約 1,746,212 件
https://w.atwiki.jp/zerolibrary/pages/25.html
【種別】 用語 【解説】 主にメイジに付けられるあだ名のようなもの。 得意とする魔法や特徴、特性に応じて自ら名乗ったり、人から呼ばれたりする。 ゼロ:ルイズ 青銅:ギーシュ 微熱:キュルケ 雪風:タバサ
https://w.atwiki.jp/zerolibrary/pages/4.html
ニュース @wikiのwikiモードでは #news(興味のある単語) と入力することで、あるキーワードに関連するニュース一覧を表示することができます 詳しくはこちらをご覧ください。 =>http //atwiki.jp/guide/17_174_ja.html たとえば、#news(wiki)と入力すると以下のように表示されます。 【グランサガ】リセマラ当たりランキング - グランサガ攻略wiki - Gamerch(ゲーマチ) 【まおりゅう】八星之紋章交換のおすすめ交換キャラ - AppMedia(アップメディア) Among Us攻略Wiki【アマングアス・アモングアス】 - Gamerch(ゲーマチ) マニュアル作成に便利な「画像編集」機能を提供開始! - ナレッジ共有・社内wikiツール「NotePM」:時事ドットコム - 時事通信 マニュアル作成に便利な「画像編集」機能を提供開始! - ナレッジ共有・社内wikiツール「NotePM」 - PR TIMES 【Apex Legends】ヴァルキリーの能力と評価【エーペックス】 - Gamerch(ゲーマチ) モンハンライズ攻略Wiki|MHRise - AppMedia(アップメディア) 【ウインドボーイズ】リセマラ当たりランキング(最新版) - ウインドボーイズ攻略Wiki - Gamerch(ゲーマチ) ポケモンBDSP(ダイパリメイク)攻略wiki - AppMedia(アップメディア) 【テイルズオブルミナリア】リセマラ当たりランキング - TOルミナリア攻略Wiki - Gamerch(ゲーマチ) SlackからWikiへ!シームレスな文章作成・共有が可能な「GROWIBot」リリース - アットプレス(プレスリリース) ドラゴンクエストけしケシ攻略Wiki - Gamerch(ゲーマチ) 【ウマ娘】チャンピオンズミーティングの攻略まとめ - Gamerch(ゲーマチ) 【ウマ娘】ナリタブライアンの育成論|URAシナリオ - Gamerch(ゲーマチ) 【ウマ娘】フジキセキの育成論|URAシナリオ - Gamerch(ゲーマチ) サモンズボード攻略wiki - GameWith 【スタオケ】カード一覧【金色のコルダスターライトオーケストラ】 - Gamerch(ゲーマチ) 【スマブラSP】ソラのコンボと評価【スマブラスペシャル】 - Gamerch(ゲーマチ) 【ブレフロレゾナ】リセマラ当たりランキング【ブレイブフロンティアレゾナ】 - ブレフロR攻略Wiki - Gamerch(ゲーマチ) 【ポケモンユナイト】サーナイトの評価と性能詳細【UNITE】 - Gamerch(ゲーマチ) 【ガーディアンテイルズ】ギルドレイド戦(秘密の研究所)の攻略とおすすめキャラ【ガデテル】 - Gamerch(ゲーマチ) 仲村トオル、共演者は事前に“Wiki調べ” - 沖縄タイムス 【ENDER LILIES】攻略チャートと全体マップ【エンダーリリィズ】 - Gamerch(ゲーマチ) 【ウマ娘】あんしん笹針師の選択肢はどれを選ぶべき? - Gamerch(ゲーマチ) 【ポケモンユナイト】アップデート情報・キャラ調整まとめ - ポケモンユナイト攻略Wiki - Gamerch(ゲーマチ) 【Apex】シーズン11の新要素と最新情報まとめ【エーペックス】 - Gamerch(ゲーマチ) ロストジャッジメント攻略Wiki - Gamerch(ゲーマチ) 【Among us】新マップThe Airship(エアシップ)の解説【アモングアス】 - Gamerch(ゲーマチ) ハーネスについて小児科医の立場から考える(坂本昌彦) - 個人 - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース ゼルダ無双攻略Wiki|厄災の黙示録 - AppMedia(アップメディア) ウマ娘攻略Wiki - AppMedia(アップメディア) ゲトメア(ゲートオブナイトメア)攻略Wiki - Gamerch(ゲーマチ) 【白夜極光】リセマラ当たりランキング - 白夜 極光 wiki - Gamerch(ゲーマチ) お蔵入りとなった幻の『スーパーマリオ』 オランダの博物館でプレイ可能?(リアルサウンド) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース ナレッジ共有・社内wikiツール「NotePM」が「ITreview Best Software in Japan 2021」のTOP50に選出 - PR TIMES 真女神転生5攻略Wiki|メガテン5 - AppMedia(アップメディア) 【B4B】近接ビルドデッキにおすすめのカード【back4blood】 - Gamerch(ゲーマチ) ポケモンスナップ攻略wiki - AppMedia(アップメディア) 富野由悠季「ブレンパワード」作り直したい!ファンを前に意欲(シネマトゥデイ) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 【ウマ娘】査定効率から見た取るべきスキルとおすすめキャラ【プリティーダービー】 - Gamerch(ゲーマチ) 【スマブラSP】カズヤの評価とコンボ【スマブラスペシャル】 - Gamerch(ゲーマチ) ナレッジ共有・社内wiki「NotePM」が「ITreview Grid Award 2021 Fall」で、チームコラボレーションとマニュアル作成部門において「Leader」を5期連続でW受賞! - PR TIMES メモ・ドキュメント・wiki・プロジェクト管理などオールインワンのワークスペース「Notion」が日本語ベータ版提供開始 - TechCrunch Japan 【ギアジェネ】リセマラ当たりランキング【コードギアス】 - ギアジェネ攻略Wiki - Gamerch(ゲーマチ) モンスターファーム2(MF2)攻略wiki|アプリ・Switch移植版 - AppMedia(アップメディア) 文芸誌『早稲田文学』のホラー特集号が発売開始。ガッチマン氏とVTuberらとの「ホラーゲーム実況対談」のほかSCP財団やChilla s Artも(電ファミニコゲーマー) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 【ブラサジ】最強キャラTierランキング【ブラックサージナイト】 - Gamerch(ゲーマチ) 【パワプロ】鬼滅の刃コラボ情報まとめ - Gamerch(ゲーマチ) 【SPAJAM2021】第3回予選大会は「クイズ!WIKIにゃんず!」を開発したチーム「かよちゃんず」が最優秀賞! | gamebiz - SocialGameInfo 検索結果における「ナレッジパネル」の役割とは・・・ウィキメディア財団とDuckDuckGoの共同調査 - Media Innovation ナレッジ共有・社内wikiツール「NotePM」が「BOXIL SaaS AWARD 2021 Autumn」にて「コラボレーション部門」を受賞! - PR TIMES Wikipediaが「中国人編集者の身の安全を守るため」に一部の編集者アカウントをBANに - GIGAZINE 【ドッカンバトル】3.5億ダウンロードキャンペーン最新情報 - ドッカンバトル攻略Wiki - Gamerch(ゲーマチ) BTS(防弾少年団)のV、8月のWikipedia閲覧数が韓国アーティストで1位!グループでは4ヶ月連続トップ - Kstyle 【イース6オンライン】リセマラ当たりランキング|召喚ガチャの開放条件は? - Gamerch(ゲーマチ) BacklogからNotePMへwiki情報を自動API連携する「Backlog to NotePM」をSaaStainerに掲載開始 - PR TIMES ライザのアトリエ2攻略Wiki - AppMedia(アップメディア) 真女神転生3リマスター攻略Wiki|メガテン3 - AppMedia(アップメディア) タスクも文書もWikiもデータベースもまとめて管理できる「Notion」とは? - ASCII.jp ナレッジ共有・社内wikiツール「NotePM」が、見るだけ専用ユーザー『無料』の新プランを発表! - PR TIMES 【かのぱず】リセマラ当たりランキング【彼女お借りします】 - Gamerch(ゲーマチ) 【乃木フラ】リセマラの必要はある?【乃木坂的フラクタル】 - Gamerch(ゲーマチ) メトロイド ドレッド攻略Wiki - Gamerch(ゲーマチ) 【パワプロ】生放送まとめ|パワフェス2021 - パワプロ攻略Wiki - Gamerch(ゲーマチ) 【ポケモンユナイト】サーナイトのおすすめビルド(わざ・持ち物) - Gamerch(ゲーマチ) ルーンファクトリー5攻略wiki|ルンファク5 - AppMedia(アップメディア) シャーマンキングふんばりクロニクル攻略Wiki - Gamerch(ゲーマチ) 簡単操作で自分専用Wikiを構築できるMarkdownエディタ「Obsidian」のモバイル版を使ってみた - GIGAZINE ディーサイドトロイメライ攻略Wiki - Gamerch(ゲーマチ) 情報マネジメントツール「Huddler」がwiki機能を刷新 - PR TIMES シェアエコ配送アプリ「DIAq(ダイヤク)」のアンカーアプリで、高層ビル・商業施設の入館方法などお役立ち情報をまとめた「DIAqwiki」を公開 - アットプレス(プレスリリース) 異常熱波のカナダで49.6度、いま北米で起きていること(森さやか) - 個人 - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 【ツイステ】マスターシェフの攻略~辛味のふるさと~【料理イベント】 - Gamerch(ゲーマチ) 【ラグナロクオリジン】リセマラは不要?おすすめ職業は?【ラグオリ】 - Gamerch(ゲーマチ) 白夜極光攻略wiki - AppMedia(アップメディア) 【バイオミュータント】2.02アプデ|アップデート1.4情報 - バイオミュータント攻略Wiki - Gamerch(ゲーマチ) ニーアレプリカントリメイク攻略wiki|ver.1.22 - AppMedia(アップメディア) 【ウマ娘】ゴルシウィークはいつから?キャンペーン情報まとめ - Gamerch(ゲーマチ) シーズン66 - 【超速GP】ミニ四駆 超速グランプリ攻略まとめwiki - 電撃オンライン 乃木坂的フラクタル攻略Wiki - Gamerch(ゲーマチ) 「こんなことになるとは…」13年前のエイプリルフールについた“嘘”がネットで… ある男の告白(BuzzFeed Japan) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 整理不要の情報共有ツール(社内Wiki)「Nerve」シードラウンドで総額約3500万円の資金調達を実施 - PR TIMES Nerve - 整理不要の情報共有ツール(社内Wiki) ローンチカスタマー募集開始のお知らせ - PR TIMES パニシンググレイレイヴン(パニグレ)攻略wiki - Gamerch(ゲーマチ) 【ひなこい】最強ひな写ランキング - ひなこい攻略Wiki - Gamerch(ゲーマチ) 稲作アクションRPG『天穂のサクナヒメ』における「農林水産省攻略wiki説」は本当なのか? - AUTOMATON スタスマ攻略Wiki【スタースマッシュ】 - Gamerch(ゲーマチ) 無料とは思えない多機能っぷりなWikiインフラ「Wiki.js」レビュー、自前でホスト&外部サービスと連携可能 - GIGAZINE Microsoft Teamsの基本と活用(24) TeamsのWikiを使う - マイナビニュース 『ゲーミングお嬢様』での提起が話題に “企業系wiki”に横たわる問題点とは - リアルサウンド 「エイリアンのたまご」,自動周回機能と公式wikiが登場 - 4Gamer.net 【リゼロス】Re ゼロから始める異世界生活 Lost in Memories攻略まとめwiki - 電撃オンライン 【世界初!】モノの背景を全方位で執筆できるVintage Wiki「VOV」を正式リリース - PR TIMES 足もとのベストアンサーを“編集”! Wikiペディキュア! - ビューティ特集 | SPUR - SPUR.JP パワプロ2021/2020攻略Wiki - Gamerch(ゲーマチ) ヌーラボ、「Backlog」の絵文字入力の補完機能やWiki編集の自動マージ機能を改善 - CodeZine(コードジン) ヌーラボ、プロジェクト管理ツール「Backlog」の絵文字入力の補完機能・Wiki編集の自動マージ機能を修正改善 - PR TIMES Backlog、Wikiにファイル添付が容易にできる機能をリリース -- グローバルバーの視認性改善なども実施 - PR TIMES GK川島、パンチング失点でWiki書き換え炎上 「セネガル代表」「プロボクサー」... - J-CASTニュース Wikipediaで「ヒト」を象徴する画像が、タイの男女に決まるまで 5年の激論を経て選ばれた「1枚」の物語 - WIRED.jp
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1537.html
