約 2,287,933 件
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/822.html
「涼宮!付き合ってくれ!」 「いいわよ」 俺はショックを受けた。なんとあの谷口がハルヒに告白したのだ。しかも俺の目の前で… ハルヒは断ると思っていた。告白してきた奴らに全てOKを出してきたのは知ってたが、あいつはSOS団の団長として日々を過ごすうちに変わっていたからだ。 俺はショックだった。 なんか宙に浮いてるような感じ?嫌違うか。 とにかくハルヒは谷口の告白にOKを出したのだ。 「ほんとか!イヤッホーィィィ!!!」 あほが叫んでいる。 「それじゃあね。いくわよキョン!」 「お、おう…」 「なぁハルヒ。なんでOK出したんだ?」 「う~ん。谷口のあほには一度中学ん時告られたんだけど…」 やはりか。 「高校になって少しは面白くなってるかもしれないじゃない?だからよ」 「そうか…」 俺はショックを受けてはいたが、別に嫉妬しているわけではない。本当である。この時はどうせ三日もすれば終わるだろう。 などと夏休みの宿題並に楽観的に考えていたからである。 しかし、谷口とハルヒは二週間しても別れることはなかった。 「ずいぶんと長く続いてるじゃないか」 「それがねキョン!谷口って案外面白い奴なのよ!」 谷口がおもしろいのは知っている。「チャック谷口」最近の奴のあだ名だ。 このあだ名に行き着くまでにいろいろとあったのだが…言うのはかわいそうだからやめておこう。 「今までで一番続いてるんじゃないか?いつ別れるんだ?」 「何それ?早く別れてほしいみたいに」 ハルヒが少し怒っている。 「あっ、いやすまん…」 「あっ!妬いてんのねアンタ!かわいいやつねぇアンタも。べつに谷口にかわっ」 「ちげぇよ!!」 妬いてると言われてすぐに否定した。最後のほうの言葉はよく聞き取れなかった。 「そ、そう…」 心なしか残念そうに見えたのはきのせいだろう。 「今日は谷口と帰るから、SOS団は休み!あんたがどいしてもって言うんならやってあげてもいいわよ!」 「いや、休みで」 休みになるなら万々歳だ。ちょうど今日は休みたかったところだ。 「そう…じゃあ帰る…」 「おう、じゃあな」 「ハ、ハ、ハ、ハルヒちゅわ~ん」 あほめ とりあえず俺は部室に来ていた。SOS団の活動は休みという朗報を伝えるためと、朝比奈さんのお茶を飲むためだ。 「ちわー」 「あ、キョンくん。今お茶いれますね」 「こんにちは。いい天気ですね」 「…」 「今日は休みだそうだ」 「そうですか。それは都合がいいですね。僕たち三人の話を聞いてもらえますか?」 「なんだ?早く話せ」 「あのですね、キョンくん。言いにくいんですけど…あたし達全員キョンくんをそんなに重要な人物としてみなくなったの…」 「どういうことだ?」 何を言ってるんだ?よくわからん。 「つまりですね。谷口と付き合うことで涼宮さんがSOS団をやめると言っても僕らはとめません。」 「なんでだ?」 「言ったじゃないですか。あなたより谷口のほうを優先するようにしたんですよ。ねぇ長門さん」 「そう」 「なんだよ長門まで…どうしたってんだよ…」 「不確定因子があなたから谷口に変わった。それだけ。情報統合思念体は谷口とより深く関わるようにと言っている」 「つまり、あれか。俺を見捨てるのか。なんだよそれ……」 「まだチャンスはあります。あなたが涼宮さんを谷口から奪ってしまえばいいんですよ」 「そんなことできるかよ…」 「では仕方ありませんね」 「ちくしょう!もうこんな団はやめてやる!」 バタン 「やれやれ、鈍い人ですね。まったく」 「本当ですね。キョンくんって天然なのかな?」 「……失望」 なんなんだよあいつら!くそっ!胸糞悪い! 「寝るか…」 その時携帯の着信音がなる。 キレテナイッスヨ、キレテナイッスヨ むかつく着信音だ。後で変えよう。 「もしもし」 「よぉ、キョン」 「谷口か…」 「なんだよ、くれぇーな。とりあえず聞いてくれよ~国木田は聞いてくれないからさ~」 「なんだ、早く言え。俺は眠いんだ」 「それがよ~ハルヒの奴めちゃくちゃかわいいんだぜ~」 ぶっ殺してやろうかと思ったね。 「のろけなんか聞きたくない。じゃあな」 「おいおい、待てよ。本題はそこじゃない。聞きたくないか?」 「……早く言え」 「俺やっちゃったんだよ~」 「………何をだ?」 マサカナ… 「決まってるだろ~セクロスしかねぇじゃん。気持ち良かったぜ~それでさー」「てめぇ!!!!!」 「な、どうしたんだキョン?!」 「明日学校で話そう」 「は?」 「教室に朝早くこい」 「はぁ?わかった…」 プッ 谷口の野郎、ちくしょう…なんだよ俺…バカみたいじゃねぇか…… なんで涙が…くそっ!止まらん。 「ちくしょう……」 「キョンくん、ごはーん!」 「いらん!!」 「お母さ~ん!キョンくんが不良になっちゃったー!」 もう寝よう…明日にそなえて……… 指定した時間に谷口は来た。 「なんだよキョン。どうしたんだ?」 「お前に聞きたいことがある。」 これだけは聞いておきたい 「ハルヒのこと本当に好きか?」 「はぁ?なんでそんなこ」 「好きか嫌いか答えろ!」 「なんだよいったい…そりゃあ好きだけど…」 「好きだけどなんだ?」 「もう目的は達成したからなぁ。セクロスしたし。別に別れてもいいぜ!わかった!お前涼宮のこと好きなんだろ!早く言えよ~付き合えよ!俺は身を引いてやるからさ」 もうがまんできん。 「このヤロウ!」 俺は殴りかかった。その時だ 「やめて!!」 そこにはハルヒが立っていた… 「ハルヒ……」 「もうやめてよ…キョン…ごめんね谷口。もういいよ…」 「ああ…わかった…まさかこんな形になるとはな」 「何言ってるんだ?お前ら」 「やぁこんにちは」 「ごめんなさい、キョンくん」 「…」 なにがなんだかわからない 「あのね、キョン。これはドッキリなの…」 「はぁ?!!」 「僕が提案したんですがね、ドッキリなんですよ。あなたならもう少し違った感じになると思ったんですが…例えば涼宮さんに告白するとか……」 「キョンくん鈍いんだもん」 「ホントよ!全くバカね!!」 「ドッキリですが、あなたが涼宮さんに告白したらドッキリとは言わないようにしていたんです。」 「あ、あんたのせいだからね!まったく…」 「ハハハ」 なんだ。ドッキリかよ… なんだろうこの気持ち… もの凄く安心している。 ああそうか。 「俺はハルヒが好きだったんだな」 「えっ!」 「ハルヒ。俺お前が好きだ」 「なにぼけてんのよ!ドッキリだったって言ったでしょ!」 「違うんだ。わかったんだよ。俺は本当にお前のことが好きだったんだなって。」 「キョン……私も………」 「ハルヒ。付き合ってくれないか?」 「かぁ~妬けるねぇ~」 「谷口くんにはがんばってもらいました。一つだけを除いて」 「そうですよ。まさかやっ…たなんて言うなんて」 「そうよ!アホ谷口!バカ!」 「な…なんだよ…」 「じゃあ谷口くんは僕が預かりますからどうぞ続きを…」 「じゃあ私たちも…」 「…コクン」 みんなでていった。 「キョン。ごめんね」 「いいさ。後で谷口には謝らないといけないな」 「それはいいわよ」 「そうだな」 プツ 「アーハッハッ!!」 二人で大笑いした。 さっきまでの気分が嘘のように晴れやかだ。 「ところでハルヒ。さっきの返事は?」 「さっきのって?」 とぼけてやがる。 「付き合ってくれ」 「いいわよ!な、なによ!ただあんたなら面白いかなと思っただけなんだから!!」 「そうかい」 「よかったですね、長門さん」 「少し残念…」 こうして俺とハルヒは付き合うこととなった。 なぜか古泉と谷口の関係が深まったような気もするが… これからはずっと過ごしていけるだろう。 いつもとちょっと違った日常をさ………… 涼宮ハルヒの変貌 完 PS谷口くんの口癖が 「ア、ア、ア、アナル~」になりました。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1874.html
“っぅ…やばいわね” あたしはさっき飲んだジュースに猛烈に当たり散らしたい気分だった。 今日は日曜日。あたしはバカキョンのために家庭教師をしてやっていた。…別にキョンの事が心配だからとか、一緒にいたいからって訳じゃないんだからね。ただ…そう、補習とかになって団の活動をサボられると困るのよ! …で、今あたしの目の前にはキョンが座っている。真剣な目で問題を解いてるキョン。間違ってるんだけどね。 でも、今のあたしにはそれをバシバシ叩きながら指摘する余裕がない。あたしは足元にある空のペットボトルを見つめた。 まずいは…かなりまずいは。調子に乗ってあんなに飲むんじゃなかった。…これはキョンが悪いのよ! 『ハルヒ、まあ、飲め。暑苦しくてたまらん』なんて言うから。あたしもついつい…だいたいキョンの覚えが悪いから怒鳴って…だから喉が渇くのよ! “…ぁぅ…” やばい、本気でやばい。よりによってなんでこんな日に断水?!水道局の怠慢だは!ダムに水がないなんて嘘よ。あたしのダムはもう満水なのよ…。 『ぁぁ…』 思わず声が漏れる。キョンが怪訝そうな顔で見てる。あたしは横座りしていた足を組み変えて正座にする。 “こうすれば踵が当たって直で押さえられるは!”まだいける…と思うけど。断水解除は4時だから…後30分ね。もっと早く動いてよ時計… まだ、マヌケ面でこっちを見ているキョン。 『ハルヒ、顔が赤いぞ、汗も凄いし。大丈夫か?暑いのか?』 なんて聞いてくるし。大丈夫そうに見えるの?滴る汗を拭うあたし。 て、あんた何クーラーの温度下げてんのよ!嫌がらせ?もう!バカキョン! …“ヴーーン、ヴーーン ” その時、床に置いてあったキョンの携帯のバイブが床を伝わり僅かな振動をあたしの身体に与えた。 『…ひゃっ…』 “…プシュッ” あっ、あれ?今のはまさか? “ひょっとして…今のはひょっとして…”何か生暖かい感触が下着の中に広がる…。 今、あたしちびった?愕然となる。すぐに確認したいけど今はキョンがいるから無理。