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白銀と亀な使い魔-1 亀と白銀な使い魔-1 白銀と亀な使い魔-2 亀と白銀な使い魔-2 白銀と亀な使い魔-3 亀と白銀な使い魔-3 白銀と亀な使い魔-4 亀と白銀な使い魔-4 白銀と亀な使い魔-5 白銀と亀な使い魔-6 白銀と亀な使い魔-7 白銀と亀な使い魔-8 白銀と亀な使い魔-9 白銀と亀な使い魔-10 白銀と亀の使い魔-11 白銀と亀の使い魔-12 白銀と亀の使い魔-13 白銀と亀の使い魔-14 白銀と亀の使い魔-15 白銀と亀の使い魔-16 白銀と亀の使い魔-17 白銀と亀の使い魔-18 白銀と亀の使い魔-19 白銀と亀の使い魔-20 白銀と亀の使い魔-21 白銀と亀な使い魔外伝 『亀ナレフは平凡無事に憧れる』 亀ナレフは平凡無事に憧れる-1
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几帳面な使い魔-1 几帳面な使い魔-2 几帳面な使い魔-3 几帳面な使い魔-4 几帳面な使い魔-5 几帳面な使い魔-6 几帳面な使い魔-7 几帳面な使い魔-8 ジョジョ三大兄貴記念SS 几帳面な使い魔 記念SS
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契約! クールでタフな使い魔! その① 「あんた誰?」 日本とは思えないほど澄んだ青空の下、 染めたものとは思えない鮮やかなピンクの髪の少女が彼を覗き込んでいた。 黒いマントをまとい手には杖。まるで魔法使いのような格好だ。 いぶかしげに自分を見つめるその表情に敵意の色はない。 だから、とりあえず周囲を見回した。 ピンクの髪の女と同じ服装をした若者達が囲むように立っていた。 共通する事は全員日本人ではない事。欧米人が多いようだ。 するとここは…………ヨーロッパのどこかだろうか? なぜ、自分はこんな所にいる。 そう疑問に思ってから、ようやく自分が草原の中に仰向けに倒れていると気づいた。 ヨーロッパを舞台にした映画に出てくるようなお城まで遠くに建っている。 「…………」 事態がいまいち飲み込めず、しかし警戒心を強めながら彼はゆっくりと起き上がった。 少女は、男が自分よりうんと背が高く肩幅も広い事でわずかにたじろぐ。 「……ちょ、ちょっと! あんたは誰かって訊いてるのよ! 名乗りなさい!」 「やれやれ……人に名前を訊ねる時は、まず自分から名乗るもんだぜ」 「へ、平民の分際で……ななな、何て口の利き方!?」 少女が顔を赤くして怒り出すのとほぼ同時に、周囲に群がっている連中は笑い出した。 「ルイズ、『サモン・サーヴァント』で平民を呼び出してどうするの?」 誰かが言う。笑いがいっそう沸き立ち、少女は鈴のようによく通る声で怒鳴った。 「ちょ、ちょっと間違っただけよ!」 どうやら、この少女の名前はルイズというらしい。 ルイズ……名前から察するにフランス人だろうか。という事はここはフランス? となると、この訳の解らない状況にも説明がつくような気がしてきた。 あのトラブルメーカーの友人が関係しているかもしれない。それはさすがに被害妄想か。 (しかし……スタンド攻撃にしては妙だ。 俺をここに瞬間移動させたのはこのルイズという女らしい……。 だが周りにいる奴等の言動を見ると、どうにもスッキリしねぇ) とりあえず彼は、一番近くにいるルイズを見下ろして訊ねた。 「おい、ここはどこだ。フランスか?」 「フランス? どこの田舎よ。それに使い魔の分際で何よその態度は」 「使い魔……?」 先程聞いた『サモン・サーヴァント』という単語を思い出す。 そして、見渡してみれば黒いマントの少年少女達の近くには、様々な動物の姿があった。 モグラであったり、カエルであったり、巨大なトカゲであったり、青いドラゴンであったり。 「………………」 ドラゴン? 集団から少し離れた所で、髪が青く一際年齢の低そうな少女がドラゴンの身体を背もたれに読書をしている。 ファンタジーやメルヘンでなければありえない光景だ。 もし、これが夢や幻でないとしたら、つまり……現実に存在するファンタジーといったところか? 約五十日ほどの旅でつちかった奇妙な冒険のおかげで、非現実的な事に対する耐性ができたというか、 そういうものを柔軟に受け入れ理解し対処する能力を磨いた彼は、 持ち前の冷静さと優れた判断力のおかげもあって取り乱すような事はなかった。 