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プロローグ 薬物乱用に溺れる奴等は、意志が金箔よりも薄いに違いない。 俺はそんな風に思っていた。しかしその考えが、 いかに的外れで愚かなものだったかと思い知らされた。身をもってな。 涼宮ハルヒのダメ、ゼッタイ 一章 俺は今日も強制ハイキングコースを、 目を半開きにしながらメランコリーに上っている。 なんで俺がこんな顔をしてるのかって? それは今が受験シーズン真っ直中で無謀にも、 俺がその激流の中に身を投じているからだ。 驚くことに俺は都内の某有名国立大学。つまり東大だ。 そいつを志望してしまっている。 いや、させられているというべきか。 あの崇高なるSOS団団長、涼宮ハルヒにな。 ちなみに別に俺はハルヒと付き合ってる訳じゃないぞ。 そりゃ、たまにいい雰囲気になったりもするが、 これといったきっかけがな。それに、今はそんなことより受験勉強である。 おい、そこ!誰だチキンとか言いやがった奴は!…正直俺もそう思う… とにかく、付き合ってもいないのに、 勝手に人の志望大学まで決め付けないでほしいものである。 お陰で昨夜もハルヒ特製受験対策問題集に打ちのめされ、こんな状態だ。 「よお!キョン!」 後ろから『朝っぱらから声を聞きたくない奴ベスト3』 にノミネートされている、谷口の声がした。 ちなみにあとの二人は古泉と妹である。 そのうちの片方は避けようがないがな。 「相変わらず眠そうだな、お前は。いいか? 親友として忠告してやる。お前が東大に合格するなんて不可能なんだ。 よく考えてみろ?俺が道行く女性にナンパして成功すると思うか?」 もしかしたらこいつは本気で心配してくれてるのかもしれないな。 自分をそこまで貶めることないのにな。 というか、お前は自分がモテナイ事にきづいてたのか。 「それはハルヒに言ってくれ。 それに俺だって東大一本に絞ってるわけじゃない。 あいつのお陰でちょっと名の通った私立大学くらいなら、 合格出来るだけの学力はついてるつもりだ」 まあその旨をハルヒに伝えたら猛反対されたがな。 しかし、そこまであいつの言われるがままになることもないだろう。 そんな会話をしてると後ろから女子の声が聞こえた。 「おはよ!キョンくん!谷口くん!」 そういったのは朝比奈さんではない。 あのお方は今はこの街にはいないからな。 その声の主は三年になってはじめて、同じクラスになった春日美那だった。 朝比奈さん同様、少し栗色のショートヘアーをアシンメトリーに束ねている。美人というよりは、健康的な可愛さがある女子だ。 「よう、春日」 俺はそいつに挨拶を返したが谷口は顔をしかめると、 そっぽを向いてしまった。やれやれ…またか。 クラス変え当初は、谷口のそんな態度をみて、 こいつも古泉と同じ道を歩みはじめてしまったのかと、 ひどく驚いたものだが11月の今となっては、 それは当たり前になっていた。谷口は、春日にだけはとてもそっけないのだ。 「じゃ、また学校でね!」 春日がその場を去ってから俺はいつものように、 谷口にその理由を聞いてみたが、谷口は 「あいつには絶対に、何があっても関わるな」 っと言ったきり一言も喋らなくなってしまった。 …やれやれ…そのセリフをきいたのも何度目かね… こいつは春日に、よっぽどひどいフラれ方でもしたのか? そんな事を考えながら俺達は学校についた。 この時、こいつの言葉の真意をもっと真剣に考えていたら、 俺はこのあとに待ちうける高校生活、 いや、人生の中で一番タチの悪い災難に会う事もなかったのかもしれない。 あのな、古泉。この世で一番怖いのは神様なんかじゃない、それは人間の欲望だ。 二章へ
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午前中。休み時間とは名ばかりの、次の授業への移行時間かつ執行猶予時間の際。 俺は……古泉は登校しているのだろうか、長門はどうしているだろうかなどを自分の席に着いたまま黙考していた。 「どうしたんだい? あまり元気がないみたいだけど。なにか悩みでもあるの?」 国木田はこちらへと近づきつつ俺に問いかけ、俺は背後にハルヒが居ないことを確認すると、 「……悩みが多すぎるのが悩みだな。正直まいってるよ」 「ふうん。てかさ、涼宮さんも何だか元気がないみたいだね。ひょっとしてケンカした?」 普通は聞きにくいようなことを飄々と聞いてきた。国木田よ、俺とハルヒはケンカするほど仲が良いわけじゃ……。 いや、あるのか。いつも俺がボッコボコにされてるが。国木田はなおも飄々と、 「聞きにくいって? もしかして、キョンと涼宮さんのケンカは犬も食わない感じになってるの? それなら、僕がそれを聞いちゃったのは野暮だね。ごめん、謝るよ」 謝られたが、考えてみれば野暮なことはないよな。そして、 「……勝手に俺たちを夫婦にするのはよしてくれ。それより、ハルヒが元気ないって?」 あいつが? ……俺には、息巻いて不思議探索に精を出そうとしていたようにしか見えなかったが。 「キョンは気付かなかったの?」 「……俺には世界を作り変えちまいそうなほど元気に見えたがな。もしハルヒがそうだってんなら、多分、俺がまだポエムを書いてないのが原因だろう」 「おいおい、いい加減早く書いちまえよな? お前なら、いままで恋愛経験がなくても関係ねえ。涼宮とのアレコレでも書いてりゃいいじゃねえか」 谷口がどこからか沸いてきた。谷口、俺はハルヒと、それこそ人に言えないようなもんしかしてないぜ。 「それは大胆だねキョン。ここは学校だし、そういった情事的な告白は自重した方がいいんじゃない?」 俺の言葉に国木田がひどい齟齬を発生させちまった。こいつが耳年増なことを言ってるのは、人畜無害そうなツラしてるのが原因だろうか。谷口は国木田に、 「バカ言え。こいつにそんな甲斐性があったら困るってよ。ムッツリな奴ってのはそんなんじゃねえ」 「誰がムッツリだ。おいお前たち、いや、アホその一とその二。妙な勘違いしてやがると俺の怒号より先に、ジェットエンジンを積んだ地対地ハルヒミサイルがアホを感知して飛んできちまうぞ。俺はそれの巻き添えを喰らいたかないね」 「勘違い、ねえ」と声を揃える二人。もといアホ供。そのなかでも特にアホな方が、 「……しかしもう一年になるんだな。お前と涼宮が、一緒に過ごすようになってから」 ――この谷口の台詞は、まんま俺が自分の部屋のカレンダーを見て思った言葉と一緒だった。 四月。ハルヒと出会った日付に、俺が記した印。 記憶をなくしちまった異世界の俺は……その印を見て、何を思っているのだろうか。 「俺はなキョン。涼宮とお前が出会ったのは良いことだったと思ってんだ。あいつが奇行をするのは変わっちゃおらんが、中学の頃のそれとはダンチだぜ」 右手を肩の位置ほどまで掲げながら、やれやれとばかりに話す谷口。 ――俺は話の内容より、谷口の姿を改めて見たことによって一つ思い浮かんだことがあった。すぐさまそれを聞こうと、 「……そういえば谷口。お前は、ハルヒとずっと一緒のクラスだったよな?」 「ん? ああ、中一の時から現在進行形でそうだろ。なにを今更言ってんだ?」 「聞きたいことがあるんだが」 もしかして、こいつはハルヒが異世界を作っちまったヒントを知ってるんじゃないだろうかと思った俺は、「あいつさ、中学の頃から宇宙人やら諸々を探し回って、不思議なものと会いたがってたんだろ? それでさ、なにか……他に変わったことしちゃいなかったか? もしくは、あいつの悩みでも願いでもなんでもいいんだ。教えてくれ」 そうだ。異世界じゃそういったハルヒの願いは叶ってる。その世界がそんなイレギュラーな事態になってるんなら、他に……何かがあるはずなんだ。若干の期待を込めつつ聞いた俺に谷口は、 「知るか」 という端的な答えを出した。冷たい言い方に俺がすこし傷ついていると、 「中学の涼宮の行動はオールラウンドに変わってたぜ。それこそ全部が変だったもんで、それがあいつの普通になってたくらいだ。……そりゃ今でも変わんねぇが、高校に入ってから変わったもんが一つあるな」 谷口は、話の後半部分になるとニヤニヤした顔を俺へと向けて話していた。やめとけ。マジモンのアホみたいだぞ。 とは言わず、それは何だと聞き返すと、 「高校に入ってから涼宮に告白したヤツがいたんだが……涼宮は断ったらしい。中学の頃じゃ考えられねーよ。でな、東中出身のヤツらの間じゃ眠り姫伝説ってのがあったんだ」 もちろん眠り姫ってのは涼宮だ。と続けて、 「眠り姫ってのはつまるところ、涼宮が寝ぼけたこと言いながら正気の沙汰とは思えん行動ばっかやってたからさ、皮肉で付けられたあだ名だよ。そんで、あいつが目を覚ますのは、あいつにちゃんとした男が出来たときだって言われてた」 また谷口は俺をアホ面で見ながら、 「涼宮が男をとっかえひっかえしてたのは、いつまでたっても現われやしない王子様を探してたんじゃねえかって噂が立っててさ。で、あいつは眠ったまんまで王子様が誰だかわからねーから、とりあえず全員オーケーしてたんだろって話だ」 「馬鹿言え。ハルヒが王子様を探してる? あいつが全員の申し入れを受けてたのは、単に断るのがメンドーだっただけだろ」 「それは違うんじゃないかな? そっちのほうが面倒じゃん。涼宮さんなら、斬り捨て御免でサヨナラすると思うけど」 「だが……」 ……と俺は言いかけて停止した。谷口の話を聞いて、一つ不安な考えが頭をよぎっちまった。こいつらとハルヒの恋愛観について侃々諤々としてる場合じゃない。 眠り姫。 スリーピング・ビューティ。 まさか……あの、閉鎖空間から抜け出たときの行動をやれなんて言わないよな? ……俺がなんとも言えない気持ちになっていると、 「でもさ、涼宮さんはその人の告白を断ったんでしょ? じゃあ、もう涼宮さんは王子様を見つけちゃったの?」 「――なっ!」 思わず驚嘆の声を発した俺に、 「何驚いてんだよキョン? いつになく素直な反応じゃねえか」 「うん。まるで好きな人に彼氏がいたのが発覚したみたいな反応だったね」 アホがアホなことを言ってきた。こいつらにアホ言うなとは無理かもしれないと思いつつ、 「お前等がアホらしいこと言ってるからだ。あいつに男なんかいやしないし、第一、今でもハルヒは天真爛漫な行動してるじゃねえか。谷口の予測も外れてるってことだ」 そう言うと、谷口は何故か盛大に嘆息した後に、 「噂は噂だ。与太話でしかねえよ。けどな、じゃあなんで涼宮はそいつの告白を断ったと思う? 俺が言うのは業腹だが、そいつは中々の良識人だったぜ。見た目だって悪かねえ」 「そりゃSOS団があるから……」 「ああ、わかった気がするよ。谷口の言いたいこと」 俺の言葉を途中で止めた国木田は、 「涼宮さんは、今度は王子様と一緒になってキテレツな行動をやり倒してるんだね」 「そういうこった」 俺の目の前に二つのアホ面が広がった。 つまり、こいつらは俺が王子様だと言いたいらしい。なんとアホな。谷口、国木田よ。俺が王子様に見えるんなら、俺が跨っている馬はハルヒだぞ。むしろ、俺がじゃじゃ馬に乗っかってるから王子様に見えるのか? 何処をどう見たら、無残に振り回されまくりの俺の格好がそう思えるんだろうね。 俺はそんなことを考えながら二人を追っ払い、少々残念な気持ちをそのまま溜息として吐き出していた。 実を言うと俺は、谷口がこの異世界問題の解決の糸口を持ってきてくれるんじゃないかと淡い期待を抱いていたのだ。 そう。長門が世界を改変し、俺以外のみんなの記憶が消えちまった時、あいつは俺とハルヒを引き合わせるキッカケをもたらしてくれた重要人物だったからだ。そして、この谷口は―― 残念以外のなにものでもなかった。 そして昼休みになる。俺はいつものトリオでの昼食会を辞退し、文芸部室へと足を運んでいた。 理由なら沢山ある。長門の様子だって気になるし、ポエムだって書かなきゃならない。教室じゃ恋のポエムなんぞ書けるはずもないため、どうせなら部室で長門と肩を並べながら頑張るのも良いかなと考えたのだ。長門にとっても、戦友がいたほうが退屈しないで済むだろうしさ。古泉は……まあ、気にならないわけではないが来てないとしても俺にはどうしようもないことだし、そもそもあいつが学校にまで来れない理由というのがわからん。よって、俺は数ある懸案事項の中で、ポエム作成と長門についての問題を優先して選択し対応することにしたのだ。 そんな雑多なことを考えながら部室へと到着し、扉を開いた俺は…… 「うお」 室内の長門の様子を目に入れて思わず声を漏らす。 「……今日は、本読んでないのか」 長門はこちらへと振り返ることもせず、顔を窓際へと向けたまま、自分の席に閑寂と着座していた。 「長門?」 俺が呼びかけてみても、一ミリの返答すら返ってこない。 「……機関誌借りていいか?」 「…………」 沈黙を了解の合図とした俺はかつての長門を見習い、ポエムの作成に温故知新的な希望をもって小説誌を開いた。 ……が、何故か俺は自分の小説ではなく、長門の小説を読み返したいと思いながらボンヤリとページを捲っていた。 「………ん?」 長門の小説を探していた俺は、機関紙が検索を終えてパラリと閉じられたことに違和感を感じた。なぜなら、俺はあいつの小説を見つけることが出来なかったのだ。 そして何度か再検索してみるものの、一向に長門の小説は姿を見せない。 というより、ない。 それが俺の勘違いでないというのは、目次として記されている作品掲載順序と実際の順番の不一致が証明してくれている。 そう。本来ならあるべきはずの場所に、あいつの小説がポッカリと消えてしまっているのだ。 「………?」 ――なにかがおかしい。嫌な予感がする。何か……とてつもなく大きなものが俺を待っている気配が、この部室内からですら漂っている。 「長門」 もちろん返事はない。しかし、それがもちろんのことになったのはつい先程のことだ。これも、本来なら変なんだ。 「……機関誌なんだが、お前の小説は何処へ行った?」 「…………」 無言で部室の隅を指差す。俺はまるで札を貼られたキョンシーの如く何も考えず諾々とその指示に従い、長門が指差す先へと歩き出した。 「………?」 壁に突き当たった俺は、またもや沈黙と疑問符を浮かべることとなった。 ここには、円筒状のゴミ箱しか置かれていない。 行動の選択肢が一つしかなかったため、俺は何を思うわけでもなく、ゴミを漁るというあまり宜しくない行動に出た。 ……そして思わぬ収穫物を手に入れた俺は、ここで、やっと意識を取り戻すこととなる。 「――誰が……こんなことしやがった」 俺が手にしているのは……長門の小説だ。見事なまでの手際で切り取られたであろう数枚の紙の姿に、俺はそれを認めることが出来ないでいた。 いや待て。待て待て。わからん。不愉快よりも、不可解さが先に来る。 何が起きてる? いつ始まった? どうしてこうなってる? 真っ白になった頭の中で数々の疑問がひしめく中……俺は思わぬ言葉を、紛れもない長門の声で耳にする。 「わたしがやった」 ……は? なにをだよ。 「それ」 俺は手元を見る。そこにあるのは、もちろん…… 「―――長門っ!?」 質問するには不明なことが多すぎた。俺は長門を一瞥し、そして普段とは違うこいつの雰囲気を認識するやいなやすぐさま駆け寄り、あいつの肩を掴みながらあいつの名前を叫ぶ。 「……なっ……お前、どうして……」 そして長門の双眸と目を合わせた俺は……そこにあるものを感じ、狼狽を隠せずにいた。 「今のわたしには、必要ないものだったから」 そう話す長門の瞳の中には…… 何も、存在していなかった。 今つくづく思う。昨日までのこいつには、いや、初めて出会ったときだってそうだ。無感動ながらも、確かに何かが存在していたのだ。 しかし、俺の目の前にいるこの長門には……何もない。あの黒い瞳はまるで乾いた氷のようにくすみ、光を失ってしまっている。初めて俺は……こいつの姿に虚無というものを見て、例えようのない戦慄を覚えた。 何かが起きてる。それは間違いない。この長門がおかしいってのも間違いない。 じゃあ、何で……長門はおかしくなっているんだ? 《あの日》を思い出したからといって、流石にこうまでなるとは考えにくい。ってことは、なにか他の原因でこうなっちまってるんだ。考えろ。どこかに……ヒントがあったはずなんだ。 昨日は何があった。なにかおかしかったところは?(帰り際にあったな)もしかして、長門は誰かに妙なことでもされたのか?(長門が?)じゃあ誰に?(あいつはどうだ)大体、長門をこんな風にして何の得がある?(ある。あいつには)今日何かおかしなところはあったか?(あいつは来ているか?)機関誌は……(最近あいつがずっと読んでたな)。 「……ふざけるな」 これは俺の馬鹿げた思考に対する言葉だ。くそ。何考えてんだ俺は。わかってるじゃないか。 古泉が……こんなことするわけねえだろうが!(機関はどうだ?) ――いい加減にしろ。