今だけどっか行ってよ…キョン。 あたしは祈った。そしたらキョンの奴電話をもって立ち上がり『悪い。親からだ。下で電話してくるは。すぐ戻る』ですって。 部屋を出て行こうとするキョン。チャンスよ!ハルヒ。って…キョン歩かないで…今のあたしに振動は…振動は…。 “プシュッ…ジュッ” …ぁっぁ…えっ?う、嘘… その時のあたしにはもう一刻の猶予もなかった。 キョンが部屋を出るのを見ると速攻でスカートの中に手を入れ下着の上から直接股間を押さえる。 “グジュッ…” あたしの下着は濡れていた。信じられない現実…そして今も染み出すように出てる液体。 “止まれ!止まれ…止まって…お願いだから… 団長たるあたしがこんなところでお漏らしなんて…” 心の中で祈りながら押さえ続ける。 祈りが通じたのか、ちょっと出ちゃったからなのかはわからないけどなんとか止まった…。 …恐る恐る手を離して下着を見る。 “見たくはないけど現状は確認しなきゃ” 純白の下着は薄く黄色く色付き、濡れてしっかりと透けていた。そして白のミニスカートにも…。 “あ、あたしキョンの家で…” 目の前が真っ暗になった。軽いパニックになる。 その時あたしの中でもう一人の冷静なあたしが囁いた。 “大丈夫よ!ハルヒ!まだキョンには気付かれてないわ!今ティッシュを使って吸い取ればごまかせる!” あたしは冷静な自分を取り戻した。幸い今は尿意が引いている。 あたしは部屋の隅に置いてあるティッシュに向かった。 …刺激を与えないように部屋の隅に向かう。 あと…3歩…2歩…1歩…。 ティッシュの回収成功。作戦の第一段階は成功ね。あとは元来た道を戻るだけ…。 中腰、擦り足で元の場所に戻るとあたしは下着とスカートからおしっこを拭った。 …その時、今迄の比じゃないの尿意があたしを襲った。耐え切れない欲求…。 『ぅぅぅ…』 “負けない…あたしは負けない…” 時計を見る。後5分。この波さえ乗り切れば後は天国よ!ハルヒ! ティッシュをもった右手を力いっぱい股間に押し当てる。 … … … 『ガチャ…』 ドアが開く。 『あースマン、ハルヒ。ちょっとこいず…いや、親がなうるさくてな』 あたしはとっさにドアに背中を向ける事しかできなかった。 全身の震えが限界に近づいてる現状を教えてくれる。 キョンはそんなあたしに近づいてきた。 落ちていたティッシュを拾うのを気配で感じる…。 ダメよ!キョン!そのティッシュはあたしの…あたしの…心の中で絶叫する。 キョンは震えるあたしと濡れたティッシュから想像したのだろう…明らかに検討違いな事を言ってきた。 『大丈夫か?ハルヒ…おまえ泣いてるのか?辛い事があるなら話してみろ…』 そう言うとキョンは“ポン”と、あたしの肩に手を置いた。 『…ぃ…嫌…ダメ…』 今のあたしの我慢はその衝撃に耐えられなかった。 『…あっ…あっ…ぁぁ…』 “ショワーーーッ!” という布越しに液体が吹き出す音が聞こえる。それは“びちゃびちゃ”と床を打つ。あっという間に広がる水溜まり。白い下着が黄色味をおびなら透けていく。 『ダ、ダメ…見ないでキョン…!』 それだけ言うのが精一杯だった。出せた事への気持ちよさよさより、下着に広がる生暖かい液体の感触とキョンに見られてることへの羞恥心の方が大きかった 一度出始めたものを止める事はできなかった。 下着だけでなく、スカート、靴下にまで不快なものを感じる。 あたしにはその時間が永遠にも感じられた。 “ちょろ…ちょろろ…” やっと勢いがなくなり、そしてあたしのおもらしは終わった。 あたしは自分に起こった事が信じられなかった。高校生にもなって…ましてや他人の、キョンの前で…消えたくなるような恥ずかしさ…。 『…ハ、ハルヒ?』 キョンの声が背後から聞こえる。突然の事で動揺してるのか声が震えてる。あたしは恥ずかしさで答える事も顔を上げる事もできなかった。 …どうしよう…おもらししちゃった…。 謝らなきゃ…とにかく早くキョンに謝らなきゃ…。 焦りと謝罪したいそんな心とは裏腹にあたしの口をついたのは理不尽な責めの言葉だった。 『…あんたのせいなんだからね…あんたが押さなきゃ全然問題なかったんだから…』 嘘…キョンは悪くない。ジュースがぶ飲みして、もらしちゃったのはあたし。 それでもあたしの理不尽な言葉は止まらなかった。 『…せ、責任とりなさいよ…責任とらなきゃ死刑なんだからね…』 …情けない姿を晒した自分と素直に謝れない自分が許せなかった。 だからキョンに八つ当たりしてるだけ…。解ってる。責任のとりようもないことも、ましてやキョンに責任がないことも…自分が子供みたいなことを言ってることも…。 … … … …キョンはそんなあたしの理不尽な怒りに対して何も言わなかった。 足が濡れるのも構わずあたし前に立つと、一言“ゴメンな”と言ってあたしを優しく抱え上げ、お風呂場に連れて行った。 …お風呂場についた私の服と下着をキョンは優しく脱がせてくれた。 あたしのおしっこのついた物なんて触りたくもない筈なのに…嫌な顔一つしないで…。 それに今はあたしの出したものを片付けるために部屋に戻ってるし。 『シャワーでも浴びてすっきりしろ …俺は着替えを用意するあと、お前の…始末をしとく』の一言を残してあたしを一人にしてくれた。 “…優し過ぎるよ…キョン…” キョンの前では団長として弱みは見せられないと思って我慢してた涙が頬を伝う。 お風呂場の中はあたしの出したおしっこの臭いがうっすらしていた。 シャワーを浴びながらあたしは考える。 “あたしキョンに凄いとこ見られちゃったな…キョンになんて謝ろう? どうしよう…顔合わせられないよ…” “トントン” ドアを叩く音。意識を戻す。 『…ハルヒ、着替えここに置いとくぞ。…あ~それとだな。気にすんな。誰にでも…『わかったわよ!そこに置いてって!!』』 あたしは精一杯虚勢を張り声を出す。そして言ってから後悔の念に押し潰されそうになる。 …またやっちゃったは。今なら顔合わせないで謝ることもできたのに…。 あたしの中で“不安”が広がった。 …“不安?”なんで不安なんだろう? おもらししたことを他人にバラされたらどうしよう…って不安? …違う。キョンはそんなことするやつじゃない。 そんな事は解ってる。 じゃあ、何の不安? …そう、キョンに嫌われるんじゃないか?って不安。汚い女だって見捨てられる不安… なんで嫌われるのが怖いの? …それはあたしがキョンを好きだから。 初めて自分の気持ちに気付いた…。 シャワーを出る。 …身体はすっきりしたけど心は晴れない。 あたしはキョンの用意してくれた服を着る。 今あたしはキョンの部屋の前にいる。 早く入らなきゃ…謝って、そしてキョンに確認しなきゃ… でもあたしの足は動かなかった。 きっと嫌われちゃった。見捨てられちゃう…って不安が大きくなる。寒くないのに膝が震える。 『ハルヒか?もう片付けたから入って来いよ』 気配を察したのかキョンがあたしを呼んだ。 『ガチャッ…』 扉を開けて中に入ると部屋の中は綺麗になっていた。 キョンの顔をまともに見られない。でも謝らなきゃ… 『…ゴメンなさい……キョン…こんなあたしの事なんて嫌いに…なっちゃった……よね』 最後のほうはかすれてよく聞き取れなかったかもしれない。 あたしは泣いていた。 いつの間にか『ゴメン…』と『嫌いにならないで…』を連発していた。 そんなあたしに近づいてきたキョンはあたしを優しく抱きしめてくれた。 『俺のほうこそゴメンな。おまえが我慢してるのに気付いてやれなくて…俺が気付いてやれればなんとかできたかもしれんのに… だからゴメン。…それに嫌いになる訳ないだろ。誰にだって起こりえることだ。だからもう気にすんな。もう済んだことだ…。もちろん誰にも言わない。俺も忘れるからおまえも忘れちまえ!』 『だから泣くな!…いつもの傍若無人なハルヒに戻ってくれ。俺はいつものハルヒが…その…なんだ…好きなんだ!』 えっ?今キョン“好き”って…あたしのこてを。嫌われてないだけじゃなく好きって…。 あたしの涙は止まらなかった。でもそれは今迄の不安から来るものじゃない。嬉しさから来るものだ…。 そんな泣き止まないあたしを見てキョンはいつもの“やれやれ”って表情じゃなく、今迄見せたことのないすっごく優しい眼差しであたしの口を塞いできた…自分の口で…。 そして…。 翌日文芸部室にて… …今日も暑いわ。なんでこんなに暑いんだろ?授業中“夏だからだろ?”なんて月並みな事を言ったキョンには既に罰ゲームを言い渡してある。 今、眉間にシワを寄せながらパンツ一丁にエプロンで席に座ってるわ。涼しそうねキョン。パンツを残したのは団長としての優しさよ!感謝しなさい! そんなキョンを見てニヤニヤしてる古泉君を見てると“ホモ説”もあながち間違いじゃない気がするのは気のせい? 『みくるちゃん!お茶!頭痛くなるくらい冷たいやつよ!』 今日何度目かになる注文をみくるちゃんに出す。 その声に反応してあたしを見るキョン。 お馴染みの“やれやれ”って顔で『飲み過ぎだろ!そろそろ止めとけ…』って言ってきた。 …っと…まあ、そうね。みくるちゃんも大変そうだし、また昨日みたいなことになったら嫌だからね。ここらへんで止めとこうかしら。 …でも、今みたいな“やれやれ”な顔じゃなく、あたしを慰めてくれた時のキョンの…今はあたしの“恋人”のあの優しい顔が見れるならまた……… そんな考えを振り払うかのようにちょっと乱暴にコップを置き、いつもの調子で叫んぶ。 『ねえ!キョン!!』 終わり
https://w.atwiki.jp/haruhioyaji/pages/264.html
