だ…うん、あり得ないね。 「ちょっと~キョン!これオカシイよね!」 はいはいオカシイオカシイ。 「…あのね…」 と話してる間、あの憎ったらしい先生が来た。 あのハンドボールバカの岡部である。 「えー、早速だが…俺の体の調子が悪く、引退する事になった…」 クラス一同、騒ぐ。 ほぉ、良かったな…引退出来て。 「…と言う訳で、代わりに新人の先生が担任になってくれるそうだ」 そういえば、新人ってどんな人なんだろうな…。 「聞いた話によると、女の先生だって!」 教えてくれてありがとう。 「入ってくれ」 「はい」 んー?どこかで聞いた声だな…。 何だっけ? と思ってる内に、教壇の所を見た。 「始めまして、英語担当の鈴見ハルカです!よろしく!」 ガンッ! 俺は、近くにある窓にぶつかった。 「ん?どした?●●●●」 「…何でもないです」 クラス全員、俺の所へ注目浴びた。 そりゃ、そうだ…俺は、物凄くすっこけたからな。 おー、イテェ…血出てないよな? 昼休み、非常階段にで 「…で、何でこんな所にいるんですか?ハルヒさん」 「んー、何の事かなぁ?」 「誤魔化さないで下さい」 「あー、分かった分かった…あのね、この時代で生活するのに仕事が必要なの」 つまり、職業症ですか? 「うーん、まぁ…それに近いわね」 と、ケラケラ笑うハルヒ(大)。 「あら?キョンとハルカさんじゃないの?」 上から声掛けた主は、ハルヒ(小)である。 「あら、ハルヒちゃんじゃないの」 「何の話をしてたの?」 俺にフるなよ、ハルヒよ。 「ただの世間話さ」 「そうなんだ…あ、ハルカさん、教えが上手かったよ!」 「あははっ、ありがと!」 ふぅ… 二人には聞こえないように溜息した。 ハルヒ(小)とハルヒ(大)を比べると少し変わったな。 未来って何があるのかな、ハルヒさん教えてくれないかな。 ま、そうは簡単に教えないか。 「ん、何よ、キョン!あたしの顔に何が付いてるの?」 「んぁ?何も付いてないさ…考え事してたんだよ」 「あ、さてはイヤラシイ事考えてたでしょ?」 「んな事考えてねぇよ」 「怪しい~」 たまには、こういう会話は悪くないな。 ハルヒさんだって、同感だろ? ハルヒ(大)サイド 懐かしいわね、あの頃の私とキョン…。 いつも、迷惑かけてたっけ。 「ハルカさん!もうすぐ、チャイムなるので戻ります!」 はいはい、いってらっしゃい。 「待ちなさーい!バカキョン!」 私は、この時代のハルヒとキョンを教室へ帰ったのを見届ける。 「…あの頃の私は、変わりたがったと思ってたな」 小学校の時、ある野球場で人が多くいた事でショック受けたな。 その後、私はつまらない生活送り始めた。私は、思ってた…少し変わりたいと…。 でも、変わらなかった…高校になるまではね、高校に入って、ある人に会った。 それが、あなたなのよ…キョン…忘れもしないわ、あれは××年前の七夕だよね。 あなたがこう言ってた「ジョン・スミスだ」とね。 それが、あなただよね…。 私は、嬉しかった…あなたと会えて…。 高校入学して間もない頃、SOS団を設立してキョンと一緒にやって来たよね。 勿論、仲間である古泉君とみくるちゃんと有希もね。 …色々あったわ…みくるちゃんにコスプレしたり、不思議探ししたりしたよね。 「それにしても…」 私は、周りを風景を見回す。 「懐かしいね…あの頃は」 その時、私の目から涙が出た。 「あら、何で涙出てるのかな…はは、何でだろ」 私は、未来人だから。 この先の事は知ってる。 辛い思い出や楽しかった思い出などあるから。 私は、何のために生きて来れたかな…。 誰のために? キョン? キョンのために? あぁ、そうだ…。 キョンのために生きて来れたんだ…。 私は、キョンにとって大切な恋人だから、生きて行けたんだな。 でも、そんなに悩む事は無いわ! だって、未来は結婚してるし…。 「あいつもいるから…」 私は、目を瞑って思った。 キョン…忘れないで。 あの頃の私は、勇気無かっただけなの。 だから、嫌われたりしないでね…。 「……」 私は、目を開け、青空を見た。 キョン…あなたは、私の……だからね。 「はぁ、泣いてスッキリした!さて、仕事に戻らないとね!」 それに、早く決着付けないと…世界が危ない。 朝倉…あなたは何を企んでるの。 第2部 完 第3部
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/4697.html
「久しぶりにオセロでもやらないか?古泉」 古泉君がきちんと整列した真っ白い歯を輝かせ、微笑む。 「長門、この前貸してくれたあの本、思いの他面白くてさ。昨日の夜もつい遅くまで読み耽ってたぜ」 有希が膝の上に置かれた本を黙読することを中断し、ゆっくりと顔をあげる。 「いやあ、朝比奈さんの淹れたお茶は何時飲んでもおいしいなあ」 みくるちゃんがお盆を抱え、少し頬を赤らめた。 いつもと何ら変わりの無い放課後だった。 今日もこうして時間は過ぎ、日が暮れる頃にハードカバーの閉じる音がした。 下校の合図。これもごく日常的な習慣。 次々と席を立ち、帰り支度をした後に、 「それでは、皆さんお気をつけて」 まずは古泉君が、 「……また明日」 その次に有希が文芸部室を後にする。これもごく日常的な帰宅の流れだ。 「それじゃあ…着替えるから」 そしてみくるちゃんが、 「待っててくださいね、キョン君」 とはにかむ。 いつもと何ら変わりの無い放課後だった。 鮮明に刻まれた記憶。身体と車が接触する瞬間。 それはすれ違い様に肩と肩をぶつけることとまるで変わらない、ほんの一瞬の出来事。 その一瞬の間にあたしは、「嗚呼、スローモーションになんてならないじゃない」、そんなことを辛うじて考えていたような気がする。 命の終わりなど本当に呆気ない。 そうして、あたしは死んだ。今から丁度一ヶ月前の出来事だ。 けれどあの時、事故に遭ったのはあたしだけではなかった。 キョン。 一緒に事故に遭ったキョンは奇跡的に無傷だった。 あたしは死に、そしてアイツは生きている。 あたしという存在を無かったことにして。 ――涼宮ハルヒの忘却―― あたしは毎日、キョンが「あたしの存在など無かったかのように」過ごすのを傍観している。 事故の日から今日まで、誰一人あたしのことについて触れることは無かった。 不自然に置かれている団長席、教室の机。それについてすらも誰も疑念を抱かない。 忘れてしまっているのだ。キョンは勿論、みくるちゃんも有希も古泉君も、谷口も国木田も鶴屋さんも、終いには家族でさえもあたしのことを忘れている。 あたしの部屋はあたしが使用していたそのままで残っているにも関わらず、家には遺影も位牌も置かれていない。葬式だって行われた様子は無い。 あたしの生きた痕跡が残る中で、『存在が無かった』と自然に振舞っている姿は苦笑してしまうほどに不自然極まりなかった。 最初は何かの冗談だと思った。 元々あたしは死んでなんていなくて、皆があたしを忘れたフリをしているのだと。 でも事実あたしは死んでいた。何かに触れることは勿論地に足をつけることもできないし、誰に話しかけたところでそれが聴こえることは無い。 あたしはあの時事故で死んだ、それは紛れもない事実だ。 そして、あたしという存在が無かったとされているこの世界…これも事実、現実の出来事なのだ。 「……朝比奈さん、あの……」 「何?キョン君」 「あの、えっと手、繋いでもいいですか?」 「えっ、あ……えっと、どうぞ……」 「……」 「……」 「……」 「……キョン君?」 「はっ、はい?」 「ふふ……みくるでいいって、何度も言ってるじゃない」 「あ」 「それにその敬語もやめてよね」 「はい……じゃない、……わかったよ、みくる」 あたしは、手を繋いで下校する二人のすぐ後ろをつけていた。 距離にして5センチも無いだろう。時折歩くペースが乱れ身体が重なることもあるが、二人が気付くことは無い。あたしの身体はもう物理的接触を行えない。 あたしはただひたすらキョンの顔だけを見ていた。この男の頬が赤いのは夕日に照らされているせいなのか。 それとも。 『ねえキョン』 キョンは答えない。 「あさひ……みくる、明日って暇か?」 『何してんのよ』 キョンは答えない。 「そうか、よかった。