周囲をキョロキョロ見回している平民の姿に腹を立てたルイズはというと、 教師のコルベールに召喚のやり直しを要求していた。しかしあえなく却下される。 「どうしてですか!」 「二年生に進級する際、君達は『使い魔』を召喚する。 それによって現れた『使い魔』で、今後の属性を固定し、専門課程へ進むんだ。 一度呼び出した『使い魔』は変更する事はできない。 何故なら春の使い魔召喚は神聖な儀式だからだ」 「でも! 平民を使い魔にするなんて聞いた事がありません!」 ルイズとコルベールの会話をしっかり聞いていた彼は、ある仮説を立てる。 つまり自分はルイズの能力によって、元いた場所からここに『召喚』された。 そしてそれは周囲にいる全員が行っているようであり、スタンド能力ではなさそうだという事。 さらにここはドラゴンがいる事からヨーロッパどころではなく、 ファンタジーやメルヘンの世界だという……突飛で奇抜で冗談のような話。 『召喚』されるのは本来――動物やあのドラゴンのような神話の生物等であり、人間ではない。 しかし彼女ルイズは人間を『召喚』してしまった。 『召喚』された生物は、『召喚』した人間の『使い魔』であるらしい。 『使い魔』という単語からだいたいどのようなものかは想像できる。 (俺が……この女の使い魔だと? やれやれ、冗談きついぜ) とにかく、彼にとって今必要なのは現状把握をするための情報だ。 話をするのに一番適しているのは……少年少女達を指導しているらしいハゲ頭の中年。 さっそく彼に声をかけようとしたところで、彼と話をしていたルイズがこちらを向いた。 ルイズは自分が召喚した平民を見た。 身長は190サントはあろうか、黒いコートに黒い帽子をかぶっている。 顔は……なかなか男前だが、それ以上にとてつもない威圧感があって、怖い。 でも、自分が召喚したんだから。自分の使い魔なんだから。 だから、しなくちゃ。 「ね、ねえ。あんた、名前は?」 恐る恐るもう一度訊ねてみる。まただんまりかと思った矢先、男は帽子のつばに指を当てて答える。 「承太郎。空条承太郎だ」 「ジョー……クージョージョータロー? 変な名前ね」 本当に変な名前だった。聞いた事のない発音をする名前だ。 ルイズは彼の奇妙な名前を頭の中で暗唱しながら、彼に歩み寄り、眼前に立つ。 そして彼の顔を見上げて、届かないと思った。承太郎は鋭い双眸で自分を見下ろしている。 やる、やってやる。こうなったらもうヤケだ。 ルイズは、ピョンとジャンプして承太郎の両肩に手をかけて自分の身体を引っ張り上げ――。 CHU! 一瞬だけ、ついばむようなキス。 さっきから鉄面皮を崩さない承太郎もこの行動には驚いたようで、目を丸くしている。 ストン、とルイズは着地した。ほんの一秒かそこらの出来事。 心臓がバクバクする。だだだだって、今のはファーストキスだったから。 頬が熱くなる。周囲の視線が気になる。 承太郎はどんな顔をしてるんだろうと思って、見上げて、ヒッと息を呑んだ。 ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ なんだろう、これ。承太郎はただ立っているだけなのに、地響きが起きているような錯覚。 あまりのプレッシャーに、ルイズは思わず一歩後ずさり。 その瞬間、承太郎が叫んだ。 「いきなり何しやがる、このアマッ!」 「キャッ!」 重低音の怒鳴り声のあまりの迫力にルイズは尻餅をついた。 続いて、承太郎も膝をつく。左手の甲を右手で覆い隠しながら。 「グッ……ウゥ!? こ、これは……」 使い魔のルーン。 承太郎の左手に刻まれたものの正体を、ルイズは恐る恐る教えた。 こうして――ルイズは奇妙な服装をした奇妙な平民を己の使い魔としたのだった。 今日召喚された使い魔の中で一番クールでタフな使い魔がこの承太郎だとも知らずに。 目次 続く
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ゼロの使い魔への道-1 『ギーシュ危機一髪 その1』 『ギーシュ危機一髪 その2』 『ギーシュ危機一髪 その3』 『キュルケ怒りの鉄拳 その1』 『キュルケ怒りの鉄拳 その2』 『キュルケ怒りの鉄拳 その3』 『燃えよドラゴンズ・ドリーム その1』 『燃えよドラゴンズ・ドリーム その2』
