約 774,140 件
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/204.html
ハルヒ「なに!?なんなのこれ?ちょっとキョン? 来なさい!3秒以内!!」 インターネットサーフィンをしていたハルヒが突然騒ぎ出した。やれやれ。 キョン「お前ももう少しパソコンの使い方覚えろよ・・・ って!なんじゃこりゃあ!!!!」 俺は思わず叫び出した。 パソコンがフリーズしたかと思ったら、なんとそこに画面いっぱいに朝比奈さんのメイド服と、長門のカメラ目線のアップと、ハルヒの指をこちらに向けて踊っている写真がポップアップで出ていたのである!! 朝比奈さんが万が一自分のこんな写真が全世界に流れていると知ったら、おそらく卒倒してしまうであろう。 キョン「ウイルスだな・・・しかし何だってこんな― 長門 「見せて」 カタカタカタカタ・・・ 長門 「行ってくる」 キョン「オイ行くってどこに!?待て!」 長門 「すぐそこ」 そう言うと、長門は部室を出て行ってしまった。 うーん。なにが分かったのだろうか。 直後、隣の部屋から声が聞こえてきた。 「いらっしゃい。あ!長門さん!待ってたよ!」 『ドカーン、バゴーン、ズガーン!!』 「長門さん!?止めてくれ!」 『ドガーン!』 「済まなかった!あやまr」 『ドーン!』 「ごめんなさいごめんなさいごめんなs」 『ドカーン!』 コツ、コツ、コツ。 長門 「ただいま」 キョン「よう、早かったな。久々のコンピ研はどう だった?」 長門 「ユニーク・・・」 ―翌日― コンピ研が無期限活動停止処分になったのは言うまでも無い。 涼宮ハルヒのウイルス 完
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1606.html
その日、ちょっと遅れて部室へ向かっていたオレは、ありえないものと廊下で遭遇した。 そりゃ未来人、宇宙人、超能力者と毎日顔をつきあわせてダベってるオレだ。そうそう のことでは「ありえない」なんて言葉は使わないようにしている。 そんなオレが、あえて「ありえない」と強調して言うんだ。 正直なところ、奥から走ってくるその姿は他人の空似かと思った。けれど、オレがあの 人を見間違えるわけがない。 顔を伏せ、手を口元にあてながら逃げるように走るその人は、紛れもなく朝比奈さんだ。 なのに、オレのことにも気づかずに、横を通り抜けてそのままどこかへ行ってしまった。 ありゃどう見ても泣いている。しかも、精神的にかなりのダメージを負った泣き方だ。 その姿に、オレは追いかけることも忘れてただ見つめるしかできなかった。 そりゃそうさ。あまりの出来事に呆然としてたんだ。が、よく考えれば由々しき事態じ ゃないか? あの朝比奈さんがマジ泣きしてたんだぞ。いったい誰の仕業──。 いや。 いやいや、ちょっと待て。よく考えろオレ。冷静になるんだ。 まず、ここはどこだ? そう、部室棟だ。なら、部室棟には何がある? SOS団のア ジトだ。そしてSOS団のメンバーが泣かされて、そのままに放置する薄情者が団員の中 にいるか? ノーだ。団員に手を出すヤツはハルヒがただじゃおかない。 にもかかわらず、そのまま放置ってことは……朝比奈さんが泣いている理由はひとつし かないな。 オレは全速力で部室へ向かった。今日はノックする必要なんてない。朝比奈さんは、さ っき泣きながらどっかに行っちまったんだからな。 「おいこらハルヒ!」 自分でもけっこう乱暴にドアを開けたと、あとあとになって思う。そのくらい、オレは 頭にキてたんだろう。 部室内には、ハルヒしかいなかった。長門も古泉もいない。2人は朝比奈さんを捜しに いったのか、それとも最初から来ていなかったのかわからないが、少なくとも部室内にい るのはハルヒだけで、そのハルヒは定位置に座って外を眺めていた。 「何よ、うるさいわね。静かにドアも開けられないの?」 それをおまえが言うか。まぁ、そんなことはどうでもいいんだ。 このテンションの低いハルヒを見れば、一目瞭然だ。朝比奈さんを泣かしたのは、コイ ツで間違いない。 「ハルヒ、おまえ今度はいったい何をやらかしたんだ!?」 「なんの話よ」 「さっき、そこで朝比奈さんとすれ違った。マジ泣きしてたぞ」 「……あっそう」 そう……っておい、それだけか? 朝比奈さんもSOS団の大切な団員だろ? それを 泣かせて、「あっそう」の一言でおまえは済ませるのか!? カッとなったオレは、いまだに外に顔を向けたままこちらを見ようとしないハルヒに近 付き、強引にこちらを向かせた。事と次第によっては、殴ろうかと思ってたくらいだ。 けれど、なすがままにこちらを向いたハルヒの顔を見て、オレは息を呑んだ。 目は真っ赤に充血し、頬には乾いたばかりの涙のあとがある。それをオレに見られてど う思ったのかは分からんが、睨むその表情はすぐに険しいものになった。 「何よ……もう、何なのよ! 何も知らないくせに騒がないでよ! ああ、そうね。キョ ンはみくるちゃんのこと大好きだもんね。だったら、さっさとみくるちゃんのとこ行けば いいでしょ!」 叫ぶや否や、ハルヒの平手が飛んできた。あまりにも突然すぎて思わず避けちまったん だが、それがまた、ハルヒの癇に障ったようだ。 「何で避けるのよ! あんたなんて、素直に殴られてりゃいいのよ!」 むちゃくちゃ言うなよ。なんで八つ当たりで殴られなきゃならんのだ。そんなに殴りた ければ、フィットネスクラブに行ってサンドバッグでも殴っくりゃいいじゃないか。 などとはとても言えず、朝比奈さんの泣き顔で頭に登った血が、ハルヒの泣き顔で一気 に下がった。いくらオレでも、こんなハルヒを見れば一概に『おまえが悪い』とは言えな いさ。 「何かわからんが、オレも悪かった。まずはケンカの原因を話してみろ。事と次第によっ ちゃ、力になってやらんこともない」 「……ない……」 なんだって? 「あんたに言う必要ない、って言ったのよ! いいからほっといてよ!」 オレを突き飛ばし、自分の鞄を引っつかむとハルヒは部室から飛び出して行った。 今日は本当に、ありえないことが次々と起こる。女同士のケンカに首を突っ込むとロク なことにならなさそうだが……でもまぁ、仲が良ければケンカのひとつもするだろうさ。 これはもう、傍観しとくのが賢い選択だろう。 傍観できれば、だけどな。 その日、結局部室に古泉は現れなかった。古泉だけじゃない、長門の姿も見ることはで きなかった。といっても、オレが部室に残っていた時間はハルヒが帰ってから1時間くら いだけどな。 なんか今日は調子が狂う一日だったが、たまにはこんな日もあるだろうさ。部室で朝比 奈さんの淹れてくれたお茶が飲めなかったのは残念極まりないが、ハルヒと朝比奈さんの ケンカも明日には──まぁ、度合いにもよるだろうが──仲直りしててくれりゃ有り難い。 そう思って下駄箱を開けると……ウサギのシールで封をされたピンクの封筒が入ってい た。周囲を見渡し、誰もいないことを確認してから、手紙を手に取る。 改めて周囲を確認し、本当に誰もいないことを再確認してから開封。中にはたった一言 『公園のベンチに来てください』と書いてある手紙が入っていた。 差出人の名前は、みくる、と書いてある。 こうやって下駄箱に手紙を入れられていると未来的な雰囲気が漂い、いやぁ~な予感が するが、オレが朝比奈さんの呼び出しを断る理由なんざ1ミクロンもありはしない。 もはや口癖になっているいつものセリフが喉もとまで出かかったが、グッと飲み込んで オレは学校を後にした。 朝比奈さんの呼び出しに、オレの足取りはいつもの3倍は軽やかに……って感じにはな らなかった。 さすがにハルヒと朝比奈さんのケンカ後だし、待っているのが朝比奈さん(大)かもし れないって思いもミックスされれば、足取りは重くなるというものだ。 そんなオレの沈んだ気分を持ち上げてくれたたのは、いつも部室でお茶を淹れてくれて いる朝比奈さんがベンチに腰掛けていた、ということだろう。 まぁ、軽くなったのは一瞬だけだ。どうにも嫌な予感がする。これまでの経験がちゃん と血となり肉となっているのか、はたまたオレの第六感もそこそこ鍛えられているのか、 嫌な予感だけはよくあたるんだ。 「こんなところで何やってるんですか、朝比奈さん」 「え……? あ、え、キョンくん?」 別に他意はなかったが、さも偶然を装ったフリをして声をかけてみると、朝比奈さんは 驚いた素振りを見せた。 ……決定、あの手紙は朝比奈さん(大)からの手紙だ。 「隣、いいですか?」 「え……っと」 何か言いたそうな顔をしているが、オレは返事を待たずに隣に腰を下ろした。 手紙の主が朝比奈さん(大)だろうと朝比奈さん(小)だろうと、どっちでもいいんだ。 今ここに、ハルヒとケンカをして泣いていた朝比奈さんがいただけで、来た甲斐があった ってもんさ。 流れる川の水面をどれほど眺め続けただろう。 オレから何か話しかければよかったのかもしれないが、あいにく気の利いたセリフは何 も思い浮かばない。 ハルヒとのケンカなんて気にするな、と言ったところで、それは当人同士の問題だ。外 から何か言われても、下手すればよけい意固地にさせる結果になるかもしれない。 「……キョンくん」 オレからは何も言うべきことがないと悟って黙っていると、日が暮れて、街灯に灯りが 灯り始めた時間になって、ようやく朝比奈さんは沈黙を破った。 「来てくれて、ありがとう……」 「偶然ですよ」 かなり作為的な偶然だな、と考えて苦笑が漏れる。素直に「捜しに来ました」とでも言 った方がよかったのか、それともこれでよかったのか、ガキのオレにゃよくわからん。 ただ、こうなったら朝比奈さんが何か喋ってくれるまで、とことん付き合うつもりでは いるんだ。オレにはそのくらいしか出来そうにないからな。 「あたし……ね」 ぽつりぽつりと、吐息を漏らすように言葉を紡ぐ。何を言うべきか迷っているような、 何を言えばいいのか考えているような、一言の間がかなり空いているが、オレが黙って朝 比奈さんが話す言葉を理解しようと耳を傾けた。 そして、朝比奈さんが次に漏らした一言には、我が耳を疑ったね。 「あたし……未来に帰ることにしちゃいました」 その言葉の意味を、しっかり頭の中で理解するのにどれほどの時間を要したろう。 当然だ。そんなことを急に言われても、すぐに理解できるわけもなければ、納得もでき やしない。 そりゃ、朝比奈さんは未来人だ。いつかは本来の時間軸に戻る日が来るんじゃないかと は思っていた。でもそれがこんな急に、しかもこの日に訪れるなんて、理解しろという方 が無理ってもんだ。 「それは……何故ですか?」 口の中が乾く。頭がぐらぐらする。それでもオレは、張り付く唇を無理矢理こじ開けて 納得のできる答えを求めた。 「何でって……ほら、あたし、全然ダメでしょ。みんなの役に立たないし、大変な時にだ っておろおろするばかりだし……自信なくしちゃった」 本当になんで……この人はこんな時にまで……。 儚げに笑う今の朝比奈さんを見れば、オレじゃなくったって苛立ちの感情しかわいてこ ないさ。 そんな言い訳じみた理由が聞きたいんじゃない。どうしてここにきて、オレにそんなウ ソを吐くんだ。悔しいし、情けない。これまで一緒にハルヒや長門、古泉たちと行動を共 にしきたんだぞ。その中で朝比奈さんの存在は、はずすことなんてできやしない。いない ほうが不自然じゃないか。 なのにどうして、その関係を崩すような事を言うこんな時にまで、ウソでごまかそうと するんだ!? 「ハルヒとのケンカが理由ですか?」 まだウソを並べ立てる朝比奈さんの言葉を遮るように、オレは我知らずキツイ口調で問 い質すように聞いていた。 「え……っと……」 「朝比奈さんがハルヒとケンカしたのは知ってます。朝比奈さん、泣いてたじゃないです か。未来に帰るって……それが理由ですか? ウソやごまかしはやめてください。本当の ことを話してください」 「それは……」 朝比奈さんは、言葉ではなく首を縦に振ることで、オレの問いかけを肯定した。 「だったら、そんなのハルヒに謝らせればいいんです。朝比奈さんが未来に帰る理由にな んてならないじゃないですか」 「違う……違うの、キョンくん。そうじゃないの。涼宮さんとのケンカは、きっかけでし かないの。それに、あれはあたしが悪いの」 そう言う朝比奈さんは、両手で顔を覆っていた。こぼれる言葉は嗚咽とともに溢れ、オ レは……情けないことに、ただ見ているしかできなかった。 「あたし……あたし、涼宮さんに知られてしまったの。ずっと隠しておかなければならな かった禁則事項を涼宮さんに知られて……。だ、だから……もう、もうあたしは……この 時間平面には……」 嗚咽が号泣に変わり、朝比奈さんの目元からは大粒の涙がこぼれていた。彼女をここま で狼狽させる、ハルヒに知られてはいけない禁則事項ってなんだ? それは……自分が未 来人だということなのか? 「ううん、それよりも、もっと……重要なこと」 自分が未来人であることがバレるより、もっと重要なこと? そんな秘密なんて、オレ には想像もつかない。 「キョンくん、覚えてますか?」 朝比奈さんは、涸れることのない涙を双眸に湛えて、オレをまっすぐ見つめていた。あ ふれ出した涙がボロボロこぼれるのも気にせず、ただただオレを見つめていた。 「はじめて2人でこの道を歩いたときのこと」 忘れるわけがいない。ハルヒに無理矢理集められたオレたちが、今じゃ定例になってい る市内パトロールの第1回目を行った日のことだ。 そのとき、オレは朝比奈さんがから未来人であることを告げられたんだ。 「そうじゃなくて、あの日、あたしは初めて男の人と2人っきりで一緒に歩いたんだ…… って話ましたよね?」 「え? ああ、そうでしたね」 あのときは甚だしく意外に思ったものだが、朝比奈さんが未来人であるというのであれ ば、この時間の人間と仲むつまじくしているのは……確かに切ないものがある。 「もう、最後だから言っちゃいます。あたし、あたしね……ホントはあのときから……」 目を閉じて、朝比奈さんの顔が近付いてくる。無意識に朝比奈さんの両肩に手を置いた オレは、朝比奈さんの行為を決して拒んでいるわけではなく、力を入れず、ただ添えてい るだけだ。 朝比奈さんは、そのままオレに体重を預けるように顔を近づけ、かくいうオレは反射的 に目をつむり、そして──。 あれ? 「……すぅ……」 …………寝てる…………。 ってことはつまり。 「朝比奈さん、そこにいるんですね?」 がさごそと、その常緑樹が時間移動時の出現ポイントだとでも言いたげに、以前と同じ 場所からオレをこの場所に呼び出した当の本人が。ようやく現れた。 「ごめんね、キョンくん」 見る人すべてを魅了するその笑顔は今はなく、陰りを落とした表情で朝比奈さん(大) がオレの前に立っている。 「口だけの謝罪なら、もういいです。ほかの懸案事項についても、今は何も問いつめたり しません。ですが、この状況だけははっきりと説明してください」 正直に言うと、今のオレはけっこう頭に来てるんだ。自分で言うのも何だが、オレは意 外と懐の広い人間だと思っている。人道からはずれるようなことでもなけりゃ、常識はず れなことだって笑って済ます器量くらいはあるだろうさ。 でもな、朝比奈さん(小)が未来に帰るとか、そういう冗談はシャレで済ませられる話 じゃないんだ。それだけオレは全員のことを大切にしている、と思ってもらいたい。 だから、ハルヒと朝比奈さんのケンカが仮に仕組まれたものだとしたら、それを仕組ん だヤツは誰だろうと許せない。 それがたとえ、未来の朝比奈さんであったとしてもだ。 「違うの、キョンくん」 朝比奈さん(大)は珍しく取り乱し、今にも泣きそうに顔をさらに曇らせていた。そん な表情を見ると、本当に朝比奈さん(小)と同一人物なんだな、と感じてしまう。 「あたしと涼宮さんのケンカは、本当に起こるべくして起きたことなの。あのときのあた しは本当に混乱していて……だから『未来に帰る』なんて言い出しちゃって。思い出した 今でも恥ずかしくなるわ。本当にごめんなさい」 深々と頭を下げる朝比奈さん(大)のセリフに、オレは違和感を覚えた。 今、なんて言ったんだ? 未来に帰るなんて「言い出しちゃって」……だって? それは つまり、裏を返せば帰らないってことじゃないのか? 「うん。まだ帰りません……けど、それはキョンくん次第」 それはどういう……? 「キョンくん、『好き』って気持ちと『愛してる』って気持ちの違い、わかる?」 頭に疑問符を浮かべていると、朝比奈さん(大)はさらに混乱させるようなことを聞い てきた。 「あたしの感覚でゴメンだけど、『愛してる』っていうのは広い意味であって、『好き』 っていうのは一途な感じなのよね。ほら、『家族愛』とか『人類愛』とかは普通に使うけ ど、でも『家族好き』とか『人類好き』って何かニュアンス的に違うような気がしない?」 なんとなく言わんとしていることは分からなくもないが、オレが正しく理解できている かどうかと問われれば、首をかしげるしかない。何が言いたいんだ? 「キョンくん、今、好きな人がいるでしょ?」 な、何を言い出すんだ突然!? 「その相手が誰とは言わないけれど、その人に対する思いが『好き』って感情で、妹さん や友だちを大切に思う気持ちが『愛』なんだと、あたしは思うの」 それは……そう言われれば、より具体的に分かる……ようが気がするが、その話が今の この状況で話すべきことなんだろうか? そんなオレの混乱を見て取ったのか、ふぅっ、とため息をついて朝比奈さん(大)は言 葉を続けた。 「あたし、好きな人がいたの」 どこか照れくさそうに、けれど何かを吹っ切ったような微笑みを浮かべていた。 「その人は、あたしが淹れるお茶をいつも美味しそうに飲んでくれて、あたしが困ってい るときは必ず助けてくれて……その人のことを、あたしは本当に大好きだったの」 それは……。 「でも、あたしの気持ちにその人が気づいてもいけないし、ほかの人が気づいてもいけな いの。だって、未来人のあたしは本来この時間にいない人間だもの。その人が結ばれるべ き相手との未来を、未来人のあたしが奪ってしまうことになるもの。だから……過去にお いて、あたしは誰かを好きになることも、好かれることもできない。何よりも優先させる べき重大な禁則事項なの。でも、バレちゃったけどね」 こつん、と自分の頭を叩いて、朝比奈さん(大)は照れくさそうに舌を見せた。 「それが、ハルヒとのケンカの原因ですか」 朝比奈さん(大)は、こくんと頷いた。 「切っ掛けは些細なことだったの。でも、そのときのあたしもまだ子供で、どうしても許 せなくて……何を言ったのかよく覚えてないけど、わんわん泣いちゃったなぁ。でも、涼 宮さんも泣いてたでしょう? あたし、涼宮さんを泣かせたんですよ。凄いでしょ」 そりゃあもう、ハルヒを泣かせることができるなんて、もしかするとあなただけかもし れないですよ。 「今も、涼宮さんは泣いてるんです。本当はあたしが謝らなければならないことなんだけ ど、でも涼宮さんのことだから会ってくれない。それに、涼宮さんが待っているのはあた しじゃないと思う」 朝比奈さん(大)は、戸惑いの瞳でオレを見つめていた。