どこか行かないか?」 『何忘れてんのよ』 キョンは答えない。 「映画か……そうだな、見たいものでもあるか?」 『アンタ、言ってたじゃない』 キョンは答えない。 「じゃあそれにしよう。……俺?俺は何だっていいんだ、みくると一緒なら」 『……キョン』 キョンは答えない。 「それじゃ、また明日な……」 無言で見つめあう二人。それを無言で傍観するあたし。 キョンとみくるの唇が重なると同時に、あたしの唇から自然と言葉が零れていく。 『アンタはあたしを裏切ったのよ』 軽く触れるようなキスを繰り返す二人。深くお互いを求め合う二人。 抱き合う二人。見つめ合う二人。幸せそうに微笑む二人。 次第に胸の奥底からふつふつと湧き上がる感情。 憎悪。 『……許さない』 あたしはキョンを憎んでいる。 あたしを忘れたキョンを憎んでいる。 あの言葉を忘れたキョンを憎んでいる。 ―――地獄の果てまで着いていくぜ、ハルヒ。 アンタだけが生きて幸せになるなんて、そんなの絶対に許さない。 ◇ ◇ ◇ 純愛映画デート。いかにもみくるちゃんが憧そうな王道プランだが、そんな反吐がでるようなベタな事をこの男が好むはずが無かった。 にも関わらずキョンは終始ニヤニヤと楽しそうにしていて、あたしは反吐が出そうだった。 実にくだらない。 使い古された展開ばかりのB級映画に金を払うなんて。 その程度の物で感動してしまうような安い女の涙を拭ってやるなんて。 あたしはこの間抜け面をぶん殴ってやりたい気持ちで一杯だった。 無論、それが可能なら今にも実行していたことだろう。 立ち寄った喫茶店でロイヤルミルクティーと鼻水を啜る女に、キョンはハンカチを差し出した。 「いい加減泣き止んでくれよ、みくる……」 「ふええっ、ぐすっぐすっ……ごめんなさぁああい……」 キョンは目の前のみくるちゃんを気遣いつつも、周囲に視線を配っては居心地悪そうに背筋を丸めていた。 店内の客の視線を一斉に浴びてしまうのも無理は無い。傍から見れば別れ話をしていると思うのが自然だ。 ようやくそれに気付いたみくるは、絞れる程に涙を含んだキョンのハンカチで目を懸命に擦る。 「おいおい、目が腫れるぞ」キョンは腕を伸ばしてみくるの手を掴んだ。 「うん…ぐすっ、もう平気…ごめんねキョン君…」 「謝るなって」 キョンは呆れたような声で盛大に溜め息を漏らしたが、行動とは裏腹に、愛おしそうに、大切そうにみくるちゃんを見つめていた。 嘲笑わずには居られない。 馬鹿馬鹿しいことこの上なかった。この男はみくるちゃんを愛してなんかいないし、大切に思っているわけでもないのに。 ただこの可憐でか弱い、男性の理想を具現化したような彼女を気遣う行為が気持ちいいだけ。守ってあげることで気分を良くしているだけ。 要は、自分に酔っているのだ。 自己満足。何て醜いのだろう。 この最低男。 「なあみくる……俺の家に寄って行かないか?今日は、その……親も妹も居ないし」 極めつけがこれだ。 ――この、最低男。 「えっ……キョン君の、家……?」 その言葉の意味を理解したみくるちゃんは顔を真っ赤にし俯いた。しかし拒否することはしない。それは肯定の合図だった。 「いい……のか?」 「うん……」 「そ、そうか……じゃあ……えっと……い、行こうか!」 喜びを隠せないのか、それとも照れているのか。キョンは慌しく席を立つと伝票を取った。 「あ、キョン君、私払います!」 「いいんだよ、俺に払わせてくれ」 「でも私、映画代もキョン君に払ってもらっちゃったし……」 申し訳なさそうにするみくるちゃんの頭を優しく撫でたキョンは、 「……癖なんだよな」 不思議そうに首を傾げながらそう言った。 何が癖よ。この馬鹿。 堪えきれなかった喘ぎ声と、二人分の荒い呼吸が湿った部屋に充満していた。 経験など微塵も無い。AVの類を見たことも、夜中に両親の真っ最中を目撃したことだってない。 そんなあたしが衝撃を受けるには、初めて同士のつたない行為でも充分すぎるほどだった。 苦痛に顔を歪めつつも、時々悦びの声をあげ上の男にしがみついていて。 欲望に思考を乗っ取られ、機械のように腰を振って女を打って。 なんて醜い行為なのだろうと思った。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。 それでもあたしは耳を塞ぐことも目を瞑ることもしなかった。 そうして一部始終を見届けてやったあたしは、行為を終えて余韻に浸る二人に吐き捨てた。 『……不潔よ』 「みくる」 「なあに?」 「幸せか?」 「……うん」 「そうか、よかった」 キョンはみくるちゃんの白く細い肩に優しく手を添えると、ゆっくり自分の胸に引き寄せた。 みくるちゃんは満足そうな吐息を漏らし、キョンの胸に耳を当て瞳を閉じている。 淀んだ空気の中、不意にキョンが呟いた。 「俺たち……何もおかしいことなんてしてないよな?」 酷く擦れた言葉だった。 「何……突然言い出すの?」 みくるちゃんは身体を起こそうとしているが、キョンの腕は彼女を離そうとしない。 そのままでキョンは続ける。 「これで……このままで居ていいんだよな?幸せに浸っている俺たち、何もおかしくなんてないんだよな?」 「どうしてそんなこと聞くの?」 みくるちゃんの声が不安に染まった。あたしも先程まで考えていたことなど忘れ、キョンの次の言葉を待つ。 「みくるは何もおかしいと思わないんだな?」 「えっ、うん……どうして?何がおかしいと思うの?」 「……いや……そうか、そうなんだよな」 キョンはみくるちゃんから離れると、気だるそうに上体を起こした。 「じゃあ、何でもないんだよな。きっと……」 「キョン君……?」 隣に居るみくるちゃんのことなど忘れてしまっているのか。キョンは独り言のようにポツリ、ポツリと呟く。 「これでいいんだよな?…………なぁ……」 宙を見つめるキョンに、あたしは届かぬ問いを投げかける。 『誰に話しかけてんのよ、アンタ』 キョンの瞳は、虚ろだった。 ◇ ◇ ◇ 翌日の文芸部室。 空席…つまりあたしの定位置だった団長席に腰掛けながら、いつも通りの放課後を眺めていた。 昨日のキョンの言葉で、あたしは確信した。 キョンはこの不自然さに気付き始めている。 この世界は不自然で、忘れている何か、見逃している何かがある。その何かがわからぬ自分に苛立ち、そして怯えているのだ。 ―――それが実に愉快だった。 昨日から笑いが止まらない。止められない。間抜け面が溜め息をつく度噴出しそうになるくらいだ。 全てを思い出した時、キョンの前に姿を現すことができるだろうか。……いや、この際出来なくったていい。 ただこの男がどん底に落ちてくれればいいのだ。 この男が絶望に襲われ、苦痛に顔を歪め泣き叫ぶ姿を見たいがために、今あたしはここに居る。 あたしを忘れ、無かったことにしたこの男に制裁を。 それだけがあたしの望みなのだ。 「なあ古泉」 「はい、何でしょう」 「何か違和感とか感じてないか?ここ最近」 「違和感……ですか?特に感じませんが、それはどういった違和感なのですか?」 「いや……それならそれでいいんだが、長門は?」 「……特に、何も」 「そうか。そうだよな……」 そう、それでいい。 キョン以外の人間があたしを思い出すことだけはあってはならない。 一番最初に思い出すのはキョン、アンタでなければならないのよ。 誰かに告げられた事実ではなく、アンタが自分の頭で思い出して一人苦悩するの。 それが最高のシナリオ。 下校時刻になる。 「それでは、皆さんお気をつけて」 「……また明日」 有希と古泉君が部室を後にし、文芸部室にはキョンとみくるちゃんの二人が残った。 二人っきり――といってもあたしが居るのだが――の空間で少し語らった後、「あ、もうこんな時間」とみくるちゃんが慌しく立ち上がる。 「それじゃキョン君、着替えるから外で待っててね」 「ああ」 返事をしつつも、キョンは立ち上がらない。 「えと、キョン君?」 キョンは答えずに、ポカンと口を開けた彼女を凝視している。 みくるちゃんは何かに気付いたかのようにハッとし、戸惑いながら、 「あの……昨日の今日で言うのもなんだけど……えっと、やっぱり学校だし、着替えくらいは……あの」 「……あ、いや、そういうつもりじゃないんだ、すまん……」 キョンはポリポリと頭を掻きながら立ち上がるが、やはりそこを動こうとはしない。