約 1,746,213 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1872.html
ここはトリステイン辺境の貴族の屋敷。 時は真夜中、見回りの兵隊が船をこぎ始めるそんな真夜中。 双子の月の月光射すそこへ黒い巨大な影が現れる。 それは土のゴーレム、どでかいどでかい土のゴーレムだった。 誰もが見上げ、そして驚く。 そのでかさ、その雄大さ、何より力強さに。 肩に乗る女はそんな彼らを見てにんまりと笑む。 そして自分用にあしらえた奇怪な眼鏡をくい、と直して深呼吸。 そして、 「やいやいやいやい! お前ら聞きな! 私はフーケだ、『土くれ』フーケだ!」 天を指差し、 「物を盗ませたなら天下一! スクエアだって土にする! そんな私が てめえらのお宝いただきにただいま参上だよ!」 力いっぱい叫んだ。 それは大地を貫き天を突く雄叫び、女とは思えぬ豪快な咆哮。 盗賊フーケ、その名を聞き屋敷中から衛兵達が、ガーゴイル達が メイジたちが大慌てで出てくる。 そして、向かいかかってくる全ての者達がこちらに武器を向けてくる。 それにフーケは気持ちの良い笑みを浮かべてそれを見やる。 「おう、上等だよあんた達! そうでなきゃつまんないってね!」 顔は隠すが身は隠さず、両者は大激突する。 フーケはひたすらに真っ直ぐ突っ込む、真っ直ぐ、真っ直ぐ。 屋敷の宝物庫を狙って真っ直ぐ、真っ直ぐ。 ――ただ、真っ直ぐ 氷の矢が飛ぼうと火の玉が飛ぼうと構いやしない。 ニッカリ笑って貴族に逆らって、道理を蹴飛ばし信念突き通す。 狙った宝はがっちりいただき、気に食わない奴等もまとめてぶっ飛ばす。 「土くれのフーケ! 今度はチミルフ様のお屋敷も狙うとは!」 「はん、黙りなアホ貴族! アンタらみたいに偉ぶってる奴等はどうにも 気に食わないのさ!」 飛びかかってきた男を鞘に入った奇妙な形の剣で叩き落す。 ガーゴイルはゴーレムの腕で殴り飛ばす。 意地で支えて、気合で進む。 でかい顔面(がんめん)のさばる奴は、拳で殴って退かせてみせる。 スクエア・トライアングルなんて関係ない。 ただ一体のゴーレムを操って彼女は盗みを行いそしてやってのける。 彼女はただの盗賊ではない、真っ直ぐな盗賊。 技術も何もあったもんじゃない、盗みをする前には真正面から宣言する。 そして真っ直ぐぶつかって毎回大乱闘の大活劇。 屋敷一つを丸ごとぶっ飛ばすその戦い方は大雑把極まりない。 しかし、そんな彼女の盗みを人は歓迎した。 なぜなら、フーケは皆が気に食わない奴等をぶっとばすからだ。 誰もが気に食わない、でかい顔をのさばらせる傲慢貴族どもを ぶっ飛ばすからだ。 そんな女の喧嘩花道、使うゴーレム顔二つ、後に残すは一つのマーク、 とんがり眼鏡をかけた弩派手な髑髏。 去るときに彼女は謳う、いつもこの一言を。 「私を誰だと思っていやがる! 私はフーケだ、土くれのフーケだ!」 これは、永劫連なる運命においてそれに風穴を開けた女の物語 没落貴族になっても尚、己の不幸を嘆かなかった女の話だ 真っ直ぐ理不尽を蹴っ飛ばし、逃げず引かず振り向かなかった女の話だ そんな彼女の胸に生きる一人の男、その背中、その言葉 彼は一度死んだ男だった 欲望に忠実に奔放に生き、仲間を愛して自由を目指し、散った これはそんな女の、一度死んだ男との物語だ ―――――9年前 アルビオンはサウスゴータ、当年14歳のマチルダ・オブ・サウスゴータ は非常に、凄まじく、とてつもなく、暇だった。 貴族の生活は退屈というのが常だ。 父は名ばかりの太守、治めているのは議会なので大してする事はない。 食事は心配せずとも出てくる。 服は召使が出してくれて着替えさせてくれる。 そんな暇と退屈だらけの日々、彼女がそんな退屈しのぎを紛らわすのに サモン・サーヴァントに手を出すのはそう遠くなかった。 「トリステイン魔法学院………ねぇ」 ベッドの上で寝転がりながら取り寄せた教科書を流し読む。 この教科書はあの高名なトリステイン魔法学院でも御用達の教科書とか 言うが、特にめぼしいと思えるものがない。 トライアングルに近いレベルの魔法の腕を持つマチルダは大体の 魔法をこなすことができる。 系統は『土』、たまにメイドを脅かしたりするのにゴーレムを使ったり したこともある。 すぐにつまらなくなってやらなくなったが。 そんな彼女が教科書を流し読みし、ようやくおもしろそうだと思えたのが 『サモン・サーヴァント』の項だった。 「ふぅん、使い魔ね。召使がいるし要らなかったけど、おもしろそうよね。 …………うん、よし!」 ベッドから跳ね上がるように飛び降りると、マチルダは窓際の机に置いた タクトを取った。 「さて、呪文呪文………っと」 タクトの代わりに机の上に置いた本をめくりながらサモン・サーヴァント の唱え方をぱらぱらと流し読む。 魔法の腕には自身があるので失敗なんてまず在り得ない。 というかコモン・マジックなのだ、失敗したらよっぽどの能無しだ。 「ま、大体唱え方も分かった事だしやってみますか!」 タクトを振り上げ、呪文を唱える。 さて、どんな使い魔が現れるのか。系統に沿った使い魔がでてくると いうのでグレートモールか? それとも、ミミズ?ああ、それは嫌だな。もっと可愛いのが良い。 もしできるのならドラゴンとかなら最高だ。 空を自由に飛びまわりたい。 そんな期待の入り混じった気持ちを胸にいっぱいにしてマチルダは その呪文を唱えた。 「我が名はマチルダ・オブ・サウスゴータ! 五つの力を司るペンタゴン! 我の運命に従いし使い魔を招喚せよ!」 だが、この時マチルダは僅かなミスをしていたのに気づかなかった。 それはほんのちょっと、ちょっぴりの間違い。 だが、それこそが彼女の運命を大きく変えることになる。 ただの盗賊フーケになる運命を大きく変える。 「きゃあ!?」 開くゲート、鏡が眩く光り、マチルダの部屋を閃光が満たした。 そのあまりのまぶしさにマチルダは驚き目を瞑った。 そして、続いて聞こえる何かが倒れる音。 ゆっくり瞳を開き、マチルダはその正体を見た。 「あ―――ッ!?」 息を呑み、少女はその場にへたり込む。 そこにいたのは血まみれの男、今にも息絶えそうなズタボロの男。 「お、お母様! お母様ァァーーーー!!」 叫び、マチルダは部屋を飛び出した。 「う………」 そんな彼女の声を、男は微かにだが聞いていた。 その声を遠くに聞きながら彼は思う。 痛みよりも、生きている喜びよりも、何故ここにいたのか不思議に思う。 自分の死に悲しむ兄弟や仲間達の姿を思う。 今頃あいつらはどうしているのだろうかと思う。 いや、心配する事はないな。 男はそいつの顔を思い出し、にんまりと笑んだ。 あいつならきっと皆を引っ張っていけるはずだと確信していた。 なぜならアイツは、自分の大事な弟分でかけがえのない相棒なのだから。 安心すると、急に力が抜けるのを感じた。 また死ぬのか、そう考えるが頭が朦朧としてはっきりしない。 誰かが駆け寄る音がするが、目を開ける力もない。 そんな脳裏に唯一つ浮かぶのは惚れた女と大事な相棒。 「なんか眠てえぜ………シモン、ヨーコ」 はぁ、と溜息をつき男は―――――カミナは気を失った。 【次回予告】 ふとして思い出す昔のこと 哀しい事、嬉しい事、怒った事、驚いた事 語りつくせば日はまた昇り、昇った朝日にアイツを思う あの日出会った規格外、カミナという漢を思い出す 次回、『ゼロの使い魔異聞~お前の魔法で天を突け!~』 「あんた、私の召使になりなさい」
https://w.atwiki.jp/mimatsu/pages/123.html
ルイズ:釘宮理恵 平賀才人:日野聡 シエスタ:堀江由衣 アンリエッタ:川澄綾子 エレオノール:井上喜久子 カトレア:山川琴美 アニエス:根谷美智子 ミシェル:石松千恵美 ジュリオ:平川大輔 シェフィールド:勝生真沙子 ギーシュ:櫻井孝宏 タバサ:猪口有佳 キュルケ:井上奈々子 モンモランシー:高橋美佳子 コルベール:鈴木琢磨 モートソグニル:新井里美 マザリーニ枢機卿:仲野裕 ウェールズ:山中真尋 ヴァリエール公爵夫人:竹村叔子 ヴァリエール公爵:斉藤次郎 バーガンディ伯爵:鈴木琢磨 リッシュモン:麦人 スカロン:後藤哲夫 ジェシカ:樋口あかり メンヌヴィル:楠大典 ヘンリー:羽多野渉 ポワチエ:魚建 1話 クロムウェル:斉藤次郎 女騎士:木下紗華 2話 ウェールズ:山中真尋 3話 コルベール:鈴木琢磨 ジュリオ:平川大輔 重臣:魚建、武虎 4話 エレオノール:井上喜久子 カトレア:岩村琴美 ヴァリエール公爵夫人:竹村叔子 ヴァリエール公爵:斉藤次郎 バーガンディ伯爵:鈴木琢磨 使用人:武虎 使用人:山中真尋 5話 リッシュモン:麦人 スカロン:後藤哲夫 ジェシカ:樋口あかり 小姓:山中真尋 スパイ:魚建 兵士:武虎、斉藤次郎 妖精亭店員:木下紗華、鈴木久美子、井上奈々子 7話 ポワチエ:魚建 店主:武虎 8話 メンヌヴィル:楠大典 銃士隊:木下紗華、鈴木久美子、樋口あかり 傭兵副官:魚建 傭兵:武虎、斉藤次郎、山中真尋 9話 傭兵副官:魚建 傭兵:武虎、斉藤次郎 10話 ヘンリー:羽多野渉 ポワチエ:魚建 将軍:斉藤次郎 情報将校:山中真尋 作品一覧 さ行 アニメ一覧:さ行?@wikiへ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2121.html
一部を除いた貴族からは距離を保たれ、平民からは妙に人気が出てきたイレーネだったが、若干戸惑い気味である。 今までは、依頼を受けた相手。つまり一般人からも距離を置かれていただけに、こういう扱いは初めてだからだ。 「昔では考えられんな…」 テレサ程ではないが、歴代ナンバー1に匹敵するだけあって、高速剣という二つ名は仲間達からも畏怖されていたのだ。 まして、一般人からこうも平然と応対されるなどと。 むしろ常に微笑を浮かべているだけあって一般人からなら、テレサの方がまだとっつきやすいだろう。 仏頂面を通り越して鉄仮面という表現が最も似合う戦士。それが高速剣のイレーネ。 嫌いというわけではないが、今までなかっただけに苦手というとこだ。 そんな具合に夜、例によって突き刺したデルフに背を預けていると音に気付いた。 小さいものだが戦士の鋭敏な聴覚にはしっかりと聞こえている。 「相棒、どうした?」 (…覚醒者…ではないな。妖気は感じない…だが…巨大だ) デルフリンガーを床から抜き窓の外を見るが、ここからは何も見えない。 「なに?どうしたのよ?」 「ここに居ろ。すぐに戻る」 それだけ言うとデルフリンガーを背負ったイレーネが、ルイズが静止するのも聞かずに窓から飛んだ。 「…ちょ!…ここ結構な高さなんだけど」 落ちたのではなく、文字通りに窓から跳躍したのだ。その姿はあっという間に見えなくなってしまっている。 「置いていっていいのか?」 「構わん。邪魔だ」 さらりと微塵の遠慮もなく言ったが、本人が聞けばキレる事確実。だが、聞こえてくる大きさからしてそう判断した。 そして、その判断は正解だったようだ。 「これ程のものとはな…」 視界に映るのは外見だけなら十分覚醒者と言っても通じる巨大な人型。 動きこそ、覚醒者に比べれば緩慢といっていいほどだったが、大きさに関してはどの覚醒者をも凌駕している。 さすがに、この巨大さを前にしては背負ったままでは少し厄介だとし、デルフリンガーを手に取った。 「ありゃあ確か…いや多分そうだ」 「知ってるいるのか?」 「実際に見るのは初めてだけどな。ありゃ『土くれのフーケ』っつー盗賊だ 屋敷の壁やドアを土くれに錬金したり、あのゴーレムで屋敷を破壊したりするんだ」 「なるほど…土か」 そう呟くと跳躍し、一気にゴーレムとの距離を詰めた。 「物理攻撃が弱点だって…?あのコッパゲ…!こんなに分厚かったら私のゴーレムでも破壊できやしないよ!」 誤算だった。 宝物庫の壁に『固定化』の呪文しか掛かっておらず、物理的な力でブチ破れると聞き出したまではよかったが、これ程までに頑強だとは予想外だった。 