ハルキョン家を探す その5から 「あたしたち、幽霊屋敷に住むわ。SOS団のみんなも一緒よ!」 いやハルヒ、『前回までのあらすじ』を強引に一言で言ってしまえば、確かにそういう風にもまとめられるかもしれないが、それだと誰も安心も納得もできないぞ。 俺は、例の不動産屋の店主との出会いのいきさつから、ついさっき訪れた古い洋館のだいたいの部屋数まで、差し障りのなさそうな部分をかいつまんで話したが、それでも主賓クラスのスピーチの長さになってしまった。ハルヒの親父さんが「ジー・ジェイ」とかなんとか言ってた気がするが。 頃は合格発表の晩、ところは涼宮オヤジの縁が深い、俺とハルヒも再開店1周年の際に訪れたことのある洋館風のレストラン、主催俺の家アンド涼宮家、協賛SOS団と愉快な仲間たちでもって開催された「ハルキョン超合格宿がパーティ」(誰だタイトル考えた奴?)は、ハルヒと俺にとって予想もしてない文字通りのサプライズ・パーティであった。 「店貸し切って、もし不合格だったら、どうしようと思ってたんだ?」 喉カラカラで演壇から降りてきた俺を出迎えたのは、メイド・コスチュームの世界一似合うアンジェリーナ朝比奈さんでも、本当に本職メイドではないんですか森さんでもなく、どこの黒執事かという出で立ちのニヤケスマイルの副団長であった。ついでに言うと古泉が俺に手渡したグラスには、シャンパンでも六甲ワインでもなく「ただの水」がなみなみと注がれていた。 「いえ、六甲の水だそうです。地元ですから」 「そんなことはどうだっていい」 「不合格……の場合ですか? ほとんど想定外のことですが、その時はその時で、残念パーティということにでもなったんでしょうか。ああ、一応、懺悔室なるものは、涼宮さんのお父様の意向で用意してありますが」 ……親父さん、あんたって人は。 「でも、万が一でも、そういうことにはならなかったでしょう」 「ハルヒが望んだ、ってのは無しだ。俺たちは見事に一浪したし、俺なんかは右手を折ったんだぞ」 しかし持論を翻さず、ハルヒの心理専門官を自認する古泉は落ち着き払った口調でこう言った。 「涼宮さんが、あなたが怪我をすることを望むとは考えられません」 「すると、こういうことか? あいつは俺と二人っきりで暮らすよりも、SOS団での共同生活を望んだ。そのために、俺たちの進学は1年間猶予され、その間に怪しげで居住スペースを十二分に備えた幽霊屋敷が登場したと?」 「まあまあ。SOS団で住むという話は、我々もさっきが初耳なんですよ。いろいろと考える必要はあるかもしれませんね」 世の中で最も絡むのに適さない相手、グレート・ザ・のれんに腕押しの腕章をすぐにでも贈呈したいこの男に、どうやら俺は絡んでいるらしい。多分、少々落ち込んでいる。そうとも、自覚はある。 「まあ、元気を出してください」 古泉、それダメ押し。「あなたは落ち込んでいる」と言外に断定しちまってるぞ。こういう時は、平凡な言葉ほど効くって本当だな。 「今回の企画の中心、涼宮さんのお母様が、あなたの家やSOS団に連絡され、説得に当たられたのですが、その間、誰も不合格なんて事態を微塵も考えなかったと思いますよ」 なんとでも言ってくれ。 「今回の結果は、決して幸福な偶然が運んで来たものではない。そう考えると、少しは誇らしく思えてきませんか?」 「こら、キョン!! あんた、今日の主役でしょ! すみっこで何ごちゃごちゃ話してるのよ!」 「姫がお呼びですよ、殿下。……できれば、披露宴もこんな風にやりたいものですね」 「誰と誰のだ?」 やったとしてもお前には司会もスピーチもさせんぞ。谷口、国木田と3人で「てんとう虫のサンバ」を歌わせてやる、しかもラップVer.でだ。 演題の上で飛び跳ねながら、本日最高の笑顔で叫んでいるもう一人の主役、ハルヒの方へ、俺はよろよろと歩いていった。 宴は、俺の片付かない気持ちとは裏腹に、大いに盛り上がった。 なかでも涼宮家の母・娘の出し物は、基本的には一般人の集まりであろうこうした宴では、もはや超反則クラスで「プロの方おことわり」の域に達していた。 いつだったか、俺が軽くリクエストしたせいで決まった、母娘二人による連弾:一台のピアノを母と娘の4つの手が演奏するやつは、最初は誰でも知ってそうなクラシックの曲からゆったりと始まったが、次第にアレンジはアップテンポになり、曲調と技巧が頂点に達したところで終わる、会場総立ちモノだった。 そういや、いつか練習しすぎで筋肉痛になったハルヒが言っていた。 「For piano four hands、連弾のことをこう言うの。ピアノはオーケストラに出せる一番低い音から一番高い音まででるけれど、所詮2つの手、10本の指じゃ限界があるわ。でもね、4つの息の合った手があれば、オーケストラにだって負けないのよ!」 続いてハルヒがピアノを弾き、ハルヒ母が、水のように透き通った、どこか現実的でないほど美しい声で、アリア3曲を歌った。以下は長門による簡潔な解説である。 「すべてヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの作曲によるもの。1曲目ケッヘル番号51(46a)歌劇『みてくれのばか娘』からアリア『あたし恋をしてるの』、2曲目ケッヘル番号217 ガルッビ:歌劇『ドリーナの結婚』への挿入曲 アリア『あなたの心は今は私に』、3曲目ケッヘル番号440(383h)アリア『あなたに望みを託しますわ,ああ,愛する夫よ』」 一転して会場は水を打ったように静かになり、静寂がゆっくりと盛大な拍手に変わっていった。 二人は一礼して、ハルヒの母さんは親父さんのいる席へ戻り、ハルヒは俺の隣にやってきた。 「すごいな。ぶっつけとは思えん」 「ずっと練習はしてたもの。今日やるとは思わなかったけど」 「ピアノもよかったが……」 「母さんでしょ? まあ、あたしに歌わせるつもりだったみたいだけどね」 「どうしてやめたんだ?」 「あんた、歌の内容、知ってる?」 「長門から歌のタイトルは聞いた」 「そう」 と言いながら、ハルヒはその辺りの食べ物を手当り次第に口に詰め込む。 「今日はじめて席について食べられるわ。誰のお祝いだか、わかりゃしないわね」 「まったくだ」 「ん? なにをぶーたれてるのよ?」 「ぶーたれてなんぞない」 ハルヒはおれのほっぺたを両方の手でつかみ、うにうにと伸ばす。 「さあ、ぐーとでも言ってみなさい」 「ぶー」 ああ、あわれ。我は子豚なり。 度を過ぎた宴はやがて終わり、手回しよく配車されたタクシーが参加者をそれぞれ送って行った。これだけ、手回しの達人たちが揃っているのだ、不思議というには当たらない。 「おーい、今日の主役その1」 と向こうで呼んでいるのはハルヒの親父さんである。 「もう残ってるのは俺たちだけだぞ」 「あの、うちの家族は?」 「妹ちゃんが寝ちまったんで、早々に引き上げられた。愚息をよろしく、とのことだ」 「やれやれ」 「今日は泊まってくだろ?」 「ええ。お邪魔します」 「すまんが、そこでつぶれてる主役その2を、叩き起こして自分の足で歩かせるか、担いで来てくれ。なあに、そのままさらっていけ、とまではいわん。そこのタクシーまでだ」 「すみません。選択肢その1は無理です」 「涼宮家でも、母さんだけができる荒技だ。……今日はずっと浮かない顔だな」 「いや、ちょっと疲れただけですよ」 「疲れているか、ぶーたれてるかぐらいは、バカ親父にも区別がつく」 そう言って親父さんはゆっくりと歩いてきた。そして羽目を外して酔いつぶれ、テーブルに突っ伏して寝ているハルヒを見下ろす。 「幸せな奴だ」 親父さんはハルヒの頭をぽんぽんと叩いた。 「こいつは好きなことやって、何回かは頭ぶつけて転んで、たとえそれでも好きなことやって一生過ごすんだろうさ。キョン、こんな奴はいいから、おまえ自身が幸せになれ。大抵のことは、それで何とかなるだろう」 「……キョ〜ン、もう食べられないわよお、……むにゃむにゃ」 ハルヒ、ベスト・タイミングにしてベスト・コンテンツの寝言。親父さんは「おまえはオバQか!」と古いツッコミを入れている。やれやれ。俺も思わず笑ってしまう。たとえば歳を取り、懐かしく思い出したりするのはきっと、なんでもないこういう瞬間なんだろう、とふいに思った。 「おい、ハルヒ、おぶされ。帰るぞ」 「……キ、キョン?……あんた、あたしに……何しようってんのおぉ……ぐう」 「何もせん。家に帰るんだよ」 「……あ、あたしの……家はねぇ……」 背中をハルヒに向け、椅子に座っているこいつの高さにあわせてしゃがむ。親父さんがハルヒの腕を俺にのっけてくれる。ハルヒの腕が俺の前で交差する。ハルヒの体重が俺の背中に移動してくる。 「……ここに、決まってんでしょ、このバカキョン!」 「ハ、ハルヒ、落ち着け。く、首がしまるっ」 「お父さん、済みましたよ。ん? どうしたの、二人とも? 真っ赤になって」 向こうからハルヒの母さんの声が聞こえる。が、ハルヒの細い腕が、俺の首にはまりすぎるくらいにぴったりすぎて、絞まる……。 「俺は笑い過ぎだが、キョンは窒息しかけだ」 「はいはい」 ぺしりっ、と乾いた音。び、ビンタですか? 「んあ、母さん? って、キョン! 親がいるのに何してんのよ!!」 「ほんと親が二人も揃っていてよかったわ。ハル、もうちょっとで未亡人になるところよ」 手を放し、俺の背中でおろおろするハルヒ。となりで馬鹿笑いする親父さん。ニコニコしながら号令をかけるハルヒの母さん。 「じゃあ、みんな、家に帰りますよ」 「働かざるもの食うべからず、って言葉、知ってるかしら、キョン?」 涼宮家に着いてから、ハルヒの母さんがハルヒを部屋に連れてゆき、自分も寝室へと退散した。 残された俺と親父さんは、居間のソファをそれぞれ占拠し、 「プロポーズになんで花持ってたかって? 女性に贈るのは花と決めてたんだ。ヘタ打って別れたにしても、花なら腐って消えるから物証が残らない。母さん? 『ああ、もらった薔薇はポプリにしました』だと。さすがに変色はするが、香りなら10年は楽に持つらしいぞ。50年ものなんてのもあるらしい。完敗だ」 といったような、多分のろけ話を聞かされているうちに、いつの間にか寝てしまった、ということはどうにか記憶にある。 目が覚めて、俺を見下ろしているハルヒは、すでにハルヒ100%状態であって、見回すと居間には俺一人残され、親父さんの姿もない。 怒ってみせているハルヒの眉の角度を見れば、それが上機嫌を押し隠すための照れ怒りだということはわかる。あと、俺は腹が減っていた。