約 1,076,870 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/479.html
風の使い魔-1
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2246.html
眠気がわだかまる瞼をうっすらと開けたジョセフは、ゆるりと周囲を見やった。 段々と傾き始めた日が葉の間から射す森の中、地面に横たわる自分の近くで立ち話する話し声の主は、二人。一人は老人、もう一人は青年。彼らを取り巻く少年少女達はじっと二人のやり取りを聞いている。 アルビオンから帰還した面々の中で最後まで眠っていたジョセフはゆっくりと身を起こして立ち上がると、老人に声を掛けた。 「すみませんな、オールド・オスマン。つまりそーゆーコトになっちまいまして」 ニヒヒ、と笑うジョセフに、オスマンは愛用のパイプをふかしてから、ウェールズからジョセフに視線を移し、ほんの少し学院長らしい様相で眉根を寄せた。 「ジョースター君、トリステイン魔法学院はトリステインのみならず各国の王族や大貴族の子爵令嬢が何人も在籍しておる。つまらない火遊び一つが戦争の火種になりかねん場所だということは知っておるかね?」 ここで亡国の王子を入れたらどうなるか判るな、という言外の問いかけに、ジョセフは悪びれもせず答えた。 「大体は察しております。ですが今までこの学院でのいざこざが切っ掛けで起こった戦争が幾つあったのか、お訪ねしてもよろしいですかな」 質問を受けたオスマンは、ぷか、と煙のリングを宙に浮かせた。 「少なくともわしがおる間は一件もない」 その答えに、ジョセフはニヤリと笑い、オスマンも同じくニヤリと笑った。 「次にオールド・オスマンは『今更皇太子の一人や二人匿ったところで何も変わらんがね』と言う」 「今更皇太子の一人や二人匿ったところで……と。ジョースター君、答えが判っているのにいちいち質問をしなくてもよろしい」 かっかっか、と老人二人が笑い合う。 「どうせ学院は無駄に広いからのぉ、殿下がお隠れになる場所なら幾らでも用意出来る。風の塔にちょうどいい空き部屋があるんじゃが少々掃除をせねばならんのでな。ミス・ツェルプストー、ミス・タバサ、ミスタ・グラモン。君達に手伝って貰うとしよう」 白く長い眉毛の下から、生徒達を見やり。次にジョセフへ視線を移す。 「ミス・ヴァリエールとジョースター君は、わしらが掃除を終えるまでここで殿下の話し相手を頼めるかね」 ウェールズや生徒達からおおよその事情を聞いたオスマンは、今回の件を仕組んだ張本人であるジョセフを残した。ウェールズへのアフターケアを今の内に済ませておきなさい、と言外に述べた言葉を、ジョセフが理解できないはずがない。 主人であるルイズも残したのは、爆発以外の魔法が使えないということもあるが、一応の用心も兼ねている。 「承知しましたぞ、オールド・オスマン」 「わ……判りました」 泰然としたオスマンの言葉に、ジョセフとルイズは恭しく一礼した。 「そんな、昨日から徹夜だというのにこの上掃除なんて……」 ギーシュが疲れた顔で呟くも、キュルケは嫣然と微笑んだ。 「承知致しましたわ、オールド・オスマン」 タバサは本を読んだまま、無言で頷く。 「では少し時間を貰うとしよう。何、それほど時間はかかるまいて」 そう言い残し、オスマン達はシルフィードに乗って空へ飛んでいく。 残された三人に僅かな沈黙が訪れたが、それを最初に破ったのはウェールズだった。 「まんまとしてやられたね、ミスタ・ジョースター。杖を使わずに魔法を使われるとは思ってもいなかった」 昨夜と変わらない笑顔ではあるが、声色には多少なりとも苦味が見え隠れしていた。 「何とも間の抜けた事だ。敵のみならず父や臣下達まで欺いて、再び夜を迎えようとしている。そのことに安堵していない、と言えば嘘になる。だが、それでもだ。国を亡くし、これからの道程になんら希望が見えない男を生き延びさせて、何の意味があるのだろう」 岬ごと城を落とす大仕掛けを繰り出し、アルビオン王家の生き残りはたった一人。 国は滅び、しかも愛する従妹のアンリエッタは近々意にそぐわない政略結婚をさせられる。生き恥を晒す上に艱難辛苦を味わわなければならない状況を笑って受け入れられる人間が滅多にいるものではない。 例え王族として申し分のない人格者であるウェールズにしても、稀な例外とはなれなかった。 ルイズも、こうしてウェールズだけでも救えた事に後悔はない。ただ、今のルイズに亡国の皇太子へ掛けられる言葉はなく、それでも何か言いたげに小さく動く唇を隠すように俯いているしかなかった。 しかしジョセフは、そんなウェールズの深刻な表情とは真逆とも言える、相変わらずの不敵な笑みを浮かべてみせた。 「恐れながらウェールズ様。殿下の命を救う事、これこそがトリステイン王国、引いてはアンリエッタ王女殿下の窮地を救う鍵となりますのでな。正直な所、殿下の意思はハナっから勘定に入れるつもりはなかったんですじゃよ」 おためごかしも何もなく、堂々と言ってのけるジョセフにルイズのみならずウェールズまでもが驚きに目を見開いた。 「ちょ……ちょっとジョセフ! それは言い過ぎよ!?」 ルイズが慌ててフォローに入ろうとするが、ジョセフはあくまで表情を崩さずに主人の頭をぽんぽんと撫で、ウェールズに向かって言葉を続ける。 「アンリエッタ王女殿下はお優しく魅力的なレディであることは殿下も重々御承知でしょうが、残念ながら王家を担えるかと言われれば……それもまた、殿下は重々御承知じゃと思うんですが。殿下の御見解はいかがでしょうかな?」 その問い掛けに、ウェールズは小さな溜息をついた。 「……残念なことにミスタ・ジョースターの見解と私の見解は一致せざるを得ない。アンリエッタは……不幸なことに、次代の女王となるべき教育を受けていない。いや、受けさせられなかったと言うべきか。 何と言っても、トリステインは先王が崩御してから今に至るまで、王位は空位のままだ。その間、政を担う貴族達が王室を欲しいままにした。水は流れなければ澱む。今のトリステイン王家は……かつてのように清く澄んだ湖とはとても言えない。 アンリエッタは、澱んだ水の中から出ることを許されていなかった」 ウェールズの言葉に、ジョセフはゆるりと首を横に振った。 「誉れ高く王女の覚えも高い魔法衛士隊の隊長が裏切り者だったという状況ですからのォ。わしの正直な見立てを言うと……ここから立て直すには奇跡の二つ三つは用意せんとキツい。少なくとも今のままでは、奇跡を用意することも出来ませんのじゃよ」 ジョセフの口から聞こえる言葉は、それだけ聞けば彼には似つかわしくない悲観的な流れでしかない。 だが、当のジョセフの口調と表情は、あくまでも普段と変わらない愉快げな笑みがあからさまに浮かんでいる。それはまるで、これから取って置きのオチを言おうとするかのような、子供じみた笑みだった。 ウェールズはまだ出会ってから一日ちょっとしか経っていない老人の表情が、何を示すものなのかが理解できるようになってきていた。 だから彼は、苦笑を隠そうともせずにおおよそ答えが予想できる問いを投げる。 「つまり、私の身柄はトリステインに奇跡を起こす為の布石だ。だから私の意志は尊重されるべきものではない――そう言う事だね、ミスタ・ジョースター?」 ジョセフはその答えに、非常に満足そうに頷いた。 「そこまで御理解いただけるなら話は早い。まーぶっちゃけ、どこの馬の骨とも知れん老いぼれ使い魔の言葉より、想い人の言葉なら聞き心地もよいというもんですしなァ?」 ニヤリ、と子供じみた笑みを見せる。 「なぁに、城ブッ壊して岬落とすことに比べたらアンリエッタ様が立派な王女殿下になることなんか朝飯前ってモンですじゃよ」 気楽な様子で放たれる大言壮語を、ウェールズもルイズも頭から否定できない。このしみったれた老人が今まで何をしたのか、二人とも良く理解しているからだ。 だが当のジョセフは。 (さぁ~~~てどーしたモンかのォ。ま、何とかなるじゃろ) トリステインに起きる奇跡のタネなど何一つ用意していないのだが、決してそんなことを億尾に出すようなマヌケではなかった。 そんなジョセフの行き当たりばったりっぷりなど知る由もなく、ウェールズはオスマン達が戻ってくるまでにアンリエッタへ向けた手紙を書き上げる。 手紙に施した封蝋の花押はウェールズ独自のデザインであり、皇太子本人が記した物であるという証明となる。自分が無事でいること、事態が好転するまで学院に匿われること、数文だけ書かれた従妹への私信。 アンリエッタへの新たな手紙を受け取ったルイズは、滅亡した他国の王族へ、一切失礼のない態度でウェールズに跪いた。 やがて戻ってきたオスマンの手引きで部屋に案内されるウェールズを見送った後、キュルケもルイズ達にひらりと手を振って学院へと戻っていく。 「アルビオン旅行も終わったし、任務に関係ないゲルマニア貴族が王宮をうろちょろするのも具合悪いでしょう?」 いい加減で軽薄な様に見えても、首を引っ込める点を心得ているキュルケである。 正式に任務を受けたルイズ主従とギーシュ、そしてシルフィードの主であるタバサが王宮へ向かったのは、そろそろ空の色が青から緋色に変わり始めようとする頃合だった。 * ルイズ達の帰還を待ち詫びていたアンリエッタは、「ヴァリエール家の令嬢が手紙の件でお目通りを申し出ている」という伝達を受けるが早いか、ルイズ達を自分の居室へ呼ぶ様に言い付けた。 ギーシュとタバサを謁見待合室で待たせ、ルイズとジョセフはアンリエッタの私室にて件の手紙とウェールズからの新しい手紙を渡し、アルビオンでの出来事を逐一報告した。 道中で起こった様々な出来事を聞いたアンリエッタも、ジョセフの手引きによりニューカッスル岬が落ちたという話はすぐには信じられないようだった。 アルビオンから岬が崩落したという伝令は聞いてはいたが、その原因が魔法も使えない老人の手によるものだとは、ハルケギニアの常識では到底信じられる話ではない。 だがルイズが自分の使い魔の高い能力と、トリステイン王国にとってジョセフの能力が必要になると懸命に主張する様子に、王女はまだ殆ど信じられないながらも頷いた。 そしてワルドがレコン・キスタの内通者だったことには酷く驚き嘆いたが、無事にゲルマニアとの同盟を堅守した上、ウェールズを救い学院に保護していることに安堵の色を隠すこともなく、感極まって豪奢な椅子から立ち上がった。 アンリエッタが椅子から立ち上がったのを見たルイズも、素早く椅子から立ち上がると、間髪入れず駆け寄ってきたアンリエッタの抱擁を受け、自分もまた王女の背に手を回した。 「ああ、ルイズ・フランソワーズ! やはり貴方に頼んで良かった……わたくしの婚姻を阻もうとする陰謀を未然に防ぎ、かつ裏切り者を誅したのみならず、アルビオン王家の断絶まで防いでくれるだなんて!」 「そんな勿体無いお言葉を頂けるだなんて! 王家に仕える公爵家の娘として当然のことをしたというだけですのに!」 それからしばらく繰り広げられる王女と公爵令嬢の寸劇を、ジョセフは茶を啜りながら温かい目で見守っていた。 