約 1,076,880 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/123.html
ルイズ・フランソワーズ! ブローノ・ブチャラティを呼ぶ② 朝。 ブチャラティの朝は早く始まる。 「昨日は散々だったな・・。結局オレはこのルイズに縛られたままなのか・・・。」 ふと目に止まったのは、左手に刻印された『使い魔のルーン』。 「この文字だ・・。この文字が付いた時からオレの命は再び動きだしたんだ・・・。 いったいこのルーンにはどんなルーツがあるんだ?そして・・。」 ブチャラティはベッドで寝ているルイズを見た。 「メイジとはどう言った存在なんだ?こんな、フーゴやナランチャとそう変わらないくらいの 子にさえこんなマネができるなんて・・やっぱり信じられん。」 ふと、ブチャラティは自分で言ってから少し気分が落ち込んだ。 「・・落ちつけ。ナランチャ達は覚悟を決めて自分で道を選んだんだ。 ここで苛立ったらむしろ死んでいったナランチャ達に対する『侮辱』にすらなる・・。」 そう自分で言い聞かせる。だが感情は振り切れてはくれないっ! 「オレなんかよりナランチャこそルイズに蘇らせてもらえばよかったのに・・・。 あいつ、最後学校に行きたいと言っていた・・。あいつだったらもしかしたらルイズとも打ち解けて・・。」 ――――ブチャラティはそこまで言って、この話題について考えるのをやめた。 「ミスタに撃たせた傷が治っているのは、おそらくジョルノがダメもとで治したからだろう。 気持ちはわからなくもない。(むしろ結果的に助かった。)だがアイツは目の前の成し遂げるべき事をほっぽってまでこんな事をするやつじゃない。 ――――ボスに。ディアボロに勝ったんだな。なぜだか実感できる。ジョルノ達に、『よくやった。』と言ってやらなくっちゃな。そのためにも、帰る方法を探さなくてはな。それにしても・・。」 ブチャラティはルイズのほうに向きなおる。 「う~ん…このクックベリーパイおいし~~…」 未だ目覚めぬご主人様のルイズは海辺に浮かぶクラゲのようにのん気な寝言を浮かべていた。 「ああ…もうたべられないわ~~…ムニャ。」 「人が真剣に考えてる横で…。のん気な貴族もいたもんだな。 ・・・おいルイズ。朝だぞ。起きろよ。」 「ん・・。ふぁ~~あ。もう朝・・?あれ・・?アンタ誰・・・?」 ルイズは結構朝に弱い。ぼぉ~~っとしていて目がとろんっとしていた。 「…自分で召喚した使い魔も忘れてるのかお前は・・。」 「ふぁ・・そっか、昨日から私が呼び出した使い魔がいるんだっけ・・・。」 「さて、ルイズ。オレはこの世界に呼び出されて間もない。この世界についてまだいろいろと わからない事がある。とりあえず・・。」 「ん~~。めんどくさいからその場になったら教えるわ・・。それより着替えお願い。」 「・・・・着替え?」 ブチャラティは言葉の意味がいまいち『理解』できない。 「だから、私の服を着替えさせて頂戴と言っているのよ・・。」 ブチャラティは頭を抱えた。 (貴族というのはこういう奴なのか?まさか『着替え』まで人任せとは 考えても見なかったっ!!) 「手伝わないとは言わせないわっ!やらないとゴハンあげないからね!!」 「・・・・・・了解した・・。」 ブチャラティは渋々着替えを手伝う。 「なあ、男の前で半裸になって恥ずかしいとは全く思わないのか?」 「なんで?あんた使い魔じゃない。」 「いや、確かにそうだが・・・。」 「もうっ!もっとテキパキできないのっ!」 「人の着替えなんてやったことないんだ。我慢しろよ。」 ―そして時は数分流れる― 人間という生き物はまず食べなくては動けないっ!! というわけで朝食を取るため二人は食堂にいた。 「流石貴族・・。朝食からもうこんな物を食べているのか。」 「感謝しなさいよ。あんたは特別な計らいでここで食べれるんだから。」 グゥ~~~。 ブチャラティは自分の腹の音を止める事ができなかった。 「(そういえばヴェネツィアで食べてからまともな食事をしていなかったな・・・。) しかし、いいのか?オレまでこんな朝食を・・・。」 「何言ってんの?あんたはこっち。」 ルイズが指差したのは・・・ブチャラティの目にくるいがなければっ!! いやっ!誰がどう見ても指差した先は床っ! そしてあったのはささやかな黒パンと麦のスープ!! 絶望!そして飢餓!それらは無常にブチャラティを襲う! 「本気か・・・・・?」 「ええ。本気だけど?」 「肉はないのか・・・・?」 「癖になるから、肉は駄目」 そして祈りは唱和される。 ―偉大なる始祖ブリミルの女王陸下よ。今朝もささやかな糧を我に与えたもうたことを感謝いたします― 「ああ。確かに。ささやかだろうさ。」 ブチャラティは皮肉を痛烈に言う。だが届く事はなかった。 そして朝食を取り終え、授業に向かう。その途中にルイズが聞いた話だが、 「なあ、本当に見たんだって。フルーツが皿の中に飲み込まれるように消えていったんだ!」 「おまえが魔法でやったんだろっ!?あのフルーツ僕一個も食べてなかったのにっ!」 なにやら奇妙な言い争いをしていた。だがこの時のルイズは聞き流していたのだった・・。 そして教室。ふと、ブチャラティの耳に笑い声が聞こえてきた。 生徒たちはどうやら自分を見て笑っているらしい。 (おい、ゼロのルイズを見てみろよ。本当に平民を呼び出してるんだぜ?) (流石ゼロのルイズだよな。) (そもそも本当に呼び出したのか?あれ近くにいただけの平民じゃないのか?) ブチャラティは生徒たちを見た。彼らも使い魔をつれている。 フクロウ、ヘビ、カラス、猫、目玉、六本足のトカゲ、蛸人魚etc… 「あいつらの連れてる奴が使い魔ってやつか。」 「あんたもその一匹ってことをお忘れかしらっ?」 やがて先生らしき人物が現れた。 「みなさん始めまして。今年度からみなさんを教えるミセス・シュヴルーズと申します。 さてみなさん。進級おめでとうございます。これから授業も難しくなっていきますが、 みなさんなら大丈夫と期待してますね?」 ふと、何人かがブチャラティの方を見てをクスリと笑った。 否、自分ではなくルイズを見てだ。 そういえばルイズは魔法が苦手だった。空を飛べないところでわかったのだが。 「さて、私の魔法系統は『土』。二つ名は『赤土』のシュヴルーズです。 みなさんにはこの一年間『土』系統の魔法を教えていきます。」 ふとブチャラティは疑問が浮かんだ。 「『土』系統?魔法というのはいくつかの系統に分かれるのか?」 「さてみなさん。魔法の四大系統は?」 その時、見覚えのある顔が見えた。 「『火』『水』『風』『土』の四系統です。そして何という奇遇っ! 僕の属性もミセスと同じく『土』。二つ名は"青銅"のギーシュ・ド・グラモンと申します。 