約 440,018 件
https://w.atwiki.jp/familiar/pages/4609.html
1-181 1-696 1-796異世界協奏曲 1-90小ネタ… 2-131ルイズ×サイト 3-152魔法戦隊メイガスファイブ 3-33時を駆ける少女 4-115 4-126 4-146 4-229ゼロの三国志 4-501 4-755『シエスタ&才人の小旅行』プロット(*1)5-400サイトがんばる! 5-540 6-75マリコルヌの野望 6-135今宵は無礼講 6-218マリコルヌの野望 炎の師弟愛編 6-327タバサネタバレもの 6-552『魔法戦隊メイガスファイブ』ダイジェスト 6-630ルイズのハロウィン 8-303アメリカンジョーク風ゼロの使い魔 8-343アメリカンジョーク風ゼロの使い魔 8-425アメジョ風に便乗 8-618バカップルイズ〜そして彼女はやさぐれる〜 予告編 9-286惚れ薬編if 9-326ダメ、絶対。 9-549アニエスの囚われ人 9-560ビダーシャルの趣味 9-600シルフィもサイトと遊びたい! 10-117ルイズの秘密 11-122 10-340その後 11-192ルイズの変装 11-386ある日の出来事 11-429つうこんのいちげき 11-494サイトとバレンタイン 12-88ある吟遊詩人の手記 12-117知的好奇心 12-153女王アンリエッタの優雅な一日 12-365青銅と香水と聖女の日 12-508 13-82マリコルヌの休日 13-202俺のパンツを履いてくれ 14-344フラグクラッシャーズ? 14-478一筆啓上 14-676 14-725黄金の日々 15-683竜の血 15-756タイムトラボー 17-498ジェシカとでぇと A2-338『ゼロの使い魔』 第2期 序章 X01-02『トリステイン戦隊ゼロファイブ!』(*2)
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5439.html
前ページ次ページゼロの社長 「ぐずっ…とっ、とにかく!今度こそ、これでセトは私の使い魔なんだからね!」 感情が一気に押し寄せた結果とはいえ、青春大爆発のようなコントラクトサーヴァントをしたことに今更恥かしがるルイズ。 顔が真っ赤なのは涙を流したせいか、それとも恥かしさからか、それともその両方か…? 「とっ…とにかく!そう言うわけだから、主は使い魔のことをちゃんと把握しておく必要があるわ!」 どういうわけなんだろうか? 照れ隠しなのか、海馬についての質問を始めるルイズ。 「まず、使い魔は主人の眼となり、耳となる能力が与えられるわ!」 「ふむ?こちらからは特に変わって見えることは無い…ぬっ?これは…?」 改めてルイズを海馬が見たとき、妙なものが脳裏を駆けた。 ゼロのルイズ レベル1 闇属性 魔法使い族・効果 相手プレイヤーに800のダメージを与える事ができる。 もしくは攻撃力1200以下のモンスターを破壊することができる。 この効果は1ターンに1度しか使用できない 攻撃力 450 守備力 400 「ちょっと!どうしたのよセト?急に黙って。」 「わからん…、貴様を見たときに、貴様の能力がデュエルモンスターのカードのように データとして頭の中に入ってきた。これは契約の結果なのか?」 突然の出来事に流石の海馬も少し戸惑い、ルイズに回答を求める。 こんな非日常的、いや、魔法的な感覚が発生するとしたら、原因は間違いなくあの契約である。 だが、ルイズは首を振り、望んだ答えは返ってこなかった。 「デュエル…モンスターズ?なにそれ? んー…よくわからないけど、確かに契約をした使い魔には、特殊な力が与えられる事があるわ。 ただ、平民の使い魔なんて聞いたことが無い…前例が無いから、確証は無いけど…」 ふぅん…と何かを考え込んでしまう海馬。 (なるほど、つまり、これが俺に与えられた力という事か。 相手の能力を、姿さえ見れば把握できるというのはなかなかに強力な能力だ。 情報は何にもおける武器になる。 最悪どこかで戦闘になったとしても、かなう相手かどうかを見抜けるというのも利点だ。) 「ねぇねぇ、ちなみに私はどんな能力だったの!? 実は世界最強の魔法の力が眠っているが、それ故に危険なために封印が施されているため魔法が使えないとか?」 魔法が使えない原因がわかるかもと期待の眼差しを海馬に向けるが、返ってきた答えは望んだものではなかった。 むしろ、爆発が自分の能力として定められている点に不満のようだった。 「おそらくこれは貴様の爆発魔法の効果を、デュエルモンスターズ風にテキストにした結果だろう。モンスターカードとしてのスペック自体は低いが、バーン能力とモンスター破壊効果を使えるのは強いだろう。」 (しかし1ターンとは何を基準にしているのだろうか…? 素直に考えれば時間だろうが、その単位まではまだ不明か。 今度爆発を最大威力で打った時の、次の発射までのタイムを1ターンと仮定すれば…) 異世界にきても海馬はデュエリストである。 デュエルのことを考え始めると周りが見えなくなるようだ。 また黙ってもくもくと思考を巡らせ始めたとき、ルイズが話を元に戻した。 「じゃあなくて!今はセトの能力を確認するほうが先でしょ!次に使い魔は、主の望むものをとってくるのよ。 秘薬の材料とか、そう言う探索に使えそうな能力みたいなのは無いの?」 「あいにくだが、俺はこの世界の魔法どころか、地理も歴史も知らん。 故にそう言う方面では役に立つ知識は無い。もちろん、覚える事くらいはできるがな。」 まぁ、それもそうよね、と納得するルイズ。 「あと最後に使い魔は主人を守ること!これが一番重要よ! っていうか、アンタ名前聞いたときに言ってたじゃない。 カイバコーポレーションシャチョーにして『最強』のデュエリストって! 最強!なら敵無しってことよね!ツェルプストーのサラマンダーなんか、指先一つでダウn…」 「言っておくが、俺は魔法なんかを使ってくる相手に対峙して直接戦闘で勝てるほど体を鍛えているわけではない。 基礎的なトレーニングならばともかく、プロを相手にまともに事を構える事などしない。 ましてや、あんなわけのわからん生き物になど無駄に手は出さんぞ。」 期待はずれの解答をする海馬に唖然とするルイズ。 それもそうだろう、ルイズとしては海馬に一番期待しているところを自分から否定してきたのだから。 「ちょっ…!ちょっとまちなさいよ、最強はどうしたのよ?っていうか、まず聞くべきだったわ。 デュエリストって何?さっきのデュエルモンスターズってのと関係があるの?」 「ふむ…それは見せたほうが早いな。」 そう言うと海馬は立ち上がり部屋の扉のほうまで下がった。 そして、腕のデュエルディスクを起動する。 ピピット言う起動音と共にデュエルディスクが展開し、臨戦状態となる。 ルイズはといえば、ベットから海馬のそばへと移動していた。 左腕のデュエルディスクに興味津々である。 「すごい!こんな精巧な動きをする腕輪を作れるメイジなんてそうそういないわよ!どうなってるの?」 「これは腕輪ではない!わが海馬コーポレーションが開発した、 デュエルモンスターズ専用のソリッド・ビジョン投影機 デュエルディスク! モンスター、魔法、罠の3種類のカードを組み合わせた40枚のカードのデッキを これに装着し、知恵と勇気をもって戦う、それがデュエルだ!」 やはりデュエルのことになるとテンションがあがりっぱなしの海馬であったが、 今回テンションが鰻登りなのは海馬だけではなかった。 隣にいたルイズも目をきらきらと輝かせて、まるで子供のように驚いていた。 泣いた烏がなんとかと言う奴である 「すごいすごい!それで、これはどうつかうの!?」 使い魔と主は似たもの同士が選ばれる。今の二人のテンションを見れば、その言葉の証明に十分だろう 「さらにカードを挿入する事で、カードを立体的に投影する事ができる! このようにな!出でよ、サファイア・ドラゴン!!」 そのとき、海馬の左手のルーンがまばゆく光をはなったが、デュエルディスクの陰になっていたために、二人は気づかなかった。 そして機械音と共に光が収縮し 爆音をあげてルイズの部屋に『本当に』サファイアドラゴンが実体化した。 ベッドをへし折り翼は天井を貫き、重さで床はめり込み、窓を突き破って首を出した。 ルイズと海馬は声を揃えて呟いた。 『なん…だと…?』 前ページ次ページゼロの社長