やがて二人が身を離すと、ルイズはポケットの中に入れていた水のルビーを取り出し、恭しく王女へと差し出した。 「姫様、お預かりしていたルビーをお返しいたします」 アンリエッタは微笑みを浮かべて首を振ると、差し出された手を両手で包んでそっとルイズへと押し遣った。 「それは貴方が持っていなさいな。困難な任務をやり遂げた貴方へのお礼です」 「こんな高価な品を頂くわけには参りませんわ」 「忠誠には報いるところがなければなりません。いいから取っておきなさいな」 それ以上固辞する事もなく、ルイズは指輪を指にはめた。 ルイズがルビーを受け取ったのを見届けてから、アンリエッタはジョセフへと視線を向けた。 「ありがとうございます、ジョジョ。わたくしの大切なルイズを守ってくれて。これからもルイズ共々、わたくしの友人となってもらえますね?」 たおやかな微笑みに、ジョセフも悠然と笑みを返して一礼した。 「勿体無いお言葉、痛み入ります。王女殿下の御為ならば、わしも主人も命を賭す所存ですじゃ」 ルイズ達が学院へ帰るべく再びシルフィードの背に乗ったのは、日も沈んで双月が煌々と夜を照らす頃になってからだった。 アンリエッタへの報告を終えたルイズは、余りに濃密なアルビオン行の緊張がやっと解けて、ジョセフに凭れ掛かって安らかな寝息を立てていた。 ギーシュもシルフィードの背の上で横になって束の間の眠りを貪っている。 今、シルフィードの背の上で起きているのは学院に戻るまでに仮眠を取ったジョセフと、眠っている同級生達と同じ激動の一日を乗り越えてなお、普段通りの無表情を崩さず読書に耽っているタバサだけだった。 それから三日後、アンリエッタとゲルマニア皇帝との婚姻が発表され、軍事同盟も恙無く締結された。 トリステインとゲルマニアの同盟が締結されたのを見届けていたかのように、レコン・キスタによってその翌日に樹立されたアルビオン新政府は、アルビオン帝国を名乗った。 アルビオン帝国初代皇帝クロムウェルは、すぐさま特使をトリステインとゲルマニアに派遣し、不可侵条約の締結を打診した。両国の空軍を合わせてもなおアルビオンの艦隊に抵抗しきれない今、両国はこの申し出を受けざるを得ない。 アルビオンに主導権を握られる形ではあるが、両国はこの条約を受けた。 この不可侵条約が締結されたことで、内情はどうあれハルケギニアにはひとまずの平和が訪れた。国の存亡に関わらない貴族や平民には、これまでと同じ普段通りの生活を送るだけのことだった。 それはトリステイン魔法学院の生徒達も例外ではない。 だが、一握りの人々はこれまでとは多少異なる生活を送る事となった。 * ウェールズが学院の塔の一室に隠れ住むことになり、オスマンは宝物庫から持ち出した一つの黒い琥珀――ジェットをウェールズへと渡していた。 ジェットはかつてアルビオンの女王が夫を亡くして長い喪に服した折、服喪用のジュエリーとして身に付けていたことで知られている。先立っての戦いで勇猛果敢に討ち死にしたアルビオン王家と忠実な貴族に対する、オスマンからの追悼も兼ねていた。 だがオスマンがわざわざ宝物庫から持ってくる代物が、ただの宝石であるはずもない。 指輪にあしらうには多少大きく、首飾りにするには十分な大きさの黒い琥珀。 この黒い琥珀の持ち主が指定した領域には何者も入ることが出来なくなるが、同時に持ち主が指定した人物の立ち入りを許可することも出来る。 部屋の小窓にも、風は通るし外の景色は見えるが、外からは誰もいない小部屋のように見える魔法のガラスをはめ込むことにより、ウェールズが学院にいるということが第三者に知られる可能性はほぼ完全に排除されていた。 そしてルイズ達が学院に帰還した翌日から、アルビオンに向かった面々……ルイズ、ジョセフ、ギーシュ、キュルケ、タバサがアルヴィーズの食堂に行くことが少なくなった。 表向きはオスマンが「勝手に授業をサボった罰として彼らには当面の間補習授業を行う」ということで、普段の授業時間以外の自由時間を塔の一室での補習に当てている、ことになっていた。 しかし実際は違う。 いくらウェールズが学院に居る事が知られないように手を巡らせているとは言え、ずっと一人分多い食事を用意していてはスキャンダルや噂話には無駄に聡い生徒やメイド達の興味を引かないとも限らない。 そこでジョセフが考えた手は、五人分の食事を少しずつ分けることで六人分の食事にしてしまおうという非常に単純な手だった。 そもそも食堂で出る食事は、一人分にしては豪華なボリュームがある。ウェールズに分け与える為に一人辺り一食につき六分の一渡したとしても、特に問題があるわけでもない。 しかもジョセフは気が向いた時に食堂に行けば賄が出る。その為、実際はジョセフの食事を丸々ウェールズに回してもよかったし、ジョセフも最初はそうしようと提案したのだが、満場一致でその申し出は撤回された。 「なんだいジョジョ、水臭いことを言わないでくれたまえ。僕達は心の友だろう?」 五人の言葉を要約すれば、ギーシュが言ったこの言葉となる。 結果、五人は授業以外の時間……食事以外の時間も、塔へ足繁く通うこととなった。 これについては、ウェールズの様子を監視するということではなく、ジョセフの教えを学ぶ為だった。 黒い琥珀に守られた部屋に集まる面々は、つまりジョセフがジェームズ一世を口先三寸で丸め込んだ光景を目の当たりにした面々という事になる。 ジョセフが二十世紀のNYで五十年間磨き上げた交渉術は、ハルケギニアの貴族にとって強力な武器、などという生易しいレベルの話ではない。まだ銃も開発されていない中世の軍隊が走り回る戦場で、現代兵器満載の軍隊が好き勝手したらどうなるかという事だ。 ジョセフにとっては初歩の初歩の初歩とすら言えない、町中の本屋で埃被ってる時代遅れの経営ハウツー本の第一章に書かれてるレベルの事ですら、普通に生きていればルイズ達は辿り着けなかったかもしれない発想である。 効果の程は自分達の目と耳が無二の証人であるため、ルイズ達はジョセフに駄目元でジョセフに教えを請うてみたら、拍子抜けするくらいあっさりと快諾されてしまった。 トリステイン王家の庶子を初代に持つヴァリエール家の三女に、ヴァリエールの宿敵でもありゲルマニアでも屈指の名門のツェルプストー家の令嬢、トリステイン王軍元帥の息子のみならず、滅びたとは言えアルビオン王家の皇太子。 由緒ある王族や貴族の少年少女が椅子を並べて平民の老人を師とし、時間を惜しんで貪欲に彼の言葉を学ぶという、封建制度に基づく身分制度で成り立つ社会であるハルケギニアでは到底見ることの出来ない光景が、狭い一室で連日繰り広げられることとなる。 ジョセフの肩書きが使い魔、学院で働く平民達の英雄の他にも、王女殿下の友人、虚無の担い手(嘘八百)、皇太子や貴族子息の教師、とたった数日で劇的に増えたのに呼応して、ルイズの態度もまた変わっていた。 まず、ジョセフにさせていた身の回りの世話を自分でするようになった。 顔を洗う水を汲ませはするものの、自分で顔を洗うようになったし、着替えだってジョセフの手を借りず自分で服を着る。洗濯も自分でやると言い出した。 ルイズの態度の変貌を目の当たりにしたジョセフは、まず第一に落ち込んだ。 基本的に、ただのボケ老人扱いされていた頃でもルイズの世話については嫌な気がしないどころか、むしろ進んでやっていたジョセフである。 だが、アルビオンでの冒険を終えた今、ルイズの中ではジョセフに対する認識が大きく変わっていた。 有能な使い魔であり、誇り高い老人であり……、もっと言えば、眠っているところへ衝動的にキスしてしまうという未経験の感情を持ってしまっている。 そんな相手に、いつまでもいちいち身の回りの世話をさせるのは、貴族としても一人の少女としても、ルイズのプライドが許さなかった。 そこできちんとルイズが、そこに至るまでにどう考えてその答えに至ったかを説明すれば良かったのだが、残念ながらジョセフの世話を断ったのはアルビオンから帰還して翌日すぐのこと。情報を出さないことが不都合になるという初歩的な事すら、ルイズは学んでいなかった。 「私だって子供じゃないんだから、身の回りのことくらい自分でするわよ!」 と、いつもの調子で言われてしまったジョセフは、それはもう落ち込んだ。 そりゃそうである。目に入れても痛くないほど可愛がっていた、むしろ実の孫よりも愛情を注いでいたルイズから突然こんな事を言われてしまったのだ。 極度の疲労で、落ちていく岬の上だと言うのに熟睡してしまったジョセフは、自分の唇が主人に奪われていたことなど知る由もない。心当たりが何もない状況で、突然可愛い孫からそんな事を言われて落ち込まない祖父などいるはずがない。 ショックの余りふらふらと部屋から出て廊下の壁に凭れてたそがれるジョセフを見かけたキュルケは、事情を聞いてとりあえず、なんというバカ主従かと呆れ返ったのだった。 ちなみに洗濯については、結局今まで通りジョセフがやることになった。 ルイズの目の前で輝虹色の波紋疾走こと波紋式全自動洗濯を披露したところ、数発ほど脇腹にチョップをお見舞いされるオマケはついていたが。 To Be Contined →
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/924.html
虹村億泰は憂鬱だった。 なんで俺が掃除を手伝わされているのだろうか、と。 マリコルヌとミセス・シュヴルーズが搬出された後の教室にはルイズと億泰の二人だけ。 他の生徒は既に引き上げていた。 「なーるほどなぁ~~~失敗するからゼロね。 俺もテストの点数悪いからよォ~~、似た物同士かもなぁー」 どこから持ってきたのか、三角巾にエプロンをして完全装備をした億泰が上半分の無い教卓を運び出す。 「アンタのバカと一緒にしないでよ!? 私は知識問題なら点数良いんだからね!」 「変わんねーだろー、実技失敗なら『ゼロ』点なんだからよォ~~。 お、だから『ゼロのルイズ』って事かぁー、納得だぜ」 でもよぉー、オレでも酷くても三十点は取るぜェ~と億泰が言った途端、 ルイズの額に血管が浮き出たような気がした。 どうやら今の言葉がルイズの怒りの琴線に触れたらしかった。 「ねえ」 「あァん?」 「ここ、アンタが片付けといてね」 「今だってそーじゃねーか! オメーも手を動かせルイズ!手をよぉ!」 「私、着替えて食堂行くから」 「人の話を聞きやがれこのボケがぁ! って、おい、ちょい待て!マジに行くんじゃ! 気に障ったんならもう『ゼロ』なんて言わねーからよぉ!」 その言葉にルイズが廊下から戻ってきた。 おお、真面目にやってくれんのね!?と億泰が嬉しそうに思った瞬間! 「あんた、向こう一週間ご飯抜きね」 そう言い放ってスタスタと行ってしまった! よく見ると笑顔を浮かべているように見えたが、それは酷く引きつっていた。 言われた億泰はというと…… 「…………?ウギギギギギ?」 理解不能だった。それはもう宝クジを破られた重ちーのように。 ただし、こっちには理解可能になる瞬間なんて来ないけど。 