約 1,746,370 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/9117.html
前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔 ウルトラマンゼロの使い魔 第三十七話「ゼロが死ぬ時!トリステインは壊滅する!」 電脳魔人デスフェイサー 異次元宇宙人イカルス星人 四次元ロボ獣メカギラス ロボ怪獣メガザウラ 侵略変形メカ ヘルズキング 反重力宇宙人ゴドラ星人 サーベル暴君マグマ星人 登場 ネオフロンティアスペース。それはマルチバースに存在する宇宙の一つであり、ウルトラマンティガと ウルトラマンダイナの故郷である。この宇宙の地球は、超古代怪獣との戦いに勝利した七年後、宇宙進出をして ネオフロンティアと呼ばれる時代を築いた。その時代こそが、その地球の最も繁栄した黄金期である。 しかしそんな黄金期にも――いやだからこそと言うべきか――負の面が存在していた。 宇宙進出を果たした人類に、それを快く思わない宇宙生命体スフィアが侵攻を掛けてきたことを 始めとして、凶悪怪獣の出現や敵性宇宙人の侵略行為が相次ぐようになった。 ネオフロンティアスペースの人類はそれに対抗すべく軍事に傾向していき、それが行き過ぎて 自らの首を絞めてしまう事態が発生したこともあるのだ。 デスフェイサーの存在こそ、それの証明である。ネオフロンティアスペースの地球平和連合TPCの 過激派が、侵略者の陰謀が絡んでいたこともあったが、「完全無欠の防衛兵器」として、不安定な心を 一切持たない、電脳制御の無人宇宙戦艦プロメテウスを建造した。過激派はプロメテウスを 「新たな人類の希望」にするつもりだったが、プロメテウスは完成直後に侵略者に奪取され、 心を持たない冷酷無比の、悪夢の巨大ロボットに改造されたのだ。 心を持たない力は、人間の敵にしかならない。そしてその力は、今この瞬間も、ウルトラマンゼロと トリステインに牙を剥く。電脳魔人デスフェイサーが蘇ったのだ。 『デ、デスフェイサーだと……!』 自分とイカルス星人の間に降り立ったデスフェイサーの威容を目の当たりにしたゼロは、 思わず言葉を失った。デスフェイサーは静かにたたずみながらも、言い知れぬ不気味な 威圧感を放っている。 『イカカカカカカカ! 驚いてるようだなぁ~、ウルトラマンゼロぉ!』 イカルス星人は動揺しているゼロの姿で、心底愉快そうに笑い声を上げた。 『デスフェイサーイカ、あいや以下のロボット怪獣たちは、ヤプールが怪獣墓場に眠ってたのを 解析、その科学力で再現したものだ。パワーはオリジナルとほぼ同じ、あるいはヤプールの改造で それ以上になってるじゃなイカ! いくらお前でも、ビルガモを倒した直後で、この恐るべき 最強ロボ、デスフェイサーに勝つことは出来ないじゃなイカぁ~!』 怪獣墓場。それはあらゆる宇宙で死亡した怪獣たちの魂の行き着く超常の世界。そこには 生物の怪獣だけではなく、宇宙人やロボット怪獣の魂も眠っている。ロボットに魂があるのか? という疑問もあるかもしれないが、実際にキングジョーブラックの魂が漂っていたのが 観測されたという実例がある。 『ちッ……そんなの、やってみなけりゃ分かんねぇぜ!』 ゼロは下唇をぬぐって精神を落ち着かせると、イカルス星人に言い返した。それにイカルス星人は こう応じる。 『だったら、やってみようじゃなイカ! ロボット怪獣たちよ、暴れ出せ~!』 命令により、デスフェイサーたちロボット怪獣が各々動作を開始する。そして本格的に 暴れ出す直前に、イカルス星人は足の先から透き通るように消え出した。異次元空間を介した 空間移動により、どこかへ去っていこうとしているのだ。 『我輩はひと足先に行かせてもらおうじゃなイカ~』 『待て! どこに行く気だ!?』 ゼロが問いかけると、イカルス星人は不気味な笑い声とともに告げた。 『イカカカカ! お前もよく知ってる、トリステイン魔法学院じゃなイカ!』 『何だって!? 学院に何をするつもりだッ!』 『それは自分の目で確かめに来るんだなぁ。もっともぉ、出来たらの話だけどぉ~! それじゃおさらば~!』 挑発を残してから、イカルス星人の姿が完全に消える。と同時に、ロボットたちが遂に トリステインへの攻撃を始めた。 「キィ――――――!」 「ギャアアァアアアアァ!」 「ゴオオオオオオオオ!」 メカギラスとヘルズキングが足を前に出し、家屋を蹴り飛ばして破壊。メガザウラは宙に飛び上がり、 機首の三連ビーム砲から地上へレーザーを発射し、爆発を起こした。一度はやんだ人々の悲鳴が再び巻き起こる。 『はぁッ!』 『ジャンファイト!』 『おらぁぁぁぁぁぁッ!』 破壊活動を始めたロボット怪獣たちの前に、ウルティメイトフォースゼロの仲間がすかさず駆けつけた。 ガラスの反射光からミラーナイトが飛び出し、空の彼方から飛んできたジャンバードがジャンボットに変形、 グレンファイヤーが街中から立ち上がって、それぞれメカギラス、メガザウラ、ヘルズキングの前に立ちはだかった。 『これ以上の狼藉は許さんッ!』 『おうよ! こんな危ないもんはスクラップにしてやるぜ!』 『こちらは私たちが引き受けます。ゼロはそのロボットを!』 『あぁ!』 ミラーナイトたちが三機のロボットの相手を始めると同時に、ゼロもデスフェイサーとの 戦闘の火蓋を切った。 「みんな、頑張って……!」 ルイズは地上から、ウルティメイトフォースゼロの戦いを見守っている。 初めは、ゼロがビルガモを難なく倒したことで、今回も侵略者のたくらみを無事にくじいたものだと 安心していた。が、それ以上の数の敵が現れた。ハルケギニア上では長く戦えないゼロの状態に 一抹の不安があるが、きっと大丈夫だろう。これまでもゼロは、いくつものピンチを切り抜けた。 相手は強力そうだが、単純な力の勝負で、凄腕の戦士のゼロを上回るとは思えない。 『はぁぁぁぁッ!』 そして、ゼロが気勢を上げてデスフェイサーに挑んでいく。正面から飛び込んで間合いを取り、 正拳突きを繰り出す。 しかしデスフェイサーは機敏にシザーつきの右腕を盾にして、正拳を受け止めた。ゼロは すぐに上段蹴り、チョップなど電光石火の連撃を仕掛けていくが、デスフェイサーは全ての 打撃を見切り、腕を回してさばき切った。その上でシザーの刺突でゼロを突き飛ばす。 『ぐわぁッ! 何だと……!?』 自分の宇宙空手の動きがさばかれたことに驚くゼロ。技を見切るのは、力があるだけでは不可能。 同じレベルの格闘の技量がなければいけない。それをロボットの身でやってのけるとは。 おまけに、デスフェイサーは非常に機敏で精緻な動作を見せている。ロボット怪獣は、 たとえばキングジョーのように、その超重量のせいで動きが鈍くなりがち。しかしデスフェイサーには その欠点がなかった。さすがに、ダイナが忘れられない敵に選ぶだけのことはある。 デスフェイサーは電子音と駆動音を鳴らしながら、左腕のガトリングガンを前に突き出して、 弾丸の雨をゼロに浴びせた。 『ぐッ……! 動きが速いなら、こっちはもっと速く動いてやるぜッ!』 弾丸を耐えたゼロは、ルナミラクルゼロに変身。その念力による高速移動で、デスフェイサーの 周囲を動き回って撹乱を狙う。 だがデスフェイサーは少しも動じなかった。しばしゼロの動きを観察してから、右腕を振り上げる。 『レボリウムスマ……ぐあぁッ!?』 そしてゼロが右方で立ち止まってレボリウムスマッシュを決めようとした瞬間に、シザーの 鋭い一撃でカウンターを食らわせた。不意を突かれたゼロは大きく弾き飛ばされて倒れ込んだ。 『なッ……ルナミラクルの動きまで、完璧に見切られてる!?』 立ち上がりながらもショックを受けるゼロ。彼の動揺が表れたかのように、カラータイマーも点滅し出す。 デスフェイサーは、TPCの技術の粋を集めて開発された超高度な電子頭脳を搭載している。 その頭脳が、ゼロの挙動を完璧に捉え、攻撃の軌道を計算するのだ。その上に、ゼロのこれまでの 戦闘データも電子頭脳に記録されている。そのためあらゆる攻撃に対処可能。先にビルガモと 戦わせたのも、データの補充が目的の一つだったのだ。 ゼロが苦戦しているのと同じように、他の三人も、ロボット怪獣たちに苦戦を強いられていた。 『せやッ! ……くぅッ!?』 ミラーナイトはメカギラスにチョップを仕掛けるが、メカギラスの前方には目に見えない バリアが展開されており、それに阻まれてしまう。身体全体でぶつかりに行っても、弾き返された。 メカギラスのバリアは元々異次元空間でのみ使えるものであったが、ヤプールの手によって 改造された結果、三次元空間でも使用できるようになっていた。それが今、ミラーナイトを苦しめている。 『とぁッ! シルバークロス!』 ミラーナイフやシルバークロスも試みるが、それらも呆気なく反射されてメカギラスに届かなかった。 「キィ――――――!」 『うわぁぁッ!』 それでいて、メカギラスの放つロケット弾はバリアをすり抜け、ミラーナイトを爆撃する。 バリアは、メカギラスの攻撃だけは都合よく透過するのだ。 『くッ……! こんな、こっちは手出し出来ないのに、向こうは自由に攻撃出来るなんてことが 起きるなんて! 一体、どうやれば勝てるんだ、こいつに……!?』 圧倒的に不利な状態に、ミラーナイトは思わずそうつぶやいた。 「ギャアアァアアアアァ!」 『うぐぅッ!』 ジャンボットは、空を自在に動いてレーザーを絶え間なく撃ってくるメガザウラに、なかなか 反撃に転ずることが出来ずに追い込まれていた。メガザウラはエネルギーに底がないのではないかと 思わせるくらいの怒濤の攻撃を続けている。 『くぅッ……ジャンミサイル!』 このままではやられるのを待つだけ。ジャンボットは懸命に攻撃を耐え、ミサイルの連発を 繰り出した。だがそれらは、即座にメガザウラに撃ち落とされた。 「ギャアアァアアアアァ!」 『ぬぅッ……! 何て奴だ……!』 反撃の一手があっさりとはねのけられ、ジャンボットはたじろぐ。相手は常に離れた位置から レーザーを撃ってくるので、ジャンブレードやバトルアックスは届かない。しかしこちらの射撃武器は、 簡単にかわされるのだ。 『あの動き……奴も、高度な感情回路を積んでいるな!』 メガザウラの動きから、そう判断するジャンボット。事実、それは的中していた。 侵略者の兵器としては珍しいが、メガザウラはジャンボットのように人工の心、感情回路を 組み込まれている。それにより、普通ロボットが出来ない、直感的な反応を可能としている。 その効果で、より素早い攻撃への対処を実現しているのだ。だから、ジャンボットも反撃の糸口を 掴めずに手を焼いている。 「ギャアアァアアアアァ!」 『ぐわぁぁぁぁッ!』 そしてメガザウラの感情に、情け容赦はない。ひたすらレーザーを撃って、ジャンボットの 動きを封じ込める。 「ゴオオオオオオオオ!」 『おわぁぁぁッ! いっでででッ!』 グレンファイヤーも、ヘルズキングが手の甲の装甲から出したビーム砲の光弾の連射を 食らって一方的に追い詰められていた。ヘルズキングは凄腕のガンマンの如き早撃ちで 彼を追い立てる。 『くっそぉ! なめんじゃねぇぜ! うおおおぉぉぉぉッ!』 だがそこは熱血漢のグレンファイヤー。光弾の雨を強引に突っ切り、ヘルズキングに接近して パンチを仕掛けようとする。 「ゴオオオオオオオオ!」 するとヘルズキングは手の甲の装甲を閉じ、腕を振り上げてグレンファイヤーに逆にパンチを食らわせた。 『んなぁぁぁッ!?』 