約 1,076,846 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/264.html
ゼロのパーティ-1 ゼロのパーティ-2 ゼロのパーティ-3 ゼロのパーティ-4 ゼロのパーティ-5 ゼロのパーティ-6 ゼロのパーティ-7 ゼロのパーティ-8 ゼロのパーティ-9 ゼロのパーティ-10 ゼロのパーティ-11 ゼロのパーティ-12 ゼロのパーティ-13 ゼロのパーティ-14 ゼロのパーティ-15 ゼロのパーティ-16 ゼロのパーティ-17 ゼロのパーティ-18 ゼロのパーティ-19 ゼロのパーティ-20 ゼロのパーティ-21 ゼロのパーティ-22 ゼロのパーティ-23
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/57.html
「―――では、ミス・ヴァリエール。召喚の儀式を」 「はい……!!」 ついに自分の番がきた――――――期待と不安と興奮がないまぜになり、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは身を固くして教師の呼びかけに応じた。 これから、一生を共にする自分の使い魔を呼び出すのだ。 緊張して当然である。 が、今彼女が感じている緊張は、他の同級生とはベクトルが違った。 『ゼロのルイズ』 それが示す事柄はすなわち、貴族にとって不可欠な、魔法の成功確率の『ゼロ』の揶揄である。 口惜しいことに、原因は不明。 同級生に『ゼロ』と笑われる度に、プライドの高い彼女は、はらわたが煮えくり返る思いをしたものだった。 だが、自分が今まで魔法を使えていないのは事実。 今回の儀式もまた失敗するかも知れないという恐れこそが、彼女の緊張の源だった。 しかし、 (サモン・サーヴァントに成功すれば、私はもう『ゼロ』じゃない……呼ばせない……) その思いがルイズを後押しする。 「おい、『ゼロ』! ちゃんとサモン・サーヴァント出来るのか?」 「皆、離れとけ! また爆発するぞ」 同級生の何人かがはやし立てた。 どうせまた『かぜっぴき』のマリコルヌあたりだろう。 ルイズは声のした方向をキッと睨みつけた。 野次の内容はいつもとそんなに変わらなかったが、これからの大事な儀式向けての集中が阻害されたせいもあり、ルイズは声を張り上げた。 「見てなさい……ッ!あんたたちの使い魔を全部合わせても及ばないくらい、神聖で美しく、そして強力な使い魔を召喚してみせるわ……!!」 (また悪い癖が出た……) 言い終わった後にルイズは後悔した。 どうしていつも自分はこうなのだろう? 彼女は自らの性格がもたらす弊害を強く自覚してはいたが、直す術を見いだせないまま今日に至る。 いつもならこのあと自己嫌悪に陥るところだが、生憎と今回ばかりはそうもいかない。 今は儀式に集中せねば…… 怒鳴ったせいで乱れた呼吸を静かに正し、ルイズは覚悟を決めた。 杖を構え、詠唱を始める。 ゆっくりと静かに、しかし力強く確実に。 周囲のマナが轟と震え、眩い光があふれ出す。 (いける!) これまでにないほど、魔力の流れが安定している。 ルイズは召喚の成功を確信する。 内心の興奮を抑えつつ、ルイズは淡々と詠唱を続ける。 ――――――そして、詠唱は終わりを迎えた。 "チュドォォォオン!" 成功を確信したルイズの召喚魔法の結果はしかし、いつもの通りの爆発であった。 砂埃が舞い、視界が遮られる。 意味するところはすなわち……… 「し……失…敗…なの?」 その瞬間、ルイズは金槌で殴られたような衝撃を受けた。 腰の力が抜け、その場にへたりこむ。 (……どうしてなの?) これまで、様々な苦労をしてきた。 魔法を使えるようになるために、あらゆる書物を貪った。 知識だけなら他のどの同級生に負けない自信がある。 自覚がある。 自負もある。 なのに………… 悔しさのあまり、これまでどれだけ他人にバカにされても決して流さなかった涙さえうかべた。 やはり自分は『ゼロ』なのか…… これからも他人に笑われる生活を送るのだろう。いや、ひょっとしたらこれを口実に学院を追放されるやも…… ルイズは、自分が描いた恐ろしい未来に我が身を抱いた。 そうして彼女が震えている間にも、視界を遮る砂煙は晴れようとしていた。 時は止められないのだ――――――ルイズは思った。 「ケホッケホッ……こ、今回はやけに飛ばしたな、『ゼロ』のやつ」 召喚と、その後のいつもの失敗劇を眺めていた同級生の1人が呟いた。 「エッホン、ゥオッホン……そ、そうだね。マントが汚れてしまったよ…」 実際のところ、失敗すると決め込んでいた彼らも、一瞬だが、成功したのではないかと思っていた。 しかし結果はやはり失敗。 今までにない様相を呈してはいたものの、結局『ゼロ』は『ゼロ』だったということだ。 彼らはそう、心の中で結論づけた。 彼らの心は既に、サモンサーヴァントではなく、砂煙が収まった後、どうやって『ゼロ』をからかおうかということに向かいつつあった。 しかし、やや視界が効くようになるにつれて、先程までは存在しなかったモノがあることに一部のものは気がつき始めた。 まさか……!? 皆の期待を再度裏切る形でソレは確かに横たわっている。 だがよく見えない。 目を凝らす。 舞い残る砂が目に入ってよく分からない。 目をこすり、再び目を凝ら「ぅわああぁぁあぁ!!?」 一人の生徒が叫び声をあげた。 ルイズは未だに、声を押し殺して泣いていたが、周囲の様子のおかしさに気づき、辺りを見回した。 『こちらを見る→ナニかに気づく→悲鳴を上げる』という一連の行為を誰も彼もが、一様に、時間差で行っていた。 女生徒のよく通るキャーキャーという悲鳴が、水面に石を投げた後の波紋のように、広がっていく。 悲鳴のウェーブが広がりきったその次は、悲鳴のオーケストラだった。 皆悲鳴を精練された聖歌のように唱和させる。 貧血を起こし、倒れる生徒も見受けられた。 いつもとは反応が違う。失敗を起こした後の反応とは……。 まさか、自分はサモンサーヴァントに成功したのか? その可能性に思考が行き着いた瞬間、ルイズは振り返り、砂煙が起こっていた中心を凝視した。 喜びと期待に満ちたルイズの目はしかし、自分が初めての魔法で、初めて呼び出したのであろうソレを見た瞬間に心臓が凍るほどの驚愕で見開かれた。 そこにあったのは、これ以上はないというほどスプラッタなバラバラ死体だったのだから… 戻る 2へ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2040.html
「なによ、主人が大変だっていうのに、あいつはどこいったのよ、ほんと…」 白紙の”始祖の祈祷書”を抱えながらルイズは自分の部屋で呟く。 詔を考えろなんて言われて、あまりのことにのぼせながら承っちゃったけど… 今考えたらとてつもない重役だわ、私じゃ力不足じゃないかしら…… 詩的になんていわれても、思いつかないわよ、詩人じゃないんだから。 もう、やんなっちゃうわ。 ルイズはため息をつこうとすると鍵がかかっているはずのドアが大きく開く。 「ルイズー、詔とやらはできたの?」 校則で違反されているはずのアンロックで押し入ってきたキュルケにニヤニヤしながら尋ねられる。 まったく、またからかいにきたのかしら。 そう思いながら不機嫌な顔で返事をする。 「なによ、こんな大事なこと一朝一夕でできるわけないじゃない」 「そうよねー、じゃあどれくらい書けたのよ、見せなさいよ」 う、と詰まった隙をつかれ、キュルケに下書きしている紙を奪い取られた。 「な、なにするのよ!」 それを見たキュルケが吹き出す。失礼ね。 「あはははははは!なによ、これ! 『炎は五車炎情拳!!わが身に触れるものは怒りの炎に包まれる』 『水は世が世なら百万の軍を自在に操る』 『風は風を友とし風の中に真空を走らせる その真空の力は鋼鉄をも断ち割る』 『土の歩を進ませるのはこの子供たちの心』 どこが詩的よ、あははははは!」 「そ、そんなに笑うならあなたが書いてみなさいよ!」 「なによ、私はあんたのためにいい話をもってきたのよ」 そういってキュルケはたくさんの地図を出してくる。かなり厚い。 「なによその地図の量、終わりのクロニクルの最終巻より厚いわよ」 「これでも厳選したのよ、ギーシュなんかに任せたらそれこそペリー・ローダン全巻より厚くなるわよ」 「で、なんなのよそれは」 キュルケがふふ、と笑い人指し指を立てる。 「宝の地図よ!」 「はあ?」 思わず声が漏れる。 「だから宝の地図よ、ロマンよ!ロマンホラーよ!深紅の秘伝説よ!」 「それが詔となんの関係があるのよ」 眉をひそめながら言う。 「わかってないわね…いい、詩に限らずいいものを作ろうとしたら人生経験ってのは必須なの。 どうせあなた、いいとこのお嬢さまだってことにかこつけて宝探しなんてしたことないんでしょう?」 大して年も違わないくせに偉そうに言うのは少々腹が立つが、一理ないこともない。 というか、宝探しにせっかくだから私は行ってみる方を選ぶわ、なんて気持ちもないこともない。 「ま、まあ、そこまで言うならいってあげてもいいけど?」 「なら話が早いわ、トリスタニアに一緒に行ったメイドのシエスタっているでしょ、あの子も誘ってきて」 「なんでシエスタを誘うのよ、宝探しなんでしょ?」 「シエスタの故郷がタルブなんでしょ、あの辺りに結構あるみたいだから案内してほしいのよ、 あと料理できる人いないし」 こいつ、それが目的なのね… 「わかったわよ、誘ってみるわ、いつ行くの?」 「今すぐよ今すぐ、だいたいタバサもいなくて暇だからこんなことやってるんじゃない」 「ようするにあんたの暇つぶしってわけね、じゃあ二時間後に校門で待ってるわよ」 「あいあーい」 まったく、忙しいときになんてものに誘うのかしら。 でも、気分転換にはなるかもしれない。