とにかく、ルイズが居なくなった事で『ザ・ハンド』が使えた分はかどったが、 机にめり込んだ石ころの破片に、マリコルヌの血反吐、 天井に突き刺さったミセス・シュヴルーズの歯など簡単には取れない物が多く酷く面倒だった。 「ブゲ!?」 その後食堂でルイズが見てないのを確認してこっそり入ろうとした億泰だったが、 滑車に乗って物凄い勢いで滑ってくる見覚えのある岩に吹っ飛ばされた。 「よ、ヨォ……アンジェロ……」 アギ 犯人は見なくても分かる。 わざわざこんなことをする理由が他の連中には無い。 鼻血を垂らしながら床に這い蹲り、 やっぱり逃げたほうが良いような気がしてきた億泰だった。 「ヂクショー、腹減って動けないわ、 アンジェロ岩に吹っ飛ばされるわってアイツは悪魔かコンニャロォーッ!」 動く気力も無く、する事もないので億泰は窓から空を眺める事とした。 真っ青な空が恨めしい。 と、一匹のドラゴンが飛んでいる様子が見えた。 (あー、アイツは……って聞いてもいねーから名前なんて知らねーよ。 でも……羨ましいよなァ~~!自分の飯があってあんだけ遊んでられるんだからよぉぉお! オレが泥ならアイツは星だなァー) と、先程の授業で窓越しに目で会話した(ような気のする)ドラゴンを眺める。 視線に気づいたドラゴンがきゅいきゅい、と慰めるような鳴き声を出したような気がした。 「だ、大丈夫ですか!? い、生きてますよね?」 ふと死体のように転がっていた億泰に声がかけられた。 転がって見上げると、銀のトレイを持ったメイドの少女が驚いたように見つめてきている。 「正直もうダメかもしれねぇ…… なあ姉ちゃん。俺の遺言でも聞いてやってくれ。 『ランク外 5話 スコア3120 ルイズにアンジェロ岩で吹っ飛ばされて餓死』ってな」 「え……ええと、そう言うって事はミス・ヴァリエールの使い魔になったって言う…… あ!そうだ、よろしければ厨房に来ませんか? 賄いで良ければ空腹で死なれる前にお出しできますけど」 「なんだってェーーーーっ!! 行く、行くぜ!行かしてください!?」 倒れたままの姿勢から急に飛び上がったものだから、 少女は相当驚いたようだったが、暫くすると少し吹き出した。 「うわああああああ、はっ腹が空いていくう~~~~~~~~っ! 食えば食うほどもっと食いたくなるッ! ンまぁーーーいっ!!」 朝食のスープなんかとは比べ物にならなかった。 流石にかったいパンとうっすいスープと果物数個で体が動く程億泰は燃費がよくない。 そこにきてまともに作られただけでも神の施しのような物だ。 そうじゃなくても、十分に美味い代物だったのだが。 「食材の余りとかから作ってるシチューなんですけど…… よかった。お代わりも十分ありますからね」 娼婦風スパゲティをズビズバ食った時のように勢いよく食べる億泰を少女はニコニコしながら見つめている。 使い魔に囲まれていた時もそれなりに和めたが、 すぐに爆発で台無しにされた事を考えるとやっと心の洗濯ができたような気がした億泰だった 「ところで、なんであんな事になってたんですか?」 「ングッ、ゴクッ……ああ、なんか急に機嫌悪くしたみてーでさぁー。 少しだけ事実言っただけだったのによぉーっ」 「まあ!貴族相手に言えるなんて勇気が有るんですね!」 「別によォ~~、貴族だとか平民だとか俺にゃー関係ねーしなー。 魔法が使えるからって威張ってんじゃーねーよっての」 「ゆ、勇気がありますわね……」 唖然とした顔で億泰を見つめるシエスタをよそに、空になった皿を返した。 「美味かったぜェー、ホント~~にあんがとな!」 「あの、お腹が空いたらいつでも来てくださいな。 私達の食べている物でよかったらお出ししますから。 えーと……」 「ん?ああ、億泰だ。俺は虹村億泰だぜ。 つーか、うん、すまねえな。ホント。 そんじゃさァ~~、世話になりっぱってのもワリーし、 手伝える事あんなら手伝わせてくれねーか?」 ルイズの下着は気づかれるまで毎日ガオンしてやると心に決めたが、 この少女の手伝いなら何でもしていいや、という気分だった。 「私はシエスタといいます。 それなら、デザートを配るのを手伝ってくださいなオクヤスさん」 ケーキの並べられた大きな銀のトレイを億泰が持ち、シエスタが配っていく。 途中、金色の巻き髪に薔薇をシャツに挿したキザな勘違いメイジが居た。 周りに友人が集まり、口々に冷やかしているのが聞こえてくる。 「なあ、ギーシュ!お前、今は誰と付き合ってるんだよ! 「誰が恋人なんだ、言いやがれギーシュ!」 「つきあう?僕にそのような女性はいないよ。 薔薇は多くの人を楽しませるために咲くのだからね」 勘違いここに極まれり。反吐が出る事この上ない所だった。 一人だったら間違いなくボコってるなァ~と少しムカつきながら億泰はその集団から目を背けた。 「あ……」 「ん?」 「すみませんオクヤスさん、 ちょっと厨房に戻ってケーキの補充をしてきてくださいな。」 「おう」 そう言って億泰は厨房へ行き、シエスタが勘違いの所へと駆け寄っていく。 「あの、落としましたよ?ミスタ・グラモン?」 「何を言ってるんだメイド。 それは僕の物ではな……」 「おお!それはもしやモンモランシーの香水の壜ではないか!?」 「つまり、お前は今!モンモランーと付き合っている!違うか?」 「違う、いいかい?彼女の名誉のために言……」 そう言いかけた時、ギーシュのテーブルの両側から足音が聞こえてきた。 「ギーシュ様……『二股』しましたわね? チャンスは差し上げません、向かうべき道は『一つ』です」 「な、ケティ!?違うんだ!」 「これは『試練』ね。 二股に打ち勝てという『試練』と私は受け取った。 人の成長は……未熟な過去を清算することだと…… ねえ?貴方もそう思うでしょう?ギーシュ・ド・グラモン」 「モンモランシー、違うんだ誤解なんだ。 彼女とはただいっしょにラ・ロシェールの森へ遠乗りしただけで……」 ギーシュは冷静な態度を取ろうとしていたが、心の中では三つの思いが交錯していた。 『彼女達を落ち着かせなければ』 『ヒィイ~~!怖いよマーマ!』 『たかがメイドの分際で!何か有ったら仕置きの時間だ!』 「行くわよ!ケティ!」 「はい!お姉さま!」 右のケティからワインボトルのフルスイング! 左のモンモランシーからケーキの乗った皿のフルスイング! 左右の少女の怒りの間に生じる真空状態の圧倒的破壊力はまさに歯車的裁きの小宇宙!! 「……あのレディたちは、薔薇の存在の意味を理解していないようだ」 ハンカチを取り出して、ワインとガラスとクリームでグシャグシャになった顔を拭うギーシュ。 ある程度拭き終わったところで、呆然としていたシエスタに話しかけた。 冷静になっちまうほどにプッツンしているようだ。目がうつろで焦点が合っていない。 「どうしてくれるんだい? 君が軽率に香水の壜などを拾い上げてくれたせいで、こんな事になってしまった。 二人のレディを傷つけてしまったんだぞ?」 「も、申し訳ございません!」 「謝って済む問題だと思っているのか!? フン、やはり平民は平民か。 空気を読んで拾わない程度の事さえ期待するほうがバカだったね」 ギーシュが薔薇の造花を胸ポケットから抜き取った。 それを見てシエスタは『魔法を使われる』と恐怖に震え、腰を抜かして泣きながら土下座をする。 「す、すみませんすみませんすみません!」 「フン、今すぐ出て行きたまえ。君にこのトリステインでメイドをやる資格なんてない」 鼻で笑い造花をポケットへと仕舞うと、ギーシュは振り返ってその場から立ち去ろうとする。 「おいおいおいちょっと待ちやがれテメーよぉ。 テメーの不始末くらいテメーでやりやがれってんだボケが」 が、そこに厨房から戻ってきた億泰がギーシュを呼び止めた。 「なんだい君は?……ああ、ゼロのルイズの使い魔だったね、確か。 使い魔の平民如きが軽々しく話しかけないでくれたまえ。 貴族に対する礼という物を知らないのかい?」 使い魔の平民如きという言葉が引っかかるが、そんな事はどうでもよかった。 それよりもカチンと来たのはギーシュがテメーの二股の不始末をシエスタに押し付けていることだ。 厨房から戻ってきた時点で既にワインとケーキのツープラトンが炸裂していた所だから、顛末は分からない。 しかし、理不尽な内容でシエスタに八つ当たりしている事はよく分かった。 「おー、俺バカだからなァー!んなモン知らねーぜ! だからよぉーっ!」 「ぶっ!?」 億泰がそのまま自らの拳をギーシュの鼻へと叩き込んだ。 鼻の骨が折れる音と共に鼻血を撒き散らしてギーシュが倒れる。 「おれの『ザ・ハンド』を使うまでもねーっ 顔ボゴボゴにしてやっどォーッ」 「な、ま、待っ杖、杖もまd……ウヒィイイイイ!?」 その後の様子は、言わない方がいいだろう。 ギーシュ・ド・グラモン →メイジに治療されるも全治一日 魔法を使う前にボコられたせいで億泰に対して強い恨みを持った。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1525.html
「……な……なによあの……船は……」 「オレが知るか」 大きさとしてはレキシントンより一、二回り大きい程度だが、ハルケギニアの船のように側舷砲を持たず船首に長大な砲を構えた鉄の船がそこにあった。 「まぁ、見た感じこっちのモンじゃあねぇ事は確かだろうぜ」 「……あれ、あんたの世界の船なの?」 「オレんとこの船は飛びはしねーよ……だが……形はそうだな」 船がどうあれグレイトフル・デッドの射程内に納まる大きさだ。 そう思い、ゼロ戦を船に近づけようとした時、船から何かが連続で飛んでくるのを察知した。 普通なら、スタープラチナ並みの精密さでも無ければ見えない速さだったが、印効果で何かが飛んでくる事には反応できる。 だが、操縦者は反応できても機体はそうはいかない。アムロの反応速度にガンダムが追いつけなくなったアレと同じだ。 数発が機体をかすめ、回避先に一発操縦席目掛け飛んできている。 「……チッ!」 回避不能、狭い操縦席内では避ける事もできないし、元よりベルトで固定している。 回避ができないと判断するやグレイトフル・デッドを全面に展開させ腕でガードする。 衝撃はあるだろうがモロに食らうよりはマシだ。 風防に穴が空き、それを受けるが、グレイトフル・デッドの腕に綺麗な穴が開いた。 「うぐぁ!……バカなッ!」 「え……なんで腕から血が!?」 スタンドに穴が開いたという事は当然、本体にもダメージがフィードバックされ服こそ破れてはいないが腕から血が吹き出た。 それを見たルイズが右往左往……狭いからできないのであたふたとテンパっている。 スタンドにダメージを与えられるという事から導き出される答えは一つ。 「スタンド攻撃かッ!!」 ミスタのピストルズを思い出したが、弾が誘導される気配は無かったし、なによりピストルズの射程ではない。 (船からの攻撃……遠距離型か……?ピストルズみてーに誘導されてるわけでもねーが……弾幕が邪魔で射程に入れやしねぇ) こちらも20ミリ機銃で撃ち返すが、装甲を僅かに貫いただけで効いた様子は無い。 