突き放すような意志と、引き 留めようとする意志が葛藤している瞳……と見えるのは、オレの気のせいだろうか。 「キョンくん、涼宮さんのところに行ってあげて……」 躊躇っているオレの背中を後押しするように、朝比奈さん(大)は絞り出すようにそう 言った。 「あたしなら、大丈夫。今日のことの記憶は長門さんに頼んで凍結してもらうし、涼宮さ んの居場所は古泉くんが知ってるから……だから」 「朝比奈さん、ひとつだけ答えてください」 今のこの気持ちのままじゃ、オレはハルヒのところになって行けやしない。行ったとこ ろで、何もできはしないだろう。 朝比奈さん(大)がその話をしてくれたということは、朝比奈さん(小)にとっては現 在進行形の想いであっても、朝比奈さん(大)にとっては過去の思いなんだ。だから、禁 則事項にならずに、オレに話してくれた。 それはわかっている。わかっているが、ただひとつ、本当に些細なことでいいんだ。 踏ん切りをつけさせてくれなければ、オレはどこにも行けないし、朝比奈さん(大)だ って、この時間に現れた意味がない。 だから、オレは聞くんだ。 「朝比奈さん、今、幸せですか?」 その問いかけが意外だったのか、朝比奈さん(大)は一瞬目を見張って驚いた表情を見 せたが、すぐに極上の──それこそ、世の祝福を一身に浴びたような女神のような微笑み を浮かべて、「当たり前じゃないですか」と──。 その左手の薬指に輝くリングを見せて、そう言ってくれた。 朝比奈さん(大)から古泉は学校にいると言われて駆けつけたオレを待っていたのは、 古泉だけではなく、長門も一緒だった。 2人の表情に驚きがないのは、オレが来ることを予めわかっていたってことか。 「思ったよりも早くて助かりました」 爽やかな笑みを浮かべて、古泉がいけしゃあしゃあと、本当に感謝しているのかどうな のか問いつめたくなることを言いやがる。 「ハルヒは?」 「おわかりかと思いますが」 持って回った言い方をするなよ、こんな時まで。 「閉鎖空間の中ってわけか」 「理解が早くて助かります。ですが、ただの閉鎖空間ではありません。以前……そう、あ なたと涼宮さんが2人で閉じこめられた閉鎖空間と同じもの……いえ、下手をすればそれ 以上の場所ですね」 それは……よく分からんが、実はけっこう危険な状態じゃないのか? それこそ世界が 終わる寸前だとオレは思うんだが、古泉の態度を見ているととてもそうとは思えない。 「いえいえ、とんでもない。『機関』の人員が総出でかかっても対処しきれない異常事態 です。ただ、今回に限っては長門さんも協力してくださったおかげで、今もまだ保ってい る、ということです」 長門が『機関』のやることに協力とは……それはまた、珍しいことと思うべきか、それ ほどまでの緊急事態と把握すべきか、迷うとこだな。 「古泉一樹が所属する組織への協力ではない」 違うのか? じゃあいったい何で……? 「ただ、時間を返しただけ」 時間を返すって……なんの話だ? 「涼宮ハルヒはあなたや古泉一樹、朝比奈みくると出会う時間を、あなたはわたしが『私』 という存在であることに気づく時間を与えてくれた。それを返しただけ」 ジ……ッと、吸い込まれるような漆黒の瞳でオレを見つめた長門は、その無貌に何を思 っているのかオレが把握する前に、ついっと顔を背けて校門へ向かって歩き出した。 「お、おい長門」 オレは何を言いたかったのかな、思わず長門を呼び止めていた。 「あー……ありがとな」 「……いい」 ほんのわずかな間だけ歩みを止めて、長門はそう言うと長い坂道を降りて行く。 「では参りましょうか」 去っていく長門の後ろ姿を惜しみつつ、オレは古泉とともに校内に足を踏み入れた。 「今は異常事態……って、おまえは言ったよな?」 古泉曰く、校内すべてが閉鎖空間になっているわけではないらしい。校内の、ごく一部 がそうなっており、範囲の狭い閉鎖空間はこれまで出来たことがない、という。 それもそうだ。《神人》が暴れるのは、いわばハルヒのストレス解消であり、逆に言え ば《神人》が暴れられなければ、ハルヒのストレスは解消されない、ということになる。 「そうです。もはや一刻の猶予もありません」 「それにしては、余裕がありそうに見えるんだがな」 「それはそうですよ」 なんなんだ、その根拠のない自信の表れは。 「根拠がない、とはとんでもありません。ただ、確かにあなたが言うように楽観視はして いますが。何故かわかりますか?」 そういう持って回った言い方は、時と場合を考えて使ってくれないもんかね。今のオレ には心の余裕があまりないんだ。 「それは失礼を。理由は簡単です。ここにあなたがいるからですよ」 「なんでそれで楽観視できるんだよ」 「あなたを残して、涼宮さんが世界を改変するわけがないからです」 自信満々だな。そんなのは根拠にすらならないじゃないか。 「僕はこれでもSOS団の副団長ですから。団長のことはもちろん、団員のことも把握し ているつもりです。そうでなければ、しがない中間管理職はつとまりませんからね」 それはまた……頼もしいことを言ってくれる副団長さまじゃないか。 「こちらです」 古泉がオレを連れてきたのは、1年5組の教室だった。オレはてっきり文芸部の部室だ と思っていたんだが、ここだってのは意外だ。 「僕にとっては、なるほどと納得できる場所ではあるんですが」 「そうか?」 「ここは、あなたと涼宮さんが初めて出会った場所でしょう?」 古泉はオレの手を取る。閉鎖空間に入るためには仕方がないとはいえ、男に手を握られ るのは気持ちの良いもんじゃないね。 「予め断っておきますが、僕に……というか、『機関』の人員を総動員してできることは、 あなたを涼宮さんのいる閉鎖空間へお連れすることだけです。そして、中では涼宮さんの 記憶すら曖昧な状況になっているでしょう。覚えていることは、強い思いだけ……といっ たところでしょうか。世界が変わろうとしているのだから、当然ですね」 「それで?」 おまえが真面目な顔つきになっているのは、この際、スルーしてやろう。だがな、話を するなら手を繋ぎっぱなしじゃなくてもいいんじゃないのか? 「一般的な視点で状況を説明すれば、『世界の運命はあなたに託された』ということです。 けれど……そうですね、僕がこんなことを言うのは意外かと思われますが、こればかりは 本心なので、信じていただきたいのですが」 「だから、なんだよ?」 「まだ、あなたにゲームで勝っていません。あなたに黒星を付けるのが、高校生活の目標 なんですよ。ですから、是非とも戻ってきていただきたいのです。……涼宮さんと一緒に」 オレにゲームで勝つだって? そんなこと、本気で考えているとは驚きだ。 「おまえに土を付けられることなんて、想像できないけどな。でもまぁ、ゲームには明日 もつきあってやるさ」 その答えに満足したのか、古泉はいつものようなニヤケ顔を見せた。 「約束ですよ」 古泉に導かれて入った教室の中は、机が整然と並ぶ見慣れた景色だった。違うところと 言えば、教室内に誰もいないことだろうか。……いや、1人だけ、そこにいる。 窓際の最後尾、机を枕にして顔を伏せている黄色いカチューシャの女。 悪いが古泉、時間がないとおまえは言っていたが、オレには関係ないね。オレはただ、 ハルヒに言いたいことを言いにここへ来ただけだ。世界がどうとか、そういうのは二の次 なんだよ。 「よう、ハルヒ」 登校したいつものように自分の席に腰を下ろして、顔を伏せているハルヒにオレは声を かけた。そんなハルヒはチラッとだけオレに目を向けるや否や、再び顔を伏せる。 「何よアンタ、馴れ馴れしいわね」 不機嫌この上ない口調で、とりつく島もない。テンションがローギアに入っているのか、 いつぞや長門が改変した世界のハルヒのように、蹴りが飛んで来ないのは有り難いね。 「オレが誰か、わかるか?」 「知らないわよ」 高校入学当時とも、ちょっと違うらしい。言葉のキャッチボールをちゃんとしてくれて、 オレは嬉しいぞ。 「ジョン・スミスのことは覚えているか?」 「はぁ? あんた何いってんの?」 なるほどな、古泉。こいつは確かに重症だ。異常事態の緊急事態だ。それをオレ1人に 投げちまうとは、おまえはマジでひどい野郎だぜ。 「ま、いいさ。それよりもな、オレの知り合いが言ってたことなんだが、人間、言いたい ことを溜め込むのは精神衛生上よくないことらしいぞ」 「だから何?」 「へこんでるヤツを見ると、話を聞いてやりたくなるんだ」 「……変なヤツ」 おまえに変なヤツ呼ばわりされるのは甚だ心外だが、まぁ、今のオレは自分でもいつも と違う気がするさ。それもこれも、ハルヒの調子がいつもと違うからだ、ということにし ておこう。 「あたしさ」 しばらく顔を伏せたままの後頭部を眺めていると、ようやくハルヒが口を開いた。 「友だちと、ケンカしたのよ。泣かせちゃったし、もう許してくれないかも……って思っ たら、あたしも泣きたくなったわ」 ホントは泣いてただろ、とは口が裂けても言えず──。 「ケンカの原因はなんだったんだ?」 何も見えない窓の外に視線を固定したままのハルヒに問いかけてオレが黙ると、しばら く経ってからようやく話してくれた。相手を知らないから、気も弛んでいたんだろう。普 段のハルヒなら、到底言いそうにない話だ。 「あたしさ、今まで散々男に言い寄られたけど、自分から誰かを好きになることって、あ んまなかったのよね。初恋だって中学入ってからだし、その人とはもう会えそうにないか ら諦めたんだけど、高校になってまた好きな人ができて。それで……」 「それで、ケンカした友だちとおまえの好きな人が被ってたのか」 図星を指されて、ハルヒはようやく顔を上げた。まるでエスパーを見るような目だが、 やめてくれよ。ケンカの原因を聞いてそんな話をされれば、そうじゃないかと見当くらい つくだろ。 「ふーん、あんたボケた顔してるけど、意外と鋭いのね」 ボケた顔は余計だ。 「でもまっ、あんたの言うとおりよ」 再び顔を伏せるハルヒ。まるで独り言のように言葉を続ける。 「やっぱり恋なんてするんじゃなかったわ。恋愛感情なんて、やっぱ精神病よ。一時の気 の迷いで友だち無くすなんてさ、あたし、バカみたいじゃない……」 やれやれ……。ああもう、本当に何度でも言ってやる。 やれやれ、だ。 こいつは今になってもまだそんなことを言ってるのか。 「だったら、なんで自分の好きなヤツを友だちに譲らなかったんだ?」 ハルヒの肩が、ぴくっと震える。 「友だちが大事で、恋愛感情なんて精神病の一種って言うなら、おまえが身を引けば丸く 収まったんじゃないのか?」 「それは……そうかもだけどさ」 「おまえの理屈じゃ、そうなんだろ?」 「…………」 オレなんかに言いくるめられるとはな、いつもめちゃくちゃな理論武装をしているハル ヒさんらしくないぜ。 「おまえばっかりに話させるのも悪いな。気分転換にオレが小耳に挟んだ話でも聞くか?」 「……聞きたくない」 「まぁ、そういうなって。オレが聞いた話ではな、学校中の男子が憧れる美人な先輩の話 なんだ」 うるさい、とか、黙れ、とか言われないってことは、ハルヒにとって聞くつもりはある ってことだろう。中断されるまで、オレの「聞いた」恋愛体験ってのを話してやるさ。 「その先輩ってのが、校内でもトップクラスの美少女だったわけだ。狙う野郎共は星の数 ほどいたわけだが、誰とも付き合わなかった。どうやら両親が遠い国にいて、でも先輩自 身はここに残りたかったみたいでな。それで親に出された条件ってのが『誰かを好きにな るのはいいけれど、その気持ちを相手にはもちろん、ほかの人にも知られてはいけない』 ってことだったらしい」 いったん区切り、オレはハルヒを見る。まだ顔を伏せたまま、ぴくりともしやがらねぇ。 寝てるんじゃないだろうな? 「先輩は、だから誰も好きになろうとはしなかった。でもな、やっぱ人間、自分の気持ち にウソは吐けないらしくてさ。好きな人ができたそうだ。最初はその気持ちをずっと隠そ うと思っていたらしいが、ちょっとした切っ掛けで、やっぱり告白しようと思ったらしい。 返事が良くても悪くても、もう会えなくなるかもしれないのに、自分の気持ちを相手に伝 えたそうだ」 「……それで、その人どうなったの?」 「結果から言えば、告白した相手には他に好きな子がいたそうで、フラれちまった」 「ふーん……振ったのって、あんた? んなわけないか」 「……聞いた話って、最初に言っただろ。でもオレは思うわけだ。その先輩は、今のおま えより百倍マシなんじゃないかってな」 机を枕にして顔を伏せているハルヒは、その姿勢のまま視線だけをオレにぶつけていた。 「あんた、あたしにケンカ売ってるわけ?」 「そんなつもりはない。ただ、こんなところで腐ってるおまえと、結果はダメだったが行 動することができたその先輩と、客観的に見てどっちがマシかって話さ」 そう言うと、喧嘩腰だったハルヒの瞳からみるみる力が抜けていく。 そうさ、ハルヒだって分かってるはずなんだ。わざわざオレが言うまでもない。ただ、 ようやくできた友だちを失いかけて、どうすればいいのか分からないだけなんだ。中学時 代は周りから距離を置かれて1人だったから、ようやく得た友だちを失いかけて、どうし ていいか分からず、ただ怖がってる。 人を好きになるって気持ちも同じだ。自分から好きになったのはいいけれど、告白して フラれたらどうしようとか考えている。ほかの人に取られるのはイヤだけど、自分からは 怖くて行動できない。 はぁ……まったく、情けねぇぞ涼宮ハルヒ。そんなの、まったくおまえらしくないじゃ ないか。後先考えずに突っ走るおまえはどこにいったんだ!? 「ハルヒ、こんなところに引っ込んでないで、言いたいことを言うべき相手に言ってきた らどうだ? あれこれ考えるなよ。おまえは勝手に1人で突っ走って、まわりをおろおろ させるくらいの勢いで丁度良いんだ」 「……なによ……なによ、もう! 何も知らないクセに、なんでもかんでも知った風なこ と言わないでよ!」 座っていた椅子をひっくり返すような勢いで立ち上がったハルヒは、ボロボロ泣きなが らオレを糾弾した。だから、そうじゃないんだ。 「相手が何もわからないからこそ、わかるように言いたいことを言ってこい、ってオレは 言ってるんだよ。そりゃそうだ、人間、相手に自分の気持ちを伝えるには言葉か文字しか ないんだ。どんなに想っていても、念じるだけで通じるわけがないだろ」 そうだな、それはオレにも言えることだ。ハルヒだけに何もかもぶちまけさせるのは、 確かに不公平ってもんだ。おまえがまだ躊躇ってるなら、オレが先に言ってやるさ。 「オレはな、ハルヒ。なんだかんだ言って、おまえに付き合ってバカ騒ぎする毎日が気に 入ってるんだよ。たまには『いい加減にしろ』ってツッコミたくもなるが、そういう毎日 がずっと続けばいいとさえ思ってる。そうだな、おまえさえよけりゃ、一生付き合ってや ってもかまわないんだ」 ピシッ、と何かがひび割れる音が聞こえた。 「ただ……それはおまえ次第だ。おまえがオレを必要だと思ってくれて、そしてオレが納 得できる答えを言えたらっていう条件付きだ。言えるか?」 一度聞こえてきたガラスが割れるような音は、あちこちから聞こえてきた。 「あ……たしは……」 絞り出すように、ハルヒが声を出す。耳を澄ませば聞き取れないような声は、まわりの 音にかき消されそうだが、オレは一言もその声を聞き逃すまいと耳を傾けた。 「ずっとみんなにいてほしい……。有希や古泉くんも……みくるちゃんだって、謝って一 緒にいたい……。それに……」 涙で真っ赤になった目を、ハルヒはまっすぐオレに向けていた。 「キョン……あたし、あんただけは絶対に離したくない! ずっと側にいてほしい! あ たしは……あたしは、あんたのことが──」 そのとき、世界が割れた。 初めて古泉に連れられて行った閉鎖空間の最後と同じだ。静寂に包まれた世界に音と色 が戻り、世界は日常の当たり前の風景を取り戻す。 耳をつんざくような轟音で、けっきょく肝心なセリフは聞けず仕舞いか。まぁ、その言 葉はあんな場所で聞くもんじゃないな。できることなら、この世界で聞きたいもんだ。 ……望みは薄そうだが……。 オレはちらりと時計を見る。 もう6時か。外が薄明るいってことは、午前6時か? まったく、唯我独尊な団長さま に振り回されて徹夜かよ。そのくせ、本人は寝てるときたもんだ。 理不尽だ。理不尽極まりない。このやり場のない怒りをどうしてくれよう。 ふむ。 ここは学校の教室だ。そして目の前には寝てるハルヒ。となると、やることはひとつし かない。えーっと油性ペンはどこにあったかな……。 「……ぅあ?」 ちっ、起きたか。 「……あれ……あれ? ここ……教室?」 「よぅ、ハルヒ」 寝ぼけているのか、状況が把握できてないのか、きょろきょろしているハルヒに、オレ はいつものように声をかけた。 「えっ、キョン?」 その顔は、みるみる真っ赤になっていく。茹ダコだってここまで赤くはならないだろう って勢いだ。 「なっ、なんでここにキョンがいるの!? ってか、なんであたし、教室に!?」 「何言ってんだ、おまえがこんな朝っぱらから学校に来いって言ったんじゃないか。オレ の睡眠時間を返せ」 「あたしが……あんたを?」 「ああ。……なんだよ、寝惚けてんのか?」 「寝惚けてって……あれ、夢だったのかな……?」 ま、そういうことにしておこう。オレにとっちゃこの上なくリアリティのない現実だが、 ハルヒにとっては『夢オチでした』ってことにしといたほうが、世のため人のため、ひい てはオレのためかもしれん。 「あたし、あんたを呼び出したの?」 ハルヒが怪訝そうな顔つきで聞いてくる。そういう話の振りにした手前、違うとはとて も言えやしない。 「んー、何の用だったのかしらね? ま、どーせたいした話じゃないわよ」 そりゃそうだろうな。オレのデマカセなんだ。 なんてことを言うわけにもいかず、オレは大袈裟にため息を吐いてみせた。 「話がないなら、オレは寝るぞ。おまえのせいで睡眠時間が削られたんだ。ホームルーム のときに起こしてくれ」 「なんであたしが、あんたの目覚まし代わりになんなきゃならないのよ!」 憤まんやるかたないという表情を浮かべるハルヒを無視して、オレは机の上に突っ伏し た。今になって眠気が襲ってきてやがる。武田軍の騎馬隊もかくやという勢いだ。 「ちょっとキョン、聞いてんの!?」 えーい、うるさい。頼むから少し寝かせてくれ。背中を教科書の角で殴らないでくれ。 「……ったく、しょうがないわね」 教科書がダメなら椅子を使って、ってのがハルヒの思考パターンだが、幸いにしてそれ はなかった。 どれほどの時間、沈黙が続いただろうか。オレの意識が眠りの縁に落ちる直前のころに なって、またハルヒの声が聞こえた。 「キョン、寝ちゃった?」 まだ寝ちゃいなかったが、よく考えればハルヒがオレを放置したまま、おとなしくして るわけがない。睡眠時間ゼロで今日一日を乗り越えなければならないことを覚悟して顔を 上げようか、などと考えていると、鈴の音のような小さな呟きが聞こえた。 「……あたし、やっぱりあんたのことが……好き……かも……って、あたしは何を言って るのよっ!」 ……やれやれ、オレが寝てると思って油断するなよ。おまえはオレに起きてほしいのか 寝ていてほしいのか、どっちなんだ? ここでオレが顔を上げたらどうなるか、なんてことがチラリと脳裏を過ぎった。もっと も、それは地雷原に飛び込むのと同義であるような気がするのでやめておくべきだな。 そもそもハルヒよ、そんなセリフは是非ともオレの目を見て言ってもらいたいもんだ。 そんな日が来るかどうかなんて分からないが……今は、そうだな。 ハルヒが『独り言』で自己嫌悪に陥って喚くという、世にも珍しい声を子守歌に、心地 よい微睡みをわずかな時間でも堪能することにしよう。 〆
