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わたしたちは、ラ・ロシェールで一番上等な宿に泊まることにした。 ワルドさまは全員に向かって困ったように言った。 「アルビオンに渡る船は明後日にならないと出ないそうだ」 「急ぎの任務なのに・・・」 わたしは口を尖らせた、ウェールズ様が敵の手に落ちるのも時間の問題なのに。 「あたしはアルビオンに行った事がないからわかんないけど、 どうして明日は船が出ないの?」 キュルケの方を向いて、ワルドさまが答えた。 「明日の夜は月が重なるだろう?スヴェルの月夜だ。その翌日の朝、 アルビオンが最も、ラ・ロシェールに近づく」 ワルドさまは鍵束を机の上に置いた。 「さて、じゃあ今日はもう寝よう。部屋を取った。キュルケとタバサは相部屋だ。 そしてギーシュとプロシュートが相部屋」 キュルケとタバサ、ギーシュとプロシュートが顔を見合わせる。 「僕とルイズは同室だ」 わたしは、はっとしてワルドさまの方を見た。 「婚約者だからな。当然だろう?」 ワルドさまが、あたり前の様に言った。それを言ってしまえばプロシュートと わたしが同室でも主人と使い魔で当然なんだけど・・・ 「大事な話があるんだ。二人きりで話したい」 そういわれて、断るわけにはいかなかった。 わたしとワルドさまは宿で一番上等な部屋に入った。 テーブルに座ると、ワルドさまはワインを杯につぎ一気に飲み干した。 「きにも腰掛けて一杯やらないか?ルイズ」 「はい、ワルドさま。いただきます」 わたしは言われるままにテーブルについた。 「ルイズ、その『ワルドさま』と言うのを止めてくれないか」 でも・・・ 「僕達は婚約しているんだ、十年もほったらかしにしていたのは悪いと思っている。 その溝を少しでも埋めていきたいんだ」 信じられなかった。婚約といっても両親同士が勝手に交わしたもので、ワルドさまは とっくに別の人を見付けているとばかり思っていた。 「わかったわ、ワルド」 「ありがとう、ルイズ」 わたしの返事にワルドは微笑み満足そうに頷いた。 「それで、ワルド大事な話って何?」 わたしはワルドに本題を促した。 「ルイズ、自分の系統は見つかったのかい?」 「いいえ、まだ見つかっていません」 「そうか、やはり・・・」 ワルドはわたしの返事に複雑そうな表情をした。 やっぱり婚約の事を後悔したのかしら。 「そうよ!やはり、わたしは『ゼロ』のルイズよ」 わたしは、堪らず声を荒げた。 「ルイズ、僕が君のクラスメイトの様にそんな事を言うと思っているのかい」 ワルドの目がつり上がった。 「だって本当の事ですもの」 自分で言って気持ちが沈んでいく。 「違うんだルイズ。きみは失敗ばかりしてたけど、誰にもないオーラを放っていた。 魅力といってもいい。それは、きみが他人には無い特別な力を持っているからさ。 僕だって並のメイジじゃない。だからそれがわかる」 「まさか」 「まさかじゃない。例えば、そう、きみの使い魔」 わたしの使い魔・・・異世界の暗殺者 「プロシュートのこと?」 「そうだ。彼の左手のルーン・・・。あれは、ただのルーンじゃない伝説の使い間の印さ」 「伝説の使い魔の印?」 「そうさ。あれは『ガンダールヴ』の印だ。始祖ブリミルが用いたという伝説の使い魔さ」 ワルドの目が光った。 「ガンダールヴ?」 そういえば、以前コルベール先生がプロシュートのことをガンダーなんとかと言おうとして オールドオスマンに口止めされてたっけ。 「誰もが持てる使い魔じゃない。きみはそれだけの力を持ったメイジなんだよ」 「信じられないわ」 わたしは首を振った。プロシュートの力は疑いようは無いが、自分がワルドの 言うようなメイジなんだろうか。 「四系統に当てはまらない系統、伝説の使い魔」 ワルドの目に妖しい光が灯る。 「これらの事は全て君が虚無の系統であることを示している」 虚無ですって!失われた伝説の系統。それが、わたしの系統だっていうの? 「この世界に始祖ブリミルが残した虚無の呪文が必ず何処かにある。僕がきっと その呪文を見つけ出し君に差し出そう。その時こそ、虚無の系統の誕生・・・いや、復活だ」 ワルドは熱っぽい口調でわたしを見つめた。 「それを信じろというの、ゼロのわたしに?」 「かわいそうに、周りに馬鹿にされ自分に自信がもてないんだね・・・この任務が 終わったら、僕と結婚しようルイズ」 「え・・・」 けっ結婚ですって、だっ誰と誰が? 「僕は魔法衛士隊の隊長で終わるつもりはない。いずれは国を・・・ このハルケギニアを動かすような貴族になりたいと思っている」 「で、でも・・・」 「でも、なんだい?」 「あの、その、わたしまだ、あなたに釣り合うような立派なメイジじゃないし・・・ もっともっと修業して・・・」 わたしは俯いて、続けた。 「あのねワルド。小さい頃、わたし思ったの。いつか皆に認めてもらいたいって。 立派なメイジになって、父上と母上に誉めてもらうんだって」 わたしは顔を上げて、ワルド見つめた。 「まだ、わたし、それができてない」 「僕は君を認めている、それじゃだめなのかい?」 「そんなことないの!そんなことないのよ!」 ワルドがわたしに結婚を求めている。・・・さきほどの伝説の使い魔、失われし 虚無の系統・・・。慰めなんかじゃなく、ワルドは本当にそれを信じているというの? 「わかった。取り消そう。今、返事をくれとは言わないよ。でも、この旅が終わったら、 君の気持ちは僕にかたむくはずさ」 ワルドの言葉に、わたしは頷いた。 「それじゃあもう寝ようか。疲れただろう」 ワルドが近づいて、唇を合わせようとした。わたしは無意識にワルドを押し戻した。 「ルイズ?」 「ごめんなさい、でも、なんか、その・・・」 ワルドは苦笑いを浮かべて首を振った。 「急がないよ。僕は」 わたしは再び俯いた。 どうしてワルドはこんなに優しくて、凛々しいのに・・・。ずっと憧れていたのに・・・。 結婚してくれと言われて、嬉しくないわけじゃない。 でも・・・わたしを認めてほしいと思う両親に、クラスメイトに。 そして、プロシュートに。
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前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔 ウルトラマンゼロの使い魔 第四十五話「全滅!ウルティメイトフォースゼロ」 双頭合成獣ネオパンドン 暴君怪獣タイラント 宇宙大怪獣アストロモンス 宇宙大怪獣改造ベムスター 光熱怪獣キーラ 宇宙スパーク大怪獣バゾブ 地獄星人ヒッポリト星人 登場 地下から劇場を突き破って出現した怪獣ネオパンドンは、二つの首から赤と青の炎を吐いて 建物を焼きながら、王宮への進撃を開始した。その背中を、劇場崩落のどさくさに紛れて 逃げおおせたリッシュモンがながめる。 「あの小娘のせいで予定が大幅に狂ったが、問題ない。そのまま王宮を焼き払ってしまえ」 自分を陥れたアンリエッタへの憎悪をたぎらせながら、両手に抱えている装置に念をこめた。 それに合わせてネオパンドンがけたたましく咆哮し、進撃の歩を早めた。 リッシュモンが持っているのは、ネオパンドンを操作するコントロール装置。元々はゴース星人が 使っていたものを、ある作戦を進めるヒッポリト星人に与えられた。持つ人間の憎悪が深いほど、 ネオパンドンは激しく暴れ回るのである。 本来の計画では、アルビオンへの亡命の用意が済んだところで、ネオパンドンを直接王宮に 出現させて、トリステインの中枢を破壊し尽くすはずであった。しかし、このまま王宮を襲わせれば、 結果に変わりはない。王宮の破壊が完了したら、手筈通りアルビオンへ国外逃亡するだけだ。 「その前に、一つ仕事を片づけんとな……」 王宮の襲撃はこのままネオパンドンに任せ、リッシュモンはヒッポリト星人が、力を与える 条件として言いつけてきたある「任務」を遂行するため、また、追っ手から逃れるためにその場を離れた。 「サイト! 怪獣がまたトリスタニアに!」 ネオパンドンの出現はもちろん、ルイズと才人も気がついていた。アンリエッタたちが リッシュモンを逮捕するために動いていて、今回は出番なしかと思っていたが、こうなったからには ウルトラマンゼロの出番だ。 ネオパンドンは、既に王宮の目と鼻の先に迫っている。魔法衛士隊が慌てて攻撃を仕掛け、 足を止めようとしているが、ネオパンドンは振り返りもしなかった。 『サイト、行くぜ!』 「おう! デュワッ!」 人気のない裏道で、才人は素早くウルトラゼロアイを装着し、ウルトラマンゼロに変身した。 「デヤァァァー!」 「キィィィィッ!」 変身直後の飛び蹴りがネオパンドンの胸部に刺さり、ネオパンドンは後ろに蹴り飛ばされて 王宮から離された。ゼロは王宮の前に着地して、盾となる。 『ここから先には一歩も通さねぇぜ! さぁ来やがれッ!』 「キィィィィッ! キィィィィッ!」 啖呵を切って挑発するゼロ。それに煽られたかのように、ネオパンドンはすかさず起き上がって ゼロに突進を仕掛けていった。 「ぃよい……しょっとぉッ!」 内側から崩落し、見る影もなくなった劇場跡の瓦礫の山から、グレンが馬鹿力を発揮して 瓦礫を下から押しのけた。かばったアンリエッタに手を差し出す。 「怪我はねぇか? ったく、あのタヌキジジイ、とんでもねぇことしやがるな」 「は、はい……ありがとうございます……」 頬を赤らめて手を取り、瓦礫の山から這い出すアンリエッタ。それからグレンと協力し、 同じく瓦礫の下敷きとなった銃士隊員たちを救出する。不幸中の幸い、重傷の者はいなかった。 「皆の者、無事ですね?」 「陛下! 大変です!」 状況を確認した銃士隊員の一人が、息せき切ってアンリエッタに報告した。 「リッシュモンが見当たりません! 騒動に紛れて、逃亡を図ったものかと!」 「何ですって!?」 驚愕するアンリエッタ。ここでリッシュモンを取り逃がし、アルビオンへと逃げられたら、大変なことになる。 「まだそう遠くへは行ってないはずです! すぐに港へ続く道を封鎖! リッシュモンの邸宅も 押さえなさい! 残りはリッシュモンの捜索を! 別行動のアニエスにも連絡を!」 「はッ!」 銃士隊は速やかに命令に従い、バラバラに駆け出していった。アンリエッタとグレンは、 未だ暴れるネオパンドンを見やる。ちょうどゼロと組み合ったところだ。 「あっちはゼロが相手してるな。なら安心だぜ。俺もジジイを捜すの手伝うぜ!」 「重ね重ね、感謝致します。ではわたくしたちも行きましょう」 広いトリスタニアから一人を見つけ出すには、人手は一人でも欲しい。アンリエッタも グレンとともに捜索を開始した。 「デヤッ!」 ゼロが突き飛ばしたネオパンドンにゼロスラッガーを投擲する。これまで幾多の怪獣に とどめを刺してきたふた振りの宇宙ブーメランは、空を切り裂いてネオパンドンへ飛んでいく。 早速勝負を決める気か。 「キィィィィッ! キィィィィッ!」 しかしネオパンドンは素手で、両方のスラッガーをはっしと掴んで止めた! 『何ッ!?』 十八番の武器が怪獣に掴まれて止められたことに驚きを禁じ得ないゼロ。ネオパンドンが スラッガーを投げ返し、頭に戻る。 「キィィィィッ! キィィィィッ!」 ゼロスラッガーを破ったことで、ネオパンドンは得意になっているようであった。身体を上下に 小刻みに動かし、嗤うように鳴き声を上げる。 『へッ、少しはやるみたいだな……。上等だ!』 下唇をぬぐったゼロは落ち着きを取り戻し、ネオパンドンに正面から飛び込んで格闘戦を挑んだ。 『うらッ!』 「キィィィィッ!」 取っ組み合うゼロとネオパンドン。だがネオパンドンの筋力はかなりのもので、すぐにゼロを押し返す。 ゼロの体勢が崩れたところで、側頭部に強烈なパンチを入れた。 『うぐッ!』 傾いたゼロをそのまま引き倒し、その上に飛び乗って全体重を掛けて踏みにじる。 『うぐおぉぉッ! この野郎ッ!』 げしげしと蹂躙されるゼロは力ずくでネオパンドンを己の上からどかしたが、直後に蹴り上げを 食らって蹴り飛ばされた。 「キィィィィッ! キィィィィッ!」 転がっていったところに赤と青の火炎弾を連続発射するネオパンドン。爆発と炎上がゼロを襲う! 『ぐぅぅぅぅッ!』 熱と衝撃に晒されて苦しみながらも、ゼロは果然と立ち上がった。 『くそぅ……すげぇパワーだな』 ネオパンドンは遺伝子操作により、素の能力の時点で元のパンドンよりパワーアップがなされている。 その上、コントロール装置からリッシュモンの悪しき思念が送られ続けており、それで更に力を増している。 そのため、パンドンからは戦闘レベルが数段も上昇しているのだ。普通の怪獣とは訳が違う。 『だが、ただの力任せじゃあ、このウルトラマンゼロには敵わねぇぜ! イヤァッ!』 しかしゼロの闘志は少しも揺るがない。宇宙拳法の構えを取り直して再度ネオパンドンに飛び掛かり、 今度は相手の攻撃を受け流すことに集中する。 「キィィィィッ! キィィィィッ!」 ブンブンと腕を振り回して打撃を見舞うネオパンドンだが、そんな単純な攻撃は、いくら力があろうと 宇宙拳法の達人のゼロに呆気なく受け流された。そしてゼロは相手の隙を突き、片腕をはっしと捕らえて、 「デヤァァァァァッ!」 一本背負い! ネオパンドンの巨体が大きく宙を舞い、空き地の上に落下した。そして立ち上がる相手に、 エメリウムスラッシュの一撃! 「キィィィィッ!」 光線が直撃して、さしものネオパンドンも動きを止めた。この隙に、ゼロは一発逆転の大技を繰り出す。 『フィニィッシュッ!』 ゼロスラッガーを宙に放って固定。そしてジャンプして横薙ぎのキックを入れた。ウルトラキック戦法だ! 超加速したスラッガーを目で捉えることが出来ず、ネオパンドンは胸部を貫通された。 そのまま後ろにバッタリと倒れ込み、爆発四散する。 『ふぅ……思ったよりも苦戦したぜ』 着地したゼロの頭にスラッガーが戻り、ゼロは大きく息を吐いた。これでトリスタニアは救われ、 リッシュモンの陰謀は粉砕された……。 といつもならなるところだが、今回は違った! 突如ゼロの背後の地面が裂け、そこから フックつきのロープが飛んできたのだ! 『なッ!?』 ロープはゼロの首に巻きつき、締めつける。突然の事態に激しく動揺するゼロ。 『な、何事だ!?』 首を絞められて苦しみながらも、背後に振り返って状況を確認する。その時に激しい地揺れが起こり、 地面の裂け目が広がった。 「キイイイイィィィィッ!」 そしてその裂け目より、五体のパーツに一貫性がなく不自然につなぎ合わされている、 丸で複数の人形をバラバラにしてパーツを一つずつ組み合わせたかのような異形の怪獣が 地上へ這い出てきた。ゼロの首を絞めるロープは、その怪獣のトゲつき鉄球になっている 左手から伸びていた。 『あいつは……タイラント!』 ゼロが驚愕して叫んだ。大宇宙の凶悪暴君と呼ばれる大怪獣。凶悪無比! その頭はシーゴラス。 そしてその腕は超獣バラバ。胴は恐るべき宇宙大怪獣ベムスターのものだ。それが怪獣たちの怨念が 結集して誕生した、恐るべき合体怪獣タイラントである! 「キイイイイィィィィッ!」 タイラントが地上に上がると、その後ろに続いて、更に怪獣たちが出現する。 「キュイイイイイイ!」 甲虫が直立したような姿で、黄色く大きな両眼が爛々と顔面に輝く怪獣、キーラ。 「カ―――ギ―――――!」 タイラントの胴体になっている、恐るべきベムスター。それもただのベムスターではない。 ヤプールの手による改造が加えられて更に強力になった、改造ベムスター! 「キイイィィィ!」 左腕が鎌、右腕が鞭、そして腹部が巨大な花となっている、超獣よりも強い大怪獣アストロモンス。 「ギュルウウ! ギュルウウ!」 頭部が胴体と比較して異様に大きく、悪魔のような形相をしている怪獣、バゾブ。 以上の五体の怪獣が地中から出現し、ゼロの前に並んだ。 『こいつら、宇宙怪獣じゃねぇか! どうして地中から出て来るんだ!?』 疑問に思うゼロだが、今はそんなことを気にしていられる状況ではない。