「あんなのが居る以上、さっさと『呪いの大剣』を盗みたかったけど…もう少し、下準備をしとくべきだったかね…」 あんなのというのはご存知イレーネの事だ。 「あれは…エルフなんかじゃない。もっと別の…化物だね」 そう思った理由は、ここから遠く離れた地に居る少女の事だ。 確かに、姿形はエルフのそれだったが、自分が知っているものと比べると明らかに何かが違う。 ギーシュのワルキューレが細切れにされた後、片付けと称して破片を少し調べた。 『エア・カッター』などの類で切断されたものではない。 剣で斬ったのだろうと判断したのは、砕けて放置されてあったギーシュが作った青銅の剣だ。 こちらも砕けてはいたが、同じ程度の硬度の物質と激しい衝突を繰り返した際に砕けたものと見た。 同じ硬度。つまり青銅。即ちギーシュのワルキューレと。 他の者には見分けは付かないだろうが、土系統のエキスパートであるフーケの目には切断面を別の物として捉えたのだ。 剣を持っていた事も手伝い、先住魔法などではなくワルキューレを切り裂いたのは剣だと確信したが、それだけに寒気がした。 誰の目にも映らない…抜き身すら見えない高速の連撃。そんな化物が居る以上さっさと目的の物を盗んで逃げたかったのだが、この有様だ。 「……ゴーレムを出したのは失策だったか」 先に壁の強度を調べればよかったと思ったが、後の祭りだ。 並みの壁ならブチ破れるというこれまでの自信と、イレーネというエルフとは違った化物の存在に焦った事が仇になった。 この場でゴーレムを土くれに戻しても次の日には発見される。かといって、移動させれば音で気付かれる。 まだバレてはいないだろうが、どうしたものかと腕組みして考えたが、人外の速度で迫ってくる影を見付けた。 「あれは…まずい…!あいつだ!」 剣を抜き疾駆してくるのは、デルフリンガーを携えたイレーネだ。 「なんて速さだい!」 ここに来て久しぶりにフーケの顔に焦りが浮かんだ。 少なくともゴーレムの攻撃が当たるような速度ではない。 だが表情に出してはいないが、イレーネもそれは同じだ。 相手は身の丈よりも約15倍以上も差がある敵だ。 巨大な覚醒者を相手にする場合、まず足か手を切り落とすのがセオリーなのだが、これは巨大すぎる。 30メートルもあろうかというゴーレムを支える手足は当然それ相応に太い。 いくらイレーネの腕が前の半分の強さで振るえるとはいえ、デルフリンガーの刀身を考えると一撃で切り落とすのは不可能だからだ。 「仕方あるまい…」 こうなれば、ダメージを蓄積させ四肢をもぐか首を狙うしかない。 妖力の回復が遅い以上持久戦は避けたいということで、首狙いでいくことにしたが、まずは目に入った脚に一撃を加える。 高速剣ではないが、それでもゴーレムの足に数撃が加えられ、裂け目が入ったが、動じず傷口が再生している姿を見て内心で舌打ちした。 「再生か…動きは素早くはないとみたが、厄介だな」 再生される以上、手足をもぐのは不可能になった。首を狙うしかないと判断したのだが、さすがにそこまで一気に飛ぶ事はできない。 ならば、ゴーレム自身の体を足場にしようとしたが、敵もそれをさせようとはしない。 「このままでは埒があかんな」 そう呟く。持久戦は避けたい以上、五割の妖力解放で一気にケリを付けることにした。 「致命傷は与えられないみたいだけど、あれが出てくるなんて予定外もいいとこさね」 もう既に結構な音が出ている。学院から人が出てこないのは巨大なゴーレムを見てビビッているからだろう。 今すぐにでも逃走に転じたいところだったが、ゴーレムを残したまま自分だけ逃げるにしても あの化物がそれを見逃すかどうかという不安がそれをさせないでいた。 だが、遅かれ早かれ、このままここに居れば、あの化物に斬り殺されるか、オスマンあたりに捕らえられるかだ。 化物が空を飛べない事を祈ってフライを詠唱しようとしたが、フーケの後ろの壁で爆発が起きた。 「「何だ!?」」 二人の声が重なるが、その疑問は両者ともすぐに解けた。 この学院において、あのような爆発を起こせる唯一の人物。 「残れと言ったはずだ。なにをやっている」 ルイズが杖をゴーレムに向けてそこに居た。 「そ、それはこっちの台詞よ!あんた一人で『土くれ』と戦うなんて!」 置いていかれた事に対してかなり怒っているようだったが、そんな事イレーネには知ったこっちゃあない。 確かにルイズの爆発は威力は高いが、生身の人間があのサイズの大きさの攻撃を喰らえば即死である。 だから置いていったのだが、ルイズの方は聞きやしないでいた。 「なんて威力…私のゴーレムでも破れそうに無い壁にひびが入ったじゃないか」 正直おったまげたが、逆に考えると好機だ。 ヒビが入ったのなら、このゴーレムでも壁を破れる。 瞬時にそう判断し、壁にゴーレムの拳を打ち下ろす。 インパクトの瞬間に拳が鉄へと変化し、ヒビの入った壁を容易く打ち抜いた。 そしてそのまま、その腕を伝い宝物庫の中へ侵入する。 様々な宝物があったが、狙いはただ一つ。鉄製のプレートに『呪いの大剣持ち出し不可』とご丁寧に示されている。 「あった…これだね。使い手に恐ろしいまでの力とを与えると同時にその身に呪いを与える剣。呪いはともかく好事家に高く売れそうじゃないか」 全長は長く、重量もそれ相応のものだったが、今は気にしている場合ではない。 去り際に杖を振ると『呪いの大剣。確かに領収いたしました。土くれのフーケ』という文字が壁に刻まれた。 「話は後だ。今は、あのデカブツを倒すぞ」 話を聞かないルイズだったが、さすがに宝物庫が破られ、逃げられたのでは洒落にならない。 その巨体だけあって、一歩ごとに進む距離が長い。 ゴーレムを追撃しようとしたが、腕をルイズに掴まれた。 「…なんだ?」 「また一人で行く気?」 要は連れて行けという事である。 連れて行けば追撃速度が落ちるのだが、如何に睨み据えても視線を外そうとしないルイズを見てイレーネが先に折れた。 「まったく…お前というやつは…掴まれ」 背中にルイズがしがみつくと、走り出す。 結構な速度だが、本来の速度とは比較にならない。 背負ってるとはいえ、常人より軽いルイズだ。 変わらない速度を出してもよかったが、そうなるとルイズが落ちる。 なんだかんだで結構気にかけていたりするのだが、相変わらず顔には出さないのは流石と言ったところだろう。 学院の壁を乗り越え草原を歩くゴーレムの肩の上に乗っていたフーケだが、ルイズを背負って走りながら追ってくる人影を見て薄く笑った。 「どうやら、あいつは飛べないみたいだね。私のゴーレムにも大した傷を与えられなかったし、どうにでもなるね」 素早い事は素早いが、それだけでは、このゴーレムを倒す事はできない。 目的の物も奪えたし、それが分かっただけでも上場だ。 草原の真ん中まで歩くと、ゴーレムが潰れ、土くれと化した。 少し遅れて、その場に走ってきたイレーネだが、その場にあるのは土の山だけで、肩に乗っていた黒ローブのメイジの姿は確認できない。 「…どうやら逃げられたようだな」 そう言うと、ルイズが俯く。 イレーネ自身、責めているつもりは全く無いが、『ゼロ』という二つ名を持つルイズは、そう受け取ったようだ。 とりあえず、何が盗られたのかにもよるが、妖気を探知する事もできないし、何よりルイズが居る。 一先ず、戻る事にしたのだが、ルイズは俯いたままだった。 翌日、学院は覚醒者に襲撃されたかのような騒ぎだ。 もちろん、そんな状況下でも一切ペースを乱さないでいのが高速剣の使い手たるイレーネだ。 「盗まれたというものは、そんなに重要なものか?」 「……詳しくは知らないんだけど、宝物庫に収められてる宝物の中でも、オールド・オスマンが持ち出し禁止って言ってるぐらいだから」 「それで、あの有様か」 そう言って視線を移す先には、好き勝手に喚いている教師陣。 特にテンパっているのは昨日の当直のシュヴルーズだろう。 そんなシュヴルーズを特に強く責めている教師を見たが、なんとなく気に入らない。 責めている事が気に入らないのではなく、見た目や雰囲気が、組織の幹部連中に似ているとこがあり気に入らないのだ。 「…こればかりはどうしようもあるまいな」 当人の主観でしかないため、仕方ない事なのだが、戦士で組織の幹部連中を好ましく思っている者など一人も居ないだろうと思っていると 外見だけなら仙人の領域に達しているオスマンが現れた。 「そう女性を苛めてはいかん。この中でまともに当直をした事のある教師が何人おられるのかな?」 オスマンが辺りを見回すが、教師達は顔を見合すと顔を伏せた。 つまり誰もまともにやった事が無いという事だ。 「呆れたものだな…組織ならば粛清対象だぞ」 その教師達を見てイレーネからそう言葉が漏れる。 任務を受ければ、敵を斬り殺すか自分が死ぬか。まして放棄などすれば粛清の対象となる。 放棄していなくても、組織に戻らないというだけでもそうなるのだ。 そんな感想が出るのはごく当然の事だ。 「責任があるとすれば、我々全員にあるのじゃ。ほとんどがメイジの学院を賊が襲うなどとは夢にも思わんからな。 だが、賊は大胆にも忍び込み、『呪いの大剣』を盗んでいった。我々が油断していたのじゃ。責任があるとすれば我々全員にあるといわねばなるまい」 中々の長っぷりを見せているオスマンだが、言いながらシュヴルーズの尻を触っているあたり、威厳は一切無い。 周りの真剣な目を見て咳払いをする。突っ込み待ちだったのだが誰も突っ込んでくれない。スルーされたボケというものは悲しいものである。 「で、犯行の現場を見ていたのは誰だね?」 「この二人です」 コルベールが進み出て、後ろに控えていたルイズとイレーネを指差す。 使い魔なのだから、数に入れなくてもよかったが、相変わらずのエルフ扱いである。 「見ていたというよりは、戦っていたと言った方が正しいのだろうが」 「ふむ…詳しく説明してみたまえ」 「僅かだが音と振動がしたんでな。覚醒…いや、これはこっちの事だ。 とにかく駆けつけてみればゴーレムとやらが居て、壁を破って何かを持っていった」 「それで?」 「そのまま、後を追ってみれば残っていたのは土しか残っておらず、肩に乗っていた黒いロープのやつは居なかった…というわけだ」 「後を追おうにも手掛かり無しか…ときに、ミス・ロングビルはどうしたのかね」 オスマンとコルベールがそんな話をしていると、ロングビルがやってきた。 「申し訳ありません、フーケが現れたという事で、朝から調査をしていたもので」 「ほっほ、慌てているだけの誰か達とは違って仕事が早いの。ミス・ロングビル」 誰かとはもちろん教師達の事である。それを感じ取ったのかコルベールが続きを言うようにと慌てた調子で促した。 「そ、それで、結果は?」 「はい。フーケの居場所が分かりました。近在の農民に聞き込んだところ近くの森の廃屋に入っていった黒ずくめのローブの男を見たそうです」 「黒ずくめか…」 一々頭に浮かぶのは組織の連中なのだが、特に印象深いのがルヴルだ。 大分前から、組織に身を置いているはずなのだが、外見が全く変わっていない上に、どこか飄々としていて他の連中とは違っているところがある。 「そこは近いのかね?」 「徒歩で半日。馬で四時間といったとこでしょうか」 「すぐに王宮に報告し、王室衛士隊に頼んで兵を差し向けてもらわねば!」 コルベールがそう叫んだが、逆にオスマンに怒鳴られる。さっき思いっきり尻触ってたジジイとは思えない迫力だ。 「たわけ!そんな事している間にフーケに逃げられてしまうわ! その上…学院の宝が盗まれたからには我らの手で解決せねばならん!捜索隊を編成する。我と思う者は杖を掲げよ」 オスマンが辺りを見回すが、教師達は顔を見合わせるだけで、誰も杖を揚げようとはしない。 「おらんのか?おや?どうした!フーケを捕らえて名をあげようと思う貴族はおらんのか!」 呼ばれてから俯きっぱなしだったルイズだったが、杖を顔の前に掲げた。 「ミス・ヴァリエール!あなたは生徒ではありませんか!ここは教師に任せて…」 「誰も掲げないじゃないですか!」 ルイズは唇を強く結んで真剣な目をしている。こういう目をしているヤツが弟子だっただけに止める事はできないだろうと悟った。 