約 1,076,918 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/744.html
ルイズが起こした爆煙が晴れると……そこには一本の剣が突き立っていた 「見ろよ! 『ゼロ』のルイズは剣を喚び出したぞ!」 「凄いな……負の意味で」 「いや、インテリジェンスソードの可能性も…」 周囲からの嘲笑を右から左へ聞き流し、剣を手にとってみる ルイズの頭の中に、誰かが語りかけてくる ──わたしの名はアヌビス…おまえはわたしの本体になるのだ…… (あんた…インテリジェンスソード……?) ──おまえは達人になった…誰よりも強い剣の達人だ…… ──私を使って殺すのだ…… ピシィィィン 「チクショオオオオ! くらえギーシュ! 必殺エクスプロージョン・スラッシュ!」 「さあ来いヴァリエール! 僕は実はモンモランシー一筋だぞオオ!」 ザン! 「グアアアア! こ、このトリステインの種馬と呼ばれるギーシュ・ド・グラモンが…『ゼロ』のルイズに… バ…バカなアアアアアア」 「ギーシュがやられた…」 「フフ…所詮ギーシュはドットクラス… 『ゼロ』のルイズに負けるとはメイジの面汚しね…」 「くらええええ!」 ズサ 「グアアアアアアア」 「やった…ツェルプストーとついでにタバサを倒したわ… そしてこの間学院に侵入した泥棒・『土くれ』のフーケを倒せば、もうあたしをバカにする奴はいなくなる!」 「よく来たわねミス・ヴァリエール…待っていたわ…」 「オスマン学院長の秘書のミス・ロングビルが『土くれ』のフーケだったの…! それにこの魔力は…トライアングルクラス…!」 「ミス・ヴァリエール…戦う前に一つ言っておくわ。私が盗んだ『破壊の杖』だけど、私には使い方が分からなかったの」 「な、何ですって!?」 「だから学院の宝物庫に戻しておいたわ。あとは私を倒すだけね、フフ…」 ゴゴゴゴ… 「上等よ…あたしも一つ言っておくことがあるわ あたしの魔法が失敗して爆発ばかりなのは『虚無』の属性に関係があるような気がしていたけど、別にそんなことはなかったわ!」 「あらそう」 「ウオオオいくぞオオオ!」 「来なさい小娘!」 ルイズの魔法が世界を救うと信じて…! ご愛読ありがとうございました!
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1014.html
第2章 中編 「……50Mプールぐらいあんじゃねぇか?ここ。」 トリステイン魔法学院の食堂は(ry …とにかく広くて豪華です。 この学院では、マントで学年分けしてるみたいだ……。 一年生は ”marrone”(伊:茶色の) 二年生は ”nero” (伊:黒い) 三年生は ”viola”(伊:紫色の) 一年生より、三年生の方が凄い魔法とか使えるのか? 食堂には生徒以外にも教師が朝食をとりに来ていた。 (教師か…。 それこそ”凄いヤツ”がいてもおかしくないな) キョロキョロと辺りを見渡していると、ルイズが講釈し始めた。 「どう? 凄いでしょ。」 「あぁ。とても豪華だし、人もいっぱいいるな。」 得意げにふふんと鼻を鳴らし、話を続けるルイズ。 「トリステイン魔法学院が教えるのは、魔法だけじゃないのよ」 「魔法だけじゃない?」 「メイジはほぼ貴族なの。貴族たるべき教育を、存分に受けるのよ」 食事も”貴族らしく”ってことらしい。 マナーは勿論、質と量も。 ほんとは、この食堂へは『平民』は一生入れないらしい。 それはそれは。とあいまいな返事を返しつつ、ルイズのため椅子を引く。 桃色がかったブロンド娘は気品良く、椅子に腰掛ける。 「隣に座っても?」 こちらもマナーとして一応御主人様にお伺いを立てる。 「残念でした。 あんたは…」 そこまで言って、ルイズは固まってしまった。 どうした? スタンド攻撃でもされたか? オラオラですか? 無駄無駄ですか? 「……」 「もしかして…」 「……」 「オレの分、準備していない?」 「…Yes!Yes!Yes!……(OH MY GOD!)……」 「………(ドジこいたーッ! 昨日厨房に言い忘れてた! とっておきの作戦があったのに!こいつはいかーん! チクショー!!)」 「……それはねぇよ。 ルイズ…」 「き、貴族でも、極々稀にミスはするものよ!」 「………」 今度は使い魔が黙る。何か訴えるかのような目つきでルイズを見つめる。 「……な、何よ?」 「―――ミスより」 「は?」 「ミスよりキスがいいな……」 「…なッ!!」 今度はルイズが赤くなる。それにして感情の起伏が激しい娘だ。 「御主人様より、『ごめんねのキス』を頂ければ幸いです…」 仰々しくお辞儀をして、ゆっくりと頭を上げる。 …ヤバイ。 肩を小刻みに震わせている。 キレるな。これ。 調子に乗るんじゃあない!とテーブルにあったフルーツを投げつけられる。 貴族のマナーは一体何処へ……。 「『食べ物を粗末にしちゃいけません!』って、危ないっ!」 至近距離である。いくら少女の力でも痛い。 特に落とさないように、掌で受けるから痺れる痺れる。 数個投げると、ルイズは椅子に座りなおし、そっぽをむいたまま告げる。 「……そ、それでも食べてなさい!」 「……キスは?」 今度は燭台を投げようとするルイズを見て諦めた。 …朝は『濃い目のエスプレッソに、砂糖をたっぷり入れたヤツ』って決めてんだがなぁ……。 怒るルイズから逃げるため、食堂の壁際まで逃げてきていた。 でもエスプレッソどころか、コーヒー自体あるかどうか……。 パスタやピッツァは? そもそもトマトはあんのか? …すげー不安だ。 朝食は軽めに済ませる性質(たち)のスクアーロは、フルーツと思わしきものに噛り付く。 リンゴだよな?… こっちは…どう見てもオレンジ……。 元の世界とほとんど似ているが、なんとなく違う気がするフルーツを味わう。 味は悪くない。というか美味い。……良かった。これで食事は期待できる。 この味が”美味い”という感覚ならば、料理も高水準だろう。 しかし、これはあくまでも貴族用だ。 使い魔でしかも平民(とされている)の自分の食事はどうだろう? 朝はともかく、昼食や夕食が貧しいものであったら……。 「かなりヤバイな…(自制が利くかどうか… きっと暴れるね…)」 交渉なり、実力行使なりで、どうにかしなくては……。 ルイズと交渉するか…? だめだろうな… きっと…。 窃盗・恐喝でもするか…? …それじゃ、ただのチンピラだ。 …最終手段だな…。 もっと、楽で確実で。できれば美味いものを…。 一年生の女子生徒が数人、こちらを”ちらちら”見ているのに気づく。 笑顔で手を振る。 あ… 貴族様だから、怒るか無視する? (あれ… 笑ってる… というか、喜んでる?) 以外にも邪険にするでもなく、キャッ!キャッ!とはしゃぎながら食堂を出て行った。 少しだけ気分が和んだ。 なるほど。どこの世界でも”乙女は乙女”なのか。 ついで(…といっては失礼だが)に、料理を運ぶメイド達にも手を振る。 一人一人、目が合った順に手を振る。 