約 774,146 件
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/4668.html
その日、俺は誤ちを犯した。 「みくる。夏のせいだ。そうだ。夏が全て悪い」 偶然着替えを見てしまった俺は、みくるを産まれたままの姿にしていた。 「はうはう、こんな事をしたらハルヒさんが」 唇を優しくふさぐ。指先タッチ感覚。 そして、俺は燃えた。燃え上がった。世界は溶解し、俺の前に征服され、一人の女を支配した俺に不可能はなく、万能感が、俺に自身を神と告げていた。 ガチャ。部室の扉が開いた。 「ちょっと何してるのよ、キョン!」 驚愕というのを絵に描いたような表情でハルヒが俺を見ていた。 そして、その目に涙が盛り上がってくる。 「待ってくれ。違うんだ、ハルヒ」 俺は手を上げてそう言っていた。 「何が違うのよ、キョン。もういや、皆いやーーーーーーー」 そして、ハルヒの記憶から俺達は消えた。 入学式まで時間は戻り、俺の後ろには普通の女。 更に、古泉が調べてところではハルヒは坂の下の進学校に行ったのだという。 俺は、愕然として入学式を迎えていた。 あの時をまたやり直せたら、夏の妖精の誘惑すら振り切ったのに。 翌日、目を覚ました俺は、重い気持ちで、着替え、朝食を終え、そして、ダッシュしていた。 遅刻だ。このままでは完全に遅刻だ。 そして、学校に向かう、最後の角を曲がった瞬間。 背後から女生徒に激突していた。 かばんが開きモノが散乱する。 その女生徒が顔を上げる。黄色いカチューシャをした凄い美人がそこにはいた。 「ちょっとあなた。前に会った事がある」 もし、ハルヒに再び出会えるのなら。 そんな偶然を神が起こしてくれたのなら。 もう間違わない。 もう道を間違えはしない! 「ああ、会ったさ。三年前に、俺はジョン・スミスだ」 俺はハルヒを抱きしめてそう言っていた。 まわりの遅刻気味の生徒の視線も気にしなった。 もし、再び、やりなおせるのなら。 「今度は浮気したらダメだからね」 ハルヒが怒った目をしてそう俺を睨んだ。 判っていたのかハルヒ。お前もやり直したかったのだな。 あの日、あの時をやり直せるのなら! 通学路の脇にあるラブ・ホテルが俺達を誘っていた。 もう俺達の愛を阻むものは何もなかった。 そう、夏の妖精ですらも。 二人のラブストーリーはまだ始まったばかりだ・・・・・・。 涼宮ハルヒの再 会 完 灼熱の夏再び、みくる・マイ・ラブ~二度めの誤ち~につづく
https://w.atwiki.jp/haruhioyaji/pages/234.html
ハルヒと親父2その後 一周年 その1から ハル母 さて、明日も平日だし、そろそろ今日はお開きにしましょう。 親父 キョン、客間に客用布団と着替え一式、用意しといた。先に風呂を使ってくれ。あー、それからバカ娘。 ハルヒ 何よ? 親父 「湯加減見ようか」とか「背中流そうか」とか、ラブコメな振る舞いは慎むように。親父はもう体力の限界だ。 ハルヒ どんなラブコメよ! 親父 詳しいことは言えないが、男性用だ。少年誌とはいえ、侮れんぞ。 ハルヒ いい加減にしないと、殴るわよ。 親父 もう、いい奴を2、3発もらっちまっているが。それじゃ解散。 キョン 親父さん、風呂あがりました。先にすみません。 親父 今、風呂はバカ娘か? キョン はい。 親父 じゃあ、ちょっと座っていけ。 キョン はい……。 親父 といっても、話すネタは特にないんだけどな。 キョン はあ。 親父 二人に「共通の話題」……ああ、ハルヒのことだぞ……を取り上げると、ほとんど刺し違いみたいになるしな。 キョン ……。 親父 少なくとも俺は傷つく。良く言われても、悪く言われてもな。 キョン ……。 親父 答えなくていいぞ。というか、答えんでくれ。じゃあ、なんで尋ねるんだろうな……あんなの奴の、どこがいいんだ? キョン ……。 親父 あの見掛けにあの言動だ。ヘタすりゃ、後ろから刺されるぞ。そこんとこ、本人はわざと「無頓着」だしな。 キョン あの……。 親父 お、手があがったな。発言を認めるぞ。 キョン 本人が、後ろに。 ハルヒ オ・ヤ・ジ。話があるわ、たっぷりと。話すことはないけどね。 親父 風呂、速いな。カラスの行水か。若い娘としては感心せんぞ。 ハルヒ うるさい! こういう事態を想定してちゃっちゃと上がってきたのよ! 親父 どういう事態を想定したんだか。まあ、いい。お前も座っていけ。 ハルヒ なんなのよ、もう! 親父 宛先だけ変えて同じ質問をするが、お前はこいつのどこがいいんだ? ハルヒ 他人様を「こいつ」呼ばわりしない! 親父 キョンのどこがいいんだ?と聞いている。 ハルヒ !そ、それ、は、あの、あー、なんで決めつけんのよ! 親父 自然な推論だ。嫌いな相手と一日の大半を過ごすのか、何より我慢が嫌いなお前が? キョン ……あの、いいですか? 親父 おう、キョン。 キョン 答えるな、と言われたんで、どこが良いとか好きとかは言いませんが……こいつは確かに無茶はするし、考え方が不穏当なときは多いし、一言で言ってめちゃくちゃなやつですが、人から刺されるような人間じゃないです。誰かのものを取り上げたり、誰かを押しのけて得をしようとしたり、そのために自分や周囲の人間を利用してやろうってカケラも考えないやつです。我慢したり諦めたりしている人間にうらやましく思われることはあっても、恨まれるとは考えられない。それに……こいつは俺の手を引いて、いつもどんどん行っちまおうとするんで、こいつの後ろには俺がいます。だから後ろから刺されるなんてあり得ない。あ、教室の席は前後逆ですが。 親父 ……ハルヒ、こんなの、どこで見つけてきたんだ? ハルヒ ……だから、前の席って言ってんでしょ! っだあ、キョン、あんたも何言ってんのよ!! 親父 下がってろ、バカ娘。自分の部屋で枕でも叩いて真っ赤になってろ。おい、キョン、この馬鹿に、愛想が尽きたり我慢できなくなったら、言ってくれ。後腐れ無く分かれさせるし、次の女は紹介してやる。 ハルヒ バカ親父! それが娘の彼氏に言うことか!! 親父 今はツンデレに貸す耳はない。お前は怒った振りしてごまかそうとしたことを、この男は、斜め上のコトバで答えたぞ。親父は風呂に入って、敗北感を抱えて寝る。 ハルヒ もう、帰ってくんな、バカ親父! 親父 悪いが、ここは俺の家だ。嫌なら、さっさと部屋でも借りて出ていくんだな。 ハルヒ ……あ、あんたも、もっとモノには言いようってもんがあるでしょ!! キョン ああ、すまん。 ハルヒ ったく。それにね、周りの人利用したり、誰かのもの取り上げたり、したことぐらいあるわよ。あんたもいたでしょ、その場に。 キョン 都合良く忘れてた。 ハルヒ あたしが手を引いて、あんたが後ろにいて、ってのは事実だけど。 キョン それは比喩だ。横に並んで歩いたりもするぞ。 ハルヒ そうよ、デタラメよ。口からでまかせ。でも、親父を負かして、胸がすっとしたわ。……ほ、褒めたげる。 キョン そりゃ、どうも。 ハルヒ あ、あたしが掛け値なしで褒めるなんて、めったにないんだからね! キョン そうだな。 ハルヒ なんで、そこで笑うのよ。 キョン わらってない。 ハルヒ じゃあ、にやけてる。 キョン かもな。 ハルヒ 親父じゃないけど、今日のあんた、なんかむかつく。余裕あり過ぎよ! キョン 馬鹿いえ。突然、泊まらされて、親父さんに膝つめされて、「娘をどう思う?」だぞ。一杯一杯だ。 ハルヒ あんたは追いつめられないと、本気出さないからよ。 キョン 本気なんて、それで十分だ。 ハル母 お父さん、これからお風呂ですか? 親父 母さん。キョンのやつに、あっさり、ひねられちまった。完敗だ。 ハル母 そりゃ、ハルの彼氏ですから。 親父 今だったら「ハルヒを嫁に下さい」と言われたら、OKしちまいそうだ。 ハル母 それもいいですね。 親父 そこまで吹っ切れんがな。 ハル母 二人も、もう少しは待ってくれますよ。 親父 もう少し、だけか? ハル母 それはなんとも。 親父 なんか、あいつには「こんな奴のどこがいいんだ?」といつまで経っても聞いてるような気がする。 ハル母 その度、キョン君がどう答えるか、楽しみですね。 親父 風呂に入ってくる。 ハル母 はいはい。 キョン どこまで着いてくるんだ? ハルヒ あんた、客間で寝るんでしょ? キョン そっちに布団があるんだよ。 ハルヒ 俺の意思じゃない、みたいな言い方ね。 キョン 気に入らないのか? ハルヒ 気に入らないわね。 キョン ここはお前のうちだろ? ハルヒ そうよ。親父がなんか叫んでたけど。 キョン 親父さんも、お母さんもいるんだぞ。 ハルヒ そりゃそうよ。あたしのうちだもの。 キョン なんで、俺の服の袖、つかんでるんだ? ハルヒ 離したくないからよ。 その3へつづく
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1496.html
ハルヒは悩んでいた。 午後の授業が始まってからずっとなのだが、昼前は機嫌が良かったので、 恐らく昼休み中に何かあったんだろうなあ。 最近はいつも昼休みになると首根っこ掴まれて学食で奢らされるのだが、 今日は昼休みになるなり何も言わず、教室を飛び出して行った。 俺も財布の中身を確認しながら安堵したのだけど。 それが授業が始まる直前に教室に戻ってきてかと思うと、 不機嫌そうな面持ちで頬杖をついた。 俺が、どこいってたんだ?と声を掛けると、 「あんたには関係ないでしょ」 と言った。 確かに関係ない。だがお前が不機嫌になるときは俺にとって都合があまり良くないってことを ほんの微塵でもいいからわかっていただけるとうれしいんだけどな。 俺もそれ以上ハルヒに追及をしなかった。ハルヒも話すつもりはなかったんだろうし。 それで、今に至るわけだが、ハルヒがダウナーな気分になっていることなんて、 珍しいことではない。 ただ今日はいつもの不機嫌とは違うということに俺はなんとなく気づいていた。 ……しかし、まあ何で俺がハルヒのご機嫌なんかを伺わんといけないんだ? この代償は高くつくぞ、ハルヒ。 5時限目が終了して、ハルヒはすぐに教室から出て行った。 俺はトイレに向かって歩いていた。すると廊下の反対側に、俺を見つけて微笑する古泉が手を振っている。 「こんにちは。今日もいい天気ですねー」 なんだそのすっとぼけた態度は。 「え?なんのことです?」 「ハルヒの事なんだがな」 「涼宮さんがどうかしましたか?」 こいつの組織がまた変な事をけしかけたというわけではないのか。 俺が疑うような素振りを見せると、古泉は肩を竦めた。 「残念ながら私は何も知りませんよ?」 まあ、嘘をついているようにも見えないし、本当に何も知らないんだろうな。 「まあいい。例の閉鎖空間は最近どうなってる?」 古泉は、驚いたように目を少し見開いたと思うとニヤケ顔を近づけてきた。 「あなたも心配してくれているんですね。どうですか?例のバイトの件考えてくださってもいいんですよ?」 心配してるのは自分の身だ。そんなもんやらん。顔を近づけるな。 「まあ今となっては、ほとんどあなたが無償でバイトをしてくれているようなものですしね」 古泉は指先で前髪をピンと跳ねると続けた。 「あの時以来、閉鎖空間は安定したままです。あなたのおかげですよ」 「今もか?」 「ええ。特に変化はありません」 それに、と古泉は続ける。 「涼宮さんなら昼休みに会いましたが、あなたが心配しているような様子ではありませんでしたよ? いつもどおりの涼宮さんでした」 いつもどおりのハルヒとは何だ? 感情の起伏の激しさじゃ右に出る奴はいないからな。 全くもっていつもどおりの想像がつかん。 「いえ、普通にあいさつをしただけですが、別段不機嫌だとか逆に機嫌が良いとか そういうのはなく本当に普通の涼宮さんです」 「そうか」 古泉が言っていることが本当だとしたら俺のただの思い違いか。 そうであればいいんだがな。 それに……俺はハルヒに振り回されすぎだな。 別に何が起こってもいいじゃないか。 SOS団には長門もいる。ちょっと頼りないが朝比奈さんも。 そして、今目の前にいるこの男も一応な。 俺は今まで何を学んできたんだ。ハルヒのことにしてもだ。 もうちょっと俺が信用してやらなきゃならんのではないか。 「古泉」 「はい?」 「今話したことは忘れてくれ。ハルヒ云々言ったことをな」 古泉は素直にそれを聞き入れた。 「わかりました。悩みごとがあるなら僕でよろしければいつでもお聞きしますよ」 「結構だ」 教室に戻ると、ハルヒはすでに席についていた。 さきほどと変わらない表情で外を見つめている。 俺も今は何も聞かないでおこう。そう思い席についたのだが、 ハルヒはそんな俺の考えを見透かしたかのように言った。 「何よ、その顔。言いたいことがあるなら言いなさいよ」 「言いたいことはさっき言ったぞ」 「あんたには関係ないって言ったじゃない」 「だからこれ以上聞こうなんて思ってない」 ハルヒは一層不機嫌そうな表情を作ると、再び外に目を移した。。 そして、ため息だろうか、小さく「はぁ」と声を漏らした。 なんなんだろうなあこいつは。 