約 774,165 件
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/2373.html
それはある晴れた日のことだった。 部室に行ってみると、まるで特撮番組の怪獣のようにわめきまくるハルヒも、 いつもオドオドとしていて守ってあげたくなる小動物系の朝比奈さんも、 樹海の奥にひっそりと生えている花のような気配の長門もおらず、年中スマイルのバーゲンセールをしている「アイツ」しかいなかった。 「やぁどうも。僕が来た時には誰もいなかったのですが…いやぁ、手持ちぶさたでしょうがなかったのです。どうです?一勝負。」 と言ってトランプの入った、いかにも安っぽい四角い箱を持ち出してきた。 いいだろう。完膚無きまでに叩きのめしてやるから光栄に思え。 「ははっお手柔らかにお願いします。」 ふん。そういう事はトランプの神様にでも言うんだな。お前の大好きな神様とやらに。 こうして俺たちはポーカーを始めた。あんな不思議なことが起こるとも知らずに。 ハ「よぉ~し!これで写真集が出せるくらいの写真が集まったわ!」 み「ふぇ~…やっぱりあきらめてなかったんですねぇ…」 長「………」 ハ「有希もレフ板ありがとね!ホントは古泉くんに任せようと思ってたんだけどなかなか来ないし、それにいつまでも待ってるとキョンが来てうるさいし!」 今、SOS団三人娘は校内を歩いている。ちなみに格好はハルヒと長門は制服、みくるはメイド服である。(天の声) ハ「まったく…キョンときたらいっつも「朝比奈さんがかわいそう」だの何だの言って邪魔するんだから!」 そうぼやきながら後ろに長門とみくるを率いて歩いている。(天の(ry そして階段にさしかかろうとした時、 ハ「どう思う!?っと!うわっ!?」 勢いよく振り向いて聞いた瞬間、ハルヒは足を踏み外してしまった。(天(ry み「涼宮さんっ!?」 長「……っ!」 とっさに手を伸ばす二人。だが結局支え切れず、三人は階段をもみくちゃになりながら転げ落ちてしまった。 ?「いたたたた…」 ?「ふえぇ~痛いですぅ~」 ?「……不覚。」 どうやら三人ともたいしたケガもなく、無事だったらしい。でもあれれ~?(C.V.高山みなみ)何か違和感が。 ?「あれ!?あたしがいる!」 ?「ふぇ~!?わたしの胸が小さk…きゅぅ(気絶)」 ?「………」 そこには、まるで特撮番組の怪獣のようにわめきまくるみくると、 いつもオドオドとしていて守ってあげたくなる小動物系の長門と、 樹海の奥にひっそりと生えている花のような気配のハルヒがいた。 ハ→み「これは人格入れかえってヤツね!」 みくる?が大声で強気にしゃべっている。心なしか態度もデカい。 み→長「あの~…それってどういう…?」 長門?はいつもと違ってもじもじしている。そしていつもより饒舌である。 ハ→み「ほら!マンガとかでよくあるでしょ!頭ぶつけたり、強い衝撃で人格が入れ替わっちゃうってやつ。きっとそれよ!あーゆーのはマンガだけかと思ってたけど…実際に起こるのねぇ~」 み→長「へぇ~…そんなのが…(あの~長門さん?ですよね?)」 そう言って長門?はハルヒ?に話しかけた。 長→ハ「(……そう。だが外見は涼宮ハルヒ。)」 ハルヒ?は無表情で口数が少ない。ものすごいギャップである。 み→長「(あの…これはどういう…?」 長→ハ「(涼宮ハルヒが望んだ。彼女が階段を落ちるわずかな間に「こうなれば面白いのに」と望んだ結果。でも問題ない。一時的なもの。)」 み→長「(そうですか…とりあえず一安心ですね…)」 どうやらそんな感じの大変なことになってしまったようです。 ハルヒinみくる。みくるin長門。長門inハルヒ。わかりにくいことこの上ない。 そしてみくる?が声高に叫んだ。 ハ→み「おもしろいわ!みくるちゃん、有希!よね?今日はこのまま過ごしましょう!どうせ一時的なものだから楽しまなきゃ損だわ!こんな体験なかなか出来ないしね!キョン達を驚かせてやるのよ!わかったわね!?」 み→長「確かに…そうかもしれませんね!実は私もちょっとワクワクしてたり…」 長→ハ「……ユニーク。」 どうやらみんなあまりショックではないようだ。それにしてもこの三人娘ノリノリである。 ハ→み「そうと決まれば部室に行くわよ!…ところでみくるちゃん。あんたやっぱり胸デカいわねぇ。重くて肩が疲れそうよ。」 み→長「そうなんですよぉ…あ、でも今は私すごい楽なんでs…ひぃっ!」 長→ハ「……………………………………………………………………………………………」 無表情なハルヒ?の目が鋭く光っていた。 フラッシュだ。残念だったな。 古「ワンペアです。いやぁお強いですね。」 お前が弱いだけだろ。俺は普通だ。休み時間に谷口や国木田とやってる時の戦績は三人ともあんまり変わらないからな。 古「少なくとも僕はうらやましく思いますよ…おや、どうやら姫君たちのお帰りのようですよ。」 ふん。そんなキザな言い回しを考えるくらいなら俺に勝つ方法でも考えるんだな。 そう言いながら朝比奈さんで目の保養をと考えてドアの方を見た。すると朝比奈さん、長門、ハルヒの順で部室に入ってきたSOS団三人娘を見て、俺はふと違和感を覚えた。いやそれが何なのかはわからんけど。 み?「あっ!お茶を入れ…ますね~♪」 はぁ。どうも。やっぱり何かおかしい。こう…なんか快活というかなんというか。まさかハルヒが何かしたのではあるまいな? そう思ってハルヒの方を見た。 ハ?「……………?」 なんか怖い。無表情でここまでテンションの低いハルヒなんて初めて見た。七夕やバレンタインデーの時の比じゃない。 おい、どうしたハルヒ?元気ないじゃないか。 ハ?「別に。あんた…には関係ないこと…よ。」 なんだこれは。マジでおかしい。熱でもあるのか?そう思って偉大なる団長様のおでこに自分のを当てようとした瞬間、 ガシャーン! ん?なんだ今の音は。後ろを振り向くと朝比奈さんが湯飲みを割ってしまっていた。 大丈夫ですか!?お怪我などは!? み?「私は何ともないですよぉ~♪」 こちらもやはり変だ。どう見ても朝比奈さんには似つかわしくない怒りマークが顔に出ている。 これは一体どういうことか。その謎を唯一知っていそうなSOS団の有機製アンドロイドの方を見てみると、こっちもどうしたことか。本を広げてはいるがチラチラとこちらの様子をうかがっている。 いつものような頼りがいのある所は感じられず、変わりにビクビクとしていてなんともかわいらしいオーラが出ている。思わず顔がニヤける。なんかこう守ってあげたk ガッシャーン! またか!?本当に大丈夫なんですか?朝比奈さん。疲れてるなら、俺も名残惜しいがお帰りになられては? み?「ホントに大丈夫ですからぁ~♪」 声は笑っているが顔からはある種の迫力がにじんでいた。 なんか今日の朝比奈さんはこう…ハキハキしてらっしゃいますね。はは… ヤバイ。なんかヤバイ。なんだか情緒不安定になりそうだ。一縷の希望を賭け、超能力者の方を見てみると、なんとも形容しがたい微妙な表情をしていた。ダメだ。役に立ちそうもない。 どうしたことだコレは。俺が何かしたのか?いや授業中のハルヒはいつも通りだったし、放課後になってからはさっき会ったばかりだ。俺は何もしていない。たぶん。 そして。もういっぱいいっぱいだったのだろう。俺は何を血迷ったか、ハルヒの肩に手を置き、顔を近づけた。 そう、あの閉鎖空間の時のようにキスをすれば戻ると考えたのだ。他のSOS団メンバーもいるがそんな事を気にする暇もないほどテンパっていた。そしてキスまであと1cm… ?「こんのバカキョン!!なにしようとしてんのよ!!」 うわぁ!悪かったハルヒ!!…ってアレ?目の前のハルヒは目を閉じてじっとしている。ってことは今の声は?と考えるのもつかの間、急にスゴイ力で引っ張られた。 その先にはものすごく怖い顔をした朝比奈さんが。 あの~朝比奈さん?一体どうされたのでs み?「みくるちゃんじゃない!あたしよ!まだわかんないの!?」 え?でもだって…え? み?「みくるちゃんがあたしで、あたしが有希で、有希がみくるちゃんなの!!」 意味がわからん。でもこの口調、態度、唯我独尊な性格はまさしく… まさか…ハルヒなのか? み?「だからそう言ってるでしょ!!もう!!」 その後、三人から事情を説明され、俺と古泉はやっと納得した。こんな時でもスマイルを崩さないこいつは心底すごいと思う。 ちなみにハルヒ(朝比奈さんの外見をした)はなぜか怒ってとっとと帰ってしまった。 朝比奈さん(長門の外見をした)はひたすらもじもじして俺に謝っていた。なんだか俺が悪いことをしたように思えてくるから不思議だね。 あと、残念そうな顔をしていた長門(ハルヒの外見をした)がなんとも印象的だった。 それにしてもなんでハルヒはあんなに怒っていたんだろう。キスだって自分がされる訳じゃないのに。まぁ体はハルヒだが。 古「本気で言っているんですか?」 古泉が聞いてくる。ちなみに今は不本意ながら一緒に生徒玄関に向けて校内を歩いているところだ。まったくもって不本意だ。 本気かだと?ふん。わかったよ、明日ハルヒに謝ればいいんだろ? 古「わかっているじゃないですか。安心しましたよ。今度はちゃんと本人にキスを…」 などと階段を下りながらバカなことを言ってくる。 あーうるさい!まったくお前は…っと!ぅおあ!? 古「危ない!!」 俺はつい「足下がお留守だぜ!」になってしまい階段を転げ落ちてしまった。俺を支えようとした古泉と一緒に。 ?「っつう…大丈夫でしたか?」 ああ、なんとかお前のおかげでな。一応礼は言っておくぞ 。あれ?古泉?どこだ? ?「目の前にいますけど?驚きですね。」 いや目の前には鏡しか…だってその証拠の俺の顔がある。ほら、俺が右手を挙げると鏡に映った俺も… あれ?目の前の俺は右手を挙げるかわりに手鏡を差し出してきた。 その手鏡の中には………ニヤケハンサムな顔が映っていた。 お い ま さ か 終わり
https://w.atwiki.jp/haruhi-2ch/pages/73.html
涼宮ハルヒの憂鬱Ⅵ(2006年放送版第14話、構成第06話・DVD版第07話/2009年放送版・時系列第06話) スタッフ 脚本:志茂文彦 絵コンテ:石原立也 演出:石原立也 演出補佐:坂本一也 作画監督:池田晶子 原作収録巻 第1巻:『涼宮ハルヒの憂鬱』より第7章(P250)とエピローグ最後(P300)まで。計50ページ分をアニメ化。 DVD収録巻 『「涼宮ハルヒの憂鬱」第3巻』に収録。 紹介 2006年放送順最終回でクライマックス。時系列順でも憂鬱編最終回でクライマックスだが、アニメだけでも8話の短編が残っており通過点にすぎない。 時系列では次のエピソードは『涼宮ハルヒの退屈』となる。 OPカット、EDは本編とともに冒険でしょでしょ?が流れる。 2006年放送順の提供バックのねこマンは『レンジャーねこマン』。(DVD第06巻に収録) 次回予告 TV版: (放送順で最終回なので次回予告はなし) DVD版: 有希:次回、『涼宮ハルヒの退屈』。打って。 放送版とDVD版との違い Aパート最初、ハルヒの腕がないのを修正。 ED入る直前のタイトルロゴにDVDでは著作権クレジットが追加。 最終カットで2006年放送版ではズームアウトするが、DVD版ではそのままの大きさのまま終わる。 パロディ・小ネタ キャスト・スタッフ(詳細) キャスト 1段目 キョン:杉田智和 涼宮ハルヒ:平野綾 長門有希:茅原実里 朝比奈みくる:後藤邑子 古泉一樹:小野大輔 2段目 谷口:白石稔 キョンの妹:あおきさやか スタッフ 脚本:志茂文彦 絵コンテ:石原立也 演出:石原立也 演出補佐:坂本一也 作画監督:池田晶子 動画検査:中野恵美 美術設定:田村せいき 美術監督補佐:平床美幸 色指定検査:竹田明代 制作マネージャー:栗須貫大 原画 渡邊政治 植野千世子 堀口悠紀子 秋竹斉一 福島正人 唐田洋 大更麗子 岡野文恵 内藤直 動画 中峰ちとせ 黒田久美 栗田智代 大川由美 仕上げ 佐々木祥子 宿谷葉子 田口真由美 小浦千代美 一ノ瀬益美 背景 細川直生 篠原睦雄 袈裟丸絵美 加藤夏美 川内淑子 松浦真治 伊藤豊 撮影 中上竜太 田中淑子 高尾一也 山本倫 石井和沙 浜田奈津美 梅津哲郎 (ポストプロダクションなどは省略) 放送日程 2006年(野球中継などは考慮せず) チバテレビ:2006年7月2日24時00分-24時30分 テレ玉:2006年7月2日25時30分-26時00分 tvk:2006年7月3日25時15分-25時45分 KBS京都:2006年7月3日25時30分-26時00分 テレビ北海道:2006年7月3日26時00分-26時30分 サンテレビ:2006年7月4日24時00分-24時30分 TBC東北放送:2006年7月4日26時00分-26時30分 東京MXテレビ:2006年7月5日25時30分-26時00分 テレビ愛知:2006年7月5日26時28分-26時58分 広島ホームテレビ:2006年7月8日26時05分-26時35分 TVQ九州放送:2006年7月8日26時40分-27時10分 2009年 サンテレビ:2009年5月7日24時40分-25時10分 テレ玉:2009年5月7日25時00分-25時30分 新潟テレビ21:2009年5月7日25時45分-26時15分 東京MXテレビ:2009年5月8日26時30分-27時00分 tvk:2009年5月8日27時15分-27時45分 TVQ九州放送:2009年5月9日26時40分-27時10分 テレビ和歌山:2009年5月10日25時10分-25時40分 テレビ北海道:2009年5月11日25時30分-26時00分 KBS京都:2009年5月12日25時00分-25時30分 広島テレビ放送:2009年5月12日25時29分-25時59分 チバテレビ:2009年5月12日26時00分-26時30分 奈良テレビ:2009年5月12日26時00分-26時30分 仙台放送:2009年5月12日26時08分-26時38分 メ~テレ:2009年5月12日27時55分-28時25分 Youtube:2009年5月13日22時00分-2009年5月20日21時59分(1週間限定配信) RKK熊本放送:2009年11月22日26時15分-26時45分 DVDチャプター アバン(0:00~3:35) Aパート開始(3:36~4:18)※題名無し平凡な日常(5:19~7:09) 灰色の世界(7:10~9:50) 2人、文芸部部室にて・・・(9:51~11:48) Bパート開始(11:49~13:03)※題名無し長門からの伝言(13:04~14:42) 神人現る!(14:43~16:53) 破壊されゆく校舎、文芸部(16:54~18:34) sleeping beauty(18:35~20:14) ED(20:15~22:45) いつもの待ち合わせ場所にて(22:46~23:40) 使用サントラ 0 00~0 15 SE 0 16~1 24『いつもの風景』サントラ02収録 1 25~1 38 SE 1 39~3 04『うんざりだ』サントラ03収録 3 05~3 43 SE 3 44~4 30『何かがおかしい』サントラ02収録 4 31~5 28 SE 5 29~6 27『ある雨の日』サントラ08収録 6 28~7 21 SE 7 22~9 10『閉鎖空間』サントラ04収録 9 11~9 55 SE 9 56~12 57『虚無的空間』サントラ04収録 12 58~14 42 SE 14 43~19 03『グスタフ・マーラー「交響曲第8番」 第1楽章』収録なし 19 04~20 13 SE 20 14~22 04『冒険でしょでしょ?』