流石に仕事中であるし、目の前で貴族様の給仕をしているからか、表情や仕草に変化は無い。 そりゃそうだ。と割り切ろうと思った時、一人の黒髪のメイドが横を通る。 (この子には、最初の方で手を振ったな… 黒髪か… うん!”ディ・モールト”可愛い!) 通り過ぎると思った時、目の前で立ち止まり、感謝の意を述べきた。 「御心遣い、ありがとうございます。 貴方様も、お仕事頑張ってくださいね」 …マジで? この世界の女性は優しいなー。 …たとえ社交辞令だとしても。 コチラコソ、アリガトウ。キミモガンバテネ。 ……何故かカタコトでお礼を返す。 メイドは微笑を湛えたまま、礼をして厨房の方に下がっていく。 なるほど、貴族相手(オレは違うが)には笑顔と礼儀が基本てか? 感心しながら、メイドが下がっていった厨房の方をぼーっと見る。……厨房? ―――厨房関係者を味方につける? 余った食材なら、少しぐらい分けてくれるだろうし、さらに料理できるやつなら申し分ない。 良し。決定。後で厨房に行こう。 とりあえず、行けば何とかなるだろう! 気づくと、昨日は何も食べていなかったせいか、果物を残さず全て食べていた。 遠くにいる御主人様も、どうやら食事を終えたようだ。 さあ、御主人様の元へ馳せ参じますか―――。 「…意外と順応してるなぁ。オレ。」 自分の適応能力の異様な高さを感心しながら、うんと背伸びをした。 なんだかんだで、朝飯抜きにせず、 ちゃんと自分に果物を(投げつけて)与えたくれた (すこ~しだけ)優しい御主人様に (すこ~しだけ)感謝しながら ルイズの元へ歩き出す―――。 「…あんた、一年生とかメイドに『手』振ってたでしょ? 笑顔で。」 「え? あ、あれは…。 挨拶です。挨拶。」 「今日から三日間、ご飯抜き。」 「……飛びてー」 前言撤回! 全然優しくない! …早く食料事情を何とかしなければ……。 ―――今晩当たり襲いかかろうか? ……なんとも不穏当なことを考える鮫であった。 「The Story of the "Clash and Zero"」 第2章 ゼロのルイズッ! 中編終了 To Be Continued ==
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/890.html
晴天の中、爆音が響き渡る。 もはや説明は要らないだろうが、3行で説明しよう。 ルイズが毎度のように魔法を失敗させ、激しい爆発を引き起こした。 貧乳はステータスだ。 ルイ茶は少ししょっぱい。 何度目かの爆発の後、ルイズはとうとう何かを召喚した。 「やった、やったわ!! ゼロのルイズ完ッ!! 次回よりミラクル魔法少女みるきぃルイズがスタートしますッ!!」 どう考えてもヒットしない次回作は無視するとして、 モクモクと上がる砂煙が晴れてくると、召喚されたモノが見えてくる。 さっきから描写を全てカットされていた同級生たちも興味深げに見てみるが、 「皿?」 「鏡?」 「和同開珎?」 どうみたら和同開珎に見えるのかと小一時間(以下略。 爆発の中心地であった焦げた大地には銀色に輝く円盤があった。 他のSSと同様にルイズはゴネたが、輝ける炎蛇のコルベールは許可しなかった。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」 諦めて円盤に口付けをしたが、いつまでたっても円盤にルーンが浮かんでこない。 「おぉるいず しっぱいするとはなさけない」 「えー、マジで契約失敗してんのぉー?契約失敗が許されるのは小学生までだよねぇー」 「逆に考えるんだ。『変なモノと契約しなくて済んだ』と考えるんだ」 ギャラリーが騒がしいが、ルイズ本人はそんな事を気にする余裕は無かった。 (え?なんで??他のSSではちゃんと契約は出来てるじゃない!) (なんで私だけ契約すら出来ないの!?) (もしかしてクイーンオブへっぽこルイズですか私!!!??) 絶賛混乱中だ。 メダパニにコンフュを重ね掛けてエンポリオのDISCを使ったみたいだ。 結局、召喚自体は成功したのだからと儀式は終了した。 契約については後日コルベール先生の指導の下で再チャレンジすることとなった。 レビテーションやフライで移動する級友たちを尻目に、 一人ルイズはとぼとぼと歩いて自室へ向かった。 その日ルイズは夕食時に食堂へ行かず、自身の情けなさに涙していた。 何回も失敗してやっとの思いで呼び出したのが円盤、しかも契約出来なかった。 栄えあるヴァリエール公爵家に属する身でありながら、なんと不甲斐ない事だろう。 もし再チャレンジでも契約できなかったら、退学もやむを得ないだろう。 ルイズがそんなネガティブな考えに苛まれていると、部屋をノックする音が聞こえた。 「失礼します、ミス・ヴァリエール。お夜食を…」 「入ってこないでッ!!!!」 何が悪かったかといえば何もかも悪かった。 夜食を持ってきたメイドは大きな声で怒鳴られて、 持っていたドアノブを勢いよく手放しその衝撃でドアは開いてしまった。 ドアが開いたことにルイズは過剰なまでに反応し、 手近にあったものを手当たり次第ドアへ向けて投げつけた。 枕、毛布、パンティ、杖、花瓶……そして円盤を。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/696.html
朝になってアルビオンへ出発するため正門にでる。 おれの荷物はデルフリンガーのみだ。 ルイズは旅用の荷物のほかに王女から預かった『水のルビー』とやらを持っている。 バナナはおやつに入る?って聞いたら怒られた。これは遠足じゃないらしい。 お、ギーシュがやってきた。さあ出発だ。 「お願いがあるんだ」 と思ったら何か話があるらしい、空気を読め、まったく。 「僕の使い魔を連れて行きたいんだが、良いかい?」 まったく、そんなことかよ 「ダメだ」 「何で!?せめて見てからでも良いじゃないか!」 「ダメだ」 「ヴェルダンデ、出てきてくれ」 そういってギーシュが地面を足で叩く。話を聞け。 すると大きなモグラが現れた。 「これが僕の可愛い使い魔、ジャイアントモールのヴェルダンテさ!」 「なるほど、で味は?」 「食べる気かい!?そんなことしちゃダメだよ!」 食ったらウマそうなんだがなぁ 「アルビオンに行くのよ、そんなの連れて行くなんて、ダメよ」 今まで黙ってたルイズが口を挟んできた。 「そんな…お別れなんてイヤだよヴェルダンテ…」 ギーシュが悲しそうな声で言う、だがそのモグラはルイズに向かって突進した。 そのままルイズを押し倒す。 「おお、これは中々見ごたえがあるな」 それを見たギーシュの感想がこれだ。まったくそのとおりだ、ある意味官能的で実に良い。 「あんたたち!早く助けなさいよ!」 えー、もっと見たいのに。 「このモグラ!姫様から頂いた指輪に鼻をつけないで!」 指輪?水のルビーか? 「ああなるほど、ヴェルダンテは宝石が大好きだからね」 よし、ならこいつは部下にしよう。ついでに後で盗む予定のルビーの罪もなすりつけよう。 さて、そろそろ助けようかな、でもルイズはどうせ感謝しないだろうしどうしようかな。 