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S.H.I.Tな使い魔-01 S.H.I.Tな使い魔-02 S.H.I.Tな使い魔-03 S.H.I.Tな使い魔-04 S.H.I.Tな使い魔-05 S.H.I.Tな使い魔-06 S.H.I.Tな使い魔-07 S.H.I.Tな使い魔-08 S.H.I.Tな使い魔-09 S.H.I.Tな使い魔-10 S.H.I.Tな使い魔-11 S.H.I.Tな使い魔-12 S.H.I.Tな使い魔-13 S.H.I.Tな使い魔-14 S.H.I.Tな使い魔-15 S.H.I.Tな使い魔-16 S.H.I.Tな使い魔-17 S.H.I.Tな使い魔-18 S.H.I.Tな使い魔-19 S.H.I.Tな使い魔-20 幕間1 S.H.I.Tな使い魔-21 S.H.I.Tな使い魔-22 S.H.I.Tな使い魔-23 S.H.I.Tな使い魔-24 S.H.I.Tな使い魔-25 S.H.I.Tな使い魔-26 S.H.I.Tな使い魔-27 S.H.I.Tな使い魔-28 S.H.I.Tな使い魔-29 S.H.I.Tな使い魔-30 S.H.I.Tな使い魔-31 S.H.I.Tな使い魔-32
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究極の生命体とはッ! ひとつ 無敵なり! ふたつ 決して老いたりせず! みっつ 決して死ぬことはない! よっつ あらゆる生物の能力を兼ね備え しかも その能力を上回る! そして その形はギリシアの彫刻のように 美しさを基本形とする。 それが究極生物 アルティメットシング!! 深夜 自分の寝室で気持ちよくスースーと幸せそうに寝ていたルイズは 誰かの気配でぱちりと目が覚めた 普段は梃子でも魔法でも起きないルイズだが この日は違った なぜかはわからない まさに奇跡 「だ だれか いるのっ?」 何者かの気配でふと眼が覚めるルイズは小さく声を出した 気のせいであッてほしい生きた侵入者はいらない 死んだ幽霊はもっと嫌だけど 最近話題になっているという ある盗賊の噂を思い浮かべ びくっと緊張する いい男からの夜這いも考えたが 微熱のキュルケと同類にされるのは嫌なので 思考すら拒否 嫌なものは嫌である 寝巻きのまま メイジは肌身離さず持つようにと常に言われていた 杖を手元に引き寄せてえいと構えた 眼を凝らすが 闇で何も見えない まあ 暗闇だから当然といえば当然のことだが 自分はライトの共通魔法すら使えないのが いまさらながら思い返して とても悔しい さすがゼロなんていわないで 「・・・ワタシヲ コノへヨオンダ ムスメ世オ?」 突然誰かの声が語りかける その声は静かに だが 聴くものを畏怖させる響きを持つ ルイズにはよく聞き取れなかったけど 幽霊じゃないのはよかったけど 侵入者に代わりはナイ 部屋が暗くてよく見えない だが明らかに人影がある 窓の傍に確かにいるのだろうか 「シツモンにコタエろ むうス おが このカあズを ヨンダノカ?」 前と変わらぬ口調のまま 質問をくりかえす なぞの侵入者 有無をいわさない そのうえ聞き取りにくい 発音と文法がややおかしい 声がこわれたような感じだ 平民が神のように恐れるメイジなど歯牙にもかけない なぜかそんな印象すら感じさせる それが貴族としてプライドの高いルイズ様に カチンと来た なによコイツ ナマイキね 「いい度胸ね 貴族の寝室に 侵入するなんて よほどの命知らずか馬鹿だわ」 挑発するように言うが 無反応 一人で空気に語りかけているように思えた まるで間抜け ただの変な人だ 「コタエロ こカあズを スクイだしたのはおマエか?」 口調は変わらず そして静かに 声は質問を繰り返す 無駄無駄無駄と 聞こえたような 聞こえないような ルイズは不気味に感じた 「いっている意味がわからないわよ アンタどこの田舎もn・・」 言いかけて ふとあること思い出した 昼間の召還儀式 そして ただの岩・・まさかとは 思うけど・・考えられるのは一つ そう選択肢ルートは一つのみ 「アンタ・・・まさか あの岩とかいうんじゃないでしょうね?」 岩は生物になるなど 聞いたことも見たこともない 魔法生物で 似たような例はあるが 昼間みたのはどう考えてもただの岩だッた このルイズ様の眼をもってしても岩だった 「ンンン・・そのハンノウ やはりソウダナ お前がアノ声の娘カァァ」 それは体温と呼吸と音声から部屋を割り出し侵入した わずかに得た昼間の情報を 総合 分析 推理 検討 した上 今の反応で確信 やはりこの人間の娘が昼間 何かの手段で 宇宙空間からこの星へ導いたのだと 少なくとも波紋ではないことはたしかだとも 「だったら どうだというのよ?」 