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カーネル大佐 #ref error :ご指定のページがありません。ページ名を確認して再度指定してください。 概要 オルカ軍スペシャルフォース部隊大佐。年齢45歳。 議会と統括軍司令官によって決められた作戦の現地での指揮をとる。 指揮官という立場ではあるが、戦場の最前線に立ち味方の士気を高めている。 しかし自分が戦闘に参加する事は稀で「まぁいいけど」が口癖の面倒くさがり屋。 部下からは慕われ、人気がある。まぁいいけど。 右胸のバッチはSFで殉職した部下の名が刻まれている。 銃火器、爆薬、兵器取り扱いのスペシャリスト。 また、剣術、棒術、などの武具の他、柔術、ボクシングなどの徒手格闘術も極めている。 単純な戦闘力ならばオルカで最強と言われている。 ちなみに、カーネルがスペシャルフォース時代にスペシャルフォースの大佐をカスパールが務めていた。 そのためカスパールに対する忠誠心は強い。今でも師と仰いでいる。 カーネル戦闘服 #ref error :ご指定のページがありません。ページ名を確認して再度指定してください。 SFが身に着けているものよりもさらにグレードの高いバトルスーツ。 両腕は完全に義手。腕から黒刀やダブルバレルショットガンなどの銃火器を収納。 発動時間は短いが、ステルス迷彩機能がついており、使用中は肉眼での確認は非常に困難。 まさに鬼に金棒のバトルスーツ。
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登録日:2011/08/27(土) 18 02 43 更新日:2024/06/13 Thu 17 17 55NEW! 所要時間:約 9 分で読めます ▽タグ一覧 1/1化 EVA アダムの分身 エル&トポ エヴァ エヴァンゲリオン サイコガン ビースト プロダクションモデル リリンの僕 ヱヴァンゲリヲン新劇場版 不遇 人造人間 先行量産機 八つ裂き 四ツ目 巨影都市 式波・アスカ・ラングレー 惣流・アスカ・ラングレー 惣流・キョウコ・ツェッペリン 換装 新世紀エヴァンゲリオン 決戦兵器 洞木ヒカリ 渚カヲル 猫 真希波・マリ・イラストリアス 赤 量産機の餌 鳥葬 これこそ実戦用に造られた、 世界初の、本物のエヴァンゲリオンなのよ! EVA-02 PRODUCTION MODEL 概要 エヴァンゲリオン弐号機はアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』に登場する人型兵器エヴァンゲリオンの一機。 デザインは山下いくと。 旧劇場版では本田雄がリデザインしている。 エヴァンゲリオンANIMAに登場する弐号機II式とヱヴァンゲリヲン新劇場版に登場する2号機についても説明する。 作中での活躍 TVアニメ版 零号機、初号機に続くEVAシリーズの実用型機体。 カラーリングはレッド。眼部は四眼で、パイロットは惣流・アスカ・ラングレー。 フルパワー時には頭部装甲の一部が展開し、素体の目が露となる。 第八話「アスカ、来日」でアスカと共に初登場。 実戦を目的とした実用型であるため、初号機と零号機には規格外の装備などが使用できるなど、弐号機自体の性能は安定して高い。レギュラー3機の中で唯一暴走らしい暴走を起こしていないのも特徴(*1)で、悪く言えば爆発力に欠けるとも言えるが、兵器としての信頼性は他の2機と比べて極めて高いといえよう。 初登場時に第6使徒ガギエルを単独で倒し、物語中盤までは他のEVAとの共同戦線で順調に使徒を殲滅するが、第13使徒バルディエル戦では一瞬で無力化。 第14使徒ゼルエル戦でも両腕と頭部を切り落とされ沈黙するなど連敗が続き、更にそのことからアスカのプライドに綻びが生じた結果、シンクロ率の低下を招いてしまう。 第16使徒アルミサエル戦では遂にシンクロ率が2ケタを切り、起動すらしなくなってしまう。 + ネタバレ 弐号機のコアにはアスカの母親である惣流・キョウコ・ツェッペリンの魂が入っている。 アスカと弐号機のシンクロ率が低下してしまったのは、アスカが終盤から弐号機をただの兵器と見なし、心を閉ざしてしまったから。 また機体の素体は初号機とは異なりアダムのコピーであり(というよりも初号機だけが違う。零号機は諸説あり)、 そのことを利用されTV版24話ではアダムの魂を持つ渚カヲル(第17使徒タブリス)に外部から操られ、初号機と交戦。 プログナイフで頭部を貫かれ沈黙した。 旧劇場版 修復され(破損した頭部素体を替えたためか頭部のデザインが若干異なる)戦自から守る為アスカを乗せた状態でジオフロントの湖底に沈められていた。 その後弐号機内に母の存在を感じ取り、復活を果たしたアスカにより人造人間としての真の力を発揮し、戦略自衛隊の大部分を壊滅させる。 しかし、自衛隊の攻撃でアンビリカルケーブルを切断されてしまう。 直後、ゼーレにより投入されたエヴァ量産機9機と交戦。 約3分半の活動限界が迫る中、圧倒的な戦闘力で量産機を全滅させかけるが、 一機の放ったロンギヌスの槍のコピーによって頭部を貫かれ、同時に活動限界で沈黙してしまう。 更にS2機関の力で再生した量産機によって全身を鳥葬のごとく食いつくされる。 このとき、アスカの量産機への強烈な殺意で暴走しかけるが、槍で全身を貫かれ完全に沈黙した。 エヴァンゲリオンANIMA ロンギヌスの槍で頭部を貫かれる所までは旧劇場版と同じだが、シンジの精神が旧劇場版ほど追い詰められていなかった為、そのまま補完計画の依代にされかけてしまう。 しかし自らの意思でエヴァに乗ったシンジの初号機F型が儀式の最中に乱入、零号機F型と共に全ての量産機を撃破し救出された。 その後は量産機との戦闘の後遺症によって四眼を双眼に改めた弐号機II式として再建され、ネルフJPNの保有する機体の中では最も優秀な戦力であると評されている。 月面への強行偵察任務の際には弐号機II式・アレゴレカへと改修、この時に元の四眼に戻っている。 第一章のラストでは弐号機建造時の試作パーツを用いて建造された姉妹機「エヴァンゲリオン・EUROII・ウルトビーズ」が登場。 外観は翼の生えた白い弐号機であり、パイロットは洞木ヒカリ。 ユーロ軍のネルフJPN侵攻部隊の中核としてスーパーエヴァと交戦している ヱヴァンゲリヲン新劇場版 破 アスカと共に初登場。名称が"2"号機に変更され、頭部額の左右に小さなツノが追加された。 また、プログナイフの形状もダガータイプに一新され、登場時には空中戦仕様のS型装備で出撃した。 3号機がアメリカから日本側に譲渡されると一国のEVA保有数を三体までに制限するバチカン条約に抵触するため2号機は封印される(2号機はユーロの保有機体)。 パイロットは変わらずアスカだが、第10の使徒戦では重傷を負ったアスカに代わり真希波・マリ・イラストリアスが搭乗。 EVAの隠された強化形態である獣化第2形態(マリ曰く『裏コード ザ・ビースト』)となるが、第10の使徒との戦闘により大破する。 シェルターに籠るシンジを外に連れ出した後、活動限界で沈黙した。 最終的には第10の使徒に敗北したものの、TV版とは違いA.T.フィールドを突破しながら使徒に大きく迫り、 大破しながらも零号機の援護をしながら食い下がる活躍を見せた。 ちなみにツノが付いたのは、旧版は劇中の活躍に比べて商品的な人気があまり無かったらしく、庵野監督が「それはツノが無いからだ」と思ったため。 ヱヴァンゲリヲン新劇場版 Q 前回で大破したため、14年経過したにもかかわらずなぜか急造修復されて「改2号機」として登場。 場面に応じて左腕の義手を換装できるようになっている。 パイロットは復帰したアスカ。 冒頭の初号機奪還戦(US作戦)ではロケットブースターと専用の楯を装備した「改2号機β」で出撃。左腕にはワイヤーアンカーを装備している。 舞台を地上に移してからは胴体がよりマッシヴになった「改2号機γ」に改良。 ヴンダー発進時に水中に潜って主機に点火した際は救命胴衣のような浮き輪を装備した。 第13号機戦では近接戦闘用の薙刀を用い、フォースインパクト発動後は素早くガトリングガンに換装している。 ヴンダーに取り付いたMark.09を倒すために「コード777」を発動し、ビースト化が進んだ獣化第4形態に変形。完全にネコ科の獣である。 しかし全身コアのMark.09を倒せず、パイロットのアスカの脱出後自爆し、四肢が千切れた状態で大破した。 最後はボロボロの状態で8号機ともども回収されている。 シン・エヴァンゲリオン劇場版 || Q最後の予告では8号機とニコイチ状態で無双していた。 いい加減休ませてやってほしい……と、言いたいところだが休ませてもらえるはずもなく今作でもアスカの相棒として運用される。 冒頭の戦闘には参加せず、予告から少し形を変えて8号機が調達してきたJA-2とのニコイチである「新2号機」として復活。JA-2由来であろうモスグリーンの機体カラーや背中に設けられた制御棒、所狭しと積み込まれた武装の数々と、ミリタリーかつ重厚感溢れるデザインが心をくすぐる。 終盤のヤマト作戦では8号機と共にNERV本部跡へ投入され、エヴァMark.07の大軍相手に落下しながら大迫力の戦いを繰り広げる。 そうして武装を使い果たしながらもついに再起動前のエヴァ第13号機の喉元へと王手をかけるが……? コード999 停止信号プラグを打ち込もうとした瞬間、第13号機には無いはずのATフィールドがプラグを阻む。 それを新2が本能的に13号機を恐れているからだと悟ったアスカはコード999を使用。眼帯の下にある呪詛棒を引き抜きそこに眠る第9使徒の力を開放し、新2には「エンジェルブラッド」が注入される。 識別パターンを使徒のものである青に変え、使徒化したアスカの叫びとともに新2も咆哮を上げて羽化するかのようにJA-2の装甲を破って疑似シン化形態を思わせる光輪を纏いながら巨大化。 アスカ自身のATフィールドで新2のATフィールドを中和し今度こそ停止信号プラグを振り下ろしたが…… 狙い澄ましたかのように13号機は再起動。目からビームを放って新2の腕もろともプラグを消し飛ばし、首を締め上げながら貫手で新2のコアを貫いた。 アナザーインパクト始動のために使徒化したアスカが必要だったことからエントリープラグを引き抜かれ、破裂するかのように新2は形象崩壊。その後残った頭部だけが旧劇さながらにAAAヴンダー甲板に放り捨てられた。 敗れこそしたものの、過去作のセルフオマージュも交えつつ最後の最後まで人類のため死力を尽くす二号機の最後の勇姿は本作最大の見所の一つであろう。 武装 プログレッシブ・ナイフ PK-02 高振動粒子で形成されたナイフ。超高速振動で、対象を分子レベルで切断する。普段は肩の武器庫に収納されている。 初号機のものとは形状が異なり、弐号機のものはカッターナイフ状で、刃が破損しても替刃と交換することが可能。 新劇場版では剣型ナイフに変更され、両肩に2本装備されている。 ソニックグレイブ プログナイフ同様、刃の高速振動で対象を破断する薙刀。第7使徒イスラフェルを一刀両断する威力を見せるが、使徒の能力により2体に分裂された。名前こそグレイブ(薙刀)だが、刃は直刀なのでどちらかというと槍に見える。 局地戦用EVA-D型装備 全身を覆う耐熱用のアーマー。マグマの中でも活動可能になるが見た目は雪だるまのようで動きもかなり制約される。パイロットも耐熱仕様のプラグスーツを着用する。 第8使徒サンダルフォン戦で使用された。 スマッシュホーク 刃の高速振動で対象を破断する斧。第12使徒レリエル戦で登場するも、兵装ビルに突き立てて足場として使用されただけだった。 パレットライフル ハンドバズーカ 両方とも第14使徒ゼルエル戦で使用。それぞれ2丁射撃による猛攻を与えたが効果は無かった。 ポジトロンライフル 陽電子砲。装備するためには肩の武器庫を外して交換する必要がある。 第7使徒イスラフェル戦のユニゾン攻撃中に使用。 ポジトロンライフル改 前述のポジトロンライフルのカラーリングを変更して望遠スコープを付加したもの。第15使徒アラエル戦で使用。 アスカが錯乱状態の上に射程外すぎたため届かなかった。 A.T.フィールド 旧劇場版にて使用。武装というよりは技に近い。腕を大きく振るい、物質化するほどの強力なA.T.フィールドを対象に叩きつける。 戦略自衛隊の空爆機を一掃するほどの威力。 F型装備 ANIMAに設定上存在する強化装備。 近接戦を想定した仕様であり、遠距離戦仕様の零号機F型、中距離戦仕様の初号機F型との連携を前提に開発されていた。 しかし、パイロットの不調によって開発を後回しにされた結果、量産機との決戦には開発が間に合わずに実戦投入される事は無かった。 ビゼンオサフネ 弐号機II式の専用武装として開発された大型刀。 弐号機の身の丈ほどもある長刀で、刃の表面にA.T.フィールドをコーティングしている。 レクテナ 弐号機II式用に開発された遠隔給電装備。 要はデュートリオンビーム。 作中ではオーバーチャージによって電磁爆発を引き起こす事で、攻撃手段としても用いられた。 アレゴリカユニット 弐号機II式の強化装備。 装着した姿を一言で言い表せば『有翼のケンタウロス』。 動力源であるN2リアクターや飛行装備である重力子フローターの搭載によって様々な領域での運用が可能となった。 ペイロードにはTVアニメ版のエンディングテーマであるFLY ME TO THE MOONの文字がペイントされている。 超電磁洋弓銃 新劇場版の第7の使徒戦で使用された、貫通力と連射性に優れたクロスボウ。超電磁とあるが某スーパーロボットとは関係ない 囮のコアを撃ち抜き、続けて連射された矢は2号機のイナズマキックによって、杭打ちの要領で使徒のA.T.フィールドを貫いた。 サンダースピア 第10の使徒に接近する際に使用した、折り畳み式の電磁槍。槍の先端部は電熱を帯びているかのように赤白く発光している。 ペンシルロック ニードルを発射する6連装式の発射筒。第10の使徒戦でプログナイフの代わりに両肩に装備していた。 サンダースピアで接近し、ゼロ距離で放ったがA.T.フィールドで防がれる。 ヒートランス ヴンダーの主機に点火する際に使用した、銛型の槍。カシウスの槍に似ているが気のせい。 薙刀(仮称) 第13号機戦で使用した、実在兵器型の双刀。中央部分で取り外し、二刀流の刀として用いることも可能。 ガトリングガン(仮称) フォースインパクト発動時に使用した、左腕に換装した実弾銃。 第12の使徒やMark.09には全身コアだったため有効打を与えることはできなかった。 大型破砕兵器デュアル・ソー 漫画版でカヲルの操縦する弐号機が使用した、2つの刃を持った大型電気ノコギリ。 大型発動機によって高速回転する複数の高周波刃により対象物を肉片として砕き再生不可能にする。 アルミサエルに使用するも、効果無し。逆に侵食を受けて制御系統を乗っ取られ、足を切断された。 本来はゲーム「エヴァンゲリオン2」のオリジナル装備である。 ポジトロンハンマー 正式名称:エヴァ専用円環加速式陽電子アタッチメント試作20型 ゲーム「名探偵エヴァンゲリオン」に登場する弐号機専用のアタッチメント。装着した弐号機は球体になり、初号機に投擲されることで攻撃する。 作中ではボウリングピン型死徒に対して10体の分身へ同時に攻撃を仕掛ける「ナカヤマ作戦」が展開された。 なお、弐号機の肛門に指を突っ込まないと投げられない構造。なんでさ。 余談 富士急ハイランドには上半身だけだが1/1スケールの弐号機獣化ver.がある。 ここには他に初号機も置いてある。 私を護ってくれてる! 私を見てくれてる! ずっとずっと、一緒だったのね! ママ!! 負けてらんないのよぉぉぉ!! ママが見てるのにぃッ!!! ロンギヌスの槍…ッ!! あ゙ァ゙ァ゙ぁあ゙ぁ゙あ゙ァ゙ァ゙ア゙ぁ゙ぁ!!!! △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] テレビでも旧劇でも新劇でもボロボロ -- 名無しさん (2013-11-09 19 41 25) 劇中では一度も暴走したことがない、安定性の高さを誇る。さすがは実用モデル。 -- 名無しさん (2013-11-09 20 03 42) ↑ニゴウキノカラダハjボドボドダァ!! -- 名無しさん (2013-11-09 21 46 20) 旧劇の最後は一応暴走での再起動だったきがす -- 名無しさん (2013-11-09 21 59 43) それなのに何故かボロボロ党に入ってない不思議 -- 名無しさん (2013-11-09 22 01 17) 旧劇はボロボロなんてレベルじゃないだろ。スプラッターを超えた何かだありゃ -- 名無しさん (2013-12-20 01 43 59) ↑スナッフビデオ観てる気分だたよ -- 名無しさん (2014-04-24 20 09 39) いーつまでもーかわるーことなくー→ムシャムシャ -- 名無しさん (2014-08-17 09 20 22) 改2号機最初見たとき何かに似てると思ったら紅蓮だった。赤くて腕を切り替えて戦うってことで。 -- 名無しさん (2014-09-05 21 44 15) 首から下は零改と同じ。なもんだから旧作時のプラモでは、付属する武器も同じだった(ランナー流用)。ロンギヌスやシャトル盾が付いていたのさ… -- 名無しさん (2014-10-24 22 47 41) ↑3それは参号機 -- 名無しさん (2014-10-24 23 03 24) ビーストモードもあったな・・・。 -- 名無しさん (2014-12-05 20 04 27) 旧版は劇中の活躍に比べて むしろ活躍っぷりを見ると妥当なんじゃ…… -- 名無しさん (2015-08-14 15 27 34) EOEで量産型エヴァの頭を串刺しにしたトゲトゲはペンシルロックとやらと同じ? -- 名無しさん (2015-09-01 21 29 28) 日テレのしゃべくり007に未完成だが松坂桃李と出たな。 -- 名無しさん (2015-11-18 08 00 13) 出番も見せ場も盛りだくさんで不遇なんてことはないはずなのになぜか不遇に見える不思議 -- 名無しさん (2015-11-18 08 35 13) スパロボVでザ・ビーストがスキューラのごとく口が裂けたのがワロタ -- 名無しさん (2017-03-28 14 03 30) 某所では主人公機兼人類補完計画の要である初号機やパイロットが特別な零号機と比べて兵器として完成してる分エヴァンゲリオンとしての一歩秀でた強みを持ってないとか言われてたけど新劇場版でザ・ビーストって立派な武器が出来て何より。 -- 名無しさん (2017-05-02 22 44 12) そのビーストも活躍できたかと言われると…… -- 名無しさん (2017-08-14 12 37 49) シンエヴァ登場予定の新2号機かっこいいな。今度こそ活躍頼む -- 名無しさん (2018-03-07 12 50 30) 零号機が単眼、初号機が二つ目、この弐号機が四つ目だったので、本放送当時は「エヴァンゲリオンn号機の目の数は2のn乗。参号機は8つ目に違いない」とか予想されてたな。外れたけど。 -- 名無しさん (2018-07-11 11 27 36) ビーストってなんのためにあったんだ。ゼルエル戦で出てきた意味は… -- 名無しさん (2018-07-11 11 43 59) 発明少年「ツノなんかつけると重くなるんだけどなぁ」 ほんとツノつけるの好きだなこの人w -- 名無しさん (2018-08-28 15 30 08) まさかのジェットアローンと合体…だと…!? -- 名無しさん (2019-07-24 13 31 30) 武器多い割りにそれを使っての成果は振るわんな… -- 名無しさん (2020-03-05 20 08 57) ↑どんな武器も大体使いこなせる搭乗者の錬度の高さの表れでもあると思う。毎回毎回相手が悪すぎるねん -- 名無しさん (2020-04-22 18 16 18) ライバルポジション感ある スペック高いし弱くはないけど主役に比べると活躍できない アスカ自体そういう側面あるけど -- 名無しさん (2020-05-07 22 19 46) 実は旧新双方に登場しているエヴァの中で唯一名前の表記が変わっている機体(0号機と初号期は共に漢字表記、3号機と4号機は旧の頃からアラビア数字、それ以降の機体は旧と新で別物) -- 名無しさん (2021-02-15 21 05 46) 2号機今までお疲れ様。 -- 名無しさん (2021-03-09 02 22 10) ニコイチかっこよかったです -- かき氷 (2021-03-11 10 59 29) フルアーマー弐号機って感じだった -- 名無しさん (2021-03-12 13 00 51) ↑同じこと思った -- 名無しさん (2021-03-12 13 05 59) 肝心な時に活躍しないできない呪いの元にあるエヴァ -- 名無しさん (2021-03-15 08 33 41) ↑主人公機以外が活躍できない事情を、パイロットのメンタル悪化の要因として処理したとも -- 名無しさん (2021-03-15 20 13 45) ごめん2号機って言ったら許してくれそう、とか言われてるのは流石に吹く -- 名無しさん (2021-04-12 14 31 11) どの作品でも獅子奮迅の活躍を見せるが結果が実らない不憫なエヴァ(とアスカ) -- 名無しさん (2022-01-19 15 30 46) エンジェルブラッドで最後の大暴れ…思ったら瞬殺なんてそりゃないぜ…よくよく考えたら第13号機にビビってる時点であれだけども -- 名無しさん (2022-02-25 10 41 47) アスカ本人が悪いわけではないんだが、アニメ版でも旧劇でも新劇でも割と損な役回りばかり与えられてる印象。 -- 名無しさん (2022-07-05 12 22 37) ガキエル戦でのプロレスラーのごとく、マントを羽織る → 脱ぎ捨てて飛翔・出陣する姿は....今でもカッコイイ。 -- 名無しさん (2022-09-19 23 22 02) アスカエヴァ統合体の事は書かないのね -- 名無しさん (2023-11-27 13 46 03) 名前 コメント