6限が終了し、部室に行こうとしたその時、ハルヒが声をあげた。 「キョン、ちょっと私寄るところがあるから先に行ってて」 そう言うとハルヒは教室を後にした。 俺はその言葉に従い、先に部室へと向かった。 部室のドアをノックすると、毎度ながら愛らしい声で、 「はぁぃ」と声が聞こえる。朝比奈さんだ。 ドアを開け、中に入るとすでにハルヒ以外の全員が揃っていた。 俺は軽く挨拶を交わすと、いつもの指定席に腰かけ、 メイド姿の朝比奈さんがお茶を入れるのをボーっと見ながら、 あんな服やこんな服を着てくれないかなあと健全な高校生なら誰でもしてしまうような妄想を 頭の中に描いていた。きっとだらしない顔をしていただろう。 それを見た古泉がクスッと笑うと俺の目の前にオセロを差し出した。 トレイにお茶を乗っけて不器用に歩く朝比奈さんが、長門、古泉、俺の順にお茶を渡してくれた。 朝比奈さんはお茶を渡すと、思い出したかのように俺に言った。 「そういえば、今日涼宮さんが珍しく5限と6限の間に私のところにきたんです」 ハルヒは授業の合間に校舎中渡り歩いているんじゃないんですか。 朝比奈さんは、ゆっくりと首を振った。 「確かに、涼宮さんが廊下を歩いているのは私も何度か見たんですけど、 その、私のところに直接来たのは、初めてここに連れてこられた時以来で」 それで、ハルヒは朝比奈さんのところに何しにきたんです? まさか授業中にバニーになれとかとんでもないこと言ったんじゃないですか。 「ううん。突然、涼宮さんが来たのでちょっと怖かったんですけど、 その、『みくるちゃん、あなた明日家に来なさい』って」 ハルヒが自分の家に朝比奈さんを? ますますわけがわからないなあいつは。 「私悪いことしたのかなと思っちゃって」 いやいや、朝比奈さんが悪いことしたって言うならハルヒは犯罪者ですよ犯罪者。 それも、国際指名手配されてもおかしくないぐらいの大物犯だ 「涼宮さん、どうしちゃったんだろう……」 朝比奈さんが不思議そうな顔をして俺の目を見てくるので、 その愛らしさに思わず手を握りたくなったが、消え入るような声で目を覚ました。 「私も」 窓際の椅子に腰掛けていた長門がこちらを見て口を開いていた。 「涼宮ハルヒに呼ばれた」 「家にか?」 「そう」 また何でだろうな。ふと古泉を見たが不思議そうに首を横に振るだけだ。 呼ばれたのは、長門と朝比奈さんだけか。以前、バレンタインの時には長門の家に行って 3人でチョコケーキを作ったという話はあったが、その時は2人に硬く口止めをしていたし、 それに今は記念日とかそういうものもないからな。男2人を外す理由も特に考えられない。 普通の女の子だったら、恋の悩みを相談したり、男子の悪口を言って盛り上がったりとかするんだろうが、 ハルヒに限ってまさかそんな会話を繰り広げることは断じてないだろう。 「そういえば」 古泉が時計を見て言った。 「涼宮さんがまだいらしてないですね」 「ああ、ハルヒなら寄るところがあるから先に行ってろって言ってたな。そろそろ来るんじゃないか?」 俺が話し終えるとほぼ同時にドアが勢いよく開いた。 「遅れてごっめーん!」 なんだこのテンションの高さは。 そんな俺の顔を見てハルヒは眉をひそめた。 「何よキョン。何か文句ある?」 今更文句なんかねえよ。ここに来てから随分俺も大人になったからなあ。 「何それ。まあいいわ。みんな注目!明後日の日曜日、野球観戦にいくわよ!」 一同は唖然とした。 「みんな忘れたの?今年も町内野球大会に出場するのよ!そのためにプロの試合を見て技を盗むのよ!」 一回プロの試合を見に行ったぐらいでその技を盗めたら、そこら中プロ野球選手だらけだぞ。 「気持ちの問題よ。自分もやればできるんだって思い込むことが大事なのよ」 ハルヒは得意げに演説を始めた。 「自分もプロ野球選手みたいに上手くなりたいって思うことで体も動くようになるの!」 お前がそんな精神論的なことを言い出すとはな。 それに野球はもう飽きたんじゃなかったのか? 「当たり前でしょ?まずは気持ちからよ。何か不思議なことを見つけようと思わなければ いつまでたったって見つからないでしょうが!」 ちょっと待て、話がずれてきてないか。 「とにかく、行くわよ!ちゃんと予定空けときなさい。来なかったら死刑だから!」 一年前から常に死刑と隣合わせに生きてるんだなあ俺らは。いや、俺だけか。 しかし、ハルヒの突然の欝はどこに飛んでいったんだか。 心配した俺が損したみたいじゃないか。ええい、こんな生活から早く脱却したいものだ。 どうやら野球のチケットを親父にもらったらしく、それで去年の野球大会のことも思い出したらしい。 ハルヒの親父さんも余計なことをしてくれるぜ。また俺が4番なんかにされてみろ。 あっという間に世界の危機が到来しちまうぞ。 その後、特にやることなく、だらだらと部活での一時を過ごし、 時計が五時半を指した頃に、ハルヒが椅子から立ち上がった。 「さて、帰るわ。キョン行くわよ」 ハルヒ、俺はお前の下僕じゃないぞ。 まさかそんなセリフをここで吐けるはずもなく、俺は言われるがまま席をたった。 残った三人も帰り支度を始めていたが、ずんずんと先を歩き始めるハルヒを追って俺は部室を後にした。 校門を出て、坂を下っている途中、ハルヒは一言も口を利かなかった。 二人だけになった途端にこれか、俺はハルヒの肩を掴んだ。 「なに?」 「すまないが、もうちょっとゆっくり歩いてもらっていいか? 足首が痛むんだ」 実は今日の体育の途中、俺はサッカーをしていて見事にこけた。 元々サッカー自体そこまで上手くもないが、だからといってボールを踏んでこける程間抜けでもない。 しかし、何がどうなったか、俺はボールの上に乗るような形で反転し、 足首を捻ったのだった。 それをクラスの女子にも見られていたわけで、ハルヒに至ってはこけた俺を指差して大笑いしていた。 「キョンー!あんた本当にドジねー!」 ほっといてくれ。心からそう思った。 結局途中退場し、保健室に向かった。 足首を捻ったといっても歩けないという程のことでもなく、 もし後日に足が痛むようなら病院に行けと言われたぐらいだ。 ハルヒに合わせて坂を下ると若干の痛みが走ったのだ。 「ほんとドジよね。まああの時は笑っちゃったけど……痛い?肩貸してもいいわよ」 珍しく優しいこと言ってくれるじゃないか。 「ま、団員が怪我したらそれを見るのも団長の務めだからね」 このハルヒの照れ隠しにはもう慣れたが、たまには 「キョンのことが……心配だから!」 とか聞いてみたい気もするね。 「何馬鹿なこと言ってんのよ。置いてくわよ!」 つっけんどんにハルヒはそっぽを向いた。 ここ最近は、ハルヒを自転車の後ろにのっけて家の近くまで送ってやるんだが、 いや、送らされてるというほうが正しいか? なんせそこらのカップルのような甘い時間はなく、騎手が鞭を力の限りに叩かんばかりに ハルヒは俺にスピードを要求するので、まるで俺は競走馬さながらなのだ。 しかし、今日はどうにもそれもできそうにない。 「別にいいわよ。そんなんで悪化されたってSOS団の活動を妨げることになるしね。 いいわ、今日は私が家まで送ってあげるから」 正直、驚いた。 ハルヒの口からまさかそんな言葉が出るとは。 俺がどんな顔をしていたか、ぜひ鏡で見てみたいが、ハルヒは俺の顔を見て 「あのねー。あんたのためじゃないんだから。あくまでもSOS団のために……」 「わかってるよ、ハルヒ」 途中で俺が言葉を遮った。 「わ、わかってるならいいのよ!ほら行くわよ」 ハルヒは先程の半分程のスピードで歩き始め、たまに俺がついてきてるか横目で確認しながら坂を下っていった。 俺の家についた時には、完全に日も暮れていた。 結局、いつもとは逆にハルヒが自転車をこぎ、俺はその後ろに乗って帰ってきたのだが、 ハルヒの運転は逆に俺の命を縮めんばかりのもので二度と乗るまいと誓った。 家の前まで来て、ハルヒが意外そうな声を挙げた。 「へー。結構いい家に住んでるのね。意外だわ」 お前は一体俺がどんな家に住んでると思ってたんだ。 「あ、ハルにゃん!」 また余計なタイミングで出てきやがった! 「おー、妹さん。元気?」 「うんー元気だよ! ハルにゃんどうしたの? 遊びにきたの?」 俺は妹が抱えてきたしゃみせんを抱き上げた。 「足を怪我したからな、ハルヒが送ってくれたんだ」 「えーキョン君ずるーい。あたしもハルにゃんと遊びたい!」 妹よ。お前は兄の言葉をちゃんと聞いていたか?遊んでいたんじゃなくて送ってもらっただけだ! 「ハルにゃん寄っていかないの?」 おい、待て勝手に話を進めるな。 「そうね。キョンの部屋でも見せてもらおうかしら。どうせやらしい本とか一杯あるんでしょうけど」 ハルヒは不気味な笑みを浮かべると目を細めた。 「キョン君、エッチな本持ってないんだよー。あたしいつも部屋に入るけど見つからないの」 「甘いわ。キョンのことだからきっとせこい場所に隠しているのよ」 ハルヒは俺にも見せないような満面の笑みを浮かべると、妹に言った。 「ハルにゃんこっちだよー!」 そう言うと妹はハルヒの手を引き、家の中に消えていった。 俺は呆然として、固まっていたが、まずい!部屋の中を荒らされてみろ! 末代までハルヒに脅しをかけられるぞ。 次第に痛みが増す足を引きずりながら俺は玄関に挙がった。 それからハルヒが帰るまでの1時間程の時間が、俺にはどれだけ長く感じたことだろう。 勝手に部屋に上がりこみ、引き出しからタンスまで開けて物色しようとするハルヒを押さえながら 面白がってハルヒを加勢しようとする妹を諌め、俺の疲労度は極限まで来ていた。 ハルヒは俺の部屋からやましい本が出てこないことに対して真剣に悩みだしていた。 「キョン。あんたまさか……そっちの気があるんじゃないでしょうね」 こいつの目は本気だ。 「断じてない」 俺は妹が持ってきたお茶とお菓子をハルヒに差し出した。 「あんたぐらいの年頃の男ならそんな本の一冊や二冊持ってるもんでしょ? 出しなさいよ」 「嫌だ」 「じゃあやっぱり……」 やれやれ。どうすれば信じてもらえるのかね。 このままじゃ万が一そんな本を見せたりして、それをネタに散々言われるか、 それとも良からぬ疑惑を掛けられたままになるか、どちらにしろ俺が損するだけじゃないか! ハルヒはアヒル口をすると、今度はベッド下を覗き込んだ。 「やっぱりないわねえ」 「大体そんなもの見て、お前はどうしようというんだ」 「別に、どんなものを見てるのか興味を持っただけよ」 人様の恥ずかしい物に興味があるという理由だけで、部屋の中を荒らさないで欲しいね。 「それより明日、朝比奈さんと長門がハルヒに呼ばれたって言ってたが、何かあるのか?」 ハルヒは一気にお茶を飲み干すと、まるであらかじめ答えを決めていたかのようにきっぱりと言った。 「特に理由なんてないわ」 理由もないのに呼び出したのか。 「なんだかんだで1年経つけど、ゆきのこともみくるちゃんのこともまだまだ知らない事も多いから」 なんだか本当にまともな部活動の部長のようなことを言い出したぞ。 「団長として知っておかなきゃいけないことだってあるのよ」 ハルヒはやはりどこか変わった気がする。 古泉も口にしていた。 ハルヒは以前のようにただ不思議なことだけを追い求めるだけではなく、 自分の周りの環境もしっかりと構築しようとする面も強くなってきていると。 つまり、それだけ安定してきているということなのだが、どうにも何のきっかけでまた暴走するかわからんからなあ。 ハルヒに限ってだけは安定なんて言葉は簡単に当てはめていい言葉じゃないな。 「あんた明日も足痛かったら病院行きなさいよ?」 わかってるよ。日曜日に死刑になりたくないしな。 ハルヒはお菓子をある程度口にすると、すくっと立ち上がり、 「帰るわ」 と言った。 玄関の外で俺はハルヒに自転車を貸そうとしたが、 「そんなに遠くないからいいわ。それより明後日ちゃんと来なさいよ?」 そう言いのこすと、早足で闇の中に消えていった。 翌朝、切れるような足の激痛によって目を覚ました。 しゃみせんが足首の上に乗っていたのだが、この痛みはただ事ではない。 俺は布団を捲り上げ足首を確認すると、明らかに腫れあがっていた。 まさか折れているわけじゃないよな。 ベッドから這い起きると服を着替え、朝食をさっさと済ませると俺は病院へと向かった。 外科のある病院まで行くのには歩きで二十分程かかる。 自転車に乗って片足でこげばまだ楽かなと思い、自転車を引っ張り出すとよろけながらなんとかこぎ始めた。 こんな時に限って風が強く、俺の体は何度となく煽られ、今にも転びそうになっていた。 走り出して5分程して、細い道の交差点に入ろうとした時、 自分のことで精一杯だった俺は横からの進入者に全く気づいていなかった。 気づいた時にはすでに遅く、なんとか体を捻り正面衝突は避けられたものの、 横から来た人の自転車の先が調度俺の自転車の横から衝突するような感じになり、 俺は横に勢い良く倒れた。 同時に右足首で体を咄嗟に支えてしまったため、激痛が走り、俺は思わず叫び声を挙げた。 「ぐわっ!」 転がったまま右足首を押さえころげていると、衝突した自転車から降りてきた人が声を掛けてきた。 「ご、ごめんなさい。