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今日も寒い日だった。 いつものようにハイキングコースを登ってると これもいつものように谷口が声をかけてきた。 「よっ!キョン!おはよう!」 こんな糞寒いのに元気な奴だ。 その元気を8割くらい分けて欲しいもんだね。 教室につくと俺は即座に自分の席に座る。 窓側の日差しが入ってくる、冬が苦手な俺にとってはまさに特等席だ。 ちなみに一番後ろの席だ。 ハルヒはもう俺の後ろにはいない。 今は2月下旬、暦の上では春なのだが、まだまだ寒い日が続いていた。 ちなみに俺は今、高校2年生だ。 俺と谷口は、なんとかギリギリ2年生に進級することが出来た。 1年の頃はSOS団なる意味不明な団体活動に精を出してたから 勉強をする気力をすべてそっちに持っていかれていたが、今年は進級について悩むことは無さそうだ。 なぜならSOS団はもう活動をしていないからである。 自分の席で太陽の日差しを浴びて、あまりの気持ちよさで深い眠りに入りそうなとき、 女子数人が大声で喋りながら入ってきた。 そのおかげで俺は目を覚ました。 その女子のグループは2年生になってから同じクラスになった女子2名と 去年から同じクラスだった女子3名から成り立っていた。 その3人の中の1人は涼宮ハルヒだった。 去年まではクラスで孤立していた涼宮ハルヒも 今年はクラスの女子と仲良くやっていた。 変な趣味を除けば、 美人で頭が良くてスポーツ万能で、思いやりのある明るい女だ。 そして2年生になってから友達が出来たということは 変な趣味を捨てたということだ。 ハルヒは何も言わず俺の横の席に着き、鞄から出した教科書を机にしまっている。 俺も何も言わず、チャイムがなるまで日差しを浴びながら先生が来るのを待った。 3時間目の数学の授業が始まる直前のことである。 ハルヒは机の中を熱心に覗き込んでいた。 「あっれ~おかしいな~、確かに鞄に入れたんだけどな」 どうやらハルヒは数学の教科書を忘れてしまったらしい。 俺は何も気にすることなく座っていた。 ハルヒは右側の席の奴に 「ねえ、教科書忘れちゃったから一緒に見てもいい?」 という会話をしていた。 俺たちはもう赤の他人のような状態だった。 今日から短縮授業である。 何故なら3年生はもうじき卒業で、 教師達は就職の手続きや大学受験の補習などで大忙しのためである。 言うまでも無いが、朝比奈さんは何事も無く3年生に進級した。 そして何事も無くこの学校を卒業をする。 そういえば朝比奈さんは大学へ行くのだろうか? それとも就職するのだろうか? いや、これからは今以上に涼宮ハルヒの観察に従事するのだろうか? そんなことを考えてるうちに終業を知らせるチャイムが鳴り 1年生と2年生は帰宅の時間となった。 しかし部活動をしている連中は昼飯を食った後、部活動をすることになる。 俺は谷口と国木田の3人で、ハルヒは女子数人、 古泉は自分のクラスの連中と家に帰宅する。 ちなみに長門は1人で家に帰る。 長門はもう文芸部の活動をやめていた。 おそらく途中でコンビニに寄り夕食を買ってから帰るのだろう。 俺たちと違って、学校内にも家に帰っても親しい人間がいない長門は このところずっと1人きりで生きてきたのだろうたぶん。 家に帰った俺はあることを思い出す。 「しまった・・・今日からは昼飯はコンビニやら弁当屋で買うんだった・・」 この寒い中、また外へ出るのも億劫だったが 1時間したくらいに俺の腹は限界を迎え、結局コンビニへ弁当を買うことにした。 家から出て1分ほどしたところで電柱の陰から男が飛び出してきた。 「こんにちは、お久しぶりです」 古泉だった。 「なにやってんだよお前、こんな糞寒い中、俺を待ってったのか? それともハルヒ関連のことか?」 久しぶりの古泉との会話だ。 「そうです。涼宮さん関連の話です」 「なんだよ、最近めっきり事件が発生しないと思ったら・・」 「あなたは最近の涼宮さんを見てどう思いますか? とても幸せそうな学校生活を送ってるように見えますよね? しかも成績優秀でスポーツ万能、まさに何も悩みがありません」 「何が言いたいんだよ、遠まわしに言わないで用件だけをさっさと言え。 長門や朝比奈さんは呼ぶのか?そうだ、昼飯を食ってからにしてくれ」 古泉はあの懐かしい微笑をしながら俺に告げた。 「いえ、事件ではありません。」 「なら何なんだよ」 早くしてくれ。俺は腹が減ってるんだ。 「何も無い。それだけです。涼宮さんが常識的な思想を持ち、幸せな生活を送り そしてそれに伴いあの神人の出現も無くなりました。用件はそれだけです」 「そうか、よかったな」 「我々、機関の努力の成果ですね。実はこうなるように我々は3年前から計画を立てていたのです」 まだ話が続くのか。 「涼宮さんが普通の人間として人生を歩むように仕込んだのです。 野球大会や夏の合宿、冬の合宿なども、そのための我々の計画だったのです。 未確認生物を探し回るよりも、友達と普通に遊ぶ方が楽しいという考えを植えつけるためのね」 なるほど。 古泉の所属している機関の努力おかげで ハルヒは非現実的なことを考えることは無くなり 今では普通の学生として普通の人生を送っている。 そしてSOS団なんていう変な団体の活動もしない。 子供の頃に作って遊んだ秘密基地のように、時がたてば忘れる。 SOS団もどうやら秘密基地と同じような物だったんだろう。 古泉と別れの挨拶をした後、俺はコンビニへ向かって走った。 「早くしないと唐揚げ弁当が売り切れちまう」 唐揚げ弁当は無かった。 「古泉の野郎め」 しかたなく俺は梅おにぎりを買うことにした。 しかも3つも。 せめていろんな種類があればよかったのだが、不運なことにこれしか残ってなかった。 明日は忘れずに学校帰りに買おう。 そしてコンビニを出た直後、俺はあることを思い出した。 長門はどうなるんだ。 俺たちと違って長門は1人だ。 機関とやらのせいで長門は昔のように1人の生活に戻ってしまった。 いや違う。何を考えてるんだ俺は。 俺にも責任があるだろうが。 SOS団がなくなったら長門は1人になるなんて分かってたことじゃないか。 なぜ気づかなかったんだ。 俺は長門のマンションへと走った。 SOS団はなくなっちまったけど昼飯くらいは一緒に食おうぜ。 3年生になってからは俺たちと一緒に弁当を食おうぜ。 きっと谷口も国木田も大歓迎だぜ。 玄関のインターホンで長門の部屋のボタンを押した。 …反応なし。 もしかしたら昼寝、、な分けないか。 マンションがダメなら思い当たる場所はあそこしかない。 そう、文芸部室だ。 俺はコンビニの袋を抱えたまま学校へと走った。 文芸部室の扉の前に到着した俺は30秒ほど 息を整えてからドアをノックした。 「・・・・入って」 長門の声だ。 「長門、久しぶりだな。じつは一緒に昼飯を食べようと思って」 「・・・・」 長門は俺の言葉を無視して、本を読んだままだった。 「ひょっとしてもう食い終わったのか?」 「・・・・」 無言。 しかたなく俺は1人で梅おにぎりを食うことにした。 食い終わった後、1人でオセロをやった。 長門を誘ってみたがまた無言だった。 1人オセロを始めて30分程度が過ぎた頃、 なにやら小さな泣き声が聞こえてきた。 その声の主は長門だった。 「どうしたんだよ長門!腹でも痛いのか!」 急いで長門のそばに駆け寄る。 「私・・これからずっと1人だと思ってたのに・・あなたが来てくれたから・・」 長門は俺に抱きつき、そのまま夕方まで泣き続けた。 よほど1人は寂しかったんだろうな・・・ 冬の日没は早く、俺たちが学校を出た頃には既に 街灯がともっているくらい暗くなっていた。 俺たちは凍えるような冬の空の下を並んで歩いた。 こうして長門と2人きりで歩くのも久しぶりだな。 「なぁ長門。SOS団のこと好きか?」 「・・好き」 「また皆で一緒に街中を探検したりしたいか?」 「・・したい」 「また朝比奈さんのお茶を飲みたいか?」 「・・飲みたい」 「また合宿とかに行きたいか?」 「・・いきたい」 「なぁ、俺にいい考えがあるんだけど言っていいか?」 「・・言っていい」 「SOS団を復活させようぜ」 家に帰った俺はさっそく元SOS団のメンバーに電話をかけた。 まずは朝比奈さんからだ。 この人ならなんでもOKしてくれそうな気がする。 「あ、キョン君、お久しぶりです~。え?SOS団? あと数日だけですがいいですよぉ」 あっさりとOKを貰った。 問題はここからだ。ハルヒと古泉。 ハルヒは今では普通の思想を持った普通の女子高生だ。 もしSOS団を復活させたいと言っても断られる可能性が高い。 俺の小学生時代の友達に「また秘密基地を作ろうぜ」と言っているのに等しい。 古泉もむずかしい。 基本的にイエスマンの古泉だがSOS団となると話は別だ。 なんせSOS団を解散に追い込んだのは古泉の所属する組織だからな。 数分迷った挙句、俺は古泉に電話をした。 「もしもし、ああ、今日の話の続きを聞きたいのでしょうか? え?SOS団を復活させたい、ちょっと待ってください。 僕的には何の問題もありません。僕自身、SOS団のことは大好きでした。 しかしまず機関の意向を聞かなければなりません。ちょっと待ってください」 そういうと古泉はどうやら別の携帯電話で機関とやらに電話をし始めた。 なにかボソボソと会話した後、 「もしもし、お待たせしました。1日だけならという条件ならいいとの事でした。 何か必要な物があったら僕に言ってください。はい、では」 残るはハルヒか・・・ 俺は最後の難関、ハルヒに電話をした。 「なに」 よかった。 ハルヒと会話をするのは半年振りだから 居留守を使われたりするかと思ってたからだ。 俺はいきさつを説明した。 「なんで今更SOS団なのよ。有希が望んでるから? 知らないわよそんなの」 昔はSOS団の活動を断ったら死刑にするとまで言っていた ハルヒだが、今ではこうなっていることに俺は胸が痛くなった。 そして団員を命を賭けてでも守ると言っていたのに、 知らないわよ、の一言で片付けてしまったを俺は本当に悲しいと思った。 「ねぇキョン、私達はもう高校2年生なの。 4月からは3年生なのよ。もうそんな幼稚なことやってられないわよ。 復活させるのは自由だけど私は参加しないわよ。 今は短縮授業だから毎日学校帰りに友達と一緒に喫茶店でお昼を食べることにしてるの」 とにかく明後日の放課後に文芸部室に集合な、 と言って俺はハルヒが反論をする前に電話を切った。 次の日、学校帰りに古泉を捕まえて明日の活動に必要な物を告げた。 そしてSOS団復活の日である。 俺は文芸部室のドアをノックした。 そして朝比奈さんの「はぁ~い」という返事を聞き、俺は部室に入った。 朝比奈さんはあのメイドの衣装を着ていた。 そして既に長門と古泉の姿があった。 古泉の用意した野菜を朝比奈さんが切り、 これまた古泉の用意した鍋の中に入れていった。 昨日俺が古泉に注文したのは、鍋とその具だった。 朝比奈さんは「もうすぐお別れですね・・・」 等の卒業生らしい会話を始めた。 朝比奈さんは泣いていた。 俺は朝比奈さんに 「卒業してもまた会えるじゃないですか」 しかし朝比奈さんは泣き止まない。 そうか・・・ 暗い雰囲気の中、俺たち4人は鍋を囲んで具が煮えるのを待っていた。 そしてバタン!と勢いよくドアが開かれた。 と同時に 「やっほー!!ひっさしぶりー!」 やれやれ、心臓が止まるかと思ったぜ。 振り向いたそこに立っていたのは鶴屋さんだった。 「よっ!キョン君、ひさしぶりー! 有希ちゃんも古泉君もひさしぶりー!」 鶴屋さん、ありがとうございます。 おかげで重い空気が吹っ飛びましたよ。 「あの、私が呼んだんです」 朝比奈さんが言った。 SOS団準メンバーを加え5人になった俺たちは 再び具が煮えるのを待った。 「やっぱパーティーと言えば裸踊りだよね~。 みくるっ!脱いで!」 朝比奈さんは脱ぎ始めた。 「あの、、キョン君、、これでお別れだからサービスです」 「よーし、あたしも脱ごうかな~!」 鶴屋さんも脱ぎ始めた。 古泉は苦笑していた。 「いいんですか?鍋がバレただけなら停学で済みますが、 裸にもなると卒業すら出来なくなってしまいますよ?」 「大丈夫だって!ほら古泉君も脱いじゃえ!」 鶴屋さんは古泉のベルトを外し、ズボンを下げ、パンツを下げた。 さっきの苦笑はなんだったんだ。 体の方は大喜びしてるじゃねえか。 改めて俺は古泉に対して人間不信になった。 朝比奈さんと鶴屋さん、古泉が裸になっていた。 俺は深い溜息をついた。 「やれやれ、俺も脱がなきゃいけないじゃないか」 そして長門以外の4人が裸になった。 「ほら有希ちゃんも脱いじゃえ!」 「・・・・」 長門は脱がなかった。 「こうなれば実力行使しかありませんね。 鶴屋さん、力を貸してください。一緒に長門さんを裸にしましょう」 そして古泉と鶴屋さんは長門を全裸にしようとした。 しかし長門の不思議な力によって、古泉と鶴屋さんは窓の外に飛んでいってしまった。 そしてゆっくりと地面に着陸した。 その光景は、まさにアダムとイブのようであった。 ピピピ・・・ピピピ・・・ 俺はベッドの中にいた。 「なんだ、、夢か・・・」 ここからが正真正銘のSOS団復活の日である。 いつもより早く登校した俺は誰もいない坂道を登り 誰もいない廊下を歩き、教室に到着した。 ハルヒがいた。 最近は女子の友達と集団登校するのが習慣だったのだが、 何故か今日は1人で登校していた。しかもこんな早い時間に。 「よお、早いじゃないか」 俺はSOS団の話をするよりも日常会話を選んだ。 「うん、なんか目が早く覚めちゃって」 「実は俺もそうなんだよ。昨日変な夢見ちゃってさ、文芸部室での夢さ」 そしてSOS団の会話が始まった。 「SOS団をやめる気なんて無かったのよ」 「じゃあなんでやめたんだ?」 「普通の女子高生をやってみたかったの。 正直、罪悪感はあるわ。私が立ち上げた団体だもの。 でもある日、クラスの女子に誘われたわけ。一緒に帰らないかって。 その子は私がSOS団をやってることを知らなかったの。 本当は知ってたのかもしれないけど、とりあえず誘われたの。 最初は一日程度SOS団を休むくらいいいか、って気持ちだったの。 その子は私と普通に接してくれたわ。私がSOS団をやってることを知ってる子って だいたい腫れ物を触るような態度で私に話しかけるでしょ? でも彼女は違った」 それは古泉の組織が用意した人間なのか、 それとも本当にSOS団を知らなくて、本当にハルヒと仲良くなりたいと思って近づいたのか・・・ どっちにしてもハルヒがその子が原因でSOS団をやめたのは確かである。 「その子と一緒に帰るようになってから他のことも仲良くなっていったの。 それで私、SOS団の団長をやってることを隠そうと思ったの。 だってバレたらなんか嫌だったから・・・」 「お前はSOS団と、その友達とどっちが大切なんだ? いや、言わなくてもいい。結果を見れば分かる。 でも今日だけはSOS団の団長に戻って欲しいんだ。」 「本当に今日だけよ?」 「ああ」 そして放課後、俺とハルヒは文芸部室へ向かった。 鍋は既に出来上がっていた。 長門と古泉は無言のまま席についていた。 朝比奈さんは俺とハルヒのためにお茶をいれていた。 ものすごく空気が重かった。 いつもならハルヒは元気過ぎるくらいだったのだが、 今日は無言のまま下を向いていた。 自分がSOS団を裏切ったことに負い目を感じているのだろうか。 他の団員が話しかけても生返事をするだけだった。 そして余計に空気が重くなっていった。 「あ、あのぉ、キャベツ煮えてますよ」 「・・・うん」 こんな感じだ。 いつもならハルヒと同様、食欲旺盛の長門も今日はあまり食が進んでいない。 俺は古泉にアイコンタクトを送った。 「どうにかしろ古泉」 「いや~こうやって皆で集まるなんて久しぶりですね」 その後が続かない。 いつもハルヒが1人で勝手に盛り上げてたけど、 そのハルヒは長門と同じくらい無口になっている。 鶴屋さんを呼べばよかったな。 あのお方ならどんな状況であれ、なんとかしてくれる。 そんなことを考えていたとき、長門が急に立ち上がった。 そして服を脱ぎ、全裸になった。 そしてハルヒは言った。 「これだからSOS団なんて嫌なのよ!ただの乱交パーティーの会じゃない!」 そしてハルヒは部室から出て行った。 古泉が口を開いた。 「よくやりました、長門さん」 朝比奈さんも 「やっぱ長門さんならなんとかしてくれると思ってましたぁ」 なんだこの展開は。 「実はねキョン君、私達は涼宮ハルヒを普通の人間にするための組織だったの」 これは朝比奈さんの言葉ではない。 長門の言葉だ。 「あの無口な性格もぜんぶ演技だったの。 恐らく涼宮ハルヒはそのことに気づいてたんだと思うの。だからSOS団をやめたの」 なるほど。 「僕や朝比奈さんの使命も終わりました。これでもうあなたと会うことも無いでしょう」 「キョン君、あの、、利用してごめんなさい。でも、、もう会うことも無いから忘れてね」 そして二人はそのまま部室から出て行った。 鍋はどうするんだ。 部室には俺と長門の2人しかいない。 「長門、じゃあ一昨日の涙も嘘だったのか?」 「違うの。あの涙は本当よ。私、あなたのことが好きなの」 「なんだって?」 「好きなの」 「なぁ長門。本当に俺のこと好きか?」 「・・好き」 「セクロスしたりしたいか?」 「・・したい」 「俺のザーメンをを飲みたいか?」 「・・飲みたい」 「気持ちよくなって天国へいきたいか?」 「・・いきたい」 「なぁ、俺にいい考えがあるんだけど言っていいか?」 「・・言っていい」 付き合おうぜ 俺は情報統合思念体になった。 宇宙を彷徨っている。 長門も人間の体を捨てて情報統合思念体になった。 宇宙を彷徨っている。 ハルヒとかどうでもいい。 地球とかどうでもいい。 もう疲れた。 寝るよ、長門。 そして2人はどこかへ行きました。 おしまい
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俺は、ハルヒの事が好きだが、告白するなんぞ出来ない…… 何故なら、俺はツンデレだと自覚している。 それなのに、いつものように生活している…… 「涼宮ハルヒの憂鬱キョンとハルヒの絆」 今の季節は夏、俺は今、学校へ行ってる所である。 谷口「よぅ!キョン!」 声掛けるな、暑苦しい 谷口「何言ってんだ?クールな口調になってるぞ」 なってない、なってない 場所変わって、教室 入ると、ハルヒがいる かなり暇なようだ 「よぅ」 ハルヒ「あ、キョン、放課後ミーティングあるからね、遅れないように!」 「はいはい」 と、言う時に岡部が来た 放課後、俺はいそいそとSOS団部室へ行った。 入る前にノックして入るのが俺のルールだ みくる「は~い、どうぞ」 我らアイドル、朝比奈みくるの声である。 う~ん、可愛い声ですね! 入ると、朝比奈さんと古泉と長門……そして、ハルヒがいた。 古泉「こんにちは」 長門「……(ゴクリ」 みくる「こんにちは、キョン君」 ハルヒ「遅い!ミーティングするわよ!」 やれやれ……挨拶無しですか、ハルヒさん いつものようにミーティングをやり、終わった。 そして、長門が本閉じた時が帰る時間になるのだ。 帰ろうと思ったのだが…… ハルヒによって呼び出された。 ハルヒ「キョン、あんたは残って……話したい事あるの」と言われた。 このまま、帰ったら死刑にされるから仕方なく了解した。 今、部室には俺とハルヒだけだ 「……」 ハルヒ「……」 「……」 ハルヒ「…ねぇ、キョン」 「何だよ」 ハルヒ「…あたしの事どう思ってるの?」 「?俺がハルヒの事どう思ってるかってか?」 ハルヒ「…うん」 唐突過ぎて呆然してしまった。 俺が、ハルヒの事どう思ってるのかって? ハルヒ「……」 「……」 ハルヒ「……」 長い沈黙である。何分経ったが分からないぐらいだった……そして、俺は沈黙を破った 「…最初は変な奴かと思った」 ハルヒ「!?」 「しかし、俺は、お前と一緒にいると楽しいと分かった」 ハルヒ「……キョン」仕方ない、ここで告白しようか……言うんだ!俺よ! 「……ハルヒ、俺はお前の事……」 キィィィィ…… な、何だ!?この耳鳴りは!? ???「やっと、見つけたね」 この声……まさか!? ???「やっと、見つけたね」 「お前はまさか……」そう、俺を2回襲い、殺そうとした………それが 「朝倉涼子!」 朝倉「当たり、流石、キョン君ね…私の事を覚えてるなんで」 「何で…何でこんな所にいるんだ!」 朝倉「私は、キョン君と涼宮さんに会いたかったの」 ハルヒ「朝倉さん、あんた、カナダへ行ったんじゃあ……」 朝倉「お久しぶり、涼宮さん……残念だけど、カナダ行ってないし……それに」 と、部室が異空間に変わった。 朝倉「私は普通の人じゃないわ」 「!?」 おぃおぃ、マジか? 朝倉がナイフ取り出したぞ…… ハルヒ「あ、朝倉さん……」 ハルヒは、呆然してるな… ま、仕方ないだろ?誰でも信じたくない出来事で呆然するのは当たり前… じゃなくで、こういう状況はどうすんだ……気付いてくれよ、長門! 朝倉「ふふふ……どうするの?」 くっ、逃げるしかないか…… おぃ、ハル…… ハルヒ「これは、どういう事?ねぇ、キョン!」 ちっ、ハルヒが混乱に陥ってるな… 「ハルヒ!逃げるぞ!」 ハルヒ「キョン!」 俺は、ハルヒの手を捕まって部室から逃げた。 とにかく、稼ぐんだ!時間を稼ぐんだ!長門! 朝倉「逃がしはしないわ」 逃げる、逃げる、とにかく逃げる…… …おかしい、階段が見当たらんぞ……これがエンドレス廊下かぃ! 笑えないな 朝倉「そう、笑えないわ」 いつの間に!? 朝倉「今度こそ、あなたを殺して、ハルヒを目覚めて貰うわ」 くっ、ここでゲームオーバーか! 朝倉「死になさい」 朝倉のナイフを俺の方へ投げる… ???「……させはしない」 この声は! 「長門!」 長門「…遅れてゴメン」 朝倉「ふふふ、まだ現れたね、有希」 長門「あなたは、私が消したはず」 朝倉「私は諦めない主義なんでね」 長門「あなたは、前より強くなった」 前より強くなった!?と言う事は、前のようには出来ないって事か!? 長門「…そう」 冗談じゃねぇ!と言う事は、この異世界から脱出するしかないのかよ! 長門「…そう」 朝倉「脱出しても無駄、私が追っかけるわ」 長門「…一つ出来る事ある」 「それは、何だ?」 長門が言ったのは、次の事である。 朝倉を無へ帰る事 つまり朝倉と闇に包まれた世界へ行けってか…… 「で、それはまだなのか?」 長門「……もう完了した」 なるほど、長門ってなかなかの策士だ。 長門「出口を開ける」 と、長門が呪文を唱えて、何も無い空間から出口が現れた。 「行くぞ、ハルヒ」 ハルヒ「う、うん」 ハルヒを出口まで連れて行く時に、突然、キョンは腕を捕まれた 朝倉「させない」 キョン「な、放せ!」朝倉「暴れても無駄よ」 ハルヒ「キョン!」 くっ…………仕方ない… 「ハルヒ!長門!出口まで走れ!行くんだ!」 ハルヒ「で、でも!」「行くんだ!」 ハルヒ「……分かった、行こ、有希!」 と、ハルヒは、長門を連れて走った… そう、それでいい… 朝倉「何をする気?」「お前を、道連れしてやる!」 朝倉「ま、まさか!?」 周りの空間が闇に染まって来る ハルヒ「キョン!何してるの、早く!」 ハルヒ、長門…脱出したな… 長門「…キョン」 寂しがるな、長門… ハルヒ「キョン!ねぇ!」 ハルヒ…今までありがとな… 「っ!ハルヒ!お前は、俺の……」 ハルヒ「キョーンッ!」 ――恋人だ 異世界の扉が閉ざされ、元の部屋に変わった。 そして、キョンは行方不明に… キョンが消えた… あたしが好きだったキョンが消えた… 「有希!キョン救えるでしょ!」 長門「…救える確率は低い」 「そ、そんな!?」 長門「彼の事は、病気という理由しておく」 「……」 長門「…ゴメン、ゴメンなさい」 「!ゆ、有希…」 泣いてる…あんな無感情だった有希が無いてる 「あ、あんたは悪くないのよ…有希、いいの、自分で責めないで…」 長門「うん…でも、ゴメンなさい」 「いいの!二人で救う事だけ考えようよ……うっ、ううっ…」 長門「……」 お互い、抱き合って泣いた…神はあたし達を見守ってるだろうか… 次の日 岡部「えー、●●●は病気で欠席だ」 クラス一同「エェーーッ!?」 ……キョン キョンの机… キョンの置き勉… …キョン 「よぉ!」 「映画、成功しよう!」 「やれやれ…」 「SOS団の事頼むぜ」 「俺、実は…ポニーテール萌えなんだ」 「ハルヒ、それ似合ってるぞ」 「ハルヒ、ハルヒ、ハルヒ……」 会いたい、キョンに会いたい… 阪中「どうしたの?ハルヒさん……泣いてるの?」 え、泣いてる? あたしが泣いてる…… 会いたい、キョンに… 授業が終わり、放課後になり ハルヒは部室へ行き、古泉やみくるに昨日の事を伝えた。 みくる「そ、そんな…キョン君が…」 古泉「キョンさんが行方不明に…」 二人も驚いてた。仕方ない事だったのよね…いえ、仕方なくない! 長門「ゴメンなさい」 「有希は悪くないのよ、全て…あの子が悪いのよ」 長門「……」 あたしは、信じてる…キョンは今どこにいるかを! それに… 「古泉君、みくるちゃん…あんた達は、やっぱり…」 古泉「…気付いてたのですか?」 みくる「そうです、私は未来人です」 そっか…有希が宇宙人だとすれば、この人達は…と思ってたけど… あの時、キョンが必死に言ってたのはこれだったのね… 「…古泉君、みくるちゃん、有希、あたしは何者なの?」 みくる「あなたは…時間を変える能力あります」 長門「こっちは、三年前…情報を爆発させたのは…あなた」 古泉「しかし、我々…『機関』では、あなたの事を「神」だと思ってる者がいます」 つまり、あたしは何者がはっきりしてないって事ね 古泉「恐らく、そうなります」 ん?と、言う事は 「あの時…そう、キョンとあたしがいた空間はもしかして?」 古泉「空間?巨人がいっぱい出て来た空間の方ですか?」 「うん、そう」 古泉「あれは、「閉鎖空間」と言われる空間なんですよ。あなたのイライラで発生した空間です… あの巨人は「神人」と呼ばれる者なのです。アレは、あなたの不機嫌で出来た者達…あなたは夢だと思ってますが、違います。」 「え!?じゃあ…アレは…夢じゃないって事?」 古泉「えぇ、そうなります」 な、ちょ…え!?うそ!?あのキスはゆ、夢じゃないの!? 古泉「何があったか知りませんか、夢ではなく現実です。あなたの不機嫌が爆発したら…ここは無くなる可能性あります」 え?あたしの不機嫌で世界が無くなる? 「それは、世界崩壊って事なの?」 古泉「…はい」 そんな!あたしは知らないまま生きてたと言う事なの… みくる「涼宮さん、あなたは知らないまま生きて欲しいと望んで来ました…まさか、この時に告白するとは思いませんでした …すみません」 「みくるちゃん…いいの、あたしは気にしてないわ」 長門「私はあなたを守る」 「ありがとう、有希…ありがとね…」 と言いながら、あたしは、ふと、窓の方へ見た… 橙色で染まってて美しかった。 キョン、今どこにいるの… ???「うっ…こは、ど…だ…さ…い…みん…会い…い…ハ……ハル……ルヒーっ!!」 