あ、今の右ストレートは痛いぞ~、助けるのはモグラの方だなこりゃ おれがそのまま傍観するか否かを決めかねていたら強い風が吹いてモグラを吹き飛ばした。 風の魔法か?おれが辺りを見回すと。 おっさんがいた。 そのおっさんはアンリエッタが来る時にルイズが見ていたおっさんだった。 「貴様、僕のヴェルダンテに何をするんだ!」 ギーシュが騒いだ。うるせーなあ。 「僕は敵じゃない。魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルドだ。」 なるほど、おれ達だけじゃ不安だから援軍としてやってきたって事か、だが納得できない事がある。 「敵じゃないのに何故攻撃した?」 敵じゃないならモグラを吹き飛ばす理由などない。これは絶対に不自然だ。 「すまない。婚約者が襲われているのを見て見ぬ振りはできなくてね」 そうかヴェルダンテの婚約者だったのか。変わった趣味だがそれなら納得だ。 「ワルド様!」 いきなりルイズが声を上げた。ちゃんと謝っとけよ、お前はコイツの婚約者をボコボコにしてたんだから。 「久しぶりだな!ルイズ!僕のルイズ!」 あ、婚約者ってルイズの方か、なるほど婚約者が犯罪者にならないようにモグラを吹き飛ばしたのか。 って納得いかねぇーーーー! なんでルイズが婚約してるの!? モグラじゃなくてルイズ!?ありえねーだろ!あ、モグラの方がありえないか。 つまりお前はロリコンか?ロリコンなのか?おれもだ! おっと混乱しちまった。 おれはロリコンじゃないぞ、ロリコンでもあるってだけでそれ以外もオッケーだ。 だがコイツは真性のロリコンだ。間違いない。 話が脱線したな、元に戻そう。 そのロリコンはルイズを抱え上げ、 「彼らを紹介してくれないか?」 と言った。紹介くらいならまだ良い、だがおれをそっちの道に引きずり込むなよ。迷うから。 「ギーシュ・ド・グラモンと使い魔のイギーです」 ギーシュは頭を下げ、おれも一応下げておいた。目を付けられたくないからな。 「この犬がルイズの使い魔かい?フーケを捕まえた時は大活躍だったらしいね」 まあな、スゴイだろ。でもロリコンのほうがスゴイな、絶対。 「さて」 そういってワルドは口笛を吹いた。その口笛が合図なのかグリフォンが現れた。 そのグリフォンにルイズを抱えたまま跨り、杖を掲げて叫んだ。 「では諸君!出発だ!」 ロリコンのクセに仕切るな。 後で上下関係をハッキリさせてやるぞ。 おれはそう誓いながら馬に乗り込み(もちろん部下にしてある)出発した。 To Be Continued…
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/729.html
ルイズにはなにが起こったかわからなかった。 目の前のものが『何』かは理解できる。 だが『なぜ』そこにいるのか? それが理解できなかった。 周りの皆の嘲笑がそれを理解させた。 「さすがは『ゼロ』のルイズ! 平民を召喚するなんて!」 「君はやればできる子だと思ってたよ! ププッ」 ルイズは瞬時に行動に出る。 「ミスタ・コルベール! やりな――」 「だめです無理です儀式です。君には最後までやってもらいます」 ハゲは否定する。頭皮は拒絶する。それは絶対的宇宙意思―― ルイズはあらためて『それ』を見る。 相手のほうも、なにが起こったかわからないようで、怯えている。 それにしたって異常な怯え方だ。 よく見るとずぶぬれで、手には何か包みを持っている。 「ちょっとアンタ!」 声をかけるとビグゥッ! と震えた。ルイズぷちショック。 「あ…あなたは?」 「…聞いて驚きなさい、わたしの名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール!」 そして! 間髪いれず! 一気に!! 「平民の分際で! 貴族にこんなことされるんだから感謝しなさいよね!」 その唇に! キスをッ! ブチュルブチュルとブチ込んだッ!! そいつの左手にズギュンとルーンが刻まれていく。 (間違いないわ…ルイズ・ド・ラ・ヴァリエール…『この人』は……) 『女の子が好き』 ~百合の使い魔~始まらないよ! 一体なんでこんな事になったのか、今でもわからないわ―― ――わたしはただ、小瓶を拾ってあげただけ。 このグラモンとかいう人をどうこうしようなんて、まるで考えてなかった。 小瓶を机の上に置いた途端、彼の周りが騒がしくなったの。 それから――すごい平手打ちだったわ。食堂中に音が鳴り響いたもの。 ――でも、それだけじゃなかった。 ワインを頭からかけられて、極め付きの一言―― 「最低! もうそのワイン臭い面見せるんじゃないわよッ!」 彼は私のことをすごい目つきで見てた。 「君は確か…ミス・ヴァリエールの……」 「ちょっとギーシュ! 人の使い魔に何ちょっかいかけてんのよ!」 そこに彼女が割って入ってきた。 「使い魔の不祥事は主の不祥事……償ってもらうぞヴァリエール! 『決闘』だッ!」 「はぁ? 急に何言い出してんのよアンタ?」 「ぼくが勝ったら……」 「話聞いてる?」 本当に、何がなんだかわからないの。 「彼女をぼくにくれッ!! 決闘だ! 『愛』のために!!」 (これで間違いないわ…ギーシュ・ド・グラモン…『この人』は……) 『私のことが好き』 ~百合の使い魔~決闘祭りよッ! ルーシーは、特に決闘に興味が無かったので、ルイズの部屋でごろごろしていた。 何しろ、この部屋には『脊椎』が置いてあるのだ。出来るだけそばにおいておきたい。 もしかしたら『遺体』のパワーで突然元の世界に戻れるかもしれない。 ガチャリ、とドアが開いてルイズが入ってきた。 「お帰りなさ――どうしたのその顔!?」 ルイズの顔は随分とひどく腫れ上がっていた。 そして同時に晴れ上がった顔でガッツポーズを取るルイズ。 ルイズの話によると、決闘は両者が同時に杖を落としてしまい、素手による乱闘に突入。 ギーシュは空気投げでルイズを翻弄し、ルイズは逆立ちでギーシュを困惑させる。 それでも決着がつかず、お互いを強敵(とも)と認め合ってその場は収まったらしい。 (女の子とガチで殴り合って引き分けって、正直大概よね) (スティーブンだったらこんな華奢な女の子、一発でノシて今頃サーカスに売り飛ばしてるところよ) (ルイズってそういう層に需要が高そうだし、割りといい値段がつくわね) (そういえば家柄も貴族だし、キュルケのサラマンダーどころの話じゃないわ) (好事家に見せたら、値段なんかつかないわ) 夫のことを思い出してセンチな気分になるルーシー。彼は今大丈夫だろうか? ルイズがベッドに寝転んできたので、いつものように「よちよち」と頭を撫でてやる。 ゆっくりと何回か撫でてやると、ルイズは気持ちよさそうに眠りについた。 だいぶルイズも主従関係というものがわかってきたようだ。 何者かに見られている感覚を味わいながらルーシーは思った。 (間違いないわ…オールド・オスマン…『あの人』は……) 『スケベジジイ』 ~百合の使い魔~盗撮祭りよッ!
