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「ファイナルファンタジータクティクス」の聖石 参考リンク:ウィキペディア (Wikipedia) フリー百科事典 ファイナルファンタジータクティクスの項より ゼロと聖石-01 ゼロと聖石-02 ゼロと聖石-03 ゼロと聖石-04 ゼロと聖石-05 ゼロと聖石-06 ゼロと聖石-07 ゼロと聖石-08 ゼロと聖石-09 ゼロと聖石-10 ゼロと聖石-外伝 昼下がりの戦い ゼロと聖石-11 ゼロと聖石-12 ゼロと聖石-13 ゼロと聖石-14 ゼロと聖石-15 ゼロと聖石-16 ゼロと聖石-17 ゼロと聖石-18 ゼロと聖石-19 ゼロと聖石-20 ゼロと聖石-21 ゼロと聖石-22 ゼロと聖石-23
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前ページ次ページゼロと聖石 ギーシュは怯えていた。 目の前のゼロに、先ほどまで格下だと疑わなかった存在に。 ルイズはしらけていた。 試したいことの半分も消化しないうちにギーシュが杖を手放したから。 杖を突きつける者と突きつけられる者の彼我が逆転した瞬間だった。 ギーシュが去った直後、私は部屋に駆け込む。 装飾された儀式用のきらびやかな杖、ヴァリエール家の家紋を象った杖を取り出す。 アルテマの知識が教えてくれた大切な事項。 ―――魔法とは杖によって発動するのではなく、 武器や大気に篭った魔力を糧として自身を媒介にして放つもの――― その観点から引っ張り出したのがこの杖だ。 どこかの霊木に水のメイジが精霊からもらった水で磨き、土のメイジが加工した銀を聖水で加護をした特注品。 そりゃもう魔力ならいくらでも篭っている。 ついでにマントも黒に赤い裏地の物を羽織る。 よし、これで後方防御も40%プラス。 魔法も20%防げる。 制服とバレッタでHPもMPもバランスよく、状態異常も無効。 ―――いけない、また変な思考が。 装備品を整え、ヴェストリの広場へ。 この姿を見た生徒達は後にこう語った。 「ゼロがゼロじゃなくなった瞬間」と。 「逃げずに来たのは誉めておこうか、『ゼロ』のルイズ」 「おあいにく様、逃げる理由が無いもの。ギーシュ・ド・グラモン」 無粋に無粋で返したところで無粋の極みだ。 「もっとも、あなたは地べたを這い蹲る運命なのだけれどね」 こちらはせめて、小粋に返そうではないか。 「こちらは武器として魔法を使わせてもらうよ、まぁ『ゼロ』は『ゼロ』なりに逃げ惑ってくれたまえ」 そう言ってギーシュがワルキューレを召喚する。 その数は1体、これで十分だと言わんばかりだ。 呼び出された瞬間にこちらに駆け出してくるワルキューレ。 その拳が私の眼前に迫ったとき、一つの魔法を発動させた。 空振るワルキューレの拳。 次の瞬間にはワルキューレの真後ろに立っていた。 「甘い、そして遅いわよ」 ワルキューレが振り向きざまに裏拳を放つ。 その攻撃もかすることなく私はワルキューレの真横に。 矢継ぎ早に繰り出される攻撃を右に左に後ろにあるいは正面に『跳んで』回避する。 ギーシュには悪夢のような光景だった。 何しろルイズが消えたと思ったら次の瞬間には別な場所にいる。 しかも、その距離がどんどんワルキューレに対して遠くなっているのである。 いつこっちに現れてもおかしくない、そう思って二体目のワルキューレを防衛にまわすのはまともな判断だった。 ルイズ以外の相手には。 ギーシュがワルキューレの2体目を出したのを確認。 こちらはテレポの実験を終了する。 距離が離れると失敗するという説明だったが、今の状態なら100%跳べる。 ある程度ギーシュに近づいた瞬間、詠唱を開始。 使う魔法は三属性。 まずは、目の前の防衛用に対して目標をセット。 追いかけてくるワルキューレに対して思いっきり跳んで距離をとる。 「岩砕き、骸崩す、地に潜む者たち。集いて赤き炎となれ! ファイア!」 跳び終わった瞬間に詠唱終了。 突然現れた炎にワルキューレはなすすべなく熔かされる。 そのことに驚きながらもギーシュは防衛に1体、攻撃にもう1体を追加。 これで3体。最大数は7だったはず。 向かってくる2体に狙いを定め、詠唱。 「闇に生まれし精霊の吐息の、凍てつく風の刃に散れ! ブリザド!」 突然出現した氷塊がワルキューレ2体を砕く。 観客がどよめくが、気にしない。 テレポで徐々に距離を詰める。 ギーシュも近づけさせなければいいという精神で作り出せる限界数、7体のワルキューレを作成する。 そこまで密集されるとやりたくなるのが人の性である。 足を止めてワルキューレの一番前にいるやつに狙いをセット。 さすがにあのアルテマは死ぬだろう。 というわけで、 「虚栄の闇を払い、真実なる姿現せ。あるがままに! アルテマ!」 若干威力を抑えたアルテマを放つ。 威力は失敗魔法と同じくらい。 それだけあれば十分だ。 一撃で守りを固めていたワルキューレが吹き飛び、粉々になる。 その爆煙が晴れる前にテレポでギーシュの後ろへ跳び、足払い。 さらに正面に跳んで杖を突きつける。 爆煙が晴れる。 彼我関係が覆され、地面に這い蹲る形のギーシュに、杖を首に向けるルイズ。 ギーシュの目は恐怖に怯えている。 その恐怖で杖を手放している。 誰かがギーシュの手元に目が行く前に詠唱を終了させる。 「残念ね、降参してくれればこんな目にあわずにすんだのに」 「ま、まい「もう遅い。まばゆき光彩を刃となして地を引き裂かん! サンダー!」 ギーシュにどこからか落ちてきた雷が着弾。 全身をこんがりとさせてギーシュは意識を失った。 さすがにやりすぎを反省し、詠唱。 「清らかなる生命の風よ、失いし力とならん! ケアル!」 ギーシュを緑色の光が包み、雷で焼け爛れた皮膚が再生する。 相変わらず気絶したままだったが、これなら問題は無いだろう。 「それじゃあね、ギーシュ・ド・グラモン。今度はもっと腕を磨いてきなさい」 そのままギーシュに背を向けてヴェストリの広場を後にした。 遠見の鏡からオスマンとコルベールが決闘の様子を眺めていた。 「アレが、ヴァリエールが契約した聖石の力…」 「多分、あれはほんの一部分に過ぎんな。あの悪魔には程遠い」 オスマンが遠見の鏡の発動を止め、空をにらむ。 「わし等も、覚悟せんといかんの。場合によっては殺さねばいかん」 「彼女を、ですか?」 その言葉にオスマンは答えず、緊迫した空気だけが流れていた。 前ページ次ページゼロと聖石