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パネルの効果 進行アイコンの数字の分だけ日付が進むと、止まったパネルに応じたイベントが発生する。 白パネル |良いイベント、悪いイベントのどちらも発生する可能性がある。 青パネル |必ず良いイベントが発生する。 赤パネル |必ず悪いイベントが発生する。 黄パネル |実行した練習の効果が通常よりもアップする。 星パネル |複数のルートが出現し、いずれかのルートを選択できる。 人物パネル |OB選手やスカウトなどとのイベントが発生。詳しくは下記参照。 強制停止パネル |試合や試験など、必ずそこで止まることになる。 パネル上に登場するキャラクター プロ野球選手 |スター街道編出身の選手が出現。練習を見てもらうことで選手の能力が上昇する。 ミゾット社員 |OBとなった元選手がミゾットに就職すると出現。練習機材との交換券がもらえたり、道具のメンテナンスをしてくれる。 サラリーマン |スター街道編で契約更改できなかった選手や、OBになった元選手が出現。選手の偏差値が上がる。 占い師 |OBになった元選手が占い師になると出現。指定された選手の性格を変えることができる(栄冠編固有パラメータ)。 職人 |OBになった元選手が職人になると出現。バットやグラブなどの野球道具をもらえる。 スカウト |スカウトが来校して選手をチェックする。注目してもらいたい選手を3人の中から1人選べる。 パン屋・八百屋・肉屋 |OBになった元選手がパン屋・八百屋・肉屋に就職すると出現。いずれかの能力の経験値が加算される。 本屋 |OBになった元選手が本屋に就職すると出現。特殊能力を取得する本などがもらえる(その他栄光編アイテム?) ならずもの |OBになった元選手がならずものになると出現。進行アイコンを総入れ替えしてしまう。 アイドル |OGになった元マネージャーがアイドルとして出現。選手のモチベーションが上がる。 TOP > 栄冠ナイン編 > 栄冠編の基本システム
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エルフカタン部である~(´・ェ・`) mebyが潰れた後はBSWでカタンやってるよ(´・ェ・`)ハチュマレー 初心者の人はまずこれを読もう(´・ェ・`)イソゲー 片山まさゆき先生のルール解説漫画 カタン部員一覧 98円@いなげや macjr アンバー 桜花閃々 かなえ きょとん てんぽいんと ひなぎく
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【作品名】でこぼこ魔女の親子事情 【ジャンル】漫画 【名前】フェンネル 【属性】エルフ 【年齢】183歳 【長所】伊達に100年片思いしてないくらいアリッサ一筋 【短所】けど多分一生弟ポジションから抜け出せない vol.8
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115 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/07/23(木) 00 34 11 ID ??? 0. 「あんたなんか……あんたなんかね……」 少女の視界が赤く染まり、キーンという不快な金属音が頭の中に鳴り響いた。 ――白衣の女が少女の首を絞めている。 白衣の女の顔は醜く歪み、殺意と憎悪が熱風となって全身から吹き出しているかのようだった。 少女は手を振りほどこうと女の手に爪を立てるが、所詮は幼児の力。抗するすべもなく、視界が赤から完全な暗黒へと塗りつぶされようとした、そのとき―― 「やめて、母さん! 何やってるのよ!?」 首から手が払いのけられ、決壊した堤防から水が流れ込むように、肺に空気がどっと送り込まれてきた。 「大丈夫?」 少女の命を救ったのは、若い女だった。 けっ、けっ、と、猫が毛玉を吐くような音を立てて咳き込んでいる少女の背中をさする。 少女の首を絞めていた女は、後ずさると、顔を両手で覆い、絞り出すような声を上げて泣きはじめた。 「母さん……一体、どうしてこんなことを……」 若い女は困惑の表情を少女と白衣の女――母親に向ける。 「私……私……」 涙に濡れた目が自分の娘と少女の姿を捉えた。 「違うのよ……こんなことするつもりじゃなかった……」 「しょちょう、が、しったら」 女の台詞を無視して、少女が苦しそうに咳をしながら口を開いた。 「しょちょうが、しったら、あなたは、ほんとうに、ようずみね」 女の涙と手の震えが止まった。少女を見る。今耳にしたことが信じられないといった様子だった。 首を絞めていたときの、火が出るような憎しみはその目から消え失せ、代わりに支配しているのは恐怖だった。 若い女が少女の背中から手を放して、数歩後ずさる。 得体の知れない、しかし危険であることは本能的に分かる生き物にばったりと出くわしてしまったように。 「このことを、ひみつにしたいなら、わたしのいうことを、きくのよ」 身を起こし、たどたどしく言い終えると、少女は唇の両端を吊り上げて微笑を浮かべた。 もし蛇が笑えるならこういう笑みを浮かべるに違いない――見るものに、そう思わせる微笑だった。 116 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/07/23(木) 00 37 07 ID ??? 1. 少年はふと視線を感じ、後ろを振り返った。 視線の先には―― ――女の子? 学生服を着た少女の姿が、陽炎のように揺れている。 もっとよく見ようと目を細めたが、その瞬間、電線にとまっていたカラスの群れが一斉に飛び立ち、その不吉な音に気を取られた。視線を戻した時には少女の姿は消えていた。 ――何だったんだろう。僕の気のせい? 少年は額の汗を拭ってため息をついた。 ――やっぱり緊張しているのかな。 父親に呼び出されてここまで来たものの、電話も通じない上に妙な幻覚を見るなど、お世辞にも幸先のいい出だしとは言えなかった。 ――困ったな。どうしよう……。シェルターに行くしかないか。 困惑する少年に「幸先のいい出だしとは言えない」どころではない災難が降りかかるのは、それから数分後のことだった。 「あれが碇シンジ……」 少女は小首を傾げて呟くと、かたわらに待たせておいた黒塗りの大型車に乗り込んだ。携帯を取り出してかける。繋がると一言だけ呟いた。 「作戦開始」 少女の言葉につられたように運転席の黒服の男がミラーに目をやる。 後部座席に座る少女と視線があった。 少女の赤い目は無機質で、人間味というものが全く感じられず、男はそこからどういう感情も読み取ることはできなかった。 仕事柄、感情を表さない人間は腐るほど見てきているが、少女の目は今まで会ったどんな人間のそれとも違っていた。 男はその違いを上手く表現出来ない。人間味がない? いや、人間ではない――。 男の思考がそこまで行き着いた、そのときだった。 背後から凄まじい破壊音が鳴り響いてきた。ミラーで背後を見ると、巨大な怪物の一部が目に入る。 117 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/07/23(木) 00 42 24 ID ??? 男は押し殺した唸り声を上げた。 ついに使徒が、この街、第3新東京市に来襲したのだった。 全身を緊張で漲らせ、男は少女に問いかける。 「どうしますか? 引き返しますか?」 少女はやはり無機質な目つきを変えず、無造作に言い放った。 「いい。死んだらそれまで」 男はうなずいた。いずれにせよ、今から戻ったところで何も出来ない。ピックアップは別のものが行っているはずだ。運がよければ助かるだろう。 ミラーに映る少女は、無表情のままだった。同僚――予定では――の生死など、地面を這いつくばるアリほどにも気にしていないように見える。 車内は冷房がほどよく効いているにもかかわらず、男は額に汗が滲み出るのを感じた。 ――まったく薄気味の悪い娘だ。 そう思わざるを得ない。一般人には想像もできないような激烈な鍛錬と陰惨な経験を積んだ自分が、なぜこの小柄な少女を恐れるのか、見当がつかなかった。 その気なら少女の首を一ひねりして殺すことなど造作もない。片手でも出来る。 しかし、もし実際にその行動を起こしたらどうなるのか。少女に手をかける前に自分は死ぬだろう、と何の根拠もなく男は確信していた。オカルトか冗談のような話だが、男は本当にそう思っている。 「そうね」と、ふいに少女が呟いた。「その通りだわ」 そして、唇の端をほんの少し持ち上げた。人間で言えば、それは微笑みにあたる感情表現だった。 男の全身からどっと汗が出た。思わず声が出そうになる。 自分の思考を読んだのか。まさか。そんなことがあるわけがない。少女の独り言の内容が、たまたま自分の思考に関係あるようなものだっただけだ。つまり、ただの偶然だ。 ……いや、この娘なら――。 男はそれから何も考えず、運転することだけに集中した。 118 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/07/23(木) 00 44 47 ID ??? □ ――そんな……。 碇シンジは息を呑み、自分の腕の中で苦しげに呻く包帯姿の少女を見つめた。ほっそりとした、いまにも壊れてしまいそうな少女だった。 こんな酷い怪我をしてる女の子を戦わせようと言うのだろうか? ――戦わせる……僕が乗らなければ、この女の子が……。 シンジの呼吸が浅くなる。 掌にぬめりとした感触。見ると、血だった。 ――まさか。嘘だ。 僕を騙すつもりに違いない、とシンジは思った。思わざるを得なかった。こんな現実は信じられない。嘘だ、嘘だ、嘘に違いない……。 シンジは父親にすがるような視線を送る。「冗談だ、シンジ」「ここは危険だ、あとは私たちに任せて安全な場所に避難しろ」「落ち着いたらゆっくり話をしよう」――父親が、そう言う事を期待して。 しかし、父親の冷たい目を見て、本気だということが分かった。 「やります」シンジは唇を噛みしめて言った。「僕が乗ります!」 「はい、カット」 シンジが去ったのを確認すると、綾波レイは身体を起こして軽く伸びをした。 「上手くいったわ。ミサトとリツコもご苦労さま。たまには役に立つのね」 そう言うと身体に巻きついた包帯をほどき、担架から降りて司令室に向かって歩きはじめる。 レイは上機嫌だった。即席に近い三文芝居だったが、シンジをまんまと騙して初号機に乗せることが出来たからだ。 彼女にとって、他人が自分の意図した通りに動くことほど気分のいいことはなかった。 それにしても、迫真の演技だったのではないか。包帯に血糊までつけたのはやり過ぎと思わないでもなかったが。 レイは、思わずくっくっと喉の奥で笑う。 まったく、単純な男だ。訓練もしていない素人――それも十四歳の中学生を、いきなり実戦に放り込むわけがない。そんなことも判断できずにその場の雰囲気に呑まれて承諾してしまうとは。かなりの馬鹿かよほどのお人よしなのだろう。 馬鹿とお人よしは徹底的に利用されるのがこの世の常だった。 ――せいぜい私に利用されなさい、碇シンジ君……。 119 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/07/23(木) 00 48 42 ID ??? しかし――。 レイの思考はそこで変わる。 ――司令とミサトの言い方はないわ。 レイはそこが不満だった。担架の上で苦しそうな演技をしながら、内心ひやひやしたのだ。 普通に考えて、土下座してでも初号機に乗って貰わねばならない状況なのに、どうしてああいう言い方をするのだろうか。 本当にシンジが帰ったら司令はどうするつもりだったのか。どうせ私がいるから構わないと? そうだとしたらレイを舐めているとしか言い様がない。 ミサトもミサトだ。お父さんから逃げちゃダメ? 死ぬかも知れないという状況で父親から逃げるも何もないだろう。 私のために戦ってとでも言って拝み倒すほうがまだマシだ。 どちらも人間の機微というものを分かってなさ過ぎる。 ――事態が落ち着いたらおバカさんたちに説教ね。 考えているうちにレイの機嫌は悪くなってしまった。他人が自分の意図した通りに動かないことほどレイの機嫌を損ねることはないのだ。 「あのー、レイ……?」 隣を歩きながら、ミサトが腫れ物に触るような態度で話しかけてきた。 「素直にあんたが出ればいいんじゃないかしら? あの子、訓練も何もしていない素人なのよ」 「牝牛は黙ってて。私に考えがあるんだから。だから司令も許可したの」 「め、めうし……」 あまりの言い草に、ミサトは軽くのけぞって絶句した。 レイはふと立ち止まると、ミサトの左胸をわしづかみにして、レモンでも絞るように思い切り握りしめた。 ミサトは飛び上がって叫んだ。 「ぎゃーっ! いたたた! 痛い痛い! ちょ、ちょ、ちょっと何するのよレイ!?」 「搾乳」 「はぁ!?」 「胸が大きすぎて脳まで酸素がいってないみたいだから」 怒りのあまり酸欠の金魚のように口をパクパクさせるミサトを横目で見ながら、リツコはそっと溜め息をついた。 ――ブザマね。 120 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/07/23(木) 00 50 20 ID ??? □ 「碇。本当にいいんだな?」 冬月は前を見ながらゲンドウに問いかける。 ゲンドウは答えなかった。 ――何を考えている、碇。 冬月は懸念を覚えざるを得ない。この無謀極まりない作戦――それを作戦と呼べるのならば――を了承したのは司令の碇なのだ。 冬月に言わせるなら、人員の無駄であり、時間の無駄であり、金の無駄だ。ゲンドウの真意を量りかねた。 冬月は、ふと、ある可能性に思い至り、顔色が変わる。 ――碇、まさか、お前も……。 その可能性は十分にあった。何しろ彼女の行動力と執念は生半可なものではない。彼女の魔手はネルフのありとあらゆる人員に伸びていると考えるべきだった。 もし自分の考えが正しいなら――と、冬月は暗然とした面持ちで考える――ネルフの将来は暗いと言わざるを得なかった。 □ オペレーターの状況報告が飛び交う緊迫した空気の中、レイは超然とモニターを見つめていた。 画面には初号機が歩いているところが映っている。 歓声が沸いた。 初搭乗でエヴァを動かしているのだ。奇跡といってよかった。 「歩いた……!」 「やるじゃない」 とレイが呟いたとたん、初号機は前のめりに倒れこんだ。歓声はたちまち失望の溜め息に変わる。 「やっぱり無理よ。レイ、出て」と、ミサトがレイを振り返って言う。 「もう少し待って」 「もう少しって……」 ミサトは気が気ではないという様子でモニターとレイを交互に見た。使徒が初号機に迫っている。 「相手の力も知らずに戦うのは得策じゃないわ」 「敵を知り己を知らば……ってわけ? そのためにシンジ君を犠牲にするの?」 「まだ死んだわけじゃない」 121 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/07/23(木) 00 52 57 ID ??? 「そうだけど、これじゃ時間の問題だわ。出撃しなさい。これは命令よ、レイ」 「まだ」 レイは食い入るように画面を見つめている。まるでミサトなど存在しないようだ。 そうしているうちに、初号機の左腕が接近した使徒に掴まれた。ぎりぎりと引っ張られる。 「レイ! いい加減に……!」 ミサトは唇を噛みしめる。 「レイの言うとおりだわ」 「リツコ!」 いったい何を言い出すのかと、ミサトがキッと友人を見据えた。 リツコはその視線を気にする風もなく、平然と見返して言った。 「シンジ君が倒されてもレイがいる。戦闘訓練をきちんと受けたレイがね。だけど、レイが倒されたらあとは素人同然のシンジ君だけなのよ。使徒を倒せる可能性が高いのはどっち?」 ミサトは一瞬、言葉に詰まった。リツコの言い分にも一理なくはなかった。 しかし、だからといってこのままシンジを見殺していい訳がない。 「レイ! お願いだから……」 ミサトは今度はレイとゲンドウの顔を交互に見ながら悲鳴に近い懇願をした。 ――司令は何考えてるのかしら。自分の子供なのよ!? オペレーターたちも息を詰めてレイの様子を窺っている。 鈍い音と共に初号機の左腕が握り潰された。シンジの悲鳴が司令室にこだまする。 ミサトは即座にオペレーターたちに神経切断の指示を飛ばす。 「レイ。出撃だ」 ミサトは深々と安堵のため息をついた。 ようやくゲンドウが重い腰を上げたのだった。 レイの唇の両端が吊り上がって、笑いの形を作った。 瞳が猫のようにきらきらと輝く。 「仕方ないわね」軽く握った拳を掌に打ち付けて呟いた。「ボコボコにしてやるわ」 □ 使徒は、ボコボコにされた。 (続く) 134 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 00 55 33 ID ??? 121 2. 「!」 シンジは目を覚ました。瞬間、自分がどこにいるのか分からない。 溺れている時のような恐慌に陥るが、ぼやけた視点が急速に回復し、自分がどうやら病室にいるようだと分かると、落ち着きを取り戻して深いため息をつく。 ――何でこんなところに……。 シンジは記憶を探る。 そうだ。エヴァンゲリオンとやらに乗せられ、巨大な化け物に一方的にやられて……そこからは記憶になかった。 とにかく、酷い目にあったことは間違いない。そうでなかったら病院にはいない。 「知らない、天井だ……って、何だ?」 何か白いものが天井に貼られている。あれは……紙? 紙には字が書いてある。 目を凝らすと、 役立たず と書かれてあった。 「なっ……何だよ、これ」 シンジは呆然とした。 「何でこんな目にあって……わけが分からないよ」 横を向いて頭を抱える。 「何だよこれ……ひどいよ……」 135 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 00 58 59 ID ??? □ レイはシンジの様子を想像して、くっくっと喉の奥で鳩のように笑った。さぞ驚いて、不安になったことだろう。 天井に貼った(貼らせた)紙きれは、レイの仕業だった。 特に深い意味はない。単なる悪戯だった。他人を不安の谷底に陥れるのは、もはやレイの本能といえるほどまで身に着いている。その本能に従ったまでだった。 とはいえ、この種の悪戯はほどほどに留めておかなくてはならない。何しろシンジは他のネルフの職員たちと違って、重要な存在――エヴァのパイロットなのだから。 レイは手に持った手帳をぱらぱらとめくった。最新のページには碇シンジの名前と、これまでの生い立ち等、基本的なデータが書いてある。 ああいうタイプは難しい――とレイは思う。碇シンジという少年には、あまり手酷く扱うとぽきりと折れそうな印象がある。 