そうだ、原因を考えたところでどうなるわけじゃない。今必要なのはトルストイ的思考方法だ。 まず、現在一番優先すべきことはなんだ?(そりゃもちろん長門を元に戻すことだ)それを果たすには?(思いつかないね)じゃあどうする。(何が出来る?)俺に出来るのは……(俺に出来ないなら……) 「喜緑さん……!」 あの人なら何か知っているはずだ。確証はないが、もとよりここで俺が無為に思考を巡らせるよりは彼女に何かしら聞いてみた方が上策というものだろう。 だが、ここの長門はどうする? 下手に校舎内を引っ張って連れて歩こうものなら、ハルヒが追尾してきたりだとか俺が破廉恥な輩だという無用の心配が生徒や教師間に蔓延ってしまうかも知れん。そんなもんに構ってる暇などありゃしない。 俺が行動を決めかねていると部室の扉がガチャリと音を立て、 「……おや」 立ち尽くす俺の姿に少々驚きつつ、見慣れたハンサム顔が進入してきた。 「いえ、長門さんが心配だったのでね。僭越ながらここへやってきたわけです。お邪魔なら引き返しますが」 何も聞いちゃいないのに訪れた理由をいつものスマイルで話す古泉に、 「古泉、これ頼む! あと、長門もだ! 俺は今から喜緑さんの所に行ってくる! 理由はすぐ解るはずだ!」 「……ど、どうしたんですか?」 俺は古泉の胸元に長門の小説を押しやり、されるがままにそれを受け取った古泉は当惑しながら俺に説明を求めた。 「何がどうなってるかは知らんが、事態は風雲急を告げまくりだ! よろしく頼……」 一目散に扉へと駆け出していた俺は途中で足と言葉を止め、唖然としている古泉を見ながら、 「……古泉。俺は、お前を信じてるぜ」 たとえ『機関』が――いや、誰が長門をこうしちまったとしても……古泉は、目の前の長門を守ってくれるはずだ。 俺はそれ以上足を部室に留めることなく、一路喜緑さんの元へと駆け出した。 とは言うものの、俺が目指したのは生徒会室だった。目的地に着いた俺はすぐさまドバン!と無作法にも勢いよく扉を開き、 「……なんだキミは。ここはそちらのイカガワシイ部室と違い、ひどく真面目に学内活動に取り組んでいる場所なのだ。無礼な入室の是非は推して測るべきだと思うがね」 突然の闖入者に呆れ顔の生徒会長。少しも怯んだ様子が見受けられないのは感嘆だ。 「そういえば、機関紙の上稿の件があったな。詩集は完成したのかね? もっとも……キミのその様から鑑みるに、期日の延長でも哀願しに来たと考えるのが妥当な判断だが」 肩で息をしている俺に、会長は訝しげに言い放つ。 「……それも頼んでおきますよ」 ちゃっかりしたことを言う俺に、 「ふん。その程度の用件でわざわざ参られては、こちらが困るというものだ。期日を設定したのはそちら側だろう。そもそも今の私は、奇怪な団体に付き合ってる暇など皆目持ち合わせてはいない。この度の生徒会からの要求も実の所、便宜上の活動内容が欲しかっただけなのだ。詩集とやらはあのお祭り女が勝手に決めたことだ。今回、生徒会側はキミたちに契約不履行の罰則を何も提示してはいない。勝手に四苦八苦でも七難八苦でも起こしていたまえ」 会長があまりにも正当なことを言っているのでちょっと逆らおうと思った俺は、 「……少しばかり要求を急ぎすぎだった感は否めませんがね。せめて二学期から活動を求められれば良かったんですが」 「ふん」 いわれのない非難を受けて呆れ返ったような息を吐き、 「キミは喜緑くんの、折角の厚意を無下にするつもりかね。当初の生徒会側の申し入れを提案したのは彼女だ。……理解したのなら、早く退出したまえ。こちらは昼食をロクに摂れぬ程忙しい身なのだ」 「待ってくれ。俺はそれで来たんじゃないんだ……いや、ないんです。喜緑さんはいないんですか?」 「ほう。キミが我が生徒会秘書と謁見したいというのは何故だ」 答えてるヒマはない。いるかいないかどっちかだけ答えてくれ……という俺の質問は愚問だった。清濁併せ持つというか本来黒い会長がこの喋り方だってのは……。 「会長。どうやら彼はわたしに火急の用があるみたいです。すみません、少し席を外していて頂けないでしょうか?」 「……む。私とてヒマではないのだが。キミも良く知って……」 会長にニッコリと微笑む喜緑さん。これ以上会長が話しを続けていたらどうなるかわかったものじゃない。 「……よかろう。だが、手短に済ませたまえ」 絵に描いたような渋々とした風情で歩き去る生徒会長。生徒会活動に精力的なあの人の邪魔をするのは少々気が引けるな。 「構いません。わたしたちはここで、お弁当を食べていただけでしたから」 一転して会長に越権行為疑惑が浮上した。ちくしょう。権力を傘にきて、喜緑さんにちょっかい出してやいないだろうな。 「いえ。会長は素晴しい殿方ですよ?」 明るく言い放っているが、この人は会長の本性を知っているのだろうか。知らないとは思えないが……。 ――って、そんなどうでもいいことを考えてる場合じゃない。 「喜緑さん! あなたに聞きたいことがあるんだ! 長門の様子なんですが……」 急に笑顔のトーンを落とし、喜緑さんは悲しむ口調で、 「……はい。彼女に異変が発生しているのは知っています……その原因も」 ――よし、ビンゴ。当たりだ。原因が判明すれば、後はなんとでも対策は講じられる。 「……あいつはどうしちまったんですか? 多分、誰かに干渉されて――」 喜緑さんはゆるやかに首を横に振り、 「そうではありません。彼女は……禁を破り、死を願ってしまったんです。そして情報統合思念体からの処分を受け、現在の状態に保持されています」 「な……。あいつらが、長門を――?」 ――待て。思念体にとって長門は……世界人仮説を解明するとかいう、進化の希望だったんじゃないのか? それがあいつらの最重要目標だったはずだ。なのに、禁を破っちまったからといってホイホイとあんな状態に変えちまうのか? いや……もしかして、解明の作業には影響しないのだろうか? だがな、だからといって長門をあんな風にしちまうのは許され――って、 「ちょっと待ってください。長門が……死を願っただって? 死にたいなんぞを思ったってことですか?」 喜緑さんは視線を落としながら軽い困惑の色を顔に貼りつけ、 「……はい。長門さんのパーソナルデータが消去されていることから、それは間違いありません」 「長門のパーソナルデータが消えた? ……何となく意味は掴めるんですが、どういうことなんです?」 俺の質問に、喜緑さんはまるでカマドウマ事件をもたらした際のたじろぎ気味な雰囲気で、 「言うなれば……彼女はもう長門さんではないんです。現在の彼女は、いままでの長門さんの行動形式を思念体から暫定的に付加された、素体が一緒なだけの別人なんです。そして……」 更に沈み込み、唇を噛み締めるような様子で…… 「――もう、わたしたちが知っている長門さんが帰ってくることはありません。……彼女の中に存在する思念体は長門さんのものですが、これからどうしようとも……あの長門さんと同一のパーソナルデータが形成されることはありませんから……」 「………うそだろ」 ……喜緑さん。頼むから、そんな顔をしないでくれ……。それじゃ……。 まるで、打つ手がないみたいじゃないか……。 ――打つ手が……ない? いや……あるのか……? 「…………」 俺は揺らめく意識とおぼろになった現実感の中で、懸命に思考を成り立たせようと煩悶していた。 ……大人の朝比奈さんは言っていた。今日、長門の為に《あの日》へ飛ばなければならない、と。 だが、行ってどうなる? ――そう、そこなんだ。この現在は過去の延長なんだから、過去の空白を埋めても今が変わるわけじゃないはずだろ。 つまり……それは、長門がこうなっちまう現在を変えろってことなのか? だが、それは危険なんだ。俺たちは、歴史がどう変わるかなんて予想出来やしない。大人の朝比奈さんにいいようにされちまう可能性があるんだ。それに……。 長門が復調することは、大人の朝比奈さんにとって不利益なんじゃないか? 思念体は俺に、世界の矛盾を消して元の姿に戻さないかと提案してきた。それは、大人の朝比奈さんが消えちまうってことだ。ああ。そうだよ。そもそもが宇宙人や未来人や超能力者の上の繋がりは、純粋な利害関係で目的が一致してたから互いに敬遠していただけだ。思念体が長門を見限った今、『機関』や朝比奈さんの『未来』があいつを助けようなど考えるわけがない。 ……だが、最も頼りになる奴らは、長門を助けることに微塵の躊躇もありはしないんだ。 ――俺たち、SOS団には。 そして、今は俺の判断が一番重要な意味を持っているんだ。長門や古泉、恐らくは朝比奈さんも背後の黒幕から行動を制限されている。俺の行動如何によって、事態はあらゆる方向に進行してしまうのだ。世界の分岐点とやらがあるのなら、今が一番大事なポイントだ。 よく考えろ。俺に何が出来る? 俺の朝比奈さんに大人バージョンの彼女の存在を打ち明けてみるか……もしくは、博打だがハルヒに俺がジョンスミスだと名乗り出るかだ。危険度を考慮すれば前者だが、効果を考えるなら後者だ。どっちに………。 「………くそ」 どちらを選んだとしても、あまり良い結果が出るとは思えない。 ……それに現在俺の中では、上の奴らに向けているものとは別の怒りが大きくなり、思考することを邪魔している。 ――長門。お前は今大変な状況だが、一つ……言わせてくれ。 なにやってんだ。お前は。 死を願っただって? んなもん、願い事でも何でもねえ。お前は、死ぬほど悩んでたんだろうが。それで死にたくなったんなら、なんでこうなっちまう前に俺に言わねえんだ。いや、俺じゃなくてもよかった。ハルヒでも、朝比奈さんでも……古泉でも。そうさ、お前は一人で抱え込み過ぎるから《あの日》を起こしちまったんだろうが。……いや、それは俺が気付くべきだったよな。お前は何も悪かない。 けどな、長門。俺は誓ったんだ。お前に二度と……あんな思いはさせないと。 それはSOS団のみんなだって一緒だ。だから、俺たちはお前の悩みでも何でも共に背負って行きたいんだよ。 だが、お前がそれを教えてくれなきゃ……俺たちは、寄り添いようがなだろうが……。 長門。お前に一番必要なのはさ、自分が抱えてる悩みを仲間に伝えること――――。 ――ドクン。 ……この瞬間、俺の心臓がまるで今始めて鼓動し、その存在を知らしめるかの如く高く鳴り響いた。 「まさか……」 頭の中では、一人の少女の……笑わない仮面が笑ったような笑顔の映像が勝手にフィールインされていた。 「――喜緑さん! あいつは……朝倉はいないんですか!? いや、とにかく聞きたいことがあるんだ!」 慌てふためく俺を見ることなく、喜緑さんは視線を落としたまま、 「朝倉さんは……現在、思念体内に存在していません。彼女のパーソナルデータのバックアップも、失われています……」 「…………」 ――決まった。 俺は、行かなければならない。二度と行きたくはなかった《あの日》に。 そして俺は……二度と会いたくはなかったヤツに、今一番会いたいと感じている。 そう。朝倉は……長門の願いを、あいつの悩みを聞いているんだ。 ……《あの日》はまだ、終わっちゃいなかった――。 第三楽章・臨
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キョン「おい、持ってきたぞ」 ハルヒ「遅いわよ!どうせタラタラ歩いてきたんでしょう!」 キョン「この重量を持ってダッシュできるとでも思ってか」 古泉「ふぅ、腰が痛いです」 ハルヒ「二人とも情けないわね。まぁいいわ!さっそく組み立てよ!」 キョン「頑張ってくれ」 ハルヒ「なにいってんの、あんたがやるのよ」 キョン「…お前こそなに言ってんだ。俺と古泉はもうクタクタなんだ」 古泉「さすがに今すぐというわけには…」 ハルヒ「これだけ部品があるんだから、今すぐにでもやらないと 完成するの夜になっちゃうじゃないの!」 みくる「すみません遅れま…ひゃ、なんですかコレ!」 ハルヒ「アンテナよ!」 キョン「正確にはその部品です」 みくる「こんなにたくさん…いったいどうしたんですか?」 ハルヒ「有希が見つけてきたのよ。 へんな宗教団体の建物の跡地から」 長門「……」ペラッ キョン「(長門のことだから何かしらの意味があってのことなんだろうが…)」 古泉「(いったい何なんでしょうか、コレ…)」 長門「(…何なんだろうコレ)」ペラッ ハルヒ「で、今からさっそく組み立てようってトコ」 キョン「頼むから少し休ませてくれよ」 ハルヒ「やっぱり屋上の上かしらね、 あ、でも屋根の方が教師たちに見つかりにくいかしら」 キョン「話を聞け、頼むから」 キョン「よいしょ、っと。 この部品で最後だ」 ハルヒ「もう陽が傾いてるじゃないの!」 キョン「仕方ないだろう、この量だ」 古泉「組み立ては明日にした方がよさそうですね」 みくる「今からじゃ夜までかかりそうですもんね」 ハルヒ「さ、さっそく組み立てましょ!」 キョン「…あのな、話をだな」 ハルヒ「何事も勢いが大事なの!思い立ったが吉日よ!」 キョン「お前はいいとしてもだがな、 朝比奈さんや長門を夜遅くまで残すのは良くないだろ」 ハルヒ「…む」 古泉「…すみませんバイトが入ったので失礼します」 キョン「(すまん、古泉)」 ハルヒ「わかったわよ!みくるちゃんと有希は帰っていいわ! ただしキョン、テメーは駄目だ!」 キョン「…わかりましたよーっと」 ハルヒ「それでいいのよ(あれ、いつのまにか2人きりってことになってね? これチャンスじゃね?え、しかも夜の学校+星の見える屋上とか ふいんきバッチコイじゃね?マジパネェくね?あれ?)」 長門「……私は平気。アンテナも気になる」 ハルヒ「黙れ小僧ッ!」 キョン長門みくる「!?」 ハルヒ「夜道は危ないから気を付けて帰りなさい!」 キョン「(…気のせいか?)」 ハルヒ「……まだできないの?」 キョン「急かすな、足場が悪いんだから」 ハルヒ「少しは急ごうとしなさいよ!もう真っ暗よ!」 キョン「だからこそ慎重にやってるんじゃないか」 ハルヒ「……もうっ!」プイッ キョン「おい、どこにいくんだ」 ハルヒ「屋上探険!」 キョン「はぁ…気を付けろよ」 ハルヒ「…キョン、頑張ってくれてるな…。 ぶつくさいいながら、なんだかんだて付き合ってくれてるわよね…。 今日だって、帰ったっていいのにこんな時間まで…」 ハルヒ「……っ!何、考えてるのよっ! やつがそんなっ…」 キョン「あー寒い」 ハルヒ「暗いなぁ… …この街の光一つ一つに人がいて、生活があって、人生があって… …楽しんだり、苦しんだり、泣いたり、笑ったり… こんなにたくさんの人たちが、それぞれ生きていて、死んで… 世界は続いたとしても、その人の命はそこで途切れて… こんな世界に、意味なんてあるのかな…? こんな気持ちに、人を…す…っ………に、なることに、 意味なんて……」 意味などない。 この世界は繰り返す。 ただそれだけだ。 もはや無意味であることも無意味だ。 空であって、空で、ない。 ハルヒ「…え?」 キョン「おーいハルヒ。もうすぐ完成だぞー」 ハルヒ「あっ……うん……… おっ、遅いのよ!」 キョン「うっし、この部品で最後だ」ガチッ バチィッ! キョン「うおっ!眩しっ!」ズルッ キョン「しまった…!」 ハルヒ「キョン! どうしようどうしよう、受け止めなきゃ…!」 ドン。 ハルヒ「あれっ?」 キョン「痛いじゃないか」 ハルヒ「えっ、あっごめん…」 キョン「早くどいてくれ、じゃないと間に合わない」 ハルヒ「そうね」 キョン「見ろハルヒ、看板が見えてきた」 ハルヒ「私、ドキドキしてきた!」 キョン「ほら、小人がプラカードを持って案内しているぞ」 (^q^)「我がwwwwwwサーカス団をwwwwww是非wwwwwww ご覧wwwwww下さいwwwwwwwwワニ女もwwwww お見せwwwwwwwwしましょうwwwwwwww」(^p^) ハルヒ「小人はみんな同じ顔をしているのね」 キョン「人生楽しそうだな」 ハルヒ「はやくいきましょう」 キョン「入場料はいくらだ」 ハルヒ「あんたのおごりね」 キョン「――――か。意外と安いな」 ハルヒ「え、いくらだって?」 キョン「だから、――――」 ハルヒ「うーん、まぁいいわ」 キョン「ほら、早く入るぞ」 ハルヒ「あ、待って」 キョン「どうした、早く」 ハルヒ「ちょっ…待っ……て」タッタッタッ キョン「先に行くぞ」 ハルヒ「待ってってば…… ん……暗幕が邪魔…で……追い付けない……」タッタッタッ ハルヒ「待ってってば」バサッ 「ようこそいらっしゃいました我がサーカス団へ! 今宵もどっきり不思議をどっさり持ってきたよ! こいつを見逃しちゃ、残りの人生後悔しかない!それこそ生きてる意味がない! どうぞ最後までご覧あそばせ!」 ワアァァァァッ!! ハルヒ「キョン……どこにいったのかしら」 「おい、もう始まるだろうが!うろうろ立ってないで早く座れ!見えねえじゃねえか!」 