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/3895.html
前ページ次ページゼロの軌跡 第二話 虚無の扉 その日、ルイズはメイジとしての自らの尊厳と存在をかけて召喚の儀に挑んでいた。 地面に穿たれた無数のクレーターはその努力の証左だ。既に何度目か、数えるのも億劫になるような試行錯誤のその果て。ありったけの精神力と祈りと願いを込めて振り下ろした杖の先。 浴びせられる嘲笑と罵声は濛々たる白煙の中から聞こえる駆動音と蒸気にかき消された。 煙が晴れてそこに鎮座していたのは巨大なゴーレム。しかし土で出来ているようには見えない。総鉄製の人形はその手を何かを守るかのように胸の前に掲げていた。 湧き上がった歓喜もつかの間、ルイズは戸惑いの渦中にあった。 自分の起こした爆発の中から現れたのだから、間違いなくこのゴーレムは自分が召喚したのだろう。しかし生物でないものを召喚するなどということがあるのだろうか。 同級生はもとより、いかな文献や授業でもそのような話は聞いたことがなかった。そもそも鋼鉄で出来たゴーレムなんてものが知識の範疇外のものだ。 「コルベール先生、その…この場合ゴーレムと契約することになるんでしょうか」 「ああ、そうだね。この儀式はしんせ…いや、無理に契約しろとは言わないよ。君が気に入らないなら私が引き取ろう。うん、それがいい。是非とも新しく召喚しなおしてくれ」 この機械バカに聞いた私が間違いだった、とルイズは内心で毒づく。 「いえ、やはり契約します」 思い切り残念そうな顔をしたハゲを尻目にルイズはゴーレムに近づいた。心はまた喜びで満ちた。 そうだ、これは私の使い魔なのだ。ゼロだった私が立派なメイジになった、その証なのだ。誰にも、誰にもくれてやるものか。今まで蔑みの対象でしかなかった私を守ってくれる鋼の揺り籠。 ゆっくりと近づいて、私はその腕にキスをする。暖かい。きっとこのゴーレムも私を祝福してくれているのだ。 胸に刻まれた複雑なルーン。私とこのゴーレムをつなぐ絆。そう思うと意味もわからないその文様すらいとおしく感じられる。 ルイズは高らかに叫ぶ。それは凱歌だ。今まで自分を見下し続けた世界に対する勝利宣言だった。 「見なさい、これが私の使い魔よ。竜の炎も獣の爪もものともしない、くろがねの王。 私の、私の使い魔よ!」 しかしルイズの歌は背後から聞こえる音に突然遮られた。 振り向けば、ゆっくりと開かれるゴーレムの手のひら、そこに立っていたのは一人の少女。年の頃は12,3歳くらいだろうか。紫の髪に黒のリボン。白と黒を基調とした上品でかわいらしいドレスに赤いネクタイ。 そしてなにより、その手に握られた彼女の身の丈ほどもありそうな異形の大鎌。金色に縁取られた漆黒の刃の先端は新雪のように白い。その、人を殺すにはあまりにも優美な曲線。尖った柄は春の光を浴びて鏡のように少女の顔を幾つも浮かび上がらせる。 「あなた、今なんて言ったの・・・」 その言葉に込められた、竜をも殺さんばかりの殺気。 しかし、もうルイズは後には引けなかった。 それは世界と彼女とを繋ぎ止める桎梏。失えば再び侮蔑が彼女を襲うだろう。 魔法に見捨てられるゼロに戻ることなど、選べるはずもなかった。 ルイズは無謀にも叫ぶ。手負いの獣のいななきのようなその言葉。 「そのゴーレムは私の使い魔!私の物!そこから降りなさい!」 その言葉を聞いて少女がその稚い顔をゆがませた次の瞬間、ルイズは宙に浮いた。足を掬われたのだ、と気づく間もなく地面に思い切り叩きつけられる。 肺から逃げた空気は音にもならず、首筋に当てられた刃を見て悲鳴を必死に飲み込んだ。 組み伏せられたルイズを見て、コルベールはすぐに彼女を下がらせなかった自分の判断の甘さを悔やんだ。しかし、あの速さでは自分が彼女をかばっていたとしても守りきれたかどうか。 それどころではない、とかぶりを振り今は不必要な思考を追い出す。ともかくも、あの少女を落ち着かせることだ。あのままでは、ルイズが危ない。 「お嬢さん、ひとまず落ち着い『<パテル=マテル>、ダブルバスターキャノン!!』」 コルベールの言葉は途中で遮られ、少女の怒号が響いた。 彼にも上手く咀嚼できない少女の声を理解できる者がその場にいるはずもなく、けれども不吉なものを感じ取った生徒たちが後ずさりを始めた時、ゴーレムから二つの閃光が走った。 その暴力的なまでの輝きを放つ光は塀を紙細工のように粉砕し、木立を飲み込み、轍を形作った。 数瞬の後、轟音と閃光が静まる。そして沸き起こる混乱、生徒達とその使い魔の悲鳴と呪詛が辺りを埋め尽くした。 生徒達は皆逃げて失せた。コルベールは慌ててルイズに近寄ろうとしたが、ルイズとコルベールの間に彫られた轍、それを越えようとしたときゴーレムが再び動き出すのを見て歩みをとめざるを得なかった。 手を出すな、ということか。コルベールは臍をかむ。ゴーレムの動きをとめつつ少女からルイズを救出する。そんな離れ業が出来るとも思えず、彼に残された道はただただルイズの無事を祈ることだけだった。 今なおルイズの頚動脈に置かれている少女の鎌、地面に突き刺さった柄はルイズの桃色の頬に触れんばかり。次第に遠くなるクラスメイトの悲鳴を聞くたびに、死の淵にいながらルイズの頭は逆に冷えていくようだった。 私は思う。きっと私はここで死ぬのだろう。ゼロの私は己の魔法で喚び出したものに殺されるのだ。 「さっきの言葉を撤回しなさい!」 それは私には出来ないことだ。それには私が魔法に捧げてきたもの全てが懸かっている。 この少女に思い知らせてやりたい。私がどれほどの時間を費やし、寝食を削り、体を酷使し、心を擦り減らし、願いを込めてあの言葉を吐き出したのか。 立派な貴族足らん、メイジであらんとして求めたもの。その結晶があのゴーレム。 「<パテル=マテル>はレンの何より大事なものなの!」 ああ、レン、あなたはレンっていうのね。折角の可愛い顔が台無し。 そんなに怒りに身を震わせて私に刃を向けないで。 そんなに怯えに身を竦ませて私を見ないで。 あなたにはきっと、天使のような微笑が似合うはずなのだから。 「レンのパパとママよ!絶対に渡さない!」 その言葉を理解する前に私の体は再び宙に浮いた。首に手をかけられて持ち上げられる。こんな状態ではさっきの言葉を撤回しようにも話すことすら叶わない。彼女の我慢が限度を越えたのだろう。もう私には死しか残されていないということか。 耐え切れずに動いたコルベール先生がゴーレムの腕で横薙ぎに吹き飛ばされるのが見える。死に際してこんなにも冷静な自分自身の思考が奇妙にも可笑しく感じられた。意外なほどに恐怖を感じないのは何故なのだろう。 ああ、そうか。 私は得心する。 レンと私はとてもよく似ているんだ。 きっとレンも世界に見捨てられたことがあるに違いない。 でなければ、こんな眼をするはずがない。 「しんじゃえ…」 でもかわいそうに、レン。 私はそのゴーレムで救われるけど。 あなたはそのゴーレムでは救われなかった。 段々視界が黒く塗りつぶされていく。 意識が薄くなりながらも、私はレンの笑顔が見れないことが悲しくて仕方がなかった。 私の命が閉じるその寸前、雲耀の差で首に掛かる力が弱まった。どうにか眼をこじ開けるとレンの唇が動くのがかすかに見えた。 「だめよ、『レン』 あなたも私も本当は優しいお姫様なのだから」 ああ、そうか。 私は嘆息する。 レン、あなたはゴーレムだけでは救われない。 あのゴーレムで救われるのは『レン』だけ。 あなたのパパとママは『レン』しか守ることは出来ないの。 レンは今もずっと、一人きりで泣いているのね。 誰か、レンを助けてあげて。 心の奥底で、孤独に怯えているレンを暖めてあげて。 太陽のような光で、優しい想いで。 ルイズの意識は、そこで暗転した。 前ページ次ページゼロの軌跡