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1640.html
「おはよう。」 「おはようキョン。」 いつもの朝、教室に入った俺は友人の国木田、谷口と朝の挨拶を交わした。 「なぁ、今日の放課後だけどな、ナンパ行こうぜ!」 「…谷口、朝っぱらからそれかよ、一昨日も行っただろうがよ…もういい加減にしようぜ?大体うまくいった事無いだろうが…。」 「馬鹿!失敗を恐れてどうなるってんだ!挑戦無くして成功は無しだ!」 …朝から拳を握りしめて力説している谷口…はぁ…。 こいつとは入学からの付き合いでちょくちょく放課後や休みの日にナンパに付き合わされている。 結果は…言うまでも無いだろう…。 「悪いが今日はゲーセンに行くと国木田と話がついているんだ。またの機会にしよう。」 「…チッ。」 谷口は不満気に舌打ちした後自分の席に戻った。 …北高に入学してそろそろ一年経とうとしている。 この一年特に大きな出来事も無く、放課後や休日は友人とゲーセンに行ったりナンパに行ったりと平凡な生活を送っている。 「おはよう。キョン君。」 「ああ、おはよう朝倉。」 …朝倉涼子、このクラスの中心的存在で谷口曰わく AAランクプラス の美少女だ。 文化祭や体育祭などでも素晴らしいリーダーシップを発揮し、大いに盛り上げてくれた。 「朝からなんか憂鬱そうね?」 憂鬱?まぁ~毎日妹に乱暴な起こされかたをされてあの坂を毎日登れば憂鬱にもなるさ。 「ふふふっ。」 朝倉は軽く笑った後席へと戻って行った。 「憂鬱ね…」 俺は憂鬱と聞いて後ろの席に座っている人物が頭に浮かんだ。 涼宮ハルヒ 入学後の自己紹介でとてつもなくインパクトのある言葉を吐いた女だ。 容姿、スタイル、そのどちらも極上と言っても良い美少女だが…性格が捻れまくっている。 何度か話し掛けて見たが 「うるさい。」 の一言で切り捨てられている。 俺だけで無く、クラスの誰が話しかけてもその調子だ。 もうみんなこいつとコミュニケーションを取る事を諦めている。 涼宮ハルヒは今も俺の後ろで頬杖を突き憂鬱そうな顔をして窓の外を眺めている。 「おはようみんな。」 担任の岡部が入って来た…そんなこんなで授業が始まった。 ~一限目~ 「…で、この場合はこの公式を使って…」 今日もいつもの通り授業は進んでいる…が…今日はなんか体調がおかしい…。 教師の言葉がまったく耳に入らない 別に夜更かしした訳じゃ無いんだがな。 俺がそんな事を考えていた時…それが来た… ―ー思い出せ!。 「…っ!」 …突如俺を幻聴と頭痛が襲った。 ―ー気づけ!ここは偽物だ! 「…ん!」 …なんだ…これは… 「ううっ…」 ガタッ 俺は突如襲った幻聴と頭痛とめまいの為机から床に転げ落ちた…。 「きゃ!」 「おい!どうしたキョン!」 …意識が…薄れて… …。 …。 …。 ………気がつくと俺は保健室のベットに寝かされていた。 俺は起き上がり、 「…なんだったんだ…あの頭痛…めまい…幻聴は…。」 そう思った時だった。 ――思い出せ! 「…っ!」 またか…何なんだよ…何を思い出せってんだ…。 ――気づけ! 「…ん!」 …俺は保健室を抜け出し…どこかに歩いている? 俺は…どこに向かっているんだ…? …。 …。 …。 俺は気がつくとある部屋の前に来ていた。 「…文芸部?」 文芸部…たしか部員0で来年入部者が居なければ廃部になるって話の? 「…。」 俺は誘われるように文芸部室へと入っていった…。 使われて居ない部屋…その部屋は埃臭く殺風景な物だった。 隅の方に本棚があり、机の上にかなり古いパソコンが置いてある…ただそれだけの部屋だった。 「…なんで俺はここに…んっ!!。」 …今までで一番強烈な奴が来た…ん?…今度は幻覚…か!? 俺の目の前に… 俺 が立っていた… ―いつまで呆けてんだ俺!いい加減目を覚ませ!覚えてるだろあの日々を?絶対忘れられる訳ねぇだろが! 「…あの…日々…?」 その瞬間頭に何かが駆け抜けた…。 「…SOS団…宇宙人…未来人…超能力者…涼宮ハルヒ…。」 …そうだ…。 「俺は…思い出した。」 そう、俺は完全に思い出した…くそっ!どうなってんだ一体…。 まて、落ち着け俺!俺は普通の奴よりもこの様な事態には耐性がある…そうだ、OK。 まずは整理してみよう。 …まず間違い無くここは改変された世界だ。 ハルヒは…居る。SOS団は結成していないが間違い無く居る。 古泉は…居る。この世界でも同じ様に転校してきている。間違い無い。 朝比奈さんは…居る。谷口が騒いでいた。間違い無い。 長門は…居ない!?…この世界での長門を認識した事は無い!…文芸部も部員0だ…間違い無い。 「…ハルヒも居る…朝比奈さんも古泉も…長門だけが…居ない。」 …何故長門だけが居ないのだろうか? それにこの事態を引き起こしたのた誰だ? ハルヒか?それともまた長門か? …そうだ!きっと長門は何かヒントを残しているはずだ! 俺は本棚へ向かい例の本を探した。 「頼むぜ………あ!」 俺は本をめくりそれを見つけた。 【パソコンの電源を2秒押し離す。それを三回】 例の栞にはそう書かれていた。 俺は直ぐにパソコンに向かい書いてある行動をとった。 ピッ パソコンは旧型とは思えないスピードで起動し…それが画面に映し出された…。 YUKI.N …もしもあなたが思い出した時の為にこのメッセージを残す。 「…ああ、思い出したさ。」 YUKI.N ここは改変された世界。でも涼宮ハルヒは同じ様に力を持ち、古泉一樹、朝比奈みくるも同じく力を持っている。 この事態を起こしたのは情報統合思念体。 …長門のメッセージ。 つまり情報統合思念体内部で大きな動きがあり急進派が力を持ってしまった。 ハルヒの起こす情報爆発を効率良く引き起こすのにSOS団は邪魔な存在と認識され、俺たちがSOS団を結成していない世界に改変した。 そして長門は消去され代わりに朝倉涼子が配置された。 …くそったれが! YUKI.N これは仕方の無い事。 それと、涼宮ハルヒに関わらない事を推奨する。 あなたと涼宮ハルヒが接触すると朝倉涼子が同じく行動を起こす確率が高い。 危険。 あなたはこの世界で生きて。 楽しかったありがとう。 「ふざけんなよ!」 YUKI.N …心残りは…もう一度あなたと図書館へ行きたかった。 「いや、行くぞ!一度と言わず何度でもな!」 YUKI.N それと…もう一度あなたに私の肉じゃがを食べさせてあげたかった。」 「…すまん。それだけは勘弁だ。」 YUKI.N …さようなら …。 …。 このメッセージが表示されるのは一度きりである。 エンターキーを押し消去を。 …。 …。 …。 「…ふざけるなよ。こんなので納得できるかよ!これで終わりだなんて!」 末尾でカーソルが点滅している…あの時と同じか…。 違うのは…あの時はこれを押したら改変世界から抜け出せたが今回は…終わりだ。 「くそっ!」 俺は近くの椅子を蹴飛ばした。 「長門…お前はそれで良いのかよ…」 …。 …。 ………!? 待てよ。何故エンターキーを押さないといけないんだ? 別に自動で消去してもかまわないだろ? …もしかして…。 俺はパソコンに戻り画面を再び見た。 「あの時は別のボタンを押したら終わりだった…今回は?」 俺は祈りを込めて…NOの意味でNボタンを押した。 カチ …。 …。 …。 YUKI.N プログラム起動条件・鍵をそろえよ。最終期限・今日。 …。 …。 …。 「…そうだよな…お前だってこのまま消えたくないんだな…任せろ!必ずあの日常を俺が取り戻してやる!」 …。 …。 …鍵か…前回と同じで良いんだよな。 今何時だ?後5分で昼休みか…。 俺はまず古泉の所に向かった。 …。 …。 ~9組~ 「すまない、古泉一樹を呼んでもらえないか?」 俺は適当に教室から出て来た奴にそう言った。 ほどなくして古泉が来た。 「僕に何か様ですか?」 古泉はこの世界でも変わらない0円スマイルでそう言った。 …あの時と同じで行くか。 俺は声を抑え切り出した。 「突然で悪いが…『機関』という組織に思い当たることはないか?」 「キカン…ですか?どういう字をあてるのでしょう」 …おんなじ反応しやがった。 でも俺は長門のメッセージで知っている。 「お前がここに居る目的は涼宮ハルヒの監視。そして閉鎖空間が現れた時お前はそこで暴れる『神人』を狩る超能力者だ。…違うか?」 すると古泉は俺の手を引き人気の無い場所へ連れて行った。 「あなた…何者ですか?」 古泉は笑みを消し俺にそう詰め寄った。 「…そうだな。今のお前からみたら 異世界人 って所だな。」 「…異世界人?」 「…詳しく話をしたい。放課後、文芸部室まで来てくれないか?」 「……分かりました。」 …古泉は戸惑いと警戒の目を向けながらも了承した。 …さて、次は。 …。 …。 ~2年のクラス~ 「すいません。朝比奈みくるさんを呼んでいただけませんか?」 俺は朝比奈さんのクラスから出て来た女子生徒にそう言った。 「…ふ~ん。あの子も人気者ねぇ…わかったわ。玉砕しても泣かないようにね。」 …なにやら勘違いしているみたいだが…まぁ良い。 ほどなくして朝比奈さんがやって来た。 みくる「あの~何でしょうか?」 ああ…この世界でも朝比奈さんの美しさは変わらない…早くまたあのお茶を飲める様にせねば! …おっと!本題本題。 「すいません…ここではちょっと…。」 周りからの好奇の視線が痛い…俺は会話が誰にも聞こえ無い位置まで朝比奈さんを連れて行った。 「突然ですが…あなた未来人ですね?」 単刀直入に俺は言った。 「ななな何をいいい言ってるんですか!そそそんな訳無いじゃないですか!」 …古泉と違い非常にわかりやすい。 「三年前…いや、もうすぐ四年前か。大きな時間振動が検出され、その中心に涼宮ハルヒが居た。 あなたがこの時代に来た目的は涼宮ハルヒを監視する為…違いますか?」 「…あなたは…いったい…。」 「詳しい話をしたいので放課後文芸部室に来ていただけませんか?」 「……はい。」 朝比奈さんもOKだ。 最後はハルヒ…こいつは放課後だな…。 俺は教室に向かった。 ~教室~ 「キョン!?もう平気なの?」 「びっくりしたぜ。急に倒れるからな。」 国木田と谷口だ。 「ああ、大丈夫だ。すまんな心配かけて。」 「キョン君大丈夫?病院行かなくて平気?」 「ああ朝倉、平気だ。単なる寝不足だからな。」 「寝不足?」 「ちょっと夜更かししすぎたみたいだ。そのせいでめまいがな。 今まで保健室で寝てたからもう大丈夫だ。」 俺はニカッっと笑った。 「…呆れた。どうせゲームでもしてたんでしょ?体調管理はちゃんとしないとね!」 「へいへい…」 朝倉は自分の席に戻って行った。 ……怪しまれなかっただろうか。 俺は背中が汗で濡れている事に気づいた。 このまま最後の授業を受け…放課後になった。 さて、朝倉に見つからないようにハルヒを捕まえなければ… 俺はげた箱まで先回りしハルヒを待った。 「キョン、ゲーセンどうするんだ?」 谷口?…そうか、こいつらとゲーセン行く約束してたんだ。 「すまん。今日は帰って寝るわ。まだちょっとめまいがな…。」 「そうか、んなら俺は国木田と二人で行くわ。」 「ああ、すまんな。」 「その代わり明日はナンパ付き合えよ!」 「おう!」 …すまん。元の世界に戻ったら必ずその約束果たすからな。 …。 …来た。 どうしようか…前回と同じで行くか? いや、朝倉に気づかれる恐れがある。時間も無いし…よし。 周りに人気が無くなった所で俺はハルヒに近づいた。 「世界を大いに盛り上げるジョンスミスをよろしく。」 俺はすれ違いざまハルヒにそう呟いた。 「な!?」 ハルヒは俺に振り向き 「…何であんたがその言葉を…」 驚愕の表情で呟き次の瞬間俺のネクタイを掴もうと手を伸ばした。 ヒョイ …予想してたからよけるのは簡単だった。 すまんな、今目立つ訳にはいかないんだ。 「詳しい話をしたい。いまからちょっと付き合ってもらえるか?」 「ちょっと…!」 「今は黙ってろ…着いたら話す。」 ハルヒはしばらくの間の後無言で頷いた。 …。 …。 …。 …朝倉に気づかれなかっただろうか…。 ハルヒと文芸部室に向かう途中俺は考えていた。 例えば朝倉が長門だったとして…長門に悟られる事無く行動できるか? …否。 …気づかれていると考えてよいだろう。 とにかく一刻も早く…。 …。 …。 …着いた。 「ここだ。」 俺はハルヒにそう告げた。 「あんたアタシの前に座っている人よね?…何者?」 「中に入ってからだ。」 俺達は文芸部室に入った。 中ではすでに古泉と朝比奈さんが来ていた。 二人は俺と一緒にハルヒが来た事に驚いているようだ。 …これで揃った。 前回と同じならこれで… …。 ピッ 「…!?」 良し! 俺は直ぐパソコンに向かう。 「ちょっとあんた!何やってんのよ!話てくれるんじゃなかったの!?」 「すまんみんな、少し待っててくれ!」 みんなに謝罪しパソコンの画面を見た。 …。 …。 YUKI.N …あなたは鍵を集めた。 これでプログラムが作動する。 でも私はこれを推奨しない。 あまりにも成功率が低すぎる…危険も大きい。 「…危険?」 YUKI.N …それでもあなたはきっと…。 …このプログラムが起動するのは一度きりである。実行ののち、消去される。非実行が選択された場合は起動せずに消去される。 Ready? …。 …。 答えは分かっているだろ、長門。 俺はお前を、SOS団を取り戻すと決めたんだ。 危険?上等だ! 俺は指を伸ばし、エンターキーを押し込んだ。 …。 …。 すると本棚が…横にスライドした!? 本棚の有った所に… …なるほど。そうか。 弾は三発…良いんだな長門。 「ちょっと!人を呼びつけといてさっきから何やってんのよ!!」 すまない、またせたな。 俺はそれを三人に向けた。 「なっ!?」 「ふぇ!?」 「な…何のつもりよあんた…。」 …俺は三人に銃を向けている。 「悪い。話すよりこれが手っ取り早いんだ。」 短針銃。以前も使った銃だ。 これでみんなの記憶を取り戻す。 …まずは…俺は特に考えもなく朝比奈さんに発射した。 針は朝比奈さんの首筋に命中した。 「はぅ…」 朝比奈さんはその場に倒れこんだ。 …すいません。でもすぐにわかりますから。 等と呑気に考えていた時だった。 ゲシッ! 「…え?」 気づくと腕を蹴り上げられ、銃が弾き飛ばされていた。 次の瞬間強い衝撃が俺の顔を襲った。 …俺…殴られ… 俺は古泉に銃を弾き飛ばされ殴られた後、そのまま古泉に押さえつけられていた。 「涼宮さん!彼女を!」 「わ…分かったわ!」 …俺って本当に馬鹿だ…何やってんだ本当に…。 銃を向けられ撃たれるってなったらそりゃ反撃するわな…俺だってそうするさ…。 「大丈夫!生きてるわ。眠っているみたい。」 「そうですか、良かった…さて。」 古泉は俺に向かって言った。 「あなた何をしているか分かっているのですか!?」 …古泉…お前いつも笑っていて気持ち悪い…って思っていたが…うん、やっぱりお前は笑顔が一番似合うぞ! そんな怖い顔するなよ…。 「待て!話を聞け!」 「あなたが何者で何を企んでいるかはのちに機関の方でゆっくりと聞かせていただきます。」 …ヤベ…絞められている…このままだと落ちる…。 古泉は俺を気絶させようとしている様だ…この力…こいつこんなに強かったのか…。 その時 「…ん。」 「大丈夫!?しっかりして!」 朝比奈さんが目覚めた!? 朝比奈さんは目を開け暫くボーっとした後、ハルヒ、古泉、俺…と見た。 「…朝…比奈…さん…。」 俺は朝比奈さんに手を伸ばした …ヤバい…意識が… 朝比奈さんは立ち上がり、 「古泉くん!ごめんなさい!」 そう言って古泉にタックルを喰らわした。 「えっ!?」 古泉は予想外の攻撃に対応しきれなかったらしく俺を離し朝比奈さんと一緒に転んだ。 「ゲホッ!ゲホッ!…はぁ…はぁ…。」 「キョンくん!今よ!」 ああ…朝比奈さん。 俺の朝比奈さんだ! 俺は直ぐに銃に飛びつく。 しかし古泉も直ぐに立ち直って銃に飛びついた。 …。 …。 …。 すまん。俺が早かったな。 「うっ!」 針は古泉の額に命中した。 そのまま俺の上に倒れ込む…重い。 「キョンくん!」 俺は古泉の下から抜け出し最後の一人に銃を向ける。 「これは一体どういう事なんですか?」 「朝比奈さん、話は後で。」 「…何よ…一体なんなのよ…」 ハルヒは床にへたり込んで怯えている…白か…。 「キョンくん…どこ見てるの…」 すいません。男の習性なんです。 「ハルヒ…すまない。すぐにお前にも分かるから。」 俺は引き金を引いた。 針はハルヒの太ももに命中…ハルヒも床に倒れ込んだ。 …やれやれ、やっと全員か…。 しかし油断した…危なかった。 最初に古泉を撃っとくべきだったな。 俺が反省している所で朝比奈さんの声が… 「…キョンくん、古泉くんが。」 「…ん。」 「起きたか古泉。」 古泉がノロノロと起き上がった。 「こ…これは…一体…。」 記憶が混乱しているようだ。 そりゃそうだ、記憶が戻ったとは言えしっかりこの世界の記憶もあるからな。 「まずは落ち着け。……それじゃ説明するぞ。」 俺は長門がメッセージで残した事を全て二人に伝えた。 …。 …。 …。 「なるほど、そういう事ですか…。」 「まさか…また世界が改変されていたなんて…。」 …とりあえず俺は仲間を取り戻した。 そしてこれからは…。 「そして、これからあなたは何をしようとしているのですか?」 「ああ…ハルヒに全てを伝えハルヒの力で全てを元に戻すつもりだ。」 俺は二人に伝えた。 …暫く沈黙が続く。 …まぁ、そうだろうな。古泉にしても朝比奈さんにしてもハルヒが自分の力に気づく事を望んでいない。 古泉が口を開いた。 「……分かりました。それしか長門さんを取り戻す方法は無い様ですしね。」 「…いいのか?」 正直驚いた。朝比奈さんはともかく古泉だけは絶対反対すると思っていたからだ。 「…雪山の約束もありますしね…それにあなたを殴ってしまった。いくら記憶が無かったとは言え…申し訳ない事を。」 「気にするな。当然の行動だ。」 「そう言っていただくとホッとします。 …それにですね。この世界での僕は予定通り直接涼宮さんに接触する事無く、ただ監視しているだけなんですよ…実につまらない日々です。」 「私も同じです。」 朝比奈さん? 「…無くなって初めて気づく物なんですね…。」 「そうです。僕は今回は機関としてでは無く、SOS団副団長としてSOS団を取り戻すために動かせていただきます。 もちろん長門も含めてです。」 古泉はいつもの笑顔を浮かべて言った。 「…古泉。」 「そうです!五人揃ってSOS団ですからね!」 「…朝比奈さん。」 最高だ。俺は一人じゃない! 「…ん。」 