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本戦SS一覧 Season 1 {試合SS {キャラクター名 {投票結果 Rec1-1:【ストリート】STAGE チャレンジャー:張本負切洲 【ストリート】結果 モンスター:牝垣パルフェ {試合SS {キャラクター名 {投票結果 Rec2-1:【砂漠】STAGE チャレンジャー:正空寺サツキ 【砂漠】結果 モンスター:天台河原登志夫ヴィルヘルム (スクロールで次試合) {試合SS {キャラクター名 {投票結果 Rec3-1:【SASUKE】STAGE チャレンジャー:禅谷回那 【SASUKE】結果 モンスター:萩原セラフ {試合SS {キャラクター名 {投票結果 Rec4-1:【採石場】STAGE チャレンジャー:原門りんご 【採石場】結果 モンスター:冬知らずの魔女、カレン (スクロールで次試合) {試合SS {キャラクター名 {投票結果 Rec5-1:【刀林処地獄】STAGE チャレンジャー:名無し 【刀林処地獄】結果 モンスター:"傷跡の送り手“パーシリヴァル {試合SS {キャラクター名 {投票結果 Rec6-1:【溶岩地帯】STAGE チャレンジャー:柏木エリ 【溶岩地帯】結果 モンスター:十三代目武田信玄 (スクロールで次試合) {試合SS {キャラクター名 {投票結果 Rec6-2:【希望崎学園】STAGE チャレンジャー:柏木エリ 【希望崎学園】結果 モンスター:冬知らずの魔女、カレン
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キョン無題1 キョン無題2 キョン無題3 キョン無題4 キョン無題5 キョン無題6 キョン無題7 キョン無題8 キョン無題9 キョン無題11 涼宮ハルヒの消失(偽) ハルヒ能力喪失・SOS団解散編 キョンいじめ 超能力テスト 朝倉涼子の逆襲 改造人間キョン サイレント・ホスピタル ワークテイカー・ラヴァ―ズ ハルヒの想い ~アニメ版エンディングの延長版~ 記憶喪失 影の世界 (BADEND注意) 王様ゲーム キョンの決意 想い 試験勉強 北斗のキョン 残された時間 洞窟にて 俺とハルヒと古泉の生きる道 (BADEND) 許婚と最愛の人 Another Story 涼宮ハルヒの変質 ストレンジデイ イン ザ レイン キョンの死、そしてその後 クリスマスイブ 憂鬱アナザーエンド 涼宮ハルヒの旅路 グラップラーキョン ハルヒが残した希望 1枚の写真 涼宮ハルヒの海遊 Verywhiteday お見舞い 一つの選択 『ComebackAvenger』 キョンの憂鬱 もしもの世界 看病 ある夏の日の夕暮れ 涼宮ハルヒの変貌 愛すべき日常 涼宮ハルヒの我侭 殺人鬼はそこに (グロ・BADEND注意) 10歳児 6歳児 涼宮ハルヒの退行 ディサイデッド・フェイト キョンの苦難 涼宮ハルヒの永遠 涼宮ハルヒの交替 涼宮ハルヒの日常 犬キョン キョンの告白記 変わらない世界 ハルヒが母さん!? 冗談から恋 Sleepingbeauty 解けない難問 涼宮ハルヒのトランプ 涼宮ハルヒの邂逅 涼宮ハルヒの蹴撃 箱の中 キョンとハルヒの距離 青い鳥 修学旅行の陰謀 誤解 ゲーセンに行こう 暗闇 Lost smile 余ったピース・足りない欠片 緊急脱出プログラム もしもシリーズ(勝手に) World of mind 鳥人間コンテスト 涼宮ハルヒの追憶 涼宮ハルヒの笑顔 黒キョン 【キョンの苦悩】 『涼宮ハルヒの退屈Ⅱ』 涼宮ハルヒの就活 また明日。ある晴れた日のこと。 endlessdate 「キョンの消失(仮)」 「異変」 「涼宮ハルヒの忘年(仮)」
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あたしにとってキョンは何なんだろう? 放課後、文芸部部室で皆が皆何時もどうりに過ごしているのを団長席から眺めながらそう自分に問いかけてみる。 北高2年5組の男子生徒でクラスメイト。 ごくごく平凡で特徴の無い友人。 SOS団の団員その一かつ雑用係。 それから…。 「涼宮さん。」 「ありがと、みくるちゃん。」 みくるちゃんから受け取ったお茶から嗅ぎ慣れない香りがした。 「変わった香りね。これ何茶?」 「カモミール・ティーです。なんでもこれを飲むとリラックスできるそうですよ。」 「へえー。」 「カモミール。学名“Matricaria recutitia”キク科1種耐寒性一年草。ヨーロッパで最も歴史のある民間薬とされており、今から4000年前のバビロニアですでに薬草として使用されていたと言われている。」 「昔は健胃剤・発汗剤・消炎剤・婦人病の薬などに用いられていたそうですが、 今は安眠の薬と言われていますね。」 「詳しいな。」 「長門さんも古泉くんもさすがですね。」 本当、二人とも詳しいわね。…おっといけない、いけない思考が逸れたわね。 あたしにとってキョンは…。 「はい、キョンくん、古泉くん。」 「どうも。」 「ありがとうございます。」 バカ。 間抜け面。 みくるちゃんをや有希ばっか見てるやつ。 「…なんだよ。」 「別に…。」 他の女の子と仲良くしてるのを見たくない奴。 「みくるちゃんおかわり。」 「あっ。はーい。」 しかし、自分の事ながらキョンと”他の女の子が仲良くしてるの見たくない” という考えには理解しがたいものがある。 キョンは別にカッコイイわけじゃないし。スポーツができるとか頭がいいとか金持ちでもない。 まして宇宙人、未来人、異世界人、超能力者なんかであるはずが無い。 普通に考えればあたしがキョンに固執する理由は無いはず、…無いはずなのだ。 なのに、あたしはこのどこからどう見てもただの一般市民に何かしら特別な感情を抱いていて、その結果、あいつが他の女の子と仲良くしているのを見ると嫉妬してしまう。 理解できないのにもかかわらず、ごく自然に。 ここまで考えて、あたしは一度考えるのを止めた。 このまま考え続けると思考が無限ループに陥ることが予測できたからだ。 何でそんなことがわかるかって? 答えは簡単。悪夢を見た5月以降キョンのことを考えることはや1年、これ以降思考が進んだことがないからだ。 それにしても1年も同じ事を考え続けるなんて、あたしって…、いや敢えて言うのはよそう、自分が惨めに感じられるだけだ。 はあ…、一体全体あたしはあいつのことをどう認識しているのだろう。 それ以降も、あたしはキョンのことを考え続けていたわけだけど、いくらか時間がたった時に、どういうわけか、突然今までの思い出が頭の中を駆け巡り始めた。 始業式に始まり、キョンとの朝の会話、SOS団結成、始めての不思議探索、夏合宿に映画撮影。 それ以降も現在までの思い出がめまぐるしく駆け巡り、これで終わりかしらと思っていると、今度はキョンと相合傘して帰った日に記憶が戻り、その次はジョンとあった時にまで戻った。 ちょっと戻りすぎじゃない?しかもキョン関係ないじゃん。 そんなあたしの突込みをよそに思い出シアター(命名あたし)は続き、最後には実際にあった事ですらないあの5月の末に見た悪夢を上映し終わり告げた。 そして、それが終わるとともにあたしにキョンに対する答えが天啓のように舞い降りた。 そうか、あたしにとってキョンは――。 「おい、ハルヒ。」 「?」 「…ハルヒ!」 「へっ?」 「やっと、起きたか。」 起きた? あれいつの間にか皆いなくなってるし、外も暗くなってる。 「ひょっとして寝てた?」 「ああ。ぐっすり熟睡だったぜ。おかげでもう閉門時間だ。たくっ、カモミール・ティーあんなにがぶ飲みするからだぞ。」 そっか、あたし考え事したまま寝ちゃったんだ。 「皆は?」 「先に返した。」 そう、よかった。 「あんたは何で残ったのよ。」 「寝ている奴を一人置いて行くわけにいかんだろ。それに何時ぞやの借りもあるしな。」 「ふーん。」 それにしても、あたし寝る前に何考えてたんだっけ? 「とりあえず早く帰ろうぜ。腹減っちまった。」 「わかってるわよ。」 あたしはパソコンの電源を落として鞄を手に取った。 「ああっ!!」 「何だよ。」 思い出した。あたしが寝る前に何を考えていたのか。あたしは”キョンがあたしにとって何なのか”ってことを考えていたのだ。 そして夢の中でそれの結論が出たときに起こされたんだけど…、あれ?起こされた拍子に導き出した結論を忘れちゃった。 「あんた、何であたしを起こしたのよ!」 「はあ?」 「もうちょっとだったのに。もうちょっとで結論が出せたのに。」 「結論って、何の?」 「それは、あたしがあんたのことを…。」 「俺のことを?」 しまった。 「なっ、なんでもない!」 「おい、待てよ。」 あたしのバカ。キョンに何言おうとしてるのよ。 「急がないと門閉まっちゃうわよ。」 「それはわかってる。それよりお前さっk…。」 「何も言ってない!」 「嘘付け。確かに何か言いかけたろ。」 「うっ…。うるさい!そんなことよりさっさと行くわよ!ほら駆け足!」 ああ、今日はついてないわ。せっかくキョンがあたしにとって何なのかって問いに答えを見つけられたと思ったのに忘れちゃったし、しかもキョンに変なこと言って墓穴掘るし。 「はあ、はあ。たくっ、いくら閉門時間が迫ってるからって走ることは無いだろ。」 「走りたい気分だったのよ。」 「…そうかい。」 不思議ね、この間抜け面を見てるとキョンがあたしにとって何なのかなんてどうでも良くなってきたわ。 「これくらいでばてちゃってだらしないわね。」 「悪かったな。」 もう考えるのは止めた!所詮キョンはキョンであってキョンでしかないのよ。 トートロジー?知ったこっちゃ無いわ。今のあたしにはそれで十分よ。それに…、 「なあ、ハルヒ。」 「何よ。」 今のあたしにはそれより先に考えなくちゃなら事があるしね。 「お前部室で何か言いかけただろ。あれなんて言おうとしたんだ?」 そう、さっきの失態を誤魔化す方法を考えないと。 「あれはね…。」 「あれは?」 さて、何て言ってやろうかしら?
