約 2,287,823 件
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1069.html
俺は植物園の南側に小隊を集結させていた。とはいってももはや無事な生徒は10名しかいなかったため、 学校から補充要員として送られてきた生徒10名を加えて総勢20名となっている。 現在の状況はこうだ。植物園北側は古泉の小隊が押さえて、敵の侵入を阻止している。 エスパー戦闘経験のある古泉の度胸はとてもよく、敵の攻撃をものともせずに押さえ込んできた。 一方の南部が問題だ。鶴屋さん部隊も俺たちと同じく包囲状態になり、完全に孤立してしまっていた。 さらにここ2時間近く連絡すら取れない状態に陥っている。そのため、長門の支援砲撃ができない。 闇雲に撃ち込んで、間違って鶴屋さんたちに当たれば本末転倒だ。 それを救出するべく俺たちは森との境界線に陣取っているんだが、 向こうも南部への移動を阻止するように抵抗が激しく、鶴屋さんの救出どころか、植物園から森に侵入すらできていない。 何とか森との境界にある小さい丘に身を隠し、敵の銃撃を受けないようにしているだけである。 「ガンガン撃ち込んでくれ、長門!」 俺は膠着状態を打開するために、徹底的に砲撃をさせていた。向こうが壁を作って通さないというなら、 こっちは完膚無きまでそれを破壊しつくまでだ。しかし―― 「だめだね。まだこっちに向かってガンガン銃撃してくるよ」 「どこに潜んでいやがんだ。さっきからあれだけ撃ち込んでいるってのによ!」 国木田の言葉に俺は吐き捨てるように怒鳴った。ここに来て、砲弾を受けても効果なしなんて言うインチキを 始めやがったんじゃないだろうな? また、目前で4発の迫撃弾が着弾した。轟音と砂が顔に降りかかってきたので、あわてて頭を下げる。 「油断するとヘルメットごと頭を持って行かれるかもね」 となりで物騒なことをひょうひょうと言うのは国木田だ。どうしてこいつはこんなに度胸が据わっているんだ? 俺はずれたヘルメットをかぶり直しつつ、 「砲撃で効果がないってなら、別の方法を考えないと――ん?」 そこまで言って気がつく。先ほどの着弾以降、敵側からの銃撃がぴたりと収まっていた。 ようやくクリティカルヒットだったか? 「よし……一気に前進するぞ。ついてこい」 俺は慎重に腰をかがめながら立ち上がり、丘を登り始める。同時に小隊全員がそろそろと俺についてきたが…… 「……ぶっ!」 情けない声とともに、俺は丘の下に引きずりおろされた。だれかに服を強引に引っ張られたようだが―― 同時に丘の向こうで悲鳴が飛んできた。さらに、身体に銃弾がめり込むいやな音と血しぶきも一緒にだ。 あわてふためいた生徒たちが次々と丘の下に飛び込んでくる。 「キョン、大丈夫かい!?」 俺を丘の下に引きずりおろしたのは国木田だった。何を考えているんだと怒鳴りそうになった瞬間、 その意味を理解する。頭の上を飛び越えていく銃弾の荒らしと、丘の向こうから聞こえてくる絶望的なうめき声を聞けば、 どんなバカでも理解できるはずだ。 答えは簡単。またしても、敵の罠に引っかかったのだ。砲撃の着弾と同時に、銃撃をやめる。 やったと思った俺たちがのこのこ丘を越えてきた時点で狙い撃ち。こんな単純な手に引っかかるとはバカか俺は! 俺はそろりと丘から頭半分を出し、どうなっているのかを確認した。そこには血まみれになった生徒二人が 倒れている。一人は突っ伏したまま動かず、もう一人は痛みのあまりうめいて手をばたつかせていた。 あまりの悲惨さに思わず身を乗り出して手を出そうとするが、それを阻止すべくまた敵の銃撃が始まる。 数発が負傷した生徒に命中し、さらなる悲鳴を上げた。奴らには情ってモンがないのか!? 「助けないと!」 俺は飛び出して行こうとするが、またも国木田に制止させられる。 「冷静に! とにかく、こっちも撃ちまくって向こうの頭を下がらせるんだよ。その隙に救出するべきだね」 「く……わかった。すまんが頼む」 国木田の案を受け入れて、俺は生徒たちに一斉射撃を命じた。全員一気に立ち上がるとそこら中の茂みに向けて乱射を始める。 敵側の銃撃が収まったことも確認せずに俺は丘から身を乗り出し、負傷した生徒を丘の下に引きずりおろした。 同時に動かなかった生徒を小隊の一人が同じように引きずりおろす。 俺が助けた方は、名前も知らない女子生徒だった。全身の銃弾を浴びて、傷だらけどころかぐちゃぐちゃだ。 「ハルヒ! 負傷者だ! ひどい怪我なんだ! 誰かよこしてくれ!」 『わかった! 何人か向かわせるわ!』 無線連絡後、ハルヒ小隊の何人かが、その女子生徒を回収していった。すでに瀕死の状態だったが、 それでもまだ生きている以上、こんな弾の飛び交う場所に置いては置けなかった。 「くそっ……」 俺は丘の下で座り込み、ヘルメットを取ってため息をつく。やりきれなさすぎる。 鶴屋さんたちを助けたいがどうすることもできない。無理につっこめば、こっちの犠牲が増えるばかりだ。 救出する方が損害大では意味がない。どうすればいい? いっそ鶴屋さんたちが自力で戻るのをここで待つか? 包囲状態とはいえ、そのままでいるわけもないし、こっちに移動してきているはずだ。 だったら、それを向かえ入れた方が…… と、突然そばにいた生徒から無線機を渡される。古泉からの連絡らしい。 「なんだ古泉。今はおまえの話を聞くような気分じゃないぞ」 『それだけ言えるならまだ無事と言うことですね。安心しました』 全然安心できねえよ。あっちもこっちもめちゃくちゃで、頭がおかしくなりそうだ。 いや、普段の俺だったらとっくにおかしくなっているだろうよ。ちくしょう、一体どれだけ俺の頭の中をいじくりやがったんだ。 『それはさておき、そっちの様子はどうですか?』 「その前におまえの方を教えてくれ。聞く前にまず自分から言うもんだろうが」 自分でもそれは違うだろと自己つっこみをしてしまったが、古泉は苦笑しているような声で、 『こっちはなかなか派手な状態ですよ。北部一帯で防御戦を引いて何とか敵の植物園侵入を阻止していますが、 向こうも焦っているんでしょうか、携帯型のロケット弾ぽいものを持ち出してきました。 さっきからそれの雨あられですよ』 それでも防御線を守りきっているのか。本当にたいした奴だな。ハルヒの見る目も。 『そろそろ本題に移りましょうか。どうやら、そっちは未だに鶴屋さんのところにたどり着けていないようですね』 「ああ、腹立たしいがその通りだ。敵の抵抗が厳しい上に、砲撃が全くきかねぇ。これじゃどうしようもない。 正直、侵入はあきらめて鶴屋さんが戻ってくるのを待ったほうがいいかと考え中だ」 『それは待ちぼうけになるからやめた方が良いですよ』 なに? それはどういう意味だ? 『ここに来るまでの間に、涼宮さんと鶴屋さんの無線連絡を耳に挟みましてね、いえ、盗み聞きしたわけではありません。 すごい剣幕で話しているからいやでも耳に届いたんですよ』 ハルヒと鶴屋さんが言い争い? 全く想像ができないぞ。どういうことだ? 『完全に聞いたわけではありませんが、大体想像がつきます。鶴屋さんは、目的であったロケット弾発射地点を 制圧するまで撤退するつもりはありません。たとえ、誘い込むための罠であってもです』 「うそだろ……」 俺は唖然としてしまった。さらに古泉は続ける。 『気持ちはわからなくないですね。あなたの方は、逃げた敵の掃討だったので、 罠とわかればあっさりと撤退が可能です。実際にそうなりましたしね。しかし、鶴屋さんの方は違う。 たとえ、罠であってもここで発射地点を制圧しなければ、北高への攻撃は続行されるでしょう。 結局はまた制圧に向かうことになる。それでは同じ事の繰り返しです。ならば、どんな犠牲を払ってでもとね。 できることなら犠牲を出したくないという涼宮さんとは完全に対立するでしょう』 ハルヒは自分で何でもやりたがるタイプだ。間違っても自分の作戦で他人が死にまくっても平然としているような奴じゃない。 そんなことになるくらいなら、ハルヒ自身がやろうとするだろう。今思えば、植物園にハルヒ小隊を置くと 頑固に言い張ったのも、指揮官が前線に出るなんてという考えと、できるなら自分が戦っていたいという考えの ぎりぎりの妥協点だったかもな。 そして、鶴屋さん。正直なところ、鶴屋さんの人物像はつかみづらい。すごい人であるという認識程度だ。 今回だって包囲状態に陥ってもなお発射地点制圧をすると強弁できるなんて常人には―― 待てよ? ひょっとして鶴屋さんは最初からこれが罠であるとわかっていたのか? 『僕もそう思いますね。鶴屋さんは罠の可能性を強く疑っていたのではないでしょうか。 だからこそ、たとえ罠だとはっきりしても目的を変更するつもりはない。そう言うことでしょう。 また、あの時、罠である可能性をしてきた僕の意見に対して何も言わなかったのは、 罠であろうがなかろうが関係ないということだったのでは』 鶴屋さん……あなたって人はっ……どこまで俺たちの上を行くつもりなんですか? しかし、そうなると未だに鶴屋さんが帰還しないと言うことは、制圧もできていないと言うことだ。 『そうでしょうね。だからこそ、あなたには鶴屋さんのところへ向かってほしいんです。 救出ではなく加勢としてね』 古泉の言葉で俺の腹は決まった。何としてでもここを突破する。それしかない。だが、どうすりゃいい? 『確証はありませんが、敵の動きは涼宮さんの性格を強く意識しているように思えます。 今回の待ち伏せを考えてみてください。敵は北山公園で待ちかまえると同時に、遠距離から北高を攻撃しました。 この場合、我々にはいろいろ選択肢があります。たとえば、こちらの砲撃で徹底的に北山公園南部を砲撃する―― これは長門さんが効果が薄いと言っていましたが。また、校庭にヘリコプターもありましたから、 あれで発射地点を確認し、少数部隊でピンポイントで叩く。砲撃に耐えながら、学校に完全に立てこもって 籠城という手段もありますね。考えればもっといろいろあるかと。 しかし、涼宮さんの性格上、確実に北山公園全土制圧を一番に考えるでしょう。 やられっぱなしなんてもっとも嫌がりますし、ピンポイント攻撃だと相手が逃げ回って延々と追いかけ回すことに なりかねません』 また頭上を飛んでいく銃弾が激しくなってきた―― 『このようにたくさんの可能性がありながら、敵は誘い込んで待ち伏せという手段をとっていました。 完全にこちらの動きを読んでね。涼宮さんの性格を知っているからこそ、迷わずにその手を採用したんです。 そして、自らが決定した作戦のせいでたくさんの犠牲者を出したことになれば、 涼宮さんに与えるダメージは半端ではありません』 「ハルヒの考えを読んでいたとは限らないだろ。敵はこれだけの世界を簡単に作り出しちまうんだ。 なら、俺たちは常に監視されていて、こっちの動きが筒抜けの可能性だってある」 『ええもちろんです。しかし、たとえそうであっても敵の目的が涼宮さんであることには違いありません。 