「止めたところで行くんだろうな、お前は…だが、その前にだ」 そう言いながらイレーネが扉の前へと向かい扉を開ける。 そうすると、そこにタバサとキュルケが居た。 「…あら〜〜、バレちゃったわねタバサ」 「そう思うなら少しは気配を消す事だ」 「な、なんで、あんたがここに!」 「ふん。ヴァリエールには負けてられないのよ」 つまらなそうに言ったが、それだけで扉に耳つけて盗み聞きにするような真似はできまい。 (ノエルとソフィアみたいなものか) 二人を見てそう思う。互いにライバル視しているが、他から見ればじゃれ合っているだけのようなものだ。 この事を言えば、恐らく同じように否定されるだろう。 もっとも、ノエルとソフィアはプリシラに殺されているのだが… 「タバサ。あんたは別にいいのよ。関係無いんだから」 「心配。それに興味がある」 心配なのはキュルケで興味があるのはイレーネなのだろうが、キュルケは未だ何か勘違いしているようだ。 キュルケが生暖かい目をタバサに送っているのを無視して、ルイズが礼を言う。 教師陣は反対していたが続くオスマンの 「では、君達が行くかね?」 という言に一斉に黙った。揃いも揃ってヘタレである。 「ミス・タバサは若くしてシュヴァリエの称号を持ち ミス・ツェルプストーはゲルマニアの優秀な軍人を数多く排出した家系の出で、彼女自身もかなりの炎の使い手と聞く。そして、ミス・ヴァリエールは…」 ルイズが自分の番だと言わんばかりに可愛らしく胸を張ったが、オスマンが言葉に詰まる。褒めるところが見当たらないからだ。 「こいつの事は、私が保証してやるよ。攻撃力だけなら、この三人の中でも一番だろうさ」 褒めてない。それ褒めてないからという視線がイレーネに集まったが、実際そうなのだから仕方ない。 ルイズは不満そうな目を向けているが、オスマンにとっては助け舟で急いで話を続ける。 「う、うむ。そのとおりじゃ!そしてその使い魔はエルフ!これが彼女の実力を証明する事になっておる」 それにガンダールヴなら、あの大剣を使いこなせるかもしれん。 そこは口に出さないが、空気読まないコルベールが『ガンダールヴ』と言い掛けて口を押さえられた。 「この四人に勝てる者がという者がいるなら、前に一歩出たまえ」 三人だけなら誰か出るかもしれないが、残りの一人。即ち、未だエルフ扱いのイレーネの存在が大きいのだろう。誰も出ようとはしない。 「魔法学院は、諸君らの努力と貴族の義務に期待する」 ルイズとキュルケとタバサが真顔になって直立し「杖にかけて」と唱和したが、イレーネの思うところは別の次元にある。 (あの時の二の舞だけは避けねばな…) あの時というのはナンバー2からナンバー5までがテレサ討伐に向かった時の事だ。 プリシラの精神の未熟さを考慮にいれておかなかったおかげで暴走し、テレサ、ソフィア、ノエルを殺され、自身も左腕を失い瀕死の重傷を負った。 ルイズがプリシラ並みというわけではないが、同じように精神的に未熟ということは、まだ短い間付き合っただけだが理解している。 魔法を使えば爆発しか起こせないというコンプレックスを抱えている以上、追い込まれれば暴走し取り返しの付かない事になるかもしれない。 失敗といっても、並以下の妖魔なら吹き飛ばせそうな威力だ。なまじ強力なだけに誰かがバックアップする必要がある。 イレーネがルイズに着いて行く理由はこんなとこだ。 「では、馬車の用意をしよう。魔法を温存するために、それで目的地に向かうのじゃ。ミス・ロングビル、彼女達を手伝ってくれたまえ」 「もとよりそのつもりですわ」 ルイズは、自分のせいでフーケを逃がしてしまったと思っている責任から。 キュルケは、ルイズへのライバル意識を兼ねた、遠まわしな気遣いから。 タバサは、親友が心配なのと、エルフどころかハルケギニアの、どの亜人とも違うイレーネへの興味。 そしてイレーネは、同じ過ちを繰り返させないために。 各人それぞれの思いを乗せ目的地に向かう。ただ一人。違った目的を持つ者も含めて。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/3360.html
前ページ次ページゼロの使い魔~我は魔を断つ双剣なり~ さて、夜である。空には双月と星が瞬き、それを窓から臨む魔法学院の自室では 我等がルイズ・ド・ラ・ヴァリエールがショゴスを抱き枕代わりにベッドの上で ふてくされていた。 理由は言うまでもない、素っ裸同然の少女と抱き合っていたクザクのことである。 別にあれは使い魔な訳であるし、正直ここまで怒る必要なんてまったくないのだが なんつーか気に食わない。 それはつまり、あれだ。胸のでかいだけの女になびくような盛りのついた犬はお仕置き しないといけないという使命感から来る感情によるものであって。 だからその使命感から気絶してるクザクを馬の後ろに繋いで引っ張りまわして、ついでに ヴェストリの広場に吊るしたのもそのせいで。 ああ、そうだ。何もかも全部アイツが悪い! だから今回だって全然構う事なんてないのだ! 合点し、うんと強く頷くルイズ。 別に他意はありゃしない。胸がでかいからって言うひがみなんかじゃない。 悔しくなんかない、ないのだ。ああ、ないとも。ないともさ! 「てけり・り?」 「うぅ…………」 前言撤回、やっぱりちょっと悔しい。 やはり乙女心としてはこの鎖骨からお腹まで続くなだらかな曲線はやっぱり気になるところ。 特に自分の大好きなちい姉さまなんか見てたらもう、あれなのだ。 たっぷりと詰まった果実で曲線がなだらかどころか険しい山脈なのだ。 ああ、御年16歳になろうかという今現在においてここまで成長芳しくないのは一人の女として 胸を痛めるしか他がない。 「はぁ…………」 重い溜息しか出ない。男というのはやっぱり胸のでかい女の子でないと駄目だというの だろうか? こう、やっぱり、ほら、こうやって、寄せてあげて、谷間のあるほうが……。 谷間の……こう、谷間が……谷間……谷間……作って…………。 「てけり・り?」 「うぅ……」 欝だ。何でこんな事で悔しい思いをしないといけないんだろうか。 そう考えたらやっぱりクザクが悪い。こんな悔しい思いをする羽目になったのはアイツの せいなのだ。ルイズは強く、強く、頷く。 忠実な下僕というのは、特に使い魔は、だ。ご主人様以外に目を向けたらいけないと いうのに、あのダイジュージクザクはご主人様を放っぽり出してあんな破廉恥な 真似をしていたのだ。 別にあの下僕に好意とか抱いてるわけじゃない、ただ、気に食わないのだ。要は自分の ものを他人に取られた悔しさなのだ。 それよりもギーシュをやっつけたというのにあの様は何だと言うのだ。 つまりはあれか? あれなのか? 女の魅力は全て胸にあろうとでも言うのか? 胸はこの世のありとあらゆる魔法と武器に勝るとでも言うつもりなのか、あれは?! 強いはずなのにあんな胸にたぶらかされてあの様としか思いようがない。 ツェプルストーの友達とかいう女子が何か言っていた気がするが知ったことじゃない。 クザクが少女に圧し掛かられている姿を思い出し、不退転の決意を撃ち破らんばかり の怒りがルイズの中で吹き荒れた。 それは世界を破滅に導くような兄弟喧嘩だって指先一つでダウンできるくらいに途方もなく 激しい怒りだ。おかげで抱き枕にされているランドルフはその身体を極限まで絞り上げ られて苦しそうである、というかかなり苦しい。 「ええ……ええ、そうよね。なぁにが胸よ。あああ、あのツェプルストーだって 胸がおっきいけど頭はすっからかんじゃない。ででで、でもちい姉さまも 胸は大きいけどちい姉さまはいっぱい色々知ってるんだから。 だだだっだ、だから、むむむ胸がちい……ちいさ………うぅ」 言えない、これ以上言えない。これ以上言ったら自分で墓穴掘った上に二度と 引き返せない後悔に苛まれることになりそうで怖くて言えない。 「てけり・り」 そんなルイズの肩を一不定形は悪夢めいた蠕動をしながら優しく叩く。 「……あんた、慰めてくれてるの?」 つぶらな瞳の奥に優しさを見てルイズはそんな言葉を口にする。 「てけり・り」 涙はこれでふいとき、と言わんばかりにランドルフはどこからかとりだしたちり紙を ルイズの掌に落とす。いや、本当に何処から出した、それ。 まあ、それはそれとして、見た目はアレだが実に紳士的な振る舞いな、それ。 流石は卿(けい)と呼ばれる彼と同じショゴスなだけある。 「ずびぃ……」 鼻をかむルイズ、そしてちょっと鼻の天辺を赤くしてランドルフにはにかんだ。 「ありがと」 「てけり・り」 麗しき、人と人以外のちょっとした友情の芽生えであった。 * 目をさましまず最初に気づいたのは先ほどまでいた森ではないという事。 辺りは暗く、それで時は既に夜。ルイズの爆発に巻き込まれてからかなりの時間が 経ったことを認識する。 あと、全身の節々が痛い。爆発に巻き込まれただけの痛みではない気がする。 開いた瞳に映るのは明かりがなく薄暗りではあるが、ルイズの部屋と似た石造りの天井。 まさかルイズが自分を此処まで連れ帰ったのか? そう思い立ち上がろうとする九朔。 がしかし、そこで自分の身に起きた異常にこれまた気づく。 「う……動けんだと!?」 異常を確かめようと己の身体を見れば両手両足をロープで完全に拘束されている哀れな 己の姿。 状況を把握しようとどうにか動く首だけを使ってあたりを見回せばルイズの部屋とは どうやら違う。薄暗がりに見えるドレッサーはルイズのそれとはまったく趣が違い、 ゴツくてでかい。 「うふふ………目が覚めたかしら?」 かけられた艶かしい声、どうにも嫌な予感しかないのだが確認しないわけにもいくまい。 視線を上げれば180度視界の反転した世界、真逆になった其処に映るベッドの上の人影を見て 九朔は狼狽することになる。 そこに在るのは裸同然の姿の褐色の女、先ほど意識を失う前に見たシルフィードとは違い、 その肢体は女として完成しきっており、豊満な胸とくびれた腰を包む下着は扇情的な作りで 見るものを誘惑しないではいられない。また、そこから放たれるむせ返るような色香は もはや妖艶と称して良いほどであった。そして、その女を九朔は知っている。 「汝……ルイズの学友か?」 やや上ずった声で九朔は尋ねる。名前はキュルケだったか、反転した視界の中で微笑む その顔が怖い。 「あら、私の事を知ってくださっていたのね……嬉しいわ」 ゆっくりとベッドの上を四つん這いになってこちらに近寄ってくるキュルケ。一歩近づく そのたびに悩ましく双丘が震える。 どうにも嫌な予感しかしないこの現状、どうにから逃げ出そうと色々策を講じてみるが 精神病院で使われてそうな拘束服だってびっくりの強靭さを誇るこの縄の前では その行動も無意味であった。 「逃げようとしても無駄ですわ騎士様、それには固定化の魔法をかけてますから」 死刑宣告のように聞こえたのは気のせいか、というか自分を拘束して何をしたいというのか この娘は。 己を覗き込むキュルケの顔を見て思う九朔だが次の瞬間にその意を身をもって理解する こととなった。 「でも、そんな事は今はどうでも良いこと……」 その瞳の色が獲物を狩る猛獣の色を帯びているのは自分の気のせいであって欲しい と思う九朔であるが現実は早々に生易しくないもので。 「えぇい♪」 語尾に音符なんかつけちゃわれながら――――剥かれた。 「ぬぉぉぉぉぉぉッ!?」 某大盗賊もびっくりな早業、かろうじてパンツとシャツは死守したものの、ズボンをマント、 上着を剥がれ、ついでに髪飾りも解けた現在の九朔は裸シャツの美少女そのものであった。 傍から見れば苺で修羅場な乙女の園とかマリア様がガン見しちゃってる乙女の園あたりで 主役級をはれる完璧美少女が褐色の肌のお姉さまに押し倒されているの図。 ――これは酷い。 「い、いきなり何をするか汝えぇぇぇぇぇぇ!」 「襲ってるの♪」 「音符を語尾につけるな! というか何故襲う!?」 「貴方に……心を奪われてしまったの」 頬をそめてイヤンとか言いながら顔を横に向けていうが、いじらしさとかそういう のとは無縁な感じで皆無である。 