総合的に判断すれば、こちらには一分の勝率もあり得ないではないか。 顔で怒って心ごきげんなハルヒが手渡したのは巻き尺だった。 「はい、これ。部屋の使い方を考えるのに、間取り図が必要でしょ。測ってきて」 「あの広さの洋館を俺ひとりでか?」 とはいえ、せめてもの抵抗を試みる。 「あたしも鬼じゃないわ。親父を連れて行きなさい、どっかで転がってアニメ見てるから、拾って来て。もし寝てたら、死なない程度に叩き起こしてかまわないから」 いや、言おう。ハルヒ、おまえは鬼だ。 「ああ見えて、意外と役に立つわよ」 そんなことは分かってる。性能には何の不足もないだろうさ。しかし、あの親父さんである。 どうして神は、かくも高い能力を、かのような人格に与えてしまったのだろうか。意地悪か?それとも悪戯か? 人を試そうっていうのか? と、あれやこれやを思案していると、のっそりと親父さんが登場した。 「お言葉を返すようだが、バカ娘」 と親父さんはぶーたれる。 「なによ、文句あるの、バカ親父?」 「俺は忙しい」 「36時間寝ないで、ネット・ゲームやってる、あんたのどこが忙しいのよ?」 「それは受け手のポジションに甘んじていたこれまでの俺。これからは送り手の立場に立って世界に向き合うつもりだ。だから忙しい」 「忙しい、つ・も・り でしょ?」 「明日中に『涼宮オヤジちゃんの憂鬱 二ノ巻』をネット配信しなくてはならん」 どうやって、そんなもの……つくったんですか? あと、一ノ巻は? 「もちろんMADだ。足りないところはElanceでお仕事オークションしたら、インドのデザイナーが落札した。すごいスキル・セットでPerlとJAVAとRubyとPHPを使えて、王族みたいな英語でドキュメントまで書けるのに、1時間あたり5ドルで働くんだぞ。どことは言わんが日本にあるのに日本語が通じないサポート・センターとは、どえらい違いだ」 ああ、何ゆえこんな危険親父にWeb2.0を、のれんに腕押しを、猿にモノリスを……人類は、テクノロジーとの付き合い方を、真剣に考えなおすべき時期に来てるんじゃないだろうか。 「あとここだけの話、ハルヒの幼稚園時代のビデオがあるんだが、ニコ動にアップするってのはどうだろう?」 「親父さん、そりゃ犯罪です!」 「俺は親だぞ。だったら『エスパー魔美』はどうなる?」 「あれはバイトでお金を渡してます」 「いつか親になって娘を持ったら、油絵に描いてやろうと思ってたんだが、俺って勝ち組か?」 「実現……してないですよね?」 「母さんにバレた」 「つまんない話してないで、さっさと行ってきなさーい!!」 ハルヒにどやされ、男二人(俺と親父さん)は、道具をひっつかんで走り出す。 その2へつづく
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/526.html
涼宮ハルヒの異変 上 涼宮ハルヒの異変 下
https://w.atwiki.jp/akadama/pages/65.html
「あ~、なんか暇ねえ…」 ネットサーフィンもそこそこに飽きただろうハルヒがぽつり、とつぶやいた。 俺はオセロの石をひっくり返しながら古泉に目配せした。お前の役目だろ。 するとどうだろう、古泉は両手を上げていつもの『参りましたね』ポーズだ。 長期休暇しか役に立たないのか、お前は。 「今日はみくるちゃんもいないし…そうだわ!」 ハルヒは何かを思いついたらしく、イスが後ろに滑っていくくらい勢いよく立つと、古泉の近くへやって来た。 「今日は古泉君で遊びましょう!」 「えぇっ?!」 ハルヒの忠実なるイエスマンが驚くのも無理はない。 「なんでしょう…何を着たらいいのですか?」 「なーんにも着ないわ。」 じゃあ何を、と聞くよりも早く古泉の頭の上に手を置くとハルヒは、 「古泉君を開発するのよ!」 「か…?!」 さすがに俺も驚かざるを得なかったね。開発って…そりゃ高校生が発するような言葉じゃないぞ。 「あ、あの…涼宮さん?意味がよくわからないのですが」 「と言っても思いつきだから何も用意してないのよね…ああもう」 俺は長門を見た。すると、いつも古泉がガサガサしているゲーム置き場を指差している。 まさか用意したとか言うんじゃないだろうな。 ゲームを掻き分けてみると、案の定とんでもないブツが姿を現した。やたら長くて赤い紐に、なんだかよく分からない液体に、バ…これは言葉にはしたくないな。 「おいハルヒ、丁度いいものが見つかったぞ」 「やだ、誰が持ち込んだの?…まあ、いいわ。」 真夏の太陽のような超笑顔をうかべてハルヒは古泉を見た。明らかに笑顔が引きつっている。 先に言っておくが俺は解説役に徹するからな。 「アンタにせっかくの楽しみは渡さないわよ。」 そうかい。 「ただ開発するのもつまらないからあたしなりにルールを設けたわ。引っかかったらランクアップしていくからね!」 逃げるなよ、古泉。逃亡罪は閉鎖空間3日間分だぞ…多分。 「その、何といいますか…できればそういうのは遠慮したいんですが…」 いきなりハルヒが危機感を覚えさせるような不敵な笑みを浮かべた。 「ちちち…引っかかったわね古泉君!」 ルールその一。抵抗・否定的な態度および言動…禁止! 「まずは脱いでもらうわ、着てるもの全部よ!」 さすがのイエスマンも完全に固まってしまった。オイ、ハルヒがぐずらないうちに動いとけ。 「言っとくけど、これ以上逆らったらもっとひどいことするわよ…有希に脱がせてもらいたいの?」 「わ…わかりました」 頬を染めながら俯いて一枚、また一枚と脱ぐ姿は…なんというか、アレだな。 女の子だったら壮絶にエロイ展開なのだが、野郎となると…なぁ。顔赤くすんな、夢に出る。悪夢的な意味で。 古泉は最後の一枚で数分ためらっていたが、覚悟を決めたように脱ぎ捨ててそのまま目をつぶってしまった。 自分が全裸だということを忘れる作戦のようだが…それもひっかかるんじゃないのか? 「さぁて、最初は何にしようかしらね…やっぱりベース作りかしら。」 どうやら縛りたいらしく、赤い紐を引っつかんで何か考え込んでいる。 「どうするんだ?」 「最近縛り方の本を読んだのよね…でも男の子なら菱縄しかないかなと思って」 オイオイ、なんつーもん読んでんだ。花も恥らう女子高生が高度な本読むんじゃありません。 「さ、手を後ろに回して」 「ま、待ってください!…もう少し」 目をつぶりながら両手を前に突き出した古泉は、また地雷を踏んだようだ。運の悪いやつだな。 ルールその二。自分からハルヒに触ること…禁止!! 「ひぃ…っ!!」 「目もちゃんと開けなさい。ああ、もう少し足開いて。」 あっと言う間に縛り上げられてしまった古泉は、足を開いた状態で床に座らされた。 「次はやっぱりコレよね!」 どうでもいいがなんでそんなにノリノリなんだ、ハルヒ。 「だって楽しいじゃない!いつもニコニコ笑ってる古泉君の表情が苦痛に歪むのよ?!ゾクゾクするわ!!」 団長様はよく分からない液体と、男性器を模した物体を握り締めながら満面の笑みを浮かべている。 「滑りを良くしなくちゃ入らないわよね、男の子だもん。」 ハルヒは古泉の股間に正体不明の液体を全部ぶっかけると、後孔に手をかけた。 「そこは…っ!だ…」 「だめ、じゃないでしょ?」 「だ…めじゃ…ない、です…っ」 「否定語を2回重ねたわね…こーしちゃおうっと。」 今のはいささか卑怯すぎないか?ハルヒよ。 持っていたバイブを頭の部分だけ滑り込ませると、スイッチを入れて後ろに少し下がった。 「あああああっ…ふぅ、ん…!!」 「ちゃんと口あけて声出しなさいよ、いい声してるんだから。…ちなみに、あたしの命令は絶対だからね!」 それはいつものことだろ。 「ちゃんと締めないと出てきちゃうわよ、イヤでしょ?」 「はぁ…いっ……うぁあっ…ん!」 古泉的には閉鎖空間とこの状況とどっちがイヤなんだろうか…こっちだな。 「ねえ、使った感想、聞かせてくれない?」 「変なっ…気分に、ぃッ!…なり、ま……すぅッ!!…はァん!」 「よろしい。正直でいい子な古泉君にはご褒美をあげちゃうわ!」 そう言い放つとハルヒは、古泉の中に入っていやらしい動きを続けるブツを一気に押し込んだ。 「ひゃああああっ!!!…そん、なぁッ!おく、までぇぇッ!!」 「なーんにもしてないのに、ココから溢れてる…感じてるのね?」 既に十分勃ったペニスを眺めて終始ニヤニヤしている。こういう職業に向いてるんじゃないか?ハルヒ。 「も、もふぅ…ぁっ!……イ…イっちゃうぅ…ん!!」 「だぁめ。…そだ、出ないように縛っておきましょう、いいわよね?」 ハルヒはあたりをきょろきょろした挙句、傍らに放り出されていたネクタイに目をつけると、ぐるぐるとペニスに巻きつけやがった! 古泉はと言えば、口から涎を垂れ流しながら息をするのも辛そうなほど喘いでいる。言っとくが、うちにはお隣さんがいることを忘れるなよ。 「ハァ…す、ずみやァッ…さん…許し、てぇええっ!」 「キョン、デジカメ。…早く!」 撮るのかよ、コレを…こんなのネットに流出でもしたら確実に自殺するぞ、こいつ。 「大丈夫よ、あたしの家に保管するから。」 余計ダメだろ、と思いつつもフル充電のデジカメを渡してしまう俺はなんなんだろうな。 一枚一枚注文をつけたり口に指を突っ込んだりして撮影していくハルヒに、余裕がないなりに答えている古泉を見ていると…なんだか健気過ぎて泣けてくるね。 あとでジュースの一本でもおごってやるか。間違いなく今日のMVPだよ、お前は。 「さて、と。そろそろかしらね。」 てっきりネクタイを解いてやるのかと思ったら、解きかけたまま指でバイブをさらに深くまで押したではないか。鬼畜め。 「触らッ……ひゃううッ!!」 衝撃が強すぎたのか、精液を腹にネクタイに床にと、派手に撒き散らして古泉はイッてしまった。 「あ~あ、ネクタイにかかっちゃったわね…だから言ったじゃないの、出しちゃだめだって。」 それから服を着てハルヒが帰った後も古泉は泣き続けていた。 「も…もう、ヒッ、お嫁に、いけない…ヒック、ですぅ…!」 何言ってる、ハルヒに貰ってもらえばいいだろ。毎日楽しいと思うぜ?