ちょっとワクワクするしね。 ラルカスが杖を振る。 鋭い水の刃が鍾乳石、地面、家具、そしてワムウたちの皮膚を切り裂く。 「なかなか堅い皮膚だな、同類よ」 「吸血鬼風情が偉そうな口を、貴様なんぞは餌にすぎん」 「吸血鬼?そうか、俺は吸血鬼になっていたのか。ご指摘感謝しよう、ところで君はなんなんだね、 伝説の吸血鬼の上の存在とは?学術的にも興味があるな」 「人間どもは柱の男と呼んでいた。お前が死ぬ前に脳味噌に刻んでおけ」 「『柱の男』か、いいだろう、覚えておこう。しかし私に勝てるのかね? ミノタウロス、伝説の吸血鬼、スクウェア以上のメイジ、スタンド使い、それが私だ。 『柱の男』よ、もう神の前髪は俺の手の中だぞ」 ラルカスの絶え間のない魔法とワムウとクレイジーダイヤモンドのぶつかりあいによって洞窟が少しずつ崩れていく。 月光による筋が数本射しこめる。 「きゅいー!お姉様もワムウ様もなんとかして外に逃げるのね、外にさえ出れれば空までは追って来れないはずなのね、 きゅいきゅいーッ!」 「シルフィードは逃げて」 「お、お姉様はどうするのね!?こんなところで死ぬのも死なせるのも嫌なのね! どうせ死ぬなら空で死にたいのね!穴の中はごめんなのね!」 「なんとかして足止めだけでもする、あの化け物を見過ごしてはおけない」 「きゅいー!お姉様、なんでこういうときは強情なのね、やるからにはやるのね、 精霊の魔法なめんじゃないのねーッ!我を纏う風よ、彼の姿を変えよ!」 青い渦がラルカスを襲いラルカスの左手がゴムのようになる。 「た、他人にこの魔法使うのなんて初めてなのね…維持するだけでせいいっぱいだから あとはお姉様とワムウ様よろしくなのね」 ワムウは邪魔が入り舌打ちするが、一応手伝いという名目なので何もいわず向き合う。 タバサは杖で足元を狙い、飛んでくる水の刃を凍らして体積を増やし、少しでも切れ味を鈍らせる。 そこまでの努力を敷いても、ラルカスには致命傷を与えられなかった。 ワムウが攻撃することによって退けることのできないクレイジー・ダイヤモンドをかわし、 かつ安定した体勢で狙わなければ堅い皮膚は破れない。 その上多少の傷は吸血鬼の自己再生能力ですぐに治り、決定打を与えることができても、暇を与えれば おそろしいレベルに達している水の魔法による治癒で治されてしまう。 決定打を与えられないのはラルカスも同じだが、無尽蔵とも思える精神力とスタミナに対して 経験豊富なタバサでさえもついていけなくなっていく。 「やれやれ、埒があかんな」 バックステップで下がったワムウがタバサに話しかける。 「どうする?」 「埒を開けるしかないだろう、白兵戦は硬直しだしたならば、騎兵突撃といこうか」 「きゅい?馬なんかどこにもいないの…」 「闘技『神砂嵐』」 ワムウの放った神砂嵐で洞窟の天井が崩れる。 「ほら、とっとと竜になれ」 「わ、わかったのね」 竜に変身したシルフィードに二人は乗り、天井の大穴から大空へ飛びたつ。 ラルカスが見上げながら呟く。 「ふむ、上空か、それは少し厄介だな」 ラルカスはクレイジー・ダイヤモンドをだし、あいた大穴を半分以上治す。 「どうだ、これでその竜はもう降りてこれまい、降りてこい、鬼神」 「ど、どうするのね、よくわからないけれど、あんな小さい隙間にされたんじゃさすがに降りれないのねェ~ 洞窟は狭いのねェ~」 「行け」 「い、行けといわれてもこれでは進めないのね…」 「隙間を広げればいいではないか…行け」 「す、すきま~~?破片で尖った石であふれているのねェェェ」 「関係ない、行け」 「い、いやなのねえェェェ!って体が勝手にいいィ! きゅいいいいいいい!ここまでやらせたのね、私の綺麗な肌は守ってくれるのね?」 「だめだ」 「きゅいいいいいいいいいいいい!」 シルフィードをワムウが無理やり操り、隙間に急降下させる。 隙間をワムウが破壊し、破片が飛び散る。 急降下したままタバサが氷の矢を雨のように降らせる。 「騎馬の真髄はな、突撃力だ、あそこからの急降下ならお前も無事ではすまんだろう、 バカ竜、悪いがそのまま突っ込ませてもらうぞ」 「きゅいいいいいいいいーッ!ひどすぎるのねーッ!」 シルフィードの巨体をクレイジー・ダイヤモンドでガードするが、あまりの重量と速度のためガードが弾かれる。 ワムウがシルフィードから飛び下り、スキのできたクレイジー・ダイヤモンドを飛び越え、ラルカスに突っ込む。 ラルカスは舌打ちしながらワムウにむかって激流のような水柱を放つ。 「それを待っていた」 タバサが素早く詠唱し、ワムウに水柱が届く前に全て凍らせる。 杖ごと水柱は巨大な氷柱となり、あまりの重さに右手を下げる。 「もう貴様を守る腕はもうない、神の前髪が手の中にあるだと?笑わせるな。 首から上全て持っていくのが我々柱の男だ……闘技『神砂嵐』!!」 砂嵐の小宇宙がラルカスを襲い、凍っていた杖、皮膚、角、全てを破壊していく。 「おおおおおおおッ!」 やぶれかぶれにラルカスが殴り掛かってくるが、受け止め、ボディーブローを数発決める。 ラルカスは地面に沈む。 「どうした、先ほどのスタンドの能力は治療か巻き戻し、とみたが治さないのか?治すより早く体をぶち折ってやるがな」 「なんなんだ貴様は!鬼神か!?魔王か!?軍神か!?」 立ち上がれないラルカスが喚く。 ワムウが頬を掻く。 「そうだな、強いて言えば宝石も貰ったし、女王陛下のアルバイト使い魔、といったところか」 「使い魔だと、そうか、俺は使い魔に負けたのか…主人はそこの少女かね、それとも女王陛下とやらかね?」 「いや、向こう見ずな小娘だ」 「そうか、一度その少女を見てみたかったな、では、地獄でもよろしくだ、軍神の化身よ」 ラルカスはクレイジーダイヤモンドでワムウに殴り掛かる。 それよりも速くワムウはラルカスを喰いきった。 「あーっ!そういえば外の人売りどものこと忘れてたのね!一応ボスは縛ったけど仲間は逃がしっぱなしなのね、 早く追いかけるのねーッ!きゅいきゅいーッ!」 そう言って人間に戻ったシルフィードは出口に向かって走り出した。 そして、洞窟の出口にたち、絶句していた。 「なにが起きたか、そこにはとんでもない事実が!衝撃の事実は、しーえむのあと!」 タバサに杖でシルフィードは殴られる。 「痛いのね、なにするのね!」 「他人のネタは使わない」 「他人というかある意味自分のネタなのね、これは韻竜の共有財産なの…」 もう一発杖が落ちてくる。 「いたいのね、わかったのね、ごめんなさいなのね」 「それで、なんなの」 「外をみればすぐわかるのね」 タバサが長いトンネルを抜けるとそこは裸賊の住処であった。 「変態なのねー!お姉様目に毒なのねーッ!」 下着だけで盗賊たちが縛られて放置されていた。 「ま、待ってくれ、俺たちの名誉のためにもわけだけでも聞いてくれ!」 「あ、ありのまま先ほど起こったことを話すぜ!『リーダーを助けようとしたら変な髭のおっさんが現れて、 気がついたらギャンブルで下着以外全て奪われていた』 なにをされたのかわからなかった…頭がどうにかなりそうだ」 シルフィードが男たちを冷やかな目で見つめる。 「変態には違いなさそうなのね、変態で盗賊なんてもうどうしようもないのね、とっとと突き出すのね、お姉様。 ……ん、なにか紙が落ちてるのね?」 『タバサ様へ ロープなどの諸経費(人件費含む)五エキューを七日までにダービー商会トリスタニア店舗にてお支払い お願いいたします。 追記、なおミノタウロスの遺体の買い取りも承っております、どうぞご利用下さい』 「……巻き上げた上にロープ数個に五エキューとはあのおっさん貴族なめてるのね、お肉いくつ買えると思ってるのね! きゅいきゅい!だいたいミノタウロスの遺体なんて武器屋がなんに使うのね!」 「皮膚を使って鎧にしたり角を使って槍を作ったりする。肉骨粉はクラゲとあわせて発射にも使える」 「お姉様、そういうネタこそやめた方がいいと思うのね……もう疲れたのね、こいつら引き渡して、 シルフィお気に入りのタルブの村に向かうのね、きゅいきゅい」
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/318.html
「さて…どうだね? 今のうちに言っておくが…」 仗助を宙に吊り上げたギーシュはスデに勝ち誇っていたッ 「キミ、敗北を認めたまえ! そしてぼくにわびろ 『いやしいワタクシのせいで二人の尊きレディの名誉にキズがつきました』とね 反省の色さえ見せてくれれば…なに、ぼくだって鬼じゃあないのさ」 地上から薔薇をふりかざし仗助を見上げ、一方的な言いたい放題 わざとらしく聞き耳を立てる仕草をし かすかに動く仗助の唇に注目する 「ンッン~? なんだい、悪いがよく聞こえないんだ もうちょっと大きな声を出してくれないか? それともなんだい 反省が足りないのかなぁぁ―――ッ」 ズドァッ 落とした 頭からッ! 首の骨でも折っちまう気なのか? 単にギーシュはハイになりすぎていた キュルケやコルベールさえ苦戦した使い魔に完封勝利をおさめつつあることにッ 「ドッ…ッラァ!!」 グシァ ギュンッ 頭からも血を流す仗助の反撃は 落ちた地面の土を掘りあげ投げつける コルベールに試みたものとまったく同じ ゆえにギーシュはあわてなかった 「おおっと!」 ドドッ ズバシィッ 地面の中から突如生えてきた槍が飛んできた土くれを阻んだ 土中から身を起こし完全な姿を見せたのは、青銅製の女神像ッ!! 「このぼくのワルキューレ 動きはそれほど速くはないが 正面から来るとわかっている『土くれ』程度、たたき落とせないほどヤワでもないのさ…」 すでに土の中 待機させていたッ 歯ぎしりをする仗助がまた宙に浮かんでいく 「あ――っと 言い遅れたが ぼくはギーシュ・ド・グラモン 二つ名は『青銅』 青銅のギーシュだ 以後お見知りおきを…使い魔君 そしてキミの今の態度 なるほど、もっと反省したいらしいね?」 