ハッ!? …ゆ、夢か… あれから、一ヵ月後…あたしは元気になって通っている。 でも、家では元気じゃない… 泣いた日だってある… 「んー?何だったのかしら?あの夢…」 時々、声が途切れて、何で言ってるのか分からなかった… なのに、どこが…懐かしい感じがしたわ… 何だったのかしら? SOS団室 「やっほー、みくるちゃん!お茶!」 みくる「は、はい…ちょっと待って下さいね」 みくるちゃんのメイド姿を見ると、嫌な夢忘れられるわ… 古泉「こんにちはー、おや?ハルヒさん、今日も大丈夫ですね」 「あったり前よ!それに比べて、キョンなんか…あ…」 古泉「…すみません」 みくる「…お茶置いときますね」 「あ、うん…」 そっか、今はキョンいないんだ…あたしって、まだ思ってるんだな… 「……キョン…」 まだだ、あたしって弱くなったな…キョンがいたら、きっと笑ってしまうよね 長門「……」 古泉「おや?長門さん、顔色が悪いですよ…大丈夫ですか?」 長門「う、うん…」 みくる「本当に大丈夫なんですか?」 長門「大丈夫」 と言って、立ち上がった。 古泉「おや、帰るんですか?」 長門「…(ゴクリ」 と、有希は歩き出した途端 「…ぁ…」 ドサッ! 有希が倒れた… 「!…有希っ!有希!有希!」 みくる「有希さん!」 古泉「保険室へ行きましょう!」 保険室 「有希、どうしたのかしら?」 みくる「そうですね…」 シャッ カーテンを開く音だ。 古泉「先生から聞きましたが…長門さんは、寝不足に疲労が溜まってたんですよ」 「寝不足と…」 みくる「疲労?」 古泉「えぇ、そうです」 「な、何で…有希が?」 古泉「…ハルヒさん、心当たりありますか?」 心当たり?……まさか… 「ずっと、キョンを探してたの?」 古泉「……」 みくる「……」 有希…有希も、まだキョンの事を… 「有希…何で、何で…あたし達と相談しなかったのよ…ズルイわよ!あたしは、団長なんだからね!…うっ、うっううっ…」 みくる「ハルヒさん…」 古泉「……」 有希は、今も寝てる…優しい天使の様に …よし、決めた! 「皆!よく聞いて!」 古泉「はい?」 みくる「何ですか?」 「あたし達と一緒にキョンを探そう!きっと、どこかにいるわ!」 みくる「涼宮さん…」 古泉「これは、良い決心ですね…僕も探しましょう」 「皆、頑張ろうね!」 長門「私は…まだ諦めてない…私も探す」 と、有希は起きてた 「有希!ちゃんと寝ないとダメよ!」 長門「大丈夫…時間を早くした…もう平気」 有希… みくる「行きましょ!」 みくるちゃん… 古泉「僕も一生懸命、探しますよ」 古泉君… ???「ハルヒっ!」 「!…え?」 周りを見ると誰もいない… どういう事?あ! (???「ここは、どこだ…寒い…皆に会いたい…ハルヒ、ハルヒ、ハルヒーっ!」) あの夢、まさか…キョン!? 皆に、夢の事を話すと 古泉「夢の中にキョンさんか?」 みくる「まさか、キョン君は…今、そこにさ迷ってるって事?」 「かもしれないわ…キョンは多分…」 長門「その可能性ある」 古泉「……」 みくる「……」 「…有希、何とか出来ないの?」 長門「ある」 古泉「え?それは…まさか?」 みくる「どういう事ですか?」 「古泉君、何か分かったの?」 古泉「…閉鎖空間へ行き、欠けた場所あれば…そこが異空間の入り口です」 欠けた場所? 「はい、例えば…そこに壁があるとすれば、閉鎖空間では壁では無くなってる…と言う事です」 つまり、あった物が無いとすれば、そこが異空間への入り口って事ね 「で、どうやって行けるの?」 古泉「ご安心を、僕の出番ですから」 古泉「ここでいいでしょう」 ここは、校庭…何でこんな所に? 「って、ここで何か出来るの?」 古泉「はい…その前に、あなたに言いたい事あります」 「何?」 古泉「僕とみくるさんに、長門さんは行けません…何故なら、あの空間はあなたの物ですからね」 「……」 古泉「一人で探せますか?」 「探せるに決まってるでしょ!」 古泉「そう聞いて、安心しましたよ…さぁ、目を瞑ってください」 目を瞑る?取りあえず、言われた通りにやるしかないわね… 古泉「失礼ですか、手を貸しますよ?」 「うん」 一歩、二歩、三歩… 古泉「目を開けて下さい」 ……ここは、閉鎖空間ね 古泉「後は、頑張って下さいね」 と言い、古泉君は消えた… …さて、キョンはどこにいるのかしら 一年五組の教室… 保健室… 食堂… トイレ… 屋上… 体育館… 色々、探したけど…見つからなかった… 「ふー…ここにも無いわね…と言う事は…SOS団室だけか…」 SOS団室のある校舎へ行き、階段に登り、到着した。 ここなら…見つかるはず…お願い! と、あたしは思いながら開けた… 何にも無い… 「う、うそでしょ…どこにも無いわよ…」 ん?何か…何か変ね… ロッカー…コスプレ服…盤ゲーム…お茶入れ…ヤカン… あ、PCが無い… 「どういう事?」 よく調べると…PCがあった机の向こうに入り口あった… 「入り口から見れば無かったのに…後ろにあったなんで…」 そう、そこが異空間への入り口… 何だが、怖い…怖くで行けないよ…キョン…あたしは本当は気が弱いのよ…キョン… 「うっ…ううっ、ひっ…怖いよぉ…」 カダンッ! 「ひっ!……な、何?」 周りを見ると、床に何か落ちてた… 「…これは…」 よく見れば、キョンの鞄だった… キョンが行方不明になって以来、鞄をおばさんや妹ちゃんに返してなかったっけ… キョン… 「ん?鞄の下に何かある…」 と、鞄の下にある物を取って見ると… 一冊のノートだった… 「何で、こんな物か?…日記?」 ノートの表面にデカデカと「日記」と書かれてあった… とにかく、開いて見る ○月○日 変わった女がクラスにいた。そいつの名は涼宮ハルヒ。 しかし、可愛かったな…ポニーテールすれば物凄く可愛いよな ○月○日 ちょっと話し掛けてみた…すぐに終わっちまった… まったくよ、こんな可愛い子がいるのに勿体無くね? ○月○日 ハルヒを観察したら、分かった…こいつ、曜日ごとに髪型を変えてるな…うむ、面白い ○月○日 SOS団か…まぁ、仕方ないか… 間違った方向へ行かなきゃいいんだがね… キョン…こんな事を日記書いてたの? ○月○日 夢を見た…ハルヒとキスする夢を…うわぁ、恥ずかしい!フロイト先生が笑ってしまうぐらい恥ずかしい… でも、味が良かったな… キョン…嬉しかったの? キョン… 最後まで読もう… ふー…次のページへ行くかな… ベラ・・・ 「ん?これは…最近の」 ふと、手が止まった… ○月○日 ハルヒを見て思った…ハルヒは確かに可愛い。 怒る顔も可愛かった…だけど、ハルヒと一緒にいるだけで楽しい… だから、俺はつい嬉しくなる…ハルヒはハルヒらしく行動してくれると俺は安心する… めちゃくちゃな行動をするハルヒが好きだ。気が強いハルヒも好きだ。 俺は、素直に「好きだ」と言えない…それでも、愛してる… ハルヒ、気付いてくれるのだろうか… キョン…あたしの事をそう思ってたの!? 「キ、キョン…あぁ、会いたい!会いたいよ!…気が強いハルヒが好き?…でも、あたしは…本当は、気が弱いのよ!」 あたしは、泣いた…物凄く泣いた…会いたくでも気が弱いまま… (キョン「ハルヒ、お前は!俺の……」) !? (――恋人だ) キョンは、こう言ってたわ…あたしを恋人してくれたんだ…あたしは、頑張るよ!いつまでも気が弱いままじゃダメだよね…キョン、待ってて!) と、あたしは異空間へ入った。 暗い… 上と下が分からない… 寒い… キョン…どこにいるの… フワッ! あたしがいた暗かった異空間が、いきなり明るくなった。 「な、何なの?」 ここは、あたしが通ってた東中… そして、今いるのは、校門の辺り… 「…!!」 「……!」 校庭の辺りに声が聞こえる… あたしは、そこへ行って見た 「あ、あれは」 そう、あたしが見たのは…中学校頃のあたしと…ジョン・スミスだった。 どうやら、線引きをやってる最中だった。 どうやら、線引きが終わったようだ 「ねぇ、あんた。宇宙人、いると思う?」 「いるんじゃねーの」 「じゃあ、未来人は?」 「まあ、いてもおかしくはないな」 「超能力者なら?」 「配り歩くほどいるだろうよ」 「異世界人は?」 「それはまだ知り合ってないな」 「ふーん」 あの男…確か… 「ま、いっか」 「それ北高の制服だよね」 「まあな」 「あんた、名前は?」 「ジョン・スミス」 ジョン・スミス!?ジョン・スミス…まさか…キョン? そうか、キョンは3年前へ行ったんだ… キョン…あたしの知ってるジョン・スミスだったんだ… その後、昔のあたしとジョン・スミスが去った後、校庭へ行った。 そっか、これを書いたのは…キョンだったんだ… ありがとう、キョン… と、その時にあたしの後ろから光が放った。 「え?」 あたしは、振り向いた その光が人の姿に変わった…そして、光が消えた。 「え?あ…」 目の前にいた…あたしの会いたい人がいた… キョン「久しぶりだな、ハルヒ」 ハルヒ「キョン!」 あたしは思わずキョンへ駆け寄り、抱き付いた… 「会いたかったよ!キョン!」 キョン「スマンな、心配掛けて…」 いいの…キョンがいたから、謝らなくでいいの! 「キョン…」 キョン「…ここは、3年前の七夕だな」 「うん」 キョン「さっき、気付いたんだろ」 「うん!」 キョン「……」 ハルヒ「……」 お互い見つめ合ったまま、動かない… キョン「ハルヒ、ただいま」 ハルヒ「おかえり、キョン」 ???「あら?いい雰囲気ね」 !?あの人が来た!?学校の屋上? と、二人は学校の屋上を見る キョン「いい加減しろ…朝倉涼子!」 朝倉「あら、張り切ってるね?キョン君」 いきなり、キョンサイドへ切り替わりまーす! 朝倉「ふふふふ…どうするの?」 ハルヒ「キョン…」 あぁ、大丈夫だ!ハルヒ、俺が守ってやるさ 「朝倉!俺は思い出したぞ」 朝倉「何を?」 「長門から聞いた事ある。この異空間は自分の意思で物を変えれると聞いた! だが、それも条件あるんだろ?」 朝倉「あら、有希ってお喋りね」 「その条件はここの異空間とはピッタリらしいな?しかも、この異空間はコンピュータ世界だろ?」 朝倉「で、それがどうしたの?まさか、物を出すとか?」 「大当たりだ。普通の人でも出せるらしいよな?だったら!」 俺がイメージした通りに物が現れた…それは銃だった。 それを取って、素早く構えた。 「もぅ、お前の思い通りはさせねぇ!そして、お前を撃つ!」 朝倉「!?」 「……」 朝倉「ふふふふ、あーっはははは…この私に何か出来るというの?」 朝倉「ふふふふ…行くよ!」 と、朝倉の手からナイフが出て来た。 「くっ!」 銃で防御する俺 ハルヒ「キョン!」 「ハルヒ!お前は隠れてろ!」 ハルヒ「う、うん」 キン! 朝倉「ハルヒを逃してどうするのよ?キョン君!」 キン! 「ハルヒは俺が守る!朝倉、お前がやってる事は間違ってる!」 キンキン! 朝倉「それがどうしたのよ!私が間違ってる?それは無いわ」 キンッ! 鍔迫り合いする両者 「それは、お前のエゴだって…分かってるのか?」 朝倉「さぁ?分からないわ」 「ふざけんな!」 と、俺は弾き返した 朝倉「私は、ふざけてないわよ?」 朝倉「あなたがいる世界はつまんないでしょ?」 「つまらくはない、むしろ、楽しいさ」 朝倉「あら?我慢してるの?」 「…俺は、ハルヒがいる世界が好きだ…だが、お前が思うような世界は欲しくない」 朝倉「あら、ハルヒ、ハルヒって言うけど、そんなに好きなの?」 と、朝倉は「やれやれ」のボースをしてる。 「確かに、好きだ…あいつは気が強くでも、本当は気が弱いところがある…それでも守りたい…」 朝倉「ふーん…」 「ハルヒはハルヒだ、お前の思うようにはさせない!」 朝倉「でも、もう遅いよね…どの道、あなたが死ぬのだから」 「それはどうかな?」 朝倉「え?影?まさか!?」 朝倉は、月の方へ振り向いた 「遅かったな……長門!」 そう、月を背景して現れた 長門「情報結合の解除を申請する」 と長門が言うと、朝倉のナイフが消えた 朝倉「そ、そんなバカな…」 説明しよう!キョンは戦略を考えていたのである! 銃を出した後、長門の事を思い浮びながら戦ったと言う事だ! 時が来たら、それを実行したのがキョンの策…流石、策士は伊達じゃないぜ! 朝倉「くっ…」 朝倉は、少しよろめく 「朝倉!お前の負けだ!」 と、銃を構えた 朝倉「くっ!これが私の負けなのね…」 「朝倉!これで…終わりだぁっ!」 と、銃の引き金を引く バァン… 朝倉「あぁ…私の…ま…けね…」 朝倉は涙の泣かしながら、結晶化になり…消えた。 「…長門、ありがとな」 長門「…(ゴクリ」 …さて、ハルヒの所へ行くか… キョン…あんたの想いは分かったよ… あたしの想い…キョンの想いは繋がってたんだね… キョン「ハルヒ!」 「キョン!…戦いは終わったの?」 キョン「あぁ、終わったよ」 「……」 あれ?何で有希がここに? 長門「私は、ここから出る…後は、あなた期待」 と言って、消えた。 あぁ、CGが何かのプログラムかな? キョン「…ハルヒ、ここで言わせて貰う」 「何?キョン」 俺の想い…まだ変わってない…今なら言える! 「ハルヒ、お前の事好きだ!付き合ってくれ!」 キョンの想い…確かに受け取ったよ…あたしの想い受け取って… 「あたしも好きだよ!あんたじゃないと…ダメなんだからね…」 ハルヒ、確かにお前の想いは受け取ったよ… 「ありがとう、ハルヒ」 ハルヒ「こっちもありがとう、キョン」 「ねぇ、キョン」 「ん?何だ?ハルヒ」 「キ、キスしてくれない?」 「…あぁ、するよ」 と、お互いの唇が重なる ハルヒは可愛い。 キョンは優しい。 何かあろうと守ってみせる。 何かあっても守りたい。 そして、俺は…それぞれの想いを今、一つになる。 そして、あたしは…それぞれの想いを今、一つになるよ。 俺は、あたしは、愛されるより愛したい。 そして、生きて行きたい。 ――永遠に エピローグ あれから、一週間後…あたしは元気に通ってる。 キョンに会いたいから楽しみに通ってる。 俺は、ハルヒに会うため楽しみに通ってる。 色々あったけど…これで、恋人同士になるな… 「おぅ、ハルヒ」 「あ、キョン」 俺は守りたい奴がいるから… あたしは会いたい人がいるから… 「おはよう!」 「おはよう!」 俺たちは あたしたちは 強い絆を結ばれているから 完
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「あんた・・・誰?」 俺に向かってそう言ったのは涼宮ハルヒだ。 あんた?誰?ふざけてるのか?嘘をつくならもっとわかりやすい嘘をついてくれよ! だがハルヒのこの言葉は嘘でも冗談でもなかった。 この状況を説明するには昨日の夕刻まで遡らなければならない。 その日も俺はいつものように部室で古泉とチェスで遊んでいた。 朝比奈さんはメイド服姿で部屋の掃除をし、長門はいつものように椅子に座って膝の上で分厚いハードカバーを広げている。 ハルヒは団長机のパソコンとにらめっこしている。 いつものSOS団の日常だった。 「チェックメイト。俺の勝ちだな古泉!」 俺はいつものように勝利する。 「また負けてしまいましたか。・・・相変わらずお強いですね。」 微笑みながらこっちをみる古泉。 俺が強い?言っておくが俺は特別強くなんかないぞ!おまえが弱すぎるんだよ古泉! まぁこの微笑野郎が本気でやっているかどうかは疑わしいもんだが。 そうだったら腹がたつな! 「今日はここらでやめとくか。」 「そうですね。続きはまた明日とゆうことで。」 ニコニコしながらチェスを片付け始める古泉。 すると長門がハードカバーを閉じる。 同時に下校の予鈴が鳴った。 ハルヒが立ち上がって鞄を肩にかける。 「さぁ、あたしたちも帰りましょ!」 ハルヒの号令に俺たちは帰宅の準備を始める。 「たまにはみんなで一緒に帰りましょ!」 ニコニコしながら腕を組んでいるハルヒ。 「そうだな、たまにはいいかもしれないな。」 今思えばこのときが運命の分かれ道だったのかもしれない。 帰りの支度を終えた俺たち5人はいつもの坂道を下り始めた。 先頭に俺、隣にハルヒ、俺の後ろに朝比奈さんと古泉がいて最後尾に長門がいる。 「ねぇ、キョン。あんた土曜日ヒマ?」 ハルヒが歩きながらこちらを向く。 土曜日か…ヒマと言えばヒマなんだが俺には睡眠という名の立派な業務がある。 「まぁどうせヒマでしょ?あたし叔父さんから映画のチケット2枚もらったのよ!特別にあんたを招待してあげるわ!」 正直俺は映画館のあのかったるい感じが嫌なのだがハルヒにしちゃまともな誘いだ。特に断る理由もないだろう。 「映画ねぇ。別にいくのはいいんだがどんな映画を見に行くんだ?」 こいつのことだからSF物かもしくはホラーか?まぁそれなりに楽しめる内容だといいんだが。 「あ、あたしもまだどんな映画だか知らないの。」 「チケット貰ったならタイトルくらいわかるだろ?」 そう返すと何故かハルヒは顔を赤くする。 「べ、別にいいじゃない!どんな映画でも!」 嫌な予感がするな。こいつがタイトルを言えない映画ってなんだ? まさか恋愛ラブストーリーだったりしてな。 「と、とにかく土曜日空けときなさいよ!」 まぁいいか。 ハルヒがどんな顔して恋愛ものを観るか楽しみでもある。 そんな会話を俺とハルヒがしていると聞いていた古泉が微笑声をもらしながら近づいてきた。 「お二人方、週末は映画館でデートですか。お熱いですねぇ。」 うるさい古泉。おまえはいつも一言多いんだよ。 「デ、デートじゃないわよ!キョンはただのオマケなのよ!勘違いしないで頂戴古泉君!」 そこまでむきになって否定しなくてもいいと思うが… 「そうゆうことにしておきましょう。」 ハンサム野郎は再び微笑して頷いた。 ここまでは普段どおり何ら変わりはなかったが事件はこの後起きる。 坂道を下ると大きな交差点にぶつかった。 信号は青だ。 俺はハルヒの誘ってきた映画のことを考えながら渡り始めた。 このとき俺がよくまわりを見て渡っておけばあんなことにはならなかったかもしれない。 突然、大きなブレーキ音とともに俺の横に一台のバイクが突っ込んできた。 「危ないキョン!」 ハルヒは俺に飛びついて俺を転ばせた。 俺とハルヒはそのまま転がる。 危機一発。俺は寸前のところでハルヒに助けられたようだ。 「・・・っ・・・なんて乱暴な運転しやがる・・・」 俺は体を起こしながら辺りを見る。 「大丈夫ですか!?」 古泉たちが駆け寄ってきた。 「・・・なんとかな。ハルヒ助かったぜ!」 俺はそう言いながら隣に倒れこむハルヒを見た。 ハルヒは道路に倒れこんだまま目を瞑っている。 「おい!ハルヒ?」 ハルヒは応答しない。 その場にいた全員が言葉を失った。 ハルヒはぐったりして目を瞑ったままだ。 「お、おいハルヒ!しっかりしろ!」 ハルヒの体を抱き寄せ問いかけるが返事はない。 「動かしてはいけません!」 そう言って古泉は電話を取り出し救急車を呼ぶ。 なんでこんなことに… 「頭を強く打ってます!もう少しで救急車が到着します!あまり動かさないで下さい。」 真剣な顔で古泉は俺を見つめる。 すると長門が俺とハルヒの前に来るとハルヒの頭に手をかざした。 なにやら呪文を唱えているようだ。 そして俺を見ると一言だけ発した。 「心配いらない。傷は塞いだ。」 長門がそう言ってくれたおかげで俺は平静を取り戻した。 長門が大丈夫だと言うんだ。すぐにハルヒは目を覚ますだろう。 俺が安心すると大きなサイレンと共に救急車が到着した。 救急隊員がハルヒを担架に乗せると救急車の中に運んでいった。 「僕たちも付き添いましょう!」 古泉の言葉で俺たちもハルヒに付き添い病院に向かう。 救急車の中では救急隊員がハルヒの口に人工呼吸器をあてている。 俺は先ほどの長門の言葉を頭の中で何度も自分に言い聞かせながら平静を保っていた。 病院に着くとハルヒは緊急治療室に運ばれていった。 俺たちはロビーで待つことにする。 「ぅ・・・ぅぇ・・・涼宮さぁん・・」 朝比奈さんはさっきからずっと泣いており古泉がそれをなだめている。 「長門さんがあの場で治療してくれたおかげで涼宮さんはほとんど無傷です。心配いりませんよ。」 そう言ってる古泉だがいつもの笑顔はない。 「とりあえず今は待ちましょう。僕たちにできることはそれしかありません。」 どれくらいの時がたっただろうか。気がつくと辺りはすっかり暗くなってる。 すると治療室から医者がでてきた。 真っ先に古泉が医者に駆け寄る。 「彼女のお友達の方々ですか?」 「えぇ、先生。彼女の容態はいかほどでしょうか?」 古泉はいつになく真剣な顔だ。 「心配いりませんよ。頭を強く打っていますが奇跡的に無傷です!すぐに目を覚ましますよ!」 「そうですか。ありがとうございました。」 古泉は医者に会釈すると俺たちにやっと笑顔を見せた。 「よかったです。長門さんのおかげですね。」 ようやく朝比奈さんも泣き止んだ。 俺は長門に顔を向けると長門は相変わらずの無表情だった。 「長門。ありがとう。」 長門は淡々と答えた。 「涼宮ハルヒは大事な観察対象。万が一のことがあっては困る。」 ありがとな長門。お前はそう言っていても俺にはお前に対する感謝の気持ちでいっぱいだ。 「皆さんこれからどうします?僕は今から涼宮さんのご両親に連絡してきますが。」 どうする?決まってるだろ? ハルヒが目を覚ますまでそばにいるさ!いつだったか俺が入院したときもあいつはずっとそばにいてくれたんだからな。 「俺はしばらく病院に残るよ。」 「わかりました。では僕は電話してきます。」 あとはハルヒが目を覚ますのを待つだけだ。 俺は朝比奈さんと長門を連れてハルヒが運ばれた病室へ入った。 人工呼吸器を口につけたまま眠っているハルヒ。 俺はそんなハルヒに心の中で声をかけた。 おいハルヒ!さっさと起きてくれよ。お前がいないとSOS団はどうなるんだよ。それに映画に一緒に行く約束もしただろ!お前が寝たままじゃチケットが無駄になるだろ! 第一俺を庇ってくれたことの礼も言いたいんだよ。 だからさっさと起きろ! 言いたいことはまだあるんだ。 しばらくすると古泉が戻ってきた。 「涼宮さんのご両親がもうすぐ到着されます。おそらく僕たちは邪魔でしょう。今日のところは帰りましょうか。」 ハルヒが目覚めるまでそばにいたかったがハルヒの両親に迷惑をかけるわけにもいかない。 「仕方ないな。今日は帰ろう。」 俺たちは病院を後にして解散した。 翌日になると俺はいつものように学校に向かった。 坂道を駆け足で登り校舎に入る。 そしてクラスに入る。 だがハルヒの席にハルヒはいない。 やがてHRが始まり担任の岡部が切り出した。 「えぇ、涼宮は昨日交通事故に遭って頭を強く打ったそうだ。怪我はないらしいが今日は大事をとってお休みだ。」 クラスが騒然とした。 だがすぐにいつもの空気に戻る。 その後俺は授業を受けたがやはりハルヒが後ろにいないとなんだか物足りないな。 「ねぇキョン!いいこと思いついたわ!」 そう言ってつついてくるハルヒが途端に恋しくなったな。 結局俺は授業など上の空って感じであっという間に1日が過ぎた。 廊下にでると古泉と朝比奈さんと長門が俺を待っていた。 「先ほど病院から連絡がありました。涼宮さんが目を覚まされたようですよ。」 「本当か古泉?」 「えぇ。僕たちもすぐに病院に向かいましょう。」 やっと目を覚ましてくれたかハルヒ… お前のいない学校はつまらなかったよ。 そんなことを思いながら俺たちは病院に向かった。 ハルヒの病室に着くと俺は昨日のことをどうハルヒに謝ろうかと考えながら扉をノックした。 「どーぞ!」 ハルヒの元気な声を確認して俺は安心した。 ゆっくりと病室の扉を開けるとそこにはベッドの上でしかめっ面をして腕を組むハルヒがいた。 俺たちは病室に入り扉を閉めた。 「ハルヒ。もう大丈夫なのか?」 ハルヒはしかめっ面のままこちらを凝視していた。 「あんた・・・誰?」 俺は耳を疑った。 あんた誰?何言ってんだよこいつは。 ちっとも笑えないぞ! 「は?」 「は?じゃないわよ!勝手に人の病室に入ってこないでよ!」 「せっかく見舞いに来てやったんだ。なんの冗談だよ?」 ハルヒは表情を変えない。 「見舞い?なんであたしの知らない人間が見舞いに来るのよ!」 どうゆうことなんだ?俺を知らない? すると古泉がいつもの笑顔で話かける。 「お元気そうで何よりです。涼宮さん。」 ハルヒは不思議そうな顔で古泉を見る。 「なんであんたもあたしの名前知ってんの?どっかで会ったかしら?ああ、そういえばそれ北高の制服ね。」 全くもってわけがわからん。誰か説明してくれ! 突然古泉が俺の耳元で囁く。 「一旦出ましょう。わけは外で説明します。」 俺たちは古泉の言うとおり一度出ることにした。 ロビーに移動した俺たちに古泉が語り始める。 「先ほどの涼宮さんの奇妙な言動ですが、記憶喪失と考えると全てつじつまが合います。」 「記憶喪失だって?ハルヒはホントに俺たちのこと忘れちまったのか?」 「えぇ、それも僕たちSOS団のことだけをね。」 「俺たちだけ?なんでそんなことがわかる!」 「涼宮さんはご両親とは普通に話してるようですし涼宮さんは北高のことを知っていました。なので消えてる可能性があるとしたら僕たちSOS団に関する記憶でしょう。」 ハルヒの中から俺たちだけの記憶が消えた?なんでそんなややこしいことになっちまったんだ。 「おそらく僕たちとの思い出が涼宮さんにとって一番大事なものだったからでしょう。それが優先的に消されてしまったのです。」 「元には戻らないのか?」 「わかりません。突然思い出すこともあるようですが・・・」 とりあえずもう一度涼宮さんの病室に行きましょう! 俺たちは再びハルヒの病室にやってきた。 古泉がノックをする。 「どーぞ!」 こうなりゃやけだ!意地でも俺たちのことを思い出させてやる! 扉を開けるとしかめっ面のハルヒ。 「またあんたたち?あたしに何の用なのよ!」 俺は手当たり次第ハルヒに質問をぶつけてみることにした。 「なぁ、谷口って知ってるか?」 何故か最初に谷口が浮かんだ。 「谷口?あのバカがどうしたのよ!」 なるほど谷口は覚えてるのか。 「じゃあ国木田って知ってるか?」 「国木田?ああ谷口といつもつるんでるやつね?」 国木田は俺と同じ中学だ。ハルヒは中学の国木田を知らないはずだ。 つまりハルヒには北高の記憶はあるということだ! 俺はハルヒを追い詰める。 「じゃあお前の席の前に座ってるやつは誰だ?」 ハルヒはその場で考えこみ始めた。 「・・・あたしの・・前?・・思い出せないわ。なんで?」 なるほど… やはり俺たちだけの記憶がないらしい。 「・・・なんで思い出せないの?・・・っていうかあんたたちは誰なのよ!」 「お前と同じ学校のもんさ!俺はキョン。こっちが古泉で、こっちが朝比奈さん。こっちが長門だ。」 なぁ思い出せよハルヒ!お前だけが一方的に俺たちを忘れるなんて許さないぜ! 「あまり考えさせるのもよくありません。また出直すことにしましょう。」 ここは古泉言うとおりにしておこう。 「じゃあなハルヒ!明日学校でな!」 「ち、ちょっと待ちなさいよ!まだ話は終わってないわ!」 ハルヒの言葉を無視して俺たちは強引に病室をでた。 全く勝手なやつだ。