もっとも、そこが面白いところでもあった。 簡単すぎるゲームはつまらないものだ。 弱みを握って脅せば言いなりになる人間ばかりではない。むしろそういう人間のほうが少ないだろう。 鞭だけではダメ。飴も与えなければ。 飴と鞭――人間を操る基本中の基本。 シンジの記録を見ると、母親はエヴァの実験中に死亡。幼くして他人の家に預けられたとある。ほとんど捨てられたようなものだ。 シンジの人格形成に大きな影響を与えたことは間違いないだろう。ゲンドウとの会話もそれを証明している。 レイはボールペンを手にとって、シンジのページに「父親との関係」と書いた。これは使える。直感だった。レイの直感はほとんど外れた試しがない。とりわけ、他人の弱みに関する点では。 それから初号機に乗り込んだ際のシンジの行動を書きはじめた。誰のどういう言葉にどういう反応を示したのか。どんな表情だったのか。可能な限り、詳細に書き連ねていく。 ここまでするのはゲンドウ以来、久しぶりだった。 人の気配を感じ、顔を上げると、蝶ネクタイに黒ベストのウェイターが腰を屈めて注文を聞く姿勢をとっていた。 「失礼します。ご注文はいつもので構いませんか?」 レイは黙ってうなずいた。かしこまりました、と言ってウェイターが下がる。 手帳に目を戻す。 ふと、今ごろシンジは誰と食事を摂っているのだろうと思った。 もちろん、ミサトとに決まっていた。レイがそうさせたのだから。 136 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 01 05 40 ID ??? □ シンジと同居したらどうかとレイはミサトに提案したのだった。 もっとも、形としては提案だが、実際は強制のようなものだ。 当初はシンジは一人で暮らすという話だった。 しかし、世界を救おうという中学生を一人暮らしさせるなど、言語道断である。 体調や精神面の管理はどうするのか。誰かが一緒に住まなければならないのは明らかだった。 本当はゲンドウと同居のほうがレイは対応しやすいのだが、シンジが拒否をしたという。 何年ぶりかの対面にもかかわらず、ああいう会話を交わすのを見ると、それも当然という気がする。 上手くいってないのだろう。 それならミサトがベターだとレイは判断したのだった。 しかしミサトは気が進まない様子だった。 「でもね~。いくら中学生でも赤の他人の男の子と同居するってのは……」 ミサトは渋る。 「大丈夫、あなたみたいなオバサンには興味ないと思う」 「オバサン……」 もはやレイに何を言っても無駄だと観念してるものの、額に青筋が立ってしまうのはやむを得ない。 「あっ、あのねー。これでも三十前なんですけど。それにあんたと違ってナイスバディだし」 中学生と張り合うなど馬鹿げていると思いながらも、つい口にしてしまうミサトであった。 「ま、もしそういう関係になってもそれはそれでいいんじゃないかしら。いえ、むしろ好都合かも」 「……は?」 ――この子は一体何を言ってるのだろう。 ミサトはぽかんと口を開けてレイの目を覗き込んだ。 「身体で言うことを聞くなら安いものでしょ?」と、レイはすまし顔で答えた。 「あ、あ、あ、あんたね。自分が何言ってるか分かってるの!?」 ミサトは仰天した。 いつの時代でも子供は大人が思うよりも成熟してるものだが、レイのような、いかにも儚げな美少女の口から出るとやはり効果が段違いである。 「世界の命運がかかってるのよ。身体を張るのは私たちだけなの?」 「そ、そういう問題じゃないでしょ! っていうか身体を張るってのはそういう意味じゃ……」 「あなたこそコトの重要性を分かってるの、葛城さん。最優先は何? 使徒の撃滅。使徒の撃滅に一番大切なものは? 私たちパイロットとエヴァ。あなたは私と碇君を最優先にしなければならないのよ」 「まぁ……それはそうだけど……だからって身体を張るとか……」 137 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 01 14 12 ID ??? 「司令と碇君の会話、聞いてどう思った?」 レイはミサトの困惑に構わずに会話を進める。 「ん……まぁ、普通の親子の会話じゃあないわね」 「あの二人が一緒に住んでうまくやっていけると思う?」 「それは……やってみないと……分からないんじゃないかしら」 空気が抜けた風船のように声が小さくなっていくのが自分でも分かる。 「やってみて、碇君が帰るとなったらどうするの?」 「どう……しましょ?」 「どうしましょで済まないのは分かるわよね。一番都合がいいのはあなたなのよ、葛城さん」 「うーん。やっぱりそうかしら、ね……」 ミサトは考え込んだ。実を言うと、ミサトもシンジと暮らすことを考えないでもなかったのだ。 しかし自分から同居を申し込むとなると、さすがのミサトでも他人の目が気になった。いくら中学生とはいえ、男の子なのだ。 あと一押しと判断したレイはとっておきを使うことにした。 「テープ」 「う”っ」 ミサトの顔色が変わる。具体的に言えば、顔から血の気が引いて青ざめたのである。 「いいの? まかり間違ってあのテープが流出したらそれはそれはもう大変なことに」 「わーっ、わーっ!」と、ミサトは叫び声を上げつつ、周囲を見回して誰もいないことを確認した。「卑怯よ、レイ! 脅迫する気!?」 「卑怯とか脅迫とか言う前に、理屈が通っているのはどっち? 私、それともあなた?」 ミサトはぐっと喉を鳴らすと、がっくりと肩を落とした。 「……分かったわ」 長く深いため息を白旗代わりに、ミサトは降参した。 満足げに頷くレイ。本当はメガネのオペレーターにコピーを渡してあるのだが(受け取ったことでメガネは弱みを握られたのである)、もちろんそれは秘密だ。 この手は多用できないし、本当に相手が嫌がっている時には基本的に使えない。 ミサトが受け入れたということは、ミサト自身、思うところがあったのだろう。レイは背中を押しただけのことだった。――かなり乱暴に、ではあるが。 「さすが、責任感あるわね」 レイは心にもないお世辞を言った。 「あんた、本心で言ってるの?」 「言ってない。言うと思う?」 「……もういいわ」 ミサトは天を仰ぎながらその場を立ち去っていった。 138 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 01 18 24 ID ??? □ レイはミサトとの会話を思い出して、くすくすと笑う。 ――場所は市内の高級ステーキ専門店。 レイは一番奥のテーブルに一人で座り、食事を摂るところだった。 ゲンドウに一緒に食事をしようと誘われていたのだが、断った。そもそも食事は一人でしたい上に、あんな陰気な男とテーブルを共にするのは真っ平だった。 ゲンドウの、断られたときの俯き加減の顔を思い浮かべ、レイは唇の両端を吊り上げる。 他人が自分の行動のせいで悲しい想いをすると、いつも楽しい気分になるのだ。 とはいえ、少しは機嫌をとってやらねばならない。あの男が自分に何を見ているのか知らないが、利用できるものは最大限に利用するのがレイの信条だった。 ウェイターの姿を視界の隅に認めると、手帳をぱたんと閉じてカバンにしまう。 ウェイターが恭しい仕草でテーブルに皿を置く。 レイは、旨そうな音を立てている肉を、慣れた手つきで切りはじめた。 最高級の米沢牛のシャトーブリアンを、血の滴るようなブルー・レアで食べるのがレイの好みだった。 ブルー・レアとはレアよりも生に近い焼き方で、店員に教えてもらって以来、レイの好みになっている。 まさに自分のためにあるような焼き方だと思う。味付けは荒塩とレモンのみ。これが一番肉の旨みを引き出すのだ。 常連はレイの姿に慣れたもので、ことさら見つめたりはしないのだが、新規、あるいは新規に近い客は不審げにちらちらレイの様子を窺っている。 それはそうだろう。このような高級店に制服姿の中学生が一人で食事をするなど、気にならないほうがおかしい。 もっともレイは他人の目など一切気にせずに食事を続けている。他人の目など生まれてこのかた気にしたことがなかった。 レイにとって、ヒトとは、今現在自分の言うなりになっているか、将来自分の言うなりになるかの二種類しかいない。 わざわざこちらから気にかけるような存在ではないのだった。 139 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 01 22 58 ID ??? ステーキを食べ終わると、半分固形物のようなとびきり濃いブラック・コーヒーを、ゆっくりと時間をかけて飲み干した。 それから支払い金額に制限がないカードで清算し、店員のありがとうございましたを背に店を出る。 むっとする熱気がレイを包んだ。今日は夜になっても湿度が高く、蒸し暑さが残ったままだった。もっともレイは暑さをほ感じない。ほとんど汗もかかないのだ。 異常なことだが、レイは不思議に思ったことはなかった。それで不都合はなく、不都合がないことにこだわる性格ではない。 雲のせいで星が見えなかった。レイには星を見て物思いに耽るような感傷癖はないので、星が見えようが見えまいがどうでもいいことだったが。 自宅に向かって歩き出す。いつもは車を待たせておくのだが、今日はそういう気分ではなかった。 自分の足で、歩いて帰りたい。 どうやら高揚しているらしい。使徒との戦いのせいだ。 使徒を虐殺したときの快感を思い出して、レイはぞくっと身を震わせた。 140 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 01 26 59 ID ??? ……レイは使徒の腕を掴んで、思い切り引きちぎった。腕から血のような液体が迸り出る。 それからはやりたい放題だった。もう片方の腕を握りつぶし、両足をナイフで切断してやった。 レイには、使徒の胴体にある、赤い球体を破壊すればいいのだと何故か分かっていた。 分かっていたから、敢えて狙わなかった。 馬乗りになり、ナイフで使徒の身体を突きまくる。 レイは、笑っていた。戦闘がはじまってから、ずっと笑っていたのだ。 何と楽しいことなのか。 こんな楽しい思いをするのは、生まれて初めてだった。 他人の弱みを握って脅迫するなど、これに比べたら塵芥に等しい。 ――死なないでね。まだ楽しみたいから。 しかし、戦闘の最中にケーブルが切れていて、内部電源に余裕がなくなったので、仕方なくコアを破壊した。本当ならもっと遊びたかったところだ。 使徒は最期にレイを道連れにと自爆したが、まったくの無駄に終わった。レイの強烈なATフィールドに阻まれて、かすり傷さえつけることが出来なかった。 発令所に帰還すると、押し殺したどよめきに包まれた。 レイがゆっくりと見回すと、目が合った職員は青ざめた表情で目を伏せていく。 人類の未来を決する戦闘に勝った英雄を見る目ではなかった。 女性のオペレーターが、レイが前を通るときに「ひっ」と小さな悲鳴を上げた。 凍りついた雰囲気の中、ミサトが「ご苦労様。ゆっくり休んでちょうだい」とねぎらいの言葉をかけた。 レイはそれに返事をすることなく歩き去った……。 141 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 01 29 58 ID ??? 夜道を歩きながら、レイは思う。 あの化物に感情はあるのだろうか。怯えたのだろうか。恐怖を感じたのだろうか。 ――あればいいのに。感情や痛みが。 レイは心からそう思った。 ――あれば、いいのに。 何も感じない化物を嬲り殺しても面白みなど何もない。それでは仕事と同じだ。 レイは、使徒に、激烈な痛みを感じて欲しかった。 狂ったような憤怒をぶつけて欲しかった。 どうしても敵わぬ相手を目の前にして、尽きることの無い絶望を感じて欲しかった。 ――どっちでもいいか。楽しいから。 そう。使徒を倒すのはとても楽しかった。 これで終わりではない。これからも機会はある。そのたびに、あのぞくぞくするような快感が味わえるのだ。 小物をいびり倒して退屈を紛らわす日常とは、これでおさらばだった。 ――楽しい……。 レイは身体を震わせた。 「あはっ」 容器いっぱいに満たされた水が、なお注がれて縁から零れ落ちるように、ふいに、笑いが漏れる。 「あはは」 笑いながら両手を広げ、その場でくるくる回る。 「あははははは!」 髪を振り乱し、白い喉をのけぞらせて、レイは狂った花のように笑った。 夜の熱をじっとりとふくんだ闇は、レイの哄笑に彩られ、さらにその色を濃くしていくように思われた。 (続く) 188 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/07/28(火) 23 59 58 ID ??? 141 3. レイは頬杖をついて、つまらなそうに外を見ていた。実際つまらないことこの上ない。 普段は学校になど気が向いた時――つまりクラスメイトをいびりたくなった時にしか来ないのだが、碇シンジの転入以来、毎日登校するようにしている。シンジを探るためだ。 包帯姿になってからのほうが登校する頻度が上がるというのもおかしな話だが、誰も気にする様子もない。 いや、本当は気になるのだが、気にしないフリをしていると言ったほうが正確だろう。 レイに余計な関わり合いを持とうとすると痛い目に遭うのが、今までの経験上、分かっているからだ。 ……それにしても、シンジほど監視のしがいのない人物も珍しい。それがレイの退屈の原因だった。 誰と話すわけでもなく、休み時間になるとイヤホンをつけて音楽を聴いているだけ。 たまに視線を向けてはくるものの、レイにすら話しかけてこない。 少し当てが外れた感があった。どうやら想像以上に内に篭る性格らしい。やっかいなことになりそうだった。 ……突然、教室がどっと沸いた。騒ぎの中心に視線を向けると、シンジの回りに人だかりが出来ていた。 会話を聞いてみると、シンジがエヴァのパイロットだと分かっての騒ぎのようだった。 ――馬鹿? レイは心持ち眉をひそめてシンジを見る。今、パイロットであることを明かして何の得があるのだろう? どうやら後先を考えて行動するタイプではないようだった。もっとも後先を考えて行動するならここにはいないだろう。とっくの昔に逃げ出してるか、最初から来ていない。 「ちょっと!? みんな、最後くらいちゃんと……」 ――こっちも馬鹿ね。 顔を真っ赤にして怒る洞木ヒカリを、レイは鼻で笑った。 189 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/07/29(水) 00 02 26 ID ??? 長めのチャイムが昼休みを告げた。 「転校生。お前にちょっと話がある。顔貸せや」 関西弁を喋るジャージの男と、メガネをかけた小柄な男が(レイは同級生の名前など覚えない)、シンジを連れて教室の外に出て行く。 レイはひっそりと席を立つと、距離をおいて二人の後を尾けていった。 普段から妖しい雰囲気を醸し出しているレイが意識して気配を消すと、まるで本当の幽鬼のようだ。通りすがりの生徒がぎょっとした顔をする。 校舎の裏に来た二人とシンジを、見つからないように物陰から観察する。 と――トウジがなにやらシンジに声をかけた後、いきなりシンジを殴りつけたではないか。 メガネが倒れたシンジに何やら声をかけている。 レイは舌打ちすると駆け寄って、シンジとトウジの間に立ちふさがった。 「ちょっと待って」 トウジは驚いた顔を見せる。どう考えてもレイはこの騒ぎを止めそうにない人物だったからだ。むしろ殺人事件の最中でも無視して歩いていくタイプである。 「何やねん、綾波。お前には関係のないこっちゃ」 「何でこういうことするの」 「お前には……まぁええわ。お前もさっき知ったやろ? こいつがあのロボットのパイロットや言うやないか。 この間の戦いでワシの妹が大怪我をした。もっと慎重に戦っていれば妹は怪我をせずに済んだんや。だから、ワシはこいつを殴らなあかん」 それ見たことか、とレイは胸の中で毒づいた。調子に乗って余計なことを言うからこうなる。 「関係、あるわ。私もパイロットだもの」 仕方ない。気乗りはしないがバラすことにする。 190 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/07/29(水) 00 04 32 ID ??? 「何やて!」 トウジは驚きのあまり呼吸が止まりそうになった。ケンスケも口をあんぐり開けてレイを見ている。 「な、何や、お前みたいな女まで乗ってるんか!」 「そうよ」 トウジは、女までパイロットとはどんだけ人材難やねん、と言いかけたが、レイとシンジを交互に見ると、納得したように頷いた。 シンジがパイロットというのは信じがたいが、レイは容易に信じられる。 レイのように冷静沈着かつ冷血な人間ならパイロットにもなろうというものだ。 「ということは、妹に怪我させたんはお前かも知れん、ちゅうことやな」 「そうかもね。私も殴る?」 レイは思わず笑いそうになった。「お前かも知れん」どころか、怪我をさせたのはまず間違いなく当のレイなのだ。 「……」 トウジは険しい表情を崩さずに、レイの痛々しい包帯姿を――これは嘘なのだが、トウジには知る由もない――見る。 「……止めとくわ。ワイは女は殴らんよってな」 ふん、と鼻息をもらすと踵を返して歩き出す。 ケンスケがちらちらと後ろを振り返りながらトウジの後を追った。 「今度はちゃんとまわりをよう見て戦えや!」 トウジの罵声は校舎の壁に跳ね返って、雲一つない青空に吸い込まれていった。 191 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/07/29(水) 00 13 10 ID ??? シンジは殴られた場所に手をあてて立ち上がり、制服についた砂をはらった。痛みはあまり感じなかった。それよりも、やる瀬無さで心が痛かった。 ――何で殴られなきゃならないんだろう。自分が望んだことじゃないのに。 このまま消え入りたいくらいだったが、その前に言うべきことがあった。 「綾波」 「何?」 「……助けてくれてありがとう」 シンジはうつむきながら礼を言った。さすがに女の子に助けられるのは恥ずかしく、顔が赤く染まっている。 「いいの。私の責任でもあるから」 本当は責任などまったく感じていないが、これはシンジを懐柔するための「飴」だとも言えない。結果としてはプラスに転びそうな騒動だった。少なくとも教室でじっと座っていられるよりはいい。 「でも、嘘をついてまで……」 「え……?」 レイは一瞬、混乱した。 そうだ。シンジには、意識を失っている間に初号機が暴走して使徒を倒したいう説明がなされているはずだった。 いざとなれば初号機が暴走して倒してくれるかも知れないという希望があれば、エヴァに乗って戦う恐怖も少しは和らぐのではという理由からだ。 用意周到なレイは初号機暴走のニセの動画まで作らせたが、シンジが説明の真偽を問うことはなく、無駄な努力に――もっとも努力したのはネルフの職員だが――終わった。 もしシンジが嘘を暴いたとしても、それはそれで問題はなかった。 シンジの性格を考えると、嘘をつかれたことに対する怒りや不審よりも、大怪我で瀕死の状態だったレイをエヴァに乗せてしまったという自責の念のほうを感じるはずだ。 感じないようだったら、シンジに余計な負担をかけないために偽動画を作ったとでも言えばいい。どちらに転んでもレイに損はない話だった。 それにしても――と、自分で仕組んだことではあるが、レイは呆れてしまう。こんな都合のいい説明で素直に納得するとは、とんだお人よしというべきか。もっともお人よしでもなければエヴァには乗らないだろうが。 ――いえ。お人よしというより、他人が決めたレールから外れるのが怖いのね。 この性格だと長生きはできないだろう。使徒と戦ううちに、いずれ死ぬ。 ――それまでせいぜい利用させてもらうわ――。 レイは、ちらりと薄い笑みを浮かべる。 192 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/07/29(水) 00 16 27 ID ??? 「必要な嘘だから」 シンジは何か言いたそうにもごもごと口を動かしたが、レイの笑みを何と誤解したのか、結局言わないことに決めたらしい。 レイはそんなシンジを冷酷な目で見つめている。シンジの取るそういった反応の一つ一つが、レイにとっては分析の対象になるのだった。 「失礼します」 二人が振り返ると、黒服を着た大柄の男が立っていた。 男からは、冷静に暴力を振るえる――それも躊躇無く――雰囲気が、冷凍庫から取り出したばかりの氷のようにひんやりと漂っている。 