「兄貴、あの親玉ありえねーぐらいカテーぞ!」 元々機銃弾は空戦用装備であり、対艦を目的としたわけではない。 木造船ならどうにかなっただろうが、あの艦を砕くにはパワー不足もいいとこだ。 「デルフ、オメーなんか気付いた事はねーか。ささいな事でいいんだ。何か本体が撃ってきてる気配とか感じなかったか?人影とかよ」 「わかんねぇ……船員も沢山居るだろうしよ」 ただの対空機銃なら吃水船の下に入れば飛んでこない。だが、この弾幕はその下にいても襲い掛かってくる。 急速上昇、そのまま反転し背面飛行している機体をロールさせ戻し距離を取る。 座席に体を固定させているプロシュートはいいが、そうではないルイズは後ろで色々と転がりながら悲鳴をあげている。 「も、もっと丁寧に操りなさいよぉ!」 「直撃食らうよりマシだろーが!」 旗艦の弾幕ですら厄介なのに、他の船からの援護砲撃が襲ってきた。 当然、通常の砲弾なら当たるはずもないが、小さな鉛弾をショットガンのように詰め撃ち込んで来ている。 「クソッ!親玉の弾幕だけでも厄介だってのに…仕方ねぇ!トコトンやるぜッ!」 散弾を回避しつつ上昇し援護砲撃をしてくる船の真上につけスタンドエネルギーをフルパワーで老化に回し沈黙させていく。 風石によって今すぐ沈む事はないが、援護砲撃は止まる。 だが、未だに本命の射程圏内には踏み込めない。 決め手を欠いたまま弾幕を避けていると、『ストレングス』が船首を少し傾けた。 船首の向きはようやく建て直しが始まっているトリステイン軍だ。 瞬間、凄まじい轟音が鳴り響き船首砲から砲弾が放たれた。 その砲弾を迎撃すべくトリステインのメイジが総出で風の防壁を作り防ごうとするが、それを突き抜け血と肉片が辺りに飛び散り悲鳴があがった。 砲の口径、弾速、その全てがハルケギニアのものより圧倒的に上だ。 もちろん、それを知らないトリステン軍はレキシントン落しの効果もあって壊走寸前と化している。 恐らく、次に砲撃が行われれば、もうそれは止めることはできないであろう事はギーシュが決闘したら負けるぐらい確実ッ! 「ど、どうしよう…!あそこには姫様が…!」 そうは言うが、今の自分にはどうする事もできない。 必死になって自分にできる事を探そうとするが、失敗魔法しかできない以上全く無い。 無意識にポケットの中の水のルビーを指に嵌め指を握り締める。 「どうか姫様をお守りください…」 やれる事が無いのなら、せめてアンリエッタの無事を祈ろうと思った。 「兄貴!左と正面から弾幕だ!」 「分かってる!」 言われるまでも無く右側面に機体を90°傾けさせ、そのまま右下に滑るように回避。 「キリがねー……このままじゃあ燃料が持ちゃあしねぇ」 燃費がいい方だとはいえ、急速反転や上昇を繰り返している。 航続距離2000キロを誇るゼロ戦でも、そんな無茶な機動を繰り返していては、そう長く持ちはしない。 また転がったルイズが泣きそうになりながら地に落ち開いた始祖の祈祷書を拾い上げる。 持ってくるつもりは無かったが、あそこで置いてくるなどと言えば、自分が置いていかれる恐れがあったのでそのまま持ってきたのだ。 そうして開いた祈祷書に触れた瞬間、水のルビーと祈祷書が光った。 「兄貴、座席の下に何か落ちてるぜ?」 弾幕の射程圏外に出つつスタンドでそれを器用に掴み取る 「……ボルトじゃねーか。何でこんなもんがあんだよ」 それを掴んだまま、弾幕の射程圏外に出ると、そのボルトが溶けるかのようにして無くなった。 「おでれーた、溶けたぜ」 「ボルトが溶けた……?しかも弾幕の射程外に出たとたんに…溶けた以上、あのボルトは物質じゃねぇ……」 何か分かりかけてきた。ゼロ戦のものではないボルト。それが弾幕の射程外に出た瞬間溶けた事。 そして風防に空いたさっきのボルトと同じ程度の大きさの穴。 「……弾幕の正体はこのボルトか!だが、なぜボルトなんだ……?」 リゾットのメタリカのように磁力のようなものを操り飛ばしてきているという 事も考えたが、それならばボルトなどという形を取る必要は全く無い。 「兄貴…ボルトって何に使うんだ?」 「あ?こっちにはボルトねーのか?ネジのデカイヤツで金属板とかをこいつで固定すんだよ」 「じゃあ、あの鉄の親玉にも使われてんだな」 スタンドのボルト、金属装甲の船、360°繰り出される弾幕。これで何かが繋がった。 「……でかしたぞデルフ!『どこから』『どんな方法で』攻撃しているのか、お前のおかげで全て理解したぞデルフ!」 「……悪りぃ、さっぱり分かんねー」 「射程外に出たら溶けたって事は、あのボルトはスタンドって事だ! そして、あの船『から』撃ってきてるんじゃあねぇ……!あの船『が』ボルトを撃ってきている…つまり、あの船そのものが…スタンドってこったァ!!」 「な、なんだってーーー!あんなデカイやつもスタンドってやつなのかよ!」 「何でもアリってのがスタンドだからな……だが、あんだけデカイスタンドを操るとなると……本体もかなりの化けモンだな」 「スタンドはスタンド使いには見えなかったんじゃあねぇのか?溶けたって事は物質と一体化してるわけじゃねぇしよ」 「……スタンドエネルギーがデカすぎるって事ぐらいしかねーな、あんなタイプのスタンドなんざ組織の情報網にも引っかかった事ねーよ」 だが、船の正体が分かったところで、あの弾幕をどうにかしない事には詰みだ。 スタンドパワーの枯渇を待つ。Noだ。持続力A以上は間違い無いだろうし、まずこちらの燃料が持たない上に時間も無い。 弾切れを誘う。これもNo。スタンドである以上、スタンドパワーが尽きない限り弾幕は途切れない。 射程外からの機銃弾による攻撃。問題外だ。スタンドエネルギーが実体化してるという事はダメージはあるかもしれないが あの大きさに20ミリの穴を開けたとしても大してダメージにはならない上に、修復されかねない。 250キロ爆弾でも積んでれば話は変わってくるのだろうが、そんな装備はこのゼロ戦には付いていない。 ハッキリ言えば打つ手無しだった。 「なにこれ……古代ルーン文字?」 今まで魔法が使えなかったぶん、それに反比例するかのように勉強に勤しんでいたルイズである。 古代ルーン文字を読むことができたのは当然といえた。 「序文。 これより我が知りし真理をこの書に記す。この世のすべての物質は、小さな粒より為る。 四の系統はその小さな粒に干渉し、影響を与え、かつ変化せしめる呪文なり。その四つの系統は、『火』『水』『風』『土』と為す」 呟くような声で読み上げるが、前で必死こいて回避運動を行っている一人と一振りには聞こえてない。 「チッ!せめて弾幕の軌道と間隔さえ読めりゃあ接近できるんだがな」 「でもよぉ兄貴、近付いたら近付いたで、回避しようがねぇよ」 確かにそうだ、広域老化では効果が出るのに多少時間がかかる。 至近距離では弾幕を回避する事はできず直撃を受ければ良くて機関停止、悪くてその場で爆散だ。 「神は我にさらなる力を与えられた。四の系統が影響を与えし小さな粒は、さらに小さな粒より為る。 神が我に与えしその系統は、四の何れにも属せず。我が系統はさらなる小さき粒に干渉し、影響を与え、かつ変化せしめる呪文なり。四にあらざれば零。零すなわちこれ『虚無』。我は神が我に与えし零を『虚無の系統』と名づけん」 「こっちの位置をどうやって把握してるかだな……エアロ・スミスみてーに特定のものを探知しているか……視認で撃ってきてるかだが」 レーダーなどで確認しているのなら打つ手はないが、視認で補足してきているのなら、まだ一つ打つ手はあったが、確証が無い。 「これを読みし者は、我の行いと理想と目標を受け継ぐものなり。またそのための力を担いしものなり。 『虚無』を扱うものは心せよ。志半ばで倒れし我とその同胞のため、異教に奪われし『聖地』を取り戻すべく努力せよ。 『虚無』は強力なり。また、その詠唱は永きにわたり、多大な精神力を消耗する。詠唱者は注意せよ。 時として『虚無』はその強力により命を削る。したがって我はこの書の読み手を選ぶ。 たとえ資格なきものが指輪を嵌めても、この書は開かれぬ。選ばれし読み手は『四の系統』の指輪を嵌めよ。されば、この書は開かれん。 #center{ブリミル・ル・ルミル・ユル・ヴィリ・ヴェー・ヴァルトリ} 以下に、我が扱いし『虚無』の呪文を記す。初歩の初歩の初歩の呪文。第一の爆発『エクスプロージョン』」 その後に、呪文が続いたがルイズは呆然としている。 「始祖っていうわりに頭脳がマヌケじゃない……?指輪がなくちゃ祈祷書が読めないんじゃ、誰がその注意書きを読むのよ」 だが、祈祷書が読めるという事は…… 「わたしが『虚無』の使い手って事なの?」 『エクスプロージョン』と自分の失敗で起こる爆発。 効果としては同じだ。なら今まで失敗と思っていた魔法が『虚無』だったとしたらどうか。 思えば誰もあの爆発を失敗と呼び笑っていた。 ただ一人、その爆発も使い方次第でどうにでも変わる『自信を持て』と言ってくれたのはプロシュートだ。 なら、祈祷書が読める以上、自分を信じて、それに頼るしかない。 そう思った時スデに行動していた。 「このクソ忙しい時に何やってんだッ!」 座席の隙間からルイズが身を出し、操縦席にやってきて座り込んだ。 「……もしかしたら、何とかなるかもしれない……うまく言えないんだけど選ばれちゃったかもしれないのよ」 「何にだ?」 よもやスタンド能力に目覚めたのではないかと思ったが、どうやらそうではないらしい。 「いいから、合図したら、ひこうきをあの戦艦に近づけてちょうだい!」 「……自信はあんのか?」 「……ぁ……る」 「聞こえねー……!自信を持ってんなら、自信を持って答えろ!」 「……あるわよ!あるから言ってるんじゃない!!」 そう答えるルイズを見て、口の端を上げ笑った。 「やれんのは一回限りだ。しくじったら次はねー。それに、こいつは賭けだぜ? もしかしたら墜とされっかもしれねーが」 「いいから近付けなさいッ!使い魔は黙ってご主人様の言う事に従うのッ!」 「了解、『ご主人様』」 急速上昇、敵旗艦の遥か上空まで駆け上がった。 「子爵、どうやら敵の竜騎士はどこかに逃げたようだが」 「ガンダールヴの能力の射程にさえ入れなければいいわけですからな… しかし、あの男がそう簡単に退くとも思えますまい、念のために艦の上空に遍在を二つ配置していますよ」 「ウキャアアアアア」 猿―フォーエバーがそう叫びを上げると壁の中にめり込み消えていく。 今までは遍在のワルドが、ゼロ戦の位置を捕捉し使い魔としての能力を使いフォーエバーに指示していたが、自らが捕捉し、攻撃を行う気になったようだ。 ストレングス上空約3千メートル、眼下に映る巨艦ですら点のような大きさだ。 もちろん酸素濃度は結構低い。そんな状態で風防を開けて、スタンドでガッシリと掴まれたルイズが風防から顔を出しているのだからスゴイ事になっている。 「ぜぜぜ、絶対に離さないでよねぇ~~~!」 さっきまでの、自信はどこにブッ飛んだのか、半泣きに近い状態でそう叫ぶ。 まぁスタンドが見えないため、何に固定されているのか分からない状態なのだが。 