約 1,746,032 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/147.html
深夜 ドッピオはルイズから渡されたカードを使っていろいろと不思議に見せるための特訓をしていました ちなみに渡されたカードはトランプでした。案外この世界に流れ着いているこちらのものはあるようです カードの扱いに慣れてきたところでもう眠気がきたので寝床に就こうとしますが コッ・・・コッ・・・ 物音が聞こえます。これは足音でしょうか コッ・・・コッ・・・・・・・・・ ルイズの部屋の前で足音は止まりました ・・・こんな深夜に誰かと思いドッピオはドアを開きました 「・・・あれ?」 そこには誰もいませんでした。確かに足音は聞こえていたはずですが・・・ 「あの」 「うひゃい?!」 突然左から話しかけられました。そこにいたのは 「・・・どちら様でしょうか」 「あの・・・アンリエッタと申しますが・・・貴方がルイズの使い魔ですか?」 「はい、そうですけど・・・ルイズさんに用ですか?」 「はい・・・」 よく見ると服装も学院生とは違う服装です 「・・・ルイズさん。起きて下さい」 ユサユサとルイズを起こします 「・・・なによ。こんな時間に・・・」 寝ぼけ眼で起き上がるルイズですが 「・・・?!」 アンリエッタを見た瞬間とても驚いた顔をします 「・・・ルイズさん?」 「す、すいません!このような無礼な格好で・・・」 いきなりあわただしくするルイズを見てドッピオは (・・・もしかしてアンリエッタさんは偉い人なんですか?) 小声でルイズに聞きます。帰ってきた返答は (当たり前じゃない!トリステイン王国の王女・・いや、今は女王になった方よ!) そう返されました 「早く部屋へお入りください。この様なところにいたと知られれば・・・」 そう言ってルイズはアンリエッタを手招きしました 「そうですね。でもそんな言葉遣いなんてしなくていいですよルイズ ―――私たち、友達でしょう?」 友達という言葉に一瞬気を取られそうになったルイズですが 「いえ、たとえ幼少時の遊び相手である私でも失礼に値するような言葉遣いなんて・・・」 そう言って自制しました 「・・・ところで」 アンリエッタの視線はドッピオに流れました 「これが貴女の使い魔ですか・・・」 その言葉にルイズは 「あ、あのえっと・・こ、こんな平民でもとても強くて―――」 「分かっています。なの土くれのフーケを倒したのでしょう?」 「え?」 ルイズはなぜ知っていると言う顔でした 「王家から守れと言われている破壊の杖を学院は秘密裏に取り戻したつもりだったんでしょうが そんな一大事が発生したら王家からの諜報が働きます。活躍も聞きましたよ、ルイズ」 「そ、そんな・・殆どこの使い魔が倒したようなものですし・・・」 ルイズはしどろもどろになりながらそう答えました 「・・・明日の品評会。楽しみにしていますよ」 「はい!」 そう言ってアンリエッタは戻っていきました ドッピオは結局何も喋らずじまいで女王さまを見送りました 「・・・女王様と知り合いだったんですね」 「ええ・・・」 ドッピオはアンリエッタが品評会を楽しみにしていると言うことを聞いて 「もしかして見に来ちゃったりしますか?」 そういうことかと思って聞いてみました 「そうよ・・・だから絶対ドジ踏んだりとかしちゃダメよ」 ようするにルイズはいいところを友人に見せたいのです 「それにしても驚いたわ。まさか前日にたずねてくるなんて」 「案外行動力のあるお姫様なんですね」 「そうね・・・子供のころはいっつも私が連れまわしてあげてたんだけどね・・・」 遠い昔を見つめるように窓から空を見上げているルイズ 「・・・絶対に失敗は出来ないな」 少しでも友人にいいところを見せたいと願う主人に愛らしさを覚えながらも明日の品評会に熱意を燃やすドッピオでした 14へ
https://w.atwiki.jp/shachozero/pages/113.html
375 :社長の使い魔 ◆.H42NtoyGg:2008/03/10(月) 00 17 58.27 ID rPFUBLma0 ,. ヽ. ヽ l l l l / ヽ. ヽ l l l l / / ヽ. ` 、 ヽ ヽ. レ、l l. l / / 丶、 ` 、 ヽ ヽ / ヘ \ l l / / ` 、_ \. ヽ. ∨ , `丶 \ ! l / ヽ - ニ_ー三>ィヘ、 ヽ ∨、ハ }. 〉j l l 「……メイド。貴様の曽祖父のデッキ ト 、 \ ` 、 丶、  ̄ / j ` 、 ヽ}_」 j /∧. l l それは確かに遊戯に届けてやる `丶、\ `丶、_`ァハ / ` 、 l!__, / Ⅵ l ……それだけでも感謝するんだな」 `丶\ゝ、_,イ{j } / ヽl.// ∧ Ⅴ ! `丶、 ヽ ´ Ⅵ ,ヘ ヽ l l ソ‐-、_` 、  ̄´ \ヽ. l. l / `丶 」____\ヽV / |  ̄ ̄ く、 | `丶, _ | `´、_ /| \ ,イ .| ,rf⌒ ┌‐\ ∠.」 ! { | \__/ | _l. 弋_ | 〈 ̄.l l l l l l l j _____j___/______ ____/___\ _ _ \  ̄\. | |. //´ ヽ /´〉 | レ 〈 383 :社長の使い魔 ◆.H42NtoyGg:2008/03/10(月) 00 19 15.70 ID rPFUBLma0 __// __ヾ==-、 f ´ ̄ , ´ `ヽ l | / / \ ∧/ / 〃 ;.イ/l } , ヽ l { l /__ / / /_/ /j / } | l レ/,,∠`/ /∠/メ// / l ! | 伐_j f以ヽ彡イ 「……はい。でもこのままじゃ行かせません ヽ ! i V;;リ {;;リ 〃 | 私、結構大胆なんですよ?」 Vl | { l l ! l 、 ー .イ , __ 厂 ̄ ¨ヽ \ !-j> _ ィ<、 / ヽ `ート 、_r _\ヽ |,_ ̄ヘ二´¨l_ハ / ./゙ヽ /⌒く/ ヽ∠ヽ「j|`~/ //ヽ `∨ / } l l } Ⅵ ヽ 〉、 ∨ / ゝァ‐ } くrー! 入 } . .\ V二ニ〈 { / \ }∨ \∧ . . ヽ , } ン′ ヽ| ¨ヽ . .. ノ ヘ_/ ヽ { \ 8//~′ } _ `ヽ、__ __/ `ヽ_// 〃 / \  ̄/ /`===彳 r′ __ヽ { } j、 l く ハ /-- ――‐イ 〉 386 :社長の使い魔 ◆.H42NtoyGg:2008/03/10(月) 00 19 34.18 ID rPFUBLma0 ,. ヽ. ヽ l l l l / ヽ. ヽ l l l l / / ヽ. ` 、 ヽ ヽ. レ、l l. l / / 丶、 ` 、 ヽ ヽ / ヘ \ l l / / ` 、_ \. ヽ. ∨ , `丶 \ ! l / ヽ - ニ_ー三>ィヘ、 ヽ ∨、ハ }. 〉j l l 「なに?」 ト 、 \ ` 、 丶、  ̄ / j ` 、 ヽ}_」 j /∧. l l `丶、\ `丶、_`ァハ / ` 、 l!__, / Ⅵ l `丶\ゝ、_,イ{j } / ヽl.// ∧ Ⅴ ! `丶、 ヽ ´ Ⅵ ,ヘ ヽ l l ソ‐-、_` 、  ̄´ \ヽ. l. l / `丶 」____\ヽV / |  ̄ ̄ く、 | `丶, _ | `´、_ /| \ ,イ .| ,rf⌒ ┌‐\ ∠.」 ! { | \__/ | _l. 弋_ | 〈 ̄.l l l l l l l j _____j___/______ ____/___\ _ _ \  ̄\. | |. //´ ヽ /´〉 | レ 〈 392 :社長の使い魔 ◆.H42NtoyGg:2008/03/10(月) 00 20 53.98 ID rPFUBLma0 __// __ヾ==-、 f ´ ̄ , ´ `ヽ l | / / \ ∧/ / 〃 ;.イ/l } , ヽ l { l /__ / / /_/ /j / } | l レ/,,∠`/ /∠/メ// / l ! | 伐_j f以ヽ彡イ 「ちゅっ…… ヽ ! i V;;リ {;;リ 〃 | ……これぐらいはさせてもらいます」 Vl | { l l ! l 、 ー .イ , __ 厂 ̄ ¨ヽ \ !-j> _ ィ<、 / ヽ `ート 、_r _\ヽ |,_ ̄ヘ二´¨l_ハ / ./゙ヽ /⌒く/ ヽ∠ヽ「j|`~/ //ヽ `∨ / } l l } Ⅵ ヽ 〉、 ∨ / ゝァ‐ } くrー! 入 } . .\ V二ニ〈 { / \ }∨ \∧ . . ヽ , } ン′ ヽ| ¨ヽ . .. ノ ヘ_/ ヽ { \ 8//~′ } _ `ヽ、__ __/ `ヽ_// 〃 / \  ̄/ /`===彳 r′ __ヽ { } j、 l く ハ /-- ――‐イ 〉 398 :社長の使い魔 ◆.H42NtoyGg:2008/03/10(月) 00 21 45.23 ID rPFUBLma0 ,. ヽ. ヽ l l l l / ヽ. ヽ l l l l / / ヽ. ` 、 ヽ ヽ. レ、l l. l / / 丶、 ` 、 ヽ ヽ / ヘ \ l l / / ` 、_ \. ヽ. ∨ , `丶 \ ! l / ヽ - ニ_ー三>ィヘ、 ヽ ∨、ハ }. 〉j l l 「……ふぅん。勝手なまねを」 ト 、 \ ` 、 丶、  ̄ / j ` 、 ヽ}_」 j /∧. l l `丶、\ `丶、_`ァハ / ` 、 l!__, / Ⅵ l `丶\ゝ、_,イ{j } / ヽl.// ∧ Ⅴ ! `丶、 ヽ ´ Ⅵ ,ヘ ヽ l l ソ‐-、_` 、  ̄´ \ヽ. l. l / `丶 」____\ヽV / |  ̄ ̄ く、 | `丶, _ | `´、_ /| \ ,イ .| ,rf⌒ ┌‐\ ∠.」 ! { | \__/ | _l. 弋_ | 〈 ̄.l l l l l l l j _____j___/______ ____/___\ _ _ \  ̄\. | |. //´ ヽ /´〉 | レ 〈 404 :社長の使い魔 ◆.H42NtoyGg:2008/03/10(月) 00 22 09.02 ID rPFUBLma0 / / / / ./ { 丶 \丶、 l . / / .| | | ./ ヽ l 八 _ ヽ }\ \ \ │ {/| l | レl┼─\l { -ヘ ヾ斗七7 ̄\ ヽ l l | j∧ . | 乂Vァ≧≠=kz∨ヽ Ⅳz=≠テ≦、 ∧ | l | lヽ ヽ ヘ 〃 fて ,ハ } . . / fて ハ }ト } j ∧. .| 「……セト」 } |\\ .|ヾ 弋っ;辷リっ j// c辷う少 〃 // , ヽ! . / ハ  ̄ {ヽ( う¨¨´ , `¨¨( つイ ∧ \ / , O° ′ l◯ , ヽ \ / ◯ , _ __ ,′ / \ / ∧ ヽ /´ `´ `ヽ / / \ \ , / ∧ \ { } ィ´ ∧. \ ヽ i / _;/ ∧ > `ー一 ー‐ _< ., ゝ、 丶 , { ´ / ヽ \ > 、_ <// l \ .ヽ ∨ _/ , ヽ \ / / | \ ヽ / /´ } ∨⌒∨^ヽ /. ! ヽ } { { j }. /⌒ヽ ∨ { } , 409 :社長の使い魔 ◆.H42NtoyGg:2008/03/10(月) 00 23 13.12 ID rPFUBLma0 ,. ヽ. ヽ l l l l / ヽ. ヽ l l l l / / ヽ. ` 、 ヽ ヽ. レ、l l. l / / 丶、 ` 、 ヽ ヽ / ヘ \ l l / / ` 、_ \. ヽ. ∨ , `丶 \ ! l / ヽ - ニ_ー三>ィヘ、 ヽ ∨、ハ }. 〉j l l 「喚くな凡骨。見苦しい顔をさらに歪めてどうする気だ」 ト 、 \ ` 、 丶、  ̄ / j ` 、 ヽ}_」 j /∧. l l `丶、\ `丶、_`ァハ / ` 、 l!__, / Ⅵ l `丶\ゝ、_,イ{j } / ヽl.// ∧ Ⅴ ! `丶、 ヽ ´ Ⅵ ,ヘ ヽ l l ソ‐-、_` 、  ̄´ \ヽ. l. l / `丶 」____\ヽV / |  ̄ ̄ く、 | `丶, _ | `´、_ /| \ ,イ .| ,rf⌒ ┌‐\ ∠.」 ! { | \__/ | _l. 弋_ | 〈 ̄.l l l l l l l j _____j___/______ ____/___\ _ _ \  ̄\. | |. //´ ヽ /´〉 | レ 〈 412 :社長の使い魔 ◆.H42NtoyGg:2008/03/10(月) 00 24 44.11 ID rPFUBLma0 / / / / ./ { 丶 \丶、 l . / / .| | | ./ ヽ l 八 _ ヽ }\ \ \ │ {/| l | レl┼─\l { -ヘ ヾ斗七7 ̄\ ヽ l l | j∧ . | 乂Vァ≧≠=kz∨ヽ Ⅳz=≠テ≦、 ∧ | l | lヽ ヽ ヘ 〃 fて ,ハ } . . / fて ハ }ト } j ∧. .| 「うるさいわね……私、あんたがいなくなったらどうすればいいのよ…… } |\\ .|ヾ 弋っ;辷リっ j// c辷う少 〃 // , ヽ! また、何にも出来なくなっちゃうじゃない…… . / ハ  ̄ {ヽ( う¨¨´ , `¨¨( つイ ∧ \ ここまであんたといたからなんとかなったのに……」 / , O° ′ l◯ , ヽ \ / ◯ , _ __ ,′ / \ / ∧ ヽ /´ `´ `ヽ / / \ \ , / ∧ \ { } ィ´ ∧. \ ヽ i / _;/ ∧ > `ー一 ー‐ _< ., ゝ、 丶 , { ´ / ヽ \ > 、_ <// l \ .ヽ ∨ _/ , ヽ \ / / | \ ヽ / /´ } ∨⌒∨^ヽ /. ! ヽ } { { j }. /⌒ヽ ∨ { } , 419 :社長の使い魔 ◆.H42NtoyGg:2008/03/10(月) 00 27 43.80 ID rPFUBLma0 ,. ヽ. ヽ l l l l / ヽ. ヽ l l l l / / ヽ. ` 、 ヽ ヽ. レ、l l. l / / 丶、 ` 、 ヽ ヽ / ヘ \ l l / / ` 、_ \. ヽ. ∨ , `丶 \ ! l / ヽ - ニ_ー三>ィヘ、 ヽ ∨、ハ }. 〉j l l 「ふぅん。