約 1,076,941 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/725.html
「……私は…公爵家の三女として…生まれたのよ。父様も母様も姉様達だって優秀なメイジなのに… なのに…私はドットですらない…簡単な魔法ひとつまともに使うことができていないわ…!使い魔召喚の儀式ですらまともにできない私はきっとメイジではないのよ…! ……きっとこんな私を父様や母様はヴァリエール家にいることを許さないわ…!」 ルイズの独白をトリッシュはただ黙ってきいていた。ルイズの言葉からは家族に見捨てられることへの恐怖と家族の期待を裏切った自分へのふがいなさを責める気持ちがない交ぜになった悲しい気持ちを十分にトリッシュへ伝えてきた。 それは家族を失ったトリッシュにはもう失ってしまった感情のひとつだった。トリッシュはルイズを慰めるための言葉が見あたららない。 トリッシュは気がつくとベットに腰掛けてルイズの傍らでルイズの頭をなでていた。 ルイズは驚いたようにトリッシュをみたがトリッシュがはじめて見せるやさしい顔をみて、何も言わずされるがままになっていた。 なによりトリッシュになでられていると学院にきて心の休まるときがなかったルイズにかつての心のよりどころであるカトレアを思い出させた。 心地いい気持ちに身をゆだねるようにいつしかルイズはトリッシュの肩に頭を預けた。 「ねぇルイズ…使い魔がちゃんといれば…家族にも見捨てられることはないのかしら?」 「あなた…なにを…いって…」 「例えば…私があなたの使い魔になれば…ルイズ、あなたは馬鹿にされることもなく、家族にも見捨てられることはなくなるんじゃないの?」 『トリッシュ、ソレナラバ私ガルイズノ使い魔ニナッタホウガヨイノデハ?』 「スパイス・ガール…あなたではだめよ。ルイズには『なぜか』見えているようだけれど…他の奴らにはスタンドは見えないわ。それに、ルイズが使い魔として召喚し、契約したは私よ。他の奴らにもわかるように私がルイズの使い魔になるべきなのよ…!」 ルイズは顔を上げトリッシュを見上げた。そこには力強い意思の光を感じるトリッシュの目がじっと自分を見ていた。ルイズはなぜか顔を赤らめてしまった。 「…でも、いいのトリッシュ、私の使い魔になっても…?」 ルイズはとても信じられなかった。なぜなら、トリッシュがここにきてから自分の使い魔になってくれるような要因は何一つ見当たらない。 逆に『ならない』理由なら山ほど見当たったが。 「ルイズ…私は、私の居場所にやがて帰らなくてはならないと思っているわ。…でも、ルイズ…、あなたが私を元の場所に戻すために協力してくれるというのであれば…元の場所に戻るまでの間なら、ルイズ、あなたの使い魔になってもいいわ」 ルイズはこくこくと、肯定の意味を示すように首を振ると、トリッシュはルイズに微笑みながらやさしく頭をなでた。 「さぁルイズ…もう寝ましょう。ずいぶんとたくさん泣いて、疲れたでしょう?ベットに横になりましょう?」 トリッシュはルイズをベットに運び、横にさせた。 「トリッシュ…もう少しだけ…もう少しだけ…頭をなでていてくれないかしら?私が眠るまでの間でいいから…」 ルイズは顔を真っ赤にさせながらトリッシュの服をつかみながら恥ずかしそうに消え入りそうな声でトリッシュに言った。 「…ええ、いいわよ、ルイズ。ゆっくり休みなさい…」 トリッシュはやさしくそういうとルイズの頭を抱きながら、ルイズのふわふわした髪をやさしく、やさしくなで続けた。 5分ほどそうしているとルイズの口からすーすーとかわいらしい寝息が聞こえてきた。 そのルイズを起こさないように、スパイス・ガールが遠慮がちにトリッシュに聞いてきた。 「トリッシュ…ヨイノデスカ?当初ノ予定デハ、ルイズカラ召喚ノ時ノ話ヲ聞イタラ、サッサト他所ヘ移動スルハズデハ…? 使イ魔ナドニナッテ…一刻モ早クイタリアヘ帰ルタメニコウドウスベキデハ…?」 「いいのよ…スパイス・ガール、コルベールに聞いた話ではイタリアに帰るにはかなり苦労しそうだし…何よりルイズをほうっておくことが私にはできないわ…」 トリッシュはそういうともう話は終わりと目を閉じた。 (トリッシュ…アナタハ…ヤサシスギマスヨ…マッタク) 近くでスパイス・ガールのため息が聞こえたような気がしたが、トリッシュは無視してさっさと寝た。 抱きしめた、小さな少女の体温をしっかり感じながら。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2056.html
「どうやら、追いついたみたいだぜ。」 アヌビスが立ち止まってしまったブチャラティを前にして言う。 (クソッ!こいつに会う前に桃色の髪の女が放った爆発で食らったダメージが残ってるな…。 コイツが人並みはずれた丈夫さを持っているとはいえかなりまずいかもな。) ブチャラティが待ち構えていた場所は何の変哲もない広場だった。 辺りに細い柱が数本立っているが、流石のブチャラティもこの柱には隠れられそうにない。 これと言って罠を仕掛けている気配もなく、デルフリンガーを左手に持ってアヌビスを睨み付ける。 「さっきの女に剣を持たせて二人がかりで戦ってくるというオチはないって判断していいのか? まあ、戦いやすい場所を選んでくれたことには感謝してやるがね。」 しかし、ブチャラティからの返事はない。 その代わりにブチャラティが再びジッパーの紐で繋がった剣の刃をアヌビスめがけて左斜め上の角度から放つ。 「おっと!」 しかしアヌビスが憶えた技を真正面から使って来ても通用するはずもない。すぐさま反応『しようとした』。 しようとしたが、失敗したのだ。 不意に左から柱が倒れ、繋げているジッパーの紐を押したからだ。 凛と張っている紐は柱に押されて刃の角度が急変化する。 「うおおッ!?ちょっとばかし切れたか?」 結果、角度の関係で撫で斬る様なパワーが少々殺されてしまったような攻撃になってしまったが、アヌビスに攻撃があたる。 胸の辺りを斬られたアヌビス。だが次に反応したのは即座に距離を詰めようとするブチャラティ。 ジッパーの紐を持って鎖鎌のようにデルフを叩きつける。 アヌビスも即座に対応するが鎖鎌は不規則な動きをするのでなかなか受け辛いのだ。 数百年前ほど前に戦った時もスタンド使いでもない相手にそういう風にほんのちょっぴり手こずった事を思い出しながら言う。 「あの時も鎖鎌の不規則な動きを受けるのは苦労したぜ。最も今はその時のデータを憶えているから 対処するのはたやすいモンだがな!」 ガキンッ!!と簡単にはじき返したが、ブチャラティはその後ろからすでにスティッキィ・フィンガースを 放ってたたみかけようとする。 しかしアヌビスは冷静に対処を図った。 「そろそろとどめと行こうか?ただしこのブチャラティ抜け目ない奴。安全策を取ってからとどめといくか。 さっき背中を斬ったおかげで…。用意は出来ているッ!」 アヌビスは一歩後ろに下がって横薙ぎに剣を振るう。 一歩下がったせいでスティッキィ・フィンガースにかすりもせず空を切った。完全に空振りだった。 振るった事でさっき背を斬った時に刃についたブチャラティの血が目元に飛ばなければ完璧に大ハズレだった。 「ぐうッ!?」 ブチャラティが思わず目をつぶってしまう。 先ほどの不意打ちをもう一度やる気か。自らの感覚は次の攻撃を予測した。 しかしもう遅かった。すでにアヌビスは背後に飛んでいた。 「どうだ!この血の目潰しはッ!勝ったッ!死ねィッ!!」 声で方向を把握する。右後ろだ。 ブチャラティは対処しようと手を背中に向けようとしてやめた。 代わりに薄目で見たのは前方の入り口。 「とうとうあきらめやがったか。動かなければ楽に死ねるぜ!」 「いや、あきらめるんじゃあない。やめたんだよ。どうやらいい具合でかけつけてくれたみたいだからな。」 「あ?」 ブチャラティは上の太陽を薄目で見て角度を確かめる。 「そろそろ30分だったか。べネ。おかげで思いのほか簡単に倒せそうだ。」 不意に、後ろで何かが大きな物に叩きつけられるような物音がする。 まるで後ろの奴が『エア・ハンマー』を叩きつけられたような音だった。 やがて入り口から広場に入って来た3人のうちの一人がブチャラティに話しかける。 「間に合った、のかな?少なくとも君のピンチギリギリには間に合った気はするけど。」 「いや、十分だ。来てくれてうれしいよ。」 ウェールズ、ギーシュ、マリコルヌの三人だった。ブチャラティがわざとノロノロ時間をかけて逃げ回り、 30分後に広場にたどり着くよう時間つぶしをしていたのだ。 一人で倒せない相手なら複数の力をぶつけて倒すしかないからである。 「重ね重ねすまないがウェールズ。奴がひるんでるうちに『トルネード』を奴を中心にして作って奴を閉じ込めてくれないか。 後ギーシュ、『ワルキューレ』を出せる数全部出してくれ。…ん?お前たち少し怪我してないか?」 特にウェールズの肩にある傷はおのハルケギニアではなかなかお目にかからなそうな傷。――――弾痕だ。 肩から後ろへ銃弾で貫通している。ルイズに聞いたこの国にあると言うマスケット銃より威力がありそうな傷。 ウェールズがそこで肩をおさえながら『トルネード』でアヌビスを閉じ込めてから説明する。 「いや、少々奇妙な奴にさっき会ってね。どうも彼は誰かから逃げているようだったが…。 かなり挙動が怪しいし、服装も珍しかったからどうやらこの騒動に一枚噛んでいたみたいだと判断して尋問しようとしたんだが、 肩を撃たれて逃げられてしまった。奇妙な奴だった。銃を持ち歩いてたようには見えなかったのにいつのまにか銃をもっていてね…。」 ウェールズが肩を抑えながら言うが、彼は気がついていなかった。広場に立つ木の一本に小さく折られた紙が枝にかかってたことに。 「アイツらオレをつけているのか!?しばらく隠れて身を隠そうとしてたのによ!」 「どうやらぼくらはそうとう運が悪かったらしいな……。しかしこうやって隠れているのはいいかもしれない。 あのブチャラティ、ぼくのカンではなにかこれから先目の前に立ちふさがりそうなヤバイ奴だと言うことはよくわかったからな…。」 ホル・ホースがニヤリと笑って喋る本に話しかける。 「オレたちのスカウトを断られる場合もあるしな。どうだ?『観察』の調子はよ?」 「あと少しだ…。奴の顔色は悪い。多少の恐怖はうかがえる。あともう少しで奴の恐怖のサインを見つける ことができそうだぜホル・ホース。ところで…。」 「どうした?」 「奴のあの左手なんだけど、なんか気になるんだよな…。スタンド使いという事は奴は地球から来た人間のはずだろう。それはほぼ間違いない。 だが、だからこそあの『ハルケギニアの文字が書かれた左手』は少し不自然だと思わないか…?」 ホル・ホースが自らの目でそれを確認し、その言葉に答える。 「少し、高みの見物と行こうかね…。あのルーン、オレには見覚えがあるッ!!こいつはひょっとしたら想像以上の土産になるかもしれねぇからな。フフフ…。」 『トルネード』で閉じ込めたはいいがアヌビスが脱出の用意をしている。トルネードくらい簡単に突破できると言う事だろうか。 「ぬぅんッ!真上に飛んでしまえばトルネードなんざ屁でもねーぜッ!」 飛びぬけたと同時に辺りを警戒。閉じ込められている間に体制を直し、一気に叩きにくると読んでいたアヌビスが身構える。 予想は的中ッ!5体の青銅の人形たちがアヌビスを襲う。 「芸がねーな。いくら数増やしたって一度憶えた手は絶対使わないといってるだろーがッ!」 アヌビスがワルキューレの攻撃をテンポ良く受け流しつつ、続いて来るであろうブチャラティたちの攻撃に備えて、 おもいっきり背中をスタンドで殴られてしまった。 「ゴガァッ!!な、えッ!?なんでゴーレムからスタンドが!?」 その答えは簡単に判明した。またブチャラティだ。ブチャラティはすでにアヌビスに近づいていた。 すでにワルキューレにジッパーで潜り込んでいたのだッ!警戒されている以上、一瞬でも目をだます必要があったためである。 しかし背中を気にした一瞬が良くなかった。すかさずウェールズの一撃。 「『ライトニング・クラウド』ッ!!」 虚をついた一撃はアヌビスに見事決まるッ! 「ヤ…ベェ…!こいつら無駄なく攻撃をかまして来やがる…!マズイッ!今のでまたブチャラティを見失ったッ! どのワルキューレに潜んでいるんだ!?」 目の前のワルキューレを斬ってもブチャラティの血は吹き出ない。 2体、3体と切り刻んでもハズレばかりだ。4体目を斬ったところでアヌビスが言う。 「ということはッ!そこかブチャラティッ!」 残るワルキューレからブチャラティが出てくる。