「なに言ってんのよ!」 調子にのりまくったギーシュをどやしつけたのは、遅れてやってきたルイズ ようやく気をとりなおして後を追ってみたら 見せられたのは使い魔が痛めつけられる光景ッ そんな有様、我慢して見ていられる女では…やはり、なかった 「おわびなんかしようったって、しゃべれなくしてるのアンタじゃないッ フザけないで!」 「そうは言うがねミス・ヴァリエール 反省には態度ってやつがあるだろう? 彼からはね、なんというかァ、そのォ…見えてこないのだよ 誠意とかそういうものがね わびるべき相手にドロを投げつけるんじゃあ 救ってやりようがないよなぁぁ~~~」 「二股かけてたヤツがイッチョ前に反省とか誠意とかカタッてんじゃないわよッ 大体なによ、決闘は禁止じゃないのッ」 「だまりたまえッ 平民との決闘を禁じる法はないッ 彼は決闘を請け負った ここではそれが全てだろうッ! それともなんだねキミは この決闘を侮辱しようとでもいうのかい?」 押し黙ったルイズを放って 続きを楽しもうと振り返るギーシュ 彼は今、生まれて初めて「暴力」の甘美に酔っていた 強い力をより強い力で蹂躙する快感にッ 二股がバレてかいた恥も これで埋め合わせがききそうな気分だった 決闘! 決闘! 決闘! ハハハハハ ニィィ 「…では決闘だ キミがわびるまで落とすのをやめないよ クク」 くっ… 額を割りながらもなお にらむのをやめない仗助に ギーシュもまた ニヤついた顔をやめない 得意げにビシリと指さす 「次にキミが何を考えているか当ててやろう! また叩きつけられるその瞬間 キミは地面を殴って逃れようとしているな? そのいきおいでぼくの方へ飛び、この顔面に拳をくれようと思っているな?」 ドン! 「…っ」 「図星を刺された顔色だね フフフ」 薔薇を左右に振り始めるギーシュ 仗助の身体も左右に振れる 同時に槍をかかげ 直立するワルキューレ 「いいだろう、やってみるがいいさ! キミの拳とぼくの槍、どちらが先に届くか勝負しようじゃないか」 「~~!」 「キミに勝ち目があるとしたら、そのくらいだろう? 感謝したまえよ、ぼくの慈悲にッ 決闘の幕引きにはピッタリだと思わないかい?」 つまりギーシュはこう言っていた 「こいつで終わりだ!」と それはたった今駆けつけたルイズにもビンビン伝わった ルイズは息を呑んで見入る ワルキューレの掲げる大振りのランスに… 騎乗突撃用の大槍! こんな太いのをぶち込まれたらどう考えても即死! 見上げた先の使い魔からは血がしたたっているというのに 「ねえ、おまえッ」 耐えきれなくなってルイズは叫んだ 「どうして治さないのよッ わたしのキズを治したみたいに、自分のキズを治せばいいじゃないッ」 ……… 使い魔の反応は無い 不可解だ あれほどの力を持ちながら 自分のキズを治そうとしないなんて …あれほどの、力? 「あれほどの力だから連発できない」ッ! ルイズの脳天に雷が落ちた そうだ、トライアングルメイジやスクウェアメイジだからって 無尽蔵に魔法が使える人間などは存在しない あの使い魔… わたしの治療と建物の修復で、ほとんど力を使い切っているのか! うなずける上につじつまがピタリ合う 「フ、なるほど」 …ギーシュが気づいてしまったらしい わたしが叫んだせいでッ ルイズはサッと青ざめた 「考えてみれば当然ってやつだな 先住魔法だか何だか知らないが…あれだけハデなことをやったんだ そりゃ魔力も残っているわけないよなぁ――」 薔薇を振り上げる ついに落とす気だ この戦い最後の火蓋を 切って落とす気だッ! 「だが決闘にハイと言ったのはキミだぁぁ――ッ さあ落ちろ、そして来いッ 最後に血にまみれて反省しろぉ―――ッ」 もうダメだ あまりにもカワイソウすぎる わたしを助けたせいで自分のキズも治せなくなって こんなフウになぶりものにされて しゃべることも反撃もできないまま だからルイズは走った 走って… 「ル、ルイズ、なにを…」 ドグシャアッ 外野からも驚愕の声が上がった ルイズは走って、落ちてきた使い魔を「受け止めた」 実際は身体のサイズが違いすぎて 落ちてくる使い魔のために自分の身をしくことになった ゼロのルイズは レビテーションひとつ使えないからッ 「うぅぅっ……」 痛い…泣きそうだ 腕がつぶれたんじゃあないか? ほとんどしびれた感じの中に刺すようなのが混じってくる シャツに染み込んでくるぬるい感覚は 使い魔が流している血なんだろう 使い魔がなんだか目をぱちくりさせているから言ってやった 「ご主人様の言うこと…聞かないから、こーなるのよ あげく、わたしに手間かけて どういうつもりよ…」 「おま、え…」 「おまえ呼ばわりは禁止したはずだわッ… そこで… しばらく黙ってなさい」 使い魔の下から這い出して、右手をついて… 痛い痛い痛い痛い痛い! 左手をついて立ち上がった 服がひどいことになっている ご主人様を血で汚した報いはそのうち受けてもらうとして 今はギーシュ・ド・グラモンに… 「…な、なんのマネなんだい、ゼロのルイズ」 彼の理解を数百万リーグも超えた行動にアングリと口を開いているギーシュだが そんな様子になど構っているヒマはない 「わ…わたしの、使い魔の不始末を…おわびするわ」 「…は?」 ルイズは… その場にひざまずいた 外野のさらなる驚愕の声 王家に連なる侯爵家がッ ヴァリエール家の三女がッ! あの気位ばかり高い『ゼロ』のルイズがッ! 『ヴァリエール』が『グラモン』の前にひざまずくッ なにをやっているのかわかっているのか? きっとそう思っているんだろうな 「つ…使い魔のかみついた責めは主人にあるんだもの だから、ヴァリエールの名にかけて、伏してお願い申し上げるわ」 『どうか、お許し下さい』 頭をグイと下げる 悔しい…泣きそうだ でも泣いたらもっとヴァリエールの名に傷がつく もう、あのバカ使い魔を助命してやる方法はこれ以外になかった こうやって次々と取り立てていくの? お金の次はプライドを? なんてヒドイ疫病神よ 正直、殺してやりたいわ 「…よ、よしたまえよ『ルイズ・ド・ラ・ヴァリエール』 キミが頭を下げるほどのこともあるまい…」 これ見よがしに姓も一緒に呼ぶとは さぞかしイイ気分でしょうね、ギーシュ・ド・グラモン いいわよ 『プライド』くれてやるわ せいぜい鼻を高くしなさいよ これで使い魔にかけた『お金』がムダにならないのなら安いものよ… ヒュ… ドグチァ!! 「うげぇッ!?」 いきなりギーシュの顔面にすっ飛んできたドロの塊は ルイズには意味不明、意味不明、意味不明… 振り向いたらそこには使い魔 こいつが今のを投げつけた 確定! 理解不能、理解不能、理解不能、理解不能… 「な、に…な…ん…… なん、てこと、してくれんの、よ、あん、た」 ぼやく彼女の表情をたとえるならば そう… 『水中で窒息、あとわずかで顔を出せるところを目の前で水位がグングン上がっていく』絶望だった 「もう、おしまいだわ… わたしには、あんたのために支払えるもの何ひとつ残っていない」 「殺してもかまわないなッ ミス・ヴァリエールッ!!」 ドロをぬぐったギーシュの目つきはすわっていた ルイズは、その場にくずれ落ち、すすり泣きを始めてしまった… 「使い魔なのに 使い魔のくせに… どうしてムダにするの、どうしてわたしの頑張りをムダにするのよおおおお…」 「だからよー…てめー、の召使いになった覚えは、ねーよ」 はっとして仰ぎ見ると 立っている! 使い魔が横に立っている! 血だらけ傷だらけで今にも膝を屈してしまいそうなのが! 「先に言っとくけどよぉー おまえのガンバりは最初っからムダだぜ」 「なっ…」 「なぜならあいつに頭を下げて『ゆるして下さい』っつー理由が オレにもおまえにも無いからだ」 「……ほう?」 とんでもない悪人ヅラで微笑みを浮かべているギーシュに 使い魔はこともあろうに人差し指をさしてみせたッ! 「敗北だの反省だの誠意だのが今この場で一番必要なのはよぉぉ―― フツーに考えてテメーだと思うんだよなぁ――― そこんトコどうよ? グラモンさん」 「人を指さして気安く呼べる立場と思うなよ、下賤(げせん)ッ」 「そぉーッスかぁー 超安心ッスよ、話の通じねー貴族様でよぉぉ――― こころおきなく存分にボコッてやれるッスからなぁぁ――――ッ!!」 そのとき、ルイズは見た 使い魔がギーシュを指さしている左手から飛び出した もうひとつの左手 錯覚だと思ったがそんなことはない たしかにもうひとつ はっきり見える左手がある! そしてその手の甲に光輝いているのは…使い魔のルーン? あんなところにあったというのか! 繰り返すが、東方仗助にしてみれば 召使いになった覚えがないのは当然である どうしてこんなワケのわからないところに誘拐されて仕えなければならない? いきなり殺されかけたと思ったら下僕扱いされて ムチで叩かれて…冗談じゃない! だが、それでも…たとえそこから発した動機であったとしても 仗助を助けるためにその小さな身体を張り、下げにくいだろう頭を必死で下げた その後ろ姿に仗助は『タイヤのチェーンでズタズタになった学ラン』を見た そう思った途端に 身体が熱くて止まらなくなった 魂のエンジンに火が入ったのを実感した そして心底ぶっ飛ばしてやりたくなったのだ! 『学ラン』をズタズタに踏みにじる、あの二股のクソヤローがッ! (なんか泣き顔にうまく使われてるみたいでシャクだけどよぉー だけどこれでグッと来ねーヤツは男じゃねぇーぜッ そして、なんとなくわかってきた…今までバク然と使ってきたオレの『武器』) 歯車が、仗助の全身にピタリとはまりつつあった 今まさに呼ばれるその瞬間を待っている力の『砕けない名前』 運命であり、魂そのものであるそれは、今! 東方仗助の中で高らかに名乗りを上げたのだッ! 「クレイジー・ダイヤモンド…」 『そばに立つもの』、真なる覚醒ッ!!