ハルヒ「すみません…」 ハルヒ「このサーカスは自由席しかないのね」 キョン「そう、早い者勝ちなんだ。遅れたやつに誰も席なんて譲ってくれないし、 譲ったって席をなくすだけで褒められなんかしないんだ」 ハルヒ「ふーん」 「さぁさぁみなさんお待ちかね! まずはワニ女の解体ショーだよ!」 キョン「あ、朝比奈さんだ」 ハルヒ「本当。舞台用の衣装、似合ってるわね」 「今からこの巨乳なワニ女を箱の中に入れて、このチェーンソーでバラバラにしてしまいます! 皆さん、これからはまばたき禁止ですよ!」 キョン「ほう」 ハルヒ「みくるちゃん大丈夫かしら」 「それでは、さぁ刮目!」 ギュイイィィィィッ、ギィィィィィィンッ バリバリバリバリバリバリビチビチビチゴリゴリゴリゴリバリバリバリバリギューーン ガーバリバリバリバリギリギリギリギリギリキューン 「はいっ!」 ワァァァァァッ ハルヒ「あれっ」 キョン「これで終わりか」 ハルヒ「手品かと思ったら、違うのね」 「お客様の前で失礼、私、マスクを着けさせていただきます。 というのも、次にお見せするショーは少々危険でして。 続いては世にも珍しい、人に寄生するキノコの苗床にされてしまった少女、キノコ人間をご紹介―――」 キョン「なんだこれ、見世物小屋か?」 ハルヒ「サーカスって感じじゃないわね」 ハルヒ「あ、あれ有希だ」 「さぁ、続いては奇跡の業をお見せいたしましょう!」 …………ざわ………ざわ…………ざわ…………ざわ………ざわ…ざわ……… キョン「なんだあのじいさん」 ハルヒ「中国のテレビ用の仙人みたい」 「何を隠そう、これは我々が捕まえた件なのです! 今日の今日まで猿ぐつわをつけ、予言をさせないようにしてきたのです! 今、たった今、その猿ぐつわを外します! さぁ、件の予言に耳を傾けて下さい!」 件「――――。」 キョン「………。」 ハルヒ「………。」 件「――焼け焦げる臭いをたどって歩くとそれはオーブンに並べられた胎児が溢れんばかりの脳味噌を滴らせて その上に吊るされた母親の母乳と血と髪の毛によって風味付けをされていて涙がないのは 渇れたからではなくすでに絶命しているからでへその緒は首に絡まった。子供の父親たちは 各々の首を切り落としそれを使って互いを慰めあっていたまだ勃起したままだったが塗り 込められた糞と尿はその辺にありふれていて、臭いよりも味が強烈で散歩していた犬は珍味 ありがたくいただく柔らかいところは大抵腐り落ちてまた腐りはじめ。 瓶詰めの単眼児がゴミクズ自我を持っていない証明に必死になれるのはうらやましくて きらきらした眼を象みたいな鼻が眉間に瞳は二つなのにね楽しい。本日お集まりいただいた ぐちゃぐちゃ諸々はたとえば煙草屋のばばあが肺癌で死んだ。真っ黒だからまるで まずそう重油みたいな血を発電に使えたらいいくらい吐いて悉く破裂しそうな膿を針で指す けど電柱にぶら下がったそれには届かないなぜなら美しすぎるから。武器は戦車じゃなくて 言葉ごめんなさいあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてる あいしてるあいしてるあいしてるごめんなさいごめんなさいごめんなさいでも戦車も 素敵押し潰されたいし押し花みたいなのを作りたい子どもを記念に。殴りかかった右手は 頭蓋骨と一緒に砕けて釘が刺さったから一緒に二、三人首が回って笑ってるお腹の なかみはないからむこうがわに咲いた人がよくみえたよ筋肉が遺憾なく美しいよ皮膚は いっかしょにまとめられて処分が楽だし間違ったところがよくわかる、脳みそがない人が たくさんいるけどみんなわかるよ幸せなら手を叩こうと顎がないのに言うんだ。子供の子供は かわいそうだね親の親が不甲斐ないばかりに頑なに堅くなった脳は言葉さえ産み出さない 誰も救えない戯れ言を垂れ流す口は穿たれたら代わりに血ががががががががががががががががが」 キョン「詩人だなぁ」 ハルヒ「あ、血を吐き出したわ」 件「がががががががががががががががががががががががががががががががががかががが かがががががががが学がないからでなく才能がないからだわかれそのくらいわかるだろうと ソドムの街のひゃくにじゅうにちも知らないのか悪徳しかないそれはそれは美しかった いってもきかないから愛してやまないのにね仕方ないとニガヨモギをおとそうそうしよう そのせいでほとんどのみずは苦くなるが知らん、どうせイナゴだらけで何も残らないんだ ラッパの号令を待つのちつかれたと パーーン キョン「あ、頭が」 ハルヒ「破裂したわね」 キョン「でも口から血はずっと出てるぞ」 ハルヒ「すごいすごい、噴水みたい」 …………ざわ………ざわ…ざわ…………ざわ…………ざわ……ざわ………… 「えー、失礼いたしました、少々お待ちください」 キョン「大変そうだな」 ハルヒ「血がまだ止まらないみたいね」 キョン「団員が押しても引いても動かないし、どうなってるんだ?」 ハルヒ「ちょっと、血の量多すぎない?床一面に……」 件「ひ、ひとつがいだけゆるしてや、る、あとはだめだ、と、のたまう」 ぐっ キョン「あ」 ハルヒ「あ」 どばっしゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ ハルヒ「すごい、津波みたい」 キョン「あ、こっちにも来た」 ハルヒ「ていうか、流され…」 ざざーん ハルヒ「わ、キョン!助けて」 ざざざざざーん キョン「無理だ、俺も流されてるんだぞ」 ざざざざざーんざばぁぁぁん ハルヒ「がぼぼぼぼぼぼぼぼ」ぶくぶくぶく ざざーん ハルヒ「うーん」 ハルヒ「……ここは、川原?」 ハルヒ「キョンは……?どこ?」 ハルヒ「………………しょうがないわ、一人でもいかなきゃ」 ハルヒ「じっとしててもはじまらないものね」 ハルヒ「…………」てくてくてくて ハルヒ「川原の道沿いに、ずっと赤い花が咲いてる」てくてくてくて ハルヒ「………気持ち悪い」てくてくてくて てくてくてくて てくてくてくて てくてくてくて てくてくてくて てくてくてくて てくてくてくて ハルヒ「…どこまで歩けばいいのかしら」てくてくてくて ハルヒ「あ、あれは」 古泉「痛い!痛い!」 すばらしい日本の戦争「………」バシィッ!バシィッ! 古泉「やめてください!もう、血が!痛い!痛い!」 すばらしい日本の戦争「…………グスン」バシィッ!バシィッ! 古泉「痛い!痛い!…ぐえっ」 すばらしい日本の戦争「…………グス、ううっ…」バシィッ!バシィッ!ドカッ!ゴキン! ハルヒ「豚がいじめられてるわ」 ハルヒ「ちょっとあなた、なんで豚をいじめているの?」 すばらしい日本の戦争「……グスン、いじめてるんじゃ…………ないんだ………」バシィッ!ボグゥッ! ハルヒ「でもこんなにボロボロになるまで殴って、 いじめじゃなかったらなんなのよ」 すばらしい日本の戦争「…………罰を………与えてるんだ………」ガッ!ガッ! 古泉「ヒィン!痛い!」 ハルヒ「罰を?いったい何の罰?」 すばらしい日本の戦争「…………生きること………生きることは、罪だから……グスン…」バシィッ!バシィッ! すばらしい日本の戦争「………しかも……… ………豚に生まれるなんて………」バシィッ!バシィッ!バシィッ!バシィッ! 古泉「痛い……、ッ……」 ハルヒ「へーそうなんだー。確かに豚は薄汚いしね」 すばらしい日本の戦争「………ううっ………グスン……」ボグゥッ!ドガッ!ガギッ! 古泉「………痛い、よぉ……」 ハルヒ「ねぇ、私もてつだっていい?」 古泉「……!涼宮さん………」 すばらしい日本の戦争「………駄目だよ……、汚れちゃうから………グスン」バシィッ!ボグゥッ! ハルヒ「ヘーキよ、ヘーキ!汚れなんて気にしないわ」 すばらしい日本の戦争「……で、でも……これは、僕の仕事だから………」ガギッ!ゲシッ! すばらしい日本の戦争「………とられたら……困る………グスッ」バキン!ボグゥッ! ハルヒ「しーらない」フアッ! すばらしい日本の戦争「やめてくれわかってくれないと困る」ギロリ ハルヒ「ッ!」 ハルヒ「……っ、そうだ!キョンを探さなきゃ!じゃあね!」 すばらしい日本の戦争「………ごめんよ、わかってもらわないと困るんだ…… ………グスン」バシィッ!ボグゥ! 古泉「痛い…うぅぅぅ……」 ハルヒ「気持ち悪いなぁ………豚!」 ハルヒ「………………」てくてくてくて ハルヒ「…やっぱり、あの豚もらえばよかった」てくてくてくて キョン「あれに乗っていけば楽だったろうし、 いざとなったら食材にもなるしな」てくてくてくて ハルヒ「ね。なんで私がいじめるのは駄目で あいつがいじめるのは仕事だから、って許されるのよ!」 キョン「まぁ、そんなに怒るなって」 ハルヒ「そういえば、この道どこまで続くのかしら。 ずいぶん進んだのに、景色が全然変わらないわ」 キョン「仕方ないさ。 俺たちなんて、車の中でカラカラ回るネズミみたいなもんさ」 ハルヒ「…横にそれたらどうなるのかしら」 キョン「ん?」 ハルヒ「ほら、河原のあっち側はどうなってるのかしら? あっちには赤い花は咲いてないし、気持ちも晴れると思うの!」 キョン「おいハルヒ」 ハルヒ「ねぇキョン、いきましょう!」 キョン「ハルヒ」 キョン「お前がなんと言おうと、俺はこっちの道を逝く」 ハルヒ「え?」 キョン「お前も見ただろう? 生きることとは、苦しみだ。 生きることとは、罪を重ねることだ。 生きることとは、無に帰ることだ。 無から生まれた俺たちは、いつか無に帰る。 現世には、なにも残らない。 泡沫のごとく生まれ、川の流れに従うように生き、泡沫のように消える。 ただそれだけのことだ。 それが、何度も、何度も、気が狂うようなほど、何度も繰り返される、それが生きることだ」 ハルヒ「キョン?」 キョン「俺は、この果てしない流れから、巡りめぐる輪の中から飛び出す。 そう決めたんだ。じゃあなハルヒ」 ハルヒ「いやだ、私はキョンと一緒にいきたい! 生きたいよ!」 キョン「…手を離してくれ」 ハルヒ「嫌よ!絶対に連れていく!来なさい!」ぐいっ! キョン「……わかってくれ、ハルヒ」 ハルヒ「さぁ、さっさとこの川を渡りましょう! きっと向こう側でみんな待ってるわ!」ザバザバザバッ キョン「わかってくれ、頼む」ザバザバザバ ハルヒ「団長命令よ!生きましょう!」ザバザバザバ キョン「あぁ、ハルヒ」 すばらしい日本の戦争「わかってくれないとこまるんだ」 ハルヒ「!」びくっ ハルヒ「あっ…」ずるっ バシャン キョン「じゃあな、ハルヒ」 ハルヒ「やだ……がぼっ……溺れっ………」ぶくぶくぶく ハルヒ「キョン!」 みくる「あっ!」 長門「……意識が」 古泉「い、今先生を呼んできます!」 ハルヒ「……ここは、……私は、……キョンは?」 みくる「えっと……その……」 長門「ここは病院。あなたは学校の屋根から落ちてここに運ばれた。それが昨晩」 ハルヒ「あ……あぁ………、キョンは……?……私がちゃんと、受け止めて……」 みくる「…………」 長門「…………彼は」 みくる「涼宮さんの、下敷になって……」 ハルヒ「…………」 ハルヒ「………から」 みくる「え?」 ハルヒ「釈迦はイイ人だったから、キョンを生きる苦しみから救ってくれたのよ!」 長門「……!」 ハルヒ「そりゃそうよね!生きるのって苦しみでしかないもの! 生きていたって、しかたがないもの!」 みくる「す、涼宮さん!」 古泉「…先生、早く!」 医者「いったいどうしたんだ!意識が戻ったと聞いたが」 みくる「わからないんです、いきなり……」 ハルヒ「キョン、やっとわかったわ! 生きることは苦しみね、本当に! だってせっかく生きているのに、あんたがいないんだもの! 私が生き残る代わりにあんたが死んだなんて、苦しみでしかないわ!」 長門「……落ち着いて」 医者「おい、患者が暴れだした!何人か連れてこい! あとCTの準備を、速くしてくれ!」 ハルヒ「あぁ、キョン、私死ねない! 私あんたのせいで、私死ねなくなったじゃない! あんたの罪を背負って生きなきゃならないじゃない! 苦しんで、後悔しながら生き続けなけりゃいけないじゃないのよぉ!」 古泉「涼宮さんっ!いったいどうしたんです!」 長門「………うっ」 みくる「ど、どうしたんですかぁ?」 長門「………今、涼宮ハルヒは異常な電波情報を受信している」 古泉「どこからです!?」 みくる「異常って……どんな………?」 長門「……………死」 長門「…………死体、……………おびただしい量の、…………死体のイメージ…………」 古泉「……え?」 みくる「どういう…?」 長門「………………電波は、学校、屋上から出ている………」カクン 古泉「なっ、長門さん!」 長門「……首から下を横取りされた胎児は自分達の体が鍋でとろけてゆく様を棚の上に 一列に並んでみているけれど寂しくないのはそこには兄弟もたくさんいたからだって人 類は皆兄弟そりゃ背骨だけでも逆に背骨がなくったってみんな仲間さ死んじまえばみん な同じ鍋の中でじっくりじっくりじっくりじわじわ窓の外から恨めしそうに髪の毛たち が見ているだって体は土だらけで洗ってもらってないし虫食いだらけだから鍋には入れ ないんだかわいそうにかわいそうに石灰のせいで体がボロ雑巾のようだね」ガタガタガタガタ みくる「ひぃ!」 医者「おい、その子は大丈夫か!?」 古泉「くっ……あのアンテナか…」 古泉「……もしもし新川さん、緊急です! 北高校の屋上にあるアンテナを通信不能に、………破壊してください! ……えぇ、全部で構いません!一刻も早くお願いします!」 みくる「だ、大丈夫なんですかぁ?」 古泉「……他に手はないでしょう」 長門「……この期に及んでもニヤニヤと僕を笑うので眼窩をステアするとエスカルゴみた いに出てくる出てくるさっき押し込んだ眼球とそのとき砕けた骨と大脳新皮質人差し指で くるくるかきまぜてみるよきっと植物がよく育つ」 森『古泉!今北高校に到着した!すぐに対象の破壊に移るわ!』 古泉「ありがとうございます!」 森『……発破で構わないわよね』 古泉「お任せします」 みくる「ば、爆弾ですか?」 森『設置作業終わり、起爆する!』 森『3!』 森『2!』 森『1!』 森『発破!』 『ボコン』 ハルヒ「きゃうんっ!」びくんっ 古泉「え?」 長門「かはっ…」びくんっ みくる「ひゃっ!」 医者「心拍数低下!やばいぞ!おい!」 看護師「なんでこんなにいきなり……!」 古泉「………なんてことに……」 森『…古泉!どうしたの!答えなさい!古泉!』 すばらしい日本の戦争「………ぐすん…………ぐすん……」バキッ!バシィッ! ハルヒ「痛いぃぃぃッ……」 すばらしい日本の戦争「……うぅっ……ぐすん」ボグォ!バキッ! ハルヒ「……もぉ……やめて………」 すばらしい日本の戦争「………言ったじゃないか…… い、生きることは………罪だって……」バシィッ!バシィッ! ハルヒ「……私…もぅ………死んだじゃないの………」 すばらしい日本の戦争「生きることは死ぬこと死ぬことは生きることどちらもかわらない どちらも罪なんだわかれわかってもらえないと困る」バキッ!バキッ!ゴキッ!グシャ! グシャ!グチャ!グチャ!グチャ! ハルヒ「痛い痛いいたぁぁいぃぃぃっ!本当に痛いのぉぉぉぉ!」 すばらしい日本の戦争「……ううっ…………うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん! あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」バキッ!ガンッ!ガンッガンガンガンガンガンガンガンガン! ハルヒ「…………にぇぼぉっ……ぅ……ぁあ…ぁあ」 すばらしい日本の戦争「あぁぁぁ! 何故、何故こんなにも悲しくならなければならないのだろうかぁ!! 誰も彼も、ほんの一秒でも長く生きようと思えばそれだけ罪も増える! それを嘆いて身を投げてもまたそれは罪!断罪されて然るべき!」ガンガンガンガンガン ガンボグッガンガンガンガンッ! すばらしい日本の戦争「ああぁぁぁぁ悲しいのは何故かぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………あ?」スカッ スカッ すばらしい日本の戦争「…………………?」 すばらしい日本の戦争「………グスッ……またあいつ………こ、子どもに………甘い……」 ハルヒ「………痛く、ない?助かった?」 ハルヒ「背負われてる……キョン……?じゃないわね、あなた、誰? 助けてくれて、ありがとう」 地蔵「なあたは、本来ここに来るべきではなかった」 ハルヒ「えっ?」 地蔵「あなたには道が二つある」 ハルヒ「…………」 地蔵「このまま、数多なる魂の流の中に戻り、浄化を待つか」 地蔵「現世にて、彼の人を弔い、悼み、生きるか」 ハルヒ「……………どういうこと?」 地蔵「あなたにはチャンスが与えられた。 時々人はそれを試練だとか言うがね」 ハルヒ「………私に……どうして?」 地蔵「あなたは、特別なのだよ。きっと、たくさんの人に愛されている」 ハルヒ「……………わからない」 地蔵「選びなさい」 ハルヒ「…わからないわ! 生きるのも辛い、死ぬのも苦しい、 いったい、どうすればいいのよ!………ううっ……」 地蔵「選びなさい」 ハルヒ「……………うぅ……ひぐっ……」 地蔵「皆を救いたい」 ハルヒ「……?」 地蔵「それが、お釈迦様の願い でも、浮き世でそれは叶わない。 生きることは、罪であり、苦しみに満ちているから」 ハルヒ「…………グスッ」 地蔵「…でも、あなたは知っているはず。 生きることは、決して苦しみだけではない、と。 いつか消えてしまう儚いものだからこそ、愛しく感じることを」 ハルヒ「………!」 地蔵「人間は醜く、不格好。器用で不器用な存在。 でも、それが全てではない。時々、まばゆいほどに美しい」 地蔵「それは、いつか死んでしまう存在だから。 生きているから」 ハルヒ「あぁ……あぁ…!」 地蔵「さぁ、選びなさい。 ゴールは同じだとしても、ひとつとして同じ道程などないのだよ」 ハルヒ「…………私は……私は……!」 ハルヒ「……生きていたい」 ハルヒ「何度でも、生まれ変わりたい!」 ハルヒ「生きることが辛くても……きっと……愛する人のことを思えば……!」 ハルヒ「地蔵「そうかい、では頑張って生きるがいいだろう」」 ハルヒ「ハルヒ「えぇ、ありがとう!本当に、ありがとう」」 古泉「……あれからずっとこの調子ですか」 みくる「……いったい、どうして…………ぐすっ」 古泉「……彼を…」 古泉「……鍵をなくしてしまったら、もう、どうにもならないんでしょうか」 みくる「……………(この期に及んでうまいことを言おうと)………」 ハルヒ「ハルヒ「あ、キョン!…ようやく巡り会えたわね……、 私、もう一度あなんに会ったら言おうと思ってたことがあったの………」」 すばらしい日本の戦争「………………おわり………グスッ、 ………おわりは………繰り返すこと………」
