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「やめろ古泉!!」 赤い玉がこちらに迫ってくる。 俺の前で赤い玉は何かに阻まれるように激突し、激しくスパークし、そして地面に落ちて古泉に戻る。 「やはり、無理でしたか」 古泉は苦笑すると、立ち上がった。 「でも物理的手段なら」 古泉がふところから黒光りする銃を取り出し、俺に突きつけた。 そして引き金をひく。 「・・・・・・」 何も起きはしない。 「私では無理なのですね。やはり」 俺は古泉の手を掴むと銃を取り上げ、遠くに投げ捨てた。 「とうとう本当の事を話す時が来たようです。貴容さん」 古泉はニヒルな笑を浮かべると俺に言った。 「どういう事なんだ?」 「あなたは神を信じていますか?」 「神? ハルヒの事か?」 「違います。本当の神様です」 「別に否定はしないさ。いた方がいいと思う。死後の世界だってあった方がいい。悪人も善人も結果は同じなんて理不尽だしな」 俺は肩を竦めた。 「神は、実在します。二人の神が」 この世には、善の神と悪の神がいて戦っていると古泉がいった。 そして、最後の決着をつける為に二人の神の代理人とも言える存在を生み出したのだと。 「それがあなたです」 「すまん。なんだって?」 「あなたは神によって創造された代理人の一人なんです。だからこそもう一方の代理人以外に殺す事は出来ない。世界は、あなたともう一人の代理人の最終戦争によってその運命が決まるんです」 「もう一人は誰なんだ?」 それは俺がよく知っている相手の名前だった。 「俺はそいつを倒すしかないのか」 閉鎖空間が赤く染まっていた。あり得ない色に染まっていた。 「それはあなた次第です。あなたは神によって創造された存在、第三の選択をする事すら」 確かに小さい頃から、まわりの奴が、ザコ、カスにしか思えなかった。 どのような相手ですら俺の敵ではなかった。勉強などゲームのようなものだった。 「だが、世界の運命と言われてもな。いや、元々、SOS団は世界の運命を背負わされていたのだったな」 俺は笑って肩を竦める。神は、ハルヒにせよ、本物にせよ。 何時もそうやって俺をけしかける。 「不可能な事、大きな事を目の前に出されると征服したくなる性質でな」 俺はポケットに手を突っ込むと歩き出した。 閉鎖空間がはじける。 俺は町に歩き出した。 そして、俺は部室棟に行き。そしてSOS団の扉を開いた。 そこには涼宮ハルヒが立っていた。 「ハルヒ、いや、実は、古泉の事なんだが」 眼が虚無的だった。まるでハルヒじゃないみたいだ。 「こんちは、キョン。いいえ、佐橋貴容さん。実は、私は涼宮ハルヒではありません。いいえ、涼宮ハルヒなどという人間は本々存在しません。日本に涼宮なんてみょうじはないんです」 なにを言ってるんだこいつは。 これが最後の戦いの始まりだった。 次回につづく
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『涼宮ハルヒの行方』 「これは、いったい」 気が付くと古泉一樹は閉鎖空間にいた。そこは学校の校門だった。 何かおかしい。何故いきなりここにいる。 彼は見慣れたはずの色彩のない空間に奇妙な違和感を覚えた。 眼下に広がる灰色の街で、無数の神人がうごめき、破壊の限りを尽くしている。もう始まっているとは……。それにしてもすごい数だ。『機関』の能力者を総動員してもあれだけの神人を相手にするのは不可能だろう。 「ここは閉鎖空間なの、古泉君?」 声がした方向に朝比奈みくるが立っていた。周囲を警戒するように灰色の景色に視線を巡らせている。グラマーな美人教師の傍らに小柄な長門有希の姿も見える。 「そのはずですが、何か妙な感じがします――あ、そういえば、朝比奈先生、長門さんも、お二人ともどうやってここに来られたのですか」 「分からないわ、気が付いたらここにいたの」 「私達は涼宮ハルヒによって召喚された。全てを見届ける証人として」 有希が唐突に口を開く。いつものごとく、そのおもてに表情は浮かんでいない。 「ハルヒさんが? あの子は何処です、有希さん?」と、みくる。 「あそこ」 有希が指差したのは校庭だった。 グラウンドの真ん中に一人の人影が見えた。水色のセーラー服を着た小柄な少女の姿。 そのとき、校舎のほうで青白い光がゆらりと立ち上がった。一体だけではない。二体三体と次々に立ち上がる 「神人です。ここにいたら危ない。とりあえず、涼宮さんのところへ行ってみましょう」 一樹の声を合図に三人は校庭目指して走った。 背後で何かが砕ける音がした。 神人が校舎を破壊し始めたのだ。 ――やめてよ! 校庭に下りる階段の手前で悲痛な叫びが聞こえた。 三人は立ち止まった。 いや、聞こえたのではない。耳にはガラスの割れる音やコンクリートが砕ける音しか届いていない。叫びは頭の中に直接響いた。 ――あたしは、ここにいるでしょ! 神人ののっぺりした顔が校庭に向けられる。 ――あたしは町や学校を壊したいんじゃない。 ――そんなもの壊したってなにも変わらない。 ――キョンくんが生き返るわけじゃない。 神人達は校舎の破壊をやめ、校庭のハルヒへとその巨大な一歩を踏み出した。しかし校庭の手前で見えない何かに阻まれて近づくことができない。神人達は苛立ったように透明な壁を攻撃し始めた。 ――そう、壊したいのは、 ――あたし。 「ハルヒさん……」 みくるは悲しげに呟いた。ごめんなさい、みんな……みんな私のせいだわ。 ――願いさえすれば、あたしはキョンくんを救えた。 ――救えたはずなのに。 ――なぜ、祈らなかったの? ――なぜ、信じなかったの? ――なぜ、諦めたの? ――嫌なあたし。 見ると街で暴れていた神人達も学校目指して山を登り始めていた。 「涼宮さんは世界を造り替えようとしている」 一樹の顔にいつもの笑顔はない。「涼宮さんは彼のことが好きだった。彼のいない世界は彼女にとって何の価値もない。だからこの世界を捨てて新たな世界を作る気でいるんだ。もう終わりだ。僕の力も消えようとしている」 「いいえ、古泉君、これは終わりではないわ」 決然とみくるが言う。「私が今ここにいることが証拠。ここで世界が終わるなら未来から来た私はここにはいません。この先に未来があるから私はここにいられるんです」 「じゃあ、僕が信じていたことはみんな嘘だったと言うんですか、朝比奈先生!」 「古泉君、聞いて。私がいた時代から見て、過去――つまり、今いる時代に涼宮ハルヒという人物は存在していません。生きてるとか死んでるとかじゃなくて最初からいないんです。ハルヒさんのご両親、涼宮夫妻には子供はいませんでした。未来ではそういうことになっているんです。これは……規定事項なの」 「そんな……まさか」 ――キョン 何かが割れるような音がしてハルヒを取り囲むバリアが消失した。 ――あなたに 破壊されるフェンス。なぎ倒される木々。神人達がグラウンドに進入した。 ――逢いたい。 その瞬間、全ての神人がその輪郭を失い、眩い光と化してハルヒめがけて殺到した。 「涼宮ハルヒによる大規模時空改変事象の観測を開始する」 預言者のごとく、有希は、始まりの時を厳かに告げた。 ▼古泉一樹 僕は空港の出発ロビーで予約していた航空便の搭乗手続きが始まるのを待っていた。 あれから僕は北高を卒業し、一流大学に進んだ。今じゃちょっとした上級国家公務員だ。『機関』時代のコネがあったとはいえ、ここまでたどり着くまでのは、なかなか大変でしたよ。 涼宮さんの消滅を機に僕らの超能力は消え、『機関』は解散した。しかし『機関』を中心に政財界をはじめとするあらゆる分野に張り巡らされたパイプは残り、否応なく世界の危機に立ち向かった人々の絆を発端として、この国に新たなムーブメントを生んだ。それが世界中に広がるには、まだ時間がかかるが、その歩みは一歩一歩着実に進んでいる。 僕はスーツの裏ポケットから一枚の写真を取り出した。 あの五月の部室で撮ったSOS団結成の記念写真。最も楽しかったあの瞬間。いつ世界が崩壊するか心休まることがなかったが、なぜか充実感に溢れていたあの日々。悲しい結末になってしまったのは残念でならない。 未来人の朝比奈みくるは僕が卒業するまで北高で英語教師を勤め、その後姿を見なくなった。卒業の日、僕の下駄箱にはファンシーなレターセットに書かれた手紙が入っていた。それには朝比奈さんからの短い別れの言葉と、僕の未来のことが記されていた。遠回しな表現だけど、どうやら僕は歴史に名を残すひとかどの人物になるらしい……それって、禁則事項じゃないんですか、朝比奈先生。 宇宙人の長門有希は、あれ以来姿を見かけたことはない。彼女は急に転校したことになっていた。カナダにいる親元に行ったとかどうとか。きっと彼女が情報操作を行なったに違いない。ほんとカナダが好きですね、あの人は。実際のところ、彼女がどうなったかは不明だった。今も地球にいるかもしれないし、情報統合思念体に回帰してしまったのかもしれない。タコみたいな体の火星人型インターフェイスになって火星を調査している可能性だってある。でも、僕はあの読書好きの少女にまたいつか会えるような気がしてならない。そのときは、長門さん、一緒にカナダでも旅行しますか。 僕は、写真の中で恥ずかしそうに笑顔を作っている少女を見た。その横に満足そうな表情の彼の姿もある。 涼宮ハルヒ、神のごとき力をもった内気な少女。彼女が去っても世界は何事もなかったように続いた。ただ、彼女が生きていたという事実だけが消えていた。残ったのはこの写真と思い出だけ。涼宮ハルヒがどこへ行ったのかは分からない。たぶん新たな世界を創造してそっちで楽しくやっているのかもしれない。僕はあの光の中に彼の姿を見た気がした――死んだはずの彼の姿を。あれは新世界の彼だったのかもしれない。ならば涼宮さんのことは、彼が導いてくれるだろう、きっと。そうであって欲しい。 「涼宮さん、あなたはこの世界を僕らに託してくれたんですよね。ならば、僕、古泉一樹はSOS団副団長として、この世界を大いに盛り上げて見せますよ」 出発ロビーの案内盤が『搭乗手続中』に変わる。 僕は写真をポケットにしまい、ブリーフケースを持って立ち上がった。 「それが僕の規定事項のようですから」 ▼朝比奈みくる 私は閑静な住宅街の端に位置する墓地を訪れた。ここに一人の少女のために命を犠牲にした少年のお墓がある。私の時間平面ではこの場所は墓地以外の施設に作りかえられているため、彼を偲ぶとき私はまたこの時代にやってくる。 墓石に黄色い花束を供え、この時代の人たちがするように手を合わせる。石の墓標を飾る黄色い花。ハルヒさんがいつも着けていた髪飾りの色。こうして見ると彼があの子を抱いているようだ。 ハルヒさんは自分にコンプレックスを持っていた。内気な性格を気にして、自分を変えたいと願うと同時に、そんな自分を生み出した過去を封印しようとした。それが時空の断絶という形で現れてしまったのだ。あの子がどうやってそんな力を手に入れたのかは分からない。古泉君や長門さんはうまく説明してくれるかもしれないけど、たぶん永遠に謎のままだろう。ハルヒさんはどの時間平面からも消えてしまっていた。規定事項どおりに涼宮ハルヒという人物は存在しなくなった。あのとき、私はあの子から激しい時空振を感知した。時間平面が次々入れ替わり、時空の歪みが修復されていく一方で、新たな時間平面が無数に発生していた。彼女は誰かに手を引かれるようにその中に消えていった。涼宮ハルヒ自らが作った新たな時空へと。 私は自分自身に問う、本当にこれでよかったのかと。 全時空を震撼させた閉鎖空間が発生するより以前、朝倉涼子が作った異空間での戦いで、偶然そこに迷い込んだハルヒさんを庇って彼は倒れた。異変を感じて長門さんと古泉君とともに駆けつけたときは既に遅かった。だけど、あのとき、私はブレスレットの治癒デバイスを使えば彼の命を救うことができたかもしれない――にもかかわらず、私はそれをしなかった。過去の人間に対し私の時代の道具を使用するのは禁則事項だったし、どのような形であろうと、その時間に彼が死ぬのは規定事項だったから。規定事項を崩せば未来がどうなるか分からない。歴史が変わってしまう。 私は彼を救いたかった。救うことができた。でも救わなかった。 結果的に規定事項は守られた。でも、ハルヒさんを――彼によって心を開いた、か弱い少女を悲しませてしまった。 この事実が私を苛む。 規定事項とは何だろう。時空エージェントとしての私は間違っていなかった。でも人としてはどうだろう。一人の人間として、人として正しいことをせずに未来を守ることが正しかったのか? 人ひとり救えずに未来を救ったと言えるのか? 控えめなハルヒさんが、彼に手を引かれて、世界を大いに盛り上げていく歴史があっては何故いけないのか? 「キョン君――」 私は墓標に向かって言った。言わなければならなかった。 「私は誓います。私の進む時空で、もしあのときと同じ選択を迫られたら……私は間違えない。今度は人として、朝比奈みくるとして、正しいことを行ないます。今この時から、それが私の規定事項です」 私は彼のために泣いた。 ハルヒさんのために泣いた。 そして思い出の詰まったこの時間平面から未来へと消えた。 また来よう、私は弱いから、今の誓いを忘れそうになった時に。 ▼長門有希 圧倒的な光の奔流の中、涼宮ハルヒが行なう世界改変のプロセスが始まった。膨大な情報が涼宮ハルヒの周りに渦巻いた。私の目を通じて情報統合思念体も事態の推移を見守っているはずだ。 私は驚愕した。涼宮ハルヒを中心に、情報統合思念体がこれまで蓄積したよりもはるかに多くの情報が集積していた。この宇宙開闢にも匹敵するエネルギーはどこから来るのか。私はすべての感覚を総動員して、恐るべきパワーを注意深く観測した。間違いない。涼宮ハルヒは何もないところから情報を生み出している。無から有を創造する力。それは情報統合思念体にはない力だった。 全てが終わったとき、古泉一樹が恐れていた世界の崩壊は起こらなかった。朝比奈みくるの懸案事項だった時空の断絶は消滅した。涼宮ハルヒはこの世界からいなくなった。閉鎖空間内部で発生した膨大な情報はどこにも残っていなかった。おそらく彼女の創造した世界の内部に流れ込んだものと推測する。彼女のことは彼女に深くかかわった人々の記憶にのみ残った。 地球という惑星に発生した人間という有機生命体は、その脳内において複雑に絡まったシナプスとパルスの揺らぎによって『想像』という能力を形成するにいたった。通常、想像の力は個体の範疇を超えることはないが、個体内部においてはあらゆる法則を無視することができる。私はそれを人間の想像の産物である書物から読み解いた。どれほど不可能に思えることでも想像の上では全てが可能となる。そしてそれが発信源となって、ごく稀に現実の世界に影響を及ぼすことがある。確率ゼロ、すなわち不可能であるはずの事柄にほんの僅かな可能性を生じさせるのである。どんなに低い確率の事象であっても、確率がゼロでなければそれはいつか起こり得る。つまり―― 全ての人間はごく低い確率レベルの世界改変能力を持っている。 涼宮ハルヒの力は、想像力が個体の範疇を超えて宇宙規模にまで拡大したものだと私は結論する。だから、彼女は願うだけで、いともたやすく不可能を可能にし、無から有を生み出せた。逆に、自らの心に枷をはめれば、それもまた能力の封印という形で実現したのだ。しかし彼によって封印は解かれ、『想像』は『創造』へと変わり、あの少女は新たな象限へと旅立った。 私は知った。人間がこの宇宙に存在する限り、『涼宮ハルヒ的事象』は再び起こり得る。 おそらく、情報処理能力を物質の化学反応に依存する有機生命体に高度な知性が発生したのは、『想像』の力が大きくかかわったに違いない。『想像』とは、ロジックでしか思考することのできない情報統合思念体には決して理解できない概念。情報統合思念体は否定するだろうが、これこそが彼らの求めていた自律進化の可能性なのではないだろうか。 私は情報統合思念体によって作られたインターフェイスではあるが、血と肉を持つがゆえに、情報統合思念体の持つ計算能力と、物質のたががはめられた人間の脳を同時に持っていた。最初、私の脳はインターフェイスの維持にのみに使われていたが、涼宮ハルヒとSOS団の人々との交流を通じて活性化した。そこから得たものは、うまく言語化できないが、あえて言うならば『感情』だろうか。私は進化したのだろうか? 確信が持てなかった。確かめる術はもはやない。彼の死と涼宮ハルヒの消失をきっかけにSOS団はちりぢりとなった。私達が一同に会することはもう二度とない。私は悲しいと思った。 だから私は想像する。 満面の笑みでSOS団を率いる涼宮ハルヒを―― 恥ずかしげに微笑む小さな朝比奈みくるを―― 絶やさぬ笑みでよく喋る古泉一樹を―― 光となり影となって涼宮ハルヒを慕い支える彼を―― そして…… 彼らの傍らで控えめな笑みを浮かべる私を―― 私は願う。 想像の中にあるこの光景が、いつの日にか私の心の枠を超えて、宇宙に広がることを。 彼らの世界が大いに盛り上がることを。 END