文字通りの鉄拳を顎に食らい、グレンファイヤーは返り討ちに遭う。 『くっそぉ! 殴り合いも出来んのかよッ!』 「ゴオオオオオオオオ!」 頭を振って毒づいていると、ヘルズキングは拳を胸の前に持ち上げ、ボクシングのような ファイティングポーズを取った。 『受けて立つってか? 生意気なッ! やってやろうじゃねぇか! うおおおおおぉぉぉぉぉぉッ!』 グレンファイヤーは間合いを詰めてひたすら相手のボディを殴りつけるが、鋼鉄のボディは 彼の怪力でもびくともしない。逆に、ヘルズキングの反撃のラッシュで叩きのめされる。 『うぐおぉぉッ! くそ、遠近と攻守、どっちもイケるって、どうすりゃいいんだッ!』 一方的な戦いの運びに、グレンファイヤーは怒鳴るように吐き捨てた。 「なッ……! みんながッ!」 ウルティメイトフォースゼロ全員が追い詰められている様を目の当たりにして、ルイズは 大ショックを受けた。これまでも敵の策略で窮地に陥ることはあったが、まさか正面切っての 対決であの四人が苦しめられるとは、今まで思いもしていなかった。 「こうなったら……『虚無』を使うわ! みんなを助けるのよ!」 ルイズは発奮して杖を掲げた。タルブ村で起こした規模の『爆発』を今一度発動すれば、 キングジョーの軍勢のように、今のロボット怪獣たちも纏めて吹き飛ばせるはずだ。 精神力を極限まで高めて、呪文を詠唱する。 「ジェラ・イサ・ウンジュー・ハガル……」 しかし、呪文の途中で一瞬気が遠のき、ふらついた。詠唱も途切れ、『爆発』は起こらない。 「だ、駄目……。とてもじゃないけど、精神力が足りない……」 何とか踏みとどまったルイズがうめく。あの時は、それまで『虚無』に目覚めていなかったので 精神力がありあまっている状態だったから、あれだけの爆発を起こせた。だが今は、度々『虚無』の 魔法を使っていることもあり、十分な精神力が残っていなかった。半端な威力で撃っても、ロボットたちには 通用しないだろう。 「『ディスペル』は意味ないし……何か、この状況を打破できる魔法はないの!?」 他の魔法を求めて祈祷書のページをめくるが、生憎、敵は新しい魔法の発見を待ってくれなかった。 相変わらずゼロを追い詰めていたデスフェイサーが突如ジェット噴射で空に飛び上がり、 胸部の蓋を開帳したのだ。その下からは、巨大な砲口が迫り出してきて、地上に照準を向ける。 『あ、あれは……あそこを中心に、とんでもねぇエネルギーが集まってる……!?』 デスフェイサーの大砲にエネルギーが充填されていくと、それを察知したゼロがおののいた。 彼の戦士の勘が、あれは非常にまずいものだと告げている。 『くそッ! 撃たせるかぁッ!』 ゼロは発射を阻止しようと、足に力を込める。 「キィ――――――!」 その時、ミラーナイトに向けて進撃していたメカギラスが、歩きながらその姿をかき消した。 ミラーナイトは驚く。 『なッ! どこへ行った!?』 その答えはすぐに出た。メカギラスは虚空から、ゼロの背後に出現し、飛び上がろうと しているところの彼にロケット弾を浴びせたのだ。メカギラスは空間を跳躍する機能も持っていて、 このような奇襲も出来るのだ。 『うおおぉぉッ!?』 完全に不意を突かれたゼロは前のめりに倒れ込む。 『し、しまった!』 ミラーナイトが慌ててミラーナイフを発射してメカギラスに攻撃するも、メカギラスは また空間移動し、ミラーナイトの背後から彼を殴り倒した。 『く、くそ……!』 フラフラと立ち上がるゼロだが、デスフェイサーのエネルギー充填はもう終わり、砲口が激しく輝き始めた。 『ま、まずい! 間に合わねぇッ! くそぉッ!』 ゼロは咄嗟に通常状態に戻ると、ゼロスラッガーをカラータイマーにつないでゼロツインシュートを 発射した。狙う先はもちろん、デスフェイサー。 だがデスフェイサーも、とうとう大砲から絶大な光の奔流を発射した。ネオマキシマ砲。 デスフェイサーの搭載する中で最も強力な破壊兵器で、その威力は、最大で星を砕くほど。 ゼロの最大の光線と、星を抹消する超絶破壊光線が、真っ向からぶつかり合った。 『うッ……ぐッ……ぐうううぅぅぅぅ……!』 ネオマキシマ砲が直撃すれば、間違いなくトリスタニアは消し飛ぶ。大勢の人間が死ぬ。 それだけはさせまいと踏ん張って光線を放ち続けるゼロなのだが、彼の必死の思いとは裏腹に、 ネオマキシマ砲はゼロツインシュートをどんどんと押していく。それほどの威力なのだ。 そして遂に、ゼロは押し切られた。 『うわああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――――――――――!!』 『ゼロぉぉぉぉぉぉッ!?』 「サイトぉぉぉぉ―――――――!?」 ゼロの絶叫が巻き起こり、爆発が彼を呑み込む。大勢のトリステインの民が絶句し、仲間たちが、 ルイズが、悲鳴を上げた。 爆発が収まると、ゼロの立っていた場所に、ポッカリとクレーターが開いた。ゼロの姿は、 なくなっていた。 「そ、そんな……嫌ぁぁぁッ!?」 ルイズは最悪の想像をして、顔面蒼白となった。 ゼロがいなくなると、デスフェイサーは勝利したと判断したのか、そのまま高度を上げて 空の彼方へ飛び去っていく。メカギラスは空間移動で瞬時に消え、メガザウラはデスフェイサーの 後を追い、ヘルズキングはテトラポッド状に戻って、メガザウラ同様空の彼方へ消えていった。 『ま、待て……うッ……!』 引き上げていく敵を追いかけようとしたミラーナイトたちだが、満身創痍の状態のため、 それは叶わなかった。仕方なく、彼らもトリスタニアから退散していった。 後に残されたのは、未だ火の手が各地でくすぶっているトリスタニアの街並み。それが全て 更地になることは、ゼロの尽力で食い止められたが……彼のいた場所に開いたクレーターが、 痛々しく街の真ん中に晒されていた。 「サイト! サイトッ! どこに行ったの!? 返事してッ!」 ルイズは脂汗を滝のように垂らして、なりふり構わない様子でクレーターへと走っていた。 ゼロが消えたということは、同化している才人も……。 考えたくない考えが頭の中に浮かび続けるが、幸いそれは裏切られた。クレーターの方から、 才人がボロボロになりながらも歩いてきたのだ。 「サイト! だ、大丈夫!?」 慌てて彼を支えるルイズ。ひどい状態に心配するが、同時に安堵もしていた。とりあえず、 生きてはいるのだ。 「くッ……ル、ルイズ……」 才人は意識もはっきりしていた。何とか身体を支える彼は、ルイズに告げる。 「学院が、危ない……! すぐに、帰らなきゃ……!」 「えッ!? 学院が!?」 目を見張るルイズだが、才人が一人で歩いていこうとするのを慌てて制止した。 「ま、待って! そんな身体で学院に戻るなんて無茶だわ! せめて、ひと晩でも身体を 休ませないと……」 「でも、イカルス星人が言ってたんだ……。学院に向かうって……。宇宙人たちなら、今こうしてる間にも、 学院を襲ってるはず……。俺が行かなきゃ、みんなが……!」 焦る才人を、デルフリンガーが諌める。 「相棒、気持ちは分かるが、ここは我慢の時だぜ。そんな身体で行ったって、学院にたどり着く前に どっかで倒れるのがオチさ。娘っ子の言う通り、せめて普通に馬に乗れるようになるまで休みな」 「けど……!」 気持ちが急く才人なのだが、身体は追いつかず、ガクリと膝を折ってしまった。 「ほら、そんなんじゃとても学院まで行けないわ。ゼロだって、傷だらけのはずよ。とりあえず、 トリスタニアから敵は引き上げたし、姫さまに頼んで治療を受けさせてもらいましょう」 「ご、ごめん……」 「謝る元気があるなら、早く回復するのよ」 ルイズは才人を気遣いながら、ともに王宮へと足を向けた。 その頃、魔法学院では、才人の懸念通りのことが起きていた。宇宙人連合が、学院に侵入、 襲撃を掛けていたのだ。 「きゃああああああああッ!」 「うわああああああああッ!」 学院のあらゆる場所に、エビに似た頭部を持つ宇宙人の軍団が踏み込み、生徒や教師らを 捕獲していた。種族はゴドラ星人。反撃を試みようとする者もいたが、ハサミから発射する銃撃、 ゴドラガンの早撃ちには、詠唱に時間の掛かる魔法では太刀打ち出来なかった。 そして学院長室では、マグマ星人がオールド・オスマンにサーベルを突きつけていた。 「……学び舎を制圧して、一体何が目的かね?」 オスマンは切っ先を喉に向けられても、毅然とした態度で尋ねかけた。それにマグマ星人が 口の端を吊り上げて答える。 『なかなか肝が据わってるじゃねぇか。それに免じて教えてやるよ。ここを我らの作戦の 最後の仕上げ、ウルトラマンゼロの墓場にするのさ!』 と宣言すると、自身の背後に控えている女性に呼びかけた。 『作戦はいよいよ大詰め。成功すりゃ、その次は約束通り、お前の復讐を手伝ってやるぜ。 それまでは、もうひと働きしてくれよ。なぁ、ウェザリー!』 「……えぇ。分かったわ」 頭に獣の耳を生やした女性、ウェザリーは落ち着いた声音で応えた。 前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔
https://w.atwiki.jp/zeromoon/pages/53.html
前ページ次ページゼロの使い魔(サーヴァント) 「あなたは……誰?」 いつの間にか真っ青な空の下で、自分を見上げならそう訪ねられ、セイバーは目を細めた。 目の前で腰を抜かしたようにしゃがみ込んでいる女の子がいる。桃色がかった金髪の、鳶色の眼をしていた。 年のころは13歳か14歳か。あるいはもっと年下なのか年上のか。セイバーにもすぐには分別がつかない。多分、そう外れてはいないと思うのだけれど。 (あなたこそ誰なんです?) 逆に問い返したくなったのだが、もう少し観察してみることにする。 女の子は黒いマントの下に白いブラウス、グレーのプリーツスカートを着ていた。 なかなか、よく似合っている。手に持っている棒のようなものは、多分、武器ではない。 何かの指揮棒に似ていたが、そうでもないような気がする。 (黄色人種ではない、か) 見ている範囲で確実に解るのはその程度だ。 セイバーは少女からは目を離さず――周辺の情報を集めるために耳をすませ、静かに息を吸い、吐く。 ざわついている。 「おい……ゼロのルイズが成功させたぞ……」 「成功なのか? 成功っていうのかアレ?」 「どう見ても身分のありそうな騎士だぞ」 「いや、まだ通りがかりの騎士が落下してきたという可能性も……」 総じて、声は若い。 多分、目の前の少女とそんなに変わらない年頃の少年少女たちだと感じた。それ以外にも獣の唸り声のようなものも複数聞こえたが、警戒しているという以上のことは解らない。 セイバーは呼吸を静かに整えながら、情報を分析する。 (どうもここは、冬木からは遠く離れた場所のようですね……) 落胆も失望も、なかったといえば嘘になるが。 なんとなく、こんなことになるような気はしていたのだ。 セイバーはサーヴァントである。 サーヴァントとは書いてそのまま下僕とかであるといえばそうなのだが、正しくは彼女は人間ではない。 英霊、という存在だ。 英霊とは人類の歴史上に存在したとされる英雄たちのことである。死後、信仰の対象にまでいたったような彼らは英霊となる。 その英霊を召喚魔術で呼び出して使役するという無茶な儀式魔術が冬木の聖杯戦争で、呼び出された英霊はサーヴァントと呼ばれる。 これはセイバー、アーチャー、ランサー、キャスター、アサシン、バーサーカー、ライダーなどのクラスに縛りつけられた存在なので、厳密には英霊当人とは違うものである。 