甘えるなといったはずだ ト 、 \ ` 、 丶、  ̄ / j ` 、 ヽ}_」 j /∧. l l それに貴様はすでに『ゼロ』ではないのだろう `丶、\ `丶、_`ァハ / ` 、 l!__, / Ⅵ l その力が伝説ならば、俺の青眼の力を乗り越えてみるがいい `丶\ゝ、_,イ{j } / ヽl.// ∧ Ⅴ ! そうでなくては俺がわざわざこの世界に召喚されてやった価値がない」 `丶、 ヽ ´ Ⅵ ,ヘ ヽ l l ソ‐-、_` 、  ̄´ \ヽ. l. l / `丶 」____\ヽV / |  ̄ ̄ く、 | `丶, _ | `´、_ /| \ ,イ .| ,rf⌒ ┌‐\ ∠.」 ! { | \__/ | _l. 弋_ | 〈 ̄.l l l l l l l j _____j___/______ ____/___\ _ _ \  ̄\. | |. //´ ヽ /´〉 | レ 〈 425 :社長の使い魔 ◆.H42NtoyGg:2008/03/10(月) 00 30 09.86 ID rPFUBLma0 __ _, ´ `丶、 / \ / , / / / ヽ `ヽヽ l l j __ // ,イ 、ハヽ }! ハ l l 「 j_从7ヽハ !七大 ` } リ }/ | l Vf゙仡圷/ jl ノィアト、ヘ// / j l l V_ ソ ´ V リ /jイノ 「……あんたは最後の最後まで憎まれ口を叩くのね , ハ ヘ. ` , l ! ……いいわ、絶対に超えてやるわよ」 / / l ヽ ー ‐ .厶 |ハ それであんたをもう一回召喚して見せ付けてやるんだから!」 // ∧ 弋ト 、 __ , r<7 l ヽ / / / ∧ Vー、 Kヽ{ ヽ ヽ / /./ /¨} ,__∧_j_l ハ \ }/ ,′ l { / / / ヾ ☆Y ハ X { V r / / \__j 入xぅ/ \ ヽ l { / / V //∠ , } ! j/ / ! ∧V _二} ヽ / / / { 〈 l / | j/ -ーソ ノ / / / |ヽ \ l /∠/j rテ 〃 ( ヽ , . / / 、__jノ ∧{ / ,/ { _/ ハ `ー彡 / 〃 、__ > / ;> ´ /! ∨ヘ ヾ \ < _ ヽ {{ =ァ 彡< / { く{ ヽ ヽ ユ=― ´ 430 :社長の使い魔 ◆.H42NtoyGg:2008/03/10(月) 00 31 29.06 ID rPFUBLma0 ,. -‐ 、. /  ̄`~` ‐ 、 / ` ` ‐、 / `‐、 / \ , \ / ! \ / l ! | i . / , │ l l ! | │ / /./ | │ l 、 | | | , | .l ! 「ふぅん。やってみるがいい」 . / / /l ! l | | | \ !|l | / | | ! / / ./ ! | l l | | ヽ. ヽ\ \ ヽ. ヽ. |│/ヽ| ! l ! ` ‐ 、| l ヽ. ヽ.ヽ. ! l\\`‐、ヽ、\ヽ.| レ /ヽヽl ! ! . `‐、| 、ト、__\ 、 ヽ. l トーz、-‐ラ フヽ!|!/_,ゝヽ }. |│ \ヽl\`ー ヽ、\ヽ ∨ー`‐← ||!-、-、 /! |│ ヽト. ´ ̄ジヽN` -ゝ |! リ /|.| | | ! \ _iー | |.| | | |\. \ r‐== ヲ |  ̄`~` ‐ - 、 | ` ー-ヽ、 V r -‐ / .| | | `‐、 `ー- ./| , -.、 | | `‐、 / .| { {lll}} f{! _ _,,. 、-‐ | `エ´-─ー| ` ー ゞ ´ ヽ` ー- |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;| / 435 :社長の使い魔 ◆.H42NtoyGg:2008/03/10(月) 00 32 22.05 ID rPFUBLma0 ,. ヽ. ヽ l l l l / ヽ. ヽ l l l l / / ヽ. ` 、 ヽ ヽ. レ、l l. l / / 丶、 ` 、 ヽ ヽ / ヘ \ l l / / ` 、_ \. ヽ. ∨ , `丶 \ ! l / ヽ - ニ_ー三>ィヘ、 ヽ ∨、ハ }. 〉j l l 「ふぅん……凡骨」 ト 、 \ ` 、 丶、  ̄ / j ` 、 ヽ}_」 j /∧. l l `丶、\ `丶、_`ァハ / ` 、 l!__, / Ⅵ l `丶\ゝ、_,イ{j } / ヽl.// ∧ Ⅴ ! `丶、 ヽ ´ Ⅵ ,ヘ ヽ l l ソ‐-、_` 、  ̄´ \ヽ. l. l / `丶 」____\ヽV / |  ̄ ̄ く、 | `丶, _ | `´、_ /| \ ,イ .| ,rf⌒ ┌‐\ ∠.」 ! { | \__/ | _l. 弋_ | 〈 ̄.l l l l l l l j _____j___/______ ____/___\ _ _ \  ̄\. | |. //´ ヽ /´〉 | レ 〈 439 :社長の使い魔 ◆.H42NtoyGg:2008/03/10(月) 00 33 03.82 ID rPFUBLma0 / \ / / . . ..丶 / / / / \ . ... . . . . ヽ ./ / l . .l / \ . .ヽ丶 . `、 . . . . ハ l l | .!.{ . .{ ._{_, ._ヽ 斗 ト . ,. . .l . . . . , . .} | | l. l厶. イヽ .ヽ . ..ハ. l_}ヽ..}ヽ| . . . . . } / i i V _ヾ{z=k ハ.. . / ィ戈 〒ヾl . . ./∧ 「え? ……ん」 ノ ∧. ヽ ,ィf戈. ノ! }. / V≧ソ / / K . . .ヽ / . / ハ . ,` ヘ≧= ´ ´ ̄ イ . . . .| . .ヽ . .} / .. . / . . ヘ. ヘ . . ! . . . .l . . . . / / . . / . . . . ム . . 、 , ′ . ∧ . . . .{ ヽ . . { . . ./ .l . .ト、 ´’ イ . . . . ./ ヽ_ . . ヽ、 )ノ . .ヽ . . .j ! . l. > 、__, ィ ´ / . . . . ./ `ヽ . . . .  ̄ `ヽ , -一 . . / .∧ } . . V | 〉く ./ . / l . . . . . . . . } / . . . . / . . .{ \/ . . .l Ⅳ⌒ヽ// / / ヽ . . . . . . ., . / . . . . / . . . . .l / . . . } マ=マ / /. . ヽ ∧ . . . . . / { . . . / . . . . . . ./ . . . .人 弋7 { . . . . ヽ___ / l . . . . / `ヽ . . . ヽ . . ./ . ./ ヽV∠-ヘ . . . . . \ ! . . . .{ ノ . . .} . .{ .. . . ./ / ヘ . . . . . ヽ. | . . . . ゝ __ノ! ヾニ二 人 . / . .ヽ . . ./ ∧ \ . . . . . . .j | . . ヽ . _ノ 445 :社長の使い魔 ◆.H42NtoyGg:2008/03/10(月) 00 34 04.59 ID rPFUBLma0 ,. -‐ 、. /  ̄`~` ‐ 、 / ` ` ‐、 / `‐、 / \ , \ / ! \ / l ! | i . / , │ l l ! | │ / /./ | │ l 、 | | | , | .l ! 「ふぅん。これで一番初めの借りは返したぞ」 . / / /l ! l | | | \ !|l | / | | ! / / ./ ! | l l | | ヽ. ヽ\ \ ヽ. ヽ. |│/ヽ| ! l ! ` ‐ 、| l ヽ. ヽ.ヽ. ! l\\`‐、ヽ、\ヽ.| レ /ヽヽl ! ! . `‐、| 、ト、__\ 、 ヽ. l トーz、-‐ラ フヽ!|!/_,ゝヽ }. |│ \ヽl\`ー ヽ、\ヽ ∨ー`‐← ||!-、-、 /! |│ ヽト. ´ ̄ジヽN` -ゝ |! リ /|.| | | ! \ _iー | |.| | | |\. \ r‐== ヲ |  ̄`~` ‐ - 、 | ` ー-ヽ、 V r -‐ / .| | | `‐、 `ー- ./| , -.、 | | `‐、 / .| { {lll}} f{! _ _,,. 、-‐ | `エ´-─ー| ` ー ゞ ´ ヽ` ー- |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;| / 455 :社長の使い魔 ◆.H42NtoyGg:2008/03/10(月) 00 35 40.61 ID rPFUBLma0 _ , -‐ ´ `ヽ / `丶 / ヽ / / / 、ヽ ヽ 、 ハ { , i_i」Li 、 L,」__ } } | l { i´lzL」_ト、 iソリ_」Lリ` l l 「クス……あんたまだファーストキスを奪われたこと根に持ってたのね ∧ヾ〈.代ラj }ノ .代ラj.〉! / ト、 でもね、わたしもファーストキスだったんだからお互い様よ」 / 〉 ヘ ゞ- , ゞ- / ト、 \ 〈 / .iヘ r‐‐y イ / ヽ } ___ ) / / /`ト ,_‐ _,.イ/ ∧ \_ ノ . /´ ̄ __ノ / { /i/ ,r‐ 7´ ! ヽ `ヽ、 { /´ _,.イi ! |不,/´{ | } ヽ _ ヽ } / /ヽ、,_!|,/_, -ヽ ヾ / ノ ((__ノ__,ノ } ヾ ;/ ,.不ニ ;; _;; ゝ, ∨ / 465 :社長の使い魔 ◆.H42NtoyGg:2008/03/10(月) 00 38 10.58 ID rPFUBLma0 __// __ヾ==-、 f ´ ̄ , ´ `ヽ l | / / \ ∧/ / 〃 ;.イ/l } , ヽ l { l /__ / / /_/ /j / } | l レ/,,∠`/ /∠/メ// / l ! | 伐_j f以ヽ彡イ 「もう、セトさまってば……わたしにも自分からしてほしかったですわ ヽ ! i V;;リ {;;リ 〃 | ……セトさま、これをお受け取りください」 Vl | { l l ! l 、 ー .イ , __ 厂 ̄ ¨ヽ \ !-j> _ ィ<、 / ヽ `ート 、_r _\ヽ |,_ ̄ヘ二´¨l_ハ / ./゙ヽ /⌒く/ ヽ∠ヽ「j|`~/ //ヽ `∨ / } l l } Ⅵ ヽ 〉、 ∨ / ゝァ‐ } くrー! 入 } . .\ V二ニ〈 { / \ }∨ \∧ . . ヽ , } ン′ ヽ| ¨ヽ . .. ノ ヘ_/ ヽ { \ 8//~′ } _ `ヽ、__ __/ `ヽ_// 〃 / \  ̄/ /`===彳 r′ __ヽ { } j、 l く ハ /-- ――‐イ 〉 前へ トップページ 次へ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1803.html
「…で、俺はなにをすればいいんだ?」 あぐらをかく使い魔。 生徒たちが好き勝手な方向にクモの子を散らすように逃げ去っていった中、 歩いて少女の使い魔の部屋に到着したワムウと少女。 ワムウは、部屋に向かうまで真昼間であるはずの今、遮蔽物もなしに歩けることを不思議に思った。 しかし、それ以上に不思議に思ったのはッ! (月がッ!月が2つあるッ!…どういうことだ?太陽の光も少し体の調子を下げる程度で十分に動ける… 長い間直射を浴びていればダメージを受けるだろうが…風のプロテクターを使うよりもスタミナは安上がりだな…… だが、油断はできんな…シーザーのやったように、鏡などで太陽の光を集中させれば、十分致命傷になりうる… 天敵である波紋使いが今のところ見当たらん…そのためにも唯一の『天敵』である太陽光…もっとも違う世界であるようだし 太陽とは呼ばないのかもしれないが…太陽光には十分気をつけなければいけないな…) 「さっきも言ったように…使い魔は主人の目となり耳となる能力を与えられるはずなんだけど…なにも見えないし聞こえないわね…… 次に使い魔は主人の望むものを見つけてくるのよ。たとえば秘薬とかね。あんたどこの田舎に居たかしらないけど亜人なんだから そういうの詳しくないの?」 「そもそもここはどこだ?それすらわかっていない…魔法学校などと言っていたな、ここはスイスではないのか?」 「スイス?そんなところ聞いたことないわ。トリステイン魔法学院くらいは知ってるわよね?」 「そもそも魔法自体俺は知らん。俺の知らない土地で人間は二〇〇〇年の間にそこまで成長していたのか? ……ああ、ここは違う世界だったな、まあ似たようなものだろう。」 一呼吸空く。 「あ、あんた?なに言ってるの?違う世界から来て、しかも二〇〇〇年前から生きてるなんて言わないわよね?」 「正確には二〇〇〇年前から眠っていたというところか。念のために聞いておくがここは『地球』という言葉を知らないよな? もしくは『Tellus』『Earth』…それに似たような言葉でも構わん。」 「チキュウ?それがあんたのいた国?聞いたことないわね。大体二〇〇〇年間寝てて、ご飯とかどうしてたのよ?他にもいろいろ 生きてく上で必要あることあるでしょ?さすがに私でもそんな嘘にひっかからないわよ。」 「石と同化して二〇〇〇年間眠っていた。食料も二〇〇〇年程度いらん…が、こちらに来てなにも食べていないな。 お前ををまず食ってみようか?」 しばしの沈黙。 「きゃああああァアアアアアアーーッ!!」 大声で悲鳴をあげる。 窓を思いっきりあけ逃げようとする少女。 「冗談だ、それほど騒ぐな」 「冗談って、あ、あんた二〇〇〇年眠ってたってのも?」 「それは本当だ。人間を食うこともな」 「きゃああああァアアアアアアーーッ!!」 二度目の悲鳴。先ほどの悲鳴より強いようだ。 「ルイズッ!うるさいわよッ!」 悲鳴を聞きつけたのか、赤髪のグラマーな女性が彼女の部屋に怒鳴り込んでくる。 「ひとりで逃げるのよキュルケ。あんたを逃がすのは私であり……そこのサラマンダーであり、あたしの魔法 爆発… 生きのびるのよ あんたは『希望』!来いッ!ワムウ!」 