約 440,001 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8190.html
前ページ次ページゼロの賢王 トリステイン魔法学院。 その中庭で、ドカーンと威勢のいい音が鳴り響いた。 これで何度目だろう・・・。 同じ制服を着た少年少女たちは、1人の少女を見ながらそう思っていた。 ピンクブロンドの髪を振り乱し、華奢な体をふるふると震わせる少女。 彼女の名はルイズと言った。 ルイズは何とか自分を落ち着かせると、再び目を閉じて、杖を構えた。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」 そう静かに、そして確かに呪文を唱える。 「五つの力を司るペンタゴン」 これは召喚魔法。 彼女のパートナーとなる使い魔をこの場に呼び寄せる呪文である。 「我の運命に従いし、"使い魔"を召喚せよ」 少女は力を込めて杖を振った。 その直後、目の前で大爆発が起きた。 大量の土煙が舞い上がり、その場には大きなクレーターまで出来ていた。 周りで見学していたルイズの同級生たちは誰もが、 「『ゼロのルイズ』がまた失敗した」 そう思い、ルイズを嗤おうとした。 その時、立ち込める煙の中に人影が現れた。 少女は目を見開く。 もうもうとした土煙が晴れると、そこには金色の長い髪の男が倒れていた。 「・・・え?」 ルイズは愕然とした。 ドラゴンやグリフォンなどといった高等な生物まではいかなくとも、 せめて使い魔らしい使い魔を呼びたかった。 だが、目の前にいるのは人間。 しかもどう見ても平民である。 それに気付いてから同級生たちの嘲笑の声が辺りに響き渡るのに時間は掛からなかった。 「ハーッハッハッハハ!!!おい、見ろよ。あれ平民だぜ!?」 「やっぱり『ゼロのルイズ』だな!!アハハハハハハ」 「ひ・・・ひ・・・も、もうダメ・・・笑い過ぎで、腹が・・・!!」 ルイズは頭の中が真っ白になった。 暫く呆然としていると倒れていた男がピクリと動く。 「んん・・・」 男は頭を押さえながらよろよろと立ち上がった。 そして、薄く開いた目で辺りをキョロキョロと見回している。 その顔もこれまた野暮ったい顔である。 年齢もこの召喚テストを取り仕切っているコルベールと変わらない様に見える。 ルイズは思わず頭を抱えていたが、すぐにピンクブロンドの髪をひるがえして、 側でルイズと同じ様に呆然としているコルベールへと向き直った。 「ミスタ・コルベール!」 「・・・あ、な、なにかな、ミス・ヴァリエール?」 「あの・・・も、もう一度!もう一度召喚させて下さい!!」 「それは出来ない」 コルベールは首を振って否定の意を示した。 「使い魔の召喚は神聖な儀式だ。一度呼び出した使い魔を変更することは出来ない」 「でも、アレは平民です!使い魔じゃありません!!」 「例え平民であっても、召喚された以上は君の使い魔だ。君は責任を持って彼と契約する義務がある」 「で、でも!!」 ルイズは必死に食い下がるが、コルベールは再び首を振ってそれを拒否した。 「さあ、早く『コントラクト・サーヴァント』をしたまえ」 「し、しかし!!」 そうは言いながらもルイズは分かっていた。 『サモン・サーヴァント』が成功したのは、今の自分にとっては奇跡的なことであり、 今が最後のチャンスなんだということを。 正直、ルイズは再び『サモン・サーヴァント』を成功させる自信が無かった。 「ちょっといいか?」 突如聞こえた言葉がルイズの思考を遮る。 気が付くと、男が二人の側まで来ていた。 「ここは一体何処だ?俺は一体どうなった?さっきまで確かに船の上にいたんだがよぉ・・・」 ルイズは横目でジーっと男の顔を見る。 そしてハァとため息をつくと、覚悟を決めたかの様に男へと向き直った。 「あんた、名前は?」 そう言うと、ルイズはキッと男を睨み付ける。 頭で納得出来ても、やはり心では納得出来ていないのだ。 男はいきなり睨み付けられて少しムッとした顔になった。 「お嬢ちゃん。人に名前を聞く時はまず自分から名乗るのが年上に対する礼儀って奴だぜ?」 「いいから名前!!」 「だから、まずそっちが名乗れって・・・」 「名前!!!!」 「・・・・・・」 男は先程のルイズの様にため息をつくと、やれやれと言った感じで答えた。 「・・・ポロンだ」 「ポロン?変な名前ね。いいわ、ポロン。ちょっと屈みなさい」 そう言うとルイズは人差し指をポロンに向けて、下へと曲げた。 「ハァ?何で俺がいきなり会った見ず知らずのガキに名前呼び捨てにされて、 更に言われた通りにそんなことしなきゃならねえんだ?」 「ガキ・・・?(ピキッ)・・・いいから早くしなさい」 「ったくよぉ」 ポロンはこれ以上言っても無駄だと思い、渋々身を屈めた。 ルイズの顔が近くなる。 「あんた、感謝しなさいよね。貴族にこんなことされるなんて、普通は一生ないんだから」 (意外と可愛い顔しているな) ルイズの顔を間近で見て、素直にポロンはそう思った。 だが、ポロンとて愛する妻がいる身であり、血が繋がってはいないもののたくさんの子供もいる。 