「うーん……絶対捕まえてやるわ……むにゃ……」 「いい加減起きなさい、ヴァリエール」 うるさいわね、今フーケと戦っている最中よ、だいたい何でこいつが 「フーケはどこよ!他のみんなは?」 「フーケなら、あなたの横に簀巻きにされて転がってるわよ。 セッコは隅で寝てる、タバサは馬を引いてるわ」 気づいた時には、全てが終わっていた。 紆余曲折あって結局セッコが仕留めたらしい。 「わたしも、もう少し強くなれないものかしら」 「強いかどうかはあれだが、役には立ってるぜ。 おめーが見張りしてなかったら、全員ゴーレムに踏み潰されてたろうよ」 デルフリンガーが珍しく私を擁護する。 言ってくれるじゃない剣の癖に。ちょっとだけ嬉しいわ。 「そういえばミス・ロングビルはどこへ?」 「あなたの横に簀巻きにされて転がってるわよ」 「何言ってるのよツェルプストー」 ついに脳まで熱にやられたかしら。 けれど隣をよく見たら納得できた。 「ああ、そういうことだったのね」 学院長室で、オスマン氏は戻った四人を呼び報告を聞いていた。 セッコはよほど疲れていたのか全く目覚める気配がなく、仕方なくルイズの部屋に置いてきたので実質三人ではあったが。 「ふむ……ミス・ロングビルが土くれのフーケじゃったとはな…… 美人だったもので、何の疑いもせず秘書に採用してしまった」 「いったい、どこで採用されたんですか?」 側に控えていたコルベールが尋ねた。 「町の居酒屋じゃ。私は客で、彼女は給仕をしておったのだが、ついついこの手がお尻を撫でてしまってな」 「で?」 「おほん。それでも怒らないので、秘書にならないかと、言ってしまった」 「なんで?」 ほんとに理解できないといった口調でコルベールが尋ねた。 オスマン氏が突然真面目な顔になる。 「おまけに、魔法も使えるというもんでな」 「それって、決定的に怪しいですよね、オールド・オスマン」 「怪しい」 「怪しいわね」 「怪しいってレベルじゃあないわ」 全員の視線が、汚い物を見るような目つきに変わりつつあるのを悟り、オスマン氏は照れたように咳払いし、話題を変えた。 「さてと、君たちはよくぞフーケを捕まえ、[破壊の杖]を取り返してきた」 誇らしげに三人が礼をする。 「フーケは、城の衛士に引き渡した。そして[破壊の杖]は、無事に宝物庫に収まった。一件落着じゃ」 オスマン氏は、一人ずつ頭を撫でた。 「君たちの、シュヴァリエの爵位申請を、宮廷に出しておいた。 追って沙汰があるじゃろう。と言っても、ミス・タバサはすでにシュヴァリエの爵位を持っているから、精霊勲章の授与を申請しておいた」 三人の顔が、ぱあっと輝いた。 「本当ですか?」 キュルケが、驚いた声で言った。 「ほんとじゃ、いいのじゃ、君たちは、そのぐらいのことをしたんじゃから」 その言葉に、ルイズの顔が曇る。 「オールド・オスマン。わたしは……」 オスマン氏が力強く言い返した。 「問題ない」 ルイズの表情が少し戻った。 「さてと、今日の夜は[フリッグの舞踏会]じゃ。 このとおり、[破壊の杖]も戻ってきたし、予定どおり執り行う」 キュルケの顔が更に輝いた。 「そうでしたわ!フーケの騒ぎで忘れておりました!」 「今日の舞踏会の主役は君たちじゃ。用意をしてきたまえ。 せいぜい、着飾るのじゃぞ」 三人は礼をするとドアに向かった。 タバサは、二人が出て行ったのを確認して立ち止まり、オスマン氏に向き直った。 「何か、私に聞きたいことがあるようじゃな」 タバサは頷いた。そして、無表情なりに表情を険しくする。 オスマン氏は、何か察したのかコルベールに退室を促した。 コルベールが退室したのを確認して、タバサが口を開いた。 「オールド・オスマン」 「何かね」 「セッコのルーン。単体では意味のない破壊の杖」 タバサの脳裏に、嬉々として自分を試し、死地に送り出す上司の姿がちらりと浮かんだ。どこも似たようなものか。 少し考え直しその嫌な発想を振り払う。今回は志願だし。 しかし、もし志願者が私とキュルケだけだとしたら、オスマン氏は果たして許可しただろうか? オスマン氏は、少し深刻な、何か言葉を捜しているような表情になった。 「……オレも聞きてえな、校長先生よォォォ」 地の底から響くような声がし、部屋の隅から、寝ていたはずのセッコが現れた。 手に、不思議な金属の杖のようなものを持って。 オスマン氏の顔が更に険しく真面目になり、そして口を開いた。 「順番にじゃ、ゆっくりとな。それと、分かっているとは思うが他言無用じゃ」 「「……」」 無言で頷く。 「ミス・タバサ」 頷く。 「そのルーン文字については、まだまだ謎が多いのじゃ。じゃから、今は何も言えん。 それで[破壊の杖]じゃが、確かにそれだけでは役に立たん。じゃが、これだけは言わせてくれ。 教師が生徒を信用して、悪いことでもあるのかね?」 これ以上は、話す気がなさそうだ。 「ありがとうございます、オールド・オスマン」 「すまんの、ミス・タバサ」 セッコの話も興味深い。しかしオスマン氏の視線が、“出ていかなきゃ無理にでも退室させる” 凄みを放っていたので、仕方なく礼をして部屋を出る。 フリッグの舞踏会(で出される料理)を想像すると、少し心が安らいだ。 タバサが出て行くのを確認し、ヒゲジジイがこっちに向き直り口を開いた。 「質問に答える前に、それをどうして持ってきたか聞いてもいいかのう?」 「宝物庫に入って探して来た。正しく質問に答えて貰う為によお」 鋭い目でオレを見る。 「そうではない。私が聞きたいのは場所や理由ではなく、手段じゃ」 糞、食えねえヒゲだ。 「フーケと戦ってる間に思い出した、オレは地面や壁に潜れるってな。多分[左手]とは関係ねえ」 「思い出したとな?」 「オレは、自分についての記憶があいまいなんだ。理由は知らねえ」 「なるほどの。じゃが、その力は余り人に見せん方がいいのう」 んなこたあ言われんでも分かる、基本だろうが。 「てめーボスだろう。だから教えた」 ヒゲが妙に嬉しそうだ。 「そうかそうか、では質問を聞こうかのう。できるだけ力になろう」 「校長先生よお~、[破壊の杖]とこの[弾]の使い方を知ってんのかあ?」 「ああ。それがどうかしたかね?」 「オレは多分、ここじゃねえ場所の人間だ。それはオレが昔居た所の武器だ」 ……多分な。 「本当かね?」 多分な。 「それのことを知ってんだよな?なら、オレの記憶や居た場所についての手がかりも、何か教えてもらえるんじゃねーかと思って」 ヒゲがため息をついた。 「残念だが今は無理じゃ。それを私にくれたのは、私の命の恩人じゃ。 使い方を教えてくれたのもな。だから直接は知らんのじゃよ」 当てが外れたかなあ。 「そいつはどうなったんだ?」 「死んでしまった。今から、30年も昔の話じゃ」 畜生、結局振り出しか。 「うう……」 「すまんのう。だが、これなら知っておるよ」 ヒゲが俺の左手を掴んだ。 そう知りたいわけではないが、一つずつでも疑問が解決するのは気分がいい。 「ガンダールヴの印じゃ。伝説の使い魔の印じゃよ」 「伝説ぅ?」 伝説だから光るのかあ。確かにモグラやシルフィードの印は光ってなかった。 「そうじゃ。その伝説の使い魔はありとあらゆる[武器]を使いこなしたそうじゃ。[破壊の杖]について細かく分かったのも、そのおかげじゃろう」 推測かよ。 「うー、むぅ……」 「どうしてそうなったかは分からん」 ヒゲがきっぱりと言いやがった。知ってるつって形だけじゃねえか。 結局、オレは一体何なんだ。 「力になれんですまんの。ただ、これだけは言っておく。私はおぬしの味方じゃ、ガンダールヴよ」 ヒゲはそう言うと、オレの手を強く握った。 「よくぞ、恩人の杖を取り戻してくれた。改めて礼を言うぞ」 どいつもこいつも、何であれが杖に見えるんだあ? 「わかった」 「おぬしがどういう理屈で、ここに現れたのか、どうして記憶が抜け落ちているのか、私なりに調べるつもりじゃ。でも……」 「でも?」 「何も分からんでも、恨まんでくれよ。記憶を消す魔法や壊す薬はあっても、取り戻すものは現状存在しとらんしのう」 「……」 「なあに。ここだって住めば都じゃ。嫁さんだってさがしてやる。 あと、今日は[フリッグの舞踏会]がある。まあパーティじゃな。飯もうまいぞ」 それはいい。早速食いに行こう。ルイズに怒られる気はするが、正当な報酬だ。 ヒゲの目が再び鋭くなる。 「それとな、そいつを、[弾]をちゃんと元に戻しといてくれよ。こっそりとな」 このヒゲに逆らうのはやべえ、ルイズの次ぐらいに。本能が告げてやがる。 「……わかった」 食堂の上の階が、大きなホールになっている。舞踏会はそこで行われていた。 テーブルにつき、目の前の料理を貪る。 あれ……?甘くねえのにうめえ。 何故だろう、味覚が少し回復している。 何かがオレに起こっているんだろうか? 「お前、さっきから食いすぎじゃねえのか」 背中からデルフリンガーが話しかけてきた。 「あいつに比べたら普通だぜえ」 斜め向かいに視線を向けてやった。 黒いパーティドレスを着込んだタバサが、それにも拘らずオレと変わらない勢いで料理を平らげている。化け物か。 「おでれーた……」 その時、ホールの扉に控えている呼び出しの衛士が、ルイズの到着を告げる声が聞こえた。 「ヴァリエール公爵が息女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール嬢のおな~~~り~~~!」 随分と遅かったなあ、何やってたんだあ。まあ飯の方が大事だ。 テーブルに向き直り、食事を再開する。 少しすると、白いパーティドレスを着たルイズが声をかけてきた。 「楽しんでるみたいね」 いきなりだったのでちょっと料理がむせる。 「うおっ、おっ」 えーと、あれはどういう表現だったっけなー。 「胡麻にも衣装、じゃなくて……猫にも衣装、……は違う……うぐぐ……独楽にも衣装でもなくて、巫女の衣装……」 「何意味わかんないこと言ってるのよセッコ」 「ハハハ、[馬子にも衣装]だな、ちげえねえ相棒」 デルフリンガーが聞いてもないのに助け舟を出しやがった。知ってんだよお、ちょっと忘れてただけだあ。 「失礼ね」 「ヴぇ」 デルフリンガーが殴られる。正確に思い出せなくてよかったぜ。 「あんたもよ、セッコ」 「……いてえ」 全く、この体のどこにそんな力がありやがるんだ。 「ま、今回は許してあげるわ、セッコ、わたしと踊りなさい」 こいつ何言ってやがるんだ? 「オレはこの料理があればそれでいいんだがなあ」 「いいから」 「何でだよお、踊る相手なんていっぱいいるんじゃねえのかよ」 「あのね、ありがとう」 「はあ?」 わけがわからねえ。 「その……フーケのゴーレムに潰されそうになったとき。 助けてくれたんじゃないの?キュルケから聞いたわよ」 「それが仕事だってルイズオメーが言ったんじゃねえか」 「いいから。踊りなさい、命令よ!」 なるほど、ルイズなりの礼のつもりなのかあ。まあ腹ごなしに付き合ってみるか。 本当は飴の方が嬉しいんだけどな。 「わかった。……だがよお、オレは踊りなんてわからねえ」 「わたしに合わせてくれればすぐ慣れるわよ、あなたなら」 「わかった」 ……たまには悪くねーなあ。 そんな様子をテーブルに立てかけられたまま眺めていたデルフリンガーが呟いた。 「おでれーた!」 二つの月がホールに月明かりを送り、ロウソクと絡んで幻想的な雰囲気をつくりあげている。 「相棒!てーしたもんだ!」 踊る相棒とその主人を見つめながら、デルフリンガーはおでれーた!と繰り返した。 「主人のダンスの相手をつとめる使い魔なんて、初めて見たぜ!」 料理を胃に流し込みつつ、一部始終を見ていたタバサは思った。 使い魔的教育が一段落したら、シルフィードにダンスを教えてやろう。と。 To be continued…… 戻る< 目次 続く
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2194.html
イレーネ、ルイズ、タバサ、キュルケが馬車の荷台に座り、ロングビルが御者を勤める馬車が街道を進む。 さすがに馬車の中だというだけあってデルフリンガーを突き刺してはいないが。 黙々と手綱を握るロングビル。本を読んでいるタバサ。座って目を閉じているイレーネ。 普段喧しいタイプのルイズとキュルケにとっては、ものスゴク居心地が悪い。 「あ、あの。ミス・ロングビル…御者なんて付き人にやらせればいいんじゃないですか」 重い空気を変えようとキュルケがロングビルに話しかけた。 「構いません。わたくしは貴族の名を無くした者ですから」 「でも、貴女はオールド・オスマンの…」 「差し支えなかったら事情をお聞かせ願いたいわ」 「聞かれたくない事を無理に聞くのはトリステインじゃ恥ずべき事よ」 ルイズにそう言われると瞬時にターゲット変更。イレーネに切り替わる。 「イレーネ姉さんは、『ゼロ』に召喚される前は何を?」 『ゼロ』の部分を強調して聞いてきたが、まぁ別に聞かれたくない事ではないので答えた。 「妖魔。こいつを斬り殺すのが我々の仕事だ」 「……吸血鬼みたいなものかしら」 「さぁな。吸血鬼というものを知らんからよく分からん。というか姉さんというのは何だ」 「それもそうね…呼び辛いし…『イレー姉さん』のがいいわね」 「…好きにしろ」 そんな話をしていると、馬車が森に入る。薄暗く、向こうなら妖魔の2~3匹居そうである。 「この森って…確か、ここ1年の間で行方不明者が沢山出てるって噂の森じゃあ…」 「…そうなの?」 「噂なんだけどね…出るらしいのよ…色々と」 ビクゥ!とタバサが動いた気がしたが一瞬だったので誰も気付いてはいない。 イレーネも無意識に妖力探知を行う。こういう場所には大抵、妖魔が居るので習慣みたいなものだ。 「……これは…いや、違うか…?だが他に考えられん」 聞こえない程度にそう呟くが、身体は警告を発している。 もちろん、確証は無いが。 「ここから先は、徒歩で行きましょう」 警戒しながら歩いていると開けた場所に出た。 それなりの広さで、真ん中ぐらいにボロい小屋がある。 「わたくしの聞いた情報だと、あの中にいるようです」 人の住んでる気配は全く無い。対象が妖魔であればすぐに分かるのだが、生憎そうもいかない。 イレーネを除いた四人が座って作戦会議を開いている。 タバサが絵を描いて説明しているが、ルイズが小屋に視線を向けると、背中のデルフリンガーを握ったイレーネが小屋に向け歩いていた。 「ちょっと作戦は…!?」 「時間が無い」 短くそう答えると、高速剣で壁を切り裂き壊す。 「…作戦…いらなかったみたいね」 「わ、わたくしは辺りを偵察してきます…」 ロングビルが駆け出しながら森の中に消えたが、イレーネは何か焦っているようだった。 小屋をガサ入れしていると、タバサがチェストの中から身の丈より大きい剣を見つけた。 重いし、全長も165サントとタバサよりかなり長いので、一杯一杯のようだったが、なんとか取り出す。 「『呪いの大剣』じゃない。宝物庫を見学した時に見たけど、あっけないわね」 「これが、この場所にあるという事は…やはり、読み違えたというわけではないか」 予想が確信に変わった。このまま、ここに留まるのは非常にマズイ。 「…逃げるぞ。説明している暇が無い」 「フーケは?」 タバサが聞いてきたが、この状況はフーケなぞ比較にならない程危険だ。 だが、外から大きい振動と、ルイズの悲鳴が聞こえてくる。 「こんな時に…!」 「ゴーレム!」 屋根が吹っ飛び空がよく見える。憎たらしいぐらい青い空を背景にしているのはフーケのゴーレムだ。 タバサとキュルケが魔法を放つが、ビクともしない。 「行くか、相棒」 「悪いが構っている暇が無いんでな」 小屋の中から跳躍。吹っ飛んだ屋根の淵を足場を利用し再び飛びゴーレムに取り付く。 無駄な時間を使っている余裕は無い。ゴーレム自身の身体を足場にし肩に飛び乗ると、頭目掛け高速剣を放つ。 炸裂音が森に鳴り響くとゴーレムの頭が弾け、それを確認したイレーネが飛び降りデルフリンガーを仕舞った。 「行くぞ。説明している時間は無い」 杖を握って突っ立っているルイズにそう言ったが、叫ばれた。 「なにやってるの!