俺たちだけのことを一方的に忘れやがって。 「まぁいいではありませんか。涼宮さんがご無事だったのですから。焦る必要はありません。」 「だがなぁ」 「涼宮さんは明日から登校してきます。きっと明日思い出してくれますよ。」 今日の古泉の言葉には妙に説得力がある。 「そうだな。今日は帰るか。」 そうして俺たちは解散することにした。 その日の夜、俺は明日ハルヒの記憶を取り戻すための作戦を考えていた。 ハルヒの記憶を戻す方法はある。 それは俺はジョン・スミスだと言うだけでいいんだ。 だがそれを使うと今までのことや俺たちのことを全てハルヒに話さなければならない。 下手するとハルヒの力が暴走する。 だからこの方法だけは避けたい。 そんなことを考えながら翌日になった。 今日はきっとハルヒが来る。 俺は急いで学校に向かった。 駆け足で教室に入るとハルヒの姿があった。 椅子に座り腕を組んでまわりをじっと睨んでいる。 まるで一年前ハルヒと出会ったときのようだ。 「よう!体はもう大丈夫なのか?」 俺は自分の席に座りハルヒに話しかけた。 「あんた昨日の!なんであんたがここにいんのよ?」 「ここは俺の席だ。」 ハルヒは戸惑った顔をしている。 今までいろんなハルヒの顔を見てきたがこんな顔は初めてみたさ。 正直可愛かったね。 「・・・っ・・思い出せないわ。あたしが忘れてるのはあんたなの?」 頭を抱え込んでるハルヒ。 「いずれ思い出すさ。」 俺はそう言って前を向いた。 それからのハルヒはずっと空を見て考えこんでいた。 思い出してくれよハルヒ。俺たちのことを。 それから時間は流れ昼休み。 俺はハルヒを部室に連れていくことにした。 「ハルヒちょっと来てくれ!」 ハルヒの手首を掴み強引に部室まで引っ張っていく。 「ち、ちょっとなによ!」 ハルヒの言葉に俺は耳を貸す余裕はない。 「・・・文芸部?なんでここに連れて来たのよ!」 文芸部。つまりSOS団の部室だ。 「今日からここがあたしたちの部室よ!」 一年前ハルヒがこの部屋でそう言った日からSOS団は始まった。 扉を開けるとそこには朝比奈さん、長門、古泉がいた。 ハルヒを中に入れ俺は問いかけた。 「どうだ?この部屋覚えてないか?」 ハルヒは少し考えこむと 「・・・わからないわ。・・でも・・・なんか懐かしい感じがするの・・」 よかった。連れてきた甲斐があったみたいだ。 毎日通った部室だ、ハルヒの体が覚えているんだろう。 「涼宮さんはこの部屋で団長をやっていたんですよ。」 古泉と朝比奈さんが壁に貼り付けられた写真を指差した。 夏合宿のときに孤島で撮った写真だ。 「これ・・・あたし?なんで?・・・思い出せない。」 まるでおもちゃを無くした子供のような顔で写真を見つめるハルヒ。 「俺たちはここでお前のつくったSOS団として活動してたんだ。その写真が証拠だよ。」 ハルヒはやがて無言になる。 しばらくの沈黙が流れやがてハルヒが切り出す。 「SOS団だとか・・・団長だとか・・・わけわかんない・・」 今にも泣き出しそうな顔でそう言うと走って部室を出ていった。 「・・・ハルヒ」 出ていった瞬間ハルヒが遠くに離れてくような感じがした。 「仕方ありません。いきなり現実として受け入れるのはいくら涼宮さんでも難しいでしょう。」 古泉も珍しく寂しい顔をしている。 すると俺の服を掴むやつがいた。 長門だ! 「長門?」 長門は無表情のままこちらを向く。 「涼宮ハルヒの精神状態が不安定になったことでこの部屋の空間を構成している力のバランスが崩れようとしている。」 よくわからないがそれがまずいことだってことは俺にもわかる。 古泉が神妙な面もちで言う。 「とにかく放課後対策を練るとしましょう。」 結局その日ハルヒは教室に戻って来なかった。 放課後俺は再び部室に向かった。 部室にはすでに3人の姿がある。 古泉が真剣な顔でこちらを見ている。 「涼宮さんは?」 「ハルヒは結局帰って来なかったよ。」 古泉と朝比奈さんは何か深刻な顔をしている。 「困ったことになりました。先ほど機関から連絡があったのですが世界中で大規模な閉鎖空間が発生してるようです。」 「なんだって?」 「おそらく涼宮さんの精神状態が不安定になったことで発生したのでしょう!このままではこちらの世界とあちらの世界が入れ替わってしまいます。そうなる前に涼宮さんを見つけなくてはなりません。」 くそっ!こんなことになるならハルヒをここに連れて来るんじゃなかった! 「悔しんでもなにも変わりません。とりあえず今は一刻も早く涼宮さんを探し出さないといけません。」 「ああ。わかってる」 俺は長門を見た。 「長門。お前の力でハルヒを探せないか?」 長門は答える。 「今はできない。現在私の能力は何らかの影響で弱まっている。」 何らかの影響?それもハルヒの仕業なのか? 「・・・おそらく」 「ここ話していても何も解決しません!今は涼宮さんを見つけだすことが先決です!」 古泉の号令で俺たちは手分けしてハルヒを探すことにした。 くっ!ハルヒ。どこにいるんだ! ハルヒの行きそうなところに俺は走った。 東中か?それともいつもの喫茶店か? とりあえず行ってみるしかない。 俺はいつもの喫茶店に走った。 ハルヒはいないようだ。 じゃあどこだ?東中か?何も考えずに俺は東中に向かう。 走りながらハルヒの携帯に電話をかけるが繋がらない。 俺は東中に着くと無我夢中で探しまわった。 ここにもいないのか?じゃあどこにいるんだハルヒ! 気がつくと辺りはすっかり暗くなっていた。 こんなことになっちまったのは全部俺の責任だ!俺が無理やりハルヒに記憶の断片を突きつけたり、いや、その前にあのとき事故に遭わないければハルヒはこんなことにならなかった。 自分自身に腹がたつ!頼むハルヒお前に会いたい! いつの間にか俺は北高に戻ってきていた。 真っ暗な校庭の真ん中にポツリと誰か立っている! ハルヒなのか? 俺は校庭の真ん中に駆け寄った。 「ハルヒ!」 校庭にいたのはハルヒだった。 ハルヒは悲しそうな顔でこちらを見た。 「あんた・・・一体なんなのよ・・」 いつになく力無い声だ。 「・・・わかってるのよあたしだって。何か大切なことを忘れてるのは・・・」 「・・・ハルヒ」 「・・でも・・どうしても思い出せないの!・・・あんたのことだって絶対知ってるはずなのに。」 ハルヒの悲しい顔を見ると俺は胸が苦しくなる。 ハルヒは俺に近づき続ける。 「ねぇ教えて!あんたは誰なの?あんたは私のなにを知ってるの?・・・教えてよ・・」 俺はハルヒの両肩に手を乗せて言う。 「・・・いいんだハルヒ。無理に思い出さなくて・・・お前はお前だ。他の誰でもない。涼宮ハルヒだ!」 ハルヒは目から涙を流しながら俺を見つめている。 「・・・・・なんであんたを見るとドキドキするの?・・・なんで・・」 俺はハルヒを抱きしめた! 俺の胸の中で泣いてるハルヒ… 「なぁハルヒ聞いてくれ。お前が俺のことを思い出せなくても俺はお前が大好きだ!・・・俺だけじゃない!古泉も長門も朝比奈さんもみんなお前が大好きなんだ!」 俺は一年前にハルヒと閉鎖空間に閉じ込めらたときのことを思い出していた。 今はあの時とは違う。今俺がハルヒにキスをしたところであの時のようにうまく行く確証はない。それどころかそんなことをすれば逆にハルヒの精神状態をよけい不安定にしてしまうかもしれない。 だが気がつくと俺はハルヒの唇に自分の唇を重ねていた。 なぜそんなことをしたかって? 決まっている!俺がしたかっただけだ! 俺はハルヒと世界を天秤にかけてハルヒを選んだ。 もうこのあと世界がどうなろうとかまわなかった。 今はただハルヒと唇を重ねていたかった。 1分ほど経っただろうか。俺はハルヒから唇を離しハルヒの顔を見た。 ハルヒの頬は赤くなっている。 こんなときに不適切な発言かもしれないが言っておく。 世界で一番可愛いと思った。 ハルヒの肩から手を離すとハルヒが小声で言った。 「・・・・・・・・・・・・・ばか」 「すまんハルヒ。つい・・・」 ハルヒは赤い顔のまま顔を横に向けた。 「・・・ばかキョン。・・罰として土曜日奢りなさいよ。」 ん?今なんて言った?土曜日?まさかハルヒ! 「思い出したのか全部!?」 ハルヒは再びこちらに向いて 「大体あんたがあのときよそ見したから悪いのよ!今度からはちゃんと周りをみてから渡りなさい!」 よかった。いつものハルヒだ。 そのあとのハルヒとの会話はよく覚えていない。 そしてその日の夜に古泉から電話があった。 古泉の話によると世界中に発生していた閉鎖空間は消えたらしい。つまり一件落着ってわけだ。 翌日からハルヒはいつものハルヒに戻っていた。 部室ではハルヒが朝比奈さんをいじくり、長門は相変わらず分厚いハードカバーを広げ、俺と古泉はチェスで対戦。 そこにはいつもと変わらない日常があった。 ◆エピローグ◆ 土曜日の話だ。 俺はハルヒと映画を見に行った。 鑑賞した映画は男と女が繰り広げる非日常のラブストーリーだった。 俺の隣のハルヒは終始真剣にスクリーンを見つめていて、映画のワンシーンであるキスシーンが流れると頬を赤く染めていた。 正直俺は映画よりハルヒの顔見てるほうが面白かった。 映画を見終わり俺たちは駅に向かって歩いていた。 「なぁハルヒ。あんなチャラけた映画の何が面白いんだ?」 「あんたにはわかんなくていーの!ばかなんだから!」 俺はハルヒをからかってやった。 「お前キスシーンのとき顔赤くなってたぞ。」 ハルヒはその場で赤くなり俺の胸ぐらを掴む。 「な、なんであたしの顔見てたのよ!?いやらしい!」 「別に。お前も純情なんだなハルヒちゃん!」 「う、うるさいばかキョン!」 ハルヒは尚も俺の胸ぐらを掴みながら小声で言う。 「・・だいたい、あんたからだけなんてずるいじゃない・・」 そのまま俺を引き寄せ唇を重ねてきた。 短いキスが終わりハルヒは赤く染まった頬のまま言った。 「これでおあいこだからねキョン!」
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涼宮ハルヒの遡及Ⅶ 「でっかぁぁぁ!」 「す、涼宮さんなんたってこんなぁ……!」 俺の驚嘆の声と朝比奈さんの怯えきって震えた声を聞いて、 「うんうん。やっぱ、ボスたるもの、これだけの迫力がなくっちゃ!」 などと、ハルヒは腕を組み、勝ち誇った笑顔でうんうん頷いている。 そう、俺たちの目の前に現れたのは、マジで山かと錯覚してしまうくらいの大きさなんだが、実質的にはさっきの怪獣より倍は大きい程度で、漆黒の鱗に紅蓮に輝く瞳、その口からぬめり輝く牙はゆうに俺たちの身長以上は楽にある。んでもって、やっぱり漆黒の翼を纏い、しかしその体重が飛ぶのをどこか邪魔しているのか、がっつり大地に足を下しているんだ。これを長門、古泉、朝比奈さんが協力して倒すストーリーなのか? いったいどうやって倒すつもりだったんだろう? んで、奴が歩みを進める度に震度3以上で大地を震わすのである。 ……ボス、ねぇ…… 「で、あれがラスボス?」 問いかけてきたのは振り向くことはできないようだがアクリルさんだ。 「アレがラスボスなら、アレをやっつけちゃえばこの世界から脱出よ。だって、ラスボスを倒せば『ストーリー』が終わるから。その先がない以上、世界は崩壊し、あたしたちは元の世界に戻ることができる」 なるほど。それは確かに納得できる理由だ。 まあもっとも、ハルヒのことだから、 「あ、違います。さっきの大群のボスだけど、こいつがこの世界のラスボスって訳じゃないんです」 だろうな。こんなあっさりラスボスが登場するとは思えん。 「あっそ。んじゃまあ、とりあえずあたしたちの身の安全のためにこいつを葬るとしましょうか!」 ハルヒの答えを聞いて、アクリルさんが宙を駆けるように舞い上がる! それを追って長門と古泉も飛び上がった! 「ブレイズトルネード!」 先手はアクリルさん! 舞い上がると同時に、猛スピードで漆黒の怪獣の目線に到達した瞬間、灼熱の炎の竜巻を奴にぶつける! 当然、奴は恐れ慄き、むやみにそのぶっとい腕を振り回すが当然、そこにアクリルさんの姿はない! どうやらあれは目くらましだったようだ。さらに上昇して行くもんな! だが、いったい何のために? そんなアクリルさんの上昇を尻目に、古泉と長門も攻撃を開始した! 古泉は勿論、例の赤いエネルギー球をぶつけ、長門はスターリングインフェルノを振るい、主に爆裂魔法をしかけているようだ。 ただ如何せん、あの巨体だ。そんなにダメージはなさそうである。 派手な爆撃音が響く割には怪物の動きはまったく鈍っていない。 目くらましから目が慣れてきたのか、だんだんと攻撃が正確になっていく。 奴の繰り出すかぎ爪攻撃が古泉や長門をかすってやがるからな。 しかし、古泉と長門の動きもそんなにのんびりしちゃいない。 かする以上のダメージを受けることなく、散発的な攻撃を継続している。 ――!! と言うことは牽制攻撃ってことか!? なら本命は――! 俺の予想を裏付けるが如く、はるか上空から、しかし、それでもここまで声が届いたんだ! 「グラビデジョンプレッシャー!」 と、同時に怪物の動きが、そうだな、同じくらいの大きさの錘を背負わせたんじゃないかというくらい、俺にもはっきり分かる! 奴の表情が苦痛に歪み、腰が前折れになって、足が大地にめり込みやがったからな! これは……重力を増大させる魔法か!? つまり奴の動きを封じるために……! 「セカンドレイド!」「……」 奴の動きが止まった瞬間、古泉と長門がさっきの攻撃以上の力を込めていることが一目瞭然で理解できるエネルギー球を、奴めがけて、それぞれ右腕と左腕に投げつけて、当然、その両腕は破壊された! 奴の空気を震わせる絶叫が響く! 「これでもうかぎ爪の攻撃はできなくなりましたね」 などと言う古泉の勝ち誇った声が聞こえてきて、 「えっ!?」 しかし、その声を捉えた怪物は紅蓮の瞳で古泉を睨みつけたと思った瞬間! 「くっ!?」 古泉には両手でブロックする時間しか残されていなかった。 しかし、奴の巨体からすればブロックの上からでも楽に古泉を吹き飛ばせることができる! 猛スピードで地面に墜落する古泉! 「古泉くん!」 ハルヒの悲痛の叫びが届く! そう……確かに吹き飛ばしたはずの右腕が瞬時に復活しやがったんだ…… どういうことだ……? 「超回復」 って、長門!? いつの間に!? 「あの怪物は肉体の一部が破損されたとき、瞬時にその部位を回復させる特殊能力がある模様」 なんだって!? 俺は愕然とするしかできなかった。 が、 「さて、それはどうかしら?」 長門の意見を否定する人物が現れた。いや否定と言うより疑問視だな。 もちろんそれは俺と長門の前に降り立ったアクリルさんだ。 「で、もう大丈夫よね?」 「はい、ありがとうございます」 その隣にはさっき、かなりの勢いで地面に激突した古泉が、ブレザーの袖と背中が派手に破れさせながら、全身は誇りまみれになっているんだけど、ほとんど無傷の状態で佇んでいるのである。 って、いつの間に!? 「僕が地面に叩きつけられたとほぼ同時に、さくらさんが来てくれて回復させてくれたんですよ。おかげで助かりました。テレポテーションという能力は便利なものですね」 「よかった……」 にこやかな苦笑を浮かべる古泉に俺とハルヒは安堵の表情を浮かべるが、 「あなたに問う。わたしの見解に対する疑問は?」 なんとなく憮然と問いかけてきたような気がするぞ長門。注文が付いたことがそんなに気に入らなかったのか? で、どうやらアクリルさんも長門の心境に気づいたのだろうか、 「あ、誤解しないで。もしかしたらあたしの思う『超回復』とあなたの考える『超回復』で意味が違うかもしれないってだけだから」 と、なんとも気を使って語りかけてくるのである。 「あ……!」 おや? 長門は悟ったようではあるのだが? 「んじゃまあ、とりあえず試してみましょうか!」 そんな長門の声は耳に入らなかったのか、アクリルさんは巨人竜へと向きなおる。 少し足を開き気味に立ち、両手を腰のあたりに添え、と同時にマントと頭髪をなびかせながら、俺には理解不能の呟きが聞こえてくる。 言うまでもないと思うが呪文を唱えているってことだぞ。 んで、アクリルさんを中心に気流が渦巻き始めているんだ。しかもどんどん勢いを増してゆく! 「ウィングソードストーム!」 アクリルさんが術を開放すると同時に周囲を渦巻いていた気流が――そうだ、あたかも気流が刃の嵐となって巨人竜へと放たれたんだ! どこかで聞いたような変化を示した魔法ではあるが気にしないでくれ! どうやらアクリルさんが使う魔法にはとある星座をモチーフにしたバトルマンガのフィルタがかかっているようなんでな! そしてその刃が再び巨人竜の右手を砕く! 再び響く巨人竜の絶叫! しかし! 「あ、復活した」 なんてどこか呑気な声を発したのはハルヒだ。 「……ここは一度、戦略的撤退よ!」 「はい」 「了解」 は? 巨人竜の右腕が復活したのを見て取れて、アクリルさんがいきなり撤退宣言。それに古泉と長門があっさり了承。 って、ちょっと待て! アレをほったらかしにするのはいいのか? 「そんな悠長なことは言っていられない、ということですよ」 俺の問いには答えず、しかし古泉が俺の手を取り、赤球をスパークさせる。 ふと隣を見てみれば、アクリルさんがハルヒを抱えて、長門が朝比奈さんを背負って同じように猛スピードで飛行していた。 「で、どういうことなんだ?」 「見ての通りです。あの巨竜は長門さんのおっしゃられた通りで破損された部位を即座に修復させる治癒能力を持っています。つまり、どれだけダメージを与えようが、並みの攻撃では太刀打ちできません。ですから作戦を練るために一度、奴と距離を取るのです。もっとも幸いなことに回復された個所が強化されることは無いようです。長門さんが言った『超回復』は回復スピードを指し、さくらさんの言った『超回復』は通常僕たちでも負傷した時に、その箇所がより強固となって回復する『超回復』を指すようです。これが『超回復』に対する二人の見解の違いと言うことですね」 「……どっちにしろ、俺には回復スピード以上の破壊エネルギーをぶつける以外の対抗策がない、という風にしか聞こえんのだが?」 「そうとも言えるかもしれませんね」 って、笑ってる場合か! あんなデカブツ相手にどうやったら回復する前に倒せるような力が存在するんだよ!? 「ですから、それを考えるということです。幸い、あの巨竜の動きは僕、長門さん、さくらさんと比較するなら相当鈍いようですし、撤退して距離を取ればある程度の時間を稼ぐのは可能ですから」 ああ、そうかい。 などと嘆息する俺なのだが、一つ、失念していた感は否めない。 なぜなら、奴の手下である五十匹ほどの空飛ぶ怪獣たちは爪と牙と体重以外に口から発射される武器を持っていたから。 なら、当然、その親玉であるあの巨人竜も持っている訳で、 「って、ハルヒ! さくらさん!?」 そう、二人の背後から猛スピードで迫る漆黒の渦巻きが二人を追っているんだ! 古泉や長門と比較するならやはり、アクリルさんの飛行速度の方がはるかに速いので、今では俺たちの先頭を飛行しているしているのである。 だから俺はその漆黒の渦巻きを横目に捉えてしまったんだ! どうやらあの巨人竜は誰が一番脅威なのかを本能的に分かっているらしい! ただ、それが強大無比な戦闘力を誇るアクリルさんなのか、それとも、この世界の創造主であるハルヒなのかまでは分からんのだが、とにかく二人が固まっているわけだから、奴にとっても攻撃しやすいのだろう。 さすがのアクリルさんの飛行速度も背後から迫りくる漆黒の渦巻きには勝てないらしい。 どんどん差が縮まっていくもんな! 「くっ!」 「さくらさん!」 肩越しに振り返るアクリルさんの表情には焦燥感が色濃く表れている! しかももう避けられるほどの範囲にない! 「ハルヒぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」 俺の絶叫が響いたのは、その漆黒のうねりが二人を飲み込んだところを目撃してしまった後のことだった。 「ハルヒぃ! ハルヒっ! ハルヒぃぃぃ!」 俺は錯乱したように叫ぶしかできない。 なぜなら漆黒の火柱が過ぎ去ったあと、そこには何もなかったから。 今は俺と古泉のはるか背後になってしまっているのだが、飛行中、横目に確実に誰もいない現実を捉えてしまったんだ。 そう――呑みこまれるまでには確実にいたハルヒの姿がそこに無かったから―― 「ちょっと! 落ち着くてください!」 「馬鹿野郎! これが落ち着いていられるか! ハルヒが! ハルヒが! と言うか戻れ! もしかしたら墜ちただけかもしれないじゃないか!」 「冷静に状況分析をしてください! 今、先ほどの場所に戻ることはできません! 僕たちがやられてしまいます!」 「古泉てめえ! ハルヒがやられたってのに何、落ち着き払ってやがる! お前はハルヒが心配じゃないのか!」 「ですから……!」 「一応、あたしも巻き込まれたと思うんだけど、あたしの心配はなし?」 え? 俺の動きを止めたのは、俺たちの背後から聞こえてきた妙にからかっている感のある声だった。 恐る恐る振り返る。 そこには、 「あの……涼宮さんを心配されるお気持ちは判りますけど、僕が落ち着いていた意味をもう少し考えてほしかったのですが……」 と、呟く苦笑を浮かべて呟く古泉のさらにその背後に、 「ば、馬鹿キョン……あんた、何、取り乱してるのよ……こっちが恥ずかしくなるじゃない……」 「それだけハルヒさんが大切ってことじゃない?」 顔を真っ赤にしているハルヒと、ハルヒを抱えてなんとも宥める笑顔を浮かべるアクリルさんが居るのである。 「いったい何が……」 「説明は後よ。とにかくいったんあいつから離れる」 「了解しました」 俺の茫然とした呟きを今は聞き流して、アクリルさんと古泉が飛行速度を加速させる! 「あのエネルギー波はちょっと厄介ね。あたしの結界以上のパワーがあったわ。だから避けるしかなかったんだけど。でもまあ、これだけ離せば射程距離外にはあるみたい」 「そのようです。追撃の一撃が来ません」 アクリルさんと古泉が肩越しに振り返る。 さっきはとてつもなく大きく見えた巨人竜が、今は遠い所為もあり、せいぜい近くにある山と同化しているようにしか見えん。 つっても色が漆黒で形がいびつだから区別はつくがな。 「では降下して森の中に身を隠し、対策を練ることを推奨する」 って、長門いつの間に!? などと俺が口に出す前に、三人は眼下の森へと降下を始め、どうやら俺の頭も冷えたようだ。 しかしだな。同時に暗澹たる気持ちが支配する。 ――あの怪物をどうやって退治する?―― 誰も口にはしないがおそらくは、みんな同じことを考えただろうぜ。 涼宮ハルヒの遡及Ⅷ
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「涼宮ハルヒの鬱憤」の続編です。 狼が牙を研がせる襖から 蕾み開いた蓮の花。 散っては散っては夢の中。 暴れる時の移ろいは もはや誰にも止められぬ――― 先週までのハロウィン調査(正確にはパーティー)も当たり前の事だが、 特に成果もなく一旦中止となり、俺は期末テストに向けて部室で 鬼教官・ハルヒの超スパルタ教育を受けている。 「ハルヒ。お前、その竹刀どこから持ってきたんだ?」 「つべこべ言わずに覚える!」 鼻先に突きつけられた竹刀に怯みながら俺はようやく ハルヒの鋭い剣筋を教科書で受け止める反射神経を身に付けたようだ。 今日は日本史。 俺の最も苦手な教科の一つだ。 「日本史は覚えようと思っても頭に入ってこないんだよな。 教科書の文字が漢字ばっかりで…。 大体、試験範囲は幕末、明治維新だけって言ったってこの時代の奴ら、 色んな面倒事を起こし過ぎだ。」 「覚えられないのはあんたに気合いと根性と脳みそが足りないだけ!」 くそっ…反論の余地無し…。 目の前にいる古泉はニヤニヤしながらお茶を飲んでいる。 「しばらく一緒にゲームが出来ないのが実に残念です。」 勉強しなくても余裕と言った古泉の佇まいが許せない。 神様はなんて不公平なんだ。いや、神様はハルヒだからえ~と…? 「はい、今から10分の休憩を入れるわ。」 最初で最後の休憩時間。 「キョン!はい、これ。」 手渡されたのはカカオ99%の苦~いチョコと緑茶。 ハルヒは「チョコと緑茶は記憶力を良くしてくれるの!」と言っていたが、 俺は胸焼けを起こして集中力を刈り取られそうだ…。 朝比奈さんの入れてくれるお茶が恋しい…。 長門はいつものように読書をしている。 まぁ、こいつに試験勉強は必要無いだろう。 「今回は何を読んでるんだ?長門。」 長門はそっと本を上げて表紙をこちらに向けた。 しまざき…ふじむら?なんで名字が2つ並んでるんだ? 「ほぅ…島崎藤村の『夜明け前』ですか。」 良かった…口に出さなくて…。 「キョン、どうせあんたの事だから『どっちが名字だ?』とか思ったんでしょ?」 そういう勘は本当に鋭いな、ハルヒ。 苦いチョコを緑茶で流し込もうとしたその時、部室の扉が開き、 最近またグッとセックスィ~さを増したSOS団のプレイメイツッ!!こと、 朝比奈さんのご登場だ。 「こんにちは。新しいお茶の葉も見つけたんで皆にも、と思って。 だから今日はここでお勉強しようかなって。」 と、何故かメイド服を手に取る朝比奈さん。何故!? 朝比奈さんが「今日は珍しいお茶の葉が手に入ったんです~。」と 入れてくれたのは蓮(はす)の花茶という最高級品らしく、 なんでも舟で池に咲いてる蓮の花の蕾みを一つずつ摘んで作るものらしい。 う~ん、フローラルな香り…。 さっきまで「歴史っていうのは流れで覚えるの!」と 解説用のノートを竹刀で差しながら叫んでいたハルヒは 俺が黙々と教科書に向かっているのをジーッと見ていたか思うと 夕陽の暖かさに耐えられなかったのか頬杖を付きながら ちょっと遅めのお昼寝タイムに入っていた。 俺もさっきの蓮の花茶の香りに当てられたのか眠くなってきた…。 「ここでサボったら後で涼宮さんに何をされるか分かりませんよ。」 俺の心を見透かしたように古泉はニヤついていた。 分かってるよ…俺もハルヒに竹刀でぶっ叩かれるのはごめんだ…。 その時、部室内がフッと暗くなったので窓の外に目をやると さっきまでの夕陽が消え、灰色の空間が押し迫ってきていた。 「古泉、これは…」 古泉に目をやるとさっきまでのニヤケ顔と違い、真顔で驚いたような表情をしていた。 「閉鎖空間のようですね。しかし、涼宮さんは眠り込んでおいでのようですが…」 と、古泉が喋り終わらないうちに眩しい光が部室を包んだかと思うと、 俺は気絶しそうな目眩に襲われた。 業火に焼かれる月の都の闇の中。 踊る金魚は池の中。 降り注ぐ血の色煙る雨の音。 想う心は一つでもあちらこちらと相容れぬ――― 「ぐおっ!!」 なんか思いっきり腹を踏まれた。痛い…。 「おめぇ何者じゃ?妙な格好しおってからに。」 何だ?ここはどこだ?あれ?谷口???ハルヒ達はどこ行った? 「何しやがんだ?谷口。大体、お前こそ変な格好しやがって…」 「お前、何故わ、わ、わしの名を?怪しい奴じゃ!どこのもんか知らんが、 毛唐みたいな服着よってからに不届千万!攘夷じゃ!この奸賊めが!」 はぁ?と思う間もなく、この着物とちょんまげ姿の谷口は でっかい刃物を取り出し、俺の鼻先に突きつけてきた。 