「あ、あんた、何を言ってるのよ…脳みそがクソになったの?」 「……なにを勘違いしているんだ。お前の使い魔になったといっただろう。起きている間でも二〇〇〇年やそこら人間を食わなくても済む。 他の…人間どもの一般的な食事があればな」 「な、なんだ……じゃあやっぱり私の使い魔で私を食べたりはしないのね」 「うむ。少なくともお前はとりあえずしばらくの間は食わないし、食う価値も今のところはなさそうだ」 「やっぱ逃げてええええキュルケェえええええッ!」 もう既に赤髪の女は居なかった。 * * * 「先ほどの女はなんだ?そういえばお前の名前も聞いていなかったが。ルイズというのはわかったがな」 「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、由緒正しきヴァリエール家の三女よ」 「さっきの女、キュルケとやらは?」 「キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。忌々しきツェルプストー家の尻軽女よ。 ああ、憎たらしい!あんな女逃がそうとなんかしなきゃよかったわ。とっくのとうにいなくなってるしね……」 顔を真っ赤にして怒鳴り散らす。 「ツェルプストー家になにか因縁でもあるのか?」 「数え切れないほどあるわよ!キュルケのひいひいひいひいおじいさんのツェプルストーはわたしのひいひいひいおじいさんの恋人を 奪ったのよ!今から二百年前に!それから、わたしのひいひいおじいさんは……」 「人間どものつまらん話など聞く必要はない。それより飯だ。まさか使い魔にはないとは言わないよな?」 先ほどの『食料は人間』という話を思い出す。 顔が青ざめていき、高ぶっていた心は一気に冷めていった。 彼女の口の動力機関はぴたっと止まった。 「え、ええ。食堂はこっちよ。」 (数段ランク落ちたものを食べさせて威厳を見せつけようと思っていたのに、こんなんじゃそんなものあげるにあげられないじゃないッ! はあ、私なにを呼び出しちゃったのかしら……い、いえ!ポジティブに考えるのよ!『ゼロ』だってバカにしてた奴らを追い払うくらいの…) 「どうした、行くんじゃないのか?」 ワムウに声をかけられ、思考は中断する。 「ひゃっ、……は、はい。」 寮の出口へ2人は歩き出した。 * * * 「うーむ、なんじゃあの使い魔は。あんなパワーを持った亜人みたことないぞい……多少鈍っているとはいえ、コルベール君、君が 本気を出して放ったファイヤーボールを片手で止めるとは……」 老人がいすの上で唸る。 「しかも、現状を一瞬で理解したことから、私たち以上といっても過言ではない判断力を持っているといっていいでしょう…… 特に……戦闘の際の判断力は、私が見てきた軍人たちの中から探してもあれほどの人間は居ませんでした。」 髪の薄い男性も唸る。 「で、君が調べたあのルーンは間違いないのかね?」 「はい、私も何度も確かめましたが間違いないでしょう。喜ぶべきなのか困るべきなのか……」 「やれやれ、よりにもよって伝説の使い魔ガンダールヴとはな…」 老人はため息をつく。 「やれやれ、ミス・ヴァリエールもやっかいな者を呼び出したようじゃわい…」 外からノック音が聞こえる。 息を切らした様子の緑色の髪の女性が入ってくる。 「ミス・ロングビル、そんなに慌てていてどうしたんじゃ?そんなんだから婚期を逃すんじゃよ」 「婚期は関係ありません!そんなことより、ヴェストリの広場で決闘がおきて大騒ぎになっています! 止めに入った教師たちも、生徒たちに邪魔されて、止めるに止められないようです」 「なんじゃ、そんなことか暇を持て余した貴族ほど、性質の悪い生き物はおらんわい。で、誰が暴れておるんだね?」 「一人はギーシュ・ド・グラモン」 「あのグラモンのところのバカ息子か。オヤジも色の道では剛の者じゃったが、息子も輪をかけて女好きじゃ。 おおかた女の子のとりあいじゃろう。相手は誰じゃ?」 「そ、それが……ミス・ヴァリエールの使い魔です…」 老人は二回目のため息をついた。 「やれやれ、今日は厄日かのう……」 * * * 数十分前の食堂。 ややにぎわっており、生徒たちであふれている。給仕たちや料理人たちもいそがしそうである。 そこに入っていったルイズとワムウ。 教室での騒ぎを知らない者の一部は好奇の目を向け、知っている者はそそくさと立ち去る、ルイズが座る席から離れる、気づかない振りをするなど 多種多様だが、多くは友人たちとの会話や食事を続けている。 ルイズ達が席について少し経つと料理が二人の前に運ばれてくる。 運んできたメイドは、ワムウの顔に少しおびえたのか、目の前に立った瞬間怯んだものの、何事もなかったかのように仕事を再開した。 「なあ、ギーシュ、お前、今誰とつきあってるんだよ!」 「誰が恋人なんだギーシュ!」 気障な少年が数人の友人に囲まれて話をしていた。 「つきあう?僕にそのような特定の女性は居ないのだ。薔薇は多くの人を楽しませるために咲くのだからね。」 今日も絶好調、気障なセリフが全快だッ! 友人の一人がギーシュのポケットの中のふくらみに気が付く。 「なあギーシュ、お前のポケットに入ってるものはなんだ?見せてみろよ」 「や、こ、これはだめだって!」 「いいじゃねえか。見られて困るものじゃないだろ?困るならなにか教えろよ」 「そ、それは……」 友人たちに迫られて後ずさりする。 ギーシュには幸運が二つあった! 友人が迫るスピードが遅かったために彼の影を踏むときにギリギリまで彼から遠くに居たこと! そして! 幸いにも回し蹴りが下半身に行ったこと! そのどちらの幸運がなかったとしても彼の人生は老化して首の骨を折られる以上の悲しい死因だったであろう。しかし彼はその大きな幸運より 目先の不運を恨んだのだった。 「うわらばッ!」 容器が割れる甲高い音と、彼の断末魔に似た声がする。 「な、なにしてるのよワムウ!」 「すまんな、坊主。俺は影に入られるのが嫌いでな。反射的に攻撃してしまった。まあ生きているようだし次からは気をつけるんだな。」 「お、おいギーシュ、大丈夫か?」 「なにか割れた音がしたけど……あれは!」 「モンモンラシーの香水の入った小壜じゃないか!割れてるけど」 「そうか、ギーシュはモンモンラシーとつきあってたんだな!」 「ああああああ!モンモンラシーからのプレゼントがあああッ!」 その嘆きを無視し食堂を出ようとするワムウに少年、ギーシュは叫び声を突きつける。 「お前!貴族になにをしたかわかっているのかッ!そして、お前が割ったのは僕の最愛の人モンモンラシーからのプレゼント! 謝罪ではすまないぞ!」 「ふむ、ではなにをすればいいんだね?」 ワムウが振り向きギーシュを見据える。 「決闘!それがグラモン家の流儀ィイイイイッ!ヴェストリの広場に来やがれッ!」 /|_________ _ / | | ̄| | | \ TO BE CONTINUED .. | |_| |_| \| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/6193.html
マンガ ワールドヒーローズ2(雑君保プ版)から根腐博士とその一行 1話目 2話目 3話目 4話目 前編 4話目 後編
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1809.html
決闘が終わり、もう夜。 月が2つ並んでいる。 「…まったく、無茶しちゃって……あんたまだ召還されて一日目よ!?よくもこんな問題おこせるものね!」 「無茶だというが、俺の実力は知っている。多少魔法が使える程度の小僧に負けるとは思えん。もし負けたとしたらそれほどの男であった、ということだ」 ルイズが声を張り上げる。 「ダー―ッ!違うわよ!別にあんたみたいな田舎の亜人が負けて怪我することは心配してないわよ!あんたの恐ろしさは召還してすぐわからせてもらってるわ! お生憎様!まったく、まだギーシュは決闘という形だったからよかったけど、あんたみたいな亜人が貴族を傷つけたりしたら即刻処刑よ! しょ・け・い!もし次傷つけたりしたら、運がよくてもアカデミーってところで輪切りにされるくらいは覚悟しときなさいよ、まったく」 まくしたてるように話し、終わった後ためいきをつく。 「それにしても、あんた異世界から来たって本当?確かにあんたみたいな亜人見たことも聞いたこともないけど。太陽の光に少し弱い、って 実は吸血鬼もどきじゃないの?人間食べるっていうのが本当なら吸血鬼以上ね……ああ、頭痛くなってきた」 「吸血鬼、か。こちらの世界にも居るのだな。だが、世界が違う以上部下になるかどうかはわからんな。カーズ様が居ない以上石仮面も作れんし」 「……ああ、もうなんでもいいわ、あんたの話にいちいち驚いてたら身が持たないわ…異世界からっていうと色々と説明がめんどくさいから ……そうね、東方のロバ・アル・カリイエから来たってことにしておいて。いい『ロバ・アル・カリイエ』よ。覚えた?」 「その程度の語、我々の知力ならば覚えるのはわけない。それより、そろそろ就寝しなくていいのか?俺は寝なくても構わんが寝れるならば寝ておきたい」 「あんた、いちいち物言いがムカつくわね…わかってるわ、もう寝るわよ。あんたは床だけどね!屋根があるだけ感謝しなさい!」 勝ち誇ったようにルイズが唸った。 「ゆか、だと?」 「そうよ、床よ」 (まあ亜人だしそんなもんよね、屋根があるところで寝れるってだけでも十分私は恩人だわ!ああ、なんて慈悲深いのルイズったら!) 「……狭いではないか」 「はぁ?」 まさかそういった返答が来るとは思っていなかったが、よくよく見てみると確かにあの巨体が寝るにはスペースが多少、いやかなり心許ない。 「どこで寝ても俺の勝手だろう、俺は外で寝かせてもらう」 「あ、ちょっと待っ…」 ワムウは窓を開けて外に飛び出していった。 外を見ると林の方向に飛び去るという感じで向かっていき、地面から木の上に数歩で上っていった。 どうやら木の上で寝るらしい。 「いっちゃった……色々としもべとして頼もうと思ったのに、どうしろっていうのまったく…」 ルイズは再度ためいきをついた。今日ほど幸せが逃げた日はないな、などと思いながら意識は薄らいでいった。 * * * 「シン……帰ったら俺の部屋の電気消しといてくれよな…むにゃむ……ハッ!」 「おい、起きろ」 ルイズは鈍い音で目を覚ます。 「なに!?なにがおこったの!?」 「使い魔らしく起こしてやったんだ、感謝するんだな」 「い、今の鈍い音はなに?」 「小型の真空竜巻をお前の頭上に放った」 ルイズが起き上がって枕を見ると無残にも羽毛がはみ出ていた。 ルイズが杖を持って立ち上がる。 「こ、この……」 「どうした?なにか不満か?」 ルイズは叫んだ。 「この汚らしいバカ犬がァーーーッ!」 ワムウは爆発で吹っ飛んだ。本日第一号だ。 「よくわかんないけどあんたが私の爆発に弱いのは割れてるのよ……いい、次こんなことやったら、全精神力をつぎこむわよ」 何事もなかったかのように立ち上がるワムウ。 「ふん、主人は主人でもカーズ様とは偉い違いだな、だがまあ今は頭を垂れておいてやろう」 「それで垂れてるつもりなの?まあ、いいわ。まずは着替えさせて。」 「着替えだと?俺の世界ではそれは自分でやるものだったが、こっちにはそんな風習があるのか?」 ルイズが肩をすくめる。 「あのね?田舎者のあんたは知らないだろうけど、貴族は下僕がいるときは自分で服なんか着ないのよ」 「そうか、俺は使い魔になるとはいったが下僕になった覚えはない、自分で着替えるんだな」 うー、と低い声で唸り返す。 「あんた、朝ご飯抜くわよ?」 「好きにしろ。我々は多少食わなくても構わないし、なんならどこかから『調達』してきても構わんしな」 ワムウは外を見る。 (昨日少し見回ったが、あそこの林には割と動物がいる。野兎くらいはいるだろう、むしろ昨日のようなこぎれいな料理では 足りん。どうにかして補充しなければならない以上、どれが食えるかくらいしっておいた方がいいのだろうな) 外を見ているワムウを見る。 (あ、あいつ飯を抜かれるって言ったとたん外を見てるわ!『調達』…ってもしかして…あ、あいつの目!生徒を見てるに違いないわ! 『号外 トリステイン魔法学院から行方不明者が頻出!』ってことも………そ、それだけは避けないと!) 「わ、わかったわよ!自分で着替えるわよ、自分で!朝飯も食べさせてあげるから待ってなさい」 「食堂の位置は覚えている。先に行っているぞ」 「ま、待ちなさいよ!つーかお願いだから待って!あんた一人で行動させたらろくなことがないから!」 そういえば、扉も窓もカギを閉めていたはずなのに、どこから入ったんだろうと思ってふと窓を見て… 無残にも割れているのを見て…泣いた * * * 朝食を終え、食堂を出て教室へ向かう。 よっぽど昨日の決闘とその前のイザコザが広まったのか、昨日以上におびえてる人間が多かった。 特にワムウの影だけは踏んではならない、ということを身にしみてわかっているギーシュの取り巻きたちは太陽がどこに転移しても 影が届かない位置を常にとるように過敏に反応していた。 (とりあえず朝食は終わったわ…ああ、なんで朝食くらいでわたしがこんなにビクビクしなきゃいけないの!) 「魔法の授業、とやらはなにをやるのだ?」 「今からやるのは土の授業よ、あの先生の授業は最初だから初歩からやるだろうしあんたのその自慢の『知力』なら理解できるんじゃない?」 皮肉げに言ってみるが、軽く流される。 2人は教室に辿り着き、入り口のドアを開けた。 騒がしかった教室が静まる。 「や、やあルイズ、おはよう」 いつも『ゼロのルイズ』とバカにしているマリコルヌが乾いた声で挨拶してくる。 ルイズは無視して席につく。みなワムウの一挙一投足を注視し、影を踏まないよう気をつけている。 ワムウがルイズの後ろに立ってから数分後、シュヴルーズ先生が入ってくる。 「皆さん。春の使い魔召還は、大成功のようですわね。このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に、様々な使い魔達を見るのが とても楽しみなのですよ」 先生はルイズの方向に目を向ける。 「ミス・ヴァリエールは大分変わった亜人を召還したようですね。なんでも人語を解する上に…とてもお強いとか…」 「は、はあ…」 「まあいいですわ、では授業を始めますよ」 授業が始まる。ワムウはその内容をだいたい整理する。 (魔法の系統は『火』『水』『土』『風』『虚無』があり、そのうち『虚無』は今は失われているというわけか… そして、土はこの世界ではいわゆる土木技術などを担っているらしいな) ミセス・シュヴルーズが真鍮の錬金を成功させると、ワムウも感嘆の声をあげた。 「ゴゴ、ゴールドですか?ミセス・シュヴルーズ?」 「違います、ただの真鍮です。ゴールドを錬金できるのは『スクウェア』クラスのメイジだけです。私はただの…『トライアングル』ですから」 (ふむ、あの言葉から察するにこちらでもそれなりに黄金には価値があるらしいな…だが、我々の世界と違い、採掘量が少ないからではなく、 錬金が難しいから価値が高騰している、とみたほうが良いようだな…我々の世界では黄金以上に価値が高かった銀も錬金できるのだろうか…) 「おい、ルイズ」 「なによ」 「気になっていたんだが、お前の属性はなんなんだ?」 ワムウの一番後方の席のマリコルヌが吹き出しかける。自分では隠しているつもりだろうがルイズにすらバレバレだ。 「爆発、ということはやはり火、か?エシディシ様も熱によって物体を爆発などさせていたが…」 「ミス・ヴァリエール!」 教師から叱責される。 「授業中の私語は慎みなさい」 「すみません……」 「おしゃべりをする暇があるのならあなたにやってもらいましょう」 「え?わたし?」 「そうです。ここにある石ころを、望む金属に変えてごらんなさい」 すると後ろの方から声があがる。 「先生、『ゼロのルイズ』にやらせると…」 声を出した生徒をワムウが睨む。 「おい小僧」 「ひッ!」 怯えて震えだす。 「なぜ主人は『ゼロのルイズ』などと呼ばれているのだ?」 「え、あ、それは…」 ルイズから声が飛んでくる。 「うるさいわねっ!ワムウもそんなこと聞かなくていいのよ!先生、やります、やらせてください!」 ルイズは前に歩いていく 「ヒッ!」 「このルイズ、容赦せんのか!」 「今週の山場ーっ!」 色々なところから声が漏れる、が無視してルイズは教卓の前に立ち、杖をかかげる。 「ミス・ヴァリエール。錬金したい金属を、強く心に思い浮かべるのです。」 ルイズはうなずき、杖を向ける。 生徒たちは、できるだけ教卓から離れ、机の下に逃げ込む。 数人こっそりと出て行く。 ルイズは短くルーンを唱え、杖を振り下ろす。 その瞬間、教卓ごと石ころが爆発した。 爆風をモロに受けたルイズとミセス・シュヴルーズが倒れる。 「HEEEEYYYY!!あんまりだァアアアアアッ!」 「ここはまだ地面だからな!ここには確実な生がある!!」 「芸術は爆発だ!」 「机の下に顔があっても良いじゃないか!」 「やられたまんねーん!」 「おしおきだべェーッ」 まさに阿鼻叫喚、地獄絵図。 煤をハンカチでふき取りながらルイズが言った。 「ちょっと、失敗したみたいね」 (なるほど、成功率『ゼロ』のルイズか…) 机の下に隠れていなかったためモロに食らったワムウは座り込みながらそんなことを考えていた。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1532.html
アルビオン王党派を破って後、レコン・キスタは神聖アルビオン共和国を名乗りトリステイン王国に対し戦端を開いた トリステイン‐ゲルマニアの軍事同盟はこれを抑止する事はかなわなかったのだ トリステインにとって長く苦しい戦争の始まりであった その戦火の中にトリステインの旗と共にアルビオンの旗を掲げるウェールズ王太子の姿が在ったと言う それぞれのその後 ■キュルケ 飽く無き恋の道をひた走り、ついに恋愛神「プッチーニ」に邂逅するに至る 「私はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。恋に生き、恋の為に戦う、炎の女よ」 ■タバサ ディアボロの持つ性質(一緒に消えたものを健康な状態で復活させる)を利用して母親を回復させる (なお、この性質は 『へし折られた』デルフリンガー、『鞭の跡が残る』マリコルヌ、『切り落とされた』ギーシュ 等、幾多の犠牲の上に確認された) ■シエスタ 作者の贔屓により幸せになる 如何幸せになるかは下の選択肢から選べ ①才人の彼女 ② 200の嫁 ③ハルケギニアのイイ男の妻 ■才人 出会い系サイトに金をつぎ込み、親にしばかれる 「キュルケにタバサにシエスタ、外人のオネーサンか!?」 ■フーケ 作者の贔屓の引き倒しにより超幸せになる 具体的には考えてない とにかく幸せになる ■ルイズ 常に使い魔を盾にするその姿から(情け)ゼロのルイズ 余りにも凹凸の無いその姿から(胸が)ゼロのルイズ 等、様々な意味の二つ名を手にする しかしその中に魔法が使えぬゼロという二つ名は存在しない そして、ディアボロ ルイズが死んだ 死因は老衰、天寿を全うし数多くの者達に見取られながら安らかに逝った これで自分を再召喚するものは居ない これからは以前の様に何処から来るか何時来るか分からない死を繰り返すのか それとも繰り返す死を乗り越えることが出来たのか すでに足元は固めてある、忌わしい死さえ乗り越えたならばこの世界で再び絶頂を極める日も近い 何処からか声が聞こえてくる 「…終わりが無いのが終わり…」 視界が暗転した 暗闇から転じた明るさに目を開ける すると目の前には見覚えのあるピンク色の髪をした貧乳がこちらを見下ろしていた 「アンタ誰?」 完
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1097.html
布地を勢いよく引っ張り、残っていた水気を振り落とす。 才人の日課である、朝から始めた今日の洗濯も、昼が近づくころには、終わりに近づいていた。 「はいこれ。洗っといてね」 どすんっ、と重そうな音を立ててルイズの洋服や制服、下着が山積みで目の前に置かれる。 「ちょ、ちょっとまて! 何でこんなにあるんだよ!?」 「あんた達を診てあげてる間に、こんなに溜まっちゃったの。まったく、余計なことばっかりして。ニョホが一番悪いけど、あんたも同罪よ」 最近ルイズはジャイロのことを、ニョホと呼ぶようになった。どうやら、彼からチビと言われることの意趣返しらしい。 「あれは……、あの金髪野郎だって悪いんだぜ。だってあいつ」 事情を話そうとした才人を、ルイズは遮る。 「私は止めろって言ったわ。なのに無視して、その上勝手に怪我して死にかけるなんて、使い魔の自覚が無さ過ぎよ」 その上、あんた達を助けるために、秘薬まで取り寄せたのよ。とルイズは付け足す。 確かに、命を助けてくれたのは感謝している。だけどあの時、ギーシュの横暴を才人は目の前で見せられた。 我慢しろと言われても、とてもじゃないができなかった。 「ルイズ、確かに俺やジャイロを治療してくれて、命を助けてくれたことは感謝してる。……けど、俺はギーシュってやつが、正しいことをしたとは思っていない」 「あいつが正しいことをするほうが少ないわよ。私が言ってるのは、あんたは使い魔なんだから、主人の命令を聞かなくちゃいけないのに、反抗したってこと」 「あいつのほうが間違っていたんだ。なのに、それを見て見ぬふりしろっていうのか」 命令違反をしてごめんなさい、と言えば、まあ許してやるかと思ったのに。予想に反して才人は自分の主張を曲げず、逆にルイズをじっと見据える。 それが、ルイズの心を波立たせる。 「貴族の行いを正すのは貴族の役目よ。あんたが出しゃばるようものじゃないわ」 「悪い行いをしていても、貴族なら許されるってのかよ。それって変だろ」 彼が投げかけた、当然の疑問。それがどんな意味を持つのか、このときのルイズには理解できなかった。 「うるさいわね……。とにかく、服、ちゃんと洗っといてよ」 それだけ言い残し、ルイズは授業に向かうため、部屋を出る。その去り際に。 「まったく、……何も言わない道具のほうが、まだマシよ」 そう、短く呟いた。 その言い草に腹が立って、ドアを閉めたルイズに向かって、才人は服の山を蹴り飛ばした。 「さてと……、あとはこれだけかな」 やっと一抱えほどになった洗濯物をタライに移し、さっさと終わらせてしまおうと、才人は取り組む。 隣にいるはずのジャイロの姿は無く、洗濯は才人一人で行っていた。 「洗濯はオメーに任せるぜ。オレはちっと用があるんでな」 カゴ一杯の洗濯物を洗い場まで持ってきた二人だったが、ジャイロが突然、そう言った。 「ジャイロ!? そりゃどういう――」 「図書館に行っててな……。なんとか文字を理解できそうなんだ。早えーとこ覚えて、こっからオサラバしてーんでな」 脱出の方法を、探す。それは彼が以前から言っている目的であり、少年も期待していることだった。 「できるのか?」 「いい講師が見つかってよォ。なんとかなりそうだ」 ニョホ、とジャイロが笑う。 「それによ……。オメー、オレの決闘に横槍入れたろ」 ビッとジャイロが才人に指を挿す。鼻先にいきなり指を突きつけられて、才人は、うっ、と唸った。 「ケッコーオレ、根に持ってんだぜェー」 「何言ってんだよ。後半ピンチだったじゃねーか。それに俺だって、あいつに痛めつけられたんだぜ。俺だって権利ぐらいある」 「まーオレもそんなに遺恨を残してーとは思わねー。……そこでだ、今日の洗濯をオレの分までやってくれたら、この件はキレイサッパリ忘れよーじゃねーの」 そう言うと、ジャイロはくるり、と後ろを向いて去っていく。 「お……おい! マジで見捨てる気かよ!」 「頑張れよー。少年」 笑い飛ばされ、才人はぽつんと、取り残された。 溜息を一つ吐く。それから――、壁のような下着の山から、憤りを込めて、洗い始めたのだった。 洗濯が最後になって、ようやく才人は、なにも手洗いをする必要なんてなかったんだよな、と気付く。 立ち上がって辺りを見渡す。地面を見渡して、丸みのある石はないか、と探す。 一つ、よさ気なものが、見つかった。 これで、あいつがやったように、楽に洗濯ができるんだと思うと、何故かわからないが、嬉しさがこみ上げてきた。 タライの中に石を置く。力が一番伝わるように、中心へ。 知らず、手に力がこもる。 大丈夫だ。だってできたんだ。鉄球を回転させて、飛ばすことができたんだから。今回も、できるはずだから。 「やっ!」 気合と共に、石を回転させる。だが、石はすぐに勢いを失う。 「あれ?」 やり方が悪かったんだろうか。もう一度同じように試す。だが、また結果は同じだった。 「何でなんだよ……?」 今回と前回、何が違うのか。それがわかれば、できるはずなんだ、と才人は思った。 あっ、と気がついて、ぽんっ、と手を叩く。 武器だ。 前は手に持った鉄球を、武器だと思った。そしたら回転したんだ。 なら、……今回も。 石を手に取る。タライの中心において、そして、念じた。 ――武器だ。これは武器。武器武器武器武器。……これは、武器! 紋章が僅かに、輝く。 「よっし……。いっけえ!」 力を込めて、手を放す。石は静かに、だが力強く回転を始め――。 才人が手を放した瞬間、意志はものすごい力で回転し、勢いを加速させる。その勢いで、水も回転し、水流が巻き起こる……までは、よかったのだが。 そのまま――、洗濯物を巻き込んで、タライを貫き、地面を採掘し、爆音を発して、吹っ飛んだ。 巻き込まれ切れ端になる下着。降りかかる土煙。巻き上がる砂煙。 折角綺麗に洗ったほかの洗濯物は無常にも、……やり直しをしなければならなくなり、がくっと才人は、膝を折った。 それとほぼ同時刻、ある教室から爆音が轟くのだが……、それはまた別のお話。 「魔法の成功確率がゼロ……。んで、“ゼロ”のおチビねェ……。よく言ったもんだ」 どこか遠いところで、爆発が聞こえたような気がしたが、すぐ静寂を取り戻す。 学院の図書室。その片隅で、ジャイロは何冊か本を片脇に積んで、読み漁っていた。 書士が留守の間に潜入し、独学の勉強をする。最近のジャイロの日課であった。 魔法による施錠をされている場所は入れなかったが、図書室はなかなか広く、それ以外の場所にも本はあった。 それを読み、文字を理解しようとしているのだった。 彼が読んでいるのは、文と一緒に、挿絵が載っている。恐らく、絵本の類なのだろう。 しかし……いい年こいた連中がいる学校に、なんで絵本があるんだ? と考えたジャイロだったが、考えるのもアホらしいので、止める。 「えーと……むかしむかしあるところに、おじいさんとおばあさんと……で、いいのかコレは」 あーでもねーこーでもねーと、ブツブツ言いながら読んでいたとき。 ガチャリ、と、ドアが開く音がする。それをジャイロは目で追い、入ってきた者の顔を見て、声をかける。 「よォ……。また逃げてきたのかよ」 「大爆発」 「あのおチビ、加減しらねーからなァ」 ニョホホと笑う。対する少女は、無表情だったが。 「んで、……またヒマだっつーんなら、教えてもらえねーか、センセイ」 「……新メニュー試食」 「あー……、わかった。それで手ェ打つわ」 ジャイロが椅子に腰掛け直す。それに続いて――、タバサが、隣に座った。 ジャイロがタバサから文字の読み方を教わり始めたのは、つい先日のことだった。 いつものように図書室に忍び込み、わからない文字を考古学者のように躍起になって解読していたとき。 授業中の時間帯なのに、さも当然のようにタバサが入ってきた。 お互いに一瞥する。ジャイロは彼女を、いま授業中じゃねーのかよ、こいつ案外不良じゃねーのか? と思った。 対するタバサは、何を考えているのか、全く読めない。 だが騒ぎ立てるようなことはせず、そのままタバサは本棚に向かって行った。 そのうち、奇妙な音が聞こえるようになった。 ぴょん、とも、ひょん、とも聞こえる、なんとも気の抜けた音。 さすがに気になって、音のするほうを覗くと、タバサが必死に、自分の背丈より高いところにある本をとろうとしていた。 「……何やってんだ、オメー」 たしかこいつ以前、空中に浮いてたよな。それ使えばいいんじゃねーのか、と思ったが。 ジャイロの問いかけに答えず、タバサは再び跳ねた。 「なァ……、もしかしてオメー。本、取りてーのか?」 気になって聞くが、彼女は無言で答えない。 「じゃー、なにやってんだオタク? 傍目から見てると奇怪でよォ」 跳ねるのを止めたタバサが、杖を持って、なにやら唱える。 すると、彼女の体が浮く。……しかし、少ししか浮かばない。 「なんだ? もっと浮けばいいじゃねーか」 「できない」 「なんでだ?」 「わからない」 何故か分からないが、魔法を制限する力がかかっている、とタバサが言う。 