お見知りおきを。」 昨日道を聞いた奴だ。空にも浮かべられたな。ブチャラティは思い出していた。 しかしアイツのあの仕草はどうにかならないものだろうか。そう思わずにはいられないっ! 「よろしく、ミスタ・グラモン。『土』は万物の組成を司る重要な魔法。それをまず覚えてもらうため まず簡単な"錬金"の魔法を覚えてもらいます。」 そう言うとシュヴルーズは石を取り出し、呪文を唱えた。 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・・。 石は光りっ!姿を変えるっ! 「そ、それってゴールドですか!?」 どこかの席から赤髪のグラマラスな女が立ち上がり聞く。 浮かべられた時ルイズと一緒にいた奴だ。そうブチャラティは思い出した。 「いいえ。これは真鍮です。金には『スクウェア』クラスからでないと 変えられませんので。」 「なぁ~んだ・・。」 「『スクウェア』クラス?ルイズ、何だそれ魔法にはクラスがあるのか? 「そう。下から、一系統だけの『ドット』二つ重ねる『ライン』 三つの『トライアングル』四つの『スクウェア』があるわ。 ミセス・シュヴルーズのような先生たちはみんな『トライアングル』よ。」 「なるほど。魔法はクラスが4つ、系統が4つだな。 ミスタが聞いたら卒倒するのはだいたいわかった。」 「・・・ミスタ?まあいいわ。あと、系統には一つ失われた系統『虚無』が存在するわ。 もう誰も使うことは出来ないみたいだけど。」 そこまで話して、ブチャラティはまた疑問ができた。 「そういえばルイズ、『おまえ自身』の系統はなんだ?」 「えっ!?・・えっと・・。」 そこまで言ったときだった。 「では、実際に誰かにやってもらいましょうか。ではそこのアナタ。」 そう言って指差されたのは――――ルイズだった。 「ええっ!?『ゼロのルイズ』が!?」 「やめたほうがいいんじゃ・・!」 みんなが騒ぎ出す。どうしたと言うのだろう。ルイズが魔法が苦手なのは知っていたが、 それにしてはこの動揺のしかたは普通じゃあないっ!! 「あの・・先生やめた方がいいんじゃ・・。」 「危険ですっ!!ルイズに任せるなんて、地雷原でタップダンスを躍れというようなもんですよっ!」 さっきの女も立ち上がった。 「ルイズに任せるくらいなら私がやりますよっ!」 「危険・・?"錬金"の何が危険なんですか?」 「やらせてくださいっ!!」 ルイズがブチャラティをどかして教卓の前に立った。 「ルイズ!やめなさいよっ!」 「静かにして。気が散るから。」 ブチャラティは近くにいた青い髪の生徒に聞こうとした。だが、危機を察知したように 誰にも気づかれないように教室から出た。 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・。 「・・・『何か』が・・・おかしいっ!ただルイズが魔法が苦手にしては 状況があまりにもおかしすぎるっ!おいっ!どういうことなんだ!?」 ブチャラティは他の生徒に聞いた。 「おい・・。これから『ゼロのルイズ』の使い魔をやっていくからには一つ 大切な事をおぼえていたほうがいいぜ・・。アイツの魔法は・・!」 「なにやってるんだっ!『呪文』を唱えたぞ!何かにかくれるんだぁーーー!!!」 ピカッ!! ルイズの所から光りが発する!!ブチャラティの危険信号はすでに自分を襲おうとしている危機を悟った!! 「まずい・・・!!」 ―※― 「今年も無事に新学期が始まったのう。ミス・ロングビル。」 「ええ。何よりです。」 学院長室。そこには学院長とその秘書がいた。 「学院長としてこれほどの事はない・・。」 ヒュン! フワワン。 ミス・ロングビルの杖の一振りで水パイプを奪われる学院長。 「うむぅ・・年寄りの楽しみを奪うと言うのかねミス・ロングビル。」 「お尻をさわるのはやめてくださいオールド・オスマン。」 都合が悪くなった学院長はふと思い出す。 「そういえば昨日使い魔の召喚があったようじゃのう。」 「(・・・クソジジイが・・・。)ええ。ただ、ひとりだけ変わった使い魔を呼び出したみたいですが。 たしか・・。」 「うむ・・。例のミス・ヴァリエール家の三女か。使い魔とは永遠の僕であり、友である・・。さてミス・ヴァリエールの使い魔はどうなのじゃろうな・・。しかし人間とは驚いた。」 「チューチュー。」 ふといつの間にか白ねずみがいた。 「おお、我が使い魔モートソグニルよ、お前とも長い付き合いじゃな。 ・・・ほう、白か。純白とな!!」 「・・・!!!オールド・オスマン。今度やったら王室に報告しますよっ!!」 なにをしたのか?下着をのぞいたのであるっ! 「下着を覗かれたくらいでカッカしなさんなっ!そんなだから婚期を逃すのじゃ!」 プッツ~ン ボコッドカッ プッツンしたロングビルは蹴りをかました! 「やめて、降参、もうしないから・・・。」 ドッカーーーン!! 「おや・・。噂をすれば・・・・。」 「ええ、『また』だったみたいですね。未だこんな事ばっかりだそうです。 そういえばミセス・シュヴルーズに教えておくのを忘れていました・・・。」 「うむ・・。ミス・ヴァリエールも『失敗』するだけで『使えない』わけでは ないのだが・・・。彼女も不憫な・・。」 「オールド・オスマン!!」 突然ドアを開けてやってきたのは召喚の儀式の時にいた中年の男っ! 「えっと、君は、たしか・・・えっと。」 「コルベールですよ。オールド・オスマン。」 「そうそう。ノックもせんで何事じゃ騒々しい。」 「緊急にお伝えしたい事がございまして・・・!これを!」 コルベールが出したのは分厚い本!本の虫しか読みそうにない代物だっ! 「なんじゃこれは・・・。『始祖ブリミルの使い魔達』ではないか・・。こんなモン読んでばっかいるから お主の印象も薄れてしまうと言うのが・・・。」 「見ていただきたいのは・・・こちらです。」 『それ』を見た時、この学院長の目つきが変わった。 「ミス・ロングビル。席を外してもらおうかの。」 「はい。」 ガチャン。 ドザザザザザザザザザ・・・・・・。 「詳しく・・・話してもらおうかの。ミスタ・コルベール。」 ―※― 爆発の震源地はルイズのいた教室。いや、もっと言うならルイズのすぐそばだった。 「どういうことかいろいろと説明がほしいのだが・・・・。」 ブチャラティは聞いた。 「ツツ・・。これが『ゼロのルイズ』さっ!」 「もうっ!ルイズ!!だから言ったのにっ!」 「キュルケ・・。急に立ち上がらないでくれ・・。」 キュルケとよばれたあの赤髪の女が怒っていた。 「ちょっと失敗したみたいね・・。」 「どこがちょっとだよっ!いままで成功の確率ゼロじゃないかっ!!」 ギーシュもまた怒っていた。 「なるほど・・。だから『ゼロのルイズ』か・・・。言いえて妙だ・・・。」 (・・・?