約 886,150 件
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/260.html
暖かいまどろみの中 聞き慣れない目覚ましの音が鳴り響く キョン「ん・・・う、うるせ・・・」 ジリリリリリリ キョン「・・・・ん?クソ・・・この」 毎朝の習慣。右手を軽く伸ばす。しかし、いつもあるはずの場所に目覚まし時計がない キョン 「な、なんだ?・・・」 軽く目を開ける。目覚まし時計は、枕元の見慣れない小棚の上にあった カチッ キョン「んー?・・・・・・ぁ?」 違和感。おかしい。あきらかに。ベッドがデカいし・・・部屋も見慣れない・・・枕も2つある キョン「ここどこだ・・・」 少なくとも俺の部屋ではないことはわかる。いや、俺はいま起きるまでは何をしてたんだっけか いや、いま起きたんだから寝たんだよな・・・どこで?たしかに俺の部屋で寝たよな・・・キャトルミューティレーション? ガチャ キョン「・・・!」 ハルヒ「あ、起きた?キョン」 キョン「・・・誰ですかあなたは・・・」 いや、みりゃわかる。ハルヒだ。どう見てもハルヒ。・・・しかし、ハルヒではない。 ハルヒは・・・こんなに胸もないし・・・エプロンなんて・・・ キョン「おわわわ・・・近づくな」 ハルヒ「?」 俺の知ってるハルヒの目だ。ちょっと吊り目がちな目で見つめてくる・・・て、おい、こいつはハルヒだぞ。 ちょっとドキドキしてしまう キョン「なにを俺は」 ハルヒ「なーにぶつぶつ言ってんのよ。仕事遅れるでしょーが」 キョン「ほあ?」 ハルヒ「ほあ?じゃないでしょ。さっさと朝ごはん食べて会社行きなさい!」 か・・・かいしゃ?・・・学校じゃねーのか・・・てか、・・・これは ハルヒ「・・・・・・」 キョン「な・・・んだよ」 ハルヒ「・・・・・んー」 んんーーーーーーーーーー??これは!これはあああ!見たことあるぞ!漫画で!ドラマで!映画で!そう!キスのおねだりだ!! キョン「お、おい・・・!おまえな・・・悪ふざけも大概に」 ハルヒ「あ!パン焦げちゃう!」 ドタドタドタ ハルヒ似の人妻は、ハルヒそっくりな騒音を立てながら階段を降りていった いや、わかった。あれは、ハルヒ似でも人妻でもない。いや・・・現実を見ようか・・・あれはたしかに『人妻』のハルヒだ 暑苦しい部室だ・・・もうこれが高校時代最後の夏か・・・ キョン「・・・ふー」 古泉「キョンさん。いままで僕たちは防戦一方でした」 キョン「なんだいきなり。俺は疲れてるんだ・・・そっとしておいて・・・許可なく隣に座るな」 古泉「ははは、キョンさんの隣は涼宮さん専用でしたね失敬」 キョン「もうなにもいわん」 古泉「そうですか、助かります。では、本題に入ります」 思えば三年間。こいつはずっとこうゆう話の展開の仕方だったな 古泉「話は簡単です。キョンさんに涼宮さんの『願望』の中に入ってもらうんです」 キョン「・・・大丈夫。驚かない。」 古泉「もう、慣れたものですね。ははは」 キョン「まず、言おう。俺をハルヒの願望の中。つまり宇宙人や未来人、超能力者。いや、それだけじゃないだろ。恐竜や怪獣。スーパーヒーローにスーパーロボット はたまた・・・・とにかく、そんな中に俺をぶちこんで」 古泉「ええ・・・・それなんですがね。どうやら、最近の涼宮さんの願望に大きな変化があるようなのです」 キョン「変化・・・それ3年前も言ってただろ・・・悪い風に変化してるって」 古泉「違うみたいなんですよ、それが。涼宮さんを変えた決定的なのが」 キョン「おまえがなんでそれを知っている」 古泉「やだなぁ。僕はまだなにも言ってませんよ」 俺とハルヒが去年の冬に・・・あの日からハルヒが俺にあまり突っかかってこなくなった 古泉「で、ですね。その変化を見に行ってもらいたいんです。あ、キョンさんは、いつもどおり夜に自室で寝てるだけでいいんです 私たちが飛ばしますから」 キョン「超能力も便利になったものだな」 古泉「ははは。ええ、我々も進化してますからね」 キョン「進化じゃなくて、進歩といえ。おまえに進化されるとなんか怖い」 古泉「ははは」 ハルヒ「はい、それじゃ鞄持ったわね」 キョン「ん、ああ」 ハルヒの作った朝食は、ごく一般的とはいえ、俺には十分満足できるものだった 鞄を持ち、玄関まで行く。ハルヒは・・・マンションより一軒家がいいのか・・・それに結構大きめだな。ハルヒらしといえばハルヒらしいか 俺は心の中で笑ってしまう ハルヒ「はい、お弁当」 キョン「おう、あんがとな」 靴を履き終え、玄関のドアに手をかける ハルヒ「・・・・・」 例といえば例のごとくだが・・・ キョン「・・・・・・」 ハルヒが軽く俺のスーツを掴む キョン「・・・・・・ん」 ハルヒ「・・・ん・・あ」 長いキスだ。こんな長いキスを毎朝すんのか ハルヒ「・・・・ん・・・ん」 いや、まあ・・・決して悪い気分では・・・ キョン「・・・・んあ・・・・ん」 俺はやっぱハルヒが好きなのか ハルヒ「はい!終わりね!いつまでキスしてんの!」 キョン「う・・・」 いきなり口を離され、なんだか不憫な気持ちになってしまう ハルヒ「本当にキョンはスケベな 結婚したら少しは落ち着くかと思ったんだけどね」 キョン「あ・・・あのなぁ」 俺は玄関のドアを開け、外に足を出す ここどこなんだろうなぁ・・・ 玄関の外も見慣れない景色だ キョン「じゃ、行って来る」 ハルヒ「さっさと行きなさい!」 いってらっしゃいませご主人様とか言え・・・いや、普通はないか キョン「・・・ふー、これがハルヒの『願望』なのか」 しばらく歩くと後ろからタタタタと足音が聞こえる キョン「あ・・・弁当」 キスして忘れたよ・・・ ハルヒが弁当片手に駆けてくる 右手の人差し指を下まぶたにつけて 舌を出して・・・ベーっとしながら ハルヒ「キョン!あんたってほんとーにあたしがいなきゃダメね!アハハハ」 それは本当に楽しそうなハルヒの笑顔。無垢な子供のような、それでいて女性の優しさが溢れている この笑顔を俺は・・・叶えたい。いや、叶えられる・・・俺は、そう確信を持ったんだ 暑い・・・寝苦しい・・・ ジリリリリリリリリリリリジリリリリリリリリリリリ キョン「・・・あ・・つい・・・う、うるせ」 カチッ 俺はいつもどおりの部屋で、いつもどおりの位置の目覚ましを止めた キョン「・・・今日から夏休みだ」 プルルルルルルルルルル ピッ キョン「んあ」 ハルヒ「キョン!おきてるー!?SOS団発進よ!すぐに学校に来るように!以上」 おわり
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/2497.html
涼宮ハルヒの邁進 プロローグ 涼宮ハルヒの邁進 その1 涼宮ハルヒの邁進 その2 涼宮ハルヒの邁進 その3 涼宮ハルヒの邁進 その4 涼宮ハルヒの邁進 その5 涼宮ハルヒの邁進 その6 涼宮ハルヒの邁進 エピローグ
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/3593.html
「・・・・・・・・・・なんでよ?あたしのこと嫌いなの?」 ハルヒが泣いている・・・・いつもの笑顔からは想像も出来ない泣き顔 俺はハルヒを悲しませてしまったのか、あの太陽のような笑顔を守ってやれないのか 「そんなことない!好きだ!・・・・でも今は・・・・・・」 俺がハルヒと付き合い始めてから早1ヶ月。変わったことと言えば毎日一緒に登校してるってことと、日曜日の勉強会が午前になって午後からはデートになったってことぐらいだ ・・・・・・そうそう、どうでもいいことかもしれんが俺にはうれしい変化がもう1つあった。ハルヒのポニーテール仕様率の異常なまでの上昇だ。髪をバッサリ切ってしまう前のポニーの長さには到底届かない、言うなればチョンマゲのようなポニーだが、そこがまた可愛い!抱きしめたくなる衝動に駆られるね、正直言って・・・・・・・俺って変態だな 「・・・・・・・って有希は言うんだけど、みくるちゃんはね・・・・・ってあんた聞いてるの?」 「ん?あぁ聞いてるぞ。で朝比奈さんは何て言ったんだ?」 「なんだ、聞いてたんだ。間抜けな顔してたから回想にでも浸ってたのかと思ったわ」 するどいな・・・・・やっぱり心が読めるんじゃないか? 「なんだかんだ言ってもキョンはあたしの話を聞いててくれるから大好きよ!」 コラ!登校中にそんな大声で「大好き」発言するんじゃありません・・・・・・はぁ、周りの目が痛いぞ 「別にいいじゃない、付き合ってることなんて皆知ってるんだから」 ハルヒのとんでもパワーは今でも健在。古泉の機関の推測である、俺と付き合えば力も消えるってのは大外れで長門曰く増大したそうだ。その証拠がこの「皆知ってるんだから」である 話は遡ること1ヶ月前・・・・・・ 「よう!キョン・・・・・お、嫁も一緒か」 空気の読めない男No.1(俺予想)の谷口・・・・・うわぁ、ハルヒがトマトだ 「だだだだだだだ誰が誰の嫁よ!ぶっ殺すわよ」 言ってることは連続殺人鬼並なのに顔がニヤケてますよ 「いて!蹴るこたぁないだろ・・・・・だって付き合ってるんだろ?」 「あれ?谷口。お前、何でそのこと知ってるんだ?俺は誰にも言ってないぞ?・・・・・・ってまさかハルヒ、皆に言いふらしたのか?」 「そんな非人道的なことあたしがすると思う?」 いや、朝比奈さんに強制わいせつしてるが、あれは人道的行為なのか?他にも挙げたらキリがねぇ 「何ブツブツ言ってるのよ!とにかくあたしは、言いふらしたりなんかしてないわ」 「だよな・・・・スマン、ハルヒ。疑ったりして」 「べ、別にあんたが謝る必要なんてないわよ・・・・あたしを好きでいてくれればそれで・・・・」 「・・・・・・・・・・ハルヒ」 「・・・・・・・・・・えぇっと・・・・・・・・俺、先行っていいか?」 谷口は相当イライラしてるみたいなんだが・・・・・正直スマンかった 「いや待て。誰から聞いたんだ?その付き合ってること」 「・・・・・・ん?そういえばそうだな。特定の誰かから聞いたって訳でもねぇし」 「はぁ?誰からも聞いてないのに知ってる?なんじゃそりゃ」 「いやぁ、俺も不思議なんだが自然とそう思ってたよ」 「不思議?!」 あぁ、ハルヒの目が輝いてる・・・・谷口、ご愁傷様 「ちょっと谷口!その話詳しく聞かせなさいよ」 谷口はネクタイを掴まれて・・・・カツアゲされてるみたいで可哀想で助けてやりたいのは山々なんだが確認しとかないとかけないことも出来たしな 「ハルヒ、先行くぞ」 ・・・・・・不思議となれば俺の言葉も耳に入らないのか?まぁ先行くか 「・・・・・ふんふん、なるほどね。キョンはどう思う?ってあれ、キョンは?」 「先行ったみたいだぞ」 「何で言わないのよ!この役立たず!」 「いてー!蹴るなよ・・・・・殴るのもなしだって」 「長門、いるかー」 「・・・・・・・・・・・・・・・何?」 なんか朝は三点リーダーが多いな・・・・・長門も朝は苦手なのかな? しかし、こんな朝早くから団室にいるなんて、流石長門だな 「ちょっと聞きたいことがあるんだが、いいか?」 「・・・・・・・・・・・・・・・いい」 やっぱり機嫌悪くないか?昼休みでもいいんだが・・・・ 「・・・・・・・・・怒ってなどいない・・・・・・・・・早く話して」 やっぱり怒ってねぇ?微妙に目が恐いんだが・・・・・ 「そのことについては情報統合思念体も把握している。涼宮ハルヒの力によるもの」 まぁ、想像はしていたが・・・・・で、何でそうなったんだ 「情報統思念体の見解によると、涼宮ハルヒはあなたと恋愛関係にあることを世間に知られることで、あなたを他の女に取られることを防止したと思われる」 「なるほどね・・・・そんな可愛い一面もあるんだな」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 ・・・・恐いから睨まないでください 「で、なんでそのことを俺に教えてくれなかったんだ?」 「現実、事実を捻じ曲げた情報の書き換えはなく、また時間が経てば現状と同状態になると予測されたため」 「なるほどな・・・・納得したよ。ありがとよ」 「・・・・・・いい」 「・・・・・・でね、そしたら今度は有希が・・・・・って聞いてる?」 「聞いてるって、長門がなんだって?」 「フフフ・・・・・・やっぱりキョンはキョンね」 「どういう意味だ、それ?」 「そのまんまの意味よ!」 ・・・・・・・・わけわからんぞ、それ 俺とハルヒのラブラブっぷりは自分で言うの変だが常軌を逸している そのことが顕著に現れるのは授業中と団活中、それにデート中だ 「・・・・・・・・・」 授業中はずっと後ろから視線を感じる。まぁ後ろからって時点で視線の元はハルヒで間違いないんだが・・・・・それにしてもこの席順、変わらないな 「・・・・・・・・・何見てんだ?」 「キョンの背中って案外大きいのね。頼りになりそうね」 「そうかい、そりゃぁどうも」 授業中だというのに、こんな惚気た会話をしてて、よく自分が恥ずかしくないよな しかし、この学校の教師はどうなってるんだ?これだけハルヒとお喋りしてるっていうのに注意の一つもしてこやしない ・・・・・・もしかして、またトンデモパワーで「ラブラブ遮蔽シールド」とか張ってるんじゃないだろうな・・・・・いや、ハルヒならやりかねん まぁこのくらいは許せる範囲なんだが、やっかいなのが団活中だ 授業中にいちゃいちゃ出来ないのが不満なのか放課後の団活ではその不満を爆発させる 「ねぇ~キョン~・・・・キョン~・・・・・・」 だー!耳元でそんな甘い声で囁くな!!理性よ頑張れ!! 指定席だったデスクトップの置いてある団長席は今はただのパソコン台に成り下がり、ハルヒは俺の隣に座って、俺を弄ったり古泉とのボードゲームを観戦したり俺を弄ったり雑誌を読んだり俺を弄ったりノートパソコンでネットの世界にダイブしたり俺を弄ったり俺を弄ったり・・・・ つまり何だ・・・・・俺の理性を崩壊させたいだけなのかもしれん。こいつの悪戯心にはまいるよ。こんなこと毎日されてたら理性なんてあったもんじゃないぞ まぁデートの様子なんて実況しなくてもわかるだろうし、実況なんてしたくもねぇ いわゆる唯のバカップルってことだ そんなハルヒもバカップルっぷりを唯一振舞わないのが土曜、つまり今日の不思議探索のときだ クジでの組み合わせ決めで、俺はてっきり毎回ハルヒと2人きりになるとばかり思っていたんだがそうではないらしい。きちんと確率論に則った結果が毎回提示される ここぞとばかりにハルヒパワーじゃないのか?こういうところで力を発揮して欲しいね 「大丈夫。わたしがさせない」 ・・・・・・・・・・長門?! ・・・・・・・・・偶然だよな? 偶然なのかハルヒパワーなのか情報操作なのか規定事項かはしらんが今日の午前のペアはハルヒとだった。でも何かが違った。しいていうなら風邪をひいたハルヒってところか?いつもの猪突猛進さがないというか「キョンとね!じゃぁ行くわよ!」と言って手でも引っ張っていくと思ったんだが・・・・・そういえば付き合い始めてからはペアになるの初めてだな なんだかしおらしいハルヒをつれて街中をぶらぶら・・・・傍から見ればただのデートなんだが、いつのまにか例の川沿いを歩いていた なんかハルヒも元気がないことだしベンチで一休みするか 「なぁ・・・・今日のお前、元気がないな」 「そ、そんなことないわよ!いつも通りよ」 「・・・・・・・・そうか、ならいいが」 「・・・・・・・・・ねぇ、キョン。あたし達って付き合い始めてから1ヵ月経ったわよね?」 「ん?あぁそうだな」 「キスもたくさんしたわよね?」 「・・・・・まぁ・・・・・・・・・・したな」 「あたしのこと愛してる?」 