完全に虚をつけた。 「アリアリアリアリ!!」 スティッキィ・フィンガースが拳でアヌビスを叩く。手ごたえあり。勝負あった。 かに思えた。 だがアヌビスにとどめを差したと錯覚したブチャラティが気づくッ! 「ブチャラティ!叩いたのはアヌビスじゃない!影武者だぁーーーーッ!『エア・ハンマー』ッ!!」 マリコルヌが叫ぶと同時に呪文を放つッ! ブチャラティの背後を取ったアヌビスは冷静に対処しようとハンマーを切り裂く。 「空蝉の術だっ!やはりおまえの上を行ったのは!このオレだったようだなァーーーーッ!!」 ブチャラティが気づくッ!スティッキィ・フィンガースを出しながら振り返り、すでに自分を一刀両断しようと 向かって来たアヌビスを把握する! ブチャラティが白刃取りのかまえを取る、白刃取りでもないかぎり受けられそうにない。 「白刃取りも緊急回避も無駄だぜッ!緊急回避した場合は腹の辺りで斜めに払って切り裂くッ! 言っただろうがマヌケッ!このオレに憶えた技は通用しないとッ!」 「わかっているとも。だから考えたッ!新しい『策』をッ!おまえを確実に掴み取りやぶる策をッ!!デルフッ!」 「おし!『大鋏』了解ッ!!」 その時だ。デルフの刃が縦に裂ける。ジッパーでハサミのように縦に開いたのだ。 そのままアヌビスの刃に向かって掴み取ろうとする。 「こいつ!掴むものが増えたからなんだと言うんだ!すり抜けておまえの頭を切り裂けば終わりだッ!」 アヌビスがさらに前に。もう引くことなど出来ない。こんどこそ決着がつく。 だがブチャラティは引こうとしない。一歩も引かない。冷静にアヌビスに告げた。 「よく見ろ。掴み取ると言ったのはお前の首の事だッ!!」 アヌビスがハッとした。スタンドは自分を掴もうとしているがデルフの鋏は首を取ろうとしている。 断面がジッパーだから首を切断しようとしてるわけではない。 首から掴んで横に投げつけてやりすごすつもりか。 「それにしては遅すぎるんじゃあないか!?スピードが足りてない何度言わせれば気が済むんだァーーー!?」 アヌビスが自分を信じて前に踏み込んだその時だ。 バチンッ!!とアヌビスの刀を持つ手が払われる。 「え…?」 ブチャラティ自身の二つの手はデルフを持っている。スティッキィ・フィンガースの手は白刃取りしようと 前に出てるはず。 この『5本目の手』による攻撃などありえないはずだった。 「おおおおッ!!」 そのままスティッキィ・フィンガースの手がアヌビスの肩に当たる。肩からジッパーが発現する。 そしてキャラバンの意識が目覚めようとした時に最後の攻撃の正体を知った! 「こいつ…!ジッパーの能力で…!」 (確かにシルフィ…イルククゥはおかっぱさんみたいにスタ…ンド…だったっけ?それが使えたりはしないのね。 でも相手はどんどん技を覚えていくんでしょう?だったら一人じゃ危険だわ!でも協力すればもしかしたら…!) (イルククゥ。お前に言われなくともオレは奴が一人で相手をするにはいささか危険な相手だということも リスクを背負いでもしないと勝てないことも最初からすでにわかってる。だから必ず勝つためにもう一度忠告しよう。『隠れてろ』イルククゥ。) うな垂れるイルククゥ。かみ殺したような声で言った。 (お願い…。お姉さまと同じくらい私はアナタに死んでほしくないのね…。心配で手を出さずには…!) (タバサを助けたい。オレも助けたい。両方やらなくちゃいけないのがお前の言い分か? お前の覚悟を感じ取った以上、言われなくともオレはお前を最大限まで使うつもりだ。 だから言ってるんだ。隠れろと。) 「オレのジッパーは…。人間につけてその中に入る事も可能だ。それも入られた本人も違和感ないまま 動くことができる。これが何を意味してるかわかるか? つまり逆に使えば、オレの体内に人間をしまうことだって出来るということだ。」 「コイツッ!さっきの女を体内に隠してやがったァーーーーーッ!!!!」 イルククゥがタバサの杖で両手を失ったアヌビスに狙いを定めて言う。 「この杖はッ!おおおこの杖はッ!!お前がお姉さまを操って使ってた杖だぁーーーーー!!!」 ガキンッ!と音を立てて頭部に思いっきり振りかぶるッ!! 「がああああああああああああッ!!!」 「お前がいかに憶えるのが速くても…。全く予測できない技を出されればそれまで…。 お前に本当に必要だったのは、相手がどんな攻撃をしえるか予測する発想力だったようだな。 そして、ルイズの仇を今こそ取ってやるぜ。」 「うっ、うっ、うっ、うっ…!」 「うわあああああああああああああああああああああああ!!!!!」 「アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ!!」 スティッキィ・フィンガースでキャラバンに機関銃のように高速の拳を叩きつける。 その目に慈悲の心などなかった。 「ガッ!ぼっ!ぐがっ!!あがっ!バカな…!ちくしょおおおおおおおッ!!!」 「アリーヴェデルチ!(さよならだ)」 キャラバンの五体がバラバラに砕け散る。 ブチャラティがアヌビスを触らないように鞘にしまう。 そしてブチャラティの手の中でアヌビスが6等分になって完全に行動不能になった。 イルククゥはキャラバンのほうを見る。 「死んじゃったの…?」 「生かしたところで、ルイズを付け狙うのをやめるとは思えなかったからな。 こいつもルイズを殺そうとした以上、逆に殺される覚悟も出来てるだろうさ…。」 ポカンとしているギーシュとマリコルヌ。 ウェールズも息を呑んでいた。こうもあっさりと冷徹に徹したブチャラティを前にし、 少しばかり驚いていた。 しかし、直後ブチャラティがそのまま倒れる。 「おかっぱさん!?」 「大丈夫、気を失っただけだ。手当てしてやればまだ目を覚ましてくれるはずだ。」 フードを被りなおしたウェールズがブチャラティを押さえた。 「彼には、まだ聞かなければならないこともあるしね…。」 しばらくして、二人を抱えるキュルケとウェールズの率いていた小隊が追いついたのだった。 夕暮れになってからブチャラティは目を覚ました。 傷は小隊の水のメイジの魔法で少しばかり癒えていた。 「何考えてるのよアンタッ!アイツから逃げていればこんな怪我しなかったのに!」 「足のアキレス腱を断ち切られたお前には言われたくないな。」 ウェールズはブチャラティの説明を聞き、今後の対処法を練っていた。 「ああ言う変則的なスタンドは対処法があっても倒せない場合がある。勝つことよりも 動きを徹底的に封じるほうがいいだろう。自分から姿を現したりするのは近距離パワー型の能力だと判断していいから 相手のパワーに気をつけるんだ。」 「ありがとう。これからはより良く敵と渡り合って行けそうだ。ん?ちょっと待ってくれ。」 部下からなにか話を聞いて言う。 「…すまない。突然なんだが緊急事態だ。これからこの場を離れなきゃいけない。 また会えることを楽しみにしているよ。『破壊の杖』を見つけたら教えてくれ。もしかしたらアレは…。」 「…破壊の杖?」 ルイズが耳をピクリとして聞き返す。 「いや、ではこの辺で!ありがとうブチャラティ!!」 ウェールズはそのまま去っていった。 ルイズはその後姿を見て、首をかしげる。 彼の姿がなにか引っかかっているのだ。 「あの人どこかで見たような…。ブチャラティ、あの人は何者なの?」 「そういえば最後まで何者なのかわからなかったな…。まあ、いずれ会えるかもしれない。 スタンド使いって言うのは厄介なことを引き続ける代物だからな。」 その時、後ろからキュルケが抱きついてきた。 豊満な胸を押し付ける。男としては心踊るシチュなのだが。 「あーん!ダーリン!!もう心配しちゃったわよ!背中大丈夫!?」 「たった今傷口が開きそうになった。」 「もー意地悪!」 後ろから見ていたタバサは大きな杖で体重を支え、親友をジト目で見る。 綺麗な唇が開いて静かに言う。 「どっちかというと意地悪はキュルケ。」 そしてタバサがイルククゥ、もとい人間姿のシルフィードを無表情なまま見る。 無表情だからどのくらい怒っているのかわからなくて怖い。 「後で、はしばみ部屋行き確定。」 「きゅい~!お姉さま~!もうしないからそれはかんべんしてほしいのね~!きゅいきゅい!」 だがタバサは怒りが急に収まった様子でブチャラティのほうを向く。 「あなたは先に行かなくちゃいけない。彼に別れを告げるなら今。」 「あ、そうね…。きゅい。」 彼女はブチャラティに近づいた。 「おかっぱさん!」 ブチャラティは青髪の女性を見た。イルククゥともシルフィードとも名乗るこの女の子を。 「イルククゥ。どうした?」 ルイズが「そういえば結局この女はアンタとどういう関係なの?」と聞いてくるが無視し、 イルククゥは、シルフィードに戻るために別れを告げる。 「あの、その、おかっぱさん…。」 「?」 イルククゥは少しどもって、顔を赤らめるが言う。 「その、イルククゥとお姉さまを助けてくれてありがとう!」 ぺこり、と頭を可愛らしく下げて言った。 ブチャラティも普通に返した。 「ああ、こっちこそグラッツェ。お前こそ助けてくれた。」 そしたらイルククゥはもっと近づいて言う。 「えっと、人間はお礼の挨拶がわというか、ごほうびにこんなことするんだったっけ?きゅい…。」 「?」 「何?言っとくけど人の使い魔にあまりべたべたしないでほしいんだけど…。」 というルイズの制止を無視し。 イルククゥの唇がブチャラティの頬に当てられた。 一番に驚いたのはルイズだった。 顔を真っ赤にして手をばたばたさせ、「な、あ、ああ、アンタ、使い魔だって言ってるのに…!」 とうろたえにうろたえる。 キュルケもこれには驚いた。 「あら、意外と大胆じゃない…。」 ブチャラティ自身もわずかだが動揺し頬に手を当てる。 イルククゥはブチャラティに背を向けて言った。 「ありがとう!また会おうねおかっぱさん!」 そう言って青い韻竜は夕焼けへと走っていった。 タバサがそれを見て一言。 「…惚れた?」 一方、ホル・ホースたちは仲間の女性シェフィールドと合流していた。 妖艶な空気を纏うシェフィールドは少しばかり落胆したように言う。 「で?結局失敗して逃げ帰ったという事ね。ずいぶんとあきらめよく帰ってきたようだけど。」 「無論、他の土産があるからだぜ、シェフィールド。」 「そうそう。僕らも手ぶらで帰るのも気が引けたからこうやって手土産を用意したんだ。」 シェフィールドはにらんだような目で見続ける。 「そこまで言うからには相当おおきな土産なのでしょうね。」 「アヌビス神よりも大きな土産だぜ。大ニュースだ。海老で鯛を釣ったようなモンだ。 シェフィールドがホル・ホースを見据えたままだ。 ホル・ホースの次の発言を聞くまでは。 「今回調べろといわれてたスタンド使いはあるメイジの使い魔になっていた。この意味がわかるか?」 目を見開くシェフィールドをみてホル・ホースはしめたと思った。 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ 「何を言ってるのか…わかっているのかしら?」 「テルがブローノ・ブチャラティの左手に奇妙なハルケギニア文字に気づいてな、調べていたんだ。 奴は、インテリジェンスソードを持った瞬間、急に身体能力とスタンドパワーが上がった。 この効果は…たしか、何だったけか?」 「神の左手…ガンダールヴ…!」 シェフィールドが冷静さを崩さないように言う。 「使い魔という事は…主人は?」 「桃色の髪のレディだったぜ。学生だったようだがな。」 「おそらく、疑惑を持っていた人物の一人だわ…。そいつはおそらくヴァリエールの三女ルイズ・フランソワーズ! 想像以上の収穫をしてくれた…。」 「立場が立場だから手ぶらでは悪いと思ってな。」 ニヤリと女は笑って言う。 「流石はホル・ホースといったところかしら?この私直属のスタンド使い遊撃隊『隊長』ホル・ホースと…。」 「おれとしては副隊長のほうがよかったんだけどな。」 「いいわ。お咎めはなし。あなたには正式に報酬を与えましょう。次の作戦まで待機しなさい。」 「へいへい。行こうぜ、テル。あと、お前が隊長かわらないか?」 「本が隊長になってはまずくないか?」 一人になったシェフィールドが武者奮いをしながら笑う。 「もうすぐ…。もうすぐ作戦は始まる…。ウフフフ…。」 風が彼女の髪を捲る。 その額にはブチャラティの左手のようなルーンが刻まれていた。 キャラバン・サライ―――――死亡 アヌビス神―――――――――捕獲、宝物庫送り。 時々、夜中に「イヤアアアアアア。ユルシテエエエエエエ。」という声が聞こえるらしい。 To Be Continued...