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/3795.html
なあハルヒ? 冗談を言うのも程ほどにしろよ。 皆深夜までも続く演技で疲れてんだからさ、お前がそんな事を言いたくなる気持ちも分る。だが、それは無いだろう。そんな冗談言ってると、某ギャグ漫画の魚雷姉さんが突っ込んでくるぞ。 「冗談?そんなもんじゃないわよ」 違うのか。じゃぁなんだ、ドッキリか。 「ドッキリでもないわ。本気よ」 本気と書いてマジと読むのかハルヒ? 「マジよマジ。マジ過ぎて古泉君が小泉君になるくらいだわ」 其の時俺は、部屋の隅の方で胡散臭いニヤケ男が蹲ってるのが見えたが、まあいいか。“小泉”だし。 「『涼宮ハルヒの憂鬱』の、第二期を中止するわ!」 「代わりと言っちゃあ何だけど、その代わり、新アニメーション化する事にしたわ!!」 新アニメーション化とか何とか言って、どうせまた俺の気苦労が増えるだけだろうな。 ふぅ、やれやれ。 終わり?
https://w.atwiki.jp/yuriharuhi/pages/52.html
二学期がもうすぐ終業式を迎えるある日の午後。 コンビニに行くと言って席を立った古泉は、扉の前でいつもの微笑をたたえ、SOS団アジトを振り返った。 「何か用がございましたらどうぞ」 「古泉くん、あたし雪見だいふくお願いね!」 早速ハルヒが勢い良く挙手して言った。 お前には遠慮と言うものが…ま、古泉だしいっか。 「古泉、ジャンプ頼む。料金後払いでな」 「あのー、古泉くん、ハンドクリームを…あればでいいです。 よろしくお願いします」 朝比奈さんが律義に古泉に頭を下げるのを見つめていると、長門がいつの間にやら古泉の真横に移動していた。 「私も、行く」 ん?古泉に頼んだらどうだ?そのために奴も皆の注文を聞いているんだろうし。 俺がそう思っていると、ハルヒも同じように思ったんだろうな、 「有希、古泉くんに頼んだら? 遠慮してるんだったら大丈夫よ、古泉くんは私が見込んだSOS団の副団長だもん。 断るなんてキョンみたいなケチ臭いことしないわよ!」 市内探索の度に全員分の昼食代やら茶代やらを払っている俺のどこがケチ臭いと言うんだハルヒさんよ。 「いいの?」 古泉、今すぐ俺と代われ。 長門にそうやって上目使いに尋ねられるんならパシリくらい安いもんだ。 「勿論です。どうぞご遠慮なく」 コートを手に取った古泉が長門に爽やかスマイルで促すと、長門は 「昼、少ない日用。羽付き」 とだけ呟いた。 「ゆーきぃー!!!」 長門の一言で外の気温よりも冷たくなった空気の中、真っ先に動いたのはハルヒだった。 「な、長門さん!」 少し出遅れた朝比奈さんも、ハルヒと同じく長門に駆け寄った。 ふたりして長門を抱き寄せ、顔に掛かるふたり分の胸の圧力に身動きできずにいる、なんとも羨ましい状態の長門を古泉から引き離す。 その古泉はと言うと、あまりのことに爽やかスマイルのままその場に固まり、このクソ寒いのに汗を一筋流すなどと高度な技をやってのけていた。 ハルヒと朝比奈さんは俺と古泉から最も離れた場所、つまりハルヒの団長机まで長門を連行して、そこでやっと長門を解放した。 「ゆゆゆ、有希、あなた学校でなったの?」 「なった」 「どうして私に言わないの!? みくるちゃんでも良いわ、とりあえずそーゆー時は知っている人に持ち合わせがあるかどうか聞くもんなのよ!」 ハルヒの物凄い剣幕に、長門はそうなの?とでも言うように首を傾げ、朝比奈さんはハルヒの言うことにこくこくと頷いていた。 「でも、聞くと言っても、そういうのは男の人に聞いちゃだめです」 そこでハルヒ達は全員が全員、俺と古泉の方を見た。 ハルヒは睨み付け、朝比奈さんまでもが咎めるように。 長門はただ見つめただけだったが、なんだなんだ、ハルヒと朝比奈さんのその目は。 俺も古泉も誰にも何もしてないぞ。 何故か冷や汗が垂れてきた。 「それに、古泉くんと有希が一緒にコンビニ行って、よ。 有希がそれ持ってレジに並んだら、古泉くんがなんてリアクションしたら良いか解らなくて困るでしょ!」 「べ、別に何もリアクションなんてしませんが…」 うん、こればっかりは俺も古泉がハルヒに反論するのも無理ないと思うぞ。 俺だって見て見ぬフリをするさ。 「解ってくれましたか?長門さん」 朝比奈さんがまるで姉のように長門に問い掛け、長門がこくっと頷いた。いいね、和む。 「って、悠長にしてる場合じゃないわ!」 ハルヒは自分の鞄に手を突っ込んで小さいポーチを取り出すと、長門の手を掴んで扉までずかずか歩いて行った。 古泉が扉の前から退くと、何故かハルヒは奴を一瞥してから勢い良く扉を開けて部室から出て行った。朝比奈さんもそれに続く。 そりゃな、あんな会話をした後に男共とひとりで残るのは気が引けるだろうよ。 ぱたん、と扉が閉められる音を聞いてから、盛大な溜息をついて俺は机に突っ伏っした。 はー、やれやれ、一気に疲れた。 古泉が壁にもたれ掛かって、そのままずるずると床にへたり込む。 こりゃいつものオーバーリアクションじゃなくて素っぽいな。当然か。 「それにしても、驚きました」 「ああ、宇宙人の長門にもそーゆー…」 「近頃のコンビニって何でも置いてあるんですね」 そっちかよ。今時パンツだって売られてるぞ。 いや、そうやってツッコむ気力さえ今の俺にはもう無いさ。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5029.html
俺が朝目覚めると、目の前にハルヒの寝顔があった。 一瞬戸惑ったが、昨日のことを思い出す。 ちなみに俺達は付き合っていたのだが、こういうことをしたのは今回が初めてだ。 俺もまぁしたくないわけではなかったのだが、ハルヒに拒否されるかと思うと怖くて出来なかったんだ。しかし、昨日ハルヒが俺のことを挑発してきて、ついに俺の理性がぶちぎれてしまったわけだ。 そう、俺とハルヒはその何と言うかまぁそういうことをしてしまったわけだ。 ハルヒは中学時代に付き合いまくってたにも関わらず初めてだった様だ。まぁ、俺もそうだったがな。 そんなことを思いながらハルヒの寝顔を見る。 やっぱりきれいだ。俺の自慢の彼女だもんな。 時計を確認すると、そろそろおきたほうが良い時間のようだ。今日は学校もあるしな。さぼろうかと思ったが、ハルヒと二人でさぼったら古泉たちに何を言われるか分からん。 さて、ハルヒを起こすか。 俺が起こすと、ハルヒは比較的寝起きが良いようで、スッと起きた。 「おはよう」 あぁ、おはよう。体、大丈夫か? 「あ、うん///大丈夫そう。ちょっとスースーするけど…」 学校行けそうか? 「大丈夫」 そうか、じゃ早く準備して行くぞ。 「キョン、おはようのキスして。」 あぁあぁ、わかりましたよ。 チュッと軽いキスを落とす。 「ねぇ、もっとやってよぉ」 仕方ねぇな・・・学校前だぞ? 俺たちはさっきより濃厚なキスをした。 「ぷはぁ・・・キョン、朝から激しすぎよ。」 すまん、お前が可愛すぎだからだ。 「もう///」 すると、俺はあるいたずらを思いついた。 おいハルヒ、お前今日俺のいう事聞いてくれるか? ちなみにこういうとき、ハルヒは大抵俺のいう事を聞いてくれる。付き合う以前はともかく、こいつから告白してきたし、ハルヒは俺と二人っきりの時は比較的素直だ。 「何?キョン」 これ挿れて学校行ってくれないか? 「え、これって…」 俺達は昨日、初夜だとは思えないほど激しいプレイをし、道具なども使ったわけだ。 俺の手に握られていたのは、昨日ハルヒの前戯に使ったバイブだった。 「でも…」 いいだろ? 「ばれちゃわないかな?」 大丈夫だよ、お前もスリルは大好きだろ? ほら入れるぞ。 「あ・・・ん」 ハルヒの中にバイブを入れる。 「ん・・・あぁん・・・」 おいハルヒ、もう感じてるのか?一日持たないぞ? 俺の中で何かのサディズムが目覚めてしまったようだ。 まぁ、付き合う以前は散々尻に敷かれていたし大丈夫だろう。 何やかんやあったが、俺達は無事に学校に時間通りについた。何とか一緒に来たこともばれなかったようだ。 そして ハルヒの膣には今バイブが挿入されている。 授業は始まったが、ハルヒは真っ赤な顔をしたままずっと下を向いたままだ。 かくいう俺はチラチラと後ろを確認している。 すると、ハルヒが俺をつついて小さな声で言ってきた。 「キ、キョンー…あ・・・はぁ・・・もう無理っぽいよぉ・・・」 確かに、もうハルヒの秘部から出たと思わしき匂いが充満し始めている。このままじゃばれてしまうかもしれない。 じゃぁ、この授業が終わるまで我慢できるか? 「が、頑張ってみるわ・・・」 休み時間になった瞬間、ハルヒが話しかけてきた。 「キョンー・・・早く抜いてぇ・・・もう無理だよぉ」 そうかそうか、よく我慢したな。 ほら、立て。保健室行くぞ。 ハルヒは立とうとしたが、その瞬間にしゃがみこんでしまった。 「キョン、立てないよぉ、足に力が入らない・・・」 仕方がない、俺はハルヒをお姫様抱っこして保健室に行った。 すると、ちょうど良いことに保健の先生は居なかった。 ほら、ハルヒ、寝転がれ。抜いてやるから。 「ありがと・・・キョン。」 ハルヒは顔を真っ赤にしていて、相当感じているようだ。 俺はハルヒをベッドに寝かせ、先生が来てもばれないようにベッドの周りのカーテンを閉める。 ハルヒ、足を開けろ。 グチョ、ヌチャ いやらしい音を立てながら、ハルヒが股を開く。 俺はパンツの上から、軽くハルヒの秘部を撫でる。 「あ・・・」 ビチョビチョじゃないか、むしろ洪水だ。感じてるのか?ハルヒ。 「ん・・・もう、キョンのせいなんだから。」 俺はハルヒのパンツをずらし、バイブを抜いた。 抜いたあとにハルヒのハルヒの穴を見ていると、何かを求めているようにヒクヒクしている。 「キョン、そんな見ないで・・・」 そうか。 俺はそういうとハルヒのパンツを元に戻した。 正直俺も今すぐにでも押し倒したかったし、俺の息子もかなり大きくなって居た。それにハルヒも感じていて、もっとして欲しいようだ。だが、あえて裏切ってみる。 「え・・・?キョン、もっとしてくれないの?」 何言ってるんだ、ここは学校だぞ?家まで我慢できたらやってやるよ。 「えー・・・」 やれやれ、これからあと学校が終わるまで、俺もハルヒも耐えられるかな・・・ っていうか初めてなのに二人ともやりすぎだろw