みくるちゃんを見つめたまま立ち尽くしている。 「キョン君、やっぱり昨日から変よ……?」 「何があったの?」と心配そうに尋ねられると、キョンは意を決したかのように真面目な顔をし、 「…みくる、一つ聞いていいか?」 「えっ?」 「そのメイド服は……―――自分で用意したのか?」 あたしは、自然と口端が吊りあがるのを感じた。 「……ほえ?こ、この服のこと?」 みくるちゃんはスカートを摘み上げ自身が纏うメイド服を凝視した。 「……あれ……どうだったっけ……?えと」 「なあ、その服、自分で着たいと思ったのか?」 「えっと……ううん、そうじゃなかったような……あれ……?」 みくるちゃんは心底不思議そうに首を傾げた。 対して私は笑っていた。そう、そうよ。アンタは思い出さなくていい。 「みくるは、そのメイド服を毎日着るよう誰かに義務付けられた……なあ、違うか?」 キョンはみくるちゃんの両肩を押さえつける。 「おかしいだろ?俺やみくるだけじゃない、皆そのことを忘れてるんだ。なあ、これっておかしいと思わないか?」 「やっ……ちょっ、と」 「頼むから思い出してくれよ、みくる」 「わっ、ふっ、やめっ」 キョンはみくるちゃんの身体を激しく揺さぶりながら続ける。 「何のために毎日メイド服なんて着てるんだ?誰に言われて着るようになったんだ?なあ!」 「痛っ、痛いよ、キョン君っ……」 「なんで誰もおかしいと思わないんだ!なんで俺は思い出すことができないんだ!!俺は……俺は一体何を忘れてるんだ!?なあ、教えてくれよみくる!」 一層大きな声で怒鳴りつけると、キョンは我に返ったかのようにみくるちゃんから離れた。 「ひっ……ぐすっ……うっ……う、うっ……」 「あ……す、すまん、すまない……」 身体を震わせすすり泣くみくるちゃんにもう一度手を伸ばすも、それは弱弱しく払いのけられる。 みくるちゃんは先程の言葉とは裏腹に、泣きながらメイド装束を脱ぎ始めた。慌しく着替え終えると、乱暴に鞄を取り小走りで文芸部室を飛び出していった。 キョンはその背中を見届けた後、悪態を吐きながらパイプ椅子を思い切り蹴りつけた。 椅子と椅子が激突する音と、キョンの怒鳴り声が文芸部室に響き渡る。 『…キョン…』 その様子を傍観していたあたしは、無意識に間抜けなあだ名を呟いていた。 その声が聞こえたかのように、あたしの居る方に視線を向けるキョン。そのまま凄まじい形相でこちらに近づいてくる。 「何なんだよ!ここには誰が座っていたんだ!……俺は何で思い出せねえんだよっ!!」 キョンが机に拳を叩きつける。渇いた音と共に机が軋む。 「畜生!」 きっと10センチも無いだろう。その先に、キョンの顔があった。 こうして至近距離に居ても、キョンがあたしと目を合わすことは決して無い。 キョンが見ているのはあたしでは無く、この席に座っていた『誰か』なのだ。 こんなに近くに居るのに、キョンの荒い息はあたしにかからない。 こんなに近くに居るのに、キョンはあたしに気付かない。 こんなに近くに居るのに、キョンはあたしを思い出さない。 『……あたしはここに居るわ!キョン!!』 キョンは答えず、俯き、歯を食いしばるだけだった。 キョンが苦しんでいる姿。あたしは何よりもそれを望んでいたはず。 それなのに、どうしてかすごく気分が悪かった。 ◇ ◇ ◇ キョンが帰路についた後も、あたしは文芸部室に残った。 キョンが苦しみ、取り乱した姿が目に焼き付いて離れない。 今まで間抜けで能天気なアイツばかり見てきたのだから、アイツのあんな様子を見て動揺するのも無理は無い。 しかしあたしはこうなることを望んでいたはずだ。 今のあたしの心境は矛盾している。 どうして願いが叶ったにも関わらず、こんなにも不愉快なのだろう。 ならば、あたしはどうしたかったのだろうか。 『笑っちゃうわね。あたしは恨んでいるのよ、アイツを』 『アイツは地獄の果てまで着いて行くって誓ったのよ』 『それなのにアイツはあたしを忘れてみくるちゃんと……』 『許せるはずないじゃない』 『あんな奴苦しんで当然なのよ』 『アイツだけ幸せになるなんて……そんなの……』 あたしはアイツへの憎しみを確認するかのように独り言を呟いた。 それでもあたしの心が晴れることは無い。むしろ逆効果だった。 『あたしは…』 あたしはどうしたかったのだろう。どうなってほしかったのだろう。 何故? 今となっては思い出すこともできない。 あたしが何を望み、どうしてここに居るのか。 あたしは…何かを忘れている? そんな時だった。 もうとっくに下校時刻を過ぎた今、文芸部室のドアを開かれたのだ。 『キョン!?』 ドアを開いたのは他ならぬキョンだった。 キョンはひどく疲れていたようだった。げっそりとした顔に、腫れた赤い目。よろよろとパイプ椅子に腰をかけると、宙を見つめ呟いた。 「……思い出せないんだ……」 うわ言のように繰り返される言葉。 「忘れてしまったんだ……大切な、何かを」 『……どうして、思い出せないの?』 あたしはこの男の独り言に、無意識に返事をしていた。何となく、キョンが返答を求めていたような気がしたからだ。 当然返事は無い。キョンはそれから目を閉じたまま動かなかった。 再び訪れる沈黙。あたしはキョンの胸中を伺えず、諦めて部室の外へと視線を移した。 怪しく浮かぶ月には雲がかかり、この不自然な世界に灰色の光を降らしていた。 灰色の世界。二人きりの学校。 思い出されるのは、おかしな夢、交わしたキス―――…… ああ、 なんだ、そうか。 そうだったんだ。 『キョン……』 あたしはキョンの方へと向き直った。目を閉じている彼の頬を涙が伝っている。 キョンの頬へと手を伸ばし、それを拭おうとした。 触れられない。 もうキョンに触れることすらできない。 死んでしまったあたしには、キョンを哀しませることしかできないのだ。 『……忘れていたのは、あたしの方ね』 キョンがあたしを忘れたのは、他でもないあたしの願いだった。 彼を哀しませないためにあたしが望んでやったこと。 涼宮ハルヒという存在をを無かったことにしたのは、涼宮ハルヒ自身だったのだ。 どうしてこんな大事なことを忘れていたんだろう。 全てはキョンが好きだったから。 あたしは一番大切な気持ちを忘れてしまっていたのだ。 『……キョン』 もう触れられぬとわかっていても、あたしは何度も彼の頬を拭った。 『思い出さなくていい……もう苦しまなくていいのよ』 拭えぬ涙は止め処なく流れ続けていた。 それでもキョンは心なしか、頬を撫でられ擽ったそうにしているように見える。 キョンの体温が温度を持たぬこの手に伝わってくるような気さえしていた。 『好きよ、キョン』 もう涙すら流せないこの身体。 もう触れることすらできないこの身体。 もうキョンを哀しませることしかできない、あたしの存在。 『あたし……行くわ』 これで最後と、あたしはキョンの頬に手を添えるようにした。 そしてそっと唇を近づける。 灰色で、二人っきりの世界。 アンタはキスをして夢から覚める。 そして次に目を開けた時、アンタは完全にあたしを忘れる。 今度は痕跡も無くあたしは消えるわ。 だからもう苦しまなくていいのよ。 ごめんねキョン。 アンタは生きて……幸せになって。 好きよ。 好きよ。 大好きよ。 誰よりも愛してるわ。 だからあたしを忘れなさい。 あたしはアンタを忘れない。 アンタを好きなこの気持ちを二度と忘れない。 「……ハルヒ」 最後に、キョンのうわ言が聞こえたような気がした。 「勘違いしないでよ。あたしはアンタを彼氏にするつもりは無いわ!」 「な、なんだと?」 「その代わり、団員その1は永久名誉雑用係に昇進です!」 「……はあ?ハルヒお前、何言って……」 「だからアンタはずっと、一生、死ぬまであたしの傍に居なくちゃならないの。仕事だって今までの何倍も増えるわよっ!覚悟しなさい!」 「…………」 「……ちょっとキョン、聞いてるの?」 「ああ。地獄の果てまで着いていくぜ、ハルヒ」 終
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/6137.html