シンジは我知らず顔をしかめた。好きなタイプとは到底言えなかった。いや、好きどころか半径100m以内でも近寄りたくないタイプだ。 「綾波様。緊急招集がかかりました。お急ぎを」 シンジは耳を疑った。綾波様……? どこかのお嬢さんか何かなのだろうか? 自分にはこんな恭しい態度はとらないのに……。 レイは男を見ずに、さっさと歩き出した。 「私たちは歩いていくから。あなたは戻っていいわ」 「し、しかし……。緊急時のマニュアルでは……」 黒服の男はハンカチを取り出して、額にふきだしてくる汗を拭う。 「二度言わせるの?」 レイは振り返らず、前を見たままゆっくりと言った。 「い、いや、そ、それは」 黒服は絶句した。 「じゃ、いいわね」 レイは黒服を後に残して歩き出す。 シンジは驚きのあまり、そこに突っ立ったままだった。 中学生の女の子が、大の大人にまるで部下のように――いや、部下というより家来という言葉のほうが相応しい――接しているのだから驚くのも無理はなかった。 シンジのレイに対する印象は「謎めいた美少女」というものだったが、謎めいたどころでない。謎だらけだ。 193 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/07/29(水) 00 20 59 ID ??? 「何してるの? 置いていくわよ」 レイは振り向いて、立ち止まったままのシンジに声をかける。 「あ、ごめん」 シンジは反射的に謝り、レイに追いつくために駆け出した。 二人はしばらく無言で歩いていた。その沈黙の重さに耐えかねたようにシンジが口を開く。 「ひとつ、聞いていい?」 「何?」 「綾波は何でそんな大怪我したのかな……って。ミサトさんに聞いても教えてくれなかったんだ」 「え?」 レイは虚を衝かれた。迂闊にも全く考えていなかったのだ。ミサトに答えられるわけがなかった。 レイの沈黙を、シンジは誤解したようだった。 「あ、ごめん……。嫌なこと聞いちゃって。そんなこと、思い出したくないよね。今のは無視して」 シンジは申し訳無さそうに言う。 「でも、何でそんな酷い怪我してまでエヴァに乗るのか、知りたかったから……」 「……起動実験の最中に、零号機が暴走したの」と、レイは言った。こんな程度でいいだろう。あとでミサトやリツコに言っておかねば。 それから、レイはふと思いついたことを口にした。「そのとき、司令が助けてくれた」 司令のくだりはシンジの父親への複雑な感情を刺激するために思いつきで付け加えたものだった。 案の定、シンジは微妙な表情を浮かべる。 「父さんが……?」 レイは心の中でほくそえむ。こうやって父親のことをちくちく刺激してやれば、操りやすくなるだろう。 一番扱いにくいのは、感情に揺れのない人間だ。シンジにそうなってもらっては困るのである。 194 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/07/29(水) 00 29 22 ID ??? □ レイは内蔵のモニターでシンジと初号機を見ていた。零号機に乗り込んで、待機中である。 今度は最初から出撃したかったが、大怪我をしたという設定でシンジを騙したのが仇となった。 さすがにこんなに短時間で戦闘ができるまで回復した、というのは嘘が過ぎる。 いや、いざとなれば出るのは仕方ないとしても、本当にどうしようもない状況まで待たねばならない。 前回と同じくシンジがピンチになったら出撃するという条件を、ミサトは意外とあっさり呑んだ。 ロクにエヴァを動かせなかったサキエル戦とは違う。それなりに訓練を積んだシンジが一人でどう戦うか、様子を見てもいいというのがミサトの判断だった。 だったのだが……。 「やっぱりダメか」と、レイはパニックに陥っているシンジを見て呟く。 それにしても頼りない男だ。もっとも使徒など自分ひとりで撃退できるから、頼りにするわけではないのだが。 司令は何でこんなのを呼び出したのだろう? レイは不審に思う。息子というのが理由? だとしたらとてもではないが司令に相応しい器ではない。首をすげ替えることも頭に置いておく。 後任は冬月でいいだろう。自分の言うことを聞く人間ならだれでもいいのだが、未知の人物だと改めてその身辺を調査しなければならないのが面倒だった。 ……画面には一般市民の姿が映し出されている。見覚えのある顔だった。 あれは――さきほどの二人組だ。シンジを殴ったジャージと子分のメガネ。 こんなところで何をしているのだろうか。逃げ遅れたのか、シェルターから出てきたのか。 シンジは二人を庇って戦おうとしない。 ――私だったら踏み潰しているところだわ。 レイはだんだんと苛立ってくる。初号機の活動限界まであと3分。 二人組はミサトの判断により、初号機のエントリープラグに収納された。 「シンジ君? 命令を聞きなさい。退却よ」 当然尻尾を巻いて退却するものとレイは思った。その後は自分の出番だ。再び虐殺の快楽を味わえると思うと、身体が震えてくる。 しかし――シンジは反対の行動を取った。 プログレッシブナイフを手に取ると、凄まじい絶叫を放ちつつ使徒に向かって突進したのだ。 195 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/07/29(水) 00 33 15 ID ??? その瞬間―― レイは背骨に電流を流されたようにぴくんと背中を反らせて、かすかに「あ」と声を漏らした。 シンジの叫びと呼応するようにレイは「あ、あ、あ、あ」と立て続けに小さな叫び声を上げた。 眩暈がした。 うなじの産毛がチリチリと焦げ付いたように逆立っていた。 ミサトが自分に何か言ってるようだが、聞き取れない。そもそもミサトの言うことなどどうでもよかった。 今、この瞬間、レイの世界はシンジの絶叫で埋め尽くされていた。 そう――。 魂から無理矢理搾り出されるようなシンジの絶叫を聞いて、レイは――碇シンジを自分の手で壊したくなったのだった。 なんて素敵な悲鳴なのだろうとレイは思った。まるで天上の音楽のように心地良かった。 シンジの叫びに共鳴するように、レイの身体が震えていた。 喉がからからに渇いているときに、甘美な果物にかぶりついたようだ。シンジの叫びが身体のすみずみまで行き渡り、全身の細胞を活性化させていく感覚にとらわれる。 恍惚の表情を浮かべながら、レイは強く想う。 ――碇君の叫びを、ずっと聞いていたい。 その欲求の強さは、ほとんど吐き気を催すほどだった。 ずっと。 いつまでも。 そう、いつまでも、いつまでも――。 操縦桿をきつく握り締めて、レイは誓った。 またこの絶叫を上げさせてあげる、と。 私だけのために――。 いずれ思いもよらぬ人物から今のシンジの絶叫と同種の叫びを聞くことになるのだが、今のレイにはむろん、知る由もなかった。 (続く) 214 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/08/03(月) 15 05 56 ID ??? 195 4. レイは頬杖をついて、不機嫌そうに窓の外を眺めていた。 いや、不機嫌そう――ではない。レイは実際に不機嫌極まりない状態にいた。メーターがついていれば針が振り切れるほどの不機嫌さ加減だった。 その原因は、しつこく降り続く長雨ではなく、シンジだった。 第四使徒との戦い以来、学校に来ていないのだ。 使徒戦で怪我をしたわけではない。病気ではないかと疑ったが、病院を調べてみてもシンジは入院していない。 ということは精神的に落ち込んで家に引き篭もっているのだろう。 これでは何のために学校に来て、下らない授業を聞いているのか分からない。 ――甘く見ていた。 レイにしては珍しく、その顔には反省の色がある。 これほどまでとは想像しなかったのだ。シンジの脆さが。 多少の紆余曲折はあったものの、はじめて一人で使徒を倒したのだ。自信がついたとさえ思っていた。 ――行くしかないか。……面倒。 これから自分が取る行動を考えると、レイの不機嫌はさらに募っていく。 □ レイはチャイムを押して、ドアが開くのを待った。 「はーい。……あら、レイ。どうしたの?」 ドアが開いて、ミサトが意外そうな顔をしてみせる。 「碇君は?」 レイは入ってと言われる前に足を踏み入れていた。 「あ、シンちゃん?」ミサトは一瞬視線を上に移動させた。「シンちゃんは今……病院よ。ちょっと、風邪引いたみたいで」 「……」 レイは黙ってミサトの目を凝視した。視線を外したのはミサトだった。 「どうして、嘘をつくの?」 215 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/08/03(月) 15 09 26 ID ??? ミサトは額に手を当て、ため息をついた。 「あんたには通用しないか。本当はね、彼……家出しちゃったのよ」 レイの頬がぴくりと動いた。唇も同程度に動かして言った。 「役立たず」 ミサトは気色ばんだ。 「ちょっと。そんな言い方……」 「何のためにあなたは碇君と同居しているの? 管理者失格ね」 保護者と言わないところがレイらしいところだ。 ミサトはむっとした顔を憂い顔に崩し、またため息をつく。 「レイ、あなたみたいな強い子には分からないだろうけど、シンジ君には辛すぎるのよ。私としては、このままエヴァに乗らない道をあの子が選ぶなら、それも仕方ないと――」 レイは苛立たしげに手を振って、ミサトの言葉を遮った。 「そんな生温いことを、本気で言ってるわけじゃないでしょうね、葛城さん。天秤の片方に乗っているのは人類の未来なのよ」 というものの、人類の未来など、レイにとってはどうでもよかった。レイにとっては何より優先されるのは自分の快楽だった。レイは、そのために――そのためだけにエヴァに乗っている。 「分かってるわよ、あなたに言われてなくても――」 「常習性の強い薬を投与することは考えてる? エヴァに乗ることと引き換えに薬を処方する」 ミサトはまるで殴られたようにのけぞった。その手法が採られる可能性はあるとミサトは思っていた。 なにしろこの勝負の賭け金は人類であり、勝つためにはありとあらゆる手段が採用されるに決まっていた。 ゲンドウは実に息子にそこまでやるのか――。ミサトは、そう問われると絶対ないとは断言できないものをゲンドウに感じている。 むろんシンジへの薬物投与など、万が一実行されるとなれば職を賭してでも阻止するつもりだった。 「冗談よ」と、レイは真顔で言った。 「……」 ミサトは、レイにはお馴染みの目付きでレイを見ている。人間ではない異形の生物を見る目付きだった。 薬物使用の可能性を政府のお偉方が口にするならともかく、当のパイロット、十四歳の綾波レイが言っているのである。投与される側ではないか。異常というより他はなかった。 もっともレイにとっては冗談というのは本心の言葉だった。シンジに薬物を使うことなど、とうてい許されない。 といっても倫理的な問題ではなく、薬漬けの鳥がいい声で鳴くとは思えないという、それだけの理由だが。 216 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/08/03(月) 15 11 52 ID ??? 「どうするの?」 ミサトは黙っていた。正直、これからどうすればいいのかミサトにも分からない。こうやってレイに責め立てられると、やはり自分には荷が重かったかという思いに駆られてしまう。 「飴はきちんと与えていたの?」 「アメ?」 「飴と鞭。人間を操るときの基本でしょ?」 ミサトは唖然とした。まったく十四歳の子供の言うこととは思えなかった。 「まさかと思うけど、命令違反はいけませんと説教するだけだったんじゃないでしょうね」 レイの目付きがきつくなった。 「軍規に違反したことは確かだけど、使徒を倒したのも事実。一人でよく出来ましたねと頭を撫でておいて、命令違反のことは後で付け加えればいい。 軍人でもない素人の中学生相手に叱り付けるだけなんて、葛城さん、あなた、犬を飼う資格もないわ。人間なんてもってのほか」 ミサトは黙りこむ。シンジの家出という結果を考えれば、何も言うことがない。 「自分の感情のおもむくままに行動するなんて、あなたの使徒撃滅への想いはその程度のものだったのね。……お父さんが草葉の陰で泣いているわよ」 しょんぼりと下を向いていたミサトだが、最後の言葉を聞くと、キッと顔を上げた。血の気が引いて蒼白になっている。 「あんたね……世の中には、言っていいことと悪いことがあるのよ」 すでにレイはミサトの気を外すように一歩下がっている。視線はミサトの手に据えられていた。ミサトがいつ殴りかかってきても対処できるようにだった。 「さよなら」 レイはミサトから目を離さず、後ずさりながら部屋を出て行った。 外に出ると、かすかに笑った。他人のトラウマを抉るのはどんなときでも楽しいことだ。不機嫌も多少はおさまる。 廊下の角を曲がり、エレベータの扉の前で待つ。しばらくして扉が開くと、中にジャージとメガネの二人組みが乗っていた。 「綾波、何しとんのやこんな所で」 レイは話しかけてくるジャージを無視をしてエレベーターに乗り込む。 「あ、お前も碇の様子を見に来たんか。同僚やもんな。どうやった?」 返事をせず、閉ボタンを押して扉が閉まるのを無表情に見つめる。 「ちっ、何やねんあいつは。無愛想にもほどがあるで」 ジャージの言う台詞が扉越しにかすかに聞こえてきた。遠い外国の知らない言葉と同様に、レイには意味のないものだった。 217 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/08/03(月) 15 17 36 ID ??? □ さて、これからどうするか――。家出までするとは想定外の出来事だった。 外に待たせてあった車に乗り込んでレイは思案する。 シンジの行方なら保安部の連中が見張っているだろうから問題はない。自分で戻るか、連れ戻されるかどちらかだ。 問題は、この家出が一時的な逃避衝動なのか否かということだった。正式にネルフから離れることにならないだろうか。それは困る。 レイはシンジの絶叫を思い出し、ぞくりと身体を震わせる。シンジには、レイが飽きるまで鳴いてもらうつもりだった。 「碇シンジが今どこにいるか、分かる?」 レイは運転席の男に声をかけた。 「はい。分かりますが」 「そこにやって」と、レイは言った。 演技の時間だった。 「碇君」 映画館を出てきたシンジに声をかけてきたのは、レイだった。 「あ、綾波……。どうして、ここに!?」 シンジは呆然とした。偶然? まさか……。 レイはシンジの問いに答えなかった。 「どうして学校に来ないの? その様子じゃ病気じゃないわね」 「え……。それは、その……」 シンジは俯いた。レイの視線が痛い。 「僕は……」 それきり黙り込む。 レイは何も言わなかった。こういうときにぐちぐち責めるのは逆効果だとレイは知っているからだ。 218 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/08/03(月) 15 20 36 ID ??? しばらく沈黙した後、ころあいを見計らって、 「碇君、帰ってくれるわよね……。私、車で来てるから。一緒に帰りましょう」 レイはシンジの返答を待った。内容は聞くまでもない。 シンジは今にも泣きそうなくらい顔を歪めた。 「僕は……」 顔を上げ、必死に言葉を紡ごうとする。 「ダメなんだ……。僕は、ダメなんだ」 シンジは手を広げて見る。震えていた。 「もうイヤなんだよ。もうあれには乗りたくないんだ。父さんや、ミサトさんや、綾波やみんなの期待には……応えられないんだ」 レイが何か言おうと口を開いた瞬間だった。 「ごめん、綾波」 シンジはそう言うと、背を向けて駆け出していた。 「えっ?」 レイはきょとんとシンジの背中を見送った。何か現実ではない、奇妙な光景を見ている気がする。 シンジは自分の言うことをおとなしく聞いて、ミサトの家へ戻るはずだ。 なのに、なぜ遠ざかっていくのか。 ふいにレイの顔に朱が差した。 拒否したのだ。 ――私の言う通りにしなかった。 レイにとって、これほどの侮辱はなかった。 目がくらむほどの怒りを感じる。腹のあたりでぐつぐつと何かが煮立っているようだった。 そう――。他人が自分の言うことを聞かないことほどレイを怒らせることはないのだった。 脅迫したわけではない。演技にせよ、私が頼んだのだ。この私が。 それをあの臆病者は拒否し、背を向けて逃げ出した。 許せることではなかった。 ――! レイは無言でそばにあるゴミ箱を思い切り蹴飛ばした。 隠れていた野良猫がレイに向かって牙を剥き出して威嚇する。しかしレイの顔を見ると、素早く反転して逃げていった。 219 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/08/03(月) 15 21 21 ID ??? レイは家に帰るとすぐにシャワーを浴びた。レイが感じた怒りは湯で洗い流せるほど単純なものではなかった。 その原因には、レイにはもうどうしようもないということもある。 シンジがもうエヴァに乗りたくないと言えばそれで終わりなのだ。 まだシンジの弱みを握っていないから、脅迫しようにも出来ない。あとは、それこそ拷問か薬かの世界になる。 そこまではやらないだろうとレイは踏んでいる。あの男にそこまでする度胸はない。 肝心のミサトの説得は期待薄だった。 打つ手がない。失敗したのだ。 歯噛みする思いだった。 それでも何か手を打つとすれば――。 いや、これ以上の行動はレイのプライドに関わることだった。もう何もしない。 レイは鏡を見る。鏡の中の綾波レイが赤い目を光らせてレイに話しかける。 ――甘く見てたわね。 (そう。父親との関係を突っついて操ろうなんて甘く考えていた) ――私は戻ってくると思うわ。 (そう? もう、どちらでもいいけど) ――怒ってないの? (怒ってるわ) ――じゃあ、もし、碇シンジが逃げ出さずにネルフに留まるようだったら――。 (そう。そのときは) レイはうなずいた。 弱みを探り出すなんて甘いことはしない。 こちらから作り出してやる。 鏡の中の綾波レイは、唇の両端を吊り上げた。 220 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/08/03(月) 15 25 39 ID ??? □ 次の日、シンジはネルフに残ることになったという連絡が保安諜報部から入った。 「そう……」 レイは呟いて電話を切った。 どういう経緯があったか知らないが、結構なことだ。 そうなればなったで、こちらにも考えがある。 まずは協力者が必要だった。 レイは頭の中で候補者を選びはじめた。 放課後のことだった。 レイは鞄を手に持ち、いつもの憂い顔で校門を出るところだった。 「綾波!」 シンジが後ろから駆けてきて、レイの前に回りこんだ。必死になって走ってきたのだろう、膝に手をつき、息を切らしながら、 「綾波! この間は……ごめん」 「何?」 レイは小首をかしげて、まるで何のことか分からないように答える。 221 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/08/03(月) 15 27 01 ID ??? 「あの、謝りたくて……。綾波がわざわざ来てくれたのに、あんな……逃げたりして。本当に恥ずかしいよ。自分でも情けないって思ってるんだ」 シンジはやや俯きながら、しかしどこかさっぱりしたような顔で、 「でも、もう……逃げたりしないから。……本当のこと言うと、今だって逃げ出したい気持ちはあるんだ……。僕は、こういうことに向いてないと思う気持ちは変わらない。 だけど、頑張るから。ここで逃げたら結局同じなんだ……。だから、出来るだけ頑張ってみようと思う」 「そう。頑張ってね」 レイはシンジを見ずに、呟くように言った。いまだに冷たい怒りが身を浸している。顔も見たくなかった。 「……うん。それだけ、言いたくて。じゃあ」 シンジの駆け出した先には、ジャージとメガネの姿があった。この間あのジャージに殴られたばかりだというのに、どういうことだろう? 手下にでもなったのだろうか。いかにもシンジのやりそうなことだ、とレイは思った。常に保護者を必要とするタイプなのだ。 レイは整った唇を歪め、シンジの言葉を反芻する。 ごめん? 謝りたくて? 笑わせる。 それで済まされるはずがなかった。 見てなさい。 頑張らなくても逃げ出さないように、いや、逃げ出せないように――私の奴隷にしてあげる。 □ シンジとの会話から何日か経ったある日、レイは、とある男子生徒が一人でいるところを見計らって背後から声をかけた。 