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/302.html
「じゃあ、このハルキゲニア…」 「違う!ハルケギニア!もう、何度言ったら覚えるのよ!」 ルイズの苛立つ姿を見たジョナサンの脳裏に、ラテン語の格変化で父親に散々しごかれた子供時代の思い出がよぎる。 窓からは月の光が淡く差し込み、卓上の魔法灯の明かりと共に部屋の中をほの明るく照らしている。 この時間になるまでルイズとジョナサンは互いの情報交換に忙しかった。 ルイズは端っからジョナサンがどこかの辺境から来た平民、つまり魔法を使えない人間だと信じ込んでおり、 そもそも彼女の知らない別世界から召喚されたという事実なぞ思うよしも無かった。 一方ジョナサンは二つの月が昇るのに面食らい、カーター某なる男が死後に火星の二つの月の下で大冒険を 繰り広げる話を思い出して、ここは火星のどのあたりかと聞いてみたが、返答は「どこそれ、あんたの国?」と ごく簡単なものだった。 双方の誤解を解くための説明や無駄な遠回り、はたまた時には口論の末、ようやく二人は 1:ジョナサンが今いるのはハルケギニアという魔法が存在する世界である 2:ジョナサンが来たのは19世紀のイギリス、但しアメリカへの連絡船の中で死んだはずである 3:ジョナサンはどういう訳かルイズの使い魔として召喚された という共通した認識を持つに至った。 「…ハルケギニアに召喚された僕は、使い魔として何をすればいいのかな?」 先程までの激昂ぶりが嘘のように、ジョナサンは落ち着きを取り戻して椅子に座っている。 結局先程のキスは子馬や何かの鼻面にしてやるような、いわば動物とのスキンシップが儀式の一環として 組み込まれているだけの話で、要するに人間が召喚された場合を想定してなかったがために ややこしい事態になっただけだと分かると、納得はいかないまでも淫らがましい行為ではないと思えるようになった。 「まず一つ目に、使い魔は主人の目と耳になるの。使い魔の見聞きした事は主人も見聞きできるはず…」 ベッドの上に座るルイズが精神集中するように目を閉じる。 「…なんだけど無理みたい」 ルイズも最初のうちこそジョナサンの剣幕とその後の変貌ぶりに驚いていたが、自分がファーストキスを交わした相手が 自分と同じような後ろめたさを感じていること、また冷静な状態なら(いささか田舎臭いものの)それなりに 礼儀作法をわきまえていると知り、これまた納得はいかないが安心はできた。 「二つ目は秘薬の材料を探してくれる…んだけど、あんたじゃ無理そうね」 「残念だけれどその通りだな」 「最後にご主人様を守る。ある意味これが一番大事よね」 ルイズはジョナサンに歩み寄り、周囲を回りながらじろじろと観察する。 「…結構いい体つきしてるわね」 「ラグビーをやっていたからね。革で出来た紡錘形のボールを蹴ったり持って走ったりしてゴールに入れる競技だよ」 「ふうん…ま、小間使いぐらいは勤まるかしらね」 あふ、とルイズが欠伸を噛み殺す。 「さすがに遅くなってしまったな。もう休むべきだ」 気付いてジョナサンは立ち上がり、 「それで、僕のベッドはどこだい?」 ルイズが指差した物を見て我が目を疑った。 毛布が一枚椅子の背に掛かっているだけ。つまりこれをかぶって適当な所で寝ろ、ということらしい。 「…また僕を侮辱するつもりか?」 「ち、違うわよ!そもそも部屋の中で寝られるだけ有難いと思いなさい!普通だったら大型の使い魔は外で寝てるのよ! それに急だったからベッドの予備なんて無いわよ!第一使い魔なのにベッドで寝るなんてありえない!」 言ってからしまった、とルイズは顔をしかめる。 いい加減眠くなってきたのにまた口喧嘩を始めてしまい、これでまた時間を取られるのはごめんだ。 「うん…それもそうだ。ベッドが用意できるまでは仕方ないな。レディのベッドを取る訳にも行かないし」 ジョナサンは意外にあっさり折れ、椅子に戻ると毛布を羽織る。 ルイズは内心胸を撫で下ろし、いつものように制服を脱ぎ始め、 「…僕が君の立場なら、もう少し恥じらいというものを持っているはずだけれどね」 ジョナサンの非難めいた声に慌ててクローゼットの戸を大きく広げ、 「わ、分かってるわよ!つい今までの癖が出ちゃっただけよ!さっさと寝なさいよ!」 それを衝立代わりに着替えを済ませる。 下着に手を掛け、 (洗って貰おうと思ったけど明日の朝言えばいいわね。もう面倒は沢山) 普段通り足元の洗濯物かごに放り込んで、ベッドに潜り込んで魔法灯を消す。 (でもあいつ、ベッドで寝るなんて言ったわよね…まだ誰がご主人様か分かってないんじゃないの?) ジョナサンは目を閉じ、背を向けたまま、ルイズがベッドに入ってすぐ寝息を立てるのを聞いていた。 (世間知らずで我がままってだけじゃない、無防備だ…警戒心が無いのか?それとも貴族としての自負の表れか?) 波紋の呼吸に意識を集中、心の雑念を振り払う。 (…何としてでもエリナに僕が生きていると伝えたい…出来ればエリナの許に帰りたい…) 肺の空気を残らず吐き出し、血液のビートを全身で感じる。 (ここは魔法学園だと言っていたな。教員ならば元の世界に戻る方法を知っているだろうか?) ゆっくりと空気を吸い込み、全身の細胞から血流に乗って運ばれる波紋エネルギーを背骨に沿って束ねる。 (どちらにしても明日からだ) 残らず吐き出す。 ゆっくりと吸い込む。 吐き出す。 吸い込む。 (…そういえばあの娘、さっき小間使いがどうとか言ってなかったか?) 主人と使い魔の間にある理解の壁は、まだ高く厚かった。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/60.html
そうしているうちに、コルベールが戻ってきた。そして、その後ろに続く二つの人影。 『微熱』のキュルケと、『雪風』のタバサであった。 先程のパニックの折、混乱する生徒達の中で彼女達だけは自分を保っていたのをルイズは見ていた。 恐らく自分と同じくこの死体の奇妙さに気づいたのであろうその2人がこの場に来るのは不思議ではなかった。 内心そう思いながらも、キュルケが嫌いなルイズは、突っかからずにはいられなかった。 「ツェルプストー、何か用?」 宿命のライバルを前に、自然とルイズはいらだった口調になった。 そんなルイズの態度をうけながし、キュルケは杖をいじくりながら飄々と答えた。 「べっつに~。用なんか無いわよ、あんたには。あるとすれば、そこに転がってる身元不明の死体に、かしら?」 「なによ、ハッキリしなさいよ!」 キュルケの微妙に的を得ない回答に、ルイズの方が痺れを切らした形となった。 キュルケはいかにも『呆れた』といった表情を浮かべた。 タバサの方は、さっきからずっと黙って、杖を抱えたままだ。 「だから、契約よ! するの? その死体と」 「……あっ」 キュルケの言葉にルイズはハッとした。 さっきまでの、自分をどこかに置き去りにして来たような感覚は消えていた。 そうだった。 このバラバラ死体がどうしてこの場に呼び出されたのかルイズはすっかり忘れていた。 自分はこれから一生をともにする使い魔を呼び出すために、このサモン・サーヴァントに臨んだのだった。 万全を期して。 そうして呼び出されたのが目の前にデンと横たわる、身元不明の死体だったというわけだ。 つまり………… ということは……… この理屈から言うと……… ルイズの思考が最悪の未来を脳裏に描き出した。 「こ、こ、これと契約しろっての~!? 無、無理よ! 無理無理! ぜぇったいいや!」 ルイズは半狂乱になって無理無理無理と繰り返した。 契約するということはつまりキスをするということだ。 そこの死体と。 ルイズは、今初めて自分がとんでもない状況にあることに気がついた。 チラリと死体を見る。 割られたスイカと目があった気がした。 ぶるっと身震い。 シャレにならない…… ルイズはコルベールに助けを求めることにした。 「ミスタ・コルベール! 召喚のやり直しを希望します!」 割と切実なルイズの声が広場に響いた。 何が好きで死体にファーストキスを捧げなければならないのか……ルイズは最早半泣きだった。 己の不幸を強く呪うとともに、どうしてコルベールだけでなく、キュルケとタバサもこの場にきたのか、ルイズは悟った。 以前から、サモン・サーヴァントは伝統に基づく神聖な儀式であり、召喚のやり直し等は不可能である旨は、目の前にいるコルベールから耳にタコができるほど聞かされている。 今更彼が、自分の言葉を覆すとはとうてい思えなかった。 つまり、彼らは否が応でも私に契約をさせるつもりで、キュルケとタバサは、自分が契約を拒否した場合に、無理矢理ふんじばって契約させるためにいるのだ――――――ルイズは確信した。 確信した瞬間にルイズは三人に向かって杖を構えた。 ど、どいつから来るの……!? わ、私は後、何回契約させられるの……!? 「私に近寄るなぁあああ!!!!」 ルイズは腹の底から叫んだ。 親の仇でも見るかのような、鬼気迫る表情に、流石の三人も気圧された。いつも冷静なタバサすら、身を固くしてルイズを見守っていた。 妙な誤解をしているようだ……と、三人は感じた。 そして、おそらくは誤解の原因であろうキュルケが、恐る恐る話しかけた。 「あのね、ルイズ。変な勘違いしてるみたいだけど、まったくの誤解よ。あんたをどうこうする気は…「嘘だッ!!!!」 必死の弁明はしかし、ルイズの叫びに遮られた。 これは重症だ。 このままだと奇妙奇天烈な怪奇事件に発展しそうだったので、キュルケに変わってコルベールが説明に入った。 「ミス・ツェルプストーの言っていることは本当ですよ。ミス・ヴァリエール。私たちはあなたをどうこうしようというつもりは全くありません。落ち着いてください。」 「…………」 「落ち着いて、ください。落ち着くのです」 「…………」 ルイズが杖を下ろす。 やはり亀の甲より年の功か、今度は説得が通じたようだ。 取りあえず惨劇は回避されたらしい。 三人は肩の力を抜いた。そのままの勢いでコルベールが話を続ける。 「私もこんな事例は初めてで、少々面食らっています。このまま契約をあなたに強制するのも酷というものでしょう。よって私はあなたに選択肢を与えようと思います。 ①覚悟を決めてこのまま契約を行う ②今回の召喚はなかったことにして、死体を内々に処理。一年間留年の後、再び再召喚 (③無理矢理契約。現実とコルベールは非情である) 選ぶのはあなたです、ミス・ヴァリエール。あくまであなたの意志で選んでください」 意図せずして、責任をすべてルイズにまる投げする形になったことに、キュルケは不快感を感じたが、どうしようもなかったのでだんまりを決め込んだ。 ルイズは、コルベールのセリフに最初は期待したが、最後にあんまりな二択を突きつけられて目の前が真っ暗になった。 契約か、留年か…… おおよその貴族のご多分に漏れずプライドの高いルイズにとって、留年など、屈辱以外の何物でもなかった。 それならば我慢してこの死体と契約した方が、いくらかマシなのでは……チラッと、死体を見る。こんどは、ちぎれた左腕が自分に向かって手を振っているように見えた。 ――――――留年もアリかな、とルイズは考え直した。 しかしルイズの脳裏に、家族の顔、そして大好きなカトレアの顔が浮かんだ。 これまで自分が魔法を使えないせいで、何度家族に迷惑を掛けてきたことか…… 自分が留年することで、これ以上大好きな家族に迷惑をかけることは、とてもルイズには出来なかった。 それに、やはりこの死体は、ただものではない。その考えは、自分の中で確信にまでなっていた。何かとんでもない秘密があるに違いない……ならば、それに賭けてみるべきではないか……? 暫く考えた後、ルイズはとうとうハラを決めた。 「ミスタ・コルベール」 「決断しましたか…?」 コルベールが自分の目を見て問う。 ルイズもまた、コルベールの目を正面から見返した。自分で出した結論に自信を持たなくて、何が貴族だろうか。 これから起こるすべてを受け止めてみせよう。 高らかに宣言する。 「私、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、この『物』を使い魔と認め、契約します。」 一息で言い切る。 コルベールは一言「分かりました」とだけ言った。 タバサは黙ってルイズを見つめている。 何か思うところがあるのだろうか。 一方のキュルケは、予想外の展開に目を見開いた。 (ルイズ、あんた、決めるときは決めるじゃない) 自然と頬がゆるむ。 やはり彼女は私のライバルにふさわしい……感心しつつそう思いながらも 一方で不安も覚えた。 今ルイズが契約すると言ったアレ…… アレはまさに未確認生物だ。 今はおとなしく死んでいる(?)が、契約を交わした瞬間何が起きるか皆目分からない。 契約の瞬間は、メイジがもっとも無防備になる瞬間でもある。 ルイズの身に何か起こったときは自分が……そう心に決めつつ、キュルケは、堂々とした足取りで死体に近づくルイズを見守った。 ルイズはどうやらあの割られたスイカみたいな頭部の唇にキスをする事に決めたようだ。 案外ロマンチストなようだが、割られたスイカは唇部分もほぼ真っ二つになっているので、それに向かって少女が唇を近づける様は、第三者から見るとかなりシュールだった。 ぶっちゃけ気持ち悪い。ルイズは、スイカ頭を見ないように目を瞑ってその形の整った唇を近づけていく。 そして、運命の時―――――― 2へ 戻る 4へ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/41.html