あれ、こいつ『無傷』っ!?どういうことだ?服の汚れすらないぞっ!?) 一通り授業が終わった後ルイズが言った。 「あんた今日飯抜きね。」 「なんだとっ!?」 八つ当たりだろうかっ!!ルイズは無情に言い放つっ! 「ふざけた事言ってんじゃねーぞこのくそガキがっ!! よびだしたからにはそれ相応の責任と言うやつを・・・!」 「命令よ・・・・!」 怒りを押し殺したような声でそう言った。そしてどっかに行ってしまった。 (この女はふざけているのか?いやマジだった。奴は本気でオレの飯を抜くつもりだっ!) 流石のブチャラティも怒りをあらわにしていた。 「クソッ!せっかく生き返っても、これじゃまたすぐに死んじまうっ!」 そんな時だった。 「あ、あの、すいません。どうかなさいましたか?」 ふと声がした。 後ろにいたのはメイド服の女の子だった。 「・・・いや、なんでもないんだ。すまない。」 ブチャラティはそういって去ろうとした時だった。 「あれ、もしかしてあなたがミス・ヴァリエールの使い魔になった平民の方ですか?」 知られているのか。ブチャラティは振り返って言った。 「そうだ・・。君も魔法使い・・・いや、メイジか?」 「いえ、私も平民です。ここには奉公のために貴族を世話しに来ているんです。 あ、そういえば自己紹介が・・。シエスタと申します。」 「ブローノ・ブチャラティだ・・。ブチャラティでいい。」 グゥウウウウ・・・。 ふとブチャラティの腹の音が鳴った。朝食がもう消化されたのだ。 ブチャラティが拳を作って胸に当てようとした時だった。 「あ、お腹が空いているみたいですね・・。あの、残り物でよろしかったら、食べていきませんか?」 「え・・・?」 「困ってる時はお互い様です。どうぞ、遠慮なさらずに。」 ブチャラティは不覚にも―――感動していた。 こんなに人に優しくされたのは何時ぶりだったろうか・・・。そう思っていた。 彼女の前でなかったなら、涙すら流していたかもしれない。 「グラッツェ。(ありがとう)じゃ、貰っていくよ。」 ブチャラティは微笑みながらそう言った・・。 to be continued……
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/440.html
「これ、嫌いなんだけどな」 少し残念そうな言葉を漏らす女性は、我らがヴァリエール嬢。 朝食にしては豪華な料理が並んでいるが、今日のメニューは少し物足りないようだ。 ここ、トリスティン魔法学院は食事のマナーにも厳しい、が、貴族の食事は社交も兼ねることが多いため、大声で雑談しなければ特に注意されることもない。 今までは誰とも会話せず食事を進めていたが、最近ではキュルケやタバサ、モンモランシーと会話することも多い。 キュルケを見ると、既に食べ終わっている。 朝から食欲旺盛なキュルケを見て、食べた肉が腹でなく胸に行くのは何故だろうと考え、世の不公平を感じた。 しかし、キュルケと行動を共にすることの多いタバサは、ルイズよりも小柄で、胸もぺったんこ。 胸ではかろうじて勝っているルイズだが、彼女はキュルケと同程度かそれ以上の魔法の使い手だ、どっちにしろ魔法では勝てない。 食事があらかた終われば、デザートが配られる。デザートを配りに来るのは厨房付きのメイドシエスタと他数名の役目。 シエスタは平民だが、ルイズにとっては気の許せる友達でもある。 しかし、胸の大きさは明らかにルイズよりも大きく、これに関しては憎い相手であった。「ヴァリエール、ちゃんと食べないと背どころか胸も小さいままよ?フフン」 キュルケにとっては軽い冗談だったが、その言葉を聞いたルイズとタバサは意を決して苦手な料理に手を出すのだった。 しばらくしてメイド達はデザートを配り始めた。 いつものようにシエスタがルイズの右隣に立ち、ケーキの乗った皿を慣れた手つきでテーブルの上に置く…はずだったが、今回は珍しく別のメイドがデザートを置いた。 いつもいつも同じ列ばかりを担当できないのだろう、と思ったが、あたりを見渡すとシエスタの姿だけが無い。 厨房内の仕事でもしているのだろう、と思いながら、ルイズはデザートに手をのばした。 まもなく食事の終わりを告げる鐘が鳴り、生徒たちは食堂から出て行ったが、ルイズは考え事をしているのか、席に座ったままだった。 「ヴァリエール、何してるのよ。まだ食べ足りないの?」 モンモランシーの言葉に促され、ルイズは腑に落ちないものを感じつつも、席を立ち食堂を出て行った。 そんなルイズを、料理長のマルトーが、何か思い詰めたような表情で見ていた。 午前中の授業が終わり昼食の時間。 朝に続き、昼にもシエスタが顔を見せないの この学院で過ごしている生徒達の大半は、貴族だけあって人の顔をよく覚えている。 しかし、平民のメイドが一人いなくなったからといって、気にすることはない。 『ゼロのルイズ』とあだ名されるほど魔法が苦手な彼女は、そのコンプレックスから負けん気が強く、貴族の権力を傘にして威張り散らすこともあった。 シエスタを助けてから…いや、正確には奇妙な夢を見るようになってからだが、ルイズは『素の自分を見せることが出来る友達』の大切さを自覚し、シエスタをはじめとする平民に目を向けるようになったのだ。 昼食も終わり、午後の授業が始まる。そして午後の授業を終え、夕食の時間が来た。 タバサの指摘を受けて、ようやくルイズは異変に気づく。 食前のお祈りを唱和した時、タバサはルイズの隣で一言「給仕口」と告げたのだ。 ルイズが給仕口を見ると、マルトーと目があった。 それに気づいたのか、マルトーはそそくさと厨房へと隠れてしまった。 その日の夜、明かり一つない食堂のテーブルクロスがもぞもぞと動き、ルイズが顔を出した。 ルイズは鍵を開ける魔法を使えない。爆発を起こさず厨房に忍び込むため、食堂にじっと隠れていたのだ。 給仕口から厨房に行くと、そこには小さなランプが灯されており、その下でマルトーがじっと誰かを待っているようだった。 シエスタなら今のマルトーに、まるで覇気がないと気づいただろう。 「…何か用?」 「 ! …あ、貴族様でしたか。こんな夜更けに、厨房に何か」 「何言ってるのよ。じーっと見られてたら何かあると思うじゃない。今日はシエスタも顔を見せないし。私に用があるんでしょ」 「………」 しばらくの沈黙の後、マルトーは話し始めた。 「昨日学院を視察に来られた、貴族のお方なんですがね…。その貴族様が、シエスタをたいそう気に入ったらしいんでさ。」 ルイズは思わず唾を飲み込んだ。いやな予感がするせいか、少し眠気の混じっていた頭が急速に覚醒していくのが分かった。 「今朝、シエスタは連れて行かれました。『昨日はこの平民が貴族に無礼を働いた』とか言われましてね。頭が真っ白になりましたよ。