約 1,738,190 件
https://w.atwiki.jp/indexssindex/pages/123.html
Date 2006/05/25(Thu) Author SS1-198 この邂逅より時を遡ること少し。 「で、黒子。アンタいつまでついて来る訳?」 「それは愚問ですわお姉様。お姉さまの行く先こそがわたくしの目的地ですわ」 御坂美琴と白井黒子は常盤台中学の下校ルートからは幾らか外れたところにあるファミレスの中で、噛みあっている様で実は噛みあってない会話をしていた。 「全く。風紀委員の仕事とかは無いの?」 「ええ。先日のテロ事件で働きを評価していただきまして、今日は完全完璧のフリーですの」 対面に向かい合って座った二人は、互いに注文した食事を順調に減らしている。 ちなみに美琴はミルク風味ミートソーススパゲッティーにオニオンサラダ、白井は茸ソースのハンバーグとパンのセット、飲み物は美琴はホットミルクティーで白井は黒烏龍茶と言ったメニューであった。 「あー、こないだの?」 「はいですわ。ですから、今日は前々から計画していた『お姉様密着大作戦』を実行しようと思いましたの」 「何なのよ、その聞くだけで気分が萎えそうになる作戦は。で?」 げんなり、と言った感じで美琴がフォークを振りながら先を促す。 「最近のお姉様の行動はどこかおかしいと思いますの。門限ギリギリまで出歩く回数も以前に増して増えたような気も致しますし、こうやって寮や食堂以外でお食事をとろうとする事も多くなったような気がするんですの」 ぴたり、と一瞬美琴の動きが止まる。しかし何事も無かったように再び動き出し、 「ふーん、そうだったかしら」 と、白井の顔を一瞥する。 「それで?私の行動が変だからどうしようっての?」 「そんなことは聞くまでも無い事ですわ、お姉様」 美琴の視線を真正面に受け止めて、白井は宣誓する様に右手を胸に当てて謳い上げる。 「お姉様についた悪い虫を排除するに決まっているじゃありませんか」 ずべしゃあ、と言う効果音がつきそうな程の大きな動きで美琴はずっこけた。 「まぁまぁまぁお姉様ったら、そんなわかり易いリアクションをなさっては一目瞭然ですわよ」 「な、な、な、なんて事を言うのよアンタはーっ!?」 がばっと起き上がりながら、美琴は叫ぶ。 どうでもいい事だが、ここが公の場という事を忘れてはいないだろうか? 「どこをどうやったらそんなトンデモな話になるのよ!て言うか大体悪い虫ってのは何!?」 「それは勿論、あの殿方の事ですわ。夏休みの終わりの日に寮の前でなさっていたやり取り、忘れたとは言わせませんわよ?」 「あ、アイツは全然、そんなんじゃないわよっ!何言ってるのよ?」 「そんな!?わたくしの推理が間違ってるとでも?」 「間違いも間違い、大外れよ!!」 怒りの所為か、顔を紅潮させて美琴は吼えた。 ……隣の席のカップルが刺激しないように席を立っていく。 「……でしたら、何故このような所でお食事をなされるのですの?」 至極当然と言える疑問を、白井は投げかけた。 「……今日はそういう気分だったのよ」 そう言って、温くなったホットミルクティーを一気に呷る。 「まぁ、そうだったのですの。わたくしはてっきりお姉様が、このファミレスはあの殿方と会ったことがある場所でここでなら偶然会えるかもいえ例え会えなくてもそんな想い出に浸りながら優雅に食事をしたい、と思っておられるのかと思いましたわ……って大丈夫ですの!?お姉様!」 白井は突然咽た(奇跡的に口の中のものをぶちまけると言う醜態は晒さずに済んだ)美琴の背中を擦ろうとして、テーブルを回り込もうとする。 そんな白井の動きを片手で制し、 「えほっ……大丈夫よ。ったく、いきなり変なこと言わないでよね」 と言いながら、カップを片手に席を立つ。 「あら、おかわりですの?でしたらご一緒いたしますわ」 と言って、白井も自分のコップを空にして席を立つ。 「別に一緒に来なくてもいいわよ」 「そうは参りませんわ。お姉様ある所わたくしありですもの」 はいはい、と空いてる片手をひらひらとさせてドリンクバーへと向かう。 