■ パートⅠ 使い魔は静かに暮らしたい ├ 使い魔は静かに暮らしたい-1 ├ 使い魔は静かに暮らしたい-2 ├ 使い魔は静かに暮らしたい-3 ├ 使い魔は静かに暮らしたい-4 ├ 使い魔は静かに暮らしたい-5 ├ 使い魔は静かに暮らしたい-6 ├ 使い魔は静かに暮らしたい-7 ├ 使い魔は静かに暮らしたい-8 ├ 使い魔は静かに暮らしたい-9 ├ 使い魔は静かに暮らしたい-10 ├ 使い魔は静かに暮らしたい-11 ├ 使い魔は静かに暮らしたい-12 ├ 使い魔は静かに暮らしたい-13 ├ 使い魔は静かに暮らしたい-14 ├ 使い魔は静かに暮らしたい-15 ├ 使い魔は静かに暮らしたい-16 ├ 使い魔は静かに暮らしたい-17 ├ 使い魔は静かに暮らしたい-18 └ 使い魔は静かに暮らしたい-19 ■ パートⅡ 使い魔は今すぐ逃げ出したい ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-1 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-2 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-3 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-4 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-5 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-6 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-7 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-8 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-9 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-10 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-11 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-12 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-13 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-14 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-15 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-16 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-17 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-18 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-19 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-20 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-21 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-22 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-23 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-24 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-25 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-26 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-27 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-28 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-29 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-30 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-31 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-32 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-33 ├ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-34 └ 使い魔は今すぐ逃げ出したい-35 ■ 使い魔は今すぐ逃げ出したい外伝 『ラ・ロシェールにて』 ├ ラ・ロシェールにて-1 ├ ラ・ロシェールにて-2 ├ ラ・ロシェールにて-3 ├ ラ・ロシェールにて-4 ├ ラ・ロシェールにて-5 └ ラ・ロシェールにて-6 ■ パートⅢ 使い魔は手に入れたい ├ 使い魔は手に入れたい-1 ├ 使い魔は手に入れたい-2 ├ 使い魔は手に入れたい-3 ├ 使い魔は手に入れたい-4 ├ 使い魔は手に入れたい-5 ├ 使い魔は手に入れたい Until It Sleeps ├ 使い魔は手に入れたい-6 ├ 使い魔は手に入れたい-7 ├ 使い魔は手に入れたい-8 ├ 使い魔は手に入れたい-9 ├ 使い魔は手に入れたい-10 ├ 使い魔は手に入れたい-11 ├ 使い魔は手に入れたい-12 ├ 使い魔は手に入れたい-13 ├ 使い魔は手に入れたい-14 ├ 使い魔は手に入れたい U.N.Owen ├ 使い魔は手に入れたい-15 ├ 使い魔は手に入れたい-16 ├ 使い魔は手に入れたい-17 ├ 使い魔は手に入れたい-18 ├ 使い魔は手に入れたい-19 ├ 使い魔は手に入れたい-20 ├ 使い魔は手に入れたい-21 ├ 使い魔は手に入れたい-22 ├ 使い魔は手に入れたい-23 ├ 使い魔は手に入れたい-24 ├ 使い魔は手に入れたい-25 ├ 使い魔は手に入れたい Love ├ 使い魔は手に入れたい-26 ├ 使い魔は手に入れたい-27 ├ 使い魔は手に入れたい-28 ├ 使い魔は手に入れたい-29 ├ 使い魔は手に入れたい-30 ├ 使い魔は手に入れたい-31 ├ 使い魔は手に入れたい-32 ├ 使い魔は手に入れたい-33 ├ 使い魔は手に入れたい-34 ├ 使い魔は手に入れたい-35 ├ 使い魔は手に入れたい-36 ├ 使い魔は手に入れたい Can't Stop? ├ 使い魔は手に入れたい-37 ├ 使い魔は手に入れたい-38 ├ 使い魔は手に入れたい-39 ├ 使い魔は手に入れたい-40 ├ 使い魔は手に入れたい-41 ├ 使い魔は手に入れたい-42 ├ 使い魔は手に入れたい-43 ├ 使い魔は手に入れたい-44 ├ 使い魔は手に入れたい 21st Century Schizoid Man ├ 使い魔は手に入れたい Le Theatre du Grand Guignol ├ 使い魔は手に入れたい 21st Century Schizoid Man-2 ├ 使い魔は手に入れたい Le Theatre du Grand Guignol-2 ├ 使い魔は手に入れたい 21st Century Schizoid Man-3 ├ 使い魔は手に入れたい Le Theatre du Grand Guignol-3 ├ 使い魔は手に入れたい 21st Century Schizoid Man-4 ├ 使い魔は手に入れたい Le Theatre du Grand Guignol-4 ├ 使い魔は手に入れたい 21st Century Schizoid Man-5 ├ 使い魔は手に入れたい Le Theatre du Grand Guignol-5 ├ 使い魔は手に入れたい Sad But True ├ 使い魔は手に入れたい No Remorse ├ 使い魔は手に入れたい Dive in the sky ├ 使い魔は手に入れたい-45 ├ 使い魔は手に入れたい-46 ├ 使い魔は手に入れたい-47 ├ 使い魔は手に入れたい-48 ├ 使い魔は手に入れたい-49 ├ 使い魔は手に入れたい-50 ├ 使い魔は手に入れたい-51 ├ 使い魔は手に入れたい-52 ├ 使い魔は手に入れたい-53 └ 使い魔は手に入れたい-54 ■ パートⅣ 使い魔は穏やかに過ごしたい ├ 使い魔は穏やかに過ごしたい-1 ├ 使い魔は穏やかに過ごしたい-2 ├ 使い魔は穏やかに過ごしたい-3 ├ 使い魔は穏やかに過ごしたい-4 ├ 使い魔は穏やかに過ごしたい-5 ├ 使い魔は穏やかに過ごしたい-6 ├ 使い魔は穏やかに過ごしたい外伝『バッカスの歌』 ├ 使い魔は穏やかに過ごしたい-7 └ 使い魔は穏やかに過ごしたい-8 ■ Shine On You Crazy Diamond ├ Shine On You Crazy Diamond-1 ├ Shine On You Crazy Diamond-2 ├ Shine On You Crazy Diamond-3 ├ Shine On You Crazy Diamond-4 ├ Shine On You Crazy Diamond-5 ├ Shine On You Crazy Diamond-6 ├ Shine On You Crazy Diamond-7 ├ Shine On You Crazy Diamond-8 ├ Shine On You Crazy Diamond-9 ├ Shine On You Crazy Diamond-10 ├ Shine On You Crazy Diamond-11 ├ Shine On You Crazy Diamond-12 ├ Shine On You Crazy Diamond-13 ├ Shine On You Crazy Diamond-14 └ Shine On You Crazy Diamond-15
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/366.html
「ルイズー!ルーイズー!起きてるのー?」 ノック、というにはいささか品無くドアを叩く音にジョナサンは目を覚ます。 波紋呼吸法を覚えてからは多少寝なくても疲労感や眠たさを感じる事は無くなったが、師ツェペリから 『体の問題じゃあない、精神の問題なんだよジョジョ。波紋は心まで強くはしないからねェ~』 と定期的な睡眠を欠かさぬよう厳命されており、ジョナサン自身も守り続けていた。 どんどんとドアを叩く音が続く。 ジョナサンは椅子から身を起こし、ベッドで眠るルイズを見ると、 「んむにゅ、くらえ~い、きゅうきょくまほう~、のいらて~む!」 身振り手振りまで加えて寝ぼけていた。 「仕方ないな…」 ベッドの脇をすり抜けてドアへ。シンプルな引き手に手を掛け、 「待ってください、今…」 引くがびくともしない。 鍵かかんぬきがどこかにあるのかとも思ったが、鍵穴も何も見つからない。 「まーた寝てんのねぇ…」 ドアの外で溜息一つ。かちゃりと掛け金が外れる音がドアの中から鳴り、 「さあて今日はどうしてイジメてくれよう…」 開いたドアがジョナサンの額をしたたかに打った。 「ブ!」 「…ってあら?」 痛みと驚きで目を白黒させるジョナサンの前に現れたのは二人の女性。昨日から見てきた生徒達と同じ服装なので ルイズの級友だろう。 一人は長身でグラマラスな赤毛。もう一人は小柄で(ジョナサンには信じられなかったが)青い髪。 「こいつ確か…ルイズが召喚した使い魔の平民じゃない?」 赤毛の娘が値踏みするような目でジョナサンを見つめている。 「…何の御用でしょうか?」 ジョナサンは立ち上がり、極力威厳を保った顔を作って尋ねる。 「ああ、ルイズを起こしに来たのよ。あたしはキュルケ、こっちはタバサね」 青い髪の娘が軽く会釈する。 「ジョナサン・ジョースターです…その、ミス・ヴァリエールとは…」 「ま、ライバルってところかしらね」 「…友達」 二人はジョナサンの脇をすり抜けルイズが眠るベッドの脇に立つ。 「相変わらず可愛い寝顔ねぇ…フレイム?」 にんまりとキュルケが笑むと、開いていた扉から巨大なトカゲがのっそりと入ってくる。 「ううッ!」 慌ててジョナサンが後ずさると、尾の炎から膨大な熱量をふりまきながら、それでいて室内の調度一切に 火を点けること無く、ジョナサンの目の前をすり抜け、ベッドの脇によじ登る。 「私の使い魔よ。私が操る限り危害は加えないわ」 火竜は口を開け、炎をひと吹き。 「うわきゃああぁぁぁ!」 鼻の先を高熱であぶられ、ルイズは文字通り跳ね起きた。 「はいおはよう、ルイズ。どう、私の使い魔?火竜山脈のサラマンダーよ?」 事の次第を理解する数秒の間の後、 「な、何考えてるのよツェルプストー!何で火竜なんて連れてくるのよ!焼き殺す気? タバサも何で止めないのよ?あんた達の後ろにいる男は誰?それと何時よ今?」 一気に全開でまくしたてるルイズと、 「あー、質問は一つづつお願いできますかしらねぇ、ミス・ヴァリエール?」 勝ち誇った微笑を崩さないキュルケ、 「あれ、あなたの使い魔」 無表情で答えるタバサから一歩引いた所で、 「な…何だ?これがメイジの日常なのか?」 ジョナサンは自分の常識を疑っていた。 「いっつもこうやって起こしてあげてるのよ。ヴァリエールは代々寝起きが悪いから」 「ふん!代々腰軽のツェルプストーに言われたくないわよ!」 ふくれながらベッドを降り、クローゼットに向かうルイズ。ジョナサンは慌てて部屋の奥に戻るが、 「ちょっと、服を着せなさいよ」 呼び止められて振り向き、 「君は自分で服も着られない赤ん坊じゃないだろう?」 言い放ってからキュルケへと向き直り、 「僕が来る前からこんな調子なのかい?」 疑問をぶつけてみる。 「んー…まあそうね。さすがに服は自分で着てたけど」 「余計な事言わないでよ!」 ルイズはクローゼットの戸の奥でぶつくさと文句を言いながら洗面と着替えを済ませ、 「はいこれ、洗っておくのよ」 洗濯物をかごごとジョナサンに手渡す。 「これは?」 「生徒の洗濯物は生徒寮付きのメイドがやるわよ…普通はね」 肩をすくめるキュルケに、 「ちょっとキュルケ!