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/2524.html
γ-1 「もしもし」 山びこのように返ってきたその声は、ハルヒだった。 ハルヒが殊勝にも、「もしもし」なんていうのは珍しいな。 「あんた、風呂入ってるの?」 「ああ、そうだ。エロい想像なんかすんなよ」 「誰もそんな気色悪いことなんかしないわよ!」 「で、何の用だ?」 「あのさ……」 ハルヒは、ためらうように沈黙した。 いつも一方的に用件を言いつけるハルヒらしからぬ態度だ。 「……明日、暇?」 「ああ、特に何の予定もないが」 「じゃあ、いつものところに、9時に集合! 遅れたら罰金!」 ハルヒは、そう叫ぶと一方的に電話を切った。いつものハルヒだ。 さっきの間はいったいなんだったんだろうな? 俺はそれから2分ほど湯船につかってから、風呂を出た。 γ-2 寝巻きを着て部屋に入り、ベッドの上でシャミセンが枕にしていた携帯電話を取り上げてダイヤルする。 相手が出てくるまで、10秒ほどの時間がたった。 「古泉です。ああ、あなたですか。何の御用です?」 俺の用件ぐらい、察してると思ったんだがな。とぼけてるのか? 「今日のあいつら、ありゃ何者だ?」 「そのことなら、長門さんに訊いた方が早いでしょう。僕が話せるのは、橘京子を名乗る人物についてぐらいです」 「それでかまわん」 「彼女は、『機関』の敵対組織の幹部といったところですよ。まあ、敵対とはいっても血みどろの抗争を繰り広げているというわけでもないですが」 「なら、どんなふうに敵対してるってんだ?」 「彼女たちも僕たちも、そうは変わらないんですよ。似たような思想のもとで動いてますが、解釈が違うといいますかね。まあ、幸い、彼女はまだ話が通じる方です。組織の中では穏健派寄りのようですからね。あの朝比奈さん誘拐事件も、彼女の本意ではなかったと思いますよ」 ほう。お前が弁護に回るとはな。 「それはともかくとして、橘京子の動きは僕たちがおさえます。別口の未来人の方は、朝比奈さんに何とかしてもらいましょう」 まあな。朝比奈さん(大)だって、あのいけ好かない野郎に好き勝手させるつもりはないだろう。 「問題は、情報統合思念体製ではない人型端末です。何を考えてるのか、全く読めません。長門さんの手に余るようなことがあれば、厳しい状況ですね」 「長門だけに負担をかけるようなことはしないさ。俺たちでも何かできることはあるだろ」 「僕もできる限りのことはしますよ。でも、万能に近い宇宙存在に比べると、我々はどうしても不利です。こればかりは、いかんともしがたい」 それを覆す切り札がないわけではないがな。 だが、それは諸刃の刃だ。 「ところで、おまえのところにハルヒから連絡がなかったか?」 「いえ、何もありませんでしたが、何か?」 「いや、明日の朝9時に集合って一方的に通告されたんだが」 古泉のところに連絡がないとすれば、どうやら、明日ハルヒのもとに召喚されるのは、俺だけらしいな。 「ほう。デートのお誘いですか? これはこれは。羨ましい限りですね」 「んなわけないだろ。どうせ、俺をこき使うような企みがあるに違いないぜ」 「涼宮さんも、佐々木さんとの遭遇で、気持ちに変化が生じたのかもしれませんよ。奇妙な閉鎖空間については、先日お話ししたかと思いますが」 「あのハルヒに限って、それはありえんね」 「修羅場にならないことを祈りますよ。僕のアルバイトがさらに忙しくなるようなことは避けてほしいですね」 「勝手に言ってろ」 古泉との電話はそれで打ち切られた。 次は、長門だ。 今度は、ワンコールで出た。 「…………」 「俺だ。今日会ったあの宇宙人なんだが」 「彼女は、広域帯宇宙存在の端末機」 即答だった。 「俺たちを雪山で凍死させようとしやがった奴ってことで合ってるか?」 「そう」 「あの宇宙人とは、何らかの意思疎通はできたのか?」 「思考プロセスにアクセスできなかった。彼女の行動原理は不明」 「広域帯宇宙存在とやらの考えも分からんか」 「情報統合思念体は彼らの解析に全力を尽くしているが、成果は出ていない」 「そうか」 このあと、長門は、淡々とした口調でこう告げてきた。 「私は、情報統合思念体から、最大限の警戒態勢をとるよう命じられた」 長門の抑揚のない声が、異様なまでに重く感じられた。 γ-3 ハルヒにこき使われるに違いない明日に備えて寝ようとしたところを、妹が襲撃してきやがった。 しぶしぶ、妹の宿題につきあうこと1時間。 シャミセンと戯れ始めた妹を、シャミセンごと追い出すと、俺はようやく眠りについた。 γ-4 翌、日曜日。 妹のボディプレスで起こされた俺は、朝飯を食って、家を出た。 「遅い! 罰金!」 もはや規定事項となった団長殿の宣告も、今日ばかりは耳に入らなかった。 なぜなら、ハルヒの隣に意外な人物が立っていたからだ。 「なんで、おまえがここにいるんだ?」 ハルヒの隣には、佐々木の姿があった。 「酷いな、キョン。僕がここにいるのがそんなに不思議かい? まあ、驚くのは無理もないが、そんなに驚くことはないじゃないか。昨日、涼宮さんに電話で提案してみたのだよ。昨日会ったのも何か縁だろうから、いろいろと話し合いたいとね」 「あたしも聞きたいことがいろいろとあるし、快諾したってわけ」 ハルヒ。佐々木がお前の電話番号を知っていることを不思議に思わなかったのか? まあ、橘京子あたりが調べて佐々木に教えたんだろうけどな。 「事情は分かった。だが、なんで俺まで一緒なんだ? 話し合いたいことがあるなら、二人で話し合えばいいことだろ?」 「キョン、君は相変わらずだね。この調子じゃ、涼宮さんもだいぶ苦労してるんじゃないかな」 待て。なんでそんなセリフが出てくるんだ? この唯我独尊団長様に苦労させられてるのは、俺の方だぜ。 「フン。いつものところに行くわよ!」 なぜか不機嫌になったハルヒの号令のもと、俺たちはいつもの喫茶店に向かった。 ハルヒは、俺の財政事情には何の考慮も払わず、ガンガン注文を出しまくった。 話し合いというのは、何のことはない。 俺の中学時代と高校時代のことを互いに話すというものだった。 まずは、ハルヒが、佐々木に、高校時代の俺のことについて話した。 なんというか、話を聞いているうちに、俺は自分で自分をほめたくなってきたね。ハルヒにあれだけさんざん振り回されてきても、自我を保持している自分という存在を。 「キョン。君は、実に充実した学生生活を送っているようだね」 それが佐々木の感想だった。 なんだかんだいっても、充実していたというのは事実だろう。 だが、俺はこう答えた。 「ただ単にこき使われてるだけだ」 「くっくっ。まあ、そういうことにしておこうか」 次は、佐々木が、ハルヒに、中学時代の俺のことについて話した。 話を聞いているうちに、ハルヒの顔がどんどん不機嫌になっていく。 聞き終わったハルヒは、不機嫌な顔のままで、こう質問してきた。 「ふーん。で、二人はどういう関係だったわけ?」 「友人よ」 さらりとそういった佐々木を、ハルヒはじっとにらんでいた。 「あのなぁ、ハルヒ。確かに誤解する奴はごまんといたが、俺たちは友人だったんだ。やましいことなんて何もないぜ」 「友人以上ではなかったってこと?」 「それは違うわよ、涼宮さん。正確には、友人『以外』ではありえなかったというべきね。少なくても、キョンにとってはそうだったはず」 どこが違うんだ? 俺のその疑問には、誰も答えてはくれなかった。 「はぁ……」 ハルヒは、大げさに溜息をつきやがった。 「あんたが嘘をついてるなんて思わないわよ。でも、嘘じゃないなら、なおのこと呆れ果てるしかないわね。あんた、そのうち背中からナイフで刺されるわよ」 おいおい、物騒なこというなよ。 ナイフで刺されるのは、朝倉の件だけで充分だ。 「僕も同感だね」 佐々木まで賛同しやがった。 俺がいったい何をしたってんだ? 茶店代は当然のごとく俺の払いとなった。 総務省に俺を財政再建団体の指定するよう申請したい気分だ。俺の懐具合が再建するまでには、20年はかかるだろうね。 そのあと、三人で不思議探索となった。 傍から見れば、両手に花とでもいうべきなんだろうが、この二人じゃ、そんな風情じゃないわな。 そういえば、ハルヒとペアになるのは、あの日以来か。 結局のところ、俺はハルヒにさんざん振り回され、佐々木の小難しいセリフを聞き流しながら、一日をすごすハメになった。ついでにいうと、昼飯までおごらされた。 そして、駅前での別れ際。 俺がふと振り返ると、ハルヒと佐々木は二人でまだ何か話していた。 何を話しているかは聞こえなかった。 知りたいとも思わなかった。この時には。 γ-5 月曜日、朝。 昨日の疲れがとれず、俺は重い足取りで、あのハイキングコースを這い上がった。 学校に着いたころにはずっしりと疲れてしまい、早くも帰りたくなってきた。そんなことは、俺の後ろの席に陣取る団長様が許してくれるわけもないが。 ハルヒは、微妙にそわそわした感じだった。 また、何か企んでいるのだろうか? 俺が疲れるようなことでなければいいのだが。 疑問には思ったが、疲れた体がそれ以上考えることを拒否し、俺は午前中の授業のほとんどを睡眠という体力回復行為に費やした。 寝ている間に、何か長い夢を見たような気がしたのだが、目が覚めたときにはきれいさっぱり忘れていた。 昼休み。 なぜかハルヒが俺の前の席に陣取り、椅子をこちらに向けてドカッと座った。 俺の机の上に、弁当箱を置く。 「今日は弁当なのか?」 「そうよ。そんな気分だったから」 机の上には、俺の弁当箱とハルヒの弁当箱が並んでいる。 こうして、二人で向かい合って、弁当を食うハメとなった。 なにやら誤解を受けそうな光景だ。実際、クラスのうち何人かがこちらをちらちら見ながら、こそこそと話をしている。 ハルヒは、相変わらず健啖ぶりで、弁当を平らげていた。 「その唐揚げ、おいしそうね」 ハルヒは、そういうや否や、俺の弁当箱から、唐揚げを取り上げ、食いやがった。 「ひとのもん勝手にとるな」 「うっさいわね。しょうがないから、これをやるわよ」 ハルヒは、自分の弁当箱から玉子焼きを箸でつまむと、そのまま俺の口に突っ込んだ。 