約 1,746,213 件
https://w.atwiki.jp/shachozero/pages/13.html
1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 19 33 14.20 ID gckj6eAy0 ,. -‐ 、. /  ̄`~` ‐ 、 / ` ` ‐、 / `‐、 / \ , \ / ! \ / l ! | i . / , │ l l ! | │ / /./ | │ l 、 | | | , | .l ! . / / /l ! l | | | \ !|l | / | | ! / / ./ ! | l l | | ヽ. ヽ\ \ ヽ. ヽ. |│/ヽ| ! l ! ` ‐ 、| l ヽ. ヽ.ヽ. ! l\\`‐、ヽ、\ヽ.| レ /ヽヽl ! ! . `‐、| 、ト、__\ 、 ヽ. l トーz、-‐ラ フヽ!|!/_,ゝヽ }. |│ 「ふぅん。どうにも俺はオカルトに付きまとわれるらしいな \ヽl\`ー ヽ、\ヽ ∨ー`‐← ||!-、-、 /! |│ おいそこの女。ここはどこだ、説明しろ」 ヽト. ´ ̄ジヽN` -ゝ |! リ /|.| | | ! \ _iー | |.| | | |\. \ r‐== ヲ |  ̄`~` ‐ - 、 | ` ー-ヽ、 V r -‐ / .| | | `‐、 `ー- ./| , -.、 | | `‐、 / .| { {lll}} f{! _ _,,. 、-‐ | `エ´-─ー| ` ー ゞ ´ ヽ` ー- |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;| / 5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 19 35 59.94 ID gckj6eAy0 , -‐ ´ ` ー、 / `ー-、 ,‐´ 、 `ヽ、 f‐ | ヽ ヽ ヽ / ー、 ヽ_ / ヽ ヽ ヽ\ ヽ / } _ l ヽ ヽ/! ヽ i ヽ i l / / ヽ l、 ヽ l ハ/f-f、 }l l、 |リ l l l_l_lr- {_ゝヽ ヽ |//fc リ /! /リ l |. . } l ハ、=ゞ==リ / ムソ /イ 〈 「何よその口の聞き方!」 ノ l. . l イ /´七C、ム/ .. lゝ、ヽ、 平民が貴族に対してそんなことを言っていいと思ってるの!?」 `ー-´ _-‐!. . ヾ l 弋ソ .. .. }l  ̄ ー----- f´ ヽ. . ヽ、 ,__ -= /ヽ、 . . . _-―‐´、 ヽ. . . ヽ、 /  ̄ノ/! ヽ、 . . . ヽ ヽ、 \ . . . ヽ、_ー‐ニ‐´ !. . ヽ、 . . . . .ヽ、ヽ ヽ、_ ヽ、! ヽフニイ / /ヽ . . ヽ . . ./ヽ、ヽ `ー-ヽ. . ヽl ll l / ヽ、. . ヽ . . . i ヽ \ }. . } l 7 | / }. . . } . . l \ `ヽ、 /. . . . , ヽTl / / /. . / . . .l \ \/. . . . /`ヽ、/ /. . . / . ./ ヽ/. . . . / / l| /. . . ,-‐´ 8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 19 37 44.21 ID gckj6eAy0 ,. -‐ 、. /  ̄`~` ‐ 、 / ` ` ‐、 / `‐、 / \ , \ / ! \ / l ! | i . / , │ l l ! | │ / /./ | │ l 、 | | | , | .l ! . / / /l ! l | | | \ !|l | / | | ! / / ./ ! | l l | | ヽ. ヽ\ \ ヽ. ヽ. |│/ヽ| ! l ! 「黙れ凡骨が! ` ‐ 、| l ヽ. ヽ.ヽ. ! l\\`‐、ヽ、\ヽ.| レ /ヽヽl ! ! 貴様こそこの俺を誰だと思っている!」 . `‐、| 、ト、__\ 、 ヽ. l トーz、-‐ラ フヽ!|!/_,ゝヽ }. |│ \ヽl\`ー ヽ、\ヽ ∨ー`‐← ||!-、-、 /! |│ ヽト. ´ ̄ジヽN` -ゝ |! リ /|.| | | ! \ _iー | |.| | | |\. \ r‐== ヲ |  ̄`~` ‐ - 、 | ` ー-ヽ、 V r -‐ / .| | | `‐、 `ー- ./| , -.、 | | `‐、 / .| { {lll}} f{! _ _,,. 、-‐ | `エ´-─ー| ` ー ゞ ´ ヽ` ー- |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;| / 14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 19 40 49.59 ID gckj6eAy0 , -‐ ´ ` ー、 / `ー-、 ,‐´ 、 `ヽ、 f‐ | ヽ ヽ ヽ / ー、 ヽ_ / ヽ ヽ ヽ\ ヽ / } _ l ヽ ヽ/! ヽ i ヽ i l / / ヽ l、 ヽ l ハ/f-f、 }l l、 |リ l l l_l_lr- {_ゝヽ ヽ |//fc リ /! /リ l |. . } l ハ、=ゞ==リ / ムソ /イ 〈 「知るわけないでしょ!? ノ l. . l イ /´七C、ム/ .. lゝ、ヽ、 いったい何なのよあんた!」 `ー-´ _-‐!. . ヾ l 弋ソ .. .. }l  ̄ ー----- f´ ヽ. . ヽ、 ,__ -= /ヽ、 . . . _-―‐´、 ヽ. . . ヽ、 /  ̄ノ/! ヽ、 . . . ヽ ヽ、 \ . . . ヽ、_ー‐ニ‐´ !. . ヽ、 . . . . .ヽ、ヽ ヽ、_ ヽ、! ヽフニイ / /ヽ . . ヽ . . ./ヽ、ヽ `ー-ヽ. . ヽl ll l / ヽ、. . ヽ . . . i ヽ \ }. . } l 7 | / }. . . } . . l \ `ヽ、 /. . . . , ヽTl / / /. . / . . .l \ \/. . . . /`ヽ、/ /. . . / . ./ ヽ/. . . . / / l| /. . . ,- 19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 19 42 26.71 ID gckj6eAy0 ,. -‐ 、. /  ̄`~` ‐ 、 / ` ` ‐、 / `‐、 / \ , \ / ! \ / l ! | i . / , │ l l ! | │ / /./ | │ l 、 | | | , | .l ! . / / /l ! l | | | \ !|l | / | | ! / / ./ ! | l l | | ヽ. ヽ\ \ ヽ. ヽ. |│/ヽ| ! l ! 「貴様に名乗る名などない! ` ‐ 、| l ヽ. ヽ.ヽ. ! l\\`‐、ヽ、\ヽ.| レ /ヽヽl ! ! 俺の名前が汚れるわ!!」 . `‐、| 、ト、__\ 、 ヽ. l トーz、-‐ラ フヽ!|!/_,ゝヽ }. |│ \ヽl\`ー ヽ、\ヽ ∨ー`‐← ||!-、-、 /! |│ ヽト. ´ ̄ジヽN` -ゝ |! リ /|.| | | ! \ _iー | |.| | | |\. \ r‐== ヲ |  ̄`~` ‐ - 、 | ` ー-ヽ、 V r -‐ / .| | | `‐、 `ー- ./| , -.、 | | `‐、 / .| { {lll}} f{! _ _,,. 、-‐ | `エ´-─ー| ` ー ゞ ´ ヽ` ー- |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;| 21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 19 46 41.69 ID gckj6eAy0 , -‐ ´ ` ー、 / `ー-、 ,‐´ 、 `ヽ、 f‐ | ヽ ヽ ヽ / ー、 ヽ_ / ヽ ヽ ヽ\ ヽ / } _ l ヽ ヽ/! ヽ i ヽ i l / / ヽ l、 ヽ l ハ/f-f、 }l l、 |リ l l l_l_lr- {_ゝヽ ヽ |//fc リ /! /リ l |. . } l ハ、=ゞ==リ / ムソ /イ 〈 ノ l. . l イ /´七C、ム/ .. lゝ、ヽ、 「なんですってぇ~!!」 `ー-´ _-‐!. . ヾ l 弋ソ .. .. }l  ̄ ー----- f´ ヽ. . ヽ、 ,__ -= /ヽ、 . . . _-―‐´、 ヽ. . . ヽ、 /  ̄ノ/! ヽ、 . . . ヽ ヽ、 \ . . . ヽ、_ー‐ニ‐´ !. . ヽ、 . . . . .ヽ、ヽ ヽ、_ ヽ、! ヽフニイ / /ヽ . . ヽ . . ./ヽ、ヽ `ー-ヽ. . ヽl ll l / ヽ、. . ヽ . . . i ヽ \ }. . } l 7 | / }. . . } . . l \ `ヽ、 /. . . . , ヽTl / / /. . / . . .l \ \/. . . . /`ヽ、/ /. . . / . ./ ヽ/. . . . / / l| /. . . ,-‐´ 22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 19 47 12.57 ID gckj6eAy0 , イ \ / \ \ / ヽ , | { l | _ 〉 、 | |/ ,、ヽ / \ { / ヽ∨  ̄≧ュ、 〉 __,. , { ノ r リ  ̄´ 斤ォー / 「ミス・ヴァリエール ∧ヽゝ ヽ  ̄ー ├ー |ゞ′、/ 言い争いはそこまでにしたまえ , \| | ヽ、__ノ !、__ノ 一度サモン・サーヴァントで呼び出してしまったからには、彼を使い魔にするしかない」 _ / l l } / / ヾ ヽ __ ー / ノ ` ー- 、 \ < _ / / \ ヽ __ / _ -──  ̄  ̄/ ̄ 7 、 -─ / / ` ─- 、 / / >ー───── 、 / / / / 29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 19 50 40.66 ID gckj6eAy0 _ __ /´ `ヽ_ , -‐ `ヽ / \ . / / ヽ l / ,′/. / .〃 . .丶 丶 . .ヽ l l l l | l . .l . .ト、/ . . { . . .ヽ. \ .j .! │ l lハ l. . |. ..!. .{\八 . . .ヽ ,__匕厶} │ l 「……わかりました ヽ∧ . ! . 从7tーゝヽ . イヘ ノ│ l ヽ、 あんた、感謝しなさいよね jハ>ハ `‐ j /  ̄ / リ `ヽ、 普通は貴族にこんなことされるなんて一生ないんだから」 | } ´ 、 / / . . \ _ ノ ゝ , `マZ三)′ 厶;._ } / `ヽ┐ . . . . /> ´ / ヽ . / / ) {_, }. . . . / / _ -ヘ . . . . .∨ { ┐r /. . .〃 /_ -‐ ´ ヽ . . . / 入 / ̄ ̄`V / l | . . . ト、 / . .Y / ̄ ̄ヽ . . . . ./ l l . . . . . . .\ ヽ . .レ l-‐、__{ l { . . . . . . . . . \ ) .l \ \ l ヽ . . . . . . . . . . . ヽ / . .ヽ ヽ ヽ l } . . . . . . . . . . . . } 36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 19 54 12.36 ID gckj6eAy0 . /  ̄`~` ‐ 、 / ` ` ‐、 / `‐、 / \ , \ / ! \ / l ! | i . / , │ l l ! | │ / /./ | │ l 、 | | | , | .l ! . / / /l ! l | | | \ !|l | / | | ! / / ./ ! | l l | | ヽ. ヽ\ \ ヽ. ヽ. |│/ヽ| ! l ! 「貴様ら…… ` ‐ 、| l ヽ. ヽ.ヽ. ! l\\`‐、ヽ、\ヽ.| レ /ヽヽl ! ! 俺を無視して話を進めとはいい度胸だな! . `‐、| 、ト、__\ 、 ヽ. l トーz、-‐ラ フヽ!|!/_,ゝヽ }. |│ いいだろう! デュエルで俺の実力を見せてくれるわ!」 \ヽl\`ー ヽ、\ヽ ∨ー`‐← ||!-、-、 /! |│ ヽト. ´ ̄ジヽN` -ゝ |! リ /|.| | | ! \ _iー | |.