何教えてるのよ!」 目論見のことごとくが外れたルイズが食って掛かる。 「あぁら、常識知らずのヴァリエールに言われたくないわねぇ」 手を頬に当てて高笑いをすると、 「…ミス・ヴァリエールを侮辱するのは関心しないな」 ジョナサンの声色が変わったのに気付いたが、 「気にしないでいいのよ。じゃれ合ってるようなもんだから」 キュルケの余裕は崩れない。 「全く、あんた何考えてるのよ!ヴァリエール家にとってツェルプストー家は仇敵なの! あたしの許可も得ないで勝手に喋ってるんじゃないわよ!」 怒鳴りながら中央塔への渡り廊下を歩くルイズの後ろについて歩くジョナサン。 「でも起こしに来てくれたんだろう?方法は…まあ問題があったけれど」 廊下を歩きながらあちこちを見回す。ぱっと見では東欧あたりのどこかの城としか思えなかったが、 塔を主体とする建築様式やあちこちの意匠、特に文字は馴染みの無い物ばかりだ。 「方法?使い魔の自慢してただけじゃない!何であの色気バカの使い魔がサラマンダーであたしが平民なのよ!」 両開きの扉の前でジョナサンが先に進み、右手の戸を開ける。今度は特に鍵は掛かっていない。 足音高く中に入るルイズを追うと、ドアの向こうは塔の直径をそのまま長辺とする広大なホールになっていた。 幾重にも並んだ長テーブルに朝食とは思えない豪勢な料理が並び、生徒達がずらりと席に着いている様は なかなか壮観だった。 「ここが『アルヴィーズの食堂』。平民はまず入れない場所よ。感謝しなさい」 自分の席に向かいつつなぜか自慢げなルイズ。 「なるほど、礼儀作法も教育のうち…貴族ならば当然だろうな」 料理の匂いに気を良くした様子のジョナサンはルイズの椅子を引き、座らせてから、 「で、僕の席は…」 ルイズが指差した物に気付く。 「本当は使い魔は、外。あんたはあたしの特別な計らいで、中。感謝しなさい」 床に直に置かれた木製の素っ気無い皿の中に、薄いスープと質の悪いパンが二切れ。 スープには木製のこれまた素っ気無いスプーンが一本転がされている。 「…良く分かったよ、ミス・ヴァリエール」 きびすを返し、ホールの出口へと向かう。 「ちょっと!どこ行くのよ!嫌なら朝食抜きでも…」 「このような物を食事とは呼ばない」 ジョナサンの視線にたじろぐルイズ。 「何言ってるのよ!これは使用人の食事と同じ物よ!贅沢言うんじゃないわよ!」 「食事の内容じゃない」 戻ると皿を拾い上げ、テーブルの上に置く。 「ちょっ…汚いじゃない!」 「貴族は自分が汚いと思うような物でも平気で平民に食べさせるのか?」 ルイズの顔に傷ついたような表情が一瞬浮かぶが、 「朝食は要らない。君の食事が終わるまで入り口で待っている」 ジョナサンが背中を向けると、 「ふ、ふん!要らないなら要らないって言えばいいじゃないの!」 いつもの調子に戻った。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/14.html
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ 「バカな、キュルケ… ホントに、なんというおろかなことをしてくれたんだ」 地べたに転がったまま、ギーシュは奥歯がガチガチ噛み合わなかった 鳥の巣頭がチリチリと焼け焦げアフロと化したあの男は しばらくボーゼンと立ち尽くした直後 ブワァァァッ ビンッ ビンッ ビンッ カゲロウのように周囲の空気をゆらめかせ、 髪の毛があおられるように逆立っていく 「アレのことをいうのか? 怒髪天っていうのは… あいつはもう止まらない 取り返しがつかないんだぞッ!?」 「ったく、非ッ常識な頭だこと…」 「まっまだ怒らせる気かぁ――ッ」 ヒステリーのようにわめくギーシュを放って キュルケは考える (「殺す」のは簡単だと思うけど… トライアングルメイジの全力を以てすれば、ね) 「殺し方」はすでにできていた あの男がこちらに近寄ってくるところへ 火×1の魔法で足下に火を放ち、さえぎる ムカドタマ真っ最中の男は迂回などせず ナゾの力で地表をまとめてぶっ飛ばし鎮火するだろう 一瞬だが足は止まる さすがに生身で炎に突っ込むわけがない そこへ火×2の魔法で扇状になぎ払い、とどめとなる 火×3は使わない、長い射程は必要ない どうせ近寄ってくるのだからそのときが最後だ 灼熱の中で窒息しながら焼け死ぬのだ 必要とあらばやる キュルケはそれができる女だった だが、それだけでもなかった 「…」 チラリと見る ルイズとは、先祖代々宿敵同士なのだ こと、微熱のキュルケの性(さが)において その因縁はきわめて重大だった 「……」 (この私が本気を出すの? ゼロのルイズの使い魔に? …却ッ下だわ、そういうのはね…大人げないっていうのよッ) 男がこちらに歩いてくるのが見えた 嵐の前の静けさというやつだった 殺さないなら方針も違う そのためのギーシュだった 「手伝ってもらうわ、ギーシュ…ちょっとばかりね」 「手伝えだって? 無責任なッ アレをああしたのは君じゃあないかッ!? ボクは知らないぞ、知らないんだッ」 「大金星を拾えって言ってるのよ、あなたに」 「ああ、口ではなんとでも言えるだろうさ 人を乗せるのがウマいからな、キミは だけどボクはだまされないッ」 キュルケの目がスゥッと細くなった ビクッ 「な、なんだね、今度は脅そうとでも言うのかい?」 「そ…『あのこと、バラすわよ』」 ズン ある意味、最悪の魔法だった ギーシュには身に覚えがありすぎた 「な、何だい? あ、『あのこと』とは?」 「『あのこと』よ」(フフフ…) ザッ!! 戦闘態勢をとるキュルケ これ以上はさすがにノンビリかまえていられないッ 「あいつが『ぬかるみ』にハマッた瞬間に、錬金で足下を石に変えるのよ、いい?」 「『ぬかるみ』だって?」 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 「ハマッた瞬間でなければ意味がないわ、目をこらしてなさい…」 ボンッ 再び放たれた火球は、今度はまっすぐ男に向かった 避けなければ焼けて死ぬ これで決まれば世話はない キュルケは素早く駆け出していた 「あなた、どこのどちら様? カッコイイわよその髪型…最初のアレよりずっとねぇ?」(フフ) 走るついでにオチョクッていく 知らない言葉を使っていたようだが 笑われたことに怒っているのなら多分通じているのだろう そうでなければアレは危険な狂戦士(バーサーカー)だ 殺してしまった方が世のためということ ダムッ 男は炎を横飛びに回避してからキュルケに向かって飛んでくる これでふたつわかった ・男は炎の直撃に耐えられるとは自分でも思っていない ・バカにされていることを理解するだけの脳ミソはある だが、飛んでくる勢いが大砲のそれだったことだけはわかりたくもなかった ギャン!! 一瞬のうちに2メイル以内にまでカッ飛んできていた 走ったくらいじゃどうにもならない (何よ、これは… 風系統の魔法じゃない 杖がなきゃ魔法は使えない 地面を殴って、その反動で自分を飛ばしてきたとでも言うの? …とにかく、まずいッ!!) 反射的に身をかばい、顔の前で腕をバツの字に組む 今度は威力を知る番だッ 「DORAaa!!」 ズドドバァ 見えない拳が突き刺さる すれ違いざま五発くらいが飛んできた ドッ ミシッ パキッ ポキ ゴシャア 第七肋骨、亀裂!! 右肩胛骨、亀裂!! 右手骨、粉砕ッ!! キュルケは全身に疾る鈍い音を聞いた ゼロのルイズと同じように空中に舞い上がり、落っこちる 目の前が真っ暗になっていたが、おかげで意識はなんとか戻る 馬車に轢かれた気分だった 少しの間、遅れてきた痛みに歯を食いしばって仰向けに空を見上げていたが 「いッ…… ~~~ ッたいわねぇぇぇぇッ!!」 身を転がして一息に立ち、闘志のメーターが恐怖にふれかかったのを怒鳴り散らして引き戻す パワーはともかく、速さを読み違えていた あの男は20メイルをひとっ飛びで駆け抜け すれ違った相手を五発は殴って反対側に着地できるらしい あまりうまく着地はできなかったようだ 逃げて端に寄っていたクラスメート達のド真ん中に転がり込んだ男は 草にまみれて肩口を押さえていた キュルケはすかさず頭の中でメモを付け加えた ・最初に考えた「殺し方」はダメだ 高速で突っ込まれたら対応できない ・だがアレは、あの攻撃をやりなれてはいない うまくすれば自滅を誘えるかも… 一方、追いついてきたコルベールはツルリ光る頭を抱えたい気分だった あの男は危険すぎた 放っておけば死人が出るだろう だからその前に私が殺す 殺さねばならない そう思っていた だが (生徒の中に着地するとは…) コルベールもまたトライアングルメイジである 火×3の魔法で男の周囲のみに局地的な完全燃焼を起こし アッという間に窒息死させるつもりだった どんな能力を持とうが、どんな力で殴れようが関係のない処刑法だった 彼の理念に真っ向から反する行動だが生徒のためならやむをえなかった だが見ての通り目論見はつぶれた (これでは皆まで巻き込んでしまうぞッ…!!) 「このぉぉッ、イミフメーな髪型の分際でキレてるんじゃないわよッ」 なんということだ 聞こえてきたあの声を叱りつけねばならない 「やめなさいミス・ツェルプストー ここは生徒の出る幕では、ありませんッ」 「…あら、コルベール先生 先生こそ下がっていて下さいませんこと? 『火の本質は破壊ではない』んですものね? ですが私は微熱のキュルケ 荒事は好みですのよ」 「どうするつもりなのですか、そのような有様でッ」 「何を言っても遅いんですわよ先生 …だって、もう、来ますもの」 チッチッチッ 舌を鳴らしながらキュルケは 男に向かって左手の甲を突き出し、人差し指をクイックイッ 万国共通、キット通じる「かかってこい」だッ 右手は使えないから仕方なかった 変形させるフシギなチカラで骨が変な風にくっついたらしかった 「……」 しかし今度は男は来ない 戦闘態勢はとったままだが キュルケと回りを交互に見て動かない (…チョットぉッ) キュルケは苦々しげに舌打ちする (攻撃をためらうの? なんで今更ッ いいわよ、だったらもう一押しすればいいだけッ) 「…ファイヤッ」 ボワン 火×1 魔法の杖から放たれたそれは空高く舞い上がり 男の背中まで回り込んでから落着する まわりくどい軌道に魔力をとられて威力は落ち込んだが これでクラスメートを巻き込む問題なしッ 完全(パーフェクト)ッ!! 「さぁ…いらっしゃい、こっちにッ 今度はツルッパゲにしてやるわ」 ドワッ!! 男の足が、土から、離れたッ!! 4へ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1009.html
「…何だこいつは」 「よぉ…兄貴…」 夜、ルイズの部屋の前には何故かデルフリンガーにブッ刺されたハムが置いてあった。 とりあえずデルフリンガーからハムを抜きかじる。不味くは無い。 「…何があった?」 「いや、兄貴があのメイドの娘っ子と一緒に馬乗ってるとこ見た嬢ちゃんがな…」 「アレか?馬乗ったことねぇっつーから乗せただけだが…」 「…兄貴そっち方面に関しては結構天然なんだな」 メローネ曰く 「本人にその自覚が無いだけ周りに与える影響がディ・モールトヤバイ。ありがちなジャッポーネのゲームの主人公ぐらいに」との事 「まぁ、そういうわけで嬢ちゃんがプッツンしてハムに刺されたってわけでな」 ハム=生ハム=プロシュート。だろうと検討を付ける。そのハムを刺しているという事は、締め出し継続という事だろう。 「仕方ねーな…まぁいい、明日からはオメーにも手伝ってもらうからな」 「手伝う?何をだ?」 「仕事だ」 それだけ言うと、ハムとデルフリンガーを持ち歩き出す。 「なんの仕事か分からねーけど、今日はどうすんだ?」 「寝る」 「どこで?」 「マルトーが使用人の部屋使っていいつったからな」 その部屋の扉を開け、上着を脱ぎ寝る。 後ろの一人を気にしながら馬を走らせたため例によって疲労感があり、すぐに寝た。 しばらくして、部屋に入ってくるのは熱の流法絶賛習得中のご存知シエスタだ。 本来、他にも使っているのだが、マルトーの深読みしすぎた計らいにより二人のみとなっている。 「おでれーた…これ嬢ちゃんが見たらどえらい事になるな」 スデに体力&精神力回復状態に入っているプロシュートは眠っている。 左腕を頭の下に、右手を腰のあたりに乗せ そして、シャツのボタンを下の方だけ留め胸元を出しているという結構セクスィーな姿で。 そっち方面の趣味の方が見れば間違いなく『や ら な い か』突入というところである。 そんなプロシュートを見てシエスタが大きく息を吸い 「ちょっとだけ…ちょっとだけなら…」 と呟きつつ対象へと近付く。 (おいおいおいおいおいおい!こいつは兄貴色んな意味でヤベーってか普通逆じゃねーの?) ヤバイとは思うが、声には出さない。この剣、何だかんだで結構楽しんでいる。 ゆっくりとだが万力を締めるような動きで近付き、開いている右手を握った。 (へ?それだけ?つまんねー) シエスタにとっての不幸?は―プロシュートが、この世界に来るまで常に臨戦態勢であったという事。 逆に幸運は―プロシュートが、グレイトフル・デッドを出しながら眠っていなかった事。 プロシュートにとっての不幸は―疲労と、まだ完治しきっていない怪我で、ここが別世界という事を忘れているという事。 逆に幸運は―この世界に暗殺チームの仲間が居ない事。 右手を握った瞬間グィィッっと腕が左上の方に振り払われ、当然その手をしっかり握っていたシエスタがバランスを崩して倒れ込む。 「グレイトフル・デッ…!…何やってる」 スタンドを出現させた分、タイムラグが生じギリギリ直触りを仕掛ける一歩手前で止まった。発動してたら多分再起不能になる。責任取ってくださいどころじゃ済まない。 プロシュートが下!シエスタが上だッ!の状態でテンパりながらシエスタが答える。 「え、いや!あの!…右手!右手がですね…!」 右手?と疑問符が浮かび自分の右手を見る。掴んでいる、どう見てもシテスタの手を掴んでいる。 さすがに、状況が掴めない。寝ていたはずなのに、なして手を掴んでいるのかと。 (…直触りでも仕掛ける夢でも見たか?) と思いっきりズレた思考を張り巡らせていると 「おーい、明日の食材の搬入について聞き忘れた事があ………スマン邪魔したな」 お約束のように入ってきたのは料理の事ならトニオさんの次にスゴイナンバー2、マルトーであった。 「ちちちちちち、違いますマルトーさぁぁぁぁぁぁん!」 必死になって否定するが、もーマルトーは止められない。 「だから言っただろ?鍵しとけって。しかし、まぁ…おまえさんの方が仕掛けるとはなぁ…」 感慨深げに目を閉じながら一人うんうんと納得したかのように首を縦に振る。 「不可抗力…不可抗力で、こ、こうなったわけなんですよ~~」 「心配するな、誰にも言いやしないからよ」 「何なんだマジで…」 「…兄貴マジで天然なのな」 「それじゃあな、シエスタ。未来の旦那さんとよろしくやってくれ。鍵忘れるなよ」 廊下をスポットライトが当ったような明るさでマルトーが去る。 完璧に自分が押し倒していたと思われorzの形でへたり込む。 が、そこに懐かしい祖父の声が聞こえた (何?押し倒したと思われた?逆に考えるんじゃ『押し倒して事実にしてしまえばいい』と考えるんじゃ) それにしても、このジジイ外道である。 「分かりましたおじいちゃん!『女は度胸!何でもためしてみるもんさ』ってよく言ってくれた、それですね!」 微妙に間違っているが、『覚悟』を決め後ろのリボンを解きエプロンを床に落す。 「せせせ、責任取ってくれなんて言いませんから、その・・・・・・プロシュートさん?」 寝ている。もう思いっきり寝ている。 (…兄貴は、これで素なんだよなぁ。もったいねぇ) このギャング、弟分相当の人間と仲間の状態はよく気付くが、それ以外の事はマジ疎い。 ギャングになる前、女性と付き合った事が無いというわけではないが、根っからの兄貴気質なのであまり続いてなかったりする。 面倒見と顔は良いため固定ファンが居たぐらいだが、ギャングになってからはさすがにそんなものも居ない。 「わたしって魅力無いのかしら…」 そう言いながら、自信を失ったかのようにため息を付く。 起きていれば多分、説教開始だが当人が寝ているためそれは起こらない。 モンモンとした気分でベッドに潜り込み布団を頭まで被り、色々まぁR指定一歩手前な想像をした後、寝た。 それから数日経過したがプッツンしっぱなしのルイズが昼頃プロシュートが毎日馬に乗って出かけているのを見付けた。 「ご主人様を放って何やってるのよ…!あのメイドは一緒じゃないみたいだけど」 自分が締め出している事は思いっきり棚に上げているが、毎日放っぽり出されるのは気に入らないご様子。 「昨日真夜中に帰ってきたのを見たけど何してるのよあいつ……まさか!いえ…でもそんな…だけど剣持ってるし…それに確か」 (そうなってくるとオレとしては脱走し資金・食料を得るために どこかの貴族の館に押し入りそいつの家のベッドの上には見知らぬ老人の死体が転がってるって事になるな) 「こんな事言ってたわよね…」 「な、何が目的だ!」 「答える必要はねーな」 その館には二人の男しか居ない。他は全て朽ち果てている。 「貴族にこ、こんな真似をしてただで済むと思っとるのか!この私を誰だとおもっちょる!死刑だ!死刑にしてやる!」 「なに…オメーが心配する事じゃあねーよ。朝、見付かるのは身元不明の老人の死体なんだからな…」 ズキュン! 屋敷から出てくるプロシュート。だがその背にはその館にあった財宝が詰め込まれていた。 「貴族つってもシケたもんだな…次は王室を殺るか…」 トリステインの貴族の館が次々と襲撃される事件が勃発するが、それは遂に王室にまで及ぶ事になる。 秘法が全て盗み出され城に残ったものは兵士とメイジの朽ち果てた死体。そして王女―アンリエッタまでもが朽ち果てていた。 「そんな事になったら…破滅だわ!…どうしよう…ヴァリエール家がわたしの代で終わるなんて…ちいねぇ様ごめんなさい!」 壁に頭を打ち付けながら犯罪的想像をしているが遂に決意したかのように立ち上がる 「フフ…ウフフフ…これは…犯行現場を突き止めて躾けないと駄目みたいなようね…」 ドス黒いオーラを出しながら後を追うべく厩舎へと向かうが後ろから有無を言わさない声がかかった。 「ほーう…この『疾風』のギトーの授業をサボってどこに行こうというのかね?」 教師陣知名度ワーストナンバー1のエセスネイプことギトーであった。 「行かせてください!ヴァリエール家の未来が懸かってるんです!」 「…ヴァリエール家の心配より君の単位の心配をしたまえ」 単位!それは学生生活においてかなりのパーセンテージを秘める言葉ッ! 現在、魔法成功率ゼロのルイズにとってそれが一つ減るだけでもディ・モールトヤバイ! 「…分かりました」 素直に従うルイズを見て教室に向かうギトーだが、歩の速度を落したルイズが少し距離を開けた瞬間…逃げた。 「かかったなッ!アホがッ!!」 「偏在だ」 「ふぎゃ…!」 杖で思いっきりシバかれたルイズが引きずられるように教師に運ばれた。 「それとオールド・オスマン師が呼んでいたので授業終了後に向かうように」 「S.H.I.Tッ!王室もロクなもんを送りつけてこんのぉ…まがいものにしても文字すら書かれておらぬではないか」 オスマン自身各地で始祖の祈祷書と呼ばれるものは幾百と見てきたが何も書かれていないというのは初めてだ。 そこにノックの音がした。 「秘書を雇わねばいかんな…また酒場に行くかの!…コホン!鍵は掛かっておらぬ。入ってきなさい」 それにしても、このジジイ全く懲りていない。 入ってくるなり開口一番ルイズが口を開いた。 「話というのは…まさか!プロシュートがどこかの屋敷を!?そうなんですねオールド・オスマン!!」 「お…落ち着きなさいミス・ヴァリエール。君の使い魔の事ではない」 かなりテンパっているルイズに少し引いているオスマンだが思い出したかのように祈祷書を差し出した。 「何ですかこれは?…まさか、ヴァリエール家取り潰しの……!!」 「…ミス・ヴァリエールの使い魔は何かやらかしたのかね?」 「あ…いえ、それでこの本は?」 墓穴掘ったと後悔しつつ話題を変えるべく話を本に戻す。 「始祖の祈祷書と言われるものでな、王室の伝統で王族の結婚式の際には貴族より選ばれた巫女が祈祷書を手に詔を詠みあげねばならん」 「それで、わたしが呼ばれた理由は?」 「姫がその巫女にミス・ヴァリエールを指名しておる」 「姫様が?」 「うむ、巫女は式の前より、この『始祖の祈祷書』を肌身離さず持ち歩き詔を考えねばならぬ」 ぶっちゃけ、今にもプロシュートが王室を襲うのではないかと気が気ではない状況なのだが姫様の頼みであるなら断れない。 「み、詔もわたしが考えるんですか!?」 「草案は宮廷の連中が推敲するじゃろうから心配せずともよい。伝統というものは厄介なもんじゃのぉ だが、ミス・ヴァリエール。逆に考えるんじゃ『王族の式に立会い詔を読み上げるなど一生に一度しかできない』と考えるんじゃ」 「わ、わかりました。謹んで拝命いたします」 (ヴァ、ヴァリエール家の未来が…でも姫様の頼みを断るわけにもいかないし…!) その後、さらに数日経過し虚無の日になったが肝心の詔はキレイサッパリ浮かんでこない。 「我々は一人の英雄を失った、これは敗北を意味するのか!否、始まりなのだ!」 ボツ:英雄がウェールズなのでこんなの結婚式で詠みあげたら同盟破棄は確実。 「ウェールズは風になった――アンリエッタが無意識のうちに取っていたのは敬礼の姿であった―――涙は流さなかったが無言の愛があった――奇妙な友情があった――」 ボツ:上に同じ 「『真実の愛』がある、そして『結婚』がある。昔は一致していたが、その『2つ』は現代では必ずしも一致していない 『真実の愛』と『結婚』はかなりズレた価値観になっている……だが『同盟締結』には『結婚』が必要だ…… 二人にもそれがもう見える筈だ……式を進めてそれを確認しろ…『仮面夫婦への道』を…わたしはそれを祈っているわ、そして感謝する ようこそ……『政略結婚』の世界へ…………」 ボツ:同盟云々より自分の命が危うい 「駄目ね…思い浮かばないどころか色んな電波を受信してる気がするわ…」 気晴らしに部屋の外に出るが、再びプロシュートとシエスタが馬に乗ってどっか行くのを見つけて一時間程固まった。 風上のマリコヌル ― 露伴ちゃんのように爆破され死亡 「………アギ……」 あ、まだ生きてた。 「タバえも~~~~~ん!」 と今にも叫ばんばかりにタバサの部屋の前にダッシュかまし扉を開けようとするが、扉に鍵が掛かっていてノックしてもなんの返事も無かったので…『爆破』した。 「ねぇーーーーーーー!シルフィード出してぇーーーーーーーーー!」 始祖の祈祷書片手に、部屋の中に突入するが誰も居ない。が、後ろから声が掛かった。 「あたしも『アンロック』ぐらいした事はあるけど、爆破ってのは無いわよ?」 「タバサ知らない!?というか教えなさい!」 「あの子なら…ヴェストリの広場でシルフィードと一緒だったけど…今は近付かない方がいいわよ…ってもう居ないわね」 全力疾走でヴェストリの広場に向かうが…何故か広場から煙が湧き上がっていた。 (お、おねーさまは一体なにを…) 「次は…海草 そしてワイン 豆を入れた後…野菊…干し芋 鱒 バター」 鍋の中に次々と素材を入れていく。 「そして…はしば…はッ!コフン…!ケフ…!………草」 (なんの草ですかーーー!) 大量のはしば…ゴフン!ゲフン!草を入れ仕上げに入る。 そしてその上澄み汁を水筒に入れた。 「……味見したい?」 (遠慮しますおねーさま) 「そう…気に入ったの。たーんとお飲み」 (逃げるんだよォーーーー!…っておねーさま尻尾は…!きゃうぅぅぅ!尻尾はダメって…!) 逃げようとするが尻尾を思いっきり捕まれシルフィードが悶えているとこにルイズが現れた。 「丁度良かったわ!シルフィード貸して!ヴァリエール家の危機!OK!?分かったなら乗せて!」 「虚無の曜日はこの子は動かないわよ。何があったの」 必死こいて説明するが、強盗だの、メイドだの挙句ヴァリエール家取り潰しの危機だと話が繋がっていない。 「ほら…口開けて」 (おねーさま、そ、そんな無理矢理…だ、ダメです!) 「えーっと話を繋げると、ダーリンがメイドと一緒に馬に乗って強盗しに行ってあなたの家が取り潰されるって事?」 (うぁぁぁぁ、も、もうダメ!は、入っちゃう!水筒の先が入っちゃうぅぅ) ダーリンと聞いたタバサがもう今にもシルフィードに飲まそうとしていた水筒を引っ込め、その背に乗り込む。 (た、助かったぁぁぁ) 「どっち?」 「分かんないけど方角は城下街の方だったわ!」 「馬一頭。見付からなかったら飲ます」 (ごめんなさい、ごめんなさいおねーさま。頑張って見つけるからそれだけは許してください) 「この子が自分から動くなんて珍しいわね。あたしも行くわ」 2時間経過したが依然として見付からない。 タバサが水筒に手をやりシルフィードの頭に近付く。 (ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナ…居ました!おねーさま!!) シルフィードの目を通してタバサが二人を確認し水筒を収める。 「どこ!?どこに!?早くしないとヴァリエール家がぁぁぁぁ」 「あの建物に入った」 そうしてタバサが建物を指差す。 「ねぇ…あれって…」 「もしかして…」 「宿屋」 スタープラチナ・ザ・ワールド! タバサとシルフィードを除いて時が止まり止った世界の中で、なーんかものスゴイピンク色の妄想がリプレイされたッ! ~10分経過~ 「や…やるわね…あの平民…学院じゃできないぐらい激しいことをしてるって事ね…」 先に時が動き出したキュルケがジュルリと涎を飲み込み口を拭いて熱の流法に突入した。 ルイズのは方はなんかブツブツ言っている。免疫が無い分、妄想力(もうそうぢから)が高いらしい。 「……エオル…スーヌ……ル・ヤル……クサ オス………ヌ・ウ…ュ・ル……ド ベオー…ス……ル・スヴ……ル・カノ……シュラ ジュ……イサ………ジュー・ハ…ル・ベ……クン……ル…… 」 6XXX年、ハルケギニアは虚無の炎に包まれた!地は枯れ、海は裂け、あらゆる生命体は絶滅したかに見えた。だが!人類は死滅していなかった!! 「YouはShock!虚無で空が落ちてくるー…YouはShock……」 「なに鼻血流しながらブツブツ言ってるのよ」 モヒカン率のやたら高い世紀末世界が見えたような気がしたがルイズの妄想だったらしい。 「あああああああ、あのサカリの付いたハム…!まままままま、毎日こんな事してたんだわ……!」 今にもキレそうだが鼻血流しながら言っているあたり説得力は無い。 一人冷静なタバサが呆れたように二人を見ているが口を開いた。 「入る?」 その言葉を聞いて二人は実に迷ったッ! キュルケの場合よろしくやっていた場合、参加するかどうかッ! ルイズの場合、今後の扱いをどうするかッ!あと、25%ぐらい泣きたい気持ちでッ! 20分程迷った結果入る事になった。 「ゴクリ…いい…開けるわよ?ってお子様には刺激が強いわよ!」 生唾が止まらない御様子のキュルケさんだが、水筒片手にしたタバサが先に入った。 そして立ち止まって呟いた。 「珍しい…」 『珍しい』、現在進行形で脳内ピンクのお二人にはもうそっち方面としか受け取れない。 「なに?扉入っていきなり!?」 そりゃあいくらあたしでも心の準備ってもんがー。と涎を拭きながら視線を前にやるが、それ以上にブッ飛んだものを見る事になったッ!! そこで見たものは営業スマイル全開でウェイターをやっているのは我らが兄貴だったッ! あの無愛想面がこうも笑えるものかと思えるぐらいスゴかったッ! 「いらっしゃ……い」 扉が開いたのを見てそっちに目をやると見慣れた三人が居たので一瞬その顔を引きつらせるがすぐに顔を戻す。この男プロである。 「三名様入ります」 変わらず営業スマイルで三人を奥の方のテーブルへと運ぶと急に何時もの顔になった。 「…なにをしにきた?」 「いつもの冷静な顔もいいけど、笑顔もステキねー」 「超レア」 ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ *┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ 「なにをしにきた?」 「そ、そりゃあねぇ…ルイズ?」 このアマーーーー!わたしに振るのかーーーーーッ!と心の中で恨みながら何とか答えた。 