「ああ、貴方は私の事をはしたない女だと思うでしょうね」 「この状況をそれ以外にどう解釈するか!」 「思われてもしかたがないの。私の二つ名は【微熱】」 「話を聞け」 「私は松明のように燃え上がりやすいの、だからこんな風に押し倒したりとかしちゃうの。 わかってる、いけないことよ」 「だったらこの縄を解け、ついでに服を返せ!」 そう叫んでみるが本人には聞く様子は全くない。 「でもね、あなたはきっとお許ししてくださると思うわ……」 人の話を聞く気が無いというかむしろそんなの関係ねえ、と強引に押し進めるつもり なのか潤んだ瞳で裸シャツ状態の九朔を見下ろすキュルケ。 昼間とまったく同じ状態のマウントポジション、キュルケの指が九朔の胸元へとするりと 伸びた。 「くすっ」 その笑みと同時、猛獣の瞳でキュルケが九朔の胸元をがっしりとはだけた。 ブチンと音を立ててボタンが弾ける。 ちょっと待って欲しい、これは表現規制法とかこのスレの対象年齢的に実に問題ありというか そもそも原作がそういうのだからとしてもいきなり過ぎる。 「ま、待て! 我に惚れるのは良いがいきなりどうしてこうなるか!?」 今更何を言うかといった顔でキュルケが九朔を見る。 「だって貴方ってば昼間にもタバサの召使いに手を出してたじゃない。あの子がメイドを 雇ってたなんて初耳だったけど……まあ、それはいいとしてあの現場を見ちゃったら ツェプルストー家の女としてもこう、燃えちゃうというか私がやらないでどうするか! ってな訳になるの。 ああ安心して。私も伊達にいろんな男子達と付き合ってきてるわけじゃないわ。 だからあんなメイドなんかすぐに忘れさせてあげる………」 「手なぞ出しておらん! そもそもどうしてそんな事になっておるかぁぁ!」 「ああ、恋は突然だわ……私の身体をすぐに焔のように燃やしてしまう……」 どこで何がナニを間違えたのだろうか。 このようなバッドエンドっぽいフローチャートはまず何処にも存在しなかったはずだ。 いや、そもそも自分の年齢を考えるとその選択肢が現れること自体が危ういような。 混乱のあまりかそのようなことを考え始める九朔であったが、その間にもキュルケの指は 肌の上を滑り上へ下へと向かってくる。 「話を聞けと……あ、こら! そこは……あ、ちょ、ま……あ……そこは……あぁ…… や……駄目ぇぇぇ……!」 言葉では形容できないような真似を受け、言う事も憚られるような状態に突入。 脳裏にルイズと同じ髪色のしかしそれとは真逆のボディバランスを誇るグラマラスな 美女に筆舌に尽くしがたい官能的な行為を受けている様が浮かんだのは誰の記憶 だったろうか。 だが、そんなギリギリのところで窓の外から闖入者は現れる。救いの主である。 「キュ、キュルケ……ま、まさか君にそのような趣味があったとは……」 そこにあるのは今にも顎間接を外しかねない勢いで大口を開ける青年の姿。 彼にはどうやら九朔が女子に見えたようである。 「ベリッソン!」 それはつまりキュルケがいたいけな珍しい女子を押し倒し、あられもない行為をしようと していると見えたわけでハンサムな青年の鼻からは夥しい鼻血が。 片手で抑えてはいるが致命的っぽい量に見えなくもない。 あと、状況が状況なだけに既に無窮の空の彼方へ意識を離しかけていた九朔にはここが 三階であるとか彼が魔法で浮いてるとかは想像できるわけがなく、 「二時間後に!」 「へぶらっ!」 キュルケの魔法で火の玉が名も無きと共に窓枠と一緒に飛んでいったのを眺めているしか なかった。 「ふぅ。では今の続きをしましょ騎士様」 「や……やめろ汝……あ、いやぁぁぁぁぁぁ……」 もう色々と限界近い九朔へキュルケの腕が再び襲い掛かるがしかし、 「キュルケ! その……えっと、その女子は……だ、誰だ!?」 「スティックス!」 またも闖入者現る。 「今夜は僕と一緒に過ごすはずなんだが……ああしかし……ああ……ああ!」 困惑気味に、しかしながらその光景に魅せられたのか篝火に近寄る蛾の如く部屋へ 入ってこようとする彼であったが 「四時間後に!」 「あみば!」 篝火に寄り過ぎた蛾は焔に炙られ窓の下へと落ちていく運命であった。 「ふぅ……時間をあまり無駄にしてはいけないわね。夜が長いなんて誰が……あら?」 恋する乙女の顔で頬を染めつつ言うキュルケだったが、その相手である九朔は、友よ今こそ 駆け抜ける時! と、この期を逃すまいと必死の様で拘束されたまま前進するところ。 無論キュルケには九朔を逃がすつもりなど毛頭これっぽちも一ミクロンもあるわけがない。 追い込まれた狐はジャッカルよりも兇暴なのだ、別に追い込まれてないが。 「えいっ」 そんな訳で杖で一振り、フライで浮かばされては拘束された手前、言葉どおり手も足も 出るわけもなく浮いた身体はそのまま弧を描いてベッドの上へと逆戻り。 そして待ち構えるのは猛獣の瞳で九朔を射抜くキュルケ。 ベビードールは言うも憚られる行為の所為でもう全裸に近い。 「そんなわけで、さあ!」 「いやぁぁぁぁぁぁ!」 そしてキュルケは腕を広げ、滝の如く泣き叫ぶ九朔へとダイヴする。 が、二度あることは三度ある。 「キュルケ!」 「そこな……女子? い、いや男(おのこ)は!」 「何処ぞの男子か!」 「マニカン! ギムリ! エイb……じゃなくてエイジャックス!」 コミック力場ここに極まれり。 世界がどこかで歪んだなどともはや知ったことではない。 最後の一人の名前が版権的な意味合で際どかったりするが知ったことではない。 そんな三人は口調がおかしいまま彼等は二の句も三句も無く、 「――フレイム」 サラマンダーに焼かれ、 「「「うわらばっ!」」」 世紀末救世主的モヒカンな断末魔を残して窓の外から消え去った。 さあ、これでもう邪魔者はないとばかりに情熱的な捕食者の瞳が九朔を捉える。 覚悟はいいか、否、できるわけが無い。 沈黙が部屋の中を包む。絶望が九朔を覆う。 世紀末救世主だってこんな展開から救ってくれる訳ではないようである。 「愛してるわ騎士様! さあ、今こそ私と共にヘヴンッへ!!」 「何処の誰だ汝は!? あ、いややめて……そこは……あぁぁぁぁぁ………」 そこからめくるめくる官能的展開を誰もが期待するであろう。 誰もこんな絶望から救ってくれる正義の味方などいないと思うだろう。 誰もこんな天国から突き落とす悪魔の手先などいないと思うだろう。 むしろこんな展開を望んでる破廉恥な人間もいるかもしれない。 そんなことを望まない清く正しく真っ当な人間もいるかもしれない。 しかし真実は何時も一つだ。 もはや二度と戻る事の出来ない身体になろうとした九朔の前でドアが開かれた。 暗い部屋にロウソクの灯より明るい光が差し込む。 それは救いの朝日といえた、だが同時に惨酷な処刑場の鐘の音だった。 現れるルイズ、脇に抱えられたショゴス、同時浮かぶルイズの修羅相。 もはや言うまでもなかった。 振上げられる杖、同時見計らったように飛び退くキュルケ。 振り下ろされる杖、九朔の眼前が清らかで真っ白な閃光に包まれていく。 「このっ…………変ッッッ態ッッッッがぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!」 爆発音、どこかでウィップアーウィルのけたたましい鳴き声がした 前ページ次ページゼロの使い魔~我は魔を断つ双剣なり~
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1603.html
ラ・ロシェールで一番上等な宿、「女神の杵」亭に泊まる事にした一行は、一階の酒場でだらだらしていた。 さすが貴族を相手にするだけあって、隅々まで掃除が行き届き、テーブルは床と同じ一枚岩からの削り出しで輝いている。 そこに、「桟橋」へ乗船の交渉に行っていたワルドとルイズが帰ってきた。 ワルドは席に着くと、困ったように言った。 「アルビオンに渡る船は明後日にならないと、出ないそうだ」 「急ぎの任務なのに・・・」 ルイズは口を尖らせている。ギーシュの瞳が輝いている。セッコは首を捻った。 「なんで隔日なんだあ?アルビオンてのは、そんなに田舎なのかよ。」 ワルドが答える。 「明日の夜は月が重なるだろう?[スヴェル]の月夜だ。その翌日の朝、アルビオンが最もラ・ロシェールに近づく。」 ワルドは、まるでこれが完全な答えだ、と言わんばかりの様子だ。 「・・・おあ?」 横でキュルケがなるほどと頷いているものの、セッコには完全に意味不明である。 考えるのをやめた。 「さて、今日はもう寝よう。部屋を取った」 「キュルケとタバサが相部屋だ。そしてギーシュとセッコが相部屋」 ギーシュが怯えた。 「僕とルイズは同室だ」 ま、婚約者ならなあ。 ルイズが反論する。何でだろ? 「そんな、ダメよ!まだ、わたしたち結婚してるわけじゃないじゃない!」 「いや、大事な話があるんだ。二人きりで話したい」 「・・・わかったわ」 「女神の杵」で一番上等な部屋。そこでワインを傾けながらワルドとルイズは話していた。 「姫殿下から預かった手紙は、きちんと持っているかい?」 ルイズはちょっとふくれた。 当たり前よ。もう子供じゃないんですから。 むしろ不安なのは、手紙を書きながら見せたアンリエッタの表情。 あれはもしかして・・・いや間違いないわ・・・ 「・・・ええ」 「心配なのかい?無事にアルビオンのウェールズ皇太子から、姫殿下の手紙を取り戻せるのかどうか」 「そうね、心配だわ・・・」 「大丈夫だよ。きっとうまくいく。」 「そうね、あなたがいれば、きっと大丈夫よね。で、大事な話って?」 ワルドは何処か遠くを見つめている。 「覚えているかい?あの日の約束。ほら、きみのお屋敷の中庭で・・・」 「いやだ、そんな変な事ばっかリ覚えているのね。」 「そりゃ覚えているさ。君はいっつもお姉さんと魔法の才能を比べられて、デキが悪いなんて言われてた。」 ルイズは恥ずかしそうに俯いた。ワルドは言葉を続ける。 「でも、君は失敗ばかりしていたけれど、誰にもないオーラを持っていた。 それは、きみが、他人にはない特別な力を持っているからさ。僕だって並のメイジじゃない。だからそれがわかる」 ルイズにはなにがなんだかわからない。 「まさか」 「まさかじゃない。たとえば、そう、きみの使い魔・・・」 「セッコがどうかしたの?」 「そうだ。彼の身のこなし、そして武器をつかんだときに、左手に浮かび上がったルーン・・・ あれは、ただのルーンじゃない。伝説の使い魔の印さ」 「伝説・・・?」 「そうさ。あれは、[ガンダールヴ]の印だ。始祖ブリミルが用いたという、伝説の使い魔さ」 ワルドの目が鋭くなった。 「ガンダールヴ?」 「誰もが持てる使い魔じゃない。君はそれだけの力を持ったメイジなんだよ」 「信じられないわ・・・」 ルイズは考え込んでしまった。確かにセッコは不思議だ。 変な格好をしているし、異常に目と耳が鋭いし、素早いし、不思議な力を持っている。 命令には忠実だし、悪い奴には見えないが、幼児のように無邪気で適当で残酷だ。 記憶のことも含めて謎が多すぎる。しかし、いくらなんでも伝説の使い魔とはとても思えない。 そういった神聖なものにしては、馬鹿すぎる。 そしてわたし。どう考えても魔法に関しては落ちこぼれだ。考えたくないけどゼロだ。 ワルドが言うようなことはやはり納得できない。 「きみは偉大なメイジになるだろう。そう、始祖ブリミルのように、 歴史に名を残すような、すばらしいメイジになるに違いない。僕はそう予感している。」 ワルドの表情が熱っぽいものに変わる。 「この任務が終わったら、僕と結婚しようルイズ」 「え・・・」 いきなりのプロポーズに、ルイズは固まってしまった。 「で、でも・・・」 「ルイズ、僕にはきみが必要なんだ」 「ワルド・・・」 ルイズは俯いた。再びセッコのことが頭に浮かぶ。あんなのでも一応男だし、ワルドと結婚してしまったら側においておくのは問題だろう。 その時、わたしのコントロールを離れたセッコはどうなるだろう? セッコに信頼されているらしいタバサか、あるいはオールド・オスマン辺りが手綱を握ってくれるかもしれない。 