「そりゃぁ勿論愛してるぞ」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・そう」 何が言いたいんだ?やっぱり何処か変だ。少しどころではない。大分おかしい 「キョン・・・・・探索が終ったら家に来て」 「家って・・・・・・・ハルヒの家か?」 「うん」 「そうか・・・・・・・・わかった、行くよ」 「ありがとう・・・・・もう時間ね。皆の所に戻るわよ」 おかしい。おかしいことに間違いはないのだが・・・・・それにしても直接家に呼び出すなんて、よっぽど大事な話があるに違いない・・・・・・・別れ話なんて勘弁だぜ? 「さて、涼宮さんがいなくなりましたので・・・・・大事な話があります」 「お前の、その「大事な話」とやらはどうせ俺を巻き込む事態なんだろ?」 「何故そう思われるのですか?」 「この面子で話し合うことなんざ、どうせ俺が疲れる仕組みになってるに違いない」 「まぁとりあえず話だけでも・・・・」 午前のおかしなハルヒは朝比奈さんを引き連れて午後もおかしなまま2人で人ごみへと消えていった。つまり俺のペアは長門に古泉だ 俺たちはいつもの喫茶店の前で別れる振りをして再度入店した。なんでもこの店は機関のものらしく、聞かれたくない話を存分に出来るらしい。 「端的に申し上げますと、今朝のペア決めで凉宮さんとあなたがペアになられたとき閉鎖空間が発生しました」 なんだと?閉鎖空間ってあの閉鎖空間か?ハルヒがストレスを感じてたってことか? 「いえ、今回はそのような理由ではなく、また通常の閉鎖空間ではないようです。僕は機関からの報告を受けただけで実際に見ていないので詳しいことは分からないのですが、閉鎖空間内を覗ける長門さんに、ここは説明を任せます」 「了解した」 長門はそんなことも出来たのか・・・ 「通常の閉鎖空間と違う点は2つ。1つは空間範囲の狭さと拡大する気配がないこと。2つめは神人の活発な活動が認められない」 あの神人が活発に破壊活動をしていない?想像も出来んな・・・ 「神人は出現してから約3時間の間、ただうずくまって座っているだけ。破壊活動もしなければ身動きすらしない」 「そんな神人が出たのか・・・で機関はどうするんだ?」 「えぇ、そのことなのですが・・・・触らぬ神に祟りなしとも言います。しかし放っておけば何時までも閉鎖空間は消えませんし、何時拡大を始めるかもわかりません」 「そうか・・・・・・で俺はどうすればいいんだ?」 「そうですね・・・・なにか涼宮さんについて変わったこととかはありませんでしたか?」 「変わったところと言えば・・・・・どこか元気がなかったぞ」 「元気がない・・・・落ち込んでいるのでしょうか?」 「そのような感情の観測はなされていない・・・・言うなれば・・・不安になってる?」 不安?ハルヒが・・・本当か、それ 「宇宙人、嘘つかな~い」 長門・・・・キャラ変わってるぞ 「さて、これからどうしましょうか。僕としては探索が終ってからでも充分対策がとれると思うのですが・・・・どうです、長門さん」 「問題ない。探索終了後わたしのマンションで検討会を実施する」 そうかい。頑張ってくれよ 「何を言っているのですか。もちろんあなたにも参加してもらいますよ」 いや、俺はちょっと用事が・・・・ 「世界とその用事とどちらが大事なのですか?」 そりゃぁハルヒも大事だが世界が終ってしまえば元も子もないか・・・・ 「わかったよ」 「わかっていただけてよかったです。では探索終了後、1度別れる振りをして長門さんのマンションに集合ということで」 「はいよ」 「了解した」 「では探索に参りましょうか」 「今日の探索は終了!解散!」 ハルヒの一声で今日の探索とは名ばかりの活動も終了し俺も帰宅する振りを 「さ、行くわよ」 そうでした。呼び出し喰らっていましたね しかし古泉にも言われたとおり世界のほうが優先されるべきなんだろうな・・・・世界崩壊の原因が目の前にいるとは 「あぁ、そのことなんだが。スマン、実は用事があってな」 「・・・・・・なによ、あたしより優先すべきことなの?」 「まぁそういうことだ」 「その優先することってなんなのよ!」 しまったな、言い訳を考えてなかった。まさか本当のことを言うわけにもいかないし、かと言ってハルヒに俺の考えた嘘が通じるとも思えないし・・・・・ 「黙り込んじゃって、ますます怪しいわ」 しょうがない。本当のことを全部言うわけにはいかんが・・・・ 「実は長門の家に呼ばれてるんだ」 「・・・・・え、有希?」 「・・・・・・・なんであたしより有希なのよ」 え?俺の目の錯覚か・・・・ハルヒの大きな目から1滴、2滴と大粒の涙が滴り落ちてゆく 「あたしより有希なの?・・・・・・・・あたしのこと嫌いになっちゃったの?」 「違う!そんなんじゃない・・・・・ハルヒのことは好きだ!」 「そんなの嘘よ!もういい!!」 そう吐き捨てたハルヒは走っていってしまった。こんなの常識的に考えて追いかけるだろ?世界なんて二の次だ 「みっみっミラクル~み~くルンルン!」 「発信者:古泉一樹(グループ:SOS団)」 そう俺の携帯のディスプレイが表示している。いいタイミングだな 「・・はぁ・・・・はぁ・・・・・古泉か?」 「ええ。緊急事態です。閉鎖空間が急速に拡大し始めました」 まぁそうだろうな・・・・・あんなにハルヒが怒って泣いていたんだ 「はぁ・・はぁ・・・・・そうか・・・・・はぁ・・・・悪いが俺は行けそうにない・・・・はぁ・・・・はぁ・・・・理由は・・・・・・・・・・後で」 「なんとなく状況は察しました。世界崩壊の危機を脱っすることが出来ましたらそのとき・・・では」 話のわかる仲間を持つと助かるぜ 「・・・・・・なんであたしの部屋に入ってきてるのよ」 「おまえが来いって言ったんだろ?」 ・・・・なんてのは嘘で夢中で追いかけてたらハルヒの部屋まで来ちまった 「だってあんたは有希のところに行くんでしょ!」 「いや違うそれは・・・・」 「それは何よ!だいたいあんたはいっつも有希やみくるちゃんばっか見てデレデレしちゃって、あたしのことなんてちっとも見てないじゃない」 「なに言ってるんだ!俺はしっかりお前のこと見てるぞ!」 「・・・・・・そんなの嘘よキョンはあたしのことを見守っててはくれないわ」 「いいや、嘘じゃねぇ!お前のことを守って見せる」 「そんな約束いつまで続くかなんてわからないじゃない!」 「約束する。いつまでもおまえのこと見守っててやる!」 「・・・・・・?!ちょっとキョン、それって」 「俺は世界とハルヒを天秤に掛けてもハルヒをとる!何があってもハルヒを守ってみせる!」 「・・・・・・・・・・本当」 「あぁ、本当だ」 「・・・・・・・・まぁいいわ。今回は信じてあげる」 はぁ、よかった・・・・ってそういえば古泉たちは大丈夫なのだろうか 本当にハルヒの方の天秤をとったわけなんだが・・・・ 「・・・・・・ねぇ、キョン。知ってる?」 何がだ? 「今ね、この家にいるのキョンとあたしだけなのよ?」 そ、それは拙くないか?男と女が二人っきり・・・・・ 「別に拙くなんかないわよ。あんたさっき自分で言ったこと忘れたの?」 さっき言ったこと・・・・なんのことだ? 「はぁ?あんた覚えてないの?あたしを一生・・・・・・まぁいいわ、キョンはやっぱりキョンね」 ・・・・・・・・なんのこっちゃ 「ここは再構築世界とかじゃないよな?」 「えぇ、おそらくは・・・・ですよね?長門さん」 「そう」 ハルヒを泣かしてしまうという事件もようやく一段落ついたその日の深夜、ようやく長門のマンションに来れた。本当はもっと早く来るつもりだったんだが、泣き疲れたハルヒは俺を抱きかかえたまま寝てしまった 別に腕の中から逃げてこられなくはなかったんだが・・・・・気持ちよさそうな顔だったから、つい見とれていこの時間だ 「・・・・・・・・可愛い寝顔だな」 「!?・・・・・Zzz・・・・」 あぁ、こいつ起きてやがる・・・・顔が真っ赤だ 「お前、起きてるだろ」 「・・・・・なんでわかったのよ」 「そりゃぁいつでも見守ってるからな」 「・・・・・・・・キョン」 「そういやぁ親はどうしたんだ?」 「・・・・・あんた雰囲気ってものを知らないの?」 「なんのことだ?」 「はぁ・・・・・・親は親戚の結婚式に行って夜まで帰らな・・・・ってもうこんな時間じゃない!何で起こさないのよ!!」 「可愛い寝顔だったからつい・・・・」 「バカこといってる場合じゃないわよ、本当に帰ってきちゃう。キョン、早く帰る支度して!」 別に「あたしの彼氏よ」とか紹介されてもいいんだが・・・・ 「バカいってないでさっさと帰る!!」 ってな具合に家を追い出されてしまった 「そうか・・・・じゃぁ、今回の種明かしをしてもらおうか」 「種明かし・・・・ですか。結論から言いますと、男には女の気持ちはわからない・・・・でしょうか」 全然結論になってないぞ、古泉。ちゃんと説明しろよ 「僕も男ですし、今回の騒動は長門さんにご説明をお願いいたします」 「了解した」 長門って、その台詞多いな・・・・・ 「凉宮ハルヒが不安になっていな要素はたった1つ。あなたとの関係」 「俺との関係?」 「凉宮ハルヒがあなたにしようとした行為によってあなたとの関係が壊れることを危惧し、その葛藤の中で例の閉鎖空間を発生させた模様」 行為?行為ってなんだ? 「・・・・鈍感」 「いやぁ、あなたがそこまで鈍感とは」 「・・・・・わるかったな」 ハルヒが俺としようとしたことぐらい俺にだってわかるさ。付き合って1ヶ月、キスも充分した、愛してる。でも気づくのが遅かったな。スマン、ハルヒ。やっぱり女の考えてることは男には到底わからないものなのさ・・・・・でもちゃんとわかるように努力はするよ 「・・・・な、なによ!じろじろ見て」 「いいや、別に。俺はただお前を見守ってるだけだ」 「・・・・・・・あんた、よくそんな恥ずかしい台詞が言えるわね」 お互い様だろ 「そんなに見られてたら答え合わせに集中できないじゃない!」 今日は土曜探索の翌日、日曜日だ。予定通り午前中はハルヒと勉強会中・・・・と言っても、もう終るんだがな 「・・・・うん、よし。今日はこれでおしまいね。お疲れ様」 「お疲れ、ハルヒ。いつもありがとな・・・・・午後はどこにデートに行きたい?」 「・・・・・あたしの家に来ない?」 ・・・・・・親に紹介でもするのか? 「んとね・・・今日も家に誰もいないのよ」 「それってまさか・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・バカ」 good end… 「いやぁ今回は出番が結構ありましたね」 「いっぱい喋った。ユッキーがんばった」 「あのー・・・・・わたしは?」 作者「空気乙wwwwwwwwwwwwwwwwwwww」 「貴様、【禁則事項】で【禁則事項】して【禁則事項】するぞ!」 作者「アッー!!」 bad end…
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/4025.html
『涼宮ハルヒの進路』 3月。鶴屋さんと朝比奈さんはそろって卒業し、鶴屋さんは地元の大学へ合格した。 朝比奈さんは・・・試験当日、高熱を出して文字通り昏倒し、結果、一年を棒にふった。 おかげでというか、卒業後も文芸部室のマスコットを継続していただけることになった。 予備校とか、いいんですか?と控えめに聞いた俺に対し朝比奈さんは泣きそうな声で 「私は! 試験に落ちたんじゃないですから!」 と叫んだ後なにやら呪うようにつぶやいていた ウケテサエイレバ ウケテサエイレバ ウケテサエイレバ 聞かなかったことにしよう 4月がきて、俺たちは最上級生へと進級した。このままいけば来年で卒業であり 本格的に進路を考えざるを得ない状況に追い込まれたわけだ。 職員室の岡部のところまで日誌を届けに行くと、先客がいた。ハルヒだ。 聞くともなく聞いた内容によると、ハルヒは進路調査を白紙で出したらしい。 「どうしたんだハルヒ。お前の成績ならどこでもすきなとこ選べるだろ」 「うっさい、余計なお世話よ。だいたいアンタ、他人の心配してる余裕あんの?」 とりつくシマもない 受験生となっても団活に休みはない。 新年度最初の不思議探索。くじ引きは古泉と二人組みになり、このところ閉鎖空間が頻発していると聞かされる。 なぜだ?進路希望を白紙で出したりするからには悩んではいるのだろうが、閉鎖空間を創るほどのことだろうか? それとも、進路とは関係ないのか?理由がわからない。 掃除当番を終え、いつもの文芸部室にやったきた俺を迎えたのは卒業後も律儀にメイド服に着替えている朝比奈さんと、 いつものように本を開いている長門、そしてマウスをぐりぐり動かしているハルヒだった。 てっきり俺が最後だとおもったが 「9組はホームルームが長引いてるみたい。どうせ進路がらみでしょ。アンタ…進路は考えてるの?」 「んー・・・そうだな。私立に行く金も県外に出る金もないし、地元の国立がベストだな」 「そんなの奨学金とればいいだけじゃない。ちゃんとやりたいことのできるとこ選ばないとダメよ!」 珍しいこともあるもんだ。ハルヒがまともなことを言っている。 じゃぁベストは模索中ってことで、いまんとこ地元国立だ。 「へぇ…偶然ね」 ハルヒがつぶやいた。パソコンのモニターで顔は見えない。 なんと、ハルヒも同じ進路らしい。偶然だと信じたい。 それにしてもアンタ、国立志望できるほど成績よかったっけ? 安全圏には程遠いな。家庭教師をしてくれるって、前に言ってたよな? あったり前よ!SOS団団員が浪人したなんていったら団長の恥よっ! 東大でもケンブリッジでもオックスフォードでもMITでも、トップ合格できるくらい叩き込んであげるわ! 頼りにしてるぞ。 久しぶりな気がする、100Wのハルヒの笑顔だった。 ふふん。覚悟しなさい? ところで、朝比奈さんがうつろな目をして何かつぶやいてるぞ。 ワタシハローニンジャナイ ローニンジャナイ ローニンジャナイ 聞かなかったことにしよう それから毎日、団活後はハルヒが家まで押しかけてきて家庭教師をしてくれるようになった。 数日後、古泉から閉鎖空間の発生が嘘のように落ち着いたと聞かされる。 はて、俺は何もしていないぞ。 礼を言うな。気持ち悪い。 土曜はもちろん不思議探索があった。 探索後、ハルヒは我が家で家庭教師をしてくれている。 明日の日曜は丸々朝から家庭教師をしてくれることになった。 自分の勉強は大丈夫なのか あたしの頭脳をもってすればNASAだって余裕よ! NASAは大学じゃないような気がするが 飲み干したコップやらを台所に返しにきたら ハルヒさんに夕飯食べていってくださいって伝えてね 現物支給か? と俺を頭のてっぺんから足元までしげしげと眺めた後、 現物支給で受け取ってもらえるくらい高い子だったら、母さん苦労しないわよ ため息交じりでのたまった。どういう意味ですかお母様。 日曜日、妹 ハルヒタッグの襲撃により起床を余儀なくされ 文字通り あさめし前 の課題を消化していると玄関のチャイムが鳴った 今日は朝から客の多い日だと思いつつ、出された問題と格闘していると パタパタとスリッパの音が近づいてきて、ノックが響いた。 どうぞー 誰の部屋だ うっさい。問題に集中しなさい。それ終わるまで朝ごはんはおあずけよ! おじゃまします 入ってきた人物を見て、ハルヒがぽかんとしている。 俺も驚いた。なぜ佐々木が? 橘さんの強い勧めでね 『佐々木さんも勉強会に参加するべきですっ!』 ってうるさいのよ。 どこで二人の勉強会のことを知ったのやら あたしとしてはあまり気が進まないんだけど、橘さんがしつこくって。 二人の睦言を邪魔しても悪いし、顔を出したけど断られたといえば彼女も納得するでしょう。 じゃ、あたしは帰るわね。 