サントラでは収録なし 22 05~22 18 SE 22 19~23 39『そして、いつもの風景』サントラ04収録 23 40~23 55『冒険でしょでしょ?予告アレンジ』サントラ02収録 一覧 新アニメ 1期時系列 1期放映順 DVD 原作小説(巻) コミック収録巻 アニメサブタイトル #01 第01話 第ニ話 第01巻 憂鬱(1) 第01巻 涼宮ハルヒの憂鬱 I #02 第02話 第三話 第01巻 憂鬱(1) 第01巻 涼宮ハルヒの憂鬱 II #03 第03話 第五話 第02巻 憂鬱(1) 第01巻 涼宮ハルヒの憂鬱 III #04 第04話 第十話 第02巻 憂鬱(1) 第01巻 涼宮ハルヒの憂鬱 IV #05 第05話 第十三話 第03巻 憂鬱(1) 第02巻 涼宮ハルヒの憂鬱 V #06 第06話 第十四話 第03巻 憂鬱(1) 第02巻 涼宮ハルヒの憂鬱 VI #07 第07話 第四話 第04巻 退屈(3) 第03巻 涼宮ハルヒの退屈 #08 - - 新第01巻 退屈(3) 第03巻 笹の葉ラプソディ #09 第08話 第七話 第04巻 退屈(3) 第04巻 ミステリックサイン #10 第09話 第六話 第05巻 退屈(3) 第04巻 孤島症候群(前編) #11 第10話 第八話 第05巻 退屈(3) 第04巻 孤島症候群(後編) #12 - - 新第02巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #13 - - 新第02巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #14 - - 新第03巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #15 - - 新第03巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #16 - - 新第04巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #17 - - 新第04巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #18 - - 新第05巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #19 - - 新第05巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #20 - - 新第06巻 溜息(2) 第05巻 涼宮ハルヒの溜息 I #21 - - 新題06巻 溜息(2) 第05巻 涼宮ハルヒの溜息 II #22 - - 新第07巻 溜息(2) 第05-06巻 涼宮ハルヒの溜息 III #23 - - 新第07巻 溜息(2) 第06巻 涼宮ハルヒの溜息 IV #24 - - 新第08巻 溜息(2) 第06巻 涼宮ハルヒの溜息 V #25 第11話 第一話 第00巻 動揺(6) 未制作 朝比奈ミクルの冒険 Episode00 #26 第12話 第十二話 第06巻 動揺(6) 第06巻 ライブアライブ #27 第13話 第十一話 第06巻 暴走(5) 第07巻 射手座の日 #28 第14話 第九話 第07巻 オリジナル 未制作 サムデイ イン ザ レイン
https://w.atwiki.jp/haruhi_sm/pages/13.html
キャラ選択・涼宮ハルヒ 1-314 SMを大いに楽しむための涼宮ハルヒの団 1-633 長門有希の首輪 後編
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5952.html
涼宮ハルヒの異界Ⅳ 「ということは涼宮さんに涼宮さんの能力のことを告げたのですか!?」 珍しく古泉の表情からは笑みが消え、目を見開き、どこか茫然自失としているようでもある。 「仕方ないだろ。もうそれしかなかったんだ」 もっとも俺はしれっと返してやる。 当たり前だ。俺はハルヒに告げたことをまったく後悔していないからな。古泉の心情は相当焦っているだろうけど、あえて今の俺の気持ちを表現するなら古泉の気持ちに対する答えは「だから?」だ。 そうさ。 ハルヒがハルヒの力を知ったからどうだってんだ? 今さらながら思うがハルヒに隠し続けてきたことなど本当に些細なことでしかない。 「別にたいした問題じゃない。知らなかったことを知った。ただそれだけだ」 「ただそれだけって……」 古泉が心底困ったように首を振りながら、どこか俺を非難するように、 「いいですか。涼宮さんには世界を思い通りに変革する力があるのですよ。それを自覚してしまうということは――」 「あ、その点は心配しなくていい。俺がハルヒに教えたのは『ハルヒに新しい世界を生み出す力がある』ってことだけだ。世界改変能力については何一つ言っていないぜ」 「同じことです。『新しい世界を生み出せる』ということは『自分の思い通りの世界を創り出せる』と同意語なのです。この世界に変革が起こらなくても、涼宮さんが『不思議』を望めば、それが叶う世界が誕生するということです。それもこれからは無限に」 「いや――それはないな。断言してもいい。ハルヒは絶対に新しい世界を創り出すような真似は今後一切しないはずだ」 俺は真摯な瞳で古泉の仮説を打ち切った。 そうだろ? ハルヒは絶対に新しい世界を創り出そうなんて考えるはずがない。いや考えたとしても間違いなく自重するんだ。 あの時、あの場に居合わせた蒼葉さんを思い出してな。 たった一人で世界を未曽有の危機から救うためにやってきて、しかも命の最後の灯火まで振り絞った戦いを繰り広げたあの雄姿を忘れるなんざ絶対に許されんさ。俺もハルヒもだ。 ハルヒが新しい世界を創造しようとすれば、別の世界が滅びてしまう可能性があることを知ったんだ。いくらあいつでも自分の都合で一つ世界を滅ぼすことがどれほど重罪な所業か理解できたはずだ。 ましてや蒼葉さんはハルヒの心に深く刻みつけられるような言葉も残した。 俺も覚えているあのセリフ。 ――自分の為に世界があるんじゃない。世界の為に自分がいる―― 蒼葉さんは言った。親友や同僚、そして世界中の全ての存在の為に命を賭けて戦うのだと。 ある存在にとっては面白くない世界なのかもしれないが、また別の存在にとってはそれは面白い世界なのかもしれない。世界を楽しいと思う存在もいれば世界に怒りを感じる存在もいる。嬉しいと感じる存在、悲しいと感じる存在だっている。その存在一つ一つにドラマがあり、それは誰にも否定できないことでもある。 それが世界なのだと教えてくれた。 俺は以前、ハルヒに世界はお前を中心に動いていた、なんて言ったがそれは根本的なところで間違っていたことを痛感させられたんだ。 ハルヒだって意味不明な力を持っていようと世界の一部なんだ。それは『力』が意味不明か意味が分かるかの違いでしかない。 いくら不思議な力を持っていようがハルヒを特別扱いすること自体、間違いではないが正解でもないんだ。 蒼葉さんは自らを持って証明してくれた。蒼葉さんだってあれだけの力があるなら世界を変革はできなくても、ある意味、自分の都合よく世界を牛耳られそうなものなのにまったくそれをやるつもりがなかった。自分の力は世界の為にあるとまで思っていたんだ。 これで感銘を受けないとすればそいつはまったく心がない奴だ。 そしてハルヒは自己中心的で傲慢な人間に分類されようとも、鬼畜の域まで堕ちてなんているわけがないんだ。 「まあ、お前のバイトで済む程度の閉鎖空間くらいはこれからも生み出すかもしれないが大した問題じゃないだろ? 新しい現実世界とやらを発生させることに比べればはるかに健全だ」 「いやまあ……しかしですね……」 「なあ、これ以上、意見するのはやめてくれないか」 「え……?」 俺たちは立ち止まり、俺は古泉をどこか睨むような視線で真剣に見つめた。 「これ以上、お前が意地でも異論を挟もうとするなら俺はお前を殴りつけるかもしれん。俺だけじゃない。同じ異論をハルヒにぶつけても同じ反応が返ってくるぜ。だからやめとけ。 それだけのことを俺とハルヒはあっちの世界で出会ったあの人に見せつけられた。 だから、はっきりと言える。お前のバイト程度で済む閉鎖空間なんざ危機の内にも入らん。百歩譲っても、あんなもの単なる小競り合い程度だ。なんなら俺に改造手術を施してあの巨人と戦えるだけの力をくれても構わんぜ。いくらでも手伝ってやる」 これは俺の本音だな。あの時、ただ見ていることしかできなかった自分自身を俺は今でも許せん。 もし、俺にあの巨人と戦える力をくれるなら、是非植え付けてほしいもんだぜ。 んで、朝比奈さんにあの時に連れて行ってもらって蒼葉さんと一緒に戦うんだ。あの人と同様に命をかけてな。 俺の断固たる決意を感じてくれたのか、 「そうですね。少々、自己主張が過ぎたようです。僕はもう何も言いません。あなたや涼宮さんに嫌われることは僕としても本意ではありませんからね。ですが、あっちの巨人のことは僕たちで何とかしますよ。あなたは現実世界で涼宮さんを守ってくだされば僕としては大歓迎です」 「そうか」 俺と古泉は互いに苦笑を浮かべる。 それでいいさ。 「あなたと涼宮ハルヒは五時間、この世界から消えていた」 放課後、文芸部室で窓際から長門が座ったまま、しかし俺に視線を向けて言ってきた。 前回の倍の時間、か……なるほどな…… 「お前にはあっちの世界のことが見えていたのか?」 「見えていた。あの異世界有機生命体のことも見ていた」 だったらぜひとも聞いておきたいことがある。 「今は……?」 思いっきり絞り出すような口調ではあったが問う俺。 当たり前だ。あの人の安否は俺とハルヒにとって何よりも気になるところだからな。 「分からない」 「……」 本来であれば『見えない』が正しい答えなのだが、長門は俺の心情を読み取ってくれた答えを返す。 「向こうの世界の消滅に彼女が巻き込まれたところは見えたが、どこに消えたかまでは分からない。わたしに向こうの世界が見えた理由はこの世界と連結が断たれていなかったため」 「そっか……」 長門を責めるつもりは全くないが俺は落胆した。 実は今日一日、俺の後ろに陣取るハルヒも元気がなかったのである。 仕方ないよな。 俺とハルヒはこっちの世界に戻ってきたが蒼葉さんがどうなったかなんて確認できなかったんだ。無事でいてくれるといいんだが確かめる術がない。 くそ……寝覚めが悪いなんて次元じゃない……説明のしようがないくらい重いものを背負った気分だぜ…… 我知らず、俺は部室の黒板にコブシをぶつけていた。 「キョンくん……」 ポットの傍から俺をいたわる朝比奈さんのか細い声が聞こえ、いつもなら机の向こう側に座って対戦用ボードゲームを俺とやりたくてうずうずした笑顔を見せる古泉も手を組み、両肘を机に付けて笑顔が消えた神妙な面持ちで俺を見つめていた。 ちなみにハルヒは今日、掃除当番だ。もうすぐ来るとは思うが―― がちゃ 扉が静かに開けられる。 誰が入ってきたかなんざ振り向かなくても分かるさ。 俺以上に沈んだ表情を浮かべたハルヒが来た以外に答えはない。 「ねえキョン……」 「ん……」 「あの人……無事かな……?」 「俺も知りたいことだ……」 「だよね……」 俺の横を俯いたまま、ハルヒが通り過ぎる。 こんな辛く悲しげで自責の念に押しつぶされそうな表情のハルヒは見たことがない。 静かに団長席に座って、組んだ手を額につけ今にも泣き出しそうである。 もちろん、朝比奈さん、長門、古泉にハルヒにかける言葉はないし、たぶん見つからない。 声をかけられるのは、 「なあハルヒ」 そう。あの時、現場に一緒にいた俺だけだ。 「お前ひとりの責任じゃない。俺も一緒に背負ってやる。俺がもっと早くあの人に告げていればあんなことにならなかったかもしれんのだからな……」 「ありがと……」 それでもハルヒは面を上げない。 これは相当、重症だな。まあ俺も人のことは言えんが。 こんな俺たちの様子を見ていれば部室の空気も自然と重たくなる。 重苦しい沈黙がこの場を支配して―― ――聞こえる? その沈黙を破ったのは、突然、周りの風景を協調反転させた頭の中に響いてきた軽やかで甲高い声だった。 「うそ……」 と、同時に団長席から茫然としたかすれた声が聞こえてきて、 「これは!?」「え? 何? 何なの?」 古泉の驚嘆の声と朝比奈さんの狼狽のボイスが重なり、長門もまた、無言なのはいつも通りだが信じられないものを見るような瞳で辺りに視線を這わせている。 むろん、俺も絶句したままだ。 ――随分と驚かせちゃったみたいだけど――あの時のお二人さんはここにいるわよね? 「本当に……蒼葉さん……なの……?」 ハルヒが愕然としたまま問う声が聞こえたのだが、 ――もちろんよ。ああ良かった。間違えたかと思ったじゃない―― ハルヒの問いに答えてくれた頭の中の声には安堵の気持ちが如実に表れていた。 「無事だったんだね!」 ハルヒの声に張りと明るさが戻ってきた。まあ俺も同じ気分だ。こんな嬉しいことはそうそうない。去年の十二月二十一日に匹敵する幸福感だ。 ――まあね。んでさ、あの時の別れ方だとあなたと彼に、とびっきりの不安感を与えてしまったんじゃないかと思ってさ。世界消失と同時に私は自分の生きる世界に、あなたたちはあなたたちの生きる世界に戻ったはずだもんね。でも私は意識不明のままだった。てことで、あなたたちに心配かけてると思って、どうにかして連絡しないと、と考えたって訳―― 「ううん。蒼葉さんが無事ならそれでいいよ。あ、でもそれを確認できたのは嬉しいかな?」 ハルヒに笑顔も戻ってきた。分かるぞハルヒ。俺も心の底から笑いたい気分だからな。 ん? なにやらコホンという咳ばらいが聞こえたような気がしたけど……とりあえず気を取り直したってことか? ――確か、あんたたちには魔石を預けてあったはずだから、あとはこっちの世界のみんなに協力してもらってなんとか声だけは届けられたわ――さすがにテレポテーションは無理っぽいわね――それとその魔石もテレパシー通信ができるのは一回だけ――でさ、どうしても、あの時のお礼を言いたくて―― 「お礼?」 ――うん、ありがとう――あなたたち二人のおかげで私たちの世界は救われたの。あなたたちがあっちの世界の創造主を見つけてくれて新世界創造を止めさせてくれたんでしょ? というか私が生きて元の世界に戻れたってことはそれしか考えられないし―― 「ん……」 ハルヒが自嘲の表情を浮かべて少し俯いた。まあ気持ちは分からんでもない。蒼葉さんと蒼葉さんの住む世界を危機に陥れた張本人がハルヒなんだ。にも関わらず、お礼を言われれば誰だって複雑な気持ちになるってもんだ。いくら蒼葉さんは真実を知らないと言ってもな。 ――ふふ。謙遜なんてしなくていいわよ。あなたたち二人は私たちにとって救世主。こっちの世界であなたたちのことは永久に語り継がれていくかもね―― なんだか茶目っ気たっぷりの蒼葉さんの笑顔が頭に浮かんで、 「あ、あのね!」 