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「ねえあんたたちっ! みゆきちゃん見なかった!? こっちの方に飛んできたはずなんだけど……」 「いや知らんが、ハルヒよ。あんまり着物姿で走り回らないほうがいいと思うぞ。折角鶴屋さんの家の人から綺麗に着付けて貰ってるんだ。着物だって借り物なんだし、鬼ごっこが出来る程ここが広大だからといって早速始めちゃダメだろ」 「そんなのやるわけないでしょ! みゆきちゃん、着替え中に髪留めを取るのを渋って逃げちゃったのよ。どこ行ったのかしら……」 桃色の振袖を着飾るハルヒは、八重桜の下で座ってでもいればこれ以上ないほどの美麗な風貌を見せているのだが……やはりと言うべきか、こいつは裾をまくって鶴屋さん宅の廊下を跳ね回っている。 「涼宮さんらしくて良いではありませんか。ああやって快活な姿を見せていてくれるほうが、こちらとしても心が安らぎます。それに……」 古泉は俺に笑顔を向けると、 「異世界の問題も、無事に解決したことですしね」 ……現在、俺たちは鶴屋さん宅での俳句大会を終えて、どうせなら八重桜を背景にみんなで記念写真を撮っておこうというハルヒの提案と鶴屋さんの同意によって始まった女性陣の和装への着替えを、男性陣が待つという形になっている。 つまり今はゴールデンウィーク真っ最中であり、こうやって俺たちが平穏無事に今日を過ごせているのは、当たり前なことだが世界がちゃんと正気を保っているからだ それは俺たちの行動によって異世界の問題がちゃんと解消されているからに他ならないが、それについて語る前にまず、俺が今日ここに来て知った二つの驚きの事実について話しておこう。 一つ目は、鶴屋家の秘密の蔵に壊れた亀型TPDDが保管されていたことだ。 それを見せられて驚きを隠せない俺と古泉を見ながら、ニヤニヤを隠せない上級生はこう言った。 「いやーごめんねっ! あたし実は知ってたんだ、みくると有希っ子の正体っ。あたしが中一のときだったかな? これがいきなり空からうちの庭に降ってきてさ、中から、みくると大人っぽい有希っ子が出てきたんだよ? あたしは宇宙人もなんも信じてなかったんだけど、流石にあの登場で自己紹介をされちゃった日にゃあ、いくら鶴にゃんでも信じざるをえないねっ! あやや、あのときはたまげたっ」 「……じゃあ鶴屋さんは、かなり前からその事実を知ってたんですね?」 「ま、そういうことになるかなっ。まこと申しわけないっ。んで、そこで二人から事情を聞いてさ、正体どころか今日までの話をあらかた聞かされてたんだっ。いやあ、無事に世界が続いてくれて良かったにょろ! こうなったってことは、キョンくんはあたしの質問に答えを出したってことだよね。宇宙人と未来人、どっちを選ぶかって話っ」 「ええ。そうなるんでしょうね」 あとで気付いたのだが、恐らくこの人は、その問題を俺に投げかけることによって自分にとって大事な人は誰かということを考えさせたかったのだ。素直じゃない俺を上手く手玉にとった、なんともひねくれた問題である。流石は鶴屋さんだと言わざるを得ない。 「にゃはは。結局キョンくんが選んだのはハルにゃんだったってことだよねっ。ラブレター見たよ、あっついあつい! 触ったらこっちまで火傷しそうさ!」 何故あの手紙の存在を知っているのかについては後回しにしておく。 「それにさ、驚いたって言えばまだまだあるんだ。二人が墜落して出てきたときなんだけど、どうやらみくるが操縦ミスしちゃったっぽくって、大人の有希っ子はそれはもう鬼のようにみくるを叱ってたにょろ! もうみくるは半泣きで、しかも大切な部品が別の時代に落ちちゃってさあ大変! そして、それを見ちゃったあたしに二人が協力を求めてきたってわけさ。ほんと、高校に入ってから二人に再会して、みくるはドジッ娘のまんまだったけど、有希っ子のあまりの大人しさには我が目を疑っちゃったよ! まるで別人さっ」 ああ、通りで最近長門と仲良くなってきた朝比奈さんが、大人になるとまた長門を恐れてしまっていたわけだ。それに、未来の長門はそんなに饒舌なのだろうか? 俺のイマジネーション能力では皆目見当もつかないので、是非一度見てみたい気がする。そして、そのときに紛失した部品があの金属棒だったってわけだな。 続く二つ目の事実なのだが、それは谷口と周防九曜が知り合いであり、しかもクリスマス前に谷口が付き合ったと言っていた相手が、なんとこの周防九曜だったという話だ。 また、谷口は人違いだったというおマヌケな理由で振られちまったんだそうな。 まさか周防九曜は俺と谷口を間違えたなんて言うんじゃなかろうなと思いきや残念ながらそうだったため、谷口のどこが俺に似ているんだと当然の抗議を申し立てたとき、古泉は「いえ、お二人には実に良く似た部分がおありですよ。だから中学生の涼宮さんも………と、これは秘密です」などと、どうやら谷口もハルヒに告白をしていたということを匂わせるような発言をした。ま、別に聞かなくてもいいことさ。 と、ここでも一つ疑問が生じたと思うので説明しておく。 今回の鶴屋家主催花見俳句大会、実は参加者がSOS団以外にも佐々木たちや俺の妹、そしてミヨキチやハカセ君に至るまでSOS団関係者のほぼ全員が集合してしまっているという様相を呈しているのだ。 谷口と周防九曜が運悪く鉢合わせたことやこのイベントの参加者がこれだけの数に肥大化したことにも驚きを隠せないが、それを容易に許容できる鶴屋家の敷地面積と二つの意味での懐の深さにもあらためて一驚を禁じ得ない。 まあ、ここにやってくる繋がりとして他のメンバーはなんとなく分かるとして、佐々木たちがここに参加しているのは、会誌を仕上げた土曜日の次の日、世界の運命を分ける日であった日曜日にSOS団と鉢合わせたからだ。異世界の問題については、ここから説明を始めよう。 異世界ではそこでハルヒが俺たちの正体に気付いたことによって、みんなの記憶が失われてしまった。 しかしそれは今回の詩集、SOS団の面々が自分自身を題材にしたポエムを朝比奈みゆきが異世界にもたらしたことがキッカケとなって異世界は正気を取り戻した。 そうやって全てを知った異世界の俺たちは、こちらの世界に同期する道を選んだと聞いている。 その選択はSOS団団員のみんなが全てを団長に一任して導き出されたものらしい。 つまり異世界の俺たちはハルヒに全てを打ち明け、その上で、分裂した世界のこれからをどうするのかハルヒ自身の意思に委ねたというわけだ。 そしてあいつはこちらの世界を選び、分かたれた世界を一つにした。 俺には、どうしてハルヒがその選択をしたのかわかる。 非日常が日常になり、その身に過ぎた力があるのを知ってしまったとき……ハルヒはなんと答えるのか。 ――SOS団。涼宮ハルヒと俺たちの冒険は、本当が嘘になる世界で不思議を見つけることが目的じゃない。普通でも普通じゃない日々の中で、気の向くままに遊んでいるのがSOS団であり、ハルヒの……俺たちの望みなんだ。 そう思ったとき。 鏡の世界から投げられたハルヒの願いを、俺は確かに受け取った気がした。 ……とまあ、今回ハルヒが書いたポエムにも、それを感じさせるような言葉があったんだがな。 俺のポエムを見た後にハルヒが書いた、答えはいつもあたしの胸に、から始まる詩の中に。 そしてこちらの世界の日曜日では、俺たちは土曜日に中止となった不思議探索を通常営業で行った。 そこでばったり出会った佐々木たちをハルヒが俳句大会に誘ったのを発端に、続々と参加者が増えていったという次第なのである。 うん。今日までの流れの説明としてはこんなものだろう。 しかしまあ、佐々木と橘と周防九曜は分かるとして、藤原がやってきたのは正直意外だったな。こいつはてっきりこっちの誘いを断ってくるものだと思ってたよ。 「ふん。この国の文化に触れておくのも、僕のこれからの任務において有意義だと思ったんでね。たまには予定表にない行動をしてみるのも悪くはないよ」 「未来人の任務……これは僕の予想にしか過ぎませんが、もしかして貴方は、日本書紀を作成して聖徳太子という虚構の人物を作り出すのではないですか?」 女性陣の着替えを待機している男共が軒を連ねているあまり面白くない風景で、古泉が藤原に言う。こいつらの隣に並ぶというのもなんて居心地が悪いことなんだと思いながら、 「なんだそりゃ。つまり、聖徳太子はいなかったとでも言うのか?」 こくりと古泉。そして人差し指を立てながら、 「ええ。日本書紀でその存在が語られている聖徳太子が実は存在しなかったというのは、最近世間にも周知されてきている事実です。僕はね、このように往々にして歴史書が実際の事実と違っているのは、実はそれが未来人によって作成されていたものだったからなのではないかと想像してしまうんです。こういった方法であれば直接的にその時代を変えることなく、それからの未来を導いていけますからね。実際に聖徳太子という人物の存在は、現代の僕たちを形作る上で重要な影響をあたえていますから」 古泉の台詞に、ぷいと顔を背ける藤原。古泉は、藤原不比等がどうたらと話を続けていたかと思いきや「それよりも」と藤原の視線を自分に向けさせると、「あなたには、色々と伺いたいことがあるのですが」 藤原は溜息をつくように、 「彼女から聞いているよ。というより、全てを知らされたと言うべきか。……まさか朝比奈みくるの組織も長門と繋がっていたとはね」 「どういうことだ?」と俺が聞くと、 「長門は、僕の組織と彼女の組織を統制することによって世界を両側面から回していたのさ。僕の組織の方がどちらかといえば表で、彼女の方が裏になる。だから、こちらの方が朝比奈みくるたちよりも知らされている情報が少なかったんだ。……だが、その真実を知ったからといって、僕たちはこれまでの行動意義を疑ったりはしないよ。全ての行動が自らの意思によってなされたことに変わりはないんだ」 「その思想は《機関》の理念にも通ずるところがありますね」 そりゃ何なんだ、と聞くと古泉は遠い目をして、 「……目の前に続くこの道を、我々は自らの意思で歩いていくのだろうか、はたまた見知らぬ者の意思によって歩かされるだけに過ぎないのか――。人はその疑念を抱いた瞬間に、自身の立っている場所すら見失ってしまうことがある。しかしそれは、過去を振り返ってその道に不安を抱いた者が陥る自縄自縛の考えでしかないのです。他人の駒になってしまうことは忌避したいものですが、それを気にしてばかりいて、己が立ち止まっていることに気付かないというのは輪をかけて愚かしい行為だ。だから、僕たちはいつだって自分の意思をもって前に進むことを忘れてはならないのですよ。他の者の意思など、実は何の関係もないのです。自分の足を進めることが出来るのは、自身の意思の力以外には存在しないのですからね」 「つまり、いつだってやれることをやるだけってことか?」 「その通りです。それこそが真実に至る唯一の方法であり、また、あなたの生き様でもありますね」 これは素晴しいことです、と古泉。俺は別にそんな高尚な考えで動いているわけじゃないんだがな。出来ることしかしないだけなんだ。 「それは簡単なようでいて相当難しいことなのですよ。己に出来得ることを見極め、それを実行に移す。これは見極めるというだけでも至難の技だというのに、あなたの場合はほぼ直感的にそれを理解、行動し、その姿勢をいついかなるときも崩さない。良くも悪くも理詰めの考え方しか出来ない僕からすれば、あなたの真実を見る能力は天才的で驚嘆に値します。だから僕は、あなたには敵わないなと思うのですよ」 あんまり褒められても気味が悪いだけでしかないぜ。それにおだてられたからといって、俺がお前に敵うなんて勘違いはしない程には客観的に自分を判断する力は持ってるつもりだ。 俺たちの会話を黙したまま聞いていた藤原はチラリと古泉を見やると、 「……そこまで考えが及ぶなら、僕がキミに話すことはないんじゃないのか?」 「そうですね、あなたがもたらしてくれた理論のおかげであらかたの予想は立っています。涼宮さんの情報創造能力の正体、そして未来組織の正体についてもね。こちらから話をして様子を伺ったほうがいいのならそうさせて頂きますが」 「どの道僕が言えないこともある。キミの推論を聞いているほうが良さそうだな」 「ではまず、僕の考える情報創造能力の正体についてお話しましょう」 すると古泉は俺に、今度は四本の指を立てて見せ、 「この物質世界の物理法則は、複数の『力』によって支配されてます。それらの力は宇宙開闢の際一つの力だったものが分化して形成されたものだと推察され、これらの力が元々一つであったなら、その全てを統合し、宇宙の仕組みを統一的な原理から考えられるのではないかといった試みがなされているのですが……現在はその全ての力を統一しようとする理論の《超大統一理論》は実証されていません。が、そこで涼宮さんの時空改変能力の登場です。彼女が世界を『箱』から『紙』に変えたことによって次元の性質、つまり世界に内包されていた『力』が統合され、あの情報創造能力が発生しています。このように、世界の入れ物を変えることによって中身を統一させるという理論が涼宮さんによる《超大統一理論》であり、それは能力の発現により実証も得ている。つまり彼女に備えられた神の力の正体は、宇宙の始まりに存在し、僕たちの世界の全てを創造した『大いなる力』だったというわけですね」 まさか、あの唐変木な力にそんな正体があったなんて想像もしなかったよ。単に無茶苦茶なだけだと思ってたからな。 「なんだ。じゃあハルヒは、その力を発生させるために時空を改……」 と言いかけたところで俺は理解した。 そうか。ここでもやっぱりハルヒは力が欲しかったんじゃない。 あいつが時空を改変した理由は、小説誌に書いたハルヒの時間平面理論に関する論文が全てを語っている。 SOS団を恒久的に存続させるための方程式。 つまり俺たちと出会うことを望んだあの小さいハルヒが、SOS団でいつまでも過ごしていけるような世界を夢見て、それが時空の改変に繋がったのだろう。《あの日》に出会った俺が『鍵』となって、ハルヒは次元の箱を開いてしまったんだな。 すると古泉は遠い目をして、 「……実を言うと僕は、機関に限らず、SOS団にもいつか終わりの日はやってくると思っていたんですよ。本音を言うと今回の事件でそうなるのではないかと。……でも、そうではなかった。物語を構成する起承転結において『結』とも言えるあの出来事を通して、逆に僕たちは一つになることが出来たんです。――ここで僕は考えてしまうんですよ。ひょっとしてSOS団には、終わりなどないのではないかとね」 「……それはそれで怖い感じもするが、その理由はなんなんだ?」 古泉は微笑み、 「――SOS団が『結』を迎えたとき、そこには『団結』という言葉が形作られるからです。現に《機関》は、これから長門さんを始めとして情報統合思念体と共に歩むことに決めました。個人ではなく組織としてであれば、悠久の時を生きる長門さんをずっとサポートしていくことが可能ですからね。そして未来の《機関》こそ、朝比奈みくるさんや藤原さんの所属する組織、時間の流れの外側に身を置く時空管理局となるのでしょう。これから《機関》はそのように形態を変えていくからこそ、未来の理論も伝えられたのではないかと」 ……今まで散々話を聞かされてきたが、『団結』ね。まさか最後をそんな適当な話で締めてくるとはな。脱力せざるをえないぜ。 「そうですか? 終わりの話としては相応しいかと。それに僕は、この理論が一番好きですよ」 ふん、と俺が鼻を鳴らすと、藤原は話が終わったのを見計らったように、 「ところで古泉一樹。あんたは長門をどう思ってるんだ? 彼女といつまでも一緒にいたいだとか、そういうことは思っていないのか?」 いきなり藤原は何を言い出すんだろうか。たまらず俺は古泉に目を配る。 「流石に僕には、ずっと長門さんの傍にいるなんてことは出来ませんよ」 その言葉の意味はなんだと問いただしてやろうかと思ったが、古泉は間髪入れずに、 「ですが、そうですね……せめてこの命が続く限りは、彼女と共に過ごして行きたいものです」 そんなことを屈託のない笑み混じりに話していたとき、 「おわっ!? な、長門?」 「…………」 長門がいつの間にか俺たちの隣にちょこんと正座していた。 青紫色の着物に身を包んだ長門は、虚を突かれた古泉に視線を向けて首をこてんと傾けると、 「……古泉一樹」 そして言った。 「それは、プロポーズ?」 こいつはお前と一生添い遂げる覚悟みたいだしな。プロポーズなんじゃないか? 俺がそんなことを言うと古泉はやや困りながらもまんざらでもない反応を見せ、その姿を見ていた藤原は小憎らしい笑みを作り、 「ふん。せいぜい尻に敷かれないようにするんだな。僕が存在するためにも、頑張って欲しいと思っているよ」 「それは……」 古泉は微量の驚きを顔ににじませている。それは俺も右に同じだ。 まさか藤原は、長門と古泉の……? 「理論的には可能」 長門が淡々と口を開いた。 「ヒューマノイドインターフェースが行使する情報操作能力は、あくまでハードではなくソフトの問題。有機生命体としてのわたしの構成情報は人類のそれと同等であり、あなたたちとのあいだに生物学的な意味での差異はない。つまり、もしわたしと古泉一樹がセッ………………」 はい。テイクツー。 「わたしが普遍的な女性として生きることには、どんな弊害や支障も発生しない。唯一問題があるとすれば、相互間の精神的な問題だけ」 「じゃあ長門、お前は古泉のことをどう思ってるんだ?」 「…………」 じっと古泉の顔を見つめる長門。 「わからない。……でも、彼がわたしを守ってくれようとしてくれたことは知っている」 そして確かに、長門はにっこりと微笑んで言った。 「ありがとう」 もうおめでとうとしか言いようがないぜ古泉。これから頑張っていけば、なんとかなりそうな予感がするじゃないか。長門の笑顔を独り占めするなんて、うらやましいやつめ。 「あまりいじめないで欲しいな」 古泉は苦笑し、 「それになじり合いの勝負ならば、こちらには必勝のカードがあることをお忘れなく。組織の人間ではなく対等な友人関係としてであれば、追い詰められた僕がそのカードを切らないとは限りません」 なに言ってんだ。それはお前たちが血みどろの抗争をやってるってのが嘘だったことで相殺だ。言われなきゃわからんとはいえ、えらく無意味な嘘をついたもんだな。 「それ相応の苦労はしているつもりですよ。それに、組織には裏の顔があるほうが面白くはありませんか? 《機関》はそれこそ独占企業のようなもので、いわば敵なしの平穏そのものでしたからね。あなたの好みに合わせて、軽く色をつけてみただけです」 「そりゃお前の趣味だろうが。それに考えてみれば、一番の対抗組織だったであろう橘京子の組織とですら流血沙汰を起こしていた様子はなかったんだから、俺も気付くべきだったよ」 古泉は小さく笑い、 「それはうかつでしたね。ですが、そんな嘘を通すために当時敵対していた彼女たちと口裏あわせをするわけにもいきませんし、流石にそこまで安穏としていたわけではありませんから」 話を戻しましょう、と古泉は、 「長門さんとのことは正直戸惑っています。ですが……」 無表情を貼り付けている長門を見て、 「カマドウマ事件のとき、彼女に読書以外の趣味を教えるという件を後回しにしていたことを思い出しましたよ。