約 773,991 件
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/4865.html
涼宮ハルヒの逆転 太陽が元気に輝いてるにも関わらず、今日は気温が低い。そう冬だからである。 放課後相変わらず文芸部室で遊びもとい団活動している五人。 俺は古泉と朝比奈さんでじじ抜きをし、長門は本を読んでいる・・・あれは人体解剖の本か?でハルヒはネットで動画を見ているようで、さっきから高い女性ボイスがうるさい。 古泉がビリという当たり前と化した結果でじじ抜きを終了したとき、団長様が騒ぎはじめた。 ハルヒ「キョン!あんたこの女の子好きでしょ!」 ちょっと来なさい、とばかりに魔手を招いてきた。仕方なく立ち上がりハルヒの見ている動画を見に行った。 動画にはやけにうるさい女と涙目なか弱い男が映っていた。どうやら前者のことを言ってるようだ。 ハルヒ「主人公のことを思い心を鬼にする女の子。あんたにはこういう子のがお似合いよ!」 いーや朝比奈さんのような可憐な女子が好きだ。ておい古泉、なに笑ってんだ? キョン「俺は可愛くて大人しい同級生と付き合いたい」 みくる「ロマンティストですねぇキョンくん」 いやですね朝比奈さん?さりげなく「人に夢と書いて」ということを言わないでくださいよ。 朝比奈さんの嘲笑を一身に受けながらハルヒの方に目をやると ハルヒが俺を見たまま目を見開いて硬直していた。 キョン「ハルヒ?」 ハルヒ「・・・そうだったの」 なにゆえ落ち込む? そのとき本を閉じる音が聞こえた。 ハルヒ「まあいいわ。とりあえず解散!」 一気にテンション戻しやがった。 帰り道、鈍感ですねと古泉に言われた。俺がなにをした! これから起こる事件は俺が悪かったのだろう。だがなあ宇宙人に未来人に超能力者、俺にだって選ぶ権利があっても・・・まあ俺は自分の意志で決めたから良いのだが。 次の日いつもどおり妹にたたき起こされた。いつもどおりだらだらと飯を食べた。いつもどおり登校直前に教科書の類いをバックに積めた。 つまり俺は学生としてはダメ人間なわけだ。 そしていつもどおり玄関のドアを開けると、いつもどおりではない光景を見た。 なんとハルヒが俺の目の前にいる。 キョン「どうしたんだ?荷物持ちならお断りだぞ」 ハルヒ「えと・・・おはようございます」 俺にカミナリが走った。なんでハルヒが手もじもじさせて、一般人のセリフを言ってんだ!? ハルヒ「あっ荷物持ってもらえるのでしたらその・・」 微妙に図々しい所は変わらないな。だがこんな弱気な美少女の頼みとあれば キョン「わかった。カバンよこせ」 ハルヒ「あっありがとうございます」 顔赤くしないでくれ、理性がはじけ飛びそうだ。てか本当に同一人物なのか? カバンを受け取りつつ聞いてみた。 キョン「名前は?」 ハルヒ「えっ?涼宮ハルヒです。でも以前から知って」 キョン「部活は?」 ハルヒ「SOS団の団長ですけど?」 キョン「バスト・ヒップ・ウエストは?」 ハルヒ「えっとたしか・・てちょっとキョンくん!」 最後の解答以外で判断するとたしかにあの暴君らしい。あとで古泉に聞くか。 てなわけで俺とハルヒは登校した。 ハルヒと黙ったまま肩並べて歩くのは初めてだな。たまにハルヒが俺を見ては地面を見ていた。急に頭をなでてやりたくなったが、我慢して歩いた。 授業中ハルヒは寝ずに起きていて、6教科の教師全てを驚かせた。ハルヒが本当に優等生に見えたひと時である。 昼休み、俺はハルヒからの誘いで昼食を共にした。だが弁当をもらえるわけではなく、ただ机をくっつけて黙って各々の弁当を食べるだけだったが。たびたびハルヒがハンカチを取り出してこちらを見ては戻してたが、どうしたんだろうね。 放課後俺は急いで部室へ向かった。ハルヒは英語教師に質問してから行く、という。今日は英語の授業がなかったな。英語教師がハルヒの変わりぶりに驚愕することは間違いない。 この一連の変化を解決すべく部室の扉を開けると、いきなり誰かに抱きつかれた。確認すると、小柄な体の無口少女が 長門「キョンくん今日は早いね~!」 なにがあった? キョン「長門。これは一体全体どうなってんだ?」 長門「もうキョンくん!私のことは『ゆきっち』でいいよ!」 「消失」以来久しぶりに見た長門の笑顔に一瞬ときめいたが、長門を落ち着かせて事情を聞くことにした。 長門「ブーゆきっちでいいのに。なんか『ハルっち』が性格を改変したの」 キョン「おまえとハルヒをか?」 長門「私は変わってないよ~!ハルっちと『牛乳腹黒ロリ女』を変えたっぽい」 色んなところにツッコミしたいのだがまあいい。 長門「この改変について特に問題はないよ、て情報統合思念体が決定しちゃった。だからこのままキョンくんと遊ぶ~!」 こら抱きつくな、いやしてください、いーややっぱりだめだ! 「キョンから離れろ長門ーー!!!」 甘い誘惑に踊らされてる俺の背後から聞いた覚えのある声が叫んだ。振り向くとそこには・・朝比奈さん? 朝比奈「てめぇ二人っきりだからって何してもいいわけじゃなねぇぞ!」 長門「ふーんだ。陰険腹黒娘に言われたくないもんね~」 朝比奈「だから離れろって言ってんだろ長門!だいたいてめぇに陰険なんて言われたくねぇよ!」 俺は二人の口論に口を出せずただ呆然としていた。怒ってる朝比奈さんもかわいいです、てレベルじゃない。 長門「なんで私に美人局常習犯って言われたくないのよ?」 朝比奈「セリフ変わってんだろ!あんな本読んでるてめぇに言われたくはない!!」 そう言って指さした先を見てみると、椅子の上に一冊の本があった。なになにタイトルは「海外拷問画像集R20」?そんな本があったんだ。 驚いている俺の視界が急に暗くなった。 長門「見ちゃだめ!恥ずかしいよ~」 朝比奈「抱きつくな~!!!」 長門が俺の目を手で覆ったようだ。朝比奈さんが長門につかみかかったらしく、長門が俺から離れて朝比奈さんとケンカし始めた。 ハルヒ「どうしたんでしょう?」 いつのまにか俺のとなりでハルヒがあたふたしていた。本来の朝比奈さんポジションにハルヒが着くのか。 古泉「どうやら面白いことになってるそうですね」 おまえもいたのか。それより、女子のケンカを面白いとな? 古泉「たまには良いものです。今回の件は大きな改変ですが、あまり重要視する必要のない問題です」 むしろ楽しいです、と嫌みではなさそうな笑みを浮かべていた。 ハルヒ「あの二人を止めた方が」 古泉「涼宮さんがそういうのであれば止めましょう」 そう言うなり古泉が白兵戦中の朝比奈さんと長門の間に入った。 古泉「二人とも落ちつゲフグハァ!」 みくる「邪魔すんなガチホモ!」 長門「いっちゃんも敵なんだよね~」 あーあ左右から顔を殴られるなんてデフォなことして。 古泉は両頬を真っ赤に腫らして戻ってきた、なんか濡れ衣だとか言ってる。古泉の犠牲を無駄にせぬため、今度は俺が止めに入った。簡単に乱闘が終了した。 古泉「さて今回の件についてですが、先程言ったとおり重大な問題ではありません」 キョン「根拠はなんだ?」 古泉「解決方法がわかってます」 ほう、では教えてもらおうか。 古泉「ですがこの状況も面白いのでしばらく放置します、機関の許可もありますし」 キョン「なんか釈然としないが、いつでも改変を戻せるんだな?」 古泉「まあ戻すのはあなたですがね」 なに笑ってんだてめぇ。 ようやく部室に平穏が訪れたので、スマイル仮面とチェスをしよう。 だがその平穏の名前は「つかの間の休息」だった。 以下音声でお楽しみください。 みくる「はいキョンくんお茶!」 キョン「ども。いやーいつもながらおいしいです」 みくる「いっいつもやってんだからお世辞なんていらない!」 長門「なになにダークマターがツンデレ~?キョンくんはゆきっちのものなの!」 みくる「あー!?だいたいダークマターの意味ちげぇだろバカ!」 長門「あんたはまだプライベートに謎が多すぎる生命体だからいいのよ。特に深夜ね、クスクス」 みくる「こ ろ す」 ハルヒ「おっお願いですからその」 みくる「なんだ団長やろうってのか?」 長門「ハルっちは危ないから逃げて」 ハルヒ「暴力はダメです~!」 みくる「今日こそ決着つけるぞ長門!」 長門「ふーんあたしの宇宙的パワーに勝てるのかしら」 ハルヒ「えっ?宇宙?」 キョン「まて朝比奈さんに長門!おまえらそれは」 ハルヒ「今のはどういうことなんでしょうゆきっち!?」 長門「げっゆきっちピンチ」 みくる「ほんとあんたバカね」 ハルヒ「宇宙的パワーってどんな感じですか!?やってみてください!」 オンリー音声タイム終了。なるほど不思議の話になると積極的になるあたり、たしかにハルヒである。 長門「たったとえばこんなの、えい!」 そう言って長門はポッケからトランプを取り出すと、子供でもできる手品をした。 ハルヒ「わぁすごーい!」 ハルヒがよろこんでる。純心っていいな。その直後にどこが宇宙的パワーなんですか、とハルヒに言われて長門は愛想笑いでごまかした。 ハルヒ「ゆきっちは面白い人ですね」 長門「そうかな~。それより今思ったんだけど、ハルっちはさ~」 ハルヒ「えーと?そんなに見つめないで・・・」 長門「やっぱりかわいい~!大人しいときなんて興奮しちゃーう!」 ハルヒ「かっ顔が近いですゆきっち!ぃひゃぁっ!」 長門「この強調し過ぎない胸なんて特にイイ!私なんてこんなひんぬーなのに!」 ハルヒ「ひぃああくすぐってぃ」 長門「聞こえなーい!」 二人ともそのままでいろよ、今カメラにおさぶがあぁぁ! みくる「なーにやらしい目で見てんのよキョンくん!そんなに私は魅力的じゃねーの!?」 キョン「いきなり腰に飛びげ」 みくる「そーう、じゃ今から私しか見れないように調教してやるわ」 いつのまにか朝比奈さんの右手にはムチがあった。あっ右手を振り上げイタッ! キョン「朝比奈さん!いたいじゃギャッ!」 みくる「いいわよーもっとイイ声でさえずってキョンくん。テイッ!」 朝比奈さんは何度も俺にムチを打ってくる。こらーそこのかしまし娘たち!怯えてないで止めてくれ。 このままMに目覚めてしまおうか、そう思い始めたとき聞き捨てならぬ言葉をハルヒから聞いた。 ハルヒ「キっキョンくんはこういう女性がお好きなんですか?」 うおおおなんとしてでも否定をしゲフッ! みくる「そうよね~キョンくん?ハイ!」 キョン「アッ―――」 遂には亀甲縛りされ、口にゾウキンを詰められた。えーとハルヒさん?なにもそこまで青冷めなくても? ハルヒ「そうだったんですか・・・」 長門「泣かないでハルっち、ね?」 ハルヒ「ゆきっち~!」 ハルヒが長門に泣きついた。長門は照れながらハルヒを抱きしめて頭をなでている。だから誤解だってば! 声を出せないのでひたすら顔を横に振ったが、気づかないようだ。 あれ古泉はどこいった?そう思った直後 長門「じゃあ今日はカイサーン!」 もうそんな時間か、じゃなくて誰か助けて。ておいみんな帰るんじゃねぇ!扉を閉めるなぁ! さて置いてかれてからしばらくすると、古泉が戻ってきた。閉鎖空間からの帰りか? 古泉「なにがあったか察しは着きます。とりあえず解放しましょう」 閉鎖空間は発生してません、と言われた。 古泉「涼宮さんは今怒ってるのではなく落ち込んでいます。今までのデータを参考にしますと、落ち込んでいる時には閉鎖空間は発生しません」 ようやく俺の拘束が解除された。 キョン「じゃあなんでおまえは消えたんだ?」 古泉「だって朝比奈さんが怖いんですもの」 テヘッとか言うな気持ち悪い。 それよりだ、この改変された性格ってのはあくまで「作られた」性格なんだよな? 古泉「正確にはある基準を基に性格を逆転させています。」 例えば涼宮さんは普段ゴウマもとい気が強い女性ですが、今回はとても庇護欲をそそる女性になってます。 古泉「ただ思考までは改変してないようで、『不思議』にはとても興味が注がれてましたね?」 キョン「おまえはいつから消えてたんだ?」 古泉「朝比奈さんがあなたにムチを振るい始めた時からです」 キョン「罰として明日の昼食代を払え」 いやです、と言われたが解答を聞く気はない。 さっきの話によると、改変された人の性格は変わるが考えることまでは変わらないらしい。つまり朝比奈さんは……。 俺が下校中朝比奈さんへの認識をひたすら上書きし続けた。 古泉「・・・すので、帰りましたらお願いしますね」 どうやらなにか話してたらしい、俺は改ざん作業で聞いてなかった。ああ、と答えておいた。 家に帰って夕飯食べて風呂浴びてテレビ見て歯磨きしてベッドに入った。そこ、勉強が欠けてるとか言わない。 今日一日のことを思い出す。古泉の言葉を借りると、庇護欲をそそるほどかわいいハルヒ。ちょっぴりサディスティックな朝比奈さん。少々毒舌だが人なつっこい長門。案外悪くはなかったし、むしろ楽しかった。 あれが本来の性格でないのはわかっている。ゆえにどちらが良いかと聞かれたら間違いなく俺は 元の性格のかしまし娘たちをとる。 体のあちこちが痛い俺は早めに寝ることにした。 痛みで目が覚めた。妹が起こしにきたのかと思っていた俺は恐怖を感じた。俺は上半身裸でパジャマのズボンを着ていた。寒いな。 ハルヒ「ほらほら勉強の時間よ!」 ハルヒがスクール水着を着て、朝比奈さんのより丈夫そうなムチを使い慣れた手で俺に振るってきたのだ。 俺は逃げようとしたが、足が動かない。いてぇ。 両足が縄で縛られ、手も後ろ手に縛られていたのだ。 急に腰に重みを感じ、うつぶせにされた。ハルヒが馬乗りになったのだ。 ハルヒ「さあさあ良い声でさえずりなさいキョン!あたしたちの愛を確かめるように!!」 そう言うとハルヒは俺に首輪をはめ、首輪に繋がれた鎖を思いっきり上に引っ張りやがった。 キョン「グァァッ!」 ハルヒ「もっと!上手にできたら天国と地獄を同時に感じさせてあげるわ!アハハハハハ!!」 暴れたくても、馬乗りされて思うように動けず息も詰まっていた。 しばらくその体勢でいると、いきなり足に衝撃が走った。 キョン「ウワアアアァァァァ!!!」 ハルヒ「そうよその調子よ!ムチなしで鳴けたら完璧よ!!」 そう言うとハルヒはうつぶせの俺に重なるように抱きついてきた。 ハルヒ「温かいでしょう。これはあたしの愛よ、キョン」 休憩よ、と言い俺から離れると、ハルヒは不気味に明るいこの部屋の隅でくつろぎ始めた。 もはや話す気にもなれないので縄をちぎろうと懸命に抗っていると声が聞こえた。 「大丈夫ですか?」 誰だ?そしてどこにいる? 古泉「ここです」 耳元で聞こえていることに気づいた俺が声の方向に振り向くと、今にも消えそうな小さな光る玉がいた。 古泉「声を出さずに聞いてください。ここは特殊な閉鎖空間です」 閉鎖空間は本来神人が暴れるところですが、ここは神人が存在しない代わりに神がいます。 古泉「これは昔あなたと涼宮さんが行かれた閉鎖空間と似ています」 ですが涼宮さんは世界を放棄したわけではありません。よって我々の世界が終焉を迎えることはありません。 キョン「長い。要約しろ」 古泉「失礼。原因はあなたが涼宮さんに性格改変を望ませたことです。一昨日は大人しい性格に、昨日は『あの』朝比奈さんのような性格にね。」 すくなくとも今は日付が1日進んでるんだな、とか悠長なことを考えた。 古泉「この事件の解決法と閉鎖空間からの脱出方法はおそらく同じです。先程も言いましたが、あなたが涼宮さんを恋愛対象として認めたことを彼女に伝えればいいのです」 キョン「できるかそんなこと!!」 古泉「静かにしてください、あくまでフリです」 ハルヒ「どーしたのキョン?天国地獄のお時間よ~!」 しまった。おまえなにを口に入れるつもりだ。モガッ! ハルヒ「猿グツワ装備完了!鳴けなくなるのが嫌だけどしかたないわよね?」 そんな笑顔で言われても返答できねぇよ。 ハルヒはまた俺に馬乗りになった。なにやらカチッカチッという音が聞こえはじめた。なにをしてんだおまえは。 ハルヒ「あたしからの熱い愛のプレゼントをあげるわ!」 そう言うと、俺の脇に温かいものがアツッ!まさか ハルヒ「どう、ロウソクは熱いでしょう?あたしの愛なんだから当然よ!」 ライターでロウソクに火をつけたのか。このままでは俺の身がもたない。気持ちを伝えたくても口は塞がれている。 そのまま何十分経ったのだろう、実際は数十秒だろうが。 ハルヒ「なんでナいてんのよキョン?」 ナく?鳴けないぞ、てああ泣いてんのか俺。恥ずかしいね。 ハルヒは猿グツワを外すと、俺を仰向けにして悲しそうな顔で尋ねてきた。相変わらず馬乗りだが。 ハルヒ「答えてよ。なんで泣いてんのよ?あたしの愛が嫌い?」 俺は最後のチャンスである、と直感した。覚悟を決めて言う。 キョン「俺は今のおまえが嫌いだ!」 古泉「えっ」 ハルヒが顔面蒼白になってるが気にしない。ついでにどこかから「えっ」なんて音は聞こえなかったことにしておく。 キョン「俺はかわいげがあって人思いの女性が好きだ。だがな、今のおまえにはかわいげどころか邪気すら感じるぜ」 ハルヒ「あっあたしのこと・・・キライなの・・・」 キョン「ああ」 首輪の鎖を引っ張られ、ハルヒの顔の近くに顔を持ってかれた。ハルヒの顔に一筋の涙が見えた。 ハルヒ「なんでよ!あんたの好みの女になったのに!!」 キョン「じゃあ聞くが」 俺がいつ言った? そういうなりハルヒは顔をくしゃくしゃにして泣き出した。表現がどうであれ、こいつは本当に俺のことを好きなんだな。 これじゃ相思相愛じゃないか。 キョン「ハルヒ、おまえはなにか勘違いしてるぜ」 ハルヒ「何をよ!あたしは勝手にあんたのことを・・・」 キョン「泣くな。俺が言いたいのはな」 今まで通りのハルヒが良い、ということだ。 ハルヒ「ふぇ?えっえっえっ??」 キョン「性格なんて変える必要はない。少しワガママだけど可愛いげはあるし、なんだかんだで俺や長門や朝比奈さん、おまけに古泉のことも思って行動してたじゃないか」 ハルヒ「あっ・・・うん」 キョン「つまりなにが言いたいかっていうと、俺はえっとあのその・・ハルヒを・・」 ハルヒ「なっなによ、最後まで言ってよ・・」 ロウソクを押し付けられたわけでもないのに顔が熱い。