約 2,287,963 件
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/5478.html
(これでも三訂版) ・サイレントヒルとのクロスオーバー。グロ描写注意。 「これ、返す」 「おう、やったのか」 有希がキョンに何かのゲームソフトを渡すのが見えた。有希もゲームをするのね、ちょっと意外。どんなのかしら。 「それ、何?」 「ああ、零だよ」 キョンがソフトをこちらに見せた。いかにもなパッケージをしているところからするとホラーゲームみたい。あたしが好きなジャンルではないみたい。 「お前はこういうのが好きじゃないみたいだな」 キョンがそう言ったのでびっくりした。 「な、なんで分かったのよ」 「期待して損した、みたいな表情をしてたからな」 そんな表情してたのかしら……。こいつ時々鋭いから困ったものだわ。 「で、有希、それをやってみてどうだった?」 「人間の想像力は……恐ろしい」 いつもより小さな声でそういうと俯いてしまった。 「どうしたのよ有希。まさか、怖かったの?」 「違う」 即答だった。必死さを感じたのは気のせいかしら。 「そんなことはない。決してトイレに行くことが出来なくなったり、布団に潜ったまま翌朝まで身動き出来なくなった訳ではない」 有希……全部言ってどうするの……。 「貸しておいて何だが……スマン」 「いい」 やがて古泉君やみくるちゃんがやってきた。古泉君がそのソフトの箱を見るなり言った。 「まさか貴方がそのような分野のを持っているとは思いませんでした」 「興味本位でな。あの怖いCMがちょっときになってな」 すぐにどんなのか判ったってことは古泉君もやったことあるのかしら。ちょっと内容が気になるけど……怖いのよね。 「そんなの怖くてできないです……」 そう呟いたみくるちゃんに同意せざるを得ないわ。 「キョンってどんなジャンルのゲームをするの? まさかそんなのしかないとか言わないでしょうね」 「さすがにそれはねーよ。妹もいるんだしな、パーティゲームとか大衆向けのももそれなりにあるぞ」 「ふーん、じゃあ週末はキョンの家でゲーム大会ね」 「え、ん、まあいいが」 「じゃ決定ね。ということだからみんなよろしく!」 その後、有希は読者を再開していたし、古泉君はキョンとチェスを始め、みくるちゃんは紅茶を選んでいた。 あたしは特に何をするということもなく、適当に検索して開いたページ眺めてた。 さっきの零とかいうソフトについて調べないのかって? 冗談じゃないわ、あんなアブノーマルなのあたしには向いてないもの。 「あ、あれ……?」 気が付くと、あたしは真っ暗な駅のホームに立っていた。 何で? さっきまで部室にいた筈なのに。 慌てて辺りを見回すけれど、ホームどころか駅の周辺からも人の気配が全然しない。 「どうなってるのかしら」 ホ-ムを改めて見回してみる。見たくなかったけれど。 蛍光灯だけが照らしている構内は随分と汚くて、柱なんて赤錆でボロボロになっている。地面のコンクリートが赤いのもそのせいよ。 そのせいよね……。 ここはどこの駅なのかしら。全く見覚えがない。外に明かりはなく、この駅以外は永遠に続きそうな真っ暗闇しかない。 一体何が起こったのかさっぱり分からない。あたしは一歩も動けずに 「いやああああああああああああああああああああ!!!」 その突然の叫び声にあまりに驚いたあたしは、一瞬呼吸を忘れてしまった。 「何!? 何なの!? さっきの悲鳴は何なのよ!?」 パニック寸前のあたしは一刻も早くここから出ようと、改札口へ走った。自分の荒い息遣いと壁に反響した足音だけが聞こえる。 周りを見ている余裕なんてなかった。後で思うと、見なくて正解だったかもね。 恐怖からの逃避を図ったその先で、あたしは地獄を見た。心臓が縮み上がった。全身から血の気が引く音がした。 改札口の辺りは血痕だらけになっていた。床も壁も天井も……、一体何をすればこんなに飛び散るのだろう……。 そして改札機のそばには何かが 「……みくるちゃん!?」 どうして? どうしてこんなことになってるの!? 血まみれになって倒れているみくるちゃんはあたしの声に気付いてこっちを見た。 「みくるちゃん! 何があったの!? しっかりして!」 「涼宮さん…………逃げて下さい…………。この世界は…………もう…………」 「何言ってるの!? みくるちゃん! 」 「……じ………く…………」 「 !」 「………………………」 もうみくるちゃんが何を言ったか聞き取れなかったし、自分が何を言ったかさえ覚えていなかった。 「 !」 「」 「」 「」 「」 「 「 「 「おい、ハルヒ? ハルヒ?」 あたしは気付くと、机に突っ伏して寝ていたみたいだった。額は汗でびっしょりになっていた。 ゆ、夢? そうよね、あんなこと現実にはあり得ないもの…………。 「どんな夢を見てたんだ? 随分と苦しそうだったが、大丈夫か?」 キョンはまだ呼吸の整っていないあたしを心配しているみたい。 視線を移すと、心配そうにこちらを覗くみくるちゃんが見えた。ちゃんとメイド服を来てるし、勿論血なんてついてない。 あたしは立ち上がると、何か話しているキョンを無視してふらふらとした足取りでみくるちゃんに近付いた。みくるちゃんは少し驚いた表情をしていたけどね。そんなのどうだっていいわ、さっきのが夢だっていう証拠が欲しかったから。 「みくるちゃん、何も起こってない……よね……?」 「え? は、はい、いつも通りですよ」 あたしはみくるちゃんに抱きついて泣いていた。 「す、涼宮さん?」 「ちょっと……怖い夢を見ちゃったから……。うん、大丈夫よ……」 みくるちゃんは、優しくあたしを撫でてくれた。ちょっと恥ずかしかったから、悪夢を見たのをキョンのせいにして解散した。 家に帰ってからは、一晩中なんだか怖かった。それはもうキョンから借りたゲームの所為で動けなくなった有希といい勝負だったかもしれない。 けど、何も起こらなかったし、あの夢も見なかった。 でも、翌朝にそれは起こった。 あの悪夢はただの夢だったことにほっとして、何時ものように学校に向かっていたあたしは、突然目眩に襲われて倒れた。 気がつくと、ほほにアスファルトの感触がある。その場に倒れたままだった。 「ったく……誰も助けてくれないなんて薄情な……」 ここは一通りの多い通学路なのに、人の気配が一切なかった。 そして辺りは真っ白な霧で覆われていて、5メートル先も見えない状態だった。 「え? なに……これ……」 何より不安を誘うのが、全くと言っていいほどに音が無いことだった。 音がしないなんて雪が降った日みたいだけど、今は凄く不気味に感じる。 無響室に入れられた人は不安感を抱くとかいう実験について聞いたことがあるけど、今のあたしはそれに近い環境下におかれているのかもしれない。 ここは毎日通る道なのに、どう進めばいいか分からない。電柱とか、特徴がある家とか、そういった目印を探しつつ学校へ向かった。もう家を出てしまった以上、学校に行った方が安全だと思ったから。 そうして何とか進んでいた時、私は不意に足を止めた。 白い霧の中に、ぼんやりと影が見える。その形からして、路上に誰か倒れているようにしか見えなかった。 あの時のよく似た状況の記憶が頭を埋め尽くす。 嫌、見たくない…………。 それでも、あたしには前に進むしかなかった。 重い足取りでも、確実にそれに近づいていた。 やがて霧の中から見えてきたのは、血溜まりに倒れているキョンだった。 「……え…?」 今回は夢じゃない。体を流れる血が冷たく感じた。 「嘘……でしょ……?」 キョンを揺さぶっても、全然反応しない。手も首も、だらんと重力に負けたまま……。 「嘘って……、言ってよ……ねえ!」 あたしの両手が真っ赤になっていた。キョンはおびただしい量の血を流して、温かさを失っていた。 「どうすればいいの……!」 救急車を呼ぼうと思い立って、慌てて震える手で携帯を取り出した。 「……どうして?」 圏外という赤い二文字が画面に表示されていた。助けは来ない、あたしにも助けられない。 キョンは死んでしまった? これはみくるちゃんの時と同じ「夢」……よね……? でも、このべっとりとした嫌な感触や、鉄の臭いは…… ………… ………… あたしは狂ったように泣き叫んだ。声が裏返り、しわがれても構わずに叫び続けた。 「…………!」 あたしは泣くのをやめた。 足音が聞こえた。しかもそれが段々と近づいていた。 「だ、誰……誰なの!?」 あたしは虚空に向かって叫んだ。虚勢でも張っていないとおかしくなってしまいそうだった。 すると、返事が聞こえた。 「涼宮さん!?」 あの声は、古泉君! 良かった……。 霧の中から姿を現したのは間違いなく古泉君だった。 「涼宮さ…………」 古泉君はキョンの亡骸を見て言葉を失った。 「これは……」 「あたしが来た時には、もう……」 「朝比奈さんに続いてまさか彼が……」 その言葉にはっとした。 「みくるちゃんも!? どういうことなの?」 「朝比奈さんは、先日、駅の改札口で」 「何ですって!?」 古泉君の話していた内容は、あの時の夢と全く同じだった。 あたしは頭を抱えた。ひどく混乱していた。信じたくないことばかりがぐちゃぐちゃになって頭の中を掻きまわしていた。 どういうことなの? あれは夢じゃなかったの? 「このままでは、この世界は……終わってしまいます」 それは、みくるちゃんと同じ台詞だった。 『この世界は…………もう…………』 「古泉君、この世界って何なの? 何でみんな殺されたの? この世界はどうなっちゃうの!?」 あたしが古泉君に掴みかかっていたその時、後ろから声がした。 「あら、揃ったのね」 振り向いたけど霧しか見えない。 「誰よ!」 「あら、名前なんて言わなくても分かるでしょ?」 霧の中から、うっすらと影が見えてきた。 「彼を殺したのはあたしよ。話を面白くするには良い演出でしょ?」 笑っているような口調だった。 「ふざけるな!」 あたしはそいつに向かって怒鳴った。 「ふざけてはないったら。彼もあの子も必要な犠牲なんだから」 まさか、みくるちゃんもこいつが……。そう判断した瞬間、自分自身でも驚く程の激しい憎しみという感情を抱いていた。 「良いわねぇ……、良いわその表情……。あたしを殺したいの? 出来るかしら?」 あたしは呼吸が荒くなっているのが分かっていたけれど、それを抑えることはしなかった。 「悔しいのなら、学校で待ってるからいらっしゃい。面白いものを見せてあげるから」 そう言って、そいつは霧の中に消えた。 キョン…… そいつが消えた頃にあたしはようやく落ち着いた。古泉君が霧で真っ白の世界を見回しながら呟いた。 「僕自身も、裏世界にいるのは初めてなんですが……。この霧の世界……、まさにサイレントヒルですね」 「それって……あたし達はホラーゲームの世界に放り込まれたってこと? 冗談じゃないわ!」 本当に冗談じゃなかった。ホラーの世界が現実になったら……とてもじゃないけど、主人公みたいに生き残れる自信なんて……。 「しかし、このままでは何も進展しません。ここで敵の襲撃を受ければ助かる見込みはありません」 あたしは決意した。キョンの仇を取らなきゃ。 「……分かったわ、あたし達が主人公になってやろうじゃないの。主人公は不死身なんだからね」 あたしは別の世界の涼宮ハルヒだと説明すると、古泉君はあっさりと理解してくれた。 なんで不思議に思わないのだろう……。 古泉君によると、この世界のあたしは数日前に失踪してしまっている。それ以来、裏世界と呼ばれるおぞましい空間が発生し、そこで殺人事件が起こっているらしい。 その犠牲者はキョンやみくるちゃんを含めて20人を超え……。 そして、今いるのがその裏世界。惨劇の舞台に、あたし達はいる。 「つまり、狙われてるってこと?」 そう思いたくなかったけど、そう思わざるを得なかった。 あたし達はあの女のいる学校へ向かうことにした。 何かが襲ってこないか不安だったけども、静寂を破るようなことは起こらなかった。 どれくらいの時間が掛ったのだろう、霧の中を歩いて、ようやく学校に着いた。 でも、古泉君は入るのを躊躇っていた。 「どうしたの?」 「裏世界の詳細をご存知ですか?」 「どんな世界なの?」 「その世界の建物の内部はとても凄惨なことになっています。最もおぞましいと言われる程だそうです。覚悟をしないと、精神的に参ってしまいます」 あたしは頷いて学校へと入った。 覚悟はしていたつもりだった。 でも、古泉君が言っていた通り、入った瞬間に食道がケイレンを起こした。 「ぅ…………」 あの時の駅より酷い、酷過ぎる。 「大丈夫ですか?」 何もかもが赤錆と血飛沫でどす黒い赤色になっていた。血の臭いがする……。この学校のあらゆる場所で殺し合いがあったような状態だった。 「ええ。なんとかね……」 蛍光灯は全部割れていて、外の霧が唯一の明かりになっていた。 「かなりの邪念を感じますが……、とりあえず、進みましょう」 「ええ、そうするしかないわね……」 昇降口 まず、自分の上靴の場所を調べる。 履き替えるつもりなんて勿論無い。血でこんなに汚いんだから、土足でも構わないだろうし。 二度と触りたくないくらいに汚い上履き以外は、変わった物は入っていなかった。 「おや、これは心強いですね」 古泉君が見つけたのは、ショットガンだった。弾も幾つか見つけたみたいだった。 古泉君は、弾をポケットに入れると、その一つを装填して構えた。手慣れたように見えたのはどうしてだろう。 「頼れる武器があると、やはり落ち着きます」 こんな物騒なものを手にして落ち着くなんておかしいけど、今は命の危険に晒されているのだから、古泉君が正しいと思う。 「この世界がゲームと同じなら、武器はいろいろと見つかる筈ですね」 なるほど、だから学校にそんなものが置いてあるのね。 あたしも何か役に立ちそうなアイテムはないかと見回すと、傘立てに傘に混じって何かが立ててあった。 手に取ると、日本刀だった。鞘に紐がついていたので、それを腰に巻いて結んだ。 「いいものを見つけたみたいですね」 ショットガンを持った古泉君が言った。 「僕も近接武器が欲しいですね。ショットガンには弾に限りがありますから。銃身で殴るには少々重たいですし」 ズズッ…… その時何かの音がした。 「おやおや、歓迎でも来たようですね」 勿論そのままの意味でないことは知ってる。敵でしょ。 廊下で何かが動いていた。 それが這ってこちらに来ている。だんだんとその姿がはっきりと見えてきた。 ゾンビというのかは分からないけど、人の形をした血まみれの気持ち悪い生き物が近付いていた。 「涼宮さん、下がって下さい」 「いえ、その必要はないわ……」 あたしは刀を鞘から引き抜いて、銀色に輝く刃を見つめた。 決心したんだもの、あたしはキョンの仇を討つまでは……いえ、討っても死ねない! 「弾はもしもの時の為にとっときなさい!」 あたしは目の前の敵に向かって走った。 あたしの姿を認めるとそいつは何やら呻いていたけれど、そんなの気にせずに素早く背後に周りこんで、これでもかという位に斬りつけた。 背中から血を噴き出してもがいていたけど、蹴りを一発お見舞いしたら動かなくなった。 「す、凄いですね涼宮さん」 古泉君の視線で、あたしは大量の返り血を浴びていた事に気付いた。それを見たから、古泉君は少し驚いたのだろう。 「この調子ならノーダメージでいけそうね」 「では、行きましょうか」 1F 薄暗い廊下を歩いて行く。目的地は分からないけど、学校のどこかにアイツはいるから順番に回っていけばいつか見つかるだろうし。 古泉君が腕を組んで壁とにらめっこをしていた。 「これは……困りました。ここには手洗い場があったはずなんですが」 確かに、ここにはトイレがあった筈なのに、真っ赤で気味の悪い壁しかない。 「どういうこと……?」 「特に仕掛けもないようですし、配置が変えられていると考えるのが一番かと」 配置が変えられているだけじゃなかった。とても学校とは思えないくらいに廊下が入り組んでいた。 「なによこれ、迷子になっちゃいそう」 迷宮のような廊下を真っ直ぐ進んで行くと、机と椅子が山のように重なっていて行く手を阻んでいた。 「」 「これはどかしようがありません。仕方ありませんので、引き返しま……」 振り返った時に、あたし達は硬直した。 おぞましい生き物が天井からぶら下がってこちらを見ていた。 さっきのとは形が少し違う。天井から人間の上半身が生えているようだった。 あたしは思わず叫んだ。そして、 「よくも脅かしてくれたわね……!!」 冷静さを失っていた。 刀でこれでもかと言う程に斬りつけた。 「涼宮さん……落ち着いて下さい!」 古泉君があたしを止めた時には、その生き物は原形を止めない程になっていた。 説明してほしい? 簡単にいえば乱切りよ。それ以上は言いたくないから。 あたしは肩で息をしていた。なんでこんなにムキになっていたのだろう。 「冷静になることも必要ですよ。体力も消耗しますし」 古泉君は少し怯えた表情であたしを見ていた。自分の言動で逆上されることを恐れているようだった。 なんだか腫れ物に触るような扱いに感じて悲しくなった。 行き止まりから引き返す途中、あたしのクラスの教室を見つけた。 「何で気付かなかったのかしら」 ちょっと期待してたけど、中に入るとあたしの席もキョンの席も、やっぱり血がべっとりとついていた。 キョンの机の中から何かがはみ出ていた。出してみると箱があり、その中に拳銃と幾つかの弾倉が入っていた。 「何でわざわざ箱に入れてあるのかしら」 疑問に思いながらも拳銃をポケットにしまった。 「おや、これはこれは」 「どうしたの?」 古泉君が掃除用具入れから鉄パイプを見つけていた。 「手頃な武器が見つかりました」 感触を確かめるようにパイプを振っていた。 「ねぇ、おかしいと思わない?」 古泉君は表情を引き締めた。 「ええ、確かに招き入れた割に大した罠もなく、かつこれだけ武器が用意してあるというのは少々不自然です」 「だとすると、この世界にあたし達の味方がいるのかしら」 「そうとも考えられます。しかし過度の期待は禁物です。このように武器を提供するので精一杯なのかもしれませんから」 2F 階段を上ったところでいきなり現れた巨大化したゴキブリみたいな虫の大群に対し、古泉君の鉄パイプが早速活躍した。 古泉君が何とかしてくれていなかったら、あたしは卒倒してたかもしれない。想像してごらんなさい、でっかいゴキブリが顔めがけて飛んできてかじりつこうとしてくるのよ。生きた心地がしないわ。 