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/136.html
通路をプロシュートが前、ルイズが後ろを歩く。 だがプロシュートの後ろ姿から ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ というような音と何かオーラが見える。 「……何?まだ怒ってるの?」 プロシュートがルイズに向き直る。 「いいかッ!オレが怒ってんのはなテメーの『成長の無さ』なんだルイズ! そりゃあ確かに毎回『爆発』起こしてんだ、『ゼロ』と呼ばれて当然だッ! 自分まで『巻き込まれちまってる』んだからな!オレだってヤバかった!」 己の使い魔に一番痛いところを突かれた。 「毎回失敗する理由はオレなんかには分からねぇ! だが!オメー自身の心が『成長』しなけりゃあまた『ゼロ』と言われるだけだッ!」 プロシュートの言っている事はルイズにも十分分かる、だが今まで散々努力はしてきた。 知識だけならそこら辺のメイジ達よりも上だという自負もある、だが魔法は使えない。故に『ゼロのルイズ』と呼ばれる。 これ以上できる事が他に何があろうか。したがって次に出てきた言葉は 「……使い魔がご主人様にお説教しようなって100年早いのよ!今日のご飯無しだからね!」 ルイズが駆け出し通路の曲がり角を曲がり居なくなる。 「オイ!まだ話は終わっちゃいねーぞ!……チッ、ペッシのよーにはいかねーか」 昼食を抜かれたとしてもプロシュートには朝の男からギッた金があるので特に問題はない。 だが、一つ肝心な事を忘れていた。 「ヤバイな……迷ったか?これは」 流石の兄貴も慣れない場所では迷うらしい。 10分程通路を歩いたが全く道が分からず、さすがにイラついてきた。 (ギアッチョならあたり構わずブチのめしてるとこだな) チームである意味ペッシ以上に手のかかる仲間の事を少し思い出す。 ちなみにこの前はニュースにイラついて溜まり場のテレビをブッ壊しリゾットにカミソリを精製されかけていた。 自慢の氷の防御もリゾットの磁力にだけは効かないらしい。 「あ、あの……どうかなさいましたか?」 と、まぁ明らかにカタギの人間じゃあないプロシュートに若干恐れの入った声がかかる。 自分が居た場所、もとい世界では特定の地域を除いてでしか見ることのできないメイド服を着た少女がそこに居た。 「……ああ、食堂に行きてぇんだが生憎道が分からなくてな」 「それでしたら、私も行く途中なのでご案内します」 「助かる」 食堂に向かい歩くメイドと非カタギ、通常であれば明らかに異常な光景である。 途中気付いたのか 「あなたがミス・ヴァリエールの使い魔になった平民の方ですか?」 「まぁ訳の分からねーうちにそういう事になっちまったようだがな。オメーもメイジとかいうやつか?」 「いえ、私も平民です。ここには奉公のために貴族を世話しに来ているんです」 (あのマンモーニ連中の世話か…リゾット以上に苦労してそうだな) 「私はシエスタと申します。よければお名前を教えて頂いてもよろしいでしょうか?」 「プロシュート、意味はオレの国の言葉で『生ハム』だ」 「プロシュートさん…ですね、食堂に着きましたよ」 「グラッツェ」 そう礼を述べプロシュートが中に入ろうとするがシエスタが 「あの、賄い物でよろしければ食べていかれませんか?」 と聞いてくる。 それは使い魔として召喚されたプロシュートを気遣ったものだが、今まで裏街道を歩いてきたプロシュートにとってほぼ初めてとも言ってもいいものだ。 「いや、一応金はあるからな。そこまで世話になるわけにはいかねぇさ」 「そうですか…残念です」 「何かあれば遠慮なく世話にならせてもらうぜ」 プロシュートが微笑を浮かべシエスタにそう返す。 チームの連中(特にメローネ)に見られた日には自殺もんだが、幸いヤツらはここには居ない。 その超レアとも言える兄貴の微笑を見てシエスタも微笑み返す。 「外の方にもお席はありますので」 「そうさせて貰おう」 『魔法学院アルヴィーズ食堂』 本来なら生徒達が食事や談笑する場所であるが、ある一角だけ全く人が座っていなかった。 当然プロシュートが食事をしている周辺である。 注文したのはピッツァとワイン。 細かい味付けは違うがやはりイタリア人としてはこれが一番よく馴染む。 声が小さすぎて聞き取れないが多分『平民』『平民』と言ってるのだろうと思う。 ギャングという事からイタリアに居た時もこのような視線は結構浴びており慣れていたはずだが、どうも不快感を感じるが何故かはまだ分からない。 ピッツァを食べ終わりワインの香りを味わいながら飲んでいるとメイドがデザートを運んでいるのが見えた。シエスタである。 プロシュートに気付いたのか笑みをこちらに向ける ―が、視線が反れたのか金髪の男と正面から衝突し、その勢いでデザートが重力を脱し男の服に直撃を果たす。 その男にプロシュートは見覚えがあった。このピッツァとワインの代金を提供して貰ったヤツだ。 貴族どうしなら大して騒ぎにならない事だがこの場合は違う。貴族とその奉仕に来ているメイド、明らかにシエスタの分が悪い。 当然ながら男がシエスタに対し騒ぎ立てる。 「君…平民が貴族に…『青銅のギーシュ』に何て事をしてくれたんだ!これから大切な用があるというのにどうしてくれる!」 「も、もももも申しわけございません!」 シエスタが男に向かって半泣きになりそうになりながら今にも土下座に発展リーチしかねんばかりに頭を下げている。 とりあえず、おさまったのかギーシュが後ろを向く。 「申し訳ありません…ぶつかってしまった時これを落とされたようですが…」 が、頭を下げている時シエスタがギーシュの足元に落ちている小瓶に気付きそれを拾い上げる。 瞬間、ギーシュが凄まじい勢いでそれを否定する。 「こ、これは僕のじゃない、き、君は一体何を言ってるんだ!」 「ですが、確かにギーシュ様の足元に…」 さらに否定しようとするギーシュ、だが周りがそれを肯定する。何時の時代も最大の敵は強敵(とも)という事か。 「ん…?この小瓶はモンモランシーの香水じゃあないか」 「そうか…ギーシュは今モンモランシーと…そういう事か」 こうなってくるとギーシュにはもう収拾する術はない。 そうこうしてると今朝食堂前でギーシュと一緒に居た少女がその集団に泣きながら向かいそして―― グワシィィーz_ィン 少女のビンタが炸裂した。 それを見たプロシュートが (メローネが見たら『スゴク良い!良いビンタだ!手首の(ry』と言うだろうな) と思った程の勢いだ。 そしてビンタを決めた少女が泣きながら走り去った後、新たな少女がギーシュに詰め寄ってきた。 「これは、どういう事かしらギーシュ…!!」 「モ、モンモランシー!違う、違うんだ!あの子はだだの…」 そうギーシュが言い終わる前にモンモランシーと呼ばれた少女がシエスタが持っている香水を取りそれをギーシュにブチ撒ける。 「もう二度とその顔を見せないで…!」 少女二人に捨てられたギーシュ、二股をかけていた当人が当然悪いのだが理不尽な怒りはシエスタに向かっていった。 「君が軽率に香水のビンなんか拾い上げたおかげで、二人のレディの名誉が傷ついた。どうしてくれるんだね!」 シエスタはただ頭を下げ続け謝るばかりだったが他の生徒達の前でビンタと香水を頭からブチ撒けられたという恥からさらに怒りがヒートアップする。 「申し訳ありませんで済めば憲兵なんていらないんだよ!……どうやら君には貴族に無礼を働くとどうなるかを身を以って知った方がいいようだね」 ギーシュが薔薇の造花の杖を出し構える。 メイジが杖を出す時。それは魔法を使う時だとシエスタは十二分に知っていた。つまりこれから自分が何をされるかという事も。 「ひっ……!」 シエスタがうずくまり頭を両手で押さえる。 この騒ぎにギャラリーが出来ていたようだが、誰もギーシュを止めようとしたりシエスタを助けようとはしない。 むしろニヤニヤとした笑みを浮かべ見物している物が多数を占めている。 それを見た時プロシュートが感じた不快感が何か理解した。 あの目だ…あの目と同じだった。 組織の他のチームの幹部連中が自分達暗殺チームを見る目。 利用するだけ利用し、得る物はボスからの不当ともいえる報酬のみ。 他のチームがそれぞれのシマを持ち利益を得ているというのに自分達にはそれがない。 その圧倒的とも言える他のチームとの待遇の差による自分達を見下した目……それと同じだった。 そう思った瞬間プロシュートは行動していた。 頭をかばうようにして縮こまるシエスタは圧倒的な恐怖から泣いていた。 少しだけ視線を上げ上を見る、ギーシュが杖を振り上げていたのを見て少しでも恐怖から遠ざかろうと目を閉じた。 だが、いくら時間が経っても自分が恐れていたものは襲ってこない。あるいはもう襲ってきてしまったのかと思いつつ恐る恐る目を開ける。 「ミス・ヴァリエールが召喚した使い魔君じゃないか…邪魔しないでくれたまえ!」 平民が貴族にあのような無礼を働いたんだ。貴族の使い魔の君がそれが分からないのかい?」 逆行で顔はよく見えなかったが男が振り上げられたギーシュの腕を掴んでいた。 「それとも、平民同士助け合おうってことかい?涙ぐましい友情だね」 「二股かけてたのがバレで無抵抗のヤツに八つ当たりか?マンモーニを通り越してゲス野郎だなオメーは」 ゲス野郎という言葉に完全プッツン来たようである。 「……いいだろう!まずは君から礼儀というものを教えてあげた方がいいようだねッ!」 「何がやりてぇのか言ってみなゲス野郎」 「まだ言うか…!『決闘』だッ!ヴェストリ広場で待っている!準備ができたら何時でも来たまえ!」 そういい残しギーシュが友人とギャラリーを引き連れ広場の方向へ向かっていった。 「あ、ありがとうございます…でも元々関係ない貴方に迷惑はかけられません…私が行って何とか事を沈めてきます…」 「ヤツが決闘したがってるのはオレだ、オメーじゃあねぇ。それに何の問題も無ねぇ」 「で、でも…このままじゃ貴方の命が…」 「ここで万が一オレが死ぬとしてもオレは常にそういう『覚悟』をしてきている」 そう言うと、プロシュートは自分が座っていた席に戻り最後の残ったワインを飲むと広場にと向かっていった。 ←To be continued 戻る< 目次 続く