ハルヒも顔を紅潮させていた。 キョン「い、言わなきゃだめか?」 ハルヒ「そうよ!こういうのは男からこきゃふゃくれ」 キョン「なに噛んでんだよ、笑わせないでくれ」 ハルヒ「うっうるさい!じゃあ少しじっとしてなさい!」 ああ、ハルヒの顔がだんだん近づいて ハルヒ「ん・・・」 目の前には目を閉じたハルヒの顔。互いの息が混じり合う。ハルヒの唇は甘く熱い。腕を縛られたままなのが残念だ。 ― 突如浮遊感に襲われた。直後俺はベッドに入ってることに気づいた。俺の部屋だな。服装も戻ってる。時計を見るとまだ6時30分である、じゃあお休み キョン「もうそんな時間かよ!!」 俺が驚きで体を起こすのと同時に、妹が部屋に入ってきた。悪いな妹、今日の俺は早起きだぜ。 朝飯を食べてる間も甘い感触を忘れることはなかった。 朝飯を食べ終えた俺が部屋で教科書をバックに積めていると、電話がかかっきた。 古泉「おかげさまで彼女たちの性格が戻りました」 キョン「それは良かったな」 古泉「序盤で一瞬頭がおかしくなったかと思いましたが、ややこしいことを言わないでもらいたいです。ヒヤヒヤしましたよ、冬だけに」 キョン「うるせーな、ハルヒのことを考えて言ったんだ」 古泉「まあさすがにあんな甘いひと時を直視してはいませんがね、フフ」 あれを見られたのか!?て当たり前か、こいつは閉鎖空間にいたしな。だがな、他人に見られるのは恥ずかしいだろ。 キョン「コイズミクン、あとで昼飯をおごれ」 古泉「冗談ですよ。まあ今回は手っ取り早い方法をとってもらいましたが、今後はより安全策をとるよう機関で検討します」 キョン「古泉、なにか勘違いしてるぞ」 古泉「えっ?」 俺がハルヒのことを好きなのは事実だ。ただお互いに素直じゃなかった、それだけだ。 古泉「そうですか。では僕からはこうしか言えません。おめでとうございますキョンくん、そして涼宮さん」 キョン「今だけは嫌みを感じなかったぜ。ありがとう古泉!」 古泉「ただ残念ですが」 なんだ?前言撤回していいか? 古泉「涼宮さんからすれば、あの閉鎖空間での出来事を『夢』と思ってるかもしれません。だからといって現実だと伝えてはいけませんよ?」 ああ、そんなことか。 キョン「古泉。正直なところ確証はないが、あれが夢だと思われたとしてもだ」 もう一度正式に告白すれば、ハルヒは了承するぜ。 古泉「フフッ涼宮さんは力によって女性団員三人の性格を逆転しました。そして純粋な愛情であなたの気持ちを友達から恋人へ逆転させた、というところですね」 キョン「なに難しいことを」 古泉「僕は二人の恋が成就することを祈ります」 キョン「ありがとう」 俺が玄関のドアを開けると、目の前にハルヒがいた。 キョン「おー今日もか」 ハルヒ「うっうるさいわね!遅刻しないか心配に・・・じゃなくてその・・」 キョン「ありがとよ。ほれ学校行くぞ」 ハルヒ「・・・うん」 あのしおらしいハルヒを思い出した。ハルヒは顔を少々赤く染めて俯いていた。 登校中俺たちは黙って歩いていた。不思議とくそ寒い気温なのに温もりを感じた。 学校の正門辺りでハルヒが口を開いた。 ハルヒ「なっなんか今日最こ、最悪の夢を見たのよ」 笑みがこぼれてるぞ、とは言わず俺は同じように笑って言った。 キョン「奇遇だな、俺もさ。もしかしたら同じ夢かもな」 ハルヒ「・・・そうかもね!」 授業中はいつもの睡眠ハルヒに戻っていた。おいおい寝言で俺を呼ぶな、恥ずかしいだろ。英語教師が睡眠ハルヒを見て落胆してたことは内緒にしておこう。 昼休み、俺はハルヒを文芸部室に連れて行った。部室に入ると誰もいなかったが、イスにぶ厚い本が一冊置いてあった。なるほどね、ありがとう長門。 真っ赤に頬を染めたハルヒはなんだか落ち着かない様子だった。さて人生の出発点を定めよう。 「ハルヒ、聞いてくれ。俺はハルヒのことが好きだ」 幸せを手に入れた二人。私はあなたたちを祝福しよう。 幸せ。「幸せ」とはどのようなもの? これの後日談「神の末路」へ続く。 ―――――end――――――
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/2031.html
ハルヒのおかげかそうでないのか、俺は無事進級できたわけだ いや、ハルヒがやけにうれしそうに俺に勉強を教えてくれたおかげなのかもな 三月のホワイトデーという難関も無事に突破し、春休みの半分以上はSOS団活動で 終わった。 新学期、幸か不幸か俺はまたハルヒと同じクラスになり、席も相変わらずだ まあ他の面子にはあまり変わりが無く、俺も少しほっとしたわけだ 俺たちは今二年生なわけで当然、新入生も入ってきた 俺は新入生を見て、俺もあんな初々しかったのかな、などと感慨にふけり でも実際は一年しか経っていないわけで、新入生とあまり変わっていないのだと思う ハルヒは新入生の調査で忙しいらしく、新学期が始まって一週間はまともに部室には来なかった またとんでも属性の人を連れてこないのか若干ひやひやしてたが そんなことはなく結局ハルヒは誰も連れてくることはなかった もし仮にハルヒがまた変なやつを連れてきても、俺は甘んじてそれを受け入れるがな そしてSOS団のメンバーに変わりはなく、この五人で活動している 活動と言っても、特に何もしてないのだが 今は五月、一年生が学校に慣れてきて少々うるさい時期である 俺はそんなことは気にせず、いつもどおりの生活を送っていた ちょっと刺激が足りない気がするが、ナイフを持った女子に追い掛け回されたり でかい虫に追いかけられたり、そんなことはもう勘弁してもらいたいからな 今に、ハルヒがまたドアを破るように開け厄介ごとを持って来るさ 今の俺にはそれくらいがちょうどいいのさ しかしここ最近ハルヒの様子がおかしい おかしいと言っても何がおかしいのかよくわからない 授業中は俺を突いてくるし、休み時間になると教室からいなくなる 行動自体はなんら普段と変わりないのだが、おかしい そのことに気づいてから一週間が経ち、俺は少し心配していた 他の団員は気づいてないのだろうかと思い、あまり気が進まんが古泉あたりに聞いてみよう 「なあ古泉」 「なんですか」 「ここ最近ハルヒの様子がおかしくないか?」 「おかしいとは、どのようにおかしいんですか?」 「いやうまく説明できないんだが、なんとなくな」 「また何か良からぬ企画を練ってるんじゃないですか?」 「まあそういうことならいいんだが、なんか違う気がするんだよ」 「しかし僕から見た限りいつもの涼宮さんに見受けられましたけど」 「俺の勘違いならそれでいいんだ」 「あなたにしては珍しく涼宮さんの心配ですか?ですが機関からも何も報告は来てませんし 特に何もないと思いますよ」 「そうか」 俺の勘違いなのか?だがまだ疑念は拭えない 手っ取り早く長門に聞くとするか、あいつならずばり答えてくれるだろうし 「長門」 「なに」 「ここ最近ハルヒの様子がおかしくないか?」 「……質問の意図が理解しかねる」 「だからなんていうか、最近どことなくいつもと違くないか?」 「涼宮ハルヒからは異常は感知していない」 「そうか」 長門がこう言うんだからそうだとは思うんだが 多分同じ答えが返ってくるだろうけど、朝比奈さんにも聞いてみるか 「朝比奈さん」 「なんでしょう」 「最近ハルヒを見てて、なにか様子がおかしいと感じませんでしたか?」 「え?特に何もおかしいところはなかったと思いますよ。涼宮さんと何かあったんですか?」 「あ、いえ何もないですよ。俺の勘違いでしょう」 「ふふっ変なキョン君」 期待はしてなかったが同じ答えが返ってきたか 三人とも何も感じないのか?俺にはなんか無理に明るく振舞ってるように見えるんだが 直接聞いてみるか 次の日 掃除を終わらせた俺はいつものように部室に行った 珍しいこともあるもんだ、部室にはハルヒしかいなかった 「あれ?ハルヒだけか」 「あたしだけじゃ不都合があるって言うの?」 「いやむしろ好都合だ」 「へ?」 「いや、それより他の連中はどうしたんだ」 「え?ああ有希はコンピ研に行って、みくるちゃんは進路相談、古泉君はなんか急にバイトとか言って帰ってわ。みんな怠けすぎよ、SOS団を第一に考えるべきだわ」 今更、SOS団が最優先事項になったのは初耳だがあえてつっこまないでおこう 「そうか」 「そうよ。そこんところ今度みんなに教えないとだめね」 「ああ、そうしてくれ」 「……あんた、今日はやけに素直じゃない頭でも打ったの?」 「どこも打ってないし、どこもおかしくなってない」 「そう。変な日もあるわね」 と言いパソコンをいじり始めた 「じゃあ帰ろうぜ。みんな時間かかるみたいだしさ」 「あんたまでサボろうとしてるわけ、そんなの認めるわけないじゃない」 「頼むよ。今日だけ、な?」 両手を合わせ頼んでみる 「…仕方ないわね。今日だけよ、そのかわり帰りに何かおごりなさいよ」 「はいはい」 ハルヒは部室のドアに張り紙をして、俺たちは帰ることになったのだが どう切り出せばいいんだ?『悩みでもあるのか?』こんな直接聞くのもおかしいよな でも聞かないでイライラするより聞いたほうがいいだろう 帰り道 坂を下りながら 「なあハルヒ」 「なによ」 「最近悩み事でもあるのか?」 いきなり立ち止まりやがった、またゆっくりと歩き出し 「何でそんなふうに思ったの?」 「なんとなくだが、ここ最近ハルヒと接してて違和感を覚えてな、いつも通りと言われればそうなんだが、なんか引っかかってな」 「……」 この三点リーダはハルヒのだ。俺はさらに続ける 「なんか、無理に元気出して振舞ってるように見えたんだ。いや俺の勘違いならそれでいいんだ」 「……」 否定も肯定もないハルヒを見るのは初めてだが、やっぱりなにかあるんじゃねーか 「悩みがあるなら話してみろよ。話ならいくらでも聞いてやるぞ」 「……」 「無理に聞こうなんて思ってない、ハルヒが話したくないならそれでいい。男の俺に話しづらい事なら朝比奈さんや長門にでも話してみろよ」 「……」 「俺はいつでも話し聞いてやるから、俺に話して解決するかわかんねーけど、誰かに話したら少しでも気が楽になる事だってあるんだ」 「……」 「あんまり一人で抱え込むんじゃねーぞ。らしくないハルヒを見てるのはつらいんだ」 「……」 その後、俺たちは一言もしゃべらないまま坂を下りた 坂がおわった所でハルヒがようやく話してきた 「いつ気づいたの?」 「一週間か十日ぐらい前かな」 「そう」 「あたしこっちだから」 「あれ?奢らなくていいのか」 「今日は帰るわ」 「そうか」 「じゃあね」 そう言って歩いて帰っていった そのときのハルヒの後姿はとても小さく見えた そのまますっきりしないまま家に着き夕飯を食べ、俺にまとわりついてくる妹をスルーし、部屋に着いた なんだか落ち着かん。何なんだこの感じは? しかしこれ以上考えてもどうにもならん。話したくなったら話してくれるさ そう思い、いつもより早くベッドに入った 明日は土曜日、不思議探索があるしな 深夜、俺もようやく眠りに入った頃に、電話があった 誰なんだこんな夜中に 着信 涼宮ハルヒ いつもならあまり驚かない電話なんだが、昨日あんなこと言っちまったし 眠い目をこすりながらなるべく平静を装いながら電話に出た 「もしもし」 「起きてた?」 寝てたに決まってんじゃねーか何時だと思ってんだ、なんて言えるはずもなく 「ああ、なんとなく寝付けなくてな。どうしたんだ?こんな時間に」 「うん。その今日の帰りのことなんだけど」 「なんだそのことか、やっぱりなんか悩んでるのか?」 「そのことなんだけど、明日キョンの家に行っていい?」 おかしすぎる、こんなふうに言われるなんて数えるほどしかないぞ。いや、なかったか 「俺はかまわんが明日は不思議探索じゃなかったか?」 「そうだったんだけど明日は中止にするわ。ほかのみんなにはあたしから連絡しとくから」 「そっか」 「じゃあおやすみ」 「ああ」 話が終わり、携帯で時間を見てみた。2時15分 ハルヒはこんな時間まで起きてて、電話してきたのか そういや何時に来るか聞いてなかったな、こんな時間まで起きてたんだ朝来ることはないだろう 話の内容が気になるがさすがに眠い、もう一眠りするか 翌朝 朝起きる気はこれっぽちもなかったが、いつも通り妹に起こされてしまった 「キョン君おきて、ハルにゃんが来てるよ」 「なに?今何時だ」 「8時だよ」 いくらなんでも早すぎんだろ 「ハルヒは今どこにいるんだ?」 「居間で待ってもらってるよ。早く起きてきてね」 なんだって?これはマズイ。色々とヤバイ。何がマズイかよくわからんが 俺は急いで服を着替えて、寝癖を直さないまま居間に向かった 幸運なことにそこには親の姿はなく、とてもほっとした 動揺を悟られぬように 「よう、ハルヒ」 「おはよう」 食卓テーブルに座りながら、お茶を飲んでるハルヒがいた 妹はニコニコしながら俺とハルヒを交互に見ている、何が面白いんだおまえは 「来るの早かったな」 「ごめんね。早く起きちゃったから」 初めて聞いたぞそんなセリフ、まさかここはもうすでに違う世界とか ちょっと前の俺ならそんなことも疑うが、昨日のハルヒの様子からしてそうではないだろう 「いや、いいんだ」 こう言うのが精一杯である 「それより他のみんなにはもう連絡したのか?」 「もうしたわ。7時くらいに」 よく起きてたな、まあみんなは不思議探索あると思ってんだし起きてるか それよりここにハルヒをおいとくわけにもいかんな 「ハルヒ、俺の部屋に行っててくれないか」 「わかったわ。じゃあ先に行ってるね」 「ああ」 ハルヒについていこうとする妹を捕まえ、今日は俺の部屋に入るなと何度も言い聞かせていた 「むぅ~わかったよ。キョン君のイジワル」 何とでも言ってくれ 俺は手早く寝癖を直し、パンを食べ、部屋に戻った ノックしたほうがいいよな 「どうぞ」 床に正座で座り、窓の外を見ているハルヒがいた。何を見てるんだ? 「おそかったわね」 「そうか?」 「そうよ」 ハルヒの向かいに座り、テーブルの上に手を置き 「で、どうしたんだ?」 「昨日あんた言ってくれたでしょ?悩みがあるなら聞いてくれるって。本当は話す気なんかなかった。あんたに話してもどうしようもないことだから。でも、もうちょっと疲れたみたい、あんたに頼るなんて。」 「……」 「昨日の帰りに何も言わなかったのは、ビックリしたからなの。何で気づいたの?どこでばれたの?そう思って何も言えなかった。でも嬉しかったの。こういう時だからこそいつも通り明るく振舞おうとしてた。実際いつも通りにしてたと思うわ。でもキョンは気付いてくれた。それが嬉しかったの」 「……」 「だから話そうと思って来たの、あんたは今から言うことを黙って聞いてほしい。聞くだけでいい解決してほしいなんて思わないから」 「わかった。遠慮なく言ってくれ」 「うちの親、離婚しそうなの」 ……それは悩むよな。そうか。 「二週間ぐらい前からなんかギクシャクしてたの。夫婦喧嘩なら今まで何回も見てきたけど今回はなんか違ったわ。その何日か後に家に帰ったら怒鳴り声が聞こえたの」 「お母さんがよく怒鳴ってるのは聞くけど、今回は二人そろってデカイ声出して喧嘩してた『おまえは何もわかってない』『あんたこそ何考えてるのかしら』そんなことを言ってたわいつもなら親父がすぐ謝るんだけど、今回それはなかったわ」 「夜になったらまた喧嘩しだすし、あたしも止めるんだけど、うまくいかなくて」 「喧嘩の原因を二人に聞いても、『母さんに聞いてくれ』『お父さんに聞いたら』なんて事しか言わないの。訳わかんないわよ」 「それで一昨日、お母さんが独り言みたいに『離婚しようかしら』なんて言うのよ。今までそんな事聞いた事ないからひどく悩んだの。ここ最近まともに寝てないし。昨日も」 「……そうか」 なんて言ってやればいいかわからない。今に仲直りするさ、こんな無責任な事言えんし また俺はこんな事しか言えないのか。情けない 「そうよ」 おもむろにハルヒは立ち上がり、俺の横に座って俺の肩をつかみながら 「どうすればいいの?」 そう言って俺の肩を前後にゆすり始めた 涙を流しながら 「ねえ、教えてよ。どうすればいいのよ。教えなさいよ」 俺は下を向いて俯くことしか出来なかった 「どうっうぅすればっいいっの?」 ハルヒは俺の肩から手を離し、俺の胸で泣き始めた。ハルヒの手は俺の背中に回され俺の背中に爪を立ててしがみついている 「うっうっうっ」 声をあまり上げずに苦しみながら泣いているハルヒを見て、俺もとても苦しかった ハルヒにロックされてない右手でハルヒの頭をそっと撫ぜてやる これくらいしか出来なくてごめんな 何十分そうしていただろうか、背中にまわされた手の力が弱くなってる事に気がついた 泣き声も出していない。ハルヒの手をそっと離し顔を見てみる 寝てる 涙のあとがくっきりついた顔で寝てる。とても安心した顔で 寝てないって言ってたもんな。出来るだけ衝撃を与えないようにしてハルヒを抱き上げて俺のベットに寝させた ハルヒを抱き上げてみてとても軽い事に気付いた。やっぱ女の子なんだよな ハルヒは体を丸め、こちらを向きながら寝ている これ以上ハルヒの寝顔を盗み見する趣味はないので、俺は自分の部屋を出て居間に向かった 連絡しときたい相手もいたしな。トイレに入り携帯を見てみる 着信あり 12件 やはりな。その内1件は朝比奈さん、残りは古泉 気持ちはわかるんだがちょっとかけすぎじゃないか 俺は着信履歴の三分の一以上を占めてる古泉の名を見て、気分が悪くなった でも、かけてやるか 便器に座ったまま、古泉に電話した 「お待ちしてました」 おい、ワンコールで出るなよ。 「おまえに待たれてもうれしくないな」 「まあそう言わないでくださいよ。今朝、涼宮さんから電話がありまして、いきなり今日は中止だから、と言われまして。いつもならただの気まぐれだろうと思うんですけど、どこか様子がおかしかったものですから。