そろそろ、それを考えるべき時期のようですね」 そう言いながら、古泉は流麗な笑みを長門に向ける。 俺が長門の表情に変化がないか凝視していると、 「もちろんそれはあなたもです。なんせ、あなたの方は既にラブレターまで渡しているのですから」 ここでネタ晴らしといこう。鶴屋さんやこいつがあの手紙の存在を知っている理由は、ある意味で俺の自業自得であり、ひとえにハルヒの暴挙のせいでもある。 思い出して欲しい。俺の書いたポエムは、本来機関紙に掲載されるためのものであったということを。ちなみに俺がそれを思い出したときは戦慄したね。 そう。ハルヒはあれをなんのてらいもなく無編集のまま機関紙に載せたのだ。 これはまさに俺の自業自得なのだが、ハルヒがあの内容をまんま載せた行為は暴挙だとも言えるんじゃなかろうか。 そうして俺のポエムは、機関紙の配布完了とともに全校生徒はおろか異世界にまで知れ渡ってしまったのである。 「……やれやれ」 俺はすべての憂鬱な事柄をこの一言で済ますことにした。人間諦めが肝心なのであり、ここで俺がまともに神経回路を繋いでしおうものなら、ひょっとして俺は空を飛べるんじゃないかと考え始めて暴走を開始するのは必死だからである。 「あ、キョン先輩。近くに涼宮先輩はいないですよね? フフ。この格好どうですか? 着物なんて初めて着ちゃいました」 物陰からぴょんと跳ねて朝比奈みゆきが姿を現した。エメラルドグリーンの着物姿をくるりと見せて微笑んでいるのは実に愛らしいのだが、いかんせんスマイルマークの髪留めが格好に似合っていない。 「むう。これはしょうがないんです。あたしすごいくせっ毛で、他の人にいじられるよりはこのまま留めておきたいんです」 そういうものなのかね、と思っていると、 「あなたに渡したいものがある。こっちに来て」 「ほえ?」 長門が朝比奈みゆきを呼びつけて渡したものは、髪飾りだった。 「それ、もしかしてあの金属棒のか?」 聞きながら品物を見てみると、それは透明なガラスで作られたような綺麗な雪の結晶だった。 「って、花じゃないじゃないか。雪には六花って呼び方もあるらしいが、花言葉なんてあるのか?」 すると藤原が、 「アイリス? ちょっと貸してくれ」 と長門から髪飾りを受け取り、それを陽にかざすと、 「アイリスの花言葉は『架け橋』だよ。それはアイリスという名前が、虹を意味しているからなんだ」 雪の結晶が光を受けて、藤原の顔にスペクトルが映し出される。長門はこくりと頷き、朝比奈みゆきを見つめて、 「あなたが平和な日常を送れるようになるためのお守り。出来るだけ身につけておいて欲しい」 そういうことかと思ったね。 朝比奈みゆきは、朝比奈さんが北校を卒業した後で北校に入学し、朝比奈さんの後釜としてSOS団に入ってくる予定らしい。学校でむやみに能力を使ってしまわないようにと考えた長門の配慮なのだろう。 そしてこの花言葉を選んだ理由は、朝比奈みゆきが思念体と人の仲を取り持つような生い立ちをしてきたからなのかもな。それに確かアイリスには、他の花言葉もあったような気がする。 「うわあ、とっても綺麗……。長門おねえちゃんありがとう! じゃあこれは代わりにあげちゃいます。あ、お揃いがいいな」 と言って、自分の髪留めを長門のと同じ形の雪の結晶に成形した。おいおい、誰か他のやつに見られやしなかっただろうな。 「僕も満足した。なぜか長門はこれを僕に触らせようとしなくてね。ほら、返すよ」 藤原が朝比奈みゆきに髪飾りを渡し、そしてみゆきの髪飾りを受け取った瞬間、パキン。という不穏な音が周囲に響く。 「あ」 藤原が髪飾りを掴み割ってしまったのを見て、全員が思わず声を出した。 長門は無駄のない動きでみゆき製髪飾りを藤原から掠め取ると、 「……あなたにはもう触らせてあげない」 「な……」 藤原は怪訝な顔をして、そういうことか、と呟く。 藤原と長門がそんなコントをしているとき、朝比奈さんがぱたぱたと近づいてきて、 「待たせちゃってごめんなさい。あ、長門さんとみゆきちゃんも一緒みたいで良かった。みんなの着替えが終わったからそろそろ写真を撮るみたいです。あそこの木の下に集合って言ってました」 朝比奈さんは、オレンジというよりは山吹色と表したほうが相応しい着物に身を包み、素人目からでも分かるその良質な作りの服は、それだけでいずれかの童話にナントカ姫として出てきそうな程彼女を引き立てていた。 と、この和服姿とは別に、俺は朝比奈さんの姿を見ていて一つ思うところがある。 今回の異世界騒動なのだが、タイミングが良いのか悪いのか、この朝比奈さんは《あの日》の裏で起きていたこの事件を知らないのだ。大人の朝比奈さんが知らなかったので当然なのだが、これはもしかして、小さい朝比奈さんの負担を減らそうという未来の長門の配慮だったのではないだろうか。朝比奈みゆきに髪飾りを譲ったり、あいつは自分のことよりも周りを優先させてしまう節がある。それを考えても、やはり俺たちが一緒に過ごせる時間のなかで、長門のために俺たちが伝えられることはすべて伝えて行きたいと切に思う。 それに未来では朝比奈さんも待っているし、みゆきだって藤原だっている。考えてみれば、俺の子孫とハルヒの子孫がそろえばSOS団が結成出来そうだよな。 出来れば、俺はそうなって欲しいと願いつつ。 「みんな集まったみたいね! じゃあ早速この色紙に未来へのメッセージを書いて頂戴。未来って言っても大人の自分にじゃなくて、遠未来の未来人に向けたものよっ」 「なんだ、タイムカプセルの準備はしてないみたいだが、しないのか?」 「気付いたんだけどね、タイムカプセルは自分たちで掘り起こすべきであるイベントなのよ。それにあたしたちの行動は未来にとって常識レベルの歴史になってるはずだし、あたしたちの生み出したものは石油並みに生活に必須なものとして使われているんじゃないかって思うわけ」 あながち間違いでもないことを揚々と言い切るハルヒは、 「だからタイムカプセルを残したところで、未来人にとってはあたしたちが石炭をお宝として見つけるようなもんでしょ? それより、SOS団からのありがたいメッセージがあったほうが喜ぶはずよ。ってことで、みんなで寄せ書きをしてそれを埋めようってことにしたの」 ふふんと誇らしげに胸を張る。なにが誇らしいのか俺には分からないが、良案なんじゃないか? なんてったって紙は安全だからな。奇怪なメカや珍妙な物体が長い間箱の中に入ってるよりましだ。 俺が将来このメッセージを掘り起こすであろう朝比奈さんたちの身を案じていると、くっくっと特徴的な笑い声が聞こえ、 「涼宮さんは面白いことを考えるね。この場に来てしまうのは正直気が引けたんだが、理由もなく断るような真似をしなくて正解だった。ほんとに楽しいね、ここは」 ハルヒも長門も朝比奈さんも相当に男の目を引っかけるのだが、俺の目はそれに少々慣れていたのかも知れない。 普段と変わらぬ口調と服装のアンバランスさが何らかの効果をもたらしているのか、緋色の着物姿の佐々木は文句なしに美人だった。 「ほら、佐々木さんに見とれてないで、あんたからまず書いちゃって。もし面白くないことを書いたりしようものなら、なにが面白かったのかをみんなの前で説明させるからね」 ぐっとくる台詞を言うじゃないか。なんせ、これが冗談じゃないっていうんだからな。 ここでの面白いとは何のことを言うのだろうと思いつつ、俺はハルヒから渡されたサインペンと色紙を構える。何を書こうか。 「そうだな……」 ここは一つ、未来のSOS団結成に足りない俺とハルヒの枠を埋めてもらって、あっちのほうでSOS団を結成してもらうように頼んでおくか。 俺はスラスラとペンを走らせて、その辺でアホな面を下げていた谷口へと色紙を手渡す。 すると谷口は「ぎょっ」というありえない悲鳴を出し、 「おいおい。ポエムの件に関しちゃあ俺も書くように言ってたからよ、たとえラブレターを読まされても文句は言わん。まさか本当に書いちまうとは思ってなかったが……。しかしだなキョンよ。こんなところでまでノロけられちゃあ流石に滅入るぜ?」 何を言ってるんだなんて言葉はお前には飽きるほど言ってきたと思うんだが。いい加減俺にも分かりやすく物事を話してくれると助かる。 「貸しなさい」とハルヒは色紙をひったくると、俺が書いたメッセージを見るやいなや顔を朱に染めて、 「……ばっ! あんた、なんてこと書いてんのよ!? バカじゃないの、このエロキョン!」 いやあ罵られている理由がまったくの不明であるがゆえに、こちらとしてはなんともリアクションがとれないぜ。 一体いま何が起きているのかを確認しようと、俺も再度自分の言葉を確認してみると、 「げ」 どうやらとんでもない齟齬が発生しているらしいということに気がついた。 「ち、違う! これはそういう意味じゃないんだって!」 「おや、ではどのような意味なのです? そのままの意味ではないのですか?」 小憎らしいスマイルを浮かべて俺をなじる古泉。さっきの仕返しをしてきやがるとは、お前も中々やるようになってきたじゃねえか。いいだろう、覚悟しろよ古泉? 今からお前が未だかつて見たことのないほど頭を下げて降参する男の姿を見せてやる。 そんなこんなを言いながら、全員が集合していることもあって、場内ははやしたてるように一気に騒がしくなった。が……。 俺は、自分の書いた言葉に対するみんなの誤認を強くは否定出来なかった。 一人の少女の憂鬱から始まった物語。 それはいつの間にか俺たちの物語となって、これから先の未来へと続いていく。 しかしまあ、俺はここらで、未来に向けた俺とハルヒのメッセージをもって長く続いたこの物語に一応の節目をつけておこうと思う。 まず、我らが誇るべきSOS団創設者であり絶対不可侵なる団長、涼宮ハルヒの言葉はこれだ。 『未来永劫、SOS団に栄光あれ!』 みんなで撮った集合写真を見せられないのが悔やまれる。みんなこの言葉を胸に、相当良い笑顔をうかべていたんだぜ? そして最後を締めくくるのは、僭越ながら俺の言葉である。 先に言っておくが、俺はSOS団と、みんなと、そして何よりハルヒに出会えて最高に良かった。 そんな俺が書いた言葉は……、 『俺とハルヒの子供をよろしく』 さて。 この言葉が将来どんな意味を持つことになったのかは――禁則事項だ。 涼宮ハルヒの団結 完
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ハルヒ「なっなによこれ!」 ハルヒが目を覚ますと目の前は真っ暗だった 目隠しの黒布がハルヒの視界を妨げていたからだ それだけではない 手は後手に、足はM字開脚の形で縛られている おまけにハルヒは気付いていないが服装は体操服にブルマ姿だ 「誰よっ外しなさいよ!!」 叫んでも人が来る気配はない 疲れた。お腹もすいた。そして膀胱の方にも水分が… ハルヒはだんだん声を出さなくなった こんな姿を誰かに、とくにSOS団の仲間に見られたら… でもずっとこのままなのはいや… 古泉「変ですね…」 キョン「どうしたんだ、いきなり」 古泉「閉鎖空間が発生しました…しかし、どうやらいつものものとは様子が違うようだ」 キョン「それは…この世界の危機ってことなのか?」 古泉「いえ…はっきりとは分かりませんが、そういうわけではないようです」 キョン「どういうことだ。わかりやすく説明しろ」 古泉「すみません、僕にもよく分からないんですよ。とにかく、僕は今からアルバイトです」 キョン「おい、…俺も、連れて行け」 俺は舌打ちをした 肝心な時、頼りになる長門はいない そもそも古泉がその違和感を感じたのは俺と二人になった帰りの電車の中だ 「やはり変です…」 「だから何がだ。主語を先に言え」 俺の苛立った声に古泉はまたすみませんと言って少し微笑んだ 場を和ませるつもりで笑ったのか、癖なのかは知らんが俺はそれにまた苛立ちを覚えた 「閉鎖空間の入口が確認できません」 「なんだって?」 「…今までこのようなことは経験したことがありません。……異常事態とでも言いましょうか。」 古泉もその小綺麗な顔から笑顔を消した その顔は俺には必死に言葉を探してるように見えた 「……涼宮さんの精神が不安定な状態にあるのは確かです。ただ、この世界に直接影響があるわけではない……です、だから、僕には閉鎖空間の入口が確認できません」 ラッシュ時間でもない、電車が通り過ぎたあとの閑散とした駅のホームで俺たちは夏でもないのにやたらと汗をかいていた 今日はSOS団の活動はなかった ハルヒの姿も見ていない。ハルヒは欠席だったから めずらしいなと思ったが大して気にとめなかった しかしハルヒの家に連絡すると今朝確かに家を出たという 俺は古泉を連れて学校に戻った 俺はもうすぐ下校時間になろうかという校舎内を古泉と探し回った ハルヒの携帯はまったく応答がない もう時間がない 校舎のはずれの普段は使われていない第二実験室、鍵がかかっていないことを不審がる暇もなく俺は扉を開けた そこには、縛られた体操服姿のハルヒが、 「だっ、誰よ、誰なのっ」 ほこり臭い部屋の机の上、がくがく震えているそいつをやっと見つけ 俺がまさに声をかけようとしたときだ 「やだっ、いやぁ…いやあああ見ないでえええ!!」 ハルヒの盛大な放尿ショーだった びくびくしながら尿は音を立てて板張りの床を打つ うっすらほこりの積もった床の色を変えてゆく 思わず、俺はその場に立ち尽くしていた 「ハルヒ!」 我に返って駆け寄ったときにはハルヒは失神していた とにかく腕やらを縛る紐を解いてやる 扉の音と足音に振り向くと反対側を探していた古泉、そして長門も一緒だ 「…閉鎖空間は解除されました。……おそらく、これが彼女の望んだ…」 古泉が手で口元を押さえてうつむく 「……長門」 俺の言葉に長門は無言で頷いた 「…涼宮ハルヒ」 ぽつりと呟いた長門の言葉は俺にも古泉にも、もちろんハルヒにも届かなかった 終わり ハルヒ「キョン、……しないと死刑よ!」 みくる「私も死刑でお願いします!」 古泉「僕も!僕も!」 鶴屋「私もにょろ~!」 長門「私も」 ハルヒ「じゃ、じゃあ……私も」 キョン「よし、お前死刑な」 ハルヒ「二班に分かれるからクジ引いて頂戴!」 …… ハルヒ「あ、私は印入り」 キョン「無印だな」 古泉「無印のようです」 長門「無印」 みくる「無印です」 ハルヒ「……え?……あれ?」 キ・古・長・み「では、そういうことで」 ガタッ ハルヒ「ちょ……何よこの展開……あれ……涙が……」 「ねえ、みんな最近不思議な事件とか見つけた?」 「………無い。」 「残念ながら僕も見つけられていません、努力はしているはずなんですがね。」 「ホントにぃ?ちゃんと探せばきっとそこら辺に転がってるはずよ。」 「謎がそこらへんに転がってりゃ今まで苦労はしてないぞ、ハルヒ」 「うっさいわね、雑用の癖にー。」 「あ、そういえば私今日こんなこと聞きましたぁ」 「え?なになにみくるちゃん?」 ハルヒ「………」 ハルヒ「なに一人でやってんだろ私」 ハルヒ「みんながこなくなってから約一ヶ月か……」 ハルヒ「………寂しいよみんな。」 ハルヒ「今日は私の誕生日よっ!!さぁ、祝いなさいっ!」 キョン「はあ、結構期待してたのにな…お前にはガッカリだよ。じゃあな」 ハルヒ「へ?」 古泉「どうやら僕は涼宮さんを買い被っていたようですね。では行きましょう朝比奈さん」 みくる「う、うん」 ハルヒ「ちょ、ちょっと…」 長門「私は…」 ハルヒ「有希…」 長門「今日という日を楽しみにしていた。期待外れ。帰る」 ハルヒ「あ…」 ハルヒ「なによなによなによみんなしてっ!エイプリルフールが誕生日じゃ悪いって言うのっ!? バカー!」 ウワァァン ハ「ポケモンするわよ~」 キ「古っ」 み「今時でですか!?」 有「今はムシキングの時代」 ハ「みんなっひどい・・・」 ハルヒはそういい残すと涙を隠しながら部室から逃げるように出て行った キ「いやぁポケモンしてるの気づかれなくてよかったよ」 み「本当です」 有「・・・」 キ「ばれたら俺のパーティ全体マダツボミにされちまうぜ」 み「涼宮さんが持っていたの赤っぽかったですけどね~」 キ「ええ」 キ「え?」 「この中に、宇宙人、未来人、異世界人、 超能力者などがいたら私のところに来なさい 以上」 何を言ってるんだこいつは 「宇宙人なんていない」 長門・・・ 「未来人なんていません そんなのただの妄想にすぎません」 朝比奈さん・・・ 「超能力者?寝言は寝てから言ってください」 古泉・・・ 「う・・・みんな・・・信じてないわけ?・・・いいよもう・・・うぅ・・・」 古泉「過疎ですね…ここは一つ、スレを盛り上げるという名目でSSでも書きませんか?」 キョン「俺はハルヒが拉致られて無理矢理獣姦させられる物語を所望する」 みくる「わ、私は涼宮さんが大学生グループに輪姦される話がいいと思いまーしゅっ!」 長門「変態にダルマにされ、調教される涼宮ハルヒの物語が読みたい」 ハルヒ「あんたら私になんか恨みでもあるの?」 そりゃあ、もう ハ「野球するわよ~」 キ「嫌だ」 み「嫌です」 長「嫌」 古「それはちょっと断らせて・・・」 ハ「古泉君だけ賛成ね みんなSOS団員という自覚が足りないんじゃないの?」 ハ「今日は私の誕生日よ 祝いなさい」 キ「嫌だな」 み「それはちょっと・・・」 長「嫌」 古「僕の意見としても個人を祝うのは・・・」 ハ「古泉君だけしか祝ってくれないわけ?」 ハ「はぁ・・・やっぱり古泉くんだけしか頼りに出来ないわ」 古「ははは 僕はメス豚には興味ありませんよ」 ピルピルピルピピルピー♪ キョン「お、ハルヒからメールか」 From ハルヒ Sub 無題 本文 助けて殺されちゃ( _ ) キョン「うぜっ、『迷惑メールすんなっ!』と…送信」 続く デーデーデーディードードーディードー♪ みくる「チッ、誰だよこんな時間に…げっ、涼宮じゃん!」 From ハルヒ Sub 無題 本文 SOS! みくる「うぜぇっ!!はいはい『団』とでも答えればいんだろうがよぉ!意味わかんねぇよ糞ビッチが!死ねっ!…送信」 続く ブルルルルル♪ 長門「メール」 From ハルヒ Sub 無題 本文 ナニちけτぇー(uдu) 長門「涼宮ハルヒ…」 長門「涼子ぉ、メールきたー」 朝倉「はいはい、あんたもメールくらい自分で打てるようにならなきゃダメよ?」 