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/396.html
パーティはどうやら食堂の上のホールで行われるようでした 着飾ったルイズの美しさにそれまでゼロのルイズと呼んでからかっていた同級生たちまでもが 群がってダンスを申し込んできます ですがルイズはそれを全部丁重に断りどうにかこうにかバルコニーに逃げてきました バルコニーから見えた景色の中に自分の使い魔も含まれていました 「・・・あいつが来るわけないわよね」 なんとなくこういうきらびやかな舞台に来ることを自分の使い魔は嫌っているの 目立ちたくないだけなのかどうなのか知らないが来ないものを期待するほどバカでもない その使い魔はなにをするでもなく、ただ星を見ていた 使い魔の男はなにをするでもなく学院の庭で星を見ていました (・・・俺の野望) その使い魔、ディアボロは少しばかり構想にふけていました (俺はなぜ野望の成就を目指したのだったか) 単純な考えでした。彼は己の野望を追い求めていました ですがそれは失敗に終わり、地獄を経てこの世界に来たのです 不意に自分を打ち倒した金髪の青年の言葉を思い出しました 「生き残るのは…この世の「真実」だけだ… 真実から出た『誠の行動』は、決して滅びはしない…」 ならばこの世界での生は自らが真実に到達したからだろうか 「そしておまえの行動が真実から出たものなのか それともうわっ面だけの邪悪から出たものなのか」 そうだ。簡単な考えだったのだから答えだって簡単だった (俺は・・・ただ幸福になりたかっただけではなかったのか?) 星を見上げる使い魔は答えに到達しました 自らを帝王にするという野望はただの幻想だということにして 今の自分は幸福にあろうとそう考えました この先、この世界で死にGERがまた発動したのならこの答えは一時のものでしょう ですが今は 「主人ルイズに仕える使い魔であるとしよう ―――なんだ。俺は彼女に好意を抱いているのか」 いたって他人事のようにそう言いました 「きっとお前も同じなのだろうな。ドッピオ」 自らのもう一つの人格に話しかけるディアボロ、返答はありません 「・・・・・だが」 一つため息をついてディアボロは 「・・・俺は幸福にあるべきではないな」 きっと彼は暖かくあることを恐れているのでしょう 自らの娘が出来たところで野望を成就させようとした自分は殺そうとしました 自分は幸福にあろうとすることは許されない 暖かさを拒絶した自分にはもう訪れさせてはいけない ・・・そう。幸福を得ようとした代償に大量の他者の幸福と暖かさを奪ってきた自分にその権利は無い 「・・・だが、お前はちがう。 ドッピオ、お前には権利はある」 もう一度、もう一つの人格に話しかけます。もちろん返答はありません 「お前は主人格である俺に命令されただけだ。おまえ自身の意思は介入していない ―――もしも、俺が消えてお前が残ることがあるのなら」 お前だけでも幸せになれ、その言葉をディアボロは心の中に止めておきました 特にやる事も無く星を見ていたディアボロの横に 「なにしてるのよ?ディアボロ」 自らの主人が来ていました 「・・・何もしていない。だがよく私だと分かったな」 ふとした疑問を主人にぶつけました 意識変更による多少の肉体の変換はありますが基本的に殆どドッピオと変わらないはずです 「分かるわよ。雰囲気っていうか周りの空気っていうか・・勘で分かるのよ」 「そうか」 会話はそこでとまりました。ディアボロは話すことなんてありませんので基本はルイズからの返答のみです 「・・・ねえ」 ふとルイズに話しかけられました 「何だ?」 簡単な返答を返します 「・・・頑張って、頑張りぬいた人が最後に報われないっていうの、どう思う?」 「それは仕方の無いことだったのだろう。所詮、努力を重ねたところでそれが叶うかどうかなど未知数だ 努力は単に成功率を上げるためにする行動だ」 「・・じゃあアンタはどうなの?」 「それも同じだ・・・だがそれが他者から奪い作られた努力なら別だ」 「でもアンタはフーケを倒したっていうのに・・・何にもないなんて」 ディアボロは目の前の主がただ報われないのが嫌なだけということを理解しました そしてこう答えました 「使い魔なのだから賞賛されるのは主だろう。私にはそれで十分だ」 「でも・・!」 「あと賞賛するのであればドッピオにしてくれ ―――私にはその資格はない」 そういってディアボロは寮へ歩いていきました (それでも・・・アンタだけが報われないなんて) ルイズには彼の言葉への反発しか生まれませんでした 「絶対に・・・認めない。アンタだけが報われないなんて」 そう言ってその背中を追って行きました ですがその後を追って部屋に行ってもディアボロはもう眠っていました 「・・このくらいならいいわよね?」 彼以外、誰もいない部屋でつぶやき 「・・今回は助かったわ」 そのお礼の言葉をつぶやきました
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/414.html
「あんた誰?」 気が付いた矢先に無遠慮な言葉を掛けられた… 【逆に考える使い魔】 視界に移るのは青空と草原…そして平行世界では ダークだったり、パワフルだったり 黄金の精神を持ってたり、腐れド外道だったり していそうなピンク頭の少女とハゲと…『その他、大勢』だった! しかし、私は混乱しなかった! なに?何故に混乱しないのか? 逆に考えるんだ 死んだ筈なのに道を歩いていたのだから この程度で混乱する理由はないと考えるんだ 頭の中で響いた声、『原作のタイトル通りに奇妙なだけだ』は華麗にスルーした 目に映るドラゴンと思われる神話上の生物 オ●マなカタツムリ等のナマモノ達 を見て物思いに耽っていると…唐突に乙女の接吻を受けた…
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1926.html
「・・・何やってんだ、おめーら」 部屋の扉を開けたまま、肩にデルフリンガーを担いだ状態でギアッチョは しばし固まった。 厨房でルイズ達と別れてから数時間を剣の訓練に費やし、今戻って来た 彼の眼に飛び込んだものは、 「あ、おかえりギアッチョ」 「お邪魔してます」 足りない分はキュルケあたりの部屋から持ってきたものか、しっかり 五人分揃えられた椅子に座り円卓の騎士よろしく丸テーブルを囲む ルイズ達の姿だった。 「シエスタの嬢ちゃんまでいるじゃねーの 今日は半ドンか?」 やけに俗な言葉でデルフがギアッチョの疑問を代弁する。シエスタは椅子を 引いて立ち上がると、律儀に礼をしてからそれに答えた。 「はい マルトーさんに掛け合ったら快く許してくださいまして」 「・・・理由はそいつか?」 ギアッチョはテーブルの上に丁寧に広げられた数枚の地図に眼を向ける。 「ロマンだよギアッチョッ!!」 両手で勢いよく地図を叩いて、ギーシュが興奮した面持ちで声を上げた。 「見たまえ!宝の地図だよ!宝、財宝、進化の秘法!」 「ああ?」 「宝探しは男のロマンさ!男に生まれたからには、心躍る冒険の一つや 二つ夢見て当然!いや、見ないでどうするッ!!」 「あんた毎日冒険してるじゃない」 主に女性関係で、と突っ込むルイズの言葉も、熱苦しい情熱を振りまいて 語るギーシュの耳には届かないらしい。キュルケはやれやれという風に首を 振ると、一人と一本に説明を始めた。 「ほら、折角こんな関係になったんだしシエスタも入れてどこかに 遊びに行こうって話になったのよ それで、最近私が買った地図のことを 思い出してね」 「貴族の割に野趣溢れる選択だな・・・こういうなぁ人を雇って探させる もんじゃあねーのか?」 「貴族と言っても私達は所詮子供だしね、大金持ってるわけじゃないのよ それに、ま・・・ギーシュじゃないけど、ちょっと夢があっていいじゃない?」 ギアッチョはもう一度並べられた地図に眼を落とす。どれもこれも、いかにも 作り話じみたうさんくさい代物ばかりである。胡乱な視線に気付いたらしい、 タバサが本をめくる手を止めずに口を開く。 「・・・確率は低い でも伝承や噂と矛盾する内容は見当たらない」 「行ってみる価値はある、っつーわけか」 桃色の髪を揺らして、ルイズがギアッチョを見上げた。 「・・・ダメ?」 「何でオレに許可を求めんだ ・・・ま、いいんじゃあねーのか」 「見たとこどれもそう遠くはなさそうだしな」地図にルイズ達がつけた 印を見ながら応じる。「死なねー程度に頑張って来な」 「何言ってるの?あなたも行くのよ」 「・・・何?」 キュルケの言葉に、ルイズのベッドに無造作に下ろしかけた腰を一瞬止める。 「同行」 「おめーらで行きゃあいいだろーが」 「皆で行くからいいんじゃないか!」 「だからおめーらで行けば・・・」 「ダメよそんなの!皆で行くんだから、ギアッチョがいなきゃ意味ないわ!」 五人は喧々囂々主張を交わす。この数日を特に鍛錬に充てるつもりの ギアッチョとしては、それが潰れることは歓迎出来ない。一方ルイズ達は 誰か一人欠けても意味が無いと主張し、彼らの議論は中々収束しない。 「・・・あのっ」 おずおずと声を掛けたシエスタに、全員の視線が集中する。慌てて机上の 地図を一枚掴み、ギアッチョに差し出して言った。 「これ、『竜の羽衣』って宝物の地図なんです」 「・・・?」 「さっき話してたんですけど、これ実は私のひいおじいちゃんの持ち物で」 「おめーの故郷か?