あなたに連絡してみたんですけど」 「出なかった、か」 「そこで機関に連絡して、涼宮さんの事について色々調べさせてもらいました」 「あまりいい趣味とは言えんな」 「申し訳ございません。何分、あまりいい事態が起こってるとは思えなかったものですから。今涼宮さんはそちらにいらっしゃるんですよね?」 「俺の部屋で寝てる」 「そうですか」 「おまえはどこまで知ってるんだ?」 「ええ、涼宮さんのご両親の仲が最近あまりよくないことしかわかりませんでした」 「そうか。それで今大変なのか?閉鎖空間だかは」 「いえ、閉鎖空間は発生してませんよ」 「なんだと?」 あんなに不安げにしてたのにどうしてだ? 「あなたがこちらの心配をしてくれるのはうれしいですが、やはり何かあったんですか?」 「いや大丈夫だ。ハルヒが起きたら家まで送っていくよ」 「わかりました。少々心配したんですけどあなたがご一緒してるなら大丈夫そうですね。何かありましたら連絡ください」 「ああ」 「それとあんなに電話して申し訳ありませんでした。それではまた」 とは言ったものの、どうするべきか 古泉はあまり状況把握が出来てないみたいだし、あいつらしくない 朝比奈さんには今日あった事を伏せて電話しておいた。俺に話してくれたんだ、あまりベラベラしゃべるのはよくないよな 時計を見ると、もう4時を過ぎていた そろそろ起きてるかな、そう思い部屋に戻った まだ寝てるか、俺はベットによしかかり何か言ってやれることはないのか、必死に考えていた でも他人が夫婦仲に入って、何か言うのもなあ 「はぁ」 何も思い浮かばん。これ以上考えても駄目だな 俺はいつも通り振舞うしかないな。ハルヒに余計な心配かけたくないし それしかないな 色々と考えていたが『ガバッ』と音が聞こえるような勢いでハルヒが起きた 「ようやくお目覚めか」 ハルヒは俺を一瞥し周りをきょろきょろ見て 「あれ?あたし寝ちゃったの?」 「ああ、起こすのもかわいそうなくらいぐっすりな」 「そっか」 急に顔を真っ赤にして、俺から視線をはずした 「今何時?」 「8時ちょい過ぎだ」 「なんですって?……あたし何時間寝てたの?」 「8、9時間ぐらいじゃなのか?」 「そ、そんなに寝てたの?」 「ああ」 それから俺の方に向き直り、何かを決意したのか話し始めた 「今日は話を聞いてくれてありがとう」 なんと?聞いたことないぞそんな言葉 「あんたの言った通りね、全部話したらスッキリしたわ。もう涙が出ない位泣いたし」 「さっきはあんたに話しを聞いてくれるだけでいい、なんて言っといてあんなことしてごめ「そういえば他のみんなも心配してたぞ、いきなり不思議探索が中止になったから」 ハルヒが何を言おうとしてるかわかったから、わざと割り込ませた これが今俺に出来ることさ、これ以上ハルヒの口からそんなこと言わせたくないからな 「……そっか」 「他のみんなには何も言ってないから心配すんな」 「うん」 それからしばらくの沈黙が続いた 「あーなんか久々に寝た気がするわ。スッキリしたらお腹へってきちゃった、今日何も食べてない もの。そろそろ家に帰るわ」 「そうか。じゃあ送ってくよ」 「いいわよ、そんなことしなくて。一人で帰れるわ」 「駄目だ」 「何が駄目なのよ、でもどうしてもって言うなら許可するわ」 「じゃあどうしてもだ」 「仕方ないわね、じゃあお願いするわ」 少し元気が出たみたいだな それから家を出て、自転車で二人乗りしてハルヒの家へ向かった 最初の方、後ろに乗っているハルヒはどこも掴まないで黙って後ろに乗っていた 途中から俺の腰に手を回し、頭を背中に預けて、黙って乗っていた 俺はひたすらペダルを漕ぎ続けた 俺とハルヒは自転車に乗ってから、一言も話さなかった 30分ほど走っただろうか、ようやくハルヒが口を開いた 「この辺でいいわ。止めて」 「ああ」 「じゃあね」 そう言って走って帰っていった 帰り道、ハルヒは後ろに乗っていないのに足が重く、家まで1時間かかった 少し疲れたかな 家についてベットに倒れこむようにして横になり、テレビをつけた もう12時か、そろそろ寝るか そう思い寝ようとしたら、また電話があった ハルヒからだった 「キョン、ちょっと聞いてよ」 随分うれしそうな声だな、いい事でもあったのか 「なんだ?何があったんだ」 「さっき家に着いたら、二人して抱き合ってるのよ。意味わかんないわよ」 「それでね、仲直りしたの?って聞いたのよ。そしたら二人して『喧嘩なんかしてたっけ』なんて言うのよ」 「こんなに悩んだあたしがバカみたいじゃない。でね、どうしても喧嘩の理由が知りたいからしつこく聞いてみたの。そしたら、あたしの進路のことで揉めてたみたいなの」 「進路?」 「そうよ。大学に行かせるだの、なんだのって揉めてたみたいなんだけど、あたしの好きにさせる事で決着がついたみたい。あたしそれを聞いてイライラを通り越して、あきれたわ」 「でも今後こんなことはごめんだから、二人に正座させて今まで説教してたわけ」 俺はハルヒが親に説教してる姿を想像して笑ってしまった。いや親は見たことないけど 「何笑ってんのよ。笑い事じゃないのよ」 「ああ、すまん。それよりおまえは親にまで説教するのか?」 「当たり前じゃない。そんなことに親も子供も関係ないわ」 「おまえらしいな。でもよかったじゃないか、仲直りしてくれて」 「そうね、安心したわ。それより明日、あんた暇?」 「おまえが俺の予定をきくなんて珍しいこともあったもんだな」 「そんなことはどうでもいいじゃない、どっちなのよ。暇なの?」 「暇だが」 「それならもっと素直にはじめから言いなさいよ」 「おまえにだけは、言われたくないね。それで明日なんかあるのか?」 「明日の昼12時にいつもの待ち合わせ場所に来て。じゃあおやすみ」 切りやがった、俺はまだハイもイイエも言っていない気がするのだが しかし今日は何も文句はないね、良かったじゃないか いつも通りのハルヒに戻って 俺は心底安心していた 「はぁよかった」 次の日 いつもより遅く起き、適当に身支度を済ませ家を出た 15分前には着くだろう、俺にとってはいつもより早めだ なんとなく早く出たんだ、そこに深い意味などない 到着 そこにはハルヒしかいなかった、まあ予想はしていたが 「遅い、でも今日は罰金は無し」 「というか遅刻はしてないんだがな」 「いいからここに座んなさい」 そう言ってハルヒが座ってるベンチに座った 「今日は何なんだ?」 「昨日の話しに決まってんじゃない」 「もうあの話は終わったんじゃないのか?」 「詳しいことは全然話してないわ」 それからハルヒは昨日の出来事を話し始めた ハルヒは怒りながら笑い、笑いながら怒り、などととても器用なことをしながら話していた 俺は適当に相槌を打っているだけで話は頭に入ってこなかった とても安心していた、良かった元に戻って、今日はいつもよりさらに元気じゃないか だが、ここで一生の不覚をしでかしてしまった ハルヒは話を急にやめ、俺の顔を覗き込むようにして 「何で泣いてんの?」 「へ?」 驚いたことに俺の目からは涙が出ていたのである 「どうしたの?だいじょうぶ?」 「あ、ああ大丈夫だ」 目を軽くこすりながら、何で泣いてんだ俺、と思っていた 「どっか痛いの?」 「いやそういうんじゃない」 「でも、もう大丈夫なんだよね?」 「ああ」 少し話が途切れ、俺は恥ずかしいことを口にしていた 「たぶんな、たぶん安心したんだ。今日のハルヒを見て安心したんだ」 「え?」 「いつもの元気なハルヒが見れて、安心したんだ」 「そう、なの?」 「ああ、たぶんな」 「俺は昨日おまえに何も言ってやれなかった。おまえが苦しんでるのに気の利いたこと何も言えなかった。本当情けねーよ。昨日はごめんな」 「あんたバカじゃないの?」 「は?」 「あたしがあんたに話してどれだけ元気が出たと思ってんのよ。もしあんたに話してないで一人で抱え込んでたら、なんて考えるだけでぞっとするわ。あんたは黙って話しを聞いてくれた、真剣に、いつもなら変につっこむけど、そんなことなかったでしょ?」 「ああ」 「だからあたしに謝らないで。わかった?」 「わかった」 「よろしい」 「キョンにこの事、相談しなくてもこの問題は解決したと思うの。でもね今はあんたに話してよかったと思ってるの」 「どうしてだ?」 「わかんないの?」 「わからんからきくんだろうが」 「はぁ本当にあんたってあれよね」 「あれってなんだ?」 「教えるわけ無いでしょ」 そう言って勢いよく立ち上がり 「でも、あたし、とても大切なことに気付いたから、今回は辛かったけど、良かったわ」 「何に気付いたって?」 「だーかーら、教えるわけ無いでしょ」 俺の手を取り走り始めた。俺の好きな笑顔で やれやれ ハルヒが気付いた事は結局わからなかったが 今回、俺が気付いた事とハルヒが気付いたことが、同じであると 俺はそう願いたい
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/3331.html
涼宮ハルヒの軌跡 プロローグ 涼宮ハルヒの軌跡 機関の決断(前編) 涼宮ハルヒの軌跡 機関の決断(後編) 涼宮ハルヒの軌跡 未来人たちの執着(前編) 涼宮ハルヒの軌跡 未来人たちの執着(中編) 涼宮ハルヒの軌跡 未来人たちの執着(後編) 涼宮ハルヒの軌跡 情報統合思念体からの独立(前編) 涼宮ハルヒの軌跡 情報統合思念体からの独立(中編) 涼宮ハルヒの軌跡 情報統合思念体からの独立(後編) 涼宮ハルヒの軌跡 SOS団(前編) 涼宮ハルヒの軌跡 SOS団(後編) 涼宮ハルヒの軌跡 エピローグ -----下記のものは別の方がご厚意により作ってくれたものです----- 涼宮ハルヒの軌跡 動画(PC版) ※Divxコーデック必須
https://w.atwiki.jp/c21data/pages/108.html
カッパLG5 名称 サイズ 潜在(開放後) 入手方法 Rank 備考 カッパLG5 S A() - C-4 単パーツロボ LV 重量 コスト HP EN EN回復 歩行制限 飛行制限 歩行 飛行 跳躍 射撃 格闘 物防 ビ防 火防 電防 安定 耐遅 耐凍 1 70.0t 97 680 650 71.0t 125 85 30 30 40 20 1% 1% 30 50
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/3609.html
ここは部室。 いるのは長門と古泉と俺。 いつもよりちょっと笑顔が偽者臭い古泉と会話をしている俺は今日も深い溜息をついた。 「またかよ」 閉鎖空間。 3年に進級した今もそんなものが発生しようとは疑問しか湧いてこない。 その理由は古泉によると俺だけが知らない等と言いおった。イジメかよ。 最近じゃ2人きりの活動も少なくないからな。勉強とか勉強とか・・・ 周りは冷やかしたりするがハルヒは恋人じゃないっての。間違ってもそんな関係になるばずがない。 まぁとにかくハルヒと過ごす時間が一番多いのは俺だから最近のご機嫌なハルヒを見る限り大丈夫と思っていたのだが・・ 「では、よろしく頼みます」 「何をだよ」 「涼宮さんのこと です」 そう言って古泉は立ち去っていった。バイト乙。 ・・・って他人事じゃないんだけどな。 俺はまた溜息をついて椅子にぐにゃりと座る。 しばらくうなだれていると突然後ろから声がした 「これ」 「ぅおっ・・・長門!?」 「あなたに」 そういって差し出されたのは四角いケース。 「必要な時だけ、使って。」 「・・・これは?」 「性能は保証する。宇宙人と発明家の太鼓判付き」 そう言って長門は椅子に戻った。突っ込みぐらいさせてくれよな。 俺は恐る恐る箱を開けて中身を見る。 眼鏡だった。 かけてみようかと思った矢先にハルヒと朝比奈さんが戻ってきたので眼鏡ケースはバッグに入れた。 ハルヒはやっぱり朝比奈さんで遊んでいたようだ。やれやれ・・・ 卒業した後も律儀に部室に顔を覗かせる朝比奈さんには平伏するね。 活動が終わった後、俺はハルヒと共に帰り道を歩む。 厳密には帰り道ではない。これから俺の家に行って勉強するのだ。 テストの赤点対策から始まり、宿題、試験勉強、 そして今は受験勉強と、俺はハルヒと勉強するのは日常生活の1部になっていた。 今では毎日ハルヒと勉強している気がする。ハルヒ曰く「教える側の方が勉強になるのよっ」だそうだ。 まぁやる気が無い日というのも実は存在して、話をしたりゲームをしたりする日もあるんだがな。 勉強も一段落ついてハルヒの「ちょっと休憩!」の声がかかった。 ハルヒは俺の布団にもたれて寝てしまった。ちょっとは状況を考えてほしい。 俺の苦労や悩みを何も知らないんだろうな、こいつは。 お互い様か? そこで俺は鞄の中のケースに気が付いた。そういえば眼鏡貰ったんだったな。 ケースを開けて眼鏡をかけてみた。おお、結構見やすい。 視力は良い方だと思っていたが、そんな俺でも更に見やすくなったぞ。 ハルヒの寝顔もばっちり見える。教科書の文字も読みやすいな。 しばらく眼鏡で遊んでいると下に敷かれていた紙に目がいった。眼鏡拭きではないようだ。 紙を広げてみると、見覚えのある整った字が目に入った。 左 不快指数 右 愉快指数 ・・・なんだコレは。 どうみても普通の眼鏡ですよ長門さん。 それに不快指数って気温と湿度の組み合わせで決まる人体の感ずる不快の程度のことだよな? と思いながらはずしてもう一度見ると耳にかける部分にスイッチらしきものを見つけた。 カチリ、と押してみる。もう一度眼鏡をかけてみる。やっぱり何も変わらない。 まぁ勉強するには最適の眼鏡かもな。 「キョン。どうしたのその眼鏡」 げぇっ。ハルヒが起きよった。 「お前はもう少し寝て・・・ろ!?」 「なによその言い方!どういう意味よ!!」 正直俺はそれどころではなかった。 視界の隅に異変が起きたからだ。 73 49 左目のレンズに数字が出てきた。 しかもハルヒは気づいていない。と思ったら気づいたらハルヒが目の前にいた。近いって。 「キョン!聞いてるの!?」 いかん。とにかくハルヒをなだめなくては。そこで俺は思いついた。 あのわかりにくい10文字の説明文でもレンズに出てきた数字を見ればすぐに推理できる。 「ハルヒ。お前の寝顔はなかなか可愛かったぞ。」 「!?」 55 61 なるほどね。長門。いいものを用意してくれたな。 今ならわけのわからん太鼓判にも納得できるぜバーロー。 「はは、冗談だけどな」 「それであんたからかってるつもり!?しかも人の寝顔見るなんて趣味が悪いわよ。」 68 43 どうやら”からかい”はうまくいった様だ。 それにしてもこいつめ、人の部屋で勝手に寝顔晒しておいてなにを言うか。 ・・・しかしここはとりあえず謝っておこう。 俺はすごいもんを手に入れたのだからな。こいつの評価は530000だ。 「すまんな。なんか気分が穏やかになってみただけだ」 「なにそれ。気持ち悪い」 嫌そうな顔を見せるハルヒ。でも内心はそんなに嫌ではないらしいな。 今日は古泉にも苦労させちまったみたいだしな。 俺はその後かつてないほど真面目に勉強し、お茶を持ってきたり軽食を持ってきたり とにかく思いつく限りの気が利く行為をハルヒにしてやった。 ハルヒは「今日のあんた変!」等と言ったが、数字は嘘をつかなかった。 35 90 ああ、こいつももっと素直に喜べばいいのに。 内心はちゃんと嬉しいんじゃないか。何故隠す必要があるんだ。 こいつの感情表現は素直な方だと思っていたのに、今までもこうやって嬉しさを隠していた時があるのかと思うと実にもったいない。 でもいくらか不安になっているということはやっぱり俺を疑っているのは本当だということか・・? ・・・当然といえば当然かな。 そろそろ時間だな。ハルヒを送っていく時間だ。 俺達は自転車に乗って夜の道を進んでいる。 「なんか今日は時間がたつのが早いわね。あんたのせいよ」 「知らん。日によって気分はころころ変わるもんだ。 それはおまえが一番良く知ってるだろう。」 「じゃあ今日はどんな気分だったのよ」 ・・・・ここで俺は詰まった。ここで本当のことを言ったら当然地雷だろうな。 でもハルヒを本当に喜ばせてみたい。なんて言えばいいんだろう。 ハルヒを見ると言葉に詰まった俺を見てちょっと不安そうな顔をしている。 不安の数値がちょっとずつ上がっている。そんなに不安か?何故そんなに不安なんだ。 赤信号の前で止まり、もう一度ハルヒを見る。 「だから、そういう気分だったんだ。」 「そう」 71 50 ・・・・やっぱりはぐらかすのは損なんだな。でもこれは多分いつもの俺だ。 数字に惑わされちゃだめだよな。 自転車が進む音と風を切る音が聞こえる。 ちょっと心地よくなってきたところでハルヒの家に着いた 「明日遅刻しないでよ。」 「ああ。・・・あーハルヒ。今日も、あー、お疲れさん」 「なによそれ」 「だから、お疲れさん。明日も頼むぜ。」 「何よ改まって。当たり前でしょ。」 58 62 ちょっとはましになったか・・・。でもこれで俺も古泉も、他の2人もちょっとは安泰か。 今までの数値が気になるところだな。まぁ今更どうしようもないんだがな。 あれから数日経った。 俺は長門に貰ったハルヒのご機嫌測定器のおかげで順調な毎日を過ごしていた。 某新世界の神と某皇帝の息子も言っていたように、武器は知らねばならない。 俺なりに調べてみたところ、どうやらあの眼鏡はハルヒ専用らしい。 なので谷口を見ても長門を見ても何も起こらなかった。 あとハルヒが視界に入っていないと数字が出てこない。後姿はOKのようだ。 電池は長門曰く1年は持つらしい。流石というべきか。 そうして俺はこの眼鏡を、特にハルヒと勉強している時は絶対につけるようになった。 なんせ眼鏡としての本来の機能も抜群だからな。 次第に学校でも勉強中につけるようになり、そしてついに部室でも付けるようになった。 気が付けば殆ど1日つけている気がする。 