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前ページ次ページゼロと聖石 倒れこんだ状態でハイポーションを使う。 とりあえずは応急処置といった感じか。 同じく倒れこんでいるシエスタにはエクスポーション。 元から体力の桁が違うのだ、材料費が高く回復量も高いものを使うのが道理だ。 それでも完全に回復していないところが怖い、というか化物ですか? さようならエクスポーション。作成費金貨三枚、貴方のことは忘れない。 同じく倒れこんでいるウェールズ皇子の容態を調べる。 リレイズの発動まで後三十秒弱。 これは、皇子がアンリエッタ様に再び会えるように掛けたおまじない。 今ここで使わせるわけにはいかない。 万が一のために用意しておいたフェニックスの尾。 鳥形使い魔の抜け落ちた羽をベースに薬を混ぜて作った気付け薬。 細かく砕いて水と共に飲み込ませる。しめて金貨十枚なり。 即効性が売りの薬だ。効果はすぐに現われ、ウェールズ皇子も起き上がる。 「この水の秘薬は、一体なんだ? 先ほどまでは動けそうも無かったが、今は少しなら動けるぞ」 「ちょっとした薬です。完全に回復したわけではないので、こちらも飲んでください」 そう言って、渡す薬はエクスポーション二本とエーテルにハイエーテル。 これだけ飲ませれば完全回復するだろう。 さようならエキュー金貨で十八枚。 この旅だけで金貨三十枚以上は無くなっている。 私の財布は悲鳴を上げるのであった。 「少なくとも五分は動かないでくださいね。傷がふさがる前に動くと痕が残りますから。 ついでに本来の回復量に達しませんから絶対に安静にしていてください」 ここまで釘を刺しておけば確実に動かないだろう。 その間に、手持ちの材料からポーション三つとエーテル二つを作っておく。 「もう動いても大丈夫です」 その言葉に、軽くストレッチする形で体を確かめるように動く皇子。 この感じなら完全回復だろう。 と、そこで爆音が響く。 レコンキスタの攻撃だろう。 予告された攻撃時刻よりも早い。 つまり、奇襲。 「少しだけ、私が時間を稼ぎます。皇子は非戦闘員の脱出を」 「眠りの雲よ……」 予備の杖から放たれた雲は、いともたやすく私の意識を奪っていった。 「シエスタ、といったね。君は彼女を連れて脱出するんだ」 「しかし、皇子は! ―――分かりました。アンリエッタ様には名誉に殉じたと、伝えます」 皇子様の決心は硬い。 騎士にとっての名誉をお爺様から教えられた私には、止めることなど出来なかった。 「せめて、こちらをお持ちください。これならば契約をしていなくても触媒として申し分ないと」 鎧の内側に仕込んでおいたお爺様の剣の模造品、ルーンブレイドを手渡す。 お爺様曰く、魔力を高める効果に魔法触媒としても有効だと。 さらにルイズ様が準備しておいたポーションとエーテルを渡す。 「御武運を、ウェールズ皇子様」 「君に、アルビオンから吹く風の加護があらんことを。 それと、宝物庫に君達が持っているのと同じ石が有る。それを持っていってくれ」 それだけの言葉を交わし、私はルイズ様を背負って駆け出した。 途中で遭遇したレコンキスタは全部切りながら進む。 宝物庫にたどり着く。 扉を開き、中を確認すると殆どのものは運び出され、残っているのはガラクタばかり。 部屋の中央で小箱を見つけ、中を開けると聖石が入っていた。 淡い水色の、やはり似たような文字が刻まれている。 サジタリウスが共鳴し、名前を教えてくれる。 「アクエリアス? 宝瓶宮? よくわからないけど聖石なのね?」 それに反応するように、サジタリウスが煌く。 爆音と怒号が響く。 ここらもそろそろ人が入り込んでくる。 急いで脱出しないと。 脱出艇が出港を始めている。 しかし、周りのメイジが攻撃を始め、撃沈の危機にさらされている。 私はそいつ等の注意をひきつけるために、技を放つ。 「命脈は無常にして惜しむるべからず…葬る! 不動無明剣!」 まとまっていたメイジが氷の刃に貫かれ、絶命。 桟橋を離れた脱出艇へ駆けると同時に技を放ちつつメイジの数を減らす。 「間に合え、間に合え、間に合えぇーー!!!」 最大速度、ルイズ様を抱えた状態での大跳躍。 距離は大体五十メイル。 ぎりぎり届くか届かないか! 甲板で援護をしていたメイジたちが一斉に着地スペースを作る。 ここまでお膳立てされたら確実に成功する。 そう思った刹那、足に鈍い衝撃が走る。 骨を砕いて風の針が突き立っていた。 それが原因でバランスを崩す。 目算で十メイル足りない。 だけど、人一人なら問題ない! たどり着けないと計算した私は、背負っていたルイズ様を船に向かって、 「ルイズ様を、お任せいたします!!」 全力で放り投げた。 慣性の法則で私は失速、ルイズ様は甲板に到着。 これでいい。 私が居なくても、あの方は強いから。 空中で無双稲妻突きを繰り出して、港のメイジを蹴散らす。 ますます遠くなる船。 私に向かって飛来する魔法をデルフで弾きながら、メイジを撃ち落す。 そして、港も見えなくなる。 下は霧がかっていて見えない。 確実に助からないだろう。 「ゴメンなさい、デルフ。あなたまで巻き添えにしちゃった」 「まぁ、相棒は使い手じゃないくせに使い手以上の動きしたから楽しかったぜ」 デルフを抱きしめる。 初めて持たされたとき、その重さにふらついたっけ。 喋り始めたときは怖くて思わず泣いたっけ。 最高のご主人様に、最高の相棒を持つことが出来、 「お爺様、剣聖へは至れなかったですが、シエスタは、幸せでした―――」 「じゃあまだ幸せは続くな相棒。剣聖もまだ目指せるぜ」 へ? と思う間も無く、背中に衝撃。 「まったく、ルイズ以上に無茶なのは貴方だと思うわ、シエスタ」 「それには同意」 「まぁ、間に合ったんだからよかったじゃないか」 キュルケ様にタバサ様にギーシュ様、という事はここはシルフィードの背中か。 ラ・ロシェールからここまで飛んできたのか? だとしたら凄い長旅だろう。 「迎えに来たわよ、シエスタ。ルイズはあの船?」 私は満面の笑みで、はいと答えた。 お爺様、先ほどの言葉は訂正します。 私は、こんな素晴らしい方達に囲まれて剣聖を目指せることを、誇りに思います。 前ページ次ページゼロと聖石