そこに待ち受けるモノを知らずに。 で、現在に戻る。 口火を切ったのは上条だった。 「御坂と白井じゃねーか。こんな所でも会うなんて奇遇だな」 その言葉に、白井が反応する。 「まぁまぁまぁなんという事でしょう!噂をすれば影が射す、と言うのはあながち間違った言葉でもございませんのね?」 これに美琴が過剰に反論する。 「な、何言ってんのよ黒子!誰が誰の噂をしてたって言うの?」 「あら、そう言えば噂をしていたのはわたくし一人だけでしたかしら?」 えへ、黒子失敗☆、などと頭をコツンと叩きながらウインクする白井。 そして、そんな流れについて行けないのが若干一名。 「………………。誰?」 ぽつり、と呟かれた姫神の問いに上条が答える。 「あぁ、姫神は会った事無いよな。えーと……」 一瞬の逡巡後、続ける。 「常盤台のレベル5ビリビリ中学生とそのルームメイトの風紀委員だ」 「ちょっと!何なのよその説明の仕方は!」 美琴の抗議もどこ吹く風。 「常盤台のお嬢様でもファミレスなんかに来るんだなぁ。もっと良いもの食えるんじゃないのか?」 「それは勿論そうですわ。グレードで言えば、こちらの料理など足元にも及ばないクラスだと個人的には思いますわ。まあ、これはこれで良いものだとは思いますけれど」 「って黒子も普通に流すんじゃないっ!……それで、そちらの方はどこのどちら様?」 一頻り激昂して深呼吸一つ。とりあえずの平静を取り戻して、今度は美琴が問う。言葉尻に微妙な殺気が滲み出ていたりするが。 「姫神秋沙。クラスメイトだよ」 この上条の言葉に、 「へぇ……、クラスメイト、ねぇ……」 なぜか押し殺すような声で唸る美琴と、どことなく楽しそうな顔になる白井。 二人の視線の先には、しっかりと繋がれた上条の右手と姫神の左手がある。 「ははぁ、クラスメイトさんですの。でも、ただのクラスメイトだ、とは仰いませんわよねぇ?」 ぷぷぷ、と笑いそうな仕草で口元を押さえながら白井が言ってくる。それを聞いて、更に美琴からの視線が強まる。 「……えーと」 (何、何なの、何なんですかこのプレッシャーは!?何かマズい事を言いましたかー!?) 強いて言えば、その鈍感なところが拙かったかと思われます。 美琴からの理不尽なプレッシャー(上条主観)を受けて硬直する上条。 と、姫神がその上条より一歩前に出る。 「始めまして。私。姫神秋沙」 ぺこり、と一礼。 「それで。あなたたちの名前も教えてもらえると。ありがたいのだけれど」 姫神の問い掛けに、美琴達も素直に応じる。 「御坂美琴です。こちらこそ始めまして」 「白井黒子と申しますわ」 二人からの答えに、こくり、と首を縦に振り、 「御坂さんと。白井さんは。上条君と私の関係が気になるみたいだけど。私たちは。本当に」 ここで一拍止まり、続ける。 「ただの。クラスメイトだから」 「あらあら、でもただのクラスメイトにしては随分と親密になさっておられるみたいですけれど?」 白井からの揶揄交じりの指摘に対しても、 「この手は。そういうのとは違うから」 「どう違うって言うのよ」 どこか不機嫌そうに、美琴が反駁する。 「これは。こうして貰わないと私が困るから。上条君に協力して貰っているだけ」 「「…………、ハイ?」」 姫神の答えに、意味が判らない、と言う風に声を上げる二人。しかし、姫神はそんな二人を気にも留めずに、いまだ固まってる上条に声を掛ける。 「君。そろそろ席に戻らないと。ウェイトレスさんが困ってる」 そう言って指を差した先には、確かに注文の品を手に空席の前でオロオロしているウェイトレスの姿がある。 「ん、そ、そうだな。じゃあな御坂、白井」 上条が二人へ声を掛けている間に、姫神は手際よく自分のイチゴサイダーを注いでいる。 そして、そのまま自分たちの席へと戻っていった。 後に残されたのは。 「……お姉様、わたくしたち体良くあしらわられたのでしょうか……?お姉様?」 「ふ、ふふ、また私はこんな扱いな訳……?」 ご愁傷様です。
https://w.atwiki.jp/indexssindex/pages/202.html