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むかしむかし、ある国の貴族の夫婦の間に一人のかわいいけど頭のイタイ女の子が生まれました。 ハルヒと名付けられたその女の子は様々な武勇伝からいつしかツンデレラと呼ばれるようになったものの、とても美しい娘に育ちました。 ところが浮気症だけど優しいお母さんがエイズで死んでしまいました。 代わりにやってきた継母と二人の連れ子、みくると有希はとても意地悪で、ハルヒは毎日いじめられていました。 人間立場が違うとここまで豹変するのかと、作者はちょっぴりセンチメンタルな気分になりました。 ある日、この国の王子さまがおしろで女あさりのパーティを開くことになりました。 欲張りな有希とみくるは王子をゲットしようとお化粧したり、官能的な衣装を着たりして、ハルヒを一人残してパーティに出かけて行きました。 ハルヒがパーティに行けないイライラをペットの谷口(犬)にあたっているとそこに魔女のちゅるやさんが現れ、 「ハルにゃん、ハルにゃん、泣くのはやめるっさ」と言いました。 「にょろ~ん」とも言いました。 「ハルにゃんをパーティに連れていってあげるよっ スモークチーズを一つ、三毛猫を一匹捕まえるにょろ!」 どうやらちゅるやさんの鼻息が荒いのはデフォルトのようです。 ハルヒが言われた通りスモークチーズと三毛猫を持ってくるとちゅるやさんは長葱をひと振りして呪文を唱えました 「やっつぁっつぁぴゃりやん (ry」 面倒くさいから省略されました。 すると、あら不思議! 三毛猫が猫バスに変身しました――あと、言い忘れましたが三毛猫の名前はシャミセンです。 イライラして名付けました。反省してます。 しかし苦労して作ったスモークチーズはそのままでした。 ハルヒがちゅるやさんに尋ねると、 「これはお夜食にょろ」 ハルヒはシャイニングウィザードをかましました。 ちゅるやさんが長葱をもうひと振りすると、ハルヒはとてもエロティックな衣装と鋼のピンヒールに身を包まれました。シャイニングウィザードの仕返しでした。 「ちょっと、何よこれ!センス無いわね!ドレスとガラスの靴にしてちょうだい!」 ちゅるやさんはしぶしぶハルヒの言うことを聞きました。 長葱をもうひと振りすると今度はきれいなドレスとガラスの靴に身を包まれました。 「そうそう、これよこれ!あんたやればできるじゃない!」 ハルヒがお礼を言うと、ちゅるやさんは、 「スモークチーズをくれたら胸パットも出してあげるよっ」 ハルヒは丁重にお断りし、かねてからの疑問を口にしました、 「いらないわよ! そんなことよりあんた呪文はどうしたのよ?」 「面倒くさいにょろ」 魔女はとても正直者でしたがハルヒにシャイニングウィザード天山キックをかまされました。 「だったらはなっからやるんじゃないわよ中途半端ね!」 猫バスに乗ったハルヒとちゅるやさんはお城とは名ばかりのラブホテルに来ました。 最近ではブティックホテルというらしいのですがその手のことに縁が無い作者に関係の無いことでした。 「ヤる気まんまんってわけね!いいわキョン、この勝負受けてたつわ!」 「ハルにゃん、ハルにゃん、大事なことを言い忘れたにょろ いいかい、ハルにゃん。 十二時くらいになったら魔法が切れてすべて元に戻ってしまうかもしれないにょろ。 そのまえにずらかったほうがいいにょろよ」 ハルヒはちゅるやさんの曖昧な物言いと語尾にイライラしました。 二人が大広間に案内されると、美しいハルヒはすぐに王子役のキョンの目に止まりました。 ですがキョンは隣国の大帝国の王子、古泉に捕まっていました。 いつの世も弱肉強食、この摂理だけは変わりありませんでした。 余談ですがこの頃になると出番の無い有希とみくるは近場のスターバックスで遅めの昼食をとっていました。 キョンの取り巻きの兵隊達はキョンのアナルのピンチにも関わらずニヤニヤと笑っていました。 特に隊長の国木田は物凄く良い笑顔でした。 ハルヒは必殺のドロップキックを古泉におみまいすると、王子様の手を取り時間も忘れて踊りました。 ラブホでしたがあくまでも童話なので本番行為はしませんでした。 悔しそうな全裸の古泉をよそに、幸せそうに踊るハルヒとキョンに周りから祝福の拍手がおこりました。 ですが隊長の国木田だけがニヤニヤと笑っていました。 殺すか? その時、十二時の鐘がヂリリリリーン、ヂリリリリーンと鳴り始めました。電話の呼び鈴のようですがそれ間違いなく鐘の音でした。 ハルヒはちゅるやさんの言葉を思い出し、 「キョン延長しなさい!もちろんあんたの奢りだからね!」 と、広間を走り抜け、階段を駆け降りて行きました。 その時、ハルヒの片方の靴が脱げてしまいました。ちゅるやさんは足を踏み外し、盛大にころげ落ちて大怪我を負ってしまいました。 しょうがないのでハルヒはこれ以降の魔女のシーンにはピカチュウのぬいぐるみを置いて代用することにしました。 ちなみにみくるだけは最後まで入れ替わったことに気付きませんでした。何処までが演技なのでしょうね? さて、ラブホに一人取り残されたキョンはハルヒの落としていったガラスの破片を眺めながらハルヒのことを思い続けました。そして執事の新川に、 「あの姫こそ、俺の探していた花嫁d (ry」 原作通りのことしか言わないので省略されました。 キョンとその家来達は国中を訪ねて歩きましたが、ガラスの靴をはける娘は一人もいませんでした。 そして最後にハルヒの家にやってきました。みくると有希はなんとか靴をはこうとしましたが、いくら足を押し込んでもはけませんでした。 有希があんまり熱心に足をねじ込んだためにガラスの靴は壊れてしまいました。 キョンは慌てて三代目のガラスの靴を買いに行きましたが何故か自腹でした。 そしてキョンは何故かお尻をさすっていました。キョンの身に一体何が!? それはディレクターカット版で明らかになるのでそちらも是非購入してくださいっス。お願いしまっス。 その時掃除を終えたハルヒが部屋に入ってきました。みくるは必死で遮ろうとしました。 何故ならキョンと有希がキスをしてたからです。 どちらかというと有希が無理矢理キョンの唇を奪ったのですがそんな言い訳ハルヒには通用しません。 怒ったハルヒは世界を滅ぼしてしまうほど危険だからです。 焦った新川は迷わずに言いました。 「どうぞ、はいてみてください」渋い演技にお茶の間の奥様方もメロメロです。 ちなみにハルヒの足はぴったりと靴におさまりました。 「おお、この方こそ王子様の探していた花嫁に違いない!」 新川は声を張り上げ、みくるや有希も拍手で二人を祝福しました、 「お、おめでとうございますツンデレラ。今までいじめててごめんね」 「………」 立場が逆転したとたんに手の平返したように態度を変えるみくるにハルヒは不信感を感じましたが悪い気はしなかったので素直に祝福されました。 「ふん!エロキョンあんた今月一杯昼飯奢りだからね!」 ハルヒが隣の大帝国を打ち滅ぼし国に帰ってくるとそこにキョンの姿はありませんでした。 キョンはまるでハルヒから逃げるようにして妹とフェードアウトしてしまったのです。 主のいなくなった国はやがて衰退し滅びましたがキョンと妹いつまでも禁断を愛を深め、いつまでも、いつまでも幸せに暮らしましたとさ。 めでたし めでたし
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新川「涼宮ハルヒのお願い!ランキング!!」 多丸兄「今回のテーマはこちら!!」 森「本当に可愛い北校生がしりたーい!!」 多丸弟「そしてそれらの美少女たちを審査する美食家アカデミーはこちらぁっ!!」 キョン「どうも、キョンです。座右の銘はポニーテールは人類の宝です」 古泉「これはこれは……古泉です。今回はよろしくお願いしますよ、んっふ」 谷口「女の審査は任せろ!!!なんなら俺的北校美少女ランキングを公開してm」 国木田「国木田です。始めまして」 多丸弟「以上の四人の美食家アカデミーが、それぞれ10点ずつの持ち点、合計40点満点で審査してランキングを作成するぞ!!」 新川「機関のブレインたちが汗水垂らして作成した予想ランキングはこちらぁっ!!」 第一位 涼宮ハルヒ 第二位 朝比奈みくる 第三位 長門有希 第四位 鶴屋さん 第五位 喜緑江美里 第六位 朝倉涼子 第七位 阪中 佳実 森「上位三位はやっぱりSOS団が占めてるみたいね」 多丸兄「果たして一番可愛い北高生の称号は誰の手に!?それでは参りましょう!!まず第七位はこの方!!」 新川「阪中さん!!さて、美食家アカデミーたちの反応は?」 キョン「うーん……普通なんだよな」 古泉「普通ですね……」 谷口「うん、これといった特徴がねえんだよなあ……たしかに顔も可愛いし、スタイルだって悪くないんだけど……なんだかなあ」 国木田「普通に見てもかなり可愛い方だと思うけど、やっぱりこれだけ個性の多い北高生の中ではなんだか見劣りするものがあるよね。あと特徴的な口調だけど……僕的にはかなりマイナスかな。普通のしゃべった方が可愛いと思う」 多丸弟「早速美食家たちの厳しい指摘の声!!さて、開発者……もとい、美少女たちの反応は!?」 阪中「みんなひどいのね」 ハルヒ「どうどう」 みくる「ていうかなんですかぁこの企画……」 長門「普通に引く」 森「番組の内容自体に不満が集中しているぞ!」 新川「……」 多丸弟「さあ、気になる得点は!?」 キョン「7点です」古泉「5点です」谷口「4点です」国木田「6点です」 合計 22点 ハルヒ『うわぁ……厳しいわね』 みくる『涼宮さん、そんなこと言ってる場合じゃないですよう』 朝倉『谷口君にこんな点数付けられる筋合いないと思うわ』 長門『そう。あれは人類の最下層に位置する個体。採点する資格も無ければ、気にする必要も無いものと思われる』サスサス 阪中『うう……』 長門(ここで媚売っとけばシュークリームが) 新川「さて、ここまでは機関の予想通りの結果に!!続いて第六位に美食家アカデミーの選択した美少女は!?」 多丸兄「涼宮ハルヒ!!これは機関予想を大きく覆しての第六位だ!!美食家アカデミーたちの反応を見てみると?」 キョン「ハルヒか……黙っていてなおかつポニーテールにしてたらかなりいいんだけどな……でも最近髪短くしてるし騒がしいし……」 古泉「うーん……立場上言えませんでしたが、彼女あなたがいないときよく団室で放屁されるんですよ」 キョン「マジか」 古泉「えらくマジです。……そんなこともあって残念ながら僕もあまり高評価は下せませんね」 谷口「俺は一度振られた女には低評価を付ける事にしているんだ。それに性格も腐ってやがるしな」 国木田「そんな事誰も聞きたくないし、言っちゃだめだよ谷口。涼宮さんか……僕はそこまで悪いとは思わないけどな……でも、文化祭の映画のときのことキョンから聞いたんだけど、朝比奈さんにあんなことするのは良くないと思うな。でも最近はそんなことしないみたいだからそこまで悪い評価は上げられないよ」 多丸兄「世界が滅びそうな厳しいコメント!!美少女達の反応は!?」 ハルヒ『むきー!!!!』 みくる『涼宮さん落ち着いて……』 長門『正当な評価』 ハルヒ『有希!?』 長門『今のは腹話術。朝倉涼子改めまゆりんの陰謀』 朝倉『ちょっと長門さん!?まゆりんってなによ!?』 長門『ユニーク』 ハルヒ『……ともあれキョンと古泉くんにはおしおきが必要ね』 鶴屋『あははっ、キョンくんにげてー!!にょろ!!』 喜緑『なかなか厳しいようですね』 森「あまりに厳しい審査に、動揺が隠せないようだぞ!」 多丸弟「それでは気になる点数は!?」 キョン「6点です」古泉「6点です」谷口「3点です」国木田「8点です」 合計23点 ハルヒ『ぬがああああ!!!!!!!』 みくる『涼宮さん!!握りしめすぎて爪が掌に刺さって血がだくだく出てます!!危ないです!!』 長門『ユニーク』 ハルヒ『有希!?』 長門『見ざる聞かざる言わざる。まゆりんの陰謀』 朝倉『知らないわよ!?』 鶴屋『知らざるだねっ!!』 森「なんだか本人以外特に気にしてないみたいだぞ!」 ~この番組は世界の明日を作る、機関の提供でお送りしています~ CM中 キョン「………そろそろ説明してもらおうか」 古泉「なにがですか?」ニコッ キョン「とぼけんなって。あと古泉スマイルとかそういうのマジでいらないから」 古泉「んっふ、これは手厳しい」 キョン「だれの陰謀だ。ハルヒか?」 古泉「いや、今回は涼宮さんとは無関係ですよ。ついでに言うと貴方の親友の佐々木さんも無関係です」 キョン「じゃあなんでこんなことを」 古泉「分からないのかね?」キリッ キョン「え?」 古泉「そっちの方が、面白いだろう」ダイハツッ キョン「………」 古泉「いや、止めましょうって。無言で鉄パイプとか振りかぶっても面白いことなんてありませんから」 ~ここからは神人たちから世界を守る、機関の提供でお送りします~ 新川「予想一位のまさかの六位転落!!大波乱のまま続いて第五位に選ばれたのは!?」 多丸兄「朝比奈みくる!!またしても機関予想を大きく裏切る結果に!!美食家アカデミーたちは一体どのような反応を示したのか!?」 キョン「この人は……可愛らしいな。そして巨乳なんだが……」 古泉「貴方の仰りたい気持ちは理解しました……何かが足りないんですよね?」 キョン「ああ、そうだ……そして、言っちゃ悪いが影が非常に薄い。……残念だ」 谷口「俺的美的ランクで言えばAAAなんだが……たしかにキョンたちが言うとおり、何かが足りないんだよな」 国木田「すごく阪中さんとケースが似てるんだけど……やっぱりこの人の場合、お茶汲みメイドのキャラ設定とか、様々なキャラが涼宮さんによって後付けされたものだから 微妙なんじゃないかな?やっぱり個性ってものはその人自身でつけるものだし……」 多丸弟「北高のマドンナと称される朝比奈みくるの評価に意外すぎる厳しい声が!!これを受けて美少女たちの反応やいかにっ!?」 みくる『殺す。[禁則事項]で[禁則事項]して殺す』 ハルヒ『はっ!!みくるちゃんからドス黒いオーラが立ち上ってるわ!!』 長門『当然。意味のない脂肪をつけていたらだれでもこうなる』 ハルヒ『有希!?』 長門『まゆりん、いい加減にしてほしい』 まゆりん『長門さん?いい加減にしないと、今日のハンバーグあなたのだけ豆腐のやつにするわよ?』 長門『なぜあんなことをしてしまったのか自分にも理解できない。深く反省している。もうしない』 朝倉『よし』 森「どうやらSOS団の女性陣は怒ると人格が変わるようだぞ!」 新川「さて気になる点数は!?」 キョン「7点です」 古泉「6点です」 谷口「7点です」 国木田「7点です」 合計27点 みくる『でも涼宮さんより4点も上なんだぁ……ふふっ』 ハルヒ『みくるちゃん!!それどういう意味よ!?』 長門『超低空飛行な争い。ゆきりん見てられない』 ハルヒ『有希!?』 