「涼宮さん!」 「起きたかハルヒ。」 「…キョン…あれ…何…これ…」 「落ち着け…これから全てを話してやる。」 …。 …。 そして俺達は今の状況、正体、力、全てをハルヒに教えた。 最初は信じなかったハルヒも俺がジョンスミスだったという所で俺達が冗談を言っているのでは無いと気づいたようだ。 ハルヒ「…まさに灯台下暗しってやつねね…。」 そうだろう、そうだろう。 ハルヒの待ち望んでいた宇宙人、未来人、超能力者がこんな近くに居たのだからな。 「…それで、どうやったら有希を取り戻せる訳?」 古泉が言った。 「現状では…涼宮さん。あなたの力に頼るしかありません。先ほど話した通り、あなたには神の如き力があります。」 しかしハルヒの反応は… 「…ん~、そこの所がイマイチ実感湧かないのよねぇ~。」 実感湧かないって…俺達がお前の力にどれだけ振り回されたと思っているんだ? 「ハルヒ!間違いなくお前にはとんでもない力があるんだ!だから…。」 …ここで俺の言葉を遮り女の声が響いた…。 「そこまでよ!」 俺達は一斉に振り向いた…そこには…。 「朝倉…涼子…。」 部室の入り口に朝倉涼子が立っていた。 「…長門さんにも困ったものね。こんな小細工をしていたなんて…。」 朝倉は「フン」と笑った後部屋に入って来た。 …。 …。 やはり気づかれていたか…。 「朝倉…長門はどうなっているんだ!」 朝倉は笑顔で言った。 「長門さん?ああ、とっくに消去されているわよ。」 なんだと…。 「何ふざけた事言っているのよ!有希を返しなさい!」 「…笑えない冗談ですね。」 「…なんて…事を…。」 「朝倉ぁ!」 みんな怒りに震えている。 「…なぁ~んちゃって。」 「…え!?」 「嘘よ嘘。そんなに怖い顔しないで。長門さんはちゃんと居るわよ…ほら。」 朝倉はそう言って首にぶら下げたペンダントを見せた。 ………あ!? 朝倉の首に掛けられているペンダントにたしかに長門が…居た。 「長門!」 「有希!」 「長門さん!」 「長門さん!」 長門はペンダントの中で悲しそうな目を俺達に向けていた。 「消去する訳無いでしょ?だって長門さん一度私を消したのよ?…そんな簡単に楽にしてあげる訳無いじゃない。」 「…長門を返せ!朝倉!」 「嫌よ。長門さんは今から罰を受けないといけないの…大事なお友達が目の前で殺されるのを見る…って罰をね。」 …やっぱりこいつの目的は… 「…記憶戻らなかったら良かったのにね。こうなった以上前回出来なかった事をやらせてもらうわ。」 …やばい…やばすぎる…。 「キョン君を殺して涼宮ハルヒの情報爆発を観測する…いや、あなた達三人を殺して。」 「!?」 俺達三人…俺と朝比奈さんと古泉か! 「朝倉!…お前の目的は俺だけだろ!この二人は関係無いはずだ!」 朝倉は笑いながら言った。 「状況が前と変わったのよ。あの時はそれほどその二人と涼宮ハルヒは近い関係に無かった。でも今は強い信頼で結ばれている…そう言う事よ。」 なおも朝倉は続ける。 「これから一人一人別の場所にご招待するわ…そして最後に涼宮さんを…切り刻まれたあなた達を見た涼宮さんはどんな情報爆発を見せてくれるかしら…フフフ。」 こ…こいつ… 「朝倉!お前!」 朝倉はナイフを構え。 「知ってた?神様って非情なのよ。…神様って言っても情報統合思念体なんだけどね。 …やっぱり最初はキョン君からね。さあ行きましょうか。」 朝倉はゆっくりと俺に手を伸ばした。 「――!?」 その時誰かが俺の前に出た…古泉!? 古泉は俺に笑顔を向けたまま…その場から消えた…。 …。 …。 …。 …。 ~閉鎖空間~ …。 …。 …みんなが消えた!? …いや、僕が消えたと言った方が良いのでしょうね…。 僕と… 「順番は守らないとダメよ。そんなに死に急ぎたいの?」 …この朝倉涼子と。…。 「…長門さんが居ない今、あなたに対抗できるのは僕だけなものでしてね…。」 「へぇ~、もしかして勝てる気でいるの?」 「僕に…いや、俺に出来ないとでも思ったか!」 …ここではかしこまる必要は無いだろう。 俺は両手に力を込めた…大丈夫…力は使える。 「フフフ…怖い顔ね…あなたニヤケ顔してるよりもこっちの方が素敵よ。」 …しかし半分以下か…自分を光の玉に変える事はやはり出来ないみたいだ。 「でも残念ね…すぐお別れだなんてね。」 朝倉涼子はナイフを構えた。 「ああ、すぐにお別れだ。お前が俺に殺されてな。」 …勝率は…一割以下だ…絶望的な数字だな…だがやるしか無い。 俺の死〓みんなの死だ。 「口だけは達者ね…じゃあ…死んで!」 朝倉涼子は突進して来た。 俺も両手から光を出し死神へと向かった。 「おおおおおお!!」 …。 …。 …。 …。 ~部室~ 「古泉君と朝倉涼子はどこに消えたの!?」 「おそらく古泉は俺の代わりに朝倉と閉鎖空間に行ったんだろう。 …長門が居ない今、朝倉に対抗出来るのは自分だけだと思ってな…。」 …くっ…古泉… 「…古泉くん…帰って来ますよね…?」 …朝比奈さんは目に涙を溜めて言った。 「当然よ!なんてったって彼はうちの副団長よ!…絶対帰ってくる。」 …古泉…絶対帰ってこいよ!! …。 …。 …。 …。 ~再び閉鎖空間~ …。 …。 …。 「ぐっ!」 俺は壁に叩きつけられた。 「結構頑張るわね。でも後がつかえているのよ。そろそろ死んでくれない?」 どれくらい時間がたっただろうか。 …おそらく20分ぐらいだろうが俺には1時間にも2時間にも感じられていた。 「…化け物が。」 全身血だらけだ。体のあちこちに裂傷を負っている。 …背中の傷が一番深いか…。 朝倉は強い。何よりも素早く攻撃が当たらない。 いや、当たりはする。当たればその部分が消し飛ぶ。 だがすぐに再生しやがる。くそっ! それに…首に掛けられたネックレス…あの中には長門さんがいる… 下手に攻撃したら長門さんまで…。 「ほ~ら!」 朝倉はナイフを振るって…!? 朝倉のナイフは俺の首筋を掠めた。 「あら、惜しかったわ~。」 後数ミリで頸動脈が斬り裂かれていた…。 俺は右手の光を朝倉に投げる。 しかし朝倉は素早くよけ…足に命中した。 しかしすぐに再生される。 「…結構痛いのよ。これ…そろそろ本気で終わらせるわ。」朝倉は突進してきた…刺突か!? 「ぐっ!」 俺はわずかに身を交わし心臓への攻撃は避けたが朝倉のナイフは俺の左肩を貫いていた。 …激痛が走る中俺は目の前のペンダントに右手を伸ばした。 ブチッ 良し!取った! しかしその瞬間さらなる激痛が俺を襲った。 朝倉はナイフを俺の太ももに突き刺さしていた。 「ぐおっ!」 朝倉は俺から飛び退き言った。 「馬鹿ね。ペンダントを奪うのでは無くそのままその光で攻撃したら勝てたのに…長門さんが気になったのかしら?」 …ペンダントは奪い取ったが左手と足を封じられた…絶望的だ…。 「これで終わりね。」 朝倉は俺にとどめを刺す為突進してきた。 …駄目だ…動けない…みんなごめん。 朝倉のナイフが迫る。 …朝倉の動きがゆっくりに見える…これがドーパミン効果ってやつか…。 この軌道…右目から入ってそのまま脳にか…即死だな…。 そしてナイフが俺を貫いた。 …。 …。 …。 「…往生際が悪いわね。」 朝倉のナイフは俺の右の手の平を貫いていた。 俺は…まだ死ねない…。 俺はそのまま右手で朝倉の腕を掴み… 朝倉は俺が何をしようとしたのか分かったのか必死に飛び退こうとしたが… 「遅い!!」 左手から放たれた0距離攻撃…朝倉の体は赤い光に包まれ…消滅した。 …。 …。 …。 手の平に刺さったままのナイフが静かに崩れて行く。 俺は静かに言った。 「俺の勝ちだ…。」…。 …。 …。 閉鎖空間が崩れ始める。 俺は…僕は長門さんの入ったペンダントを見た。 長門さんが僕を心配そうな顔で見つめている。 「…さぁ…一緒に帰りましょう。」 そして空間が割れた。 …。 …。 …。 ~部室~ 突如俺達の前に血だらけになった古泉が現れた。 「古泉!」 「古泉君!」 「古泉くん!」 古泉は俺たちの顔をしばらく眺めた後こう告げた。 「……朝倉涼子は倒しました。」 古泉は静かに言ったがけして楽な闘いでは無かったのを全身に刻まれた傷が物語っていた。 「…酷い怪我…」 「…ふぇ…こ、古泉くん…だ、大丈夫ですか…?」 ハルヒと朝比奈さんは古泉を介抱している。 しかし大丈夫な訳が無い…今もかなりの出血が確認できる。 「古泉…よく頑張った…。」 「はは…これであなたを殴ったのは帳消しになりましたかね?」 笑みを浮かべ奴はそう言う。 「…馬鹿野郎。」 帳消しどころでは無い。 俺はいくらお前に釣りを渡せばよいんだ? 「…これを。」 古泉はそう言って俺にペンダントを差し出した。 「これは…長門!?」 ペンダントの中で長門は俺に何かを訴えているようだ…何?…開ければ良いのか? よく見るとペンダントの上部に小さいキャップが付いている。 俺は迷わずキャップを開けた。 するとペンダントから光が飛び出し、その粒子が俺達の前に人間の形を作り出した。 「有希!」 「長門さん!」 「…長門…さん」 ……長門。 俺達の目の前に長門が立っていた。 「……。」 長門はしばらく俺達の顔を見た後 「…古泉…一樹…。」 そう呟き古泉の所へと駆けて行った。 「…ごめんなさい…ごめんなさい…。」 何度も古泉に謝罪の言葉を呟いていた。 古泉は頭を振り 「長門さん、良かった…。」 と呟いた。 「長門、古泉の傷を治せないか?」 俺は長門にそう言ったが長門の答えは 「…無理。」 頭を振ってそう答えた。 「…情報統合思念体との接続が切れている…今の私には何の力も無い…。」 …よく考えたらそうだ。今回の敵こそ情報統合思念体だったんだ…。 くそ!まだ出血が続いている…このままだと命に関わるぞ…。 「…救急車を。」 朝比奈さん!? …そうだよ。救急車だよ。頭が回らなかった。 「俺が呼んでくる!」 俺はそう言って部室の出口に向かおうとした…が! …。 …。 …。 「な…。」 俺は絶句した…なぜならそこに 朝倉涼子が立っていたからだ。 「もう良いかしら?」 「お…お前…。」 朝倉はそのまま部室に入って来た。 「…不死身か…?」 古泉が驚愕の表情で呟いた。 そりゃそうだろう。 必死になって倒した敵が無傷で現れたのだから…。 朝倉は笑顔で言った。 「あら、古泉君、勘違いしないで。さっきのはあなたの勝ちよ。 さっきの私は完全に消滅したわ。」 「…どういう事ですか…。」 「こういう事よ。」 「……!?」 …悪夢としか言いようが無いだろう。 さらにもう一人朝倉が俺達の前に現れた…。 「たとえ今の私達を倒しても無駄よ。」 「また新しい私が現れるからね。」 …。 …。 …情報統合思念体の力でたとえ何回倒されようとも復活し続ける…朝倉はそう告げた。 「最後に長門さんに会えたから悔いはないわよね?」 「じゃ、そろそろ死んで。」 2人の朝倉がナイフを持ち近づいて来る。 …その時1人の少女が動いた。 「させない。」 …長門…。 長門が両手を広げ俺達を守るように朝倉の前に立ちふさがった。 「あら、長門さん。今やただのひ弱な女の子に成り下がったあなたが何をするつもり?」 朝倉が見下した目でそう言った。 「やらせない。」 しかし長門は一歩も退かず同じ言葉を口にした。 …俺は普通の人間。 朝比奈さんは未来人だが戦う力は持ってない。 古泉はすでに瀕死の状態。 長門はいまや何の力も無い少女になっている。 ハルヒはうつむいて何か呟いている …無理もない。いくらハルヒとはいえ実質は普通の世界で生きてきた女子高生だ。 いきなりこの様な場面に叩き出されたら壊れるのも無理は無い…。 すなわち…絶体絶命って事だ。 その時だった。 …。 …。 ポッポ~♪ポッポ~♪ ーー!? なんだ!? 俺はその奇妙な音の鳴る方を見た。 …。 …。 ……なんだ。鳩時計か…。 部室に掛けられている鳩時計が六時を知らせていた。 …。 …。 ポッポ~♪ポッポ~♪ポッポ~♪ポッポ~♪ …こっちは絶体絶命だってのに呑気に鳴いてやがる………って…え!? …鳩時計? んな馬鹿な…少なくとも俺の記憶の中でこの部室に鳩時計が飾られた事は無い。 なぜだ? 俺がそう考えていた時 …。 …。 「…なるほどね。」 …。 …。 その声の主は不敵な笑みを浮かべてそう呟いた。 「さて、今度はみんな一緒に招待してあげるわ。広い所にね。」 朝倉はそう言って指を鳴らした。 …。 …。 …。 ~閉鎖空間校庭~ 周りの風景が変わり俺達はいつの間にか校庭に立っていた。 「みんなまとめて殺してあげる。」 朝倉かそう言いながら再び指を鳴らすと……うわぁ……。 俺達の目の前に百人近い朝倉涼子が現れた。 「痛みを感じる暇も無いかもね…じゃ、行くわよ。」 百人の朝倉がナイフを構え俺達に飛びかかろうとしたその時。 「待ちなさい!」 その声の主、先程 「なるほど」 と呟いたハルヒが不敵な笑みを浮かべたまま朝倉にそう言った。 「何…涼宮さん?大丈夫よ、あなたは殺さないから。 あなたの役割は切り刻まれたお友達を見て情報爆発を起こす事よ。安心して。」 …何が安心だ。 「アタシはただ待てと言ってるの。」 ハルヒ? 「…そうね。お別れの時間くらい与えてあげても良いわ…。10分よ。」 「それだけあれば十分よ。」 ハルヒはそう言って俺達の方を向いた。 …なんだハルヒ、本当に別れの挨拶をする訳じゃないだろうな? 「古泉君」 「はい?」 「あなた超能力者だったわね? だったら手から炎を出したり傷を癒せたり瞬間移動できたりするわよね?」 古泉は表情を落とし。 「いえ…残念ながら…。」 そう呟いた。 残念ながら古泉にその様な力は無い。 こいつの力は限定された空間でしか使えない。 たしか最初に説明したはずだが? 「いいえ、使えるの!」 「え?」 何を言ってるんだ? 「アタシがそう決めたんだから使えるの。そういう事なんでしょ?」 ー!? そうか…そういう事か! 古泉はしばらくポカーンとした後…。 「…そうです…そうなんです!今、涼宮さんの言った能力、全部使えます!」 にっこりと笑いそう答えた。 「そう、ならちゃっちゃと自分の傷を直しちゃいなさい!」 「はい!」 …さっきの鳩時計もハルヒの仕業か。 それで自分の力に… 「みくるちゃん!」 「は…はい!」 「あなた未来人だったわよね?」 「はい…一応…。」 「ならあなたのポケットは四次元ポケットね。隠したって無駄よ!アタシには分かってるんだから! 早く未来の凄い武器でも出しなさい。」 朝比奈さんはド○えもんか! 「え!?…え!?…」 「朝比奈さん!」 …。 …。 …。 「……あ…そういう事…そう、そうです! 凄い武器出しちゃいますよ!!」 朝比奈さんはようやく気づき元気にそう答えた。 「有希!」 「……。」 長門は振り返りわずかに首を傾けた。 「あなた宇宙人だったわよね?」 「…正確に言うと対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース。」 「そんなのどっちでも良いのよ!んで今はその能力が使えないと?」 「そう。」 長門は顔を落とし答えた。しかしハルヒは笑顔で言った。 「残念だけどそれは勘違いよ。あなたは自分の能力を全部使えるの、自分の意志で! アタシが今決めた!」 長門はその言葉にしばらく目を見開いた後 「コクン。」 大きく頷いた。 「キョン!」 俺?…俺はハルヒを見た。 「あんたは普通の人間なんだからみくるちゃんからなんか武器を貸してもらいなさい。」 「ああ。」 良かった。変な能力者にされないで本当に良かった。 「朝比奈さん。」 俺は朝比奈さんに話しかける。 「は、はい!……ふ、ふぇ…す、凄いの出ちゃった…。」 巨大なライフルらしき物を持ちそう言った。 それ本当にその小さなポケットから出たんですか…。 「これはどんな武器なんですか?」 「これは…その…禁則事項です。」 …分かりません! 俺と朝比奈さんが困っていると…。 「禁則事項禁止!」 ハルヒ? 朝比奈さんはしばらく沈黙した後頷き 「対ヒューマノイド・インターフェース用ライフル。 これは命中した相手の情報連結を解除出来る特殊武器です。 あ!ちなみに長門さんに当たっても大丈夫な用に作られてますから…。」 俺はライフルを受け取り 「…またずいぶん都合の良い武器が有りましたね。」 「ええ…まぁ涼宮さんですから…。」 なるほど、何でも有りか。 …ん?…古泉!? 瀕死状態だった古泉がいつの間にかいつもの笑顔で立っている。 「お前大丈夫なのか?」 「ええ、傷は癒やしました。涼宮さんに新たに頂いた力で。 …この戦い、いけますよ。」 ああ、いける。 俺は頷き次は長門に声をかけた。 「長門、どうだ?」 「涼宮ハルヒの力により私は全機能が復帰した。 今の私は全ての機能を情報統合思念体の許可無く使用する事が出来る。」 長門完全復活だ。 「私はこれよりジェノサイドモードを発動する。 これは戦闘モードの中の最終モード。 本来なら絶対許可は下りない。しかし今の私は情報統合思念体の許可は必要ない…様するに…」 長門の全身から凄まじいプレッシャーがにじみ出ていた。 「私は非常に怒っている。」 頼もしいぜ。 次に朝比奈さんに話しかけた。 「朝比奈さん、大丈夫ですか?」 「はい!オートターゲット機能がついていますから下手くそな私でも大丈夫です!」 朝比奈さんは銃を持ちそう答えた。 「キョンくんは大丈夫ですか?」 「俺ですか?…ええ。」 俺は笑顔で言った。 「この世界での連日のゲーセン通いは伊達では無いですから!」 …。 …。 「みんな、準備は良いわね!」 「ええ。」 「ジェノサイドモード発動完了。」 「は、はい!」 「おう。」 ハルヒは朝倉に向き直り。 「待たせたわね。」 「もう良いのかしら?」 ハルヒは不敵な笑みを浮かべ言った。 「さあ!どっからでもかかって来なさい!!」 こうして戦いが始まった。 …。 …。 …。 あそこで一度に3人の朝倉を焼き払ったのは、今やどこに出しても恥ずかしくないサイキックソルジャーになった古泉だ。 瞬間移動をしながら手から炎を出し戦っている。 …お前は草○京か! そして戦闘開始から凄まじい勢いで朝倉を倒し続けているのは、 ジェノサイドモード とか言う物騒な名前のを発動した長門だ。 よほど鬱憤が溜まっていたのか 「俺達必要ないんじゃないか?」 ってくらいの勢いで凄まじい勢いだ。 この2人が前衛部隊として戦っている後ろで俺と朝比奈さんは2人が討ちもらした朝倉を射撃している。 朝比奈さんは 「ふぇ…ふぇ…」 と言いながらもオートターゲット機能のおかげか確実に射撃を命中させている。 俺は連日のゲーセン通いで培った腕で射撃を続けている。 …谷口、国木田、ありがとう。 そして我らが団長、涼宮ハルヒは 「アタシが戦うまでも無いわ。」 とでも言いたげな感じで腕組みをし、笑みを浮かべ俺の後ろに立っていた。 …。 …。 そんなこんなでいつしか敵は朝倉1人残すだけとなった。 …。 …。 「朝倉、もうお前だけだぞ。」 俺は朝倉にそう言った。 …まぁ全部朝倉だった訳だが。 しかし朝倉は余裕の笑みを崩さない。 「あら、もう勝った気でいるの?」 朝倉は再び指を鳴らした。 …。 …。 --な!? 突如俺達の前に巨大な影が現れた。 …なんだこいつは。 その影は手にした棍棒らしき物でなぎ払いをしてきた… 「な!?」 「ひゃ!?」 その軌道上に居るのは俺と朝比奈さん! 