「ほー。魔法っても案外、便利なよーに見えて不便だな」 ジャイロがタバサに近づく。そして手を伸ばして、本を取り、タバサに渡す。 「ほれ、コレでいいのか?」 面食らったような表情を作り、タバサは無言で頷く。 「図書室は静かにするもんだぜ。じゃーな、青いおチビちゃん」 ニョホホ、と笑ってジャイロが戻っていく。 「読める?」 「あー?」 「本」 「いや。サッパリわかんねェ」 「……教える?」 それは願ってもない。 これがきっかけで――、実に奇妙な授業が開始されることになった。 「オールド・オスマン。やはり彼は」 「ミスタ・コルベール。早合点は禁物じゃぞ」 学院の一室。トリステイン魔法学院を束ねる学院長――オールド・オスマンのいる学院長室で、コルベールはある報告をしていた。 「まず、これについては他言無用じゃ。すべてを明るみに出すのは、もう少し先でもよいじゃろうて」 ほっほ、と笑い、オスマンは遠見の鏡を映し出す。 「しかし、……伝説か。あんまりろくなもんじゃないのう。伝説がもてはやされるという時代は」 大抵、乱世じゃ。と老人は呟いた。 「なにか、不吉なことの前兆なのでしょうか……?」 コルベールが、額の汗を拭き取りながら、大魔導師に尋ねる。 「わからんよ。なにもわからん。一寸先は闇じゃ。そう決まっておる」 そして、それ以上この話題に触れることを、許さぬ空気になった。 遠見の鏡に映されるのは、学院の一部分。 ジャイロがギーシュと決闘をした、あの庭が映っていた。 「派手に暴れたもんじゃのう……。直すの大変じゃぞい」 それと同時に、ばんっ! と部屋の扉が開け放され、秘書を勤めているミス・ロングビルがずかずかと入ってきた。 「おお~う。ミス・ロングビル。今日も一段と綺麗じゃのう。どれ、儂が一つその綺麗の秘密を探り当ててや、ろぶぇつ!」 ロングビルの膝が、オスマンの腹に入る。 「オールド・オスマン! あれほど言ってるでしょう! 私が湯浴みをしているときに、使い魔使って下着持って行かないようにと!」 つまみ出されたネズミは、間違いなく、オスマンの使い魔だった。 「おお~モートソグニル。残念じゃ、見つかってしまったのか。惜しいのう。実に惜しい」 げしげしっ! ロングビルのつま先がオスマンの背中に当たる。 「まったくセクハラですわよ! オスマン学院長ともあろうお方が、生徒達に手本にならぬようなことをするなんて!」 「いやいや、まったくすまんのう。……ところで、ミス・ロングビル? もしかして……、今、ノーパン?」 げしげしげしげしげしげしげしげしっ!!! 誰もこの時、鏡の景色を見てはいなかった。 ギーシュが最後に倒れた場所に、奇妙に残る不気味な手形が一つあったことなど。……誰も気がつかなかった。 そして一陣の風が吹くと共に――、それは跡形も無く、消え去ったことなど。
https://w.atwiki.jp/shachozero/pages/122.html
428 :社長の使い魔 ◆.H42NtoyGg:2008/01/27(日) 22 36 43.89 ID Mfbr7B940 ,. ヽ. ヽ l l l l / ヽ. ヽ l l l l / / ヽ. ` 、 ヽ ヽ. レ、l l. l / / 丶、 ` 、 ヽ ヽ / ヘ \ l l / / ` 、_ \. ヽ. ∨ , `丶 \ ! l / ヽ - ニ_ー三>ィヘ、 ヽ ∨、ハ }. 〉j l l ト 、 \ ` 、 丶、  ̄ / j ` 、 ヽ}_」 j /∧. l l 「……ふぅん」 `丶、\ `丶、_`ァハ / ` 、 l!__, / Ⅵ l `丶\ゝ、_,イ{j } / ヽl.// ∧ Ⅴ ! `丶、 ヽ ´ Ⅵ ,ヘ ヽ l l ソ‐-、_` 、  ̄´ \ヽ. l. l / `丶 」____\ヽV / |  ̄ ̄ く、 | `丶, _ | `´、_ /| \ ,イ .| ,rf⌒ ┌‐\ ∠.」 ! { | \__/ | _l. 弋_ | 〈 ̄.l l l l l l l j _____j___/______ ____/___\ _ _ \  ̄\. | |. //´ ヽ /´〉 | レ 〈 436 :社長の使い魔 ◆.H42NtoyGg:2008/01/27(日) 22 38 47.94 ID Mfbr7B940 __// __ヾ==-、 f ´ ̄ , ´ `ヽ l | / / \ ∧/ / 〃 ;.イ/l } , ヽ l { l /__ / / /_/ /j / } | l レ/,,∠`/ /∠/メ// / 「し、失礼しました」 l ! | 伐_j f以ヽ彡イ ヽ ! i V;;リ {;;リ 〃 | Vl | { l l ! l 、 ー .イ , __ 厂 ̄ ¨ヽ \ !-j> _ ィ<、 / ヽ `ート 、_r _\ヽ |,_ ̄ヘ二´¨l_ハ / ./゙ヽ /⌒く/ ヽ∠ヽ「j|`~/ //ヽ `∨ / } l l } Ⅵ ヽ 〉、 ∨ / ゝァ‐ } くrー! 入 } . .\ V二ニ〈 { / \ }∨ \∧ . . ヽ , } ン′ ヽ| ¨ヽ . .. ノ ヘ_/ ヽ { \ 8//~′ } _ `ヽ、__ __/ `ヽ_// 〃 / \  ̄/ /`===彳 r′ __ヽ { } j、 l く ハ /-- ――‐イ 〉 437 :社長の使い魔 ◆.H42NtoyGg:2008/01/27(日) 22 39 31.34 ID Mfbr7B940 __ _, ´ `丶、 / \ / , / / / ヽ `ヽヽ l l j __ // ,イ 、ハヽ }! ハ l l 「 j_从7ヽハ !七大 ` } リ }/ | l Vf゙仡圷/ jl ノィアト、ヘ// / j l l V_ ソ ´ V リ /jイノ 「……行っちゃったわね」 , ハ ヘ. ` , l ! / / l ヽ ー ‐ .厶 |ハ // ∧ 弋ト 、 __ , r<7 l ヽ / / / ∧ Vー、 Kヽ{ ヽ ヽ / /./ /¨} ,__∧_j_l ハ \ }/ ,′ l { / / / ヾ ☆Y ハ X { V r / / \__j 入xぅ/ \ ヽ l { / / V //∠ , } ! j/ / ! ∧V _二} ヽ / / / { 〈 l / | j/ -ーソ ノ / / / |ヽ \ l /∠/j rテ 〃 ( ヽ , . / / 、__jノ ∧{ / ,/ { _/ ハ `ー彡 / 〃 、__ > / ;> ´ /! ∨ヘ ヾ \ < _ ヽ {{ =ァ 彡< / { く{ ヽ ヽ ユ=― ´ 440 :社長の使い魔 ◆.H42NtoyGg:2008/01/27(日) 22 39 58.74 ID Mfbr7B940 ,. ヽ. ヽ l l l l / ヽ. ヽ l l l l / / ヽ. ` 、 ヽ ヽ. レ、l l. l / / 丶、 ` 、 ヽ ヽ / ヘ \ l l / / ` 、_ \. ヽ. ∨ , `丶 \ ! l / ヽ - ニ_ー三>ィヘ、 ヽ ∨、ハ }. 〉j l l ト 、 \ ` 、 丶、  ̄ / j ` 、 ヽ}_」 j /∧. l l 「出て行ったな」 `丶、\ `丶、_`ァハ / ` 、 l!__, / Ⅵ l `丶\ゝ、_,イ{j } / ヽl.// ∧ Ⅴ ! `丶、 ヽ ´ Ⅵ ,ヘ ヽ l l ソ‐-、_` 、  ̄´ \ヽ. l. l / `丶 」____\ヽV / |  ̄ ̄ く、 | `丶, _ | `´、_ /| \ ,イ .| ,rf⌒ ┌‐\ ∠.」 ! { | \__/ | _l. 弋_ | 〈 ̄.l l l l l l l j _____j___/______ ____/___\ _ _ \  ̄\. | |. //´ ヽ /´〉 | レ 〈 445 :社長の使い魔 ◆.H42NtoyGg:2008/01/27(日) 22 40 43.22 ID Mfbr7B940 __ _, ´ `丶、 / \ / , / / / ヽ `ヽヽ l l j __ // ,イ 、ハヽ }! ハ l l 「 j_从7ヽハ !七大 ` } リ }/ | l Vf゙仡圷/ jl ノィアト、ヘ// / j l l V_ ソ ´ V リ /jイノ 「メイドね」 , ハ ヘ. ` , l ! / / l ヽ ー ‐ .厶 |ハ // ∧ 弋ト 、 __ , r<7 l ヽ / / / ∧ Vー、 Kヽ{ ヽ ヽ / /./ /¨} ,__∧_j_l ハ \ }/ ,′ l { / / / ヾ ☆Y ハ X { V r / / \__j 入xぅ/ \ ヽ l { / / V //∠ , } ! j/ / ! ∧V _二} ヽ / / / { 〈 l / | j/ -ーソ ノ / / / |ヽ \ l /∠/j rテ 〃 ( ヽ , . / / 、__jノ ∧{ / ,/ { _/ ハ `ー彡 / 〃 、__ > / ;> ´ /! ∨ヘ ヾ \ < _ ヽ {{ =ァ 彡< / { く{ ヽ ヽ ユ=― ´ 448 :社長の使い魔 ◆.H42NtoyGg:2008/01/27(日) 22 41 07.35 ID Mfbr7B940 ,. ヽ. ヽ l l l l / ヽ. ヽ l l l l / / ヽ. ` 、 ヽ ヽ. レ、l l. l / / 丶、 ` 、 ヽ ヽ / ヘ \ l l / / ` 、_ \. ヽ. ∨ , `丶 \ ! l / ヽ - ニ_ー三>ィヘ、 ヽ ∨、ハ }. 〉j l l ト 、 \ ` 、 丶、  ̄ / j ` 、 ヽ}_」 j /∧. l l 「メイドだな」 `丶、\ `丶、_`ァハ / ` 、 l!__, / Ⅵ l `丶\ゝ、_,イ{j } / ヽl.// ∧ Ⅴ ! `丶、 ヽ ´ Ⅵ ,ヘ ヽ l l ソ‐-、_` 、  ̄´ \ヽ. l. l / `丶 」____\ヽV / |  ̄ ̄ く、 | `丶, _ | `´、_ /| \ ,イ .| ,rf⌒ ┌‐\ ∠.」 ! { | \__/ | _l. 弋_ | 〈 ̄.l l l l l l l j _____j___/______ ____/___\ _ _ \  ̄\. | |. //´ ヽ /´〉 | レ 〈 453 :社長の使い魔 ◆.H42NtoyGg:2008/01/27(日) 22 42 03.69 ID Mfbr7B940 __ _, ´ `丶、 / \ / , / / / ヽ `ヽヽ l l j __ // ,イ 、ハヽ }! ハ l l 「 j_从7ヽハ !七大 ` } リ }/ | l Vf゙仡圷/ jl ノィアト、ヘ// / j l l V_ ソ ´ V リ /jイノ 「…………」 , ハ ヘ. ` , l ! / / l ヽ ー ‐ .厶 |ハ // ∧ 弋ト 、 __ , r<7 l ヽ / / / ∧ Vー、 Kヽ{ ヽ ヽ / /./ /¨} ,__∧_j_l ハ \ }/ ,′ l { / / / ヾ ☆Y ハ X { V r / / \__j 入xぅ/ \ ヽ l { / / V //∠ , } ! j/ / ! ∧V _二} ヽ / / / { 〈 l / | j/ -ーソ ノ / / / |ヽ \ l /∠/j rテ 〃 ( ヽ , . / / 、__jノ ∧{ / ,/ { _/ ハ `ー彡 / 〃 、__ > / ;> ´ /! ∨ヘ ヾ \ < _ ヽ {{ =ァ 彡< / { く{ ヽ ヽ ユ=― ´ 461 :社長の使い魔 ◆.H42NtoyGg:2008/01/27(日) 22 43 59.54 ID Mfbr7B940 ,. -‐ 、. /  ̄`~` ‐ 、 / ` ` ‐、 / `‐、 / \ , \ / ! \ / l ! | i 「ふぅん。凡骨、初めて貴様が役に立ったな . / , │ l l ! | │ あのままではメイドが何をしでかすかわかったものではない / /./ | │ l 、 | | | , | .l ! 褒めてやろう、ありがたく思え」 . / / /l ! l | | | \ !|l | / | | ! / / ./ ! | l l | | ヽ. ヽ\ \ ヽ. ヽ. |│/ヽ| ! l ! ` ‐ 、| l ヽ. ヽ.ヽ. ! l\\`‐、ヽ、\ヽ.| レ /ヽヽl ! ! . `‐、| 、ト、__\ 、 ヽ. l トーz、-‐ラ フヽ!|!/_,ゝヽ }. |│ \ヽl\`ー ヽ、\ヽ ∨ー`‐← ||!-、-、 /! |│ ヽト. ´ ̄ジヽN` -ゝ |! リ /|.| | | ! \ _iー | |.| | | |\. \ r‐== ヲ |  ̄`~` ‐ - 、 | ` ー-ヽ、 V r -‐ / .| | | `‐、 `ー- ./| , -.、 | | `‐、 / .| { {lll}} f{! _ _,,. 、-‐ | `エ´-─ー| ` ー ゞ ´ ヽ` ー- |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;| / 473 :社長の使い魔 ◆.H42NtoyGg:2008/01/27(日) 22 47 06.17 ID Mfbr7B940 / /. / . ./ . ./.. / `、 \ ,′ . i . .j{. . . .ハ. .{.. jノ ヽ \ \ ヽ . i |. . |. -八. .‐{七j´ {. . .. `ト、!. . . j } | . | |. . | /ァz≧=.kハ. ヽ . . j. .j\ハ. . . . / . j . | |. . l 彳 {iヘ j|ヾ ∨}. . . .,仟≦k |j . . . //∨ j ! |. . │` r チリ j. ./ {iヘイハ}从/イ ,′l ハ. . . | V_少 r リ /. . .「 | 「ほんと? ありがとー!」 . / /. ハ. . . l 、 ヾ , . . │ ! . /. . ./ . . . .ヽ ! i. . |八 . /. . . . /. . __,r-ヘ . .. , 「 マ イ. . | . ヽ /. . . . . // i. . . . ヽ丶、 ゝ / イ. . !. . {. . . `ー- _ . . . . . . .. . / |. . . . . \ > ‐-/⌒\│. . . . . . ヽ__ . . . . `ヽ . . . . . . . . / j. . . . . .. \ ̄/ /⌒ \ . . . . . \`ヽ . . . . . i . . . . . ./\ /. . . . . . . ∨ ′ /⌒_ヽ_ . . . \} . . . . . j . . . .