朝倉の時といい、今といい、俺は先端恐怖症にでもなってしまいそうだ…。 冷や汗が背中を伝う、まさにその時だった。 「いたぞ!!こっちだ!!」 と、何人もの集団が大声を出しながらこちらに向かってくる。 「しもうた…。」 一言呟いてちょんまげ谷口は刀を納め、逃げ出していた。 「おい!待てよ!」 俺はとりあえずこの場の空気を読んでちょんまげ谷口と一緒に走っていた。 「お、お前!何故ついてくるんじゃ!?」 「うるせぇ!とりあえず逃げとけみたいな流れだったからだ!」 狭い路地裏に飛び込み、弁慶と牛若丸が出てきそうな橋を渡り、 寺の境内を抜け、走り続けているとそこは昔、修学旅行で行った 太秦映画村のセットのような屋敷の裏門だった。 「くそっ!袋小路か…お前のせいじゃぞ、毛唐!」 表の大通りから声が聞こえてくる。 どうやら相当な人数が追い掛けてきているようだ。 お前は一体、何をやらかしたんだ?谷口。 と、その時、屋敷の通用門が開くと俺と谷口は襟首を掴まれて引きずり込まれた。 これは一体、何の冗談なのでしょうか? まぁ、百歩譲って長門有希と朝比奈みくるに挟まれているのはまだ理解出来ます。 しかし……何故、僕らはちょんまげを付けて妙なはっぴを着た連中に 大人数で囲まれているのでしょうか? 「お前ら、何者だ!?」 それはこちらの台詞ですよ。 「いきなり目の前に現れよって!妙な格好をしている所を見ると毛唐か?」 「この人達は一体、何なんですか~!?」 会話が噛み合ってませんね。この方達が何者なのか僕が知りたい所です。 「…新撰組。」 おやおや? 「日本において残存する歴史的資料のデータと彼らの姿形が一致している。 理由はわからないが、今は彼らが新撰組だと認識するのが妥当。」 「ふぅ~…理由はわかりませんし、信じたくもありませんが、 確かに彼らは新撰組としか見えない格好をしていらっしゃいますね。」 「そして彼らはこちらを敵性と判断している。」 「キョンくんと涼宮さんはどこにいるんでしょうか~?」 「まずはこの場を切り抜けるのが先決。その後、2人の捜索を開始する。 2人の存在も微弱ながら感知出来る。」 「長門さん、どうやらここでは僕の能力が僅かながらですが、発揮出来るようです。 何故かはわかりませんが、少々お力添えは出来そうです。」 「…助かる。」 「先程から何をごちゃごちゃと!!」 キラリと光ったと思うと四方八方から刃が切り込んできた。 「私が障壁を作る。攻撃はあなたに任せる。 ただし、殺さない程度に力を抑えて。」 「分かっていますよ!」 障壁に雷のような電気が走ったと同時に逃げ道を作る為、攻勢に転じた。 「さぁ、長門さん、朝比奈さん。この爆発の煙幕に紛れて逃げましょう。」 この山、登りゃ何見える? あの谷、降りりゃどこへ行く? 誰にも分からぬ獣道。 草をかき分け、野を抜けて道なき道をただひたすら――― 「不逞浪士に逃げられただと?馬鹿野郎!」 屯所内に怒号が響く。 「すみません…しかし、一緒にいたのが妙な格好をした奴でして 西洋人だと思うのですが何故、攘夷浪士が毛唐共と話をしていたのか? 何か繋がりでもあるのかと思いまして…」 その時、外の廊下から誰かが走ってくる足音が聞こえた。 「副長!副長はおられますか?」 激しく襖が開くと一人の小柄な美男子が立っていた。 彼は八番隊組長・藤堂平助。 北辰一刀流の使い手で常に闘いを一番手で先んじる所から 隊士達の間では『魁(さきがけ)先生』と呼ばれている。 「うるせぇな。今度はなんだ?」 不機嫌な顔と鋭い眼光を藤堂に向けながら目の前に座っている男は答える。 この周囲を沈黙せしめる威圧感と凄みを振りまいている男こそ、 京の攘夷浪士から新撰組隊士までをも震え上がらせる 新撰組・鬼の副長、土方歳三その人である。 「それが副長。先程、三条大橋の辺りで 毛唐みたいな妙な格好をした3人組を見つけやして…。 連行しようとしたところ、抵抗していざこざになりそうな時に それがまた奴ら、天狗みたいに不思議な術を使いやがるんでさ。 突然、目の前に現れたかと思うと、火の玉出したり、雷が落ちたみたいに 影も形もなくなって消えちまったり…。 あいつらは天狗みたいな鼻してると聞いた事がありますが、 本当に天狗みたいな妖術を使いやがるんですね。」 副長は溜息を付いてやれやれ…という顔をしながら 「お前もまたそんな訳の分からん報告を入れんのか、と言いたい所だが、 さっきの島田の話と合わせると攘夷浪士達が何らかの理由で方針を変えたのか、 その妙な格好をした西洋人共と何らかの繋がりがありそうな雰囲気だな。 この前の桝屋古高俊太郎への取り調べや山崎の報告から 今はこの京に不逞浪士が多数、潜伏し、何かを企てているらしい。 浪士と毛唐が手を組むなんざ考えられんし、考えたくもないが…。 ちっ…。ったく、面倒臭ぇ。 そいつらも浪士共と一緒にふん捕まえて縛り上げるか、叩っ斬るか、 徹底的にやらねぇといけねぇみたいだな。」 風もなく、太陽がギラギラと輝いている。 メイド服を冬用に衣替えしていたのでとても暑いです。 3人でなんとか狭い路地の片隅に身を潜める事が出来ました。 「情報統合思念体とのコンタクトに成功。 私の持つデータと情報統合思念体の持つデータの間に生じている齟齬は改善された。 侵入コードを解析…。 やはり時間と空間の位相がずれている。 現在の日付は地球時間に換算して、1864年7月7日。 空間座標は京都。 涼宮ハルヒの力により何らかの原因で、 5人がこの時空間に転送されたと考えるのが妥当。」 その言葉を聞き、私は自分でも驚くような大声を出しました。 「そんなはずありません!」 古泉君にシッと声を沈めるように促されながら、2人に説明しました。 「そんなはずありません…。涼宮さんが原因となった時間震動により 時間平面同士の間に大きな時間の断層が出来ているはずです。 私達がいたあの時間より4年以上過去には行けない状態だったはずです!」 そう、そんな過去には行けない。これはもう何回も確認されている事。 「でも、これは事実。恐らく、涼宮ハルヒの力により その時間の断層を飛び越えて転送されたと考えるべき。 元の時間平面上に戻るには…」 「…涼宮さんの力が必要と言う訳ですね。」 「…そう。」 「と言う事はまずはやはりあの2人の捜索が肝要。」 「…そう。」 「原因の究明はその後ですね。」 「あんちゃん達!」 急な背後からの声に3人の動きが止まった。 くそっ…今日は踏んだり蹴ったりの厄日だ。 俺は上に乗っかった谷口をはね除けて、服に付いた泥を払った。 「おい谷口。さっきから言おうと思ってたんだが、お前、袴の帯、解けてるぞ。」 「えっ!?くそっ!お前のせいで今日は踏んだり蹴ったりの厄日じゃ!」 その時、ふと横目にちらりと入ったものに気を取られた。 ポニーテール……ハルヒ!? しかし、目の前に立っていたのはハルヒと同じくらいの眩しい笑顔をした大男だった。 「おまんら、さっきから大騒ぎし過ぎじゃきに。ちくっと大人しゅう出来んかえ。」 あれ?この人ついさっき、どっかで見たような…。 「行ったようじゃの…。しっかし、おまんら…新撰組相手に何やらかしたんじゃ?」 し…新撰組? 「あんな大人数に追い掛け回されるっちゃよっぽどの極悪人かいのぉ~?」 言葉とは裏腹にこの状況を楽しんでいるかのような笑顔をしている。 「き、貴様こそ何者じゃ!?」 谷口は虚勢を張ったが、目の前の大男に威圧され、逃げ腰になっている。 「おんや?おまん、長州の桂んとこに、よう出入りしちょう谷口じゃなかか?」 「か、か、桂さんを呼び捨てとは何たる無礼者!!」 「まっ、ええわ!ところでおまん…」 大男の鋭い眼光に睨まれて俺は少し怯んだ。 「変な格好しちょるのぉ~!ひょっとして、こんが西洋のジャケッツっちゅう着物かい? あ!エゲレス人には英語しか通じんかの?あぁ~…アーユージャケッツ?」 あ…いえ…日本語で大丈夫ですから…。 むしろ、日本語しか通じませんから。 それに「あなたはジャケットですか?」ってどういう意味ですか? 「いっや~!あんちゃん達のさっきのアレ、めがっさ凄かったにょろ!!」 聞き覚えのある声に見覚えのある顔。 ただその人は着物姿で、こちらを好奇心いっぱいの目で見つめていた。 「鶴屋さん!?」 3人は何故、ここに?と思ったに違いない。 「あっれ~?あんちゃん達、うちの事知ってんのかいっ!?」 彼女はニコニコと微笑んでいる。 「…彼女はこの時代の有機生命体。恐らくは私達の時代にいる彼女の祖先。」 なるほど…あのハイテンションは遺伝だったんですね。 「3人だけでごにょごにょ内緒話とは聞き捨てならないさっ! 何で新撰組に追われてたんだいっ!? そんな悪そうな人達には見えないっけどな~! まっ!こうして会ったのも何かの縁さっ! うちに来なよ!あんちゃん達みたいな変わった人達は大歓迎にょろ!」 3人は顔を合わせた。 「ほらっ!早くっ!そんなとこに突っ立ててまた見つかっても知んないよっ! 大丈夫っ!ここらへん一帯はうちの庭みたいなもんさっ!」 3人の背中を押しながら鶴屋さんはずんずん進んで行く。 「ところであんちゃん達のあの雷や火の玉みたいなのってうちにも出せるのかいっ!?」 「…それは不可能。」 「そっかい!あんなの出せたらやりたい放題にょろ?」 何をやりたい放題なんですか? 煩悩は花の種。 人の心に咲く花は悩みの種から芽を吹いて 育つは人煩いの涙の雨と笑うお天道様の声。 煩悩を捨ててはつまらぬ人生。 時は移ろい全てのものは変化する。 それが諸行無常と言うならば、 我を捨て空に達しては開いた悟りも過去のもの――― 「いやっはっはっ!!すまんぜよ! まっさか、言葉の通じるエゲレス人がおるとは思わんかったきに!」 いや、だから…なんか、つっこむのも面倒臭くなってきた…。 「おい!お前、何者じゃ!桂さんやわしの事まで知っとるとは看過出来ん!」 大声を張り上げながら谷口は刀の鍔に手を掛けていた。 「おまん、何をいきっとるんじゃ?わしは…」 谷口は刀を抜き、俺達に剣先を突きつけてきた。 「やめとき…。おまんの腕じゃわしには勝てんぜよ。」 2人は世界を止めたように静かに睨み合っている。 その一瞬、火花が散ったかと思うと、 谷口は転がされ逆に鼻先に剣を突きつけられていた。 「の?言うたじゃろ?」 刀を納めると彼はまた太陽のようにニカッと笑い、 「さぁ~て、おまんら変な奴らじゃきに、ちくっとわしについてこい。 な~に、悪いようにはせんて。」 俺はこういうマイペースな人に巻き込まれてしまう性分なんだろうか? この日、土方歳三は苛立っていた。 「場所は祇園にある実成院という寺の門前にある会所。 隊の羽織から防具に至るまでなるべく全て今日中に運び込んでおけ。 目に付かないよう一遍にではなく、いくつかに分けてな。」 そのように屯所内を動かしながら三条通付近に隈無く探索方の配置を徹底していた。 日の暑さと相まって精神的にピリピリしているだろう。 なにせ京は盆地の為、風が無い。 「少しでも多くの報せが欲しいが…しかし、妙な毛唐共とは一体、何者なんだ?」 庭で子供の笑い声が聞こえる。また、あいつか…。 縁側に出ると子供達に混じって少し猫背の男が大はしゃぎしていた。 「おい、何やってやがる?」 猫背の男がボーッとした顔でこちらを振り返ってきた。 子供達は雀のように飛び散っていった。 「あ~ぁ…土方さんがそんな鬼のようなしかめっ面で出てくるから 皆、怖がって逃げちゃいましたよ。」 ニヤニヤと笑いながらゆるりとこちらに歩いてきた。 気が抜けて隙だらけのようにも見えるが、底を読ませない怖さがある。 「俺も気が張ってんだ。少し気を落ち着けたいんで碁に付き合ってくれんか?」 「良いですよ。ところで先生は?」 「ここでは先生ではなく、局長と呼べ。近藤さんは会津の藩邸だ。ところでな、 探索に出していた島田と巡回中の藤堂から入った報告なんだが、 何でも三条近くで妙な毛唐共が攘夷浪士共と一緒にウロウロしていたらしい。 何の因果か知らんが、もし毛唐と不逞浪士が手を組むなんて事になったら一大事だ。 しかもそいつら、変な火の玉や雷を出すんだとよ。」 「土方さん、熱でもあるんですか?」 「真面目に聞け、馬鹿。」 「フフ…じゃあ、斬っちゃえば良いんじゃない?」 「無茶言うな。」 この時代、幕府は開国させられただけでなく、外国と不平等ながら条約を結んでいた。 いわば攘夷運動はゲリラ的なテロ活動である。 京都守護職である会津藩の預かり、新撰組も外国人の横柄な態度を すんなり受け入れている訳ではないが、立場上、外国人を斬りつけるような 行動は取れない組織である。 ただ、この2人が話している怪しい奴らは宇宙人、未来人、超能力者であるのだが…。 「あぁ~!駄目だ。総司、俺はちょっと散歩してくる。」 「いってらっしゃい。」 碁の相手をしていたこの飄々とした男。 新撰組の中でも一、二の使い手と言われた一番隊組長・沖田総司である。 城? 「ここがうちの屋敷にょろ!さっ!入った入った!」 門をくぐり、様々な季節の木や草花の生い茂る庭を歩いている。 玄関はまだ見えない。 「無駄にだだっ広い家さっ!うちでも時々、迷子になるからね!アッハッハッ!」 人影が見える。…も、森さん? 「お帰りなさいませ、お嬢様。」 「やっほ~!また池の掃除してんのかいっ!」 「旦那様お気に入りの池でございますから。」 鶴屋さんは鼻歌交じりに庭の飛石を一足飛びで駈けていく。 「さっ!入りなよ!たっのも~!」 自分の家に何を頼むんだろうか? 「お帰りなさいませ、お嬢様。」 居並ぶ人、人、人。 「そんな堅っ苦しい挨拶は抜きさっ!この人達を居間に通しておっくれ! あと、お腹空いたから何か食べ物も出して欲しいにょろ!」 「畏まりました。」 凄っ…。 池に小舟を浮かべましょ。 折り紙折った小さな舟を。 蓮の小島に辿り着きゃ 仏と居眠り暇潰し。 もじゃもじゃ頭でポニーテールの大男は2人を引っ張って歩いていく。 そういや…SOS団の皆は、ハルヒは今、どこで何をやってるんだろうか? そもそもこれは夢か?それとも俺だけ閉鎖空間に飛ばされたのか?等と思案していると 大男は俺を問い質した。 「ところでおまん、名はなんと申す?」 今更ですか…。 「なんじゃ言えんのか?エゲレス人の名くらい儂にだって分かるきに。 ジョン・スミスとかそんな感じじゃろ?」 本当に人の話、聞いてませんね。 じゃあもう、それで結構です…。 「ほぅ~!正解か!?ジョンじゃな!ジョン!」 なんか犬みたいで小馬鹿にされてる気分だ…。 大男は立ち止まった。 「さぁ!入るぜよ。」 促されるように小さな門をくぐると庭で2人の男が話をしていた。 「いや~!勝さん、陸奥。ただいま帰ったぜよ。暑い暑い! 海軍操練所の新しいスツーデンツを連れて来たきに。」 この、もじゃポニー男の突然の言葉に俺も含めた4人は呆れたような顔をしている。 ハルヒ並みに無茶苦茶な人だ。 「龍さん、おめぇはまたこんな訳の分からん輩を…」 「いや、勝さん。こいつらは見込みあるきに。のぅ!谷口!ジョン!」 谷口は暴れている。 「なんだ?ジョンってぇのは?」 「この変な服着たエゲレス人の名ぜよ。ジョンじゃ!」 「そいつぁ西洋人には見えんが…」 「ところで陸奥、ここにはおまんしかおらんのかえ?亀達はどうした?」 「望月さん達は人に会う約束があるとかでどっか出て行きましたよ。」 「ほぅか…今の京は危ないきに。あんまウロウロしてたらいかんぜよ。 ちくっとあいつらにお灸据えとかんとな。」 あなたはどうなんですか?もじゃポニーさん。 「おめぇの言えた事かい!龍さん。おめぇも色んな嫌疑掛けられて追われる身だ。」 「儂ゃ何もやっとらん。ただ船で海に出たいだけぜよ。あ!ところで勝さん、 新しい船の話はどうなったきに?黒船が欲しいぜよ!」 「無茶を言うない!まっ、黒船とはいかんが、それなりに当てはあらぁ。 その話はまた後でするとして、それよりもだ、龍さん。 おめぇ、薩摩の西郷って知ってっかい?」 「あの寺の釣り鐘みたいな男じゃろ?」 「よくわっかんねぇ例えだな。俺も会った事はねぇんだが、 おめぇは土佐の脱藩浪士で色んな厄介事も抱えちまってる。 もし、これから京で動き辛くなったらそいつを頼んな。 薩摩が守ってくれるさ。話は付けといた。」 「そりゃありがたいのぉ~。さぁて!おまんら、とりあえず飯じゃ!陸奥も食うぞ。」 未だに俺はこの状況が飲み込めん…何なんだ、一体。 「これから私達はどうしましょう~?」 朝比奈みくるはお茶を飲みながら話を切り出した。 「あ!このお茶、美味しい♪」 「…この時空間は特殊。私の能力もいくつか制限されている。 …あの2人の位置座標までは特定出来ない。でもこの時間にいるのは確か。」 「どうにかして捜索しないと、こんな物騒な所に飛ばされたとあっては 僕らが襲われたと言う事から考えると、彼らの身にも危険が迫ってると 考えてもおかしくはないでしょう。」 「…そう。」 その時、襖が凄い勢いで開いた。 「食べてっかい!御三人。おっや~、なんだか随分と暗い顔してっけど!?」 ここはやはりこの方に頼るしか手はありませんね。 「鶴屋さん。実は僕ら、外国から来た旅の者なのです。」 鶴屋さんは目をぱちくりさせながらこちらを見ている。 「5人でここへ来たのですが、一緒に来たあとの2人とはぐれてしまいました。 どこへ行ってしまったのか皆目、見当も付かないのです。 あとの2人の捜索のお手伝いを頼んでも宜しいでしょうか?」 鶴屋さんは何かを考え込むような顔をして、 「私が知ってる外の国の人達は雷や火の玉を出したりはしなかったにょろ? あんちゃん達の顔も西洋の人より私達に近いし、言葉も通じるし、 うちはまた、妖術使いかなんかだと思ってたさっ! まっ!深い事情がありそうだから詳しくは聞かないでおくよっ!」 あの異常に勘が鋭いのも遺伝ですか…。 「その2人ってのもあんちゃん達と同じような格好してんのかいっ!?」 「えぇ、まぁ…。」 「じゃあ、簡単さっ!そんな格好してる人なんて他にいないから目立つしさっ! すぐに見つかると思うにょろ!森ちゃん!皆に言ってこのあんちゃん達と 同じような格好した2人を探して欲しいにょろ!頼んだよっ!」 やはりいつの時代も只者ではありませんね、鶴屋さん。 「ぷっはぁ~!食った食った!ん?どうした?谷口。 おまん、ほとんど箸を付けとらんな。要らんなら儂が貰うぞ。」 谷口は急に立ち上がって大声を張り上げた。 「儂ゃ、これから大志をなさんといかんのじゃ!大切な用事もある! こんな所で呑気に飯を食っとる時じゃないんじゃ!」 もじゃポニーさんは呆気に取られたような顔をしたかと思うとポツリと語り出した。 「おまん…大志の為に死ぬんか?おまんらが何をするつもりかは大体、分かっちょう。 その覚悟はえぇ。しかし、死んだら元も子もない。 全て終わりじゃ。おまんらがやろうとしちょるんは大志じゃなく、ただの無謀じゃ。 事を成すなら生きて事を成すべきじゃ。 こんな狭い島国の中で仲間同士、いがみ合っておってもせんない。 陸奥や望月、おまんらみたいな若い者がこの先の日本には必要なんじゃ。 1人でも多くの有能な人材が必要なんじゃ。 儂ゃそういう奴らを集めて外国と貿易するんじゃ。 その貿易で得た財で私設艦隊を作り、こん国を外国にも負けん強い国にしちゃる。 まっ、その前に船を手に入れにゃいかんがの! 時代は否応なく変わるぜよ…。 そん時を見られんっちゅうはつまらんじゃろ?」 谷口は拳を握り締めた。 「さきほどの小男は幕府軍艦奉行の勝であろう? あの西洋かぶれと通じておるとは貴様、何者じゃ!?」 もじゃポニーさんは頭を掻いている。 「ありゃ?まだ名乗っとらんかったかのぉ~?そりゃすまんかったわい。 儂ゃ、土佐脱藩浪士、今は神戸海軍操練所の塾頭をしちょる坂本竜馬っちゅうもんじゃ。 ところでおまん、舟は大丈夫か?あれは体が揺れて酔うけんのぉ~。 儂も未だに船酔いには慣れん。そんな奴が海軍の頭っちゅうのもおかしな話じゃがの!」 彼は快活に笑い飛ばした。 この、もじゃポニーさんが坂本竜馬?どっかで見たと思ったのは日本史の教科書か…。 ますます事態が呑み込めん…。 「さぁ~て、と。じゃ、行くか。」 もじゃポニーさんこと、坂本竜馬は刀を手に立ち上がった。 谷口はさっきから黙って俯いている。 「あの坂本さん…どちらへ?」 「船じゃ。ジョンと谷口もついてこい。陸奥はここで待っちょいてくれ。 勝さ~ん、行ってくるぜよ!」 奥からの『おぅ!』という声に見送られ、俺は坂本さんについていった。 太陽がギラギラと輝いている。 谷口は未だに納得がいかないのか、少し離れて歩いている。 その時、バラバラと男達に囲まれた。新撰組だ。 「おい、貴様。名を名乗れ!」 坂本さんはニコニコしながら 「薩摩藩士、才谷梅太郎じゃ。」 と、ネーミングセンスゼロな名前を名乗った。 「訛りが薩摩の者とは違うようだが…。」 「ふ~ん…きっとずっと京におったからでごわす。」 怪し過ぎです。無理矢理過ぎですよ、坂本さん。 「そうか、ところで才谷とやら。おまん、ここで何しちょうぜよ?」 「ちくっと知り合いの所に顔を出しに行くきに。」 「やはり、土佐の者か!!」 バレバレ過ぎです、単純な罠に引っ掛かり過ぎです、坂本さん。 「あっちゃ~…なんで分かったんじゃ?」 この人、アホだ…。 「見た所、妙な格好の毛唐もいるな。副長が言っていた不逞浪士と毛唐というのは こやつらの事か。とりあえず斬っとくか。」 一斉に刃が斬り掛かってきた。 俺はひたすらに避けては逃げる。 期末テストの鬼教官・涼宮ハルヒの竹刀に鍛えられた反射神経、舐めんな! 坂本さんは刀を縦横無尽に舞わせている。 「ジョン!谷口!逃げるぞ!」 必死で走っていた。夢ならそろそろ覚めてくれ!!! 「永倉隊長、逃げられましたね。」 「あのもじゃもじゃ頭、あいつはきっと強いぞ。やり合ってみたかったわ。」 鶴屋さん…何をやってらっしゃるのでしょうか? 「だって、これ凄いよ!何なのさっ!この乳!」 朝比奈みくるはどこの時代に行っても同じ扱いを受けるんですね。 「止めて下さ~い!」 「良いではないか、良いではないか。ウッヒッヒッヒッ。」 ふと襖に影が降りたかと思うと声を掛けてきた。森さんだ。 「お嬢様。」 「どったぁ~?」 「ただいま、旦那様に御客人が御出でなのですが、その中に 偶然なのか、旅の御三方とよく似た格好をした者がおりまする。」 3人は顔を見合わせた。 「キョンくんと涼宮さんです!」 「これは凄いですね!探す手間が省けたと言うものです。 それにしてもどうして彼らは僕らがここにいるのが分かったのでしょうか?」 「行ってみりゃ分かるさねっ!」 僕らは鶴屋さんについて応接間に向かった。 応接間の中には3人の人間が座っていました。そこには確かに彼の姿がありました。 しかし… 「キョンくん!」 「朝比奈さん!長門!古泉!お前ら、どうして!?なんでここに?」 「なんじゃ?ジョン、おまんの知り合いか?」 「こちらの方につれられてここにお邪魔しています。」 「鶴屋さん!」 「あっれ~!君もうちの事、知ってんのかいっ!? 有名になったもんだね、鶴屋さんも!」 「涼宮さんはいないようですね…とりあえず、詳しくお話しましょう。」 浮き世の旅は当ても無く、 時の縛りも無い故に ちょっと一服、笹団子。 見つめる先は鈴の音と旅人行き交う東海道。 朝比奈さんの「禁則事項です♪」と言う言葉に従い、 他の皆さんには席を外して貰う事も考えたのだが、 この時代の彼らの協力無しにはハルヒの捜索は行えない、 という古泉の意見を採用し、俺達は外国から旅をしてきた人間だ、 という設定で、まずはお互いの状況を簡潔に説明し合った。 まずここが1864年7月7日の京都だと言う事、 ハルヒもここのどこかにいるが行方不明だと言う事、 3人は新撰組に追われた事、そこでここの鶴屋さんと出会った事、 家に隠まってもらってた事、 鶴屋さんに2人の捜索を依頼した事。 そして俺はクラスメイトの谷口にそっくりな男と一緒に新撰組に追われた事。 その時この、もじゃポニーの坂本さんなる男に助けられた事。 その坂本さんに無理矢理、勝という人の所に連れて行かれ、海軍に入れと言われた事。 今も新撰組に追われている事。 坂本さんの船購入に出資してくれるのが鶴屋さんである事。 「僕は涼宮さんはてっきりあなたと一緒にイチャついてるのかと思っていたのですが…」 「誰がイチャつくか!?俺もハルヒはお前らと一緒なんだと思ってたよ…。」 また振り出しか…ハルヒ、お前は一体、どこに行っちまったんだ? 「ジョン!おまん、人探ししとったんか!?なら、はよ言や良かったんじゃ!」 坂本さん、あなたが喋らせてくれなかったんでしょうが…。 坂本さんは長門に興味を惹かれたようだ。 「ところで、そこのおなご。おまん、航海士かぇ!? その着物、セーラーじゃろ!?セーラーは海軍の証拠じゃきに! どうじゃ!?儂の海軍に入らんか!?しっかし、随分と破廉恥なセーラーぜよ! 外国じゃ、おなごはこげに肌を露にするもんかぇ!?」 話がややこしくなる。静かにしといて下さい、坂本さん。 あとスカートの中身をあまりジロジロ見ないで下さい、坂本さん…。 「それにしても俺達はなんでこんな所に…朝比奈さんの話では、えぇ~と、 ここらへんに来るのは不可能だったんじゃないんですか?」 「それが私にも不思議なんです~…。」 古泉が笑いながら制止した。 「それはまた後ほど。」 「しっかし、おまんらの話はどっか、芯のよう掴めん話じゃのぉ~…。 なんか気になるし、面白そうぜよ!儂もおまんらについていこうかの!」 えっ!? 「じゃあ、うちも行くにょろ!」 「谷口、おまんはどうする?」 谷口は返事をしなかった。 「ふ~ん…まぁ、納得いかんのに無理矢理引っ張るのもあれじゃきに。 おまんの好きにせぇ。」 谷口は無言で何かを思案しながら、俺達と別れた。 古泉が俺の耳元に囁きかけてきた。気持ち悪っ!!あ…息は吹きかけるな…。 「先程の何故、僕らがこの時代に飛ばされたのか?というお話ですが、 恐らく…涼宮さんが願ったからではないか、と。 あなたの覚えがあまりに悪いのを改善するにはどうすれば良いのか? と、涼宮さんは思案し、あなたの身体に覚え込ませる為に ここへ直接、放り込めば良いのではないか?と彼女は考え、 そして、閉鎖空間とはまた違う世界が構築された。 それに部室にいた全員が巻き込まれたのではないかというのが僕ら3人の意見です。 この世界では不完全ながら僕の力も有効化されますし。」 ハルヒ…あんまり無茶させんな…。 「ところであの天然パーマの方、ひょっとしてあの坂本竜馬ですか?」 「あぁ、みたいだな。どうやら本物らしい。色んな意味で信じられんがな。」 「これは凄い!坂本竜馬、勝海舟、新撰組と、 本当に歴史の教科書の中に飛び込んだ世界のようだ。」 笑ってる場合じゃないだろ…。 「あんちゃん達は皆、三条大橋の近くで離ればなれになったにょろ? じゃ、もう1人もその近くにいるかもしんないよ?皆で行ってみようさっ!!」 次の行動が決まらない俺達は鶴屋さんの提案に賛同したが1人、 坂本さんだけは渋い顔をしていた。 「三条大橋の周りは今はちくっと危ないぜよ。 京にいる攘夷志士から新撰組まで一斉にあの辺り一帯に集まっちょる。 