うう、後ろーーー!」 「何!?」 振り向くと同時に迫ってきたのは鉄と化したゴーレムの拳。 高速剣で勢いを殺そうとしたが、拳が鉄に変化している事と、そのパワーで、完全には殺しきれずに吹っ飛ばされる。 覚醒者なら首を狩れば勝負が決まる。長年の習慣での行動だったが、迂闊だった。 「がはっ!かはっ!…くそ…脚が折れたか。…首を狩っても動くだと?覚醒者以上だな…」 致命傷ではないが、砕けた骨を治すのは、四肢接続より厄介だ。 冷静を保ち、妖力を回復に回す。冷静さに定評があるイレーネなら、そう難しい事ではないが、今はその時間さえも惜しい。 「なにやってるの!逃げなさいルイズ!」 変わらない姿勢でルイズがゴーレムに杖を向け振ったが、ゴーレムの表面を爆発を襲ったが、すぐに再生されている。 「嫌よ!あいつを捕まえれば、誰もわたしをゼロなんて呼ばないでしょ!」 目がマジだ。こうなれば梃子でも動かないが、放っておくわけにもいかない。 自分もそう呼んでいただけに、責任もある。 「タバサ!シルフィードを!」 「間に合わない…」 もう、ゴーレムはルイズを潰そうと足を上げている。 風竜であるシルフィードとは言え、今からでは間に合いそうにない。 全員が目を閉じたが、ゴーレムが踏み潰す前に脚を治したイレーネがルイズを掴む。 そのまま、ゴーレムの足の範囲上からルイズを投げ飛ばすと自らも飛び、ルイズの頭を押さえる。俗に言う強制土下座のポーズだ。 「前に進むのもいいが…少しは身の程をわきまえろ。あれはお前が勝てる相手じゃないよ」 「で、でも!わたしは…!」 「そのために私が居るんだろ?道は私が拓く。お前はお前にやれる事をしろ」 「前は相棒に任せて、娘っ子は後ろで杖振ってりゃいいってこった」 ゴーレムが、その拳を振り上げ、それが飛んでくる。 途中で拳が鋼鉄に変わり、イレーネが居る場所に突き刺さった。 「イレーネ!」 潰された。そう思ったが、ゴーレムの腕の方から声が聞こえる。 「ようやく私の名を呼んだか。まぁ話は後だ。時間をかけると厄介な事になりそうなんでな…行くぞ!」 拳の腕に乗っていたイレーネが腕を伝うようにして駆ける。 速い。不安定な腕の腕とは思えない速さだ。 巨体とは言え、覚醒者に比べれば重鈍なゴーレムだ。 剣では仕留めきれないが、倒す方法はある。 まず乗っている腕の右肩が砕ける。 だが、いかに高速剣といえど、大きさに差がある。 完全に切り離すことはできないが、肩に大きな穴ができる。 「今だ、やれ!」 直後に、その破損部分から爆発が起き、腕と胴を繋ぐ部分が完全に吹っ飛び脱落する。 続けざまに、瞬間的な妖力解放をし瞬時移動。右膝の辺りを狙う。 さっきと同じだ。その場所目掛けルイズが杖を振る。 再生するというのであれば、それを上回る速度で攻撃すればいい。 そこで決め手となるのがルイズの爆発だ。 表層への爆発なら、ゴーレムを欠けさせるだけだが、高速剣によって深くえぐれた場所を狙えば別だ。 これなら再生されるよりも早くパーツを内側から吹き飛ばせる。 数度繰り返すと、ゴーレムが四肢を全て吹き飛ばして転がって悶えている。 「痛みなど無いだろうに」 止めの一撃。胴体の中央に向け高速剣を繰り出し即座にその場を飛ぶと、そこに爆発が起き、上半身だった場所が砕けた。 「…やったぁ」 限界を超えたのだろうかもう再生はしない。 それを確認すると、ルイズがへたり込んだ。 「まぁ、お前にしてはよくやった方だ。一応褒めてやるよ」 「一応ってなによ、一応って」 不満そうだったが、顔は笑っている。 手助けがあったものの、自分の魔法が役に立ったという事が嬉しいのだろう。 茂みの中でフーケが舌打していた。 あの大剣の使い方を知っているかと思っていたが、使わずに倒してしまった。 それも、あの『ゼロ』のルイズの魔法が決め手となってだ。 「それにしても…どうしたものか」 ゴーレムを失った以上、あの化物と正面から戦って勝てる気はしない。 こうなれば、ロングビルとして対応するしかない…と思い、茂みから出る。 「ミス・ロングビル!」 「申し訳ありません。捜したのですが、フーケと思われる人物は見付かりませんでした」 我ながら白々しいと思わないでもないが、今はこれしか手が無い。 ルイズ、キュルケ、タバサがゴーレムを調べていると、ロングビルが出てきた茂みから、誰かが現れた。 女だ。それを見てイレーネの表情が少しだけ変わる。 「思いのほか…出てくるのが早かったな…」 「まさか、フーケ!?でも…ミス・ロングビルの情報だとフーケは男だって」 もちろん、本人が居るから、それはフーケではない。イレーネを除いた全員が訝しげにしていると、女が口を開いた。 「どうしてここにクレイモアが居るのか知らないけど…あなた達四人…美味しそうな匂いがして…もう我慢できないのよね…」 美味しそう?匂い?そう思ったが、理由はすぐに分かる。 しばらく、ビキビキと音を立てていたが、爆発するかのような音が辺りに鳴り響き、木々から鳥が飛び立つ。 「…なに…こいつ…」 「なに…って…こんなの化物に決まってるじゃない!ルイズ!」 女の体が膨張し、膨れ上がり、背中から無数の鋭い触手のような物が蠢いている。 「ああ…生きたまま…内臓…食べたい…」 膨張が止まる。人型を保ちフーケのゴーレムに比べれば遥かに小さいが、禍々しさは比較にならない。 「とりあえず…あたなたち四人以外はいらないのよね…」 言葉が意味する事に気付いたのか、タバサが短く叫ぶ。 「逃げて!」 (な、なんなのーー!) 「……っ!」 シルフィードが急速上昇すると同時に、触手の刃がイレーネとシルフィードに向かう。 「あら…結構素早いのね」 「相棒、ありゃあ…」 「くそ…出てくる前に退くつもりだったんだがな…あれが覚醒者だ」 苦々しげに呟くが、デルフリンガーがイレーネの様子が何時もと違う事に気付いた。 「あら、あなた…懐かしい物持ってるのね」 覚醒者が、そう言った視線の先にはキュルケが引きずるように持っている大剣だ。 「懐かしいですって…!?まさか…この剣の…」 力を与える変わりに破滅的な呪いを与える大剣。その呪いでこうなったのかと、完全にビビったキュルケが後ずさる。 「まぁ…あなた達は後にするとして…邪魔な人を八つ裂きにしてあげないと」 瞬間、その場から覚醒者が消える。 「相棒!上だ!!」 瞬時に跳躍するが、続けて触手が飛んでくる。 空中でデルフリンガーを使い防ぐが、数発が掠める。 息が荒い。妖力も抑えたままだし、そんなに動いてもいないのに呼吸が乱れている。 「はっ…はぁ…はっ…くっ…!」 「相棒…どうしたんだよ」 カタカタと音がする。小さな音だが、発生源は他でもないデルフリンガーだ。剣を持つ右手が震えている。 「どうしたね。相棒なら、あんなのにでも遅れをとらねぇだろ」 確かにそうだ。高速剣の能力が半減しているとはいえ、一桁ナンバーの覚醒者とでもサシで渡り合えるだけの力を持つはずだが ある一つの感情のせいで本調子を出させないでいた。 「…怖いんだよ…私は…あの時の恐怖が未だに身体にこびり付いて離れない…お前なら分かるはずだ」 戦士や妖魔なら、こうはならないだろうが、覚醒者の歪に膨張した妖気。 これを感じた瞬間、身体にこびりついたプリシラへの恐怖が再燃していた。 もちろん、それを感じ取ったデルフリンガーも驚いている。 「おでれーた…相棒にそれだけ言わせるなんて、どんな化モンだよ。って危ねぇ!」 「ち…!」 首に向け刃が迫る。普段なら、高速剣で防ぐところだが、思いように身体が動かない状態では、かわせそうにない。 首を撥ねられたテレサの姿が浮かぶ。その整った顔が歪み、辺りにドロリとした液体が散らばった。 「痛いじゃない…残念だわ…生きたまま内臓を貪りたかったんだけど」 散らばったのは、赤ではなく、変色した青みがかった血。 タバサの『エア・カッター』が切り飛ばしたのだ。 軋むような音を出しながら覚醒者が顔を向け切り飛ばされた先を瞬時に再生する。 元は防御型だ。こうなると、首を落さない限りケリが付かない。 もっとも、防御型以前に覚醒者の動きを人が捕らえる事などできないだろうが。 今度はタバサに狙いを付け、再生させた触手を飛ばすが、今度は炎によって、それが焼かれる。 「…不思議な力を使うのね、この地域の人達って。でも、残念ね…あなた達じゃ私は倒せないみたい…」 焼かれた先は再生できないようだが、覚醒者自身がそれを切り離すと瞬時に再生を果たし、タバサとキュルケの顔が青くなる。 「無理よ…こんな化物…!」 「撤退…!」 一目散にシルフィードの元に逃げ出したが、覚醒者からすれば止まっているような速度だ。 「さて…と。それじゃあ…そろそろ行きましょうか。…あら?あなたは逃げないのね」 ルイズだ。ルイズがキュルケが遺棄した大剣の切っ先を地面に付けるような形で持っていた。 「お願い…!あれを倒す力をわたしに頂戴!」 柄を両手で握ったまま、必死になって呟いているが、当然何も起こるはずは無い。 「なんでよ!使い手に力を与えてくれる剣なんじゃないのこれ!?」 怒鳴ったが、怒鳴ったところで覚醒者が止まるはずもない。 「あなた…この四人の中で一番美味しそうな匂いがしてたのよね…」 目が一層光る。その異形に似合わぬ金色の両眼が。 風切り音がし、ルイズを捕らえるべく触手が飛ぶ。 泣きそうになったが、泣く暇すらも与えてくれそうにない。 やけにゆっくり迫る触手を見たが、それより先に、長い銀色が目の前に飛び込んできた。 「逃げろ…今の私ではそう長く持たん」 本来なら歯牙にもかけない相手だろうが、身体が動いてくれない。 頭にも、あの時の恐怖が叩き込まれているのか、防御に徹する事だけで手一杯だ。 「うぉぉ!なんだこりゃ!気持ち悪りぃ!」 触手がデルフリンガーに絡みつき、奪おうとしている。 「く…!泣いている暇があるなら行け!」 「イヤよ…!貴族っていうの…は!敵に…!後ろを見せない…者を…!貴族って…呼ぶのよ…!」 顔を歪めて泣いているが、今のイレーネには、構っている暇は無い。 「それに…!使い魔を見捨てるメイジは…メイジじゃないんだから…!」 ここで逃げれば、一生『ゼロ』と呼ばれる。 いや、人からは呼ばれなくても、自分自身がそう呼んでしまうだろうと思っている。 だからこそ踏み止まった。 「残念ね…あなた頑張ってたけど…力も私の方が上…」 触手の力が一層強まり、デルフリンガーが持っていかれそうになる。 妖力解放で対処したいとこだが、覚醒者の妖気がプリシラの物と重なって解放できないでいる。 それ程、プリシラは圧倒的だった。 駄目かと思ったが、上空から風の刃と火球が飛来し、デルフリンガーに絡み付いている触手を切り飛ばす。 「まったく…無駄だって言ってるのに…今の若い子達は…」 「あなた、情熱ってご存知?あたしの情熱は全てを焼き尽くすの」 軽口だが、杖を持つ手は震えている。 一般人が妖魔に遭遇しただけでもヤバイのに、覚醒者と相対したのだから当然だろう。 タバサは無言だが、身の丈程の杖をしっかりと握っている。こちらも戦る気だ。 「お前達では、やつの餌にしかならん。退け」 「あら、イレー姉さん。『微熱』の二つ名を持つあたしに、言ってくれるじゃない そりゃあ一人じゃ無理かもしれないけど、言ってたじゃない。あたし達が協力すれば大丈夫よ。仲間なんだから」 それに追従するかのように、タバサも頷く。 「そうか…そうだったな」 「あらあら…余所見してる余裕なんてあるのかしら」 ビキビキと音を立てながら、高速の触手がイレーネとルイズを目掛け飛ぶ。 ルイズも巻き込まれるが、死んだ後で内臓を食べればいいと思ったようだ。 「そんな小さな妖気で覚醒者と戦おうだなんて…身の程知らずもいいとこ……え?なによ…?この妖気…」 「すまんな…今回お前の出番は無いぞデルフ」 高速剣。迫り来る触手を無数の斬撃で削ぐかのように斬り落す。 数が集まればプリシラを倒せるとは思っていないが、ともかく今はこれで十分だった。 もう右手の震えは止まっている。 「後先を考えんやつだ…本当に呪いが掛かっていたらどうするつもりだ」 「だって…何もできなくて…悔しくて…」 「貸してみろ、使い方と私の中身を教えてやるよ」 文句あり気なデルフを背負うと大剣を握る。 印は違うが作りは同じだけあって、やはり馴染む。 覚醒者を見据えると、抑えていた妖気を限界近くまで開放させる。 「…せめてもの手向けだ。お前の印が刻まれたこの剣で葬ってやる」 7割の妖力解放。現状を考えるとこれが限界だ。 身体がビキビキと音をたてると、覚醒者目掛け飛んだ。 「ガァア!」 今までで最大数の触手がイレーネに向かうが全て斬り落とされている。 「ガ…ガ…ア…!なによこれ…一体どういう…」 さらに地面を蹴り、加速したイレーネが覚醒者と交錯し、互いに背を合わせるような形で着地した。 「ば…化…物…」 「化物?冗談じゃない。私は…本当の化物というものを二人知っている」 一人は人として死に、その血肉はクレアに受け継がれ、もう一人は妖魔と化したあの二人。 まだ何か言いたそうだったが、言い終える前に細切れになり、辺りに無数の肉片と血が飛び散った。 剣を振り血を払うと、後ろから三人が恐る恐る近付いてきた。 「大丈夫!?呪われてない…?」 「ああ、今のところは大丈夫だ」 『今のところは』と言ったが、疲労と達成感と恐怖からの解放で、それは聞かれなかったようだ。 「フーケには逃げられたみたいですが、『呪いの大剣』は取り返せたし、あんなのと戦って命があったんだから良しとしましょう」 「そうね…でも疲れたぁ~」 「あたしも…」 「以下同文…」 抜け抜けとフーケが言ったが、あんなのを見た以上、フーケだと出ればまず一瞬で解体される。 そう思ったようで、しばらくはロングビルとして学院に留まり、隙を見て逃げる事にしたようだ。 お宝は欲しいが、命あってこそナンボなのである。 四人が馬車に戻ったが、背負ったデルフリンガーが刀身を少し出し口を開いた。 「なぁ相棒…あの力、あまり無理して使わない方がいいぜ。少しづつだけど、アレと似た力が大きくなってきてんだ」 「…そうだな。そうしよう」 妖魔の力を使う以上、何時か訪れる限界。 限界が訪れた時、果たして覚醒せずに人として逝けるか。 そう、不安に思わないでもないが、今は人として前に歩くだけだ。 小さいが闘う資格を再び与えてくれた、三人の『仲間』と共に。
https://w.atwiki.jp/yaruoperformer/pages/236.html
