約 1,746,364 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/9435.html
前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔 ウルトラマンゼロの使い魔 第百四十九話「ロマリアの夜に」 炎魔人キリエル人 登場 ロマリア。ガリア王国真南のアウソーニャ半島に位置するこの都市国家連合体は、現在は ハルケギニアの人間の最大宗教であるブリミル教の中心地とされる宗教国家である。始祖 ブリミルはロマリアの地で没し、後世の人間がこれを利用してロマリアを“聖地”に次ぐ 神聖なる場所であると主張したことがその始まりだ。そしてロマリア都市国家連合はいつしか “皇国”となり、代々の王は“教皇”を兼ねるようになった。これらのため、ハルケギニア 各地の神官は口をそろえてロマリアを『光溢れた土地』と称し、生まれた街や村を出ることの ない人間はその言葉を信じ込んでロマリアに夢を見ている。 だが、実際にロマリアを訪れて少しでも観察眼を持つ人間ならば、ロマリアが『光の国』と 称される理想郷などでは断じてないことをすぐにでも知ることだろう。実際のロマリアは、 通りという通りにハルケギニア中から流れてきた信者たちが職も住居もない貧民となって 溢れており、明日の食べるものにすら困窮した生活を送っている。その一方で、街には派手な 装飾を凝らした各宗派の寺院が競い合うように立ち並び、同じように派手に着飾った神官たちが 寺院で暇を持て余したり贅沢を極めたりしている。ここまで身分と立場の違いによる貧富の差が 同じ土地に凝縮されている場所は、ロマリア以外には存在しない。アンリエッタなどはこの光景を 『建前と本音があからさま』と評している。 そんな欺瞞に満ちたロマリアの濃厚な影の世界では、様々な集団の思惑が跋扈している。 “実践教義”を唱える新教徒がその最たる例だが、現在ではある『人外』の者たちが暗躍を していることは、まだ誰も知らないことであった。 『……』 そしてその『人外』は今、人間の目には映らない状態である場所を注視していた。そこは 何の変哲もない酒場。だが太陽の出ている内に酒を飲むことは不信心とされるロマリアでは、 昼間の酒場は大体空いているものなのに、今日は大勢の人間が押しかけてひどく賑やかで あった。しかも外で店を囲んでいる側は、ロマリアが誇る聖堂騎士の一隊であった。 『人外』はその酒場の中に集っている集団の方に意識を向け、その内の一人を認識すると 声音に暗い情念をにじませた。 『再び現れた……。奴に、あの時の報復を……!』 酒場に立てこもって、聖堂騎士相手にバリケードを築いているのは誰であろう、オンディーヌを 中心としたトリステイン魔法学院の生徒たちであった。 「……ったく、ロマリアに来て早々えらい目に遭ったぜ。誰かさんの余計な歓迎のせいでな」 その日の夜、才人とルイズはロマリアの中心地、引いてはブリミル教の総本山たるフォルサテ 大聖堂の自分たちにあてがわれた客室にて、とある人物と会話をしていた。と言うより、才人が その人物に嫌味をぶつけていた。 「だから、何度も言ってるだろう? 確かに余興がちょいと過ぎたかもしれないけど、これから 待ち受けているだろうガリアとの対決は、あんなものがままごとに思えるくらい過酷なものになる はずだぜ。あれしきで根を上げているようだったら、あの場で騎士たちに捕らえられてロマリア から追い出されてた方が身のためってものさ」 「宗教裁判にかけられるところだったって聞いたんだけど!?」 「嫌だなぁ、そういう最悪の事態にはならないようにするためにぼくがずっと近くにいたんじゃ ないか。さすがに命を取るような真似はしないよ」 「けッ、どうだか」 胡乱な視線を送って吐き捨てる才人。ルイズも呆れたように肩をすくめた。 そんな二人を相手に飄々と笑っている月目――地球で言うところの光彩異色の青年は、 ロマリアの助祭枢機卿ジュリオ・チェザーレ。かつてのロマリアの最盛期の大王と同じ名を 名乗るこの神官は、ルイズたちとは先のアルビオン戦役で、ロマリアの義勇軍という形で 対面している。その時から掴みどころのない性格と言動、態度で特に才人を散々に翻弄した ものだった。 このジュリオが何をしたのか、そもそもルイズたちが何故ロマリアにいるのか。初めから 順を追って説明をしよう。 王立図書館の怪事件を、連戦に次ぐ連戦の果てに解決したルイズたちだが、すぐに次なる 旅が彼らの元に舞い込んできた。ブリミル教教皇との秘密の折衝のためにロマリアを訪問 していたアンリエッタから、オンディーヌにルイズとティファニアをロマリアまで至急連れて くるよう命令があったのだ。何のためにそんな命令を出したのかは不明だったが、才人たちは その指示通りにコルベールに頼んでオストラント号を出してもらって、ロマリアへと急行した。 しかし入国してすぐに一行はトラブルに遭遇してしまった。ロマリアでは杖や武器は剥き出しで 持ち歩いてはいけない決まりなのだが、そんな慣習には疎い才人がうっかりデルフリンガーを 背負ったままロマリアの門をくぐろうとして、衛士に止められた。すると個人的にロマリアが 大嫌いなデルフリンガーが衛士に喧嘩を吹っかけ、その末に警戒を強化している最中の聖堂騎士の 一団に追いかけられる羽目になってしまったのだ。それが、昼の酒場での籠城戦の経緯である。 しかし実はこの騒動の半分を仕組んだのがジュリオであった。才人たちがロマリアで困難に ぶつかるように、教皇が誘拐されたという噂を聖堂騎士に流していたのだ。それで才人たちは 恐慌誘拐犯のレッテルを貼られ、執拗に追い回されたのであった。才人がおかんむりなのは そういう訳であった。 そんなことがあったのにちっとも悪びれる様子のないジュリオに不機嫌な才人だったが、 いつまでもへそを曲げていてもしょうがないという風に、ふと話題を変えた。 「けど、さっきの晩餐会は色々驚かされたな。ジュリオ、お前がヴィンダールヴで……教皇聖下が ルイズやテファと同じ、“虚無”の担い手なんてさ」 才人とルイズはティファニアとともに、アンリエッタと教皇聖エイジス三十二世こと ヴィットーリオ・セレヴァレと囲んだ晩餐の席で、様々なことを聞かされた。その一つが、 ヴィットーリオが世界に四人いる“虚無”の担い手の一人であり、ジュリオが彼の使い魔…… 才人と同等の立場だということである。まだ誰なのかは知らないが、ガリアにも“虚無”の 担い手がいることは判明しているので、これで“虚無”を担う四人の所在が全て判明した ことになる。 そしてヴィットーリオは、同じ“虚無”の担い手であるルイズとティファニアに、エルフから 聖地を取り返す協力を求めてきた。ヴィットーリオはハルケギニア中での人間同士の戦火を止める 方法として、聖地をエルフから人間の手に取り戻し、ハルケギニア中を統一しようと考えている のだった。そして強大な力を以て聖地を占領しているエルフと渡り合うために、四つの“虚無”を 一箇所に集めてその力を背景に交渉を行うつもりだと。 しかし、ヴィットーリオは実際に力を振るうつもりはないと言いつつも、才人とルイズは それを詭弁だと感じた。ヴィットーリオのやろうとしていることは、要はエルフよりも大きい 力を振りかざして脅しを掛けるというものだ。才人たちはこれまでの経験から、力を拠りどころ とする手段には非常に懐疑的なのであった。 特に才人は、地球の歴史の暗部の一つを思い出した。それは超兵器R1号事件……。ウルトラ 警備隊の時代に発生した、防衛隊最大の汚点の一つであるそれは、惑星を丸ごと破壊する超兵器を 盾にして侵略者の行動を牽制する計画から端を発した。その超兵器R1号の実験でギエロン星が爆破 されたのだが、生物がいないと思われたギエロン星から怪獣が出現し、地球に報復をしてきたのだ。 地球人の生み出してしまった哀しき怪獣ギエロン星獣……本の世界で戦ったことは記憶に新しい。 惑星破壊兵器による地球防衛は、この事件により、侵略者との兵器開発競争を過熱させて しまうとの判断となって破棄されたのだが……ヴィットーリオはこれと同じことをしようと しているのではないだろうか? 才人にはそう思えて仕方なかった。エルフを力で抑えつけたら、 向こうには不平が生じるだろう。それが報復となって自分たちに襲いかかって来ないと、何故 言える? ヴィットーリオは“虚無”に絶対的な自信があるようだが、力はどこまで行っても ただの力。それを振るうルイズたちが、四六時中一切の隙をエルフに見せないなんてことが 出来るだろうか。 アンリエッタもある程度は才人たちと同じ考えで、ヴィットーリオの提唱する方法に全面的に 賛成してはいなかった。しかし……彼女は一国の長故に、ハルケギニア中の人間による争いを 止めることの困難さをルイズたち以上に知っている。彼女では、他に戦を止める方法が思いつかない がために、ヴィットーリオに強く反対することも出来ないでいた。そのため、結論は保留という 曖昧な態度を取っていた。 そもそもそれ以前に、一つ重大な問題がある。ガリアの担い手だ。“虚無”が完全な力を 発揮するには始祖ブリミルに分けられた四つがそろわなければいけないが、あのジョゼフが 支配するガリアが協力をするはずがない。そこをどうにかしなければ、たとえルイズたちが ヴィットーリオに協力したところで徒労が関の山だ。 しかしヴィットーリオも抜かりないもので、既にガリアをどうにかしてしまう作戦を講じていた。 三日後にはヴィットーリオの即位三周年記念式典が開催されるのだが、そこにルイズとティファニア にも出席してもらって、三人の担い手を囮にジョゼフをおびき出すというのだ。そうしてジョゼフを 廃位にまで追い込み、ガリアを無害化するというのがヴィットーリオの立てた計略であった。 エルフのことはともかくとして、ルイズやタバサの身を狙うジョゼフには落とし前を つけなければならない。才人はそれには賛成であったが、ルイズはこれも反対の立場を 取っていた。ジョゼフの力は未だ底が知れない……。事実、ゼロも才人も何度も危機に 陥っている。そのためルイズは強く警戒しているのであった。 ヴィットーリオはこれらのことに対して、すぐの回答を求めなかった。それで晩餐会は 終わりを迎えたのだった。 「にしても、ちょっと意外だったな。あの教皇聖下、見たことがないくらいの優男なのに…… 発言がやたら過激だった」 晩餐会を振り返って、才人がぼやいた。ヴィットーリオは女性顔負けの、輝くような美貌を 有しており、更には完全に私欲を捨てたレベルの者だけが放てる慈愛のオーラを放っていた。 才人は初めて面と向かった時、しばし呆然としてしまったくらいだ。 しかしそのヴィットーリオの思想や発言は、上記の通り。力を背景にした交渉を推し進めようと する強引さに加え、才人は彼からの「博愛は誰も救えない」という断言が一番記憶に残っていた。 愛の感情に溢れた人間の発言とはとても思えない。 このことについて、ジュリオは語る。 「それは無理からぬことさ。何せ、聖下が即位なさってからまだ三年ほどだけど、たった それだけの間に聖下は苦渋の数々を経験なさってるのさ」 「苦渋?」 才人とルイズがジュリオの顔を見返す。 「そうさ。ロマリアは国内外から“光の国”と称されるけど、実態はそれとは程遠いのは きみたちも目にしたことだろう? この国は全く矛盾だらけさ」 ジュリオのひと言に内心深く同意する二人。ロマリアに入国してから少し見ただけでも、 街の至るところに難民の姿と、彼らに対して全く無関心な神官の姿が目立った。籠城戦の 時も、聖堂騎士が才人たちにてこずっていると野次馬の市民から散々野次が飛んでいた。 普段権威を笠に着て威張り散らしている聖堂騎士の苦戦が愉快だったのだ。このひと幕で、 ロマリアの権力者が平民からどう思われているのかが垣間見えるだろう。 “光の国”の呼び名は、ゼロの故郷ウルトラの星の別称と同じであるが、両者の内情は 天と地ほどの開きがあるのであった。 「大勢の民が今日のパンにも事欠く傍らで、各会の神官、修道士は今日も民からせしめた お布施で贅沢三昧だ。今じゃ新教徒のみならず、終末思想じみたものを唱える異教すら その辺で横行するありさまでね。聖下はそんなこの国の現状を解きほぐそうと、教皇就任から ずっと努力されてきた。主だった各宗派の荘園を取り上げて大聖堂の直轄にしたり、寺院に 救貧院の設営を義務づけたり、免税の自由市を設けたりとかね。すると聖下を教皇に選んだ 神官たちは何と言ったか分かるかい? 新教徒教皇だってさ。ほんと勝手なもんだ」 うんざりしたように肩をすくめるジュリオ。 「今のままでこれ以上神官たちの私利私欲を止めようとしたら、聖下は教皇の帽子を取り上げ られてしまうだろう。そんな行き詰まった状態を打破しようと、聖下は聖地回復をお望みされて いるという訳だ。聖下のご動機、分かってくれたかい?」 「ま、まぁ、一応は……」 ジュリオのまくし立てるような説明により、才人は若干呆気にとられながらも、ヴィットーリオも いたずらにエルフと事を構えたい訳ではないことを理解した。ルイズは同じように呆然としながら ジュリオに問い返す。 「ジュリオ……あなただって神官なのに、随分とズバズバ国の痛いところを口にするのね。 まぁあなたはそういう人なんでしょうけど」 「今みたいな建前なんて必要のない、正直なところを遠慮なく発言できる国も聖下の目指されて いるところだからね」 実に口の回るジュリオは、ここで態度を一層崩す。 「まぁこんな小難しい話をしに来たんじゃないよ、ぼくは。ちょっとしたお誘いだ」 「またルイズにちょっかい掛けようってのか?」 「是非ともそうしたいところではあるが、残念ながら用事があるのはサイト、きみの方だ」 「えッ、俺?」 やや面食らう才人。 「実はこの国には、是非きみに見てもらいたいものがあってね。ちょっとカタコンベに潜って もらうことになるけど」 「うーん……悪いけど今日はもう疲れたから、明日にしてくれないか? 明日は時間あるか?」 「ああ。それじゃあ明日の早朝にしよう。明日は早起きを……」 話している最中で、ジュリオの台詞が不意に途切れ、彼の目つきが一変。険しいものとなって 虚空を用心深く見回す。 「ジュリオ?」 虚を突かれるルイズだが、才人もまたデルフリンガーを手に取り、警戒の態勢を取っている。 「……誰かいるな」 「気がついたかい。こういうことには鋭いんだね」 二人は、姿は見えないが刺すような殺気がどこからかこの空間に向けられていることを 察知したのだった。実は才人とゼロは、ロマリアに来てからずっと、誰かに良く思われて いない目で見られていることを感じ取っていた。ジュリオの尾行に気づかなかったのも、 その気配に隠れていたからだ。 じり……と臨戦態勢を取る才人とジュリオ。そして息の休まらぬしばしの時間が過ぎた後…… 彼らの客室が突如爆発炎上した! 「っはぁッ! いい反射神経だ!」 「散々鍛えられたからな!」 しかしジュリオと才人はルイズを連れながら一拍早く扉から脱出していた。ごうごうと 燃え盛る火災から安全なところまで下がると、ジュリオが機嫌を害したような声で発した。 「客間とはいえ、大聖堂で爆発テロなんて穏やかならぬ話だ。これを仕掛けた奴、いい加減 姿を見せたらどうだい!? 近くにいるんだろう!?」 辺りに向かって怒鳴ると、それに応ずるかの如く、三人の前に怪しいものが出現した。 全体的に人型ではあるが、輪郭がかなりおぼろげで姿がはっきりとしていない。人間型の 人魂、という表現が一番しっくりくるだろうか。 ルイズが驚き、才人とジュリオが反射的に身構えると、その人魂は言葉を発した。 『六千年の時を隔て、再び相まみえようとは……。受けるがいい、このキリエル人の裁きをッ!』 前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/3502.html
前ページゼロの使い魔ももえサイズ はじめましての方、はじめまして。そうでない方、お久しぶりです。 僕の名前は節木です。なんか某スレで最初から斬られていたのではないかと邪推されていましたがそんな事は全然ありません。 突然ですが、この世界に召喚される前からももえさんの事を愛しています。 ももえさんがこの世界に召喚されてから、もっと恋しくなってこの世界へと追いかけてきました。…どうやって来たのかは聞かないでください。 この世界に来ても、愛用の双眼鏡を使ってももえさんの監視を行っております。 これは前にいた世界である方からの命令で、ももえさんの監視の任務を任されているからです。 ももえさんの環境の変化はすぐに現れました。なんと、ももえさんはルイズと呼ばれている少女の使い魔になり、彼女と一緒に行動しているのです。 あの押しが強いももえさんが簡単に使い魔という縛りに甘んじるとは思えません。これは何か弱みでも握られている。僕はそう確信しました。 「絶対、ももえさんをあのロリピンクの手から解放してみせる………!!!!」 今日も、僕は前の世界と同じように黒色の学ランに身を包み、愛用の双眼鏡で木の上から死神家の蔵にいるももえさんをしか…もとい監視していました。 「おっ………」 遠く離れていても、双眼鏡越しにももえさんの姿を確認することが出来ます。 倉庫の中にある窓からももえさんたちの姿を確認することが出来ました。 ももえさんは倉庫の中にある銃兵器に興味津々のご様子です。 さすがに細かな口の動きまではわかりませんが、隣にいるロリピンクが、ももえさんの言動に対していちいち大きなリアクションをとっているので何をしようとしているのかがなんとなくわかりました。 ももえさんはおもむろに銃を構えて窓の外に向けます。 そしてそれをこっちの方に向けて…………ってええええええ!? ひょっとして僕のことがばれているんですか? でも100メートル以上も離れたところから当たるわけないのはわかるけどでもそれでもちょっと恐 「そこで何をしている?」 うわあああああああ!!! いきなり誰かの声が下から聞こえてきたぁ!!!! それに驚いた僕はバランスを崩して頭から地面に落下していきました。 そして僕が、地面に落下した瞬間に頭上の木が爆音とともにおおきく破砕していくのが見えたのです。 「あわわわわわわわ…………」 頭を打って仰向けになった状態のままで破砕していくのを見ていた僕はただただ声にならない声を発しているだけでした。 「……大丈夫か?」 するとさっき僕を驚かせた人が僕を抱えて何も無い草原まで運んでくれました。木の欠片まみれになるよりずっとよかったし、何より僕の事を何も聞かずに運んでくれたのが幸いでした。 「さっきはすまなかったね。僕が声をかけたばっかりに君が木から落ちてしまって。」 「いえ………その、ありがとうございます。」 その状況になすがままだった僕も、ようやく口を開くことが出来ました。 「あなたは一体………?」 僕がそういうと彼は自らの名を名乗りました。 「私の名はワルド。」 彼は同性の僕から見てもいわゆるモテオーラを発散しているような色男でした。そして、その色男は自らの目的を口にしました。 「私は、婚約者を監視している。」 「かん………し?」 そろそろ月刊化?「ゼロの使い魔死神ガーゴイル友情タバサの裏設定タバサの母フレイムデルフリンガーシルフィードネギ香水草鞋下級生ももえサイズ」 「いやー、試し撃ちって中々楽しいもんだねぇ。」 拳銃の先から吹き上がった煙を、ももえニヤついた表情を浮かべ、軽く息を吹きかけて消した。 「えええええっ!? っていうか今の何よ! すごい音がしたし、ガラスも粉々に割れちゃったじゃないのよ!」 いちはやくルイズはももえに対してツッコミを入れたが、居合わせていたキュルケは目が点になったままで粉々に割れたガラスをじっと見つめていた。 「私が…昔…使って…いたもの…です…。」 メイドのメイは小声でそう答えた。 「昔って………。」 「昔…は…昔………です…。」 ルイズは思わず周囲を見回してため息をついた。 ももえにスレイヴの自分にしか出来ないことだと言われて、キュルケとタバサを連れてノリノリでついていったのが馬鹿だった。 ももえとメイに連れてこられたは家の離れにある倉庫だった。 「蔵…等…と言い…ます……。ここ…に…は…この…世界…で…は見る…こと…が出来な…いものが…数…多く…存…在しま…す……。」 「クラナド………?」 そこでルイズたちが見たものは確かにこの世界では見ることが出来ないものばかりであった。 悪魔の干し肉・悪魔の干しパン・悪魔の干しぶどう……… 「なんで、食べ物ばっかり…しかも干してあるものばっかりじゃないのよ。」 ももえはその中の干し肉を取り出すとカマを使ってサクッと二等分にした。 『ももえのカマで斬られた物の存在はももえが肩代わり』 「はっふぇ(だって)ふぉふぃてふぉふぁふぁいふぉ(干しておかないと)ふぅふぁふぅふぁん(腐るじゃん。)」 ルイズのぼやきにももえが干し肉を噛みながら返す。ルイズはため息をついて後ろを振り返ってみた。 