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キョンとキョン 一章 キョンとキョン 二章
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幕間SS一覧 このページではダンゲロスSS4に投稿された幕間SSを表示します。 第一回戦までの幕間SS一覧 作者 幕間SS 文字数 登場キャラクター 飯田カオル ワクワク動画大発表 1,743文字 飯田カオルミスター・チャンプ(Mr. Champ)山口祥勝本屋文 本屋文 本屋文の日常 1,522文字 本屋文 雨竜院暈々 ホーリーランドクラブ・SS4合同SS「ハローデイズ」 2,305文字 雨竜院暈々雨竜院暈哉(外部リンク) 撫津美弥子 大発表への反応~撫津 美弥子の場合~ 1,775文字 撫津美弥子飯田カオル 色盲画家ストル・デューン 無題(幕間スレ6-7) 2,759文字 色盲画家ストル・デューン 雨竜院暈々 雨空 1,913文字 雨竜院暈々一切空 撫霧煉國 撫霧煉國(実質)プロローグSS 5,642文字 撫霧煉國 雨竜院暈々 雨竜院家の資料 1,907文字 雨竜院暈々その他 飯田カオル ああ日本再生党 2,938文字 飯田カオル シシキリ 逃亡のコニャポニャ 4,508文字 シシキリ 柊時計草(風月藤原京) 希望崎学園『暦』設定 2,780文字 その他 柊時計草(風月藤原京) 大発表への反応~柊時計草(風月藤原京)の場合~ 2,444文字 柊時計草(風月藤原京)飯田カオル山禅寺ショウ子 ウィッキーさん 大発表への反応~Leaks Wickyの場合~ 1,329文字 ウィッキーさん飯田カオル 山禅寺ショウ子 山禅寺ショウ子 真本格プロローグSS 3,000文字 山禅寺ショウ子 柊時計草(風月藤原京) 探偵を巡る別世界からの反応 2,976文字 シシキリ山禅寺ショウ子その他 シシキリ 盛華と西瓜と世界制覇(セイカとスイカとセカイセイハ) 1,045文字 その他 シシキリ 盛華ちゃんvs恐怖の訪問者 1,420文字 その他 綾島聖 ”ソルト”ジョー 1,399文字 綾島聖 本屋文 本屋文の反応 919文字 本屋文飯田カオル 錬鉄の元・魔法少女 キュア・エフォート アルティメットゴッドモード 1,000文字 その他 山口祥勝 氷河での戦い、その24時間前 2,413文字 山口祥勝 右野斬子 右野斬子、幕間SSという名のプロローグSSの続き 4,930文字 右野斬子 飯田カオル ワクワク動画追加発表・一回戦前 1,958文字 飯田カオル 時ヶ峰健一 無題(幕間スレ45) 840文字 その他 蒿雀ナキ <ことば> 413文字 その他 撫津美弥子 日常 5,570文字 撫津美弥子 馴染おさな 実録!実家出産のススメ! 1,948文字 馴染おさな メリー・ジョエル 無題(幕間スレ71) 225文字 馴染おさな 以下、第一回戦までのネタバレを含むおそれがあります。 第二回戦までの幕間SS一覧 作者 幕間SS 文字数 登場キャラクター 山口祥勝 山口祥勝 -2 3,677文字 山口祥勝 撫津美弥子 悩みの迷路 時を重ねた友情 2,897文字 撫津美弥子 一切空 インナー・グルーヴ 1,060文字 一切空 飯田カオル その後の葦出纏と樹脂あくりる 1,656文字 飯田カオル 門司秀次 あきらめて猟奇温泉ナマ子 354文字 門司秀次撫津美弥子猟奇温泉ナマ子 馴染おさな 馴染おさなの初体験 2,477文字 馴染おさな 門司秀次 ダンゲロスSS4昔話 106文字 綾島聖一切空蒿雀ナキ 蒿雀ナキ 2.崎々亭主人の悲恋 2,990文字 蒿雀ナキ ウィッキーさん 歌【『オレの右手はGODHAND~オーバーアデプトver.』】 829文字 ウィッキーさん撫津美弥子 シシキリ 盛華の行方/Dr.デイドリームの野望 680文字 シシキリ 錬鉄の元・魔法少女 キュア・エフォート アルティメットゴッドモード その2 700文字 その他 山禅寺ショウ子 山禅寺の能力についての確認事項 237文字 山禅寺ショウ子 ミスター・チャンプ(Mr. Champ) ある日、ある掲示板の、ある書き込み 2,713文字 ミスター・チャンプ(Mr. Champ)シシキリ ツマランナー 希望崎大学生の日常風景 2,777文字 ツマランナー梶原恵介 梶原恵介 梶原恵介プロローグもどきSS『コミックマスターK』 10,221文字 梶原恵介 菊池徹子 トゥー ロング パラレル レイルズ:ストップオーバー 3,116文字 菊池徹子潜衣花恋その他 山禅寺ショウ子 外伝・山禅寺梟奇の受難 11,000文字 山禅寺ショウ子 千葉時計草(伊藤日車) 伊藤日車から遠藤(中略)菖蒲への手紙 209文字 千葉時計草(伊藤日車) 柊時計草(風月藤原京) 探偵を巡る別世界からの反応(その2) 3,188文字 千葉時計草(伊藤日車)シシキリ山禅寺ショウ子その他 梶原恵介 インタールードファッキュー 10,221文字 梶原恵介 錬鉄の元・魔法少女 キュア・エフォート アルティメットゴッドモード その3 1,453文字 錬鉄の元・魔法少女 キュア・エフォート ツマランナー 無題(幕間スレ142) 1,735文字 ツマランナー 山禅寺ショウ子 馴染おさなの証言 5,000文字 山禅寺ショウ子馴染おさな 上毛早百合 外呪の「虚」拾の段 846文字 上毛早百合 にゃんこ師匠 にゃんこ師匠危機一髪! ~拙者、にゃんこになっちゃったニャ!?の巻~ 7,626文字 にゃんこ師匠 刻訪結 幕間Ⅰ:シセン 2,410文字 刻訪結 菊池一文字 カーテンコールは誰がために 3,367文字 菊池一文字紅井影虎 以下、第二回戦までのネタバレを含むおそれがあります。 準決勝戦までの幕間SS一覧 作者 幕間SS 文字数 登場キャラクター 門司秀次 無題(幕間スレ155) 513文字 その他 門司秀次 無題(幕間スレ156) 344文字 その他 ウィッキーさん みんなのうた【『しんぷさまをたたえるうた~こうどうver~』】 629文字 ウィッキーさん綾島聖一切空蒿雀ナキ 綾島聖 イシノオ 1,153文字 綾島聖 ウィッキーさん ウィッキーさん敗戦SS『Tai-kansoku last edition S.B.M.』その1 930文字 ウィッキーさん 一切空 フィクシング・ア・ホール 3,139文字 一切空 シシキリ エピローグ雑文『ほりりん・さいりくす』 3,139文字 シシキリ 本葉柔 本葉柔・真ケン勝負! 1,182文字 本葉柔 蒿雀ナキ 4.蒿雀 咲(あおじ えみ) 6,122文字 蒿雀ナキ 撫津美弥子 れいかの想い 6,007文字 撫津美弥子 山口祥勝 新世界の神、始めました 2,470文字 山口祥勝時ヶ峰健一潜衣花恋 本葉柔 本葉柔 vs 時ヶ峰堅一(その4) 2,854文字 本葉柔 ツマランナー 希望崎大学生のバイト 1,502文字 ツマランナー梶原恵介 ミスター・チャンプ(Mr. Champ) 刻に奉げるカプリッツィオ 3,794文字 ミスター・チャンプ(Mr. Champ)錬鉄の元・魔法少女 キュア・エフォート 菊池一文字 ダンゲロスSS4裏二回戦if~迷宮時計杯~ 2,148文字 菊池一文字ツマランナー廃糖蜜ラトン 刻訪結 幕間Ⅱ:あわい 3,780文字 刻訪結上毛早百合 古沢糸子 グラス・オニオン 1,451文字 古沢糸子 以下、準決勝戦までのネタバレを含むおそれがあります。 決勝戦までの幕間SS一覧 作者 幕間SS 文字数 登場キャラクター 馴染おさな その日、久坂俺と 4,360文字 馴染おさな ツマランナー 迷宮ウオッチ 940文字 ツマランナー純粋天使・須藤四葉本葉柔鈍亀の継嗣 千葉時計草(伊藤日車) 探偵を巡る別世界からの反応(その3) 3,405文字 千葉時計草(伊藤日車) ツマランナー ツマランナーエピローグ 4,824文字 ツマランナー梶原恵介純粋天使・須藤四葉本葉柔鈍亀の継嗣 本葉柔 ディスコ突入五時間前 1,644文字 本葉柔日下景 上毛早百合 もし早百合と糸音が協力していたら 1,744文字 上毛早百合 本葉柔 フランとゴリラの大冒険!迷宮時計編 1,973文字 本葉柔リュネット・アンジュドロー 以下、決勝戦までのネタバレを含むおそれがあります。 エキシビジョンまでの幕間SS一覧 作者 幕間SS 文字数 登場キャラクター 本葉柔 スプリング・ハズ・カム・フォー・マイ・フェア・レディ 2,029文字 本葉柔刻訪結飴びいどろ撫津美弥子 以下、エキシビジョンまでのネタバレを含むおそれがあります。 エキシビジョン以降の幕間SS一覧 作者 幕間SS 文字数 登場キャラクター ツマランナー 梶原惠介対ツマランナー 2,029文字 ツマランナー梶原恵介猟奇温泉ナマ子本葉柔日下景綾島聖
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「ねぇ~キョ~ン」 後ろからハルヒの声がする、だが振り向くわけにはいかない。だって授業中だもの。 「キョーン、何無視してんのよ。早くこっち向きなさいよー」 声がでかいんだよ、恥を知れこの野郎。ほら見ろ、そこの女子に笑われてるじゃねえか。 新学年になったばかりなのに後ろ指をさされたくないんだよ、俺は。 「……いい加減にしないと怒るわよ」 理不尽なことこの上ないね。どうやってもこいつは俺を苛めたいらしい。 仕方ねえな、少し相手してやるか。 カキカキ 「ハルヒ」ポイッ 「ん、何これ?」ガサガサ 『今は授業中だ、直接は話すことはできないから用件があるならこの紙に書いてくれ』 ……お、静かになったな。作戦は成功したようだ。さて、やっとゆっくりできr―― 「キョン」ポイッ 返すの早っ!!ちったぁ休ませてくれよ。 と思いつつもハルヒが何と書いたか気になるな。 ガサガサ 『あんたにしてはいいアイデアじゃない。決めたわ、これから毎時間これを続けるわよ!そしてギネスに載るの!』 ………はぁ、毎時間かよ。完璧に作戦は裏目に出ちまったようだな。 しかしこのままハルヒに押されっぱなしなのは悔しい、少しからかってみるか。 カキカキ 「ハルヒ」ポイッ 「さーてキョンは何て書いたのかしら?」ガサガサ 『ハルヒ、……実は俺SOS団をやめようと思う』 まあ嘘ピョンだけど。さてハルヒはどんなリアクションをとるのかね。 「えっ……………ちょ、ちょっとキョンこれ本気!?」 「………」 何も答えない俺。 「…………ねえキョンったら……」 「………」 またしても答えない、俺はもっといい反応が見たいんだ。 「…………ね……キョ…………うぇぇぇん!」 ハルヒは大声で泣き始めた。クラス中の視線が集まる。さすがに焦るね。 「ギョ、ギョンが……やめ゛るなんで、い゛やだぁぁ………」 ああ、俺は何てことしちまったんだ。まさかあのハルヒを泣かせてしまうとは。 「や゛、や゛めない゛でぇ…」 「バカやろう!!」ギュッ 俺はハルヒを抱きしめた。 「俺がやめるわけないだろ。俺はお前が好きなんだからな」 「!!ほ、ほんどに゛!?」 「ああ」 「あ゛たじも、キョンが大好きだよぉ!!」ギュッ ハルヒが抱きしめ返してきた。 「これからよろしくな……」 「うん………」 チュッ クラス一同「「「「「「「「家でやれ」」」」」」」」 ハルキョン「「えへへ……」」