昨日はさんざん褒めて、今日になったら反逆者扱い。何だってんだ!」 マルトーの拳が、ドン!と、厨房のテーブルを響かせた。 「貴族様ってのは何なんですかい!?シエスタが何をしたって言うんですか!俺は、俺は女衒じゃない!」 マルトーはテーブルの上に置かれた小さな袋を壁に投げつけた。ガシャン、という音ともに散らばったのか、10枚ほどの金貨だった。 「貴族様、ヴァリエール様!何とか出来ねえんですか!シエスタは、連れて行かれた時、ルイズ様には言わないでくれと言ったんでさ。ですがね、泣きながらそんなことを言われたら、黙ってられるわけが無いじゃありませんか!」 ルイズは、怒りと悲しみの混ざったマルトーの声に、不思議な感覚を覚えた。 怒りが一巡して、恐ろしいほど体が冷めていく気がする。 昨日視察に来た貴族は、魔法学院その他の、国の重要機関を監査する立場の貴族だ。 本当の事かどうか分からないが、平民の少女だけを集め、ハーレムを作っているという噂を聞いたことがある。 しかし、思い返してみれば、自分の姉も母も、その貴族を毛嫌いしていた。 おそらく事実なのだろう。 考えてみれば、今日はオールド・オスマンが王宮に呼ばれ、学院にいない。 その隙をねらってシエスタが連れて行かれた。 「…オールド・オスマンがお帰りになられたら、すぐにその話を伝えて」 そう告げると、ルイズは使用人通路の鍵を開けさせて、一目散にシエスタを連れ去った貴族の別荘へと走っていった。 マルトーは、シエスタの言う『おともだち』のルイズを今ひとつ信用しきれていない。 だが、ルイズ以外にこんな話が出来る相手もいなかったのだ。 ルイズは地面を『蹴り』瞬く前に空高く、そして遠くへと跳躍していった。 その姿を見たマルトーは『ゼロ』と呼ばれるメイジでも、空を飛ぶことは出来るのかと、素直に感心していた。 前へ 目次 次へ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/107.html
掟破りの二重契約。 ルイズが行った最終手段とはそれであった。 その名の示すとおり、使い魔との契約を重ね掛けする術。 古今東西、あらゆるメイジの歴史の中で、1度契約を交わした使い魔を御せられなかったという話など、ルイズは聞いたこともなかった。 どんな凶暴な魔獣であれ、契約すればペット同然に扱える。 それほどまでに、サモン・サーヴァントとは強制力を持った儀式なのだ。1度以上の契約など、必要ないのだ。 しかし、ルイズは今回自ら二重契約を行った。 つまり、自分には使い魔を制御する力がありませんと認めるようなものだった。 貴族として、メイジとして、そしてヴァリエールの娘としての恥だ。 だからこそ、これは最終手段だったのだ。 自分の名誉にかかわる。 それに、二重契約には落とし穴があった。 確かに、二重契約を行えば使い魔との繋がりが強力なものとなり、制御もしやすくやる。 だが、繋がりが強くなるということは使い魔と精神的により深く同調することだ。 下手をすれば自分と使い魔の境界を浸食され、心を破壊されてしまう。 ルイズはもちろん初めは使う気などさらさらなかった。 だか、コルベールが倒され、そして自分のライバルであり友人でもあるキュルケがあの触手に捕らわれるのを見たときに、ルイズは密かに決心した。 あの異常な使い魔…再生能力に触手に目からビームにetc…. バラバラ死体から復活したばかりの、弱っているだろう今のうちに、自分の制御下に置いてしまわねばとんでもないことになる……。 はたしてルイズの策は功を湊したが、ルイズがそれを確認することは出来なかった。 二重契約をして、ようやくヤツにはっきり刻み込まれた使い魔のルーンを見た後ルイズは、使い魔を下敷きにしていたとはいえ、地面にもろに叩きつけらて、衝撃で脳を揺さぶられ、貧血も相まって無様に伸びる。 身を預けた己の使い魔の胸は、広くてたくましかった。 黒一色に染まっていく視界の端で、タバサのシルフィードがゆっくりと着地して来るのが見えた。 タバサ―――無傷。 キュルケ―――軽傷(ただし、心に刻み込まれたトラウマは深 い)。 コルベール―――片足をビームで貫かれ重傷。 ルイズ―――全身と左肩に穴をあけられたことによる大量失血 で瀕死の重傷、意識不明。 ルイズの使い魔―――完全契約。気絶。 to be continued…… 14へ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1638.html
DIOが使い魔!? ◆Wbi9AknFck スターダストファミリアー ◆LSP/td4iE2 スターダストは砕けない ◆LSP/td4iE2 サブ・ゼロの使い魔 ◆oviEMgpce6 Start Ball Run ◆k7GDmgD5wQ ゼロと奇妙な鉄の使い魔 ◆PEFli7wTN2 ゼロと奇妙な隠者 ◆4Yhl5ydrxE 使い魔ファイト ◆Ux26ysntzk ゼロのパーティ ◆5ckVgDaSVk アンリエッタ+康一 ◆3D2JBRgybs ヘビー・ゼロ ◆a97Bny7H1c 愚者(ゼロ)の使い魔 ◆Dv3XctLjy. ゼロのスネイク ◆jW.eGr2I9s 亜空の使い魔 ◆cpD80RhRDE 鮫技男と桃髪女 ◆7/eeytaWnw アヌビス神・妖刀流舞 ◆6Dp6kmr0yc つかいまがとおるっ! ◆1kaqwCsXPI 使い魔は天国への扉を静かに開く ◆1kaqwCsXPI 風と虚無の使い魔 ◆/4V68E5Ojg
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/773.html
歩き出す使い魔-1 歩き出す使い魔-2 歩き出す使い魔-3 歩き出す使い魔-4 歩き出す使い魔-5 歩き出す使い魔-6
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/214.html
ACTの使い魔-1 ACTの使い魔-2 ACTの使い魔-3 ACTの使い魔-4 ACTの使い魔-5 ACTの使い魔-6 ACTの使い魔-7
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1376.html