そりゃあ奇遇だな」 「はい、それで・・・あの ・・・何にもない村なんですけど、一つだけ ――とっても綺麗な草原があるんです 私、ギアッチョさんにも見て 貰いたくって」 「・・・・・・」 「・・・ダメ、でしょうか」 ギアッチョの冷たい双眸が、シエスタの不安げな瞳を捕える。 「・・・・・・しゃーねーな 保護者が必要だってことにしとくぜ」 小さく溜息をつくと、両手を上げて降参の意を示した。同時に、その場が わっと歓喜に沸く。 「よく言ったッ!それでこそ男だよギアッチョ!」 「おめーに男がどうとか言われたくねー」 「お手柄よシエスタ!」 「きゃっ!?だ、ダメですミス・ツェルプストー!」 再びロマンを語り出すギーシュの横で、キュルケがシエスタを抱き締める。 珍しくというべきか、歳相応にはしゃぐ彼らだったが、 ――あ・・・・・・ 嬉しそうに笑うシエスタと、その視線の先にいるギアッチョに――ルイズの 胸はちくりと痛んだ。すぐに理由に気付いて、それを吹き飛ばすように彼女は 強く首を振った。 「それじゃ、明日はちゃんと起きるのよ」 「わ、分かってるわよ!」 キュルケ達を見送りに出た廊下。今朝のことが頭をよぎり、ルイズは思わず頬を 染めて返答する。一瞬怪訝げな表情を浮かべたキュルケだったが、自室の扉を 開くと特に詮索することも無く手を振った。 「そ、じゃあ二人ともお休みなさい」 「お休み・・・また明日」 「じゃあな」 無理矢理見送りに引っ張り出したギアッチョと三人で挨拶を交わし、キュルケは あくびをしながら扉を閉めた。同時に、ルイズが同じく自室の扉を開ける。 「さ、わたし達も早く寝ちゃいましょ 明日は早いんだから」 ギアッチョは声を出さずに、肩をすくめてルイズに応えた。 ぱたり、と扉が閉まる。その音に被せて、 「・・・ギーシュ・・・」 廊下の角に姿を隠して、見事な金糸の髪を持つ少女は――怒りと不安と悲しみの 入り混じった声で恋人の名を呟いた。 ニ脚に戻った椅子に腰を下ろして、ギアッチョは最近見方を覚えた水時計を 覗く。もうすぐ深夜に差し掛かる頃合だった。中々スケジュールが定まらず、 夕食を終えて入浴を終えた後も六人はあれやこれやと打ち合わせを続けていた。 もっとも、その半分以上は他愛の無い雑談に割かれていたのだが。 「ほら、さっさと寝るわよギアッチョ!寝坊なんてしたら許さないんだからね!」 「・・・随分と楽しそうじゃあねーか」 「そ、そう見える?」 「見えるも何も・・・っつーやつだ」 二人は背中を向けたまま会話する。 「おめーがそんなに笑顔でいんのは見たことねーからな」 「えっ・・・ええ?」 ぺたぺたという音がギアッチョの耳に届く。大方、今頃気付いて反射的に自分の 顔でも触っているのだろう。 「・・・単純なガキだな」 「ぅ・・・わ、悪かったわね・・・」 自分の行動を見透かされたと気付いたらしい、ルイズは小さく拗ねた声を出す。 「・・・別に、いいんじゃあねーのか」 「え?」 「おめーらみてーなガキがよォォォ~~~~、小難しいことばっか考えてて どーすんだっつーのよ そうやってあいつらと笑ってるほうがよっぽど歳相応 だろーが」 毎度巻き込まれるのは勘弁だが、と小さく付け足して、ギアッチョはフンと 鼻を鳴らした。 「・・・そ、そう・・・」 若干の沈黙が場を支配する。微かに衣擦れの音が聞こえた後、 「・・・もういいわ」 着替えの終了が告げられた。といっても、ギアッチョは何ら興味を示さずに 黙り込んだままだったが。 「・・・あの」 「何だ」 ベッドの上に座り込んだまま、ルイズはどこか眼を泳がせながら問いかけた。 「わたし・・・笑ってたほうが、いい?」 「・・・・・・」 ギアッチョは肩越しにルイズを振り返る。 「・・・まぁ 年中辛気臭ぇ顔されるよりゃあよっぽどいいだろ」 何とはなしに軽い答えを返すが、ルイズの表情は予想に反して緊張したまま だった。既に薄く染まっていた頬を更に赤くして、毛布をいじりながら口を開く。 「・・・・・・じゃ、じゃあ」 「まだ何かあんのか?」 「わっ、わわ・・・笑ってたほうが、か、か、かか・・・可愛い・・・?」 「・・・・・・ああ?」 コントよろしく椅子からずり落ちそうになった身体を何とか持ち直す。 「バカかてめーは」とあしらおうとしたが、ルイズが存外真面目な顔でこちらを 見ていることに気付いて、ギアッチョは思わず言葉を飲み込んだ。 物の本によれば、弟子の質問にどう答えるかで師匠はその真価が問われると 言う。しかしこのような場合に一体何と答えて然るべきなのか、ギアッチョには 皆目見当がつかなかった。 ――そもそも、こいつは何を求めてやがるんだ 片手で特徴的な髪をいじりながら、ギアッチョは改めてルイズに眼を向ける。 毛布を抱き締めた格好で、ルイズは上気した顔に不安げにも期待するようにも 見える色を浮かべている。 自慢ではないが、生まれてこの方連想ゲームや伝言ゲームに勝った試しなど 一度とて無い男である――最も、敗北よりもブチ切れてゲーム自体を台無しに したことのほうが多いのだが――、ルイズの心の機微など解ろうはずもなかった。 「あー・・・」 何と言っていいものか、ポーカーフェイスの下でギアッチョは白旗を揚げたい 気分だった。――その時。 コンコンと、扉を小さく叩く音が聞こえた。 「夜分遅くにすまんの、ミス・ヴァリエール 起こしてしまったかな」 扉の向こうに居たのは、誰あろうオールド・オスマンその人であった。 「い、いえ・・・大丈夫です それよりもこんな格好ですいません、今着替え――」 「いや、それには及ばんよ 忘れておったこちらが悪いんじゃからの」 「忘れ・・・?」 小首をかしげるルイズに、オスマンは古びた一冊の本を差し出した。 「本来ならば昼に渡すべき物だったんじゃが・・・いやすまぬ、職務に忙殺 されてすっかり忘れておったのじゃ」 「それは・・・ご苦労様です」 とりあえず受け取りながら、学院長に労いの言葉をかける。ミス・ロングビル ――土くれのフーケがいなくなってから、まだ新しい秘書は雇っていないらしい。 それでは忘れてしまうのも仕方が無いだろう。 「・・・それで、これは・・・?」 「うむ それはの、『始祖の祈祷書』と呼ばれる古文書じゃ」 「始祖の――こ、国宝じゃないですか!」 それがどうして、とルイズが疑問を継ぐ前に、オスマンは静かに説明を始めた。 「アンリエッタ王女が、この度目出度くゲルマニア皇帝との結婚を執り行う こととなった」 「・・・・・・!」 ルイズは絶句する。こうなることは分かっていたはずなのに、刺すような痛みが 彼女の心を抉った。オスマンは数秒ためらうように沈黙したが、やがてゆっくりと 説明を再開する。 「おぬしも聞いたことはあろう トリステイン王室の伝統では王族の婚儀の際に 貴族から一人の巫女を選出し、その祈祷書を手に式の詔を詠み上げさせる慣わしが あるのじゃ」 「ま、待ってください!それは――」 「うむ 王女はおぬしを巫女に指名した」 「姫様が・・・」 ルイズはハッとして顔を上げた。こっそり左右に目配せすると、オスマンは ルイズを見返して言う。 「望まぬ結婚じゃ、王女も――おぬしも辛かろう しかし、ならばせめて親友に 祝ってもらいたいのだろうとワシは思う ・・・どうじゃ、引き受けては くれんかの」 元より選択肢など無い。数多いる貴族の中から、アンリエッタはこの自分を選んで くれたのだ。一体どうしてそれを拒否出来ようか。 「・・・謹んで拝命致します」 始祖の祈祷書を両腕に抱いて、ルイズは静かに一礼した。 「・・・・・・どうしよう」 「何がだ」 扉の閉まる音に重ねて、ルイズは弱った顔で呟いた。 「聞いてたでしょ?詔の内容はわたしが考えるんだって」 「みてーだな」 ギアッチョはさして興味も無いと言った風に返す。 「わたし、そういうの苦手なのよ 全っ然思いつかない」 「・・・受けちまったもんはしょうがねーだろ」 「それはそうだけど、しかもそれを国賓の貴族達の前で詠み上げるなんて・・・」 「考える前に弱音を吐くんじゃあねーよ」 「うう・・・」 ギアッチョのあまりの正論にルイズは言葉も無く溜息をつく。 「何にせよ今日はもう寝とけ」 「・・・うん」 言いながら寝床へ向かうギアッチョに習ってルイズもベッドへ足を向けるが、 ふと立ち止まって後ろを振り返った。 「・・・ねえ、ギアッチョ」 「何だ」 「・・・・・・やっぱり、ベッドで寝たい?」 「・・・今更だな」 毛布を広げながら、ギアッチョは首だけをルイズに向けて答えた。 「そりゃあよォォ クッションよりも硬い床が好みなんてヤローはそう いねーだろうぜ」 「――そう・・・よね・・・」 悄然と俯くルイズに、フンと鼻を鳴らして言葉を重ねる。 「別に何とかしろたぁ言わねーよ 金もスペースもねぇのは分かってんだ こういう所で寝るのは慣れてるしな」 事実、ルイズに金は無かった。昨日の自分とギアッチョの治療費に加えて、 キュルケ達の反対を押し切って彼女らの分までを負担していたのである。今の ルイズの財布では、今日の糊口を凌ぐことすら難しかった。そんな現状を 把握した上での発言だったが、 「ん・・・」 いつまでも床で寝させていることへの罪悪感からか、それを聞いてルイズは 複雑な顔をする。 「・・・・・・あ、あの」 しばし言おうか言うまかといった仕草を見せた後、ルイズは小さく深呼吸を して意を決したように口を開いた。 「・・・や、やっぱりいつまでも床なんてあんまりよね だ、だから、その、・・・ベ、ベ・・・」 そこで言葉が止まる。ギアッチョの怪訝な眼差しから逃げるように、ルイズは 俯いて毛布を抱き締めた。 「・・・だからオレぁ別に――」 「ベ、ベベベベッドで寝てもいいわっ!」 ギアッチョの言葉を遮って、一息に言い切った。 「ああ?」 ギアッチョは視線をルイズの下に移す。ベッドというのは――普通に考えてこれの ことだろう。 