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ハルヒ「キョン、キョン恐いよキョン!」 ① ② ③ ④ 戻る 次へ 1 :名前なし:2009/05/06(水) 00 09 24.42 ID L16jdEMsO 「あれ、ここは・・・・」 そこは見慣れたいつもの教室だった。俺はどうやら居眠りをしてしまったらしい。 冬の空気は冷たいが窓から差し込んでくる西日が暖かく、心地よい眠気を誘っている。 立ち上がり教室の隅にある時計に目をやると、短針は午後六時を回った位置にあった。 こりゃ大分寝てしまったようだな。確か掃除が終わって机に突っ伏しているうちにうとうとと・・・ いや違う、委員会の仕事が終わって教室に戻ってきてからだったかな、寝たのは。 はっきりと思い出せない。勉強疲れだろうか。先日の期末テストはなかなかの出来だったと思うが、まぁ自分にしては珍しくテスト勉強を頑張ったからな。 とりあえず早く家に帰らねばなるまい。妹や母に無駄に心配をかけると後々うるさいからな。 7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/06(水) 00 15 12.31 ID L16jdEMsO 「ただいま~」 「おかえりキョンくん~、今日は遅かったねぇー」 小学五年生の妹が相も変わらず元気な声で出迎える。こいつは本当に元気だねぇ。俺も小学生の時はこんなに元気だったかなと記憶を辿ってみるも、今とあまり変わらなかったような気もする。 しかし、実の兄のことをキョンくんと呼ぶのはいい加減やめてもらえないものか。 「キョンくん、昨日はシャミしゃべった~?」 妹は一体何を言っているのかね。ちなみにシャミとは先月からうちで飼っている猫のシャミセンのことだ。俺の妹だけに頭の出来はあまりよろしくないとは思っているし、サンタクロースの存在をいまだに信じている我が妹だが、さすがに「ネコしゃべった~?」はないだろう。 言葉を話すのはなぁ、理性を手に入れた人間だけに許された特権であり・・・と我が妹を諭していると、 「なに言ってるのキョンくん、このまえキョンくんがシャミとおしゃべりするって言ったんだよ」 んなばかな。そんなこと言った記憶は全く無いね。 10 :名前なしなし:2009/05/06(水) 00 24 30.50 ID L16jdEMsO 「ぶー、キョンくんのいじわる。昨日はおしえてくれなかったんだから今日おしえてよ~。」 昨日も何も知らないものは知らないのだが・・・。 怒った顔で頬をふくらませていた妹だったが次の瞬間には 「あ、キョンくんご飯できてるよ。はやくはやく~」 はしゃぎながらトテトテと食卓へと駆けていくのであった。全く元気なものだ。 しかし、俺がシャミセンとおしゃべりをすると言った、か。 妹に特に嘘を言ってからかう様子は見られなかったのが気にかかるが、残念ながら俺にはその記憶が無い。本当だ。 11 :名前なしなし:2009/05/06(水) 00 26 25.59 ID L16jdEMsO 「・・・昨日か」 何となく引っかかる。昨日、俺は何をしたか。普通に学校に通い、普通に下校するという特に執筆するほどのものでもないどこにでもいる高校生のごく一般的なスクールライフを送った・・・はずだが、 なぜだろう。昨日のことなのに自分の記憶に自信がもてない。さらに記憶を辿ろうとしたが、特に具体的な部分となると全く分からなくなる。弁当の具や谷口や国木田とした会話の内容、学校帰りに寄った店などについては全くもって覚えていない。 やはり勉強疲れかね。一応これでも国立大学を目指している身だ。つい最近担任の岡部に進路指導で呼び出され諭されたこともあり、まぁそれでなんとなくスイッチが入ったとも言えなくも無い。 どーでもいい昨日の記憶を留めている脳細胞に英単語を記憶させた方がよっぽど有意義に決まっている。俺の脳みそも少しは分かってきたのかね、と超ポジティブ思考でごまかすことにして、今日は記憶についてはこれ以上考えないことにして食卓に向かった。が、 この時は、翌日に思いも寄らぬ出来事が我が身にふりかかろうとは思ってもいなかった。 17 :名前なしなし:2009/05/06(水) 00 30 50.24 ID L16jdEMsO 翌日。十二月二十一日 昨日の夜は何となく寝つきが悪かったためにイマイチ熟睡できず、その影響で朝に2度寝してしまったために予鈴ギリギリの到着かと思いきや、焦ったために逆に少しだけ余裕を持って我が学び舎に到着することができた、そんな俺に、 「ようキョン」 話しかけてきたのは悪友の谷口だった。成績は俺とどっこいどっこい、試験では毎回赤点スレスレを低空飛行する仲だ。 こいつのせいで、まぁ自分と同じ程度の成績の奴がのんびりしているのだから自分もまだ大丈夫だろうとどこかで思ってしまうために、何か勉強に身が入らなかったのかもしれないが、いかんせん今回の試験では俺のほうが上だろう。こいつの驚く顔を見るのが楽しみだぜ。 「おす谷口」 適当に挨拶を返す。 「でキョン、そろそろ頭は冷えたか?」 「頭が冷えた?何の話だ。確かに一週間前から風邪ははやっていたようだが、俺はひいてない。よって熱も出ていない。36度代だ、多分。むしろ風邪をひいて熱を出していたのはお前のほうだろう。」 19 :名前なしなし:2009/05/06(水) 00 32 35.68 ID L16jdEMsO 「何言ってんだキョン、昨日はあれだけおかしい振る舞いをしといて今更誤魔化そうったってそうはいかねぇぞ。涼宮には会えたのか?え?あいつは昔からツラはいいからなぁ、黙って突っ立ってりゃ俺様的美的ランクAAを与えてやっても良かったものを、あの訳分からねぇ性格のせいでよぉ・・・まぁお前がヒトメボレするのもなんとなく分かるが、あいつはやめといた方がいい・・・」 「待て待て谷口、お前は何を言っている。おかしな振る舞いってなんだ。というか涼宮というのが誰なのかが分からん。そんな一発で漢字に変換できそうもない苗字の知り合いなんぞ俺にはいないぞ。」 「そうかぁ・・。キョン、お前の気持ちは分かる。授業を途中でボイコットしてしまうほどのヒトメボレをして涼宮に告白したはいいが、ものの見事に玉砕したわけだ。涼宮はそういう所は容赦ないからなぁ。あまりの玉砕っぷりにもうお前の中では思い出したくない記憶となっているんだろ。分かるぜキョン、まぁこのことは男と男の秘密にしといてやるよ・・・」 22 :名前なしなし:2009/05/06(水) 00 34 37.68 ID L16jdEMsO 「授業をボイコットしたのか?俺が?」 谷口はさらに怪訝そうな顔をして、そこまで誤魔化そうとするならば昨日のお前のおかしな振る舞いを逐一教えてやるぜと言い、頼んでもないのに語り始めた。 谷口の話によると、昨日、いや一昨日から俺の調子はおかしかったらしい。我がクラス委員長である朝倉涼子に向かってお前はなぜここにいる、とか、お前は俺を殺したくなったことはあるか、とか、訳のわからないことを話し、谷口から涼宮とかいう奴の所在を聞いた途端、仮病を使い学校を抜け出したりしたらしい。 全く持って信じられん。というか覚えていない。記憶に無い。 「はぁ・・・。まだとぼけるかねぇ。まぁ相当なショックだったってのは分かるぜ。しかしなぁキョン、男はフられてフられt・・・」 23 :名前なしなし:2009/05/06(水) 00 36 25.97 ID L16jdEMsO 谷口の話は途中から聞いていなかった。そういえば昨日は妹も変なことを言っていた。 谷口も、まぁ嘘をついているようには見えない。昨日、いや、一昨日もか。 俺の記憶があやふやなのは事実だ。 これはどういうことだろうか。若年性アルツハイマーか? いやさすがに十代での発症は早すぎるだろ。しっかりしてくれよ俺。 予鈴直前に俺の後ろの席の住人である委員長・朝倉が教室に入ってきた。 朝倉も何か言ってくるのかと思いきや何も言わず、代わりに何か意味ありげな目線を俺に投げかけてきたところで担任の岡部が入ってきて俺は前を向いた。 29 :名前なしなし:2009/05/06(水) 00 47 10.81 ID L16jdEMsO ちなみに今は期末試験終了後の午前授業の日程だ。ああすばらしきかな午前授業。脳を休めるには最適な期間だ。 授業中や休憩時間までも、何人かのクラスメイトが怪訝そうな目で俺を見てきたが気にしないことにする。うららかな日差しのせいで窓際後方二番目というなかなかの席にいた俺は睡眠不足もたたり半分夢の世界のままに午前中は終り、午前中で学校が終わるというのにわざわざ弁当を作ってくれた母のためにもそれを残すのは心苦しいので、食べてから下校することにした。 しかしながらゆで卵が半熟ってのはどうなのかね。目玉焼きなら分かるが。後で文句でもつけてやろうかと考えていると、 「おっ、おいキョン!!」 谷口だった。焦った様子で近づいてくる。谷口よ、いくらアホなハイテンションだけがとりえのお前だからといって、他人が弁当を食っている時くらいは落ち着いて欲しいね。午前授業だというのに我が母がつくってくれた弁当がまずくなるじゃないか。 30 :名前なしなし:2009/05/06(水) 00 48 51.13 ID L16jdEMsO 「うるせぇ、それどころじゃねぇよ!」 「何が起こったってんだ。AAA+の美少女でも見つけたのか。」 「涼宮が来ているぞ。お前に用があるらしい、職員室だ。」 なんと。 しかし涼宮ねぇ。そういや下の名前聞いてねぇな。全く、なんで一度も会ったことの無い奴に呼び出されにゃならんのだ、しかも他校の生徒に。他校に乗り込んでまでの用事なんだから相当重要なんだろうな。一応急いでおくか。 なぜかは分からないが、少しだけ楽しみだったな。最低でも職員室の扉を開けるまではそう思っていた。 職員室のドアを開く。そこには4つの人影があった。そのうちの2人は我が北高の制服、残りの2人は坂の下の進学校、光陽園の制服だった。 32 :名前なしなし:2009/05/06(水) 00 49 56.89 ID L16jdEMsO 光陽園の制服を着た女子がこちらに進んでくる。腰まで伸びた長い黒髪に大きな目、整った顔立ちからは気の強そうなオーラが放たれている。 直感で分かったね。こいつが涼宮だって。 「お前が涼みッ・・・!!!」 言い終わらないうちに胸元に強い力が加えられた。反射的に振りほどこうとするが、なんというバカ力か、女子高生とは思えないね。 「ゲホッ、ゲホ、なにしやが」 「あんた、昨日はどんなトリックを使ったのよ!」 また言い終わらないうちに発言を中断された。とりあえずこの手を離しやがれ。 十秒程度にらめっこした後、涼宮らしき女は手を離した。それにしても妹や谷口や朝倉に続いてこいつらもまた昨日か。 一体何があったんだろうねぇ。どーせ例によって俺にはお前らが話すことの記憶は残ってないだろうがな。 33 :名前なしなし:2009/05/06(水) 00 51 23.00 ID L16jdEMsO 「ったく、いきなり何しやがる。トリックも何も俺はお前らとは初対面だ。きちんと自己紹介して事情を説明してもらわにゃ困るね!」 「何言ってんの、昨日会ったでしょ。光陽園の前であたしたちを待ち伏せしてたじゃない。それから喫茶店に行ってあんたの話をきいてそれから・・・」 「涼宮さん」 もう一人の光陽園からのお客さんが口をひらいた。身長は俺よりも高く、顔にフヌケた微笑を浮かべている。 それなりにイケメンだと評価してやってもいいのだが、なぜかこいつを見ているとなんとなくムカついてくる。それからやはりこの女が涼宮で合っているようだな。 「どうやら、昨日の彼が言っていたことは本当のようです。そして今の彼と昨日の彼は別人なのでしょう。こちらの彼が覚えていないことが何よりの証拠です。」 35 :名前なしなし:2009/05/06(水) 00 53 22.50 ID L16jdEMsO 「本当に私達のことを覚えていないのですか?私達だけではなく、こちらの北高のお二人とも面識は無いのでしょうか?」 光陽園の2人のインパクトが強すぎてほとんど視界に入ってこなかったが、あらためて俺は北高の制服を着た二人を見た。 一人は、 覚えている。ボブカットを更に短くしたような髪型が、眼鏡をかけ大人しそうな雰囲気を放つ顔を覆っている。半年ほど前図書館でこいつと会った。図書館の職員がみんな忙しそうにしている中、カウンターの前をうろちょろしていたこいつに声をかけ、図書カードを作ってやった、名前は確か・・・ 「長門、長門だよな・・・確か、長門有希。前に図書館で会った・・・。」 「・・・そう」 長門は、そのそれなりに整った顔に微笑を浮かべた。いやいや、なんか俺も嬉しいね。最近は俺の記憶と周囲の記憶が食い違ってばかりだったからか、記憶が事実とが一致すると安心する。当たり前のことのはずなのだが。長門もそんな笑みを浮かべていたような気がする。 36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/06(水) 00 53 31.08 ID 9pN+Icq60 ああ、なるほど。 38 :名前なしなし:2009/05/06(水) 00 54 58.29 ID L16jdEMsO 長門から右に約1mほど視線をずらして目に入ってきたのは、小柄な少女だった。しかしこれがまたすんげー美少女だった。俺と目が合った瞬間に目線をそらされてしまったのが何となくショックだったが、谷口に見せれば間違いなくAAAの評価を下すであろうぶっちぎりの美少女がそこにいた。 この人と直接会話をしたことは無いが、校内で何度か見かけたことがあるような気がする。たしか2年の・・・ 「あ、朝比奈さん・・・ですよね?二年の・・・」 「は、はい」 なぜか怯えた様子で返答する朝比奈さんだったが、怯えている様子もまた可愛い。しかし今はそんなことを考えている場合ではない。 「朝比奈さんとは会話をするのは今が初めてなはずですが、そうですよね?」 「えっ・・・いえ、あのっ・・・その・・・」 「あんた、本当に何も覚えてないの?昨日のことなのよ?」 涼宮が割り込んできた。覚えてないものは覚えてない。なぜかは分からんが昨日と一昨日の記憶がはっきりしない病に感染してしまったのだ俺は。というかそんなに昨日が好きか、え?過去に囚われてばかりじゃ人は前に進めないぞ。 41 :名前なしなし:2009/05/06(水) 00 56 23.93 ID L16jdEMsO 気が付くと俺たちは職員室中の視線を独占していた。ニヤケ野郎もそれに気が付いたのか、 「分かりました、ではあなたの昨日以前の行動について私達の知っている限りをお話しましょう。できれば5人きりで話ができる場所に移動したいのですが。」 42 :名前なしなし:2009/05/06(水) 01 00 20.35 ID L16jdEMsO 俺を見られても困る。第一俺は部活にも応援団にも生徒会にも属していない。部室かプライベートルームを提供しろったって無理だね。そう思っていると、 「長門さん、いいわよね?」 「・・・かまわない」 えっ。 ということで俺たちは五人揃って移動中だ。先頭に光陽園の二人、続いて長門と朝比奈さん、最後尾に俺だ。向かっているのは通称「部室棟」の二階にあるらしい文芸部室。