ポロンがルイズに感じた可愛さは、親が子に思うそれと同質のものであった。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我が使い魔となせ!」 それに見惚れていたというわけではないが、ルイズの突然の行動にポロンは何も出来なかった。 重なる唇。 流石のポロンもサクヤや子供たち以外と口づけを交わすのはかなり久し振りであり、少し気恥ずかしくなる。 ルイズの体がポロンから離れた。 「・・・終わりました」 それだけ言うと、ルイズの顔は急に赤くなりポロンから目を背けた。 可愛らしいところもあるんだな、と思った瞬間、ポロンの左手に激痛が走った。 「何!?」 毒でも仕込まれたのか?と一瞬勘ぐったが、痛みはすぐに治まった。 代わりに左手には見たことも無い文字で印が刻まれていた。 「何だ・・・こりゃあ?」 「それは使い魔のルーンよ」 「使い魔の、ルーン?・・・つーか、使い魔って何だ?」 「使い魔は使い魔よ。ポロン、今日からあなたは私の使い魔となるのよ」 「ハァ!?何だそりゃ!?」 ポロンは開いた口が塞がらないという感じで言った。 するとコルベールが二人の間へ入った。 「ミスタ・・・そのことは私から説明しましょう」 コルベールから今の事情について簡単に説明した。 今は使い魔召喚の試験を行っているということ。 ミス・ヴァリエール・・・つまりそこの少女がポロンを召喚したということ。 彼女はこの試験に合格出来なければ留年となること。 故にポロンと使い魔の契約を交わしたということ。 「何じゃそりゃあ!?俺は使い魔なんてやらねえぞ!!」 それを聞くとポロンは全力で拒否の意を表明した。 いきなり見知らぬ土地へ連れて来られて、更に見知らぬ子供に口づけされて、 それで今度はその子供の使い魔となれ。と言われているのだ。 拒否しない方がおかしい。 「ハァ?何言ってんの?あんたみたいな平民に拒否権なんて無いわよ」 「ああ?あんだってー?」 「平民が貴族に従うのは当然じゃない!大人しく使い魔になりなさい」 「今のでカチンと来た!!絶対に嫌だね!!」 ポロンが頑なに拒否していると、またクスクスと笑い声が聞こえる。 「おい、『ゼロのルイズ』が平民に拒否られてるぞ!」 「アハハハハ、自分の使い魔に拒否られるなんて流石は『ゼロのルイズ』だな!!」 「ていうか、あれって使い魔なの?ただの平民だろー?」 その声は、事情を知らないポロンさえも不快な気分にさせた。 『ゼロのルイズ』が何を意味しているかは分からないが、 目の前の少女が馬鹿にされている。というのは伝わって来る。 ふと見ると、ルイズはわなわなと震え、目には涙を浮かべていた。 ポロンは「ふむ」と顎に手をやると、すぐに軽く頷いた。 「おい」 「・・・何よ?」 「使い魔になってやってもいいぜ」 「へ?で、でもあんたさっき絶対に嫌だって・・・」 「気が変わった。これからよろしくな、えーっと・・・ルイズだっけ?」 「な、何で私の名前を?」 「さっきから周りのガキ共が『ルイズ』って言ってたからな。お前のことだろ?」 「ええ・・・」 『ゼロの』という部分を敢えて言わないのはポロンの優しさだった。 本来のポロンは子供にはとても優しい人間である。 『ゼロ』が示す意味については気になる部分もあったが、それが彼女にとって触れられたくないものである。 ということはすぐに察せられたので『ルイズ』とだけ言ったのだ。 「ふ、フン!最初から素直に使い魔になってれば良かったのよ」 「素直じゃないのはお互い様でね」 「な、何よ!」 二人の様子を見てコルベールは安心したように頷くと、ふと何かを思い出してポロンの元へ駆け寄った。 「すみませんミスタ、その左手のルーンを見せていただいてもよろしいですか?」 「あん?これか?別にいいけど・・・」 「ふむ、珍しいルーンだ。有難う」 コルベールは素早くポロンのルーンをスケッチすると、手をパンパンと叩いて皆の注目を集める。 「では皆さん、これから部屋へ戻って今呼び出した使い魔との交流を深めて下さい」 コルベールの号令とともに他の生徒たちもぞろぞろと部屋へ戻って行く。 「ルイズ、お前は歩いてこいよ!」 「あいつ、フライはおろか、レビテーションさえまともにできないんだぜ!」 去り際にそんなことを言いながら飛んでいく生徒たちを見てポロンは驚いた。 その様子を見て、ルイズは「魔法を知らないなんて何処の田舎者よ」と呆れていたが、 ポロンが驚いていたのは飛べることではなかった。 (何で飛べるんだ!?世界から呪文は失われたはずなのに・・・) 思わずポロンは立ち尽くしていた。 ルイズはそんなポロンに気付かず、その場に置いて先へ進んでしまった。 ポロンは暫く呆然としていたが、ハッと気が付くとすぐに地面へ手を向けた。 「メラ・・・!」 すると、懐かしい感触とともに手の平から火の玉が放たれた。 火の玉は地面へ着弾すると、そのままパチパチと燃えている。 (呪文が・・・使える・・・だと!?) これは絶対に有り得ないことであった。 