「どうする?止めんのなら今だぞ」 そうは言ったが、答えはスデに分かっている。 さっき見せた目には明確な覚悟が宿っていたからだ。 「ばばば、馬鹿言うんじゃないの!わわ、わたしがやらないと姫様が危ないんだから!!」 その言葉と同時に機首を巨漢に向けスロットルを限界まで絞る。レシプロ機の特性上プロペラがすぐに止まる事は無いが時間の問題だ。 巨大戦艦に向けての垂直降下。さらにすれ違い様にルイズが、『エクスプロージョン』を放つ。 言うなれば、米軍機が得意としていた戦法の一つ、急降下爆撃だ。 音で感知されないようにエンジンは止めておかねばならないが、水面に浮かぶ船とは違い、下にも空間は十分にある。 フルスロットルにし最加速するまでは十分な高度が。 これが水上艦ならバンザーーーーイと叫びながらの特攻だが、宙に浮いている事が幸いした。 もちろん、懸念はある。 エアロ・スミスのようにレーダーで特定のものを探知するようなタイプであれば早々に迎撃される。 探知か視認か、このどちらかによって、結果は違う。 賭けだった。それはもう、どこぞのギャンブラーが見たら迷わず『グッド!』と指を向け叫んだぐらいに。 エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ その詠唱と共にゼロ戦が自由落下を始めた。 垂直に落下しているので風防から身を乗り出しているルイズは当然、下を思いっきり見る事になる。 掴まれているとはいえ、この高度からの急速降下である、絶叫マシーンなぞ比較にならないぐらいアレなのだが詠唱そのものは途切れる気配は無い。 「……ゲームにハマってるメローネと……同等の集中力だな」 「それってスゲーのか?」 「言いたくねーが、そういう時のメローネを邪魔できんのはブチキレたギアッチョぐらいしかいねーよ」 「あー……そりゃあスゲーな」 ギアッチョの事は聞かされていたので、そのスゴさが一発で理解できたようだ。 オス・スーヌ・ウリュ・ル・ラド 呪文の詠唱を始めて、すぐに降下に対する恐怖心など無くなった。 なによりどこか懐かしいようなリズムが、それを許さなかったからだ。 体の中で何かが生まれ、行き先を求めてそれが回転するかのような感覚だ。 コルベールエンジンを爆破した日、自分で言っていた事が今まさに『言葉』でなく『心』で理解できていたッ! ベオーズス・ユル・スヴュエル・カノ・オシェラ 重力によりさらに加速、敵艦との距離が凄まじい勢いで詰まる。 「……風が乱れた?」 ストレングス上空で風竜に乗り哨戒中の遍在ワルドx2だが周辺の風が乱れた事に気付いた。 周りに船が多数浮いている中よく気付いたのだが、微かに乱れただけで詳しい場所も分からない。 まぁ、この状況でそれに気付いたのは、風のスクウェアだけの事はある。 それに、反応してフォーエバーも壁から出てきたが、ストレングスの船内に居る相手なら手に取るように把握できるが、船外ならそうはいかないのでワルドに任せている。 本来ならただで人間に従う機など毛頭無かったが、学ランの男にボコボコにされ辛うじて生きてはいたが色んな所が再起不能になって暮らしていたところ この男がそれを治してくれた(正確に言えば水のメイジ)というのもあるが、何故かDIO様のように仕えなくてはならないという気になっていた。 「来るか……?ガンダールヴ!」 下方、側面を見渡すが、何も無い。となれば上しかないが、あるのは陽光眩しい太陽だけだ。 だが、その太陽に影が差すと、その場所が特定できた。 「日の中か……!やってくれる!」 少し光が薄らいだ太陽の中から降下してくるのは緑の機体だった。 「……あのハゲ!日食は今日じゃあねーかよ!」 太陽を背にし、その光に紛れてギリギリまで接近するつもりだったが、日食のおかげで予定より早く探知された。 「逃げねーとモロに食らっちまうぜ兄貴!」 ここで回避する事はできるが、そうなればこの策は二度と通用しない。 つまり、アレを沈める事ができなるなる。 「いいや、ここは突っ切るしかねぇ!」 フルスロットル、最大加速しながら降下する。重力と推進力によって一気に限界速度に達し突っ込んだ。 ジュラ……イサ・ウンジュー…… その風圧に思わず詠唱が途切れそうになるが、急にそれが弱まった 「グレイトフル・デッドを前に出しといてやったから、ちったぁ……マシになんだろ」 背負わされている形になっているのだが当然見えないルイズには分かった事ではない。とにかく風圧が弱まった事だけは事実だ。 操縦している方も喋っている場合ではないのだが、同じようにスタンドの体で風圧を弱めているため何とかなった。 「ホキョァァアアア」 「止まれぇぇぇぇぇガンダールヴッ!!」 ストレングスから弾幕が放たれるが、限界速度で高速移動している飛行物体に当てるのは至難の業だ。 水平飛行している状態なら数に物を言わせ当てることもできたが、この場合は違う。 減速する気配が微塵も無い上に、むしろ加速しながら突っ込んできている。 ただ、機動飛行を行っているわけではないので、少しづつだが、弾幕がゼロ戦をかすめ始めた。 バキィ!と嫌な音をたて開け放った風防が脱落し、周りをボルトの弾幕がかすめる。 「チッ!あのハゲ……!戻れなかったら老化で全滅させてやっからな!」 「その前に生きてりゃあな……」 スデに弾幕の射程内。ストレングスまで400メートルといったところだ。 この速度なら、一瞬。だが、その分直撃は貰いやすくなる。 ハガル・ベオークン・イル…… 詠唱が終わるが、その瞬間この呪文の威力を理解した。 周辺空域全てを巻き込むであろう、その威力を。 選択肢は二つ。殺すか。殺さぬか。 破壊すべきは何か。 一瞬、迷いが生じたが直ぐにそれを断ち切る。 (『詠唱する』と心の中で思ったなら……その時スデに行動は終わっているのよね……) 翼に穴が開くが、速度は落さない。むしろ落したりでもしれば、それこそ蜂の巣だ。 風竜に乗った遍在ワルドと目が合った気がしたが、構っている暇など一切無い。 そのまま、ストレングスとすれ違うように降下し、胴体部に直撃を果たすボルトの弾幕が見えた瞬間、光の玉が辺りを包んだ。 ようやく到着した二人と一匹だが、艦隊が光の玉に包まれていく光景を見た。 「なによ……あの光は……」 「分からない……」 「でも、あれなら、トリステインが勝ったって事じゃない?」 ラ・ロシェール付近に展開し壊走寸前だったトリステイン軍からも歓声が聞こえている。 「……まだ!」 タバサがそう叫ぶと光が晴れる。殆どの艦は炎上し、甲板とマストを燃やし墜落していたが、唯一本命の巨大戦艦だけは、炎上しながらも健在な威容を見せていた。 スタンドの船という事が災いした。 本体、つまり、フォーエバーには直接ダメージは入ってないのだ。 核。ストレングスがベースとしている艦が炎上していれば墜落していただろうが、巨大なスタンド像に阻まれ、こちらは損傷には至っていない。 もちろん、船に与えたダメージの分は本体にもフィードバックされているが致命傷というわけではない。 「フフ……ハハハハハハハ!」 船の中でワルドが笑う。ただひたすら笑う。 あの光を見た瞬間、それを虚無だと確信したのだが、その伝説の虚無すらものともしない艦を手に入れた事に笑った。 「ギャオオオォォォォ」 だが、その笑いをも打ち消す獣の叫びが辺りに響き渡る。 その声の主はフォーエバーだ。 船体を焼かれているのだから、当然ある程度本体も焼かれている事になる。 こうなれば、ワルドに対しての忠誠など一切無い。使い魔になって日が浅いというのも災いした。 敵を倒すという本能のみが頭を支配する。 スタンドに目覚めているだけあって、普通の猿とは違う高度な頭脳を持っているのだ。 通常なら制御できていたが、焼かれた事でベイビィ・フェイスの息子もびっくりな暴走っぷりを始めている。 主砲はスタンドではなく実弾なので、それを込める乗員などその他多数乗船していたが、一人の例外も無く船の中に飲み込まれようとしている。 「こ、これは……馬鹿な……!」 ワルドとて例外ではない。スデに半身を底なし沼にハマった旅人のように船体に埋めている。 必死に、フォーエバーと連絡を取ろうとするが、怒り一色のフォーエバーにはそんなもの聞こえてすらいない。 「アレでまた墜ちねーのか……」 「もー無理だ、逆立ちしても無理だね」 機首を翻し、光の起こった方向を見たが、炎上しながらも依然として健在な戦艦が上空にあった。 弾幕の射程に入らないようにしていると、見慣れた竜が戦艦に近付くのを見た。 「あの馬鹿が……ッ!死ぬぞ!」 タバサ&キュルケinシルフィードなのだが、どうやら戦艦上空に向かおうとしているらしい。 へばっているルイズを後ろに押し込むと、再び高度を上げるが、シルフィードに向け弾幕が放たれた様子は無い。 「やはり、視認で撃ってきたってわけか……?なら本体はどこだ?」 甲板を見渡しても本体らしき者は居ない。中に本体が居ると判断し広域老化を仕掛けるべく甲板上空に付けるが、それより先にシルフィードがそこに居た。 「オメーら邪魔だ!」 そう叫ぶが、距離もある上に、ゼロ戦自身の爆音で聞こえていない。 船自身がスタンド。迂闊に接近するのは自殺行為だ。グレイトフル・デッドの 長大な射程があればこそ、ギリギリまで接近したのだが、シルフィードは近付きすぎている。 「ここまで近付いても攻撃してこないなんて……何があったのか知らないけど先手必勝ね!」 普通の船なら、近付くまでに船員なりが攻撃を仕掛けてくる。旗艦なら当然メイジも居るはずだ。 だが、現在フォーエバー暴走中につき船から反撃が行われる事は無い。 それで、二人して乗り込もうと思ったのだが、この船自身がスタンドなどとは微塵も思っていない。 そして、シルフィードが最も接近した時、二人と一匹に船体からパイプなどの部品が絡みついた。 「なな、何よこれ!」 「……引っ張られる!」 (こ、こいつおねーさまに何をーー!……はッ!まさか、その触手っぽいモノでおねーさまに、あんな事やこんな事を!……少し見てみたい気も!) ちょっとアレな想像をして悶えているシルフィードだが、相手はあの家出少女(14)に手ぇ出そうとした猿。 何が言いたいかというと……正解である。 獣の叫びを上げながら、壁から巨大な猿……オラウータンことフォーエバーがにじり出てくる。 怒りで顔を通常の三倍の如く赤く染め上げ、絡め取られている二人+一匹に近付いていく。 タバサが辛うじて握っていた杖で『ウィンディ・アイシクル』を唱えたが、フォーエバーに当たる直前に 床の壁がフォーエバーをガードするかのように盛り上がり氷柱を阻んだ。 「……錬金!?……違う……まさかスタンド!?」 改めてフォーエバーを見据えるが、刺さった氷柱を抜き、火傷に押し当てたり、かじりつつタバサを見ている。 「猿のくせに……気に入らない顔してるわね…!」 そっち方面の事に関しては百戦錬磨のキュルケさんにとってはその猿の顔は今まで見飽きたような顔だ。 「なに?この微熱のキュルケを無視してタバサに?……いい度胸してるじゃない!」 