とはいえ、人格はバーサーカーにでもならない限りは変容することもないし、能力制限はあるが、生前とそんなに違和感はセイバーも感じたことはない。 彼女は聖杯戦争に参加していたのだが、ある事情で五次聖杯戦争の後も現世にとどまり続けた。 そして第六次聖杯戦争……は起こらなかったが、ある魔術師の野望を阻むために大聖杯を破壊したばかりだった。 それが、彼女の認識ではつい数分前の出来事だ。 破壊した直後に魔術が姿を変じた蜘蛛を、宝具を投げ飛ばして殺したのだ。 そしてさらにその後に突然現れたのが、あの鏡(のようなもの)だ。 一瞥ではさすがにそれが何なのかというのは彼女にも解らなかったが、元より、あの場所、あのタイミングで現れたものが何かの罠でないはずがない。そう思ったのは無理もない話である。 それゆえに彼女はそれに突っ込んだ。 無謀であるといえばそうだが、剣はその時に手放したばかりで、すぐさまできる手というのがそれしか思い浮かばなかった。 もっといえば、何かを考えている暇もあまりなかった。自身の対魔力を過信していたといえばそうであるし、万が一ここで命を失っても構わないとも思っていた。 で、だ。 突っ込んだ瞬間に、痺れにも似た感覚が全身に広がった。 (この感覚には覚えがある) 過去に二度。 現世に召喚された時に、似ている。 (ああ、そうか) 彼女は理解した。 これは――召喚の魔術だ。 彼女は自分の身に何が起きたのか理解した。 おそらくはあの鏡(らしきもの)をくぐったモノは召喚のゲートなのだろう。あるいは、空間転移のための魔術か。 いずれにせよそれは空間を繋げて別の場所に呼び出すというのだから魔法の域だ。行った魔術師は相当な人間に違いない。もっといえば人間ですらないのかも知れない。 だが。 理解はしたが、納得がいった訳ではない。 なんで自分なのだ? 自分だけがここにいるのだ? セイバーは、自身とマスターを繋げているレイラインが絶たれていることに気づいていた。 あのゲートが空間移動用のものであるにしても、一人の通過しかもたないような不安定なものだったのか、最初から一人のためのものなのか、それは解らないが、どっちにしてもここには士郎も凛もいないのは確かなようだった。 (いや、私の後を追ってシロウとリンがきていないのなら、それはそれでいい) こんな、得体の知れない状況にマスターをおいやるようでは、それこそサーヴァント失格だ。 だが、魔力の補給のない状態での現界はそういつまでもできないだろう。 そして、それもいいかとセイバーは思った。 二度とあの二人に会えないというのは寂しい限りのことだったが、覚悟はしていたことだ。 何処か心地よい諦観が彼女の胸に溢れ―― 唐突に気づいた。 魔力の補給はないのに、まったくなんの脱力も感じない。呼吸しているだけで体内で生成されている魔力が溢れてくるようであった。 (これは……大気の魔力が桁外れなのか) かつて生きた古代の時代ですらもこんなものではなかった。ギルガメッシュが生きていたような神世の時代でならあるいはともかく、現代の地球上でこんな場所があるだなどとは信じがたい。 というより、どんな細工をすれば空間を転移させただけでマスターとサーヴァントの繋がりを絶てるのだ? そこまでに思い至り、改めて目の前の少女を注視する。 後ろの方からざわつきながら聞こえる声からして、彼女が多分、ルイズという娘なのだろう。そして、おそらく彼女が自分をここへと呼び寄せたあのゲートを作った魔術師だ。 鳶色の目は、脅えたような、それでも精一杯の勇気がこめられてセイバーへと向けられている。 (邪悪な感じはしない……) いかなる意図があってあんな魔術を使ったのか、それを問いたかった。 なのに、どうしてか彼女の口はかつてと同じ、似たような構図で自分が出した言葉を紡ぎだしていた。 「問おう」 もっと別のことを言った方がいいのだろうか。 いや。 状況に納得はしてない。 納得はしていないが、この場でもっとも相応しい言葉がある。 ならばそういうべきなのだろう。 契約を結ぶかどうかは、その時に決めればいいことだ。 「貴方が私のマスターか?」 ◆ ◆ ◆ ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは貴族である。 貴族ではあるがメイジではない。 近頃は金だのを積み重ねることによって所領を賜り、それで爵位を得ているような平民出の貴族も増えてはいるようだが、彼女のケースはそうではない。彼女の父と母は立派なメイジで貴族で、そして姉たちもまたメイジであった。 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、メイジの子でありながらも魔法が使えない貴族だった。 厳密に言えば魔法がまったく使えない訳ではない。何をやっても爆発させてしまうという失敗をしてしまうというだけのことである。 平民のように魔法の素養がまったくないというわけではないのだ。 だから、なのだろう。 彼女を見るたいがいのメイジの目は、そこらの平民を見るよりも冷ややかで、かつ嘲笑に満ちていた。彼女の実家が公爵家という身分の高い家柄であることも余計にそれを助長させているようであった。 それでも、あるいはそれだからこそ彼女は誇り高く振舞っている。 魔法のひとつも満足に使えない身だけれど、いつか使えるときがくると、ただいまの自分は努力が足りないだけなのだと。 彼女はメイジではないが貴族であった。 しかし、どっちにしてもメイジとしての勉強のために魔法学院にきているわけで。 使い魔召喚の儀式というのは伝統のあるもので、この儀式で使い魔を召喚することによって、メイジはやっと一人前の入り口にたつ。 使い魔は、その主人と一心同体の存在であり、その主人は使い魔を見ることによって己の属性を確定する。 ルイズはこの日こそは失敗すまいと心に決めていた。 いつだって失敗したくないとおもっいていたが、この火のこの儀式だけはとにかく失敗したくなかったのだ。 もしもこの儀式で、自分は使い魔も呼べなかったら―― それは、彼女の魔法使いとしての将来は本当に暗黒に閉ざされたものになるというのが確定してしまうからだ。 とにかくそういうわけで呪文を唱えて呼び出してみたのだが―― 「あなたは……誰?」 現れた女騎士に対し、ルイズはそれだけをいうのが精一杯だった。 「貴方が私のマスターか?」 質問に質問で返されたが、ルイズはそれに腹を立てる訳でもなく、改めて目の前の女騎士を見る。 今更だが、そう聞かれて、彼女はやっと目の前の女騎士が自分の使い魔召喚の儀式でやってきたのだと気づいた。 すぐに気付かなかったのは、使い魔として人間がやってくるだなんてことはありえない――そういう先入観があったからだ。 通常、召喚のゲートを通過してやってくるのはだいたいにおいて魔獣だの幻獣だのであり、そうでなければ梟とか蛙とか鼠とかだ。 そりゃ下半身が蛸のスキュラだの、亜人というべきモノもいないでもないが。 この人はどう見ても人間だ。そしてさらにいうのなら騎士だ。騎士ということはメイジであるということであり、貴族であるということである。 ハルケギニアでは、戦いは貴族の役目であった。勿論、平民出の兵士もいるし、メイジを相手にしてなお打倒できる〝メイジ殺し〟といわれる凄腕の戦士だって、いる。 そして彼女は、どう見てもそういう類の〝メイジ殺し〟とも違う。 なんというか、品格というか王気(オーラ)と言うか――そのようなものがあるのだ。 いずれ高貴な血筋に連なる人であるに違いない。 なのに。 (マスターか、と聞いた――それはつまり、私の使い魔になることを了承してゲートをくぐってきてくれたって訳?) まさか父か母の差し金ではないか、と一瞬疑ったが、それはないかと思い直す。 使い魔召喚のゲートがどういう基準で使い魔の前に現れるのかというメカニズムは、いまだ解明されていないのである。 解っているのは術者の属性に関係するということであり、メイジは使い魔を召喚することによって己の属性を確定する。 当然のことではあるが、使い魔を呼ぶまでもなく属性を知ることは可能ではある。しかし、いまだにまともに魔法を成功させたことのないルイズのそれは誰にも解らない。つまり、どういう使い魔がくるのかも解らないということだ。 いかに彼女の両親が凄腕のメイジで名門貴族であったとしても、それらの難関をくぐりぬけた上に、仮にもメイジ一人を娘の使い魔としてしまおうなどということができるはずがない。 そういうわけでその可能性を除外したルイズではあるが。 (どんな事情があってゲートをくぐったのかしら) 考えはしたが、結局、結論はでなかった。 でなかったのだが、「そうよ」と彼女は答えていた。 「私が、貴方のマスターである、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ」 轟然と、そう名乗る。 ルイズは家名を出して相手を平伏させようと考える性根の持ち主ではない。だが、この時は目の前の女騎士に気圧されている反動で家名を出した。それとこの女騎士がどの程度の貴族であるのかを確かめようともしている。 少なくともハルケギニアに生きる貴族ならばヴァリエールの名を出せば平然とはしていられまい。その度合いでどの程度の家格の者かも解るというものである――とルイズは自分に言い訳するように考えた。自分の中の脅えには彼女だって気付いているのだ。 しかし、女騎士の反応は彼女のどんな予想とも違っていた。 「るいずふらんそわーず……」 と呟いたのが聞こえたが。 軽く溜め息のようなものを吐き出し、肩を落としたのである。 そして。 「ああ、やはり貴方がマスターでしたか、メイガス」 どこかぼやくようなものがその声には混じっていた。 ルイズは敏感にもそれを察した。 「何よ! 私があなたの主人であることになんの不満があるっていうのよ!」 叫ぶ。 叫びながらもルイズには解っていた。 この人は、自分のような生まれた家の他にはなんの取り柄もないような駄目なメイジの使い魔であるのは相応しくないのだと。どういう事情なのかは知らないけど、きっときっとゲートの先には立派で素晴らしい魔法使いが待っていると思っていたに違いないのだと。 そう思ったのだ。 怒りと劣等感が彼女の視野を狭めている。 そもそもこれほどの威容を持った女騎士を使い魔にしようなどということが普通のメイジの考えではありえないのである。学院の長であるオールド・オスマンにだって無理だ。もっといえば、ゲートを好き好んでくぐるメイジというのがあり得ない。 いきなりの癇癪に女騎士は微かに戸惑ったようであったが、「落ち着きなさい、メイガス」と静かに言う。 それで落ち着いたら世話はないのだが、凛としたその声にルイズはきょとんとして顔を上げた。 気付けば、自分よりほんの少しだけ背丈のある女騎士の目線がすぐ前にあった。 僅かに膝を曲げたのである。 「別に、貴方に不満があるとかそういうのではないのですよ」 「……じゃあ、何なの?」 「それは――」 言いかけて、女騎士は振り向く。 「お話の途中、失礼します」 つるっぱけの頭に眼鏡の中年――コルベールが跪きつつもそう言った。 左の膝を落として右手を前に、そして左手を腰の後に廻した前屈姿勢である。右手の前には杖が置かれている。 それは貴人に対する礼に見えたが、むしろ自分が敵意のないことを示すための所作であった。 なのに女騎士が目を細めたのは、その眼鏡の奥の眼差しに隠しようのない鋭さを見て取ったからであろう。 「……御身は?」 