ハルヒが何かを言いかけたことを俺は自分の右手人差し指で、ハルヒの口を遮った。 当然ハルヒは俺に戸惑いの視線を向けてくるが、俺はウインクまでして苦笑を返す。 謝るなら面と向かって、だろ? 視線にそういう意味を込めてな。もちろん、ハルヒも瞬時に理解してくれた。 ――どうしたの? ちと間が空いたのを向こうでいぶかしげに思ったのか? しかしハルヒはとびっきりの笑顔で続けた。もちろん別の言葉であり、俺の想像通りの言葉を。 「また会えるかな?」 その答えは―― ~エピローグ~ その後のことを少しだけ話そう。 ハルヒは長門が宇宙人で、朝比奈さんが未来人であるってことを知ったわけだが、どうやら宇宙や未来に連れて行け、と言い出すんじゃないかと冷や冷やしていた俺の考えは杞憂に終わったらしい。 まあ時折、と言うか今も長門には宇宙人のことをほしがっていたおもちゃを手に入れて目の前にした子供のような笑顔で訊いているけどな。 長門も律儀に受け答えしているぜ。俺には意味不明の単語も混じっていたが、それも含めてハルヒから興味津々という爛々とした瞳の光は陰ることはなかったがな。 ちなみに、ハルヒは朝比奈さんにも最初は未来のことを訊こうとしていたが早々と断念した。 朝比奈さんの「禁則事項です」という言葉をあっさり受け入れたからだ。 もっとも朝比奈さんは、俺に告げた時のような、ウインクしながらの右手人差し指を唇に付ける腰が砕けそうな笑顔ではなく、どことなく嫌な汗をいっぱいにかきながらの苦笑満面で、ではあったがな。 それでもハルヒが簡単に引き下がるとはね。 ま、無理もないか。未来の世界を壊したくないんだろうし、もう一つ、未来は知るものじゃなくて創るものだからだ。未来を知ってしまうと夢とか希望とかがなくなってしまうことの同意語なんだ。人間誰しも絶対に失いたくないものベスト5に確実に入ってくるものの内の二つだ。そりゃハルヒじゃなくたって断念するに決まっている。 古泉についてはそうだな。 まあいずれ話してやるさ。とりあえず、『異世界人』で桁外れの威力を誇る『魔法』という名の『超能力』を振るう存在に出会ってしまったハルヒだ。 もしかしたら、あの巨人一体にさえ集団でかからなきゃならん古泉の超能力では物足りなさを感じてしまうかもしれんし、それでは古泉も立つ瀬がないだろう。 俺と古泉はハルヒと長門のやり取りを横目に捉えながらボードゲームに勤しんでいる。 ハルヒのいないところなら、いつどこでどういうタイミングで古泉が超能力者であることを教えてやろうかと相談するようにもなったんだ。 なかなか答えは見いだせなくて二人して苦笑を浮かべるしかなくなるけどな。 補足するが、週末恒例のSOS団、市内不思議発見パトロールも継続中だ。 何故かって? 仕方ないだろ。宇宙人、未来人、異世界人、超能力者以外にも不思議なことはこの世に腐るほど存在するんだ。見つけられないだけでな。だから探索目的標的が変わったってことさ。 おっとそうだ。 俺の中でずっと疑問に感じていたことがようやく氷解したんだ。 何かって? おいおい。いつも言ってるじゃないか。 特殊能力を持たない普遍的な超普通の一般人である俺をどうしてハルヒがSOS団に引きずり込んだか、さ。 何のことはない。 ハルヒはジョン・スミスに逢いたかった―― ただそれだけだ。 もっとも、どうしてそう考えるようになったかは分からんがな。 涼宮ハルヒの異界(終)
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1072.html
俺がハルヒの元に戻って数時間。長門の反撃に驚いたのか、敵はめっきり攻撃してこない。 しかし、またいつ襲ってくるかわからないので、俺たちは結局前線基地で銃を構えてぴりぴりしなけりゃならん。 これがゲリラ戦って奴なんだろうな。 ここに戻ってきてからはすっかりハルヒに見張られるようになっちまった。 度重なる命令違反にさすがにぶち切れたらしく、さっきから便所に行くのにもついてこようとしやがる。 せっかく長門に礼を言おうと思っているのに、それも適わん。 「全く少しでも目を離そうとするとどっかに行こうとするんだから。まるで落ち着きのない子供ね」 またオフクロみたいな事をいいやがるハルヒ。 俺は嘆息しながら、仕方なくまた正面の住宅地帯を眺める。古泉のUH-1ミニガンですっかりぼろぼろになった民家を見ると、 ここが本当の戦場なんだろうと思ってしまう。 もうすぐ日が落ちる。辺り一面がオレンジ色に染まりつつあった。あと数時間で2日目も終了だ。 人生の半分以上の情報量がこもっているんじゃないかと思うほどに濃い二日間だったな。 身の回りでこれだけの人が死に、谷口や鶴屋さん、国木田まで命を落とす。 たとえ3日間を乗り切ればすべて元通りといわれても本当かどうかわからないし、実際目の前で死なれて、 ショックを受けない方がどうかしている。こんな現実は二度とゴメンだし、本当の現実にさせるわけにも行かない。 敵はこれからいよいよ本腰をあげて俺たちを叩きにかかるだろう。古泉の予想なら、これからハルヒに 学校への撤退を決断させるような動きを見せるはずだ。今まで以上の凄惨な展開が待っていることになる。 「キョン、ご飯よ。見張り交代してあげるからとっとと食べなさい」 そう言ってハルヒは昼と同じ缶詰を投げてきたので、俺はあわててキャッチする。 って、これだとまるで飼い犬に飯をやっている図みたいではないか。 俺はヘルメットを取って缶詰のブルトップを開けようとしていたが、 「ちょっとキョン、その頬の傷どうしたのよ?」 ハルヒの指摘に俺は頬をなぞる。耳の横あたりをふれたとたん、ピキッと痛みが走った。 ん? ああそういやこんな怪我していたんだっけ。大した怪我じゃない。飛び散ったコンクリートの破片がかすった程度だ。 「ダメよ。ばい菌でも入ったて化膿したらどうするつもり? ほら、拭いてあげるから」 「おい――ちょっとま――うぷぷっ」 俺の意志も無視して、ハルヒはどっかから持ってきていたぬれタオルで強引に俺の顔を拭く。 力任せに拭くもんだからめちゃくちゃ痛い。 「これでよしっと。ちゃんと自分の身体は自分で管理しなさいよ。他のみんなもね。戦闘が始まってからじゃ遅いんだから」 ハルヒの言葉に周りの生徒たちが頷く。なんだかんだで部下思いな奴だ。 と、そこでハルヒに無線が渡された。長門からの連絡らしい。 「有希? あ、さっきの件調べてくれたんだ。ありがと」 ハルヒは長門と無線機越しに会話しながら、またあのメモ帳に名前を書き加え始める。 死んだ生徒と負傷した生徒の確認。指揮官の務めといえばそれまでかもしれないが、 ハルヒなりにけじめをつけているのかもしれないな。 「うんうん……ありがと。じゃあまたね」 そこでハルヒは無線連絡を終了。ぱたむとメモ帳を閉じた。そして、ハルヒは力ないほほえみを浮かべ、 「ついに死者が100人越えちゃった……」 それはあまりに痛々しい表情だった。つい抱きしめてやりたくなるほどに。 俺は何か言ってやりたかったが、どうしても言葉にできなかった。慰めや励ましをしても意味はない。 だったら一体何を言えば良いんだ? 「あと……………………いいんだろ」 ぼそっとハルヒの口から言葉が漏れる。ただ俺は聞き返そうとは思わなかった。 なぜかって? どう見てもただの独り言だし、俺に向けていった言葉ではない。だったらもう一度言わせるなんて野暮だろ。 ハルヒは自分の頭をこづき、 「あーもう、どうしても暗くなっちゃうわね! 何か楽しいことはないかしら! ちょっとキョン。何か漫才しなさい」 「できねえよ、芸人でもないし」 使えない奴ねとハルヒは俺をにらむが、正直このくらい唯我独尊一直線なハルヒの方が見ていて気分が良い。 普段、もっと落ち着けよと散々思っているというのに。 ◇◇◇◇ さて、のんびりモードも終了しハルヒは銃を構えて、周辺の警戒に復帰する。俺もすっかり忘れていたが、 手に持ったままの缶詰を開けてがっつき始めた。まだまだこれからだからな。今の内に腹をふくれさせておこう。 とっとと缶詰を平らげた俺はハルヒの横につき、 「また攻撃を仕掛けてくると思うか?」 「……あたしの予想じゃ、日が落ちるまでは攻撃してこないんじゃないかと思う」 長門の情報改変をしらないハルヒが意外な予想をしてきた。 「何でだよ?」 「バカね。夜になってみなさい。昨日の夜の様子じゃ街灯は点灯するみたいだけど、それでも辺りは真っ暗だわ。 あいつら全身真っ黒だし見えづらいから古泉くんのヘリからの援護も難しくなるし、 夜間にヘリを飛ばしっぱなしってもの危ないし。どっから攻撃されるかわかりにくい上、学校への着陸も難しくなるわ。 ライトか何かで校庭を照らせばいいけど、それじゃ的にしてくれって言っているようなものよ」 なるほど。確かに月明かりと街灯の明かりだけでは、上空の古泉の支援は難しくなるだろう。 そろそろ長門の砲撃の再開も考えなけりゃならん。ただ、あれはヘリと同じほどの切り札だから、 最後の最後まで使い切らないようにしないとな。 だが、敵の動きは予想を完全に裏切った。風を切るような音が聞こえたかと思ったら、強烈な衝撃が 俺たちのいる建物を揺さぶる。天井からバラバラと小さい破片が落下し、あまりの威力に立っていた生徒の数人が床に転がる。 「――みんな無事!? 怪我した人が言ったらすぐに言って!」 ハルヒは真っ先に周りの生徒たちの様子を確認する。幸い負傷者はいなかったようだ。 俺は辺りを見回しながら、 「今のはなんだ? RPGとは威力が桁違いだったぞ」 「そうね……ん! 何か来るわよ!」 ハルヒが正面の住宅地帯を走る道路を指さす。そこには荷台がめらめら燃えたトラックがこちらに向かって―― 俺は理由はわからんが、とっさに何が起ころうとしているのか悟った。きっとテレビのニュースか何かで 見ていた記憶がこんなところで役だったのだろう。 「――特攻だ! 隠れろ!」 俺の声が早いか遅いか。ほぼ同時に炎上トラックが前線基地前で大爆発を起こした。 俺たちのいる建物の一部が倒壊し、破片と砂煙が辺りに蔓延する。 さらに遙か上空まで上がったトラックの破片が次々と俺たちの頭上に降りかかってきた。 そんな中ハルヒは片目だけ開けて微動だにしなかった。あれだけのショックに耐えるなんてとんでもない奴だ。 だが、こいつのとんでもなさはそれどころではない。 「ぎりっぎりだったわね……!」 って、まさか建物にぶつかる前に爆発したのは、お前がやったのか!? どうやって!? 「火を噴いているところに一発お見舞いしただけよ。そしたら爆発したってだけの話! そんなことより、最初の一発目の奴の正体がまだよ! 気を抜かないで!」 ハルヒの言うとおりだ。神業に感心するのは敵を黙らせてからにしよう。 さて、この状況になればいつもの通り、正面の民家から次々と敵が姿を現し始め、こちらに銃撃を開始する。 ワンパターンな奴らだと思いつつ、違うのが一つ。最初の一発目の衝撃の正体だ。 敵弾!という声が響き、俺はあわてて身を隠す。そして、俺たちの隣の建物にそれが直撃して壁の一部を吹き飛ばした。 どっから何を撃ってきやがるんだ!? 俺はとにかく見えない攻撃を放って、窓から顔を出す敵に向けて撃ちまくる。 さすがに敵の動きにも慣れてきたのか、的確に一発一発シェルエット野郎に命中させられるようになっていた。 あまりうれしくない技能取得だが。 とハルヒの元に一人の生徒が駆け寄る。どうやらさっきからの正体不明の攻撃は、 前線基地前方の住宅地帯の路上にいる武装トラックから放たれているものらしい。 はっきりとはしないが、無反動砲のたぐいのようだ。距離が遠い上に周りの攻撃が激しくて、 発射阻止ができない状況に追いやられている。 「古泉くんのヘリを早く呼んで! 上空から片づけるしかないわ――くっ!」 ハルヒが指示を飛ばしている最中にもまた無反動砲による攻撃が続く。 今度は応戦していた3人の生徒の真正面に着弾し、衝撃で彼らが吹っ飛んだのがはっきりと見えた。 近くで難を逃れた生徒たちが、やられたものたちを救出にかかる。 俺はひたすら屋根やら窓から飛び出し続ける敵を撃ち続けた。しかし、いくら命中させても次から次へと飛び出してくる。 当たらないモグラ叩きよりも、終わらないモグラ叩きの方が遙かにたちが悪い。 とようやくここで古泉のUH-1が登場だ。辺りはすでに薄暗くなりつつあるとはいえ、 まだ日が落ちきっていない。今なら無反動砲を備えた武装トラックも視認できるはずだ。 「古泉くん! やっちゃって!」 『任せてください』 ハルヒの指示で古泉は目標の位置を探り始める。だが、しばらくしてから、 『……うまい具合に死角に入り込んでいますね、ただ、攻撃可能な角度もあるようです。回り込んで掃射します』 古泉はそう言うと、ヘリを移動させ始める。 ハルヒはM14で迫ってくる敵をひたすら撃ちながら、 「全く敵の考えがよくわからないわね! 夜になってから攻撃してくると思ったのにさ! 無反動砲なんて持ち出してきたけど、ヘリの餌食になるだけだわ! 相当アホな奴が指揮官やっているんでしょうね!」 ハルヒが怒っているんだか笑っているだか、区別しがたい口調で叫ぶ。だが、俺はその言葉に強烈な違和感を覚えた。 なんだ? 何かが変だ。 俺は古泉のUH-1を見上げる。今、無反動砲トラックを攻撃できるポジションを探して、上空を旋回している。 そもそもどうしてこのタイミングで無反動砲なんていう代物を持ち出してきた? ハルヒの言うとおり、 日が落ちてからやれば効果絶大だ……いや、違う。北山公園の時を思い出せ。敵は軍事的優位を必要としない。 連中の目的は効果的にハルヒに精神的苦痛を与えることだからだ。ならば、今ハルヒ――俺たちにとって、 もっともダメージの大きいことは何だ? 頼りにしている者が倒れることだろう。 なら頼りになる者とは? さっきからの展開を考えれば古泉様々だな。だったら、今古泉のヘリが撃墜されでもしたら、 ハルヒはどれだけのショックを受けるんだ…… 俺はぞっと寒気が全身を駆け抜ける。敵の目的は今もっとも頼りにしている古泉――UH-1をハルヒの目の前で 撃墜することかもしれないんだから! 即座に無線機を奪うように取ると、 「古泉っ! 戻れ! 今すぐ学校に戻るんだ! 早くしろ! それは――」 俺は最後まで言い切れなかった。すでに遅かったからだ。今までとは質の違う発射音が辺りになり響く。 無反動砲トラックがあるだろうと思われた地点から、弾道がしっかりと見えるほどの砲火がヘリに向けられる。 対空砲火だ。今までのRPGやAKでの攻撃とは違う、完全にヘリを落とすための攻撃方法。 「古泉くんっ!」 ハルヒの絶望的な呼びかけもむなしく、UH-1は対空砲を受け続けぼろくずのようになっていった。 俺たちを北山公園に誘い込んだときと同じ手だ。無反動砲を持ち出し、ヘリをおびき出す。 そして、対空砲を用意しておき、のこのこと現れたところを狙って攻撃。くそっ! どうして同じ過ちを繰り返しているんだ俺は! ぼろぼろになりつつもまだ跳び続けているUH-1。そして、こんな状態だというのに古泉からの無線連絡が入る。 『は……はは……してやられましたね……』 「古泉くんっ! 古泉くんっ! 早く逃げて!」 ハルヒの必死の呼びかけ。しかし、古泉には聞こえていないのか、一方的な話し方で続ける。 『後ろの生徒も隣の生徒もみんなやられて……しまいました。僕ももう持たないでしょう……。 ですが、このままでは終わりません……!』 急にUH-1が猛烈な勢いで高度を下げ始める。