_ -=¬冖¬=‐- .,_ _,,.. ''"゙゙⌒´゙´ ,.∠三 .'"゙`` ,,__ }ニ=ノ´゙ ,_, '⌒'ー'゙` /⌒ヽ`寸 ._, '゙=== `ヽ ,/'"⌒\ { / ,ハ /⌒マ===== _ノ '".,_,;' \V /|八__ ,// | |≧=‐''"´'ー''⌒゙ ,/ ``ヽ ___ { . 人ー一| |__,/,ノ>--ー¬ァ冖冖7'" ,ィニ二三ー=ァ冖 、 \ ̄二≧===チて__,,.. -=≦´ー=て_ノ ' ,ニニ三 f´ 、__⌒\ ` ー- ..,__ノニ>∠斗ャ } ー=ミ ハ Vー=ミマ三,ノー一'\__ `¨¬、__,ノr< イ茨がリノ `¨¨)`_} j } i . \\__,ノ><`ニ≦三i| i 狡ソ} `⌒´ . 匚(__ノ ′ { . \_,. -ニ二≦三三三三| i i / . | / , /ハ \ ̄`¨¨''冖¬==ニ二二| i |i . ゝt一' 匚リ./ // }\ \ l|i .\ -z‐ー_、 rァ'′{ {_{ . 、}i、 \ l|i .\ `こ ̄ rァ゙ /]{ {-\ . \\ l| ',\ゝ-r=チ /-ニ乂-/\ . \ 八 ∨ハ V/{ /-ニニニ/j゙⌒' ´゙'ー ., ;'"'⌒' \ . V| |'/{|--ニニニ]| ;_,;_,. '゙ _.. __,,..,__,. - .,_r '⌒''゙´;,_メ.ノー-''\ \|'/{|/,-ニニニ]__/{,, '゙(_,r ,_, , ; '"`(_, _, ,,_rx_/ ___ . /`'ー-=ミ -ニ, -マニニ/ / /`7′ 'ー//C゙/ \  ̄ ̄\/7 --ニニ/ . }ニ/ / /_/ / ///// ( ̄ ̄ ̄7//ー―<ニ{ . /-/ /,{ ( {/// | /ニニニ7/∧`\_ `ヽィ二{ i|-/\ \ ∨//| /ニニニ///-∧ ∨ニ二三三{ i i|ニ⌒)_\ ∨/| iニニニ〈//二二\ノニ三三三{ i i|ニ 名前:ジャイロ・ツェペリ 性別:男 原作:ジョジョの奇妙な冒険 一人称:オレ 二人称: 口調: AA:ジョジョの奇妙な冒険/7部 スティール・ボール・ラン/ジャイロとジョニィ.mlt ジョジョPart7「SBR」のもう一人の主人公。24歳。Part1~6に登場したツェペリとは別のツェペリ。 主人公のジョニィ・ジョースター(Part7のジョジョ)とコンビを組んで、アメリカ大陸横断の乗馬レースに参加する。 イタリア半島の小国の死刑執行人兼医者の長男。鉄球と「黄金長方形」の回転技術でレースを戦っていく。 キャラ紹介 やる夫Wiki Wikipedia アニヲタWiki ニコ百 ピクペ 登場作品リスト タイトル 原作 役柄 頻度 リンク 備考 真・女神転生やる夫は堕落の坩堝を生き延びる様です 女神転生シリーズ やる夫の仲魔、初期種族はケンタウロス 常 まとめ R-18 完結 やる夫とやらない夫で月旅行に行こう オリジナル 参加者の一人 常 まとめ 予備 完結 キル穂は破壊神のようです。 勇者のくせになまいきだ 魔界の学校でのキル穂のクラスメイト 準 まとめ 一部R-18 完結 aaaaquest6 幻のぼっち ドラゴンクエストVI アクバー役 脇 まとめ 完結 怪物は瓢箪となり、賢者は笑うようです 世界史(クラウディウス帝) ユリウス・カエサル役 脇 まとめ 完結 翠星石は夢を見ているようです ドラゴンクエストVI ミレーユとジョニィ(テリー)の父 脇 まとめ 完結 やらない夫は破壊神より強い化物と呼ばれるようです ドラゴンクエストII 勇者ロト 脇 まとめ 完結 短編 タイトル 原作 役柄 リンク 備考 やる夫で学ぶシャルル・アンリ・サンソン 歴史 シャルル・アンリ・サンソン役フランス革命期の死刑執行人 まとめ 短編
https://w.atwiki.jp/zerolibrary/pages/43.html
【種別】 マジックアイテム 【解説】 メイジが魔法を使うために必須のアイテム。 系統魔法、虚無魔法問わずこれがないと魔法を行使することが出来ない。 術者によって形状に個性があり。どうやらある程度自分の好きな形の杖を使うことが出来る様子。 杖の作成方法は未だ明らかになっていない。他の人の杖を使って魔法が使えるか否かも不明。 多くの場合はオーケストラの指揮棒(タクト)に似たタイプを持つ。 タバサのように魔法使い然とした大きな杖も存在する。 また、ギーシュのように薔薇の造花であったり、ワルドのように細剣を杖にするものもいる。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/7745.html
前ページ次ページゼロの使い魔×相棒 ~トリステイン魔法学院特命係~ プロローグ 「一体どうなっているんだ? 神戸」 それが、部長室にやってきた尊の説明を聞いた中園照生参事官の第一声だった。 中園はまったく要領を得なかったらしく、疑いというよりは否定的な目を尊に向けている。そして、それは中園の上司である内村も同様であった。 ある程度は覚悟していたが、現実にこのような対応をされるのは鬱陶しいことこの上ない。尊はうんざりしていた。そんなこと、俺が聞きたいよ。 「まったく、どうなっているのか…私にもさっぱりわかりません」 尊の答えは、彼の今の正直な気持ちである。 「馬鹿者! そんなふざけた説明で納得できるとでも思っているのか!」 とうとう堪忍袋の緒が切れた内村は手を机に叩きつけて立ち上がり、尊を怒鳴りつけた。 「刑事部長のおっしゃる通りだ! 何を隠しているんだ?」 中園がいつものように内村に同調した。 「どうせまた、我々に内緒で勝手に事件に首をつっこんでいるんだろうが。ええ?」 「いや、ですから本当のことなんです。何でしたら、角田課長にも聞いてみてください…」 「黙れ! 特命がっ!」 内村の怒鳴り声に弁明を遮られた尊は、首をすくめた。 「お前たち…俺をなめているな? よくわかった、いいだろう」 内村は、鋭い光を帯びた目で尊を睨みつけ、高らかに宣言した。 「杉下が今日中に見つからない場合は、特命係は解散、お前たちはクビだ! 異論は一切認めん! わかったか!」 尊は、右京の信じがたい消失、そしていきなりつきつけられた理不尽な制限時間つきの最後通告と急転していくこの現実が、 どうか悪い夢でありますようにと、今までにないほど真剣に神に願った。「苦しい時の神頼み」という諺の意味を、尊は骨身に染みて感じた。 しかし、神は苦しい時にしか頼ってこない尊に救いを与えてやるほど慈悲深くはなかった。 尊の選択肢は一つしかなかった。 「……わかりました」 尊は、顔を上に向けて小さく息をつくと、内村の方を見すえて、命令を承諾した。 「以上だ! とっとと出て行け!」 「失礼します」 尊は部長室の扉を閉めると、今度は大きなため息をついた。 「あの鏡、今の俺なら喜んで入るのにな…」 鏡も、都合のいい尊の願いを叶えてやるほど甘くはなかった。 第二章 春の使い魔召喚儀式を終えて教室に戻ってから、ルイズは憂鬱だった。 教室でのクラスメイトたちの話題が、もっぱら自分の使い魔自慢だったからだ。 クラスメイトたちの使い魔は、ネズミやカエルといった小動物からバシリスク、サラマンダーといった大きなモンスターまで様々いたが、自分の力で召喚しただけに愛着心は強いらしく、 ほとんどの生徒が教室に使い魔を連れてきていた。そして互いにこんな特技がある、ここがかわいいなどと言いあって、盛り上がっていた。 話に加わっていないのは、使い魔を連れていないルイズとタバサだけであった。タバサは我関せずと言わんばかりに、分厚い本を読みふけっている。 ルイズが使い魔を連れてこなかったのは、悪目立ちしたくないからであった。ただでさえ“ゼロのルイズ”などと呼ばれてうんざりしているというのに、 「あいつ」を連れてきたら何を言われるかわかったものではない。 タバサのように自分の世界にのめりこめないルイズは、できるだけ周囲の話を耳に入れないように努めなければならなかった。 そのために、休憩時間ではいつも以上に念入りに授業の予習復習をやっていた。 だが、そんなルイズを、彼女の不倶戴天の仇であるキュルケが見逃すはずはなかった。 キュルケは、巨大な赤いトカゲのモンスター・サラマンダーを連れていた。その尻尾の 先端には、炎が赤々と燃えている。 「あ~ら、ルイズゥ。年上の彼氏はどうしたのぉ? まさか、もう倦怠期?」 「あいつは彼氏じゃなくて、使い魔よ!」 「でも、ファーストキスだったんでしょ?」 「つ・か・い・ま・だって言ってるでしょ!」 堪えきれずに、ルイズは叫んだ。キュルケはいやらしい笑みを浮かべながらルイズから離れていった。 ルイズは、クラスの注目が自分に集まっていることに気づき、臍をかんだ。 案の定、同級生たちが「そういえばルイズ、君は使い魔を連れていないのかい? 例の平民の」 「“ゼロのルイズ”が呼び出した、前代未聞の人間の使い魔、見せてくださいよー」などと、口々にからかってきた。 キュルケとのやりとりで頭に血が上っていたルイズは、教室中に聞こえるような大声で言った。 「わたしはねぇ、あんたたちと違って、使い魔くらいでいちいち騒いだり自慢したりするほど子どもじゃないのよ!」 教室が静まり返った。それを確認したルイズは、表向きは何事もなかったようにすまし顔で着席した。 しかし、座ってから激しく後悔した。 言うんじゃなかった…。あれじゃまるで負け惜しみじゃない。何でわたしが、ここまで悩まなくちゃならないのよ。 こうならないようにあいつを部屋においてきたのに、全然意味ないじゃない! ルイズは頬杖をついて、誰に言うでもなくぼやいた。 「何もかも全部、あいつのせいよ…」 使い魔として召喚してしまった、妙に目聡く耳聡い、変な名前の紳士のことを、ルイズは思い浮かべた。 「ただいま……」 夜になり、授業を終えたルイズは憂鬱な気分を抱えたまま、使い魔が待つ自室の扉を開けた。 ルイズの部屋は、12畳ほどの広さで、窓を南向きとするなら、西側にベッドが置かれ、北側に扉があった。東側には大きなタンスが置いてある。部屋の中央にテーブルと、それを挟んで椅子が二つある。 「お帰りなさいませ、ミス・ヴァリエール」 右京が、上品な笑顔で部屋の主を迎えた。部屋の中にいるのでコートとスーツの上着を脱いで、ネクタイとカッターシャツ、ボタン留のサスペンダーで吊ったズボンという格好になっていた。 ちなみにコートと上着は、皺ができないようにきっちりと壁にかけてあった。 彼は窓のそばにいた。どうやら外を見ていたようだ。 「お疲れ様でした。どうぞ。紅茶をお淹れしましょう」 右京は椅子を引いて、ルイズに座るよう勧める。 テーブルの上には、ティーポットとカップが二つ、そしてビスケットの入った皿が置いてある。 ルイズは、まったく予想していなかった出迎えに、扉を開けた姿勢のまま固まっていた。 「おや、どうされました? …ああ、僕としたことが!」 「へっ!? な、なに? どうしたの?」 「ミス・ヴァリエールは、コーヒーの方がよろしかったでしょうか?」 「え……ううん、紅茶でいいわ。というか、コーヒーは苦手だから…」 「そうですか、それならよかった。僕自身が紅茶を夜に飲まないと眠れないほど好きなものですから、ついコーヒーを失念してしまいました。さあ、どうぞ。お座り下さい」 右京のそつのない応対と細やかな気配り、そして穏やかな笑顔に、さっきまでの憂鬱はすっかり吹き飛んでしまった。ルイズは勧められるまま椅子に座った。 「これ、誰かに用意してもらったの?」 彼女は、目の前にあるポットとカップを見ながら尋ねた。もともと、自分の部屋にはなかったものだからである。 「いいえ。厨房に勤めておられる女中の方から道具と茶葉をいただいて、僕が淹れました」 「ふーん、そう…って、ええ!? 外に出たの!?」 ルイズは思わず立ち上がった。 「ええ。しばらくはお部屋にあるアンティークの調度品を拝見していたのですが、あなたが非常に疲れておいでのようだったので、リラックスできるものがあった方が良いだろうと思いまして」 「あんた、わたしの言いつけを聞いてなかったの!?」 「万が一、僕より先にお帰りになったときのことを考えて留守にする旨のメモを残し、合鍵で施錠して厨房を探しに行きました。帰ってから念のためにお部屋を確認しましたが、なくなった物はありませんでした」 「そういう問題じゃなくて!」 「確かに、あなたからは部屋を出ないように言われていましたが、一度思い立ったら行動せずにいられないのが、僕の悪い癖で…申し訳ありません」 右京は、かしこまって謝罪した。 本来のルイズなら、言うことを聞かない使い魔には容赦なくお仕置きをしているところだが、右京のあくまで紳士的な態度を見せられると、その気持ちは削がれてしまった。 いちいち怒る自分が恥ずかしい、貴族としての器が小さいという気持ちにさせられるのだ。 しかし、このまま右京のペースに乗せられてしまうのも気に入らない。 しっかりしなさいルイズ! わたしはあいつの主人なのよ。お仕置きはしないにしても、ここで主人らしいところを見せつけておかないと。 ルイズは、咳払いをして、腕を組んだ。偉そうに振舞おうとする様子は何とも言えず微笑ましい。 「…まぁ、あんたが使い魔として、主人のわたしに気を遣ってやってくれたことみたいだし、その気持ちに免じて、今回は不問に付してあげる。でも…」 右京にビシッと指差した。 「忘れないで! あんたはわたしの使い魔なんだからね! 使い魔は主人の命令には絶対服従! わかった?」 「はい。お許しいただき、ありがとうございます」 右京は、穏やかな微笑をたたえて、謝意を示した。 「うん…。そう、わかればいいのよ」 そう言うと、ルイズは椅子に座り直した。右京の反応には肩すかしをくらったような気分になったが、無視した。 右京はルイズのカップに紅茶を注いだ。ポットをかなり高い位置に引き上げてまた戻すという、独特なものであった。彼女の分を注ぎ終えると、自分のカップにも同じように注いでいく。 ルイズは面食らった。自分が見てきた限りで、そんな注ぎ方をしている者は見たことがなかったからだ。 「それでは、冷めないうちにいただきましょう」 右京も席に着くと、まず香りを楽しみ、それからじっくりと味を楽しむように飲んだ。その表情は、非常に満足そうだった。 一方のルイズは、右京の独特の注ぎ方のために少し警戒心を抱いていたが、ご満悦の様子を見ておそるおそる口に運んだ。 「…! おいしい…」それが、嘘偽りない彼女の感想だった。 これまで紅茶は何度も飲んできたが、その中でも1、2を争う美味しさではないか。 「やはりミルクティーにはアッサムですねえ。貴族のご令息やご息女が召し上がるだけあって、香り、味ともに非常に質の高い茶葉です」 「うん、そうねぇ…………はっ!」 ルイズは、またも右京のペースに乗せられていることに気づいた。 「さて、そろそろ本題に移ってよろしいでしょうか?」 ティータイムが終わってから、気分がくつろいだルイズに右京が尋ねた。 「本題?」 「ここがどういう世界なのか、なぜ僕がここにいるのか、そして今後僕たちはどう行動するべきなのか…状況をまとめる必要があります」 「ああ…」 思い出した。 召喚儀式を終え、ルイズと右京は歩いて校舎へ帰っていた。 彼女は授業に戻る前に、右京を自室においておくことにした。部屋に向かう道すがら、やたらと質問してくる右京に 「帰ってからきっちり説明してあげるから、おとなしく部屋で待ってなさい! 勝手に出たりしちゃだめよ!」と言い残してきたのだった。 「確かに言ってたわね。わかった。説明してあげる」 そういうと、ルイズはすっくと立ち上がった。 さっきまではこの使い魔に圧されていたが、今度はこちらが教える立場だ。それならば自然と主導権を取ることができる。そのためには最初が肝心だ。 