すると、キュルケもタバサもまわりを見回して色々と探していた。 「悪魔の設定資料集・悪魔のアニメパーフェクトブック・悪魔の麻雀牌………。」 そのうちの麻雀牌に強い興味を示したタバサは、麻雀牌が入っている木箱を開けて手にとって転がし始めた。 「こっちは、悪魔のレーザー銃・悪魔のロケットランチャー・悪魔の黄金銃………って書かれてあるわね。」 ???もの知り館??? 黄金銃【おうごんじゅう】 元々は「007 黄金銃を持つ男」に登場する銃器のこと。 ゲームでは相手を一撃で倒すことが出来たため、対人戦ではよく取り合いになった。 キュルケはそれぞれに貼り付けられていた紙を読み上げていった。よくわからないがなんだか物騒なものだという事はなんとなくわかっていた。 「あっ、じゃあこれ貸して。」 そういってももえは黄金銃を箱の中から取り出した。そしてその感触を確かめながらゆっくりと銃を窓に向けた。 それを見たキュルケは思わず口をあんぐりとあけて目が点になる。ルイズは「あわわわわ」と訳のわからない言語を口走りながらももえを止めようとしたが、 「やややややめなさい! まさかあんたそれを 「はああああああああ!!!!!!」 「きゃあああああああ!!!!!!」 ももえの黄金銃から弾が発射された。音は小さく乾いた音しかしなかったのに、弾はガラスを粉々に砕き、遠くにあった大きな木の枝が破砕していくのがわかった。 「あわわわわわ………。」 ルイズは身体をがたがたと震わせた。銃を見たことは無くはないのだがあそこまで精度が高くて凶暴な武器を今まで見たことが無い。とてつもない恐怖を感じていたのだ。 「いやー、試し撃ちって中々楽しいもんだねぇ。」 拳銃の先から吹き上がった煙を、ももえニヤついた表情を浮かべながらは軽く息を吹きかけて消した。 そのころ、タバサはすぐそばにあった点棒に興味を示し始めていた。 「監視………ですか。」 「そうだ。私は愛する婚約者を監視している。」 僕はワルドさんと名乗ったその男の人とがっちり握手を交わしました。彼の手は男の人とは思えないほどとても綺麗だったと記憶しています。 「そうか………君の名前はフシキ。で、君も我の婚約者を監視しているのかね?」 ワルドさんに婚約者と言われて僕の顔はたちまち赤くなります。そして僕の妄想の中でももえさんが笑顔で僕を出迎えてくれる姿を想像します。そしてその薬指には婚約指輪が……… 「キャーッ!」 「!」 少し空気が気まずくなりました。よく覚えていないのですが、僕はワルドさんを驚かせるような気持ち悪い表情を浮かべていたようです。いや、どんな妄想なのかは一字一句 「…………。」 「………えー、こほん。いえ、婚約者というか。僕にとって彼女は大切な人です。僕は彼女無しでは生きていけません。」 途端に険しい表情になったワルドさんは重々しく頷きました。それに気づかない僕は更に続けます。 「だから僕は婚約者を越えた大切な人になりたいんです。彼女の大切な人になりたいんです!」 自分でも何を言っているのかはわかりません。何故このようになったのかもわかりません。ただ一ついえることは彼は婚約者で僕はただのストーカーだという事です。 「………そうか。」 僕の告白を聞いたワルドさんはにっこりと微笑んで僕の肩に手を置きました。 「ならば、俺はお前の敵だ。」 「えっ…ひいいいいいいいっ!!!!!」 僕の右肩がワルドさんの手の重みでどんどん下がっていくのがわかります。 そしていつのまにか左手に杖のようなものを手にしたワルドさんは口で小さく呪文を詠唱しました。 「遍在」 するとワルドさんの分身がびゅうびゅうと僕の周りをぐるぐると回り始めたのです。 「ところで、ルイズちゃんには男っているの?」 「えっ? なっ、何よ。藪からぼうに………。」 ももえがそんな質問を投げかけたのは倉庫の整理を終えてからのことだった。 キュルケは過呼吸気味にスーハースーハーと繰り返し、タバサは倉庫から持ち出した麻雀牌を手で転がしていた。 「ちょ…っと……貸し…て…下さ…い……。」 メイはタバサから麻雀牌を貸してもらうとそれをお手玉のように器用に飛ばしてみせる。それを見たキュルケとタバサから思わず歓声の声が上がった。 「何やってるのよあんたたち………。」 それを見たルイズが今日何度目かのため息をつく。ももえはルイズの肩をつかみしつこく質問をしてきた。 「で、男はいるの?」 「おっ、男っていうか……その………こっ、婚約者っていうか………小さいときに一緒に結婚しようと親が決めた人が………。」 「へぇ………。婚約者ねえ。」 ルイズは顔を真っ赤にしながらそう言った。一方、興味が薄れてきたももえは干し肉を口にしながら外の景色を見ていた。 「そんな奴に限って今頃ストーカーとかしてたりするんだよねぇ。」 「ストーカー?」 ルイズは首をかしげて見知らぬ単語を聞き返す。ももえは説明した。 「ストーカーっていうのはいろんな理由をつけて自分の後ろをついてまわる人のことを言うんだよ。」 「………犬のようなものかしら?」 「まぁ………そんな感じ。生意気な犬は猟銃で打ちのめさないと………。あっ、そういえば猟銃もあの蔵等の中にあるんだよね。」 そう言って、ももえはさっきまでいた倉庫を指差した。ちなみに倉庫の鍵は南京錠で軽く留められているだけである。 「じゃあその猟銃を私に貸しなさい。」 「いいよー」 ももえはそう言って倉庫の中へと戻っていった。使い魔の仕事を全うしているももえを見て思わずルイズは高笑いをする。 「ふふふ……ふふふふふ………あはははははははっははははは!!!! はぁ………。私も犬が欲しいなぁ………。」 ルイズは猫よりも犬が好きな少女だった。幼いころからふと思っていた小さな感情。 犬と戯れたい。犬にご奉仕させたい。かわいがりたい。痛めつけたい。ころs 「あーーーーーーーーっ!!!!!」 ???もの知り館??? かわいがり 相撲から派生した隠語で立場の上の者が新弟子等を「厳しい稽古」で痛めつけたりすること。 「愛の鞭」の名の下に暴力が行われて死亡事故にまで発展したものもある。 このかわいがりに耐えるためには丈夫さとそれに耐えうる強い信念。もしくは痛みを快楽に変える強い精神力が必要不可欠である。 「キャーーーーーーーッ!!!!!」 ももえが指差した先にはルイズが見たことも無いような服に身を包んだ男がいた。 周りにはルイズ達が可視できるほどの大きな風が渦巻いて男をぐるりと囲んでいた。それが男の恐怖感をあおるのか、男はただただ泣き叫んだ。 「行こう!」 「えっ、ちょっ、まっ、待ちなさいよぉ!」 ルイズは慌てて走り出したももえの後を追いかけていく。 すると数十メートル先で足を止めたももえはカマを取り出してそれを泣き叫ぶ男のほうへと投げつける。 「サイズラッガー!!」 ギュルギュルギュルと音を立てながらカマは男の方へと向かっていった。 「キャーーーーーーーッ!!!!!」 情けないことですが、完全にパニック状態に陥った僕は、ただ泣き叫ぶことしか出来ませんでした。 「む、あれは愛しのルイズではないか。あの馬鹿女と一緒にいる………。全く………。」 ワルドは遍在の中でそのような事をぶつぶつとつぶやきました。 しかし、その言葉を聞いて僕は叫ぶのをやめ、瞬時に冷静さを取り戻しました。 この男はとんでもない勘違いをしている。そして、こいつは僕の敵だと認識しました。 「……………な。」 「ん? 俺の威嚇にもう泣き喚かないのか………。では仕方が無い。お前に止めを… 「ももえさんの事を悪く言うなぁーーーーーっ!!!!!」 僕はさっき拾った細長い棒を構えて遍在の中に向かって突進していきました。 「たああああああああああっ!!!!!」 しかし、僕は気づきませんでした。 いつの間にか風が止まっていて、その代わりにカマの音が僕のほうへと近づいていることに ギュルギュルギュル………ずがばっ 「ティアーーーーーーーーーーッ!!!!!!」 ???もの知り館??? ティアナ=ランスター アニメ「リリカルなのはStrikerS」の登場人物。 模擬戦で楯突いたためになのはさんにかわいがりを受けた人。同僚の女の子といい雰囲気になったりする。 ちなみに筆者はリリカルなのはの本編は1期すら見た事がないので細かいところを突っ込みたい方は要注意 僕の細長い棒が真っ二つに斬れてしまったのです。しかもさっきまでいたあの男はいつの間にか消えていたのです。 『ももえのカマで斬られた物の存在はももえが肩代わり』 「大丈夫!?」 そう言いながら駆け寄ってきたのはロリピンクの方でした。 ももえさんも遅れて駆け寄ってきてくれます。でも僕はももえさんのストーカー………ももえさんに顔を見られるわけにはいかないのです! 「さよならっ!!!!」 僕はそう言い捨てて、森のほうへと逃げ込んでいきます。しかしロリピンクは僕を逃がしてくれませんでした。 ずがぁぁぁん 「キャーーーーーッ!!!!!!」 ロリピンクは猟銃で僕めがけて撃ってきたのでした。幸いにも弾は外れて僕には当たらなかったのですが 「待ちなさい。」 僕は恐る恐る振り返ってみると、猟銃を僕の頭に突きつけたロリピンクが居ました。 「人の敷地に入って謝罪の一言もなしに逃げるとはどういうつもりなのかしら?」 「えっ、えっと………ここってももえさんの家の敷地じゃあ……」 「うるさいうるさいうるさい! 使い魔のものは私のもの! 使い魔の敷地は私の敷地よ!」 ロリピンクの持つ猟銃にも力がこもります。恐怖に打ちのめされた僕は彼女の機嫌を損なわないよう恐る恐る聞いてみました。 「僕は何をすれば……… 「そうね………私のストーカーになりなさい! 私に徹底的にぶちのめされなさい!」 「え」 騒ぎを聞いていろんな人が駆けつけてきましたが皆呆然としている様子です。 ももえさんもこの様子には呆れてものも言えない模様で………ってこんなみっともない僕の姿はももえさんに見られたら幻滅されてしまう!! 僕は思わず目をつぶりました。 「……ねえキュルケちゃん。こいつはあんたの知り合い?」 「いいえ、ぜんぜん知らない男だわ。」 覚えられてねぇーーーーーっ!!! 前の世界では僕と同じクラスメイトだったのに!!!!! そして今度は不意に空に向けられた猟銃がまた火を噴きました。 「うわあああああああああん!!!!!」 「あっ、暴発しちゃった。」 ロリピンクの関心はストーカーではなくて目の前にある猟銃に向けられたようです。 僕は必死になって息を切らしながら、森の中へと逃げ込みました。途中、目から汗がぽろぽろと流れ落ちるのがわかりました。 「はぁ……はぁ……はぁ……」 僕が森の中で休もうとしたその瞬間。ワームのようなものが僕めがけて襲ってきたのです! 「キャーーーーーーーッ!!!!!!!」 「キャーーーーーーーッ!!!!!!! 何これ何これ何これぇええええええ!!!!」 「ルイズ! 何あんた危ないことしてるのよ! 当たったら死ぬじゃない!」 ルイズは空に向かって暴発し続ける猟銃を持ってあたふたしていた。 キュルケはルイズにあたふたとしながら逃げようとしている。タバサは既にレビテーションを使って避難している。 「もーっ。しょうがないなぁ」 ももえはカマを一振りすると猟銃は真っ二つに斬られ、暴発は治まったのであった。 『ももえのカマで斬られた物の存在はももえが肩代わり』 「あっ、ありがと………。」 「まー、これも使い魔の役目のうちのひとつだからねー」 ももえにそう言われると少し顔を赤くしたルイズはおもわず早口でまくし立てる。 「あああ、当たり前じゃない! 主人が使い魔の労をねぎらうなんて、きっ、基本中の基本なんだから!」 「はいはい。ま、たまにはこういうのも悪くないけどね。」 そう言ってももえは歩いて家に戻っていく。それを見た三人も家の中に戻ることにした。 「あのさ、キュルケ」 「なに? ルイズ。」 「私達何か色々なことを忘れてない?」 「さぁ………。」 こうして時間は刻一刻と過ぎていったのである。その時間の中である人物が動き出していることにまだ二人は気づいていなかった。 ※おわり これまでのご愛読 ご支援ありがとうございました ※次回からはじまる「ゼロの使い魔死神ガーゴイル友情タバサの裏設定タバサの母フレイムデルフリンガーシルフィードネギ香水草鞋干し肉細長い棒悪魔の猟銃下級生ももえサイズ」に乞うご期待! 前ページゼロの使い魔ももえサイズ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/9159.html
前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔 ウルトラマンゼロの使い魔 第五十一話「脅威のカブトザキラー」 異次元人ヤプール人 ミサイル超獣ベロクロン 一角超獣バキシム 蛾超獣ドラゴリー 火炎超獣ファイヤーモンス 異次元超人カブトザキラー 登場 超獣。その呼称をつけられた怪獣群が最初に現行地球人に観測されたのは、西暦1972年のことである。 その年、地球に突如として異次元人ヤプール人が侵略を仕掛けてきた。 ヤプール人は、それまでの侵略宇宙人とは比較にならないほどの驚異的な力を持った侵略者であった。 侵略の武力として怪獣を送り込むのは他の異星人もよく使う手段なのだが、ヤプール人は自分たちの怪獣に 独特の改造を施して、最早全く別の生物に変えたものを手駒としていたのだ。その、地球人に 「怪獣を超えた怪獣」という意味で「超獣」と呼ばれることになる生体兵器第一号のベロクロンは、 通常の怪獣とは桁違いの破壊力でもって地球防衛軍を全滅させた。ベロクロンは後に超獣専門対策チーム・TACと 新たなウルトラ戦士・ウルトラマンエースによって倒されたのだが、ヤプールはその後も多種多様な超獣を 次々送り込み、エースとTACを徹底的に苦しめた。 ヤプールの侵略兵器である超獣の脅威は、後世にもしっかりと伝わっている。怪獣の生命力と 兵器の破壊力を併せ持つ超獣は、怪獣との長い戦いを勝ち抜いた現在の地球の人々にも 心の底から恐れられているのだ。 その超獣が今、ハルケギニアに牙を剥いて襲い掛かる! 「グロオオオオオオオオ!」 「ギギャアアアアアアアア!」 「ギョロロロロロロロロ!」 魔法学院前の平野に並ぶ、ベロクロン、バキシム、ドラゴリーの三大超獣。狂ったように咆哮を 上げるそれらを見上げ、才人は顔面蒼白になって戦慄していた。 「何てこった……! 超獣が、一気に三体もだなんて……!」 今までの『レコン・キスタ』の工作活動の裏にはどれも、侵略者の影があった。そのため才人は今度も、 宇宙人かその配下の怪獣が現れるものとは予測していた。 しかし目の前の光景は、その予測を超える事態であった。超獣ということは、ヤプール人自らが 指揮を執っているに相違あるまい。 「あぁぁ……!」 「サイト、どうしたの? 確かに怪獣が一度に三体なんて大変なことだけど、そこまで恐れること ないんじゃないの?」 震える才人を案じて、ルイズがそう呼びかけた。彼女からしたら、今の事態がそれほどの 脅威であるとは思えないのだ。数だけならば、タルブ戦や円盤生物軍団、ヒッポリトの大怪獣軍団の 時などの方が上回っている。 「超獣はただの怪獣じゃないんだよ! 見ろ、攻撃を始めるッ!」 「グロオオオオオオオオ!」 才人の言った通り、ベロクロンが腕と身体を広げて攻撃の構えを取った。 直後に、全身に生えた突起から大量のミサイルが発射! ミサイルの雨は別々の軌道を描き、 学院の周囲の大地に着弾。爆発を起こし、瞬く間に学院を大火災で包囲した! 「きゃあああああッ!? い、今の何!? あいつ、何を飛ばしたの!?」 一瞬の出来事に、ルイズやコルベールは愕然となった。科学文明が中世レベルのハルケギニアには ミサイルなど存在しないので、正体が分からないのは当然である。 「ミサイルだ! 自ら火を噴いて空を飛び、軌道を曲げることの出来る大砲の弾の進化形みたいなもんだ!」 「そ、そんなものが存在するっていうの!?」 「今見ただろうが! 超獣はそういう破壊兵器を全身に仕込まれた怪獣兵器なんだよ!」 ベロクロンだけでなく、バキシムとドラゴリーも攻撃を始める。 「ギギャアアアアアアアア!」 「ギョロロロロロロロロ!」 バキシムは楕円形の両手と鼻先からバルカン砲を発射、ドラゴリーは両腕の先端からロケット弾を放ち、 ベロクロン同様学院の周りを火の手で覆い込んだ。これでは、誰も学院の外へ逃げることが出来ない。 しかしどういう訳か、学院そのものには矛先を向けない。 「グロオオオオオオオオ!」 ベロクロンは才人たちを、才人を見下ろし、身体を揺すって笑うような仕草を見せた。 「くそッ、あいつら……!」 才人には、超獣を通してヤプール人が挑発しているように思えた。 人間どもはいつでも殺せる。早く変身して戦え、と言っているようであった。 「……ルイズ、先生、一旦下がろう! ここは危険だ!」 「ええ!」 「う、うむ!」 才人は安易に挑発に乗らず、二人とともに学院の方へ退却する。 「うわははははははは!」 その時に、復活したメンヌヴィルが狂ったような笑い声を上げた。彼はコルベールに向けて叫ぶ。 「見ろ、隊長殿! これが究極の炎だ! 実に素晴らしいだろう! このまま世界の全てを 焼き尽くしてしまいそうではないか!」 コルベールは超獣たちの起こした、大地を焦がし、その後に何も残さないような勢力と規模の 火災を見回し、冷や汗を垂らした。 「これが……こんなものが、究極だと……!?」 メンヌヴィルはコルベールの様子に構わずに続ける。 「俺はあんたに近づこうと磨いた自分の炎に自負を持っていた! しかしそんなものは、 この炎を見せてもらった時に砕け散ったよ! 所詮メイジの、人間の炎など、これと比べたら ちっぽけなものでしかなかったのだ! そして俺は思った! この炎が欲しい、と! 俺の依頼主殿は、快く応えてくれた!」 「ま、まさか……!」 才人が目を剥いてメンヌヴィルを見やる。 「あんたにも見せてやるぞぉ、コルベール! 俺が手にした、究極の炎を! その炎で あんたを焼き、俺は人間を超越するのだぁーッ!」 絶叫したメンヌヴィルの身体が、降りかかった火災に呑まれた。 かと思った次の瞬間に、炎の中から新たな超獣が立ち上がった! 「ア――――――――オウ!」 「超獣ファイヤーモンス! メンヌヴィルは超獣に改造されてたのか!」 赤と青の色彩の鋭角的な超獣を端末で調べた才人が叫んだ。超獣は地球の生物と宇宙怪獣を合成し 改造して作られると言われている。ヤプールの技術力ならば、人間と超獣を合成することも簡単なのであろう。 変わり果てたメンヌヴィルを見上げて、コルベールは大きく舌打ちする。 「副長……とうとう悪魔に魂を売ったのか……!」 「ア――――――――オウ!」 ファイヤーモンスはとがった口から火炎を吐き出す。メンヌヴィルだった時の炎とは 比べものにならない、人間などあっという間に焼き尽くす地獄の業火だ! 「うわぁぁぁぁぁッ!」 「きゃあぁ――――――――!」 業火が三人を襲う。このままでは学院にたどり着く前に全滅は必至。そのため、才人は ウルトラゼロアイ・ガンモードを手にルイズとコルベールから離れた。 「俺が囮になる! その間に逃げてくれ!」 「ま、待ちなさいサイトくん! 危険すぎる!」 「先生危ないッ!」 コルベールが止めようとしたが、火炎が飛んできたのでルイズが慌てて引っ張って助けた。 「この野郎……人間であることを捨ててまで、そんなに『究極』が欲しかったのかよ!」 才人はゼロアイのビームで威嚇射撃を行い、超獣たちの気を引きつける。しかしすぐに ファイヤーモンスが火炎を放ち、反撃してきた。 「ア――――――――オウ!」 才人の姿が一瞬にして、炎の中に消えた。 「サイトくぅーんッ!」 絶叫するコルベール。しかし、才人に問題はない。 「デュワッ!」 炎の中からウルトラマンゼロが立ち上がり、ファイヤーモンスにアッパーの一撃を食らわせた。 不意打ちをもらったファイヤーモンスはヨタヨタと後退する。 「ウルトラマンゼロ! やっぱり来てくれたのか!」 「サイトはゼロが助けてくれたはずです。先生、下がりましょう」 ゼロの登場に安堵するコルベール。急かすルイズとともに学院の方へ下がっていく。 「ジュワッ!」 「ア――――――――オウ!」 ゼロの方は持ち直したファイヤーモンスと対峙している。しかしその周りにベロクロン、 バキシム、ドラゴリーが集まり、ゼロの前方を取り囲んだ。 「グロオオオオオオオオ!」 「ギギャアアアアアアアア!」 「ギョロロロロロロロロ!」 ゼロに立ちはだかる四大超獣。無敵の戦士、ウルトラマンゼロも一度に四体を相手にするのは厳しいだろう。 だが既にご存知の通り、ゼロには頼もしい仲間たちがいるのだ! 『テェヤッ!』 『ファイヤァァァァ――――――――!』 『ジャンファイト!』 窓ガラスのきらめきから、大空の彼方から、宇宙空間からミラーナイト、グレンファイヤー、 ジャンボットが駆けつけた! 彼らはそれぞれベロクロン、バキシム、ドラゴリーに飛び掛かる。 「グロオオオオオオオオ!」 