けれど、もしそれがされなかったら? 理由もなく不安感が募る。でも・・・ 「どうしたんだい、ルイズ?」 ワルドが心配そうに私を覗き込む。 「あの・・・その・・・わたしまだ・・・」 「急がないよ、僕は」 「いえ、あのそういうわけじゃ・・・」 「いいさ、今返事をくれとは言わない。でも、この旅の間に君の気持ちを傾けてみせる。もう寝ようか、疲れただろう」 ルイズは再び俯いた。 ワルドは優しくて凛々しいし、もちろん憧れだ。でも、まだ早すぎる。 特に何か理由があるわけではない、そんな気がするのだった。 その様子を窓に貼り付いて眺めていたキュルケは呟いた。 「随分と純情ねえ、あのワルドって人。」 てっきり押し倒すとばかり思ったのに、残念。 ワルドとルイズがキュルケに観察されていたその頃。 セッコとギーシュとタバサはそのまま酒場で雑談しつつ食事をしていた。 しかし・・・ 「よく、君たちはそんな同じものばかり食べ続けられるねえ、ヒック。」 酒が回ってきたギーシュが辟易とした調子でくだを巻いた。 「そうかなあ。」 「・・・」 甘苦く、なんともいえない匂いが高級酒場の一角に漂っている。 「甘いのもう一皿くれえ。」 「はしばみ草サラダのラ・ロシェール風」 「は、はい。かしこまりました」 ウェイトレスの声もやや引きつっている。 ギーシュは右を見た。 セッコは生地が崩れるほど蜂蜜を塗ったホットケーキを貪っている。 気分が悪くなった。 正面を向く。 タバサがはしばみ草をドレッシングもかけずに頬張っている。 見ただけで口の中が苦くなった。 「もう、勘弁してくれぇ~!!」 翌朝。 目を覚ましたセッコが日課となっているスーツの手入れをしていると、ドアがノックされた。 ギーシュの方を見ると、二日酔いなのか伏せて唸っていた。 仕方なくスーツを着てドアを開ける。 「おはよう、使い魔くん」 ワルドが羽帽子を被って立っていた。 失礼な奴だなあ。部屋の中では帽子を取れよ。 「なんかあったのかあ?」 ワルドはそれには答えず、にっこり笑って言葉を続けた。 「きみは伝説の使い魔[ガンダールヴ]なんだろう?」 なんだこいつ? 「違う。オレはセッコだ」 「いや、そういう意味じゃない。左手のルーンの名前さ。」 「あー。それがどうかしたのかよ?」 そんなにこの印は目立つもんなのか? 確かにスーツの上まで浮き上がってるけど。 面倒なもんなら手袋でもするかなあ。それとも誰かに聞いたのかあ? いくらなんでも昨日今日でタバサが言うわけがねえ。言ったのがヒゲ校長だとしたら最悪だ。 そんな嫌がらせみたいな事ないと思いてえ。 「僕は歴史と、兵に興味があってね。フーケを尋問したときに、君に興味を抱き、王立図書館で君の事を調べたのさ。 その結果、[ガンダールヴ]にたどり着いた」 ・・・手袋決定。今すぐでも欲しい、面倒事なんか大嫌いだ。無かった事にしてえ。 「でだ、あの[土くれ]を捕まえた腕がどのぐらいのものだか、知りたいんだ。ちょっと手合わせ願いたい」 「てあわせ?」 「つまり、これさ」 ワルドが腰に差した剣と杖のあいのこを引き抜いた。 「今ここでえ?」 「そうだ。この宿は昔、アルビオンからの侵攻に備えるための砦だったんだよ。 中庭に錬兵場があるんだ」 「いや、そういうことじゃねえし」 「ん、ああ、大丈夫だ。寸止めするし、きみの心配したようなことにはならんさ」 本当かよ。まあ体動かすのは好きだけどなあー。 「わかったよお」 「それでこそ男だ」 変な奴だなあ。 セッコとワルドは、今ではただの物置と化している錬兵場で向かい合った。 「昔・・・かのフィ・・・王が・・・」 ワルドが何か歴史的なことを言っているが、セッコには当然理解できない。 「でだ、立ち会いには、介添え人が必要なんでね。もう呼んであるが。」 なんかめんどくさい事になってきた。全力で断るべきだったかなあ。 と、物陰からルイズが現れた。 「セッコ!何やってんの!ワルドは味方なのよ!」 はあ? 「いやちげーし!オレ悪くねえ!向こうからやろうってきたんだって!」 「え、嘘、ワルド?」 ワルドは頷いた。 「彼の実力を、ちょっと試したくなってね」 「もう、そんなバカなことやめて。今は任務中よ!」 「そうだね、でも、貴族というやつは厄介でね。強いか弱いか、それが気になるともう、どうにもならなくなるのさ」 「セッコもやめなさい!」 「ちょっと遊ぶだけだってえ。」 「ああもう、仕方ない人たちね!殺しても殺されても潜ってもダメよ!」 「わかった。」 「ちゃんと加減するから大丈夫だよ。安心して、僕のルイズ」 ワルドは首をかしげた。・・・潜るとは一体? 考えてもわからない。 「では、始めるとするか」 ワルドは腰から杖を抜き身構えた。 セッコは鞘に入ったままの剣を構えた。 「おや、抜かないのかい?」 「加減するつったのはテメーだろお。」 ワルドが電光の様に突きを繰り出す。セッコがそれを力任せに弾き返す。 「たいした怪力だな、だが隙だら・・・うおおおおおっ!」 本来死角のはずの場所へ飛びこんだワルドに、セッコの後ろ蹴りが襲いかかる。 「そうかなあ?」 間一髪で跳び退りワルドが体勢を立て直す。 「やはり、魔法無しでどうにかなる相手ではないか、[ガンダールヴ]よ」 「パワーなら負けねえぜ、多分なあ。」 セッコの単純かつ強力な大振りの攻撃をなんとかかわしつつ呪文を唱える。 これをかわさず受け止めたら、間違いなく杖か腕が折れてしまうだろう。 むしろ、こんな使い方をされて、損傷しない剣の正体の方がワルドには恐ろしかった。昨日見たときは、刃が錆びていたように見えたが。 一体どんな材質に固定化をかければこんな荒っぽい使い方に耐えうるのだろう? 「デル・イル・ソロ・ラ・ウィンデー・・・」 ボンッ! 詠唱が完了し、空気が撥ねた。巨大な空気のハンマーが剣を弾き飛ばし、 セッコ本人をも10メイルほど吹き飛ばして、そこに積んであった樽に叩きつける。樽がガラガラと崩れ落ちた。 ワルドは素早くセッコの剣を踏みつけた。 「勝負あり、だな。きみではルイ・・・」 ドボォッ! だが、ワルドは最後まで発言することができなかった。 セッコの投げつけた樽が今度はワルドを彼方に吹き飛ばす。杖を取り落とさなかったのは奇跡といっていい。 「思ったよりつええじゃねえか、帽子のおっさんよおおおお。」 セッコがゆっくりと剣を拾い上げ、鞘から抜いた。足元の地面が微妙に沈む。 「すまない、舐めすぎていたようだ。今度は全力で行かせてもらうよ」 起き上がったワルドはセッコから距離をとり低く、低く詠唱を開始した。 「ユビキタス・デル・ウィ・・・」 「いい加減にやめて二人とも!秘密任務を何だと思ってるの!」 その様子を見ていたルイズは、慌てて間に割って入り叫んだ。 「うおあ、冗談、冗談だよおルイズ。」 「失礼、ちょっと興奮してしまった」 二人はなんとか正気を取り戻した。 「俺様には、とてもちょっとした冗談に見えなかったけどな」 抜かれたばかりでその前の状況を理解してないデルフリンガーが呟いた。 To be continued…… 戻る< 目次 続く
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/6368.html
前ページ次ページゼロの使い魔~我は魔を断つ双剣なり~ 走れ、ただ今は走れ。そう足に命じて路地を駆け抜けて行く。 何処を走っているかわからない。息切れがして苦しい。足がもつれてこけそうになる。 何かに引っ掛けてブラウスが破れる。スカートがこけて泥だらけになる。 だけど、止まれない。止まってはいけない。 ――GIIIIII’AAAAAAAAHHHHH! 今まで聞いてきたどんな獣の声ともつかない、魂まで凍りつかせるおぞましい咆哮が背を撫ぜた。 冷や水をかけられたような悪寒が走り抜け、全身が総毛立つ。 振向いたら最後、その声から逃れるすべはない。脅迫めいた思考がルイズの足を動かす。 眼の前の建物が後ろに流れて行き、背後ですぐさま崩れる音がする。 アレが、建物を壊しながらやってきているのだ。自分を狙って追いかけているのだ。 そうだと限らないのに、だけど、そうだと理解できた。 だから走る、走り続ける。 いったい、どうしてこんな事になったんだろうとルイズは考える。 ただ、ちょっと追い出してしまった自分の使い魔を連れ戻すだけだったはずなのに。 見つけて、怒って、連れて帰るだけだった筈なのに。 それがどうしてこんな事に。 ルイズの脳裏に【あれ】の姿がよぎる。 病的に生々しい白色をうねらせた、自分の肩幅よりふた周りも大きな胴回りの、巨大な、巨大な、それ。 瞳はなく、こちらに向けた口腔にはびっしりと埋め尽くされた牙は汚濁した粘液で濡れていて。 突然現れたバケモノ、もしあのまま逃げられなかったらと思う。 牙に裂かれる皮膚、引き千切られる四肢、咀嚼され嚥下される肉、残るものはない。 血に塗れ虚ろな目を向ける自分の生首を想像し、全身から熱が去るのを覚えた。 とにかく逃げなければ、それだけを考えルイズは路地を駆け抜ける。 でも、どうして誰も気づかないのだろうか。こんなに大きな音をたてているのに、こんなに 地響きがするのに。 誰も来ない。誰も気づかない。 まるで自分だけがこの世界に取り残されたような錯覚。 ――そりゃそうさ、君と騎士殿に必要なイベントだからね。御都合主義というやつさ 「……っ」 一瞬の忘我、ルイズは頭の中で何かが聞こえたような気がした。だが、それは気のせいだった 気もする。 いや、それよりも逃げなければ。思考を切り替える。言い聞かせる。脳に命じる。 迷路のような路地を駆け抜け、右、左、斜め右と、ジグザグに逃げる。 遠くで人の声がした。だが、そちらに逃げることはできない。もし逃げればどんな事になるか なんて考えるまでもない。 しかし、体力の限界は、いよいよ本当の限界を迎える。 「きゃあっ!」 足がもつれ、前につんのめり、勢いは殺される事なく前方に三回転して盛大にこけてしまう。 「ううっ……」 呻き、立ち上がろうとするが、疲れきった足は悲鳴を上げていてもう動きようがない。 腕が震えて、起き上がることすら出来ない。 そして、 ――GIIIIII’AAAAAAAAHHHHH! また、あの咆哮が。 逃げなければ、そう思考するが、体が言う事をきかない。地響きは確実に自分の元に近づき、 路地裏に漂うそれとは異なる、吐き気を催す、据えた匂いが鼻を突く。 「ッ――!?」 脳内を、今まで感じた事のない灼熱が疾走(はし)るのを覚える。 それは痛みという感覚からかけ離れていた。 人の言語では到底表す事の出来ないソレは脳内を反響して肉体の隅から隅までくまなく 伝播していく。 ――蛆! ――■ドウ■ク・プ■ン ――■e ■er■is M■steriis! ──蛆、妖■、蟲、■蛆──! 頭の中を語【ワード】が走る。意味を成さず、流れていく。今のルイズには理解すら出来ない 語句は流れ泡沫となって消える。 ――閲覧接続異常発生 術師、魔導書閲覧位階に未到達、魔導書閲覧不可 魔導書閲覧の接続を強制解除→承認 異界領域からの接続を遮断 結界外からの接続を遮断 ――第192542182167世界への接続を全遮断 ――情報削除 ――記録削除 ・ ・ ・ ・ ――削除完了 怒涛のように押し寄せた情報は一瞬の内にルイズの中から失われた。消失した記憶は再び一瞬の 忘我となる。だが、それをルイズが認識する事はない。 「逃げな……きゃ」 生まれたばかりの子鹿のように足を震わせて立ち上がろうとする。こんな事になるのなら 来なければ良かったと思う。だが、既に起きてしまった事を悔やむ暇は今はない。 今は逃げなければ。 壁に手を付き、ようやく立ち上がろうとしたその瞬間、 ――GuuuuuruuuI’iiiiiiHHHHHHH! 「ッッ!?」 咆哮がルイズの鼓膜を震わせ、眼の前の石畳が――割れた。その振動に揺られ、尻餅をつく。 汚濁した粘液に覆われた死肉の色が、割れた石畳を突き破って噴出す。 1、2、3――5メイルに及ぼうかという巨体が影を生む。 見上げると、こちらに向けた口腔内、敷き詰められた牙が歓喜するように戦慄いた。 