約 1,076,816 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1384.html
グイード・ミスタ登場 その① グイード・ミスタ登場 その② グイード・ミスタ登場 その③ トリステインで朝食を その① トリステインで朝食を その② トリステインで朝食を その③・四大魔法(魔法のルールは不吉) 貴族らしく死ね その① 貴族らしく死ね その② 姫殿下の000(ダブルオーゼロ) 姫殿下からの第一指令 土くれのフーケを捕縛せよ その① 姫殿下からの第一指令 土くれのフーケを捕縛せよ その②
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2142.html
第一章≪使い魔は立ち上がる≫ 一章一説 ~星屑は違う空に流れる~ 一章二節 ~ゼロは使い魔と相対す~ 一章三節 ~使い魔はゼロを見る~ 一章四節 ~使い魔は使い魔を知らない~ 一章五節 ~使い魔は血に慄く~ 一章六節 ~使い魔は千鳥足を踏む~ 一章七節 ~青銅は信念と錆に浮かれる~ 一章八節 ~ゼロは頭を下げない~ 一章九節~使い魔はとりあえず前を向く~ 一章十節 ~人間は一場には変わらない~(前編) 一章十節 ~人間は一場には変わらない~(後編) 一章十一節~微熱は平静を遠ざける~(前編) 一章十一節~微熱は平静を遠ざける~(後編) 一章十二節~おしゃべりは使い手を見初める~(前編) 一章十二節~おしゃべりは使い手を見初める~(後編) 一章十三節~土くれは機を逃さない~ 一章十四節~使い魔は上を向いて立ち上がる~(前編) 一章十四節~使い魔は上を向いて立ち上がる~(後編) 一章十五節~使い魔は空を見る 土くれは壁を見る~(前編) 一章十五節~使い魔は空を見る 土くれは壁を見る~(後編)
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/711.html
「…ここはどこ?私はさっきまで飛行機に乗っていたはず…」 トリッシュはその日、ローマに乗る飛行機の中にいた。 多忙な中、久しぶりに時間の取れたジョルノとミスタとともにフットボールの試合を見るためだ。 トリッシュは飛行機の中で、空港で買ったファッション誌の最新号を読みながらいつの間にかまぶたを閉じ穏やかな眠りについた。 (それがどうだろう?今、私の周りにいるガキどもの格好…まるで映画でみた魔法使いのよう…。) トリッシュが物思いにふけっていると、その『ガキども』のなかから桃色の髪をしたかわいらしい少女が自分に近づいてくるのがみえた。 トリッシュは、チラッと確認すると、すぐに興味をなくしたように目線を足元に下げ、思考を再開した。 実際、トリッシュは最初スタンド攻撃を疑ったが、それならば最初から飛行機の中で始末すべきだ、わざわざ私をここに連れてくる必要はないだろう。それにこの少女からは殺気や敵意と言ったものはほとんど感じられなかった。 なにより近づいてくる動作がまるで隙だらけだ。これならすぐ『やれる』。 (それとも………わたしを『拉致』するために………?いいえ、それならここにつれてくる間に私の意識を覚醒させないための手を打つはず………) トリッシュが桃色の髪の少女を完全に『シカト』している間に少女はトリッシュに向かって何か言った後、トリッシュの肩をつかんで、いきなり『キス』をした……!! 「……!?……!!」 トリッシュは桃色の髪の少女を突き飛ばすと、自分の最も信頼するパートナーを呼び出す。 ……すなわち『スタンド』をッ!! 「スパイス・ガール!!!」 トリッシュの目の前、すなわち桃色の髪の少女とトリッシュの間に『力を持ったビジョン』が現れる。 「トリッシュ、コノ痛ミハ、直接『スタンド』デアル、私ニ、アタエテイルッ…!!」 スパイス・ガールは、桃色の髪の少女に対して警戒しつつ、トリッシュに警告を与えた。 「トリッシュ、コノ少女ハ、スタンド使イ、カモシレナイッ!!トリッシュ、警戒ヲスルノデス!!」 トリッシュとスパイス・ガールが油断なくその桃色の髪の少女と周囲の人間たちに警戒していると、その少女はスパイス・ガールを見ると、驚いたような、いや、恐ろしいものを見たかのような表情をした後、短い悲鳴とともにバタンと倒れた。 「…………トリッシュ、コノ少女ハ、完全ニ意識ヲ失ッテイマス。通常、スタンド使イハ意識ヲウシナウト、スタンドヲ出スコトガデキマセン。 ……ナニヨリ、コノ少女ハ、私ヲ見テ、驚キマシタ。トリッシュコノ少女ハスタンド使イカモシレナイガ……敵デハナイ『可能性』ガアリマス……」 トリッシュを狙う『刺客』は何度か来たことがあったが、そのすべてがトリッシュが『スタンド使い』であることを知っていた。 もちろん、知らされずに差し向けられた『可能性』もあるが『暗殺』の成功率を上げるためにはトリッシュがスタンド使いであることを教えておくべきだろう。それよりもたまたま巻きこまれただけの『スタンド使いの才能を持った少女』である可能性が大きい。 (ジョルノやミスタなら……いえ、他のパッショーネのメンバーなら間違いなく『始末』しているでしょうけど……私は、できるだけ無関係な一般人は傷つけたくない…) トリッシュは警戒しながらもその少女を見つめていた。 「やっぱりゼロのルイズだな!使い魔との契約もまともにできないなんて!」 「ゼロのルイズは何をやってもだめだな!」 周囲の人間たちが何か言いながら指を刺して笑っているのが見えた。なぜかトリッシュはすごく『不愉快』な気分になった。 そんな中一人、頭の禿げ上がった男が自分たちに近づいてくるのが見えた。その男を警戒しながらも桃色の髪をした少女を守るかのようにトリッシュが『無意識』にわずかに動いたことをトリッシュ自身も気づいていなかった。 「ふむ……左手を抑えていたようですが…『使い魔のルーン』は刻まれていないようですね。