あいつまさかっ!? 『また……部室で会いましょう……!』 そのまま住宅地帯に墜落した――いや、あえてそこを狙って落ちたのだろう。無反動砲と対空砲があったと思われる場所に。 「古泉っ!」 「古泉くんっ!」 俺とハルヒの呼びかけに古泉は答えることはなかった。あれで生きていられるわけがないだろう。 何がまた部室でだ! 最期まで格好つけやがって! バカ野郎が! 墜落のショックで無反動砲の砲弾が爆発を始めたらしく、轟音が鳴り響く。しかし、俺は耳をふさぐこともなく、 呆然と空を見上げたままだった。いつもスマイルでハルヒのイエスマン。いけ好かないところや、 いまいち信用ならないところもあった。だけど、最近ではSOS団に思い入れのあるようなことを言うようになっていた。 あの古泉が死んだ。そう――死んだ。 俺は呆然としている自分に気がつき、あわてて意識を取り戻す。何をやっているんだ! 古泉が自らの命をかけてまで、 敵を叩いたんだ! それをただ呆然と見ているか!? しっかりしろ俺! はっと俺はハルヒの方に振り返る。あれだけ頼りにしていた古泉の死だ。ハルヒにとっても耐え難いことのはず―― 「…………!」 俺が見たのは、血が流れるほどに強く唇をかみ、必死に叫び声を上げまいと耐えるハルヒだった。 不安定な呼吸からかすかに声も漏れてくる。 俺は意を決して、 「ハルヒ!」 「……何よ!」 「負けねえぞ!」 「当たり前よ!」 ――もう完全に日が落ち、夜が辺りを支配しようとしていた―― ◇◇◇◇ UH-1撃墜からすでに3時間。俺たちはひたすらノンストップ戦闘を続けている。前回までとは違い、 今回の攻撃はやたらとしつこく、叩いても叩いても敵が飛び出し、たまに武装トラックが現れるという繰り返しだ。 古泉の支援がなくなったことも原因だろうが。代わりに北高からの砲撃を再開しているが、 こっちも砲弾の残りが少ないためにちまちま撃つ程度になってしまっているため、効果は薄い。 もう辺りは完全に真っ暗になって、今では街灯と満月の月明かりだけが敵の位置を知らせてくれる。 幸い、シェルエット野郎はどうも薄く発光しているらしく、暗闇の中でも昼間ほどではないが視認することができた。 変なところでサービスしやがるな。 「本当にしつこいわね!」 ハルヒはいったん銃を撃つのをやめると、水筒の水をがぶ飲みし始める。ハルヒが愚痴を言いたくなるもの仕方がない。 何せ、さっきから延々と戦闘が続けられているからな。いい加減うんざりしてくるぜ。 「きっと敵は調子に乗っているのよ。古泉くんのヘリを撃墜してここで一気に決めようとしているんだわ! そうはさせるかってもんよ!」 ハルヒは口をぬぐってから、またM14を片手に敵めがけて撃ち始める。 今の状況は消耗戦だ。敵は無限に出現しやがるが、こっちははっきり言って人員不足がひどくなりつつある。 北高側の稼働を考えると、もう前線基地に持ってこれる生徒はいない。しかし、こっちは延々と撃ち合っている間に、 どんどん負傷者や死者が増える一方。前線基地をこれ以上守るのは不可能な状況になりつつあった。 しかしだ。こうやって敵の目的がハルヒに学校までの撤退を決断させる状況に追い込むことなのは俺でもわかる。 わざわざ奴らの目的通りに動くなんてあまりに腹立たしい。何とか出し抜いてやりたいが…… と、ここでハルヒに無線機が渡される。長門からの連絡らしい。ハルヒは物陰に入り、 「有希、またこっちに補給は送れる? え、人員は良いわ。これ以上、そっちは減らせないし、 こっちだけで何とかやりくりするつもりよ。大丈夫だって。何が何でも守りきってみせるから」 こっちには長門の声は聞こえないが、どうやら弾薬の補給を要請しているらしい。 しばらくそんな会話が続いたが、やがて、 「ありがと。じゃあね、有希」 そう言ってハルヒは連絡を終了する。ただ――最後のじゃあねはなんだか聞いていて辛くなるような口調だった。 が、ハルヒは俺の方に無線機を向け、 「キョン、有希やみくるちゃんに言いたいことがあるならいっときなさい。今の内にね」 「…………」 俺は無線機を受け取り、敵から見えないように物陰に引っ込む。代わりにハルヒがM14を持って銃撃を再開した。 『聞こえる?』 「ああ」 長門からの声。なんだかすごく懐かしい気分になった。さっきから銃声音しか聞いていなかったからだろうか。 「そっちの様子はどうだ? 今の展開じゃ、北高側への攻撃が始まってもおかしくないけどな」 『大体の状況は把握している。古泉一樹のことも』 「そうか……」 俺はまた脳裏にUH-1が撃墜された光景がフラッシュバックする。ぼろくずのようにされて地面に落下していく姿。 そして、古泉の最期の台詞。思い出したくもないのに。 しばらく、沈黙してしまった俺だったが、長門はその空気を読んだのか、 『あなたの責任ではない』 めずらしく慰めの言葉をかけてきた。が、続けて、 『事実。この疑似閉鎖空間を構築した者たちに逆らうことは不可能に近い。想定外の行動で攪乱するだけでも上出来。 彼らは私たちを好きなときに消すことができる。例え、古泉一樹抹殺のための罠だと気づいても、別の方法が実行されただけ』 「……そうかい」 長門なりの励ましなのかもしれないが、あっさりと敵の罠にかかったショックは大きい。 そして、俺たちがいくら努力しても所詮は、創造主様の手のひらで踊っているにすぎないって言う事実もそれに拍車をかける。 しかし、敵の襲撃を受けている中でいちいち落ち込んでいる場合でもない。 「こっちは、恐らくそろそろ北高に戻ることになりそうだ。敵の思惑通りといったところで腹が立つが、仕方がない。 それからが勝負――」 『涼宮ハルヒが前線基地を放棄して、北高に撤退することはあり得ない』 何? それはどういう意味だ? 『先ほど話したことで確信を得た。涼宮ハルヒは北高へ撤退しない。一人になってもそこから動かない。 生命活動が停止するまでそこで抵抗を続ける』 俺はハルヒの方に視線だけ向ける。必死な表情で一目散に敵めがけて撃ちまっているこいつの姿は―― 『限界が近い。このままでは3日という期限前に、これを仕組んだ者の目的が達成される』 「目的だと? それはどういう――」 『待って』 俺の質問を遮り、突然長門の声が遠ざかった。一瞬、ついに北高への攻撃が始まったのかとどきっとしたが、 無線機からかすかに流れてくる長門と喜緑さんの声を拾う限り、そうでもなさそうだった。 やがて、長門がまた戻ってきて、 『聞こえる?』 「ああ、聞こえるぞ」 『今、情報操作権限の一部を私の制御下に置くことができた』 「は?」 『情報操作権限の一部を私の制御下に置くことができた』 長門は淡々と語っているが、それって実はとんでもないことなんじゃないか? 『正確に言うと、この空間に置ける――CREATEの実行権限を私の制御下に置いた。 UPDATEとDELETEはまだ不可。時間はかかるが、順次こちらの制御下に置くようにする。 淡々と語るのは良いが、具体的に何ができるようになって何ができないのかを教えてくれ。 『現在、私はこの世界の物質を構築することができる。そして、仕組んだ者はそれができない。 だから、これ以上あなたたちの生命活動を停止させるべく作り出されている敵性戦闘物体はこれ以上増えない』 俺は一気に歓喜の声を上げようとしてしまうが、ぎりぎりで飲み込む。ハルヒに気がつかれるとまずいしな。 さらに長門は続ける。 『ただし、現在この世界にすでに存在しているものに対し、改変・消去は不可。その権限は持っていない』 「ようは、今俺たちに襲って来ている連中はそのままだが、これ以上増えることはないって事なんだな」 『そう。しかし、それを見越していたのか、この世界に置ける敵性戦闘物体の総数はかなり多く構築されている。 そこから数キロ北方には、前線基地周辺にいる以上の戦闘能力を備えたものがすでに配備されていた。 これらが南下を開始した時点でこちら側に勝ち目はない。現状に置いて圧倒的不利は変わっていない』 「……手放しには喜べないって事か。おっと!」 また武装トラックが出現して、12.7mm機関銃の乱射が開始された。ハルヒが口からつばを飛ばして反撃の指示を出している。 『だから、CREATE権限を最大に利用して、敵性戦闘物体への反撃を行いたいと考えている。 短時間かつ広範囲に対してダメージを行う方法を採用するつもり』 「具体的に何をする気なんだ?」 俺の問いかけに、長門はしばし考えるように沈黙して、 『航空機による空爆を実施する』 ◇◇◇◇ 思わずくらっと来たね。まさか、長門から空爆なんて言う地球人類的な発言が出るとは思っていなかったがとか そんなことはどうでもよくて、敵が一網打尽にできるなら反対する理由なんてどこにもない。 俺は長門との無線連絡を終了すると、ハルヒの元に行き、 「おいハルヒ。長門からの報告だ。すごい攻撃方法を実行するって言っていたぞ!」 「すごいって何よ!?」 「空爆だとよ!」 「すごいじゃない! 何でも良いから早くやっちゃって!」 ハルヒは俺の言ったことを理解しているのしていないのか、もはや何で今頃なんて考える余裕すらないのか。 まあ、深く考えてくれない方がこっちとしても好都合だ。 だが、ここに来て敵の攻撃が苛烈さを極めてきた。どうやら、これ以上、シェルエット野郎を増産できないことに 感づいたらしい。残っている戦力だけでこっちをつぶしにかかってきたみたいだな。 「キョン! 撃ちまくって敵を後退させるのよ!」 「言われんでもわかっているさ!」 とにかく動いているものにめがけて撃つ。俺はそれだけを考えて引き金を引きまくった。 だが、敵も必死なのか今まで以上の命中精度で俺たちに銃撃を加え始めた。あっちこっちで銃撃を受けた生徒たちの悲鳴が上がる。 ハルヒもだんだん焦りだして、 「有希の言う空爆ってまだなの!?」 「もう少しだろ! 今はあいつを信じて待つしかない!」 そう俺が怒鳴り返したときだった。何かのエンジン音みたいなものが銃声音の隙間から聞こえてくることに気がつく。 雲一つない満月の夜空を見上げると、飛行機が2機俺たちの頭上を飛んでいるのが目に入った。 満月とはいえ、さすがに夜ではシェルエットしか確認できないが、テレビとかでよく見る戦闘機に比べて、 主翼が直線にのびる翼で、尾翼の前にターボエンジンぽいものが2つ乗っかるようにある。なんだありゃ。 地球的デザイン+宇宙人的センスが混じったような変な機体だ。いや、でも今俺があれを見てなんなのか理解できないって事は、 敵が俺の頭の中にねじ込んだ知識の中にはないって事、つまり想定外のものが出現したって事だ。ざまあみやがれ。 しばらくその変な飛行機は俺たちの上空を飛び回っていたが、いっこうに攻撃を開始しようとはしない。 と、長門からの連絡が俺に入る。 『予定通り攻撃機の構築は完了した。しかし、問題が発生している』 「どうしたんだ?」 『あなたと涼宮ハルヒのいる位置と敵のいる位置の境界線が不明。このままではあなたたちを誤射する危険がある』 そりゃ勘弁してほしいね。ここまで来て味方に吹っ飛ばされたら無念どころではすまないだろうからな。 『正確に言えば、あなたと涼宮ハルヒの位置は完全に確認している。この世界を構築した者の視認モードでは 涼宮ハルヒ本人とそれに関わりのある人間はどこでも捕捉できるようにされていた』 なるほどな。だから、ハルヒも俺も今までろくな怪我もせずにいたってわけか。意図的に俺たちから狙いを外して。 そして、逆に殺害の時間が来たらきっちり確実に仕留めると。 『だから、あなたたちを誤って攻撃する可能性はない。しかし、その他の生徒たちは敵性戦闘物体と 認識レベルが同等になっている。今の情報制御状態では、それを判別することはできない。 地図から入手している情報で誤射の確率は限りなく低いが、ゼロにはならない状態』 「誤射する可能性はどのくらいあるんだ?」 長門は考えているのかしばらく沈黙した後、 『3%以下』 「……そうか。ならやめておいたほうがいいな」 『やめてたほうがいい』 俺はしばし考える。たかが3%とはいえ、それが見事的中してしまえばしゃれにならない事態だ。 ハルヒにかける精神的負担も今までの比ではない。わざわざ敵の目的に荷担するようなものである。 「まだ時間があるが、日が昇るまで待つってのはどうだ? それなら確認もしやすくなるはずだ」 『無理。敵性戦闘物体は攻勢を強めている。今のままではあなたたちは朝まで持たない。確実に全滅する』 長門の言葉を証明するように俺の近くにいた生徒が銃撃を受けて倒れる。一体この数時間でどれだけの生徒がやられた? ひょっとしたらもう俺とハルヒぐらいしかいないんじゃないか。どのみち、このままでは持たないのは確実だろう。 ならばどうにかして長門に攻撃位置を知らせる必要があるが、激戦状態の前線基地に来させるわけにもいかない。 「……待てよ。俺とハルヒの位置は確実に特定できるんだよな」 『そう』 俺はぴんと来て、長門に作戦の概要を説明する。長門は少し考えるように黙った後、 『わかった。あなたに任せる』 そう了承した。さてと、問題はハルヒだな。 「おいハルヒ」 「有希は何か言っていたの!? はやく、空爆でも何でも良いからやってくれないとこっちが持たないわ!」 M14をひたすら撃ちまくりながらハルヒ。俺はとりあえず長門が攻撃できない理由を端的に説明してやる。 ハルヒは眉をひそめて、 「それじゃ仕方ないわね。あーうまくいかないもんだわ! また別の手を考えないと!」 「そこで一つ提案があるんだが」 「何よ?」 ハルヒが疑惑の目を向ける。今までハルヒ総大将の意向を無視してやりたい放題だったおかげで すっかり警戒されちまっているな。 「俺が敵の位置を知らせるために、敵の居場所につっこむ。そこで銃を上空に向けて長門に位置を知らせる。 そして、俺が戻った後に長門がそこにめがけて攻撃するってわけだ」 「ダメよ! ダメに決まっているじゃない!」 やっぱり反対しやがった。 「どーしてもそれしかないってなら、あたしが行くわ! それならいいけど!」 俺はいきり立って眉毛をつり上げるハルヒの頬をそっとなでてやると、 「お前は総大将だろう? ここにいて他の連中を守ってやる義務がある。こういう突撃役は俺みたいな下っ端の仕事さ。 心配すんなって。死ぬつもりはねぇよ。お前の援護次第だがな」 俺の言葉にハルヒは口をへの字に曲げて抗議の表情を見せていたが、 「わ、わかったわよ……! 任せるからしっかりやりなさい! こっちもしっかり援護するから!」 なんだかんだで了承するハルヒだ。他に方法がないことを理解しているのだろう。 俺は無線機を背中に背負う。目的地に到着次第、長門に連絡しないとならないからな。 「ハルヒ! こっちはいつでもいいぞ!」 「わかったわ! いいみんな! 合図とともに一斉射撃よ。とはいってもでたらめに狙っても意味がないわ! 屋根の上とか窓とかにいる敵を確実に仕留めなさい! いいわね!」 了解!と周りの生徒たちが返事する。頼もしいぜ。 「行くわよ――キョン行って!」 ハルヒとその他生徒たちが一斉に前面の民家に向けて射撃を開始する。窓やら屋根やらにいたシェルエット野郎が 次々に飛散していった。それを確認すると俺は前線基地の建物から飛び出し、前方の住宅地帯に飛び込む。 俺は叫びながらひたすら路地を突っ走った。とにかく、敵の注意をこっちに引きつけなけりゃならん。 そうすりゃ長門の空爆もやりやすくなるってもんだ。 