もちろん、そんな露骨な表情で迫ってきた男達は火葬される事になっているのだが、それが、自分にではなくタバサに向けられている事が気に入らなかった。 Fuck you……ブチ殺すぞエテ公 そんな危ない呟きが聞こえたのは多分幻聴だ。 そして、『フレイム・ボール』が放たれるが、フォーエバーの遥か手前で壁に阻まれ炎上している。 魔法―ストレングスから見ればスタンド能力だと思っているのだが、それを見て、邪魔だと言わんばかりにキュルケとシルフィードを船体に半身を沈めさせる。 「ヤッバイ……逃げなさいタバサ!」 「……無理」 人間の五倍近くの力を有するオラウータンだ。並の人間でも太刀打ちできないのに、普通より小柄なタバサが拘束から逃れるのは不可能といえた。 「ウホ、グフホホホ」 氷をかじりながらモット伯もドン引くような笑みを浮かべゆっくりと近付く。 (ああ!おねーさまの初めてが、あんな猿に!?……でも大丈夫なの!後でシルフィが慰めてあげるのね!) フォーエバーとは別の方向でなんか興奮しているシルフィードを見て、これを乗り切ったらどんなお仕置きをしようかと思ったのだが、それどころではない。 だが、フォーエバーとタバサの距離が3メートルに達したところで、フォーエバーが止まり右手を横にかざした。 瞬間、その横に『ウィンディ・アイシクル』を止めたものより厚い壁が盛り上がり、そこに機銃弾が撃ち込まれた。 「チッ!」 それと同時に、上空をゼロ戦が通り過ぎ、その場に風が流れる。 「最悪、巻き込もうかと思ったが……氷食ってやがんな」 忌々しげに眼下のフォーエバーを見るが、ガリガリと氷を貪り余裕とアレが混じったムカつく笑みを浮かべている。 本来ならオラウータンと人間の寿命差でフォーエバーが先にくたばるのだが、タバサが魔法を使ったのが仇になった。 こうなれば、広域老化は役に立たない。 直触りは問題外だ。ゼロ戦を捨てたとしても船上はフォーエバーのホーム・グラウンド。 例えるなら、虎の球団のファンが大勢乗った電車の中で一人オレンジ色のマークの球団の帽子を被り、それに乗るようなものだ。 機銃弾も通じない以上、残った手段は、キュルケの炎でフォーエバーの体温を上げさせる事だったが肝心の魔法がフォーエバーの遥か手前で止められているから期待できそうにない。 もう一度反転し、機銃を撃ち込むが、さっきと同じように壁に阻まれフォーエバーに届いていない。 「エテ公が……ここで、撃ってくれば墜とせるってのに、やらねーって事は…ナメきってやがんなッ!」 「こいつじゃ、あの壁を貫通できねーしな。どうするね兄貴」 連続して同じ場所に撃ち込めば貫通できるだろうが、ゼロ戦自体が高速で動いている以上それはできない。 ガンダールヴ印の効果で精密射撃自体は可能になっているが、あの壁を貫通できるぐらい同じ場所に連続射撃をするというのは無理だ。 遠すぎれば弾はバラけるし、近ければ、その速度故に貫通するだけの量の弾を撃ち込めない。 「ホワイト・アルバムを相手にしてる気分だぜ……クソッ!」 あの堅牢な装甲も、同じ箇所に立て続けに攻撃を食らったり、一点集中の強大な負荷をかければ破れるのだが、それをやるのがディ・モールト難しいのだ。 つまりまぁ……目の前の猿がギアッチョと被り、ムカついてきた。 「速すぎるなら速度落せばいいんじゃないか?」 「これで限界だ、これ以上落すとこいつが墜ちるからな……」 もう少し落せない事も無いが、水平飛行をギリギリ維持できる速度だ。上昇や旋回などは当然できない。 まして、照準の調整などしようものなら即、失速して墜落だ。 「いっその事、こいつを空中で止めちまうってのはどうだ?」 「馬鹿かオメーは?プロペラが回って前へ進んでるからこいつが飛んでんだろーが」 「いや、魔法でさ」 悪くは無いが、誰がやるかが問題だ。 タバサは、もうスデにがっつりと絡め取られ、ルイズはヘバっているし、爆発を起こしかねない。 となると残っているのは、半身を埋めているキュルケだが、フォーエバーに気付かれずに伝える手段が無い。 スタンド使い同士なら、意思疎通も可能だが、そうではない。もっともフォーエバーにも聞こえてしまうが。 直接伝えるのがベストだが、そんな真似ができる人間はここには――― 「……オメー確か丈夫な方だったよな?」 「ああ、そりゃあ伝説だしな」 「それじゃあ、今から言う事をしっかり覚えとけ」 「んー?どうするんだね?」 説明し終えると、デルフリンガーの柄を握り、キュルケの方を見る。 半身を埋めているものの、杖を持った方の手は出ている。良好だ。 「イタリアに戻れたら言えねーから、先に言っといてやる。世話になったな『相棒』」 「兄貴……俺の事を初めてそう言ってくれたな……!もう泣きそぉぉぉぉぉぉぉぉ」 言い終える前に、デルフリンガーをキュルケの方に向けブン投げる。 見下ろすと、見事にキュルケの近くに刺さったデルフリンガーとキュルケが何やら言い合っているが問題は無いと判断し再び上昇する。 スデに、日は半分欠けている。一発勝負だ。 「あたしに刺さってたらどうしてくれんのよ、この剣は」 「俺に言うな。投げたのは兄貴だぜ…で、大丈夫なんだな?」 「任せときなさいな。あのエテ公に一泡吹かせられるんなら何だってやるわよ。……タバサも色々と危ないみたいだし」 猿を睨むが、腕をタバサに向け動かしている。 タバサの方も見るが、フォーエバーが腕を動かす動きに合わせパイプがグネグネと動いている。 正直言って、触手そのものと言ってもいい。 ジュルリ そんな音がしたが、デルフリンガーは幻聴だと思った。というかそう思わせてください。 「そ、そろそろ、くるぜ」 キュルケの方は見ないでそう答える。見れば今までの価値観が崩れてしまいそうな気がする。 今までタバサの方に向けていた腕を上に向けるとフォーエバーを覆うように壁ができた。 それと同時に、直上方向から機銃弾が浴びせられるが、さっきと同じで貫通はしない。 20ミリ機銃でも突破できない厚さの上にスタンドだ。 普通のものより強化されている。 特攻という事も考えたが、この船は俺のものだ。壁を介して何時でも逃げられる。 何より、この近さでは、この少女も巻き込むはずだ。 上は放っておいても問題無い。となれば、何かしてきそうなのは捕獲している一人と一匹かと判断し視線をメンドクさそうにそっちに向けると 赤髪の女が杖を振っている事に気付いた。 それを見るや、手を掴むように握りこむ。 「がッ……レディにこんな事するなんて……礼儀を知らないわね……エテ公が……うぐぁぁ……!」 (痛い痛い痛い痛い痛い痛いのーーーーー!) 人間の5倍近いオラウータンの握力とスタンドパワーによる締め付け、下手すれば埋もれている部分から切断される。 フォーエバー自身、キュルケにもアレでナニな事をするつもりでいたが、ド真ん中ストライクゾーンなのはタバサだったため、放置していたが害になるのなら始末する。 そう判断し、そちらに集中を向けたため、それが一手遅れる事になった。 直上方向から壁を穿つ音が聞こえていたが、その音が長すぎる。 機首を翻していなければ機体を船にぶつけているはずだが、それも無い。 思わず上を見上げるが、見た物は同じ箇所に銃弾を受け、脆くなった壁を突き破り己の額に向かってくる20ミリ機銃だった。 「資料で見ただけだが…ナランチャがトドメを刺す時はこう言っているようだな……」 機体を90°傾けさせ機首をフォーエバーに向けた機体の中でスタンド使いにのみ聞こえる会話をフォーエバーに向ける。 「ブゴォォォ!ウグアボゴォォォォ!!」 勢いが殺されている弾とはいえ、生物を貫く事ぐらいはできる。 だが、勢いが殺されているだけあって、一発で致命傷に至らなかった事が、この猿の不幸か。 「ボラーレ・ヴィーア(飛んでいきな)…だったか?」 トリガーを押しっぱなしにし銃身が焼きつかんばかりに弾切れまで撃ち尽くした。 「はぁ……ものすごい締め付けだったわね……千切れるかと思ったじゃない」 ちょっと言葉がアレだが気にしない。 猿とタバサの方を見るが、どうやらギリギリ一歩手前で無事なようで一先ず安堵した。 (死ぬかと思ったのね……でもこれから、泣き崩れるおねーさまをシルフィが優しく抱いて……) (なにやってるの?) (はッ!おねーさま、何もされなくてよかったのね……) 現実に引き戻され、ちょっと残念そうに答えるシルフィード。自重しろ。 (……お仕置き) (へ?な、何を!?ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサヤッダッバァァァァ) 解放されたタバサが恐ろしく素早い動きで、シルフィードの口に捻じ込んだのは、ご存知『草』が入ったアレだ。 韻竜も一発で昏倒させるその威力に引いたが、船体が溶け始めた事にはビビッた! 「兄貴がこの船スタンドって言ってたから、あのエテ公がスタンド使いって事だな」 「……それって、あの猿を倒したからこの船が消えてるって考えていいの?」 「そういう事だな」 落ちる。そう思った瞬間、垂直に空中で浮いているゼロ戦を水平に戻した。 タバサは気絶したシルフィードで手一杯だ。 直上方向から垂直に降下し『レビテーション』で浮遊させ装甲を貫通できるまで機銃弾を叩き込む。 推力を落としているため、前に進むこともなく墜落もしない。 水平方向なら惰性で照準がズレるため、降下しながらの作戦だ。 水平になった瞬間、再稼動。『レビテーション』が切れる前に飛行可能速度に達するべく、勢いよくプロペラが回転し、その場を離れる。 「どーやら任務完了ってわけだが……間に合うか?」 上空を見上げると日は2/3といったところか。 このまま行けば間に合うだろうが……後ろでヘバっているルイズを見た。 船があった場所を見ると、スタンドが溶けながら核となる船が炎上しながら落ちていっている。 スタンドは溶けたが炎はそうではないため燃え移ったようだ。 タバサとキュルケはスタンドの中に飲み込まれていた船員をそっちに移している。 ストレングスにはメイジも居たため、まぁ何とかなるだろう。 ワルドっぽいヤツも居たような気がしたが、早々に逃げたようだ。 「あっちも手一杯ってわけか……仕方ねーな」 言いつつ機首を下げようとすると、後ろから声がかかった 「なに……やってんのよ?……帰るんじゃなかったの?」 「オメーみてーなの連れていったら、オレが色々困るんだよ」 ルイズが付いてきて、なおかつチームの連中が生きて万が一にでも見られた日には、ハイウェイ・トゥ・ヘルもんである。 そうでなくても、ボスを暗殺せねばならないのだ。暗殺チームの戦いにルイズを巻き込む気は無い。 そう言うが、左手のルーンがさっきよりも少し強く光っている事には気付いていない。 「……わたしが邪魔ならハッキリそう言いなさいよ。いいわ、今日であんたクビね!」 「あ?イカレたのか?この状況で」 「好きにしていいって事よ……元の世界にでもイタリアってとこにでも勝手に帰りなさい」 「だからオメーを連れて行く気は……な……!……てめー何やってる!外は時速350キロだぞ!!」 後ろに居たルイズが、また隙間から前に出てきて、外に身を乗り出そうとしている。 