どこか他の場所に……失礼!」 その男はトリッシュをじろじろ見た後、急に気づいたかのように顔を赤くしながら目をそらした。どうやら、この男には目の前にいるスタンドが見えていないようだ。 「…ゴホン!さて皆さん教室に戻りますよ!」 まるで『ゆでだこ』のように顔と頭を真っ赤にしながら、大声で周囲の人間に向かって叫ぶ。 周囲の人間たちは杖を振るうといっせいに宙に舞って城…いや、教室へと飛び立っていった。 「ミスヴァリエールと……その……失礼、使い魔くん名前はあるのかい?」 トリッシュのほうを見ながら、目はかなり上空をみているが、男は尋ねてきた。 「トリッシュ。トリッシュ・ウナよ」 おそらく自分のことを言っているのだろうとトリッシュは、トリッシュは自分が恐ろしく落ち着いていることに驚きながらも、短くこたえた。 「では、トリッシュ君、君のご主人様は私が連れて行くとしよう。 使い魔といえど女性に力仕事をさせては、仮にも貴族に名を連ねるものとして恥ずべきことだからね」 男は、そういって横たわっている少女に杖を振るうと、その少女を宙に浮かせた。 「トリッシュ君、君は道がわからないだろうから私も君と歩きながら学院に向かうとしよう。ついてきたまえ」 男はちらちらとトリッシュを見ながら、鼻の下を伸ばしながら、歩き出した。 「……トリッシュ、ドウヤラ…私達ハ、マタヤッカイナ事ニマキコマレタノカモシレマセン」 (そう……見たいね……どうするべきかしら、私達は……) 「マズハ情報ヲ集メルコトデス。情報ハ全テノ答エニダドリツクタメノミチシルベデス!」 (そうね……『情報』をあつめるべきね……!) トリッシュはその男とあるきだした。まずはここがどこかを聞かなくては、そう思いながら。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/322.html
人は運命に使役される使い魔である。 「・・・・・・あれ?」 その日は年に一度の恒例行事、使い魔召還の儀。 彼女、ルイズ・フランソワーズ・ル・プラン・ド・ラ・ヴァリエールもまたほかの生徒と同じく使い魔を召喚しようとして、 ”失敗”した? 「あれ? え? え?」 机の影に隠れてた生徒たちが顔を出す。彼らもまた驚いている。 ”ゼロのルイズ”たるルイズの失敗など日常茶飯事だと言うのに。 それもそのはず、”爆発”が起きてないからだ。 数多の平行世界の彼女であってもここで爆発しないということは絶対にありえない。そのはずなのだが。 「おっほん、ミス・ヴァリエール。これは召喚に失敗したと見てよろしいのですかね? 「ま、まって下さいミスタ・コルベール。ま、まだ失敗と決まったわけじゃ」 その時 ヒュ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ン ドグシャア!! 「おべがげべはぁ!」 「うわああああああ、いきなり岩が落ちてきたー! しかも運悪くギーシュが下敷き!」 「ああ、でも見てっ! ギーシュの足元にいたカエルはなぜか無傷」 「これが波紋なのか!?」 これが彼女と”運命”との邂逅であった。 「ええっと・・・とりあえずギーシュはすぐに医務室に運びました。気を失ってますが命に別状はないそうです。」 「うーむ、あれだけのダメージを負って気を失う程度なのか彼は・・・」 そりゃ天井からあのサイズの岩石が落ちてくれば普通即死だろう。 とりあえず自分の失敗で死人を出さなかったことに彼女は安堵した。 「ミスタ・コルベール、やはりこれは私の使い魔なのでしょうか?」 「そうですね、ゴーレムが呼び出されること自体はそう珍しくないので十分あり得るでしょう。 ・・・少々珍しいゴーレムのようですがね、彼は」 そう言ってコルベールは岩に目を向ける。 その岩は見れば見ること不思議な岩だった。 まず球体だ。ほぼ完全な。岩を完全な球体にするなど、どこぞの中国四千年くらいしかできるものではない。 そう考えるとやはりゴーレムの線が濃いだろう。 ゴーレムに手や足はなく、ただ一部に変な模様が刻まれていた。 「ミスタなんなんでしょうこの・・・四角の一本線が足りないのに×印がついたマークは」 「ふうむ、私も始めてみる紋章ですね。あるいは何らかの文字でしょうか」 コルベールは知的探究心を刺激されたのか岩のあちこちを触って感触を確かめている。 「ミスタ・コルベール、どうやって契約を行えば・・・」 「おっと、失礼。使い魔の契約は口付けが原則ですが生憎このゴーレムには口らしきものはありませんね。 仕方ありません。とりあえずどこでもいいので口付けをしてみて下さい」 由緒と伝統のある使い魔召還の契約の儀式がどこでもいいでよかろうんだろうか。 ルイズは多少不安になりつつもそっと紋章のちょっと上に口付けた。すると ペキ ペキペキ ペキペキペキ 「やった!」 岩の裏側に使い魔のルーンらしき文字が彫られていく。 つまりこれは正真正銘私が呼び出した、私の使い魔だ。 「よろしい。これで全員が使い魔を召喚できたことになりますな。よかったよかった」 「つまんないの。これでルイズだけ留年したりしたら面白かったのに」 キュルケが野次を飛ばすがルイズは気にしない。 「よろしくね・・・ええっとあなたの名前何にしようか」 「さぁとりあえず学校を案内するわついてきなさい。あなたの名前も考えないといけないし」 しかし岩はピクリとも動かなかった。 「ちょっと、聞いてるの?今更知らんふりしたって無駄よ。あなたが私の使い魔だってことは分かってるんだから」 やっぱり岩は動かない。 「むむむむむむむ・・・もしかして何か動かす方法があるのかしら」 ルイズは手を組んでうんうん考えたが特に何も思い浮かばなかった。 それはそうだ。ゴーレムの知識など彼女は0だからだ。ギーシュじゃあるまいし。 「とりあえずこのままにしてく訳にもいかないし・・・ああもう! 」 ゴーロ ゴーロ ゴーロ クスクス ゴーロ ゴーロ ゴーロ ゴーロ なにあれ? 