そこら中から放たれる銃弾を奇跡的にもかわし続け、俺は住宅地帯の真ん中あたりに到着し、 適当な民家の中に飛び込む。どたどたと中にいた敵が驚いて撃ちまくってくるが、俺は的確にそいつらを仕留める。 やれやれ、ずいぶん射撃もうまくなっち待ったもんだ。 俺は敵がいなくなったのを確認すると無線機を取り、 「おい長門! 目的についたぞ。俺の位置は把握できているか?」 『問題ない。はっきりと確認できている』 「よかった。じゃあ、ハルヒのいる位置と俺のいる位置がわかるな? そこが味方のいる位置で、 俺が敵のいる位置だ――と!」 また一人のシェルエット野郎が民家に乗り込んできたので射殺する。長居はまずい。 「ハルヒのいる位置から俺のいる位置の間は攻撃するな。敵はいるが味方に近すぎで誤射の可能性がある。 俺よりも北側ならどれだけ攻撃しても良い。派手にやってくれ!」 『わかった。即刻そこから涼宮ハルヒのいる位置まで戻って』 「言われんでもわかっているさ!」 俺は無線を終了させると、外に飛び出そうとするが―― 「うわっ!」 俺は悲鳴を上げて、民家の中に逃げ戻った。何せ民家の窓、路地の陰から俺にAKを構えているシェルエット野郎が 見えたからだ。それも数十人規模で。ほどなくして、俺にめがけて乱射が開始される。 必死に頭を抱えて室内の壁に身を寄せて、銃撃に耐えるもののこのままじゃいずれ民家内に侵入される! 「どっちみちかわらねぇなら……!」 俺は無線を取り、 「長門! 俺の位置ははっきりとわかっているんだな!?」 『わかっている。だから早く逃げて』 「すまんが、今のままじゃ逃げられそうにねぇな。だから、俺に構わず撃て。といっても俺に当たらないようにな!」 『……危険すぎる。できない』 「いいからやれ! このままじゃやられるだけだ!」 『…………』 「おまえならできるさ。十分信頼できると思っている。だからやってくれ」 長門はしばらく黙っていたが、やがて絞り出すような声で、 『わかった。今から空爆を実施する』 「ああ、悪いな」 『有希、待ちなさい!』 突然割り込んできたのはハルヒの声だ。こいつ、盗み聞きしてやがったな・ 『やめて有希! キョンが……キョンが死んじゃう!』 『大丈夫。当たらない。絶対に当てない』 『無理よ! こんな乱戦じゃ!』 「ハルヒ!」 俺の一喝でハルヒの叫び声が止まる。 「……長門を信じてやれ」 そう言ったが、ハルヒはこれ以上何も言ってこなかった。俺はそれを了承と受け取ると、 「長門、頼む」 『了解』 長門からの返事とともに敵からの銃撃がやんだ。そして、一瞬辺りが静まりかえったと思いきや、 突然、耳をえぐるようなブオオオオという回転音ようなものが響く。 「――うおぁ!?」 情けない声を上げてしまったが勘弁してくれ。何せ窓から見えていた隣の民家が根こそぎ吹っ飛ばされたんだからな。 爆弾じゃないぞ。何だ今のは!? 疑問に思っている暇もなく、また同じ轟音が響き今度は別の民家が消し飛んだ。あれに当たったら12.7mmどころじゃない。 跡形もなく消し飛ぶぞ! しばらく長門の空爆らしき攻撃が続いたが、 『あなたの周辺の敵は一掃した。今の内に前線基地まで戻って』 「助かった。ありがとうな!」 俺は長門に礼を言うと民家から飛び出して、 ――愕然とした。何せ俺のいた民家の周りの家がことごとく木っ端みじんに粉砕されているからだ。 長門の奴、なんて容赦のないものを持ち出してくるんだ。 しかし、それでも敵はしつこい。がれきになった民家の陰からしつこく銃撃を加えてきやがる。 俺はそれに撃ち返しつつ、前線基地に走り出す。見れば、また俺の頭上を1機のあの奇妙な飛行機が飛んでいった。 そして、息も切れ切れになりながら、ハルヒのいる建物に飛び込む。 そのまま大の字で仰向けに酸素補給活動をしていたが、隣にハルヒが立っているのに気がついた。 ああ、あの眉間のしわ寄せ具合を見ればどれだけ頭に来ているのか、すぐわかるな。 「この――バカ!」 ハルヒの罵倒がなぜか心地よかった。 ◇◇◇◇ さて、帰ってきたとはいえまだまだ戦闘は継続中だ。前線基地周辺にいる敵は長門の空爆対象外だからな。 こっちでつぶさなきゃならん。ちなみに空を飛ぶ攻撃機はしばらくガトリング砲らしきものを撃ちまくっていたが、 続けてミサイルやら爆弾の投下が開始された。 「その調子よ、有希! 徹底的にやっちゃって!」 『了解。しかし、補給が必要。攻撃機の入れ替えを行う』 さすがに弾切れを起こしたのか、2機の攻撃機があさって方向に飛び去っていった――と思ったら、 今度は8機出現だ! 長門の奴、本気で容赦する気ねぇな。 『敵の新手が何かしてそちらに向かっているのを確認した。これから攻撃機の半数はそちらの迎撃に向かう』 「新手!? 今度はいったい何なのよ!」 『……確認した。T-72戦車数十両』 長門の報告に顔を見合わせるハルヒと俺。やつら、切り札を残してやがったな。 「冗談じゃねえぞ。そんなもんがここに来られたら対抗手段がねえ」 『任せて、あなたたちのところへは一両も到達させないから』 長門航空部隊の半数が北上し、ミサイルなどで敵の戦車部隊がいると思われる場所へ攻撃を開始した。 しかし、敵も猛烈な対空砲火で応戦を開始する。攻撃機と戦車のガチンコ勝負だ。身近でみたいとは思わないが、 かなり痛快なシチュエーションだろう。 「ちょっと有希大丈夫なの!? あんなに攻撃を受けたら撃ち落とされるんじゃ――」 『大丈夫。この機体は数十発程度の被弾では落ちない』 長門、おまえ一体何を持ち出してきたんだ? とにかく、そっちは任せるぞ。 俺たちはしつこく迫るシェルエット野郎に応戦を続ける。しかし、こっちの負傷者増大でもはや限界だ。 長門の空爆で敵の戦力は格段に落ちたが、それでもまだ向こうの方が有利だ。 増援がほしいがこれ以上は無理と来ている。 「ハルヒ! もう持たないぞ! どうするんだ!?」 「…………」 ハルヒはあからさまに苦悩の表情を浮かべて迷っていた。学校まで戻るか、それともここで徹底抗戦か。 前者ならもう少し粘れるかもしれないが、学校への直接攻撃を許すことになる。 おまけにここにいる負傷者を回収するのは無理だ。置き去りにするしかなくなる。しかし、後者ではもう持たないのだ。 と、そこでまた長門からの連絡が入る。 『そちらに新しい戦力を送った。3人ほど。操縦が可能な車両も供与してある』 3人? 何でそんな中途半端な増援なんだ? しばらくすると猛スピードでジープぽい車両が俺たちの前に現れた。そして、その座席から現れたのは、 「森さん? それに新川さんも」 ハルヒが素っ頓狂な声を上げる。そう現れたのは古泉と同じ「機関」なる組織にいる二人だ。 どうしてこんなところにいるんだ? そんな俺の疑問にも答えず、迷彩服に身を包んだ森さんは、 「救援としてやって参りました。古泉のことは聞いています。彼の代わりとしてあなたたちを援護します」 「短い付き合いになりますでしょうが、できるだけの事はしますので。指示をお願いできますかな」 新川さんも同調する。いや、もう何でとかはどうでもいい。長門が何とかしたんだろということにしておこう。 とにかく、今は乗り切る方が最優先だ。ハルヒも特に深く追求するつもりはないらしく、 森さん新川さんにせっせと指示を出している。ところで、やってきた車両の銃座で12.7mm機関銃を撃ちまくっているのは誰だ? どうも女性らしいその人はさっきからハルヒの方をしきりに気にしつつ、近くにいなくなったことを確認してから 俺の方に手を振った――って、朝比奈さん(大)かあれ! 「キョンくん、こんにちわ」 くいっとヘルメットを持ち上げて見せたその顔は間違いなく朝比奈さん(大)だった。 あの長い髪の毛をヘルメットの中にしまっているらしく、全然気がつかなかった。 「驚きました。だって、全然こんなことをやった覚えがないんですから」 「……どうやって、ここに来たんですか?」 「それは禁則事項です」 とまあいつもの秘密主義者ぷりを発揮すると、また12.7mmを撃ちまくり始める。全く何がどうやっているのやら。 北方での長門航空部隊と敵戦車部隊の死闘はさらに激しさを増しているらしい。 いつのまにやら10機以上に増大した攻撃機が爆撃を続けている。 一方の俺たちは、何とか3人の増援を手にしたおかげで少しばかり――どころか圧倒的に状況が改善した。 特に森さんと新川さんがすごい。どこかで特別な訓練でも受けているのか、狙った獲物ははずさないモードだ。 次々と敵を打ち倒していくんで俺のやることがなくなったほどだ。ちなみに朝比奈さん(大)は とにかく12.7mmを撃ちまくっているんだが、いっこうに敵に命中しないのはらしいと言ってしまって良いのかな? それから数時間、激闘が続く。眠気すら起きず、汗もだくだくで俺はひたすら撃ちまくった。 ハルヒも森さん、新川さん、朝比奈さん(大)、そしてその他の生徒たちも。 そして、もうすぐ日が上がろうと空が黒から青に変わろうとしていたとき、 『敵性戦闘物体の完全消滅を確認。同時にこちらはUPDATEとDELETE権限を確保した。 もう攻撃してくるものは存在しない』 長門から入った連絡。それを聞いたとたん、俺は力が抜けて座り込んでしまった。終わりか。やっと終わりなんだな。 ハルヒもM14をほっぽり出して、地面に大の字になる。他の生徒たちもがっくりと力尽きたように座り込み始めた 「キョン、ねえキョン」 「何だ?」 「……終わったのよね」 「ああ、もう終わりだ」 「そう……」 ハルヒは呆然言った。なんてこった。何かをやり遂げた後は大抵爽快感とか達成感とかが生まれるもんだと思っていたのに、 今の俺たちにはただ終わったという感想しか生まれてこなかった。ただ――虚しいだけだった。 ◇◇◇◇ 学校が見える。何かやたらと懐かしく見える北高の見慣れた校門だ。 俺たちは前線基地からようやく学校に戻って来れた。何せ、負傷者やらなんやらを担いでの移動だ。 さすがに時間がかかる。おっと、トラックを使わなかったのは、全員歩きたかった気分だからだ。特に深い理由はない。 そして、そんなぼろぼろな俺たちを校門で迎えてくれたのは―― 「キョンくーん!」 真っ先に俺に抱きついてきたのは朝比奈さん(小)だ。俺に抱きついて泣きじゃくり始める。 「ふえっ……よかったです。古泉くんまで……死んじゃってキョンくんまで……ふえええ」 「何とか乗り切れましたよ。朝比奈さん」 俺がいくら言葉をかけてもひたすら泣き続ける朝比奈さんだった。 ふと、長門と喜緑さんがいることに気がつく。 「よう長門。助かってぜ。ありがとな」 「……そう」 相変わらずリアクションの少ない奴だな。 「ところでだ。森さんや新川さんとあ――は何で突然この世界に出現したんだ? って、あの3人もういねえし!」 振り返ってみれば、森さん、新川さん、朝比奈さん(大)の姿が完全になくなっていた。 まさか、あれは全部俺の妄想とかいうオチじゃないよな? 「あの3人は、この世界に入ろうと試みていた。だから、私が招き入れた。絶対的な人員不足を解消するためには、 少しでも人手が必要だったから」 長門の淡々とした説明を聞く。全く風のように現れて、あっという間に去っていったな。昔のヒーロー番組かよ。 ま、おかげで乗り切れたからいいけどな。 代わりに目に入ったのは、ふらふらと力なく歩く一人の人間――涼宮ハルヒだった。あの威勢のいい早歩きの面影もなく、 まるで水も食料もなく沙漠をさまよってはや数日な状態の歩き方だ。 「おいハルヒ。どこにいくんだよ」 「……ゴメン。一人にさせて」 それだけ言うと、ハルヒは校庭の方に去っていってしまった。精神的負担は想像以上なのかもしれない。 その背中は真っ白になって力尽きてしまっている。大丈夫なのか? 「この空間から元の世界に帰還できるまでしばらく時間がかかる。今は負傷者の手当を優先すべき」 長門の言葉に俺はうなずく。ハルヒのことも心配だが、今はけが人からなんとかしなきゃな。 ◇◇◇◇ 「飲んで」 俺は長門から差し出されたペットボトルの水を飲みほす。 すっかり日が高くなり大体負傷者の手当も終わった。死者117名、負傷者75名。 これが俺たちが出した最終的な犠牲者の統計だ。ようやくこれ以上数えなくて良くなったことはうれしいが、 これだけの生徒たちが傷ついたんだから、手放しで喜べるわけもなかった。 校庭に降りる階段に座り込んでいる俺の隣では朝比奈さんがすーすー寝息を立てている。 何でもこの異常な世界に放り込まれてから、一睡もしていなかったらしい。 この狂気の世界じゃ眠る気にもなれなかったのだろう。 「で、いつになったら俺たちは元の世界に戻れるんだ?」 俺の質問に長門は、 「もうすぐ。この世界との情報連結状態の解除が完了する。第1段階として、涼宮ハルヒたちに関わりの薄い生徒たちから 元の世界に帰還することになる」 そう言いながら長門も俺の隣――朝比奈さんの反対側に座り込んだ。そして、続ける。 「それが完了次第、次に私たちが帰還を開始する。現在のところ問題ない」 「……犠牲になった生徒たちは?」 「問題ない。生命活動が停止した時点で元の世界へ帰還されていた。この世界で起こったことの記憶をすべて消去した上で」 「そうかい」 俺はすっと空を見上げた。雲一つない快晴だ。この世界で唯一まともだったのはこの青空ぐらいだったな。 「結局、こんなばかげたことをしでかした奴の目的は何だったんだ?」 「はっきりとは不明。ただ、当初予想していたように涼宮ハルヒに対して精神的負荷をかけることが目的だったのは確実」 「やっぱりそうなんだろうな」 「相手のシナリオはこう。1日目は涼宮ハルヒに近い人間には手を出さず、関わりの薄い人間への攻撃を強める。 2日目午前、いったん危機的状態に追い込む。この時点で近い人間を殺害する」 「そりゃ鶴屋さんのことか? しかし、実際には鶴屋さんはハルヒの命令を無視して戦死してしまったけどな」 「そう。そのためある程度の軌道修正を加えたと思われる。だから、2日目午前の攻撃は規模が大きくなかった。 そして、午後あなたの生命活動を停止させない程度の負傷を追わせた後、古泉一樹を殺害する」 「……前線基地の最西端に俺が移動したのも敵の思惑通りだったてのか。全く陰険な連中だぜ。 んで、古泉は予定通りヘリごと撃ち落としたと。まるで敵の手のひらで踊っていただけじゃねえか」 長門は少しだけ首を傾けて、 「仕方がない。主導権のすべてを握られていた。抗うことはまず不可能。その後、3日目朝にあなたたちを学校まで撤退させてから 戦車部隊で攻撃開始。そこで、朝比奈みくるとわたしが生命活動停止状態になる。 あとは、期限直前にあなたを殺害し、残るのは涼宮ハルヒ一人だけになるはずだった」 後半はほとんど敵のシナリオ通りにならなかったな。長門が超パワー発動で戦車を片っ端から撃破してくれたし、 俺たちも森さん、新川さんの活躍で――ああ、朝比奈さん(大)もな――敵を打ち負かせた。 「長門さんが情報操作能力を取り戻すことは明らかに想定していなかったんですね」 背後から聞こえてきたのは喜緑さんの声だ。長門は彼女に振り返ろうともせず、 「感謝している。一人では不可能だった」 「いえ、お互い様です」 礼を言いながら決して顔を合わせないところを見ると、どうもこの二人には決定的な溝があるらしい。 今回の一件では共同戦線を取ったが、あくまでも利害が一致したという理由から何だろうな。 今後二人が衝突なんて言う事態にはなってほしくないんだが。 