この高さから落ちれば、速度の関係無しに紫外線の直撃を受けたコルベールの毛髪が抜け落ちるぐらい確実に死ぬ。 「わたしを誰だと思ってるの……!虚無の使い手『ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール』よ?」 「……スタンド使いも能力の目覚めたてが一番危なっかしいんだよ。……本気か?」 「虚無の使い手のわたしが、使い魔如きに心配される覚えなんてないんだからね!でも一つだけ命令よ」 「クビなんじゃあなかったのか?」 「う、うるさい!一々揚げ足取るんじゃないの!……その組織ってとこを相手にしても死なない事」 「オメーに言われるまでもねーよ。オレ『達』は簡単には死ななねぇ」 「な、ならいいわ!……あんたも少しはわたしを信頼してよ……」 「……マジってわけか……止めはしねーが後ろに気をつけろ。後で見たらオメーの肉片が付いてましたとかじゃあ洒落にもならねぇ」 「い、嫌な事いわない!……皆に伝えて欲しい事は無いの?」 「アリーヴェ・デルチ(さよならだ)。こいつだけで十分だが、しばらく時間が経ってから言えよ」 「なんで?」 「……オメーがそれ言った後に帰れずに戻ってきた時の気まずさを考えてみろ」 「あー……それ、なんかすっごく分かるわ」 別れの挨拶をしてから、後でその本人が現れる。B級映画でもやらない、洒落にもならない行為だ。 「それじゃあね……今だから言うけど結構楽しかったわよ」 「餞別だ、グレイトフル・デッドで運んでやる。あと、デルフの鞘も持っていけ」 言うと同時に、ルイズを持ち上げる。 「死んでも責任取らねーからな」 「く、クビにした使い魔に責任取ってもらう必要なんて、無いわよ」 「言ってろ」 フルパワー。尾翼に当たらないように放り上げるようにルイズを投げた。 投げると共にフルスロットル、太陽に向け急速上昇。 少し気にはなったが、後ろは振り向かない。 一端の覚悟を持って望んだのだ。信頼してやるのが礼儀というものだろう。 さて、こちらは重力に従って降下しているルイズだ。 確信があったわけではないが、自分の系統を見つけた事により、それも使えるであろうという奇妙な感覚があった。 「落ち着くのよ…ルイズ・フランソワーズ……落ち着いてやればできるわ……あいつも言ってたじゃない」 風圧で手に持つ杖が飛ばされそうになるが、しっかりと握り締める。 これを飛ばされたら、パール・ジャム決定だ。 呪文を詠唱し風圧に逆らいながら杖を振ると降下の速度が落ちる。 「『レビテーション』……やっと成功ってとこね」 地面に着陸すると同時にガクッと意識が遠くなる。今ので最後の最後まで精神力を使い果たしたらしい。 完全に意識を失う瞬間、キュルケとタバサが近付いてくるのが見えた。 そして、翌日。学院で目が覚めたルイズだったが…使い魔がどこにも居ない事に……泣いた ←To be continue...? 戻る< 目次 続く
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/807.html
食堂にルイズが着いたのを1人の生徒が気がついた 「あ、『平民』を召喚したゼロのルイズじゃないか」 すると・・・ 「本当だ、平民を召喚するなんて流石だな!」 「そこに痺れないし憧れないぃ!」 次々とルイズを侮辱する言葉が飛んできた 「な・・・・な、こ、こいつはただの召使いよ!」 「へー 召使いって名前の平民なのか」 「なな・・・なんで知ってるの!?」 散々侮辱され流石に酷いんじゃ・・・と思ったが 昨日の自分の受けた扱いを思い出しその考えを取り消した また、今回の原因は今朝赤髪に話したせいだと思ったが嫌な予感がしたので黙っている事にした そんな事を考えながらルイズの席を引いて座らせ、自分も座ろうとすると ルイズは無言で床を指差した。そこに皿が一枚と焦げたパンが置いてある 「これは何ですか?」 「あのね、ホントは使い魔は、外。あんたはわたしの特別な計らいで、床」 エンポリオはその一言で全てを理解し・・・・今度こそ心が折れそうになった そして、そのルイズ様から頂いた素晴らしい食事を食べ終え外へ行こうとすると 香水が転がってきた けれど無視して行こうとした・・・・が (な、なんだ? ここで香水を拾わなければいけない気がする・・・・) そして香水を拾い転がってきた方向を見ると 「なあ、ギーシュ! お前、今は誰と付き合ってるんだよ!」 金色の巻き髪にフリルのついたシャツを着た、キザで見るからにマンモーニなメイジがいた。 薔薇をシャツのポケットに挿している。どうやら友人らしき人物と話をしているようだった。 「誰が恋人なんだ? ギーシュ!」 「つきあう? 僕にそのような特定の女性はいないのだ。薔薇は多くの人を楽しませるために咲くのだからね」 「会話中にすみませんがこれ、落としましたよ」 すると周囲に居た友人らしき人の1人が 「おや? それはもしや、モンモランシーの作っている香水じゃないか?」 「ああ、この特徴的な色合いは間違いないな。彼女が調合している香水だ」 「つまりギーシュは、今モンモランシーと付き合っているのか」 そのマンモーニが何か言いかけたとき、近くの席から茶色のマントをつけた少女がギーシュの席にやってきた 「け、ケティ……。違うんだ、これは…」 ケティと呼ばれた少女は弁解をしようとしたギーシュの頬を思いっきりひっぱたいた そして涙を零しながら去っていった するともう一人少女が近づいてきた こちらがモンモランシーだろうか? その少女はマンモーニの前に立つと・・・・スープを顔面に叩き込んだ 「嘘つき! 二度と顔を見せないで!」 そう言うと その少女もまた、去っていった 呆然とその光景を見ていると 「どうしてくれるんだ? 君のせいで二人のレディの名誉に傷がついたんだぞ!」 そのマンモーニが言いがかりとしか思えない発言をしてきた 「え?ぼ、僕が悪いんですか?」 「当たり前だろう! 君が香水を拾うからこんな事になったんだ!」 流石マンモーニ その考え方には尊敬してしまう 「でもマンモーニさn・・あ、えっとギーシュさんが二股をしていたのが行けないんじゃ・・・」 その言葉に周囲から「子供に言われてるよ・・」などと失笑が漏れる プライドが高いのだろうか?怒りで表情を歪めている 「確か君はミス・ヴァリエールの使い魔だったな・・・・ いい機会だ 彼女の変わりに僕が躾けてやる!」 その言葉には流石にカチンと来る そしてエンポリオは・・・・・ モンモランシーと同じように、スープを、叩き込んだ! 少しの静寂の後周囲に爆笑の渦が広がる 「き・・・き、き 貴様 許さん!決闘だ!!! 死ぬまで痛めつけてやる!!」 周りが 子供相手に何を言ってるんだこのマンモーニ っていうかマンモーニって何? という視線にも全く気がつかずギーシュは目を純血させながら激怒していた ~~~~~~~~~~ その頃のルイズ・・・・校舎裏で今日も真面目に魔法の勉強中(マンモーニ事件は知りません
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/578.html
爆炎の使い魔-1 爆炎の使い魔-2 爆炎の使い魔-3 爆炎の使い魔-4 爆炎の使い魔-5 爆炎の使い魔 番外編~平行世界では~
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/800.html
窓から差し込む光でジョニィは目を覚ました。 いつもなら日も昇りきらない早朝に起きてすぐに次のゴールを目指して出発するのだが やはり昨日の一件で肉体的にも精神的にも疲れていたらしい。 目の前にある下着を見て昨日の出来事が夢ではないことを悟った。 ジョニィは昨晩寝る前に「ご主人様を起こすのも使い魔の役目!」と言われてたのを思い出し 上半身を起こして車椅子に乗るとベッドに近づいていく。 自称ご主人様はまだベッドの中で寝息を立てている。 (何で僕が堅い床でルイズがふかふかの布団なんだ…?) 昨日の一件を思い出し少しイラッときたジョニィはルイズが寝入っているのを確認しタスクを発現させる。 「タスク───移動する穴───!!」 ジョニィの爪弾が床に撃ち込まれる。 その弾痕穴はルイズのベットに向かっていき… ガゴンッ! 「キャッ!」 ベッドの足を一本破壊して消えた。 「な、何よ!?なにごと!?」 「朝だ、お嬢様」 「はえ?そ、そう…ってなんであたしのベッドが傾いてるのよ!」 「僕に聞くなよ。ただ地震かなんかで足が折れたんだろ」 まだ寝ぼけたままのルイズは「ああ、そんなものなのかな」と納得してしまう。 一方ジョニィはこっちの世界でもスタンドが発現できるとわかり一安心である。 背中に脊椎部の遺体の一部があることも感覚でわかる。 ルイズは起き上がるとあくびをした。それからジョニィに命じる。 「服」 椅子にかかった制服をルイズに向かって放り投げてやる。 だるそうにネグリジェを脱ぐルイズに背を向ける。 「下着」 「は?」 「そこのー、クローゼットのー、一番下の引き出しに入ってる」 「………」 なるほど、雑用ね。そう思いながら下着を適当に引っつかんで後ろに放り投げた。 「服」 「君にさっき渡しただろ?僕はもう持っていない」 「着せて」 「僕が?」 「平民のあんたは知らないだろうけど下僕がいるときは自分で服なんて着ないのよ」 「できるわけがないッ!」 いくらなんでも昨日会ったばかりの女の子に服を着せるなんてできるわけがないッ! そう思って振り返ったジョニィは四回言う前に冷静さを取り戻した。 ルイズの体は未発達で出るとこが全然出ていなかったのである。 下着姿のせいで悲しいほどよくわかる。 これだったら年下でもルーシー・スティールのほうがよっぽどスタイルがいいだろう。 それなりに女遊びもしてきたジョニィはルイズの体を見てもどうとも思わず、逆に同情の気持ちがわいてきた。 (最高だったは使えないな…) ジョニィはやれやれといった表情でルイズのブラウスを手に取った。 ルイズと部屋をでると廊下の戸が一つ開き、中から燃えるような赤い髪の女の子が現れた。 身長、肌の色、雰囲気、胸、全てがルイズと対照的な美女だった。 「おはよう、ルイズ。あなたの使い魔ってそれ?」 にやっと笑いながらルイズに挨拶をするとジョニィを指差して今にも噴出しそうな顔で言った。 「そうよ、文句あるのキュルケ」 「あっはっは!ほんとに平民なのね!すごいじゃない!さすがはゼロのルイズ!」 キュルケ、と呼ばれた女の子は腹を抱えて爆笑している。 「あたしも昨日使い魔を召喚したのよ。誰かさんと違って一発で呪文成功よ」 「あっそ」 「どうせ使い魔にするならこういうのがいいわよねぇ~。フレイムー」 キュルケが勝ち誇った声で使い魔を呼ぶと部屋からのっそりと真っ赤で巨大なトカゲが現れた。 ジョニィは思わず車椅子をバックさせる。 「うおおッ!?なんだこいつはッ!?」 「もしかして、あなた、火トカゲを見るのは初めて?」 「…毒とかある?」 「平気よ。それにあたしが命令しない限り襲ったりしないから」 キュルケは手を顎にそえ、色っぽく首を傾げた。 「これってサラマンダー?」 ルイズが悔しそうに尋ねる。 「そうよー。火トカゲよー。見て?この尻尾。ここまで鮮やかで大きい炎の尻尾は、間違いなく火竜山脈のサラマンダーよ。 ブランドものよー好事家に見せたら値段なんかつかないわよ?」 「そりゃよかったわね」 「素敵でしょ。あたしの属性ぴったり」 キュルケは得意げに胸を張った。ルイズも負けじと胸を張り返すが、まったく勝負になっていない。 ふとキュルケはジョニィを見つめる。 「あなた、お名前は?」 「ジョニィ・ジョースター」 「ジョニィ・ジョースター?ヘンな名前。じゃあ、お先に失礼」 そう言ってキュルケは颯爽と去っていった。 その後をサラマンダーがちょこちょこと追っていく。 「くやしー!なんであのバカ女がサラマンダーでわたしがあんたなのよ!」 隣でルイズが何やらわめきだしたがジョニィはさっきのトカゲのことで頭がいっぱいだった。 どうもあの火トカゲを見ると毒でもあるんじゃあないかと疑ってしまう。 (な、なんで僕はこんなにあのトカゲを警戒しているんだ?) 話を聞いていなかった罰としてルイズに チョップを撃ち込まれた彼の頭には一瞬だけアンドレ・ブンブーンの顔と腫れ上がった指が浮かぶのだった。 To Be Continued =>