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/387.html
康一とギーシュが、ヴェストリの広場で決闘を始めていた頃、学院長室ではコルベールが泡を飛ばしてオスマン説明していた。 春の使い魔召喚の際に、ルイズが康一という平民を呼び出したこと。 そして、その康一に刻まれたルーン文字が気になり、それを調べると、『始祖ブリミルの使い魔たち』という文献に、全く同じルーン文字が載っていたことを。 「なるほどのう……」 オスマンは、コルベールが描いた康一のルーン文字のスケッチを見ながら呟き、言葉を続けた。 「して、これは何の使い魔のルーンなんじゃ?」 「それなんですが、ここを見て下さい!」 コルベールは、『始祖ブリミルの使い魔たち』に書かれていた、ルーン文字の項を開いた。 そこには、様々な使い魔に刻まれていたルーン文字が表のようになって載っていた。 その表の中に、康一の手に刻まれたルーン文字と全く同じルーン文字が載っている。 オスマンは、そのルーン文字を見ながら目を見開いた。 「ふむ……。ほほう、これは……」 「もうお分かりかと思いますが、このルーンは何の使い魔のルーンであったか、書かれてないんです!」 オスマンは、長い髭を弄りながら首を傾げた。 「妙じゃのう……。他のルーンは全て名前が記されておるぞ。 ここに書かれている『ガンダールヴ』とかな……。なぜこれだけ記されてないんじゃ?」 何も名前が記されてないルーン文字を指差して質問してくるオスマンに戸惑いながらも、コルベールは質問に答える。 「自分なりに、二つの仮説を立てて見たのですが……」 「ふむ、言ってみなさい」 コルベールは、禿げ上がった頭をハンカチで拭きながら言った。 「まず一つは単純なものでして、単に書き忘れたか、ここの文字だけ剥げてしまったか……です」 「なるほど。して、もう一つは?」 「召喚後すぐに、何らかの原因でその使い魔が死に至ったか……です」 コルベールは、コホン、と咳払いをしてから話を続けた。 「この場合、何の種類で、どんな能力を持っていたのかわからず、名を記すことすら出来なくなりますからね……」 オスマンは瞑っていた目を静かに開くと、悟ったように言った。 「つまり、こういうことか? 『あの平民は未知の能力を持った、未知の使い魔である可能性がある』」 「Exactly(その通りでございます)」 コルベールが頭を下げながら答える。 そんなやり取りが行われてる時、ドアをノックする音が聞こえてきた。 「誰じゃ?」 オスマンがドアの前までいくと、ドアの向こうからロングビルの声が聞こえてきた。 「私です。オールド・オスマン」 「なんじゃ?」 「ヴェストリの広場で決闘をしている生徒がいるようです。大騒ぎになっています。 止めに入った教師がいましたが、生徒達に邪魔されて、止められないようです」 オスマンは、髭が揺れるほど深いため息をついて言った。 「まったく、暇をもてあました貴族ほど、性質の悪い生き物はおらんわい。で、誰が暴れておるんだね?」 『暇をもてあました貴族ほど、性質の悪い生き物はいない』と聞き、 貴方もその一人よ、クソジジィ! と思いながら質問に答えるロングビル。 「一人は、ギーシュ・ド・グラモン」 その名前を聞き、やれやれと言った感じで俯くオスマン。 「あの、グラモンとこのバカ息子か。あんな寄生虫なんぞ、放っておきなさい」 「しかし……」 「おおかた女の子の取り合いじゃろう。相手は誰じゃ? どうせマリコルヌのカスあたりじゃろう」 仮にも自分の生徒を、寄生虫だのカスだの酷い男だ……。などと思いながらコルベールは聞き耳を立てている。 「……それが、メイジではありません。ミス・ヴァリエールの使い魔の少年のようです」 オスマンとコルベールは顔を見合わせた。 「……なんじゃて?」 「ミス・ヴァリエールの使い魔の少年です。教師達が、決闘を止めるために『眠りの鐘』の使用許可がほしいと……」 オスマンの目が、鷹のように鋭く光った。 「アホか。たかがそんなことの為に、秘法を使えるか。もう一度言うぞ、放っておきなさい」 「……わかりました」 ミス・ロングビルが去っていく足音が聞こえた。 コルベールは唾を飲み込んで、オスマンに質問した。 「オールド・オスマン、まさか……」 「うむ、その『まさか』じゃ。もしかしたら凄いものが見られるかもしれんぞ」 そう言って、オスマンは杖を振った。 壁に掛かった大きな鏡に、ヴェストリ広場の様子が映し出される。 「オールド・オスマン! 危険すぎます! 万が一、あのルーンにとてつもない能力が秘められていたら……」 「その時は私が責任を取ろう。私はただ純粋に、どんなものか見てみたいのじゃよ。キミだってそうだろう?」 コルベールは静かに目を瞑り、軽く頷いた。 オスマンは、鏡の前にあった椅子に座り、ギーシュと康一の戦いの様子を静観し始めた。 康一の怒りは頂点に達していた。 目の前いる男、ギーシュは何の関係もないシエスタを傷つけた。 彼女は気絶しただけで済んだが、もし当たり所が悪ければ最悪の事態もありえた。 「よくもシエスタさんを……」 そう言って、康一は怒りの眼差しでギーシュを睨みつける。 一方、ギーシュは突然の乱入者によって完全に動揺していた。 「ぼ、僕のせいじゃない……あ、あんなの予測できるはずがない……!」 ギーシュは、今まで女を泣かしたことは何度もあったが、殴ったりしたことは一度も無かった。 それは、貴族だろうと平民だろうと、美人であろうとブスであろうと例外は無い。 ギーシュにとって、女を殴ったり蹴ったりするのは、この世でもっとも最低の行為であると思っているからだ。 「あ、あれは……あれは不可抗力だ……」 しかし、不可抗力とはいえ、女を殴ってしまった事実は揺ぎ無かった。 康一は、どんどんギーシュに近寄ってくる。 ギーシュの頭の中は、後悔、混乱、恐怖といった感情がぐるぐると交差していた。 「ち、近寄るな……」 ガタガタと震えながら後ずさりするギーシュ。 康一が迫ってくる恐怖に我慢できなくなり、ギーシュの理性が弾けた。 「ぼ、僕のそばに近寄るなああー――ッ!」 鬼でも見たかのような表情で薔薇を振り、ゴーレム達に攻撃を命じる。 一体のゴーレムが康一を攻撃しようとした瞬間、『ドガァァァン』という音と共に、粉々に弾けとんだ。 「あ……ああ……うわぁぁぁああああああー――ッ!!」 二体目、三体目のゴーレムが康一に殴りかかる。 康一が、少し体をずらした次の瞬間、二体目と三体目のゴーレムが『ズバッ』という音と共に、豆腐のように切り裂かれた。 二体のゴーレムは、真っ二つになって地面に転がる。 「く、来るなッ! 来るなッ! 来るなぁぁぁあああああー――ッ!!」 残りのゴーレムで、一斉に康一を攻撃する。 四方を取り囲み、完全に康一の体を捕らえたと思った瞬間、『ドンッ』という音と共に、全てのゴーレムが上空に吹っ飛んだ。 康一の後方で激しい金属音を立てながら、ゴーレムは思い切り地面に体を叩きつけ、バラバラに分解した。 「うぁ……ぁぁああ……」 全てのゴーレムがやられ、無防備になったギーシュを守る者はどこにもいなかった。 ギーシュの頭に絶望の二文字が浮かんだ。 一瞬でゴーレム達を倒したバケモノ、勝てるわけがない……。 そう思いながら、震えていたギーシュの目の前に康一が迫る。 「ひッ! く、来るなッ! 来ないでくれぇぇぇぇええええー――ッ!」 ギーシュは自分の杖である薔薇を投げ捨て、康一から逃げようとする。 しかし、ACT2は既に、ギーシュに『ピタッ』という音を張っており、ギーシュは一歩も動けなかった。 康一は、身動きが取れないギーシュを、鋭い眼差しで睨みつける。 ギーシュは、まるで巨大な鬼か悪魔に見下ろされたような気分になり、全身をガタガタと震わせていた。 