「ちょっと、いい? 話があるの」 「うわっ!」 その生徒は飛び上がらんばかりに驚いた。それから辺りを見回し、レイが自分に話しかけていることを確かめてから言った。 「え、俺に?」 「そう。あなたに」レイは目を細め、薄い笑みを浮かべて言った。「あなたに、よ」 275 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/08/09(日) 01 35 55 ID ??? 221 5. 「……手続き面倒よ。シンジ君、本チャンのセキュリティカードもらったばかりなんだもの」 ミサトは手に持ったビールの缶を中指と親指でつまみ、ぶらぶらと左右に振りながら言った。 そこでミサトにとって唯一の宇宙の真理――すなわち飲み干せば、新しい缶が必要だということ――に気づき、「あ、シンちゃん、ビールお願い」とシンジに向かっておねだりをする。 ミサトの他にはリツコとシンジがいて、そんなミサトを呆れた目で見ていた。 三人でミサト家で食事をしているところなのだ。ただし、シンジとリツコにとっては食事という名の拷問であったが。 「あっ。忘れるところだったわ。シンジ君、頼みがあるの」 思い出した、という顔のリツコ。 「何ですか?」シンジは満面の笑みを浮かべるミサトにビールを手渡して言った。 「綾波レイの更新カード。渡しそびれたままになってて……悪いんだけど、本部に行く前に彼女のところに届けてもらえないかしら」 リツコはバッグからカードを取り出して、シンジに渡した。 「はい」 シンジは素直にうなずいた。それからじっとカードを見る。 ミサトはこういうことには目ざとい。シンジの様子に素早く気がついて、 「どーしちゃったのー? レイの写真をじーっと見ちゃったりして」 「あっ、いや……」 シンジは慌ててカードから目を離す。 「まったまた、テレちゃったりしてさ。レイの家に行くオフィシャルな口実ができて、チャンスじゃない!」 「からかわないでよ、もう!」 シンジはふくれてその場に座り込んだ。 ミサトの台詞を聞いて、リツコは苦笑する。 ――オフィシャルな口実、ね。その口実を作ったのは当のレイなんだけど……。 276 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/08/09(日) 01 37 37 ID ??? 「赤木博士」 残業中のリツコが突然レイの訪問を受けたのは、PCを前に、その日十杯目のコーヒーを飲み、二十本目のタバコを吸っているときだった。 「あら、なぁに? 珍しいわね」 リツコは内心驚きつつも平静を装って返事をする。レイはいつも気配を消して訪れるので、その度に驚いてしまう。心臓に悪い。 一度注意したが直す様子はなかった。わざとやっているのだろう。他人が嫌がることをするのが天性になっているのだ。 レイは黙って手を差し出した。掌には、セキュリティカードが乗っている。 「私のセキュリティーカード、更新した」 リツコは眉をひそめた。 「……いえ、確か、してないわよ」 レイはちらりと苛立ちの表情を浮かべる。 「更新してなくても更新した。それで、あなたが私に渡し忘れたということにして、碇君に渡して」 「それでどうするの?」 「碇君に、私の部屋まで届けるように言って」 「……なんでそんなことを? と言ってもあなたは理由は言わないんでしょうね」 「分かってることをわざわざ口に出すのは馬鹿のやること」 レイはそう言うと踵を返し、部屋を出て行った。 リツコはドアをしばらく見つめると、二十一本目のタバコに火を点け、肩をすくめてやり残した仕事に戻った。 「でもねー、あのコちょっと性悪かも知れないわよ、シンちゃん。覚悟はできてる?」 「しょ、性悪!? 何ですかそれ!? っていうか、覚悟とか何とか……意味が分からないです」 「いや、ちょっとじゃないか……かなり性悪かもよ」 「ええっ、か、かなり?」 ――さてさて、どういうつもりなんでしょうね。 リツコはミサトとシンジの他愛のない遣り取りを聞きながら、謎めいた微笑を浮かべた。 277 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/08/09(日) 01 39 12 ID ??? □ 道路沿いに立ち並ぶ集合住宅はアスファルトから立ち上る熱気にゆらゆらとゆらめいて、海原のごとく無限に続いているように思われた。 その中の、廃墟のような一棟にレイは住んでいるらしい。少なくとも、ミサトのメモはそう言っている。 シンジは額の汗を拭って、四階のあたりを見上げた。 ――ここ、本当に人が住んでるのかな? 人の気配がない。この時間帯なら、幼稚園や学校から帰った子供や母親の姿があるはずだ。 しかし、辺りは静まり返り、ガン、ガンという工事の音だけが響いている。 日の光があるだけに、夜よりもかえって不気味さを感じてしまう。 何回見直しても、ミサトからもらったメモに書いてある住所とここの番地は合っている。 使徒の襲撃で疎開してしまったのだろうとシンジは考えた。シンジのクラスでも転校していく生徒がいる。その数は増える一方だった。 階段を上る途中でも、人の姿を見ることは無かった。 シンジは「402 綾波」と書かれたプレートを見上げた。いざ来てみると、やはり緊張する。女の子の部屋を訪問するなど初めてのことだった。 掌をズボンで拭うと、おずおずとインターフォンを押す。 ――。 返事がない。 ――どうしようか。 シンジは困惑した。このまま帰るわけにはいかなかった。カードがないとレイは本部に入れないのだ。 ドアノブに手を伸ばして、回してみる。何の抵抗もなくドアは開いた。 ――あいてる? 「ごめん……ください」 やはり返事はない。シンジは靴を脱いだ。 「ごめんください。……綾波、入るよ」 シンジは忍び足で廊下を歩いていき――息を呑んだ。 278 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/08/09(日) 01 40 36 ID ??? ――ここに……住んでる? そこは、とても十四の女の子の部屋とは思えない場所だった。ベッド、冷蔵庫、パイプ椅子……必要最小限の家具しかない。 床にカーペットが敷いてあるわけでもなく、壁にポスターやカレンダーが張られてるわけでもない。 無機質で、寒々とした光景だった。監獄でもここよりは人間らしい場所と言えた。 シンジは驚きのあまり立ち尽くす。 黒服に綾波様などと呼ばれていたから、もしかすると、どこかいいところのお嬢様なのかと思っていたのだ。 まぁ、よく考えるといいところのお嬢様が人型の決戦兵器などに乗って怪物と戦ったりはしないのだが。 ますますレイのことをどう考えればいいのか分からなくなるシンジだった。 物思いに耽るシンジを現実に引き戻したのは、そのレイの声だった。 「何、してるの」 「あっ」 振り返ったシンジの目の前には、バスタオルを肩にかけたレイ。 シンジは自分の目を疑った。おそらく幽霊を見てもこれほどは驚かなかっただろう。 レイは――何も身に着けていなかった。 「!」 シンジの頭はまるでストロボを焚いたように真っ白になった。心臓が口元までせり上がってくるような感覚。口が急速に渇いていく。 慌てて後ろを向いた。心臓の動悸が激しすぎて、胸とこめかみが痛い。 「いやっ、あのっ」 279 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/08/09(日) 01 41 43 ID ??? とにかく弁明しなければという一心で舌を動かす。 「僕は……その……僕は、た、頼まれて……つまり……何だっけ……」 「そう、カード! カードが新しくなったから、届けてくれって、だから、だから別にそんなつもりは……」 「リツコさんが渡すの忘れたからって……ほ、ほんとなんだ。それにチャイム鳴らしても誰もでないし、鍵が……開いてたんで……その……」 シンジの独白はレイの言葉で遮られた。 「ちょうだい」 「え?」 「カード」 「う、うん! 今すぐに……」 バッグからカードを出して、目をつむって――後ろを向いてるからその必要はなかったのだが――レイのほうに突き出す。 しかし、シンジは緊張のため、カードを強く掴みすぎていた。それに付け加え、レイがひったくるようにカードを取ったため、シンジはバランスを崩してレイに寄りかかる格好になった。 一瞬ののち――他人が見ればレイを床に押し倒したような姿勢になった。 シンジの左手はまるではじめからそこにあったようにレイの右の乳房におさまっている。 シンジはきょとんと不思議そうな顔でレイを見ていた。事態はシンジの理解できる範囲を超えてしまったのだ。 レイの「どいてくれる?」という台詞までシンジは現実に戻れなかった。 「え? ……あ。あ、あ、あぁぁぁぁっ!」 叫びながら、バネ仕掛けの人形のように立ち上がる。 「ち、違うんだ綾波! これは……これは間違いで……そんなつもりは……とにかく、ごめん! 本当にごめん!」 シンジはまるでライオンに追いかけられているような猛烈なスピードで走り去っていった。 280 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/08/09(日) 01 43 33 ID ??? □ レイは下着をはき終えると、「出てきていいわよ」と声をかけた。 ベッドの下から、手にビデオカメラを持ったケンスケがのろのろと這い出てくる。 「ちゃんと撮れてるわね?」 レイは確認を要求した。チェックすると、一部始終がきちんと映っている。 「うまくいったわね」 レイは喉の奥で満足げに笑うと、服を着はじめた。 横を向きながらも、ちらちらとレイのほうに目を向けてしまうケンスケ。性格はともかく、容姿は抜きん出ているのだからこれはやむを得ない。 当のレイはケンスケのことなど全く気にしなかった。備え付けの家具ほども気に留めない。 シンジに裸を見られた――いや、見られたのではなく見せたのだが――ことも気にならなかった。犬や猫に裸を見られて恥ずかしがる人間はいないのと同じ理由だった。 ケンスケはうな垂れ、ため息をつく。 ――いったいなんでこんなことになったんだ……。 こうなるに至った経緯を呆然と思い起こす。 それは昨日のことだった。 281 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/08/09(日) 01 45 32 ID ??? ケンスケは不安げな様子できょろきょろと様子を窺っていた。 場所は体育館の裏で、こんなところにも放課後特有の突き抜けたような、それでいて気怠い雰囲気が漂っている。 ケンスケは同じ場所をうろうろと歩きながら考える。 自分に用があるなんて一体どういうつもりだろう? 不吉な予感がしてならない。これが普通の女の子なら――たとえ可能性が万が一でも―― 告白されるかも知れないと妄想できるのだが、レイが相手だとそんな可能性はまったくのゼロだ。あるいは告白ではなく脅迫かも知れない。 ……残念ながら、ケンスケを待っていたのは後者だった。 レイは約束の時間よりも十五分遅れでやって来た。ケンスケを不安がらせるための、意図した遅刻だ。 顔を会わせるなり単刀直入に、レイは「あなたにやって欲しいことがあるの」と切り出す。 「……まさか、法に触れることじゃないだろう?」と、ケンスケは眼鏡のズレをなおしながら、「やだぜ。殺人の手伝いとか」 冗談のつもりで言ったのだが、レイはくすりともしない。あまりに真剣な顔なので、かえって冗談を言ったケンスケのほうが不安になる。 「おい、まさか……」 「あなたの持ってるビデオカメラで撮影してもらいたいの」 「……で、何を撮るんだ?」 ケンスケは思わず胸を撫で下ろしつつも、疑いの表情を崩さずに訊いた。レイのやることだ、ロクでもないことに決まっている。 「あなたは知らなくていい」 「知らなくていいって……。じゃあ俺は協力しないよ、そんなの」 「あなた……父親からエヴァの情報をくすねてるわね。それだけじゃなくて、他の生徒に教えている」 「エヴァの情報って……そんな大したことじゃないよ」 282 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/08/09(日) 01 46 29 ID ??? ケンスケの顔に警戒心が浮かび上がる。第一種戦闘配置といったところだが、戦闘員はケンスケしかいない上に相手はレイだ。甚だ不利というしかない。 「たとえ大した情報じゃなくても、そして相手がたとえ同級生でも、情報漏洩の罪は重いのよ。ネルフをなめないほうがいいわ」 「情報漏洩って……」 ケンスケは口ごもった。まさか、と思う。そんな大それたものなのだろうか? 「おまけにこの間の事件もあるし。私の命令ひとつで闇に葬ることもできるのよ。あなたの父も、あなたも。嘘だと思う?」 レイは赤い目を光らせる。夕日の光加減で白い顔が血のように赤く染まっていた。 ケンスケは真っ青になった。 「た、頼むよ……。そんなことはしないでくれ」 「だったら私の言うことを聞きなさい」 「……わかったよ」 ケンスケはため息をついた。とんでもない女に目をつけられたものだ。禿鷹が頭上に舞っていてもおかしくない。 「で、いつどこで撮るんだ? まさかそれは教えてくれるんだろう?」 「明日、私の部屋で」と、レイは答えた。 283 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/08/09(日) 01 53 17 ID ??? 「綾波さ……もうこんなことやめろよ」 ケンスケはレイが服を着終わるのを確認すると、レイに向き直って、強い調子でそう言った。 「どうして?」 レイは不思議そうに首をかしげた。 「こんなことして、何が面白いんだよ」 「面白い? 面白いとか面白くないとかじゃないのよ」 「じゃあ何なんだよ」 「あなたには、関係ない」 「お前さ……碇の気持ちも考えてみろよ」 言っても無駄だと知りつつも、ケンスケは口を出さずにはいられなかった。 ケンスケはシンジが綾波のことを気にかけているのを知っている。その感情がどういう種類のものかは別の話だが、気にかけていることは間違いない。 レイはケンスケが下を向くまでケンスケの顔を見つめ続けた。 「碇君の気持ちがどうだろうと、私は私のやりたいことをやるのよ」 当たり前のことではないか。自分がなぜ碇シンジの気持ちなど考えなければならない? 「今日撮ったやつ、どうするんだ?」 「あなたの知ったことじゃない」 レイは吐き捨てた。いい加減うるさくなってきたのだ。上機嫌の燃料もそろそろ尽きかけている。 「用は済んだ。帰って。カメラ代は渡したわよね?」 ケンスケはまだ何か言いたそうな顔をしながらも、部屋から出ていった。 ――碇の気持ちも考えてみろよ、だって。 「はっ」 ――他人の気持ちを考える――? 私が他人の気持ちを考えるのは、弱みを握りたいとき。他人を効率よく支配したいときよ。 いや、そんなことはどうでもよかった。 ――これで碇シンジは私の奴隷になったも同然。折に触れてこのことを思い出させてあげる。今度ネルフから逃げ出そうものなら……。 カメラ役にケンスケを選んだのも、どうやらシンジと仲良くなりつつあると見たレイの底意地の悪さの表れだった。 このビデオを撮ったのがよりによってケンスケだと知ったら、シンジはどんな顔をするのか。想像しただけでレイは胸が張り裂けるような興奮を覚える。 さぞかし傷つくことだろう。目に涙をいっぱいに溜めて、泣き言を言うのだろう。 レイはくすくすと笑い出した。立っていられなくなってベッドに倒れこみ、しまいには身体を二つに折って笑い転げる。 笑いは、なかなか止まらなかった。 (続く) 289 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/08/10(月) 23 54 26 ID ??? 283 6. 「あ……」 レイは身体を仰け反らせて軽く呻いた。 相変わらず鳥肌が立つようなシンジの悲鳴だった。第五使徒の荷粒子砲をもろに受けたのだ。 オペレーター、ミサト、リツコの状況報告や指示が慌しく行き交う。 最初に出撃しなかったのは正解だった。奴隷は見事に自分の役割を果たしたことになる。 「レイ、一旦待機」 初号機が格納されたあと、レイに指示が飛ぶ。 「了解」 レイは肩をすくめた。今度の使徒は、もしかしたらこの手でナイフを突き立てるというわけにはいかないかも知れない。 ――それだと詰まらないわ。あの感触がいいのに……。 目を閉じて、LCLが排出されるのを待つ。 ……レイは病院の廊下を物音も立てず、猫のように歩いている。目的地はシンジの病室だった。 シンジの容態が気になるのだ。ここで死なれるのは困る。まだ早い。 ペットは飼い主よりも早く死ぬが、だからといって、今死んでいいというわけではない。出来るだけ長生きして欲しいというのが飼い主の共通の願いだろう。それと同じことだった。 レイは病室に行こうとする看護婦に身分を明かして交替を申し入れ、食事と服を差し入れに行く。ミサトが立てた作戦も伝えねばならない。 病室に入ってシンジの様子を窺った。 シンジは死んだように眠っている。 男にしてはやや長い睫毛と、白い肌。こうやって寝ていると、中性的な顔立ちも相まって、この少年がどこからかやってくる得体の知れない化け物と戦う兵士なのだというのはひどい冗談のように思えてくる。 レイはシンジの寝顔を見守りながら、ふと想像する。 ――エヴァでこの細い身体をぎゅっと握り締めたら、どんな悲鳴を上げるのかしら。 信じられないといった顔で、やめてよ綾波、と懇願するだろう。僕が何をしたっていうの? と、言うだろう。 何をした? あなたは私の言う事を聞かなかったのよ。奴隷のくせに……。ごめんなさい? 今さら謝っても遅いのよ。もっと鳴きなさい。ほら、もっと……。 レイは思わず、足を前に一歩踏み出していた。何をするつもりだったのかはレイにも分からない。 290 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/08/10(月) 23 55 34 ID ??? そのとき、シンジの意識が回復した。シンジが最初に見たのは、自分を見下ろすレイの白い顔だった。 「……あ。綾波……?」 このときレイが考えていることをシンジが知ったなら、再び意識をなくしていただろう。もちろんそんな術はないから、シンジはレイの淡々と告げるヤシマ作戦のスケジュールを聞くことになった。 「これ、新しいの」 レイは服をベッドの上に放り投げる。 シンジは反射的に上半身を起こした。それにともなってシーツが下腹部まですべり落ちる。 「寝ぼけて、その格好で来ないでね」 「え? ……わっ! ……ごめん……」 シンジはレイが指摘した「その格好」に気づき、慌ててシーツを引き上げた。 少しの間、その格好で固まっていたシンジが視線をレイに向けた。レイがそれに気づく。 「食事」 シンジは俯いた。 「何も、食べたくない」 「六十分後に出発よ」 レイに苛立ちの感情がふつふつと湧き上がってくる。たかだか死にかけたぐらいでグチグチと、情けない男だ。だいたいこの間頑張ると言ったばかりではないか。 ――その可愛い口を開かせて、無理矢理詰め込んでやろうかしら。 「また、あれに乗らなきゃならないのかな……」 レイの苛立ちも知らず、シンジは鬱々と独り言のように呟く。 「ええ、そうよ」 ――当たり前よ。あなた、他に何の役に立つの? 「僕は……」と、暗い顔でシンジが口を開きかけたのを、レイがかぶせるように、「怖い?」と訊いた。 シンジは目を見開いて、身体を震わせた。 「当たり前だよ! 僕は死にかけたんだ! あんな……」 「案外意気地なしなのね。女の子の胸を触る勇気はあるのに」 シンジは口を閉じ、人種が変わったのかと思うほど真っ赤になった。 「あれは……ごめん。でもホントに間違いで……。って、僕、昨日から、謝ってばかりいる……」 シンジの相手をするのにもうんざりしてきた。レイは我慢できるタイプではない。「じゃ。葛城さんと赤木博士がケイジで待っているから」と言い放つと病室から出た。 極度に清潔な、しかし死の匂いが濃厚に香る廊下を歩きながらレイは呟く。 ――逃がすものか。 291 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/08/10(月) 23 57 40 ID ??? □ ミサトとリツコは書類だの資料だのが乱雑に散らばっている――ミサト曰く、何がどこにあるのかすぐに分かり、しかもすぐに 手に取りやすい絶妙なバランスで整頓されている――ミサトの個室で、ひと時の休憩を味わっている。 