『失われし日』を境に呪文の消失は全世界に及んでいた。 魔力の有無に関わらず、全世界で呪文を使用することが出来なかったのだ。 それが使用出来るというのは、すなわちここが自分たちが知る世界では無い、ということである。 「・・・・・・」 ポロンはごくりと唾を飲み込むと、もう一度呪文を唱えた。 「メラゾーマ!!」 しかし、今度は何も起きなかった。 (魔力は足りている。呪文を忘れた?いや、違う。そういう感じじゃねえな・・・。急に使えるようになったから、心と体が慣れていないのか?そんな感じだな・・・) 「ちょっとポロン!!何で付いてきていないのよ!!」 ルイズが急いでポロンの元へ駆けつける。 ポロンはルイズの顔を見た。 ルイズは怒りながらも何処か不安そうな顔をしていた。 (そうか・・・俺がお前を置いてどっかへ行っちまったとか思ったんだな) 「ああ・・・すまねえな」 そう言うと、ポロンは軽く頭を下げた。 「ふ、フン。はぐれるんじゃないわよ!・・・ほら私の部屋へ案内するから。今度は一緒に付いて来るのよ?いい、離れないでね?」 ポロンは笑いながら頷くと、ルイズの後を追って歩き始めた。 前ページ次ページゼロの賢王
https://w.atwiki.jp/dai_zero/pages/51.html
第二話 誇りにかけて 前ページ次ページゼロの影 口に薔薇の造花を加えた気障な少年は、顔色を蒼くしながらもルイズを庇っていた。 今まで散々ゼロのルイズと馬鹿にしてきたのに、一体どういうつもりだろう。 もしかして、人を見下す態度を反省し心を悔い改めたのか――。 そう考えると、気取っているとしか思えない顔が凛々しく高貴に見えてくるから不思議である。 「どうして……!?」 「ヘボでダメダメイジでゼロのルイズでも一応レディじゃないか、一応」 あっという間に温かい想いは霧散し、後頭部を殴りつけたくなった。馬鹿にしているにもほどがある。 「とにかく! ぼ、僕の前では! れれ、レディには指一本触れさせないッ!」 膝を振るわせ、鼻水を垂らしそうになりながらギーシュは高らかに宣言した。 字面だけ見れば格好いいと言えなくもないが、所々裏返った声で叫ばれては逆効果である。 騎士道精神あふれる少年の言葉に感動するはずもなく歩み寄る彼の前に、青銅の戦乙女――ワルキューレが立ち上り、襲いかかった。まともに拳を食らえば殴り飛ばされてしまうだろう。 だが、吹き飛んだのはワルキューレの方だった。彼らの動体視力ではろくにとらえきれなかったが、無造作に手で払いのけただけ。 たった一撃でワルキューレの胴体がへこみ、地面に叩きつけられ動かなくなった。 ギーシュの顔が引きつり、ルイズもあっけに取られた。恐怖より驚嘆の色が生徒たちの顔を染め上げている。 反対に、彼は己の掌を眺めてかすかに顔をしかめた。 オリハルコンでもないあの程度の強度の金属ならば、本来原形をとどめぬほどグチャグチャにひしゃげているはずだ。 一歩足を踏み出すと今度は四体のゴーレムが行く手を阻む。一斉に襲いかかるが全く脅威は感じない。身体能力は落ちていても、動きを読む力まで衰えているわけではないのだ。 冷静に攻撃を避け、反撃の拳を叩きこむ。 どれほどの数のゴーレムを生み出せるかわからないが、本体を叩けばいい。流れるように接近し、攻撃しようとしたところで彼は身を捻った。 生徒を救おうとコルベールが炎の帯を生み出し飛ばしてきた。宙へ身を躍らせた彼へ炎球が飛ぶ。 それを放ったのは炎と同色の髪の持ち主。『微熱』の名を持つ、ルイズとは犬猿の仲のキュルケだ。 彼女は本能的に知っていた。彼に学院の者達を認めさせるには、戦うしかないと。 空中ならば避けようがない。勝利を確信した彼女の目が見開かれた。高速で振るわれた掌によって球体は弾かれ、明後日の方向へ飛んでいってしまった。 生徒たちの想像を超えた力だが本人は苦い顔をしている。 術者の方に弾き返すつもりだったが、狙いが逸れてしまった。 回避に集中して人間と自身の力を確認しているが、戦えば戦うほど力の低下がじわじわと意識を焼いていく。 炎球の向かった先には青い髪の女生徒――タバサがいた。コルベールが逃げるよう叫んだが、彼女はどこまでも冷静に身の丈以上の杖を振り、風で軌道を変えた。 反撃の氷の矢が次々に飛ぶが、彼を捉えることはできない。キュルケとタバサの息の合った連携攻撃と、それを回避する青年の姿は幻想的だった。 生徒達は逃走も加勢も忘れ、目の前の戦いに目を奪われている。 一方、ルイズは悔しさに唇を噛んでいた。 タバサやキュルケは戦う力を持っている。呪文を使える。 だが、自分は何もできずじっと見ているしかない。全く認められることのないまま――。 しかし、そこで体の奥底から声が聞こえる。何かと共鳴したような、魂をも震わせる響きが。 (力を認められたい……ゼロのままでいたくない!) ここで何もしなかったらいつまでもゼロのままだ。 脳裏に彼の言葉が蘇る。 (笑わせるなっ! 小娘風情が主のような顔をするのは……身の程を知らぬにも限度がある!) (私に一撃でも食らわせることができたら、少しは認めてやってもいいが……触れることすらできまい) 彼女は気位が高く意地っ張りである。