知らないの? ゴーロゴー 「・・・っぷ、何やってるのあなた?」 「・・・うるさい」 「大変ねえ。レビテーションなんてコモンマジックすら扱えないと。手伝ってあげましょうか?」 「結構。私の使い魔の面倒は私が見るわ」 「あらそう。でも、どうすんのここから」 なんとかルイズは岩を寮まで運んだが、ここからは階段だ。 ルイズの細腕ではとても運べるものじゃない。 「・・・いいのよ!こいつは入り口においてく! どうせまた明日授業に連れて行くんだし」 「・・・あんた毎日それ押して授業受けに行く気?」 「私の勝手よ! いいからあっちに行って!」 キュルケを追い返し彼女も部屋に戻った。 「はぁ・・・なんなのよもう」 正直使い魔の契約が出来たとき彼女は有頂天だった。 爆発も起こさず使い魔を召喚できた。魔法の成功自体彼女の人生の中では快挙だった。奇跡だった。 呼び出せたのは多少変なのだったが、文句を言うレベルではない。 だからこそ他人の嘲笑に耐えてあそこまで岩を運んだんだから。 「ほんとに・・・私の使い魔なのかな」 彼女がもう一度大きなため息をつこうとしたその時 ゴト 「きゃっ!?」 誰かいるの? ルイズが振り向いたそこには 「・・・あんた、もしかして自分で来たの?」 いつの間にか部屋には岩が鎮座していた。 「なによ、動けるんなら最初からいいなさいよ、バカ」 彼女は岩をパシンと叩く。手が痛いだけだった。 「そだ、あんたの名前考えたわ。可憐で高貴で素晴らしい岩と言う意味の・・・『ローリングストーン』よ。かっこいいでしょ?」 「・・・・・・・・・・・」 無論岩がその名前に不平を言うことも不満を言うこともなかった。 むろん違うだろ、と言う突っ込みさえも。 「おはよう、キュルケ。いい朝ね」 次の日の朝、授業が始まる前にルイズはキュルケに挨拶した。 いつもは目すら殆どあわせないのだが。 「あら、おはようルイズ。あなたの大事な使い魔さんは運べたの?」 「ご心配なくこれこの通り」 ぽんぽんと足元をたたくルイズ。そこには岩が昨日と変わらずその身を晒していた。 「・・・使えるようになったの? レビテーション」 「使い魔が主人に付き従うのは当然のことでしょ? わざわざそんな必要はないわ」 といいつつルイズも実はよく分かっていなかった。 岩を動くところも彼女は見たことはないからだ。ただいつの間にか”岩は側に立っている”のだから。 食事のときもいつの間にか足元にいた。パンとスープを与えてみたがやはり食べることはなかったが。 なんと忠義に厚い使い魔だろうか。彼女はその程度にしか考えてなかったが。 「ふーん・・・まあいいや。ところで聞いた? あの話」 「あの話?」 「実はね・・・」 「はい、皆さん席について。授業を始めます」 シュブルーズが教室に入ってきたことにより、その話は中断された。 「皆さん、春の使い魔召喚は、大成功のようですね。おめでとうございます」 授業は滞りなく進んでいく。ルイズが爆発したことも含め。さいわいシュブリーズに怪我はなかったようだが。 おかげで授業は途中で取りやめになった。ルイズは罰として教室の後片付けを命じられた。 当然ローリングストーンは手伝ってくれるわけもないため一人で片付ける。 「はぁ・・・今度はうまくいくと思ったんだけどなあ」 やっぱり召喚の時のあれは偶然だったのだろうか。教室を片付けながらルイズ昨日つけなかった分のため息をついた。 「はぁ~~~やっぱルイズはこうでなくっちゃ。スッキリしないわ」 「あら、そう。じゃあ昨日の分を貸し付けて失敗して差し上げましょうか?」 「うわ、ちょちょちょ、冗談よ冗談。あ、それより聞いた? あの話?」 「あの話?」 そういえば授業の前もいってたな。 「何の話?」 「アルビオンってあるじゃん。あの浮遊大陸の」 そんなの知ってる。少なくともゲルマニアなんかよりもよっぽど親交が深い。 そういえばアルビオンは現在内戦中だったと聞いたがなにかあったのだろうか。 「あそこの王子様さ、死んじゃったらしいわよ」 「死んだ? 王国が滅亡したの?」 「いやそれがね」 ・ ・ ・ 「事故死なんだってさ」
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2201.html
ゼロと使い魔の書 第一話 地球にひっぱられて、上着から体がぬけた。仗助のいる屋根が遠ざかり、茨におおわれている赤煉瓦の壁にそって落下した。 八角形のドームと七つの尖塔をもった[茨の館]の上空につよい風がふいて、…… 目を開くと、鋭い日光に目を刺され僅かに眉を顰めた。 自分の身に起きた一番最近の記憶は、自らの存在意義でもあった「やるべきこと」が終わり、幕引きを行おうとした最後の最後で東方仗助との死闘に敗北し、 全身の骨を砕かれ茨の館から落下した。それで間違いない。 ならここはどこなのか。上半身を起こし、そして怪我が治っていることに気がつき、自分の目の前に広がる光景に言葉を失った。 緑色の海だった。 微かに吹く風が草を揺らし、草原は一つの生き物のように自身を波打たせていた。 神はいない。自分はそう考えていたが、どうやら単に怠慢で残酷で、そして気まぐれだったためにいないと勘違いしていたらしい。 自分は肉体という魂の枷から放たれてようやく、行きたいところに行かせてもらっているのだ。 ここがどこで、なぜこんなところにいるか、疑問は瑣末なものであった。 ただ、草原を眺めていた。 どれほどの時間が流れたか。 突然、背中に衝撃を感じ、前のめりに地面に突っ伏した。細々とした草が顔をくすぐった。 「平民のくせに!無視するなんていい度胸じゃない!」 振り返るとピンク色の長髪を揺らした少女が仁王立ちしていた。腕や胴回りなどはかつて自分に好意を抱いていた異母妹と同じくらい、ドーナツの輪をくぐれそうなほど細い。 その少女と自分を、黒いマントを羽織った少年少女が憐憫の情を含んだ嘲笑を浮かべ囲んでいた。 