第六章 虹色に輝くオーパーツ。その光がやみ終える。 「変な気分だ」 「ええ、無理も無いでしょう」 部室を出て、二人は長門の住むマンションにと向かった。ここ数日分のの記憶が二つ存在している。むこうの世界の俺がそう判断したんだからしょうがない。こうなることが分かっていたら、俺はどうしていただろう。くだらないことしか思いつかない。同時刻にチェスと将棋で古泉を打ち負かしてやるってのはどうだ。 こっちの世界・・・正規の世界では俺は無様にも何もすることが出来なかった。長門が倒れている中で古泉や喜緑さんに頼りっぱなしだった。しかし向こうの世界では少しは貢献できただろう。しかも今回は長門と古泉が毎度のように奔走する中、あの朝比奈さんが許可なしでは禁止されている時間移動をしてみんなを助けに来た。そしてSOS団に対する俺の気持ちが分かったような気がする。そう考えると同じ記憶を持つってのも悪くない。 オートロックを開けてもらい、長門の部屋の前に着いた。玄関のドアを開けると、奥から話し声が聞こえる。どうやらいつも通りの会話が聞こえる。にぎやかな話し声だ。 部屋に行こうとすると向こうからハルヒがやってきた。 「ちょっと遅いわよ。それよりも早く・・・」 分かっている。それ以上は言わなくてもいいんだ。俺は体験して確認できているんだからな。 扉を開けると、寝ていたそいつはこう言った。おいおい逆じゃないか?お前は俺の妹みたいなことを言うな。 「・・・ただいま」 長門は体を半分起こしている。 「ちょっと有希、まだ無理しちゃダメよ。まだ治ってないでしょ」 ハルヒは言葉では心配しているが、心では安心しているのだろう。長門の顔をみる限り寝込んでいたのが嘘だったようにケロッとしている。それを見れば気づくのだろう。もう無事だと。古泉と朝比奈さんも良かったとつぶやいている。 長門が無事と分かればハルヒはあれやこれやと話し始める。 「本当に心配してたんだから」 とか、 「体調を崩し始めたらすぐあたしに言いなさい。団長命令よ」 とか。長門はそれをただ聞いている。ハルヒは早速作ったおかゆをたべさせようとする。普通の病人ならそう簡単に食えやしないだろうが。がっつきすぎだぞ、長門。 喜緑さんは長門の無事を確認できたからなのか、 「少し用事がありますのでお暇させていただきます。今晩の看病は引き続きお任せください」 と言って出て行った。情報統合思念体に報告でもするのだろう。 その後俺たちはしばらく長門の部屋にいた。何をしていたかと言うと、珍しくハルヒと長門が会話をしていた。とはいってもハルヒが長門に一方的に話しかけているだけで、数分おきに長門が 「・・・そう」 「・・・分かった」 とつぶやき、はたまた、 「・・・・・・・・・」 無言で会話をしているように見えた。心なしか長門は嬉しそうだった。古泉や朝比奈さん、喜緑さんは黙ってそれを見守っている。 俺はというと・・・これからやることを整理していた。まだまだやらなくちゃいけないことがある。だけど少しくらい先延ばしてもいいよな。今日くらい久しぶりのSOS団を満喫してもいいじゃないか。 「やばい、忘れてた」 「何言ってるの、キョン」 「ちょっとレンタルDVDを返し忘れてた。悪い、今日は先に帰る」 ハルヒのギャーギャーいう声が聞こえる中、部屋を出た。早くオーパーツを鶴屋さんに返さないとな。またどこかに忘れたりなどしたらまずい。玄関に行くと喜緑さんが立っていた。 「お薬をお持ちいたしました。特効薬です」 いかん。こいつも忘れてたな。そのフォロー助かります。 さっそく鶴屋家へと走る。ほんと走ってばっかりだな。 何度見ても荘厳といえる家だ。インターホンを鳴らす。鶴屋さんが門まで来てくれた。 「やあ、それはもう必要ないのかいっ」 「ええ、助かりました。ありがとうございます」 今回はこの人だけでなく、鶴屋家のご先祖様にまで助けられたな。 「じゃあこれはまたうちで保管させていただくよっ。それよりもキョンくん。答えは分かったのかなっ」 このお方は何かが起きたって分かっているんだな。 「まあキミの顔を見れば分かるっさっ。少年、大使を持つにょろよ~」 ええ。既に大使は身につけてきましたよ。 家に帰ると妹が玄関にやってきた。 「ただいまー」 おう、おかえり。今日は間違えずにすんだな。 夕飯を食べ、自分の部屋へいった。ベットに寝ころがりながら考える。明日やるべきことを・・・ 翌日、水曜日。 自分のクラスに入るとハルヒがすでに来ていたようだ。 「昨日は悪かったな」 「悪いも何も、あんたはもっと部員を心配しなさいよ」 「分かってるって」 どうも昨日俺が帰った事で不機嫌らしい。 「有希、今日は学校に来ているわ。熱も下がってすっかり治ったみたい」 「会って来たのか」 「そうよ。きっと喜緑さんの特効薬が効いたんだわ」 まあそれだけではないだろう。お前が昨日ずっと居座って長門と話をしてたんだからな。長門も安心したんだろう、自分の居場所を確認できて。 昼休み。弁当を即効で食い終え、部室へと行く。そろそろこの不摂生が何かの病気にならなければいいが。 「どうぞ」 「お待ちしておりましたよ」 部室には古泉と朝比奈さんががいた。珍しく長門がいない。 「あなたはどこまでご存知ですか」 「さあな、さっぱりだ」 「それでは僕が」 またこいつの仮説を聞かなくちゃいかんのか。できれば長門に聞きたかったんだが。いや、二人いた方が分かりやすいか。 「僕が二つの記憶を持ち合わせていること、またあなたや長門さん、朝比奈さんの話を思い出すと、先週の土曜夜に世界は分裂してしまいました」 ああ、そうだったな。 「我々の記憶上で残っている世界をα、結果として存在していた世界をβとします。長門さんや喜緑さんが分裂した事を気づけなかったのは、九曜と言う宇宙人の仕業でしょう。α、βの両世界において妨害していたようです」 結局、九曜というやつのもよく分からなかったな。 「ええ。いくつかの能力において、長門さんよりも上位にあるようです。ただし意思というものがないのでしょうね。今後なにをするのか予想がつかないのは脅威ですが、恐らく単独で行動することは無いと思います。涼宮さんの能力に興味を持っているのですが、どうしたらよいか分からないといった感じでないでしょうか」 現に長門は倒れてしまったんだ。脅威だろ。 「そうとも限りません。喜緑さんがいますでしょう。今回のことで喜緑さんはよりいっそう警戒しているようです。僕が直接聞きました。二人がそれぞれ補っている限り、攻撃してもその時は回避できるはずです。九曜さんが長門さんに直接攻撃してきたのはβの世界です」 「じゃあαの世界の敵は藤原ってやつなんだな」 「その通り。彼があなたを利用して涼宮さんから佐々木さんへ能力を移し変えようとしたようです。もっとも移し変えようとしたのではなく、涼宮さんの能力をもともとなくそうとしたのではないかと。朝比奈さんの未来とβ世界の長門さんを人質にとって」 そこで朝比奈さん、あなたのおかげで助かったんです。 「またいつかお願いしたいものですね」 古泉ちゃかすな。朝比奈さんが困っているだろ。そういや勝手に時間移動してよかったんですか? 「あのう、わたしどちらの世界でも未来と連絡を取れなくて。古泉くんの言うβっていう世界ではあきらめてたんです。でもαって世界ではダメもとでやってみたんです。そしたらできちゃって・・・今は、禁則なんですけど未来と連絡取れるんです。そしたら禁則ですけど・・・処分待ちだって・・・」 やっぱりいけないことだったのか。どうしたらいいんだ。すると部室のドアが開いた。長門がやってきた。 「心配する必要は無い」 その言い草は何だ。俺たちの会話はお前に筒抜けだったのか。それにしてもやけにおそかったな。どこいってたんだ? 「涼宮ハルヒの作成した弁当を共に摂取していた」 そこまでハルヒは面倒見ているのか。で、朝比奈さんはどうなるんだ?しばらく黙った後、長門はこう言った。 「大丈夫。いずれ分かる」 だからどう大丈夫なのか言ってくれよ。それとも言わなくてもすぐ分かるってことなのか?朝比奈さんが縮こまっているじゃないか。それでもその怪訝を気にする必要はないと言わんばかりに違う説明をした。 「世界を分裂させたのは涼宮ハルヒ。九曜と呼称される個体により、発見が遅れた。