「ひぃぃッ! こ、殺さないでくれ……! た、頼む……!」 康一は、命乞いするギーシュを無言でブン殴った。 エコーズではなく、自分自身の拳でギーシュに右ストレートを浴びせていた。 『ピタッ』という音が剥がれ、ギーシュは地面に転がった。 「あが……ぐぐぐ……ぐ……」 「いいかッ! 今のは、シエスタさんを侮辱した分だッ! そしてッ!」 康一は、ギーシュの胸倉を掴んで、さっきよりも強く拳を握り締める。 「これはお前のガラクタに殴られた、シエスタさんの痛みだァー―――――ッ!!」 「うわぁぁぁあああああああああー――――――ッ!!」 康一の渾身を込めた一撃が、ギーシュの顔面ど真ん中にクリーンヒットする。 前歯が一本抜け落ち、ギーシュは顔面を押さえながらもだえている。 康一は、地面を転げまわっているギーシュに馬乗りなった。 「も、もう止めてくれッ! 僕が悪かったッ! 謝るッ! 謝るからもう許してくれぇ……」 情けない声を上げながら、ギーシュは涙を流した。 「僕のことなんてどうでもいい……」 康一は、気絶しているシエスタをチラリと見て言葉を続ける。 「シエスタさんに言った言葉を取り消せ。そしてちゃんと頭を下げて謝るんだッ!」 「わ、分かった……。取り消す! ちゃんと謝るッ! なんでもするッ!」 馬乗りになっていた体勢を解き、康一は立ち上がった。 「本当だな? 嘘をついたら承知しないぞッ!」 「き、貴族の誇りに誓う!」 康一はニヤリと笑って、ギーシュを指差して言った。 「よし、なんでもするって言ったな……。 それじゃあ明日からさっそく……炊事、洗濯、家事の世話を全部やれ!」 「えッ!!」 「フフ……ジョーダン! ほんのジョーダンだって! フフフ……」 ギーシュの肩にポンっと手を置いて、康一はシエスタの所へ向かった。 康一に脅されたギーシュは、涙を流しながら呆けていた。 「……。(じょ、冗談に……き、聞こえなかった……)」 シエスタを抱え、歩き出そうとする康一の元に、ルイズが駆け寄った。 「コーイチ!」 「どうだい、勝ったぞ……。少しは僕のこと見直してくれたかい?」 「ふ、ふんだ。ギーシュが弱かっただけよ!」 突如、康一に重い疲労感が襲った。膝が抜け、力が一気に抜ける。 「そ、そんなことより、治療……」 「ぼ、僕は後回しでいいからさ……シエスタさんのこと……頼むよ……」 抱きかかえていたシエスタをそっと置いて、康一は地面に倒れた。 意識が朦朧とする康一に、ルイズの叫び声が聞こえてくる。 ――そういえば……僕のエコーズACT2は、物理的ダメージはないはずなのに…… どうしてあのゴーレムに対しては爆発させたり、分断させたりできたんだろうか? しかも……今までにない物凄いスピードで……まあ、今は……休みたい……な―― そんな風に思いながら、康一の意識は闇へと沈んだ。 それと同時に、康一のルーン文字の光もふっと消えた。 広瀬康一――気絶。ルイズの治療を受ける。 シエスタ――大した怪我じゃなかったため、この後、すぐに目を覚ました。 ギーシュ――この後、シエスタに謝りに行った。前歯が一本抜けたため、『歯抜け(マヌケ)のギーシュ』というあだ名がついた。 To Be Continued →
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/225.html
ヴァニラはどこに消えたのか? ルイズが壁の穴の前で思案に暮れている時 彼はまさにその穴を通り抜け外にいたッ 自らのスタンド、クリームの口内に潜り込みこの世界から姿を消す スタンドが小さくなったとはいえその口内に広がる亜空間の容量はヴァニラにすら判らないほど広大ッ 彼が潜り込む等造作もなかった 時折外を確認し、物を削って移動の痕跡を残さぬよう注意し やがて人気のない洗い場にたどり着いた 「どうすればいいのだ・・・・・」 とりあえずルイズの部屋からは抜け出したものの、エジプトに戻る方法も行く当てもないヴァニラはこの世界において完全に孤独ッ そもそもこの弱ったスタンドでは戻ったところで何の役に立つというのか 小さくなったクリームの口内から少々苦労しながら体を出し、腰を下ろそうとするが 「きゃっ!」 突然背後から上がった悲鳴と、それに続く何かの落ちる音に弾かれた様に振り返る 「誰だッ!」 クリームを飛ばそうと身構えるがそこにいたのは洗濯物を満載した籠を持った――正確には持っていた、メイド服の少女ッ どうやら何もないところから出てきたヴァニラに驚いたらしい 「も、もうしわけありません・・・・あの、ミス・ヴァリエールの使い魔になられた方ですよね?」 少女は恐る恐る問いかける 「・・・・・・・・・・そうだ」 しかしヴァニラは目に見えて不機嫌になり、少女は更に恐縮してしまった 「も、もうしわけありませんッ!」 体が折れてしまうんじゃないかと心配になるほどに少女は何度も何度も頭を下げ、その態度に流石のヴァニラも居た堪れなくなる 「もういい、頭を上げろ」 本当に申し訳なさそうに頭を下げる少女に仕方ないといった様子で声をかける 「はい、申し訳ありません・・・・ええと」 ようやく顔を上げた少女は困ったようにヴァニラの顔を見上げる 「ヴァニラ・アイスだ」 「あ、もうしわけありません」 ヴァニラが名前を告げると慌てたように頭を下げ 「ヴァニラ様ですね。私はここで貴族の皆様のお世話をしているシエスタと申します」 と、恭しく名乗り返した シエスタの態度はここへ来て傲慢な貴族しか見ていなかったヴァニラにとってとても好ましく思えた 「それでシエスタ、お前はここで何をしていたんだ?」 「あ、私は洗濯を・・・・」 シエスタはそう答えると今頃思い出したのか、慌てて落としてしまった籠を拾い上げる 「・・・・・・」 ヴァニラは無言で零れ落ちた洗濯物を拾い、籠に入れた 「え、あの、ありがとうございます」 再び少女は恐縮しもう一度恭しく頭を下げるがその弾みで洗濯物が幾つか零れ落ちた ヴァニラがまた拾い上げようと身を屈めると 「見つけたわよヴァニラッ!」 肩で息をしながらルイズと、その後ろから見るからにキザそうな金髪の少年が洗い場に駆け込んできた 「ミス・ヴァリエール、君の使い魔はなかなか手が早いようだね」 「うるさいわねギーシュ、もう見つけたんだから帰ってもいいわよ!」 ギーシュと呼ばれた少年はルイズの言葉にむっとしたようだが、これ以上面倒ごとに関わる気はないのか何もいわず帰っていった 「・・・・・」 しかしヴァニラはギーシュの台詞に些かむっとした様子、何か言おうとしたが 「ちょっとヴァニラ、どういうつもり?使い魔が逃げ出したなんて聞いたこともないわッ!」 わめき散らすルイズに阻まれ、それは叶わなかった 「うるさい、それよりもルイズ」 ヴァニラは面倒くさそうにそれを遮る 「大体・・・・何よ?」 平民如きに呼び捨てにされたのはムカついたが一先ずストップ、自分より遥かに背の高い使い魔の顔を見上げる 「お前如きに仕えるのは本意ではないが、使い魔とやらになってやろう」 スタンドも月までぶっ飛ぶこの衝撃ッ! ヴァニラが自分から使い魔になると言い出したッ!! (ここで癇癪を起こしたところでDIO様の元へ帰れるわけじゃない。ならばあの小娘の元で帰る方法を模索した方がましというものだ) 今一度冷静になり、己の身の振りを考えた結果だった 「は・・・・?あ、当たり前でしょ!アンタは私の使い魔でもう契約の・・・そのしたんだから!!」 契約に伴った行為を思い出し赤面するルイズ、そもそもヴァニラの知らないことだが サモンサーヴァントの儀式には使い魔に口付けをしなければならない 幸いにも『お前如き』といわれたのは耳に入らなかったようだ (DIO様、いつの日か必ずお傍へ参ります。どうかその時までご健在であられて下さい) こうして、ヴァニラの使い魔としての生活が始まった To Be Continued...