部室棟には入学直後の部活動見学の時に一回入ったきりだ。結局俺はどの部活動にも所属することなく帰宅部部員としての部活動を全うするべく毎日をすごしているのだが、まぁそんなことはどうでもいい。 というかなぜ光陽園の二人が先頭を歩いているのだろうか。周囲の目線をこれでもかと浴びまくっているが二人に気にする様子は無いし、他校に来たというのに全く迷う様子が無いのはなんでだ。忍び込みでもしたのだろうか。 文芸部室は思っていたより質素な部屋だった。本棚とパイプ椅子数個、折りたたみ式長テーブルとその上に置いてある旧式のデスクトップパソコン、目に付くのはこれくらいかな。しかしこのパソコンは大分古いな。アンティーク物だ。 43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/06(水) 01 00 35.76 ID whDmWwUZO キョンが、PCの前から消えた後の話か 44 :名前なしなし:2009/05/06(水) 01 01 41.55 ID L16jdEMsO 俺はとりあえず本棚の近くのパイプ椅子に腰をかけた。向かいに朝比奈さんが座り、涼宮は朝比奈さんの隣、長門は窓際のイスに座る。ニヤケ野郎の分のイスは無かった。 「さて、どこからお話しましょうか。」 「まず自己紹介から頼む。最低でもお前にはしてもらわないと困る。苗字も名前もイニシャルも知らんからな。」 「おっと、これは失礼しました。僕は古泉一樹と申します。見ての通り光陽園の一年生です。よろしくお願いしますね。」 ニヤケた笑みと同時に手が差し出され、とりあえずは握り返しておいた。 「あたしは涼宮ハルヒ」 そんだけかよ。ハルヒってのか下の名前は。 46 :名前なしなし:2009/05/06(水) 01 02 50.89 ID L16jdEMsO 「俺は・・」 「あんたはいいわ。もう知ってるもの。ジョン。ジョンでいいわよね。」 「お前は俺の話を中断させるのが趣味なのか?しかもなんだジョンて。俺にはいとこの叔母が勝手につけたマヌケなニックネームはあるがそんな欧米人的なあだ名で呼ばれたことは無いぞ。」 「なによあんた、キョンとかいうマヌケなあだ名がそんなに気に入ってるわけ?変な趣味してるわねぇ。気が知れないわ。」 「気に入ってはいない。どちらかといえばやめて欲しくはあるが、というかマヌケって言うな。自分でも自覚してはいるが他人に突っ込まれるとなぜかむかつく。」 47 :名前なしなし:2009/05/06(水) 01 04 53.09 ID L16jdEMsO 「てゆーかなんでお前は俺のあだ名を知っているんだ。谷口にでも聞いたのか?」 「それも込みで、昨日以前のあなたの行動についてお話しましょう。」 古泉が言った。 「確認しておきますが、あなたの記憶がはっきりしているのはいつまでですか?昨日と一昨日の記憶が無いとおっしゃられておりましたが、では三日前はどうです?」 いちおう考えてみる。今日は十二月二十一日、三日前は十八日。何をした。俺は何をした。 「思い出せない・・・」 とりあえず形だけでもそれっぽくすれば浮かんでくるものもあるかと思い、考える人並みに考えるポーズを取った俺だったが、脳から有益なアウトプットがなされることは無かった。 「そうですか。十二月十八日といえば、あなたが朝比奈さんと長門さんに接触した日ですね。朝比奈さん、彼がどんな様子だったかをお話してくださいませんか? 52 :名前なしなし:2009/05/06(水) 01 10 01.69 ID L16jdEMsO 俺は朝比奈さんの方を見る。この小柄な上級生はなぜか俺のことを恐がっているようだった。極度の人見知りなのだろうか。 「は、はい、えっと・・・」 朝比奈さんの話によると、あろうことか俺は廊下を歩いていた朝比奈さんにかけよりいきなり両肩を鷲づかみにし、涼宮がどうとか古泉がどうとか訳分からないことを連呼したらしい。この時点での朝比奈さんは涼宮とも古泉ともまだ会ってなかったらしいから、彼女も混乱するばかりだったという。 「わ、私のことを未来から来たとも言っていました。」 未来から来た?一体何のことだ。そういうオカルトチックな話には正直ついていけそうにないのだが。俺に記憶が無いことはもう書き飽きたが、しかし朝比奈さんの言っていることが本当ならば俺はこんな美少女に暴挙を働く所だったのか。なんということだ。 53 :名前なしなし:2009/05/06(水) 01 11 12.43 ID L16jdEMsO 「それから、わ、わわ、」 なぜか顔を赤くしながら、 「わたしの、その、む、胸のここらへんに、ほ、星型のほくろがあるはずだから、見せてくれって・・・」 なんと。 「本当に俺がそんなことを言ったんですか?」 「は・・・はい」 なんたることだ。我が家系の末代までの恥だこれは。記憶が無いとはいえとりあえず謝っておかねばなるまい。 「朝比奈さん、すみませんでした。本当に申し訳ない。」 「いえっ、わ、私のほうこそグーで、その、殴ったりしてごめんなさい、痛かったですか?」 どうやら俺は手痛い反撃を食らっていたようだな。全然大丈夫ですよ朝比奈さん、どうやら殴られて当然のことを俺はしたみたいっすから。気にしないでください、覚えてないですし。なるほど、だから朝比奈さんは俺を恐がっていたのか。 54 :名前なしなし:2009/05/06(水) 01 12 22.61 ID L16jdEMsO しかしどうなってんだ。未来人?全く意味が分からない。未来人で思い浮かぶのはスーパーサイヤ人のトランクスくらいだが、朝比奈さんとトランクスに共通点があるとは微塵も思えない。 三日前の俺はこんな漫画の世界と現実とを混同してしまうほどに混乱していたとでも言うのかね。 「次にあなたが接触したのは長門さんですね」 とニヤケハンサム顔の古泉が言い、俺は長門を見る。 「・・わたしがいつものように部室で読書をしている時にあなたが突然あらわれた。そして私が宇宙人だとか、魔法のような力をいっぱい持っているとか、ホームラン専用バットを作ってくれたという話をしてくれた。でも、わたしには全くわからない話だった。」 未来人の次は宇宙人か。 57 :名前なしなし:2009/05/06(水) 01 14 03.46 ID L16jdEMsO 「あなたはこうも言っていた。昨日と今日で世界が変わっている。ハルヒの変わりに朝倉がいる。朝倉はわたしの同類。それから情報統合思念体・・・」 長門は話しを続けるが、ますます意味が分からなくなってきた。こいつら全員で俺を篭絡しようとしているんじゃないかと思えるほどだ。記憶が無いとはいえ、未来人だとか宇宙人だとか世界が変わっただとか、こんな話をされたら何言ってんだこいつら?ってなるだろう普通なら。 「その日あなたはパソコンをいじって、帰った。」 「このパソコンに何かしらのカギになっていることは間違いないのよ!」 涼宮が口を挟んできた。 「どうです、記憶が戻ってきたりはしませんか?」 「全く無い。これはもう思い出すとかより元々その記憶自体が無いと表現した方がいいかもしれんな。俺の脳は見事に何も無いと言っている。」 58 :名前なしなし:2009/05/06(水) 01 17 03.92 ID L16jdEMsO 「次の日もあなたはここに来てくれた。あなたは本棚にある本を手にとってある栞を見つけた。その栞には私の字でこう書いてあった」 『プログラム起動条件・鍵をそろえよ。最終期限・二日後』 その栞に書いてある文字は長門が書く文字と似ているが、長門自身は書いた覚えは無いのだという。じゃあ誰が書いたんだよ。 「向こうの世界の長門さんが書いたものだと思われます。どうやらその栞が、昨日以前のあなたにとって大事な手がかりとなるものだったのでしょう」 向こうの世界?なんじゃそりゃ。もうね、話が飛びすぎててわからん。お前、頭がおかしいんじゃねーのか。宇宙人とか未来人とかばっかだが、お前らはオカルトマニア研究会なのか?俺を勧誘しようってのなら他を当たってくれ。そんなもんに興味なんぞ無いからな。 60 :名前なしなし:2009/05/06(水) 01 18 20.70 ID L16jdEMsO 「僕の頭がおかしくなったという可能性も十分にあります。僕自身も昨日の出来事については、その出来事を目の前で見ていたにもかかわらずまだ信じられない部分もあるのですよ。それについても追って説明しますので、とりあえず今は僕達の話を聞いていただけないでしょうか」 その後俺は本棚の本を端から端まで調べたらいが、その俺にとって必要な物はその栞以外には見つけられなかったらしい。 しかもその日の俺はなんと、長門の家に単身乗り込んだのだという。先ほど朝比奈さんに乱暴を働いた話を聞いたばかりなので、長門に対しても何かしてしまったのかと心配になり反射的に謝ろうとしたのだが、特にそのようなことはしなかったらしい。 ほっと長門の胸を撫で下ろす。途中朝倉がおでんを持って来て三人で食事をしたらしいが、今朝の朝倉の妙な目線はこのせいだったのだろうか。 61 :名前なしなし:2009/05/06(水) 01 20 00.07 ID L16jdEMsO さて、どうやら一番重要らしいのは昨日、十二月二十日だ。昨日は途中から記憶がある。 冒頭の通りだが、いねむりから目を覚ましたのが午後6時付近、それ以降の記憶は執筆した通りだ。 それから谷口の話によれば俺は学校を途中でぬけだし、涼宮に会いに行ったそうだが・・・。 「そこまで話を聞いているのでしたら説明は早いですね。僕と涼宮さんがあなたと出合ったのはまさに昨日です。光陽園も午前中で授業が終わる日程でしたから、掃除が終わった後、僕と涼宮さんは校門を出ました。」 「あんたに会ったのは校門を出てすぐ。いきなり「おい!」って声かけられて最初は何こいつ?って思ったんだけど、あんたはあたししか知らないはずのことを言った」 何を言ったんだ俺は。ハルヒは少し間を置いてからこう話した。 「あたしはね、まぁ自分でこんなこと言うのもなんか恥ずかしいから嫌なんだけど・・・いいわ、特別に説明してあげるから感謝しなさい」 63 :名前なしなし:2009/05/06(水) 01 21 29.29 ID L16jdEMsO 「何に感謝しろって。行為の前にお礼を言うやつがどこにいる。」 「うるさいわね、とりあえず聞きなさいよ」 俺は塩をかけられたナメクジのように黙って涼宮の話を聞くことにした。 66 :名前なしなし:2009/05/06(水) 01 24 34.64 ID L16jdEMsO 「中学一年生の時よ。ある夜にあたしは思うことがあって東中に忍び込もうとしたの。鍵は事前にくすねておいたんだけどね。さて忍び込もうと思った時にあたしに声をかけてくる奴がいたわ。「おい」ってね。そいつは北高の制服を着ていた。やけに協力的だったからあたしはそいつと一緒に、白線を引く道具あるでしょ?名前忘れたけど。それで校庭にメッセージを描いた。織姫と彦星宛のね。メッセージの内容は『わたしはここにいる』 描き終った後そいつに名前を聞いたわ。その時のそいつはこう答えた。『ジョン・スミス』ってね。 まぁその時は大して気にもしなかったんだけどね。校庭のメッセージは翌日には新聞に載るほどの大騒ぎになってたけど、あたしは自分から犯人を名乗り出たわ。別に悪いことをしたつもりなんかなかったもん。だけど、犯人に私以外に北高の生徒がいたこと、そいつがジョン・スミスだと名乗ったこと、それからメッセージの内容については誰にも言ってない。だから私以外に分かる人がいるはずなかったの」 67 :名前なしなし:2009/05/06(水) 01 25 39.01 ID L16jdEMsO なるほどな。この際夜中に忍び込んで織姫と彦星宛のメッセージを描いたなんてアホなことについては突っ込まないでおこう。そして、昨日の俺がお前にいったことってのは・・・ 「そう、あんたがあたしに言ったのは、自分がジョン・スミスだってことと描いたメッセージの内容の『わたしはここにいる』について」 なるほどな、いやしかし待て、ええと、飛びすぎた話ばかりで大分頭が混乱しているがそれだとおかしい話になるのは俺だって分かる。 「おかしいだろ、お前とジョン・スミスが出会ったのが三年前だから、仮にそいつが北高の一年だったとしても昨日の時点ではもう卒業しているだろう。出会えるはずがない。昨日の俺が本当にそんなことを言ったとしても時間的にありえないだろう」 「あたしもそう思っていたわ。でもね、三年前のあの日にジョンに会った後、あたしは北高の生徒を全員調べたわ。張り込みだってした。でもジョンらしき人を見つけることはできなかった。なぜならジョンはもう北高にはいなかったから。」 68 :名前なしなし:2009/05/06(水) 01 26 41.15 ID L16jdEMsO もう反論する気すら起きない。話が破綻しているだろう。こいつらは話が読めているみたいだが俺にはもう大分前から話がかみ合っていない。帰っていいかな、俺。 「この後、あなたと私達は駅前の喫茶店に場所を移し、さらに興味深いお話を聞かせてくれました。そうですね、昨日の彼と今の彼を分けて説明するために、昨日の彼をジョンさん、こちらの彼をキョンさんとして分けて考えましょう。涼宮さん、いいですよね?」 俺のニックネームなのに古泉は涼宮に許可を求める。