彼女は我々情報統合思念体と発祥が異なるため、攻撃方法も分析できなかった。また分裂の原因はあなたの友人である佐々木と呼称される人物。涼宮ハルヒは嫉妬と呼称される感情を持ち、佐々木と呼称される人物を消去した」 そういえばハルヒがやったんだよな。よりによって俺の友人に手を出すなんて。 「それは気になりますね。今後涼宮さんが同じようなことを起こすかもしれません。もちろん、あなたと涼宮さんが結ばれてしまえば気にかけることはないでしょうが」 だから古泉、その発言はよせよ。 しかし俺はハルヒがまた同じ事をするなんて思っていなかった。今朝ハルヒとした会話の続きを思い出す。 「長門が俺たちに寝込んでいることを言わなかったのは、長門なりに心配かけたくないってことだったんじゃないか。長門にも言いにくいことはあるだろうさ」 「まあ・・・それも分からなくもないわ」 「誰にだって言い難いことはある。そういうお前も俺たちに言えないでいることはあるんじゃないのか?」 そう言うと、しばらく窓の外を見てハルヒはこう返答した。 「そうかもね」 そして口ごもるようにこう続けた。 「・・・・・・あんたあたしに隠し事していない?例えば誰かと付き合っているとか。この前会った佐々木さんとか怪しいわね。例えばの話よ」 「お前、残念ながら俺がどれだけもてないのか分かるだろ。いる訳ない。佐々木と俺との間に恋愛感情などない。異性同士でも親友という関係が成り立つってのが俺の持論だ。仮に少しでも気になる異性がいたらだ。真っ先にお前に相談するよ」 同性の国木田とかに相談するより、異性のお前たちに聞いたほうが少しはためになるだろう。ましてナンパ成功率0.00・・・1%の谷口に相談するなんぞもっての外だ。 「それもそうね」 何か勝ち誇ったようにハルヒは俺に笑顔を見せている。 「そういうお前はどうなんだ。入学して一年たつんだ。彼氏を作る気はないのか」 「あんたには関係ないわよ」 「おいおい、お前は俺に隠し事するのかよ」 「・・・・・・あたしはそんなことよりSOS団のみんなと遊んでいる方が楽しいわ」 「それには俺も同意見だ」 はっきりと遊んでると言い切ったな。本来の活動内容はどこへいったんだ。 「ならハルヒ、悩み事があるなら俺たちに相談しろよ。もっともいえる範囲での内容でいい。俺だったら何でも言うさ。まして恋愛ごとに関していったら、SOS団には女性が三人もいるんだから。悔しいがこの学校ではトップクラスで異性にモテている古泉もいるんだ。俺たちに隠し事などない方がいいだろ」 「当たり前よ。SOS団に隠し事なんて不必要だわ」 もっとも、隠しておかなければならないことは隠し通すべきだ。いきなりあの三人が本性を語り始めたりすることはないだろう。それ以外のことだったら何でもいい。幸か不幸か、SOS団のみんなは一年間毎日同じ時間を過ごしてそんな間柄になっているに違いない。担任の岡部が教室に入ってきたところで、会話はそこで終了した。 回想終了。俺は確かめるべく、まず古泉に聞いた。 「そういうお前はどうなんだ。新学期になって早速下駄箱にラブレターなんてもの入ってたりしないのか?」 「いきなりどうしたんですか?・・・新一年生から何通かそのようなものを受け取りましたよ。でも今の僕にはそんなことをしている時間はないんです」 うまく紛らわそうとする古泉に、拍車をかけるように質問を続ける。 「じゃあ逆に気になる子とかいないのか?告白を断り続けているのも、既に意中の人がいるとかはないのか」 「・・・・・・そうですね、僕は機関の仕事で忙しいのでそのようなことを気にする時間はないんですよ。もっともプライベートの時間はこの部室や週末の野外活動で、あなたたちと過ごすことで満足してしまっているようです」 古泉はシロか。そう思いながら今度は女性に目を向ける。 「朝比奈さんはどうですか?あなたもたくさん告白を受けているのでしょう。この時代で恋愛してはいけないんでしたっけ?でも一つ禁則事項を破っているんですからもう一つくらいかまわないでしょう」 「いきなりなんてこというんですかぁ~。あっキョンくん、その顔はだまそうとしたんですね。いじわるです。好きな人がいるかどうかは・・・、禁則事項です」 やはりこの人は分かりやすい。残念そうな顔をしている朝比奈さんを見れば、そのようなことはないだろう。 「長門、お前はどうなんだ」 目を見開いてこちらを見ているように見える。なんてことを聞くんだって顔か? 「・・・・・・ヒ・ミ・ツ」 そりゃないだろう。少しくらいお前のプライベートを聞きたいもんだ。お前も中河以外から告白を受けたりしなかったのか? 「・・・・・・そのようなものを受けた場合、今の私だけで判断することは出来ない。情報統合思念体の見解が必要。またあなたたちにも見解を求める可能性もある」 ようするに親や俺たちに相談するって事か。 「お前たちのことは分かったよ。ハルヒにも今朝同じ事を聞いた。釘刺しておいたよ。あいつは俺に遠慮していたみたいだな。嫉妬かどうか分からないが、俺なんかを心配していたんだろう。これからはお互い隠し事はなしだって約束したさ」 俺はそのとき一つ見過ごしていた。さっきの俺の発言に対して反撃してくる可能性があるということを。よりによって古泉ではなく、朝比奈さんが反撃してきた。 「それで、キョンくんはなんて告白したんですかぁ?それとも涼宮さんに告白されたのかな。教えてくださぁ~い」 どう答えていいか考えているうちに、昼休み終了を告げるチャイムが鳴った。助かった、と思いきや三人が近づいてくる。くそっ、教室までダッシュだ。 「おや、逃げ足だけは速いんですね」 そう言う古泉を後ろにして、何とか教室へと戻ってこれた。 放課後、部室へと向かった。既に一人部室にいた。二日ぶりに、休みを入れると三日ぶりに五人揃って部室で活動できるんだな。長門が椅子に座り本を読んでいた。そういえばこいつに聞きたいことがまだあったな。 「そういや、俺が電話をかけただのかけてないだのってこと分かった気がするぜ」 「そう」 俺は確かに一方の世界では長門に電話をし、もう一方の世界ではしなかった。こいつの言ってたことと同じだな。しかし何だってそんなことになったと思っていると、それを見かねたのか、長門が説明してくれた。 「あの時間、あなたからの電話の電波情報が別の世界の私に発せられた。その原因も恐らく九曜と推定される」 「だから俺はお前が倒れていることに気づけなかったんだな。ひょっとして九曜は、言いにくいんだが、お前より強かったりするのか?」 「・・・情報統合思念体は未だ解析できていない。しかし今回のことからその可能性は否定できない。もしくは我々と九曜が持つ能力が別々に存在している可能性もある。お互い意思伝達が出来ないのもそれが原因とも思える」 後者の方がいいんだがな。また襲ってくるなんてこともあるだろ。 「私がさせない」 「私たちが、だろ。お前も今回のことで分かっただろ。一人で解決できなくともみんなの力で解決できることがあるって。少しは俺たちのことも信用しろよな。古泉の機関や朝比奈さんの未来勢力にとっかかりはあるかもしれないが、お前個人が危ないって分かったらみんな助けに来ただろ。古泉や朝比奈さん、それにハルヒのことも信頼してくれよ」 長門は沈黙の後、何かを確信したかのように言った。 「・・・・・・分かった」 残りの三人がやってきていつものように放課後を過ごした。いや、いつも通りではなかったな。俺と古泉がボードゲームをし、ハルヒはパソコンをいじり、長門が窓辺で本を読み、朝比奈さんがそれらを見守るようにお茶を汲んだりしていた訳ではなかった。古泉が持ってきた人生ゲームを五人みんなでやっていた。しかしまたしても奇妙なことが起きた。それぞれの職業が、ハルヒは総理大臣、古泉はマジック芸人、長門はNASA、朝比奈さんはタイムマシーン製造業なんてのにつきやがった。こんなゲームどこで作ったんだ。かくいう俺は、言わずとも分かるだろ、雑務係の万年平社員だった。 ゲームをしながらハルヒは不満げに呟いていた。 「なんで入団希望者が来ないのかしら。今年の一年はみんな腰抜けばかりね。もっと歯ごたえのあるのが来ると思ってたのに」 「まあまあそうあせるなって。