| | | |\. \ r‐== ヲ |  ̄`~` ‐ - 、 | ` ー-ヽ、 V r -‐ / .| | | `‐、 `ー- ./| , -.、 | | `‐、 / .| { {lll}} f{! _ _,,. 、-‐ | `エ´-─ー| ` ー ゞ ´ ヽ` ー- |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;| / 40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 19 56 03.33 ID gckj6eAy0 / / 、 \ ヽ 、 l / | \ ヽ ヽ , |/ / 人 ヽ, , | ! || !. l 、| / ヽ l /l |_, ! ヽ ヽ |l | /ヾ|、 ノイ /! /_,|イ l´ | \ 〉!ヽ\|ー,‐≧、,ノ /_ノ≦___| / ト、 ヽ / |\! ゝー ゙  ̄ ´ ゝ、_ノ 7 .! ヽ \ / | | / |ヽ、| 〉 ヽ | l u u./. | メ, / 「ホントになんなのこいつ…… 〉 r ゙/ ヽ ー─--、 / | }_ / もう! いいからじっとしてなさい!」 / {./ |>- ` ー一 _, イ / ´ ヽ `ヽ / r 7 ノ ∧` >< / / ハ ` 、 / /´/ ∧ ∨ ,、 ∧ ヽ; -ー ´ }. \ . / | / / \ ∨ | / ヽ \ _, ハ \ 〈 / / \ ヽ7 / ヽ ヾ´ l \ ヽ / / ` ^__´ l | ヽヽ ヽ } 〈 ∧ ` 一 〉 l , | / 〉 ∧ ヽ ∧ / / ∨ / . / | ヽ , /| ト; / / ヽ / . / l } } / || || ∨ / \ 前へ トップページ 次へ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1506.html
ルイズメモNo.12-使い魔について- あの決闘から一週間が過ぎた。 意外にも、最大の懸念事項だった謹慎は無し。 ハゲ曰く、「怪我人が出なかったから今回だけは許す」らしい。 けれど、もしモンモランシーが機嫌を直していなかったら、ギーシュは確実に死んでたわね。 何かの陰謀を感じなくもない。だとしてもわたしに出来ることは特にないけど。 それよりもセッコね。格闘が強いのはうすうす判ってた、 けど岩を操ったのは何だろう?直接聞いてみたけれど答えは要領を得ない。 セッコは朝わたしを起こして、朝食を食べるといつの間にかいなくなる。一体どこへ行っているのだろう?要検証ね。 一応呼ぶと現れるので、それほど遠くへは行ってないみたい。微妙に感覚共有ができているのかも、そうだとしたら喜ばしいことだわ。 ふと思って「来い」と念じてみた。来る様子はなく、肩を落とす。しかし声に出して呼ぶと、いつも通りすぐにやってきたわ。意味がわからない。これも要検証。 気になることが多すぎるので一日使ってセッコを監視することにする。 他の使い魔達を連れて厨房に餌をたかりに行っている。やっぱり足りてないのかしら? 信じられないものを見てしまった。セッコはともかくとして、ドラゴンとジャイアントモールが食材の搬入を手伝っている。誰の使い魔か知らないけど意地汚いわね。 中庭でギーシュと話している。妙にギーシュの腰が低いのは気のせいだろうか。 ギーシュが錬金したとおぼしき棍棒をセッコが振り回している。もしかして武器が欲しいのかしら?今度の休みにでも何か買ってあげよう。 その間ギーシュは横で震えている。その様子は実に面白い。 思ったよりあいつは人望がある。わたしのよく知らない子と普通に会話していた。ハシバミ草愛好会って何なのかしら? 部屋に戻るといつの間にかセッコが戻ってきていた。謎の鎧のような服の手入れをしている。「大事なもんだ、何に使うかは忘れたが。」と言っていた。 呼べば来るけど念じても来ない謎が遂に判明。単にわたしの声を聞いていただけみたい。目がいいのに、耳もきくってのは珍しい。才能ね。 不思議な事も言っていた。硬い物を持つと身が軽くなる?理解できない。けど嘘ではなさそう。 「起きろー」 うるさい 「起きろぉー」 まだ眠いのよ 「起きろおおおお」 今日は休日じゃない 「起きろつってんだろおおおおおおおおおお!」 「ああ……おはよう」 そういえば、今日は買い物に行くから早く起こせって言ったんだわね。 「オレも行くのか?」 「当たり前じゃない、というかあなたの武器を買いに行くのよ。」 「うー」 ひどくやる気のない面でこっちを見ている。 「付いて来るなら飴を一缶買ってあげるわよ。来ないなら当分おやつ抜き。 もう一度聞くわね。付いて来るかしら?」 「うおお、うん、うん!」 いつもながらこの扱いやすさは評価できるわ。 「ならさっさと行くわよ。」 「うん。」 タバサはセッコの事が気になっている。 召喚した次の日、普通にハシバミ草を食っていたこと。 自分の使い魔である風韻竜シルフィードと妙に仲がいいこと。 そして……決闘で見せた不思議な、見たこともない戦い方。 しかも昨日はサイレントを掛け、かなり後ろからつけていたのにわたしに気づいて話しかけてきた。修行が足りないだろうか。 勘は鋭いが頭は良くないようで、適当にごまかしたら納得していた。 そうだ、今日は虚無の曜日だ。休みを満喫すべく図書館に向かうことにする。 部屋でゆっくり読もうと本を2冊借りて出てくると、窓から馬で町へ出て行くセッコと主人ルイズの姿が見えた。 どうも気になる。 ……空で本を読むのも悪くないか。そう自分を納得させシルフィードを呼んだ。 「きゅい?」 「馬2頭。食べちゃダメ」 「きゅいきゅい!」 あら?よく見たらセッコちゃんなのだわ! たぶん町へ行くのよね、ついでだし乗せてあげちゃおうなのだわ! シルフィってなんて友達想い! 「シルフィード?」 タバサが気づいた時既に遅し。シルフィードは、セッコとルイズのすぐ横まで急降下していた。 「きゃあああああああ!何?何なの?」 ルイズはあまりのことに落馬してしまった。 まあ、いきなり横にドラゴンが降りてきたのだ。 驚くなという方がどうかしている。 「いたた、セッコ生きてるかしら?」 ……あら? 「うおっ、おおおっ」 「きゅい、きゅっきゅ!」 「うん!うん!」 「きゅいい!」 「おあ、おうおう!」 「きゅいきゅい!」 腰をおさえながら起き上がったルイズが見たものは。 意味不明な言葉でドラゴンとコミュニケーションを取るセッコと、ドラゴンの背中でプルプルと震えている同級生の姿だった。 しかも……あのドラゴンは確かに校舎の裏手で食材を運んでいた奴だ。 「早い、早いわ!さすがドラゴン!」 横でルイズがはしゃいでいる。キュルケ並みに騒がしい。 「おっおっ」 「きゅい!」 シルフィードとセッコが何か言い合っている。はあ、何でこんなことに。 まだまだ「教育」が必要みたい。 (……シルフィード) (なに?) (帰ったらあれよ。) (な、なにもわるいことしてないの!喋れることもばらしてないの!) (追跡対象は今乗せた2人。) (……) 「タバサ、だっけ。ありがとう。凄く助かったわ。」 「いえ、別に。」 元は乗せるつもりなんかなかったのに。 「あれ、どこ行くの?」 「用事。」 もう頓挫したけど。 ……せっかく街まで来たんだし、秘薬屋に足を伸ばそうか。 「帰りも乗せてもらえる?」 「……」 シルフィードとセッコはまだ何か話し?ている。 害はなさそうだし、乗せてもいいか。 「ここで待つ。」 「ありがとう。タバサ」 タバサとわかれて武器屋を探す。どこだったかしら…… 「狭い道だなあ~」 え? 「ここが一番広いのよ?それはそうと、スリには気をつけなさいよ。」 「わかった。」 セッコを呼び出してかなり経つ。でもわからない事が多すぎるわ。 こいつ自体記憶喪失なんだから、どうしようもないのだけれども。 「見えたッ!チクリと見えたぜ!」 セッコが指差した先には何も見えない。何言ってるのこいつ。 「剣の看板!」 「どれよ」 「その先だ、オメー目が悪いぞぉ。」 あなたが良すぎるのよ。 100メイルほど歩くと確かに剣の看板であることが分かった。 そういえばこんな場所だったわね。 「こんにちはー」 店の中は薄暗く、乱雑に剣や槍や甲冑が並べられていた。 店の奥に座ってパイプを銜えていたヒゲ親父が、入ってきたルイズを胡散臭げに見つめ、口を開く。 「旦那。貴族の旦那。うちは真っ当な商売してまさあ。 お上に目をつけられるようなことなんか、これっぽっちもありませんや。 「失礼ね、客よ。」 「こりゃおったまげた!貴族が剣を!おったまげた!」 「使うのはわたしじゃないわ、使い魔よ。 後、剣よりもハンマーとかメースとか、頑丈で重いものがいいのだけれど。」 店主がよく見ると、少女の後ろに変な鎧を着た男が立っている。 確かに力は強そうだ。 「困りましたなあ、うちは剣と槍が専門でしてね、 殴る武器はそれ、そこの護身用の棍棒しかありませんや。」 指した先を見ると、0,5メイルほどの貧相な棒が数本吊ってあった。 「うーん、さすがにこれはちょっと。」 ですよねー。 といった表情でヒゲ親父が何か考えている。 「ああ、そういえば物凄く頑丈な奴が居ますぜ、片手剣ですがね。 値段も新金貨で50もあれば十分でさあ」 「いいじゃない。」 「ただ、少々素行に問題がありまして。」 「素行……?」 突然、奥に積まれていた剣の山から低い男の声がした。 「何が素行に問題ありだ馬鹿親父!おめえと比べたら清廉潔白もいいとこだぜ!」 「やい!デル公!黙ってろって言ったろうが! せっかくてめえを売り込んでやろうと思ったのによ!」 「デル公って呼ぶなっつーたろう!デルフリンガー様と呼べ!」 「へえ、インテリジェンスソードじゃない。口は悪いけど。」 ルイズは妙に興味が湧いた。 「こいつの喋る以外の能力って何?」 「強いて言えば、硬いことですねえ。切れ味は悪いですが。」 「どのぐらい?」 「頑丈さだけなら、ここにある何よりも上でさあ。」 嘘は言ってない。あの外見と罵詈雑言がなきゃ業物で通るだろう、と店主は思う。 もっとも、その欠点のおかげで数十年売れてないのだが…… 「よさそうね、セッコ。ちょっとあの声の主を拾ってきて。」 「うん。」 「本人を無視して勝手に話を進めるなバカヤロー!使い手は自分で選ぶぜ!」 「黙ってろデル公、また話がこじれるだろうが!」 「うわっ変態!俺を掴むな!おめえなんかに使われてたま……ん? おでれーた!てめ、[使い手]じゃねえか!」 セッコは思った。この五月蝿さはともかく、持ち易いし丈夫そうだ、と。 「サビてるわね。」 「ええ、サビてはいます。」 「今にも崩れそうに見えるんだけど。」 「「そんなことはねえ」」 セッコと剣の声が重なった。 「そうかしら。」 素手でワルキューレの腕を捻じ切ったセッコが言うならそうなのかもしれない。 そうだ、いいことを思いついたわ。 「セッコ」 「何だ」 「その剣を、えーとデルフリンガーだっけ?思い切り殴ってみなさい」 「ちょおまやめ」 剣が何か言っているけど気にしない。 「……わかった。」 セッコが剣を机に置き、思い切り腕を振り下ろす。 ドッボオォォ 「UGYAAAAAAAAAAAA!」 物凄い音と聞くに堪えない叫び声がして、金属でできた机が凹む。しかし、剣は汚い叫びを上げはしたが無傷だった。 刃を横から叩くなんてことをしたら、普通の人がやっても折れて当たり前だ。 しかしこいつは……あのセッコに机が凹む勢いでぶん殴られても、曲がってすらいないのだ。 これはきっととんでもない掘り出し物に違いない。 「これに決めたわ。サビは見逃してあげる。新金貨50でいいのよね?」 「へえ、ありがとうございます。ところでですね。」 「何よ」 「あの……机の修理代を……できればでいいんでがすが……」 店主は泣きそうな顔で縮こまっている。正直哀れだ。 「いくらよ」 「新金貨20……」 ヒゲ親父はデルフリンガーを凄い勢いで振り回すセッコをちらりと見て、更に怯えた表情になった。 セッコにしてみれば、新しい玩具が手に入ったから遊んでいる、 その程度なのだろう。しかしこの状況ではほとんど脅迫といっていい。 「いや、15でいいでさあ。」 ちょっと哀れかもしれない。 それにこの剣はなかなか使えそう。もう少し払ってやってもいいわね。 「わかったわ。合計65枚ね。」 ヒゲ親父の顔がぱっと輝いた。 「へい!まいどありい! あと、もしあまりにもこいつが五月蝿いようなら、 鞘に入れれば大人しくなりますぜ。鞘はサービスでさあ。」 ……普通鞘は最初から剣についてるもんじゃないのかしら?まあいいけど。 デルフリンガーを振り回すのを止めさせ、鞘に突っ込む。 何か言いかけたけど、とりあえず無視が一番ね。 勝手に出てこないように厳重に紐で縛ってからセッコに持たせた。 おそらくセッコが使う分には、抜き身でも鞘に入ってても変わらない。 それに、このインテリジェンスソードはずいぶん性格が悪そうだ。