大怪獣軍団は、 示し合わせたようにゼロへの攻撃を開始したのだ。 「キイイイイィィィィッ!」 タイラントがロープを引っ張り、ゼロを横転させて市中を引きずり回す。ゼロが無惨にやられる様に、 避難している民たちが悲鳴を上げた。 『うおおおおッ! くッ、ふざけやがってぇ!』 振り回されてボロボロにされるゼロだが、どうにかロープを首から解いて引き回しの刑から脱した。 しかし、それを待っていたとばかりに残りの怪獣たちが一気に攻撃してくる。 「キュイイイイイイ!」 キーラが大きな目を一旦閉じ、そしてカッ! と開く。それに伴って眼球から強烈な閃光が発せられた。 『うああぁぁッ!? くそッ、目がッ!』 真正面から閃光を浴びたゼロは、目を焼かれて視界を失ってしまった。敵を見失って立ち尽くす 彼にアストロモンス、改造ベムスター、バゾブが迫る。 「キイイィィィ!」 『ぐああぁぁぁッ!』 アストロモンスが鞭でゼロをビシバシ叩いた上に、花から噴射される消化液を食らわせた。 「カ―――ギ―――――!」 「ギュルウウ! ギュルウウ!」 『うおああぁぁぁぁッ!』 改造ベムスターは目からレーザーを、バゾブは頭頂部のマゲのような触覚から電撃光線を放って ゼロの身体を焼く。 「キイイイイィィィィッ!」 『ぐああああああああ――――――――!』 最後にタイラントが口から放射する爆炎を食らって、ゼロは大きく吹っ飛ばされた。 さすがのゼロも、五対一では多勢に無勢。怒濤の攻勢に押され、カラータイマーが点滅を始める。 リッシュモンの捜索中だったグレンだが、ゼロの苦戦を目の当たりにして、大きく舌打ちした。 「ゼロがやべぇぜ! アンリエッタ姫さん、悪いが手伝いはここまでだ。俺はゼロの加勢に行く!」 「ええ。どうかトリスタニアをお願いします!」 アンリエッタにひと言断って、グレンは戦場へと駆けていく。途中で高く手を掲げて、 変身のために叫んだ。 「ファイヤァァァ―――――――!」 ウェールズの肉体が赤く発光し、グルグルときりもみ回転しながら巨大化。燃えるマグマの戦士、 グレンファイヤーへと変わった! 「キイイイイィィィィッ!」 タイラントを先頭に、五体の怪獣は伏しているゼロへ迫る。その前に、グレンファイヤーが立ちはだかった。 『こっから先は通行止めだぁー!』 『はぁぁぁッ!』 『ジャンファイト! ジャァンナックル!』 グレンファイヤーと同時に、ミラーナイトとジャンボットも戦場に駆けつけた。グレンファイヤーは タイラントと改造ベムスターに激突して押し返し、ミラーナイトはミラーナイフでキーラとバゾブを迎撃、 ジャンボットはジャンナックルをアストロモンスに食らわせた。 「キイイイイィィィィッ!」 「キュイイイイイイ!」 「キイイィィィ!」 押し返された怪獣たちはひるんで動きを止めた。その間に、グレンファイヤーがゼロに肩を貸して立たせる。 『ゼロ、大丈夫か?』 『ああ……まだ戦えるぜ……!』 ゼロは負傷が激しいが、戦闘続行できないほどではなかった。ウルティメイトフォースゼロの四人は その力を一つにして、怪獣軍団へと立ち向かっていく! 『うらぁぁぁぁッ!』 「キイイイイィィィィッ!」 「カ―――ギ―――――!」 ゼロは一瞬燃え上がってストロングコロナゼロに変身し、タイラントと改造ベムスターに殴りかかった。 二体の怪獣は、ストロングコロナの超パワーによって押し返されていく。 「ギュルウウ! ギュルウウ!」 『ぐおおおぉぉッ!?』 バゾブがジャンボットに近づくと、それだけでジャンボットはショートし、大きく苦しんだ。 『この怪獣……触覚から強力な電磁波を放っているな! 私のようなロボットの天敵といったところか……!』 バゾブは常に電磁波を放出し、自身の周囲に機械を狂わせる磁界を形成している。その影響は、 エスメラルダが誇るスーパーロボットのジャンボットといえども苦しむほどであった。 『おらぁぁぁー!』 「ギュルウウ!」 ジャンボットが危ないところを、グレンファイヤーがバゾブに体当たりして引き離したことで救った。 『こいつの相手は俺が引き受けるぜ、焼き鳥!』 『私の名前はジャンボットだと言っている!』 戦闘中でもいつも通りの二人。バゾブはグレンファイヤーに任せて、ジャンボットは背後から 迫っていたキーラに振り返って、ショルダータックルをお見舞いした。 『せいッ! はぁッ!』 「キイイィィィ!」 ミラーナイトはアストロモンスの鞭と鎌の振り回しをくぐって、水平チョップを喉に炸裂した。 更に腹部の花に連続パンチを入れて悶絶させた。 「うおー! いいぞー!」 五体もの恐るべき敵が相手でも、ウルティメイトフォースゼロは一歩も退かない。彼らの善戦に 民たちが歓声を上げた。 だが四人が一旦身を寄せたところで、事態は急変した。 「キョオオオオオオオオ!」 怪獣たちのものではない鳴き声がどこかから響くと、四人の頭上に突然巨大なカプセルが出現したのだ! 『何ッ!?』 ゼロたちがかわす間もなく、カプセルは一人ずつに覆い被さって、四人は瞬く間に閉じ込められてしまった。 これにトリスタニアの全ての人間が驚愕する。 『フハハハハハ! ハーハッハッハッハッハッ!』 そんな中、一人だけ高笑いする者が。怪獣たちの中央に、巨大化したヒッポリト星人が出現したのだ。 『まんまと罠に掛かったなぁ、ウルティメイトフォースゼロ!』 『テメェはヒッポリト! そうか、ここまでの全部が、お前の罠だったのか……!』 『今頃気がついても、遅すぎるぞ!』 カプセルの中で悔しがるゼロ。ネオパンドンも、タイラントたち怪獣軍団も、全てはゼロたち全員を 誘き出して、ヒッポリトカプセルで捕獲するためのものだったのだ。 『残念だなぁ。自分で自分の最期は見られないだろう。俺は貴様らの最期を、ゆっくりと見せてもらうぞ!』 ヒッポリト星人の頭頂部の触角が光ると、カプセルに液体がしたたり始めた。液体がゼロたちの 身体に触れると、そこがカチカチに固まっていく。どんなものでも固めてブロンズ像にしてしまう、 ヒッポリト星人の恐怖の武器、ヒッポリトタールだ! 『うあああああッ! や、やばいッ!』 『苦しめ! 苦しめ! だんだん死んでいくのだぁー!』 圧倒的優位に立ち、ゼロたちの焦りもがく様を楽しむ、残虐なるヒッポリト星人。そしてゼロたちを 救出する者は、もういない。ウルティメイトフォースゼロは全員捕まってしまったのだ! 『くっそぉッ! どうにかして脱出しねぇと……!』 ゼロたちは必死にカプセルからの脱出を図る。が、彼らがどんな抵抗をしても、カプセルはびくともしない。 『無駄だぁ! ヒッポリトカプセルは、内側からは絶対に壊せんのだぁ!』 ウルティメイトフォースゼロの抵抗を嘲笑い、勝利を確信したヒッポリト星人は、怪獣たちに命令を下す。 『邪魔者はもういない! 怪獣たちよ、この街を焼き払ってしまえぇー!』 「キイイイイィィィィッ!」 タイラントたちが再び動き出し、トリスタニアに火を放っていく。 「うわあああぁぁぁぁぁぁ―――――――!」 「きゃああああああ――――――――――!」 怪獣軍団に街を蹂躙されていき、人間たちからは大絶叫が巻き起こった。魔法衛士隊が必死に 攻撃を仕掛けるも、精神力を振り絞っても五体もの怪獣を止めることは、彼らには出来なかった。 『うるさいハエどもだ! 叩き落としてくれるッ!』 しかもヒッポリト星人が合わせた両手からヒッポリトミサイルを発射し、騎士たちを撃墜する。 「うわああぁぁぁぁ―――――――!」 『やめろぉーッ! くそぉーッ!』 絶叫するゼロだが、今の彼では、冷酷なヒッポリトの軍勢の暴虐を阻止することは出来ないのだ。 それどころか、己の死が間近に迫っている。 「何てこと! ゼロたちが、一網打尽に……!」 ほとんどの市民が逃げ、無人のチクドンネ街の一画で、ルイズは絶望的な光景を見上げていた。 このままではウルティメイトフォースゼロは全滅し、最悪の結末がやってくる。 竜騎士の何人かはカプセルを攻撃し、ゼロたちを解放しようとしているが、彼らの火力では 破壊は叶わなかった。しかし、それが出来る者がこの場に、たった一人だけいる。 「待ってて、みんな。わたしの『爆発』なら……!」 キングジョーをも粉砕した虚無の『爆発』ならば、カプセルの破壊も出来るはずだ。そう考えて、 ルイズは呪文を唱え始めた。実際、ヒッポリトカプセルは内側の耐久を重視しており、外側からの 衝撃にはそこまで強くない。ルイズならば助け出せるだろう。 だが、ヒッポリト星人の狡猾な策略は、ルイズにまで及んでいたのだ。 「見つけたぞぉ!」 突然野太い男の声が聞こえたかと思うと、足元に火の球が飛んできて炸裂した。それによって ルイズは倒れ、呪文が中断される。 「きゃあッ! な、何!?」 振り返ると、リッシュモンがこちらに杖を向けていた。 「リ、リッシュモン高等法院長!? どうしてこんなところに……!?」 目を丸くするルイズだが、聡明な彼女はすぐに察しが行った。リッシュモンは敵の間諜で、侵略者の手先なのだ! 「法院長は既に元だよ。残念ながら、つい先ほど罷免を受けてな」 リッシュモンはうそぶき、ルイズを冷酷な目つきでにらむ。 「ラ・ヴァリエール家の三女、ルイズ・フランソワーズ。間違いないな。こんなちっぽけな小娘が、 最も警戒すべき人間とは……世の中とは不思議なものだ。まぁよい。お前を捕まえ、ウチュウ人どもに 差し出す、それだけで法院長時の収入とは比較にならん莫大な富が手に入るのだ。何とも簡単な仕事よ」 リッシュモンは、ルイズを捕らえに来たのだ。ルイズは一気に青ざめる。 これまでのゼロたちの窮地の内の何度かは、ルイズの虚無の魔法でひっくり返した。虚無は既に、 ゼロたちの最後の切り札になっている。しかし敵はとうとう、ルイズへの対策も取ってきた。 今ここでルイズがやられてしまえば、本当にウルティメイトフォースゼロはおしまいだ! 「くッ……!」 リッシュモンに杖を向けるルイズだが、リッシュモンは相変わらず冷たい視線を向けた。 「やめておくといい。私はもう呪文を唱え終えた。後は解放するだけだ。どう考えても、私の魔法の方が早いぞ。 変に抵抗するんじゃない。もし死んでしまったら、ウチュウ人どもにケチをつけられるかもしれないではないか」 それがハッタリではないことは、ルイズにも分かる。身動き一つ取れない、絶体絶命の状況。 その間にも、ゼロたちはブロンズ像に変えられつつある。 このままトリステインは、最後の日を迎えてしまうのだろうか? 前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔
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法皇は使い魔~プロローグ~ 法皇は使い魔~第一章~ 法皇は使い魔~法皇の使い魔第二章~
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「その傷はどうした?半人半妖になる前に受けた傷か?」 「今から死にゆく者に、教えてやる理由はあるのか?」 周囲を山に囲まれた盆地の中の崖に立つ二つの人影がそこにあった。 「いや、両腕があればなんとか…といったところだろう。お前…それほど強くて、なぜNo5に留まっている?」 「悪いが、それに答えてやる理由も無いな」 隻眼の戦士が剣を構え、両腕を失った戦士にその切っ先を向ける。 両腕が無い戦士が目を閉じる。 剣を握れぬ以上、反撃することもできず観念したのだろうと隻眼の戦士は判断し、すれ違いざまにその剣を振り下ろした。 (全てが済んだら必ず返しにくる。だからお前も必ず生きていてくれ) (心配しなくても私はそう簡単には死なん) 微動だにしなかったが、数刻前にした会話が頭に浮かび、体が反射的に動いた。 「……どういうつもりだ?」 「すまんな、まだ死ねんようだ」 振り下ろした剣から血が落ちているが、右肩を少し切断しただけだ。 「両腕を失ったお前に何ができる?」 「出来の悪い弟子に触発されたようでな…元No2の首、そうそう簡単に取れると思うなよ」 妖力解放。瞬時にその場から離れ崖を飛び降りる。 「…チッ、隠遁したいたとはいえ、かつてNo2だっただけの事はある」 追おうとするが、スデに姿は見えない。 こうなってくると、元来の妖力の大きさは向こうが上なだけに、こちらも妖力解放せねば追いつけないが、 隻眼の戦士にはそれはできない。 「…妖気は外に漏れ出ている…ガラテアに任すか」 片目を失った日から何のために妖気を抑え続けてきたのか。 その目的を果たすためには、こんなところでそれを無に帰すわけにはいかない。 妖気を探るが、突如として気配が消えた。 「消えた…?妖気を消す薬を持っているとは思えないが…どういう事だ?」 同時刻―少し離れた森― 借りたものを借りた戦士が、森の中を歩いているが突如、右腕に違和感を感じた 「イレーネ…?何か今…右腕が…な、何だ…?何か…とんでもないものが…くる!」 何か違和感を感じたが、遠くの方から木をなぎ倒すような音と、凄まじく強大な気配が近付いてきてそれどころではなくなった。 「あら、こんにちは。奇遇ねぇ、こんなところで会うなんて」 さらに同時刻―トリステイン魔法学校― 「宇宙の果てのどこかにいるわたしのシモベよ 神聖で美しく、そして、強力な使い魔よ! わたしは心より求め、訴えるわ…我が導きに、答えなさい!!」 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、現在サモン・サーヴァント二回目に挑戦中。 一回目は綺麗なクレーターが地面に残るぐらいの爆発が起きた。 それはいつもの事なので、野次が飛ぼうと気にしない。 MY予想では47回は爆発する覚悟でいるのだから…ッ! だが、予想に反して変化は2回目の爆発に訪れた。 煙が収まるにつれ何かの影が見えたのである。 「…や、やった!」 そう喜ぶが、それも長くは続かない。 その影が動くと、人の形になったからである。 この場合、考えられる選択肢は亜人、ゴーレム、人間のどれかなのだが、 召喚者の実力を非常によく知っている者達からすれば人間、それも平民だという流れになるのは当然だ。 「サモン・サーヴァントで平民を呼び出すなんてさすが『ゼロ』だな!」 「~~ぅるさい!まだ分からないじゃない!!」 「魔法も使えない『ゼロ』なんだから平民しかないじゃないか!」 周りが嘲りを含む笑いに包まれるが、煙が晴れ、その姿を見てぶっちゃけ全員凍りつく事になった。 女性ながら身長180サント前後の長身。 腰にまで届くかという、色素が抜け落ちたかの様な混じりけの一切無い銀色の髪。 鋭さを備えた銀色の瞳。 そして、尖った耳。 以上の事から、生徒及び引率の教師が導き出した結論は唯一つ。 『どう見てもエルフです。本当にありがとうございました』 「「「「ぜぜぜ、ゼロのルイズが…エルフを召喚したぁぁぁぁ!!!」」」 そう叫ぶと同時に、周りに居た生徒が一斉に距離を空ける。 残っているのはハゲ頭の教師と呼び出した当人だけだ。 ルイズはルイズで、動けないでいるだけなのだが。 もっとも、イレーネもイレーネで状況が掴めないでいる。 覚えている限り、自分が居た場所は周囲を山に囲まれた盆地で、こんな開けた平原ではない。 何より、周りに人なぞ居なかったはずだ。ラファエラから逃れるため妖力解放したとしても、こんな場所に瞬時に着けるはずもない。 周りが怯えた様子なのは別に気にしなかった。 銀眼と言えば半人半妖のクレイモアと呼ばれる戦士しか居ないのだから、恐れられて当然の事だ。 だが、自分の体に違和感を覚え視線を右に向けた時、思わず衝撃が顔に出そうになったものの、 辛うじて堪えた。 伊達に、片腕のみの妖力完全解放というロクでもない技を顔色一つ変えずに使うだけの強固な精神力を持ってはいない。 (クレアに与えた右腕が…あるだと!?) 己の妖力を探り、それをほとんど使い果たしている事に気付くが、正直な所納得いっていない。 (攻撃型の私が、あの短時間で…しかも意識を失っていたというのに右腕を再生したというのか…?) 