俺に求めろ、俺に。 まぁいいわとの涼宮の一言で俺はジョンからキョンに戻った。全然嬉しくないがな。 ジョン、まぁつまり昨日までの俺が古泉達に話して聞かせた内容を一部紹介すると、ジョンの世界では涼宮は北高に入学し、古泉も北高に転校してきたらしい。 涼宮には自分の思い描いた通りに周囲を変える得体の知れないスーパーパワーが宿っているが本人はぞれに気付いておらず、その力のせいでジョンやSOS団の面々が大分苦労した話、あ、SOS団ってのはジョンの世界でこの五人が結成した謎の団のことらしい。 69 :名前なしなし:2009/05/06(水) 01 28 13.24 ID L16jdEMsO 北高では同好会って位置づけになってるらしいが生徒会には認められてないとかなんとか。これがまたマヌケな正式名称で、世界を大いに盛り上げるための涼宮ハルヒの団、略してSOS団らしいが、ジョンの方の俺はなぜこんな団の結成を止めなかったのかね。止めようとしたがハルヒの勢いに押されて仕方なくって感じなのだろうか。そんな気がする。 そんなジョンの世界だったが、十二月十八日を境におかしくなってしまった。つまり、俺たちの世界に迷い込んでしまった、あるいは世界そのものがジョンを残して全て変わってしまったと言うのだ。 ジョンは世界を元に戻したいらしく行動していたらしいが。 72 :名前なしなし:2009/05/06(水) 01 29 58.33 ID L16jdEMsO 「特にジョンは三年前のあの七夕の日の時間遡行については詳しく語ってくれたわ」 ジョンの世界では未来人である朝比奈さんの力でジョンと朝比奈さんは三年前の七夕、ハルヒと共にメッセージを描いた日に時間遡行し、メッセージを描いた後、ジョンの世界では神がかった宇宙人的力を持つ長門に三年間の間時間を止めてもらい元の時間軸に復帰した、という話だった。 「つまり私がジョンと会った日にしか、ジョンは私達と同じ場所に存在していなかったということよ。さっきは北高の生徒を全員調べたり張り込みしたと言ったけどその時にはジョンはもういなかったの。いくら探しても見つからなかったわけ。」 ハルヒはでかい目をきらきら輝かせながら説明する。まるで昔から願っていた夢がかなったとでもいうように。反対に俺の顔は台風直前の空模様並に曇っていたことだろう。 確かに、タイムトラベルができるとなれば先ほどの話もつじつまが合う。タイムトラベルを信じるとすればだが。 ここまで来ると俺は半ばヤケになっていた。 73 :名前なしなし:2009/05/06(水) 01 30 52.23 ID L16jdEMsO 「とても今すぐに信じろといわれても無理な話だ。しかしまぁ、今は信じるとか信じないとかは脇に置いておいて、とりあえずそうであると仮定するってことでいいだろうか。まぁそうしないと話が先にすすまなそうだしな。」 「なによ!あたしの言ったことが信じられないって言うの?失礼しちゃうわね」 「仕方ないだろう。信じられる奴がそうそういるわけながい。いるとすればよっぽど頭のいい奴か悪い奴だね。まぁ俺の妹なら信じそうではあるが。」 「まぁまぁ涼宮さん、それで良いではないですか。先ほど言いましたとおり、説明している僕でさえ半信半疑な所があります。あなたの言うとおり、仮定しないと話が先に進まないのですよ」 「ちなみにあなたは、失礼、ジョンさんは僕のことについても語ってくれました」 74 :名前なしなし:2009/05/06(水) 01 32 32.60 ID L16jdEMsO この古泉は超能力者だったらしい。涼宮の機嫌が悪いと閉鎖空間なるアホ空間が出現し、ついでにそこではビルの高さほどもある巨人も出現するらしい。この巨人を倒すのが古泉の役割であり、倒さないと閉鎖空間が広がり続け、終いには閉鎖空間が現実世界と取って代わるとかなんとか。さっき言ったとおり、こいつの言っていることも正しいと仮定したさ。仮定だけどな。 宇宙人に未来人に超能力者に得体の知れないマヌケパワーを持つ奴の集まるSOS団か。さぞ楽しかろうなぁジョンは。ん、待て、ほかの四人には特別な属性があるが俺にはどうなんだ、何か聞いてないのか? 「あんたには何も無いわ」 マジかよ。 「彼は、自分には何の属性も無い唯の一高校生なのになぜ自分がSOS団にいるのかが一番不思議だとも言っていました。なぜなんでしょうねぇ」 「ふん、何のとりえも無いのに団に入れてあげたんだから、あたしに感謝の一つでもしなさいよ」 76 :名前なしなし:2009/05/06(水) 01 33 53.40 ID L16jdEMsO 何故にお前に感謝しなければならん。するならばあっちのお前だろう。まあ多分ジョンはしてないだろうがな。 フン、と涼宮は顔をそらした。うーむ。今朝谷口が言っていたが、確かにこいつはツラはいい。 朝比奈さんと比べてもそんなに見劣りしないしな。男にはモテそうだ。まぁ今はそんなことはどうでもいい、聞きたいことがある。 「ジョンは元の世界に戻したい、戻りたいと言っていたそうだが、その後どうなったんだ?俺がここにいるってことはジョンはどうにかなったってことなのか?」 そういうと古泉は少しだけ神妙な顔をして、 「そうですね、その部分についてまだ触れていませんでしたね。」 古泉は少し間をおいてから言った。 79 :名前なしなし:2009/05/06(水) 01 36 22.47 ID L16jdEMsO 「喫茶店を出た僕たちは北高に向かいました」 北高に?なぜだ。 「侵入するためよ」 あっさり言いやがった。なぜ侵入したんだ。何が目的だったんだ。 「なんとなく見たくなったのよ。ジョンが言ったSOS団ってのをね。楽しそうだったもの。五人集めてあたしたちも団を作るってのも悪くないかなと思ったのよ。五人集めてみて思ったわ、当たりだって。ピンと来たわね、なんかこう、エジソンが蒸気機関を発明した時のアレみたいに!」 ピンときたって感覚についてはまぁなんとなくわかるが。 「のどかわいたわ、みくるちゃん、お茶」 「えっ、お、お茶ですか?えっと、な、長門さん、このコンロつかえますか?」 上級生には見えないが一応上級生である朝比奈さんをいつのまにかちゃん呼ばわりしお茶をオーダーするなんてなんという図々しさか。これがハルヒクオリティか。こりゃジョンも苦労しただろうに。朝比奈さんもそんなに健気にハルヒの命令に従わなくてもいいのに。 80 :名前なしなし:2009/05/06(水) 01 38 12.33 ID L16jdEMsO 「僕ら五人がこの文芸部室にあつまったその時、急にパソコンの電源が入りました」 古泉はそう言って旧型のデスクトップパソコンを指差す。 「彼はパソコンの電源が入るや否やディスプレイに釘付けになり、かなり集中していましたね。僕らの話し声なんかは聞こえていない様子でした。彼は最後にこう言いました」 『なぜなら俺は、SOS団の団員その1だからだ』 どういう意味だ。 「彼がキーボードの何かのキーを押した瞬間、多分エンターキーですね、ジョンさんはいきなり消失しました」 消失したって、どういうことだ。想像がつかんぞ。 「目の前からいきなり消えた、ということです」 「最初はビックリしたんだけど、何かトリックを使ったんじゃないかって思ったわ。だから今日北高を訪ねて来たわけよ。もしあんたがいたらトリックって可能性もあるからね。でもあんたはいたけど、記憶は無かった。ジョンの言葉を信じるしかないわ」 82 :名前なしなし:2009/05/06(水) 01 39 40.13 ID L16jdEMsO 「そういえば長門さん、彼が消える直前のディスプレイの様子をあなたは見ていたのではありませんか?」 「・・・・・・」 長門は無言のままうなずき、 「・・・・見ていた。画面にはわたしがいた」 どういうことだ、長門。 83 :名前なしなし:2009/05/06(水) 01 41 29.71 ID L16jdEMsO 「わたしの、多分別の世界のわたしの彼へのメッセージが表示された」 一字一句正確には覚えていないけど、と長門は続ける。 このメッセージが表示されたということは、そこにはあなた、わたし、涼宮ハルヒ古泉一樹、朝比奈みくるがいるはずである。 それが鍵。あなたは答えを見つけ出した。 これは緊急脱出プログラムである。起動させる場合はエンターキーを、そうでない場合はそれ以外のキーを選択せよ。起動させればあなたは時空改変の機会を得るが成功する保障はできない。 このプログラムが実行されるのは一度だけ。実行されなかった場合はそのまま削除される。Ready? こんな感じだったと思う、と長門。長門が話してくれた栞について思い出す。そこに書いてあったカギというのがこの五人でジョンは時間内にそれを集めた。ジョンはエンターキーを押してこのプログラムを起動させた・・・ということなのか? 85 :名前なしなし:2009/05/06(水) 01 45 18.68 ID L16jdEMsO 「そういうことになるのでしょうね」 と古泉。 「僕たちがジョンさんについて知っていることはここまでです。なんせ消えてしまったわけですからね。どうしようもありません。もっとも、あなたが一世一代の演技をしているなら別ですが」 古泉はそう言って喉奥から不快な音を出した。何度も言うようだがここ三日の記憶は無い。ったく、いい加減言い飽きたぜ。 「そのジョンが消えたのが何時頃なんだ?」 「はずかしながら、僕も気が動転していて正確なところまでは覚えていないのですが、午後五時から六時の間だと思われます。・・・そうか、あなたの記憶がはっきりしているのがそれ以降だということですね」 86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/06(水) 01 46 54.70 ID Y4ZjBYmUO なるほど、異世界サイドの話か 87 :名前なしなし:2009/05/06(水) 01 47 46.86 ID L16jdEMsO 勘のいい奴だ。その通り、俺は午後六時に教室で目覚めた。気が付いたら教室にいたんだ。そこで俺とジョンが入れ替わったってことなのか。 しかしながら、あっちの長門は世界の命運をジョンに預けたのか。さっきのSOS団の話を聞いた限りでも長門には大分世話になっていたようだな。そう言って長門をちらりと見ると、恥ずかしそうに顔をうつむかせる。よく見ると長門も結構かわいいな。隠れファンとか結構多いんじゃないか?眼鏡を取った顔も見てみたいね。 「そうですね、ジョンさんはあちらの長門さんに絶対の信頼をよせていたようです。微笑ましい限りです」 すみませんといいながらくっくっと笑う古泉。しかしまぁ、お前らの言っていることを全て信じたとして、これからどうしようってんだ。もうこの世界にジョンはいないんだから何も手がかりは無いだろ。ジョンの話をネタにSF本でも書こうってのか? 「何言ってんの、そんなつまらないことするわけないじゃない」 88 :名前なしなし:2009/05/06(水) 01 49 11.07 ID L16jdEMsO 「お前は今全国のSFファンを敵に廻した。だったら何をするんだ?」 「決まってるじゃない!ジョンを追うのよ!」 「何を言っている。確かにそれはそれで面白そうではあるが、もう一度言うがジョンはもうこの世界にいないのだ、手がかりが無いじゃないか。」 「あんたもアホね!始める前から諦めてどーするのよ。やらないで後悔するよりやって後悔したほうがいいって言うでしょ。青春は待ってはくれないわ、当たって砕けろ精神で突進するべきなのよ!」 90 :名前なしなし:2009/05/06(水) 01 52 12.41 ID L16jdEMsO お前の青春に俺を巻き込まんでほしいねといい終わる前にハルヒはすっくと立ち上がり、椅子に片足をのせて石原裕次郎がかっこつけたときのポーズみたいな姿勢をして、 「みんな、いいわね!これからSOS団はジョンの後を追います!ジョンがあのあとどうなったのかは分かりません。時空改変に成功してもとの世界に無事にもどれたのか、あるいは失敗して次元の狭間でバッツ達を待っているのかもしれません。もし後者だったら助けてあげる必要があります。どっちにしろ、ジョンの無事を見届けなければなりません。明日からジョンの後を追うための手がかりを探しに入ります!いいわね!文句があるならジョンを見つけた後に文章で提出しなさい。いちおう見てあげるわ」 長門は座ったまま、朝比奈さんは人数分のお茶をトレーに置いた所で、古泉は微笑したまま、俺は何と反論すればよいかと考えながらハルヒを見ていた。 91 :名前なしなし:2009/05/06(水) 01 53 18.68 ID L16jdEMsO 「いちおう聞くが、SOS団ってのは俺たちのことか?ん?団員構成を教えてくれ」 「何アホなこと言ってんの、あたしたち五人に決まっているでしょ!そうね、団長はもちろんあたし、副団長に古泉くん、副副団長に長門さんと、あーめんどいから有希でいいわよね!、有希とみくるちゃん、キョンあんたはパシリよ!」 パシリて。 「定期集会は毎週土曜、とりあえず明日は北高も光陽園も午前授業だから駅前に集合!午後1時には来なさいよ!それからみんな、ジョンを救出するための策を考えてきなさい!いいわね!」 どうやらジョンは、次元の狭間にとじこめられている設定で決まりらしい。やれやれ。 時計を見ると、午後六時を回っている。大分話し込んでしまったみたいだ。俺は朝比奈さんがせっかく入れてくれたお茶を飲み干した。もったいないもんね。さすが天使のような朝比奈さんが入れてくれたお茶だけあって愛情というスパイスがふんだんに入っているね。ただのお茶のはずなのにただのお茶の三十倍はおいしいですよ。 93 :名前なしなし:2009/05/06(水) 01 55 43.96 ID L16jdEMsO 帰り際、俺は長門に呼び止められた。 「どうした、長門」 長門の漆黒の瞳が俺を見つめる。 「・・・・・・・お礼、言ってなかったから・・・」 「お礼って何のだ?」 「・・・・・・・図書館のカード」 あぁ、気にしなくていいぞ。部室の本棚とかもちらっと見せてもらったが、あれは全部お前が読んだ本なのか?本が好きなんだな。 「・・・そう」 「何やってんのキョン、有希ー。早く行くわよー!」 「行こうぜ長門」 「・・・・・・」 音も無くうなずいた長門と共に、俺は玄関へと向かった。 戻る 次へ