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前ページ次ページゼロと聖石 ワルド様が必死になって風石の代わりに魔力を使っている。 その姿を見つつ私はティータイムとしゃれ込んでいた。 シエスタは紅茶を淹れたあと、床で『メイソウ』とかいう精神統一法を行っている。 シエスタ曰く、『見えなかったものが見える』そうだ。 視野を切り替えるとかそういったものだろうか? そんな風に過ごしていると、船員が慌しく走り回る。 事情を聞くと、空賊が現れたみたい。 甲板に上がり、その姿を確認する。 黒塗りの船体、側舷についている二十数門の大砲。 ―――これは勝てないわ。アレだけの規模ならメイジ乗っていそうだし。 完全アルテマで吹き飛ばしていいが、それだと…最悪乗っ取られる。 やめよう、聖天使の力を引き出して正気でいられるか分からないし、まだ死にたくも無い。 その数分後、空賊たちが乗り込んできた。 ワルド様のグリフォンはあっという間に空賊のメイジに眠らされる。 私も杖を没収され、シエスタはデルフと盾を没収されていた。 そして、倉庫の一室に押し込められた。 ワルド様は静かに何かを考え、シエスタは相変わらず 狭い船室の中、この空賊たちについて考えていた。 まず、目的。 彼等はマリーガランド号の積荷が硫黄だと聞くと、目を輝かせていた。 今は貴族派が幅を利かせているため、硫黄などの火の秘薬はよく売れる。 それは劣勢の王党派も同じこと。 仮にこの船が貴族派の物だとして、そこまでして硫黄を入手する必要が無い。 本物の空賊だったら硫黄だけ奪って後は証拠隠滅で片がつくはずだ。 結論は一つ。 決まったら即行動。 「シエスタ、船長のところに行くわ。手伝って」 ワルド様が困惑している中、シエスタが鎧の内側に仕込まれた剣を抜き、構える。 私も鉄で出来た東方のオウギという、風を起こす道具を取り出す。 シエスタがドアを蹴破り、それに私が続く。 その音に空賊が武器を構えて襲い掛かってくるが、シエスタの敵ではない。 私はというと、後ろから来る敵に対して、役に立つと思っていなかった魔法を唱える。 「命ささえる大地よ、我を庇護したまえ。止めおけ! ドンムブ!」 通路の狭い船の中では最高に相性のいい魔法、対象をその場から動けなくする。 それを何人も繰り返し、あっという間に封鎖線が出来上がる。 歩く先には倒れ付す空賊、後方にはなすすべも無く見守る空賊。 そんなことを繰り返しながら空賊頭目の前までたどり着く。 「アルビオン王国の貴族とお見受けします。 私はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、アンリエッタ姫殿下の命により馳せ参じました」 後ろの空賊たちとワルド様が驚きで目を見開き、シエスタはだから手ごわかったのかみたいな顔をしていた。 頭目は一瞬唖然としていたが、すぐに顔を引き締め、居住まいを正した。 「これは大変な失礼をした。私はアルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダーだ」 今度は私が驚く番であった。 お偉方が一人は乗ってると思ったらまさか総大将方向の人間が乗ってるとは。 我に返えると、ウェールズ皇子がしてやったりの表情をしているのを気づいた。 ニューカッスル城。 アルビオン王国の権力の象徴だった城。 今は砲撃によって煤け、あちこちに瓦礫が落ちている。 「すまないね、騒がしい場所で」 鹵獲されたロイヤル・ソヴリン号が砲撃を続ける。 その巨体はその場にいるだけで威圧を続け、空に君臨していた。 砲撃音と着弾音が響く中、私はウェールズ皇子にアンリエッタ様から預かった手紙を渡す。 それをひとしきり読んだあと、小さな宝箱を取り出し、古ぼけた手紙が渡される。 内容は聞かずとも分かった。 それを懐にしまいこみ、一応亡命を勧めておく。 ウェールズ皇子はそれに対して首を振り、名誉に殉じると言った。 そこまで言われたら、何も言えない。だから、私はウェールズ様に一つだけ魔法をかけておく。 「大気に満ち、木々を揺らす波動。生命の躍動を刻め! リレイズ!」 光がウェールズ皇子を纏い、消える。 部屋を去る直前に、一言だけ言っておく。 「女を泣かせると後が怖いですよ。せいぜいアンリエッタ様を泣かせないように」 「これは手厳しい。忠告として受け取っておくよ」 その直後に、ありがとうと聞こえた気がしたが、聞こえていない。 ウェールズ皇子の独り言など、聞かなかったのだ。 最後の晩餐会で国王の言葉を聞く。 やはり、彼等はここで全員死ぬつもりなのだ。 戦争とはいえ、誰かが死ぬのは悲しい。 「アルテマ、あなたも悲しいの?」 アルテマからの回答は無い。 彼女は必要なときに必要なことだけ告げていくのだから。 それでも、誰かの声が聴きたい瞬間があるから話しかけてみた。 寂しく思った瞬間、聖石が一瞬だけ煌いた。 「ありがとう、アルテマ」 暗い気持ちを払い、戦士の皆と酒を飲んでいるシエスタの元へ向かう。 シエスタがワインをジョッキで一気飲みをしている。 それに負けじとワインをジョッキで飲むおっさん。 そこに私も乱入するのだった。 そして明くる朝。 「頭いたーい、気持ちわるーい、絶対吐く………」 「大丈夫ですか、ルイズ様………うぉぇっぷ」 二人揃って二日酔いになる。 ワルド様に起きたら聖堂に来てくれと言われているのに。 こうなったら仕方が無い。 こんな状況で使う予定じゃなかったのだが、緊急事態だ。仕方が無い。 「天駆ける風、力の根源へと我を導き、そを与えたまえ! エスナ!」 効果があるかどうか疑わしかったが、どうやら効果はあったようだ。 頭痛と吐き気がすぅっと去っていく。 横にいるシエスタにも使わないと、部屋が大変なことになる。 すさまじい速度で詠唱を始めるのだった。 外伝へ 前ページ次ページゼロと聖石
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前ページ次ページゼロと聖石 久方ぶりの夢を見た。 親には成績が悪いとしかられ、使用人の陰口も聞いてしまった。 私は中庭の池に浮かぶ小船の上で泣いていた。 いつもの夢なんだと理解してしまった。 いつもならここで子爵様が出てくるのだが、今日の夢はいつもと違っていた。 泣くのをやめて舟を漕ぎ、対岸にたどり着く。 そこではキュルケが化粧をしていた。 タバサがシルフィードにもたれて本を読む。 シエスタがデルフと話しながら重り付きの三メイルほどある棒で素振りをしている。 見知らぬ女性とロバの足を持った化物が仲睦まじく話している。 オールド・オスマンがその光景を見て少し引きつっている。 私は皆の元へと走っていった。 そこで、目が覚めた。 私にしては早く目が覚めた、眼下の中庭、シエスタが洗濯物の横で三メイルほどの重り付き棒で素振りをしている。 うん、いつもの朝だ。 いつものように着替え、いつものように友人達と騒ぎながら授業を受ける。 さて、日常を謳歌しましょう。 「さて、諸君は最強の系統は何だと思う?」 風は最強がモットーのミスター・ギトーの講義が始まり、いつもの決まり文句が飛び出す。 二年次で初めてこの授業を受ける時、必ずする質問で、彼はここで生徒の未熟な魔法を吹き飛ばして悦に浸るのが趣味だと聞いた。 さて、毎年ここで『火』や『水』とかそういった声が自信満々な生徒が挑戦してくるのだが、今年は違った。 「いや、多分ミス・ヴァリエールが使う先住魔法ぽい魔法じゃないかと」 ギーシュがそう呟き、共に授業を受けていた全員が頷く。 どうやらいまだにトラウマなようだ、アルテマが。 「ほう、ゼロのルイズが最強との声が名高いが、最強の系統は風だ。 ありとあらゆる災難を吹き飛ばす風こそが最強、というわけで、ミス・ヴァリエール。