「ルイズ、『サモン・サーヴァント』で平民呼び出して、しかも無視されちゃ形無しだな!いや、『さすがゼロ』と言うべきか?」 誰かの一言で、嘲笑は哄笑に変わった。 「ミ、ミスタ・コルベール!もう一度、召還のやり直しを要求します!」 少女は最後の希望、という表情で、周囲の中で唯一笑っていなかった中年男に言った。 「ミス・ヴァリエール……こう言ってはなんですが、自分を知りなさい……もう一回やる時間が……あると思うのですか?今のあなたに」 温厚そうな中年男は、しかし苦りきった顔で少女に言った。 「それがあなたの使い魔です。契約しなさい」 中年男に負けず劣らず嫌悪の表情を浮かべた少女は、首を振りながら自分に近寄ってきた。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司るペンタゴン。 この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」 唇の動きからいって、そう言ったのだろう。耳では聞き取れなかったほど早く小さく呟かれていたが、唇の動きを読める自分にとっては口元が視界に入っていればよかった。 少女は体が触れるぎりぎりのところまで近づくと、首をそらし自分を睨み上げた。 「屈みなさい!」 膝を折ると、少女は唇を重ねてきた。 「・・・・・・終わりました」 少女が呟くと同時に、左手の甲に熱を伴う強烈な痛みが走った。 左手を切り離さなければ死んでしまう、と思ったところで熱は引いていった。 見ると、不思議な模様が左手に刻まれていた。 「あんた、名前は?」 「……蓮見琢馬」 ここはどこで、目の前の人間達はなんなのか。 考えなければならないことが山積みであったが、自分には関係なかった。 見渡す限りの草原に、自分は立っている。 その事実の方がはるかに重要だった。 前ページ次ページゼロと使い魔の書
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1856.html
カプリ島 ここ観光客が賑わい、美しい風景と海が広がるのどかな島には不釣合いな男たちがこの島にいた。 山頂で金を取りに行っている6人組みとはまた別に不釣合いだった。 なぜなら二人とも血まみれで、一人は全身傷だらけで、もう一人は明らかに致命傷の銃によると思われる傷が有った。 この男たちの名はサーレーとマリオ ズッケェロ。 この二人はスタンドという超能力使いでさらにギャングである。 この二人はこの島にある先日自殺したポルポという幹部の遺産の回収のためにこの島にやって来た。 ブチャラティという男が遺産の在処を知っているのがわかったまでは良かった。 しかし、一時はブチャラティの仲間を人質に取ったものの、ブチャラティの機転により破れ、ズッケェロは拷問を受けた。 先にカプリ島で待っていたサーレーも奇襲をうけ、今の今まで縛られていた。 意識を取り戻した二人はお互いのスタンドで縄を切り、今現在逃げる途中である。 「これからどうする?ズッケェロ。俺たちもうパッショーネに居られねえぜ?」 「世界の果てをしらねェように未来のことなんてしらねえ。」 (このバカは・・・。 後先考えないから負けたんだろうが・・・。) 明らかに自分のことを棚に上げているサーレーなのであった。 この二人、一見正反対のように見えるが一つだけ意外な共通点がある。 後先考えずに一つのことに突貫する。 良い意味でも悪い意味でも二人はそうであった。 目的のためにはどんな策でも練れるがその作戦もどこか行き当たりばったり。 しかし、この奇妙な共通点はこの二人の奇妙な友情も同時に作り出していた。 だから正反対の二人が一緒に居るのかもしれない。 しかし、それも今日までだった。 異変に最初に気がついたのはズッケェロだった。 「おい、あそこで何か光ってねえか?」 サーレーがズッケェロの指した方向を見る。 そこには円形の鏡があった。 しかし、どこか不自然だ。 何故こんな人っ子一人いない道路にこんな物があるのか。 有り得ない。 サーレーはそう思うと鏡に一歩、また一歩と近ずいていった。 (まさか、スタンド攻撃か?) サーレーはいやな予感がしていた。 (まさかブチャラティの仲間が俺たちを始末しに来たのか!?) しかし彼には全てを“固定”する強力なスタンド『クラフトワーク』が付いている。 (まさかまた負けるわけがナイよな。) この慢心が悲劇を招いた。その慢心でミスタに負けたというのに同じ間違いを繰り返した。 サーレーはクラフトワークを出しながら鏡に近ずく。 あと20メートルという所でいきなり鏡がサーレーに向かって猛スピードで突っ込んできた。 「何いぃイイ!!クラフトワーク!!」 固定して止めようとするが止まらない。 仕舞いにはクラフトワークから飲み込まれていった。 「何だとオオオ!?」 「サーレー逃げるんだよオオオ!!」 サーレーはすでに脱出を試みている。ズッケェロに言われなくてもそんな事分かっている。 じきに鏡はサーレーの体の3分の二を取り込んでしまった。 サーレーは改めて思った。 (俺は馬鹿だ・・・。こんなのに無策で突貫するなんて・・・。) サーレーは諦め抗う力を緩めた。 もう悟ったのだ自分は死ぬのだと。 「ズッケェロ、家族のことは頼んだ!」 サーレーはそう言うと鏡の中に消え去った。 「サアアアレエエエエエ!!!」 ズッケェロの悲鳴がカプリ島に響いた。 ドッカアン! 馬鹿でかい音と共にサーレーは盛大に尻餅を付いた。 「痛ェ!」 (うん?痛いだと?) 「は!俺はいきてんのか!?」 「あんた・・・誰?」 サーレーの目の前には桃色のブロンドの少女がいた。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1466.html