付き合ってられないわ。 「学院に帰るわよ、セッコ」 「待て、飴一缶。」 すっかり忘れてた。危ない危ない。 「そういえばそうね。菓子屋に寄ってからタバサを探しましょ。」 飴って砂糖を沢山使うから高いのよね。クッキーとかじゃあダメなのかしら? ま、約束しちゃったものは仕方ないか。あ、菓子屋ってどこだっけ。 その頃、武器屋の店主は満面の笑顔でルイズたちを見送っていた。 デル公の厄介払いも素晴らしいが、せしめた机の修理代のおかげで笑いが止まらない。 鍛冶である己の技術をもってすれば、この程度の修理朝飯前である。 今日はもう休みにし、ゆっくり酒でも飲もう。どうせ客はめったに来ないのだ。 飴を買って最初に降りたところまで戻ると、既にドラゴンとタバサが待っていた。 セッコは後ろで買ってやった飴をバリバリと噛み砕き食べている。 飴は舐める物じゃないのかしら?まあいいけど。 「ありがとう、タバサ。待っていてくれたのね。」 「待ったのはシルフィード。」 「きゅい!」 「似たようなものよ。とりあえず帰りましょ。」 それにしても、キュルケのサラマンダーもあれだけど、風竜の使い魔とか、それに輪を掛けてうらやましすぎるわ。セッコが悪いとは言わないけど。 「きゃあああああ!」 突然シルフィードが急降下した。何、何なの? 「よぉーしよしよしよし!」 「きゅい!きゅい!」 セッコがシルフィードの頭をなでている。 その瞬間わたしは理解した……飴を投げて空中キャッチさせたのね。 「セッコ」 「シルフィード」 「「やめなさい。」」 「「……」」 一人と一匹が何が悪いのか理解できない といった表情でこっちを見る。 セッコを呼び出してから初めて、本気でぶん殴りたくなった。 ここが空中なのを思い出し、何とか抑える。ちらりとタバサを見る。 なんだか心が通じ合った気がしたわ。きっと気のせいじゃない。 風竜は速い。あっという間に馬を停めていた学院入口に到着する。 「今日はありがとう、助かったわ。これからもよろしく。」 「ちょっとした偶然。」 なんかわたし達を追ってきたように見えたけど気のせいよね。 気のせいということにしとこう。 「3個やる、3個!」 「きゅいきゅいきゅい!」 「「……」」 「セッコ、帰るわよ」 「……わかった。」 ルイズが去っていった後、本を読みつつ今日のことに付いて考える。 使い魔同士なんだか仲良くしているな、程度に思っていた。 とはいえ、シルフィードがセッコにあそこまで餌付けされているとは、想定の範囲外もいいとこだ。 やはり教育不足?まあそれは追っ付け叩き込めばいい。 それにしても……結局セッコの謎については全く不明のままだ。 かなり慎重に観察したのに。それも近くで。 もしかしてルイズが能力を隠させているのか?私のように。 それとも、記憶が? たしかキュルケはルイズと部屋が隣同士だったはず。暇な時に調べてもらおう。 To be continued…… 戻る< 目次 続く
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/774.html
─ミシガン湖畔─ その夜、彼はいつものように見張りをしていた。 自分達の愛馬が猛獣に襲われないように。 なによりも国王のために走る自分の命を狙うテロリストと、友人がこのレースで手に入れた聖人の遺体(といっても今は脊椎の一部しかないが)を狙う者たちから身を守るためである。 ふわっ、と欠伸を一つ、そろそろ見張りを交代してもらおうと隣を見て彼は───目を疑った。 「…ジョニィ?」 周囲を『鉄球の回転の振動波』で警戒していたにも関わらず、友人は馬ごと消えていたのである。 「…?」 目を開くと抜けるような青空が広がっていた。ああ、今は昼なんだなと思う。 ───まずい、寝すぎたか。 そう思って勢いよく体を起こす。 「すまないジャイロ。ちょっと寝過ごしたみたいだ…」 僕は立つことは出来ないから上半身を捻って周りを見回した。 だが ―――おいおいおいおい、ずいぶん呑気だなオタクさんはよ? そう言いながらニョホホと笑う相棒はそこにはいなかった。 「あんた誰?」 僕の名前は『ジョニィ・ジョースター』 この「物語」は僕が歩き出す物語だ。 最初から最後まで本当にツンデレな少女 「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」と出会った事で… ─歩き出す使い魔─ 「ルイズ、『サモン・サーヴァント』で平民を呼び出してどうするのよ?」 「さすがゼロのルイズ!平民を召喚しやがった!」 「どんな魔法を使おうがやっぱゼロは無駄無駄ァ!」 「マギィ…」 「ちょっと間違っただけよ!ミスタ・コルベール!もう一度やらせてください!」 気が付くとジョニィは騒がしい人々の輪の中心にいた。 空は抜けるような青、周りは見渡すばかりの豊かな草原を バックに目の前には桃色の髪の少女が立っている。 ───草原だって? 「草原!?ここどこッ!?」 ふいに自分のいる場所を認識して軽くパニックに陥る。 そう、彼は昨日まで雪の残るミシガン湖畔にいたはずだ───が周りには見事な緑の草原が広がっていた。 まったく状況が理解できない彼に目の前にいた少女が苛立たしそうな声を上げて詰め寄ってくる。 「ちょっとあんた!どこの平民よ!」 「へ、平民?」 「まったく!なんで私の使い魔がこんな平民なのよ!」 ゼロのルイズと呼ばれた少女(彼女の名前だろうか)は中年のハゲ男性になにやら必死に頼んでいるが男性は首を横に振るばかりである。 (な、なんだこいつら?大統領の刺客がもう来たのか…?だがなぜ攻撃してこない?) スタンド攻撃を警戒しつつ周囲を見回すと遠くには大きな石造りの城が見える。 自分を取り囲む集団は彼女と同じような服装をして手に杖のような物を持っているのも確認できた。 (ここは明らかにミシガン湖畔じゃない…そして僕の周りにいるやつら…同じような格好をしている?組織か…何かチームのようなものだろうか?) ふいにジョニィの背中を何者かがつついた。 驚いて振り返るとそこには過酷なレースを一緒に旅してきた愛馬『スローダンサー』の姿があった。 「僕の馬!?よかった、君も一緒にきていたのか!」 よく見ると近くに車椅子や荷物も落ちている。昨晩、自分の周囲にあったものがここに移動してきたようである。 (これは…モニュメントバレーの近くで攻撃してきたスタンド使いの攻撃に似ている) (ブンブーン一家や『11人』のスタンド使いもチームで一つの能力を持っていた…まさかあいつも他に仲間がッ!?) しばらくすると中年男性と話が終わったのか、少女がガックリとうなだれて近づいてくる。 馬に乗って逃げようかとも思ったがまずはここがどこか解らなければジャイロと合流することもできない。 もちろん危険と判断すればすぐに自身のスタンド『タスク』を発現させて撃とうと思ってはいたが両手の爪の数である10発しか撃てないタスクではこの人数だと圧倒的に不利である。 とりあえず警戒しつつも目の前の少女から情報を得るべきだろう、ジョニィはそう考えた。 「あんた、感謝しなさいよね。貴族にこんなことされるなんて、普通は一生ないんだから」 「君は一体何者だ?目的は『遺体』か…?」 「いいからじっとしてなさい」 ジョニィを軽く無視すると少女は杖を振り、呪文のようなものを唱え始める。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」 下半身を動かすことが出来ないジョニィはルイズの次の行動に逃げることも抵抗することもできなかった。 「え?」 「ん……」 重ねられる唇と唇。 ───あなたならどうする?最高だった…… 「ってそうじゃないッ!おまえ何やってるんだーーッ!?キスはともかく理由を言えーーーッ!!!」 「いきなり大声ださないでよ!『コントラクト・サーヴァント』の儀式よ」 「な、なに言って…」 そう言いかけたところで体にサンドマンのスタンド攻撃を喰らったときのような熱と痛みが走った。 あのとき体感した、まるで『燃える音』が血管の中を駆け巡り全身に運ばれるような感覚にジョニィは思わず声を上げてしまう。 「うおあああああああああ!?」 (やっぱりこいつ…スタンド使い!?) 「使い魔のルーンを刻んでるだけよ。すぐ終わるわ」 あまりの痛みと熱に『タスク』を出すこともできずにジョニィは転げまわる。 しばらくするとルイズの言葉どおり何事もなかったかのように熱と痛みは収まったが代わりに左手の甲に謎の文字が出現していた。 以前、左腕にラテン語が刻まれたことがあったが今、手の甲に現れた文字は自分の知る言語でも次の遺体の場所を示す物でもない。 「ふむ、珍しいルーンだな」 いつの間にか近づいてきていた中年男性がジョニィの左手の文字を見るとそう言ったが何の事なのか理解できずただ成り行きを見守ることしか出来ない。 「さてと、じゃあ皆教室に戻るぞ」 彼はそのままきびすを返すと何事でもないように───宙に浮いた。 そういえばルーシーを追ってきたスタンド使いも宙に浮いてたが、あれは雨粒に乗っていただけだ。 しかし目の前の男は何も無い場所で浮いたのである。 呆然とするジョニィの前で今まで自分を取り囲んでいた連中も次々と宙に浮いていく。 「ルイズ、お前は歩いてこいよ!」 「あいつ『フライ』はおろか、『レビテーション』さえまともにできないんだぜ」 ───ここは何なんだ、ジャイロはどこに行ったんだ… 目の前の光景が信じられず自分の頬を抓るジョニィに、ルイズはため息をついてから怒鳴った。 「あんた誰よ!ほんとどこの平民よ!」 ───これは夢だ、早く起きてジャイロと見張りを交代しないと。そう思いながら彼は答えるのだった。 「僕の名前は…ジョニィ。ジョニィ・ジョースター」 To Be Continued=>
https://w.atwiki.jp/gundamzero/pages/24.html
サモン・サーヴァントを行ったルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、この上なく困惑していた。 数度の爆発を経て召喚に成功したものの、現れた物は、この世界にある物とはかけ離れた物だったからだ。 「なに…?これ」 目の前に現れたのは80メイルはあろうかという巨大な緑色の物体。 だが、その巨体の半分以上を焼け焦がせ異臭を放ち、所々からは火花が巻き上がっている。 「これ…ゴーレム?」 脚は付いていない。ならば飛ぶのかとも思ったが、全く動く気配は無い。 初めはその巨体に驚いていた他の生徒達も、動かない物を召喚したルイズを笑い始めた。 「さすが『ゼロ』だな!壊れたゴーレムを召喚するなんて!」 「ミスタ・コルベール…あの!もう一度召喚させてください!」 「それはダメだ。ミス・ヴァリエール。春の使い魔召喚の儀式は神聖なものだ。好む好まざるに関わらず、これを使い魔にするしかないのだよ」 そうは言うが、コルベールの気は重い。 不名誉極まりない『ゼロ』という二つ名を持つ彼女が数度の爆発を経て召喚に成功したのだが、物が物だけに困っていた。 個人的には再召喚させてもいいという心情だったが、公平を期すためにはそれはできない。 「これは伝統なんだ。ミス・ヴァリエール…例外は認められない。これは…」 そう言って、その物体を指差すが、改めて息を呑む。 表面をかなりの高熱で焼かれたらしく、気泡が現れている部分もある。 こんな大質量の金属をどうやって焼いたのだろうかと、興味を持ったが、すぐに目の前の落ち込んでいる少女の事を考えて自己嫌悪に陥りかけた。 「…今は動かないかもしれないが、呼び出された以上、君の使い魔にならなくてはならない」 「そんなぁ…」 がっくりと肩を落としたルイズが『それ』に近付いたが、契約するにもどこにやればいいのかサッパリ分からない。 これが動いてくれれば、文句無しに喜んで契約するとこなのだが… とりあえず、『フライ』を使ったコルベールに掴まり、頭らしき方に近付いたのだが その時、沈黙していた頭部から一条の光が放たれた。 「あれは…目か?どうやらまだ動くようだね」 一つ目という特異な目だったが、動く事にほんの少し安堵した。 だが、安堵したのも束の間、頭部が後退し、すぐ下の部分が様々な動きを見せ内部が開け放たれた。 「…ミスタ・コルベール。あそこにいるのは一体…」 「私にもよく分からん…だが、怪我をしているようだ」 中に居たのは、妙なスーツで全身を覆った人。 だが、腹部から血を流していた。 (いいか…一人でも突破し…アクシズ艦隊へたどり着くのだ!) 周囲に浮かぶ、様々な巨人に向け言葉を放ち続ける男が一人。 (我々の真実の戦いを、後の世に伝えるために!) その言葉を合図として、周りの巨人が加速し一直線に突き進む。 ただ、ひたすらに、居並ぶ敵艦隊の向こうに存在するはずのアクシズ艦隊を目指して。 (我々が尽きようとも、いつの日か、貴様らに牙を剥くものが現れる!それを忘れるな!!) 壁というべき艦隊と突き抜け、周囲を見渡すが、すでに周りには自分しか存在していなかった。 (最後の…一人か…) そう思うと、声にならない叫びをあげ目の前の艦へと突き進む。 迷いなどあろうはずもない。成すべき事を成し、後に続く者が現れる事を信じて機を推し進めた。 視界が赤く染まり、全ての音が途切れる。 だが、その赤く染まっていた視界が再び開かれ、ぼやけた視界に入った物は…緑色の長い髪だった。 ミス・ロングビル。オールド・オスマンによって採用された秘書であり、理知的で物静かな姿勢から一部生徒達からも人気がある人だ。 もっぱらの悩みの種は、そのオスマンによるセクハラであるのだが 『ゼロ』の二つ名を持つルイズが召喚した大破したゴーレムの中の人の様子を見るようにとオスマンに言われて医務室にやってきている。 「まったく…こんな事する暇があるなら、宝物庫の事でも調べときたいんだけどね」 秘書にあるまじき言葉ではあるが、本職が秘書でないのだから仕方ない。 とりあえずは異常なしとして、戻る事にしたのだが、背後から恐ろしいまでの殺意と咆哮を受け固まった。 「シーマ!?貴様ァーーーーーーーーーー!!!閣下を殺害しておきながら、よく私の前にその姿を晒せたなッ!!」 なに?シーマ?誰?てか何で!? そう思うまもなく一気に組み伏せられる。早い。杖を抜く暇すら無かった。 「お、落ち着いてください!ここはトリステイン魔法学校で…」 必死こいて後ろへと顔を向ける。 長く纏められた銀髪が印象的だったが、おっそろしい程に怒り猛っている。 しばらく視線が交錯したが、手の力が少し緩んだ。 目覚めたてで、思考が鈍っており、そこに仇敵であるシーマ・ガラハウを彷彿とさせる緑の長い髪が目に入ったからなのだが よくよく考えてみれば、サラミスに特攻したはずの自分を、シーマが拾うはずもないと思い、とりあえず状況を掴む事にした。 あの状況で命があったとすれば、十中八九ここは連邦の艦だからだ。 「シーマではないようだが…捕虜というわけか?」 捕虜であるにしろ、このまま黙っているわけにはいかない。 このまま事が進めは、宇宙の晒し者になる事は確実なのだ。 最悪、目の前の女を人質にMSなり戦闘機なりを強奪する気でいた。 「一先ず、話を聞いてください。ここはトリステイン魔法学校で、あなたは捕虜などではありませんから」 「トリステイン…?艦の名か…?いや待て、学校だと。という事はコロニーか?だが、サイド3にもサイド6にもそのようなコロニーは無かったはずだが」 サイド1.2.4.5の修復されたコロニーのどれかとも思ったが、少なくとも、そんな名のコロニーは無い。 それ以前に『魔法』という単語も聞こえたのだが、あえて無視する。 もちろん、状況が掴めない以上は、離す気は無い。 連邦の勢力下だとして、星の屑の中心人物である『ソロモンの悪夢』を、そう簡単に逃がすはずは無いと判断した。 そうしていると、扉が開いて、明らかに軍人ではないような桃色の髪の少女が入ってきた。 「……この…!ミス・ロングビルになにやってんのよ!バカーーーーーー!!」 叫びと共に放たれる蹴り。 だが、間合いも遠い上に、素人の蹴りだ。 不意を付かれでもしない限り本職の軍人が食らうようなものではない。 軽くいなすと支えている脚を払い転倒させた。 「…ロングビルと言ったな。一つだけ聞こう。ここは連邦の勢力下か?」 「連邦…?少なくともトリステインは王国ですが」 「王国だと?ふざけた事を」 そう思うのも無理は無い。 地球の全域は、アフリカなどが影響が弱いぐらいで、全てが連邦の勢力下だ。 宇宙にしても、サイド3のジオン共和国。月のフォン・ブラウンとグラナダ。中立であるサイド6のリーア。そして遠く離れたアクシズ。 少なくとも王国などというものは一切無い。 「とにかく…離していただかない事には話もできませんので…できれば」 倒れて目を回している少女とロングビルと呼ばれる女を一瞥する。 少なくとも、軍関係の者ではないようなので、一先ず離す事にした。 そこで自分の状態に気付く。 無いのだ。ノーマルスーツの上半身部分が。 バイザーが砕けかかったヘルメットは側にあったが、上半身部分が綺麗に切り取られたかのように無くなっている。 そして、銃創と破片によって受けた傷も無い。 「怪我をされていて、着ていたものが脱がせず治療できないとのことでしたので、切り取らせていただきました」 訝しげにしていた様子に気付いたのか、ロングビルが答えるが、切り取ったというとこに納得がいかない。 宇宙にしろ地球にしろ、少なくとも医療関係者がノーマルスーツの着脱法を知らないはずが無い。 さすがに、妙だと思っていると、目を回していた少女が目を覚まし、起きるや否や叫んだ。 「へ、平民が…使い魔が…主人にいきなりなにすんのよ!!」 平民?使い魔?そんな疑問が浮かんだが、状況がサッパリ掴めない。 「名前は!?平民でも名前ぐらいあるんでしょ?」 そう聞かれたが、この規律の塊とも言うべき男からすれば、まず第一に口の利き方がなってない。 「人に名を聞くときは、聞くほうが先に名乗るべきだが」 ぐぅ!と言葉に詰まる。相手は平民だが正論だ。おまけに妙に威圧感がある。 「…ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ」 「アナベル・ガトーだ」 「アナベル?女みたいな名前」 アナベルが男の名前でなにが悪いんだ!俺は男だよ!! 最も信頼する部下の声でそんな言葉が聞こえたが多分幻聴か何かだろう。 少なくとも、名前関係で人と揉め事を起こした事は無い。 一応の自己紹介が済んだが、最も大事な事に気付いた。 「…ノイエ・ジールはどうなった」 どうも今一、記憶がハッキリしない。アクシズ艦隊目指し、追撃艦隊に突入したところまでは覚えているのだが。 「ノイエ・ジール?緑色の大っきいやつ?それなら、草原に転がってるけど、なんなのよあれ」 「馬鹿な!宙間戦闘用MAが転がっているだと!?」 草原というからには、ここが艦ではないという事は分かった。 ならば、コロニーという事になるのだが、転がっているというのは理解しがたい事だ。 漂流したのならば、少なくともノイエ・ジールはコロニーの外にあるのだから。 ルイズに案内され外に出たが、ここがコロニーではないという事を目にする。 コロニーにあるべき物が全く無いからである。 上空に見える地面も無ければ、河も無い。 そして、草原に転がっている半壊状態のノイエ・ジール。 さらに、その上を浮いている人。 「なん…だと!?」 さすがの、ソロモンの悪夢も、その光景には言葉が出ない。 まだ05が飛んでいるといった方が信じられるだろう。重力に囚われたような環境で人が飛ぶなどとは。 「おお、気が付いたのかね。三日も意識が無かったから、どうしたものかと思っていたのだが、無事なようでよかった」 上空から声がかけられたが、返事ができない。 「一体これは、なんなのかね!表面を見た事も無い金属で覆っている!実に興味深い!」 「…まずは、それから離れてもらおう」 ノイエ・ジールはアクシズから寄与された試作MAである。軍事機密の塊と言ってもいい。 ノーマルスーツの腰に付けられている拳銃を抜くと、その銃口を向けた。 だが、拳銃を向けても離れようとはしない。これが武器であるかとも分からないかのように。 一発、上空に向けトリガーを引く。威嚇だが、これで次は無い。 「うわ!な、なんの音だ!」 「次は無いと思え」 「銃…なのかね?それは」 至近距離で銃声を聞いた、ルイズが耳を押さえているが。関係無い。 不承不承の体でコルベールが降りてきたが、それに銃口を向ける。 「私を回収してくれた事には一応感謝しておく。だが…どういうわけだ?」 「きみは、そこのミス・ヴァリエールの使い魔として召喚されたのだよ。手に使い魔のルーンが刻まれているだろう?」 左手を見るが、確かになにやら文字のようなものが刻まれている。 おまけに、なにやら光っている。 さすがにこれは反応せざるを得ない。 「貴様…!私に何をした!」 改めて銃口を向け、手に力を込める。 MSで敵を撃破するか。生身で人を撃つか。形に違いはあれど失われる命に違いは無い。 この男が敵であり、なにか妙な事を施したとでもいうのであれば、トリガーを引くのに躊躇はしないだろう。 コルベールもそれに気付いたのか、幾分か緊張した面持ちになる。 メイジではないが、雰囲気から、この使い魔がどこかの国の軍人であると判断した。 平民が軍人になれる国…それは隣国『ゲルマニア』しかない。 基本的に、実力主義で戦果さえ挙げれば一平卒でも将官への昇進が連邦よりも容易なジオン公国軍。 実力と才能で稼いだ金で地位を買う事のできるゲルマニア。 まぁ似たようなとこはある。 「とりあえず、銃を降ろしたまえ。我々はきみの敵というわけではないよ」 なるべく穏やかに言ったが、ガトーは鋭い目をコルベールに向けたままだが、ゆっくりと銃をホルスターに仕舞った。 「まず、話をしよう。ここはトリステインだ。きみはどこから来たのか聞かせて欲しい」 そう問われたが、ぶっちゃけあまり聞いていない。 「ジオン公国」 短く答えたが、考えが纏まらない。 コロニーで無いなら、ここはどこになるという事だが、常識で考えれば地球しかない。 だが、それなら、ノイエ・ジールがこんなとこに転がっているはずもない。 八方塞というやつだ。 「ジオン公国…聞いた事が無いな」 ジオン公国を聞いた事が無い。 そんなはずはない。U.C0083に生きる人間にとって、ジオン公国は前大戦の主役の片割れを担っていたと言ってもいい存在だ。 ジャブローの原住民でも、ジオン公国という名前ぐらいは知っているはずだ。 埒があかないので、こちらから質問してみる事にした。 「先程、飛んでいたが…どういう技術だ?」 「『フライ』かね?魔法だが…知らないはずはないだろう?」 『魔法』その単語を聞いて、少し頭が痛くなったが、現実だ。 「…魔法学院とか言っていたな」 「そのとおりだ。ここは、貴族が魔法を学ぶための施設で、君はミス・ヴァリエールの使い魔となったのだ」 「使い魔?どういう事かは知らぬが、私は、そのようなものになった覚えは無い」 「そのルーンが何よりの証拠だ。コントラクト・サーヴァントは君が気を失っている間に済ませてしまったようだが」 話は変わるが、基本的にジオン軍人は、軍人より武人に近いと言われている。 宇宙攻撃軍だけにしても猛将と揶揄されるドズル・ザビ中将を筆頭に、白狼『シン・マツナガ』といった武人気質の人間が非常に多い。 もちろん、そのドズル中将麾下の302哨戒中隊を率いていたガトーも例外では無い。 そんな人間に、気を失っている間に契約しておいたから、使い魔になれ。と、一方的な事を言えばどうなるか。 ただでさえ、多大な圧力を掛けてくる地球連邦に反発し1/30以下の国力がありながら独立戦争を仕掛けたのだ。 当然、次の瞬間には銃を抜いていた。 「動くな。動けば即座に撃つ」 「な、何を…!」 「確か…ルイズと言ったな…私を元居た場所に戻してもらおう」 会話に付いていけず、半ば呆然としていたが、コルベールに銃を突きつけ、そう言ってきた事でやっと我に返った。 「へ…?ああ、無理ね。『サモン・サーヴァント』は呼び出すだけ。使い魔を元に戻す呪文なんて存在しないわ」 「っく…!ふざけるな!」 「わたしだって、あんたみたいな平民が使い魔なんてイヤよ!大体、大怪我してて、治癒の魔法の秘薬の代金だってわたしが出したんだから!」 「ぬう…」 先にも言ったが、アナベル・ガトーは武人気質の人間で、行動理念の大半は義だ。 確かに、コウ・ウラキに撃たれた傷は塞がっている。 つまりは、命を拾われたという事になるのだが…どうもいま一つ納得しがたい。 「確かめたい事がある。どういう理屈か知らんが、私をノイエ・ジールのコクピットまで運んでもらおうか」 「それは…構わないが、銃をだね…」 指示をしつつ、ノイエ・ジールのコクピットに運んで貰う。 ルイズも付いてきたので中に三人入る事になった。いかに巨大MAノイエ・ジールとはいえ狭い。 おまけに、倒れているため、非常に操作し辛い。これが宇宙なら関係無いのだが。 各部チェックを行うが、武装関係はほぼ全滅でIフィールドも働いていない。 ジェネレーター出力も辛うじて作動していると言っていいLvだ。 それでも、システムを動かすだけなら何とかなる範囲。 ハッチを閉じると、モノアイを通して外の風景が映し出される。 「なにこれ!閉まってるのに外が見える!」 「戦闘記録データ…U.C0083.11/13/00・34・38…このあたりか」 コンソールを動かし操作するとモニターが外の風景から漆黒の宇宙へと切り替わる。 そこに移るのは、大きく輝く地球と周りに浮かぶ、06.09.21などのMSだ。 何かを合図としたかのように、それが艦隊へと向け突き進んだが、映し出されるのは、ミサイルや機銃。護衛のジムの攻撃により次々と脱落していく姿。 しばらくすると、一隻の艦がモニターに映し出され、それが大きくなると、爆発に巻き込まれ画像が途絶えた。 コルベールは黙って見ていたが、ルイズはビームやミサイルがかすめる度に大声を上げている。 そして、ハッチを開け放つと核融合炉を停止させた。 地上である以上役には立たないし、この損傷だ。暴走して爆発でもしたら洒落にもならない。 ガトーが無言でノイエ・ジールの装甲の上に立つ。 「生き恥を晒したというわけではないだろうが…お前に拾われた命だ。好きにするがいい」 「君はいったい…どこから、いや、あれは一体…」 その問いには答えない。というより答える余裕が無い。 日が沈みかけ、ハルケギニアにソロモンの悪夢が降り立ってからの三日目が終わろうとしていた。