「……ぁ」 全身が金縛りにあったように、微動だにできなくなった。2メイルの幅もない路地裏を、戦慄く 肉壁が立ち塞ぐ。 嗚呼、駄目だ。 もう、助からない。 眼前の絶望に、全身の気力が抜け落ちた。限界まで疲労達した疲労が身体を微動だにもさせない。 諦観が、ルイズの心を塗りつぶしていく。だが、それでも肉体は恐怖に震える。 恐怖に震えるが、だが、何もできない。致命的な諦観がルイズの瞳を閉じさせる。 世界が暗闇に閉ざされていく―― 疲弊し、怯え、竦む『殻』となりえる少女を蟲は見下ろした。それが持つ匂いを感じ取る器官が その少女の肉がどれほど美味で、その臓物がどれほど美味いのかを察知する。 少女がここで生きるための『殻』としてだけではなく、食事にも適してる事に歓喜し戦慄つ。 背骨を抉り出し、髄をすすり、骨にこびりつく肉を削ぎ、血に照る腸を噛み千切り咀嚼する。 皮膚に残る肉を噛み砕き、嚥下する。眼球を噛み潰し、濃厚な汁をすする。 そうして肉を己の糧とする事で、蟲は少女の持つ肉の形を覚える。 そうする事で、己が少女の肉の内に納まることが出来るのを本能で知る。 故に、蟲は歓喜する。 芳しい香りを放つ少女の身の内に潜む厖大な魔力と甘美な肉の味を共に味わえる事に。 人とは異なる思考形態で蟲は少女を今まさに喰らわんと決断する。 牙をむき出し、口腔内を曝け出し、竦む少女へと狙いを定める。 叫ぶ少女の絶叫を耳にあたる器官で感じ取りつつ、迫る。 そして、 ――GUuuuuuuuuRaaaaAAAAaaaaaaahhhhhhhhhhhh! 地響きと咆哮と共に、蟲は大地に、ルイズに、その悪怪なる歯牙をたたきつけた。 しかし、 「――!?」 割れた大地、たたきつけた汚濁した牙。だが、肉の感触はそこになかった。 香る少女の肉の美味がそこにない。 少女の姿が、汚濁した牙に貫かれ、美味なる血を垂れ流し、潰れた臓腑を撒き散らし、 痙攣する少女の姿が、か細い悲鳴をあげる少女の声が、そこに、そこに、どこにも、ない。 蟲の思考が、人の言う所の戸惑いを覚えた。瞬時に獲物の居場所を追おうとする本能が探る。 感覚器官を周囲にめぐらせ、消えた少女を追う。 嗅覚器官から伝わる少女の香りの残滓を追う。 聴覚器官から伝わる少女の心臓の鼓動を追う。 追う、追う、追う。 追って、追いかけ、探り、そして。 「――――!」 蟲は気づいてしまった。 そこにいる存在を感知してしまった。 それは圧倒的畏怖と、超越的絶望、宇宙的な悪意を持って蟲に受け入れられる存在。 それを蟲は気づいてしまった。 ――そこにいる ――自分の近くに ――【我等の怨敵が】いる 退化した視覚器官ではなく、蟲自身が本来持つ、魔術的感知器官。この世界に生まれた事により 変化したその細胞が読み取り感知する。 それは少女の側にいた。それは少女を守るようにそこにいた。それは蟲を見ていた。 それは蟲が最も恐れるべき存在。 それは、それは―― 空を飛んでいた。大地を踏みしめる重さが身体から消失し、風が頬を撫でていた。 初めての浮遊感、自分一人で、空の中にいるその感覚に胸がかすかに高鳴るのを覚えた。 そして、生きていることに。 「え……?」 そして恐怖に瞑った瞳を開き、眼下に広がる光景を目にする。 そこはトリステインの城下町。今先ほどまでいた路地裏がそこにあり、蟲がそこにいた。 その頭上を自分は飛び越え、弧を描き、また町へと下っていた。 そしてルイズは気づく。自分を抱え、空を跳んでいた者を。そしてその姿を双眸に収める。 蒼銀が、朝の陽光を反射する河のように煌めき、たなびいていた。 若草が、揺り篭に寝る赤子のようにルイズを優しく抱きしめていた。 乳白が、中性的に整った顔を彩り、清潔な美しさを微笑の中に湛えていた。 翡翠が、桃色のブロンドを映し、ルイズを覗き込んでいた。 衝撃を殺し、住家の屋根に降り立つ。 それは美しい少女だった。それはまるで御伽噺の中の存在だった。妖精の様だった。 そして自分はそんな少女にお姫様抱っこされていた。 だが、それは紛れもなく、 「クザク……?」 どういう訳か女装をしていた自分の使い魔だった。ただでさえ女性じみた中性的な顔立ちが 薄化粧によって、完全に女性のそれとなっていた。 だが、間違いなく、自分の使い魔であるダイジュウジクザクだった。 「大丈夫か、ルイズ?」 「あ、う、うん。アタシは大丈夫だけど……」 お姫様抱っこで、しかも(一般的観点で)美男子に無事かどうか心配してもらえるなんて乙女的 観点からすればこれ以上は無いほどの好シチュエーション。 しかし、 「ルイズ、何処か怪我でもしたのか?」 心配げな眼差しに酷く何故か心が痛む。正直自分にはそういう属性とかそういう趣味はないはず だったのだが、嗚呼どうしてか。 「そうじゃないけど……あの、その、えっと……」 「ん?」 「ご、ごきげんよう」 「……ごきげんよう」 ――さわやかな昼過ぎの挨拶が、汚濁した大気の中に木霊した。 もちろん、別に深い意味はない。ただ言ってみたかっただけですね、良く分かります。 「ルイズ――」 「え?」 その瞬間クザクの瞳の色が変わる。翡翠が引絞られ、抱える腕が、全身が緊張に強張る。 「――跳ぶぞ!!」 「え……あ、きゃあっ!?」 言うが早いか再び空へと跳躍。同時、今先ほどまで立っていた屋根が崩れ去った。 そこに現れたのはあの巨大な蟲の腹、屋根を突き破り、口腔が再び牙を剥いていた。 「な、何なのよあれ!? ああ、あれ……おっきくなってる! それに太くなってる!」 その通りだった。先ほど2メイルかそこらしかなかった蟲の巨体、それが今では5メイルを 超えようとしている。 「叫ぶのは後だ! 逃げるぞ!」 蟲から距離を取るように路地裏に着地するや否や、九朔は二の句を告げさせる間もなく駆けた。 ルイズが悲鳴をあげるが、構いなしに右から左へと聞き流し、入り組んだ町中を走り抜ける。 「……しかし奇妙だ」 駆ける速度を落とすことなく九朔は呟く。 これほどの大騒ぎだというのに、周りに人の姿が見えない。周りは閑散とし、建物自体も数年は 人が住んでないようなものばかりではあったが、それにしても人一人見ないとはどういうことか。 人がいないと言う事は、必然的に二次的な被害は防げる事になるのだが、それにしても余りにも 異常なこの状況はなんだというのか。 「クザク……」 その不安はルイズも感じているのか、九朔の若草色のワンピースの袖を握り締め震えている。 ――そうだ、ルイズだ。 彼女は自分が辿り着くまで独りであの蛆から逃げ切ったのだ。その恐怖、どれ程のものだったか。 本当に間に合ってよかった、心からそう思う。 そう、例え爆発魔法とやらをぶつけられて窓から放り捨てられようと、お仕置きと称して木に 括り付けられようと、はたまた爆発魔法で空に打ち上げられようと、良かったと思う。 ……別に怨んじゃいない、うん。ちょっと、軽く、腹が立つだけ。 だが、それでも 「良く頑張ったな」 「え?」 「ここからは我に任せろ。我が、汝を守る」 それは本当だ。しかし、口を衝いて出た言葉に、ルイズの顔が一瞬固まるのを見た。 「なっ……な、ななっ……なあっ……!」 「なんだ?」 「な……何でもない!」 「そうか。――ならば、しっかり掴まっておれ!」 後ろから追いすがる蛆の戦慄きを大気に感じつつ、それを引き離さんと足に力を込める。 身の内から滾々と湧き上がる力は際限なく、疾風となって町を駆け抜ける。ギーシュと決闘を したときと同じあの力が、五臓六腑に染み渡るのを感じる。 そうだ、今は何も考えず、彼女を守る事だけを考えねば。念じ、九朔は駆けた。 町中を駆ける。左へ、右へ、右斜め前へ、左斜め後ろへ、ジグザグに駆ける。 壁を駆け上がり、腐った木壁を蹴り倒す。 咆哮が背を撫ぜる。しかし、その咆哮すら押し退けるが如くにさらに疾走する。 疾走、疾走、疾走疾駆。 跳びあがり、屋根に飛び移る。蟲の姿は見えない。だが、止まらず駆ける。 駆ける。 駆ける。 駆ける。 疾走る。 疾走る。 疾走る。 跳ぶ。 跳ぶ。 跳ぶ。 ――だが、逃げども、逃げども、終わりは、ない 走れども走れども、何処にも辿り着く気配が無い。メビウスの輪のように終わりが無い。 それはまるで、自分たちの世界だけが切り離されたような、そんな感覚。 これほどの騒ぎにも関わらず、官警の一人すら出てこない。それは明らかな異常事態。 やはり、何かがおかしい。 ザラつくような不快感が胸で澱む。その不快感が何か、それを知る術も知識も九朔にはない。 にも関わらず、その不快感を九朔は『識っていた』。 意味不明な矛盾に混乱しそうになる思考、果たして自分は何を識っているというのか。 まるで何かに突き動かされるように、九朔はそれを思い出そうとする。 疾駆する肉体で思考を疾走らせ、深く深く、原初の記憶まで遡ろうとする。 穴あきの、字の欠けた書を保管するように探り、パズルを組み合わせるように思考する。 かすかに浮かぶワード、それがゆっくりとおぼろげに九朔の脳内で構築されていく。 それは―― それの名は―― その■■は―― ――N#%rl?t⊿§∑ep 「が……は……っ!?」 脳を、何かが灼いた。知らないはずの――いや、知っていたはずの【何か】が灼いた。 それは、思い出してはいけないのか。それとも、思い出すべきなのか。 覚えているのに、覚えていない。 知らないはずなのに、知っている。だが、知らない。知っている。 ――それは、世界と裏と表の狭間を裏返しにした三角形を外側に四次元的に開いた六尺三寸虫が 凡人に生卵をアイスの当たりくじに含めた衝撃的クライアントにこれはです奇妙なボールの座り ますいえあげませんぼくはそのこれをいえませんいえますソレしっているだれだれきみぼくそれ あれしってるしらないしりますしりません……尻? 知り私利四里尻シリシリシリカゲル死霊資料飼料支流しりりりりジリリリリジリリリリちりり りりりチクタクチクタク =死■秘■/わR% →??? →虚数魔術領域へのアクセス/%◇■#の記述へのアクセス/異界との接続 暗号解読不可―――■■■◇の断片情報の破損を確認 破損術式再構築を開始 破損領域再構築を開始 全情報への接続を停止 *警告* *警告* *警告* *警告* *警告* *警告* *警告* *警告* *警告* *警告* *警告* *警告* *警告* *警告* *警告* *警告* *警告* *警告* *警告* *警告* *警告* *警告* *警告* *警告* *警告* *警告* *警告* *警告* *警告* *警告* *警告* *警告* *警告* *警告* *警告* *警告* *警告* *警告* *警告* *警告* *警告* *警告* *警告* *警告* *警告* *警告* *警告* *警告* *警告* *警告* *警告* *警告* *警告* *警告* ・復元完了まで全術式をシャットダウン ・再起動まで全術式の使用を一時停止 ――全術式、停止 「か……は……っ!」 脳を途方もない熱量が灼いた。その激痛、四肢を引き千切られたかのようにさえ錯覚する。 「きゃあっ!?」 悲鳴が上がる。だが、誰のものか一瞬判別が付かなかった。それほどに激痛はすさまじかった。 「あ……がぁ……」 「――ク!? ね、――え――ザク!? ――――たのよ!?」 遠くから、近くから、ルイズの声が山彦となって頭の中で反響した。視界は焦点が定まらないか ぼやけ、彼女の姿を鮮明に捉えられない。 全身が痛みで麻痺する。 脂汗が額を伝う。 その汗さえも、痛みとして知覚する。 だが、今は。 だが、今は。 それよりも、今は。 「――――ッッッ!」 脳を灼く痛みとは別の、全身を駆け巡る悪寒が九朔の肉体を動かした。 ぼやける視界に映りこんだルイズを、激痛で麻痺する肉体で抱きかかえ、飛び退く。 ルイズの悲鳴が耳もとで山彦となって反響し―――― ゴッッッ――――! 同時、足元の石畳が崩壊した。 大騒音/大音響のシンフォニーが空間を満たし、大地が、石畳が、奈落に呑まれる。 立ち並ぶ家屋さえも巻き込み、路地裏の一角が陥没する。 飛び退いた筈も、しかし、奈落は一瞬で九朔達の足元へと迫り、人を呑んだ。 「ぐぅっ……!」 「きゃああああああっ!」 魔法世界にも関わらず働く物理法則に従い、二人の肉体は奈落の底へと落下する。 世界は一路、真昼の光の下から漆黒の闇へ。 前ページ次ページゼロの使い魔~我は魔を断つ双剣なり~