それにジョン達の格好は目立ち過ぎる。服だけでも着替えておくべきじゃきに。」 確かにこの時代にセーラー服やメイド服は目立ち過ぎる…。 それにもうこの格好であの町には出たくない…。斬られるのはごめんだ。 「じゃ、うちにある着物を貸してやるさっ!その服は風呂敷にでも包むんだね!」 まるで夏祭りにでも行くようですね、と古泉は笑いながら呑気な事を言っている。 「あん破廉恥なセーラー服も堪らんけんど、それもなかなか悪くないっちに。」 と、坂本さんは長門に冗談を飛ばしている。 森さん達にも捜索してもらっている事もあり、ひとまず全員で固まって動き、 現地で二手に分かれる事とした。 ハルヒ~…早く出てきてくれ…。 アケビ、椎の実、銀杏(いちょう)に蓮の実。 供物捧げる盂蘭盆(うらぼん)にゃ、 仏様の蓮の葉座布団、摘んどけ、買っとけ、載っけとけ。 言う事聞かないお転婆娘は蓮の葉女にされちゃうよ――― 京都は夏真っ盛りである。 風鈴も音を鳴らさないほど風もなく、制服で歩き回るのは確かにしんどい。 6人は三条大橋に着いたものの、東海道の終点である宿場町と言う事もあり、 人がごった返していた。 「凄い賑わいですね~。」 朝比奈さんは物珍しそうな顔をしながらキョロキョロしている。 落ち着きの無い俺に古泉がニヤニヤと笑いながら話し掛けてくる。 「涼宮さんの捜索という目的がなければ、京の風情を味わいたい所ですね。 まぁ、心配しなくても涼宮さんなら大丈夫ですよ。僕には分かります。 正確には分かってしまうと言った方が正しいのですが…。」 長門が呉服屋の店先に置いてある鈴の付いたかんざしを見つめている。 「お!おまん、仏頂面の割には可愛いもん欲しがるの!買っちゃろか?」 「…ユニーク。これは何という武器?」 武器じゃありませんっ!! 6人でどう二手に分かれようか相談していると、急に町が騒がしくなった。 喧嘩でも起きているのだろうか? 「どうやら新撰組がおるようじゃ…。また攘夷の連中が暴れちょるんかの?」 おいおい…また斬り掛かってこられるのは勘弁だ…。 遠くの方で土煙と怒声が舞っている。 「こりゃ大捕物さねっ!」 人のごった返す通りをかき分けながら何十人という大所帯の 新撰組が抜き身の刀を振り回し、こちらへ駈けてくる。 「ここは危ないようです。ひとまず身を隠しましょう。」 横の路地に入ると大声で喚き散らしているのが聞こえる。 「副長!!副長!!」 「あっちに逃げたぞ!!!」 「待て!コラッ!!!」 「囲め!逃がすな!!」 「叩っ斬れ!!」 こりゃあ、ヤバいんじゃないか?やれやれ…物騒な所に来ちまったもんだ…。 「儂ゃ近眼じゃきに、よう見えんがどうやらこっちに来るようじゃの。」 「バレてしまったのでしょうか?」 「いんや!誰かが追われてるようにょろ!」 俺はふと大通りに目をやり、騒ぎの中心を覗いてみるとあまりの驚きに目を疑った…。 ハルヒッ!? 「……どうやら涼宮さんのようですね…。」 ………………。 今度は何をしでかしやがったぁぁぁあああ~~~~!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!??? ハルヒィィィイイイ~~~~~!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 土方歳三は沖田総司の一番隊を借りて京の街を歩いていた。 ここの所、探索や暗殺、拷問と立て続けに面倒事が舞い込み、 諸々の準備にも時間を取られるのと蒸し暑いのとが相まって 気が張って苛立っているようだ。 だが、これも新撰組を最強の武士集団とする為には仕方の無い事。 ちょっとでも気を抜いて取り締まりを緩めれば何が起こるか分からない。 こっちの命があっさり取られかねない事も重々、承知している。 「副長!!」 声を掛けられて振り向くと永倉新八率いる二番隊の連中がそこにいた。 「ちょうど良い所で会いました。先程、妙な浪人2人と西洋人に出くわしました。 やはりあいつら、毛唐共と手を組み、何かを企んでいるやもしれません。」 ちっ…。ったく、つくづく面倒臭ぇ…。 どうも攘夷の連中は俺の神経を逆撫でする為だけに 生きているような連中が多いようだ。 「斉藤の三番隊も今日はこの辺りを巡回中だったよな? 一度合流して配置し直すか…。」 三条大橋の近くで斉藤一率いる三番隊と合流すると、こいつらは何人か 斬ってきた後のようだった。気が荒れて、ささくれ立っている。 「おめぇら、息を整えろ。これから一番隊、二番隊、三番隊の配置を決める! どうやら攘夷志士の連中は毛唐共と手を組んで何かを企てているという 報告が入っている。いいか!!怪しい輩は生かしておかんでもいい!! 局中法度を思い出せ!気を引き締めろ!!俺達の任務は京都の治安を守る事! 面倒な奴らは徹底的に根絶やしに…ん??………はべしっ!!!!!!!」 「…副長??…副長!!!!」 目を覚ますと私は見た事もない川縁の土手に寝転んでいた。 部室にいたのは夢だったのかしら?あれ?こっちが夢? しぱしぱした目でキラキラ光る川を見ると一枚の葉っぱが流れてきた。 「ここ、どこ!?」 周りを見渡すと変な格好をした人達で溢れかえっていて私をジーッと見つめていた。 「何、見てんのよ!?」 手元にあった竹刀を振りかざすと皆、散っていった。 「キョンはどこ?自分から頼んどきながら勉強サボって 私を一人にするなんて、マジあいつ罰金と死刑をダブルで宣告するわ!」 立ち上がって歩いてみると本当に不思議な町だった。時代劇のセットのような町。 むぅ~…なんかジロジロと視線が気になる…。 「おい!そこのおなご!」 声を掛けられて振り向くと全員お揃いのダッサいはっぴを着た男共がいた。 アイドルオタクか何かかしら?気持ち悪いわ…。 「何よ?」 「お前、何者だ?何だ、その格好は?」 あんた達に言われたくないわよ。 「何よ?文句あんの!?マジ殺すわよ!!」 そう言うとそいつらは無礼者だなんだ言い掛かりを付けてきて刀を突きつけてきた。 そんなおもちゃの刀でこのSOS団団長、涼宮ハルヒ様に逆らおうなんて 良い度胸じゃないのよ!?目にもの見せてやるわ!! 30秒もかからなかった。 雑魚ばっかね…そんな腕で私に挑んで来ようなんて100万年早いのよ!! 倒した連中を踏んづけてるとアイドルオタクの仲間らしき連中が 30人近くの大人数でこちらへ向かってきた。 さすがにあの人数を相手に真正面から1人で闘うのは戦略的に不利だわ。 ここはゲリラ的戦術の採用決定ね。 引いては押し、押しては引いて、 路地に身を隠しては迂闊に飛び込んでくる馬鹿の鳩尾に一発! 屋根に上って近付き下でうろちょろしてるアホの脳天に一発! 身を伏せ通り過ぎた所を背後からフルスイングで顔面に一発! 「ふぅ~…何とかかなりの人数を仕留めるのに成功したわ。 全く何なのよ?あいつら、SOS団を脅かす悪の組織か何かで 真っ先に団長たる私を狙ってきたのかしら? それとも、ただ単に気持ち悪いアイドルオタクとして 可愛い女の子に襲い掛かってるってのなら可愛いのも罪よね。」 屋根の上であぐらをかきながら次の戦略を練っていると アイドルオタク達はどこかへと去って行った。 「ふん!逃がさないわよ!この私に喧嘩をバーゲンセールで売りつけるなんて とことん敗北と後悔にまみれさせて服従させてやらないと気が済まないわ!」 屋根伝いにアイドルオタク達を尾行すると 集まって何やら話し合いの真っ最中のようだった。 「私を倒す為の相談かしら?どうやらあの一番前で偉そうに突っ立ってる 陰気そうな奴がアイドルオタクのリーダーって訳ね。」 屋根の上からそ~っと近付き、アイドルオタクのリーダーの真上にまで来た。 「ふふん…まだまだ甘いわね。隙だらけだわ!」 竹刀の構えに力を込めた。 「ていやっ!!!」 「…ん??………はべしっ!!!!!!!」 「…副長??…副長!!!!」 何よ?副長って事は二番手?じゃあ、真の黒幕はまだ他にいるって事ね! 見てなさい!アイドルオタク共! この涼宮ハルヒ様を敵に回した事を後悔させてやるわ!! 俺が今、頭痛と目眩で倒れそうなのはこの町の暑さのせいだけではないだろう。 何故なら、あの涼宮ハルヒが目の前で大人数の新撰組を相手に 大立ち回りを演じているからだ。 「助けに行きましょうか?」 あぁ…そうだな…。 「あれがおまんらの探しちょう者かぇ?こん大人数の新撰組を相手にあん体裁き。 只者じゃないぜよ。」 えぇ…確かに只者じゃありません…。 「ひゃ~!凄い暴れっぷりさっ!」 「でも、涼宮さんが危ないです~。」 「…私が前線に出て障壁を張る。その隙にあなたは涼宮ハルヒを保護して。」 ラジャー、長門。 「行くぞ!」 さすがに緊張するよ…俺は何の術も持たない一般人なんだ。 6人で一気に飛び出し、暴れるハルヒの元に駆け寄った。 「何すんのよ!?離しなさい!」 助けに来てやったのに竹刀で殴られるとは…。 「キョン!?あんた何やってたのよ!?遅いわよ!」 お前こそ何やってんだよ、ハルヒ…。 「SOS団では遅刻は厳禁!罰金よ!」 やれやれ…。 長門が前線を抑え、坂本さんと古泉が襲いかかってくる新撰組を撃退してくれている。 「さぁ!ハルヒ行くぞ!」 「ちょっと!!待ちなさいよ!!真の黒幕はまだ存在してるの!! SOS団を脅かす悪の組織たるアイドルオタク達との闘いはまだ終わってないわよ!」 何を言っとるんだ、こいつは…とりあえずさっさと行くぞ。 俺達は布と剣を目の前にして暴れる闘牛のようなハルヒを 俺と朝比奈さんと鶴屋さんの3人は力ずくで鶴屋さんの家まで引きずっていった。 遅れて長門と古泉、坂本さんが走ってきた。 「何とか撒いてきたぜよ。もうあんな大人数に襲われるのはごめんじゃきに。」 古泉はまたニヤニヤ顔に戻っていた。 「でも、さすが涼宮さんですね。あの人数を相手に一歩も退かないとは。」 「何なのよ!?あともう少しで全員ぶっ倒す必殺技でも出そうだったのに!!」 こいつは本気で言ってるんだから困る…。 「ハルヒよ…お前、今度は一体、何やらかしたんだ? あんな大人数に追い掛けられて逃げ回るなんて余程の事だぞ。」 ハルヒは竹刀を俺に突きつけ叫んだ。 「私はあんなアイドルオタクの雑魚共から逃げてた訳じゃないわよ! さすがの私にもあの大人数相手に1人では多勢に無勢だったから 体勢を立て直す為の戦略的な一時撤退よ! 前にも言ったでしょ!SOS団に敗北主義者は要らないの! それをあんた達が邪魔するから! 次やったら全裸になって校庭で組み体操の刑よ! 八本足の宇宙人に連れ去られる~!って叫びながらね! あのアイドルオタク共、次、会ったらボッコボコにしてやるんだから!」 おいおい、こいつは日本最恐と言われた暗殺集団にまで喧嘩を売るつもりかよ…。 鶴屋さんの家の居間でこれからの善後策を練る事にした。 ハルヒは汚れた制服を着替える為に鶴屋さんと奥へと入っていった。 とりあえずさっさと元の時代に戻りたい…。 「ふふ…どうやら涼宮さんは随分と楽しんでいらっしゃるようですね。」 古泉、呑気な事を言ってる場合じゃないだろ。 長門と朝比奈さんは何事もなかったかのようにお茶を飲んでいる。 2人共、違う意味で鈍感だから羨ましい。 坂本さんは森さんと何やら話をしている。 「それは失礼しました。ですが、涼宮さんは過去に飛ばされたというのに 気が付いていらっしゃらないのが救いです。 悪の組織か何かの陰謀に巻き込まれたと本気で信じているようですから。」 長門がぽつりと口を開いた。 「…大丈夫。ここは改変された世界。元の時代に帰還した際、 完全とは言えないまでも情報統合思念体の力により ある程度の記憶の情報操作、改変、再構成、再構築する事は可能。 例え、涼宮ハルヒが時空間移動の事実を認識したとしてもそれは消去出来る範囲。 但し、行動の記憶までは消去出来ない。 あくまで認識の部分に於いてのみ、改変可能。」 って事は悪の組織と闘った~、みたいな記憶だけ残るって事か? 「…そう。だから戦闘等の行動に問題は無い。」 いや、大有りだ。生まれるよりも前の時代で死ぬなんざ、ごめんだからな! 「ところで俺達が元の時代に戻るにはどうすれば良いんだ? 朝比奈さんの力でも無理なんでしょうか?」 「そうなんです…。私達がいた時代より4年前の涼宮さんを中心とした 時間震動による時間断層が存在しています。 私達が過去に飛ばされてしまったので今度は あの時間より未来にはどうしても行けなくなってしまっています。」 「長門はどうにか出来ないのか?」 「やってはみる。ただし、初めての事例で保証は出来ない。 結局は涼宮ハルヒの力を利用するしか無い。」 「涼宮さんに元の時代に戻りたいと願ってもらう以外に方法はなさそうです。 と言う事はやはり、今回もあなたの力が不可欠な訳です。」 3人の視線が一斉に俺に突き刺さる…そんなに期待しないでくれっ! ハルヒが楽しそうな笑顔で居間に入ってきた。 黄色地にピンク色の蓮の花が施してある着物に着替えたハルヒは 茶道か華道でも習う着物美人なお嬢様にしか見えない。 竹刀さえ持ってなかったら、の話だが…。 隣に座った坂本さんが声を上げた。 「いんや~!さっきの破廉恥なセーラーも悪うなかったけんど、 浴衣着て竹刀を持つおなごとはなかなか。剣の腕と言い、気迫の強さと言い、 まっこと、さな子さんにそっくりなおなごぜよ!」 さな子とはかつて龍馬が通っていた江戸にある北辰一刀流桶町千葉道場の当主、 千葉定吉の娘、千葉さな子の事であろう。 「ジョン!おまんもおなごにゃ尻に敷かれる男かぇ!?」 古泉が意味ありげに笑う。 「さぁ!これからSOS団緊急ミーティングを開始するわよ!」 闇夜に蠢く蛇一匹。 池に浮かぶや蓮一輪。 泳ぐ蛙は睨まれて慈悲を乞う為、蓮の上――― 頭が痛ぇ…。 くそっ…あのアマ!一体全体、何者だ? 大衆の面前で人の脳天に思いっきり一本振り下ろしてきやがって! 次、見つけたらただじゃおかねぇ! 「どうした?歳。随分と苛立ってるようだが…。」 近藤勇は笑顔で訊ねる。沖田総司が代わりに、からかうように答えた。 「今日、土方さんね、三条大橋なんて人の大勢いる目の前で 女の人に竹刀で脳天かち割られてぶっ倒れちゃったらしいんですよ。」 近藤は豪快に笑う。 「歳、お前は昔から女たらしのくせに冷たくあしらう所があるからな。 またどこぞの女にでも手を出して恨みでも買ったんだろうよ。」 土方は益々、不機嫌になった。 「要らねぇ事くっちゃべってんな、総司。それよりも明日の事だ、近藤さん。 桝屋古高俊太郎への取り調べから明日、攘夷浪士共の会合があるのは確かだ。 長州、土佐、肥後あたりの面子だろう。ただはっきりした場所が分からねぇ。 探索に出している山崎や島田からの報告によるとやるとすれば四国屋丹虎か池田屋。」 近藤は先程までの笑顔を解き、真顔になっている。 「隊を二手に分けておくか。」 「あぁ、そうした方が良いだろう。 会津や桑名だけに手柄を持ってかれるのはごめんだからな。」 「しかし、事実なのか?歳。いくら過激な攘夷浪士共とは言え、 御所に火を放ち、一橋公と容保公を暗殺、天子様を長州に連行するなど 正気の沙汰とは思えんぞ。」 「事実かどうかは問題じゃねぇ。事は始まってからじゃ遅ぇんだ。」 ハルヒは 「SOS団の未来を守る為、敵対する悪の組織は徹底的に根絶やしにすべきだわ!」 と強く主張していたが、全員の説得でなんとか踏みとどまらせた。 「じゃあ、仕方ないわね。今日は一旦補給の為、休戦!明日の決戦に備えなさい!」 どこの何と決戦なんだ…教えてくれ。 俺は坂本さんが浮かない顔をしながら言った 「明日か…。」という言葉が引っ掛かっていた。 眠りにつきながら俺は祈った。 目が覚めたら部室かベッドの上に戻っていて欲しい…… ……俺の祈りは通じなかったようだ。 低血圧で目覚めの悪い俺は一番遅い目覚めだったようだ。 ハルヒは物凄い勢いで白飯をかき込んでいる。 「今日は決戦よ!長い一日になるわ。十分に補給しときなさい!」 お前が何もしなかったら何も起きん。 ボーッとした頭で朝飯に手をつけていると森さんの声が聞こえた。 「皆様、おはようございます。坂本さん…少々お時間を。」 坂本さんは森さんと話し込んだかと思うと、浮かない顔つきで戻ってきた。 「…儂と同じ土佐者で今は共に海軍操練所におる亀と北っちゅうもんがおるんじゃが、 昨日、見当たらんかったきに、ここの者に捜索を願ったんじゃ。」 望月亀弥太と北添佶摩の事であろう。 「どうやらあんの阿呆共、面倒な厄介事に首を突っ込んどるようぜよ。 過激な尊王攘夷の連中とは手を切れと何遍も言うたんじゃが…。 おまんも知っちょる谷口もおるらしい。 ジョン、すまんがこの後、ちくっと手伝うてくれんかの?」 「手伝う?」 「あいつらをここに引っ張ってくる。」 新撰組の屯所では土方が部隊を2つに分け編成を行い、一人一人に指示を出していた。 「何度も言うが、場所は祇園にある実成院という寺の門前にある会所。 固まっては動くな。通常の巡回や町に遊びに出てきた態を装ってそこへ集まれ。 今夜は生死を分つ時になるやもしれん。覚悟と準備を怠るな。 全員集まった後、もう一度そこで編成の確認をする。」 三条大橋で出会った妙な輩共とあばずれ女の行方も気にはなるが、 隊士の言う所では攘夷浪士と一緒にいた毛唐共とはあいつらの事らしい。 そう言えば確かに見慣れない妙な格好をしていた。 女に至っては肌を露出させたふしだら極まり無い着物だ。 もし、攘夷浪士と毛唐が手を組んでいるのならば 今夜の会合にはあいつらの姿もあるだろう。 まとめて叩っ斬っちまえば良い。 今夜は新撰組の浮沈を懸けた決戦だ。 土方は刀を持って屯所を出た。 ハルヒは目を輝かせていた。 「事件の匂いがプンプンするわ!その依頼、我がSOS団が引き受けましょう!」 こいつが出てくると何でも無い事まで大事件に発展する。 「ほぅか!おまんみたいな、強かおなごの力が必要かもせん! おなご2人が破廉恥なセーラー着て航海士やって戦闘員まで兼ねるとは 外国はほんに不思議な所ぜよ!」 面倒だ…誰か、俺とツッコミ役を代わってくれる方、メールしてくれ。 「まっ、とりあえず飯じゃ!」 長門はこういう和食の朝は初めてなのだろうか、 興味を惹かれたのかしきりにおかわりしている。 朝飯が終わり、一服しているとハルヒが袖を引っ張ってきた。 「ねぇ、キョン。あのもじゃもじゃの人、坂本さんだっけ? なんであの人、あんたの事、ジョンって呼んでるの?」 そうか…ハルヒにジョン・スミスの事は言えないな…。 「いや、なんか聞き間違えをそのまま勘違いしてるみたいだ。 キョンとジョンって響きが似てるからな。」 納得したようなしてないような顔をしている。 「まっ、良いわ。さぁ!SOS団捜索隊、任務開始よ!」 頭の中で坂本さんの言葉が鳴り響いていた。 『事を成すなら生きて成せ。死んだら終わりじゃ。時代は変わる。』 儂ゃ何がしたいんじゃ…。 「…口。おい、谷口!!」 ハッと顔を上げると座を占めていた面々がこちらを見つめている。 「お前は普段から締まりの無い男じゃが、こういう場くらいしゃきっと出来んか? これから長州藩のひいては尊王攘夷の行く末が決まる時なんじゃ。」 上座に座る男が鋭い言葉を放つ。 「今夜にでももう一度集まろう。その時には桂もおるじゃろうて。」 その言葉で各々、散って行った。 尊王攘夷、か…。 はっきり言うと尊王攘夷とはどんなものなのか自分自身、未だによく分かっていない。 なんだか祭りの熱に乗せられて京まで出てきてしまった気がしている。 「里に帰ろうかのぉ~…。」 そんな事を考えながら歩いていると、見覚えのある集団に取り囲まれた。 「その亀とか言う変な名前の奴らをふん捕まえれば良いのね!楽勝だわ!」 とハルヒは楽しそうに鼻歌を歌いながら歩いている。 またあの橋の所まで行くのか?絶対に襲われる…絶対に新撰組に捕まる。 俺の勘はもはや百発百中なのか、そりゃそうだろう。 こんな怪しげな集団が7人連なって歩いていたら 誰だって気になるに決まっている。 「お前ら、どこへ行く?」 坂本さんと古泉はニコニコと笑っているが、 ハルヒは今にも竹刀で飛び掛かって行きそうな勢いだ。 「このあんさんらが、ちょいと祇園はんにでも顔出そか、言わはりましてなぁ~。」 気が付くと鶴屋さんが艶っぽい京訛りで新撰組の連中にしなだれかかっていた。 「もうすぐ祇園祭でっしゃろ?舞妓はんらの踊りもそりゃ幽玄なもんでっせ? どや?お侍はんらも、うちと一緒に来はりまへんかぇ?」 くっ…朝比奈さんとはまた違うセックスィ~さだ…。 「い、いや。遠慮しておく。任務があるからな。あまりうろちょろするなよ!」 と、新撰組は立ち去って行った。 「アッハッハッ!!東のお芋さんは京訛りの女に弱いのさっ! ちょいと色で仕掛けるとすぐにこうさねっ!ちょろいもんにょろ!」 確かにあれは男としては堪らない…。 「ちょっと、キョン!何、鼻の下伸ばしてんのよ!?このスケベ面!」 …悪かったな! 望月と北添は会合が一旦解散となった後、京の町をブラブラと練り歩いていた。 「龍さんにはなんと言おうかの?」 亀こと望月亀弥太はぽつりと口を開いた。 「おまん、そげに気になるかぇ?確かに海軍を作るっちゅう龍さんの言には 一理も二理もある。けんど、今すぐやらにゃいかんっちゅう事もあるぜよ。」 北添は身近な仲間が抜けて1人になるのが嫌だったのであろう。 引き止めるように言葉を続けた。 「確かにおまんは龍さんから航海術を習い、腕もよう磨いちょう。 でんも、その術を活かすには活かすだけの世が必要じゃ。 今の海は毛唐共に支配されちょる。 こん国から海に出るにはまずこん国から毛唐を追い出し、 天子様を芯に据えた強き国を作らにゃいかんぜよ。」 亀はその意見も分かるし、龍馬の言葉も分かる。 要は優先順位の問題だ。 「とりゃっせぃ!!」 亀と北の脳天に衝撃が走った。 「坂本さん、とジョン。」 はいはい…ジョンですよ。 そしてハルヒ、暴れるな。 「まだ生きちょったの、谷口。」 坂本さんはにこやかに話し掛けた。 「あれ?土佐の亀と北じゃ。」 亀と北はさっき、ハルヒの竹刀を脳天に喰らって気絶している。 「ちくっとこいつらとおまんに話があっての。少し行き違いがあったが、 まぁ、こいつら儂の仲間じゃ。そして、おまんもな。来い。」 坂本さんはぶらりと歩き出した。 「何よ?3人に話があるから引っ張ってくるっていうのは のして無理矢理連れてくるって意味じゃなかったの?」 そんな訳ないだろ、ハルヒ。 気絶して抱えられている亀と北の目を覚まして 突然、脳天をかち割った事を何とか誤魔化し、鶴屋さんの 「さっ!歩いて喉も渇いたし、団子とお茶で一休みにょろ!」 の言葉により、茶屋に入った。 「さぁ!おまんら。これからどうするんか、ちゃっと決めぇ!ちゃっと!」 坂本さんは珍しく熱くなっている。 「悩む事は良ぇ事ぜよ。悩み考えんと出てこんもんもある。 しっかし、何も考えんと事を始めるのはただの馬鹿じゃきに。」 その言葉に北が、 「儂らは今やるべき事をやって、きっちりけじめを付けたいぜよ。」 と言い返した。 「亀、おまんもか?」 という坂本さんの言葉に亀は眉間に皺を寄せて頷いた。 「谷口は?」 谷口はうんともすんとも言わずにただ黙って俯いている。 それにハルヒがイラついたらしい。 「あんた、男らしくないわね!さっきから黙ってないで何か言ったらどうなの!? どうせそんなんじゃどこ行ったって使いっ走りがせいぜいなんでしょうけど!」 お前は黙っとけ。話がややこしくなる。 しかし、ハルヒの煽りに谷口は我慢出来なかったらしい。 「儂ゃ元々、坂本さんとは昨日初めて会っただけの縁じゃ。 助けて貰った恩はある。それはいつか必ず返す。でも、それとこれとは別じゃ!」 坂本さんは大きく溜息をついた。 「おまんら、揃いも揃って頑固者ばかりぜよ。分かった。もう何も言わん。 ただ、一つだけ覚えとけ。必ず生きて帰ってこい。 おまんら、帰ってきたらまた海で遊ぼうぜよ。」 坂本さんは少し寂しそうな笑顔を浮かべていた。 唸る狼、群れをなし、 牙を尖らせ、鼻磨き、 眼は爛々と輝いて 闇夜の獲物を取り囲む――― 昼に3人の探索をしたせいで着物を汚してしまった事を謝って 俺達は制服に着替えた。(朝比奈さんだけはメイド服だが…) 夕方、鶴屋さんの家に戻ると坂本さんは縁側で寝仏のように横になりながら 微動だにしなくなった。何かを考え込んでいるようだった。 俺達も考えなくてはいけない。元の時代に戻る方法を。 蒸し暑い夜だった。 長門は漢字ばかり並んでいる鶴屋家の蔵書を読みふけっている。 ハルヒと鶴屋さんは朝比奈さんに 「みくるちゃんが着物を着てると帯を回したくなる悪代官の気持ちが分かるわね。」 等と、セクハラ三昧のいたずら放題をしている。なんて羨ましい…。 俺と古泉は将棋を指している。3連勝中。 森さんが勢い良く駆け込んできた。 「皆様!どうやら新撰組の方々が三条木屋町の池田屋さんに踏み込んだようです。 尊王攘夷の方々が多数、集まり会合を開いていたようですが、 坂本さんのお知り合いもいらっしゃるのではないかと思いまして…」 その話を聞いた坂本さんは刀を手にして縁側からもうすでに外へと駆け出していた。 「僕らも様子を見に行ってみましょう。」 「ハルヒ!」 ハルヒはもう竹刀を手に外に出ていた。 「分かってるわよ、みくるちゃん!有希!行くわよ!」 「はい!」「……。」 5人で走り出した。………戻ってきた。 「鶴屋さん!森さん!池田屋ってどこ!?」 森さんと野次馬根性丸出しの鶴屋さんに案内され、池田屋のある方向へと来たのだが、 闘いの真っ最中なのだろう、街中の路地と言う路地に兵が蠢いていた。 森さんの話では新撰組だけでなく、会津、桑名の藩兵も出てきているらしい。 「こちらです。」 森さんが全員を近くの家の屋根の上へと導いた。 この時代の森さんも得体の知れない人だ。 騒がしい大声の聞こえる方へと進み、屋根の上から池田屋の見える位置に移動した。 入り口で一人の男が抜き身の刀を手に仁王立ちしている。 新撰組の人間以外は敵だろうが、味方だろうが入れる気はないらしい。 「あぁ~!!あいつよ!アイドルオタクの副リーダー!!」 飛び出していきそうなハルヒを全員で押さえつけた。 坂本さんはどこだ? 「一度、三条大橋に行ってみましょう。」 森さんの言葉に一斉に屋根の上を動き出した。 こちらにも何百何千という藩兵が道を固めていた。 坂本さんはどこだ? 「…待って。」 突然、長門が立ち止まった。 「…こっち。」 長門が歩き出した方角へ進んで行くと 路地の陰に坂本さんに抱えられた谷口と亀が見えた。 2人とも重傷のようだ。 坂本さんにも多少の切り傷が付いている。 「おぅ…おまんら、やっと来たかぇ…。さすがに2人抱えて逃げるのはしんどいぜよ。」 しかし、長門。なんで居場所が分かったんだ? 3人を屋根の上へ乗せようとしたその時であった。 側面から火が噴いた。 「キャッ!!」 「ハルヒッ!!」 一番手で屋根に登ろうとしたハルヒは屋根の上から 真っ逆さまに地面へと叩き落とされた。 「ハルヒッ!!大丈夫か!?ハルヒッ!!」 「こっちだ!!」 藩兵が駆け込んできたのが見えて俺は倒れているハルヒを抱えて 全員で大通りに逃げると三条大橋の目の前で四方全てが囲まれてしまった。 くそっ…万事休すか。 