と、喜緑さんが俺の前に立ち、 「そろそろ時間のようです」 そう言って校庭で疲れ切って寝そべっている生徒たちを指さした。彼らはまるで原子分解されるかのごとく、 霧状に身体が飛散し始める。 「帰還の第1段階が始まった。これが終了次第、わたしたちが続くはず」 「はず?」 長門の言葉に違和感を覚えた。まるでそうならない可能性が存在しているみたいじゃないか。 そんな頭の上にはてなマークが浮かぶ俺に、喜緑さんはいつものにこにこ顔で、 「最後に一つだけ問題が出ているんです。それはひょっとしたらこの世界を構築した者の目的が達成しているという可能性です」 「んなバカな。長門や喜緑さんのおかげで敵のシナリオは完全に狂ったんだろ? さぞかし、敵もあわてただろうよ。 目的が何だったか知らんが、これじゃ完全にご破算に決まっているじゃないか」 俺が抗議の声を上げると、今度は長門が立ち上がりながら、 「この世界から【彼ら】が去ったときに少しだけ意志を感じ取れた。間違いなく【彼ら】は目的達成を確信している」 「負け惜しみか、ただの強がりなんじゃねえか?」 俺の反論に喜緑さんは首を振りながら、 「今、帰還の第1段階が終わりました。続いて第2段階に入ります。ですが」 「わたしたちは帰還プロセスが開始されているが、あなたには適用されていない」 はっと気がついた。今、長門と喜緑さん、そして隣で寝息を立てている朝比奈さんは、 先ほどと同じように身体が霧状に飛散し始めていた。だが、俺の身体には全く変化がない。これはまさか…… 「今、この世界の制御権限はわたしにはない。別の人間によって完全に制御下に置かれている」 その長門の説明で俺は確信を持った。ハルヒだ。あいつが何かしでかしている。この後の及んで何を考えてやがるんだ―― 「――そうか。そういうことか」 俺は唐突に理解した。こんな最悪な世界を作り俺たちを放り込んだ連中の目的をだ。どこまでも陰険な奴らなんだよ……! 「あなたに賭ける」 ちりちりと消えつつある長門はいつぞやと同じ事を言った。あの時は何の事やらさっぱりだったが、今ではわかる。 やらなきゃならんことをな。そして、それは俺の意志でもあるんだ。 俺は隣で眠っている朝比奈さんを抱えると、長門に預け、 「朝比奈さんを頼む。それから元の世界に戻る過程で俺たちの記憶も消去されるんだろ?」 俺の問いかけに長門はこくりとうなずく。 「それはありがたいね。こんなばかげた記憶なんて頼んででも消してもらいたいぐらいだったし。 あと、長門自身の記憶も消去されるのか?」 「する。ただし、帰還後に何らかの形で情報統合思念体よりここであったことの情報共有が行われる可能性がある。 それをわたしが拒否する権限はない」 「拒否しちまえよ。何よりもお前の意志を最優先に考えればいいさ」 「…………」 長門は何も答えない。そんなに単純な話じゃないんだろうな。だが、聞きたくないことに対して耳をふさぐぐらいの権利は 認めてもらって当然だと思うぜ? ああ、それから、 「あと、万一元の世界に戻っても俺が違和感とか記憶の断片とかが残っていて、長門に何があったとか聞いていたら、 教えないでくれないか? ここの事を知って入ればの話だけどな。ま、俺がそう言っていたと言ったら、 そのときの俺も納得するだろ。こんなことは中途半端に知ってもつらくなるだけだからな」 「わかった。そうする」 もう長門の身体は完全に消えようとしていた。そして、最後にかけられた言葉。 「また部室で」 それだけ告げると、長門、朝比奈さん、喜緑さんは消滅した。 全く、鶴屋さんはまた学校で。古泉はまた部室で。長門もまた部室で、か。 俺は辺りを軽く見回して見たが、他には誰もいなかった。今この世界にいるのは俺と―― 「ハルヒだけか。とりあえず、あいつを捜すとするかな」 ◇◇◇◇ 「ハルヒ」 学校の屋上で呆然と立ちつくすハルヒを発見できたのは、学校探索を開始してから数十分後。 全く滅多に来ないような場所にいるもんだから見つけるのに時間がかかっちまった。 俺の呼びかけにもハルヒは答えようともせず、こちらに背を向けてただ学校周辺を見ていた。 とにかく、こっちから近づくしかないな。 「なにやってんだよ」 俺はハルヒの横に立つ。だが、ハルヒは顔を背けてしまった。屋上をなでる風が髪の毛を揺らした。 しばらく、そのまま時間が過ぎた。ハルヒはたまにしゃくりあげるように肩を動かしていたが、 決してこちらに顔を向けようとはしない。俺は嘆息して、 「なあハルヒ。辛いことはたくさんあっとは思うが、もう終わったんだ。これ以上ここにいたって意味ないだろ? とっとと元の世界に帰ってまたSOS団で楽しく――」 俺が口を止めたのは、唐突にハルヒがこちらに顔を向けたからだ。それは――なんというか―― ……なんてツラしてやがるんだ…… 絶句するしかなかった。ハルヒのこんな表情なんて見たこともなかった。言語なんぞで表現できるわけもない。 それほどまでに絶望的に染まった顔だった。 くそっ……忌々しい。ああ忌々しいさ! こんなばかげた舞台を作り上げた奴らが勝利を確信するわけだ。 ハルヒのこんな顔を見れば誰だってそう思うさ。なんて事しやがったんだ! ハルヒはしきりに俺に向かって何かを言おうとしているようだった。しかし、言葉にならないのか、 何かの思いが口の動きを阻害しているのか、口を動かそうとしてはまた手で押さえるという動作を繰り返した。 そして、ようやく口にできた言葉は、 「……自分が許せない……」 無理やりのどからひねり出した声。あまりに痛々しいそれは聞くだけでも苦痛を感じるほどだ。 だが、一つ言葉をはき出せたせいか、次々と口から声がこぼれ始める。 「死者117人。負傷者76人。これだけ犠牲を出しておきながらあたしは傷一つ負っていないなんて! あたしは何で無傷なのよ……」 ハルヒが背負ったのはSOS団のメンバーだけじゃない。クラスメイトの生徒どころか、この世界に放り込まれるまで 名前も顔も知らない生徒の命まで背負っていた。俺たちみたいに頭の中をいじくりまわされていたならさておき、 素のままだったハルヒが背負った重圧はどれほどのものだったのか。想像することすら適わない。 「最初はみんなを守れるって思っていた! でも途中から守りたいになって――そのうちできないんじゃないかとか、 何でこんな事やっているんだろうとか、最後には自分がバカみたいになってきて……!」 ハルヒの独白に俺はただ黙って聞いていることしかできなかった。 「これだけの犠牲を出しておいて、元の世界に戻った後にどんな顔をしてみんなに会えばいいのよ! できるわけないじゃない! あれだけ――あれだけ信頼してくれていたのにあたしは……あたしは!」 「ハルヒ」 とっさに錯乱寸前のハルヒを抱きしめた。それはもう強く強くだ。 俺自身も耐えられなかった。こんなに苦しむハルヒを見続けたくなかった。 抱きしめてもハルヒは全く抵抗もしなかった。ただ俺に身を預けてしゃくり上げ続けている。 俺は落ち着かせるようにハルヒの背中をさすりながら、 「もういい。もういいんだ。終わったんだよ。全部終わりだ。こんな悪夢を見続ける必要なんてない。 いい加減、俺も疲れたしお前も疲れただろ? そろそろ目を覚まそうぜ。起きれば、また何もかも元通りさ。 こんなバカみたいな悪夢なんてすぐに忘れるほどに遊べばいい。不思議探索ツアーでも何でもしよう。 俺はまだまだSOS団の一員でいたいんだ」 すっと俺とハルヒの身体が発光し始めた。そうだハルヒ、それでいい。帰ろう。またあの部室に。 「また……また、一緒に……」 「わかっている。もう何も言うな……」 意識が暗転し始める。ようやく終わってくれる。この地獄の3日間が―― ◇◇◇◇ これを仕組んだ者の目的。それは涼宮ハルヒという人間を精神的に追いつめ、この世界に閉じこめること。 それもハルヒ自らがそう望むようにし向けることだったんだ。今まで閉鎖空間を作り出し、 その中であの化け物を暴れさせていた時は、ストレスを外側に向けていた。だから、何かを破壊するという行動になっていた。 だが、今回はじりじりとハルヒは追いつめられていった。世界や他人に絶望する前に、まず自分に絶望するようになった。 最後にハルヒがたどり着いた先は元の世界への帰還拒否。こんなダメで無能な自分のせいでたくさんの人が傷ついたのに、 どうして無傷な自分が帰れるのか。一体どんな顔をして仲間たちに顔を合わせればいいのか。 そんな考えに陥れば、誰だって帰りたくなくなるさ。 その後に奴らが何を考えていたのか知りたくもないし、どっちみちもうわからないだろう。 ………… でもな、甘いんだよ。ハルヒが帰ってこないと困る人間だっているんだ。俺はまだハルヒと一緒にいたい。 あのときに味わったような喪失感は二度とご免だ。どんな手段を持ってもハルヒを連れて帰る。 ――それが俺の意志だ。 ~~エピローグへ~~
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/764.html
「いい天気!!!」今日はどうやってキョンに話しかけようかな そこまではいつもの朝だった 「キョン遅いわよ!!」 「はあ!?お前みたいなキチガイに遅いとか言われたくないな、てか話しかけるな」 何言ってるの?聞き間違いよね?ねえ! 「どうしたの?キョンなんか変よ?」 「変なのはお前だろ自己紹介のときに宇宙人とかぬかしてやがったろ、ていうかもう話しかけないでくれ馬鹿がうつる」 「ちょっと!本当にどうしたのよキョン!!キョン!!!」バチーン 「え?」左頬が痛い 「話しかけるなっていってるだろ!!お前なんかさっさといなくなっちまえ!!」 何も言えなくなった どうして?何か悪いことした? 昼休み 「古泉くんならきっとなにか知ってるかも、たしか9組よね」 あ、いた…でもキョンが隣にいる、しかたがない 「古泉くn「でさ、さっきさ後ろの奴が話かけてきやがってよ」 「どんな人でしたっけ?」 「前に宇宙人とか言ってた奴さ」 「ああ、なるほどそれは災難でしたね」 「しつこかったからおもっきりひっぱたいて怒鳴ってやった」 「あなたらしくないですね、まあしかたないと思いますが」「だろ、はいチェックメイト」 これ以上ここにいたくない み、みくるちゃんなら…きっと… 二年生の教室に向かった 「みくるちゃん!!ちょっと聞いてよ!!」 「え?えっえ??あの~どなたですかぁ~?」 「…あたしがわからないの?」 「ごめんなさぁい」 そのときあたしはみくるちゃんの腕を思いっきり引っ張っていた「いたいですぅ~」 「キョンに会えば思い出すわよ!!」お願い一緒にきて そのとき腕を誰かに掴まれた 「ちょいっと待ちなっ!」 「うちのみくるが怯えてるよっ」 「もしかして女の子好きな子かいっ?でも物事には手順てやつがあるんたよっ」「…違う、違うの!!!」 あたしはそこから走り出していた いつの間にか放課後になっていた 「どうして?もう誰もあたしの味方はいないの…」 「WAWAWA~忘れ物~」 「…谷口!!」コイツだけでも 「ちょ、話しかけるなよ!涼宮菌がうつる!!」 「…もう駄目だ」 足早に家に帰った 「…キョン…キョン…どうしたらいいのかわからないよ?」涙がとまらなかった もう明日学校行きたくない………あ!!有希のこと忘れてた!! …でも有希みんなと一緒なのかな… バチーン 自分の顔を叩いた よし、明日有希に会いに行こう 少し気分が晴れたきがした 次の日は雨になった 「今のあたしの心みたい…弱気になったら駄目!!」 「まずは有希に会いに行かなきゃ!」 今日は誰とも話さなかった ひそひそと陰口を言われているのはわかったけど無視した、するしかなかった 放課後部室に向かった 初めて扉をノックした「キョンみたい」 反応がない 「しかたないわね有希だし」 扉を開けた 「有希あたしのことわかる?」 「…」コク 「本当!?」救われた気がした 「ねえ、いったいどうなってるの?キョン、みんなの記憶がなくなってるの」 「…私がした」え?何て言ってるの? 「…この世界は私が望んだ世界」 「どうして!!」有希につかみかかっていた 「…あなたがいると彼が私を見てくれない、だから世界を改変した」 「なっ!!有希!!!」手を振り下ろした 有希に届く前に弾かれた 「どうなってるの?」 「…やはりあなたは邪魔、ここであなたの存在を消しみんなの記憶から消去する」 「え?消す?あたし殺されるの??」 そう言った瞬間光の刃があたしに向かって飛んできていた 「ごめん、キョンあたしもう駄目だ…好き…だったよ」 キィーン 「え?」あたしの前で光の刃が弾きとんだ 「…!!」有希が驚いた顔をしている 「あたし何もしてないわよ」助かったの!? 振り返るとPCが光輝いていた カタカタカタ 何か書き込んである kyon 大丈夫かハルヒ? キョン!?キョンなの!? kyon ああそうだ、いきなりお前が消えちまったから長門に頼んで探してもらってたんだ 有希!?有希ならあたしを殺そうとしてるわよ YUKI.N それは私であって私でない どうなってるのよ!!あたしはどうしらいいの? YUKI.N 強く望んで本当の世界を、あなたならできるはず 望んだからってどうなるのよ! YUKI.N 時間がない私がバリアを張れるのもあと数分、それまでに わからない!!わからないわよ… kyon ハルヒ キョン kyon 頼むお前しか無理なんだ…あのなんだ早く帰ってきてくれお前がいないと…寂しいんだ …キョン kyon こんなときに言うのもなんだが俺はお前のことが世界で一番好きだ、早く戻ってきてくれ! そう書いた後に文字が消えていった 「キョンあたしやってみるよ」 「…もう終わり」 「有希!!!あたしはもとの世界に戻りたい、本音はあなたの存在を消した世界に戻りたい」 「…」 「でも、あなたはSOS団の一人、いなくなることなんて許さないわよ」 あたしは目を瞑った お願い、お願いもとの世界に…優しいキョンのいる世界に… 「…ぉが?」あたしはベッドの上で寝転がっていた 夢?だったの? 時計は4 28分を示していたその後は寝られなかった 「キョン、戻ってるわよね」朝から憂鬱になりながらいつもの坂を登った 「キョン、遅いわよ…」声がでなかった 「悪かったなこれでも早くきたほうだ」 いつものキョンだった 「キョン!キョン!!」思わず抱きついてしまった 「なっ!?おいみんなが見てるだろ」 「朝から見せてくれるね~キョンは、ね谷口」 「教室でいちゃいちゃするなってえの」 「キョンあたし怖い夢を見たの、でも…もう大丈夫よ」 「そうかい、ほら涙拭けよ」 「もう少しでいいからこうさせて」 「やれやれ」 「…好き」「ん?なんか言ったか?」 「なんでもないわよバカキョン!!」 ありがとうキョン 終わり
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1927.html