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5271.html
前ページ次ページゼロの女帝 ガキィン! サイトの持つ剣がワルキューレのランスとぶつかり合い、火花を散らす。 「くうっ」「やるね」 そのまましばらく打ち合っていると、やがてサイトはワルキューレの盾を踏み台にして後方へとジャンプする。 「いかん!あいつを止めるんだワルキューレ!」 しかしその時遅く、サイトはジャンプした勢いそのままに庭の隅に生えていた木の向こう側へと・・・・・降り立たなかった。 樹木の後ろにするり、と降り立とうとしたかと思うとそのまま姿を消したのだ。 まるで10サントほどの太さもない木の向こう側に隠れたのように。 「くそっ」 ギーシュは薔薇の造花に似せた自らの杖を振り、もう五体程ワルキューレを生み出す。 「六神がったぁい!」 ギーシュがどこぞの水島某のように叫ぶと同時に一体のワルキューレの頭部が開き、ギーシュを『収納』する。 一体のワルキューレが左右に分割されよく分からん変形(なんせ錬金なので)かましてブレストアーマーのような形になり、ギーシュを 収納したワルキューレの上半身を覆い尽くす。 二体のワルキューレが両腕を切り離し、またよく分からん変形(またもや錬金)してギーシュを収納したワルキューレの左右の『腕』となる。 二体のワルキューレが両腕を切り離し、またよく分からん変形(またもや錬金)してギーシュを収納したワルキューレの左右の『脚』となる。 四体のワルキューレが切り離した腕は、八つがあつまり変形の末巨大なハルバートとなる。 『合体!ゴッドワルキューレパーフェクトモード!』 「?」 『そこだサイトぉ!』 振り下ろされた巨大な斧剣が砕いた場所から、平賀才人君が飛び出してくる。 「くっ 合体に思わず見とれてしまった」 「そうだろう!この『ゴッドワルキューレパーフェクトモード』は強さと美しさと格好良さを兼ね備えた存在!」 ガキィン! 「ふう、やれやれ」 シエスタが持ってきてくれた、冷たい水で濡らした手拭いで汗を拭くサイト。 もとより学園で働く平民達と仲の良いルイズの使い魔でもあり、また名も無い生徒Aに絡まれた シエスタを助けた事もあって彼の立ち位置はそう悪くない。 「しかしねぇギーシュ」 「なんだい、我が愛しいモンモランシー」 冷たい水を渡しながらギーシュに聞いてみる。 「あの『合体』って何なのよ」 「いや、サイトが持っていた「ぱそこん」とやらに「だうんろーど」してあった娯楽映像作品を見せて貰ってね。 いやぁ巨大ゴーレムの合体はまさしく漢の浪漫だねぇ」 「はっはっは、ようやくこの世の真理を理解したかギーシュ」 ちなみにサイトは自分が住む村の真実を聞かされ(超巨大星間国家の出張所であり住人はその殆どが宇宙人の血を引いている)驚いたが あっさり受け入れ(ニッポンのオタクを舐めるものではない) 現在武術の修行も兼ねてルイズ嬢の使い魔とやらをやっている。 ちなみに瀬戸がライン引いてくれたので中央と同じくらいアニメ見放題いとなり、サイトのオタクライフはむしろ向上してしまった。 ギーシュやマリコルヌら男性陣はおろかケイト達女性陣にもちと腐った趣味が広まりつつある。 「まあその辺の阿呆な発言はともかく」とルイズがサイトに語りかける。 「アンタ魔法も使わず木に近づくだけで姿を消したり木を蹴った反動でパワー増したりと何なのよそれ」 「あ、それアタシも聞きたーい」「聞きたい」 キュルケとタバサの発言に答えたのは瀬戸。 「あたし達の住む樹雷と言う地はちっと勘弁してんかってくらい木が多いのよ。 だからその地の武術は必然的に木を利用したりあるのが前提な闘い方が基本になるの。 まあサイトちゃんは初歩も初歩、シロート同然なんだけどね」 「訓練とはいえ僕のワルキューレを両断するようなのがシロートなのか」 「まあ俺ぁマンゾクだがね! このまま出番無しで終わるのかと思ったら無事『使い手』に会えたんだから。 出番がある!出番がある!出番がきちんとある! ああなんて幸せなんだろう」 「はい、休憩終わり! 次は組み手ね。 サイトちゃんとイーシュちゃん、二人まとめてかかってらっしゃい」 ギーシュと二人がかりで瀬戸にあしらわれてるサイトの左手の甲には、誰も知らないナゾのルーンが密かに輝いているのでした 前ページ次ページゼロの女帝
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5110.html
前ページ次ページゼロの女帝 「うわーんうわーん」 ワルドはまだ泣き続けていた。 「ね、ワルドちゃん、もう泣かないで」 「うるさいやい、さわんな」 頭を撫でようとした瀬戸の手を振り払う。 「ヴァリエール、あんたなんとかしなさいよ。婚約者でしょ」 「やよ。あんたこそなんとかしなさい」 「あたしだって嫌よ。子供の頃からよく言われたでしょ、『他人の嫌がることを進んでやりなさい』って」 「意味が違う」 「しょうがないわね。 はい、ワルドちゃんの杖一本だけ返したげるから泣き止んで」 「ほんと?ほんとにホンモノのボクのつえ?」 「ちょっとセト!」 「しかたないじゃない。 このままじゃまるであたしが弱い者苛めしてるみたいだから」 そういって瀬戸はワルドの手に一本の杖を渡す。 「わぁい 『予備の杖くん28号』だ! おまえがいればビルの町にがおーで夜のハイウェイにがおーだ!」 「いいも悪いもリモコンしだい、ね」 「と、いうワケで杖が戻ってきた以上私は無敵だ!」 「もう立ち直ったわね」 「杖依存 魔法依存」 「あたし、下手ぁうつとアレの子供産んでたの?」 「『ルイズはわたしの母になってくれたかもしれん女性だ』かい?」 「勘弁してよぉ」 「五月蝿いそこ!とにかくウェールズ王子を含めお前達全員皆殺しだ! 帰還したらルイズの勝手な行動の結果私を除いて全員死亡、と報告しておいてやろう」 「殺る気マンマンね」 「そりゃもうあんな醜態見られたんだからね、僕たち全員生かしておく訳には行かないだろう」 「五月蝿いそこ!」 その言葉とともに、ワルドが五人に増える。 「あらやだ、今をときめく近衛衛士ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド卿ってば分裂出来たの?」 「いや、ここは普通に遍在だろう」 そんなワルドの前に、ふらりと立ちはだかる瀬戸。彼女が懐から取り出したのは 「フォークとナイフ?」 「さっき宴でごそごそしてたのはそれを集めてたから?」 「「「「「そんなモノで何をしようというのかね?