「ギギャアアアアアアアア!」 「ギョロロロロロロロロ!」 ゼロの仲間たちともつれ合って転がっていき、学院から引き離される三体の超獣。そのお陰で、 ゼロはファイヤーモンスと一対一で戦うことが出来るようになった。 『メンヌヴィル……罪のない人々を殺し、あまつさえヤプールに魂を売り渡すお前のような悪は、 俺は絶対に許さねぇ! 引導を渡してやるぜッ!』 ゼロはメンヌヴィルに対して激しい怒りを抱いていた。人間の中にも、ルイズたちのように 心清き者がいる一方で、侵略者にも負けないほど性根の腐ったどうしようもない悪人がいることは 分かっている。だが、メンヌヴィルはその中でも極めつきの人間であった。人間同士の諍いに 手を出してはならない決まりがなければ、とっくに叩きのめしていただろう悪党だ。 超獣に変じたのは、むしろ好都合。この手でお前の悪事に終止符を打ってやる! とゼロは 義憤に燃えていた。その怒りは、ファイヤーモンスの炎だって凌駕する勢いだ! 「ア――――――――オウ!」 『行くぜッ!』 そして、ゼロとファイヤーモンスの決闘の火蓋が切って落とされた! ゼロたちが超獣を食い止めてくれたお陰で、ルイズとコルベールは学院の中庭まで戻ることが出来た。 そこでは既に、キュルケとタバサによってオスマンたち人質が解放されていた。 「おぉ、ミスタ・コルベール。無事であったか」 「ウルトラマンゼロのお陰です。サイトくんも、彼に助けてもらったことでしょう」 無事を確かめ合うオスマンとコルベール。だが喜んでばかりはいられない。超獣たちの放った火は 相当な勢いで広がり、学院の一部に燃え移り出したのだ。 「む、いかん! 皆の衆、水のメイジを中心にすぐに消火に当たりなさい! 迅速に、しかし 慌てずに取り掛かるのじゃぞ!」 オスマンの号令で、教師生徒に関係なくメイジたちが慌ただしく動き始めた。怪獣災害が 発生するようになってから、こういう時のために非常訓練を施すようにしておいたのが幸いし、 メイジたちは比較的整然とした行動で学院の火を消していく。銃士隊もそれに倣う。 「ちょっと、隊長さん! しっかりしてよ!」 だがそんな中で、キュルケがいきなり大声を出した。ルイズがそちらに身体を向ける。 「どうしたの、キュルケ! 何かまずいことが!?」 事態が事態なので、何事かと焦るルイズ。キュルケの面前には、アニエスが腰を抜かしてへたり込んでいた。 「それが……この銃士隊の隊長さんが、火災が起きてからこんな風に腑抜けになって動かなくなっちゃったのよ」 「あぁぁぁ……!」 アニエスは学院を覆い込む大火災を見上げ、口をだらしなく開けてガタガタと震えていた。 普段の毅然とした様子が嘘のような様子に、ルイズは驚く。 「そういえば、ダングルテールは焼き払われてアニエスだけ生き残ったって……まさか、 その時のトラウマが蘇ったの!?」 そうとしか考えられない。今の状況は、ダングルテール地方の滅亡の時と酷似しているのだろう。 アニエスは二十年前の古い記憶が呼び起こされてしまったのだ。 ルイズとキュルケでどうにか活を入れようとしたが、アニエスはどうやっても正気を取り戻してくれなかった。 『せいッ! とぁッ!』 「グロオオオオオオオオ!」 ミラーナイトはベロクロンに正面からチョップ、キックを叩き込んでいる。自分を上回る巨体で、 改造により筋力も並々ならぬベロクロンだが、ミラーナイトは巧みな技量で一方的に連撃を入れ、 ベロクロンを追い込む。 「グロオオオオオオオオ!」 『ふッ!』 後退したベロクロンは手から光刃を連射して反撃するも、ミラーナイトは鮮やかなバク転でかわし切った。 「ギョロロロロロロロロ!」 『むぅッ!』 ドラゴリーは両眼と口から稲妻状の怪光線を放ち、ジャンボットを狙い撃つ。ジャンボットは光線に 晒されるも、身を固めて光線を耐え切った。 『ビームエメラルド!』 そして頭部から反撃のビームエメラルドを発射! ドラゴリーの胸部を撃った。 「ギョロロロロロロロロ!」 攻撃後の隙を突かれたドラゴリーはバタバタ飛び跳ねてもがいた。 「ギギャアアアアアアアア!」 バキシムはバルカン砲の集中砲火でグレンファイヤーをひたすら攻撃する。しかしグレンファイヤーは 炎を全身に纏い、バルカンを防ぐ。 『こんな豆鉄砲が効くかよぉ! ファイヤァァ――――!』 バルカンを弾きながら突進し、バキシムの巨体を弾き飛ばす! 「ギギャアアアアアアアア!」 そしてゼロはファイヤーモンスのどてっ腹に横拳を叩き込んだ。 『うらぁッ!』 「ア――――――――オウ!」 よろけたファイヤーモンスは火炎を吐いて反撃。だがゼロはウルトラゼロディフェンサーで 火炎を易々と防御する。 『はッ!』 「ア――――――――オウ!」 接近戦で上回り、火炎はシャットアウトする。ファイヤーモンスは誰がどう見ても劣勢であった。 しかし突如としてファイヤーモンスの頭上の空が割れ、その中から巨大な剣が降ってきて ファイヤーモンスの手中に収まった。そして刀身に炎が灯る。 ファイヤーモンスの切り札、炎の剣だ! 昔に戦ったウルトラマンエースはこれに串刺しにされ、 生死の境をさまよったことがある。それほどに危険な代物だ。 「怪獣が武器を!?」 驚くルイズ。これまで様々な怪獣がいたが、まさか怪獣が武装するなんて夢にも思っていなかった。 「ア――――――――オウ!」 ファイヤーモンスは炎の剣を振り回し、それまでと逆にゼロを追い詰め出す。さしものゼロも、 燃え盛る危険な凶器に迂闊に飛び込むことは出来ない。素手で触れれば大ダメージ確実だ。 「シャッ!」 距離を置いてエメリウムスラッシュで攻撃するも、炎の剣を盾にされて防がれた。エメリウムスラッシュを 見切って防御する剣術。メンヌヴィルの意識はもう見られないが、彼の戦闘術は受け継いでいるようである。 「ア――――――――オウ!」 ファイヤーモンスは一気に飛び込み、猛然とゼロに斬りかかる! ゼロ危うし! 「シェアッ!」 だがゼロは電光の速さでゼロスラッガーを両手に握り、炎の剣を受け止めた! そのまま、 相手の隙を窺い合う鍔迫り合い。 『であぁぁぁッ!』 「ア――――――――オウ!」 その末に、ゼロが炎の熱にも負けずに剣を弾き飛ばした! 空中に放り出された炎の剣を ゼロがすかさずキャッチ。切り札を奪い取られたファイヤーモンスは大慌てで後ずさった。 『武器に頼れば隙が生じるんだぜ! こいつはお返ししてやるッ!』 炎の剣を投げ返して、ファイヤーモンスにとどめを刺そうとするゼロ。 しかしその時、彼とファイヤーモンスの間の空が割れ、歪んだ空間が覗いた。そしてその中の、 とがった頭を持つ怪人の集団が声を発する。 『さすがだなぁ、ウルトラマンゼロ! ファイヤーモンスをこうも容易く追い詰めるとは』 『ヤプール人! とうとう姿を見せやがったな!』 空の異空間に向けて叫ぶゼロ。そう、遂に侵略者たち、ハルケギニアを覆う外宇宙の悪の親玉、 ヤプール人がゼロの前に姿を現したのだ。 「あれがヤプール人……!」 ヤプールの姿はルイズたちにも見えていた。割れた空の中にたたずむ異形に誰も彼もが 唖然とする中で、ルイズは険しい目つきでハルケギニア全ての敵をにらんでいる。 『貴様が相手では、我らが自慢の超獣でも役者不足のようだ。しかし心配はいらんぞ。 既に貴様に相応しい対戦相手を用意しているのだ!』 『何だと!?』 宣言の直後に、一瞬で空間内の光景が切り替わる。ヤプール人から、兜と鎧を 身に纏ったような巨大超人のものに。 『行けぇー! カブトザキラー!』 ヤプールの叫びとともに超人の両眼に光が宿り、空を更に砕いて穴を広げながら 三次元世界に飛び込んできた。空中で前転し、ファイヤーモンスの前方に降り立つ。 『こいつ……エースキラーに似てやがる!』 ゼロは目の前に現れた巨大超人の容姿について、そう発した。 エースキラー。それはかつてヤプールが、ことごとく自分たちの邪魔をした ウルトラ兄弟を始末するために造り上げた超人ロボットだ。その性能と戦闘能力は ウルトラ戦士に匹敵するほどで、超獣と並ぶヤプールの切り札となっている。 『そうとも。このカブトザキラーはエースキラーを強化改造した機体! ……フフフ、 この意味が貴様なら理解できるだろう』 『まさかッ!』 『戦えー! カブトザキラー!』 ヤプールの指示により、異次元超人カブトザキラーが手の代わりにハサミを持った 両腕を持ち上げ、十字に組んだ。 「えッ!? あの構えは……!」 まさか。ルイズが思う。そしてそのまさかは、的中した。 『スペシウム光線!』 カブトザキラーの右腕の先端より、黄色い光線、ゼロのワイドゼロショットによく似た光線が発射された! 『うおぉッ!』 咄嗟に炎の剣を盾にするゼロ。光線はエメリウムスラッシュを防いだ剣を、一撃で粉々に粉砕した。 『ちッ、やっぱり使えるのか……! ウルトラ兄弟の技をッ!』 ゼロの独白に、ヤプールが肯定した。 『如何にも! エースキラーはウルトラ四兄弟のエネルギーと武器を与えたロボット。後継機の カブトザキラーにもその能力は備わっている。しかも我々の改造により、現在のウルトラ兄弟全員の 技を使用できるようにしてあるのだぁ!』 「な、何てこと……!?」 愕然となるルイズ。ウルトラマンゼロはいくつもの驚異的な能力で、何人もの強敵を粉砕してきた。 だが今の敵は、そのゼロと同等の攻撃技を持つというのだ! そんな敵が今までにいただろうか!? 『カブトザキラーの力はウルトラ兄弟の力だ! 貴様はウルトラ兄弟全員と戦うのに等しい。 その結果がどうなるか、その身をもって教えてやる!』 『ふざけるな! 相手が誰だろうと、俺はテメェらみたいな悪には負けないぜ!』 『そんなことをいつまで言っていられるかな!? カブトザキラー、メタリウム光線だ!』 カブトザキラーが上半身をひねり、戻す勢いでL字に組んだ腕から虹色の光線を発射する! 『せぇやッ!』 ゼロは対抗してワイドゼロショットを発射。光線同士がぶつかり合い、爆発を起こして相殺された。 『ウルトラブレスレット!』 カブトザキラーの攻撃は止まらない。左腕に嵌めたブレスレットを宇宙ブーメランに変え、ゼロへ投擲する。 「ジュワッ!」 ゼロは頭部からゼロスラッガーを飛ばしてブレスレットを弾き返した。だがカブトザキラー自身が 突っ込んできて、両腕のハサミで切りかかる。 『うおッ!』 すんでのところでハサミをかわしたゼロは相手の手首を掴んで、ハサミの攻撃を止めた。 『エメリウム光線!』 『うおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉッ!』 メンチを切るように顔と顔を近づけたゼロとカブトザキラーのエメリウム光線が至近距離で激突。 そのまま両者学院の反対側へ走っていく。 『だぁッ!』 光線の勝負は互角。ゼロたちは光線のぶつかり合いの衝撃で距離を開けると、カブトザキラーが 地を蹴って高く跳び上がった。 『レオキック!』 『でやぁぁぁぁぁぁッ!』 飛び蹴りをウルトラゼロキックで迎撃。轟音とともに両者大地に落下。しかしゼロの方が 先に起き上がり、カブトザキラーの懐に飛び込んで掴みかかった。 『せぇぇいッ!』 相手の首筋にチョップを連打してダメージを与えていく。が、 『バックルビーム!』 カブトザキラーの丹田辺りから光弾の連射が発せられ、ゼロを大きく弾き飛ばす! 『ぐわあぁぁぁ!?』 大地に転がるゼロ。そこにカブトザキラーの追撃! 『M87光線!』 紅色の光線がゼロに襲い掛かり、彼を大爆発で呑み込む! 『うあああああぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!』 「ゼロぉッ!!」 無敵のウルトラ戦士、ゼロがまさかの劣勢に、ルイズたちの表情が驚愕で染まる。 恐るべきカブトザキラーの脅威! ゼロはこの窮地を乗り越えることが出来るのか!? 前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/9414.html
前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔 ウルトラマンゼロの使い魔 第百四十一話「五冊目『ウルトラCLIMAX』(その2)」 装甲怪獣レッドキング 古代怪獣ゴモラ 機械獣サテライトバーサーク 登場 『古き本』もいよいよ残りが二冊。そして五冊目の本は、ウルトラマンマックスが守っていた 地球が舞台の物語だった。ある夜突然街を襲った怪ロボットの出現を始まりとして、人類は謎の 地底人デロスから脅迫を受けることになる。人類の文明放棄を求めるデロスに対し、血気に逸った 某国が地底貫通ミサイルで攻撃しようとしたが、怪獣レギーラとヘイレンによって阻止された。 そのまま人間を襲おうとした怪獣たちはゼロによって倒され、ゼロと才人はその足でマックスに 変身するトウマ・カイトと接触した。才人たちは、地上人と地底人の争いを解決に導けるのだろうか。 ベースタイタンを臨む海岸線。東京湾に浮かぶ、今まで幾多の怪獣や宇宙人と戦ってきた DASHの本拠地をながめながら、才人はカイトとの会話を始めた。 「単刀直入に言います、カイト隊員。デロスは宇宙人や侵略者ではありません。元々から この星の地下に存在していた地底人……紛れもなく、この地球で人知れず栄えていたもう 一つの『人間』です」 「……やっぱり、そうなのか」 才人から報告されたことを、カイトはよく噛み締めながらつぶやいた。 才人とゼロは独自調査により、デロスがノンマルトのような、正真正銘地球の生物が進化した 末に誕生した種族である確証を得ていた。そのことを踏まえて、才人はカイトに告げる。 「そして、同じ星の文明同士の争いには、原則としてウルトラ戦士は干渉できません。それが 宇宙のルールなんです」 「……!」 「だから、デロス相手だとたとえどんな事態が起きたとしても、マックスの助けは得られない ものだと考えて下さい」 忠告する才人。そんな彼に、カイトは聞き返す。 「でも君たちは、さっき地球人……いや、地上人を助けてくれたじゃないか」 「あれはあくまで人命救助です。地上人の地底攻撃作戦に加担した訳じゃありません」 現に、やろうと思えばもっと早くに怪獣たちに戦いを挑むことが出来た。それをしなかったのは、 ミサイルの破壊を阻害することは地上人に宇宙の掟を破って肩入れすることになってしまうからだ。 それをしては物語が破綻してしまう恐れがある。 「繰り返しますが、デロスとの間に決着をつけることに、ウルトラ戦士は手を貸せません。 あなたたち『地球人』が全てやらなくちゃいけないんです」 「俺たちが……」 才人の言葉を受けたカイトの表情に陰りが見える。 「……不安ですか?」 「ああ……正直言うとね。これまでも俺たちは力いっぱい戦ってはきたけど、ほとんどの場合 最終的にはマックスに手助けしてもらってた。そのマックスの助けなしに事に当たらなければ いけないということが、これほど心細いことだとは……」 不安の色が抜けないカイトではあるが、内心で己を鼓舞しながら顔を上げた。 「いや……これからはそれをしなければいけないんだ。マックスも、自分の国に帰る時が 近づいてると言ってた。いつまでも頼っていられないってのは、とっくに考えてたことだ。 地球の未来は、俺たち自身で変えていかなればいけないんだ……!」 固い使命感を顔に窺わせるカイトに、才人はこの部分で心配はいらないだろうと判断した。 話は次に移る。 「もう一つ、デロスの真意は俺たちもまだ掴んでませんが、地上人を滅ぼしたいとかそういった 無法が目的じゃないはずです。それをするつもりなら、事前に警告をする必要はありませんから」 過去のM78ワールドの地球にはゴース星人という、デロスのように地中からの攻撃に目を つけた侵略者がいたが、彼らは降伏勧告はしたものの実際の攻撃の際には警告など一切発さず、 世界中の格都市に甚大な人命被害をもたらした。それと比較したら、デロスは今のところ被害を 最小限に留めようとしているように見える。 「つまり、デロスには悪意はないものと思われます。悪意がないのなら、きっと……いや、 必ず分かり合うことが出来る! 勝ち負けじゃない解決法があります。カイトさん、どうか 頑張ってこの地球全体を救って下さい」 才人の心からの応援に、カイトは謝意を示す。 「ありがとう。……けど、どうして君はそんなにも親身になってくれるんだ? 君からしたら、 俺はどこの誰とも知らない人間だろう」 「いえ……いつでも、どんな場所でも、人の平和を願うのがウルトラ戦士ですから」 最早言うまでもなく、それは才人自身にとっての願いにもなっていた。これまで数多くの 人間から見せてもらった奇跡……この世界でも起こるものと信じている。 いよいよカイトとミズキがデロスとの交渉のために、モホロビチッチ不連続面へ向けて 出発する時がやってきた。地中潜行用のドリルモードに換装したダッシュバード三号を 機動母艦ダッシュマザーが海上へと搬送していくのを、地上から才人が見上げている。 「作戦が始まったか……」 『話し合いが上手く行くといいんだけどな……』 と願うゼロだが、才人は別のことを気に掛けていた。 「地中の世界に行って、無事でいられるかな……。地底戦車って事故が多いし」 M78ワールドの歴代の防衛隊では、ベルシダーやマグマライザー等様々な種類の地底戦車が 試作されたが、実際に地中に潜ると何らかのトラブルに見舞われて搭乗員が命に危機に瀕する 嫌なジンクスが存在していた。そのため現在では、地底戦車そのものが開発されなくなって 久しい。ダッシュバード三号もそうならないといいのだが……。 『とにかく俺たちも後についていこうぜ。カイトにはああ言ったが、万が一のことも考えられる』 「ああ……」 才人はゼロアイを装着して、光となるとダッシュマザーの後をつけていく。そしてダッシュマザー からダッシュバード三号が発進し、海中に潜って海底からデロスの国へ向かっていくのを、ダッシュ バードが作る地中の道からこっそりとついていく。 そしてしばらくの間、地中を延々と掘り進んでいったダッシュバードが……岩盤を貫いて 開けた空間の中に飛び出した! 才人とゼロもまた、地底に存在する広大な空間へと躍り出る。 『ここが……デロスの世界……!』 直径は何キロあるのだろうか。端が見えないほどの広さの空洞に、淡く発光するキノコの ようなものが無数に点在している。中央には、地上のどんな建物も及ばないような丈のタワーが 集中していた。あれは何だろうか? そしてダッシュバードはこの大空洞のちょうど天井から飛び出してしまっていた。そのまま 真っ逆さまに転落していく。ドリルモードでは飛行は出来ないのだ! 『ダッシュバードが危ない!』 『待て! 下手に手を出さず、様子を見るんだ……』 落下していくダッシュバードの姿に慌てる才人だが、ダッシュバードはホバー噴射を駆使して どうにか安全に着地しようとしている。このまま何事もなく空洞の底に着陸できるだろうか。 「……ピッギャ――ゴオオオウ!」 「ギャオオオオオオオオ!」 だがその時、空洞の底を突き破って二体の怪獣が出現した! 目を見張る才人。 『あれはレッドキング、ゴモラ!』 装甲怪獣レッドキングと古代怪獣ゴモラ。デロスが自分たちの都市の防衛用として放し飼いに している怪獣だろうか。 「ピッギャ――ゴオオオウ!」 そしてレッドキングは口から岩石を大量に吐き出し、あろうことかダッシュバードを攻撃 したのだった! 『ああ!?』 岩石がかすめたダッシュバードはホバーが途切れ、地面に墜落してしまう。その衝撃はひどく、 機体は一瞬にして半壊、しかも上下逆に落下したので搭乗しているカイトとミズキが押し潰される 形になっている! 『大変だ!』 才人は慌てふためくが、カイトの方は奇跡的に無事のようであった。 「ミズキ、大丈夫か!? ミズキ!!」 しかしミズキの方は負傷が深刻であった。意識を失い、生命反応が弱っているのが遠くからでも 見て取れるほどであった。 「ピッギャ――ゴオオオウ!」 「ギャオオオオオオオオ!」 しかも墜落したダッシュバードへと、レッドキングとゴモラが迫っていく。このままでは 話し合いをする暇もなく、カイトたちが叩き潰されてしまう! 『まずいぜ! ゼロッ!』 『ああ! 行くぞ!』 それをさせてはならない。ゼロは遂に辛抱ならなくなって、ウルトラマンゼロの姿に変身して 二体の怪獣に背後から飛びかかる。 『待て! あいつらには手出しさせねぇぜッ!』 「ピッギャ――ゴオオオウ!」 「ギャオオオオオオオオ!」 ゼロはレッドキングとゴモラの首に腕を回して捕らえると、ストロングコロナに二段変身して 怪力を発揮。力ずくで引っ張ってカイトたちから遠ざけていく。その間にカイトはミズキを抱えて ダッシュバードから脱出した。 「ウルトラマンゼロ……! ありがとう……」 カイトは自分たちを助けるゼロの姿を見上げると礼を告げ、手近な場所にミズキの身体を横たえる。 「しっかりしろミズキ!」 必死に呼びかけるカイトだが、ミズキは目を覚ます気配を見せない。