朝食も済ませ、つやつやとした顔色のルイズは、キラークイーンを従え教室へと向かっていた。 余談だが、朝食の席でルイズがキラークイーンに食事が必要かどうか試すために与えたパンの欠片は、やはり必要ないと判明。 ついでとばかりに能力実験も行い、爆弾にされ投げ捨てられた。 ・・・それがギーシュの朝食に当たり、彼のそれが吹き飛んだことはまた、別のお話。 ここでは彼の色男っぷりが上がったということだけを記しておこう。 「ああん、ワイルドなギーシュも素敵よぉ~」 「ケホッゴホッ・・・ありがとう、モンモランシー。しかし一体何なんだ?」 ・・・ケッ!色気づきやがって・・・おっと失礼。続きといきましょうか。 そんなこんなで扉の前。 教室へ入ったときのみんなの反応を想像(多分に妄想を含む)しながら、 そのためににやつく顔を必死で抑え・・・ざわめく教室へと踏み込む。 ・・・。 それまで騒がしかったその場が一瞬、静寂に包まれた。 「ゼロが成功・・・。」 「ありえねえ・・・。」 「しかもわりとまともな・・・。」 しかしそれも一瞬のこと、すぐに失礼にも程がある声がいくつも聞こえてきた。 妄想世界の住人となっていたルイズには少々キツイ洗礼である。 しかしさすがにゼロと呼ばれ続けた少女。 このような場合を無意識に想定していたためか、いきなりブチ切れるといった失態は見せない。 しかしくやしいものはくやしいし、ムカつくものはムカつく。 内心は穏やかではなかった。 その怒りは授業の最中にも燻り続け、普段ならばありえない態度となって表れていた。 「ミス・ヴァリエール?ちゃんと授業に集中なさいね。」 「あ・・・すみませんでした・・・。」 「ルイズ~授業くらいはちゃんと聞けよな、ゼロのルイズの唯一のと・り・え・なんだからさぁ~。」 「こ、この・・・風邪ッぴきの分際でッ・・・!」 「僕はッ!風上だッ!二度と間違えるな!」 「あらあら、間違えるなと言うのなら、やっぱり風邪っぴきよ。」 「風上だと言っているッ!!」 「お二人ともいい加減になさい!誇り高き貴族たるもの、そのようなくだらない言い争いは控えるものです。」 「「・・・すいませんでした。」」 「よろしい。では・・・ミス・ヴァリエール。話を聞いていなかった貴方に錬金を命じます。 それで帳消し、ということにしておきますから。さて、何か聞いておくことは?」 「いえ、問題ありません。」 「先生ッ!?それは・・・危険ですっ!!」 「そうです、なんなら代わりに僕がっ!」 キュルケを筆頭に皆が叫ぶ。 「黙りなさい!・・・先生、この私にお任せを。」 優雅に一礼すると、ルイズは教卓に歩み寄った。背後にはキラークイーンが憑いている。 「ときにミス・ヴァリエール・・・先ほどから気になっていたのですが、何故使い魔を?」 「そういう性質なんです。」あらヤダ。この娘、嘘ついた。離れてもムズムズするだけなのに。 カワイソーだけど数秒後には粉微塵になってるのね・・・という視線が幾つもそそがれている石ころ。 だがそれも少しの間だけのこと、ルイズが杖を構えるころには皆、机の下に避難していた。 一部、教室外に逃亡した者もいるようだ。 そして・・・ついにルイズが魔力を込めて呪文を唱えたッ! ドッグォオ~ン!! 石が爆ぜ、机も巻き込んで吹き飛んでゆく! ミセス・シュヴルーズも吹っ飛んだ!さながら壊れた人形のように! ルイズにも破片が襲い掛かる! しかし・・・キラークイーン! この程度の衝撃、破片など恐るるに足りぬ!見事に全てを防ぎきった! 「・・・ちょっと失敗しちゃったみたいね。」 「「「「どこがだっ!」」」」生き残りからの突っ込みが入る。 幸運にしてミセス・シュヴルーズは気絶しただけであり授業は中止。 元凶であるルイズに下った罰は教室の掃除であった。 「細かいのはいけるとして、こういう大きいのは・・・キラークイーン、まとめてやっちゃえ!」 使い魔を駆使して掃除を終えたルイズは、しかし昼食に間に合うことはなかった。 「うぅ・・・お腹空いた・・・。」まるで幽鬼だ。 ふらふらと行くあてもなく彷徨うルイズ。行き着いた中庭で落ち込んでいた。 「あ、あの・・・。」 今にも誰かを道連れに自殺しそうな雰囲気のルイズに、一人のメイドが声をかけた。 何のことはない、メイド仲間に無理矢理行かされたのだ。 ↓経緯 「彼女よね?食べそびれたのって。何かお出しした方が・・・。」 「で、でも恐い・・・。」 「シエスタァ・・・お願い。」 「わっ私ですか!?」 「「「お願い!」」」 「うぅ・・・。」 かくして彼女に白羽の矢が立った。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/95.html
目の前の超異常事態に多少放心気味のルイズであったが男がこちらに近付いてくる事に気付き我を取り戻す。 「これは・・・アンタがやった事なの!?」 だがプロシュートは何も答えずルイズにさらに近付く。 「ちょっと・・・ご主人様が聞いてるんだから答えなさいよ!」 「テメー・・・一体何モンだ?オレに何をした?」 「平民が貴族に向かってそんな口の利き方していいと思ってるの!?」 「2秒以内に答えろ……オレに何をした?」 「質問に答えなさい!」 ルイズが怒鳴り散らすがプロシュートは全く動じない。 「ウーノ!(1)」 「ひ、人の話を聞きな――」 「ドゥーエ!(2)」 ルイズは魔法成功率0とはいえメイジ…つまり貴族だ。 平民という存在より圧倒的に上の立場にいると言ってもいい。 だが組織の暗殺チームの一員とし幾つもの死線を潜り抜けてきたプロシュートから見れば「良いとこのボンボン」つまり「マンモーニ」にしか見えない。 そして、その百戦錬磨の暗殺者としてのプロシュートの「スゴ味」が自然とルイズに質問の答えを答えさせていたッ! 「……アンタを召喚したのよ」 「召喚だと…?」 「そうよ、本当ならアンタみたいな平民なんかじゃなく 皆が召喚したようなドラゴンとかを使い魔にするはずだったんだけど何処を間違ったかアンタが召喚されたってわけ」 「その左手のルーンがアンタが私の使い魔になったって印よ」 「左手…さっきの左手の痛みはそれの事か」 だがプロシュートがある違和感に気付く。 (待て…さっきの左手の痛みはいい、それは納得できる…) (だがオレはその左手を何で押さえたッ!?) プロシュートがその答えを得るべく疑問の先へ視線を向ける。 ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ 「何ィーーーーーーーーーーッ!!」 「ちょっと…そんなに大声出さなくてもいいじゃない。それに貴族にキス……って何言わせんのよ!」 使い魔の儀式のアレを思い出しルイズが顔を真っ赤にさせるがプロシュートにとっても問題は左手ではなかった。 そう、左手にあるルーンなどどうでもいい。問題は「左手」ではなく「右手」だった。 (バカなッ!?ブチャラティのスティッキィ・フィンガースに切断されたはずの右手がなぜ『付いて』いるッ!?) 「まったく…弟分がお前を引っ張ったその『糸』に救われたぜ」 記憶に映るのはあのフィレンツェ超特急でのブチャラティとの闘い。 「バカなッ!! ブチャラティィイッ!」 (オレの右手はペッシのビーチ・ボーイの糸を殴ったブチャラティの攻撃で確かに『切断』されたはずだッ!) そこまでだ。