「役割はどうするの?」リツコが湯気を立てているコーヒーカップを両手で持ち、湯気越しにミサトを見ながら言った。 「そうね……シンクロ率が高いシンジ君が砲撃手、レイが防御役でいこうかなと考えてるところよ」 ミサトは頬杖をつき、右手の人差し指で机をとんとんと叩きながら答えた。 リツコはコーヒーカップを机に置いた。さすがにそのぐらいのスペースはある。 「シンクロ率が高いといってもほんの少しだし、そもそも装甲は初号機のほうが頑丈だわ。逆のほうが良くなくて?」 「そうねぇ……まぁ、まだ決まりってワケじゃないから」 「それにね」 リツコはカップの縁を人差し指でゆっくりとなぞる。 「あの子たちの意見を無視するのはどうかしら?」 「どういう意味? まさか自分で選ばせろっていってるわけ?」 リツコにしては珍しい意見ね――とミサトは思った。いや、そうでもないのかも知れない。長年の友人と思っていても、思いがけない面というのはきっとあるのだろう。 「あの子たちが一番力が発揮できる役割がいいんじゃないかしらと思っただけ。押し付けられるものより自分で選ぶほうが納得できるでしょうしね。 まぁ、作戦立案の責任者はあなただから口出しするつもりはないけれど」 「そうね……。考えてみるわ」 ミサトは腕組みをしながら答えた。 一番力が発揮できる役割という言い方をミサトは気に入った。押し付けるのが軍隊というものだが、何しろ前代未聞の作戦なのだ。それに相応しい配置方法があっていいのかも知れない。 292 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/08/11(火) 00 00 08 ID ??? □ 目も眩むような照明に照らされて、シンジとレイ、ミサトとリツコの影が床に長く伸びている。最終のブリーフィングだった。 「……と、いうわけ。私はシンジ君が砲撃手、レイが防御と考えてるけど、あなたたちはどう?」 「……どっちが、危険なんですか?」と、シンジ。 ミサトはシンジの目を真正面から見て、 「どちらも危険なことに変わりはないし、どちらの責任が重いわけでもないわ。お互いやるべきことがあるだけ」 「できれば、僕……防御役をやりたいと思います」 シンジが片手を挙げて言うと、レイを見る。 「綾波も、それで構わないよね?」 「ええ」と、レイは言った。シンジが言い出さなければ自分が砲手をやると言うつもりだった。自分が防御役など、王様にトイレ掃除をさせるようなものだ。冗談ではない。 それにしても――。レイはシンジを横目で見る。 実のところレイは少し感心していた。主人の守りをかって出るなど、まさに奴隷の鑑ではないか。やはりレイの部屋でのあの出来事が功を奏しているに違いなかった。レイは自分の行動に満足する。 ミサトはにっこり笑った。「そう。じゃあ、そうしましょう」 それからリツコにより、ポジトロンライフルの説明を受ける。 「それと、一度発射すると、冷却や再充填、ヒューズの交換などで、次に撃てるまで時間がかかるから」 レイは、もし外して敵が打ち返してきたら?――などと馬鹿げた質問をしたりはしなかった。 一撃で倒す。当然のことだ。 「時間よ。二人とも着替えて」と、ミサトが言った。 293 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/08/11(火) 00 04 57 ID ??? □ 二人は更衣室でプラグスーツに着替えている。シンジがちゃんと服をたたむ一方で、レイが適当に放り投げているのは、それぞれの性格を表しているものか。 着替え終わったシンジは、床にこの現実を抜け出す解答が魔法のペンで書いてあり、見つめ続ければあぶり出せるかのようにじっと足元を見つめている。 シンジは気配でレイが着替え終わるのが分かった。顔を上げ、 「ねぇ……綾波は、怖くないの? さっき、僕に怖いのかって訊いたけど」 「何が?」 「死ぬのが。僕は怖いよ。……男なのに、情けないと思うかも知れないけど。綾波は、どうなの?」 「私は怖くない」 実際、まったく怖くなかった。そもそもレイは、自分が死ぬなどと想像したこともない。 「そう……。やっぱり、綾波はすごいな。僕には到底……」 シンジは台詞を途中で止める。レイが入ってきたからだ。 「だって、私は死なないから」 レイは口元に冷ややかな笑みを浮かべ、シンジの独白を遮った。 ゆっくりとシンジに近づいていく。 「あなたが守ってくれるもの」 「え……」 レイは、戸惑う様子のシンジに、お互いの息がかかるほどの距離まで近づくと、少し首をかしげてシンジの目を覗き込んだ。 レイの瞳に、シンジが映る。 シンジの瞳に、レイが映る。 シンジはびくっと身を引いて目を逸らした。顔が少し赤くなっている。 「でしょ?」 「う、うん……」と、シンジはか細い声で答える。 レイは掌で包んだ小鳥を空に放すように、そっと言った。 「守ってくれるわよね、碇君」 「……守るよ、綾波」 小声で言うと、シンジは逸らした目をレイに再び向けた。 そして、「僕は、君を守る」と、今度ははっきりと言った。 満足そうに頷いて立ち去るレイの背中を、シンジは唇を噛みしめて見送った。 青ざめたその顔には、強い決意が浮かんでいる。 294 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/08/11(火) 00 07 28 ID ??? シンジとレイは離れて座り、作戦開始を待っていた。すべての準備は整い、あとはエヴァに乗り込むだけだ。 天を圧するような満月の光が二人を照らしている。 月がこんなに明るいなんて知らなかったな――シンジは膝を抱えながら思う。日本中の電力をここに集めるための必死の努力をあざ笑うかのような明るさだった。 シンジはレイに視線を向ける。レイは、月光のせいで全身から燐光を発しているように見えた。 何を考えているのか、その横顔からは全く窺い知ることができない。 思わず、声をかける。 「綾波は……何故これに乗るの?」 面白いこと言うのね、とレイは思った。そんなことは考えたことがなかった。目を閉じて言葉を探す。すぐに見つかった。 「そうね……面白いから」 「……え?」 シンジは驚いて聞き返した。 「どこが? 酷い怪我をしてまで……。これからだって、死ぬかも知れないんだよ?」 怪我などしたことはないが、それを言うわけにはいかない。それに、これから怪我をするつもりもなかった。 「面白いじゃない。エヴァに乗るから大の大人たちが私みたいな小娘の言うことを聞くのよ。まぁ乗れなくてもそれなりに手はあるけど、面倒になるわね。碇君は他人の鼻面を掴んで引っかき回すのは好きじゃないの?」 「はあっ!? そ、そんなの好きじゃないよ!」 シンジは何を言い出すのかとびっくりして、つい叫んでしまった。 「そう。じゃあ、引っかき回されるのが好きなのね」 「ち、違うよ! それも好きじゃないよ! 何言ってるんだよ、綾波」 シンジはレイの姿を上から下まで見直した。最初のころの可憐でいたいけな少女というイメージがどんどん変わっていくように思われる。 「でも、碇君を見てるとそうとしか思えないわ」 「何で?」 「だって人の言うなりじゃない、碇君」 シンジが口を開くまで少し時間があった。 「……綾波って、結構、きついこと言うんだね」 「この位、序の口だけど」 レイは小さな声で言った。 「え、何か言った?」 「いえ、何も」 そのうちもっときついことを言ったり、きついことをしてあげるわ、とレイは胸の内で呟いた。 「時間よ」 レイは立ち上がった。 295 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/08/11(火) 00 12 08 ID ??? □ 「外した!」 レイは舌打ちした。信じられないが、事実は事実だ。使徒が放った荷粒子砲に影響されて狙いが逸れてしまったのだ。 衝撃で揺れる零号機の中で、レイは屈辱にかっと頭を熱くする。 「第二射、急いで!」 ミサトの指示を待たずに第二射の準備が整えられていく。しかし使徒はそれまで待ってはくれなかった。 レイの目が光を感知し、衝撃に備えて奥歯を噛みしめる。 衝撃は――来なかった。 シンジが盾を構えて零号機の前に立ちふさがっていた。 盾はフライパンに乗せたバターのようにどんどん溶けていく。 「盾が持たない!」というリツコの悲鳴にも似た声がレイの耳に届いた。 見たままのことを言って何の役に立つのか、と頭の片隅で思うレイだが、さすがに焦燥感が出てくる。もちろん案じているのはシンジではなく自分の身だ。 「早く……」 ――あとどれくらい? 歯を食いしばってその時を待つ。限界まで引き絞られた矢が解き放たれる瞬間を見守るような、ぎりぎりの切迫感。 「早く……!」 照準が合った。 レイは引き金を引いた。 296 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/08/11(火) 00 13 34 ID ??? □ 使徒と初号機が地面に崩れ落ちるのはほとんど同時だった。 面倒だったがこのまま放って置くわけにはいかない。 レイは零号機で初号機のエントリープラグをつまみ出すと、地面に置いた。 零号機から降り、プラグのハッチを開けにかかる。熱を持ってるらしく、掌がジュッという音を立てて煙が立つ。 耐熱加工でなかったらとてもではないが持っていられないだろう。レイは歯を食いしばってハッチを回転させた。熱で変形しているのか、開けるには通常以上の力が必要だった。 「大丈夫? 碇君」 レイはプラグの中を覗き込み、おざなりに声をかける。 意識を失っているのか、それとも死んだのか――シンジはぐったりとしている。 中に入って確かめてみるかどうか、一瞬逡巡した。いや、もう一声かけてみる。 その前に、シンジは目を開けた。「綾波……」 「いか……」 レイは、開きかけた口を途中で止めた。 シンジは泣いていた。同時に微笑んでいた。 レイが無事だから、泣いているのだった。 レイが無事だから、笑っているのだった。 「よかった……綾波が無事で。本当によかったよ」 シンジの両目から大粒の涙が零れ落ちる。涙はシンジの柔らかそうな頬を伝ってプラグスーツに落ちていった。 どういうわけか、レイはシンジの泣き顔から、笑顔から目を逸らすことができなかった。 息をするのもを忘れてレイはシンジを見詰めていた。まるで魔法だった。 レイはかすかな恐怖を覚える。シンジの涙が溜まった目を見ていると、透明度の高い湖をじっと見ているときのように、吸い込まれそうになるからだった。 その状態のまま、どれくらいの時間が経ったのか分からない。ほんの数秒のはずだが、レイには永遠にも等しく感じられた。 魔法を解いたのは、空気をかき乱して近づいてくるヘリのローター音だった。 「来たみたいね、救助」 297 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/08/11(火) 00 15 05 ID ??? レイはシンジから外へ視線を移動させると、ほっとため息をついた。助かったという思いが浮かんでくる。 ――いったい何から助けられたのだろう? 外へ出ると、安心した自分に急に腹が立った。何故かは分からなかった。分からないことにも腹が立ったし、腹が立ったこと自体にも怒りを感じた。 「ちっ」 舌打ちすると、足元の石ころを思い切り蹴飛ばした。 その瞬間、レイはあることに気がつき、硬直した。 そう。 ――私のせいで誰かが泣くのは何回も見たことがある。しかし―― ・ ・ ・ ・ ・ 私のために誰かが泣くのは、はじめて見た。 ――それが、何? レイは掌を見つめた。表面のコーティングが溶けて、黒い焦げ目がついている。その焦げ目でさえも、月の光をふんだんに浴びて、きらきらと輝いていた。 理屈で言えば、レイが見てないところでレイのために泣いた人はいるかも知れない。 しかし、レイが感じたのは直感だった。直感ゆえにその正しさは疑いようもなかった。 碇シンジが、レイのために泣いた、はじめての人間だということを。 レイはその思考を振り払うように頭を振る。 だから何? まったく、それが何だというのだろう。 ――他人が自分について何をどう思いどう感じようが、私の知ったことか。 ふたたび、目の前が真っ赤になるような、原因不明の激情に襲われた。 ぎゅっと握りこぶしをつくって、プラグの外殻を思い切り叩く。 ――泣きたければ、勝手に好きなだけ泣いていろ。 ふと気がつくと、ローター音が頭上で炸裂していた。 ヘリの巻き上げる風で、髪の毛がざあっと掻き乱される。 レイは手をかざしてヘリが放つサーチライトの光を遮り、少しため息をついて満月が我が物顔で輝く夜空を見上げた。 しかし、月は、何も語らない。 (続く) 361 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/08/19(水) 01 36 38 ID ??? 297 7. 振り向かなくても後ろから来るのが誰だか、レイには気配だけで分かった。五感が――五感だけでなく第六感もだが――普通の人間よりも発達しているのだ。 「綾波」 「……何?」 レイは前を向いたまま答える。 その人物――シンジはレイに追いつくために少し早歩きで来たらしい。軽く息を切らせている。 「おはよう」 そう挨拶されてもレイは押し黙ったままで、シンジの方を見もしない。レイには挨拶をする習慣がなかった。無駄だからだ。 シンジは特に気を悪くした風もなく、レイの横をやや遅れて歩いている。 学校まであと五百メートルといったところだった。 今日は湿度が低く、暑さも控えめで、過ごしやすい一日となることが予想された。空には刷毛でさっと刷いたような雲が切れ切れに浮かんでいる。 気持ちのいい風が吹いていた。 登校中の生徒には珍しいものを見るように二人を横目で盗み見ていくものがいる。レイと誰かが一緒に登校するなどはじめてのことだからだ。 「あの……さ」 シンジが躊躇いがちに声をかけてきた。 「ちょっと、いいかな……?」 「駄目」レイはそう言うと横目でシンジを盗み見る。 「えっ……」と、案の定、シンジはおどおどといかにも不安な顔をしている。 「冗談よ。何?」 「突然こんなこと言うの、何だけど……。綾波さえ良かったら……僕が料理を作るから、食べてもらえないかな」 レイはぴたりと歩みを止めて、はじめてシンジを真正面から見た。シンジも立ち止まる。緊張で身体を硬くしているようだった。 「い、いやっ、その……ヘンなこと言ってごめん……」 362 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/08/19(水) 01 37 55 ID ??? この男は何でそういうことを言うのだろう? レイは心持ち眉をひそめて考える。私に料理を作って、この男にどういうメリットがある? レイは瞬きせずにシンジをじっと見つめている。ひょっとしてビデオの件がバレて、私に復讐しようと言うのだろうか? ……いや、バレてもないし、そんなことをしでかす度胸もない。 「あの……綾波がイヤだったら、別に……」 レイの視線に何を感じたのか、シンジはもじもじしはじめた。 「ただ、この間綾波の部屋に行って思ったんだけど、綾波の食生活って……きっと、外食ばっかりじゃない? それじゃ身体に悪いから……」 シンジが何か喋っているが、頭に入ってこない。どうせ大したことは言ってないだろうから構わない。 そうか。突然レイの疑問は氷解した。奴隷だからだ。奴隷が主人に尽くすのは当たり前だった。 そう言えばヤシマ作戦のときも何も言われてないのに防御役に立候補した。それと同じことなのだろう。 こちらから何も言わずに奉仕するとは、なかなかよくできた奴隷だった。 「いいわ」と、レイはうなずいて歩き出した。 「そう?」 シンジの顔がぱっと輝いた。 レイはぱちぱちと目を瞬かせた。妙な気分がした。もっとも自分の心を覗き込んで妙な気分の正体を突き止めようとはレイは思わなかった。内省というものをレイはしない。 「じゃあ、明後日でどうかな? ミサトさん出張で、ミサトさんの分作らなくていいんだ。作らなくていいっていうか、本当は当番制で今日はミサトさんの番なんだけどね……」 「それでいい」 「ところで、綾波は何が好きなの?」 「肉」レイは即答した。「肉が、好き」 「そ、そう」 シンジはレイのあまりに直截な返答に多少ひるむ。レイのような繊細な少女の口から肉が好きなどという言葉が出るのはどことなく違和感がある。 「でも、バランスをとらないとダメだよ。肉ばっかりじゃ偏りが出るからね」 レイはまた不審に思う。なぜ私の身体を心配するのだろうか? 意味が分からないことを言う男だった。私は誰の心配もしたことはない。 それとも――。奴隷はこうやって主人のことを何くれと心配するのだろうか? 今まで強制的に言うことを聞かせてきたから、要領がよく分からない。少し鬱陶しい。 363 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/08/19(水) 01 40 44 ID ??? 「大丈夫。薬、飲んでるから」 「くすり……?」 シンジは眉をひそめた。 「そう。赤木博士がくれるの」 「身体、どこか悪いの?」 「悪いように見える?」 「い、いや、見えないけど……」 実際具合が悪いと思うことはまるでない。ということはリツコはきちんと仕事をやっているということだ。現状に支障が無いなら思い煩うことはない。 「じゃあ、サプリメント……とかなのかなぁ?」 シンジは首をひねる。 「でも、栄養は食事から取ったほうがいいんだよ」 「そう」と、レイはそっけなく言う。別にどうでも良いことだった。 「何か、食べたいものある? いや、肉とかじゃなくて、料理の種類で」 「特にない」 「そう……? じゃあ、ハンバーグでいいかな。野菜サラダも作るから」 「それでいい」 「綾波の家に調理道具ってどれくらいある? 包丁は?」 「ない」 「フライパンとか、鍋は?」 「ない」 「そっか……。お茶碗は?」 「私の分だけ」 「うん。分かった。じゃあ、明後日」 教室に入って二人は分かれた。 レイは椅子を引きながら、ふと、すげなく断ってシンジが傷つく顔を見てもよかったと思った。 そうしなかったのは、多分、悪魔でもワルツを踊りだしそうなくらいに気候が良いせいに違いなかった。 364 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/08/19(水) 01 42 25 ID ??? □ チャイムが鳴った。 レイは「鍵、空いてる」とだけ言う。やることがないので椅子に座っているところだった。レイは何もすることがない状況に何時間でも耐えることが出来た。 いや、耐えるという表現は違うかも知れない。椅子に座り、何をすることなく時間を過ごしても、特に苦痛は感じない。 おじゃましますと控えめな声とともにシンジが入ってきた。右手にはスーパーの袋に入った調理道具、左手には料理の材料。どちらもぎっしりと詰まっている。 シンジはレイの視線に気がついたようだった。 「フライパンとか包丁とか、持ってきたから。置いていくから、よかったら使って」 袋を床におろして、道具を出しはじめる。 「綾波の部屋……ずいぶんと、殺……シンプルな部屋だね」シンジは殺風景と口にしかけて、あわてて言い換えた。「飾りつけとか、興味ない?」 「ない。してどうなるの?」 「え? いや、どうなるっていうか……。その方が、気分が変わって楽しくないかな」 レイは返答せず、しばらく沈黙が流れる。 「……じゃあ、作るよ。あんまり時間もないしね……。ちょっと台所借りるよ」 レイの耳に水が流れる音が聞こえてくる。それから包丁で何かを切っている音。ガスコンロを点ける音。 「結構、料理も楽しいよ」 レイは何も言わない。料理が楽しいとはレイの理解の範疇のはるか外にある。 「確かに自分だけのための料理はちょっと空しい感じもするけど。誰かのために作る料理は楽しいと思う。食べた人が喜んでくれるとね」 レイは笑いそうになった。逆ならともかく、誰かのためにレイが何かをするなど、考えられないことだった。シンジの思考はレイにとって異星人のそれと大差ない。 「綾波は、料理したことある?」 「ない」 あるわけがなかった。料理とは作らせるもので作るものではない。 「じゃあ、全部できあいのものなんだ……」 包丁の音が止まった。 「そういうのって……さみしいと思うな」 365 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/08/19(水) 01 44 57 ID ??? 「さみしい?」 レイは小首を傾げた。