そしてデロスの指定した タイムリミットまで、もう残り三分しかなかった。 「くそ……! ミズキ、待っててくれよ!」 カイトはやむなく使命を優先し、無人の大空洞に向かってあらん限りの声量で叫び始めた。 「おーい! 地上から話をしに来たー! 無茶な要求をしないでくれー! 地上には、平和を 望む人間が、大勢暮らしているんだー!」 だがデロスからの返答はない。……その代わりかのように、乱立している巨大なタワーが ミサイルのように飛び上がっていく! 「攻撃を始めたのか!? よせー!!」 カイトの叫びも虚しく、タワーは次々と発進していく。ゼロはレッドキングの岩石攻撃を かわしてヘッドバッドを決め、ゴモラのみぞおちに横拳を突き入れてひるませると飛んでいく タワーを見上げる。 『ゼロ、タワーが! 地上への攻撃が始まっちまったぜ!』 『ああ……! だが俺たちには、それを止めることは出来ねぇ……!』 悔しいが、ゼロにはなす術なく見ていることしか出来なかった。ここでタワーを撃墜することは、 宇宙からの来訪者としての領分を侵すことになってしまう。 「ここまで来て、何も出来なかったのか……!? バカヤロー!! 何故こんなことをー!!」 無力さに苛まれて絶叫しているカイトの背後からは、ずんぐりとしているが人型のロボットが 接近していた。地底の警備ロボット、サテライトバーサークだ……! 「うわッ!?」 振り返ったカイトの首をサテライトバーサークは鷲掴みにして吊り上げる。 「俺は戦いに来たんじゃないんだぁ……!」 とカイトが訴えても、サテライトバーサークはまるで反応を見せない。サテライトバーサーク 自身は感情を持たない、与えられた命令を実行するだけの機械なのだ。 『ぐッ……!』 「ピッギャ――ゴオオオウ!」 「ギャオオオオオオオオ!」 レッドキングとゴモラを押さえ込んでいるゼロは、カイトが襲われているのを目にして うめき声を発する。本心では彼を助けてあげたい。しかし同じ星の文明同士の直接的な諍い には、どんな形でさえ干渉することはならない。 もどかしい思いを抱えていると……。 「放しなさーいッ!」 ミズキが目を覚まし、サテライトバーサークに向かって叫んだ。傷ついた肉体を必死で 支えながら、脅しを掛ける。 「カイトを放さないと……バードスリーをここで自爆させるわ! 密閉されたこの空間で バードスリーが爆発したら……この都市ごと消滅するわよ!?」 ミズキがダッシュパッドのスイッチを押すと、ダッシュバードのノズルからジェット噴射が 発せられ、機体が急加熱していく。ミズキが本気である証明だった。 これを受けてか、サテライトバーサークから声が発せられる。 『我はバーサーク。デロスを保護するシステム……』 カイトとミズキが驚きで目を見開いた。 その頃、地上では……ベースタイタンを始めとする、世界中のDASH基地が、地下から 突き出てきたデロスの巨大タワーによって全壊していた。その領地を乗っ取るように 地上に現れたタワーの先端がスパークしている。 臨時基地としてUDFハンガーに退避していたDASHのメンバーに対して、ルイズがタワーの 分析結果を報告した。 「あの塔は膨大なアルファ粒子発生システムで、空気中の窒素と二酸化炭素を変換しています。 このまま世界各国の塔が酸素変換を続けると、八週間で地球全体の大気組成が変わります」 続いてショーンが告げる。 「高濃度の酸素があの塔に充満してる! 攻撃デキナイ!」 「このまま手も出せないのかよ! くそぉッ!」 コバが憤懣やるせなく司令室のコンソール台を叩いた。 「このまま地球の大気を変え、地上の生き物を絶滅させようとしているのかもしれない!」 ヒジカタの推測を、ヨシナガ博士が否定した。 「そうではないわ。むしろ、地球の大気を、太古の時代に戻そうとしてるのよ!」 ミズキはカイトを吊り上げたままのサテライトバーサークに訴えかける。 「同じ地球に住んでる者同士、どうして争わないといけないの!? そんなに私たちに滅んでほしい!?」 それに対するサテライトバーサークの回答は、 『地球に生まれた生物を滅ぼしたいと、デロスは考えていない。しかし、地上の人間が地球の 環境を変えてしまったため、デロスは滅びようとしているのだ』 「えッ……!?」 今の言葉に、カイトもミズキも、ゼロもまた衝撃を受けていた。 ルイズはオートマトンのコアからデロスの情報を解読していた。 「デロスは滅びようとする種族。地球を取り巻くオゾン層が人間の産業によって薄くなり、 太陽からの有害放射線が地中にまで届くようになってしまった」 『デロスは太陽の有害放射線により滅びつつある。デロスはバーサークシステムに、デロスの 保護を命じた。バーサークは、止められない』 ゼロは怪獣たちと戦いながらつぶやく。 『そういうことだったのか……!』 デロスは自分たちの命の危機という後がない事態のために行動を起こしている。しかし、 地上の人間とて今更全ての文明を放棄することは不可能。それほどまでに人間の数は増えて しまったのだ。これを解決する手段があるのだろうか……。 「そんな……もう間に合わないの……!? 人間は滅びるしかないの……?」 そして絶望したミズキの気力が途切れ、その場で前のめりに倒れ込んだ。 「ミズキ!?」 「やっぱり……未来なんて……」 「ミズキーッ!!」 再び倒れたミズキを目にして、カイトは馬鹿力を出し、サテライトバーサークの拘束を 振りほどいてミズキの元へ駆け寄った。 「ミズキ! ミズキ、しっかりしろ!」 懸命に呼びかけるカイトだが、ミズキの呼吸は既に途絶えつつあった。 「ごめんね、カイト……! 私、やっぱり……」 「何言ってんだよ……あきらめるなよミズキッ!」 カイトの呼びかけも虚しく、ミズキは彼の腕の中で力を失う。 『なッ……!!』 レッドキングを押し返したゼロは、ミズキからの生命反応が消えたことに、言葉を失った。 「ミズキいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃッ!!」 カイトの絶叫が、広大な地底世界の隅にまで轟いた……。 前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/9204.html
前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔 ウルトラマンゼロの使い魔 幕間その五「その時ウルトラセブンは」 宇宙斬鉄怪獣ディノゾール 宇宙斬鉄怪獣ディノゾールリバース 登場 M78ワールド。それは皆ももうよく知っている、我らがウルトラマンゼロの故郷。M78星雲の存在する、 数多のウルトラ戦士の宇宙である。 その宇宙の一画で現在、赤い流れ星が青い流れ星を追いかけ、広大な宇宙を横断していた。 「キャァ――――――――!」 青い方の正体は、青みの掛かった外骨格に全身を包んだ大怪獣。日本の尻尾をたなびかせ、 四つもある眼をギラギラと光らせる。下顎は左右に二つに分かれ、金属音に似た甲高い雄叫びを上げる。 この怪獣の名はディノゾール。驚くほどに長い歯舌を振り回し、あらゆるものを両断してしまう 恐ろしい攻撃力を持った宇宙怪獣だ。 そしてそれを追跡する赤い流れ星の正体は、銀と赤のボディの中央に菱形の青いカラータイマーを 輝かせる、我らのウルトラ戦士だ! 「セアァッ!」 ウルトラ戦士は十字に組んだ腕から黄金色の光線を発射! その光線はディノゾールの首に見事命中! 首から上が丸ごと爆散したディノゾールは高度を落としていき、宇宙に漂う小惑星の表面上へと 墜落していった。ウルトラ戦士もその後を追い続け、小惑星上に飛び込んでいく。 「タァッ!」 ダァンッ! と土煙を巻き上げて着陸した、若々しくも雄々しい雰囲気を纏った勇姿。 彼の名は、ウルトラマンメビウス! 一方、首を失い上下逆さまに地面に刺さったディノゾールだが、命が失われたはずの肉体が 突如として不気味にうごめき出した。二本の尾が引っ込んだかと思えば、二つの新しい頭部を 持った首へと変形。手足もメキメキと形を変え、腕は脚部に、脚は背面を覆う装甲と化す。 首のあった部分からは新たな尾が伸び、上下反転した姿勢のまま別の怪獣へと生まれ変わった! 「キャァ――――――――! カァァァァァァッ!」 この姿は通称ディノゾールリバース。肉体の極性を反転させて復活するという、数いる怪獣の中でも 他に類を見ない極めて特異な性質を持っているのだ。最大の武器の歯舌が二本となることで戦闘力は 増大するが、宇宙怪獣に最も大事な飛行能力は失われる。そのため、群れを作るディノゾールに 強大な外敵が現れた時、一匹が犠牲となって群れ全体を逃がす生存本能の発展した末に生じた 特殊な再生能力と囁かれている。 「セアッ!」 復活したディノゾールリバースに、メビウスは勇敢に立ち向かっていく。しかし接近しようと 駆け出したその時に、ディノゾールリバースが先手を取って双頭から歯舌、断層スクープテイザーを伸ばした。 シュンシュンッ、と線が宙を舞い踊った、かと思われた次の瞬間、メビウスの身体を恐ろしく速い斬撃が襲う! 「ウワァッ!」 ダメージをもらうメビウスの後方で、小惑星の岩山の先端が綺麗に切断され、地面へと滑り落ちていった。 ディノゾールの歯舌は最長百万メートルにも及ぶ長さに対して、直径はわずか一オングストロームしかない。 そのため、ウルトラ戦士の視力を以てしても見切るのは困難。しかもそれが二本となっては、メビウスの苦戦は むしろ当然といったところだ。 「キャァ――――――――! カァァァァァァッ!」 ディノゾールリバースは凶刃の舌の二刀流を存分に振るい、メビウスをもてあそぶように苦しませる。 メビウスは相手の猛撃に、なかなか反撃に出ることが出来ない。 しかしメビウスも立派な勇士の一人。このくらいでは参らなかった! 「シャッ!」 左腕に装着したメビウスブレスから引き出したエネルギーを両手に宿らせることで、手刀を文字通りの 光刃と化す。ライトニングスラッシャーだ! 「ハッ! タッ! セアァッ!」 そして猛然と前へ駆け出すメビウス。断層スクープテイザーが飛んでくるが、メビウスは恐るべき 凶器を見事に見切り、手刀でぶつ切りにしていく! 自身の一番の武器を切り落としながら接近してくるメビウスにディノゾールリバースは 恐れおののいた。しかし行動を取ろうとした時にはメビウスは肉薄し切り、すれ違いざまに 相手の胴体を水平に切り裂く! 「キャァ――――――――! カァァァァァァッ!」 大ダメージをもらったディノゾールリバースの動きが大幅に鈍る。一方で振り返ったメビウスは、 再びメビウスブレスに沿えた右手を走らせてエネルギーを引き出す。両手を頭上へ持っていくと、 輝く光の帯が無限を示すメビウスの輪を作り上げる! 「セアァーッ!」 そして発射する、必殺のメビュームシュート! その一撃は、ディノゾールリバースを 跡形もなく吹き飛ばした! 逆転勝利を飾ったメビウス。そんな彼から少し離れた二か所の地点に、ウルトラ戦士と 別のディノゾールが一対ずつ着陸する。 「キャァ――――――――!」 二体の別個体のディノゾールに相対しているのは、紅蓮の鋭き眼差しの戦士と荒々しくも 女性的な柔和さを面影に両立した不思議な戦士。 偉大なる先輩戦士、ウルトラセブン! そしてウルトラマンエース! 「キャァ――――――――!」 ディノゾール二体は彼らに歯舌の斬撃を繰り出す。だがさすがは歴戦の勇士たち。ほぼ不可視の 攻撃を見切り、難なく回避した。 「ジュワッ!」 セブンは頭部のアイスラッガーを投擲。ゼロスラッガーの元祖とも言える宇宙ブーメランは素早く 断層スクープテイザーを根本から切断し、ディノゾールから武器を奪った。 「キャァ――――――――!?」 「ジュワーッ!」 ひるむディノゾールにセブンは右腕を脇に、左腕を胸の前に置いた姿勢を取り、額のビームランプから 緑色のレーザー光線を照射! これぞ必殺のエメリウム光線だ! 「キャァ――――――――!!」 エメリウム光線の一撃はディノゾールを一瞬で爆裂させた! 「トアァーッ!」 エースの方もディノゾールへ必殺の光線技を放とうとしていた。両手にエネルギーを溜めると それを額のランプまで持っていき、更に増幅して集中。最後に両手から赤色光線として発射。 パンチレーザーの強化版、パンチレーザースペシャルだ! その攻撃により、最後のディノゾールも粉々に粉砕された。三体の怪獣を倒すと、メビウスが 二人の戦士の元まで歩み寄って話し掛ける。 『セブン兄さん、エース兄さん、この宙域の怪獣は全て倒したみたいです』 『うむ、これでひと安心だな。しかし、他の場所ではまだまだ怪獣が暴れていることだろう。 ひと息ついている暇はない』 セブンがうなずきながらもそう語った。 ゼロがハルケギニアに赴いた頃と前後して、M78スペース全体で怪獣が凶暴化し、各地で多大な 被害を出す事態が相次いでいた。そのため宇宙警備隊は宇宙のあらゆる場所にウルトラ戦士を 向かわせ、事態の鎮静化を図っているのだ。しかし未だにその目途は立っていない。 メビウス、セブン、エースの三戦士も、群れから離れて人の住む惑星を襲撃しようとしていた ディノゾールたちを発見し、被害を未然に防ぐためにやっつけたのであった。 『80によると、宇宙全体のマイナスエネルギーが増大傾向にあります。原因を突き止めねば、 どれだけ怪獣と戦ったところで事態の解決にはならないでしょう』 とエースが意見する。 『しかし、その原因が一向に掴めないのがもどかしいところだ。私たちはその時まで、怪獣の被害を 食い止めねばならない』 セブンがそう言い、新しい現場に向かおうとしたその時、不意に星空の彼方を見上げた。 『む……!』 『セブン兄さん、どうしましたか?』 メビウスが怪訝そうに尋ねると、セブンは二人に向けて告げた。 『……次元の彼方から、ゼロの気配が途絶えた』 『えぇッ!?』 この時、ハルケギニアではちょうどゼロが、己の命を引き替えにしてヤプールの膨大な闇を 祓ったところであった。セブンは親子の絆といえる超感覚により、その事態をキャッチしたのだった。 エースとメビウスは泡を食う。 『大変なことではないですか! まさかヤプールに……!』 『セブン兄さん! やっぱり、あなただけでもゼロの元へ向かうべきですよ!』 メビウスはそう意見したが、それを却下する声が降ってきた。 『いや、その必要はない』 『! ゾフィー兄さん!』 見上げると、ウルトラマンによく似た容姿の戦士が彼らの元に降りてくるところだった。 胸と両肩には、点の列が飾られている。 彼の名前はゾフィー。偉大なウルトラ兄弟の長男にして、宇宙警備隊の隊長を務める、 ウルトラの星でも特に重要なポストの戦士なのだ。 そのゾフィーが語る。 『意識を集中すればわかるだろう。一時は異次元から強烈に感じられた、ヤプールの闇の波動が なくなっていることに。ゼロはヤプールに勝ったに違いない』 『しかし、ゼロは相討ちになったみたいです! 彼の生存も危うい状況ですよ! ゼロの命を助けなければ……!』 メビウスが反論するが、肝心のセブンがそれをさえぎった。 『いや、ゼロなら大丈夫のはずだ』 『セブン兄さん……!?』 『ゼロも今や立派なウルトラ戦士だ。ウルトラ戦士は、そう簡単に死んだりはしない。ここにいる全員が、 そのことを分かっているはずだ』 どのウルトラ戦士も、楽に戦いを終わらせた経験などほとんどない。誰もが厳しい戦いをくぐり抜け、 死の淵に瀕することもあった。しかし、彼らは悪にどれほど追い詰められようとも、最後には復活して 逆転を果たした。セブンもメビウスもエースも、そんな経験をしている。 『その理由は、守るべき人たちの声が私たちの命を支えてくれたから。ゼロだって、今は気配が 感じられなくとも、助けを求める声があれば必ず再び立ち上がるだろう。私はそれを信じている』 父親であるセブンがそう言う以上は、エースとメビウスに異論はなかった。 『セブン兄さんが信じるのでしたら、俺も信じますよ。ゼロの復活を!』 『はい! ゼロが帰ってくる日を僕も待ちます!』 四人のウルトラマンは、宇宙の果ての更に先、ハルケギニアの宇宙のどこかにいるはずのゼロに思いを馳せた。 『ゼロ……お前の光は不滅だということを、この父に示してくれ!』 セブンは、今はどこにいるか分からないゼロに向けて、願いを込めた。 ……その頃の、惑星ハルケギニア。シティオブサウスゴータから南西に百五十リーグ近くも 離れた森の中に、突如として一人の少年の姿が虚空から飛び出すように出現し、そのまま地面に うつ伏せに倒れ伏した。 少年の背負う剣が声を発する。 「どうにか成功か……。まったく……、“使い手”を動かすなんざ何千年ぶりだ? しかもこんな やり方は初めてだぜ……」 嘆息したのはデルフリンガー。彼を背負う少年はもちろん、才人である。 デルフリンガーはヤプールの闇をかき消すゼロの光が消えかけた正にその瞬間、吸い込んだ魔法の分だけ ガンダールヴの肉体を動かす能力の応用で、ゼロのテレポーテーション能力を使ってゼロ=才人を脱出させたのであった。 「相棒、滅茶苦茶まずい状態だぜ……。俺っちももう魔法が切れちまったし、どうしようもできねえ。 近くに人がいればいいんだが……そもそもここはどこだ……」 デルフリンガーは自分たちがどこへ飛んだのかも知らなかった。しかしそれは無理のないことだろう。 試したこともない手法をぶっつけ本番で実践した上に、テレポートの瞬間がわずかにも早かったら ヤプールを倒し切れず、わずかにも遅かったらゼロと才人は消滅していたというシビアすぎる タイミングだったのだ。転移先を選ぶ余裕があるはずがない。無事に着地できただけでも奇跡のようなものだ。 それは非常に分の悪い賭けであった。しかもその賭けはまだ続いている。ここで才人が助からなければ、 結局は何の意味もないのだ。 「相棒、お前さんの運が『虚無』の魔法並みに強けりゃ、まだ助かる道があるんだがな……」 ともかく、もうデルフリンガーは一歩も動けない。才人が助かるか否かは、天命に預けるしかない。 ……その時、彼らの近くの樹の陰から、ガサガサと物音が立った。 「お?」 目はないが、視線を向けるデルフリンガー。どうやら近づいてくる気配は、獣のものではないようだ。 「……へへッ。相棒、お前さんはツキに見放されてないみてえだな」 倒れ伏す才人の元へと、人影がそっと近づいてきた。 流れるような美しい金の髪から覗く耳は――人間ではありえないほどにとがっていた。 前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/9428.html