最終章 その後、朝比奈さんとハルヒには妹のお守りを頼み俺はその間に校庭の隅に穴を掘り、朝比奈さん(大)と長門の遺体を埋めた、古泉の遺体は見つからなかった。 恐らく閉鎖空間の消滅とともに消滅してしまったのだろう。 それから五日間、俺とハルヒと朝比奈さんは学校にも行かずに家に引きこもっていた。 長門の必殺技のおかげで世界は大混乱していた。北向きに放たれた衝撃波は一瞬にして中国、韓国、北朝鮮、モンゴル、ロシアとその方向にある大体の国を新地に戻してしまっていた。 当然学校も休みである。日本に土地的に被害はなかったのだが経済は混乱中であった。しかし働かずに飯は食えないのでほとんどの店は大体四日後には通常通り営業していた。 六日目、布団の中で蹲っていたら携帯がなった。朝比奈さんであった。 「あのぅー、実は未来から指令が来ていたんです。七日前に。今気づいたんですけど。 実はそれによると 『今、これをみているときにはとても悲しいことがあったはずです。 ですがあなたはそれを乗り越えなければなりません。例え未来の自分の死を見てしまったとしても、親しい友人が亡くなったとしても。 あなたは強い子です。だからかならず乗り越えられます。 本当につらいと思いますが、私からの最後の指令です。 あの日から一週間たったらキョン君を呼び出してこれからあなたがすべきことを全て教えてもらって下さい。 彼は全て知っています。 それがすんだらすぐに未来に帰って下さい。 あなたはこれから一週間前のあの日のために剣術を習ってもらいます。 こんなことを言うのもなんですががんばって下さい。』 って事なんですけど。どういう事なんでしょうか。」 おそらくは七夕や消失騒動のときや一週間後の朝比奈さんが来たときのことだろう。 「わかりました、今から会えますか?ハルヒも一緒に。」 それからハルヒにも電話をかけ。喫茶店「夢」で会うことになった。 「元気そうだな、ハルヒ。朝比奈さんも。」 「どう見たら元気そうに見えるのよ。馬鹿ね。」明らかに元気のなさそうなハルヒ。 会釈する朝比奈さん。 世間話をする余裕などなくすぐに本題に入った。 七夕のとき俺を導いてくれたこと、 ハルヒがいなくなったとき助けてくれたこと、手紙で指示を出してくれたことなど全て包み隠さずに教えてあげた。 ハルヒは完全に非現実的な話や裏話を聞いて少し元気になったようだった。 「わかりました。いままで本当にありがとうございました。私は未来に帰ります。」 そして何ながらハルヒと抱擁を交わす。 そして瞬きした瞬間に、消えた。 自分が死ぬ運命を知っていて、友達の未来のために活動し、友達の未来のために命を捨てる。 なんて強い人だったんだろう。 ハルヒは俺に背を向けわなわなと肩を震わせていた。 泣いているのだと思うと思わず抱きしめたくなった。 が俺のそんな感情すぐにかき消される事となった。 いきなり振り向いたハルヒはこう言った。 「キョン、SOS団は何をする活動だったか覚えてる?」 「確か…『宇宙人や未来人や超能力者を探しがしだて遊ぶ。』だったか?」 「そう、正解。でも本当はその目的は果たされていた。そうよね。」 「そうだな。」 「じゃあSOS団って何の略省だったか覚えてる?」 「『世界を大いに盛り上げる涼宮ハルヒの団』だろ?」 「じゃあ私が有希やみくるちゃんや古泉君や世界中のみんなのために今何をしようと考えているかわかるわね?」 「いーや、わからん。」これは嘘だった。大体のことは予想できる。 「まあいいわ。あんたは私に黙ってついてくればいいのよ。」 そういうとハルヒはいつぞやのように俺の手を引っ張り走り出した。 俺はこの瞬間思った。 サンタクロースなんてもんは信じてなかったが今は信じられるような気がする。 なぜなら宇宙人がいて未来人がいて超能力者がいた。それならサンタが存在してもおかしくない。 もしかしたらハルヒは俺にとってのサンタクロースなのかもしれない。 極端に強引なサンタだが。 これから何をするかって?決まってるだろ? この団長様と世界を大いに盛り上げるのさ。 THE END
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1055.html
第三章 7月7日…とうとうこの日が来てしまった。 俺は何の対策も考えていない。 何かいい考えは無いかと考えている間に午前の授業が終わった。 昼飯は一年の時と同様谷口や国木田と食べている。 卵焼きを突いていた谷口がこんなことを言い出した。 「涼宮って去年の7月7日おかしくなかったか?俺学校の帰り道で東中の前通るんだけどさ、 俺去年の七夕の日学校が終わってゲーセンによってから帰ったんだ。たしか8時ごろ、 東中の前を通ったら涼宮が校庭でずっと立ってたんだ、しかも雨が降ってたのに傘もささずに。あれなんか意味あるのか?あいつのやることはやっぱよくわからん。」 「ふ~ん、そうか」俺は平然を装った。なんとなく動揺しているのを見られるのはまずい気がした。 心の中では適当に済ませばいいなんて考えていた俺をもう一人の俺が殴っていた。俗に言う心の中の天使と悪魔と言うやつである。 そして悪魔のほうが天使にぶっ飛ばされたわけだが、天使が勝ったところでどうにかなるわけでもなく俺は途方に暮れていた。 午後の授業もあっという間に過ぎ、とうとう部活の時間だ、今日だけはあいつと顔を合わせたくないのだが行かないほうがめんどくさいことになる気がするので文芸部室へと足を運んだ。 すると足取りが重かったせいか俺が部室に着く時には全員がそろっていてハルヒが嫌な笑みを浮かべた。 この瞬間俺は背筋が凍りつくような寒気を感じた。 このときの俺はこれから何が起こるかなんて知るよしも無かった。 ハルヒは全員がそろったと言うことでこう言った。 「今日は七夕で不思議も油断しているかもしれないわ!今日はこれから久しぶりに市内探索しましょ!!」 なんだって?最近驚いてばかりってのに驚きだ。市内探索?今から? 実は今までに5回市内探索が行われたのだが、結局一度もハルヒとなることは無かった。 そしてハルヒは例のごとくどこにしまっていたのか爪楊枝を取り出し例のごとく俺たちは爪楊枝を引いた、 そして驚いたなんと俺とハルヒがペアになっていたのである。 その瞬間明らかに長門、古泉両名の顔が明らかにゆがんだ。 ハルヒは言った。「何であんたとペアなのよ。まあいいわ、足手まといにならないようにしなさいよ!」いかにもハルヒらしい発言が聞けて俺は安心した。 「わかってるよ。」そう言い返しておいた。俺はなんかうれしいかった、それが何故かはわからないが。 そして夕方5時過ぎに俺とハルヒは学校を出た、そして行くあてはあるのかと聞いてみたするとハルヒは当然のように「東中。」 俺はそうか何しに行くんだ?とわざと聞いてみた。 するとちょっと怒ったように「あんた昨日の話聞いてたの?あたしは人を探しているのよ!」と答えるハルヒ。 俺は何故か行ったらまずい様な気がした、しかし断る理由も無く、思いつきもしなかったため「冗談だ、なら急ごう」そう言ってハルヒの前を歩いた。 北校から中学まで30分ほどで着いた。着いたはいいがまだ部活やら補修やらで残っている生徒がいるようだこれでは中に入れない。 「どうする?ハルヒ。」と聞いてみる。 「そうね、今入るのはまずいわねどこかで時間を潰しましょう。近くにちょうどいい公園があるわ、そこに行きましょう。」 あの変わり者のメッカか…こいつも好きらしいな断る理由も無い。 「わかった。」と答えた。 公園に着くと二人でベンチに座った。傍から見れば完全にカップルだ。 お似合いに見えるかは置いといてだな。 「だいだい8時ぐらいまでは待ってなきゃだめだろうな。」と俺。 「そうね、後2時間ぐらいね」とハルヒ。 「なんか話しでもするか。」 そして俺たちはしゃべり続けた。 新しいクラスがつまらないこと、朝比奈さんのコスプレ衣装の希望、これからのSOS団の活動内容について、新しい担任がむかつく事 そしてあっという間に2時間が過ぎた。 ハルヒが時計を確認し「そろそろ時間よ、行きましょう」そして後についていく俺。 学校に着くとさすがに真っ暗で携帯のライトで周りを照らした。 そしてこの後俺は信じられない光景を目の当たりにする ハルヒがライトを向け俺の名前を呼ぼうとしたときだ。 「キョ… 涼宮ハルヒがいきなり倒れたのだ、俺は焦った。 こんなに焦ったのはハルヒが消失しちまったとき以来だ。 焦りながらも俺は古泉に電話を掛けた、後から考えればナイスな判断だったと思う。 「古泉!!ハルヒが倒れた!!!!」 「どうしました落ち着いて下さい。」 「北校でハルヒが倒れたんだよ!!」 「わかりました15分…いや10分で向かわせます。」 「わかった。早くしてくれ」 こんな感じだったと思う、あまり覚えていない。 たぶん10分ぐらいで救急車が着たんだろうが俺には3倍ぐらい長く思えた。 そして機関御用達の病院にハルヒは検査入院ということで入院した 第四章
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/3846.html
「いやーすっかり遅くなっちゃったわね」 全くだ。現在時刻、午後9時半。部活にしては遅すぎるぜ。 朝比奈さんなんかさっきからあくびをかみ殺してばかりだ。ふぁあ。あくびうつった。 とりあえず、早く帰って休もうぜ。明日休みとは言え疲れをためるのは良くない。 「わかってるわよ!…キョン、古泉くん!」 何だ。 「何です?」 「女子をそれぞれの家に送りなさい!こんな時間に女の子が一人で歩いたら危険よ!」 あのなハルヒ、こんな時間になったのはお前が… 「わかりました。ここから一番近いのは長門さんの家ですね」 「じゃあみんなで有希の家へゴー!スパイダーマン♪スパイダーマン♪」 近所迷惑になるからスパイダーマンのテーマ(エアロスミス)歌うな。 「ぅう…暗いですね…」 すみません朝比奈さん、俺がついてますから…本当だったら真っ先にあなたを… 「…キョン」 何だよ… --------- 何となく喋りながら歩き、ほどなく長門のマンションに着いた。 まだ更に朝比奈さんの家・ハルヒの家へと行かなけりゃならん事を考えると少々気が滅入るがまぁ仕方ない。 じゃあな長門。また学校でな。 「………」 「どうしたの有希?」 マンションの門で立ち止まったままの長門に、ハルヒが問い掛ける。 確かに様子がおかしいな。どうしたんだ? 「…あそこ」 「…ぁあっ!ひぃい…」 長門の視線が指す先を俺が見る前に朝比奈さんの悲鳴が夜の住宅地に響いた。 おいおい…あれは… 「おやおや…これは」 おやおやって…お前な… 「キョ、キョン!何なのあれ!」 俺に聞くな!俺にはアレにしか見えんが… 「…有機生命体の言語で言うなら」 待て待て。俺は認めたくないんだ。何かの間違いだ。特撮だ。 「あれは幽霊」 ……はぁ… 「ふみゅう。。。」 崩れ落ちる朝比奈さんを古泉と支えながら、長門に尋ねる。 マジで言ってるのか?幽霊なんてホントにいるのかよ。 「いるじゃない実際に!あたしだってそりゃ100%信じてたわけじゃないけど、 幽霊なんていないって言うならアレは何よ!」 確かにハルヒが指差す先には、中学生くらいの女の子が… その…何だ。浮いてるんだ。宙に。 それに俺は長門に聞いてるんだ。なぁ長門、本当に幽霊なんか… 「…あなたは誰?」 …は?何故それを俺に向かって言うんだ?聞くならアッチだろ? 「あなたに聞きたい。答えて。」 …何か意図するところがあるみたいだな。 俺は俺だ。これでいいか長門。 「いい。次の質問」 ……… 「なぜあなたはあなただと言い切れる?」 ……解らん。 「降りてきなさーい!あんたに聞きたいことがあるのよ!」 向こうでハルヒが拳を振り上げ何やらきゃいきゃい騒いでいるがとりあえず無視する。 「…自意識という情報があるから」 「自分、という概念」 「その情報はとても大事」 「それが確立していないとヒトは自他の境界線を失う」 「だから自意識の情報には強固なセキュリティがかかっている」 「普通死後は全ての情報が破棄されるが自意識の情報はそのセキュリティのせいで残る事がある」 「それが幽霊」 要するに、自意識情報が魂みたいなもんで死後に残ってしまうといわゆる幽霊になるってわけか? 「そう」 なるほどな… 情報統合思念体なんてものの存在を知った今じゃ、 幽霊が完全削除するのを忘れてゴミ箱フォルダに残ったデータだ、 とかいう突拍子もない話の方が、もっともらしい心霊番組よりよほど信じられる。 「キョン!あんたさっきから人を無視して!」 …あぁ、すまん。 「あいつ捕まえるわよ!」 幽霊をどうやって捕まえるって言うんだ! 「頑張るのよ!」 「そうですよ。努力は時に天才を打ち負かすものです」 …古泉を本気で殺したいと思ったのは初めてだ。いや初めてか…?まぁいい。 あのなお前ら、 「あっ!消えた!」 なにっ? さっきまでヤツがいた所を見ると…確かに消えていた。 あぁ…俺の頭にわずかに残っていた特撮説も、一緒に消えちまった。 一般人よりもちょっとばかり超常現象に耐性がついてる俺は、 幽霊が消えた事に驚くよりもさっきから最高の笑みを崩さずこっちを見ているハルヒが、 次に言うだろうセリフを予測しうんざりしていた。 「探すわよ!」 ってな。…まぁいいが、 探しに行く前に、朝比奈さんを起こさないとダメだろ。 「そうね。みくるちゃん起きなさい。気絶なんかしてる場合じゃないわよ」 「う…ん…」 俺の腕の中でかわいらしい声を出す朝比奈さん。 自制しなければ…ってうわぁ! 「……」 いきなりがばっと立ち上がった朝比奈さんは、黙ったまま俺達に視線を向けた。 「みくるちゃん…?」 「これは少々厄介ですね…」 どういう事だ古泉。 「朝比奈みくるの自意識情報が一時的ブランク状態である事を利用して入り込んだ」 …えっとつまり… 「朝比奈さんが気絶しているスキに幽霊が憑りついたということです」 「みくるちゃんが憑りつかれた!?凄いわみくるちゃん! 日頃から巫女さん衣装とか着せてるから霊媒体質になってたのかも!」 …何でそんなに嬉しそうなんだ。 しかし、ハルヒがいくらつねったり胸をつついたりしても無反応な事を考えるとどうやらマジらしい… 「あなたたち」 朝比奈さん(霊)が突然口を開いた。 「あなたたち、私が怖くないの…?」 朝比奈さん(霊)は、朝比奈さんの声で俺達に問い掛けてくる。 不思議と恐怖感は全くない。奇妙なものに遭遇するのにも慣れてきたしな。 「全然大丈夫!ところで、あんた名前は?」 「…ちひろ」 「ちひろちゃんね!どうしてあたし達の前に出て来たの? あと、憑りつくってどんな感じ? そうそう、どうやったら幽霊になれるの?」 朝比奈さん(霊)、どうやらちひろというらしいが… ハルヒのヤツ…幽霊に質問攻めとは… 「好ましくない状態」 長門が呟く。 「一つのフォルダに二つ自意識情報が入っている」 「このまま朝比奈みくるの自意識情報がブランク状態から復帰したら」 「…重大な人格障害を起こす危険がありますね」 「…そう」 人格障害…?まずいじゃないか。何とかならないのか…? 「入り込んだ自意識情報を削除すればいい」 「しかし、セキュリティはどうするんです?」 「外部操作によってセキュリティを解除する」 「正確には自ら解除させるよう仕向ける」 わかったぞ。つまり俺達が幽霊ちひろの未練みたいなのを取り払ってやれば、 セキュリティは解除されるって事だな? 「飲み込みが早いですね。驚きましたよ」 「私も驚いている。 こうも容易に理解することは予測していなかった」 ただ幽霊モノの基本を言っただけなんだが…なんかムカつくな… 長門まで… 「おーいあんたたち!」 俺達をそっちのけで朝比奈さん(霊)となにやら話していたハルヒが、彼女の手をひいてくる。 「ちひろちゃん、生きてた時に付き合ってたひとと話したいんだって!」 またベタな展開だが…いいのか、長門。 「…」コク 正直こんな時間に見ず知らずの人を訪ねるのはどうかと思うが、 朝比奈さんの事を考えれば仕方ない…か。 で、場所は分かってるのか? 「大丈夫。