「宇宙の果てのどこかにいるわたしのしもべよ。 神聖で美しく、強力な使い魔よ。わたしは心より求め、訴えるわ…… 我が導きに、答えなさい!」 ルイズは呪文を詠唱すると、祈る思いで杖を振りかざした。 途端に爆発が起こり、同級生達が叫び声を上げる。 音にはもう慣れた。ルイズは目を細め、唇をかみ締めながら爆発地点を見つめる。 夕焼けと爆発の煙にぼやけ、うっすらと何かの影が見えた。 「うそだろ、ゼロが」「何かの間違いだ!」「やっと帰れる!寝れる!」 好き勝手に騒ぐギャラリーの言葉もルイズの耳には入らない。 何十回もの失敗のすえの成功。嬉しさに顔がにやける。 危険は二の次、と影に歩み寄った。失敗しすぎて日が暮れかけている。 早く契約したかったし、何より間近で姿を見たかったのだ。 強風が吹いて、煙を一気に吹き消した。ルイズの心臓が一際強く跳ねる。 ゆっくりと立ち上がったその姿は、人間の男に似ていた。 体つきは人間そのもの。圧倒的な存在感を放つ高い背丈と逞しい体躯。 頭から十本ほど、細いものが角のように突き出ている。 不思議な装束を纏っている。薄い布地が身体に貼りつき、ずいぶん窮屈そうだ。 ルイズ達は息を呑んだ。 一瞬、その身体が夕焼けの光とも異なる奇妙な輝きを纏っているように見えたからだ。 ルイズの背後から「亜人……?」と呟く声が聞こえた。 ルイズの目線が亜人?の顔へと移り、そこで凍りついた。 亜人?と最も近い位置にいるのがルイズである。距離はほぼ3メイル。 ルイズ以外は遠巻きになっている為、15メイルは離れている。 だから最初に気づいたのは当然ながらルイズだった。 亜人。亜人、よね?そうよねうんそうだわ。だってこんなに変なんだもの。 眉なんか妙に黒くて太くって、目の周りなんて濃い紫色。頬もこてこての紅色で、 分厚い唇は硬そうなのに真っ赤。どう見ても普通じゃない。 でも、でも目つきや肌の色も人間っぽい。着てる物もよく見ればワンピース? 角みたいなのはただの頭飾り? い、いやいや待っておかしいわ。そんな事あるはずない。 だって「これ」が人間だとしたら180サント以上の筋肉男よ?化粧してたり スカートはいてたらへ、へへへ変態じゃない。だからこれは亜人。どっか遠くの 部族の民族衣装かなにかよ。どんなに人間に似てても、にに人間なわけないのよ。 亜人は寝ぼけたような目できょろきょろしている。爆発のショックだろうか。 そのまま何故か足元に転がっているガラスビン数本をぼんやりと眺めていたが、 ルイズを見るやそのうちの一本を拾って差し出す。そして何事か呟いた。 「あらお客さま?あたしのドリンクいかが~~?お嬢ちゃんにはまだお酒は 早いから、冷たァいコーラでもどうかしら~~~~」 うわ言のように続けられるそれはどう聞いても人間の言葉だった。 ドッギャァアアアアン ヴァリエール公爵家三女ルイズ・フランソワーズ・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの 使い魔はなんと人間で平民!しかも筋肉達磨の女装男に決定ッ!! ルイズは耳を澄ました事を後悔し、立ち尽くした。 会話を交わしたかと思いきや、硬直して動かないルイズと亜人?の様子に生徒達が 不審を感じざわめき出す。 「もしかしてあれはただの人間なのでは?」と誰かが口にすると、すぐにからかいの 声も出始めた。だが、少数いた目端のきく者の「あれって女装した男じゃ」という声は 途中でどこかから放たれた炎によって遮られた。 (召喚したのが人間だった位なら笑いのネタにできるけど、“あれ”をからかったら ルイズはもう立ち直れない。なんとなくそんな気がする) 普段ルイズのライバルを自称しているキュルケははらはらしながら杖を握りしめた。 ルイズの肩は震えていた。 やっと現れた使い魔である。贅沢は言わない、はずだった。 鼠や蛙でも文句はないし、いっそ虫でもいいやぐらいの覚悟は出来ていた。数分前までは。 (ミミミミスタ・コルベールやりなおしのきょかを) 自分の喉が乾ききってヒューヒューという音しか出していないと気づかないまま ルイズが背後を窺うと、コルベールは首をかしげながら眼鏡を拭いている最中で まだ何も口にする様子はなさそうだった。 ルイズの瞳が潤み、目尻に涙が溜まる。 ……ミスタ・コルベールはどうせ再召喚を認めてくれないだろう。 きっと「神聖な儀式だから」とか言って、取り付く島もないに決まってるわ。 絶望に心が埋め尽くされ、浮かんだ涙の一粒がこぼれそうになったところに、 ルイズの頭の中でチリペッパーをブチ込まれたような電撃が閃いた。 ――なに、「再召喚を認めてくれないかも」ですって? 逆に考えるのよルイズ。 はっきり『認めない』と言われる前にこの女装男を消しちゃって、まるで 最初から何もいなかったかのように『またまた失敗しちゃいましたァァアン』と ごまかせば万事解決――と考えるのよ。 だから急いでジョースター家の恥さらしであるそのマヌケを爆死させるんだルイズ。 ってあれ?なんか途中から誰かが割り込んできたような感じだったけど…… 「なかったことにする」。なんて盲点。この説得力、天の声と呼ぶべきね。 コントラクト・サーヴァントをするふりして爆破。 微妙に悔しいけど「いつもの失敗」って事ならコッパゲも信じるはず! 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司るペンタゴン……この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」 一気に言い切ると、ルイズは男に近づこうと一歩更に足を踏み出す。 (そう、あと少し。あと少し近づいたら至近距離で『レビテーション』を 食らわせてやるわ。勿論コッパゲ達に聴こえない超小声でッ!!) ルイズは男と数サントの距離まで顔を寄せた。袖に潜ませた杖を男に向ける。 そのまま詠唱を始めようとしたルイズの唇は、 「むぐっ」というくもった音を残して――男の唇に奪われていた。 