俺達に棍棒が迫る。 避けられるタイミングじゃ無い…。 俺は朝比奈さんを庇うようにして抱きついた。 …。 …。 クラッ… …。 …。 俺を襲ったのは衝撃では無く、強烈な立ちくらみだった……あれ?この感覚は…。 俺が目を開けると… まるで棍棒が俺達をすり抜けたかのように通りすぎていた。 「2秒だけ…。」 「え?」 朝比奈さん? 「2秒だけ飛べました。」 そうか、時間移動。 朝比奈さんは俺達に棍棒が当たる瞬間2秒未来へ時間移動をしたのか。 朝倉、やっぱりお前は長門よりも下だ。 長門は完璧に時間移動を封じたぞ! …しかし…この巨大な奴は一体…。 --!? さらに4体の巨大な影が現れやがった…合計5体…。 「長門、あれは一体何なんだ?」 長門は静かに答えた。 「…ミノタウロス…。」 ミノタウロス!? 「…あれが?」 確かに良く見るとそれの顔は牛の形をしていた…神話で有名なあのミノタウロスだ。 「ミノタウロス…××星に生息する巨大生物。性格は凶暴。 …その肉は美味。」 …最後の一文が気になったが…まぁ良い。 とにかく倒せば良いんだろ! 俺はミノタウロスに射撃した……効かない? 次に古泉が炎を、光の玉を連続して放ったが…同じく効果が無い。 「無駄。」 長門? 「ミノタウロスに特殊な攻撃は通用しない。倒すには単純な力による攻撃しかない。」 「…長門。お前なら何とかできるよな?」 思い出したく無いがかつて長門はミノタウロスを調理し肉じゃがにした事がある。 しかし…。 「無理。」 …え? 「あの時倒したのは幼体。あれは成体…しかも5体…今の私でも無理。」 …。 …。 なんてこったい。 「形勢逆転ね。」 いつの間にかミノタウロスの肩に座っている朝倉がそう言った。 「くそっ!」 どうすれば良い…見ると古泉や朝比奈さんの顔にも焦りの表情が見える。 「おい!ハル…」 俺はハルヒに振り向き……え? ハルヒの顔には焦りの表情は無く、先ほどまでと同じ笑みが浮かんだままだった。 ハルヒの視線…ハルヒは朝倉やミノタウロスを見ておらず、もっと後ろ……あ!? 「あ!?」 「ふぇ!?」 「……あ。」 ゆっくりとそれは現れた。 …なるほどな。 「…くっ…くっ…くっ…。」 思わず笑いがこみ上げる。 「…ふっ…ふっ…ふっ…。」 見ると古泉も笑っている。 「…何?恐怖で狂ったの?」 朝倉が怪訝な表情で俺達に言った。 「ははははははは」 俺と古泉の笑いがこだました。 「あなた達状況がわかっているの?私の命令一つであなた達死ぬのよ?」 状況がわかっているのかって? 命令一つ? これ以上笑わせるなよ。 「これが笑わずにいられるかよ? なぁ、古泉?」 「くっくっくっ…まぁ、僕としては複雑な気分でもあるんですけどね。」 そりゃそうだろうな。 「……。」 朝比奈さんは呆然としている。 そうか、朝比奈さんは見た事なかったな。 「長門、面白いだろ?」 長門は静かに言った。 「ええ。とてもユニーク。」 状況が1人分かっていない朝倉はイラついたような顔で 「なによ!なんなのよ!!」 と繰り返している。 「キョン。」 ハルヒ? 「教えてあげなさい。」 OK。 「朝倉。」 「何よ!」 「後ろを見てみろよ。」 「後ろ? …………!?」 朝倉は後ろを振り向き…絶句した。 そりゃそうだろう。 後ろでさらに巨大な巨人が今にも自分を叩きつぶそうと拳を振り上げているんだからな。 「……な…な…な…。」 「…神人。」 古泉が静かに呟いた。 神人…ハルヒが自ら生み出した閉鎖空間で暴れさせていた巨人だ。 しかし今はハルヒの命令を待つかの様に拳を振り上げてたまま待機している。 「やりなさい。」 ハルヒの声が響く。 それと同時神人の拳が振り下ろされた。 「ひっ!」 朝倉は小さく言葉を発し、ミノタウロスの肩から飛び退いた。 次の瞬間5体のミノタウロスは完全に叩き潰された。 「…すげえ。」 俺は思わず呟いていた。 そして静かに神人は消えていった。 「…で、形勢逆転がどうしたって?朝倉涼子?」 ハルヒの言葉を聞いた朝倉は怒りの表情を浮かべ立ち上がった。 「調子にのってるんじゃないわよ!殺してやる!!」 朝倉は絶叫しナイフを俺達の頭上に投げた。 ………!? ナイフが何千いや、何万という数に分裂し俺達を囲んだ。 これが俺達に降り注いだらひとたまりもないだろう。 しかし俺は落ち着いていた。 何故かって? ハルヒが笑顔のままだったからだ。 「ナイフの全方位攻撃よ! 手加減してあげてたのに図に乗って!……死になさい!」 朝倉の一言により何万ものナイフが俺達に降り注ぐ……事は無かった。 …。 …。 「な…なんで…。」 「馬鹿ねぇ。」 ハルヒは今日見せる最大級の笑顔で言った。 「そんなのアタシが許すとでも思ってるの!」 全てのナイフが音も無く消滅していく。 …ハルヒは…。 「すごい…涼宮さん…。」 「ええ、彼女は完全に…。」 そう、ハルヒは完全に自分の力を使いこなしていた。 「…覚醒。」 …長門? 「涼宮ハルヒは覚醒した。今の涼宮ハルヒに勝てる者はもはや存在しない。」 朝倉は狼狽していた…いや、恐慌していると言った方が良いだろう。 朝倉は一瞬逃げるような素振りを見せた後、石像の様に動かなくなった。 「あなたが動く事も許さない。」 「…あ…あ…。」 ハルヒはゆっくりと朝倉に近づく。 「…よくも…よくも好き勝手してくれたわね。」 笑顔だったハルヒの表情が徐々に怒りの表情に変わっていく。 「有希を閉じ込めたり…アタシ達の…SOS団の記憶を消したり…キョンを…みんなを殺そうとしたり…古泉君をあんな酷い目にあわせたり…。」 ハルヒを見ると…………泣いていた。 怒りの表情で体を震わせ涙を流していた。 「…アタシはあんたの存在を許さない。未来永劫ね。」 ハルヒの言葉に朝倉は…。 「…やめて…お願い…それだけは…それを言われたら…私は…。」 今さら何を言っているんだこいつは…。 「古泉、言ってやれ!」 古泉は頷き穏やかに言った。 「朝倉さん、知ってますか? 神様って非情なんですよ。 まぁ、神様とは言っても僕らの団長の事なんですけどね。」 古泉は朝倉に言われた事をそっくりそのまま返していた。 さらに古泉は続ける。 「あなた方は涼宮ハルヒを舐めていた。その結果彼女の逆鱗に触れる事となった。 残念ですが我らが団長は敵にはどこまでも非情になれる方なんですよ。」 古泉はニッコリと微笑んだ。 「アタシはあんたを絶対許さない!あんたが再び生まれる事も許さない。 消えなさい!朝倉涼子!永久に!!」 ハルヒがそれを言ったと同時に…朝倉涼子は…消滅した。 もう二度と朝倉が現れることは無いだろう。 ハルヒが言った以上絶対だ。 触らぬ神に祟り無し この言葉をちゃんと理解していたら良かったのにな…朝倉。 そして空間が歪み…割れた。 …。 …。 …。 ~部室~ 「終わりましたね。」 古泉が言った。 ああ、終わった。 後は世界を元に戻すだけだ。 「……ごめんなさい。」 ん?長門? 長門は続ける。 「今回の件は全て私の責任。ごめんなさい。」 お前の責任なんかじゃない。 それに今言う事はそれじゃない…。 「長門、違うだろ?今お前が言わないといけない事は一つだけだ。」 長門は目を見開きしばしの沈黙の後言った。 「……ただいま。」 「お帰り、長門。」 「お帰り、有希。」 「お帰りなさい。長門さん。」 俺、ハルヒ、朝比奈さん、古泉が同時に言った。 …本当にお帰り。長門。 「さて、んでどうすれば良いのかしら?」 ハルヒが俺に言った。 「そうだな、お前の力で元の世界に戻すんだ…いや、二度とふざけた真似できないように情報統合思念体存在を消した世界をな。」 「分かったわ。」 その時だ。 「待って。」 ん!? …。 …。 その声の主は部室の入り口に立っていた。 「喜緑さん…。」 喜緑江美里…生徒会書記、その実体は長門や朝倉と同じ対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース…彼女が何故? ハルヒが呟く。 「なるほど、朝倉涼子の次はあなたって訳ね。」 その言葉に喜緑さんは首を振り 「いいえ、あなた方と争うつもりはありません。 あなた方に今の情報統合思念体の事を伝えに来たの。」 …。 …。 喜緑さんの話しによると、今回の件は急進派によるクーデターみたいなものであったらしい。 そして現在は元の通りになった。 二度と急進派が表に出る事は無い。 つまり、情報統合思念体を消すのを止めてくれ…って言いたいらしい。 「それを信じる理由は無いな。」 俺はそう言った。 当然だ。また奴らが同じ事をしないという保証は無い。 「私も情報統合思念体を消さない事を推奨する。」 長門!? 長門は続ける。 「喜緑江美里の言っている事は事実。 情報統合思念体の消去による影響は甚大。」 長門の話しによると情報統合思念体が消えるとこの世に大きな不具合が発生し、メリットよりもデメリットの方がはるかに大きいと…。 しかしなぁ…。 「もしもまた同じ事があったらどうするんだ?」 俺の問いに長門は 「それは無い。涼宮ハルヒが許さないと言った以上絶対。だから心配ない。」 俺はハルヒを見た。 「…まぁ、有希が言うなら仕方ないわね。 喜緑さん、分かったわ。」 ハルヒがそう言うなら仕方ない。 「ありがとうございます。 …それじゃ長門さん、後はお願い。」 喜緑さんは去っていった。 …。 …。 「私が涼宮ハルヒの力を使い元の世界に戻す。」 長門? 「今日の事が無かった事になりあなた達が今日経験した記憶は消える。」 「記憶が…消える?」 「そう、私以外の記憶は消え、当たり前の1日が始まる。」 ハルヒが声をあげる。 「ちょっと待って!それってアタシはまた何も知らない状態に戻るって事? 自分の力、有希が宇宙人、みくるちゃんが未来人、古泉君が超能力者って事も全部?」 「そう。でもそれがあなたの望み。」 ……なるほどな。 何でも自分の思い通りになる世界をハルヒが望むか? …否。 そんな世界をハルヒが望む訳が無い。 ハルヒが望んでいるのはいつもの日々だ。 ハルヒが無茶な事を言い出して俺達が振り回される。 みんなで馬鹿な事をやり笑いあえる…いつもの日々。 「帰ろうぜ、あの日々に。」 俺はハルヒに言った。 「…そうね。帰りましょう。」 古泉と朝比奈さんも笑顔で頷いた。 「改変を開始する。」 長門がそう言うと周りの景色が歪み…真っ白な世界になった。 それと同時に俺達の体が光に包まれる。 「ところで、僕の力はどうなるんでしょうか?」 「古泉一樹、あなたの力は一時的に涼宮ハルヒにより与えられた力。記憶の消失と共に消える。」 「それは残念ですねぇ。」 古泉は残念そうな顔で呟いた。 「ああ、あと涼宮さん、なるべく閉鎖空間を生まないようにしてください。」 気持ちはわかるが今言っても忘れているから意味ないぞ。 「ふっ、それならあなた達アタシを退屈させないように頑張りなさい。」 ハルヒは笑顔でそう言った。 俺と古泉は肩をすくめ呟いた。 「やれやれ…。」 …。 …。 そして長門が口を開いた。 「みんな…ありがとう。」 そして全てが光に包まれる…。 …。 …。 …。 ~キョンの部屋~ ガタン 「痛ってえええ。」 …どうやらまたベッドから落ちたらしい。 今何時だ?……2時か…。 ……何か夢を見ていたみたいだが……思い出せない。 物凄く苦労した夢だったみたいだが…まぁ、そのうち思い出すだろう。 寝よう…。 …。 …。 …。 ~教室~ 「おはよう。」 「おはようキョン。」 いつもの朝、教室に入った俺は友人の国木田、谷口と朝の挨拶を交わした。 「ちょっと!キョン!聞いて!」 なんだハルヒ?朝っぱらからテンション高いな。 「昨日凄く面白い夢を見たのよ!」 夢? 「もしかしてまた俺と古泉がお前に飯おごらせようとして、お前が財布を忘れて古泉がロリコンからホモになったあれか?」 「違うわよ!」 「違うわよ!」 違うのか…古泉には悪いがあれは正直面白かった。 「どんな夢だ?」 「それがね!覚えて無いの!」 ……は? ハルヒは覚えて無いけど物凄く面白い夢だったと言っている。 なんだそりゃ…そう言えば俺もなんか夢を見たな…覚えて無いけど…かなり苦労した夢…まぁ良い。 「おはようみんな。」 担任の岡部が入って来た…そんなこんなでいつもの1日が始まった。 …。 …。 …。 ~放課後の部室~ いつも通りみんな集まり、それぞれ思い思いの事をやっていた。 ハルヒは団長席でふんぞり返り、朝比奈さんはメイド服でみんなにお茶を配り、俺と古泉はカードゲームをし、長門はいつもの席でいつもの様に自動読者マシーンと化している。 途中でまたハルヒが夢の話しをしだした。 それぞれ昨日どんな夢を見たか? ハルヒ「凄く楽しい夢だった。でも内容は覚えていない。」 俺「凄く苦労した夢だった。でも内容は覚えていない。」 古泉「凄く痛い夢だった。でも内容は覚えていない。」 朝比奈さん「凄くオロオロする夢だった。でも内容は覚えていない。」 みんなバラバラだ。 共通点は覚えていないって所か。 「有希?あなたは何か夢見た?」 長門は本から顔を上げコクンと頷いた。 長門も夢を見るのか? 「んでどんな夢?」 長門はしばらく考えた後 「凄く幸せな…嬉しい夢。」 と答えた。 「で、内容は?やっぱり覚えてないの?」 長門は首を振り言った。 「覚えている。」 「教えて。」 「……内緒。」 内緒か…まぁ幸せな夢だったら良いか …っと思っていた時長門が急に立ち上がった。 そして… 「みんな……ありがとう。」 …。 …。 …なんで俺達は長門にお礼を言われているのだろうか? 皆を見てみるが皆困惑の表情を浮かべている。 でもそんな事はどうでも良い。 皆もそう思っているだろう。 だって… 長門が今、最高の笑顔で微笑んでいるのだからな…。 …。 …。 …。 …おしまい。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/509.html
涼宮ハルヒの異変 上 涼宮ハルヒの異変 下
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/575.html
涼宮ハルヒの仮入部~ハンドボール部編~ 涼宮ハルヒの仮入部~アイドル研究部編~ 涼宮ハルヒの仮入部~グリークラブ編~ 涼宮ハルヒの仮入部~新体操部編~ 涼宮ハルヒの仮入部番外~かなり後の後日談~ 涼宮ハルヒの仮入部~コーラス部編~ 涼宮ハルヒの仮入部~バレーボール部編~ 涼宮ハルヒの仮入部~空手部編~ 涼宮ハルヒの仮入部番外~孤島症候群その後~ 涼宮ハルヒの仮入部~ソフトボール部編~ 涼宮ハルヒの仮入部~野球部編~ 涼宮ハルヒの仮入部~女子レスリング部編~ 涼宮ハルヒの仮入部~手芸部編~ 涼宮ハルヒの仮入部番外~帰宅部の連中~ 涼宮ハルヒの仮入部~将棋同好会編~ 涼宮ハルヒの仮入部~茶道部編~ 涼宮ハルヒの仮入部~テニス部編~ 涼宮ハルヒの仮入部~軽音楽部編~ 涼宮ハルヒの仮入部~美術部編~ 涼宮ハルヒの仮入部~吹奏楽部編~ 涼宮ハルヒの仮入部~剣道部編~ 涼宮ハルヒの仮入部~水泳部編~ 涼宮ハルヒの仮入部~文芸部編~ 涼宮ハルヒの仮入部おまけ
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1961.html
【キャラ設定】 涼宮春日:涼宮ハルヒ これがデビュー作なのでかなり立場が弱く、性格も弱弱しい。 特技:裁縫、料理 尊敬する女優:長門有希 長門有希:長門有希 結構有名な女優で面倒見がいい。ドラマの名前と本名が同じ 特技:暗算、世話 尊敬する女優:綾波玲子 朝日未来:朝比奈みくる 大物女優だが仕事はほとんどグラビア。後輩いじめが激しい 特技:誘惑、フェラ 尊敬する女優:いない 鶴屋和子:鶴屋さん こちらは歌手+女優+タレントの超大物で未来も頭が上がらない 特技:カラオケ、一気飲み 尊敬する女優:流アスカ 緑川江美里:喜緑江美里 未来と同じ大物女優でライバルも未来。結構世話焼きらしい 特技:空手、素股 尊敬する女優:翠星恭子 横倉良子:朝倉涼子 春日の次に新人だがドラマは3本目。長門と仲がいいらしい 特技:手品、スポーツ全般 尊敬する女優:長門有希 小野妹子:キョン妹 天才子役。はっきりものを言うので未来といい勝負。春日を尊敬している。 特技:バトン、縄跳び 尊敬する女優:涼宮春日 阪中文恵:阪中 普通の女優。売れ具合は平凡で自分もそんなもんだろうと思っている 特技:射的、金魚すくい 尊敬する女優:洞木光子 山田花子:朝比奈さん(大) 未来と似ているためにスカウトされた人。春日と仲がいい 特技:裁縫←天才的 尊敬する女優:朝日未来 森レイカ:森園生 美人ピン女芸人。今回初めてドラマに挑戦、ファンもいるので結構有名 特技:一発芸、ものまね 尊敬する芸人:赤城律子 新川源一郎:新川執事 超大物俳優で時代劇からポップなドラマに挑戦。楽屋では神様らしい 特技:剣道、作法 尊敬する俳優:(故)冬月源一 堤下吉安:多丸圭一 エヴァにも出演していた俳優で今でも現役バリバリ。 特技:大工仕事、運転 尊敬する俳優:新川源一郎 田丸祐:多丸祐 二枚目俳優で、歌手でもデビューしている。結構ひ弱 特技:英語、短距離走 尊敬する俳優:六分儀原堂 【禁則事項】:キョン ここでも本名は禁句らしい。ドラマと違い、実際は几帳面な性格 特技:掃除、心理学 尊敬する俳優:碇信二 林原一樹:古泉一樹 ハンサムのくせにオタクの2ちゃんねらー。皆に呆れられている 特技:煽り、タイピング 尊敬する俳優:ジン・サクラダ・JUM 谷口健太:谷口 大物俳優だがサバサバしていて嫌味もない、リアルな鶴屋さん 特技:ダンス、ボクシング 尊敬する俳優:有馬総一郎 国木田和利:国木田 こちらも大物俳優で谷口と仲がいい。趣味は骨董品集めらしい 特技:きき温泉、歴史 尊敬する俳優:工藤新一 影野隼人:コンピ研部長 名脇役でいつになっても脇役らしい。夢はレギュラー番組をもつこと 特技:速読、ツッコミ 尊敬する俳優:脇役俳優全て 大鷹凌:生徒会長 俳優業は短いが、幅広いドラマに出演している実力者。 特技:長距離走、柔道 尊敬する俳優:新川源一郎 シンドウカオル:パンジー(仮) 美少年で演技もうまいが嫌味でキョンをよくいじめる。ナルシスト 特技:自画自賛、美術 尊敬する俳優:いない 猫丸:シャミセン よく訓練されている天才猫でテレビに出たことも多々ある。 特技:爪とぎ、ジャンプ 尊敬する猫:ドラえもん 熊田岩男:カマドウマの中身 重い着グルミなどでは多々呼ばれる力一本の裏方。あだ名は熊さん 特技:力仕事、パンチ 尊敬する俳優:筋肉マン 「涼宮ハルヒの舞台裏」~かわいい顔して高飛車編~ 監督「収録終わりです。おつかれ」 一同「お疲れ様でした!」 ~楽屋にて~ みくる「・・・あなた今日何回リテイクされたの!」 ハルヒ「あの・・・すいません・・・7回です・・・」 みくる「大女優の私が直々にあなたのいじられキャラになっているのよ!」 ハルヒ「すいません・・・・・・」 みくる「・・・まったく!今度失敗したらタダじゃおかないわ!」 ハルヒ「ごめんなさい・・・・・・シクシク・・・」 みくる「ふん・・・部屋掃除しといてよね」 ハルヒ(辞めようかな・・・この仕事) 涼宮ハルヒの舞台裏」~面倒見のいい先輩編~ 監督「収録終わりです。