虫の大群はいまや抜け殻の山となっていた。それを蹴散らして廊下を進み、部屋を確認していく。 「……あった!」 こんな所に部室があった。SOS団と書かれた紙に希望が膨らむ。 でも、扉をあけて中に入るとやはり酷い有り様だった。 「うわ……」 本が棚から崩れ落ちたままの状態で埃をかぶり、みくるちゃんの衣装までもが血で染まっていた。 だけどそんな中で唯一、パソコンだけが血を浴びずに綺麗なままだった。 それには二人ともほぼ同時に気付いた。 「古泉君、あのパソコン」 「何かヒントがありそうですね」 「やっぱり味方がいるって考えで正解みたい。よかった」 スイッチを押すと、黒い画面に文章が現れた。 『このメッセージは条件を満たすと表示されるものであり。そちらとの疎通は出来ない』 あらかじめ用意されたプログラムってことかしら。 『裏世界と呼ばれるその空間は現実から隔離されている別の世界』 これは古泉君から聞いたから知っている、でも、その後に表示された一文にあたし達は首をかしげた。 『しかし、神がその世界を支配すれば、その世界が現実となる』 ……つまり、この気持ち悪い世界が現実と入れ替わるってこと? 冗談じゃないわ。 それより、気になる単語があった。 「神とは何のことでしょうか……」 「少なくとも、良い神じゃなさそうね」 パソコンは神ついて詳細を述べることは無かった。でも、そいつにこの空間を支配されたらおしまいってのは分かった。 『クリーチャーは貴方達の憎悪や恐怖が実体化したもの。冷静さを保てば遭遇する頻度は下がると予測される』 つまり、あたしがもっと冷静になれば厄介な敵は現れなくなるってこと? 「ごめんね古泉君、こっからはもっと落ち着いて行動できるように気をつけるわ」 「いえいえ、謝らなくて結構ですよ」 *** 朝学校に来ると、ハルヒがいなかった。珍しく遅刻をしているようだ。 あくびをしながらその空席を見ながら座った時だった。 喜緑さんが教室にやって来た。そして真っすぐに俺のところに歩いてくる。喜緑さんが俺に用があるということは何かでっかい事件があったということだろうか。 「涼宮さんが登校途中で倒れて病院に運ばれました。これは緊急事態です」 いきなりのことに、俺は仰天した。 「なんだって……?」 俺は机上に置いたばかりのカバンを再び持つと、喜緑さんと一緒に教室を出た。授業? サボりというやつだな。 外で朝比奈さんが待っていた。 「キョン君……涼宮さんが……」 「喜緑さんから聞きました。早く病院に行きましょう」 「こちらに来てください」 喜緑さんに手招きされて近づいた瞬間、世界が一変した。 「へ?」 「ん?」 いつの間にか病院の前に立っていた。空間移動をしたらしい。 って古泉はいないが置いて来たとかそういうことはないですよね。 「既に病室にいます。詳しい話は皆さんが揃ってからに」 病室に入ると、ベッドでハルヒが眠っていた。その傍で古泉が待っていた。 「待ってましたよ」 「ハルヒは一体どうしたんだ」 「目撃者の話では、歩いていて突然全身の力が抜けたように倒れたそうです。その原因は……」 「それは私が説明します」 喜緑さんが割って入った。そんなに難しく深刻な話なのだろうか。心配になってきた。 「現在、涼宮さんの精神は抜き取られて別の世界に閉じ込められているようです」 別の世界って……。 「その空間に干渉しているところですが、情報改変が殆ど出来ていません。彼女にヒントや武器を与えることが精一杯です」 武器? どういうことだ、そんなに危険な世界なのか。 「簡単に言うと、サイレントヒルの裏世界、という表現が貴方がたには一番分かりやすいと思います」 「ぇぇっ?」 隣で朝比奈さんが俺以上に驚愕していた。朝比奈さんも知ってるんですか? 「はい、ホラーゲームの初期作の一つとして有名ですから……。でも、あんなゲームの世界に閉じ込められるなんて……」 そこで朝比奈さんがハッとした表情を見せた。 「もしかして昨日の……!」 「昨日ハルヒがうなされてた悪夢のことですか?」 「はい、それが何なの予兆だったのかもしれないです」 「そんなことがあったのですか。やはり狙われていたようですね」 喜緑さんの言う『狙われていた』というのはどういうことなのだろうか。 「閉じ込められている目的は何なのですか」 喜緑さんは古泉の質問に一切のタイムラグなく回答した。 「彼女を閉じ込めた相手はあくまで本気のようで、ゲームの様に楽しませる積もりは毛頭ないようです。相手の目的は、彼女を生け贄にして神を生み出し、その力で裏世界を現実と入れ替えることと推測されます」 生け贄……? おいおいまてよ。 それって、つまり……。 このままじゃハルヒが殺されるのか!? 「なんとかして助けられないんですか!?」 「何度も裏世界の改変を試みましたが成功していません。また相手の正体は不明で、神がどのような力を持つかも推測に過ぎません」 「そういえば、長門さんはどうしたんですか?」 朝比奈さんの一言で思い出した、長門がいない。なんでこんな時にいないんだ。 「長門さんは……隣の病室にいます」 なんだって? 「彼女は裏世界への侵入を試み、現在涼宮さんを捜索中です」 *** 涼宮ハルヒの精神が隔離された空間への侵入を試みたところ、突然「目眩」という症状を起こし、気付くと学校にいた。 しかしそれは全く似て非なるものであった。配置が著しく変えられた校舎内はどこも血痕だらけで、とても禍々しい光景だった。 ここに涼宮ハルヒがいる。 ……おかしい、統合思念体との連絡がとれないので現在の状況すら把握出来ず、おまけに情報操作が全く行えない。 有機生命体の五感を頼る他ないようだ。 前方に何かがいた。 *** 3F 階段を登り終えたときから古泉君の様子がおかしい。 さっきから落ち着きがないし、まるで風邪を引いたみたいに震えて呼吸も荒い。 「古泉君、大丈……」 思わず後ずさりしてしまった。 古泉君の腕が、ところどころカビのように黒くなっているのが見えた。 「こ、古泉君?」 もう、古泉君は古泉君ではなくなっていた。 「亜阿あああぁ唖あああああああああ!!」 古泉君は意味不明な言葉を叫ぶと持っていた鉄パイプであたしを殴りにかかった。 あたしはなんとか避けたけど、古泉君はまだあたしを狙っていた。 走って逃げたけど、向こうも走ってくる、逃げるのは無理みたい。 振りかぶった隙に鉄パイプを奪い取ることには成功したけど、古泉君は素手での攻撃を止めない。何度も何度も掴み掛ろうとする。 「ちょっと…………やめ……て……」 「ぁぁぁぁぁぁぁ………………あはははははは……!」 古泉君があたしの首を締めようとしてくる。あたしはポケットから拳銃を取り出した。古泉君を突き飛ばしてその隙に距離をおき、構えた。 「ごめんなさい!」 拳銃の弾は、古泉君の頭を貫いた。糸が切れた操り人形のように倒れ、もう動かなかった。 「古泉君……何で……?」 なんでさっきまで味方だったのに突然こうなったの? しばらくして落ち着きを取り戻してから、古泉君の服のポケットからショットガンの弾を取り出す。 その時、何かが光っているのが見えた。古泉君の首に紐に通された鍵がかかっていた。 鍵には「体育館」と書いてある小さな紙が貼ってあった。 *** 痛い……? 寂しい……? 怖い……? 様々なエラーが発生し、私は歩みを止めた。 理解不能、私にはそのような「感情」など……。 では、どうして呼吸が乱れている? どうして過度に背後を警戒する? どうして前進を躊躇う? どうして? それらの自問に答える事が出来なかった。 幾度となく殲滅させた筈のクリーチャーが再び現れた。彼らは執拗に私を喰らおうとやってくる。 それに対して、箒を分解して金属製のパイプのみにしたものを応急的な武器としているが、簡単に折れてしまいもう箒の残りは少ない。持久戦になればこちらの劣勢は明らか。 早急に新たな戦法を練らなければならない、そう思った時だった。 机の上に、いつの間にか機関銃が置いてあるのが視界に入った。 それを手に取った瞬間、メッセージを受信した。 『私達に出来るのはこれ位だけど、これで思いっきりやっちゃいなさい!』 「朝倉涼子……」 統合思念体の干渉はこれが精一杯のようだ。しかし……、 「充分」 私はその機関銃を手にすると、向かってくるクリ―チャ―を飛び越えて走った。 この裏世界はゲームではない。 たとえチートと言われようと構わない。 あらゆる手段を尽くして、この世界を終わらせる。 *** しばらく目を閉じていた喜緑さんが目を開けた。 「裏世界の観測が可能になりました」 待ちに待った知らせだった。ここに来て数時間ずっと気になっていたことをぶつける。 「ハルヒは、長門はどうなってるんですか!?」 「現在は二人共に大丈夫のようです。しかし、裏世界ではキョンさん、古泉さん、朝比奈さんは死んでいます」 「なんだって……?」 「あくまでもあの空間は仮想のものであり、そっくりにコピーしたものです。しかし、世界が入れ替わった場合はそれが現実となり、その時にはあなた方は消えてしまいます」 俺達三人は固まってしまった。 十数秒たってから、その静寂を破るように、朝比奈さんが消えそうな声で言った。 「消えちゃうんですか……」 「……くぅっ……」 ハルヒがまた苦しそうな声をを漏らした。 自分に何もしてやれないことに腹が立つ。俺達はハルヒに触れることすら許されない。接触すると相手に何かされる懸念があると言う。 目の前で苦しそうに顔を歪めながら眠っているハルヒを見てやることしか出来ない。 頼む、頼むから、無事に目覚めてくれ……。 俺達には祈ることしか出来なかった。 *** 体育館 「やっと来たのね」 古泉君の持っていた鍵で扉をあけると、体育館で待っていたのは予想通りアイツだった。 ここも照明は機能してないけど、霧がわずかな明かりとなってアイツの顔を照らしていた。 ここに来るまでに、アイツの正体はなんとなく分かっていた。 アイツの声は聞いたことがなかった。何故なら、それが自分の声だったから。 「アンタがこの世界のあたしなの?」 「そう、だったら何?」 「何でこんな事をしたの」 「この世界は唯のコピー、いつかは消される運命にある。それが気に入らないの。だから神の力でこの世界と貴方の世界を入れ替えてこの世界を本物にするの。みんな、神を生み出すのに必要な犠牲だったのよ」 神……? 「紹介するね、これがこの世界の神よ」 暗くて気付かなかったけど、アイツの隣に巨大な化け物がいた。 あたしが想像する神は、宗教とかそんなの抜きでももっと綺麗なものだった。 けど、目の前に現れた神は、とても神とは呼べないものだった。 5メートルはあろう神だという生物は、人の形はしているがひどく痩せていて、やはり血まみれだった。 「神は絶対的な存在よ、全てを支配するの。だから、人間は神にはなれないの」 アイツが話を区切る度に静まり返る体育館。「神」がこちらを見ている。その視線を受けたあたしは一歩も動くことが出来なかった。 「この神はまだまだ未熟だから、憎悪という感情が足りないの、だから貴方が神に必要な生け贄に選ばれた。そんな貴方がちょっとでも強力になってもらう為にあの男を殺したの」 あたしの怒りを増すためだけにキョンを殺したなんて……。 でもあたしは何も言えなかった。それに対して怒れば相手の思うつぼだし、こんな魔物の生け贄に選ばれたことがショックだった。 「神に逆らうことは許さない。例えあたしでもね」 突然、「神」はアイツを手にとり、じっくりと舐めるように眺めていた。 「あら、神は貴方よりあたしを先に欲しいみたいね」 「な、何言ってるの? アンタも殺されるのよ」 「いいえ、光栄なことよ。神のヴィクティムになるのだから……」 神は我慢できなくなったのか、突然そいつをまるでスナック菓子のように喰らいついた。 アイツの身体が噛み切られて……。これ以上言わせないで。 「う……わ……………………」 あたしはとっさに目を瞑り、耳を押さえた。それでも骨の砕けるような嫌な音が響いていた。 しばらくして音がなくなった。 どうやら食事が終わったらしいので目を開けるた。「神」は血をぼたぼたと垂らしながらあたしを見ている。 次に喰われるのはあたし。 アイツへの復讐は出来なかった。でも、この「神」とやらをなんとかしないと、この世界は終わらない。あたしは、ショットガンを構えた。 「くたばりなさい!!」 引金を引いた瞬間、強い衝撃で肩に痛みが走った。 あたしのような体格では、反動の大きなショットガンは身体に負担がかかることは百も承知。 でも、これは遠距離からでもダメージを与えられる数少ない武器だから、それくらいは我慢。 肩の痛みを堪え、次々と弾をこめては頭を狙って撃ち続けた。 ダメージがあったのか、「神」は呻き声を上げている。 「やったかしら」 油断してしまった。次の瞬間、その長い腕でなぎ払ってきた。 避けようとすることすらできなかったあたしの身体は宙に浮き、十数メートル飛ばされて叩きつけられた。 何とかして立ち上がったけれど、全身が打撲で痛い。ショットガンもどこかに飛んでいってしまった。こんなに暗い中ではすぐには見つからないから諦めるしかない。 「いっ……たいじゃない………………!」 あたしはふらつきながらも再び「神」と向き合い、拳銃を撃ちながらショットガンを探した。 でも「神」は怯むことなく迫ってきて、またその腕に弾き飛ばされた。 「ぅう……」 床に叩きつけられたときに頭を強く打ってしまい、立ち上がることが出来なくなっていた。 拳銃も暗闇の中に消えてしまった。 近づいてくる「神」から逃げようと痛む四肢を必死に動かして床を這ったけど、すぐに追いつかれてしまった。 あたしはとうとう「神」の手で押さえ付けられてしまった。腰には日本刀があるけど、激しい痛みで手が動かなくなっていた。 血でべとべとの「神」の手に圧縮される気分は最悪だった。 苦しい、息が出来ない。こんな化物に食べられるなんて……。 「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」 叫んでもここには誰もいないから無駄なことは知ってる。けども、最後までこいつに抗っていたかった。 その時、「神」の荒い呼吸に混じって、誰かの足音が聞こえてきた。 「させない」 ……有希!? 銃声が絶え間なく響いていた。「神」はたまらず悲鳴を上げてのけぞり、あたしはなんとか手から解放されたた。 視界が開けて、音のする方向を見ると有希がマシンガンを撃ち続けているのが見えた。 何十発撃っただろう、「神」は遂に倒れた。それでも有希は「神」が完全に動かなくなるまで攻撃をやめなかった。 マシンガンの音が止む。そして、ガシャンという大きな音を立てて床に落とした。 そしてこっちに駆け寄って、あたしの身体を支えて立たせてくれた。 「涼宮ハルヒ」 「有希……、ありがと」 「いい、私も……一人で心細かった……」 あたしと有希は抱き合ったまま、静かに泣いた。 窓から眩しい光が射している。霧が晴れて、青空が見えた。 外に出ると、校舎は相変わらずだったけど、空気はよどみがなく透き通っていた。 太陽が眩しい。あたしと有希は、その光に包まれていった。 *** 涼宮さんが目を覚ましたようです。 状況説明が困難な為、長門さんが隣の病室にいることは涼宮さんには内緒になっています。 「…………」 涼宮さんと同時に目覚めた長門さんは、ぼんやりと自分の手を見つめていました。 「どうしました?」 「大量のエラーが発生している。身体の制御すら上手く出来ない」 彼女の手は震えていました。 「もう大丈夫ですよ」 私はそっと彼女を抱き締めました。彼女は私に顔を埋めていました。おそらく、泣いていたのだと思います。あくまでも推測ですよ。 数分間そのままでいましたが、長門さんが離れました。 「エラーの削除が完了した」 「では、そろそろ涼宮さんの所へ行きましょう。貴方は涼宮さんにプリンを買いに行ったことになっています」 「……分かった」 「では、情報操作を始めますね」 その時、彼女が小さな声でありがとうと言いました。少し恥ずかしそうでしたね。 情報操作により、私以外は今回の事件についての記憶を失い、長門さんは涼宮さんの見舞いに来たことになりました。これは、トラウマと呼ばれる精神状態に陥らない為の救済措置です。 さあ、私はこの病院にはもう用はないので学校に戻りますね。 それでは失礼します。 inspired SILENT HILL 3 おまけ 長門有希がビビりプレーヤーだったら 痛い……? 寂しい……? 怖い……? 様々なエラーが発生し、私は歩みを止めた。 それらのエラーを言語化するならば……、 「帰りたい……」 いっつも助けてくれるパパ(統合思念体)との連絡がとれないから、一人でなんとかするしかない。 でも、この間キョン君に借りたゲームをしたばっかりだから怖さ倍増なの……。 どうしよう、有希泣きそうだよ……。 「こわいよパパ……」 あー来る、こういう所絶対何か来る。ドッキリ要素というものが絶対ある。 こういう時は……、歌を歌おう。 「ある~はれ~たひ~のこt」 ガッシャーン! 突然ドアを突き破ってクリーチャー登場。 「POOOOOOOOOOO! ふっざけんにゃよ! もーやだ! 無理! 終了! 終了!」 私は走りながら思い切り泣いた。いいもん、誰も見てないから……。 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁんパパァァァァァァァァ~~!!」 MISSION FAILED... おまけ 2 あのEnd マシンガンの音が止む。そして、ガシャンという大きな音を立てて床に落とした。 そしてこっちに駆け寄って、あたしの身体を支えて立たせてくれた。 「涼宮ハルヒ」 「有希……、ありがと」 「いい、私も……一人で心細かった……」 あたしと有希は抱き合ったまま、静かに泣いた。 突然、窓から眩しい光が射した。 「なにあれ!?」 空中に浮かぶ複数の円盤、それは……、 ま さ に U F O 「有希! UFOよUFO! これは調査しなきゃSOS団の名が廃るわ! あたし達の活動を全世界に広められるチャンスよ!」 あたし達は外に出た。グラウンドに着地していたUFOは合計三機。中から出てきたのは、期待通りの宇宙人! 「ユ、ユニーク(タコさんウインナー……)」 「ねえあなたたち! どこから来たの?」 「 %*#\$@=-@!」 「な、何言ってるのかサッパリね……」 「意思疎通は困難と思われる(おいしそう……)」 「+ |\ ; *// #!」 宇宙人が取り出したのは、光線銃? ビビビビビビビビビ いきなり有希が撃たれて倒れた。有希は痺れて動けない様子だった。 「………………ユニー……ク…………(一口だけでもかじってみたかった……)」 「有希ー! 有希ー! ユニークとか言ってる場合じゃないわよ! アンタ達! 何するのよ!」 「 *#/(^^) $/-!」 すると今度はあたしに光線銃を向けた。 「な、何よ! やめなさ……いやあああああああああああああ!!」 そして動けなくなったあたし達はUFOに乗せられて…… ユニーク(笑)