その魔法とやらを使ってみなさい」 瞬間、全員どころか使い魔まで教室外に逃げる。 調度品が近くにある生徒はそれを抱えて撤退し、風系のメイジが長机で入り口にバリケードを築く。 そのうえ、タバサほか水系統が使えるメイジが氷で障壁を張り、土系メイジがゴーレムでバリケードを押さえる。 その手際の良さに驚きつつ、ギトーは詠唱を開始する。 同時にルイズも詠唱を開始。 ギトーの周囲に暴風とも取れる障壁が張られる。 そのとき、横の教員用入り口から入ってきたズラをかぶったコルベールが登場。 「みなさん、授業は中止で……あれ?」 「さあ、全て吹き飛ばして見せよう!」 「星となりし偉大なる神々よ、我が力となりたまえ…リタンジャ!」 その瞬間に、ギトーの作り出した風の障壁が消える。 リタンジャによって障壁を作り出すという行動自体を無効化。 その隙にアルテマの詠唱を完成させる。 「なっ!? 風よ」 「遅い! 渦なす生命の色、七つの扉開き力の塔の天に到らん! アルテマ!」 ギトーの間一髪で間に合った全力の障壁をものともせず、アルテマの破壊力が教室中を埋め尽くす。 「ぎゃぼーーーーー!!」 「なんでわたしまでーーーーーー!!」 二つの断末魔が響き渡り、退避した生徒達全員が祈りの十字を切った。 ズラが消え去り、服に焼け焦げを作りながらコルベールが授業は中止だと告げた。 アンリエッタ姫が学院を尋ねるのだと。 そう、アンリエッタ様が。子供のころ一緒に遊んだアンが。 そのことに少しだけ胸を躍らせながら、同時に嵐が来る予感もした。 夜になって、アンリエッタ様が予想通り尋ねてきた。 久方ぶりのお嬢様ハイテンションに任せて会話を続けたが、正直頭が痛くなってきたので本題を切り出すように言った。 「要約してしまうと、アルビオンのウェールズ皇子から手紙を受け取ってほしいと」 「その通りですが、しばらく見ないうちにずいぶんとさっぱりした性格になりましたね」 なんでもゲルマニアとの婚約をご破算にしてしまうほどの物らしい。 どーせ恋文でしかも始祖ブリミルに誓ってとか書いちゃったんだと思う。 そこで私は部屋のドアを開け、盗み聞きしていた不逞の輩を部屋にご招待。 「盗み聞きとは根性悪いわね、ギーシュ・ド・グラモン」 こちらの笑顔を見て、震えながら命乞いをするギーシュ。 まて、まだ何もしていないぞ。 その後、アンリエッタ様のとりなしで同行を許可したのであった。 というか使い物になるのかコイツ? さらに王家の証ということで水のルビーを借り受け、指にはめる。 そんな簡単に王家の証渡していいのか? そんなことを考えながら、翌日の任務に備えて眠るのであった。 翌朝。 二人だけの任務だったはずだが… 「皆まで言わないわ。とりあえず行きましょうか」 いつもの面子全員が集結していた。 シエスタがデルフを背中に背負い、普段は見ないような立派な盾に鎧を身に着けている。 キュルケも冒険用の軽い皮鎧にツェルプストー家の家紋が入った杖を背負っている。 タバサは白いローブに身を包み、いつもの杖を持っている。 ギーシュはいつもの格好、せめて何かしらの旅行用の装備位しろと。 そういう私は黒のローブにマント、ヴァリエール家の杖にリボンと完全武装。 準備も整ったので、激を飛ばす! 「いざ、アルビオンへ!」 「「「「「おー!!」」」」」 おかしい、聞き覚えのあるようで懐かしい声が聞こえた。 後ろを振り向いて人数を確認する。 ―――マテ、一人多い。 あからさまに一人だけ、年齢の割りに顔つきがオッサン臭い人物が! 「ワルド様!?」 「やあ、久しぶりだな、僕のルイズ!」 ルイズを抱きかかえて回りだす。 全員が驚きながら、こうも思った。 どこかにいっちゃってる人だな、と。 その全員の中にルイズも含まれていることは秘密だった。 前ページ次ページゼロと聖石
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前ページ次ページゼロと聖石 店が開いてからの魅惑の妖精亭は修羅場だ。 客にサービスしながらオーダーを取り、場合によっては自分で調理。 隙を見て皿洗いやその他雑用。 店を出るお客様のお会計にお見送り。 忙しい、ああ忙しい、忙しい。 今日も今日とてがんばって働いてます。 と言いたかった所だが――― 「この店の女だってのは分かってるんだ、出て来い!!」 外から響く、無粋な声。 ここはお酒を楽しむところであって、貴族が杖を抜く場所ではない。 ジェシカと目が合い、頷きを持って返す。 ―――万が一の場合はお願い。 ―――了解。 下準備は整ったので、ホールを抜けて店の前に出る。 目の前に居るのは昨日の貴族に、雇われの傭兵達。 その数、しめて十人。 ………あー、人間できることと出来ないことの二種類あるんだよね。 数の差をひっくり返すのは難しい部類に入るわけだ。 一人でこの人数は無理、つーかリンチ? 剣を抜き、構える。 絶望的な戦いに身を投じようとしている。 でも、逃げ出すことは出来ない。 記憶のない私に対して、やさしくしてくれた。 食事や仕事もくれた。 そんな人たちに迷惑をかけるわけにはいかない。 自分の問題は、自分でケリをつける! 襲い掛かってくる剣士が剣を振りかぶった瞬間に二回切りつけて沈黙させる。 シエスタが教えてくれた、ハメドるという技術だ。 少なくとも、近接戦はこの技術で問題はない。 だが問題となるのは、近接戦をしてこないメイジや弓を持った奴等だ。 今はまだ避けられているが、いつか破綻が来る。 飛んできた矢を剣で叩き落す。 迫ってくる魔法をバックステップで避け、目の前の斧使いを切り捨てる。 肩に矢がかすめ、一瞬バランスを崩しながらも剣士の剣を受け止める。 そして、剣士を巻き込むように襲い掛かるフレイムボール。 剣士を盾にしのぐが、襲い掛かる熱波に一瞬目を閉じる。 同時に足から鋭い痛み。弓使いが放った矢が刺さっていた。 襲い掛かる火球に対して、剣で受け止めるような形で直撃。 全身が熱と火に包まれ、地面を転がるようにして鎮火する。 転がっているうちに傭兵の一人が私を蹴り飛ばす。 そしてそれに追従するかのごとく全員が私を蹴り飛ばした。 既に、全身が痛みに支配され、意識が闇に落ちそうになる。 「さて、この娘は後回しにして―――店を破壊したまえ」 その言葉に、精神が目覚める。 そうだ、コイツは言っていたじゃないか。 『親族縁者もろとも台無しにしてくれる』と。 コイツから見て、ここが私の家だと認識したらしい。 「させるもんですか―――!」 剣を杖に立ち上がる。 口の中に溜まった血を吐き出し、立ち上がる。 ―――空の下なる我が手に、祝福の風の恵みあらん。 心の内側からわきあがる言葉。 それを呟き、敵を見据える。 「ケアルガ!」 瞬間、緑色の風が周囲を逆巻いて包む。 火傷が、蹴られてボロボロになった身体が癒されてゆく。 完全に思い出せないが、私が魔法を使えたことを思い出す。 