崖から飛び降りた時、何か鏡のような物に当たった気はするのだが、 さすがに防御型ではないからには、理由は分からないにしろ再生できたとしても、常人と同じ程度の力しかない。 (状況が掴めんが…聞けば分かるか?) 辺りを見渡すが、周囲に居るのは距離を空けている少年少女達と、ハゲ頭が眩しい中年男、 そして呆然としている桃色の髪の少女だけだ。 この場合、状況的に見てハゲの中年がこの場の責任者だろう。 そう判断し、問いただす事にしたのだが…色々ビビッているご様子。 クレイモアが現れる場所=妖魔が潜伏している、とでも思っているのだろうと判断したが、どうも周りからエルフなどという聞きなれない言葉が聞こえる。 「悪いが訊きたい事がある」 「な、なんだね…?」 「ここはどこだ?なぜ私はここに居るんだ?」 教師は言葉に詰まった。 下手に『ここはトリステイン魔法学校で、あなたを生徒の使い魔として召喚した』などと言えば、先住魔法を喰らう恐れがあったからである。 『炎蛇』の二つ名を持つ彼でも、先住魔法を行使するエルフの相手は荷が重過ぎる。ましてや、生徒を守りながらなど…。 どう答えようかと必死こいて悩んでいたが、別方向から答えが返ってきた。 「こ、ここはト、トリステイン魔法学校よ」 「トリステイン?聞かん名だな」 聞かない地名だったが、組織と戦士の活動地域は47もの地区に分けられた大陸にあるのだ。 文明Lv的にもほとんど変わりないので、よもや別世界などとは微塵も思ってはいない。 「ミスタ・コルベール…!も、もう一回召喚させてください!!」 「…それは駄目だ、ミス・ヴァリエール。春の使い魔召喚の儀式は神聖なものだからやり直しはできないのだよ」 「で、でも…エルフを使い魔にするなんて聞いた事がありません!」 少々考え事をしている横で『使い魔』だの『エルフ』だのワケの分からない単語が飛び出ている 「話し込んでいるところ悪いが、今一状況が掴めん。説明してくれないか?」 その銀色の威圧感たっぷりの目で二人を見据える。 (うう…怖い…。でも、使い魔って事分かってないみたいだし…やるなら今しかないかしら?) 「説明したいから、ちょ、ちょっとしゃがんでくれない…?」 「いいだろう」 目線が合う高さまで頭を下げると、ルイズが杖を目の前で振り 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」 等と呪文らしき言葉を唱え、目を閉じ顔を近づけてくる…。 ギン! という音がしたような気がし、目を開けるとえらいモノが飛び込んできた。 「ふぇ…?目の…色が変わってる!?」 今の今まで銀色だった瞳が金色に変わり、何だかよく分からない妙な気配が漂っている。 その瞬間、まずい!と心の底から思った。 例えるなら、蛇に睨まれた小動物のような絶対的捕食者に対する恐怖。 そして、まばたきをした瞬間、その姿が掻き消えていた。 「ど、どこに…!?」 周りを見回すが、どこにも姿は無い。 そうやってあたふたしていると、後ろからえらくドスの効いた…何かこう殺気混じりの声が聞こえてきた。 「…その趣味は無いんだが、何て事をしてくれるんだ?」 恐る恐る後ろを振り向くと、こちらを見下ろしている鋭い銀眼と思いっきり目が合った。 (目の色が戻ってる…というか、何時の間に!?) 瞬きはほんの一瞬。その隙に後ろに回り込むなど到底不可能だ。 「せ、せ…先住魔法だ!!」 そんな声があがると同時に、生徒達が空を飛び逃げ惑う。 残りの妖力といっても、実際は瞳の色が変わる程度しか残っていなかったのだが、 『微笑』のテレサという桁外れの存在でNo2に甘んじていたものの、歴代No1にも匹敵する力の持ち主である。 『疾風』のノエル程ではないが、一割程度の妖力解放でも瞬きの瞬間に背後を取るなど容易い事だ。 …まあ、そのありえない移動速度を目の当たりにして、生徒達はエルフの使う先住魔法と判断し逃げたのだが。 その飛んでいる姿を見て、驚いたのはイレーネも同じだ。 「飛行型…妖魔か!?」 そうは思ったが、飛行型とは言え妖力を全快にせず人間の姿のまま空を飛ぶなどありえない事だ。 妖力探知も行うが、やはり妖気なぞ微塵も感じられない。 「…そういえば、魔法とか言っていたな。しかし、そんなものが存在するとは聞いた事も無い」 「…魔法を知らない?…エルフじゃないの?」 「エルフというのがどのようなものかは知らんが、私が居た場所では我々は『クレイモア』と呼ばれている」 「き、君は一体どこから来たというのだね?」 「その前に、私が何故ここにいるかという事を説明してもらいたい」 「君は、サモン・サーヴァントによって、ここに呼び出されたのだよ」 「サモン・サーヴァントだと?」 「ゲートを通して対象を召喚する魔法なのだが…心当たりは無いかね?」 「…あの鏡のようなやつか?」 「恐らくそれだろう。それで、さっきの質問なのだが」 「私がかつて属していた組織は東の地にあるが…本当に知らないのか?『クレイモア』という存在を」 「東…君はあのロバ・アル・カイリエから来たのか!?東の地ではエルフの事を『クレイモア』と言うのか…興味深いな」 「私が居た所は47の地区に分けられた大陸で、一地区に一人戦士が担当しているのだが…トリステインなどという地名は聞いた事が無い」 「大陸…別の大陸という事か。面白い…実に面白い!」 ちょっとテンションが上がってきたコルベールと呼ばれた教師だが、ルイズは放置食らっている。 「一つ聞くが、この地に『妖魔』は居るのか?」 「『ようま』…どういったものなんだね?」 「簡単に言えば、人の臓物を好んで喰らう化物だ」 「オーク鬼みたいなものかね…?」 オーク鬼の説明を受けるが、全然妖魔とは違う。 他にもいくつか候補が挙げられるが、全て今まで相手をしてきた妖魔とは異なるものだった。 今度は妖魔の説明をしたが、そんなタイプの怪物は居ないと言われる始末。 「いや、驚いた…。そんな化物が存在するとは、君がいた場所は随分と物騒なんだね」 「驚いたのはこっちも同じだ。ドラゴンなどがいるなど到底信じられん」 覚醒者なら、そんな形をした者も居るかもしれないと思ったのだが、話を聞く限り種族として存在する以上、それは覚醒者ではない。 話を纏めると『妖魔はこの地に存在しない』『故に組織の力もこの地には及んでいない』『ただし、妖魔の代わりに妙な化物が多数存在する』 という事になったが、今のイレーネには好都合だ。 再生できた理由は分からないが、常人程度の力しか持たないこの右腕では最下位Noの戦士すら倒せない。 もちろん、再生能力や妖力解放は通常と同じよう備わっているし、脚はその力を失っていない。 まぁ、『クレイモア』と呼ばれた自分が剣を用いず足技で格闘戦をしている姿は、あまり想像できなかったが。 そこら辺の人間ならそれで十分すぎる程の戦力になるだろうが、戦士を相手にするとなるとそれだけでは無理だ。 まして、元No2である自分に差し向けられてくる者なら、上位ナンバーである事は確実なのだ。 そういう事から、組織の力がこの地に及んでいないという事は、非常に有難かった。 もちろん、万が一に備えて無駄な妖力解放はしない方が良い。 組織に探知されても厄介だし、もし覚醒でもすれば、組織の力が及んでいない地域だけあって、国の一つや二つを滅ぼしかねない。 そういった観点から、妖力を使うとしても一割程度に抑えておいた方がいいと決めた。 高速剣に関しては妖力を腕のみに止める技なので、覚醒への影響は少ないだろうが どのみちこの腕では持続力はともかく、力と剣速は右腕を託す前のクレアにも及ばない使い物にならない高速剣しかできないだろうから、使う必要は無い。 場所のに関する状況は概ね理解できたので、本題の召喚された理由を問う事にする。 「それはいいとして、私をサモン・サーヴァントとやらで召喚したのは何故だ?」 「その…言いにくいのだが、君は使い魔として呼び出されたのだよ」 「使い魔だと?」 「使い魔というのは契約を行い主人に仕える存在で、 本来なら幻獣や動物を呼び出すものなのだが…エルフが召喚されたのは今回が初めてだ」 「組織に属しているという事とあまり変わらんな」 とうの昔に離反しているのだが、早い話、主従になれという事かと認識した。 一線から退き、託すものは全てクレアに託した身ではあるが、 生きていてくれと言われた手前、そう簡単に死ぬつもりは無い。 プリシラを狩るという事が、どれだけ気の遠くなるような事かは身を持って知っている。 例え順調に事が運んだとしても、1~2年では済まないはずだ。 どのみち、今の妖気が漏れ出ている状態で組織の手の届く地に戻れば、一発で捕捉されてしまうだろう。 放置されているルイズと目が合ったが、テレサと同じような事をしてみるのも悪くないと思った。 もっとも、ちびクレアとルイズとでは年齢が大分違うのだが。 「まだ名前を聞いていなかったな」 「ルイズ…ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ」 「私の名はイレーネ。いいだろう、ルイズ。お前の使い魔とやらになってやるよ」 声にこそ出さなかったが、ルイズは内心、天高く拳を突き上げ「キターーーーーー!!!!!!!」と叫んでいた。 何せ、エルフである。先住魔法を行使し、並のメイジ10人分の力を誇るとまで言われているあの種族が使い魔になると言ってきたのだ。 気が変わらないうちにと、早速コントラクト・サーヴァントにとりかかる。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」 先程と同じ呪文を唱えるが、打って変わって声の調子はものっそい嬉しそうである。 (やれやれ…これが契約か) それが終わると、イレーネの体…特に左肩が熱くなった。 「…ッ」 普段から妖魔や覚醒者に相対している身であるから、この程度の熱さ等どうという事は無い。 「コントラクト・サーヴァントは無事にできたね。どれ、ルーンの確認をさせてもらうよ」 だが、イレーネが肩のマントを捲ると二人が固まった。 それもそのはず。左腕が存在していないのだから。 「珍しいルーンだが…その、左腕はどうしたのだね?」 そう聞かれた瞬間、イレーネの顔が曇る。 さすがに、まだあの時の圧倒的な恐怖は頭からこびりついて離れていない。 ルイズも、少しばかり契約した事を不安に思った。 腕が一つ足りない使い魔ってどうよ?と 「まあ、聞かれたくない事もあるのだろう。私は先に教室に戻っているよ。皆も既に戻っているようだしね」 そう言うと、コルベールが空を飛び学園へと帰っていく。 「見事なものだな…ところで、お前は飛ばないのか?」 仮にも契約したのにお前呼ばわりされた事に怒ろうとしたが止めた。やっぱりあの目は怖い。 「う、うるさいわよ…!ほら、早く着いて来て」 深く追求せずに後を追いつつ、テレサが連れていたちびクレアとは大分違うタイプだな… 等と思いながら空を見上げた。 何かこう、普段見ているものとは一つ余計な物が見えた。 「…ったく、また分からんものが一つ増えたな…」 まだ夜にはなっていないが、薄っすらと月が二つデカデカと浮かんでいる光景がその銀眼に映った。
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前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔 ウルトラマンゼロの使い魔 第二話「これがウルトラの歴史だ!」 変身怪獣ザラガス 地底怪獣グドン 宇宙大怪獣ベムスター 雪女怪獣スノーゴン 用心棒怪獣ブラックキング 登場 『ヘアッ!』 『ガアアアアアアアア!』 新設されたばかりですぐに半壊させられた児童会館の前で、赤と銀色の巨人が一匹の巨大怪獣相手に戦っている。 怪獣の方は、攻撃を受ける度に体質変化を起こして、以降同じ攻撃に対する耐性を取得してパワーアップする 恐るべき能力を持った大怪獣ザラガス。そして巨人の方は、ウルトラマンゼロの大先輩にして、 現代の人類が記録している中で最初に地球に来訪して数々の怪獣の脅威から地球を護った偉大なる光の戦士、 初代ウルトラマンである。 しかしこの戦いは現在行われているものではない。ウルトラマンが地球を護っていた頃の、 アーカイブ映像なのであった。 『ヘアッ!』 ウルトラマンはザラガスのフラッシュ攻撃を食らって一時的に失明してしまったのだが、 敵の気配を敏感に察知することで、背後から忍び寄っていたザラガスの後ろ蹴りを浴びせて返り討ちにした。 『ガアアアアアアアア!』 蹴り飛ばされて転がったザラガスだが、起き上がると鉄塔をもぎ取って、それを武器にウルトラマンに接近する。 対するウルトラマンは、目が見えないというハンデがやはり大きく、無防備である。ウルトラマンのピンチ! そこに当時の地球防衛隊に当たる科学特捜隊自慢の万能戦闘機、ジェットビートルが飛来。 鉄塔を振り上げて今にもウルトラマンに攻撃しようとしていたザラガスの口の中に砲撃を撃ち込んだ! 『ガアアアアアアアア!』 その一撃ではザラガスを倒すには至らなかったが、攻撃を阻止して動きを止めさせることは出来た。 『ヘアッ!』 そしてジェットビートルが時間を作ってくれたお陰でウルトラマンの視力が回復。 直ちに彼の代名詞ともいえるスペシウム光線を発射した。 ザラガスは攻撃に対しての急激な進化を繰り返す恐ろしい怪獣だが、体質変化を起こしている最中に 更に受けた攻撃を耐えることは出来ない。その唯一の弱点を突かれて、ザラガスは絶命して大地に倒れた。 『シュワッチ!』 怪獣を倒して役目を終えたウルトラマンは、いつもそうするように、この時も空に飛び上がってどこかへと去っていった。 場所はガラリと変わり、岩山が連なる山脈。ここにウルトラマンの次に地球を度重なる 悪性宇宙人の侵略から守護していた深紅の戦士、ウルトラセブンが、十字架に閉じ込められて横たえられていた。 この時の彼はガッツ星人という侵略者に敗れて、地球人への見せしめとして処刑されかけていたのだ。 だがウルトラセブンを復活させる方法を知ったウルトラ警備隊が彼の所在地を突き止め、 間一髪のところでエネルギーを与えたことにより、セブンは再び立ち上がる! 『ジュワッ! ジュワーッ!』 指先からブレーク光線を発して、自らの動きを封じる十字架を破壊。勢いよく立ち上がると、 処刑しようと近づいていたガッツ星人の円盤をハンディショットで全機撃墜した。 『ジュワッ!』 そして飛行して円盤の母機の前へ接近。敵の攻撃をウルトラVバリヤーで防ぐと、 太陽光線からエネルギーを更に吸収して力を蓄え、ハンディショットを連発して円盤を集中的に攻め立てる。 『ジュワッ!』 十分攻撃を加えたところで、頭についているセブン一番の武器、アイスラッガーを外して空中に固定。 それにハンディショットを当てて威力、発射速度ともに増加させるという大技、ウルトラノック戦法を繰り出した! 『ジュワーッ!』 アイスラッガーの強烈な一撃を受けた円盤は跡形もなく粉砕され、ガッツ星人の侵略計画はここに潰えた。 更に場所は変わり、東京のど真ん中。異常気象の影響で目覚めた怪獣の一体であるグドンに、 地球を護る命を帯びて来訪した後のウルトラ兄弟の四男、ウルトラマンジャックが挑む。 『グオオオオオオ!』 『ヘアーッ!』 この時はグドンの他にツインテールという別の怪獣がいて、ジャックは二対一の状況に苦しめられていたのだが、 MATの活躍によりツインテールとグドンが衝突。結果ツインテールが絶命し、ジャックとグドンの一騎打ちの形になった。 そしてこうなったからには、ジャックは負けない。 相手の懐に潜り込み、グドンを背負い投げ。その後体当たりを食らって地面に転がるが、 向かってくるグドンの足を刈って転倒させた。 『グオオオオオオ!』 『ヘアァッ!』 グドンとジャックの激闘が続くが、ジャックがグドンの身体を捕らえて放り投げたことで、 叩きつけられたグドンの動きが鈍る。その隙を逃さずにスペシウム光線が発射された。 