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1914.html
教師「えー本日を持ちまして、涼宮ハルヒさんは転校することになりました。」 …どいつもこいつもニヤケ面。 教師がいなかったら拳の1発や2発かましてるところよ。 ──そんな学校生活も、もう終わり。 唯一出来た思い出が楽しくなかったのが心残りかな? 教師の岡部がサラリと奇麗事を並べると、生徒の間からは拍手の音が聞こえた。 どうせ、万歳の拍手だろう。あたしを惜しむ者なんて一人もいない。 あたしの前の席にいるキョンが遠く見える。 …キョンは、どういう意味で拍手してるんだろう…? だけどもう、どっちでもいい、アンタともサヨナラよ。 ……少しだけ楽しかった。ありがとうね。 あたしはもう次の生活を思い描いていた。次こそ普通に生きれますように…。 そんな精神状態の中、ある音があたしの耳を刺激する。 ガラッ! キョン「どうしたんだハルヒ、お前らしくないぞ。」 ──えっ? ……キョン? 古泉「見て下さい、この体。機関のお偉い方さんからも好評なんですよ。」 ──嘘。キョンはあたしの席の前で拍手を送っている。 ただ、転校しようとしているあたしを、無関心な表情で…。 長門「…精神を攻撃する情報思念体。解ってしまえば、怖くない。」 突然現れた長門が教師である岡部に飛び掛る。 ──そんな光景に驚いている暇もなく、キョンがあたしの手を引っ張る。 キョン「いくぞ、こっちだ!」 その時のキョンの手は暖かかった。間違いない。本物だ。 あたしはふと顔に笑みを戻すと、そのまま倒れてしまった。 キョン「───おーい、ハルヒぃー。」 ん……ん? 気づけばあたしはキョンに抱きかかえられていた。 ──夢?だったの? キョン「お前相当悪い夢見てたんだな、ソファーから落ちるなんて普通はありえんぞ。」 普通の部室。普通の光景。普通の…キョン……。 ハルヒ「あ……あっ、そう! あたしたまにはだってこーいう事あるわよ!」 ──嬉しかった。夢でよかった。 そう思うと同時に、また眠気が誘ってくる。 ハルヒ「あたし、もっかい…寝る。 キョンも……。」 あたしは喉まで出かけた言葉を噛み殺した。 だけど、あの、手を引っ張ってくれた時のキョンは本当に頼もしかった。 ──そのうち、副団長も考えてやらなくはないわ。団長があたしでよかったわね、キョン。 古泉「さてさて…涼宮さんはまた眠ってしまいましたが…。」 長門「いい。……彼女に何らかの支障を出さない事、これが私達の役目。」 キョン「しっかしまぁ、やっぱり頼りになるよな、長門は。」 長門「………」 ───ハルヒ、お前は戦った。自分の精神に負けず、がんばった。 だから今は眠っていろ、SOS団の団長が倒れるなんて団員の俺達には、願ってもいない事だからな…。 ……お前が閉鎖空間にいる間、いろんな計画立ててたんだぞ。 お前が起きたら、どれから実行してやろう……っとと、それを決めるのは団長のお前だったな。はははは……。 Fin これを読んでくれた古泉萌えの皆さんありがとう 古泉「次週もマッガーレ!」
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/3614.html
「……で、話とはなんだ、古泉」 「……はい」 …。 夕暮れの文芸部室、今この空間に居るのは俺といつに無く真剣な表情の古泉。 …。 状況が分からない? 大丈夫だ、俺も理解していない。 いつもの時間が終わり帰宅しようとした俺を古泉が呼び止めたのだ。 …。 「大事なお話があります」 …。 ……と。 とりあえず分かるのは古泉が何か重大な話をしようとしている事ぐらいだ……やれやれ、また厄介事か? …。 「またハルヒが何かやらかしたのか?」 「いえ、涼宮さんの事ではありません」 …。 ハルヒの事では無い? …。 「ならお前、あるいは長門や朝比奈さんの事か?」 「いえ、今回は超能力的、宇宙人的、未来人的な事とは一切関係ありません」 …。 じゃあなんだ? …。 「……あなたの妹さんの事です」 …。 …………は? …。 「ちょっと待て、なぜ俺の妹がここで出てくる?……まさか、俺の妹が異世界人だった……なんてオチ…」 「ご安心下さい、あなたの妹さんは正真正銘普通の人間です……話と言うのは…」 「話と言うのは?」 「…………あなたの妹さん、可愛いですよね…」 …。 …………は? ……コイツ何言ってんだ? …。 「……ああ、可愛いな。歳が離れているから尚更な」 …。 とりあえず無難な返事をしてみるが…。 …。 「いえ!そう言う意味では無く!……その、一人の女性として……と言うか……何と言うか…」 …。 頬を赤らめてつぶやく古泉……実は気づいていた……気づきたくなかった…。 …。 「古泉……お前……まさか……」 「…………はい」 …。 …。 古泉一樹はロリコンだった …。 …。 ……神……神よ……いや待て!落ち着け俺! 俺はこんな事態には常人よりも耐性がある!そうだろ?……そうだ、まずは深呼吸だ……………よし、落ち着いた。 まずはコイツが本物かどうか確かめなくては。 …。 「古泉!!」 …。 俺はハルヒが野球部からパクってきたボール(本人は迷子になっていたのを保護したと言い張っている)に妹と書き、古泉に突き付けた。 …。 「え……?」 …。 次に筆箱から取り出した消しゴムに上○彩と書き、同じように突き付けた。 …。 「あの……これは一体……」 …。 突然の俺の行動に困惑する古泉。 俺は静かに告げた。 …。 「古泉、この○戸彩をお前の好きにしても良いぞ」 「好きにしても良いとは?」 「撫で回そうが、乳を揉もうが、口に含もうがお前の好きにしろ」 「な?!そ、そんな事許されるのですか?事務所とか問題ないのですか?!」 「事務所など気にする事は無い……ただし!上戸○を選ぶか我が妹を選ぶかはっきりとしてもらおうか!!」 …。 俺ははっきりと古泉に告げた。 明らかな狼狽を見せる古泉……さあ、どう出る? …。 「……決まっているではないですか、○戸彩を出せば僕の心が揺らぐとでも思いましたか?……まぁ……実際少し揺らぎましたが……僕の答えは……ふもっふ!!」 …。 なっ!? …。 古泉は掛け声と共に消しゴムを投げ捨てた……ああ……彩ちゃん……。 …。 「……本物か」 …。 困った事にどうやらコイツは本物らしい。 只でさえ超能力者と言う属性を所持しているのにその上ロリコンの属性までも求めなくても……。 …。 「そんな訳でこれからあなたの家に行き、お義父さんとお義母さんにご挨拶をして晩御飯でもご馳走になろうかと思‥」 「断る!!」 「……即答ですか」 「当然だ!これで了承する奴がこの世界のどこに居る?」 「いえ、ここに居れば良いなと……いや、駄目ですか……参りましたね……」 …。 突然表情を落とす古泉……様子が変だ。 …。 「どうした?」 「はい、実は……」 …。 …。 古泉が語った事、銀行の手違いで仕送りが遅れ明日にならないとお金が入らない、そして数日前から何も食べて無い……との事。 道理で顔色が悪い訳だ。 …。 「そうだったのか」 「はい……恥ずかしながら」 …。 ここで無視するほど俺は冷たい人間では無い。 しかし、俺もハルヒが課す罰金で手持ち金は無いし……かと言って家に連れていけば妹が危ないし…。 …。 「……あ!?」 「どうされましたか?」 …。 そうだ、あれがあるじゃないか! まさに今こそ使う時だろ? …。 「古泉」 「なんでしょうか?」 「ハルヒに飯を奢らせるぞ」 「…………すいませんもう一度お願いします」 …。 聞き返す古泉、幻聴とでも思ったか? …。 「聞こえなかったか?ならもう一度言おう。 ハルヒに飯を奢らせるぞ! 」 …。 俺の言葉に目を見開いて驚愕する古泉……まぁ、当然か。 …。 「……正気ですか?」 「ああ、至って正気だ」 「涼宮さんですよ?」 「ああ、あの涼宮ハルヒだ」 「天上天下唯我独尊、目の無い巨大台風、世界の中心で我が侭を叫ぶ第六天魔王……等、様々な異名を持つあの涼宮ハルヒにですか?!」 「……お前本人居ないと思って言いたい放題だな……そうだ、その第六天魔王にだ」 …。 しばらく沈黙が流れたた。 その間古泉は俺を理解出来ない物を見るかのような目で見続けた……いやいや、超能力者でロリコンなお前が一番理解出来ねぇよ。 古泉が沈黙を破る。 …。 「……しかし、あなたのその自信、何か手でも?」 …。 その言葉に俺は無言で例のモノを取り出しスイッチを入れた。 …。 …。 「こ…これは……いつの間に……」 「ああ、一昨日にな。まさかこんなに早く役に立つ時が来るとは」 「これがあなたの武器……たしかにこれならば…」 「ああ、勝てる!あの第六天魔王にな」 …。 俺の用意した武器、これがあればあのハルヒと言えども俺たちに飯を奢らざるを得ないだろう……しかし…。 …。 「ただし、一つ問題がある。これは古泉、お前に深く関係する事だ」 …。 古泉の顔に緊張が走り……そして口を開いた。 …。 「……閉鎖空間ですね」 …。 閉鎖空間……知っての通りハルヒの精神が不安定になると発生するトンデモ空間。 これの発生を食い止めるのが古泉……機関の使命。 俺たちが今から実行しようとしている事は機関にとって敵対を意味する事になる。 なぜならこれを実行したら過去最大級の閉鎖空間が発生する事が確実な訳だから。 …。 「どうする?」 「…………」 …。 古泉は無言で俺に背を向け窓へと向かった。 …。 「まぁ、無理だよな、さすがに……この件は無かった事に…」 「雪山の件……覚えていますか?」 …。 俺に背を向け窓の外を見ていた古泉が俺の言葉を遮るように語りかけた……雪山? …。 「あの時約束しましたよね? 一度だけ機関を裏切りあなた方に味方する ……と」 「……それが?」 「あの約束を果たす時が来たようです」 …。 ……おい。 …。 「おそらくこの件を実行中に凄まじい勢いで電話が掛かってくるでしょう……ですが僕は!それを完全に無視します!……ええ、とても辛いですが僕は約束を守ります!あなたとの約束を!!」 …。 いつの間にか振り返り拳を握りしめ熱く語る古泉……ってか何だその約束の無駄使い。 …。 「……いや、そこまで重大な事でも」 「いえ、約束は約束です!」 「いや、いいって…」 「そこをなんとか……わかりました!では約束は一度では無く二度……いや、三度で。ですからその内の一回を今回に…」 「……ずいぶん安いな、お前の約束」 …。 要するにお前は大義名分が欲しいんだな? お前がそのつもりならそれで良い。 …。 「分かった、お前の覚悟は受け取った……ではこれより我らは修羅に入る!」 「鬼に会っては鬼を切り、仏に会っては仏を切る……ですね?」 「さすが古泉、良く知っているな。まぁ、それくらいの覚悟が居るって事だ。 なんせ相手は…」 「第六天魔王もとい涼宮ハルヒ……神ですからね」 …。 こうして二匹の修羅と化した俺たちはハルヒの元へと向かった。 …。 …。 …。 …。 ~涼宮ハルヒ~ …。 …。 …。 「結構遅くなったわね」 …。 今日は部活が終わった後、有希とみくるちゃん誘ってと最近開店したお寿司屋さん行ってみた……もちろん回るお寿司屋さんだけどね。 ん?なんでキョンと古泉君を誘わなかったかって?開店サービスで 女性のみ二千円で食べ放題!飲み放題! …ってルールがあったからよ。 まぁ、アタシと有希が食べ過ぎたせいか 女性のみ二千円で食べ放題!飲み放題!(涼宮ハルヒ、長門有希除く) ってなっちゃったけど……まぁ、それはまた別のお話。 それにたまには女の子同士だけで食事ってのも良いじゃない? その後ケーキ屋さんに行ったりなんかしてこんな時間になっちゃった……別に帰りが遅くなったからって怒る親も居ないし。 ん?ああ、親が居ないってのは二人共仕事帰りがいつも遅くなるってだけだから勘違いしないで。 ……それにしても一人娘を放って置くなんてグレたらどうすんのよ、幸いにもアタシは真っ直ぐ素直に育ったけど……なんて事考えている内に家に到着! …。 ガチャガチャ …。 「ただいま~……って誰も居ないんだけどね……ん?」 …。 リビングに灯りが点いている?お母さん? …。 ガチャ …。 「どうしたのお母さん、こんなに早…」 「お帰りハルヒ。遅かったな」 「お帰りなさい涼宮さん」 「……」 …。 ガチャ …。 アタシはドア閉めた…………え?……キョンと古泉君……? ……幻覚と幻聴?……無理もないわ、団長としていつも気苦労が絶えないし……うん、幻覚幻覚。 アタシはもう一度ドアを開ける。 …。 ガチャ …。 「なにやってるんだハルヒ?入らないのか?」 「涼宮さん、お茶を用意していますよ。座って下さい」 …。 …………幻覚じゃ……無い?! …。 「ちょ…ちょっと!なんであんた達ここに居るのよ!?」 「……声を抑えろハルヒ、夜だぞ。近所迷惑を考えろ」 「何処から入ったの?!」 …。 アタシの問いにキョンはポケットから何かを……って?! …。 「人の家の合鍵を勝手に作るな!」 …。 アタシはそれをひったくり怒鳴る……なに……この状況?何でキョンと古泉君が家に? ……駄目、頭グルグル……落ち着け涼宮ハルヒ!落ち着くの!落ち着いて今の状況を整理するの! …。 「はい涼宮さん、お茶ですよ」 「ああ、ありがとう古泉君……ごくごく……ふぅ~……じゃなくて!なんで古泉君まで居るのよ!」 「まぁ、まずは落ち着け、深呼吸だ。それにしてもお前は突然の事態に対する耐性が無いな。それでも団長か?そんなザマで何が世界の不思議を見つけるだ!!ええ?!」 …。 くっ……言い返せない……ってか……何でアタシ怒られてるんだろう…? とにかくキョンの言う通り深呼吸……………………よし、もう大丈夫! …。 「落ち着いたか?じゃあ話を聞け」 …。 …。 …。 …。 「なるほどね」 …。 キョンの話……まさか古泉君にそんか事情があっただなんて。 …。 「そんな訳だ、だから団長として俺と古泉に飯を奢ってくれ」 …。 なんでキョンが入っているのか理解出来ないけど……って言うか。 …。 「それは別にキョンが古泉君に奢ってあげたら良いんじゃない?」 「あいにく俺はお前が課す罰金で貧乏だ」 「ん……でも家に招待して晩御飯をご馳走するぐらい良いでしょ?」 「ある切実な事情があって古泉に家の敷居を跨がせる訳にはいかないんだ」 「……何よそれ」 「それは禁則事項だ」 …。 何よ禁則事項って……そう言えばみくるちゃんもたまに使うわね。 こんど意味聞いてみよう。 …。 「でも残念だけど家は何も無いわよ、アタシも外で済ませて来たし」 「ああ、それは確認済だ。見事に何も無いな」 「勝手に家捜しするな!!」 「声大きい、近所迷惑を考えろ」 「あんたはアタシの迷惑を考えなさい! ……まさかアタシの部屋とか入ってないでしょうね?」 …。 もしも写真立てとか……それどころか日記でも見られていたら。 …。 「見損なうな、そんなモラルに反する事を俺たちがすると思っているのか?お前は俺達をそんな目で見ていたのか?……だとしたらかなりのショックだな…」 …。 表情を落としうつ向くキョン……別にそんなつもりじゃ…。 …。 「ご、ごめんなさい。言い過ぎたわ」 「……すまん、俺も言い過ぎた」 …。 アタシの悪い癖……不用意な発言で人を傷つける……反省。 …。 「……不法侵入の時点で人としてアウトなんですけどね」 …。 古泉君の呟きが聞こえたような気がしたけど話が進まないからとりあえず聞かなかった事にする……ってかさっきから古泉君の携帯鳴りっぱなしなんだけどなんで出ないんだろ? …。 「と、とにかく何も無いのは確認済なんでしょ?無駄足だったわね」 「それは問題ない、今から外でお前に奢ってもらうつもりだからな」 「な!?嫌よ!アタシは奢ってもらうのは好きだけど人に奢るのは大っ嫌いなの!」 「……そんな発言を堂々と胸を張って言える所がお前の良い所であり羨ましい所なんだが……ハルヒ?」 …。 キョンの表情が変わる……何よその猛禽類を思わせる鋭い目は? …。 「な、なによ」 「一昨日の放課後を覚えているか?」 …。 一昨日の放課後? え~と……たしかキョンは掃除当番、たしか古泉君も。みくるちゃんは鶴屋さんと用事があって、有希はコンピ研に……そう、アタシが一番に部室に行ってしばらく誰も………あ!? …。 「思い出したか?」 …。 邪悪……そうとしか表現出来ない顔でニヤリと笑うキョン。 …。 「キョンあんた……まさか……」 「古泉」 「はい」 …。 古泉君が取り出したのはカセットレコーダー……って事は……やっぱり…。 …。 「人と言うのは悲しいな……暇になると即興で歌を作り歌ってしまう。しかもそれは大抵が恥ずかしい代物だ」 …。 足がガクガクと震える……道理であんなに強気だった訳だ二人共…。 …。 「ハルヒ、お前に選択肢は無い」 …。 ……くっ …。 「分かったわよ!奢れば良いんでしょ?奢れば!ライスでもライス大盛でも好きにどうぞ!」 「……やれやれ、お前はまだ自分の立場が理解出来ていないみたいだな……古泉」 「はい」 …。 カチッ …。 うきやあああああああああああ!!! …。 「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい申し訳ありませんでした!!何でも好きな物をお腹一杯お食べくださいませ!二人は成長期だから美味しい物を一杯食べないといけないのおおお!!」 「古泉」 「はい」 …。 カチッ …。 「……うっ……うっ……」 「涼宮さん、ご馳走になります」 「ハルヒ、素直なお前が一番可愛いぞ」 「この鬼いいいいいい!!!」 …。 悪魔二人に晩御飯をご馳走する羽目になってしまった……アタシともあろう者が……うっ…うっ…。 …。 …。 …。 そんかこんなで今、夜道をアタシ、キョン、古泉君の三人で歩いている。 静かな夜道に二人の話し声と古泉君の携帯音だけが響き渡っていた。 …。 「ここの高級レストランに入るわよ」 「高級レストランって……ただのファミレスじゃないですか」 「まぁ、もう歩くのも疲れた。