食らえ『エア・カッター』」」」」」 一斉に解き放たれた五つの魔法。 それに対し瀬戸は手にした四本のフォークとナイフを投げ放つ。 「なっ?」 彼女の投げたナイフとフォークは『エア・カッター』を打ち砕きそのままワルドを貫いた。 掻き消える四人のワルド。 消されなかった魔法を華麗なジャンプでかわす瀬戸。 「ほう、たいしたものだ。 しかし五分の四という確立にも裏切られたね」 またも五人となるワルド。 しかし言葉や表情と裏腹に頭の中ではパニクっていた。 (わたしの魔法を打ち消したということはあれはただナイフやフォークを投げてるだけじゃない。 しかし先住魔法とも違う) レコン・キスタの任務で幾度となくエルフとやりあった経験をもつ(といっても尻に帆かけて逃げ出したのが殆どだが) 故、先住魔法には多少の知識をもっていた。 (だが、五人のわたしに対し投げたナイフが四本。 これは彼女が一度に『力』を込めて投げられるのが四本まで、と言う事を意味している。 ならば、ナイフが外れたツキに頼るしかない) 再び瀬戸が投げた四本のナイフは、再び四人のワルドとその魔法を貫きかき消していく。 「むう、またも外れたんだね」 「これはワルドの運が良いのか、それともミセス・セトの運が悪いのか」 「そのどちらかであってくれればいいんですがねぇ」 ルイズは全身全霊を持って溜息をついた。 「はあっ はあっ」 ワルドの全身はびっちゃりと濡れていた。 これが敵、特にウェールズの血であったら任務を達成した誇りに身を包んでいる所だが あいにく、自分の汗でしかなかった。 もう、何回遍在を出したのだろう。 覚えているのは、その全てがルイズの使い魔によって消されている、と言う事だけだ。 ルイズは彼女は使い魔などではない、というがそんな事はありえない あってはいけない。 銃を使ったりふいをついたり、といった形で魔法を使わない平民がメイジを倒す事はまあまれにあるだろう。 地震とか雷とか、そういった「単なる不運」だ。 メイジが気まぐれか何かで与えてやった力で能力の低いメイジを害する、というのも許容範囲だ。ありえない事ではない。 しかしそういった事が無い平民風情が実力で、しかもスクェアメイジを圧倒するなど許されない、許してはいけない。 「それはこの世の真理を否定することだ!」 前ページ次ページゼロの女帝
https://w.atwiki.jp/dai_zero/pages/84.html
第三話 陰りゆく太陽 前ページ次ページゼロの影 状況を確認しようと現実の景色に意識を集中させたミストバーンは、丘の頂に登り視界が開けた瞬間息を呑んだ。 眼前に広がり草原を埋め尽くすのは、完璧に布陣し、攻撃態勢を整えたアルビオン軍だった。 彼の姿を視認した瞬間、集団はまるで一つの生物のように行動を開始した。 咄嗟に馬の背を蹴って宙に身を躍らせたが、点や線ではなく空間ごと押しつぶすような攻撃を回避するのは不可能だった。 無数の風の刃が、氷の槍が、弾丸が、飛来する。 空中で剣を抜いて振るうが体中に痛みが走り鮮血が滴った。かろうじて体勢を立て直し着地する。 「く……!」 いきなり攻撃を食らってしまったのは致命的だ。万全の状態ならばともかく、あらゆる力が低下している今の彼だと大きな痛手となってしまう。 「何だァ!? いくらなんでも準備よすぎだろ!」 敵が現れる時刻や方向を把握し殺意をみなぎらせて備えていた集団と、情報や戦意の少ない個人との差はあまりにも大きすぎた。 気配を感じなかったのは身体の深刻な異変に加え、敵軍が魔法をかけていたためかもしれない。 「相棒、キメラの翼を使え!」 言われるまでもなく使おうとした。だが、不思議な力にかき消され翼はそのまま残っている。 彼が危惧していた通りになってしまった。大魔宮など逃亡を許さぬ場所が世界には存在する。 アルビオン軍の力か地理的な要因かはわからないが、撤退という選択肢は消えた。 彼に残されたのは、戦い抜き、生き延びる道だけだ。 「『虚無の影』だ! 殺せ!」 「正義は我らにある! 化物の息の根を止めろッ!!」 今ここで絶対に滅ぼすという意志と共に殺到する。 たった一人に向けて、七万の大軍が。 拳と剣で立ち向かう彼にデルフリンガーが悲しげに呟く。 「ダメだぜ相棒……心を震わせなきゃガンダールヴの力は出せねえ」 左手のルーンの光は今にも消えてしまいそうだ。ほとんど身体能力は向上しておらず、ワルドを追った時に比べるとあまりにも違いすぎる。 原因は彼の心に在った。 ウィンプフェンの情報に従って丘に向かったのは鮮明な夢を信じたためだ。いずれこの世界から去るという予感を抱いていたためでもある。 それが裏切られ、限界まで張り詰めていた心の糸が切れてしまった。以前からあらゆる感情を無理矢理抑え込んでいた分反動も大きい。 アルビオン軍は動きに精彩を欠く敵の姿に、好都合とばかりに襲いかかる。 「騙されて悔しくないのか!? 怒れよ!」 デルフリンガーの必死の叫びも心の表面を滑り落ちていくばかりだ。 垂らされた餌に食いついたのは焦りに目がくらんだ己の責任だ。 騙されたなどと言うつもりはない。最初から信じていないためだ。 どれほど信憑性の薄い情報でもわずかな可能性にかけて確かめずにはいられない。 あのまま無視して船に乗っていても後悔に苛まれるだけだとわかりきっている。 それに――力があれば跳ね返せる。ただそれだけの話だ。 雨の如く氷の矢が降り注ぎ、風の刃が乱れ飛ぶ。炎の球が続けざまに打ち込まれる。 吸収しきれず吹き飛ばされかけたところに背後から無数の武器が突き出される。刃の冷たさが熱、次いで痛みに変わり背中一面に広がった。 体を捻って串刺しになるのは免れたが、傷は深く血が流れ出て行く。 だがすぐに止まった。炎球が背中に直撃したためだ。 傷が炎に焙られる激痛に呼吸が一瞬止まりかけたが、攻め寄せる敵に鉄拳を食らわせ数人まとめて吹き飛ばす。 氷の矢が降り注ぐのを敵兵の体を掴み盾代わりにして防いだ。だが、その陰から次々に空気の槌や刃を撃ち込まれよろめく。 倒れかけた所に槍が繰り出され、腹部を貫き標本のように地に縫い止めた。動きを止められた彼にあらゆる方向から氷の杭が迫る。 槍を引き抜き振り払った彼の全身に氷柱が突き刺さり、鈍い音が連続して響いた。 そこへ再度巨大な炎球が叩きこまれ氷を溶かし尽くす。腹部の傷口から炎が流れ込み、体内に熱が弾けた。 「ぐあぁ……ッ!」 身を震わせながらも踏みとどまり、地を蹴って複数の敵を一気に切り裂き殴り飛ばす。 追撃を跳躍して回避し、魔法が飛来するのを剣と掌で弾くが完全には防ぎきれない。 体勢を崩し落下したところに襲い来る攻撃は嵐そのもの。 ――死なないならば、徹底的に殺す。 脅威を排除するという意志で彼らは一つになっている。 「このままじゃまずいぜ……相棒」 デルフリンガーの囁きは戦場の喧騒の中に消えた。 ルイズが目を覚ますと従軍していたクラスメートらが覗きこんできた。 「ここは?」 「出航準備中の船さ。アルビオン軍は遅れているらしいよ」 アルビオン軍は進撃の速度を落としたらしい。それを聞いて虚ろな風が心をかけぬけて行く。何か大切なことを忘れている気がする。 夢の世界で彼女はウィンプフェンと会話し、次に丘の見える街道で数多の兵を相手にしていた。 ようやく使い魔と感覚を共有することができたのかもしれない。視線を巡らすが青年の姿は見えない。 「ミストバーンは……?」 「司令官から知らされたんだ。僕達を逃がすために一人だけ残ったって」 「――嘘よ」 彼は人間が何人殺されようが眉一本動かさない。 夢の断片がつながり、真実を知らせる。 ウィンプフェンは彼の帰還への執着を、主への忠誠心を利用した。 