「私は当トリステイン魔法学院で教師を務めております『炎蛇』のコルベールと申します」 恭しくはあるがその声はいつもどおりのはずである。はずなのに、何処か重くのしかかるような気がルイズにはした。 女騎士は「はい」と答え、どうしてか右手を見てから少し戸惑ったような顔をしてみせ、コルベールと同様の姿勢をとってみせた。 「ご丁寧に名乗っていただき、ありがとうございます。私は――」 「いえ、お名乗りは結構です」 コルベールは右手をあげて女騎士の言葉を遮った。 言いながら、このメイジの教師の頭の中では、状況からあらゆる推論が積み重ねられ、かなり蓋然性の高いと思われるストーリーがくみ上げられつつあった。 (いずれ名のある名家に連なるお方とお見受けするが……使い魔の召喚ゲートをくぐられるというのは、相当なご事情があってのことだ) 女騎士の言葉と装束から、コルベールはついさっきまで彼女が何か危地に陥っていたのだと考えた。 戦闘に携わっていた者としての勘としかいいようがないが、この人はゲートをくぐる直線まで戦っていたのだと判断している。雰囲気というか、空気がそういうようなものなのだ。 そして現れてから「マスターか」と聞いた。 それはつまり、彼女はそれと承知でここにきた……ということであろうか。 (いや、それはありえない。こんな立派な身なりの騎士が、戦いの最中で召喚ゲートをくぐるなどという判断を下すというのはありえない) いやいや。 逆に考えるのだ。 (あるいは……そういう判断を下す他はない状況であったということか) 戦いのに敗北寸前であったとか。 逃げ延びようとしている途中であったとか。 それで追い詰められる中で現れたゲートに、一縷の望みをかけて飛び込んだ――ということなら、あるかもしれない。 いやいやいや。 それも何か違う。 違うと思った。 この女騎士は、この人は……。 (敗北が似合わない) そう感じたのだ。 どういう種類の根拠もなく、それは直観としか言いようがなかったが。 この女騎士は、敗残者とか逃亡者などという言葉はどうあっても当てはまらない存在だ。 勝利を約束された戦場の王。 勇気をもって突き進む英雄。 それはあるいは、ハルケギニアに平和を齎せた新しきイーヴァルディの勇者の如き……。 微かに首を振り、それも打ち消す。 (あるいは、ゲートと知らずにくぐったのかもしれない) 召喚ゲートを知らないメイジというのはありえないが、使い魔の前にどういう風に現れるのかということは知られてない。というか観測された事実がない。 もしかしたら、こちらとは違う形態で現れて、それでちょっと試しに手を突っ込むとかしてみたらここにいて。 そして状況から判断して自分が使い魔として呼ばれたのだと知った――ということはどうか。 (……いや、それこそありえないか) しかしまあ、だいたいそういう感じなのだろうと推測した。予断ではあるが。 どちらにしろ、彼女がもしも名のある騎士なり王族であるのなら、ここで皆の前で名乗られるのは拙い、とコルベールは判断したのである。 「ご事情については、詳しいことはいずれミス・ヴァリエールを同伴の上で、学院長様のところで」 ――自分では責任を取りきれませんから、という言葉は口にしなかった。 そして残る事案は、彼女がルイズと契約をするか否かということだけになった。 「構いません」 と女騎士はわりとあっさりと承諾した。 これには。 「いいの!?」 とルイズも驚いたし、コルベールも目を丸くした。 それは確かに、彼女に使い魔になって貰わなくてはルイズのメイジとしての将来が困ったことになるが――彼女に使い魔になってもらうということは、ルイズの人生に深刻な影響があるように思えてならなかった。 「確かに私も主を持つ者ですが」 そのつながりも途切れてしまった、というと、ルイズの顔が泣きそうに歪んだ。責任を感じているのだ。 女騎士は安心させるように微笑んで見せる。 「いつか主のもとに還ることがあるかも知れませんが、そのためにも存在し続けねばいけません」 「そうなの……」 その言葉をどう受け止めたのか、ルイズの表情は晴れないままだ。 女騎士は改めて跪き、ルイズに顔を寄せた。 「小さなメイガスよ。この召喚は確かに私にとっては不本意なものでしたが、ここに私がいることには意味があるはずです」 不本意、という言葉にびくりと身体を振るわせたルイズだが、女騎士は少し思案してから。 「もう一度いいます。私がここにいることには意味があるはずです」 「だけど……使い魔よ? 貴方みたいな立派な騎士さまがすることではないわよ! ご主人様がいるのなら、召喚なんかなかったことにして帰ればいいじゃないの!」 「そのつながりは絶たれてしまいましたので――」 「ミス・ヴァリエール」 見かねたのか、コルベールが横合いから口を挟んだ。 ちなみ生徒たちは先に帰らせている。 「使い魔召喚の儀式は神聖なものだ」 「え、ええ」 「本来ならば、人間が召喚されるという事態はまるで想定外のことだが」 「はい……」 「やはり、ルールは守らねばならない」 「――――」 このはげ、とんでもないこといいやがる、とでもいいたげな顔で教師を見上げたルイズは、「解りました」と投げやりにはき捨て。 跪いたままの女騎士の顔を両手で挟み込んだ。 「言っておくけど」 「はい」 「使い魔なんてやっぱりいやなんて言っても、契約した後では遅いんだから!」 「――もとより私はサーヴァントである身です」 「ふん! たいした覚悟じゃないの!」 なんだか微妙にかみ合ってない会話だなあとコルベールは傍目に思ったが、コントラクト・サーヴァントは大切な儀式だ。静かに見守ることにする。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ……」 そして唇を寄せる。 女騎士が目を見開いたのに、コルベールは僅かに眉を寄せた。 それも、その二つの唇が合わされた時までだ。 少女も騎士も美形といって申し分のない容姿である。その二人の口付けというのは独身者の身にはいささか以上の刺激であったらしい。 女騎士はルイズの顔が離れてもしばし戸惑っていたが、やがて訝しげな顔をして左手を見た。 「これは――令呪、ではないのか」 その呟きをどう受け取ったらいいものか解らず、コルベールは「ふむ」とその手に顔寄せる。 「コントラクト・サーヴァントは成功したようですな。篭手の下、左手にルーンも刻まれたようですし。あとで確認させていただきますので、よろしくお願いします」 それから一通りの指示をルイズにした教師は、それでは、と一礼して宙に舞う。 しばしそれを見送った女騎士は、改めてルイズに向き直り。 「サーヴァント、セイバー。召喚に応じ馳せ参上した。 これより我が剣は貴方と共にあり、運命は貴方と共にある。 ―――ここに契約は完了した。」 それは宣言であり、誓約の言葉だ。 たがえることのない絶対の契約だと、主従であると。 この女騎士、いや、セイバーはそう言ったのだ。 ルイズは呆然とセイバーを見上げていたが、やがて「ふん」と顔を逸らし歩き出す。 「ついてきなさい」 セイバーは頷き、その後ろを従った。 やがてすぐに足を止めたのに気付き、ルイズは振り向く。 「どうしたの?」 「いえ」 セイバーを空を見上げていたのだ。 ルイズもつられてそこをみたが、あるのは何の変哲もない月が二つあるだけだ。そういえば、もうそんな時間になっていたのかと彼女はようやく気付いた。 そして。 「どうやら、本当に遠い場所にきたようです」 そんなことを彼女の使い魔が言った。 果たしてセイバーの言葉にどういう意味があるのかも解らず、彼女は首を傾げるのだった。 ゼロの使い魔(サーヴァント) 第一話 了 前ページ次ページゼロの使い魔(サーヴァント)
https://w.atwiki.jp/akatonbowiki/pages/8899.html
このページはこちらに移転しました ジャイロ 作詞/355スレ246(曲つき改詞は下段) ずれた地軸に立つような そんな危うい感触に 慣れきってない僕達は 立ち止まって空仰ぐ 似たものたちに囲まれて 褪せた色した街並も もっと似たもの探しだす パズルなのかもしれないね この胸に残ってる 何億のパルス 今 無駄遣いしていいよ デタラメな魔法でも ※僕は走り続けるよ ジャイロ 君が好きだから くるり回るステップで ジャイロ 君のこと抱いて 凍らせるもの溶かすもの 欠けていくもの満ちるもの 波の挟間で僕達は 生きる軌道を確かめる 太陽は照らしてる 欲望と憂鬱と 愛を呼ぶ心たち 真っ白に包み込む ずっと遠いところまで ジャイロ 車輪はずませて 限りのある地平でも ジャイロ 同じ瞬間(とき)はない (※repeat) ジャイロ(修正版) 作詞/356スレ32(=355スレ246) 作曲/355スレ337 (一部改詞) ずれた地軸に立つような そんな危うい感触に 慣れきってない僕達は 立ち止まって空仰ぐ 似たものたちに囲まれて 褪せた色した街並も もっと似たもの探しだす パズルなのかもしれないね この胸に残ってる 何億のパルス 今 無駄遣いしていいよ デタラメな魔法でも ※僕は走り続けるよ ジャイロ 君が好きだから くるり回るステップで ジャイロ 君のこと強く抱いて 凍らせるもの溶かすもの 欠けていくもの満ちるもの 波の挟間で僕達は 生きる軌道を確かめる 太陽は照らしてる 欲望と憂鬱と 愛を呼ぶ心たち 真っ白に包み込む ずっと遠いところまで ジャイロ 車輪はずませて 限りある地平でも ジャイロ 同じ瞬間(とき)は二度と来ない (※repeat) 音源 ジャイロ(サビ) ジャイロ(ワンコーラス) ジャイロ(フル) ジャイロ(オケ) ジャイロ(歌:356スレ32) ジャイロ(歌:PK)
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/9423.html