前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔 ウルトラマンゼロの使い魔 第百四十六話「七冊目の世界」 ペットロボット ガラQ 登場 六冊の『古き本』に記憶を奪い取られてしまったルイズ。才人とゼロはルイズを元に戻すため、 未完であった『古き本』を完結させる本の世界の旅を続けてきた。そして遂に六冊全ての本を 完結させ、ルイズもまた記憶を取り戻したのだった。……そう見えたのもつかの間、才人のこと だけがルイズの記憶からすっぽりと抜け落ちていることが判明した。よりによって才人を思い 出せないのは明らかにおかしい……いよいよ我慢がならなくなった才人たちはリーヴルに 隠していること全てを聞き出すために、彼女を捜し始めたのだが……。 「お姉さま、駄目なのね~! あの眼鏡女、全っ然見つからないのね~!」 「パムー……」 夜の薄暗い図書館の中を、才人たち一行はリーヴルの姿を求めて捜し回っているのだが、 杳として見つからなかった。シエスタが困惑する。 「いくら広い国立図書館とはいえ、これだけ捜して見つからないというのは変です……!」 『しかし、図書館の人の出入りはずっと監視していたのだが、リーヴルが外に出たところは 確認できなかった。だからまだ館内にいる可能性が高いのだが……』 と報告したのはジャンボット。彼の言うことなら信用できる。 『見つからないとなると、意図的に隠れていると考えていいだろう。そうなると、やはり リーヴルは重大な何かを秘匿している可能性が大だ』 『やっぱ、今回の件には裏があるってことだな……』 ゼロがつぶやいたその時、一旦ルイズの様子を見に行ったタバサが額に冷や汗を浮かべて 戻ってきた。 「ルイズがいない……!」 「何だって!?」 才人たちの間に衝撃と動揺が走る。 「ど、どういうことでしょうか……!? ミス・ヴァリエール、勝手に出歩いてしまうような 状態ではありませんでしたのに……!」 『ルイズの自発的行動ではなく、何らかの外的要因の可能性が高いだろう。……やはり、 この事件はまだ終わりを迎えてなどいなかったのだ』 ジャンボットが深刻に述べる。 「ひとまず、図書館の中をもう一度捜そう! どこかにいるかもしれない!」 才人の提案により、一行は手分けして館内の捜索を再開した。才人は背にしているデルフリンガーの 柄を握り締めて、いつ何が起こっても対処できるようにガンダールヴの力を発動している状態にする。 やがて才人とデルフリンガーは、館の片隅から人の話し声が聞こえてくるのを耳に留めた。 「ふふッ、そうなの? すごく面白いお話しなのね」 「! 相棒、今の娘っ子の声じゃなかったか?」 「間違いない! 行くぞ、デルフ!」 すぐにそちらへ駆けつける才人。彼が目にした光景は、ルイズが何者かと向かい合って 談笑しているというものだった。ルイズの相手をしている者の手には、開かれた本がある。 「もっと楽しいお話しが聞きたいわ。お願い出来るかしら?」 「もちろんだよ。君の望みとあらば、ボクは何だって聞かせてあげるよ」 一見すると少年のようであるが、ふと見れば落ち着いた青年のようにも、また年季の入った 老人のようにも見える、何だか不確かな雰囲気を纏った怪しい人物が、ルイズに本の読み聞かせを しているようであった。才人はすぐにその怪人物に怒鳴りつける。 「誰だお前は! ルイズから離れろッ!」 すると怪人物は、至って涼しい表情で才人の方へ顔を上げた。 「おやおや、困るね。図書館では静かにするのがマナー。それくらい常識だろう?」 「ふざけてるんじゃねぇ! 何者だッ! 宇宙人か!?」 いつでもデルフリンガーを引き抜けるように身構えながら詰問する才人。それと対照的に 余裕に構えている怪人物が名乗る。 「ボクの名前はダンプリメ。君はボクのことを知らないだろうけど、ボクは君のことをずっと 観察させてもらってたよ。サイト……そして君の中のもう一人、ウルトラマンゼロ」 「!!」 『どうやら、こいつがリーヴルの後ろにいる黒幕の正体みたいだな……』 ゼロのことを簡単に言い当てたダンプリメなる男に対して、ゼロが警戒を深めた。才人は ルイズに呼びかける。 「ルイズ、そこは危険だ! 早くこっちに来い!」 だがルイズは才人に顔も向けない。 「ねぇ、早く次の話を聞かせて。わたし、もっとあなたのお話しが聞きたいの」 「ルイズ……?」 『才人、お前のことを思い出せないばかりか、今はお前のことが見えてすらいないみてぇだぜ……!』 ルイズの反応を分析したゼロが、ダンプリメに向かって言い放つ。 『お前がルイズの記憶をいじってんだな。一体何者で、目的は何だッ!』 「質問が多いなぁ……。まぁこっちばかりが君たちのことを知っているというのも不公平だ。 今度はボクのことを色々と教えてあげようじゃないか。始まりから、現在に至るまでね」 おどけるように、ダンプリメが己のことを語り始める。 「始まりは、もう二千年も前になるかな。その当時、この図書館にあった本の中で、様々な人の 魔力に晒されて、意志を持った本が生まれた。いや、己が意志を持っていることを自覚したと いった方が正しいかな」 「意志を持った本……? 生きた本ってことか?」 「俺のようなインテリジェンスソードみてえな話だな」 才人の手の中のデルフリンガーが独白した。 「それとは少しばかり経緯が異なるものだけどね。インテリジェンスソードは人が恣意的に 作ったものだけど、その本は自然発生したんだから。そして本は、己に触れる人の手の感触、 己を読む人の視線に関心を持ち、徐々に人のことを理解していくようになった。本は成長 するとともに、人に対する関心も大きくなり、それは人を知りたいという欲求に変化して いった。やがては魔力の影響を受け続けた末に、人の形を取ることに成功するまでになった。 人を知るには、同じ形になるのが最適だからね」 『なるほど……それが今のテメェだってことだな』 ゼロが先んじて、ダンプリメの話の結論を口にした。 「ご明察。すまないね、回りくどい言い方をして。ボクが本なせいか、自分のことでも他人の ように話してしまうことがあるんだ」 「お前の正体が本だってことは分かった。けどそれとルイズにどんな関係があるんだ」 才人はダンプリメへの警戒を一時も緩めないようにしながら、ダンプリメの挙動を監視する。 もしルイズに何か妙なことをしようものなら、即座に飛び出す態勢だ。 「本、つまりボクは人を知る内に、どんどんと人に惹かれていった。もっと人のことを知りたい、 人と交わりを持ちたい……そんな欲求は、遂には人と結ばれたいという想いになったんだ」 「人と結ばれる? 本と人が結婚するってか? そんな馬鹿な」 「まぁ普通はそう思うだろうね。だけどボクは本気さ。この想いは、馬鹿なことであきらめられる ものじゃないんだ」 と語るダンプリメに、才人はあることに思い至って息を呑んだ。 「……まさか、それでルイズを!?」 「如何にも。ボクは仲間といえるこの図書館の本の内容も理解する内に、この図書館そのものと いっていい存在にまでなった。当館に保管される書籍、資料はどんなものであろうと、ボクの 知識になる」 それはつまり、ダンプリメはトリステインの国家機密にまで精通しているということになる。 王政府の文書の数々も、この図書館に保管されるのだ。 「その中でルイズの存在を知り、生まれて一番の関心と興味を持った。そして彼女がここに やってきた時に、その類稀なる魔力に関心は最高潮となった。そしてボクは感じた。ルイズ こそが、ボクの伴侶として最も相応しいとね」 このダンプリメの言葉に、才人は激怒。 「ふざけんな! ルイズの意志はどうなる! お前が人だろうと本だろうと関係ねぇ、自分の 勝手でルイズの心を好きにいじくり回そうっていうのなら……容赦はしねぇぞッ!」 相当の怒気を向けたが、ダンプリメは相変わらず態度を崩さなかった。 「勇ましいね。流石は正義の味方のウルトラマンゼロだ。……だけど、やめろと言われて じゃあやめますと撤回するようだったら、初めからこんなことはしないんだよ」 不敵な笑みを張りつけているダンプリメの顔面に、やおら迫力が宿った。 「ボクは何としてでもルイズを手に入れてみせる。君が何者であろうとも、邪魔をすることは 許さないよ」 ダンプリメがサッと一冊の本を取り出すと、その瞬間にダンプリメ自身と、ルイズの身体が 強く発光する。 「うわッ!?」 『まずいぜ才人! 止めろッ!』 ゼロが忠告したが、その時にはもう遅かった。ダンプリメとルイズの姿は閃光とともに 忽然と消え、後に残されていたのはダンプリメが持っていた本だけであった。 「ル、ルイズッ!!」 『やられた……連れ去られちまったな……』 床に放置された本へと駆け寄って拾い上げる才人。 「まさか、ルイズはこの中に!?」 『奴が生きた本だっていうのなら、リーヴルがやってたのと同じことが出来ても何ら不思議 じゃねぇだろうな』 「く、くそう……!」 才人はまんまとルイズを奪い取られたことを悔しんで唇を噛み締めた。そこに騒ぎを聞きつけた タバサたちが集まって来たので、落胆している才人に代わってゼロとデルフリンガーが経緯と現状を 説明したのであった。 ひとまず、才人たちはゲストルームに戻って今後の対応を講じることとした。才人らは テーブルに置いた本を囲んで、話し合いを行う。 『簡潔に言うと、そのダンプリメが今回の件について裏から糸を引いてた輩だ。こいつを どうにかしないことには、ルイズは取り戻せないと考えていい』 「娘っ子に直接危害を加えるつもりはねえってのが不幸中の幸いだが、どちらにせよ早いとこ 娘っ子を奪い返さねえと色々とまずいだろうな」 と言うデルフリンガーであるが、するとシルフィードが意見する。 「だけど、本の中に引っ込まれたらここにいるシルフィたちだけじゃどうしようもないのね」 「少なくとも、ミス・リーヴルの手助けがなければいけませんね……」 シエスタがつぶやくと、才人はリーヴルのことを思い出して顔を上げた。 「そのリーヴルは結局どこに……」 「みんなー」 と発した直後、才人たちの元にガラQがひょこひょこと現れた。しかも、後ろにリーヴルを 連れている! 「ミス・リーヴル!」 「ガラQ、お前と一緒にいたのか!」 「うん。説得してた」 リーヴルは皆の視線を受けて気まずそうにしていたが、やがて観念したかのように口を開いた。 「話はガラQより伺いました……。遂にダンプリメが行動を起こしたのですね」 「……全て話してくれる?」 タバサの問いかけにうなずくリーヴル。才人が一番に彼女に尋ねる。 「まず初めに聞いておきたい。この図書館で起きた事件の初めから終わりまで……リーヴル、 あんたがあのダンプリメという奴に指示されて仕組んだことなのか?」 その質問に、リーヴルは変にごまかさずに肯定した。 「はい、幽霊騒ぎの件から『古き本』をルイズさんが手に取るように設置するまで、ダンプリメに 言われた通りに……。ですが、それらは図書館を守るために必要なことだったのです」 「図書館を守るために? どういうことなのね?」 「パム?」 シルフィードとハネジローが首をひねった。リーヴルは答える。 「……ルイズさんを本の世界に取り込む計画を持ちかけられた私は、初めは当然断りました。 そんなことは出来ないと。ですが……ダンプリメは、協力しなければ図書館の本を全て消して しまうと言ったのです」 「え? 図書館の本を……?」 呆気にとられる才人たち。 「ダンプリメは本に関しては万能といっていいほどの力を持っています。当館には、他にはない 貴重な図書もいくつもあります。それを盾にされたら、どうしようもなく……」 「ま、待って下さい。いくら貴重だからって……本のために、ミス・ヴァリエールを犠牲に したってことですか!?」 いくらか憤りを見せるシエスタであったが、リーヴルははっきりと返した。 「他の人にとってはたかだか本という認識でしょう。ですが、早々に親を亡くし、親戚の元でも 冷遇され、頼る人のいなかった私にとって、この図書館は何より守るべきものなのです」 リーヴルの身辺を洗っても何も出てこないはずだ、とタバサは思った。本が人質など、 常人の感性では理解できるものではない。 「私も、どうにか説得しようと試みました。ですがダンプリメの意志は強く……」 「押し切られたって訳か」 静かにうなずくリーヴル。才人は腕を組んでしばし沈黙を保ったが、やがて口を開く。 「事情は分かった。話してくれてありがとう」 「どんな事情にせよ、私がダンプリメの片棒を担いだのは紛れもない事実です。サイトさんに どう罰せられようとも、異論はありません」 「いや、今リーヴルを責めたってルイズが戻ってくる訳じゃない。それより、ダンプリメ自身の 方をどうにかしないと」 と言って、才人はリーヴルの顔をまっすぐ見つめて告げた。 「リーヴル、俺をもう一度本の中に送り込んでくれ。ルイズを助けに行ってくる!」 決意を口にする才人だが、リーヴルは聞き返してくる。 「本気ですか……? 一応、もう一度言いますが、ダンプリメは本に関しては万能です。 特に本の中では、神に等しい能力を発揮できます。そこに乗り込んでいくのは、今までの 六冊の旅よりも危険であることは必至です」 その警告も、才人にとっては無意味なものであった。 「相手が神だろうが何だろうが、そんなのは関係ない。俺はやる前からあきらめるようなことは したくないんだ!」 才人の強い働きかけに、リーヴルも応じたようであった。 「考えは変わらないみたいですね……。分かりました。では少しだけ時間を下さい。準備をします」 「頼む」 「その前に一つだけ、訂正することがあります。最初、私の魔法では本に送り込める人数は 一人だと言いましたが、それは虚偽です。あなたを可能な限り不利な状況に置くようにと、 ダンプリメに指示されましたので」 「そうだったか……。まぁ今更それにとやかく言ってもしょうがない。それよりもこれからのことだ」 リーヴルが魔法の準備をする間、ジャンボットが才人とゼロに申し出た。 『複数人が本の中に入れるのならば、私たちもともに行こう。皆で力を合わせれば、きっと ルイズを取り戻せる!』 ジャンボットの言葉に才人は苦笑を浮かべた。 「ありがとう。……だけど、それは遠慮するよ」 『ああ。ダンプリメも、俺たちがそうしてくるのは予想済みだろうからな。奴が本当に本の中では 万能だってのなら、人数を増やすのは逆に首を絞めることになっちまうかもしれねぇ』 ダンプリメの能力の範囲はまだまだ未知数。いたずらに複数で挑んだら、最悪同士討ち させられる恐れもある。 『みんなは外の世界で応援しててくれ。なぁに、心配はいらねぇぜ。俺たちは、あらゆる死線を 突破してきたウルトラマンゼロなんだからな! 本の中の引きこもりぐらい訳ねぇぜ!』 おどけるゼロの言葉にシエスタたちは苦笑した。 「ええ。それではお帰りをお待ちしています、サイトさん。必ず、ミス・ヴァリエールと ともに戻ってきて下さい」 「頑張って」 「シルフィ、あなたの勝ちを信じてるのね! きゅいきゅい!」 「パムー!」 もうここには、才人たちを引き止める者はいない。そんなことをしても意味はないことを 十分理解しているし、何より才人たちを強く信頼しているのだ。 「相棒、俺は持っていきな。正直ずっと置いてけぼりで退屈だったぜ」 「ああ、分かった。頼りにしてるぜ、デルフ」 才人がデルフリンガーを担ぎ直したところで、彼らの元にリーヴルが戻ってきた。 「お待たせしました。いつでも本の世界へ入れます」 「ありがとう。もちろん今すぐに行くぜ!」 才人が魔法陣の真ん中に立ち、仲間たちに見守られる中リーヴルに魔法を掛けられる。 向かう先は、ダンプリメが待ち受けているであろう七冊目の世界。 (待ってろよ、ルイズ。すぐに助けに行くぜ!) 固い意志を胸に秘めて、才人とゼロは今度こそルイズを取り返す戦いに挑んでいくのだった……! 前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/7003.html
前ページ次ページゼロの使い魔はメイド ジュール・ド・モットがトリステイン魔法学院を訪れたのは、近々行われる使い魔の品評会について……というのは表向きのこと。 そういうのは、いささか間違っているかもしれない。 いわゆる、公務のためにやってきた――それ自体は別に間違いのないことなのだ。 とはいえもう一つの、私的な用向きがあるというのも、これまた真実であった。 やや詩的な表現をすれば、色の道に関わることだった。 あけっぴろげにいうのなら、助平根性のためである。 この学院の勤める、平民の娘を屋敷に買い入れよう、そういう魂胆があってのことだった。 あちこちに持っているその手の情報網から、魔法学院に器量の良い、しかもなかなか『いい肢体』をしたメイドがいると聞き込んだ。 そこで公務のついでに、 「我が物にしよう……」 こう考えていたわけだ。 情報というのは、いくら隠蔽しても結局あちこち漏れるものだが―― 三十路をとっくに過ぎたモットだが。 そちらにおいては、思春期の少年ばりに壮健で、あちらこちらへ小金を巻いて、情報収集は怠らない。 そういう情報は男から、と思われがちだが、実際は女からの〝おしらせ〟も多いのだ。 確かに女のことゆえ、女同士のほうが、詳しい情報は知りやすいのかもしれない。 現代においても、女子トイレへの盗撮カメラなどは、女に仕掛けさせることが多いのだという。 怖いところは、なまじっか器量に秀でた娘ほど、モットなぞより、もっとたちの悪い貴族へ情報が舞い込んだりする。 モットとて、決して品行方正な男ではない。 むしろ、分類されるのなら悪徳貴族のほうが近いのだろう。 それでも妾・愛人とした女たちには、それなりの扱いや見返りはしている。 しかし貴族の中には、慰みにするという言葉では追いつかぬような淫虐にふける連中もいるのだ。 そういう者の餌食になった娘は、大抵が二度と日の目を見るということはない。 買い入れたとか、愛人にしたという情報すら漏れることなく、毒牙にかけられ、その後は言わずと知れていた。 そして、そんな連中ほど表は貴族然と取り繕うのだから始末が悪い。 堂々と平民の娘をあさるモットは悪には違いないが、小悪党というやつだろう。 学院についたモットは、まず王室よりの書状を届けるべく院内を歩いていたが、その視線はチラチラと学院のメイドたちに向けられる。 (あれかな? いや、あれがそうだろうか?) ついつい話に聞いたタルブ出身のメイドを、探してしまう。 (確か黒い髪とか言ったから、すぐに見つかるだろうが……) 視線を走らせるうちに、一人の小柄なメイドが洗濯籠を手に歩いているのを見かけた。 その髪の毛から、 (おっ。この娘か?) と、思ったのだが、どうも違うらしい。 小柄というよりも、年齢そのものが低いのだ。 年齢は十六、七と聞いていたのだが、そのメイドはどう見ても、十三、四かそこらだった。 なんだ、人違いか。 モットは肩透かしを食ったような気分だったが、なかなかそのメイドから目が離せなかった。 いつの間にか、歩くのさえやめている。 ハッキリというなら、地味な娘であった。 確かに磨けば光るものを持っていそうではあるが、それだけならば、そのへんにいる娘とそう大差はない。 メイド服姿で働くのその様は、どうしようもなく使用人であり、それ以上でもそれ以下でもなかった。 しかし、可愛らしくはある。 すれた女にはない、純朴さというのか、初々しさというのか。 (ま、たまには青い果実というのも悪くはないかな?) モットは少女を見ながら、良からぬことを考える。 明らかに犯罪そのまま逮捕な思考であるが……。 生憎とここはファンタジー世界。 ロリコンは犯罪? 何それ、美味しいの? なのである。 まして相手は平民であり、モットは貴族。 やろうと思えば何だってやれます、なのであった。 実際、十三歳ほどの年齢で結婚というのは、貴族や王族では珍しくないし、平民にしたって農村部では結婚年齢はかなり早い。 現代の女子高生、あるいは女子中学生という年代で一児の母になっている娘など、珍しくもなかった。 (さあて、どうしようか?) 頭で色々と策を考えながら、モットはまずは公務のほうを片付けるべくオスマン学院長のもとへ急いだ。 途中、何度か少女のほうを振り返りながら。 「は? 使い魔?」 思いがけぬ言葉に、モットは目を丸くした。 オールド・オスマンにそれとなく件の少女のことを尋ねてみたところ、 「ああ、シャーリーかね? 彼女はうちの生徒、ミス・ヴァリエールの使い魔じゃよ」 こんな返事をよこしたのである。 「ははは。またまたご冗談を」 モットは笑った。 人間が使い魔などという話は、後にも先にも聞いたことがない。 使い魔はメイジの実力を表すバロメーターというが、メイドを使役するメイジというのは一体どういう属性なのだ。 まさか、始祖の再来――伝説の虚無とでもいうのか。 それこそ、ありえぬ話である。 「いや、本当じゃよ」 オスマンはにこりとしないで、モットの笑いを切って捨てた。 「……本当にですか?」 「もちろん」 と、オスマンはうなずく。 「珍しい話ですな」 モットは感心したような顔をしてみせるが、内心では舌打ちをしていた。 仮に使い魔というのは眉唾であるとしても、ヴァリエール家とつながるというのは面倒臭い。 愛人にしたいから、ちょっとそのメイドを譲ってくれ、などと言って、はいそうですかとうなずくであろうか。 うまく手を回せぬこともないだろうが、なかなか手間がいりそうだ。 本当に使い魔なら、なおのことだろう。 例えどんなものであれ、他人に譲れと言われて、使い魔を手放すメイジなどいるわけがない。 (どうも……出鼻をくじかれたな) ちょっと食指を動かされたといっても、ヴァリエールに睨まれてまで欲しいものでもない。 (ここは当初の予定通り、胸のでかいメイドのほうにしておくか) そう思いつつ、モットは学院を歩いていたが。 あれやこれやと考えごとをしていたせいか、うっかりと道を間違えたらしい。 いつの間にか奥内のほうへと足を運んでいた。 目の前に、白いものがいくつもなびいている。 洗濯されたばかりの衣類やシーツが風を受けているのだ。 (こりゃいかん。迷ったな) あわてて引き返そうとすると、人の声が聞こえた。 若い女の声である。 根っから助平であるモットは、つい条件反射的にそちらのほうを振り向いた。 干された洗濯物の向こう側、一人のメイドがかがみこんで何かしている。 一瞬犬か何かとじゃれているのかと思ったが、少女と戯れるその生き物は、犬よりもはるかに大きい。 赤い巨大なトカゲ。 見事なサラマンダーだった。 恐らくは、生徒か教師の使い魔なのだろう。 これほどのものを召喚したメイジ、おそらくはトライアングルクラスに違いない。 それにしても、ずいぶんと懐いている。 恐ろしげな火蜥蜴が、まるで子犬みたいに少女に頭を摺り寄せる光景は、何かの絵画みたいだ。 使い魔ならば、主人に懐くのは納得できるが、見たところ平民で少女に、何故ああも懐いているのか。 (あ!) よく見るとそのメイドは、先ほどちょっと興味を持った、あのメイドではないか。 あの時はそれほどハッキリと顔が見えなかったが、今度は比較的近くのせいか、よく見えた。 ブルネットの髪に、憂いを含んだもの静かで穏やかな瞳。 華奢な肉体に、メイド服がよく似合っている。 やはり、地味といえば地味だ。 しかし。 小動物的な愛らしさと、人形のような可憐さ。 地味な娘と見えたの誤りであった。 清楚な雰囲気は、少女の周辺だけ空気が清浄なものになっているような錯覚を覚えさせる。 