大丈夫ですか?」 声からして女性のようだ。 普通ならここで運命の出会い的なものを感じでしまうのかもしれないが、 生憎そんな余裕もなく俺は痛みに耐えながら返事をするのが精一杯だった。 「ば、なんとか……」 「あれ、あなた昨日の?」 俺は顔を上げてその女性の顔を見た。女性ではなく、朝比奈さんのような幼さのある女の子がそこにいた。 昨日のという言葉から、昨日どこかで会ったことがあるはずだと必死で思い出そうとしたが、 痛さと昨日は色々と考えることが多かったためか、全く思い出せなかった。 「えと、どこかで会ったっけ?」 女の子は、ちょっと怒ったように目じりを吊り上げると、 「保健室で、手当てした保健委員の斉藤です。キョン君でしょ?」 保健室……、思い出した! 怪我をして保健室に行ったんだが、その時近くにいた隣のクラスの保健委員の女の子が ついてきてくれたんだった。それがこの斉藤さんだったのだ。 名前は覚えていたのだが、顔を忘れてしまうとはね。 斉藤さんは俺の顔を覗き込むと、足に目を向けた。 「ちょっと見せて!」 そう言うと、自転車をどけ、ものすごい勢いでGパンの裾をまくりあげた。 ちょ、ちょっと! と、止める間もなく捲り上げられたわけだが、斉藤さんの目は大マジである。 まるで獲物を狙う鷹のような目つきだ。 俺はその目に少し違和感を感じた。 前にもどこかで見たような……。 「こんなに腫れてるじゃない……病院はいかなかったの?」 「今向かっている途中だった」 斉藤さんは、すくっと立ち上がると、俺の自転車を脇に寄せると、 自分の自転車にまたがり後ろの荷物載せを指差し言った。 「乗って。下田病院でいいんでしょ?」 「一人で行け……」 と言いかけるより早く腕を掴まれて起こされた。 「いいから早く。そんな足なんだから」 それじゃお言葉に甘えて、と俺は後部に腰掛けると手のやり場に困っていたが、 「腰に回して、落ちないでね」 という言葉に抵抗することなく斉藤さんの腰に手を回した。 自転車をこぎ始めた斉藤さんからは香水だろうか、それともシャンプーの残り香だろうか、甘い匂いが漂ってきた。 なんだろうか、こう妙に落ち着く匂いというか……眠くなりそうな匂いというか……。 なぜかその時、一瞬、ハルヒの顔が頭によぎったが、その甘い香りにかき消されていった。 病院で診察待ちをしている間も、斉藤さんは俺の側から離れなかった。 本人は「保健委員気質だからいいのよ」と笑っていたが、 週末だけあって診察まで二時間程待たされる形になり、 診察が始まってからもレントゲンを撮ったりしていたので結局病院についてから3時間を過ぎていた。 検査の結果は骨には異常はないが、重い捻挫であると診断された。全治2週間だそうだ。 診察室を出ると、斉藤さんが待ってましたと言わんばかりに近づいてきて肩を貸してくれた。 「どうだった?」 「ただの捻挫みたいで」 斉藤さんはほっとした表情を見せると、可愛らしい笑顔を見せた。 「びっくりしたよ。昨日病院行ったと思ってたし」 ここまで痛くなるとは思ってなかったからなあ。俺は椅子に座ると斉藤さんに礼を述べた。 診察料を支払い、再び斉藤さんに肩を借り、外に出る。 どうやって帰るかな、と思案していると斉藤さんが自転車を持ってきて、 「家まで送るわ。自転車も後で届けてあげるから」 とまるでお姉さん口調のように言った。 俺は、家に電話して迎えにきてもらうつもりだと告げようとすると、 「遠慮しなくていいじゃない。こういう時はお互い様だよ。あたしは暇だし、乗りかかった船だからね」 どうも俺はこういう押しに弱いらしい。姉属性に弱かっただろうか。 しかし、可愛らしい顔に似合わず積極的な人だな。 まるで朝比奈さんとハルヒを足して2で割ったような感じだ。 斉藤さんの押しには逆らえず、俺はお世話になることになる。 足に貼ったシップの匂いと、斉藤さんから香る甘い匂いが混じって複雑な香りがする中、 自転車はゆっくりと走っていく。 その時、誰かが自転車の前に飛び出してきた。 「ちょっと止まりなさい!」 この声は……ハルヒ! 鬼のような形相のハルヒが、自転車の前に立ちはだかっている。 良く見るとその後ろのほうには朝比奈さんと長門の姿が見える。 まるで浮気現場に彼女が現れたような気持ちになった。 いや、俺は実際そんなこと体験したことないがな。 恐らくこんな気分になるんじゃないかと思うぞ。 男性諸君、浮気は、やめよう。 冷静に考えてみれば、別に浮気でもなんでもないぞ? 俺、しっかりしろ。 ハルヒは彼女ではないし、こんな鬼のような形相の彼女は欲しくない。 後ろめたい気持ちなんてないが、ハルヒの迫力に圧倒されてまるで俺は蛇に睨まれた蛙だ。 「あんた誰?」 しかし、ハルヒの矛先は俺ではなく、斉藤さんに向かっていた。 違うぞハルヒ、俺はこの人に助けてもらってだなあ。 「あんたは黙ってて」 すまん、斉藤さん。こちらの不注意でぶつかっておいて助けてもらっておきながら、 あなたをとんでもないことに巻き込もうとしている。 なんでこんなタイミングでハルヒに会ってしまうかなあ。 そもそもこいつは今日家に二人を呼んでいるんじゃなかったか? 「あなた、涼宮さんでしょ? 私は隣のクラスの斉藤よ。体育でいつも会ってるじゃない」 意外にも斉藤さんは笑顔だった。 ハルヒはその言葉を聴くと、一層眉間にしわを寄せた。 朝比奈さんは後ろでおろおろしているし、長門は……、あれ、長門がいない。 と思ったら、俺たちの横に来ていた。そして、ジーッと斉藤さんを見ている。 「まあいいわ。斉藤さんだったわね。キョンとどこにいくつもり?」 「どこにいこうと、あなたには関係ないんじゃない?」 まるで斉藤さんはハルヒに喧嘩を売るように挑発的な言葉を続ける。 「関係ないわけないじゃない。キョンはSOS団のメンバーなんだから!」 斉藤さんはくすっと笑うと、 「SOS団って部活でしょ?その部活では部員の私生活にも干渉するものなの?」 ハルヒが珍しく、悔しさを顔に出している。唇を噛み、体を震わせている。 このままでは余計な事態になりかねないと俺は判断し、ハルヒの前に出た。 「ハルヒ、とりあえず話しを聞け」 「聞きたくないわ。キョン、あんたSOS団クビよクビ! あんたみたいなのをSOS団に入れたのが間違いだったわ」 「ちょっと待てよ。事情も聞かずにそれはないだろ? 今だって病院に行ってたんだ」 「ふん。大体、大した怪我でもないのに大げさなのよ。あんたみたいなドジにはお似合いだけどね! とにかくクビよ。そんな女とちゃらちゃら遊んでるのがあんたにはお似合いよ!」 俺はカチンときた。 気づいた時には時すでに遅く、俺の右手はハルヒの頬を張っていた。 「おまえ……それ本気で言ってるのか」 ハルヒは頬を張られたことに驚きの表情を見せ手で頬を覆ったが、 すぐにこちらを睨み返すと、 「本気よ!除名!クビ!二度と顔見せるな!」 そう言うと、ぐっと歯を食いしばりハルヒは走り去った。 その目にはわずかだが涙が見えた。 「す、涼宮さーん!」 朝比奈さんがハルヒの後を追いかけると、長門も俺の顔を見るとスタスタと歩き去っていった。 「なんなのあの子?」 斉藤さんは呆れ顔で言った。 斉藤さん、あなたの言ってることは確かに最もなことですよ。 ただ、俺の中にも複雑な気持ちが湧き上がってきたわけで。 俺は斉藤さんに礼を言うと一人で帰ると伝えた。 斉藤さんは納得のいかない顔をしていたが、俺の表情を見て気の毒そうな顔をすると 「それじゃ、帰るけど無理しないようにね」 と告げ、自転車で去っていった。 俺は深くため息をつくと、家に向かって歩き始めた。 いつもの歩く速度の3分の1くらいの速さでやっとのことで家に到着すると、 妹が玄関まで駆けてきて不思議そうな顔をした。 「あれーハルにゃんは?」 「ハルヒはいないぞ」 「でも、会わなかったの? ハルにゃんわざわざ家まで来てくれたんだよ? キョン君いるかって。病院に連れていくって。それで、もう病院行っちゃったよって言ったら 急いで出ていっちゃったんだから」 「そうか」 俺は右手を見た。 痛めた右足よりも、手の平のほうが痛いな。 妹は手の平を見る俺を不思議そうに見ていたが、インターホンが鳴ると 「はーい」 と元気良く返事をした。 「あ、あたし、朝比奈と申します」 「みくるちゃん? 今開けるよ!」 妹がドアを勢いよく開けると、そこには朝比奈さんが一人で立っていた。 「あ、キョン君。ちょっとお話してもいいですか?」 「はい」 俺は妹を押さえつけると朝比奈さんと玄関の外に出た。 「今日ね、涼宮さんの家に行ったんです。だけど、ずっと落ち着かない様子で。 私が何かあったんですか?って聞いたら、キョンを病院に連れていく!って」 朝比奈さんは前をまっすぐ見ながら続ける。 「それでね、涼宮さん謝ったの。私たちにね? びっくりしちゃいました。 私も長門さんもキョン君の怪我のことは知らなかったけど、 涼宮さんは、せっかく来てもらったのにごめんね。って」 ハルヒらしからぬ素直さですね。 「涼宮さんは私たちに謝ってまであなたのこと心配してた」 「それは俺も事情を話そうとはしましたけど、ハルヒはあんな感じで聞く耳がないですから」 朝比奈さんはちょっとうつむくと、声を小さくした。 「それは……私にもわかるけど。そういうことじゃないの」 どういう意味です?ハルヒの行動を朝比奈さんは正しいと言うんですか? 「違うの……うまくいえないけど、あんなキョン君格好悪いです」 ハルヒの頬を張ったことだろうか。 朝比奈さんに格好悪いと言われるとぐさっときますよ。 「私が涼宮さんなら……。ううん……上手く言えないけど」 刹那、体が動かなくなった。 ただ、ただ、甘い鼻につく匂いを感じるだけで、まるで体が言うことを利かない。 頭がボーっとしてきたかと思うと、俺は自分の意思に反した言葉を発していた。 「もう放っておいてください。俺はもうSOS団の団員ではないですし、ハルヒに謝る気もありません」 朝比奈さんは驚き、足を止めると肩を震わせた。 「キョン君どうしちゃったんですか? 私の知っているキョン君はそんな人じゃないです!」 またも俺の意思とは異なる言葉が口から出てくる。 「そんな人ってどんな人だと思っていたんですか?勝手に俺という人間を決め付けないでください」 朝比奈さんは、一歩二歩と体を引くと、涙を流し走り去っていった。 自分の意思ではない誰かが俺の体を、心を動かしている。 まるで操り人形だ。 まさか、ハルヒか……? あいつならそれも可能だろう。 人間一人の存在を消してしまうことぐらい簡単にできるような奴だ。 ハルヒは俺という人間を別のものに変えようとしているのかもしれない。 俺は、恐怖を覚えているのと同時に、ハルヒがそう望むのならそれでも構わないとも思っていた。 俺のいない世界を望むのなら、いっそのこと全て変えてしまえばいい。 俺はそこで別の人間として生きるさ。そうさ、そしてまたお前を必ず見つけてやる。 覚えてなくたって、いやむしろ俺がお前のことを忘れるはずがない。 なんせ人生で一番の衝撃だったからな。 気がつくと、俺は地面に横になっていた。体に力が入らない。 声もでない。目の前がどんどんと暗くなっていくことだけがわかった。 ハルヒ、俺は……。 気がつくと、俺はベッドの上に寝ていた。ここはどこだ? いやその前に俺は誰だ?名前は?思い出せない。 ここは病院ではなさそうだが、誰の家なんだ? 頭の中は「?」だらけになっていた。 すると、ドアを開いて一人の少女が部屋の中に入ってきた。 見覚えがある。けれども名前を思い出すことができない。 「あら、目が覚めた? 食事持ってきたわ」 俺は色々なことを聞きたかったが、その少女から香る甘い匂いに引き付けられて、 言葉を発することができない。この匂いどこかでかいだ記憶がある。 「あなたの身柄はしばらくの間拘束させてもらうわ。ごめんなさいね」 何を言っているんだこの人は。拘束ってなぜだ。 「一時的に記憶を奪うための薬をあなたに投与してるわ。だから、その間は何も思い出せない。 感覚的なことは、匂いとか味とかは覚えているかもしれないけれど、自分の名前も思い出せないはずよ」 その通りだ。この甘い匂いも、運んできた食事の匂いもどこかでかいだことのある匂いだ。 「手荒なことかもしれないけれど、許してねキョン君」 キョン? それが俺の名前か?随分と変わった名前だな。 キョンと名づけた親の顔が見てみたい気分だぜ。 「俺はここにいつまでいればいいんだ?」 「観察が終わるまで。それが終わる時にはもうこの世界はないかもしれないけれど」 なんの観察だ。一体何を観察したら世界が終わるようなことになるのかぜひお聞きしたい。 「涼宮ハルヒの観察よ。あなたにこの名前を言ってもわからないでしょうけど」 涼宮ハルヒ……。 わからん。そもそも他人の名前がわかるぐらいなら自分の名前を思い出してるわ。 「それじゃ、用があったらその電話で呼び出して」 無機質な部屋には、電話とベッド、そしてタンスが一つおいてある。 あとは小さめのドアが一つ、どうやらトイレのようだが。 しかし、どうして俺は記憶を失くさなきゃいけない状況になっているんだ。 その涼宮ハルヒとかいうやつの観察のためにと言っていたが、 俺はそいつといったいどういう関係なんだ。 