Date 2010/02/13(Sat) Author SS 7-204 幻想殺し(イマジンブレイカー)と狂気の宝石(クレイジー・ダイヤモンド)その② 上条は白井との一騒動のあと、無事に食品街のコンビニへ着いていた。 そして、コンビニで食料を買いあさっていく 今日の夜ゴハンは何にしましょーかね?なんていう主婦みたいな言葉を呟いている。 (そういや、インデックスどこまで行ったのかな?) なんて呑気なことを考えがら、適当に商品をかごに入れレジに並んだ。 卵はこの後、不幸な出来事に巻き込まれる可能性が高いので買わないことにした。 さーて、家かえって昼飯食うかー!と心の中で叫びを上げながら、コンビニを出る。 すると、食品街のある場所に人だかりができている。 どうやら、どっかの馬鹿が喧嘩か何かで騒ぎを起こしたらしい。 ヤジウマ根性の働いた、上条はその人だかりにつっこんでいき状況を確認しようとする。 ようやく最前列まできた上条が見たものは。。。 「う、うぐゥ。あのチビガキなめやがって。チクショウ。。」 ちっちゃい声でブツブツ呟く大柄のカリアゲ少年がいた。手には手錠を付けられアンチスキルに連行されている。 上条はその少年を見て何か違和感を感じる。その少年の制服に見覚えがあったからだ。 学園都市では見慣れない紫の制服なのだが、どっかで見たような…。 上条はハッと思い出す。 さっき携帯を直してくれた少年も同じような制服を着ていたということを。 細かいところがちょっと違うが、服の色・ボタン・校章を見る限り同じ学校の制服だ。 また上条はもう一個のことに気がつく。 白井が追いかけているのは、このカリアゲ少年の仲間だということを。 これに気がついた上条は気が気でなくなり、白井とリーゼント少年の後を追うことにしたのだった。 一方こちらは億泰。 彼は先ほどまで気絶していた。 そして、起きたらなんか警察らしき人がまわりに立っていて。。。 連行されているのだ。 「う、うぐゥ。あのチビガキなめやがって。チクショウ。。」 億泰は自分を気絶させたあの少女に対しての憎しみをブツブツと呟く。 実際、億泰は自らのスタンド「ザ・ハンド」で難なくこの状況を脱せるのだが。 そこで、色々な騒ぎが起きてもっと面倒なことになるのは、高3にもなった億泰には考えることができたのだ。 いまの彼には仗助たちの無事を祈ることしかできない。 (仗助、康一、由花子、無事でいてくれよ…) 億泰は護送車に連行されていった。 その頃… 「ハア、ハアハアハア…」 道の真ん中を走る怪しい人影が、監視カメラにキャッチされる。 その人影は、白井の報告した不審者の特徴を満たすものだった。 「逃げ切ったか…?」 少年はまだ自分の姿が全ジャッジメント・アンチスキルに通達されたことを知らない。 さきほど、山岸由花子が起こした一件で自分たちがかなりの危険人物扱いされていることも。 「追ってはこないッスね…」 一安心して、リーゼント少年・仗助は一休みする。 だがその休みも何者かに中断される。 「そこの君?」 呼びかけられた仗助はヒョイと顔を上げる。 顔を上げると同時に、呼びかけた人物が飛び掛ってくる。 「ウぉあ!?な、なんスか!?急に。」 間一髪で攻撃を逃れた仗助は、飛び掛ってきた人物を見る。 そこにいたのは、メガネで巨乳なジャッジメント・固法美偉だった。 to be continued...
https://w.atwiki.jp/indexssindex/pages/120.html
Date 2006/05/20(Sat) Author SS1-276 突如、学園都市は“闇”に覆われた。 作り出された巨大な密室。 囁かれる「非公式肉体変化」の超能力者。 更にその中で発生した密室殺人事件。 そこに、一人の魔術師が降り立つ。 「犯人は、詐欺師(トリックスター)だ」 宣告。 そして魔術師は犯人を嘲笑うようにトリックを解き明かす。 一方土御門と共に巨大密室の調査を進めていた上条は———。 空腹でぐったりしながら魔力元をサーチしていたインデックスは———。 招かれざるモノ“C”と魔術師の物語が幕を開ける。 『トリックスターズC』開幕!