「ゴーレム!」 人には聞き取れないほどの詠唱を紡ぐ。 瞬間、地面から這い出る三メイルほどのゴーレム。 私を守護するように立ち上がる。 メイジや剣士がゴーレムを壊そうと必死に戦っている。 その防壁が崩れる前に、次の詠唱を終了させる。 「天と地の精霊達の怒りの全てを今そこに刻め! サンダジャ!」 ゴーレムが崩された瞬間に降り注ぐ膨大な雷。 傭兵もろとも貴族まで吹き飛ばす。 ―――ついでにお店の一部も。 …ヤバイ。 あまりにも派手な魔法使ってしまった。 メイジでもこんな規模の魔法なんてお目にかかれないって。 「ごめん、私逃げるわ。ほとぼりが冷めたら戻ってくるわ!!」 窓から外の様子を覗いていたジェシカに宣言をし、私はテレポで逃げ出した。 後に残ったのは、雷で黒焦げになった傭兵集団だった。 ―――行っちゃったか。 集団リンチされていた時はヒヤヒヤしたが、何とかなった。 店の一部を雷で破壊しながらも。 絶対、後で弁償させてやろう。 そう思いつつ、私は裏口から外に出て、屋根までジャンプ。 目を凝らしてあたりを見渡すと、目的の人物をあっさりと発見する。 フライの魔法で飛びながら逃げる貴族。 先ほどまでルイズと戦っていたヤツだ。 それを見据え、私は駆け出す。 フライよりも速い、全力を持って。 「クソ、クソ、クソ!! あの女、絶対に殺してやる!! 貴族に逆らったことを後悔させてやる!」 「残念ね。貴方ごときでは絶対に無理よ」 声をかけた瞬間にはもう既に至近距離。 絶対に外さず、逃れることの出来ない必殺の間合い。 「熱いベーゼは私の性に合わないから、苦しませないで殺してあげる」 瞬間的に相手の身体を殴る。 身体を吹き飛ばすほどのものでもない、ただちょっと押す程度の力。 それが仕手という技術の一つ、息根止。 「ガッ―――!! グェアアア!!」 たったそれだけの行動で、貴族だった物体は地に落ち行く。 「悪いわね、私もまともな人間をやっていないの」 屋根に立ち、空を眺めながら、私はルイズのことを思った。 無論、店の修理費の計算をしながら。 テレポでシルキスの小屋まで行き、シルキスに跨る。 「さ、行きましょうか。目指すはラクドリアン湖よ」 シルキスが景気良く鳴き、ゆっくりと歩き出す。 ミメットがその後ろに付き、歩を進める。 二匹の足並みは徐々に早くなっていき、草原を駆け抜けていった。 一人と二匹が目指すのはラクドリアン湖。 シエスタの待つ、誓約の水精霊の住処へ。 月の光に、一瞬だけ聖石がきらめきを放った。 前ページ次ページゼロと聖石
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前ページ次ページゼロと聖石 今日来た客は、凄く変わった集団だった。 大抵酒場の儲け話に乗るのは傭兵集団やゴロツキと相場が決まっている。 しかし、今日は違った。 ガキが五人、どこかの制服を着ていたから多分メイジなんだろう。 貴族のガキが一体何を? だから、第一声を聞いた瞬間、驚かされた。 「とりあえず、ミルクを。それと最近噂になってること聞きたいんだけど」 まさか、儲け話を探しに来た貴族がいるなんて。 トリスタニアの酒場で聞ける話は幅が広い。 些細な噂話から大局を見据えた話までさまざまだ。 最も聞ける噂はアンリエッタ様がゲルマニアとの婚姻するという話とレコンキスタに関する話題。 婚姻についてはお膝元だけあって、その手の噂は飛び交っている。 レコンキスタに関しても、次の目標はどうしてもトリステインだということで、あちこちでささやかれている。 そして、マスターに本題を切り出す。 「マスター、何かいい話無い?」 「お嬢さん方、実力者と見るからこんな儲け話があるぜ」 マスターの話に耳を傾ける。 こういった場を取り仕切るマスターがそう言うのだ、相当な話だろう。 「ラ・ロシェール周辺にあるタルブ村、その近くに森があるんだが……最近オーク並に怖い魔鳥が現われるんだと。 その森を突っ切ると、街道を進むより道の短縮になるから重宝されていたんだが… 今はその魔鳥、便宜上タイニーフェザーと呼ばせてもらうヤツ等がそこを陣取っていて、安心して通れないんだ。」 確かに、街道は安全だが若干遠回りになってしまう。 森は気をつけるところに気をつけておけば、最高の短縮ルートになるのだろう。 しかし、その問題となっている魔鳥が道をふさいでしまっていると。 「タイニーフェザー? 魔鳥? コカトリスとかそういった類の?」 ここでマスターが首を振る。 「いや、先住魔法とかの恐ろしさじゃなくて、物理的な恐ろしさらしい。 命からがら逃げてきた冒険者によると、鋼鉄製の鎧に穴を開けるほどのくちばしを持ち、 森の中なのに落石が襲い掛かってきたりと言っていたな。 そのうえ集団で襲いかかってくるそうだ」 なんだろう、そのとても怖い鳥は。 話を聞く限りでは先住魔法を使いこなすみたいだが、遭ってみないことには分からない。 「その魔鳥を退治してほしい、もしくは新ルートの開拓をしてほしいということね」 「話が早くて助かる。どうする?」 全員に目線を合わせ、意思を確認する。 当然ながら、受けると。 なぜかシエスタ以外。 そもそもなぜ、私達がこんなことをしているかというと…… 「諸君、我々にはお金が無い」 食堂でお茶していたところ、ギーシュが宣言した。 まぁ、アルビオンに行くまでの準備とか着いた後のごたごたで出費が重なっている。 私も金額換算で三十三エキューと二十スゥを使っている。 「今こそちょっとした冒険で小遣い稼ぎといこうじゃないか!」 「半分は賛成。宝探しよりも効率的な手段を探したほうがいい」 と、タバサ。 ギーシュの持っている宝の地図が目に入ったのか、それを見てからの提案。 これについてはギーシュ以外全員同意だ。 「じ、じゃあどうやって…」 「酒場に行く。儲け話の一つぐらい紹介してもらう」 なぜタバサがそんなことに詳しいのか、誰も突っ込めないままトリスタニアまで行くことになってしまった。 情報どおりに森の近くまで進む。 全員がたかが鳥、問題なく退治して終了と息巻いていた。 やっぱりシエスタ以外。 むしろ青ざめている。 「どうしたの? たかが鳥じゃない。酒場の主人が名前を大げさに言ってるだけだって」 「そうだといいんですが……もしアレだったら………」 「大丈夫だ、相棒。いくらなんでもアレが逃げ出してるわけねーよ」 「―――手紙に、つがいのアレが逃げ出してなかなか見つからないって書いてあったとしても?」 「……おでれーた。まさかマジでアレが逃げ出したのか? そうなるとヤバイなんてもんじゃねーよ」 デルフと話すシエスタの様子がおかしい。 あの剛剣無双なシエスタが怯える何かが待ち構えているというのか? 「ねぇ、シエスタにデルフ。アレってなに?」 ナイスキュルケ! こういうときにズバズバ聞く性格が頼もしいわ! 「―――鳥、デスヨ? 