長門『まy……喜緑江美里改めわかめ星人は少し自重してほしい』 喜緑『長門さん?今なんと?』ニッコリ 長門『ご……ごめんなさい。ぶたないで。わたしの髪の毛をわかめに変えないで』ガタガタ 森「どうやらSOS団内の友情に亀裂が生じてきたようだぞ!」 多丸弟「さて!!大波乱が続くなか、お次は第四位!!ランクインしたのは……」 多丸兄「喜緑江美里!!美食家アカデミーの感想は?」 キョン「おお……喜緑さんか…!!美人だ……ただ」 古泉「ええ………この美貌には、朝比奈さんや涼宮さんとは違った何かを感じます。本当に気品があって上品そうな美人ですね……ですが」 谷口「うほっ、この人ってあの生徒会きっての美人の喜緑江美里さんじゃねえか!!お綺麗だなぁ……惚れ惚れするぜ!!……だが」 国木田「やっぱりこの人は上級生だけあって大人っぽさがあるよね。この人にも僕憧れてるんだ。ちょっとね。……けど」 キョン「わかめだ」 古泉「わかめですね」 谷口「わかめだな」 国木田「わかめだね」 喜緑『パーソナルネーム「キョン」「古泉一樹」「谷口」「国木田」の情報連結の解除を申請』 朝倉『ちょ、落ち着いてよね』 長門『そう。貴方がわかめなのはもはや避けようのない規定事項』 ハルヒ『有希!?』 長門『阪中佳実、出番がないからといってわたしにアフレコをするのは推祥できない』 阪中『はひっ!?』 鶴屋(出番がないのはわたしも同じっさ) 森「出番争いという新たな争いが起こっているようだぞ!」 新川「さて、気になる得点は!?」 キョン「8点です」 古泉「8点です」 谷口「8点です」 国木田「7点です」 合計31点 森「ついに大台の30点突破!!これに対して美少女の反応は!?」 みくる『くそワカメが。わたしの方が絶対可愛いわ』(すごいですぅ喜緑さん) 鶴屋『みくる、逆、逆』 喜緑『……まあ、わかめと言われたのは癪に障りますが、30突破は気分がいいですね』 長門『』スック トトトト 喜緑『あら、長門さん。なんですか?』 長門『TFEI最弱が』ボソッ 喜緑『』ピクッ 長門『』トトトト ペラッ 朝倉『は、は、ははは……』 阪中(帰りたいのね) 森「女の争いは恐ろしいぞ!」 新川「続いては第三位!!と、その前に……」 森「涼宮ハルヒの番外!ランキング!!」 多丸弟「ノミネートされたのはこちらのメンバーだ!!」 機関予想 第一位 佐々木 第二位 渡橋泰水 第三位 周防九曜 第四位 橘京子 多丸兄「こちらの佐々木団+αも美食家アカデミーに審査してもらおう!!」 森「本当は妹ちゃんやミヨキチちゃんもいれたかったけど、妹ちゃんはキョンくんの肉親だし、ミヨキチちゃんはあまりにも資料が無かったのでカットさせてもらったぞ!」 新川「さて番外編第四位は……この人だあっ!!!」 多丸弟「佐々木さん!!さて、美食家アカデミーたちの反応は!?」 キョン「佐々木か……可愛いんだけどなあ……なんかもうひとつ」 古泉「んふ、そうですね……非常に魅力的なんですがね」 国木田「やっぱり男性だけに僕っ娘ってキャラはいいんだけど……なんだか無理してる感じがあるよね。無理してまで個性を作っちゃいけないよ」 谷口「ああ……それに言っちゃ悪いが胸が小せえな。かなり可愛いけど」 新川「さて、気になる得点は!?」 キョン「8点です」 古泉「8点です」 谷口「8点です」 国木田「6点です」 合計30点 森「本編と同じく大波乱!!でも一発目にして30点の大台を突破したぞ!」 新川「非常にレベルの高い番外編!!続いては第三位!!選ばれたのは……」 多丸弟「周防九曜だあっ!!さあ、美食家アカデミーたちはどのような感想を抱いたのか!?」 キョン「なんだかんだ言っても九曜も可愛いよな、結構」 古泉「そうですね。彼女には彼女の魅力が多大にあります」 キョン「実は、俺踏切で襲われてアイツが微笑んだとき『耐えられたのは俺でこそだ』とか偉そうな事いってたけど正直昇天するかと思ったよ」 古泉「んふ。それは興味深い。またいつか詳しくきかせていただくといたしましょう」 谷口「す、周防さん……」 国木田「大丈夫、谷口?顔、酷い事になってるよ」 谷口「……ほっといてくれ」 新川「さて、気になる点数は!?」 キョン「9点です」 古泉「9点です」 谷口「6点です」 国木田「8点です」 合計32点 森「どうやら谷口くんはいきなり振られたのが相当ショックだったみたいだぞ!」 多丸兄「さあ番外編第二位は……この人!!」 藤原「渡橋泰水!!さて、気になる美食家アカデミーたちの反応は……?」 キョン「ヤスミか……可愛かったなあ」 古泉「ええ……もう二度と会えないのが残念でなりません」 キョン「……なあ、古泉よ」 古泉「なんですか?」 キョン「どうせ幻だったんなら……一回ぐらいやってても誰にも気付かれなかったよなあ……勿論警察にも」 古泉「おやおや……まさかこのような事で貴方と考えが一致するとは思いもしませんでしたよ」 キョン「……やっぱりお前とは親友だ」 谷口「可愛いなぁ……うん。可愛い。でもちょっとムネが小さいか?」 国木田「死になよ谷口。うん、でも涼宮さんが言ってたんだけど彼女って中学生なんだって。だから胸が小さいのは当然じゃないのかなあ」 谷口「JCだって…… み な ぎ っ て き た ぜ ! ! !」 国木田「ほんと帰りなよ」 新川「さて、気になる点数は!?」 キョン「9点です」 古泉「10点です」 谷口「8点です」 国木田「8点です」 合計35点 森「遂に古泉から満点が出たぞ!」 藤原「さあ!!残る第一位はこの人!!橘京子だぁっ!!!」 多丸兄「さて、美食家アカデミーたちの感想は!?」 キョン「おうふ……いやはや、朝比奈さん誘拐事件の犯人とはいえ……可愛いよなぁ」 古泉「この純真無垢な笑顔は……敵対組織ながら、かなり来るものがあります。そして仕事時にする子悪魔的笑みもまてbeautifulですぞ」 谷口「可愛いなあ……うん、このぽやーっとした感じがなんとも」 国木田「なんだか天然っぽい子だね。それもこの笑顔は作った天然じゃなくて真の天然だ。いまどき珍しい子だと思うよ」 新川「さて!!番外編第一位の点数は!?」 キョン「9点です」 古泉「9点です」 谷口「9点です」 国木田「10点です」 合計37点 森「惜しくも40点には届かなかったものの、本日最高得点をマークしたぞ!」 藤原「さて、CMの後は遂に本編ベスト3の発表だ!!」 ~この番組は●<マッガーレ印の機関でお送りします~ CM中 キョン「いやー……九曜に橘。そしてヤスミに佐々木……前回の事件の女性陣は実に素晴らしい!!」 古泉「全くです。いやはや、橘さんに至ってはあの事後思わずメールアドレスと電話番号を聞き出してしまったくらいですから」ハナタカダカー キョン「古泉……威張ってるつもりかもしれんが、俺だって橘のメールアドレスくらい持ってるぜ。そしてお前のとは文字列が違う……これがどういう意味だか分かるか?」 古泉「いえ……」 キョン「古泉。俺のとお前のと、ドメインを見比べてみろ」 古泉「はいはい……貴方のは……codomo.ne.jp……僕のは……orz」 キョン「そいつはサブアドだ」 古泉「ちくしょう」 ~ここからは世界の明日を担う機関の提供でお送りします~ 新川「さて!!遂に本家第三位の発表だ!!第三位は……この人!!」 藤原「長門有希だぁっ!!」 長門『……不服』ガンガン 朝倉『ちょ、長門さん、落ち着いて』 長門『黙れまゆりん』 藤原「さあ!美食家アカデミーたちの反応は!?」 キョン「長門か……正直、消失世界での長門の微笑み、それに帰ってきた後のありがとうはかなり俺の胸にくるものがあったな」 谷口「一年の最初こそ俺的美的ランクA-に留まっていたが……キョンたちと一緒にいるようになってからは雰囲気も柔らかくなったし、普通にAAランクくらいなら上げれるレベルになってきてるぜ」 国木田「そうだね……うん、谷口の言うとおり、かなり印象が柔らかくなったと思うな。今までは少し近寄り難かったんだけど……最近は接点こそ無いにしろ、接点さえあればかなりフレンドリーになることが出来ると思う」 藤原「ここまではかなりの好評価だ……しかし、ここにきてあの男が牙をむく!!」 古泉「あのー、確かに最近……特にこの12月から春にかけてかなり近寄りやすく、人間らしくなってますが……その、彼女少し黒いような印象を受けますね。なんだか自分というものを確立して、自信が出てきたのは結構だと思うんですが……少しそれを前面に出しすぎかなといった印象を受けますね」 藤原「ここまで同調同調を繰り返し、あまり自分の意見を出さなかった古泉がまさかのダメ出し!!これを受けて女性陣は!?」 長門『パーソナルネーム「ガチホモ」の情報連結の解除を申請』 朝倉『長門さん落ち着いて……ほら!!そんなことするから阿部高和さんがいなくなっちゃったじゃない!!』 長門『うかつ』 喜緑『うふふ、偉そうなことを言っていたわりには張り合いの無い順位ですね』 長門『たった一番とはいえわたしはあなたの上。あなたにわたしを皮肉る資格は無いものと思われる』 喜緑『おや、皮肉に聞こえましたか?そんなつもりはさらさら無かったんですけど』 森「皮肉というよりは、ただの悪口だぞ!」 藤原「さて、気になる得点は!?」 キョン「9点です」 古泉「8点です」 谷口「9点です」 国木田「9点です」 合計35点 長門『あなたより4点も上』ドヤアアアアアアアアアアアアア 喜緑『くっ……』ギリッ 鶴屋『有希っこすごいねっ!!』 長門『まだ出ていないあなたが言っても嫌味にしかきこえない』 ハルヒ『それにしてもSOS団の女性陣がこんな順位までなんて……鍛えなおしよ!!』 みくる『六位が何言っても説得力ないですよう』 ハルヒ『みくるちゃん!?』 みくる『ひえー!禁則事項ですぅ!!』 阪中(わたしなんてもう面目丸つぶれなのね) 森「なんだか知らないけど殺伐としているぞ!」 藤原「さて第二位発表の前にスタジオ予想だ!!」 森「朝倉涼子と鶴屋さんのどっちが一位か、スタジオで決めて欲しいぞ!」 佐々木「ふむ……とりあえず藤原くん、こちらにもどっておいで」 藤原「ふんっ、禁則事項だ」 橘「意味が分からないのです!」 九曜「――――チーム――――佐々木は――――橘京子と―――――佐々木某――――――チーム――――藤原は――――わたしと――――――シスコン未来人――――――――」 佐々木「九曜さん説明ありがとう。ふむ……僕の順位が最下位だったのは後でキョンにじっくり訊いてみるとして……やっぱり勝つのは鶴屋お嬢さんではないかな?」 橘「きっとそうなのです!!わたしに亀さんくれたのです!!」 佐々木「橘さん……言っては悪いが、そのう……なんだかアホの子になってないかな?」 橘「気のせいなのです!!天才の指輪も持ってるのです!!雑誌で売ってたのです!!」 佐々木(うわぁ……真性のアホだこいつ) 藤原「ふん、僕は癪だがあのTFEIに賭けてやろう」 九曜「―――どう――――して――?」 藤原「ふんっ、僕は太ももが好きだからd………あ」 佐々木「…………」 橘「…………」 九曜「…………」 藤原「いっそ殺せよ」 佐々木チーム……鶴屋さん 藤原チーム……朝倉 新川「さて、どちらの予想が正しいのか!?」 藤原「運命の瞬間!!第二位は……この人だ!!」 多丸弟「鶴屋さん!!!さて、美食家アカデミーは、どのようなジャッジを下したのか!?」 キョン「おお……鶴屋さんか……この人は正真正銘の天才だ……!!そして何よりもお美しい……」 古泉「んふ。まさかこれほどまでとは……いやはや、鶴屋家もあと50年、いや70年は安泰ですね」 谷口「いや、素晴らしい。マジですごい。それしか言い表す言葉がねえな」 国木田「流石、僕の進路……いや、人生を変えた人だよ」 多丸兄「美食家アカデミーのこの高評価!!女性陣の反応は!?」 鶴屋『みんな……こんな風に思っていてくれてたなんて……お姉さん感激だよっ!!』 みくる『すごいですぅ鶴屋さん』 ハルヒ『流石はわがSOS団の名誉顧問ね!!ううん、貴女には名誉顧問なんて肩書きは生ぬるいわ!!永世最高名誉顧問に任命します!!』 鶴屋『ハルにゃん、ありがとっ!!』 長門『』シュッシュッ 朝倉『どうしたの、長門さん?』 長門『次に呼ばれる不届き者を抹殺するための特訓。まさか情報統合思念体はそのような不届き者は抱え込んでいないと思われるが、例え抱え込んでいたとしても大丈夫。その場でスタッフがおいしくいただきました』 朝倉『ぴいっ!』 森「やっぱり恐ろしいぞ!」 藤原「さて気になる点数は……これだ!!」 キョン「10点です」 古泉「10点です」 谷口「10点です」 国木田「9点です」 合計39点 新川「一見完璧を思われた高評価に国木田氏が待ったをかけた!!その理由は!?」 キョン「国木田……?どうしてお前が9点なんだ?」 国木田「違うんだよキョン……確かにあの人は天才だ。でもね……まだ高みに昇る事ができる天才なんだ」 国木田「今彼女は天才の中の頂上にいるんだ。でも、まだだ。あの人ならまだそこから新しい頂上を積み上げて作っていくことができるんだ……そして、頂上の頂上まであの人が行き着いたとき……そのときに僕は10点を付けたいんだ」 谷口「国木田……」 古泉「国木田くん……」 キョン「ものさしが……違うんだな」 国木田「……そういうこと」 鶴屋『決めた。わたし国木田くんと結婚するよっ』 みくる『ちょ、そんないきなり』 鶴屋『わはは、冗談さっ……でも、そんな風にみてくれてる人がいるって、凄く大切なことだよねっ!!』 朝倉(どうしよう、なんか……とてもじゃないけど言い表せないエラーがどんどん湧き出てきてる) 森「あまり評価が高すぎるのも考え物だぞ!」 新川「そして遂に第一位!!朝倉涼子さんだ!!!」 藤原「さて、美食家アカデミーたちの反応は?」 キョン「なんてこった…………」 古泉「この眉毛………そしてこの眉毛……」 谷口「そしてこの健康的な太もも……」 国木田「鶴屋さんとはまた違う美しさがここにある……」 キョン「……なんだろう、二回刺されたのがなんだか光栄に思えてきた」 古泉「機関の見解は大きく間違っていました……彼女こそ、真の神です。それ以外にありえません」 谷口「AAランク+なんてヤワなもんじゃねえ……こいつは、いや、このお方はAAAAAランクだ!!」 国木田「うん!非のうちどころがないよ!」 藤原「さて、点数は!!」 キョン「10点です」 古泉「10点です」 谷口「10点です」 国木田「10点です」 合計40点 新川「満点だああああ!!!本日最初の満点に女性陣の反応は!?」 ハルヒ『朝倉!!アンタ凄いわ!!本日をもってアンタをSOS団副団長に任命します!!』 朝倉『あ、ありがとう!……あれ?でも古泉くんは?』 ハルヒ『ああ……古泉くんは 13の時点でキョンの前任ポストの雑用係に降格よ』 みくる『前任……?あのぅ、キョンくんは?』 ハルヒ『奴隷に降格』 朝倉(ひどっ) 朝倉『……ていうか長門さん』 長門『なに』 朝倉『どさくさに紛れて眉毛剃ろうとするの止めてちょうだい』 長門『そう』 鶴屋『まあ何はともあれおめでとう!!』 一同『おめでとう!!(なのね)』 朝倉『うう……ありがとう!!』グスッ 森「というわけで、ランキングは以上のものとなったぞ!」 機関予想 結果 一位 涼宮ハルヒ |一位 朝倉涼子 ↑ | 二位 朝比奈みくる |二位 鶴屋さん ↑ | 三位 長門有希 |三位 長門有希 → | 四位 鶴屋さん |四位 喜緑江美里 ↑ | 五位 喜緑江美里 |五位 朝比奈みくる ↓ | 六位 朝倉涼子 |六位 涼宮ハルヒ ↓ | 七位 阪中 |七位 阪中 → シャミセン「というわけで、藤原チームの勝利ー!!!」 藤原「ふんっ当然だ」 佐々木「そういえば藤原君司会だからそりゃ当たるよね」 橘「ズルなのです!!」 九曜「―――――――ズル」 藤原「俺、泣いてもいいかな?」 森「次回の涼宮ハルヒのお願い!ランキングは!」 新川「一番強い組織をしりたーい!!」 藤原「というわけで、皆さま、また来週!!」 ~この番組は明日を守る●<ふんもっふ! 機関の提供でお送りしました~ <後日談> ~数日後~ ハルヒ「キョン!!これ焼却炉に捨ててきて!!」 キョン「へいへいただいま」 長門「古泉一樹」 古泉「はい、なんでしょう」 長門「このへんの空気が悪い。恐らく肩が凝っているせいだと思われる。早くこの辺の空気の肩を揉むことを推奨……いや、命令する」 古泉「いや……空気に肩はないかと」 長門「逆らう気?」 古泉「めっそうもございません閣下」モミモミ 長門「……なぜ空中で手を動かしているの?あなたのような変態は即刻立ち去るべき」 古泉「……了解しました」 朝倉「なるほど。こうやってお茶っ葉を蒸らすのね」 みくる「そうですよ……うまくなってきましたね」 ~部室の外~ 古泉「……しくしく」 キョン「お、どうしたんだ古泉……またアレか?」 古泉「そうですう……めそめそ」 キョン「そうか……それはそうと、国木田と鶴屋さん、付き合い始めたらしいな」 古泉「そうなんですか?それはおめでたいですね」 キョン「……お互い親友どうし、この辛い状況を乗り切っていこうぜ」 古泉「………はい!!」 完