できるだけ尊大に、貴族らしく名乗って身分の違い、あるべき主従関係をこの男に叩き込むことだ。 ルイズは、気取った様子で高らかに名乗りを上げた。 「あんたはもう知ってるでしょうけど、最初に改めて自己紹介しておくわ。わたしはルイズ・ド・ラ・ヴァリエール。トリステイン魔法学院の二年生で、今日からあんたのご主人様よ」 「ええ。よろしくお願いします、ミス・ヴァリエール」 右京は、恭しく頭を下げた。 「……」 ルイズは、再び肩すかしをくらったような気分になったが、やはり無視することにした。 それから彼女は、今自分たちのいる場所が、ハルケギニア大陸のトリステイン王国内にあるトリステイン魔法学院であり、貴族の子女をメイジにするための公的教育機関であること、 そして自分が行った召喚呪文『サモン・サーヴァント』が原因で、右京が現れたことを説明した。 「なるほど…おそらく、あの鏡のようなものが『サモン・サーヴァント』で使い魔となる生き物を契約者のところへ送る、いわば転送装置だったのでしょうねえ。 そして、それにとびこんでしまったことによって、僕はミス・ヴァリエールの使い魔としてこのハルケギニアに召喚された…」 右京はいつの間にか立ち上がり、手を後ろに組んで部屋をうろつきながらひとりごちた。 「なにブツブツ言ってるの?」 なにやら考え込んでしまった右京に、ルイズが話しかける。 彼はルイズの方に体を向けて、質問を続けた。 「『契約』を行う前に、『召喚した使い魔候補は、やむを得ぬ場合を除いては、変えることは許されない』『人間が使い魔として呼び出されるなんて今までなかった』とおっしゃっていましたが、使い魔として契約する生物は、呼び出す側が選ぶことはできないのですか?」 「選べないわ。『サモン・サーヴァント』は、自分の属性とメイジとしてのレベルに応じて、最も適した生き物が自動的に召喚されるの。 属性はメイジにとって重要だから、召喚された使い魔によって判断するわけ。だいたい選べるんだったら、あんたなんか召喚しないわよ! もっとカッコいい、ドラゴンとか、グリフォンとか、マンティコアとかの方がいいに決まってるじゃない!」 「では、使い魔は、全てこのハルケギニアとは違う世界の生き物なのでしょうか?」 「動物も幻獣も、召喚されるのはハルケギニアの生き物よ…っていうか、あんただってそうでしょ?」 右京は、ここでいったん質問を止めて、考えをまとめた。 「つまり、僕がこの世界に召喚されるという事態は、あなた方にとっても本来ならば起こるはずのない、完全に偶発的な事故だった、というわけですねえ」 そして、左手のルーンに目をやる。 「僕の左手に刻まれた、この『使い魔のルーン』が『珍しい』というのも、おそらくそこに理由があるのでしょう」 「ねぇ、さっきから何言ってるの?」 真面目な状況把握の話だったはずが、だんだんおかしな方向に向かっているようにルイズは感じた。 「『この世界』とか『違う世界』とか、まるであんたがハルケギニアの人間じゃないって言ってるように聞こえるけど…冗談でしょ?」 冗談半分の軽い気持ちで、ルイズはそう言った。 彼女は、右京がトリステインか、あるいは他国かはわからないが、とにかく魔法の存在すらも知らないような田舎から来たのだと考えていた。 貴族への礼儀やマナー、教養を身につけていることから、どこかの貴族に仕えていたのではないかとも考えたが、それならば魔法を知らないというのは考えにくい。 たとえ野蛮なゲルマニアの平民上がり――ゲルマニアにはメイジではない平民でも金があれば領地を買い取って貴族になることができる制度があり、 一方トリステインでは法律で平民の領地の購入は禁止されている。この違いにより、トリステイン貴族はゲルマニアを「野蛮」と蔑んでいるのである。もちろん、ルイズも例外ではない――であろうと身分的には貴族だから、 メイジである貴族との付き合いも当然あるはずだ。貴族社会に身を置いている以上は、魔法と無縁でいられることなど、まずありえない。 そして、魔法をまったく知らないにもかかわらず、メイジの間でしか使われないルーンを右京はなぜか知っているようだった。 いったい、彼はそれをどこで、どのように学んだのだろうか。ルイズの中で、右京の正体は謎を増すばかりであった。 しかし、それにしても「別の世界の人間」は突飛な発想だろう。 そもそも、ハルケギニアとは別の世界が存在するなどルイズは今まで聞いたことも、考えたこともなかった。だから、右京がそんなことを言い出すなんて、何かの冗談としか思えなかった。 だが、右京は、あくまで真面目だった。 「いいえ。間違いありません。僕はハルケギニアの人間ではありません。地球の島国、日本の東京というところから来た、異世界の人間です」 右京の両目は、ゆるぎない確信の光に満ちていた。 ルイズは戸惑った。 チキュー? ニホン? トーキョー? 確かにどれも聞いたことのない地名だ。少なくともトリステインにはない。しかし、それで「異世界から来た」という主張を信じることもできない。 やっぱり冗談のつもりででたらめを言っているのではないか。 さもなくば、おかしくなって妄想を信じ込んでいるのではないか。 「本気で言ってるの? でも、そんなの信じられない…」 「確かに信じがたいことではありますが、これ以外に全てを矛盾なく説明できるものがない以上、たとえどれほど荒唐無稽なものであろうと、これが真実です」 右京は、静かだが確信に満ちた声で、はっきりと断言した。 「僕は異世界にいるのではないか――中庭で先生や生徒の皆さんの、地球上で可能なトリックや仕掛けでは説明のつかない空中浮遊を見たときにその可能性を考えましたが、 夜になり窓の外を見たとき、僕はそれを確信しました」 「どういうこと?」 右京は上を指差した。 「月です」 「月?」 ルイズは首をかしげた。まさか、右京がいた世界とやらには月がないとでもいうのか。 「証拠をお見せしましょう」 そういうと、右京は懐から小さな機械を取り出した。 「あ、それ…」 ルイズは、右京が中庭でそれをいじっていたのを思い出した。 「これは、携帯電話というものです」 「ふーん。見たことないわね。それ、どういうマジックアイテム?」 「簡単に言えば、離れた場所にいる人と直接会話できる電話機を携帯可能にした通信端末です。僕がいた世界の科学技術によって開発された機械です」 ルイズは思わず立ち上がった。その目は期待に輝いている。 「離れてる人と話せるの!? すごいじゃない! 何系統の魔法? ちょっとやってみせてよ!」 「残念ながら、今はその機能は使えません」 「何よそれ! 使えないアイテムなんか持っててどうするの?」 ルイズはがっかりして、力なく座りなおした。 「僕がこれを出したのは、この中にある写真をお見せするためです」 「シャシン?」 「この携帯電話にはカメラ機能も搭載されていて、人物や風景を撮影し、撮影した画像をデジタルデータとして記録することで、いつでも閲覧することができるのですよ」 「えっと、つまり…気に入った風景を残して、好きなときに見られるってこと?」 「はい」 ルイズは両手を合わせた。再び目を輝かせる。 「素敵! 二つのことができるマジックアイテムなんて! 何を見せてくれるの?」 右京が携帯電話をいじった。そして、ある風景を撮影した写真をルイズに見せた。 「この写真を見ていただければ、僕がハルケギニアの人間ではないということがご理解いただけるでしょう」 彼女は興味津々で画面に見入った。 「へぇ…あ、これあんたが写って……え? うそ、何これ……」 ルイズが見ているのは、笑顔の右京がきれいな満月の見える夜空の下にいる写真だった。 そこに写っているものに、彼女は絶句した。 「月が……一つ?」 「その写真は、一昨年の十五夜の日に、中秋の名月の下で撮影したものです」 右京は失礼、と断って携帯電話を取り上げた。 ルイズは、ショックのあまり動けなかった。 「そして…」 右京は窓を開けると、身を乗り出して携帯電話を上に掲げた。 パシャッ、というシャッター音が鳴った。写真を撮影したようだ。 窓を閉め、携帯電話をルイズのところに持っていく。 そして、今撮ったばかりの写真を彼女に見せた。 それは、ルイズにとっては見慣れた、というより当たり前なので最近はあえて見上げることすらなかった、ハルケギニアの夜空だった。 その光景は地球のものとは明らかに違っていた。 ハルケギニアの月は、地球のそれと比べると、優に二倍はあろうかという大きさだった。 そして、大きさ以上に、ハルケギニアと地球の月には決定的な違いがあった。 「このハルケギニアには、月が二つあります」 そう、右京が指摘した通り、ハルケギニアには大きさの違う二つの月が隣り合って浮かんでいるのだ。大きいほうは青く、小さいほうは白く光っている。 「そんな…こんなのって…」 ルイズは、目の前におなじみの二つの月の写真を見せられたことで、目に焼きついて離れない一つの月の写真との反論しようのない差異に、改めて大きな衝撃を受けた。 頭が真っ白になって、言葉が出てこない。 「仮にどちらかを火星、あるいは金星と考えたとしても、地球ではこのような見え方はしません。未知の惑星とその衛星などというのは論外です」 右京は、予想しうる反論を自ら提示し、否定していく。 「もう一つ考えられるとすれば、この二つの月が何らかの魔法によって人為的に作られた光景であるという可能性が考えられますが……ミス・ヴァリエール、そのような魔法に心当たりはありますか?」 「……ないわ」 ルイズは、つぶやくように答えた。 「すなわち、この月が一つしか写っていない写真が、僕がハルケギニアとは別の世界からやってきたという、確たる証拠なのですよ」 右京が携帯電話を操り、月が一つしかない写真が画面に表示された。 「大丈夫ですか、ミス・ヴァリエール。どうぞ」 茫然自失とした様子のルイズを気遣い、右京は優しく声をかけた。そして、彼女のカップに紅茶を淹れ、飲むように勧めた。 ルイズは出された紅茶を一気に飲み干すと、大きくため息をついた。ショックから抜けきったわけではないが、少しは気分が落ち着いたようだった。 「おわかりいただけましたでしょうか? ミス・ヴァリエール」 右京が確認してきた。 「…正直、信じられないけど…こんな証拠を見せられたらね…」 ルイズは、今の自分の正直な心境を吐露した。 「お察しします。僕も逆の立場だったならば、きっとあなたと同じことを思うでしょうからねえ」 いや、それはないだろうとルイズは思った。 この男なら、あの月が一つしかないシャシンを見せられても、何か思わぬところから、相手がぐうの音も出ないような反論を考えつくのではないだろうか。 右京の全てを信用するわけではない。しかしルイズは少なくとも、この親子ほども歳の離れた男の驚異的な洞察力、記憶力、そして頭の回転の速さは認めざるをえないことを悟った。 少しの静寂のあと。 「ミス・ヴァリエール」沈黙を破ったのは右京だった。 「なに?」 「僕を呼び出した魔法…『サモン・サーヴァント』でしたか。もう一度、その魔法を僕に使っていただけないでしょうか?」 彼は、自分を呼び出した魔法ならば、再びその魔法にかかれば元の世界に帰れるかもしれないから、と提案理由を説明した。 だが、ルイズは一瞬悩んだ顔になったあと、首を振った。 「無理よ。『サモン・サーヴァント』はあくまで呼び出すだけ。使い魔を元に戻せる呪文なんて存在しないのよ」 「一方通行、というわけですか」 「それに、今は唱えることもできないわ」 「『やむを得ぬ場合』ですね」 「そう。『サモン・サーヴァント』を再び使うには、召喚した使い魔が死ななきゃいけないの」 やはり右京の記憶力と洞察力は恐ろしい。本当に何も知らないのか疑わしくなるほどに話が早く進んでいく。 そんな相手に、死んでみる?と冗談めかして付け加える気には、さすがのルイズもなれなかった。 「では、ほかにこの世界と僕のいた世界とを繋ぐような魔法はご存知ありませんか?」 「ないわ。さっきも言ったけど、別の世界なんて聞いたことないし」 「そうですか…。そうなるとやはり、ここであなたの使い魔として仕えながら、自力で帰る方法を探すしかなさそうですねえ」 「そういうことね。わたしも不本意だけど」 右京の言葉に、ルイズが同意した。 大変な状況であることは変わりないものの、ともかくこれから二人がどうするべきかは決まった。 こうなればあとは、細かいところを詰めていくだけである。 口火を切ったのは、やはり右京だった。 「この世界における使い魔には、どのような役割が与えられるのでしょうか?」 そうねぇ、と言って少し考えた後、ルイズは答えた。 「まず、使い魔には主人の目となり、耳となる能力を与えられるわ」 「それは、僕が見聞きしたものをあなたも共有できる、ということですか?」 「そうよ。でもあんたは無理みたいね。わたし、なんにも見えないもん」 「申し訳ありません。ほかには何が?」 「主人の望むものを見つけることよ。例えば秘薬とか」 「秘薬といいますと…錬金術におけるいわゆる不老不死の霊薬・エリクサーのようなものでしょうか?」 「不老不死って…。そういうのじゃなくて、特定の魔法を使うときに使用する触媒のこと。硫黄とか、コケとか…」 「なるほど」 ルイズは頬杖をついた。諦めたように嘆息する。 「あんたに、そんなの見つけられないわよね…。秘薬の存在も知らないもんね…」 「そういったものでしたら、危険な場所でない限りはお役に立てると思いますよ。職業柄、探し物は得意ですからねえ。 もっとも、硫黄のような鉱物の場合は、採掘するための道具が当然必要になりますが」 「いい、いい。期待してないから……。で、これが一番重要なんだけど…」 「ほう。一番重要、ですか」 右京が身を乗り出した。 「それは、主人を守ること。その能力で主人を敵から守るのが、使い魔の一番の役目なの」 「護衛ですね。そういったことなら、これも職業柄、武道や体術の心得がありますから自信はあります。人間相手なら…」 「じゃあ、大きな幻獣相手ならどう? 無理でしょ?」 「それはさすがに対処のしようがありませんねえ」 右京は苦笑した。 「だから、あんたができそうなことをやらせてあげる。掃除、洗濯、その他雑用。あんたなら手際よくできるでしょ?」 ルイズは、ティータイムにおける彼の完璧なふるまいを思い出して言った。 「気を遣っていただき、ありがとうございます。では、それらの合間に帰還方法を探すということでよろしいですね?」 「主人としてはだめ…というべきところだけど、あんたが帰ってくれればわたしも次の使い魔を召喚できるからね。 仕事をおろそかにしないなら許可してあげる。それに、『一度思い立ったら行動せずにいられない』んでしょ?」 ルイズは、右京の真似をして、彼が言った言葉尻をそのまま返してやった。 右京にイニシアチブを取られっぱなしだったが、ようやく一矢報いた気分で得意げな表情になる。 右京は、そんなルイズの気持ちを知ってか知らずか、何か含みのありそうな笑顔を彼女に向けた。 「もういい? いろいろあって、眠くなってきちゃった…」 ルイズは体を伸ばして、あくびをした。 「ああ、失礼」 右京が、突然部屋の外に出た。 「ちょっと、どこ行くのよ!?」 