いくら頭を捻ったところで思い出せもしないことを俺は延々と考えていた。 それから何日経っただろう。 たまに襲われる嫌な感覚で意識が遠のき、正確な時間を把握できなくなっている。 そもそも記憶を失う前にどこにいて何をしていたのかもわからないんだ。 あれから同じ少女が食事を持ってくるだけで、俺が質問しても何も答えようとはしない。 一体何がどうなっているんだ。考えてもどうにもならないもどかしさだけが残る。 部屋に窓はあるが、人間が出られるような大きな窓ではなく、 朝か夜か判断できるぐらいの大きさの窓である。 実質、もし脱出するとしたら少女がいつも食事を運んでくる入り口になるのだが、 とてもじゃないが、足が痛くて脱出できそうにもない。 しかも、なぜかここからでないほうがいいような気がしている。 それはなぜだかわからないが、そんな気がするのだ。 小さな窓に目をやると夕焼けの光が差し込んでくる。 そろそろ夜になるのだろう。と考えていた矢先に、大きな爆発音のような音が響いて、 建物自体が揺れた。地震とは違う、何かが衝突したような響きである。 しばらくの間、誰かが叫ぶ声が聞こえたりしていた。悲鳴も混じっていたようだ。 そして、入り口の扉が開いた。 「キョン君!」 見たことのないような美少女が入り口に立って叫んだ。 その後ろには顔の良いやたらきざっぽい男と、大人しそうな少女が立っている。 「良かった、どうやら無事のようですね」 美少女は目に涙を浮かべ、俺に抱きついてきた。 ちょっと待ってくれ、あんたらは一体誰なんだ。 そして、一番に俺が誰なのか教えてくれ。 美少女は一歩あとずさると手で顔を覆った。 「キョン……君?」 キザたらしい男は真顔で近づくと俺の顔をのぞきこんできた。 「どうやら記憶操作されているようですね。長門さん」 長門と呼ばれた大人しそうな少女は、ゆっくりと俺に近づくと頭に手を置いた。 「私の知らない方法で記憶操作されている。恐らく、ここより先の時代で作られた新種の薬」 「となると、やはり未来から来た連中の仕業ということになるんでしょうか」 「恐らく。それだけじゃない。この建物自体に大きな時間軸の歪みがある。 時間凍結を応用して時間の進みを早くしていた可能性がある」 「涼宮さんの観察をするため、ですね」 無表情の少女は小さく頷いた。 こいつら一体なんの話をしているんだ? 俺にもわかるように説明しやがれ! 「とにかく、ここを出ましょう」 キザっぽい男が俺を立たせると、肩を貸してくれた。 階段を下りると、そこには数人の大人がいて、何かを言っているのだが、 俺には理解することができない。 車に乗せられると、どこかで見たような気のする病院に連れていかれて、 様々な検査を受けさせられた。 検査の間中、ずっと先程の美少女が泣きそうな目で俺を見ていたが、 知らない人でも抱きしめてしまいたくなるようなそんな庇護的な欲を感じた。 こんな感覚を以前にも味わった気がするのだが。 一通りの検査を終えると、個室の病室に入れられた。 長門と呼ばれていた少女が再び俺の頭に手を置いた。 5分くらいそうしていただろうか。俺はどんな顔をすればいいのかわからなくなっていた。 少女は俺から手を離すと、後ろを振り返った。 「すでに薬は切れている。体内に不純物も見当たらない」 なんだこの少女は、医者なのだろうか。医者にしたって頭に手を置いただけで 体内の物質がどうとか言う神のような人の話なんぞ聞いたことがない。 いや、今の俺が知らないだけかもしれないがな。 「となると、後遺症という可能性ですかね」 キザ男が考えるような仕草を取る。 「違う」 「違う?……まさか!?」 キザ男は絶句している。美少女も同じく手で顔を覆っていた。 長門と呼ばれる少女は俺のほうを見るとゆっくり口を開いた。 「彼は、涼宮ハルヒに消されかけている」 涼宮、涼宮ってそんな大層なやつなのかね。 それに俺を消そうとしているってのは一体どういうことなんだ。 名前も顔も知らないようなやつに殺されるのはごめんだぜ。 涼宮ハルヒ……か。 しばらくして俺は、人目を盗んで逃げるようにして病院を飛び出していた。 どこに行く宛てがあるわけでもないし、ましてや自分の家がどこにあるのかもわからない。 とりあえず足の向くままに俺は歩き出していた。 なるべく賑やかそうな場所にいけば、もしかしたら何かを思い出すかもしれない。 俺は無意識的にそう考えていたので、自然と町に向けて歩を進めていた。 賑やかな繁華街を抜けて、駅の近くまで来た時、正面から誰かが近寄ってきた。 「キョン。ちょっと来なさい」 誰だこの女は。すげえ美少女ってことはわかるが、名前は……やはりわからん。 俺が不審者を見るような目で少女を見ていると、その少女は俺の手首を掴み歩きだした。 「ちょっと待て、お前誰だよ!」 そう言うと、少女は顔を曇らせた。なんだその目は、どこかで見た、何でも見透かしてしまうような目。 俺は、知っている名前を挙げることしかできなかった。 「お前がひょっとして涼宮ハルヒか?」 少女は驚きの表情を見せたが、すぐにまた前を向き、俺を引っ張って歩きだした。 どうやらこいつが涼宮ハルヒのようだ。 とりあえず引かれるがままこの涼宮の後をついていくことにした。 なんせ今の俺にはあらゆる記憶がないし、この涼宮が俺のことを消そうとしていると聞いている。 殺されるのかと思ったが、どうやらそんな雰囲気でもないし、今は言うことを聞いておいたほうがよさそうだ。 道中ずっと黙っていた涼宮が突然言葉を発した。 「あたし、あんたが消えればいいと思ったわ。そりゃそうよ。このあたしをひっぱたいたのよ!許されざる行為だわ 普通なら死刑ね。三回ぐらい死刑よ」 団長? 何の団だ? 俺がお前を無視したって言われても全くわからん。 「でも、あんたが何度もあたしの名前を呼ぶんだもん。仕方ないから許してやろうって気にもなるわ」 呼んだ覚えなんてこれっぽっちもないぞ。 「あたしも大人気ないことしたと思う。今になって考えればね。素直じゃないわ」 「俺は何をしたんだ?」 「何もしてない」 涼宮は見覚えのある学校の前で立ち止まった。 「登って」 涼宮は校門をよじ登ろうとしている。俺もそれにならって登ると、 真っ暗闇の校庭内に足を踏み入れた。 「あたし、後悔したわ。あんたがいなくなればいいと思ったこと」 涼宮は、校庭のほぼ中心で立ち止まった。 「交通事故にあって記憶喪失になったなんて聞いたら誰だって後悔するわよ」 どういうことだかよくわからないが、俺は交通事故で記憶を失くしたのか? 「病院にいこうとしたのよ、そしたらあんたの声が聞こえてきたの。あたしの名前を呼んだわ」 いや、俺は呼んだ記憶がないんだが。 「聞こえたのよ、ご丁寧にどこに向かってるかも言ってくれたわ。だから、あたしは駅前で待ってたの」 つまり、なんだ。俺がお前のことをテレパシーだかなんだかで呼び出しだとそういうことか。 「さあ。私の空耳かもしれないわ。だけど、あんたの声だったしね、1%ぐらい信用してやろうと思ったのよ」 そりゃどうも。 「簡単に私は人を認めたりしないわよ。だけど……認めた人間はそれなりに重要だし、大事にしたくもなるわ」 「何を言ってるんだ?」 涼宮は少し眼を潤ませて唇を噛んだ。 「キョン……思い出しなさい。あたしのことも自分のことも、そしてSOS団のことも……」 突然唇に柔らかいものが触れた。それが涼宮ハルヒの唇だということに気がつくまでそう時間はかからなかった。 なんとなく懐かしい感じがする。 唇から一気に頭に情報が流れ込んでくるような感覚を覚える。 ああ、これが俺の記憶。涼宮ハルヒとの出会いやSOS団との出会い。 そして、俺が何者なのか。 今、はっきりと頭に蘇ってきた。 俺は、目の前にいる涼宮ハルヒを力強く抱きしめて名前を呼んだ。 「ハルヒ」 俺とハルヒ以外の三人が北高につくまでにそこまで時間はかからなかった。 その後全てを思い出した俺が聞いたのは、隣のクラスの斉藤と名乗っていた奴は未来から来た強行派の人間だったこと、 そしてそれに協力している情報統合思念体の存在が後ろにあったことということだ。 俺のあの怪我自体が初めから仕組まれていたことのようで、 斉藤という保健委員は存在せず、俺の記憶が操作されていて本当にいると思い込まされていたそうだ。 ハルヒが不機嫌になっていたとき、調度あの頃から俺は奴らの術中にいたってわけだ。 ハルヒはそれを敏感に感じていたようで、気分が悪くなったのはそれが原因だったと。 「これは何か事件の臭いがするわ。きっと異世界からやってきた人間だったのよ!」 あながちその推理は間違いではないんだがな。 しかし、長門がなぜそれに気がつかなかったかというと、 どうやらそのバックについていた情報統合思念体から妨害を受けていたため、 正確な情報が得られなかったと言うのだ。 そのため監禁されたことを知るのにも時間がかかり、俺は何日もの間閉じ込められていたってわけだ。 しかし、現実世界では一日しか経ってなかったらしい。 つまり、外での細かい観察記録を時間をかけて整理したいが、 もし世界改変がすぐに起きてしまうようなことがあれば、その情報は意味のないものになってしまうというわけだ。 そのため、その情報統合思念体は、建物内と外界との時間流の速さを変えてしまうことで、 外では一日しか経っていないのに、建物の中は1週間経過しているようなカラクリを仕込んだのだ。 長門によると斉藤はすでに消えていたらしい。 それと一部の強行派の未来人を拘束したと、朝比奈さんが言っていた。 やはり、俺を使ってハルヒを観察するのが最も効率的であるという見解は強行派の中で変わってないらしく、 わざとハルヒを煽ってみたりしたのも俺という人間に対してハルヒがどのような感情を持っているのか 確かめるつもりだったんだろう。 正直、危なかったんだよなあ。 もう少し俺の救出が遅れていたら、ハルヒは俺の存在を消していただろう。 俺はテレパシーなんざ使えない普通の人間だが、ハルヒが俺の声が聞こえたって言うなら それは最後の俺の足掻きだったのかもしれないな。 ハルヒのことはどんなことがあっても忘れないと思っていたが、 ハルヒの唇を忘れないに訂正させていただこう。 それぐらいの妥協はいいよな? ハルヒ。 終
https://w.atwiki.jp/wiki5_eroparo/pages/381.html
【板名】ハルヒ板 【理由】あちこちにハルヒスレが乱立してうざいから 【内容】ハルヒに関する情報や雑談など 【鯖】anime2 【フォルダ】haruhi 【カテゴリ】漫画・小説等
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/3686.html
まず、プロローグ的なものだ。 なんというか、前々回の話はどこ言ったのか? と、疑問に思ってる方もいるでしょうが、 それはまぁ、あれだ、えっとだな、そう、 宇宙人的、未来人的、超能力的、超監督的存在が、 倫理的観念から放送を打ち切った様なもんだ。鬱展開だったんだ! そう思っとけ。 決して手を抜いたわけじゃないぞ。 それも含めてネタだと思えばいいのさ。 そういや、最近ネタ系の話が多くなって来た気がするが、 ここいらで真面目系の展開にするか? それもいいかもしれないが、今までの展開は無視していいものかどうか、 悩むところだな、でも、まあ悩んでも仕方ない、なるようになれだ。 ま、それに文句を言われても俺にはあのセリフがあるからな。 ──知ったこっちゃねーや。 なぁんてな、と、そろそろ話を進めないといかんよな、 と、言うわけで──。 最終話『涼宮ハルヒの深淵』スタート 「──えーと、マジですか? 長門さん」 俺達は今、旧校舎の階段の踊り場にいる、 さっきまでいた鶴屋さんは朝比奈さんの整備の為に二年の教室に戻ったいった。 なので俺たちと言うのは長門と古泉と俺の三人だ。 この非常識な世界を元に戻すための方法を見出したとされる、 ミス万能宇宙人長門から、俺はその方法を訊いて思わず冒頭の言葉を吐いた。 さすがに信じがたいことだったからな。その内容はというと……。 「涼宮ハルヒがいる空間に入れるのはおそらくあなたのみ、 あなたが何度かその空間にアクセス出来た状況からみても断言できる、 その方法としては、あなたに危機的状況が訪れたときだと推測される」 ここまで言ったことについては俺も理解できた。 「それにより、涼宮ハルヒはあなたの状況を何かしらの方法で観察、 または探知していると推測し、 わたしはその検証を試みた、先ほどあなたに切りかかったのはその為、 そのとき、わたしはあなたの前腕部に軽い切り傷を作った」 思わず自分の左腕を見る、が、そのような跡はまったくないぞ、 「結果、その傷は数秒でなくなった、これにて検証終了、 あなたはおそらく不老不死と呼ばれる存在に改変されていると思われる」 なんだって、不老不死? 意味わかんねぇぞ、おい。 「あなたもなにかしら改変されていたようですね、 しかも不老不死、結構じゃありませんか、 人類が切望し、手に入れたがっていた存在になれたのですよ、 神に選ばれたあなたならではの能力じゃないですか、 まったく、うらやましい限りです」 あー、まぁこの際、俺も何かの改変をされてるのはいいとしよう、 だが古泉、おまえも有る意味不死的な存在じゃないのか? 