話ノ通リ、クチバシデ鎧ヲ貫ク」 「―――遭えば分かる。アレと戦った話なんてしたくも無い」 何だかよく分からないまま、馬車は肝心の森へと進んでいった。 「鬱蒼としてるわね、こんな樹海があるなんて」 「地元の話によるとオークの住処」 「オークは嫌だな。臭いし、汚いし」 「―――オークの方がまだマシです……」 「止まって、何か聞こえない?」 その言葉に全員が耳を潜める。 ―――プギャー!! フゴー!! これはオークの声か。 それにしてはずいぶん痛々しい悲鳴がいっぱい上がっている様な… ―――クェー!! クァー!! この声がタイニーフェザーというヤツだろう。 声がしたほうに、もうちょっと接近してみる。 シエスタだけ、何かを諦めたようにデルフを抜いて戦闘態勢に入る。 視界が開け、木々の隙間からぽっかりと空いた広場が見える。 数体のオークが襲われている。 噂のタイニーフェザーに。 黄色や黒の羽毛。 鳥の癖に大地を駆けるその勇姿。 頑丈な鎧でも貫けそうなくちばし。 そして、二メイルはあろうかという体躯。 どう見ても温和そうな生物がオークにくちばしを突き立てて蹂躙している。 「あぁ、やっぱり…」 「アレだけの大所帯だ。さぞかし縄張りは広いだろ」 シエスタとデルフが絶望の淵に立ったような声をあげる。 そこまで怖いものなのか? いや、現実を直視しよう。 振り下ろされる棍棒を、すばやいバックステップで避ける。 脂肪の鎧に包まれた腹に深く突き刺さるくちばし。 謎の球体がオークに襲い掛かり、地面に打ち据える。 傷を負ったタイニーフェザー同士が寄り添って、ケアルに似た光を発して傷を癒す。 これは、一方的だ。 オークが逃げ出そうとして、背を向けた瞬間に降り注ぐ岩石。 降り注いだ岩石はオークを押しつぶして消えた。 オークの逃げようとした先から、赤いタイニーフェザーが出てきた。 「シエスタ、正直に話して。アレは一体なに?」 「お爺様が村に来たときに持ち込まれた、タルブ村にのみ生息する巨大鳥、チョコボです」 「爺さんの話によると、赤いのは先祖返りした獰猛な赤チョコボだ。 黒いのは黒チョコボって言って、空を飛び回る。 厳密にチョコボって言うのは一番数の多い黄色のヤツだ」 「でも、たかが鳥でしょ? どうしてそんなに……」 「野生のチョコボは、完全武装した騎士団でも討伐が難しいと言われるほど危険なんです」 「相棒も昔戦ってボロボロにされた事があるぜ」 全員が絶句する。 「でも、足はそんなに速くなさそうだし、鳥だから賢くないんじゃ?」 「馬かそれ以上の速度が出ますよ? 森の中でもない限り逃げるのは無理です」 「おまけに賢いんだよ」 そのとき、小枝が折れる音が響く。 ギーシュが姿勢を変えた瞬間に踏みしめてしまったのだ。 広場にいたチョコボが一斉にこちらを向く。 「これって、かなりヤバイ?」 「下手すると絶体絶命といった感じです」 後にルイズはこのことを『史上最悪の戦い』と言い残した。 シエスタは後の世に、『温厚な人とチョコボは怒らせるな』という格言も残した。 ―――ここからが、本当の地獄だ。 前ページ次ページゼロと聖石
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前ページ次ページゼロと聖石 話は酒場での結果報告より遡る。 仕事も終わり、意気揚々と帰還している最中だった。 森の中に石造りの建物があった。 部屋が一つだけの簡素な造り。 中には朽ち果てた船が一隻。 大きさから見て二人から三人乗りの船だろう。 船体に刻まれていた文字はエンタープライズ、船の名前だろう。 しかし、ギーシュが触るだけで船体が軋み、所によって割れる。 これが、未知の技術で作られていることはすぐにわかった。 なぜなら、風石が無い上によくわからない棒が付いている。 極めつけは中に積んであった黒い塊。 『魔力変換式空冷エンジン・銀鍵守護機関過渡期Ver.Dr.West』 とりあえず、名前とかそういったものには一切触れないで置こう。 なんだか検閲されそうだし。 よく解らないが、そういったときはあのハゲに聞くのが一番。 というわけで、戦果として持ち帰ることにした。 やぁ、皆の頼れる紳士、コッパゲ―――違うわ! コルベール先生だ。 初めて活躍した『コルベールをやっつけろ☆』以来、久しぶりの登場です。 横で部屋の片付けをしているのは、古代のゴーレム『労働八号』君だ。 戦闘用としても有用だが、命令に対して忠実なのでミス・ヴァリエールからリースしている。 一ヶ月金貨三枚で有能な秘書を雇うようなものだ。 彼のおかげで研究ははかどっている。 機構こそブラックボックスだが、その技術はいろいろと画期的だ。 ゆかいな蛇君Mk-2の開発も手伝ってくれたし。 と、外が騒がしい。 まぁ、私には関係ないが。 「なんだ? またコッパゲ関連か?」 「あのコッパゲも変人だからな。だからハゲるんだよ」 よろしい、私情で点数は付けないがイロは付けよう。 それにしても私関連ということはミス・ヴァリエールか? マントを羽織り、中庭に出る。 黒い塊に、竜騎兵達。 その前にミス・ヴァリエール達。 「あ、コルベール先生。ちょうどよかった、この人たちに運賃を払ってくれませんか?」 数日間留守にしてようやく帰ってきたらいきなり金よこせですか。 ずいぶん偉くなったものですな。 「帰ってきていきなり―――こ、これは!?」 目の前に聳え立つ黒い塊。 いや、ただの塊じゃない、これはゆかいな蛇君の発展版だ。 純粋にスケールアップしただけではなく、所々違う部分や用途が不明な部分が多い。 ―――バラシたい。 そこからの行動は迅速かつ丁寧に行われた。 研究室に戻り、運賃を支払う。 ついでに研究室前まで運んでもらう。 一緒に持ってきていた工具の類も運び込む。 そして、ミス・ヴァリエールにアイコンタクトを送る。 ―――少なくとも二週間は授業を自習という旨を皆に。 ―――了解しました、先生。成果のほうをよしなに。 アイコンタクト成立。 これだけの研究対象は久しぶりだ。 工具を携え、謎の物体『エンジン』へと戦いを挑みに行った。 これでしばらくは自由に過ごせる。 チョコボの卵、あの勇敢な赤チョコボが守っていた卵。 残念な結果だったが、あのチョコボのことは忘れない。 卵は馬小屋の端に藁を敷いて、暖めている。 私はその隣でポーションを調合する。 正面にはモンモランシー。 水系統のメイジで、『香水』の二つ名を持っている。 「つまり、十二種のハーブと七種類のビタミンっていう栄養の素、それに泡の出る水を合わせるの」 「泡の出る水って、炭酸ってやつ?」 彼女にポーションの作り方を教えてと言われ、実演している最中。 今作っているのは飲み薬の方、塗り薬もある。 ちなみに十二種類のハーブはFFⅩⅡ、飾り瓶で有名な初代ポーション。 七種類のビタミンはFFⅦ、新羅カンパニー瓶の方である。 Ⅶの方はローヤルゼリーとカフェインも含まれているぞ。 