美しい。 素直にそう思えた。 それも、外見をゴテゴテと飾り立てた貴婦人や娼婦のようなものではない。 内面から発せされる、健全な美であった。 たまらぬような美であった。 思わず、モットは見惚れた。 時間の感覚が狂ったような気がした。 どれほど少女を見つめていたか。 少女はモットのほうに気づいたらしく、さっと顔に緊張の色を浮かべた。 それを見て、モットもハッと我に返る。 そばのサラマンダーも、モットを見ている。 だが、そこには少女に対していた時の人懐っこさは欠片もない。 うなり声こそ出さないが、まるで敵でも見ているような威嚇の視線である。 邪悪から聖女を守護する聖獣といった雰囲気だった。 メイドの少女は、少し脅えを含んだ瞳で、そっと会釈をした。 「お、おっほん」 モットは何か悪事を見咎められたような後ろめたい気持ちになった。 わざとらしく芝居じみた咳払いをしてから、こそこそと逃げるようにその場を離れる。 「?」 残ったメイド――シャーリー・メディスンは、 (なんだったんだろ?) 妙だと思いはしたものの、まだ仕事が残っていることを思い出すと、見かけない貴族のことはすぐに忘れてしまった。 きびきびと動き出す少女の後を、サラマンダーはのそのそとついていく。 「もう、だめだよ、フレイム! ミス・ツェルプストーに叱られるってば!」 シャーリーは火蜥蜴を見て、困った顔で言った。 それでも、フレイムは純な瞳で、シャーリーを見上げていた。 屋敷に帰った後、モットはぼうっとしてろくに食事も摂らなかった。 椅子に座り込んだまま、どこか遠くを見るような目で、時々溜め息をつく。 そんな主人の様子を、使用人たちは薄気味の悪いものでも見るように遠巻きに見ていた。 病気にでもかかったのか。 女遊びに飽きて、おかしな薬にでも手を出すようになったのか。 自分がそんな風に見られているとも知らず、モットは一人自室にこもって、溜め息を吐いたり、ウロウロと歩き回ったりしていた。 そんなことが二、三日続いた後のことだった。 この日も相変わらずだったモットのもとへ、一人の女がやってきた。 家の使用人であり、モットの妾の一人である。 妾とはいっても、なかなか才気のある女だった。 秘書の真似事のようなことをしたり、あちこちのルートから諸所の情報を集めてくる仕事をしている。 女としてよりも、むしろそちらのほうで重宝されているのだ。 男女の関係もあるにはあるが、どちらかというと、上司と部下のそれに近い。 「旦那様、例のメイドについて調べてまいりました」 「おお、そうか!」 女の報告に、モットはガバリと顔を上げた。 それによると―― やはり、あの少女がヴァリエール家の三女・ルイズの使い魔であることは間違いないらしい。 右手に、使い魔のルーンもしっかり刻まれているという。 「年は十三歳。正式な名前は、シャーリー・メディスンというそうですわ」 「アルビオン風の家名だな……いや、待て? あの娘は平民ではなかったのか?」 「正真正銘の平民です。ただ、あの娘の出身地では、平民にも家名があるのが、当たり前らしいですわねえ」 「そんな国は聞いたことがないが……?」 「イギリス、とかいう国だそうです。詳しいことはわかりませんが、恐ろしく遠い国みたいですね」 詳細は、これに――と、女は報告書をモットに渡した。 「ごくろう。下がってもいいぞ」 「はい。では……」 女が出て行った後、狂ったよう報告書を読んでいたモットだったが、 「シャーリー。おおお、シャーリーか……。私は歓びで戦慄を覚える。俺は何を求めてあの学院に行った? 公務?否、肉欲を求めてだ」 顔を突っ伏し、ぶるぶると頭を振った。 それからおもむろに立ち上がり、まるで舞台に立つ役者のような身振り手振りで独り言をつぶやき続ける。 「――しかし、俺はあの場所で心を洗われ、求めているものが変わった」 両手を広げ、モットは天井を仰いだ。 その視線はそこに映る少女の、シャーリーの幻を見ている。 「惨めな男、ジュール・ド・モットよ、今お前がなすべきことは、彼女の前にひざまずいて真の愛を訴えることだけだ!!」 感極まるという様子だった。 が、しかし。 出て行ったはずの妾兼秘書が、ドアの向こうで呆れ顔で立ち聞きしているのを、モットは全く気づいていなかった。 「まったく……あんな田舎娘のどこがそんなにいいのやら」 つぶやいた後、女は笑った。 自嘲の笑いだった。 まさか、こんな気分を味わうことになるなんて。 やるせないような、敗北感だった。 自分がモットの妾になったのは、十五の時だった。 別にモットは白馬の王子でも何でもなかったが、自分がつくづくラッキーだと思ったものだ。 当時の自分はまだ子供で生娘だったけど、それでも特に思うこともなかった。 だからこそ、モットは自分を妾にしたのだろうし。 舞台か何かなら、モットは上品で若く美しい貴公子、さもなくば権力で無理やり平民の娘を我が物にする悪党だろうか。 まあ、後のほうは当たらずとも遠からずだが。 それでも、吹けば飛ぶような平民の、その中でも貧乏人の小娘にはまたとないチャンスでもあった。 自分の先が知れていることなど、当にわかっていたし、この世に『イヴァールディの勇者』なんてものがいないことも理解していた。 むしろ、である。 自分の経験からすれば、おとぎ話の勇者なんてものは、実際にいれば恐ろしく迷惑な存在なのではないかと思う。 何の見返りもなく、正義のためとか、愛のためとか、そんなお題目をかかげる奴ほど胡散臭いものはない。 あるいは、世の中のことなど、何もわかっていないただの馬鹿か。 そんなものに比べれば、モットのような小悪党のほうがよっぽど信用できるのだ。 どうせそのへんの貧乏人の女房におさまるか、安い娼婦として夜の花となるか。 ろくに字も読めない貧乏人では、そのあたりが関の山。 なら貴族の妾になるほうが、よほど良い暮らしができる。 そういう打算の元での選択だった。 実際それは正しかった。 自分が妾になることで、家の暮らしは良くなった。 その日食いかねているような貧乏暮らしが、大金持ちとは言えないが、それなりのものになったのだ。 貴族に仕えるにために字やマナー、その他の教養も学んだ。 もっとも、もう何年も実家に帰っていない。 時々家族と街で会うくらいだった。 昔の知り合いには、あまり会いたくない。 蔑んだ目をするような男。 哀れみの中に、嫉妬をこめた女。 どいつもこいつも気に入らない。 (ふん。貴族の妾になったが、そんなに汚らしいのかい) 女は舌打ちをして首を振った。 (まったく、こっちが色々苦労してるってのにさ……) あの、使い魔の娘は、 (何にもしないで、ただいるだけで、生のままで貴族の男を骨抜きにしちまった。女好きの小悪党をさ……) そう考えてから、女はまた自嘲した。 (だからこそかねえ。化粧と媚びに長けた女よりも、あんな小娘のほうが――) と、いきなりモットから呼びつけられ、女は思わず声を上げそうになって口をふさいだ。 声をかけられたわけではない。 ポケットに入れた小さな鈴が鳴ったのである。 鳴るというより、軽い振動を発したというほうがいい。 これはモットから渡されたマジックアイテムで、対になっている呼び鈴を鳴らすと、この鈴が振動するようになっているのだ。 女は呼吸を整えてから、いくらか間を置いて部屋に入った。 「お呼びですか?」 「む、うむ」 モットは何か興奮した様子だったのが……。 女の顔を見ると、何か奥歯にものの引っかかったような態度になり、まるで思春期の童貞小僧みたいになった。 (なんとまあ、惚れたはれたでここまで変わるもん?) 内心で冷笑しながらも、女は忠実な秘書の仮面をかぶったまま、 「失礼ながら、あの娘のことでございますか?」 「そ、そうだ」 モットはうなずいた。 「ハッキリと申しますが、あの子は難しいですわ。自然に話しかけるきっかけを作るのも、少々骨かと」 『まともな手段では……』と、女は付け加える。 「わかっている。別にお前に恋愛指南を頼んどるわけじゃない」 モットは不機嫌な声で言った。 「まあまあ、そう怒らないでくださいな。報告書にも書きましたが……」 と、秘書はモットをなだめて、 「彼女はヴァリエール家の令嬢の使い魔、だそうですが……。近々学院では恒例の使い魔の品評会があるそうですね」 「ああ、私も一応出席することになってる」 「人間とはいえ、使い魔である以上彼女もそれに出るようですね。で、ここから肝心なのですが……」 そっと耳打ちをするように、 「メイドたちの噂ですが、先日ミス・ヴァリエールは使い魔、つまりシャーリー・メディスンに着せる服がないと困っていたとか」 「服だと?」 「ええ、普段着、ではなくって、品評会の時に着せる服が」 なるほど、とモットは膝を打った。 「確かにそういう場ではメイドの格好なんぞでは具合が悪いしな。よし、そこで彼女に服を贈れば……うん、よし!」 と、モットは一人で何度もうなずいている。 「いくら金がかかってもいい! 上品で、豪華なものを贈ろう!」 「ですが、いきなりそんなプレゼントなんてしても、かえって怪しまれるかもしれませんわ。主人のほうならともかく、平民の娘に……」 「なんだと?」 「ですからね、ご主人であるミス・ヴァリエールに怪しいやつと疑われるかもしれない、そういうことですわ」 「別にあんな小娘に用はないぞ。あくまでもあのシャーリーに……」 「ですから、それが余計に怪しいんですよ」 あのシャーリーって子も、小娘だけどね……と、女は内心笑いながら、 「ミス・ヴァリエールというか、ヴァリエールとお近づきになるためと装って、あの子に服を贈るんですよ。いかが?」 「ふうん? そんなものかな……。まどろっこしいだけの気もするが……」 「普通のメイドならどうとでもなりましょうが、ヴァリエール家の使い魔でしょう? でしたら、まずそちらから攻略しないと」 「うむ……」 秘書兼妾の意見に、モットは考えこんだ。 そして、いくらか日にちは過ぎて。 ルイズは、困惑していた。 モットという貴族から、シャーリーにと贈られた服を見てひたすら困惑する羽目になった。 素材はかなり高級なものらしいが、全体の造りはシックかつ上品で、大変に出来が良い。 下手にけばけばしく飾り立てたドレスよりもはるかに上等なものだろう。 念のために調べてみたが、別に変なマジックアイテムでもないらしい。 本当に普通の服のようだ(おそらく値段は普通ではないのだろうが――) (何でこんなものもらうことになったのかしら?) ルイズにはそこがよくわからない。 賄賂か何かのつもりだろうか? だが、自分にそんなものを贈る理由は……。 (ヴァリエール家とお近づきになりたい?) 確かにヴァリエールは王家の流れを汲む名門の家柄だが……。 何か腑に落ちないものを感じはするものの、服を見ながら驚きと感動で頬を高潮させるシャーリーを見ていると、 (ま、いいか――。服のことは助かったし) つい気楽に考えてしまうのだった。 前ページ次ページゼロの使い魔はメイド
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/52026.html
登録日:2022/09/04 (日曜日) 11 18 00 更新日:2024/03/17 Sun 13 25 56 所要時間:約 4 分で読めます ▽タグ一覧 ジャン・コルベール ゼロの使い魔 ネタバレ項目 ハゲ 天才 教師 火属性 炎 炎蛇 眼鏡 科学者 結構重い過去持ち 縁の下の力持ち 能ある鷹は爪を隠す 「君は、いつかわたしに言ったな?別の世界からやってきたと」 「その世界では、ハルケギニアとは比べ物にならんほど技術が発達してる」 「あのだな、わたしはそれが見てみたい」 「わたしは、そんな世界が見たい」 【概要】 ジャン・コルベールはライトノベル『ゼロの使い魔』の登場人物。 cv.鈴木琢磨 本編では1巻から登場。最終巻まで登場し続ける主要人物の一人。 ルイズたちの通うトリステイン魔法学院の教師の一人であり、物語の重要キーマン。 見た目は頭が禿げ上がった中年男性で、見るからに気弱で風采の上がらない体をしている。生徒たちやファンからのあだ名はコッパゲ。 しかしメイジとしての二つ名は『炎蛇』と物々しく、後述の発明品にも「〇〇のヘビくん」と名付けるなど、強い思い入れもある模様。 解説していくが、「ある理由」があって非常にハイスペックな御仁である。 【人物】 性格は温厚でお人よし。学院の教師をしているからにはメイジであり貴族でもあるが、使い魔の平賀才人や平民のシエスタらにも誠実な対応をする、貴族としてはかなり異例な人物。 一方で色気に弱く騙されやすい一面もあり、女盗賊のフーケにまんまと色仕掛けで洗いざらい宝物庫の情報をしゃべらせられてしまったことも。 さらに、異世界から来た才人の言う地球のことも素直に信じてしまうなど、そのお人よしと素直さは心配になるほど。 だが、これだけなら単なる好人物ですむが、彼の特異なところは魔法万能のファンタジー世界であるハルケギニアで『技術』を研究しているところにある。 独力で原始的な蒸気機関=エンジンの発明に成功しており、それを見た時には才人は魔法万能主義が絶対でメイジが威張りくさっているハルケギニアにこんな人がいたのかと仰天した。 ただしその発明品を授業中に失敗も構わず見せびらかそうとするので生徒たちからは嫌われてこそいないが、かなり変人扱いされている(*1)。 知識量と応用力に至る発想もずば抜けていて、わずかなガソリンのサンプルから、それを化石燃料であると見抜いて複製に成功した。しかも一晩で大量に。 もしこれを地球で披露したら石油メジャーが崩壊して世界経済が大混乱に陥るのは想像に難くない。 才人がゼロ戦を発見してきたときは、これまた独学で構造を解析してオーバーホールをできるほどになってしまった。 しかもその後短期間で、短距離でも離陸できるように火薬を使ったロケットブースターまで開発している。 この技術力は、後にタイガー戦車が発見された時にもおおいに生かされた。 才人からの地球の話を元にほかにも様々な発明品を生み出しており、その立ち位置はロボットアニメにおける博士と呼べるほど多様かつ万能。 ゼロ戦の機銃弾は精巧すぎて複製できなかったが、代わりにメイジに向かって自動的に飛ぶ空対空ミサイルと言える『空飛ぶヘビくん』を開発してゼロ戦に装備していたりした。 白眉と言えるのは、ゼロ戦のエンジンを解析して、キュルケの実家の援助を受けて建造した蒸気動力式飛行船『東方号(オストラント号)』であろう。 空飛ぶ船自体はハルケギニアでは珍しくないものだが、船体の左右から伸びた羽根に一基ずつプロペラが装備されていて、従来の飛行船をはるかに超える速力を持ち、浮遊のための風石の消費も少なく済むため航続距離も長い。 現実世界で喩えると、カリブの海賊が帆船で戦ってた所にいきなりペリーが黒船を率いて襲い掛かってくるようなもんだと思えば良い。そりゃ勝てんわ。 おまけに空飛ぶヘビくんを始めとする魔法兵器も内蔵しており、エルフの空軍ですら翻弄された。 ハルケギニアのレベルでは完全なオーバーテクノロジーであり、これを完全に独力で開発したコルベールの頭脳は天才だとしか呼びようがない。 しかし彼はこれらの技術を戦いのために使おうとは考えておらず、自衛のための抵抗力は仕方がないとして、世の中を魔法に頼らない技術力で良くしていければとだけ切に願い続けている。 そしてそのための勉強をしたいと、才人の故郷である地球に行くことを夢見ている。 【過去】 現在でこそ温厚な良識人にしか見えないコルベールであるが、彼が今の性格と信念に至るまでには大きな過ちとトラウマがあった。 二十年前、若い頃の彼は国の直下である王立魔法研究所実験小隊というものに所属する戦闘専門のメイジであった。 これはタバサの所属しているガリアの北花壇騎士団と同じく国の汚れ仕事を請け負う組織で、かなり後ろ暗い非道なこともしてきた。 そこの小隊長であったコルベールは、それでも必要悪として仕事をこなしてきたが、ある時タングルテール村に疫病が流行ったとして村を住人ごと焼き討ち皆殺しにせよとの命令を受けた。 コルベールは小隊を率いてタングルテール村を炎で包んだが、部下からの報告で村に疫病が蔓延している気配はないと知り、これが国の一部の重臣の私欲による「新教徒狩り」であると看破してしまう。 だが、時すでに遅く、かろうじて幼少の頃のアニエスだけを救い出すことはできたが、村は完全に壊滅してしまった。 このことで、国のために杖を振るうことへの空しさを感じてしまったコルベールは実験小隊を辞め、自分が小隊にいた痕跡もすべて消して野に下った。 そして以後、罪滅ぼしのために財産も投げうって、人々の役に立つ研究に没頭してきたのであった。 この信念と覚悟は本物で、成長して故郷の復讐に燃えるアニエスが目の前に現れた時はためらわずに命を差し出そうとした。 一方で実験小隊時代の戦闘力はまったく衰えておらず、生徒を傷つけようとする相手には「炎蛇」と呼ばれて恐れられた凄腕メイジとしての凄みを見せる。 本編では20年ものブランクがあるにもかかわらず、かつての部下であり20年間戦闘経験を積んできた傭兵メイジであるメンヌヴィルを瞬殺してしまった。 また、王宮に幽閉されてしまった才人たちを、警備の兵士を誰一人殺さずに気絶させて正面突破で救出するという離れ業を演じている。 エルフなどの人外を除いても、作中で彼に比肩し得るメイジは最終巻時のタバサや烈風カリンなどのごく一部に限られるだろう。 ぶっちゃけて言えば、コルベールがいなければゼロの使い魔の物語は詰んでいた。 キュルケにはこれらのことやメンヌヴィルから助けられたこともあって本気で惚れられており、コルベールは生徒が相手だということで困惑しているものの、キュルケは引くつもりは微塵もなく、歳の差20以上の遅咲きの恋となった。 【劇中での活躍】 1巻の冒頭から、使い魔召喚の儀をおこなっていたルイズたちの教師として登場。 なにげにサブキャラとしても一番の登場である。 人間を召喚してしまうという前例のない事態にも落ち着いて対処し、ルイズに「召喚した使い魔はやり直せない」と告げる。 その後、才人の手に浮かんだ奇妙なルーンの正体を伝説の使い魔であるガンダールヴのものであると調べ上げた。 ギーシュとの決闘に勝利した才人をガンダールヴだと確信し、すぐに王宮に報告すべきだとオスマン学院長に詰め寄るが、学院長から「戦争の火種になりかねない」と制止されるという、彼の素性からすればおかしな行動もしている(*2)。 3巻では授業中に自作の原始エンジンの模型を見せ、授業を見学していた才人に驚かれて交流を持つようになる。 その縁で才人が見つけたゼロ戦の整備と燃料調達を請け負い、見事ゼロ戦を大空に復活させた。 その後、アルビオンとの戦争に赴くことになったルイズと才人に改造したゼロ戦を託し、自身は学院に残る。 同時に「戦争に慣れるな、必ず生きて帰ってこい」という激励の手紙を自分の夢と贖罪の意思を込めて渡し、二人の価値観に少なからぬ影響を与えている。 学院では残った生徒たちに授業を続け、銃士隊が生徒たちへの軍事教練を始めた時もかたくなに反対の態度をとり続けた。 だがしばらくして魔法学院に生徒たちの身柄を狙ってきたアルビオンの傭兵団が来襲し、生徒たちや護衛の銃士隊の力では手に負えないと判断したコルベールはついに杖を取る。 圧倒的な実力差で傭兵団の団長であるメンヌヴィルを始末するが、乱戦の中でアニエスをかばったことで重傷を負ってしまう。 そこでタングルテール村の生き残りであるアニエスから、故郷の仇と剣を向けられるが、話の途中で力尽きてしまう。 だがそのときにはまだ絶命してはおらず、とっさに機転をきかせたキュルケが死んだとハッタリをかますことでアニエスを引かせていた。 しかし重傷を負ったことは変わらず、かつしばらくアニエスの目から逃れるためにキュルケの実家で療養生活を送っていた。 その際に、大貴族であるキュルケの支援を得て、自身の念願であった冒険船「東方号」を建造していた。 学院では才人たちも、コルベールは死んだという知らせを信じていたが、学院がシェフィールドの襲撃を受けた時にキュルケとともに東方号に乗って颯爽と駆けつけた。 シェフィールドの飛行ゴーレムを空飛ぶヘビくんで一掃し、生きて帰還した姿で皆を喜ばせる。 以後はさらわれたタバサを救うためにガリアに潜入しようとする才人たちをアシスト。 王宮に幽閉されてしまった才人たちを助け、その際に「王宮の警護の質も落ちたな」と兵を気絶させながらつぶやくゴルゴっぷりを見せている。 しかし追手のアニエスから才人たちを逃すために一人で殿として残り、アニエスと一対一で対面。 タングルテールを虐殺した罪を糾弾するアニエスに、罪は消しようが無く償いようもない、だから裁きは生き残りである貴官にゆだねるとして命を差し出した。 だがアニエスは、貴様を殺せば貴様の生徒たちが自分を憎むだろうと、憎しみの連鎖を断ち切ることを決意。二人の止まっていた時間が動き出した瞬間であった。 