ハルヒは思ったより不安を抱えているらしく、全体で見ると不安の数値の方が高い。 驚いたのは俺と会話している時のハルヒは数字が常に変動しているということだ。 古泉と会話している時も、朝比奈さんをいじくっている時も、愉快数値の方が上回っているのに俺だけはまるでシーソーのようにぐらぐらしている。 そんなに俺の反応が怖いのか? むしろどちらかといえば俺がお前の反応にいつもビクビクする側だと思っていたのに。 俺は若干の疑問を抱えつつ、ちょっと優越な日々を過ごしていた。 「長門。いいもんをありがとな。」 「そう」 そんなある日の昼休みの部室で、俺は改めて長門に礼を言った。 いつもなら返事をした後読書に戻るはずなのだが、長門は顔を上げて俺を見た。 「・・・」 見詰め合っているのも変なので俺が話を切り出す。 「どうした。俺の顔に何かついているのか?」 「眼鏡」 そうだな。何かついているとしたら眼鏡だな。流石長門 ・・・じゃなくて。 「ああ、今もつけさせて貰っている。なんせ便利なもんでな・・・」 「・・・」 「長門?」 「・・・使いすぎないほうがいい」 長門は表情を一切変えずに、要はいつもと同じ調子で言った。 そのはずなのにその一言は何故か俺のどこかを突き刺した感覚がした。 「あ、ああ。そりゃ他人の心を覗くなんてのぁあんまり良くないとは思ってるが・・」 「・・・そう」 「いやすまん。これからは気をつける。」 そう言って俺は眼鏡をはずした。 遠くの景色がほんのわずかにぼやけたが、やはり肉眼で見るのが一番いいな。 ここで予鈴のチャイムが鳴った。俺は教室に戻ろうと思ったが長門がまだこっちを見ている。 「長門?ひょっとしてまだ何かあったか。」 「・・・」 「無いなら教室戻ろうぜ」 「・・・情報の」 「・・・?」 「伝達に、齟齬が発生する。よって、伝えることは不可能。」 そう言って長門は本を閉じた。 それがジョークかどうかは最後までわからなかった。 俺は急いで教室に戻って授業を受ける。その次の休み時間のことである。 「キョン。今日はSOS団の活動は中止よ」 「おお、やっと休みになったか。流石団長様だ。団員の心疲れをわかっていらっしゃる。」 「何言ってんの?SOS団は休みだけどあんたは違うわよ。」 「は?」 「あんたには放課後ちょっと付き合ってもらうから。 ふふん、大丈夫よ。単純なあんたなら絶対に喜ぶことだから。」 そう言って不適な笑みを浮かべるハルヒ。なんて恐ろしい。 そういう誘い文句で地獄を見たことが何度あると思ってるんだ。 くそっ。眼鏡をかけて来ればよかったぜ。 「何で俺なんだ」 「だから喜びなさいって言ってるじゃないの。」 だめだこりゃ。 気が付いたら放課後になり、俺はハルヒに手を引っ張られて昇降口を出ていた。 手首ではなく手を掴むようになったのはいいんだがなんか周りの視線が痛い。また勘違いされるぞ。 そんな俺の焦りも知らず学校の裏に歩いていくハルヒに俺は何も言わず引きずられるのみであった。 連れてこられたのは人の気配の無い駐車場。 こんなところに俺を連れてきて何をしようというのだ。ちなみに俺は眼鏡をかけていない。 ハルヒを見ると鞄をごそごそ探っている。俺をちらりと見てはまたにやりと笑う。 「キョン、これ、なんだか分かる?」 ハルヒは鞄からそのブツを取り出して俺に質問をしてきた。 「分かる」 「そうじゃなくて、これは何って聞いてるの」 「だから見りゃ分かる。若葉マークだ。」 そう、初心者マークの通称だな。特に自動車免許の・・・ まさかな、と思う間もなくハルヒは目の前にあった車にそれを貼り付けた。 おいおいお前・・・ 「そう!驚いたでしょ。これ、あたしん家の車だから大丈夫よ。教師の目なんてちょろいちょろい。」 「いつのまに免許取ったんだ!?」 「取ってないわよ。まだ通ってる途中よ。」 「思いっきり違反じゃねーか!」 「事故んなきゃいーのよ。ゴタゴタ言わずにさっさと乗りなさい。」 そう言ってハルヒは車に乗り込みエンジンをかけた。 薄いベージュの軽車。車に乗り込みシートベルトをつけたりミラーを確認したりする姿が初々しい。 俺は仕方なく助手席に乗り込んだ。すごく変な気分だ。 「どこに行くつもりだ」 「そんなこと聞いてどうすんのよ。」 質問に質問で返された。この理不尽さには慣れつつあるがやはり虫の居所が変わるのは実感できるな。 「どこに行くかもわからん車に乗れるか。降りるぞ」 「ダメ! ・・・わかったわよ。車で30分ぐらいのとこ!これでいいでしょ!」 良くない と言いたいが、多分今日のためにハルヒはいろいろ準備をしたのかもしれない。 車を借りるのだってそれなりに苦労するんじゃないか。 そんなことをいろいろ考えてまたやれやれと言う余裕が出来た頃には車は学校から出発していた。 車の中での会話がちょっとぎこちなかったから昨日やったところの復習というということで、俺は車の中で昨日やった問題をハルヒに出題してみた。 ここで俺は鞄から問題集を出すついでに例の眼鏡をかけた。 ハルヒは運転中なわけで俺がいくらハルヒを見ても気づかれにくいので好都合だ。 62 75 ・・・・・・。 こいつは何がこんなに嬉しくて何がこんなに不満なんだ。これから行く場所にもよるが・・・ 正直ハルヒの様子を見てるともっと楽しいのかと思ったので意外だ。 もしかしたら俺が車に乗るときに言った言葉が突き刺さったのか? いやまさかな。 数字だけじゃ何も分からない。むしろ数字が分かるからこそ分からなくなる。なんという矛盾。 ハルヒを分かろうとすればするほど泥沼にはまっていく気がしてならない。 元々ハルヒを理解するなんて無理だって最初にあった日からわかっていたのにな。 こいつのおかげで高校生活における俺のテンプレートは皆無さ。 あえていうなら・・・ 「次の問題まだ?いつまでボーっとしてんのよ。」 俺は気づいたら自分の世界に浸っていたらしい。 信号待ちでこちらを見たハルヒはそれなりに心配してるような、呆れているような顔つきだ。 俺は慌ててページをパラパラとめくる。お前が即答できそうにも無い問題を探すのは結構苦労するんだよ。 そうやって車に乗って30分が経過した。ハルヒはまだ走り続けている。 俺は少し酔ってしまったので問題を出すのは一旦やめようと提案した。それよりもな・・・ 「おい、本当にどこにいくつもりなんだ。いつになったら着くんだ」 「もうちょっとなんだから辛抱しなさい。」 そう言いいながらも焦らずに運転するハルヒに苛立つ。 しかし苛立ちのなかにどこか心地よさを感じている気がして、俺は悶々とした気分になった。 ハルヒの運転が心地よかったせいもあるな。免許もとって無いのにどうしてお前は上手に車を操れるんだ。 ・・・ダメだ。今日も1日学校で疲れたせいだろう、リラックスした俺は寝てしまっていた。 オレンジ掛かった光と心地よい音楽に誘われて俺は目を覚ました。 ここはどこだ?日陰の駐車場か。それにしては周りに何も無いな・・。 時間を見たら学校を出発してから1時間半。これじゃ帰りは夜だな。 ハルヒは・・・と思って運転席を見ると椅子を倒して本をアイマスクにしているハルヒがいた。 この状況から察するに、着いたけど俺が起きないから音楽をかけてついでに本を読んでいるうちに眠くなって寝てしまった、か? いや待てそれはおかしい。・・・ってそういえば眼鏡かけてねぇ。寝るときは確かにかけていた筈なのに。 少し探した後、はっと気づいた。俺はハルヒの顔に乗っかっている本を奪い取った。 「やっぱりこいつは・・・」 ハルヒの顔には俺のメガネがまぁ見事にはまっていたというべきか。 ゆすって起こそうとしたが、俺は体が硬直する感じがした。ついでに唾を飲み込む音が聞こえた。 ・・・本当にこいつの寝顔はかわいいな。これだけは評価せねば。 本を取ったおかげで目を覚ましたハルヒは寝てしまったことを思い出すのに0,6秒の時間を費やしたのち、 「あんた授業中も寝てたくせに何で寝てんのよ!」 と叫んだ。おはようかそれに代わる挨拶なんて俺は期待してないからおkだ。 「俺の眼鏡を返せ。ハルヒ」 「あ、そうね。あんた眼鏡をかけたまま寝るんじゃないわよ。」 何でそれをお前に言われなくちゃならんのだ。 俺たちは車を降りて、ハルヒ先導による道案内で目的地に向かうことになった。歩くのかよ。 さりげなく確認したところ、当然ハルヒは眼鏡をかけても何も起こらなかったらしい。 ただ見やすかったのでそれをつけて本を読んでいるうちに寝てしまったと。なるほどね。 ちなみに車で50分くらいでここに着いたんだと。なにが車で30分だ。 ということは俺は着いてからも40分寝てたということになるな。 俺は最後までその疑問を口にすることはなかった。わざわざ聞くほど大した疑問じゃないからな。 何故40分も待っていてくれたのか、なんてね。 ハルヒも寝ていたのだから考えるだけ無駄だろう。 ちょっと歩いたらここがどこなのかはすぐに分かった。 いやすでに風の匂いでわかっていた。ここは海だ。 俺の手をひっぱるハルヒは散歩中に言うことを聞かない犬のようだった。 片手でなんとか俺は眼鏡をかけてハルヒの後姿を捉えた。 54 88 なんというか、俺はほっとした。 理由はどうであれ、ハルヒが本当に楽しそうにしている様子は俺にとっても救いだからな。 「ハルヒ。急ぎすぎだろ。もっとゆっくり歩け」 「あーもう、しょうがないわね」 海辺の茂みを俺たちは歩いていった。 太陽はもう水平線に届こうとしている ハルヒはどんどん先へ進み、道は岩場独自のゴツゴツとしたものへと代わる。 もうどれくらい歩いたんだろう。 無言で進んでいくうちに数メートル先を歩くハルヒが立ち止まった。 「ここよ」 ここって言われてもな・・・。 そこから見える風景はなんともいい難いものだった。 岩場と岩場の間にちょっと広い砂浜がある。僻地であまり人が来ないせいか聊か綺麗に見える。 「どう?なかなかでしょ。教習中に走った道があの道路でね、通った時にここがちょこっと見えたからもしやと思ったけど、 やっぱりあたしの勘はあたしを裏切らないわね。」 「俺はお前の勘によく裏切られているんだが」 俺の適切なツッコミをやはり無視してハルヒは手を広げた。 「ここ、素敵でしょ!」 そんな楽しそうに言ってくれるなよな。どんなに疲れてても首が縦に動いちまう。 34 82 「ここね、今度SOS団で来ようと思ってるの」 「どうやって来るんだ。お前の車は軽だろ」 「普通に詰めれば5人ぐらい乗れるわよ。ほんとにあんたは硬いわね。」 俺は常識に則った発言を心がけているはずなんだが。 ちょっと座りやすい場所を見つけてハルヒは腰を下ろした。 倣うように俺も隣に座り込む。丁度空がオレンジ掛かってきたようだ。 「・・・でね、夕焼けがこんな風に綺麗に見えるようになるまで皆で遊ぶのよ。 もちろん不思議探索も兼ねるわよ。ここの近隣は自然なままだからまだ人に知られざる謎が・・」 ハルヒのトークは止まらない。こいつとしゃべってるとネタが尽きない。これは一種の才能じゃないか? 俺の突っ込みだって負けちゃ居ないけどな。 実はもしハルヒがこんなことを言い出したらこう言ってやろう、みたいな予習はしているからな。教科書が無い予習なのに結構楽しい。 「ほら見て、キョン。水平線に夕日が映ってなかなか綺麗じゃない。」 そんなもん言われんでもわかっている。俺だってこんな光景滅多に見れんのだよ。 夕日が沈む様をしばらく無言で眺める。 ちょっと涼しくなったところでふと風が俺たちを強く吹きつけた。 ハルヒはスカートを押さえていたつもりのようだが残念だったね。白だ。 俺が鉄壁の表情を取り繕ってるのに安心したのか知らないが、ふっと息を吐く音が聞こえた。 「さっすがは海よね。この空気が違うわよね。」 ハルヒが独り言のように絶賛している。俺は・・・しょうがないので答えてやるとする。 「ハルヒ。空気を一番大事に使う時はどんな時かわかるか。」 「はぁ?」 「それは空気を吸う時じゃなくて読むときなんだぜ。」 「なにそれ。意味わかんない。あたしはいつだって空気読めてるわよ。」 空気の読めない奴に自覚なんてないのさ。多分だがな。それにしても・・・ 「そもそもどうして今日ここに来たんだ。」 気になっていた質問をぶつけてみた。 ちょっとは心境揺らぐかなと思ったがそうでもなかったのはちょっと残念だ。 「だから今度ここにSOS団で来るって言ったでしょ。その下見に決まってんじゃない。」 眼鏡をちらりと確認。いかん、イライラ値が増えている。 「お前が選んだにしてはいい場所なんじゃないのかここは。」 ハルヒを見る。映し出された数値の変化は俺の思い通りにはいかなかった。 何故? さらに目を細めたその瞬間に俺はハルヒに眼鏡をとられた。 「おい・・!」 「あんたに眼鏡は似合わないわよ。」 ハルヒはなんとも言いがたい表情になっていた。 「勢いにしても酷い言いようだな。」 「あんたが眼鏡をかける時は最低でも勉強する時だけでいいのよ。 こんな綺麗な景色は裸眼で見なきゃダメよ。」 俺にはわかる。これは口実だろう。 なんとなくだが、やっぱり俺の考えていることはハルヒに筒抜けなんだろうと俺は感じた。 「あんた最近、あたしのこと品定めするような目つきで見てない?」 ハルヒは前を見ている、と思う。俺も前を見ていてハルヒの顔がよく見えないからな。 おまけに眼鏡も取られてハルヒの数値もわからないときた。 「丁度あんたが眼鏡を使い始めた時期からよ。なんか目つきがやらしいのよ。 こそこそチラ見してるのばれてないとでも思ったの?」 「思った。」 ハルヒが今どれくらいの数値なのかが気になったが、わかっても無駄なんだろうと俺は思った。 結局俺にあれを上手く使いこなすのは無理なのだろう。 ハルヒのご機嫌メーターは最初を除いて一度だって俺の思い通りにはいかなかったのだからな。 すまんな長門。 ハルヒは顔を伏せて「ほんとに・・バカ・・・」とか呟いている。 俺は困るばかりである。 バカというのはいつもの聞きなれた罵倒だからいいとして、なぜハルヒは黙り込む必要があるのだろうか。 こいつらしくもない。疲れているわけでもなさそうだ。 眼鏡のことで気を悪くしたから?それもそうだがその前から閉鎖空間が出たといらない報告も受けている。最近はどうなのだろうか。 いやまずこの空気をどうにかしないと。空気は読むもんだぜとさっき俺自身で言っただろうに。 でもなんて言えばいいんだ。気まずい空気を一瞬で浄化できる魔法の言葉・・・ 俺に思いつくはずがない。だいたいそんな言葉は存在しない。そういうことにしておこう。 結局どうすることもできず溜息をつこうと思ったのだが、先に隣から溜息が聞こえた。 ハルヒがいつのまにか顔をあげてこっちを見ていた。ちょっと睨みが効いている。 「何考えてんのよ」 第3者から見れば挑発しているような言動のハルヒ。 しかし俺にとってはこの睨みは良い心のスパイスだったりする。 「別に、なーんも。」 いつぞと同じ返し方をしてしまった。多分ハルヒは怒るだろう。 お前のこと考えてた、なんて本当のことを言うわけにもいかないけどな。 「あっそう。あんたの相手するのも疲れたし、もう帰るわよ。」 そう言って俺の手を掴んで立ち上がるハルヒ。 怒ったというよりは呆れたような表情をしている気がして、俺は少し・・・ほんの少し動揺した。 だから俺はハルヒの手を逆に掴んで、もう一度座るように促した。 「せっかくだから太陽が完全に沈むまでいたらどうだ。」 って言ってももうほとんど沈んでいるんだがな。 それでもハルヒは 「しょうがないわね。」 と言ってまた腰を下ろした。手を掴んだままで。 いやこれは俺が掴んでいるのか?もうこの際どうでもいいか。 夕日が沈んだ後も、俺たちはしばらく手を繋いだまま海を見ていた。 軽く会話を交わしながら見た海は何故かは知らんがしばらく忘れそうにもない。 俺達が帰りの車に乗った頃にはもうすっかり暗くなっていた。 どうやらハルヒは俺の家まで送ってくれるようで、なんかムズ痒い気分だ。 「お前さ、最近いろいろと不安になってないか。」 隣で丁寧に運転するハルヒにそれとなく聞いてみる。聞くんなら今日だ、と心のどこかで俺が言ったからな。 「いきなり何よ。あたしが不安になるわけないでしょ。」 そう言うだろうと思ったさ。閉鎖空間を量産しておきながらよく真顔で言えるもんだ。 さっきだって憂鬱モードに入っていたくせに、もしかしたらこういうことを言われた時に返す言葉を用意しているのか。お前は。 俺みたいに。 「進路の事か?SOS団の事か?それとも今日の晩飯か?」 ひょっとしたら俺のことか?なんて心の中で呟いてみる。それはないよな。 そこで信号が都合よく赤になり、ハルヒは車を停止して俺を見て大きく溜息をついた。 「・・・そうね。ここら辺の通りにも結構レストランがあるみたいだし、今度来る時は晩御飯つきがいいわね。 その方が楽しいしね。来週までにここらでいいとこ調べておきなさいよ。キョン。」 「何で俺が」 「わかった?」 ハルヒはこちらを睨んでいる。きっとこの信号はハルヒの思い通りなんだろう。だから、 「・・へいへい、わかりましたよ。」 と俺が返事したとたんに青になるんだよな。 ほら、やっぱり。 ハルヒが俺の話をうまくかわしたとに気づいた時は俺の家が見えていた頃だった。 なんだかこのまま帰ってはいけない気がしてならない。 車がゆるやかに停止する。何故俺はこんなに不安になってるんだ。 「着いたわよ。運賃は取らないでおいてあげるから感謝しなさい。」 「何で無免許運転の共犯にさせられた俺が感謝しなきゃいけないんだ。」 「ごちゃごちゃ言わないの。じゃあね、明日遅刻しないでよ。」 そう言ってハルヒは手を振った。しかし車を降りようとドアに手を掛けたところでもう一声がかけられた。 「それと、あんたも早く免許とりなさいよ。」 暗くてハルヒの表情がよくわからない。 それでも、俺はこの一言にかなりの意味が込められているのではないかと思った。 いや、そうに違いない・・・ こちらをちらちらと見ているハルヒに俺は語りかけた。 