https://w.atwiki.jp/quo_vadis/pages/514.html
【ゼロの使い魔~三美姫の輪舞~】【ラノベ】【ファンタジー】【萌え】【アニメ】【2008】【8】 公式 wiki なんとか動画 才人を巡る恋のライバル関係に決着をつけるため、シエスタはルイズに勝負を提案する!! それは翌日催される「スレイプニィルの舞踏会」で、才人がルイズを見つけることが出来るかどうかというもの。ただし、この舞踏会は「真実の鏡」というマジックアイテムで、自分がもっとも憧れる人物の姿に変身して行うという趣向のイベントである。絶対に負けられないルイズは、才人に自分を見つけられたら「この間の夜の続きをしてあげる」という大胆な約束をする。そして舞踏会当日、会場で才人は首尾良くルイズの姿を見つけるのだが・・・。 じじいの美的センスに嫉妬。 ファットも女の子に変身してたけど、もし変身出来るなら女の子になりたいです。 いや、ほんと、本気で、普通に男でも結構いると思うんだ。 ね?(確認 流石、ロイヤルビッチだ。期待を裏切らないぜ。 自分の理想の女の子、その彼氏に手をつけるってのは……。 理想を汚すという背徳心で興奮するタイプですね? ゲェッ!茶番劇だッ! もう虚無とかどうでもいいからサイドストーリーに戻して欲しいわ。 ハゲも生きてたのは嬉しいけど、来週の予告で全く触れてなくて泣いた。 視聴者とスタッフの意識に違いがありすぎる。 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/nrks/pages/358.html
うぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!熱っちぃぃぃぃぃぃ!! ―――≪人物≫ 〝炎魔剣〟の二つ名を持つ創世戦団十二使徒の一人にして3rd。 国際指名手配されているA級テロリストで、あのネルナハト戦役への参加経験、さらには元カノッサ機関議員〝グレアム・スレード〟率いる テロ組織 E・Noir への所属歴など非常に危険人物でありその戦闘能力を買われ、創世戦団にも参加した。 性格は至って単純で非常に好戦的、かつ単純な性格をしており、簡単に言えばただのバトルジャンキーである。 だがその戦闘能力と戦術能力はやはり長年テロリストとして活動してきただけはあり非常に高い。 〝ディネム山脈〟での戦いにモルドレッド・ガーベインと共に現れセシルと激突し死亡した。 最後はグレアムやミーメと馬鹿騒ぎできなくなることを悔やむように、息を引き取った ―――≪容姿≫ 銀の長髪に黒いロングコート、黒いスラックス、黒のミリタリーブーツ 瞳は茶色、身長は180cmオーバーで年齢は二十代前半といった所か。 さらに両手には特殊なグローブを装着しておりこれが着火装置にもなっている。 ―――≪剣術・異能・武装≫ 『〝煉獄刀 炎月〟』 ジャイロが所有する直刀、火属性の力を吹き込めば切れ味の上昇など様々なステータスアップが期待できる。 『〝着火装置〟』 腕に付けている手の甲の部分にコアがあるグローブ型の着火装置 火種が必要なジャイロにとっては必需品であり、これによって様々な火炎攻撃を可能とする。 『〝デザートイーグルcustom二丁〟』 自分用にカスタマイズした銀色のデザートイーグル、腰の辺りに二挺装備している 通常弾のほかに、火炎弾なども発射する事が可能であり非常に使い勝手がいい。 『〝スタン・グレネード〟』 その名の通り、閃光と爆音で相手の五感を乱す手榴弾、これで相手をブレインしその間に斬りかかる戦法を使う 訓練しているのか、ジャイロ自身はあまり影響を受けないで行動できる。 ≪〝炎魔ノ目〟≫ ジャイロが所有する異能。所謂パイロキネシス能力である。 しかし炎を操作する事は出来るが、自身で炎を生成する事は出来ず、火種が必要となる また、他人が精製した炎も操作は不可能だが、その代わりに身体能力を向上させることが出来る。 《〝炎龍裂波〟》 龍のような形状をした火炎を相手に向けて放つ技、直線機動であるがリーチが長く意外と厄介である。 貫通性能もあり複数の敵を一気に仕留める事も可能、火傷のバットステータス付加も可能。 《〝重炎斬〟》 直刀の刀身に炎を纏い、それを思い切り叩きつける荒業 同時に衝撃波も発生する為、集団戦闘などでも便利な汎用性の高い技である。 《〝魔焔十字斬〟》 直刀から十字状の炎の斬撃を放つ技 十字の炎は一度対象の前で停止してから数コンマ置いて燃え上がり爆発する。 《〝終焔突〟》 直刀の刀身に炎を纏い、そのまま突撃して突きを放つ凄まじく単純な必殺技。 単純であるが故に強力で、凄まじい速度威力を持っており、全霊を乗せているため相手のカウンターにも全く対応できない
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1636.html
前ページ次ページゼロの使い魔~我は魔を断つ双剣なり~ やや落ち着きを取り戻しつつある食堂奥の厨房内、そこで空になったシチュー鍋を前に 一人と一不定形が満足そうな表情を浮かべていた。 「馳走になった」 「てけり・り!」 無論、九朔とランドルフである。 そしてそんな彼等の前にはシエスタがにこにこと頬杖をつき、初めて見る恰幅の良い男が 腕を組んで笑っていた。 「いやあ、お前さん達の食いっぷりを見ているとまったく清清しいぜ。しかもシエスタ達の 洗濯の手伝いまでしてくれてたとか言うじゃねえか。いやぁ、本当にお前達はいい奴だ!」 「そうでもないと思うが」 「いいや謙遜するない。お前さんは良い奴だ、いい男だ!」 がははと笑いながら恰幅の良いコック長マルトーは九朔の肩をたたきランドルフを 揉みしだく。 「てけり・り」 本来ならば見るだけでトラウマっぽいものを植えつけるはずのショゴス。 だがしかし、どうやらここの人間は総じて耐性が高いらしく、少し暇のできたメイド達が こちらにやってきてはランドルフのぷるぷるむっちりバディをつんつん突っついたりして 遊んでいた。 「てけり・りぃ」 そして、そんな彼等の好奇心の対象である当の本人(?)はと言うと、マルトーの指使いが よっぽど心地よかったのかさっきからずっと気持ちよさげに揉まれた箇所を蠕動させている。 「しっかし坊主も大変だな。貴族に召喚だったか? そんな事で呼び出されて使い魔に されちまうなんて悲劇以外のなんでもねえや」 首を振り苦々しく言うマルトー、周りも同情の表情でうんうんと頷く。 「だが俺たちもお前さんと同じ平民、もし飯とか何かで困ったらここに来い。平民同士 協力できる事は何でもするぜ!」 そういってガッシリと九朔の手を握るマルトー。 それに続くようにシエスタもその手を握る。 「そうです! 私たちもお洗濯手伝ってもらいましたし何か手伝えることがあったら いつでもぜひ!」 「あ、ああ………何かあったら……頼むとしよう」 真剣な表情で力説する二人に少々たじろぎながら答える九朔。ただ昼食を恵んでもらおうと 思っていただけなのに、余りの好待遇に悪い気がしてならない。 無論、彼等としてはただでさえ貴族に虐げられている平民なのに、それがよりにも よって貴族本人に召喚されて使い魔にされてしまった九朔に同情の念を 禁じえなかったという理由があるのだが知る由もない。 「っと、そういや貴族の坊ちゃん達にデザートを配る時間だな。運んでくれるか」 「はい、分かりました!」 立ち上がる二人、周りに居たメイドや料理人たちもそれぞれの仕事に戻ろうとする。 そこに取り残される九朔とランドルフだが、彼等もまた立ち上がる。 これほどの好待遇を受けておきながら何もしないではいられない。 食器の洗い場へ向かうランドルフとは別に九朔はシエスタへと歩み寄った。 「シエスタ、我にもデザート配りを手伝わせてくれぬか?」 「そんな悪いですよ! 朝あんなに手伝っていただいたのに!」 申し訳ないといった顔で首を横に振るシエスタだが、九朔も引き下がるつもりはない。 「あれくらいどうという事はないさ。むしろ昼時に汝等より先に昼食を頂戴したのだ、 手伝わないでは夢見が悪い」 肩をすくめて笑む九朔にシエスタはマルトーにどうしたものかと目配せする。 「坊主よ、俺たちの仕事をまた手伝ってくれると言うのか?」 「ああ、もちろんだ。汝等から受けた恩、返さずにはいられぬよ」 平然と、しかも淀みなく言ってのける九朔に真剣な顔をしたマルトーは再び破顔した。 「そうかそうか!」 心底嬉しそうに九朔の肩を叩いて笑う。 「良し、分かった! だったらシエスタ達を手伝ってやってくれ!」 「良いんですかマルトーさん?」 「構わねえ。こんな良い奴がやると言ってくれてるのを無下にできねえ!」 シエスタににやりと笑むマルトー、変わった口ぶりに奇妙な装束をした平民の少年だが その心意気は彼の眼鏡にかなったようだ。 「それじゃ、坊主。ここにあるケーキをあの小憎ったらしい貴族の坊ちゃん連中に もってってやってくれ。シエスタ、運び方とか色々教えてやりな」 「あ……はい、分かりましたマルトーさん。九朔さんこっちですよ」 「あ、ああ」 機嫌の良いマルトーにつられて上がったテンションはシエスタにも伝染したらしい。 にこにこ笑いながら九朔の手を引っ張りケーキへと案内する。 そんな彼等のやりとりの向こうではランドルフが触手を数十本にも伸ばして蠢かして 食器を洗っていた。 その見事な洗いっぷりに、後ほどメイドと料理人たちからランドルフは 『我等の洗濯王』と呼ばれ唄まで作られたのだが、それはまた別の話。 * アルヴィーズの食堂、並ぶ料理は昼食に食するには充分に過ぎた豪華なものであり、 それを見れば毎日の料理がどれだけ無駄に消費されるか手に取るようにわかる。 さすが貴族、何処の世界においても無駄と豪華にかけては右に出る者はないのだな、と 嘆息し九朔は食堂内をシエスタと共に歩く。 しかしこう言う場を実際に眼にするのは初めてではない気がするのはなぜだろう、そして これよりもっと豪華絢爛な料理を見た気がするのも何故だろうと首をかしげる九朔だが 今の彼には思い出せるはずもない。 両手に持ったケーキのトレイからシエスタがはさみでそれを生徒達に置いていく。 九朔自身は気づいてなかったが、この時多数の女子と男子が共に彼の顔を見て良からぬ 感情を抱いたのは不幸だったか幸福だったか。 男子は九朔を『可愛い平民の子女』もしくは『衆道の友』として。 女子は『中性的な平民の男子』もしくは『女装をさせてみたい』として。 双方からそのように思われていたのだが不幸だったか幸福だったか。 「ふぅ……」 そんな己の身と貞操の危険に気づくことなく、この既視感が何かを考えつつ九朔は シエスタと共に食堂内を練り歩く。 そして、耽っていたその思考はある驚きの声で途切れる事になった。 「ん?」 気づけば、目の前では金髪巻き髪の少年に友人タチがやいのやいのと騒ぎ立てているところ。 「そうだ! その鮮やかな紫色はモンモランシーが自分のためだけに調合している香水だぞ!」 香水? むしろその怪しげと言うか致命的っぽいアレな色は毒薬か何かでは と思うが口にはしない。 金髪巻き髪の少年は落ち着いてはいるが必死で否定をしていた。 「そいつが、ギーシュ、お前のポケットから落ちてきたと言う事は、つまりお前は今 モンモランシーとつきあっている。そうだな?」 「違う。彼女の為に言っておくが――――――おごばぁぁぁっ!?」 彼の弁明は最後まで綴られる事なくその綺麗な顔面をストレートされた。 顔を中心に一回転して石床に叩きつけられたギーシュと呼ばれた少年、その顔には見事な までに拳の痕がくっきりついており実に痛々しい。 そして倒れた少年の眼前、一人の少女が仁王立ちをしていた。 「お、おごご……ケ……ケティ。これは、誤解で………」 「さよなら!」 彼を思い切りぶん殴ったと思われるケティと呼ばれた少女は涙を流しながら去っていく。 ここにいるのは全員魔法使いだそうが、あの娘は格闘家あたりになったほうが良いのでは と九朔は思った。 きっとムエタイ選手ならどんな者でも1ページ見開きで倒せる。 そんな彼女と入れ違うように今度は修羅の如き怒りの焔を纏い、金髪の少女がギーシュと 呼ばれた少年の前にやって来た。 その表情が見事なまでににこやかなのはある意味恐怖である。 ギーシュの周りに居た友人達が生命の危機を感じてズザザザと後ずさり、取り残された ギーシュの目の前に彼女が仁王立った。 「モ、モモモ、モンモランシー、こ、これは誤解なんだ。