「…橋の上を突破する。」 長門が一歩前に出てきた。 「では、僕が後方の抑えを担当しましょう。」 「…助かる。」 「おい!大丈夫か、長門。」 「…問題無い。 対有機生命体コンタクト用インターフェースの力は物質を介在する事で増幅され、 更に一方向に集中させる事で拡散しているエネルギーを圧縮する事が可能。」 どういう事だ? 「…大丈夫。…本気を出すから。」 ちゃりんと鈴の音がした。 あれは…坂本さんに買ってもらってたかんざしだ、と思った瞬間、 朝が来たのかと思う程の眩い光が辺りを包み込んだ。 突然の眩しい光に眼を開けていられなかった。 ようやく眩しさに慣れて眼を開くとそこには信じられない光景が広がっていた。 橋の上にいた何百人、何千人という人間が跡形もなく、消えていたのである。 いや、一人だけ橋の手前で倒れていた。 長門である。 「長門っ!!」 くそっ…ハルヒと長門、2人も…。 「古泉っ!!!!!!!長門を頼む。逃げるぞ!!撤退だ!!」 「はい!」 全員で逃げようとした時だった。 「亀っ!!」 坂本さんに抱えられた望月亀弥太の背中に刀が突き刺さっていた。 「……何しょるんじゃ、貴様ら!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 刀を抜いて斬り掛かって行こうとした坂本さんに誰かが飛びついた。 谷口だ。 「行かせんぞ…。生きて事を成せ、言うたのはお前じゃろうが…。 時代が変わるのを見せてくれるんじゃろうが…。 お前がおらんのうなったら誰と一緒に海で遊ぶんじゃ!!」 「坂本さん!!」 坂本さんは歯噛みしながらこっちへ駈けてきた。 横を走っていた古泉の息が乱れている。 「ここまで来れば何の問題もなく、逃げられそうですね。」 と、橋を渡り終えた瞬間、急に身体が重くなって倒れて込んでしまった。 目を覚ますと、橋の横の土手にいた。 しかし、後ろから追ってきていた藩兵達はいなくなっている。 鶴屋さん、森さん、坂本さん、谷口の4人の姿も見当たらない。 夜の帳が下りて物音一つしない。 「どうやら僕らだけのようです。」 声を掛けられて振り向くとドキッとした。 目の前に古泉のニヤケ顔があったからだ。近いんだよ、顔が! 「そうだ…皆は!?」 「…問題無い。」 うおっ!長門。 「涼宮ハルヒは落下の衝撃により気絶しているだけ。特に損傷等は見られない。 朝比奈みくるも、じきに目を覚ます。」 「お前も倒れてたが、もう大丈夫なのか?長門。」 「…問題無い。瞬間的に全エネルギーを開放した為に起きた反動。 動作用のエネルギーが注入されれば問題は無い。」 「ところでさっき、橋の上で人が消えたのって…」 「…空間座標を移動させただけ。命までは取っていない。 数が多かったのでエネルギーを消耗した。」 こいつのエネルギーの源って何なんだろう?飯は普通に食ってるよな? 「ふぁ~い…。あれ~?どうしたんですか~?」 朝比奈さんがお目覚めだ。 「ところで一体全体、何が起きたんだ? 坂本さんとか鶴屋さんや森さんはどこに行った?」 古泉と長門が目を合わせた。 「どうやらここは先程までいた時代とはまた別の時代に来てしまったようです。」 は? 「空間の位置座標に変化は無い。但し、時間の位相がずれている。 地球時間に換算すると1867年12月10日。先程の時間座標から3年後の未来。」 …嘘だろ。 「なんで、今度はそんな時間に飛ばされちまったんだ?」 「長門さんのお話ですと、あの時、三条大橋を渡り終えた時にですが、 何でも僕らの元々いた時代に戻る時空間移動の震動が波形として現れたらしいのです。」 じゃあ、なんで…。 「…そう。理由が分からない。 何故、時空間移動の最中にこの時間座標に落下してしまったのか。 涼宮ハルヒの力によるものなのか、外的要因によるものなのか、原因は不明。」 朝比奈さんが真剣な顔つきで聞いている。 「それはひょっとすると…」 「何かご存知なんですか?朝比奈さん。」 「う~ん……禁則事項です♪」 おい…。 これからまた面倒事に巻き込まれるごめんだぞ…。 と思っていると、長門が歩き出した。 「…こっち。」 え? 長門は何も言わずにどんどん進んで行く。 俺はハルヒを背負ってついていった。 「ちょっと待てよ、長門。どこへ行く気だ?」 「…すぐに分かる。」 そのまま5人で歩いて行くと、とある店の前についた。 醤油屋さん???どうした、長門。また腹減ってんのか? 長門がその店の番頭と話をしたかと思うと、二階の部屋へと通された。 そこにいる人を見て驚いた。 「坂本さん!!」 確かに坂本さんである。もう一人、見た事の無い人がいた。 「おぉ!!ジョン!!久し振りぜよ!!」 久し振り?あぁ~…そうか、坂本さんにとっては3年振りか…。 「おぉ、中岡!!こいつらはジョンとその航海仲間じゃ。以前、話した事があろう?」 その中岡という人は頷いた。 「こいつは中岡。同じ土佐者で一緒に色々、やっちょうきに! いんや~!懐かしい!おまんらとは三条大橋で離ればなれになったきりぜよ。 ところでおまんら、今日はなんじゃ?」 長門、何かあるんじゃないのか? 「おぉ!そうじゃ!そこの仏頂面の女航海士!」 と、坂本さんは懐から何かを取り出した。 「おまんから預かっちょったかんざしの鈴、返しとくぜよ。」 綺麗な鈴の音が長門の手の平で鳴った。 「実は儂、女房を持ってのぉ~!さすがに女房の前で他のおなごからの贈り物じゃ なんて言うたら何されるか分からんきに!」 と、坂本さんは快活に笑った。 俺達は知らなかったのだが、かんざしには二つ鈴が付いていたらしい。 長門が坂本さんに買って貰った時に一つ、お礼としてあげていたらしい。 実に長門らしいお礼の仕方だ。 「あっ!そうそう!ところでエゲレス人のジョンなら知っちょるじゃろ。 実はの……今日はこの坂本龍馬のバースデーなんじゃ!!」 へ? 「それはおめでとうございます。」 「バースデーとは西洋では、なんじゃ祭り開いて盛り上がるんじゃろ?」 中岡さんが口を出してきた。 「龍さん、いかんぜよ。風邪引いちょる言うちょったじゃろ?」 「中岡はほんにつまらん男じゃきに。」 俺はふと思い付きを口に出してみた。 「でも、鍋とかだったら身体も暖まりますよ。」 「おぉ!それじゃ、ジョン!藤吉!藤吉!」 と、坂本さんが誰かを呼ぶと階段を登って相撲取りのような巨漢の男が入ってきた。 「藤吉。すまんが、鶏を買うてきてはくれんかの? 儂のバースデーに皆で鶏鍋をしたいぜよ!風邪にも効くしの!」 と、中岡さんの顔を見た。仕方が無いと言う感じだ。 すみません、余計な事言ってしまって…。 随分とお世話になったのだし、俺が言い出してしまったと言う事もあり、 せめて俺達で買い出しくらいには行こうとその藤吉さんに 鶏を売っている店の場所を教えてもらった。 「いんや~!ジョン、すまんの!積もる話はまた鍋の時じゃ!」 眠っているハルヒを置いて行こうとしたら朝比奈さんに止められた。 「いつまた何が起こるか分からないんだから 涼宮さんをひとりぼっちになんかしちゃ駄目です!」 と、怒られた。反省…。 疲れた…本当に疲れた…。 眠たい…布団に入ったら思いっきり寝てやる。 通りの向こうから提灯の灯りが歩いてくる。 今夜は鶏鍋か、美味そうだ。 提灯の灯りがすれ違った瞬間、ふと何かが引っ掛かった。 あれ?坂本龍馬の誕生日って…。 「なぁ、長門…。」 「…何?」 「今日って何月何日だったっけ?」 「…さっきも言った。1867年12月10日。」 「もう一回。」 「1867年…」 「違う!旧暦で!」 「…旧暦に直すと…慶応3年11月15日。」 俺は振り返って、今来た道を引き返そうとした。 しかし、朝比奈さんが必死にしがみついて俺は止めていた。 「駄目です!!キョンくん!!」 無視だ…関係無い…今はそんな言い争いをしている場合じゃない…。 「絶対に駄目です!!それにキョンくんが行っても何も変わらない!! これから起こる事は規定事項なんです!!」 規定事項という言葉に心臓を掴まれたような衝撃が走った…。 「さっきから規定事項だなんだって……… 大切な人1人、守れもしないで何が規定事項ですか!!!」 「規定事項なんです!!!!!」 朝比奈さんは泣いていた…。 「ごめんなさい……。でも、あなたが今やろうとしている事は、 禁則事項なんてレベルの問題じゃない。歴史の改変です。 皆で坂本さんを助けたのも規定事項なら今日の事も規定事項なんです。 あなたがどうしようとやっぱり歴史は変えられない……。」 霞む目の前で坂本さん達がいた部屋の灯りが消えた…。 冷たい風に長門の持つかんざしの鈴が鳴り響いていた――― 全員押し黙って歩いている。 冷たい風が身に染みる。 ハルヒが目を覚ました? 「ねぇ、キョ~ン…今日はもう帰りましょうよ…。皆、疲れてるのよ…。」 またハルヒの寝言か…… いずれ、この身が滅ぶとも 魂までは滅びやせん。 終わり結末、如何なれど 運命共にし、一蓮托生――― ……はべしっ!!! 「ちょっと、キョン!!あんた、何サボってんのよ!?日本史覚えたの!?」 …舌が噛んだ…目の前がチカチカする…涙出てきた。 「痛ぇな!!何しやがんだ!?」 パンッ!! 「へぇ~…この私にいつからそんな大口叩けるようになったのよ? 言ってご覧なさい!キョン!」 「おやおや、またですか?」 頼む!とめろ、とめてくれ、古泉。 「暖かいお茶入れますね♪」 ハルヒ、竹刀で顔をグリグリするな! ―ちゃりん。 新しく読み始めた本に合わせて、 新しいしおりを手に入れました。 二つの鈴が付いた澄んだ綺麗な音の鳴るかんざし。 島崎藤村『夜明け前』ページは今、開かれたばかり――― 「キョン。随分、元気ないわね。テストやっぱり駄目だった?」 「いや。今回の日本史は覚えるのにまさに命を懸けたからな。 ハルヒのお陰でほぼ完璧だ。」 ハルヒは満面の笑顔になった。 「じゃあ、もっと嬉しそうな顔しなさいよね!」 今回のテスト勉強はいつも以上に疲れたんだよ…。 「私に感謝しなさい! お礼はきっちりして貰うから!さっ!行きましょ!」 と、ハルヒは俺の手を取って歩き出した。 「どこへ?」 「どこでも良いわ!お礼!」 また何か奢る羽目になるのか。 ん?雪か…。 「今日は冷えると思ったら雪が降ってきたわね。天気予報も当てにならないわ…。」 「あぁ…そうだな…。」 「ねぇ、キョン。雪って下から見上げると幻想的で綺麗よね…。」 「あぁ…綺麗だな…。」 もうすぐクリスマスか…。 The End 涼宮ハルヒの歓喜~サンタが町にやって来た~へ続く
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ホームルームが終わると、俺とハルヒはまっすぐ文芸部の部室に向かった。 ハルヒと肩を並べて歩いていると、こいつが妙に上機嫌なことに気がついた。 俺の視線に気がついたのか、ハルヒを顔を上げて俺に言ってきた。 「私がどうして機嫌がいいのか知りたいでしょ?」 別に。まあ、無理を言うなら聞いてやらんことも無い。 一週間後の天気くらいには気になるからな。 「駅前に新しくできたケーキ屋さん知ってるでしょ?」 ああ、先週オープンしたばかりのあれな。妹が行きたいとか騒いでたから覚えてる。 「そうよ。あそこのプリンはね、それはもう、天国と地獄が入れ替わるんじゃないかってくらい美味しいの」 それって美味いのか? というか天国と地獄が入れ替わったら神様を大混乱だろう。 「だから昼休みにこっそり抜けて、買ってきたの。最後の一つだったんだから!」 昼休みに見かけ無いと思ったら、そんなことしてたのか。 よくもまあ、プリン一つにそこまで頑張れるものだ。 「それくらい美味しいのよ!」 いつの間にか、俺達は部室の前まで来ていた。 ハルヒはいつものように勢いよくドアを開ける。朝比奈さんが着替えてたらどうすんだよ。 幸か不幸か、麗しいメイド服の先輩の姿は無く、読書好きの宇宙人の姿があった。。 「ちょっと、有希、それって!」 「………つい」 訂正。食い意地の張った宇宙人がプリンをもぐもぐと咀嚼してる姿があった。 見れば、容器の中はすでに空で長門の口に入ってる分で終わりらしい。 「あんたねえ……」 いつものハルヒならブチ切れているところだが、今は怒るに怒れないでいる。 長門の申し訳なさそうな顔を見たら怒れないという気持ちは分からんでも無い。 長門には、大甘なこいつなら、なお更のことだろう。 「………」 「まあ、もう良いわ。有希には怒れないし、誰にでも食べられるところに置いてた私にも責任があるから」 言うまでも無いが、俺がハルヒのプリンを食おうものなら大激怒でも済まないだろうね。 一体、どんな罰ゲームをさせられることやら。 その時、、さっきまで無言だった長門が立ち上がった。 「私という個体は今回のことを非常に申し訳なく思っている。せめてものお詫びをしたい」 「え、別のいいのよ。言ったでしょ、私も非があるって」 ハルヒはいつになく饒舌な長門に驚いたのか、しどろもどろに答えを返した。 「あなたに非は無い。完全に私の責任」 そう言って、ハルヒに一歩近づいた。 「あなたはプリンを生命維持の為ではなく、嗜好品として摂取しようと考えていたと私は推測した」 長門はまた一歩、ハルヒに近づく。 「ちょ、ちょっと有希、あなた何する気よ?」 「よって、あなたがプリンの味覚情報を得れば、完全ではなくてもあなたの欲求は満たされるはず」 また一歩近づく。長門とハルヒの距離は50cmも離れていない。 長門はハルヒの腰に、両手を伸ばした。 「有希、待ちなさい! あんたまさか!?」 「幸い、プリンの成分の一部は私の口内に残存している」 「ゆ……ん、むぐ」 何かを言おうとしたハルヒの唇は、長門の唇によって多少、強引にふさがれた。 長門はハルヒの腰に添えられた左手をそのままに、右手をハルヒの後頭部に回した。 まるでハルヒが逃げられないようにするために。 ハルヒは長門の唇から逃れようと身を捩ったが、いかに馬鹿力のハルヒと言えども宇宙人の前には無力だった。 しばらく、それでも長門の腕の中で暴れていたハルヒだったが ピチャピチャと何かが絡み合う音が聞こえてくる頃には、抵抗することやめていた。 そうしてハルヒは開放された。 時間にして30秒ほどだったが、やけに長く感じた。 俺は結局、二人の熱い接吻をじっくり見入るように眺めていたことになる。 ハルヒは腰が砕けたように床に、萎れるように座り込んだ。 先ほどまでの行為のせいか、それとも俺に見られていたからか、顔は人体の限界に挑戦するかのような赤さだった。 「な、な、なななな」 あまりのショックのせいか、言語を発せられないらしい。 「私は先ほどの行為では、完全に満足していない。私はあなたを欲求を叶えるために先ほどの行為を行った。次はあなたが私に協力することを推奨する」 ちょっと、待て。お前は結果はどうあれ、ハルヒのプリンを食べた償いにさっきのキスをかましたんだろうが。 それで、次はあなたってどう考えてもおかしいだろう。詭弁、もしくは詐欺ってやつだ。 ていうか、単にお前がやりたかっただけだろ。 長門は、床に座っているハルヒを同じ目線までしゃがむと目を閉じて、わずかに唇をハルヒに突き出した。 「有希、私はしないからね!」 ハルヒが至極当然の返答を終えると、ほぼ同時にドアがノックされた。 朝比奈さんか古泉だろう。 流石に今の状況は不味いと判断した俺は、急いでドアを開けると外に出た。 なるべく中の様子を見せないように。 そこにいたのは、朝比奈さんと古泉の二人だった。 「なにごとでしょうか?」 「いや、今は少しまずいんだ」 「ふぇ? 何かあったんですか?」 「たいしたことじゃ無いんです。気にしないで下さい」 「涼宮さんと長門さんは中に?」 「何があったんですかー?」 俺が二人の質問に答えていると、不意にドアの向こうから長門の声がした。 「この部屋の情報を書き換えた。今から二時間は誰も入ることはできない」 おいおい、ちょっと待て。お前は二時間で何をするつもりだ。 「その問いに答えることはこの国ではセクハラに分類される」 ………もう、何も言うまい。 俺は横で状況を飲み込めないでいる、朝比奈さんと古泉に事情を話すと家に帰ることにした。 鞄は部室の中だったが知ったことか。今日は疲れた。やれやれ。 翌日、長門と手をつないで登校する二人を目撃した生徒が続出したことを谷口から聞いた。
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11月も後半に突入し、日に日に冬らしさが増えてくる。 最近は部活から帰る時点ですでに真っ暗だ。 「今日は転校生が来たぞー」 岡部は教室に入ってくるなり、そう言った。 教室がざわつく。 お前らは小学生か?と突っ込みつつ俺も少しそわそわする。 「すっごい綺麗な女の子だと良いなー」 谷口、だとしたらお前には振り向かないぞ。 「入ってくれ。」 岡部の掛け声と共に、男子が入ってきた。 男子のため息と、女子の囁きが聞こえる。 入ってきた奴は古泉ほどではないものの、なかなかのイケメンだった。 「よし、じゃあ自己紹介をしてくれ。」 「こんにちは、春日清(きよ)です。」 春日とか言う男は澄んだ、綺麗な声で自己紹介を始める。 「趣味は本を読むこと、特にSFが大好きです。宇宙人、未来人、超能力者などに興味があります。」 …え? その時、ハルヒがガバッと立ち上がった。 「ねぇ、春日君。だったらSOS団に入団しない?」 「涼宮、勧誘は後で良い。んーとじゃぁ春日、うるさい奴だが、涼宮の隣に座ってくれ。」 「よろしく、春日君。」 後ろを振り向くと、ハルヒが春日に挨拶をしている。 「こちらこそ。よろしくお願いします。涼宮さんといいましたっけ?」 「そうよ、涼宮ハルヒ。SOS団の団長よ。」 俺はこいつらの会話を聞きながら、何でこんな微妙な時期に転校してきたのか、疑問に思っていた。まるで朝倉の時のようだ。嫌な記憶がよみがえる。 …後で部室に行けばあいつらが教えてくれるだろう。 授業中、春日とハルヒはずっと超能力者、未来人や宇宙人がいるかどうかについて話し合っていた。ったく、春日は転校生なんだからそんなにしょっぱなから先生に悪印象を与えてどうするんだよ? 途中休みになると、ハルヒは春日に俺を紹介した。 「こいつはキョン、SOS団の雑用係。」 あぁ、雑用係とわざわざつけられたのが気に食わないがよろしく。 「キョン君か、よろしく。」 キョンで良い、なんかくすぐったいからな。俺も春日でいいか? 「どうぞ、むしろ僕もその方が気が楽だよ。」 「さぁ、春日君!校舎の案内するからついてらっしゃい!」 そう言い走り始めるハルヒの後を、春日は微笑を浮かべてついていった。 さてと、俺は部室に行くか。 「来ると思っていましたよ。」 なら話は早い、春日、あいつは誰だ? 「彼は涼宮さんが生み出したものですよ。」 何のためにだ?話が合う友達が欲しかったのか? 「いえ、違います。」 じゃぁ何だよ。 「こればかりはあなた自身で気付いてください。一つ、私からヒントのような質問です。あなたは彼と涼宮さんが仲良くしているのを見て、何か感じますか?」 あいつらが仲良くしてるのを見て…なんとなくハルヒを取られた気がしてイライラする。しかし、何故ハルヒを取られた気がするのかも、それでイライラするのかもわからん。 「素直じゃないですね…」 「さらに鈍感。」 うぉ!長門、居たのか。 「居た、最初から。」 そ、そうか… 「おや、そろそろ次の授業ですね。では、私は行きます。」 じゃぁな。 「あなたは?」 もう少し後で行くよ。 そう言ったが、あまり授業に出る気は無かった。 あの二人が仲良くしてるせいでうるさくて、どうせ集中なんか出来ないしな。 「キョーーーーーン!」 ったく、何だよ。 あれ?ハルヒ? 「あんたなんで授業サボってたの?」 あ、いや、何でもない、ただ単にだ。 「そう。」 いつの間にか周りを見回すと、俺以外全員が揃っている。 「さて、今日は新団員を紹介するわよ!」 って、春日?!お前入るのか?! 「うん、楽しそうだしね。」 お前、本当に自分の意思か?ハルヒに強制させられていないか? 「えーと、キョンは放って置いて紹介よ!これが春日君、私たちの同じ1年生よ。今日転校してきて、未来人、宇宙人、超能力者とかに興味があるみたい。ってことで今日から団員だから、皆も自己紹介してね。じゃ、みくるちゃん。」 「あぁ、え?私からですかぁ?えぇと、朝比奈みくると言います。唯一の2年生です。一般的にはお茶汲みをやっています。よろしくおねがいします。」 「美しい方ですね、よろしくお願いします。」 「あ、ありがとうございます。」 「じゃぁ、次は有希!」 「長門有希、趣味は読書。よろしく。」 「私たちはもう自己紹介したから、最後は古泉君!」 「こんにちは、あなたの噂は彼や涼宮さんから聞いています。私は古泉一樹で、SOS団の副団長を務めさせて頂いています。」 「みなさん、よろしくお願いします。」 「新団員も入ってきたことだし、みんな気合入れてね!」 そこから一週間、春日は毎日部室に来て、俺達と打ち解けていった。 しかし、俺のイライラは溜まる一方だった。 何故か、春日と一緒にいるときにハルヒが笑顔になるのを見ていると嫌になる。 クソッ、俺が閉鎖空間発生させたいぐらいだぜ… だが、この気持ちがなんなのかが分からない。 今は金曜日の放課後で、今部室には長門、朝比奈さんと俺しか居ない。 「あのー…キョン君、どうしたんですか?最近イライラしているようですが。」 あぁ、朝比奈さん。気にしないで下さい。 「どうしたんですか?私の力になれることなら…」 そこで、俺は一部始終を話してみた。 朝比奈さんは俺の話を何も言わずに聞き、静かに頷くと 「キョン君は涼宮さんのことが好きだから、春日君に嫉妬してるんですよ。」 えーと…俺がハルヒを好き?春日に嫉妬? 確かに、もしかしたらこの感情は好き、それにこのイライラは嫉妬なのかもしれない。 だとしたらつじつまは合う。 そう…ですね。そうかもしれません。 「キョン君、気付いてよかったですね。じゃぁ、涼宮さんにアタックしてみてください。」 え、でもあいつは春日が… 「ここからは僕が説明しましょう。」 ん?古泉? 「今少しドアの外で聞いてしまいました。春日君は涼宮さんが、あなたに嫉妬をさせるために作り出したものです。」 相変わらずハルヒってすごいな… 「そこじゃないですよ、つまり嫉妬をして欲しいということは」 ということは? 「あなたはここまで来ても鈍感なんですか…?」 …何だ? 朝比奈さんまでそんな軽蔑した目で見ないで下さい…。 長門、お前もだ。 「ならいいです、明日は不思議探索があります。多分何かが起こるので、ちゃんと心の準備を。」 何が起こるんだ?何のための心の準備だ? 「「「…」」」 「よし、みんないるわね!明日は土曜日だから不思議探索をするわ!午前は団長の私用があるから、いつもの場所に1時集合ね!春日君は初めてだから、説明するわね。」 そういうとハルヒは不思議探索について説明を始めたが、ほとんど俺の耳には入っていなかった。 「キョン!遅いわよ!初めての春日君でもあんたより早いわよ!」 おい、春日、お前何故時間より早く来る事を知っている? 「いえ、ただ単に集合時間より早めにくるべきかな、と思ったので。」 …こいつとハルヒを取り合って勝てる自信がない。 「じゃぁいつもの喫茶店に移動!」 おいおい、神様はどんなにひどいんだよ。 午後のペアは 俺と古泉 長門と朝比奈さん ハルヒと春日だった。 俺の怒りのマグマが心の中でブクブクいっている。 「やったー春日君と同じね!私がこの町の良いところ教えてあげるわ!」 ……… 「ありがとう、涼宮さん。」 ……… 何だよ何だよ、ケッ、両方とも微笑みやがってさぁ。 「大丈夫?性格に悪化が見られる。」 あぁ、長門。気にするな。 「じゃぁ出発!春日君、早く行きましょう!」 ハルヒが春日の手を引っ張る。 一瞬怒りで脳味噌が吹っ飛んでいくかと思った。 いつも春日が来る前はハルヒにやられていたが、端から見るとこんなにもカップルに見えるのか…。 「私たちも行きましょうか。」 るせぇな、どこに行くんだよ。 「あなたの好きなところで良いですよ。」 じゃぁ、あいつらをつけるぞ。 「いつからストーカーになったんですか?」 モラルとかルールとか、正直そんなものは今どうでも良い。 俺は、ハルヒを春日に何があっても絶対に取られたくない。 …ここまで俺がハルヒを好きだとは思わなかったぜ。 「気付いて良かったじゃないですか。しかし、男の嫉妬は醜いですよ?」 放っとけ。 ハルヒと春日は、仲良く喋りながらいろいろな場所を回っていった。 大したことはしていないが、俺にしたら二人が傍にいるだけで嫌になる。 そして暗くなり始め、そろそろ集合場所に戻るかと思っていると、春日が何かを言い出した。 俺達の位置からは何を言っているのかは聞こえない。 ハルヒはその言葉に頷き、春日の後をついていった。 「どうぞ。」 古泉が俺にケータイを少し小さくしたような機械を手渡す。 これは何だ? 「長門さんがさっき仕掛けておいた盗聴器の受信機です。」 そういえばさっき長門とハルヒ達がすれ違ったような… 何故仕掛けたのかが気になるが、まぁここは感謝してせっかくだから使おう。 俺今完全なる犯罪者だな… 『ねぇ、春日君、こっちに何があるの?』 『まぁまぁ、僕についてきて下さい。』 二人はテクテクと人気のないほうに歩いていく。 俺達はコソコソとその後をつけて行く。 すると、春日はハルヒを人気のない公園に連れ込んだ。 「これは、もしかして、彼は涼宮さんに告白する気では…」 なぁんだぁってぇぇぇ?! 春日がハルヒに好意があるのは知っていたが、さすがにこんなに早く告白するとは思わなかった。 やばい、ハルヒは中学時代、どんな男に告白されても、その場でふったことは無いらしい。 つまり、春日がハルヒに告白したとしたら、どんなに短時間だとしてもあの二人は恋人関係になるわけである。 しかも、ハルヒもあまり春日を嫌っていないようだ。 ということは本気で付き合いだすかもしれないという事か?! 『どうしたのよ、春日君。こんなところに連れ込んで。』 『俺…ハルヒのことが好きだ!付き合ってくれ!』 『え…』 俺が飛び出そうとすると、古泉に抑えられた。 「後少し待ってください。」 『え、そんな、春日君?』 『僕は本気です。』 『ちょ、春日君、キャッ!』 するとその時、春日がハルヒをベンチに押し倒したのだ。 一瞬、古泉の腕の力が抜けた。 俺はそのまま、ハルヒと春日の前に出て行く。 おい、春日、何やってるんだよ? 春日がこっちを振り向く。 「キョ、キョン?」 「何って、涼宮さんに告白してるんだよ。」 「違うの、キョン、これは…」 そのことじゃない、何故お前はすでにハルヒを襲おうとしてるんだ? 「涼宮さんは告白は断らない主義だそうなのでね。」 だからと言ってお前何故服を脱がそうとしてるんだよ… 俺は黙々と春日に近付き、 ドスッと春日を殴った。 「キョン?!」 「何するんだ!」 女を襲ってる奴を殴って何が悪い? 「別に僕が涼宮さんに何をしようと僕の勝手だろう?」 違う。 俺はな、ハルヒが好きなんだ。 「…え?キョン?!」 最初お前が転校してきた時、俺は自分がハルヒを好きだとは思っていなかった。 だが、お前らが仲良くしているうちに俺は自分がハルヒを好きだって気が付いたんだ。 「キョン…」 「そんなこと言ったって…僕だって涼宮さんのことが好きなんだよ?」 あぁ、だろうな。でも俺だって好きなんだよ。 おいハルヒ、お前は俺と春日、どっちを選ぶんだ? 「…キョン、ごめんね。」 え…。 「春日君もごめん。」 どっちも振るのか? 「うぅん、キョンにはやきもち妬かせてごめんね?後、春日君、気持ちに答えられなくて、ごめん。」 「涼宮さんは、キョンを選ぶのかい?」 「ごめんね、春日君。春日君はすっごく優しいし、頼りにもなるし、趣味も合う。頼りにならなくて、気も利かなくて、ヘタレなキョンとは大違い。だけど…何故か分からないけど…私はキョンが好きなの。ごめんね。」 すると、ハルヒがいきなり倒れた。 お、おい?!ハルヒ?! 「大丈夫、安心して。私がやったこと。」 長門?! 「キョン、君と争えて良かったよ。」 春日の影が薄くなっていく。 おいおい、どうなってるんだよ? 「春日君は涼宮さんがあなたにやきもちを妬かせる為に作ったもの。あなたがやきもちを妬き、告白した今、用はない。」 「だから、彼は消えるんですよ。」 …春日、お前、意外と良い奴だったな。 「君もだよ、キョン。じゃぁ」 「「またいつか、どこかで」」 「キョーン、一緒に帰ろ♪」 ということで、あの日の告白以来、俺とハルヒは付き合うことになった。 春日のことを長門に聞いてみると、一言 「情報操作は得意。」 と言われてしまった。 つまり、多分みんなの記憶から消したんだろうな。 だが、俺は春日のことを忘れるつもりはない。 もしかしたら、あいつとは、良い友達になれたかもな。 しかし、ハルヒが今、俺の隣で笑っているのは春日のおかげだ。 「何考えてるの?」 いや、別に。お前のこと考えてたんだ。 と適当にごまかす。 「もう、キョンったら」 そういうハルヒの顔は、うっすらと紅色に染まっていた。