それを最優先に動いてくるはずです』 なるほどな。なら敵はロケット弾発射地点を死守したりすることよりも、ハルヒに精神的苦痛を与えることを 最優先に考えているって事か。 『話が早くて助かります。敵の動きと涼宮さんの考えと照らし合わせれば、おのずと敵の動きも読めるのではないでしょうか。 今言えることはそれくらいですが――おっと、ちょっとこっちも活気づいてきてみたいですね。 あとはお任せします。ではまた』 そこまでで通信は終了。俺はサンキュと無線を持った生徒にそれを返す。 さて、どうするか。敵は砲撃ものともせずに、俺たちの鶴屋さん小隊との合流を阻んでいる。そこまで粘る理由は? そりゃ、包囲状態にした敵――鶴屋さんたちと増援の俺たちの合流を許すわけがない。いや待て、その考えじゃダメだ。 こうやって、俺たちが何もできずにただ時間がたっていることにハルヒは相当のいらだちを覚えるはずだ。 だから、こうやって俺たちの足止めを行っている……よし、この考えで良い。 そうなると、敵はできるだけ鶴屋さんの孤立状態に陥らせることに専念するはず。では、どうする? 「……ちっ」 結局、相手の考えを読んだところで何も変わらねぇ。敵の目的と俺たちの目的が完全にぶつかっているからだ。 なら、ここからの鶴屋さんの場所に向かうのはあきらめて、数名で北山公園のすぐ南にある光陽園学院に行き、 そこから北上して行くか? いや、敵は信じられないことを平然とやっているんだ。その動きを読まれて、 すぐに防御線が築いてしまう恐れもある。 だったら目的を変更してやればいい。俺の目的は鶴屋さんへの加勢なんだから……加勢に行かない? ふざけんな。 そんなまねができてたまるか。じゃあ、いっそ南部を手当たり次第砲撃するように長門に指示するとか……鶴屋さんを殺す気か? ん、ちょっと待てよ? ハルヒは全員の植物園までの撤退を望んでいるという。だが、鶴屋さんはそれを拒否して、 未だに発射地点制圧を行っているんだ。ならそれは敵にとって想定外の事態じゃないか? 鶴屋さんの後退を阻止するのではなく、発射地点を防御しなけりゃならないからな。 でも、発射地点は敵にとってさほど重要なものではないと思える。俺たちをここに誘い込むだけの利用価値のはず。 さっさと鶴屋さんたちに破壊させて、包囲状態にでも何でも置けばいい。だが、確信を持って言えるが、 鶴屋さんたちはまだ発射地点を制圧できていない。何の証拠もないが、無線連絡が取れなくても、 あの人なら何らかの手段で俺たちにそれを伝えるはずだ。絶対に。 俺はふとあることを思いついて、無線機を取る。話す相手は朝比奈さんだ。場違いな相手じゃないかって? だが、俺たちの中で一番鶴屋さんのことを知っているのは、朝比奈さんであることに間違いないだろ? 『キョンくん! 大丈夫なんですかぁ!?』 焦りきったマイエンジェルの声に俺はいくらかの癒しパワーを受け取ってから、 「ええ。何とかまだ生きていますよ。ところでちょっとお話が」 俺は今の状況を端的に話す。俺が知りたいのは鶴屋さんならどうするのかとか、 鶴屋さんならどのくらいできるだろうとかだ。 朝比奈さんはう~んといつも以上に悩みながら、 『そうですねぇ……わたしが言えるのは鶴屋さんは本当にすごい人です。だから、そんな危ない状況でも 簡単に抜けられちゃうんじゃないかなぁって思うんです。でも、何でこんなに時間が……』 今の会話に俺は何かを感じた。どこだ? すごい人の部分か? そんなことは俺もわかっている。 簡単に抜けられちゃう……ここだ。そうだ、包囲状態でも攻撃を続ける鶴屋さんなら 植物園までの後退は簡単にできるんじゃないか? だからこそ、敵は鶴屋さんを引き留めるために 発射地点を死守する必要がある。それなら、理屈が合うってもんだ。 『でもぉ……ひょっとしたら……』 「朝比奈さん」 まだ独白のように続ける朝比奈さんの言葉を遮り、 「ありがとうございます。おかげで考えがまとまりましたよ。すごく助かりました」 『え……えっ?』 何が何やらわからない朝比奈さんがかわいらしすぎてもだえそうになるが、ここは我慢だ。それどころではないからな。 「じゃあ、また学校で会いましょう。戻ります」 『待って!』 突然、朝比奈さんからせっぱ詰まった声が飛ぶ。 『鶴屋さん……いえ、みんな無事なんですか? ここからじゃ、一体何が起きているのかさっぱりわからなくて……』 今にも泣き出しそうな――いや、もう涙ぐんでいるのかもしれない声が無線機から漏れてきた。 俺はどう答えるべきかしばし考えた後、 「大丈夫ですよ。SOS団はまだ健在です。鶴屋さんもきっとぴんぴんしていますよ』 俺は事実だけを言った。でも、谷口は死んだとは言えなかった。 朝比奈さんは俺の言葉にほっとしたのか、 『がんばってください。また学校で』 そう言って無線を終了した。すみません、朝比奈さん。 そこに国木田が丘の下に滑るように降りてきて、 「で、キョン。どうするのさ」 「今はこのままだ。しばらくしたら絶対に変化が起きる。そしたら、こっちも動くぞ」 国木田は俺の自信めいた口調に疑問符を浮かべながらも、また丘の上の方に戻っていった。 これから起きることは二つだ。まず第一に鶴屋さんが発射地点を制圧する。そうなった場合、 あらゆる手段を使ってでも、俺たちにそれを知らせてくるだろう。次に鶴屋さんたちが全滅する――考えたくもないが。 だが、この場合は敵が発射地点の防御を行わなくなることから、植物園に対する攻撃の動きが変化するはずだ。 今はどちらかが起きるのを待つ。これでいい。 ◇◇◇◇ 変化は意外に早く起きた。俺が待ち始めてから15分後、一発のロケット弾が北山公園南部から発射されたという 長門からの無線連絡が入ったのだ。同じ頃に、南部でひときわ大きい爆発音がとどろいている。 ただし、発射されたロケット弾は 『こちらは攻撃を受けていない。確認した限りでは、北山公園から東側に向けて発射された。今までとは明らかに違う』 以上、長門からの報告。もう俺は即座に確信し、ハルヒへと連絡する。 「おい、長門からの話は聞いたか?」 『聞いたわよ! これは鶴屋さんからの敵制圧の合図に違いないわ! さっすがSOS団名誉顧問だけのことはあるわね!』 「ああ、俺もそう思う。で、俺はどうすりゃいい?」 『とにかく、あんたがぼさっとしている間に向こうはけが人とかでているに違いないわ。 とっとと助けに行きなさい! 以上、命令終わり!』 やれやれポジティブ思考が復活しつつあるようだ。でも、その方がハルヒらしくて安心できるけどな。 「さてと……」 敵はしつこく俺たちに向けて銃撃を続けている。これからどうするか。ハルヒは助けに行けと言った。 なら、敵はそれを阻止するように動くのか? いや待て、それでは今までと大して変わらない。 もっとも大きな精神的ダメージを与える方法は? 俺は結論を出したとたん、笑い出しそうになった。ひょっとしたら初めて敵を出し抜けるかもしれないと思ったからな。 また、俺は無線で長門に連絡し、俺たちの動きを阻止している敵にめがけて、10発ほど砲撃を行うように指示する。 そして、数分後的確な砲撃が俺たちの目前に降り注いだ。今まで以上の轟音に俺は耳を押さえて、鼓膜を守った。 着弾音の余韻が通り過ぎると、辺りに静寂が戻ったことを【確認】する。 「また罠かな?」 国木田は警戒心を表していたが、俺はそれを無視し、一人で丘の上に立ち上がった。 「キョン! 何をやって……え?」 抗議の声を止めたところを見ると国木田も気がついたらしい。まったく弾丸は飛んでこないことに。 俺はそのまま小隊の生徒たちを待機させたまま一人じりじりと前進し、森の中に数歩はいる。砲撃のすさまじさを 表すように地面が穴だらけになっていた。しかし、敵は一人もいない。 確認完了だ。俺は右手を挙げて、小隊を前進させて森に入らせた。 ◇◇◇◇ 「やあ……キョンくんひさしぶり……でも、ダメじゃないか……敵は……」 鶴屋さんの力ない声が耳に流れ込んでくる。ほとんどかすれ声だった。だが、言おうとしていることはわかる。 同時に俺の背後ですさまじい銃撃戦が始まった。俺たちが来た道から背後を突くように、 敵が襲ってきたからだ。だが、この攻撃をわかっていた俺たちにとって、それは背後からの攻撃にはならない。 完全に迎え撃つ準備はできている。 しばらく激戦が続いたが、やがて敵は長門の砲撃を受けて下がっていった。 「すごいね、キョン。何でわかったのさ?」 「俺だって学習能力ぐらいはあるんだよ」 国木田の指摘を軽く流して、俺は周囲を見回す。鶴屋さんがいたのはやはりロケット弾発射地点だった。 すっぽりと森に穴が開いたような場所に一台のトラックが置かれている。その上には ロケット弾を載せるための鉄レールを平行に並べ柵状にした棚が乗っていた。いわゆるカチューシャロケットと言われる 多連装ロケットランチャーだ。こんなもんで俺たちを攻撃していたとはな。 敵の動きは大体読めていた。ハルヒは鶴屋さんたちを助けに行けと言った。そして、敵はすんなりと鶴屋さんのもとに 俺たちを招き入れた。理由は簡単。今度は俺たちを包囲状態にするためだ。北山公園に俺たちを誘い込んだのと 同じ手法である。ハルヒが決定して、そのせいで俺たちが大損害、となればまたまたハルヒに与えるダメージはでかいと 踏んだのだろう。だがな、甘いんだよ。そうそう何度も同じ手が通用してたまるか。 だが、予想外なことも一つだけあった。最悪なものだ。 「ふふっ……そっかぁ……キョンくんも気がついたんだねっ……」 鶴屋さんは息も絶え絶え、寄りかかるように座っている木の根元には血だまりができようとしていた。 周りにいる鶴屋さん小隊の生徒4人も不安げな表情で見つめている。 そう、鶴屋さんは銃撃を受けて今にも息絶えようとしている。くそったれ! やっとここまで来れたってのに! 「鶴屋さん! ようやく来れたんです。早く学校に戻りましょう!」 俺は鶴屋さんを背負おうと彼女の肩に手をかけるが、そばにいた鶴屋さん小隊の生徒から制止される。 衛生兵の役割を担っていた彼は、動かせない。動かせば死ぬだけと沈痛な口調で言った。 「そんな……やっと目的を果たせたんだ! 連れて帰らないと! 大体、おまえら何で指揮官を守ってねえんだよ…… ってそうじゃねえだろ! くそっ! 何言ってんだ俺は!」 あまりの言いように、自分自身に怒りが爆発する。鶴屋さんは自分の配下の生徒たちを力なく見回し、 「責めないでよ……みんな必死にやったさ。無能なのはあたし自身。結局、守れたのはたったの四人だけっさ……」 鶴屋さん小隊の人間から聞いたことだが、植物園から南部に小隊が入ってすぐに攻撃を受けたらしい。 その後、包囲状態に置かれようとしたが、先手を打った鶴屋さんが小隊をさらに3~4人に分けて、 北山公園南部一帯に散らばせた。そのため、敵はその散らばった小隊を追いかけ回し、 鶴屋さんたちはロケット弾発射地点を探し回る。まるで鬼ごっこ+缶蹴りだ。 