長門「うん」 朝倉「……『ヤッポー(^∀^)ノシ ユッキーナニ゙よ。メールありがとね(はぁと×7)よくわからなL1けどくU゙けナニらナニ゙よ(*^v^*)b』…送信。」 続く ハルヒ「なんで誰も助けに来てくれないのよぉ!」 古泉「もう理解出来たでしょう?誰もあなたを必要としていないのですよ。もちろん、僕達も…」 ハルヒ「そ、そんなことないっ!そうだ、鶴屋さんなら…」 古泉「アドレス知っているのですか?」 ハルヒ「う……じゃ、じゃあ阪中さんに…」 古泉「アドレス知っているのですか?」 ハルヒ「………」 古泉「誰もあなたを助けに来ませんよ。皆、あなたの被害者なのですから…」 ハルヒ「なによそれ……全然意味分かんないっ!」 古泉「あなたも…変な力を持たなければ…普通に生きて行けたでしょうに……残念ですがこれが《機関》の総意ですので、さようなら涼宮さん」 ハルヒ「待って行かないで!出してよ!ここから出してっ!」 古泉「………やれ」 新川「………はい」 ハルヒ「いやあああぁぁぁぁ!!!!」 私はSOS団恒例の不思議探索の待ち合わせ場所でみんなを待っていたら 「ちょっとみんな遅れるからそこで待ってて」 「みんなってなによ?みんなキョンと一緒にいるの?」 「詳しくは後で話すからとりあえずそこで待っててくれ」 「あっ!ちょっと待ちな…………切れた」 キョンからこんな電話がきた。みんなで私を待たせるなんてどういう気かしら? ……もしかしてサプライズパーティ?みんな今日が私の誕生日なの覚えててくれたのかしら? と、ワクテカしながらみんなを待ってた。 翌日 「30分待っても来ないから先に帰っちゃったわよ」 と、私が言うとみんなは口を揃えて 「なんだよ。あと5分も待っててくれれば着いたのに」 …オカシイよね。三時間も待ってたのに。 ハルヒ「誰……? 正直に言いなさい……今ならまだ許してあげるわ……」 キョン「……」 長門「……」 みくる「……」 古泉「……」 ハルヒ「……誰かがやらなきゃこんなのここにあるわけないじゃない……往生際が悪いわね……」 キョン「……」 長門「……」 みくる「……」 古泉「……」 ハルヒ「……もういいわ!! みんな見損なったわ!! ……こんな子供みたいなことして……」 キョン「……」 長門「……」 みくる「……」 古泉「……」 ハルヒ「……部活の邪魔ね! 片付けなきゃ……!」 そう言ってハルヒは団長机に盛られた特大の糞を片づけ始めた。 ガチャ ハルヒ「やっほ……って誰もいないわね…… ……? ……このお茶は……?」 ハルヒ「みくるちゃん一回来たのかしら……? まあいっか、頂いちゃお」 ゴクゴク ガチャ! ダダッ キョン「ハルヒ! お前そのお茶を飲んだのか!?」 ハルヒ「え……ええ……なに……? なにかしたの?」 長門「そのお茶には……何者かが入れた猛毒が……」 ハルヒ「え……ええっ……!!? ちょっとちょっと……嘘よ! 嘘でしょ!?」 キョン「ハルヒ、腹を出せ!! まだ間に合うかもしれない……オラァァァ!」 ボグッ ハルヒ「ウァ…アガァ……キ……キョン……!? なに……を……?」 キョン「いいから腹を出せ!! 今なら殴れば逆流して吐かせられる!」 みくる「涼宮さん! このままじゃ死んじゃいますよ! 早くお腹を出して下さい……!!」 ボグッボグッ ハルヒ「ウグッ!! オエッ!!」 ゲロゲロ キョン「あっ……よかった、吐いたな危なかった……! ハルヒ大丈夫か……!?」 ハルヒ「うっ……ううううっ……お腹痛いよ……キョン……」 キョン「ソファで安静にして待ってろハルヒ! 俺達はお茶に毒を入れたやつを探してくる!」 ガチャ バタン! ハルヒ「ううっ……痛いけど……キョン……ありがと……」 キョン「いやぁ、流石長門だな。こんなストラト解消法なんて考えもしなかったぞ」 みくる「慌てたりお腹痛そうにしてたのがもう、すっとしましたねぇ!」 長門「……これぞ最強のいじめ……」 祇園精舎の鐘の声、諸行無常のハルヒあり。 娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす。 おごれる人も久しからず、唯春の夜の夢のごとし。 たけき者も遂にはほろびぬ、偏に風の前の塵に同じ。 キョン「ということで、おまえは塵だ、ハルヒ」 みくる「ばいばいき~ん」 古泉「去ね去ね!」 長門「・・・やれやれ」 ハルヒ(´・ω・`) キョン「だいたい、ハルヒに気に入られたからといって、罰金だの死刑だの、 知ったことではないんだが・・・」 長門「私の任務は観察であって、世界が崩壊したとしても不都合はない」 古泉「そういえばそうですね。僕もキャラ作りに疲れました。 あなたとゲームをする以外に楽しみもありませんでしたし」 キョン「俺はSOS団なんてわけのわからん組織はやめて、普通に生きていくことにする。」 古泉や長門と遊ぶのは学校帰りでもいいんだし」 みくる「そんな~,わたしが困りましゅ~」 長門「黙れ、雌犬・・・」 古泉「乳揉ませろや、このポンコツ」 キョン「確かに、朝比奈さんはおかず以外には役に立たないな」 みくる ( ´・ω・) ハルヒ「やっほー、全員そろってるわね」 キ・古・長・み「お前は引っ込んでろ」 ハルヒ (´;ω;`) 鶴屋「めがっさにょろーん!!」 キョン「うるさい」 ハルヒ「そうよ!そうよ!あんたうるさいのよ!」 鶴屋「にょろ~ん…」 キョン「うるさい黙れ」 ハルヒ「そうよ!お黙りなさいよ!!」 キョン「お前に言ってんだよバカ!鶴屋さんの声が聞こえないだろ!!」 ハルヒ「( ´・ω・`)アレ~?」 ガチャッ キョン「うぃっす」 ハルヒ「遅いじゃない」 中に居たのはハルヒだけだった、そうかじゃあ帰るか ハルヒ「ぐおしゅ!!ま、待て!待ちなさい!」 キョン「なんだよ!俺になんか用か?」 ハルヒ「いやだってさ…その…部活していきなさいよ!SOS団でしょ!」 キョン「そんな言葉で俺が買えるとでも?」 ハルヒ「いや買うって…じゃあ値段は体で払うわ♪」 キョン「お疲れ様でしたー、鍵は閉めて帰れよ」 ハルヒ「……」 「うう、寒い。今日はまた一段と寒いなぁ。今日の最高気温10度だってよ。風邪ひいちまうぜ。」 バサッ 「?...毛布?」 「別にあんたのためにかけてあげたんじゃないんだからねっ!」 「ハルヒ、ツンデレはもう時代遅れだ。さっさと消えろ。」 「うっ...。」 「泣くんじゃねえよ。キモい。」 ハルヒ「ちょっとキョン大変よ!」 キョン「なんだ、うるさいな」 ハルヒ「っ!…うるさいですって!……まあ、いいわ。それより部室がなくなっちゃったのよ! きっと生徒会のやつらよ!」 キョン「それがどうしたんだ?」 ハルヒ「え?」 キョン「要件はそれだけか?じゃあ、俺は長門たちと遊ぶ約束があるから行くぞ」 ハルヒ「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!SOS団の危機なのよ。どうにかしようと思わないわけ?」 キョン「思わないね。元々、俺たちはお前が勝手に始めたことに無理やり付き合わされてきただけだからな」 ハルヒ「な」 キョン「部室が没収されたのだって長門が文芸部を退部して廃部になったからだ。終わりだな?俺は行くからな」 ハルヒ「ちょ……キョン… 行っちゃった……なんでよ…… キョン「あ、そうそう」 ハルヒ「キョン!?(戻ってきてくれた!)」 キョン「お前、後からついてくるんじゃないぞ。さめるからな」 ハルヒ「………」 キョン「朝比奈さんがハルヒと接触したということは、既定事項が成り立っていないんじゃないですか」 みくる「!! そうでしゅね。キ、キョン君、私と付き合ってください」 キョン「もちろんですよ」 キョン「ということで、朝比奈さんと付き合うことになった」 ハルヒ「団内で恋愛なんて認められないわ」 キョン「じゃあ、やめさせてもらう」 古泉「僕と長門さんもやめなくてはなりませんね」 長門「・・・そう」 キョン「じゃあ、帰るか」 古泉「そうしましょう」 ハルヒ「ちょっとみんな、待ちなさい」 みくる「もてない人は悲しいですね~」 長門「いつまでも電波ばかり発しているからもてないことに気付くべき」 ハルヒ (´・ω・`)
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だんだんあの嫌な暑苦しさも徐々に消えてきて、もうそろそろ秋の到来を感じさせる季節…でもないが、中々涼しい。 まぁ俺が言いたい事はいつもの変わらない日常生活を送っているという事だ。…非日常的ではあるがな。 俺がいつものように見慣れた部室の戸を開けようとすると、中からもんのすごい奇声が聞こえてきた。 「ひ、ひぇぇぇぇぇえええええー!!!!!!!!」 俺は反射的に部室の戸を開ける。メイド服に着替え中の朝比奈さんが迎えてくれた。 だが様子がおかしい。何かあたふたしている。 「キョ、キョンくんっ!見ないでぇ~!!」 俺は慌てて朝比奈さんの発言が終わる前に部室から出た。赤面し、尚且つあたふたして混乱している朝比奈さん…まずい、鼻血が出そうだ。 少しの静寂の時間の後、弱弱しい声が聞こえてきた。 「入っていいですよぉ~…」 「あ、はい。」 いつもの朝比奈さんのメイド服。特に変わった様子はもう見られないが…さっきの奇声はなんだったんだ? 10分も経たない内に次々と他の団員が入ってきた。ハルヒは何故かニヤニヤしていたな… 「みくるちゃん!どうだった!?」 「ふ、ふぇ?何の事ですかぁ…?」 「いや、いいのよ!そんな事より新しい靴を新調したの!みくるちゃんに似合うかしら?」 靴を新調…?一体何故。またよからぬ事を考えてなければいいが… 「さあみくるちゃん、履くのよ!」 「は、はあ…。」 朝比奈さんが怪しい靴を履いたと同時にさっきと同じ奇声が部室中にこだました。 「ひ、ひぇぇぇぇぇえええええー!!!!!!!!」 『カシャッ、カシャッ!!』 「いいわよ、みくるちゃん!もっと喘ぎなさい!!」 「また画鋲がぁぁー!!」 「おいハルヒ――」 「――何をしているのです!!涼宮さん!!」 …俺が言おうとしていた言葉を古泉が代役して言ってくれた。 「何って、みくるちゃんの痛がってる写真を撮ってるのよ。最近刺激が足りないと思ってたのよね~。」 「朝比奈さんを玩具のようにして楽しいのですか!?」 古泉の様子がおかしい。いつものスマイルが嘘かのように眉間にシワを寄せている。 「な、何よ古泉くん!団長にそんな口答えしていいと思ってるの!?」 「いい加減にしてください!そんな目的の為に彼女を足を傷つけるなんて!!」 「そんなにみくるちゃんが大切ならみくるちゃんと一緒に出て行きなさいよ!!」 神人と超能力者の口喧嘩…果たして、勝敗の行方は!?って、こんな事を悠長に言ってる場合ではない。誰かが止めないとどんどんエスカレートしていくぞ。 俺は長門にSOSの視線を当てたが、長門はすっかり本に見入っている。朝比奈さんは呆然と2人の口喧嘩を見ているし…やはり俺しか居ないのか! 「だいたいあなたは何処まで我侭なんですか!」 「まぁ待て古泉。お前の気持ちは痛い程よく分かる。だがここは落ち着いて」 「これが落ち着いていられますか!」 「しかしだな。」 「少し黙っててください!」 すいません、朝比奈さん…正直これ、止まりません。ストレスを…持て余す。 「もういいわ!!もう古泉くんとは口を聞かないから!フンッ!」 団長様は席にどっすりと座ってそっぽを向いてしまった。頬には雫が流れているように見えるのは気のせいだろうか。 しかしらしくないな…古泉の奴。堪忍袋の尾が切れた、というやつだろうか? するとすぐに古泉の携帯が鳴る。例の空間が出現したか。 「ハハハ、酷い醜態を見せてしまいましたね。では僕はこれで失礼します。」 「朝比奈さんの足は俺が絆創膏でも貼っといてやるよ。」 「ありがとうございます。」 そして下校時。あの時はSOS団はどうなるかと思ってひやひやしたね。 だがその不安はある光景によって一瞬で消し去られた。 俺の目の前には、素直にハルヒに謝っている古泉の姿があったんだもんな。 少し照れくさくスネているハルヒの顔を見るとハルヒも許している様子。可愛いな、あの顔。 その日をきっかけにハルヒと古泉が一緒に帰るようになった。正直羨ましい。 一般的に言うと、『付き合っている』のだ。『デキている』のだ。『カップル』なのだ。 しつこいな俺…少し嫉妬心があるのかもしれない。 ハルヒと付き合うとはなんと生意気な奴…!古泉のくせに…!! end
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俺は今奇妙な状況下に置かれている。 …というのもあの凉宮ハルヒに抱きつかれているというのだから戸惑いを隠せない。 普段のハルヒがこんなことをしないのは皆さんご存じだろう。 まぁ、とある事情があって普段のハルヒではなくなっているからこうなっているわけだ… そのとある事情を説明するためには少々過去に遡らねばならん(←こんな字書くんだな) いつもの通り俺たちSOS団は文芸部の部室にいた。 まぁ、いつもと一つ違うと言えばこの砂漠のような部屋に俺の心のオアシス… そう、朝比奈さんがいないことぐらいだ。 さっき廊下でたまたま会った鶴屋さんの話によると夏風邪らしい。 やはり日頃の疲れが貯まっていたのだろう そこの団長の特等席でふん反り返ってる涼宮ハルヒのせいで… と、俺が色々と考えながらハルヒを見ていると 視線を感じたらしいハルヒがこっちを睨んで言った 「なに!?暑いんだから視線を向けないでよ!」 「……」 いつもだったら何か捻った言葉の一つでも返すのだが、暑すぎて何も返せなかった。 続けてハルヒが言う。 「まったく、ボーっとしてるんならクーラーかみくるちゃんを持ってきなさいよ」 こんなに暑いのに口の減らん奴である。しかもまた無茶なことを… 「無理に決まってるだろ。朝比奈さんは病気だし、クーラーを買う金もない。」 俺は必要最低限の返答をした。 その返答に対してハルヒは「知ってるわよ!バカキョン!」 逆ギレかよ…。そうとう不機嫌だな今日は。 しばらく沈黙が続いて部屋には長門が本をめくる音だけが響いた。 バンッ!! 突然ハルヒが机を叩き立ち上がった。 俺と古泉はぼんやりとしていた脳への突然の刺激に驚いてハルヒの方を向いた。長門は……まぁ、そんなことぐらいでは反応しなかったな。 「お酒を飲みましょう!!」 「………ハァ?」 感情が素直に言葉として表れた。わりと考えてからものを言うタイプなんだがな。 「暑い日はビールに限るってうちの親父が言ってたのよ!」 そんなに目を輝かせるな。 「なに言ってんだ。未成年だろ俺たち。しかもここは学校だ」 もっともである。これに異議を唱える奴(不良以外でな)がいたら俺の前に出てこ… 「はあ!?なに堅いこといってんのよ!せっかく高校生になったんだからバレなきゃいいのよ!」 …いたよ。それも目の前に。 「しかもここで飲むなんて、そこまであたしはバカじゃないの」 さすがにそこはわかってるらしい。 「ああそうかい。じゃあ早く家に帰って一人で…」 「は?何言ってんの?」 人が話してんのにこの女は…。 人の話は最後まで聞くって教わらなかったのか? アメリカの映画の口論みたいな奴だ。 と不満を脳内でぶちまけていたのだが 俺はまたハルヒのイカレタ発言を耳にすることになる。 「キョンの家でみんなで宴会に決まってるじゃない」…皆さん、今この人はあたりまえみたいに言いましたけど決まってはいないですよね? 俺の脳内のたくさんの俺による俺会議の結果、満場一致で反論することが決まった。 「なに勝手に決めてんだ。いい加減にしろ。だいたい…」 俺がいいかけると読書中の長門が呟いた 「…………閉鎖空間」 おいおい嘘だろ?こんなことぐらいで・・・ そう思い古泉を見ると、腹が立つくらいの笑顔で頷きやがった ムッとした例のアヒルみたいな口でハルヒが言った。 「だいたいなによ」 お前はいつもいつも…と言おうとしていたのだが、あの言葉を突き付けられてしまっては…… 「だ、だいたい俺の親が許可するかどうかわからないしだな」 …あれ? うわぁ~ミスったよ!親さえ良ければ家でいいみたいじゃねえか! 「なるほど、それは考えてなかったわ。じゃあ今聞いてみなさい」 やっぱりね。うん。わかってたぞ。なんだかんだでハルヒとの付き合いも長いしな。 言ってしまったものは仕方ない。 俺は携帯から自宅に電話した。 しばらくかけていると母親が出た。 どうしたの?とか聞かれたが手短に済ませたかった俺は本題に入った。 「あのさ、家で酒とか飲んだらダメだよな?」 頼む!ダメだと言ってくれ!親がダメと言ったならハルヒも諦めるだろ。 そのためにわざわざ否定疑問文で訊いたんだ。 「いいんじゃない?もう高校生なんだし。外で飲んで警察のお世話になるよりいいわよ」 …そうだった。俺の親は割りとさばけた人間なんだった。 俺は電話を切った。 「いいお母さんね。キョンと違って話の分かる人よ」 うれしそうにしやがって。つーか笑顔は本当にかわいい奴だ。 ワガママにもいい加減慣れてきている自分が少し嫌だ。 そんな感じで俺らSOS団は雑用係である俺(言ってて悲しくなってくる)の家で 宴会を開くことになった。 待て待て、まだ俺の話は終わりじゃないんだ。 少し愚痴らせてくれ 家に向かう途中で酒を買えれば良かったのだが、もちろん制服姿の奴に売ってくれる店はない。 つまり俺はハルヒ達を一度家に案内して着替えてから買いに行かねばならんのだった。 もちろん私服がないという理由で俺ひとりで買いにいったさ。 まあ、奢りじゃないだけマシか…。 「じゃあ行ってくるけど、部屋荒らすなよ?特にハルヒ!」 そう言い残して俺は家を出た。 冒頭で言ったように外は暑い。いち早くクーラーの効いた部屋に帰還するため俺は急ぎめで買い物を済ませ家に向かった。 ちなみに店員はあきらかに二十歳に達していない女子高生だった。 はたして俺はいくつに見られたのだろう? など考えながら家に着いた。部屋のドアを開けるとクーラーが効いていて、まるで天国のようだった。 「買ってきたぞ」 俺は溜め息混じりで言った。 「お疲れ様です」 と古泉が言ったので、「ああ疲れたよ。