いくら相手が強くともここまで侮辱されたら決して後には退けない。 その眼が燃え上がり、悔しさや怒りが膨れ上がり――弾けた。 彼女は衝動のままに落ちていた石を拾って投げつけた。 青年が弾こうとした瞬間、杖の先端を石に向けて爆発させる。彼は予想外の事態に驚くより感心したような息を漏らした。 「わたしに出来るのは、これだけだから……っ!」 キュルケが、タバサが、同時に攻撃する。それを回避しようとした瞬間彼の足元が突然崩れた。まるで地面が急に脆くなったように。 ずっと観察し、動く位置を予測したコルベールが『錬金』によって作り替えたのだ。 体勢を崩しながらも掌撃で弾こうとした彼の背後に一体のワルキューレが出現し、羽交い締めにする。 そのまま炎と風の餌食になるかと思われたが、彼は青銅の腕に手をかけ、力を込めた。ビシリという音と共にひびが入り、戒めが緩んだ所で掴んで振り回す。 盾にされたワルキューレは魔法を食らって崩れ落ち――その隙間を縫うようにして小石が飛ぶ。再度の爆発を彼は腕を上げて防いだ。 その表情がわずかに動く。 ルイズが刺そうとするかのように杖を構え、突進してきたのだ。 玉砕覚悟としか思えぬ無謀な行動だが、彼は冷静に杖を掴んで止めた。 しかし、彼の予想に反して手の中で爆発が起こる。 先ほどから投げた石を目標として爆発させていたのも、小石と併用しないと爆発は起こせないと勘違いさせ、本命を叩きこむため。 至近距離で爆発させれば彼女もただでは済まないが、その眼にためらいは無い。 「爆発には慣れてるわ……これなら絶対命中する! わたしと我慢比べよっ!」 幾度も爆発が生じ、己の身を削るような行動にギーシュが顔をゆがめる。 だが傷ついているのは鋼鉄の手袋だけで一撃を入れたとは言えない。 ルイズが攻撃の無意味さを悟ると同時に、彼は杖を捻って彼女を地面に叩きつけようとした。 一瞬早く手を放した彼女が殴りかかるが、掌であっさり止められる。 「……惜しかったな」 珍しく評価するような言葉だが、それに感動するような彼女ではない。 なおも地を蹴り、体をぶつけるような勢いで飛びかかる。蹴りで迎撃しようとした彼の足を青銅の腕が掴んだ。 「最後の一体さ……!」 ギーシュが白い歯を輝かせながら微笑んだ。これでルイズが格好良く殴り飛ばしてくれれば、彼の活躍も光るというものだ。 しかし、ルイズは格闘技の心得があるわけではない。勢いよく飛び過ぎて体勢を崩し――予想外の動きを見せたため反撃を受けることもなく――彼女のひたいが相手の頭に激突した。 メイジなのに素手で、しかも頭突きで一撃を入れていいのか。 仮にも貴族の令嬢なのに猪のごとく突っ込んでいいのか。 誰もが心の中でそう叫び、彼女はそのまま気を失い倒れてしまった。ひたいから血がだらだら流れているが、青年には傷一つない。 それでも一撃は一撃だ。 「触れるどころか、本当に一撃食らわせるとは……」 コルベールの言葉に彼は顔をしかめた。 いくら人間達の連携が巧みであっても、魔法が強力であっても、本来ならば簡単に皆殺しに出来たはず。 しかし実際は甘く見ていたとはいえ “一撃”を食らってしまった。信じられぬほど力が落ちている。 ゴーレムの腕を蹴りつけ、気絶した彼女をすぐさま蹴り殺そうとしたが、突然彼の足から力が抜けた。操り人形の糸が切れたように完全に動かなくなったのだ。 ぐらりと体が揺れ、膝が折れる。 「く……!」 この異変が召喚直後の一時的なものか、ずっと続くものなのかわからない。 認めざるを得なかった。ここで彼らを皆殺しにするのも、力ずくで言うことを聞かせるのも今の自分では難しいということを。 彼の内心を読み取ったのか、コルベールが頭をさすりつつ発言した。 「もうやめませんか。あなたは強いが、ここで戦っても元の世界には戻れない。あなたの最大の望みは帰還……そうでしょう?」 頷き、肯定する。 ついカッとなって戦ってしまったが、彼らを殺してもメリットはないとわかっている。呼び出したルイズこそが鍵を握るはずだ。 「取引しませんか。我々は情報を、あなたはその力を。学院のために働けなどとは言いません。彼女に力を貸してほしい――それだけです」 「使い魔としてか?」 皮肉な口調にコルベールは沈黙した。 儀式のことを考えるとそうとしか言えないが、相手のプライドを傷つけることになってしまう。 ルイズならば「当然でしょ」と言って再び争いを勃発させるだろうが、幸い彼女は気を失っている。 後で彼女に刺激しないよう言い聞かせなければならない。 「騎士……のようなものでどうでしょう。最大の手がかりである彼女の傍にいることは、あなたにとっても悪い話ではないと思います」 使い魔だろうと騎士だろうと主人は主人なのだが、ものは言いようである。 双方の顔を立てる点で大人だ。 「……いいだろう」 主の元へ戻るまでの一時的な関係、仕事の一環だと割り切るしかない。 全ては一刻も早く主の元へ戻るため。彼にとっての主は大魔王以外に存在しない。 タバサやキュルケ、コルベールは敬意とまではいかずともある程度認めたのだが、彼らがいなければ何もできなかったはずのルイズに関してはそれほど評価していない。 開き直りとはいえ、傷つきながら一撃を食らわせた根性だけは認めてやらなくもないが。 そんな彼の内心も知らず、目を覚ましたルイズは安堵したように笑った。 「わたしはルイズ。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ」 「ミストバーンだ」 本来相まみえぬはずの二人が巡り合ったことによって何が起こるのか――その時はまだ誰にも分らなかった。 前ページ次ページゼロの影