そう簡単にお前の目にかなうやつは見つからないだろ」 「やっぱり去年のうちに目ぼしいのを探しておくべきだったわ」 下校の時間になり、五人は早々と部室を出た。 「あのゲームはなんだ、お前らの機関が作ったものか?」 「いえ、新発売の人生ゲームですよ。あの手この手やりつくして、奇抜な内容になってしまったようですね。まさかあんな結果になるとは思っていませんでしたよ」 古泉と下らん会話をしながら前を見ると、長門はハルヒと朝比奈さんに挟まれながら歩いていた。ハルヒと朝比奈さんだけ会話をしているように思えたが、時折、 「・・・・・・そう」 「・・・・・・うかつ」 という長門の声が聞こえた。よかったな、長門。 五人が解散した後、俺は一人喫茶店に来ていた。数分後、もう一人やってきた。 「待たせたね。宿題を先に済ませておこうと思ってね」 向こうの世界で顔をあわせた後、一度もあっていない佐々木が来た。昨日のうちに待ち合わせをしておいたのだ。 「キョン、すまなかった。先に謝らせてくれないか」 「謝るのはこっちだ。お前は散々な目に会っただけだ」 「一時の迷いがあったとはいえ、本当に悪かった。橘さんたちとはもう会わないことにするよ。少なくとも僕から会うことはない」 佐々木が席に着くなり、二人とも頭を上げ下げしていた。こうしてはおれん。コーヒーを注文してひとまず落ち着くことにした。 「ハルヒがあんなことをしないように確認しておいたから。安心して大丈夫だ。あいつに謝らせることはできなかったから、俺の方から謝るよ。本当にすまなかった。今後、九曜や藤原がお前襲ってきてもSOS団で助ける。だから心配するな」 「そうしてもらえると助かるよ、ありがとう。それにしても藤原さんがあんなことをするとは君も思わなかったんじゃないかな。さぞかし意表をつかれただろう。今回の作戦を提案したのは橘さんさ。彼女もなかなか策士だね」 やけに絡んでこないと思ったら、考えたのは橘だって訳か。確かに彼女の能力は佐々木の閉鎖空間に入ることだから、襲ってくるとは思わなかったが。 「僕が思うに、九曜さんは能力を移し変えることなんてできないんじゃないかな。もしくはやりたくないとか。彼女は最後まで理解できなかったよ。だから橘さんは藤原くんにお願いしたと言うわけだ。彼が未来人なら世界が分裂したことなどあらかじめ知っていてもおかしくはないだろうし」 確かに何も知らない向こうの世界で、いきなり藤原が襲ってきたときはビックリした。あの七夕に連れ去られるとは。かろうじて長門が反応して一緒に来れたことが救いだった。あそこに一人連れ去られていたら、朝比奈さんがくる前に精神が参っていただろう。 「一つだけ謎を推理したんだが聞いてくれないか」 「おや、めずらしいね。君の論説も久しぶりに聞いてみたいよ」 「佐々木、お前にも閉鎖空間があるって言っていたが、それは橘の嘘なんじゃないか?日曜お前の閉鎖空間に入ったんだが、十秒くらいで出てこれただろ。ハルヒのそれに入った経験からすると、閉鎖空間の時間は実際の時間と共に進行するか、それか時間はたたずに出てこれるんじゃないかって思って。あの時のは九曜に魅せられた幻なんじゃないか。だからお前にはハルヒの持つような力は存在しないと思う。でないと藤原のやつがした行動も矛盾することになる」 「なるほど、そうだとありがたい。君の推理も一理ある。何しろ僕がそのような力を持っていたくはないんだ。平穏な生活を望むよ」 「俺だってそうさ。それにハルヒはお前を消そうとだけしてたとは思えない。向こうの世界にだけ、SOS団にお前を含め入団希望者がやってきただろ。いくら藤原の時間移動で来れたとしても、それだけじゃハルヒによって拒まれるんじゃないか。お前を消そうとしたことに罪悪感を持ったんじゃないかって。だからお前は向こうの世界に異世界人としてくることができた。どうだ?」 「くっくっ、涼宮さんにおける君の信頼は厚いね。うらやましいよ。まあ君がそういってくれるだけでも僕は安心することができる」 ああ、そうに違いない。ハルヒが一時の迷いで人を消してしまおうなんざするはずがない。 「何はともあれ、今後ともあいつの行動には気をつけるよ。この前話してた同窓会の件だが、俺と佐々木で決めちまわないか。二人をお互い窓口にして。会うことはハルヒにも言っておくさ」 「そうしてくれると助かる。早く決めてしまいたいしね。何より息抜きになりそうだ。相変わらず僕の学校はみんな勉学に気を張り詰めてばかりだからね」 その後、俺は佐々木の話に耳を傾けつつ相槌をつくように会話した。久しぶりだなこの感覚。 「では同窓会の件は僕からみんなに連絡しておく。展開があったらこちらから連絡するよ。君の学校の人たちにも伝えておいてくれないか」 「ああ分かった。じゃあばた今度な」 二人は喫茶店をでて別れようとしている時だった。俺たちの背後にいやな気配がする。授業中にも感じる、あの刺々しい気配だ。 「あらキョン、こんなところで何してるの?」 なんだってんだ。この状況をこいつに見られたら、振り出しに戻ってしまうじゃないか。どうする俺。最悪だ。修羅場だ。女の修羅場が始まるぞ・・・こんな時に発せられる男の第一声ってのはなんとも情けなく聞こえるのだろう。 「あのな・・・お前なんか誤解していること言っただろ。この前佐々木と俺たちが会った時、お前つれない態度だったじゃないか。だから佐々木も気にしているみたいでな。だから今しがた、その誤解を解いてこいつにも理由を話していたわけだ。はははっ・・・」 ああ、俺の人生はここで終焉を迎えようとしている。せっかくあの場から戻ってこれたって言うのに。しかしその時、神の声が降り注いだ。 「なんだってキョン、君ってやつは。今日のことを説明してなかったのかい?涼宮さん、これを機に新たな誤解を生む必要はないよ。先日あなたに対してあまり良くない印象を与えてしまったみたいで気になっていたんだ。せっかくの出会いも第一印象が悪かったら人生を損すると思える。僕はあなたに対してそのような印象を持っていないんだ。しかもこれがいい出会いになることを望んでいる。それに彼と会うことは、中学の同窓会のことで話そうと僕から提案したことなんだ。どうか、気にかけないで頂きたい」 佐々木よ、お前に力がないなんて言って悪かった。お前は神だ。 「ふうん・・・・・・そう・・・・・・。ならいいけど」 「そうなんだよ。ハルヒ。じゃ、じゃあまた明日な」 ここ一週間で最も早く俺の脚が動いたのが、まさかこの時だなんて。情けないったらありゃしない。一刻も早くあの場を立ち去りたかったからだ。しかし、俺が逃げるようにその場を立ち去った後、二人が何か話していることに気づくべきだった。 そんなこんなで家に着き、夕飯を食った後、また外へ出た。 「どこに行くのー?お散歩?それとも彼女?」 「そんなんじゃありません。ちょっとコンビニにな」 「えー、いいなあ。キョンくんおみやげ買ってきてねー」 今日はやることが多いな。しかしそれを見逃すわけにも行かなかった。今朝下駄箱に手紙が入っていたからだ。 『今日の夜九時、いつもの公園で待っています 朝比奈みくる』 そうだ、今回の事件で何も絡んでこなかった、しかも小さい朝比奈さんに対しても何も連絡しなかったのであろう、もっと未来にいる朝比奈さんの呼び出しがあったのだ。 公園に着くと、朝比奈みくる(大)がベンチに座って待っていた。 「急に呼び出したりしてごめんなさい」 いや、いいんです。俺も聞きたいことが山ほどあるんです。あなたがどこまで話してくれるかどうかは分かりませんが。まず一番聞きたいことはこれだ。 「今回のことも規定事項だったんですか?」 そう尋ねると、言葉が詰まっているように見える。目に涙も浮かべているようだ。 「いえ・・・今回のことは私たちもあなたに委ねようとしていました。あの時、あなたがどの未来を選択しても納得するようにしました。それまでは干渉しないように決めていたのです。あなたにとって酷な選択でした。でもあなたのおかげで今、私や長門さんがこうして生きていられるのです。そしてこれだけは分かって欲しいです。そうすることしかできなかったの・・・」 酷だ、酷過ぎたさ。でもあなたはヒントをくれた。 「では今俺たちと時間を共にしている朝比奈さんについてはどうなんです?