https://w.atwiki.jp/indexssindex/pages/83.html
Date:2006/01/30(Mon) Author:SS1-9 警報音がなりひびく。 次々と閉められていく隔壁。 その学園都市の協力研究機関には、シスターズのひとりがいた。 「これ以上は一人だって死んでやることはできない」 その思いをむねに、ミサカ=シスターズはこの研究所からの脱出を試みる。 敵対組織の襲撃により研究所内を徘徊する異形のモンスター。 行く手をはばむ、数々の仕掛け。 様々な謎。そして陰謀。 それらすべてを乗り越えた先にあるものは・・・。 『とあるミサカのレディオノイズ————第一回————』 いま、ミサカの覚悟がためされる
https://w.atwiki.jp/indexssindex/pages/193.html
Date 2010/01/31(Sun) Author 非の打ち所も無い素晴らしき青空の下、御坂美琴はコンビニでの立ち読みを終え、行き先もなくふらふらと街を歩いていた。 せっかくの休日というのに、いつもなら買い物に誘ってくる黒子は朝早くからどこかへ出掛け、自分は昨晩の一件に頭を悩ませている。 「あー、もう……なんでお持ち帰りしちゃったかなぁ……」 腕を組んで考えるが、後悔先に立たず。溜め息が出るばかり。 「喉渇いたわ……」 丁度、いつもの公園の近くを通りかかったのもあり、そのまま自販機の元へ。 「…何やってんの?」 「あちちち!」 思わずジト目となった美琴が見たのは、温かい、いや、熱湯となったコーラでジャグリングしていた上条の姿だった。 「アンタもつくづくツイてないわねぇ……今時熱々のコーラって……。何時の時代の人?」 「うるせぇやい。上条さんにはこれ位がデフォなんです」 「あはは、なにそれ」 噴き出す美琴に、上条は目の幅涙をぶわっと流した。 そんな姿を憐れんでか、美琴は自販機に手を触れ、帯電し始める。 「おいやめろバカ」 「早くもこの自販機は終了ね」 ※自販機荒らしは犯罪です。絶対に真似しないでください。 「お…お?一本だけ出てきた」 「何回練習したと思ってんのよ」 「えー」 ふと、上条が缶ジュースを二本持っているのに気付いた。またあのシスターか、と思考を巡らせる。 「あー…知り合いの分だからな?」 「はいはい、またいつものシスターね」 「? 違うぞ?」 「へ? そ、そう…」 変な奴、と言いたげに上条は首を傾げた。逆に、美琴は自分の考えが外れて安堵した。が、 (な、なんで安心しちゃってんの私のココロー!) 視界がぐるぐる回る。以前にも似た感覚に陥るも、目一杯踏ん張りを入れる。 「…大丈夫か?」 「ふぅ…なんとか……」 危うく能力が暴発するところだった。ひとまず落ち着いたので、自販機にコインを投入する。 「今日は普通だな」 「あ、当たり前よ。毎回毎回蹴り飛ばしてジュースを出すなんてはしたないことしないわよ?」 「前はやっtげふん」 きっ、と睨みつけ、上条の防御が下がった。 「いつもそうだと可愛いんだけどな。人を待たせてるから俺は行くぜ」 「へ?あ…うん。またね」 「じゃーな」 あれ今なんて言った? 美琴の頭の中には上条の言葉が駆け巡る。再び回り出した視界。そして自販機終了のお知らせ。一発放出後は意識がはっきりとしたが顔の火照りが収まらず、美琴は足早にその場を立ち去った。 学園都市を一望出来ると評判のホテル。その一室を、『グループ』と呼ばれる学園都市暗部組織のひとつが貸切にしている。 「聞きました? 昨日のニュース」 部屋の真ん中にあるソファに腰掛けている海原光貴が言った。 「ああ、未確認生命体ね」 「ファンガイアだって色々と手一杯だっていうのになァ」 同じ様に、胸にさらしをまいた露出狂ショタコうわなにするやめ(ry結標淡希と学園都市第一位の一方通行がそれぞれ反応を見せた。 その会話の中に、ファンガイア、未確認生命体と聞き慣れない言葉が飛び交う。未確認生命体は昨日、黒髪ツンツン頭の少年が倒したクモの怪人のことであるが、学園都市上層部てそう名付けられた。 「ところで土御門、なンで俺達が化け物退治なンかしなくちゃならねェンだ?」 土御門、と呼ばれた金髪サングラスにアロハシャツの奇抜な格好の人物は手近にあった資料を手に取り、答えた。 「しょうがないにゃー。