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/3643.html
前ページ次ページゼロの魔獣 結論からいえば、真理阿は『役に立つ』使い魔だった。 召喚から3日経ち、あらためてルイズはそう思った。 まず、彼女よく働く。 ルイズが指示を出すまでもなく、掃除や洗濯にと甲斐甲斐しく動き回る。 おそらくは天性の働き者なのだろう、同年代のメイド(シエスタと言ったか?)と親しくなった真理亜は そのまま厨房の仕事を手伝いに行き、たちまち平民たちの間で人気者になった。 (手伝ったお礼にと貰った布団を繕いなおし、その日のうちに寝所まで確保した。) 平民だけではない。 彼女はどういうわけか、他の使い魔達から好かれた。 彼女の前では本来獰猛な性質の使い魔も、鼻を鳴らして擦り寄ってくる。 じゃれつくフレイムを見て、「どっちが主人か分ったもんじゃないわね」などとキュルケは苦笑したが 彼女自身、真理阿の事を気に入っているらしく、いつものように毒づいてこない。 それは、キュルケに限った事では無いらしく、初めは平民を召喚した事を馬鹿にしてきた学友たちも 公の場で彼女を侮辱する事は無くなっていった。 しかし! しかしである。 ルイズは気に入らない。 平民の小娘を召喚し、公衆の面前で接吻するハメになった。 その事実だけでも耐え難い屈辱だというのに、彼女は平然と平民たちの仕事の真似事をする。 しかも、彼女はただ従順なだけではない。 一度、ルイズは彼女に 「使い魔は主にだけ仕えていればいいのよ!主を貶めるようなマネはしないで!!」と抗議したが、逆に 「平民の上に立つ貴族がそんな狭量でどうするのか」と、たしなめられた。 ルイズは主従関係を持ち出して優位に立とうとしたが、真理阿は未熟な妹に言い含めるかのように 時に強く、時に優しくルイズに迫り、まったく頭が上がらない。 普段は同年代に見える真理阿が、その時は何故か、母親のような貫禄すら感じさせた。 結局その日、ルイズは使い魔にセイザ(真理阿の故郷の風習らしい)させられ 小一時間足が痺れて立てなくなるほど説教を受けた。 ゼロのルイズの汚名を返上できず、使い魔に八つ当たりもできない。 悶々とした日々を送るルイズは、数日後、ある騒ぎに首を突っ込む事となった・・・。 前ページ次ページゼロの魔獣
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/398.html
注意 これは小ネタです。実際の人物、団体、某合衆国とは何の関係もありません。が、未来は誰にもわからないのでもしかすると・・・・・ 「宇宙の果てのどこかにいる、私の下僕よ!強く、美しく、そして生命力に溢れた使い魔よ! 私は心より求め、訴えるわ。我が導きに応えなさい!」 もう失敗の数も30は数えただろうか。周囲の黒煙が風に流された後、そこに居たのは一体のゴーレム? 赤い一つ目を持ち、体は黒い金属で出来て、背中には赤い何かを背負っている。 なにより目を引くのが、力強いその存在感。 これよ、これこそ私に相応しい使い魔だわ! 「ゼロのルイズが成功しただと?」 「うそでしょ?」 「なんだあの見たことの無い使い魔は?」 周りの喧騒など気にならず、私は自分が召喚した使い魔に近づいていく。 『ジョディ!ジョディ!』 使い魔が鳴き声?を出しながら周りをキョロキョロ見渡しているのも気にしない。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司るペンタゴン、この者に祝福を与え、我の使い魔と為せ」 私は使い魔に口づけすると、使い魔の胸の辺りにルーンが浮かんでくる。 「よし、『コントラクト・サーヴァント』の魔法も成功よ。これであなたは私の使い魔になったわ、これからはご主人様の 言うことを良く聞くのよ」 そう、使い魔に言っておく。躾は最初が肝心なんだから。 『いきなり大胆なお嬢さんだ。ところでここはどこだね?』 「あ、あなた喋れるの!?』 話が出来るなんて、さすが私の使い魔ね。ますます気に入ったわ! 「ここはトリステイン魔法学院よ、そして私の名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 あなたは私の使い魔になったんだから、ご主人様の名前をよーく覚えておくように」 『トリステイン魔法学院?