「そう言われればそうですね、常人よりかは幾分頑丈な肉体になりました」 いつもの笑顔で軽く笑う古泉。 お前は何があってもその笑顔だな、正直感心するよ。 「そう、涼宮ハルヒにとって我々SOS団のメンバーは特別な存在といえる、 そのメンバーが怪我や病気になることを涼宮ハルヒは望まない、 そのため、あなたには不老不死、古泉一樹には吸血鬼、 朝比奈みくるは機械の体に改変した」 なるほど、一応理由がある訳か、ん? ちょっと待て、長門の雪女はどうなんだ? 雪女に不死的設定なんてあったっけ? とはいえ妖怪の一種だからいいのか。 おばけは死なない、病気もなんにもない。そんな単純でいいのだろうか。 俺としてはダジャレの線もすてがたいんだが、まあいいか。 「涼宮ハルヒがメンバーの健康状態を危惧するようになったのは、 去年の十二月十八日以降だと思われる。涼宮ハルヒ、古泉一樹、 朝比奈みくるには、わたしとあなたが体験したものとは、 まったく別の出来事を記憶しているのが原因。 その出来事は涼宮ハルヒにとって衝撃的で、今回の方法の重要なファクター」 長門がそこまで言ったところで古泉が、なるほど、 っと言って自分の手の平をぽんと叩いた。 なにがなるほどだ。 そして長門はゆっくりと俺のほうに向き直り、じっと顔を見つめながら、 「その出来事をここで再現し続ければ、 涼宮ハルヒを目覚めさせるきっかけが得られるはず」 ちょっと待て、いま再現し続けるって言いましたか。この野郎。 俺だってその時、何が起こったのかは古泉から訊いていたから知っている。 つまり長門が何を言おうとしてるのかというと、 俺を階段から転げ落として頭を強打させようとしているってことだ、 しかもそれをハルヒの目が覚めるまで何度も繰り返すんだと。なんつうこっちゃ。 そして冒頭のセリフ、マジですか? 長門さん。となるわけである。 それについて長門は一言、 「もちろん」 ほんとに一言だった。 じゃ、俺も一言。 おしまい 「ここで終わりにはさせる訳にはいかない、改変世界の回復を優先してほしい」 「ちょっと、勝手に終わらせないで下さい」 二人から同時に突っ込みを受けた。 俺だってさっさと元の世界に戻したいさ、だが、なんで俺だけ体を張って、 しかも文字通り階段落ちをしなければならないんだ。 いや、一回位ならやってもいいが、何度もやらなければならないのは、 さすがにちょっと、遠慮し……。 ここまで言ったところで不意に足が滑った、体勢を立て直すために右足を出すと、 そこは既に階段だった、 「うわっ!」 と、叫んで手すりを掴もうと反射的に手をのばす、うをっ冷てえ! 手すりが氷になってるし、よく見ると俺がさっきまで立っていた床も氷で覆われていた。 滑ったのはそのせいか。 体が宙を舞う不思議な感覚と背中やひじ、ひざに襲い掛かる衝撃を受けて、 俺は見事に階段落ちをきめた、もちろん、 最後に後頭部を強打すると言うところも忘れずに。 「すぐに起き上がってはだめ」 いてて、と後頭部をさすりながら自分の体に異常がないか確かめてると、 頭上から抑揚のない声が降ってきた。 「気を失った状態になった方がより望ましい」 「そうですね、あの時の再現をするならそこまで演技したほうがよさそうですね」 おいおい、そういうことは事前にちゃんと言っといてくれよ、 しかも不意打ちで足を滑らせるなんて反則だ。 それに再現もなにも俺にとっては初めてのことだ、あと、俺に演技を期待するな。 と、いうわけで第一回階段落ちは失敗に終わった。 俺が不死身の肉体に改変されてるのは本当のことのようだ、 打ち身や青アザくらい出来てもおかしくない転落っぷりだったのだが、 俺の体はまったくの無傷だったからだ。 とはいえ、痛みを感じない訳ではない、そのせいで恐怖心も芽生えてくる。 はっきり言って俺はこんなマゾな性癖を持ち合わせてなどいないからな。 世の中には苦痛が快感になって自分の体をわざと傷つける人間がいるらしいが、 そんなヤツの気持ちなんぞまったくわからん。 そんなヤツには朝倉を紹介してやるぞ。喜べ、今なら虎縞ビキニ姿だ。 仕方なく階段をのぼる俺、うう、足取りが重い。 古泉、ご愁傷様ですって顔でこっちを見るな、同情するなら金をく……って古い! 「心配は要らない、今のはリハーサル、次できめる」 はい、次本番いきまーす、っておい、リハーサルなんか必要ないだろ、 それに次できめるってなんだ? 何をきめるつもりだ、長門。 「別にわざわざ飛び込まなくてもいい、あなたが落ちる状況はわたしが演出する」 と長門は言った、俺は普通に階段を下りていけばいいらしい、 その方が自然だということだ。普通ねぇ……そう言われると意識して行動しにくいな。 で、テイク2。 今度は靴の裏と床が凍りつき、つんのめった感じで階段から落ちた、 ラストは前回同様、後頭部を強打して終わる、やっぱ痛ぇ。 ここで気絶したふりをすればいいんだな、と、思っていると、 「うわっ」っといって誰かがゴロゴロ落ちてきた。 何だ? と思って薄目を開けて見ると、古泉も落ちてきていた。 なにやってんだ、あいつは。 古泉はすぐ隣で俺同様、後頭部を強打して止まる。 これを見てひとつ解かったことがある、 体験するより見てる方が気分が悪いってことだ。 なるほど、次できめるって言った長門の気持ちが少し理解できた。 で、なんで古泉も階段落ちをしてるんだ? と思っていると、 長門も階段から落ちてきた。まじっすか? しかもすっごい不自然な落ち方だ。 直立不動で落ちてきてる──ありえねぇー。 とはいえ、長門も後頭部を強打するラストを迎えるのか、 そう思うとなんだか阻止したくなる、誰だって受け止めたくなるさ、そうだろ。 だが、俺の思惑の斜め上の行動を長門はした。やっぱ長門の思考は計り知れん。 そのまま後頭部から落ちてくるのかと思っていたらいきなりジャンプしたのだ、 ────な!? 虚をつかれる俺。 長門はそのまま空中のキャンバスにムーンサルトを、 きれいなハーフイン・ハーフアウトで描き、そして古泉の腹の上に着地した。 古泉は一瞬かえるの鳴き声のような呻き声をだす。 まるでダウン攻撃だな。などと、思っていると。 長門は「……パラシュート部隊」と、ぽつりと言った。 すまん、意味がわからん。 そして長門はひっそりと両眼を閉じ、崩れ落ちるように俺の上に倒れこんだ。 ……長門!? まてまて、こう言う場合、俺はどういうリアクションをとればいいんだ? はたから見れば押し倒されたようにも見えなくはない、 運悪く三人とも階段を転げ落ちた感じにも見える、 さっき俺が言っていた、階段落ちをしてきた長門を受け止めた様にも見えるな。 で、俺はやっぱり気絶しているふりを続けた方がいいのか? どうすりゃいいんだ監督さんよう、 誰かカット、OK、とか言ってこの演技を終わらしてくれ。 おい、そこっ、うらやましいとか言うな。 仕方なく、俺は小声で、 「どうすりゃいい? 俺はこのまま気絶したふりをしてていいのか」 と、長門に聞いてみた。 「……しばらく、このまま」 ある意味、果報者が聞くセリフかもしれないが、 今はそんなこと考えてられなかった、今の長門は雪女なんだからな、 はっきり言って、寄り添われてると寒い、凍え死にそうだ。 「大丈夫、今のあなたは死ぬことはない、 ザ・フジミとも呼べる存在」 THEを付けただけで、いきなり弱くなった気がするな……、 それよりだんだん感覚がなくなってきたんだが、俺、凍り始めてねえか? このままだと鉱物と生物の中間の生命体になりかねないぞ、 本格的にやばい、意識が遠のいてきた……。 長門、悪いが限界だ、どいてくれないか。 そう言って起き上がろうとした時、長門と目が合った。 いや、合ってしまったと言うべきか。 妖しげな雰囲気、白い肌、少し儚げな感じがする無表情。 胸の上という至近距離からまじまじと俺を見上げているその瞳に、 俺は魅せられてしまった。まずい、抵抗できん。 その瞬間、俺の思考が停止した──。 その後のことは断片的にしか覚えていない、 気が付いたら闇の中を落ちていた。 はっきりと思い出せない、なんかとんでもないことをしようとしてた気がする。 なんかこう……自分の意思とは無関係に腕が動いたような……。 ぐあ、考えたくねえ! それに最後は長門に腕をかまれた様な気もする。 長門に噛み付かれる様な事でもしでかしちまったのか? やっぱ考えたくない、だが、後で謝っておいたほうがいいのかもしれん。 闇の中で浮遊感とともにそんなことを考えながら俺は落ちていっていた。 急に辺りが明るくなり、気がつくと教室の中に俺は立っていた。 これで三度目だな、ここに来るのは。 俺はハルヒの寝ている窓際最後部の方に向く。 安らかな寝顔が見えた。ちっ、忌々しい。 俺は途中にある机や椅子を迂回せず、机の上を飛び石のようにして一直線で向かう、 以前のように足をつかまれて強制退場させられる訳にはいかないからな。 ──ハルヒ、起きろ。 やはりここでは声は出せないままか。だが言わせてもらうぞ。 ──お前にとってはとんでもなく愉快な夢かもしれないけどな。 ──俺にとっちゃ全然愉快でもなんでもねえ、 ──ま、中にはお前の夢の世界ででも楽しんでる人もいるが……。 ──それでも迷惑に思ってる奴がいるんだ、 ──だから早く起きろ、いつまでこんなところにいる気だ、 ──天岩戸じゃあるまいし、お前は天照大神か? ──こんなところで寝てたってちっとも愉快な出来事は見つけられないぞ。 ──SOS団のみんなで何かやってる方が楽しいんじゃなかったのか? ──それに……。 声にはならなかったが言いたい事のほとんどを言った時、自分の机まで来ていた。 そのままゆっくりと自分の机の上に座る。 ハルヒの穏やかな表情の寝顔を見て、ふと思う。 果たしてこの騒動は本当にハルヒの能力が原因なんだろうか。 誰だって寝不足になったり夢をみたりするだろう、 いくらハルヒでもそんなことぐらいで世界を改変させるのだろうか? だったらもっと頻繁にこんな騒動がおこってもおかしくないはずだ。 あえてハルヒに改変能力を使わせようとしてる黒幕がどこかにいるんじゃないのか。 なぁんてことを考えてたが、そんなこと考えるのは長門と古泉の役目だ。 柄にでもないことしちまった、さて俺の役目は決まってる、 そのためにここに来たんだからな、もう一度ハルヒの寝顔を見る。 人の気も知らないで気持ちよさそうに寝てやがる。やれやれ。 俺はやわらかそうなハルヒの頬に手を伸ばし、 ──それに……だ、お前のいない世界はやっぱ落ちつかねえし、つまんねえよ。 そう言って俺は少々強めにハルヒの頬をつまんでやった。 その後のことを少し話そう。まあ、エピローグ的なものだな。 結果、俺はハルヒを起こすことに成功し、無事にもとの世界に戻れた。 ハルヒが起きた瞬間、さっきまで誰もいなかった教室に生徒が現れたのだ。 みんな普通の姿だ、へんな改変はされていない。 それはいいのだが、程なくして担任の岡部が入ってきて、 朝のホームルームをはじめたのだ。なに? 朝? 俺の体感ではたしか夕方だったはずなんだが、 ということはもう一回今日をやり直せってことですかい、ハルヒさん。 もうすでに俺は色々あったんで休息をとりたいのだが、 帰っていいかなぁ、俺。て、やっぱそれは無理ですか、そうですか。 くそ、ハルヒの奴め、じゅうぶん睡眠をとれてやたら元気になってやがる。 忌々しい、お前にはセリフをやらん、てことで全部俺のモノローグだ。 さて、昼休みになって、俺はまたもや文芸部の部室に向かった、 チョット訊きたいこともあるし、それに、 なんだか知らないがココの主に謝らないといけない気がするからな。 部室に入ると予想どおり長門はいた、 いつもの席に座って本を読んでいる。本を読めるようになってよかったな。 とりあえず話し掛けてみた。 いつもなら本を読みながらでも返事くらいはしてくれるのだが、 なぜか今日は本を読むのを中断し、顔を上げ、 「…………」 無言で俺のほうを見る長門。 なんか念波を送っている感じがする、やっぱ怒ってらっしゃる? 「あーそのーなんだ、すまん、あんまり覚えてないんだが……」 いや、言い訳はよくないな。 「長門、すまなかった、なんかとんでもないことをしちまったみたいだな、俺、 このとおり謝るから機嫌を直してくれ、な」 そう言って頭を下げる俺。 これで許してもらえるだろうか、と顔をあげて見る。 いつもの無表情だが、気のせいか俺には困惑しているような、 または残念がっているような感じに見えた。 長門は二回ほど瞬きした後、目線を本に戻し、 「……それは勘違い、わたしは怒ってなどいない」 え!? 「だから謝る必要はない」 じ、じゃあ、あの最後に噛み付いたのはいったい? 長門はもう一度ゆっくりと俺の方に向き、 「それはあなたの体表面に、 涼宮ハルヒを強制的に覚醒させるプログラムを展開させるためにしたこと。 一度目の転落時、涼宮ハルヒにアクセスすることが出来た、 その時に、何者かの介入があったこと、 彼女が強制的に夢を見る状況に追い込まれていることが判明したため」 て、ことはやはり黒幕がいたってことか。 長門を怒らせてしまったのかとヒヤヒヤしていた俺は正直ホッとしていた。 