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/377.html
ルイズはベッドの中で夢を見ていた。 トリステイン魔法学院から馬で三日ほどの距離、生まれ故郷での夢だった。 幼い頃のいルイズは屋敷の中庭を逃げ周り、植え込みの陰に隠れて、追っ手をやり過ごす。 ルイズは出来のいい姉たちと比較されては、物覚えが悪いと叱られていたのだ。 「まったく、ルイズお嬢様にも困ったものだねえ」 「上の二人はあんなに素晴らしいメイジなのに……」 幼い頃のルイズは、いつもこうやって屈辱を受けていた。 召使いたちですら、自分が聞いていないと思って、こんな事を言う。 魔法が使えないのは事実だが、召使いにまで馬鹿にされるのが悔しくて仕方がなかった。 ルイズは植え込みの中を移動し、あまり人の寄りつかない中庭に移動した。 中庭には池があり、そこには小舟が浮かんでいる。ルイズは小舟に乗り込んで池の真ん中まで移動した。 叱られたルイズはいつもここに逃げ込む。そして、誰かがルイズの元を訪れるのだ。 「泣いているのかい? ルイズ」 「子爵さま…」 幼いルイズは慌てて顔を上げたが、すぐに顔を隠した。ルイズの元にやってきたのは、憧れの人なのだ。 泣き顔を見られてしまうのはいくら何でも恥ずかしい。 「今日はきみのお父上に呼ばれたのさ」 憧れの人は、幼いルイズを抱き上げようとする。が、突然憧れの人との距離が離れた。 「子爵さま!」 驚いて声を上げるルイズ。 夢の中でルイズは、他の誰かに抱き上げられてしまったのだ。 夢の中で子爵は、ルイズが誰かに抱き上げられているのに、何も言わない。 笑顔一つ崩れることがなかった。ルイズはその表情に、一抹の不安を覚えた。 ルイズが自分を抱きかかえている人は誰なのか見上げる ルイズを抱き上げているのは、どこかで見たことのある銀色… いや、白金に輝く筋骨隆々とした男だった。 ルイズを抱き上げた彼は、まるで、迫り来る敵を警戒するかのように、ルイズの憧れの人を見ていた。 さて、ルイズが不可解な夢から目覚めて、欠伸をしている頃、オールド・オスマンの秘書であるミス・ロングビルは、宝物庫の状態を調査していた。 宝物庫は、壁も扉もスクウェアメイジによる『固定化』の魔法がかけられており、トライアングルクラスのメイジではまったく歯が立たない。 それどころか、中にあるもう一枚の扉は、スクウェアメイジでも一人では破ることも出来ないだろう。 この宝物庫は国家の宝物もいくつか預かっているため、最重要の宝物が収納された奥の扉は、スクウェアメイジが複数人…おそらく五人以上で固定化の魔法を掛けられている。 教師のコルベールは、物理的な力を使えば破壊することも不可能ではないと言っていたが、『土くれのフーケ』が作り出すゴーレムが力づくで殴っても、破ることが不可能なのは明らかだった。 ふう、とため息をついたロングビルは、宝物庫の扉を小突く。 この中には、国中の貴族が驚くようなお宝が沢山眠っている。 それを盗み出すことが出来れば、国中の貴族はおろか王族にも一泡吹かせられるだろう。 オールド・オスマンの秘書にしては、危険すぎる思考を巡らせるロングビル。 「おい」 そこに、突然声を掛けられた。 驚いて振り向くと、そこには黒マントをまとった長身の人物が立っていた。 薄暗い宝物庫の中で、白い仮面に覆われて顔の見えぬ男に、突然声を掛けられたのだから驚く。 その上マントの中から、メイジの証である魔法の杖が突き出ているのが見えた。 「だ、誰かしら?仮面を被ったお客さんなんて、珍しいですわね」 仮面を被った男、声の調子からして男だろう。そいつはわざとらしくサイレントの魔法を唱えると、こう言った。 「『土くれ』だな?」 「………」 警戒するロングビルに、その男は両手を開き、敵意がないことを示した。 「話をしにきた」 「は、話? 何の用でしょうか。私はただの秘書ですわ」 「マチルダ・オブ・サウスゴータ」 ロングビルの顔が真っ青になる。焦りを顔に出してはいけない。そう言い聞かせたが、体が言うことを聞かない。 心臓の鼓動がやけに大きく聞こえる。 しばらくの静寂の後、男は小声で 「再びアルビオンに仕える気はないかね?」 と言った。 ルイズは、怖いと評判の教師、ミスタ・ギトーの授業を受けていた。 シュヴルーズ先生やコルベール先生が教室に入ってきても、すぐには静かにならない。 しかしこの先生は別だ。オスマン氏にも『君は怒りっぽくていかん』と言われる程である。 疾風のギトーという二つ名を持つその教師は、長い黒髪と黒いマントを特徴とする。 ハッキリ言って不気味だ。 「最強の系統は知っているかね? ミス・ツェルプストー」 「『虚無』じゃないんですか?」 「伝説の話をしているわけではない。現実的な答えを聞いてるんだ」 このように、いちいち引っかかる言い方をする。 生徒からの人気がないのも仕方がない。特にキュルケはこの教師を嫌っていた。 「火に決まってますわ。すべてを燃やしつくせるのは、炎と情熱…」 キュルケの言葉を遮るかのように、ギトーは杖を抜いて言い放つ。 「残念ながらそうではない。この私にきみの得意な魔法をぶつけてきたまえ」 ギトーはキュルケを挑発するように言う。そこまでされて黙っていられるキュルケではない。全力でぶつけるのつもりでキュルケは呪文を詠唱する。 掌の上に現れた小さな炎が、直径一メイル(m)ほどの大きさになるのに時間はかからなかった。 それを見た生徒達は慌てて机の下に批難し、それを合図にしてキュルケは魔法を放った。 しかしギトーは剣を振るかのように杖を振り、風邪の魔法を放ち炎の玉を霧散させ、キュルケをも吹き飛ばした。 「諸君、風が最強たる理由を教えよう。風は偏在し、すべてを薙ぎ払う。試したことはないが、『虚無』の魔法でも吹き飛ばすことが可能だろう。それが風の魔法だ」 生徒達は机の下から出て、席に座り直す。キュルケも立ち上がり、不満そうにしながらも席に着いた。 「でも、ゼロのルイズなら…」 少々太り気味の生徒、風上のマルコリヌが、ぼそっと呟いた。 それを聞いたギトーは眉をひそめる。 マルコリヌはギョっとしたが、ギトーは眉をひそめたままルイズを見たので、マルコリヌはほっと胸をなで下ろした。 しかし、ルイズの方を見ると、ルイズは明らかな殺意を持った目でマルコリヌを見ていた。 その目つきに驚いたマルコリヌは、ルイズからの『爆破予告』を受けた気がして、失神した。 ギトーの視線がルイズから外れ、教室の扉に向けられると、ギトーは軽く杖を振った。 開かれた扉の向こうで、オールド・オスマンの秘書である、ミス・ロングビルが少し驚いたような表情で立っていた。 ロングビルが「失礼します」と言いながら教室に入ろうとすると、ギトーが「授業中です」と言って咎めた。 「学院長からの伝言をお伝えします。ミス・ヴァリエール、この間の件について、至急事情を聞きたいとの事です。 至急学院長室に来てくださるようお願いします」 「は、はい」 ルイズは内心で、助かったと思いつつ、急いで教室を離れるのだった。 「失礼します」 「おお、ミス・ヴァリエール、待っておったぞ。早速じゃが…」 オールド・オスマンは、ルイズが学院長室に入り扉を閉めると、すぐに扉の鍵を閉める呪文を唱え、次に部屋の音を外に漏らさない呪文、最後にルイズの体にマジックアイテムが仕掛けられていないか探知する呪文を唱えた。 その真剣さにルイズは驚き、硬直していたが、すぐに気を取り直して姿勢を正した。 「ミス・ヴァリエール、まずは謝らせてもらう。事情を聞くというのは嘘じゃ」 ルイズは黙ってそれを聞いた。 