「むぐ」 クラスの女子から、キャーというささやき声が聞こえる。 とんだ羞恥プレイだな。 こりゃいったい何の罰ゲームだ? 「感想は?」 ハルヒが、挑むような目つきで訊いてきた。 「うまい」 実際、それはうまかった。 「当たり前でしょ! 団長様の手作りなんだからね!」 そういいながら、ハルヒの顔は上機嫌そのものだった。 だがな、ハルヒよ。 いくらお前が鋼の神経をしているとはいえ、こういう誤解を受けかねないような行為は避けるべきだと思うぞ。 まあ、誤解する奴はいくら説明してやったってその誤解を解くようなことはないんだけどな。 俺が中学3年生時代の経験で学んだことといえば、それぐらいのものだ。 その日の放課後、俺とハルヒはホームルームを終えた担任岡部が教卓を降りると同時に席をたち、とっとと教室を後にした。 いつものように部室に行くのかと思いきや、 「キョン、先に行っててくんない? あたしはちょっと寄るところがあるから」 ハルヒは鞄を肩掛けすると、投擲されたカーリングの石よりも滑らかな足取りで走り去った。 はて、何を企んでるんだろうね? そういや、あいつは、朝から妙にそわそわした感じだったな。 まあ、考えても仕方がないので、俺はそのまま部室に向かった。 γ-6 部室に入ると、既に長門と朝比奈さんと古泉がそろっていた。 「涼宮さんは?」 古泉がそう訊いてきたので、答えてやった。 「授業が終わったとたんにどっかにすっ飛んでいきやがったぜ」 「そうですか。何かサプライズな出来事を持ってきてくれるかもしれませんね」 「世界が終わるようなサプライズは勘弁してほしいぜ」 「まあ、それはないでしょう」 そこに、SOS団の聖天使兼妖精兼女神様である朝比奈さんがお茶を出してくれた。 「どうぞ」 「ありがとうございます」 「ところで、昨日はどうだったんですか?」 古泉がにやけ顔で訊いてきやがった。 いつもだったら無視しているところだが、あの佐々木の周りにはSOS団と敵対している超常野郎が集まっている。一応、古泉の見解も聞いてみたかった。 俺は昨日の出来事をはしょりながら説明してやった。 「おやおや。まさに両手に花ではありませんか?」 「あの二人じゃ、とてもじゃないがそんな気分にはなれなかったね」 「まったく、あなたという人は」 「それより、佐々木のやつは、あいつらに操られてるんじゃないだろうな?」 心配なのは、そこのところだ。 「それはないと思いますよ。昨日の一件は、佐々木さんの自由意思でしょう。問題は、その自由意思を利用しようとする輩が現れることです。先日もお話ししましたが、特に警戒すべきは周防九曜を名乗る個体です」 俺は、長門の方を見た。 「長門の意見はどうだ?」 長門は、分厚いハードカバーから視線を離さず、淡々と答えた。 「私も、古泉一樹の意見に同意する」 「そうか」 一応、もう一人のお方にも聞いておくか。 「朝比奈さん」 「はい?」 「二月に会った、あの未来人のことですが」 「ああ、はい。覚えてます」 「あいつらが企んでいることって何ですか? ハルヒの観察ってわけでもないらしいって感じなんですが」 「えーっと……あの人の目的は、そのぅ、あたしには教えられていません。でも、悪いことをするために来たんじゃないと思います」 うーん。自分を誘拐した犯人たちの仲間だというのに、不思議なことに、朝比奈さんはあの野郎には悪い印象は持ってないようだ。 仏様のように広い御心の持ち主なのは結構ですが、もうちょっと警戒心とかを持った方がいいと思いますよ。 それはともかく、とりあえず、警戒すべきは周防九曜を名乗る宇宙人もどきであるというのが、結論になりそうだな。 その話題は、そこで打ち切りになった。 「どうです、一勝負」 古泉が出してきたのは、囲碁かと思ったら、連珠とかいう古典ゲームらしい。 「五目並べのようなものです。覚えたら簡単ですよ」 俺は古泉の言うままに盤上に石を置きながら、実地でだいたいの遊び方を教わった。 朝比奈さんのお茶を片手に二、三試合するうち、たちまち俺は古泉に連戦連勝するようになる。 いつもどおりまったりと時間が過ぎていった。 それにしても、ハルヒは遅いな。 そう思った瞬間に、爆音とともに扉が開いた。 「ごめんごめん。待たせたわね!」 部室にいた団員全員の視線が、ハルヒに集ま……らなかった……。 団員の視線は、ハルヒの後ろに立っている人物に集中していた。 「みんな! 今日から入団した学外団員を紹介するわ! 佐々木さんよ!」 そこにいたのは、紛れもなく佐々木だった。 続き 涼宮ハルヒの驚愕γ(ガンマ)
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5950.html
涼宮ハルヒの異界Ⅱ さて、俺がハルヒから教えてもらった、この異世界人の名前は蒼葉(あおば)さん、と言うことだった。 俺たちとはまた違う別の世界からやってきた、その世界のとある機関のエージェントということらしい。 もっともこれ以上、詳しい説明は目の前の彼女もハルヒからもしてもらえなかった。 ハルヒは何でも知りたがる小学生に上がったばかりの子供のように詳しく聞いていたが蒼葉さんははぐらかすのみである。 「この厄介事が片付いたらもう会えることは0に限りなく近い確率でほとんどなくなるから知る必要もないわよ」 これが蒼葉さんの答えだった。 なるほど確かに理にかなっている。 異世界に行くにはどうすればいいか。 それはもう空間を越えるしかなくて、また異世界の数も天文学的な数であるから、万が一、他の異世界とやらに行けたとしても、そこが蒼葉さんの住む世界とは限らないのである。 なぜなら異世界に通じる扉というものは存在しない。つまり奇跡に近い偶然を通り抜ける必要がある訳で、それにプラス異世界の数を思えば確かに蒼葉さんの言うとおり、俺たちが再会する可能性は限りなく0に等しいものとなる。 いくらハルヒに確率論が通用しないと言っても天文学的数字の天文学的数字乗をひっくり返すなんて無茶なことはさすがにできないことだろう。 だから彼女のことを詳しく知る必要もないし、また蒼葉さんも俺たちについては何も聞いてこないのである。 「そう言えば、蒼葉さんはどうしてこの世界に?」 ハルヒのパパラッチ並のしつこい尋問を冷静な表情で涼やかにさらりと流し続けていた蒼葉さんに俺は尋ねた。 彼女の視線がこちらを向く。 「私たちの世界を救うために来た」 笑顔の彼女の答えは簡潔だったがその瞳には決意めいた固い意志の光が灯っていた。 「世界を救うため?」 「そうよ。んまあこれは話してもいいわね。今、私たちの世界は存続の危機に立たされたの」 何でまた? 「時空にこの新しい世界が生まれつつあるからよ。それが今回はたまたま私たちの世界と隣接してた。んで.、この世界が誕生すると私たちの世界はその余波で吹っ飛んでしまうってわけね。正直危なかった。もう少し遅れてたらアウトだったわ」 「この世界が生まれる? この世界はまだ誕生してないってこと?」 ハルヒが尋ねる。 「そうよ。この世界にはまだ『壁』があったからね。半径およそ2キロメートル。ちょうどこの建物が経っている敷地全体を覆ってるって感じね。それさえ破壊されない限りはまだ時間は残されてる」 なるほど、あの見えない壁のことか。ハルヒの精神状態不安定から来る閉鎖空間は半径5キロとか古泉は言っていたが、新しい現実世界の誕生は半分以下くらいに縮まるのだろうか。そう言えば前にハルヒがいた時も学校の敷地に沿って見えない壁があったか。 ん? ちょっと待て。あれは誰が壊せるんだ? 「さっきいた、あの青白い巨人が壊せるのよ。あんたたちの世界だとあいつらのことを何て言うか知らないけど、私たちの世界の言葉で言えば『境界を破壊する者』かな?」 ……んなマンガみたいなカタストロフネタがあるもんなんだな……まあこの世界に来ている時点で俺の常識論も通用しないのだろうか。思わず蒼葉さんの言葉に納得してしまったね。 そう言えば、どうして俺たちにあなたの言葉を理解できるんです? まさかあなたが日本語を知っているとは思えないのですが。 「ニホンゴというのが何の言語を指しているのか分かんないけど、まあお互いの言葉が分かることに関して言えば大した理由はないわ。補正ってやつよ。確か何かの娯楽読み物(ペーパーバック)で、別の国の人同士の会話で通じてるの見たことあったし、それと同じなんでしょ」 ……納得できないけど納得するしかないのだろうか? 気がつけば、俺たちは再び校庭に辿り着いた。 「ねね、蒼葉さん! これからどうするの?」 蒼葉さんに嬉々として問いかけるハルヒ。 そう言えば、あの《神人》たちは消し飛ばしたわけだが、それでもこの世界が消えたわけじゃない。 つまり、蒼葉さんの住む世界の危機が過ぎ去ったわけじゃないということと同意語なんだよな。 いや待てよ? あの《神人》たちが消え去ったら、この世界の閉鎖は解かれて通常に戻るんじゃなかったか? マジで古泉か長門が説明しに来てほしいのだが…… 長門……か…… 俺は何気なく校舎を見上げる。思い出すのは去年の5月のこと。あの向こうの世界とこっちの世界でのチャットである。 新校舎の方は半分以上が破壊されているので、ここからでも旧館がよく見える。もちろん、その一角に位置する明かりの灯った文芸部室の窓もだ。 そう言えば電気を付けっ放しで来たな。 「そうね。まずはこの世界の『創造主』を見つけたいところね」 「創造主?」 蒼葉さんとハルヒが話し合いをしている姿を横目に捉えて―― しかし、俺の方も旧館・文芸部室に行く訳には行かなかった。 こんな場所で単独行動をハルヒは勿論、雰囲気から察するに百戦錬磨っぽい蒼葉さんが許してくれるとは思えない。 「そ。人どころか生命体が何一ついなくても、創造主は必ずこの世界にいるはずなのよ。でないと世界ができるわけがない。だから創造主を見つけて、出来れば話し合いで解決したいところね。この世界の誕生は勘弁してください、って」 「なるほど。でも話し合いで解決しないときは――って、考えるまでもないですね」 「を? 分かるの?」 「そりゃまあ力づくしかありませんから」 「まあね。穏便に済ませたいけど、そうもいかないときは――ね。その創造主がどんな姿してるか分かんないけど、どんな姿かたちだろうと躊躇する気はないわ。さすがに創造主がいなくなればこの世界は消失してくれるからね。