いけない、雑念が混ざった。 薬作りに集中。 「でも、こんな水の秘薬聞いたこと無いわ。材料費も安いし」 「ある所にはあるのよ」 主にタルブ村とか。 そんなことを考えながら、手早くハイポーションとエーテルを合わせてエクスポーションを作る。 同時にエーテルとエーテルドライ、ハイエーテルを作る。 「もしかすると、秘薬の常識を覆せるかも」 「いや、これだけで十分覆しているし」 私はエクスポーションの瓶とハイエーテルの瓶を持ち、ビーカーに注ぐ。 二つの薬をあわせ、出来上がったものをモンモランシーの口に突っ込む。 「ガボボボボボボボ!!!??」 さあ、効果の程はいかに!? 「殺す気ってあれ? 精神力が回復しているような…」 「体の調子は?」 「あんまり変わらないわ」 残念、失敗か。 エリクサーが出来れば今後楽になったのに。 「ルイズ、今舌打ちしなかった!?」 「してないわ。それよりもポーションを作ってみなさいよ」 その言葉にモンモランシーはポーションを作り始める。 私はというと、卵を見つめる。 時々動いたり。ヒビが入ったり……… ―――ヒビ? て、うわぁぁぁ!! 卵二つともヒビ入ってるし!? ちょ、ま、シエスタ!? 「あ、ヒビが入ってますね。この様子だと後五分ぐらいですね」 「うわぁぁ!? いつの間に!?」 「ヒビが入り始めたあたりからです」 恐るべしメイド、いやシエスタ。 そんなことしているうちに卵のヒビがどんどん大きくなる。 一部の殻が外れ、中から羽毛の色が見える。 「こっちのほうは赤、こっちのは黒ですね」 「いずれこの子も岩を落とすのね………」 シエスタをも一撃で倒す威力の岩など見たくもない。 味方なら別だけど。 ヒビが全体に行き渡り、卵が孵る。 「「クエッ!!」」 二匹のチョコボが産声を上げ、誕生する。 「ルイズ様、名前をつけてください」 「そうね、性別わかる?」 シエスタが二匹の性別を調べる。 その間に名前の候補を決める。 「赤チョコボがオスで、黒チョコボはメスです」 「だったら―――赤チョコボがシルキスで、黒チョコボはミメット」 名前が決まったあと、藁で体を拭いてやった。 これからこの子達がどう育つのか、楽しみにしながら。 前ページ次ページゼロと聖石
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前ページ次ページゼロと聖石 前日から翌日までの話をしよう。 結局誰とも遭遇することなく部屋にたどり着き、着替えを済ます。 30サント浮いた状態で。 食堂で食事を済ませる。 椅子から30サント浮いた状態で。 予習と復習をする。 椅子から30サント浮いた状態で。 眠気が来たので眠る、毛布をかぶってお休みなさい。 ベットから30サント浮いた状態で。 ええ、持続時間は優秀だ。朝も目が覚めたらベッドから30サント浮いていた。 …本当に、レビテーションとして優秀なのか失敗なのか分からないレビテトという魔法だった。 いい加減解除したいなと思った瞬間、新しい魔法の気配。 「風に潜む古の力秘めたる精霊達よ 魔に汚れし空を払え! デスペジャ!」 視線が30サント分下がる。 実に12時間ぶりの地上だ。 効果時間はすさまじく長い、しかし移動速度は自身の能力と変わらず高さは30サント。 良く分からない魔法だ。 とりあえずは食事だ、と思い立ち、着替える。 今日はリボンではなくバレッタでまとめる。 気分の問題で香水もつける。 つい最近買ったばかりのソルティレージュという香水屋のだ。 不思議と落ち着き、これをつけた日は怪我とか失敗のダメージが少なくなるから不思議。 さて、気分も落ち着いたところで食事に移る。 ここのコックは腕が良いので毎日の楽しみになっている。 さすがに量は多いが、貴族の精神として全部食べるように心がけている。 もったいないという意味も有るが、奪った命を残すという行為が許されない。 鳥のローストの骨に付いた肉もこそぎ落として食べる。 実はここが一番好きだったりするのは内緒だ。 食事も終わり、胃と精神を落ち着けるために紅茶を飲みながらノートに書き込む。 タイトルは魔法詠唱。 詠唱時間が長いだけあって効果は抜群な私の魔法。 ソラで言えるのは勿論、素早く正確に唱えることが重要になる。 性能はいいのだ、性能は。ただ何もかも詠唱が悪い。 愚痴りつつ、小声で詠唱の練習をするのであった。 授業が始まった後、ミス・シュウルーズの発言に反応して囃したてる輩を無視しつつ、詠唱の練習をする。 詠唱がないマバリアは無視して、今のところ一番詠唱が必要な魔法であるアルテマだ。 Spが20というのは速いのだが、ほかの魔法が25あるんだから必然的に一番遅い。 レビテトに至っては50、アルテマ一回使う間に2回は唱えられる。 今なにか別な人の思考が飛んできたような気がした。 「授業中に独り言とは余裕ですね、ミス・ヴァリエール。前に出て錬金をやってみせなさい」 おっと、小声だったのにばれた。 仕方が無い、ここで実験してみよう。 歩きながらマバリアを発動、これで準備は完了。 「いいですか? 自分が作り出したい金属をイメージするのです…聞いてますかミス・ヴァリエール?」 聞いていません。詠唱するので必死です。 スピードを上げ、一気に魔法を練り上げる。 「先生、伏せてたほうが良いですよ?」 詠唱が完了する一瞬前にそう教えておく。 ほかの皆はいつものように失敗すると退避済み。 こうなったら度肝を抜いてやる! 「渦なす生命の色、七つの扉開き力の塔の天に到らん! アルテマ!」 対象は目の前の石ころ。 あたりに青白い魔力が収束し、 大爆発。 威力はいつもの2倍くらい、範囲はいつもと同じ。 教室の調度品は消し飛び、机は跡形も無い。 同級生は机ごと吹き飛ばされ、小型の使い魔は壁に打ちつけられる。 爆心地のルイズは焦げ目一つ無く仁王立ちし、ミス・シュウルーズは黒こげ。 無事なのはとっさに男子と机でガードしたキュルケと氷で障壁を作ったタバサのみ。 そして、後々伝説となる一言を私は叫んだ。 「よし、実験大成功!」 復活した生徒から大ブーイングだったのは言うまでも無い。 罰掃除を命じられ、机を片付ける。 魔法禁止の令が出ていたので魔法を使わずに机を並べる。 調度品とかも片付けなければならないのだが、片付ける調度品が無い。 アルテマで全部吹き飛ばしましたから。 今は昼食も済んでアフタヌーンティーの時間、シェフ絶品のお茶請けを堪能する最高の時間。 なのだが、そのはずなのだが、いつまで待っても本日のお菓子が来ない。 入り口にはクックベリーパイと大きく書かれていたのに、配膳に来ない。 苛立ちが募り、抗議しようと厨房に乗り込もうとすると聞こえる怒鳴り声。 「君が香水を拾ったおかげで二股がばれてしまった、どうしてくれるんだ!」 隣のテーブルにはギーシュ・ド・グラモン達が集まって平民のメイドを責めていた。 