畜生!」と心の中で思ってると 「………お疲れさま」 と長門が蚊のなくような声で言ったのを俺はしっかりと耳にした。 普段無口な長門に感謝されると行った甲斐があるというものだ。 と少し感動していると 「10分ちょっとね。まぁ、キョンにしてはなかなかのタイムね。お疲れ様」 ハルヒの言葉に俺はややムッとしたが気にしていてはきりがない。 「部屋荒らしてないだろうな?ハルヒ? 俺は先ほどの怒りの分も込めて言ってやると、 「あ、荒らしてなんかないわよ!」 ハルヒが心外だという顔で言った。 実に怪しいものだが、ちょっと荒らしたぐらいじゃ見られて困るようなものは見付からないだろうしな。 「そうか」 とだけ言って床に座った。 その後、機嫌が少し悪そうなハルヒをフォローするため古泉が 「乾杯の合図は団長が」 など言いながらハルヒに缶チューハイを渡し、 古泉の気遣いに気を良くしたハルヒのやたらテンションの高い乾杯で、ハルヒ曰く「第一回SOS団夏休み直前祝いの宴会」が始まった。 いや、始まってしまったの方がしっくりくるな。 そこからが大変だったのだ。 俺とハルヒは父親がかなり飲むらしく、全然酔わなかった。 古泉はあまり飲まないし、少し顔が赤くなる程度でいつもと変わらずだった 意外だったのは長門だ。俺の個人的主観では長門はこの中で一番酒に強い! ということになっていたのだが、それは大きな検討違いだったらしく、 一口、二口飲むと、まるで人形のように倒れ込み、そのまま眠ってしまった。 それを見たハルヒが 「有希ったらだらしないのね~」なんて楽しそうに言っていた。 どうせ酔うなら、ベラベラとハルヒぐらい喋る長門や、笑い続ける長門も見たかったが おそらく収拾に困っただろう。 それにしてもハルヒは飲む。気付けばハルヒの横には空の缶が4本も並んでいる。 心配になり 「飲みすぎじゃないのか?」 と声をかけたが、 「こんなのジュースと同じよ!!」 と言われてしまった。 本人が一番自分を分かっているだろう。 俺はハルヒのことはあまり気にかけず、テレビを見た。 長門は息をしてるか不安になるくらい寝ていて、俺と古泉はあまり飲まずにテレビをみて、ハルヒは飲みながらテレビを見ていた。 興味深い番組に夢中になっていたため気付かなかったが、 時計はまもなく10時30分を指そうとしていた… ふとハルヒの方を見ると、そこには目の座った完全な酔っぱらいがいた… 俺は知っていた。酔っぱらいとは目を合わせてはならないということを、しかし、酔っぱらいと知らずに見た奴が酔っぱらいだった場合の対処方は知らない。 そう、まさに今だ… 「なあに見てんのよキョン~」 うわっ!絡まれた! 俺は酔っぱらいがどれほど厄介なものかは分かってるつもりだ。 現にうちの母親はすぐ酔うし絡むからな。 のそのそと近付いて来たハルヒは俺に抱きつくとそのまま押し倒した・・・ 「どけ、ハルヒ!重いから!」 勘違いするなよ?ハルヒの名誉のために言うが別に本当に重いわけではない。 俺は酔っぱらい(主に母親)に乗しかかられた時はいつもこう言うのだ。いわば決め台詞だな。 しかしハルヒは一行に退こうとしない。 「ん~キョン~」などと普段出さないような声で顔を俺の胸あたりに擦りつけて来る。 そんな攻防がしばらく続くと長門が目を覚ましあたりをみて開口一番にこう言った 「………帰る」 俺は喜び、叫んだ。「早くこのよっぱらいを連れて帰ってくれ!」 もちろん心の中でだぞ? しかし次の言葉で固まった。 「では帰りましょうか、長門さん?」 長門はコクッと微かに首を縦に振った。 えっ!ちょっと待てよ。涼宮さんはいいのか!? 「おい、古泉!こいつはどうするんだ!?」 俺は今まさに部屋から出ようとする古泉に訪ねた。 「ん~」 なに考えてんだ?「ん~」じゃないだろ!? 「お任せします」 笑顔でいいやがった。 「ハァ?」 今日は素直に言葉が口から出る日だ。 「おじゃましました」 そういうと俺の心の底からの疑問には耳も貸さず古泉は部屋から出てった。 続いて長門が出て行こうとしたため 俺は最後のチャンスだと思い長門に言った。 「な、長門!こいつを連れて帰ってくれ!」 「……やだ」 「やだ」って長門さん… まだ少し酔ってんだな~とか考えているうちに長門は部屋から出て行った。 俺は戸惑った。時計を見るともう11時を過ぎている。 もちろんハルヒを一人で帰らせるなんてことはできないし、 送って行くにしろ、こんな泥酔状態の奴を連れて歩いてたら警察に捕まる。 俺が必死に考えているというのに当のハルヒは今だに俺の胸あたりに顔を擦りつけ、 甘ったるい声でゴニョゴニョ言っている。 なにを言ってるんだかわからないが、俺はハルヒの方を見ていた。 しばらくすると、突然ハルヒは顔を上げ、俺の方を見て言った。 「キョンはあたしのことどう思ってるの~?」 …その刹那、稲妻が体を突き抜けた。 というのは嘘だが、 元々美人なハルヒが上目使いで、頬を赤く染め、さらには「あたしのことどう思ってる?」 と来たからには衝撃を防ぎきることはできなかった。 「ど、どうって…」 俺が言葉に詰まっているとハルヒが俺の体を軽く揺すり 「ねぇ~どうなの~?」 とか言っている。 正直この状況に俺はまだ困惑しているため、 苦し紛れにハルヒに言った。 「お前は俺のことどう思ってるんだ?」 普段のハルヒの質問に質問で返したら逆鱗に触れることは必至だが、今ならいけそうだと判断したからだ。「え?あ、あたし?」 赤い顔を更に赤くさせ、ハルヒが言った。 「そうだ。ハルヒから教えて欲しいんだ」 確にハルヒが俺をどう思ってるのか気になるしな。 今なら本音が聞けそうだしな。 財布とかパシリでないことを祈ろう… しばらく沈黙が続いた(5秒ぐらいだがな)が、ハルヒが話出した。 「…あたしは……キョンが……好きだよ///」 「へ?」 我ながら気の抜けた声である。だが本気で俺は驚いたんだ。まさかあのハルヒから好きだと言われるとは思わなかったからな。 たぶん今鏡を見たらトマトより赤い俺に似た奴が写るだろう。 頭の中がパニックになっていたが、 どうやらハルヒの話にはまだ続きがあるらしかった。 「…いつもあたしの勝手なワガママ聞いてくれるのキョンだけだし。いざという時ほんとに頼りになるし、 いつもあたしのこと支えてくれてるもん…。キョンに会わなかったら高校だってきっと辞めてた…。」 いつになくシリアスなハルヒの話を俺は黙って聞いていた。 「それに比べてあたしは……グスッ」 ……泣いてる? 確かに泣いている。人前で涙を見せないハルヒが。 泣きながらハルヒは続けた。 「キョンの優しさに甘えてばっかりだし……、かわいくワガママも言えないし……、なにかしてくれても、 ありがとうも言えないの……。いっぱいいっぱい感謝してるのに、何度も何度も支えてもらったのに…」 俺は何も言えずにいた。 「…だからね……、キョンの気持ちが知りたいの…。 こんなあたしのこと良く思ってないのはわかってる。あたしがキョンだったら、とっくに見捨ててる……。」 「でも…あんたは見捨てないでいてくれた…。 あたしは……もうキョンじゃなきゃ駄目なのよ……。 迷惑なのは分かってる。でもキョンがいないとあたしきっと壊れちゃう…。 だからキョンの気持ち聞かせて…。お願い…。 みくるちゃんみたいになるから…。キョンの理想の女の子になる……。だから……!!」 気付けば俺はハルヒを抱き締めてた。 「キョ、キョン…?」 いつもと違う弱々しくて壊れそうなハルヒを抱き締めてた。 「…違うぞハルヒ。」 そう、違うんだよ。俺が好きなのは…… そういえば今日は素直に口から言葉が出る日だったな…。 「俺が好きなのは今のままの涼宮ハルヒだ…。ムチャクチャなことばっかり言ってて、 俺を振り回して…。素直じゃなくて、怒りっぽい…そんなお前が好きなんだ!」 「……うそ」 ハルヒは驚いた顔をして声を漏らした 「ウソじゃない。お前が好きなんだ。お前が好きだ。 …さっき素直じゃないってお前に言ったが、本当に素直じゃないのは俺の方なんだよ。 お前の正直な気持ちを知ってやっときづいたんだ。お前を愛してるってな…」 こんなに自分の気持ちを表に出したのは久しぶりだった。 「いなくなって壊れるのはきっと俺だって同じはずだ。 俺も中学の時はお前と同じように毎日に退屈してたんだと思う。 でも今は違う…。お前といるのが楽しくて仕方がないだよ!」 言いたいことは全部言ってやった。 「ほ、ほんとなの?」 ハルヒが目の周りを赤くして言った。 「あぁ本当だ!」 「う、うそだったら死刑よ!?」 「残念だが死刑にはなりそうにない。」 ハルヒは再び泣き出した。 「泣いてるのか?ハルヒ?」 からかうように言ってやった。 「泣いてるわよ!あんたがやさしすぎるから!」 「なんだそりゃ?」 二人の間に自然と笑みがこぼれる。 「……ねぇキョン」 笑いがおさまると同時にハルヒが言ってきた。 「なんだ?」 「一つワガママ言ってもいい?」 「おう、なんだ?俺のできる範囲でな?」 「キスして欲しい…」 ハルヒの顔は今日最大の赤さだった。 やばいやばいやばいかわいいぞ!? 俺は焦っていたが、ふとあることに気付きハルヒに質問を投げ掛けた。 「お前酔ってないのか?」本来酔っぱらいには「酔っているか?」という質問は禁止なのだが、 俺にはハルヒが今酔ってる様には見えなかったのだ。 ハルヒは急にそわそわしだし、息を飲んでから白状した。 「え~っとね、正直途中までは酔っててあんまり記憶にないんだけど、 途中からなんだか頭がスーっとしてって少し頭がグルグルするぐらいになったのよ」 「途中ってどのあたりだ?」 「よくわかんないだけど、気付いたらあんたに抱き締められてて、 あんたが「違う…」とか言ってたの…。 なにが違うんだろうとか思ったけどあんたの腕の中が気持ち良くて、ボーっとしてたらあんたが好きだって言ってくれて、 そこからはハッキリ覚えてるのよ///」 「つまりハルヒは自分の告白は覚えてなくて、俺の…こ、告白は覚えてるってことか?」 なんて都合のいい奴なんだろう… 俺がそう思っていると、 またまた顔を赤くしたハルヒが顔を押さえて言った。「え、じゃ、じゃあ夢かと思って言ってた告白は全部現実だったの!?」 「夢だと思ってたのか?」俺の言葉により、自分が確かに俺に告白したことを確認すると、ハルヒは俺の胸に顔をうずめて 「顔から血がでるほど恥ずかしい!」 などと叫んでいる。 あえて血ではなく火だろうという突っ込みはいれなかった。 ただ俺の腕の中で悶えるハルヒの頭を撫でながら言った。 「でもあれがハルヒの本音でいいんだよな?」 ハルヒは顔を上げずに、耳まで真っ赤にして、うんと一度だけ頷いた。 「うれしかったぞ」 と言い、ハルヒは恥ずかしいらしく少し嫌がったが、顔を上げさせ、 そっと口づけた。 二回目のキスは大人の味がした・・・ キスしたあと興奮して酔いが再び回ったのか、 ハルヒはパタリと倒れ込み寝てしまった。 俺は起こさないようにハルヒをベッドに運び、寝かせてやった。 あまりに寝顔がかわいいのでしばらく見ていると 「…キョン……すき…」 とハルヒが嬉しい寝言を言ってくれた。 俺は抱きつきたくなる衝動を押さえて、タンスに向かった。 え?なんでかって? こんなかわいい彼女がいるのに、あんな物持ってたらハルヒに怒られちまうからな。 この秘蔵のビデオや雑誌はエロ谷口にでも売ってやるつもりだ。 朝起きるとまだハルヒは寝ていた。 そんなに口開けて寝やがってだらしない奴だ。 でも裏を返せば信頼されてるってことなのだろうか? 「せっかくだから寝顔でも撮っておくか…」 と呟き、携帯を取り出すとハルヒが起きた。 少々残念だが仕方ない。 「よっ!元気か?」 と俺が挨拶すると、寝癖のついた髪に重そうな瞼であたりを見回し、 昨日のことを思いだし顔を赤くして言った 「へ、変なことしてないでしょうね!?」 一言めからいつも通りのハルヒがおかしくて俺は笑って言った。 「何かして欲しかったのか?」 「バ、バカキョン…///」 いつもと違うトーンで言われたため俺まで体が熱くなってくる。 「団長命令よ。水を持ってきなさい!」 ハルヒも熱いのだろう 「はいはい」 と水を取りに行こうと廊下に出ようとすると、 「そ、それから!」 ハルヒが叫んだ。 そんなに声を張らなくても聞こえるんだがな。 「ん?なんだ?」 俺が聞くと 長門ばりの小さな声で 「もう一回キスして…」 と言ったのを俺は聞き逃さなかった…… 終わり
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~涼宮ハルヒの恋人~ 「ねぇ、キョン?」 とある秋の一日。 4限目の授業が中盤に差し掛り、俺が睡魔と空腹という二匹の魔物を相手に何とか互角に渡り合っていた最中である。 俺の後ろの席の女子生徒、つまり我らがSOS団団長・涼宮ハルヒが、 いつもの様に俺の背中をシャーペンで突いてきた。 団長様はまたトンデモ計画をお考えになったらしい。 (やれやれ…)といつもの様に思いながら 「なんだ?ハルヒ」 そう言っていつもの様に振り返る。 だがそこから先はいつもとは違った。 俺が身を捩り、ハルヒの方を向いたその刹那、 「ガタッ」という椅子の動く音と共に、ハルヒの顔が急接近してくる。 「なッ――」 俺が驚き声を出そうとしたその時、ハルヒは俺に―― …キスしていた。まうすとぅまうすだ。 そこ、早くも「アマァイ」とか言わないでくれ。 さて…人間が緊急事態に対処するにはどうすればいいんだっけか。 そうだ、まずは落ち着くことが大切だったな。 そしてもちつくには杵と臼と…もち米が必要だな。…いや待て違う。違うぞ俺。 落ち着くには…まずは状況整理だ。 1.ハルヒ俺を突く 2.俺振り返る 順番に箇条書きしてみました。 3.ハルヒ俺にキス なんだコレ?…ハルヒが俺にキス?幻覚だろ? しかし俺は幻覚を見てしまうようなアブナイ物には手を出してない。誓ってだ。 とか考えていると、ハルヒが上目遣いで顔を真っ赤に染めながら 「好き…」とか言ってきやがったな。 ここで俺はやっと事態を認識し、はっとクラスに目を向ける。 教師を含めクラス全員がこっちを向いて口を半開きにしている。 谷口に至っては上も下も全開じゃないか。 「その…付き合って」後ろから声。 俺はまたはっとなり、いつもよりか弱くなった声の主へと顔を向けた。 そこには俯いて真っ赤な顔をしたハルヒの姿がある。 「ハルヒ…?俺をおちょくってんのか…?」 訊ねた途端、目の前の完璧な美少女(性格除)はムッと不機嫌顔になり、 「そんな訳ないでしょ!さぁ、返事を聞かせなさい!10秒以内!」 と言い放った。さっきまでのか弱さが嘘のようだ。 というか告白早々ご機嫌斜めってどうなんだ、ハルヒよ。 「10…9…8…」 カウントが始まった。 しかし、本気でハルヒは俺をそんな風に思ってくれているのか? …俺はどうなんだ? 確かに今となっちゃハルヒの居ない日々は退屈で、考えられないモノなのかも知れない。 でもそれは恋愛感情とは別だろう…だが。 「5…4…3…」 あの日、閉鎖空間での出来事。 あれが何を意味するのかなんて知った事じゃないが、あの時確かに俺の中には妙な感覚があった。 その感覚が日に日に増していくのも感じたが。 それは兎も角、またあんな空間へ連れ込まれちゃたまらない。ここはちゃんとした返事をするべきだな。 「2…1…」 「あぁ、俺も好きだ」 やけにサラリと言えた。 「…本当に?…まぁいいわ、決定ね。つ、付き合いましょう」 誰か俺を世界を救う勇者だと崇めてくれ。今の俺ならりゅ○おうも楽勝で倒せただろう。ゾ○マはちょっとキツイが。 なんたって授業中の急な告白にその場で応えたんだからな…って、授業中? 俺は再びクラスの方を見た。 そこにはさっきよりも美しい表情でこっちを見つめる連中の顔が並んでいた。 しかし女子は…何やら少し視線が冷たい。 …というか、怖いから。絵的に。 そんな連中を見てもハルヒは全くお構いなしで、薄い赤に染まった笑顔をこちらに向けていた。 「やれやれ…」 キーン…コーン…カーン…コーン そうして、何だか半信半疑な状態のまま4限目の授業が幕を閉じた。 (ハルヒは本気なんだろうか…?) 俺は未だに状況を把握し切れないまま、空腹という名の魔物を退ける準備に入る。 だが、これから襲ってくるであろう空腹以上の敵が何なのかを俺が予想するのは簡単だった。 そう。俺はこの昼休み、クラスメートの鮮やかなまでの冷やかしに耐えなければならないのだ。 というか既に絶頂だ。 さて、予想通りだが谷口がニヤニヤしながら弁当を持って俺の席に近づいてくるのが見える。しかしそこは谷口。 「キョン、やるなお前!!見損なったぞ!」 お前にそっとして置いて欲しいなんて事を望んだ俺が間違いだった。 タイミングの悪さ、あからさまな日本語ミス。すべて完璧だ。 こいつは天才かも知れん。勿論分野は不明だ。 「チキンなキョンなら応えられないと思ってたんだけどなぁ」 そう言って国木田までもが笑顔で俺の席に着く。 最近こいつにも毒がある気がするな…。 「やれやれ…」 俺は今日何度目になったか分からないその言葉を呟きながら、机にかけてある鞄から弁当を取り出す。 「キョン…」 …この世に神なんて居ないな。うん。 後ろから俺を呼ぶハルヒの声。いつに無くしおらしい声だった。 今俺とハルヒが話すと会場の冷やかしムードが全盛期を迎えるだろうに。 「どうした?」 振り向くと、頬を赤らめたまま上目遣いなハルヒ。 (いつもこうしてりゃ反則的な可愛さなんだがな…) ちなみに、視界の端で谷口が思いっきりニヤニヤしている。 古泉とはまた別の意味で気持ち悪い。やめろ、やめてくれベストフレンド。 「お…お弁当作ってきてあげたから。の、残さず食べなさいよ!」 ハルヒはそう言って俺の目の前に異常なデカさの弁当箱を突きつけた。 告白直後に手作り弁当。幾らなんでも準備が良すぎだろう。いや、嬉しいが。 団長様の突然のご好意に戸惑ったのか、俺はこんなことを口走っていた。 「ちょ…お前これ量多すぎじゃないか?」 …しまった。言った後後悔した。 スマン古泉。バイトが増えるかもしれん。 何で今日に限って頭の回転が悪いんだ、俺。 それを聞いてハルヒはいつもの不機嫌顔になる。 「な、何よ…!