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ハルヒ「いやっほー!!!みくるちゃん、行くわよー!」 みくる「あ、はーい」 古泉「この暑さだと言うのに元気ですね、涼宮さんは」 キョン「お前は泳がないのか?」 古泉「自分はちょっと準備しなければいけないので失礼」 古泉は微笑みながら海の家に向かって歩き出した 俺はビーチパラソルの下で本を読んでいる長門を見た つーか、わざわざ海まで来て読書なんだ? まぁ、海に来たからって泳がないと妖怪・わかめ野郎に襲われるって訳じゃないんだし・・・ 長門「・・・・・」 キョン「泳がないのか?」 長門「・・・・・あとで」 キョン「そうか・・・俺もそろそろ行くか」 俺は海に向かって歩き出した と、急な話だが我がSOS団は海に来たのである 話は3日前になる …………… ………… ……… …… … ハルヒ「急だけど3日後に海に行くわよ!」 いつもの喫茶店でハルヒは言った 今日はパトロールと緊急ミーティングの為、全員喫茶店にいるのだ ハルヒは本当に急なことを言い出すから困る 俺は自然に溜息をついた 古泉はアメリカ人みたいなお手上げのポーズをしている 朝比奈さんは目が点になっている 長門は・・・いつもどうりだな 誰もハルヒに質問しないから俺は仕方がなく聞いた キョン「何故だ?」 ハルヒ「特に理由なんて無いわよ」 キョン「海なら行っただろ?あの孤島で泳いだりしたじゃないか」 ハルヒ「あら、海に2回行ったらいけないって法律でもあるわけ?」 確かに、そんな法律なんてない もし、あったとしたら日本の偉い人はなにやってんだと思う ハルヒは本当に理由など無く、SOS団で海に行きたいだけなのだ キョン「まて、皆の予定とかあるだろ?」 古泉「その日なら僕は空いていますよ」 みくる「あ、あの~、私も大丈夫ですよ」 長門「・・・・・コクリ」 ハルヒ「決定!3日後に行くわよ!」 ちょっと待て、俺の事情とかは無視か? ハルヒ「どうせ暇でしょ?」 まぁ、その日は何もすることが無いので暇だ ハルヒ「車は従兄弟のおじさんが出してくれるからそこらへんは大丈夫よ!」 みくる「も、もし良かったら、お弁当でも作ってきましょうか?」 ハルヒ「さっすがみくるちゃん!気が利くね!」 朝比奈さんがお弁当を作ってくれるなんてこんなレアなイベントは無いぞ 古泉「僕はビーチパラソルとか色々持ってきましょう」 長門「・・・・・ビニールシート」 ハルヒ「うんうん、流石SOS団ね!」 海に行くことが決定し、緊急ミーティングは終った そして、いつものくじ引きをしてパトロール 赤い印が付いている爪楊枝を引いたのは 俺、古泉、長門 そして無印の爪楊枝を引いたのは ハルヒ、朝比奈さんだ キョン「お前の仕業じゃないのか?」 古泉「今回は僕の仕業じゃないですよ ただ単に皆で海に行きたいだけじゃないですか?」 なんだ、てっきり機関のヤツが協力しているのかと思った 古泉「最近では閉鎖空間の数も減りましたし、そんな事をする必要が無いのですよ」 古泉は微笑みながら言った 結局、何も不思議なことが無いままパトロールは終わった ハルヒ「今日は解散!集合時間とかはメールでするからね」 古泉「じゃ、これで」 みくる「さようなら~」 長門「・・・・・フリフリ」(手を振っている) 俺は自転車置き場に行き、家に帰った 帰り道に妹にバレないようするにはどうすればいいのかと考えていた ―――そして3日後――― ハルヒ「遅いじゃない!もう9時15分よ!」 集合時間の9時30分には間に合ってるからいいじゃないか てか、なんで皆こんなに早いのか? もしかして、メールで早めに来るように連絡しあっているのか?・・・まさかな ハルヒ「キョン!海の家で皆にジュース奢りなさいよ」 キョン「わかったよ」 いつもの事だからなれた・・・ってなれていいのか? 自問自答しならがハルヒの従兄弟のおじさんの車に乗った …………… ………… ……… …… … そして今に至るのだ ハルヒ「ちょっとキョン!遅いじゃない!」 ハルヒと朝比奈さんはビーチボールで遊んでいた みくる「はぁい、キョン君」 ポーンッと朝比奈さんからのパス・・・ハルヒが居なければ周りから見るとカップルに見えてるだろうに とボールを取ろうとした瞬間 ハルヒ「隙あり!」 キョン「うぉあっ」 ザッバーン あれだ、海に行ったらお約束と言ってもいいのか? キョン「な、何しやがるっ!」 ハルヒ「隙を見せたあんたが悪いのよ!」 技名は知らんがハルヒは急に俺を投げたのだ おかげで海水飲んじまったじゃねぇか 俺とハルヒが言い争っている間に朝比奈さんが みくる「あ、あれって・・・」 キョン「・・・・・ん?」 俺は目を細め、朝比奈さんが見ている方向に目をやった まぁ、アレだ、まさか本当にこんな状況があるなんて考えもしなかった ハルヒ「さ、サメよ!!!」 ジョーズだか何だけ知らないがサメ注意報など聞いていないぞ 俺と朝比奈さんとハルヒは猛ダッシュで逃げようとしたその時 みくる「あうぅ~」(ピシッ) どうやら足を攣ったらしい キョン「あ、朝比奈さん!!!」 みくる「ふ、ふぇえ~ん」 誰もがダメだと思ったその時 ザッバーン 古泉「あれ?驚きました?」 サメの正体は古泉だったのだ 古泉「まさか、こんなに驚くとは思いませんでしたよ」 サメに変装・・・とは言っても背びれとか着けてるだけなんだけどな ハルヒ「ちょ・・・古泉君!?び、ビックリしたじゃない!」 みくる「もう・・・ヒック・・・ダメかと思いました・・・ヒック」 キョン「大丈夫ですか?」 と、俺はすぐに朝比奈さんに駆け寄った 古泉め、朝比奈さんを泣かした代償は大きいぞ ハルヒ「古泉君!バツとして皆に焼きトウモロコシ奢りなさいよ!」 古泉「そこらへんは覚悟していましたよ」 そこらへんも計算していたんだな ハルヒ「ん・・・そろそろお昼の時間ね」 なんで分かるのかは置いといて・・・いいのか? 俺達は長門が居るビーチパラソルに戻り、朝比奈さんが作った弁当を食べる事にした みくる「あんまり自信ないですけど・・・」 いやいや、何言ってるんですか 例え、塩と片栗粉を間違えたオニギリでも美味しいに決まっていますよ ハルヒ「いっただっきまーす」 キョン「いただきます!」 長門「・・・・・いただきます」 みくる(ドキドキ) 俺は可愛らしいタコさんウィンナーを食べた 見た目は普通だが味は格別 フランス人が食べたらきっと腰を抜かすだろうと思うぐらいに美味い、美味すぎる キョン「とても美味しいですよ」 みくる「キョン君、ありがとう」 朝比奈さんは見るものすべてを悩殺する位の笑顔で俺に言った 死ぬ前に食べたい物は? と聞かれたら即答で答えるね 朝比奈さんが作った弁当だと しばらくして、古泉が焼きトウモロコシを持って来た 古泉「あ、ズルイですよ 先に食べるなんて」 みくる「ご苦労様です、お茶飲みますか?」 古泉「ありがとうございます」 憎い、憎いぜ古泉・・・ ハルヒ「本当に美味しいわよ、みくるちゃん」 みくる「ふふ・・・ありがとう」 長門「・・・・・」 こいつは無表情でパクパクと食べている・・・こいつには味覚とかあるのかと考えてみたがやっぱりやめる 楽しい会話もしながら俺達は昼飯を食べた ハルヒ「さ、ジャンケンよ!負けた人がアイス買ってきてね」 みくる「ま、負けませんよ~」 古泉「じゃ、僕はグーを出しますね」 長門「・・・・・コクリ」 キョン(嫌な予感がするぜ・・・) ハルヒ「じゃーんっけーん」 全員「ホイッ!」 ……… …… … 結果は俺の負け・・・まぁ、予測していたがな 俺は海の家に向かって歩いていると後ろから ハルヒ「ちょっと待ちなさいよ」 ハルヒが小走りで来た 何故だ? ハルヒ「あんたが何味を選んでくるのかが心配だったのよ」 おいおい、俺のセンスが悪いみたいな言い方だな 少しばかり歩いて、海の家に到着 ハルヒ「おじさーん、オレンジ3つとミルク2つね」 おじさん「まいど! おや、お二人お似合いだね」(ニヤニヤ) 冗談でもやめてくれ・・・と思いたいのだが、何故か満更でもなかった ハルヒ「何ニヤニヤしてんのよ」 キョン「そう言うお前も顔真っ赤だぞ?」 ハルヒ「ち、違うわよ! ひ、日焼けよ、そう、日焼けよ!」 変に強調すると逆に怪しいぞ ハルヒ「さ、戻るわよ」 ハルヒはアイスを受け取り先に歩いた なんだ、コレがツンデレってヤツなのか? キョン「お、おい ちょっと待てよ」 俺が行こうとした瞬間 おじさん「ま、頑張るんだよ」(ニヤニヤ) 俺は無視してハルヒを追った ハルヒ「はい、みくるちゃん、ユキ」 ハルヒはオレンジ味のアイスを渡した キョン「ほれ、古泉」 古泉「どうもすみませんね・・・ところで涼宮さんと何かありました?」 キョン「・・・なぜわかる?」 古泉「おや? 冗談で言ったつもりなんですが・・・」 しまった、墓穴掘ってしまった キョン「おい、アイス返せ」 古泉「食べかけですがいいのですか?」 俺は溜息をついた 古泉「ふふ・・・涼宮さんを見ていれば分かりますよ」 お前はハルヒの何なんだ? 古泉「ま、とりあえず頑張ってください」 何をだ ドイツもコイツもまったく・・・ ハルヒ「さて、休憩もしたところだし皆で泳ぐわよ!」 長門も泳ぐ気になったのか、本を閉じて皆とビーチボールで遊んでいる 古泉「いきますよ、朝比奈さん」 みくる「あ、はい」 古泉「そーっれ!」 古泉の投げたボールそこそこ早い やらせるか! キョン「とぁーっ!」 俺が飛び込み、朝比奈さんをかばおうとしたその時 古泉「マッガーレ」 ハルヒ・キョン「すごっ!」 なんと古泉が投げたボールが曲がったのだ その曲がったボールは長門に向かって行った が、長門は何も変わりなくキャッチ 流石だぜ長門 ハルヒ「古泉君!どうやったの?ぜひ教えてほしいわ」 何故か古泉は俺に向かってウィンクした 気色悪いぜ キョン「長門大丈夫か?」 長門「平気」 キョン「だろうな・・・」 長門「彼の行動は予測できた」 キョン「何故だ?」 長門「・・・・・・・・秘密」 古泉とはいったいどんな関係なんだ? と考えていたその時、ボールが俺の顔面に飛んできた ハルヒ「今のが戦場だったらあんた死んでいたわよ!」 ありえん、絶対にありえん もしあったとしても曲がり角を曲がったらパンを銜えた少女が・・・(以下略 とりあえず、それぐらいここが戦場だと言う確立は極めて低いのだ キョン「やれやれ・・・」 時間はあっという間にすぎ、もう夕方だ 楽しい時間は早く感じ、嫌な時間は遅く感じることをしみじみ思った ハルヒ「キョン、そっち持って」 ハルヒはビニールシートを片付けていた 古泉「結構焼けましたが・・・どうです、似合ってますか?」 俺は華麗に無視し、ハルヒを手伝った ハルヒ「さて、荷物も片付いたことだし・・・みくるちゃん、夏と言ったら何?」 みくる「え、あ、う、うーん・・・スイカですか?」 ハルヒ「スイカもいいけど、やっぱり花火でしょ!」 ハルヒはバックから花火セットを出した あらかじめ準備していたみたいだな 古泉「お、花火ですか いいですね」 キョン「おい、長門 花火やったことあるか?」 長門「・・・ない」 キョン「そうか、結構楽しいぞ」 長門「・・・そう」 なんだか長門の目が輝いて見えたのは気のせいか、気のせいではないのか ビーチパラソルやら色んな物を片付けているうちに日が落ちてもう夜だ ハルヒ「じゃ、花火するわよ!」 長門「・・・」 長門は花火をじぃっと見てる キョン「これに火を点けるんだよ」 長門「わかった」 長門は線香花火に火を点けてじぃっと見ている 古泉「花火に興味があるようですね、長門さん」 キョン「長門だってそれぐらいあるだろ」 古泉「そうですね」 当たり前だ 長門だって好奇心とかあるだろ ハルヒ「ちょっとキョン、古泉君!これ持って!」 ハルヒは両手に花火を持ってはしゃぎながら言った キョン「やけにハイテンションだな」 古泉「純粋に楽しいからじゃないですか?」 みくる「本当に嬉しそうですね」 未来には花火なんてあるんですか? みくる「ふふ、言うと思いますか?」 朝比奈さんは指を唇に当てて言った ぶっちゃけ可愛いです ハルヒ「コラーッ!キョン、デレデレしないでさっさと来なさーい!」 俺は仕方がなく歩いていった 正直足が痛い ちょっと遊びすぎたか しばらく皆で花火で遊んだ ハルヒはねずみ花火を俺に向かって投げてくるし 長門は線香花火を見ているだけだし 古泉は俺を見てみぬフリ 朝比奈さんはオロオロしている シュルルル... パン! キョン「うぉあ!」 ハルヒはケラケラ笑っている キョン「ちょ、ちょっとノドが渇いたからジュース買ってくる」 ねずみ花火から逃げていたからノドがカラカラだ ハルヒ「あ、私も行く 皆何か飲む?」 古泉「お任せします」 みくる「あ、私もお任せします」 長門「・・・・・」 何だ、ハルヒが奢ってやるのか? ハルヒ「あんたが奢るのよ」 俺は財布と相談したが・・・大丈夫だ 俺達が花火しているところから自動販売機まで少し距離がある 100mぐらい歩いた時だった ハルヒ「ねぇ、楽しかった?」 キョン「あぁ、普通に楽しかったぜ 水着とか見れたしな」 ハルヒ「へ、変態」 俺だって健全な男だ ハルヒ「で・・・どうだったのよ?」 キョン「ん、何がだ?」 ハルヒ「・・・ずぎ・・・」 キョン「はっきり言わんと聞こえんぞ?」 ハルヒ「・・・・・水着似合ってた?」 キョン「あぁ、最高に似合っていたぞ ナンパされないのが不思議だ」 我ながら何言ってんだ 事実だけどな ハルヒ「ば、バカ・・・」 しばらく沈黙が流れ、自動販売機に到着し、適当にジュースを買った キョン「おい、持ってやるからジュース渡せ」 ハルヒ「べ、別に大丈夫よ!」 ハルヒは何故かムキになって全部持っている キョン「無理すんなって」 ハルヒ「大丈夫だって言ってるでしょ!」 キョン「お、おい!」 俺はハルヒの方に手を置き、振り向かせた カランカラン... ハルヒが持っているジュースが落ち、目が合う ハルヒ「・・・・・」 キョン「・・・・・」 鼓動が徐々に早くなっていく・・・ 心臓の音と波の音しか聞こえない ドクン...ドクン...ドクン... ハルヒの顔が真っ赤になっている 多分、俺も真っ赤だな ハルヒ「きょ、キョン・・・」 キョン「・・・・・な、何だ」 変な汗が出ているのが分かる ハルヒ「じ、実は・・・」 こ、この状況は何なんだ? もしかして・・・ ハルヒ「私・・・キョンの事が・・・・」 その時だった 大砲を撃った様な音が聞こえた ヒュ~・・・ドーン! 打ち上げ花火だ 近くの公園でやっているらしい ハルヒ「わぁ~ キレイ・・・」 俺とハルヒはしばらく打ち上げ花火を見ていた ハルヒはまるで、カレーに肉を入れ忘れていていたかのように ハルヒ「あ、ジュース忘れていたわ! い、急ぐわよ、キョン!」 ハルヒは慌ててジュースを拾い 走って行った 結局ハルヒは何が言いたかったんだろう・・・ まさか・・・な 俺はハルヒを追いかけるように走った 古泉「また何かありましたか?」 キョン「・・・何もねーよ」 古泉「ふふ、そうですか」 コイツ分かっているな ムカツク野郎だ キョン「長門、花火はどうだった?」 長門「・・・ユニーク」 どうやら長門は花火に興味をもったらしいな 長門「・・・・・またやりたい」 そうか、やりたかったらいつでも言え 協力してやるぜ ハルヒ「車が来たから帰るわよー!」 ハルヒの従兄弟のおじさんの車が来たようだ ハルヒ「早く来ないと置いて行っちゃうわよー!」 はいはい、今すぐ行きますよ 俺は急いで車に向かった そうだ、ハルヒ 今度来るときはカメラでも持っていこうぜ あと、鶴屋さん、谷口、国木田とか誘って行こうぜ 大勢で行った方が楽しいだろ? おまけで妹とシャミセンも連れて行ってもいいぜ それと、あの時、何を言おうとしたか ちゃんと言ってくれよ 俺は車から見える夜景を見ながらそう思った ~ Fin ~
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涼宮ハルヒの遡及ⅩⅠ 終った……のか……? 俺は茫然と呟いていた。なぜならとても凌ぎきれそうにないと想像せざる得なかったあの怪鳥の集団が完全に消滅したのだから。 それも長門とアクリルさんが二人で放った、たった二発の融合魔法――フュージョンマジックによって。 「終わり? 何言ってんの?」 が、俺をあっという間に現実に引き戻したのは、肩越しに振り返ったアクリルさんの不敵な笑みである。 ……その頬には嫌な汗を一滴浮かばせていたからな。 ついでに言うなら隣に肩を並べて佇んでいる長門は振り返ることすらしていない。 そうだな。おそらくそれはその視線の先に在る者のためだろう。 ああそうだ。さっきと同じくらいの大群がまた、俺たちに迫って来てやがるんだよ。悪いか。 「嘘よ……」 ん? 「こんなの嘘よ……」 心細く呟いているのは俺の腕の中にいるハルヒじゃないか。それも前髪で瞳を隠して全身が震えてやがる。 どうしたんだ? 「だって……この世界は、あたしの想像が現実化している世界なんでしょ……?」 まあな。俺と古泉がそれを教えたもんな。 「だったら!」 ハルヒがどこか涙を浮かべた瞳で睨みつけてきた。 「何でみんなを危ない目に遭わせなきゃいけないのよ! あたしはみんなで面白おかしく過ごせることを望んでいるわ! なのに何でみんなを苦しませてるの!?」 ハルヒが慟哭の叫びをあげている。 確かにそうだな。お前は無理難題を吹っ掛けることは多いが、それでも俺たちを苦しめてやろう、などと思ったことは一度もなかったよな。 「蒼葉さんの時もそうだった……あたしは、ただ面白い世界であってほしいだけなのに何で……」 その通りだ。お前は誰も不幸にしたいと思っちゃいない。少し方向性はズレているがそれは間違いないだろうぜ。 だからさ、 「誰もあなたと一緒に居て不幸だと思ったことはない」 え? 俺のセリフを取ったのは長門。お前なのか? 「その通りです。僕も涼宮さんに出会って不幸だなんて感じたことはありません」 「あたしもです。あ、でもあんまり恥ずかしい格好させられるのは……」 「みんな……」 「だとよハルヒ。てことは今、この状況でさえもお前のことを恨んでる奴なんかいないってことだ。SOS団にはな」 俺はこの場に似つかわしくないであろうとびっきりの笑顔を浮かべている。 「キョン……」 「だからさ気にするな。必ずこの世界から脱出できるさ」 「で、でも……あの怪鳥の数とか世界の異常気象とかは……」 「何か勘違いしているようだけど、あたしたちに襲ってくるこの世界はハルヒさんの意思じゃないわよ」 割ってきたのは唯一SOS団とは無関係の異世界人さんである。 「だって、もうこの世界は『一つの世界』として定着してしまっている。それは異世界という意味。つまり、ハルヒさんの力はもうこの世界に及んでいない。なぜならハルヒさんも元の世界の一部だから。世界を越えてまでその力が作用されることはないの。 要するに今、この世界はあたしたちを完全に敵とみなしたってことよ。当然よね。だって、あたしたちはこの世界を滅亡させようとしているんだから」 ……なんつう説明だ……いいのか……? 「ついでに言うなら、アサヒナさんの……えっと、ミクルミサイルだっけ? アレが確実にこの世界を滅亡できるってことを意味していることでもあるわ。だからこそあたしたちを、正確にはアサヒナさんを排斥しようと躍起になってるわけだしね」 「え? じゃあ世界を滅亡させよう、なんて考えなければ攻撃されないってこと?」 「……元の世界に戻るにはこの世界を崩壊させるしかない、って言ったはずだけど」 戸惑いながら問うハルヒに、苦笑を浮かべて応えるアクリルさん。 が、次の句は再び襲いかかって来た怪鳥の大群によって阻まれてしまったのである。 再び、大激闘が始まる。長門とアクリルさんと古泉の。 長門とアクリルさんは怪鳥の群れに突っ込み、なんとヒットアンドアウェイ作戦で一羽一羽を各個撃破していくんだ! 確かに作戦としては間違いじゃない。 集団に突っ込んでしまえば向こうの同士討ちも誘発できる。ただし、それは長門とアクリルさんが相手よりも素早く動き回れる、ってことが絶対条件だ。 空を飛ぶ怪鳥相手に、魔法で飛ぶ二人が動きで負けないのだからとんでもない話だ。 んでもって、古泉は古泉で、俺たちを守るこの赤い球を消すわけにはいかず、笑みが消えた必死の形相で現状維持を図っているんだ。 くそ……また見ているだけなのかよ……俺にも何かできることはないのか…… 「キョン見て……」 俺にどこか愕然とした声をかけてきたのはハルヒだ。 「何だ?」 「よく見てよ……さくらさんと有希を……」 ん~~~正直言って、あまりに動きが早いんでなかなか細かく見ることが難儀なんだが…… 目を細めてみる。 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!?! 俺もまた驚嘆した。 「嘘だろ……まさか……」 「そうよ……これじゃあの時とまったく同じよ……」 俺とハルヒの震える声が響く。 そう……長門とアクリルさんが肩で息をし始めているんだ……しかも動き回っているわけだからその度に小さな光が点々と反射してやがる…… つまりそれは疲労が蓄積し始めてるってことだ。 無理もない。さっきから怪鳥の大群を相手しているだけじゃなく、大地がもうないわけだからずっと『飛んだ』まま戦い続けているってことになるからな。 それは魔力とやらを放出し続けているって意味だ。 体力と同じで魔力だって器量を越えれば必ず尽きるときがくる。 そしてそれが意味することは―― 「じょ……冗談じゃねえぞ……今、ここにいる古泉も含めてこのままじゃ……」 「分かってるわよ! だから、あたしたちにも何かできないことはないの!?」 ハルヒが叫ぶ。 その気持ちは痛いほど解るさ。俺だってあんなことは二度とごめんだ。 だが俺たちに何ができるというのか。 確かに今の俺は、ゲーム作りした時に創り上げた数多くの中の一つのゲームの時の妙な力は使えるが空を飛べるわけじゃないんで役には立てない。 さっきも言ったが、ハルヒの大技は朝比奈さんが戦列に加わることができない以上、使えない。 いったいどうしろと……って、いや待てよ! 「ハルヒ、お前だ! お前が呼ぶんだよ!」 それは俺の思いつき。しかし、確実に来るだろうと予感できるもの。 「って、何をよ!?」 「前にゲーム作りした時にお前が宇宙戦艦を呼べたじゃないか! アレを呼べ! おそらく、いや絶対に来る! だって、俺にだって妙な力があったんだ! だったら!」 「そっか!」 ハルヒが満面に勝気な笑みを浮かべて、しかし、即座に瞳を伏せてマジ顔に変化! 「来なさい――」 静かに呟き、そして『かっ』という効果音が聞こえてきそうな勢いで瞳を開き、 「ザ・デイオブサジタリアス!」 ハルヒが吠えると同時に空が割れ、その暗闇の空間から、深紅に輝く、とあるトレーディングカードをテーマにした物語に出てきた天空を大いなる翼で羽ばたく神の竜を彷彿とさせるデザインの、一機だけではあったが、戦艦が現れたのである。 「行くわよ! キョン!」 「もちろんだ!」 戦艦に乗り込むべく、ハルヒは俺に手を差し出し、迷わず俺はその手を取った。 「あ、あの?」 古泉が戸惑いの声を漏らして、 「古泉! お前は朝比奈さんを守っていろ! 俺とハルヒが抜ければその赤玉も小さくより強固にできるだろ! なんせ守る人数が減る訳だからな!」 俺は勝気っぱいの笑顔で吠える。 もっとも俺がこう言っている時でもハルヒと俺は深紅の戦艦にトラストされている。 完全に中に入ったとき、俺が最後に見ていたのは古泉と朝比奈さんの戸惑っている表情だった。 が、それでいい。 頼むぜ古泉。 そう心の中で呟き、俺とハルヒはコクピットへと駆ける。ま、入った順番の関係で俺が後ろ、ハルヒが前ではあったがな。 …… …… …… …… …… …… 古泉一樹は感慨深げに上空を眺めていた。 深紅の戦艦がゆったりと動き始めた様を、今、自身は親友という念を抱いている少年を見送るが如く眺めていた。 もし、自分自身が創り出した赤い結界球の中にいなければ、その風圧で古泉一樹の柔らかな髪は揺れていたかもしれない。 「まったく、あなたという人は……」 ひとつ、ため息交じりの呟き。しかし、その表情には自嘲気味ではあったが笑顔が浮かんでいる。 おそらくは彼の親友は見たことがない笑顔。 そこには仮面ではない本当の本物の素直な古泉一樹の笑顔があった。 もっとも、たった一人だけ、その笑顔を見止めた者もいる。 「くすっ、古泉くんってそんな風に笑うこともできるんですね」 「朝比奈さん……」 無邪気な笑顔を向ける朝比奈みくるに、古泉一樹が苦笑を浮かべる。 どことなく照れくさかったから。 「しかしまあ」 が、もう一度、上空へと視線を移し、 「確かに、彼の言うとおり、これで僕は結界球を縮小させ、強化することができます。あなただけを守ることに専念できるということです」 「よろしくお願いしますよ。もう少しですから」 「はい」 などと会話しつつ、しかし、古泉一樹はとある提案を思いつく。 むろん、それは嘘ではないのだが、受け入れてもらえる提案かどうかが判らなかったので、 「ところで僕があなたに近づけば近づくほど、もっとより強固にできるのですが? なぜなら、結界球は範囲が小さければ小さいほどより強固になるものですから」 「どういう意味でしょう?」 