『警備員』に任せるにしても、能力者にやらせるにしても危険過ぎるからな」 「そうは言っても通常兵器で太刀打ち出来ねェだろ」 「そのために『アレ』が与えられたのでしょう?」 テーブルに置かれたひとつの何かのグリップのような物を海原が指差し、土御門が続ける。 その開発ネームは『Intercept・X・Attacker』というらしい。 「イクサシステム……」 「まだ三回しか使ってないけどな」 「着心地はどうなの?」 「特に何も無ェな。段々使い勝手もわかってきた」 装着者に任命されたのは一方通行だった。色合い的にも気に入り、リハビリにも丁度良いとは本人の談。 「ファンガイアサーチャーに反応だわ」 「一方通行」 「場所は?」 部屋の隅に置かれたPC機材を、結標がぎこちない動きで操作する。これも上層部から支給された物で、これの情報を基に一方通行が出撃するのだ。 「第七学区のファミレス近くよ」 「了解」 そう言って、部屋から一方通行が飛び出した。 「案外、ノリノリじゃない」 「変身してみたいですね」 「俺もだにゃー」 男の夢ですね、わかるか海原、と手を握りあう野郎二人を結標は冷めた目で見つめた。 行く宛も無く彷徨う作業の再開だお。何か上条に上手い具合に撒かれたような気がするが、其処まで頭が回らない。先程ので未だにぼやけているのである。 「騒がしいわね…」 とあるファミレスの前をふらふらと力無く漂うクラゲの如く歩く美琴の耳につんざく悲鳴が響いた。それに気を取り直して辺りを見回し、状況確認を行う。 (逃げ惑う…?) 茶色の髪を揺らし、視線を素早く走らせてひとつの異常をまず見つけた。 時空の歪み。そこを中心に人々が走り出している。 「リント……ボゾグ…」 よく見ると、鼠に似た姿の異形が人々を襲っているではないか。今もまた、幼き子供が狙われている。スカートのポケットからコインを数枚取り出し、狙い撃つ。 超電磁砲。 自身の通り名である能力攻撃を、怪人にぶつける。 「…効いてない!?」 「ボゾグ…ボゾグ!」 「やば…こっちくんな!」 叫んでみても言葉が通じない。もう数発程撃ってはみるが、やはり効き目無し。だが、子供が逃げる時間は稼げた。 「…見たところ、ネズミさんみたいな形ね」 不気味な姿だが、しっかり見れば動物に似ていたが、美琴としてはこんな不細工な鼠に殺されるなど笑止。 「能力が効ないなら……これで!」 「ボンバベシ、ゴセビパツグジョグギバギ!」 「ちょっ、きゃあ!」 蹴りを受け止められ、パンチをされてよろけてしまう。それでも、ダメージは皆無。 「こ、こっちは初めてなのよ!?」 「……?」 「…ああもう!」 殴りかかってくる鼠グロンギのパンチを手で掴み、逆にこちらが腹部に決める。攻撃の手を休めず、更に一撃、二撃と続ける。 「いい感じね…」 「…ボゾグ!クウガ!」 「グギグギうっさいわね!」 固く握り締めた右拳が、苛立ちがこもってグロンギの顔面を直撃する。 「まだまだ行くわよ!」 拳を握り直し、グロンギに近寄りーーー、 「痛っ! 何!?」 真横からの突然の強襲に、美琴クウガが吹き飛ばされた。 突進の主の方を見ると、 「……また鼠?」 ここは浦安か、とつっこんでしまう美琴。そんな世界的ではなく学園都市です。 「…ってか一気に増えた!?」 計四体。新たに現れたのが三匹でどれも同一種である。 「不利過ぎよ!」 文句を垂れるが、どうやら向こうの方も新たな敵に困惑している様子。仲間では無いようなのだ。 「くっ…」 今は先の方をどうにか退けなくては。 再度攻撃を仕掛けに鼠三匹を素通りしてグロンギに向かう。 「痛」 鼠三匹に絡まれた。調子に乗ったグロンギまで襲う。 かなりまずい状況。逃げ出す機会を窺うが、絶え間なく降り注ぐ暴力の嵐に、美琴は耐えるしかないが、いずれ力尽きてしまう。 (嘘でしょ……) 肉体が強化されているとはいえ、地味に痛みがある。 気が遠くなりかけ、諦めが脳裏を掠め始める………。 「居やがったなファンガイア! その命、神に還しやがれ!」 聞き覚えのある声に、美琴はそちらを振り向いた。 上条ではない声。黒では無く、白い人物。その人物は手に持ったナックルで、美琴に群がるファンガイアと呼ばれた鼠怪人をぶん殴り、払いのけた。 「おい、赤いの。大丈夫かァ?」 「あ、ありがと…一方通行」 「…この声、『超電磁砲』か?」 どうやら一方通行も美琴のことを認識したようで、手を貸して立ち上がるのを手伝った。 