次回はもっとマシな所に連れていけよ」 …。 じ…次回って…。 …。 …。 …。 「いらっしゃいませ、ご注文はお決まりでしょうか?」 …。 席に着くと……見るからに頭の軽そうな女が営業スマイルを浮かべて注文を聞きに来た。 ……いけないいけない、アタシ心が荒んできてるわ…ダメよこんなんじゃ。 …。 「……コーヒー」 …。 お寿司食べたからお腹空いてないし……。 …。 「俺は高い順番に上から10品、それとデザートも上から5品」 …。 遠慮全く無しですか……そうですか…。 でも古泉君なら…。 …。 「おや、それは良いですね。では僕も彼と同じ物を」 …。 ……もう好きにして。 …。 大量の料理がテーブルの上に並べられるやいなや、二人はまさに成長期とでも言うような食欲でそれらを胃袋へと入れ始めた。 ……アタシはコーヒーを飲みながら眺める。 …。 「ねぇ、古泉君」 「はい?」 「さっきから携帯鳴りっぱなしだけど出なくて良いの?」 「あ、うるさかったですか?申し訳ありませんでした」 …。 そういって古泉君は電源を切った……良いの? …。 ……それにしても……これ全部でいくらになるのかな…。 アタシはポケットの財布を確認す…………え?……。 ……そんな訳無いわ…そう!別のポケットに! ………無い……嘘…。 ……落ち着け、落ち着くのよ涼宮ハルヒ、キョンも言ってたでしょ? まずは深呼吸…………よし、落ち着いた。 財布は……あ!…そうだ…。 思い出した、リビングのテーブルに置いた財布の存在を……どうしよう…。 …。 「どうしたハルヒ?」 「どうかされましたか涼宮さん?」 「へっ?!な、なに?」 …。 突然二人が声を掛けてきた。 …。 「いや、顔色が悪いぞ」 「ええ、真っ青ですよ」 …。 ……まずい。 …。 「べ、別に何も無いわよ!至って普通の状態よ!」 「そうか……なら良いんだが」 …。 二人は再び食事へと戻った……まだ……まだ駄目。せめて二人がお腹一杯になってから。 …。 …。 …。 …。 「いやあ、食った食った」 「ええ、こんなに美味しい食事は本当に久しぶりでしたよ」 …。 二人は食事を終え食後のコーヒーを飲んでいる……もう良いかな?大丈夫かな?……かな? …。 「ねぇ、キョン、古泉君」 「なんだ、ハルヒ」 「なんでしょうか?」 …。 あ、笑顔だ……お腹一杯になったから凄く機嫌が良いんだよね? うん、大丈夫。 …。 「あの……凄く言いにくい事なんだけど……」 「どうしたんだハルヒ、お前らしくないぞ」 「ええ、何でも言って下さい」 …。 アタシは自分で出来る一番可愛い顔で言った。 …。 「財布……忘れて来ちゃった……テへッ(はーと)」 「「…………」」 …。 しばしの沈黙の後二人の顔がみるみると……。 …。 「「あ゛あ゛(怒)!!」」 「ひいっ(泣)」 「古泉!例のテープを今すぐ流せ!大音量でだ!」 「はい!ただいま!!」 …。 ちょおおおおおお!!! …。 「ええ、お集まりの紳士淑女の皆様、北高SOS団団長涼宮ハルヒが心を込めて歌いました、聴いて下さい」 「いぃやめぇてえええええええワザとじゃ無いのおおおお本当にいいいいい!!! 」 …。 …。 その後アタシの必死の努力によりとりあえず大惨事はまぬがれた……ワザとじゃないの……本当なの…。 …。 …。 …。 …。 「……一杯食べてしまったな」 「……食べてしまいましたね」 「……食べたわね」 …。 アタシ達三人は今途方に暮れていた。 …。 「お金がありません。ごめんなさい」 …。 そんな言葉で許して貰えるような金額では無い事はアタシ達誰もが理解していた。 二人を見てみる……困っているわね。 方法はない、お金が無いのは事実。 ……素直に謝るしかない……ここは団長であるアタシが仕切らないと! …。 …。 「ねぇ、ここは素直にあやま…」 「やはりこの手しかありませんね」 「「え?!」」 …。 アタシの言葉を遮るように古泉君が発言した……何か手があるの? …。 「聞かせてくれ、その手とやらを」 「はい、まずあちらをごらんください」 …。 古泉君が指す方向……レジの所に男の店員さんがいるわね…。 …。 「幸いにも今フロアに店員は一人しか居ません。まずあの店員の前に僕かあなた、あるいは涼宮さんが立ちます」 「「それで?」」 「次にその店員にボディブロウを入れるのです……その隙に逃亡……どうですか?」 「「なっ?!」」 …。 アタシとキョンは同時に驚きの声を上げる……ちょっと古泉君、それって食い逃げ!……いや、この場合は強盗よ! …。 「古泉君!ちょっとそれは…」 「……その手があったか」 …。 ……へっ? …。 「この手しか思い浮かびませんでした」 「いや、さすが古泉だ。店員の前には俺が立とう」 「……漢ですね。ではお任せします」 …。 ……なに?……この二人?……大体おかしいでしょキョン? あんたの役目はアタシの暴走を止める事でしょ?まるで逆じゃない…。 …。 …。 アタシは知らなかった、この二人が修羅に入っていると言う事を。 鬼や仏をも斬る覚悟の二人にとって何の罪もない店員さんにボディブロウを喰らわせる事くらいほんの朝飯前だと言う事を……。 …。 …。 「ボディブロウは……そうですね、気絶させるのが一番の理想ですがそれは難しいと思いますので、とりあえず最低でも10秒は悶絶させたい所ですね」 「10秒か……じゃあこの角度で……」 「はい……えぐり込むように……」 …。 修羅二匹が作戦会議をしている……あの会議が終わったその時……何の罪も無い店員さんの前に立ちキョンは …。 一切の手加減を止め、強力なボディブロウを喰らわせる …。 そう …。 微塵ほども容赦無く!! …。 …。 「あは……あはははははは…」 …。 アタシは壊れかけていた……何故かって? だってアタシ涼宮ハルヒよ?ちゃんと理解しているのよ自分が変人だって!それを受け入れているわ! …。 でも……いま……いま…。 …。 「なぁ古泉、もしもあの店員が大怪我とかしたら……」 「その時はその時です。そんな事を考えていたらこのミッションは達成できません。僕なら殺すつもりで打ちます」 「……お前の言う通りだ。すまん、覚悟がたりなかった……殺す気でだな」 「祈りましょう。彼の幸運を……」 …。 …。 この三人の中で一番の常識人がアタシであると気づいてしまったから……。 …。 駄目!壊れるのはまだ早い!!アタシは誰だ?そう、涼宮ハルヒ!!頑張れアタシ!! みんな見ていて、アタシ涼宮ハルヒの頑張り物語りを!! …。 …。 …。 「待ちなさい!」 …。 アタシは今にも向かいそうだった二人に声をあげた。 …。 「なんだハルヒ?もうミッションをスタートさせねばならんのだが」 「涼宮さんも逃げる準備を早く」 「却下!!」 「……え?!」 「逃げる準備?ミッション?何ふざけた事言ってんの?大体団長たるアタシを無視して何勝手に話進めてんのよ!」 …。 二人の顔に狼狽が見える。 …。 「いえ……しかしこうなった以上はこれしか…」 「ハルヒ!じゃあお前には何か他に手があるっていうのか?」 …。 他の手?……それは……。 …。 「……無いわ」 「なら引っ込んでいろ!俺達のプランでなら確実にこの窮地から脱出出来るんだ」 …。 ……ほう。 …。 「……なんの罪も無い人を傷付けてね」 「「……ん」」 …。 アタシの言葉に二人はうつ向く……効いたみたいね。 …。 「じゃあ……一体どうしろと…」 「涼宮ハルヒ」 「……は?」 「アタシの名前よ。思い出した?アタシが待てと言っているの!うだうだ言って無いで大人しく待ちなさい!」 …。 …。 …。 「……分かった」 「分かりました」 「うん、よろしい!」 …。 涼宮ハルヒ完全復活! …。 …。 …。 …。 あれからしばらく時間が流れた。 さっきああは言ったけどこの窮地を脱する手段は未だに思いついていなかった。 …。 …。 『電話して誰かにお金持って来て貰えば良いんじゃね?』 …。 …。 神の声ありがとう。たしかにその手が一番よ。 でもアタシがその手を思いつくのは全て終わった後。 ……人間ってテンパっているとそんな基本的な手段も思いつかないもんなのよ。 …。 「……やはりあの手しか」 「ダメよキョン!惨劇を起こして乗り越えてもその幸せは長くは続かないの。待ちましょう……追い風が吹くのを」 「追い風か……いつ吹くってんだ」 …。 今は待つしかない……そう……追い風を。 …。 「……よろしいですか?」 「古泉?」 「古泉君?」 …。 あれから一言も発しなかった古泉君が突然声をあげた。 …。 「どうした、古泉?」 「まずはあちらをご覧ください……おっと!何気なく、気付かれないように」 …。 古泉君の示す方向を見ると…………何?あいつ? 一人の人相の悪い男がアタシ達をジッと見ていた。 …。 「もうかれこれ一時間近くになります……あの不快な視線……もう我慢できません」 「……なるほどお前の言いたい事は分かった」 「これはあちらから喧嘩を売っているも同然……売られた喧嘩は買うべきです。ついでにここの支払い分巻き上げましょう」 「さすが古泉だな……上等だ、その役目、俺が引き受けよう」 「大丈夫ですか?結構強そうですよ」 「心配するな、伊達にこの一年過ごして来たわけじゃ無い。体力だけは無駄に付いた」 「……そうですか、ではご武運を」 …。 キョンは席を立ち向かおうとした。 …。 「待ちなさい」 …。 アタシはキョンを呼び止める。 …。 「なんだハルヒ、まさか止めろとか言うつもりじゃないだろうな?」 「いいえ!あの手の奴はここでキッチリと締めておくのが良いわ。 払わないとでもぬかしたら腕の一本でも折ってやりなさい」 「あ……ああ」 …。 今度こそキョンは向かった……ん?さっきと言っている事が違う? なんで?売られた喧嘩は買うべきでしょ? …。 「やりますね、いきなり胸ぐらを掴みましたよ」 「頑張れキョン!」 …。 …。 …。 「マズイですね……素直に謝りそうな気配です」 「なにやってんのよ!許したらダメよ!」 …。 …。 …。 「……どうやら打ち解けてしまった様ですね」 「……バカキョン」 …。 程なくしてキョンが笑顔で戻ってきた。 …。 「……あなたには失望しました」 「このチキン野郎……もう一回行って来なさいよ」 「違う違う、俺じゃなくて古泉が行けば良いんだよ」 「僕が?」 「古泉君が?」 …。 キョンは古泉君に行けと言っている……なんで古泉君? …。 「……えっと……じゃあちょっと行ってきます」 「頼んだぞ」 …。 古泉君は首をかしげながら向かって言った。 …。 「キョン、説明して?」 「ああ、あの男、実はホモなんだ」 …。 ……へっ? …。 「どうやら古泉に一目惚れしたみたいでな、あの視線は奴から古泉へのラブ光線だったって訳だ」 「……そ、そうなんだ……んで支払いはどうするの?」 「ああ、紹介してくれたら報酬をコトがすんだ後、古泉に渡すそうだ」 「コトって……まさか?!」 …。 古泉君を見てみると……トイレに連れて行かれそうになっている?! …。 「助けて下さい!この男……何かを狙っています!」 …。 古泉君の声が響き渡る……狙ってるって、あなたの肉体なのよ! …。 「あなたは何電話掛ける振りをしているんですか?それどう見ても電話じゃなくてあなたが履いていた靴でしょ?!」 「ああ……次の商談の件だが…」 …。 キョンは上手くやっているわね……アタシは…。 …。 「涼宮さん!」 …。 アタシはテーブルの下に潜り耳を塞いで …。 「プーさんでしゅプーさんでしゅ、ハチミツ食べたいでしゅ」 「テーブルに潜って一体なになっているんですか?!」 …。 古泉君はどんどんとトイレに近づいて……ううん、アタシは何も見ていない!聞いていない! …。 「アッ――――!!!」 「プーさんでしゅプーさんでしゅ……」 …。 …。 …。 …。 「コーヒーお代わりお願いします」 「ああ、俺も」 …。 アタシとキョンは古泉君の帰還を待っていた……コーヒーを飲みながら。 古泉君がいつの間にか居なくなってそろそろ30分になろうとしている。 …。 「古泉一体何処に行ったんだろうな」 …。 キョンが棒読みでそう呟く。 …。 「そうね、いつの間に居なくなっちゃうんだものね」 …。 アタシも棒読みで返しておいた。 さらに15分ぐらい経った時だ。 …。 「古泉!」 「古泉君!」 …。 古泉君が帰って来た! …。 …。 「一体何処に行っていたんだ?心配したぞ」 「本当よ、でも責めるつもりは無いわ。だってちゃんと帰ってきたのだもの」 「僕……僕……」 「どうした、古泉?」 「古泉君?」 …。 …。 「……汚れてしまいました」 …。 ……古泉君。 …。 「お尻の穴が……痛いんです……」 …。 ああああああ!!! …。 「痛みに耐えて良く頑張った!感動した!」 「あなたはSOS団の誇りよ!あなたに終身名誉副団長の称号を与えるわ!」 …。 古泉君あなたは本当に立派よ!……所で…。 …。 「古泉、あの男から何かもらわなかったか?」 「え?……ええ、これを…」 …。 古泉君が差し出した物……それは。 …。 「……テレホンカードだと?」 「……しかも50度数な上に使いかけ……こんな物の為に古泉君は…」 「待って下さい」 「「えっ?」」 「本当に大切な物はお金ではありませんよ、本当に大切な物とは……」 「「大切な物とは?」」 …。 …。 「固くて太い物です」 …。 …。 …。 「うわああああああ!!!」 「いやああああああ!!!」 …。 ファミレスにアタシとキョンの絶叫が響いた。 …。 「駄目だ古泉!!そっちは駄目だ!!」 「古泉君!!そっちにいったら駄目えええ!!」 …。 なんて事?!まさか古泉君が! …。 「違うだろ古泉!お前はロリコンだ!!そうだろ?」 …。 ……え? …。 「キョン?ロリコンって……」 「ああ、古泉はホモなんかじゃない!俺の妹(11)が好きなロリコンなんだ!!まかせろ、俺が必ず何処に出しても恥ずかしくない立派なロリコンに戻してやる!!」 …。 古泉君……ロリコンだったんだ。 ……ちょっと引いちゃった。 …。 594 名前:涼宮ハルヒの幕張 ◆0qzco1.0p6 [sage] 投稿日:2007/11/23(金) 01 13 49.31 ID eK7mf4EFO 「古泉、今から俺が言う質問に答えろ!良いな?」 「は…はい…」 「女子児童、OL……さぁどちらに心が惹かれる?」 「女子……児童です」 「良し!なら次だ、ブルマとパンスト……どっちが欲しい?」 「…ブルマです」 …。 だんだんと古泉君の目に光が戻っていってるみたい……。 …。 「最後だ、上戸彩と俺の妹……どっちを愛している?」 「あなたの…妹さんです!」 …。 古泉君はしっかりとした声で言った……古泉…君。 …。 「古泉!」 「僕は……僕は……」 「何も……何も言うな……くう、涙がとまらねぇ」 「……ひっく……ひっく……古泉君……お帰りなさい」 …。 それからアタシ達は三人で抱き合って泣いた……事情を知らない他の人達ももらい泣きしているみたいね。 ……本当にゴメンナサイ、ゴメンナサイ。 その涙無駄使いです。 本当にゴメンナサイ。 …。 「古泉、もう一度お前の愛する者の名前を聞かせてくれ」 「あなたの妹さん……」 「声が小さい!もう一度だ」 「あなたの妹さん…………の」 …。 ……の? …。 「お兄ちゃんです」 …。 …。 …。 ……えっと……キョンの妹のお兄ちゃん……って……。 …。 「うわああああああああああ!!!」 …。 キョンの絶叫が響いた……古泉君……戻ってこれなかったのね…。 …。 「……キョンたん」 「やめろ……俺をキョンたんと呼ぶな……俺を恋する乙女の目でみるな……」 …。 キョンがどんどん追い詰められて行く……このままだとキョンが…。 でもアタシにこの状況で何が…………ん?!キョン? キョンがアタシを見て……そう、分かったわあんたのアイコンタクト……伝わったわ。 まかせて! …。 「古泉君!向こうでフンドシ締めた美少年の集団が悩ましげに腰を振りながら練り歩いているわよ!」 「なんですって?!」 …。 古泉君がアタシの言葉に騙された……今よ、キョン! キョンは一瞬アタシに親指を立てた後素早く古泉君の後ろに回り込み……これは……これは…。 …。 「うぉおおおおお!!」 …。 ジャーマンスープレックスホールドだあああああ!!! …。 グゥエシ! …。 キョンの放った大技により古泉君は完全に沈黙した。 …。 「許せ古泉、こうするしか……こうするしかなかったんだ……しかしまさかロリコンからホモになるとは……」 「ええ、超サイヤ人3もビックリな変身ね……目が覚めた時元の古泉君に戻っていたら良いけど」 「ああ、心から……心からそう願うよ」 …。 …。 …。 それからのアタシ達、店長らしき人が現れて。 「お願いですから出ていって下さい。お代?ええ、結構ですから二度と来ないでください」 …。 と言われ追い出された。 …。 「結局払わないでよかった訳だ」 「結果オーライってやつね」 …。 アタシとキョンは固く手を握りあった。 …。 「ところでコレどうしようか? 」 「そうだな……そこの茂みにでも放りこんでおこう」 「でもここら辺野犬が出るって話よ」 「それは大丈夫だ。たってコレは古泉だぞ」 「そうね、古泉君だもんね」 …。 そしてコレを茂みに放り込んだ後、キョンとアタシは肩を並べ歩いていた。 …。 「ところでキョン!当然送ってくれるんでしょうね?」 …。 アタシの言葉にキョンはハニカミながら言った。 …。 「やれやれ、お姫様がお望みならばな」 …。 …。 …。 …。 「……ってところで目が覚めたのよ」 …。 …。 なんだ……それは…。 ん?状況が分からない?OK説明しよう。 …。 いつもの放課後、いつもの部室。 突然ハルヒが昨日面白い夢を見たと俺たちに語り始めたのだ。 …。 ってかずいぶんと危険な言葉が出てこなかったか?閉鎖空間とか…。 …。 「んなら感想は?みくるちゃん!」 「ふ、ふえ?!え~とえ~と……そ、そうだ!古泉君はどうでしたか?」 「……この話で僕に振りますか……そうですか……」 「ふぇえええ…」 …。 古泉のコメカミがヒクヒクしている。 朝比奈さんこれはさすがにあなたが悪いです。 …。 「長門、お前はどうだ?」 「……パクリ」 …。 さて、何の事だかさっぱり分からないな。 … 「……でもユニーク」 …。 …。 ……おしまい。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/6560.html