ドアを閉めようとする佐々木をハルヒが呼び止めた ちょっと待って! そうね、確かに一人じゃ面倒見切れないかもしれないわ。 佐々木さんが手伝ってくれるなら私も助かるわ。 おいおいおいおい そう?なら、あたしも協力させてもらっていいのかしら。 えぇ。よろしくお願いするわ。 ちょっと待てハルヒ 佐々木もなぜ女言葉で話してる。 部屋の主は俺だ。当然、話しかけるべきは俺で、話し言葉は男言葉ではないのか というか、ハルヒが断れないように挑発しただろう。睦言なんぞとは無縁だぞ と、いうわけだ、キョン。 東大でもケンブリッジでもオックスフォードでもMITでも、トップ合格できるくらい叩き込んであげよう。 覚悟したまえ。 そこで男言葉か。 …………4月とはいえまだ肌寒い陽気だというのに、汗がつたう。 ここは俺の部屋だというのに、なぜこんなにも居心地が悪いのだろう ふとみると、時計は21 30を回っていた。もうこんな時間か。 今日はこの辺にしないか? 今日はいろいろな意味で疲れた そうね 佐々木と二人頷きあい、ハルヒが宣言した 今日はここまでにしましょう 二人を送るために自転車を引っ張り出した。乗っていくためではなく、荷物運搬用だ。 うぉ?おい、佐々木、やらく重たくないかおまえのカバン?何が入ってるんだ。 女性の持ち物を詮索するものではないよ、キョン。 そうよ。まったくデリカシーに欠けるんだから お前の口から『デリカシー』なんて単語が出るとは驚きだ なんか言った? なんも しかしこの重い荷物をかかえて駅から家まで?誰か駅まで迎えに来るとか? 歩いて帰るつもりだよ。たいした距離でもないしね。 わかった。佐々木は家まで送ってやる。 ハルヒは駅まででいいか? ………… ハルヒ? いいわよ送ってもらわなくても ハルヒは自分の荷物をひったくるように言い 駆け出して行ってしまった 翌日の月曜日、教室に入るとハルヒが机に突っ伏していた 体調でも悪いのか? 別に なぁ、昨日は何でいきなり帰ったりしたんだ? どうでもいいでしょ ほら岡部来たわよ。さっさと前向きなさい ハルヒは一日中ダウナーモード全開でおとなしく、 シャーペンで背中をつつかれることは一度もなかった 放課後、文芸部室にハルヒはいなかった 今日はおやすみだそうですぅ お休みなのにお茶を淹れてくれるってことは、何かあるんですね? ハルヒに聞かれては困るような。 えぇと、私にはないんですけど、古泉君が… えぇ。察しがよくて助かります 昨日から、閉鎖空間の発生頻度が一気に増えました。まるで中学時代の頃のように あなたに原因があるのではありませんか? すまんが心当たりがない もしよろしければ、昨日のことを教えていただけますか? 俺は昨日のことを話してやった。 そうですか・・・佐々木さんが それでは、僕たちにはどうすることもできませんね 耳にたこでしょうが、『あなたに期待する』としか言いようがありません そろそろ帰ったほうがよいでしょう お引止めしてすみませんでした 家にはハルヒと、もしかしたら佐々木もいるかもしれない なんとなく、早く帰らないといけないような、帰りたくないような・・・ 玄関には、女物の靴が二足あった。 おかえりーーキョンくんー お兄さんと呼びなさい 君たち兄妹は相変わらずだね。くくっ 遅かったわね。今までなにやったてのよ お前こそ、なんで急に休みなんだ …気が乗らなかったのよ 古泉の言うとおりだ。確かに、こいつはおかしい はい、これ どかっという擬音がしっくりくるほどの紙の束。まさかこれ全部・・・? 当然でしょ。ほらさっさとやらないと朝になるわよ カリカリカリカリパラパラ カリカリカリカリパラパラ うぅぅぅまだ半分残ってるぞ。ちょっと多すぎないか? 普段からやってればたいしたこと無いわよ。 なぁハルヒ、ここちょっと教えてくれないか? どこ?はぁ?なんでこんな結果になるのよどんな計算してんの? どれどれ? あぁなるほど。キョン、この公式に当てはめる数字はこちらだよ。 なぜかというとだね、、、 佐々木の解説はとても丁寧でわかりやすかった サンキュ。助かったよ …… カリカリカリカリパラパラ ハルヒ、ここな「佐々木さんに聞いて」んだが・・・ ハルヒ? あたし帰る。悪いけど、佐々木さんあとお願い。 私はかまないけど、いいの? 待て。帰るなら送っていくぞ アンタは課題を片付けなさい! ハルヒは何を怒ってるんだ? …今ばかりは、君の鈍感さに感謝するよ…… 教室に入ると、空気がピリピリしていた。 昨日はダウナーオーラだったが、今日のそれは一触即発の地雷そのものだ。 どうしたんだ? あたし今日から行かないから なんだって? 志望校変えたの。 あたしはあたしの勉強するから、キョンにかまってるヒマは無いの。 ちょっと待て。どういうことなんだ? 今言ったでしょ。勉強の邪魔しないで。 放課後、厭な予感を振り払うようにSOS団アジトへ向かった俺は 厭な予感が当たってしまったことを知った。 ハルヒは今日も休みだった。 急いで帰ると、玄関には女物の靴が一足だけ。 佐々木、すまないが待っててくれるか? ハルヒを迎えに行ってくる なぜ? 涼宮さんには涼宮さんの事情があるでしょう? 勉強ならあたしが見てあげられるし、無理に呼ばなくても。 それとも、あたしでは不足? それは違う。何が違うのか、どう違うのか俺にもよくわからないが、違うんだ。 佐々木は俺の言葉を噛締めているようだった。 俯き、 こうなると思っていた。いや、わかっていたといってもいい。 だが、確かめずにはいられなかったんだ。悪かった。 もう来ないから安心したまえ。短い間だったが楽しかった。 顔を上げて これで…これであたしも一歩踏み出せると思う。 ありがとう… 佐々木の別れの言葉は、女言葉だった。 俺は佐々木を見送らなかった。 俺は携帯電話をとりあげ、ハルヒに電話をした 出ない。だが、俺は確信していた。ハルヒは絶対に携帯を手にして睨んでいる。 留守番電話が6度。7度目の正直はノーコールで繋がった。 しつこいわよ!わからないところは佐々木さんに聞けばいいじゃない! あたしはもう行かないんだから! まてハルヒ!頼むから切らないでくれ。 一度しか言わないからな。よく聞けよ。 お前が来てくれないなら、俺は一切勉強なんかしない。学校へも行かない。 明日からニート一直線に突き進む。 あ、あんたバカじゃないの?ナニふざけたこと言ってるのよ あぁ俺はバカだ。自分でもあきれるくらいだ。だからお前が必要なんだ あたしじゃなくても、佐々木さんがいるでしょう… 佐々木は帰った。もう来ないそうだ。 …そう…… そんなわけで、俺の将来はおまえにかかっている 俺たちは駅に近い、ちいさな公園を待ち合わせに定め、電話を切った。 俺が自転車を疾駆して公園に着いたとき、ハルヒはすでに来ていて 小さなブランコを窮屈そうに揺らしていた。 俺が隣に立つと、ハルヒはぽつぽつと語り始めた。 あたしね、卒業するのが怖い。 卒業して、みんな自分の進みたい道へ進んでいくのよね。 あたしは…自分がどんな道に進みたいのかぜんぜんわからない。 SOS団のみんなと離れ離れになって、自分ひとりになって、また中学のときみたいに? そう考えたら、立っていられないくらい怖かった。 だから、キョンと同じ大学に行くことにしたの。 ほかの誰がいなくても、キョンがいればきっと大丈夫。そんな気がしたから… まるでストーカー。迷惑よね… どうして?中学生のときのあたしは平気だったのに どうして今のあたしはこんなに怖いの? キョン…キョンは、あたしのことどうおもってるの? もし…あたしが特別でないなら、もうかまわないで。もうやさしくしないで。 やさしくされたら、キョンに頼ってしまう。 頼ったら、あたしは弱くなる。一人で立っていられないほど、弱くなってる。 それで、俺を無視したりSOS団をほっぽったりしたのか? ごめんなさい… こんなに弱気で素直なハルヒは初めてだ 『俺にとってハルヒは何なんだ?』か いつぞやの、灰色空間での自問が甦る ハルヒは俺にとって特別な存在なのか?今でも正直よくわからん だが、ハルヒが頼ってくれるなら俺はうれしい こんな俺でよければ、いくらでも頼ってくれ。 それって 俺を見上げるハルヒの顔には期待と不安、歓びがにじんでいた 反則的にかわいい顔にうろたえた俺は、地雷を踏んだ。 俺だけじゃない。長門も、古泉も、朝比奈さんも、鶴屋さんもいる。 ……っっっ!ばかぁっ! ハルヒはブランコからはじける様に立ち上がり、俺に詰め寄った アンタのせいよ!あたしは強かった!独りでいることなんてなんでもなかった! あたしが弱くなったのはアンタのせい! 有希でもみくるちゃんでも古泉君でもない、アンタのせいよ! 涙?ハルヒが泣いてる? アンタが優しいせい! あたしのわがままを許してくれるせい! あたしをっ!あたしをこんなに弱くして…すこしは責任取んなさいよ………っ 泣き崩れるハルヒを、俺は抱きしめていた。 泣いているハルヒなんて見たくなかった ハルヒを泣かせたくなかった 俺は懇願するようにハルヒにつぶやいていた 俺はここにいる。お前が望む限り、お前が望んでくれる限り。 キョン… あんたは?あんたは、あたしがあんたの隣にいることを望んでくれる? あたしは あんたの隣にいて いいの? 涙を湛えた目で見上げるのは反則だ。ちくしょう。かわいいじゃねーか。 ああ。いてくれ。 目の届かないところにいられると落ち着かん。 ん…いいわ。いてあげる…… 俺たちはその後しばらく抱き合っていた。どれだけの時間がたったのか ハルヒのぬくもりが名残惜しいが、いつまでこうしてはいられない。 俺たちにはやるべきことがまだまだ数多く残されている。 安らぐのは今ではない。 ハルヒ、今夜はもう遅いから勉強は明日にしよう。家まで送っていくから。 ハルヒは頷き、俺たちは自然と手をつないで歩き始めた。 明日のために。二人で。 fin.
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/924.html
なぜだ? いや、理由は分かるが予想外だ。 なぜだ? あれ?だって古泉も朝比奈さんも、さらに長門も大丈夫だって・・・ あれ? 今、俺の目線の先には、夕日に照らされ、だんだんと背中が小さくなっていくハルヒの姿が映っている。 先ほども述べたように予想外なことがおきた。 いや、ちょっと前の俺ならこれは予想できるレベルなんだ。 ただ、古泉や朝比奈さんや長門にも予想外なことが起きてしまったから俺は今困惑している。 多分、谷口や国木田に聞いても、その3人と同じ言葉をかえしてきたと思う。 なのに、なぜだ? 俺は今、北校の校門前で棒立ちになっている。 ハルヒは今、俺からかなり離れた坂の下で走っている。 えっと、俺が今考えなければいけないことは多分、明日からどうやってハルヒと接していくかということだ。 まあ、ハルヒにはさっき、今までと変わらずに・・・とか言われたんだが・・・ どちらにしろだ。俺がさっきやったことは、失敗に終わったわけで・・・ ああもういい、何があったかさっさと言っておこう。 俺は、俺は先ほど、 ハルヒに告白して振れらた。 次の日の上り坂はいつもよりかなりきつかった。 ちょっと誰かに前からつつかれたら、俺は下まで真っ逆さまで転がり落ちる自信がある。 とりあえず、俺が今考えなくちゃいけないのは、これからハルヒとどのように接していくかだ。 いや、今までと同じように、告白なんてなかったかのように接していくのがやはり一番いいような気はする。 しかしだ、悪いが俺にはそういうことができる自信がない。 現在の俺の心境は、けっこう辛いのだ。 心にポッカリ穴が開いたというのはこういう時に使うんだなというのがよく分かる。 もしかしたら、谷口あたりに聞けばいい答えがもらえるかもしれないな。 あいつなら、こういう経験何度もしてそうだし。 と思ったのだが、谷口よりも、ハルヒのほうが顔をあわすのは当たり前だ。 なんたって、俺の席の後ろの席なんだからな。 何か言うべきなのだろうか?それとも、何も言わずにするべきだろうか? 普段の俺はどうしてた? そうだ、いつもハルヒに話しかけてたじゃないか。 だが残念、今日の俺にはそういうことできそうにない。 と思っていたのだが、 「おはよっ!キョン!」 ハルヒのほうが俺に、挨拶をしてきた。 どことなく、無理して作った笑顔という感じで・・・ こいつも、もしかしたら俺と同じ心境なのかもな・・・ 今までよく一緒に行動していた相手に告白されて、そしてそれを振った相手とどう接していけばいいか・・・ 「ああ、おはよう」 とりあえず、俺も返事を返しておく。 自分でも分かるぐらい、元気のない声でな。 「今日も部活に来なさいよ!」 「ああ」 そういや、昔谷口が言ってただろうか? ハルヒは、告白されても、その場で振ることを知らないと。 っていうことは、俺が最初に告白してその場で振られた第1号というわけだ。 そうとうのショックだぞこれは。 そんなこんなで、俺とハルヒはまともに話さずに、どことなく気まずい一日を送った。 時は放課後。 俺は今、文芸部室のドアの前にいる。 ノックをする。朝比奈さんの「はぁい」という声が聞こえる。ドアを開ける。3人の顔を確認する。 ハルヒは掃除当番なため、まだ教室にいるはずだ。 ところで昼休みに、谷口に昨日のことを話したら、ざまあみろと言いたげな顔になっていた。 少しはいいアドバイスをくれると思った俺がアホだったか。 国木田はいろいろ、励ましてくれたようだが、 もう一度告白できるわけがねーだろうが! 古泉と目が合う。テーブルにはチェス盤。 どうせヒマなので、俺は古泉の向かいの席に座り、朝比奈さんからもらったお茶を受け取り、飲んだ。 「おや?思ったより元気がないですね。今日は笑顔で入ってくると思ったのですが・・・」 目の前の古泉が言う。 そういや、こいつらには話してなかったな。昨日のことを。 いろいろ、アドバイスしてくれたんだ。 言っておいたほうがいいだろう。 「ハルヒには振られたよ」 そう言ったとたん、ポーンを持っている古泉の手の動きが止まった。 いや、古泉だけではない、長門も朝比奈さんもだ。 しかも、3人とも目線は俺の顔。 まあ、こいつらも多分、俺と同じことを思ってるんだろうな。 なぜだ?・・・と。 「本当に、振られたのですか?」 「ああ」 「何かの間違いでは?」 「間違ってたのはお前らのほうだ」 そう言うと、古泉は何も言い返すことがなかった。 しばしの沈黙。 長門からの目線が痛い。 朝比奈さんはどこか、オドオドとしている感じだ。 俺は、先ほど朝比奈さんから受け取ったお茶を口につける。 いつもよりおいしく感じないのは俺の気のせいか? 沈黙を破ったのは古泉だ。 「できるなら、昨日のことを詳しく聞かせていただけませんか?」 まあしかたがない。 一応、昨日の告白は3人に協力してもらってやった行動なんだ。 あまり乗り気ではないが、喋ってやろう。 昨日の放課後、古泉はバイトと偽って先に帰り、朝比奈さんも用事があると偽って先に帰り、長門も(以下略) そんなわけで、部活終了時には俺とハルヒだけになった。 「なんか、あの3人って用事があるときかぶるわよねー」 とかハルヒが言っていたような気がする。 いや、はっきり言って、いまいち曖昧だ。 なんたって、その時の俺は、その後に取る行動のことで頭がいっぱいだったんだからな。 「じゃあ、あたし達も帰りましょうか」 「そうだな」 ちなみに、この時間、他の部活も終了時間であるにもかかわらず、校門にはほとんど人がいなかった。 それもそのはず、機関の協力があったからだ。 あまり、あいつに貸しを作りたくないんだが・・・。 まあいい、感謝しておこう。 時は夕方、日は傾きだし、坂の上から見下ろした町はオレンジ色に照らされていた。 こういう景色を見れる時だけ思う。 北校が、こんな坂の上でよかったなと。 