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ハルヒとキョンがSOS団を設立した後、みなさんからひと言コメントをいただきました。 岡部 「騒動だけは起こしてほしくなかった!!」 山根 「What!?」 榊 「何だあの古泉というヤツは!!女をとっていくな!!」 柳本 「あたしには何も関わりあいませんように」 阪中 「涼宮さんから手作りのチラシをもらったのね。机に大事にしまっておくのね。あのバニーガールも素敵だったのね」 鈴木 「アチャー!なんか作っちゃったよー!」 荒川 「やっぱ、あいつはアホだな」 高遠 「また、一緒にソフトボールできたらいいんだけどな」 花瀬 「先輩に髪無理やり剃られました・・・にしても、千本ノックはきついいです」 日向 「ねぇねぇパパ、わたしのクラスの涼宮さんっていう人が新しい部活作ろうとしてるんだよ」 西嶋 「枕カバーにYesとNoってあれなんだったんだろう?剣持さんも瀬能さんもそれは嫌って言ってたけど」 垣ノ内「何か、涼宮さん明るくなってきたなー。うんうん、いいことだ」 大野木「なんか、阪中が涼宮さんのほうばっかり見てるような気がするんだけど・・・」 植松 「おいおい、涼宮ハルヒって頭いいのかよ!!」 中西 「うーん・・・なんか、イメージダウンなんだけど・・・」 吉崎 「このムンクの叫び、涼宮さんに渡したほうがいい・・・かな?美術室に保管しておきたいんだけど」 由良 「涼宮さんはだんだん喋るようになったけど、豊原君は相変わらず・・・」 松代 「豊原と後藤…やっぱりあいつら怪しいよな。ったく、何で俺とあいつらの席が離れた位置になるかなー?」 葉山 「やっぱり、後藤君に告白する勇気がでないよ」 長門 「また図書館に」
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「……あなた、一体何をしているの?」 凶刃を停止させて、朝倉は自分を遮る俺の長門に話しかける。 「あのね、今のあなたには何の能力もないの。何をやろうともそれは無駄なことでしかないわ。邪魔だから、早くそこをどきなさい」 俺の長門はわずかずつ後退し、後方のハルヒを守らんとする姿勢を崩さない。しかし、それは何処かプログラムを遂行しているかのような動きだ。 ……正体不明の頭痛も治まり、俺は緊迫した空気のなかにある朝倉と長門の姿を目にいれながら、必死にこの状況を打開する方策を探っていた。……すると自分の記憶とポケットの中に小さな引っ掛かりを感じ、それにゆっくりと手をやってみる。 ――金属棒。いつかこれを使う日がくるのかもしれない、と過去に俺が無根拠にそう感じた代物がそこにはあった。その正体はTPDDの部品で………周防九曜を制御した髪飾りの原料だ。だが……。これはこのままだと意味がないはずだ。何か情報操作のようなものを施すことによって髪飾りへと変貌するのだし、それに、確かその髪飾りも朝倉には効果がなかったように記憶する。しかしながら、現在はこれの存在に頼るよりないのも確かだよな。どうする? あまり賢い方法ではないが、試しに朝倉に投げつけてみるか? それをやるなら石つぶての方が効果はありそうだが。 「うう……。長門さん、涼宮さん……」 俺が懊悩としている隣で、実に不安そうに朝比奈さん(小)が呟く。今にも泣き濡れてしまいそうな横顔は、まるで己の無力さを嘆いているような…………。 ――って、ちょっと待て。そうだ、朝比奈さんは無力でも何でもないじゃねえか。むしろ、このお方ほど現時点において頼りに出来る人物は他にいやしない。多少反則的な感もあるが、あの無敵状態を誇る朝倉には文句を言われる筋合いなど皆無だ。 ……なんとか出来るかもしれない。そう。未来人なら――この状況を過去に乗り越えたことのある、朝比奈さん(大)だったら。 俺が大人の朝比奈さんに顔を向けようと思った、そのときだった。 「……わかった。もういい。あなたにもどのみち消えてもらうんだし、順番が変わっちゃうだけのことよ。それにわたしだって、あの長門さんにはあなたの姿をこれ以上見ていて欲しくない。丁度良いわ。あなたから先に消してあげる。安心して? あなたには痛みなんか感じさせないから。――じゃあね」 「な……!」 「え……? そ、そんな! 嘘……長門さんっ!」 ――朝倉涼子はハルヒを守る長門へと手を伸ばし、その頬を軽く一撫でする。 途端に長門の姿は淡く白い光に包まれ始め、次第にその輪郭を失っていく。 「――待て! ……長門!」 俺は長門の元へと駆け寄りながら、消えていく長門を絶対に手放したくないと片腕を伸ばした。……そして長門が俺へと向けた手は、俺の手のひらをすり抜けて―――姿もろとも、消失してしまった。 「うそ……。ちょっとあんた、なんてことすんのよ! なんで……こんな……」 眼前で起こった事態にうろたえながらハルヒが叫ぶと、朝倉は薄く笑って、 「……これれちゃった人形にはもう何の価値もないの。むしろそのままじゃ、あの長門さんを悲しませてしまうじゃない。だから何も問題なんてないわ」 「ふざけるんじゃないわよ! そんなの絶対におかしい――」 と、朝倉は責め立てるハルヒを睥睨し、 「――うるさいなあ。あんたは黙って恐怖だけしてればいいのよ。しゃしゃり出てきたあんたの王子様にだって、何にも出来ることはないんだから」 朝倉たちの間に介入した俺はハルヒをかばいつつ、凶行に及んだ朝倉の顔をハルヒと共に睨みつけていた。朝倉は俺たちの視線を真っ向から受けつつ、 「生まれ変わった長門さんにはあんたたちなんていらない。……そろそろ死になさい」 「……く」 ――もう、駄目なのか。 殺意表明の後で朝倉がナイフを腰元に構えるのと同時に、俺は後のハルヒへと素早く振り向き……ぐっと小柄な体を抱きしめる。 ……この日に再び訪れてから、俺はどこかで選択を誤ってしまったのかもしれない。背中にはまたあのナイフが突き立てられちまいそうだ。ああ、なんてバッドエンドを迎えちまったんだろうね。そのせいで、長門は……。 ――せめて、ハルヒ。こいつにだけは手を出させたりはしない。 中学生姿のハルヒを俺が強く抱きしめていると、背中への不快な感触の代わりに――思わぬ声が耳に飛び込んできた。 「――――な、」 ナイフをこの身に受け入れる覚悟を決めて身体を強張らせていた俺は、ゆっくりとその緊張を解き、なにやら驚きの声を漏らした朝倉へと振り向いてみる。 「……長門?」 やれ刺さんとばかりにナイフを構えた朝倉の腕を、眼鏡の長門がそれを阻止するかのように掴んでいた。 「長門さん……あなた……」 思わぬ人物からの干渉に戸惑いを隠せない朝倉。俺も同様に目を丸くし、眼鏡の長門の様子が今までと違っているのを感じていた。 「――朝倉涼子。みんな……ごめんなさい」 若干の哀愁を帯びてそう言う長門の表情は、頬を赤らめたりするあの長門のものではなく、俺の知る長門にもう少し感情の色を足したような感じだった。 「もしかして長門、記憶が……戻ったのか?」 俺が問いかけると眼鏡の長門は少し悲しそうに、 「わたしはわたし。だが……残念ながら、このわたしはあなたの知るわたしではない」 理解出来ないでいると、 「でも、あなたたちの知っている長門有希と同じ気持ちをわたしは持っている。だから、今から話すわたしの気持ちをみんなに聞いて欲しい」 すっと朝倉から手を離し、神妙な面持ちで話す長門。その言葉に従うように俺はハルヒの隣へと立ち、朝倉さえも、俺たちを襲うことを忘れてその場で長門に注視していた。 「――涼宮ハルヒの情報創造能力は真実を否定するものではなく、この世界に矛盾の存在をも認める……とても優しい力。それと同じように人は矛盾を許容することによって、他の有機生命体とは性質を異にする存在へと成り得たのだと思われる。だからわたしは、進化の可能性は涼宮ハルヒの生き方にこそあるのだと思う。……そして情報統合思念体の進化への希望となる一人の女の子を、わたしは知っている」 「……それって、朝比奈みゆき、か?」 「そう。人に育てられたインターフェイスである彼女は、人の心を持ったことによって、既に単なる端末を超越した存在となっている。人の心という矛盾するものを得た彼女は、それを自身の内にある真理と併合することによって、人にも思念体にもない……新たな可能性を導き出した。わたしは情報統合思念体も『心』を持つことによって、進化への道を踏み出せると考えている。それはどういうことなのかといえば、つまり……人の感情を思念体が持つということ」 ここで朝倉はハッとした表情を見せ、その後で秀麗な顔に影を落とした。 長門は続けて、 「わたしは……人間になって『死』というものを取り入れれば、人の感情が理解できるかもしれないと思ったからこの日を生み出したのだろう。……でも、そうではなかった。感情は死を回避するためだけのものでも、ウイルスのようにその者を蝕んでしまうものでもない。人の『心』は……人類が言語とは違う方法で己以外の存在と繋がり合おうと努力し、その進化の過程で組み上げられてきた一つの結晶。他の存在と繋がりあおうとする行為にこそ、進化への歩みを進める理由がある。それは感情によってなされるもの。だから――」 ……やめてよ、と朝倉は不意に呟き、俺たちの意識をその身に集めると、 「人の感情なんて……自分を害するものを拒絶して、脆い自分を保護するために作られてきたものなの。あなたが言ってるのとは正反対のシロモノよ。わたしには、それが進化を助長するものとは思えない」 長門は若干視線を落として、 「そういう部分もあるかもしれない。だけど、わたしはそれが人間の本質だとは思わない。何故なら、人は笑顔を作るから。悲しいとき、自分の弱さが表に出て無防備な状態のときでさえ、人は涙を流してそれを伝えようとする。それは、人が他者を利用して生きるものであれば矛盾すること。つまり人の感情は、人が自分の気持ちを伝えることによって互いに補完しながら生きてきたという証」 「そうだとしても……!」と朝倉はたまりかねたように「人間の中に他人を食い物にする奴がいるのは確かなことじゃない! それだけじゃないわ。どんなに人が手を差し伸べたって、頑として自分の世界を貫くだけの奴だって腐るほどいる。そいつらには、どんなにこちらが繋がりを持とうとしても何も解りはしない。そんな人間がいるから世界は乱れるのよ。それにね、あなたが好きだって言うSOS団はどうなの? あなたたちはちゃんと繋がっているとでも言うの? もしあなたがそれを肯定するとしても、それを証明するものなんてないじゃない!」 「……自分と他人が繋がっているかを証明するものは存在しない。だけどわたしは……それを信じることが出来る。でも、それは本当はとても怖い。全ては自分の独りよがりかも知れない、相手が本当は自分を嫌っているのかも知れないという可能性は決して消えたりなどしないから。――それでもわたしがそれを信じているのは、彼等と一緒に過ごしてきた時間があるから。人は人と手を取り合うことによって、互いの歪みを解消することが出来る。そして……」 長門は俺をゆるりと見つめ、朝倉の方へと向きなおすと、 「現在の情報統合思念体は……彼等を、大切な友だちだと思っている。思念体が彼等に意見を求めたのもそのため。そして未来からの来訪者も、全てを知る悲しみ、何も知らないことの苦しみに耐えながらこの時代の人と共に同じ『今』を作っている。涼宮ハルヒに異能力を授けられた者たちが仮面を被っていることも人と繋がるための一つの方法であり、その仮面の下には、わたしのことを思って泣いてくれる素顔がある。……今のあなたと同じように」 そう言って長門が視線を向ける先には……粒々と涙を溢れさせている、朝倉の姿があった。 朝倉はそれに気付いていなかったように手を自分の頬へと寄せ、その指に触れる水を確認したのと同時に、ストン。という音が地面へと滑り落ちたナイフによって奏でられた。 ……そうか、そうだよな長門。正直俺だって、最近まで宇宙人や未来人や超能力者のまとまりについて疑問に思うところがあったんだ。だがそれは、だんだん話を重ねていくにつれて……一緒に過ごしていくことによってその繋がりが確認出来たんだよな。今の俺は、長門の親玉だって、未来だって、機関だって信じることが出来る。 そう。本当に全部ひっくるめて、SOS団のみんなを。 「――でも、人が笑っていられるのは……そのとき、泣いている人がいることを忘れているからじゃない。だったら、最初から悲しみなんて……」 なおも大粒の涙をこぼしながら、消え入りそうな声で朝倉が言う。するとそこに、 「……いいえ。それは違うって、わたしは思います」 大人の朝比奈さんが双眸からポロポロと落涙する朝倉の肩に手をかけ、朝倉がその母のように優しい顔を見つめると、 「この世界には知らなくても良いことだってたくさんあります。……でもね、人は悲しみを知っているからこそ、幸せの姿を見つめることが出来るの。悲しみを知らない人は笑いながら人を傷つけてしまい、そして悲しみを知らなければ、自分が傷つけられていることさえ愛情だと錯覚してしまうわ。それぞれに幸せの形はあるけれど、悲しみを知らないことで幸福を感じている間は……いつだって悲劇でしかないんです」 「あ……」と朝倉は泣き崩れる数瞬前の顔で「じゃあ……わたしは……わたしがやったことは……」 すると朝比奈さん(大)はにっこりと微笑みかけ、 「いいえ。あなたを咎める理由なんて何もありません。だってあなたの長門さんを思う気持ちに偽りなんてないでしょう? それはね、結果があなたの考えたものとは違っていても、あなたのやったことに間違いはなかったっていうことなのだから」 キョンくんを傷つけてしまったのはいけないことだったけど、と俺への刺突行為を軽く諫める大人の朝比奈さん。 ……その言葉を受けて遂に朝倉の激情は霧消し、そこには、泣き咽ぶ少女とそれを抱きしめる女性の姿だけがあった。 ………… ……… …… 「そう。……長門さん、それがあなたの答えなのね」 すっかり落ち着きを取り戻した朝倉が、やさしい学級委員長のような気配で眼鏡の長門へと尋ねる。そして長門がこくりと頷いたのを確認すると、 「……でも、どうしてあなたは記憶を――」 俺も不思議に思い長門を見つめていると、思いっきりばっちり長門と目が合った。朝倉は不審そうに俺を見やると、 「―――まさか。そうだったなんて……」 何かに驚き、かつ何かを理解したような声を朝倉は漏らしたが……何なんだ? 俺にはさっぱりわからんが。 「……あと、もう一つ疑問があるわ」今度は俺の方を見つつ「あなた、どうやってここにやってきたの? いえ、あなたたちじゃなくて、そこで寝てるあなたの方」 俺は安らかに地面で寝転んでいる己の姿を一瞥すると、 「……ああ、俺は最初に変わっちまった世界を奔走して、三日後に長門の脱出プログラムを起動させたんだ。その後で過去の七夕へと跳んで、大人の朝比奈さんと長門に連れられてここにきたのさ」 「脱出プログラム……?」朝倉は思案顔で「……どういうことかしら。長門さんが作り変えた世界にはそんなものなかったはずなんだけど。それに脱出ってなに? あなた、長門さんから何も聞かされてなかったの?」 「なにいってるんだ?」 本当に理解しかねることを言っている。俺は長門から事前に劇的世界大改造について、ビフォアにもそういえばアフターにも説明を受けた覚えなど特にないし、改変後の世界に脱出プログラムがあったのも事実だ。 なので俺は何も嘘なんか言っちゃいないし全ては体験による情報なので勘違いでもないのだが、朝倉が勘違いしているという線も考えにくい。このズレは何が原因で発生しているのだろうか? ……と、思い悩むまでもない。ここにはそれの答えを出してくれそうな人物が二人ほど居てくれている。 俺は少し考え、 「朝比奈さん」 に質問することにした。もちろん大きい方の。 「これはどういうことなんです? それに、この後世界はどうなっちまうんですか? これから俺が走り回った三日間が始まるのなら、世界はいつ正気を取り戻すんですか?」 「……世界が元の姿に戻るのは、キョンくんが脱出プログラムを起動させた後です。それでね、本来長門さんは、世界改変後キョンくんにその理由を伝えるつもりだったの」 じゃあなんでそれが俺の体験したものと違っているのか、と聞くと長門の方が、 「これから世界を整えるためには、再度情報を調整しなければならない」 寝ている俺を一瞬目に入れ、すぐさま俺を見直すと、 「まずはわたしのデータを改変直後のものに再修正し、わたしが作った世界を再現しなければならない。そしてここで寝ているあなたには、これからの三日間をずっと眠っててもらうことになる。