おつかれ」 一同「お疲れ様でした!」 ~楽屋にて~ 長門「春日ちゃん!元気ないけどなんかあったの?」 ハルヒ「・・・・・・昨日未来さんに怒られて・・・」 長門「そうなの・・・あなたも主人公だから大変よね」 ハルヒ「私・・・辞めたいとも思ってます・・・シクシク」 長門「それは駄目よ!」 ハルヒ「な・・・なんで・・・ですかぁ・・・?」 長門「この仕事ではドロドロしたこともよくあること・・・私も昔はそうだった・・・ でも逃げちゃ駄目よ!我慢すればきっと幸せだから!」 ハルヒ「本当ですかぁ?」 長門「うん・・・あなたはこれがデビューでしょ?リテイクなんて当たり前よ でも・・私はあなたの演技はすごく好きだわ」 ハルヒ「・・・うっ・・・うわあああああん!・・・長門さぁん・・・」 長門「よしよし・・・一緒に頑張りましょ」 「涼宮ハルヒの舞台裏」~脇役は結構有名人~ 監督「収録終わりです。おつかれ」 一同「お疲れ様でした!」 ~楽屋にて~ キョン「お疲れ様でした!」 谷口「おう!おつかれ」 キョン「すいません・・・俺なんかが主役で・・・大物俳優の谷口さんが脇役で・・・」 谷口「そんなこと気にするな!気にするな!」 キョン「そうですか?」 谷口「おう!俺は主役やりすぎて逆に脇役に飢えているからな!」 キョン「ありがとうございます!」 谷口「お前も俺のこと下の名前で呼んでいいんだぞ!」 キョン「そ・・・そんな!大物俳優の谷口さんを下の名前なんて・・・」 谷口「そんなこと気にするなって!どうだ?この後いくか?」 キョン「ぜ・・・ぜひ、ご一緒させて下さい!」 谷口「今日は俺の奢りだぜ」 キョン「そ・・・そんな!俺が出します」 谷口「大丈夫だって!俺に任せろ」 キョン(谷口さん・・・本当にいい人だな・・・) 「涼宮ハルヒの舞台裏」~鶴屋さんは空気が読めない編~ 監督「収録終わりです。おつかれ」 一同「お疲れ様でした!」 ~楽屋にて~ ハルヒ「なんか今日は疲れたな・・・」 長門「私なんてアクションシーンがあったから・・・」 みくる「ああもう!今日は早く家に帰りたいわ!」 鶴屋「お疲れぇ!今日はカラオケ行くわよ!」 一同「・・・・・・・・・」 ハルヒ「ちょっと今日は・・・」 鶴屋「なんでなんで!?行こうよカラオケ」 長門「すいません・・・用事があるので・・・」 鶴屋「しょうがないわね・・・未来!一緒にカラオケ行こう!」 みくる「あ・・・あの私は・・・・・・ご一緒させていただきます」 鶴屋「それじゃあ行くわよ!朝まで歌うわよ!!」 みくる(くそっ!あの先輩!空気嫁ってんだアホ) ハルヒ「鶴屋さん・・・あんがい最強?」 「涼宮ハルヒの舞台裏」~古泉オタク編~ 監督「収録終わりです。おつかれ」 一同「お疲れ様でした!」 ~楽屋にて~ キョン「お疲れ一樹!」 古泉「乙カレー!うはwwwテラツカレタwww」 キョン「う・・・うん・・・疲れたな・・・今日は・・・」 古泉「オマエモナー」 キョン「ああ・・・俺も疲れているよ・・・」 古泉「ショボーンって感じすかwww」 キョン「ああ・・・少し憂鬱だな・・・・・・」 古泉「ギガワロスwww憂鬱とwwwダジャレすか?www」 キョン「・・・ダジャレじゃないよ・・・はは・・・」 古泉「そうすかwwwうはwww自爆wwwテラハヅカシスww」 キョン(喋りにくい・・・VIP語?) 「涼宮ハルヒの舞台裏」~キョンとハルヒは似たもの同士~ 監督「収録終わりです。おつかれ」 一同「お疲れ様でした!」 ~廊下にて~ キョン「お疲れ様」 ハルヒ「あ・・・お疲れ様です。キョン君・・・」 キョン「君もリアルでキョン君って呼ぶのか・・・?」 ハルヒ「す・・・すいません!呼びなおしますから!」 キョン「あ・・・いいよ。どうせ禁則かかるから・・・」 ハルヒ「そうなんですか・・・」 キョン「それよりどう?職場の雰囲気」 ハルヒ「それが・・・未来さんがちょっと怖くて・・・」 キョン「そうなんだ・・・大変だね」 ハルヒ「で・・・でも長門さんが励ましてくれるんです」 キョン「そうなんだ・・・こっちは谷口さんが気さくなんだ」 ハルヒ「いいなぁ・・・男性の方は雰囲気もよさそうですね」 キョン「古泉が少し意味分からないんだけどね・・・」 ハルヒ「私は女性のほうに江美里さんが来るらしくて・・・」 キョン「そうなんだ・・・大女優だからね江美里さん」 ハルヒ「ちょっと心配です・・・」 キョン「大丈夫だよ!俺も応援してるから」 ハルヒ「ありがとう・・・」 谷口(若い子はいいなぁ・・・初々しいぜ!) 「涼宮ハルヒの舞台裏」~年下は強し~ 監督「収録終わりです。おつかれ」 一同「お疲れ様でした」 ~楽屋にて~ みくる「ちょっと!妹!リテイクなにされてんのよ!」 妹「あれはキョンとかいうヘタレだから私じゃないわ」 みくる「キョンの失敗もあんたと同じよ!」 妹「五月蝿いわ!春日さん以下の存在のくせして」 みくる「なによ!あんなペーペーの新人なんて目じゃないわ」 妹「はっ!巨乳と童顔しかないあんたより春日さんのほうがマシだわ」 みくる「五月蝿い!あんたは子供だから色気がないのよ!」 妹「色気なんてそのうち出るわよ!あんたはもう少しでおばさんだから!」 みくる「五月蝿いのよ!あんたはクマさんパンツでしょどうせ」 妹「なに?私の下着に興味があるの?このヘンタイ!」 みくる「なっ・・・なんですって!あんたの演技なんてクズよ!」 妹「巨乳とったらなにも残らないあんたに言われたくはないわね」 みくる「あんたは何もないから取るものがないわね」 妹「五月蝿いよ!私にはこのスレンダーなボディだあるんだから」 みくる「でている場所が下なんだから意味がないわねぇクスクス」 妹「あんたは下も二の腕も出ているからヤバイわよ!」 みくる「出てないわよ!あんたはカミブッ・・・」 妹「あらーこの程度で下噛むなんて、あんた女優辞めたら?」 みくる(あんちきしょぉぉぉぉ!) ハルヒ「うわぁ・・・強いだなぁ妹子ちゃんって」
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/754.html
コンコン 「どうぞ。」 ガチャ 「失礼します。どうしたんですか?喜緑さん。」 「今日はちょっと涼宮さんについて試してみたいことがございまして、あなたに協力していただけないかと。」 「なんでしょう?」 俺はこのとき、俺にできることならなんでもやるつもりだった。 「涼宮さんが今まで他の人にしてきた行為と同じ事を他の人に涼宮さん自身がされたらどういった反応を示すのか試して見たいのです。」 「えっと、具体的にはどういった事をするんですか?」 「こうするのです。」 喜緑さんはいきなり自分の服を乱暴に脱ぎ、半裸になった。 「何してるんですか喜緑さん!服着てくださいよ!」 「あなたが着させてください。それまでは私は服を着ません。」 俺は逃げればよかったんだろうけど、あまりの出来事に脳はショートしていた。 喜緑さんも宇宙人という先入観も手伝ってとりあえず服を着せてやろうとした。 その瞬間。 カシャ! なんと生徒会長が写真を撮った。 「え!!???」 「じゃあそういう事だ。詳しいことは喜緑くんに聞いてくれたまえ。」 そう言うと生徒会長はこの部屋を出て行った。 「どういう事なんです?とりあえず服着てください。」 「このままでいいじゃないですか。それに言ったはずですよ?『今まで他の人にしてきた行為と同じ事を他の人に涼宮さん自身がされたらどういった反応を示すのか試して見たい』と。 簡単に言いますと、朝比奈みくるさんとパソコンを奪った方法でSOS団から部室を取り上げようとしているのです。生徒会長はこれから現像してSOS団に乗り込みます。」 「何を言ってるんですか喜緑さん!そんなことして何になるんですか?」 このとき俺はハルヒが俺を切り捨てて終わるんじゃないかとか、長門が何とかしてくれるとか考えていた。古泉も、朝比奈さんもいる。 つまりSOS団自体には俺がいなくなる可能性があるだけで変わらないと思ってた。 思ってたから喜緑さんに説明すれば撤回してもらえると考えたんだ。だからこのとき俺はそこまで焦っていなかった。生徒会長を追わなかった。 「あなたの考えている事はわかります。しかし我々思念体の判断は、涼宮ハルヒはあなたの不祥事に対し閉鎖空間を発生させます。 この場合の閉鎖空間は相当な大きさになり、まず古泉一樹は自由に行動できないでしょう。」 「長門がいる。あいつは俺の事を信じてくれるハズだ。」 「長門さんは、そうですね。あなたの事を信じているから、今回は静観することに納得してくれました。 あなたと長門さんはこの問題が終わるまで連絡を取ることはできませんが伝言を承っております。」 「なんです?」 「誤解は解ける。あなたを信じている。」 そうだ、何故か俺が悪いことをした雰囲気に持ち込まれているが、俺は何もしてないんだ。 「そうですね、長門の言うことを信じて誤解を解こうと思いますよ。まだSOS団を脱退したくないんでね。」 「あなたならそうおっしゃると思いました。私もあなたなら誤解を解くと思っています。」 「なら何故こんなことをするんです?」 「長門さんと同様、私も穏健派なんです。自体の急変は望まない。なぜなら対応できない事態に陥ったときのリスクが大きいと判断しているからです。」 「じゃあやめてくださいよ。」 「しかし、長門さんの観察により、涼宮ハルヒはあなたを信頼しているため、誤解が解けると判断されました。 ならば、自体を急変させ、観察し、誤解を解かせる。平穏に事態は収拾されます。」 「リスクがないから異常事態を発生させるんですか?」 「平たく言えばそういうことになります。」 「ついでに、朝比奈みくるの異次元同位体からも伝言を承っております。」 「なんでしょう?」 「『この時間帯の私は事態を把握していません。邪魔にさえなりかねませんが、この誤解が生まれる事は決まった事なんです。』と。」 「なら誤解を解くしかないのでしょう。ところで、長門が俺のと連絡取れなくなるのは何故です?」 「うふふ、禁則事項です。」 そこでウィンクですか。似合ってはいるが、朝比奈さんほどではないなとか考えていると、 「そろそろですね。がんばってください。」 と言い、急に喜緑さんは泣き始めた。 「どうしたんですか?大丈夫ですか?」 俺は焦って近寄った、瞬間 ドーン!! 「ちょっとキョン!!!どういうこと!!?この写真は!!???」 泣く喜緑さん。喜緑さんに近づく焦った俺。そういえば喜緑さんの服は… 「えっ?キョン?何してんの?ウソでしょ?」 しまった!最悪のタイミングだ。 「ハルヒ、落ち着け!」 「落ち着ける訳ないじゃない!!なんなのよアンタいったい!!」 ハルヒがそう言い終わった直後に朝比奈さんと古泉が来た。 「キョンくん…」 朝比奈さんは泣いていて、今にも倒れそうなほどショックを受けてるのがわかる。 「キョン!!なんとか言いなさいよ!!」 「だから、落ち着け。俺は何にもしてない。全ては誤解だ。」 「喜緑さん泣いてるじゃない!!そんな風にしといてよく誤解だなんて言えるわね!!」 コイツは人の話を聞かないことを忘れていた。 「申し訳ありませんが、状況を把握できていないので説明してもらえませんか?」 まるで俺に弁解するチャンスをくれるように言ってきた。だが表情はいつもより硬い。 「古泉くん、さっき生徒会長が来たでしょ!??そんでこの写真渡されて、お宅の部員が生徒会の役員に卑猥な事を強要してるって言うのよ! 信じる訳ないじゃない??いくら写真に写ってても、偽造とか疑うでしょ??そしたらこの部屋に行ってみろって言われたの!!来たらこのありさまよ!!」 「あなたからも説明してもらいたいのですが?それと朝比奈さん、彼女を保健室まで連れて行ってくれませんか?」 「はい…。」 さて、誤解を解くか…。 っ!!しまった!ハルヒの前で説明できない!どうする?考えるんだ。落ち着け、俺。 「何も言わないの!??アンタそんな人間だったの??」 そうだ、襲われたのは喜緑さんだ。古泉ならわかってくれるかもしれない。 「少し古泉と二人で話したいんだが、ダメか?」 「ダメに決まってるじゃない!!アンタどうせ逃げるんでしょ?それとも男なら気持ちわかるだろとか言って古泉くんを仲間にするつもり?」 なんの仲間だ。 「そうか。古泉、良く聞け。お前は、本当に俺が、喜緑さんを襲ったと思うか?いや、襲えたと思うか?」 喜緑さん、という単語を強調してみた。女性が喜緑さんだとわかってか、古泉の顔がニヤケた。いつもはウザいが、今日は朝比奈さん並みの笑顔に見える。 「俺は何にもやっていない。」 「なるほど。あなたの言い分はわかりました。僕個人としてはあなたを信じているのですが、この状況では僕には何もできそうにありませんね。」 もしかしたら、古泉は宇宙人の思惑にまで気付いてくれているのかもしれない。だが、古泉まで『涼宮さんとあなたなら誤解は解けるでしょう』とか思ってたら最悪だ。 「古泉くんはこのバカキョンの事を信じるのね。」 「ハルヒは信じてくれないのか?」 「あいにく、あたしは自分の目で見たことしか信じないの。」 ハルヒらしいな。 「じゃあ、ハルヒは俺が襲ってる所を見たのか?」 「見てないわよ。だからアンタにも弁解の余地をあげる事にするわ。」 やれやれ。弁解のしようによっては誤解は解けるかもな。もしかしたら誤解は解ける事が未来では決まっていたのかも知れない。 そうだ、いい事を思いついた。朝比奈さんとお前がコンピュータ研のパソコンを奪ったときを例にあげて、朝比奈さんに害が及ばないようについでに注意しとくか。 どうせ誤解は解けるんだし。 「ハルヒ、今の俺の状況は、お前が朝比奈さんを使ってコンピュータ研のパソコンを奪ったように生徒会長が喜緑さんを使って俺をはめ、SOS団を解散させようとしたんだ。 もう一度言う。俺は何もやってない。」 「ウソよ!喜緑さん泣いてたじゃない!」 「朝比奈さんだって泣いてたじゃないか。朝比奈さんは翌日学校を休んだんだぞ?言い換えればお前は俺に怒ってることと同じ事を朝比奈さんにやってるんだ。」 「え…」 ハルヒはとまった。目には涙が浮かんでる。 携帯の着信音が聞こえる。すごい速さで遠ざかっている。 やはり古泉の姿は消えていた。 喜緑さんと朝比奈さんは保健室。古泉はおそらく閉鎖空間。長門はいない。つまり俺とハルヒは二人きりだ。 「なあハルヒ、俺を信じてくれないか?」 「違うわ!!あたしとあんたとじゃあやってること全然違う!だってあたしは女でアンタは男じゃない!!」 しまった。少し言い過ぎたか。こうなるとハルヒは人の言うことを聞かなくなる。 「そうだな、少し言い過ぎた。だけど、俺は何もしていない。」 「何よそれ。意味わかんない。こんな状況で何を信じろって言うの?」 「そうだな。俺と古泉が逆の立場だったら信じられないかもしれない。」 「…喜緑さんにも話を聞いてくる。あんたは部室にいなさい!逃げたら死刑だからね!!」 「わかった。」 はあ、本当に俺は何にもしてないんだけどな。ハルヒも落ち着けばきっと信じてくれるだろう。 それよりも喜緑さんが余計なこと言わなければいいが、あの人もこれ以上は危険だってことはわかるだろう。いくら穏健派でも。 そんな事を考えてたら部室に着いた。ノックしないで入るのは久しぶりだな。 ガチャ 「えっ?長門??なんで??」 なぜ長門がここに?この件が終わるまでは俺の前にでないんじゃなかったのか? 「あなたは未来を書き換えた。よって誤解が解けない可能性がでた。それが私がここにいる理由。」 「どこで俺は未来を書き換えたんだ?」 「おそらくあなたは未来を予想した。本来なら弁解しかしない所、涼宮ハルヒに反論してしまった。 これにより涼宮ハルヒはあなたに対する信頼を低下させた。低下した信頼とあなたの誤解が解ける可能性は共に未知数。」 「そうか、俺は余計な事をしたんだな。どうすりゃいいんだ?」 「どうにもならない。」 えっ? 「もう誤解は解けないのか?」 「そうではない。誤解が解ける可能性はあくまで未知数。わたしにもわからない。あなたに賭ける。」 まるでいつぞやの閉鎖空間のようだな。ただあの時は答えがでてた。今回は同じ解答をすると取り返しのつかない事になるのは目に見えている。 「そうか、なら俺は誠心誠意誤解を解く努力しますよ。」 やれやれだ。 「わたしも協力する。」 そうか、助かるよ。 ガチャ。 「あんたいったいどんな脅しをしたの?喜緑さんは『彼の言った通りです。』しか言わないわ。」 「だから俺の言った通りなんだって。」 さて、どんな弁解をしよう。一番簡単なのは古泉が生徒会長に暴露させることなんだけどな。居ないけど。 「あの~キョンくん、本当に何もやってないんですか?」 朝比奈さん、来てたんですね。平気そうで何よりです。ただ、信用してもらえないのはちょっと、いえ、結構傷つきます。 「彼は何もやっていない。」 長門、何故お前が言い切る。逆に不自然だぞ? 「ちょっと有希!あんた何か知ってるの?」 「何も。」 「なんで有希までキョンを庇うのよ!古泉くんも庇ってるみたいだったし!」 「あの~涼宮さん、やっぱり私もキョンくんはそんな事するとは思えないんですけど。」 そうか、長門の正体を知ってる朝比奈さんなら長門の言うことの信頼性がわかるのか。俺は信じてもらえなかったけど。 「みくるちゃんまで?決定的証拠まであるのよ?」 「でも、わたしも喜緑さんと同じ事させられたんですけど。でもコンピュータ研の部長は無実じゃないですか。だからやっぱりそれは証拠にはならないんじゃないのかなって。」 「そう。わたしは証拠がないなら彼を信じる。」 朝比奈さん、長門!ナイスコンビネーション!! 「でも…」 ハルヒがごもった。これは誤解が解けるかもしれない。 「私は彼を信頼している。彼がどのような人間か知っている。彼はやってない。 それにもし彼が襲うとしたら、より弱者である朝比奈みくるを狙う。」 「狙わん!」 「わたしは信じてます。キョンくんがそんなことしないって。それに、キョンくんって意外とモテるんですよ?」 「キョンがモテるって?そんなわけないじゃない!仮にモテたとしても、関係ないわ!」 「彼が本当に暴走する人間なら私と言う固体を使ってエラーを除去する。」 「ちょっと有希!それどういう意味よ!」 「そうですね、わたしもキョンくんが本当にそんなことする人間だったらわたしにすればいいのにってちょっとだけ思いますよ」 長門、朝比奈さん。そこまで俺を信用しないでくれ。俺だって一般的な高校生なんだ。普通の高校生なんだ。 「あんたたちそれはどういう意味?」 「そのままの意味。」 「でもね、本当は私たちよりもっとキョンくんの事を好きって人を知ってるんです。」 朝比奈さん達のさっきの言葉には『俺の事好き』って意味も含まれてたのか。それはとても感無量だ。説得するためとはいえ、そんなこと言ってもらえるなんて。 ところでもっと俺の事好きって人?いったい誰だ? 「誰よこいつのこと好きってヤツは!」 「その人は、キョンくんがそういう事しないって信じてるからこそ今回の事件で取り乱したの。 でも本当は何故自分にそういう事しないんだって憤りも感じてるの。それに気付いてないから怒ってるんだと思う。 それに、その人はキョンくんに好かれている事をわかってると思う。」 「そう。」 長門に朝比奈さんのコンビって意外と強力だな。ところで誰なんだ?ハルヒにはわかったのか? 「まあいいわ。今回は有希とみくるちゃんに免じて特別あんたを信用することにするわ。その代わり言ってることが違ったら、わかってるわね?」 「ああ。わかってる。俺は本当に何もしていないから問題はない。」 ところで問い詰めないところをみると俺の事好きな人ハルヒは誰だかわかってるんだな。 誤解もほとんど解けたし、後は古泉に任せよう。そして帰りに俺の事好きだなんていう奇特な人の名前も聞いておこう。 「じゃあキョン!帰るわよ!」 「おいおい、俺の事疑っといて謝罪の言葉もなしか?」 「関係ないわ!疑われるようなことするあんたが悪いのよ。」 やれられ。余計なこと言わなければもっと早く信じてもらえたのかな? 「ところで朝比奈さんに長門。俺の事好きだって人、誰だ?」 「有希!みくるちゃん!こんな強姦魔には何も言わなくていいからね!」 顔が赤いぞハルヒ。 「いい。彼に襲われる事に問題はない。」 顔が青いぞハルヒ。 「でもキョンくんはその人以外にはしませんよ、涼宮さん。 それより、その『好きな人』がキョンくんと付き合っちゃえばそんな事しなくなるし安全じゃないですか?」 また顔が赤くなったぞ、ハルヒ。 「それより朝比奈さん、俺はそんな事してないですししないですよ?」 「そうでしたねっ」 「キョン!帰るわよ!!」 やれやれ。もうちょっと信用あると思ってたんだけどな。 帰り道はハルヒと二人だった。 「なあハルヒ、そろそろ教えてくれよ。いったい誰なんだ?」 「みくるちゃん言ってたじゃない!アンタの事を好きな人は、アンタが好きな人よ!」 なるほど。 「そうか、ようやく理解したよ。」 「他にいう事はないの?」 「違ってたらすまん。…ハルヒ、好きだ。」 「バカ。」 「違ったのか?すまん。だがコレは俺の本当の気持ちだ。」 「バカ。」 「ごめん。」 「バカ。」 「泣いてるのか?」 「あんたが鈍感すぎるのがいけないのよ!」 「すまん。早とちりだった。」 「本当にアンタは早とちりしすぎよ!」 「だからすまんって。」 「いい加減気付きなさいよ!あたしだってアンタの事好きなのよ!」