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SSノートとは・・・ 簡単に言えばSSのしおりのようなもの。子ども達がそれを見てSSを楽しみにし、 それを見てSSを思い出してまたわくわくできるもの。 例年は、持ち物リストや歌の歌詞、一日の感想を書くページがあったりしました。 SSの本番2週間前ぐらいに子ども宛に発送されます。 今年のSSノートのコンセプト 今年の自分流、自分発見のSSにあったSSノートはどんなノートだろうと考えました。 私のイメージは白いノートが4日間を通して真っ黒になっていく感じです。 自分で感じたこと、思ったことを好きな形で表現できたらと思います。 また、一日の振り返りで記入はしてもらうけどプログラムのときや自分時間など自分 が”発見”って 思ったら書き込めるのがいいのではないかなと思っています。 なのであえて多くは含めないことがいいのではないかなと思ってます。 ただ、必要なことはきちんと含めていきたいと思います。 私が思っている点をいくつかあげます。 ☆日記のページの横にその日その日で使えるメモみたいなものを1ページつける。 これをSSノートの前半にもってくる。 →自由に書けるページが1日見開き1ページある感じ。 メモは書きたいときにかける。(絵でも文字でも) 例えばこんなカレーは?っと行きの電車で思いついて、メモをしたいと思ったら書 く、見たいな感じです。 ※子ども達が1日を振り返るように少し枠組みを作ってもいいかなって思ったので すが、 ”自分で自分を発見”するには枠組みを作らないほうがいいのではと思いました。 ☆何も書いていないみの石の図を載せる。 →みの石の中をまわったときにここにこんなものがある!っていうのを書き込めるよ うにする 安全担当からの安全Mapをノートに入れるのでそれとどうかね合わせるかは安担と 相談しようと思っています。 ☆クリアファイルまたは何か入れることのできるものを付ける。 →何か見つけたものや、運営担当から出た指令書?を入れることができるようにす る。 ☆班構成、スタッフ紹介も何か変えようかなと思っています。 以上長々私の頭の中のSSノートの考えです。私の考えで勝手に進めているので皆様そ れぞれ思うことを ぜひぜひアドバイスください。”これだけは入れて!””この考えよくわからない” 等々なんでも。 今後のスケジュール 6月13日(金) SSノートの大枠決定 (各担当、または個人的に入れたいページなどをこの日までにメールしてください。) 6月18日(水) 各担当へ以下のお願いする内容の締め切り 6月24日(火) ブリーフケースにアップし、修正点等確認 7月2日 (水) 修正すること等締め切り 7月6日 (日) 原稿確定 7月12または13日 印刷、発送作業
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ハルヒ「キョン、キョン恐いよキョン!」 ① ② ③ ④ 前へ 戻る 346 :名前なしなし:2009/05/06(水) 09 50 41.92 ID L16jdEMsO ふぅ。世界は今日も平和である。 俺は今日も授業が終わると同時に謎の団・SOS団のアジトと化した、由緒正しき部である文芸部の部室へとのそのそと向かい、高校生であるのにメイドさんの衣装を着込んだメイドルック朝比奈さんが入れてくれたお茶を飲み、ちなみに朝比奈さんがメイドさんの衣装を着込んでいるのはハルヒの命令であり、それに何かの意味があるのかというと、全く無いのである。 ただ単にハルヒにとってそれがおもしろいから、気分が良いからという理由だけで、朝比奈さんは毎日、メイド衣装に着換えなければならなくなったのだ。なんとも健気で儚くしかしながら可愛い、そんなお人なのだよ。 ちなみにこの人は未来人である。去年十二月十八日におかしくなった世界を元に戻すために、俺たちと共にその日にタイムスリップしたり、三年前の七夕の日、ハルヒと校庭に落書きをしたあの日に時間遡行をしたりとこの人には色々とお世話になった。一度はTPDDとか言うタイムマシンを無くしてオロオロしていたものの、まぁその時は長門のお陰で戻ってこれたがな。 349 :名前なしなし:2009/05/06(水) 09 57 24.25 ID L16jdEMsO そんな朝比奈さんをひとしきり眺めた後、俺は窓側に視線を移す。そこにいるのは無口で読書好きな宇宙人製のヒューマノイドインターフェイス・長門有希。三年前にタイムマシンを無くして元の時間に帰れなくなった俺たちの時間をなんと、三年間もの間止めるという反則的な宇宙人的力を使い、俺たちを元の時間に戻してくれたというなんでもアリな奴だ。これ以外にも俺は長門にはかなり世話になっているのだが、 先ほど、十二月十八日に世界がおかしくなったと言ったが、世界をおかしくしてしまった張本人はなんと、この長門有希なのだ。こいつのメモリ空間に溜まったバグが引き起こしたエラーらしいが、詳細は自身でも分かっていないらしい。 世界をおかしくした張本人だからとはいえ俺は長門を責めたりはしない。なぜなら長門がエラーを引き起こす原因を作ったのは俺にもあるのだと俺は考えている。 事あるごとに長門を頼り、長門ならなんとかしてくれる、長門なら・・・と俺はいつのまにか長門まかせにしてしまっていたのだ。 こいつはこいつで色々と疲れていたのかもしれないな。これからは出来ればあまり無理はしてほしくない。と言っても俺には何の能力も無いので長門に代わって戦うことはできないが、それでも簡単に長門に甘えるのはよそう、と思っている。 351 :名前なしなし:2009/05/06(水) 10 03 33.31 ID L16jdEMsO 現在この部屋にいるのは俺以外ではこの三人。ハルヒはどこをほっつき歩いているのかは知らないが、そのうち部屋のドアを突き破らんばかりの勢いで開き、厄介ごとを抱え込んで登場するに違いない。 限定超能力者・古泉は俺とのオセロの対戦中に生徒会の仕事で呼び出されたと言って部屋から出て行った。すぐに戻りますよと言ったっきり30分も戻ってこない。オセロはもう終盤に入っており、四つある角のうち四つを俺が操る黒の騎士団に占領されており、どうあがいても古泉の勝利は無い。 勝敗の決まっているオセロの盤面をいつまでもただ見ているのもつまらないので、長門に前々から気になっていたことを聞いてみることにした。 「なぁ長門」 長門はゆっくりと本から目をそらし、俺を見る。 「十二月十八日から俺が三日間迷い込んだあの世界なんだが、古泉の主張では俺たちの改変し直しによって世界が上書きされたとかなんとか言っていたが、あいつの主張は正しいのか?」 「間違ってはいない。ただし、上書きという表現に誤謬が含まれる。その表現だと、元々そこにあったものが完全に消えてしまうということになるが、時間の流れと次元の存在の可能性とを複合的に考えると、上書きという表現は適切ではない」 つまり、上書きされても消えるわけじゃないってことか? 「それも概ね間違ってはいない考え方だが、正確ではない。人類の用いる言葉の概念ではこれらを正確に説明するのは困難、理解も困難」 352 :名前なしなし:2009/05/06(水) 10 08 03.61 ID L16jdEMsO 俺は朝比奈さん(大)の言っていた言葉を思い出す。確か未来のコンピューターは無形で脳の中に存在しているって話だったな。そのコンピューターとやらが、言葉に代わって新しい概念を提供しているのだろうか。何にしろ、そこまで技術が進歩しないと、人間が時間の流れについて理解することはできないんだろうね、きっと。 俺としてもそれに興味がないっつーわけじゃないが、理解できないんなら仕方ない。時の流れを勉強する前にテストでいい点取れとか言われそうだな、母には。 そうしている間に古泉とハルヒが同時にやってきた。 「遅れちゃってめんごめんごー!映画の続編について考えててね、良い感じのストーリーを思いついたのよ!今週末に第一回の撮影を行うわ。有希、あの魔法使いの服まだ持ってる?」 「・・・・」 音も無くうなずく長門。 「みくるちゃんはウェイトレスの格好、古泉くんは制服でいいわ。キョンあんたは雑用係よ。カメラとか機材持ってきなさいよね」 怯えながら首を横に振り続ける朝比奈さんに、ニヤケた笑みを浮かべ続ける古泉、我関せずとばかりに読書に耽る長門。SOS団のいつもの、なんの変哲もない風景だ。平和だねぇ。 俺が古泉と共にオセロに戻ろうとしたその時、 353 :名前なしなし:2009/05/06(水) 10 13 45.55 ID L16jdEMsO 長門が何かに驚いたように顔を上げ、ドアの辺りを凝視している。 本を読んでいる普段のこいつは誰かが声をかけない限り顔を上げることはない上に、そのようにして顔を上げる場合の動作は緩慢であり、驚いたように顔を上げるなどということは過去には無い。 俺と古泉がそれに気が付く。朝比奈さんはハルヒに抱きつかれてわきゃわきゃ言ってるので気付いていない様子。俺は長門にかけより、 「長門、どうした。何かあったのか?」 いきなりハルヒはがくっと膝を落とし、全体重を長門の右腕にかけてぐったりしている。 「大丈夫、眠らせただけ。全員わたしの後ろに来て、早く」 長門の後方に移動すると、長門はハルヒを俺にあずけてきた。 「・・・さがって」 「待て、何が・・おわっ!」 言い終わらないうちに長門は得意の呪文を超高速で唱え、部屋の真ん中に透明なガラスのような仕切りを発生させた。窓側とドア側に部室が分断されたという状況だ。 次の瞬間、猛烈な光と共に俺の目に飛び込んできたのは・・・・・・・ 357 :名前なしなし:2009/05/06(水) 10 34 01.30 ID L16jdEMsO 俺だった。 しかも俺だけじゃない。ハルヒ、長門、古泉、朝比奈さんまでもがいる。 注目すべき点は三つ。ハルヒが光陽園の制服を着ている。古泉が光陽園の制服を着ている。長門が眼鏡をかけている。 さて、この三つのヒントを元に何が想像できるだろうか。考えるまでもない。あっちの、消失世界の住人がこちらにやってきた、ということになるのだろうか。あるいは逆。俺の脳みそじゃそれくらいの解釈しかできないが。 仕切りの向こう側の俺、古泉、朝比奈さんは驚いたようにポカーンとしている。長門は驚き混じりではあったが、あの時の微笑を浮かべていた。沈黙から一早く復活したのはあっちのハルヒだった。 「ジョン、ジョンなのね!探したんだから!」 「お前は、あの時のハルヒか。十二月二十日に会った・・・」 「・・・やっぱり、ジョンなのね。よかった、会えて・・・」 涙ぐんだハルヒはそう言いながらこちらに進んでくる。しかしそんなハルヒのレア顔をじっくり観察する余裕は俺にも無かった。程なくして長門の作った壁に激突し、 「あいたぁっ!何これ、壁!?なんでこんな所に壁なんかあんのよ。ちょっとジョン、これどうにかしなさい!」 358 :名前なしなし:2009/05/06(水) 10 38 11.14 ID L16jdEMsO 他にも考えるべきことはあったが不覚にも俺は笑ってしまった。 「ちょ、ちょっとジョン何笑ってんのよ!早く何とかしなさいよこの壁!なんなのこれ?ガラス?すっごい硬いわね」 長門、大丈夫か? 長門は俺を凝視し、 「危険値は全くゼロではない。彼ら自体からは特殊な属性情報は感知されていないが、次元の異なっている存在が同時に存在するなどということは前代未聞。情報統合思念体には他次元にまで干渉できるような力は無い。状況情報を転送しているが、情報統合思念体も困惑している。さらに、彼らからはわたしの力の断片を感じ取ることができる」 どういうことだ。 「彼らはわたしの力を使い、こちらの世界に来たと予想できるが、わたしの記憶領域には彼らの世界にそのような力を残したという行動の履歴は残されていない。可能性があるとすればわたしがエラー動作をおこしている最中。しかしエラー動作中の履歴はわたしが正常に戻ると同時に大部分が削除され、残っている部分もノイズが多く解析することは不可能、よってこの事態とわたしの力とに関連があるのか、解析ができない」 363 :名前なしなし:2009/05/06(水) 10 45 18.10 ID L16jdEMsO 長門に解析できなこほどのことが俺にわかるわけもない。