折角あたしがキョンの為にたくさん作ってきてあげたのに…」 横で谷口が「何てことを!」という表情で口(勿論上下だ。もう注意する気にもならん)を空けたまま俺を見ていた。 国木田も「何やってんの…」という目で俺を否定している。 流石に謝るべきかもしれない。 …というか、何故クラスの皆は一方的にハルヒの肩持ちをするんだ。しかも皆心なしか俺を睨んでいる。 俺は何か妙な事やっちまったか…? 「あー…ハルヒ」 「…何よ」 ハルヒはいつもの様に俺を睨んだつもりらしいが、その表情にはどこか寂しさが見え隠れした。 「その…すまなかった」 「………」 ハルヒはまだ俺を睨んでいる。なんとその眼にはうっすら涙が溜まっていた。 あぁ、ハルヒ。お前にはそんな表情は似合わんぞ。ということで… 「弁当、貰っていいか?」と生死を分かつ大勝負に出る。 「……当たり前でしょ…米一粒でも残したら死刑だからね!」 どうやらあのままだと俺は本当に死んでいたらしい。 ハルヒは俺に死刑宣告を放ったあと、そっぽを向いてしまった。 俺がクラスメートの放つ含みの有る視線を全身で受け止めたのは言うまでもない。 ハルヒの弁当を受け取り、「やれやれ…」と、谷口と国木田の方を向く。…居ない。 二人のベストフレンドは非常に爽やかな笑顔で俺の席を遠くで眺めていた。 …なんだ?これはつまりアレか…? できればそういう気遣いはして欲しくないんだが…。 まぁこうなると半ば覚悟してしまっていた俺は、ハルヒの方に向き直る。 「…!…何よ。まだ何か用?」 いや待てハルヒ、それが数分前にできた恋人に言う台詞か? まぁ十分有り得るが。 「よかったら弁当…い、一緒に食わないか?」少し緊張してしまう。 「…ほんと?」 「え?…あぁ」 ハルヒは急に太陽の様に輝く笑顔になった。 なんだ?コイツはこれを言って貰えなくて拗ねてたのか? 「どう?あたしなりに上手くできたとは思うけど」 だろうな。普通に美味い。性格以外完璧なだけはある。口が裂けてもこんな事は言えないが。 「美味いよ。ありがとな」 「…そ」 お、照れてるなw かくいう俺も相当恥ずかしいんだが。 「じゃあこれから毎日作ってきてあげるわ。感謝しなさいよね…」 「あ、あぁ…すまんな」 「いちいち気にしなくていいわよ…馬鹿」 不機嫌な声を装いつつも、その表情は微笑んでいるように見えた。 そんなこんなで、端から見ればまさにカップルな雰囲気のまま昼食を食べ終え、今担任の岡部によるホームルームが始まったところだ。 (そういえば今日は個人懇談で四限だけだったか…) この際昼休みの存在などにツッコむのはマナー違反だ。誰にでもミスはある。居直りだ。 心なしかHR中もクラスの連中がこっちをチラチラと見ている。恥ずかしいったらないな。 しかし冷やかしも幾分大人しくなり、安堵と共に再び眠気との激闘が幕を開ける。 「ねぇ、キョン…?」 えーと………デジャヴ? 確か数分前に聞いた事があるような気がする。 まぁ正体が何なのかは分かっている。 「なんだ…ハルヒ…?」 眠気を押し退けつつ訊ね返す。 「…キスして」 どうやら俺はおかしな夢を見ているらしいな。 一応空模様を確認した――青い。閉鎖空間ではないみたいだな。一安心だ。 「すまん寝ぼけてた。もう一回言ってくれ」 「バカキョン!キスしてって言ったの!今すぐ!」 クラスの動きが止まり、教室は静寂の空間に変わる。 ハルヒが何やら叫びやがったな…内容は…あー… ―――!!! 「な、なな何言ってんだハルふぃ!」 噛み噛みだちくしょう。 「…嫌?」 …急に大人しくなりやがった。台詞だけ見た奴は長門と勘違いするかも知れない。 ハルヒは再び反則技:上目遣いで俺に挑んできたが、流石に恥ずかしすぎる。 ここは男らしく華麗にサラリと受け流す作戦で行こう。 「大概にしろ!…今はHR中だろ」 少しキツかったかもしれない、しかし現状打破にはこれしか無いんだ。スマン古泉。 (お詫び次第では許してあげない事も無いですね) 何か幻聴が聞こえたがこれも勿論無視だ。…というかどういう意味だ。 「…じゃ、放課後ならいいのね!!?」 どうやら俺の作戦は全て裏目に出てしまったらしい。 今やハルヒは調子を取り戻し、恥ずかしいことを平気で大声に出している。 脅すような裏のあるニッコリが俺を捕らえて離さない。 「…まぁとにかく、その話は後だ」 辛うじて返した言葉がこれだ。しっかりしろ俺。 「…先に帰ったら殺すわよ。バカキョン」 あのー涼宮ハルヒさん?脅してまで唇を奪う…もとい奪わせるのはどうなんでしょう? 「お前ら、イチャつくのは構わないが、大声を出すのは感心しないな」 笑い声が起こる。岡部にまで冷やかされてしまった。 明日からの授業を想像しただけで恐ろしいが、今更どうしようもない。やれやれ…。 放課後、俺はハルヒが掃除当番を終えるのを教室の外で待っている。 (今日は無茶苦茶だったな…) 今更だが自分の頬をつねってみる。 痛ぇ。やっぱりアレも夢じゃないんだよな…。 そうこうしている内に、ハルヒが教室から出てきた。 「お待たせ!じゃ部室に行きましょう」 「あぁ…」 「何よ、元気ないわね!…ほ…とに…あた…こと…きなの?」 「え?」 「………何でもないわよ!」 言ってハルヒは俯いてしまった。 何て言ったのか訊き返そうとも思ったが、ハルヒが急に不機嫌になっていたので遠慮した。 『それでは、準備が出来次第『…2人が来る』』 ガチャ… ハルヒらしくない元気の無い扉の開け方。 部室には他のSOS団が全員揃っていた。 「………」 「え…あっ、涼宮さん!遅かったですね」 いつもの三点リーダと癒しのオーラが俺とハルヒを迎えてくれた。 「うん。掃除当番。それよりみくるちゃん何話してたの?」 「ふぇ!?…な、な何でもないですよぉ~」 「そ…」 ハルヒにしては素っ気無い対話。 それにしても朝比奈さんは何をあんなに焦ってらっしゃるんだ。 さっきのアレは密談か何かだろうか。 しかしそんな妄想も一瞬で振り払われた。 古泉が、普段見せないような、冷ややかな笑みを浮かべ、俺を見つめていたのである。 「キョン君。トイレに行きませんか…?」 表情をいつもの柔和な笑みに戻し、古泉が言う。 「あ、あぁ…」 何だってんだ。今日は。 そうして俺は古泉によってトイレに拉致され、面と向かう形になり、古泉が話を切り出した。 「…あなた、涼宮さんに何をされたんです…?」 何を言い出しやがったコイツは。まさか知られてないだろうな…。 「…どういうことだ?」 「彼女のあの落ち込みよう…あなたが関わっているとしか思えないのですがね。何たって恋人な訳ですし」 知ってやがった。 一瞬、俺は銀河系の神秘を垣間見た気がした。 「…ちょっと待て古泉。お前何故それを知ってる?」 「フフフ…風のたy「嘘はいいっての」」 「そうですね。では単刀直入に申しましょう。あなたは今日、涼宮さんと恋人になったにも関わらず、 彼女の好意を素直に受けず、すこし厳しく当たってしまわれたのではないですか?例えば…」 「何言ってんだ古泉…?」 言葉とは裏腹に、一気に焦りと不安が俺を襲った。 ハルヒの不機嫌の原因は俺の行動だったのか。 というか、本当は気づいてたんじゃないか?俺。 「おやおや、あなたは真性の鈍感男ですか?…分かっているはずですね?」 …しかしここまでストレートだとはな。たった三行で。しかも俺も小学生並みの反論しかできんなんて笑い話にもならんな。 というか、一緒に弁当食ったのは不機嫌解消のネタにはならんのか。やれやれ… 「あぁ…そうだな」 「では、あなたのやるべき事ももうお分かりですね」 「あぁ…分かってる」 覚悟を決めた。 「やけに素直になりましたね。一つ僕とも愛を「断る」」 やはりHRの時に聞いた幻聴は幻聴じゃなかったのかもしれないな。 「そうですか…残念です」 本気で残念がるな、気持ち悪い。 「実は、皆さんにはもう作戦を提案してあります。僕自身はバイトで帰る、ということで」 「あぁ、すまんな」 「お礼ならk「断る」」 「そうですか…」 とりあえず嫌な予感がしたから断っといたが、「k」の先がが何なのかは考えたくもないな。 話が決まったところで俺たちはトイレから出て、今も不機嫌モードであろう我らが団長、 涼宮ハルヒの居る部室へと向かった。 作戦について小声で話し合いながら、俺たちは部室に戻った。 それと同時に古泉は何やらハルヒにだけ見えないタイミングで全員にウィンクを送った。 多分これが開始の合図なんだろう。…何故か緊張してきた。 「………」 長門は顔を上げ5mm頷く。果たして今日こいつは喋るのだろうか? 「…喋る」 喋った。 「…何、有希?」 あ、ちなみにこの台詞はハルヒの台詞だ。 最早長門と全く区別が付かんな。 「…何でも無い」 そういうと長門は読んでいた本を閉じる。 「あ、ぇと…涼宮さん!」 相変わらずの慌てっぷり。癒されます。 「何?みくるちゃん」 「今日は私と長門さんで買い物に行くので、その…ここで帰らせて頂いても…」 「…わかったわ」 朝比奈さんも相当な罰を覚悟していたのだろう。 安堵の息を漏らすのを俺は聞き逃さなかった。毎度お疲れ様です。 「じゃ、帰りますね」 「………」 「じゃあね。また明日」 ハルヒの言葉に見送られ、長門と朝比奈さんは部室を後にした。 「さて、涼宮さn「古泉君も帰るなんて言い出すの?」」 ハルヒの強い口調に古泉は少しタジったが、すぐいつもの胡散臭い笑顔を作り、 「はい…何分急なバイトが入りまして」 「…わかったわ。また明日」 「はい。では」 部室を出る時、古泉が俺にアイコンタクトで 『本当にバイトが入らなければ良いですが…』 と言っている気がした。って何で俺は古泉と眼だけで会話してんだ、気持ち悪い。 『愛・コンタクトですね!』 背筋が凍る…勘弁してくれ…。まぁ、今回は借りがあるから水に流してやるか。 さて、問題はこれからだな…。 ハルヒは相変わらず不機嫌オーラを振りまいている。 こいつの機嫌を何とかしないと、古泉に借りができてしまうな。 それどころか世界の危機に発展するかも知れない… いや、それとこれとは違う。 俺はハルヒにそんな力が無かったとして、告白を断っただろうか。 俺は「世界の為」に告白を受け入れたのか? …答えは分かりきっていた。 俺はやっぱり… 部室に戻って10分が経った。 しかし、俺自身の本当の気持ちを理解してしまってからたった数分の間で、 ハルヒはやけに遠い存在になってしまっていた。 ――恐怖。 それそのものだった。 告白は嘘だったんじゃないかと思うくらい、ハルヒの眼は死んでしまっていた。 話しかけても眼を合わせてくれない。やれやれ…甘々の予定だったのにな。 それでもここで退くわけにも行かない。 「――なぁ、ハルヒ…」 「何?」 暗く、温かみの無い返事。 入学当初のハルヒを見ているようで、俺の胸はいたたまれない気持ちでいっぱいになった。 「その、一緒に帰らないか…?」 断られるかも知れない。それならこの場ででもいい。 場所なんてどこでもいいさ。兎に角2人で話をつけなきゃならない。 「………別に。構わないわよ」 奇跡的にもOKを貰えた。言ってみるものだ。 …まだ眼は合わせてくれなかったが。 俺とハルヒは互いに無言のまま、部室を片付けて足早に校門を出た。 気まずい空気だが、一緒に帰る許可を貰ったからか、もう焦りは無かった。 しかし、どう切り出したものかね…。 打ち明ける方法を必死で考えている内に、ハルヒと分かれる分岐点が近づいてきた。 …もう、いい加減にしろ俺。覚悟なんてあの時トイレで決めてたはずじゃ無かったのか? 「ハルヒ…」 「………」 返事が無い。 まぁ帰りに誘っといて一言も喋らないんじゃ、嫌われたってしょうがないよな…。 正直に申し上げて、今俺は泣きそうだ。 ハルヒが俺にとってどれほど大事な存在なのかを痛感した気がする。 「ハルヒ…俺の眼を見てくれ」 「………嫌」 その声は儚く、寂しげな涙声だった。 「頼む。少しだけでいい。お前に言わなきゃいけないことがある」 「うるさい!!」 俺はショックを受けた。目の前で俺を睨んで立つ少女は、殆ど裏声でそう叫んだのだ。 「何が『言いたいことがある』よ!!あたしが色々言ってもろくに反応もしなかったくせに!!」 「その事だ…本当にスマン。ハルヒ」 「うるさいうるさい!!本当はあたしのこと好きでも何でもないんでしょ!!」 「そんな事ない!!」 「嘘ね!!」 「嘘じゃない!!」 いつしか2人の間で叫び声が飛び交っていた。 「嘘に決まってるわ!!毎日毎日アゴで使われて、休みの日も朝から呼び出された挙句奢らされて… ………嫌いになるに…き、決まってるよね…ヒクッ…ぇう…」 「…?…ハルヒ…?」 お前はそんな事――― 「も、もうあたし、ヒクッ…帰るね…」 そう言ってハルヒは俺にまた背を向け、そのまま走り去ろうとした。 「待て、ハルヒ」 そういって俺は、その少女の細くて華奢な腕を掴んだ。 「…は、離してよ…!ぅうっ」 「そうもいかない。勘違いされたまま帰られたら俺が困るんでな」 「………」 「ハルヒ、聞け」 もしお前が居なかったら、俺は退屈な毎日に絶望してただろう。 お前が居るから、毎日が楽しい。 その為なら少しくらいの苦労は耐えられる。 それにな、ハルヒ――― ―――俺には、お前に何されても毎日笑ってられる理由があるんだぜ――― 「お前が、好きだ」 世界の為とか、そんなものはどうでもいい。昼間のとは恐らく違う、心から出た言葉。 ただ、俺は今目の前に居るお前に心底惚れちまったんだ。きっとな。 「………本当に?」 あぁ。 「本当に本当に本当なの?」 あぁ、誓ってだ。 「………キョンの馬鹿!馬鹿ばかバカ!!!」 そう言って俺の胸に顔を埋め、肩を連打しながら大声をあげて泣く少女。 涙を通して人間らしい温かみが伝わってくる。 なんだ、考えてみればハルヒだって普通の女じゃないか…。 「あたしが…ヒクッ…どんだけ寂しい思いしたと…ぇぐっ…思ってるのよ!」 「遅くなって、すまなかったな」 しばらくして、ハルヒは顔を上げた。 まだ涙をボロボロこぼしながら、それでも今までで一番の、輝く様な笑顔でこう言った。 「そうよ!遅刻した罰として、これから先ず――っと、日曜日はあたしに一日服従よ!!」 やれやれ…いよいよ俺に休暇ってもんは許されないのか…。 まぁ、それもそれでいいだろう。 やっぱり恋人になってもこいつには敵わない。 「あと…やっぱ恋人になったんだし…ね?」 ハルヒはそう言って甘えた眼で俺を見た後、猫の様に俺の腕に抱きついてきた。 笑顔のハルヒの頬ずりが、心地良かった。 それと―――SOS団の皆には大きな借りができちまったらしい…土曜日はまた俺の奢りかな。 fin
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ある日、妹のダイブが来る前に目を覚ました。 珍しい事もあるもんだなぁ。 なんて思ってしまう俺も俺なのだが・・・ 目を覚ました俺は自分の部屋に何か違和感を感じた。 何だ?この感覚は・・・ それを気にしていたらあっという間に時間が無くなった。 俺はその違和感が気になったものの遅刻しては堪らないのでさっさと着替えを済ませ、リビングへと向かった。 「おはよう、母さん」 「おはよー!!あんた、相変わらず時間ギリギリね」 「あぁ、いつもすまな・・・」 思わず俺の時間が止まったね。 なんたって台所に立って朝食の準備をしていたその人はなんとハルヒだったんだからな。 「何?朝からポカーンとしちゃって、まだ寝ぼけてるの?」 「は、ハルヒ!!こんなとこで何してるんだお前!?」 「朝っぱら母親を呼び捨てにするなんていい度胸ねぇ?」 危険だ・・・・・ ハルヒは顔は笑っているが声が笑っていない・・・・ 持っているおたまに得体の知れない何かが集まっていく。 このままだと間違いなく俺の明日は無い!! 「す、すいません!!以後気をつけます!!」 あぁ、俺ってここまでヘタレだったのか。 「分かればよろしい。じゃあ、さっさと朝御飯食べちゃいなさい」 「あ、あぁ、分かった」 とりあえず、状況を整理しよう。 どうやら、今の俺はハルヒの子供らしい。 という事は当然父親もいる訳だな。 ハルヒと結婚した勇気ある奴はどんな奴かね? 早く面を拝んでみたいものだ。 今、何かムカッときたがこれはただ単に腹が減っているからだろう。 そうに違いないさ。 そう考えをまとめ、ハルヒの作った朝食を食っていると誰かが降りてきた。 そう、遂にハルヒの旦那の面を拝める時がきたのだ。 ドアが開いた音のする方へ向いた俺は言葉を失った。 そりゃそうだろ。 そこには、ダルそうにしている俺が立っていたんだからな。 起きてきた俺が食卓に着くとなんとも言えない嫌ぁな雰囲気になった。 この空気はなんなんだ? さっきから俺とハルヒが全く口を聞かない。 これが噂に聞く倦怠期ってやつなのか? 俺は小さな勇気を振り絞って聞いてみた。 「な、なぁ、さっきからどうして二人とも口聞かないんだ?」 すると二人の鋭すぎる視線が俺に突き刺さった。 痛い・・・痛すぎるよ・・・(泣) 「「別になんでもない(わよ)!!話したく無いから話さないだけだ(よ)!!」」 二人とも息がぴったりだった そう言い終わると二人は睨み合いを始めていた。 あぁ、これが夫婦喧嘩というものか。 これは確かに犬もこんなもん食ったら腹壊すわなぁ。 しかし、未来では俺はなんとかハルヒと平等な地位を獲得している様で安心した。 「喧嘩してるのは分かった。で、原因は一体何なんだ?」 また視線が飛んできた。 今度はあのバチバチいってるのも一緒にな。 「「それはハルヒ(キョン)が俺(あたし)の言う事全く聞かないからだ(よ)!!」 またハモってる・・・ さて俺はあえてこの二人にこの言葉を送りたいと思う。 このバカ夫婦がっ!! その後、どうにか喧嘩の原因を聞きだした俺は二人を説教していた。 原因は俺、つまり未来の俺とハルヒの子供の進路の事だった。 「分かった。俺の事をそこまで思ってくれるのは大変ありがたい事だと思うよ。でもな、その事で二人が喧嘩したって意味無いじゃないかっ!!」 俺は机を「バンッ」と思いっきり叩いた。 いつもの俺ならここまでする事は無いだろう。 しかし、さっきの原因不明のイライラが俺をどんどんヒートアップさせる。 未来の俺とハルヒはすっかりシュンとなっている。 それに構わず俺は続けた。 「いいか?自分の事で親に喧嘩されたら子供は辛いんだぞ!!自分が原因なのがどれ程苦痛かなんで分かってやれないんだ!?」 「「ご、ごめんなさい・・・」」 それを聞いた俺は一気にクールダウンした。 「分かってくれればいいんだ。こんな息子だけどこれからもよろしくな」 そこまで言うと俺は急に意識が遠くなった。 気が付くと全ての時間が止まっていた。 いや、厳密には俺と俺の前に立っている奴以外の時間がと言っておこう。 「お前は誰だ?」 「はじめまして。僕はあなたの息子です」 こいつは何言ってんだ? 「何を言ってるのかさっぱり分からん。どういうことか説明してくれ」 「今回の両親の喧嘩がいつもよりすごくて僕の手に負えなかったんです。そこで、よく母さんが「学生時代のキョンは」と言っていたので助けてもらおうと思ったんです」 俺の子よ、苦労してるんだな・・・・ 「そうか、そりゃ済まなかったな。ちゃんと説教しといたからもう大丈夫だと思うぞ」 「えぇ、見てました。本当にありがとうございました」 俺はふと気になった事をそいつに聞いてみた。 「でだ、俺達はいつもあんな感じなのか?」 「いえ、いつもはそりゃもう仲の良い夫婦ですよ。暇があれば四六時中ベタベタしてますから」 「そ、そうか・・・」 イカン、顔が段々熱くなってきた。 その瞬間、俺は何かに吸い込まれるような感覚に襲われた。 「そろそろ時間みたいです。名残惜しいですけどお別れですね」 「あぁ、そうだな。最後に1つ聞いていいか?」 「何ですか?」 「お前は俺達の子供で幸せか?」 「そんなの聞くまでも無いですよ。気苦労は絶えませんけど僕は2人の子供で良かったと思いますよ。では未来で会いましょう」 「あぁ、じゃあな」 そこで俺の意識は完全に何かに吸い込まれた・・・ 朝、違和感の無い部屋で目を覚ました俺はほっと胸を撫で下ろした。 学校では昨夜の出来事のせいでハルヒの顔をまともに見る事が出来なかった。 あぁ、気まずい・・・ その気まずさからハルヒを避けていたら超特大の閉鎖空間が発生したとかで古泉から散々ダメ出しをされた。 その翌日、避けていた事をハルヒに謝ったら 「キョン、あたしを傷物にしたんだからちゃんと一生責任取りなさい!!」 とか、教室で大声で叫んでくれやがった。 そして今、ハルヒに課せられた罰ゲームとしてなんと婚姻届を書かされているのだ。 そもそも俺が18歳にならなければ役所が受け取ってくれないと思うんだが・・・ 「キョン、手が止まってるわよ!!さっさと書きなさい!!」 「へいへい」 そんな理屈がこいつに通用する訳無いか・・・ はぁ、やれやれ・・・ fin