ゼロの胸を張り 強気に言うが 内心はガタガタ震えてる まるでネコが人食いトラに 喧嘩を売るような感覚だ そして勝率は限りなくゼロ 駄目よルイズ ゼロていうんじゃない ゼロは孤独で不吉な数字よ おまけに数えると えらくムカツクわ 「キョウミぶカァい ジツに キョウみい深いぞ ンンン」 なぜかご機嫌の様子で影はルイズにじりじりと近寄ってくる 杖を構えようとしたが 思わず焦って落としてしまう しまった 「ハモンとは違う・・・何かノ くうカン干渉の力か あレのカンカくハ」 落とした杖が 影の足元に 転がっていく それを拾うと 影はしげしげと眺めいじりだす 子供がはじめてみるおもちゃをいじくりまわすように その間 十秒 「こレが なニカの 力を使役するためのドウグ ダナ オマエの反応を見るかぎリィィィ」 その影はズバリと推理した ルイズのわずかな呼吸の乱れや動作も分析して 名探偵が真犯人を当てるように的確に 「か かえしなさいよっ」 ルイズは焦る 焦りまくる 杖はメイジの生命線 なぜかコイツはすご^く賢い それもとてつもなくヤバイことだとは 本能で理解できた コイツに少しでも情報を与えると パズルのピースを全てわかって埋めてしまうような感じだ 「お前達・・・メイジとカ言っていたな そウか お前達が この星の生態系の頂点・・支配者クァァァ」 そう 昼間拾ったのあらゆる音や動きでこの生命体は全てを理解していた 言語から文法までも 誰からも教わらずに 今話している言語もわずかな時間で体得したのだ 子供が馬に乗るコツを覚えたとたん スイスイと乗りこなせる要領というべきか やばい やばいわ・・コイツの学習能力は 化け物だ 「だが・・このカーズを導いたのは なんノ力」 突然 ぶつぶつと一人で思案を始めるカーズ ルイズは完全に取り残されている 「な なんなのよ コイツ・・」 岩かと思えば 生物 一人で語り 一人で問題解決していくコイツに戸惑うばかりのルイズ 言語もなぜか話すたびに正確な発音と文法になるのがまた怖い 自己学習修正しているのか 変わり者が多いメイジ にもこんな変な性格の人物はいない ルイズの知る限り 変わりはてた頭の教師は一人いるな あとスケベな学院長もいたか これはどうでもいい 「ルイズとかいう名前の人間・・・・このカーズに おまえの使い魔になれというんのか」 その一言はまさに ルイズを驚愕させた なんでそれをっ?名前も自己紹介もしないのに 眼の前の影は 用件 自分から 切り出したのだ さらに影はこちらに近寄っていく もう逃げられない距離だ 「どうした 答えよ ルイズやら このカーズと契約を結ぶのか」 もはや完全な文法と発音でしゃべりかけてくるカーズ その影は二つの月の光を浴びながら 明らかになる 神々しいまでの肉体美と威圧感 それはまさに太陽の化身 そして究極の生物 そして カーズはニヤニヤAAAAと笑みをうかべた ルイズの前に偉そうにドーンと立ちながら からかうように 遊ぶように 見下すように えらく楽しそうに これが お前の運命 だとヨォォОォォといわんばかりの表情を浮かべて BAAAAAAン!! と どこから聞こえそうな音をたてそうな感じで 「この究極生物 アルティメットシングと契約するかァァァァ!!?」 第二話 究極な使い魔 誕生 続く・・
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『参ったねえ、こりゃ実に参った』 手に握り締めた知恵ある剣、デルフリンガーが何度目とも知れぬ愚痴を漏らす。 ここはハルケギニアと呼ばれる世界。 トリステイン魔法学院に在学する学生達に、遺跡調査の依頼が舞い込んで来た。 それ自体は、決して珍しい話では無い。 魔法学院に通うメイジ達とは例外なく貴族の家系であり、彼らはいざともなれば習得した魔法を駆使して、他国との戦争の為に激しい戦場に立たねばならない。 学問や魔法の研究、そして武者修行の為に、魔法学院の学生達は日々の授業以外にも命の危険を伴う冒険に挑む必要があるのだ。 今回もそうした――危険ではある物の、ありふれた冒険の一つのはずだった。 『よお、これからどうする。先に進んじまうか、連中を探すか、どっちだい』 遺跡を守護するガーディアンとの戦いに気を取られ、仕掛けられていたトラップを見抜けなかったのは自分のミスだった。