プロシュートにはそこまでの記憶しかない。いくら記憶を探ってもそれは同じ事だった。 だが地面に激突する瞬間何かの光に包まれたような気がする。 思考を中断し視線をルイズに戻す。 「……テメーの言ってる事はどうやらマジのようだな」 「理解できた?じゃあ早くこの老化を解いてちょうだい」 「断る」 「アンタ…平民、それも使い魔が貴族に逆らえると思ってるの?」 「平民か貴族なんてのはオレたちにとってはどうでもいい、何より使い魔ってのが気に入らねぇ」 「貴族を敵に回してここで生きていけると思ってるの…!?」 「それに使い魔って言っても奴隷とかそういうのじゃなくて主人を守り忠誠を誓うある意味平民にとっては名誉なものよ?」 ルイズが使い魔の事について説明を始める。 が、当のプロシュートは殆ど話を聞いていない。 プロシュートが再び思考を巡らす。だがそれは使い魔になるかならないかという単純なものではなかった。 (どうするか…) 思考の末プロシュートは三つの選択肢を作り出す。 (一つはこいつを殺しここから離脱する事だが…これは駄目だな。 もしこいつの言うとおりここが全く違う世界なら地理が分からねぇしどういうわけか言葉は分かるようだが文字が分からないってのが致命的だ) (二つはこいつを人質にしここから離脱する…これも却下だ。 チビとは言え人一人を無理矢理担いで移動するのは限界があるし何より目立ちすぎる。) (三つは使い魔とやらになったふりをし情報を集める…今の状況下ではこれが最善か…? 殺す事は何時でもできるしやはり何より今は情報が欲しい。それにこいつ…メイジとか言ったがスタンド使いではないようだな。) (スデにグレイトフル・デッドで殴りかかってみたが動揺一つせず汗すらもかきやしねぇ) 自身の状況を正確に把握し最善の策を見出す。それが暗殺者としてプロシュートが生き抜く為に身に付けた事だ。これは当然他のヤツらも持っている。(ペッシ以外だがな) プロシュートのかなり物騒とも言える思考を知らずにルイズが「早くルイズ様の使い魔になるって言いなさい」という視線を送ってくる。 「……大体の状況は理解した」 「そう、それじゃあ早く皆を元に戻してちょうだい!」 「使い魔とやらになってはやる、だが…オレを他の連中と同じと思わねぇ事だなッ!」 ズキュン! グレイトフル・デッドの能力が解除され倒れていた生徒達の老化が解除されしばらくしてコルベールが起き上がる。 「うう……一体何があったのだね?ミス・ヴァリエール。」 「もう大丈夫ですミスタ・コルベール」 「そうか……他の生徒達も大丈夫なようだね、各自教室に戻りなさい。」 生徒達が多少ふらつきながら戻っていく。だがプロシュートは空を見据えたまま動かない。 「ほら、早く戻るわよ!」 (ペッシ…メローネ…ギアッチョ…リゾット…すまねぇな、ボスを倒すと誓ったはずなのにしばらくそっちに戻れそうにねぇ) プロシュートにとって昨日まで一緒に居た仲間が急に遠くに感じられたが、今は状況を少しでも良くする為に前に突き進むしかなかった。 予断だがコルベールのU字ハゲが進行した事は言うまでもない。 戻る< 目次 続く
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/694.html
翌日、いよいよ始まった品評会。舞台の上では次々と二年生たちが自身の使 い魔の特技を披露している。うち何名かは単なる大道芸になっていたりする のだが、滞りなく進行していた。 そして、ついに、ルイズの名前が呼ばれた。彼女は先日とは違い、覚悟を決 めたのか凛とした表情で己の使い魔を連れたって舞台に上った。 ルイズのクラスメイトや数名の教師、自分の仕事をしているものたち以外は ざわめきを起こす。それでも彼女は動揺しなかった。 「私の使い魔を紹介いたします。名はンドゥールです」 「がんばれー、『ゼロ』のルイズー」 野次が飛ぶ。その二つ名の意味を知っているものたちからは笑いが生まれる。 それでも顔をうつむかせない。 「見てのとおり、彼は人間です」 さっきより大きな笑いが起こる。こんな罵声はわかっていたことだ。 それに負けぬよう、彼女は己の胸を張って言い放った。端的にンドゥールの 特技というか得意なことを表すもの。 「――この場の誰より強い人間です!」 笑い声も何もかもが消え、しんとなった。ルイズは表情を硬くして、観衆を 見つめながら思った。 (言っちゃった………) 「なら誰かとやってみろよ!」 予想通りの声が飛んできた。それを合図にしてかざわつきが生まれ、それは 加速度的に大きくなっていく。教師たちは静まらせようとしたが、その必要 はなかった。 親衛隊の一人がゆっくりと手を上げた。 「私が相手になりましょう」 今度はどよめきだ。トリステインで親衛隊というものは男児であれば誰もが 入隊を夢見る部隊。それほどの実績と、吟味された力がある。そんな人物と 戦う。 ルイズはやっぱりやめにしないかなあと思った。勝てるとは到底思えなかっ たのだ。 「礼を言う」 だが、ンドゥールはそんな主人の心配などお構いなしに了承した。 わかっていたことである。元々、ンドゥールが親衛隊の中から適当に一人選 んで戦わせてくれと王女に頼んだのだ。なれば受けるのは当然の流れ。 ルイズは舞台に歩いてい来る騎士を見た。精悍な顔にマントの下にある鎧か らあふれる威厳、別にンドゥールを弱いと思っているわけではないが、いく らなんでも相手が悪すぎる。 そう思っていた。 すぐさま刃引きされた剣が用意される。勝負はどちらかが自身の敗北を認め ることで終わる。魔法は自由だ。ルイズはここまで来てしまってはもう止め ようなどとは思わなかったが、下がる前にンドゥールに尋ねた。 「これ、使う?」 ルイズは懐から水筒を出した。彼が異常聴覚以外になにか特別なものをもっ ているのは確かだが、具体的にはわかっていない。それでも水を使うことを 彼女は知っている。 「一応、いただいておこう」 ンドゥールはそれをズボンのポッケに入れて、騎士と対峙した。その人物は 剣を構え、目を尖らせている。杖を取り出さないことから魔法を使う気はな いようだった。対するンドゥールは、左手に剣を握っているものの構えては いなかった。 しばらくどちらも動かなかったが、痺れを切らしたのか騎士がじりじりとす り足で近づいた。やがて互いの間合いに入る。 騎士が剣を振りかぶり、床を蹴った。 ンドゥールの左手が光った。 「んぬお!」 騎士が苦悶の叫びを上げた。 鎧の横っ腹に目にいつのまにか剣が食い込んでいた。 「まいった……」 今度は逆に喝采があがった。野次を掛けていたものたちも大きな拍手を鳴ら している。騎士は一礼をしてから舞台から降りていった。 「やっぱりタバサのシルフィードか。ま、妥当なとこよね」 キュルケが舞台を見てそんなことをいった。