必殺光線がグドンを瞬時に爆散させ、二大怪獣は両方とも倒された。東京は救われたのだった。 ……以上、三つの戦闘が立て続けに流されると、才人の通信端末の画面が暗転した。 そうするとルイズが画面から目を離し、才人に向き直る。 「……これって、本当にあったことなの?」 「ああ。もちろんだ」 見せられたものが現実のものと信じ切れないルイズの問いに、才人はコックリとうなずいた。 ウルトラマンゼロと三怪獣の戦闘が終わると、魔法学院は上から下までひっくり返ったかのような大騒動となった。 あの怪物たちは一体何だったのか、そして魔法が全く通用しなかったそれらを更に上回る力で以て瞬殺した 青と銀の巨人は何者なのか、自分たちの目の前で何が起こっていたのか。誰もが様々な推測を立てたが、 「宇宙」という概念も根づいていないハルケギニアの人間では、答えにたどり着く者は一人も出なかった。 はっきりしているのは、この件の報告を受けた王室が直ちに調査団を派遣することを決定したことくらいである。 しかしただ一人、ルイズだけは、才人はゼロに変身するすぐ近くにいたため、 二人が同一人物ではないかという推測を立てることが出来た。そしてその日の晩に自室に戻ると、 すぐに才人を問いただし出した。その結果、才人は手始めに、ハルケギニアにやってきた直後にも披露した通信端末の、 以前は話がややこしくならないようにあえて見せなかったウルトラマンと怪獣の戦いの録画を見せたのである。 映像を見終えたルイズはしばらく頭を抱えていたが、考えが纏まったのか顔を上げて声を発する。 「あまりに信じがたいことだけど……でも今日カイジュウ? っていうものを実際に見ちゃったし…… 信じるしかないわよね。あんたが、別の世界から来たってことも」 「何だよ。信じてなかったのか?」 「当たり前よ。突飛がなさすぎることだから、それを見せられても半信半疑だったわ」 問い返してきた才人にそう答えると、次の質問に移る。まだまだ聞きたいことは山ほどあった。 「あのカイジュウたちが、あんたの世界の生き物だってことは分かったわ。けど、そいつらと戦ってた、 うるとらまんって巨人は何者なの? 今日実際に私たちの目の前に現れたあいつは、サイト、 あなたってことでいいのかしら?」 この問いに、才人は返答に困る。 「う~ん……実はウルトラマンのことは、俺も全部を知ってる訳じゃないんだ。俺とウルトラマンゼロは、 今は同じ身体を共有してるだけで、別人だしな」 「言ってることがよく分かんないんだけど……名前はウルトラマンゼロ、でいいのね? 気に入らない名前だけど……とりあえず、そのゼロと話をさせてもらえないかしら?」 自分の蔑称そのままなので不快に思うルイズだが、それは置いておいて、ゼロと直接会話できないかと考えてそう頼んだ。 すると才人は余計困る。 「ゼロと話を? いいのかなぁ……」 『俺なら構わないぜ』 突然ゼロの声がしたので、才人は驚いて左腕のブレスレットを顔の前まで持ち上げる。 「うわッ! 急に話しかけるなよ。心臓に悪い」 「えッ!? 今の、どこから声がしたの!?」 ルイズも驚いていると、ゼロが感心したようにつぶやく。 『へぇ、今の聞こえたのか。才人にだけ言ったつもりだったが、これも契約ってもんをした影響なのかね』 「そうなのか……。それでゼロ、本当にルイズと話しするのか?」 『ああ。共同生活をする以上、俺とウルトラマンのことを教えないままって訳にはいかないだろうからな。 さぁ、こいつで俺と代わってくれ』 ブレスレットからウルトラゼロアイが出てくると、それを目にしたルイズが驚く。 「わッ! また出てきた! そのブレスレット、どういう仕組みなの?」 「ウルティメイトブレスレットっていうんだって。ゼロの大事なアイテムだってさ」 簡単に説明した才人が、ウルトラゼロアイを装着する。 「デュワッ」 その途端に才人の身体が光り輝き、瞬時に身長はそのままにウルトラマンゼロの姿となった。 『よう。俺がご紹介にあずかったウルトラマン。ウルトラマンゼロだぜ』 「ほ、本当に才人がウルトラマンってのになった……大きさはそのまま……」 しばし呆然としていたルイズだが、気を取り直してゼロ本人に質問を始めた。 「そ、それじゃあウルトラマンゼロ……あなたたちウルトラマンって、一体何者なの? どこから、何のためにこのトリステインにやってきたのかしら? 教えてもらえる?」 『ウルトラマンのことか……。色々と話すべきことが多くて、さてどこから話したもんかな』 しばし考え込んだゼロは、やがてこう切り出す。 『そうだな、ここは一からその目で見てもらおうか。その方が理解しやすいだろうしな』 「え? 見てもらうって、何を?」 『すぐに分かるさ。才人もついでだ。それじゃ、始めるぞ』 説明もおざなりに、ゼロは腕を組んで精神を集中し出す。 『はぁッ!』 そして掛け声が発せられると、ルイズの視界が急転。自室から、数多の星が輝く宇宙空間のビジョンへ放り出された。 「えぇッ!? な、何これ!? 私夜空に浮いてる!?」 「うおッ! こりゃすげぇな!」 「サイトまで!?」 気づけば才人が隣に浮いていた。混乱している彼女に、どこからかゼロの声が響いてくる。 『落ち着け。これは本物じゃない。俺が超能力で見せてるビジョン、幻影のようなもんだと思ってくれ。 場所が移った訳じゃないぜ』 「幻影……なるほどね」 『じゃあ説明を始めるぞ。まずは……ルイズ、お前が毎日見てる空の、その向こう側には何があると思う?』 ゼロは最初に、ルイズに宇宙の概念を教えることから始めた。 「空の向こう側? そんなの考えたことないんだけど……その先ってどこまでも続いてるものなの?」 『ああ。空の向こうには宇宙っていう果てしなく広い空間が続いてて、そこにはいくつもの星、 つまり大地や、太陽と同じ恒星が無数に存在し、様々な生命体が活動してる。夜に見る夜空の星の きらめきの正体がこの恒星さ。お前たちがハルケギニアって呼んでる大地も、宇宙に存在する星の一つにあるものなんだ』 「な、何だかついていけないんだけど……」 『まぁここで無理に理解してくれなくたっていい。とにかく、遠い空の彼方にも大地があるってことぐらいには思ってくれ』 簡単に宇宙を説明すると、ルイズと才人の目の前に惑星のビジョンが現れた。 「これは……?」 『これははるか昔のM78星雲の惑星、ウルトラの星。ここが俺たちウルトラマンの故郷だ』 惑星の表面がズームアップして、星の大地に暮らす人々の様子が見えた。彼らは今のウルトラマンとは違う、 地球人やハルケギニア人とほぼ同じ容姿をしている。 『俺たちはかつて、お前たちと変わりない種族の人類だった。だが、27万年前に運命が大きく変化した』 突然ウルトラの星の太陽が爆発し消滅。ウルトラの星は暗黒に包まれる。 『27万年前に太陽が大爆発を起こして消えてしまったんだ。そのため、ウルトラの星は光を失ってしまった』 「た、太陽が爆発って、それ大丈夫なの!?」 まだ「宇宙」を理解していないルイズだが、それがとんでもない事態であることは想像がついた。 『もちろん大事態さ。光を失ったら、星全体の命が死に絶える。だが俺たちの先祖は決して諦めなかった。 太陽がなくなったなら代わりを作ればいい。星の住人が力を合わせることで人工太陽プラズマスパークの開発に成功し、 ウルトラの星は全滅をまぬがれたんだ』 真っ暗の世界にプラズマスパークの輝きが広がり、星は命を取り戻した。 『だがプラズマスパークは、予想をはるかに超えた恩恵を俺たちの先祖に与えた。 プラズマスパークから発せられるディファレーター光線が、先祖たちの身体を全く別のものに変えたんだ』 ルイズと才人の見ている前で、ウルトラの星の人間の姿が、超人ウルトラマンのものへと変貌した。 『これが今で言うウルトラマンの誕生さ。だがウルトラの星の人間は元々争いを好まない性質だから、 与えられた新しい力と姿を持て余してる感じだった。四万年前まではな』 「四万年前までって……その時に何かあったの?」 ルイズが問いかけた瞬間、目の前に広がる光景がウルトラの星のものから大きく変化し、 大勢の異形の集団が出現した。 『ギアァッ! ギギギィッ!』 『パオオオオ! パオオオオ!』 『グアアアアァァァァ!』 ベムスターやスノーゴン、ブラックキングなど、数々の種類の怪獣軍団の背後にテンペラー星人や メフィラス星人、グローザ星系人、デスレ星雲人ら宇宙人軍団が並び、更にその後ろで、 漆黒のまがまがしい雰囲気を湛えた怪人が全体の指揮を取るように腕を上げている。 『四万年前に、エンペラ星人という宇宙中を荒らすとんでもなく悪い奴が大怪獣軍団を率いて、 ウルトラの星に攻めてきたのさ。俺たちウルトラ一族と怪獣軍団の戦いは長く続いたが、 後のウルトラの父となるウルトラ戦士がエンペラ星人を下したことで戦乱は終わりを迎えた。 だが放っておけばまたエンペラ星人のような奴が宇宙のどこかに現れ、宇宙の平和が乱されるんじゃないかと 考えたウルトラの父は、平和を乱す悪者を退治する宇宙警備隊を組織した』 怪獣軍団が消えると部隊がウルトラの星に戻り、星からたくさんのウルトラ戦士が宇宙へ向けて 飛び立つ様子がルイズたちの目に入った。 『俺たちウルトラマンが才人の故郷である地球という星と関わったのも、宇宙警備隊の活動の中でだ。 ある時一人のウルトラ戦士が逃亡した凶悪な宇宙怪獣を追って、地球に降り立った。彼はその星が怪獣や 他の星からの侵略者の危機に晒されていると知ると、地球に住む命を助けるために地球に留まった。その戦士が、 地球人から「ウルトラマン」の名前を授かった最初の一人になったのさ』 ルイズと才人の目の前に、そのウルトラ戦士の姿が映し出される。言うまでもなく、 ウルトラマンその人である。 「この人は、さっき見た……」 『彼がウルトラの星に帰った後も、何人もの戦士が地球に危機が訪れる度に出向き、 地球人を助けてきた。これが、地球との関わりを含めたウルトラの星の歴史の大体さ』 ウルトラマンに続いて、ウルトラセブン、ジャック、エース、タロウ、レオ、80、メビウスの姿が現れては消えていった。 「ウルトラマンって、こんなにいるのね……」 「俺もウルトラマンのことは授業で聞いたけど、こうして見ると何だか全く違う話みたいだなぁ」 呆けるルイズの隣で、才人がしみじみ語った。 『そしてこの俺、ウルトラマンゼロは今、ルイズ、お前の暮らすハルケギニアのあるこの星に 邪悪な何者かの魔の手が忍び寄ってるとの情報を受けて、侵略者を倒してこの星を護るためにやってきたんだ。 このハルケギニアに存在してないはずの怪獣が出現したのも、そいつの影響だろうな。これで分かったか?』 「えぇーッ!? そ、そんなことになってたの!? その私たちの星を狙う奴の正体は!?」 ゼロの目的を知り、ルイズは目をひん剥いて絶叫した。 『残念だが、そいつを調べるところも俺の任務だ。つまり正体は不明。だがいずれ調べ上げて、 俺がとっちめてやるぜ!』 とゼロが宣言すると、ビジョンが消え去り、元のルイズの部屋の光景に戻った。 才人のビジョンも消える。 『今ので大体のところは理解してもらえたか?』 「そ……想像してた以上の話だったわ……私、とんでもないのを使い魔にしちゃったのね……」 途方もない大きさの話に、ルイズはすっかり圧倒されていた。そんな彼女にゼロが頼みごとをする。 『今日現れたような怪獣が、またハルケギニアのどこかに出現することだろう。その時俺は、 そこに飛んでいって怪獣と戦わなきゃいけない。そんな訳で度々この学院を離れなきゃならない。 当然俺と一体化してる才人も一緒なんだが、時々いなくなるのを許してもらえるか?』 「ま、まぁ……使い魔が勝手に私の側から離れるのは不本意だけど……人の命が懸かってるんじゃしょうがないわね。 あんまりうるさくは言わないでおいてあげる」 さしものルイズも、ゼロの役目を受け入れざるを得なかった。だが、ここでふと疑問がわき上がる。 「でも待って。あなた、どうしてサイトと身体を分け合ってるの? 本来は別人なんでしょう? 何かと不便なんじゃない?」 『そこはちょっと訳があってな……今の才人は俺がいないと、命がなくなっちまうんだ。 だから離れることが出来ないんだよ』 「よく分かんないけど……だったらだったで、サイトの姿じゃなくてずっと今の姿でいればいいんじゃないかしら? どうして今日戦う時になって初めてその姿になったの?」 ウルトラマンのことを少しでも知る者ならばすぐに分かる理由について尋ねかける。 『そうしたいのは山々だが、そうもいかないのさ。ウルトラマンの力は途方もなく大きなもんで、 俺自身ウルトラマンとはどこまでのことが出来るものなのか完全には把握してない。 だがそのせいなのか、エネルギーの消耗が半端なくてな。環境によっては、ごく限られた時間しか 本来の姿を保ってられないんだよ。このハルケギニアでもそうなのさ。だから必要じゃない時は、 才人が表に出てるって訳だ』 「ふぅん……ウルトラマンになるというのは、いいこと尽くめって訳でもないのね」 納得したルイズに、ゼロが胸の青いランプを指し示して見せる。 『この胸のカラータイマーが赤く点滅し出したら、限界が近い合図だ。後、才人がこの俺、 ウルトラマンゼロってことは黙っててくれよ。無用な騒ぎを起こしたくはないからな』 「分かったわ。言っても、誰も信じないだろうしね」 『言うべきことはこれで全部かな。それじゃ、才人に戻るぜ』 ひと通りの説明を終えたゼロが目の部分に手を当てると、ウルトラゼロアイが身体から分離して、 同時に才人の姿に戻った。 ゼロからの話が終わると、ルイズは大きなため息を吐いた。 「ふぅ……あまりに壮大な話を一気に聞かされて、疲れちゃったわ……。今日はもう休むから、 サイト、あなたも早く寝なさいよ。急に態度が変わったら怪しまれるだろうし、 明日からも普段通り接するからね。洗濯サボるんじゃないわよ」 「はいはい。分かってますよっと」 「それと……その……」 忠告したルイズは、途中で歯切れが悪くなったが、やがて声を絞り出した。 「今日は、ありがとう。危ないところを、助けてくれて」 すごく照れくさそうに礼を言われて、才人は思わず面食らったが、すぐに顔をほころばせた。 「気にすんな。当然だろ」 「どうして?」 「俺はお前の使い魔だろ」 「……!」 それを聞いたルイズはぎくしゃくとした動きでベッドに横になり、間もなく寝息を立て始めた。 彼女が就寝すると、才人は苦笑を浮かべた。 「いつもは何かとやかましいけど、可愛いところあるじゃん」 それから、ブレスレットを介してゼロに尋ねごとをする。 「ところでゼロ、一つ聞いておきたいことがあるんだけど」 『まだ何かあるのか?』 「ギーシュの奴との決闘の時、俺すごい力を出しただろ? あれってやっぱりお前が力を貸してくれたのか?」 ずっと気になっていたことを確かめると、ゼロからは意外な答えが返ってきた。 『いいや、違うな』 「え? そうなのか?」 『俺も途中で手助けしてやろうと思ったんだが、実行する寸前にお前がものすごい剣の腕を発揮したんじゃねぇか。 正直驚いたぜ。お前って強かったんだな』 「まさか! 俺はここに来るまでは、ただの高校生だったんだぜ? 剣を握ったことなんて一度もないよ。 ましてや、青銅を真っ二つにするなんて」 才人が否定すると、ゼロはやや考え込んだようだった。 『それもそうだよな……。だったら、左手のルーン文字が関係してるのか』 「左手のルーンだって?」 ルイズとの契約の証であるルーンに目を落とす才人。 『お前が剣を握った瞬間、そのルーンが光ったんだよ。聞けば、使い魔ってもんは特殊な能力を得るもんじゃないか。 強くなったのは、その能力によるものじゃないか?』 「そうなのかなぁ……」 腑に落ちない才人なのだが、自分と同じくハルケギニアに来たばかりのゼロが正解を知っているはずがない。 夜も遅いので、結局謎の解明はしばらく保留となるのであった。 前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔
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前ページゼロの使い魔「魂を紡ぐ者」 『ホワイトスター(ネビーイーム)内部』 そこでは蒼と紅の巨人がぶつかり合っていた。 周りには巨人の残骸が転がっている。そして彼らの奥では轟音が響き渡り続けている。 蒼の巨人はすでにボロボロになっていた。 元は文字通りの蒼だったろうが今では黒こげになっている部分は吹き飛ばされている部分がある。 蒼の巨人に搭載されいてる自己回復が追い付いていない証拠だった。 だが、紅の巨人はそれの好機を狙わない、いや…「狙えない」。 紅の巨人もボロボロだった、特徴的である右腕のバンカーも残弾は一発限り、左腕の「五連チェーンガン」にいたっては一発も残っていない。 紅の巨人に残された攻撃手段は最早「リボルビング・バンカー」と「プラズマ・ホーン」しかなかった。味方は「インスペクター」と戦っているため増援は期待できないもっとも…増援などという野暮な行為は彼は使わないつもりだが。 「どうした! 仲間がいなければ何もできないわけでないだろ!」 蒼の巨人の左腕が動く、その狙いは紅の巨人の胸…すなわち全ての巨人の弱点。 「っち!」 紅の巨人が右腕のバンカーを構える。 だがその動作をいち早く察知した蒼の巨人が紅の巨人を蹴り飛ばす。 「くぅ…っ!」 紅の巨人が揺らぐ。そしてその隙は蒼の巨人を動かすのに十分だった。 「もらったぞ!」 蒼の巨人が奔る。その両腕が淡く輝く。その輝きは蒼の巨人を包む込むまでになる。 エネルギーはほぼ0に近い、それならば… 文字通りの「必殺」で「粉砕」するだけになる。 「コード・麒麟」それが彼の「必殺」だ。 「コード・麒麟! 砕け散れ、キョウスケ・ナンブゥッ!!」 肘の噴出孔から淡く輝く刃を作り出す。 蒼の巨人はその刃で紅の巨人の巨人の左肩をそのまま抉るように吹き飛ばす、そしてもう片方の肘の刃で今度は右肩を吹き飛ばそうとしたところで… 「その技…そしてその隙。待っていたぞ!」 紅の巨人のブースターが限界まで吠える。いや…限界を僅かだが超えた。 蒼の巨人が避ける間も無く紅の巨人は距離をほぼ完全に零距離にする。 「賭けるか? これでどちらが生き残るかを!」 右腕の「リボルビング・バンカー」を蒼の巨人の胸に突き刺して撃つ、それだけなら蒼の巨人は立ち上がれただろう…そう「バンカー」だけで済んでいたならば…だ。 「…貴様、正気か!?」 蒼の巨人…いや「アクセル・アルマー」が叫ぶ、それは当然だった。 なぜなら紅の巨人の両肩が展開しているのだ…「アヴァランチ・クレイモア」本来なら離れて使う代物だ。接近している状態では紅の巨人もただでは済まないだろう。 だが…紅の巨人…「キョウスケ・ナンブ」は全てをこれに賭けていた。 「クレイモア…全弾貰って行け! アクセル・アルマー!!」 両肩の「アヴァランチ・クレイモア」が咆える。 その轟音と共に蒼の巨人は見る見る朽ちていく。 ボロボロだった蒼の巨人は遂に膝を突く。 左腕はない頭部も吹き飛ばされている。なんとか胸部が無事だったのはただ「接近しすぎた」というまぐれでしかなかった。 「…俺の勝ちだったな…アクセル・アルマー…」 紅の巨人は後ろを向いて味方が戦っている場所へ向かう。 もう勝敗は完全に決している。そしてかける言葉もない。 「…止めはささないか…ふっ。どちらにしても、もう…ソウルゲインは限界だがな…」 アクセルはただキョウスケが向かった方角を見続けている。 「…キョウスケ・ナンブ…お前に執着しすぎたのが…俺が負けた原因だ…これがな」 蒼の巨人の関節から火花が散り巨人が倒れる。 そのまま立て続けに爆発が起こりついにコクピットへと火花が散り始める 「レモン、先に行ってるぞ…」 そして爆発がついに蒼の巨人を包む。 その爆発は…鏡らしきものが巨人をスキャンするように素通りした直後に起こった。 あとは残骸が残るだけ…。そう残骸が…残るだけだった。 『トリステイン学園 中庭』 「…今度こそ…」 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブランド・ラ・ヴァリエールは精神を集中した。周りの野次のせいでほとんど集中できないがそれでも集中しようと努力する。 「もう、やめろよルイズー」 「平民でも連れて来て雇ったほうがはぇーぞー?」 「まぁ、ゼロのルイズだし。仕方がないとおもうぜ?」 「それより、早くおわってよー。私の「ステファン」が寝そうなんだけどー?」 馬鹿にする声。ほとんど諦めている声。 ルイズは少し眉をヘの字にしてしまうが。それでも集中する。 そして、声をあげる。これで最後にしたいから。その思いも込めて。 「宇宙のどこかにいる私の下僕(しもべ)よっ!」 周りの野次が止まる。それはただ単純に「失敗したら大笑いしてやれ」という「失敗」が前提の嵐の前の静けさだった。 「強く、美しく、そして生命力に溢れた使い魔よ!私は心より求め、訴えるわ。我が導きに応えなさい!」 別世界にいるどんなものでもいい。それこそ猫でもいい。…できればフクロウあたりがうれしい。 そんな思いを込めて杖を振り下ろす。 次の瞬間爆発が起きるのはやはりお約束だった。 「どぅわ!? また失敗かよー」 「まぁ、ゼロのルイズだし」 「ちょっとー。ステファンがびっくりしてるわよー」 「どーせ、失敗なんてお約束ってやつだしなー」 ついにルイズの堪忍袋は限界を迎えた、爆発による砂煙を背にするように野次を飛ばしたクラスメイトのほうを見て叫ぶ。 「うるさいわね!、アンタ達のせいでまた失敗したじゃー…え?」 声を荒げながら再び爆発した方を見た瞬間…ルイズは硬直した。 そこには蒼い3メイル前後のゴーレムらしき者がいた。 形状として明らかに「殴り合い」に適している、 手の甲と肩などに緑色の宝玉らしきものが輝いている、そして一番の特徴が…鬚だった。だがダサイなどは感じないむしろ「かっこいい」や「強そう」というのが最初に浮かび上がる姿だった。 「うそだろ…あのルイズが!?」 「ちょ、なにあれ…あんな芸術LVのゴーレムを…ゼロのルイズがっ!?」 「というか…あれ。ゴーレムなのか? むしろガーゴイルな気が…」 騒ぎ出すギャラリー達。それは「失敗」によぶ馬鹿にする声ではなく「成功も成功」にたいする驚愕による騒ぎだった。 「…やった…私が…あんなすごいゴーレムを…っ!」 ルイズはコルベールの「危険です。まずは様子を!」という声が聞こえないほど舞い上がっていた。そして近づく。 …反応はない。こちらを見て警戒もしないそもそも瞳がある部分が真っ黒なところを見ると眠っているとルイズは判断した。 実際は機能が一時的ながらスリープモードになっているだけなのだが…それをルイズは知らないし。知る必要は無かった。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」 杖を一度振りそのまま口…というかマスク部分に口づけをするルイズ。 そして蒼いゴーレムの左腕の宝玉と思われる部分にルーンが刻まれるとほぼ同時に…蒼いゴーレムの瞳が紅く輝いた。 「おい…、なんだ貴様は」 少し低い声が聞こえる。 ルイズは誰が喋ったのかと周りを見渡すが…周りにいるのは生徒とコルベールだけだ。そもそも青年のような声を出せる人物がいない。 「お前の眼の前だ、ピンクの髪をした女」 今度は前を見る、そこにはつい先ほど契約を交わした(一方的だが)蒼いゴーレム。 「え…まさか、アンタが?」 ルイズは尋ねる。もしかしたら誰かが風の魔法で声を送っているだけだと思ったからだ…もちろんイタズラだったらそれを実行した人物を殴ると心に誓っておいてだ。 「そうにきまっているだろ、それにここはどこだ。ホワイトスターではないようd「い、いやったぁぁぁぁっ!! 喋る蒼いゴレーム! これならキュルケにだって劣らないわきっと!」…」 蒼いゴーレム…アクセルはなぜか喜ぶピンクの髪をした少女を見て少し戸惑う。 それに疑問がいくつかあった。 一つ「なぜ宇宙空間に浮かんでいるホワイトスターにいたはずの自分が地上にいるのか」 これは転送装置がウンヌンカンヌンで説明がつくかもしれない。 だが次から説明ができなくなる。 一つ「なぜボロボロだったソウルゲインが完全に直っているのか」 アクセルの記憶が正しければ左腕や頭部は吹き飛ばされていて最後は大爆発をしたはずだ、だが今のソウルゲインはほぼ完全に修復されていた。 自己修復能力だけでは説明がつかないほどにだ。 そして最後の一つ…これが一番重要だった。 「なぜか自分=ソウルゲインのような感触になっている。そしてなぜか3m前後まで縮んでいる」 これはもはや説明という説明ができなかった。目を覚ました時には自分の体を動かそうと思えばソウルゲインの体が動く。おまけに全長が3メートルまで縮んでいる。でなければルイズという女性がアクセルにキスということができないはずだ。 なぜなら本来のアクセル…いや、ソウルゲインは全長「41.2m」 大きさでいえばアルトアイゼン・リーゼの約二倍の大きさ。ビルよりも大きいのだ。それが3m、スペックはかなりに下がっていたり「コード・麒麟」によくわからないリミッターがつけられてたりしているが。実質スケールサイズした程度だ。 性能で言えばこの状態でもリオン相手なら簡単とはいかなくても倒せれる。 という感じだ。 また攻撃力以外。スピードはフルドライブさせれば「コード・麒麟」を本来以上のスピードで繰り出せるほどになっていた。 これにはアクセルも理解できなかった、ただまぁ…言えることは。 「訳がわからんな…これがな」 それだけだったのはたしかだろう。 前ページゼロの使い魔「魂を紡ぐ者」
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タルブの村、フーケ=マチルダは花京院と別れた後もそこに逗留していた。 ワルドにつけられた傷は深く、水魔法を日に何度か使っていくことでどうにか完治はしたものの元の状態には戻っていない。 リハビリが終わるまではしばらくゆっくりするつもりだったのだ。 しかし、そんなことを言ってられない事態になってしまった。 ある日のことだった。泊まっている村長の家で身体を動かし、どこにも違和感がないことを確かめていたら、大気を揺るがす爆発音が耳に突き刺さってきたのだ。 直後には地震のような震動も伝わってきた。 これは明らかに自然の現象ではない。彼女は村長たちと一緒に急ぎ外へ出た。 まず視界に入ったのは何隻もの船が落下している光景だった。 山肌にぶつかり黒煙を上げるもの、森に落下し暴虐の火を撒き散らかすもの、様々だったが、共通点があった。 偶然落ちたものではない。落されたのだ。 マチルダにとって予想外であった。ワルドが戦争をもうすぐ起こすといっていたことは覚えている。 しかし、まさか不可侵条約をあっさり破って仕掛けてくるとは夢にも思わなかったのだ。 「村長さん、村人を非難させな」 「ま、まさか、戦争なのですか?」 「そうさ。しかも………あいつらろくでもないことをするみたいだ」 上空から生まれて初めて見るような巨大な船が下りてくる。 それが錨を草原に下ろし停泊すると、何頭ものドラゴンが飛びたちまっすぐ村にやってきていた。 これは戦争だ。それも、相手は条約を破る歴史的に見てもそういない厚顔無恥。 礼儀や配慮など持ち合わせているはずがない。そんなやつが、敵に遠慮をするか? いいや、示威行為として、見せしめとして、盛大な炎を上げるだろう。 マチルダの勘は当たっていた。 ドラゴンは村の上空に飛来すると、家々に火を吹きかけたのだ。 「逃げな! 焼き殺されちまうよ!」 マチルダが叫ぶ間にも火は燃え移っていく。防衛の術がないためたったの三頭で十分だというのだろう。 空飛ぶ相手は厄介ではあるが、マチルダならば相手はできる。 だが、敵はこれだけではない。戦うというのならばその後ろとも事を構えなければならない。そんな覚悟はない。 こんなところで死ぬわけにはいかないのだ。 そのはずなのに、彼女は杖を持ち走っていた。 村の入り口では男連中が女子供を外に逃がしている。村長からの指示が早かったためにいまのところ怪我人はいない。 転んだ人がいるだけだ。しかし、彼らに向かって一頭のドラゴンが近づき鎌首をもたげ、火を吹いた。 メイジでもなんでもない平民が防ぐことはできない。 が、突然に地が盛り上がり彼らの盾となった。 火は村人に届くことはなかった。 ドラゴンに跨る兵士は背後に振り向いた。そこにはマチルダがいた。彼女が守ったのだ。 「貴様、メイジか」 「そうだよ。まったく、こんなことガラじゃないんだけどね」 「ならば我らレコン・キスタに入れ。貴様の腕なら相当な地位につけるぞ」 ため息をつく。 「あのさあ、なんであんたら馬鹿の一つ覚えみたいにそんなことしか言えないんだい?」 「ほう、何度か言われたことがあるのか。ならば、入るつもりはないのだな? このような状況においても」 マチルダの周囲には、前方のものを含めて三頭のドラゴンがいた。 なるほど、まともに戦って勝てるわけがない。だが、それならまともに戦わなければいいのだ。 マチルダは前に歩いた。 「入ると、決めたのか?」 「んなわけないでしょばか」 ドラゴンが背後からハエのように飛ばされた。村人を救った土、それをゴーレムに変えたのだ。 さらに間断いれずにもう一頭のドラゴンをも殴り飛ばす。 最後のやつは腕の届かないところに逃げ出してしまったが、船に戻すつもりはなかった。 マチルダは燃え盛る家の中から焦げた柱をゴーレムで取り出し、投げつけた。 「おおあたりっと。やれやれ。貧乏くじ引いちゃったわね」 そう言ってマチルダも村から出ようとしたところ、背後から爆発音がした。 自分以外にもメイジがいたのだろうかと思ったが、そうではないと徐々に知ることになった。 爆発は一度ではすまなかった。何度も起こった。マチルダは、それが魔法や自然で起こったものではないということもわかった。 爆発したところからは火も煙も昇ってこなかったからだ。 普通そんなことはありえない。 不審がるマチルダの耳に奇妙な声も聴こえてきていた。 「……………ジャネェー」 人間のものとは思えない、ひどく無機質な声。いや、音というべきである。 マチルダはゴーレムの頭に飛び乗って村を見回し、その声の主を見つけようとした。 一番近い家が爆発した。火は消し飛んだが、そこから彼女のほうに向かってくる小さな物体があった。 それが爆発を起こしたのか、確信はなかったがゴーレムに殴らせた。 つぶれた。そう思った瞬間、ゴーレムの腕が爆発して消えた。マチルダは爆風に飛ばされ地面に降り立った。 「今ノハ人間ジャネェー」 髑髏が付いた走る車、それがその声の主だった。 「……なんだいこりゃ」 それはゴーレムの胴体に突っ込み、圧倒的な質量を持つそれをあっさり爆発させて消し去った。 塵一つ残っていない。 マチルダの背筋が寒くなった。あんなものを食らえばどうなるかわかりきっているからだ。 どうかこっちに振り向かずどっかに行ってくれればと願ったが、そんなわけがなかった。 その子供のおもちゃのような車は彼女に振り向き、走ってきた。 「今ノハ人間ジャネェー」 「―――じょ、冗談じゃないよまったく!」 冗談じゃなかった。マチルダは生まれてこの方、これ以上の恐怖を味わったことがない。 ワルドはまだ人間だった。だから驕りと油断があり、隙を突くことができたのだ。 ところが今回の敵は己の意志というものが存在しない。そのため油断や驕りが生まれることもない。 ただただ自動的に爆破させているのだ。 それだけでなく自慢の巨大ゴーレムのパンチをものともせず、あっさりとこの世から消し去ってしまうほどの能力を持っている。 救いがあるとするならそれは一つ、空を飛べないことだ。 「これで飛行能力までついてたらって考えると、ぞっとしないね」 フライを使い、マチルダは恐ろしい敵から逃れることができていた。 しかし、そいつはマチルダの真下から離れようとはしない。 