できあいのものがさみしいという結びつきが理解不能な上に、そもそもさみしいという感情自体をレイは感じたことがなかった。 レイは思う。辞書的に言えば、さみしいというのは満たされない、人恋しい気持ちのことだ。だけど私は満たされてるし、人恋しいなど生まれてこのかた思ったことがない。 さみしいなどと感じたことがないし、これからも感じることはないのだ。 「どうしてさみしいの?」 シンジはそう問われて答えに窮したようだった。 「何て言うか……誰にも求められていないっていうか……。ごめん。失礼なこと言ってるね、僕。別に綾波が求められてないって話じゃないんだ。綾波は、僕と違って優秀だしね。 ミサトさんと一緒に暮らすようになって、それからトウジとかケンスケとか、もちろん綾波とかと知り合って、助けられたり、助けたりして、傷ついたり、傷つけたりして、 そういうの……面倒だったり鬱陶しかったりするけど、それが当たり前なのかも知れないって、今、ちょっと思ってるんだ」 「分かる」と、レイは言った。 ヒトというのはたとえどれほど独裁的に見えようとも相互に補完された関係性のなかでしか生きられない。 臣下あっての王であり、王あっての臣下ということだ。王だけの世界など存在しない。それは、レイとて例外ではない。 レイはそこまで考えて、驚きのあまり顔を上げた。これは――あまり調子に乗るなという遠まわしの警告なのだろうか? まさか。どう考えてもシンジはそんなことを言えるタイプではない。 366 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/08/19(水) 01 46 29 ID ??? シンジは少し嬉しそうだった。 「分かってくれるんだ。ヘンなこと言って、困らせたらどうしようかと思ったけど……」 シンジはそこで言葉を止めた。トントンというリズミカルな包丁の音だけが、少しの間、部屋に響く。 「できあいのものばかりって、自分はそれでいいかも知れないけど、他人が許さないと思うんだ。そういう人がいないというのは、さみしいと思う。 綾波は気にしなくても、僕は……。僕が、イヤだから。それだと、僕がさみしいんだ。だから、その、綾波さえ良ければ……。 今日みたいに、料理作りにくるから……。もちろん、綾波が迷惑じゃなければの話、だけど」 料理を作りに来るなどと、自分の手間と苦労でしかないことを言うのになぜ言いにくそうにするのか、レイには全く理解できない。もっとも理解しようとも思わなかったが。 まぁ、いつも同じ外食ばかりだと飽きるのは確かなことだった。やりたいというのならやらせればいい。 「別に、構わないけど」と、レイは答えた。 シンジが顔を出して、「メニュー、いろいろ考えておくよ」と言った。その顔にはほっとしたような、かすかな笑顔が浮かんでいる。 シンジが台所に立って、しばらく経った。 「綾波……。ちょっと、来てくれる?」 「……何?」 レイは心持ちむっとしながら立ち上がった。たとえお願いの形でも、他人から何かをしてくれと言われるのが嫌いなのだった。とはいえここで断るのはいくらなんでも子供っぽい。 台所に行くと、シンジがエプロンで手を拭きながら、 「良かったら、手伝ってくれるかな……。油揚げを切って欲しいんだ」 レイは眉をひそめる。なぜ私が? 作るのはあなた。食べるのは私。レイは、そう言おうとした。 「これ、綾波のエプロン」 シンジがビニール袋から真っ白なエプロンを取り出して広げて見せた。 「似合うと思うんだ。……着てみる?」 「え……」 レイにしては珍しいことに戸惑った。 「……いえ、いい」 「……そう?」 367 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/08/19(水) 01 47 43 ID ??? 何となくぎこちない空気が流れる。シンジが咳払いをして、 「綾波も、少し料理を覚えたほうがいいと思う。別に、女の子だから料理をするのが当然とかじゃなくて……。ほら、いざ作りたいと思ったときに、できるのとできないのとじゃ違うから」 レイは苛立ちを感じる。何かを頼まれるのも嫌だが、指図されるのはもっと嫌なのだ。 レイの表情から何を読み取ったのか、シンジはちょっと慌てて付け加えた。 「強制じゃないよ。イヤだったらいいんだ。今は料理ができない女の子だっていっぱいいるし」 「……別に」 レイはまたむっとした。こんなことぐらいできるに決まっている。 包丁を手にして油揚げを切ろうとする。 「ああっ!」 じっと見ていたシンジが声を上げる。 「?」 「危ないよ、左手……こうやって第二関節のところで折り曲げて……」 シンジの手が、レイの手に触れた。レイは自然とシンジを見る。 「あっ。ご、ごめん……」 シンジは慌てて謝る。 なぜ謝ったりするのか? 別に思いっきりぶつかったとか、痛い思いをしたわけではない。まったくこの男はやる事なす事いちいち謝らなくては気が済まないのだろうか? レイが何か言おうと口を開いたときだった。 玄関のチャイムが鳴った。 同時に「綾波様、緊急招集です」という男の声がした。 □ 輸送機の振動に揺られながら、レイはまったくやる気のない表情で――といっても他人から見るといつもの表情と変わりがないのだが――ミサトからブリーフィングを受けている。 相手が使徒でないのがやる気のない原因だった。何かを破壊するのがレイの喜びなのに、どうやら今回はそうではないらしい。 「レイ、目標と並走し、私を背後部に取り付けて。以後は可能な限り目標の移動をせき止めてね」 「乗るの? あなたが?」 レイは少し驚いた顔でミサトを見る。 「そうよ」 「死ぬんじゃない? 私はあなたが死んでも別に構わないけど」 ミサトは苦笑した。 「ま、やれることやっとかないとね。後味悪いでしょ?」 368 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/08/19(水) 01 51 24 ID ??? ……制御棒が本体に格納され、JAは停止した。 「葛城さん、死んだ? あ、生きてても返事しなくていいわよ。別にあなたの声なんて聞きたくないから」 「……ったく、あんた何でそんなに口悪いのよ? 残念でした、生きてるわよ」 疲労困憊といった態のミサトの声が聞こえてくる。 「三十女はしぶといのね」 「まだ三十じゃあ・り・ま・せ・ん」 「似たようなものでしょ」 「神はディティールに宿るって言葉、知らない?」 「宿るにしてもあと何ヶ月かの短い命ね。……それにしてもわざわざお披露目の席で暴走なんて、ずいぶん場をわきまえたロボットね」 「……ま、ね」 ミサトは黙りこくったまま、何か考えているようだった。 レイは肩をすくめる。誰がどんな目的でこの事件を仕組んだのか、あるいはただの偶然なのか。 いずれにせよ、レイには関係のないことだった。レイにとって、詰まらない仕事を一つこなしだだけの話だ。 「ところでレイ、お食事のところ、悪かったわね」 「……何で知ってるの?」 口にしてから馬鹿なことを言ったとレイは思った。シンジに決まっている。 「シンちゃん、張り切ってたもの。あんたがちゃんと食べてるか心配してたわよ」 「そう」 「シンジ君、あんたを守れたこと、すごく嬉しそうにしてたわよ。世界を守るとかそんな大それたことよりも、もっと身近な人を守れたことにね。 そういうのがシンジ君には合っているみたい。そりゃ私だって世界がどうとか、正直実感ないけどね」 レイは声に出さずに失笑していた。誰が守ってもらった? 別にシンジなどいなくても、本当の力を発揮すれば助けなどいらないのだ。 ただそうすると少し面倒なことになるので、しないだけ。見当違いもいいところだった。 369 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/08/19(水) 01 52 57 ID ??? 「そんなわけだから……ま、あんまりシンジ君をいじめないようにね」 レイは返事をしない。シンジをいじめるなと言われてもそれは無理な相談だ。あれほどいじめがいのある人間もいないのだから。 「少し変わったのよ、シンジ君。最初のころみたいに皮肉も言うようになったし。料理の件はかなり勇気がいったみたいだけどね。……レイ、あなたも変われるといいわね」 「……そんな必要、ない」 不意を衝かれて、答えるまでに少し時間がかかった。今日は意外なことを言われる日だ。 「今に分かるわ。三つ子の魂百までとは言うけれど、人間は環境が変わったら、変わらざるを得ないのよ」 「……」 レイはなぜか不快な気分になり、無線のスイッチを無造作に切った。 □ 帰ると、当然シンジはいなかった。 シンジには好きな時間に帰ってと言ってある。シンジは鍵はどうするのか訊いてきたが、このマンションは保安部の監視がある上に、第3新東京市にいるのは関係者のみであり、 容易に外部から入れないよう封鎖されている。今の第3新東京市は日本でもっとも犯罪が少ない都市といっても過言ではなかった。だから鍵などかける必要はない。 以上の理屈にシンジはうなずいた。それでも少し心配そうではあったが。 テーブルにシンジのメモとサランラップに包まれた食事が置いてある。メモを読んでみると、 "味噌汁はコンロで、その他はレンジで温めて。サラダは冷蔵庫に入ってる。味噌汁を温めるときは、たまに鍋の底をかき混ぜること。突然沸騰して危険なことがあるから。 それから料理道具一式置いていきます。綾波も気が向いたら料理、してみて。それじゃ。碇" メモから顔を上げて部屋を見回す。さきほどから違和感がある。 何回か見回してみて、違和感の正体が分かった。綺麗になっているのだ。わざわざ掃除までしていったらしい。 ――ご苦労なこと。 肩をすくめると食事の支度にとりかかる。さすがのレイもレンジで温めたり、ガスコンロを点けたりはするのだ。 よく考えると昼食を摂ってから何も口にしていない。 すぐに準備はできて、レイは食事に取りかかった。二口ほど口にすると、思わず感想を言っていた。 370 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/08/19(水) 01 53 53 ID ??? 「……おいしい」 ハンバーグは切ったとたんに肉汁があふれだし、小皿にとりわけてあった大根おろしを乗せて、ワサビ醤油につけて食べるとさっぱりしてご飯がすすむ。 味噌汁もレイの好みを知っているかのような絶妙な塩加減だ。 冷静に考えれば特別においしいわけではないのかも知れない。空腹であることもおいしく感じる一因だろう。空腹に勝る調味料はないと言う。 いや、やはり、それだけではなかった。シンジの料理にはプロにはない何かがあった。それが何であるかは分からなかったが。 エヴァに乗るより、料理人にでもなったほうがいいのではないだろうか、とレイは思った。あるいは家政婦やら主夫とか。 あっという間に食事を平らげると、何もすることがなくなった。あとはシャワーを浴びて眠くなったら寝るだけだ。 いや、あった。今日はシンジの意外な側面を見ることができたのだから、メモしておく必要がある。 手帳を取り出して、シンジの行動とそれに対するレイの分析を書き出していく。 ――碇シンジから料理の提案。自分に何の得もないにもかからず、部屋の掃除。 ――自分を支配する者に媚を売るのが習性になっているものと思われる……。 ――料理はかなりの腕前。 ……。 ……。 371 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/08/19(水) 01 54 44 ID ??? ふと、シンジがエプロンを着てみないかと言ったときのことを思い出した。 ……似合うと思うよ。 レイは立ち上がってエプロンを探しはじめた。シンジはきっと置いていったはずだ。 エプロンはハンガーにかかっていた。 手に取ると、鏡の前に立って身体にあててみる。 レイは首を傾げた。どこが似合っているか、分からない。 ――馬鹿馬鹿しい。 エプロンを放り投げると、手帳を取り上げ、しまおうとして、最新のページに目が留まった。 そこには殴り書きのような字で、 碇君の手 あたたかい と書いてあった。 レイは奇術を目の前で見せられた子供のように、じっと手帳を見つめた。 「何……?」 こんなことは自分は書いてないはずだった。まるで他人が書いたようだ。 しかし、もちろん他人が書いたわけがなかった。 レイは左手を右手で押さえた。突然、シンジの手の感触が蘇ったのだ。 ……危ないよ、綾波。伸ばしっぱなしじゃなくて、こうやって第二関節のところで折り曲げて……。 「……」 レイは無表情な顔でそのページを破くと、丸めて壁に思い切り投げつけた。 しばらく壁を見つめたあと、手帳も投げつける。鈍い音を立てて手帳は壁から床に落ちた。 立ち上がると、バスルームにいって手を洗い出した。 しかし、どんなに石鹸をつけて洗っても、シンジの手の感触は消えなかった。 (続く) 431 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/08/27(木) 18 38 43 ID ??? 371 8. 伊吹マヤは誰もいない休憩室でレモンティーを飲んでいる。冷房が効きすぎる部屋で飲む温かい紅茶は格別に美味しいものだ。 時計の短針はもう少しで9時を指そうというところだった。9時といっても夜の方で、今日は遅番の日なのだ。 さて、そろそろ行こうかな――紅茶も飲み終わり、伸びをして立ち上がろうとした、そのときだった。 「伊吹さん」 「ひいっ」 突然声をかけられて、危うくひっくり返りそうになる。 「レ、レイちゃん……」 後ろを向くと、綾波レイが亡霊のように立っていた。 ――どこにいたの? マヤは思わず部屋を見回す。 マヤが休憩室に入ってきてから、誰か入ってきた気配はない。とするとずっとここにいたのだろうか? まさか、だって私が入ったときも誰もいなかったんだし……。 レイはマヤの動揺を気にすることなく、薄い笑みを浮かべて「頼みごとがあるの」と言った。 「な……何?」 マヤは思わず唾を飲み込んだ。 レイの"頼みごと"は頼みなどではない。断ることが許されない強制事項なのだ。 「今度赴任してくる弐号機パイロットの個人データが欲しいの。取ってきて」 「パイロットの個人データはクラスAのアクセス制限がかかってます。私でも閲覧できません。というか、そんなの必要ないでしょう?」 レイは唇をゆがめた。 「そう。じゃあ、この写真を赤木博士に見てもらって、感想をいただいてくるけど」 レイは胸ポケットから写真を一枚取り出すと、指で摘まんで魚のようにひらひらと泳がせて見せた。 432 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/08/27(木) 18 40 45 ID ??? 「ああっ、そ、それ、それはっ」 マヤの顔色が変わり、涙目でレイから写真を取り上げようとするが、レイは闘牛士のように華麗に避けつつマヤを振り回す。 マヤはどたばたとひとしきり追いかけたものの、とうとう力尽き、床に突っ伏して、ううう、と泣き崩れた。 「ひどい……。そ、それだけは……」 「じゃあ、お願いね」 「で……でもっ」 「赤木博士がどんな顔するか」 「わっ、分かりました! もう、私、こんな犯罪みたいなことを……いや、みたいじゃないわ。犯罪よ……」 「ところで、パイロットの名前は?」と、泣き崩れるマヤを意に介せずレイは質問する。 マヤは泣きべそをかきながら、 「え? だって名前は知ってるはずじゃ……」 「私、人の名前覚えないから」 それじゃ今私が言っても意味ないじゃないと思いながらも、マヤは名前を告げた。 「惣流・アスカ・ラングレーです!」 転校生は黒板にチョークで自分の名前を書くと、くるりと振り返ってとびきりの笑顔を振りまいた。 鮮やかな赤毛、肌理の細かい白い肌、すらりと伸びやかな肢体。 笑顔は太陽のように眩しい。 ――嘘ね。その顔。 賞賛の口笛で、歓迎の歓声で、嫉妬のため息でざわめく教室の中、レイはひとり頬杖をついてアスカをじっと観察している。 ――弐号機パイロット。あなたのその偽りの笑顔、暴いてあげるわ。仮面を剥ぎ取ったらどんな顔があらわれるのか、楽しみね。 レイは唇の片側を吊り上げて、背筋が凍るような笑いを浮かべた。 その笑みに気がついた人間は、いない。 433 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/08/27(木) 18 41 58 ID ??? □ チン、とやや間抜けな音を立ててエレベーターの扉が開く。 三十才くらいで髪を後ろで結んだ男の先客がいたが、レイはまるで中に誰もいないかのように乗り込んだ。 エレベーターの個室のように狭い空間に誰かと二人でいると、特別に意識せずとも普通なら若干の緊張が生まれる。人を人とも思わないレイにはそれはなかった。 先客が口を開いた。 「おやおやこれはこれは。確か君は……ファースト・チルドレンの綾波レイちゃんかな? 俺の名前は加持リョウジだ。はじめまして」 「新しく特殊監察部に配属された男ね」と、レイは扉を見つめながら答えた。 「俺なんかの配属先を知っているなんて光栄だね。ところで、ここの連中はだいぶ君に振り回されてるみたいだな。お手柔らかにお願いするよ」 レイは後ろを振り返り、じっと加持を見つめた。 加持はレイの凝視を受けても、目を逸らすことはなかった。珍しいことだ。レイに見つめられるとたいていは視線を外す。 韜晦で本音を隠し、弱みを決して見せない種類の男か。 ……いや、違う。本音を言うべきときを知り、弱みを見せてもいい相手を心得ている男だ。 最も厄介なタイプだった。 「あなた、長生きできないタイプね」 加持は苦笑した。ポケットに突っ込んだ手を出し、顎の無精髭を撫でながら、 「そう思うかい? 同じことを言われたことがあるよ。特に長生きしたいとは思わないが、早死にしたいとも思わないんだがね。ま、せいぜい気をつけるとするよ」 目的階につき、レイはエレベーターを降りた。 ――この男は要注意。やるなら本気でやらねば。 加持は人差し指と中指を揃えて、ピッと振った。 「それじゃ、また」 のちに加持はこの時のやりとりを思い出すことになる。 長生きできないと言い放ったレイが、皮肉にも加持の命を救ったあとに。 434 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/08/27(木) 18 44 10 ID ??? □ セカンド・インパクト以来、常夏と化した日本だが、夏は夏でも微妙に違いがある。 日差しが強く、肌がひりつくような夏は過ぎ、今は湿度が低く、快適な、いわば「読書の夏」とでも言う季節にさしかかっていた。 レイはベンチに腰掛けて、世界拷問大全というぶ厚い本を読んでいた。 人間の想像力の限界を試しているような――あるいは超えているような拷問の数々を、シンジに当てはめて楽しんでいるところだった。 その本に影が差した。人影だった。 ――? レイは顔を上げた。 目の前に弐号機パイロットがいた。正確に言えば、花壇を取り囲むコンクリートブロックの上に立ち、レイを睥睨していた。 本に夢中になっていて気がつかなかったのだ。 レイは小さく舌打ちをする。もし弐号機パイロットに悪意があったら完全にやられていた。気の緩みすぎだ。 「ハロー! あなたが綾波レイね。プロトタイプのパイロット」 アスカは腰に手を当てて、なぜか勝ち誇るように宣言する。 「あたし、アスカ。惣流・アスカ・ラングレー。エヴァ弐号機の専属パイロット。仲良くしましょ」 レイは心持ち首を傾げて答える。最後の意味が分からない。 「仲良く? どうして?」 「その方が都合がいいからよ、いろいろとね」と、そんな分かりきったことを訊くなんて、という表情を露骨に出すアスカ。 「……そうね」 レイは本を閉じると立ち上がり、下から視線を上げていき、最後にアスカの顔を見つめて、何かを確認するようにゆっくりと言った。 「仲良くしましょうね……」 アスカは思わず一歩下がろうとしたが、立ち位置を思い出して踏みとどまる。 「な、何よ」 「……別に」 レイは本を鞄にしまうと、踵を返して歩き去っていく。 「変わったコね」と、アスカは呟いた。 ふと気がつくと、二の腕に鳥肌が立っていた。 435 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/08/27(木) 18 45 12 ID ??? □ 初号機はまだ修理中であり、シンジは待機となっている。そのさなかに使徒が来襲した。 今回は第3新東京市の迎撃システムが壊滅状態ということもあり、本土上陸直前に迎え撃つ作戦だった。 