私は第47代アメリカ合衆国大統領マイケル・ウィルソンだ、ミス・ヴァリエール。 先程からご主人様だの、使い魔だの、一体何のことかね』 まったく、そんなこともわからないなんて。これからご主人様として色々躾けていかなくちゃね。 そう思って私は使い魔の役割を説明する。 「・・・・・と言う訳よ、わかった?」 『つまり、無抵抗な一般人を無理やり拉致して強制労働を強いるのだな?まさに悪の枢軸! アメリカはテロリストには屈しないぃぃぃー!!!』 「アメリカ?ちょッいきなりなにいってんのよ!」 突然叫びだす使い魔、いったいどうしたのよ! 『紳士なのは17時までだ』 そういった私の使い魔は背中から何かを取り出し、それを両手に持ちこちらへと向ける。 『オゥケェェイ、レッッツパァリィィィー!!!』 ドガガガガガガガガガガガガガガ!!! 破壊破壊破壊。 逃げ回る生徒たち、聞こえる怒号と悲鳴。 「ちょッやめなさい!ご主人様の命令が聞こえないの!」 私は、見た目とは違い素早く動き回って破壊を振りまく使い魔に向かって叫ぶが、使い魔はまったく言うことを聞かない。 使い魔を囲むように青銅のゴーレムが七体現れるが 『大歓迎だな、お返しに穴あきチーズにしてやるぜ!』 あっという間にボロボロにされる。 「ちょっとルイズ!あなたの使い魔なんだからなんとかしなさいよ!」 「うるさいわよキュルケ!コラ!止めなさいって言ってるでしょ!」 「もういいわ。タバサ、いくわよ」 「わかった」 キュルケの隣に居た青い髪の娘がうなずいて杖を構える。 それを見て私も杖を構えたところで、いつの間にか使い魔に襲い掛かる巨大なゴーレムが目に入った。 使い魔は巨大ゴーレムの攻撃をかわして反撃する。 ドガン!! 『ビンゴォ』 巨大ゴーレムの頭を吹き飛ばす。頭を吹き飛ばされた巨大ゴーレムは、頭を再生させつつ右腕を使い魔目掛けて振り下ろす! 「やった!」 誰もがそう思ったが、使い魔はそれを受け止める。 「う、うそでしょ?」 「そんなこと不可能だ!」 『不可能ではない!なぜなら私はアメリカ合衆国大統領だからだ!』 そう言って掴んだ右腕ごと巨大ゴーレムをぶん回す私の使い魔。そんなのうそでしょー! 『アーーーー!!これが“大統領魂”だーーーーー!!!!!』 その言葉とともに空高くぶん投げられた巨大ゴーレムは、綺麗な放物線を描いて地面に激突してバラバラになった。 これは夢、そう夢よ夢じゃなきゃやってられないわ! 巨大ゴーレムが稼いだ時間で生徒たちの非難は終わり、教師たちが使い魔を取り囲む。 「これで終わりだ!」 誰かか言ったその言葉に使い魔は 『ノープロブレム』 と、空高く舞い上がり 『熱々の“ローストチキン”にしてやるぜ』 無数の何かを吐き出した。 吐き出された何かは白い尾を引きながら地面に突き刺さる。 強烈な閃光。それが私が見た最後の光景だった。 この日、ハルケギニアの地図上からトリステイン魔法学院は文字どおり消滅した。 ゼロの大統領ー完
https://w.atwiki.jp/hinoriewiki/pages/40.html
編集 ゼロの使い魔 ゲーム PS2 ゼロの使い魔 小悪魔と春風の協奏曲 2007年2月15日発売 ゼロの使い魔 小悪魔と春風の協奏曲 公式サイト ゼロの使い魔小悪魔と春風の協奏曲(コンチェルト)初回限定版 ゼロの使い魔小悪魔と春風の協奏曲(コンチェルト)通常版 ゼロの使い魔小悪魔と春風の協奏曲(コンチェルト)Best Collection PS2 ゼロの使い魔 夢魔が紡ぐ夜風の幻想曲 2007年11月29日発売 『ゼロの使い魔~夢魔が紡ぐ夜風の幻想曲~』の発売を記念して二人からのメッセージ 2007年12月12日現在配信中を確認。 ゼロの使い魔 夢魔が紡ぐ夜風の幻想曲 公式サイト ゼロの使い魔 夢魔が紡ぐ夜風の幻想曲(ファンタジー)(限定版) ゼロの使い魔 夢魔が紡ぐ夜風の幻想曲(ファンタジー)(通常版) PS2 ゼロの使い魔 迷子の終止符(ピリオド)と幾千の交響曲(シンフォニー) 2008年11月6日発売 ゼロの使い魔 迷子の終止符と幾千の交響曲 公式サイト ゼロの使い魔 迷子の終止符と幾千の交響曲(限定版) ゼロの使い魔 迷子の終止符と幾千の交響曲(通常版)
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/3985.html