鶴屋さんたちは空き缶=カチューシャロケットを探し続け、ついに目的を果たした。 目的を果たしたと同時に、散らばった生徒たちは植物園に戻るように指示していたらしいが、 ハルヒに確認した限りでは誰も戻ってはいない。ここにいる生徒以外は全滅したと言うことだろう。 さらに鶴屋さんまでもが…… また、俺の背後で銃撃戦が始まる。しつこい連中だ。いい加減、あきらめろ! 「キョン、このままだとまた包囲されるよ」 「んなことは言われんでもわかるさ……!」 国木田の言葉に、俺は焦燥感だけが募る。このまま鶴屋さんをおいておけるわけがない ――今までさんざん【仲間】を置き去りにしてきただろ? わかっているさそんなことは……! 「行ってほしいなっ……わざわざあたしをえさにしている敵の思惑に乗ってほしくないにょろよっ……」 「わかっています……わかっているんです……!」 どうしても踏ん切りがつかない。だが、それでもつけなければならない。 俺は絶望的な思いで言う。 「つ、鶴屋さんっ……。朝比奈さんに……朝比奈さんに伝えることは……!」 のどが悲鳴を上げるほどに力んで言葉を出しているのに、それ以上口を開くことができなかった。 でも、鶴屋さんはそれを待っていたのか、にっと笑顔を浮かべて、 「悪いけどみくるにはだまっておいてくれないかなっ……きっと気絶なんかしちゃってみんなに迷惑かけちゃうかも」 「わかりました……!」 「あと、あたしの仲間も連れて行ってっ……最期の最期までバカみたいにあたしについてきてくれた大切な仲間っさ……」 「もちろんです……!」 もうここまで来ると俺は鶴屋さんの顔を見ることすらできなかった。受け入れられない現実を拒否したいのか、 耳すら閉じたくなる。 「じゃあキョンくん!」 突然、かけられたいつもの鶴屋さんの声。俺ははっといつのまにか下がっていた頭を上げると、 普段と変わらない笑顔を浮かべ、俺の方にぐっと腕を突き出した鶴屋さんがいた。 「また学校で!」 その言葉と同時に、鶴屋さんは全身の力が抜け落ち、頭も完全にたれた。元気よくつきだしていた腕も、 力を失って地面に向かって落下する。 すいません鶴屋さん。絶対に元の世界に戻ってまたいつものように騒ぎましょう。でも、ここにいて、 果敢に戦い抜いた今のあなたのことも絶対に忘れません……! 俺は目に浮かんでいた涙をぬぐい、周りにいた鶴屋さん小隊の残りを見回す。皆一様に指揮官の死に涙していた。 これは絶対に作られた感情ではなく、本人の本来の意志によるものだと確信できるほどに悲しんでいるのがわかった。 「これから、おまえらは俺の指揮下に入る。問題ないな?」 4人とも、潤んだ目をしっかりと俺に向けて頷く。 国木田たちと敵の戦闘はますます激しくなりつつあった。もはや一刻の猶予もない。 俺は無線機を持った生徒を呼びつけ、ハルヒに連絡する。 「おいハルヒ、聞こえるか?」 『何よキョン! 鶴屋さんたちのところについたなら、早いところ戻ってきなさい! 当然、鶴屋さんたちもつれてね! 30分以内じゃないと罰金――』 「鶴屋さんは死んだ」 俺の言葉でハルヒは絶句した。叫びたいのを必死にこらえるようなうめきと、何と言って良いのかわからないという 不安定な吐息が無線から流れ込んでくる。 「いいかハルヒ。これから俺が言うことに黙って従え。いいな?」 『…………』 「いますぐ、古泉たちをつれて北高に戻れ。俺たちが戻るのを待つ必要はない」 この言葉に激高したのか、ハルヒは砲弾の着弾音以上の声で、 『バ、バカなこと言うんじゃないわよ! いい!? あんたたちが戻るまで死んでもここを死守するから! 絶対に帰ってくるのよ! 絶対絶対絶対よ! 見捨てるなんて絶対にしないから……帰ってきて! 絶対!』 「良いかよく聞けハルヒ!」 俺の怒鳴り口調にびびったのか、錯乱状態だったハルヒの口が止まる。 「冷静に聞けよ。今、俺たちはまた敵に包囲されようとしているんだ。敵の狙いは、植物園に俺たちが戻るのを阻止すること。 今おまえが俺たちを放って学校に戻るなんて、敵は頭の片隅にすらねえはずだ」 『あんたたちはどうするつもりよ! 玉砕なんて死んでも許さないんだからね!』 「俺たちはこのまま北山公園を南下して、光陽園学院前に出る。そして、学校東側から戻る。 安心しろ。絶対に学校に戻るから心配するな」 ハルヒはしばらくぶつぶつと聴き取れない抗議めいたことを言っていたようだが、やがて、 『……わ、わかったわ……絶対に帰ってきなさいよ!』 「当然だ」 話し合いがまとまったので、俺は無線を終了しようとするが、 『待ってキョン!』 ハルヒがなにやら確認したいらしい。しかし、なかなか言い出せないのか、しばらくうなったような声を上げていたが、 『鶴屋さん……鶴屋さんはどうするの……?』 「……俺の口からいわせないでくれよ。すまん」 『……ゴメン』 そこで無線が切られた。おっと一つ言うことを忘れていた。 『……なに? まだなんかあるの?』 悪い知らせと思ったのか、びくびくとした様子が手に取るようにわかった。 「すまないが、朝比奈さんには鶴屋さんのことは言わないでくれるか? 鶴屋さんからの遺言なんだ。 万一、聞かれたときは――あー、足をくじいたから近くの民家で、このばかげた戦争が終わるまで隠れているって言ってくれ」 『了解……』 そこで今度こそ無線終了。さて、 「よし、このまま南下して学校に帰るぞ! ついてこい!」 俺の空元気な声が飛んだ。 ~~その4へ~~
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/642.html
涼宮ハルヒの出会い プロローグ 涼宮ハルヒの出会い 第1章
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/5699.html
中3の冬 受験勉強の息抜きにふと書店に寄ってみた。そこで一冊の本をみつけた 「『涼宮ハルヒの憂鬱』・・・?」 なぜこの本が気になったのかというと、この本の主人公と俺は同じあだ名だったからだ。妙な近親感ってやつ?しかも国木田って苗字のヤツも出てるし・・・ 感想はというとなかなかおもしろかった。そしてこの本は気晴らしに読んだ一冊で終わるはずだった。 おめでたいことに高校に合格した。国木田も合格した。これからどんな高校生活が始まるのかという期待と不安に俺も例外なく襲われる。 入学式が終わってクラスでのホームルーム、担任の岡部は顧問をつとめるハンドボール部について語った。そして出席番号順に自己紹介。俺はあたりさわりのないことを言ってすぐに自己紹介を終えた。そして俺の後ろの女子の番。 ハルヒ「東中出身、涼宮ハルヒ。ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未 来人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上」 なんだと!?涼宮ハルヒ?そして自己紹介の内容はおぼろげな記憶だがあの本と同じ。どうなっているんだ? さっきしまったクラス名簿を引っ張り出す。朝倉涼子、国木田、俺、涼宮ハルヒ、谷口、これは偶然なのか? クラス中がハルヒの自己紹介にあっけにとられている、俺はあっけにとられるどころでは済まされなかった 「なぁ、あの自己紹介すごかったな」 俺はいろいろ探りをいれるためにハルヒに話しかけた。 ハルヒ「あんた宇宙人なの?」 「違うけどさ・・・」 ハルヒ「だったら話かけないで」 そうはいかないさ、あの本は俺が小さいころに忘れてしまったサンタクロースからのプレゼントかもしれないんだからな 「もしかして中学の校庭に奇妙な絵かいた?」 ハルヒ「誰からきいたの?」 「中学のときウワサできいた」 ハルヒ「本当よ」 ビンゴ、ということは・・・ 「教室の机全部廊下にだしたのもお前か?校舎の屋上に星マークをペンキで描いたのもお前か?学校中に変なお札を貼ったのもお前か?」 ハルヒ「そ、そうよ・・・だからそんなに迫らないで!」 そうはいかねぇ、まだまだ聞きたいことがあんだよ 「付き合う男はみんな振ったんだろ?普通の人間だからって理由で」 ハルヒ「あ~もうそうよそうよ!わかったならこれ以上質問しないで!」 その時教室に岡部が入ってきた。あとはあとで聞こう。 俺は確信した。おそらくあの本は俺の高校生活を著したものだと。すげぇよ、あれが全部本当なら俺は高校生活は薔薇色じゃねぇか。 休み時間もハルヒを捕まえていろんなことを聞いた 「髪型毎日変えてんだろ?」 ハルヒ「・・・・・・、あんた以前どっかであったことある?」 「いや、今日がはじめてだ。あと着替えは場所をきにしろよ」 ハルヒ「もう!なんなのよ!アンタってストーカーなの?気持ち悪い!」 ハルヒは走ってどっかいっちまった、不思議探索か・・・? ハルヒはすごく驚いていた。俺はやりすぎたと思ってはいるが、まるで人の心が見える能力を手に入れたようで興奮がとまらない。 今日はあれっきりハルヒは戻ってこない。そして昼休みの時間 谷口「おい、キョン。お前どんな魔法を使ったんだ?」 「魔法って何だ?てかもうあだ名で呼んでんのかよ」 谷口もあの本のまま、そういえば俺は思いっきりあの本のシナリオを無視しちまっている。 まぁ大丈夫だろ、こんなにも共通点が多いんだからちょっとくらい・・・ 谷口「俺、あんなに怖気づいたハルヒなんて初めて見たぞ。お前なんていったんだ?」 傍から見たら変態な質問を浴びせていたなんていえねぇよな。 谷口「驚天動地だ」 国木田「昔からキョンは変な性癖があるからねぇ」 ずいぶんな言い様だな 朝倉「あたしも聞きたいな」 でた、殺人宇宙メカ。ちょっと遊んでみるか 朝倉「入学初日からいざこざがあるのは気持ちよくないわよ」 「それより宇宙人っていると思うか?もしかしたら身近にいるかもしれない」 朝倉「・・・・、なんの話?」 この反応おそらく・・・ 「いや、あの自己紹介聞いちゃったからさ」 朝倉「そう、まぁとにかくみんな仲良くいきましょうね」 そういうと朝倉は笑顔で向こうにいった 次の日からハルヒは休み時間になるとすぐ教室から出て行き、放課後もすぐ教室を出るようになった。予定通り。 GWが終わって少し経ったある日、席替えをした。ハルヒは俺の後ろの席ではない。さすがにあの本どおりにはいかないか。仕方ないこっちから行こうか。 「部活作んないのか?」 ハルヒ「・・・・なんでよ?」 「全部の部活に仮入部してもしっくり来るものがないんだろ?だったら自分で作っちまえよ」 ハルヒ「・・・・、それもそうね」 「俺も手伝うからさ」 ハルヒ「別にあんたの手伝いなんていらないわ」 「一人で部員集めから書類提出までやれんのか?」 ハルヒ「・・・・・、わかったわよ」 「じゃ~俺は書類やるから、部員集めと部室確保よろしくな」 ハルヒ「なんで勝手に役割決めるのよ?」 「部員と部室は当てがあるんだろ?」 ハルヒ「・・・・・・・」 よし、とりあえず順調だ 終業のチャイムがなる。