それを利用していっそアルビオンの船にぶつけてやろうとも考えたが、途中で殺されるか、そうされなくともどのみちなんらかの対抗策を用意されているに違いなかった。 やるだけ無駄である。しかし、ではどうする。 打撃は無意味、かといって魔法を使ってどうにかなるとは思えない。こいつは大火に突っ込んで爆発させまくったのだから。 ……どうしてわざわざ火の中に突っ込んでいったのか。 マチルダは村のことを思い出す。目の前の車は燃えている家を爆発させて回っていた。 それなのにいまはマチルダ自身を追ってきている。人間を狙っている、のは間違いない。 だが、識別する方法は視覚的なものではない。なにか、条件があるはずだ。 そうでなければ、車の近くに落ちたときに殺されている。 なぜあのときゴーレムに向かったのか。なぜ燃えている家を爆破させていたのか。 その理由は―――温度。 ゴーレムはドラゴンの火を浴びて熱せられていた。だから先に向かったのだ。 しかし、答えがわかったところで、どうだというのか。学院の宝物庫に匹敵する頑丈さをどうやって攻略するのか。 いや、それより、どうやってこの状況を脱するのか。 そのうち魔力は切れてしまう。そうなったら………… マチルダが悩んでいると、視界に数十人の軍勢が入ってきた。 彼らは恐らくここら一帯の領主であるアストン伯とその兵士たちだろう。 領土内に侵攻されたので黙っちゃおれんとばかりに出征してきたのだ。 その行為はすばらしいものだ。領民を捨てずに戦いにきたのは。 だが、彼女に言わせれば、それは勇気でもなんでもなく蛮勇である。確実に、死ぬ。 ノミが人間に勝てるか。 彼らはそのままマチルダのほうに近寄ってきた。車は距離があるからかまだ彼女の真下にいる。 「貴女に尋ねるが、村人たちはどうなった」 精悍な顔つきをした男だった。鎧の装飾からして伯爵だろう。 「みんな無事さ。家や田畑はあんなことになっちまったけどね。それより、あんまりこっちに近寄るんじゃないよ。あたしの真下にいるやつが村をあんなふうにしやがったんだ」 正確には違うが、こうでも言っておかなければ不用意に近づいて爆死してしまう。 余波にやられてはたまらないのだ。 ところが、いいのか悪いのか、この伯爵はモットとは大違い。 善人だった。 「わかった。なら、まずは貴女を助けよう」 伯爵がそう言うと、一人のメイジが詠唱を始め、よりにもよってファイアーボールを投げてきた。 突如生まれた高温、車はそれにまっすぐ向かい、爆発した。 「今ノハ人間ジャネェー」 「よ、余計なことを!」 車はマチルダ以外の温度に気づいてしまった。 馬、人間、よりどりみどりだ。 「逃げな! そいつは『ぶっ壊れ』ない!」 せっかくの警告を聞いちゃいなかった。一人の兵士が馬から下りて剣を叩きつける。 しかし、パキンとあっけにとられるほどの間抜けな音を立てて真ん中から折れてしまった。 そして、その無知な兵士はこの世から消えた。 マチルダは即座にフライを切った。すると重力の鎖に絡め取られ落ちていくがその最中に遠くへファイアーボールを投げ込んだ。 車はそちらに向かって走っていく。そして、爆発した。 「なんなのだあれは! 彼は一体どうなったのだ!」 「死んだんだよ。よくわかんないけど、あの車は温度が高いところに走って爆発するんだ。跡は残らない」 マチルダの話を聞いても伯爵はまだ半信半疑だったが、もう一度遠くに火をつけると車はそちらに向かっていき爆発した。 「……何者かの使い魔であるのか?」 「わかんないけど、その可能性はあるわね」 もしくは、花京院と同じスタンドか。これならもっと話を聞いておけばよかったと考えかけたが、いまはそんな場合ではなかった。 車は彼女らの方向に走ってきている。 また遠くに火を点けて遠ざける。 「尋ねるが、村人たちはいずこに」 「南の森。そっちに避難しているよ」 「そうか。皆のもの、あの魔物は私が引きつける。その間に村人たちを館へ誘導しろ」 「……正気かい?」 「無論。こういうときに殿を勤めるのがメイジである。貴女は逃げても構わんぞ」 「そういわれてハイハイ逃げられたらいいんだけどね」 「人がいいな。『土くれ』のフーケよ」 「ばれてたのかい。まったく、こんなのあたしのガラじゃないのに。 なんでこうも貧乏くじを引かされるのかね!」 マチルダはあちらこちらに火をつけて兵士たちのために時間を稼いだ。 アストン伯も協力してくれるが、いつまでもこんなことをしていられない。 そのうち精神力か体力が尽きてしまい世界からさよならだ。 「案はあるかい?」 「ある。極々簡単な方法がな」 「マジで? じゃあやってみなよ」 アストン伯は短く詠唱すると、車の前方に水を生み出した。そして、衝突した瞬間、がちがちに凍らせてしまったのである。 車はごろごろと残った勢いで転がったが、爆発するようなことはなかった。 マチルダは恐る恐る触れてみても分厚い氷に覆われているせいか爆発はしない。 たぶん、標的を抹殺するためにある程度近づく必要があり、それを温度で確かめるのだが、氷に覆われているためそれを感知できないのだろう。 「……機転が利くじゃないか」 「お褒めに預かり光栄だ。しかし、なにもかもが遅かったようだ」 二人の視線の先には、陣を広げ始めているアルビオンの軍隊が見えた。 元々数十人の軍勢など歯牙にもかけていない。使い魔かなにかがこのような事態になろうとどうだっていいのだ。 「一泡、吹かせてやりたいもんだね」 「まったくの同感だ。彼奴らは、罪なきものたちの命を軽々と奪おうとしたのだ。 貴族ではない。もはや蛮族である」 「ともかくいまは待ちだね。それしかできない」 「うむ。貴女も館に来るといい。どうせ盗むものは何もないが気落ちしないでくれたまえ。 いや、一つあったか。ものではないがな」 王宮ではレコン・キスタの侵略戦争に対して会議が進められていた。しかし、まったく進むことはない。 ただ情報が真偽に関わらず飛び交っているだけに 過ぎず、参加している誰もが内容を把握し切れていなかった。 確かなことは戦争が始まったこと、王女の婚姻が延期になったこと。 たったの二つだった。 その騒々しい会議室から離れた宮廷の中庭では、とうに魔法衛士隊が出陣の準備を終えていた。 ただ、状況が状況だけにすぐさま出ることはできないということを面々はわかっていた。 これがもし、周到な準備をしてからの『正々堂々』とした戦争であれば話は違っていただろうなと衛士の一人であるアニエスは思っていた。 そもそもグリフォン隊の隊長が裏切り者だと判明してからまだ半年もたっていない。 混乱は表面上治まっているに過ぎず、部隊の再編成はまったく進行していない。そこへ狙ったかのように、いや、狙って戦争だ。 このまま反抗せずに降参という可能性もある。 「困ったものだ。なあ、4」 『腹減った。干し肉くれ』 アニエスはため息をつき、話し相手の小さな人間らしきものに小さく切り分けた肉を与えた。 彼か彼女かの額にはあるルーンが刻まれており、見た目は使い魔のようであるため彼女は一応貴族連中に混じって隊に入ることはできた。だが、所詮平民であることには変わりない。 彼女は常に最前線で命を張らなければならない。 『さっきの話だけどよぉー、アニエス、たぶんお前の心配は無用だぜ』 「なぜだ?」 『そりゃあお前が不吉だからだよ。俺がついているんだぜ。安全なんてものとは程遠いさ。 なにせ、元の主人つうか本体だかいうやつはその不吉を嫌って俺を認めなかったぐらいだからな』 4は腹を抱えて笑った。 『ほれ見ろ。姫様がでてきたぜ』 彼の言うとおりだった。王女は中庭に出てきて出撃を伝え、自らもユニコーンに跨った。 『やっぱ俺がついてるから不吉だな。今度ばかりは死ぬかもしれないぜえ』 「死なない。死ねないからな」 ルイズはンドゥールと学院の玄関先で王宮からの馬車を待っていた。アンリエッタの結婚式に出るためである。 ちなみに、いまだに詔は完成していない。 はっきり言うと才能がないというのもあるがンドゥールが旅立ってから数日前、あの夜が明けるまですっかり忘れてしまっていたからだ。キュルケやギーシュには呆れられてしまい、それでも即興でなんとかしようとしたがどうにもならなかったので王女の側近であるマザリーニに助言を頂こく腹積もりであった。 しかし、それも結局無駄なことだった。 ンドゥールがピクリと妙な動きをした。ルイズがどうしたと尋ねる前に彼は地べたに座り込み、杖を耳に当てた。 「……なにか聴こえるのね」 「…………馬車が来るのであったな。ルイズ」 「ええ、そのはずよ」 「いま来ているのは馬一頭だ。それもなんらかの、喜ばしくない事態を伝えに来ている。限界以上の速度を出しているために馬が疲弊しているのが足音でわかった」 ルイズは目を細めて遠くを見やった。その数分後、彼の言ったとおり早馬が駆けてきた。乗っているのは服装から王宮のものであった。 その人物はルイズたちの前で馬を止めると焦った口調で学院長の居室を尋ねてきた。 教えられると一目散に走っていく。 「なにがあったのかしら。ンドゥール、聴ける?」 「ああ、できる。サイレントとかいう魔法は使う暇もないだろう」 それからしばらくし、ンドゥールはルイズに語った。 「宣戦布告、だそうだ。アルビオンが不可侵条約を破り攻め入ってきた。現在、タルブが占領されているそうだ」 シエスタの故郷であるとンドゥールは教えてやった。 「村は全焼だが村人は全員無事だが………そこに陣を張りラ・ロシェールで軍同士がにらみ合っているとのことだ。準備が早かったのか制空権を取られて難儀しているらしいな」 「つまり、戦争が始まった、のよね」 「そうだ」 ルイズはそれを聴き、頭が真っ白になってしまった。また戦争、また人が死ぬ。どうしてもアルビオンの人たちを思い出してしまう。 「なんなのよあいつら。なんでそんなに戦争が好きなのよ。なんでそんなに奪いたいのよ」 「さあな。よほど不足なのだろう。だから戦争など仕掛けるのだ」 ンドゥールが歩き出した。そのあとをルイズがついていく。 「どこへいくの?」 「花京院を起こす」 そう言って、彼が向かったのはコルベールの研究室であった。 花京院はそこで寝泊りしているのだ。 いきなり起こされすこし不機嫌であったが、事情を聴くと花京院ははっきり目が冴えたようだ。 すぐさまコルベールを叩き起こしてゼロ戦を動かせるようにしてもらった。 ガソリンをゼロ戦に注いでいる間にルイズが二人に尋ねる。 「これで、どこにいくつもりなの?」 「タルブの村だ。そうだろ?」 「ええ。なにせこのゼロ戦は譲り受けたとはいえ、あの村に骨をうずめた佐々木武雄さんの誇りであり魂だったんです。助けにいきますよ。君はどうするんだい?」 「シエスタには恩を受けている。命の、というわけではないが、放っておくわけにもいかん。 それに、あの村にはフーケだったかマチルダもいる。俺はアルビオンであいつに助けられ……てもないな。もともとあの場に残ったのはあいつが原因だったか。それでも、指を奪っておいてなにも復讐をされなかったのでな、ついでに助けにいくか」 「彼女はついでか。サポートはしてくださいよ。毎日操縦法を教えられていてもぶっつけ本番なんですから」 「わかっている」 二人はゼロ戦の風防を開いて乗り込もうとしたのだが、ンドゥールのマントが弱い力で引っ張られた。 「私も連れて行きなさい」 ルイズだった。 「……詰めれば三人で乗れるんじゃねー? ああ、久しぶりの発言がこれか」 なにかを諦めたような口調でデルフリンガーが言った。それはその通りではあるが、行き先に問題がある。 「なにをしにいくのかわかってるのか?」 「わかってるわ。わかってるからいくのよ。それに、あんたは私の使い魔。目の届かないところで勝手をされるわけにはいかないもの。それに、なんだかね、こう、根拠はないけどいけそうな気がするの」 「まあいいんじゃねお二人さんよ。嬢ちゃんが危なくなるような事態になったら相棒が責任もって守ればいいんだし」 「そうですね。大体危なくなるっていうときは僕たちも危ないんですから。 それじゃあ乗ってください。一度、元の場所で飛行機が墜落したことがあるので祈っててくださいね」 花京院が冗談気味に笑い操縦席に座った。その背後、元々無線機が詰め込まれていたスペースにンドゥールとルイズが座った。クッションが敷かれてあった。 それは、いつか二人でどこかに飛び立つからだろうとルイズは思い、少しだけ苦しくなった。 コルベールが前方から風を吹かせる。花京院は慎重にだが適切なスピードで作業をすすめていく。 ここ数日、彼は学院に来てからンドゥールに付きっ切りで操縦法を教えてもらっていた。 何度も何度も繰り返し行ってきた。 間違いはない。 ゼロ戦は、いま、再び空へと駆け上る。
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前ページ次ページゼロの使い魔・ブルー編 「もう半日以上経っているぞ?魔法衛士隊の連中は化け物か」 「グリフォンと馬では勝手が違うのかも知れませんね……」 「そういうものかね」 「知りませんよ……」 「……大丈夫かね?」 ギーシュが言ったとおり、半日ほど馬に乗りっぱなしである二人であった。 元々乗馬の経験があるギーシュはまだ何とか体勢を保っていたが、 ルージュはと言うと、完全に馬の上でぐったりしている。 ギーシュはそんな様子を見て、不思議そうに言った。 「君はもっと体力がある方だと思ったがね」 「……何でです?」 「ちょっと剣を振ってみたんだがね、あれは結構疲れた」 「……そうですか」 「……本気で疲れてるようだね……」 そこに、ワルドの怒鳴り声が聞こえた。 「早くしないと、置いていくぞ!」 ……彼にしては珍しく、少し苛ついた。 「……『デュレイオーダー』」 グリフォンの速度を、少しずつ下げていった。 そのうち、ろくに操れていない馬の方が早くなる。 ルージュは追い越して、距離がある程度経つと息切れしながら、 何とか出せる限りの大きな声を出した。 「早くしないと……置いてきますよ……」 そのまま走り去る。 まぁ、『デュレイオーダー』は時間が経てば解けるし、 グリフォンの元の速度が馬より速いから、さして問題ではないのだが。 事実、その後ルージュの馬はワルドのグリフォンにあっさり抜き返された。 まぁ、そんな事をしていたので、馬を乗り換えながらも、 夜深くにようやくアルビオンの玄関口たるラ・ロシェールについたのだが。 「ゼェ……ハァ……」 「本気で辛そうだね……君は……」 「まだですか……」 「それはもうかれこれ12回聞いた気がするんだが…… だけど、もうすぐ着くよ」 その言葉にルージュは顔を上げて周りを見回した。 港町と聞いていたが、山だらけである。 「……シップがないのに、高地に港町があるんですか?」 「シップ?なんだねそれは」 「……船です」 「別におかしく無いじゃないか」 「……?」 その時、彼らめがけて崖上から火のついたたいまつが投げ込まれる。 馬がそれに驚き、暴れ出した馬にギーシュとルージュは捕まっていられなかった。 その後数本の矢が飛んでくると、ギーシュが叫ぶ。 「奇襲だ!」 「……」 「ブルー!寝てないで応戦したまえ」 「もう止めてくださいギーシュ……僕のLPはもうゼロです」 「ゼロになったら死ぬんじゃないのかね」 「宿屋に行けば大丈夫です……というわけで後は任せました……」 「いや、そういうわけに――」 矢が横をかすめて飛んできたので、ギーシュは黙り込む。 「むう、どうも一人でなんとかしなきゃならないみたいだね……」 ギーシュはそう言って矢の飛んでくる方向に大体の当たりを付け、 錬金で壁を作り出し、そこに隠れた。 「さて、近づいてきてくれれば僕でもどうにか出来るかも知れんが、 このままもう一回たいまつを投げ込まれたらどうしようか」 と、そこにワルドが戻ってくる。 飛んできた矢を、竜巻を作り出してはじき返した。 「子爵!」 「野党か山賊の類か?」 横で呆然としていたルイズが、続く。 「アルビオンの貴族派ってことは……」 「貴族ならあんな手は使わん」 その言葉に、寝ていたルージュは少しの違和感を感じた。 (そう言えば、今朝方も変だったな。 なんであの紹介でルイズの使い魔だと解ったんだ?) あの説明ならば、ギーシュと『その』使い魔のブルー、と捉えてもおかしくはない。 だが、それは個人の捉え方。どう解釈してもおかしくはない。 しかし。 (貴族派、と言ってもまさか全員が貴族というわけじゃないだろうし) そして思考をより深くしようとして、 どこからか聞こえてきた翼の音に、思考を中断させる。 崖の上から悲鳴が聞こえてくる。恐らく、たいまつや矢を飛ばしてきた者達だろう。 暗くて遠くなので良く見えないが、数回雷光が閃くと、その男達の姿が見えた。 「『風』の呪文……にしては妙だな」 雷撃に撃たれた男達ががけの上から転がってくる。 崖の上に何かが降り立つと、月からの逆光でシルエットが浮かび上がる。 「あれって……」 それは再び飛び上がると、此方に向かって飛翔してきた。 近づいてくると、その姿と、上に乗った二人組が見える。 「タバサ!クーン!後キュルケ」 「なんであたしはついでなのかしら?」 「何しに来たのよ!?」 「追ってきたのよ。思ったより時間がかかったけどね」 キュルケは雷竜の背中から飛び降りると、 転げ落ちていた男達を足で軽くこづく。 「で、こいつらどうするのよ?」 「僕に任せてくれたまえ」 と、ギーシュが一歩前に進み出る。 「君たちは何だね」 「ただの盗賊だよ」 ギーシュが振り返る。 「だそうだ」 「……いや、色々と突っ込むところが多すぎて逆に……」 「やるなら徹底的に」 といい、今度はタバサが前に進み出る。 「なんだ、今度は嬢ちゃんか、俺達はただの盗賊だって――」 返事はせず、タバサは小さく呟き、杖を振る。 幾つかの氷の矢が、自称盗賊達をかすめて地面に突き刺さる。 「……わ、解った。酒場で酒を飲んでたら、男と女の二人組に雇われたんだ」 「詳しく」 「女の方はフードを被ってたからよく解らねえ。 男の方は仮面を被っててよくわからなかったが、そうだな……身長はそこの兄ちゃんぐらいだな」 と、ワルドの方を見やって言う。 「それと、二人ともメイジだったな」 「それだけ解ればいい」 タバサが振り返る。 それに対し、ワルドが言う。 「……ふむ。捕縛したい所だが、時間がない。 ここは放置して先を急ぐとしよう」 と、ルイズを連れてグリフォンにまたがる。 ギーシュとルージュも馬に乗った。 彼らが進むその先に、ラ・ロシェールの灯が煌めいていた。 彼らが去った後。 「畜生、割の良い仕事だと思ったら、相手がメイジなんて聞いてねえぞ!」 「あんな人数のメイジを相手なんて、金貨200でも足りねえよ……」 と、そこに白い仮面を付けた男が現れる。 男達のうち一人はそれに気付くと、ぶっきらぼうな口調で言う。 「おい、いくら何でもメイジ相手は無茶ってもんだろう、旦那よ」 「そうか、だがまだ働いて貰うぞ」 「あぁ?俺達は今さっきガキのメイジ一人にあしらわれたんだぞ? こんな仕事やってられるか!降りるぞ!」 「そうか」 冷たく言うと、男は腰に下げた紅い剣を抜きはなった。 「な、何だ、やろうってのか?」 「逃げれば殺すと言っただろう」 「へ、へへ。剣を使うって事はてめぇメイジじゃねぇな。 この人数相手に勝てると思うのか!?」 と、周囲に寝転がっていた男達が立ち上がり、各々の獲物を手に取る。 「そうだ、てめえから金を奪えば良いじゃねえか。 まさかあれだけって筈もないだろ……やっちまえ!」 男達が、仮面の男に武器を構えて駆ける。 仮面の男はそれを平然と眺めて、手にある剣を一閃した。 剣がふくれあがった。そう表現するのが一番正しい。 紅く透き通った巨大な刀身が仮面の男を中心に振り回されると、 男達が身体を真横に両断される。 「……な、なにが…………は」 胸の辺りを切断された男は、最後の吐息を漏らすと、 それ以上話す事は出来なかった。 仮面の男が、その場を立ち去る。 後には、骸だけが残った。 『女神の杵』亭という、結構豪華な宿に泊まる事になった一行は、ぐったりしていた。 いや、どちらかというとルージュのみがぐったりとしていた。 ギーシュは、ワインを飲んでくつろいでいる。 キュルケはタバサに話しかけている。タバサは本を読んでいる。 つまり会話が成り立っていない形になる。 ルイズはと言うと、ワルドと共に『桟橋』に乗船の交渉に行っている。 ルージュが机に寝そべったまま、ギーシュの方を向き、聞いた。 「ギーシュ、さっき船がどうとか言ってたよね?」 ギーシュは、口に含んでいたワインを飲み込む。 「確かに言ったね」 「高地にあるって事は……まさか飛んだりはしない?」 「飛ぶに決まってるじゃないか。アルビオンに行くのだから」 と、そこでルイズとワルドが帰って来た。 一同が集まっていた卓の空いている席に座る。 「アルビオンへの船は明後日にならないと出せないそうだよ」 「一刻を争うのに……」 「良いじゃないですか、無理に急いだって良いことはありませんよ」 ルージュが言うが、その様子を見てると誰もが同じ感想を抱く。 休みたいだけじゃないのか?そんな視線に晒されても彼は動じない。 キュルケがそこで話題を変える。 「アルビオンに行ったことはないからわかんないけど、 明日は船が出せないの?」 「明日は月が重なるだろう?その翌日に、アルビオンが最もラ・ロシェールに近づくのだ」 そして、三つの鍵を机の上に置いた。 「今日はもう休もう、部屋をとっ……ってあれ?」 鍵がいつの間にか二つになっている。 見ると、ルージュが既に部屋のある上への階段を上っていた。 ワルドはそちらを見てから、もう一度卓についている者の方を向く。 「……キュルケとタバサ、彼とギーシュ、僕とルイズが相部屋だ」 前ページ次ページゼロの使い魔・ブルー編
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前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔 ウルトラマンゼロの使い魔 第六十七話「ハーフエルフの娘」 隕石小珍獣ミーニン 悪質宇宙人レギュラン星人 登場 入室してきた金髪の少女へと顔を上げた才人は、途端に硬直した。彼女の美貌に……容姿に、 思わず心を奪われてしまったのであった。少女の顔立ちは、宇宙一美しいと言われる 怪獣ローランもかくやというほどだった。 しかしそれ以上に目を引くところが、胸であった。何という大きさであろうか! 才人は生涯に これほど大きな女性の胸というのは見たことがなかった。魔法学院一と謳われるキュルケ以上。 たとえばルイズとは、最早比べることすらおこがましい。これぞ大怪獣サイズだ。 「ば……バスト・レヴォリューション!?」 才人はそんなことまで無意識下に叫んでいた。だがそれで少女がビクリと震え上がった。 怖がらせてしまったか。 「ほ、本当に大丈夫? さっきから変なこと言ってるけど……」 「あ、ああいや、大丈夫だよ。今直面してる現実に色々と驚いただけだから」 適当にごまかした才人はベッドから起き上がろうとする。しかし大分長いこと眠っていて、 身体がなまったからか、ふらついて倒れそうになる。 「わわッ……!?」 「あ、危ない!」 傾いた身体を、少女が受け止めてくれた。その際の衝撃で、少女の金色の髪がはだけて、 隠れていた耳が露わになった。 ツンと尖っていて、見慣れない形だ。物珍しさから才人が凝視すると、少女は慌てて自分の耳を両手で隠した。 「ご、ごめんなさい」 「え?」 「でも、安心して。危害をくわえたり、しないから」 何を言われているのかよく分からなかった。もしかして、自分が怖がっているとでも思われたか。 「違う違う。あまり見ない形の耳だから、つい見つめちゃって」 その言葉で、少女は何故か呆気にとられる。 「……ほんとうに、驚いていないの? 恐くないの?」 聞き返され、才人は肯定する。少し耳が尖っているから、何だというのか。様々な異形の 宇宙人を見てきた身からしたら、そんなのは誤差みたいなものだ。 少女はほっとしたような顔になった。 「エルフを恐がらない人なんて、珍しいわ」 「エルフ?」 聞いたことのある名前だった。確か、ハルケギニアの“東方”に住むという種族の名前だったはずだ。 凶暴で、それこそ怪獣と同じくらいに恐れられているということだったが……それと目の前の少女は とてもではないが結びつかない。 「そう、エルフ。わたしは“混じりもの”だけど……」 自嘲気味につぶやく少女。何やら複雑な事情を抱えているみたいだが、初対面でいきなり 根掘り葉掘り聞くのは図々しい。 そこで才人は、まず自己紹介する。 「礼が遅くなったけれど、助けてくれてありがとう。俺の名前は平賀才人。君は?」 「わたしはティファニア。呼びにくかったら、テファでかまわないわ」 お互い名乗ったところで、さっきの小怪獣が舞い戻ってきた。 「キューキュウー」 「おいおい、もっと優しく運んでくれよ。折れたりはしねえけど、振り落とされるのは気分が いいもんじゃねえからな」 小怪獣はデルフリンガーを抱えていた。 「デルフ!」 「いよぉ相棒……。やっと目が覚めたか。よかったよかった」 「ミーニン、サイトの剣を持ってきてくれたのね。ありがとう」 「キュー」 小怪獣の頭をなでるティファニアに、才人はその怪獣について尋ねる。 「そのミーニンっていう生き物は、ここで飼ってるの?」 「ええ。最近、近くの森の中でうろうろしてるのを子供たちが見つけて、連れてきてね。 見たこともない生き物だから初めはビックリしたけれど、すごく大人しいからそのまま置いてるの。 今では子供たちの良いお友達よ」 「キュッ」 ティファニアはミーニンをそう紹介した。 それからデルフリンガーとティファニアが、才人が意識を失っている間のことを説明してくれた。 限りなく死んでいた才人をデルフリンガーが能力で運び、そこを偶然ティファニアが発見。 先住魔法の力が込められた指輪の最後の一回を使い、才人の命をギリギリのところで復活させたこと。 そのことに才人は、心の底から感謝しきりだった。 しかし、何かお礼がしたいところだが……その前に、自分はとんでもない問題にぶつかっているのであった。 「デルフ、大変なんだよ! 左手のルーンが消えちまってるんだ! これってどういうことなんだ!?」 先ほど確認した通り、左手の甲には確かにあったはずのルーンが、跡形もなく消えている。 それについてデルフリンガーは、こう説明した。 「使い魔の契約が外れちまった理由……そいつはやっぱ、相棒が一度死んだからだろうさね。 使い魔は死ぬとルーンは消えるんだ」 「でも、俺は生き返ったんだぜ。ルーンも復活しないのか?」 「先住の魔法のことは、メイジの扱う魔法じゃ想定外だ。そういう機能はないんだろうね」 「自動で戻ったりはしないってことか。それじゃあ……もう一度契約したらいいんじゃないか?」 「おすすめはしないね。メイジは使い魔が死ねば、次の使い魔を召喚できるが……使い魔にとって、 “契約”は一生もんだ。生きてる状態で“契約が外れる”ってことがまずありえねえ。そんなわけで、 メイジと二回目の契約をした使い魔の存在なんか聞いたことねえし、やっちまったら、そいつの身体に 何が起こるかわからねえよ」 思った以上に難しい問題のようだ……。サイトが重い顔をしていると、二人の話を端から 聞いていたティファニアが目をパチクリさせた。 「人が、使い魔……? そんな話、聞いたこともないわ。サイト、どういうことなの?」 「あッ……」 回答に窮する才人。そのことを説明しようとすれば、話が『虚無』に行き着く恐れが大だ。 さすがにティファニアを自分たちの事情には巻き込めない。 「えっと、その……色々込み入ったことがあってさ……おいそれと教えられることじゃないんだよ。ごめんな……」 仕方なく、無難にごまかすことにした。幸い、ティファニアはそれ以上突っ込んでこなかった。 「そう……仕方ないわよね。人には秘密の一つや二つ、あるものだもの。……わたしには 聞かせられらいことがあるのなら、しばらく席を外すから、その間に話し合ってちょうだい」 それどころか気を利かせて、ミーニンを連れて退室していった。才人は彼女の後ろ姿へ、 小さくお礼を言った。 「それでなんだけど、デルフ……もう一つ、大変なことがあるんだ……」 「わかってるぜ。その左腕の腕輪……もう一人の相棒のことだろ」 力なくうなずく才人。正直、ガンダールヴのルーンが消えたことよりも衝撃の大きなことであった。 ゼロが、目を覚ます気配がないのだ。 「ゼロ、どうしちまったんだろう……。どうして俺が目覚めたのに、ゼロは眠ったままなんだ? おかしいじゃないか……」 「さすがにそこまではわからんね。ただ……」 「ただ?」 「……あの嬢ちゃんの指輪に残ってた魔力は、一人分だけだった。だから下手したら……」 デルフリンガーの言葉の先を、才人は青い顔でさえぎる。 「そんな馬鹿な! 俺とゼロは一心同体なんだ! 他ならぬゼロがそう言ったんだ! だから…… 俺だけが助かったなんてこと、あるもんか!」 「だから、もしかしたらって話だよ。単にもう一人の相棒は、まだ力が戻ってねえだけってことも 考えられらぁ。何せすげえ決着のつけ方だったからな。あんなん、誰にも真似できねえや」 「……ゼロ……」 才人はひたすらに、ゼロの身を案じる。 偉大なる勇士、ウルトラマンゼロ。思えば、自分が勇気を持って戦えたのは、ずっと彼が 側にいたからかもしれない。自分が見守られていることを実感していることで、ただの高校生だった 自分が戦場に立てたのかも……。そのゼロがいない今……ガンダールヴでもなくなった自分に、 どれだけの価値があるのだろうか。 一人で暗い気分になっていると、窓の方から聞き覚えのある声が聞こえた。 『ああ……! やっと見つけました……!』 よく聞き慣れた、爽やかな雰囲気の声音。振り返れば、窓のガラスに銀色の戦士の姿が映っている。 「ミラーナイト!」 言うまでもなく、ミラーナイトだ。彼は才人の姿を確かめ、非常に安堵している様子であった。 『よかった……本当によかった……! ずっと捜してたのですよ……! サイト、あなたが 生きてて何よりです……。本当に犠牲になってたなら、私たちはどう償えばよかったのか……』 かなり興奮しているようだったが、ミラーナイトは呼吸を整えて落ち着く。それから、才人へ呼びかけた。 『さぁ、サイト、皆の元まで帰りましょう。皆、あなたが死んでしまったのではないかと心配してるんですよ。 特にルイズがひどく落ち込んでて……。しかし、あなたが見つかった以上はそれも終わりです。 皆を安心させてあげましょう』 だが、才人はそれに応じることが出来なかった。 「ミラーナイト、ごめん……。わざわざ捜してもらったのに……今は、それは出来ないよ……」 『え? ど、どうしてです? そういえば、何やら様子がおかしいですが、もしかして何かあったのでしょうか……?』 心配して尋ねるミラーナイトに、才人は今の自分の状態を打ち明けた。そしてうつむき気味に なりながらつぶやく。 「今の俺が帰ったところで、何が出来る? 何も出来ない……。俺はもうガンダールヴでも、 ウルトラマンでもない、ただの人間に逆戻りしたんだ……。こんなんじゃ、また敵が現れた時に 誰も守れない。帰っても、ルイズをガッカリさせるだけだよ……」 『……』 ミラーナイトは何か言いかけたが、今の才人には何を言い聞かせてもどうしようもないと 判じたのか、口に出すことはなかった。 『……分かりました。サイト、あなたにはしばらく気持ちを整理する時間が必要みたいですね。 では今日は、私はこのまま引き上げます。ルイズたちにも、あなたを見つけたということは話しません』 でも、とつけ加えるミラーナイト。 『ジャンボットやグレンファイヤーには伝えますよ。あの二人も私と同じように、あなたのことを 捜し続けてますので』 「うん、分かった。無理言ってすまないな……」 『……ゼロが目覚める時、そしてあなたが本当の意味で元気になる時が早く来ることを、祈ってますよ』 その言葉を最後に、ガラスからミラーナイトの顔が消え失せた。 