エピローグ 朝起きれば何故だかハルヒの声がして、その理由が掴めぬまま独りもだえた後に学校へ行く支度をした。あー、眠いねえ。 いつも通りえっちらおっちら坂道を登っていき、朝っぱらから元気な谷口と合流。とるに足らない会話をした。しょうもない内容でも話していれば坂道の苦も幾分か忘れることが出来、気づけば教室前に着いていた。無意識ってのも凄いもんだな。 「キョン、客だぞ」 「ん? 俺にか?」 ドアに手をかけた所で谷口からそう言われた。俺に用なんて、誰だよ。古泉ぐらいしか思い浮かばん。 だがそれは以外にも長門だった。 「どうした、長門」 「‥‥‥昼休み」 それだけ言って立ち去っていく。なんだなんだ。なんかまたハルヒが起こそうとしてるのか? 「おいキョン」 「なんだよ」 「昼休みに、あの長門有希と何する気だよ」 「さあな‥‥‥」 わき腹を小突かれ、顔見ればニヤニヤしている。変態め。 そして俺はようやく長門にこの話を聞かされたのだ。涼宮ハルヒの分身。にわかにも信じがたい話だった。長門の創作じゃないだろうな。 「‥‥今のは本当なのか?」 「全て実際にあった出来事。世界を改変した際に、全員が違和感をもたないように私が自主的に記憶を作り替えた。今回ばかりは涼宮ハルヒ個体のみの記憶の改変を施すにはかえって時間がかかるため、あなたも含めた全員の記憶を統一したキーワードに沿った記憶となっている」 「そのキーワードってなんだ‥‥?」 ウインナーを取り上げながら聞いた。長門も食うか? 「‥‥‥日常」 長門はそう言った後、フルフルとわずかに首を横に振った。そうか、いらないか。 「にしても、じゃあなんで俺たちはその閉鎖空間に最初からいたんだろうな。その、もう一人のハルヒっていうのは俺たちを特に歓迎してたわけでもないんだろ?」 「涼宮ハルヒが深層心理の中で、団内のメンバーと離れることに拒絶に近い反応があったためと思われる」 なるほど。古泉や朝比奈さん、長門との結びつきもしっかり強くなってたんだな。一緒に映画まで作った中だし。 「ちなみにそれはこっちのハルヒのことか?」 一呼吸置いてから 「両方」 とだけ長門は短く呟いた。 ハルヒはハルヒに違いないということ、か。 長門から急にされた話ではあったが、そんな話も放課後になるまでの間に特に疑いもしなくなっていた。自分が体験していない出来事を語られるのは何だか歯がゆい気がしたが、まあなんだ。過去の俺は頑張ってたというわけだ。 「‥‥キョン!」 「なんだ」 「なんだじゃないわよ! あんた一冊も本を呼んでないってどういうことよ!!」 読書大会のことなんてすっかり忘れたんだよ。確か一週間かそこらか前に言われた気がしなくもないが、まあ曖昧だ。長門が作ったからだろう。 「何有希をチラチラ見てるのよ! あんたが本を読まなかったのは他でもないあんたのせいでしょ!」 古泉は相変わらず微笑んでいるだけだし、朝比奈さんはメイドさんの格好したまま古泉と同じく笑っている。読書の達人長門は‥‥‥まあ言わずとも分かるだろう。 「罰よ! 古の時代から悪しきものにはペナルティーを与えるのが規律なんだから!」 最初からこうなる展開になることを予期していたかのように、ハルヒはポッケから折りたたんであるルーズリーフを取り出し、それを広げた。裏からでも分かるぐらい、罰ゲームがびっしりと書かれている。やれやれ。 「さぁーて、どれにしようかしら。みくるちゃん、古泉君、有希達も選ぶのよ!キョンの罰ゲーム」 な、4つもやるのか!? 「当たり前でしょ! みんな10冊以上読んでるんだから!!」 朝比奈さんは顔からして、あんまりキツくないものを選ぼうとしながらも、鬼畜極まりないものしかないらしく悩んでいた。古泉は 「恥ずかしいセリフ10連発なんて良さそうですね」 などと言って、助けてくれそうにない。長門は黙々と何かを選び、本の世界に舞い戻った。しれっとしてはいるが、校庭の真ん中でヒゲダンスとか選んでいそうで一番怖い。 ハルヒは何だろうか。まあ俺のインスピレーション的に、おそらくは‥‥‥ 「あたし達全員が笑うまで一発芸よ!!」 ‥‥ほらな。こういう奴なんだこいつは。大人しく哲学書読んでる方がマシにさえ思える。 俺は一週間の猶予が与えられ、それまでに 古泉の選択した恥ずかしいセリフ十個、 長門の選択した校庭のど真ん中で百だか千だかの風になってを丸々一曲熱唱、 朝比奈さんの選択した誰にも言えないほど恥ずかしい過去を語る、 ハルヒの全員が笑うまで一発芸をし続ける の準備する羽目となった。これはひどい。人生経験上地獄の一週間となりそうだった。 ‥‥‥‥ 「おそらく、私はまたあなたの記憶を消すかもしれない」 「何故だ」 「あなたに‘涼宮ハルヒ’の能力を応用出来るという事実をまた知らせてしまったから。未来の私は今話した内容ごと忘れさせると思われる」 「‥‥‥どうして忘れさせる内容を話した? どうしてハルヒの能力を使えることを俺が知っていると困るんだ?」 「‥‥‥‥‥‥」 ‥‥‥‥ 知ったこっちゃねーや。長門は何か抵抗しているようにも見えたし、それが言えないならば、俺はいつ言われても受け入られる状況にしておくまでさ。長門が記憶を消そうと、何をしようともな。 でも長門、 どうせ消すんだったら‥‥その、なんだ。 皆の考えた罰ゲームの分も含めちまって この一週間以内に、頼むぜ? 完 消失へ続く
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5712.html
長門のマンションを訪ねた俺は玄関で予想外の人物と出会った。 「やぁどうも」そういって微笑みフェイスがそこにいた。 今日はラッキーかもしれん。ひとつ手間が省けた。そう思いそいつに訪ねた。 「お前はこのことについてどう思う」 「いきなりですね、まぁいいでしょう」 早く言えよ。 「わかりました、今回の事件は情報統合思念体の急進派の仕業だと思われます。」 「どういうことだ」 「簡単に言うと涼宮さんが願ったんですよ。SOS団のみんなは私を必要としてほしいと。」 意味がわからん「どうしてハルヒがそんなことを願うんだ。」 「おそらく情報操作されたのでしょう。急進派に。」 「なんだって、どうしてだ?」 「まずは、長門さんの部屋に行きましょう。話はそれからでも遅くないかと」 そうだな。そうして俺は長門の部屋の番号を押してコールした。 「長門、俺だ古泉もいる。」 「入って…」そう言ってドアが開いた。 相変わらずだな でも安心したぜいつもの長門だ。行くぞ古泉。 そして長門の部屋にいるわけだが、何から話していいのかわからん。 「長門、急進派がハルヒを情報操作したというのは本当か?」 「本当。」 「目的は何なんだ?」 「情報フレアの観測。大規模の情報フレアを発生させてこの世界を崩壊させようとしている。それが急進派の目的。」 「それ結構やばくないか。」 「大変まずいことだと思われる。そのためにあなたは、鍵を集めないといけない。」 「僕たちSOS団のメンバーのことですね。」 「その通り。私たちSOS団を集合させると鍵が揃う仕組みになっている。」 なんとなく状況がつかめてきたぜ。世界の崩壊とはまた厄介だな。 「今ここには、あなたと古泉一樹がいる。残りの朝比奈みくると涼宮ハルヒを集めればいい。」 「そのためにはどうすりゃいいんだ?」 そういって俺は驚愕した。 「3年前にタイムスリップする。」 なんだって。 2章のつづく
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1083.html
第二章 俺の安らかな眠りを妨げる者は誰だ。 目覚まし時計が朝を告げる音を軽やかに鳴らす。 朝特有の倦怠感と思考の低下は、俺の1日の始まりである。 不機嫌な状態で居間へ下り、テレビを観てハッとする。 「8 45」 あれれー? 急いで洗顔を済ませ、歯を磨き、着替えて愛車にまたがる。今日は朝飯抜きだ。 「待て。」 「あ?」 振り返ると1人の男がいた。俺の全神経が集中する。この自嘲的な笑みが憎たらしい。 こいつはいつぞやの俺と朝比奈さんの邪魔をした未来人っぽい奴。 「生憎、俺は男に興味は無いのだが。」 「忠告しに来ただけだ。死にたくないなら、今日は行くな。」 「お前を信用出来ない。お前は俺の敵だろ。」 「知るか。俺の敵は朝比奈みくるだ。」 「朝比奈さんは、俺の見方だ。その敵は俺の敵でもある。」 「まあいいさ。規定事項で近日中にお前は死ぬことになっている。」 ますます嫌な事言うな。「俺はその規定事項を破る為に来た。 お前の存在が与える影響は大きい。お前は未来にとって必要な鍵だ。失うわけにはいかない。 信じる信じないはお前の勝手。俺は勝手に動く。」 そう言ってあいつは俺に背を向け、どこかへ消えた。 駅前に到着する頃には、当に9時を過ぎていた。 「あんた、遅れたら死刑だって知ってる?」 ニゲタイ。デモ、ニゲラレナイ。 目の前の鬼は、表面上は笑顔を取り繕っているが、体から放つオーラが半端じゃない。 「さぁ今日は沢山食べるわよ~♪」 あぁ、不況が続く。 古泉が小声で話し掛けてくる。顔が近い。 「長門さんに頼んで、今日はあなたと涼宮さんを離します。事態が収まるまで続けますよ。」 いつ終わるんだよ。一生はないよな。 「大丈夫。人の記憶は短いですよ。彼女も直ぐ忘るはずです。」 その後ハルヒは、飯まで食いやがった。俺の金で。 「いいじゃない。あんたも食べてるし、遅刻した罰よ。」 それは目覚ましの………もういい。悲しくなる。 さて、くじ引きの時だ。古泉によれば、長門の力で俺とハルヒを離すらしいが…… 「では、僕から。」 古泉はそう言いながらくじを引く。 「印付きです。」 「………」 無言で長門が引く 「印付き。」 そう言い終えると飲みかけのサイダーを音も無く吸い出す。 「次はあたしね♪」 ハルヒが引く 「印無しよ。」 「じゃあ、次は私が。」 朝比奈さんが引く。 くじを前に悩む顔が可愛らしい。何引いたって結果は同じさ。 「印付きです。」 朝比奈さんは柔和な顔で俺にくじを見せた。 とても和みmあれ? 今回はハルヒと一緒。確か俺はハルヒ以外と組むはずなのでは? 古泉を見ると口をあんぐりさせ、長門の方を見ている。 一方、長門はといえば無表情のままだが、どこか情緒不安定に……見えないな。 「さぁ!!行きましょう。」 太陽も引っ込むような笑顔で、ハルヒは俺の手を引っ張り、外へ出ようとする。 その姿はまるで、クリスマスイブにプレゼントを買って貰えるとはしゃぐ、子供のようだった。 俺は金が少ない。会計は古泉に任せてとんずらする事にしよう。 外へ出た俺とハルヒだが、特に行く所も無く、 「何処行くか?」 「ん~あんたの好きな所でいいわ。」 「じゃあ、ゲーセンでも行くか。」 ハルヒしばらく考えた後「いいとこ目つけたわね。そういう場所には宇宙人とかがいるのは定番だし。」 どこが定番なんだろうか。やけに上機嫌なハルヒはドカドカと道を歩み出した。 どうでも良いが、街のど真ん中で鼻歌は止めてくれ。一緒にいる俺まで恥ずかしい。 すると、急に俺の携帯が鳴りだす。古泉からのメールだった内容は… 『先ほどはよくも、逃げて頂きましたね。代償は大きいですよ。 ところで本題ですが、詳しい話は後ほどにでも 現在はお2人を後ろから監視してます。 何かあったら直ぐに駆けつけますので御安心を P.S 良いデートを。ただし、密室は避けること。』 なにが『良いデートを』だ。殴ってやりたいね。いや、殴ってやる。 まぁ密室は避けるべきだな。俺の命に関わってる事だし。 だいたいこんな事になったのもハルヒの妄想電波のせいであり…… 「何してるの?早くついてきなさいよ!」 やれやれ、死のカウントダウンが始まったようだ。 助けてくれ親愛なる仲間たちよ。 十分後、近くのゲーセンに着いた。ハルヒは真っ先に近くのゲームをし始める。 ふと、俺の携帯が呼び出しをしていることに気づく。 長門からだった。 「長門か?」 「トイレで待つ。」 俺は曖昧な返事をして電話を切り、トイレへ向かう。ハルヒに言う必要はない。 トイレの前に古泉はいた。嫌な予感がする。 にやけ面が口を開く。 「どうも。」 「説明してもらおうか。」 「それはですね…」 一呼吸おき、 「や ら n」 「古泉。お前が泣くまでッ殴るのを止めないッ。」 「何もそこまで……アッー!!」 トイレの中で古泉を張り付けにした後トイレの外で長門と朝比奈さんに会う。 「あれ?古泉くんは何処ですか…?」 今頃トイレでキリストになってますよ 「きりすと?」 首を傾げて朝比奈さんは言った。今更だが、朝比奈さんの知識は俺達とかなり異なるみたいだ。 だがしかし、未来人として、歴史を知るという事は重要ではないのか? これがゆとりの力だろう。 「簡単に言ったら救世主ですね。確か一度死んで復活したとかしないとか。」 「宗教的ですねぇ。」 宗教ですからね… 「説明する。」 キリストならもう俺が話したが? 「そちらの方をして欲しい?なら、説明する。 彼が何故救世主と崇められたのは、彼の弟子のユダの裏切りにより…」 「もう結構です。」 「……そう。」 「要点だけ言ってくれる?」 キリストの話じゃないぞ 「結論から言う。私の力が働かなかった。」 「どういう事だ?」 長門の力が働かない? 急進派の陰謀で俺を殺すためとか? 妨害電波の発生か? 四次元ポケットの故障か? 「どれも違う。これは涼宮ハルヒが求めたからである。彼女の力が私の力を上回っただけの事。」 ハルヒが望んだ? 「そうです。彼女がそう望んだのです。羨ましいですね。私もあなたと一緒にいt……ぎゃあ。」 古泉。てめぇ、いつ抜け出しやがった? 「あ、あああ朝比奈さんに助けて頂きました。」 「ふぇ…いけませんでしたか?」 そんな事御座いません。あなたの決定は俺にとって絶対ですからね。 「で、俺はどうすれば良い。」 「………特に無い。」 「ただし、付かず離れずを保って下さい。」 付かず離れず? 「涼宮さんの興味をあなたに引きすぎてもダメ、逆も同じです。」 どうして? 「つくづくあなたは鈍感ですね。本当は気づいているのでは?」 古泉の溜め息が響く。 「………のろま。」 長門まで何を。しかし、まっったく解らん。 「乙女心ですよっ。男のキョン君には、解らないんですね♪」 男の古泉が乙女心を知っているのが不思議なのだが。 朝比奈さん…そんなに嬉しそうに言わないで下さいよ。馬鹿って言われてる気分です。 「これ。」 長門は小型のチップを手渡した。 「発信機。見失っても安心。」 「では、これで。」 3人は俺に会釈(長門は一瞥)をして出て行った。 何故かは知らんが「のろま」という言葉だけ俺の耳に残る。 俺は亀ではない。 渋々ハルヒの所に戻る さて、ハルヒは何か景品を取ったらしく、 「これ、要らないからあんたに一個あげるわ。携帯にでもつけなさい」 俺はハルヒからツキノワグマのぶーさんのキーホルダーを貰った。 「変な趣味だな」 「う、うっさいわね。嫌なら返してよねっ。」 ハルヒから不機嫌オーラが出てくる。 ここは、受け取るべきだな。 「いや、有り難く頂きますよ団長さん。」 「そっ…それならいいのよ。初めから欲しいって言えこのバカ!!」 ハルヒは怒ったような、悲しいような、だけど嬉しそうな…とにかく、滅茶苦茶な表情をしていた。 本当、何が言いたいのかね。 「さぁ、次やるわよ!」 ハルヒはいつもの表情に戻るや否やクレーンゲームに興味を示した。 まぁその辺の詳しい事は割愛させて頂く。 ハルヒはまたぶーさん人形をゲットし、他のアーケードゲームに興味を示す。 勿論、俺も参加する。まぁ、その辺はどうでもいい。問題はその後だった。 とりあえず、長門達が見つかった。 ハルヒが「プリクラを撮るわよ!」とか言って中に入ろうとしたからだ。 普通、誰か居るの確認するだろ。 その後古泉が、「おや?奇遇ですね」などと抜かし、すたこらどっかに消えて行った。 「やっぱりね。」 何が「やっぱりね。」なんだ? 「今までずっとつけられてたのよ。気づかなかった?」 生憎、俺には気を探る能力や、どこぞの宇宙人が持つスカウターは持っていないからな。 「今までの全部見られてたのよ!!恥ずかしいったらありゃしない!!」 「おお、キョンと涼宮じゃないか。」 谷口がいた。変な奴に見つかったな。 「遂に2人でデートか?アツアツだねー。」 「な、何よ。冷やかしに来たの?」 ハルヒは頬を赤らめた。俺だって恥ずかしい。 「あら、その手に持っているの何?」 「あぁこれか。早急拾った………なぁ。」 「どうしたんだよ。」 谷口は俯きながら何か躊躇するような姿勢をとる。 「俺ら友達だよな。」 「は?当たり前だ。」 「涼宮は?」 「一応一緒のクラスだし、友達でもいいんじゃない?何なら下僕にしてあげてもいいのよ。」 ハルヒはニヤリと小悪魔みたいに微笑む。 「ハハハ…お前らしいや。ホント良かったよ。お前らが仲間で。」 「お前何言ってるんだ?悩み事ならh……!!?危ねぇ!!避けろハルヒ!!」 谷口の手が光る。あれはナイフだ。それがハルヒに向けられる。 「……え!?」 間に合え!! 俺はハルヒからぶーさん人形を引ったくり、ハルヒを突き飛ばす。 そしてそれを谷口へ向ける。 ナイフはぶーさん人形に突き刺さった。 「谷口ィィィ!!!てめぇ……よくもッ!!」 俺は吹っ切れた。渾身の力で谷口へ殴りかかる。 その手を誰かが止める。古泉がいた。 「いけません。」 止めるな。こいつはハルヒを……… 俺は必死に足掻く。 「彼を見て下さい。もう何も出来ません。」 谷口は自分の手を見て目を疑っていた。 「AWAWAWA……俺……何してんだ?何で……何でこんな事を………ゴメン………ゴメン。」 「落ち着いて下さい。さぁ、ここは人目につきます。外へ。」 横で呆然としていたハルヒを抱え、外へ出る。 その後ハルヒはぐったりとしていたが直ぐに眠りに落ちた。 古泉が誰かに電話をしている。どうせ機関の誰かだろう。 程なくして車が来る。森さんだった。 古泉は谷口を車に乗せる。 「わたしも行く。」 長門も車に乗り込み、車は発車する。 「何で警察じゃないんだ?」 谷口は立派な殺人未遂犯である。警察に突き出すのが当たり前だ。 「気付きません?」 「……ナイフ。」 朝比奈さんが感づいたように呟く。 「まさか谷口……」 その先は言えなかった。悲しすぎた。言うに耐えなかった。 「ええ、ご想像の通りでしょう。」 また車が来た。今度は新川さん。 「涼宮さんとどうぞ。家まで付き添ってあげて下さい。」 ハルヒを抱え、車に乗る。 「古泉。」 「何でしょうか。」 「お前の力凄いな。俺の本気が簡単に止められたのは初めてだ。」 「ふっ、知ってますか?オカマやゲイが強いのは定番なんですよ。」 不思議な名言を残し、古泉と朝比奈さんは手を振る。 「宜しいですかな?」 「お願いします。新川さん。」 車は発車する。 「キョン……」 起きたかハルヒ。 「うん……助けてくれてありがと。」 ハルヒはまだ朦朧としている。 「大丈夫だ。俺がついている。」 ハルヒは急に瞼を全開にして、赤くなる。 「そ、それって…」 「何たって俺はSOS団の雑用係だからな。」 ハルヒは機嫌を損ねたようで、俺のふくらはぎをつねる。 俺何か悪い事言った? 「目覚めたなら頭どけてくれるか?膝枕は意外に疲れるんだ。」 「……バカキョン。」 すると、俺の頬に生暖かい物体が触れた。 ミラーに写る新川さんがにやけていた。 「………お礼よ。」 「………そっか。」 あ、自転車忘れた。 第三章へ