く  ̄\ / . . . . . . . . l| / __ノ. . . . . .. ヽ . . . / . . . . / \ / . . . . . . . . l| / ヽ . . . . . . . } . . / . . ノ 7 . . . . . . . ハ {⌒( } . . . . . . ∧. ( _ . / / . . . . . / 厶 Y / . . . . . . . . / ∧ . . . . . .`ヽ / ( . . . . . / ヘ. | / . . . . . . . . / \ . . . . . . ) 483 :社長の使い魔 ◆.H42NtoyGg:2008/01/27(日) 22 48 59.36 ID Mfbr7B940 lア′ \ _/\ . / / / . . j . . \ ヽ ∨ _/ 〉 / / . ./ . . .; イ. . / \ . . .. 丶 l ∨ _/ __,/ ⌒ヽ /\. ./ . . . ./ |. . . ! . . ヽ .\ . . l ∨{/| \ / `、 . .! . . . /ト、. . . / {. . j{ . . . . |ヾ . }ヽ イ´ . . | !´ ト、 7 ∨. | . / .|. .\/ l . 八. . .. ... . .jハ. l/l . lヽ .. . l |__/ \ i .... l. .l . , j. .__/\ j / \ . . / /! _j / jl . | | . . . . . . . 「なんていうわけないでしょこのバカァーーー!!!」 ー―‐ | . .. | . | .{,>〃テFミ\/ } . //チF千ヾ<| .; . |¨ ̄`ヽ . . . . . ∧ | . Ⅳヘi{ !{ヘ `トヽ_/ 、ノ ´{iヘ } ! }ハ l/. . | ー‐=≦仏 l . .ハ. ヾ V ヽイj V ヽイ/ / . . | . _// ∧ |\_ ヽ _ ゞ‐= ゞ=- _ /. . . | / /_/_イヽ /{ . .} /. . . . | 厂 |{ .ヽ .八 __ -―=  ̄ ヽ /.. . . . | / __ | \ ..∨. . .l丶、 ∨ ̄ 〉ィ/.. . . . . ヽレ ´ ̄ ̄ / _`ヽ{/ ` . .\ | iく_> 、 _____, <r /. . . . . . { . . . . . . . ヽ /´ `\} / .. \ ヽ\__ ,>ー< ノ, .. . . . . . . ヽ . . . . . . . . . ,イ |/ .. ヽ、__〕/_____ `< i.. . . . . . . . \ . . . . . . │ ! ........................ ) } |.. . . . . . . . \. . . . │ .. { ,、 _/ / l . . . . . . . . .. \ . 496 :社長の使い魔 ◆.H42NtoyGg:2008/01/27(日) 22 50 32.33 ID Mfbr7B940 ,. -‐ 、. /  ̄`~` ‐ 、 / ` ` ‐、 / `‐、 / \ , \ / ! \ / l ! | i 「喚くな、うっとおしい」 . / , │ l l ! | │ / /./ | │ l 、 | | | , | .l ! . / / /l ! l | | | \ !|l | / | | ! / / ./ ! | l l | | ヽ. ヽ\ \ ヽ. ヽ. |│/ヽ| ! l ! ` ‐ 、| l ヽ. ヽ.ヽ. ! l\\`‐、ヽ、\ヽ.| レ /ヽヽl ! ! . `‐、| 、ト、__\ 、 ヽ. l トーz、-‐ラ フヽ!|!/_,ゝヽ }. |│ \ヽl\`ー ヽ、\ヽ ∨ー`‐← ||!-、-、 /! |│ ヽト. ´ ̄ジヽN` -ゝ |! リ /|.| | | ! \ _iー | |.| | | |\. \ r‐== ヲ |  ̄`~` ‐ - 、 | ` ー-ヽ、 V r -‐ / .| | | `‐、 `ー- ./| , -.、 | | `‐、 / .| { {lll}} f{! _ _,,. 、-‐ | `エ´-─ー| ` ー ゞ ´ ヽ` ー- |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;| / 504 :社長の使い魔 ◆.H42NtoyGg:2008/01/27(日) 22 53 38.56 ID Mfbr7B940 | l│└ ┐ ./ / \ \ ┌‐┘ ノ./ー─┘/ / i ヽ ヽ └―〃/ | ̄ ̄| ,′ , . ヽハ / ̄ ̄|│ 「丁 l ヽ ヽ l. l│ ヽ/丁| │|ヽ_ { j{ / N } │ │| |└┘ト l、∧ |ヽ { } } ヽ, 斗-┼ │l |│ | lヾ >k{_ \ ノ_ル<ハj / !│ 「あああ、あんたベッドのうう上に 八! ∨ ‐〒示心ーヘ ヽ戈云テテ‐レ j八 め、メイドを連れ込んで何をしてたのかしら!? / ∧ , ゞー ´ j/ ゞー / / \ 使い魔のくせにご主人様のベッドで何をしようとしてたのかしらぁ!? / ハ ∨/// /// / ∧ \ / /rヘ ヘ ___ _/_/¨ヾ ヘヽ ヽ / , -‐< } 个 ,、 rー ´__う /〃⌒ヽ \ ヽ \ . / ,イ } j ∨ > ー-- ‐ァ<.じ⌒ヽ、 Y ス \ l / / l { / ,. 厂V弋′ /^\ / ∧ \ } / / ヘ ∨ }ヽ /ー兮-ヽ /{ l、 // l \ . / /l ヽ/ / ∨_/ 厶ヽ_V フ / |\ \ . ,′ / | / / ∨/_ヽ∨ / /、__ l \ \ . l / ノ / \{ \∀/ { ム ) く \ ヽ ! / ヾ / \  ̄{ /ゝ-── { / ノ ヽ } ∨ / / `ヽ /厂ヽ 〉 l/ \ } / 509 :社長の使い魔 ◆.H42NtoyGg:2008/01/27(日) 22 55 32.28 ID Mfbr7B940 ,. -‐ 、. /  ̄`~` ‐ 、 / ` ` ‐、 / `‐、 / \ , \ / ! \ / l ! | i 「メイドが服を脱ぎだした . / , │ l l ! | │ それだけだ」 / /./ | │ l 、 | | | , | .l ! . / / /l ! l | | | \ !|l | / | | ! / / ./ ! | l l | | ヽ. ヽ\ \ ヽ. ヽ. |│/ヽ| ! l ! ` ‐ 、| l ヽ. ヽ.ヽ. ! l\\`‐、ヽ、\ヽ.| レ /ヽヽl ! ! . `‐、| 、ト、__\ 、 ヽ. l トーz、-‐ラ フヽ!|!/_,ゝヽ }. |│ \ヽl\`ー ヽ、\ヽ ∨ー`‐← ||!-、-、 /! |│ ヽト. ´ ̄ジヽN` -ゝ |! リ /|.| | | ! \ _iー | |.| | | |\. \ r‐== ヲ |  ̄`~` ‐ - 、 | ` ー-ヽ、 V r -‐ / .| | | `‐、 `ー- ./| , -.、 | | `‐、 / .| { {lll}} f{! _ _,,. 、-‐ | `エ´-─ー| ` ー ゞ ´ ヽ` ー- |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;| / 514 :社長の使い魔 ◆.H42NtoyGg:2008/01/27(日) 22 57 42.68 ID Mfbr7B940 lア′ \ _/\ . / / / . . j . . \ ヽ ∨ _/ 〉 / / . ./ . . .; イ. . / \ . . .. 丶 l ∨ _/ __,/ ⌒ヽ /\. ./ . . . ./ |. . . ! . . ヽ .\ . . l ∨{/| \ / `、 . .! . . . /ト、. . . / {. . j{ . . . . |ヾ . }ヽ イ´ . . | !´ ト、 7 ∨. | . / .|. .\/ l . 八. . .. ... . .jハ. l/l . lヽ .. . l |__/ \ i .... l. .l . , j. .__/\ j / \ . . / /! _j / jl . | | . . . . . . . 「んなわけないでしょーー!!!! ー―‐ | . .. | . | .{,>〃テFミ\/ } . //チF千ヾ<| .; . |¨ ̄`ヽ ああもう、あんたなんてクビよクビ! . . . . . ∧ | . Ⅳヘi{ !{ヘ `トヽ_/ 、ノ ´{iヘ } ! }ハ l/. . | 出てって! あんたの顔なんて見たくもない!」 ー‐=≦仏 l . .ハ. ヾ V ヽイj V ヽイ/ / . . | . _// ∧ |\_ ヽ _ ゞ‐= ゞ=- _ /. . . | / /_/_イヽ /{ . .} /. . . . | 厂 |{ .ヽ .八 __ -―=  ̄ ヽ /.. . . . | / __ | \ ..∨. . .l丶、 ∨ ̄ 〉ィ/.. . . . . ヽレ ´ ̄ ̄ / _`ヽ{/ ` . .\ | iく_> 、 _____, <r /. . . . . . { . . . . . . . ヽ /´ `\} / .. \ ヽ\__ ,>ー< ノ, .. . . . . . . ヽ . . . . . . . . . ,イ |/ .. ヽ、__〕/_____ `< i.. . . . . . . . \ . . . . . . │ ! ........................ ) } |.. . . . . . . . \. . . . │ .. { ,、 _/ / l . . . . . . . . .. \ . 518 :社長の使い魔 ◆.H42NtoyGg:2008/01/27(日) 22 59 52.19 ID Mfbr7B940 ,. -‐ 、. /  ̄`~` ‐ 、 / ` ` ‐、 / `‐、 / \ , \ / ! \ / l ! | i 「元から貴様の部屋にい続ける理由などないがな . / , │ l l ! | │ まぁいいだろう」 / /./ | │ l 、 | | | , | .l ! . / / /l ! l | | | \ !|l | / | | ! / / ./ ! | l l | | ヽ. ヽ\ \ ヽ. ヽ. |│/ヽ| ! l ! ` ‐ 、| l ヽ. ヽ.ヽ. ! l\\`‐、ヽ、\ヽ.| レ /ヽヽl ! ! . `‐、| 、ト、__\ 、 ヽ. l トーz、-‐ラ フヽ!|!/_,ゝヽ }. |│ \ヽl\`ー ヽ、\ヽ ∨ー`‐← ||!-、-、 /! |│ ヽト. ´ ̄ジヽN` -ゝ |! リ /|.| | | ! \ _iー | |.| | | |\. \ r‐== ヲ |  ̄`~` ‐ - 、 | ` ー-ヽ、 V r -‐ / .| | | `‐、 `ー- ./| , -.、 | | `‐、 / .| { {lll}} f{! _ _,,. 、-‐ | `エ´-─ー| ` ー ゞ ´ ヽ` ー- |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;| / 528 :社長の使い魔 ◆.H42NtoyGg:2008/01/27(日) 23 02 32.81 ID Mfbr7B940 rく! / / ! ヽ \. V勹! ∧| ! ! ! ∧ ! ∧ ! ! ∨ ! ! | ! !斗ヤT¨ヽハ T T ナト|、 ! | | | | ! | 斗=zミ | /,zぇ=rミ.レ| / .! | V!\|〈. {く _ハ ´ {く心! 〉厶イ .! 「えっ! あっ……出てっちゃった……」 / / | | トヘrリ トヘrリ / ! ∧ , / ! ハ ¨´ 、 `¨` / /!. ヽ / | ハ / / ! \ . / | > 、 ´ ` ,. イ / ! \ / /| ∨ !{r 、,. イ i / | ! \ / / ! ∨/^^^^^^^! / | ! \ 前へ 次へ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1377.html