「あんた…が毎日、出かけてるし…きょ、今日だって…あのメイドと一緒だったから…」 「それで、尾けてきたってか」 毒気を抜かれ呆れたように言い放つ。 雰囲気が軽くなったのかキュルケが口を開いた。 「で、ここで何をやってるの?」 「…見りゃあ分かんだろ、仕事だ」 「いや、それは分かるけど…なんで?」 「色々とだ」 そうしてると珍妙な声が聞こえた。 「プロシュートちゃ~~~ん。こっちのお客様の相手してあげてぇ~~~」 「…イエッサー、ミ・マドモワゼル」 そういって離れていったプロシュートと入れ替わるようにシエスタとゴツイピチピチの衣装のオカマがやってきた。 「あれ、皆さん。どうしてこんなところにいらっしゃるんですか?」 いつもとは違ったメイド服のシエスタだったが、後ろのオカマが強力すぎてそっちは目に入っていない。 「…何…やってるの?」 「ここ、わたしの従妹とそのお父さんが経営してるんです。で、こちらがその『ミ・マドモワゼル』ことスカロンさんです」 「あら~~~可愛い娘達ねぇ~~どう?うちの店で働いてみ・な・い?」 ぶっちゃけドン引きで声が出ない。なんとかルイズが声を絞り出す。 「え…その…スカロン?さん」 「ノンノンノン『ミ・マドモワゼル』よ」 「…ミ・マドモアゼル…あいつは…ここでなにを?」 「あいつ?プロシュートちゃんのこと?この前シエスタちゃんと一緒に来てから働いてもらってるのよ~ プロシュートちゃんのおかげで女性客も増えたんだから大満足なのよ。ン~トレビア~~ン」 初めて紹介された時スカロンがプロシュートに迫り、思わずボスが乗り移ったのは内緒だ。 「兄貴ィー、三番テーブル、シフトB」 壁に立てかけられたデルフリンガーから伝令が伝えられると声が聞こえてきた。 「お客さん、うちの店はそういう店じゃあねぇんだぜ…?」 スゴ味の聞いた声が聞こえてくると女性客から黄色い声援が上がった。 ちなみに、これで相手が引き下がらない場合。鳩尾への蹴りから鼻っ柱への膝蹴りx5が入り店の外に放り出される事になる。 そこに扉が開き客が入ってくる。だが、こちらからはそれが見えない。 「『ミ・マドモアゼル』要注意客Oが来店しましたぁ~~」 「まぁOが!?あの人、いっつも妖精さん達にイタズラするのよねぇ~~」 「…妖精さんって…なに?」 「ここで働いてる女の子達のことなんです。店の名前が『魅惑の妖精亭』っていうかららしいんですけど」 しばらくすると、軽い悲鳴が上がった。 「尻なでたぐらいで怒らんでもいいじゃろ?どうじゃ秘書やらんか!」 なんか、ものスゴク聞いた事ある声だった。 「兄貴ィーー5番テーブル、シフトO」 「全然懲りてねーなジジイ……」 「ゲェーーー!どうしてここに…!そ、そうじゃ、良いものあげよう!…だからこの件は内密にな…?」 「……なら、こいつを立て替えて貰いてぇんだが…経費で落ちんだろ…?」 「どれどれ…ちっとばかし高くない?これ」 「無理ならいいんだが…魔法学院院長っつー身分を笠に『魅惑の妖精亭』でセクハラか…大変だな明日から」 「分かった!分かったから…!内密に頼むぞい!」 どう見ても恐喝です、本当に(ry それを終えたプロシュートが戻ってきた。 「『ミ・マドモアゼル』…金は今できたから今日で抜けさせてもらうぜ」 「あらぁ~~~残念ねぇ~~プロシュートちゃんならいつでも歓迎よ」 「そんときは世話になるかもしれないが、頼むから顔を近付けるなッ!」 「いいじゃない、キスしちゃうわぁ~~~」 「うぉぉぉぉああ!!シエスターッ何やってるーッ!早くこいつを止めろーーーッ!!」 ある意味列車から落ちそうになった時より必死であった。 プロシュート兄貴 ― スーツ代GET が精神的に少々ダメージを負う。 要注意客O― スーツ代を経費で落そうとするがもちろん落ちず自腹確定。 ルイズ キュルケ タバサ シエスタ ― 引きつった笑みを浮かべながら傍観 戻る< 目次 続く
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2504.html
ディオはルイズによって召喚された。だが、彼は四系統のいずれにも当て嵌まる覚えはなかった。 ディオは自らが召喚された理由を考えるが、その間にも運命の歯車は回り続ける。 おれは使い魔になるぞジョジョーッ! 第五話 朝食の席で特筆するような事はなかった。食堂に入ろうとするディオをルイズは物陰に引っ張り込み、 使い魔が食堂に入れる事自体が特別なんだから床で十分だと説明した。 そして床に皿を用意してやるからさっきの自分に対する態度を謝れば食べさせてあげない事もないと言ったが、 ディオは憎々しげな視線をルイズに向けると黙って立ち去った。 朝食が終わり(何故か今日の)、授業の為に教室へ行くと、いつの間にかディオが後ろを歩いていた。 大学の講義室のような教室に入るとすでに教室に入っていた生徒達から囁きが漏れる。 ルイズの召喚した前代未聞の平民の使い魔にみな興味津々なのだ。 そんな教室の様子にも我間せずといったかんじで入るとディオはルイズの隣に座ろうとした。 それを制止し 「あんたの席はここじゃないわ。ここはメイジの席。使い魔は…」 と言いかけたところでルイズは先程の出来事を思い出した。床に座れなどと言おうものならまたディオに殴られるか 黙って教室から出ていってしまうだろう。しかも今回は衆人監視の元で。 そうなったら恥ずかしい処の話ではない。使い魔も満足に御せないダメルイズ、やっぱりゼロはゼロだったと 嘲笑雑じりに馬鹿にされるのは目に見えている。 そこでルイズは―――使い魔と同じく剛巌不遜な態度に徹する事にした。 だがルイズは知らない。自分が無意識のうちにディオに恐怖していたという事を。 教室の先客にはキュルケもいた。キュルケの周りには何時も通り男生徒達が群がっている。 だが本当になかった事にしたのか、あるいはプライドが傷つくと考えたのかフレイムを蹴られた事を言い触らすつもりはないらしい。 それどころかディオと目線が合うとウィンクをする始末であった。 そんなキュルケを無視し、慣れた様子で『椅子に』座り、周りを見渡すディオ。 成る程、使い魔にも色々とあるらしいな。蛇や蛙、昆虫といった中にキュルケのサラマンダーをはじめとしてお伽話にしか 出てこないような動物がちらほらと見える。 だが、あいつらは全てジョジョのペットであったダニーと同じように主人の顔色を窺うようなゴミ以下の奴らでしかないッ! メイジ共は自分に都合良く動くように洗脳しただけのそれを友情とごまかしているだけなのだ! そうして暫くすると中年の優しそうな風貌をした女性が入ってきた。どうやら彼女が教師らしい。 「皆さん。春の使い魔召喚は、大成功のようですわね。このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に、 様々な使い魔たちを見るのがとても楽しみなのですよ」 と、ここで野次が飛ぶ。 「先生!一人その辺を歩いている平民を召喚しちゃって失敗した人がいます!」 小太りの生徒、マリコルヌだ。それにつられて爆笑する生徒達。 シュヴルーズはそれを睨むとルイズの方を向き、ディオをしげしげと観察する。 「おやおや。変わった使い魔を召喚したものですね。ミス・ヴァリエール」 その間の抜けた発言と皆の笑いに気をよくしたのかマリコルヌは更にルイズを馬鹿にし、ルイズの応戦に挑発する。 そのやり取りはシュヴルーズがマリコルヌ他の口に赤粘土を貼り付けて口を封じるまで続いた。 その間ディオは表情一つ変えず、まるで自分は全く関係ないかのように一連の騒ぎを冷ややかに見つめていた。 「私の二つ名は『赤土』。『赤土』のシュヴルーズです。『土』系統の魔法を、これから一年、皆さんに講義します。 魔法の四大系統はご存知ですね?ミスタ・マリコルヌ」 「は、はい。ミセス・シュヴルーズ。『火』『水』『土』『風』の四つです。」 生徒達には今更の話題であるらしく、あまり真面目に聞いていないが、ディオは熱心に聞いていた。 この世界では当たり前の事であるが、ディオにとっては初めて耳にする事ばかりである。 この先この世界で暮らしていく以上、どんな些細な事でも知っておく必要がある。 だが系統の話を聞いているうちにディオには一つの疑問が湧いてきた。『何故おれは召喚されたのか』という事である。 シュヴルーズの話では、使い魔は主人であるメイジの系統に沿ったものが召喚されるらしい。 だがディオには今の四つの系統に当て嵌まるような覚えはない。 主人の系統を知っておく事は大切かもな。そう考えるとディオは熱心に授業を聞いているルイズに尋ねる事にした。 横目でみるとシュヴルーズはどうやら石ころを錬金術で変質させたらしい。キュルケが身を乗り出して質問をしているが、 あまり興味は引かない。魔法や空想の生き物が存在しているのだ。錬金術くらい存在して当たり前である。 「ルイズ、少し聞いてもいいかい?」 「なによ」 ディオは小声で隣のルイズに尋ねる。 「さっき聞いたところ四つの系統が存在しているらしいが、君はどの系統なんだい?」 「…うっさい」 と、ルイズは表情を暗くすると呟く。 「主人の系統を知りたいのは普通だろ?まさか『虚無』の使い手なのかい?」 「うるさいって言ってるでしょ!?」 突然ルイズが怒鳴る。シーンと静まり返る教室。憮然とした顔付きをしているディオが ふとキュルケを見るとやっちゃったなというジェスチャーをされた。 「ミス・ヴァリエール!私にむかって煩いとは何事ですか!」 「あ…いえ…その…違…」そして盛大に勘違いをする教師。自分の話に熱中していて前後を聞いていなかったらしい。が、 「そこまで自信があるのであれば、あなたがやってみなさい!」 途端にざわめきだす教室。中には早々と机の下に潜り込む者もいる。 「先生、ルイズは止めておいた方がいいです!」 誰かが言う。 「どうしてですか?」 「あまりにも『危険』だからです!」 ルイズ以外の顔を出している生徒全員が頷く。 「な、なんなら私がやります!」 とキュルケ。しかし 「だが断る。」 容赦なく死刑宣告は下された。 「このシュヴルーズの好きな事はできないと思われている生徒に成功させることよ。 しかもミス・ヴァリエールには今回自信があるみたいです。あらゆる機会を捉えて生徒を成長させるのが教師の務めなのですよ。 さあ、やってみなさい」 今度こそ我先にと机の下に潜り込む生徒達。後ろで待機している使い魔を呼び寄せる生徒もいる。 ディオも周囲の危険を察知してゆっくりと机の下に潜る。 ルイズはそれらを横目に暫く逡巡していたが、やがて意を決すると教壇へと足を進めた。 「さあ、錬金したい金属を、強く心に思い浮かべるのです」 必死に連想するルイズ。その顔は美しいが悲しいかな、それを見ているのはシュヴルーズだけである。 次の瞬間、石と教卓が物凄い音を立てて爆発した。使い魔や生徒達の悲鳴や祈りの言葉が教室内に充満する。 グラウンド・ゼロにいたルイズはひっくり返って気絶しているシュヴルーズを見、頭に手を当てた。 「てへ、ちょっと失敗しちゃった」 その場にいた全員から突っ込みを入れられたのは言うまでもない。 先生が気絶してしまったので残りの時間は休講となり、ルイズは罰として教室の掃除を行う事になった。 そしてディオはルイズの文句を聞き流しながらルイズが『ゼロ』と呼ばれている事を理解し、今の出来事について考えるのであった。 to be continued…
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/912.html
真赤な鮮血が次々と眼前で広がる。 剣を振るい、肉を断ち骨を断ち命を絶つ感触が、快感を伴いゾクゾクと背筋を駆け上る。 泣き叫びながら逃げる子供を後ろから斬り伏せる。子供の次は泣き叫ぶ女を……。 そして次々と死体の山が出来上がり……。 「okirookiろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ」 そうそう、死体が次々と元気に起き上がって。 うん、朝になったら、死体でもちゃんと起きないと駄目よね。 『おはようございまーす』さっき倒れた子供も元気に起き上がる。 元気で宜しい……って? 「起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ。 朝だ起きろ起きろ起きろ起きろ。朝だ起きろ」 「っだーっうるさいうるさいうるさぁーいっ!!」 ルイズはあまりに耳障りな音に大声を上げて跳ね起きた。 「起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ……起きたか」 キッと音の元を睨み付ける。続けて窓の外を見る。 薄らと白んだ空、日が僅かに顔を覗かせんとしているまさに夜明けの瞬間だ。 「朝だ」 その声に再度、声の主の方を向く。 剣だ。剣が転がっている。 しかもその『朝だ』の瞬間に、なにやら偉そうに腕を組んだ犬面男の幻影が見えた気がする。 「だから朝だ起きろ」 「だから五月蝿いって言ってるでしょ!!」 ぶんっ その姿に腹が立ち、両手を上段に振り上げて叩き付けるように枕を投げ付ける。 「そもそも何で私の部屋に薄汚れた折れた剣が転がっててしかも偉そうに目覚まし……」 とまでぶつぶつ言ったところで気が付いた。 昨日の召喚の儀式を。 そう言えば帰って其の侭突っ伏したので服も其の侭、寝苦しくて少し脱いだらしく着崩れて物凄いだらしない格好。 面倒だなぁと思いながらよたよたと起き上がりベッドから降りてクローゼットへ向う。 ルイズが思い出したのは着替えないまま寝た事だった。 カツンッ 途中で枕ごと何かを蹴り飛ばした。 くるくるくるくるっ こつんっ アヌビス神は其の侭ベッドの脚にめり込んだ。 下手にでて目覚まし時計変わりまでしてやったのにこの扱い。まさに『何するだァー』である。 そう叫ぼうと思ったが目の前でお着替えが始まったので黙っておいた。 憶えておくべきだ、特に新しい体験は!未体験はよくない!”博物館への陳列”も”髭剃りの剃刀代わり”も体験済みだが少女の部屋でベッドの脚に刺さった状態で下から見上げる様に少女の着換えを閲覧するのは未体験だッ!!しかも着崩れ半脱ぎ状態からッ!! すとすとすとっ スカートがブラウスが乱雑に脱ぎ捨てられていく。 アヌビス神の名誉の為に記述しておけば、彼は少女の肉体への特別な性的興味は無い。 