無意識状態だったとはいえ、俺は、いや、俺の腕は長門をギュっと抱……。 あーっだめだ! 思い出しただけで自分の頭を壁に打ちつけたくなる。 あれは幻覚だ、忘れるんだ、俺──。 落ち着け、話を戻そう、確か黒幕がいたってことだったな。 「ひょっとして雪山山荘事件の野郎か?」 俺がまず思い立ったのはそれだった、たしか広域帯宇宙存在だっけ、 閉じ込められた吹雪の山荘から脱出した時と、 今回の騒動を終わらせた時の状況がよく似ていたからそう思ったんだが。 「おそらく、そう……前回より効果的なアプローチになっている」 連中も学習しているってことかよ、だったらもっとまともに挨拶に来い。 いや、だからと言って普通に宇宙人ですって挨拶に来られても困るわけなんだが。 まあ、長門の説明によるとやつらの仕業で間違いないようだ。 今後、似たようなことが起きない様に警戒と対策を施しておくそうだ。 あと長門は、今回の改変騒動は強制的に睡眠状態にされたハルヒが、 異常状態を俺たちに知らせる為の方法かもしれないと言っていたが、 真相はハルヒの心の奥にあり、そして俺にとってはもうどうでもいいことだ。 ただ、どちらかといえば陰鬱で殺伐とした世界じゃなく、 比較的、気楽で愉快な世界に改変されていたのが救いだと俺は思う。 そういや、生徒会長が言ってたな、ハルヒのことを頭のニギヤカな女だって、 まったくもってその通りだな。 それと、俺が着けていたトナカイの被り物だが、 あれがハルヒのいた空間とつながっていたそうだ。 あの騒ぎから数日間、時折長門は俺の顔を見つめてくるんだが、 やっぱ怒ってたのだろうか? いや、気のせいだな、すでに今はいつもの長門だしな。 そして今回の騒動、長門の親玉も色々と興味深く感じていたそうだ。 まさかとは思うが、次は長門の親玉主催の乱痴気騒ぎが起こるんじゃあるまいな。 明日学校に行ってまたもや変な改変世界になってたら、 今度は俺が天岩戸に閉じこもってやる、 アメノウズメ役はだれかほかの人にたのんでくれ、俺はもうこりごりだ。 おわり 挿絵1 長キョン あとがき、のようなもの。 俺、実はなま足萌えなんだ、いつだったか朝倉の太ももは、 そりゃもう反則なまでに魅力的だったぞ。 なぁんてことを考えて朝倉をSSに出演させるために考えはじめたのがこの話です。 でも朝倉の活躍はまったくありませんがね。 あと、ギャグ展開にしようと思ったのはバンブーブレードの一話を見て、 影響を受けたためです。ある意味自殺行為だったけど。 しかし、深淵の連載中、いろいろと名作も投下されてて自分の文才のなさに凹みまくりました。 ほんと小説になってねぇな俺のは、一話なんてキョンのモノローグ風プロットってかんじがする。 次回作はもう少しマシにしたいなぁなんて考えておりますが、 はてさてどうなることやら。 と、いうわけで次回はミステリーに挑戦する予定です。 おまけ ハルヒ「……ここでSS投下予告」 キョン「テンション低!、前回は俺がいなくなる話だったが、今回はなんだ?」 ハルヒ「今回の話、あたしの出番がほとんどないし、つまんなさそう」 キョン「真面目にやらんと予告コーナー長門に取られちまうぞ」 ハルヒ「わ、わかったわよ、真面目にやればいいんでしょ」 キョン「そうそう、で、タイトルは『涼宮ハルヒの……何て読むんだこれ、フカブチ?」 ハルヒ「深淵よシンエン、『涼宮ハルヒの深淵』わかった?」 長門 「……読んで」 キョン&ハルヒ「うおっ!」 恥ずかしながら、これは第一話投下時に使用した予告レスです、 深淵という文字の読み方が解らないって方がいたからここに載せておきますね。 次回予告 ハルヒ「ちょっとキョン!あたしのセリフ無くすなんていい度胸じゃない!?」 キョン「文句はあとで聞いてやるから落ち着いてくれ、今は予告をだな……」 ハルヒ「むうー、今回出番はほぼ無いし、ずっと寝てて退屈だったのよ! もう、 じゃあ、さっさと次の予告いくわよ! 次回はちゃんとあたしの出番あるみたいだし」 キョン「その調子でいこう、次回はミステリーだそうだ」 ハルヒ「タイトルは、『新・孤島症候群(仮)』ってことらしいけど、 よくあるタイトルよね」 キョン「被ってなきゃいいんだが……」 ハルヒ「ところで一つ訊きたい事があるんだけど」 キョン「なんだ?」 ハルヒ「真のますらおってなに?」
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/3795.html
なあハルヒ? 冗談を言うのも程ほどにしろよ。 皆深夜までも続く演技で疲れてんだからさ、お前がそんな事を言いたくなる気持ちも分る。だが、それは無いだろう。そんな冗談言ってると、某ギャグ漫画の魚雷姉さんが突っ込んでくるぞ。 「冗談?そんなもんじゃないわよ」 違うのか。じゃぁなんだ、ドッキリか。 「ドッキリでもないわ。本気よ」 本気と書いてマジと読むのかハルヒ? 「マジよマジ。マジ過ぎて古泉君が小泉君になるくらいだわ」 其の時俺は、部屋の隅の方で胡散臭いニヤケ男が蹲ってるのが見えたが、まあいいか。“小泉”だし。 「『涼宮ハルヒの憂鬱』の、第二期を中止するわ!」 「代わりと言っちゃあ何だけど、その代わり、新アニメーション化する事にしたわ!!」 新アニメーション化とか何とか言って、どうせまた俺の気苦労が増えるだけだろうな。 ふぅ、やれやれ。 終わり?
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/464.html
ヤッパッパーヤッパッパーイーシャンテン はしゃぐ恋は池の鯉 ヤッパッパーヤッパッパーイーシャンテン 胸の鯛は抱かれタイ #訳もわからずに ハルヒハルヒで、日が暮れる 君と逢ってから ハルヒハルヒで ナンダカンダと、すったもんだの世紀末 なぜもっと静かに「好きだよ」と言えないの? 張り合うと私も じゃじゃ馬になっちゃう! ベルも鳴らさずに そよ風の様に 胸のワンルーム住みついた君なの 迷惑よ だけど …今夜だけいいわ (明日までいいわ) ヤッパッパーヤッパッパーイーシャンテン 踊る接吻は海の鱚 ヤッパッパーヤッパッパーイーシャンテン 恋の鰺は隠し味 見つめられる度 ハルヒハルヒで、目が回る 恋になりそうで ハルヒハルヒで タンマタンマで そんなもんねとお友達 迫力で口説かれ 星の街逃げ出した 夢見てたデートが マラソンになっちゃう! 痒いメルヘンも 乙女には媚薬 君の優しさに 包まれてみたいの 冗談よ だけど …ハートは透けちゃう (…いつかは透けちゃう) (※ 繰返し) 見つめられる度 ハルヒハルヒで、目が回る 恋になりそうで ハルヒハルヒで、お友達 (# 繰返し) …何か、合ってる様にしか見えない…ピッタリじゃねぇか… ハルヒはかわいい。 だが、すぐ怒る ツンデレだし気が強い。 おまけに天上天下唯我独尊で 成績も中の上。 言い訳が得意。 口癖は「バカキョン」 座右の銘は「変わりたい」 俺たちは、恋していく。 生きていく。 byキョン キョンは優しい。 だが、バカ。 ツンデレだし気が普通。 おまけにツッコミ役で 成績も中の中。 歴史だけは得意。 口癖は「やれやれ…」 座右の銘は「SOS団を続けたい」 あたしたちは、恋していく。 生きていく。 byハルヒ 朝倉はかわいい だが、すぐ刺してくる 委員長だし責任感強い。 おまけにいつも笑顔でいて 成績はかなりいい。 いろんな説明が得意。 口癖は「うん、それ無理」 座右の銘は「強行突破」 俺たちは、恋していく。 生きていく。 by俺 キョンは優しい。 だが、バカ。 ツンデレだし気が普通。 おまけにツッコミ役で 成績も中の中。 歴史だけは得意。 口癖は「やれやれ…」 座右の銘は「SOS団を続けたい」 あたしたちは、恋していく。 生きていく。 by古泉 俺は優しい。 だが、バカ。 ニートだし気が弱い。 おまけにいじめられ役で 成績も下の下。 オナヌーだけは得意。 口癖は「ハルヒは神」 座右の銘は「みくるは俺の嫁」 俺は、ひきこもっていく。 生きていく。 by俺 長門は無口。 だが、宇宙人。 静かだし気が普通?。 おまけに助けてくれるし 成績も中の上。 読書だけは得意。 口癖は「…ユニーク」 座右の銘は「守りたい」 俺たちは、守っていく 生きていく byキョン ハルヒ みくる 古泉 谷口はお茶目 だが、馬鹿 馬鹿だし頭が弱い オマケに馬鹿だし 成績は下の下 忘れ物だけは得意 口癖は「WAWAWA」 座右の銘は「空気」 俺は見守っていく、これからも、ずっと。 by国木田 ハルヒはすぐ怒るけど…キョンに対してツンデレ キョンはハルヒを見守ってるけど…ハルヒに対してツンデレ そんな二人は気付かないけど、強い絆を結ばれてる… 長門はハルヒを守り、キョンを強い勇気与えてくれる… みくるは、ハルヒとキョンを見守りながらも頑張ってる… 古泉は、ハルヒを暖かく見守り、キョンを応援してる… そんな、ハルヒとキョンは心を通じながらも生きていく… 世界が変わるまで恋していく… それが 世界を変えた奇跡の二人… 永遠に別れることの無い愛… 二人は強く生きていく… 世界が変わる時が来るまでに… 原爆みたいに地球上消し飛ばしたら みんなでどこまでも逝けるね あの世の果てまでドーン ノースでコリアなこの事件は 世界中を巻き込んだ騒動で アソボウ★ ある晴れた日のこと 魔法のようなミサイル 限りなく降り注ぐ ありえなくない 明日また会うとき 笑いながらハミング できるかな わかんないよ 滅亡なんかは一瞬 またうつのかな うたないでいて 大きな 夢 夢 好きでしょ 夢みたいな あの人の温もり 現実から身を投げ、消え去ろうとした私を受け止めて 微笑んでくれたあの人の温もり あの人はどんなに辛くても最後は笑っていてくれた ただ私がお別れを言うと泣いた ねえ、笑って? 私は私から出た言葉に驚いた でもそれは私の真実の言葉 もし私が消えてなくなっても、その笑顔なら思い出せる急がして さよなら……キョン そう残して、私は泣いた 初めて私は彼を呼んだ 彼は最後に笑ってくれた 「おやすみ、長門……有希」 おやすみなさい パーソナルネームナガトユキ 私が目を開けたとき そこは私の生まれた場所 ナンジニ、フタタビメイレイヲ そう聞いて私は再び目を閉じた 再び目を開けた時 私はあの窓辺にいた 彼が泣いていたあの窓辺 近くに落ちていた無題の本 私のたった一つの願い 私の記憶の最初からを綴った本 私は震える手でページを巡る しかし私が消えた時まで読んでも、まだページは半分 そこからは白紙 どこまでも白紙 不意に部屋のドアが開いた 私は見上げた 彼がそこに立っていた 彼は再び笑ってくれた 「おかえり、長門有希」 ただいま 長門有希 課された役割が終わり 消え去ろうとした 私の手を 彼がつかむ どこへいく? 私は帰る どこへ? 私のいるべき場所へ それはここだろう? もし私が笑えるのなら この時私も笑っていただろうか 朝比奈みくる 泣いた ずっと泣いた 任務が終わり 未来へ帰る時 泣いていた私を 繋ぎ止めてくれた 逃げるの? 消え去ろうとしてやめた有希さんが尋ねる 逃げる? 私は逃げない ごめんなさい 私、まだ帰らない 涼宮ハルヒ 私が目覚めた時 傍に彼がいてくれた みんながいてくれた 私がつむいだパズルのピース 誰一人欠けることなく 私は泣いた 初めて泣いた 彼を見て泣いた 皆を見て泣いた 私まだここにいていいの? 