「何があったか聞きてェとこだが……やれるか?」 「なんとかね。アンタは?」 「見てりゃあわかる」 ナックルを持ち直し、もう片方の手に打ちつける。 『レ・ディ・イ』 機械音声が告げる。 一方通行が持つイクサナックル。手に当てることで、ナックル側が装着するに相応しいかを識別し、可能の場合に機械音が流れる。 「変身!」 『フィ・ス・ト・オ・ン』 腰に巻かれていたベルトに、ナックルを装着させ、白い聖職衣をモチーフとした強化装甲服が形成されて一方通行を包む。 「!?」 「これで納得したか?」 「う、うん」 「行くぜ、『超電磁砲』」 「ええ!」 クウガとイクサ、それぞれの敵へ向かって駆ける。 鼠グロンギとの間合いが至近距離となり、拳と蹴りを織り交ぜ、戦う。鼠ファンガイア三匹と交戦するイクサは、イクサカリバーという銃兼長剣となる武器を巧みに操り、牽制しつつダメージを与えてゆく。 「一気にケリをつける…!」 鼠ファンガイアと距離を離し、イクサカリバーの弾薬スロット部を上に押し込み、一方通行はベルトの横から、金色の笛のようなアイテム『フエッスル』を手に取り、ベルト本体にリードさせる。 『イ・ク・サ・カ・リ・バ・ー・ラ・イ・ズ・ア・ッ・プ』 「イクサ・ジャッジメント!」 光を纏う赤い刀身で鼠三匹を斬りつけ、三匹はステンドグラス状となって砕けた。 「は、早い!」 それを見ていた美琴の口から感嘆の句が零れた。 「一人で大丈夫かァ?」 「あたしにだってこれ位はぁ!」 あの一方通行に心配され、美琴は躍起になって拳でグロンギを後退させ、 「喰らいなさい!」 跳躍し、グロンギの胸部へと蹴りを放つ。ヒットした部位にクウガの紋様が刻まれ、そこから封印のエネルギーが流れ込み、ベルトのバックルに到達すると、 「ジュスガバギ……クウガ!」 「やった!」 死に際に断末魔の叫びを上げ、爆発四散した。 後ろを振り返ると、既に一方通行の姿は無く、その場には美琴だけが残された。 「つ、疲れた……」 変身が解け、疲労が込み上げてくる。こんな時にいない同居人を少しだけ恨み、美琴は学生寮へと歩を進めた。 次第に、通報を受けた『警備員』や『風紀委員』、野次馬が集まって来たが、面倒なので美琴は足早に立ち去ることにした。 (クウガ…グロンギ…) 先程の変身の際に、頭に直接刺激された単語。女子中学生の体力には結構キツいものがあった為、今は深く考えないことにした。 道中、幾度か力尽きかけたがなんとか寮まで辿り着き美琴は部屋のベッドにダイブする。同居人は未だ帰っておらず、数十分前のことを思い詰めるのには好都合である。 (ベルトの名前が『アークル』、それに埋め込まれているのが霊石『アマダム』……) 脳裏にフラッシュバックした古の戦いの記憶。超古代、という言葉がまさしく当てはまる。長らく封印されていたグロンギだが、何かが原因で復活し、それが元でこの『アークル』は現れたのだろうか。 「難しいわねぇ……」 クウガ。 そういえば、と思い、巨大匿名掲示板を覗いてみた。昨日のように、目撃者がいるかもしれないのだ。 「これかしら…」 『さっき変な怪人に襲われて仮面ライダーに助けてもらった』(351) 目に留まったスレを見てみると、恐らく、いや、やはりと言った内容が書いてあった。 赤い仮面ライダーと白い仮面ライダー。…昨日のはピンク……マゼンタの仮面ライダーだったはず、という書き込みばかりだった。 「これで私も仮面…ライダー……」 いざなってみてわかる複雑な心境。自分一人が何かを言われるのはいいが、黒子や初春さん達まで言われるのではないかと思い込んでしまいかける。 だが、次第に意識が遠退き始め、瞼が重くなり、ちらつく黒いツンツン頭に手を伸ばそうとして、美琴の意識は深く落ちた。 続く
https://w.atwiki.jp/indexssindex/pages/114.html