そして三日間を体験したあなたが脱出プログラムを起動させたとき、眠っているあなたは代替の記憶と共に元の世界で目覚めるようにする」 ……つまり、俺が三日間を過ごした世界は、最調整された後の世界だったのだ。……俺が一番最初に過去の七夕へと時間遡行をしたのも、この未来を固定するためだったというわけか。そう考えれば、長門が俺に知らせもせずに世界の情報を改竄したのも納得がいく。 それは、今の俺が頼んだことなのだ。 何故ならば、もし俺が世界改変の事情を知っていれば、心からSOS団の大切さに気付くなんてことはなかっただろうからだ。何故期限を示したのは。何も知らない俺が改変後の世界を果てしないものだと思ってしまえば身が持たないだろうし、こういうのは集中して行うべきで、それで無理だったらそれまでということなんだ。 「……そっか。多分、その調整はわたしがやることになるのよね」 喋り出した朝倉を俺が反射的に見ると、 「わたしは改変後の世界を見守ることにするわ。そしてあなたが三日後に七夕へと向かった後、わたしが世界を元通りに修正する。そういうことで良いんでしょ?」 「それが一番望ましいと思われる。朝倉涼子、すまないがお願いする」 「いいえ。かまわないわ。……それより、涼宮さん」 ハルヒが虚をつかれたように反応すると、 「さっきはごめんね。あなたを傷つけるようなことを言っちゃって。あれは間違いだったわ。あなたも長門さんも、一人なんかじゃなかったのだから。だから……長門さんをよろしくね」 「ん……あったりまえじゃないっ! 安心してあたしに任せてちょうだい。これはあたし自身のためでもあるんだしね。だって長門さんは、未来のあたしにとって大事な――」 ……ああ。欠かすことの出来ない大事な団員だよな――。 と心の中で先読みしていたのだが、その予想は外れてしまった。 そう、ハルヒは頼もしい声でこう言い放ったのだ。 「――友達なんだからね!」 そんな朝倉とハルヒのやりとりを見て、俺には一つの考えが浮上してきた。 もしかして先程のハルヒの宣誓がこの時間軸以降のハルヒに影響を及ぼし、冬の合宿で見受けられた過剰なまでの長門に対する気配りへと繋がったのではないだろうか? もしそうだとしたら、もう一つ疑問が解消される。 それはハルヒの手が加えられた朝比奈さんの小説の内容のことだ。 三日後に目覚める王子。そこはハルヒが手を加えた部分の一つで、一際無意味さを醸しだしていた箇所だったのだが……きっとそれも、この中学ハルヒがこの日を目撃していたことに起因するのだろう。この出来事がハルヒの無意識だか識閾下だかに残存していたのだ。三日目に目覚めるというのは、つまり、ここで寝ている俺のことで、俺が王子だという点にはあえて触れないでおく。 そして人魚姫。これは……ある意味で、朝倉のことだったのかも知れない。 「…………」 俺は沈黙する。俺はもう、朝倉に対して嫌悪感は抱いていない。むしろ、こいつはこいつで一生懸命長門のことを思いやっていたのだ。だが、王子をナイフで刺すことの出来なかった人魚姫の結末は…………。 そう思って一つ、つつましやかに朝倉へと尋ねてみる。 「――朝倉。お前は、また学校に戻って来る気はないのか?」 「あら、なんでそんなことをあなたが言うのかしら」 俺は報われない結末を迎える人魚の話を頭に浮かべつつ、 「……実のところ、進級したクラスの面子がそう代わり映えしなくてな。かつてのお前ほどみんなを取り仕切れる奴がいないんだよ。だから……カナダから帰ってきたことにでもして、またお前が来てくれるのも良いんじゃないかと思ってな」 朝倉は驚き眼をして、次に柔和な笑みで「ありがとう」と俺に言うと、 「でもごめんなさい。それは無理なの」 何故だと聞くと、 「わたしの行動が上のほうにも伝わっているから。二度までもあなたを脅かしたわたしは、もうあなたの近くにはいられないわ。だから、あなたの気持ちだけ受け取っておくね」 そんなのは関係ない、と食い下がる俺に朝倉は少々困った顔を見せ、 「……じゃあ、もしまた会う機会があったら、そのときはあなたになにかご馳走でもするわ。そうね、なにか好きな料理を教えてくれない? 頑張って作ってみることにするから」 「――そうか」と流石に俺は朝倉の意を汲み取り「……じゃあ、冬といえばやっぱり鍋だな。クリスマスにはSOS団でいろんな具材が入った鍋をやるから、なにか他の……そうだな、鍋と言えば我が家ではおでんだと決まってるんだが」 「じゃあ、そのときはおでんを振る舞ってあげる。美味しく出来上がるかはわからないけど」 「ああ、すまないな朝倉。……美味しかったよ」 と、朝倉はクスクスと微笑し、 「なに言ってるの? まだ食べてなんかないじゃない。感想を言うには気が早すぎるよ」 なに、不精な俺のことだ。もしかしたら馳走の礼を忘れるかも知れないからな。それに朝倉が作るおでんは、俺の舌をウマいと絶叫させるって決まってるようなもんだ。 「ありがと」 朝倉は目を細くして言うと、大人の朝比奈さんに顔を向けて、 「後はわたしに任せてもらうとして、あなたたちはどうするの?」 「そうですね」朝比奈さんは小さな自分を見ると「あなたはこのまま、古泉くんを迎えに行ってください。そして、またあの公園で落ち合いましょう」 「わかりましたっ。それじゃあ、あたしは先に古泉くんのところへ向かいますね」 すると朝比奈さん(小)は朝倉の名を呼び、 「ホントに……ほんとうに良かった。色々あったけど、これでよかったんだってあたしは思います」 「……そうね。わたしもそう思うわ」 ニコリと笑った朝比奈さんに、ちょっと待って、と長門が呼びかけ、 「その七夕の日のわたしに、全てが完了した後でパーソナルデータは初期の状態へと戻して置くように伝えて欲しい。そのままでは、以後の活動に支障をきたしてしまう恐れがある」 「はい。ちゃんと伝えておきます。……ではキョンくん、涼宮さん。目をつむってもらってていいですか?」 そうだった、と俺とハルヒは目をつむり、そして目を開けたときには、朝比奈さんは既に古泉の元へと飛び立った後だった。 ……朝比奈さんの言う通り、俺もこれで良かったんじゃないかと思っている。今までの経緯にはマイナス要素も含まれていたが、それはいわば計算式の一部であり、現在の結果となる答えにはそれも不可欠なのだ。終わりよければ全てよしという言葉はまさにそのことを表しているのだろう。 「そしてキョンくん。元の時空へと戻る前に、あなたに説明しておきたいことがあるの」と朝比奈さん(大)は「まず……長門さんが病気だと言って学校を休んだときから続いていた、彼女と情報統合思念体とのトラブルについて」 ……ああ、それもまだ明かされていない謎だったなと思いながら、俺は話を聞く体勢に入る。 「長門さんはね、世界が分裂していたことを最初は認知していたの。だけどその異常事態をわたしたちに教えることは、それの観測を重要視していた思念体から禁止されていました。そこで長門さんはとある仲間の思念体を自分の管理下に置き、その仲間を通してわたしたちに知らせようとしたのだけど、それが上のほうにばれてしまって阻害されてしまったんです。そこで長門さんは自身の力を振り絞ってなんとかその仲間の身体を保持することに成功したんだけど、個人の力では赤ん坊の身体を構成するので精一杯だった。そこで長門さんはその子に死の概念……えっと、普通の人間のように肉体的な成長を授けて、思念体の精神的干渉を防ぐようにしたんです。そしてわたしにその子を託して、未来の時の中で成長させようと考えていたの」 ……つまり、それが朝比奈みゆきだってことなのか。 「そうです。そしてもう一つ。今回長門さんのパーソナルデータが消去されてしまったのは、わたしが原因なの」 「それ、どういうことなんですか?」 「わたしが前日にみゆきを連れてキョンくんに会いにきたでしょう? みゆきを連れてきたことこそが、長門さんに死を思わせるキッカケとなったんです。何故かといえば、みゆきの存在を長門さんが感知したとき、長門さんはひどく動揺したんです。みゆきの元となった思念体の構成情報が変化して、まるで人と同じような精神構造を持っていたから。……そこで長門さんは、強く思ってしまったの。やはり、死というものによって感情は形成されるんじゃないかって」 じゃあ、あの時の会話を長門が聞いていたからじゃなかったのか。 「ええ。思念体は長門さんたちを通してでなければ人と触れ合うことが出来ませんし、長門さんにそんな機能はありませんから」 ちょっといいかしら、と朝倉が急に話へと加わってきて、 「……その思念体って、誰だったの?」 大人の朝比奈さんは、申しわけないのか何なのか分からないような微妙な表情で、 「――それは、禁則事項です」 「……そう。まあいいわ、興味本位で聞いてみただけだから」 どこか切なそうに言う朝倉に、 「ふふ。ほんとに、なんでみゆきは朝倉さんみたいな子にならなかったのかな。……わたしの育て方が悪かったのかしら?」 若干本気で心配するような顔を見せ、 「――じゃあ、この世界と長門さんをよろしくお願いします。また……お会いしましょう」 ん? 長門はここに残るのだろうか? と眼鏡の長門は、 「わたしはここに残らなければならない。あなたたちの傍にいるべきわたしは、あなたたちが元の時空に帰還した後身体を再構成したうえで、パーソナルデータが消去される直前のわたしのデータを入力してくれるといい」 「そうなのか。……でも、そうするとまた記憶を消されるんじゃないのか?」 安心して、と長門は俺に言い放つと、 「……わたしはもう死を願ったりはしない。わたしは、わたしとして生きていく」 そして俺の瞳をじっと見つめ――、 「みんなと一緒に」 「じゃあ、そろそろみんなともお別れね。……色々ごめんなさい。あなたにはいくら謝っても足りない程だけど、そう悠長にしている時間もないかな」 「ん? どういうことだ?」 訝しがる俺に朝倉がAAランクプラスの笑顔を披露しながら言った言葉は、まるで登校中の一ページを見ているかのようで、あの頃の優しい委員長が戻ってきたような懐かしさに満ちていた。 「――急がないと、学校が始まっちゃうよ?」 第十三章
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涼宮ハルヒと魔術より あの閉鎖空間から帰ってきて約2ヶ月、今日は七夕だ 涼宮ハルヒは何故かメランコリー状態、しかし部室に来るなり ハルヒ「七夕マジックショーをするわよ!!」 などと言い出した、しかも朝比奈さんをバニーに着替えさせ、自らもバニーだ まぁここまではいいとしよう、何故長門にまでバニーを着せるのかねこいつは 別にかまわんがな 用意された小道具・大道具にはそれぞれ魔術紋様が描かれていた、まぁ長門や古泉と言った怪しげな魔導書の主ともなればそれくらいはわかる では何を意味しているのかと問われれば答えよう、わからん 長門に聞いてみると 長門「そのうちわかる」だそうだ、意味深だがまぁそのうちわかるならいいだろ 時刻は夜7時、お開きとなり俺は長門と朝比奈さんからそれぞれ栞とメモを渡された 長門「……後で役に立つから」と手渡され、朝比奈さんからはハルヒに気付かれないようこっそり渡された 内容は、解散しても残っていてと言う一言だけだった と言うわけでお開きになった後の部室に残っているわけだが、さてどうしたものか…… みくる「すみません、お待たせしました」 キョン「いえかまいませんよ、それでどうしたんです?」 みくる「まず私と契約してください!それから一緒に3年前に行ってほしいの」 キョン「と言うと接吻ですか……」 みくる「大丈夫です!直ぐに終わります」 で30秒後 キョン「それでは行きましょうかゴトゥーザ様」 みくる「おう!!」 3年前七夕…… キョン「はっ!」 みくる「あっ、気が付いた?」 キョン「ここは?」 みくる「3年前の七夕です」 キョン「てことは、俺は時間旅行をしたわけか」 みくる「はい」 起き上がり辺りを見回すと、部室ではなく公園だった時刻は8時を過ぎたところだ キョン「それで朝比奈さん、この時代で何を……」 みくる「zzz」 やれやれ、眠ってしまったか みくる(大)「お久しぶりキョンくん、また会ったわね」 キョン「あなたですか朝比奈さん(大)」 みくる(大)「ここからは私があなたを導きます」 キョン「どういう事です?」 みくる(大)「あなたと契約しこの時代にまで導くのがこの子の役目、そしてここからあなたを導くのが私の役目なの」 キョン「最初からあなたが来れば良かったのでは?」 みくる(大)「詳しくは言えないんだけど、ここであなたと契約しないと私は私になれないの」 キョン「……禁則ってやつですか?」 みくる(大)「えぇ」 キョン「それで俺に何をさせようって言うんです?」 みくる(大)「この先にある中学校に女の子がいます。その子のやろうとしていることを手伝ってあげて」 キョン「一体なにをやるんです?」 みくる(大)「それは行けばわかります」 キョン「……わかりました、じゃあ行ってみます」 みくる(大)「よろしくね、じゃあこっちの私はおぶって行ってね、キスくらいならいくらでもしていいわよ」 キョン「はぁ……」 こうして俺はその中学校とやらに向かうことにした やれやれ何が待っているのかね みくる(大)「……」 問題の中学校に到着したが誰もいない…… やれやれどうもここではないらしい、何々、東中学校ねぇ……はて聞き覚えがある名前だな ガタガタ 何の音だ?おっあいつか! キョン「おい!」 女の子「え?」 キョン「何やってるんだ?」 女の子「見てわからない?」 キョン「学校に侵入か」 女の子「そうよ、あんたこそ何誘拐犯?」 キョン「何をやろうとしてるんだ?」 女の子「別にあんたには関係ない……でもちょうどいいわ。あんたちょっと手伝いなさい!」 キョン「いやそれは構わんがどうやって入るんだ?」 女の子「鍵があるから開けるわ」 キョン「どこで手に入れたんだ?」 女の子「職員室から合鍵ちょろまかしてきたのよ」 キョン「犯罪だぞ」 女の子「いいのよ、どうせあたしの手品に引っ掛かってるんだから。さっ開いたわよ」 キョン「あぁ」 俺が敷地内に入るとそいつは一直線で体育倉庫の裏へと進んだ。そこにあったものは、白線を引くアレだ これで一体何をしようというのだろうか、皆目見当がつかない 女の子「あたしの指示通りに白線を引いてちょうだい。んしょっと!」 キョン「……俺が運んでやる」 女の子「お礼は言わないわよ」 キョン「何かお前、俺の知り合いに似てるな」 女の子「へぇどんな人?」 キョン「手品で世界を盛り上げようとしてる奴さ」 掻い摘んで俺の高校生活を話してやった、元々興味があったのか食い付きがよかった 女の子「ふぅん魔術師ねぇ、あんたが……。まぁ嘘でしょうけど信じてあげるわ」 キョン「そうかい」 女の子「その代わりしっかり私の指示通り、書いてもらうわ」 キョン「はいよ!」 女の子「こらー!そこ歪んでる!!違う!ダメ!やり直し!!」 キョン「どう違うってんだ!」 女の子「うるさい黙って足を動かしなさい!!」 とまぁ怒鳴られながらなんとか仕上がった校庭一面に描かれたそれは……、さっきみたハルヒの魔術紋様であり長門からもらった栞にも描かれているものだった……まさかこいつ! 女の子「ようやく完成ね!そう言えばまだ名前を聞いてなかったわね、あんた名前は?」 キョン「人に名前を聞く前にまず自分の名前を名乗るもんだ」 女の子「それもそうね、あたしは涼宮ハルヒ、それであんたの名前は?」 なんだと!?やっぱりか。となると、あだ名で名乗るワケにもいかないし、かといって本名はまずい。よしここは一つ キョン「ジョン・スミス」 ハルヒ「あんた……それ本気で言ってんの?」 キョン「偽名だがそういう事にしといてくれ」 ハルヒ「じゃああっちの娘は?」 キョン「アレは俺の姉ちゃん」 ハルヒ「わかった、そういう事にしておいてあげるわ」 キョン「すまんな、でも何でこんなもん描こうと思ったんだ?」 ハルヒ「あたしはね、トリックを使った魔術師じゃなくて本物の魔術師になりたいのよ」 キョン「なら魔導書を探した方が早くないか?」 ハルヒ「あるわけないでしょそんなもの」 キョン「……知ってるか?力ある魔導書は時として人の姿をするらしいぜ」 ハルヒ「それはさっき聞いた!」 キョン「じゃあ契約する時は接吻が基本らしいぜ」 ハルヒ「何でキスしなきゃならないのよ!」 キョン「さぁな魔導書に聞いてくれ」 ハルヒ「それもそうか、あたしにも見つかるかなあたしだけの魔導書」 キョン「案外近くにあるのかも知れないな」 ハルヒ「近く……か。じゃあこうしちゃいられないわ!帰る、帰って魔導書を探すわ」 キョン「あぁ、気を付けて帰れよ」 ハルヒ「わかってるわよ!それじゃ(北高……か……)」 さてと、疲れたぞっと。さぁ朝比奈さんを起こしてとっとと帰るか キョン「朝比奈さん、起きてください」 みくる「あたしは眠いんだよ!」 