「ああ、必ずとるから、それまで待っててくれないか。」 今日も借りができちまったからな。 「何それ。あと何年待てばいいのよ。」 お前はそんな笑い方もできるのかよ。こんな時に限ってそれは反則だ。 「さぁな、近いうち・・・かな。」 そういえば俺は何の話をしていたんだっけ 「ちゃんと保障してくれなきゃダメよ。」 そして俺は何をしようとしている。止まらないんだが。 ドアを開けようとしていた筈の手はハルヒの手に添えられ、俺は顔を近づけて・・・。ってマジか。 男のエスだがイドだかってのはこういう時に働くものなのかね。 これじゃまるで安いドラマの1シーンみたいじゃないか。 手の甲に接吻なんて柄じゃない筈なのにな。 ・・・ハルヒは黙ってしまった。 今頃湧いてきた羞恥心を必死に押さえつける。 保障印としては上出来だろう?なんて言葉が喉まで上がってきてはそのまま落下していった。 車のエンジン音が唸り続ける中で、やっとハルヒの声が耳に届いた。 「・・・待ってあげるから。」 俺はハルヒと恋人関係にない。間違ってもそうなるはずがない。 そうなる必要がないからだ。俺はそう思っていたし、ハルヒもそうだと思い込んでいた。 互いに分かり合いすぎた。時間を共有し過ぎた。 鈍感だと言われるたびに心の中で”鈍感なフリをしているだけだ”と不満を言っていた。 ハルヒの気持ちも、俺が惹かれていく先もわかっていたからだ。 でもここへきて、進路を考える時期になってハルヒが不安になっていた事に俺は気が付かなかった。 あいつが俺にわからないように隠していたとしても、気が付かなかった時点で結局俺は鈍感なのだ。 「免許、明日までに取るから。」 「勝手にしなさい。」 何かが割れる音が響いた。 そのときの俺は全く気が付かなかったらしい。 俺はハルヒが帰った後も、格好いい口説き文句をずっと考えていた。 あれから数日経った。 文芸部室ことSOS団の部室。 俺はしばらく考えた結果長門に眼鏡を返すことにした。 普通に眼鏡として使っても良かったのだがどうも気が進まない。 あの日家に帰った後机の引き出しに入れたままのご機嫌測定値だったが、今日になってやっと処分を決めたというわけだ。 ところが一つ問題が発生してしまった。 今日の朝になるまで気が付かなかったのかが悔やまれる。 「長門、眼鏡貸してくれてありがとうな。結局俺には使いこなせなかったよ。」 「そう」 「というより、必要なかったんだ。それに気づいただけでも十分だった。」 「・・・」 「で、眼鏡なんだが・・・その・・・壊れちまった。すまん。」 朝、ケースの違和感に気づいて開けてみたら見事に割れていた。 記憶を手繰り寄せて考えてみればすぐ分かるが、割れたのはあの時しかない。 「別にいい」 長門はそう言って俺から眼鏡を受け取った。俺は思わずまた謝ろうと頭を下げたが長門は 「大丈夫」 と言って例の高速呪文を唱えた。 薄々分かっていたが壊れた眼鏡を直すことなんて長門にとっては朝飯前なんだろうな。 「もう一度 使う?」 そう言って眼鏡を差し出してくる長門。 俺は断ろうかと思ったのだが長門の表情を見て踏みとどまった。 冗談をいう時の表情とはまた違う。俺が断るのをわかっていて聞いてる ・・って取っても大丈夫なんじゃないかと思わせる些細な視線。なにかを理解しているのは間違いなさそうだ。 なのでここはあえて乗ってみることにしよう。 「そうだな。もう一度だけ使わせてもらおうかな。」 長門は「そう」と言っただけだった。 俺はとりあえずかけてみようと思い、スイッチを入れて顔の高さまで持ってきたところで ばーん と勢い良く部室の扉が開いた。団長様がおいでなすったようだ。 途中で見つけたんだろうか、朝比奈さんも連れている。 いつものようにハルヒは団長席に座り朝比奈さんにお茶をせがむ。 俺はそのまま外に出ようとしたところでハルヒに呼び止められた。 「その眼鏡は何?」 「前のは度が合わなかったんでな。長門に頼んで新しいのを譲ってもらった。」 「ふーん、そう。」 本音を言えば数値が気になるから眼鏡をかけたい・・・が、やっぱりここは引くべきだろう。 「俺に眼鏡はお気に召さないんだっけ?」 「別にもういいわよ・・・」 やっぱりお気に召さなかったらしい。 いかんな。また古泉に苦労をさせてしまいそうだ。 いや、古泉がどうとかは関係ないんだ。 俺自身が・・・ 「ちょ・・っと・・・・。・・っ・・・ 何すんのよバカッ!」 椅子が派手な音をたてて俺は床に転げてしまった。 なんだよ。ちょっとキスしてやろうと思っただけなのに。 「そういう問題じゃないのよ!煩悩!ヘンタイ!」 なんか知らんがここ数日そういう衝動が襲ってくるのだよ。すまんね・・・ ああ、いかん。結構怒ってるな・・・ 俺はどさくさに紛れて眼鏡をかけることにした。 ところが・・・ 「おい・・・眼鏡、また壊れてるぞ。」 眼鏡は綺麗にヒビが入っていた。机の上にあったので俺が倒れこんだ時のものではない。 ちょっと考えれば理由はすぐに察せるな。長門もこうなるのがわかってたんだろう。 まったく、ハルヒは幸せもんだぜ。 そんな奴の想い人になっちまった俺もな。 「あんたに主導権を渡すのはまだ早いんだから!」 ああ、そりゃまだ仮免ということか。 こうして結局俺は免許をとりきっていない。 それが生涯続いたとしても俺はこんなに心地よい気分なのだろうか。 ---end---
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/948.html
涼宮ハルヒの微笑 プロローグ 涼宮ハルヒの微笑 第一章 涼宮ハルヒの微笑 第二章 涼宮ハルヒの微笑 第三章 涼宮ハルヒの微笑 第四章 涼宮ハルヒの微笑 第五章 涼宮ハルヒの微笑 第六章 涼宮ハルヒの微笑 第七章 涼宮ハルヒの微笑 エピローグ 涼宮ハルヒの微笑 イメージ映像 →YouTube版
https://w.atwiki.jp/urinaranida/pages/65.html
※クランメンバーでWoTゲーム実況してる人は掲載するのでお知らせ下さい。 Rin_Tye(リンチェ) ニコ生コミュ http //com.nicovideo.jp/community/co3145107 Twitter https //twitter.com/Lince088 「なんでこいつがクランのトップ!?」と言われる成績キムチ色の偉大なクラン大統領 `∀´* ゲーム実況でニダニダ言っているが、そもそもニコ生する前からニダニダ言ってたので キャラは変えようがないニダ。 ガルパンコスプレ、旧スク、ブルマが好きでコスプレカメラ付き配信。 朝鮮(特に韓国)で荒れたりサンダー!(noob)しすぎて偉大なクラマスに対して非難のコメがでたり まったく関係ない話をしながらゲーム実況してたりしますが話することが好きなので NIDAクランのガチ勢じゃなくあくまで「ネタ枠」放送として温かく見守ってていただけたらなと思うニダ raku6453(らくらく) ニコ生コミュ http //com.nicovideo.jp/community/co1096737 Twitter https //twitter.com/raku6453 WoTクランのイベントなど実況していたりボイスMODの製作作業などを ニコ生実況している放送。基本コメント対応はチャット返信ですが たまに生の声が聞けるかも!? クランに対するお問い合わせや、むじゅかしい質問は日本語を理解仕間違える 偉大なクラン大統領よりこちらに聞いた方が真面目な回答が返ってくる Nidekaactive(ニデカ) ニコ生コミュ(休止中) http //com.nicovideo.jp/community/co1686748 Twitter https //twitter.com/nideka WoTではほとんど見かけないがリンチェさんにニコ生を勧めた人。 スカイプで丁寧に教えてくれた。本人もまさか教えた相手がコスプレし始めるまで なってしまったことは予想できなかっただろう。今は何してるか不明だがTwitterは生きてるみたい。 たまに車のドライブレコーダーを流す実況放送もしてたりしてた。 サイトの運営してるので、PC関係に詳しい。インターネットなどでお困りなら ぱちょこん知識が全くない偉大なクラン大統領よりこちらに聞いた方が真面目な 回答が返ってくるので真面目な方はおぬぬめニダ(ただし今は忙しくてゲームどころじゃなさそう (本人談)勝手に紹介されてるニダ・・・・謝罪と賠償を要求するニダ!
https://w.atwiki.jp/haruhi_best/pages/38.html
涼宮ハルヒのSS 厳選名作集 長編 涼宮ハルヒの覚醒 「おはよう。」 「おはようキョン。」 いつもの朝、教室に入った俺は友人の国木田、谷口と朝の挨拶を交わした。 「なぁ、今日の放課後だけどな、ナンパ行こうぜ!」 「…谷口、朝っぱらからそれかよ、一昨日も行っただろうがよ…もういい加減にしようぜ?大体うまくいった事無いだろうが…。」 「馬鹿!失敗を恐れてどうなるってんだ!挑戦無くして成功は無しだ!」 …朝から拳を握りしめて力説している谷口…はぁ…。 こいつとは入学からの付き合いでちょくちょく放課後や休みの日にナンパに付き合わされている。 結果は…言うまでも無いだろう…。 「悪いが今日はゲーセンに行くと国木田と話がついているんだ。またの機会にしよう。」 「…チッ。」 谷口は不満気に舌打ちした後自分の席に戻った。 …北高に入学してそろそろ一年経とうとしている。 この一年特に大きな出来事も無く、放課後や休日は友人とゲーセンに行ったりナンパに行ったりと平凡な生活を送っている。 「おはよう。キョン君。」 「ああ、おはよう朝倉。」 …朝倉涼子、このクラスの中心的存在で谷口曰わく AAランクプラス の美少女だ。 文化祭や体育祭などでも素晴らしいリーダーシップを発揮し、大いに盛り上げてくれた。 「朝からなんか憂鬱そうね?」 憂鬱?まぁ~毎日妹に乱暴な起こされかたをされてあの坂を毎日登れば憂鬱にもなるさ。 「ふふふっ。」 朝倉は軽く笑った後席へと戻って行った。 「憂鬱ね…」 俺は憂鬱と聞いて後ろの席に座っている人物が頭に浮かんだ。 涼宮ハルヒ 入学後の自己紹介でとてつもなくインパクトのある言葉を吐いた女だ。 容姿、スタイル、そのどちらも極上と言っても良い美少女だが…性格が捻れまくっている。 何度か話し掛けて見たが 「うるさい。」 の一言で切り捨てられている。 俺だけで無く、クラスの誰が話しかけてもその調子だ。 もうみんなこいつとコミュニケーションを取る事を諦めている。 涼宮ハルヒは今も俺の後ろで頬杖を突き憂鬱そうな顔をして窓の外を眺めている。 「おはようみんな。」 担任の岡部が入って来た…そんなこんなで授業が始まった。 ~一限目~ 「…で、この場合はこの公式を使って…」 今日もいつもの通り授業は進んでいる…が…今日はなんか体調がおかしい…。 教師の言葉がまったく耳に入らない 別に夜更かしした訳じゃ無いんだがな。 俺がそんな事を考えていた時…それが来た… ―ー思い出せ!。 「…っ!」 …突如俺を幻聴と頭痛が襲った。 ―ー気づけ!ここは偽物だ! 「…ん!」 …なんだ…これは… 「ううっ…」 ガタッ 俺は突如襲った幻聴と頭痛とめまいの為机から床に転げ落ちた…。 「きゃ!」 「おい!どうしたキョン!」 …意識が…薄れて… …。 …。 …。 ………気がつくと俺は保健室のベットに寝かされていた。 俺は起き上がり、 「…なんだったんだ…あの頭痛…めまい…幻聴は…。」 そう思った時だった。 ――思い出せ! 「…っ!」 またか…何なんだよ…何を思い出せってんだ…。 ――気づけ! 「…ん!」 …俺は保健室を抜け出し…どこかに歩いている? 俺は…どこに向かっているんだ…? …。 …。 …。 俺は気がつくとある部屋の前に来ていた。 「…文芸部?」 文芸部…たしか部員0で来年入部者が居なければ廃部になるって話の? 「…。」 俺は誘われるように文芸部室へと入っていった…。 使われて居ない部屋…その部屋は埃臭く殺風景な物だった。 隅の方に本棚があり、机の上にかなり古いパソコンが置いてある…ただそれだけの部屋だった。 「…なんで俺はここに…んっ!!。」 …今までで一番強烈な奴が来た…ん?…今度は幻覚…か!? 俺の目の前に… 俺 が立っていた… ―いつまで呆けてんだ俺!いい加減目を覚ませ!覚えてるだろあの日々を?絶対忘れられる訳ねぇだろが! 「…あの…日々…?」 その瞬間頭に何かが駆け抜けた…。 「…SOS団…宇宙人…未来人…超能力者…涼宮ハルヒ…。」 …そうだ…。 「俺は…思い出した。」 そう、俺は完全に思い出した…くそっ!どうなってんだ一体…。 まて、落ち着け俺!俺は普通の奴よりもこの様な事態には耐性がある…そうだ、OK。 まずは整理してみよう。 …まず間違い無くここは改変された世界だ。 ハルヒは…居る。SOS団は結成していないが間違い無く居る。 古泉は…居る。この世界でも同じ様に転校してきている。間違い無い。 朝比奈さんは…居る。谷口が騒いでいた。間違い無い。 長門は…居ない!?…この世界での長門を認識した事は無い!…文芸部も部員0だ…間違い無い。 「…ハルヒも居る…朝比奈さんも古泉も…長門だけが…居ない。」 …何故長門だけが居ないのだろうか? それにこの事態を引き起こしたのた誰だ? ハルヒか?それともまた長門か? …そうだ!きっと長門は何かヒントを残しているはずだ! 俺は本棚へ向かい例の本を探した。 「頼むぜ………あ!」 俺は本をめくりそれを見つけた。 【パソコンの電源を2秒押し離す。それを三回】 例の栞にはそう書かれていた。 俺は直ぐにパソコンに向かい書いてある行動をとった。 ピッ パソコンは旧型とは思えないスピードで起動し…それが画面に映し出された…。 YUKI.N …もしもあなたが思い出した時の為にこのメッセージを残す。 「…ああ、思い出したさ。」 YUKI.N ここは改変された世界。でも涼宮ハルヒは同じ様に力を持ち、古泉一樹、朝比奈みくるも同じく力を持っている。 この事態を起こしたのは情報統合思念体。 …長門のメッセージ。 つまり情報統合思念体内部で大きな動きがあり急進派が力を持ってしまった。 ハルヒの起こす情報爆発を効率良く引き起こすのにSOS団は邪魔な存在と認識され、俺たちがSOS団を結成していない世界に改変した。 そして長門は消去され代わりに朝倉涼子が配置された。 …くそったれが! YUKI.N これは仕方の無い事。 それと、涼宮ハルヒに関わらない事を推奨する。 あなたと涼宮ハルヒが接触すると朝倉涼子が同じく行動を起こす確率が高い。 危険。 あなたはこの世界で生きて。 楽しかったありがとう。 「ふざけんなよ!」 YUKI.N …心残りは…もう一度あなたと図書館へ行きたかった。 「いや、行くぞ!一度と言わず何度でもな!」 YUKI.N それと…もう一度あなたに私の肉じゃがを食べさせてあげたかった。」 「…すまん。それだけは勘弁だ。」 YUKI.N …さようなら …。 …。 このメッセージが表示されるのは一度きりである。 エンターキーを押し消去を。 …。 …。 …。 「…ふざけるなよ。こんなので納得できるかよ!これで終わりだなんて!」 末尾でカーソルが点滅している…あの時と同じか…。 違うのは…あの時はこれを押したら改変世界から抜け出せたが今回は…終わりだ。 「くそっ!」 俺は近くの椅子を蹴飛ばした。 「長門…お前はそれで良いのかよ…」 …。 …。 ………!? 待てよ。何故エンターキーを押さないといけないんだ? 別に自動で消去してもかまわないだろ? …もしかして…。 俺はパソコンに戻り画面を再び見た。 「あの時は別のボタンを押したら終わりだった…今回は?」 俺は祈りを込めて…NOの意味でNボタンを押した。 カチ …。 …。 …。 YUKI.N プログラム起動条件・鍵をそろえよ。最終期限・今日。 …。 …。 …。 「…そうだよな…お前だってこのまま消えたくないんだな…任せろ!必ずあの日常を俺が取り戻してやる!」 …。 …。 …鍵か…前回と同じで良いんだよな。 今何時だ?後5分で昼休みか…。 俺はまず古泉の所に向かった。 …。 …。 ~9組~ 「すまない、古泉一樹を呼んでもらえないか?」 俺は適当に教室から出て来た奴にそう言った。 ほどなくして古泉が来た。 「僕に何か様ですか?」 古泉はこの世界でも変わらない0円スマイルでそう言った。 …あの時と同じで行くか。 俺は声を抑え切り出した。 「突然で悪いが…『機関』という組織に思い当たることはないか?」 「キカン…ですか?どういう字をあてるのでしょう」 …おんなじ反応しやがった。 でも俺は長門のメッセージで知っている。 「お前がここに居る目的は涼宮ハルヒの監視。そして閉鎖空間が現れた時お前はそこで暴れる『神人』を狩る超能力者だ。…違うか?」 すると古泉は俺の手を引き人気の無い場所へ連れて行った。 「あなた…何者ですか?」 古泉は笑みを消し俺にそう詰め寄った。 「…そうだな。今のお前からみたら 異世界人 って所だな。」 「…異世界人?」 「…詳しく話をしたい。放課後、文芸部室まで来てくれないか?」 「……分かりました。」 …古泉は戸惑いと警戒の目を向けながらも了承した。 …さて、次は。 …。 …。 ~2年のクラス~ 「すいません。朝比奈みくるさんを呼んでいただけませんか?」 俺は朝比奈さんのクラスから出て来た女子生徒にそう言った。 「…ふ~ん。あの子も人気者ねぇ…わかったわ。玉砕しても泣かないようにね。」 …なにやら勘違いしているみたいだが…まぁ良い。 ほどなくして朝比奈さんがやって来た。 みくる「あの~何でしょうか?」 ああ…この世界でも朝比奈さんの美しさは変わらない…早くまたあのお茶を飲める様にせねば! …おっと!本題本題。 「すいません…ここではちょっと…。」 周りからの好奇の視線が痛い…俺は会話が誰にも聞こえ無い位置まで朝比奈さんを連れて行った。 