Date 2006/05/06(Sat) Author SS1-233 序章 アルバイト The_WORKING!! アルバイト始めました。 泡まみれのスポンジで武装した典型的な皿洗いスタイルの上条当麻は、ぼんやりとそんなフレーズを思い浮かべた。せっせと食器の油汚れを拭き取る上条の周りでは、忙しなく他の従業員(スタッフ)が動き回っている。 場所は某ファミレス。八月最後の日、魔術師との戦闘に巻き込まれて多大な被害を被ったあの店舗である。 本来なら顔を出すのもおこがましいような場所で、なぜ上条がアルバイトなんぞをしているのか。 その理由は単純明快。器物破損の罪により損害賠償を請求されてしまったからである。 当然ながらただの高校生の上条に支払い能力などあるはずもなく、金がないなら体で払え方式で絶賛ただ働き中というわけなのだ。 ちなみにその請求額、二十万とんで三千円という大打撃。上条さんちの家計簿も真っ赤もとい真っ青である。 店の一部を大破させた関係者でありながら、知らぬ存ぜぬで通せるほど世の中甘くはない。 先日、上条は不幸にもファミレスの店長と遭遇し、捕縛・連行・尋問の三連コンボに身元特定という裏技(ウルテク)を喰らって戦闘不能に陥った挙句、ただ働きの契約をさせられて現在に至るというのが事の経緯である。 ふと上条の脳裏に、ムキムキ店長とにこにこウェイトレスさんその他殺気立った従業員に小一時間問い詰められた苦い記憶が蘇った。 「…………うだー」 あふれる涙をさめざめと流しながら上条が皿を洗っていると、件のにこにこウエイトレスさんが近づいてきた。 「上条くん。店長からの伝言で、後で話があるそうですよ」 そんな用件を伝えるだけで何度も転びそうになっているあたり、ドジっ娘巨乳ウエイトレスの名は伊達ではない。 よたよたと頼りない歩みでにこにこウエイトレスさんがフロアに戻っていくのを見送り、上条は溜め息を吐いた。 店長からの呼び出し。 付け加えるなら、職業選択を間違えたとしか思えないほどマッチョムキムキな店長の呼び出しである。何を言われるのかと考えると、これ以上憂鬱なことはない。 「上条君。君には他のところで働いてもらいます」 「……はい?」 にこにこウエイトレスさんばりに笑顔なムキムキ店長は、開口一番上条に向けてそう告げた。 「ちょっと知り合いの店の方が人手不足らしくてね、明日からこの地図の場所で働いてくれるかな?」 そういうとどこからともなく一枚の紙片を取り出すムキムキ店長。 上条が紙片を覗き見ると、そこには丁寧な筆跡で地図が描かれていた。手書きの地図には目的地らしき場所に印が書かれており、色の違うペンで店名が記されている。 「えっと……」 「お願いできるよね?」 上条の目を至近距離で覗き込みながら、有無を言わせぬ迫力で言う店長。 それは言外に命令というか強迫してますよねー! と上条は泣き叫びたくなった。というか、もう涙腺が緩み始めている。 「そうか、ありがとう上条君! いや、先輩の頼みだから断り辛くてね。バイトを一人寄越してくれと言われた時はどうしようかと思ってたんだよ」 返事も聞かずに一人納得して、上条の肩をバンバン叩きながらHAHAHAと米笑するムキムキ店長。 先輩ってだれですか、という疑問を口にすることも出来ないまま、上条はドナドナされていく子牛の気分で帰路へとつかされたのであった。
https://w.atwiki.jp/indexssindex/pages/8.html
動画(youtube) @wikiのwikiモードでは #video(動画のURL) と入力することで、動画を貼り付けることが出来ます。 詳しくはこちらをご覧ください。 =>http //atwiki.jp/guide/17_209_ja.html また動画のURLはYoutubeのURLをご利用ください。 =>http //www.youtube.com/ たとえば、#video(http //youtube.com/watch?v=kTV1CcS53JQ)と入力すると以下のように表示されます。
https://w.atwiki.jp/indexssindex/pages/175.html
元スレ:
https://w.atwiki.jp/indexssindex/pages/51.html
now making
https://w.atwiki.jp/indexssindex/pages/108.html