「表で待っていますので、どうぞお着替え下さい」 扉の向こうから右京の声が聞こえた。 ルイズはしばし考えて、彼の意図に気づいた。 ああ、着替えを見るわけにはいかないってわけね。まだ着替え始めてもいないっていうのに、ほんとに察しがいいわ。 それにしても、使い魔のくせに一丁前に紳士気取りだなんて。まあいいけど。 気にせず、ルイズは着替えることにした。 ブラウスにスカート、ニーソックスから下着まで脱いで、最後に彼女には少し大きめのネグリジェを頭からかぶった。 「もういいわよ」 外で待っている使い魔に声をかけた。 音をさせないようにゆっくりと扉が開かれ、右京が入ってきた。 「それ、明日になったら洗濯しといてね」 ルイズが下にあるものを指していった。彼女が脱いだ下着類だ。 「かしこまりました。水場はどちらに?」 「校舎から中庭に出るところに、井戸があるわ」 「そうですか。ありがとうございます」 「じゃあ、おやすみ…」 「あ! すみません。あと一つだけ」 心にひっかかっていたことを思い出した右京が指を立てて、寝ようとするルイズに食い下がる。 「なによ…」 これまでにないほど、一日にいろいろなことが起こったせいで精神的に疲れていたルイズは、うんざりしたような声をあげた。 「きわめて個人的な興味なのですが、同級生の方があなたのことを“ゼロのルイズ”と呼んでいましたね。どういう意味なのでしょうか?」 ルイズは不愉快な顔になった。 「おやすみっ!」 質問に答えることなく、ベッドの中に潜ってしまった。 右京は「おやすみなさいませ」と小さく返事をすると、視線を下ろし、思案を巡らせた。 “ゼロのルイズ”は、どうもルイズにとっては嫌な言葉のようだ。 あだ名だとしたら、子どもの間でよくある、からかいをこめたあだ名なのだろう。 では、“ゼロ”にはどういう意味がこめられているのか。何が“ゼロ”なのか。 もしかしたら、違和感を覚えた『あのこと』と関係があるのだろうか……。 と、そのとき、床に放っておかれた下着類が目に入った。 ふと、ルイズが風呂に入っていないことに気づいたが、 すぐに、中世ヨーロッパでは“下着を替えること”が“身体を洗う”のと同じくらいの効果をもっていると考えられていたことを思い出した。 ご主人様・ルイズと使い魔・右京の一日目はこうして過ぎていった。 前ページ次ページゼロの使い魔×相棒 ~トリステイン魔法学院特命係~
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/7222.html
前ページ次ページゼロの使い魔~我は魔を断つ双剣なり~ 宝物庫の中は酷い有様になっていた。腐り落ちた岩に潰された槍の残骸は原型を留めておらず、 その近くにあった品々も、超高温に曝されたかのように解け落ちていた。 シルフィードの背から降り立ち、九朔とタバサは宝物庫内へと進入する。 先程よりはマシになったとはいえ腐臭は今も漂っており、胸の悪くなるようなその臭いに眉を 顰めつつ二人は宝物庫内を行く。 「酷いな……何を盗られたかすら分からんぞ、これでは」 荒らされた宝物庫内を見て九朔は呟く。しかし、それを意に介さないようにタバサは奥へと 突き進んで行く。 「タバサ?」 「フーケの仕業なら、盗んだ証を残す」 そう一言。進むタバサを追うように九朔はその後ろをついて行く。 「しかし、どうにも只の瓦落多ばかりのように見えるな」 「オールド・オスマンの趣味もある。実際に魔力の込められたマジックアイテムもある」 「なるほどな。しかし、魔力……なぁ」 そう呟く九朔の瞳には、よどんだ霊気の淀みが見えていた。大気の歪みの様に見える霊気は、 明らかに先ほどの巨人の影響だろう。まるで混線したラジヲ電波のように異界色の魔力が 絡み合っていた。 (やはり、あの蛆虫と一戦交えて以来取り戻しつつある……か) 記憶の虫食いは未だあるが、それでも身に宿る力に実感がある。 「あった」 「ん?」 前方からのタバサの声。見上げれば、壁に見慣れない文字が書かれていた。 「なんと、書いてあるのだ?」 「『破壊の杖、確かに領収しました。土くれのフーケ』」 「破壊の杖?」 「私も知らない。恐らく、宝物の一つ」 振向いたタバサの無表情な瞳が九朔を見た。 「でも、あれは話に聞くフーケとは違う」 「どういうことだ?」 「それは――」 「だあああああああらっしゃあああああああああああああああああああああああああ!」 「!?」 「な、なんだ!?」 突如宝物庫に響き渡る絶叫、というかシャウト、というか。 辺りを見回すが、声の主はいない。あるのは瓦落多の剣やよく分からない本や、本当に ナニに……ではなくて、何に使うのか分からないようなものばかり。 「いきなりアレか! アレだよ! 出番カットというか出オチというか、登場して一秒退場 というか! いや、そもそも俺が出てこなかったりするのはどういうことでぇ!? そんな役回りばかりの俺にだって愛の手はあってもいいだろうがぁ! というか、ヘルプ! 誰かヘルプ! 俺にも活躍を! 活躍する機会を! 俺が俺として活躍する機会を誰か くれよぉぉぉぉぉぉおおおおお!」 「…………」 「…………」 宝物庫内に冷たい風が吹いた。呆気にとられたというのが正しい気もするが、なんというべきか、うん、口にするのも億劫な気分だった。 「タバサ、教師達は?」 「すぐに来るはず。若干、遅い」 「ああ、そうか。ならば……行くか」 「うん」 宝物庫に出来た穴から退散しようかと、きびすを返す九朔達。が、 「って、こら! 待ちやがれい! いや、待ってください! というか逃げないでぇ!」 再び叫び声、今度は切実な感じ。 「……」 「……」 「おお、止まったか! 止まってくれたか! いやぁ、やっぱ持つべきは良き隣人って言った もんだよなぁ……ああ、涙がでてくるぜぃ――って、俺、涙なんてでねぇんだった、 てへっ(はぁと)」 一人漫才、誰も聞いてはいないというのに。 「……行くか」 「分かった」 「って嘘だからァァァ! 待て! とにかく待て! 本編にいるのにアニメでだけ存在を 消されるような真似とかされるの嫌だからちょっち待ってェェェェェェェっっ!」 大きな溜息が九朔からこぼれる。 「……我としては、すごく無視してやりたい気分なんだが」 「おい、聞こえたぞ!? 無視とかやっちゃいけないって親から習わなかったか!? 人には 親切しましょうって、習ったろ!?」 「すまん、覚えてない」 「ひどっ!」 「記憶喪失だからな」 真実である。 「わ、分かった。とにかく俺の話を聞いてくれ。落ち着くからよ、テイクイットイージーって やつだ。分かるよな?」 「……ああ、分かった分かった。分かったからとっとと姿を現せ」 「いや、もういるんだけど?」 「何処だ?」 「ここ」 「何処だ?」 「だからココだって」 「だから、何処だ」 「ほれ、ここだ」 「…………」 非常に人の神経を逆撫でるのが得意のようだ。心の広い大十字九朔といえども実にイラっとくる 気分である。 「帰るか」 「待ってぇぇぇぇ! ここ! ここだから! イラストなしだから分かりにくいの分かるけど! 文章にして書かないと分からんのはすっごい分かるけど! 俺の声は『壁に立てかけた剣の 束の中から』声が聞こえてるから!」 「メタか」 「メタ?」 「いや、こちらの話だ」 軽く頭を抱えつつ九朔は言われたとおり『壁に立てかけた剣の束』に近づいた。 「で?」 「ここ」 そこでようやく、その声の主を見つけた。何十本と束ねられた剣の中から錆の浮いた剣を 引きずり出し、九朔は語りかけた。 「汝がか」 「おうよ、坊主! いやー、一瞬本当にこのままフェードアウトかと思ったが、そんな事は なかったぜ!」 実に歓喜に満ち満ちた声だった。 「インテリジェンスソード」 「ん?」 横を見るとタバサが剣を指さしていた。 「魔法使いが魔力を込めたマジックアイテム、珍しい」 「そうか」 「おう、その通りよ! この俺、デルフリンガーさまはそりゃもう大昔に作られた剣よ!」 鼻高々に(といっても剣だが)自分を誇るデルフリンガー。 「その割には、只の錆ついた剣のようにしか見えんがな」 「お前さん、口悪いね」 「本当のことだろ」 「まあ、そーだがね……って、ちょい待った。お前さん、どこかであった事ねえか?」 ひどく突飛な質問に九朔が首をかしげる。 「いや、汝とは今が初対面だ」 「あっれぇ? な~んかお前さんとは初めてのような気がしねぇんだけど」 ぶつぶつと呟くデルフリンガー。と、そこでようやく宝物庫の扉が開き、人が雪崩れ込んできた。 「何事ですか!?」 「ふむ、どうやら手酷くやられたようじゃの」 先頭にいたのは、コルベールとオスマンだった。人波に呑まれぬよう下がった九朔とタバサへ 二人は視線を合わせる。 「おや、君はミス・ヴァリエールの……それに隣は」 「ミス・タバサじゃな」 宝物庫の各所へ行く教師陣。その中でオスマンとコルベールが二人を手招く。それに従い、 宝物庫の外へ九朔とタバサは出る。 「コルベール殿、こちらは……?」 「このお方はオールド・オスマン。この学院の学院長だ」 そうして紹介される老人へ九朔は視線を移す。 九朔としてはコルベールの方は何度か会い、話した間柄だが、この老人は初めて見る顔だった。 「始めましてじゃの」 「こちらこそ、お初にお目にかかる」 傍目には白髪に白の口ひげを蓄えた老人にしか見えないその姿。だが、ただの老人ではない。 刻まれた皺、にじみでる何かが九朔にそう感じさせた。 「で、じゃ。先ほどの話なのだが、ミス・タバサ、それに――」 「九朔。大十字九朔だ」 自分の名を告げる。 「そうか。ミスタ・クザク、ミス・タバサ。話を聞かせてもらいたいのはやまやまなのじゃが、 今日のところはこの状況、落ち着かぬにも程があるのでな。明日、学院長室まで頼めるかの?」 そう告げるオスマン。互いにタバサと九朔は顔を見合わせ頷く。 「我は別に構わぬ」 「同じく」 が、しかし 「ちょい待った、ジジイ! 俺様はどうなるんでい!?」 デルフリンガーの声がその間に割って入った。 「ほう? インテリジェンスソードか。はて、ミスタ・クザク、お前さんのかの?」 「いや、ここに在った物だが……」 「ふむ」 口ひげを撫で付け、デルフリンガーと九朔を交互にしてオスマンが見つめる。 コルベールもまた、ガンダールヴかもしれないという少年への好奇心と関心で見つめる。 「おい、黙ってねえで何とか言えってんでぃ! こちとら剣であっても飾り物じゃねえぞ!」 「デルフリンガー。汝、相当に口が悪いな」 「へっ、構うもんかい。それよりジジイ! どうすんでえ!?」 「そうじゃのぉ……」 そうして上がるオスマンの顔は――実に良い笑顔をしていた。 「ど~せ瓦落多かなんかだろーし、ミスタ、持ってってくれい」 「はぁ!?」 「はいぃ!?」 無表情のまま黙るタバサと対照的に、驚きの声を九朔とデルフリンガーがあげる。 「待ってくれ! 一応この剣はそなた等のだろう? それを部外者と変わらぬ我が持っていく など、おかしいではないか」 「まあ、そうなんじゃがな。この宝物庫、マジックアイテム以外のいらない物とかけっこう あっての。その剣、喋れるくらいしかないみたいだし、持ってちゃってえーよ?」 「おいコラ! 誰が喋るしか能がねえだ! 訂正しろい!」 「しかし、良いのか?」 「ええんじゃ、ええんじゃ。それに、今日は忙しくなりそうなんでの、ワシも行かなきゃならん。 そういう訳でミスタ、後は任せた!」 「あ、テメ! 俺のこと無視すんじゃねえ! 」 そう言うと、オスマンはダッシュで宝物庫の中へと消えた。実に活きの良い老人である。 「それじゃあ、クザク君。ミス・タバサ。私も行かねばならないので」 後を追うようにコルベールもまた宝物庫へと消えて行く。 残されたのはタバサと九朔、そしてデルフリンガー。 「まあ……そういう事だ。デルフリンガー、我と来るか?」 「そりゃ、おめえ。それしか選択肢ねえもの」 「貰える物ならば持っていて損はない」 話すタバサに九朔も頷く。 「確かにな。では、これから頼む」 「こちらこそよろしく頼むぜ、相棒。これからはデルフとでも呼んでくれ」 * 人は誰しも夜の訪れを迎え、眠りにつく。 それは全ての人に等しく、優しく、容赦なく。 そして、誰もが夢を見る。 「お母様…………」 それは哀しい夢であったり、 「ああん、駄目よダーリン………」 少しいかがわしい夢であったり、 「違うんだ、これは違うんだモンモランシー。ああ、それだけは……アッー!!」 なんか微妙に修羅場ってる夢であったり、 「ギーシュのばかぁ…………」 切ない夢であったり、 「クザクさん……ああっ、そんな、駄目です……うそ、もっとして……」 おめでたい夢であったり、 「やったぁ…………胸がおっきくぅ……ふぎゅ」 憐れみを感じる夢だったりする。 全ての人が各々の夢に浸る中、しかし一人だけ夢を見ない者がいた。 トリステイン魔法学院、院長室。一人の老人が己の眼前にいる『それ』を見据えていた。 周囲には助平ではあるが主には好々爺である彼の顔、しかし今の彼にそれはなく。 生きる活力を失い、ただただ枯れ逝く老木のような表情を浮かべる彼の瞳の奥は疲れきり 磨り減っている。 外から先刻のゴーレムの件で動く人間達の声が微かに聞こえる中、それはそこにいた。 「やあやあ、オールド=オスマン」 それは女のやふであり男のやふである。 彼女があるだけで部屋の中は夜闇の月光さえ差し込まぬ黯黒となる。 彼があるだけで部屋の中は暖炉の暖かさを失い真冬と等しくなる。 外から聞こえていたはずの声も零になる。 世界がそこだけ隔絶する。 それは正しく異形である。 「おやおや、何だかお疲れのようだねマイ・ディア・オスマン?」 それは彼の机に腰掛け、彼に笑む。 酷く虚ろで邪悪な笑みだった。 「ああ、そうか。今日は色々あったからね。疲れるのも仕方のない事ではある」 「何の用じゃ」 暗闇にか細く燃えるランプの焔に照らされ、彼の瞳はそれを見る。 「ああ、怖い怖い。そんな怖い顔をしないでおくれよ」 優しく、彼の肩に手を置く、それ。しかし、それの声が彼の心を安らげる事は決してない。 彼≠彼女はくすくすと質量のない笑い声を上げて彼の瞳を覗きこむ。 「これでも僕は君が結構好きなんだよ?」 目の前に差し出された鉄の表装がついた書、オスマンの眼端が強張る。 その意を理解し、ただその瞳は深く、奈落に沈む。 「………また、なのか」 「ああ、これかい? うん、その通りだ、マイ・ディア・オスマン」 くすくすと、無邪気な哂い声が響く。 「道化は舞台をちゃぁんと整えなければならないからね。狂った舞台を整えなきゃいけない。 ああ、忙しい。急がし言ったらありゃしない!」 パラパラとその本をめくりつ彼はオスマンへと視線を向ける。そこにあるはずの瞳は 何故かなく、虚ろな眼窩がオスマンを捉えた。 「そして君は……そう、君は今回もいつも通り見届けるだけで良い、君はいつも通り観客たれば 良いのさ。ね、簡単だろう?」 「そうやって、儂は何時まで見続ければ良いのだ……」 「僕が望む形になるまでずっとだよ、ずっとさ」 「そうか……」 「ああ、そうさ。そうなのだよ」 裂けた様な笑みが彼女に張り付く。 それは彼を牢獄に繋ぐ呪詛、しかし彼の心は既に蝕まれ、冒され、その声に従うのみ。 彼女は彼の背にまわり、愛し子を抱きしめるように彼の首に腕を絡める。 「ああ……あたたかいねぇ、オスマン」 「…うぅ………」 彼の全身を想像を絶する快楽が強引に引き出され、侵して征く。 その中で彼の思考は彼岸の彼方へと押し流される。 その中で彼の精神は解かれ、溶け、原初の海へと還る。 故に、今ここで起きた事を彼は思い出すことはない。 彼の魂にのみ刻まれるだけ。 彼女≠彼は己の腕の中で侵されて征くオスマンの耳元でそっと囁く。 それはとても慈悲深く、とても残酷な彼/彼女なりの愛し方だ。 「大丈夫、きっと今回で全ては終わるよ。安心して良い、何故なら―――」 彼女が指を鳴らすと、遠見の鏡が淡く輝いた。 その先に映るのは蒼銀の髪を持つ少年の寝姿。 「大十字九朔、僕の愛しの騎士殿がいるからさ………」 暗闇に燃え盛る三つの眸が嘲笑する。 曰く、それは黯黒の王である 曰く、それは燃える三眸である 曰く、それは闇に吼えるものである それは奇怪なる太鼓とフルートの音にまどろむ白痴の王に仕えるもの また同時にその盲目暗愚たる父を嘲笑するもの それは千の貌を持つ無貌、混沌の庭に住まうもの ”それ”の名は―――― 前ページ次ページゼロの使い魔~我は魔を断つ双剣なり~