「突然ですが…あなた未来人ですね?」 単刀直入に俺は言った。 「ななな何をいいい言ってるんですか!そそそんな訳無いじゃないですか!」 …古泉と違い非常にわかりやすい。 「三年前…いや、もうすぐ四年前か。大きな時間振動が検出され、その中心に涼宮ハルヒが居た。 あなたがこの時代に来た目的は涼宮ハルヒを監視する為…違いますか?」 「…あなたは…いったい…。」 「詳しい話をしたいので放課後文芸部室に来ていただけませんか?」 「……はい。」 朝比奈さんもOKだ。 最後はハルヒ…こいつは放課後だな…。 俺は教室に向かった。 ~教室~ 「キョン!?もう平気なの?」 「びっくりしたぜ。急に倒れるからな。」 国木田と谷口だ。 「ああ、大丈夫だ。すまんな心配かけて。」 「キョン君大丈夫?病院行かなくて平気?」 「ああ朝倉、平気だ。単なる寝不足だからな。」 「寝不足?」 「ちょっと夜更かししすぎたみたいだ。そのせいでめまいがな。 今まで保健室で寝てたからもう大丈夫だ。」 俺はニカッっと笑った。 「…呆れた。どうせゲームでもしてたんでしょ?体調管理はちゃんとしないとね!」 「へいへい…」 朝倉は自分の席に戻って行った。 ……怪しまれなかっただろうか。 俺は背中が汗で濡れている事に気づいた。 このまま最後の授業を受け…放課後になった。 さて、朝倉に見つからないようにハルヒを捕まえなければ… 俺はげた箱まで先回りしハルヒを待った。 「キョン、ゲーセンどうするんだ?」 谷口?…そうか、こいつらとゲーセン行く約束してたんだ。 「すまん。今日は帰って寝るわ。まだちょっとめまいがな…。」 「そうか、んなら俺は国木田と二人で行くわ。」 「ああ、すまんな。」 「その代わり明日はナンパ付き合えよ!」 「おう!」 …すまん。元の世界に戻ったら必ずその約束果たすからな。 …。 …来た。 どうしようか…前回と同じで行くか? いや、朝倉に気づかれる恐れがある。時間も無いし…よし。 周りに人気が無くなった所で俺はハルヒに近づいた。 「世界を大いに盛り上げるジョンスミスをよろしく。」 俺はすれ違いざまハルヒにそう呟いた。 「な!?」 ハルヒは俺に振り向き 「…何であんたがその言葉を…」 驚愕の表情で呟き次の瞬間俺のネクタイを掴もうと手を伸ばした。 ヒョイ …予想してたからよけるのは簡単だった。 すまんな、今目立つ訳にはいかないんだ。 「詳しい話をしたい。いまからちょっと付き合ってもらえるか?」 「ちょっと…!」 「今は黙ってろ…着いたら話す。」 ハルヒはしばらくの間の後無言で頷いた。 …。 …。 …。 …朝倉に気づかれなかっただろうか…。 ハルヒと文芸部室に向かう途中俺は考えていた。 例えば朝倉が長門だったとして…長門に悟られる事無く行動できるか? …否。 …気づかれていると考えてよいだろう。 とにかく一刻も早く…。 …。 …。 …着いた。 「ここだ。」 俺はハルヒにそう告げた。 「あんたアタシの前に座っている人よね?…何者?」 「中に入ってからだ。」 俺達は文芸部室に入った。 中ではすでに古泉と朝比奈さんが来ていた。 二人は俺と一緒にハルヒが来た事に驚いているようだ。 …これで揃った。 前回と同じならこれで… …。 ピッ 「…!?」 良し! 俺は直ぐパソコンに向かう。 「ちょっとあんた!何やってんのよ!話てくれるんじゃなかったの!?」 「すまんみんな、少し待っててくれ!」 みんなに謝罪しパソコンの画面を見た。 …。 …。 YUKI.N …あなたは鍵を集めた。 これでプログラムが作動する。 でも私はこれを推奨しない。 あまりにも成功率が低すぎる…危険も大きい。 「…危険?」 YUKI.N …それでもあなたはきっと…。 …このプログラムが起動するのは一度きりである。実行ののち、消去される。非実行が選択された場合は起動せずに消去される。 Ready? …。 …。 答えは分かっているだろ、長門。 俺はお前を、SOS団を取り戻すと決めたんだ。 危険?上等だ! 俺は指を伸ばし、エンターキーを押し込んだ。 …。 …。 すると本棚が…横にスライドした!? 本棚の有った所に… …なるほど。そうか。 弾は三発…良いんだな長門。 「ちょっと!人を呼びつけといてさっきから何やってんのよ!!」 すまない、またせたな。 俺はそれを三人に向けた。 「なっ!?」 「ふぇ!?」 「な…何のつもりよあんた…。」 …俺は三人に銃を向けている。 「悪い。話すよりこれが手っ取り早いんだ。」 短針銃。以前も使った銃だ。 これでみんなの記憶を取り戻す。 …まずは…俺は特に考えもなく朝比奈さんに発射した。 針は朝比奈さんの首筋に命中した。 「はぅ…」 朝比奈さんはその場に倒れこんだ。 …すいません。でもすぐにわかりますから。 等と呑気に考えていた時だった。 ゲシッ! 「…え?」 気づくと腕を蹴り上げられ、銃が弾き飛ばされていた。 次の瞬間強い衝撃が俺の顔を襲った。 …俺…殴られ… 俺は古泉に銃を弾き飛ばされ殴られた後、そのまま古泉に押さえつけられていた。 「涼宮さん!彼女を!」 「わ…分かったわ!」 …俺って本当に馬鹿だ…何やってんだ本当に…。 銃を向けられ撃たれるってなったらそりゃ反撃するわな…俺だってそうするさ…。 「大丈夫!生きてるわ。眠っているみたい。」 「そうですか、良かった…さて。」 古泉は俺に向かって言った。 「あなた何をしているか分かっているのですか!?」 …古泉…お前いつも笑っていて気持ち悪い…って思っていたが…うん、やっぱりお前は笑顔が一番似合うぞ! そんな怖い顔するなよ…。 「待て!話を聞け!」 「あなたが何者で何を企んでいるかはのちに機関の方でゆっくりと聞かせていただきます。」 …ヤベ…絞められている…このままだと落ちる…。 古泉は俺を気絶させようとしている様だ…この力…こいつこんなに強かったのか…。 その時 「…ん。」 「大丈夫!?しっかりして!」 朝比奈さんが目覚めた!? 朝比奈さんは目を開け暫くボーっとした後、ハルヒ、古泉、俺…と見た。 「…朝…比奈…さん…。」 俺は朝比奈さんに手を伸ばした …ヤバい…意識が… 朝比奈さんは立ち上がり、 「古泉くん!ごめんなさい!」 そう言って古泉にタックルを喰らわした。 「えっ!?」 古泉は予想外の攻撃に対応しきれなかったらしく俺を離し朝比奈さんと一緒に転んだ。 「ゲホッ!ゲホッ!…はぁ…はぁ…。」 「キョンくん!今よ!」 ああ…朝比奈さん。 俺の朝比奈さんだ! 俺は直ぐに銃に飛びつく。 しかし古泉も直ぐに立ち直って銃に飛びついた。 …。 …。 …。 すまん。俺が早かったな。 「うっ!」 針は古泉の額に命中した。 そのまま俺の上に倒れ込む…重い。 「キョンくん!」 俺は古泉の下から抜け出し最後の一人に銃を向ける。 「これは一体どういう事なんですか?」 「朝比奈さん、話は後で。」 「…何よ…一体なんなのよ…」 ハルヒは床にへたり込んで怯えている…白か…。 「キョンくん…どこ見てるの…」 すいません。男の習性なんです。 「ハルヒ…すまない。すぐにお前にも分かるから。」 俺は引き金を引いた。 針はハルヒの太ももに命中…ハルヒも床に倒れ込んだ。 …やれやれ、やっと全員か…。 しかし油断した…危なかった。 最初に古泉を撃っとくべきだったな。 俺が反省している所で朝比奈さんの声が… 「…キョンくん、古泉くんが。」 「…ん。」 「起きたか古泉。」 古泉がノロノロと起き上がった。 「こ…これは…一体…。」 記憶が混乱しているようだ。 そりゃそうだ、記憶が戻ったとは言えしっかりこの世界の記憶もあるからな。 「まずは落ち着け。……それじゃ説明するぞ。」 俺は長門がメッセージで残した事を全て二人に伝えた。 …。 …。 …。 「なるほど、そういう事ですか…。」 「まさか…また世界が改変されていたなんて…。」 …とりあえず俺は仲間を取り戻した。 そしてこれからは…。 「そして、これからあなたは何をしようとしているのですか?」 「ああ…ハルヒに全てを伝えハルヒの力で全てを元に戻すつもりだ。」 俺は二人に伝えた。 …暫く沈黙が続く。 …まぁ、そうだろうな。古泉にしても朝比奈さんにしてもハルヒが自分の力に気づく事を望んでいない。 古泉が口を開いた。 「……分かりました。それしか長門さんを取り戻す方法は無い様ですしね。」 「…いいのか?」 正直驚いた。朝比奈さんはともかく古泉だけは絶対反対すると思っていたからだ。 「…雪山の約束もありますしね…それにあなたを殴ってしまった。いくら記憶が無かったとは言え…申し訳ない事を。」 「気にするな。当然の行動だ。」 「そう言っていただくとホッとします。 …それにですね。この世界での僕は予定通り直接涼宮さんに接触する事無く、ただ監視しているだけなんですよ…実につまらない日々です。」 「私も同じです。」 朝比奈さん? 「…無くなって初めて気づく物なんですね…。」 「そうです。僕は今回は機関としてでは無く、SOS団副団長としてSOS団を取り戻すために動かせていただきます。 もちろん長門も含めてです。」 古泉はいつもの笑顔を浮かべて言った。 「…古泉。」 「そうです!五人揃ってSOS団ですからね!」 「…朝比奈さん。」 最高だ。俺は一人じゃない! 「…ん。」 「涼宮さん!」 「起きたかハルヒ。」 「…キョン…あれ…何…これ…」 「落ち着け…これから全てを話してやる。」 …。 …。 そして俺達は今の状況、正体、力、全てをハルヒに教えた。 最初は信じなかったハルヒも俺がジョンスミスだったという所で俺達が冗談を言っているのでは無いと気づいたようだ。 ハルヒ「…まさに灯台下暗しってやつねね…。」 そうだろう、そうだろう。 ハルヒの待ち望んでいた宇宙人、未来人、超能力者がこんな近くに居たのだからな。 「…それで、どうやったら有希を取り戻せる訳?」 古泉が言った。 「現状では…涼宮さん。あなたの力に頼るしかありません。先ほど話した通り、あなたには神の如き力があります。」 しかしハルヒの反応は… 「…ん~、そこの所がイマイチ実感湧かないのよねぇ~。」 実感湧かないって…俺達がお前の力にどれだけ振り回されたと思っているんだ? 「ハルヒ!間違いなくお前にはとんでもない力があるんだ!だから…。」 …ここで俺の言葉を遮り女の声が響いた…。 「そこまでよ!」 俺達は一斉に振り向いた…そこには…。 「朝倉…涼子…。」 部室の入り口に朝倉涼子が立っていた。 「…長門さんにも困ったものね。こんな小細工をしていたなんて…。」 朝倉は「フン」と笑った後部屋に入って来た。 …。 …。 やはり気づかれていたか…。 「朝倉…長門はどうなっているんだ!」 朝倉は笑顔で言った。 「長門さん?ああ、とっくに消去されているわよ。」 なんだと…。 「何ふざけた事言っているのよ!有希を返しなさい!」 「…笑えない冗談ですね。」 「…なんて…事を…。」 「朝倉ぁ!」 みんな怒りに震えている。 「…なぁ~んちゃって。」 「…え!?」 「嘘よ嘘。そんなに怖い顔しないで。長門さんはちゃんと居るわよ…ほら。」 朝倉はそう言って首にぶら下げたペンダントを見せた。 ………あ!? 朝倉の首に掛けられているペンダントにたしかに長門が…居た。 「長門!」 「有希!」 「長門さん!」 「長門さん!」 長門はペンダントの中で悲しそうな目を俺達に向けていた。 「消去する訳無いでしょ?だって長門さん一度私を消したのよ?…そんな簡単に楽にしてあげる訳無いじゃない。」 「…長門を返せ!朝倉!」 「嫌よ。長門さんは今から罰を受けないといけないの…大事なお友達が目の前で殺されるのを見る…って罰をね。」 …やっぱりこいつの目的は… 「…記憶戻らなかったら良かったのにね。こうなった以上前回出来なかった事をやらせてもらうわ。」 …やばい…やばすぎる…。 「キョン君を殺して涼宮ハルヒの情報爆発を観測する…いや、あなた達三人を殺して。」 「!?」 俺達三人…俺と朝比奈さんと古泉か! 「朝倉!…お前の目的は俺だけだろ!この二人は関係無いはずだ!」 朝倉は笑いながら言った。 「状況が前と変わったのよ。あの時はそれほどその二人と涼宮ハルヒは近い関係に無かった。でも今は強い信頼で結ばれている…そう言う事よ。」 なおも朝倉は続ける。 「これから一人一人別の場所にご招待するわ…そして最後に涼宮さんを…切り刻まれたあなた達を見た涼宮さんはどんな情報爆発を見せてくれるかしら…フフフ。」 こ…こいつ… 「朝倉!お前!」 朝倉はナイフを構え。 「知ってた?神様って非情なのよ。…神様って言っても情報統合思念体なんだけどね。 …やっぱり最初はキョン君からね。さあ行きましょうか。」 朝倉はゆっくりと俺に手を伸ばした。 「――!?」 その時誰かが俺の前に出た…古泉!? 古泉は俺に笑顔を向けたまま…その場から消えた…。 …。 …。 …。 …。 ~閉鎖空間~ …。 …。 …みんなが消えた!? …いや、僕が消えたと言った方が良いのでしょうね…。 僕と… 「順番は守らないとダメよ。そんなに死に急ぎたいの?」 …この朝倉涼子と。…。 「…長門さんが居ない今、あなたに対抗できるのは僕だけなものでしてね…。」 「へぇ~、もしかして勝てる気でいるの?」 「僕に…いや、俺に出来ないとでも思ったか!」 …ここではかしこまる必要は無いだろう。 俺は両手に力を込めた…大丈夫…力は使える。 「フフフ…怖い顔ね…あなたニヤケ顔してるよりもこっちの方が素敵よ。」 …しかし半分以下か…自分を光の玉に変える事はやはり出来ないみたいだ。 「でも残念ね…すぐお別れだなんてね。」 朝倉涼子はナイフを構えた。 「ああ、すぐにお別れだ。お前が俺に殺されてな。」 …勝率は…一割以下だ…絶望的な数字だな…だがやるしか無い。 俺の死〓みんなの死だ。 「口だけは達者ね…じゃあ…死んで!」 朝倉涼子は突進して来た。 俺も両手から光を出し死神へと向かった。 「おおおおおお!!」 …。 …。 …。 …。 ~部室~ 「古泉君と朝倉涼子はどこに消えたの!?」 「おそらく古泉は俺の代わりに朝倉と閉鎖空間に行ったんだろう。 …長門が居ない今、朝倉に対抗出来るのは自分だけだと思ってな…。」 …くっ…古泉… 「…古泉くん…帰って来ますよね…?」 …朝比奈さんは目に涙を溜めて言った。 「当然よ!なんてったって彼はうちの副団長よ!…絶対帰ってくる。」 …古泉…絶対帰ってこいよ!! …。 …。 …。 …。 ~再び閉鎖空間~ …。 …。 …。 「ぐっ!」 俺は壁に叩きつけられた。 「結構頑張るわね。でも後がつかえているのよ。そろそろ死んでくれない?」 どれくらい時間がたっただろうか。 …おそらく20分ぐらいだろうが俺には1時間にも2時間にも感じられていた。 「…化け物が。」 全身血だらけだ。体のあちこちに裂傷を負っている。 …背中の傷が一番深いか…。 朝倉は強い。何よりも素早く攻撃が当たらない。 いや、当たりはする。当たればその部分が消し飛ぶ。 だがすぐに再生しやがる。くそっ! それに…首に掛けられたネックレス…あの中には長門さんがいる… 下手に攻撃したら長門さんまで…。 「ほ~ら!」 朝倉はナイフを振るって…!? 朝倉のナイフは俺の首筋を掠めた。 「あら、惜しかったわ~。」 後数ミリで頸動脈が斬り裂かれていた…。 俺は右手の光を朝倉に投げる。 しかし朝倉は素早くよけ…足に命中した。 しかしすぐに再生される。 「…結構痛いのよ。これ…そろそろ本気で終わらせるわ。」朝倉は突進してきた…刺突か!? 「ぐっ!」 俺はわずかに身を交わし心臓への攻撃は避けたが朝倉のナイフは俺の左肩を貫いていた。 …激痛が走る中俺は目の前のペンダントに右手を伸ばした。 ブチッ 良し!取った! しかしその瞬間さらなる激痛が俺を襲った。 朝倉はナイフを俺の太ももに突き刺さしていた。 「ぐおっ!」 朝倉は俺から飛び退き言った。 「馬鹿ね。ペンダントを奪うのでは無くそのままその光で攻撃したら勝てたのに…長門さんが気になったのかしら?」 …ペンダントは奪い取ったが左手と足を封じられた…絶望的だ…。 「これで終わりね。」 朝倉は俺にとどめを刺す為突進してきた。 …駄目だ…動けない…みんなごめん。 朝倉のナイフが迫る。 …朝倉の動きがゆっくりに見える…これがドーパミン効果ってやつか…。 この軌道…右目から入ってそのまま脳にか…即死だな…。 そしてナイフが俺を貫いた。 …。 …。 …。 「…往生際が悪いわね。」 朝倉のナイフは俺の右の手の平を貫いていた。 俺は…まだ死ねない…。 俺はそのまま右手で朝倉の腕を掴み… 朝倉は俺が何をしようとしたのか分かったのか必死に飛び退こうとしたが… 「遅い!!」 左手から放たれた0距離攻撃…朝倉の体は赤い光に包まれ…消滅した。 …。 …。 …。 手の平に刺さったままのナイフが静かに崩れて行く。 俺は静かに言った。 「俺の勝ちだ…。」…。 …。 …。 閉鎖空間が崩れ始める。 俺は…僕は長門さんの入ったペンダントを見た。 長門さんが僕を心配そうな顔で見つめている。 「…さぁ…一緒に帰りましょう。」 そして空間が割れた。 …。 …。 …。 ~部室~ 突如俺達の前に血だらけになった古泉が現れた。 「古泉!」 「古泉君!」 「古泉くん!」 古泉は俺たちの顔をしばらく眺めた後こう告げた。 「……朝倉涼子は倒しました。」 古泉は静かに言ったがけして楽な闘いでは無かったのを全身に刻まれた傷が物語っていた。 「…酷い怪我…」 「…ふぇ…こ、古泉くん…だ、大丈夫ですか…?」 ハルヒと朝比奈さんは古泉を介抱している。 しかし大丈夫な訳が無い…今もかなりの出血が確認できる。 「古泉…よく頑張った…。」 「はは…これであなたを殴ったのは帳消しになりましたかね?」 笑みを浮かべ奴はそう言う。 「…馬鹿野郎。」 帳消しどころでは無い。 俺はいくらお前に釣りを渡せばよいんだ? 「…これを。」 古泉はそう言って俺にペンダントを差し出した。 「これは…長門!?」 ペンダントの中で長門は俺に何かを訴えているようだ…何?