前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔 ウルトラマンゼロの使い魔 第百四十二話「五冊目『ウルトラCLIMAX』(その3)」 機械獣サテライトバーサーク 地底文明デロス 装甲怪獣レッドキング 古代怪獣ゴモラ 機械獣ギガバーサーク 登場 『古き本』も残すところ後二冊というところまで来た。五冊目の物語は、ウルトラマンマックスが 守った地球で起きた人類存亡の危機の大事件。地底人デロスが地上の全世界に向けて脅迫を行って きたのだ。カイトとミズキはデロスとの交渉のために地底の世界へと突入を果たしたが、怪獣に撃ち 落とされてしまってミズキが重篤の状態に陥ってしまう。更には、デロス側も人類の環境破壊による 滅亡の危機に瀕しての行いだったことが判明し、交渉も行き詰まってしまった。地上人は自分たちの 行いの代償を支払う他はないのだろうか? 果たしてこの物語の行方はどこへ向かうのであろうか。 『何てこった……!』 今もなお牙を剥いてくるレッドキングとゴモラをあしらいながら、ゼロはミズキの生命反応が 途絶えたことに絶句した。彼の中の才人も、激しい無力感に苛まれてグッと歯を食いしばる。 『何か……何か出来ることはなかったのか……!? 本当に……!』 二人は後悔を覚えていたが、カイトは違った。 「ミズキが死ぬ運命なんて……俺は認めない……!」 慟哭していた彼であったが、己に言い聞かせるようにつぶやくと、腕の中のミズキをそっと 地面に横たえ、顎を上に向かせる。そしてファスナーを下げて上着を開くと、人工呼吸と心臓 マッサージを開始した。 カイトはミズキの鼓動が停止してもあきらめず、蘇生させようとし始めたのだ。 「ミズキ……帰ってこい……! 一緒に生きるんだ……!」 脇目もふらない懸命な蘇生活動を行うカイト。才人とゼロは彼のひたむきな姿勢に強く 胸を打たれていた。 『カイトさん、決してあきらめることなくミズキさんを助けようと……!』 『こっちも、あいつの頑張りを絶対に無駄にはさせねぇぜ!』 二人はカイトの姿に勇気づけられ、奮起してレッドキングたちを取り押さえる腕の力を増す。 何としてもカイトとミズキを守り抜く心構えだ。 「ピッギャ――ゴオオオウ……!」 「ギャオオオオオオオオ……!」 しかしどうしたことだろうか。力を増したゼロと対照的に、レッドキングとゴモラは急に勢いが 衰えて大人しくなり始めたのだ。すごすごと後ずさるその様子に、ゼロはむしろ疑問を抱く。 『……? どうしたってんだ……?』 カイトは必死にミズキの救命活動を続けているので、そのことには気づいていない。 「ミズキ……! 生きるんだ……! ミズキ生きるんだッ!」 ……カイトのその想いが天に通じたのか……ミズキの唇がかすかに動いた。 「……あッ……!」 ミズキが声を発した――息をしたという事実に、カイトとゼロたちは目を見張る。 「ミズキ……!」 「……カイト……」 間違いではない。ミズキは……はっきりとカイトの名を唱えた。 「ミズキ……!!」 一気に喜びに打ち震えたカイトは、ミズキを抱き起こして固く抱擁した。 ミズキは命を取り戻したのだ! 『やった……! 生き返った!』 『ああ……! 大したもんだぜ……』 才人もゼロも、束の間状況も忘れて二人の様子に見入っていた。 しかしいつの間にか、カイトとミズキの周囲を無数のオートマトンが取り囲んでいた! 『あッ!?』 『あいつら何を……!』 思わず身を乗り出すゼロ。だがオートマトンはカイトたちに危害を加えるような真似はせず、 じっと二人を注視しているようであった。 「地上の人間たちのせいで、君たちが苦しんでるのは分かった……! 俺たちに時間をくれ!」 カイトが改めて懇願すると、真正面のオートマトンの中央の顔が引っ込み、現れた空洞から 露出するコアから光が発せられる。 その光が、白いローブで姿を覆い隠したような人間のビジョンを浮かび上がらせた。 『あれは……!』 『あれがデロスの姿ってところか……』 デロスと思しき人間のビジョンは、カイトにこう呼びかけた。 『カイト。あなたがその人を助ける姿を見て、デロスは後悔しています。地上の人類は、 命を大切にするということを認識しました』 デロスからの告白に、カイトたち一同は驚きを覚えた。内容的には喜ばしい報せではあったが、 すぐにだから事が解決に向かうという訳ではないことを知る。 『しかし、デロスは既にバーサークシステムを起動させてしまいました。バーサークシステムは、 デロスを守るためには、あらゆる障害を排除します。我々には、バーサークを止められないのです。 ウルトラマンもまた、バーサークの攻撃対象になっています』 デロスの語る内容に、才人が思わず毒づく。 『自分たちで止められないの作るなよ……!』 『そんなこと言っても始まらないぜ、才人』 デロスは続けて語る。 『ウルトラマンの能力は、バーサークによって解析されています。バーサークはマックスを、 青いウルトラマンも、確率100%で倒します』 それが先日現れたスカウトバーサークの真の目的だったのだ。ゼロの能力もまた、地上での レギーラとヘイレン、この地底でのレッドキングとゴモラの戦いで既に解析を行われていた。 その結果からバーサークシステムが導き出した、『ウルトラマンを100%倒す』手段とは何か……。 しかしカイトはその言葉に怯えたりはしなかった。 「その予測も……外れになるさッ!」 カイトはおもむろにウルトラマンマックスに変身するアイテム、マックススパークを引き抜き―― それがまばゆく輝いた! 障害が解決され、マックスがカイトとともに戦う決意を抱いたことを示す 閃きであった。 「カイト……」 「戻ろう……俺たちの世界に」 マックススパークを握り締めるカイトに、ミズキは微笑みを向けた。 「あたし……知ってた気がする。カイトがマックスだってこと……!」 カイトもまた微笑み、マックススパークを己の左腕に装着した。 そうすることで、カイトの肉体はウルトラマンマックスのものへと変化を遂げた! 「シュワッ!」 ミズキを抱きかかえるマックスは、ゼロの方へ顔を上げた。ゼロはうなずき返してマックスへ告げる。 『先に行ってるぜ、ウルトラマンマックス! ともに未来を掴み取ろうぜ!』 ルナミラクルゼロにチェンジすると、テレポートでひと足早く地上へと移動していった。 マックスはミズキを抱えたまま高く飛び上がり、大空洞の天井を突き抜けてそのまま地上を 目指していく。 「ギャオオオオオオオオ……」 「ピッギャ――ゴオオオウ」 マックスの去っていく姿をデロスと、ゴモラとレッドキングが見守るように見上げていた。 地底の世界から地上の日の下へと戻ってきたゼロだったが、彼を待ち受けていたのは想像を はるかに超えるような敵だった! 『な、何じゃこりゃあッ!?』 一体いつから現れていたのか、街のど真ん中に恐ろしく巨大な鋼鉄の塊のようなロボット怪獣が そびえ立っているのだ。その全長、何と990メートル! 重量は9900万トンにもなる! 比較すると、 巨人のはずのウルトラマンゼロが指人形に見えてくる! 最早ロボットというより機動要塞だ! これは機械獣ギガバーサーク。バーサークシステムが作り出した対ウルトラマン用の最終最強の 戦闘兵器なのだ! 『圧倒的な質量で押し潰すってのが出した答えって訳か……。単純だが却って効果的なのかもな……!』 ただ立っているだけでも肌にひしひしと感じるほどの威圧感を放っているギガバーサークを 前にするゼロだが、だからと背を向けるようなことをするはずがないのだ。 『面白れぇ! やってやるぜッ!』 それだけでゼロの何十倍もある機首から、途方もない直径の光弾が発射され始めた。ゼロは それに一切の恐れもなく駆けていく! 『はぁッ!』 光弾の間を上手く抜けながら空に飛び上がるゼロ。相手が大きすぎるので、地上戦では 著しく不利との判断だ。 『ミラクルゼロスラッガー!』 しかし空中戦で優位になれるという訳でもなかった。六枚のスラッガーを縦横無尽に駆け巡らせて ギガバーサークを何度も斬りつけるのだが、常識外の巨体のためほんのかすり傷にしかなっていないのだ。 『くッ、これじゃアリんこが象に挑んでるみてぇだ……うおッ!?』 ギガバーサークの周囲を飛び回るゼロへ、ギガバーサーク後部の刃が振り下ろされる。 その刃もゼロを両断するどころか粉微塵にしてしまうほどのサイズなので、ゼロはたまらず 回避した。 『危ねぇ……ぐあぁッ!!』 だが刃はかわせてもすぐに迫ってきたギガバーサーク本体からは逃げられず、ゼロは地表に 叩き落とされてしまった。あまりの質量差のため、ギガバーサークが少し身動きしただけで ゼロには大ダメージになるのだ。 『ぐッ……くぅッ……! 確率100%とか豪語するだけのことはあるじゃねぇか……!』 どうにか身を起こすゼロだが、今の一撃で通常形態に戻っていた。カラータイマーも既に 赤く点滅している。先ほどの戦闘より休憩なしで継戦しているので、元からエネルギーの 残量がわずかなのだ。このままでは極めて厳しい。 「シュアッ!」 そこにゼロに後れて地上へ戻ってきたマックスが駆けつけてきた。……が、マックスも 変身してから地上まで掘り進んで帰ってくるのにエネルギーを消費しているため、カラー タイマーが点滅している。残り時間は一分がいいところであろう。 それなのに、二人のウルトラマンでもギガバーサーク相手では正直焼け石に水だ! 「ジュアッ!」 ひるむことなくマクシウムソードを飛ばしてギガバーサークに立ち向かっていくマックスだが、 彼もやはり全く有効打を与えられていない。しかもギガバーサークの表面から伸びてきた鎖が四肢に 巻きつき、拘束されて磔にされてしまった! 「グアァッ!!」 『マックスッ!!』 磔にされたマックスを電流が襲って苦しめる。助けようと走り出すゼロだが、ギガバーサークの 光弾の雨の前に近づくことすら出来ない。 『くそぉ……!』 一方で空の彼方より、コバとショーンの駆るダッシュバード1号と2号が飛来してきた。 マックスを救うために、アタックモードになってギガバーサークに攻撃を仕掛ける。 「ウィングブレードアタック! うおおおおお―――――ッ!」 「オオオオオ―――――ッ!」 二機のウィングブレードでマックスを縛り上げる鎖を斬りつけるが、切断することは叶わなかった。 そうしている間にもマックスはどんどんとエネルギーを失っていく。このままではマックスの命が危ない! その時、ゼロが最後の賭けに出た! 『マックス! カイト! お前たちの未来を望む気持ちが本物なら……この光を扱えるはずだッ!』 ウルティメイトブレスレットを自分の腕から外し、マックス目掛け投げ飛ばしたのだ! 『受け取れぇーッ!!』 ブレスレットはウルティメイトイージスに変わり――光となってマックスとぶつかった! 「シュワッ!?」 『こ、これは……!? うわぁッ!』 ウルティメイトイージスの秘めるエネルギーは絶大であり、制御できるのはこれまでゼロ以外に いなかった。マックスとカイトもまた、イージスのエネルギーを抑え切れずに苦しむことになる。 そんな二人にゼロが檄を飛ばす。 『それは未来への希望の想いが形となった光だ! お前たちの希望が決して消えねぇ本物なら…… 必ず応じてくれる! その手で、未来を掴めぇぇぇぇ―――――ッ!!』 ゼロの呼び声に応じるように、カイトは叫んだ! 『俺は……あきらめないッ! 俺だって……俺だって……マックスなんだぁぁぁ――――――――ッ!!』 この時! イージスの光が鎖を砕き、マックスが解き放たれた! 「ジュワァッ!」 空高く飛び上がったマックスの身体は、ウルティメイトイージスの鎧で覆われていた。 ―-マックスはゼロから託されたイージスの力により、ウルティメイトマックスになったのだ! 『やったぜ!!』 ぐっと手を握り締めるゼロ。これからウルティメイトマックスの反撃が行われる! 「シュッ!」 マックス目掛けギガバーサークが光弾を乱射するが、マックスはウルティメイトマックスソードで 全弾切り払う。そしてソードレイ・ウルティメイトマックスを伸ばしてギガバーサーク本体を斬りつける。 「シュアァーッ!」 長大な光の刃はギガバーサークの超巨体も貫き、右の刃を易々と切り落とした! 切断面が 露出したギガバーサークがスパークを起こして動きが鈍る。 「シュアッ!」 そしてマックスは鎧を分離すると同時に伝家の宝刀、マックスギャラクシーを召喚。弓状にした イージスの先端にマックスギャラクシーを接続して、鏃にする。 マックスギャラクシーの膨大なエネルギーによって、イージスにエネルギーがフルチャージされた! 「イィィィィヤアァッ!!」 マックスが弦を引き絞って放つ、ファイナルウルティメイトマックス! ギガバーサークに 炸裂し、貫通してどでかい風穴を開けた! 『バーサークシステム、停止……』 うなだれるように力を失ったギガバーサークは粉々に分解し、消滅していった。これとともに バーサークシステムは機能を失い、デロスタワーが地底に戻っていく。 それをウルトラマンマックスとゼロが見届けていると、デロスが最後のメッセージを送ってきた。 『デロスは、地上の人類たちに期待しよう……。地球が元の姿を取り戻すまで、デロスは眠りに就く……』 「ありがとう、ウルトラマンゼロ、平賀才人君。