当然だろ? ごめんなさい そしてありがとう 終わりまで たった一人で生きること それが私に課せられたさだめ さだめと言うの名の未来 ただ繰り返し 傍観し 孤独でいる運命 私にとって 色も音も存在しない世界 なのに いつの間にか そこにあなたがいた あなたが私の世界で絵を描いた あなたが私の世界で楽器を鳴らした 誰のために そんなことをするのだろう あなたはこう言った気がした お前の ためだ と ありがとう 伝えられぬ想い 紡がれる感情 もし 私に笑顔があるのなら あなたのために 笑いたい 長門 有希 夢追う先に何が隠れてる それすらわからずただ動き出す じっとしているのが苦手なだけ そんな言い訳はもういらない ただ走り続けたいの どこまでも できることならば終わりなんて来ないで欲しい あいつと 私と 皆と 私 いつも一緒に走り続けたい 永久へと向けて もうあの頃には戻らない 戻りたくない ただうつむいて 影でないてた 私は 私の 操り人形 でも あいつが 私の糸を外してくれた 糸の切れたあやつり人形 おぼつかない足取りで あいつが手を引っ張ってくれた わかった ごめんね もう歩けるよ ありがとう まだ 一緒にいて欲しい 涼宮 ハルヒ 冬の夜空に舞い散る雫の様に 冷たく冷え切った心 私は何も望まなかった 望みたくなどなかった ただ景色の一部を彩る欠片に過ぎなかった それが役目だったのだから あなたが私に話しかけるたび 私に暖かい感情を向けるたびに 私は消えてなくなりそうな気がした まるで 雪が溶けて なくなってしまうように 長門 有希 どうしようもなく どうにもできない時 そんな誰にでもある 虚しいファンタジー 主人公は誰でもない自分自身だと 気がついたのはだいぶ後になってからだった 自分自身の手で物語を書き上げる それはとても恐れ多く 俺には荷が重すぎた 誰かに代わって欲しい そう何度も呟いた だけどある日 気がついた 選ばれたのは俺だと あいつらと共に歩むことのできるのは俺だと だから 守る あいつらと その笑顔を キョン 動き出した たった一つの時の流れ 守れるものが 目の前にあった その方法もわかっていた 大切な時をその中で刻んだ それは とても 大いなるものだった 何もかもが指の合間から崩れ落ちることのないように 僕にしかできない覚悟を持って もしその中に組する者へと 広大な危機が迫るとするならば 僕は世界の全てを裏切り その中の者達と戦うだろう それだけの勇気を貰った それだけの覚悟を手に入れた 僕も その中の一人だと 教えられたのだから 古泉 一樹 時の流れ それは時に全てを忘れさせてくれる 優しい春風 そして時に全てに別れを与える 寂しい木枯らし 出会い 別れ 涙 笑顔 それは人の力の及ぶものではなく そして決して刃を持つものでもない 時は静かに刻み続ける 私と 皆の 思い出を そして静かに歩みを寄せる 私と 皆の 別れの時を 願わくば もう少し 願わくば 目が覚めるまで 私はまだ ここにいたいから 朝比奈 みくる 決して終わることのない悪夢 ただひたすら同じ事を繰り返すだけ 現実というものはなぜこうもつまらないのか だから私はあらがった それが無意味なものだと知りながら それが私にできるただ一つのことだから そんな私についてきてくれた人達がいた 彼がいた 彼女がいた 彼女がいた 彼がいた 影で 私は 泣いた 終わりまで 最後まで 夢が覚めるまで 私はここにいる 涼宮 ハルヒ 決して終わることのない悪夢 ただひたすら同じ事を繰り返すだけ 現実というものはなぜこうもつまらないのか だから私はあらがった それが無意味なものだと知りながら それが私にできるただ一つのことだから そんな私についてきてくれた人達がいた 彼がいた 彼女がいた 彼女がいた 彼がいた 影で 私は 泣いた 終わりまで 最後まで 夢が覚めるまで 私はここにいる そうです、私が変なおぢさんです(´・ω・`) 黒みくるの歌 撲殺天使 バットでドスドス ミクルちゃん 撲殺天使 血みどろどろどろ ミクルちゃん 斬って殴って嬲って 刺して晒して垂らして でもそれってボクの「愛」なの 名前変えただけだし微妙だな これが勝利の鍵だ! アッガーレ! 音も無い世界に 舞い降りた I was snow グレイの陰謀 人類滅亡 どこまですごいノストラダムス!! 宇宙人 未来人 超能力者SOS!! SOS!! MMR!! SOS!! MMR!! グレイ マシャール 最終戦争 ノストラダムスMMR!! SOS!! MMR!! SOS!! MMR!! ―――――なるほど行きましょう。 超人集合SOS 超常現象MMR 日常体SOS 人類滅亡MMR 二人は一体共同体!! 閉鎖空間 セカンドレイド 情報統合思念体 グレイ マシャール グランドショーフ←? 最終戦争ノストラダムス!! あなたとの関係の段階が物語り創っていく 俺が長門で長門が俺で二人は合体融合体!! SOS!! MMR!! SOS!! MMR!! SOS!! MMR!! 長門さんに会いたいNA!! SOS!! MMR!! SOS!! MMR!! SOS!! MMR!! 俺も読書が趣味なんDA!! SOS!! MMR!! SOS!! MMR!! SOS!! MMR!! 踊りませんか長門SAN!! SOS!! MMR!! SOS!! MMR!! SOS!! MMR!! 伝えたい!! 伝えたい!! 貴方に言いたいご覧の通り!! 私は一つの豆電球 皆で飾った部室の中で 彩る一つの豆電球 別にいなくても変わらない 私は拙い豆電球 配線が切れてつかなくなった 私はこのまま捨てられるだろう 彩る一つのパーツに過ぎない だから私は消えるだろう 想い重ねて瞼を閉じる さようならとも言えずにサヨナラ 突然私に光が戻る あなたが繋げた配線で 驚く私にあなたが言った 私も大事な仲間なのだと 浮かぶ涙を必死にこらえ あなたに言ったありがとう 長門有希 眠れない夜、ふとあの人の事を考える この感覚はなんなのだろう 私の中へ蓄積されてゆくエラー それはとても苦しく哀しく、だけどとても暖かいもの 私はただ一つの目的で作られただけのもの ただ一つをまっとうすべきもの だけど、だけどその場所に あの人がいた 決して表に出すことの許されない感覚 それは私の指命とは異なるもの だけどもし、私が一つだけ、望むことが許されるのならば、 まだ、あの人の傍らで本を読みたい 長門有希 姉歯元一級建築士の憂鬱 鉄骨でしょでしょ? 偽装はいつも私の夢に 何でだろう? 小島を選んだ私です もう止まらない ヒューザー様から 決められたけど I believe ネジだけじゃつまらないの My dream night! 儲かるから 強度偽装だけをするよ 鉄骨でしょ?でしょ? ほんとにネジを減らす物件で 金になるから 偽装するのよ ヒューザーのためじゃない 一緒に来てください 証人喚問で 私を見てよね 明日ヅラを取った頭姉歯設計 コストを減らそう 隠そう偽装を I believe ナガモンユカイ ナゾナゾみたいに情報連結解除したら キョンくんと何処までも行けるね また図書館に Booon ノイズでエラーなこの想いは 何もかもを巻き込んだ妄想で 遊ぼう アル雪ノ日ノ事 朝倉の触手が 限りなく突き刺さる ナガモン じゃないわ 明日また会うとき 無表情で ハミング♪ 邪魔者は砂と化す カンタンなんだよ こ・ん・な・の 追いかけてね つかまえてみて 小さな 胸&胸 好きでしょ? 星空見上げ 私だけのヒカリ教えて あなたはいまどこで 誰といるのでしょう? 楽しくしてるコト思うと さみしくなって 一緒に観たシネマひとりきりで流す 大好きなひとが遠い 遠すぎて泣きたくなるの あした目が覚めたら ほら希望が生まれるかも Good night! I still I still I love you! I m waiting waiting forever I still I still I...........
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/503.html
涼宮ハルヒの改竄 version H 涼宮ハルヒの改竄 version K
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1616.html
俺が涼宮ハルヒと出会ってどれくらいの月日が経過したのだろうか。 コレまでも、寝てる間に閉鎖空間に連れ込まれたり、時間を巻き戻されて 何度も八月を体験したり…… 寝起きドッキリには多少どころか多分に耐性が出来ていると思っていたのだが…… 「何だコレは……」 ――――目を開けるとそこは不思議な世界でした どこのジブリかと自分自身に突っ込みを入れたくなる。 さて、冷静に現状を整理してみようか。まず第一にここは俺の部屋じゃない。 カレンダーも、MDプレイヤーも、更には教科書までもがこの空間には存在しない。 ログハウスのような木の質感がはっきりと見て取れるこの部屋にあるのは 俺が今まで寝ていたこのベッドと、壁にかかっている地球のものかもわからない不思議世界地図、 後は小さな、洋服いれとも小物いれともつかない棚だけだ。 第二に、起こしに来た妹の服装が、少なくとも一般的な日本人が着るようなものではなくなっている。 例えるなら、カカリコ村のコッコ姉さんみたいな服装とでもいえばわかりやすいだろうか。 わかりやすくなくとも今の俺にはそうとしか表現できないな。 「ほら、キョンくん早くー。ごはん冷めちゃうよー?」 わかったわかった。今から行くから先に行ってなさい。 はーい、と間延びしたいつも通りの声で返事をして、俺の部屋の戸を閉めると、 妹のとたとたと階段を降りるような足音が聞えてきた。 少なくともここは二階建て以上らしい。 階下に向かうとそこにはまた見慣れない光景が広がっていた。 両親の姿には変わるところがないのだが、家も、食事のタイプも全く違う。 ここで食パンにシリアルでも出てきたのなら俺はもっと安心できたろうに、 今朝のメニューは見たこともない魚の丸焼きにキノコや木の実のサラダだった。 ……不味くはないが、なんともいえない不思議な感じがした。 さて、部屋に教科書がなかったから俺は学校に行かなくても良いんだよな? 食事のメニューから考えるに畑仕事や魚捕りはやらされそうだが。 「キョンくんは今日から『まおー』をやっつける冒険にいくんだよね?」 妹よお前は何を言っているんだ?まおーはやっつけるものじゃなくて スケートリンクに見に行くものだろう。……我ながら寒いギャグを思いつくものだ。 オヤジ選手権があればコレだけでトップスリーには食い込めることだろうきっと。 「えー?キョンくんこそ何言ってるの?剣も買って、一緒に冒険に行く友達も見つけて、 昨日あんなに張り切ってたのにー」 やれやれ、俺の知らないところでストーリーはそんな風に進んでいるらしい。 この世界の異常の心当たり。まぁ心当たりも何もこんなことが出来るのは俺の知る限りハルヒしかいない。 どっかの学園ギャグマンガみたいに今までの生活全てが俺の夢だといわない限りな。 この話の筋書きを書いたのはハルヒだ。そうするとこの流れに乗っかればそう遠くないうちに ハルヒに出会うことは出来るだろう。乗り気はしないが、 ここはとりあえずその“お友達”とやらと合流して冒険の旅に出るとしようか。 まずハルヒに出会わないと話が進まない。魔王と戦うなんてのはゴメンだけどな。 剣とかいう凶器を取りに一旦部屋に戻り、 タンスの中から見つけた友達との待ち合わせの場所を書いたメモと 薬草(らしきもの)を道具袋にねじ込んだ俺は、『世界樹の森の広場』なる場所を目指した。 村のヒトに話を聞くとそこは村を出て北東に行ったところにあるらしい。……魔王に村人に タンスから薬草、いよいよ世界がドラクエめいてきたな。 もしかして道中、モンスターなんかが出てきたりするのか? 善良な一般高校生に生き物の殺生なんかさせるなと言いたいね。どっかの愛護団体から訴えられてしまうじゃないか。 物語的に運が良いのか悪いのか、目的地の広場へと続く道程にモンスターが出てくることはなかった。 ……まぁ遠くにそれらしき影はチラチラと伺えたのだが、そこは上手くスルーしてきた。 目立たないことと現状維持は俺の得意技だ。 驚くほどスムーズに広場へと到着し、後は友達とやらの到着を待つことになった。 ここに来てふと疑問が浮かぶ。なぜハルヒは眠っている間にこんな世界を作り出してしまったのか。 今までのケースから見ると、ハルヒはこの世界の住人になることを強く願ったということになる。 たしかにハルヒの望むカタチではなかったかも知れんが、SOS団の面々でわいわい遊ぶのに 大分満足していたと思うのだが。俺にはハルヒの気持ちがこれっぽっちも想像できないね。 森の、そう遠くない場所から、ざっ、っと足音のようなものが聞こえた。 俺は腰に引っ下げた剣に手を伸ばしつつも広場の木の陰に隠れて、足音の聞こえた方を伺った。 ……人影が見える。 例の冒険の“友達”か? いや、遠すぎて判断できない。 仲間の可能性は高いが、同様に敵――つまりはモンスター――である可能性も否定できない。 見慣れない世界だからこそ、不測の事態に備えて最大限の警戒を。 それにしてもあの人影が仲間だったとして、それが谷口だったらイヤだな。 頼りないことこのうえない。 無駄なことに俺のささやかな脳細胞が活動をしている間に、 その人影は俺のほうへと大分近寄ってきていた。 ……はっきりとは見ていないが、あの体格なら女だな。 露出の多い服装だから、俺のゲーム知識から考えうる役職からして女戦士といったところか? 武器の携帯は見られない。 どうやら向こうに敵意は無いようなので、 警戒はしつつも俺は木の陰から一歩足を踏み出した。 ―――そこにいたのはハルヒだった いつか会うだろうとは思っていたがそれがこんなに早くに実現してしまい、 俺はひどく狼狽した。 しかしそれは向こうも同じ様子、きっとハルヒも俺と似たようなことを考えていたのだろう。 「なっ……ハルヒ!この世界は何なんだよ!?」 「そんなの私にだって解るわけないでしょ!」 そうだった。古泉曰く、コイツは自分に力の実感のない不完全な神様みたいなもんだったな。 コイツに聞いたところでことの真相が解るわけでもない。 さて、これからどうしようか。 「そんなの知らないわよ。あたしだって朝起きたらいきなりこんなになってるし、 一体世界はどうなっちゃってるわけ?」 根本の原因はお前にあるんだよという発言を喉の奥に飲み込み俺は軽く思案してみる。 「とりあえず長いものには巻かれるということで一緒に旅でもしてみるか?」 「なんでキョンなんかと一緒に旅をしなきゃ行けないのよっ!それにアンタどことなく 弱そうだし、モンスターに会ったら一発でやられそうじゃない」 ぐっ、戦いを避けていた俺としては全く否定ができない。 しかしそういうお前はどうなんだ?見たところ戦士っぽいが剣も何も持っていないじゃないか。 「私は武闘家よ。アチョーってなかんじで敵をバシバシやっつけちゃうわけ」 なるほど合点がいった。モンスター相手にドロップキックを笑顔でぶちかますハルヒの姿が 容易に想像できる。 それにしても衣装と役職が全くかみ合っていないな。まぁお前らしいといえばお前らしいが。 「一応タンスの中に武闘家の服もあったんだけどね、可愛くないからやめたのよ。こっちのほうが 私としては気分が出るし」 それはわかった。で、結局行くのか行かないのか、どっちなんだ? 「行くわよ。アンタがココにいるってことは、有希やみくるちゃんや古泉くんもどっかに いるかもしれないし、SOS団異世界支部の結成ね!」 ……非常に心強い反面、非常に不安だ。予測される多難な前途に俺はこの言葉を送りたいと思う。 ―――やれやれだ ~To be continued?~