メイドの足元にはクックベリーパイの残骸。 経路から見て次の順番は私。 ―――滅殺決定。地べた這いつくばらせてやる。 そんな心に反応してか魔法ゲット。 「無念の死を抱き続ける大地よ、黒き呪縛となれ…グラビデ!」 口汚く罵っているギーシュが急に地面に向かって倒れこむ。 周囲も何が起こっているのかわからないであわてている。 「私を怒らせた罪は重いわよ、ついでにその格好情けないわね、ギーシュ」 魔法の効果が切れ、ギーシュが起き上がる。 その目つきから仕草までこちらをゼロのくせにと罵っているのが伺える。 「邪魔しないでくれたまえ、僕はこのメイドにお仕置きを」 「そんなことで私のクックベリーパイが届かないことが何よりも許せないのよ、二股男」 図星を付かれたのか、顔を真っ赤にしながらこちらをにらむ。 「よろしい、ならば決闘だ。ヴェストリの広場へ来い!」 「良いわよ、実験したいことがいっぱいあるから」 こうして、当事者であるメイド・シエスタのことを完全に無視した決闘という名の、 ギーシュにとっては憂さ晴らしになる決闘が、 ルイズにとっての実験が幕を開けることとなった。 前ページ次ページゼロと聖石
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前ページ次ページゼロと聖石 それぞれが移動手段を講じて出発する。 キュルケとタバサはシルフィードに乗り、ギーシュとシエスタは馬。 ルイズはワルドのグリフォンに乗っていた。 「ワルド様、少しペースを落としましょう? 闇雲に急げばいいわけではないのですし」 出発から三時間ほど、シエスタはともかく、ギーシュはへばっていた。 それならば仕方が無いな、と一旦地上で休憩とする。 シエスタが日傘とシートを広げ、準備してあったポットから紅茶を淹れる。 それに舌鼓を打ちつつ、周囲を見やる。 三時間ぶっ通しで駆け抜けただけあって結構遠くまで来た。 ギーシュは寝転がって腰を押さえ、タバサはシルフィードの背中で本を読み続けている。 キュルケはシルフィードを撫でて、水を飲ませている。 ワルド様はグリフォンを労いながら周囲を警戒している。 穏やかな時間が流れる。 と思ったらその五分後には出発だとワルド様が言ったので、全員が準備を始め、再び出発した。 何をそんなに焦っているのだろう、ワルド様は? どうしても、今日中にラ・ロシェールに着かないといけない理由でも有るのだろうか? それを考えているうちに、ラ・ロシェール目前となっていた。 全員がへばりながら到達したラ・ロシェール。 女神の杵亭に部屋を取った後、全員が酒場で食事をしていた。 そして、今行われていることといえば――― 「降りるなら今のうちよ、ルイズ。こっちのカードは、泣けるわよぉ?」 「あなたの手ぐらいお見通しだわ、キュルケ。こっちの手は最初から最後までクライマックスよ?」 「シエスタ、私につられてみる?」 「お爺ちゃん、これは見逃していい不正なのでしょうか?」 「深く考える必要は無いんじゃないかな? 賭けてるものは何一つ無いんだし」 「―――なぜ今この場でポーカーをしているんだ?」 そう、ポーカーだ。 明後日まで船は出ないと聞いた瞬間、全員で酒場に突入。 食事が終わった後、キュルケの荷物にトランプを三箱発見。 全員で出来るゲームということでポーカーと相成った。 しかも、イカサマや魔法の使用の何でもありの究極の騙し合いポーカーだ。 確認されているだけでもルイズがテレポでカードを都合よく操作したり、 タバサが風で山札をすり替えたり、シエスタが目にも留まらない速度で三箱のジョーカーを全部集めて5カードにしたりしていた。 「お、女って怖い」 「それについては同感だ、ギーシュ君」 二人はイカサマせずに普通にポーカーをしている。 おかげで勝率は悲惨だが。 そんな楽しいひと時に別れを告げ、各自あてがわれた部屋に戻る。 月を眺めながら眼下を眺める。 シエスタがいつもの素振りではなく、盾と剣を用いた実戦練習をしている。 盾で叩き伏せる、剣で防ぐ、蹴りで相手の手首を狙う、それら一通りが終わると砥石で錆を落としつつデルフを研ぐ。 そんな折、ノックが響く。 「夜も深けた時間にレディの寝室を訪ねるなんて、そう言った方がよろしいかしら?」 「すまないな、二人きりのときに話したいと思っていたからね」 手に持ったワインを手土産にワルドが入ってきた。 「ところで、君は魔法を使えなかったのに、どうして使えるようになったんだい?」 「こればっかりは秘密なの、たとえワルド様でも」 その言葉に、ワルドは軽く目を伏せ、そうかと一言呟くだけに留まった。 そして、呟かれた一言に、ルイズは身を硬くする。 「聖石、ゾディアックストーン。タルブ村の一部にしか伝わっていない話だ」 「研究熱心ですわね、ワルド様」 「なんだか最近きな臭くてね。探りを入れているんだ」 「それでも御伽噺の域を出ませんわ、聖石が発見されたのなら別ですけど…」 ワルドは口の端を笑みに変え、こう言った。 「明日、シエスタ君と決闘することにした。君に立会ってほしい」 そのまま、空のボトルを持って部屋を去っていった。 ワルド様は何かしらの事情で聖石という物の存在を知っている。 しかも、シエスタが持ち主だということも分かっている。 「シエスタに伝えないと。極力手札を見せるなって」 ワルド様が何をしようとしているのか知らないが、いやな予感しかしない。 明日は、絶対に一悶着どころか二悶着くらいある。 最近こういった予感が多いなと思いつつ眠りに着いた。 あっという間に翌朝。 シエスタがデルフを構えて立っている。 それに相対するかのごとく、ワルド様が杖を構える。 (見えている手札の使用は認められている、となると剛剣はOK、最近練習して使えるようになった技は使わない) 「それじゃあ、コインが落ちた瞬間に開始。卑怯な事したらこの私が叩きのめす」 そういって、私はコインを弾く。 二人の中間点に落ちるコイン。 それと同時にお互いが距離を詰める。 剣と杖が交差する。 その瞬間にシエスタがワルドの手を狙った蹴りを放つ。 シエスタ曰く、サムライという剣士の一流派が使う足蹴という技らしい。 その技に驚きつつも剣で何とか受け止める。 シエスタが一瞬で距離を離し、強攻破点突きを繰り出す。 怪我しないように着けていたプロテクターを破壊する、がその直後にウィンドブレイクがシエスタの体を吹き飛ばす。 壁にぶつかる寸前で体勢を立て直して足で壁に着地。 足をバネにして壁から弾け跳び、ワルドに突撃。 それを冷静に受け流した直後、エアハンマーがシエスタに直撃。 そのままシエスタの元まで歩み寄り、杖を突きつける。 「終わりだ。惜しかったのは君が魔法を使えないメイジだったということだ」 そう、自信満々に告げたワルドだったが、手加減されていることには全くといって気が付かないのだった。 前ページ次ページゼロと聖石