最後の一手。 それは彼女が少年を篭絡させるための一手に他ならない。 既に彼は顔を真っ赤に染めながら、荒い鼻息を繰り返していた。 彼女は巣に捕らわれた羽虫を食おうとする蜘蛛のような気分で、ブラウスの最後のボタンを外そうと指を伸ばす。 まずはこの少年を墜とし、その後でゆっくりと、あの猛々しい青年も陥落させるのだ。 場合によってはこれから調教し、忠犬と化した少年にも協力してもらって。 方法はいくらでもある。美貌と体、自身を存分に使い尽くして、誘惑できない男はいない。それだけの自信が彼女にはある。経験がある。 そして妖しい目つきを、罠に乗った餌にむしゃぶりつこうとする獲物に向けて、最後の晩餐を与えようと。 そんなキュルケの仕草を、食い入るように見ていたのは、才人だけではなかった。 彼女の後ろに座っていたヴェリエも、その隣の男子も。数列離れていたマリコルヌさえも……、あられもないキュルケの姿を、食い入るように見ていた。 ぷつ。 最後の、ボタンが外された。興奮しすぎて涎すら流していた才人は喜び勇んでその御姿を……拝見できなかった。 机の中に屈んで顛末を見届けようとしていた才人の顔面に、隣のルイズの足が、めり込んでいたから。 「……い、犬ゥッ!」 げしっ。眉間に一発蹴りこまれる。 「何やってんのよ犬ッ!」 げしっ。さらに顎に一発。 「サカッてんじゃないの犬ッ!」 げしっ。喉に一撃。全く容赦が無い。 「駄犬ッ!」 げすっ。鳩尾に一発。距離が遠くて届かないから椅子から腰を浮かしてまで蹴りつける。そこまでするか。 「種犬ッ!」 げすげすっ。右頬に一発。左頬に一発。 「性獣ッ!」 げすげすげすっ。うずくまってさらけだした後頭部に三発。 「ケダモノッ!」 どげしっ! 止めに下腹部に一発。 「騒がしいですよミス・ヴァリエール。一体どうしたのです?」 ミセス・シュヴルーズが、なにやら騒々しいルイズに尋ねると、何でもありません、とルイズが答え、椅子に座り直した。 「……そうですか? それでは、次のページですが……」 首をかしげながらも納得したシュヴルーズが黒板に向き直ると、ルイズはペンを持って授業に戻り。 作戦が途中で邪魔されたキュルケはブラウスのボタンを戻しながら、ちっ、と小さく舌打ちし。 「ごめんなさい。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」 体罰に震えながら、机の下で、才人は小さく謝罪の言葉を繰り返し呟いていた。 「まったく……。ニョホは相変わらず、犬はよりにもよってツェルプストーの色香に迷うなんて……」 ブツブツと、なにやらイライラしながらルイズが授業の終わった学院の渡り廊下をずんずんと進む。 才人のことをさっきからずっと犬よばわりである。よっぽど、キュルケの誘惑に乗った才人が許せないらしい。 「だからルイズ、あれはあいつが勝手にやってきたことで、俺は無実なんだって」 自分の潔白を才人は主張する。むしろ被害者なんだと。 「あ、ああ、あんたは私の使い魔なの! キュルケのやつが色目を使ったって言うのなら、無視するのが使い魔の努めでしょ!」 いや、健全な男子なら無視できねぇって、あれは。 そう、心に思った才人だったが、口には出さない。 「……ったく。なあジャイロ。お前のところからは、見えたのか」 男二人で、主人から距離をとって話す。こういう話題は、男同士のほうが盛り上がるものだ。 「あー? ああ。アチーアチー言いながら脱いでたのは見えたな。ま、おチビが邪魔で完全には見えなかったがな」 「そっか。いやー、俺はもー、バッチリ見えちゃった。眼福眼福」 言いながら、さっきの光景を思い出し、鼻の下が伸びる才人であった。 「ニョホホ、そりゃいーモン拝めたなァ」 「ああ。もうそりゃすごかったさ。なんたって普段は見れない大型プリンのダブルマウンテンのっけ盛りだもんなー。もーちゃっちい小山なんか目じゃねーっつーか」 「ほほう」 キュピン、とジャイロの目が光る。 「白いブラウスの隙間から覗く褐色の柔肌……。その隙間が一つ、また一つと捲れていくカルタシス……、いやーあいつ、男が好きなチラリズムわかってるね」 顎に手を当て、サイトがキュルケの一挙一動を批評する。 「そんなものが目の前にあって、見るなだの無視しろだの、できると思うか、なあジャイロ」 「そりゃ見ちまうわな。向こうからやってくれるんだから、拒むこたーねーだろ」 「そうだよな。そのとおりだよ。なんたって普段絶対見れないものがプルンプルンしながら目の前で踊ってるわけですよ。そりゃ見るでしょ。見るよな、なあ見るだろ!?」 「あーそりゃ見る、間違いなく見るね。普段見る機会なんかねーもんだからなおさら見る」 「そーだよ。俺達、男だもんな。あんなのついてねーんだから見るって、絶対」 道が、遮られる。 ルイズが、二人の目の前、廊下の中央で、立ち尽くしていた。 「……て、」 向こうを向いたまま、ルイズが何か言った。その両手は硬く握られ、肌の色が変わっていた。 「はあ?」 よく聞き取れない。 「あ、ああ、あんた達、わ、わたしのう、後ろで、堂々と、あるだの、ないだのって……」 肩の震えが、怒りからのものだということに二人が気付いたのは、このあとのことである。 ルイズが振り返って、二人を睨む。 「わ、わたしを目の前にして、あるだの! ないだの! 好き勝手言ってくれるじゃないの!」 「落ち着けおチビ。オメー何怒ってんだ? 理解できねーぞ」 「うるさい! 私の使い魔のくせに! よりにもよってツェルプストーの大女と比較しようなんて、い、いいい、いい度胸じゃない!」 「比較? おいおいオメー、いよいよもって訳ワカンネーこと言ってるな。一体オレ達が、オメーのナニを見て、あのネーちゃんのナニと比較するってーんだ?」 その説明をしてくれ、と言われ、ルイズは、黙った。 俯いたその顔が、何故か赤い。 「オメー、熱でもあんじゃねーのか? 顔真っ赤だぞ」 「うるさい!」 ムキになって反抗するルイズの態度に、才人はピン、と来た。 「胸?」 ピシ。 真っ赤になっていたルイズの顔が、凍る。 「そーかそーか。やっぱ胸か。ルイズになくてキュルケにある。だったら胸しかねーよ。さすがゼロの魔法使い。魔法もゼロだが胸もゼロ!」 云い得てるね。まさにピッタンコ! そう調子よく吹き出す才人を眺める視線と、睨む視線。 ジャイロは、どーすんだこのタコ。このあとはよォー。つーかオレまで巻きこまれんだろーがという半ば諦めにも似たものだったが。 睨む視線を直視した才人は、伝説の怪物に睨まれたかのように、凍り付いてしまった。 ……人は極度の怒りのとき、表情は返って穏やかなものになるらしい。 少女の視線が、それに該当していた。 才人とジャイロ。才人は現行犯。ジャイロは幇助の罪にて。最低一週間の食事の権利の剥奪と、主の部屋での就寝を禁止された。 夜になった。 二つの月が今宵も爛々と輝き、夜風が冷たさを増す。 夕食と寝床を失ったジャイロと才人の二人は、この寒空の中、震えながら寄り添っているのだろうかとルイズは考え、少しばかり可哀想に思った。 そのまま部屋のドアを開けて外にいる二人の様子を見に行こうとも思ったが、やめる。 「悪いのは、あいつらなんだから」 自身のコンプレックスともいえる部分を馬鹿にされ、さすがにその怒りはまだ燻っていた。 明日以降はともかくとして、今日は徹底的にお仕置きしなければならないと、決め込んだ。 勉強する気も、起きている理由も無いので、そのままルイズはベッドに潜り込み、部屋の明かりを消し、眠りについたのであった。 一方その頃、例の二人は、寒空の中、お互いに体を暖めあって一夜を過ごしている……わけもなく。 アルヴィーズの食堂、普段ルイズ達貴族が食事をする場所の裏手にある、厨房の中にいた。 そこで働いているシエスタから、目の前に出された山盛りの暖かいシチューと、太い骨がついた、これまた大きくよくローストされた肉料理に齧り付いていたのである。 「余りモンですまねえが、味は保障するぜ、『我らの剣』! それに『我らの銃』!」 そう豪快に笑って二人に話しかける、この厨房のコック長、マルトーの傍らで、コック達が賄いの食事を取るテーブルの一席に座り、一心不乱にシチューを貪る才人がいた。 彼らの座っている椅子は、今ではもう二人の特等席と化している。 「美味い! 美味いよマルトーの親父さん! 今日のシチューは格別だ!」 「そりゃそうさ! そいつは貴族連中に出しているシチューだ! いつも俺たちが食っているものとは、材料から調理法、かかる手間まで桁違いだからな!」 「全くだぜ。つくづく貴族ってのはいい身分だな。シチューにこんな贅沢してやがるんだからよォ。……シエスタ、もう一杯おかわりくれよ」 マルトーの言葉に、ジャイロが同意しながら、飲み干したシチューの皿をシエスタに手渡す。 「ふふ、いいですよ。ちょっと待ってくださいねジャイロさん」 皿を受け取ったシエスタが、シチュー鍋に向かって奥に引っ込む。 「あいつらは確かに、俺たち平民にゃあ使えねえ魔法を使う。魔法は便利さ。魔法がなきゃこの国は、……いやこの世界はどこだって不便になっちまう。 だがな……、あいつらの中に、俺が作ったシチューの味をどれほど理解できるヤツがいると思う? 一握りもいやしねえ!」 学院の生徒に、マルトーがせっかく作ったシチューにソースを足して食っていた小太りの話を聞かされ、才人は笑い、ジャイロは吹き出す。 「ひどいヤツだな。親父さんのせっかくのシチューが台無しだ。親父さんの魔法を無駄にしてるよ」 「魔法? 冗談ゆうなよ! 俺は自分の腕だけで料理を作っているんだ! 魔法なんて反則技、使えたって誰が使うもんかよ!」 「いや、親父さんの料理そのものが魔法ってことさ。この絶妙な味付け、野菜の火の通し加減。誰にもできるもんじゃないよ。これだって一種の魔法さ」 才人が、マルトーの料理の感想を素直に言った。これだけの美味しさを引き出すマルトーの料理は、間違いなく魔法だと。 「ほんとうに、そう思ってくれるのか?『我らの剣』よ」 「ああ」 「『我らの銃』 ……お前もそう思うか?」 「料理のことについちゃあ素人だから難しいことは言えんが……オレが食ったこのシチューは、オレの生涯で一番美味いシチューだ。それはハッキリ言えるぜ」 マルトーは目頭が熱くなるのを感じ、思わず、二人の間に立って、二人の肩を抱きかかえる。 「ありがとう! お前らはいいやつだ! まったくいいやつらだ!」 そして二人の首を抱き寄せると。 「俺はお前らに感謝の気持ちでいっぱいだ! この気持ちをお前らに返そうと思う!」 そういうなり、才人の口にマルトーの太い唇が寄っていく。 「ま、まって。まってまってまてまてまて! 親父さん! 感謝されるのは嬉しいけど接吻は止めてくれ! あと『我らの剣』ってのも」 「どうして?」 「気持ちだけで十分さ」 「まったく謙虚なやつだな。奥ゆかしいところが、ますます気に入ったぜ!」 そう言って、マルトーは才人を手放した。 そして今度は、両手で捕まえたジャイロに寄っていく。 「オレにもまてまて。マルトーの親父さん。オレも気持ちだけで十分だぜ。ニョッホッホッホ」 「『我らの銃』よ。それじゃ俺の気持ちが収まらねえ。お前だけでも俺の気持ちを受け取ってくれ」 万力のような力を込めて、マルトーの口がジャイロに接近していく。 それを腕力で押さえようとジャイロが足掻く。 「サ、サイトさん……。なんか、ドキドキしますね、こういう場面」 シエスタがお盆から両目だけを覗かせて、しっかりと見ていた。 「シエスタ……トラウマになるから、見ないほうがいいと思うよ」 「おい才人! 見てねーで助けろ! おい! 聞いてんのか! おい! オメー!」 いや、いま邪魔すると、俺も巻き込まれるって。 才人は、せっかく助かった命を無駄にすまいと固く心に誓う。 そして後ろを向き、シエスタの前に立ってジャイロの姿を隠す。 すぐにその後ろで、断末魔が響いた。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1909.html
いつの間にか気を失ってしまったらしい。間田は仰向けのまま、ゆっくりと目を開けた。 「う・・・・」 眩しい。太陽の光が双眸に突き刺さる。―――太陽? そんなバカな。自分は学校から帰宅する途中だったはず。そんな時間帯に真上を見上げても、日の光に 目を焼かれるようなことはまずない。 今度は直に太陽を見ないように注意しながら、頭を持ち上げる。 視線の先には雲ひとつない青い空が広がり、太陽がさんさんと輝いていた。 「・・・・・ど、どうなってんだ・・・」 慌てて上半身を起こす。すると、身体を支えるため地面についた手のひらに、妙な感触が伝わってきた。 草だ。それもきれいに刈り揃えられた芝生。冷たいアスファルトの上ではなかった。 「・・・・・・・・・・・・・」 右を見る。灰色の壁が目に入った。視線を上にずらすと壁と同じ色の塔が見える。 まるでお城の中にいるようだった。 「杜王町にこんな場所あったっけか?」 今度は左を見る。黒いマントを身につけた妙ちきりんな連中が見えた。 なんだあれ。新興宗教か。しかし時代錯誤な格好してやがるな。 まるでRPGの登場人物がそのまま現実世界に出てきたかのような、古めかしい格好をしている。 あの青い髪の女の子なんて、でけえ杖持ってドラゴンまで従えてるぞ・・・って。 「・・・・・・・ドラゴン!?」 スタンド使いか、と間田は思わず身構えるが、よく見るとドラゴンは『実体』だった。 間違いなく、モノホンの血の通った『生き物』だ。 「ホントに・・・どうなってんだよ?」 そう呟き、頭を抱える。すると、すぐそばで草を踏みしめる音がした。 ―――反射的に正面を見る。 「あんた、誰?」 ド派手な桃色の髪に、鳶色の瞳を持った女の子が間田を見下ろしていた。 「・・・・俺は・・・間田敏和」 「どこの平民?」 「平民だぁ?」 聞きなれない言葉に、間田は思わずオウム返しで答える。 今どき、人のことをそんなエラそーに呼ぶ文化なんてあるんだろうか。 訝しげに女の子を観察していると、いつの間にか周りにいた黒マントの連中のひとりが声をあげた。 「ルイズ、『サモン・サーヴァント』で平民を呼び出してどうするの?」 誰かがそう言うと、間田を見下ろしている女の子以外の全員がどっと笑う。 「ちょ、ちょっと間違っただけよ!」 女の子は振り向き、鈴のようによく通る声で怒鳴る。 「間違ったって、ルイズはいつもそうじゃん!」 「さっすが、ゼロのルイズは言うことが違いますなァ~」 再び爆笑が沸き起こる。 ルイズと呼ばれた女の子はそっちを睨みつけると、人垣に向かって叫んだ。 「ミスタ・コルベール!」 人垣が割れ、ハゲ頭の中年男性が姿を現す。 間田は吹き出しそうになった。彼があんまりな格好をしていたからだ。 手には長い杖を持ち、真っ黒いローブを身に着けている。漫画やゲームに出てくる『魔法使い』そのまんまの格好だった。 その男に向かって、ルイズがお願いします、とかもう一回やらせてください、とか言いながら腕をぶんぶん振っている。 「あの! もう一回召喚させてください!」 「それはダメだ。ミス・ヴァリエール」 ミスタ・コルベールと呼ばれた男は首を横に振る。 召喚?なんだそりゃ。ファンタジーやメルヘンじゃないんだから。それとも、この子は頭がカワイソーなことになってるのか。 間田は気味悪げにルイズとコルベールを眺めていたが、しばらくするとルイズががっくりと肩を落とし、こちらに向き直る。 「あんた、感謝しなさいよね。平民が貴族にこんなことされるなんて、ありえないことなんだから」 「はあ? 貴族?」 アホか、と間田は付け足した。中世のヨーロッパじゃあるまいし、今どきそんなものいるわけがない。 間田を無視して、ルイズは諦めたように目を瞑り、手に持った指揮棒のようなものを振る。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。 この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」 朗々とわけのわからない言葉を並べると、ルイズは座ったままの間田に顔を近づけてくる。 「な、何すんだ」 「いいから・・・じっとしてなさいよ!」 