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1689.html
今日の授業も終わったし掃除当番も終わったから早速部室に行くことにした。 部室のドアを開けた瞬間、みくるちゃんが立っていて『あっ!』と思った 瞬間にはお互い頭を強くぶつけてた。 「いたたたたた・・・みくるちゃん大丈夫?」 「痛かったですぅ・・・でもなんともないですよ。」 と言って顔を上げると・・・ 「え!何であたしが目の前にいるの!!」 「ええっ!ど、どうして私が目の前にいるんですかぁ~。」 ほっぺたをつねってみた。痛い。どうやら夢じゃないみたい・・・ 「もしかして・・・あたしたち人格が入れ替わっちゃったの??」 「ふえ~ん・・・そうみたいですぅ・・・」 「どうすれば元に戻るんだろう・・・もう一度頭をぶつけるわよ!」 「ええええー、痛いのはやですよ~」 「黙って言うことを聞きなさい!」 とりあえず何回か頭をぶつけてみたものの戻ることはなかった。 「ううう・・・頭痛いですぅ・・・」 「みくるちゃんも泣かないの!それにその体私なんだから。」 困ったことになったわ・・・この先戻れないんじゃ・・・と、考えて みたものの他人になるのは悪く無いわね。面白そう。 「とりあえず元に戻る方法がわかるまでこのままでいましょ。」 「わかりました・・・でも涼宮さん、なるべくおとなしく してくださいね・・・あっ」(TPDDはちゃんとある・・・大丈夫みたいですね。) 「なに?みくるちゃん。」 「いえ、なんでもないですぅ。」 こうして私とみくるちゃんの入れ替わり生活が始まった。 「ういーす。」 俺は部室のドアを開けた。 長門はどうやら不在、いるのはハルヒと朝比奈さんだけ。 「なんか2人とも額が赤いけどどうしたんだ?」 「なんでもないわよ。」 朝比奈さんが答えた。 『わよ』?マイスウィートエンジェル朝比奈さんが今まで 発したことが無い言葉だ。聞き間違いかな。 「ハルヒ、掃除当番は終わったのか?」 「はい~。ちゃんとやってきましたぁ。」 なんだなんだ、ハルヒの言動がおかしいぞ。また何かの モードにでも入ったのか? 「あ、朝比奈さんお茶もらえますか。」 「わかったわ。」 その後乱雑にお茶が運ばれてきた・・・ (俺、なにか朝比奈さんを怒らせるようなことしたんだろうか・・・) そう思いつつ朝比奈さんを見ていると、 「何見てるのよ、エロキョン!」 思わぬ言葉が返ってきた・・・ 「すず・・・みくるちゃん、それは言いすぎですよぉ」(あわわわわ) ハルヒからも意外な言葉が返ってきた。 その後長門、古泉とやってきて、俺は古泉とカードゲームをして遊んだ。 いつも通り長門が本を閉じると朝比奈さんが、 「今日はこれで帰りましょ。解散。」 と言った。 さすがに長門は興味を示さなかったが、古泉も驚いていたようだ。 帰りの途中古泉と歩き、 「ハルヒさんと朝比奈さんが逆のようなんですが・・・」 「俺もそんな気がするんだが・・・まさかまた時空改変とかハルヒが 変な力使ったんじゃないだろうな。」 「その可能性は無いと思います。もっとも、時空改変が行われたか どうかまでは我々にもわかりませんが・・・」 なんとも奇妙な感じのまま1日を終えた。 -みくるサイド- とりあえず涼宮さんになっているので涼宮さんの家に帰った。 一応家族にはばれて無いみたい・・・よかった。 涼宮さんの部屋には初めて入ったけど、普通の女の子の部屋でした。 あれ?机の上に写真立がある。 それを取り上げてみると・・・ (やっぱり涼宮さんたら・・・素直じゃないんだから。くすくす。) -ハルヒサイド- 「これがみくるちゃんの部屋かぁ・・・やっぱ可愛い系の部屋ね。」 私ももっと可愛くしようかしら・・・とか考えたけど柄に無いので やめた。 その日はなんとなく疲れていたので夕食・お風呂を済ませたら 寝ることにした。 (でも、何か忘れている気がするのよねぇ・・・ま、いいか) 次の日、俺がクラスに入るとハルヒがすでに来ていた。 「あ、キョン君おはようございます。」 「ああ・・・おはよう。」 やはりすっげえ違和感を感じる。 しかし、この状態のハルヒを見ると・・・まるで天使のようだ。 「どうかしました?私の顔になにかついてます?」 「いや、べつになんでもないぞ。」 そんなこんなで授業も進み昼休みとなった。 「キョン君、一緒にお弁当食べましょ♪」 「ああ・・・」 そこへ、突然朝比奈さんがやってきて、 「キョン、一緒にお弁当食べましょ。」 「ええ、いいですよ。」 とまあ、結局3人で弁当を食べることになった。 もちろんクラス中の注目の的だ。 谷口なんかは泣きながら弁当を食ってる。 この状況に耐えられなくなった俺は弁当をさっさと食べると、 「ちょっと用事があるんで。」 といってクラスを逃げ出した。 昼休みが終わるまで適当に屋上で時間を潰すか・・・と考えて いると鶴屋さんと出会った。 「お、キョン君。みくる知らないかい?」 「朝比奈さんなら俺のクラスでハルヒと話してますよ。」 「そっか。いやぁ~今日凄いもの見ちゃってさ。」 「何を見たんです?」 「いつものようにみくるにちょっかいだしてきた男子がいたんだよ。 で、あたしが痛い目にあわせようと思ったらさあ、みくるがいきなり その男子にボディーブロー食らわせて肘鉄かました挙句かかと落しで 半殺しにしたんだよね。みくるがいうには『いつも守ってもらってたら 悪いから護身術習ってるの』とかいうんだよね。」 マイスウィートエンジェル朝比奈さんがそんなことを・・・と頭を 抱えていると、 「あとさ、なんかいつものみくると雰囲気が違うんだよね。しゃべり方も 違うし・・・なんていうか邪悪なオーラに包まれてるって感じ?」 まるで今のハルヒと正反対だ・・・ 「キョン君はなんかこころあたりないかい?」 「確かに昨日から2人ともおかしいとは思ってるんですが・・・こころ あたりが無いんですよ。」 「そっかあ・・・何か分かったら教えておくれよ。」 そういうと鶴屋さんは去っていった。 そんなこんなで週末の不思議探索になった。 その間、ハルヒはクラスどころか学校中で天使扱い。朝比奈さんは 悪魔のごとく変わったと学校中にとどろくことになる。 一体どうなてるんだろうなぁ・・・などと集合後の喫茶店でボケッと してると、ハルヒが、 「キョン君、くじで班決めしますよぉ。」 と声をかけてきた。 くじの結果、俺・ハルヒ、長門・朝比奈さん・古泉という構成になった。 さっそく班ごとに分かれて行動するとき朝比奈さんが、 「キョン!デートじゃないんだからね!ちゃんとみつけるのよ!」 とハルヒ張りの言葉でしゃべって来た。 いつもだったら逆なのになぁ・・・と思いつつ、ハルヒと公園へ向かった。 公園に向かうと、突然ハルヒが、 「キョン君!私のことどう思いますか?」 「え・・・ハルヒはハルヒだろ?」 「そうじゃなくて・・・男と女としてどう思いますか。」 俺は一瞬凍りついた。 今までこんなこと無かったぞハルヒ。どうしたんだハルヒ。やはり時空改変 なのかハルヒなどと考えていると、 「女の方から言わせるつもりなの?」 と上目遣いで頬をやや赤くしながら俺のことを見ている。 やばい!これは男として落ちる! 「俺は・・・」 そう言いかけた時、 「ちょっとまちなさいよ!なにやってるのよ!みくるちゃん!」 という朝比奈さんの声が背後から怒鳴り声で聞こえた。 え?みくるちゃん?目の前にいるのはハルヒじゃ? 「ごめんなさい涼宮さん、ちょっと悪戯してみました♪」 「なんてことするのよ!そんなことされちゃったら・・・もごもご」 目の前ではハルヒと朝比奈さんが言い争っている。 そこに長門と古泉がやてきて、古泉が、 「ようやく分かりましたよ。あの2人、人格が入れ替わってるんですよ。」 「そんなばかな・・・」 「この1週間の行動を見れば納得できます。確か最初に異変が感じられた日 2人ともおでこが真っ赤でしたよね。たぶんぶつかったショックで 入れ替わったんだと思います。」 そう考えれば確かに全てが納得がいく。 まさにハルヒの行動は朝比奈さんのものだったし、その逆もだ。 「長門、今の古泉の話は本当か?」 「そう....」 「何で教えてくれなかったんだ?」 「聞かれなかったから。」 「そうだったな・・・ところで2人を治す方法はあるのか?」 「ある。私を媒介して人格を入れ替えればいい。」 これ以上の混乱はごめんこうむりたい。早速長門に、 「2人を眠らせて実行してくれ。ハルヒにばれるとまずいからな。」 「わかった。」 その後長門の働きにより2人の人格は元に戻った。 2人からも入れ替わっていたことを聞き、2人ともやっと戻れたと 言う感じで安堵してるようだった。 「やはりハルヒはハルヒじゃなきゃ似合わんな。」 「なによそれ。もう少しで・・・ごにょごにょ」 「ん?なんか言ったか?」 「なんでもないわよ!バカキョン!」 こうして2人の奇妙な生活は元に戻った。 が、しかしその後の学校での後遺症はすさまじいものだった。 ハルヒは元に戻ったので負のオーラだしまくりで全校生徒は混乱、 朝比奈さんにいたっては「おイタをすると半殺しの目にあう」という 黒朝比奈さんの印象が定着してしまった。 鶴屋さん曰く、 「いやぁ~風除けになってむしろいいんじゃないかい。それにしても みくるの中身がハルにゃんだったなんてね、くくくく・・・」 と大笑いだった。 部室では、 「涼宮さんひどいですよ!これじゃ悪女みたいに思われちゃう じゃないですか!」 「いいじゃない余計な虫も来なくなるだろうし、それにこの間の 事とあわせてチャラよ。」 「ううううう・・・・しくしく。」 と、まあ朝比奈さんが当分の間沈みきってしまったのは言うまでも無い。 ただ1人残念そうにしているのが長門だ。 「朝比奈みくるがうらやましい....」 そういうと長門はハルヒに向かってなんども頭突きをしていた。 さすがに耐え切れなくなったのかハルヒは一目散に逃げて行ったが。 部活も終わり、今部室にいるのはみくるちゃんとあたしだけ。 「さすがに他人になるのはこたえるわね・・・」 「そうですね・・・2度としたくないですぅ。」 その後沈黙が続いた後、みくるちゃんがにんまりとしながら、 「涼宮さん、そろそろ素直になったほうがいいんじゃないですかぁ~♪」 「な、なによいきなり。」 「私見ちゃったんですよね、机の上の写真立て。」 「え・・・。」 (あああーーー忘れていたのはそのことだったわーーーあれ見られたら・・・) 「安心してください、誰にも言いませんから♪」 「え、いや、あの、その・・・」 「それじゃ私も帰りますね。涼宮さん、顔真っ赤ですよ。ふふふ。」 そういうとみくるちゃんは帰って行った。 ああ・・・あれ見られちゃうなんて・・・うかつだったわ・・・ 「もう!何だか知らないけどバカキョンのせいなんだからね!」 おしまい。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/367.html
カラオケネタその1 ハルヒ「じゃあ!いっちばーん涼宮ハルヒ歌いまーす♪」 キョン(どうせ2番も3番もおまえだろうよ) ハルヒ「まっかにもぉえたー♪たいようだぁからー」 キョン「美空かよ!!」 長門「ユニーク」 カラオケネタその2 ハルヒ「にばーん!涼宮ハルヒいきまーす!!」 キョン(やはりおまえか………) ハルヒ「そーらーときみーとのあいだーにはー♪」 長門 「同情するなら金おくれ」 キョン・ハルヒ「!!」 カラオケネタその3 ハルヒ「さんばーん!涼宮ハルヒ with 有希~!!」 キョン(いい加減疲れないか? それに長門。おまえ歌えるのか?) ハルヒ「にーっぽんの未来は♪」 長門 「wow wow wow wow♪」 キョン「むしろノリノリ!?つーか振りつけいつ覚えた!?」 カラオケネタその4 ハルヒ「よんばーん!!さっきから拍手しかしてないみくるちゃーん?歌いなさい!」 みくる「ふぇ!?わかりませんよ~~~」 ハルヒ「闇カラ闇カラ~」 キョン(番号を好き勝手入れて歌わすヤツか……どっちにしろ歌えないだろうなあ) ハルヒ「これよ!」ピ! みくる「……『時をかける少女』?」 キョン(ここでハルヒパワーか!!) カラオケネタその5 ハルヒ「もう!みくるちゃんたら今度はちゃんと歌いなさいよ!! 次!ごばーん!!古泉君いけるかしら~?」 古泉 「僕ですか?……いいでしょう」ピ! ハルヒ「──これは!!」 キョン「まさか!!」 古泉 「盗んだバイクで走り出すー♪」 キョン(どうでもいいが、尾崎豆を思い出した) カラオケネタその6 ハルヒ「じゃあ気を取り直してろくばんっ!ゆき!!何か歌いなさい!?」 長門 「……そう」ピ! キョン(俺に来ると思ったが……免れたぜ……しかし長門は何を歌うんだ?) 長門 「わたしまーつーわー♪いつまでもまーつーわー♪」 キョン(そりゃ3年も待機してりゃな……) 長門 「違う……」 キョン「ん?なんか言ったか長門」 長門 「何も」 カラオケネタその7 ハルヒ「さぁて、喉の疲れも癒えたことだし!これからが本番ね!!」 キョン(おお何か俺は歌わずに済みそうだゾ) みくる「あの~涼宮さん、キョン君が歌ってないような……」 キョン(あああああ朝比奈さん!?こんなとこで気を遣わなくたって……!!) ハルヒ「ああ、キョンはいいのよ」 キョン(は?お前豆腐の角で頭打ったか?らしくないこと言い出したぞ?) みくる「ええ?何でですか?」 ハルヒ「キョンはこれから聞・く・の・♪」 キョン「へ?」 ハルヒ「じゃあまずはこれ!」 キョン「!!おま!これは!!」 ハルヒ「ふふん、耳の穴かっぽじってよぉっく聞きなさい♪」 キョン(これは、絶対堪えられん……!!この場から脱出しなくては……)がしっ! 古泉 「どこに行かれるんですか?」 キョン「おい!?古泉離せ!!つーか長門!?お前まで」 長門 「手作りプリン……」 キョン「買収!?」 ハルヒ「♪とってもとってもとってもとってもとってもとっても大好きよ♪」 キョン(あああああ!!広末は反則だろ~!!!!) ハルヒ「じゃあ次は……椎名林檎の『ここでキスして。』」 キョン(ぐぁ!!それはマジ勘弁……!!) ハルヒ「ん?有希、何?この歌?嘉陽愛子の『愛してね もっと』?」 キョン(ぬぁーがぁーとぉー!!!!何勧めてんだ!?どんな曲だか知らんがタイトルからしてもうヤバいぞそれ!!) こうしてハルヒの独演会はなんと30分に渡って行われた。 それからしばらくの間、俺の頭の中でハルヒの声のあまーい歌がリフレインし続けたのは言うまでもない。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/510.html