ハルヒが俺の前にやってきた ハルヒ「ちょっと来なさい・・・」 「部室に行くんだろ?」 ハルヒ「そうよ・・・」 そして文芸部の前にやってきた。ハルヒはノックもせずに入った。そして予定通り窓際にはパイプ椅子に腰掛けて分厚いハードカバーを読む少女。 ハルヒ「ここが部室よ、あの子は唯一の文芸部員だけど本さえ読めれば別にいいって」 長門「長門有希」 窓際の少女はわずかに顔をあげ、表情なくそう言った。 「長門さんとやらよろしくな」 長門「よろしく」 俺はハルヒを振り返って 「部員はあと2人は必要だな、心当たりあるんだろ?」 ハルヒ「・・・・・」 次の日、部室にいくと長門だけがいて昨日と同じ姿勢で本を読んでいた。 「何を読んでいるんだ?」 長門は返事のかわりにハードカバーの背表紙をみせた。SFの小説らしい 「面白い?」 長門「ユニーク」 「どこらへんが?」 長門「ぜんぶ」 「本が好きなんだな」 長門「わりと」 「そうか・・・」 長門「・・・・」 「長門は宇宙人なんだろ?」 長門「・・・・・・、いきなり何をいっているの?」 「対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース」 長門「!!あなたは何者?まったくのノーマークだったはず」 ビンゴ 「俺は普通の高校生さ、ハルヒとその周辺の状況は結構知っているけどな」 すげぇ、俺は今宇宙人の一枚上手にいる。これが幼いころに捨てちまった非日常か 長門「・・・・・」 ハルヒ「ごめん、少し遅れちゃった。ちょっと捕まえるのに手間取っちゃって」 予定通りハルヒの後ろには可憐な美少女がいた、朝比奈さんだな みくる「なんなんですかー?ここどこですか、どうしてあたし連れてこられたんですか?」 実物もかなりかわいいな ハルヒ「静かにして」 みくる「・・・はい」 ハルヒ「紹介すr「朝比奈みくるさんだろ?」 みくる「ふぇ?どうして名前を・・・」 ハルヒ「そうよ、連れてきた理由とかはもう知ってんでしょ?」 「ああ、確かに年上なのにロリっぽくかわいくて胸が大きい。萌えが重要なんだろ?」 みくる「な、なんでそんなことまで・・・・」 ハルヒ「みくるちゃんゴメンね、あいつすごく変なヤツなの。あんなのと一緒にいたくななら無理に入らなくてもいいわ」 みくる「・・・・・」 視線の先には長門がいた みくる「そっか・・・私この部活に入ります」 ハルヒ「そ、そう?みくるちゃんなら殺伐とした雰囲気を和らげてくれるわ、よろしくね」 みくる「よろしくお願いします」 ハルヒ「あと部活名考えてきたわ」 「・・・・・・」 ハルヒ「今回は先に言わないのね」 「団長に花をもたせてやってるのさ」 ハルヒ「SOS団よ。世界を大いに盛り上げるための涼宮ハルヒの団」 みくる「ほ~」パチパチパチ 長門「・・・・・・」 ハルヒ「じゃ~明日からちゃんときてよね。今日は解散」 そう言ってハルヒは帰った 部室にはまだ俺と朝比奈さんと長門がいる 「朝比奈さん」 みくる「は、はいっ」ビクッ 「朝比奈さんは未来人ですよね?」 みくる「ふぇ!?い、いきなり何を・・・」 「ハルヒの監視のためにこの時代に派遣されているんですよね?」 みくる「あ、いやそのぉ・・・」 「あと胸に星型のほくろがあるはずです。確かめてみてください」 みくる「ふぇぇぇぇ!!!私、男の人に体見せたことないのに!!!」 「質問の答えは話したくなったらでいいですよ、それではさようなら」 そして俺は部室を出た。 キョンが帰ったあとの部室 長門「朝比奈みくる、これは予定された未来?」 みくる「いえ、しかし涼宮さんによる改変と考えれば納得がいくと思います」 長門「これは涼宮ハルヒが望んでいない事象、あの不確定要素が存在は涼宮ハルヒによるものではない」 みくる「でも、私たちのことを知っていましたよ?私たちと同じ異能力者と考えるのが適切かと・・・」 長門「涼宮ハルヒはあの不確定要素を快く思っていない、それでも存在している」 みくる「・・・・・、情報統合思念体はどう解釈しているのですか?」 長門「不確定要素はまったく因果関係がなく発生した。時間軸が異なる世界からの干渉の可能性も視野にいれている。情報統合思念体は今は様子をみるにとどまっている」 みくる「私たちも今は待機なようです」 長門「私と朝比奈みくるは不確定要素と接触して情報を引き出すべき」 そして部活は本格的に始まった。一応筋書き通りに進んでいる。パソコンを奪い取ったり、サイトを立ち上げたり・・・・そういえばサイト立ち上げのとき長門から本貸してもらってないな 「長門、俺に話さなければならないこととかないか?」 長門「あなたはすべて知っているはず。何も話すことはない」 なるほど・・・ ハルヒと朝比奈さんはちゃんとバニーガールでビラ配りもした。やっぱ実物は目にいい。 朝比奈さんはビラ配りの次の日学校を休んだ。 ハルヒ「みくるちゃんは?」 「今日は休みだ」 ハルヒ「そう・・・」 「新しい衣装か?」 ハルヒ「そうよ、みくるちゃんは本当にかわいいからね」 そういえばハルヒは朝比奈さんがいないとすごくつまんなそうだ ハルヒ「謎の転校生とか来ればいいのに・・・」 待望の転校生が来た 朝の教室はその話題で持ちきりだった 「今の時期にくる転校生なんて謎だな」 ハルヒ「そうね、同じクラスじゃないけど」 「もう転校生見たか?1年9組で古泉一樹って男子らしいぞ」 ハルヒ「へぇ~、あとで見にいくわ」 ついに超能力者が入部か・・・ その日の部活、朝比奈さんは復活した。今は俺が持ってきたオセロで俺と対戦している。 長門は相変わらず読書。 みくる「涼宮さん遅いですね。」 「転校生でも連れてくるのでしょう」 みくる「転校生ですか?」 「1年9組に来たようです、時期が時期ですしハルヒが興味を示したようで・・・」 みくる「へぇ、そういえばキョン君はどうして人の心とかいろいろ知っているんですか?」 「俺は一回この日々を見たんですよ。多少のズレはありますけどね」 今の俺かっこよくきまってたよな? みくる「どこで見たんですか?」 「禁則事項です」 みくる「そうですか・・・あ、また負けちゃいました・・・」 「オセロはとりあえずはさむだけでは勝てませんよ、二手三手先も読まないと」 みくる「ふぇ~奥が深いんですね」 「慣れればきっと勝てるようになりますよ」 視線を感じて振り返ると長門が盤をじっと見ていた 「長門もやるか?」 長門は首をわずかに縦にふった。 「ルールはわかるか?」 長門は首をわずかに横にふった 「じゃ~教えてやるぞ」 3人でオセロをしているとハルヒが転校生を連れてやってきた ハルヒ「転校生連れてきたわよ。1年9組に今日やってきたの、名前は・・・」 「古泉一樹くんだね?」 古泉「おや?もうご存知でしたか」 ハルヒ「古泉くん、アイツはめっちゃ変なヤツだから気をつけてね」 古泉「はぁ・・・ところでこの部活に入るのはいいのですが何をやる部活なんですか?」 ハルヒ「宇宙人や未来人や超能力者を見つけ出して一緒にあそぶのよ」 みくる「!!」 長門「!」 おもしろい光景だ 古泉「はぁ、なるほど。いいでしょう、僕も入部します」 ハルヒ「あの変なヤツがキョンで、あのかわいい子がみくるちゃん、あの眼鏡っこが有希」 古泉「みなさんよろしくお願いします。」 ハルヒは学校を案内してあげるといって古泉を連れ出し、朝比奈さんは用事があるといって先に帰ってしまった。部室には俺と長門だけ 長門はずっと本を読んでいて一緒にオセロをやる雰囲気ではない。俺も帰ることにした。 「じゃあな、長門」 長門「あなたに一つ忠告する。」 「なんだ?」 長門「涼宮ハルヒと出会ったばかりの頃のあなたは涼宮ハルヒに対してとてもしつこかった。そのことを涼宮ハルヒは快く思っていなかった。そこで涼宮ハルヒはあなたを予知能力者としてみることであなたの存在を合理化した。涼宮ハルヒはあなたの能力に惹かれているが、あなたの存在そのものには好意的ではない。これはあなたの未来に対する解釈と現実とに大きなズレを生むかもしれない。気をつけて」 これではますますあの本のことなんて言えないな、予知能力者を演じつつハルヒのご機嫌をとらないと楽しい高校生活とは決別か・・・でも俺にはあの本があるんだ、大丈夫だ 「わかったよ、創造神さまにこれ以上嫌われたら大変だもんな、ありがとな」 長門(そして涼宮ハルヒがいくらあなた自身を改変しようとしても改変できない・・・) 土曜日、朝9時北口駅前集合 金曜日の部活中の第1回ミーティングにて ハルヒ「果報は寝て待ってもやってこないわ。果報は探し出すもの。だから探しに行きましょう」 「不思議を探すんだろ?」 ハルヒ「そうよ、市内をくまなくさがすの。明日朝9時に北口駅前に集合。遅れちゃだめよ」 そして急遽決まった不思議探索、これも予定通り。 俺は突如決まるはずの罰金が嫌だから一番最初に集合場所につくようにした。 古泉「いや~みなさん早いですね」 一番最後は古泉、でも罰金はなかった ハルヒ「二手に分かれて街を探索して、何か見つかりしだいケイタイで連絡しつつ時間まで探索継続。あとで反省と考察をするわ。じゃ~くじでグループを決めるわよ」 俺は朝比奈さんと二人組になった。ハルヒは朝比奈さんをじっと見つめていた。 ハルヒ「キョン、これはデートじゃないんだからみくるちゃんに変なことしたら許さないからね」 「わかったよ」 不思議ったって簡単にみつかるもんじゃない。 「朝比奈さん、そこらへんをふらふら歩きましょう」 みくる「あの・・・ちょっとお話が・・・」 「どうぞ」 みくる「お分かりのとおり、私は未来人です。」 「ああ、はい。そのことに関しては全部知っていますよ」 みくる「では、お聞きします。去年の冬あなたは何をしていましたか?」 「していたことといえば受験勉強ですが」 みくる「かわったことはありませんでしたか?」 「・・・・・とくにありません」 みくる「そうですか・・・」 「去年の冬になにかあったんですか?」 みくる「はい、私たち未来人は私が今ここにいるように時間をさかのぼることができます。でも去年の12月3日から約1週間だけはどうしても侵入できないんです。」 俺があの本を購入して読み終えるまでの間か・・・ みくる「キョン君はいろいろなことを知っています。なら、この期間についても何かご存知なのかと思って・・・」 「残念ながら力にはなれません。」 そしてしばらくブラブラしているとハルヒから電話があった 『12時にいったん駅前に集合』 集合後、昼飯をファミレスで食べ、午後の部のくじ引きをした。 俺は長門とだ ハルヒ「じゃ~4時集合ね」 「行くか」 長門「・・・・」 「この前の話なんだが」 長門「なに?」 「俺は最近でしゃばらないでいるつもりなんだが、ハルヒはまだ俺を嫌ってるのか?」 長門「前よりは改善された、しかしあなたは一人の人間というあなたよりは予知能力者としてのあなたのほうが大きい」 「そうか・・・、でもどうして同じようなことされた長門や朝比奈さんは俺を避けないんだ?」 