前ページ次ページゼロの武侠 ゼロの武侠-01 その日、私が呼び出した物は鉄の塊だった。 形状としては鳥に近い物だったのかもしれない。 だけど、その鼻先というべき部分は地面に押し潰され、 翼に見えた部分は両方とも根元からへし折れている。 誰がどう見ても、それはただの鉄屑だった。 どっと沸き上がる笑い声。 諌めるコルベール先生の声も小さく、彼等を制するには到底至らない。 しかし級友達の嘲笑する声は突如として止んだ。 代わりに響くのは内より木霊する打撃音。 あたかも雛が卵を割って生まれ出でるように、 鼓動と共に鋼鉄は変形しその身に亀裂を走らせる。 突然起こった変化に、私も彼等も凍りついた。 それは、この中に潜む未知なる物が与える恐怖によるもの。 「何を笑っていやがる。そんなに面白いコトでもあったのかよ」 そして一際大きい破砕音の後に、不機嫌そうな男の声が聞こえてきた。 二つに裂けた鋼鉄を内側より両腕で押し広げながら、そいつは現れた。 打ち砕かれた破片を踏み締めながら一歩一歩私へと歩み寄る。 目つきは険しく、さながらゴロツキやヤクザを思わせる風貌。 加えて、顔に深く刻まれた傷跡が真っ当な人間でない事を際立たせていた。 ふるふると震えながら隣に視線を向ければ、 “召喚に成功してよかったですね、ミス・ヴァリエール。 まあ、アレを使い魔にしたいかどうかは別ですけど” なんて感じで笑顔を浮かべながら気安く人の肩を叩くコルベール先生。 どう考えてもやり直しを求められる状況でないのは理解できた。 私は始祖に心の底から訴える。 お願いです。今の失敗でいいですからもう一度だけやらせてください。 ええ、こうなったら平民でも一向に構いません。 もう実力に見合わぬ高望みなんてしません。 だから言葉の前に拳が出てきそうなこんな生き物と契約しろだなんて、 そんな御無体な事を仰らないでください。 余談ではあるが、私の願いは一度して叶った例がない。 今までも、恐らくはこれからもだ。 「あん?」 周囲を威嚇しながら見渡せば、 そこにいるのは珍妙な格好をした少年少女。 大人といえば引率らしきハゲが一人いるだけ。 その奥には歴史遺産っぽい塔が何本も立っている。 何故こんな所に自分がいるのか。そもそもここは何処なのか。 よほど強く頭を打ち付けたようだと彼は前後の記憶を手繰り寄せた。 「たまには中国に帰ってもいいんじゃない?」 そう。全てはこのヂェーンさんの一言から始まった。 パトロールから帰ってきて、ペドロと手合わせして、 蓮苞ちゃんのいない寂しさをエテ吉の拾ってきたH本で紛らわそうという憩いの一時に、 正にそれは青天の霹靂だった。 「いや、だけどよ。俺がいなくなったら何かと大変だろ」 「大丈夫なのだ。梁ちゃんは安心して蓮苞ちゃんに会いに行けばいい」 「そうですよ! ジャングルの平和は自分と先生にお任せ下さい!」 「なら途中まで俺の自家用ジェットで送ってやるぜ」 「……おめえら、それほどまで俺の事を」 思わず緩んだ涙腺に目元が潤む。 得がたき友と出会えた幸運に心より感動を覚えた。 気兼ねする必要もなく、蓮苞への募る思いに突き動かされて、 その日の内に俺は仲間に見送られながらアナべべと共に旅立った。 しかし、俺にツキがあったのはそこまでだった。 思えば天候が崩れかけていたのを気に留めるべきだったか。 あるいはセスナの免許しか持っていなかったはずのアナべべが ジェット機を操縦できるかどうか訊ねれば良かったのかも知れない。 事前に中古ではなく新品で購入した物か確認しておいても間違いはなかった。 まあ、今考えてみればその事故は起こるべくして起きたのだ。 荒れ狂う嵐に巻き込まれた小船の如く、激しく機体が揺さぶられる。 操縦桿を握ろうとも、こちらのコントロールを受け入れようとはしない。 大枚叩いたジェット機を捨てるのを惜しむアナべべをパラシュート背負わせて蹴り飛ばす。 そして、さあ次は自分の番だと飛び出そうとした直後だった。 大きくバランスを崩した機体は突如として急降下を始めた。 天井に磔にされるみたいな加速の中、外へと出るのは不可能に近かった。 一か八か、天井を百歩神拳で撃ち抜いての脱出を試みる。 ―――だが、それは視界を覆う眩い光に遮られた。 そして、気が付けば俺はここにいた。 機体こそ原形を留めていないものの、身体を締め付ける重圧も消え、 地上へと降り立った事を実感させてくれた。 あれだけの高度から落ちてよく気絶だけで済んだものだと、 ターちゃんを髣髴とさせる自身の頑強さに呆れながら身体中の埃を払う。 どこがハッチか見分けが付かなくなった鉄の箱から、 どうやって出たものか考えている最中、周りに多数の人の気配を感じ取った。 都合よく現れた人達に助けを求めようとしたのも束の間、 連中は俺を取り囲み、笑い声を上げ始めたのだ。 目の前で飛行機事故が起こり、助けを求めている人間がいるというのに――。 ギチリという鈍い音が噛み締めた奥歯が響き渡る。 怒りに我を忘れて拳を打ち込む事、幾数回。 叩き割った外壁から、ようやくこうして大地を踏み締められたという訳だ。 「なるほど」 顎に手をやりながら前後の事態から推論を導き出す。 並の人間ならば何が起きたのか判らずパニックになるだろう。 だが何千年もの歴史を誇る中国拳法、その西派白華拳の強者どもを束ねる彼は違う。 鍛え上げられた胆力は動じず、磨き抜かれた観察眼が全てを見通す。 「つまり、どっか余所の国に墜落しちまったんだな」 ―――そして彼は、全く見当外れな答えを口にした。 前ページ次ページゼロの武侠
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/644.html
第一話 うわっ面 -Surface- 第二話 異世界 -The different world-