結果として、一緒に遺跡までやって来た仲間達と離れ離れになってしまい、今この場にいるのは自分と、そしてデルフリンガーの一人と一本。 一刻も早く仲間達と合流し、任務を終えてこの遺跡を脱出する。 果たさねばならない目的の数はたった3つ。口で言うのは簡単だが、かなり困難な話である。 今、自分は何処にいるのか?仲間達の位置は?遺跡を守るガーディアンやトラップの存在は? 目的に対して問題は山積み。 もし一人でこの遺跡に訪れていたとしたら、気にする事は無かっただろう。 だが、仲間達を放っておくわけにはいかない。彼らは、孤独だった自分に出来た初めての友達。 死と隣り合わせの戦場でも、笑って肩を並べてくれる、かけがえの無い人達。 父を殺され、母を狂わされ、自らもまたトリステイン魔法学院での過酷な任務の中で惨死することを望まれた、あの可愛そうなシャルロットは、もういないのだから。 『なあ、タバサ――』 「皆と合流する」 タバサはいつも通りのか細い声で――しかしはっきりと意思を込めて声に出した。 『んぉ?お、おう、わかった。しっかしおどれーたぜ、あんたがちゃんと返事をしてくれるなんてよぉ?』 それっきり返事は返さない。決してデルフリンガーのことが嫌いな訳では無かったが、必要の無いこと以外は、あまり喋りたくは無かった。 それは、誰に対しても変わらない、他人へのタバサの接し方。 ――しかし何故、自分はこのインテリジェンスソードを持っているのだろう? これは彼女のクラスメイト、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ヴァリエール―― 通称「ゼロのルイズ」の使い魔が使っている筈の剣なのに。やはりこの剣は異世界から来たというその使い魔の青年、平賀才人の手に握られているのが良く似合う。 まあ、いい。武器を失う羽目になった才人のことは気になるが、 彼やルイズの側にはタバサの頼れる親友キュルケや、少々お調子者だけど召喚魔法の技術は確かなギーシュと言った仲間達がいるはず。 自分は彼らの無事を信じて、「早くデルフリンガーを返したいなあ」と考えていればいいのだ。 『んじゃ、合流すると決めたからにゃ、どっちに行くよ?右か?左か?上かい下かい?』 「……………」 タバサは黙って歩き始める。途中途中で、魔法を使って自分が通ったというサインも残しておく。 他に良い考えがある訳じゃなかったが、向こうもこちらを探しているなら、きっと大丈夫。 例えすぐには会えなくても、互いに強く「探そう」「会いたい」という意志を持って 歩いているなら、いつかは必ず再会出来るはずなのだ。 何故なら、自分達はお互いに向かっていっているのだから――。 『……おっ。こりゃどーも、順序が逆になったみてぇだな』 デルフリンガーの言葉に、タバサもこくりと頷く。 彼女達の目の前に立ち塞がる扉は、これまで散々遺跡の中で見続けて来た石造りの物とは違う、金属とも有機物とも付かぬ物質で作られている奇妙なデザインの扉だった。 まるで扉自体が何かの生き物であるかのように、巨大で禍々しい力すら感じ取れる。 この扉を開いたが最後、何が起こるのか――そうしたイメージすら封殺してしまう程の凄味があった。 そう。間違いなく、この扉こそがこの遺跡に眠る最大の「何か」なのだろう。 『どうする、タバサ?』 「……………」 一人でこの扉を開けてしまって大丈夫なのか?出来るなら、仲間達と合流したい。 この扉の先に何があるのかわからない以上、迷いはある。 ――だが、逆に。 逆に考えるなら、今ここで自分一人で扉を開いてしまえば、皆を巻き込まなくて済むのかもしれない。 その為に例え自分が命を落としたとしても、仲間達だけは助けられるかもしれない。 今まで歩いて来た中で、別の道は無かった。後戻りか、扉を開いて先に進むか。二つに一つ。 「………開ける」 決然とした口調で、タバサは言う。デルフリンガーを鞘に収め、自分の杖と一緒に脇へ置いておく。 そして、その小さな手を目の前の扉に掛け、精一杯の力を込めて開こうとする。 ゴトリ ――扉は、あっけない程簡単に開いた。 そしてその刹那、タバサは何か目に見えぬ圧倒的な力によって、凄まじい勢いで扉の中に引き摺り込まれようとしていた。 『――タバサ!』 「…………!!」 なけなしの力を振り絞って、タバサは声を頼りにデルフリンガーを掴む。杖は、間に合わない。 そして一人と一本は、扉の中へと吸い込まれて行く。 やがて意識を失うその直前、タバサは確かに誰かの声を聞いた気がした。 「――大迷宮へ……そして君の試練へ……ようこそ……――」 ゼロの奇妙な使い魔「タバサの大冒険」 To be continued… 戻る