長門「あなたと決別するのは私と朝比奈みくるが所属する派にとって得策ではない。それにあなたは悪い人間ではない」 「そっか、ありがとな。そういえば長門は図書館って知ってるか?」 長門「?」 お礼と言ってはなんだが、俺は本好きな長門を図書館に連れて行った 長門「ここが図書館?」 「そうだ」 それからしばらく長門は本にかじりついて離れなかった、気がついたらもう3時だ 「長門そろそろいくぞ」 長門「・・・・・」 長門は名残惜しそうに本を眺めている 「じゃ~図書カード作ってやるよ」 長門「図書カード・・・?」 「それがあればここの本ならなんでも借りれるんだ」 俺はカウンターで図書カードを作った 「ほら」 長門「・・・・ありがと」 長門はさっそくデカルトとゲーリングスの哲学書を借りた 長門「最後にひとつ聞いていい?」 「なんだ?」 長門「あなたの未来に対する解釈ではこの先どうなる?」 「ハッピーエンドだな」 長門「そう」 そして駅前に戻ることにした どうやら向こうのグループも収穫はなかったらしい ハルヒ「次回は絶対に不思議を見つけてやるわ、今日はもう解散。月曜日は反省会よ」 ハルヒは真っ先に帰ってしまった 古泉「じゃ~僕も帰ります。話によるとあなたは僕の正体をもう見抜いているのでしょう?今日はゆっくり話す時間がなくて残念です。」 「ああ、じゃあな」 みくる「今日はありがとうございました。また月曜日にあいましょう」 「さようなら、朝比奈さん」 長門「さようなら」 「おう、じゃあな」 週明けの部室 長門と古泉はもう来ていた。ちょうどいい、古泉と話をしよう 「古泉、今ならハルヒもいないし話ができるだろ?」 古泉「そうですね、念には念をということで場所を変えましょう。」 俺たちは食堂まで行き、テーブルについた 古泉「といってもあなたは僕の全部を知っているのでしょう?」 「ああ、だから俺からの質問はない。お前から俺に聞きたいことはあるか?」 古泉「そうですねぇ・・・あなたの予知はどれくらい当たりますか?」 「俺の行動を含まなければ7割はあたると思うぞ」 古泉「そうですか、ん?あなたは自分の予知と同じようには行動しないんですか?」 「ああ、俺がみたのと同じように行動するのは不可能だ。環境は同じでも俺本人は言うことを聞いてくれないらしい」 古泉「予知の中でのあなたと現実のあなたの行動のズレで何か問題はおきないんですか?」 「そうだなぁ・・・今のところは大丈夫だ」 古泉「そうですか・・・では、部室に戻りましょう」 部室のドアをあけると予定通り朝比奈さんが下着姿で立っていた、エプロンドレスを持ったまま固まっている。ほら、俺の予知はすばらしい。 「失礼しました」 俺たちは廊下で待っていた 古泉「さっきのも予知していたんですか?」 「ああ、まったく同じだ」 古泉「んふっ、罪な人です」 しばらくして中から「どうぞ」という朝比奈さんの声が聞こえた。 「すみません」 みくる「いいえ、見苦しい姿をみせたこっちこそすみません」 朝比奈さんはハルヒの注文を守っているらしい。やっぱメイド服を着込んだ朝比奈さん(実物)はすげぇかわいい。 みくる「どうぞ」 朝比奈さんはみんなにお茶を注いだ、笑顔で湯のみをわたされると本物のメイドさんにお茶をくんでもらっているようだ。とてもすばらしい。 結局その日、ハルヒはこなかった 次の日の教室 「昨日もう一回歩ってなんか見つけたか?」 ハルヒ「うるさいわねぇ、知ってんならわざわざ聞かないでよ」 やっちまった・・・また機嫌損ねちまったか? ハルヒ「日常がつまんないから変なヤツに言われた通りにSOS団作ったのに。萌えキャラとか謎の転校生も入団させたのに。何も起こらないのはどうしてよ?なんか大事件でも起きなさいよ」 弱気なハルヒってのもいいな・・・やっぱり・・・ 体育で外に出ようと下駄箱を開けると一通のかわいらしい手紙が入っていた 「きたか・・・」 体育終了後に回収しよう。 もちろん内容はわかっている。差出人は朝倉だろ? 俺は無視する。殺されかけるなんてごめんだからな。あと長門に報告だ、バックアップがもうすぐ暴走するってな 長門「パタン」 ハルヒ「今日は解散」 いつもの長門の合図で今日の部活は終わった ハルヒは真っ先に帰り、古泉と朝比奈さんも帰った 残るのは俺と長門だけ、よし作戦決行だ 「長門、これを見てくれ」 長門「放課後誰もいなくなったら、1年5組の教室にきて・・・?」 「俺の下駄箱にはいっていた手紙だ。俺の予知では手紙はお前のバックアップである朝倉からのもので、俺が教室に入るなり暴走する。」 長門「・・・・・」 「だからちょっと叱ってやってくれ」 長門「わかった、いってくる」 まぁこれで大丈夫だろ、朝倉は明日からカナダだ 俺は長門が帰ってくるまで部室で待つことにした 1年5組教室 朝倉「どうして長門さんが?」 長門「あなたがここで暴走すると彼から聞いたから」 朝倉「長門さんはあの不確定要素の言うことを信じるの?」 長門「そうすることで今まで上手くいった、これからも上手くいくはず」 朝倉「私は彼に正体がバレているわ、彼相手に目立った行動なんてできるわけないじゃない。ただ私は最近の涼宮さんの教室での様子について話を聞こうとしただけよ。涼宮さん、最近いつにも増して不機嫌だから・・・。涼宮さんがいないときをはかってね。それに今彼の身に危険が及ぶことは情報統合思念体にとってなんの利益もないわ」 長門「ではなぜ彼はこんなことを?」 朝倉「徐々に予知と現実にズレが生じている証拠じゃない。」 長門「たしかに」 朝倉「長門さん、冷静になって。私はあなたのバックアップであなたに歯向かうことはできないのよ?そして私たちが頼れるものは最終的には情報統合思念体だけじゃない」 長門「そう、わかった。それでは帰る」 朝倉「さようなら」 部室 「よう、長門お帰り。朝倉はもう消えたか?」 長門「どういうこと?」 「なにが?」 長門「朝倉涼子はあなたから最近の涼宮ハルヒの様子を聞きたかっただけ」 「そんなはずはない、朝倉は俺を殺そうとするはずだったんだ!」 長門「あなたは朝倉涼子が私のバックアップだと知っている、朝倉涼子もあなたに知られていることに気づいている」 「ああ、初日ちょっとからかっちまったからな」 長門「正体が知られている相手に釣り針を落とすの?」 「・・・・・・・」 長門「あなたの予知にもズレが生じ始めている。これからはあなたを信頼しきるのはできない」 「・・・・・・」 長門「帰る」 長門は部室を出て行った。ちくしょう、どうなってんだ?俺は確かにシナリオに従わないときもある、しかし今まで上手くいったじゃないか。朝倉が明日からも学校にいるなんてあの本には書いていなかった。どうすればいいんだ・・・ 家に帰るとすぐにベッドに入った。あの本なんて手に入れなければよかった。そうすれば俺は予知とか関係なしにあの本のシナリオにそって行動したかもしれないじゃないか。 いつまでたっても眠れない、もう1時半だ その時携帯が鳴った、誰だよこんな時間に・・・古泉!? 古泉『大変です!涼宮さんが閉鎖空間に閉じ込められました!』 おい、うそだろ?まだそれは早いはず、さらに俺も一緒にそこにいるはずだろ? 長門“そこで涼宮ハルヒはあなたを予知能力者としてみることであなたの存在を合理化した。涼宮ハルヒはあなたの能力に惹かれているが、あなたの存在そのものには好意的ではない。” まさか!おいおい冗談だろ・・・、俺はアイツに願われてアイツと一緒にいくはずだろ! 古泉『ちゃんと聞いているんですか!!??』 「悪い、もう一回言ってくれ」 古泉『ですから、あなたの見解を聞きたいのです。あなたの予知ではこの状況で何がおきるんですか?』 「俺はハルヒと閉鎖空間に閉じ込められて、校舎を探索して・・・」 古泉『それで?』 「すげぇでかい神人がでてきて・・・ハルヒと一緒に校庭にいって・・・おびえるハルヒを庇って・・・・日常に嫌気をさしてるハルヒを説得して・・・」 古泉『それで?』 「き、キスして世界は救われる・・・」 古泉『あなたには失望しました・・・今回の閉鎖空間は我々でも姿をとどめることも、長時間いることもできないんです。生身のあなたでは到底そのシナリオは達成できるわけありません。我々は全力をつくしますが、明日また会えるかはわかりません。それでは・・・』 嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ、絶対そうなるはずだ!だってあの本に書いてあったんだから・・・ ?「それはないわ」 「誰だぁ!?なぜそんなことがいえる!!??」 ここは俺の部屋だ、俺のほかに誰もいないはず・・・ 身を起すと信じられないものを見た 朝倉がベッドのすぐ横に立っていたのだ 「お前、どうやってはいったんだぁ!?」 朝倉「私は対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェースよ、情報操作ができるに決まってるじゃない」 「何しにきたんだよ!?」 朝倉「昨日のお礼よ。あなたは私の読みどおりに私を救ってくれたじゃない」 いつの話だ?いつの話だ?いつの話だ?思い出せないぞ!! 朝倉「あなた、予知能力なんてないんでしょ?」 「!!!なんでだぁ・・・なんでしってるんだぁ・・・?」 朝倉「これ」 朝倉はあの本を持っていた 朝倉「本棚に置いておくなんて無用心ね、涼宮さんとかが家にくるときとかどうしていたの?」 言葉もでないし、頭は朝倉の言葉を理解できない 朝倉「この本、私たち急進派が去年の12月3日にあなたの視線が特定の本棚を向く瞬間に発生させた情報なの。そしてあなたはこの本を買った。」 朝倉「この本は私たち急進派が作戦を失敗した時のあなたの周辺の世界をあなたの視点で綴ったものなの」 意味がわからない意味がわからない意味がわからない・・・・ 朝倉「人は一回できあがったシナリオを完全に再現することはできないでしょ?台本を読んだあなたはおもしろいくらいにシナリオをずらしたの」 朝倉「急進派はタブーとされる限度以上の情報操作をしたわ、涼宮さんにもね・・・。そして長門さんも情報統合思念体ですら見抜けなかったわ」 「なんで俺が世界を壊さないとなんだぁぁぁ!!!なんで俺なんだぁぁぁ!?」 朝倉「それはあなたは急進派が失敗した世界でのキーパーソンだったからよ、そしてあなたを少しずらせばあっという間にすべてが崩れた」 「俺はぁ・・・・俺はぁ・・・!!」 朝倉「あなたはとてもおろかだわ、この本の世界のあなたは普通を愛せた人間だったのにこの世界のあなたは欲にまみれている・・・」 もう力がはいらない・・・ 朝倉「私たちは少しだけ涼宮さんに変化があれば満足したのに、あなたはすべてを壊した。まぁいいわ、お礼を言っておかなくちゃ。ありがと」 「やめろぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」 そしてこの世界は消失した。俺はとても馬鹿な人間だった。 おわり