その肉を骨を斬り感触と血を味わう的な意味では興味津々だが、人間と同じ衝動的な性的欲求を持っていないのだ。 だが柔かい幼い肉と骨を断つコリコリとした感触は格別に思うし、それは興奮を伴う物と言っていいかも知れない。 その柔肌の感触をじっくりと刀身と刃で味わうのも悪くない。 強い敵をそれを上回る強さで斬り殺すのとは又違う格別な感覚だ。 つまりは何だ。 興味が有るのかと問われれば有る。 少女が好きかと問われれば、 大 好 き で す ! 胸が小さいのはどうかと問われれば、鎖骨から肋骨の骨を一気に断つ感覚を想像し易く、又その奥に脈打つ心の臓も意識し易く、 凄 い 好 み で す ! むちっとした肢体に斬り付けるのも当然好きだがそれは、 別 腹 で す ! ルイズは足元に転がる邪魔な脱いだ衣服を軽く蹴り飛ばし下着に手をかける。 するるるるっ パンティを少しおろし片足をそっと上げ……。 「憶えたぞ!!」(斜に構え両手でドォォ…ン!!と指差しているイメージで) 「は、はァ……?」 一糸纏わぬ姿となったルイズがゆっくりと振り返る。 「いやさっき飛ばした服がぶつかってついつい習慣で叫んだだけで特別に憶えた訳ではない!」 思わずアヌビス神は弁明と言う名の言い訳をしていた。 「こ…… このお下劣インテリジェンスソードぉぉぉぉぉっ!!!!!!」 朝っぱらからルイズの怒号が響き渡る。 ガツンッ 木製ハンガーが投げつけられる。 ここで三択……一つだけ選びなさい。 1、無敵に格好良い刀剣界のカリスマ、アヌビス神は誤解を解ける言い訳を思い付く。 2、突然の乱入者が助けてくれる。 3、現実は非情である。誤解は解けない。アヌビス神はロリコン確定!! 「よ、よし……1だッ!!500年を生きたこのアヌビス神ッ小娘の一人や二人あっさりと説き伏せてくれるわ!」 「誤解だ!別に貧乳少女が大好きという訳では無い、屈強な水夫も舌使いがレロレロ上手な優男もロリコン猿もマンモーニも好みだ!」 「尚の事悪いわーーーーっ!!」 ドガガガガガガガガガッ 怒りと共に次々とハンガーやら椅子やらが投げ付けられる。 「朝っぱらから五月蝿いわよルイズーッ!!」 突然扉が開かれ寝起きらしく、下着同然の格好の女がその長い赤髪を逆立てん勢いで怒鳴りこんでくる。 その目には全裸で壁に向って、半泣きで狂った様に次々と物を投げつけるルイズの姿が映る。 隣の部屋へ殺意を持って、攻撃を加える狂った姿にしか見えない。 昨日失敗しすぎて怒りで気が狂ったか、等と一瞬思考が過る。 使い魔召喚を常識の範囲を超え失敗して退学にならないかと、流石にそれは可哀想だと同情し心配したのが非情に莫迦らしくなる。 だが同時にこれもそれなりにやばくね?と気付き取りあえず押さえにかかる。 キュルケの思考は一瞬でぐるぐると駆け回った。 「落ち着いてルイズ、はしたないわよ!」 「な、何かってに入り込んでるのよキュルケ……て?」 ルイズは反論したところで気付いた。 全裸で大暴れしていた事を。しかもそれを1番見られたく無い者に見られ、あまつさえ止められた事に。 ここらへんでOP ふぁーすとKILLからはじまるーっ はじまらない 「で、何があったか話しなさい」 ベッドの上に転がっていた椅子を引っ張ってきてそこに座りキュルケが問う。 下品でスケベなインテリジェンスソードがグスグス、とベッドの上でシーツを纏い、涙目のルイズがぼそぼそ答える。 ベッドの脚にささったままのアヌビス神が、それは誤解だとかあそこで2番とかおかしくね?とかブツブツ言う。 キュルケが順を追って問いただし、説明を聞いていけば、この両者いまだにお互いが何者かも良く判ったいない様なのが判る。 ともあれ間に誰かが入らないと、直ぐに大騒動になりそうだったのでもう暫らく付き合う事にした。 正直壁をどっかんどっかんされるより、謎の剣の秘密を知ることが出来るほうがまだ良い。 名前はアヌビス神 手にした人を操る妖刀魔剣の類 人の血を好む妖刀魔剣の類 こことは違う世界から着た アヌビスとはその世界の神の一柱の名前でもある 振るうものは何者にも勝る達人となる 昨日叫んでいた事を元に問いただし(ルイズが物をぶつけたり爆破を試みたので拷問かも知れない)聞けた話しを軽く纏めるとこんな感じ。 「ねえルイズ、処分した方がよくない?」 キュルケはいきなり廃棄案を出した。 「「えーっ!?」」 いくらなんでもいきなり過ぎる言葉にアヌビス神が驚く、ついでにルイズも。 「人を操れて人の血を好むって確実にヤバイわよ?あなた気がついたら犯罪者よ?」 「そ、それもそうね。それに自分で神を名乗るとか、何処かのサイコなカルト教祖と変わらないわよね。エジプト九栄神とかそんなトンチキな神様聞いた事無いし」 「そうよさっさと新しく契約しなおした方が良いわ。場合が場合だから学院側も判ってくれるんじゃないかしら?流石にあなたが犯罪者の仲間入りってのは私も気分が悪いわ」 「ま、待て!落ち着け実はだな」 身の危険を感じ、慌ててアヌビス神が口を挟む。 「実は昨日操ろうとして失敗したりしてそのーなんだ。操って人殺しとか無いから。 な?な?」 「そう言えば昨日ルイズがアヌビス持ってたけど平気だったわね」 「流石良く見てらっしゃる!!友達思いっ!!」 ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシゲシッゲシッゲシッゲシッ ドガッドガッドガッドガッドガッドガッドガッドガッドガッドガッドガッ ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシゲシッゲシッゲシッゲシッ ドガッドガッドガッドガッドガッドガッドガッドガッドガッドガッドガッ ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシゲシッゲシッゲシッゲシッ ドガッドガッドガッドガッドガッドガッドガッドガッドガッドガッドガッ その言葉を言うなり、アヌビス神は何故か二人から盛大な暴力を受けた。 攻撃を憶えて同じ攻撃に対して無敵になる、とは言えそれは自由に動ける時の話しだ。無防備な状態で一方的に攻撃を受けて平気な訳ではない。 「ほーら平気平気」 アヌビス神は叩きつけようと己を手にしたルイズに触っても安全なのをアピールする。もう必死である。 「わざと操ってないだけじゃ無いの?」 訝しげに問うルイズにアヌビス神は答え語る、 「一瞬でも触れば操れる。そして操れるならこのまま操ってその女ぶった斬って逃げるに決まってるじゃないか」 と。 それもそうね~。とアヌビス神をぷらぷら振るルイズを見て寒気を覚えたキュルケは少し冷汗を垂らす。 「あっ」 ルイズが指を滑らせ、アヌビス神がすっぽ抜けキュルケに向って飛ぶ。 ざくっ 股ぎりぎりの所に突き立つアヌビス神。 「ちっ後少しの……」 「やっぱ処分した方が良いんじゃないの?」 アヌビス神の漏らした言葉に、ぴくっとこめかみに少し青筋を浮かべながら、キュルケはその剣を拾い上げる。 「え?」 ドクンッと何か脈打った気がした。 アヌビス神も力が通うのを感じる。 「ふふふふふ……」 がくっと力が抜け俯き加減になったキュルケが、不気味な笑いを浮かべる。 「ちょっと…… キュルケ?」 首をひょいっと伸ばして覗き込むルイズに向って、 「よくも今までコケにして、一方的に好き放題玩具にしてくれたなッ!!」 表情が一変したキュルケが、アヌビス神を振り上げる。 ザクッ 勢い良く振り下ろされた斬撃がベッドの角を斬り飛ばす。 「ひぃっ」 ルイズは反射的に後ろへと飛びのく。しかしそれは斬撃を避けたものの、自らの逃げ場を失わせる事となる。 ベッドの角へとじりじりと追い詰められる。 傍から見た目、ベッドの上でシーツ一枚で身を覆ったルイズにせまる下着同然の格好のキュルケだ。 「終わりだッ。ゼロの奇妙な使い魔-完-!!」 「や、止めなさーい!!この馬鹿犬ぅっ!!」 両腕で身を庇うようにして身体を丸めながらルイズが叫ぶ。 ドクンッ またキュルケの中で何か脈打つ。 アヌビス神の柄でルーンが輝き、それと共にキュルケに意識が戻ってくる。 ぽとりとアヌビス神を取り落とし。 「あ、あら?」 何時の間にかベッドの上でシーツ一枚で半泣きのルイズに迫っている自分に気付く。 一瞬意識が飛んだ気がしたが、それは置いといて気まずい、ひじょーに気まずい。その手の趣味は無いつもりながら、この体勢は不味い。 ここで三択……一つだけ選びなs 違うっ!こういう時は!逃げるんだよォォォーーー! 「お、お邪魔したわね。ほほほほほほほほほ」 キュルケはそそくさと逃げ出した。 じとぉー…… ベッドの上で転がるアヌビス神に向けられるルイズの涙目の視線が痛い。 「けっあの女油断も隙も無いって奴だ!まさかこんな子供な身体目当てだとは」 アヌビス神はドキドキしながら声をかけてみる。 「そうね……」 「だろ?」 「それはあんたでしょぉぉぉーーーーっ!!」 ルイズは手元に転がっていた木製ハンガーを拾い上げ……。 ガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッ ガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッ ガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッ 激しく殴りつけた。 ひたすら殴りつけた。 全身全霊全力を持って殴りつけた。 ガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッ ガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッ ガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッガスッ はぁっはぁっ 肩で息をしながら、上等な樫(超カタイ)で出来たハンガーがボロボロになるまで殴るだけ殴って少し落ち着いたルイズは考えた。 やはりこいつは他人を乗っ取る事が出来る。 わたしを乗っ取る事は出来ない。 わたしが命令したら乗っ取りが解除された。 この三つ、この三つは確か。 理由は判らないけどわたしが持っている分には安全で、多分それは使い魔だからとかそんなところじゃないかなと思う。 つまりは処分するか、極力近くに置いておき、迷惑をかけ無いように躾るか。その2択なのだ。 処分は……手間が多そうだし学院側を説得できなければ無意味だ。それよりこの他人を操る能力はとても使えるんじゃないかしら?とも考えた。 はっきりいってここまで他人をローコストに一方的に操る事が術など聞いた事が無い。 「そしてわたしならばそれを制御できる……っと。 それに躾……、躾るって何か良いわよね、ふふふふふっ」 何時の間にか思考が口にで、ぶつぶつと言葉を繰り返している。 「あんたアヌビス神って言ったわよね」 「う、うむ」 「今後わたしに逆らわないで協力するっていうんだったら使い魔として仕える事を許すわ」 「……」 「さっきのでも判ったけどあんたはわたしに逆らえない。 でしょ?」 「……ぐ……む」 「あんたがわたし以外の人間を操れるからって幾ら操ってもわたしを斬ることはできない。 違うかしら?」 「……そ、それは」 ガンッ 半壊したハンガーを壁に叩きつける。 「わ、判った……」 渋々アヌビス神は承諾する。 「で、使い魔とは何をすればいいのだ?」 「そうね、使い魔のすべきことは三つ有るわ。 まずは一つ目。 主人の目となり耳となること」 「どういう事だ?」 「使い魔が見聞きした事は主人にも判るのよ」 「今の所その様な事が有った様では無いが……」 「じゃあ駄目ね、使えないわねやっぱ処ぶ」 「ちょ、ちょっと持って見てくれ」 処分という言葉に敏感に反応するアヌビス神、慌てて売り込みをする。 「何よ……」 そっと手を伸ばして柄を握る。 「軽く振って見てくれ」 ルイズは言われるままに軽く振る。 「あら?」 何だか視界以外の場所、つまり己の背後の様子等が判る気がする。 やはりな……支配はできないが手にされた時主人とは本体同然に繋がる……か スタンドの見た物は本体も知覚する、ただそれだけの事だがルイズは使い魔の役目の一つ、感覚の共有が完全ではないにしろ可能と思い満足する。 「ま……剣なんだしちょっと違った事もあるのかもね」 「ほっ」 アヌビス神は少し安心した。 「二つ目。 ご主人様が秘薬とか欲しいっ!探してきて頂戴と言ったら、ぱぱっと探して持って来ること。 これは流石に無理よね。期待もしてないし、勝手に誰かを操ってうろつかれても困るし」 「この世界の知識を持ってないのでどちらにしろ無理だ」 「んで三つ目。 ご主人を守ること。これが一番大事なんだけど」 「ふんっ、任せておけ。 この無敵のアヌビス神に敵う者などいないのだからな」 「へぇーどうやって?」 ぷらぷらとアヌビス神を目の前で揺らしながら、ルイズが冷たい視線を送る。 他人を乗っ取るのは無しと言われ、手にするのは操る事が出来ないルイズである以上お手上げである。 「そ、それはその時に考える!」 自身満々で言った手前引っ込みが付かずに勢い良く言葉を返すが、うっわー、なにこの屑とかそんな感じの冷たいゾクゾクする様な視線が突き刺さる。 「四つ目、 決してスケベしない事」 「三つじゃなかったのか……って、だからそれは誤解だッ!」 「五つ目」 「まだあるのか!」 「掃除洗濯とか出来る?」 「無理言うな!」 「期待はしてなかったわ、言ってみたかっただけよ」 「六つ目」 「え、えー!?」 「わたしの事はちゃんとご主人様と呼ぶ事、呼び捨てとかにしたら塩水に漬けるから」 「……使い魔の心得の時に言わないといけない事なのか?」 「五月蝿い馬鹿犬」 どうやらちびちびといたぶって、先ほどの復讐をしているらしい。 「あんたの事はアヌビスで良いわね?神とか付けるの面倒だし、何か偉そうで腹立つし」 アヌビス神はその1文字が大事なんだよォォォ。とも思ったが、抵抗は無意味そうなので従う事にした。 「で、何時までも抜き身なままなのも不味いと思うんだけど……鞘は?」 「エジプト」 意味不明な単語で答えられた上に、話しても長くなって面倒臭そうだったので、取敢えずは適当な布を巻いておく事にした。 ともあれアヌビス神はルイズの使い魔として認められた。 To Be Continued 1< 戻る