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1555.html
(あの怪我が妖力を使わずに治るのか。さすがに再生は無理だろうが便利なものだ) イレーネ自身、妖力が回復し次第治療に当てるつもりだったが、水のメイジに治癒の魔法をかけられ腕が戻った事に感心していた。 「…で、さっきは何やったのよ。風の先住魔法か何か?」 ジト目で睨んでくる。上位ナンバーですら抜き身すら確認できない高速剣を見たのではそう思っても、まぁ無理も無い。 「その前にだ」 そう言いながら扉を開けると、シエスタが転がり込んできた。 「わきゃあああ!……いたた。あ……その、これは……」 ぶっちゃけビビっている。こっちもこっちで魔法か何かと思っているらしい。 そう見られている方だが、存在自体が恐れられていたりするので特に気にしていない。 「いいよ、どうせ説明するつもりだったからな。さっき出したのは『高速剣』。簡単に言えば剣を振っただけだ」 『高速剣』。この言葉に二人が固まっている。 「……え?なに?魔法じゃなくて『剣』を振っただけって事?あれで?」 「そうだとしか言いようが無い」 当人は事も無げに言ったのだが、聞かされた方はショートしかかっている。 「一つ言っておくが、私はエルフではないと言ったが、人間だと言った覚えも無いぞ」 人間ではない。そう聞いて色々な亜人を思い浮かべたが、翼人、吸血鬼、どれも違っている。 「…じゃあなに?」 「半分人間の半人半妖だ」 「…………ハーフエルフ…ってこと?」 「厳密に言えば違うだろうが、そう思うならそう思ってくれて構わんよ」 「前から聞きたかったんだけど妖魔ってなんなのよ?」 「…人、特に内臓を好んで喰らう化物だ。これだけならまだ対抗策も無い事も無いが、人に擬態している」 人と区別が付かない。そこはこっちの吸血鬼と同じだ。そういう事もあり、シエスタがかなり萎縮している。 「それで…その…イレーネさんは…」 「言ったはずだ、我々は掟で人の命は奪わんと。その妖魔を見分け、狩るのが我々だ」 さすがに、作られたという事までは言いはしないが、それでも人の側に立っている事は理解してくれたようだ。 「つまり、わたしたちの味方で凄く強いって事なんですね!」 …ちょっとベクトルは違うがまぁよしとしよう。ルイズの方は半信半疑のようだが。 そんなこんなでルイズに色々質問攻めにあったり、シエスタに懐かれたり ギーシュに謝罪されたりで妖力を抑えつつ数日過ぎたが、妖気は感じないが何かに見られている事に気付いた。 「妖気を探知できれば分かるんだが…いや、仲間に狙われるよりマシといったところか」 少なくとも追手や妖魔、覚醒者の類よりはマシだろうとしたが、やはり気にはなる。 探知能力もまぁ並より上といったところだが、妖気を感じない相手の場合、それはほぼ人間と変わりない。 どうしたものかと思っていたが、向こうからそれは現れた。 もし、これが敵意なりを持ちイレーネが剣を持っていれば即高速剣だっただろうが、それは敵意を持っていなかったし剣も持っちゃいなかった。 「これが竜というやつか…覚醒体ですら空を飛ぶものなどそう居ないが…」 6メートル程の大きさの竜が思いっきりイレーネをガン見しているのだ。 こんなデカイモノが見ていれば、そりゃあ妖気を帯びていなくても分かる。 とりあえず近付く。一桁Noの覚醒者ならこれより大きいのはザラなので別に気圧されたりはしない。 「私に何か用でもあるのか?」 「きゅい!」 言葉が分かるのかどうかは知らないが、首を下げて乗れといっているようだとは感じた。 正直言うと結構興味はあったりする。妖力解放し脚力で飛ぶ事は多々あるが、何かに乗って飛ぶというのは初めてだからだ。 最悪敵対する気があっても特に問題は無い。回復は相変わらず遅いが抑えていたおかげで4割ぐらいまでに妖力も戻っている。 そう判断するや否や竜の背に飛び乗る。普段の移動は徒歩がメインなだけに騎乗には慣れてはいないが、そこは半人半妖。落ちるという事は無い。 乗ると同時に竜が飛び立ち、少しすると開かれている窓のとこで止まった。 「入れ、という事なのだろうな」 「きゅい!きゅい!」 その鳴声を肯定と受け取り中に入る。罠かもしれないとは思ったが、魔法といえど当たらなければどうという事はないのである。 部屋に入ると、ルイズよりさらにちみっこい青い髪の少女が杖を持って立っていた。 「…あなたに聞きたい事がある」 「答えなければ腕尽くでも…といったところのようだが」 「………………」 答えない。これで少しでも妖気を帯びていれば戦闘開始なのだが、メイジとはいえ相手は一般人。しかも子供といっても差し支えない相手だ。 戦士にもよるが、イレーネ的にはこの程度で揉め事を起こすような事でもない。 「まぁいいさ。私の答えられる事ならな」 「…エルフの中には精神を壊す毒があるのか聞きたい。知っているなら解毒剤も」 ぶっちゃけ問題外だ。毒の事なぞ詳しくも無いし何よりエルフではい。 「他を当たれ。毒物なぞ専門外だし、それに私はエルフではないよ」 「……エルフでは無いという証拠を見せて欲しい」 証拠と言われても特にどうしろという感じなのだが、見た目的に十人中十人がエルフだと答える容姿をしているので仕方ないことだ。 まぁ、一つない事もないが。 さて、こちら廊下を歩いているのはキュルケとルイズだ。 キュルケはイレーネに多少なりとも興味があった事。ルイズはイレーネがほっつき歩いているという事で両名とも同じとこに向かっていた。 「ふ~ん…で、ワルキューレを細切れにしたやつは魔法じゃないのね」 「そう言ってるんだけど…間近で見てたわたしにも何やったか見えないのに、とてもじゃないけど信じられないわよ」 「あの子なら何か知ってるかもしれないわね」 そうしてやってきたのは扉の前。キュルケがノックするが返事は無い。 「居ないんじゃないの?」 「あの子はいつもこうなのよ。『サイレント』かけて本でも読んでるんじゃないかしらね」 そう言いながら杖を取り出し『アンロック』で開錠。かなり手馴れた手付きにルイズは呆れ気味だ。 「そんなんだからゲルマニア人は野蛮だっていうのよ…」 言われた方は大して気にせず部屋の中に入るが、ちょっとアレでナニなモノを見る事になった。 「あー…えーっと…邪魔したみたいね」 キュルケが見たモノは、マントを外し上の服を着ているイレーネとそれを思いっきり凝視している青髪のちみっこい少女だ。 着ているという事は今まで脱いでいたという事で、そっち方面が経験豊かなキュルケさンは、まぁ何だ。そういう事をやった後だと判断した。 「確かに、あたしも彼女が殿方だったら惚れてたと思うわ…でも、あなたが決めたのならあたしは精一杯応援するから頑張んなさい、タバサ!」 その言を受けて気付いたのか、両手で自身より長い杖を持ちキュルケの方に近付くと一発小突く。 「勘違い」 「なにやってんのよあんたはァーーーーーー!」 そう叫びながら蹴りをかますのは、ちょっと時間が停止していたルイズだ。 もちろん、それを喰らうイレーネではないから当たらない。 「エルフではないという事を見せただけだ」 こんな時でも極めて冷静。さすがの精神力だが、それならそれでとルイズがある事に気付き叫ぶ。 「なら、『ディティクト・マジック』で調べればいいじゃない!なんで脱いでるのよ!!」 「それも魔法か?」 イレーネは当然知らないが、他二人は知っている。エルフという認識が先行しすぎて忘れていたらしい。 タバサと呼ばれた青髪の少女がてけてけと近付き詠唱を初めるが、エルフではないから結果は見てのとおりだ。 「…反応は無い」 「…あれ、ほんとに剣を振ってたって事?」 「そういう事だ。…私からも一つ聞きたい事がある。剣を持った時と今では腕の力とスピードが違うんだが…何か分かるか?」 「わたしが知るわけないじゃない…ほら!早く戻るわよ!誰かに勘違いされたらどうするのよ…!」 もうスデに一人思いっきり勘違いしてるのだが。 その勘違い継続中でタバサに色々アドバイスをしているキュルケさンを尻目に部屋を出るが、一つ聞こえるような聞こえないような声がした。 「…一つ借り」 翌日。虚無の日という事で、マジに剣を振っていたのかどうかという事を確めたくもあり、街に剣及び、衣類、雑貨系も買いに行く事になったのだが 面子はルイズ、イレーネ、キュルケ、タバサ、竜ことシルフィードだ。 ルイズとしては馬で向かう予定だったが、タバサが「昨日の借りを返しに来た」という事で風竜であるシルフィードで運ぶという事らしい。 もっとも、虚無の日は本読んで過ごす事を知っているキュルケさンからすれば、さらに勘違いを深める結果となっている。 「人が居る場所はどこも大して変わらんものだな」 「ブルドンネ街。トリステインで一番大きな通りよ」 聖都ラボナでもこのぐらいのため、出た感想はこれだ。 だが、当人はフードを被りマントで顔と姿形を隠しているため結構目立っている。(オフィーリアと対峙した時のアレ) 「城下町にエルフが居るなんて知れたらアカデミー行きよ?」 という事での処置だが、ハッキリ言えば怪しい。だが、貴族が側に三人という事もあり、護衛か何かだろうと判断されている。 そのため、人が来ても向こうから避けるような形になっていた。 「…これならスリに気をつける必要は無いわね」 んで、各々別行動する事になり、イレーネ&ルイズ。キュルケ&タバサで分かれる事になったが 例によって何かを間違えているキュルケさンが要らん一言をタバサに言って小突かれたのは割愛だ。 狭い路地に入り、汚物やゴミが散乱し悪臭が漂っているが、イレーネは特に気にした様子も無い。 返り血を浴びる事は無いが、常に血の臭いと近いとこでやってきたのだ。この程度の悪臭なぞカスみたいなものである。 「ピエモンの秘薬屋の近くだったから…この辺りなんだけど」 「あれじゃないのか?」 そういって指差すのは、剣の形をした銅の看板でこれでもかというぐらいに武器屋だと自己主張している。 薄暗い店内に入ると、所狭しと乱雑に並べられた剣や槍が目に入る。 そこに入ってきたルイズに店主が気付くが、明らかにカモである。 「貴族の旦那。うちはまっとうな商売をしてまさあ」 「客よ。使うのはわたしじゃなくて、こっちの使い魔ね」 姿形を隠してはいるが、伊達にこんなところで武器屋を営んではいない。一瞥すると女だという事に気付いた。 「忘れておりました。昨今は貴族の使い魔も剣を振るようで」 「わたしは剣の事なんて分からないから適当に選んでちょうだい」 そうすると店の主人が細身の剣…レイピアを持ってきたが、主人が説明する前にイレーネが一蹴する。 「折れるようなものでは使い物にならん」 「しかし、見たところこの程度が無難なようで…」 ルイズが大きくて太いのがいいというと次に主人が持ってきたのは1.5メイル程の装飾が付いた大剣だった。 それを見て気に入ったようで値段交渉に入るが手持ちとは到底足りない額だ。 「おいくら?」 「こいつを鍛えたのは、かの高名なシュペー卿で魔法がかかってるから鉄だって一刀両断の代物さぁ。新金貨で三千、エニュー金貨で二千ってとこですぜ」 「立派な家と森付きの庭が買えるじゃない!」 貨幣価値は分からんが、高いのだろうと予想したが一応剣は見てみねばモノは分からない。 「持たせて貰うぞ」 「落さないようにお願いしますぜ」 無論それで落すようなイレーネでもなく片手で受け取り各所を見る。 大きさ的には戦士が使う大剣と同じ程度だが、持ってみて分かった。 「話にならん。ナマクラもいいとこだ」 戦士が使う大剣は恐ろしく丈夫だ。覚醒者の攻撃を受けても折れもせず欠けず、年単位の長期間野晒しにされていても錆一つ付かない。 そういう一品を扱ってきたからこそ手応えで分かった。これなら戦士が振り、硬いものに弾かれれば一発で折れるだろう。 