この世界にまだ息吹は感じないから罪悪感も湧かないし」 蒼葉さんの殺意さえ漂わせた真剣は眼差しは俺の背中に冷たい汗を浮かばせるには充分だった。 い、今……さらっととんでもないことを言ったよな……本気か……? むろん怖くて聞けないが。 「だったらさ!」 ハルヒが勢い込んで蒼葉さんに言い寄り、 「あたしたちも手伝います! 何かの役に立てるかもしれないじゃないですか!」 「……遊びじゃないのよ?」 「もちろん解ってますって! その『創造主』とやらを探すだけです! 見つけたら即座に蒼葉さんを呼びます! 危ないことはしません!」 おいおい。んな好奇心いっぱいの今からどこか楽しいところに遊びに行くような笑顔で提案したって蒼葉さんがげんなりした視線を向けるだけだろが。もっと深刻そうな雰囲気で言えよ! などと心の中でツッコミを入れる俺なのだが。 「……そうね……私も背に腹は変えらんないし……」 って、承諾ですか!? しかもハルヒはご丁寧に『あたしたち』と言ったのである。当然、俺も協力せざる得ない。 しかしまあ、正直なところハルヒを蒼葉さんに付き出すだけでいいのだが…… いかんせん、それが正しいことなのかどうかが分からん。 なんせ、それを蒼葉さんに言うということは、ハルヒに自身の不思議パワーを自覚させることでもあるんだからな。 ましてや蒼葉さんは相当物騒なことを言った。 仮に自分の能力を自覚してもハルヒがこの世界を消す方法を知ることができるとは限らん。もしこの世界の消失方法をハルヒが思い浮かばなかったときは蒼葉さんはまず間違いなく躊躇わない。 異世界のまったく知らん一人の命より、自分の世界すべての命を取ることだろう。もしハルヒが蒼葉さんの命を救った恩人ならともかく、さっきの対《神人》戦のときは俺たちは何の役にも立っていないし、蒼葉さんは、ハルヒ曰く《神人》全てを殲滅させたのち、ハルヒに声をかけられてやっと俺たちに気付いたほどだったらしいからな。 「じゃ、これをそれぞれ持ってくれる?」 蒼葉さんはハルヒと俺にそれぞれ何か小石くらいの大きさのしかし滑らかで厳かな光を放つ宝石のような水晶を手渡してくれた。 「それを肌身離さず持っててね。何か見つければその魔石――石に念波を送って頂戴。それで私は感知できる。すぐそっちにテレポートするから」 きゃっ! すご! そんなアイテムがあるんですか!? ていうか、これ貰ってもいいの!? と、ハルヒが満面の笑みでそんなことを口走るんじゃないかと思ったがどうやらそれは杞憂に終わったらしい。 「分かりました。何か見つけたら必ず蒼葉さんに知らせます」 随分と真面目な声で返している。もっともその表情には好戦的な笑みが浮かんではいたが。 「キョン、あんたもいいわね?」 「あ、ああ」 いきなり俺に振るハルヒに、少しどもって首肯する俺。 そんな俺たちの様子に蒼葉さんはどこか微笑ましいものを見る笑顔を浮かべていた。 む……なんか恥ずいぞ…… しかし即座に蒼葉さんは気を取り直し、 「んじゃあ、あなたたちはそこの建物の中をまずは探してみて。あのボーダーラインがこの建物を中心に半径2キロくらいであるし、核ってものは力場のほぼ中心にあるものなの。おそらくこの建物の近くに創造主がいるはずよ」 「はい! よしキョン! あんたは旧館を探しなさい! あたしはまずこっちの新館を見て回るから。んでこっちに何にもなかった時は、一度中庭で合流! んで今度はあたしが旧館で、キョンが新館をくまなく探す! それの繰り返しよ! いいわね!」 それでいい。 というかハルヒにしては珍しく理にかなった合理的な考え方だ。人によって視点が違う訳だから二つの視点で探せば、同じ場所だろうと一方が見落としたことでももう一方が見つけられるかもしれんからな。しかも二手に分かれて俺はまず旧館なんだ。これは願ったり叶ったりというやつだ。 言うと同時にハルヒは半壊状態の新館へと駆け出した。 つられて俺も旧館へ向かおうとするが―― 「そう言えば、蒼葉さんはどうするんです?」 肩越しに振り返り問う俺に、しかし蒼葉さんは背中を向けたまま校舎の反対側。グランドの方を見つめて、 「私は――こいつらの相手をする――」 ――!! 緊張感あふれる声で答えてくれた蒼葉さんの眼前では、再び、二体の青白く輝く《神人》がせりあがってきたのであった。 ハルヒがこの世界にいる限り、あの《神人》は意地でも世界を誕生させようと破壊工作に勤しむのかもしれん。 だからまた出てきたのだろう。 まあ、蒼葉さんの強さはハルヒの話からすれば古泉が集団でかからないと歯が立たないアレをたった一人で七体一度に消滅させるほどだから心配はいらないだろうが。 それよりも俺はやらなきゃいけないことがある。 向かう先は旧館三階・正式名称・文芸部室にしてSOS団の寄生部屋だ。そこのパソコンに用がある。 ほどなく到着。即座に電源スイッチオン。 ジジジ……と静かな音が流れフェーズアウトした画面に見つけた! 懐かしいこのメッセージ YUKI.N>みえてる? 予想通りだったぜ。長門なら必ず連絡を入れてくれると思っていたよ。ただ古泉が現れたなかったことが少々気になるところなのだが、今はとりあえず置いておこう。 『ああ』 俺はあの時と同じやり取りを始める。 YUKI.N>今回はこっちの世界とそっちの世界の連結が断たれる気配はない。おそらく涼宮ハルヒは二つの世界の誕生と存続を望んだ。 『なんだそりゃ?』 YUKI.N>今日、あなたも感じたはず。涼宮ハルヒの精神状態は最高レベルで維持されていたことを。ゆえに新世界を形成した。 『待て待て待て待て待て。てことは何か? ハルヒは「もう一つこういう楽しい世界がほしい」とか思って、こっちの世界を創り出したってことか?』 YUKI.N>その認識は正しい。そしてそっちの世界が誕生と同時にこっちの世界と連結される。世界が面積ではなく概念量質的に広がることを意味する。これが古泉一樹がそっちの世界に現れない理由。彼――正確には彼の所属する機関が「今回は世界崩壊の危機ではない」と判断しているため、古泉一樹はそっちの世界に行くことへの協力を拒まれている。涼宮ハルヒがこっちの世界から消える意思がない以上、情報統合思念体も気にしていない。むしろ観察対象である涼宮ハルヒの新しい情報奔流能力を見るいい機会ということで注視しているほど。 『この世界を消失させるにはどうすればいい? こっちにはそっちの世界とはまた別の世界から来た人がいる。この世界の誕生で、その世界が滅ぶと教えられた』 YUKI.N>どうにもならない。世界誕生は涼宮ハルヒの意志。涼宮ハルヒが望まない限り、その世界が消失することはない。ゆえに青白い巨人は涼宮ハルヒがそっちにいる限り無限に生まれる。 『それでも何とかしようとするには?』 YUKI.N>涼宮ハルヒをそっちの世界から消失させること。手段は問わない。 ……やっぱり、そういう結論なのか…… 俺はそれ以上、カーソルを進めることなく、がっくりと椅子の背もたれに背中を預けた。 さらにしばらく時間を置いてから、俺は中庭に降りて行った。 そこにはすでにハルヒが腕を組み、仁王立ちで俺を出迎えてくれていた。 「首尾は?」 「何も」 「なら次はあんたが新館。あたしが旧館よ」 言ってハルヒが旧館に向かおうとした矢先、 天地がひっくり返ったかと思うほどの突き上げるような地響きが俺たちを襲ったのであった。 まあ無理もない。ふと横を見てみれば、これまた突然わいてきたとしか思えない《神人》が一体、新館を後ろから破壊し始めたのである。 って、おい! こんなところまで発生してるってことは…… いやな予感を胸に、俺は新館ではなく校庭へと駆け出した! 「ちょっとキョン!」 ハルヒも付いてくる。 そして新館脇を抜け、いきなり青白い光が視界いっぱいに開けたと思った時、俺は信じられない光景を目にすることとなった。 いったいどれだけ長門とやり取りしていたかは分からない。 それほど長い時間でもなかったと思っていたのだが―― 校庭では、打ち倒された《神人》たちが校庭を埋め尽くすほど累々と横たわり、その全てが透明感をさらに薄くさせて消滅しかかっていたのである。 が、そんなものは大したことじゃない。いや、大したことではあるのだがすでに倒された分は本当に大したことじゃない! さらにその向こうにまだ数体いるのである! 「蒼葉さんは!?」 ハルヒの声で俺は周囲を見渡す。しかし彼女の姿はどこにもない! どこだ? まさか押しつぶされたとか言うんじゃないだろうな? 悲観的な想像がわき起こったりもしたのだが、 「キョン! 上よ!」 叫ぶハルヒが両手で俺を無理やり上に向かせる! んな!? そこに蒼葉さんが飛んでいた! 宙に浮いているのだ! 初めて見たが、これが魔法!? マジで使えるのか!? 信じられないのも無理ないってもんだぜ。 確かにハルヒは蒼葉さんが超能力=(表現はされていなかったが)蒼葉さんの言葉を借りるなら『魔法』を行使すると言っていたが今、目の当たりにしてもまだ信じられん! まるで漫画かゲームの世界にいるみたいだ! 「ライツオブグローリー!」 そんな俺の心の葛藤を余所に、蒼葉さんの右手から放たれた眩いばかりの光の――もうレーザー砲と言っていいだろう! とにかく光の巨大な光線が新館と旧館の間に現れた、俺とハルヒが見たあの《神人》を呑みこむ! 立て続けざまに宙に浮いたまま振り返り、 「ダイヤモンドダストスパイラル!」 ロッドを振り降ろし、放たれたのは雪の結晶が竜巻に撒き散らされている、見た目で判断させてもらうが、吹雪以上の凍てつく暴風! 《神人》数体の緩慢な動きがさらに緩慢になっていき――やがて完全に凍りつく。 そこへもう一発! 「ブレイズトルネード!」 もう一度、勢いよく振りかざしたマジックロッドから、今度は業火を渦巻く竜巻が《神人》の氷彫刻を破壊した! 再び、世界に闇と静寂が訪れて、蒼葉さんが着地する。 もうすでに校庭に倒された《神人》の屍は消滅していた。 あまりの奇想天外な出来事に俺は半ば茫然としていて、蒼葉さんの首筋に汗が滴っていることに気づきもできなかったのだが―― !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! どうやら世界の沈黙は一瞬だったらしい…… 再び、校庭の向こう側に《神人》が一体、浮腫み上がってきたのである。 涼宮ハルヒの異界Ⅲ