「火急の用、それも密命じゃ。今すぐに厨房脇の倉庫から馬車に乗り込んでもらう。食材を調達する馬車なので窮屈じゃが我慢してくれ。馬車には使用人の服が準備されておるので移動中に着替えて、その後は指示を待つんじゃ」 ルイズは驚いた。平民に変装して移動するなんて、まるで命を狙われた没落貴族だ。 しかし、更に驚いたのは、オールド・オスマンの机の上にある一枚の書状だった。 「アンリエッタ姫殿下直々の花押じゃ。この密命は確かに伝えたぞい」 オールド・オスマンは、火の呪文を唱え、そのばで書状を燃やした。 書状を燃やすという行為は、恐るべき不敬であるが、オスマン氏の真剣な表情が『なりふり構わない状態』であることを告げていた。 ルイズはオスマン氏に一礼すると、学院長室を出て、急いで厨房に向かった。 オスマン氏は、学院の生徒が王宮の都合で使われることが好きではない。ふぅ、とため息をつくと立ち上がり、神妙な面持ちで窓の外を見上げた。 ガタガタ、ガタガタと、揺れる馬車の中。 馬車は幌が被さり外から見ることは出来ない。 トリスティン魔法学院の所属であることを示す紋章すら、この馬車には一つも描かれていなかった。 馬車の外で手綱を握っているのは、料理長のマルトーで、中にはルイズとシエスタが乗っていた。 シエスタはルイズの着替えを手伝っていた。マルトーの耳にはルイズとシエスタが楽しそうに着替える声が聞こえてくる。 マルトーはそれを訝しく思っていたが、ルイズの着替が終わりシエスタと手綱を交換すると、いつもシエスタが話す『一風変わった貴族』ルイズのいる馬車の中に入っていった。 ルイズはシエスタが手綱を扱えることに驚いていた。馬に乗るのならまだしも、二頭の馬を操って馬車を引く経験もあるとは思わなかったからだ。 「シエスタって、何でも出来るのかな」 そう呟くルイズに、マルトーが言った。 「貴族様は魔法をお使いになるじゃありませんか」 マルトーは貴族に対してあまり良い印象を持っていない。それどころか毛嫌いしている節もあった。 しかし、シエスタから話を聞いている『ルイズ』の存在は、マルトーにとっても気になる存在だったのだ。 万能の魔法を使い、平民を動物と同列に扱うのが貴族だと思っていたマルトーは、メイジとは思えないルイズの発言に驚いたのだ。 マルトーはルイズのあだ名を思い出し、あっ、と小さな声を上げた。 『ゼロのルイズ』に対して、今の発言は喧嘩を売っているようなモノだ。 マルトーは貴族嫌いではあるが、正面から喧嘩を売るようなマネをして殺されるのは、いくら何でも遠慮しておきたかった。 だが、ルイズの言葉は、自分を責めるモノではなかった。それがマルトーを更に驚かせる。 「塩を錬金できるメイジは沢山居るわ。でも、美味しい食事は錬金できないもの」 この言葉はカトレアからの受け売りだった。 体が弱く、外に出られなかったカトレアに、母親は旅先で作らせたドレスや調度品を土産として渡し、寂しさを紛らわせようとしていた。 しかし、ある日ルイズにこんな事を言ったのだ。 錬金によって、精巧な黄金のオブジェを作り出すメイジもこの世には存在する。 しかし、黄金を加工して糸を作り、見事なカーテンやドレスを縫える職人技は、その微細さ故にスクウェアクラスのメイジでもなかなか再現できない。 どんなに魔法が優れていても、私は外でルイズのように遊ぶことができない。 本当に魔法は、メイジは、貴族は優れているのだろうか…と。 馬車を走らせるシエスタの後ろ姿を見て、カトレアが一番欲しいはずの『健康』を備えたその姿が、とてもまぶしく感じれた。 マルトーは、驚き、感動し、少し疑った。 ルイズの言葉が、いつも自分が言っている言葉に似ていたからだ。 『料理は食材を美味しくする魔法なんだ』 マルトーはそう言って、自分の料理を自慢していた。 しかし、貴族に心を許せないのは事実。シエスタがルイズに利用されるのではないかと危惧していたのも事実だ。 マルトーは、目の前にいる貴族、『ルイズ』を信用して良いのか、判断できなかった。 馬車が予定の場所に到着すると、そこには王宮の雑務その他をこなすメイド達が使う、小さな馬車が待っていた。 その馬車の手綱を引くメイドは、ルイズにこちらに乗り換えるように告げた。 シエスタに「ありがと」と小声で礼を言って、馬車を乗り換えたルイズ。 馬車の中で彼女を待っていたのは、懐かしい人の抱擁だった。 「久しぶりだ、ルイズ! 僕のルイズ!」 「…ワ、ワルド様…ワルド様!?」 憧れの人に抱きかかえられたルイズは、夢のような再開の喜びに酔いしれていた。 今朝見た夢を忘れてしまうほどに。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1375.html
決闘に勝利したにも関わらず、ルイズはその場から逃げるようにして離れた。 顔を真っ赤にしている彼女のその手には、一枚のパンツが握られている。 一枚、たった一枚。その他多くはルイズの放った失敗魔法の爆発に巻き込まれ天に召されたか、あるいは第三者の手に渡ってしまったようだ。 「ブラック・サバス」 ルイズは怒りのこもった声で、自分の使い魔を呼んだ。だが、神出鬼没の使い魔は姿を現そうとしない。 ルイズはいろいろ高ぶる気持ちを抑えながら、例の装置と鞭を手にする。 そして、もう慣れた手つきで装置を『再点火』する。 「お前、『再点火』したな!」 「サバス…………あれは、どういうこと?」 予定通り現れたブラックサバスに、できるだけ笑顔で答える。鞭をもつ手はプルプル震えていたが。 「チャンスをやろう!」 「うるさい!意味分からないこと言っても、もう逃がさないわよ!あんたにはもうチャンスはないからね!!」 ルイズはブラック・サバスに向かって鞭を振るった。 「ブグッ!」 ブラック・サバスはうめき声を上げるものの、痛そうなそぶりは皆無だった。 それを見たルイズはますますむかっ腹が立ってくる。 「WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!」 ルイズは顔を真っ赤にして鞭を振るった。 しかしそれでも、ブラック・サバスは特に堪えた様子は無い。 いい加減疲れがピークに達したので、ルイズは考えるのをやめた。ベッドに横になる。 ブラック・サバスが相変わらず自分のすぐ側に立っているのを確認して、そして泥の様に寝た。 その可愛らしい寝顔を見ることなく、ブラック・サバスはただルイズの横に立つ。 長い長い一日がやっと終わった。 「いつまで寝てんのよ!さっさと起きなさい!」 「……もうちょっと寝かせて……後5分……」 「まったくだらしないんだから。あなたもそう思うわよね~?」 ルイズは寝起きのボンヤリとした頭で考える。 今、私は誰と会話してるんだ?……ブラック・サバスか……朝、起こすのも使い魔の仕事よね…… それにしても声変わったんじゃない?妙に高いわね。それにいつの間にやらボキャブラリー増えてるじゃない…… なんかムカつくしゃべり方だけど……まるでキュルケに似て…… そこでルイズは跳ね起きた。 横を見るとキュルケが、ブラック・サバスと普通におしゃべりをしている。といっても一方的に話しかけてるだけだが。 「なななななな!」 「何よ。朝から元気ねー」 「なんであんたがここにいるのよ!鍵かかって……勝手に開けたのね!?」 見るとキュルケの後ろのドアが、全開で開いている。 「勝手に開けて入ってくるなんて、ホントにツェルプストーの人間ってデリカシーがないのね!」 「そういうあんたこそ。ヴァリエールの人間は抜けてるようね。