Date 2006/04/19(Wed) Author SS1-169 上条当麻が立っていた。 許容量を超過した痛みが神経を焼く。 確実に左肩は外れているし、額も割れている。足首の裂傷はあと数歩も歩けば腱がちぎれてしまいそうだ。あちこちの打ち身、擦り傷は数えるのも馬鹿らしい。 何故立ち上がることが出来たのか、上条は自分で自分を不思議に思う。 それでも吹けば倒れる状態には違いない。白銀の甲冑はがらんどうのはずの兜の隙間から確かな嘲りの視線を飛ばす。 『……、は。一度起き上がった所で二度倒されるは必定。無闇に無駄を重ねることを無意味と呼ぶ。神浄討魔。その右手でせめて潔く己の「生」という幻想を殺すがいい』 上条はギチギチとぎこちなく眼球を動かす。 満身創痍の上条だが、右の掌だけは無傷だった。 あらゆる「異能」を跳ね除け、あまねく「超常」を打ち砕く力——幻想殺し(イマジンブレイカー)。 しかし、それはあくまで右手一本を守るだけのものだ。どれだけ強く願ったとしても、どれだけ高くかざしたとしても、“絶対にその手で掴めるものしか殺せない”。 (ああ……そうか) それとよく似たものを、上条は知っていた。 『自分の手の届くもの全部を守ろうとすると……結局理想から遠ざかっていく、らしい』 とぼけた男の言葉を思い出す。 今この瞬間、違う場所で黄金の甲冑と戦っている魔術師の顔を思い起こす。 あの男は自分が諦めた時にも、諦めなかった時にも悲劇が待ち受けていると知っていた。それでもなお戦い続ける彼を支えるものがなんであるのか上条にはわからない。 絶望を見据え、拒絶を覚悟し、破滅を背負ってなお走り続けられる理由なんて想像もつかない。 だけど、それでも。 その手で掴めるものしか守れないと諦観するでなく、 その手で掴めるものだけは守れると妥協するでなく、 腕を伸ばし、いつでも、どこまででも届かせようとするその生き様は。 正直に思う。 格好いいと。 (そうだ……) 男の子なら誰でも一度は憧れただろう。 漫画やテレビの中で活躍する無敵の戦士たち。どんな困難もどんな危険も物ともせずに罪無き人々のために戦う栄光の勇者。 やがて作り物(フィクション)だと気づき、離れていってしまうのだろうけど、その一秒前まで少年たちは確かにヒーローを信じていたのだ。 あのプラスチックの鎧と剣で着ぐるみの大怪獣と台本通りの死闘を演じる役者(ゆうしゃ)たちの姿に、最も純粋で最も根源的な憧れを抱いていたのだ。 (そうだ……!) 上条当麻は記憶喪失だ。それゆえ子供の頃テレビのヒーローにどんな感情を持っていたのかなんて想像することしかできない。 だけど、だけども。 思慮が浅く、堪え性もなく、手前勝手で聞こえのいい偽善を並べることしかできなかった自分が、 主人公(ヒーロー)になろうとしたことは、本当に一度もなかったのか? 脳が忘れていても心が覚えている。 肉に残っていなくても魂に刻まれている。 何のために、誰のためにかはもうわからないけれど。 他の何者でもなく他の何物でもなく、世界にただ一人のこの上条当麻が主人公になると決めた瞬間が絶対にあった! (そうだ、そうだ、そうだ!) 何故立ち上がることが出来たのか、上条は自分で自分を不思議に思う。 何が立ち上がる意思をくれたのか、上条はもうわかっていた。 テレビのヒーローが、そしてあの魔術師が掲げていた二文字。 あの時は呆れた言葉の意味が、今ならわかる。 ■■とは『■しい■を行うこと』ではなく、 『胸に譲れぬ■を抱いて、■しくなっていくこと』だと。 先がなくても、手前勝手でも、 自分の奥底にあるただ一つの理由を裏切らないことだと。 「……はっ」 上条はもはや恐れない。血塗れの顔を上げ白銀の甲冑を睨みつける。 「何が神浄討魔だ。俺はそんなもんじゃねぇ……その程度のもんじゃねぇ……っ!」 甲冑はその言葉を最後の虚勢と受け取ったのだろう。余裕の態度を崩さず言い返してくる。 『ならば、なんだというのだ?』 「俺はな……」 答えるための言葉は一つだ。 きっとあの魔術師ならこう答える。迷うことなくこう名乗るだろう。 「俺は……」 ならば、せめてこの時くらいは幼い頃に心を戻し、 忘れていた夢を語るのも悪くない。 「俺は……!」 絶望も拒絶も破滅も越えて、なお残る幻想(ゆめ)があるのなら。 それはきっとこの右手でも殺せない、大切な真実(ユメ)だと思うから。 「「俺は、正義の味方だ!!」」 儚きモノは人の夢。 届かぬモノは遠き幻。 ありてなきような二つのモノが、されど交わる所に産まれる力は————無限(夢幻)。 「——Unlimited——」 偽者にして本物、優しき幻想を護る者。 「——まずはてめぇの——」 最弱にして最強、悲しき幻想を壊す者。 決して交わるはずのなかった二つの糸が重なった時、 「——Blade Works!!」 「——ふざけた幻想をぶち殺す!!」 物語は、始まる。