もちろん、朝比奈みくるはキョトンと問う。もっともみくるミサイル発射態勢のままではあるが。 「つまり、僕があなたを抱きしめられるくらい近づけば、という意味ですよ。そうすれば、ほとんど一人分の範囲しか必要ありませんし、今、僕が創りだせる一番強固な状態にできることでしょう」 しかし、朝比奈みくるの反応は顔を赤らめるわけでもなく、また慌てふためくわけでもなく、 「ふふっ、ゴメンだけどそれはいいです。だって意識してしまってミサイル充電に支障を来たしそうですから。そうなってしまえば、キョンくん、涼宮さん、長門さん、さくらさん、そして古泉くんに迷惑かけちゃいますから」 それだけを笑顔で言うと、再び瞳を伏せ、精神を集中させる。 ふぅ……やっぱりですか…… そんな彼女を見たあと、古泉一樹は再び視線を上空へと、正確には涼宮ハルヒが呼び、今は自分たちのやや前にある深紅の戦艦を、どこか残念な諦観の笑顔を浮かべて眺めていた。 古泉一樹には解っていた。 朝比奈みくるが一番最初に呟いた名前、正確にはあだ名を聞いて、それを確信させられてしまったから。 彼女にとって誰が一番大切なのかを。 なんとなく辛いことでもあったのだが、古泉一樹はそれをどういう訳かすんなり受け入れている自分に気がつき、どこか吹き出したくなってしまったのである。 …… …… …… …… …… …… 「キョン、あんたが操縦して! あたしは砲撃するからちゃんと当たるように動かすのよ! あと、絶対に有希とさくらさんを巻き込まないようにね!」 「言われんでも分かっている!」 ハルヒが一段高い、コントロールパネルに、ブラインドタッチでいうホームポジションで指を置き、俺はその下で四つに分かれたレバーを軽やかな手つきでさばいていた。 もちろん、二人とも勝気な笑顔を浮かべたままだ。 そりゃそうだろう。 前回と違い、今度は見ているだけじゃない。俺たちだって長門やアクリルさんのために、朝比奈さんや古泉のために戦うことができるんだ。 以前の蒼葉さんのことを思い出せば、どんなに危険なことだろうと、このやる気全開の高揚感がそれを地平線の彼方へと追いやれるってもんさ。 「行くわよ! 連続発射! 撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て!」 おいおい本当に楽しそうな声だな、つか撃つのはお前だ。 などと心の中でツッコミを入れる俺の表情も笑顔が途切れていない。 眼前では、ハルヒの狙撃が怪鳥を確実にヒットする光景が映し出されている。 まあ数は半端なく多い訳で、しかも、この怪鳥もその嘴の奥から怪光線を発射できるんだ。当然、戦艦を衝撃が襲うことだってある、というか襲いまくってきている。 俺の目の前のパネルには、戦艦の破損情報が逐一送られてきており、いくらこの船が強固なものだろうと、相手の数が数である。 当然受け続ければいずれは沈むことだろう。 もっとも、俺とハルヒにとってはそんなことはどうでもよかった。 「こらキョン! ちゃんと操縦しなさい! 一匹外しちゃったじゃない!」 叱咤してくるハルヒの声は妙に明るいしな。 などと、どこか場違いなくらい無邪気な俺たちの耳が軽い金属音を二つ捉えた。幻聴じゃない。確実に聞こえたんだ。 何だ? ――外部回線ONを申請する。互いの声が聞こえるように。可能なはず―― 「んな!?」 「ちょっと! 今の声、有希!?」 ――そう。わたしは今、精神感応魔法、テレパシーであなたたち二人に声を届けている。彼女の使用する魔法をプログラム化しインプットした今の私はこれが可能。しかし彼女はこの戦艦の機能を知らない。だから声をかけるのわたしの役割―― きちんと説明してくれた長門に、ハルヒがやや戸惑いながら外部回線をONに切り替える。 「聞こえる? 有希」 『聞こえる。そちらは』 「こっちも大丈夫よ」 『あなたの方は?』 ん? 俺に聞いているのか? というか、ハルヒが聞こえているなら俺にも当然聞こえていることくらい長門にも解かっているはずだが? 『ええ、あたしの方も大丈夫よ。これで、もっと連携しやすくなるわね』 って、何だアクリルさんに確認していたのか。 俺は思わず苦笑を浮かべてしまったね。 『それにしても助かったわ。空飛ぶ魔法を使いながら攻撃をしてたからちょっと疲れてきてたのよ。でも、この艦隊のおかげで足場ができたわけだし、かなり楽に魔法を使えるようになるわ。あたしも、んで勿論、ナガトさんもね』 外部モニターに映るアクリルさんが俺たちの方を、正確にはコクピットに向けてウインクをしてくれている。 どうやら本当に俺たちは役に立っているようだ。こんな嬉しいことはない。 『そう。そしてこれで大技を使いやすくなる』 長門? などという疑問はアクリルさんが放った魔法によって、驚嘆と供に解明された。 『スターダストエクスプロージョン!』 そう! あの銀河を駆ける数多の流星群を彷彿とさせる魔法が放たれたんだ! 撃ったのは勿論アクリルさんだ! 怪鳥群の一角に確実に大きな風穴を空ける! って、どうして今の今までこの魔法を使わなかったんですか!? 『簡単に言わないでよ。この魔法って三つの魔法を同時に使うようなものなんだから。空を飛んで、防御魔法を使って、コイズミくんの防御結界の威力を高める魔法を使ってたらこの魔法は使えないの。だって、あたしは複数魔法同時使用は五つだから』 『わたしにとってはあなたが五つの魔法を同時使用できることの方が信じられない。どうやっても、わたしは三つまでしか使えなかった』 『それも凄いわね。あたしたちの世界で複数魔法を同時使用できるのは、あたしを含めてたった四人よ。しかも三つ以上となるとあたしと蒼葉の二人だけね。魔法を使い始めてすぐのナガトさんが三つ使えることが驚き。ひょっとして魔法使いの才能あるんじゃない?』 『そう』 ううむ。思いっきり雲の上の会話だな。見ろよ。ハルヒだって目が点になってるぜ。 『それはともかく、じゃあナガトさんも当然いけるわよね?』 『もちろん』 どういう意味だ? 『スターダストエクスプロージョン』 んな! 長門が棒読みに呟くのが聞こえてきたと思ったら、またもや流星が放たれたんだ! もちろん、怪鳥群の一角が完全に吹き飛ぶ! って、凄すぎるから! 『キョンくんとハルヒさんのおかげよ。この戦艦が足場になってくれているおかげで、あたしたちは空飛ぶ魔法を使うことなく、攻撃に専念できるから』 『そう』 二人の満足げな声が聞こえて、 「よぉし! なら、あたしたちも負けてらんないわよ!」 「ああ!」 ハルヒと俺もまた、いつまでも傍観者でいるつもりはなく、長門とアクリルさんを乗せたまま、再び怪鳥の群へと攻撃を再開する。 そうだな、こう表現しても間違いないだろう。 俺たちの快進撃が始まった、と。 涼宮ハルヒの遡及ⅩⅡ
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~部室にて~ キョン「Zzzz…」 ハルヒ「……」 長門「……」ペラ ハルヒ「ねぇ有希」 長門「なに?」 ハルヒ「あたしたち友達よね?」 長門「そう認識している」 ハルヒ「それじゃあさ、なんか悩み事とかない?」 長門「何故?」 ハルヒ「何故って、特に理由は無いけど」 長門「そう」 ハルヒ「ほら、あたしたちってあんまりプライベートな話しないじゃない?」 長門「?」 ハルヒ「あたしこんな性格だからあんまり同性の友達いないの」 長門「朝比奈みくるがいる」 ハルヒ「みくるちゃんってなんだかんだで年上だし、有希が一番一緒にいる同い年の友達なのよ」 長門「そう」 ハルヒ「だから、その、もっと仲良くなりたいなぁ、って」 長門「つまり『普通』の交友関係を望むと?」 ハルヒ「うっ、団長としてあんまり『普通』を強調されると耳が痛いわね」 長門「他意はない」 ハルヒ「わかってるわよ。そうね、普通に友達と付き合いたいと思ってる」 長門「……」グゥ~ ハルヒ「一緒に買い物に行ったり、恋愛の話したり」 長門(お腹がへった) ハルヒ「そうだ!有希って好きな人いたりするの?」 長門「好きな人?」 ハルヒ「そう!好きな人!」 長門「それは異性という意味?」 ハルヒ「当たり前じゃない」 長門「自分から答えないとフェアではない」 ハルヒ「え?」 長門「こういった質問の場合、自分から答えずに相手にのみ回答を求めるのはフェアではない、と本に書いてあった」 ハルヒ「え?」 長門「先に言うべき」 ハルヒ「あたしが?」カァァ 長門「……」コク ハルヒ「あ、あ、あ、あたしは、その」チラ キョン「Zzzz…」 長門「?」 ハルヒ「あたしは、今はいないわ!……多分」 長門「そう、わたしは彼が気になる」 ハルヒ「彼?」 長門「そう」チラ キョン「Zzzz…」 ハルヒ「え?あれ?」 長門「そう」 ハルヒ「ほんとに?」 長門「友達に嘘はつかない」 ハルヒ「うっ」 長門「なにか問題が?」 ハルヒ「あ、あれはダメよ!止めときなさい」 長門「何故?」 ハルヒ「だって、その、見た目だってよくないし、冴えないし、馬鹿だし、有希には釣り合わないわ」 長門「それを決めるのはわたし」 ハルヒ「そうだけど……」 長門「……」 ハルヒ「でも、あいつは……その」 長門「嘘」 ハルヒ「え?」 長門「さっきまでの発言は嘘だと言った」 ハルヒ「だってさっき友達に嘘言わないって」 長門「それも含めて嘘」 ハルヒ「ほんとに?」 長門「今度は本当」 ハルヒ「ほんとにほんと?」 長門「くどい。友達の思い人を取ったりしない」 ハルヒ「だ、誰があいつのことなんか」カァァ 長門「なら貰う」 ハルヒ「それはダメ!」 長門「……」 ハルヒ「……」 長門「……」 ハルヒ「な、なによぉ」 長門「別に。……ただ」 ハルヒ「ただ?」 長門「人をからかうのはなかなか楽しい」 ハルヒ「なっ!」 長門「友達なら冗談の一つや二つは言うもの」 ハルヒ「そうだけど」 長門「あなたは私に普通の友達を求めた」 ハルヒ「うん」 長門「だからそれに答えられようにしてみた。何か違った?」 ハルヒ「……あたしも普通の友達ってよく分からないけど、多分あってると思う」 長門「そう」 ハルヒ「ここじゃ言えないけど、今度有希にはあたしの好きな人教えるはね」 長門「わかった」 ハルヒ「それじゃあこの話はこれでお終いね」 長門「……」コク ハルヒ「有希はあたしに何かないの?」 長門「なにかとは?」 ハルヒ「質問よ」 長門「質問……。趣味は?」 ハルヒ「不思議なこt」 長門「それはもういい」 ハルヒ「えぇ~。他には、料理とかかな?こう見えて結構お母さんと一緒に作ったりしてるから上手なのよ」 長門(案外普通。しかし) ハルヒ「似合わないかな?」 長門「興味がある」 ハルヒ「そ、そう。有希は一人暮らしなのよね。自分で作ったりしてるんでしょ?」 長門「……」フルフル ハルヒ「もしかしてコンビニ中心?」 長門「……」コク ハルヒ「有希らしいと言えばそれまでだけど、それじゃ全然ダメじゃない」 長門「?」 ハルヒ「いい。女の子は料理くらい出来ないと後々大変よ?」 長門「今日のあなたは少し変」 ハルヒ「そ、そうかしら」 長門「いつもなら『女の子らしい』などということを一々強調しない。それは朝比奈みくるの役割」 ハルヒ「そうかもね。でもなんだか有希とはなんていうの?腹を割って話したいというか、そんな感じなのよ」 長門「それは私が友達だから?」 ハルヒ「そう。それに有希って口堅そうだし」 長門「望むなら他言はしない」 ハルヒ「頼むわよ。SOS団の団長がこんなだったら他のみんなに示しがつかないわ」 長門「……」コク ハルヒ「でも、有希さっき嘘ついたしなぁ~」 長門「しつこい。それよりもさっきの話」 ハルヒ「さっき?あぁ料理の話ね」 長門「なにが得意?」 ハルヒ「ありきたりだけどカレーね」 長門「!!!」 ハルヒ「市販のルーを何種類か混ぜると美味しいのよ。あたしの場合、味の決め手はコンビーフね」 長門「……」ゴク ハルヒ「後は、大量の玉葱と人参にカボチャ。お肉は豚バラと手羽先」 長門「……」グゥ~ ハルヒ「後は香り付けに月桂樹の葉も必要ね。それとた~か~の~つ~め~、って知ってる?」 長門「知らない。興味がない」ググゥ~ ハルヒ「な、なんか今日の有希はアグレッシブね」 長門「あなたが望んだ結果こうなった」 ハルヒ「まぁ、悪い気はしないわ」 長門「そう」グググゥ~ ハルヒ「お腹空いてるの?」 長門「あなたの話を聞いたら俄然空いてきた。カレーはとても好き」 ハルヒ「そっか……。ねぇ、今日あたしん家両親が出かけてて夜一人なのよ」 長門「それで?」 ハルヒ「せっかくの機会だし有希の家に泊まりに行っていい?」 長門「さっきのレシピ通りにカレーを作るなら許可する」 ハルヒ「じゃあ決まりね♪あたし家に着替えとか取りに行ってくるわね。で、ついでに買い物して行くわ」ガタ 長門「私もついて行く」ガタ ハルヒ「今日は夜通し遊ぶわよ!」 長門「構わない」 バタンッ キョン「ふぁぁ~……、あれ、誰もいない」 Fin ~涼宮邸前~ ハルヒ「おまたせ有希」 長門「大丈夫」 ハルヒ「じゃあ行きましょ」 長門「……」コク ハルヒ「有希の家の近くにスーパーってある?」 長門「ある。問題ない」 ハルヒ「ならいいわ」 長門「そう」 ハルヒ「有希は料理作れるの?」 長門「カップ麺ならお手の物」キラ ハルヒ「……それは料理じゃないわよ」 長門「?」 ハルヒ「ま、まさか家に調理器具ないとかいわないでしょうね」 長門「……。大丈夫用意した」 ハルヒ「用意した?」 長門「問題ない」 ハルヒ「よく分かんないけど、あるんならいいわ」 長門「……」コク ハルヒ「~♪」 長門「……」ジー ハルヒ「ん?どしたの有希?」 長門「別に」 ハルヒ「?変な有希♪」 長門(精神状態が非常に良好) ハルヒ「有希の部屋って本いっぱいありそうよね」 長門「家にはあまりない」 ハルヒ「そうなの?」 長門「そう」 ハルヒ「ちゃんと片付いてる?」 長門「……」コク ハルヒ「そうよね。有希ってなんか几帳面っぽいし」 長門「……」 ハルヒ「先に家行っていい?荷物持ったままだと買い物しずらいし」 長門「構わない」 ハルヒ「♪」トテトテ 長門「……」トテトテ ~長門宅にて~ ハルヒ「お邪魔しまーす」 長門「どうぞ」 ハルヒ「ほんとに誰もいないのね」 長門「私だけ」 ハルヒ「今は二人よ」 長門「そう」 ハルヒ「そうよ」 長門「こっちがリビング」 ハルヒ「へー、って何にもないじゃない!?」 長門「机がある」 ハルヒ「見りゃ分かるわよ。こんなシンプルな部屋なんて初め てみたわ」 長門「そう」 ハルヒ「普通年頃の女の子なら小物の一つでも……」 長門「普通?あなたは普通は求めいていないのでは?」 ハルヒ「もう!いちいち突っ込まないでよ。あくまで一般論よ 、一般論」 長門「……」ジー ハルヒ「な、なによ」 長門「別に」 ハルヒ「気になるじゃない」 長門「別にと言った」 ハルヒ「わかったわよ」 ハルヒ「それじゃあ買い物行きましょう」 長門「行く」 ハルヒ「それじゃあ案内してね」 長門「任せて」 ~スーパーにて~ ハルヒ「まずは野菜ね」 長門「……」トテトテ ハルヒ「まさか、お米何も無いとは思わなかったわ」 長門(お菓子もある) ハルヒ「とりあえず、カボチャに玉葱、にんじんっと」 長門「……」キョロキョロ ハルヒ「次はお肉ね」 長門「……」トテトテ ハルヒ「やった、豚バラ半額よ。得したわね」 長門「……」コク ハルヒ「手羽も見つけたし、後は香辛料ね」 長門「……」トテトテ ハルヒ「あった」 長門(することが無い) ハルヒ「それじゃあレジ行ってくるから、お金は後で割りカンね?」 長門「わかった」 注:調理シーン及び食事シーンは割愛で。 ~再び長門宅~ 長門「ごちそうさま」 ハルヒ「おそまつさまでした」 長門「美味しかった」 ハルヒ「カレー好きの舌を満足させれてよかったわ」 長門「牛、豚、鳥が全部入ったカレーは初めて」 ハルヒ「そうなの?家であれが普通よ。実際安いお肉だけで済んでるし」 長門「今後の参考にする」 ハルヒ「どうぞ。それにしてもよく食べるわね。見てるだけでお腹痛くなりそう」 長門「いつもこのくらい」 ハルヒ「この小さい体にどんだけ入るのよ」ポンポン 長門「お腹を叩くのはやめて」 ハルヒ「あっ、ごめん。でもあれね、次回の不思議探索は有希の胃袋の限界調査ね」 長門「構わない」キラッ ハルヒ「いずれはSOS団を代表して、大食い女王決定戦に出てもらおうかしら」 長門「一向に構わない」キラッ ハルヒ「あはは、流石に冗談よ」 長門「……そう」 ハルヒ「……有希はさ」 長門「?」 ハルヒ「一人暮らしで寂しくないの?」 長門「特に」 ハルヒ「でも学校から帰ったらここには誰もいないじゃない?」 長門「……」コク ハルヒ「あたしなら寂しいなぁ、って」 長門「やはり今日のあなたは変」 ハルヒ「またそれ?なかなか弱みを見せないあたしが見せてるんだから、少しは相槌しなさいよ」 長門「弱みを見せるということは私を信用している?」 ハルヒ「家族の次に」 長門「そう」 ハルヒ「そうよ」 長門「……私は、あまり寂しくない」 ハルヒ「有希は強いのね」 長門「なぜなら」 ハルヒ「なぜなら?」 長門「普段なら今頃、彼とメールのやり取りをしている」 ハルヒ「え?」 長門「寝るまで」 ハルヒ「か、彼って?」 長門「そう、彼」 ハルヒ「そ、そんな話聞いてないはよ!」ガタ 長門「それはそう。言ってない」 ハルヒ「な、な、な、だって有希好きじゃないって、い、言ったじゃない」 長門「そろそろメールを送る」カチャ ハルヒ「え!?」 長門「……」メルメル ハルヒ「……」ドキドキ 長門「完了」 ハルヒ「……なんて送ったの?」 長門「……」 ハルヒ「ちょっと、なんかいいなs」ピリリリ ハルヒ「こんな時誰からよ?」 FROM ♪ユッキー♪ 本文 あなたは単純すぎ(笑) だから面白い(笑) さっきのはもちろん真っ赤な嘘(笑) 長門「ユニーク」 ハルヒ「……」 長門「……ユニーク」 ハルヒ「有希」 長門「……ユ、少し調子に乗った」 ハルヒ「……そう、有希でもそんなことがあるのね」 長門「ごめんなさい」 ハルヒ「まぁいいわ。でも後で覚えてなさいよ?」 長門「わかった」 ハルヒ「ったく、もぉー」 長門「牛?」 ハルヒ「え?」 長門「なんでもない」 ハルヒ「そう」 長門「そう」 ハルヒ「……なんか不思議よね」 長門「?」 ハルヒ「SOS団で、とかじゃなくて有希と二人だけじゃない?」 長門「SOS団があるから今がある」 ハルヒ「そうなんだけど……」 長門「?」 ハルヒ「あのね、一つ前からどうしても聞きたいことがあったの」 長門「なに」 ハルヒ「あたしが文芸部の部室をなかば強引に頂いたじゃない」 長門「……」コク ハルヒ「う、肯定された。で、それって迷惑じゃなかった?」 長門「問題ない」 ハルヒ「ほんと?」 長門「本当」 ハルヒ「今更だけど、迷惑だったら謝んなきゃ、ってずっと思ってたのよ」 長門「迷惑ではない。むしろ良かった」 ハルヒ「え?」 長門「あれは必然。あなたが来て、彼が来て、朝比奈みくると古泉一樹が来た。そのおかげで今に至る」 ハルヒ「有希……」グス 長門「だからあなたは謝罪ではなく、謝礼を言うべき」 ハルヒ「ん?」グス 長門「私があの部室を保有していたおかげでSOS団がある」 ハルヒ「……なんか有希って性格ちょっと悪くない?」 長門「あなたが望んだ」 ハルヒ「あたしが望んだのは友達よ!」 長門「友達なら関係は同等。あなたに合わせると自然とこうなる」 ハルヒ「また聞き捨てならないわね」 長門「気のせい」 ハルヒ「……今回も貸しにしとくわ」 長門「そう」 ハルヒ「ふぅー、ねぇお風呂入っていい?」 長門「構わない。バスタオルは脱衣所にある」 ハルヒ「ありがとう。……有希一緒に入らない?」 長門「一緒に?」 ハルヒ「そう、たまには裸の付き合いも悪くないでしょ」 長門「それは一般に男性の台詞」 ハルヒ「細かいことは気にしないの、ほら行くわよ♪」ガシ 長門「分かったから引きずらないで欲しい」ズルズル ~脱衣所にて~ ハルヒ「~♪」スル 長門「……」 ハルヒ「~♪」スルスル 長門「……」 ハルヒ「あれ?有希脱がないの?」 長門「すぐ入る。先に行って」 ハルヒ「?わかったわ」 長門「……」 長門(これは今日の仕返し?) 浴室にて~ 長門「遅くなった」 ハルヒ「先にお風呂頂いてるわよ」 長門「構わない」ジャー ハルヒ「はぁ~、暖まるわ~」 長門「そう」ゴシゴシ ハルヒ「……」ジー 長門「何?」ゴシゴシ ハルヒ「え?いや、有希って肌綺麗だなぁって、なんか使ってるの?」 長門「何も」ゴシゴシ ハルヒ「いいなぁ、うらやましい」 長門「私はあなたがうらやましい」ジー ハルヒ「ん?あぁ、これ?そうね有希にないもんね」ニヤニヤ 長門「私にもある」ジャー ハルヒ「え?どこ?」 長門「……涼宮ハルヒを敵性と判断」キュ ハルヒ「ちょ、冷たいわよ、有希!冷水は卑怯よ!」 長門「聞こえない」 ハルヒ「こんなけエコーかかって聞こえないわけないでしょ!もう、冷たいってば」 長門「潜ればいい」 ハルヒ「!その手が」ザブ 長門(今のうち) ハルヒ「ぷはっ、息続かない」ガン ハルヒ「って、イタ!」 長門「注意力が足りない」 ハルヒ「潜ってる時にふた閉めないでよ!驚いたじゃない」 長門「それが目的。今だけはあなたは私の手のなかで踊る」 ハルヒ「なによそれ」 長門「なんでもない」 ハルヒ「それより入んないの?風邪ひくわよ」 長門「入る。詰めて」 ハルヒ「ん」 長門「あたたか、くない……ぬるい」 ハルヒ「ふん、自業自得ね」 長門「お湯を足す」 ハルヒ「賢明ね。これじゃ誰かさんのせいで風邪引いちゃうわよ」 長門「……」 ハルヒ「だんだん暖かくなってきたわね」 長門「……」コク ハルヒ「……ねぇ有希。後ろ向いてこっちに背中あずけて」 長門「何故?」 ハルヒ「なんか有希ってちっちゃいから妹みたいに見えて」 長門「妹?」 ハルヒ「ほら、キョンの妹ちゃんいるじゃない?あの娘見てから、あたしにも妹いたら良かったのになぁ、とか考えちゃうのよ」 長門(あまり強く考えられると現実になりかねない) ハルヒ「だから有希、お姉ちゃんとこおいで。なんてね」 長門「わかった」クル ハルヒ「いやに素直じゃない♪」ギュ 長門「……」ムニ ハルヒ「ふぅ」ムニ 長門「……」イラ ハルヒ「暖かい」ムニ 長門「背中に当たるものが非常に不愉快」ザバァ ハルヒ「もう出るの?」 長門「出る」 ハルヒ「じゃあ、あたしも上がr」 ピシャッ!! ハルヒ「ちょっとなに閉めてんのよ!あけなさい!」 ~寝室にて~ ハルヒ「もう、せっかく夜通しで遊びたいとこだけど明日も学校なのよね」 長門「仕方がない」 ハルヒ「わかってるわよ」 長門「布団はここでいい?」 ハルヒ「どうせなら隣通しにしましょうよ。それでどっちかが寝るまでずっと話してましょ♪」 長門「構わない」 ハルヒ「決まり♪」 長門「歯を磨いてくる」 ハルヒ「あらまだだったの?あたしなんかとっくに」イー 長門「そう」トテトテ ハルヒ「ったく、つれないわねぇ」 ハルヒ「先に横になってよ」 ハルヒ「……」 ハルヒ「……」バタバタ ハルヒ(あたし今友達とお泊りしてるんだよね?なんか楽しい♪案外普通も悪くないじゃない) 長門「戻った。……ほこりが出るからあまり騒がないでほしい」 ハルヒ「あっ、ごめん」 長門「別にいい」ストン ハルヒ「それじゃあ寝ましょ」 長門「明かりを落とす」カチ ハルヒ「……」 長門「……」 ハルヒ「……」 長門「……」 ハルヒ「なんか喋りなさいよ!このままじゃ寝ちゃうじゃない」 長門「……あいうえお」 ハルヒ「……今、はっきりしたわ。どうやら今日の有希はあたしにケンカ売ってるみたいね?」 長門「……」フルフル ハルヒ「いいえ、許さないわ。ちょっとそっちに詰めなさい」モゾモゾ 長門「何を?」 ハルヒ「罰として、今晩は有希を羽交い絞めにして寝る」 ハルヒ「観念しなさい」 長門「……」コク ハルヒ「……ねぇ」 長門「何?」 ハルヒ「これから先も皆でやってけるかなぁ」 長門「何を?」 ハルヒ「SOS団」 長門「今は何の問題もない」 ハルヒ「そうじゃないの。あたしにとってSOS団ってほんと特別なのよ。こんなに皆でワイワイやって楽しかったことなんて今までなかった」 長門「……」 ハルヒ「有希に、みくるちゃんに古泉君、鶴屋さんもそうね、ついでにキョン」 長門「……」 ハルヒ「皆とだから上手くやってけてる気がする。大人になったら、流石にあたしも少しは丸くなってると思う」 長門「丸く?」プニプニ ハルヒ「有希」 長門「……ジョーク」 ハルヒ「はぁぁ。だからね、大人になっても皆で楽しくやってけるかなぁって」 長門「……」 ハルヒ「今が楽しすぎるから不安になってくのよ」 長門「大丈夫」 ハルヒ「何がよ」 長門「あなたが望めば願いはきっと叶う。もちろん私も望んでる」 ハルヒ「……有希」 長門「大丈夫」 ハルヒ「そうだよね」 長門「そう」 ハルヒ「ありがとう。それとね……」 長門「?」 ハルヒ「昼間話してた、その、あたしの好きな人なんだけど……」 長門「別に言わなくていい」 ハルヒ「え?」 長門「気付いてないと思ってるのはあなただけ」 ハルヒ「……え?」 長門「朝比奈みくるも古泉一樹も知っている」 ハルヒ「……」カァァ 長門(抱きしめる力が強くなった)ギュウゥゥ ハルヒ「……あいつも知ってるの?」カァァ 長門「残念ながら彼の鈍さは尋常でない」 ハルヒ「そ、そっか」 長門「そう」 ハルヒ「も、もう寝ましょ」 長門「……」コク ハルヒ「……あたしたちこれからもずっと友達よね」 長門「友達」 ハルヒ「……親友と思っていい?」ボソ 長門「何?」 ハルヒ「な、なんでもないわ!おやすみ!」 長門「?おやすみ」 ~通学路にて~ ハルヒ「おはよう、古泉君」 古泉「おはようございます。おや今日は長門さんと一緒ですか?めずらしいですね」 ハルヒ「そうなのよ。有希が寂しいからどうしてもって言われて、昨日はお泊りだったのよ」 長門「明らかに事実と違う」 ハルヒ「そうだっけ?」 長門「そう」 ハルヒ「まぁ、どっちでもいいじゃない」 長門「……昨夜の恥ずかしい寝言を話す」 古泉「おやおや、それは興味がありますね」 ハルヒ「え?何?寝言なんてあたし知らないわよ!?」 長門「それはそう。寝言だから」 古泉「それで涼宮さんはいったいなんと?」 長門「まず、ky」 ハルヒ「ワーー、ワーー、ストップよ有希!あたしが悪かったから」 長門「反省してる?」 ハルヒ「してるしてる」 長門「そう、ならいい」 鶴屋「おや、皆朝から元気いいねぇ」 みくる「みなさん、おはようございますぅ」 ハルヒ「鶴屋さんにみくるちゃん!おはよう」 古泉「おはようございます」 鶴屋「いったい何騒いでたんだい?」 長門「涼宮ハルヒの弱みを握った」 鶴屋「なんだって!それはでかしたよ!」 ハルヒ「有希、喋ったら死刑よ!」 長門「なら、死刑になる前に今全て暴露する」 ハルヒ「ちょ。ウソ!ウソよ!有希!落ち着いて」 みくる「みんな朝から元気ですねぇ」 古泉「えぇ、ほんとに。もし可能なら、こんな日がずっと続けばいいですね」 みくる「そうですねぇ」 Fin?