彼とて急に降ってわいた情報を怪しまないはずがない。簡単に帰る手段が出てくることはないとわかっている。それでも行かざるを得ないのだ。 (わたしの――わたしのせいで) 限界まで追い詰められ、判断を誤った。巻き込みたくない一心で話したことが彼を死地へと追いやった。 自分ならばまだいい。名誉のため、アンリエッタのため、トリステインのため、皆のため――戦う理由がある。 しかし、彼には何も無い。主のためという正義すら持たずに戦い、死んでいく。 「行かなくちゃ……! 行って――」 どうする。もう一人の彼女が囁いた。 消耗しているためタルブの時のような規模の『虚無』は使えない。わざわざ殺されに行くようなものだ。 何も言わずに気絶させ、勝手に行ってしまった相手のために命をかける必要などあるのか。 どうせ化物――人間とは相容れぬ者だ。将来、彼女を含め学院の者達を殺そうとする可能性は十分にある。 人間は異質な存在を受け入れられないと彼も言っていた。行動しなくても彼女を責めはしないだろう。 何もしないことこそが最善なのだ。 「……でも」 『お前は努力して力を手に入れようとしているのだろう?』 「それでも、ねえ……!」 『ルイズ!』 「放っておけるわけないじゃない!」 命を救われた。共に戦ってくれた。力になってくれた。何より――認めてくれた。 今まで他者からずっと“ゼロのルイズ”と呼ばれ蔑まれてきた。彼が、彼こそが、初めて“ルイズ”と呼んでくれたのだ。 彼に勇気を与えられた。それは誰にも否定できない真実だ。 (退かない……退くわけにはいかない! わたしはルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールなんだから!) もし彼がトリステインの者達に害を加えるというならば、その時は―― 「全力で戦うだけよっ!」 早速残された荷物をあさり、口元をゆがめる。 「甘いわね。まだキメラの翼が残っているじゃない」 一枚しかないため、行けばトリステインに戻れない可能性が高い。 だが、命を賭けるだけの、全てを捨てるだけの価値がある相手だと気づいたのだ。 「少しは報いなきゃ……死んでも死にきれないわ!」 ルイズは立ち向かう覚悟を決めた。――彼女が彼女であるために。 共有した感覚を思い出しながらキメラの翼を上空へ投げ上げると加速が全身を包んだ。 空を翔ける間、彼女は戸惑っていた。 今まで自分の気持ちにこれほど正直に行動したことがあっただろうか。 認めさせたいという一念が作り上げた鎧は強固なもので、内心とは正反対の言動を導いたことも多々あった。 (あいつの影響かしら?) かつて見た夢が少しずつ蘇る。どす黒い思念から生まれ、体を持たぬ己を“ゼロ”だと感じていた。 だが、その心には憎悪や羨望だけが巣食っているのではない。元は暗く濁った感情も忠誠心や敬意へと昇華されている。 彼と過ごすうちに蔑視を跳ね返すための心の枷は少しずつ砕けていった。 (あいつが死ぬわけないわ) 彼の強さの源は恐ろしいまでの膂力か、驚異的な身のこなしか。それとも常識を超えた生命力か。 否。彼の最大の武器は――。 「きゃああっ!」 ルイズは凄まじい衝撃とともに不可視の壁に激突し、地面に叩きつけられた。 全身に激痛が走り、呻く。額が切れ、左眼から頬にかけて血が滴り痣のような模様を描いた。 「うう……!」 骨が砕けそうな痛みだった。このまま意識を手放してしまえたらどれほど楽だろう。 「でも、あいつの味わった痛みに比べれば、こんなもの……っ!」 丘はまだ遠い。泥にまみれながらも彼女は立ち上がり、走り出した。 ミストバーンは数えきれぬほどの魔法と刃をその身に受けながら戦い続けていた。 魔族の体はすぐに死ぬことを許さない。生命が削ぎ落される間も戦うしかなく、その姿が人間達の恐怖を煽り攻撃を苛烈にする。 荒い息の中、少しずつ動きが鈍り表情も陰っていく。 辺りが暗くなり彼の動きが止まった瞬間、槍が胸の中央――心臓を貫いた。引き抜くより先に乱暴に捻られ、穂先が体内で回転する。 「が……!」 血塊が口から溢れ体が痙攣した。それでも柄を掴んで引き抜き、相手に突き立てる。 が、今度は背から灼熱の塊が突き抜け、剣の切っ先となって姿を現した。深々と胸を抉られ血の花が周囲を彩った。 (バーン……様……!) 破壊された心臓はこれで二つ。 背に剣を生やしたまま、力を振り絞り裏拳を叩きこむ。その弾みで剣が抜け、乾いた音と共に地面に転がった。 心臓を抉られても動く化物じみた生命力に周囲の兵士達は恐慌に陥り、絶叫しながら武器を振りかざす。糸が切れたように崩れ落ちた彼へと。 しかし突然彼の体が跳ね上がり、獣のように俊敏な動きで兵達の少ない方向へ走り、丘の上へと駆け戻ってしまった。 各隊の隊長は怯える兵士達をまとめ直すのに必死で追う余裕が無い。 時間はかかっても隊列を整え、改めて殺すしかない。深手を負わせたことに違いは無いのだ。丘の上を睨み、己に言い聞かせる。 「はあ……使い手を動かすのは久しぶりだ。……どうしたんだよ、まだ戦いは終わってないぞ」 デルフリンガーの言葉は心の奥に届くことなく滑り落ちていった。仰向けに倒れた彼の視線の先には――少しずつ陰りゆく太陽。 日食が起こっている。 「立つんだ」 何のために。 「戦え」 その先に何がある。 「生き延びるんだよ!」 主の元に戻れぬのならば、今死のうと後で死のうと同じこと。 主の体を守り切れなかったという事実が意識を責め苛んでいるものの、力の源たる憎悪も湧かない。 生きる理由そのものである主はこの世界には存在せず、戦い抜いても状況が変わるわけではない。 (戦う意味など……どこにもありはしなかった……) 元の世界へ戻れぬならば何もかも無意味だという諦めが彼の心を支配していた。 戦いしか知らないと語る彼が戦う理由を見失った時、力はゼロへ近づいていく。 ルーンによって同化した今ならば、器が破壊されると同時に本体も滅ぶだろう。 ハルケギニアを去るという予感の正体がようやくわかった気がした。 ――人間に倒されて、この世界を去る。 握りしめられた拳は震えている。本来ならば神の金属をも易々と砕き疾風のように駆けられるはずなのに、体を起こすことすらできない。 「勝利のために……何かを捨てることさえできん……!」 かすれた声には悲痛なものがにじんでいた。言葉に合わせて血が口から吐き出される。 生命が縮もうと魔獣になろうと、どんな手段を使ってでも強くなり敵を倒す――それも彼には許されない。 (何千年も仕えてきて……その最後が、これか) 主のいない世界で、主とは関係のない戦いの中、認めてもいない人間達に殺される。 偽りの希望に縋って死んでいくのも、偽りの存在には相応しいかもしれない。 太陽が黒に喰われるにつれて、心も虚無に喰われていく。血潮が流れ出るにつれて、生命の火も弱まっていく。 完全に太陽が隠れる時――命が絶えてしまう気がした。 彼は静かに、そして深く、絶望していた――。 前ページ次ページゼロの影
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5944.html