その時のハルヒは、 「明後日の市内探索は遅れずに来なさいよ!」とか言ってたような気がする。 気がするというのは、先ほども言ったように次に取る行動のことを考えていたのと、ハルヒの後ろにいたということの二つの理由がある。 そして俺はさらに、ハルヒから少し距離をとり、 「ハルヒ!」 ハルヒの背中に向かって叫んだ。 ハルヒがこちらを振り向く。 夕日に照らされたそいつの顔は、この世にある言葉じゃ形容できないほど、キレイだったのを覚えている。 「お前と初めてであったとき、変な女だ、できるだけ近づかないほうがいい・・・俺はそう思っていた」 ハルヒは、何言いだすんだ急に?というような顔をしている。そりゃそうだろうな。 「でもな、今気づいたんだ、俺はそのときからハルヒを見ていた。モノクロ世界からカラーの世界になったような・・・」 ああもう、何が言いたいんだろうな俺は? しかも、心を落ち着かせるためにいろいろ台詞考えてきたが、逆に恥ずかしい。 ああ、もういい。 俺は、考えていた台詞を捨てて、ハルヒに言った。 「単刀直入に言わせてもらう」 その時、俺には回りの音なんて聞こえてなかった。 いや、実際なにも音はしてなかったのかもしれないけどな。 で、だ。俺は一度深呼吸して言ったわけよ。 「俺はお前が好きだ。俺と付き合ってくれないか?」・・・ってな。 このときの俺は、別に、OKされると思っていたわけじゃない。 だからといって、振られるとも思っていなかった。 いや、どちらかというと、OKしてもらえるという気持ちのほうが強かった。 そんな時に、 「ごめん」 ハルヒの声が聞こえてきた。 その時のハルヒの顔を俺は見ていない。 頭をさげて告白してしまったからな。 いや、それよりもだ。なんだったんだろうな? 心臓にグサッと何かが刺さったような感覚は。 おい、今なら朝倉出てきてもいいぞ!とか一瞬だけ思ったような気がする。 そういや、その時にカラスがとんでいるのを見たような気がする。 まあ、これがアニメなら、 「アホーアホー」とか言って鳴いてたかもしれないな。 そこまで説明して、俺はもう一度、朝比奈さんのお茶を飲んだ。 やっぱり、さっきよりぬるくなってるな。 にしても、ハルヒはまだやって来ない。 まあ、普通に掃除をやってたら、これぐらいの時間、別に遅くはないのだが、 それが、ハルヒだと別だ。 この時間になっても来ないのは遅い。 あいつも、俺と顔を合わすのが気まずいような気がしてるのかもな。 それから、俺がポーンを動かすと、 「それだけですか?」 古泉が訊ねてきた。 それまでもなにも、振られるまでの仮定を聞きたかったんだろうが。 俺の話は以上だ。 「その後の話を聞きたいのですが・・・そうですね、たとえばなぜ涼宮さんはあなたを振ったとか言ってませんでしたか?」 ん?そうだな・・・ そういや言ってたな・・・ とりあえず、もう一度俺は、昨日のことをを回想しながら、話し出した。 俺はハルヒに振られ、呆然と立ち尽くしていた。 一応、俺は聞いた。 「何で?」 そこから、2拍ほどの空きがあって、 「あたし、キョンよりも好きな人がいるの」 ハルヒはそう言った。 「あんたが、いきなりこんなこと言い出してビックリしたけど、その・・・今の、なかったことにしよ!明日からも普段どおりに」 そんな無茶なことができるかよ・・・ 長門に頼めば、記憶が消せるかもしれないが。 「あっ!そうだ、あたしも用事があるんだった。じゃあ、先に帰るね!」 そう言って、ハルヒは走り出した。 俺は、呆然と立ち尽くしていた。 そこからは、冒頭通りだ。 にしても、あいつの好きな人ってどんな人だろうな? そういや、前に言ってたか? 付き合うなら宇宙人、もしくはそれに準ずる何か・・・ってね。 まだ、あいつはそんな人間だったか。 あいつをはじめてみたときからと、今のあいつはかなり変わってると思ったんだがな。 「おかしい」 これを言ったのは、先ほどから電池を充電中のロボットのように止まっている長門だ。 何がおかしいって? 「涼宮ハルヒの恋愛感情と呼ばれるものはいつもあなたにむいている・・・」 それは、お前にアドバイスしてもらってるときにも聞いた。 だけど、違うんだよ。 あいつはやっぱり、宇宙人とかそんなのがいいんだ。 俺はあいつとはつりあわないほど、普通すぎだ。 「もしかしたら、涼宮さんの言ってることは嘘だったのかもしれませんよ」 古泉が言う。 「何のために、嘘をつくんだ?」 「たとえば・・・」 そして、一瞬古泉は視線を長門のほうにむけ、もう一度俺の顔を見て、 「あなたは、僕と付き合ったほうがあっていると考えたとかね」 何だそれは気色悪い。 それはお前の願望だろうがバカやろう。 「冗談です」 そうだとは思ったさ。 でもまあ、少しは気分がマシになったかな? 「悪いがみんな、ハルヒの前では今までどおり普通にいてくれ。俺から何も聞いてないフリを貫き通してくれ」 「それが一番いいでしょう。涼宮さん自身も、今までどおりがいいと考えてそうですし」 それから数分後、いつものようにドアが勢いよく開き、 「やっほー!」 とか言いながら、ハルヒが登場した。 それからはいつもどおりだ。 俺と古泉はいつもどおりチェスをやって、俺の圧勝。 朝比奈さんは、パソコンに慣れてきたらしく、お茶に関するサイトを見ていた。 ハルヒはいつものようにネットサーフィン。 ただ、長門は時折、こちらを見ていたように思われる。 長門が本を閉じる音が聞こえた 「よーし、じゃあ今日はこれにて解散!明日は市内探索だからね!みんな遅れないように。特にキョン!遅刻したら罰金よ」 遅刻しなくても罰金だけどな。 と思いながら、俺は帰路についた。 ところで、普段なってほしいと思っていて、たまたまなってほしくないと思ったときにかぎってなってしまうことがある。 どういうことだ、なんて別にいい。 いや、ただたんにあれだ。 市内探索の午前の相手がハルヒになってしまっただけだ。 ハルヒと二人だけのペアは久々かもしれないな。 さて、俺はどうすればいいのだろう? まあ、別に考えていない。 ハルヒについていくだけだ。 「………」 「………」 「………」 「………」 ハルヒと二人っきりの状況でこんなに無言がつづくのは久々・・・いや、初めてかもしれないな。 ちなみに、俺たちが今歩いているのは、いろいろな衣料品店がある街だ。 先ほどから、いろんなショーウインドーが俺たちの左右に存在する。 にしても、最近マネキンの顔がなくなってきている。 理由は簡単、金がかかるからだ。 まあ、俺にとっちゃあどうでもいいんだがな。 と思っていると、ハルヒが何か呟き、幽霊のように歩いて、そのままショーウインドーにぶつかった。 おいおい、大丈夫か?ハルヒ。 「ごめん、ちょっとボーっとしてた。さあ、不思議を探しに行くわよ!もしかしたら近くにあたしを操った超能力者がいるかもしれないわ!」 そう言って、ハルヒは俺を置いて歩き出した。 俺は、ハルヒがぶつかったショーウインドーを見た。 そこには、俺が映っていた。 皮肉なことだ。長門の言ってたことは間違っていなかったらしい。 ハルヒは先ほどこう呟いた。 「ジョン?」 午後のメンバーは幸いなことに、ハルヒと一緒になることはなかった。 ハルヒは朝比奈さんを連れてどこかへ行く。 つまり俺は、古泉と長門と一緒だ。 俺と古泉はとくに行きたいところはないので、長門を先頭にして、どこかへ向かっている。 まあ、図書館だろうな。 「ところで、午前中は何をしていたのですか?」 横にいる古泉がそんなことを言い出した。 「ああ、いや、多分だけどな・・・ハルヒが好きな人が分かった」 古泉は笑顔の中にどこか驚いた顔をしている。 長門は先ほどと変わらない歩調で歩いている。聞こえているとは思うんだがな。 「興味がありますね、それは。是非教えてくださいませんか?」 「それは機関の一員だから言ってるのか?それとも、一人の人間として言ってるのか?」 「もちろん、後者ですよ。僕が機関に所属して無くても同じことを言っていたでしょう。まあ、機関には報告するかもしれませんが・・・」 こいつは聞きたいのか聞きたくないのかどっちなんだ・・・ 無駄な言葉が多いとは思っていたが、お前が損するようなことを言ったぞ。 まあいい、 「ハルヒが好きなのは、ジョン・スミスだ」 古泉は少し、普段と比べてだが、ポカーンとした顔になった。 まあ、誰か知らないからあたりまえだ。 長門はジョンが俺だということを知ってるのか、少し歩調が短くなった。 「あなたは、それが誰か知ってるのですか?」 「ああ」 古泉はそれ以上、何か言うことはなかった。 まあ、いざとなったら機関がてっていして調べることぐらい簡単だと考えたのか、それともこれ以上聞いても無駄だと思ったのか。どちらでもないのか。 俺にしてみりゃどれでもいい。 とか考えていると、急に止まった長門とぶつかった。 おいおいどうした長門? と聞こうと思っていたら、長門は古泉のほうこうを向き、 「あなたの服を借りたい」 と、古泉に向かって言った。 長門が、古泉に何か言うなんて珍しい。 ってか、なぜに古泉の服? なぜだろう? よく女の子の一人暮らしであるのが、部屋に男物の服をぶらさげて、同棲している男がいると誰かに思わせるというのがありきたりだが。 それなら、なぜ古泉?俺でもいいだろ。 いや、確かに古泉のほうがオシャレをしているような印象は受けるが・・・ って、長門にかぎってそんなことはないか。 で、長門がそんなことを言ってしまったせいで、俺たちは今、古泉の家にいる。 家には誰もいない。 こいつも一人暮らしなのか、それともただたんに親は外出中なのか。 それも、俺にとっちゃあどれでもいい。 そして、長門は古泉がだしてきた服の中からカジュアルなもの選びだし、それから俺のほうを見る。 「あなたには明日、これを着てもらう」 おいおい、古泉の服なんて着たくねーよ。 「大丈夫、情報操作は得意。あなたの身長は高くする」 そっちかよ! ってか、何で俺にそんなことを・・・ と言おうとしてやめた。 「ジョンになれとでも言うのか?」 「そう」 ・・・・・ 「俺が、ジョンになってどうするんだ?」 「それからはあなた次第」 古泉の顔は、最初ハテナという感じだったのだが、だんだん状況が理解できてきたという感じの表情になる。 ったく、今の話だけで状況が分かるってのに、なぜチェスの先読みができないんだろうね? 「どうする?」 長門が聞いてくる。 そんな、急に言われてもな・・・ よさそうな台詞なら、古泉に頼んだら嫌と言うほど教えてくれるだろうが・・・ でもまあ、 「やってみる」 っていうのもいいかもしれないな。 次の日の午後8時。 俺は長門の家に来た。 そこには、古泉もいる。 まずは、古泉の服に着替えだ。 すこし袖が長いのがどこかシャクに触る。 「準備はいい?」 ちょっと待ってくれ。服装はともかく、心の準備はまだだ。 それから、一度俺は深呼吸し、古泉が書いた台本を心の中で読み。 こんなうまくいくはずがないだろ!と思いながら、 「いいぞ」 長門にそう言った。 とたん、長門はいつもの高速呪文を唱え、俺は一瞬頭がクラッとした。 まあ、あの時間遡行と比べればマシだけどな。 「完了した」 どうやらもう終わったようだ。 確かに、袖の長さはぴったしになっている。 「ありがとう」 おっと!声も変わってるじゃないか! 一応、鏡で顔も確認。 ああ、こりゃ別人・・・だけれどまあ、少しは俺に似てるな。 少しかっこよくなってるような気もする。 「それが、涼宮ハルヒが現在イメージしているジョン・スミス」 そうか。ハルヒはこんなふうにイメージしてるのか。 ところで、実は言うと先ほど、ハルヒの家のポストに、 『今日の午後9時半頃、東中校門まで来てくれ』 という紙を機関の人間が置いておいたようだ。 ちなみにこれを書いたのは俺ではなく、20代前半の機関に所属している人間だ。 どこの誰かは知らんが、一応感謝しておこう。 ところで、あんな手紙でハルヒがちゃんと来てくれるのかどうかが不安だ。 だいたい、ジョン・スミスがハルヒの家を知ってるわけがないだろ! 俺さえ、どこにあるか知らねーよ。 というわけで、俺は東中に行くことにした。 時間は9時ごろ。 まあ、9時半まで後30分もあるんだから、まだ来てないだろう・・・ と思っていたのだが、ハルヒはもう来ていた。 いつぞやの七夕のときと同じように、Tシャツに短パンなラフな格好。 これは間違いなく、意識しているような気がする。 どうせなら、俺も古泉の制服を借りて着たらよかったかもしれん。 ハルヒと目が合った。 「ジョン?」 ハルヒが訊ねてくる。 「ああ、久しぶりだな」 どこからか吹いたか知らんが、風が俺とハルヒの間を駆け抜ける。 「どうして?」 何がだ? 「どうしてまた、あたしに会おうとしたの?」 確か、この質問をされたときになんと答えればいいか先ほどの古泉の紙に書いてあったはずだ。 なんだった? そうだ、確か、 「お前の話を、後輩から聞いたんだよ。黄色いカチューシャをつけた女が高校で暴れてるってな」 「そんなことはどうでもいいのよ!」 どっちだよ・・・ 「何で今頃になってあたしの前に現れたか聞きたいの。1年前でも2年前でもなくて」 やばい、この回答は持ち合わせていないぞ・・・ 「だから、その、お前の話を聞いたのがつい最近で・・・」 「あたしはあんたに会いたかった!」 ハルヒは叫ぶように言う。 それから、いつぞやのようにハルヒは校門によじ登って、中に入っていった。 「あんたも早く来なさいよ」 ったく、ハルヒらしいぜ。 そして、グラウンドの真ん中で俺とハルヒは突っ立った。 「あんたに話したいことがたくさんあるのよ」 空を見上げながらハルヒが言う。 やっぱ、この季節はほとんど星が見えねーな。 「何だよ?」 「あたしね、北校に入って部活作ったの・・・それから・・・」 それから、ハルヒは延々と話し出した。 ほとんどが俺の知ってる話だ。 俺は、それをずっと黙って聞いていた。 悪いが、俺自身が懐かしさに浸ってしまう。 この話を初めて聞いたような素振りを俺はできそうにない。 「それでね、キョンっていうヤツがいて、そいつの雰囲気がどこかジョンと似ていて・・・」 それから何分ぐらいたったかな? 10分はたっていると思う。 やっと、ハルヒは喋り終えた。 そして俺はというと、 「そうか」 これしかいえなかった。 情けない・・・ 「あんたは?何か話したいことがあって呼んだんじゃないの?」 まあな、何も話すことがなくて呼び出したなんて不自然すぎる。 えっと・・・確か・・・ そうだそうだ、古泉に言われたことは。 「お前と前に会ったとき、北校にお前みたいなやついるって言ったこと覚えてるか?」 「ええ、覚えてるわ」 「実はな、俺そいつと付き合ってたんだが、こないだ振られちゃったんだよ」 一瞬、空気が凍りついたような気がしたが、気にせず話を続ける。 「ちょうどジョン・スミスっていう役名が出てる映画の後振られたんで、あの七夕のことを思い出してな」 話を続ける。 「それでだな、ある程度のことは後輩から聞いてたから、それでお前に会おうと」 しばし沈黙。 「あたしに何を言いたいの?」 いつもより小さい声でハルヒが訊ねる。 「いや、だからそいつと似ているお前なら、何かよりを戻すいい案が思いつくんじゃないかと思ってな」 「分かるわけないじゃない!」 だよな・・・普通に考えてそうだよな。 くそ、何を言ってるんだ俺は、ってか古泉は、バカか。 「バカ!」 ハルヒに直接言われた。 「バカバカバカ」 そう連呼するな。 と思っていたら、ハルヒが俺の胸にもたれかかった。 「バカ」 いつまで言ってるんだよ・・・ と思ったその時、何か冷たい感触が俺の腕に感じた。 泣いてるのか?こいつ。 ここからはハルヒの頭しか見えないから、どっちなのかは分からん。 ただ、シャンプーのにおいがするのだけは分かった。 