彼女とはただいっしょに ラ・ロシェールの森に遠乗りをしただけで………」 頬に刻まれた拳の痕が痛々しい彼はごく自然に、そして至極冷静に答えたつもりだったが 顔が引きつっていた。 「やっぱり、あの一年生に手をだしていたのね?」 「お願いだよ『香水』のモンモランシー……咲き誇る、その、えと、薔薇のような顔を そのような無表じょ………え?」 モンモランシーが微笑んだ、そう思った次の刹那、 「うそつき」 ギーシュの頭にワインの瓶が音速激突した。 砕け散るワイン瓶、ギーシュの頭蓋骨も一緒に粉砕したのではと思わせんばかりの激音に 九朔を除いた全員がひぃと呻いた。 「お………おぉ…………ぐぉぉぉ………」 床でぴくぴく痙攣するギ-シュを一瞥すると、ふんと鼻を鳴らしモンモランシーはそのまま 食堂を去った。 ぴくぴく震えるギーシュを中心に沈黙する一同。 約1分ほど経っただろうか、突然ギーシュは立ち上がり何事もなかったようにハンカチを 取り出すと顔をゆっくり拭いた。 何か頭のてっぺんあたりから致命的な量の血が溢れてきているような気がするのは眼の 錯覚ということにしておく。 ギーシュはワインを拭うと、シエスタにその瞳を向けた。 「さて、どうしてくれるんだねそこのメイド? 君が香水の壜なんかを拾い上げたおかげで 二人のレディの名誉に傷がついたんだぞ?」 それは自分のせいだし何よりその前に、既に絶命一歩手前の自分自身の身体をどうにかした方 が良くないか、と思う九朔。 しかしシエスタはといえば貴族からの言葉とあり顔を真っ青にしてまるで壊れたおもちゃの ように何度も何度も頭を下げている。 「も、も、もも、申し訳ありません貴族様! 私、貴族様の物かと思って……!」 「それで許されると思っているのかい? 君のお陰でこのざまだよ? この傷の治療だって 馬鹿にならないんだ、どうしてくれる?」 「っそそ、それは……それは………!」 「ああ分かっている、少なくともこれは全て君の責任だからね。これから先、君にはこの傷の 治療費を払い続けてもらわなければならんなあ! それも僕が完治するまで、そして それから賠償もだ!」 「そんな! ああ……お、お許しください貴族様!」 ギーシュの前に跪き謝罪するシエスタ、それを彼は見下す。 その間も延々と自分は悪くないだの、君の責任だの、君の気配りができていないだのと のたまってシエスタを罵っている。 まったく、この手合いはいつもこうだ。 胸糞悪い。 「申し訳ありませんでした、申し訳ありませんでした!」 「許してほしいのかい? まさか! 許すはずがないだろう!? この責任は全て 君のせいなんだ、君は―――」 「……いい加減にせよ、汝」 シエスタを守るように、九朔はギーシュの前に立ちふさがった。 「クザクさん!?」 「ほう、何だね給仕? 君はもしかしてこのメイドをかばうつもりかい?」 シエスタは余りの事に驚き固まっている。 突如目の前を塞いだ給仕の少年、ギーシュは上から下へと視線を向ける。 なるほど、マントを羽織ってはいるが杖を持たないので平民だ。 その驕りが彼を強気にさせる。 「まさか君は貴族であるこの僕に口答えするつもりなのかね? 平民である君が」 「ああ、そのつもりだ。汝のような、己の失態を他人に擦り付ける者は気に食わぬ。 ましてや、与えられた地位をもって他者を脅す手合いは更に、だ」 ぴくりとギーシュのこめかみが震えた。 「ほう? それはつまり僕を侮辱しているととっても良いのかな?」 「本当のことであろう? それくらい、汝でも分かると思うが」 九朔の言葉に周りにいた人だかりがどよめく。互いに顔を見合わせ、九朔に眼をやり 哀れむ視線を送る。 彼等にとって九朔は平民、そんな彼が目の前で貴族に楯突いたのだ。 無力な平民が貴族に歯向かうことが意味するのは死だ。 恐れを知らぬ蛮勇に侮蔑の視線が飛ぶ。 己で己の首を吊る愚者を嘲笑う声が飛ぶ。 だが彼等は知らない、人は決して『無力』ではないことを。『無力』に思えるものが 如何なる力を秘めるかを。 「どうやら君は、貴族に対する礼を知らないようだ」 「汝のような下郎に持つ礼などない」 互いの視線が交錯した。 「……君は、この僕が悪いとでも言うのか?」 「それ以外に在る訳なかろうが」 「言ってくれる」 そこに見えるは両者の怒りの情、不退転の意思。 「そうか、ならば口を知らない君に僕が礼儀というものを教えてやろう。その愚かさを 身を持って知ると良い」 「ああ、そうしてもらおうか。もっとも、貴様如きにできるか不安だがな」 闘う理由は既に充分、互いが互いを敵と認識した。 ギーシュにとっては平民が貴族に逆らうその態度への怒りが、九朔にとっては己のものでは ない力を振るう横暴への怒りが胸にある。容認できぬ怒りを持って互いを敵と為した。 「宜しい―――ならば、決闘だ!」 ギーシュの宣誓に食堂内に歓声が沸きあがる。 バサと、音を立てて彼の手からハンカチが宙へと投げられた。 落ちるそれを九朔は受け取り、ギーシュと視線を交わす。 「構わないな?」 「ああ」 その言葉にギーシュは不敵に笑んだ。 「では、この決闘は《ヴェストリの広場》で行う事としよう。僕の友人が案内してくれる はずだ、逃げるなよ?」 「それはこちらの台詞だ、汝」 それで良い、ギーシュは九朔に背を向けて食堂を去った。 それを見送る九朔をシエスタは顔を青ざめて見ている。 貴族に歯向かうことはつまり死ぬ事を意味する、それは想像を絶する恐怖だ。 なのに、彼は自分の為に身を挺してくれた。 「クザクさん……何で? 私のせいなのにどうして……」 「汝を見捨てるのは後味が悪い、ただそれだけだ」 「それだけで!? そんな……クザクさん、あなた殺されちゃう!」 「なに、どうとでもなるさ」 「でも……でも!」 しかし、怯えるシエスタの肩に手を置きクザクは微笑む。 「安心しろシエスタ。 ――我を、信じろ」 そう言って九朔は食堂の出口へと向かう。 その時シエスタは彼の背中に、言葉で表せない熱さを見た。苛烈なまでに気高い、 清らかな流れに似た透明な何かを感じた。 そして気づく、胸にあったはずの不安と恐怖がゆっくりと和らいでいく事に。 「クザクさん、貴方はいったい………」 呟くシエスタの先、九朔の姿は既にそこにはない。 食堂の出口へ向かう九朔、それに追いつくようにルイズが駆け寄ってきていた。 「あんた何してんのよ! 見てたわよ!」 「そうか」 「そうか、じゃない! なに勝手に決闘の約束なんかしてんのよ!」 「放っておけなかったのでな。ああいうのは胸糞悪い」 「それだけで!?」 手で頭を抑えつつ、歩みを止めない九朔をルイズは後ろから追いかける。 「謝りなさい。怪我したくなかったら今すぐによ」 「断る」 「あんたね!」 九朔は一向に聞こうとしない、自分の使い魔なのに。 しかし、止めなければ。 無力な平民がメイジに勝てる道理などありはしないのだ。何をしても無駄だと言うことを 分からせなければ。 「無理よ。平民は絶対に貴族に勝てないの、メイジだからよ? 魔法を使う相手に 平民が勝てる道理なんてないの、絶対無理なの!」 「だから何だ?」 「無駄なの。平民がメイジに勝つなんて無理なの、そんな無駄な事しても無意味なのよ!」 「無意味……か」 「そうよ。良い? あんた達平民は無力よ、どんなに力を合わせたって勝てない。 何度も言うけどそんな無駄な事をしても無意味なの、分かる?」 納得させるように強く言うのだが、しかし九朔は答えず真直ぐ進む。 何度も何度も言いきかせるのだが止まる気配もない。 「汝が案内役か」 「ああ、こっちだ」 ギーシュの友人に従いついて行く九朔。ただ真直ぐ、歩みを止めない。 ルイズの胸は理解できない事柄でいっぱいになる。 どうしてコイツは止まる事をしない? どうしてこいつは抗う? なぜ平民なのに貴族に歯向かう? 平民は貴族に従うのが道理なのだ、虐げられていたとしてもそれに抗う術はないのだ。 それなのに、この使い魔は何故闘おうとする? ――この使い魔が本当に異世界から来たから? ………まさか。 しかし、たとえそうだとしても決してメイジには勝てない。 そういうものなのだ、それは覆らない事実なのだ。 「ねえ、あんた。どうして無駄だって分かってるのに闘うのよ?」 諦めの気持ち混じりに、振向かない背中にルイズは尋ねた。 まるでさっきの教室と同じことをしているのだが、構いやしない。 はるか奥にヴェストリの広場が見えてくる、余り時間はない。 ややあって、九朔が口を開く気配があった。 「我にも分からぬ」 「はぁ!?」 「だがな」 そこで九朔は振り返る。その翡翠の瞳がまっすぐにルイズを射抜く。 そして、初めてルイズに微笑んで見せたのだ。 「たかが無意味なくらいで何もせぬなど、そんなこと我にはできぬよ」 「え?」 「たとえ無駄だとしても、足掻かずにいられるか。何もしないまま見てみぬふりして 後悔する方がよっぽど後味が悪いさ」 たったそれだけのことで? そんなことでこいつは闘うのか? それは奇しくもシエスタが抱いた感情のそれ。 それだけのことでこの使い魔は貴族と、つまりメイジと闘う。 無駄だからと足を止めない。 何もしないなど、そんなことできない。 それはただの無謀だ、ただの愚だ。 ルイズは思う。 だが、九朔のその言葉にルイズは微かな胸の熱を覚えていた。 それは自覚することのないほどの小さな火。その意味も理由も今のルイズは 知る事はない。 ただ、今は目の前の九朔の決闘を見守るしかない彼女がいるだけ。 九朔は歩む、その場所へ。 ――決闘場はすぐ目の前に 前ページ次ページゼロの使い魔~我は魔を断つ双剣なり~
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2009.html
これは運命に抗い続け力尽きた、一度死んだ男の物語 グレン団によるダイガンザン奪取の際、カミナはその身に 深い傷を負い命を落とした しかし、死んだはずだったカミナはマチルダのサモン・サーヴァントに よりその命を今一度取り戻しハルケギニアに舞い降りた 何故蘇ったのか、誰にも分からない どうしてここにいるのか、誰も知らない ただカミナは今は夢を見る 明日と言う名の夢を見る ゼロの使い魔異聞~お前の魔法で天を突け!~ 第2話「あんた、私の召使になりなさい」 「んぐぁ………ぐぅ………ん……………あ?」 目覚めたとき、カミナは実に奇妙な光景に眼を丸くした。 ジーハ村やリットナー、アダイで見たようなくすんだ壁でもなければ 岩を彫りぬいた穴でもない。 真っ白の壁にぴっかぴかの壷やらなんやらがそこら中にあるのだ。 しかも、ブタモグラみたいに柔らかくてふかふかな何かが 自分の身体の下にあるのだ。 色々初体験なそれにカミナの思考は一瞬停止、そしてまた動き始めた。 「あー………死んだ後ってえのはこんなとこに来るもんなのか?」 むくりと起き上がり、ぐるりとあたりを見回し呟くカミナ。 が、その割には全身がきりきり痛いし包帯でぐるぐる巻きだったりするので 死んでないのはどうにも確実のようである。 つまり生きている、ついでに傷も手当てされている。 「ま、誰が助けてくれた知らねえが感謝はしとくか―――っとな!」 深く悩むこともなくポンと跳ね上がり、カミナはベッドから飛び降りる。 そして、自分の姿を見下ろし、気づいた。 そして、 「な………何じゃこりゃアアアアアああああああああああ!!!???」 叫んだ。 獣人に啖呵を切る時と同じくらいの大声で。 部屋がびりびり震えるでかさで。 「ねえ! ねえ! マントがねえ! なんてえかさらさらで真っ白(しれ)え!!」 ばばばっと身体をまさぐり、カミナはまた叫ぶ。 いつも肌身離さず持っていたマントとズボンの代わりにカミナが見たもの、 それは包帯巻きの身体に纏ったシルクのシャツとシルクのズボン。 破滅的なまでに真っ白でさらさらでぴっかぴかのギンギンのそれ、なんというか 背筋がぞわぞわっと来る光景だった。 「ど、どうしたの!?」 「のわぁ!?」 バンッ、と思い切り開け放たれたドア、それに驚きカミナは振向く。 それと同時に彼の目に飛び込んだのは少女が血相を変えて飛び込んでくる ところ。 少女は起き上がりこちらを見るカミナの存在を認めると、胸を撫で下ろし こちらにやってくる。 「良かった……起きたのね」 「お、おう」 一体誰だろうか、カミナはそう頭で考えながらその少女を上から下まで ぐるっと見渡す。 年はだいたいヨーコと同じくらい、顔のつくりはなかなかに整っていて キタンのところの三姉妹を思い出すが、ちょっとキツイ感じがヨーコに 似てなくもない。 胸はといえば、流石にヨーコには負けるがそれでもでかいほうだった。 ま、美人ってやつだな、カミナは一人納得する。 で、いったいこの少女は誰か? 「お前さん、だれだ?」 思ったならば即行動のカミナ、思ったが同時目の前の少女に問いかけていた。 「えっと……あ、あなたを……助けたの」 ぎくりと動揺、戸惑い、少し引きつった顔で少女は微笑む。 うふふ・おほほと笑うその姿、怪しい、実に怪しい。 だが、身体に巻かれた包帯といいふかふかのあれと言い、助けてくれたのは 本当のようでもある。 