「……」 残された才人は、じっと無言のまま立ち尽くした。その背中からは、あまりにも大きな悲痛さが にじみ出ていた。 その翌日、才人は肉体的には完全に復調した。元々、命自体が消えかけていた状態で特に目立った 外傷はもらっていない。そのため回復が早かった。 世話にばかりなることに引け目を感じた才人は、何か出来ることをしようと手伝いを申し出た。 遠慮するティファニアを半ば強引に押し通して、今は薪割りを行っている。 「はぁ……」 しかし薪割りを行う才人は、ため息を吐いてばかりでかなりブルーだった。薪を割る手つきも、 かなりもたついている。斧を振り下ろしても、ガスッ、ガスッ、と薪に食い込んでばかりで、綺麗に割れない。 その手際の悪さも、彼が落ち込んでいる要因の一つだった。ガンダールヴのルーンがある状態で 斧を握れば、薪を割るくらいハイスピードでやってのけるはず。本当にその力を失ってしまったのだと いうことを実感してしまった。 「ほんとに、何の力もないただの人間に逆戻りしちまったんだな……」 「そうしょげるなよ、相棒。伝説じゃなくなっちまっても、相棒は相棒に変わりねえだろ? 少なくとも、俺にとっちゃそうだよ」 ため息を吐いてばかりの才人を、近くに立てかけたデルフリンガーが慰めた。すると才人が聞き返す。 「俺が、ガンダールヴじゃなくなっても、お前はいいのか? お前はガンダールヴの剣なんだろ?」 「いいさ。六千年も生きてきたんだ。俺にとっちゃあ、相棒との時間なんて一瞬みてえなもんさ」 「でも、ルイズはそうじゃねえんだよな」 「まあね。それにあの娘ッ子は現役の『虚無』の担い手だ。また何か問題が降りかかるってのは、 十分に考えられる」 「そういう時に、戦える力のない奴がいたって、邪魔なだけだよな……」 「まあ、間違っちゃあいねえな」 ヤプールは倒れた。しかしこのハルケギニアから悪の芽がなくなった訳ではない。別の魔の手が ルイズに目をつけることはあり得る話。その時に、ガンダールヴでもない自分が側にいたら むしろ足手纏いだ。それは忍びなさすぎる。 しかしルイズのところへ帰らないとしても、これからどうするべきか。時が来れば、地球には いつでも帰れるという心積もりでいたのだが、ゼロが目覚めない以上は帰る手段がない。 まさかこんなことになるなんて夢にも思っていなかったので、才人はすっかり途方に暮れていた。 「ゼロも一緒に目覚めてくれたら、少なくともこんな思いはしなくて済んだのに……って、 俺は本当にゼロ頼みだな、はは……」 自分一人では一歩も踏み出すことが出来ないことを自嘲しながら、次の薪を割ろうとする。 だが……切り株の上に置いたはずの薪が、綺麗さっぱりとなくなっていた。 「あれ?」 どこかに転がっていったか? と思って周りを見回すが、それらしいものはどこにもなかった。訝しむ才人。 「デルフ、確かに俺、ここに薪を置いたよな。どこに行ったか知らないか?」 「いや。見てなかった」 大層不思議がる才人だが、何かの記憶違いだと思い、気を取り直して次の薪へ手を伸ばす。 しかしその時、才人が掴もうとした薪にどこからか飛んできた光弾が当たり、一瞬にして 跡形もなく燃やし尽くした! 「!? 誰だッ!」 明確な異常事態だ。才人が振り返って叫ぶと、光弾の飛んできた方向の森の陰から、異形の シルエットが姿を現した。 『フハハハハハ! 貴様はウルトラマンゼロの変身者だなぁ~! こんなところで発見するとは 思わなかった!』 首があるべきところが三角錐になっているような、鈍色と紫色ののっぺらぼうの怪人。 ハルケギニアの生命体ではないとひと目で分かる容姿であった。 「宇宙人か!」 『如何にも! 私はレギュラン星人ヅヴォーカァ! 宇宙一の嫌われ者だぁ! ウルトラマンゼロの首は、 この私が頂く!』 レギュラン星人と名乗る宇宙人は堂々と宣言した。まさか今、宇宙人に狙われるとは思っていなかった 才人は激しく動揺するが、それを相手に悟られないようにするかのように身体の震えを抑え込んだ。 「ヤプールは倒れた! それなのに、まだハルケギニアを狙うつもりなのかよ!」 『当然だぁ! ヤプールが死に、宇宙人連合もまた分解したが、私はそんなものがなくともこの美しい星を 我が物にするつもりだった! むしろ競争相手が勝手にいなくなってラッキーというところだ!』 レギュラン星人は根っからの侵略者。ヤプールとは関係なしに、ハルケギニアを狙っているという。 しかもこんな時に限って、自分が狙われてしまうとは、と才人は己の不運を呪った。 『こんなに接近しても、ウルトラマンゼロの気配は微塵も感じられない。どうやら、お前だけが起きてて ゼロは力を取り戻していないようだな! ますます僥倖! ゼロが復活する前に、息の根を止めてくれよう! どうだぁ、私の悪賢さはぁ!』 しかも、ゼロが目覚めていないことまで知られてしまった。これでレギュラン星人は何があっても退いたりはしないだろう。 焦る才人。ミラーナイトたちを呼ぼうとしても、この距離だ。どう考えても相手の攻撃する方が早い。 カプセル怪獣も、先の戦いでの負傷があまりにも大きく、まだカプセルから出せない状態。丸裸も同然である。 いや、まだ己の肉体が残っている! 自分はともかく、せめてゼロの命は何としてでも守ろうと、 才人は自分の力で立ち向かう覚悟を固めた。 「おい、あんまり馬鹿にするなよ、レギュラン星人。ゼロの前に、この俺がいるぜ!」 精一杯の見得を切るが、レギュラン星人はむしろ大笑いした。 『グッハッハッハッハッ! ただの地球人風情が、このヅヴォーカァ様に勝てると思ってるのか? 思い上がりも甚だしいわ! グハハハハハ!』 「思い上がりかどうか……今に分からせてやるぜ!」 斧を投げ捨てた才人は、デルフリンガーへと持ち替える。しかしやはり、デルフリンガーを握っても ルーンがあった時のように身体はちっとも軽くならなかった。 「……相棒、無茶だ。今の相棒じゃ、勝ち目はねえよ。力の限り逃げる方がまだ助かる目がある」 デルフリンガーが警告する。しかし才人は引けなかった。 「ここで逃げたらテファたちが危ない。ゼロが起きてるなら……同じことを言うはずだぜ」 「相棒……」 「何。俺だって今までの戦いの間中、寝てた訳じゃないさ。宇宙最高の戦士の戦いぶりを、 すぐ側から見てきた。だから俺だって、いざとなりゃ戦えるはずだ!」 と、己に言い聞かせる才人。そう思わないことには、絶望で押し潰されてしまいそうだ。 「行くぞッ! うおおおぉぉぉぉぉぉッ!」 気合い一閃、才人が遮二無二突っ込んでいくが、 『ふんッ!』 レギュラン星人の放った光弾によって、デルフリンガーはあっさりと弾き飛ばされてしまった。 続く二発目が才人の足元に当たり、才人は衝撃で転倒してしまう。 「ぐぁッ!」 『口ほどにもない。想像したよりもはるかに弱いぞ。笑いすら起きんわ』 レギュラン星人は、嘲るを通り越して呆れ返っていた。 「く、くそぉ……」 仰向けに倒れたまま、悔しさに打ち震える才人。予想していなかった訳ではないが、本当に全く歯が立たない。 ゼロの力も、ガンダールヴの力もない自分が、本当にただの軟弱な高校生だという決定的な証拠を見せつけられた。 ガクガクと身を起こそうとする才人の腹を、レギュラン星人が踏みつける。 「がはッ!」 『あまりに張り合いのない終わり方だが、容赦はせん! 貴様はあの世でウルトラマンゼロに、 自分の弱さのせいで道連れにしたことを謝っておくんだな!』 押さえつけた才人を粉々にするだけの威力の光弾を、手の平に作り出すレギュラン星人。才人は最早逃げることも叶わない。 ああ、才人よ! そしてウルトラマンゼロよ! せっかく死の淵から生還する奇跡を手にしたというのに、 こんなにも早く死の世界へと押し戻されてしまうのか! だが、才人が助かる道はもうどこにも見当たらない! 才人の最期の瞬間が、もうすぐそこに迫ってきた! 前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔
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第二話 洗濯する戦士 ルイズはこの使い魔のことが気に入らなかった。名前もそうだし、部屋に帰って話を聞いても 魔法とは何だ? ネオアルカディアは? 何でこんなに自然が? エリアゼロはどうなったのか?(ここでゼロという単語が出てきてもっといやになった) と相変わらず訳の分からないことを言い出し、 しまいには自分は違う世界から来て、そこには月もひとつしかないとか言い出した。 「もういいわ、あんたが頭のおかしい魔法も知らない田舎ものの平民だってことは分かったから。」 「平民?俺は人間じゃない、レプリロイドだ」 さすがにうんざりしてきた。魔法にけちをつけまわりの草木にけちをつけ月の数にけちをつけ、さらにゼロという名前で、 おまけに人間ということにまでけちをつけるのかこいつは。 「なにいってんのあんた。鏡見たこと無いの?いくら頭がおかしくてもそれぐらい分かるでしょう」 「俺は人型のレプリロイドだ。」 「そもそもレプリロイドってなによ?ぜんぜん訳わかんない。」 「いわゆるロボットといったほうが分かりやすいか。」 「どっちにしろわかんないわよ」 「なら、動く人形のようなものだ。」 「は?馬鹿にしてるの?人みたいによく動く人形なんてそうある分けないでしょ! そもそも人と人形の区別ぐらいつくわよ! もういいわ、あんたがまじめに話すつもりの無いのは分かったから! いいから本題に入るわよ。今からいうことをよく頭に入れなさい!私はあんたを召喚したご主人様なの、いい!」 「召喚?俺を召喚してどうしようっていうんだ?」 「もちろん使い魔として使えてもらうためよ。」 「用はお前のために働けということか。で、何をさせようって言うんだ?」 案外こいつは反発もせずに聞いてきた。やはり素直ではあるのかもしれない。 「使い魔の仕事といえば、まず私の目となり耳となることね。じゃあやってみましょうか」 ルイズはしゅうちゅうした。 さいのうがたりない。 なにもおきなかった。 ……何か聞こえたが気のせいだろう。自分は大器晩成なのだ。才能が無いわけじゃない。 そんなことを思いつつルイズは話を続けた。 「うーん、たまたま、いい、たまたまよ、うまくいかないみたいね。 ほかに秘薬の探索とかだけど、あんたそういうのって分かる?」 「分からん」 「っでしょうね。後は私の護衛だけど、まあ平民のあんたじゃ」 「わかった」 平民のくせに何を言うのかこいつは。鎧を着けているし傭兵なのかもしれないが 所詮平民がメイジに勝てるわけも無い。 「俺は戦うことしか能の無いレプリロイドだからな。お前を守れというのならそのために力を貸そう」 「……もういいわ、あんたが訳の分からないことしかいわないのはよく分かったから。 それよりも!おまえ、じゃないでしょ!いい!私を呼ぶときはごsy」 「分かった、ルイズ」 「じんさ……、ま、まあいいわ。それとせめて身の回りの世話をしなさい。掃除とか洗濯とか」 ルイズはゼロが護衛として戦えるということをまったく信じなかった。あまつさえ使用人のように扱った。 「わかった」 が、それにもゼロは素直に従った。 「じゃあ今日はもう遅いから着替えさせて」 そういうとなにも言わずルイズを着替えさせた。 「それと服はちゃんと洗濯して、朝はちゃんと起こしなさいよ。あとあんたはそこで寝なさい」 と床をさすとゼロはなにも言わずそこに行き壁にもたれた。本当に素直だ。 が、少し気になる。平民が貴族に従うのは当然とはいえいきなり呼び出されたのだ。 帰りたいと思ったりはしないのだろうか? 「ねえ、あんた、帰りたいとか思わないの?」 ふと、口に出ていた。 「……向こうでの戦いは終わった。もう俺にできることは少ない。 ここで俺を必要とするのならここに残ろう。かまわないか?」 ルイズは考える。はっきり行ってこいつは訳のわかんない平民だし名前はゼロだし正直こいつが使い魔なんていやだ。 しかしさしあたっては使い魔がいないと進級できるかも分からないし。 「まああんたはとりあえず必要よ、私のために働いてもらわないと困るし。 まあどっちにしろ戻す魔法なんて聞いたこと無いけど」 「そうか」 そういうとゼロは動かなくなった。 本当に少しも動かないので少し気になったが召喚したときもそうだったし気にしないことにした。 それより、状況を説明させたり質問をしてきたとき以降はあまり喋らなかったなと思い、 こいつ無口なのかなと思いながらルイズは眠りについた。 翌日ゼロは洗濯物を持って歩いていた。が、洗濯場が分からない。ゼロは人影を見つけると声をかけた。 「おい」 声をかけられた少女、シエスタは困惑していた。 女子寮でいきなり男、それも鎧兜で武装した男に声をかけられたのだ。 「ええ、あ、あなたは?」 「俺はゼロ、ルイズの使い魔だ」 それで思い出す。確か昨日人が召喚されたとか言っていたはずだ。 「あ、申し訳ありません、私はここでメイドとして奉公させていただいてます、シエスタです。宜しくお願します。 それで、どういう御用でしょうか?」 「洗濯場を探している。場所を知らないか?」 「ああ、それならこちらになります。案内しますのでついてきてください」 「感謝する」 ゼロは洗濯場につくとすぐに洗濯を始めた。 かつても戦いが無いときは薪割りに草むしり(ゼロ4ミニゲーム参照)といったことをやっていたのだ。 このような雑用をすることに抵抗は無かった。 エネルギーの節約のため原始的な方法に頼ることも多かったためこの世界でも洗濯に難儀することも無い。 洗濯を終えるとシエスタと別れゼロは部屋へ戻っていった。 「おい、起きろ」 「うん……おはよって誰よあんた!……ってそういえば私が呼んだんだったわね。じゃあ着替えさせて」 そうして着替えを済ますとルイズは食事のために部屋を出た。 そしていやなやつに会った。 「あら、おはようルイズ」 「…おはよう。キュルケ」 「朝からしけた顔ねえー。で、それが噂の使い魔?」 「……そうよ」 「あっはっは!ほんとに人間なのね!すごいじゃない! 平民を呼んじゃうなんて、 ほんとすごいわ。さすがねー」 「う、うるさいわね!」 そしてキュルケは、ゼロのほうを見やる。。 「あら、こうしてみると意外といい男ね。特にその目が素敵。ねえ、あなたの名前は?」 ルイズはしまったと思った。名前なんて簡単に話題に上るようなことだ。 が、もう遅く 「ゼロだ」 と答えていた。その後も俺はレプリロイドだとか行っていたがキュルケはもう聞いてはいなかった。 「ゼロ?ほんとに?あっはっは!すごいじゃない! ゼロのルイズがよぶにはぴったりじゃない。 大成功ね、よかったわねぇルイズ」 どうしてなにも手を打っておかなかったのか?偽名でも名乗らせればよかったことじゃないのか。 が、もう遅い。いまさらそうしたところでキュルケがうれしそうにしゃっべってまわることだろう。 「あははっ、ああそうだ。あたしも昨日、使い魔を召喚したのよ。さあ、おいでフレイム。 キュルケが呼ぶのに答えて、部屋から赤トカゲ現れる。 赤く大きい体、燃える尻尾。ゼロは疑問を持った。 「こいつは生物なのか?」 「火竜山脈のサラマンダーよ~、好事家に見せたら値段なんかつかないわよ? こういうのこそ使い魔にふさわしいわよねぇ~」 「何よ、あてつけのつもり!」 その後もルイズとキュルケは騒いでいたがゼロは別のことを考えていた。 ルイズの話ではこの世界には科学が無い。強力なレプリロイドやメカニロイドも存在しない。 だがこのような生物が代わりに存在する。 もしそれらを敵に回すのなら今まで経験したものにも劣らない戦いになる可能性もある。 もっとこの世界について知らなければ、そう思った。 その後、食堂でルイズはゼロに対し、名前がゼロなのが気に食わないというだけの理由で、 粗末な食事を出すも 「俺はレプリロイドだ。食事は必要ない」 といわれ、 「なに強がってんのよ!いいわ、そのつもりならもう頭下げるまで一切食事抜きだから!!」 とさらに荒れることになった。