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前ページ次ページS.H.I.Tな使い魔 「ミス・ヴァリエール。罰としてあなたにはこの教室の片づけを命じます。もちろん、使い魔に手伝わせてはなりません。」 騒ぎに駆けつけたコルベール教師はルイズにそう命じた。 ミセス・シュヴルーズは完全に意識を失っていたし、生徒達は今にもルイズを吊るし上げんばかりだった。だからルイズに同情的なコルベールでもそうさせざるを得なかったのだ。 それから一時間。まだ片付けは終わる気配を見せない。 教卓はばらばらに吹き飛んでいたし、教壇にも大穴が開いて使い物にならない。黒板は真っ二つに折れて右側が地面に伏せられていた。 生徒達の机は、距離があったためばらばらにこそならなかったものの、あちこちにヒビが入ったり吹き飛んだりして、前二列は半壊状態。後で取り替えなくてはならない。 窓ガラスは一枚残らず吹き飛んでいる。剥げた塗装に吹き飛んだ照明、床一面の煤や埃etc。要するに教室を一つまるごとぶち壊してしまったのだ。片づけがそう簡単に終わるはずもない。 だからこそいきり立つ生徒達も溜飲を下げたのだが・・・。 ルイズは今、半分に千切れた黒板と格闘しているところである。その小さな体をいっぱいに使って、黒板を外に引きずり出そうとしている。 康一はそれを手伝うわけにもいかず、さりとて放っておくわけにもいかず。その様子を見ていることしかできないのだった。 「す、すごい爆発だったね!」 なんだか気まずい康一が話しかけた。 「あれを喰らったらどんな敵でもKOしちゃうよ!」 できるだけ明るい調子で言ったのだが、ルイズはこちらに振り向きもしない。 バツが悪くて康一は頬を掻いた。 「痛っ!!」ルイズが右手を押さえた。 「だ、大丈夫?」 康一が駆けつけると、ルイズの手からは血が滲み出していた。恐らく折れた断面を握ってしまったのだろう。 「怪我してるじゃないか!」 康一はルイズの手を取った。 「触らないでよ!!」 ルイズは康一の手を振り払った。 「その手じゃもう無理だって・・・。休もうよ。」 ルイズは手を押さえたまま、黙って首を振った。 「でも・・・大体、女の子一人でこんなのおわりっこないんだよなぁ~」 康一は途方にくれた。 「・・・成功するかもって・・・」 ルイズがぼそりとつぶやいた。 「え?」 「成功するかもって。今度こそ成功するかもって思ったのよ。」 ルイズはうつむいたままい言った。 「そ、そうだよ!誰だって失敗することくらいあるよ!あんまり気を落とさないで!」 康一は励ましたが、ルイズはぶんぶんと頭を横に振った。 「今まで、一回も魔法が成功したことなんてなかったのよ。小さい頃からそう。どれだけ試しても、爆発するばっかりでただ一度だって成功したことなんてなかったの・・・」 康一は息を呑んだ。 「わたし、小さいころは、大きくなったら魔法が使えるようになるんだって思ってたの。お父様やお母様の期待に答えられるって。ヴァリエール家にとって恥ずかしくない娘になれるって信じてたの。」 ルイズは何かに耐えるように上を向いた。 「でも・・・だめだったッ・・・!今の今まで、一度も期待に答えられたことなんかなかった・・・。いつの日か・・・いつの日か・・・ずっとそう思い続けてきたけど・・・」 康一は躊躇いがちに言った。 「でも・・・ぼくの召還は成功したんだろ?」 「そうね。呼んだのがあんたみたいな平民で、みんなには馬鹿にされたけど、あれが初めての成功といっていいわ。」 ルイズは、吐き捨てるようにハッと笑った。 「だから、ちょっと夢みちゃったのよ・・・。一度魔法が成功したから、これからは他の魔法も使えるようになるんじゃないかって。わたしも・・・これからは貴族として胸を晴れるんじゃないかって・・・。でも、その結果がこれよ・・・。」 『ルイズは焦っている。』康一はシエスタが言った言葉の意味がようやく分かった気がした。 「で、でもさ!これからもっとがんばったら、いつかきっと・・・」 「知ったような口聞かないでよっ!」 ルイズが康一につかみかかった。両手で襟元を握りしめる。康一の目の前で瞳から涙がこぼれた。 「わたしだってがんばってきたわ!だれよりも勉強したわ!だれよりも魔法を練習したわ!座学だって、作法だって、誰にも負けない!