「零号機ならびに弐号機は、交互に目標に対し波状攻撃。近接戦闘で行くわよ」 「了解!」と、アスカが元気よく言う。レイは無言。 「あーあ。日本でのデビュー戦だって言うのに、どうして私一人に任せてくれないの?」 レイは失笑した。いくらネルフの面々が馬鹿揃いとはいえ、戦力の逐次投入をやるわけがない。 「何がおかしいのよ?」 アスカが気がついて問いかける。 「……別に」 あなたの猿なみの知能によ――とレイは心の中で答える。 そう言えばキーキー喚くところなども猿にそっくりだ。これからは赤毛猿と呼ぶことにする。 「言っとくけど、くれぐれも足手まといになるようなことはしないでね!」 ぴくりとレイの頬が動いた。いったいこの女は誰にモノを言っているのだろうか。 ――後ろから狙い撃ちしてあげようかしら。近代戦争における死因はフレンドリー・ファイアが結構な割合を占めているっていう話もあるし。 二人は輸送機から降下、地上に降り立って攻撃に備える。 「……来た!」 派手な水飛沫とともに使徒がその不気味な姿をあらわした。 「じゃ、私から行くわ!援護してね!」 436 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/08/27(木) 18 46 41 ID ??? 「……どうぞ」 レイは大人しく譲ってバレットライフルを使徒に向けて撃ちはじめる。 ――と、すっと銃口を滑らせて弐号機の頭を狙い撃ちする。二、三発当てるとまた使徒に狙いを向けた。 「痛っ! ちょっと! 何やってんのよ!」 アスカが憤然と抗議する。 「ごめんなさい。手元が狂った」 平然と謝るレイ。言葉とは裏腹に、謝罪の気持ちなど全くないのは明白である。 「バカ! 気をつけなさいよ!」 気を取り直したアスカはビルからビルへと飛び移り、威勢のいい掛け声とともに槍を振るって使徒を真っ二つにした。 「どう、ファーストチルドレン! 戦いは、常に無駄なく美しくよ!」 「……さすがに猿だけあって身軽なのね」と、レイは呟く。 「何か言った?」 「いえ。何も」 アスカが口を開きかけたとき、真っ二つにされた使徒が蠢動をはじめた。 「えっ?」 次の瞬間、左右に分かれた使徒のそれぞれが新たな使徒になり―― 「なんてインチキ!」 ミサトは叫び声を上げた。 437 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/08/27(木) 18 47 37 ID ??? □ 「まったく恥をかかせおって」 冬月は珍しく苛立ちを隠せない表情だった。これから冬月を待ち受ける、各方面からの抗議や叱責、皮肉、圧力、それに伴う折衝ごとが煩わしいのだ。 そもそもネルフは他の組織に好かれてるとはとてもではないが言いがたく、いきおいネルフの失敗は冬月の雑事を増やすことになる。 「同05分、N2爆雷により目標を攻撃」 「構成物質の28%を焼却に成功」 次々とスライドが切り替わっていく。 「やったの?」 「足止めに過ぎん。再度侵攻は時間の問題だ」 副司令の不機嫌そうな顔を盗み見ながら、シンジは自分が出撃してなくて良かった、と思っていた。自分が出ていてもどうにかなった とは思えない。あんな風に分離する使徒なんて、いったいどうやってやっつければいいんだろう……。 「いいか君たち、君たちの仕事は何だか分かるか!?」 アスカがきょとんとした顔で答える。 「エヴァの操縦」 「違う! 使徒に勝つことだ! このような醜態を晒すために我々ネルフは存在しているわけではない! そのためには君たちが協力しあって……」 「何でこんな奴と!」と、アスカが吼える。 ここでレイの我慢の緒が切れた。もともと細い上に短い緒なのだ。むしろここまでよく我慢してきたと言える。 「それは私の台詞ね」 「何ですって!?」 アスカがテーブルを叩いて立ち上がる。 「だいたいあんたが逃げたせいでせっかくのデビュー戦が目茶目茶になっちゃったのよ!?」 レイは使徒が分裂したあと、手を出さずに撤退したのだった。 理由はもちろん、下手に相手をすると、また分裂するかも知れないからだ。もしかすると無限に分裂するかも知れない。そうなるとさすがのレイにも お手上げであり、ここはいったん引いて対処の方法を考えるべきとレイは判断したのだった。 「戦略的撤退は逃げるとは言わないし、そもそもあなたのデビュー戦なんか知ったことじゃないわ、お猿さん」 438 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/08/27(木) 18 48 32 ID ??? 「猿!? 誰のことよ!」 「あなたのことよ、お猿さん。猿でもそのくらいのことは分かると思うけど」 「あんた、喧嘩売る気!? そっちがその気なら私はいいのよ? いつでも相手になってやるわ」 アスカは立ち上がり、腕まくりをする。 レイも静かに立ち上がった。 「……外、出る?」 「上等!」 「やっ、止めなよ、綾波! 惣流も!」慌てて二人の間に割って入ったのはシンジだった。「喧嘩なんかしてる場合じゃないよ!」 「そうだ、シンジ君の言うとおりだ。ここで喧嘩しても何も解決しない。な、アスカ?」 加持が険悪なムードに全然気づかないような、リラックスした様子で話かける。こちらは割って入る気はなさそうだ。 「……まぁ、加持さんがそう言うなら……」 不承不承の態でアスカは腰を下ろす。 「覚えておきなさいよ、ファースト!」 しかめ面を作ると、べっと舌を出した。 レイはその舌を引っこ抜きたい誘惑に駆られた。 ――あなたこそよく覚えておくようにね、お猿さん。世にも珍しい猿の泣き顔で見物料をせしめてやるわ。 「……もういい」 ため息とともに冬月の乗ったリフトが視界から消えた。 「あの、ミサトさんは?」と、話をそらせようとするシンジ。このままだととばっちりが自分に来そうなことが本能的に分かってるので必死だ。 「後片付け。責任者は責任取るためにいるからな」 加持は肩をすくめてそう言った。 439 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/08/27(木) 18 49 51 ID ??? □ トウジとケンスケは、マンションのエレベーターを降りたところでヒカリと遭遇した。 トウジが不思議そうな顔で、 「あれ? イインチョやんか」 「三バカトリオの二人……」 ヒカリも呆気にとられた表情だ。 「なんでイインチョがここにおるんや?」 「惣流さんのお見舞い。あなたたちこそどうしてここに?」 「碇君のお見舞い」と、トウジの代わりにケンスケが答える。 三人は同じ部屋の前で立ち止まった。顔を見合わせる。 トウジは「なんでここで止まるんや?」と言い、ケンスケは「なんでここで止まるんだ?」と言い、ヒカリは「なんでここで止まるのよ?」と言った。 三人同時にチャイムを鳴らして、ドアが開いて顔を出したのは、シンジだった。 三日前に比べると、かなりやつれているように見えた。目の下に隈ができている。 「おう、シンジ。やっぱり病気か?」 「え? ああ。うん。いや、違うんだ。病気で休んでるんじゃないんだ……」 俯いて答えるシンジだが、今にも倒れそうなその様子はまさに病人そのものである。 「そうか? 明らかに具合悪そうだぞ」 「ちょっと待って、碇君。私、ここに惣流さんが住んでるって聞いて来たんだけど。住所も部屋の番号も合ってるよ?」と、ヒカリ。 「ああ、それは……」 ケンスケは誰か知ってる人の声が聞こえた気がして、シンジの肩越しに部屋の中を覗き込んだ。すぐに顔色が変わり、叫び声を上げる。 「うわっ! 碇、お前!」 「何や何や」トウジもつられて覗き込む。「げえっ! ……この裏切りモン!」 440 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの[sage] 投稿日:2009/08/27(木) 18 50 52 ID ??? 「どうしたの?」 ヒカリが腰を屈めて二人の隙間から中を見た。「ああっ!?」 「誰が来たの、シンジ?」 ひらひらの珍妙な服を着たアスカが冷蔵庫から取り出した飲み物を手にやってくるところだった。三人に気づいて「まずいところを見られた」という顔をする。 「ちょっと、碇君!?」ヒカリがぷるぷると怒りに震えながらシンジに人差し指を突きつけた。「どういうことなの!?」 「ち、違うんだよこれは! 作戦の一環で……」 シンジの弁解をケンスケの素っ頓狂な声が覆い隠した。 「それに――綾波も!?」 いったい何の騒ぎかと、アスカと同じ服装をしたレイがちらりと顔を出したのだ。こちらはアスカと違って無表情。 ヒカリは額に手を当て、ふらふらとよろめいた。事態はヒカリの許容範囲を超えてしまったのだった。 「不潔……。いえ、不潔どころのレベルじゃないわ。これはもう……犯罪よ。碇君には刑務所に入って反省してもらうしかないわ……」 三人の冷たい目に囲まれてシンジはたじろいだ。 「いや、だからっ。これはそんなんじゃなくてエヴァの……」 なんで刑務所なんだ、と慌ててまた説明をはじめるシンジの肩に、ケンスケが手をぽん、と置いて、 「安心しろ、碇。お前はまだ十四歳だから刑務所じゃなくて初等少年院で済むぞ」 「イヤだよ、初等でも! っていうか何でそんなことに詳しいんだよ!」 「あら、いらっしゃい。どうしたの?」 四人の目がミサトに向けられた。買い物帰りらしく、両手にスーパーのビニール袋をぶら下げている。 「これはどういうことか、説明して下さい」と、トウジが言った。 (続く)
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エルフ ステータス(強化前/強化後) HP5/6 アーマー4/5 エネルギー180/200 クリティカル率5 初期武器 古の弓 ダメージ4~8 エネルギー2 クリティカル率0~50 弾のバラつき0 射撃ボタン長押しで威力とクリティカル率が上がる武器。クリティカル時に敵を麻痺常態にすることができ、弾ブレも少なく火力もそこそこ高いため初期武器の中でもかなり優秀。 古の弓 ダメージ6~12 エネルギー2 クリティカル率0~50 弾のバラつき0 シンプルに素の火力が上昇。他の性能に変化はないものの、元がかなり優秀な武器であるため終盤前までなら充分通用する。残念ながら麻痺させる時間が延びたりはしていない。 スキル説明 スキル1 フォーカスファイア 説明 クールダウン6秒 強化後4秒 スキル2 アローレイン [課金]280円でアンロック可能 説明 クールダウン9秒 強化後7秒 スキル3 ガーディアンエルフ 10000ジェムでアンロック可能 説明 クールダウン6秒 強化後4秒 スキルアップ レベルアップした時に得られる追加効果 スキル1 スキル2 スキル3 導師によるスキル強化 スキル1 スキル2 スキル3 パッシブ レベルアップへの道のり ジェムを支払ってそのキャラを強化できる。 1.HP+1 コスト500 2.アーマー+1 コスト1000 3.エネルギー+20 コスト1500 4.スキルクールダウン-2秒 コスト2000 5.スキルアップの追加 コスト2500 6.パッシブ追加 コスト5000 7.初期武器の強化 コスト8000 8.アイテム「エルフの涙」 コスト10000 キャラクターの評価
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ミネルヴァ・アイゼルン ハーフエルフ 女性 17歳 武道家 CV 杉山佳寿子 生い立ち 両親のダメさが濃縮されて生まれてきた様な子。 更に甘やかされて来たのでかなり自由人。リヒャルトの悩みの種の一つ。 いわゆる脳筋で、身体を動かす事と食べる事が何よりも大好き。 イーストかぶれで9歳の頃からイーストランドのテンセイ拳師範の下で修行を始める。 能力 たべる たたかう おっぱい
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3+14=?? ◆s2SStITHHc 自分が殺したはずの渚カヲルが生きていた。 碇シンジにとってそれはそう喜ばしいことではない。 後ろめたさもあるし、そもそも渚は人類の敵……最後の使徒だ。 「またカヲル君を殺さないといけないなんて……畜生!」 彼らしくもない罵声を上げながら、コクピット内で地団太を踏む。 シンジが渚を殺したのは、彼が人間を滅ぼすサード・インパクトを起こそうとしたからだ。 人間であるシンジは、渚との友情と人類の存亡を天秤に掛け、結果渚の首を落とした。 「でも、僕は間違ったことはしてないはずだ。カヲル君だって抵抗しなかったじゃないか! 僕達が生き残るべきだって言ってくれた! 僕は……ランスさんみたいにはなりたくないよ……!」 全く持って不愉快だが、今一度エヴァンゲリオン初号機のパイロットとして渚を殺さなくては。 シンジの混乱する思考は殺人への忌避を次第に除外して前回と同じ結論を導き出し、操縦桿を強く握らせる。 彼の思考の推移には、二人殺さなければ十六時間後に首輪が爆発することへの恐怖感も混ざっていただろう。 実際に渚と対峙した時に彼を使徒として認識し、躊躇なく殺害できるかというと……頷きかねる。 「……でもこのロボット、エヴァじゃない……よな……?」 自分が乗っている機体は操縦自体はエヴァと全く同じ感覚で行えるが、LCLが満ちていない。 更に言えば、エントリープラグの内壁が何かおかしい。うねうねと脈打っていて、まるで生物の体内だ。 「外の映像は……海? これじゃ現在位置なんてわからないよ」 視界は見渡すかぎりの水、水水……。地図と照らし合わせても、周囲に目印になりそうな物など何も確認できない。 シンジは幾瞬の躊躇の後、機体を動かして湖底を進む。外部の映像に、紙切れのような腕が揺れて映る。 エヴァを歩かせる時に自分の足に感じる、地面を踏みしめるような反動が来ない。まるでホバー移動だ。 「……ま、まさか」 念じて、腕を動かす。モニターに映し出されるみょーんと伸びる触腕。 シンジの脳裏に、うっすらとスクリームのような顔と男の戦いが浮かび上がる。 「使徒だこれーーーーー!!!」 『そうだ、そのまさかだ』 「!?」 その声は坐臥するシンジの上方――前述の通りここはエントリープラグ内だ――から聞こえた。 機械音風の声が聞こえた、とシンジが見上げると同時に、声の主が現れる。 肉壁風のエントリープラグの装甲が開き、触手に両腕を掴まれた少女がシンジの腰の上辺りにガイナ立ちしたのだ。 触手が少女の腕を放し、その全体重がシンジにかかった。あまりの事態に目を白黒させるシンジ。 少女の顔は、シンジの良く知る人物、綾波レイに酷似していた。だが、雰囲気が絶望的に違う。 組んだ両腕を離し、シンジを上から目線で睨み倒す少女に、恐る恐る話しかける。 「き、君は一体……」 『私は第十四使徒ゼルエルの魂の代替。本来人間が乗る事が不可能なこの存在を改造する過程で産み出された物。 シャドウミラー内部では失われた"W14"の名で呼ばれている。よろしくお願いしちゃったりしますのですよ……む?』 背中から羽を生やし、カラフルなプラグスーツを着込む桃髪赤眼の少女は、自らをW14と名乗った。 シンジは唖然としたままで、まじまじと彼女の容貌を眺める。先ほど彼の脳裏に浮かんだ使徒の姿がフラッシュバック。 『……何をそんなに見ている。お前はエヴァンゲリオンのパイロットだろう? 自分の乗る機体の特性を知らんのか。 EVAシリーズを起動させ、制御する為には人間の魂が内部に宿っていなければならない。 そして、エヴァと使徒はほぼ同一の存在……無論、このゼルエルを人間の手で制御する為にも魂が必要だった。 そこで支給機体として用意されたエヴァに入れられていた魂を分割し、ゼルエルに注入したのだ。 いわば、レモン様の技術力とネルフの科学力のハイブリッド……ベリーバッドクロスオーバー! 誰が乗ってもゼルエルを自在に動かせるように創造されたのがこの私……W14なのであるってこっちゃでありんす!』 「……(綾波に似た顔で変な事言うのやめてくれないかな……)」 『言語機能の調子がおかしいのは気にするな。私は気にしている』 シンジはW14の説明を全く理解していなかった。ショッキングな事件が続いたのでエヴァの仕組みなど覚えていない。 とりあえず彼女が参加者ではなくシャドウミラーの一派だと言う事は理解したらしく、あからさまに不審な視線を送る。 「でも、エヴァの中には君みたいな子はいなかったよ!」 『使徒とエヴァでは勝手が違う。大体ここではオペレーターもいないのだ、インターフェースは必須だろう? 更に言えば、私はジョーカーであるお前へのサービスでもある。戦闘のサポートからカウンセリングまでフルおk』 「大体、この使徒は初号機に倒されてS2機関を食われちゃったじゃないか! どうして動いているの!?」 『レモン様が直した』 「ま、まさかカヲル君も……?」 『レモン様が直した』 淡々と答えるW14に、次第に気力を失い始めるシンジ。 混乱を抑さえるという意味では、なるほどW14にはカウンセリングの才があると言えよう。 W14はシンジが喋らなくなったと確認すると、もう自室に戻ってもいいか? と問い掛ける。自室があるらしい。 「……要するに君は僕が戦う時、ミサトさん達みたいにサポートしてくれるって事で、いいの?」 『そうだが。お前に危害を加える事はないから安心していい。しかしシンジよ、これだけは言っておこう。 ゼルエルが死んだらたぶん私も死ぬので、お前は全力で生き残らねばならないとW14はW14は笑顔で脅迫した』 (……この機体、ホントに当たりなのかな……) シンジが疑問を消化しきる前に、W14はもう話すことはないとばかりに再びガイナ立ちした。 同時に、エントリープラグの上部装甲が開き、触手が舞い降りる。 触手はW14を掴むと、ゆっくりとその華奢な身体を持ち上げ、やがて姿を消す。 ぽかんと見上げるシンジだったが、しばらくして気を取り直し、これからどうしようと考え込む。 「こんな使徒で会場をふらふらしてたら殺し合いどころじゃないよ……目の敵にされて集中砲火に決まってる。 人を殺すことを前提に動くならそれでもいいけど、積極的に人殺しなんてできるもんか!」 頭を抱え込むシンジに、ふと一つの案が浮かぶ。 「そうだ……しばらくここでじっとしてて、それから陸に上がって戦闘で傷ついている人たちを助けよう! この殺し合いに嬉々として参加するような人が弱っていたら、その人は殺せばいいんだ! よし! これが一番だ!」 パッと表情を明るくして、良心と生存本能を同時に満たす結論を出すシンジ。 どうやって善人と悪人を見分けるかなど、細かいことは何も考えていない。 それを誤魔化すために、ハイテンションを保って次々とまくしたてる。 「よし! あまりのんびりしてもいられないから、六時間! 六時間、ここで休む! それから上陸しよう!」 ゼルエルの操縦を放棄し、敵機が近づいてきた場合の対策として海底のたくましいワカメ群に機体を隠蔽する。 と、エントリープラグの上部がちょっと開き、水筒と毛布と紙切れが落ちてくる。 シンジは紙切れを受け取り、そこに文字が書いてあることを見取った。 『シンジへ 温かくして寝なさいね 何かあったら起こします W14より』 水筒の中にはホットミルクが入っていた。 シンジは狭いエントリープラグの中で20分ほどのストレッチをしてからそれを飲み――――眠りについた。 【碇シンジ 搭乗機体:第14使徒ゼルエル(新世紀エヴァンゲリオン) パイロット状況:熟睡 機体状況:ゼルエル=良好 W14=良好 現在位置:D-4 海底 ワカメゾーン 第一行動方針:六時間くらい寝る 第二行動方針:起きた後、善人を探して助ける。悪人は殺す、人類の敵である渚カヲルはもう一度殺す……? 最終行動目標:生き残る】 ※カヲル殺害後から参戦です。 【W14(ゼルエルXX)について】 外見はこれ:ttp //ecx.images-amazon.com/images/I/410GG2X6CNL.jpg 中身は碇ユイ(初号機に内蔵された魂)と何かが混ざった感じ。詳細は後の書き手さんにお任せします。 実体はあるが、ゼルエルから降りると多分死ぬ。ゼルエルが大破しても多分死ぬ。詳細は後の書き手さんにお任(ry 本来のW14とは当然別物、名前を借りてるだけ。ウォーダン・ユミル(W15)との面識などは後の書き手さん(ry。 【一日目 8 00】 BACK NEXT 043 貧乏クジの行方 投下順 045 運命の戦士 034 さらなる迷走 時系列順 052 強さの在処、心の在処 BACK 登場キャラ NEXT 031 JOKER 7 碇シンジ 060 勇者と少年とアンドロイド