これはどうしたものかと考えていると、壁の向こう側のハルヒが騒ぎ出した。せっかちなのは相変わらずのようだが、 「なにごちゃごちゃ言ってんのよジョンと有希!いいからこれなんとかしなさいよ!こっちはね、あんたに色々聞きたいことがあるし、あんたがいきなり消えたから心配になって後を追ってきたのよ!困ってるんじゃないかってね!それが心配をかけた奴がとる態度なの?早くこの壁なんとかしなさい三十秒で!」 こっちのハルヒと全く変わらない罵声。そういえばあっちの、消失世界の住人は長門以外の性格はこっちと同じだったからな。俺に関しては不明だが。 確かに、こいつらには世話になった。こいつらがいなかったら俺はここに戻ってこれなかっただろうからな。心配してたってのも、大方嘘ではなさそうだ、さっきは涙ぐんでたしな。今は嘘のように怒った顔をしているが。俺は寝ているハルヒを団長机に置いた後、 「長門、壁を解いてくれないか。あいつらは、多分大丈夫だ」 俺を見つめていた長門は、一度団長机で突っ伏しているハルヒを眺め、また俺と目線を合わせる。 「あなたが、そういうのなら。ただし、予測不能の事態が起こった場合、わたしがあなた達を守れる保障はない。それでも」 364 :名前なしなし:2009/05/06(水) 10 47 01.08 ID L16jdEMsO 俺は返事のかわりにうなずきを返す。 「了解した。ただし障壁は消去するが彼らをこの空間から出すわけにはいかない。ドアと窓に封印をかける」 長門はまた呪文を唱え、部屋を二分していた障壁が消えたと思いきや、ドアと窓に先ほどの障壁と同じ、ガラスのような薄い板が張られた。封印って何だ?もう出られないとかじゃないだろうな。 「外側からは、人間の感覚ではこのドアと窓を認識できなくし、さらに物理的な手法では侵入することもできなくした。それだけ」 という長門の言葉も半分に、俺の胸の辺りに強い衝撃が走る。 「ぬぉあっ!なっ何しやがるっ!」 まったく、バカ力なのも変わらねぇな。 「さぁ説明しなさい、あんたは何者?なんであたし達の世界に来たの?そしてなんでいきなりいなくなったのよ。時空改変って何?成功したの?失敗したの?」 矢のように質問を浴びせるハルヒだったが、 「まぁまぁ涼宮さん、落ち着いてください」 割り込むようにそう言ったのはこっちの古泉だった。こいつはもう事態を理解しているようだ。冷静なもんだね。ハルヒはじとっとした目で古泉を見ていたが、 366 :名前なしなし:2009/05/06(水) 10 50 30.97 ID L16jdEMsO 「状況は大体理解しました。あなた方は、僕達から見ればお客さんですからね。積もる話もあるでしょうが、とりあえずお座りください」 そう言うと古泉は備え付けのパイプイスを並べ、俺にもその作業を手伝わせて、 「どうぞ、他の皆さんもお座りください。朝比奈さん、皆さんにお茶をお願いしてもよろしいですか?」 最初っからずっと唖然としていた朝比奈さんは、急に話を振られて驚いたのか 「ひゃ、はいっ!」 と舌を噛まんばかりに勢い良く返事をし、ポットのお湯を急須に注ぎこむ。あぶなっかしい手つきだ。 慌てているのは分かるが、火傷には気をつけてくださいね。 「まさか、あなたの言っていたことが本当だったとはね。僕は正直、あなたとはじめて会ったあの日にあなたが言ったことは全部デタラメだと思っていました。あなたの消失を目の前で見た後も、頭ではあなたの言動が真実なのかもしれないと理解しても、心の奥底には疑いが残っていました。しかし、このような経験をしてしまった今では、あなたの言葉を信じるより他ありませんね」 368 :名前なしなし:2009/05/06(水) 10 53 27.89 ID L16jdEMsO メイド朝比奈さん以外の全員が着席するや否や、一番に口を開いたのは光陽園古泉だった。ハルヒは、先を越されたとばかりに古泉を横目で睨んでいる。 「確かにな。俺もそうだった。こっちの世界には宇宙人も未来人も超能力者もいるが、しかし大半の人間はそれに気付くことなく生活を送っている。俺は例外中の例外なんだ。俺だって最初にこいつらから宇宙人だの何だのってー電波話を聞かされた時は全く信じられなかった。特に宇宙人とか未来人とか、そういうのが無いそっちの世界でならなおさら信じられないだろう。そもそも、どうやってこっちに来たんだ。宇宙人的、または未来人的、超能力的な力の無いそっちの世界でやれることは限られてるだろう。長門の力を使ったのか?しかし長門の力といえば俺が使った脱出プログラムくらしか思い浮かばんぞ。しかもあれは一度使ったっきり消去されるっつー設定だったはずだ」 「織姫と彦星宛のメッセージだ。それが鍵になってたんだよ」 『俺』が初めて口を開く。 『俺』は俺を凝視している。俺もそうしていることだろうが、しかしこいつは一番の謎だ。俺がそっちに行った時、お前はいなかったよな。お前は一体、何者なんだ」 372 :名前なしなし:2009/05/06(水) 10 59 34.21 ID L16jdEMsO 「んなこと言われても困る。俺は俺だ。それ以外の何者でもないね」 俺が考えそうな事を見事に言いやがる。しかしもう少しシャキっとしたオーラを出してくれないかね。 俺はよくもっとやる気を出せとか注意を受けるが、これほどそれがよく分かるシチュエーションは他に無いよ。と、またもや関係ないことをつい考えてしまっていた、そんな俺に長門が目線を投げかけてきた。 「彼の存在が誕生したのは、彼らの世界の時間で十二月二十日のことだと考えられる。あなたがわたしのプログラムを起動させると同時に、彼が構築された」 『俺』は少し考えるようなしぐさを取り、 「それはつまり、俺が生まれたのは十二月二十日だってことなのか?」 と長門の言ったことと全く同じことを言う。俺だけに頭はあまりよくないようだな。 「そう」 長門は一言だけ言い、『俺』をじっと見ている。 「そんなわけないだろ、俺には記憶がある。あんたがこっちに来ていた三日間の記憶だけきれいに無いが、それ以前の記憶はあるぜ。いとこの叔母に変なニックネームを付けられたりとか、中三の時にミヨキチと映画を見に行ったとか、他にもだ」 377 :名前なしなし:2009/05/06(水) 11 07 21.56 ID L16jdEMsO 「あなたたちの世界を構築したのはわたし。そして、わたしは・・・・ 途中で言葉を切り、長門はめがねの長門を初めて見る。眼鏡の長門は驚いた様子でいたが、しかしうつむいたりはせず、お互いに目をそらすことなく、 「あなたは、わたしが望んだ姿。エラー動作を起こしたわたしは、人間であることを望んだ。ヒューマノイドインターフェイスなどではなく、一人の人間として存在することを」 長門はまた、『俺』に視線を戻し、 「あなたが誕生した理由については、詳細まではつかめない。エラー動作中のわたしの行動履歴については、先も言った通り、解析できないから。ただ、あなたが存在することを、わたしは望んでいた。そちらのわたしがそうであるように」 長門の漆黒の双眸が、今度は俺を見つめている。 「あなたが時空改変プログラムを発見し、無事に起動させることができた場合、あなたという存在はあちらの世界からは消える。わたしが一人にならないように、あちらの世界でのあなたの存在を用意したのだと思う。」 381 :名前なしなし:2009/05/06(水) 11 09 22.68 ID L16jdEMsO また『俺』に目線を戻し、それがあなたが誕生した理由、と長門。何て言ったらいいのかね。長門よ。言葉が出てこないよ。 「そうか、わかった。その点はそれでいいことにしよう。しかしだな、長門の言うエラー動作ってのは何のことだ。他にも何だ、その、世界を構築したのが長門ってのはどういう事だ。更に記憶だ。それについてはどうなんだ。記憶だけ持っている状態で生み出されたとか言うんじゃないだろうな。そんなの、信じられんぞ」 「記憶を持った状態で誕生したという認識はあながち間違っていない。あなたは自分が十二月二十一日に誕生したことが信じられないようだが、わたしがあなたたちの世界を構築したのは十二月十八日。あなたを除いても他の四人は、十二月十八日に誕生した。記憶を持った状態で」 俺は予期せぬ訪問者達に俺がそっちの世界に迷い込むに至ったまでの過程、理由、俺がプログラムを起動させた以降のことについてや、その後に判明したすべての真実について詳しく話してやる。もちろん、長門のバグによって引き起こされたエラーの働きであっちの世界が想像され、それを元に戻すために東奔西走したことも話した。まぁこっちには朝比奈さんもいるし、朝比奈さん(大)についてはうまく誤魔化しておいたが。 383 :名前なしなし:2009/05/06(水) 11 11 22.22 ID L16jdEMsO 話し終える頃には訪問者達は、みんな唖然としていた。 「あたしたちの世界を作ったのが有希で、ジョンだけが正常な状態で取り残されたってわけ?やっぱりあたしたちの世界は間違った世界なの?それからあたしたちが作られたのが十二月十八日だとするとまだそこから一週間も経ってないじゃない。信じがたいわ・・・」 そう思う気持ちはわからんでもないがな。 「結局のところ、僕達の世界が存在しているということはどういうことなのでしょうか。僕は世界がパラレルワールドのような形になっているのか、あるいは時間の流れは一つだけで、時空改変によってすべてが上書きされてしまったりするような形になっているのかという推測をしたのですが、結局後者なのではないかという結論に至りました。しかしジョンさんは改変を成功させたのに僕達は存在しているし、あなたたちの世界もまた存在している。これは、どういうことなのでしょうか」 光陽園古泉が言う。それはお前らが来る直前まで俺が考えていたネタなのだが。 384 :名前なしなし:2009/05/06(水) 11 14 02.02 ID L16jdEMsO 「世界の成り立ちは時間の流れと大きく関係している。そして時間の流れについてを人間の用いる言語を使って説明するのは困難が極まる。理解も困難。なぜならば、時間の流れのメカニズムの概念は人間の用いる言葉の概念と大きくかけ離れているため。数字を用いずに数学を学ぶのが困難なのと同じ。よってその疑問に答えることはできない。しかし非常に簡易的に説明すると、時間の流れと次元の存在の可能性を複合的に考えると、あなたたちの世界とわたしたちの世界が二つとも独立し存在するに至る可能性はゼロではない。実際、こうして存在している。あなたたちの世界はわたしたちの世界がベースになっている、いわば川の支流みたいなもの。間違った世界だという認識こそ間違い」 先ほどよりも少し分かりやすい説明をしてくれた長門。 「さて、こっちの事情を話したんだ。こんどはそっちの話を聞きたいね。どうやってこっちに来たんだ。織姫と彦星のメッセージが鍵だとかお前は言っていたが、どういうことなんだよ」 唖然としっぱなしでいた『俺』がハッと我に返ったようなリアクションをとる。 「あ、あぁ・・・。まだ話してなかったな。俺たちは・・・ 386 :名前なしなし:2009/05/06(水) 11 18 14.20 ID L16jdEMsO 『俺』が話しを続ける。どうやら、俺が使った脱出プログラム以外にもまだ手段が残っていたようで、こいつらはそれを使ったのだ、という認識でいいのか。 「長門、お前が俺が使った脱出プログラムを残してくれたのは実際に俺が使ったから知っているが、あいつらが使ったプログラムを残したのは、お前なのか?」 「・・・・・・・・」 長門は黙っている。こいつにも分からないのだろうか、いやしかし、長門はあいつらに自分の力の断片を感じるとも言った。それがその校庭プログラムとやらなんじゃないのか?もうしばらくの沈黙の後、長門が口を開いた。 「彼らが使用したプログラムは、わたしが作成したもので間違いない。しかしわたしにはそのような動作を行った履歴は残されていないために、エラー動作中に行った行動だと予測できる。それ以上は、不明。なぜこのようなプログラムを残したのか、推測できない」 そう言い、長門は口を閉じる 不明、か。しかし、俺にはなんとなくだが分かる気がする。長門はバグにまみれてもなお、俺を救おうと手段を残してくれた、ということなのかな。実際、俺が脱出プログラムを100%起動させられたかどうかを考えてみても、どちらかというと起動させられずに終わってしまう可能性のほうが高い気がしないでもない。あっちのハルヒの行動力が無ければ、鍵を集めることすらできなかったろう。 俺は長門を見つめ、長門の闇色の瞳に俺が映る。ありがとうな、長門。本当お前には頭が上がらないよ。 387 :名前なしなし:2009/05/06(水) 11 20 11.04 ID L16jdEMsO その後俺たちはいろいろなことを話した。俺とハルヒが出合った時の事、突飛な自己紹介に驚いたこと、SOS団で参加した野球大会のことや映画についてなども。あっちの奴らも話してくれたぜ、クリパのこととかな。そうして小一時間くらい経っただろうか、長門が口を開いた。 「・・・そろそろ、時間」 訪問者たちにそう言い放つ。 「時間って、何のことよ。あ、そうそう、あたしたち、元の世界に帰る手段が無いのよね。