今日のハルヒは少し変だ。 どいつよりも一番長くハルヒと付き合ってきた俺が言うのだから間違いない。 いつもは蝉のようにうるさいハルヒが、今日は何故か静かだし、 顔もなんだか考え事をしているような顔だ。 「どうしたハルヒ。」 俺は休み時間になってからずっと窓の外を眺めているハルヒに話しかけた。 「なにがよ。」 「元気ないじゃないか。」 俺がそう言うと、ハルヒは眉と眉のあいだにしわをつくって、 「私はいつでも元気よ。」 「そうかね。そうは見えないんだがな。」 ハルヒは俺の言葉を無視し、窓の外に目をやり、 「今日も来るんでしょうね」 「どこにだ。」 「SOS団部室によ。」 いちいち聞くこともないだろうよ。 「ああ、行くよ。」 ハルヒは窓のそとにやっていた視線を俺の目に向け言った。 「絶対よ。」 今日の授業も全て終わり、俺はいつものようにSOS団部室―実際は文芸部室なのだが―に向かった。 ドアをコンコンとノックする。これもまたいつも通りだ。 「どうぞ。」 朝比奈さんの声でドアを開けると、ハルヒはもう既に団長席に座っていた。 「遅いじゃない。」 何を言ってる、いつも通りだ。 「来ようと思えばもっと早く来れるでしょう?まったく、意識が薄いのよ。 部室への集合にも罰金制度を取り入れようかしら・・・。」 なにやら不穏なことをぶつぶつ言っている。おいおい勘弁してくれ。 休日のオゴリだけでもきついのにそれに上乗せされちゃあ、たまったもんじゃねぇぜ。 「なら、明日からはもっと早く来るって約束しなさいよ。」 へいへい。だが、どうせ早く来ても俺のやることといったら古泉とのオセロぐらいしかないのだが。 「今日は負けませんよ。」 古泉は長テーブルにオセロのボードを広げて既にスタンバイOKのようだ。 お前はそう言って毎回負けるんだよなぁ。 俺と古泉がオセロをしている間、ハルヒは珍しくいつものようにパソコンをつけずに、 俺と古泉の勝負風景をじっと眺めていた。 「なぁハルヒ。」 俺は視線はオセロのボードに落としたまま言った。 「なによ。」 「見られてると非常にやりにくいのだが。」 「プロの将棋師とかはたくさんの人に注目されてる中でやるのよ? これぐらい耐えられなくてどうするのよ。」 どうもせん。大体、俺はプロじゃないし、今やってるのは将棋でもない。オセロだ。 そんなツッコミを入れつつ、俺は古泉の白を黒に変える。 「いやぁ、参りました。完敗です。」 古泉は両手をあげて言う。 「古泉くん弱いわねー。」 ハルヒはパイプ椅子から立ち上がった。何だ? 「私がやるわ。古泉くん代わって。」 マジで? 「どうぞどうぞ。でも、彼は強いですよ。」 お前が弱いだけだろうが。 ハルヒは古泉から譲りうけた席にでんと座り、 古泉はさっきまでハルヒが座っていた席に腰掛けた。 「さぁ、キョン。始めるわよ。私が黒ね!」 そう言ってハルヒはボードに一手目を置いた。 やれやれ。 結果。 俺が勝った。 「何よコレぇ!キョン!もう一回よ!」 またかよ。お前は勝てるまで続けるような気がする。 今度は俺が先手で始まった。 そして結果。 俺が勝った。 「なーにーコーレー!!なんで私が馬鹿キョンに負けるのよ!!」 毎日糞弱い古泉と鍛えているんだ。馬鹿にしないでほしい。 「もう一回よ!!」 ・・・やれやれ。 「やった、勝った!キョン、あんた大した事ないわねー。」 俺に5回も負けといてよく言えるな。 「あんたはいつも古泉君と鍛えてるでしょー?私はオセロなんて滅多にやらないもん。」 なんじゃそりゃ。小学生か。 ふと、横を見ると古泉がニヤニヤしながらこちらを見ていた。何が面白いんだ。 「古泉くん!」 「なんでしょうか?」 「他にゲーム持ってないの?なんかこう、SOS団みんなで遊べるようなもの!」 そんなにたくさんゲームを学校に持ってきてるわけないだろう。 「ありますよ。」 あるんかい。 古泉はバッグのファスナーをあけると、中からずるずるとなにか取り出した。 「何だそれは?」 古泉はニコリと笑って見せた。 「人生ゲームです。」 「人生ゲームね!面白そうじゃない!有希!みくるちゃん!あなた達も参加しなさい!」 ハルヒの顔は輝いている。朝の鬱モードはもう既にどこかに吹っ飛んでしまったらしい。 「ふぇ?」 編み物をしていた朝比奈さんは、何の話か聞いていなかったらしく、きょとんをした表情で顔を上げる。 「だから、人生ゲームよ。有希ちゃんも、ほら。」 ハルヒが言うと、長門は読んでいた本をぱたんと閉じ、すたすたと俺の横の席まで歩いてきてすとんと座った。 「始めるわよ。みくるちゃんと古泉くんも席に着きなさい。」 朝比奈さんと古泉も着席し、ゲームが始まった。 「やった、結婚よ!いいでしょ、キョン。羨ましい?」 羨ましくない。ボード上の世界で結婚してもしょうがないだろう。 「でもあんた、現実でも、結婚はおろか彼女すらできないんじゃない?」 痛いところを突くな。と、次は俺の番か。 俺は出た数だけ駒を進める。 ん?「株で1000万儲けた」、ねぇ。本当にあればいいのにな。 現実はそんなに甘くないのだよ。 最終的に勝者になったのは長門だった。 その次からハルヒ、俺、朝日奈さん、古泉の順だ。 古泉お前、全員でやってもやっぱり弱いのな。 「面白かったわ!古泉くん、明日はあのスゴロク持ってきてちょうだい!」 あの スゴロク・・・?っていうとあれか。 大晦日のときにやったSOS団オリジナルの、やたらと俺いじめのマスが多いスゴロク。 あれはもうやりたくないな・・・。 それから数十分して。 ぱたん。と、長門の本が閉じられた。 「今日は皆で帰るわよ!」 ハルヒは両手を腰に当てて、偉そうに言った。 「すまん、ハルヒ。俺は今日早めに帰って見たいドラマがあるんだ。」 「何言ってるのよ。そんなの録画しとけばよかったんじゃない。 いい、キョン?団長の命令は絶対なのよ。例外は認められないわ。」 ハルヒは眉を吊り上げながら、俺に顔をぐいっと近づけて言った。やれやれ。 帰り道、ハルヒはいつも以上にやたら活発だった。 急に競争をしようだとか、荷物持ちのじゃんけんをしようだとか小学生レベルの事を言い出したり、 どこから持ってきたのか、眼鏡を長門にかけさせて遊んだり、 朝比奈さんの胸を・・・っておい!!何をしているハルヒ!! お前がもし男だったら俺の鉄槌の拳が飛んでいたところだ。 しばらくすると、はしゃぎ疲れたらしい、歩くのがゆっくりになってきた。 「ハルヒ、お前今日はやけに元気がいいな。」 「そう?いつももこれぐらいだと思うけど。」 ハルヒは軽く息を切らしながらハイビスカススマイルで答えた。 「そうかねぇ。」 しばらくそのまま歩いていると、ハルヒは急に足を止めた。どうした? 見ると、ハルヒの顔は先程のようなスマイリーな表情ではなく、 真面目な顔になっていた。 「ねぇ皆。ちょっと聞いて欲しいんだけど・・・。」 他の奴等も足を止め、ハルヒに注目する。 「・・・・・・・・・。」 ハルヒはそのまま黙り込む。何だ、言いたい事があるなら早く言えよ。 「・・・・・・。」 ハルヒは小さく口を開いて声を発しようとしたが、すぐにやめて口を閉じた。 焦らすな。早く言え。 それからまた黙り込んだあと、急にまたさっきのようなスマイルに戻って口を開いた。 「いや、ごめん。なんでもないわ。つまらないことだから気にしないで。」 そう言うと、ハルヒはまた歩き出した。合わせて俺達も歩き出す。 ハルヒが前で歩いていた朝比奈さんのところに駆けていったのを見計らって、 古泉は俺に近づいてきて小声で言った。 「何かありますね。」 「・・・ああ。」 次の日、朝になるとハルヒはまた鬱モードに突入していた。 「よぉ。」 俺がバッグを机の上に置きながらハルヒに話しかけると、 ハルヒは挨拶を返すことなく言った。 「今日何日だっけ?」 そんなの前の黒板の日付みればいいだろ。 「3月・・・9日よね?」 ああ。 「金曜日よね?」 ああ。それがどうした。 「いや・・・、なんでもない。」 やっぱり何かあるな。昨日のハルヒも今日のハルヒも何かおかしい。 テンションも不規則に上がり下がりするし。 「ねぇキョン。」 ハルヒは顔をずいっと近づけてきた。 「今日も部室来なさいよね。」 昨日ハルヒに部室の集合に関してあーだこーだ言われたため、 今日はホームルームが終わってすぐに部室に向かった。 部室につくと、古泉がいつものニヤケ顔でパイプ椅子に座っていた。 「やぁ。」 古泉はさわやかな表情で慣れ慣れしく左手を挙げた。 「朝比奈さんはまだか。」 「えぇ。長門さんならいますけどね。」 古泉が片手で示した先には、いつも通り窓辺で本を読む長門がいた。 よくそんなに本ばかり読んで飽きないものだ。 「ところで、涼宮さんはまだでしょうか?」 「岡部に話があるんだとさ。まだ来ないと思うぞ。」 「それは都合がいいですね。話があるのですが、良いですか?」 なんだ。また何か面倒ごとに巻き込むつもりか? 「実は、昨日の夕方から夜中にかけて、大量の閉鎖空間が発生したんですよ。 はっきり申し上げますと、昨日の量は異常でした。 最近落ち着いてきたと思ってたんですがね。」 古泉はやれやれ、と肩をすくめた。 「・・・どういうことだ?」 俺は目を細めてみせる。 「わかりません。僕達の機関の調査では。」 古泉はニコニコ顔を崩さず言う。 「悩み事とかあるんじゃないでしょうか。 恋の悩みとか。ベッドの中であなたのことを考えるあまりに、 異常な量の閉鎖空間を生み出してしまった、とか。」 冗談にしては笑えないぞ古泉。 「完全に否定はできませんよ?フフフ。」 ・・・何が面白いんだ古泉。というか、何故俺なんだ。 古泉は心外そうな顔をして、 「おや?あなたもしかしてまだ・・・」 そこで言いとどまると、ニヤケ面を5割増しして言った。 「いえ、言わないでおきましょう。」 何故か古泉のニヤケが無性に憎く見えた。 「何にせよ、涼宮さんが何かに苛立っているというのは明らかです。 ただし、僕達と一緒にいるときは閉鎖空間の発生はみられないそうです。」 何に苛立っているというんだ。 「ですから、それがわからなくて困っているのです。」 昨日今日のハルヒの様子が変なのもそのせいか。 「そのようですね。ところで、昨日の話ですが。 昨日涼宮さんが言いとどまった言葉、なんだと思いますか?」 さぁな。 「僕達になにか伝えようとしていましたね。 あの表情からして、とても重要な話だと思うのですが、どうでしょう?」 知らん。 「全員に呼びかけたってことは、告白ってわけではないでしょうね。」 古泉はニヤケ顔を更に5割増する。なんだその目は。 「いえ、何でもありませんよ。フフフ。」 そう言って微笑む古泉の顔が不気味に見えて仕方が無い。 「あの涼宮さんが言いとどまった言葉、 あれが涼宮さんの苛立ちと関係があるような気がするのですが。」 さぁな。 「涼宮さんに聞いてみたら早い話ですがね。」 ハルヒが言いたくないことを無理に聞く必要も無いだろう。やめとけ。 「当然そのつもりですよ。まぁ、聞かずともいずれ彼女から話してくれるでしょう。」 そうだな。 「ヤッホー!!皆元気~?」 毎回のようにドアを蹴り破って登場した我らが団長。後ろには朝比奈さんがついている。 「みくるちゃんとそこの廊下であって、一緒に来たのよ。」 そうかい。 「さて、キョンと古泉くん。」 「なんだ。」 俺が言うと、ハルヒは少し顔をしかめ、ドアの方を指さした。 ああ、そういうことね。と、俺は朝比奈さんをちらりと見て、 ドアの元まで行き、一礼して部室を出た。遅れて古泉も。 「どうぞ」 朝比奈さんの声を確認し、ドアを開けると、意外な光景を目にした。 朝比奈さんがメイド服を着ているのはいつも通りだが、 なんとハルヒが朝比奈さんが前に着ていたナース服を着ているではないか。 「これはこれは。」 古泉も少なからず驚いているようだった。 「たまには私も着てみたわ。どう?」 ハルヒは得意気に髪を掻きあげた。 「いいんじゃないか。」 「何よ、その薄いリアクションは! もっとこう、『わー!ハルヒ可愛い!!』とかないの?」 わー。ハルヒかわいー。 「あーもう、イライラするわねー。もういいわ。」 とりあえず薄くリアクションしておいたが、内心、可愛いと思っていた。 朝比奈さんのナース姿も良かったが、ハルヒのそれもなかなかのものだ。 「僕は似合ってると思いますがね。可愛いですよ。」 「でしょ?ありがとう古泉くん。 やっぱりわかる人にはわかるのよねー。」 喜べハルヒ。その格好で秋葉原に行けば注目の的だぞ。 お前が言う わかる人 ってのもいっぱいいる。 …ところで、いきなりナース服を着だしたりだとか、 やはり最近のハルヒは変だ。 まぁいいか、楽しそうだし。教室のときのように鬱にしてるのより何倍もましだな。 「さぁ、スゴロクやるわよ、スゴロク!!古泉くん、持ってきてるでしょうね?」 げ。 「はい、もちろん。」 げげ。 古泉はバッグのファスナーを開けると、ずるずると大きな紙を取り出した。 やれやれ。 今日は日曜日、不思議探索パトロールをすることになってる日だ。 少しばかり寝坊した俺は、大急ぎで歯を磨き、髪を直し、服を着て待ち合わせ場所に走った。 他のメンバーは既に揃っている。 「遅い! 遅刻!! 罰金!!!」 このフレーズを聞くのも何回目だろう。これを聞くたびに俺の財布は打撃を受ける。 「と、言いたいところだけど、今日は私がおごるわ。」 は? 今ハルヒ何と言った?パードゥンミー?ワンモア、プリーズ? 「だから、今日は私がおごってあげるって言ってるじゃない。」 俺の耳は故障してしまったのだろうか。すまん、もう一度だけ頼む。 「今日は私のおごりよ!」 なんと。なんとなんと。思わず目眩がした。 今日は雪でも降るんじゃないか。いや、もう隕石が雨のように降ってきそうな勢いだ。 「何馬鹿なこと言ってんのよ。行くわよ、キョン。」 やはりおかしい。絶対におかしい。ハルヒがおごるなんて普通考えられない。 「キョンは何にするの?今日は高いもの頼んでもらっていいわよ!」 こんなことを言う事も、だ。どういう気の変わりようだ? 「何もないわよ。ほら、さっさと選んじゃいなさいよ。」 俺は何かハルヒの陰謀があるのではないか、と あえて高い物を選ばず、中くらいの物を注文した。 「何よ、遠慮することにないのに。」 何か怖くてな。すまん。 そして俺達は食事を済ませ、毎回恒例のくじ引きタイムに入った。 まず古泉が引く。無印。 次に朝日奈さん。無印。 次に俺。赤印 次に長門。無印。 「て、ことは私は赤ね。」 ハルヒは爪楊枝を掴んでいた手を開く。 爪楊枝の先には赤い印がはっきりと刻まれていた。 横に彼女を連れて、手を繋いで歩く。これはモテない男誰もが夢見ることだろう。 しかし、俺が手を繋ぐのではなく、手首を掴まれているのは何故だろう。 答えは簡単。連れている女が涼宮ハルヒだからだ。 「ちょっとキョン!もっとシャキシャキ歩きなさいよ! まず何処行く?デパートの食料品店で試食品でも食べ歩く? それとも、服でも買いに行こうか?今日はたくさんお金持ってきてるしね。」 どうやらこいつは 不思議 を探す気などさらさら無いらしい。 「どこでもいいぞ。お前のすきなところで。」 なんだか今日のハルヒの足取りは軽い。全身からウキウキオーラが放射されまくっている。 「あっそうだキョン!あたし観たい映画があるんだったわ! 一緒に観に行きましょう!」 映画・・・か。まぁ、このままハルヒに色々連れまわされるよりはいいだろう。 「決定ね!じゃあ行きましょう!」 俺は手首を掴まれたまま、映画館まで連れて行かされた。 なにやら甘ったるい匂いがするのは、受付の横の、なにやら色々飲食物を売ってる店のせいだろう。 「チケット2枚。」 俺がハルヒの分のチケットも買ってやっていると、ハルヒがポップコーンとコーラを持ってきて、 「はい、これ。あんたの分よ。私のおごりね。」 今日のハルヒは気前がいいな。 「それじゃあ行きましょう。早く行かないと始まっちゃうわ!」 そう言ってハルヒはまた俺の手首を掴んだ。やれやれ。 映写機がじりじりとスクリーンに映画を映し出す。 観ている内にわかったが、これは流行りの 感動モノ の映画らしい。 そして、今が一番泣き所のクライマックスのシーンだと思われるが、 どうした事か、俺の目からは涙の一滴すら落ちてこない。 もう少しピュアな心を持っていれば泣けるのだろうが、 俺の心はとっくにがさがさに荒んでいるのでな。 俺がふと横を見ると、意外な光景がそこにあった。 映画にかぶりついているハルヒの目に、若干涙が浮かんでいるではないか。 ハルヒはしきりに、服の袖で目を拭っている。 そのままハルヒはしばらくスクリーンを凝視していたが、俺の視線に気付くと、呆れ顔をつくって言った。 「何であんたこれで泣けないの?馬鹿じゃない?」 馬鹿ではないと思う。 外に出てみると、さっきは暗くてよくわからなかったが、ハルヒの目元が少し赤くなっていた。 「よかったわー、あの映画・・・。 あんなクオリティの高い映画はこの先そうそう作れないと思うわ。」 俺は全然泣けなかったけどな。 「あれで泣けないってのがおかしいのよ! あれで泣けないなんて信じられないわ。人間じゃないわ!」 おいおい、ついには人間以下かよ。 「まぁいいわ。楽しかったし。 おっと、そろそろ集合時間ね。待ち合わせ場所に急ぎましょう!」 ハルヒはそう言うと俺の手首を掴む。もうちょっと穏やかにできないのか。 せめて手を繋ぐとか。 「手、手ってあんたと?私が?」 冗談だ。本気にするなよ。 「あ、冗談ね。冗談か。 そうよね、あんたと手繋いで恋人同士だと思われたらとんでもないわよ!」 ハルヒは何故か少し動揺しながら言った。なにを焦ってんだか。 ハルヒが俺の手首を掴んでずんずんと商店街を行く。 と、ここで見慣れた二人組が目に入った。 「あ、谷口と国木田じゃねぇか。」 俺は足を止める。と、同時にハルヒも足を止めた。 「ようキョン。」 「奇遇だね、何やってたんだい、キョン。」 谷口と国木田は私服姿だ。お前等こそ男二人で何やってんだ? 「別に。ゲーセンとか行ってぶらぶらと遊んでただけさ。」 そう言うと、谷口は俺とハルヒを舐めまわすように見てきた。何だ? 「お前等は二人してデートか?いいねぇ、お熱くて。」 馬鹿言うな。これはSOS団の不思議探索パトロールだ。 「不思議探索パトロール?それって何するんだい?」 国木田の言葉に少し返答に困った。まさか 映画をみたりすること とは言えまい。 「街中で不思議な事が無いか探すんだよ。」 適当にごまかしておく。 「ふーん。変なことしてるねぇ。まぁいいや。じゃあ、僕達は行くよ。じゃあねキョン。」 「またな。」 「おう、じゃあな。あ、そうだ、待て谷口。チャック、開いてるぞ。」 「うわっマジかよ!!っていうか何で国木田教えてくれなかったんだよ!」 「え?それって新しいファッションかなんかじゃないの?」 「違ぇよ! やべーさっきこのままナンパしちまったよ。変態だと思われたかも・・・。」 「大丈夫だよ、谷口。君はもう顔が変態的だから。」 「えっ!?何それ?どういう意味!?」 「それじゃあね、キョン。」 「無視するなよ国木田!なんか今日お前悪い子だぞ!」 「じゃあな。国木田、谷口」 そう言って俺達は谷口達と別れた。 何やら後ろから「谷口ウザイ」という国木田の声が聞こえた気がするが空耳だろう。 集合場所につくと、既に他三人は揃っていた。 「ゴッメーン。遅れちゃった!」 ハルヒは右手を挙げる。 「それでは、また喫茶店に入りましょうか。」 本日2度目の喫茶店。今度もハルヒのおごりだった。 「それじゃあ、くじ引きしましょう。」 ハルヒは慣れた手つきで爪楊枝に印をつける。 まず長門が引いた。赤印。 次に俺。無印。 次に朝比奈さん。無印。やった朝日奈さんと一緒だ。 次に古泉。赤印。 「じゃ、私が無印ね。」 班分けは俺とハルヒと朝日奈さん、古泉と長門になった。 俺はいいのだが、古泉と長門は二人で話すことなどあるのだろうか、と少し心配になる。 ハルヒは今度は片手は俺の手首、もう片方の手は朝比奈さんの手首を掴んで歩き出した。 「出発よ!さて、キョン、みくるちゃん?何処に行きたい?」 俺はさっきも言っただろう、お前に任せると。 「みくるちゃんは?」 「えーっと・・・じゃあ、お茶の葉を買いに行きたいです。」 「じゃあまずはお茶の葉ね!行きましょう!」 やれやれ。 歩く事数分、茶葉の専門店みたいなところについた。 朝比奈さんは目を輝かせていたが、俺とハルヒはお茶の葉のことについてなんて全然知識ないから 店内に置かれた椅子にすわって暇を持て余していた。 朝比奈さんは店長さんとお茶の話で盛り上がっている。 少し耳を傾けてみたがさっぱりわからん。 しばらくして、 「お待たせしました。では行きましょう。」 楽しそうに駆け寄ってきた朝日奈さんは、茶葉の入った箱を抱えていた。 その後、デパートに行って試食品を食べ歩くなど地味ーなことをしたり、 ゲームセンターに行ってUFOキャッチャーを楽しんだりした。 楽しい時間は瞬く間に過ぎるもので、時刻はあっという間に集合時間前だ。 「楽しかったわー。キョンのUFOキャッチャーの腕前は意外だったわねー。」 ハルヒは俺が取ってやった熊のぬいぐるみを両手に抱えて、もこもこさせながら言った。 ゲーセンは谷口達とよく行ったからな。SOS団に入ってからは、あまり行くことも無くなったが。 「私も楽しかったです。ありがとうキョンくん」 いや、俺にお礼を言われても困るんですけど・・・。 「あ、有希!古泉くん!」 まだ集合10分前なのに、長門と古泉は既に集合場所に到着していた。 やはりやることがなかったのだろう。 そしてその日はそのまま解散することになった。 涼宮ハルヒの異変 下