おいおい、後で外出するって分かってたのに、風呂入ってから来たのかよ。 とか思っていると、ハルヒがなにか呟いた。 「あたしじゃダメなの?」 俺にはそう聞こえた。 そして、ハルヒはゆっくりと顔をあげ、 「あたしじゃダメなの?」 もう一度言った。 ハルヒの顔が近い。 泣いているのかどうか、 はっきり言って暗いからよく分からん。 にしてもなんだろう?このデジャヴは。 そうだ。あの閉鎖空間のときだ。 あの時も、こんな暗闇で運動場に二人きりだったか。 「あたしはずっとあんたを探してた。あの七夕の後、北校に潜入してまであんたを探した、それぐらいあたしはジョンのことが好きなの!」 ジョンは・・・告白されたんだな・・・ ったく、幸せ者だ。うらやましいぜ。 俺は、ハルヒの頬に手をやった。 やっぱり泣いているようだ。 「ずっと、ジョンのことが忘れられずにいた」 ゆっくりとハルヒの顔が近づいてくる。 俺も一瞬目を閉じ、 それから、ハルヒの行動を拒否した。 ハルヒの肩を押す。 「俺とお前は付き合ってはいけないんだ」 「何で?もしかして年齢のこと気にしてるの?そんなの離れていたとしても5歳ぐらいでしょ」 「違うんだよ」 ここから言う言葉は古泉に渡された台本に載ってない言葉だ。 今分かったが、あいつはあてにならん。 俺が今そう決めた。 だが、俺が次にやる行動が正しいのかどうかも分からん。 「俺はこの世に存在しないんだよ!」 ハルヒは近くにいるというのに、俺は50メートル先でも聞こえそうな声で叫んだ。 「どういう意味?」 ハルヒの疑問形。 「さっき俺が言ったことは全部嘘だ」 「何で嘘なんか言うのよ?」 「いいから、俺の話を聞いてくれ」 さて、どうする俺。 どうしようか・・・ジョン=キョンと言うのか。 いや、ダメだ。それじゃあダメなんだ。 「実はな、あの七夕の日の後、交通事故で俺、死んだんだよ」 ハルヒの表情が変わっていく。 「まあ、今の俺は幽霊ってわけだ。いや、でも幽霊っていうのは形がないんでな。この体の人物に乗り移ったんだよ。俺に似てるけど、背が高くてちょっとかっこいいしな」 一呼吸。 「だから、俺はお前と付き合うことができない」 そういいながら、俺は一歩後ろに下がった。 「だから、俺の外見と、俺に対する気もちは忘れてくれ」 もう一歩後ろに下がる俺。ハルヒはずっと俺の顔を凝視している。 「そろそろお別れの時間だ」 それっぽく言ってみた。 今から俺が行くところは天国でも地獄でもなく、長門の家だけどな。 俺はハルヒから離れ、校門に向かって走りだした。 と、俺が20メートル走ったところで、 「最後に一つだけ聞かせて!」 ハルヒは叫ぶように言った。 「あんた名前なんて言うの?」 俺はハルヒのほうに振り向いた。 別に、人差し指を唇に当てて、「禁則事項です」なんて言うつもりはこれっぽっちもない。 「ジョン・スミスだ!」 まあ、意味は似たようなもんかもしれねーけどな。 だけど、心に響くものは大きく違うぜ。 「この名前だけは忘れないでくれよ!また、別の人間に乗り移ってお前の前に現れるかもしれねーからさ!」 「忘れないから!死んでも忘れないから!」 「今度お前にジョン・スミスとしてお前にあったときは、宇宙人や未来人や超能力者を紹介してやるよ!」 「楽しみにしてるわ!」 「姿形が違っても、お前のことを見てるからな!」 それから俺は走り出した。 これで、よかったんだろうか? 空を見上げ、一つだけ光っている星にむかって、 「世界を大いに盛り上げるためのジョン・スミスをよろしく!」 そう言った。 次の日の朝、扉を開けるとハルヒはいつものように空を見上げていた。 どこか悲しげなのは気のせいではないだろう。 「よっ!」 軽い挨拶をしておく。 鞄を置き、ハルヒのほうを見る。ハルヒもこちらをむく。 「あたしね、恋愛感情っていうのは精神病の一種だと思ってるの」 急にハルヒがそんなことを言い出した。前にもそんなこと言ってたな。 まあ、そう思いたきゃ思えばいいじゃないか。 宇宙人や未来人がいると思われるよりよっぽどかマシだろうしな。 「でもね、その病を治すには一つ方法があると思ってる」 おっ!そんなところまで考えていたのか。 聞いといてやろう。 どうせ、恋愛感情なんて忘れるとかだろ。 「それはね、恋愛感情をむけている相手と結ばれることよ」 ・・・・・・ 予想外に反してマジメな意見が返ってきたから、俺はしょうしょう驚きを隠せないでいる。 さて、ここで俺はどうするべきだろうか? と、考えてると、ハルヒが言葉を続けた。 「だから、あんたの病を治せるのはあたししかいないわけ」 おいおい、その話はなかったことにするんじゃなかったのか? 俺もそのつもりで接していこうと思ったのだが・・・ ってか、それはどういう意味だ? やっぱり、告白にたいしてOKと言ってると思っていいのか? 「バカ。そんな簡単に了承するわけがないでしょ。そうね、もっとあたしにふさわしい男になるといいわ。そうね、宇宙人や未来人を見つけてきたらいいわよ」 もう見つけてるんだがな。 ん?それより今の言葉の意味ってあきらめるなってことか? 「まさかあたしをあきらめたつもりじゃないでしょうね?別にあたしはそれでもいいけどね。勘違いしないでよ、別にあんたが好きなわけじゃないんだから」 それからハルヒは空を見上げた。 「ねえキョン」 「何だ?」 「あんたが幽霊に乗り移られたらすぐに言いなさいよ」 俺はハルヒと同じ方向を見る。 青いな。どこまでも続く青さがそこに広がっている。 「その時は宇宙人や未来人や超能力者を紹介してやる」
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/122.html
キンッ シュッシュ ジジジ…… 「フゥー…街乗りバイクねぇ……ふふっ…とんでもねぇじゃじゃ馬じゃねぇか」 夜の峠。一人の男が煙草をふかし呟いた。 「バリオスか……なかなかのバイクだな」 その男の名は【禁則事項】皆からは キョン の愛称で呼ばれている。普段は締まりのない平凡な学生を演じているが、夜になると毎晩峠に通い詰め、その腕を磨いている。 「それにしても今日はアイツ遅いな……」 この事を学校内で知っているのは彼が所属する団の団長だけだ。 ……フォォォォオオン……ォォン フォァアァォ!! 「おっ来たか」 段々と近付いてくるエキゾーストノート。 ファァアアン!!ァァン!! 「遅いな」 「ちょっとヤボ用があってね」 「お前のFZR、また何処か弄ったのか?」 「わかる?スプロケ変えてみたのよ」 「加速型にしたのか。なかなかいい選択だな」 「でっしょー?って、あんたなんかバイク自体変わってるじゃない!!……ふーん、バリオスねぇ。NSRどうしたの?」 「ちょっとな。スープラと戦った時に焼き付いちまってさ」 「最初はオーバーホールして直そうかと思ったんだがバイク屋のオヤジが「新しいバイク買った方が安上がりだぞ」っていうもんだからさ。俺もそろそろ買い替え時かな~とか思ってたし」 「それでコレにしたんだ?」団長。涼宮ハルヒはまじまじとキョンのバイクを見ている。 「ああ、他にもCBRとかも在ったんだがな。たまには250CCもいいかと思ってさ」 「レプリカ至上主義のあんたにしては珍しいじゃない」 「で、どうなのよ?やっぱパワーないから走りづらいとかない?」 「確かに上の伸びは400の方が良いだろうが発進加速は負けてないぜ」 ま、軽いのもあるしな。とキョンは続ける。 「じゃぁやってみる?」 「負けた方が缶コーヒー奢りでどうだ?」 「のった!!」 言うが早いかハルヒは愛機FZRに跨る。そのカウルには SOS団☆団長 のステッカー。 「やれやれ。本当勝負ごとが好きな奴だ」 キョンもバリオスに跨りそう呟く。 ハルヒ先行でスタート。軽い身のこなしで次々とコーナーをクリアしていく。キョンも負けず劣らずのコーナリングを見せている。 「流石だなハルヒ。だがまだまだ甘いぜ」 まずかに膨らんだFZRの内側にバリオスが入り込む 「くっ!!やるわね……」 素早くバンクさせ、ステップから火花を散らしながらコーナーを曲がっていく鉄馬達。 「侮れないわね。キョン。」 ヘアピンが終わると長い直線が伸びている。 「直線勝負ならFZRに分があるわよ!!」 猛烈な加速でキョンをパスし、ハルヒが前に出る。 「さすがに直線じゃぁちょっと頼りないか……もうすぐゴールのスタンドになる。それまでに何とかしないとな……」 その時2台のバイクの間に割って入る黒いZXR。 「「なんだ!!」」 突然の乱入者に両者共驚きを隠せない。シールドから覗くその顔には見覚えがあった。 「フフッ僕にだまって涼宮さんと夜の営みとは……お仕置が必要ですね」 「こ、古泉!!!?」 「いきますよキョンたん!!!オナニー小説でホッシューレ!!!!!」 「アッー!!!ホッシューレだけは!!ホッシューレだけは!!!」 保守
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/852.html
今俺はハルヒを膝枕している。なんでかって?そりゃあ子供の我侭を 聞けないようじゃ大人とはいえないだろう?まあ俺はまだ自分を大人だとは 思っていないし、周りもそうは思っていないだろう。ただ、3歳児から見れば 俺だって十分すぎるほど大人なのさ。ああ、説明が足りなすぎるか。つまり こういうことだ。 ハルヒは3歳児になっていた。 ことの発端は10時間程前のことだ。休日の朝8時と言えば大半の人間が 「いつ起きてもいい」という人生でもトップクラスであろう幸せを感じつつ睡眠 という行為に励んでいると思う。俺ももちろんそうである。しかし、俺の幸せは 一人の女によってアインシュタインが四則演算を解くことよりもあっさりと瓦解 された。携帯電話がけたたましい音をあげる。携帯よ、今は朝なんだ。頼むから もう少し静かにしてくれ、という俺の願いは不幸にも全く叶えられることはなく、 俺は諦めて携帯に手を伸ばした。溜息をつきながら液晶を見ると思ってたとお りの名前がそこに映し出されていた。言うまでもなくハルヒである。 「キョン!出るのが遅いわよ!」 さすがハルヒだ。休日の朝だというのにこのテンションである。しかも怒っている。 「ああ、すまない。寝てたんだ」 謝る必要性は全くないが、一応謝っておく。こうした方がこいつも大人しくなるだろう。 俺も大人になったもんだ、などと考えているとハルヒが言葉を続けていた。 「まあいいわ、それよりキョン。今日寒いと思わない?」 比較的早く怒りがおさまった--もともと怒ってなどいなかったのかもしれないが--ハルヒが そんなことを言う。 「ああ、そりゃもう12月だからな」 寒くもなるってもんさ。と言ってからもう12月なのかと考える。あと4ヶ月で朝比奈さんが 卒業か・・・あの天使に会えなくなると思うと心を通り越して心臓が直接張り裂けそうだ。 ていうか先月の初めもこんなこと考えてたよな。いや、先々月も考えていた気がする。 「・・・ということで、皆でコタツを買うことになったから・・って聞いてんの!キョン!」 ああ、まずい聞いてなかった。また怒っていらっしゃる。ここは適当に流しておいた方がいいだろう。 「いや、ちゃんと聞いてたぞ。皆でコタツを買いに行くんだろ?で?それをどこに置くんだ?」 「だから有希の家に持ってって皆でぬくぬくするって言ったじゃない。やっぱり聞いてなかったようね。 団員としての自覚が足りないわよ。キョン」 いや、もう十分すぎるくらい自覚はあるわけなんだが・・・。まあハルヒから見ればまだまだ足りないの だろう。そんなことより、今回のハルヒの提案が大して迷惑なものではなかったことに俺は安心して いた。皆でコタツを買って長門の家で暖まろうというだけである。素敵とも思える提案だ。 「すまん。これから精進する。で?何時集合だ?」 「駅前に9時よ。即行で準備しなさい。じゃあね」 と言いこちらの返事も待たずにハルヒは電話を切った。相変わらずである。結局行くんだけどな。 俺に選択肢なんて始めからないのだ。 集合場所に着くと俺以外の面々は当然のように揃っていた。やれやれ、休日だというのに ご苦労なこった。 「おはようございます。キョン君」 おはようございます。朝比奈さん。相変わらず反則的に可愛らしいですね。あなたに会えた だけでも今日ここに来た意味があるというものです。などと俺が至福を味わっていると、 「遅いわよキョン!罰として買ったコタツはあんたが運びなさい!」 俺に指をさしながらそう言うと、ハルヒは近くの電気店の方にスタスタと歩き始めた。ハルヒよ、 お前は遅れなくてもどうせ俺に運ばせる気だったろうが。 「僕も手伝いますよ」 と、いつのまにか隣に来ていた古泉が相変わらずのさわやかな笑顔で話しかけてくる。 「ああ、すまんがそうしてもらえると助かる」 いえいえ、と言う古泉に、 「そういや最近閉鎖空間はどうなってんだ?」 ふと思ったことを聞いてみる。 「閉鎖空間ですか?全くと言っていいほど現れていませんよ。一番近いので3ヶ月前です。 これは今までの最長記録です」 なるほど、あいつもかなり落ち着いてきたんだな。3ヶ月前は何で発生したんだ?何かあった のか? 「いえ、時間帯的に単なる悪夢でしょう。ふふ・・・心配ですか?涼宮さんが」 ニヤニヤしながらこちらを見る。うるせえな、ただ気になっただけだ。そんなくだらない嘘をついた 小学生を見るような目でこっちを見るな。 「やれやれ、あなたもそろそろ素直になった方がいいですよ?」 うるせえよ。そんなことより、 「長門」 俺に呼ばれて長門はいつもの無表情をこちらに向けた。 「お前コタツなんか部屋にあったら邪魔なんじゃねえのか?なんなら俺が持って帰ろうか?」 俺も部屋にコタツなんてあったら邪魔で仕方ないが、長門にだけ迷惑をかけるわけにも いかんだろう。 「・・・大丈夫」 そこで一拍置き、 「どうにでもなる」 と、長門は続けた。そうか、まあ長門のことだ。使わないときはコタツをコンパクトにするだとか、 そういう反則的なことも出来るのだろう。だったら、長門のマンションに置いておいた方がよさそうだ。 「そうか、悪いな」 「・・・いい」 そんなことを話しているうちに俺たちは電気店に着いていた。ハルヒにいたってはもう中に入って いるようで、入り口からでは姿が見えない。 「どうする?探すか?」 「いえ、その必要はないでしょう。なぜなら・・・」 「みんなー!集合よ!いいのを見つけたわ!」 見ればハルヒが電気家具売り場の方からこちらを呼んでいる。 「なるほどね」 「そういうことです」 結果的に言えば、ハルヒの選んだそれは当たりだった。値段の割にはデザインも可愛らしいし --朝比奈さんも満足気だったしな--、大きさも5人が入っても問題のなさそうなものだ った。もともとハルヒは物を選ぶセンスなどは抜群なのだ。 問題はこれを俺と古泉だけでどう運ぶのかということだったが、これは長門の力によって あっさりと解決された。長門が買ったコタツに目を向けながらなにやらぼそぼそと言うと コタツの重みが一切なくなったのである。このような光景--というか、現象というか--を 見ると、俺の周りは非現実的なもんで溢れかえっているんだなと改めて実感する。いや、 もちろんそれが嫌ってわけじゃない。むしろ楽しいと思っているほどだ。 さて、こうなってしまうと朝比奈さんでも片手で運べてしまうのだが、ハルヒの手前まさかそんな ことをするわけにもいかず、俺と古泉はわざわざ「重いものを持っています」といった表情で コタツを運ぶことになった。途中何度か、 「大丈夫?あたしも手伝ってあげようか?」 などと普段見せない優しさを見せんでもいい時に見せるハルヒの提案を、俺と古泉が笑顔で かわすという行為を繰り返しているうちに俺たちは長門のマンションに到着した。 