「そうか。助けてくれたってえのは分かった、感謝するぜ」 受けた感謝に礼は忘れちゃいけない、それが漢(おとこ)というやつである。 「そ、そう」 だが、 「で、お前さん何だ?」 聞くことは忘れない。 「あ……あは……はは、あのね」 ざざざっと後ろに後ずさる少女を目で追う。 「え、えっとね。私は……その……あ、あなたをね」 「おお」 「ええっと………召喚、しちゃったの」 「ショーカン? なんだそりゃ?」 首をぐいっと傾けてかしげるカミナ。 「え? そりゃサモン・サーヴァントのことだけど――――って、え? まさか貴方、メイジじゃないのお!?」 「なんだ、メイジって?」 「ええええええええええええええええええええ!!??」 「うをおおぉっ!?」 思い切り驚く少女に逆にカミナが後ずさった。 詰め寄るように少女がカミナの眼前に迫ってくる。 「マント持ってたじゃない! でっかいマント!」 「あ? あー……死ぬ前は羽織ってなかったけど何か持ってた気がするな」 「杖は!?」 「じじいじゃあるまいし、何でそんなの持たなきゃなんねえんだ?」 「そんな!? じゃじゃじゃじゃじゃあ、アンタって貴族じゃないの!?」 「キゾク? 獣人とかなら知ってっけど……なんだ、『キゾク』って?」 「ああ、そんな!」 えらくオーバーに驚き少女は膝をつく。 「魔法しっぱいしだたけじゃなくて……しかも人間呼んで………おまけに 貴族じゃなくて平民呼んじゃったの、私…………?」 「あん?」 「マントあったし………そりゃ杖ないのはおかしかったけど………… でも思うじゃないメイジってぇぇぇ………」 「あー、ああん?」 正直いまいち現状を飲み込めずカミナはまた大きく首をかしげる。 しかし、窓の外から見えた外の風景にそんなことはどうでも良くなった。 カミナはその表情を強張らせ窓に近づいていく。 「………おい、ちょっと聞いていいか?」 「何よ………?」 酷く真剣な声に、心底落ち込んでいたマチルダは男を見上げた。 「ここって何処だ?」 その口の聞き方、非常に礼儀知らずなその態度に眉を顰めるマチルダ。 しかし、平民だとしたら普通は敬うなりなんなりするはずなのだが どこか雰囲気の違う目の前の男に、微かな違和感を覚える。 「アルビオン」 「ジーハ村とかリットナー、アダイとかじゃなくてか?」 「ええ、そうだけど………」 もしかして、こいつはかの東の国『ロバ・アル・カリイエ』の人間なのか? 男の質問に答えつつマチルダはその男の顔をよく観察する ゲルマニアの褐色とも違うそのくすんだ肌の色、ガリアの王族だけの 珍しい青色とも違う空色の髪、顔の作りもハルケギニアには存在しない 類のものである。 ここに至り、ようやく自分はとんでもないものを召喚してしまったのでは と顔を青ざめるマチルダ。 未だ国交のないはるか遠い国であれど、彼がもし重要な地位につく人間 だとしたらとんでもなくマズイのではないか? ただでさえ使い魔を呼ぶだけの呪文を失敗して人間を呼び出したのだ。 もしそうなればどうなることやら。 絶望的な未来にマチルダは頭を抱えた。 「こんなこと………ありえんのか?」 カミナの知っている大地は一面の荒野だった。 風が吹けば砂が舞い上がり、干からびた大地は皹だらけ。 谷はっでっかい岩だらけ、獣人と戦い死んだ人間の骨なんてザラだ。 しかし、これは、何だ? 窓の外、目の前は一面ずっとはるか向こうまで緑だった。 森は見た。 山も見た。 だが、ここまで一面びっしりに広がる緑は終ぞ見たことがない。 山が緑だ、森がいっぱいだ、草むらがぎっしりだ、しかもそれだけじゃない。 「すげえ………!」 緑の一画を切り取ったそこに見える町々の建物がカミナの目を奪った。 地上の建物といえば崖をくり抜いた穴ぐらが基本のカミナ。 だが、そこにあるのは穴ぐらでない建物が、グレンラガンの背中に乗せていた あの箱みたいなのをでかくしたものが、たくさんあったのだ。 それにカミナは身体の奥の奥、芯の部分から『すっげえもの』が湧 き上るのを感じた。 「お、おお……………」 「ん?」 「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」 「きゃあ!?」 「コイツはすげえ! 見たことねえ聞いたことねえ触ったことがあ、ねえ! ねえねえ尽くしってえのは探せばまだまだあるもんだなあ、おい!」 眼をキラキラ輝かせて、子供のようにはしゃぐカミナ。 ここが何処かとか、もしかすると全然別の世界かもしれないという不安や 疑問なんかが出るより先に、喜びの感情ががカミナの頭を突いた。 「くあああああ! シモン! ヨーコ! こいつは本当にすげえぞ! ちくしょう、ここにいたらマジでお前達に見せてやりてえぜ!」 だが、はしゃぐそんなカミナの肩を少女が叩く。 振向くと、少女はさっきより顔を引きつらせてこちらを見ていた。 どうしたのだろうか? 「え、えっと……聞きたいのだけど、あなた、東の人? もしかして?」 「あん? 東ぃ?」 ふむ、と腕を組んで首をかしげる。 「そ、そそ、そう。あなた達からすると、ここって西にやって来た事に なるんだけど………」 はてさて、どうだったろうか。 浮かれた頭をひっ捕まえて元の場所に戻し、カミナは自分でも良く わかってる空っぽな頭を働かせてみた。 沢山の旅をしてきたが正直方角なんてのは考えた事がない。 獣人の基地を探して旅をしたのは覚えているが詳しい事はさっぱりだ。 難しい事はリーロンが説明してくれたことがあった気がするが多分寝てた。 カミナの頭にやっぱりでっかく浮かぶのは仲間達のことだけ。 大事な大事な、かけがえのない大グレン団の仲間たちのことだけだ。 「わりい、わかんねえ」 「じゃ、じゃあ、あなたって偉い人だったりする? 位を持ってたり リーダーだったり……」 「リーダー? おお、リーダーならやってるぜ! 大グレン団のリーダーたぁ 俺の事だぜい!」 親指で自分を指差しにんまりと少女に笑むカミナ。 だが少女は完全に引いている。 「何処かの国とかの王子とかじゃないのね? 土地とか持ってるわけじゃなくて どこかを治めてるわけじゃなくて」 「そんなのいらねえだろ。おお、そうだ。仲間はいっぱいいるぜ?」 「それじゃ、人の上に立って政治を担っているわけ?」 「んあ? そんな感じのなら…………ねえな。俺は仲間と一緒に色々 やんのが好きだからな、めんどくせえのは丸っきりお断りだってんだ」 その瞬間、少女はほっと溜息をついた。 さっきまでの引きつった顔はなく、代わりに見下す眼だ。 思いっきり気に食わない、ジーハ村の村長を思い出す。 「そうだったら問題ないわね。とにかく、アンタを召喚したのは謝る。 でも、平民だったなら話は色々変わるわ」 「あん?」 「人間を召喚したってのは恥なの、分かる? 太守の娘なのに魔法失敗で 平民呼び出したなんて知れたら笑いものよ。それにお母様には 行き倒れて血まみれだったアンタを助けた事にしたし…………」 「だから何だ? もったいぶらずに早く言いやがれ」 それに少女の顔がにんまりと笑んだ。 そして、カミナの顔面に少女はびしっと指さす。 「あんた、私の召使になりなさい」 次回予告 縛られるってえのは性にあわねえ それが俺の生き様、漢の生き様 偉かろうが関係ねえ 俺は俺だ、俺の道だってんだ! 次回『ゼロの使い魔異聞~お前の魔法で天を突け!~』 「俺の名前はカミナだ!」
https://w.atwiki.jp/fawiki/pages/9.html
トルクとジャイロ効果 レシプロ機は全て、 プロペラの回転 に依って推力を得、前進している。 ここで特に問題になるのは「プロペラトルク」と呼ばれる機体が偏向する特性と「ジャイロ効果」と呼ばれる機体が回転しようとする特性で、レシプロ機特有の現象であり、特に単発機にその傾向は強い。 その理由は、機首に存在するプロペラが生む推力の方向と、ジャイロ効果にある。 プロペラが操縦者から見て右に回転するとき、その推力となる空気の流れは機首から発生し機体の後方へ向かって回転する渦となって流れる。 その結果、機体の右の翼には下から上向きの風が、左の翼には上から下向きの風が、垂直尾翼には右から左の風が当たることになる。 また、ジャイロ効果と云う回転物を支える物体は回転物と90度逆方向に回転しようとする働きも加わって、機体は常に左に回転しようとする力と、右に機首を向けようとする力が加わることになる。 従って機首を前方にまっすぐに向けていても機体は斜めにしか進めない。これを回避するにはラダーを操作してヨーイングに依る当て舵を行うか、トリムを調整して機体を水平直進状態に安定させる操作が不可欠である。 無論、推力はスロットルでエンジン出力を増減することに依って操作に比例して増減するので、この偏向力もそれに伴って増減する。 推力が増減すれば揚力も増減するので機体のピッチアップ動作もそれに伴って変化する。また、推力だけでなく揚力は機体の速度の増減に依っても変化する。 通常、機体の垂直・水平方向のトリムはある程度この偏向力を打ち消すために調整してあるが、機体の姿勢変更を行った場合はこの限りではないので滑り計を確認し必要ならばラダー操作を行わなければならない。 なお、FA3でLevel5以上のアリーナでは「T」キーを押すことで半自動的に機体が3軸のトリムを合わせてくれるが、上記の理由に依り機体の速度の増減で機体に掛かる力は変化する為、一度押したら終わり、では無く機体の状態に合わせて何度でも押さなければならない。 Level5以下のアリーナではこのトルク作用は反映されないので全く関係が無い。つまりFA3でLevel5以下のアリーナは基本的な物理法則を無視した機体でしか遊べないと云うことだ。 Last update 2003/06/07 (C) JAS_SDR
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4268.html
前ページ次ページゼロの使い魔~我は魔を断つ双剣なり~ 朝は来る。生きとし生ける全てのものに平等に。それが悪人であろうとも聖人であろうとも。 黎明の空、朝霧のベヱルに包まれた世界は山際より昇る太陽に照らされ清浄な煌めきを生む。 影の薄らいだ双子月は西の端へと沈み行き、眩い黄金が大地を染める。 掠れた藍色の空が徐々に澄み渡る青へと変じていく。 そしてその日の光の中、一人の少女が一人静かに本を読む。 虚無の曜日、この世界における安息日。その安息日たるこの日だけは他者からの介入もなく 彼女――タバサは読書に好きなだけ浸ることができる。 故に彼女はこの日を愛する。 が、 「ひ~ま~。ひ~ま~だ~よぉ」 目の前にいる青い髪をした娘にはそんな彼女の思いなどまったく通じず、察する様子も 皆無だった。 「あそびたい~、外いきたい~、服脱ぎたい~の~」 妙な拍子でシルフィードは歌っていた。成熟した大人の女性が頬を膨らませ身体を振り子の ように絶え間なく揺らしている仕草は童女そのもので、それが完成された女神像との アンバランスを生み出す。 しかし騒ぎすぎである。本から微かに目を離しシルフィードに藍の瞳をタバサは向けた。 「今日中には学院を出れるようにする。だからもう少しおとなしくして」 「うぅ~。でもでもぉ……」 承服しかねるといった顔でこちらを見るシルフィードだが、タバサはそれに何の表情の変化も 見せない。それが気に食わなかったのかシルフィードはタバサのいるベッドに飛び乗る。 その勢いにタバサの身体が大きく跳ねるが動じる様子は皆無であった。 「でもでも、つまらないのね! シルフィってば人の姿でいるのきゅーくつでイヤ! 元の姿に戻ってお空をぐるぅって飛び回りたい!」 「元はといえばあなたの責任。あなたが勝手なことをしなければこうなってはいない」 「うぐぅ」 顔にかかるつばを拭いタバサは一言で斬捨てる。そう、元々の責任は全てシルフィードにある。 それは彼女自身も良く分かっているのでぐうの音も出ない。 「た、確かにシルフィがクザクとお話したのがそうだけど……でもでも、クザクもシルフィの 仲間だと思ったんだもの!」 「早合点」 「きゅいきゅい! そんなこと言われてもシルフィだって勘違いしちゃうもの! あんな風に 遍在を出したり風を巻き起こしたりとかするのは精霊の力を使わないとできないもの!」 それについては理解できる。しかし、タバサはクザク本人の口からあれが先住魔法でも何でも ないと聞いている。しかし、シルフィードはあれを先住魔法という。 「じゃあ、あれは本当に先住魔法だったの?」 「それはもっちろん! ……と、いいたいとこなのだけど、ちょっとちがうかも」 指を唇にあて、シルフィードは考える仕草をする。 「どういうこと?」 「お姉さまもしってるけど、私たちの使う先住魔法は精霊と契約して使う魔法なのね。 でも、クザクの使った魔法は契約しているよーなしてないよーな」 「分かり難い」 「シルフィにもわからないのね。でも、クザクの使った魔法には大いなる意思を感じた のね。