以後はしばらくの間、熱烈アタックをかけてくるキュルケに困惑しながらも研究生活を続けていた。 ロマリア行きの先は東方号で彼らを送り届け、タイガー戦車が発見された際には整備して自分も乗車してヨルムンガンド撃破に一役買っている。 さらにルイズがエルフにさらわれた際には東方号を失うことも覚悟で奪還部隊に参加した。 【使う魔法】 メイジとしての系統は2つ名通り「火」。 魔法学院の教師として教鞭をとっているため、火の系統の魔法はおおむね使えると思われる。 しかし戦いにおいては過去の後悔から、可能な限りの不殺を心がけているため本気では滅多に戦わない。 作中で本気で殺しにかかったのは、自身の元部下であり狂人とわかっているメンヌヴィルに対してのみ。そのときも無理とわかりつつ降伏勧告をしている。 その際に使った魔法は、その名も『爆炎』。 「火・火・土」の組み合わせからなるトライアングルスペルであり、空気中の水分を『錬金』で燃料油に変えて着火し、周辺の空気から酸素を奪いつくして範囲内の生き物を一瞬にして窒息死させるというドえげつない魔法である。 これを例えれば原理は現実にもある燃料気化爆弾(*3)。効果は溶解効果こそないがオキシジェンデストロイヤーに近い。 【余談】 原作ではメンヌヴィルを瞬殺したが、アニメ版ではメンヌヴィルがコルベールにとどめを刺そうとしたところアニエスが刺殺するという形で実質勝敗が逆転している。 また死を装うのも原作ではキュルケの機転と演技だったものがアニメではタバサが仮死の魔法をかけたという形になっている。 もっともアニメ版は原作では最後まで登場するワルドが1期最終話以降登場しない、など改変が非常に多いため些細な改変だったりする。 このようにチートじみた能力を持ち、作中人物の中でも特筆しているコルベールであるが、メタ的に言えば理由がある。 実はゼロの使い魔は初期プロットでは、発明少年である才人が魔法の異世界で科学を駆使して活躍するという、決定稿とはまったく違った形が考えられていた。 それが才人が普通の高校生という設定に改められた時に、科学で活躍するという設定を受け継いだのがコルベールだったというわけである。 つまり、コルベールは本来才人が持つはずだった「主人公属性」を持っているサブキャラということになるわけで、チート化するのもさもありなんというわけなのだ。 風体を頭の禿げたうだつのあがらなそうな中年ということにして才人たちの存在感を食わないようにしたヤマグチノボル先生の采配は見事なものだったと言えるだろう。 追記・修正願えるかな。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] アニエスに「自分を裁く権利がある」とか言いながら、証拠である名簿から自分の名を消したりするのは自分の罪を隠して逃げてるのと同じで、卑怯なんじゃないか? って声も割とある。二次創作ではその辺はコルベール以外の人物が代わりに隠蔽したりと少しフォローされたりもする。 -- 名無しさん (2022-09-04 12 34 17) ↑まあ、20年前の行動を今になって責めるのも酷だと思う。当時何もかもが嫌になって証拠消して逃げだして、後々になって考えを改めてもどうにもならないわけだし。 -- 名無しさん (2022-09-04 12 56 51) 超有能ハゲ、二次創作においても出番に恵まれていたりする -- 名無しさん (2022-09-04 17 06 59) タバサの機転だが、仮死状態からの復活という、これまた主人公っぽいことをしてる(というか、実際に才人も、ティファ二アによって仮死状態からの復活をしてる) -- 名無しさん (2022-09-04 21 42 19) アニメで遺書を読んだ才人が泣いていて死んだと思ってたけど、アレってなんで生きてたんだっけ? -- 名無しさん (2022-09-04 21 53 05) ↑2でタバサが仮死魔法をかけていたから・・・というのはアニメのみ。原作だとキュルケが気絶したコルベールに演技で上手い具合に死んだと誤解させた。ゼロ魔は死んだと思ったキャラが実は生きてましたってご都合展開が非常に多い。 -- 名無しさん (2022-09-04 22 51 25) 最終的にキュルケとくっついたのはびっくりしたな -- 名無しさん (2022-09-04 22 54 28) 爆炎は現実世界の燃料気化爆弾の方が近いのでは? -- 名無しさん (2022-09-04 23 21 29) ↑それは思いましたけれど、焼く効果や物理的な攻撃力は無くて窒息が主な効果だったので -- 名無しさん (2022-09-04 23 30 37) 何で登録日が「2022/09/24 (日曜日) 11 18 00」と未来の日付になってるんだろう。編集履歴によると「2022/09/04 (日) 11 24 38」みたいだけど。 -- 名無しさん (2022-09-05 01 30 07) ↑修正しました -- 名無しさん (2022-09-05 09 27 12) サイトに出した手紙の所本当好き。自分がやってきた事を断片的にも告白して「人の死に慣れるな」と言いつつそれでも自分の夢を語る所とか -- 名無しさん (2022-09-05 10 44 01) ワンピースの小説に登場したドロウも任務のためなら住人ごと焼き討ちする炎使いだけど、あちらは罪悪感ゼロの過激派でぶっちゃけ「改心する機会がないまま冷酷であり続けたコルベールのIF」と呼べる悪役。おまけにドロウの焼き討ちの巻き添えで家族を失った生存者がアニエスとは逆に首謀者を恨むどころか「命の恩人」と思い込んで首謀者の部下になるという皮肉……もっとも、真相を知った後は幻滅してたけど -- 名無しさん (2022-09-06 09 14 51) 実際はトライアングルじゃなくてスクエアメイジじゃなかったっけ。終盤でそう書いてあったような -- 名無しさん (2023-02-17 11 50 40) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/9323.html
前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔 ウルトラマンゼロの使い魔 第九十八話「恐れていたレッドキングの出現報告」 どくろ怪獣レッドキング 登場 ……ルイズとキュルケの喧嘩から端を発した、二人の決着の舞台となるミスコンの本番当日が 遂にやって来た。出場する選手は、他の人はルイズとキュルケの熾烈な争いに割って入るのを 躊躇ってしまったからか、この二人だけ。……イベントとして大丈夫なのか? そんな俺の懸念をよそに、ミスコンはつつがなくスタート。第一審査の学力対決――二人が一時間 延々とテスト問題を解いているという内容で、恐ろしく地味だった――はルイズに分がありそうでは あったが、第二審査の体力対決――普通の体力測定で、こっちも恐ろしく地味だった――は体格が 上のキュルケの方が勝っている感じだ。 そして多分勝負の分かれ目となる、肝心の水着審査! と自己アピール。キュルケはやはりと 言うべきか、この勝負に一番の力を入れてきていて、とんでもなく際どい水着とよく纏まった アピールを披露したのだった。これはルイズ大分不利なんじゃないか? 心配する中、壇上に立ったルイズは――先日買い物に行った際に、俺がルイズに似合うと 言ったあの水着を着ていた。 な、何だよ。結局、あれを買っていたのか。俺の意見なんかどうだっていいみたいな顔を しておきながら……そういうの、かわいいじゃんかよ。 そしてルイズは、何故このミスコンに出場したのかという質問に対して、こう答えた。 「そ、それは……。一番の動機は、クラスメイトから勝負を挑まれたからです。わ、わたしは、 挑まれた勝負から逃げることはしません。そして、その決断をする勇気は……ある人がくれた ものです。だから、わたしは……こうして、この場に立っています。り、理由は、その二つです」 ……ルイズに勇気を与えた人、か。それってどんな人なんだろうな。……まさか、俺…… じゃあないよな。そこまで行ったら嬉しすぎるんだけどなぁ。 ともかく、ルイズのアピールはたどたどしいところもあったが、真摯な気持ちがありありと こもっていて、情熱の点ではキュルケにも負けないものだった。観客からの感触も悪くない。 勝負の行方はいよいよ分からなくなってきた。果たして、投票の結果は――。 「栄えあるミスに選ばれたのは……ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール!」 結果は、僅差ながらもルイズの勝利であった! よかった……キュルケには悪いけれど、ルイズはかなり不利な勝負に向けて、あれこれと 努力を積み重ねていたからな。俺も立場上は両方の応援代表だったけれど、内心ではどこかに ルイズに勝ってほしい気持ちがあった。それが叶って、すごく嬉しい気分だ。 「優勝したルイズさんには、トロフィーとティアラが贈られます」 再び壇上に上がったルイズは、司会進行からトロフィーとティアラを授かる。トロフィーを抱え、 ティアラで着飾ったルイズの姿は……普段のつっけんどんな態度が嘘みたいに、とても輝いて見えた。 「さぁ、勝者としてのお言葉をどうぞ」 自分の勝ちなのに、どこか信じられないという風にポカンとしていたルイズだったが、 司会に求められて慌てて口を開いた。 「あの、その、ありがとうございます! う、嬉しいです……!」 「この優勝に自信はありましたか?」 「自信なんて……なかったです。だ、だから、信じられなくて。本当に、本当に、嬉しいです!! ありがとうございます!」 ルイズ、心の底から感激しているって感じだ。本当、よかったな、ルイズ……。 「おめでとう、ルイズ!」 「おめでとーう!」 「おめでとう、ルイズさん!」 クリスやギーシュ、春奈たちの学校の仲間たちもルイズに称賛の言葉を贈った。 「あれが優勝のコメント? まるで子供ね。けど、ルイズらしいわ」 「……ん」 モンモランシーは少々手厳しいコメントだったけれど、嫌味らしさは微塵もなかった。 タバサもそれにうなずく。 「まさか、ルイズに負けるなんて……」 キュルケは少なからずショックを受けていたようだったけれど、悔しさは見せずに勝者へ向けて 惜しみない拍手を送った。他のみんなも手を叩き、ルイズは万雷の拍手で勝利を祝福された。 色々大変だったけれど、ミスコンもこれで大団円ってところだ――。 「ピッギャ――ゴオオオウ!」 しかしその時、体育館の外から耳をつんざく何かの雄叫びが聞こえてきた! 今のは、経験から言うと……また! 「ピッギャ――ゴオオオウ!」 気がつけば、いつの間にか外の町の真ん中に大怪獣がそびえ立っていた! あいつは、図鑑を開かなくても知っている! 怪獣の中でも一、二位を争うほど有名な奴だ! その名はレッドキング! ……何だか写真で見たのとちょっと違うような感じもするけど。 「ピッギャ――ゴオオオウ!」 レッドキングは雄叫びを発しながら、足を振り上げて家屋を踏み潰し始める! ――深夜のトリステイン、一地方の村にて。 『ピッギャ――ゴオオオウ!』 「うわぁぁぁぁッ!」 「み、みんな起きろー! 怪獣だー!」 寝入っていた村が、今は大パニックに覆われている。突如として大怪獣が出現し、村の破壊を 始めたからだ。村人たちはたまらず飛び起き、大慌てで避難していく。 怪獣の名はレッドキング――限りなく本物に近い、イミテーションではあるが。 レッドキングは人間など到底及ばない暴力を以て村を蹂躙するが、正義を守るチーム、 ウルティメイトフォースゼロがそれを見過ごしはしない。ほどなくして村にミラーナイトが 駆けつけたのだった。 『とぁッ!』 池の水面から飛び出したミラーナイトは、すかさずレッドキングに飛びかかっていき飛び蹴りを 仕掛ける。相手の先手を奪う、華麗ながら速い攻撃である。 だが。 スカッ。 『な、何ッ!?』 ミラーナイトの飛び蹴りは、レッドキングの身体をそのまま突き抜けてしまったのだった。 空を切って着地したミラーナイトは言葉を失う。今のはどういうことなのだろうか。 今度は手の平を広げて掴みかかるも、やはり手はレッドキングをすり抜ける。全く触れることが 出来ないのが、これで確定した。 『ピッギャ――ゴオオオウ!』 そうだというのに、レッドキングの方からは物体に干渉し、今もまた家屋を崩したのだ。 それはつまり、このレッドキングが単なる幻影の類ではないことを意味している。 『こ、これはどうなってるんだ……? こちらからは指一本触れることすら出来ないのに…… 向こうは建物を破壊しているなんて!』 怪奇現象に直面してミラーナイトは混乱して叫んでいた。 「うわあああああッ!」 「怪獣だぁーッ!」 祝賀ムードだった体育館は一転、悲鳴の合唱が発生して生徒たちが一斉に避難していく。 「ゼロ!」 『おうよ!』 そんな中、俺はこっそりと人の間から脱け出て、物陰に隠れた。もちろん、変身して レッドキングと戦うためだ! 「デュワッ!」 ウルトラゼロアイを装着し、ゼロに変身! 飛んでいったゼロは、レッドキングの前で 巨大化して着地した。 『やめな! こっからは、このウルトラマンゼロが相手になってやるぜ!』 「ピッギャ――ゴオオオウ!」 構えを取って挑発するゼロに気がついたレッドキングは、持ち前の好戦さを発揮してすぐさま こっちに向かって突っ込んできた! 『ピッギャ――ゴオオオウ!』 ミラーナイトをまるで無視して村を破壊していくレッドキング。ミラーナイトは一切の手出しが 出来ずに見ているしかない悔しさを味わわされていたが、ここでレッドキングに異変が発生。 唐突に挙動を変え、何もない虚空に振り返ったかと思うと、そっちに向かって駆け出したのだ。 『な、何だ?』 呆気にとられるミラーナイト。更にレッドキングはパンチやキックを繰り出すが、そこにはやはり 何もないのだ。 「ピッギャ――ゴオオオウ!」 『くッ! ぬおッ!』 レッドキングの繰り出すパンチやキックをガードするゼロだが、レッドキングはパワー型怪獣を 代表するような奴。一発一発の重量が尋常じゃなく、食らう度にゼロはふらつく。 『何の! やられたままじゃいられねぇぜ!』 しかしゼロは気を取り直すことで態勢を立て直し、レッドキングに肉薄。そして素早く 相手のつま先を踏みつけた! 「ピッギャ――ゴオオオウ!?」 これは痛い! どんな生物もつま先までは頑丈ではない。レッドキングも同じなようで、 悶絶して動きが止まる。 ゼロはその隙を突いて相手の首を脇に抱え込み、そのままひねり投げた! 『でぇぇぇりゃあッ!』 「ピッギャ――ゴオオオウ!」 レッドキングの巨体が地面に激しく打ち据えられる! 『ピッギャ――ゴオオオウ!』 ミラーナイトの見ている前で、レッドキングがいきなり前転して大地に仰向けに倒れ込んだ。 当然、ミラーナイトは何もしていない。 『さ、さっきから何が起こってるんだ……?』 さっぱり理解が出来ないミラーナイト。彼の視点からだと、一人相撲をしていたレッドキングが 自分から地面に投げ出されたようにしか見えないのだ。 「ピッギャ――ゴオオオウ!」 起き上がったレッドキングは尻尾を横に振り回して攻撃してきた。その一撃はまるでハンマーの殴打。 ゼロも受け止め切れずに殴り飛ばされた! 『うぐあッ!』 負けるな、ゼロ! レッドキングを倒せるのはお前だけなんだ! 『言われるまでもねぇさ! せぇぇいッ!』 立ち上がったゼロは再度飛んでくる尻尾を見事キャッチ。相手の勢いを逆に利用して、 ジャイアントスウィングを掛ける! 『おおおおおおおッ!』 「ピッギャ――ゴオオオウ!」 レッドキングの足が地面から離れ、宙に浮いて猛スピードで回転する! とうとうレッドキングは宙に浮き上がって高速回転を始めた。しかも回転軸はレッドキング 自身にはなく、虚空の一点を中心に大きく回っている。 これにミラーナイトは、レッドキングは自分の力で回転しているのではなく――そもそも レッドキングに浮遊能力はない――何かに振り回されているようだ、と感じた。 『こいつ……さっきから、見えない何かと戦っている、というのか……?』 つぶやくミラーナイト。普通ならちょっと考えにくいことであるが、先ほどからのレッドキングの 奇行はそうでもないと説明がつかないものであった。 レッドキングを地面に叩きつけたゼロは、いよいよとどめの必殺光線を発射する! 『これでフィニッシュだぁぁッ!』 腕をL字に組んで、ワイドゼロショット! 光線は綺麗にレッドキングに命中した。 「ピッギャ――ゴオオオウ!!」 この攻撃にレッドキングも耐えられず、一瞬にして大爆発を引き起こした。 『ピッギャ――ゴオオオウ!!』 最終的に、レッドキングはいきなり爆発を起こして消滅した。事態を一切呑み込めていない ミラーナイトは、レッドキングの再出現を警戒してしばらく周囲の様子を伺っていたが、それ以上 何事も起きる気配がないので、構えを解いた。 『……結局、何だったのだろうか……』 ミラーナイトはそんなひと言を漏らしていた。突然現れたレッドキングに対して何も出来ないかと 思いきや、レッドキングは奇行の果てに爆散した。この訳の分からない事態に、混乱するのも当然というもの。 ミラーナイトは思わず、今回の戦いとも呼べない戦いで感じたことをそのまま口にした。 『まるで、夢でも見ていたかのようだ……』 レッドキングを倒し、学校からの帰り道。俺はルイズと一緒に歩いていた。 「ルイズ、改めて優勝おめでとう。ホントにお前、よく頑張ったよ」 「あ、ありがとう……」 あの後ドタバタしたので直接言えていなかった称賛の言葉を伝えると、ルイズは控えめに お礼を言ってから、 「あ、あの、サイト? その、優勝のこと、だけど……」 「ん? どうした?」 「……わたしがキュルケに勝てたのは、サイト、あなたが色々手伝ってくれたからよ。あなたの アドバイスがなかったら、きっと無理だった……。だから、その……ほんとに感謝してるわ……。 ありがとうね……」 二度目のお礼。な、何かルイズ、急にしおらしくなることが最近多いよな……。そういう かわいいところを見せられると、ルイズのことを意識してしまって何だか気恥ずかしくなる……。 「あ、あの、ルイズ?」 「何よッ!」 「あ、ごめん。やっぱ、何でもない」 何か言おうかと思ったが、今回も変にルイズを意識して、結局言うことが思いつかなかった。 「じ、じゃあ、わたしの話を聞きなさい」 「何だ?」 ルイズの話? ミスコンが終わって、まだ何かあるのだろうか。 「わ、わたし、ミスコンのために水着、買ったわよね」 「あ、ああ。そうだよな」 「そ、それだけに着て終わりってもったいないでしょ? そう思うでしょ?」 「確かに。かわいい水着だったし、一度着たきりじゃもったいないよな」 そうだな、今年の夏は過ぎたけれど、また次の機会にでも泳ぎに行く時とかに着るのも いいだろうな。と思っていると……ルイズは言った。 「だ、だから……ここ、こ、今度、海に……つ、連れていきなさいよ!」 「海に?」 え? お、俺が、ルイズを……? 「そうよ! で、でで、でも、言ったでしょ!? これは水着がもったいないからって! だ、だから仕方なく、あんたと行ってあげるんだからッ!」 そ、そういうことか。でも……女の子から泳ぎに誘われるなんて、すごくドキドキするな……。 夏休みには、シエスタたちと遊びに行ったはずだが……。 「お、俺は別にいいけど。……じゃあ、いつ行こうか」 「そ、それはあんたが決めることでしょ!? ちゃんと計画立てて、それにせっかくだから、 た、楽しませてよね!」 「分かったよ。がんばってみます」 ルイズと泳ぎに行くプランか……。俺に上手に立案できるかな? 更にルイズは要求する。 「……じゃあ、とりあえず。この場は、わたしを家までエスコートしてちょうだい」 「はいはい。んじゃ、行きますか」 ぶっきらぼうに呼びかけたら、ルイズは怒鳴り声を出した。 「『行きますか』じゃないわ! エスコートなんだから、もっと優雅に!」 「優雅って……。お前、いつもそればっかだな」 やっぱり、育ちがいいとそういうの気にかかるもんなんだろうか。まるで貴族みたいだよな。 ……いや、ルイズが「優雅」って言うの、これが初めてだったじゃないか? 何だかよく 言われているような気がしたけど……。 「サイト?」 「あ、ああ、何でも。んで、優雅な誘い方って?」 「『レディ、こちらです。お手をどうぞ』。これくらい考えつかないの?」 おいおい、無茶言うなよ。俺は日本の一般庶民だぞ。ってルイズ相手に言っても、しょうがないか。 「はいはい。ではレディ、こちらです。お手をどうぞ」 「……ありがとう、ジェントルマン」 俺が差し出した手をルイズが取り、俺たちは再び歩き出す。いい歳して手をつないで歩くのは 恥ずかしかったが……ルイズが横にいると、何故だか周りの目はそれほど気にならなかった。 ……つい最近、似たようなことがあったような気がしたのも、その理由かもしれない。 家に帰ると、リシュが俺を出迎えてくれた。 「ただいま、リシュ」 「お帰り、お兄ちゃん! 今日がお兄ちゃんの学園のミスコンだったんだよね。楽しかった?」 と尋ねてくるリシュに、俺はぐっと親指を立てた。 「ああ、バッチシな! 当初の目的だった、ルイズとキュルケの仲も多少なりは改善できたみたいだし」 その本来の目的が達成できただけでも、苦労した甲斐があったというものだ。 「これからは、平穏な日常が送れるだろうな。久々に明日が来るのが楽しみな気分だぜ!」 ルイズといつか、泳ぎに行く約束もしたしな! またルイズやみんなと楽しい時間を過ごすんだ。 そう、明日から……! ……そう思っていたら、クス、といった音がした。 「そうだね……平穏な明日が来るよ……。これからは、もう何にも苛まれない……」 「……? リシュ、今何か言ったか?」 「ううん! 何も言ってないよー!」 ニコッと笑いかけたリシュは、クルリと背を向けてそのままパタパタと家の奥へ走っていった。 ……その姿はいつものようにあどけない、無邪気なもの、のはずなのだが……俺は何故か…… 妙に不安なものを感じた。どうしてなんだろうか……。 平穏な明日……明日は、来るよな。当たり前のことなんだが……。 前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/9352.html