君たちのお陰で、未来を掴み取ることが出来た。 この恩は決して忘れない……」 夕焼けに染まる海岸線で、カイトと才人が向かい合っている。カイトは才人たちに感謝の 気持ちを伝えていた。 「いえ、そんな……。それよりカイトさんは……マックスとお別れの挨拶を交わしましたか?」 人類最大の試練が終わりを迎え、マックスもとうとう光の国に帰る時を迎えようとしていた。 カイトは才人の問いにゆっくりとうなずき返す。 「ああ。俺たちの未来は、俺たち自身の手で作っていくことを約束したよ。俺も……世代を 重ねたとしても、いつか必ず自分たちの力で宇宙に飛び出し、マックスの故郷に行くことを 誓ったんだ」 「光の国に……。その望みが叶う時が来るのを、俺も願ってます……いえ、信じてます」 その言葉を最後に、才人はゼロアイを装着した。 「デュワッ!」 変身するウルトラマンゼロ。同時にマックスもカイトから分離し、二人は宇宙に向かって 飛び去っていく。 「マックスー! ゼロー!」 カイトは大きく手を振って、彼らの帰郷を見送り続けた……。 ……現実世界に帰ってきた才人は、今しがた完結させたウルトラマンマックスの本を手に取った。 「これで五冊目の本が完結した……。残るは、遂に、後一冊……!」 最後に残った一冊を見つめる才人。その瞳には、これまで以上の並々ならぬ熱意と決意が 宿っていた。 才人の内側のゼロがつぶやく。 『これでルイズが本当に元通りになってくれりゃいいんだが……まだリーヴルのこととかの 謎がちっとも解決されてねぇ。上手く行くかどうか、大分不安があるぜ……』 才人も同じ気持ちであったが、それでも自分にも言い聞かせるように述べた。 「でも、やるしかない。ここまで来たら最後までな……!」 ルイズが本当に元に戻るか否か、いずれにせよその答えは、最後の本を完結させれば分かることだ。 ……どこかも分からぬ暗黒の空間の中、何者かが謎の力によって才人の様子を監視していた。 『残るは後一冊か……。いよいよここまで来たか。もうじき『準備』も終わりを迎えるという訳だ……』 謎の存在は独りごち、歪んだ微笑を交えながらつぶやいた。 『その時こそ……ルイズが僕の妃になる時ということだ……!』 前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/956.html
前ページ次ページゼロの使い魔・ブルー編 何十回もの試行の末に召喚にようやく成功したと言うことと、 召喚した男が平民だったと言う状況に於いて、 その平民が言った言葉を受けて、ルイズが返した言葉は、かなり短かった。 「はぁ?」 解りやすく言えば、「よくわかりません」と言ったところだ。 ~~~~ 「ここは……トリステインとか言ったか?聞いたことがないが」 「……はぁ。何処の田舎から来たか知らないけど、説明してあげる」 ルイズの言葉に対し、ブルーは沈黙すると言う方法で肯定する。 ルイズは続けた。 「ここはトリステインよ。そしてここは彼の高名なトリステイン魔法学院」 「それはコルベールとか言う男から聞いた」 沈黙。 「……そう言われても、他に説明のしようが無いわよ」 「そうか。……所でシップの発着場は何処にある?」 「シップ?」 「キングダムに帰らなくてはならない」 「キングダム?」 「知らないのか?」 「……はぁ?そんなところ聞いたこと無いわよ。どこから来たのよあなたは」 「キングダムと言ったはずだが……」 再び沈黙。 「……へ、平民の言うことなんかいちいち憶えてないわよ!」 言っていることが無茶苦茶である。 まぁ、ここでの貴族の平民に対する態度などこのぐらいが普通のようだが。 「どこから来たのかとかは取り敢えず今は良いわ!帰るわよ!」 歩き出すルイズ。それを見送るブルー。 ちなみに、ルイズは自分の部屋に着いて初めてブルーが付いてきてないことに気付いた。 ~~~~ 「大体解った」 ブルーは今ルイズの部屋に居た。 あの後取り敢えず一番近くにある建物であったここに来たら、 さっきのルイズとか言う少女にこの部屋に無理矢理連れ込まれた。 そして、色々と話を聞いていたわけである。 「ここはハルケギニア。 そして、俺は『サモン・サーヴァント』によって召喚された」 「そうよ。私の使い魔としてね」 「……何で俺がお前の使い魔をやらなければならない?」 「私だって平民が使い魔なんていやよ」 ルイズはその言葉を放った後、ため息をついた。 「だけど、召喚しちゃった以上は仕方ないわ。 私の使い魔をやってもらうわよ」 「俺が使い魔をやらない、と言ったらどうするんだ?」 「あなた、行くところあるの?」 「…………」 ブルーが、ルイズから説明されたことの中には、当然それもあった。 ハルケギニアは、未開のリージョンか何かは知らないが、シップが通っていない。 そもそも、他のリージョンとの関わりがない。 当然トリニティの管理下にないわけだから、クレジットを使うことは出来ない。 つまり、ブルーはここでは拠りどころを持たないのである。 「良いだろう。ただ、帰れる方法が見つかったら帰らせてもらうぞ」 「駄目よ。あなたは私の使い魔なの。勝手に帰ったりしてもらっちゃ困るわ」 「もう一回やればいいだろう」 「無理よ」 「何でだ?」 「一回使い魔を呼び出したら、 その使い魔が死ぬまでもう一回唱えることは出来ないの」 「死ねば良いんだな?」 「うん……って、え!?」 「なら大丈夫だ」 「いや、大丈夫じゃないでしょ?」 「お前の知らない術だ」 その言葉に、ルイズが反応する。 「術って何よ」 「お前らも使っていただろう」 「空を飛んでいたこと?あれは魔法よ」 「同じものだ」 そう言うと、ルイズは驚いたような表情を見せ、黙り込んだ。 いや、「えっ」と位は言ったかも知れない。 なにやら汗も浮かべている。 「……ってことは……あなたは魔法……じゃなくて術を使えるの?」 「使える」 「そ、そう……」 何故か、それきりルイズは黙り込んでしまった。 声をかけても反応しないので、 ブルーは渡された毛布にくるまり、床に寝ることにした。 色々と文句はあるが、野宿よりはマシである。 ~~~~ ルイズは落ち込んでいた。 途中で数えるのを止めた程『サモン・サーヴァント』を失敗したこともだし、 成功した最後の『サモン・サーヴァント』ですら爆発が起きたこともだ。 さっきまではそれで平民を召喚したことも含まれていたが、 今では、その召喚した平民が魔法を使える事が彼女をより落ち込ませていた。 (私が使えないのに……何で平民のあいつが使えるのよ……って、 魔法が使えるなら平民じゃないわよね……) と、そこまで行って、ようやく調子を取り戻す。 ある考えに思い至ったからだ。 (そうよ、ブルーは魔法が使えるのよ。並の使い魔に出来る事じゃないわ。 むしろこれは誇るべき事じゃないかしら?) だが、ブルーが適当なことを言っている可能性がある。 確かめるべきと、後ろにいるはずの使い魔の方を向く。 「ねぇブルー、ちょっとあなたの術を――」 言い切る前に、言葉を止める。 聞かれない言葉に意味はない。 そして、今現在ルイズの言葉を聞いている者は居なかった。 ルイズがそれを聞かせようと思った相手は、既に寝ている。 それを見て、ルイズが思うことは一つだった。 「こ……」 要するに、この自分の思い通りの逆を行くような使い魔に、罰を下すことだった。 「この犬っ!使い魔が主人より先に寝るんじゃないのっ!」 言っていることが相変わらず滅茶苦茶である。 ともかく、その後起きたブルーとルイズの戦闘は、 ブルーの閃きによる当て身投げでルイズが昏倒するまで続いた。 ~~~~ ブルーが目覚めて、初めて目にしたものは、 頭にこぶを作って目の前に転がっていたルイズであった。 殴り合いは得意ではないが、『塔』を使い、消耗していた以上、 術をほいほい使うわけにはいかなかった。 なので、『活力のルーン』をかけた後、何故か殴りかかった来たルイズを凌ぎながら、 とっさに閃いた投げ技で昏倒させたのである。 窓からは日が差し込んでいた。 陽の光を浴び、完全に目が覚めると同時にあることに気付いた。 (術力がそれほど回復してない?) ブルーはそれを、ちゃんとした休憩を取れてないせい、と考えた。 何しろ昨日から食事は取ってないし、 睡眠は途中で中断されたあげく、慣れない格闘戦をしたのだから。 まぁ、術力が回復しきって無くてもおかしくはない。 (使えて超風が一発……と言うところか) まぁ十分危ないが。 考えをまとめ終えると、 取り敢えず目の前の少女を起こすことにした。 だが、ここで少し悩んだ。 (どうやって起こしたものか) 叫ぶのは何か性に合わない。 耳元で囁くのはもっとだ。 蹴ったり水をかけるのは問題外だろう。 取り敢えず、比較的術力の消費が少ない『ライトシフト』を使ってみることにした。 場を明るくするだけの空術だったが、果たして成功したようだ。 「朝だぞ」 「……ふぁい?あぁ、朝なの……って、誰よあんた!」 ルイズは寝ぼけながらも怒鳴った。 「……大丈夫か?」 ブルーはその様子を見て心の底からその言葉を言った。 「あぁ、使い魔ね。そうね、昨日召喚したんだっけ……」 ルイズは起き上がると、欠伸をした、そしてブルーに言う。 「服」 「……本当に大丈夫か?」 ルイズは服を着たままである。 それに気付くと、顔を赤くした。 「い、いつもはこの服のまま寝たりしないのよ!」 何でこの服のまま寝てるのかとか、 何で床で寝ていたのかとか、 昨日のことが少し思い出せないんだけどとか、 その他色々なことを喚いていたルイズが落ち着いた後、 二人で部屋を出ると、似たようなドアが壁に三つ並んでいた。 そのドアの一つが開いて、中から燃えるような赤い髪の女の子が出てきた。 ルイズより背が高く、むせるような色気を放っていた。 普通の男子ならちょっと視線がそっちに行ったり、 胸元をさりげなく見たりもするのかも知れないが、 元スーパーモデルのバニーガール姿を見た感想が (頭の悪そうな女だな) となるブルーである。別に何の興味も抱かなかった。 彼女はこっちを見て、それからルイズの方を向き、口の端をつり上げ言った。 「おはよう、ルイズ」 それに対し、ルイズは露骨に嫌そうな顔をしながらも、 「おはよう、キュルケ」 と返す。それを聞いてからキュルケと呼ばれた少女は ブルーの方を指さして、馬鹿にするような口調で言った。 「あなたの使い魔って、彼?」 「そうよ」 「あはは!本当に人間なのね!凄いじゃない!」 その時点でブルーのの持つキュルケへの印象は、 かつての彼女と同じく、頭の悪そうな女だな、となる事になる。 「『サモン・サーヴァント』で平民を呼んじゃうなんて、さすがはゼロのルイズね!」 いつもならルイズはこういう類の言葉に大して、 素直に恥と思って落ち込むか、 気にしない振りをしてどうでも良いような態度を取るか、 あるいは癇癪をおこして喚くかのどれかであるが、 今回は違った。 「ブルーは平民じゃないわよ」 「は?」 「魔法が使えるもの」 その言葉を聞いて、キュルケは考え込み、 なにやら悩み込み、時折唸り、最終的にひとつの聞くべき事を導き出し、 ルイズの肩を掴み、しっかりとルイズの目を見据え、それを言った。 「ルイズ?」 いきなり真剣になったので、 少々戸惑いつつもルイズは返した。 「なによ」 「大丈夫?」 流石にこれにはルイズも怒った。 ブルーに言われたのは、まだまっとうな理由があったから我慢できたのである。 もっともその分がたまっていて、殆ど同じ事を言ったキュルケに対して それが噴出しただけなのかも知れないが。 