「さあキョン!組み立てなさい!」 「へいへい」 と溜息をつきながら俺はダンボールを開け始めた。こんな扱いを受けているというのに なんでだろうね?全くいらつかないのだ。これが慣れというやつだろうか。だとしたら、 この習性は治したほうがいいのではないだろうか。などと思案している間に古泉の 手伝いもあってか、あっさりとコタツは完成した。まあ、元々組み立てるのが難しいもの でもないしな。 「よし!じゃあ有希!あれ出して」 「わかった」 と、言いながら長門は台所に向かってスタスタと歩いていった。そして数十秒で戻ってくる。 両手には大量のみかんとスナックが抱えられていた。 「おいおい、随分準備がいいな」 「まあね皆には昨日のうちに言っておいたから」 だったら俺にも言っといてくれ。その方が心の準備が出来るってもんだ。 「だって、あんたどうせ暇でしょ?だったら当日に言えば済む話じゃない」 クソ、反論できないのが歯がゆい。ハルヒの言うとおり俺の休日にSOS団がらみ以外 の予定が入ることはほとんどないからだ。谷口や国木田も、 「キョンは休日も涼宮さんと一緒なんでしょ?」 と、誤解を招きそうなことを言ってきたりで、休日に俺を誘うということもない。つまりだ、 俺の休日に予定がないのはハルヒのせいでもあるわけだ。そんなことを知ってか知らずか、 ハルヒはもぞもぞとコタツに体を押し込めながら長門がテーブルに置いたみかんに手を伸ば している。見れば俺以外はもうコタツに入っている。朝比奈さんに至っては、 「暖かいです~」 と、幸せに浸っている。となるとだ、まあここはハルヒの隣に座るのが自然だろう。いや、別に 他意はないぜ?一番近いからそこに座るだけだ。それにハルヒの隣ということを考えなければ ベストポジションだ。なんたって真正面を見れば女神が居るからな。ちなみに長門は俺から見て 右、古泉は左の位置に居る。 「ちょっと!なんであんたがあたしの隣に座るのよ!」 近かったからだ。わざわざ遠回りするのも面倒だろ。 「まあいいわ・・・。結構大きいしね、このコタツ。それにしても暖かいわね」 そうだな。たまにはこういうのもいいよな。 「幸せです~」 と朝比奈さん。本当に幸せそうだ。あなたを見てるとこっちも幸せになってきますよ。 「そうですね。たまにはこんな日があってもいいでしょう」 古泉は俺と全く同じことを考えていたようだ。やめてくれ、微妙に気持ち悪い。 「・・・ぬくぬく」 見れば長門も上機嫌そうである。もうみかんの皮が6枚ほど長門の前に転がっている。 相変わらず素晴らしい食欲だ。 「むう・・・。でもこのまま何もしないのもつまんないわね」 そうか?俺は今日はこのままぼんやりしていたいがね。 「そんなじじくさいこと言ってると早く老けちゃうわよ?」 縁起でもないことを言うな。それにお前も子供じゃないんだから、落ち着けよ。 「ふん。童心をいつまでも持つことは大事なのよ。ね?古泉君」 「ええ、僕もそう思います」 お前は黙っていろ。このイエスマンめ。 「ああ、子供といえば。あんた子供に人気あるわよね?」 ハルヒはあっさりと話を変えた。割とどうでも良かったらしい。しかし、そうは思わんがね。 人気があるといっても。すぐに思い浮かぶのは妹とミヨキチくらいなもんだ。 「ええ~、でもあたしもキョン君は子供に好かれるイメージがありますよ?」 と、朝比奈さんが言う。朝比奈さんがそう言うならそうなのかもしれんと、俺のy=xのグラフ よりも単純にできている脳は勝手に結論を出そうとしていた。 「ね?やっぱりそうよね。じゃあさ、キョン。あんたも子供が好きなの?」 なぜそうなる。 「だってやっぱり好きなものには好かれるじゃない」 「そういうもんか?」 「そういうもんよ」 「まあ、少なくとも嫌いではないな。妹も、特に3歳ぐらいのころはホントに可愛かったな」 言いながら、その時の情景を思い出す。 「ふふ」 「どうかしましたか?朝比奈さん」 「いえ・・・。きっといいお兄さんだったんだろうなあと思いまして。目に浮かびます」 もちろん今もいいお兄さんですけどね。と、朝比奈さんは付け加えた。 「あたしもそれに関しては同感ね」 おお、ハルヒに褒められるとは。これ以上光栄なことはないね。 「もうすこし感情を込めなさい。感情を」 「ばれたか」 「当たり前でしょ?ふわぁ~。なんか喋ってたら眠くなっちゃった」 「あたしもです~」 と、朝比奈さんもハルヒのあくびがうつったのか小さなあくびをした。 「眠っちゃいましょう。もう二人寝てるし、あたし達だけ起きてても仕方ないわ」 言われてからそういえば長門と古泉が全く話に参加していなかったことに気づいた -いや長門に関してはいつものことだし、古泉も一度適当な相槌を打っていた気はするが-、 半立ちになりながらコタツの左右を覗き込むと本当に二人とも寝ているようだ。二人の 寝顔を見ながら、俺はなんだか安心してしまった。この二人はSOS団のことを信頼しきっている のだ。だからこんなにぐっすり眠れるのだろう。そう思うと嬉しいというか喜ばしいというか、そんな 気分になる。 「あんたは寝ないの?」 「いや、俺はいいや」 大体二人で横になったらどっちみち俺は寝れねえよ。などという俺の思考はハルヒには届かないだろう。 「ふ~ん、じゃあみくるちゃんも寝ちゃったみたいだし。あたしも寝るわね」 正面を見ると、女神の姿が見当たらない。おそらくハルヒの言うとおり、お眠りになってしまわれたの だろう。 「お菓子、一人で全部食べちゃダメよ?」 食べねえよ。ていうか無理だ。俺はお前や長門のような何回拡張パックをダウンロードしたかわからない ような胃は持ち合わせちゃいない。 「じゃあ、おやすみ」 ハルヒはそう言いながら寝転がる。 「ああ、おやすみ」 俺はその後、何十分かはわからないが。結構長い時間ぼんやりとしていた。ただ、俺も眠かったのだろう。 頭をコタツのテーブルに突っ伏すとそのまま眠りについてしまった。今日は本当にいい日だ。おそらく面倒事も 起こらない。さっきも言ったが、こんな日があってもいい。 だが、俺のそんな思いは目覚めとともにあっさりと否定された。 「・・・起きて」 静かな、しかしどこか強制力のある声が耳元からする。 「・・・起きて」 二度目のその言葉で俺は目を覚ました。目の前に見慣れた無表情がある。長門だ。 「ああ、長門か今何時だ」 「13時」 そうか、まだ1時間しか経ってないじゃないか。だったらもう少し寝させて・・・、 「キョン!起きたのね!キョンもトランプしましょ!」 いつもの11倍ぐらい目を輝かせながらハルヒはコタツの向こう側からこちらを見ている。 しかもなぜか朝比奈さんの背中に抱きつきながら-いわゆる強制おんぶ状態だ-だ。 「おいおいなんだ?とんでもないテンションだな」 「聞いて」 長門が話しかけてくる。長門がこんなにも自ら口を開くことははっきり言って珍しいことだった。 だから、俺はなんとなく嫌な予感はしていたんだ。 「なんだ、どんな厄介ごとだ?」 「・・・おそらく涼宮ハルヒの精神は14年ほど退行している」 見ればハルヒがターゲットを朝比奈さんから、長門に変えている。長門はハルヒに背中から抱きつかれながら 無表情でそんなことを言っている。なんてシュールな絵なんだ。そしていつもながらとんでもない話だ。 「あ~、精神だけか?」 「・・・そう」 そりゃあ厄介だ。 「そう。厄介です」 と、古泉がそれに反応した。 「見た目も退行してくれていれば、もう少しやりやすかったのですが」 「ふふ・・・さっき古泉さん、涼宮さんに抱きつかれて慌ててましたもんね?」 朝比奈さんがそんなことを言う。 「いえいえ、そんなに睨まないでください。不可抗力ですよ」 古泉はパタパタと両手を振る。別に睨んでなどいない、まあ不可抗力なんだしな。 仕方のないことだ。若干もやもやするがそれは気のせいだ。 「長門よ、そのこうなった・・・」 原因は?と尋ねようとして俺はやめた。なんとなく推測出来るし、多分俺のせいだろう。 だったらそんなことをわざわざ聞く必要はない。 「いや、これは何時ごろ治るんだ?」 ハルヒは長門に抱きつきながらびょんびょん跳ねているため、長門の顔は無表情のままがくがく 揺れている。ハルヒ、やめなさい。長門の頭が取れかねん。 「確定は不可能。ただ長い時間はかからない」 そうなのか? 「・・・そんな気がする」 なるほど、それが長門の意見か。今は長門が意見を言うということもそこまで珍しいということでもない。 「僕もそう思いますよ。これは一時的なものでしょう。まあ、多少厄介ですが。みんなで遊んであげれば、 自然と元に戻るはずです」 「ああ、俺もそんな気がする」 「ただ、トリガーというかキーというか。そういうものがある可能性は否めませんが、それもおそらくは簡単に 見つかるでしょう」 言いながら、こちらを見る。期待していますよと言わんばかりだ。やれやれ、また俺が握っているのか? そのキーとやらを。 「じゃあ、今日は皆で涼宮さんと遊びましょう!ね、涼宮さん」 「うん!」 と、ハルヒが朝比奈さんの問いかけに対して明るく可愛く答えている。今のハルヒに母性本能がくすぐら れているのだろうか。朝比奈さんもまんざらでもなさそうだ。 「じゃあ、キョン!トランプ!」 太陽の笑顔をこちらに向けてトランプを手渡してくるハルヒに対して俺は、 「へいへい」 と、命令に従いトランプをシャカシャカと切り始めた。結局ハルヒの精神が幼児化したところで、俺の ポジションが変わることはないのだ。 「あ!でもトイレ行きたい。キョン!ハルヒが帰ってくるまでに配っててね!」 そう言いながらトイレの方に歩いていった。どうやら記憶はあるらしい。そりゃそうか、俺の名前も覚えてる しな。あとこの頃のハルヒは自分のことを名前で呼んでたんだな、可愛らしいこった。 「みなさん、提案があります」 と、古泉がなにやら喋りだした。 「これから多分数多くのゲームをすることになると思うのですが・・・」 そりゃそうだ、なんたって身体はそのままだからな。体力はものすごいだろう。 「ええ、ですが。そのゲームにおいてですね、涼宮さんを最下位にさせるということは出来るだけ 避けたいんです」 ああ、なるほどね。俺は古泉の言いたいことを瞬時に理解した。ほかの二人もそうだろう。 「確かにな、そんなことになったらもっと厄介なことになりそうだ」 「ええ、ただ彼女は勘がいいですからね。手加減しているのを聡られないようにしなければ いけません」 そうだな、しかしまあ骨の折れる作業だ。 「仕方ありません。それに、こういうのも楽しいでしょう。僕は嫌いじゃないですよ」 確かに退屈はしなそうだな。その時、とたとたと足音が聞こえた。どうやらハルヒが帰ってきた ようだ。 「あ!配っててくれたんだ!ありがとうキョン!」 と、俺にいつもより数割増しの笑顔を向ける。おいおい、勘弁してくれ。素直なハルヒなんて 俺の想像の範囲内には居ないんだ。俺が混乱しつつある頭を何とか正常に戻そうとしている と、あろうことかハルヒはその混乱を増幅させる行為をとりやがった。すなわち、俺の脚の間に ドスンと座ったのである。そりゃあもう堂々と、それが当たり前のように。 「おい、何をしている」 「キョン!イス代わりになって~」 ああ、うんそういうことか。でもな、朝比奈さんでもいいじゃないか。 「う~んそれでもいいんだけどさ、みくるちゃんちっちゃいんだもん」 と、言いながらこちらを見上げる。顔が近いよ、顔が。それと髪からものすごくいい匂いがする。 これはまずい、どう考えてもまずい。 「いや、でもな・・・その・・人をイス代わりにするのはあまりいいことじゃないぞ?」 俺は何とか平静を保ちながら-これは奇跡的なことだ、自分の精神力に感服するね-、 ハルヒに言い聞かす。だが、 「うう・・・キョンはいや?」 と、ハルヒに潤んだ瞳で見上げられれば「嫌だ」などと言えるわけがない。 「ええとだな・・・その・・・」 「わかった・・・。じゃあ古泉くんのところに・」 「ハルヒ!」 「ふぇ?」 「嫌じゃないぞ、全然嫌じゃない。だからここに居なさい」 もちろんこれは古泉の為だ。さっきも大分困ってたみたいだからな、そうだお前の為なんだ。 だから古泉よ、そんなニヤニヤ顔でこっちを見るな。朝比奈さんもそんなに優しい目でこちら を見ないでください。 「え・・・?うん!ありがとう、キョン!」 そう言いながら思いっきり抱きついてくる。いや、だからそういうのはまずいと言ってるだろうに。 「あ~、ハルヒよ。前を向いた方がいいぞ。トランプがしづらいからな」 「あ、うん。ごめんね」 と、素直に前を向く。かくしてようやくトランプまでこぎつけた。これからおそらく何時間も遊ぶのだ。 それが終わる頃には俺はもしかしたら、死ぬんじゃないだろうか?そんなことを俺は本気で考えて いた。 結論から言うと俺は何とか死なずにすんだ。勝因はなんといっても、 「キョンの身体かたーい」 と、言いながら朝比奈さんの方にハルヒが途中で移動してくれたことだ。それでも移動するまでは トランプのババ抜きをしている時にハルヒが最初にあがると嬉しさのあまり俺に抱きついたり、先ほども 述べたのだがハルヒからやたらいい匂いがしたりと、俺のHPはもはや限界まですり減らされていた。 途中で朝比奈さんの方に行ってくれなかったら、間違いなく命はなかっただろう。その時に若干喪失感 みたいなものを味わったが、まあそれも気のせいに違いない。 それと、古泉の言っていた懸案事項も全く問題にならなかった。なぜって?そりゃあハルヒが 何をやらしても強かったからさ。元々3歳の割には語彙が多いなとかは思っていたが、頭の 回転の良さも昔からだったらしい。結局手加減どころか本気をだしても俺達がハルヒにかなうこと はなく、終始1位と2位をハルヒと長門が取り合うという形でゲームは行われていった。ただ、途中 人生ゲームをする時は朝比奈さんに漢字や意味を聞きながらうんうんうなづいてプレイしていたから 4位になっちまったけどな。ちなみに最下位は古泉だ。もちろん、手加減などしていなかったが。 そうして楽しかった時間はあっという間に過ぎ、ハルヒの、 「ねむ~い」 の一言で4時間にも及んだゲーム大会は終わりを告げ、俺以外の4人はあっさりと眠りについて しまった。ちなみにハルヒはといえばコタツには入らず、俺に膝枕をさせながら毛布をかけて眠りこけ ている。 ここでようやく冒頭に戻る。俺はなんとなくハルヒの頭をなでていた。なあハルヒよ?楽しかったか? 今度起きたら元に戻っていてくれよ?子供のお前も好きだけど、俺はやっぱり・・・。俺がありえない 程恥ずかしいことを考えているとパチッとハルヒが目を開けた。ばっちり俺と目が合う。 「ハ・・・ハルヒ・・・?」 「ねえキョン・・・」 「うん?」 「キョンはハルヒのこと好き?」 え~とだな、このハルヒは子供の方のハルヒだよな?ああ、間違いないだろう。自分のこと「ハルヒ」 って言ってるしな。じゃあ、大丈夫だ。嘘をつく必要もない。ハルヒの頭をなでつけながら俺は出来る だけ優しい声で言った。 「ああ・・・好きだよ」 「ホント?」 「本当だ」 「元に戻っても?」 おいおい、こいつわかってやってんのか?いや、まあ大丈夫だろう。ハルヒはこれを夢と処理するはずだ。 「ああ・・・元に戻ってもだ」 「ふふ、ありがとうキョン」 と、ハルヒは更に言葉を続けた。 「あたしも・・・好きよ」 !!驚いてハルヒの方を見るが、ハルヒはもう眠ってしまっていた。いや、さすがにこの早さで寝るのは ガリレオ・ガリレイが天動説を唱えるくらいありえない。俺はおそるおそるハルヒの頬をつねってみるが、 何の反応もない。本当に眠ってしまったようだ。 「ふう」 俺はしばらく考えてから寝てしまうことにした。考え事なんてもともと俺の性分じゃないんだ。