それにあのオーパーツはあなたのヒントだったのでしょう?」 「・・・禁則に関わってしまいますが、あの時の私に判断させることしかできなかったの。おかげで今私がいる未来では飛躍的に変わったことがあるの。時間平面移動について・・・それまでは許可なしにすることは禁止されていたけど、身の危険が迫った時はやむを得ず移動してもいいと決められました。他にも色んな制約はありますが、おかげで緩和されるきっかけになったの。あのオーパーツに関しては今回の事項においてどんな形であれあなたが思いだすことが必要でした。あの後すぐに発見するとは思いませんでしたが・・・」 朝比奈さんがあの場で時間移動したことが、この朝比奈さん(大)にとっての規定事項だったのだろう。ともすれば、これがきっかけで朝比奈さんの地位が上がるってことになるんだな。早く伝えてあげないと。・・・これも恐らく禁則事項なんでしょうね。そう言って彼女を見ると、頷いている。 「それで、藤原というあの未来人のことなんですが・・・」 「それ以上は禁則事項なのです。・・・ごめんなさい」 そう言って彼女は立ち上がり、 「そろそろ時間なの。でも最後にこれだけ言わせて。キョンくん、あなたのおかげでみんな助かることができたの。本当に感謝しています」 そして草薮の方へ消えていった。 俺の頭に二つの懸念がよぎる。恐らくあの藤原と言うやつは朝比奈さんのおかげで自由に時間移動することができたのだろう。それができなければ朝比奈さん(大)たちの手によって囚われの身になってしまう。そしてオーパーツ。あれは朝比奈さん(大)たちが作り出したものなのであろう。宇宙人が作ったとも考えられるが、長門や九曜を見る限り、わざわざ三百年前の人に渡して、それをこの時代まで見つからないようにするなんて手の込んだ事しないだろう。未来人が置き忘れたか、この時のために埋めさせたと考える方が納得いく。ともすると、朝比奈さん(大)のいる時代は四年前の時間振動など消滅しているのだろう。あなたのいる未来はすでにハルヒの力がなんなのか分かっているのですか? →「涼宮ハルヒのビックリ」エピローグ あとがきへ
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/2381.html
集合時間をー夕方ーと設定していたため、部屋割りが決まった頃には外はもう暗闇の世界となり時計も8時を廻っていた。 『涼宮ハルヒのひなた荘 第3話 神様もう少しだけ』 部屋に荷物を置いてくるよう皆に促し、食堂に集まってもらった。 ちなみに…出征していた古泉も既に帰還している。 「実はそれ程苦労もしませんでした。どうやら“楽しみ”の気持ちが大きいんでしょうね」 と、帰還した際に超能力少年は大して必要でもない情報を残していったが… でもな、俺ですら楽しみにしてるんだぜ?あいつも楽しみに思うのは当然だろうよ。 食堂に集まった皆に対して、 「これからの食事は交代制でよろしく頼む」 そう伝えたところ、1名が不満の意思を表明した。精神的に大人な面々が集う中、その様に子供じみた態度をとるのは涼宮ハルヒであり、それが涼宮ハルヒたる所以だ。 「ちょっと!晩ご飯はまだ許せるとして朝ご飯を作る事になったら大変じゃない!ただでさえ1人で全員分用意するのは時間かかるのに!」 そりゃそうだろうな。俺だって1人で用意できるなどとも思っていないからな。 「ここには9人いるから3つのグループに分けてローテーションしようじゃないか。3人もいればなんとかなるだろ?」 「む…」 「そして一週間したらグループの編成も変えよう。みんなの交流も深まるぞ」 周りの顔を伺ってみるとどうやら満更でもないらしく、各々の仕草で肯定を表現していた。 「ところで今夜の食事はどうするの?今から作るたって買い出しもまだでしょうに」 「その件に関しては鶴屋さんだ」 待ってましたっさっ!と声を上げた鶴屋さんはハルヒのそばに近寄っていき不適に微笑んだ。 すまんなハルヒ。実は事前に打ち合わせ済みなんだ。 「ハルにゃんは何かを忘れてないかい?みんなが一堂に集まって最初にすることは何っさ!?」 鶴屋さんからの謎掛け。鶴屋さんの中ではどうやら人類が生まれたと同時にその習慣は始まっていたらしい。 「ええっと…」 いきなりの質問にハルヒも戸惑いの色を隠せないが、 「宴会っさ!」 “宴会”の響きで目を爛々と輝かせた。 宴会、と言うのも鶴屋さんから持ち掛けてきたことであり、俺はありがたい気持ちで終始頭があがらなかった。 先程までいた食堂は従業員専用のもので、少々狭い。そこで俺たちは宴会場へと赴き扉を開けたのだが… 目眩がした。 旅館と言うからにはほぼ全室が和室でありこの宴会場も例外ではない。 しかし、扉を開けた際に目に飛び込んできたのは執事服の新川さんと仲居の格好をした森さんだったのだ。 森さんはまだいい、というよりも最高です。髪はポニーテールを丸めた様に一つのお団子に纏められ白いうなじが見えていた。 問題は新川さんだ。和室に執事はどう見てもシュールだ。 ほれ見ろ。こんな事に慣れてない佐々木は軽くひいてるじゃねえか。 「おい、古泉」 「なんでしょうか?」 「新川さんはもっと別の格好ができなかったのか?森さんの衣装をチョイスした奴には大勲位菊花大綬章を贈呈したいくらいだがな」 森さんのうなじは本当にたまらなく、美しい。 「まあいいではないですか。執事服を着てこその新川さんですよ」 「…そうだな」 不毛な会話を切り上げる。女性陣は既に席に着いておりハルヒと佐々木の間が開いていたのでそこに座った。 「やあ、キョン。君の周囲は実にユニークな人ばかりだ。執事を見る機会など一生ないと思っていたよ」 「いや…あの人は特別だ。気にするな」 本当に機関とやらは何をしたいのかがわからない。 宴会の開催を言い出したのは鶴屋さんであり、その準備にはもちろん鶴屋家が絡んでいる。 つまり機関も一枚かむだろうとは予想できたはずだ。 俺はそこまで頭が回っておらず、新川さんと森さんの登場は完全に想定外だった。 橘は森さんの顔を直視できずに引きつった笑顔のまま佐々木の隣に着いている。 あの時に言った「森さんには二度と会いたくない」との事は本心だったんだろうな。 「ところで、キョン。こうして食事を共にするのも随分と久し振りだね。あまりの懐かしさにノスタルジーさえ感じるよ」 「そうだな。あの頃はほぼ毎日と言っていいほど昼飯は一緒だったからな」 と、俺も同意する。そして佐々木は嬉しそうに、特徴的な笑みをこぼし俺と向き合っていた。 「へえ?あんたたちってそんなに仲が良かったの」 俺の体は完全に佐々木の方を向いていたため背中の方から声が聞こえた。 その声の主、涼宮ハルヒはいつも俺と佐々木の会話に割り込んで来る気がする。 古泉に言わせれば俺と佐々木の関係について何かもやもやとした感情を抱いているらしいが… 「中三の頃は常に一緒にいたと言っても過言ではないな」 「へえ…そう、なんだ…」 ハルヒの語尾はどことなく落胆している感じがした。 「ま、そんなこと、どうでもいいけど」 その後、鶴屋さん…の文字通りの『鶴の一声』により宴会は始まった。 宴会と言うからにはお酒も準備されており新川さんが持ってきた日本酒を森さんがお酌して回っている。 橘がお酒を注いでもらってるとき、彼女は顔面蒼白になりながら手を震わせていた。 そして最後に森さんは、 「ごゆっくりどうぞ」 そう発した。ここからは森さんの表情は見えず、橘の… 「ひ、ヒィッ!」 なんて悲鳴から想像するしかなかった。いや、俺だって想像もしたくないがな。 次に佐々木が注いでもらっている。 「お前って酒飲めたのか?」 俺は疑問に思った事を言葉として発し、 「まあ、嗜む程度にはいけるつもりだよ」 の返答で一安心した。 佐々木にお酌し終えた森さんは俺の元へとやって来る。 「あの輩の監視はお任せ下さいませ」 あの『輩』とは橘の事だろう。森さんも未だに許せていないらしく少々怒気を帯びた声色だったので正直泣きそうになるが… でも俺は男として森さんに進言することにしよう。 「橘の事は俺に任せてくれませんか?あいつはもう俺たちには危害を加えないでしょうから」 そしてあの時に誘拐された朝比奈さんを見やる。