主人は何か言いたそうだったが、別の方向から声がした。 「見る目はあるようだが、その体で剣を振るなんてのは冗談じゃねぇ。そっちのレイピアにしときな」 「む…誰だ?」 声のする方向を向いたが、あるのは剣の山だ。誰も居ない。 「分かったら、さっさとそいつを買って家に帰んな。おめえもだよ、貴族の娘っ子!」 「失礼ね!」 イレーネが声のする方向に近付き、一本の錆びた大剣を引っ張り出す。 さっきよりは薄手だが、大きさはクレイモアと同じ程度だ。 「さっきのは…こいつか?」 「お客様に失礼な口を聞くんじゃねぇ!デル公!」 「お客様?こんな華奢な体の女がお客様だ?ふざけんじゃ…」 途中まで言って黙りこくるが、主人とルイズは話しをしているのでそれ気付いた様子は無い。 そして小声で話し始める。 「…おでれーた。てめ、人間じゃねーな」 「ほう…分かるのか」 「見た事もねーような化物を体に入れてやがんな…しかも『使い手』かよ」 人ではない、という事はまだ想定内だったが、体に入れているというところまで分かるとは思わなかったので素直に感嘆する。 妖魔の血肉を取り込み『作られた』存在だからだ。 「…まあいい、使い手なら俺を買え」 そうは言うが、思いっきり錆が浮いている剣だ。高速剣に耐えうるかどうか試さねばならない。 「その前に試させてもらうぞ」 そう言うと、さっきのシュペー卿が作った剣の前に無言で近付き、手に持った剣を片手で振った。 それと同時に、甲高い金属音が鳴り響く。シュペー卿の剣が真っ二つに折れた音だ。 「…なるほど、見てくれは悪いが丈夫さは私が使っていた大剣に匹敵するな。ルイズ、これにしておこう」 「錆びたインテリジェンスソードなんて買わなくても…しゃべらない他のにしない?」 「私が見たところ、高速剣に耐えれそうなのはこいつだけだ」 ルイズが文句をいいつつも値段を主人に尋ねたが、値段設定二千の剣をヘシ折られた店主はかなり凹んでいる。 「…あ、あれなら三百で結構でさ」 本来の売値の三倍なのだが、ヘシ折られた分を少しでも補填しようという商売人根性だ。 だが、現在のルイズの手持ちは二百。それを小声で言うと、イレーネが頭のフードを外した。 「あれを、あんな値で売ろうとしたんだからな…安くしてもらうぞ」 平民にとってメイジ相手でもヤバイのに、そのメイジですら恐れるエルフとあっては、商売人根性も何もあったもんではない。 「…エエ、エルフ!?そ、そりゃもう百で結構ですので、命だけは!」 命乞いまでされるとは、ちと想定外だったが、ともかく買える値段になり金貨を払う。 「さ、鞘に収めればそいつは、お、おとなしくなりまさあ!」 完全にビビっている店主から鞘を受け取るとルイズとイレーネが店を出た。 「今日はもう閉店だ…酒飲んで忘れちまおう…」 「まったく…あれじゃほとんど恐喝じゃない」 「気にするな、最初に騙されていたのはお前だ」 「あの業突張りにはいい薬だろうぜ!」 二人と一振りが、通りを歩く。抜き身で持っているため人が見たらちとアレだが、人は他に居ない。 「それで、あんたデル公でいいの?」 「ちがわ!デルフリンガー様だ!」 「錆びだらけの割りに名前だけは立派ね…」 「イレーネだ。どうやら色々知っているようだな…。詳しく聞かせて貰うぞ」 それを境にデルフリンガーが黙りこくったが、イレーネは気にせず鞘に収める。 完全に収まる前にデルフリンガーが小声で 「おでれーた…こんな心に変化が無いやつ初めてだ…」 と先行き不安そうに呟いた事は幸いな事に二人には聞こえていなかった。
https://w.atwiki.jp/jojotuyosa/pages/62.html
時限の壁を越えるが オーバーヘブンには全く無意味 EXEXEX 空条 承太郎(くうじょう じょうたろう((星の白銀・世界・天国(スタープラチナ・オーバーヘブン(ザ・ワールド)))) 天国に到達したDIO(世界・天国(ザ・ワールド・オーバーヘブン) EXEX 空条 承太郎(くうじょう じょうたろう(星の白銀・世界(スタープラチナ・ザ・ワールド))) DIO(世界(ザ・ワールド)) EX 空条 承太郎(*1) DIO(ザ・ワールド(素手、時止めなし)) SSS DIO(隠者の紫(ハーミットパープル)) SS 空条 承太郎(くうじょう じょうたろう(素手)) ヴァニラ・アイス(クリーム) 再起不能となったジャン=ピエール・ポルナレフ(銀の戦車・鎮魂歌(チャリオッツ・レイクイエム)) S モハメド・アヴドゥル(魔術師の赤(マジシャンズレッド)) 花京院 典明(かきょういん のりあき(法王の緑(ハイエロファントグリーン) ジャン=ピエール・ポルナレフ(銀の戦車(シルバーチャリオッツ)) ペット・ショップ(ホルス神) ダニエル・J・ダービー(ダービー兄(オシリス神)) アヌビス神(ジャン=ピエールポルナレフ) AAA 空条 承太郎(*2) ジョセフ(波紋・隠者の紫(ハーミットパープル)) イギー(愚者(ザ・フール)) ラバーソウル(黄の節制(イエローテンパランス)) エンヤ婆(エンヤ・ガイル(正義(ジャスティス))) J・ガイル(吊られた男(ハングドマン)) ミドラー(女教皇(ハイプリエステス)) ンドゥール(ゲブ神) アヌビス神(カーン) ケニーG(ティナー・サックス) AA 呪いのデーボ(悪魔(エボニーデビル) グレーフライ(灰の塔(タワーオブグレー)) 偽キャプテン・テニール(暗黒の月(ダークブルームーン))フォーエバー(力(ストレングス)) ホル・ホース(皇帝(エンペラー)) ネーナ(女帝(エンプレス)) ズィー・ズィー(運命の車輪(ホウィール・オブ・フォーチュン)) 鋼入りのダン(スティーリー・ダン(恋人(ラバーズ))) アラビア・ファッツ(太陽(サン)) マニッシュ・ボーイ(死神13(デス・サーティーン(悪夢世界(ナイトメア・ワールド))) カメオ(審判(ジャッジメント)) オインゴ(クヌム神) ボインゴ(トト神) アヌビス神(チャカ) マライア(バテスト神) アレッシー(セト神) テレンス・T・ダービー(アトゥム神) A ヌケサク 大統領(ラブトレイン) プッチ(MIH) ジョナサン ジョルノ(GER) 究極カーズ BBB 空条 ホリィ(くうじょう ほりぃ(茨(癒しの能力))) ディアボロ ディエゴ・ブランドー(THE WORLD(ザ・ワールド(オレだけの時間だぜ))) ジョニィ(Act4) ジャイロ(BB) 吉良 大統領 BB ウィルソン・フィリップス上院議員(車)ウェザー ディエゴ・ブランドー(恐竜(スケアリー・モンスターズ)) B 空条 貞夫(くうじょう さだお) 仗助 カルネ 露伴 重ちー CCC ワムウ 音石 ローゼス ウィルソン・フィリップス上院議員(素手) カーズ 猫草 CC チョコラータ イルーゾォ アン(家出少女)シェリー・ポルナレフ ソフィー マレーナ エシディシ C リゾット サーレー セッコ スージーQ・ジョースター DDD ブチャラティ ギアッチョ ポルポ 定助 DD 定助 サンタナ ホルマジオ アナスイ D ウンガロ ズッケェロ EEE ミスタ トリッシュ 形兆 EE オエコモバ ホルマジオ ドナテロ 噴上 E ラングラー F・F サウンドマン 吉廣 ジャンケン小僧 FFF リキエル ジョンガリ・A ヴィヴァーノ ドナテロ 康一 FF フーゴ エルメェス マックイイーン ケンゾー グッチョ 億泰 F ヴェルサス GGG マイクO GG ナランチャ G ブンブーン HHH 虹村さん(京) HH リキエル ラングラー H メローネ アンジェロ III 11人の男 ホットパンツ II シュトロハイム ウェカピポ I アクセルRO マジェント JJJ ジョセフ JJ スポーツマックス J ジャイロ KKK プロシュート アバッキオ リンゴォ KK DアンG ペッシ K ミューミュー LLL マライア LL ミラション L スクアーロ MMM 未起隆 MM プッチ M エニグマの少年 NNN グェス 定助 ディスコ NN マウンテンティム N フェルディナンド博士 OOO ブラックモア OO ジョニィ O ポークパイハット小僧 由花子 PPP プッチ PP ジャイロ P ルーシー 間田 QQQ ティッツァーノ 玉美 QQ トニオ ネズミ RRR カーズ RR ジョルノ
https://w.atwiki.jp/zerolibrary/pages/28.html
【種別】 アイテム 【所属】 トリステイン 【解説】 竜の羽衣という名前で流布していたお宝魔法アイテムだったが、その正体は、太平洋戦争中の地球から、トリステインのタルブ村に迷い込んでしまった零式艦上戦闘機。形状から52型と推測される。操縦者は大日本帝国海軍少尉の佐々木武雄さん。 【備考】 エンジンカバーの「辰」の文字の由来は、竜の意味という説と、石原裕次郎主演映画「ゼロ戦黒雲一家」が元ネタという二説がある。しかしながら、実際のゼロ戦のエンジンカバーに大きな文字や絵を描くと怒られたそうである。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/81.html
起き上がった男から名前を聞き出そうとルイズがため息混じり男に問う 「はぁ・・・何で平民なんか・・・あんた名前は?」 「・・・・・ザ・グレイトフル・デッドッ!!」 「ザ・グレイトフル・デッド?・・・変な名前」 ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ だが、プロシュートがその名を叫んだ瞬間周辺の空気が変わる。 しかし、今の時点でその微妙な違いに気付くものはいない。 「ふぅ~ん、これがゼロの使い魔か」 「平民の割りに妙な格好してるな」 と、プロシュートを近くに見に生徒が数人こっちにやってきた。 「ちょっと俺にもよく見せてくれよォ~~~」 「あ?こんな近くで見えないってお前何時から近眼になったんだ?」 ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ 「だからさぁぁぁぁよく見えないんだよぉぉぉぉ目がかすんでよく見えないんだよぉぉぉぉぉぉ」 「ひ、ひぃぃぃ、一体どうなって・・・・」 「俺の髪がぁぁぁぁぁぁどんどん抜けていくよぉぉぉぉぉぉ」 「こ・・・これは皆・・・・『と・・・年をとっている!!』」 この場で唯一老化していないルイズがコルベールの方へ振り向く。 しかし、その瞳に映ったものは枯れ木のように朽ち果てていく教師の姿ッ! (まさか・・・まさかこれはあの男がやってる事なの!?) まだ比較的老化が進んでいない生徒達が半狂乱になりながら召喚したばかりの使い魔に命ずるッ! 「あ・・・あの平民を攻撃しろぉぉぉぉサラマンダーーーーー!!」 だが、その召喚したての使い魔は動かない。 いや、動きたくても動けない。 何故ならサラマンダーもスデに老化しきって死に掛けの状態だったからだッ! 彼らがグレイトフル・デッドの高い熱を持つ生物程老化が早いという 性質を知っていればサラマンダーをけしかける事も無かっただろうが彼らにはそれを知る由もない。 そして、サラマンダーという高熱を持つ生き物を呼び寄せた事によりその周辺の老化速度が一層早くなるッ! 「おおごおおおおおおおっ」 その阿鼻叫喚とも言える状況をプロシュートは『養豚場の豚』を見るかのような冷静な目で見ている。 だが、すぐさまその状況における異変を見つける。 (何だ・・・?あの女、何故オレのグレイトフル・デッドの能力下にありながら老化しやがらねぇ!?) 男女の違いで体温の上昇差を区別し老化の速度に違いが出るグレイトフル・デッドとはいえ全く老化がないというのはプロシュートにとってはありえない事だった。 (氷を持ってるわけでもねぇ・・・・それに、この快晴で氷一つ持ってたとこで老化が止まるはずがねぇ!) ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ 明確な殺意を持ちプロシュートがルイズに近付いていった。 戻る< 目次 続く