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5602.html
その放課後、ハルヒは遅れて来た。 「おまたせー!」 誰も待っていないと思うぞ。 「みんないるわね。新人を紹介するわ!入って」 そこにいたのはみたことあるふわふわのウェーブをかけたような髪をなびかせて、サファイヤのような瞳をピカピカ光らせてそいつは入ってきた。 「春喜優菜です。よろしく」 「この子今日決まった転校生なの。それにモデルやってるんですって」 「へぇ。すごいんですね」 「うわぁ!可愛い子だね。先輩?私より背ちっちゃい。」 「でしょ?可愛いでしょ?その子は3年生の朝比奈みくるよ」 「みくる先輩かぁ。いいなぁ。スタイルいいし。」 すごいマシンガンのようにいいところを言い始めた。ハルヒと違うマシンガンのようにな。 「あ。あなたカッコいいね。何組?」 「彼は9組の古泉一樹くんよ」 「9組かぁ。じゃぁ頭いいんだ。かっこいいし私よりトップモデルになりそうな素材だなぁ」 「ありがとうございます」 「あれ?彼女、静かだね。いかにも読書大好きなもの知りってカンジの子ね」 「あの子は6組の長門有希。優菜の思う通り頭いいし、物知りだし、読書好きなのよ」 よくゆうぜ。長門はほとんど部外者だろ。 「この子も可愛いなぁ。SOS団って可愛い子多いね。うん、気に入った!私も入ってあげる。で、何をする部活なの?」 きかん方がいいぞ。 「キョンあんたは黙ってなさい。ここはね、宇宙人、未来人、超能力者、魔法使い、もしくは魔女でも可を探して一緒に遊ぶことを目的としてるの!」 春喜は不思議そうに見た後、部室を見回した。 「へぇー。面白そうだね。うん。気に入った。入るよ」 「決定ね。じゃあ早速だけど、優菜には宣伝長をまかせるわ!いい?モデルの仕事をしてるとき、マネージャーとかスタッフにSOS団のことを宣伝するの。あと、できれば雑誌の記事の取材とかで宣伝してね」 「できればやるよ」 そんな安請け合いすんなよ。後でどうなってもしらんぞ。 「ねぇ、みんなのメアド欲しいな。交換しない?」 「いいわね。芸能人と友達だなんて」 「私は芸能人じゃないよ」 俺たちはこの後、メアドを交換してだらだらとして長門の本を閉めるのを合図としてお開きした。 のだが、俺のケータイは短くうなり始めた。 誰からだ、と思いケータイを開くと春喜からのメールだった。 『いますぐ2年5組に来てください。このメールが着たらすぐ』 俺は驚いた。当たり前だ。なんで、こんなアイツらの本当のことを聞いたときのような言付。又は朝倉のような言付か。もし、朝倉のような急進派だったら長門が助けてくれると信じるさ。 恐る恐る俺はドアを開けた。 春喜はニッコリ笑ってこっちを見ている。 「早かったね。ケータイって凄いね。こんなに早く伝言できるんだもん」 「何のつもりだ?」 「え?もう気づいてるんでしょ?私の正体」 長門たちのような奴か朝倉のような奴かもしくは、橘京子のような奴か。 「まだ気づいてないの?私は…」 「魔女か?それとも俺を殺しに来たのか」 「殺す?それは黒魔除のほうよ!失礼しちゃうわ」 黒魔除?それは…一体 なんだといいかけて俺は息を飲んだ。 「危ない!!」 俺は何が起きたのかわからなかった。 「!?」 驚きすぎて声も出なかった。 まさか、剣がふっとんでくるなんて想定外だ。 それを春喜が謎の丸い物体を振り回していた。 「来たわね!悪者共!!」 「ふん。何、気づいてたの」 「魔除既定対メイド型よ!あたりまえじゃない」 魔除だと?今はそんなこと考えてる暇なんてねぇ。なんだこの状況は。 こいつ等俺のこと殺そうとしてんのか。 「優菜、そこを退け。ターゲットをうてんだろ!」 「打たせるわけないでしょ!そのためにきたんだから!」 「お前が退かないのなら、あたいが退かせてやろう!いでよ!炎の魔人!ファイヤークロス!!」 「そんなの逆効果よ!あんた達をびっくりさせるわよ!」 いきなりだ。春喜は光を放つと、黒魔除Aは「この光は…!?」といって撤収していった。 「いったぁい」 「なぁ、あいつらは何だ。お前は誰だ」 それとさっきの光。 「ほとんどは知っての通り。私たち魔除既定対メイド型はハルヒちゃんについてて、黒魔除は佐々木さんよ」 その魔除既定対メイド型ってなんだ? 「メイドっていうのは、私たちの星でいう人間ってことなの」 少し間が空いて春喜は深呼吸し 「ちょっと有希ちゃんみたくなっちゃうけどいうよ。この銀河を統括する情報統合思念対の片割れの粒子から生まれた、それが魔除となったの。この地球から雲仙億光年離れた場所に魔除星があるの。そこでも2つのチームがあるの。それが、黒魔除と魔除の差なの。でも私たちは違う。魔除は魔除でも由緒ある魔除。それが魔除既定対メイド型なの」 なあさっきから魔除っていってるが、魔女じゃないのか? 「ああ。それはね。魔物を排除するって意味なの。それでね、黒魔除はあなたを殺してハルヒちゃんにそれをいってあなたを生き返らせる代わりに、力を横取りし、佐々木さんに渡そうっていう魂胆よ。まあそれを阻止するためにここに来たのよ。ちなみに、魔除既定対メイド型は、有希ちゃんと呼び方が違うだけで、私も実をいうと対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインターフェースなの。ただ、生まれた場所も生まれ方も違うから、2つに分裂したってわけ」 そういい終えると、春喜は溜息をして、すぐ笑顔に戻った。 「今日はごめんね。ホントはこれをいうだけのはずがとんだ邪魔者が来たわね」 笑顔を絶やさずにそういうと、「じゃあ、また明日、教室で」といって別れた。 俺は家に帰ってすぐにある奴に電話をした。 聞きたいことがあったからだ。 「………」 「長門、俺だ」 いつものように無言に電話に出たのに俺は安心感を覚えた。 「お前、春喜のこと知ってたのか?」 「知っている」 そういうと長門は予想外の発言をした。 「私と春喜優菜は姉妹。物質と物質の間に生まれたのが私。彼女は物質と違う物質の間に生まれた」 ちょっと待て。魔除と有機生命体とじゃ生まれ方が違うって言ってたぞ。 「確かに魔除と私のような有機生命体とじゃ生まれ方が違う。だが、間違って魔除の星に送るはずの物質を誤って使ってしまい、あげくに私と姉妹となっているが、別々の場所へ送られた。普通なら姉妹や兄弟のようなことになれば、私と朝倉良子のように同じマンションの別の部屋という風に生活するが、生まれたところが一緒でも、監視する場所が違う魔除とは暮らすことは認められていなかった」 いなかったっていうのは過去形だな。 「そう。今はこういった間違いが多数出現してしまう。なので、認められた」 「じゃあアイツはお前と住んでるのか?」 「まだわからない。それは彼女が決めること。私は別にいい」 じゃあ暮らすことになったら仲良くしろよな。 「了解した」 「じゃあな」と、俺が言うと電話を切った。 今日は雨が降っていて気分が重苦しい。 明日は土曜だというのに、市内探索をせないかんのだ。 気分が乗らないまま夜は更けていく。 突然俺のケータイがうなった。 「もしもし」 「もしもしキョンくん?私。春喜優菜。ちょっと今暇?」 用件を簡潔にいおう。長門の家に来いといわれた。 今ちょうど長門と電話したというのに何故そのときに言わなかったのだ? いや、待てよ。電話の中の音に電車の音が混ざっていた。 つまりアイツも今向かっているということか。 俺は暇と時間は有り余っているから自転車をつっとばして長門のマンションへと足を運んだ。 いつものようにインターホンを押すと 「はい、長門ですが、どちら様でしょうか」 珍しく、違う人がでた。 「俺だ」 「あ、キョンくんかぁ、入って」 その声はまさしく春喜の声だった。 長門の部屋の前に差し掛かるとドアの前に長門が立っていた。一体どうゆう風邪に吹き回しだ? 「入って」 部屋に入ると朝比奈さんと古泉も来ていた。 「どうしたんですか?朝比奈さんも古泉もいるなんて」 はっきりと驚きを伝えると 「見ての通りミーティングですよ。僕たちと彼等の」 そういう古泉の目線の先には、信じられない光景があった。 「なんでお前等がこんなとこにいるんだ?」 「別にいいだろ。僕だって新人さんが見たかったのさ。橘さんに教えてもらって、見に来ただけだよ」 こいつは見せもんじゃねぇぞ。 「大体、この前も言ったがハルヒの力を渡すなんてことはもういわんといっただろ」 「確かに言ったわ。けど、諦めろとは言われてないもの」 「それに俺はお前らの顔を金輪際見たくないんだ」 「そんな冷たいこというなよキョン」 俺は佐々木と話してて気づかなかったが、橘京子も九曜も藤原も春喜の方を見ている。 ついに、見られてるのが嫌になったのか 「あのー、なんですか?」 と、切り出した。 すると、九曜が今日はじめて口を開いた。 「あなたの―――瞳は―――とても―――綺麗ね」 俺にも言ったことのある、パーフェクトなまでに無意味な発言をもう一度言いやがった。 「あ、ありがとう…ございます」 超恐々している。 「それより、今度はなんの用だ」 「いいだろ。僕はここに着たかっただけだ」 なんだそりゃ。さっきと言ってることが違わないか? 「私はただ、あなたたちのもうひとつのお仲間の団を拝見しようとしただけです」 仲間?もうひとつの?団?なんの話だ? 「え?お気づきじゃなかったんですか?」 そんなの知らん。ん?待てよ…そういえばこの前、変な奴と会ったな。 あれは1週間くらい前。 ・・・・ ・・・ ・・ 「ただいまぁ」 これは妹の声だが、足音がたくさんするような気がする。 「キョンく~ん。お友達連れて来た~」 友達?アイツが友達連れてくる? 俺はどんな奴か気になり、ドアを開けて確かめた。 「いらっしゃい」 精一杯の笑顔で小6の子にいった。 「………」 そこにいたのは、妹より背の低く、髪が長く、二つの小さなおだんごを髪でつくっている。 「こんにちは。えっと」 「長門美知花」 長門? 「そう。よろしく」 そいつは温度を感じさせない無表情となかなか口を開こうとしない無言さ。 そして長門という苗字。 しかし、その感情を覆すことをされた。 「この人がお兄さん?」 美知花は満面の笑みでそう尋ねて来た。 「そうだよ」 いままでの無表情と無口は何処へやら。 「あたしの部屋はこっちだよ」 「うん」 妹たちは部屋に入った。 10分くらいして廊下が騒がしくなってきた。俺は耳をドアにつけた。 「私、トイレ行きたい。何処?」 「えっと、あっち行ってそっち行くとあるよ」 我が妹ながら意味不明な教え方だ。 「わかった」 「じゃあ、いってらっしゃーい!」 すると足音がどんどん近づいて、俺の部屋の前で止まった。 するとドアがいきなり開いた。 「いっつぅ」 「すまない」 先ほどあった無表情&無口が蘇っていた。 「なんかようか?」 「ある」 なんだ、この懐かしい感覚は… 「あなたは私のコピー台をみているから」 「私のコピー…って長門のことか」 「そう、私たちはコピー」 私たちってことはほかの連中もか? 「そう、あなたと涼宮ハルヒ以外は」 「じゃあ朝比奈さんと古泉が」 「そう。古泉一樹のコピーは古泉くるみ、朝比奈みくるのコピーは朝比奈祐樹」 なんで古泉が女で朝比奈さんは男何だ? 「それは2人が望んだから」 朝比奈さんが男になりたい気持ちはなんとなくわかる。 だが、古泉が女になりたいと思ったとしたら気持ち悪いぞ。 「詳しく言えば朝比奈みくるがそう願った。それを受け、何も考えていなかった古泉一樹に影響が及んだ。なのでこのような性転換を行ってしまった」 「お前は?」 「私も長門有希の思いが込められている。私は周囲の人から二重人格と言われる。それは長門有希の思いが曖昧だったから。長門有希は普通の人間のようになりたいと願うことがたまにある。それがそのときに出てしまい、このような性格になってしまった」 「というか、俺は妹がコピーのようなことになっているのはわかる。だが、ハルヒのコピーは誰だ?」 「涼宮ハルヒの従妹。涼宮コハル」 従妹か…詳しく説明しろ、長門。 「了解した。涼宮コハルは涼宮ハルヒの近くに住んでいる。そのせいか性格が似てしまった。そして涼宮コハルは小さな閉鎖空間を造りだしうまくいかない怒りを小さな≪新人≫を暴れさせている。それを止められるのは古泉くるみ。彼女は『機関』の一員のような存在。だからできる。そして小学校にはプチSOS団ができた」 涼宮コハル、プチSOS団か…。 ・・・・ ・・・ ・・ そういわれればいたな。 「それがあなた達のもうひとつの仲間です」 「それは思い出したがそいつらがどうかしたのか?」 「その話は今度ゆっくり2人でしてくれるかい?もう夜中の1時だ。長門さんにご迷惑になるだろ」 「…それもそうね。じゃあここまでは覚えておいてくださいね」 そのあとすぐ、お開きした。俺と長門以外はな。 「長門」 「なに」 「なんで俺にあのこといわなかったんだ?」 「あなたに心配かけたくなかったから」 そんな心配しなくてもいいんだぞ。 「そう」 その言葉を最後に俺も変えることにした。 「じゃあな、長門」 「待って」 そういうと長門は近寄ってきた。 「なんだ?」 「腕、出して」 腕?何でだ? 「いいから」 俺は大人しく腕を出した。 すると長門は俺の腕に噛み付いた。 「なっ?!」 とても間抜けな声を出してしまった。 「何やってんだ?」 「ナノマシンを注入した」 なんでだ? 「統合思念対の指令」 なぜだ? 「秘密」 そういうと長門は「明日、学校で」といい去り俺は出て行った。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/638.html
涼宮ハルヒの誤解 第一章 涼宮ハルヒの誤解 第二章 涼宮ハルヒの誤解 終章
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5133.html
涼宮ハルヒの呪縛-MEGASSA_MIMIKAKI+冥&天蓋こんにゃく百合カレーmix-Relinquished 掃除で遅れた俺は、既に全員揃っているであろう部室へ向かっていた。 扉を開けるとハルヒが怒鳴る。 「遅いわよミョン! …あれ?」 ? 「ちょっとミョン! …あああれ?」 部室の空気が北極並に凍りついた。ハルヒのエターナル(以下略)が炸裂した! 俺はミョンじゃないんだが。どうした、滑舌が悪くなったか? 「よく分からないけど、ミョンって言ってもミョンになっちゃ…ああーーーーーっ!!」 ハルヒはぐしゃぐしゃ髪を掻きむしり悶絶している。意味が分かりません。 「つまり、『キョ』の発音が『ミョ』になっちまうということか?」 「そうなのよ! なんとかしなさいよ!」 「じゃあ試してみるか。Repeat after me. 教科書」 「教科書」 「京都」 「京都」 普通の単語には影響ないのか。 「巨乳」 「……」ガシッボカッ 痛い痛い、無言で殴るな! 「このエロミョン!!」 「「……」」 長門「……変態」 駄目か。 長門「無視しないで…」 「駄目みたいね。ああもうなんとかしなさいよ!」 そう言われても、俺に何が出来る…。 長門(涙目)「無視しないで…お願い…」 「あああああああああああぁぁぁぁあぁぁぁあぁあこんにゃくぅぅぅぅぅぅぅぅうぅぅぅぅぅうぅぅぅぅぅ!」 混乱したハルヒは髪を掻き回しながら廊下へと疾走していった。 「馬鹿! 廊下へ飛び出すな! もしかしてもしなくてもナイスタイミングでパイプ椅子を運ぶ会長が…!」 バッシャーンガラガラガラガラ 「ハルヒー!」 「きゅーん…」 「あーあ言わんこっちゃない」 「す、涼宮さぁん! あ、あの、私、保健室に連れていきます!」タタタ… 因みに共に気絶した会長は廊下放置されたが、後にボンテージ姿の喜緑さんに回収されていった。何するつもりなんだろうあの人…。 「古泉一樹…、私が勇気を振り絞ってツッコミを放ったのに無視された…」グスン 「それは可哀想に」ナデナデ 「ううっ…」ポロポロ 「僕も空気ですから…」 「古泉一樹…泣かないで」 「長門さん…」 しばらくして朝比奈さんが戻って来た。頭を打ったのか、ハルヒの頭上に星が4つ程「ピヨピヨ」という効果音を伴いながら輪になって回転していたが命に別状はないとのこと。 「あ、あの、ミョン君…ふぇぇぇぇぇ?」 朝比奈さんもですか…。 「ごめんなさいミョンく…」 「……」 「…ぅぅぅ…」 伝染している、まさかハルヒの仕業か…? 「ずみまぜん…」 な、泣かないで下さい。ときに古泉に抱かれている長門よ、どうなってんだこれ。 「(重要な出番ktkr!!)涼宮ハルヒは自分だけが『ミョン』と呼んでしまうことが恥ずかしく、それならばいっそ皆が『ミョン』と呼んでしまうようなればいいという改変を行なった模様」 なんで元に戻るように改変しなかったんだよ…。 つまり、 「今日から貴方の名前はミョン」 「マジか」 「マジ(ざまあwwwwwwwwww)」 「勘弁してくれよ」 「無駄(メシウマwwwwwwwww)」 「はぁ…」 (はっ、いけないいけない。私の愛しのキョン様が…) 「ふ、ふっかーつ!」ピヨピヨ 威勢良く扉を開けて保健室から戻って来たたハルヒであったが、ふらふらしているし、何やら効果音が聞こえる。 「大丈夫かハルヒ、星が回ってるぞ」 「だだだだだだだだ大丈夫!」ピヨピヨ 長門(涼宮ハルヒは思考力が低下している、キョン様に接近するチャンス!) 「ふらふらじゃないか、家まで送ってやるよ」 「え? あ、う、うん、ありがと!」