あの人の事はいつも感じているから」 幽霊ならではの能力ってわけか。 「形のない情報として存在しているから自他の境界線はない」 ふむ。 「だから他人を自分として認知することもできる」 頭が痛くなってきた…とにかく行こう。 「こっちです…」 俺達は朝比奈さん(霊)…ちひろについて歩く。 どうやら彼女の恋人の家は例の公園の方向にあるらしかった。 5分ほど歩いたところでふと、ちひろが足を止める。 「………」 …ここか。 「ここね!じゃあちゃっちゃと済ませましょう」 待て! 何普通にチャイム鳴らそうとしてるんだ。 「だって出て来てくれないと話せないじゃない」 あのな…今何時だと… 「…あの…」 …! 「何かご用ですか…?」 …この人は…まさか? ちひろの方へ視線を向けると、彼女は泣きだしそうな表情で呟いた。 「道弘くん…」 やっぱりそうか… 俺達の後ろからやって来た、不審な顔で問いかけてきたサラリーマン風の男。 この人がちひろの探していた人物らしい。 「…どこかでお会いしましたっけ…?」 「あの…私…」 「わからないむぐっ!まいむんももっ!」 何やらわめこうとしたハルヒの口を抑え、古泉と長門に目で合図を送る。 俺達は邪魔者だ。空気を読もうじゃないか。 しばらく遠巻きに見る事にしようと、場を離れかけた時だ。 「何だかわからないけど、制服姿でこんな時間にうろついてたら捕まるよ? 早く家に帰りなさい」 事情を知る俺達にはとてつもなく非情に響く言葉を残し、彼は玄関に歩いて行ってしまった。 「…無理もないですね…彼は何も知らないわけですから」 「話くらい聞いてもいいと思わない!?ふざけてるわ! これじゃあせっかくちひろちゃんが…」 ガチャン… ドアの音がこんなに冷たいとは知らなかったぜ。 「顔が違うだけでわかんないの!? 死んじゃったら忘れるなんて酷い男だわ!信じられない!」 『パパ…か…りーっ』 「いいちひろちゃん、あんな奴の事忘れなさい! もっとマシな男がきっと…」 しっ!ちょっと静かにしろ!今… 『ただい…ちひ…』 …ちひろが息を飲むのがわかる。 いや、息を飲んだのは俺だったのかもしれない。 『ちひろねぇ、パパがかえってくるのまってたんだよ』 『ありがとう。でも夜更かしはダメだぞ』 「「あ…」」 ちひろとハルヒの声が重なる。 「みなさん、こっちを見てください」 古泉が芝居がかったポーズで指し示しているのは… 表札。 そこにはこうあった。 木下 道弘 早紀 千日旅 「これは、何と読めばいいんでしょうね」 「…ち…ひろ…私と同じ…字で」 「これは珍しいですね。きっと出生届を出すときも一悶着あったでしょう。 わざわざこんな字を当てるなんてよほど思うところがあったんでしょうね」 …ハルヒは、驚きと悲しみが混ざり合ったようなよく解らん表情で表札を凝視している。 かくん、と朝比奈さんの体が崩れ落ちる。何とか支えられたが、こりゃ… 「…長門さん」 「彼女の自意識情報は削除された」 …成仏したってことか? 「そう」 「じゃああなたは涼宮さんをお願いします」 再び長門をマンションに送った後、俺と古泉はそれぞれ二手に別れて二人を送ることにした。 あの後ハルヒが終始無言だった事を懸念してるらしい。 懸念だけじゃなく対処もしてほしいんだがな。 「………」 どうしたんだ。黙ってるなんてらしくないじゃないか。 「死んじゃった後の事考えてたの」 …ふむ。 「そしたら…怖くなって…」 あぁ。誰もが体験する感覚だ。自分が死んだらどうなるのか考えて、勝手に恐怖を感じる。 死んだらもう何も感じないし、何も感じない事も感じない。 feel nothingどころかdon t feel nothing の状態になるって事を考えると確かに怖い。 でもなハルヒ、今日した体験で死んでも自意識情報…魂は残る事もあるって解ったじゃないか。 お前ほど自意識の強い奴なら、絶対に幽霊になれると思うぜ。 「当たり前じゃない。幽霊になる方法もちひろちゃんに聞いたし、 死んだら絶対に幽霊になってやるって思ったわ」 …じゃあ何が怖いんだ? 俺は今日の体験で逆に死への恐怖感が減ったくらいだ。ほんの少しだが。 「ちひろちゃんは結局、道弘くんと話せなかった」 …そうだな。でも彼はちひろの事を忘れてなかったじゃないか。 「すれ違いなのよ」 …何がだ? 「例えるなら車道ね。すれ違う時、限りなく近づくんだけど 交わることはないの。だって正面衝突しちゃうでしょ?」 お前まで分かりづらい例えをするようになったか。 要はちひろは道弘さんと話したいし、道弘さんはちひろの事を忘れていないけれど---- 「もう一度二人が会うことはできないってこと…」 …そうか……… 「その事だけじゃないわ。 …そもそも道弘くんがちひろちゃんの事を死んでしまった後も覚えてて、 娘に同じ名前をつけたのって愛してたからよね」 そうだろうな。 「あたしが死んだ時、誰かが同じ事してくれるのかなって考えたら… また怖くなって。」 ハルヒ… 「…あたし死んだらあんたのとこに化けて出るわ」 ……… えーっとこの脈絡でそういうこと言われると…どう反応していいか… 「何よ。イヤなの?」 いや、そういうわけじゃないんだが… お前より先に俺が死んだらどうするんだ? 「あたしのとこに化けて出ればいいじゃない!」 そうする為には俺も幽霊になる方法を知らなければならないんだが… …何赤くなってんだ? 「…すごく、好きな人がいればいいんだって…! もうここまででいいわ!ありがとう!気をつけて帰りなさい!じゃね!」 …はぁ。 何と言うか… 死ぬ時は一緒に…なんて考えちまった俺が憎いぜ。 一緒に幽霊になっちまえば、同じ車線にいるわけだからな。 …疲れてんのかな。明日も休みだし、帰って寝よう。 To ハルヒ Sub 幽霊の件 Txt どっちかが先に死ぬって考えるから怖いんじゃねーか? 例えばお前が先に死んでも忘れられないとは思うが… まぁちょっとした思い付きだ。俺は寝る。 Fm ハルヒ Sub Re 幽霊の件 Txt バカな事言ってないで早く寝なさい!明日9時集合だからね! To ハルヒ Sub Re Re 幽霊の件 Txt 明日は何もなしじゃなかったのか!? Fm ハルヒ Sub Re Re Re 幽霊の件 Txt 今決めたの! fin.
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/559.html
「ねぇ、キョン!アレ買ってよ!」 俺の隣に歩いてるハルヒは何かを見つけ、俺に見せた。 「はいはい…って、金、高っ!?」 ハルヒが見つけた物は、俺の金が無くなるぐらい高額であった。 「別に、値段はいいじゃないの…」 「そんな金はありません!返して来なさい!」 「ケチ!」 さて、皆さん、突然、唐突過ぎて分からない人いるだろうか。 今、俺はハルヒとデートしてるのである。不思議探しでもない、SOS団活動でもない… 正直証明のデートである。 「やれやれ…」 どうしてこうなったかと言うと、今から2日前に遡る。 某月某日の夏の放課後。 「キョン!話あるから残ってて!」 俺は帰ろうと思ってた時に、ハルヒから止められた。 何で俺が残るのだ、俺はお前に何をしたんだ。 「別に、あんたは何もやってないわ」 ハルヒは、椅子座りながら言った。 まだハルヒは何かを企んでるな。どうぜ、俺にコスプレを着させて宣伝するつもりだろう。 いやいや、それは無いな…コスプレするなら朝比奈さんしかいない。 だとすれば、俺に危険な事をやらかすんじゃないのかね? 「用が無ければ、帰るぞ?」 「待って、今から言うわ」 やはり、ロクな事言うに違いない…。 帰りたい、早く帰りたい。だけど、このまま帰るとハルヒに死刑されるわ、 ハルヒがまだ「メランコリー」になったら、古泉に叱られるに決まってる。 逃げる道は無いのか…と俺は、少し溜息した。 「どしたの、キョン?まぁ、いいわ…明後日、暇?」 明後日?明後日だと…うん、休日だな。別に予定が無い訳で、暇になるな。 しかし、何故…明後日なのだ?不思議探検をするのだろうか。 取りあえず、聞いてみた。 「あぁ、暇だが…明後日は、何があるんだ?」 と問うと、ハルヒは何やら、そわそわしてる様子だった。 何だ、ハルヒの様子がおかしいぞ…。 「あ、あのさ…えーと、その…デ、デ…」 …デ? やっぱり、おかしいぞ…今のハルヒは、いつものハルヒではなく…。 顔を真っ赤にして俯いてるハルヒである。 「デがどうした?ハッキリ言わないと分からんぞ」 「そ、そんなの分かってるわよ!だから…デ、デートよ!」 はい?今、何で言いましたか?ハルヒさん。 「だーかーらー、デートしよ!と言ってるんだってば!」 デ、デートだって!? デートとは、 1 日付。 2 男女が日時を定めて会うこと。「恋人と―する」 なるほど、これがデートって訳か…って、何で辞書を出すんだよ。 落ち着け、俺!これは、ハルヒの罠だ!そうさ、ハルヒの罠に決まってる。 「冗談だろ?」 と俺が言うと、ハルヒはこう言った。 「ホントよ!冗談だったら、そこまでは言わないわ!」 マジですか…。嘘だと言ってよ、ハルヒ! 「…と言う事で、明後日9時に公園で集合ね!遅れたら、奢りよ!いいわね!」 …と言う訳で、今に至る訳だ。 勿論、遅刻してしまい。奢る破目になった…。 「仕方ないでしょ!遅刻したあんたが悪い!」 おぃおぃ、「9時に集合」って言ったのは、どこのどいつだ。 頼むから、集合時間を正午してくれよ…。 今、ハルヒと一緒に色々と歩き回り楽しんでる所である。 ―ぐうぅ~… いかん、腹減った。 時計を見ると、もう正午に回っていた。 「キョン、腹空いたの?」 「あぁ、腹減った」 実は、朝食抜きで出かけたからだ。このままだとぶっ倒れそうだな。 「仕方ないわね、あ、あそこ食べようよ」 と、ハルヒは指差した。 俺はハルヒが指差した方へ見ると、シンプルな風景であるカフェだった。 「あ、ここ知ってる」 「ん?何か知ってるって?」 「今、女性の間で凄く人気あるカフェなの!」 「ほぅ…」 男としての俺は、そんなに人気なのか全く分からなかった。 取りあえず、食べ物とコーヒー頼んだ。 「そういえば、有希はどうしてるのかな?」 長門の事か…あいつなら、無感情で本を読んで過ごしてると思うぞ。 「そうなの?だったらいいけどさー」 そんな会話してる内に、頼まれた物がやって来た。 朝食食ってない俺にとっては、助かる。 「う~ん、うまいね!ここ」 「あぁ、ホントに上手いな」 なるほど、ベジタブル料理だから女性には人気なんだな。 ハルヒもそうだろうか。 ハルヒと楽しく食事を取ってた時に、誰かがやって来た。 「あれ?ハルにゃんとキョン君じゃないかぁ!」 「つ、鶴屋さん!」 おや、鶴屋さんじゃないですか、どうしたんです。 「いやぁ、今、友達と遊んでるにょろ!」 よく見ると、奥のテーブルに鶴屋さんの友達がいた。 「所で、ハルにゃんとキョン君はどうしてここにいるのかな!」 「そ、それは…その…そぅ!不思議探しよ!不思議探し!ね、キョン」 ん、何で俺に言うんだよ。 「そうなのかぃ?」 「えぇ、そうですよ」 「そうそう、あは、あははははは…」 と、笑い誤魔化すハルヒ。 そんな事したら、疑われてしまうだろうか、ハルヒよ。 「ふーん、そうしとくよっ!さ、デート頑張れよっ!」 鶴屋さんは元気良く、その場から去った。 「…あ、あれ?な、何で、デートって分かったのかな?」 …ハルヒ、自分で言った事をもう一度思い出してやろうか。 この後、俺の奢りで支払いをしたのである。 「そういや、この後、どこへ行くんだ?」 「ん、デパートへ行こ!あたし、ちょっと欲しい物あるから」 と言って、店から出て、デパートへ向かったのである。 デパートか…俺の金、まだあるんだろうな。 俺の愛しいサイフを覗いて見たか、あるか無いか微妙だった。 そんな事をしてる内に、目的のデパートに到着した。 ハルヒは欲しい物ってあったのだろうか。 まさか、UFOを呼び出す道具とかそんなんじゃないだろうな。 だが、俺の予想は外れた。 「キョン、見て!見て!」 ハルヒが俺に見せたのは…。 「服?」 よく見れば、ピンク色のワンピースである。 「これ、欲しかったんだよね!似合う?」 ハルヒよ、それ反則…マジ似合うよ。 「あぁ、物凄く似合うぜ」 「ありがと!値段は…」 俺も値段を見た。 うむ、安いな。 「じゃ、あたし買って来るね」 「待て、ハルヒ」 俺はハルヒを呼び止めた。 「え、何?」 ハルヒは驚いてた。 何故なら、ハルヒが持ってる服を奪って、レジの所へ行ったからである。 「ちょっと、キョン!あたしが買うからいいよ!」 「いいじゃないか、たまには俺からのプレゼントだと思ってくれよ」 俺は買った服を受け取り、ハルヒに渡した。 「え…でも、あんたの金は…」 そこまで心配するなよ、俺の奢りなんだからな。 「気にするな、さっき言ったとおりだが…俺からのプレゼントだと思って受け取ればいい」 「…うん」 うむ、照れてるハルヒは可愛いな。 それにしても、ハルヒが欲しかったのは、服だったのか…。 …早くワンピース姿見たいね。 そして、色々、楽しい事をした。 俺は、ハルヒと一緒に居るとなかなかいいかもなと思った。 いよいよ、デートの時間が終わりに近づいた。 「あー、楽しかったね!」 「そうだな」 俺達は、今、公園で休憩してる。 夕日が暮れ、公園の電灯が点いた。 俺はふと、ハルヒの横顔を見た。とても可愛くて美しい女に見えた。 「ん、何?」 ハルヒは、俺がハルヒを見てる事に気付いてた。 「あ、いや…」 ハルヒが可愛すぎて、こっちが恥ずかしくなった。 ヤベェ…理性が爆発しそうだ。 「怪しいわね、下心あるんじゃないの?」 ハルヒは、笑ってた。 俺は、必死に笑い誤魔化そうとした。 「ねぇ、キョン」 「何だ?」 「そろそろ、素直になったら?」 「え?」 一瞬、時が止まったように感じた。 「あたしも素直になるから…本当の事を言ってくれる?…あたしの事好き?」 「ハルヒ…」 よく見れば、ハルヒの肩が少し震えてる。 俺は、ハルヒを優しく抱き締めた。 今、思った。素直になろうとな。 「ハルヒ、俺は初めてお前にあった時は、綺麗だったし、軽く惚れたよ… SOS団、設立して本当に良かったと思ってる。お前がいると、俺は幸せなんだよ。 幸せだからこそ、俺は今ここにいるじゃないか!ハルヒ、お前の事が好きだよ。 例え、どんな事あろうと守るよ。」 言えた。俺の告白…ちゃんと言えた…。 俺は、ハルヒを見ると驚いた。 ハルヒは、 泣いてた。 「ハ、ハルヒ!」 「ゴメン、違うの!あたし、嬉しいよ…こんな事思ってるなんで、あたしも幸せだよ!」 ハルヒは、俺を強く抱き締めた。 「あたしも、あんたの事が好きよ!」 俺は、感動してしまい、少し泣いた。 ハルヒも物凄く泣いた。 俺は、このままでいい…このまましばらく抱き締めたいと思った。 「ねぇ、キョン…キスしてくれる?」 「あぁ…するよ」 俺の唇とハルヒの唇を重なり、キスした。 長いキスだった。 「お疲れ様、キョン!そして、これからも一緒に行こうね」 「あぁ、そうだな」 帰りは、手を繋いで歩いた。 ハルヒとしゃべりながら帰ると楽しいものだな。 完 おまけ 「ねぇねぇ、キョン!これ、どう?」 ハルヒは、ポニーテルにワンピース服の姿で現れた。 「似合うじゃないか、ちょっとカメラ撮っていいかな?」 と、言うと 「ダメv」 ハルヒは、朝比奈さんのお得意技でもある、一本の指を唇に当てて、ウィングした。 グラッと来たね。