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/6661.html
前ページ次ページゼロの使い魔~我は魔を断つ双剣なり~ それは決戦場だった。 血戦場だった。 ――いや、処刑場だったのかもしれない。 闇が集う、闇が集う、闇が集う。 歪んだ/狂った/悶える/異形の闇が集う。 光が集う、光が集う、光が集う。 荒ぶる/吼える/嘲笑う/異形の光が集う。 全てが一つに混ざり合い、全てが一つとして重なる事が無い。 全てが否定しあい、全てが肯定しあい、全てが無に還る。 それはあらゆる万物の法則を無視した、純潔で醜悪な儀式。 そこにルイズはいた。それを人の認識では感知できない感覚で『観ていた』。 その儀式を銀河の果てで、銀河の中心で、宇宙の内側で、ガムの包み紙の外で『観ていた』。 それは、二体の巨人の、二体の神の、極限戦闘【エクストリームバトル】。 苛烈に/兇悪に/鮮烈に/衝突しあう、美麗な/邪悪な/神聖な/醜悪な/舞だった。 そして、舞は終わり、二体は激突し、離れる。 光と闇の軌跡は、宇宙において完全なるシンメトリを描き、相対する。 そして、二体は鋼の手を伸ばし、ソレを掴み取る。 宇宙の奥底から=宇宙の外側から=宇宙の裏側から=宇宙の彼方から=宇宙の上部から 宇宙の逆から=宇宙の表から=宇宙の臓腑から=宇宙の皮膚から=宇宙の脳から= 宇宙の腕から=宇宙の瞳から=宇宙の夢から →それを引きずり出した。 「――――――ッ!」 「――――――ッ!」 宇宙を破壊し、宇宙を再生し、宇宙を創生する、その祝詞は、意/威をもって紡がれる。 両者が掴む、歪な線であり、立体。 それは宇宙であり、それは宇宙でなく、それは万華鏡で、それは、それは―― ** 「――ッ!?」 そこでルイズは無意識の奥底から目覚めた。 だが、開いた瞳に捉えるのは、塗りつぶされたような一面の漆黒。 「気づいたか?」 「クザ……ク?」 ひどく間近で聞こえる自分の使い魔の声。そう、吐息がかかるほど、近くに。鼻をくすぐる 香水の香り。女性がつけるような、芳しい匂いが鼻を突いた。 「ようやく、起きたようだな。怪我は無いか?」 言いながら、九朔がルイズの額を撫ぜる。それはルイズの怪我を心配してか優しい仕草で、 髪をかき上げ撫ぜる手は柔らかくて、それはまるで姉のカトレアを思い出すようで。 ちい姉さまと慕う彼女の笑顔がルイズの脳裏で鮮明に思い出される。それは女神のような 神々しさと穏やかさを兼ね備えた美しさで、何者の心さえ溶かすような温かさを持っていて。 ああ、そうだ。いつも魔法ができない自分の頭を撫でてくれてて―― 「ルイズ?」 「……へ?」 ――そこで我に返った。どうやら、また意識が何処かに行っていたようだ。これは恥ずかしい。 頬が真っ赤に染まるのを覚える。 「大丈夫か?」 「だっ……だだだ、だいじょぶよ!? うん、ぜんぜん大丈夫!」 「痛むところは、あるか?」 「う、ううん。平気、ばっちり、ぴんぴんしてる」 「そうか……。ならば、良い」 柔らかな物腰で九朔が呟く。どうにか気づかれていないようだった。 「ねえ、クザク」 「なんだ?」 暗闇の中で、九朔の手を借りて立ち上がり辺りを見回す。 「ここ、何処なの?」 「分からぬ。だが、我等はあそこから落ちたようだ」 「何処?」 「上だ」 「上? 真っ暗で何も……あ」 そこで、気づく。遥か頭上、それこそ小指の先のような、小さな、小さな、点。そこから 光が差し込んでいた。 その微かな光のおかげなのか、よくよく見れば、クザクの姿もおぼろげにだが視認する事 が出来る。 「嘘……。あんなところから落ちたの?」 「ああ、そのようだ」 「死ななかったのが不思議だわ……」 「運が良かったのだろうな。日頃の行いが報われたに違いない」 「でも、どうしたら良いのかしら。フライが使えたら、こんなところすぐにでも抜け出せるけど、 でも、アタシ……」 落ち込むルイズの頭を、九朔は撫ぜた。その手つきは、やはり優しい。 「安心せよ。魔法が使えなくとも、抜け出す方法はありそうだ」 「え?」 そうして九朔が指差す先には、ぽっかりと空いた洞穴があった。 「トリステインの地下にこのような洞穴があるとはな……知っていたか?」 「ううん。こんなの、本でも見たこと無いわ……姫様から聞いた事も無いもの」 「姫様?」 「このトリステインの王女であられる、アンリエッタ様のことよ。言わなかったかしら? 幼いころにはアタシ、姫様の遊び相手をさせていただいた事もあるの」 「……汝、貴族は貴族でも、実は相当に身分の高い家柄か?」 「当たり前でしょ、アタシ貴族だもん」 「…………」 ならば、常日頃のあの傍若無人な振る舞いは何だというのか。いや、それほどまでに高貴な 身分なのだ。その常日頃の鬱憤晴らしが必要な事もあろう。とばっちりを喰らう方はとんだ 迷惑千万なのだが。 ――正義【ジャスティス】ッッ! 突然見目麗しい妙齢の女性が、その年に似合わぬミニスカートのコスプレで、しかも何故か 涙目でポーズを取っている姿が何故か浮かんだ。その周りには、生ぬるい目つきでそんな彼女を 見るミニスカメイド達と、微笑ましく、それこそ娘の成長を見守る親とでも言わんとばかりに 微笑ましい眼差しを送るウィンフィールドの姿が。 「クザク? もしかしてどこか痛むの?」 「いや……なんでもない」 疲れている、そう思うことにして九朔は今脳裏に浮かんだ姿を記憶から抹消した。 さらに洞穴は奥へと続く。 続く洞穴、不思議な事に奥に行くにつれて道が整備されているような気配があった。 進むにつれ、段々と道を塞いだ岩塊と土が減って行く。 「奇妙だな……」 「うん……」 吹き込む風が段々と肌で感じられるものになっていく。道幅はより広く、天井はより高くなる。 そして、道の先が急激に開けたかと思うや、その全貌が九朔達の眼前に現れた。 「え……!?」 驚きの声がルイズの口から漏れる。 ルイズの目に入ったそれは、文字通り果てしなく広い空間であった。 壁に刻まれた文字は淡く輝き、その空間を仄かな光で照らし出す。だが、その明かりを以てしても その空間の端を見通すことができない。それほどまでに巨大であった。 「ルイズ、汝はこの場所の話を聞いた事が在るか?」 「ううん……さっきも言ったけど……知らない」 鋼の足場をくだり、その空間の真ん中へと向かう。歩くたびに、積もった埃が舞い、淡い光に 反射しては落ちる。その埃の量や、何年という単位でなく何十、何百年と言う単位で人が 入り込んだ形跡が見られない。 「もしかして、アタシって今、歴史的大発見の場に居合わせてるのかしら」 「………………」 だが、隣にいるはずのクザクは答えない。それどころか、隣にいなかった。 「クザク?」 九朔はルイズのはるか後ろ、淡く輝いた空間のただ中で突っ立っていた。 その姿、瞳に生は感じられず、まるでそこに人形があるだけのように見えた。 「クザク……?」 「……ン……ベイン」 そして、ルイズは卵がひび割れるような音を聞いた。 ――ザザッ 九朔の姿が、擦れる。文字通り、後ろの風景が透けて見える。紅く染まる、世界。 九朔の姿が解けて/薄れて/消えて/なくなっていく。 「え!?」 驚き、目を擦る。自分の見ているものを信じられず、もう一度見直してみる。 「見間違い……?」 やはり、何もなかった。九朔が突っ立っているのは同じだが、姿が薄れていると言う事は無い。 消えてもいない。世界は紅に染まってなどいない。 「ふう……。ちょっとクザク、ぼーっとしてないでよ」 「……え?」 ようやく我に帰ったか、九朔がルイズを見る。 「だから……まあ、良いわ。それより、今さっき何て言ったの?」 「さっき?」 「だから、何か言おうとしたじゃない。えっと、なんだっけ。ほら、デモン――」 ――GIIIIII’AAAAAAAAHHHHH! 咆吼が、空間を戦慄かせた。 地面が激しく揺れ、鋼鉄の壁が紙細工のようにへしゃげていく。異常に膨れ上がった壁面が 津波となって見る見るうちにルイズ達へと向かってきた。地面の中を何かが泳いでいた。 「ルイズッッッ!」 「分かってる!」 同時駆け出す。遥か先に見える通路へと一目散に全力で疾走する。だが、先回りをしたとでも 言いたげに、その津波は九朔達を一気に行き過ぎ、鋼鉄の床を突き破ってあの巨大な蛆は 再びその醜悪な頭部を曝け出した。 「ひっ!」 ルイズは身体を竦ませた。腐臭が鼻を突く、瘴気をまとった咆吼はなおも大気を戦慄かせる。 鎌首をもたげ、汚濁した唾液を蛆は口腔から滴らせる。 ドォッ―― 全身を蠕動させ、蛆はその全容を大空間に曝け出した。屍蝋色は先ほどよりくすみ、浮かんだ斑は 呼吸に合わせて不気味に伸縮をしている。 足が震え、ルイズは金縛りにあったように動けなくなった。 ここで終わりなのか、眼の前が暗くなる。 だが、ルイズを背に隠し、九朔が前へ出る。 「九朔……?」 九朔は答えない。しかし、その翡翠は確信していた。眼前の邪悪を討つ術を確信していた。 身に湧きだした力がそう告げていた。 不意に脳内に浮かんだ【式】が可動を始める。 激しく脈打つ心臓、鼓動はけたたましく、しかし心は何処までも静寂。 九朔の中で術式が組み立てられる。それは邪悪を討ち、魔を断つ外道の智識。 しかし、今の九朔はそれを知る術も、その意味も知らない。 だが、彼の二重螺旋に深く刻まれた【記述】がそれを可能にしていた。 破壊され失われた断片が今この瞬間、九朔の中で再構築され、意/威となっていた。 親指の皮を噛み千切り、傷口から真紅の熱が――血液があふれ出す。 「血こそ我が存在。我が魔力の証明。我が魔術の源泉……」 謳う。少女と見紛うほどの整った顔が、激しい憤怒相を纏う。しかし、その美しさは失われない。 あふれ出した血液は空に解け、鮮血はたちまちの内に血霧と化して蛆の周囲に満ちる。 呻きの叫びをあげる蛆、それを見てルイズが驚きの表情を浮かべる。 「く、九朔!? あんた、今、何を……!」 「ルイズ」 「え?」 「我の合図と同時に、奴へ魔法を叩きつけろ」 「でも……今の……」 有無を言わさぬ響きだった。しかし、失敗魔法しか撃てない自分に何をしろというのか。 「後で話す。今、汝にしかできぬ事があるのだ。頼む」 その響きは自分へ完全な信頼を置いてくれていた。誰にも頼られなかった自分を頼ろうと してくれていた。ルイズに行動を起こさせるのに、それは充分すぎる理由となった。 「――分かったわ!」 「よし……ならば、駆けろっっ!」 「え!? あ、うん!」 再び疾走、それも蛆に向かって。 「ちょ、ちょっと!?」 蛆が向かってくる二人を見定め、怒りの叫びをあげる。もたげた鎌首が大きくのけぞった。 「飛び込むぞっっ!」 「へ? あ……きゃああ!」 ルイズの手を掴み、九朔は蛆の真横を跳んだ。同時、のけぞった巨体が薙ぐ様にして鋼鉄の 床を抉る。 ――ゴォッッ! 激しい地響きを立てて抉られた鋼鉄の床は宙を舞う。まさしく紙細工のように引き千切れ、 床へ激しい音を立てて叩きつけられる。 「あ、危なかった……!」 「走るぞ!」 間一髪助かったが、すぐさま再び駆け出す。そして、その先にあるのは、またも通路。 後ろでは蛆がその巨体の全容を曝け出し、身体を蠕動させて向かってくる姿が。 「クザク! どうするのよ!?」 「まだだ!」 走る、駆ける、疾走る、疾駆する。全力で、通路へ向かう。 そして―― 「つ……着いたっっ!」 「良し――」 激しく息切れする身体を抑え振向くと、凡そ200メートル先、広大な空間に紅の羊膜に 包まれた蛆が。 「――今だっっ!」 九朔の合図、それが撃鉄。苦しい呼吸を止め、狙う。 九朔の言われたとおりに編んでおいた魔法を、ルイズは蛆へと向けた。 「ファイアッッ……ボールッッ!」 だが、放たれるのはその名の通りの魔法ではない。彼女の好敵手である少女が操る魔法は炎球、 だがルイズが放つのは失敗魔法と呼ばれる威力――――爆発【イクスプロージョン】。 血霧の中で起きる爆発は引鉄、血液が魔学反応を起こし、相乗し/連鎖し、強大な爆発を 引き起こす。 ――GURRRRRRRRRRRRRYYYYYYYYYYYYYAAAAAAAAAAAA! 血の彩の爆炎と爆風が、ルイズの失敗魔法を巻き込んで蛆の肉体を食い千切った。 壁に刻まれた刻印の緑と相反する色合いの紅が、巨大空間内で混ざり合う。 蛆は、己を焼く炎と混ぜ千切る爆発によって激痛の咆吼を上げて悶えた。だが、 ――GRRRRRRRRRRRRRRRRRRRROOOOOOOOWWWWWW! それは未だ致命ではなかった。自分を傷つけ滅そうとした憎き怨敵を蟲の感覚器官で捉え、 突進を行なう。蠕動する焼けた屍蝋色は激しい爆音を伴ってその巨体を九朔へと向かってくる。 「クザクっ!?」 「――ならばっっっ!」 再び、今度は足元に跳んできていた鉄片で腕を斬りつけ九朔は鮮血を噴出させる。 脳内で、魂で、術式を編み上げる。 編み上げた式はすぐさま威へ、転換/昇華され、蛆へ放たれる。血霧は再び蛆を覆う。 瘴気を纏った咆吼が大気を腐らせる。だが、意に介さない。 手に持つ鉄片に【意】を込める。だが、足りない。まだ、存在力(リアリティ)が足りない。 「クザクッッ!」 ルイズの叫び声が聞こえる。だが意に介さない。 鉄片へさらに【威】を込める。イメージする、それは書の頁(ページ)が焼ける様。 式は高密度に編み上げられ、錬度は著しく高められ、純化した魔力が込められる。 圧倒的な存在力【リアリティ】を構築する。血に/二重螺旋に/記述に刻まれた魔術情報が 検索/ヒット/転送/顕現を行なう。鉄片は魔術文字へ分解、新たな組み合わせに 編み上げられる。 星気領域を超え、霊的境界を越え、世界を超え、そこに在らざる可能性を顕れせしめる。 「来い……来い、来い、来い、来い―――――来たっっっ!」 そして、遂に術式は完成する。組み上げられた魔術式、それはスピードローダー、リボルバー弾。 