前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔 ウルトラマンゼロの使い魔 第百十一話「永遠(とわ)なるイーヴァルディ」 邪悪生命体ゴーデス 迷子珍獣ハネジロー 登場 ルイズの“虚無”の魔法の力を目の当たりにして、一旦は飛んで去ろうとしたビダーシャル。 しかし眼下のアーハンブラ城が突然崩壊し、巨大生物が出現したことには、普段は冷徹なほど 落ち着いている彼も唖然とさせられた。 「な、何だあれは……」 風石の力で高度を保ったまま、巨大生物――ゴーデスを観察する。城を下から破壊して 出てきたということは、城の地下に潜伏していたということだろう。あんな巨大なものが。 「全く気がつかなかった……一体いつから……」 思案するビダーシャル。エルフである自分は、自然そのものといえる精霊の力と契約して、 その「声」を聞くことが出来るが、真下にあんなものが隠れていたということは、精霊は教えて くれなかった。いや、精霊もあの存在を感じ取れなかったのか。 大地の精霊に問えば、近くに怪獣が潜っていればすぐに分かる。その精霊でも感知できなかった ような異常な怪物が、自分の戦いのすぐ後に出現した。これは偶然だろうか? ふとビダーシャルの脳裏に、才人が叫んだ「ガリアは怪獣を操っている」という言葉がよみがえった。 「……」 冷や汗を流しながら、ビダーシャルはゴーデスの触手が届かないくらいの距離の地点に降下していった。 「ひいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃッ!!」 ギーシュ、マリコルヌ、モンモランシーの三人が自分たちの面前にそそり立つ巨大な怪物、 ゴーデスを見上げて悲鳴の合唱を上げた。これまで幾度も怪獣を見てきた彼らであるが、 この距離はものすごく危険だ。ゴーデスが少し触手を伸ばせば、彼らなど簡単にペシャンコに 出来るだろう。 「タバサ! タバサはどうなったの!?」 一方でキュルケは、あくまで友のことを案じ、狂ったように叫んでいる。それにウェザリーが、 ゴーデスにおののきながら答えた。 「さっきの兵士たちは、あの怪物の肉の中に呑み込まれていったわ。ということはタバサと 彼女の母親も同じように……」 「そんなッ! タバサたちは無事なの!?」 「そこまでは分からないわ!」 ゴーデスは触手の一本を振り上げ、キュルケたちに叩きつけようとする! 「ゴオオオオオオ……!」 「この怪物ッ! タバサを返しなさい!」 ゴーデスに杖を向けるキュルケだが、ウェザリーがそれを慌てて抑えた。 「落ち着きなさい! 敵うはずがないわ!」 「逃げろぉぉッ!」 才人の絶叫を合図に、一同はクルリと反転して全速力で逃走し始めた。直後に、彼らのいた 場所に触手が叩きつけられる。 しかしゴーデスのサイズに対して、才人たちはあまりに小さい。どんなに走ったところで、 すぐに追いつかれてしまう。そこで才人はルイズをギーシュとマリコルヌに押しつけた。 「ルイズを頼む!」 「頼むって、きみは!?」 「俺は奴の気を引きつける! その間に逃げてくれ!」 言うが早いや、才人は再び反転して、デルフリンガーを握り締めてゴーデスに突っ込んでいく! 「うおおおおおおッ!」 「ああッ!? な、何て無茶をッ!」 ギーシュたちが止める間もなく、才人はゴーデスの左側へ回り込むように駆けていく。 ゴーデスはそちらに顔を向けて、ギーシュたちから目を離した。 「くッ、彼の献身を無駄にしてはいけない! みんな、全力で逃げるんだぁ!」 才人が気を引きつけている間に、出来るだけ遠くへ逃げようと必死に足を動かすギーシュたち。 だが、囮となった才人に触手が無慈悲に振り下ろされた! 「あああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!! さ、サイトぉぉぉぉぉぉぉッ!!」 絶叫する仲間たち。ゴーデスは再び目を彼らに向け、触手を伸ばしてきた。まだその間合いから 逃れられてはいない。 「も、もう駄目だぁぁぁぁぁッ!」 どう考えても逃げるのは間に合わない。絶望するマリコルヌだが、その時に空の彼方から 猛スピードで飛んでくる一つの影が。 「きゅいーッ!」 「あれは! シルフィードぉ!」 シルフィードであった。宿で待機していたのだが、異常を察知したことで怪我を押して 助けに来てくれたのだ。 ギーシュたちは全員シルフィードの背に乗り、シルフィードは飛翔。間一髪のところで ゴーデスの触手から逃れられることが出来た。 「あ、危なかった……」 「でも、サイトがッ!」 モンモランシーが叫んだその時、ゴーデスの正面に人型の何かがぐんぐんと巨大化して立ちはだかった。 「セェアッ!」 「あぁッ! ウルトラマンゼロだぁッ!」 それはウルトラマンゼロ! 才人はすんでのところで変身を行い、難を逃れていたのだ。 「デヤッ!」 「グギャアアアアアアアッ!」 これ以上の狼藉は許さないと、戦いの構えを取るゼロ。対するゴーデスも全部の触手を振り上げ、 ゼロを迎え撃つ姿勢を見せた。 『くッ、まさかとは思ったが、ホントに出てきやがるとはな……ゴーデスッ!』 ゼロはゴーデスの出現に内心おののいていた。彼はかつてゴーデスと、宇宙の命運を懸けて 戦い合ったウルトラマングレートからどういう生物なのかを聞いていた。 あらゆるエネルギーを食らい、細胞は別の物質や生命体に憑依、融合することが出来る。 ゴーデスはその能力で次々に怪獣を生み出し、最終的には宇宙の全てをその身に取り込んで しまおうとしたという。そこらの怪獣、宇宙人とは格が違う強大な相手だ。 『だがどうも様子が妙だな……生気を感じねぇぜ』 ゼロには一つ、疑問があった。ゴーデスは知能レベルも高く、グレートと対等に対話をしたと 聞いている。だが今目の前にいるのは、ひと言も言葉を発しないどころか身体に活力が今一つ 感じられない。まるで誰かに動かされているよう……ゾンビか何かのようであった。 「グギャアアァァァッ!」 ゴーデスは両眼から赤いレーザーを発して、様子を窺っているゼロに攻撃を仕掛けてきた! 『ちッ、気にしてる暇はねぇか!』 咄嗟にレーザーをかわしたゼロは、拳を握り直してゴーデスを迎え撃つ姿勢を取り直した。 そこに才人が問いかける。 『ゼロ、タバサたちがどうなったか分からないか!?』 『ちょっと待ちな……!』 ゼロが透視を使った結果、ゴーデスの体内にたくさんの人の影があるのを確認した。その内の一つが、 体格からしてタバサだとゼロは判断した。 『やっぱり、ゴーデスの中に呑み込まれちまってるぜ! まだ生きてはいるみたいだが、 早くどうにかしねぇとどうなっちまうか分かったもんじゃねぇ……!』 「ゴオオオオオオオオオ……!」 ゴーデスが振り回してくる触手を打ち払うゼロ。 「シェアァッ!」 反撃にエメリウムスラッシュを発射。ゴーデスの胴体の中心に命中するが、ゴーデスに 効いた様子は全くない。……いや、そのエネルギーが吸収されてしまったようだった! 「グギャアアアアアアアアアッ!」 「ゼアッ!」 ゴーデスのレーザーを拳で弾きながら懐に飛び込み、拳打を繰り出す。しかしいくら打ち込んでも、 これもまるで手応えがなかった。 ゴーデスは衝撃まで吸収できるようであった。 「テェェェェヤッ!」 一足飛びで下がったゼロはワイドゼロショットを撃ち込んだ。だがこれも効果が見られなかった。 『何て奴だ……攻撃のエネルギーを全て吸収しちまってる! 攻撃が効かねぇんじゃ倒しようがねぇぜ!』 驚愕するゼロ。あらゆるエネルギーを食らう、というのが伊達ではないことを見せつけられた。 このままでは、時間が経つほどに追いつめられるだけだ。 『それにただ倒すだけじゃなく、タバサたちを奴の内部から救い出さねぇと……』 『大丈夫なのか、ゼロ!』 『ああ、こういう時に有効な手が一つあるぜ』 そう言ったゼロは、才人に尋ねかけた。 『だがかなりの危険がある。才人、お前にもつき合わせることになるが、覚悟はいいか?』 それに才人は即答した。 『タバサが助けられるのなら、何だって怖くないぜ!』 『へッ、今更だったな。よぉしッ!』 ゼロはウルティメイトブレスレットから青い光を発し、ルナミラクルゼロに変身した。 『才人たちが命を懸けて戦ったんだ! 俺も命懸けるぜッ!』 そしてゼロは地を蹴って宙に浮き上がり、ゴーデスめがけまっすぐ飛んでいった! 「ゴオオオオオオオ……!」 ゴーデスは青い怪光を放ち、ゼロを球形のバリアの中に閉じ込める。しかしゼロはそのまま 飛んでいき、ゴーデスに突っ込んだ! その結果、ゼロがゴーデスの体内に消えていった。 「うわあああああ―――――――! ゼロまでが奴に呑み込まれてしまったぁぁぁぁッ!」 ギーシュたちは絶望の悲鳴を発す。が、キュルケとウェザリーはゼロの行動をしっかりと観察していた。 「いえ、むしろ自分からあれの体内に入っていったようだったわ……」 ゼロがゴーデスの体内に消えると、ゴーデスの動きがピタリと止まった。 キュルケの言った通り、ゼロはルナミラクルの超能力で自分からゴーデスの内部に入り込んだのだった。 外からではどうしても倒せないゴーデスを内部から突破し、同時にタバサたちを救出する。奥の手の パーティクルナミラクル作戦だ。 『ぐぅッ! 何て圧力だ……!』 だがゴーデスは内側もそう簡単にはいかなかった。内部にはゴーデスの吸収したエネルギーが 充満しており、それがすさまじい圧力を生じている。ウルトラ戦士の強靭な肉体でも苦しいほどであった。 更には、怪獣の幻影がゼロに襲いかかる。 『キイイィ! キイイィ!』 『グギュウウウウウウウウ!』 『なッ!? こいつらは……うおぉッ!』 キングザウルス三世とシルバゴンの幻影がゼロに食らいついてきて、彼の精神力にダメージを与える。 『ギャアアァァァ――――!』 『パア――――――オ!』 更にアイロス星人、トドラ、ベル星人、ヴァリエル星人の幻影が押し寄せてきて、ゼロに激突した。 『ぐぅあああッ!』 これらの幻影は、ゴーデスが怪獣たちに最も接してきたタバサの記憶を読み、再現したものであった。 タバサが苦しんできた記憶が今、ゼロにも牙を剥いて彼を苛んでいるのだった。 『キュオォ――――――――!』 『キュウッ! アァオ――――――――ッ!』 『ブモォ――――――――!』 『くっそ! このぉッ!』 キュラノス、ガーゴルゴン、カウラの幻影にゼロは拳を突き出して反撃する。だがこの怪獣たちは あくまで幻影。そんなことをしても君が傷ついていくだけだ! 『ギャアオオオオオオウ! オオオオウ!』 『キャア――――!』 『ぐぅッ……! こんなことしてる場合じゃねぇってのに……!』 テレスドンと再生ドラコの幻影に押し込まれ、うめくゼロ。この空間のどこかにタバサたちが いるはずだが、絶え間なく襲い来る怪獣たちの幻影に阻まれ、見つけ出すことが出来ないでいた。 そうしている間にも、ゼロのエネルギーはどんどんと消耗していく……! ゼロと一体化している才人も、自分のあらん限りの力を振り絞り、ゼロを助けようとしていた。 『頑張れ、ゼロ……! ここまで来たんだ……! 絶対タバサを助けるんだ!』 才人の心にあきらめはなく、どれだけ怪獣の幻影に苦しめられても立ち上がって力を出し続けた。 外では、動きを止めたゴーデスをシルフィードに乗ったギーシュたちが固唾を呑んで見下ろしている。 「一体どうなってしまったんだ……。ゼロは無事なのか?」 「うぅん……」 その時、体内でのゼロの戦いの気が精神を通じて影響を与えたのか、ルイズが目を覚まして 身体を起こした。 「あッ、ルイズ! 気がついたか!」 「い、一体どうなったの……? タバサは助けられたの……?」 起き抜けに首を振って問いかけたルイズに、モンモランシーが手短に答えた。 「それが怪獣が現れて、城の人たちを呑み込んじゃって……ウルトラマンゼロが出てきたんだけど、 彼も呑み込まれちゃったの!」 「ええ!?」 急激に目が冴えて、ゴーデスを見下ろすルイズ。彼女は、あの中でゼロが戦っているのだと いうことを直感で理解した。 (サイト……) 自分の魔法はもう打ち止めだ。ルイズは才人とゼロの無事と勝利を祈り、ぎゅっと両手を 握り締めた。 その頃、タバサはゴーデスの体内に力なく漂っていた。自分の記憶がゼロへの攻撃に利用 されていることも知らず、光を失った瞳で呆然と宙を見つめる。 (ああ……わたしは、ここで終わりなんだ……) タバサの心を支配しているのは、絶望と諦観だった。こんな状況に陥ってしまったら、 助かる手段なんてあるはずがない。タバサは最早抗うこともせず、ただ流されるままにいた。 同時にこれまでの自分の足取りを振り返る。 今の自分の始まりは、ファンガスの森から。ファルマガンを失い、二度と何かを失わないことを 心に誓って「シャルロット」の名を捨てた。そしてひたすらに戦い抜いた。それもこれも、自分の 身代わりとなって心を壊された母を救うため。自分は先ほど読んだ『イーヴァルディ』のような 勇者になろうとした。 でも出来なかった。所詮、自分はその程度の人間だったのだ。ほどなくして、母も消えて しまうのだろう。彼女の献身も、自分の努力も、全ては無駄だったのだ……。 もうこんな無力な自分が生きていても、仕方ない。タバサはこれ以上何もせず、自分が 消え去る時をただ待っていた……。 シオメントは、イーヴァルディに尋ねました。 『おお、イーヴァルディよ。そなたはなぜ、竜の住処へ赴くのだ? あの娘は、お前をあんなにも 苦しめたのだぞ』 不意に、タバサの耳にそんな文句が聞こえてきた。 「……え?」 暗闇に閉ざされていたタバサの瞳に、光が戻る。今のはどこから聞こえてきたのか。今のは…… 自分が朗読していた『イーヴァルディの勇者』の一節ではないか。 幻聴だろうか? イーヴァルディは答えました。 『わからない。なぜなのか、ぼくにもわからない。ただ、ぼくの中にいる何かが、ぐんぐんぼくを 引っ張っていくんだ』 もう一度、はっきりと聞こえた。 同時に、宙の彼方の一点に、温かい光が瞬いたかのように見えた。 あの光は何だ。ともに聞こえた『イーヴァルディの勇者』の内容はどういうことなのか。 『ルーを返せ』 『あの娘はお前の妻なのか?』 『違う』 『お前とどのような関係があるのだ?』 『なんの関係もない。ただ、立ち寄った村で、パンを食べさせてくれただけだ』 『それでお前は命を捨てるのか』 イーヴァルディは、ぶるぶると震えながら、言いました。 『それでぼくは命を賭けるんだ』 まさか……あの光は、『勇者』なのだろうか? イーヴァルディのように、自分を助けに来てくれた? ……そんなはずはない。必死に頑張っても母を助けられなかった無力で無価値な自分のために、 誰が命を賭けてくれるというのか。 ファンガスの森に現れた銀色の巨人――ウルトラマンのように、自分を助けてくれる『勇者』。 心のどこかでいつも待ち焦がれていた。しかし、それが今になってやってきて、自分を救い出して くれるなんて都合の良いこと、あるはずが……。 イーヴァルディは竜に向けて剣をふるいましたが、硬い鱗に阻まれ、弾かれました。竜は爪や、 大きな顎や、噴き出す炎で何度もイーヴァルディを苦しめました。 イーヴァルディは何度も倒れましたが、そのたびに立ち上がりました。 光が、どんどんと大きくなっていく。 タバサは思わず、そちらに向けて手を伸ばしていた。 いつの間にか心から絶望が消え、希望が溢れていた――。 「パムー」 『ん!?』 ゼロは突然あらぬ方向に首を向けた。そちらから、タバサの声――タバサの朗読の声が聞こえたのだ。 『才人……!』 『ああ、俺にも聞こえた!』 二人は内容を知らないのだが、『イーヴァルディの勇者』の文章が延々と聞こえてきていた。 タバサが朗読した際のものの再生であった。 それとともに、宙の彼方に光の輝きが見えた。 『――うおおおおおおおおおッ!!』 ゼロは反射的に、幻影を振り切ってそちらへ向けて飛び出した。小さな光へ向けて手を 伸ばしながら突き進んでいくと、光が大きくなっていく。近づいていく。 『才人、手を伸ばせッ!』 ゼロに言われたように、才人も光に向けて精一杯腕を伸ばした――。 タバサの視界に、こちらへ向けて飛んでくるゼロの姿が映った。 その姿には、才人が重なっていた。 「――タバサぁぁぁぁぁッ!!」 勇者――。タバサは心で感じた。 タバサの腕を、ゼロの手――才人の手の平が掴み取った! 『もう大丈夫だよ』 イーヴァルディはルーに手を差し伸べました。 『竜はやっつけた。きみは自由だ』 「セェェェェェェェェアァッ!!」 ゴーデスの頭頂部が噴火したかのように炸裂! 遅れてゴーデスの首、胴体も粉砕された! それとともに飛び出してきたのは、ウルトラマンゼロだった! 「……やったぁぁぁぁぁぁああああああああああああッ!!」 一拍遅れて、事態を把握したルイズたちは大歓声を発した。 ゴーデスが消滅し、シルフィードは地上へ降り立つ。周囲には、ゴーデスの内部から解放された 兵士たちが転がっていた。結局眠ったままの彼らは、自分たちの身に何が起きていたのかも知らないのだろう。 「タバサは! タバサはどこ? サイトも無事かしら……」 キュルケを始めとして、タバサたちの姿を捜して辺りを見回していると……彼女たちの 望んでいない者が近寄ってきた。 「……よもや、このような事態になるとはな」 ビダーシャルであった。ルイズたちは仰天し、咄嗟に身構える。 「何よ! まだやろうっていうの!?」 杖を構えるルイズだが、ビダーシャルにその意志はなかった。 「勘違いするな。我は真実を確かめに来ただけだ。……お前たちは言ったな、蛮人の国が 怪獣を操っていると。それは真だと、お前たちの崇拝するものに誓って言えるか?」 ルイズは胸を張ってその問いかけに答えた。 「もちろんよ! 今の見たでしょ? 偶然出てきたなんて都合のいいこと、あるはずないわ。 あんただって、さっきサイトに言われたことが気にかかったからこうして戻ってきたんでしょ」 「……」 「悪いことは言わないわ。ガリアとは手を切りなさい。後悔してからじゃ遅いわよ」 ルイズの忠告に、ビダーシャルは淡々と返答する。 「……我の目的は、シャイターンの復活を阻止すること。それだけは、何としても譲りはしない」 「あんたねぇ……!」 「しかし」 と、ビダーシャルは言葉を区切る。 「……あの蛮人の王は、更に別の災厄を呼び込もうとしているのかもしれぬ。シャイターンの末裔よ、 我はお前たちには何があろうと味方はせんが……彼との協定には、慎重にならねばならぬようだな」 それだけ言い残すと、ビダーシャルはローブの裾を翻して、ルイズたちの前から立ち去っていった。 「……えーと、要するにどういうことだね?」 「ガリアとは場合によっては手を切る、ってことでしょ」 「回りくどい言い方するなぁ」 キュルケに尋ねたギーシュがぼやいた。 「そんなことより、今はサイトとタバサよ。一体どこに……」 ルイズがそう言った時、城の瓦礫を踏み越えて、才人が彼らの元に舞い戻ってきた。 「おおサイト! 生きてたか!」 「このヤロー心配させやがって全く!」 ギーシュとマリコルヌと同様にルイズも一瞬顔を輝かせたが、すぐに眉間に皺を寄せた。 才人は、その両腕の中にタバサを抱え上げていたからだ。 「あっちにタバサの母親らしい人もいる。運んできてくれ」 ギーシュたちに頼む才人の姿を見つめ、ルイズはムッと顔をしかめた。 タバサを抱きかかえる才人……その構図が、お姫さまを助け出した勇者のように見えたからであった。 こんな時にまで嫉妬を覚える、仕方のないルイズであった。 前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