今は鶴屋さんと食べさせ合いっこしてるらしい。 誘拐された時の記憶はなく、初対面時に橘とも簡単に打ち解けられていた。橘は気まずそうにしていたが。 「それに橘も女の子の1人なんですから」 なんて先日あった事を思い出しながらそう告げた。 「わかりました。でも何かあった場合には古泉にでも言ってくださいね」 そう言い残した森さんは隣のハルヒへと向かう。 ん?ハルヒにお酌だと? 「おいハルヒ。お前自分自身に禁酒法を制定してなかったか?」 「うるさいわね!別にいいじゃない!こんな日に盛り上がらないなんてどうかしてるわ!」 どうかしてるのはお前の頭じゃないのか?と言うのは心の中に留め、ハルヒの表情を盗み見る。メランコリックな雰囲気を醸し出してるのは気のせいではないはずだ。 「それに今日は飲みたい気分なんだから…」 「…そうか」 俺はそれ以上何も言わない。代わりに手にしているコップをハルヒのコップにカツンとぶつけ一気に呷った。 この室内にあった豪勢な飲食物は業績悪化が続く企業の利益曲線のようになくなっていった。 「アメリカの総司令官のワシントンは単身イタリアへと渡りキリスト教の布教を始めた。これが俗に言うフランス革命なんだ。この時に活躍した楠木正成が…」 飲食物の減少に貢献しているのは長門、ハルヒ、鶴屋さんであり給仕担当の森さんもせわしなさそうに動く。 「その後福沢諭吉は第2回三頭政治に参加。これによって四頭政治へと移行したわけだ。そこに黙っていられないアルタン=ハンはニュートンと結婚、後に…」 また橘はハルヒや鶴屋さんと気があったらしく今は3人で熱唱中だ。 「その後ローマではプランタジネット朝が成立。フランスのアンジュー伯爵がヘンリ2世として即位すると園芸農業を始め…」 喜緑さんは長門を見てにこにこと、古泉は新川さんと何か相談しているようだった。 さて、佐々木はどうしたかというと… 「フランスとアフガニスタンの冷戦が始まると人々は南北朝時代と称し…」 …酔っていた。 俺の記憶が正しいと佐々木はまだ一杯しか飲んでいない。なんでこんなに狂ってるんだ? 「キョン、聞いているのか?優秀な聞き手である君と会話できることは僕にも嬉しい事なんだ。なんたって君はいつも適度な場面で相槌をくれる。なのに、今日はどうしたんだい?」 どうかしてるのはお前の方だ、とは言わない。佐々木はまだ素面のつもりだろう。 だが口から発せられるものはデタラメ過ぎる歴史である。こんなのを真面目に拝聴してしまったら今後の学習に支障をきたすだろうね。 「俺は少し酔ってるみたいだ。お前も顔が紅くなってるぞ。水でも飲んで酔いを冷ませ」 佐々木は俺の手からコップを受け取り一気に飲んだ。すまんな。水じゃなくて日本酒だ。 「き、キョン…こ、これは、いったいどう言うことなんだ?普段は客観的にいられる自分もこ、今回ばかりは冷静に、い、い、いられそうにないよ」 「わかった。わかったからもう寝とけ」 そう言い放ち佐々木のおでこをポンッと押す。 「ふ、ふにゃぁ!」 すると佐々木らしからぬ声が発せられ畳へと倒れ込む。 俺は佐々木の頭を持ち上げて二つに折った座布団を差し込み、寝たことを確認すると1人でつまみながら再び飲み始めた。 どれくらいたっただろうか。宴会はそろそろお開きのようだ。 「もう限界です~」 と涙目になっている朝比奈さんに、 「まだまだイケるっさ!」 と鶴屋さんはブランデーを流し込もうとしている。 そんな2人を古泉は窘めそれぞれの部屋へ帰るように促した。 ベロンベロンに酔った橘は佐々木に抱き付いて夢の世界へと旅立っている。 喜緑さんは佐々木と橘に毛布を被せ、長門と共に自室に戻っていった。 寝ている2人を除けば、ここにいるのは俺とハルヒだけだ。 そして俺はハルヒのご相伴に預かっているわけだ。 「京子って良い娘よね。ちょっと抜けてるけど」 「ああ」 としか俺は言わない。 「佐々木さんも良い娘ね。ちょっとおかしいところもあるけど」 「そうだな」 としか俺は言えない。 「喜緑さんも…鶴屋さんも…」 「みくるちゃんも…有希も…」 「それから古泉君も」 「私の周りにはホント良い人ばかりね」 等とハルヒは感慨深げに語った。しかし肝心なことを忘れてないか? 「俺は?」 「あんたは除外」 ひでぇ。俺だってこの団の為にいろいろとやってきたんだぜ。ここで切り捨てられるのは酷すぎだろ。…だが雑用の身分としてはこんなの感じが心地良かったりする。 「ま、あんたには日頃の礼を兼ねてこのカシスオレンジを贈呈するわ」 とハルヒは唐突に飲みかけの缶酎ハイを突きつけてきた。 「ありがたく頂戴するよ」 俺は素直に受け取る。一瞬“間接キス”という単語が脳裏をよぎったが俺はそんな事は気にしないで一気に飲み干す。 そして先ほどよりハルヒの頬が赤らんでいるのは気のせいだろう、ということにした。 「そろそろ戻らないか?」 「そうね!明日の不思議探索に支障があるわ!」 と2人が共に立ち上がった時、ハルヒの足はよろめき俺の方へと倒れ込んできた。 女1人を受け止められないほど俺も柔じゃない。ハルヒの頭を胸で受け止め肩を支えた。 「お前、結構酔ってるじゃないか。そんなんで戻れるのかよ」 「ん、あっ、いや、だっ大丈夫よ!」 俺がそう訊ねるとハルヒは俺の胸からそう答えた。 大丈夫だとは言ってるが呂律も回ってないし、耳なんてさっきより真っ赤じゃねえか。 そこで俺はある作戦を決行するためにハルヒを解放し背を向けしゃがみ込んだ。 「おんぶだ。乗れ」 「なっ!」 ハルヒは抗議の音を上げるが…そのまま行って階段で転んだりしたら大変じゃねえか。 「いいから乗れ。ケガでもされちゃあ堪らん」 渋々といった感じに、 「わかったわよ…」 と了承し、俺に乗ってくる。 俺はハルヒの太股をしっかり掴み、ハルヒは腕を俺の首に絡ませていた。 背中の柔らかみは…気にしたら負けだと言い聞かせ、でもほんの少しだけ神経を向けながら歩き出す。 ハルヒの部屋に向かう間はお互いに無言だ。少々気恥ずかしい気がしないでもないが、ハルヒと一緒の…この心地良さが好きだ。 ハルヒを下ろし布団に寝かせ、毛布を被せる。疲労感を感じハルヒの横に腰を下ろした。 「…ありがと。あんた、私の良いヤツリストに加えてやっても良いわ」 「…そいつは光栄だね。有り難く加えられるとしよう」 ふんっ素直じゃないんだから…と呟きながらそっぽを向いたハルヒに背を向け自室に戻ろうと立ち上がった時だった。 「待って!」 制止の声と共に手首を掴まれ立ち上がれなかった。 「どうした?寝るまで一緒にいてやるか?」 なんて冗談半分で言ってみたが… 「うん、お願い…」 と肯定されてしまった。 俺は再び座り込みハルヒの顔を眺める格好になったが… 「そう言えばキョンと出会ってそろそろ一年ね」 心中でそうだな、と返答し俺は無言で続きを促した。 「あんたにはすごく助けられたわ」 どことなくハルヒらしくないな、と感じつつ俺はまだ無言でいた。 「わ、わたしね!あ、あんたの事が…」 …ここまで言われるとその後に続く言葉は予想できる。こいつの顔が真っ赤な事も俺の予想を確信へと変えた。 「わ、わたしは!あんたの事が…き、キョンの事が……」 そしてハルヒが最後の言葉を発する為に深呼吸した時、 『ピリリリリッ!』 俺の携帯が鳴り響いた。 「すまないが…その話はまた今度にしてくれないか?」 「あ、うん、別にいいわよ!」 ハルヒもすっかり意気消沈したらしい。心の底から本当にすまない、と感じつつ「また明日な。お休み」と言い残し部屋を出た。 携帯を確認してみるとどうやらメールのようだ。 アドレスは…知らないな。取り敢えず本文を見てみる。 『夜遅くまで婦女子の部屋で2人きりとは感心できませんね。喜緑でした』 とのことだった。 そして左の方で扉を開ける音が聞こえたのでそっちを見てみると… 長門有希が立っていた。「よ、よお長門。眠れないのか?」 「………別に」 そもそも長門や喜緑さんは眠るのだろうか。だとすると見てみたい気もするが… 「んじゃあトイレか?」 「………」 先ほどより俺を射抜く視線が強くなった気がする。女性にトイレの質問をする俺がどうかしてるわけだが… 「そ、それじゃあまた明日な」 「………」 長門は一つ頷くと部屋に戻っていった。あいつは何をしに廊下に出たんだ? END