込められた刻印、それの意味は知らない。だが、その威は識っている。 距離は100と少し。巨大な蛆はなおも近づく。 「クザクッッッ!」 悲鳴にも近い叫びをあげるルイズ。だが、意に介さない。 ――GRRRRRRRRRRRROOOOOOOOWWWWWWWWWWW! 目標、巨大蛆。 放つ、銃弾を。 人狼(ワーウルフ)の心臓を打ち抜く銀の銃弾をイメージ。 撃つ/討つ、指弾の要領で、 「Blast Blood――【血は、灼け】」 魔力を込めて弾く。 衝撃、銃弾は一直線。 輝く刻印は汚濁した咆吼を切り裂き、血霧を突き抜け、そして。 「Warcry――【爆ぜる】ッッ!」 ――爆裂した。 「――――――――ッッッッッッッッッッッ!」 音にもならない大音響が、蛆の口腔/爆発から放たれた。魔炎は濃密な血霧と魔学反応、爆炎は 鋼鉄すら溶かしつくす炎量と高熱を発し、蛆を一片すら残さぬほどの紅蓮と化する。 だが、突進した巨塊はベクトルに従いその動きを止めない。 「いかん!」 瞬時、判断。 ルイズの手を引き通路の奥へ疾駆/跳躍。 肉薄する、紅蓮の熱が背を灼く。 ――ゴォッッッッ! 大激突。焼けた蛆の肉が通路へとめり込み、そして崩れた。だが、それまでだった。 蛆の屍蝋色の肌を舐める炎は一切の慈悲もなくその芯まで焼き尽くした。 沸騰する穢れた血液は瘴気すら残すことなく紅蓮によって浄化される。 跡に残ったのは崩れた洞穴、それのみだった。蛆の存在は跡形もなく消滅したのだった。 「……なんだったの、あれ」 「妖蛆だ」 「え?」 「ある呪文を繰り返し己の肉体を蛆に分解し、乗り移り、他人の身体を乗っ取る」 「何よ、それ……」 もはや明かりすらない道を、どうにか進む。かすかに吹く風だけが、出口への頼り。 「おぞましい儀式だ。だが、あれはそれですらない。改変された、改悪された、異形だ」 自分の使い魔がいっている事が理解できない。だが、分かった事がある。 「クザク……もしかして、記憶が戻ったの?」 「…………ああ、少しな」 暗闇の中、自分の手を引く彼の手が、強く、だが優しく握り返してきた。 「あれは邪悪だ。決して人々の世界にあってはならぬものだ。存在すら許されぬ邪悪だ。 故に我は闘う。故に我は騎士だ。だが――なんだ」 クザクの笑う声が、暗闇で響く。だが、それは決して嘲笑うものでなくて清く正しいもの。 「まあ、実のところ。今の我が騎士を名乗るのは心構えでしかない」 「何よ、それ……」 「簡単な話だ。我は結局のところ、ただのガキでしかないということだ」 「意味わかんない」 「それは良かった。我も分からん」 「くすっ……あははっ」 「ふっ……」 ルイズも笑い声を漏らす。緊張が解けたからか、はたまた、心からのものか。そういえば、 この使い魔に何か聞かなければならなかったことがあった気がする。 「…………」 「ん? どうかしたか?」 「ううん、なんでもない。早く行きましょ、出口、こっちなんでしょ?」 「ああ。この風の流れ、もう近い」 ――いや、そんなことはどうでも良いだろう。今は生きているこの事実だけで充分だ。 「それにしても良く歩くな、今日は」 「ほんとね。災難続きでもうヘトヘトよ」 お互い、見えぬ闇を進む。握り合う手だけがお互いの存在を確かめる。 そして、遂に―― 「光だわ……」 「ようやく、ゴールか……」 かすかな光が漏れた。水の流れが、人の声が、聞こえる。 「では、行こうか」 「ええ、そうね」 かすかな光に九朔の横顔が見えた。湛える微笑にルイズも微笑み返す。 地上へと行き返る、光在る世界への帰還だった。 崩落した鋼鉄通路の奥、巨大な空間は静謐に包まれていた。蛆の灼けた匂いは未だ燻り、 魔術刻印は淡く、穏やかに、呪術的脈動を打って輝いている。 その光の中、壁に刻まれた文字が照らし出されている。 だが、それを読む者も、その意味を知る者も、此処にはいない。 否、凡そその言葉を理解できる者はこのハルケギニアはいない。 なぜならば、それは彼らとは違う言語で書かれていたからである。 その淡く輝く光の中で、だが、その黯黒の女だけは読むことが出来た。 燃える闇を纏い、燃えるように輝く三つの瞳を持つ、暗闇よりなお冥い女。 彼女の名を名乗る者はいない。彼の真の名を知る者はここにはいない。 それは、知性を持つ全ての存在が持つ言語を以てしてもその存在の一片たりとも言い表す事が 出来ない存在である。 それは無貌にして千の貌、黒のファラオであり膨れ女、それは厭わしき嘲笑で世界を眺める 道化師、それは変幻自在の躰を持つ宇宙的悪意。 彼/彼女/それ/あれ/ダレ/これ/オレ/アタシ/はニアーラという貌【アバター】を 今だけは捨て去ってそこに宇宙的角度で立り、その名を曠野の眼でなぞる。 そこにあるのは愛、だが、悪意しかない。ソレは観客がいないのにもかかわらず、人が 認識しうる位相に再びその存在を変じさせ、それが愛する矮小な人間が最も良く知る女の姿を とり、物理的法則に基づいて地面に降り立った。 「ああ、ああ、やはり騎士殿は僕が見込んだとおりだったよ。さすがは君の/彼女の、息子だ。 いつも通り用意されたイベントを正しくこなし、いつも通りヒロインをエスコートしてくれる」 女は、かつてナイアと呼ばれた女は心地よさげな表情を浮かべて踊る。踊る。 「ああ、ああ、やっぱり僕は彼が大好きだ。僕を討ち、僕を滅ぼし、僕を斃しただけあるよ。 ちっぽけな人間だからこそ、ちっぽけな人間だからこそ、楽しい、嬉しい、ワクワクする!」 狂ったような笑い声をあげる。いや、最初から狂っている。狂っているという表現自体が 間違っている。そのような人間の稚拙な表現はこの邪神にはあてはまらない。 「ああ、ああ、愉しみだ。この先が、これからが、愉しみだ! 玩弄者(ゲーミキーパー)に して道化師たるこの僕の心を掴んで離さないよ! そうだろう? そう思わないかい? だが、これからなんだ。ようやく第一幕開演だ。君はどう思うかな? ねえ――」 そして、女の容が愉悦の余り崩れ落ちた。そこから溢れる闇、黯黒が淡く輝く空間を飲み込む。 黯黒に燃えるように輝く三つの瞳がその黯黒に産まれる。そして、無貌はその名を読み上げた。 人に認識できない、宇宙的発声で、読んだ。愛しき敵を、憎き恋人を。彼らの剣を、読んだ。 その刻まれた文字、その刻まれた語、その刻まれた意/威。それは、その名は ――DEMON BANE【魔を断つ剣】 前ページ次ページゼロの使い魔~我は魔を断つ双剣なり~
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/210.html
【ワンポイントギーシュ】 砕けない使い魔(仗助)登場。レビテーションでC・Dを封じるなどギーシュには珍しく頭脳派。でも結構ゲス野郎。 露伴未登場。ストーリーが進めば登場するかも? 絶頂の使い魔(ディアボロ)登場。杖を折られて殴られただけで被害は少ない。 使い魔は静かに暮したい(デッドマン吉良)登場。手を撃ち抜かれた後、足蹴にされた。その後も顔面を叩き壊されたり、怪我の絶えないギーシュ。 康一未登場。マスターがアンリエッタの為、出られてもチョイ役か? DIOが使い魔!?(DIO)登場。出るキャラみんなブラックの中、全身ハリネズミになって保険室送り。最近ようやっと復帰したらしい。 slave sleep~使い魔が来る(ブチャラティ)登場。ブチャラティに拷問されるが、モンモランシーの励ましもあって、脱・マンモーニ。妙に強い。ブチャラティに完全敗北するものの、ゲスにもならず目覚めた奴隷。……が、十四股をしていたことがばれ、制裁。 ジョセフ未登場。ストーリーが進めば登場するかも? ゼロの兄貴(プロシュート)登場。決闘中、ザ・グレイトフル・デッドによりミイラ同然にされた上、首の骨を折られて死亡。歴代ギーシュの中で一番不幸なギーシュ。 スターダストファミリアー(承太郎)登場。歴代ギーシュの中で一番優しく、紳士的なギーシュ。精神的成長を遂げるなど、ルイズ・承太郎に次ぐスタメン級の扱いを受ける。 見えない使い魔(ンドゥール)登場。二回殴られただけで、絶頂と並んで被害が少ない。 L・I・A(仗助)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? 偉大なる使い魔(プロシュート)登場。肘打ちから踏みつけという兄貴の黄金説教コンボをくらう。同じ兄貴でもここまで扱いが違うのはすごい。 引力=LOVE?(徐倫)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? ゼロの番鳥(ペットショップ)登場。肉の芽を植え付けられ、ルイズの忠実な下僕となる。なんかいつもニコニコしている。 ゼロと奇妙な鉄の使い魔(リゾット)登場。リゾットからは何もされることなく、二股相手に平手打ちをくらっただけ。歴代ギーシュの中で最も被害が少ないギーシュ。 フー・ファイターズ 使い魔のことを呼ぶならそう呼べ(FF)登場。のっけから二股を解消しているので、決闘に発展するか疑問視されていた。だが結局勘違いから決闘を申し込んだ。 ハルケギニアのドイツ軍人(シュトロハイム)登場。そこらへんのダメ将軍なんかよりもすごい指揮官っぷりを見せる。時間切れより決着つかず。 アナスイ未登場。ストーリーが進めば登場するかも? 法皇は使い魔(花京院)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? 亜空の使い魔(ヴァニラ・アイス)登場。DIOと並んで最も地獄に近いギーシュとされていたが、何と杖を折られただけで済んでしまった。その後、一部でヌケサクのあだ名が定着する。 白銀と亀な使い魔(亀ナレフ)登場。珍しく真面目なポルナレフに説教された。最後は墜落して保健室行き。 使い魔は皇帝<エンペラー>(ホル・ホース)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? ACTの使い魔(康一)登場。康一君を無駄に痛めつけるなど最低のゲス野郎。康一から怒りの鉄拳制裁をくらい、舎弟フラグと低身長フラグが立つ。 几帳面な使い魔(虹村形兆)登場。覚醒したバッドカンパニーにワルキューレを吹っ飛ばされて降参。実は全く被害を受けていない。(だが決闘前に平手打ち、ワインのビンで殴られる、右ストレートのコンボを食らっている) ファミリアー・ザ・ギャンブラー(ダニエル・J・ダービー)登場。ダービーの計略によりワルキューレすら出せずにコイーン。 星を見た使い魔(空条徐倫)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? 奇妙なルイズ(スタープラチナ)登場。瞬殺。 ゼロのパーティ(サイト、花京院)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? ゼロと奇妙な隠者(ジョセフ)登場。他のギーシュ達とは逆に、ジョセフから決闘を申し込まれた。 ゼロの世界(リンゴォ)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? 使い魔波紋疾走(ジョナサン)登場。圧倒的な格の差を見せつけられ敗北。そんなジョナサンを見て成長するだろうか。 メロンの使い魔(花京院)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? マジシャンズ・ゼロ(アヴドゥル)登場。マジシャンズ・レッドに恐れをなしてしまい、ギー茶を作ってしまった。社会的にかなりの被害を受ける。 老兵は死なず(ジョセフ)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? 凶~運命の使い魔~登場。ローリングストーンズにつぶされた。 微熱のカウボーイ(マウンテン・ティム)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? 割れないシャボンとめげないメイジ(シーザー)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? 使い魔の魂~誇り高き一族~(シーザー)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? ゼロの予報図(ウェザー・リポート)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? ポルポル・ザ・ファミリアー(ポルナレフ)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? ゼロの使い魔への道(ドラゴンズ・ドリーム)登場。はからずも龍の夢が予知した通りの未来になる。食堂に居た人達全てを不幸にしてキュルケから鉄拳制裁を受けた。 エルメェス未登場。ストーリーが進めば登場するかも? 愚者(ゼロ)の使い魔(イギー)登場。しかし、決闘の場面をキング・クリムゾンされてしまった。 女教皇と青銅の魔術師(ミドラー)待望のギーシュ主役作品。が、いきなり死亡フラグが立った。 サーヴァント・ブルース 繰り返す使い魔(アバッキオ)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? サブ・ゼロの使い魔(ギアッチョ)登場。ギアッチョに殺されそうになるが、ルイズの嘆願で一命を取り留める。 逆に考える使い魔(ジョースター卿)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? ゼロの変態(メローネ)登場。もはや理解不能。 ゼロの究極生命体(カーズ)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? ディアボロの大冒険Ⅱ(ディアボロ)登場。俺TUEEEEEEEEE状態のディアボロに軽くあしらわれる。経験値要員としか見られていない。 アバッキオ未登場。ストーリーが進めば登場するかも? 鏡の中の使い魔(イルーゾォ)名前のみ登場。鏡の中の世界に引きずり込まれてそこで死亡。 ナランチャ・アバ・ブチャ未登場。ストーリーが進めば登場するかも? はたらくあくま(デーボ)未登場。ストーリーが進めば登場するかも。 start ball run(ジャイロ)登場。男の誇りを粉砕されるも、倍になって復活。そのあと男の世界に目覚めた模様。 サンドマン未登場。ストーリーが進めば登場するかも? 爆炎の使い魔(キラークイーン)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? 使い魔はゼロのメイジが好き(ストレイキャット)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? 本気男(ホルマジオ)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? 新世界の使い魔(プッチ神父)未登場。ストーリーが進めば登場するかも? 戻る