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/4700.html
「おはようございます、キョン中尉」 ん、おはよう、いつものを頼む。まぁおはようってよりは時間的にはこんにちはだがな。 いまこの艦は停泊中だから仕事もなく気楽なもんだ、だもんで甲板士官たる俺様もゆっくり朝寝がしてられるというものだ。 「今日は新任の艦長がいらっしゃる日ですよ、なんでもすごい優秀なエリートだそうですね」 あぁそうらしいな。 「らしいって…同期なんでしょ、中尉と」 あー、同期っていうか年次が一緒というだけだ、学校が違うんだ。俺は北部士官学校卒、あちらさんは東部士官学校卒で等級外の艦とはいえ早くも艦長の超エリート様だからな。学校が違う劣等生の俺と接点なんざないよ。 東部っていえば谷口だろ、たしかあそこ出身のはずだぜ。 『総員甲板に集合せよ、総員甲板に集合せよ』 「いらっしゃったみたいですね、行きましょうよ中尉殿」 さて甲板士官の位置はここだな。しかし眠いな…。 「艦長、全員集合いたしました、お願いします」 「SOS号艦長涼宮ハルヒ、只の軍人には興味ありません、この中に敵国のスパイ、脱走兵、不名誉除隊者、兵役忌避者がいたら私の所にきなさい!」 そこには目の覚めるような美人がいた……。 *******************************
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/3045.html
六章 無音…暗闇。まあ、真っ暗なのは俺が目をつぶっているからに他ならないのだが。 かすかに手術中と書かれた扉の向こう側から聞こえて来る三つの電子音だけが、あいつらが生きている事を俺に教えてくれる。 他にも医者や看護士が駆け回る音やカチャッという金属と金属がぶつかりあったような音が聞こえているようだが、 今や俺の聴覚は三つの電子音を拾うのが精一杯のようだ。病院の待ち合い席に俺はいる。 両の手を祈るように組み合わせ、それは俯いた額を支えていた。 相手はトラックらしい。正面衝突は避けられたようだが、そのせいで相手は依然、逃亡中だ。 「ね、ねぇ…キョン…」 おや、ハルヒの声がする。ハルヒが近くにいるようだ。そういえばこいつは俺と一緒に電話に立ち会ったんだっけ。 「今は…そっとしておくべきかと…」 忌々しいことに古泉もいるようだ。この分だと朝比奈さんと長門もいるのかもな。 はは、全然気付かなかった。怒鳴るように誰かを問詰める俺をなだめていたのは、ハルヒ達だったのか。 俺にも冷静な思考がようやく戻ってきたようだ。 「何で、何でキョンくんの家族が…」 ほらやっぱり朝比奈さんもいた。そうですよね。全く言うとおりだ。誰もがもっている、それに遭遇する可能性。 だったら何で…俺達に来た…!変わりなんていくらでもいるだろう。何でよりによって俺達なんだ… 頼む、他の奴等はどうなってもいい。あいつらは…見逃してやってくれ。 もし、今誰かに俺達の役を押し付けることが出来るとしたら…俺は間違いなくそれに甘んじるだろう。 自分が、まさかここまで利己的、かつ非人道的な人間だとは思いもしなかった。 きぃ」 ドアの開くような音がした。誰かがこっちに近付いて来るようだ。 「最善は尽くしました。あとは彼らの…生命力にかけるしか…」 「そうですか」 ポーズを寸分も乱さず、台詞だけ返す。部屋の案内もされたが覚えちゃいない。 「キョン、妹ちゃん達の部屋に行くわよ。部屋の場所は教えてもら「いかない」 ハルヒの声を遮り俺は返す。別に行きたくないわけじゃないさ。ただ、この無慈悲な運命に対しての、 幼稚な駄々っ子じみた抵抗のつもりだ。突然、だん!と隣の椅子を叩くような音が聞こえた。 「っっっ!!いい加減にしなさいよ!こんのバカキョン!!いつまでメソメソしてんのよ! 誰彼かまわず当たり散らしたと思えば、いきなりふさぎ込んじゃって!」 怒鳴るハルヒだが胸倉を掴もうとしないのは、俺への気遣いなのだろうか。 お陰で俺は同じ体勢のままだ。 「涼宮さん!」 「古泉くんは黙ってて!いい?キョン。精神論で片付ける気はさらさらないけど、 そんなふぬけた態度で妹ちゃん達が帰って来ると思う!?まださっきまでのあんたの方が救いがあったわ!! あんたが今すべき事は椅子に座ってアホみたいにいじけてる事じゃないでしょ?! ベッドに寄り添って手の一つでも握ってやったらどうなの?!! こんな時くらい根性見せてみなさいよ!!!」 暗闇の中に光がこぼれた気がした。その光は波紋のように暗闇を消し去っていく。 全く、こいつはいつだってそうだ。俺の望みなんてこれっぽっちも聞いちゃくれない。 それどころか自分の意見まで押しつけてきて…俺はそのまま流されて…何だかんだ楽しくて… 苦笑いが本当の笑みに変わってて…そんなのが…たまらなく好きなんだ。 ありがとう、ハルヒ。またお前に救われたよ。そうだ、悪い方向にばかり物を考えるから暗い気分になっちまう。 もっとプラスに考えろ!この試練を乗り切ればより家族の絆は固まる。 もしかしたら妹がまたお兄ちゃんって呼んでくれるようになるかもしれん。 それだけじゃないぞ!家には誰もいないんだ。ってことは誰に気付かれることなく『奴』に貪ることが… 「え?」 自分のモノローグに自分で疑問符をあげるのと同時に俺は顔を上げて、 目を開いた。突如世界が歪んだように見えた。最初は目まいか何かだと思ったそれは 精神的から肉体的にいたるまでのあらゆる苦痛、苦悩を掻き集めたらできるような感覚。 まさしく禁断症状だ。全身から汗が吹き出して来る。 「す、すまんハルヒ。気分が悪くなって来た」 「え、ちょ、ちょっとあんた大丈夫?先生に診てもらう?」 おそらく蒼白いであろう俺の顔を見てハルヒは言う。 「いや、だ、大丈夫だ。ただの疲労だ。今日はこれで帰るよ」 「そう…じゃあ送って行くわよ?」 「いや、お前達はあいつらと一緒にいてやってくれ」 俺はハルヒ達が目視出来るであろう所まで、必死に落ち着いた歩みを見せ、そのあと全力で走った。 来るときは自転車だった道を俺は必死で走り続ける。 おいおい俺よ。どっちの方向に走ってやがる。そっちは俺の家の方向じゃないだろう。 あらゆる苦行に堪える修行僧のような気分になりながらも、俺の足は一向に止まる気配がない。 やめてくれ、消さないでくれ。これからなんだ、ハルヒとの日々はこれから始まるんだ。 朝比奈さんだって帰ってきたばかりじゃないか。古泉や長門への恩もこれっぽっちも返してないだろ? これから今までより愉快なことが沢山待ってるんだ。頼む、消さないでくれ。 今までの思い出を、これからの可能性を! もはや、家族への気遣いなど遥か彼方に忘れ去っていた。 「はぁ、はぁ」 ようやく俺の足は、目的地に到着することで止まった。玄関の外に誰かいる。 「はぁ、頼む!春日!俺に!俺にもう一度!――――!!!」 どれくらい時間が経ったのだろう。もしかしたらもう日付は変わっているのかもしれない。 あたし達はただ黙って彼の家族の横にいる。 三人とも安らかに眠っている。口元の呼吸器がなければその光景は 昼下がりに時間を持て余し、惰眠に任せる家族の図に他ならないだろう。 「キョンくんは、大丈夫でしょうか…」 最初に口を開いたのはみくるちゃんだった。 「そうね、キョンの事も心配だし、あたしはこれからあいつの家にいくわ。 皆はもう帰っていいわよ。全員で押しかけたら、あいつも困るでしょ それに古泉くんは明日、機関のパーティがあるんでしょ?」 「いえ、こんな時にとてもそんな気分には…」 「お願い、パーティに行って…」 あたしがそう言うと、古泉くんはあたしの考えてることに気付いたのか、 表情をいつもの笑顔に戻すと、ありがとうございます、とだけ言った。 これ以上、元機関の人達に迷惑をかけるわけには行かない。 「あのぉ、こんな時にこんなこと聞くのもどうかと思うんですけど…受験の方は…」 申し訳なさそうに言うみくるちゃんに、精一杯の笑顔で答えた。 「もう…無理かもね…」 笑顔を作ったせいで、その言葉はより一層寂しく響いた。 「涼宮ハルヒ」 今まで時間が止まったように黙っていた有希があたしを呼んだ。 「無理…しないで」 その言葉を聞いてあたしは本物の笑顔を浮かべ一度だけうなずいた。 キョンの家の前にいる。キョンの顔を少し見たら今日は帰ろう。チャイムを押す。 意外にもキョンはすぐに出てきた。顔色も元に戻ったみたい。 「少しは調子を取り戻したみたいね」 「あ、ああ。心配かけて悪かったな。明日はあいつらに会いに行く…と思う…」 顔色とは裏腹に表情は暗いみたい。無理もないか。 「思ったより大丈夫そうだし、あたしはもう帰るわ」 「ま、待ってくれ!ハルヒ」 「何よ」 「え…と、そうだ、受験の件だが…「あんたは!!!」 あたしはキョンの言葉を遮った。 「家族のことだけを考えていなさい。」 言葉通りの意味もあるけど、あたしは次のキョンの言葉を先送りにしたかっただけなのかもしれない。 「またね…」 オレは今、閉鎖空間を走っている。隣には今まで同じ時間を過ごしてきた仲間が三人。 河村卓 富山彰人センパイ 春日美那 みんな同年代で機関の中ではいつも一緒にいたグループだ。 「今回もまたえらく見事な空間を作りやがったもんだ。 またお前んとこの疫病神くんが何かしでかしやがったのか?古泉」 「ああ、悪いな河村」 「古泉を責めても仕方ないだろう。 それにここは無意識とはいえ涼宮ハルヒの意識下だ。『鍵』への悪口は危険だぞ。」 「はいはい、わかってるよ、富山センパイ」 「あ、わかった!タックン、キョンくんに嫉いてるんでしょ?」 「み、美那!ばかやろう!んなことあるわけないだろ!お前がいるのに何で嫉かなきゃなんないんだよ!」 「ノロケはそのくらいにしとけよ。おでましだ。」 富山センパイの言葉を合図にしたように神人はその姿を表した。 「9、10体かよ!おい!古泉!今度そのふざけたあだ名の奴、殴らせろ!」 突如場面が切り替わった。回りは壊されたオレ達の町、休憩している仲間達の姿。 神人はもういないようだ。そうかこれは夢なのか。過去の現実を夢として見ているのか。 いつのまにかオレの意識は目の前の古泉一樹から離れ、 第三者の視点で見ていた。…待てよ、ということはまさか… 目の前にいる古泉が話しだす。 「皆、いつも悪いな、涼宮ハルヒと『鍵』の仲立ちの役目のオレが…」 「気にすることないよ!今日も無事に皆生き残れたじゃん! 古泉くんは頑張ってるよ!ね!タックン!!」 「ま、そういうことだ。さ、さっきは悪かったな…」 一堂が目を真ん丸にして河村を見る。 「タ、タックンが素直に謝った…すごーい!タックンが謝った!タックンが謝った!」 「何だ!その『クララが立った』みたいな言い方は! だー!そもそも涼宮ハルヒが アホみたいな力持ってるのがいけないんだ!あの力さえ消えてくれりゃ万事解決なのによー」 「そう簡単にはいかないぞ、河村」 センパイが静かに話しだす。