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/201.html
季節は春。 ここはハルケギニア大陸にあるトリステイン王国の王立トリステイン魔法学院。 その広場では年に一度の使い魔召喚の神聖なる儀式が行われていた。 そして今その儀に向かっているのは、ルイズ・ド・ラ・ヴァリエール。 桃色がかったブロンドに白い肌、鳶色の目を持つ可憐な少女である。 だがそのルイズは今かなり焦っていた。 なぜなら使い魔を召喚する魔法『サモン・サーヴァント』を、もう3回も失敗していたからである。 「やっぱりルイズには無理なんだよ!」 「なんたって成功率『ゼロ』のルイズだもんなー!」 周りからのそんな野次にルイズは気丈に言い返す。 「黙ってて!集中が乱れるでしょ!」 そして五たび呪文を唱えだす。 (今度こそ……お願い!!) だが願い虚しく、またも大きな爆発が起きてしまう。 (……ああ……やっぱり、私、ダメなのかな…………) 五連続の失敗に気丈なルイズもさすがにガックリとうなだれる。 だが、しかしッ! 「お、おい、何かいないか?」 「本当だ!何かいるぞ!『ゼロのルイズ』が使い魔を召喚しやがった!」 周りから聞こえる声に驚き前を見上げるルイズ。 爆発の煙が晴れてきたそこには、いかにもウエスタンな格好をした男が倒れていた―― to be continued
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1939.html
「なあ、一つお願いしたいんだが…」 アルビオンに向かうために馬に跨ろうとするルイズにギーシュが問い掛ける。 「なによ」 「僕の使い魔を連れて行きたいんだけど」 「好きにしなさいよ」 ルイズは興味を失い、再度馬に跨ろうとする。 「わかったよ、おいで!僕のヴェルダンテ!」 ギーシュが使い魔の名前を叫ぶ。 ギーシュの数歩前の土が隆起し、大きなモグラが姿を現す。 大きさは直径60サント程度だろうか。 「なにこれ、ジャイアントモール?これがあんたの使い魔?」 ルイズが尋ねる。 「そうさ、ヴェルダンテと呼んでくれ!ああ、僕の可愛いヴェルダンテよ!僕とワルキューレとヴェルダンテの 心が一つになれば僕らの正義は100万パワーさ!」 「そう、じゃあ66万パワーで妥協しなさい」 「ど、どういう意味だね、それは。使い魔を連れて行っていいと言ったんじゃないのか?」 「そんな大きなの馬のどこに積むのよ」 「決まってるさ、こう見えても地中を掘る速度は馬にも負けないんだ」 ルイズはため息をつく。 「あんた、姫様の話聞いてなかったでしょ?私たちはアルビオンに行くのよ?これ以上なにか言うなら「ひと言」につき 一発殴るわよ。「何?」って聞き返しても殴る。クシャミしても殴るッ。動かなくても殴る。あとで意味もなくまた殴る」 「ちょっと待ってくれ、最後のはなんだ最後のは」 「問答無用よ」 ギーシュに華麗に左アッパーを決めたとき、なんと使い魔のヴェルダンテがワムウに襲い掛かった。 ワムウは一応手加減しつつも反射的に殴り飛ばし、地面にモグラが転がった。 「な、何をするだァーーッ!」 「それはこっちの台詞だ、急に飛び掛かるなら殴られても仕方が無いだろう」 「うーむ、昨日アンリエッタ姫から貰った指輪に反応したんだろうね、僕のヴェルダンテは優秀な使い魔だから宝石を…」 ルイズが右頬にフックを叩き込む。 「これ以上使い魔の自慢をやるようなら大好きな使い魔と寝ててもらうわよ、急いでるんだから」 ギーシュは頬を抑えながら立ち上がる。 「ルイズ、君なんか変わったなあ…それにしても君たち、僕と使い魔になにか恨みでもあるのかね?」 「ないけどあるわ、さあそろそろ行くわよ」 やっと一行が出かけようとしたとき、朝もやの中から一頭のグリフォンが飛来する。 「やれやれ…どうやら間に合ったようだな」 グリフォンに乗った長身の男は声を漏らす。 「誰だッ!」 それにワムウが襲い掛かろうとする。 「やめてワムウッ!その人は敵じゃないわ!」 「やあ、愛しのルイズ。君の一行なかなか屈強だね、少しビビってしまったよ」 長身の男は明るく笑いながら一行に声をかける。 「お忍びの任務であるゆえ、一部隊つけるわけにはいかない。そこで、姫殿下から僕が指名されたというわけさ」 「ワルドさま…」 ルイズが声を漏らす。 ワルドはルイズに近づき、抱き抱える。 そして、二人のほうを向く。 「自己紹介が遅れたな、魔法衛士団グリフォン隊隊長、ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドだ、よろしく頼む」 ギーシュは肩書きを聞き、肩をわなわなとふるわせる。 「あ、あのグリフォン隊の隊長だって!? ワムウはギーシュに尋ねる。 「そんなにすごいのか」 「ああ、『背中に目がある』『心臓が核鉄だ』『血管にドーピングコンソメスープが流れている』だのなんだの 言われてるぜ、半分は冗談だろうがもう半分はそうでも言わないと説明できない精鋭部隊さ。そこの隊長だったなんて…」 ワムウは姫の護衛についていることから精鋭部隊であることは察していたが、実戦でもそこまで恐れられているとは 思っていなかった。 「お褒めの言葉ありがとう、同行する仲間であるし、君たちの自己紹介もお願いできるかな?」 「ギーシュ・ド・グラモンだ、系統は土、二つ名は『青銅』です」 「ワムウだ」 ワムウは低く呟く。 「ふむ、もしかしてあのグラモン元帥の親族かい?」 「ええ、末っ子です」 「なるほど、それは心強いな、僕のは風のスクウェア、二つ名は『閃光』、よろしく頼むよ。 そして、そこのワムウくんは……どうやらメイジではないようだが…」 ワムウが答える様子が微塵もないのを察したルイズが代わりに答える。 「私の使い魔です、ワルド様」 ワルドが感嘆の声を上げる。 「使い魔とは思わなかったな、さすが僕のルイズ、こんな屈強な使い魔を召還するなんて! さすが僕のルイズだ!それにしても、なんて頼りになりそうな一行なんだ、 僕も胸を借りるつもりで同行させて貰うよ。さあ諸君、ではそろそろ出発するぞ!」 ルイズはヴァルキリー、ワムウは巨馬、ギーシュはヘイ!ヤア!という馬(名前のセンスがないとルイズにバカにされた) ワルドはここまで乗ってきたグリフォンに再度跨り、一行はまずは港町、ラ・ロシェールへ駈けていった。 * * * ラ・ロシェールまでは早馬で2日ばかり。ルイズは特技である馬術を生かし、ワムウの巨馬はなぜかスタミナ切れ知らずだったため 数時間おきに休めばワルドのグリフォンにもそれほど離されなかったが、ギーシュの馬および本体はすでに疲れきっていた。 「最後に休んでからいったいどれだけ立っているんだ…ええい!彼らの馬は化け物か!」 「私の馬もいい馬だけど、それだけじゃないわ。私のは『技術』よ、馬術には未知の部分があるわ」 「だいたい、なんで君の使い魔の馬はあんなに大きいのになんで疲れないんだね! 馬力のある馬ほどすぐ疲れるはずなんだ……『エネルギー』使うからなあ…」 「歩幅も大きいんだから大して変わらないわよ」 「いや…おかしい…これは辻褄が合わないッ!これが現実ではないッ!ほら、誰もいないはずの谷だってのに明るいし…」 「ギーシュ、しっかりしなさい」 実際にその谷は明るくなっていた。崖の上から松明が投げ込まれ、無数の矢が飛んでくる。 「奇襲だぞ、君たち!」 ワルドが叫ぶ。 ギーシュに向かってくる矢をワルドの魔法が弾く。 「た、助かった…」 しかし、息をつく暇もなく、二の矢が飛んでくる。 今度はワムウが左手でデルフリンガーを抜き、ギーシュとルイズに飛ぶ矢を弾き、右手で自分に向かってくる矢をつかむ。 「やあ相棒、やっと俺の出番が…」 二の矢が終わると、デルフをしまい、矢をもったまま右手を後方にしならせ、矢を崖の上の敵に向かって射出する。 「MOOOOOOOO!!」 数本の矢がものすごい勢いでワムウの手から崖の上まで飛んでいき、数人の体を貫いた。 「ほお、やるね」 ワルドが驚く。 一行が次の攻撃に備えていたが、急に矢の弾幕が収まる。 「だ、弾幕薄いよー、な、なにやってんだ敵さんは」 ギーシュが震える歯で強がりを言う余裕があるのは次の攻撃が来なかったからである。 竜に乗った少女が崖の上の敵に向かって小型の竜巻を放つ。 もう一人の女性が武装解除を徹底したのち、崖から転がり落とすと竜はこちらに向かって降りてきた。 「シルフィード!」 ルイズが竜の名前を叫ぶ。 竜の上からタバサとキュルケが降りてくる。 「お待たせ」 こともなげに数人の武器を剥いだキュルケが降りてくる。 「お待たせじゃないわよ!何しにきたのよ!これはお忍びの任務なのよ!」 「お忍びだなんて言ってくれなきゃわかんないわよ」 肩をすくめるポーズをとる。 「とにかく、感謝しなさいよね。危ないところを救ってあげたんだから」 ケガで抵抗の出来ない兵士に対してギーシュがいつもの尊大な態度で尋問を始める。 「子爵、こいつらはただの物盗りのようです」 「ふむ、最近は盗賊の集団化も進んでいるらしいしな、懸賞金に興味は無いし急いでいるし放っておこう。 もうすぐラ・ロシェールだ、あそこで一泊して朝一番の便でアルビオンに向かおう」 そして、彼らはもう明かりが見えてきたラ・ロシェールに向かって駆け出した。 To be continued.
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/283.html
使い魔波紋疾走(オーバードライブ) 使い魔波紋疾走-1 使い魔波紋疾走-2 使い魔波紋疾走-3 使い魔波紋疾走-4 使い魔波紋疾走-5 使い魔波紋疾走-6 使い魔波紋疾走-7 使い魔波紋疾走-8 使い魔波紋疾走-9