https://w.atwiki.jp/sentakushi/pages/914.html
616 名前: ゼロの慎二 ◆mkWK7X3DHc [sage] 投稿日: 2007/10/01(月) 23 02 17 逃 ここは戦略的撤退! べ、別に敵前逃亡じゃないんだからねっ この僕が大人しく従うとでも? 甘いね。とろけるように甘いよ、ちびすけ。自分より下の奴に従えと言われればNoと言えるのがこの間桐慎二様だ。怖い人に言われたら土下座だって躊躇いはしないがな。 こんなちんまい奴に偉そうにされて、黙って従う道理は全くない。 「――――嫌だねっ」 一瞬だけ近づく素振りを見せて、油断を誘うのも忘れない。相手が油断した所で一気に逆へと走る。 何故逃げるかって? そんな事に意味は無い。偉そうな奴にはとりあえず逆らいたくなるのが人ってものさ。 「――なっ!? ちょと待ちなさいよーーーーー!」 古今東西、待てと言われて待つ奴は居ないのだ。御多分に漏れず、僕も待つつもりは無い。 ――――ふっ、勝った。 勝利を確信した次の瞬間、僕は地面に平伏していた。 「……エアハンマー。逃げちゃ駄目、逃げちゃ駄目、逃げちゃ駄目。使い魔は一生の問題」 どうやらこれは、このガキの仕業らしい。この僕に地面を這い蹲らせるなどゆるせる事ではない。直ぐに立ち上がり、怒りに任せ胸倉を掴む。 「――今のはお前…………貴方様が――したの……でしょうか?」 烈火の如き怒りは、ちびすけ二号の後ろに降り立った竜により、あっという間に劣化した。だって恐いじゃないか。竜だよ、竜! 幻想種のなかでも最上級の化け物。ライダーが駆るペガサスなんて問題にもならない、正真正銘の出鱈目だ。 それを前にして漏らさなかった僕は、賞賛にあたりするねっ。小さい方はちびったけど…… 僕の質問にこくりと頷き拝呈するちびすけ二号から、一秒でも早く離れるように、一号の元へ駆け寄る。 よく見ると、周囲には生態系に含まれ得ない生物が何匹も居るじゃないか。召喚しておいて、こんな世界に僕を放り出そうとするなんて、一号は酷い奴だ。 「ほらっ、着てやったぞちびすけ一号」 「ちょ、ちびすけ一号ってなによっ! 大体なんでそんなに偉そうなの、平民のくせにっ」 一号はムキーっと興奮し、今にも噛みついてきそうだ。そんな一号の疑問に答えてやろうじゃないか。 617 名前: ゼロの慎二 ◆mkWK7X3DHc [sage] 投稿日: 2007/10/01(月) 23 04 25 「――一号、お前は間違っている。偉そうにしているんじゃない、偉いんだよ。なんたって間桐慎二様だからなっ!」 「うっさい! 訳わかんない事ばっかり言ってないで、さっさと頭下げなさいよ馬鹿!」 ごすっとすねを襲う衝撃に、思わず身を屈めてしまった。 そして一号は、低くなった僕の頭――というか、髪をむんずと掴む。そしてキスをしてきやがった。 いくら僕が絶世の美少年だからってコレはやりすぎではないか? そんな疑問すら浮かぶ余地なく、手の甲に焼けるような痛みが迸る。 「い――イギっ……がっ」 痛みのせいでちょっとだけ涙が浮かんでしまった。ホントにちょっとだからなっ! 「痛い――イタいイタイいたい痛いっ!」 「ほら馬鹿。あんた大げさ過ぎるのよ。ルーンはもう浮き上がってるでしょ」 そう言って僕の尻を蹴り上げた。そう言われれば痛くないな…… 「これでミス・ヴァリエールの契約は終わりですね。それでは教室へ戻りましょう」 その声に従うように、皆が飛び上がった。それは決して跳躍などでは再現しえぬ現象。重量遮断? いや斥力を発生させているのだろうか……。それより、この場にいた全員が魔術師だったことに驚嘆する。 「おいゼロ。お前も早くフライかレビテーション使えよ。遅刻しちまうぜ」 ニヤニヤと笑っているデブは、先程一号に風邪っぴきと呼ばれていた奴だ。 「うっさいわね! さっさとあっち行きなさいよっ」 「お~恐い恐い」 一号の顔を見ると、その言葉に浮かぶのは怒り――ではなく悔しさ、そして寂しさだった。 為す術もなく風邪っぴきを見送った一号は歩き出した。僕はその行動への疑問をぶつけた。 「おい、なんで飛ばないんだ?」 しかし答えは拳で帰ってきた。ピンポイントで鳩尾に。 「あんたは黙って付いてくればいいのよっ」 ――――そろそろキレてもいいよね、神様? 耐 僕はフェミニスト、僕はフェミニスト……仮にも女の子に暴力はいかんよ。 暴 こんなガキは女とみなさない。よって一発くらい殴っても問題なしっ! 投票結果 耐 3 暴 5 決定
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2000.html
前ページテスト空間/ゼロのアルケミスト naviの全角数字テスト 前ページテスト空間/ゼロのアルケミスト
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2001.html
前ページテスト空間/ゼロのアルケミスト naviの全角数字テスト 前ページテスト空間/ゼロのアルケミスト