同じだ…あの時と。いつもは勝手に崩壊する閉鎖空間も何故かそれを見せない。 「何でだよ。涼宮も俺達も普通の高校二年生にもどるだけだろ。バンバンザイじゃないか。」 「俺の危惧してるのはもっと先にある。もし涼宮ハルヒが力を失えば、 古泉…お前は機関の何人かを敵に回すことになる。」 「ど、どういうことですか?センパイ…」 「機関には涼宮に恨みを持っている者もいるということだ。 お前の本当の戦いは涼宮が力を失ったそのあとなんだよ。 もちろん涼宮を見捨てるという選択肢もあるが…」 その刹那、半透明で巨大な 腕が河村の頭上に現われ、それは今まさに振り下ろされようとしていた。 「河村!!」 また場面が変わったようだ。ここは…機関運営の葬式場か… 場内には目を伏せる者。堪えきれず泣きわめく者。まっすぐ前を見据える者と様々だ。 しかしその誰もが悲しみのベールを纏っている。 式が終わり機関の人が流されるように式場をあとにする 「古泉。俺は何で生きてるんだ」 「………」 答えられるはずもない。 一度全滅した空間でまた神人が発生したのは前例のないことだった。 「あの時、俺をかばったセンパイは言った。お前達の思うがままに行動しろってな。だから俺…決めたよ…古泉…」 そこにはオレの知ってる河村はいなかった。 「俺と一緒に神を殺さないか?」 はっっっっ!!オレは飛び跳ねるようにベッドから半身を起こしていた。 寝起きには不自然な程の汗が体中にまとわりついている。 あの夢も…久し振りだな。昨日、近しい人の生死の堺を目の当たりにしたからかな… センパイ…オレは間違ってなんかいませんでしたよね… ここはパーティ会場。懐かしい顔ぶれがそろっていて、昨日の出来事で沈んだオレの心も 少しは上昇気流に乗ってきたようだ。 「あ!古泉くーん!こっち!こっち!!」 思わず反射的にそちらを向くと、笑顔を振りまく春日さんが確認出来た。 彼女とはあれ以来学校で見掛けることはあっても話すことはなかったな。 そういえば涼宮さんや彼と 同じクラスなんだっけ。 「お久し振りです。どうやら元気そうですね。何よりです。」 「何か顔色悪いけど…大丈夫?」 「ええ、昨日友人の身内が事故に会いまして…それで少々考え事を。」 春日さんは笑顔だった顔を少し暗くしていた。 「この間の電話でもそうだったけど、口調…敬語のままなんだね…」 「ええ。最近ではこっちの方が慣れてしまって。気になるようでしたら直しますが…」 「ううん、いいよ。古泉くんのやりやすい方で…」 まいった…こんな気まずいムードにするつもりなかったのにな… 「あら、古泉に…春日さんじゃない!久し振り。」 「またお会い出来て光栄ですな。」 「あぁ!森さんに新川さん!お久し振りです~!!」 いたたまれないムードを払いのけてくれた森さんと新川さんは、 一年ぶりになる春日さんと半年ぶりになるオレを見て、目を輝かせていた。 それからは四人でバイキング形式の料理をつまんだり、昔話に花を咲せたりしていた。 久し振りの面子に興奮気味の、春日さんを除くオレ達は、少し無神経になっていたのかめしれない。 話を気ままに転がしていたオレ達はよりによってあの話を持ち出してしまったのだ。 涼宮さんの話を…オレが学校での涼宮さんの行動っぷりを三人に聞かせ、 夏の合宿でのことを新川さんと森さんとオレで春日さんに聞かせる。 先程――長いこと話し込んでいたので半日程前のことか――の春日さんの 暗い表情の意味もろくに考えもせず… 気付くと笑顔だった彼女の表情はひどい悲しみの色をおびていた。 「ハハ…古泉くんは…強いね…あんなことがあっても…顔色一つ変えないで彼女の話が出来るだなんて…」 オレはひどい後悔にかられた。そうだ、オレにとっての涼宮さんは、 あのことを差し引いても、日々の楽しい生活を語る上でかかせない人物であることに変わりはない。 だけど春日さんにとっては、悲しみの元凶でしかないんだ。 「何で…何で古泉くんは笑いながらあの人達と一緒にいられるの!? 何で我慢できるの!?」 春日さんを除くオレ達はただ黙って俯くことしか出来なかった。 「あ、ごめんなさい。せっかく招待してもらったのに こんなこと言っちゃって…やっぱり…あたしもう帰るね」 パーティ会場を走り去る彼女をオレは追うことが出来なかった。 「古泉」 森さんが呼ぶ。 「あなたは涼宮さん達を守る側に回ったのよね。」 「…………はい」 「あたし達は全力をもってあなたをフォローする。迷わずに自分のすべきことを見据えなさい。」 突如、オレのケータイが鳴った。ここは電波が悪いな。オレは外に出ながら ケータイを取り出す。あたりはもう暗くなっていた。相手は……涼宮さんか。 「はい、もしもし、古泉ですが…」 「ヴゥ…古泉くん!!キョンが…キョンが!あたし…あたしぃ……!」 オレの中で緊張が走った。 七章へ
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/3672.html
翌日の朝。俺は懐かしい早朝ハイキングコースを歩いて学校へと向かっていた。 とは言っても、向こうの世界じゃ毎日のように往復していたけどな。 北高に入り、下駄箱で靴を履き替えていると、 「おっ。キョンくん。おはようっさ。今日もめがっさ元気かい?」 「キョンくん、おはようございます」 鶴屋さんの元気な声と朝からエンジェル降臨・朝比奈さんの可憐なボイスが俺を出迎えてくれた。 何か向こうの世界じゃ何度も聞いていたのに、帰ってきたという実感があるだけで凄く懐かしい気分になるのはなぜだろう? 靴を履き替え終わった頃、長門が昇降口に入ってきた。 「よう、今日も元気か?」 「問題ない」 声をかけてやったが、やっぱり帰ってきたのは最低限の言葉だけだ。ただし、全身から発しているオーラを見る限り 今日の朝は気分はそこそこみたいだな。 階段を上がっている途中で、なぜか生徒会長と共にいる古泉に遭遇する。 「やあ、これはおはようございます――どうしました? 何かいつもと雰囲気がちょっと違うように見えますが」 「朝からお前と遭遇して、せっかくの良い気分がぶちこわしになっただけだ」 「これは手厳しい」 ふと、俺はあることを思い出し、古泉と生徒会長を交互に見渡して、 「とりあえずご苦労さんとだけ言っておく」 「はい?」 俺の台詞の意味がわからず、呆然とする古泉と生徒会長を尻目に俺は自分の教室へと向かった。 そして、教室に入ってみれば、ハルヒのしかめっ面が俺をお出迎えだ。 少しはこっちの気分を読んで欲しいぞ、全く。 「遅い! せっかく良いもの見つけたから、朝ご飯食べながら学校に走ってきたのに!」 「お前の都合でどうこう言われても困るぞ」 団長様のありがたい怒声を聞きつつ、俺は自分の席に座る。 見ればハルヒは机の上にチラシを沢山並べていた。どうやら何かの催しの案内らしいな。今度は何だ。 全米川下り選手権にでも丸太に乗って参加するつもりか? 「ほら見てよ、これって凄くおもしろそうじゃない? ついでにSOS団のアピールもバッチリだわ! これは――」 意気揚々と語り始めるハルヒ。俺はそれを耳から垂れ流しつつ、ちょっとした考え事に入る。 最初に言っておくが、これは昨日の夜家に帰って風呂に入りながら考えた俺の妄想だ。 俺はずっと向こう側の世界に行って、SOS団を作り上げるまで試行錯誤しまくってきたわけだが、 実際のところ不可解な点もたくさんあるのが実情だ。 特に情報統合思念体については明らかに矛盾している点がある。連中は長門によるハルヒの力の使用は二度あって、 一度はハルヒのリセットで隠蔽、もう一つは直前で阻止したようだったが、今俺が帰ってきた世界の長門の世界改変分が カウントされていないのはなぜだ? 最初に聞かされた話じゃ、ここの連中とあっちの連中も結局は同じもののはずだからな。 そう考えれば、俺の知る限り長門による力の行使は三回あったはず。これはあきらかに矛盾している。 じゃあ、実はハルヒの勘違いで、こことあっちの連中は実は別物と言う可能性はどうだろうか? 一応パラレルワールドみたいなものだし、 その分だけ情報統合思念体が存在していてもおかしくはない。が、それはそれで矛盾がある。見たところ同じような考えを持った 存在だったことを考えれば、この世界で長門が世界改変を実施したら、同じように長門の初期化、さらにハルヒの排除という 流れになるんじゃないだろうか。向こうの連中は過剰反応しただけで済ませるにはどうにも腑に落ちない。 まあ、なんだ。前置きが長くなったが言いたいことはこういうことだ。 俺が去った後にリセットされてやり直されている世界――それが今俺のいる世界なんじゃないかってね。 つまり俺はずっとここに至るまでの軌跡をずっと描き続けてきたってことだ。 情報統合思念体にも実は俺たちとは違うが時間の流れみたいなものがあって、あの交渉の結果、 この世界では長門の世界改変がスルーされた。約束通りに。 それだといろいろつじつまの合うことも多い。 ハルヒがどうして宇宙人(長門)・未来人(朝比奈さん)・超能力者(古泉)・異世界人(俺)がいることを望んでいたのか。 それは最初からSOS団を作るために、探していたんじゃないだろうか。だからこそ、不思議なことを探してはいるものの、 全員そろっている現状に密かに満足しているのではないのか。それだと唯一いないと言われている異世界人は、俺だし。 それに…… ―――― ―――― ―――― なーんてな。考えすぎにもほどがある。本当にそうなら、今目の前にいるハルヒは自分が神的変態パワーを持っていることを 自覚していることになっちまうが、それなら最初に世界を作り替えようとしてしまったこととか、元祖エンドレスサマーとかの 説明が全くつかなくなってしまう。自覚してあんなデリケートな性格になっているんだから、あえてやるわけがない。 普段の素振りを見ても、そんな風にはとても見えないしな。自覚しているハルヒを知っている身としては。 ……ただし。 ――あんたの世界のあたしがうらやましい。何も知らずにただみんなと一緒に遊んでいられるんだから―― この言葉が少々引っかかるが。 まあ、どっちにしろ凡人たる俺にそんなことがわかるわけもない。一々確認するのも億劫だし、面倒だ。 現状のSOS団に満足しているのに、わざわざヤブを突っつく必要なんてあるまい。 俺の妄想が本当かどうかはその内わかるさ――その内な。この世界も別の神とか宇宙的勢力とか出てきて、 まだまだ騒がしい非日常が続いて行きそうな臭いがプンプンしているし。 「ちょっとキョン! ちゃんと聞いているの!?」 突然ハルヒが俺のネクタイを引っ張ってきた。やれやれ、妄想もここまでにしておくか。 俺はハルヒの手をふりほどきつつ、 「で、次はどこに連れて行ってくれるんだ?」 その問いかけにハルヒはふふんと腕を組み、実に楽しそうな100W笑顔を浮かべて、 「聞いて驚きなさい。次はね――」 ~涼宮ハルヒの軌跡 完~
https://w.atwiki.jp/haruhioyaji/pages/294.html