ピヨピヨ 「という訳だから先に帰るよ、じゃあな」 バタン 長門(涙目)「うぅっ……」 古泉「……」 「彼は無意識に人を傷つける…間違い無く女性の敵…」ポロポロ 「そう言われましても……」 意気揚々と学校へ向かう妹「翌日っ!」 なのね「阪中」 妹「逆になってるよー」 あれ? どうなってるの?「阪中」 妹「…」 教室へ向かう。ハルヒはまだ来ていないようだ。重たい足取りで自分の席へ。 「ハァ、参ったなぁ。今日から俺は『ミョン』なんだよな…。なんだよ『ミョン』って、力の抜ける擬音だなぁ、…みょん」 「ミョン君、落ち込まないの」 「朝倉…」 朝倉は長門からの連絡を受けたのか、俺が『ミョン』になったことに驚いていない。 「いくら抵抗しても無駄だからね。仕方ないわよ、ミョン君」 「ああ、相手がハルヒじゃ仕方あるまい…だが俺を『ミョン』と呼ぶ奴は許さん!」ガバッ 「え、ちょ…」 俺は怒りに任せて朝倉を机に押さえつけ、「アレ」を取り出した。 「痛いのが嫌なら大人しくしてろよお嬢ちゃん…」 「…ん、うう…///」 just a moment... 「はぁ……」 「いけないコだ…、俺をここまで本気にさせるとはな」 満足感と達成感に溢れた俺の目の前に、呆れた様子の谷口と国木田が現れた。 「何でお前が朝倉の耳掃除してんだ? (う、羨ましくなんかない! 決してない!)」 悪いか? だが俺の綿棒の手さばきは半端無いぞ? 既に俺の手に「墜ちた」朝倉はすやすやと穏やかな寝息を立てて眠っている。 「しかも綿棒って、耳かきじゃないのかよ」 綿棒なめるなよ。 「なぁミョン…あれ?」 当然のことながら、谷口もハルヒの呪縛に囚われているのである。 「何故だぁぁぁぁぁ! ミョンがミョンになっちまう!」 谷口が頭を抱えている。 「意味が分からないよ谷口君」 ここでようやく国木田が喋った。 こいつがハルヒと同じことを言うのが忌々しく感じられたので、立ち上がると悶絶している谷口に接近し、指先に渾身の力を込めて脇腹を突いた。 「ぅぼぁ」 倒れて床を転がる谷口。俺はそれを見届けて席に座る。 「容赦ないね…」 「俺だってこういう時もあるさ」 「でも、谷口君が悶える姿って本当に愉快だよね」 「国木田!?」 黒い…、国木田の笑顔が、黒い。 「ついでに僕も追撃しちゃお。『冥闇符:チャックアイ=テルーゾ』」 ズガァァァァァァァァァァァァァン 謎の呪文によって放たれた紫炎は龍の如く谷口へと突っ込んだ! 「国木田ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!(断末魔)」 ピチューン 某魔女「弾幕はパワーだ…」 「国木田、お前の方が容赦無さすぎる」 「ん? そうかなぁ」 「そうかなって…」 「先に謝るよ。ごめん、どうやら僕も『ミョン』としか言えないみたいなんだ」 国木田は申し訳なさそうな表情をしている。この正直者め。 「はははそうかそうかミョンか…ならば貴様も生かしてはおけん!」グサッ 「な…んで…」ドサッ 「まさかこのナイフ(提供朝倉)を汚す時が来るとはな…残念だよ。ラ=ヨダソウ=スティアーナ…」 だが谷口と国木田はまだ残機が残っていたので、3分後には何事も無かったかのように復活した。 チャイムが鳴ると同時にハルヒがやって来た、珍しく遅刻寸前だった。 「おはよ」 「おう。ケガは大丈夫なのか?」 「勿論よ。なーんかミョンって違和感あるわね…」 「ミョンなぁ…あんまりミョンミョン言われるとゲシュタルト崩壊を起こしそうだ」 岡部「朝倉ー、起きろー」 朝倉がまだ眠っている。残念だが、俺の超絶テクニックに墜ちると1時間はぐっすりなんだぜ。 山根(あの男…何をした…!) 岡部「そういえばミョン…ん、ミョン?」 「おんどぅるあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁいとこんにゃくぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」 「ミョン!?」 なぁハルヒ、言い間違えるのも恥ずかしいが、言い間違えられるのも恥ずかしいんだぜ…。 「rrrrrrrrrrrrrrr!!!(裏声)」 遂に耐えきれなくなった俺はホームルーム最中の教室を飛び出した。 手ぶらで来た為に行くあてもなく、自分でもどこか分からない程に徘徊していた。 石を蹴って歩く。あそこの電柱まで行ったら100点…側溝に落ちた。ゲームオーバー。 「くそぅ…どいつもこいつもミョンミョン言いやがって…」 カラスが「アホー」と鳴く中、俺は夕焼けを眺めながらとぼとぼ歩いていた。 ふとポケットから綿棒のケースを取り出す。 「綿棒の残りが少ないな…補充しないと」 綿棒「なんで耳掃除を究めようと思ったんだ?」 「なんかこう…至福の時じゃないか」 綿棒「確かにな。だがいきなり襲うのはどうかと思うぞ、誤解を招く」 「耳掃除を耳かきで簡単に済ませようとする人を見ると勿体無いと思ってしまうんだ」 (見たことあるのか…) 「そういう人達に耳掃除の素晴らしさを伝えるには、少々力ずくになっても仕方ない」 (そうか…?) カオス擬人化保守。じゃないよ、嘘だよ、全然違うよ。 「ところで綿棒よ」 綿棒「ん?」 「お前も『ミョン』としか呼べないのか?」 綿棒「どれどれ…ミョ、ミョン、ミョン…」 「……」 綿棒「……ミョン」 「そうか」 綿棒「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃ……」 「だが綿棒は俺の人生だからな、許す」 綿棒「ほっ…」 そうして綿棒ケースをポケットに戻したその時だった。 救いの手がさしのべられた。 「どうしたんだいキョン、えらく落ち込んでいるじゃないか」 佐々木がいた。 「佐々木…お前、今…!」 「キョン? 何かあったのかい?」 当の本人は不思議そうな表情だが、俺にとってはまさに救世主(メシア)! 彼女の背後にある夕日はまさに後光! 「佐々木ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」ガシッ 「うわっ、何だい、いきなり路上で抱きつくなんて…苦しいじゃないか…///」 「佐々木ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!! 有り難う佐々木! お前は…お前はこんな時でも俺の味方なんだな! うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ佐々木ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」 「どうして泣いているんだい…。ま、先ずは落ち着いてくれないかな…///」 電柱の影から見守る九曜「───計画──通り──」 画面の向こうのみくる「今私のことを空気って言った奴、体育館裏に顔貸しな」 顔だけの谷口「はい」 みくる「ピギィィィィィィィィィ!! 本当に顔を貸してきたでしゅ…! ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん怖いよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」 鶴屋侍「現れたな妖怪カヲダケ! 今日こそあっしが成敗してくれるっさ!」 空中を漂うカヲダケ「ウケケケケケケ…朝比奈たんの(゜ρ゜)ハァハァ…」 鶴屋侍「喰らうが良いっさ、月夜の静寂をも乱さぬ斬撃…。鶴屋流剣術奥義・蒼月静風斬!!」ザシュッ カヲダケ「ギャアアアアアアアアアアアア!!」 鶴屋侍「妖怪、討ち取ったりぃ!!」 カヲダケ「残像だ」 鶴屋侍「!? そんな…馬鹿なっ!」 カヲダケ「クケケケケケケケケケ…無駄無駄無駄ぁ!」 鶴屋侍「な、なんだって…あたいの奥義が…効かない…?」ガクッ カヲダケ「ほっほっほっ、キミの攻撃パターンは全て学習済みなのサ!」 鶴屋侍「くっ…」 みくる「つ、鶴屋さぁん…」 カヲダケ「ヒャッハー! 命が惜しけりゃその娘を…げふぅっ」 SP「………」 カヲダケ「な、何だこのごつい体格の人達…」 SP「………」 カヲダケ「いぎぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 ドゴォォォォォォォォンバキガスドキャグルォメチャイヒャアルデヒドケトンナンプラァァァァァァ… 鶴屋さん「いやぁ…情けないねっ…結局護衛の助けを借りちゃったさ…」 みくる「でも…鶴屋がいなかったら、もう駄目かと思いました…」 鶴屋さん「みくる…」 みくる「鶴屋さん…」 「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」」 人々を震撼させた妖怪カヲダケの恐怖から解放された二人は抱き合い、大きな声で泣きました。そして二人が流した涙は雨となって乾いた大地を潤し、やがてそれが全ての生命の源である母なる海となり(以下略) 終われ 古泉「だがそう簡単には終わらないのだよアンダーソン君」 「おい古泉一樹」 「ただ言ってみたかっただけですよ長門さん…」 「貴方の言動は時折理解出来ない。まだ話は続く、『ミョン』問題は解決していないから」 俺は佐々木の部屋にいた。 そして愛を育んでいた。 「佐々木…」 「キョン…」 ※注 耳掃除です 屋根裏の九曜「──全て──順調───」 天蓋「くーちゃん、ちょっといらっしゃい」 九曜「───!!!」 天蓋「さっきからなにしてるのかなー?」 九曜「──────」フルフル 天蓋「おかーさん、みーんな知ってるんだからねー…」ゴゴゴゴゴゴ 九曜「───ぁ─ぁぁ───」ガクガクブルブル 穏健派「天蓋さんが何やら騒がしいですね」 主流派「どうしたの?」 天蓋「聞いてよ! またくーちゃんがイタズラしちゃったのよ!」 急進派「あー、さっきからのてんやわんやの原因は天蓋さん家の娘さんだったのか…」 天蓋「言ったでしょ!? 情報操作でイタズラはしちゃいけないって!」 九曜「─────」 天蓋「くーちゃん!!」 九曜「──ごめん───なさい…─」グスン 佐々木の部屋で談話していた時だ。携帯に着信が、ハルヒからであった。 「キョン! 遂に治ったわよ!」 「おお! ホントだ! やっぱり馴染みのあるのじゃないとな」 「疲れたわよ、もうあの苦しみから解放されたからもう安心! ってことで、また明日! じゃね!」 電話を切ると、佐々木が寂しげな笑みを見せた。 「佐々木…」 「いいさ、キョンが元の生活に戻ることが出来るなら」 「だが…」 俺は真っ直ぐ佐々木を見つめた。 「な、何だい」 「まだもう片方が終わっていない、やらせてくれ」 「キョンは相変わらずみたいだね、仕方ないな…」 そして俺は佐々木をベッドに寝かせると、綿棒を取り出した。 長門「貴方のお陰で、出番が減った。責任をとって欲しい」バシッ 古泉「キモティー☆」 「しかし、あの時貴方が構ってくれたことは…嬉しい…」 「長門さん…」 「古泉一樹…」 (嗚呼ぷにぷにで滑らかな白い肌…それに長門さんは僕の理想とするょぅι゛ょ体型に近い…。やはりこれは触ってこそ分かる…。見た目以上の破壊力…!) 「ここここ古泉一樹…」 「はい…、なんでしょうかぁ…」 「あああ貴方の様子がおかしい…。しし心拍数が上昇している。ぃぃ言わば『興奮状態』…ななななななな何故…」 「どうして、震えて、いるんですか? おかしくなんか、ありませんよ、あはは」ガシッ 「いいい嫌…やややめて…はははは放して…」 新ジャンル「ロリコン古泉」 バアン! 「私の長門さんに何してるのよ!」 「朝倉涼子…」 「もう大丈夫よ長門さん」 「こ、これは…! 朝倉さんはょぅι゛ょ体型とは異なるタイプ、しかしスカートから覗く紅色に染まったムチムチ太股もまた威力抜群…!」 「ひ、ひひ非常事態…、ここここここ古泉一樹がかかかかか覚醒している…」ガタガタ 「うわぁ…」 「にににににににに逃げ…」ガタガタ 「下品ですが…不覚にもbokkiしてしまいました…」 「ひぃぃっ…」 「そうと決まれば朝倉さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」 「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 新ジャンル「変態ヒート古泉」 ズドォォォォォォォン 「だ、誰ですか! 僕のおにゃんにゃんタイムを邪魔するのは!」 「ミョン君(当時)に言われてね、古泉君が暴走する危険性があると」 「国木田君!!」 「な、何故気付いた…」 新ジャンル「冥王国木田」 「「「それはない」」」 「…やっぱり?」 九曜「──うぐっ───ひっく───」 喜緑「ほら、もう泣かないの、ね?」 「──お姉ちゃん───」 (涙で潤んだ目で私を見つめている…あぁ駄目よ私、理性を保って…)クラクラ 「───?」 (く、首を傾げないでぇぇぇぇ! もうらめぇぇぇぇ! お姉さんおかしくなっちゃうぅぅぅぅぅぅ!) 「──お姉ちゃん──どうしたの─?」 (あああああああああああっ…!)ビクンビクン 主流派「喜緑江美里が周防九曜に萌え死にしたそうだ」 穏健派「えみりぃぃぃぃぃん!」 天蓋「くーちゃんがまた一人癒しちゃったわね☆」 喜緑(く、悔しいっ! でも萌えちゃうっ!)ビクッビクッ 佐々木に別れを告げ、その後学校に鞄を取りに行ったので帰宅した頃にはすっかり夜になっておった。いやぁ今日は疲れた…。 「ただい…ふぉ!」 ハルヒ「キョーンキョンキョンキョーン♪ やっぱり『キョン』が一番よね!」 妹「ねー!」 「なんでハルヒがいるんだ、しかもパジャマ姿で!」 「泊めさせて貰うわよ!」 「ハルにゃんお泊まりー!」 俺は突然のことに困惑しながらも、笑みが溢れてしまった。今夜も俺のハイパー綿棒が炸裂するのか、大活躍だな。 月明かりが照らす部屋には俺とハルヒ、二人きりである。妹? 既にお休みさ、俺の超絶技巧でな。今日は俺の綿棒さばきで3人も幸せにしちまったぜ。 ハルヒは窓から見える星空を眺めていた。 「Beautiful...」 「Yeah.」 「Hey,KYON!! Let s go catching stars!」 流石団長様、今日も考えがぶっ飛んでます、絶好調です。 「How?」 「hmm...えーっと」 「『えーっと』なんて英語はないぞ、ハルヒの負けだな」 「うっさいわね…」 何故か知らんが「英語しか話せない」ゲームをしていたのである。途中、冗談半分にパンツの色を訊いたら「SHINE!!」という返事を頂いた。何で「輝け」なんだ? カヲダケの亡霊「ローマ字読みしてみろよ…」 ん? さっきの声は何だ? まぁいいか。 「そうだ、あたし達が行けないなら星を呼べばいいのよ!」 「まだその話題は続いてたのか、って星を呼ぶ?」 もしそうなるとしたら…星が接近してきて恒星の熱で地球どろどろで人類滅亡で地球温暖化もアルマゲドンもビックリの… 「待て待て待て待て待て待て待て待て」 「ダメ?」 そんな甘えたような声でもダメなものはダメ。 「じゃあ、隕石を手に入れればいいのよ!」 「星から離れてないか? ほい、反対側も」 ああそうさ、耳掃除の真っ最中だ。膝枕してんだぜ? 羨ましいだろ。 「じゃあ隕石を呼べばいいのよ!」 「だーかーらー」 カヲダケの亡霊「畜生ー! 羨ましくなんかNEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!」 「はぁ…」 ハルヒが眠っている。そう、ハルヒも俺の耳掃除テクニックに墜ちたのだ。起こさないようにそっとベッドに寝かせる。また一人、幸せにしちまったぜ。 鶴屋侍は、苦戦していた。突如として現れたそいつに、手も足も出なかった。 「はぁ…はぁ…」 「貴方の剣術はなかなかのもの。しかし…」 ぼろぼろの鶴屋侍に対し、相手は呼吸すら乱れていない。 「速さが足りない!」 「も、もう一回いくっさ…!」 鶴屋侍が地面を蹴る。 「……」 「はあああああああああああ!!」 「残念でなりません、貴方ともあろう方がこの程度なんて」シュッ 「うっ……」 相手の攻撃をまともに喰らい、地面に倒れた。 「これが峰打ちじゃなかったら、今頃胴体が真っ二つですよ」 「く……」 峰打ちは実力が無い者への手加減、屈辱である。鶴屋侍は砂利を掴んだ。 「出直して来なさい」 そう言い残して立ち去ってゆく。 「待って下さい!」 「なんでしょうか」 「あ、貴方は…一体…」 彼女は振り返ると、微笑んで答えた。 森「ただのメイドですよ」 アクション時代劇、SAMURAI-CRANE カミングスーン… 「なぁハルヒ、何だこの予告編」 「次回の映画よ!」 「いつの間にこんなの撮影してたのか。やけにクオリティ高いなぁ」 「なんてったって今回は鶴屋さんの全面バックアップだからね! そうだ、アンタもミョンって名前で出しちゃおうかしら!」 妙「え、俺こんな名前なの?」 「そうよ! それで『ミョン』って読むの!」 妙「まてこら悪夢再燃させるな」 「結構しっくりくるわね…」 妙「おいおい、あの時言ってたことと違うじゃねぇか」 「あの時はあの時よ。うん、妙(ミョン)に決定!」 妙「うわあああああああああああああああああああああさしみこんにゃくぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」 そう、悲劇は繰り返される。 エンドレス・ミョン
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5951.html