「なによ!さっきから人の顔を見たら大丈夫とか私の何処がおかしいように見えるの!」 「あっはっは!良かった。いつものルイズみたいね」 「どういう意味よ~!」 その反応を楽しんでから、キュルケは最初に言いたかったことを言うことにした。 「あたしも昨日、使い魔を召喚したのよ。誰かさんと違って、一回も失敗せずにね」 「あっそ」 「どうせ使い魔にするのなら、こういうのが良いわよねぇ~?フレイム!」 キュルケは、勝ち誇った声で使い魔の名を呼んだ。 キュルケの部屋からのっそりと、真っ赤で巨大なトカゲが現れた。 周囲に熱気が広まる。 「ふむ」 「あら、余り驚かないのね?見たことあるの?」 「いや」 そのトカゲは大きさはトラほどで、しっぽが燃えさかる炎で出来ていた。 それ自体は黒竜や朱雀と対峙した事があるブルーに特に印象を残さなかったが、 口から時折漏れ出す炎が、ブルーにある竜を思い出させたりもしていた。 「サラマンダー?」 ルイズが尋ねた。 「そうよ。見てこの尻尾。 ここまで鮮やかで大きな炎の尻尾は、間違いなく火竜山脈のサラマンダーよ? 好事家に見せたら値段なんて付けられないわね」 その自慢を聞きながらも、 ルイズは特に嫉妬の類の感情を浮かべることはなく、 素っ気なく返した。 「それはよかったわね。火のメイジのあなたにはぴったりじゃない。『微熱』のキュルケ」 「……つれないわね?」 いつもならムキになるか、興味ない振りで返すであろうルイズが、 全くもって興味を示さないので、問いかけた。 「どうでもいいもの」 その返答を聞いて、本気でどうでも良さそうだったので、 キュルケはその隣にいる使い魔の青年に話しかけることにした。 「……ああ、そう。所であなた、お名前は?」 ブルーを見つめながらにっこりと笑って、聞いた。 普通の男なら思わず積極的になってしまいそうな雰囲気であったが、 普通は普通。彼は彼である。 彼に積極的にさせるには、それだけで評議会の議員になれるぐらいの 人的魅力のある人物でないと無理であろう。 なので、いつも通りに返答する。 「ブルーだ」 「ブルー?……変な名前」 それに対しても何も言わない。 キュルケはなんだかつまらなくなっていたので、さっさとその場を立ち去ることにした。 「じゃあ、お先に失礼」 そう言うと、髪をかき上げ、颯爽とキュルケは去っていった。 サラマンダーも、キュルケの後を追い、去る。 それを見送ってから、ルイズはブルーに言った。 「ねぇ、ブルー?」 「何だ?」 「あなたの魔法……術だっけ。見せてもらって良い?」 その問いかけに対し、ブルーは術力が少ないことを考えてから、ルイズに返す。 「……別に良いが、それほど派手なのは使えないぞ」 「それでも良いから」 そう言うと、ブルーは空に印を刻み始めた。 どうやっているか不思議だが。 「……ルーン文字?」 「そうだな、ルーンを用いて使う印術だ」 ブルーが印を刻み終えると、それが別れ、光を放ち、ブルーを覆い隠す。 暫く、というほどでもなく少し経って光が収まると、ブルーの姿が消えていた。 「……姿が消えるの?」 「姿を消す『保護のルーン』だ。他人に干渉するような行動をすると効果は切れる」 いつの間にか後ろに立っていたブルーが言う。 素直に驚きながら、ルイズが言う。 「……私達の使う魔法とは違うのね」 「違うのか?」 「私達の魔法は……まぁ、授業でやると思うから、その時聞けばいいわ。 それより一つ言っておきたいことがあるんだけど」 「……まだ何かあるのか」 「あんな事言っておいて何だけど、その術とかいうのは出来るだけ使わない方が良いと思うわ」 「理由は?」 「アカデミーって言う、魔法ばっかり研究してる機関があるのよ。 私達の知らない魔法なんて知られたら、解剖とかされるかも」 「なるほど」 そんな話をしながら、二人は食堂へと歩き始めた。 前ページ次ページゼロの使い魔・ブルー編
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/9395.html
前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔 ウルトラマンゼロの使い魔 第百三十一話「二冊目『わたしは地球人』(その1)」 蛸怪獣ガイロス 恐竜 地球原人ノンマルト 登場 トリステイン王立図書館にあった六冊の『古き本』に精神力を奪われ、目覚めなくなって しまったルイズ。才人はルイズを救うために、司書リーヴルの力を借りて本の世界の攻略を 始める。そして一冊目の『甦れ!ウルトラマン』を激闘の末に、完結に導くことに成功したが、 残念ながらルイズに変化は見られなかった。 それから一夜明け、才人は二冊目の攻略に臨む。 「……シエスタ、ルイズの様子はどうかな」 ルイズを寝かせている図書館の控え室で、才人は昨日からルイズの看護に加わったシエスタに、 ルイズの容態を尋ねた。が、シエスタは残念そうに首を振った。 「昨日から、同じままです。悪くなる気配もなければ、目を覚ます気配もありません」 「そうか……。やっぱり、残る本の世界を完結させて、ルイズの精神力を取り戻す以外に 方法はないってことか」 つぶやいた才人が依然変わらぬルイズの寝顔に目を落とし、改めて誓った。 「ルイズ、待っててくれ。必ず、お前を本の世界から助け出してやるからな」 それから待機済みのリーヴルの方に振り返る。彼女は才人に告げる。 「こちらの準備は完了してます。次に入る本をお選び下さい」 テーブルに並べられている五冊の『古き本』。才人はそれらを手に取りながら、心の中で ゼロと相談する。 『ゼロ、次はどの本にする? 結局は、全部に入らなきゃいけないんだろうけど……』 『……次は、その左端の奴にしてくれ』 ゼロが指示した本を手に取る才人。 『これか? この本は……ウルトラセブンが主役……!』 『次は親父の物語を完結させたい。やってくれるよな?』 『ああ、もちろんだ』 相談が終わり、才人は手に取った本をリーヴルに差し出した。 「次はこいつにするよ」 「お決まりですね。では、そこに立って下さい」 これから二冊目の本の旅に出ようとする才人に、シエスタたち仲間が応援の言葉を向けた。 「サイトさん、どうかお気をつけて!」 「俺がいなくとも、しっかりやんな! 油断すんなよ!」 「がんばってなのねー!」 「パムー!」 ただ一人、タバサだけは目だけをリーヴルに向け、一挙手一投足を観察していた。彼女は 昨日のミラーたちとの話し合いの通り、行動に不審なところの多いリーヴルを、密かに監視 しているのだった。 だが今のところ、リーヴルに怪しいところは見られなかった。 「では、どうぞ良い旅を……」 昨日と同じようにリーヴルが才人に魔法を掛け、才人は本の中に入っていった……。 ‐わたしは地球人- 中国奥地の砂漠地帯。断崖絶壁と、その崖に彫り込まれた巨大な仏像に囲まれた地に、 中国軍の一部隊が到着した。彼らはこの地の地下に発見された、謎の遺跡の調査にやって 来たのだ。 地下に潜った部隊を迎えたのは、仏のような壁画や石像で構成された遺跡。だがこのような 遺跡は、ありえないはずだ。何故なら、 『殷の文明より古い……』 『この地層から言うと、一万五千年以上前……』 『そんな古い時代に……考えられない……』 一万五千年前というと、仏教伝来どころか稲作すら始まっていない。そのような時代に こんな高度な遺跡が築かれていたということを、こうして実際に目にしなければ誰が信じる だろうか。 兵士たちが呆気にとられていると、突然の地震が発生し、遺跡の天井から礫岩がこぼれ落ちてきた。 身の危険を感じた兵士たちは後ずさると、震動によって遺跡の壁の一部が崩れて穴が開いた。遺跡が その奥に続いているのだ。 調査隊はその穴を潜っていくと……そこは部屋のようになっており、内部には恐竜型の 怪物が刻まれた石板と、謎の紋様が刻まれた棺らしきものだけが置いてあった。 これら出土品――オーパーツは、ウルトラ警備隊が護送することが、地球防衛軍上層部により 決定された。 1999年。三十年余りもの時を隔てて、地球防衛軍は、その有り様を全く変えてしまった。 カジ参謀の主導する、かつてのR1号計画を拡張した、地球への侵略者になり得る宇宙人の 生息する星に先制攻撃を仕掛けて破壊することを目的とした「フレンドシップ計画」を掲げ、 宇宙に対して牙を剥くようになったのだ。計画反対派のフルハシ参謀が死去してからは、 その傾向は強まる一方。 ――ウルトラセブンは、かつての地球が外宇宙からの侵略者の脅威に晒され、滅亡の危機に あったがために、無力だが美しい心を持つ地球人に代わって侵略者と戦っていた。だが今の 地球は、強大な力を背景に他の星を脅迫している。少しでも間違えれば、地球の方が侵略者に なってしまうような状況になっていた。……今の地球を守護することが、宇宙正義足りえるのか…… 心に迷いを抱えながらも、セブンはそれを振り切るように怪獣、宇宙人と戦い続けていた。 そんな中での、オーパーツとはいえ単なる出土品を護送し、防衛軍のトップシークレット 「オメガファイル」として封印するという不可解な任務。訝しむセブン=カザモリの周囲には 謎の女が出没し、「オメガファイルを暴き、地球人の真実を確かめろ」と囁く。女に導かれる ようにオメガファイルに接近したカザモリだが、カジ参謀に発見され、拘束された末にウルトラ 警備隊の任から外されてしまった。 頑なに隠されるオメガファイルの正体とは何なのか……。それが封印されている防衛軍の 秘密施設に、怪獣が迫り出した。 「ギャアアオウ!」 秘密施設に最も近い海岸から上陸し、まっすぐ施設に向かっているのは、八本の足と身体中に 吸盤を持った怪獣。頭頂部にある二つの眼が黄色く爛々と光る。蛸怪獣ガイロスである。 また陸を横切るガイロスの近くの土中から土煙が勢いよく噴出し、また別の怪獣が地表を 突き破って出現した。 「グイイィィィィィ!」 体長こそガイロスと同等であるが、見た目はずばり恐竜そのもの。これはメトロン星人が 二度目の地球侵略をたくらんだ際に、恐竜を生体改造して怪獣化したものである。 「ギャアアオウ!」 「グイイィィィィィ!」 ガイロスと恐竜。この二体の怪獣が森の中を練り歩いていく様を、カザモリと『サトミ』が 見上げた。 「例のオーパーツが運び込まれた施設のある方向に向かってるわ! これって偶然なのかしら……?」 「……」 カザモリは懐に入れているウルトラアイに手を添えたが、側には『サトミ』がいる。彼女の前で 変身することは出来ない。 そうでなくとも、今セブンに変身して戦うことが出来るのか……自分がどうすべきか決めかねる ところがあった。 (偶然ではない。あの怪獣たちは、確実にオーパーツに引き寄せられている。だが何故怪獣が 古代遺跡の出土品を狙う? 防衛軍がひた隠しにすることと言い、あれは何だというのだ……) 考え込んでいると、『サトミ』が不意に大きな声を発した。 「あッ! ウルトラセブンだわ!」 「えッ!?」 そんな馬鹿な、とカザモリが顔を上げた。 その視線の先、ガイロスと恐竜の進行先に、青と赤の巨人――ウルトラマンゼロが巨大化して 現れた。怪獣たちは驚いて一瞬足を止める。 「セェアッ!」 ゼロは登場直後に前に飛び出し、ガイロスと恐竜に全身でぶつかっていく。ゼロを警戒していた 怪獣二体も、ゼロの行動を受けて腕を振り上げ迎え撃つ。 怪獣たちと戦闘を開始したゼロを見上げ、『サトミ』は怪訝に目を細めた。 「……いえ、セブンじゃない。