前ページ次ページゼロの黒魔道士 …痛い…痛い…体中が痛むんだ… 「ギーシュ!いい加減にしてっ!!もうやめてっ!!」 「いいや、やめないね、ゼロのルイズ…それとも、君が僕に土下座をするかい?」 …体も痛むけど…心が…もっと痛かった… ―ゼロの黒魔道士― ~第六幕~Vamo' alla flamenco! 「諸君!さぁ決闘のはじまりだ!」 「わたたた!?」ドサッ …引きずられて…投げられて…たどり着いたのは、ヴェストリの広場ってところだったんだ… 既にひとだかりができて…野次馬ができてた…ボクらの…その… 「うぅ…あ、あの…決闘って…」 ボクは、決闘をするつもりは無かったんだ… 「ふんっ!この僕を侮辱しておいて今さら命乞いかい?そうは問屋がおろさないよっ!ワルキューレッ!」 …ギーシュがバラを振ったんだ …ズンッと音がして、金属の甲冑がギーシュの目の前に現れる…しかも、剣を持って… …こっちの魔法って、こんなこともできるんだ… 「僕はメイジだから、当然魔法を使わせてもらうっ!さぁ、始めよう!」 …周りからは「口上が長いぞー!」とか「はじめろー!」とか「血を見せろぉぉぉ!」なんて声が聞こえる… 「ま、まってよ、ぼ、ボクは決闘なんて…」 「ワルキューレ…やれ!!!」 ガシャンッという音がして、甲冑がボクに向かってくる… と、とりあえず食い止めなくっちゃ… 「時を知る精霊よ、因果司る神の手から…」 …何度となく戦闘で唱えた呪文…食い止めるなら、この呪文だよね… でも、この呪文は外すことも多いから、集中して、集中して… 「ブツブツとつぶやいて、ブリミルへの祈りかいっ?覚悟したまえっ!!」 …ガッと音がして剣が目の前に突き刺さる…なんとか、寸前で避けれた…そして、詠唱が完成する… 「…我を隠したまえ… ストップ!」ピルルルルル…カシッ! …どうやら成功したみたいだ…甲冑は剣を引き抜こうとした体勢のまま時の流れを止められて固まる… でも、変だなぁ…いつもより…そう、杖も無いのに…魔力の流れがはっきり分かるや…? 「おいおい、どーしたギーシュー!」 「さっさと殺せーっ!」 「くっ…ワルキューレっ!?動かないだとっ!?」 …ギーシュが必死にバラを振っている…今のうちに説得しなくちゃ… 「あの…ギーシュ…さん…?ボクは決闘なんて…」 「ふんっ!だがまだ決闘が終わったわけではないっ!!」 ズンッと音がして、今度は斧をもった甲冑が出現する… …うぅ話を聞いてくれない… 「ぎ、ギーシュさんっ!話を聞いてくだs」 「平民の戯言ならば、あとでじっくり聞いてやろうっ!土下座でもしてもらってな!いけっ!ワルキューレっ!!」 …どうしよう…別の食い止め方で止まってもらうしかないかなぁ… 「肉体の棺に宿りし病める魂を 永劫の闇へ還したまえ…」 「そこだぁっ!!」 「ブレイクッ!!!」ピシィッ …甲冑が、斧が、目前まで迫った状態で石像みたいにピッシリと固まる… …やっぱりだ…魔力の流れがはっきり分かって…当てやすい…これも結構外しやすい魔法なのに… 「なっ…錬金だとっ!?」 「お、おい…あの平民、錬金を使ったぞ…」 「しかも動いてるゴーレム相手に…マジかよ?」 「お、おい、あいつ、杖とか持ってたか!?」 …周りの野次馬がどよめくのが分かる…うーん?…みんな魔法を使ってるのに、なんでそんな不思議そうなんだろう…? 「そうか…君はメイジだったのか…」 「え、あ、あの、ギーシュ…さん?」 「よくもこの僕をたばかってくれたなぁぁっ!!」 …うぅぅぅ…ま、ますます怒ってる…どうしよう… 「そこまでよ、ギーシュッ!」 「…ゼロのルイズ…」 「ルイズおねえちゃんっ!?」 …慌てて走ってきたのか、息を切らせながらルイズおねえちゃんがボクの前に立ったんだ… 「やめなさいっ!!恥ずかしくないの!?こんなちっちゃい子相手にっ!!!」 「ルイズおねえちゃん…」 「なんだね、ルイズ、やはり君が代わりに決闘でも?」 ルイズおねえちゃんのズンズンズンズンッ…さらに5体の甲冑が現れる… 「君がメイジというならば、最早手加減は無用っ!!」 「め、メイジなら決闘は禁止でしょうっ!やめなさいっ!ギーシュッ!!」 「確かに、メイジならば決闘は禁止だがね…」 …ゴゴッと背後で音がした…そう思ったときにはもう遅かったんだ… ゴッッ「うわぁぁっ!?」 「ビビィッ!?」 「『貴族相手』以外の決闘は禁止されてないんだよ、ゼロのルイズ!」 …油断したんだ…まさか、「石化」状態から「錬金」ってできるなんて… 2体目の甲冑が復活して…ボクは思いっきり殴られた… …痛い…痛い…体中が痛むんだ… 「ギーシュ!いい加減にしてっ!!もうやめてっ!!」 …ボクは6体の甲冑に取り囲まれて…詠唱の時間も無かった… …じわじわと…ボクはなぶりものに…剣でちょっとずつ切られて、盾で殴られて…体中が痛いんだ…でも… 「いいや、やめないね、ゼロのルイズ…それとも、君が僕に土下座をするかい?」 …体も痛むけど…心が…もっと痛かった… 「魔法が使えると思ったが、所詮この程度…そうか、大方そのとんがり帽子がマジックアイテムなんだな?」 …どうして…こんなに痛いんだろう… 「ふんっ!どうやら、ゼロのルイズ共々、使えない…使い魔を見ればメイジの実力が分かる、と言うが納得だな!!」 …そうか…悔しいんだ… ボクはぐっと握りこぶしを作る 「ふん、まだ立ち上がろうと言うのかね?」 「もうやめてぇっ!!」 …ルイズおねえちゃんが、素直になれないけど、頑張り屋のルイズおねえちゃんが… ボクはフラフラになりながら立ち上がる 「一体、どうしようと言うのかね、平民の、ゼロの使い魔君!もしや、靴でも舐めて許しを乞う気かね?」 …ルイズおねえちゃんが、バカにされるのが許せないんだ… ボクはフラフラになりながら固まった甲冑の持っていた剣にしがみつく 「ビビッ、もういいのっ!もう立たなくていいのっ!!ギーシュ、お願い、やめてぇっ!!」 …ボクは…そうボクは… ボクはゆっくりと息を吸う。左手が仄かに光った気がするけど気にしない 「謝るなら許してやらないでもない…『ゼロの使い魔のくせに貴族様に逆らってどうもすいませんでした』とでも土下座するならばな!」 …ルイズおねえちゃんの… ボクはゆっくりと前を向く、ギーシュの方を、そして唱えるのは勇気をくれたあの呪文 「いいかげんにしろよなコノヤローッ!!」 …ルイズおねえちゃんの使い魔なんだ!! ボクの体に力が満ちる。ボクの左手が輝きを増す 「なっ…フンッ!いいだろう!ならば一思いに殺してやるっ!!囲め!ワルキューレ部隊っ!!」 ガシャガシャと甲冑達がボクを取り囲み距離を整える…まだだ…まだ早い… 「…かかれぇっ!!!」 ガシャッと音がして剣が、斧が、盾が…ボクの「いたところ」に襲いかかる… 「なぁっ!?」 「と、跳んだっ!?」 「しかもあんなに高くっ!?」 「おい、やっぱりあいつメイジじゃ…」 …左手にぐっと力を入れて、剣を基点にして、ボクは跳んだ… 考えた戦略なんかじゃない…剣をにぎったときに、頭の中に何故か流れ込んできたんだ…どうすれば「敵を倒せるか」って… 「くっ…だが空では動きが取りにくかろう!」 …確かに、空飛ぶ魔法を知らないボクじゃ、回避行動はこのまま取れない… …でも、想像以上の高さに跳べた…だから、時間が稼げたんだ… 「落ちてきたところをやれっ!ワルキューレッ!!」 「天空を満たす光…」 そう、詠唱をする時間が… 「ビビぃぃぃぃぃぃ!!!」 「…一条に集いて…」 ルイズおねえちゃんを、バカにさせないための… 「死ねぇぇぇっ!!」 「…神の裁きとなれ!」 使い魔として…おねえちゃんを守るための… 「サンダガ!!!!」 魔法を唱える時間が! ビシャァァァァァァンッ!!!…ガシャ…ガシャガシャンッ 一か所に集まっていた甲冑達は、「サンダガ」の威力に耐えられなかったのか、あっけなく崩れ去った… 「お、おい、まさか…」 「あの『ゼロ』の平民が…」 「勝ちやがったぁぁぁっ!?!?!?」 ドッという歓声が、驚きが、広がるのが分かった… …ルイズおねえちゃん…ボク…これでいいんだよね…? ドサッ「あたっ!?」 …着地のことは考えてなかったなぁ…いてて…頭から落ちちゃった… ピコン ~おまけ~ ATE ―遠見の鏡― 二人の男が、造りのしっかりした部屋からその決闘を眺めていた 「…さて、勝ちよったのぅ…あの少年…」 片方は髭の老人、片方は頭寂しき男 「…えぇ…なんですか、あの雷は!?風のスクウェアクラスでもあそこまでは…!」 …「遠見の鏡」というマジックアイテムを用いて、である 遠く離れた位置にあるこの学院長室から色々と見渡せるアイテムだ 「ふむ…しかも、じゃ、剣を握った左手が光よったのぅ…」 「え、えぇ!やはりあれは『ガンダールヴ』のっ!!」 机の上には、スケッチと古ぼけた本が一冊、そこに描かれた絵は酷似している 「…じゃが、グラモン家のバカ息子に止めを刺したのは、剣ではなく魔法じゃぞい?」 「えぇ、えぇ!!しかも、いやはやあんな雷は…」 「うむ、しかも使いよった魔法は雷だけじゃないのぅ…」 「えぇ!まさか動いているゴーレムを石にするとは…」 「それだけではない、と気づいておるかおぬし?」 「え…それでは…最初のはまさかミスタ・グラモンの操作ミスでなく…」 「うむ…あの少年が止めたように見受けられるのう…呪文を詠唱しておるようじゃったし…」 「な、なんと…!風の障壁ですか!?しかしそれにしては痕跡が…」 「うむ…あれは…『時を止めた』かのように見えるのぅ…」 「ま、まさかそのような魔法はどの系統にも…」 「…急ぎ、話を聞かねばならぬな…」 コンコンコンと軽くノックの音がする 「ふむ、どなたじゃな?」 「ロングビルです、『眠りの鐘』使用を差し止めに向かいましたが、その前に決闘が終わったようでして…」 緑髪の妙齢の女性が学院長部屋に入ってくる。眼鏡が理知的な印象を周囲に与える 「ふむ…ミス・ロングビル、御足労じゃが、今度はミス・ヴァリエールとその使い魔の少年をここへ呼んでくれぬかのぅ?大至急じゃぞ?」 「あら、はいはい…人使いが激しいことですわ…ねっ!!」 ガンッ!と音がして床が踏みつけられるそのすぐ脇からチョロチョロとネズミが1匹逃げてくる 「おぅおぅ…もっとお手やわらに頼むぞぃ…何、見えなかった?残念じゃのぅ…」 「…何を見ようとしたんですか、あんたは…」 先ほどまでの考察の鋭さを打ち消すかのような老人の行動に、気苦労からか禿頭よりまた1本離脱者が出た 前ページ次ページゼロの黒魔道士
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5536.html
前ページゼロの超律 シエスタの案内で一応の身だしなみを整えたマグナは、再びルイズの部屋の前にやってきていた。 マグナは女性の寝室に入ることに抵抗を覚えつつも、自らの手をドアノブに伸ばす。 ガチャリと音をたてて、ドアはあっさりと開いた。 (無用心だなあ) そろそろ反省したかもとカギを開けてみたら、当の使い魔が野宿を決め込んでいた時にルイズが抱いた感情を差し引いても、それはもっともな意見だった。 恐る恐る部屋に足を踏み入れると、学生寮とか宿舎と言った響きとはかけ離れた空間が出現する。マグナは改めて広いなあ、と感想を抱いた。 十年近くを過ごした見習い召喚師の宿舎は、相部屋で二段ベッドと机が一つと言う狭いものだったのでなおさらだ。 その広い部屋の一角、部屋の相応しい大きさを備えたベッドの上に、ルイズはいた。とても上品とは言えない寝相である。 すーはーすーはーと平常心の維持に努めんとするマグナ。チラチラと見える足とか肌が心臓に悪かった。 「ルイズ、様、朝ですよ起きて下さい」 「うにゅ」 眠っているとはいえ、なるだけ丁寧な言葉遣いを心がけるマグナ。背中がかゆくなるものの、キックよりはマシだと思う。 一方のルイズは、奇妙な鳴き声とともにむくりと起き上がると、ぼやける視界でマグナを眺めていた。髪の毛には寝ぐせが少し。 「あんた誰?」 ぶっ倒れるマグナ。 「冗談よ」 「……嘘だ、絶対に本気で忘れてた」 などと言えるはずもなく、マグナはとほほとうなだれた。 ルイズはその様子を気にすることもなく時刻を確認する。多少早いが、起こされたことを怒鳴るほどの早朝ではなかった。 「ところであんた、昨日は帰ってこなかったみたいだけど、どこで寝たの?」 「外で寝ましたけど?」 「そ、そう」 マグナの答えに、ルイズは表情を引きつらせた。 使用人の宿舎にもぐりこむくらいを想像していたので、予想の斜め上である。当然野宿など経験したこともなく、その様子を想像もできないルイズには文句一つも言えなかった。 「まあ、いいわ。とりあえず、着替えをするから」 「ん、分かったよ。それじゃあ外で待って……ぐ」 ごく当たり前のように部屋を出ようとするマグナの襟首を、ルイズの手がむんずとつかんだ。首が絞まってうめくマグナ。 振り向くと、ルイズは良い笑顔だった。 「手伝いなさい」 良い笑顔で命令するルイズ。硬直するマグナ。彼は健康な男子である。 「俺がルイズ様くらいの歳にはもう一人で着替えて……」 何とか逃れようと、苦し紛れにそう言ったところ、使用人が居るときには云々と言われ、さらにルイズが16であることを良い含められつつ殴られた。 え、同い年? と聞いたところ、今度は乗馬用のムチが飛んできたので、マグナは素直にゴメンナサイをした。 ルイズによって昼食抜きを宣告された。 素直に謝ったのにとは思いつつも、原因は大体自分なので反論はできなかった。 少年の心臓の鼓動を多いに速めつつも、着替えを済ませたころには、部屋を出て食事に向かうにはちょうど良い時間を迎えていた。 「それじゃあ行きましょう」 「あら、おはよう。ルイズ」 「おはよう。キュルケ」 ルイズの先導で部屋を出てカギをかけると、錠前がおりるのと同じタイミングで、正面の部屋のドアが開いた。 正面の部屋から現れた人物とルイズが、挨拶を交わす。 褐色の肌の少女キュルケは、マグナの姿を認めると、焔色の髪を揺らしてくすくすと笑った。 いきなり笑われてさすがに不機嫌になるマグナであるが、キュルケの視線が自分の頬に存在するパンチの痕跡であることが分かると、その感情も霧散してしまい、苦笑して返すほかなかった。 「へえ、本当に平民なのね。名前を教えて下さる? 使い魔さん」 「マグナです。ええと……」 「私はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。二つ名は微熱、微熱のキュルケよ。よろしくね」 「よ、よろしく」 「ちょっと! ツェルプストーの相手なんかしなくていいのよ!」 悲しいサガ故に、キュルケの胸元に視線を向けてしまったマグナに、あからさまに不機嫌そうなルイズの声が飛んだ。 主人の様子に戸惑うマグナであったが、キュルケが悪戯が成功したようにクスクス笑っているのを認めると、ほっと息をついた。分かってやっていたらしい。 このキュルケという少女は、人をからかうのが趣味なのかもしれない。 「ところで、剣を持っているってことは、マグナは傭兵なのかしら?」 「え? あ、ああ、うんそんなところだよ」 マグナは言葉を濁しながら答えた。 ここがリィンバウムなら、誰にはばかることもなく召喚師を名乗るのだが、基本的に召喚術は秘匿されるべきものだ。 具体的には、戦争に使えてしまう技術である。それを考えれば、やはり召喚師と名乗るには慎重になってしまう。 キュルケはマグナの態度を訝しみながらも、とりあえず詮索はしないことにした。顔は悪くないと思っているが、それ以外に彼女の興味を引くものがなかったからだ。 「ふあっ!?」 話を切り上げて食事に向かおうとしたところで、ルイズが驚いて声を上げた。 キュルケの隣をすり抜けて、虎ほどもある巨大で真っ赤なトカゲがのっそりと顔を出していたのである。その尻尾は、燃えている。 