涼宮ハルヒの異界Ⅲ いったいこれは何なんだ!? 俺は今、信じられないものを目撃している。 むろん、自称が取れる証拠を律儀に俺に見せてくれた宇宙人、未来人、超能力者がたむろしている文芸部室自体も信じられるものではないが、眼前の光景はそれに輪をかけて信じられないものだった。 立つ続けに発生する《神人》。 それを発生するたびに、『魔法』で撃退している蒼葉さん。 どうやら《神人》たちは蒼葉さんを相手にするにはあまりに力不足らしい。 と言うか、蒼葉さんが強過ぎる。これを見ていると古泉の超能力自体も相当弱いものなのだろうか、などと勘違いしてしまいそうなほどだ。 にしても…… 「アストラルブレード!」 今度は両手で握ったロッドの先端から青白い刃が生まれ、それを携えた蒼葉さんが《神人》たちの間を時代劇の立ち舞いよろしく切り倒していく! ううむ……三体があっという間に真っ二つにされて倒れいくなんて…… 「ね、キョン! すごいと思わない! さっきはあんまり見てらんなかったけど、改めて見せられると爽快な気分ね!」 ハルヒが満面の笑顔で蒼葉さんの奮闘ぶりを眺めている。 「さっき? 俺が気を失っている間のことか?」 「そうよ」 ここでハルヒは蒼葉さんから俺に視線を移し、しかし得意満面の笑みで、 「あんた、頭からだくだく血を流してたし、顔色も悪かったし、そっちの方が心配だったわ。んで、あんまり頭を下に向けていると血どころか脳味噌が出てきそうだったんで少し頭をあげてあんたを膝枕してあげてたの。その所為でさっきは蒼葉さんをよく見ることができなかったんだから」 ええっと……俺はそれは謝ればいいのか? いや違うだろ? ここは感謝すべきところだよな? と言うか膝枕? むう。性格はともかくツラとスタイルが良く、肌も滑らかなハルヒの膝枕をまったく覚えていないとは。 どことなく不覚だ。それにしても四年前の七夕の朝比奈さんの時もそうだったが俺は膝枕されているときに記憶がないのはなぜだろう? 誰かの陰謀なのか? って、ちょっと待て!? 俺はそんなに深手だったのか!? 「そりゃそうよ。あ、でも安心して。蒼葉さんが完璧に治してくれたから。もう傷口どころか痛みだってないでしょ」 今一度頭をさすってみたが確かに異常を感じられない。 「……その割には俺の制服もお前のスカートも汚れていないようだが……」 まさか蒼葉さんは服を汚れる前の状態に戻せるのか? 「いや、さすがにそれはできないって言われた。だからあたしが一生懸命タオルで拭き取ったの。血でベトベトでちょっと気持ち悪かったし。ま、今はここが暗いんで分かり辛いだけよ。明るいところならあたしの服もあんたの服にも結構血痕が付いていると思うわ」 そうか。これはハルヒに多大な迷惑をかけたってことだな。素直に謝っておこう。 「当然よね! 今度、奢ってもらうから!」 それはいつもだろ。 「何言ってんの。いつものやつはみんなじゃない。今度はあたしだけに奢りなさい、って言ってんの」 「そうかい」 よくよく考えたら俺はハルヒの盾になって負傷したわけだからチャラじゃないのか、などと思ったりもしたのだがまあいいさ。 「じゃあ、そろそろ行くわよ。創造主を見つけないと蒼葉さんに怒られるもんね」 「だな」 言って、俺とハルヒが踵を返したちょうどその時、 再び、世界に静寂が訪れる。 どうやら蒼葉さんが今、この場に出現した《神人》どもは片づけてしまったようである。 が―― はあ……はあ…… ――!! 「蒼葉さん!?」 俺は思わず振り向いた。 い、今……呼吸が乱れていなかったか……? 表情に焦燥感を浮かべながら視線を移すと、 はあ……はあ……はあ…… 蒼葉さんが肩で息をしている。 後ろを向けているんでその表情は知る由もないが、おそらく疲労が蓄積しつつあるのだろう。足元には顔から滴り落ちているであろう汗がとどめなく滴を地面に跳ねさせている。 無理もない。 次から次へと発生しまくる《神人》をたった一人で撃退しているのだ。 これで疲労が来ないのだとすれば人間じゃない。 再び地響きが巻き起こり、 「今度は……三匹か……」 絞り出すように呟きながら、再び蒼葉さんが舞い上がる! 「オーロラサドンフリージング!」 ロッドを振りかざすと瞬時に《神人》三体が白い彫刻となった! おそらくは瞬間冷凍の魔法なんだろうぜ。 それにしてもあの《神人》を三匹まとめて凍らせるなんてとんでもない魔法だ。 急激に凍らされた《神人》が乾いた澄んだ音を立てて砕け散る。 どこか幻想的で思わず見入ってしまうほどの美しいダイヤモンドダスト的光景ではあったが、蒼葉さんが着地して片膝を付いた瞬間にそんな気持ちは吹き飛んだ。 「蒼葉さん!」 ハルヒが叫んで俺も一緒に駆け寄る。 「ごめん……あたしたち……何の役にも立てなくて……」 珍しくハルヒが悪びれた謝意の言葉を切羽詰まった表情でかけているわけだが俺も同感だ。 まったくもって俺は何をやっている? あたふたしているか呑気に実況をやっているか、だけじゃないか。 「私に謝る暇があるなら……早くこの世界の創造主を探しに行きなさい……あんたたちが見つけるまで私が何度でもあいつらを打ち倒してやるわよ……」 「でも……」 ハルヒの切ない悲痛の声の逆説も分かるってもんだ。 こんな状態の蒼葉さん一人を残して俺たちが動ける訳がない。 だいいち創造主は今ここにいるんだ。探しに行くまでもないってやつだ。 しかしだな。 それを蒼葉さんに伝えていいものなのかどうか俺には判断できん。 蒼葉さんは、話し合いで解決できないときは創造主を抹消することも辞さない、とまで言ったんだ。 それは場合によってはハルヒを殺す、と宣言したのと同じであり、そんな重大なことを俺に判断しろって方が無理だ。 さらにどれだけの時間が経過したのだろう。 俺とハルヒは後ろ髪引かれる思いで再度、新館と旧館に向かった。ハルヒは悲壮感を漂わせて創造主を探していただろうけど、俺は通称・旧館の部室棟一角に位置する文芸部室でもう一度、長門とやり取りした。 答えは同じだったがな。 ――この世界から涼宮ハルヒを消失させることが唯一無二の解決方法―― くそ…… 俺もまた、心を苛立たせながら再び新館と旧館の間に広がる中庭でハルヒと合流した。 いったいどれだけ同じことを繰り返したのだろうか。 ハルヒは何度も何度も旧館と新館の間を往復して、俺は旧館担当になったときにこれまた何度も何度も長門とやり取りした。 ――穏便にすませる方法はないものか? ハルヒを消失させずに―― ――涼宮ハルヒに『力』のことを告げ、止めさせるしかない。しかしそれは正しいことかどうか判断しかねる―― そりゃそうだ。 今、ここでハルヒにハルヒの力のことを教えてやるのは簡単だが、それがどんな結果を招くか分からないんだぜ。 いくら長門だって躊躇うってもんだ。 どうすりゃいい? 結局、最初の疑問に立ち戻るしか俺はできなかったのである。 俺たちの新館旧館往復の間も《神人》どもはランダムに発生していた。 いや、最初の七匹から次の二匹を除けば間を置かず、ひっきりなしと言っても過言ではないだろう。 それほどまでにハルヒはこの世界を誕生させたいのだろうか。けど、ハルヒがこの世界の創造を止めさせたいという気持ちも本当なんだろうぜ。 一見、ハルヒの中に矛盾があるようだがそうじゃないんだな。 ハルヒの新世界誕生を望むのは本心だ。それも長門のお墨付きで。 だが、この世界の創造主がハルヒ自身だってことに気づいていないんだから責任の所在が別になっているってことだ。 つまり、この世界の創造主はハルヒの中ではハルヒじゃなく別の存在ってことだ。ハルヒがハルヒの力のことを知らないんだから仕方ないことだ。 居もしない別の創造主をハルヒは追い求めているんだ……これじゃハルヒにだって非がないことになっちまう。 ハルヒは創造主探しを諦めたわけではないのだが、どうしてもこの場から離れたくないようだ。当然だな。俺だってそうだ。 握りこぶしに力を込めて全身を震わせる俺の眼前では、 「蒼葉さん! もういい! これ以上戦ったら蒼葉さんが死んじゃう!」 ハルヒが泣きながら、無理矢理立ち上がろうとした蒼葉さんを後ろから抱き締めていた。 いや押さえつけているのだろう。 そりゃそうだよな。 蒼葉さんは魔法を開放するとき以外はもう、まともに立っていられなくなっているんだから。 「もういいわよ……蒼葉さんの世界の人たちだってきっと分かってくれるって……たとえ世界が滅びたって蒼葉さんの所為にしないって……」 とどめなく流れる涙で蒼葉さんの背を濡らすハルヒの言葉は偽りならざる心だろう。 俺もそう思う。 蒼葉さんはよくやった。これ以上は絶対に蒼葉さんの命に関わるんだ。そっちの世界の人たちだって許してくれるさ。 体力や気力に限界があるように超能力にだって限界があるんだろうぜ。 現に古泉は初めて俺を閉鎖空間に招いた時に、《神人》を打ち倒すのは結構疲労すると言っていた。 当然、蒼葉さんにだって限界が近づいて来ているってことは明白だ。誰が見たってそう思うさ。 「……で、私に……みんなを見捨てて生き延びろ、とでも言う気……?」 が、蒼葉さんの息絶え絶えで発したセリフは明らかに非難の色が混じっていた。 「そ、それは……」 ハルヒが虚をつかれて言葉に詰まる。 「冗談じゃないわよ……私一人……助かっていい訳ないじゃない……それに……ここに来た時からこのことは覚悟していたわ……世界が崩壊するなら私だって世界と供に滅びるべき……私の命が尽きる前に世界が滅びることは許さない…… 本当にみんなが……私がよくやった……って言ってくれるのは私も天国にいないといけないじゃない……じゃないと本当に力及ばず力尽きて……にならないし……」 「覚悟だって……? 自分の命を捨てる覚悟ですか……?」 茫然と問いかけたのは俺だ。 「そうよ……私だって世界のみんなと一緒に居たいんだから……親友……弟子……同僚のみんな……見捨てられる訳がないじゃない…… 私のために世界がある訳じゃないんだから……世界があって私がいるんだから……」 ――!! 「ある人に……とっては面白くない世界なのかもしれない……でも、また別の人にとってはそれは面白い世界なのかもしれない……世界を楽しいと思う人も……いれば世界に怒りを感じる人もいる……嬉しいと感じる……人、悲しいと感じる人だっている……人一人一人にドラマがあって……それは誰にも否定できないことなんだから……それが世界……一人一人が集まって……初めて形成される空間……だから私は世界を守るために戦う……だって私も世界の一部だから……」 この言葉は、正直言って俺の心を激しく揺さぶった。 が、そんな感慨に浸る暇もなく―― ――もう出てくるな! 焦燥感溢れる表情で俺が心の中で絶叫する。 青白い巨人どもがまた、今度は十体ほど一斉に姿を現したのである―― さらに時間は経過する。 この世界の時間の概念がどんなものかは知らん。しかし、あの十体一斉出現の後、巨人どもは十体単位くらいで発生するようになったんだ。もっともそれでも蒼葉さんは全て打ち倒してきたけどな。 けど、その代償はあまりに大き過ぎる…… 蒼葉さんはもう突っ伏して全身が痙攣するように息を荒げているんだ。 ハルヒも蒼葉さんにかける言葉が見つからず、絶句して顔面蒼白になってその身を震わせている。口元を押さえ、その目から後から後から涙が溢れさせているんだ。 そして――事ここに至って俺は自分に嫌悪を感じることをようやく思いついた。いや悟ったという方が正しいかもしれん。 くそ……俺はどうしてこんなことに気がつかなかった…… よく考えたらハルヒが自分の能力を知ったからってどうだというんだ? それに俺はこの世界からハルヒと供に戻る方法を知っているんだ。この世界から元の世界に戻ってもハルヒがこの世界から消失するってことと同意語なんじゃないか。 怖いとか気恥ずかしいとか言ってる場合じゃないんじゃないか? それを躊躇して結果、全然無関係の世界を一つ、滅ぼそうとしていることの方が大問題じゃないのか? ハルヒに唐変朴な力が備わったのは俺たちの世界の所為であって、蒼葉さんが住む世界に何一つ非はない。だったら俺たちの世界がハルヒに対して責任を取るべきじゃないのか? もちろん俺も含めてだ。 「蒼葉さん、もういい……」 俺は意を決して切り出した。 瞬間―― !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 「今度は二十匹!?」 ハルヒが絶望の叫びをあげる! と同時にうずくまっていた蒼葉さんが残っている全ての力を振り絞るかのように立ち上がった! はあ……はあ…… 肩で息をする声ですらもうほとんど聞こえなくなってきた。 当然だ。一人で相当な数のあの巨人どもを屠ってきたんだからな。はっきり言って、こんな蒼葉さんの様子を見せられては俺はあいつらに『神』なんて冠を付けたいと思わん。 まるで悪魔の所業だ。 「……ご……めん……みんな……もう私が……」 ――っ! 俺とハルヒが息をのむ。 今、蒼葉さんが言った『みんな』という言葉は俺たちを指していないことをお互い理解できたからだ。 つまりそれは…… しかし、それでも蒼葉さんは右手に猛回転しながらまばゆい光を放つ魔宝石のロッドを構え、左手は別の魔法の光を携えて、 「この……二十匹はこれで……打ち倒せる……良かった……この魔法……あの子に注入しておいてもらって本当に良かった……でもこれ以上は……たぶん……」 「やめろ! 蒼葉さん!」 が、俺の叫びは蒼葉さんには届かなかった。 もう……耳も聞こえていないのかもしれない…… 「これが……私の最後の……魔法……けど……これが最後なら……みんな許してくれるよね……だって……この魔法は……」 蒼葉さんを中心に強烈な、眩い光を放射させている炎の気流が巻き起こる! いや、気流というより竜巻だ! 「実はね……私……この術に名前……付けてたんだ……今度会ったら感想聞かせてよ……結構考えたんだから……」 蒼葉さんの表情に笑みが浮かぶ。しかしその瞳にすでに色はない。 駄目だ! 蒼葉さんやめてくれ! 「グレイトフルサンライズフェニックス!」 野獣の雄たけびのような轟音でこの空間全てを震わせる眩いばかりに光り輝く巨大な――そう、不死鳥と言っても過言ではないだろう。 光の不死鳥の羽ばたきが二十匹の青白い巨人を一気になぎ払っていった。 再びこの閉鎖空間に静寂が訪れる。 と、同時に崩れ落ちる小柄な人影。 「蒼葉さん!」 ハルヒが駆け寄り、彼女を抱きあげる。 が、彼女の意識はすでになかった。顔色を失い、まぶたは閉じられ、頭髪は艶やかだったシアン色が真っ白に変貌している。 「どうして……どうしてこんなことに……」 ハルヒの瞳から涙がこぼれ落ちている。 くそ……これは俺の所為だ……俺はどうして真実を言うのを躊躇った…… 「キョン! 次にあの巨人たちが出てくる前に創造主を探し出すわよ! でないと蒼葉さんたちの世界が滅んでしまうんだから!」 俺に涙目のまま決意を固めた鋭い眼光を飛ばすハルヒ。 ああ、俺も同意見だ。 もっとも別に探し出す必要はないんだがな。 今なら言える。もう隠し立てしてはならんのだ。 「ハルヒ、蒼葉さんの様子はどうだ?」 「大丈夫。心音も聞こえるし呼吸もしてる。でもたぶん長く持たないわよ……心音も呼吸もだんだん細くなってきちゃってる……」 「この世界じゃ碌な治療も出来んからな。これは早く蒼葉さんを元の世界に戻してやろうぜ」 「うん。そのためにはこの世界の創造主をとっ捕まえるしかないもんね! とっ捕まえて世界創造を絶対に止めさせてやる!」 「いや探す必要はない」 「え?」 戸惑いの表情を見せるハルヒに俺はしゃがみこんで目線を合わせてやる。 「この世界の創造主ならもう俺の目の前にいる――」 ハルヒが戸惑いの視線を向けてくるがもう構わない。 俺は静かに、まるで子守唄を聞かせる母親のような優しい口調で言った。 「ハルヒ――お前がこの世界の創造主なんだ――」 当然、ハルヒは絶句した。 しかしそれは少しだけの沈黙を呼び、 「何バカな冗談言ってんのよ! 今はそんな場合じゃないでしょ!」 当然のように抗議してくるハルヒ。 しかし、俺のハルヒを見つめる、労わるようではあるが深刻で真剣な眼差しを崩さないまま、 「嘘でも冗談でもない。ハルヒ、この世界を創造したのはお前だ」 と告げてやる。 「あのなハルヒ。お前は四年前の七月七日に東中の校庭でけったいな絵文字を描いたよな?」 「それがどうしたのよ。みんな知っている話だわ。そんな話よりも今は」 「違う。これは重要な話だ」 「む……」 俺の強気な言葉にハルヒが言葉を失くす。 ハルヒが黙ったところで俺はさらに続けた。 「その時、校庭に忍び込んだのはお前ひとりじゃなかったはずだ。そこには女の子をおぶった男がいて、お前はそいつと一緒に絵文字を描いた。それは織姫と彦星にあてたメッセージだ。その意味は『私はここにいる』だろ?」 ――!! ハルヒの目が愕然と見開いた。 「ど、どうしてキョンがそれを知ってるのよ!? 誰から聞いたの? いえ、あたしはあの時のことを誰にも言ってない。あたし以外に知っているのは――まさか!」 「そうだ――知っているのはお前と一緒に絵文字を描いた奴、ジョン・スミスしかいない――」 再び、今度は世界自体が絶句して時間が止まった気がした。 「キョン……あんたがあの……ジョン・スミスだっての……? だってあれは四年前のことよ……」 ハルヒの絞り出すような声が再び時間を動かし始める。 「お前はさっき言ったが今は冗談なんか言っている場合じゃない。俺の言葉に嘘がないことをお前に分からせたかった」 「じゃ、じゃあ、どうやってキョンがあの四年前に!?」 「女の子をおぶった男が、と言ったはずだ。あの日あの時間に俺を連れて行ってくれたのはその背におぶっていた女の子だ」 「誰なのよ!」 「朝比奈さんだ」 俺の即答にハルヒは再び絶句した。いや協調反転したかもしれん。しかし構わん。 俺はさらに続けた。 「そして、お前が俺に教えなかったあの絵文字の意味、それを教えてくれたのは宇宙人だ。そう、お前の発案した絵文字は正に、宇宙的言語だったんだよ」 言葉を失くしたまま、ハルヒの視線が再び俺を捉えてきた。 もっともその瞳は、それは誰?と切羽詰まった色を携えて問いかけてきていた。 「長門が教えてくれた――長門は宇宙人に創られた存在だった。だからお前の絵文字が読めたんだ」 「嘘……」 「嘘じゃない。言ったはずだ。俺もこんな状況で冗談なんて言うつもりはないと。つまりそういうことだったんだ」 俺はハルヒの肩を力強く握った。 「去年の入学式の日、クラスの自己紹介でお前が言った『宇宙人、未来人、異世界人、超能力者』の内、宇宙人と未来人はもう傍にいたんだ。お前が知らないだけで、お前のほしいものはすぐそこにあったんだよ。そして今、異世界人の超能力者にも出会えた」 ハルヒの驚嘆から来た愕然とした表情はまだ崩れない。 「お前が望んだ異世界人で超能力者の蒼葉さんを助けるために、いや、蒼葉さんと蒼葉さんの生きる世界を救うためには俺とお前がこの世界から元の世界に戻ればいいんだ。それだけでこの世界の創造主のお前が消失することにもなるんだ。そして、これでこの世界は消滅する。それはお前も俺も知っていることだ。あの去年の5月の時にな」 「ちょ、ちょっと待ってよ! じゃあ何? あれは夢じゃなかったってこと? ううん、仮にそれを信じるとして、そもそもあたしたちはどうやって戻れたの――って、はっ!」 俺はハルヒの問いの答えることなく、ハルヒのどこか思いつめた表情をズームアップさせながら俺は瞳を伏せた。 そして――あの日と同じように俺はハルヒと―― 涼宮ハルヒの異界Ⅳ