そんなもの は古泉あたりにまかせておけばいい。俺はそう決めてかかると、眠りの世界に身を委ねた。 起きると、周りにはもう朝比奈さんと古泉の姿はなかった。右の方を見ると長門がみかんをパクついて いる。お前、それ何個目だよ。 「長門、みんなは?」 「もう帰った。あなたたちもそろそろ帰った方がいい」 そうか、言われて時計を見れば確かにもう結構な時間である。これは帰った方がよさそうだ。 「ハルヒ、帰るぞ」 「ん・・・ううん」 そういいながらもそもそと起き上がる。 「え!うそ!もうこんな時間?どうして起こしてくれなかったのよ!」 どうやらもとのハルヒに戻っているようだ。なんとなくわかってたけどな、だからみんなも帰ったんだろう。 それよりお前はばっちり起きてたし、誰よりもはしゃいでいたぞ。 「いや、俺たちは全力でお前を起こそうとしたがどうしてもお前が起きなかったんだ」 「ホント?有希?」 「本当」 と、長門はゆっくり頷いた。 「そっか・・・」 なんだか少し寂しそうだ。 「すまん・・・無理矢理にでも起こせばよかったか?」 「ううん、いいのよ。ありがとね」 おいおい、元に戻っても素直なまんまか。勘弁してくれ。 「なあに変な顔してんのよ」 「いや、なんでもない」 そう言いながら、帰る準備を進める。さて、 「じゃあ、帰るか」 「そうね」 「じゃあな、長門。いろいろありがとな」 「いい」 「バイバイ有希、また来るからね」 「・・・わかった」 長門がゆっくり頷くのを確認してから俺たちはマンションのドアを閉めた。 帰り道、ハルヒがこんなことを言い出した。 「ねえキョン」 「なんだ」 「あたしね・・・変な夢を見たの」 やっぱりきたか、でもなハルヒそれは夢じゃないんだぜ。 「どんな夢だったんだ?」 なんとなく聞いてみたが、おおよそハルヒの回答は予想がついた。なんたってみんなに 甘えたおした挙句、最後には俺にあんなことを言われたんだ。ハルヒにとっては悪夢 以外の何物でもないはずだ。 「それがね」 と、ハルヒはこちらに顔を向けながら続ける。そして笑顔で顔を輝かせ、 「すっごくいい夢だったのよ!」 と、言ってのけた。おいおい、待ってくれその反応は反則だ。クソ、顔が熱い。ハルヒの 方を見れん。 「ちょっと、何で顔をそらすのよ。ていうか顔赤いわよ?キョン」 夜でもわかるくらい俺の顔は赤いのか、恥ずかしい話だ。仕方ない、喋ってごまかそう。 「あ~、ハルヒよ。俺も変な夢を見たんだ」 「へ~、どんな夢よ?」 「それがな」 俺は言葉を続ける。 「ものすごくいい夢だったんだ」 なぜか、ハルヒの顔が朱に染まった。 fin
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/4980.html
真夏のある日のこと。 SOS団の活動もない休日の午後、エアコンの不調により、うだるような暑さに耐えかねた涼宮ハルヒは、涼を求めて酷暑日の街を彷徨っていた。 「涼み処の定番、図書館はやっぱり人でいっぱいだったか……」 街中で配られていた、どこかのマンションの広告が入った団扇で扇ぎながら、街中を歩く。 「そもそもSOS団団長たるあたしが、人と同じ発想で涼を求めててどうすんのよ……」 さすがのハルヒも、この暑さに思考が常人並みに変化していた。 「あぢぃ……」 コンビニエンスストアでは、ごく短時間しか留まれない。北口駅前のショッピングセンターでは、時間は潰せるが座る場所がない。 「あ゛~……もうこうなったら、環状線にでも乗りに行くか!?」 その路線は最寄りの駅からさほど遠くはないにしても、別に鉄ちゃんではないハルヒにとって、ただ列車に乗っているだけという行為は、到底耐えられる代物ではない。 「雪でも降って涼しくならないかな……雪……ゆき……ユキ……有希……?」 「呼んだ?」 「うひゃあぁぁっ!?」 唐突に背後から掛けられた、見知った人の声に、ハルヒは飛び上がった。 「有希!? いきなり声掛けるからびっくりしたじゃない!」 振り返った先に居た文芸部部長、そしてSOS団員の長門有希は、珍しいことに私服だった。あまりの暑さに、制服ではもたないと判断したらしい。 「……いや、あの、有希……? 私服なのはいいことだし、今日は凄く暑いってことも分かるわよ? だけど……」 確かに、有希の服装は、理に適っていた。実に夏らしい。 「その格好じゃ、どう見ても男の子よ――――――――――――!!」 Tシャツ、短パン、サンダルに麦藁帽子。体格と相まって、可愛らしい小学生の男の子にしか見えなかった。知り合い以外に、この姿を見て「女子高生」と思う者は居ないだろう。 「この服装は、知り合いに『似合うし、機能的だから』と薦められた」 「確かに、これ以上ないくらいに似合ってるけど、似合う方向性が違うというか、何というか……」 「……?」 「……ま、いっか。それにしても、あんたと街中でばったり会うなんて、珍しいこともあるものね。てっきり図書館か本屋に入り浸ってるかと思ったのに」 とはいえ、海で遊んできた、という格好でもないわね、とハルヒは有希の姿を観察しながら言った。 「朝から図書館に居たが、人が多くなってきたので帰るところ」 「ああ、そういうこと。あたしもさっき涼みに行ってきたんだけど、人だらけで、あれじゃ落ち着いて読書なんてできないわね」 「涼みに?」 「うちのエアコンがぶっ壊れちゃってさ~、涼しい場所を求めて、このクソ暑い中を彷徨ってんのよ」 「……そう」 有希はハルヒに真っ直ぐな瞳を向け、 「それなら、うちに来るといい」 「え、マジ!?」 こくりと、無言でうなずいた。 ………… ……… …… … 「お邪魔しま~す!」 高級マンションだけあって、断熱がきちんとされている有希の部屋は、朝から無人で空調を効かせていなかったにもかかわらず、ひんやりとしていた。 「いや~~生き返るぅ~~~~」 「……飲んで」 有希はエアコンのスイッチを入れた後、冷蔵庫からキンキンに冷えた杜仲茶を出してきた。 「……ぷっは~! くぅ~~~~~~っ!!」 グラス一杯分を一気に飲み干したハルヒは、珍しく定時で上がったサラリーマンがビアガーデンで生中を飲み干したがごとき喜びの雄叫びを挙げると、そのままお替りを要求した。 「うまい! もう一杯!!」 「どうぞ」 こうして何杯か同じやり取りを繰り返した頃には、エアコンも効いてきた。 ハルヒは寝転んで全身からフローリングの冷たさを享受し、有希は借りてきた本の世界に旅立っていた。 エアコンの音をBGMに、ページをめくる音と、時折グラスの中で溶けた氷が立てる音だけが響く。 (暑い時には、何もない部屋っていうのも、いいものね……) やがてすっかり体力を回復したハルヒは、何となく、読書する有希を観察していた。 「……そっか。座椅子、買ったんだ」 孤島で合宿したときは、彼女は船の中で正座して読書していた。しかし今は、コタツの向かい側で、回転できる座椅子に座って読書している。 「……通販生活」 「買い過ぎには注意しなさいよ?」 「…………………………………………………………………………………………善処する」 「今の間は何よ、今の間は!?」 「気にしないで」 「気になるわよ!」 「…………」 「微妙な表情で見詰めるんじゃありません!」 「…………」 「しょぼーんってしてもだめ!」 「…………」 「こらー! 本で顔を隠すなー!!」 第三者がこのやり取りを目撃しても、有希の表情が変化しているとは思えないだろう。それだけ微細な表情の変化でも、ハルヒはきちんと見分けていた。 そんなやり取りもあった後、また落ち着きを取り戻した空間。ハルヒが一つ伸びをしたとき、それは起こった。 「ん? どうしたの、有希?」 有希の体が、不意にピクリと動いた。 「……足」 「足? ……ああ、当たっちゃったか」 ハルヒが伸びをしたとき、ちょうど前方に投げ出されていた有希の足の裏に、ハルヒのつま先が触れていた。 「を? ひょっとして有希は、足が弱いのかな?」 ちょんちょん、とハルヒがつま先で有希の足の裏をつつくと、その度に有希の体がピクリピクリと反応した。 「うりうり~」 ちょっと面白くなってきたハルヒは、次第に有希への攻めを強くした。 「……っ、うっ!」 「あ……」 一際大きく有希の体が跳ねた拍子に、彼女は膝をコタツにしたたかに打ち付けた。 「……………………………………………………………………………………………………」 「ごめん、ごめんってば! そんな涙目で、訴えかける視線を向けないでよ……」 ハルヒが必死に弁解するが、有希はハルヒにだけ分かる微妙な視線を送り続けていた。 やがてハルヒがいっぱいいっぱいになったところで、不意に有希は視線を逸らし、明後日の方向に視線を向けた。 「え……!?」 それで勝負はついていた。 ハルヒが自分の置かれた状況を把握したときには、背後に回った有希に床に倒され、脚を極められていた。 逸らした視線の先をハルヒが釣られて追いかけている間に、有希は超高速で移動していた。 「くっ、やるわね、有希! 今の技は、完全にやられたわ。でも、まだ負けないわよ!」 極められた技を外そうともがくハルヒに、有希は冷静に宣言した。 「あなたはもう、昇天している」 握り締め、中指の第二関節を突き出した有希の拳に、打撃が来るものとガードを固めたハルヒは、 「ひぎいっ!?」 悶絶していた。 「ちょ、ちょっと、有希! やめ……」 有希は構わず、固めた拳をハルヒの足の裏に突き立てて抉った。 「んのおぉぉぉぉぉぉぉっっっっ!?」 「ここは胃」 さらに有希は、拳を捻じりながら滑らせた。 「あおおおおぉぉぉぉぉぉぉっっっ!!」 「ここは子宮」 有希の責め苦は続く。 「これは足の裏にある各臓器の反射区を刺激するマッサージ」 「足裏マッサージでしょ! 知ってるわよ! すんごく痛いんだから!」 「特に痛い所が、何らかのダメージを受けている部位」 「分かったから、離してよ!」 有希は無言でうなずき、掴んでいたハルヒの足を離すと、反対側の足を掴んだ。 「ちょっと、離してって言ってるでしょ!?」 「人体はバランス。片方だけの施術ではバランスを崩し、かえって悪影響を及ぼす」 有希はハルヒの足の指を強くしごいた。 「んぎひぃっ!?」 「じっくり丹念に凝りをほぐす」 「い、いやあっ! 痛いのいやぁっ!!」 ハルヒは涙目で、首を左右にフルフルと振りながら、イヤイヤをしている。 「にょああぁぁぁぁぁぁっっっ!!」 有希の拳が、無慈悲にハルヒの足裏に突き立てられた。 ………… ……… …… … 「ひゅーっ、ひゅーっ……」 じっくり丹念に足裏の凝りをほぐされたハルヒは、もはや虫の息だった。瞳孔が開いている。 「全体をほぐし終わった」 「も、もう勘弁して……お願いだからあっ……」 普段のハルヒからは信じられないような、情けない声で有希に懇願する。 有希は静かに、ハルヒの足を開放した。 「た、助かった…………」 有希はそのまま台所に消えると、湯気の立つタオルを持って帰ってきた。 「仕上げ」 「あー……蒸しタオル、気持ちいい……」 地獄から一転、今度は極楽を味わうハルヒ。恍惚とした表情で有希に身を任せる。 ハルヒの足を蒸しタオルでくるんだまま、有希は静かに告げた。 「あなたが特に弱っているところは分かった」 有希の言葉に、ハルヒは最も痛かった部分を思い出して、赤面した。 「恥ずかしがることはない。女性にはありがちなこと」 「やだ、そんなこと言わないで……」 ハルヒは両手で顔を隠している。 「最後に、そこを……集中的に施術する」 有希の言葉に、ハルヒは今度は顔を青くした。 「ちょ、有希、やめて! 後生だから!」 「あなたが特に弱っているところは……」 有希は親指を立てた。 「いやぁぁぁぁ!! ソコだけは! ソコだけはー!」 ハルヒは両手で顔を隠したままイヤイヤしている。 「肛門」 有希の指が、ハルヒの足裏に深々と突き立てられた。 「アッ――――――――――――――――――――!!」 ハルヒの悲鳴が部屋中に響き渡った。しかし、悲鳴はすぐにかき消された。 「このマンションの防音は完璧」 「……どうしたの?」 有希はハルヒに声を掛けた。 返事がない。ただのしかばねのようだ。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/6553.html
●涼宮ハルヒの分身 プロローグ ●涼宮ハルヒの分身 Ⅰ ●涼宮ハルヒの分身 Ⅱ ●涼宮ハルヒの分身 Ⅲ ●涼宮ハルヒの分身 Ⅳ ●涼宮ハルヒの分身 Ⅴ ●涼宮ハルヒの分身 エピローグ
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/3642.html
俺が北高に入って早2年と5ヶ月、もう高校3年の秋だ。 この坂道もあと半年ほど登ればサヨナラ、何だか秋風のせいか寂しい気分になる。 教室に入ると、すでに受験色。皆、色んな情報を交換し合っている。 勿論俺も母親の期待に応えるべく大学進学を考えている。 まぁ、そうは言っても谷口と競い合った低空飛行のお陰で推薦入試なぞ、今の俺には無縁の話だ。 ハルヒはああ見えて、勉強は出来るゆえに既に六甲大学への推薦を受けている。 一般入試の受験先を考えていると、ハルヒがやってきた。 3年になってからもこいつとは同じクラス、まさかこいつが俺と同じクラスを願ったなんて事は無かろう。 国木田は3年から理系コースへ、谷口も何を思ったか理系に行った。 「キョン、あんた大学はどうすんの?まさか行けないって事はないでしょうね?」 なんだ、藪から棒に。その「行けない」って言い方は癪に障る。 人に進学の事を聞くときは「行くの?行かないの?」でしょうが、やれやれ本当に毎度疲れさせやがる。 「ねぇ、キョン、聞いてる?」 ああ、聞いているとも。勿論俺も進学は考えている。将来はだな、ほら公務員にでもなるか、 あわよくばどこかの上場会社にでも入れればと考えている。 「はぁ?あんたね、そんな人生でいいの?ちっとも楽しくないじゃない。もっと面白い事考えた方がいいわよ。」 俺の人生が面白くなろうがならまいが、お前さんに何の関係があるというのだ。 「SOS団から就職組や浪人は出さないから。団長命令として六甲大学に合格しなさい、わかった?」 おいおい、そんな無理を言うなよ。先日の模擬試験の結果で偏差値が50しかないんだぜ。 どう頑張ったところで、65以上の六甲大学なんか受かるわけが無かろう。 天変地異でも起こらなければありえない話だ。 今のレベルで合格出来そうな大学といえば、船で目下に広がる海を越えた阿波大学か背後に迫る山を5つほど越えた日本海大学ぐらいだな。 しかし、下宿となると親にも負担が掛かる、あと少し頑張って甲陽園大学ぐらいには行きたいものだ。 そんな事を考えているうちに、担任がHRにやってきた。 大学進学の基準にもう一つ気になることがある。 SOS団の団員はそれぞれどこに行くかだ。 古泉は近畿外大を目指すと言っていた。 長門はやはり観察対象が行く大学、六甲大に入るらしい。 まぁ、長門の場合、どこでも希望すれば入れるんだろう。 一学年上の鶴屋さんも六甲大、やはり地元ではセオリー通りの進学コースなんだろうな。 それはそうと今、同じクラスに朝比奈さんがいる。 この朝比奈さんは朝比奈さん(大)でもなければ、朝比奈さん(小)でもない。 朝比奈さん(妹)である。 まぁ、同級なので敬称略でいいのだが、長年呼んだ「朝比奈さん」が抜けない。 朝比奈さんが卒業と同時に、海外の大学へ行き、代わりに朝比奈(妹)が転校してきた。 まぁ、俺は驚かなかったが、ハルヒは鳩が豆鉄砲食らったかのように驚いていた。 もちろん、SOS団に連れ込まれたのは言うまでも無い。 ただこの朝比奈さんはどの時間から来たのか、俺たちと過ごした2年間の記憶は無い。 中身は変わらないのだが。 