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今日は暖かい空気に包まれた2年生になってはじめての5月。 別に変わらないと思うかも知れんが、俺にとってはとてもいいことなのだ。 なんといっても、ハルヒが大人しく、何も暴走しないにもかかわらず、ご機嫌なのだ。 俺の顔を見るなり「おはよっ!今日から5月ね。気合入れていくわよ!!」というものの、何も起きない。 しかし、この後、俺が想像もしなかった事態になっていたことを知らされることとなった。 部室に行くと、そこには長門は居なく、別の奴がいた。 古泉一樹。自称、超能力者。 コイツだけとは珍しい。なにか企んでいるかのような笑みを浮かべている。 「お待ちしておりましたよ」 「何の用だ?また、ハルヒ絡みか。手短に頼むぞ」 「幸いです。僕も手短に済ませて置きたいことなので」 なんだ。もったいぶらずに言え。 「これは失礼。あなたにとってこれがいいことかは分かりませんが」 だからなんだ。気になるから焦らすな。 「実はですね。僕たちの力が少しずつ、使えなくなっているんです」 どういう意味だ? 「僕たち『機関』の方々の数名が閉鎖空間に入れなかったり、また入れたはいいものの、力が使えない、と言う人が続出してるんです。どういう意味か分かりますか?」 正直に言う。さっぱり分からん。力が使えなくなっただ?ハルヒが超能力者がいないものと本当に信じてしまったのでもいうのか? 「理解できてるじゃありませんか。その通り。彼女はもう信じていない。または、半分以上信用していない、ということです。使えないのは超能力者だけではありません。多分、長門さんや朝比奈さんもそうです」 「ちょっと待て。それは矛盾してないか?朝比奈さんがタイムスリップできなくなったら、未来の朝比奈さんは実在しないぞ。つまりだ、この場所で会った大人の朝比奈さんは居なくなるのか」 「いえ、その心配はありません。朝比奈さんの使っているタイムスリップシステムタイム・プレーン・デストロイド・デバイス、略してTPDDは未来に涼宮さんではない方が造られているので、TPDDの使用許可さえすれば、使わせてもらえるはずです。出来なくなるのはおそらく未来との連絡。つまり、連絡できる間に朝比奈さんは未来に帰らなくてはならないということです」 つまり、朝比奈さんが元居た時間対に俺たちからすると未来に帰るのも遠くない、ということか。 「そういうことです」 じゃあ、長門は? 「長門さんは統合思念体との伝達が出来なくなる恐れがあります。それか…」 「それか、なんだよ」 俺がそういったとき、調度いいタイミングで長門が入ってきた。 聞くに聞けない状況だ。 朝比奈さんが未来に帰り、長門がどうなるんだ? そういえば、大人バージョンの朝比奈さんと初めて会ったとき、久しぶりといっていてな。それはひょっとしたらこれが原因で帰らなければ為らなくなったんじゃなんだろうか… その後、ハルヒが掃除当番で遅れながら来た。 「あれ?みくるちゃんは?」 知らん。俺が来たときも居なかった。 「先程いらして今日は用事があって来れないと言っておくように言われました」 「そうなの。ま、いいわ。お茶は私が酌むわ!」 大丈夫なのか、という心配を抱きながら俺はまたさっきのことを考えていた。 そのとき、俺の携帯が鈍く唸った。思わず叫びそうになった。 メールが届いただけだが、そのメールを見てどれだけ驚いたか。 「すまない。俺はもう帰る」 「なんで?」 「おふくろからだ。直ぐ変えるようにと書いてある」 「ホントに?ま、いいわ。直ぐ帰りなさいよ」 俺は部室を後にした。 実はおふくろからというのは噓だ。 メールの送り主は光陽園駅前公園で待っていた。 「いきなりどうしたんですか?朝比奈さん」 そう、呼び出されたのは朝比奈さんになのだ。 「あの、話したいことがあるんです…えっと、禁則事項とかあるからあんまり分かりにくいと思うけど…」 「大丈夫です。それは理解の上です」 「良かった。で、本題なんですけど…私、未来に帰らなくてはならなくなってしまいました」 恐れていた事実に俺はただ愕然とすることしか出来なかった。 「上司からの命令なの…えっと、涼宮さんがなんていうか未来人を信じなくなって、いままでできた禁則事項の交換?見たいなのが出来なくなってしまうそうなんです。でね、禁則事項が普通に言えるようになってしまうんです。それだとこちら側からすれば歴史を変えることに繋がってしまうの。だから、後もう少しの間で電波が持つか持たないかって感じで、だから禁則事項が禁則事項なんです。ごめんね、わからないよね。でも、ここに居られるのもあと少しみたいなの…」 悲しそうに言う朝比奈さんを見て、ハルヒは何を考えてやがると思った。 「それだけです。ホントにいきなりでごめんね。じゃあまた明日部室で」 俺はくたくたになりながら家に帰った。 まさかこんなことになるとは思わなかったしな。 二人が言ったことがほとんど一致してしまう。恐怖とも言える。つまり、あと一人からもこんな話が… そう思いながら鞄を開けると何か紙切れのようなものが落ちたのを感じた。 見るとそれは栞だった。そこには手で書いたとはとても思えない字で『今日 午後7時 私の家に』と。 普通に考えれば誰かなんてわかんないだろが、俺にはわかる。 午後7時。俺は見慣れたマンションの見慣れた部屋に居た。 「………」 「で、何の用だ?」 もう分かってるさ。もう3回目だぜ?これでわかんないのは谷口ぐらいだ。 「上手く言語化できない。情報の伝達に齟齬が発生するかも知れない。でも、聞いて」 その前ぶりを聞いたのは1年前ぐらいか。もう1年経ったのか。俺もアレから少しは変わったな。もちろん、こいつも。 「私は、今、ここにいる。でも、もうそれも長くない。涼宮ハルヒが宇宙人の存在を信じなくなったから。私の使命は涼宮ハルヒを観察し、入手した情報を統合思念体に報告することだった。でも、伝達するのも今は限界が来ている。惑星表面にあった情報フレアも観測できなくなった。ここに不思議なことが起こることはもうないと思われる。あなたとの会話も統合思念体からの命令でしているが、それすらも出来なくなっている。地球上にいる有機生命体は100人以上がその犠牲となっている。そして統合思念体が出した結論。有機生命体の回収。私たちを回収し、涼宮ハルヒの観察を終わりにする。私はもちろん、喜緑江美里も回収される。朝倉良子のとき同様、我々は光となり、この世から身を引く。私たちの存在を知っている人には統合思念体が情報操作を行い、転校したことになる可能性もあるが、比較的高度な確率で私たちが地球人類にナノマシンを注入し、記憶を綺麗に忘れさせる方法の2種類ある。どちらにせよ、私たちはこの世から消え去る」 随分でたらめな話だ。なんだよ、それ。結局俺はかやの外か。 「ちがう。あなたは涼宮ハルヒにとっての鍵。それだけは変わらない。この突然改変もあなたが原因となり出来た」 俺が犯人なのか?俺は普通の人間だぞ?変わったことは何もしていない。 「私もそれは分かっている。ただ、問題なのは涼宮ハルヒ。彼女はあなたという存在に好意を示している。 「はあ?あいつが、俺に?馬鹿をいえ。あいつは恋愛感情なんて精神病の一種だと思ってる奴だぞ?それを今更。しかも何で俺」 「彼女はちょっとしたことでも感じてしまうほどデリケート。だからちょっとしたあなたの優しさでも恋愛と感じとってしまうほど」 俺があいつに優しく?冗談はよせ。 「冗談ではない。あなたは彼女のご機嫌を損ねてはならない。特大な閉鎖空間が発生し、そこに閉じ込められる恐れがある」 そういえば、前にもそんなことがあったな。 「私も出来る限りの全力を出して手助けする。あなたの望みなら私はそれに従う。それが私の最後の使命」 そうか…なんでもいいのか? 「いい」 「じゃあ。明日、ポニーテールで登校してきてくれないか?」 「私の髪型ではポニーテールは困難」 「なんでもするんじゃなかったのか?」 「…分かった。実行してみる」 俺のわがままを聞いてくれてありがとよ、長門。 「別に構わない。コレが最後の望みにならないように」 そういって俺は長門の部屋をあとにした。 次の日の放課後。俺は真っ先に部室に向かった。 ドアをノックしても応答がない。 部屋に入ると長門がいつもの場所で読書していた。髪型は昨日の俺がリクエストしたポニーテールで。 「長門、良く似合ってるぞ」 長門は何も答えなかったが、嬉しそうな雰囲気だった。 「あら、キョン。もう来てたの。今日はやけに早いわね。あら?有希。今日はポニーテールなんだ。そうだ!」 そういうと俺を廊下に追っ払い「いいって言うまで入ってきちゃ駄目よ」と言い残して部室に入った。 すると、朝比奈さんと古泉が並んでやってきた。なんでそんな組み合わせなんだ? 「そこでばったりあったんですよ。昨日あなたにいった情報を交換したかったですしね」 そうか。 「キョンくんはなにしてるの?涼宮さんがお着替え中?」 「さあ。俺もさっぱりで」 すると、部室から「もういいわよ」という声が聞こえた。 ドアを開けて驚いた。 着替えていたのはハルヒではなかった。 いつも朝比奈さんが着てるメイド服をポニーテールの長門が着ていたのだ。 すると、取り繕った笑みを浮かべて古泉が 「わあ。長門さん凄くお似合いですよ」 「でしょ?可愛いでしょ?たまにはこういうのもいいわよね。みくるちゃんは今日は着替えなくてもいいわよ」 機嫌よくいうハルヒに朝比奈さんは嬉しそうにしていた。 「有希って背小さいし、顔整ってるしで萌え的にはいい素材なのよね。それに今日はポニーテールだし完璧だわ!」 と、いうなり長門にお茶を運ばせるように命令した。 順番にお茶を配っている長門をみると、表情が変わらなくても、内心では緊張していたのかもしれないと思う。 「お茶…どうぞ」 俺にそういってお茶を渡すと元の場所に戻ってまた本を読み始めた。 なんか変な感じだな。無表情兼無口の長門と癒しキャラである偽メイド朝比奈さんが入っているので長門兼朝比奈さんになっている。そこに黄色いカチューシャを着けて団長と書いてある腕章をつけたら長門兼朝比奈さん兼ハルヒになってこれまた厄介なことになりそうだな。 その帰り、ふと古泉に尋ねた。 「なあ、古泉」 「なんでしょう」 「ハルヒがこの状況を作りあげたのなら元に戻る方法もあるんじゃないのか?」 「あるにはあります。でも、とても困難です」 「どうやるんだ?」 「そうですね…涼宮さんはあなたを好いていらっしゃる。ならば閉鎖空間であなたが本当に好きな人を告白してみればいいのですが、いまの涼宮さんが閉鎖空間を生み出すのは困難に近いんです」 まてよ…昨日、長門は機嫌を損ねると閉鎖空間が出来るといっていた。そして閉じ込められると。それと今の話。 「なんとかなるかも知れないぞ。明日、早速実行だ」 「あら?有希だけ?」 ゆっくり頷く長門。俺は今掃除用具入れの中に隠れている。ちなみに古泉は窓の外の足の踏み場が少ししかない場所。 朝比奈さんはホワイトボードの後ろに椅子を置きその上。ハンガーラックで調度いい具合に見えない。 「有希、今日はポニーテールじゃないんだ」 反応しない長門。 「ん。何?私を虐めてるの?有希」 すると、長門は本を閉じ、新しい本を出した。 「もう。私、帰る」 そういうと怒ったようにドアを閉めた。 「長門。ホントにコレでいいのか?」 「いい。これで今夜閉鎖空間が現れる」 夜俺が眼を覚ましたのは部室だった。 「キョン、やっと起きたの…またここよ。もう、この時期は変な夢を見るのよね」 そうかい。俺は夢じゃないのくらいわかる。 「キョン?どうしたのよ。変よ」 ま、きにするな。 「気になるわよ!…ま、いいわ。夢のあんたも変わり者ね」 「お前にだけは言われたくないね」 「そう。ね、ねえキョン。ちょっと外に出ない?」 そろそろくるか、古泉の言っていたことが。 「あ、あのね。夢のあんたにいうのもその、なんなんだけど…私、言える自身がないから、あんたにいうわ」 なんだ、このハルヒは。本当にハルヒか?不気味だ。 「あ、あ、のね。私、ね。アンタのことが」 そういうハルヒは俺の肩に手を置いていた。そんな俺はその手を掴んで、言い返した。 「ハルヒ、俺も言いたいことがあるんだ」 「え…?」 「あのな、俺実は…」 夢から覚めた俺は気分がすっきりしていた。 俺は迷惑だと思ったが、長門に電話した。 「…」 「長門か?あのさ、世界変わったか?」 「変わった。必要以上に・・・」 そうか。しかし何が必要以上に変わったんだ? 「・・・秘密。あえて言うならアナル。」 「なあ。ひとつ頼みがあるだが…」 次の日。 俺はまた忍足で部室へ向かった。 「ん?あら、キョン。遅かったじゃない。今日は古泉君がコスプレしてるんだからね」 古泉はいつもの場所で微笑んでいた。今日は映画で使った超ミニスカのウェイトレスの服だった。さらにツインテールだった。 「ねぇキョン」 「なんだ?」 「キョン、実際問題誰が好きなの?」 んなもんいない。強いて言うなら朝比奈さんだな。あのお方こそ目に入れても痛くないというものだ。 「ばかじゃないの」 馬鹿で結構。今は何言われても頷ける。 すると長門と朝比奈さんが入ってきた。またこのコンビか…朝比奈さんは少し涙目になっていた。 「みくるちゃん?泣いてるの?」 「い、いえ。違います。欠伸しただけです」 「そう。それよりキョン。あんた昨日なんで来なかったの?」 「行かなかったのは俺だけじゃないだろ?」 「責任者はあんたよ!!」 「何でだよ」 「何でもよ!!」 俺たちが言い合いをしてるときだった。 「ふふ」 微かだが笑い声が聞こえた。 その声の持ち主はハルヒでも朝比奈さんでも長門でももちろん俺でもない。 古泉が控えめに俺のアナルを見つめてた 「古泉?」 そういったかと思うといきなり満面の笑みを浮かべて 「古泉君がキョンを襲ってるわ!!」 そうだな、俺はそういって襲ってくる古泉から逃げていた。 昨日コイツに言ったのは間違えだったか? でも、朝比奈さんだといっても間違いじゃないんだしな。これでよかったんだ。 昨日俺が放った言葉。 俺は―――古泉以外のSOS団全員が好きだ。 ♪お・わ・り♪