「・・・おめーはどうすんだ」 「そ、それはわたしも隣で・・・」 「・・・・・・」 「あ、ちっ、ちち違うわよ!変な意味は全然無いんだから!た、ただあの、昨日 二人で使ってもスペースに問題無いって分かったし、ギアッチョの為にわたし何も 出来て無いし・・・だ、だからその・・・!」 ギアッチョの沈黙をなんと捉えたものか、ルイズはブンブンと手を振って釈明した。 ギアッチョはそれでも少しの間黙考していたが、すぐに顔を上げて口を開いた。 「・・・ならそうさせてもらうぜ」 「これから寒くなってくるかもだしやっぱり床は不衛生だし・・・って、え?」 投げられたのは、ルイズの予想と全く反対の言葉だった。毛布を担いで数度埃を 落とすと、ギアッチョは何の迷いも無くベッドへやって来る。 「えっ、えええ!?ちょちょちょちょっと待って!!まままだ心の準備が――!」 「何の準備だよ」 ルイズの心境も知らず、ギアッチョはあっさりとルイズの反対側に寝転がった。 「とっとと寝るぞ 明日遅刻したくねーならな」 「・・・・・・バカ」 「何か言ったか」 「な、何でも無いわよ!おやすみっ!」 ギアッチョから顔を背けてそう言うと、ルイズもそそくさと毛布に潜り込む。 それを確認して、ギアッチョは静かに眼を閉じた。 ――変わったのは・・・どうやらオレだけじゃあねーらしい 静謐に身を委ねて、ギアッチョはぼんやりと考える。勿論、自分は今までの ルイズの何を知っているわけでもないのだろう。ルイズと共に過ごしたのは、 まだたかだか数ヶ月だ。しかし、その数ヶ月で自分はルイズの涙も笑顔も知った。 だからこそ解る。自分が変わったように、ルイズも変わったのだと。 ルイズの提案を受けた背景にはそういう思考があった。知り合ってすぐのルイズで あれば、貴族のベッドで平民が寝るなど自分の私物で無くても許しはしなかった だろう。――だから。昼にシエスタに言ったように、まさか本当に保護者になる つもりなどは毛頭無いが――ルイズが自分を気遣うならば、それを受け入れて やるぐらいの度量はあってもいいだろうと、そう思う。 ――プロシュートの野郎は、こんな心境だったのかもな・・・ それは、ギアッチョが最も理解出来ないと思っていた感情だった。軽い自嘲を 口元に浮かべて――ギアッチョは今度こそ眠りの底へ落ちて行った。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/252.html
「宇宙の果てのどこかを彷徨う私の僕よ、神聖で美しく、そして強力な使い魔よ、 私は心より求め、訴えるわ!我が導きに…応えなさい。」 桃色がかったブロンドの少女が独自性あふれる呪文を詠唱した。 次の瞬間、爆風がその場にいた生徒たちを襲った。神聖な使い魔召喚の儀式は、一時騒然となった。 『ゼロのルイズ』がまた失敗した。誰もがそう思った、しかし。 おい、あれを見ろ。一人の男子生徒が叫んだ。 砂煙のひいた爆心地に、ひとりの男が立っていた。ベストにタイといったフォーマルなスタイル。 手入れの行き届いた口髭。目の下に奇妙な模様があったが、一見すると裕福な商人にも見える。 「『ゼロのルイズ』が平民を召喚したぞ。」 「それもおっさんだ。」 周囲の嘲笑を無視して、ルイズは男にたずねた。 「あんた、名前は。」 「わたしの名はダービー、D´、A、R、B、Y。Dの上にダッシュがつく……。」 男はいたって冷静な口調で応えた。 ――いったい何が起こっているのだ。 ダービーはあたりを見渡してみた。どうみてもここはカイロではない。ヨーロッパの何処かのようだ。 「ところでここは何処なのだ。わたしはカイロのカフェに居たはずなのだが……。」 「トリステインよ!そしてここはかの高名なトリステイン魔法学園!」 トリステイン、聞いたことがない地名だ。それに魔法学園とは!スタンド攻撃を受け、異世界に飛ばされたか、 いや幻影を見せられているのか……。 考えをまとめるのに夢中になっていたダービーは、正面から近づいてくる、ルイズに気付かなかった。 ズギュ―ン!! いきなりの接吻。なんなんだこの女?そんなことを思う間もなく、骨まで熔けるような高熱にダービーは襲われた。 「ゲェェーッ!ぐうああああああああああ~!!」 「すぐ終わるわよ。『使い魔のルーン』が刻まれているだけだから。」 「『使い魔』だと!?」 流石に三十代のおっさんにはきつかったのか、あまりの苦痛にダービーは気を失ってしまった。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2553.html
反省する使い魔! 第三話「報いか試練か反省か」 出所当日、オレは家に帰ろうと駅に向かい電車に乗ろうとしたところを いきなりルイズとか言う奴のおかげでわけのわからねーところに連れてこられちまった… 神様よぅ、あんたはまだオレを許してくれねーわけか?恨んでるわけか? ええおい?三年前、確かにオレは形兆を殺した、盗みもやった なのになんでだ?オレは三年間、刑務所に入って反省はした筈だ。 実際今だって、形兆を殺したことをオレは後悔しているんだぜぇ… あいつは気に入らなかったがオレなんかと違いかわいそーな奴だった。 形兆は自分の父親を救ってやりたいが為に弓と矢を使ってきたんだ。 それに比べオレはどうだぁ?ええ?当時の俺はただ日頃のつまらねえ 繰り返しをするだけの社会に不満を感じ刺激的の人生を求めるがために 弓と矢を奪い…使っていたんだ。 虹村形兆という男を殺してまで……最低だな、オレ 都合のいい話かもしれないが音石は刑務所に入ってから ゆっくりと時間を掛け自分の行いを思い返していくことにより 自分がどれだけ酷い事をしたのか自覚することができていた… そしてそれを自覚し反省したが上で彼は今日出所した… そう!自分の罪を受け入れたからこそ彼は杜王町に戻る覚悟があったのだ!! 東方仗助、虹村億泰、広瀬康一、岸辺露伴などといった 「黄金の精神」を持つ若者達と向き合う覚悟が彼にはあったのだ!! (杜王町で億泰に会ったらまたぶん殴られるのを覚悟してたんだがなぁ~…) 「ちょっと!アンタちゃんと聞いてんの!?」 「ん?ああワリィ…考え事してた」 「ッ~~~~!!あんたねぇ~!」 「悪かったって、俺だっていきなりで結構混乱してんだよ、 サモン・サーヴァントだっけ?その使い魔っつーのを召喚する儀式で オレを召喚したってことはちゃんと理解してるぜ」 「そう!そしてここは!」 「ハルケギニアっつー世界の神聖なるトリステイン魔法学院……だろ?」 「…なによあんた…やっぱ知らないとか言って実は知ってるんじゃあ…」 「そんなんじゃねーよ、ただ単に記憶力がいいだけだ」 その言葉にルイズがふーんと言って目を細めている。 先程のハルケギニアを知らないと言う音石の質問を 自分をバカにしてるんじゃないかとまだ疑っているようだ。 「でも、最後の所だけ聞きそびれちまったんだ、なんだっけ…使い魔の…えーと…」 「使い魔の役目よ」 「そうそうそれだ、そこんとこよくわかんねーんだよ、もう一回頼むわ」 「たくっ、仕方が無いわね…いい?使い魔って言うのは 主人を守り、手となり足となり一生主人に仕える、それが使い魔よ!」 「なるほど……ん!?ちょっと待て…一生?今、一生って言ったのか!?」 「そう一生よ、当たり前じゃない」 ハァ~~~~~~~~~~~ッと音石は深くため息をついた。 当然だろう、いきなり呼び出され一生使えろなど無理な話である。 「なによそのため息、何か不満があるわけ!」 「逆に聞くがこんな状況にされて不満を感じねーって言うのもどうかと思うぜ…」 「う……、うるさいわね!私だってまさか人間が召喚されるなんて 思っても見なかったもの!仕方ないでしょう!」 「随分といい加減な召喚だなァ、おい…」 「あんた!神聖なるサモン・サーヴァントを侮辱するつもり!?」 「そうは言ってねーよ…なあ、悪いことは言わねぇから俺を送り返してくれねーか?」 「無理よ」 「即答かよッ!!」 「だって、使い魔を送り返す魔法なんて聞いた事ないもの、仕方が無いでしょう」 「改めて言うがマジでいい加減だなァおい!」 「うるさいうるさい!私だって本当はドラゴンとそういうのを期待してたのよ!? それなのにアンタみたいな平民を召喚した私の気持ちがわかる!?」 「オレ魔法使いじゃねーからわかんねーよ」 「メイジよ!!」 「はいはい………!」 その時音石は気付いた、ルイズが涙目になっているのを… それと同時に昼間のことを思い出す彼女が自分という平民を 召喚したことにより周りからバカにされたあの一部始終を… 「………はァッ」 「なによそのため息!まだ文句あるの!?」 「……なるよ…」 「大体アンタ平民の癖に生意気……え?」 「なにマヌケな顔してんだよ…、なってやるよ…その使い魔とかによォ~」 「使い魔になるって……、ほ、ホント!?ほんとにほんと!?」 「ホントにホントだ、ただし帰る手段が見つかるまでだがな…」 「そ、そう…わ、わかればいいのよ!わかれば!」 (涙目で威張られてもな…それと無い胸で胸を張るな) そして音石は壁にもたれ掛かり、ルイズはベットに腰を下ろした。 「そう言えばあんた異世界からどうとかって言ってたけど異世界ってどういうこと?」 「言葉通りの意味だよ、このハルケギニアとは異なる世界から呼び出されたってこった」 「信じられないわね…、大体アンタなんでハルケギニアが異世界だって断言できるのよ?」 「簡単だ、文化が違いすぎるからな…そしてなにより」 そういうと音石は窓を見た 「なにより…なによ?」 「俺がいた世界には月は1つしかねーよ」 「はあっ!?なにそれ!?月が1つってどんな世界よ!?」 「オレからしたら月が2つあんのがどんな世界だって話だがな…」 「…やっぱり信じられないわね、わたしをバカにしてるんじゃないの?」 「まあ、好きにしな…信じようが信じなかろうがおまえの勝手だ」 「お前って…私はアンタの主人よ!