どうすればいいの?あんたたちなら何とかしてくれそうだけど」 さすがだな。後先考えず突っ走る所はこっちもあっちも変わらず、か。 「あなたたちとあなたたちの時空とのつながりが弱くなってきている。今なら私の力を使いあなた達を元の世界に戻すことが可能。この機を逃すと、帰還は困難」 そう言うと長門は床に魔方陣のようなものを描き始めた。 「ちょっと待ってよ、まだ話してないことだって沢山あるのよ、時間が無いって、あとどれくらいならいいのよ」 388 :名前なしなし:2009/05/06(水) 11 22 30.46 ID L16jdEMsO 長門の言葉に納得できていない様子のハルヒであったが、フッと我に返り、 「そうね、わかったわ。わがままは言わない。あたしたちはあたしたちの世界に帰るべきなんだわ。あんたがそうしたようにね。」 「そうだな」 『俺』が言う。 「あんたも大変な苦労をしてきたみたいだしな。これ以上苦労を増やさせる訳にはいかんだろ。えっと、そっちの寝ているハルヒには世界を作り変える力が宿ってるんだっけ?とてもそうは見えないな」 『俺』は落書きでもしたそうな顔でハルヒを見ている。やめとけよ、後が恐い。俺がとばっちりを食らうことになるんだからな。 「世界を作る力か。軽く羨ましいわね、ふふ」 ハルヒが、寝ているハルヒの頬をつつきながらそう言った。そんなハルヒに俺は言う。 「もしお前がこの力を持っていたらなら、どうする?」 こいつはハルヒであり、かつそのヘンテコパワーを持っていない。聞いてみたくなったのさ、どう答えるのかをな。 390 :名前なしなし:2009/05/06(水) 11 25 42.14 ID L16jdEMsO 「そうね、まず世界をあたし中心に回るようにして、宇宙人や未来人や超能力者がうじゃうじゃいる世界に変えて・・・ ハルヒは沈黙する。 「あたしね、ちょっと分かったんだ。キョンには言ったんだけど、本当はちょっと恐かったの。ジョンを助けるとか大口を叩いておいて情けないなとも思ったけど、ここに来れたのはみんなのお陰なのよね。あたし一人ではできなかった。あたしにはSOS団があるもの。だからそんな変な力なんてあっても意味ないわ。なんせあたしのSOS団に不可能の文字は無いんだからね!」 そう言って微笑むハルヒの顔には、一変の迷いも見られない。 そうだな。俺たちだってそうさ。いい答えを聞いた。 「時間。急いで」 長門の声に倣い、訪問者達は陣の内部に移動し終わると、陣が光り始めた。 「そっちの『俺』よ。ハルヒのことは頼んだぞ」 俺は『俺』に言う。 393 :名前なしなし:2009/05/06(水) 11 29 23.18 ID L16jdEMsO 「お前こそな。喧嘩とかすんじゃねーぞ。それから風邪に気をつけとけよ」 母親みたいなことを言う『俺』だった。 「じゃあね、ジョン。元気でね・・・ 「ああ、お前もな。あんまり団員に迷惑かけるんじゃねーぞ」 陣の光量が増してゆく。 「ま、待って!」 眼鏡の長門が叫ぶ。どうした、何か忘れ物でもしたのか 「こ、これ・・・ 長門はカバンから何枚かの紙切れを取り出し、俺に渡す。 「これは・・・」 「あなたがわたしたちの世界に迷い込んだ時に、わたしが書いていた詩。あの時は見せられなかったけど、完成したから、あとで読んでほしい」 なるほどな。やはりあの時は何か書いていたんだな。しかしいいのか、俺なんかに渡して。 「・・・いい。あなたに、お礼を言いたかった。口下手で、友達もいなかったわたしとSOS団をめぐり合わせてくれたのはあなた。ありがとう」 396 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/06(水) 11 35 53.30 ID ROVs9OqVO 消失長門にとって一つの救済とも言えるSSだな 398 :名前なしなし:2009/05/06(水) 11 36 15.77 ID L16jdEMsO 俺は眼鏡越しに長門の漆黒の瞳を見つめる。いつかのように、目をそらすことはない。 「そうか、よかったな。俺のほうこそお礼を言わなくちゃな。お前がいてくれたからこそ、俺は俺の世界を取り戻すことができたんだ。ありがとう、長門」 長門は、あの時と同じ微笑を俺に見せ、陣の内部に戻る。 「じゃあな、お前ら。あっちの世界でも仲良くやれよ!」 五人の声が入り混じった声が聞こえると共に、光量が更に増加、目も開けてられないほどにまぶしくなったかと思いきや、次の瞬間には、陣だけが残され、訪問者達は消えていた。 「長門、奴らは無事に元の世界に戻れるのか?」 「問題ない。・・・今、無事に到着したのを確認した。彼らの世界とのつながりを切断する」 399 :名前なしなし:2009/05/06(水) 11 37 05.94 ID L16jdEMsO 俺はしばらく、さっきまで訪問者達がいた陣を見つめていると、 「彼らもまた、涼宮さんが望んだ結果なのかもしれません。おっと、こちらの涼宮さんのことですよ。」 と古泉。どういうことだ、奴らは奴ら自身の意思でこっちに来たんだろう。 「涼宮さんの最初の自己紹介を思い出してみてください」 あの自己紹介は一生忘れないだろう。一瞬にして担任を含むクラス全員を氷つかせたあの出来事をな。 宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたらあたしの所まで来いとかそんなんだったな。まさか・・・ 「そうです。つまり彼らを異世界人として解釈するのはどうかってことですよ。異次元の住人が僕たちの世界にやってきたんですよ。異世界人として十分なステータスを持っていると思いませんか」 そう解釈すれば、奴らがここに来たことについて変な理由付けをしなくてすむ、と古泉。 確かにその解釈は悪くなさそうだが、正直、そんなことはどうでもいい。SOS団があるから、変な力なんていらないと言ったハルヒ。頼んだぞ、ハルヒよ。あっちのSOS団をな。未来永劫の発展のために、せいぜい『俺』をこきつかってやってくれ。 元気でやれよ。 403 :名前なしなし:2009/05/06(水) 11 39 17.37 ID L16jdEMsO 視界が一気に暗転し、これは来た時のような重力の喪失が始まるのかと思いきや、気が付くと、俺たちが出発した北高の校庭に立っていた。織姫と彦星宛のメッセージが書いてあるから間違いないね。 もちろん、光ってたりはしていない。 「ねぇキョン」 少しの沈黙の後、ハルヒは口を開く。 「ジョン達、大丈夫かな」 「大丈夫だ。なにせジョンはとんでもねー苦労をしてまでも仲間を取り戻そうとした奴だ。これから先何が起こってもあいつらならなんとかやるさ。ま、さすが俺ってとこだな」 そんな俺に突っ込みをいれることなく、微笑を投げかけてくる。 「そうね、まぁ、あんたを褒めたわけじゃないんだからあんま調子に乗んないでよね」 自然とフッと笑みがこぼれた。 「さて、まだ安心はできませんよ」 と古泉。そうだ、校庭の落書きを消す作業がまだ残っている。 今日は朝早く起きてこんな大変な目にあったというのにまだ休めないとは。まぁ仕方ないがな。 405 :名前なしなし:2009/05/06(水) 11 40 40.00 ID L16jdEMsO ハルヒはハルヒ文字を書いたときと同じく肉体労働を男共にまかせ、長門と共に夜空を見上げている。 あいつらも、この星空を眺めているのだろうか。 朝比奈さんは壁によっかかりうとうとしている。疲れたからな。俺もそうしたい。 文字を一通り消し終えた後、ハルヒはこう言った。 「みんな、今日はお疲れ様。とりあえず今日は解散ね。明日反省会をするわよ!」 明日かよ!休ませろよ! 「なによ、文句は言わせないわよ!時間が経つと記憶が薄れるのよ!こんなレアな体験の記憶が薄れるなんてもったいなわ!本当は今すぐにでも反省会をしたい所だけど、さすがに今日は疲れたしね。明日でいいわ!」 と、まったく疲れた様子を見せずに高らかに話すハルヒ。 まぁいいか。 正直言って、楽しかったからな。SOS団としてこれからもお前に振り回されるのも悪くない。 これからもわががまで傲慢で高飛車な我らの団長でいてくれ。ハルヒ。 俺たちは同時に帰路に就く。 今日のハルヒの鼻歌は、JamProjectのSKILLだった。 おしまい 406 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/06(水) 11 41 41.25 ID ZyPQO7jVO 乙 407 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/06(水) 11 42 08.40 ID tcttNg6a0 乙!! 408 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/06(水) 11 42 45.98 ID ROVs9OqVO 乙だぜぃ なんだかもう、驚愕が出なくても良いような気がしてきた 425 :名前なしなし:2009/05/06(水) 11 53 39.28 ID L16jdEMsO コラム 約半日の長丁場、はじめから支援してくれた方、途中から支援してくれた方、共にお礼を言わせていただきたいと思います。 これ、実は二年前に作ったもので、当時は恥ずかしくてアップできなかったのですが、今になって読み返してみたら意外と読めたので、ちょっと勇気を出して投下してみました。 スレタイについてはあまり意味ありません。始めは涼宮ハルヒの再会あたりを考えていたのですが、このタイトルの方がクリックしてくれそうなのでこうしました(笑 次回作は二年後くらいになります(笑 ご期待下さい。 それでは、またの機会にお会いいたしましょう!グッバイ! 前へ 戻る
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SS作成方法 このページではダンゲロスSS4に投稿するSSの作成方法・内容の指針を説明します。 作成するSSの「お題」大枠について 今回のゲームでは、参加キャラクターはトーナメント形式で戦い、生き残りを目指すことになります。対戦相手を自慢の特殊能力で打ち倒し、すべての戦いを制しましょう! ゲームの世界観やバトルロイヤルのルールの詳細は基本設定・試合ルール・プロローグをそれぞれご確認ください。 作成するSSの「お題」対戦相手・舞台について キャラクター募集が終わり次第、2試合ずつ試合組み合わせが作成されます。 その際に、各試合が行われる試合場も決定します。 試合場の詳細については戦闘空間をご確認ください。 SSの募集と公開の順序【重要変更点】 ダンゲロスSS4では、従来のSSキャンペーンのように組み合わせ決定・SS募集を一括では行いません。 2試合ずつ、マッチングと戦闘空間が決まった順にSS募集を行い、公開も2試合ずつ行われます。 作成するSSの「お題」試合のルールについて ゲーム内のバトルロイヤルで規定されている勝利条件は以下の通りとなります。 ・他の全対戦相手の殺害、戦闘不能、降参、または戦闘領域離脱 これまでのSSキャンペーンと異なり、この条件を守っている限り、反則行為は一切ありません。 プレイヤーは以上のルールを把握した上で自分のキャラクター、相手のキャラクター、試合場の設定を踏まえつつ、自分のキャラクターが試合に勝利するSSを書いて投稿してください。 作成するSSの内容について キャラクターの設定や能力の応用方法について、キャラクターの設定欄に書かれていないことであっても、後づけで設定を足すことは(それが相手キャラクターに関することであっても)可能です。もちろん無理な後づけは読者を納得させるだけの説得力を持たせる必要があるでしょうから、十分に注意しましょう。 勝ち残ったSSはその時点で今回のゲームにおける「正史」となり、そのSS内で登場した新たな設定なども公式のものとなります。そのため、2回戦以降は対戦相手のキャラクター説明だけでなく、相手が勝ち上がってきた過程のSSも読むように心がけましょう。 惜しくも負けてしまったSSの内容は並行世界で起きた出来事として「あー隣の並行世界では勝てていたんだけどねー」などと扱われます。新たな設定が登場していても公式のものとしては扱われません。 SSは試合のみを書く必要はありません。試合の前後を膨らませてもよいでしょう。ただし、あまりにも長すぎるものは読者が途中で読むのをやめる可能性があるので、十分に注意しましょう。 幕間SSについて また、試合のSSだけでなく、試合外での参加選手同士の交流や、自分の(場合によっては相手の)キャラクターの設定を深める幕間SS(補足SS)を作成するのもよいでしょう。 幕間SSはダンゲロス掲示板に立てた専用の幕間SSスレッドに書きこんでください。 幕間SSに投稿期限はありません。好きな時に書きこみましょう。 幕間SSで事前に書いた設定を使って試合SSを作成するのもよいでしょう。もしもそのSSが勝ち残った場合、引用した幕間SSの内容もまた今回のゲームにおける「正史」として扱われます。 SSが出来上がったら SS投稿期限内に作成したSSを投稿しましょう。投稿方法は次のページ【SS投稿方法】をご確認ください。 SS投稿期限を過ぎた場合、失格となります。十分にご注意ください。