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「・・・・・・・・・・なんでよ?あたしのこと嫌いなの?」 ハルヒが泣いている・・・・いつもの笑顔からは想像も出来ない泣き顔 俺はハルヒを悲しませてしまったのか、あの太陽のような笑顔を守ってやれないのか 「そんなことない!好きだ!・・・・でも今は・・・・・・」 俺がハルヒと付き合い始めてから早1ヶ月。変わったことと言えば毎日一緒に登校してるってことと、日曜日の勉強会が午前になって午後からはデートになったってことぐらいだ ・・・・・・そうそう、どうでもいいことかもしれんが俺にはうれしい変化がもう1つあった。ハルヒのポニーテール仕様率の異常なまでの上昇だ。髪をバッサリ切ってしまう前のポニーの長さには到底届かない、言うなればチョンマゲのようなポニーだが、そこがまた可愛い!抱きしめたくなる衝動に駆られるね、正直言って・・・・・・・俺って変態だな 「・・・・・・・って有希は言うんだけど、みくるちゃんはね・・・・・ってあんた聞いてるの?」 「ん?あぁ聞いてるぞ。で朝比奈さんは何て言ったんだ?」 「なんだ、聞いてたんだ。間抜けな顔してたから回想にでも浸ってたのかと思ったわ」 するどいな・・・・・やっぱり心が読めるんじゃないか? 「なんだかんだ言ってもキョンはあたしの話を聞いててくれるから大好きよ!」 コラ!登校中にそんな大声で「大好き」発言するんじゃありません・・・・・・はぁ、周りの目が痛いぞ 「別にいいじゃない、付き合ってることなんて皆知ってるんだから」 ハルヒのとんでもパワーは今でも健在。古泉の機関の推測である、俺と付き合えば力も消えるってのは大外れで長門曰く増大したそうだ。その証拠がこの「皆知ってるんだから」である 話は遡ること1ヶ月前・・・・・・ 「よう!キョン・・・・・お、嫁も一緒か」 空気の読めない男No.1(俺予想)の谷口・・・・・うわぁ、ハルヒがトマトだ 「だだだだだだだ誰が誰の嫁よ!ぶっ殺すわよ」 言ってることは連続殺人鬼並なのに顔がニヤケてますよ 「いて!蹴るこたぁないだろ・・・・・だって付き合ってるんだろ?」 「あれ?谷口。お前、何でそのこと知ってるんだ?俺は誰にも言ってないぞ?・・・・・・ってまさかハルヒ、皆に言いふらしたのか?」 「そんな非人道的なことあたしがすると思う?」 いや、朝比奈さんに強制わいせつしてるが、あれは人道的行為なのか?他にも挙げたらキリがねぇ 「何ブツブツ言ってるのよ!とにかくあたしは、言いふらしたりなんかしてないわ」 「だよな・・・・スマン、ハルヒ。疑ったりして」 「べ、別にあんたが謝る必要なんてないわよ・・・・あたしを好きでいてくれればそれで・・・・」 「・・・・・・・・・・ハルヒ」 「・・・・・・・・・・えぇっと・・・・・・・・俺、先行っていいか?」 谷口は相当イライラしてるみたいなんだが・・・・・正直スマンかった 「いや待て。誰から聞いたんだ?その付き合ってること」 「・・・・・・ん?そういえばそうだな。特定の誰かから聞いたって訳でもねぇし」 「はぁ?誰からも聞いてないのに知ってる?なんじゃそりゃ」 「いやぁ、俺も不思議なんだが自然とそう思ってたよ」 「不思議?!」 あぁ、ハルヒの目が輝いてる・・・・谷口、ご愁傷様 「ちょっと谷口!その話詳しく聞かせなさいよ」 谷口はネクタイを掴まれて・・・・カツアゲされてるみたいで可哀想で助けてやりたいのは山々なんだが確認しとかないとかけないことも出来たしな 「ハルヒ、先行くぞ」 ・・・・・・不思議となれば俺の言葉も耳に入らないのか?まぁ先行くか 「・・・・・ふんふん、なるほどね。キョンはどう思う?ってあれ、キョンは?」 「先行ったみたいだぞ」 「何で言わないのよ!この役立たず!」 「いてー!蹴るなよ・・・・・殴るのもなしだって」 「長門、いるかー」 「・・・・・・・・・・・・・・・何?」 なんか朝は三点リーダーが多いな・・・・・長門も朝は苦手なのかな? しかし、こんな朝早くから団室にいるなんて、流石長門だな 「ちょっと聞きたいことがあるんだが、いいか?」 「・・・・・・・・・・・・・・・いい」 やっぱり機嫌悪くないか?昼休みでもいいんだが・・・・ 「・・・・・・・・・怒ってなどいない・・・・・・・・・早く話して」 やっぱり怒ってねぇ?微妙に目が恐いんだが・・・・・ 「そのことについては情報統合思念体も把握している。涼宮ハルヒの力によるもの」 まぁ、想像はしていたが・・・・・で、何でそうなったんだ 「情報統思念体の見解によると、涼宮ハルヒはあなたと恋愛関係にあることを世間に知られることで、あなたを他の女に取られることを防止したと思われる」 「なるほどね・・・・そんな可愛い一面もあるんだな」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 ・・・・恐いから睨まないでください 「で、なんでそのことを俺に教えてくれなかったんだ?」 「現実、事実を捻じ曲げた情報の書き換えはなく、また時間が経てば現状と同状態になると予測されたため」 「なるほどな・・・・納得したよ。ありがとよ」 「・・・・・・いい」 「・・・・・・でね、そしたら今度は有希が・・・・・って聞いてる?」 「聞いてるって、長門がなんだって?」 「フフフ・・・・・・やっぱりキョンはキョンね」 「どういう意味だ、それ?」 「そのまんまの意味よ!」 ・・・・・・・・わけわからんぞ、それ 俺とハルヒのラブラブっぷりは自分で言うの変だが常軌を逸している そのことが顕著に現れるのは授業中と団活中、それにデート中だ 「・・・・・・・・・」 授業中はずっと後ろから視線を感じる。まぁ後ろからって時点で視線の元はハルヒで間違いないんだが・・・・・それにしてもこの席順、変わらないな 「・・・・・・・・・何見てんだ?」 「キョンの背中って案外大きいのね。頼りになりそうね」 「そうかい、そりゃぁどうも」 授業中だというのに、こんな惚気た会話をしてて、よく自分が恥ずかしくないよな しかし、この学校の教師はどうなってるんだ?これだけハルヒとお喋りしてるっていうのに注意の一つもしてこやしない ・・・・・・もしかして、またトンデモパワーで「ラブラブ遮蔽シールド」とか張ってるんじゃないだろうな・・・・・いや、ハルヒならやりかねん まぁこのくらいは許せる範囲なんだが、やっかいなのが団活中だ 授業中にいちゃいちゃ出来ないのが不満なのか放課後の団活ではその不満を爆発させる 「ねぇ~キョン~・・・・キョン~・・・・・・」 だー!耳元でそんな甘い声で囁くな!!理性よ頑張れ!! 指定席だったデスクトップの置いてある団長席は今はただのパソコン台に成り下がり、ハルヒは俺の隣に座って、俺を弄ったり古泉とのボードゲームを観戦したり俺を弄ったり雑誌を読んだり俺を弄ったりノートパソコンでネットの世界にダイブしたり俺を弄ったり俺を弄ったり・・・・ つまり何だ・・・・・俺の理性を崩壊させたいだけなのかもしれん。こいつの悪戯心にはまいるよ。こんなこと毎日されてたら理性なんてあったもんじゃないぞ まぁデートの様子なんて実況しなくてもわかるだろうし、実況なんてしたくもねぇ いわゆる唯のバカップルってことだ そんなハルヒもバカップルっぷりを唯一振舞わないのが土曜、つまり今日の不思議探索のときだ クジでの組み合わせ決めで、俺はてっきり毎回ハルヒと2人きりになるとばかり思っていたんだがそうではないらしい。きちんと確率論に則った結果が毎回提示される ここぞとばかりにハルヒパワーじゃないのか?こういうところで力を発揮して欲しいね 「大丈夫。わたしがさせない」 ・・・・・・・・・・長門?! ・・・・・・・・・偶然だよな? 偶然なのかハルヒパワーなのか情報操作なのか規定事項かはしらんが今日の午前のペアはハルヒとだった。でも何かが違った。しいていうなら風邪をひいたハルヒってところか?いつもの猪突猛進さがないというか「キョンとね!じゃぁ行くわよ!」と言って手でも引っ張っていくと思ったんだが・・・・・そういえば付き合い始めてからはペアになるの初めてだな なんだかしおらしいハルヒをつれて街中をぶらぶら・・・・傍から見ればただのデートなんだが、いつのまにか例の川沿いを歩いていた なんかハルヒも元気がないことだしベンチで一休みするか 「なぁ・・・・今日のお前、元気がないな」 「そ、そんなことないわよ!いつも通りよ」 「・・・・・・・・そうか、ならいいが」 「・・・・・・・・・ねぇ、キョン。あたし達って付き合い始めてから1ヵ月経ったわよね?」 「ん?あぁそうだな」 「キスもたくさんしたわよね?」 「・・・・・まぁ・・・・・・・・・・したな」 「あたしのこと愛してる?」 「そりゃぁ勿論愛してるぞ」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・そう」 何が言いたいんだ?やっぱり何処か変だ。少しどころではない。大分おかしい 「キョン・・・・・探索が終ったら家に来て」 「家って・・・・・・・ハルヒの家か?」 「うん」 「そうか・・・・・・・・わかった、行くよ」 「ありがとう・・・・・もう時間ね。皆の所に戻るわよ」 おかしい。おかしいことに間違いはないのだが・・・・・それにしても直接家に呼び出すなんて、よっぽど大事な話があるに違いない・・・・・・・別れ話なんて勘弁だぜ? 「さて、涼宮さんがいなくなりましたので・・・・・大事な話があります」 「お前の、その「大事な話」とやらはどうせ俺を巻き込む事態なんだろ?」 「何故そう思われるのですか?」 「この面子で話し合うことなんざ、どうせ俺が疲れる仕組みになってるに違いない」 「まぁとりあえず話だけでも・・・・」 午前のおかしなハルヒは朝比奈さんを引き連れて午後もおかしなまま2人で人ごみへと消えていった。つまり俺のペアは長門に古泉だ 俺たちはいつもの喫茶店の前で別れる振りをして再度入店した。なんでもこの店は機関のものらしく、聞かれたくない話を存分に出来るらしい。 「端的に申し上げますと、今朝のペア決めで凉宮さんとあなたがペアになられたとき閉鎖空間が発生しました」 なんだと?閉鎖空間ってあの閉鎖空間か?ハルヒがストレスを感じてたってことか? 「いえ、今回はそのような理由ではなく、また通常の閉鎖空間ではないようです。僕は機関からの報告を受けただけで実際に見ていないので詳しいことは分からないのですが、閉鎖空間内を覗ける長門さんに、ここは説明を任せます」 「了解した」 長門はそんなことも出来たのか・・・ 「通常の閉鎖空間と違う点は2つ。1つは空間範囲の狭さと拡大する気配がないこと。2つめは神人の活発な活動が認められない」 あの神人が活発に破壊活動をしていない?想像も出来んな・・・ 「神人は出現してから約3時間の間、ただうずくまって座っているだけ。破壊活動もしなければ身動きすらしない」 「そんな神人が出たのか・・・で機関はどうするんだ?」 「えぇ、そのことなのですが・・・・触らぬ神に祟りなしとも言います。しかし放っておけば何時までも閉鎖空間は消えませんし、何時拡大を始めるかもわかりません」 「そうか・・・・・・で俺はどうすればいいんだ?」 「そうですね・・・・なにか涼宮さんについて変わったこととかはありませんでしたか?」 「変わったところと言えば・・・・・どこか元気がなかったぞ」 「元気がない・・・・落ち込んでいるのでしょうか?」 「そのような感情の観測はなされていない・・・・言うなれば・・・不安になってる?」 不安?ハルヒが・・・本当か、それ 「宇宙人、嘘つかな~い」 長門・・・・キャラ変わってるぞ 「さて、これからどうしましょうか。僕としては探索が終ってからでも充分対策がとれると思うのですが・・・・どうです、長門さん」 「問題ない。探索終了後わたしのマンションで検討会を実施する」 そうかい。頑張ってくれよ 「何を言っているのですか。もちろんあなたにも参加してもらいますよ」 いや、俺はちょっと用事が・・・・ 「世界とその用事とどちらが大事なのですか?」 そりゃぁハルヒも大事だが世界が終ってしまえば元も子もないか・・・・ 「わかったよ」 「わかっていただけてよかったです。では探索終了後、1度別れる振りをして長門さんのマンションに集合ということで」 「はいよ」 「了解した」 「では探索に参りましょうか」 「今日の探索は終了!解散!」 ハルヒの一声で今日の探索とは名ばかりの活動も終了し俺も帰宅する振りを 「さ、行くわよ」 そうでした。呼び出し喰らっていましたね しかし古泉にも言われたとおり世界のほうが優先されるべきなんだろうな・・・・世界崩壊の原因が目の前にいるとは 「あぁ、そのことなんだが。スマン、実は用事があってな」 「・・・・・・なによ、あたしより優先すべきことなの?」 「まぁそういうことだ」 「その優先することってなんなのよ!」 しまったな、言い訳を考えてなかった。まさか本当のことを言うわけにもいかないし、かと言ってハルヒに俺の考えた嘘が通じるとも思えないし・・・・・ 「黙り込んじゃって、ますます怪しいわ」 しょうがない。本当のことを全部言うわけにはいかんが・・・・ 「実は長門の家に呼ばれてるんだ」 「・・・・・え、有希?」 「・・・・・・・なんであたしより有希なのよ」 え?俺の目の錯覚か・・・・ハルヒの大きな目から1滴、2滴と大粒の涙が滴り落ちてゆく 「あたしより有希なの?・・・・・・・・あたしのこと嫌いになっちゃったの?」 「違う!そんなんじゃない・・・・・ハルヒのことは好きだ!」 「そんなの嘘よ!もういい!!」 そう吐き捨てたハルヒは走っていってしまった。こんなの常識的に考えて追いかけるだろ?世界なんて二の次だ 「みっみっミラクル~み~くルンルン!」 「発信者:古泉一樹(グループ:SOS団)」 そう俺の携帯のディスプレイが表示している。いいタイミングだな 「・・はぁ・・・・はぁ・・・・・古泉か?」 「ええ。緊急事態です。閉鎖空間が急速に拡大し始めました」 まぁそうだろうな・・・・・あんなにハルヒが怒って泣いていたんだ 「はぁ・・はぁ・・・・・そうか・・・・・はぁ・・・・悪いが俺は行けそうにない・・・・はぁ・・・・はぁ・・・・理由は・・・・・・・・・・後で」 「なんとなく状況は察しました。世界崩壊の危機を脱っすることが出来ましたらそのとき・・・では」 話のわかる仲間を持つと助かるぜ 「・・・・・・なんであたしの部屋に入ってきてるのよ」 「おまえが来いって言ったんだろ?」 ・・・・なんてのは嘘で夢中で追いかけてたらハルヒの部屋まで来ちまった 「だってあんたは有希のところに行くんでしょ!」 「いや違うそれは・・・・」 「それは何よ!だいたいあんたはいっつも有希やみくるちゃんばっか見てデレデレしちゃって、あたしのことなんてちっとも見てないじゃない」 「なに言ってるんだ!俺はしっかりお前のこと見てるぞ!」 「・・・・・・そんなの嘘よキョンはあたしのことを見守っててはくれないわ」 「いいや、嘘じゃねぇ!お前のことを守って見せる」 「そんな約束いつまで続くかなんてわからないじゃない!」 「約束する。いつまでもおまえのこと見守っててやる!」 「・・・・・・?!ちょっとキョン、それって」 「俺は世界とハルヒを天秤に掛けてもハルヒをとる!何があってもハルヒを守ってみせる!」 「・・・・・・・・・・本当」 「あぁ、本当だ」 「・・・・・・・・まぁいいわ。今回は信じてあげる」 はぁ、よかった・・・・ってそういえば古泉たちは大丈夫なのだろうか 本当にハルヒの方の天秤をとったわけなんだが・・・・ 「・・・・・・ねぇ、キョン。知ってる?」 何がだ? 「今ね、この家にいるのキョンとあたしだけなのよ?」 そ、それは拙くないか?男と女が二人っきり・・・・・ 「別に拙くなんかないわよ。あんたさっき自分で言ったこと忘れたの?」 さっき言ったこと・・・・なんのことだ? 「はぁ?あんた覚えてないの?あたしを一生・・・・・・まぁいいわ、キョンはやっぱりキョンね」 ・・・・・・・・なんのこっちゃ 「ここは再構築世界とかじゃないよな?」 「えぇ、おそらくは・・・・ですよね?長門さん」 「そう」 ハルヒを泣かしてしまうという事件もようやく一段落ついたその日の深夜、ようやく長門のマンションに来れた。本当はもっと早く来るつもりだったんだが、泣き疲れたハルヒは俺を抱きかかえたまま寝てしまった 別に腕の中から逃げてこられなくはなかったんだが・・・・・気持ちよさそうな顔だったから、つい見とれていこの時間だ 「・・・・・・・・可愛い寝顔だな」 「!?・・・・・Zzz・・・・」 あぁ、こいつ起きてやがる・・・・顔が真っ赤だ 「お前、起きてるだろ」 「・・・・・なんでわかったのよ」 「そりゃぁいつでも見守ってるからな」 「・・・・・・・・キョン」 「そういやぁ親はどうしたんだ?」 「・・・・・あんた雰囲気ってものを知らないの?」 「なんのことだ?」 「はぁ・・・・・・親は親戚の結婚式に行って夜まで帰らな・・・・ってもうこんな時間じゃない!何で起こさないのよ!!」 「可愛い寝顔だったからつい・・・・」 「バカこといってる場合じゃないわよ、本当に帰ってきちゃう。キョン、早く帰る支度して!」 別に「あたしの彼氏よ」とか紹介されてもいいんだが・・・・ 「バカいってないでさっさと帰る!!」 ってな具合に家を追い出されてしまった 「そうか・・・・じゃぁ、今回の種明かしをしてもらおうか」 「種明かし・・・・ですか。結論から言いますと、男には女の気持ちはわからない・・・・でしょうか」 全然結論になってないぞ、古泉。ちゃんと説明しろよ 「僕も男ですし、今回の騒動は長門さんにご説明をお願いいたします」 「了解した」 長門って、その台詞多いな・・・・・ 「凉宮ハルヒが不安になっていな要素はたった1つ。あなたとの関係」 「俺との関係?」 「凉宮ハルヒがあなたにしようとした行為によってあなたとの関係が壊れることを危惧し、その葛藤の中で例の閉鎖空間を発生させた模様」 行為?行為ってなんだ? 「・・・・鈍感」 「いやぁ、あなたがそこまで鈍感とは」 「・・・・・わるかったな」 ハルヒが俺としようとしたことぐらい俺にだってわかるさ。付き合って1ヶ月、キスも充分した、愛してる。でも気づくのが遅かったな。スマン、ハルヒ。やっぱり女の考えてることは男には到底わからないものなのさ・・・・・でもちゃんとわかるように努力はするよ 「・・・・な、なによ!じろじろ見て」 「いいや、別に。俺はただお前を見守ってるだけだ」 「・・・・・・・あんた、よくそんな恥ずかしい台詞が言えるわね」 お互い様だろ 「そんなに見られてたら答え合わせに集中できないじゃない!」 今日は土曜探索の翌日、日曜日だ。予定通り午前中はハルヒと勉強会中・・・・と言っても、もう終るんだがな 「・・・・うん、よし。今日はこれでおしまいね。お疲れ様」 「お疲れ、ハルヒ。いつもありがとな・・・・・午後はどこにデートに行きたい?」 「・・・・・あたしの家に来ない?」 ・・・・・・親に紹介でもするのか? 「んとね・・・今日も家に誰もいないのよ」 「それってまさか・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・バカ」 good end… 「いやぁ今回は出番が結構ありましたね」 「いっぱい喋った。ユッキーがんばった」 「あのー・・・・・わたしは?」 作者「空気乙wwwwwwwwwwwwwwwwwwww」 「貴様、【禁則事項】で【禁則事項】して【禁則事項】するぞ!」 作者「アッー!!」 bad end…