ハルヒ先輩2から 「ふんふん。この成績だと、内部進学は楽勝ね。ようやく同じ学校に通えるわね!」 「敷地は今も同じだし、校舎だって5分の距離だけどな」 「大違いよ! 今はみんなも見慣れた風景になってるらしいけど、高等部の中庭であんたとお弁当食べ出した時の、周囲の目ときたら!」 「気にしてたのか? というか、気付いてたんだ?」 「当たり前でしょ!」 「じゃなんで、膝の上に俺を乗っけて食べるなんてことしたんだ? 俺も結構嫌がっただろ?」 「あたしがそうしたかったからよ! 決まってんでしょ!」 「聞いた俺が悪かった」 「あとオーディエンスがいると、余計燃えるわね」 「周囲を挑発するのは、少し自重してくれ」 「あれくらいしないとね、ライバルを黙らせるには至らないの」 「ら、ライバル?」 「あんたは鈍いし天然入ってるから気付きもしてないんでしょうけど、あんたって地味にもてんのよ! 何度、体育館の裏に呼び出されたことか」 「大学生がそんなとこ呼び出されるなよ。というか、危ないから行くなよ」 「虎穴に入らずんば虎児を得ずよ、キョン。ピンチに逃げを打つようじゃ、恋をする資格はないわ!」 「意気込みは分かるが、その故事成語の使い方は違うと思う」 「別れてくれだの、年増だの、ショタ・コンだの、あたしとキョンじゃ釣り合わないだの、キョン君を弄ばないでだの、実はキョンと深い仲だの、おなかの中に二人の子供がいるだの、まあ、散々なこと言われたわ。全員、泣かせてやったけどね!」 「ど、どうやって?」 「のろけて」 「……」 ハルヒ先輩4
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/4089.html
ゆっくりと扉を開けて俺たちは部室に戻ってきた 中ではそれぞれがそれぞれの指定席に座り、…朝比奈さんは立っているのが指定に近い感じがするのだが いつもどおりの、古泉は微笑、長門は無表情、朝比奈さんは怯えた表情をしていた …あれ?いつもどおりじゃない人間が一人いるな、たまになら見るが、朝比奈さんは何に怯えているんだ? …あぁそうか、そうだよな 朝比奈さんは俺にキスしたんだった そりゃ、ハルヒに何されるかわかったもんじゃない ま、予想どおりといったところだろうか、ハルヒが朝比奈さんの方を向いて話し掛けた 「みくるちゃん」 それは普段のハルヒからは想像しがたい優しい声だった まるで母親が自分の子供をあやすような それでも朝比奈さんはびくっとしていたがな 「ありがとう、ね」 いったい、何がありがとうなんだ? 誰か俺に説明してくれ …あとで古泉にでも聞くか それを受けた朝比奈さんは溢れんばかりの満面の笑みで元気よく 「はい!」 とだけ言った そのあとだが、恐らく今回は大体を知っていたであろう未来人・朝比奈さんが持っていたバスタオルで体を拭いたあとハルヒは朝比奈さんの、俺は古泉の持ってきていた着替えに着替え、団活を開始した この準備の良さをみると、古泉も知ってやがったな 八つ当りとは言わないが、いつもどおり、俺は古泉とのボードゲームに連勝し、長門は本を読みふけ、朝比奈さんは給仕にいそしみ、ハルヒはネットサーフィンに興じている 対戦中、何度かハルヒと目が合ったのは心にしまっておこう やはり、いつもどおり長門が本を閉じる音で部活が終わる なんかいつもどおりの一日だったな、確かに世界は急に色を変えないよな それが変わっていたら8割方ハルヒのせいだ 部室をでたあとハルヒが手を握ってきた 俺は少し慌てたがもう3人とも知っているんだろうな、と考えそのままにした 5人で歩く帰り道、いつもは先頭にいるハルヒは一番後ろの俺の横で少しはにかみながら歩いている 代わりに先頭を行くのはハードカバーを文庫本に持ちかえ、それを読みながら歩いている長門で、その後ろで古泉と朝比奈さんが談笑しながら歩いている 幸いにも雨は止み、控えめに赤い太陽が顔を出している 横を見れば顔を朱に染めたハルヒがちゃんといる 俺はハルヒに耳打ちしていた 「そっと抜け出さないか?二人で」 ハルヒは一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに100Wの笑顔に戻すと大きく頷いた 長門にはバレていただろうが、いやもしかしたら全員にバレていたかもしれない 前の3人に気付かれないよう、こっそり脇道にそれた そのまま歩いて辿り着いたのは、この春休みに思い出深い、花見と、ハルヒの告白と…長門のマンションの近くの公園 桜達は、すでに花びらを落とし、早くも来たるべき夏に向けて準備をしていた しかし、抜け出してきたのはいいが、いったい何をしたらいいんだろうな とりあえず、ラブラブしたらいいんだろうが、そんな経験がない俺には何をもってラブラブというのかわからん 「おっ!キョン君にハルにゃんじゃないかっ!!」 突如後ろから聞き慣れた元気な声が聞こえる 振りむけばやはりというか鶴屋さんだった 「手なんかつないじゃって、ラブラブだね!お姉さん少し羨ましいにょろよ?」 ハルヒは照れている 顔が真っ赤だ 恐らく、冷静に観察してる俺も真っ赤だろう 「ええ、付き合うことになったんです」 それでも俺は某3倍早いMSのように赤いであろう顔に押さえ込まれないよう、できるだけ冷静を保って言葉を出す しかし、それも無駄な努力だったようで鶴屋さんは腹を抱えて大笑いしていた 「あっはっはっは!…そんな真っ赤な顔で…ぷぷ…真面目に言われてもねぇ…はっはっは…まぁ末長くお幸せに!これは鶴にゃんからの贈り物っさ!」 鶴屋さんはそう言って何かを俺の手に握らせる 「ハルにゃんを泣かせたらあたしが承知しないよ~!」 走りさりながら手を振る鶴屋さんを見送ったあと俺は手の中のものを確認した それを見た俺は苦笑する以外に選択肢はなく、覗き込んできたハルヒは顔をさらに赤くしていた 鶴屋さんはなぜ、こんなものを持ち歩いてあるのだろうか 俺はその0.03㎜の贈り物を使う日がいつ来るか考えていた
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/5108.html
「でんぢゃらすハルヒ」 ハルヒとみくるは鶴屋に呼ばれて、彼女の家に来ていた。 なにやら、二人に見せたいものがあるらしい。 「やぁやぁ、2人ともよく来たね。 今日は2人に見せたいものがあるにょろ。 これにょろ!!」 そういうと、鶴屋は金で光った大きなものを見せた。 「じゃじゃ~ん、見てほしいにょろ!!」 それは、金色に光った鶴屋の銅像だった。 「どう?めがっさかっこいいでしょ!?」 みくるは、何かおぼろげない様子で 「え…、えぇ。とてもすばらしいです」 「ハルにゃんは?」 「とてもいいじゃない!!すばらしいわ!!」 「でしょでしょ!!あたしの家族の親戚の人があたしのためにって わざわざ作ってくれたにょろ!!2人が喜んでくれてうれしいっさ!!」 話し続けようとした瞬間、その時、 ♪あたしTwinkle twinkle littie MonStAR 暴れだすこの気持ち~ とここで一本の携帯の着メロがなった。 それは鶴屋の携帯だった。 「ちょっと電話しにいくにょろ、3分で戻ってくるから待っててほしいにょろ!! あっ、そうだ。2人に言いたいことがあるにょろ」 ハ み「何ですか?」 2人がそう聞くと、鶴屋は急に血相を変えて 「この銅像壊したら殺すにょろっ!!!!!!!」 みくるは驚き、ビビった。 「のわっ!?」 「いい、壊すんじゃないにょろよ、壊したら絶対許さないにょろよ!!」 みくる「わかりましたから、早く電話しに行ってください」 そうして鶴屋は、この場を後にした。 みくるはふと息を吹き、 「…ふぅ、びっくりしました。 あんな銅像、壊す人なんていませんよ~。 ねぇ? 涼宮さん。」 「……」 ハルヒは無言のままバズーカを持ち、発射口を銅像の方に向けた。 みくるは慌てて、 「ちょ、ちょっと何するんですか!!涼宮さん!!」 「おりゃ~~~~~~~~~っ!!!」 ドカ――――――――――ンッ!! ハルヒはバズーカをぶっ放して、鶴屋の銅像を めちゃめちゃに破壊した。 「しまった―――――――――っっ!!!!! ヤベ――――――――――――――――――ッッッ!!!!!!!!!!!!」 「しまったじゃないでしょ―――――――――――――っ!!!!」 「どうするんですかっ!!!鶴屋さんの銅像壊しちゃって!!!!!!!」 「フフフ、安心しなさい、みくるちゃん、 今日は私が、友達の大切なものをこわした時の謝り方を 教えてあげるわ!!!!!!!」 「(そのためにわざと壊したんですか? 涼宮さん)」 「いい、ポイントは、… 人のせいにすることよ!!」 「何―――――――っ!!!!??」 やりとりをしている間に、鶴屋さんが現れた。 ハルヒは彼女の方に近づいて、 「鶴屋さん!!!」 「ん? どうしたんだい? ハルにゃん」 「鶴屋さんの銅像、みくるちゃんが壊しました!!」 鶴屋は血相を変えて、 「何――――――――っ!?」 みくるも 「え――――――――っ!?」 何が何なのかわからないみくる。そんなみくるに 鶴屋は近づき、 彼女の真正面に立った。 「ち、違うの!! 鶴屋さん!! これは涼宮さんが…! 涼宮さんが!!!!!」 鶴屋はどす黒い声で、 「みくる~、自分のやったことを人のせいにするなんて、 最低にょろ!!」 「違うんですってば!! 本当に涼宮さんg」 「まだそんな事言うの!? どうやらみくるは おしおきが必要みたいね!!さぁ、来るにょろ!!」 「い、痛い!!……」 そういうと、みくるの髪を引っ張り、みくるは鶴屋の家の中に引きずりこまれた。 家の中からは悲鳴と怒号が聞こえてくる。 鶴屋「おりゃ――――――――!!!」 みくる「いやあああああああああああっ!!!!!」 ドスッ、ゴフッ、バキッ、グサッ それを見ていたハルヒは 「強くなってね。みくるちゃん」 と一言つぶやいた。 お仕置きが終わったみくる。鶴屋の家から、傷だらけになりながら出てきた。 「おっ、みくるちゃん、出てきたのね!!よかったわ!!!」 みくるは一人心の中で思った。 いつか、この女殺してやる。 元ネタ 何でしたっけ?
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5813.html
涼宮ハルヒの天啓 プロローグ 涼宮ハルヒの天啓 前編1 涼宮ハルヒの天啓 前編2 涼宮ハルヒの天啓 前編3 涼宮ハルヒの天啓 前編4 涼宮ハルヒの天啓 中編1 涼宮ハルヒの天啓 中編2 涼宮ハルヒの天啓 中編3 涼宮ハルヒの天啓 中編4 涼宮ハルヒの天啓 後編1 涼宮ハルヒの天啓 後編2 涼宮ハルヒの天啓 後編3 涼宮ハルヒの天啓 後編4 涼宮ハルヒの天啓 エピローグ1 涼宮ハルヒの天啓 エピローグ2 涼宮ハルヒの天啓 エピローグ3 涼宮ハルヒの天啓 エピローグ4(終) 涼宮ハルヒの天啓 番外編1 涼宮ハルヒの天啓 番外編2