キョン「……ゴトゥーザ様、朝食の時間です」 みくる「ふぇ、もうお腹いっぱいでしゅ」 キョン「……朝比奈さん寝ぼけてないで起きてください」 みくる「え?あれ?私いつの間に眠ってたんですかぁ!」 キョン「やっと起きてくれましたね。どうやらここでやるべき事は終わったようですから帰りましょう」 みくる「そうなんですか?わかりました、それじゃあ……」 キョン「どうしました?」 みくる「ごめんなさい!魔力が不足していて私たちがいた時間軸に戻れません!」 キョン「なんと!?」 困った、どうするか……待てよ、もしかしたら!! キョン「朝比奈さん、戻れるかもしれませんよ!」 みくる「ほんとですかぁ!」 キョン「長門ですよ、もしかしたらこの時代にもいるかもしれない!」 俺も朝比奈さんも、もう手段が無い事を確信しており、わらにもすがる思いで長門のマンションを訪ねることにした ???『……』 キョン「涼宮ハルヒの知り合いの者だ」 ガーッ みくる「私長門さんが苦手で……」 キョン「大丈夫ですよ、さぁ行きましょう」 長門「……入って」 この時代に来た理由と取り残された事を伝え、出発前に貰った栞をこの時代の長門にわたす 長門「同期プログラムダウンロード、インストール……状況は全て把握した。今の私はあなたと契約している命令を」 キョン「見返りは接吻か?」 長門「……もちろん!」 キョン「わかったよ、じゃあ頼む」 奥の部屋に案内された後の第一声 長門「眠ってくれるだけでいい」 みくる「え、え、でも!」 キョン「うぅむ」 長門「時間が来たら起こす」 なんとそこにあったものは何と、ダブルベッドだった。そこに二人して寝ろと言うのだ…… みくる「わかりました、背に腹は代えられませんからね、おらキョン寝るぞ!(ドキドキ)」 キョン「はい!ゴトゥーザ様!!(って何で俺こんな立場なんだろ)じゃあ長門おやすみ」 長門「……コク、また図書館に……」 カチカチ キョン「うぅん、もう少し」 長門「……おはよう」 ガバッ!ささっ!! みくる「あぁ!キョンくん、戻ってこれました。元の時間軸です!」 キョン「なんですと!!んむっ!長門何をする!」 長門「……おはようのキス、契約通り接吻した、この契約になんの問題もない」 キョン「わかった……じゃあ説明してくれ」 長門曰く、俺と朝比奈さんが眠るこの部屋を空間ごと凍結したとかなんとか 朝比奈さんの説明によると、この部屋だけ時間を止めたのだそうだ やれやれとんだ時間旅行だったぜ…… 翌日古泉にこの事を話してやると羨ましそうにしていた ハルヒはというと、まだメランコリー状態から脱しきれてないのか団活以外ではため息をついていた そうそう、あの魔術紋様が何だったのかというと魔導書へのメッセージだったらしい 内容は『わたしはここにいる』だそうだ 何だかんだと大変な1日もとい3年だったが楽しませてもらったぜハルヒ あっ……試験勉強してねぇ……ま、まぁ何とかなるさハハハ
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4.窮地 ハルヒが倒れてから6日が経った。 長門によると、決戦は明日の13時前後らしい。 「13時5分の前後10分間」 これが長門の予測だった。長門には本当に頭が上がらないな。 これが終わったら図書館&古本屋ツアーだ。ハルヒに文句は言わせん。 明日にはハルヒに会える。 俺はそう思っていた。 世の中上手く行かないもんだ。 いや、俺がこいつらの存在を忘れていたのが悪いのかもな。 今、俺の目の前で、朝比奈さん(みちる)誘拐犯、橘京子が微笑んでいる。 「ああ、早く病院行かなきゃならんな」 とりあえず何も見なかったことにしよう。 「んもうっ、待ってくださいよ!」 何か言ってるな。聞こえん。 「涼宮さんのことですよ!」 「……ハルヒだと?」 佐々木じゃないのか。 「ふぅ、やっと止まってくれた」 足を止めて橘を見る。正直、関わりたくはない相手だ。 ハルヒは大丈夫だ、明日には目覚めるさ。 そう思っても、こいつがハルヒの名前を口に出すと反応せざるを得ない。 信用は絶対にできないが。 「で、ハルヒがどうした。サッサと言え」 「あなたは涼宮さんが明日目覚めると思ってるんでしょう」 何でこいつがそんなことを知ってるか、何て今更どうでもいい。 『機関』と同じような組織だ。調べる伝手なんかいくらでもあるんだろう。 しかし、何で今更俺にそんなことを言ってくるんだ? ハルヒがこのまま情報生命素子とやらに乗っ取られるのは、こいつらにとっても不都合なはずだ。 こいつらに俺たちを邪魔する理由は思い当たらない。 まだ邪魔しに来たと決まったわけではないが。 「それがどうした。お前には関係ない」 「そんな言い方酷い。……まあ、それはいいですけど。 それより、涼宮さんは明日になっても目覚めない、と言ったらどうしますか?」 何を言っているんだこいつは。ハルヒが明日目覚めない? 長門は明日、ハルヒの情報生命素子を消去すると言い切った。 こいつと長門、俺がどちらを信じるかなんてことは言うまでもない。 「あ、信じてないでしょう。無理もないか。今は伝えるだけでいいです。 明日、涼宮さんは目覚めません。手遅れになる前に手を打たないと」 「お前が未来人だとは思わなかった」 まともに相手してやる気はない。だが、こんな予言めいたことを言う理由は気になる。 「まさか。未来人ならこんなはっきり明日のことは言わないはず」 それは確かにそうだ。未来のことをはっきり言うのは禁則事項らいしからな。 「まあ、簡単に気が変わるとは思ってなかったけど……」 簡単でも複雑でも、俺がお前らに協力することはねぇよ。 「いつまでそう言っていられるかしら? まあいいわ、またすぐに会うことになるんだから」 そう言うと、笑顔のままひらひらと手を振って去っていった。 何しに来たんだ? 俺を不安に陥れようとしたなら大失敗だぜ。 しばらく悩んだ俺は、古泉の携帯に電話してみた。 あいつらの行動とその目的を機関が把握しているか確認したくなったからだ。 電話が通じるところにいない可能性が高い。 だが、予想に反して携帯は通じた。 『もしもし』 ……俺は思わず携帯を離してまじまじと見てしまった。 かけ間違えたか? 出たのは女性だった。 『もしもし? 大丈夫です、これは古泉の携帯で間違いありません』 受話器から聞こえてくる声で俺は冷静になった。 驚かせてくれたな、古泉め。 「その声は森さんですか?」 電話越しでも聞き覚えのある声は、完璧なメイドにして怒らせると恐ろしい機関のエージェント、森さんだった。 『はい、お久しぶりです。古泉が閉鎖空間にいるときと就寝時、機関の人間の内 あなた方がご存じの人間がこの携帯を預かることになっています』 なるほど。いつでも連絡が取れるようにという機関の配慮だろう。 「ああ、すみません、びっくりしてしまって。それで、用件なんですが……」 『橘京子があなたと接触したことですね』 ……やれやれ、さすがにわかっていたのか。俺は尾行でもされているのか? 『結果的には尾行になりますが、目的はあなたの安全です。今は緊急事態ですから』 森さんはあっさり認めた。 『それに、橘京子の方にももちろん監視がついています。 今回あなたと接触しようとしていることも掴んでいました』 本当にやれやれだ。そこまでわかっていたなら教えておいてくれてもいいだろうが。 機関も未来人同様、秘密主義をモットーとしているのか? 「で、あいつは何で俺のところに来たんですか? ハルヒが目覚めないなんて戯言をほざいていましたが」 『……そんなことを言っていたようですね』 ん? この言い方だと今の俺たちの会話で初めて知ったようだが? 知らなかったのかよ おい! これが古泉相手なら嫌味の2つや3つ言ってやりたくなるが、相手は森さんなので素直に聞く。 「把握されてなかったんですか」 『申し訳ございません。我々としましても何とか把握したいとは思っていたのですが、 不自然な邪魔ばかり入りまして』 不自然な邪魔? 『ええ、おそらくは人外の、と言っていいと思います』 人外ってことは…… 「宇宙的な力で邪魔されたと言うことですか」 あっちにも長門たちとは別の宇宙人がいたからな。 『証拠があるわけではありませんが、そのように推測しております』 そりゃ、普通の人間が太刀打ちはできないよな。 『橘京子の発言について、こちらもこれから検討に入ります。 周防九曜は監視をすり抜けて活動しています。何かあるかもしれません。 事実だとすると時間がなさ過ぎます。急がないと』 周防の活動、と聞いて寒気が走った。橘の警告。まさか何かたくらんでやがるのか。 だが、俺は長門を信じる。古泉がらみで今回は機関も信じてやってもいい。 絶対に、何とかなる。 病院に着くと、ハルヒの母親がいた。 初日に会って以来、俺は初めてあった。 ほとんど午前中に来ているらしい。 1日中ついていると言い張ったらしいが、病院の方でなだめたと聞いた。 長門が1日ついていることは隠しているらしい。 「あなたがキョンくんでしょ」 いきなり言われて戸惑った。 「あ、はい、そうですが……」 「いつも娘がお世話になってるみたいね。ありがとう」 「えっ いえ、そんなことは……」 一体ハルヒは家で俺のことをどういう風に話しているんだろう。 「こんなにお友達が心配しているの1週間も起きないなんて……」 ハルヒ母は、悲しげな目をハルヒに向けて言った。 特に異常はないが何故か目覚めない、そう聞かされているはずだ。 原因がわからないのでますます不安になるだろう。 「中学のときだったら、お見舞いに来てくれる友達なんていなかったと思うの」 ハルヒを見つめながら独り言のようにハルヒ母は続ける。 「それが今はずっとついてくれているお友達がこんなにいるものね。この子は幸せ物だわ。 ──あんまりお友達に心配かけてないで、早く起きなさい、ハルヒ」 言いながら涙目のハルヒ母を見て、俺は何も言えなかった。 本当のことを知らされないってのも辛い物だよな。 ハルヒ、お袋さんも心配してるぜ。頑張ってくれ。 そのとき、ドアがバタンと大きな音を立てて開いた。 おいここは病院だぞ。こんなドアの開け方をする奴はハルヒ1人で十分だ。 「きょ、キョンくん!! た、たた大変です!!!!」 「朝比奈さん!?」 朝比奈さんがこんなドアの開け方をするなんて珍しい、というかありえねえ。 何かあったのは顔を見れば一目瞭然だ。これ以上ないくらい焦っている。 「な、長門さんが、長門さんが……!!!」 大きな目からボロボロ涙をこぼし始めた朝比奈さんは、それ以上説明できなくなってしまった。 「落ち着いてください、長門がどうしたんですか?」 聞いても既に号泣してしまっている朝比奈さんは何も説明してくれない。 「長門はどこにいるんですか? とりあえず案内してください」 そう言うと朝比奈さんは泣きながらうなずいて病室の外に出て行ったので、俺もついていくことにした。 「お騒がせしてすみません、失礼します」 ハルヒ母に頭を下げると、病室を後にした。 ここまで来て、長門に何があった!? 「すみません、落ち着いたらでいいから説明してくれると嬉しいんですが」 泣きじゃくりながら俺を案内する朝比奈さんに聞いてみた。 無理っぽいけどな。 俺の中の不安がだんだん形になってくる。 『明日、涼宮さんは目覚めません』 橘の言葉がよみがえってきた。くそっ あいつらが何かしやがったんじゃないだろうな。 「うっ ぐすっ……す、涼宮さんのお母さんが、みえたんです、だから席を外して……」 泣きじゃくりながら何とか説明をし始めたところで、ハルヒの病室とは少し離れた部屋に着いた。 ドアを開けると、ベッドに長門が寝ていた。休憩しているのか? いや、そんなわけはない。だったら朝比奈さんが泣き出すわけがない。 「そ、そしたら……ぐすっ……突然、長門さんが……た、倒れて」 状況は把握した。だが、長門が倒れる? 過去に長門が倒れたのときには必ず関わってる奴がいやがった。 雪山のとき。そして今年の春。 「畜生、あいつか……」 情報統合思念体が「天蓋領域」と名付けたやつ。 いまいち、というか全然何考えてるかわからない存在だ。 長門の親玉にすらわからないんだ、俺になんかわかるはずもない。 あいつらにも、長門がいないとハルヒを助けられないことくらいはわかってると思うが。 だったら何故? 「わ、わたし、何もできなくて……ぐすっ 長門さんが、大変なのに……」 朝比奈さんが泣いている。 泣かないでください、俺も同じです。 何もできねぇよ、畜生! 何とかしないと……どうする? 焦って思考がまとまらない。 長門──情報統合思念体によるインターフェース。 二度と会いたくないが、朝倉がいたらこの際代わりに頼りたいくらいだ。 朝倉? そうか! 俺は携帯を取り出して古泉に電話をかけた。 『もしもし』 今度は古泉が出た。 「古泉か。長門が倒れた」 時間があまりない。単刀直入に話す。 『ええ、聞いています。僕も今そちらに向かっているところです』 「原因は天蓋領域か」 『おそらく。周防九曜の動きが全くつかめていません。何かしたのではないかと』 やはりな。 「そこでだな、今気がついたんだが、喜緑さんに連絡を取れないかと思ったんだが」 この際喜緑さんじゃなてく、他のインターフェースでもいい。 機関は複数のTFEIとコンタクトを取っている、と言っていた。 長門以外の宇宙人でも、長門と同じことができるはずだ。 「情報統合思念体の派閥が違っても、ハルヒの今の状態が面白くないのは同じなはずだ。 情報生命素子とやらを何とかするのに異論はないはずだろ」 俺は古泉に言った。 『それに気付くとはさすがですね』 嫌味かよ。 『いえいえ、純粋に賞賛の言葉ですよ。ですが、残念ながら無理です』 「無理? 何でだよっ!」 電話越しに突っかかる。目の前にいたら襟首を掴んでいるところだ。 『今朝から、機関が把握しているTFEIと連絡が取れなくなりました。 原因は長門さんと同じと思われます』 「なんだって?」 つまり情報統合思念体製インターフェースは、すべて活動停止に追いやられているってことか。 『そういうことです。長門さんは、最後まで動いていました。 状況はわかっているようでしたし、注意する、と言ってくださっていたのですが……』 なんてこった。長門は気がついていたのか。 気がついて、何とかしようと努力してダメだった。 まるで1年前のあのときのように。 また何も言わずに1人で抱えてたのかよ、長門! 『あなたには言うなと言われていましたが、状況が状況ですので。それでは、後ほど』 電話が切れた。 ちょっとショックだった。俺に隠したかったのか? 「違いますよぉ」 いつの間にか泣きやんでいた朝比奈さんが、まだ涙の浮かぶ目で俺を見て言った。 「長門さんは今のキョンくんに、涼宮さんだけを心配していて欲しかったんです」 そんなこと言われたって、この状態で長門を心配するなっていうほうが無理だ。 「長門さんはキョンくんに余計な心配かけたくなかっただけなんです」 言いたいことはわからないでもない。 それでも、やはりショックは抜けなかった。 そりゃ、俺は何もできないが、少しは頼って欲しかったよ、長門。 「すみません、少し頭冷やしてきます」 なんと言っていいかわからず、俺は部屋から逃げ出した。 外に出ると、古泉が到着したところだった。 「どうしたんです? わざわざ出迎えてくれるとは」 俺を見つけると、古泉が声をかけてきた。 「そんなわけないだろ。頭冷やしに出てきただけだ」 「あなたがショックを受けているのはわかりますよ」 古泉が真顔で言った。 「僕だってそうですから」 お前も? 少なくともお前は長門から話を聞いていただろうが。 「いえ、ただ一言『注意する』とだけ。具体的に何が起こっているかは何も聞いていません」 そうか。やはり1人で何とかしようとしていたのか。 「しかし、今回は正真正銘の緊急事態です。 長門さんはこちらの唯一のカードにして切り札だった。それを奪われたわけですからね」 その通りだ。長門がいなきゃ、ハルヒは助からない。 意識が戻っても、既に中身は違う人間だ。実際、どういう人間になるのかもわからない。 そんなことは絶対に避けなければ駄目だ。 「俺たちはどうすりゃいい?」 古泉に聞いた。こいつなら、何かいい案を出してくれるかもしれない。 だが、古泉は首を横に振った。 「機関の上の方は恐慌状態ですよ。こちらは何の手も打てないのですから」 そりゃそうだろう。機関と言っても、所詮はただの人間の集まりだ。 「でも、少なくとも僕たちは諦めるわけにはいきません」 いつになく真剣な目で古泉は俺を見つめた。 この『僕たち』というのはSOS団のことだ。 「そうだな、諦めるわけにはいかねぇよな」 ──俺たちだけは、な。 5.選択へ
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ハルヒ能力喪失・SOS団解散編 1話 ハルヒ能力喪失・SOS団解散編 1.5話 別ルートBAD END注意