でも・・・」 襟を握り締める手が緩んだ。その場にぺたんと座り込む。 「でも、魔法だけは・・・貴族として絶対に必要な魔法だけはどんなにがんばっても使えなかった・・・。だから私はゼロのルイズなのよ。どんなにがんばっても、永遠に貴族になれない。ゼロのまんまなんだわ・・・。」 ルイズは血に染まった右手を胸で抱きしめた。煤まみれの床に涙が落ちた。 ずっと爪先立ちをしていたんだ。と康一は思った。 ルイズはずっと強いふりをしていたんだ。自分の弱さを誰にも悟られないように。 何より、ぼろぼろな自分に、まだがんばれるんだと信じさせるために。 康一は初めて、彼女の力になってあげたい。と思った。 でもどんなに頭の中を探しても、かけてあげられる言葉を見つけられなかった。 だから代わりに、康一は『見せる』ことにした。 「『エコーズ』・・・」 「え・・・?」 ルイズは煤と涙でぐちゃぐちゃになった顔をあげた。 「『エコーズ』っていうんだ。ぼくのスタンド。」 康一は「ACT1!」と叫んだ。康一の横に、突然白い生き物が現れた。 ルイズはこんなでたらめな生き物をみたことがなかった。 なんと形容したらいいのか、兵士が被っているような兜に小さな手と長いしっぽをくっつけたように見える。兜の下に目らしいものとくちばしがちょこんと覗いている。 その不思議な生き物は、康一の手からハンカチを掴み取ると、呆然と座り込むルイズの膝の上にふわりと飛んできた。 「なに・・・これ・・・」 「『エコーズACT1』だよ。ぼくの『スタンド』」 「でも、前に見たのと全然違うわ!」 「あれはACT3。ACT1はエコーズの一番進化前ってことになるかな。」 奇妙な化け物が目の前にいるのに、なぜかルイズは怖いと思わなかった。 ACT1が小さな手に持ったハンカチで、涙に濡れたルイズの顔を拭く。 そして小さな声で「ギャアース!」と鳴いた。 「ふふっ・・・」 なぜだろう。ルイズの目にはこの不恰好な生き物がひどくユーモラスで、可愛く見えてきた。 ルイズは『ACT1』をぎゅっと抱きしめた。 冷たいようで暖かい、堅いようで柔らかい。不思議な抱き心地だと思った。 「ぼくはさ、つい2年まで何のとりえもない・・・そうだな、ただの『平民』だったんだよ。でも、ある事件がきっかけで急に『スタンド』って力を得たんだ。」 だからさ・・・。康一はしゃがみこんだ。 「ルイズにだって、いつか『きっかけ』があるかもしれない。誰にもその『運命』がいつ来るかなんてことは分からない。まだ、諦めるのは早いんじゃないかな。」 といってルイズの目を覗き込んだ。 「それに『メイジを知るには使い魔を見よ』なんだろ?こんな面白い使い魔を持ってるメイジなんて、世界中で君だけだと思うんだけどなァ~。」 康一は大仰に手を広げて見せた。 ルイズはようやく、「馬鹿犬のくせに・・・」といって笑った。 前ページ次ページS.H.I.Tな使い魔
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ギーシュの奇妙な決闘 第一話 祭りの後 第二話 決闘の顛末 第三話 『平賀才人』 第四話 『決闘と血統』前編 第四話 『決闘と血統』中編 第四話 『決闘と血統』後編 第四話 『決闘と血統』完結編 第五話 『灯(ともしび)の悪魔』 第六話 『向かうべき二つの道』前編 第六話 『向かうべき二つの道』後編 第七話 『フェンスで防げ!』 第八話 『STAND BY ME!』 第九話 『柵で守る者』前編 第九話 『柵で守る者』中編 第九話 『柵で守る者』後編 第十話 『Shall We Dance?』 第十一話 『星屑の騎士団』 第十二話 『香水の乙女の誇りに賭けて』前編 第十二話 『香水の乙女の誇りに賭けて』後編 第十三話 『魂を蝕む毒』前編 第十三話 『魂を蝕む毒』後編 第十四話 『暴走! 惚れ薬バカップル!』前編 第十四話 『暴走! 惚れ薬バカップル!』後編 第十五話 『三つのタバサ』(前編) 第十五話 『三つのタバサ』(後編)