ご主人様と呼びなさい!」 (めんどくせぇ……しかし、まあ退屈はしなさそうじゃねーか) その時、窓を見ながら音石の顔は薄く笑っていた。 「それじゃあ、これ明日になったら洗濯しといて…」 「ああ、悪い…せっかくだしちょっとそこらへん散歩してくるわ」 「はっ!?え、ちょっと…あんた」【バタンッ】 「行っちゃった…、もう!なんなのよアイツ!!いきなり変な楽器で演奏するし 異世界からとか訳わからないこと言うし、散々文句言ってたくせに急に素直になるし…」 その時、ルイズはハッと気づいた。 「も、もしかしたらアイツ、散歩とか言って逃げる気じゃあ…」 そんな何気ないマイナス思考な一言がルイズの顔色を青く変えた。 (も、もし召喚初日に使い魔に逃げられちゃったら…みんなになんて言われるか …い、いいえ、それだけじゃないわ!実家にいるお父様やお姉様になにされるか… こ、こ、こ、こうしちゃいられないわ!直ぐにアイツを連れ戻さないと!!) バタンッ!と甲高い音が廊下に響き渡らせ、ルイズは階段を駆け下りた。 現在音石も階段を駆け下りながらいろいろ考えていた。 異世界か…、出所していきなりとんでもねーゴタゴタに巻き込まれちまったが 悩んでてもしょうがねぇ、前向きに行くとするか… そうだぜ音石明、逆に考えるんだ 異常な事に巻き込まれているが逆に言えばオレはとても貴重な体験をしている。 よし、これでいこう! そして階段を降りると廊下に突き当たった。そしてその廊下には 金髪のいかにもナルシストを思わせるキザっぽい少年と 茶色のマントをしたおとなしそうな少女が楽しそうに会話していた。 「ケティ…君はやはりいつ見ても美しいよ…まるで女神のようだ」 「まあ、ギーシュ様、本当ですか?」 「もちろんだともケティ、僕が君にウソをつくわけ無いじゃないか」 「ギーシュ様……」 「ケティ……」 「あー…、お楽しみのところ悪いんだがちょっといいか?」 「うわァッ!?」「きゃあッ!!!」 二人とも音石の存在に気づいていなかったのか 突然声をかけられたため予想以上に驚き、声が重なっていた。 少女に関しては驚いた勢いで床に倒れ尻餅をついている。 「ああ、ワリィ…驚かせるつもりは無かったんだが…大丈夫かよ?」 「イタタタ…」 「ケティ!ちょっと君ぃ、横からいきなり口出ししてくるなんて無礼だぞ!」 ギーシュという少年が音石をキッ!と睨む。 ふと、ギーシュはその男に見覚えがあるのを思い出した。 「君は…たしか、ゼロのルイズが呼び出した平民か?」 「覚えてもらっているとは光栄じゃねーか」 すると尻餅をついているケティという少女が意外そうな顔で音石を見る。 「この人が!?一年の間でも有名ですよ!……ッ、あいたた」 「おいおい、足でも挫いたんじゃねーのか?立てるか?ほら……よっと!」 「え!?…あ、ちょ…」 「なッ!?……な、な…」 すると音石はケティの手を取り、彼女を引っ張り立たした、 ギーシュは音石の予想外の行動に唖然している。 「なんともねーか?」 「あ…いえ、あ、ありがとう…ございます…」 まさかいきなり手を掴まれるとは思ってもいなかったのか ケティは若干顔を赤くしている。 「おい、君!本当に無礼な平民だな!!平民が貴族の手に気安く触れるなど 立場をわきまえたまえ!!」 「いえ、いいですギーシュ様!私は別に気にしてませんから!」 勢い余るギーシュをケティが静止をかける。 「だから悪かったって、ただちょっと道を尋ねたいんだが…外に行くにはあの階段を降りればいいのか?」 そう言って音石は下に通じているであろう下り階段を指差した。 ギーシュは興醒めといわんばかりに薔薇を顔に寄せる。 「ふん、愛しのケティに免じて許してやろう…、ああ、その通りだよ」 「そいつはどうも…」 そう言うと音石は何事も無かったかのように階段を下りていった。 「たくっ…大丈夫かいケティ?」 「ええ、私は大丈夫です」 すると音石がやってきた登り階段から足音が聞こえてくるのに気づき ギーシュとケティは何事かと階段を覗き込んだ、そこからやって来たのは… 「おや?ルイズじゃないか、どうしたんだいそんなに慌てて…」 「ギーシュ!私の使い魔見なかった!?」 「君の使い魔?彼ならさっき階段から降りていったが……、おいおいルイズ まさか君は使い魔に逃げられたのか?フッ、まったく、使い魔もロクに扱えないとは さすがは『ゼロのルイズ』だな、期待は裏切らないでくれるよ」 「うるさいわよギーシュ!もう、あいつ変に足が速いんだから…ギーシュ!ちょっと 捕まえるの手伝って!!」 「やれやれ仕方がないな、いくらゼロとは言え女性の頼みだ すまないケティ、すぐに戻るよ」 「あ!ぎ、ギーシュ様ぁ!!」 下り階段に向かうルイズの後をギーシュが続いた。 階段を下り室内噴水広場にでるとそこにはルイズが良く知る褐色肌の女性と 小柄で眼鏡をかけた水色の髪をした少女がいた。 「あら、ルイズにギーシュじゃない、一体どうしたのよそんなに慌てて?」 「キュルケ!私の使い魔見なかった!?」 「ああ、顔に大きな傷のある彼なら向こうの階段に降りていくのを見かけたけど?」 「ギーシュ、行くわよ!」 「やれやれ…」『タタタタタ……』 「なんだかおもしろそうねぇ、タバサ!行ってみましょう!」 タバサと呼ばれる少女は読んでる本を閉じ、無言のままキュルケの後に続いた。 「改めて見てみるとマジで異世界っつーことが実感できるな」 音石は学院の外に出てみると視界に入るものすべてが元の自分の世界とは かけ離れている事を実感した。 夜空に浮かぶ2つの月、見たことも無い巨大な城、使い魔を引き連れているメイジ どれもこれもがファンタジーやメルヘンの世界だった。 「おや?君は…」 「ん?」 すると不意に声をかけられ音石は顔を向けると そこにはいたのは昼間の禿げ頭の男だった。 「あんた…確か昼間の」 「コルベールです、この魔法学院で教師を務めています」 「あ~どうも、オレ音石明っつーもんです」 「オトイシアキラ?変わった名前だね」 「(そりゃ変わってるだろーよ…)あのー、俺になんか用ッスか?」 「おお、そうだった!なに…君の『ルーン』をスケッチするのをうっかり忘れていてね 今からミス・ヴァリエールの部屋に伺おうとしていたのだが手間が省けたよ」 「『ルーン』?なんスかソレ?」 「『ルーン』を知らないのかい?使い魔としての紋章だよ」 「紋章」という言葉に音石は心当たりがあった。 「あ!もしかして左手にあるこいつッスか?さっきから気になっていたんスけど…」 「おお!それだよそれ!…ふむ、珍しい『ルーン』だな、後で図書館で調べてみよう ところでオトイシ君、さっきから気になっているのだが…」 「…?…なんスか?」 「君がぶら下げているソレは…楽器かなんかかい?」 それを聞いた瞬間、音石は納得した。 なるほど、確かにこの世界は俺らの世界で言えば中世ヨーロッパあたりだからな… ギターがないのは当たり前か…、楽器はあるみてーだが良くてもヴァイオリンあたりだな。 「こいつはギターッス」 「ギター?」 「オレの故郷にある楽器みたいなもんッスよ」 「民族楽器みたいなものかい?」 (民族楽器って…このハゲ、オレをなんだと思ってんだぁ?…) 「ふむ…実に興味深いな、よければまた今度 演奏してみてくれないか?今夜はさすがにもう遅いが…」 「はぁ~、わかりました……って、うおおッ!!?」 「なっ!?オ、オトイシ君!?」 なんと突然、音石の体が宙に浮き始めた! 「やれやれ、貴族の手をここまで煩わせるとはとは…、終わったよミス・ヴァリエール」 「助かったわギーシュ」 そこにいたのはルイズとギーシュ、そして面白半分でついてきたキュルケ そしてそのキュルケについてきたタバサであった。 「お、おい!一体なんのつまりだァコラッ!?降ろしやがれ!」 「うっさいわね!あんたがいきなりどっか行くからじゃない!」 「だから散歩だって…」 「嘘ッ!!そんなこと言って逃げる気だったんでしょう!?」 「なんでそうなんだよ!?」 「あっはっはっは、さすが『ゼロのルイズ』ね!使い魔に逃げられるなんて!」 「黙りなさいキュルケ!!」 「だから散歩だって言ってんだろーがぁ!誤解だ!さっさと降ろせぇ!!」 「彼の言うとおりだ、ミスタ・グラモン…降ろしてあげなさい」 その日頃聞き慣れた声がコルベールだと気付き それを最初に驚いたのはギーシュだった。 「コ、コ、コ、コルベール先生!?」 キュルケも「やっば…」と小さく呟いたが その一方でタバサは本を読んだまま動かないでいる。 しかしルイズは… 「先生!あいつは使い魔のくせに逃げ出そうとしたんですよ!」 「それは何かの誤解じゃないのかい?落ち着きたまえミス・ヴァリエール 彼とはさっきから一緒にいたがそんな素振りは全くありませんでしたよ?」 「で…でも、勝手にいなくなる使い魔なんて…」 「ミス・ヴァリエール…確かに彼は使い魔ではあるが人間だ 人間である以上、自分で行動するのは当たり前だろう? …それとミスタ・グラモン、いい加減降ろしてあげなさい」 「あ!は、はい!」 【ドサッ!】「いってぇ~~…」 「わかりましたか?ミス・ヴァリエール」 「…はい」 「よろしい…ではみなさん、私は部屋に戻ります 明日も授業がありますからくれぐれも寝坊しないように…」 コルベールはそう言うとその場を後にし 続いてキュルケ、ギーシュ、タバサも続いてその場を後にした。 ルイズと音石もその場を去り部屋に戻ってきた、 「おい…」 「……………」 「今更どうこう言うつもりはねーがよー…お前なに焦ってんだよ?」 「……あんたには…関係ないでしょう…」 そう言うとルイズは制服のままベッドに入り込んだ。 「おい待てコラ!オレはどこで寝ればいいんだァ!?」 「そこの藁の上」 「………」 (ないよりは…マシだな…) 音石は自分に言い聞かせ藁の上に腰をかけゆっくりと 眠りに付いた…。 To Be Continued →