隣にはギーシュやルイズもいる が、ンドゥールの姿はない。彼は生徒ではなく使い魔の立場である。そのた め席が用意されておらず、ほかの使い魔たちとともに中庭の隅で鎮座してい た。 「ダーリンもなかなかだったけどねえ。ルイズ、悔しくないの?」 「あれだけやってのけたら十分じゃないの。本当に親衛隊を倒すなんてこっ ちが驚いたわ」 「そうよね。ますます惚れ直しちゃったわ」 「言っときなさい。でも、おかしいのよね。剣は使えなかったはずなのよ。 自分でも言ってたもの」 「あんなあっさり倒したのに?」 「うん」 二人の視線が木陰で休んでいるンドゥールに注がれる。もしかして、あれが デルフリンガーの言っていたことなのかしら、と、ルイズは思った。 舞台上では王女がもう一度竜で舞ってほしいと頼んでいた。それに応じ、タ バサは使い魔に乗りあがった。 「あれ?」 自分の使い魔が選ばれずにいてうなだれていたギーシュが声をだす。静粛な 場にふさわしくないそれを隣席のモンモランシーが注意する。 「どうしたのよ」 「いや、彼、なにをしてるのかなって」 「誰よ」 「ンドゥール、ルイズの使い魔だよ」 その名前にモンモランシーだけでなくキュルケ、ルイズもそちらを見た。 ンドゥールは、使い魔の群れから離れて歩いていた。向かっていく先は外に 繋がる門である。 「あいつ……!」 「ちょっと駄目よ。座ってなさいな」 席を立とうとするルイズをキュルケがとめる。渋々それに従った。 「でも、彼はどこへ行こうっていうんだろうね」 「さあ。でもそろそろ黙ったほうがいいんじゃないの? 先生たちがこっち 見てるわよ」 モンモランシーがそう言うとぴたりと全員口を閉じてしまったが、ルイズだ けはそわそわと落ち着きがなかった。 (どこに行くのよ) 自分が戦いを頼んだのだから腹が立ったなんてわけではないだろう。それに なんだか妙に急いでいる。一体なんだというのだ。 答えはすぐにわかった。というよりもわからされた。突如、彼が向かってい る門が破られたのだ。 「なに!?」 いち早くルイズがそれを見た。そしてルイズの隣にいた者たち、舞台にいる ものたちと波紋が広がるように次々と門から出てきたものに気づいていった。 人型、薄茶色の肌、城壁と同じ背、生えている草、ところどころ穴が開いて いるがメイジならすぐさまそれがなんなのか理解する。 「ゴーレム!」 「姫殿下をお守りしろ!」 その声に応じて親衛隊が王女の周りを固めた。学院の教師たちは自身の杖を 取り出す。 「あんのバカ! 気づいてたらいいなさいよ!」 ルイズも杖を取り出し、魔法を唱えだすが横から口をふさがれる。 「ふがふ! ふがふがががー!」 「あんたが魔法使ったって失敗しかしないでしょ。使い魔を殺す気?」 キュルケにそう言われ、しぶしぶ杖を下ろす。と、次には駆け出そうとした ところを再びとめられる。 「離しなさいよ!」 「だからやめなさいって言ってるでしょ。ここは私たちに任せなさい。フレ イム!」 主の声にサラマンダーが鎌首を持ち上げ走り出す。それだけでなく彼女自身 も呪文を唱える。 「この『微熱』のキュルケがお相手してあげるわ! ファイアーボール!」 「僕だってやってやるさ。ゴーレムたち!」 火球が飛んでいき、青銅の像が走っていく。それだけでなく多くの攻撃魔法 が襲い掛かる。タバサは本を読んでいる。 ンドゥールはそれらとゴーレムの攻撃をよけながらなんとか奮闘している。 圧倒的な優勢ではあるが、見ているしかないルイズは胸の奥に焦燥感を覚え た。 (自分でいうのもなんだけど使い魔は立派。立派だけど、じゃああたしって 何なのよ!) 地団駄を踏む。彼女は己の無力さに涙がこみあげてきそうになった。いまは それを堪えることが精一杯。唇からは血が出ていた。 やがてゴーレムは多重攻撃に耐えかね、ゆっくりとその形を崩していった。 魔法の数も少なくなっていく、と、一発の大きなファイアーボールがンドゥ ールを狙ったかのように飛んでいった。 それは直撃こそしなかったものの、ンドゥールを転ばせてしまった。さらに 運の悪いことに力を失ったゴーレムが土の塊となって彼に降りかかり、完全 にその姿を隠してしまった。 それを見て、ルイズは気絶しかけたが、何とか踏みとどまる。 「ギーシュお願い!」 「わかってるさ。愛しのヴェルダンデ、彼を助けてやってくれ」 主人の命令に応じ、大きなモグラが土の山に突き進む。 「大丈夫でしょ。そんなたいした量じゃないわ」 「……うん。そうよね」 ルイズはキュルケの言葉で心が少し落ち着いた。が、なにか先ほどまでとは 違う焦りが心の中にやってきた。それはとても妙なもの、自分のものではな く他人のもののような気がした。 徐々に、それは形を得て、言葉になった。 (囮―本命―違う) それは彼女がよく知る、ンドゥールの重く響く声だった。 「ルイズどうしたのよ。顔色悪いわよ?」 キュルケの声も聞こえない。モンモランシーやタバサも顔を寄せているが、 ルイズは彼女たちの顔が見えていない。 (狙いは――) ルイズは首を真後ろに向けた。ムチウチになりそうな勢いだった。 彼女の視線の先は、この品評会が行われている広場の反対側。僅かな暇もな くルイズは走り出した。 「どこにいくのよ! ルイズ!」 後ろから掛けられる声も気に留めない。使い魔から発せられたメッセージを 受けて走る。敬愛する王女の姿も入らないほど視野狭窄になっていた。 彼女は裏側にたどり着き、本命を見た。それは門を破壊したものとは比べ物 にならない大きさのゴーレムだった。そばにはフードで顔を隠した人物が宙 に浮いている。ゴーレムを操り同時にフライを使う、それだけで相当な使い 手とわかる。 狙いは明白。宝物庫の破壊だ。 「ちょっと、なによこれ!」 キュルケとタバサがルイズのあとを追ってやってきた。 「ゴーレムよ! 見たらわかるでしょ!」 「でもこれさっきのよりもっと大きい……もしかして『土くれ』のフーケ!?」 その大きな声が災いした。 フーケと思われる人物に彼女たちは姿を見られてしまった。 「く……ファイアー!」 キュルケが火球を投げつける。だがそれはゴーレムの肌を少し焦がすにとど まった。 「見掛け倒しってわけじゃないのね」 「当たり前よ。こっちが本命だもん」 「あんた、そういやなんで気づ……なにしてるのよ!」 キュルケが声を上げるのも無理はなかった。ルイズは呪文を唱えていたのだ。 成功率『ゼロ』だというのに。 「ちょ、やめ………」 「―――ファイアー、ボール!」 ゴーレムが主人を守ろうと動く。が、ルイズの魔法は、なにも起こらなかっ た、わけではない。宝物庫の外壁が爆発した。 「どこがファイアーボールよ!」 「うるさいわね。ちょっと失敗しただけじゃないの」 最悪の状況で二人は口喧嘩を始めてしまった。