そして今、俺が一番注目しているのが朝比奈(妹)、ああ、もう面倒だ朝比奈さんで統一。 朝比奈さんが、どこの大学に行くのかそれが一番気になっている。 授業も終わり、いつものように部室へ向かう。 下級生の団員がちらほら、まぁこいつたちの話はまた今度にしよう。 朝比奈さんは先に来て、部室の掃除をしている。 長門は2年以上居座った同じ場所で本を読んでいる。 俺は朝比奈さんがお茶を淹れて、テーブルまで運んできたときに聞いてみた。 「朝比奈さんは進学はどうするんですか?行くの?行かないの?」これが正しい質問の仕方だ。 「えっとですね、ふふ、禁則事項です。」 え?俺は口に含んだお茶を食道ではなく気管に流し込みかけた。 「冗談です。六甲大学を受けようかと思っています。」 それってやっぱ上からの命令?俺は廻りに聞こえないように聞いてみた」 「それは本当に禁則事項なの。」 そうか、みんな六甲大目指すのか。 この朝比奈さん、my sweet angelと逢えるのも半年か・・・l 少しまどろっこしい悩みをしていると、いつものようにハルヒがドアを開けて入ってきた。 団長席に座るや否や、俺に向かって言い放った。 「いい、今日からSOS団は特別戦闘体制に入るから。目指せ六甲大よ!」 はぁ?なんだそれは?俺に構うな、今から頑張っても六甲大は到底無理だ。 「あのねキョン!やらずにウダウダ言っても仕方ないの。あんたは六甲大に行かなくちゃならないの!」 何ゆえに?何ゆえに俺が六甲大を目指さなければならんのだ。 そりゃ確かに女子にもモテるし、就職も良いかもしれん。だがなハルヒ、人間には身分相応って言葉がある。 背伸びしても届かないものは届かないんだぜ。 「キョン、あんた本当にそれでいいの?みんな六甲大行くのにあんただけ片田舎の三流大で満足なの?」 勝手に三流大に決めないでくれ。 「それにね、あんたが六甲大に来なければSOS団が作れないじゃないの!」 what?大学でSOS団だと。何を言ってるんだ、こいつは。 大学に行ってまでお前と馬鹿やりたくねぇよ。大学に入ったらな、遊びサークルでも入って、夏は海、冬はスキーでも行って 学園祭は出店でもやってだな・・・・・あれ?なんだ?今と変わらないな。 「つべこべ言わず六甲大にあんたが受かる学力が付くまで、毎日ここで補講するから、わかった?」 「それから下級生は今日からキョンが六甲大に受かるまでコンピ研の部室を占拠すると良いわ。じゃ、今から開始!」 ハルヒの号令とともに下級生はコンピ研の部室へと移動した。 それから毎日、俺はハルヒとの受験勉強が始まった。 11月の終わりにはハルヒと長門、朝比奈さんまでもが推薦入試で六甲大に合格した。 初雪が降る頃、全国模試で俺の偏差値は60ぐらいまで上昇していた。 もう少しか・・・大森電気店で貰った電気ストーブが今日も悴んだ手を緩めてくれる。 入試過去問題を解き終え、ハルヒがそれを採点してくれる。 そして、俺を見つめて嬉しそうに 「キョン、この点数なら去年の合格点よ。あと少し頑張れば確実に六甲大にいけるわよ」 それから、来週から冬休みになるから、部室はやめて自宅で勉強ね。 キョンの家は妹さんが居て気が散るから、学校が始まるまで私の家でやるから、毎日9時にくる事。」 ハルヒは嬉しそうに解答用紙を俺に付き返した。 終業式も無事終わり、明日からハルヒの家で朝から猛勉強か・・・ そういえば、俺はハルヒの家に行ったことが無い、どこにあるんだ? 「あんた来た事無かったっけ?あのね・・・」 ハルヒは丁寧に地図を書いてくれた。 翌朝、吐息も凍るような寒さの中、俺は参考書をカバンいっぱいに詰め込み、家を後にする。 歩いて30分、ハルヒの家に到着。 奇抜な家を想像したが、どこの町にもある普通の家であった。 しかし、何か嫌な予感がする。 一呼吸おいて、呼び鈴を押す。直ぐに勢い良くドアが開く。 「さぁ、上がって。あんたの為に特別に部屋を用意してあるから」 ハルヒは嬉しそうに俺を家に招きいれた。 通された部屋は机以外何も無い。時計すらない。カーテンは閉じられ、いや、きっとその窓の向こうの雨戸も閉まっているのではないか? 電気を点けなければきっと真っ暗なはず。 「いい、キョン。今日から2週間ここで頑張るのよ。それとあなたの行動は全て私の管理下に置かれているから勝手に人の家をウロウロしない事。トイレも許可を受けてからね。あと、携帯は没収。」 おい、俺は刑務所に入った覚えは無いぞ。それに時計すら無いとはどういう事だ? 「時計が有ったら、昼飯とかお茶とか言い出すでしょ!だから無くしたの。私の時間配分どおりやれば良いから。」 予感は的中した。が、この怪力女から逃げられない事は既に学習済み。俺は嫌々ながらもこの状況を受け入れざるを得なかった。 ハルヒの言うままに、問題を解いたり、解法を聞いたり。 何時間ぐらい経ったのだろうか、時間概念を消されたこの部屋では己の腹具合だけで全てをさとらなければならない。 ハルヒが一旦、部屋から出て行った。 問題を黙々と解く俺。ふとペンを止め、考え込んだ。 俺はこれで良いのか? ハルヒに半強制的に針路を決められている。 もしかすると、他の大学に行くと俺の人生の伴侶が居るかもしれないというのに。 大学に入って、就職までハルヒに言われるがまま・・・ まてまて、そんな事は絶対にありえん。 俺の自由意志はどこに行った?俺は一体何者なんだ?いや、者ではなく物なのか? 段々と自閉的な思考の渦にはまっていったその瞬間、ドアが開いた。 ドアから顔だけ覗かせたハルヒは 「キョン、その問題が解けたら休憩にしましょう。」と。 おお、昼飯か。腹も減ってきていた、腹時計は正確だった。 「今日はオムライスね」 何度かハルヒの作った飯を食ったことがあるが、こいつの飯は美味い。そこらの定食屋顔負けの美味さである。 問題を解き終え、テーブルを片付ける。ハルヒがトレーを持って再び入ってきた。 余程腹が減っていたのであろう、特盛サイズのオムライスを余すことなく食べきった。 いつもならココから気だるい気分で、昼寝をする訳だが、今はそうもいかない。 何せ目の前にハルヒが居るわけで・・・ 「キョン、ご飯が済んだら少し休憩して続きを始めるわよ」 また囚人の始まりだ。 そう考えると同時に問題が配られる。それをまた黙々と解く。 人間の思考というのは不思議なもので、必死に問題を考えているにも拘らず、瞬間的に他の事を考えたりする。 そういえば、さっきからハルヒ以外の声や足音が聞こえない。親は居ないのか? しかし、この事を尋ねたら、きっとハルヒは集中力が足りないと俺を批難するだろう。 俺は再び、問題に集中した。 途中、一度だけトイレに経ったが、トイレは部屋の前にあり、窓は暗幕で閉ざされていた。 「開けるな」 ご丁寧にも俺に太陽を拝ませないつもりの様だ。 廊下もこの場所からは日は差さない。 淡い黄色を発色する電灯だけが俺の存在を明らかにしている。 そして廊下には俺を閉ざしたかのように椅子が置かれている。 単調ながらも次から次へと襲い掛かる英単語や数式、年号をバッサバッさと切り倒し LVが上がる音が聞こえそうなぐらい俺は打ち込んだ。 さて、今何時だ? 昼飯で満たされた腹はまだ空いていない。 夕食は家で食べられるんだろうな。このまま監禁なんてまっぴら御免だぜ。 そんなことを考えたのがいけなかったのか、ハルヒが俺に問いかける。 「晩御飯はパスタでいい?」 本当は別のことを言いたかったのだが、何故か二つ返事してしまった。 そして昼飯と同じくハルヒが大盛パスタを運んできた。 ハルヒも一緒に食事を取るのだが、今日は物静かだ。何も語らない。 こうもハルヒが静かだと気味が悪い。 「何?足りない?おいしくない?」 いやいや、このパスタは絶品だ、俺は久しくこんなパスタを食った覚えが無いとゴマをする訳ではないが、本音じみた事をこれ以上は無理というぐらいの笑顔で答える。 「あっそ、ならもっと美味しそうに食べなさいよ」少し不機嫌なハルヒ。覚られたのか? 俺がパスタを平らげて少し安穏とした時を過ごしていると、遠くでチャイムが聞こえる。 ハルヒは直ぐに部屋を飛び出して行った。 親でも帰ってきたか? 数分後、俺はドアから入ってくる奴に驚愕する。 いや、人に驚愕したのではなく、俺が置かれた状況に驚愕したのだった。 「どうも、元気そうで何よりです」、ドアの向こうになんと、古泉が居た。 古泉は大きなバッグを二つ携え、部屋に入ってきた。 「涼宮さんに頼まれて、あなたの家まで行ってたのですよ。」 何をだ?何しに俺の家に行ったんだ?俺の家が神人にでも潰されそうになったか? 「いえいえ、実はこれあなたの荷物です。お母様に頼んで着替え用意してもらいました。」 おい、なんで着替えがカバン二つも必要とする? 「さぁ、それは涼宮さんに聞いていただかないと何とも・・・・」 目を細め、溢れんばかりの笑顔で古泉は答えた。 そして、コーヒーカップを3つトレーに乗せたハルヒが入ってくる。 「古泉君にキョンの家から着替え貰ってきた。とりあえず1週間分ぐらい。お正月は帰ってもいいから」 なんですと?何故俺は今日からお前ん家に泊まらねばならんのだ?答えろハルヒ。 「行き帰りの時間が無駄でしょ。往復で1時間、そんな時間が有れば問題10問はこなせるわ。 だから今日からキョンはここで勉強よ」 おいおい、これって軟禁だよな?古泉、俺の人権はどこに隠した? 「あなたには是非、六甲大に行って貰わなければならないのです。分るでしょう?」 何故だ? 「決まってるじゃない、SOS団の為よ!」とコーヒーを啜りながらハルヒが横槍を入れる。 すかさず古泉が「まぁ、そういうことですね、あなた自身が一番分っている事です。」 ハルヒの機嫌を損ねないためにも俺は六甲大へ行かなければならなくなった。 色調の存在する閉鎖空間で俺は問題と格闘している。 一体、今が何日の何時か分からない。 多分、6日目のはず。 何故多分とかといえば、俺が5回眠ったからである。 太陽が恋しくて堪らない。 しかし、ここから出てゆくことは許されない。 脳のバックグラウンドでそんな事を考えつつ、問題を解く。 ハルヒが切り出した。 「キョン、模擬試験するわよ。いっとくけど、模擬だけど実戦だとおもってやるのよ。」 今からかよ!飯はどうした?お茶は出ないのか? ここに軟禁されてから俺の楽しみはそれしかない。 「試験が終わったら食べさせるわよ。だから頑張って。」 そうハルヒは俺を見据えて呟いた。 「いい、今から60分づつ3教科のテストよ。休憩は15分づつ。もし、これで合格点を取れなかったら 後半の合宿はもっと厳しくするから」 おい、今でも充分なぐらい厳しいと思うんだが? 「じゃ、はじめるわよ」 そういって、ハルヒは俺に問題と解答用紙を配った。 「時間は60分、30分過ぎて出来たら休憩してもいいわ。名前は必ず書く事。じゃ、国語からはじめ!」 ハルヒの声と同時に俺は鉛筆を走らせる。 お、この問題は前にやったことがある。あ、これもだ・・・・。案外、記憶に残っているもんだな。 次から次へと問題を解いてゆく、まだどこも躓いていない。 最後の漢文問題で一瞬筆が止まったが、解答用紙を見るとペンが動き出す。 なんだこれは?この鉛筆はホーミングモードにでもなっているのか? そして問題を全て解き終えた。 顔を上げるとハルヒがこっちを見ている。 「あんた、カンニングしていないでしょうね?」 へへ、ハルヒにしては面白い冗談だ。俺とお前以外に誰がここに居るというのだ。 「じゃ、解けたんで休憩するわ」という俺にハルヒはこういった。 「あんた、確認し直しなさいよ、それにまだ20分しか経ってないから。」 なんですと?まだ20分・・・・信じられん、いつ俺に時間を止める能力がついたんだ。 仕方が無い、見直すか。 もう一度、問題を解く。間違いない。これはもしかすると満点じゃないか? ハルヒ、この調子なら一気に出来そうだ、あとの2教科を直ぐに配ってくれ。 やる気が出た俺をもう誰も止められやしない。 なんだこのやる気は。 今まで感じたことの無いやる気だな。 そうして俺は残り2教科を解き始める。 うーん、自画自賛ではないが俺の学力は飛躍的に伸びているのかも知れん。 問題を解き終え、ハルヒに渡す。 ハルヒは直ぐに採点に入る。 少しの間の沈黙、赤ペンを走らせるキュキュという小刻みな音だけが響く。 そして、顔を上げたハルヒが俺に言った。 「やっぱ教える人間が良いとこうまで変わるものね。キョン、3教科で288点、合格よ!」 おお、やった! ん?俺は喜んでいる。たぶん心の底から喜んでいる。 何故だ?合格すればハルヒとまた4年間一緒なんだぞ。 いいのか俺?本当にいいのか? 得体の知れぬ葛藤が続く・・・・ 「キョン、カーテン開けてもいいわよ。それから雨戸も。」 言われるまま俺は窓を開け、外の景色を楽しんだ。 綺麗な夕焼けが見える。 「キョン、晩御飯は外で食べましょう。今日はSOS団全員集まる事になっているから」 ほー、早速俺の合格祝いか、いいねー 「ここまでみんなの協力があったからこの点数なのよ、あんたが全部出しなさいよ!」 なんだと?俺は懲役を喰らった上に罰金まで払わされるのか! なんだかなぁ・・・・ 「さ、いきましょう!」ハルヒは席を立った。 いつもの駅前に到着すると、長門、朝比奈さん、古泉が居た。 「みんな、今日はキョンのおごりだからしっかり食べなさいよ」 ハルヒは駅前のすし屋に入る。 おい、ここの寿司は廻ってないぞ!こんな所で俺が全額とか無理だろ! すると古泉が俺に耳打ちした。 「心配しないで下さい。ここも我々の管轄内なので大丈夫です。」 そうなのか?それを聞いて俺はほっとした。 「それにここ数日間、あなたが涼宮さんと一緒にいる間、閉鎖空間は一切発生しませんでした。 組織も今回の事を非常に評価しています。なので、もしあなたが白紙で答案用紙を出しても 六甲大には合格できると思いますよ。ま、その必要もなくなりましたが・・・・」 結局俺は人類のためにペンを持っていたわけか。ペンは剣より強し、誰かが歌ってたな。 そして、俺達は腹いっぱいの寿司を頬張った。 店を出てから古泉が切り出した。 「私と長門さんは少し話がありますので、ここで失礼します。」 朝比奈さんも今日は他の用があるらしい。 「じゃ、ここで解散ね。明日は大晦日なんで23時に集合よ!初詣に行くから。」とハルヒ。 今日は30日か・・・・やっと時間が戻ってきたぜ みんな頷き、笑顔で別れる。 俺とハルヒは寒空の下を並んで歩いた。 「ねぇ、キョン。やれば出来るって分かった?」 ああ、俺は超人だからな 「あんたね、そんな風に思っていると足元掬われるわよ」 冗談だ。でもハルヒ、ありがとうな。 「はぁ?何言ってんの!私は団のためにやっただけだから!」 そういうハルヒの頬は少し赤く染まっていた。ような気がした。 「ねぇキョン、六甲大に合格できそうで嬉しい?」 え?そりゃまぁ良い大学に行けるってのは嬉しいさ。 「六甲大に行ける事が嬉しいの?それとも私と同じ大学に行ける事が・・・・」 ん?なんだって?聞こえないぞ? 「聞こえてるのに聞こえないふりするなんて卑怯よ!」 そう言いながらハルヒは俺を肘でつっつく。 いつもなら俺の息が止まるほどの強さなのだが・・・ 「ああ、お前と一緒にまた4年間居られると思うだけで俺は嬉しいぜ」 その一言を言い終えたとき、ハルヒの頬を小さな星の欠片が伝い流れたように見えた。 「キョン、本当に頑張ったね。良かった。」 ありがとう、お前のお陰だ 「まだ、合格したわけじゃないんだから。気を抜かず頑張るのよ」ハルヒは反対を向いて呟く。 ああ、分かっているさ。 「ねぇ、キョン、これ合格のお守り」 そういうとハルヒは俺に抱きつき背伸びをした・・・・ 閉鎖空間から開放されるときのスイッチはいつもこれだ・・・・ 空にはいつもより多目の星が輝いていた。 涼宮ハルヒの補習 おわり