ルイズの失敗は「近づく前にしっかり男の様子を確認しなかった」に尽きる。 元々涙が滲んで視界がぼやけていた上に、ルイズは男を直視するのをためらい 無意識に視線を逸らしていたのであった。 だから、異変を感じた男が最初の発言以後沈黙し、現状把握に努めていたこと に気づけなかったし、男の瞳が自らに近づいてくるルイズを観察していること にも考えが及ばなかったのである。 「むむっ?ふ、むむ……」 『唇を塞がれていたら詠唱が出来ない』。ルイズが最初に思ったのはそんな事 だった。次第に気づいて抵抗し始めるが、男の手に両肩を押さえられており 身じろぎ程度にしかならない。 誰も止める者はいない。傍目からは何も問題のない契約の儀式だった。 ルイズは男の唇を噛んでやろうと思った。だが顎が動かない。 身体に流れ込む暖かさが安心感を呼び、抵抗していた手足の動きすら止めている。 その暖かさは、男の手と唇から流れ込んできていた。 男が右手をルイズの頬に添え、彼女の涙をそっと拭った。 契約中の二人を、キュルケが呆然と見つめていた。 (まさか、ルイズが素直にキスするなんて……絶対ゴネると思ってたわ。 ああルイズったらあんなに気持ち良さそうに!エロ光線か何かかしら。 ちょっと代わってほしいかも。この際見た目が不気味とか気にしないから。 あああルイズ目がとろんとしてる!羨ましいのよッ代わりなさいルイズ。 早く代われ私と代われェェエエエッ!!) 血走った目で赤い髪を逆立てていたキュルケの足をとんとん、と誰かがつつく。 キュルケの右隣に座って本を読んでいた親友、タバサである。 「ど、どうしたの?タバサ(今いい所なんだけど)」 「よだれ」 一言で返答すると、タバサは本の頁に目を向けたままキュルケにハンカチを差し出した。 二人の口付けは、ルーンによって男が左手に痛みを感じ始める数秒後まで続いた。 例え目の前に広がるのが見知らぬ土地であろうとも、例え相手から殺気を感じたと しても、美少女とは一応キスをしておく――後でナチスの基地の場所と、ついでに この娘がレズビアンなのかも尋ねてみよう。 召喚された男、ジョセフ・ジョースターの思考は現在、だいたいこんなものだった。 彼は自分の女装に絶対の自信を持っていた。 ジョセフには女装の才能の代わりに運を引き寄せる才能があった。 しかしこのキスが彼にとっての幸運になるかどうかは、まだ誰も知らないことである。 つづかない。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1000.html
サモン・サーヴァントの儀式の終わった日の夜、ルイズは眠ることが出来ずにいた。 目をつぶっても昼間に起きた出来事が頭の中を駆け巡る。気がついたら東の空から太陽が昇り始めている。 あの後使い魔が消えたことで最もショックを受けていたのは意外にもキュルケだった。 今まで見たことない素直さでルイズに謝ってきたのだ。正直どう反応すればいいか分からなかったので適当に流しておいたが。 ルイズが思いのほか冷静だったのは、自分の手元に召喚した奇妙な箱が残ってたからだ。 今はもう火は出てない。あの時の騒ぎで気づいたときにはもう消えていた。だが壊れたわけではないようだ。 たぶんこの箱から火を出せば再びあの使い魔は現れる。 そして再び私を襲うんだろう。向こうはこっちの事を主人と認識してないようだ。 「あ~もう。どうしよう」 思わずつぶやく。が、そういいながらも心の中ではひとつの覚悟を決めつつあった。 今まで誰よりも努力してきたつもりだが、それでも報われず魔法が成功したためしはない。 その自分が始めてほぼ成功したと言う事ができたのだ。後もう少し。 後はあの使い魔に私を主人と認めさせる。そしてどのメイジにも負けない信頼関係を作る…! (点火「する」。ではなく点火「した」なら使ってもいい!) ルイズの手の中で火が踊った。 また後ろに現れるのではないかと思って、あらかじめ背中に壁を付けておいた。 世の中には背中を見られたら死んでしまう奇病があるという話を意味もなく思い出す。 予定通りと言うべきかどうか、使い魔は今度は自分の前に現れた。 昼間と全く同じ格好の黒尽くめの亜人。そして。 「おまえ…『再点火』したな!」 第一声も全く同じ。 違うのはそれに立ち向かうようにして杖を握りしめるルイズ。 「ええ。『再点火』したわよ」 ドドドドドドドドドドドドドドド………… (やっぱり影だ……) さっきからその場をうろうろするだけの使い魔を見てルイズは確信する。 昼間の出会いのとき心に引っかかったいくつかの単語。 再点火、チャンス、選ばれるべき者、影。 キュルケはこの使い魔がルイズの影に触れた後で、ルイズが叫び始めたと言っていた。 今回はあらかじめ自分の影が壁に向かうようにロウソクを立てておく。 余計な影ができると困るのでカーテンは閉めておいた。 これらは自分の影を守る為の作戦だったのだが、別の事実も浮かび上がらせることになった。 (こいつ。さっきから影の部分しか歩いてない) 使い魔がさっきから歩いているのは、ロウソクの光によって出来た家具の影の部分だけだった。 ひとまず自分は安全地帯にいることを認識したルイズは、使い魔に話しかけてみる。 「あんた名前は?私の使い魔なんでしょ?」 使い魔は動きを止めこっちを見ると答えた。 「チャンスをやろう!お前には向かうべき二つの道がある!一つは生きて『選ばれるべき者』への道!」 (ど~しろっていうのよ) 全く会話にならない。こいつはもしかしてこれ以外の言葉を知らないのか?思わず嘆息してしまう。 ああ。サモン・サーヴァントはもうやり直しできないし、使い魔は話を聞かないし。つまりハサミ討ちの形になるな… …………だんだんむかっ腹がたってきたわ。なんで私だけ使い魔のためにいろいろ考えて寝不足にならないといけないの? 逆じゃあないのか?選ぶのは私で、寝不足になるのはこの使い魔のほうなんじゃないのか? ルイズは相変わらず演説を続ける使い魔に向かって足を踏み出した。 