いつまで寝てんのよ」 「いつまでって………今何時」 「朝食、もう終わったわよ」 「えええええええええええ!?」 朝食の時間、食堂での話題は昨晩の決闘のことで持ちきりだった。 ギーシュはもうケガは治ってるとか、いや全治一週間だとか再起不能だとか。 ルイズの魔法によって、大爆発と共にパンツが舞い始めたとか。 そして、なによりあの謎の使い魔のこと。 不気味な姿、決闘の時見せたトリッキーな動きと、ギーシュを異様な状況に追い込んだ奇妙な力。 あれは先住魔法だ、つまりあれは亜人ではなくエルフなんだよ。 違う!あの黒づくめの格好……あれは悪魔だったんだよ!な、なんだってー! という具合だ。 しかし、その話題の中心であるルイズとギーシュがなかなか現れない。 まぁギーシュはケガを負ったので、今も療養中というのは理解できるが、ルイズが来ないのはなぜか? キュルケも顔には出さないが、少し気にかけていた。 すると後ろから声を掛けられる。振り向くと昨日の決闘の関係者の一人であるシエスタが立っていた。 「あの、ミス・ツェルプストー。ミス・ヴァリエールはどうなさったんでしょうか……昨日のことで具合を悪くなされたとか……」 「別に心配することはないと思うけど……」 そう言って二人で顔を曇らせる。後で様子を見に行ったほうがいいかもしれない。 食事が終わるとキュルケはルイズの部屋の前まで行き、何度かノックしてみる。しかし返事はない。 少し考えた後、ドアをアンロックの魔法で開けて入ってみる。 幸せそうな顔で寝ているルイズと、その横でじっと立っている使い魔をみてため息をついた。 心配して……いや、別に心配なんかしてないわよ。 ここから最初のやり取りへと展開していくのだ。 「もう!サバス起こしなさいよ!使い魔でしょ!…………ってあれ」 とりあえずブラック・サバスに文句を言おうとしたら、またもや姿を消していることに気づく。 「ああ、あんたの使い魔なら洗濯物持って……ていうか食べて出てったわよ」 「止めなさいよ!」 ベットから飛び出してルイズはブラック・サバスを追おうとするが 「あんた、もう用意しないと授業に遅れるわよ?それともそんな格好で出るつもり?」 言われて自分が昨日の決闘の時と同じ格好であることに気づく。 目だった汚れは無いが、それでも砂や泥が付いてる所があるし、なによりシワだらけだ。 というかこの格好でベットで寝たのか……と、少し後悔の念が生まれる。 「き、着替えるから出てって」 ルイズが慌ててクローゼットの前に移動する。 しかし、言われたキュルケは出て行かずにニヤリと笑った。 「着替えならあるわよ」 ニヤニヤ笑うキュルケの手の中には、パンツがあった。 「!!!!か、返して!!!」 ルイズがものすごい勢いで飛びつくが、キュルケは手を上に伸ばしてヒョイッとかわす。 「やっぱりこれあんたのだったのね~。この色気の無さはあんたのだと思ってたのよ。まぁあなたの体にはお似合いだけどね」 そう言って自分の胸を強調するキュルケを見て、ルイズの顔がどんどん赤くなっていく。 「じゃあね!早くしないと授業に遅れるわよ!」 キュルケはいろいろなものが飛んでくる前に、部屋から飛び出した。 ルイズの怒りの叫びが後ろから飛んでくる。 なぜかとても清清しい気分だった。やっぱりルイズは面白い。 その日の昼休み、ルイズはギーシュの元へ出向いた。 勝負の結果とはいえ、やりすぎた感はある(あまり覚えていないけど)。 というのも授業中、回りの生徒が自分を見る目がどうもおかしい。 決闘に勝利したことによる、改めて見直したとかそういうのではなく、なんというか畏怖しているというか。 たまに『デビル』とか『キラー』とか物騒な単語が聞こえるけど、私のことじゃないわよね。 ……いざギーシュの部屋の前に来ると、ドアを開けるのをためらってしまう。 開けた瞬間「ご臨終です」とか聞こえたらどうしよう。 …………え~い、ままよ! 覚悟を決めてドアを開ける。 「ああああああああああああああああああ」 まず聞こえたのは学院中に響いたのではないかという泣き声。 見るとモンモランシーが包帯まみれのギーシュ……恐らくギーシュである物の横で号泣している。 ギーシュ・ド・グラモン死亡確認! 処罰…………退学…………実家に強制送還………… そんな単語がルイズの頭の中を駆け巡る中、呑気な声が彼女に届く。 「おや、そこにいるのはルイズ。君も見舞いに来てくれたのかい?」 …………らせん階段……カブト虫 ……廃墟の街……イチジクのタルト…………ん? 「ギーシュ!生きてたの!」 「君はいきなりだね……」 「ちょっと!縁起でもないこと言わないでよ!」 包帯男とその横の目を赤くしたモンモランシーが順番に答える。 「ギーシュはね!今やっと目を覚ましたところなのよ!」 「まぁまぁモンモランシー落ち着いて。そんな顔をしてはせっかくの美貌が台無しになるよ」 「ギーシュ…………」 「元気そうでよかったわね。お大事に」 もう帰ろうと思い始めたルイズに包帯男があわてて声をかける。 「ま、まってくれルイズ!…………まず君と君の使い魔を侮辱したことに対して謝らせて欲しい。すまなかった」 そういって頭を垂れる包帯男に、ルイズは少々驚いていた。こんなに素直に謝るとは。 意外な顔をするルイズに包帯男、もといギーシュは続けた。 「決闘に負けて、モンモランシーが僕に付きっ切りで看病してくれてる間にいろいろ考えてね。 僕は女性には優しい薔薇のつもりでいたが………モンモランシーにケティに君に、あとあのメイドの……」 「シエスタ」 「そう、そのシエスタって子も傷つけてしまったんだ。動けるようになったら彼女にも謝罪しに行くつもりだよ」 それを聞いたルイズは、ギーシュに謝られるシエスタを想像した。 きっと頭を下げるギーシュ以上にペコペコするんだろうなあの娘は。 それを考えると少しおかしくなったルイズは二人にばれないようにフッと笑った。 「ままぁ私もちょっとやりすぎたわ。悪かったわね。私の使い魔の分も謝っておく」 予想以上にギーシュにあっさり謝罪されたので、ルイズもそれに合わせるかのように謝罪の言葉を口にする。 なんとなく気恥ずかしくなったルイズは、もうさっさと部屋を出て行こうとしていた。 そこへモンモランシーが呼び止める。 「ルイズ!ひとつ教えて…………あなたの使い魔はいったいなんなの?あれは魔法じゃないんでしょ?」 「…………」 改めてブラック・サバスのことを考える。 ……たしかにブラック・サバスの力はルイズたちの魔法の基本である四系統から、大きく逸脱している。 ……まぁそれはある意味ルイズもなのだが…… とにかく、だからといってブラック・サバスが、例えば「虚無」や「先住魔法」を使っているなんてことは思えない。 ファンタジーやメルヘンじゃあないんだし。 でも……あの力がなんだろうと……ブラック・サバスは私の使い魔なんだから。 使い魔である以上……大丈夫よね。 ……はたして本当にそうだろうか。ブラック・サバスは本当に自分を主と思っているのだろうか? あの力を、自分は御することはできるのだろうか……。 実際、今ブラック・サバスがどこで、何をしているかルイズは分からない。 「…………さぁ」 ルイズはそれだけ言うとギーシュの部屋を後にした。 その頃ブラック・サバスは 「サバスさん。あまり強くするとゴムが切れてしまいますよ」 「…………」 パンツを洗っていた。 To Be Continued 。。。。?
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/889.html
使い魔は灰かぶり-1 使い魔は灰かぶり-2