…開ければ良いのか? よく見るとペンダントの上部に小さいキャップが付いている。 俺は迷わずキャップを開けた。 するとペンダントから光が飛び出し、その粒子が俺達の前に人間の形を作り出した。 「有希!」 「長門さん!」 「…長門…さん」 ……長門。 俺達の目の前に長門が立っていた。 「……。」 長門はしばらく俺達の顔を見た後 「…古泉…一樹…。」 そう呟き古泉の所へと駆けて行った。 「…ごめんなさい…ごめんなさい…。」 何度も古泉に謝罪の言葉を呟いていた。 古泉は頭を振り 「長門さん、良かった…。」 と呟いた。 「長門、古泉の傷を治せないか?」 俺は長門にそう言ったが長門の答えは 「…無理。」 頭を振ってそう答えた。 「…情報統合思念体との接続が切れている…今の私には何の力も無い…。」 …よく考えたらそうだ。今回の敵こそ情報統合思念体だったんだ…。 くそ!まだ出血が続いている…このままだと命に関わるぞ…。 「…救急車を。」 朝比奈さん!? …そうだよ。救急車だよ。頭が回らなかった。 「俺が呼んでくる!」 俺はそう言って部室の出口に向かおうとした…が! …。 …。 …。 「な…。」 俺は絶句した…なぜならそこに 朝倉涼子が立っていたからだ。 「もう良いかしら?」 「お…お前…。」 朝倉はそのまま部室に入って来た。 「…不死身か…?」 古泉が驚愕の表情で呟いた。 そりゃそうだろう。 必死になって倒した敵が無傷で現れたのだから…。 朝倉は笑顔で言った。 「あら、古泉君、勘違いしないで。さっきのはあなたの勝ちよ。 さっきの私は完全に消滅したわ。」 「…どういう事ですか…。」 「こういう事よ。」 「……!?」 …悪夢としか言いようが無いだろう。 さらにもう一人朝倉が俺達の前に現れた…。 「たとえ今の私達を倒しても無駄よ。」 「また新しい私が現れるからね。」 …。 …。 …情報統合思念体の力でたとえ何回倒されようとも復活し続ける…朝倉はそう告げた。 「最後に長門さんに会えたから悔いはないわよね?」 「じゃ、そろそろ死んで。」 2人の朝倉がナイフを持ち近づいて来る。 …その時1人の少女が動いた。 「させない。」 …長門…。 長門が両手を広げ俺達を守るように朝倉の前に立ちふさがった。 「あら、長門さん。今やただのひ弱な女の子に成り下がったあなたが何をするつもり?」 朝倉が見下した目でそう言った。 「やらせない。」 しかし長門は一歩も退かず同じ言葉を口にした。 …俺は普通の人間。 朝比奈さんは未来人だが戦う力は持ってない。 古泉はすでに瀕死の状態。 長門はいまや何の力も無い少女になっている。 ハルヒはうつむいて何か呟いている …無理もない。いくらハルヒとはいえ実質は普通の世界で生きてきた女子高生だ。 いきなりこの様な場面に叩き出されたら壊れるのも無理は無い…。 すなわち…絶体絶命って事だ。 その時だった。 …。 …。 ポッポ~♪ポッポ~♪ ーー!? なんだ!? 俺はその奇妙な音の鳴る方を見た。 …。 …。 ……なんだ。鳩時計か…。 部室に掛けられている鳩時計が六時を知らせていた。 …。 …。 ポッポ~♪ポッポ~♪ポッポ~♪ポッポ~♪ …こっちは絶体絶命だってのに呑気に鳴いてやがる………って…え!? …鳩時計? んな馬鹿な…少なくとも俺の記憶の中でこの部室に鳩時計が飾られた事は無い。 なぜだ? 俺がそう考えていた時 …。 …。 「…なるほどね。」 …。 …。 その声の主は不敵な笑みを浮かべてそう呟いた。 「さて、今度はみんな一緒に招待してあげるわ。広い所にね。」 朝倉はそう言って指を鳴らした。 …。 …。 …。 ~閉鎖空間校庭~ 周りの風景が変わり俺達はいつの間にか校庭に立っていた。 「みんなまとめて殺してあげる。」 朝倉かそう言いながら再び指を鳴らすと……うわぁ……。 俺達の目の前に百人近い朝倉涼子が現れた。 「痛みを感じる暇も無いかもね…じゃ、行くわよ。」 百人の朝倉がナイフを構え俺達に飛びかかろうとしたその時。 「待ちなさい!」 その声の主、先程 「なるほど」 と呟いたハルヒが不敵な笑みを浮かべたまま朝倉にそう言った。 「何…涼宮さん?大丈夫よ、あなたは殺さないから。 あなたの役割は切り刻まれたお友達を見て情報爆発を起こす事よ。安心して。」 …何が安心だ。 「アタシはただ待てと言ってるの。」 ハルヒ? 「…そうね。お別れの時間くらい与えてあげても良いわ…。10分よ。」 「それだけあれば十分よ。」 ハルヒはそう言って俺達の方を向いた。 …なんだハルヒ、本当に別れの挨拶をする訳じゃないだろうな? 「古泉君」 「はい?」 「あなた超能力者だったわね? だったら手から炎を出したり傷を癒せたり瞬間移動できたりするわよね?」 古泉は表情を落とし。 「いえ…残念ながら…。」 そう呟いた。 残念ながら古泉にその様な力は無い。 こいつの力は限定された空間でしか使えない。 たしか最初に説明したはずだが? 「いいえ、使えるの!」 「え?」 何を言ってるんだ? 「アタシがそう決めたんだから使えるの。そういう事なんでしょ?」 ー!? そうか…そういう事か! 古泉はしばらくポカーンとした後…。 「…そうです…そうなんです!今、涼宮さんの言った能力、全部使えます!」 にっこりと笑いそう答えた。 「そう、ならちゃっちゃと自分の傷を直しちゃいなさい!」 「はい!」 …さっきの鳩時計もハルヒの仕業か。 それで自分の力に… 「みくるちゃん!」 「は…はい!」 「あなた未来人だったわよね?」 「はい…一応…。」 「ならあなたのポケットは四次元ポケットね。隠したって無駄よ!アタシには分かってるんだから! 早く未来の凄い武器でも出しなさい。」 朝比奈さんはド○えもんか! 「え!?…え!?…」 「朝比奈さん!」 …。 …。 …。 「……あ…そういう事…そう、そうです! 凄い武器出しちゃいますよ!!」 朝比奈さんはようやく気づき元気にそう答えた。 「有希!」 「……。」 長門は振り返りわずかに首を傾けた。 「あなた宇宙人だったわよね?」 「…正確に言うと対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース。」 「そんなのどっちでも良いのよ!んで今はその能力が使えないと?」 「そう。」 長門は顔を落とし答えた。しかしハルヒは笑顔で言った。 「残念だけどそれは勘違いよ。あなたは自分の能力を全部使えるの、自分の意志で! アタシが今決めた!」 長門はその言葉にしばらく目を見開いた後 「コクン。」 大きく頷いた。 「キョン!」 俺?…俺はハルヒを見た。 「あんたは普通の人間なんだからみくるちゃんからなんか武器を貸してもらいなさい。」 「ああ。」 良かった。変な能力者にされないで本当に良かった。 「朝比奈さん。」 俺は朝比奈さんに話しかける。 「は、はい!……ふ、ふぇ…す、凄いの出ちゃった…。」 巨大なライフルらしき物を持ちそう言った。 それ本当にその小さなポケットから出たんですか…。 「これはどんな武器なんですか?」 「これは…その…禁則事項です。」 …分かりません! 俺と朝比奈さんが困っていると…。 「禁則事項禁止!」 ハルヒ? 朝比奈さんはしばらく沈黙した後頷き 「対ヒューマノイド・インターフェース用ライフル。 これは命中した相手の情報連結を解除出来る特殊武器です。 あ!ちなみに長門さんに当たっても大丈夫な用に作られてますから…。」 俺はライフルを受け取り 「…またずいぶん都合の良い武器が有りましたね。」 「ええ…まぁ涼宮さんですから…。」 なるほど、何でも有りか。 …ん?…古泉!? 瀕死状態だった古泉がいつの間にかいつもの笑顔で立っている。 「お前大丈夫なのか?」 「ええ、傷は癒やしました。涼宮さんに新たに頂いた力で。 …この戦い、いけますよ。」 ああ、いける。 俺は頷き次は長門に声をかけた。 「長門、どうだ?」 「涼宮ハルヒの力により私は全機能が復帰した。 今の私は全ての機能を情報統合思念体の許可無く使用する事が出来る。」 長門完全復活だ。 「私はこれよりジェノサイドモードを発動する。 これは戦闘モードの中の最終モード。 本来なら絶対許可は下りない。しかし今の私は情報統合思念体の許可は必要ない…様するに…」 長門の全身から凄まじいプレッシャーがにじみ出ていた。 「私は非常に怒っている。」 頼もしいぜ。 次に朝比奈さんに話しかけた。 「朝比奈さん、大丈夫ですか?」 「はい!オートターゲット機能がついていますから下手くそな私でも大丈夫です!」 朝比奈さんは銃を持ちそう答えた。 「キョンくんは大丈夫ですか?」 「俺ですか?…ええ。」 俺は笑顔で言った。 「この世界での連日のゲーセン通いは伊達では無いですから!」 …。 …。 「みんな、準備は良いわね!」 「ええ。」 「ジェノサイドモード発動完了。」 「は、はい!」 「おう。」 ハルヒは朝倉に向き直り。 「待たせたわね。」 「もう良いのかしら?」 ハルヒは不敵な笑みを浮かべ言った。 「さあ!どっからでもかかって来なさい!!」 こうして戦いが始まった。 …。 …。 …。 あそこで一度に3人の朝倉を焼き払ったのは、今やどこに出しても恥ずかしくないサイキックソルジャーになった古泉だ。 瞬間移動をしながら手から炎を出し戦っている。 …お前は草○京か! そして戦闘開始から凄まじい勢いで朝倉を倒し続けているのは、 ジェノサイドモード とか言う物騒な名前のを発動した長門だ。 よほど鬱憤が溜まっていたのか 「俺達必要ないんじゃないか?」 ってくらいの勢いで凄まじい勢いだ。 この2人が前衛部隊として戦っている後ろで俺と朝比奈さんは2人が討ちもらした朝倉を射撃している。 朝比奈さんは 「ふぇ…ふぇ…」 と言いながらもオートターゲット機能のおかげか確実に射撃を命中させている。 俺は連日のゲーセン通いで培った腕で射撃を続けている。 …谷口、国木田、ありがとう。 そして我らが団長、涼宮ハルヒは 「アタシが戦うまでも無いわ。」 とでも言いたげな感じで腕組みをし、笑みを浮かべ俺の後ろに立っていた。 …。 …。 そんなこんなでいつしか敵は朝倉1人残すだけとなった。 …。 …。 「朝倉、もうお前だけだぞ。」 俺は朝倉にそう言った。 …まぁ全部朝倉だった訳だが。 しかし朝倉は余裕の笑みを崩さない。 「あら、もう勝った気でいるの?」 朝倉は再び指を鳴らした。 …。 …。 --な!? 突如俺達の前に巨大な影が現れた。 …なんだこいつは。 その影は手にした棍棒らしき物でなぎ払いをしてきた… 「な!?」 「ひゃ!?」 その軌道上に居るのは俺と朝比奈さん! 俺達に棍棒が迫る。 避けられるタイミングじゃ無い…。 俺は朝比奈さんを庇うようにして抱きついた。 …。 …。 クラッ… …。 …。 俺を襲ったのは衝撃では無く、強烈な立ちくらみだった……あれ?この感覚は…。 俺が目を開けると… まるで棍棒が俺達をすり抜けたかのように通りすぎていた。 「2秒だけ…。」 「え?」 朝比奈さん? 「2秒だけ飛べました。」 そうか、時間移動。 朝比奈さんは俺達に棍棒が当たる瞬間2秒未来へ時間移動をしたのか。 朝倉、やっぱりお前は長門よりも下だ。 長門は完璧に時間移動を封じたぞ! …しかし…この巨大な奴は一体…。 --!? さらに4体の巨大な影が現れやがった…合計5体…。 「長門、あれは一体何なんだ?」 長門は静かに答えた。 「…ミノタウロス…。」 ミノタウロス!? 「…あれが?」 確かに良く見るとそれの顔は牛の形をしていた…神話で有名なあのミノタウロスだ。 「ミノタウロス…××星に生息する巨大生物。性格は凶暴。 …その肉は美味。」 …最後の一文が気になったが…まぁ良い。 とにかく倒せば良いんだろ! 俺はミノタウロスに射撃した……効かない? 次に古泉が炎を、光の玉を連続して放ったが…同じく効果が無い。 「無駄。」 長門? 「ミノタウロスに特殊な攻撃は通用しない。倒すには単純な力による攻撃しかない。」 「…長門。お前なら何とかできるよな?」 思い出したく無いがかつて長門はミノタウロスを調理し肉じゃがにした事がある。 しかし…。 「無理。」 …え? 「あの時倒したのは幼体。あれは成体…しかも5体…今の私でも無理。」 …。 …。 なんてこったい。 「形勢逆転ね。」 いつの間にかミノタウロスの肩に座っている朝倉がそう言った。 「くそっ!」 どうすれば良い…見ると古泉や朝比奈さんの顔にも焦りの表情が見える。 「おい!ハル…」 俺はハルヒに振り向き……え? ハルヒの顔には焦りの表情は無く、先ほどまでと同じ笑みが浮かんだままだった。 ハルヒの視線…ハルヒは朝倉やミノタウロスを見ておらず、もっと後ろ……あ!? 「あ!?」 「ふぇ!?」 「……あ。」 ゆっくりとそれは現れた。 …なるほどな。 「…くっ…くっ…くっ…。」 思わず笑いがこみ上げる。 「…ふっ…ふっ…ふっ…。」 見ると古泉も笑っている。 「…何?恐怖で狂ったの?」 朝倉が怪訝な表情で俺達に言った。 「ははははははは」 俺と古泉の笑いがこだました。 「あなた達状況がわかっているの?私の命令一つであなた達死ぬのよ?」 状況がわかっているのかって? 命令一つ? これ以上笑わせるなよ。 「これが笑わずにいられるかよ? なぁ、古泉?」 「くっくっくっ…まぁ、僕としては複雑な気分でもあるんですけどね。」 そりゃそうだろうな。 「……。」 朝比奈さんは呆然としている。 そうか、朝比奈さんは見た事なかったな。 「長門、面白いだろ?」 長門は静かに言った。 「ええ。とてもユニーク。」 状況が1人分かっていない朝倉はイラついたような顔で 「なによ!なんなのよ!!」 と繰り返している。 「キョン。」 ハルヒ? 「教えてあげなさい。」 OK。 「朝倉。」 「何よ!」 「後ろを見てみろよ。」 「後ろ? …………!?」 朝倉は後ろを振り向き…絶句した。 そりゃそうだろう。 後ろでさらに巨大な巨人が今にも自分を叩きつぶそうと拳を振り上げているんだからな。 「……な…な…な…。」 「…神人。」 古泉が静かに呟いた。 神人…ハルヒが自ら生み出した閉鎖空間で暴れさせていた巨人だ。 しかし今はハルヒの命令を待つかの様に拳を振り上げてたまま待機している。 「やりなさい。」 ハルヒの声が響く。 それと同時神人の拳が振り下ろされた。 「ひっ!」 朝倉は小さく言葉を発し、ミノタウロスの肩から飛び退いた。 次の瞬間5体のミノタウロスは完全に叩き潰された。 「…すげえ。」 俺は思わず呟いていた。 そして静かに神人は消えていった。 「…で、形勢逆転がどうしたって?朝倉涼子?」 ハルヒの言葉を聞いた朝倉は怒りの表情を浮かべ立ち上がった。 「調子にのってるんじゃないわよ!殺してやる!!」 朝倉は絶叫しナイフを俺達の頭上に投げた。 ………!? ナイフが何千いや、何万という数に分裂し俺達を囲んだ。 これが俺達に降り注いだらひとたまりもないだろう。 しかし俺は落ち着いていた。 何故かって? ハルヒが笑顔のままだったからだ。 「ナイフの全方位攻撃よ! 手加減してあげてたのに図に乗って!……死になさい!」 朝倉の一言により何万ものナイフが俺達に降り注ぐ……事は無かった。 …。 …。 「な…なんで…。」 「馬鹿ねぇ。」 ハルヒは今日見せる最大級の笑顔で言った。 「そんなのアタシが許すとでも思ってるの!」 全てのナイフが音も無く消滅していく。 …ハルヒは…。 「すごい…涼宮さん…。」 「ええ、彼女は完全に…。」 そう、ハルヒは完全に自分の力を使いこなしていた。 「…覚醒。」 …長門? 「涼宮ハルヒは覚醒した。今の涼宮ハルヒに勝てる者はもはや存在しない。」 朝倉は狼狽していた…いや、恐慌していると言った方が良いだろう。 朝倉は一瞬逃げるような素振りを見せた後、石像の様に動かなくなった。 「あなたが動く事も許さない。」 「…あ…あ…。」 ハルヒはゆっくりと朝倉に近づく。 「…よくも…よくも好き勝手してくれたわね。」 笑顔だったハルヒの表情が徐々に怒りの表情に変わっていく。 「有希を閉じ込めたり…アタシ達の…SOS団の記憶を消したり…キョンを…みんなを殺そうとしたり…古泉君をあんな酷い目にあわせたり…。」 ハルヒを見ると…………泣いていた。 怒りの表情で体を震わせ涙を流していた。 「…アタシはあんたの存在を許さない。未来永劫ね。」 ハルヒの言葉に朝倉は…。 「…やめて…お願い…それだけは…それを言われたら…私は…。」 今さら何を言っているんだこいつは…。 「古泉、言ってやれ!」 古泉は頷き穏やかに言った。 「朝倉さん、知ってますか? 神様って非情なんですよ。 まぁ、神様とは言っても僕らの団長の事なんですけどね。」 古泉は朝倉に言われた事をそっくりそのまま返していた。 さらに古泉は続ける。 「あなた方は涼宮ハルヒを舐めていた。その結果彼女の逆鱗に触れる事となった。 残念ですが我らが団長は敵にはどこまでも非情になれる方なんですよ。」 古泉はニッコリと微笑んだ。 「アタシはあんたを絶対許さない!あんたが再び生まれる事も許さない。 消えなさい!朝倉涼子!永久に!!」 ハルヒがそれを言ったと同時に…朝倉涼子は…消滅した。 もう二度と朝倉が現れることは無いだろう。 ハルヒが言った以上絶対だ。 触らぬ神に祟り無し この言葉をちゃんと理解していたら良かったのにな…朝倉。 そして空間が歪み…割れた。 …。 …。 …。 ~部室~ 「終わりましたね。」 古泉が言った。 ああ、終わった。 後は世界を元に戻すだけだ。 「……ごめんなさい。」 ん?長門? 長門は続ける。 「今回の件は全て私の責任。ごめんなさい。」 お前の責任なんかじゃない。 それに今言う事はそれじゃない…。 「長門、違うだろ?今お前が言わないといけない事は一つだけだ。」 長門は目を見開きしばしの沈黙の後言った。 「……ただいま。」 「お帰り、長門。」 「お帰り、有希。」 「お帰りなさい。長門さん。」 俺、ハルヒ、朝比奈さん、古泉が同時に言った。 …本当にお帰り。長門。 「さて、んでどうすれば良いのかしら?」 