使い魔がルイズの影に触れたと思った瞬間、使い魔に肩を掴まれている状態になっている。 昼間の再現。だからルイズはあわてなかった。 「チャンスをや「うるさい!!!」」 また同じことをリピートしようとする使い魔に一喝する。 「意味わかんないこと言ってんじゃないの!アンタは私の使い魔なの!私がご主人さまなの!」 ルイズはその目をけっして使い魔から離さず睨み続ける。 使い魔の動きが止まる。そして。 「チャンスをやろう!お前には「だからもうそれは聞いた!!」」 使い魔の動きが再び止まる。 「チャン「うるさい!!!」」 両者の動きが再び止まった。相変わらず使い魔の感情を読み取ることはできない。 どれくらいその状態が続いたか分からない。ルイズにはそれこそ永遠のように感じた。だが睨みは効かせ続ける。 使い魔はしばらくするとルイズの肩からトンと押すように手を離した。 よろけて転びそうになる!と思ったのは一瞬で、気がつくと少し離れた場所に立っている。 (今のは『私の体』を掴んでたんじゃないのね) 息を落ち着かせながらそんなことを考える。 使い魔の方を見てみる。雰囲気が変わったとは思えないが、もう襲ってくる様子はないようだ。 「あんた名前は?」 答えは返ってこない。 またひとつ嘆息。 「じゃあもうここは譲歩して私から言うわ。ありがたく聞きなさい。私の名前はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」 反応はない。 「あんたを選んだ者よ」 やっぱり反応はない。 どうやってこの使い魔と信頼関係を作る?というよりコミュニケーションを取る?……ルイズは頭を抱えた。そのとき。 「ブラック・サバス」 「え?」 とりあえず名前は知ることができた。いやブラック・サバスが名前なのか本当は分からないのだが この際細かいことは考えないでおく。とりあえず一歩進んだ。ここから少しずつ進めればいい。努力には慣れてる。 この使い魔は何ができるのか。とりあえず簡単な命令からやってみようと思った。 「洗濯とか分かる?コレ」 ルイズは洗濯物が入ったカゴをブラック・サバスに渡す。 使い魔はそれを受け取ると…………なんの躊躇もなく食べた。 え……ルイズはその行動にしばらく絶句してしまう。なにをやったこの使い魔は!? 「何やってんの!すぐ出しなさい!このバカ犬!」 もう信頼関係なんて言葉は頭から飛んでいた。ブラック・サバスは我関せずといった雰囲気でルイズを見下ろしている。 「どうしたのルイズ?」 鍵がかかってたはずのドアが開き、廊下からキュルケが入ってくる。 と、その瞬間ブラック・サバスの姿が消え去った! 「あ!」 思わずルイズは声をあげる。あわててキュルケの横を抜け廊下に出て左右を見渡す。 わずかにだが廊下の端を影の線が伸びている。 もしあれが影上でしか動けなくてもこの上を伝って行けば相当移動できるだろう。 さらに時間が立って影の範囲が大きくなればほとんど学校中を移動できるのでは? 「ちょっとルイズどうしたのよ」 後ろを見るとキュルケが不思議そうにこちらを見ている。その足元には赤くてでかいトカゲが。おい尻尾燃えてるぞ。 「ああ、この子が私の使い魔のフレイムよ。あのさ~、えーと、あんたの使い魔は……やっぱ」 キュルケが珍しく言葉を濁すように話している。どうも自分がルイズの使い魔を殺したと勘違いしているようだ。 最近珍しいキュルケばっか見るな。なんてルイズは思いながらも 「使い魔に逃げられた」などと言うことも出来ずに、ただ廊下の先を見つめていた。 汚れたエプロンなどを洗濯するために水汲み場へ向かうメイドが一人。シエスタである。 今日もいい天気だ。というかよすぎる。 シエスタは少しでも日の光から離れるため校舎の日影の部分を歩いていた。 しかし水汲み場まで残り数メートルは日影がない。それに水汲み場自体は影になるところが無く、日に照らされている。 それでも太陽の光を反射してキラキラと光る水汲み場を見ると、涼しい気持ちになる。 水汲み場へ歩いていく。回りには誰もいなくて、付いてくるのは自分の影だけ。 「お前にチャンスをやろう」 後ろから声が聞こえヒッと悲鳴をあげてしまう。あわてて後ろを振り向く。 そこには黒い帽子に黒いマント、人間とはとうてい思えない顔と体、そしてその右手にはなぜか洗濯かご。 見詰め合うこと数分。 「あの……何かようですか?」 根負けしたシエスタは、目の前の怪しさ爆発の存在に声をかけた。 15分後そこには2人並んで洗濯しているシエスタとブラック・サバスの姿が! 「私ここで使用人をやらさせてもらっています。シエスタと申します」 「…………」 「あ、この洗濯道具は自由に使っていただいてけっこうですよ」 「…………」 「そ、その格好暑くないですか?」 「…………」 「ウミネコだ。ありゃーカモメじゃねぇーぜ。ウミネコだ。どうやって見分けるか知ってるか?」 「…………」 (…………空気が重い。エコーズACT3ってレベルじゃねーぞ!) 横からの妙なプレッシャーに思わず泣きそうになる。 黙々と洗濯をする隣の亜人に、なにか他に話題はないかと頭を回転させる。 「あなたはどなたの使い魔なんですか?」 ……やはり返事はない。もう黙ってさっさとしあげてしまおう。そう思ったとき 「ルイズ」 驚いて横を見るが、使い魔は相変わらず手は動したままこっちを見ようとはしない。 「ルイズ……ミス・ヴァリエールの使い魔なんですね?」 シエスタは会話が繋がったことに驚き、思わず声が大きくなる。 すると急に辺りが暗くなる。何事かと上を見ると巨大なドラゴンが空を通過していく。 「すごいですね。あれも使い魔なんでしょうか。わたし龍は初めて見ました」 ひとり興奮しながらも隣のサバスに話し続ける。 しかし、横を見ると使い魔はいなかった。洗濯物とカゴも消えていた。 To Be Continued 。。。。?