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「何よこれ」 その日ルイズが召喚したものは、小さな茨の冠だった。 「何が出てきたんだ?」「何も見えないぞ」「ネズミでも呼び出したんじゃないか?」 ルイズの後ろから、同級生達の声が聞こえてくる。 ゲートから召喚されたものが何なのか、見ようとしているのだろう。 ルイズは一歩前に出て、地面に置かれた茨の冠を手に取った。 よく見ると、中央に穴の開いた奇妙な鏡に茨が絡みつき、冠の様相を見せている。 なんだかよく分からないけれど、これは自分が召喚した使い魔らしい。 「ミス・ヴァリエール、どんな使い魔を召喚したのかね?」 どこまでがおでこなのか分からない教師、コルベールがルイズに近寄り、ルイズの手をのぞき込む。 「あの、これ…」 手の中にある茨の冠を見せると、コルベールは首をかしげた。 「これ?…はて、これとは、どれのことですか?」 「だから、この茨の冠みたいなものです」 「…?」 「…」 「…」 ほんの少しの間、重たい沈黙が流れたかと思うと、コルベールはぽんと手を叩いて他の生徒達に向き直った。 「えー、皆さん!そろそろ帰らねば、次の授業に遅れてしまいます、少々急ぎ足で戻るとしましょう!」 コルベールの声を聞いて、生徒達は空を飛んで、トリスティン魔法学院へと帰っていく。 ルイズを馬鹿にする言葉も少なくない、誰かは「とうとう頭がヘンになった」とまで言ってルイズを侮蔑し、飛び去っていった。 「ミス・ヴァリエール、召喚が失敗したからと言って意地を張ってはいけません、さあ、もう一度やり直しましょう」 「え…」 優しく語りかけるコルベールの笑顔が、ルイズにはとても残忍なものに見えた。 コルベール先生の指導の元、サモン・サーヴァントを何度もやり直したが、ルイズの前に使い魔を呼び出すゲートは現れなかった。 ルイズは何度も茨の冠のようなものを指さし、これが呼び出されているからゲートが開かないのだとコルベールに説明した。 だが、コルベールは気の毒そうにルイズを見ると、今日はもう疲れているのだから休みなさいと言って、魔法学院に帰るよう促した。 そこでルイズは気づく、この茨の冠はコルベール先生に見えていないのだと。 「先生!違います、本当に私、使い魔を呼び出したんです、この茨の冠みたいなものを、持ってください!」 ルイズはコルベールの手を取って、その上に茨の冠を載せる。 だがそれはコルベールの手を通り抜け、地面に落ちてしまった。 「…!」 呆然とするルイズを見たコルベールは、ルイズが意地を張り過ぎて混乱しているのだと考えた。 空を飛ぶことの出来ないルイズは、魔法学院に歩いて帰るしかない。 混乱状態の生徒から目を離す訳にはいかないので、コルベールはルイズと共に歩いて魔法学院へと戻ることにした。 ルイズは茨の冠を胸に抱き、部屋に戻ろうと歩いていた。 その途中キュルケとすれ違い、この茨の冠は他人には見ることが出来ないと、改めて認識することになった。 「あら、ヴァリエール、胸に何か抱いてどうしたの?」 「…”何か”って、ツェルプストーは、これが見えるの?」 「これって、どれのことかしら」 キュルケは、胸の前で交差させたルイズの腕をのぞき込む、だがそこには何もない。 胸すら無い。 「何にも持ってないじゃない、あんた大丈夫?」 「見えない…の?」 「?」 部屋に戻ったルイズは、茨の冠を手に持ち、考える。 これは一体なんだろう? 他の人には見ることも出来ないし、触れることもできない。 ルイズからは見ることができ、触れることもできる。 訳が分からなかった。 やたらにルイズのことを心配し、魔法学院まで付き添って歩いてくれたコルベール先生。 彼はきっと、サモン・サーヴァントに失敗たと思いこんでいるのだろう。 使い魔がいないメイジは二年に進級できない、つまり、明日の授業は皆と一緒に受けることもできず、一年生と一緒に授業を受けることになる。 けれども、自分は確かにこの茨の冠を召喚した。 誰にも認めて貰えない使い魔。 ルイズは笑った、だが、それは自虐的な笑いだった。 何年も何年も、魔法が成功しない、ゼロのルイズと蔑まれてきた結果が、誰にもその存在を認められない使い魔。 本当に自分にはお似合いだと、泣きながら笑った。 ルイズは茨の冠を手に取り、鏡の前に立つ。 これを被ったら、どんな格好になるだろう、花の冠ではなく茨の冠なんて、自分にはお似合いかもしれない… そう考えながら、ルイズは茨の冠を頭に乗せた。 『ハ ー ミ ッ ト ・ パ ー プ ル ! 』 ぱっ、と頭の中で何かの声が響く。 ルイズは咄嗟に部屋の中を見回したが、自分以外だれも居るはずがない。 だが、確かに聞こえたのだ、『ハーミット・パープル』と。 改めて鏡を見ると、頭に乗せたはずの茨の冠が消えていた。 これが後に『ゼロのルイズ』を『ゼロの茨』と名を変え、『虚無の茨』として恐れられる運命の第一歩だとは、本人ですら気づいていなかった。 続かない。