がし、とルイズは間田の頭を押さえ、頭突きするかのような勢いで間田の薄い唇に自らの唇を重ね合わせたッ! ズキュウゥゥゥン、と奇妙な効果音が周囲に鳴り響いたとか鳴り響かなかったとか。 「ん・・・・・・・・」 「・・・・・・・・!?!?!?」 一方、初対面の女の子にいきなりファーストキスを奪われた間田敏和! スタンドも月までブッ飛ぶ衝撃ってやつを、間田は身を持って体感していた。 ああー、でもあったかいッ! そして柔らかいッ! 女の子と手すら繋いだことも無いというのに、いきなりキスとは!! 俺って果報モンだなあ、とか思った直後。 「―――うわっチィィィィィ!?」 「キャアッ!? なっ、何すんのよ!」 突如として間田の左手の甲に、焼きごてを押し付けられたかのような熱さと痛みが走った! 思わずルイズを突き飛ばし、手の甲を押さえてうずくまる。 「ぐぅぅ・・・あ、熱ッ・・・・!」 呻く間田に、ルイズの呆れたような声が届く。 「使い魔のルーンを刻んでるだけよ。すぐ終わるからしばらく我慢してなさい」 「つ、使い、魔ァ?」 痛みは徐々に引いていく。恐る恐る右手をどけると、見たこともない文字が手の甲に刻まれていた。 コルベールが近寄り、呆然としている間田の手を取ってその文字をしげしげと観察する。 「ふむ・・・・・珍しいルーンだな。さて、それじゃあ皆、教室に戻るぞ」 コルベールはそう言うと、ふわりと宙に浮かび上がった。周りにいた黒マント達もそれに続く。 去り際に、黒マントの連中が何人か、ルイズに声を投げかけてきた。 「ルイズ! お前は歩いてこいよ!」 「あいつ、『フライ』はおろか『レビテーション』も使えないんだぜ」 「その平民、あんたにはお似合いよ!」 口々にルイズを馬鹿にした言葉を残し、黒マントたちは塔の高いところにある窓に吸い込まれるように入っていく。 間田はその様子をぽかんと口を開けて見つめていた。 「空、飛びやがった・・・・・・」 スタンドかと思ったがどうも違うようだ。スタンドのヴィジョンはまったく見えないし、何よりあれだけの人数が『空を飛ぶ』という同じ能力を持つスタンドを有しているとは考えられなかった。 自分の知らない未知の能力なのか、それとも―――。 間田は先ほどまでのことを思い返す。コルベールのどこからどう見ても『魔法使い』な格好。ルイズが口走った『召喚』という単語。そして、左手の甲に突如出現したこの妙な文字。 空を飛ぶという事象も、こう考えれば納得が――――。 「・・・・いくわけねーだろ。マンガの読みすぎだな、『魔法を使ってる』なんてよォ~」 頭を振ってこの馬鹿げた考えを断ち切る。起きたばっかりで頭がまともに働かないんだろう、そう考えることにした。 空を飛ぶ謎は結局解明できていないのだが、間田はそんなことはどうでもいいとばかりに立ち上がった。 まずここがどこなのかハッキリさせなくては。連中がどんなヤツらか考えるよりも、まずそっちを確かめる方が重要だ。 そう思い、憮然とした表情で突っ立っているルイズの肩を叩く。 「なあ、ここはどこなんだ?」 ルイズは振り向いた。間田をジト目で見ながら、『なんでこんなのが使い魔なのよ・・・』と呟く。 そして仏頂面を崩さず、不機嫌そうに言った。 「トリステインよ。そしてここはトリステイン魔法学院」 「・・・・・・ハイ?」 ルイズの口から出た言葉に、思わずマヌケ面で聞き返す間田。 魔法学院、と彼女は確かに言った。『まほう』という地名・・・・・ではなさそうだ。 「聞こえなかった? それとも頭脳がマヌケ?」 「・・・・・『まほう』って、まさかあの『魔法』か?」 「あの、って何よ。魔法は魔法でしょ? はぁ、陰気臭いうえにとんでもない田舎者なのね。魔法を知らないなんて」 「空飛んでたのも魔法?」 「そうよ、当たり前じゃない! ・・・ああもう、授業が始まっちゃう・・・! ほら、教室に行くわよ!」 苛立った様子でルイズは踵を返し、塔の入り口に向かって行く。 「あ、おい!」 間田は慌てて地面に落ちていた自分の荷物を回収し、ルイズの後を追う。 これが虚無のメイジ、ルイズと、優しくてタフで頼りになる(予定の)使い魔、間田敏和の出会いだったのである。 ルイズは不機嫌だった。今日召喚した使い魔のせいである。 ベルトだらけの奇妙な服を着た、17、8歳くらいの平民の少年だ。彼は部屋についてから、色々なことをルイズに聞いた。 ここはどこなのか? ルイズたちは何者なのか? 貴族とは? 平民とは? 質問は多岐に渡った。 トシカズ、と名乗った彼はひっきりなしに質問を繰り返す。それこそ子供でも知っているようなことまで聞いてくるものだから、ルイズはいい加減イライラしていたのだ。 おまけに、最後には『自分は違う世界から来た』とのたまった。これにはさすがのルイズも『こいつはイカれてるのか?』という疑念を持たざるを得なかった。 しかし、ルイズから見て間田の言動はハッキリしているし、何より彼が語る異世界とやらの様子が非常に詳細で、クスリ漬けのイカレポンチの狂言だとはとても思えなかった。 「・・・・でも、いくらなんでも信じられないわ。違う世界なんて・・・」 ルイズは困った顔で言う。テーブルを挟んだ向かい合わせの位置に座った間田は、夜食にともらったパンをかじりながら、神妙な顔つきでうんうん頷いている。 「俺も最初は夢でも見てんのかと思ったけどな、アレを見て確信したぜ。ここは間違いなく別の世界だ」 そう言って、窓を指差す。空には紅と翠の、それぞれ大きさの違う二つの月が浮かんでいる。間田の話では、自分のいた世界には月はひとつしかないのだという。 「別の世界に来た割にはえらく落ち着いてるじゃない」 「わけのわかんねーことが連続するとかえって落ち着くもんだ」 もし自分が異世界とやらに来てしまったのなら相当に取り乱してしまうだろう。ルイズはそう思ったが、目の前の使い魔の少年は異様に落ち着いた態度で、パンの最後の一口を口に放り込んでいた。 この落ち着きっぷりに、やはりこの平民は自分を騙しているのでは?という疑念が拭えないルイズは、あることを間田に問う。 「何か、証拠を見せてよ。あんたが住んでる異世界の物とか持ってないの?」 「・・・・証拠ねえ」 ルイズの問いに、間田は一緒に召喚された自分の通学鞄を取り出す。 写真つきの教科書でもあれば良かったのだろうが、あいにく置き勉ばかりしていたため、登校中に買ったマンガ雑誌しか入っていなかった。 仕方なく、間田は『ピンクダークの少年』が表紙を飾っているそれをテーブルの上に置く。 「何これ?」 「俺の世界の本」 「絵ばっかりじゃない。あんた絵本を読む趣味でもあんの?」 「絵本じゃねえ! んだよ、マンガがねーのか、ハルケギニアってのは」 ルイズはページをパラパラとめくる。確かに、四角い枠で区分けされたページにはディフォルメされた絵と見たこともない文字が書かれており、ハルケギニアのものではないということがわかる。 しかし、これだけでは・・・とルイズが悩んでいると、間田と一緒に召喚されたらしいもう一つの荷物が目に入った。 その荷物―――大きなナップザック―――は、所々がいびつに歪んでいて、わずかに開いた口の部分からは、入りきらなかったのか太い木の棒が一本飛び出している。 ルイズはその変な荷物を指差す。 「あっちは何?」 「え?・・・・・・いや、あれは・・・。その、ちょっとな」 先ほどまでの冷静さもどこへやら。急にしどろもどろになった間田に、ルイズはピンと来た。 ――――この平民は、何か怪しいモノを持っているッ! 人が見せたがる物は別に見たくもないが、人が隠そうとする物はすごく見たい。 今のルイズはまさにそれだった! すかさず間田に高圧的な態度で迫る。 「いいから見せなさいよ。それとも何? ご主人様に見せられない物でも入ってるのかしら?」 「そんなん入ってねーよ」 「じゃあ見せて」 間田は舌打ちし、ナップザックのジッパーに手をかける。 ジィィィ、と口を大きく広げ、飛び出していた木の棒を引っ張り出す。 ズルズルと少しずつ全身像が露になる、その怪しい荷物とはッ! 「・・・・・・・・・何これ」 先ほどと全く同じ言葉を、全く違う調子で言うルイズ。 「えーっと、木の人形、かな?」 『だから見せたくなかったんだ』といった感じの表情の間田。 ナップザックの中に押し込められていた怪しい荷物。 それは関節が人間とほぼ同じように曲がる、人間と同サイズの木製の人形だったのである。 ルイズは知るよしもないことだが、この人形はご存知の通り、間田のスタンド能力を発揮するための媒体。 人形に触れた人間そっくりに化けるコピー人形なのだ。 このバカでかくてクソ重い人形を、間田はナップザックに入れて毎日持ち歩いていたのだった。 もちろん、知らない人間が見ればそれはそれは白い目で見られるのだが、目の前にいるルイズも例外ではなかった。 完全に変態を見る目つきになっているルイズに、間田は慌てて話題を変えようとする。 「な、なあ! ところで使い魔って何すりゃいいんだ?」 「・・・・そうね」 首を傾げて考え込むルイズに、間田は無事話を逸らせたことにほっと息をつく。 やがて、ルイズが口を開いた。 「使い魔には主人の目となり耳となる能力が与えられるんだけど・・・できないみたいね。何にも見えないし、聞こえないもの」 「はぁ」 「あと、秘薬の材料を探してくること。あんた、できる?」 「全然わからん」 にべもなく言う間田。ルイズはため息をつき、続ける。 「最後に、主人を守ること・・・・は、もっと無理そーね」 「何でだよ?」 「オーク鬼とかトロール鬼とかに一発でやられちゃいそうだもん」 ま、あんたじゃその辺の平民にも負けちゃいそうだけどね、とルイズは付け足した。 間田は付け足された悪口にカチンと来たが、言い返すよりも新たに飛び出した単語の意味を知るほうを優先した。 「オークとかトロールって何だ?」 「亜人よ。一匹で手練の戦士5人に匹敵する力を持っていて、人間を食べる怪物なの」 「・・・・そんなのがいるのかよ・・・・」 間田は急に怖くなった。まるでゲームのような世界だと思っていたが、そんなゲームよろしくモンスターまで棲んでいるとは思いもよらなかった。 もし道端でそんなのとエンカウントしたら秒殺されてしまいそうだ。サーフィスは直接戦闘には向かないし、人間じゃない連中をコピーできるとは限らないからだ。 「・・・・やっぱり、元の世界に返してくれ」 「は?」 「だ、だってそーだろ!? なんか話聞いてると俺、役に立たないっぽいし・・・俺なんか送り返して、また新しい使い魔呼べばいいじゃねーかッ!」 見よ! このブザマな主人公(ヒーロー)の姿を。間田は見たこともない怪物の姿に怯え、優しくてタフで頼れる男になるという誓いも忘れ、元の世界に戻してくれと懇願している! だが! だからといって間田がこの物語の主人公の資格を失いはしない! なぜならッ!! 「無理よ・・・送り返す魔法なんてないもの」 「・・・マジで?」 「マジよ」 間田が主人公の資格を失うとすれば、それは間田が死んだときだけなのだッ! 契約した使い魔が死なない限り、サモン・サーヴァントの呪文を唱えても召喚のゲートは出現しない。間田は死ぬまでこの世界に居続け、この高飛車な女の子の使い魔として暮らさなければならないのだ。 もちろん、ルイズもこんな死にそーなコオロギみたいな男を使い魔とするのはごめんだった。今すぐブチ殺して新たな使い魔を召喚したいというのが本音なのだが、そんなくだらないことで罪に手を染めることはしたくない。 それに、たとえ無知でなんの取り柄もない平民だとしても、一応は初めて成功した魔法の成果なのだ。 「だからあんたには私の身の回りの世話をやらせてあげるわ。掃除、洗濯、その他雑用」 「・・・・・・・・・わかったよ」 間田は露骨に嫌そうな顔をしたが、先ほどのオークだのトロールだのとやり合うよりはマシだと考え、渋々頷いた。 それに、衣食住はこの子に世話してもらうことになるのだ。言うことを聞いておかないと食事を抜くくらい平気でやりそうな気もする。 ルイズはその答えに満足そうに微笑み、ブラウスのボタンをはずし始めた。 当然、間田は目を丸くする。 「ちょ、何やってんのォ!?」 「? 寝るから着替えてるんだけど」 「・・・・男が部屋にいるのにか?」 「男って、あんた使い魔じゃない。別に気になんないわ」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・」 いつもの間田なら鼻の下を伸ばしながらチラチラ着替えを拝むのだろうが、さすがにそんな気は起きなかった。 人はペットが部屋にいても気にしない・・・それと同じ。要するに、自分は人間扱いすらされていないのだ。 使い魔とは思った以上に待遇が悪そうだ。そう考えた間田の頭に、柔らかいものが投げつけられた。 手にとって見ると、それはッ! 「こっ、こっ、これわァァ~~ッ!?」 脱ぎたてホヤホヤの、パンティーがッ!! 「それ朝になったら洗濯しとい・・・・・って、何でポケットに入れてんの?」 「え!? ああ~ゴメンゴメン! つい興奮・・・じゃなくて、何でもない! 何でもないから!」 「・・・? 変なヤツね」 ルイズは寝巻きに着替え終わると、ベッドに潜り込む。 ランプを消そうとすると、部屋をキョロキョロ見回している間田が目に入った。 「俺はどこで寝りゃいいんだ?」 「あー、忘れてたわ」 ほい、とボロい毛布を間田に投げる。 「布団が見あたらねーんだけど」 「布団? そんなの必要ないでしょ。それじゃ、おやすみ~」 パチンと指を鳴らすとランプが消え、あたりは闇に包まれる。 間田は仕方なく固い床に寝転んだ。毛布を被ると、どっと疲れが押し寄せてくる。 「ハァ。寝る場所もマトモに与えられないなんて、奴隷と似たようなもんじゃねーか・・・」 耳を澄ますと、ふかふかのベッドの中からルイズの気持ちよさそうな寝息が聞こえてくる。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 なんとなく悔しくなって、ポケットに手を突っ込み、さっき入手したパンティーを取り出す。 まだルイズのぬくもりがかすかに残っている。 固い床の寝床も少しはマシになった気がする。やってることは最低だが。 こうして、間田の使い魔生活第一日目は幕を閉じた。 彼は無事に元の世界に帰ることができるのか。そして、優しくてタフで頼りになる、ハードボイルドな男になることはできるのか・・・。 結末は、まだ誰も知らない。 .....To Be Continued →