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/57.html
「―――では、ミス・ヴァリエール。召喚の儀式を」 「はい……!!」 ついに自分の番がきた――――――期待と不安と興奮がないまぜになり、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは身を固くして教師の呼びかけに応じた。 これから、一生を共にする自分の使い魔を呼び出すのだ。 緊張して当然である。 が、今彼女が感じている緊張は、他の同級生とはベクトルが違った。 『ゼロのルイズ』 それが示す事柄はすなわち、貴族にとって不可欠な、魔法の成功確率の『ゼロ』の揶揄である。 口惜しいことに、原因は不明。 同級生に『ゼロ』と笑われる度に、プライドの高い彼女は、はらわたが煮えくり返る思いをしたものだった。 だが、自分が今まで魔法を使えていないのは事実。 今回の儀式もまた失敗するかも知れないという恐れこそが、彼女の緊張の源だった。 しかし、 (サモン・サーヴァントに成功すれば、私はもう『ゼロ』じゃない……呼ばせない……) その思いがルイズを後押しする。 「おい、『ゼロ』! ちゃんとサモン・サーヴァント出来るのか?」 「皆、離れとけ! また爆発するぞ」 同級生の何人かがはやし立てた。 どうせまた『かぜっぴき』のマリコルヌあたりだろう。 ルイズは声のした方向をキッと睨みつけた。 野次の内容はいつもとそんなに変わらなかったが、これからの大事な儀式向けての集中が阻害されたせいもあり、ルイズは声を張り上げた。 「見てなさい……ッ!あんたたちの使い魔を全部合わせても及ばないくらい、神聖で美しく、そして強力な使い魔を召喚してみせるわ……!!」 (また悪い癖が出た……) 言い終わった後にルイズは後悔した。 どうしていつも自分はこうなのだろう? 彼女は自らの性格がもたらす弊害を強く自覚してはいたが、直す術を見いだせないまま今日に至る。 いつもならこのあと自己嫌悪に陥るところだが、生憎と今回ばかりはそうもいかない。 今は儀式に集中せねば…… 怒鳴ったせいで乱れた呼吸を静かに正し、ルイズは覚悟を決めた。 杖を構え、詠唱を始める。 ゆっくりと静かに、しかし力強く確実に。 周囲のマナが轟と震え、眩い光があふれ出す。 (いける!) これまでにないほど、魔力の流れが安定している。 ルイズは召喚の成功を確信する。 内心の興奮を抑えつつ、ルイズは淡々と詠唱を続ける。 ――――――そして、詠唱は終わりを迎えた。 "チュドォォォオン!" 成功を確信したルイズの召喚魔法の結果はしかし、いつもの通りの爆発であった。 砂埃が舞い、視界が遮られる。 意味するところはすなわち……… 「し……失…敗…なの?」 その瞬間、ルイズは金槌で殴られたような衝撃を受けた。 腰の力が抜け、その場にへたりこむ。 (……どうしてなの?) これまで、様々な苦労をしてきた。 魔法を使えるようになるために、あらゆる書物を貪った。 知識だけなら他のどの同級生に負けない自信がある。 自覚がある。 自負もある。 なのに………… 悔しさのあまり、これまでどれだけ他人にバカにされても決して流さなかった涙さえうかべた。 やはり自分は『ゼロ』なのか…… これからも他人に笑われる生活を送るのだろう。いや、ひょっとしたらこれを口実に学院を追放されるやも…… ルイズは、自分が描いた恐ろしい未来に我が身を抱いた。 そうして彼女が震えている間にも、視界を遮る砂煙は晴れようとしていた。 時は止められないのだ――――――ルイズは思った。 「ケホッケホッ……こ、今回はやけに飛ばしたな、『ゼロ』のやつ」 召喚と、その後のいつもの失敗劇を眺めていた同級生の1人が呟いた。 「エッホン、ゥオッホン……そ、そうだね。マントが汚れてしまったよ…」 実際のところ、失敗すると決め込んでいた彼らも、一瞬だが、成功したのではないかと思っていた。 しかし結果はやはり失敗。 今までにない様相を呈してはいたものの、結局『ゼロ』は『ゼロ』だったということだ。 彼らはそう、心の中で結論づけた。 彼らの心は既に、サモンサーヴァントではなく、砂煙が収まった後、どうやって『ゼロ』をからかおうかということに向かいつつあった。 しかし、やや視界が効くようになるにつれて、先程までは存在しなかったモノがあることに一部のものは気がつき始めた。 まさか……!? 皆の期待を再度裏切る形でソレは確かに横たわっている。 だがよく見えない。 目を凝らす。 舞い残る砂が目に入ってよく分からない。 目をこすり、再び目を凝ら「ぅわああぁぁあぁ!!?」 一人の生徒が叫び声をあげた。 ルイズは未だに、声を押し殺して泣いていたが、周囲の様子のおかしさに気づき、辺りを見回した。 『こちらを見る→ナニかに気づく→悲鳴を上げる』という一連の行為を誰も彼もが、一様に、時間差で行っていた。 女生徒のよく通るキャーキャーという悲鳴が、水面に石を投げた後の波紋のように、広がっていく。 悲鳴のウェーブが広がりきったその次は、悲鳴のオーケストラだった。 皆悲鳴を精練された聖歌のように唱和させる。 貧血を起こし、倒れる生徒も見受けられた。 いつもとは反応が違う。失敗を起こした後の反応とは……。 まさか、自分はサモンサーヴァントに成功したのか? その可能性に思考が行き着いた瞬間、ルイズは振り返り、砂煙が起こっていた中心を凝視した。 喜びと期待に満ちたルイズの目はしかし、自分が初めての魔法で、初めて呼び出したのであろうソレを見た瞬間に心臓が凍るほどの驚愕で見開かれた。 そこにあったのは、これ以上はないというほどスプラッタなバラバラ死体だったのだから… 戻る 2へ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1159.html
第一部ゼロの外道な初代様 逃亡した使い魔(スピードワゴン) 閃光の紳士 第二部ゼロのテキーラ酒売り シュトロハイムの野望・将星録 教師な使い魔 第三部アブドゥルさん放浪記 ゼロのタバサ(DIO) ゼロの剣 いただきマサクゥル 割れた世界 第四部ゼロの料理人 吉良 老兵は死なず(ジョセフ) シアー・ハート・アタック 望みの使い魔(トニオ) 少女よ、拳を振れ 紙・・・? うしろの使い魔 収穫する使い魔 茨の冠は誰が為に捧げられしや 茨の冠は誰が為に捧げられしや 『魅惑の妖精亭』編 猟犬は止まらない 第五部ペッシ ブラックサバス アバッキオVSギーシュ ギーシュの『お茶』な使い魔 鏡の中の使い魔 本当に良くやった使い魔(殉職警官) ゼロの鎮魂歌――黄金体験(GER) ゼロのチョコラータ 絶望の使い魔(チョコラータ) しぇっこさん 永遠の使い魔 死にゆく使い魔(カルネ) 王の中の王 -そいつの名はアンリエッタ- ボス憑きサイト 王女の手は空に届かない 罰を負った使い魔(ジェラート) 第六部サバイバー この宇宙の果てのどこかから(プラネット・ウェイブス) 使い魔ックス ゼロの使い魔像 第七部ロードアゲインの決闘 ブラックモアの追跡 Wake up people※ネタバレ注意 ~百合の使い魔~(ルーシー) その他バオー ゼロの吸血鬼(荒木) DIO 吉良 ボス同時召喚 二刀シエスタ フリッグの舞踏会にて 禁断の呪文 タバサの少し奇妙でタフな物語 ジョジョの虚無との冒険 才人の女性遍歴日記 エレオノールの来訪者 タバサと使い魔と吸血鬼