危険極まりない、が、ゴーレ ムは彼女らを攻撃しなかった。 「あれ……」 タバサが上空を指差した。ルイズとキュルケは喧嘩をやめて空を見上げた。 そこでは、ゴーレムが宝物庫の壁を巨大な腕で殴りかかっていた。 「ああ!」 ゴーレムは壁を打ち抜いた。 ヴェルダンデによってンドゥールはたいした時間もかからず救助された。と はいえ下半身はいまだ土の中だ。 「感謝は結構だよ。君は体を張って奮戦していたわけだしね」 ギーシュはそういうものの高慢な笑みが張り付いた顔は、礼をして当たり前 と言った感じだった。本来ならンドゥールは感謝するところだが、今回はし なかった。己の杖を地面に突き刺し、柄を自分の耳に当てる。 ギーシュはそれを見て少し腹が立ったが、その些細な苛立ちを吹き飛ばす轟 音が耳に入った。 『土くれ』のフーケと思われる人物は宝物庫に入り、長い箱を奪っていった。 「……ん、」 タバサが使い魔のシルフィードに乗って風の魔法を放つが、それすらもゴー レムという壁に阻まれてしまう。 地面からはキュルケが何度も火球を放つがまったく効果はない。 「かったいわねえ! 逃げられちゃうわこれじゃ」 「そうさせないようにがんばりなさいよ!」 「やってるわよ!」 また喧嘩が始まるが今度はすぐにやめた。大きな足が迫ってきていたら当然 だ。二人はなんとかそれを避けるが、こんどは大きな腕が振り下ろされる。 タバサがシルフィードを向かわせる。自身でも魔法でゴーレムを攻撃する。 しかしその巨体は揺るがない。 拳は、落ちた。が、結果的に、ルイズとキュルケは無事だった。ゴーレムに つぶされる直前、何かに押し飛ばされたのだ。 「……なに、あれ」 タバサは思わず声を上げていた。もともと寡黙な彼女がこのような声を出す ということは、それだけの驚きだったのだ。 「……水?」 キュルケがそうこぼした。そのとおり、彼女らの眼前に水が立っていた。 水系統のメイジが助けてくれたのだろうか。キュルケにはそれが誰かわからな かったが、ルイズにはその人物に心当たりがあった。 「――ンドゥール!」 「うそ! これダーリンなの!?」 「たぶん!」 水は返答せずにゴーレムに襲い掛かった。やすやすと体に穴を開けて潜り込 むと縦横無尽に走り回り、傷だらけにしていく。しかし効果がない。一瞬で ふさがってしまう。水もそれを察したのか、ゴーレムの頭に上っていき、術 者を狙おうとする。 しかし、見当違いなところを襲っている。 「どうしたのあれ」 「わからないのよ! ンドゥールは音で場所を確認するの。だから空にいら れたら攻撃できないんだわ」 「じゃあ教えないと。ダーリンそこじゃないわ左よ!」 キュルケが場所を叫ぶがそれは術者にも筒抜けだ。水は相変わらず命中しな い。ゴーレムは外へと歩いていく。このままではまんまと宝物を盗まれてし まう。 「……ンドゥール、隠れてて」 ルイズはそういい、呪文を唱えだした。キュルケはそれが聞こえていなかっ たので止めることができなかったが、ンドゥールがゴーレムの体の中に隠れ たことでルイズが何をやろうとしてるのか気づいた。 「また………」 「ファイアーボール!」 数秒の間をおき、爆発した。今度は宝物庫ではなくゴーレムだったが、頭の 表面をほんの少し削っただけ。砂を巻き上げただけに過ぎない。 ゴーレムはなんのダメージも負っていないのか歩みを止めなかった。 だが、ようやく水は当たりをつけ、まっすぐ術者に向かっていった。 腕を掠め、血が吹き出る。しかしなんの障害にもならなかった。盗賊はゴー レムとともに外へと出て行ってしまった。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/51.html
どうやら貴族というものは自分で服を着るという概念はないようだ。 ルイズを着替えさせながらそう思う。目が覚めるとまず私に驚く。私が召還された使い魔だと思い出すと突然、 「服」 と言い出す。まったく貴族という奴は皆こうなのか? ルイズとともに部屋を出る。すると別の部屋からも誰か出てくる。 赤い髪で褐色の肌を持つ女だった。ルイズより背が高く顔の彫りは深い。バストは大きくブラウスのボタンを外し強調されている。 彼女はこちら見ると薄く笑う。 「おはよう。ルイズ」 「おはよう。キュルケ」 ルイズは嫌そうに挨拶を返す。彼女の名前はキュルケというらしい。 「あなたの使い魔って、それ?」 キュルケはこちらを指差すと馬鹿にした風に言う。 「そうよ」 ルイズが意地になって言う。 「あっはっは!ほんとに人間なのね!すごいじゃない!」 やれやれ、貴族というのはこんなのばかりなのか。 まぁ、生活の苦労を知らなければこうなるのは当たり前かもしれないな。 生まれたときから人の上に立ち、甘やかされて育ったのだろう。 ルイズとキュルケが話しているとキュルケが出てきた部屋から赤く大きなトカゲのような生物が現れた。 そこにいるだけで周辺の温度が上がる。 何だこれは? それが顔に出たのだろう。キュルケが笑いながら説明する。どうやらこの生物は火トカゲというらしい。これが彼女の使い魔でフレイムというらしい。 火竜山脈とかいう場所の火トカゲでそこの火トカゲはブランドものらしい。きっと見た目と強さに定評があるのだろう。 「それであなた、お名前は?」 キュルケが聞いてくる。 「吉良吉影だ」 「キラヨシカゲ?変な名前」 そりゃこっちの人間からしたら変だろうな。 しかし目の前で言わなくてもいいものを…… 「じゃあ、お先に失礼」 そう言うとキュルケとフレイムは去っていった。ルイズは悔しいのだろう、文句を言っている。 そういやさっき彼女はルイズを『ゼロのルイズ』と言っていたな。召還されたときも誰かがそう言っていた気がする。 ルイズは私を召還したときに随分と馬鹿にされていたようだ。さっきもそうだ。そこには『ゼロのルイズ』という単語が出てくる。ルイズの あだ名なのだろう。 そういえばルイズは魔法を使ってないな。それが関係しているのだろうな。 ルイズが落ち着いたところで食堂に行く。食堂には大きく長いテーブルが三つ並んでおりテーブルには豪華な飾り付けがしてある。 いかにも「私たちは金持ちだ」見たいな感じで呆れるな。料理も朝から豪勢だ。こいつら胸焼けしないのか? 「椅子を引いてちょうだい」 ルイズが言う。椅子を引いてやる。 するとルイズが何か渡してくる。スープだ。そして皿の端にパンを二切れ置く。 「あんたの朝ごはんよ。私の特別な計らいで床で食べていいわ」 そういえば人間は食事を取らないといけないんだったな。理不尽だが我慢する。 少しの辛抱だ。こんなな小娘の言うことを利くのは情報を得るためだ。自分に言い聞かせる。 なにやら祈りが唱和される。こいつらにとってこれがささやかな糧か。早死にするぞ。 5へ