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/6007.html
涼宮ハルヒの遡及Ⅸ 「どうやらこれで一段落ね、そう言えば、ラスボスってどこにいるの?」 一息ついたアクリルさんがハルヒににこやかに問いかけておられます。 まあ俺もそう思ってるし、長門、古泉、朝比奈さんも当然抱く疑問だろう。 この世界を消滅させ、俺たちが元の世界に戻るためには、世界の鍵となるラスボスを倒すしかない。なら、どこにいるのかくらいは知っておきたいところだ。最終目標があるのとないのとでは気分が随分違うもんな。たとえ、そこまでがどんなに長くても、だ。 ちなみに今の巨竜がこの世界のラスボスでも問題はないと思ったんだが残念ながらそうじゃないことはハルヒ自身が言っていた。 はてさて、次はどんな敵キャラと遭遇しなきゃならんのか。 などと呑気に憂鬱なことを考えていた俺だったのだがどうやら、やっぱり俺の、つうか、俺たちの考えは相当甘かったらしい。 ハルヒに関しては常に最悪を想定して動き、それでもあいつはさらに斜め上に行くと予想しなければいけなかったことを痛感させられたのである。 「あ、ラスボスはこの地上そのものなのよ」 ハルヒの何かふと思い出したような声が聞こえてきたと思ったら、一瞬、この空間が協調反転して凍りついたと感じたのはおそらく気のせいではないだろう。 ……今、ハルヒの奴、何つった? 「あの……もう一回言ってくれる……? 何がラスボスだって……?」 アクリルさんが表情には如実に『冗談だよね?』と書いてある引きつった苦笑を満面に浮かべて再度確認を求めている。 ああ、はっきり言って俺も思ったさ。聞き違いであってほしいってな。 「ええっと……その……この地上がラスボスと……」 どうやら聞き間違いではなかったらしい。 ハルヒが珍しくバツが悪そうに答えてやがるからな。その態度が余計に真実味を増すってもんだ。 って、この地上がラスボスだと!? 「だ、だってその方が面白いじゃない! 悪役とか敵ってのを世界が生み出すんだから、なら、『世界そのもの』を破壊する展開が本当の正義を守ることになるじゃない! 斬新な発想ってやつよ!」 「にしたって斬新過ぎだ! 敵を生み出すかもしれんが主人公や味方を生み出すのも『世界』なんだ! なのに『世界を崩壊させる』ことを解決にしてしまったら、主人公側の勝利の後に何にも残らんじゃないか!」 「む……それは確かに……」 今、気づいたんか!? 「とにかく、今はそんなこと言ってられないわ。この『世界』が敵だって言うのであればこの地に留まるわけにはいかないわよ!」 言って、アクリルさんが俺とハルヒの手を取り、古泉は朝比奈さんの手を取った。 「レビテーション!」 「むん!」 アクリルさんが術を開放し、古泉が表情に力を込める! アクリルさんと俺とハルヒは浮き上がり、古泉が生み出した赤い球体が朝比奈さんをも包み込み、外側に電流をスパークさせながら宙へと上昇! 長門は、 「わたしの体内に反重力物質を生成。調整することによって空中浮揚可能」 もちろん自力で飛んでいる。そう言えば今、初めて長門が飛んでいる理屈を聞いたな。 「さっすが宇宙人! 重力コントロールもお手の物って訳ね!」 おーいハルヒ? そんな呑気なこと言ってる場合じゃないぞ。この世界はどうやったら崩壊させられるんだ? でないと俺たちはいつまで経ってもここから出られないことになるし、出られないってことはその間、ずっと命を狙われ続けるんだが? いくら長門、古泉、朝比奈さん、アクリルさんでも体力と能力に限界が来ちまうぞ。 そう。なんたって、俺たちが宙に浮いた瞬間から、いきなり地面が崩れ、眼下には俺たちを呑みこまんばかりに荒れ狂う『海』が見えているのである。 しかも、いつの間にか周囲すべてがだ。地平線の彼方までずっと荒波が続いている。 ついでに空には雷雲がたちこめ、雷雨と暴風雨も俺たちを激しく責め立ててやがる。 もっとも、俺とハルヒはアクリルさんの結界術の中にいるし、古泉と朝比奈さんは古泉の赤いエネルギー球によって嵐から身を守っている。長門は勿論、自身で作りだしたシールドを展開済みだ。 それでもお互いの声が聞こえるのはアクリルさんが何かしたのだろうか。と想像するのは考え過ぎか? 「さて、どうしましょうか?」 という古泉の、珍しく笑みが消えた真剣な声が俺の耳に届いているもんな。 「……いつもの閉鎖空間であれば《神人》を倒すことによって『世界の崩壊』を導くことができるでしょうけど、残念ながら今回は閉鎖空間ではなく局地的非侵食性融合異時空間。《神人》が存在しない以上、正直、僕には打つ手なしです」 確かにな。ならお前はとりあえず朝比奈さんを守っていろ。 「了解しました」 俺もまた神妙に返し、古泉は少しだけ笑顔を取り戻して首肯する。 「悪いけど、あたしにも世界を崩壊させる魔法なんてないわよ。むしろ魔法の概念は逆だしね。魔法は世界が持つ『力』を『引き出して』行使する。つまり、『世界』が無ければ魔法は使えない。だから世界を滅ぼす魔法は存在しないってわけ。例外は自分の魔力で創り出す精神魔法、あたしたちの言葉でアストラルマジック。でもこれは精神に作用するものであって物理的攻撃手段にならない」 ううむ……となると……ハルヒがこの世界の消滅を望むしか…… ――残念だけどそれも無理―― って、アクリルさん!? いきなりテレパシーって!? ――今はそんな些細なことはどうでもいいの。で、ハルヒさんが望んでも無理な理由は、この空間が世界としてとまでは言わないけど、エアーポケットワールドとしてもう定着しちゃったからなのよ。エアーポケットだから、これ以上広がることはないけど、ある意味、ここは『異世界』。つまり、世界が違う以上、ハルヒさんの願望現実化の能力下からは外れてしまっている―― ちょっと待ってください。今の説明からすれば、ハルヒが来た時点で古泉の力も朝比奈さんの力も無くなるんじゃないですか? ――ううん。それは話は別。だってハルヒさんが望んだのは元の世界にいたときだし、しかもコイズミさんとアサヒナさんに力を持たせたまま、こちらに転送したから。むしろ心配なのはナガトさん。彼女が貴方の言った通りの存在なら、ジョホートーゴーシネンタイとかいうエネルギー供給源が今、断絶された状態になっているはず。だって、この世界は元の世界からは切り離された存在。世界を越えてまでエネルギー供給が可能だとは思わない。それが可能ならナガトさんがとっくにあたしたちを脱出させているはずよ。その供給源を伝ってね―― なんだって!? アクリルさんの説明を聞いて、俺は弾かれたように長門に視線を向けた。 「長門! お前は……!」 「大丈夫。もしものときは古泉一樹に協力を乞う。それとわたし個体のエネルギーが切れたとしても、『悪の魔法使い』としての力は内臓されたまま。攻撃手段がなくなるわけではない」 そうか。こういうときはハルヒの無茶な思いつきに感謝してしまうな。 「てことでハルヒ。お前はどうやってこのお話のラストを飾るつもりなんだ?」 俺も含めて、長門、古泉、朝比奈さん、アクリルさんのみんなが何もできないとなると、残るはこの物語を創り出したハルヒに委ねるしかない。まさか、主人公格が全滅してBAD ENDなんてことは考えないと思うんだが…… 「……まだ考えてない」 うぉい! 「だってしょうがないじゃない! あたしがこの世界に引きずり込まれた時は、まだプロットが途中だったんだから!」 あ。 「なるほどね」 アクリルさんが自嘲のため息をついていらっしゃいます。 「世界の設定、登場キャラクターの設定は決まってるから『世界』としては成り立つけど、ストーリーがまだ最後まで行ってなかったのね。でもまあ、ハルヒさんが居てくれてよかったわ。でないと、この世界の『ラスボス』が何かはずっと分からなかっただろうし」 まあ確かにその通りなんだが…… …… …… …… やっぱアクリルさんはすげえ場馴れしているな。ここまで冷静に状況を分析するなんざ俺たちには無理だ。 それができるとしたら長門だけではなかろうか。 「方法がないこともない」 って、長門! いつの間に!? 「sleeping beurty」 ――!! なるほどな……確かにあの日のあの世界もハルヒが創り出したとはいえ、ある意味、独立した世界だった。今の状況は酷似していると言ってもいいかもしれん…… 俺はハルヒをちらりと見る。 「ん? 何?」 ハルヒがきょとんとしている。 どうする? 今の長門の提言を素直にハルヒに伝えるか? ハルヒはもう、あの日のことが夢でなかったことを知っているんだ。なら、事情を話せば同意してくれると思うんだが…… 「ねえハルヒさん」 って、俺が話しかける前にアクリルさんがハルヒの声をかけてるし。 「この物語のラストをまだ決めていないことは分かったわ。でも『世界』をラスボスにするなら当然、主人公格の方に何か『世界を倒せる』力を付けたわよね? じゃないと物語は終わらないし。それを教えてくれない?」 そうか。確かにそう言う力は真っ先に決めてあることだろう。でないと話が作れない。通常、物語を作る際には出だしとクライマックスを先に決めておいて、その上でその展開やそこまでの過程、エンディングを決めるものだ。いくらハルヒが行き当たりばったりと言ってもそれを考えていないとは思えない。作成過程で色々な話が付け加えられることは多々あるだろうが大筋が変わることはあり得ないだろう。でなけりゃあの去年の文化祭の自主制作映画も完成しなかったことになるからな。 「……ある」 「は?」「へ?」 ところが、なんと答えたのはハルヒではなく長門である。というか何で長門が気づくんだ? 「以前、ミクルの設定資料を見たことを思い出した。あれにミクルミサイルというものがあり、それは我々は名前を付けていない地球外物質を用いた兵器で、朝比奈みくるの胸部の質量分を爆薬として使用した場合、地表を七回焼き尽くすことが可能な熱量を発生させられるものであった」 「ふ、ふえ!?」 「そう言えばそんなことを仰ってましたね」 朝比奈さんが悲鳴をあげ、古泉が苦笑している。 ……てことは、今の朝比奈さんはそんな物騒な物質を内蔵してるってことか? まあ……目からレーザーを出せるんだ……充分、物騒なものを内蔵されてても不思議はないかもしれんが…… 「ちょっと有希。前も言ったけど、あんなあたしの思いつきの設定を真面目に語らないでよ。聞いてるこっちが恥ずかしくなるわ」 その割には、否定しないんだな? 兵器の威力については。 「そりゃ、そっちの方が面白いじゃない。それに、ミクルビームだけじゃなくてミクルタイフーンもミクルミサイルも映画では使う機会がなかっただけで、別に外したわけじゃないわ」 ……よし 「どうやらこれで何とかなりそうよ」 「同感」 「そのようですね」 お? アクリルさん、長門、古泉も俺と同じ意見か? 「え? え? それはどういう意味ですか……?」 「ちょっとキョン、まさか有希の設定をまともに信じたんじゃないでしょうね?」 どうやら朝比奈さんとハルヒだけが解っていないらしい。 「ただし問題がある」 切り出してきたのは長門だ。 「……発射までのエネルギーチャージにかかる時間のことね……」 「そう。ミクルビームは連射できない。それはチャージのための時間が必要と言うこと。そしてミクルミサイルはミクルビームよりも強大な力。故にチャージにかかる時間も少なからず小さくない」 「どれくらい?」 「時間に直して三十分ほど」 などとアクリルさんと長門が会話を交わしている。まあこういう話になればこの二人の専門分野だ。 ハルヒも古泉も朝比奈さんも黙って聞くしかないだろうぜ。つか、創り出したハルヒが何でその設定を知らんのだろう? まあそれはちっともよくないのだがよしとしよう。 それよりも長門が『問題』と言ったことの方が重要だ。 三十分ならそうは長くないと思うが…… 「なるほど。なら、その間は是が非でもあいつらからアサヒナさんを守らなきゃ、って訳ね」 「そう」 何!? アクリルさんが視線を肩越しに背後に移せばそこには、大きさ的にはさっきの翼竜のだいたい五分の一くらいだが、どこか始祖鳥を連想させるデザインの怪鳥が大群でこちらに向かってくるのである。 涼宮ハルヒの遡及Ⅹ