巨大なサラマンダーの登場によって目を白黒させるルイズに、キュルケは悪戯っぽく笑う。 「私の使い魔、フレイムよ。驚かせちゃってゴメンねー。ル・イ・ズ」 「お、驚いてなんてないわよ! サラマンダーなんか珍しくない……ん、だから」 「あら、気が付いた? いいわよねー、この尻尾。間違いなく火竜山脈のサラマンダーですもの」 使い魔自慢をする隣室の住人の言葉に、ルイズはフレイムとマグナを見比べた。 方や堂々たる体躯のサラマンダー。 方やただの少年。 身びいきするつもりも無いので、あっさりフレイムに軍配が上がった。 自分の使い魔が、宿敵ツェルプストーの使い魔に負けたので、ちょっとだけルイズの機嫌が悪くなる。 「フレイムって言うのか。よろしくな」 もっとも、当のマグナは主人の機嫌など知らぬ様子で、のん気にフレイムの頭をなでていた。 フレイムもまんざらではないらしく、機嫌よさそうにきゅるきゅる鳴いている。 「あなた、フレイムを見ても驚かないのね」 「ん? ああ、フレイムくらいの大きさの幻獣だったら結構身近に……って、舐めないでくれよフレイム! 熱い、唾液が熱いッ!??」 何気ないマグナの言葉は、しかし少女二人に大きな衝撃を与えていた。 フレイムは大きい。平均的なサラマンダーに比べてもかなりの大きさである。 そのフレイムほどの大きさの幻獣が身近……自然の成り行きで、キュルケとルイズの脳裏には、マグナの故郷として断崖の山脈や、深い密林が投影されていた。 実際は、水竜が100メイル級の船舶をけん引し、馬の代わりに幻獣が馬車を引く文明的な場所なのだが、今の彼女達が知るところではない。 知ったら知ったで驚くが、それも別の話である。 「あんた、一体どんな秘境の出身なのよ……」 特に昨夜、里帰りさせて上げる宣言をしたルイズは、秘境を踏破する自分の姿を暗澹たる気分で想像していたのであった。 今後は慎重に発言しよう、などと思いつつ。 ゼロの超律5「ルイズとキュルケ」 了 前ページゼロの超律
https://w.atwiki.jp/familiar/pages/4593.html
1-181 1-696 1-796異世界協奏曲 1-90小ネタ… 2-131ルイズ×サイト 3-152魔法戦隊メイガスファイブ 3-33時を駆ける少女 4-115 4-126 4-146 4-229ゼロの三国志 4-501 4-755『シエスタ&才人の小旅行』プロット(*1)5-400サイトがんばる! 5-540 6-75マリコルヌの野望 6-135今宵は無礼講 6-218マリコルヌの野望 炎の師弟愛編 6-327タバサネタバレもの 6-552『魔法戦隊メイガスファイブ』ダイジェスト 6-630ルイズのハロウィン 8-303アメリカンジョーク風ゼロの使い魔 8-343アメリカンジョーク風ゼロの使い魔 8-425アメジョ風に便乗 8-618バカップルイズ〜そして彼女はやさぐれる〜 予告編 9-286惚れ薬編if 9-326ダメ、絶対。 9-549アニエスの囚われ人 9-560ビダーシャルの趣味 9-600シルフィもサイトと遊びたい! 10-117ルイズの秘密 11-122 10-340その後 11-192ルイズの変装 11-386ある日の出来事 11-429つうこんのいちげき 11-494サイトとバレンタイン 12-88ある吟遊詩人の手記 12-117知的好奇心 12-153女王アンリエッタの優雅な一日 12-365青銅と香水と聖女の日 12-508 13-82マリコルヌの休日 13-202俺のパンツを履いてくれ 14-344フラグクラッシャーズ? 14-478一筆啓上 14-676 14-725黄金の日々 15-683竜の血 15-756タイムトラボー 17-498ジェシカとでぇと A2-338『ゼロの使い魔』 第2期 序章 X01-02『トリステイン戦隊ゼロファイブ!』(*2)
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/550.html
ゲーム&ウオッチがひしっとルイズに抱きつく。 比較的背の低いルイズだったが、さらに一回り小さいぺらぺらの体は丁度ヘソ辺りに擦り寄った。 「ちょっとキュルケ! 人の使い魔に何してくれるのよ!?」 ルイズが辺り気にせず声を荒立てた。 といっても、今は朝食の時間。 皆食堂に集まっていて人が居ないため 特に周りに気を使う必要も無いといえば無いのだが。 「誤解しないで頂戴。私はただこの使い魔くんと仲良くお話してただけよ」 「何がお話よ、何が。……大体こいつ、『ビ――ッ』ってしかしゃべれないのに何がわかったって言うのよ?」 全く悪びれた様子も無く、髪を掻きあげて余裕の態度を見せるキュルケに対し、 ルイズは額にデフォルメで血管が浮き出るほど怒っていた。 ~ゼロの平面3~ 「とにかく、こんなのでも私の使い魔なのよ。金輪際こいつには近寄らないで!」 猫のように毛を逆立てる気迫のルイズに、キュルケは肩をすくめてけだるげに答えた。 毛頭、そんな約束を守る気などないのだろう。 「じゃあさ、ルイズ。それ守ってあげるけど、代わりに一つ、教えてくれない?」 「…………何よ?」 あくまで妖艶に微笑むキュルケになんとなくに苛立ちを感じた。 ルイズはこの、いつでも余裕を保って人(特に自分)の揚げ足をとるとき態度が 少し嫌いだった。 だからつい、口が強くなって怒りっぽくなってしまう。 「彼の……あの使い魔くんの名前、なんて言うの?」 「…………えっ!?」 反射的に戸惑い、素の声が漏れた。 「あ、あいつの名前? 名前…………」 正直、考えたことが無かった。 恥ずかしい限りだが、今のルイズは自分の使い魔の名前すら知らないのだ。 そりゃああいつが使い魔として現れたことのショックや、 あいつ自体に時折見える、ある種の不気味さを無意識に感じ取ってたからなのか、 まともに考えたことが無かった。ふと気づけば、『あいつ』『こんなの』扱いしていた。 「知らないのかしら、まさか? いくら『ゼロ』のアナタでも、使い魔の名前ぐらいは把握してるわよね?」 「あ、あたりまえよっ! ……でも、あ、アンタなんかに教えてやるもんですかっ!!」 負けん気だけで支えた言葉はしどろもどろだ、動揺丸出しである。 ふん反り返る様に背を向けるが、実際には顔に浮き出た焦りを キュルケに悟られないようにするための、ささやかな抵抗だ。 当たり前のことを、よりにもよってあの“ツェルプストー”に教えられたのだ。 “ヴァリエール家”の人間ルイズにとって、これほど屈辱的なことは無い。 「そ、なら別にいいわ」 すかしたように息をつくなり、彼女にしては珍しくやけにあっさりと身を引いた。 意外なほど、あっさりとだ。 ルイズが思わず呆けた顔になってしまうのも無理はない。 ゲーム&ウオッチはとっくにルイズの腰から離れていた。 「ほんとは私の使い魔を紹介してあげようかと思ったんだけど……気が変わったからまた今度にするわね」 「丁重にお断りするわ。紹介と名ばっかりで、人の自慢話なんて聞いてるほど暇じゃないから」 言い終わると同時に背を向けたまま来た道を辿る。 まだ朝食を食べてない、いろいろ考えていると、おなかも空いてきた。 「あ! 待って、ルイズ」 「今度は何? ……ってあいつはどこ行ったの!?」 ようやく気づいて見れば、いつの間にやらあのぺらぺらの姿がどこへなりと消えていた。 また縦になっているかもしれないと目を細めて辺りを見回すも、 それらしい者は一つとして無かった。 「また……、あんのバカ―――――ッ!」 二度目の叫び、 今度は『ビ――ッ』と言う音(声)は、聞こえてこなかった。