ハルヒが俺に言った。 「そうだな、お前の力で元の世界に戻すんだ…いや、二度とふざけた真似できないように情報統合思念体存在を消した世界をな。」 「分かったわ。」 その時だ。 「待って。」 ん!? …。 …。 その声の主は部室の入り口に立っていた。 「喜緑さん…。」 喜緑江美里…生徒会書記、その実体は長門や朝倉と同じ対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース…彼女が何故? ハルヒが呟く。 「なるほど、朝倉涼子の次はあなたって訳ね。」 その言葉に喜緑さんは首を振り 「いいえ、あなた方と争うつもりはありません。 あなた方に今の情報統合思念体の事を伝えに来たの。」 …。 …。 喜緑さんの話しによると、今回の件は急進派によるクーデターみたいなものであったらしい。 そして現在は元の通りになった。 二度と急進派が表に出る事は無い。 つまり、情報統合思念体を消すのを止めてくれ…って言いたいらしい。 「それを信じる理由は無いな。」 俺はそう言った。 当然だ。また奴らが同じ事をしないという保証は無い。 「私も情報統合思念体を消さない事を推奨する。」 長門!? 長門は続ける。 「喜緑江美里の言っている事は事実。 情報統合思念体の消去による影響は甚大。」 長門の話しによると情報統合思念体が消えるとこの世に大きな不具合が発生し、メリットよりもデメリットの方がはるかに大きいと…。 しかしなぁ…。 「もしもまた同じ事があったらどうするんだ?」 俺の問いに長門は 「それは無い。涼宮ハルヒが許さないと言った以上絶対。だから心配ない。」 俺はハルヒを見た。 「…まぁ、有希が言うなら仕方ないわね。 喜緑さん、分かったわ。」 ハルヒがそう言うなら仕方ない。 「ありがとうございます。 …それじゃ長門さん、後はお願い。」 喜緑さんは去っていった。 …。 …。 「私が涼宮ハルヒの力を使い元の世界に戻す。」 長門? 「今日の事が無かった事になりあなた達が今日経験した記憶は消える。」 「記憶が…消える?」 「そう、私以外の記憶は消え、当たり前の1日が始まる。」 ハルヒが声をあげる。 「ちょっと待って!それってアタシはまた何も知らない状態に戻るって事? 自分の力、有希が宇宙人、みくるちゃんが未来人、古泉君が超能力者って事も全部?」 「そう。でもそれがあなたの望み。」 ……なるほどな。 何でも自分の思い通りになる世界をハルヒが望むか? …否。 そんな世界をハルヒが望む訳が無い。 ハルヒが望んでいるのはいつもの日々だ。 ハルヒが無茶な事を言い出して俺達が振り回される。 みんなで馬鹿な事をやり笑いあえる…いつもの日々。 「帰ろうぜ、あの日々に。」 俺はハルヒに言った。 「…そうね。帰りましょう。」 古泉と朝比奈さんも笑顔で頷いた。 「改変を開始する。」 長門がそう言うと周りの景色が歪み…真っ白な世界になった。 それと同時に俺達の体が光に包まれる。 「ところで、僕の力はどうなるんでしょうか?」 「古泉一樹、あなたの力は一時的に涼宮ハルヒにより与えられた力。記憶の消失と共に消える。」 「それは残念ですねぇ。」 古泉は残念そうな顔で呟いた。 「ああ、あと涼宮さん、なるべく閉鎖空間を生まないようにしてください。」 気持ちはわかるが今言っても忘れているから意味ないぞ。 「ふっ、それならあなた達アタシを退屈させないように頑張りなさい。」 ハルヒは笑顔でそう言った。 俺と古泉は肩をすくめ呟いた。 「やれやれ…。」 …。 …。 そして長門が口を開いた。 「みんな…ありがとう。」 そして全てが光に包まれる…。 …。 …。 …。 ~キョンの部屋~ ガタン 「痛ってえええ。」 …どうやらまたベッドから落ちたらしい。 今何時だ?……2時か…。 ……何か夢を見ていたみたいだが……思い出せない。 物凄く苦労した夢だったみたいだが…まぁ、そのうち思い出すだろう。 寝よう…。 …。 …。 …。 ~教室~ 「おはよう。」 「おはようキョン。」 いつもの朝、教室に入った俺は友人の国木田、谷口と朝の挨拶を交わした。 「ちょっと!キョン!聞いて!」 なんだハルヒ?朝っぱらからテンション高いな。 「昨日凄く面白い夢を見たのよ!」 夢? 「もしかしてまた俺と古泉がお前に飯おごらせようとして、お前が財布を忘れて古泉がロリコンからホモになったあれか?」 「違うわよ!」 「違うわよ!」 違うのか…古泉には悪いがあれは正直面白かった。 「どんな夢だ?」 「それがね!覚えて無いの!」 ……は? ハルヒは覚えて無いけど物凄く面白い夢だったと言っている。 なんだそりゃ…そう言えば俺もなんか夢を見たな…覚えて無いけど…かなり苦労した夢…まぁ良い。 「おはようみんな。」 担任の岡部が入って来た…そんなこんなでいつもの1日が始まった。 …。 …。 …。 ~放課後の部室~ いつも通りみんな集まり、それぞれ思い思いの事をやっていた。 ハルヒは団長席でふんぞり返り、朝比奈さんはメイド服でみんなにお茶を配り、俺と古泉はカードゲームをし、長門はいつもの席でいつもの様に自動読者マシーンと化している。 途中でまたハルヒが夢の話しをしだした。 それぞれ昨日どんな夢を見たか? ハルヒ「凄く楽しい夢だった。でも内容は覚えていない。」 俺「凄く苦労した夢だった。でも内容は覚えていない。」 古泉「凄く痛い夢だった。でも内容は覚えていない。」 朝比奈さん「凄くオロオロする夢だった。でも内容は覚えていない。」 みんなバラバラだ。 共通点は覚えていないって所か。 「有希?あなたは何か夢見た?」 長門は本から顔を上げコクンと頷いた。 長門も夢を見るのか? 「んでどんな夢?」 長門はしばらく考えた後 「凄く幸せな…嬉しい夢。」 と答えた。 「で、内容は?やっぱり覚えてないの?」 長門は首を振り言った。 「覚えている。」 「教えて。」 「……内緒。」 内緒か…まぁ幸せな夢だったら良いか …っと思っていた時長門が急に立ち上がった。 そして… 「みんな……ありがとう。」 …。 …。 …なんで俺達は長門にお礼を言われているのだろうか? 皆を見てみるが皆困惑の表情を浮かべている。 でもそんな事はどうでも良い。 皆もそう思っているだろう。 だって… 長門が今、最高の笑顔で微笑んでいるのだからな…。 …。 …。 …。 …おしまい。 涼宮ハルヒのSS 厳選名作集 長編 涼宮ハルヒの覚醒
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/6026.html
●涼宮ハルヒの分身 プロローグ ●涼宮ハルヒの分身 Ⅰ ●涼宮ハルヒの分身 Ⅱ ●涼宮ハルヒの分身 Ⅲ ●涼宮ハルヒの分身 Ⅳ ●涼宮ハルヒの分身 Ⅴ ●涼宮ハルヒの分身 エピローグ
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/6531.html
涼宮ハルヒの遡及Ⅷ 「あの波動に飲み込まれる前にテレポテーションを発動させて難を逃れたってこと。さっきも言ったけど、あたしの防御結界術を全部、打ち破ってきたわ。なら避けるしかないじゃない」 場所はあの巨人竜から距離を置き、茂みと木々に囲まれた、昼間だったはずなのだがやけに薄暗い森の中だ。 「今は冷静に振り返っていますけど、あの場面では随分、焦った顔をしておられたようですが?」 「はいはい。気まずくて強がるしかできない気持ちは分からないでもないけど、あたしに当たらないように」 む…… 「くすっ、それにしてもあなたの取り乱す姿というものはなかなか見ものでしたよ。僕が落ち着いているということは、涼宮さんの感知ができていた、という意味であるのに、それにまったく気付かなかったんですから」 「ですよね。あたしと長門さんも前から見てましたけど、あんなキョンくんは初めて見ました」 「興味深い」 「……」 こらハルヒ! 何でお前まで黙り込むんだよ! 「う、うるさい!」 叫んでそっぽを向くハルヒ。ううむ。なんとも場の空気が辛い。 などと思うのは勿論俺とハルヒだけなのだろうが、これ何て羞恥プレイ? 「とまあ、いつまでも悠長に話しているわけにはいきませんので、とりあえずあの巨人竜を何とかしなくてはなりません」 先ほどまでの温かいものを見る微笑みから、きりっとしまった、しかし場の雰囲気をあまり重いものにしないために浮かべる笑顔の古泉が切り出して、 「対策は一つしかない。あの巨大爬虫類の回復速度以上のエネルギーを炸裂させて屠ること」 長門があっさりと結論を言ってくる。 「あのぉ……このまま、ここに隠れてやり過ごす、という手は……?」 いいですね、それ。俺もその方が、 「何言ってんの。あいつを倒さないとラスボスに辿り着けない設定だとしたら避けて通れるわけないじゃない。とと、で、実際のところはどうなの? ハルヒさん」 朝比奈さんと俺の意見をあっさり切り捨てるアクリルさんがハルヒに問いかける。 「あ、うん。そりゃ、ラスボス前に中ボスを全部倒さなきゃいけないのは当然の展開だしね。あいつも例外じゃないわ」 「だ、そうよ」 「はぅ……」 だろうと思ったけどさ。だが、どうやって? アクリルさんに全長二十メートルを呑み込むような攻撃魔法ってあるんですか? 「ん~~~無いこともないけど……今は使えないし……あたしにはあいつの攻撃を防ぐくらいしかできないような……」 うわ、あのアクリルさんが珍しく困った顔してるし。 「『今は使えない』とはどういう意味でしょうか?」 問いかけてきたのは古泉だ。 「いえ、『今は使えない』ということは、条件さえ満たせば使用できるということですよね? その条件は?」 「あたしと同じ原理で魔法を使える人がもう一人ほしいってこと。ナガトさんの設定は魔法使いみたいだけど、彼女が使う魔法とあたしが使う魔法は性質が違う。だから今は使えない」 なるほどな。俺を元の世界に戻してくれた時に使用した融合させることで相乗効果を生み出す、確か『フュージョンマジック』ってやつを発動させれば、って意味か。 「よく覚えていたわね」 俺の答えにアクリルさんが目を丸くしていらっしゃる。 ふっ、俺はこう見えても勉学に関すること以外の記憶力なら、誰にも負けるつもりはないからな。 「それ、自慢になんないから」 呆れた声でハルヒがツッコミを入れた。 ズシィ……ン―― もちろん幻聴な訳がない。まだ結構遠いが、巨大な足音は確実に的確に俺たちに近づきつつある状況だ。 ん? 「融合させることで相乗効果を生み出す」? 「なあハルヒ」 それは俺の思いつきだった。 この世界はハルヒは自分が作り上げたことを知っている。 そして、俺が妙な力を振るったところを、あの時の鏡の中から見ていたはずだ。 「お前にはこの世界がお前が作り上げたものだ、ってことは言ったよな」 俺のその一言に、古泉と朝比奈さんの表情に緊張が走ったように見えたのは、とりあえず無視。 「聞いたわよ。でも、別に他の世界を存亡の危機に立たせている訳じゃないから気にするな、だったわよね?」 「ああ、そうだ。で、『お前が創り上げた』ってどういう意味かは理解できるか?」 「分からないわよ。何が言いたいの?」 「ああ、なるほど」 気づいたのは古泉だ。というか随分と白々しい気がするが。 「つまり、あなたはこの世界が涼宮さんの願望を現実化している世界だと言いたいのですね」 「えっ?」 「そういうことになりますよ。なぜなら世界を創り上げる、ということは思いのままにできる、ということになりますから。誰しも『自分の世界観』は持っているでしょうけど、それを具現化できるのは、正真正銘『世界を創造する』存在にしかできません」 おいおい古泉、なんかこれ幸いに、お前は今まで黙っていたことを吐きだすように喋ってないか? 「そして、この世界は涼宮さんが望むすべての存在が既に登場しています。『未来から来た』戦うウエイトレス・ミクル、『宇宙から地球を侵略に来た』悪の魔法使い・ユキ、そしてミクルをサポートし手助けする『超能力者』のイツキ、しかも、文化祭の映画の時は登場してませんが『異世界人』でありますさくらさんがいます」 「あ……!」 ああ、そうだな。確かにハルヒが望んだ宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がここにいる。つか、もうハルヒは知ってることなんだが、何で今更、そんなに驚く必要があるんだ? 「そういう意味ではありません。『実際にいたではなく』、この世界では涼宮さんが『創り上げたからいる』のです。おっと、さくらさんは違いますが」 ズシィィ……ン―― ……あんまり長く話している余裕はないぞ? 「では手短に」 どこか名残惜しそうな苦笑を浮かべる古泉。 「要するに、この世界では涼宮さんが考えたことが具現化している、ということです。そもそも我々の置かれた状況が退屈な日常ではありません。涼宮さんの望む非現実世界です」 「てことはさ! ひょっとして、ゲーム作りした時のアレが発動するってこと!? 確かキョンはゲームの時の力が使えたしね!」 お? どうやらハルヒも気づいたようだ。 そうさ。エンドレスゲームクリエイトの中で完成したゲームの中の一つに『SOS大戦』というものがあって、最後の大技は……まあどんな姿をしていたかはとりあえず触れずに……HP65535でしかも1ターンごとに完全回復するラスボスを一撃で倒せたんだ。 アレなら、あの巨人竜を倒せるかもしれん。いや倒せるのだろう。 ……って! な、なんだ!? いきなり古泉が俺を掴んで、アクリルさんがハルヒを抱えて、長門が朝比奈さんを背負って三方に飛び退くって! ――!! と同時に、今の今まで俺たちが居た場所を漆黒の火柱が空気を震わせ地響きを立てながら薙いでゆく! ……射程距離に入った!? 「そのようですね。見てください」 「んな!?」 古泉が手を差し伸べる方向を見てみれば、森の木々が吹き飛び完全に開けてしまっている。漆黒の波動にやられた黒焦げの地面が幅広くやけに痛々しい。 そして、その眼前にはもうはっきりと見えるし、向こうからも俺たちが見えたことだろう。 明らかにその視線は俺たちを捉えて離さない。 どうやら逃げも隠れもできなくなったようだな……つか、逃げるわけにもいかんらしいが…… 「あたしがあいつの攻撃を抑えるわ。その間にやっちゃってちょうだい」 アクリルさんが静かに呟いて、唯一人、歩みを進め、俺たちと、巨人竜のちょうど中間に佇んだ。 ……俺たちを、というかハルヒの言葉を信じた……? などと俺が思っていると、 「さあキョン、行くわよ! この世界ならあんたにもたった一つだけ特殊能力が発動するから!」 ハルヒが弾けんばかりの笑顔で俺を呼ぶ。 そうだな、ハルヒが創り出した世界で、ハルヒの想像が現実化するんだ。 俺はハルヒの右横、間に長門を挟む形の場所に移動する。 そして、 「世界の平和を守るため」と俺から見て一番向こうの古泉が切り出して、 「この世界に住むみんなのため」とその隣の朝比奈さんが続き、 「まだ見ぬ未来をつかむため」と俺の隣にいる長門が呟く。 あーひょっとして、これはあの時の決め台詞ってやつか? となれば、俺も言わなきゃならんだろう。恥ずかしいなんて言ってる場合じゃない。 ……言わないとハルヒのやる気が削がれる可能性があるし、それは絶対にやばい。 「お前を倒して俺たちが勝つ!」 俺が叫ぶと同時に、眼前のアクリルさんが紅蓮の炎に包まれて、両手を頭上で組んでいる。そして、その組んだ手を中心に彼女を取り巻く炎が竜巻となってうねりを上げる! が、アクリルさんはアクリルさんのやることをやってもらおう! 「よおし! みんな、あたしに力を貸して!」 ハルヒもお構いなしに、しかし好戦的で勝利を確信した笑みを浮かべて声を張り上げた! 刹那、ハルヒも含めた俺たち四人から色とりどりのオーラが溢れ返ってくる! 「了解した」 「アレをやりますか」 「はい、やりましょう!」 「ああ、ぶちかましてやれ!」 「行くわよ! SOS団の最終奥儀! 真! 超級グレートカイザーイナヅマジャイアントSOSアタック!」 俺たちの原色オーラがハルヒの手のひらを翳す右手に一つの光輝く球体となって形を成してゆく! それを見定めた巨人竜が俺たちに脅威を感じたのか! 凶悪な牙をぎらつかせすべてを飲み込むかのような口を開け、その奥には漆黒の渦巻きが時折雷鳴を纏わりつかせて見えている! だが、それがどうした! 「あんたの相手はこのあたしよ!」 そうさ! 俺たちには異世界からの最強の助っ人がいるんだ! アクリルさんが組んだ両手を勢いよく振り下ろし、その拳を巨人竜へと向けた! ほぼ同時に巨人竜の漆黒の炎が発射! 「メギドドラゴニックブレス!」 しかし、アクリルさんからも彼女を覆っていた炎の竜巻が、まるで野獣の雄叫びをあげるか如く、紅蓮の竜となって漆黒の炎を迎撃する! 一人と一匹の、ちょうど中間で激突し、周り中に余波を振り乱しながら互角のぶつかり合いを演じてやがる! 今――! おそらく俺たち五人の考えたことは同じのはずだ! 「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」 気合一閃! ハルヒが吼えて、足を高くあげ、つま先が光の効果を放った時、かなりの勢いでエネルギー球を巨人竜に向けて投げつける! もちろん、巨竜はアクリルさんの紅蓮竜とせめぎ合っているので、こっちの球にまで迎撃の手段がとれるわけがない! 結果、球が着弾すると同時に一瞬にして巨竜を光が覆い、その光がそのまま巨竜を飲み込んで、収縮と供に巨竜は断末魔の雄叫びすら上げることなく消失したのであった! 勝利の余韻に浸ることしばし。 「……で、何やってんの?」 へ? 「えと……決めポーズ?」 アクリルさんが左手を腰に当てて、俺たちを苦笑交じりに見つめながら聞いてくる。 はっ! 俺はようやく、自分がどんなポーズでいるのかに気づいたのである。 何と言うか…… おお、そうだ。ハレ晴れダンスの締めのポーズ、と言えば一番分かりやすいかもな。 涼宮ハルヒの遡及Ⅸ