でもでも、やっぱりちがうよーな、あってるよーな。むむむ……」 「役にたたない」 唸ったままのシルフィードにタバサは軽い溜息をつき、再び本に目を落とした。 「きゅい! お姉さまひどい!」 非難めいて叫ぶシルフィード、だが既に彼女の声はタバサに届いていない。いや、目を 落とした先の本の文字もタバサの目には入っていなかった。 使い魔、それは小感謝の属性を決定付けるための儀式である。では、召喚され、使い魔 となった彼はどの属性を持つというのか。 それは同時にそんな彼を召喚したルイズの属性にまで問題が及ぶ。 「まさか」 そこまで考えてタバサは自分の考えを否定した。流石にそれは推測にしても突飛過ぎる。 「でも」 タバサは思い出す。あの時、ギーシュに立ち向かった彼の力の凄まじさは、北花壇騎士の 自分の目から見ても尋常ではなかった。 彼の見せた四系統魔法とも先住魔法ともつかない技、あれこそが彼がその存在であると 如実に示しているのではないか。 拳を彼の武器とするならば、剣を彼の武器とするならば、あらゆる武器を自在に操った 彼は正にそうであり、彼を召喚した彼女はそうであると推測する事が出来る。 「虚無……」 そう、ルイズが『虚無の使い手』であり、クザクが『ガンダールヴ』であることに。 だが、それもまた推測でしかない事には変わりはない。それを確かめる術がない現在 彼とルイズを伝説と決定付けるには証拠が足りない。 このことはまた別の機会に考えるべきであろう。 それまでの思考を打ち切り、今度こそ意識を本に向け、再び自分の世界に戻ろうとする タバサだったが、 「タバサ、今から出かけるわよ! 今すぐ、ナウ!」 ドアを開け放って飛び込んできた闖入者はその願いを聞き届けてくれそうにはない。 「きゅい、おねえさま?」 「……」 何も言うまい、溜息を吐き出しタバサは本を閉じた。 * 「なるほど、それは実に羨ま……いや、悲惨な話じゃないか」 「ギーシュ、今何と言おうとした?」 「何でもない、何でもないぞ?」 どこか余所余所しい笑みを浮かべる金髪の優男な色男に溜息をつきつつ、大十字九朔は トリステインの城下町を行く。 虚無の曜日、この日を迎えるのはこちらに来て何度か体験しているが、こうして学院の外に 出るのは初めてだった。 「しかしだギーシュ。汝、これからいったい何処に行こうというのだ? ついて来いと 言ったからあえて何も聞かずについて来た訳だが……」 「まあまあ逸る気持ちは抑えたまえクザク。 貴族の召使いに手を出し、そして貴族の子女に 手を出し、終いにはその逢瀬を見つかり主人に部屋を追い出された使い魔である君をだ。 この僕が直々に慰めてやろうといってるんじゃあないか、うんうん!」 憎らしい位に明朗快活に笑う眼の前の金髪優男にただならぬ殺意が芽生える。がしかし、 ルイズの逆鱗に触れて部屋を爆発魔法のオマケつきで追い出され、行き場を失った自分を 何も言わず迎え入れてくれた恩人である彼を叩きのめすわけにいかない。 ここはぐっと堪える。 「それにだ。まあ……なんだ」 明朗快活に笑っていたはずのギーシュの顔がすぅっと憂鬱気なものに変わる。 「僕もだね……ええっとだ、モンモランシーとケティにその……あははは……」 皆まで言わなくとも顔色と声色で大体予想はついた。 「大変だな、汝も」 「君もな」 心と心が通じた瞬間だった。 そんなわけで女難にまみれた男二人は肩を並べ町を行く、なんとも冗句にもならない光景で はあるが。 「しかし、この町はやたらと狭苦しい」 ギーシュの案内を受け、その後ろをついて行きながら九朔は呟く。 ここが一番の繁華街だとギーシュは言っていたが、白い石造りの町の道幅は5メートルもなく、 自分の知るアーカムシティの繁華街とは似ても似つかない。 これではむしろアーカムシティの中にある市場の通りといった方が正しい気がする。 そしてそんな狭っ苦しい道幅五メートルは今日が休日もあってか人で埋め尽くされて いる訳で。 歩道があるから自動車をかっとばすようなような輩がいれば大惨事間違いなしだが、 此処には車はないのでそんな事態にはなるまい。 「で、汝はいったい何処に連れて行くつもりなのだ?」 前からやってくる人ごみを上手くかわしながら進むギーシュの後ろについて行きながら 九朔は声をかける。振向き答えるギーシュ、その顔はしかし、確かに緩んでいた。 あまり良い予感はしない。 「いや、なに。チクトンネ街に良い酒場があってだね。その名も『魅惑の妖精亭』という そうだ。なんでも女子が実に際どい格好をして食事を運んでくれるらしくてね。 ほら、僕たちはどちらも女性に酷い目にあってるだろう? ならばその分を女性に 癒してもらうのは真理だと僕は思うわけであってね」 ああ、なるほど。理解して、九朔は全身に鉛を乗せられたような気分になった。 「ギーシュ、汝はこの期に及んでまだ女を追いかけるつもりか?」 「何を言うかクザク! 男にとって女性は花だぞ!? 愛でずにいられるものか!」 勢いづく自称色男、天下の往来で大げさな身振りを交えて更に続ける。 「男なら何時までも少年を忘れるべからず! なのに、君は何をいうのか! 良いかクザク! 男は年をとろうとも永遠の少年、これは真理だ!」 瞳に炎を宿して熱弁するギーシュに九朔は頭を抱えたくなった。要はこれから居酒屋で 酒を飲んで女の子と遊ぼうというのだから。 「汝について来た我が馬鹿だった……」 「また何を言うんだクザク! これもそれもすべて君を慰めるためなんだぞ!?」 「よく言うわ汝。自分が行きたいから我を巻き込んだだけだろうが」 「無論それもあるが、男ならば可愛い女の子に囲まれたいと思うだろう!?」 「いや、あまり」 即答した。昨日の昼の一件、そして重ねて起きた夜の一件で懲り懲りだったのでそう 答えたわけだが。 しかし、眼の前のギーシュの顔色が見る見る内に青ざめていくのに、彼の脳内で、今自分が 言った言葉がどのように解釈されたかに思い至り九朔は拳を静かに握り締めた。 「ま、まさか君は……」 「ああ、なんだ」 ギーシュの手が上がり、人差し指がしっかり確実に九朔を指差した。 「ホモか?」 「死ね」 「へぶら!」 めきょ――昨日の恩を今日伊達にして返す。渾身の右ストレートは顔面にクリーンヒット、 受身を取る間もなくきりもみ3回転ひねりを加えてギーシュは一直線に路地裏へと 吹っ飛んだ。 「うごご……な、ナイスパンチだクザク。さすが我が友……」 路地裏を覗くと、石畳に大の字に倒れたギーシュが片手を上げてサムズアップしていた。 結構本気で殴ったと思ったのだがこの色男、存外に丈夫である。 「で、我のホモ疑惑は頭の中から消えたか?」 「ああ、消えた。そうそう、クザク。殴られた時に死んだひい爺様に出会えた」 「そうか」 「ああ、そうだ。花の綺麗な場所でね、ひい爺様のところに行こうとしたら今は来ては いけないと蹴っ飛ばされた」 「そうか」 起き上がるギーシュ、先ほど殴って陥没したはずの顔面は元通り、いつものハンサム顔が そこにあった。 「何も突っ込まんからな」 「なにがだい?」 * トリステイン城下町。そこはこのトリステインにおいてもっとも活気溢れる町。 それは同時に繁栄と盛衰を抱く意味を持つ。 栄えるものがあれば落ちぶれるものもある。富を得る者もいれば失う者もいる。 光がある場所には必ず闇は存在する。 この場所もその一つ。 薄汚れた裏通り、繁栄から取り残されたそこはまず普通の人間が踏み入れない場所。 人一人がどうにか通れる道の両側に立つ家には人の気配はなく、ここ数年は使われた 形跡もない。 窓ガラスは当の昔になく、吹き込む風で窓枠に張った蜘蛛の巣がゆらゆらと所在無く 揺れている。 道の向こうを見れば乞食が道端で座り込み、虚ろな目で空を見ている。また別の乞食は 断ったままぶつぶつと何かを呟き、座り込む男たちは何事かの悪事を企んでか よどんだ目で囁きあう。 そんな危険極まりない場所に女が独りでいた。 普通ならば襲われてもおかしくはないが、しかし、だれもその女に近づこうとは しなかった。尋常でない、何かをその女は纏っていた。 それは目には見えないが、生物としての生存本能を呼び起こすには充分なほどの圧迫感。 ふらつき、フードの隙間から見える肌は青ざめているというよりは土気色。 まるで生気がない。 女が一歩踏み出すたびに、昼にしては薄暗い裏通りが夜の闇へと包まれていくように 思えたのは目の錯覚か、それとも現実か。 気づけば、人々は女から逃れるようにその場を逃げ出し、その場にはその女しか いなかった。 吐き気がする。喉が渇く。苦しい。身体が、重い。頭の中身を手で鷲掴みにされたような 激痛が断続的に襲ってくる。動くのも、息をするのも苦しい。 「か……は……ぁ」 耐え切れず、汚れるのも構わず女――フーケは壁にもたれかかった。 昨日、ニアーラと出会ってからずっと身体の調子がおかしい。つまらない話をして、本を もらっただけだというのに。 今日の夜に実行する計画のために必要なものを調達しに来たというのに。 「これの……せい?」 抱いた予感、フーケは手の中に握り締めたその本を見た。それは鉄の表装のついた、 何かで黒く汚れた奇妙な本。 何かのマジックアイテムの一種か、そうニアーラに聞いてみたが彼女はただの骨董品と だけしか答えずそれ以上何も言わなかった。 ディテクトマジックをかけてみたが何の反応もなく、恐らく害はないのだろうと思って いたが。 「――」 この本に何か原因があるのではないのか。思い、どうしてか昨日から手放す事のなかった その書の表紙に手が伸びた。 指が近づくたび、開こうとする意志を持つたび、全身を包んでいた悪寒と頭痛が消えて いく。 やはり、これが原因なのか。指が表紙の厚紙を摘む。 脳の片隅でそれを開いてはいけないと言う声がした。開かねばならないと呼ぶ声がした。 だが、それはただの声。現実には何の影響も与えはしない。 分厚い鉄の表装を指先が開いた。 「―――ぁ」 ――中身は、凡そハルケギニアでは見たことの無い文字で記されていた 奇怪な図形、酷く君の悪い挿絵、紋様にも見える解読不能の文字。薄気味悪い本だった。 ニアーラの戯れだったのか、そう思い本を閉じようとしたのだが――閉じる事が出来ない。 どうしてかその本を読むのを止めることが出来ない。視線がページを追う。 薄汚い路地裏、フーケはその本のページを捲っていく。 一ページ一ページ読み進めるたびにそれに憑りつかれている自分がいる。 何ページも何ページも読み進めて、何ページも、読み進めて。 ページをめくる手は止まらず、一枚一枚めくるたびに身体の奥が熱く、熱く、疼く。 まるで全身を見えない手で嬲られているような狂おしいほどの悦楽。 それはニアーラに触れられた時に感じたそれと似ていて――止まらない。 止まらない、止まらない、止まらない、止められない。 脳髄から無理矢理に引き摺り出される快感はとどまる事がなくて、唇を舌でなぞるだけで どうしようもなく疼く。 もう、それがマジックアイテムだという事なんてどうでも良くなっていた。 ただただ読み進めていく。 ページをめくるたびに走る快楽は増していき、半分を過ぎた頃にはもう、何も考えられない。 嬲る見えざる手は無数に増えていて、喘ぎ声だけが耳を聾する。 薄暗い路地裏はいつしか闇に包まれていた。 フーケはそれに気づかない。 ――そして怪異は起きる 紋様が蠢き、フーケの指先に絡みついた。それは次々に数を増し、快楽に震えるフーケの 肢体を這い上がっていく。 描線は次第に互いと捩れあい一つのカタチを取りはじめた。 それはまるで人、絡みついた描線は後ろからフーケを抱きすくめる形でそのカタチを成し、 疼く身体を慰めようとするフーケの身体を押さえ込み、地面へと押し倒した。 快楽に溶かされた肉体は抵抗することもなく、為すがままになる。 描線は捲れ上がったローブから覗く太ももを撫ぜあげ、乳房を乱暴に揉みしだいた。 それは本能のままに行なわれる儀式。 描線は股の間を割って入り、曝け出されたうなじへと描線の絡まった舌を這わす。 「か……ぁぁ……ぅあ……!」 開いた口へ舌が差し込まれ、口内を描線でできた舌が無造作に蹂躙した。凄まじいまでの 快感に声にならない声をあげ、フーケが目を見開く。 「が……は……ぁが……うぐァ……!」 快感は喉の奥を越え、更に奥、食道を過ぎて紋様が身体の中を嬲る。見開いた目は今この時 己を征服しようとするヒトガタに向けられる。 そこには描線で出来た人の顔がある。だが、それは人の顔ではなかった。 だが、それが何かを知覚する理性までフーケは刈り取られていた。 異界の快楽はフーケを完全に蝕んでいた。 「ぅぁあぁ……ぇぁ……は……が……ぁ……ぁああ……ぁぁ……」 貪られる。 侵される。 犯される。 紋様は肉体の内に溶けてフーケという存在と同一になる。 肌に染み込み、肉に染み込み、臓腑に染み込み、魂に外道の知識という魔物が喰らいつく。 だが、彼女はそれを認識することはない。 蝕まれ、呑まれ、意識は断絶する。 ――深い、深い、奈落の底へ 前ページ次ページゼロの使い魔~我は魔を断つ双剣なり~