別の巨人だわ! どことなく似てるけど……」 「……」 カザモリもまた、ゼロを見つめて神妙な顔つきになる。 「シャアッ!」 一方のゼロは二体の怪獣の間に割り込み、巧みな宇宙空手の技で数のハンデを物ともせずに 善戦していた。触手を振り回すガイロスの胴体の中心に掌底を打ち込んで突き飛ばし、その隙に 恐竜の首を抱え込んでひねり投げる。 「ギャアアオウ!」 「グイイィィィィィ!」 ガイロスも恐竜も必死にゼロに抗戦するが、この二体は肉弾しか攻撃手段がなく、特別破壊力に 優れている訳でもない。そんな怪獣は、二体がかりでも宇宙空手の達人のゼロの敵ではないのだった。 「ハァッ!」 怪獣両方に打撃を連発して弱らせたところで、ゼロはとどめの攻撃に移る。 まずはゼロスラッガーを投擲し、ガイロスの六本の触手を根本から切断。 「ギャアアオウ……!!」 腕となる部分を失ったガイロスは仰向けに倒れ、そのまま動かなくなった。 「セアッ!」 ゼロは振り返りざまに、恐竜にエメリウムスラッシュを撃ち込んだ。 「グイイィィィィィ!」 恐竜はレーザー攻撃で爆破炎上を起こし、ガイロスと同じく絶命したのだった。 「シェアッ!」 あっという間に怪獣たちを撃破したゼロは、流れ星のような速さで空に飛び上がってこの場から 去っていった。それを見届けた『サトミ』がポツリとつぶやく。 「行ってしまったわ……。あの巨人は何者だったのかしら? やっぱり、セブンと同じように この地球の守護者なのかしら」 一方のカザモリ=セブンは、突如として現れた怪獣のことを気に掛けていた。 (これで終わりだとは思えない。オーパーツへまっすぐ向かう怪獣たちの行動……それに、 奴らは一度私と戦い、倒されたものたちだ。それがどうして復活したのか……。しかも片方は、 あのノンマルトと関係があった怪獣のはずだ。……もしそうならば、私の周りに現れたあの 女性は、まさか……) それから――ゼロのことも、次のように考えた。 (……あの戦士は、M78星雲人なのか? 何者なんだ……) ガイロスと恐竜を倒し、森の中で変身を解除した才人は、ゼロに話しかけた。 「この本の世界には、一冊目のウルトラマンみたいに、セブンしかウルトラ戦士がいないみたいだな」 ウルトラセブンは、今となっては初代ウルトラマンと同じM78星雲人であるということが 周知の事実となっているが、地球に姿を現したばかりの頃は、ウルトラマンとは大分異なる 容姿であったために同種族だとは思われていなかった。この世界は、その当時の説を採用した ような、地球を守る戦士がウルトラセブンのみという歴史で成り立っているようだ。地球の 防衛隊も、セブンとともに活躍していたウルトラ警備隊が現在に至るまで存続しているという 設定のようである。 「……でも、一冊目とは違って何だか重苦しい雰囲気の世界だな……」 才人はそのことを考え、眉間に皺を寄せた。一冊目の科学特捜隊は、ハヤタがスランプに 陥っていた以外は終始明るく和やかな雰囲気であったが、この世界の地球防衛軍は正反対に ひどくきな臭い様子である。「フレンドシップ」とは名ばかりの、行き過ぎた地球防衛政策を 推し進め、またそれが何なのかは知らないが、ある事象を頑なに隠そうとし、非人道的な手段に まで手を染めている。人間の負の面が前面に出てしまっているような世界だ。おまけに、主人公 カザモリの周りには怪しい女の姿が見え隠れしている。こんな物語を無事に完結に導くのは、 一冊目よりもずっと困難かもしれない。 『ああ、そうだな……』 そんな才人の呼びかけに、ゼロはどこか気のない返事で応じた。 彼は、「自分の父親ではない」ウルトラセブンのことを考えていたのであった。 怪獣たちが倒された後、カザモリは『サトミ』に連れられて北海道に向かった。そこには、 ヴァルキューレ星人事件の際に殉職したフルハシの墓があるのだ。 カザモリ……ダンは、フルハシの墓に向かって、今の自分の抱える悩みを吐露したのだった。 「私があなたと出会った時代、地球人は今のような強い力を持っていなかった。もっと美しい 心を持っていた! 地球人は変わってしまったのか……それとも……」 「いいえ。地球人は変わっていないわ、ウルトラセブン」 ダンの前に、またしても例の女が現れた。女はダンに、今の地球人の姿こそが地球人の 本性であること、自分たちは今「地球人」を名乗る者たちに追いやられた地球の先住民で あることを訴えた。その証拠は、防衛軍が隠している例のオーパーツ……。 女がそこまで語ったところで、ウルトラ警備隊が現場に駆けつけた。カザモリが一度拘束 された際に調べられた脳波から、現在のカザモリはダンが姿を借りている姿、つまり宇宙人で あることが発覚してしまったのだ。そしてウルトラ警備隊は、カジ参謀の命令で、カザモリを 拿捕するためにやって来たのだ……。 「動かないで!」 墓地でカザモリは、『サトミ』――一冊目のフジと同じようにその役になり切っている ルイズに、ウルトラガンを突きつけられた。 「カザモリ君が、異星人だったなんて……」 カザモリの背後からはシマとミズノも現れ、カザモリは退路を塞がれる。 「いつから……いつからカザモリ君に入れ替わったの!?」 「待ってくれ! 君は誤解している!」 「近づかないで!」 ルイズに歩み寄っていくカザモリを、ルイズは恫喝した。 「これ以上近づくと、撃つわ。脅しじゃないわ!」 ルイズの指が、ウルトラガンの引き金に掛けられる――。 その時に、才人が林の中から飛び出して、カザモリの盾となった! 「やめろッ!」 「!? あ、あなた誰!?」 突然のことに動揺するルイズたち。それはカザモリも同じだった。 才人はその隙を突いて、ゼロアイ・ガンモードの光弾でルイズたちの手に持つウルトラガンを 弾き落とした。 「きゃッ!」 「な、何をするんだ!」 「テメェ、侵略者の仲間か!?」 血気に逸ったシマが才人に殴りかかっていくが、才人の素早い当て身を腹にもらって返り討ちに された。 「うごッ……!?」 「この人に、手出しはさせないッ!」 才人の鬼気迫る叫びに、ルイズとミズノは思わずひるんだ。 ルイズたちが立ちすくんでいる間に、才人はカザモリの手を取って引っ張っていく。 「さぁ、こっちに!」 「あッ! き、君!」 ウルトラ警備隊からカザモリを連れて逃げる才人。追ってくる彼らをまいたところで、 カザモリは才人と向き合った。 「君は……怪獣と戦った、あの戦士なのか?」 「……」 「どうして僕を助けたんだ?」 カザモリの問いに、『才人』は答えた。 「理由は、「あなた」には分かりませんよ……」 「……?」 今の『才人』は――ゼロであった。カザモリ=セブンの危機に、才人と交代して助けたのだ。 だが自分が、あなたの息子である、ということは話すことが出来なかった。何故ならば、 この本の世界ではセブンに『ウルトラマンゼロ』という息子がいるという『設定』はないからだ。 「ともかく、助けてくれたことはありがとう。でも……僕は行かなくちゃ」 カザモリが踵を返して、ウルトラ警備隊のところに戻ろうとするのを呼び止めるゼロ。 「待って下さい! 駄目です、危険ですッ!」 「いや、このまま逃げ続けることは、自分が侵略者だと言ってるようなものだ。僕は自分の潔白を、 この身を以て証明しなければ」 と言うカザモリを、ゼロは説得しようとする。 「潔白を証明したとしても……あなたがウルトラセブンだということが知られても! オメガファイルに 近づいたというだけで、今の防衛軍はあなたを殺すかもしれないんですよッ!」 「……!」 その言葉には、カザモリも流石に足を止めたが……。 「……僕は、自分が守ってきた地球人を、信じる……!」 そう言い残して、再び歩み去っていった。ゼロも、今の言葉を聞いてしまっては、これ以上 カザモリを止めることは出来なかった。 「……」 取り残されたゼロの背後に、例の女がどこからともなく出現した。 「お前は何者だ。何故我々の邪魔をする」 振り返ったゼロは、女に言い返した。 「それはこっちの台詞だ。あんたこそ何者だ? どうしてあの人を、オメガファイルに近づけようと するんだ。怪獣を操ってたのはあんたか? だとしたら、怪獣を使ってまで暴こうとするオメガファイルの 正体は、何だ!」 問い返された女は、ゼロに端的に回答した。 「我々は、真の地球人。一万年以上も前に、今地球人を名乗る者たちによって追放された。 オメガファイルの中身は、その証拠だ」 「!! ノンマルト……!」 ノンマルト。それは1968年、一時地球防衛軍を騒然とさせた謎の集団が名乗った名前である。 海底に居を構え、人間の海底開発の全面中止を訴えて地上を攻撃してきたのだが……彼らは、 元々地球に栄えていた種族は自分たちであり、今の地球人は後からやって来て自分たちに成り 代わった種族だと主張したのである。 その言葉が真実であったか否かは、本来のM78ワールドの歴史では、ノンマルトが二度と 姿を現すことがなかった故に不明のままで終わった。しかしこの世界では……それが『真実』 として取り扱われているのかもしれない。 「このことが白日の下に晒されれば、今の地球人はこの星を出ていかなければならなくなる。 それ故に、防衛軍はあの棺をオメガファイルとして封印しているのだ」 女――目の前にいるノンマルトもまた、そのように主張した。そしてそれは筋が通っている。 ノンマルトの語ることが全て真実ならば、今の人間は全て、この地球に暮らす権利を全宇宙文明 から認められなくなるのだ。 「……」 ゼロは一切の言葉をなくす。するとノンマルトは畳みかけるように告げた。 「お前が何者かは知らないが、軽率な行動は慎むべきだ。たとえ誰であろうと、侵略者に 加担したならば、お前もまた全宇宙から罪人として扱われ、居場所を失うのだ」 そう言い残して女はいずこかへと去っていく。ゼロはその場に立ち尽くしたまま。 才人は彼に呼びかけた。 『……とんでもない物語の中に来ちまったな。俺たち、これからどうしたらいいと思う? ゼロ……』 「……」 ゼロは才人の問いかけに、無言のまま何も返さなかった……。 前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/9436.html
前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔 ウルトラマンゼロの使い魔 第百五十話「悪魔の復讐」 炎魔人キリエル人 炎魔戦士キリエロイドⅡ 登場 ルイズ、才人、ジュリオの前に現れた人型の人魂、キリエル人。その名乗りに、ジュリオは 眉間に深い皺を刻みながらつぶやく。 「キリエル……確か終末思想を唱える異教徒が崇拝する偶像の名がそんなだった。それが実在 してて、今こうしてぼくたちの目の前にいるなんてね……。それも攻撃してくるなんて」 「何が目的!? あんたも侵略宇宙人なの!? それともガリアの刺客!?」 杖を握り締めながら詰問するルイズ。それにキリエル人は、やや気分を害したように返答する。 『このキリエル人をそのような低俗な者どもと同一視しようとは、それだけで愚かしいほどの 無礼よ。我らは無知蒙昧なるお前たち人間を、救済へと導く存在である!』 「き、救済?」 『如何にも。人間は欲深く、愚鈍なる生物。貴様らの罪深き魂は、このキリエル人の導きに 従うことによってのみ救われるのだ』 最早高圧的などというレベルではないことをさも当然かのように語るキリエル人に、ルイズは 怒りを通り越して引いていた。 「か、勝手なこと言ってんじゃないわよ! そういうのを侵略っていうんでしょうが!」 「やめておきなよ、ルイズ。こういう輩には何を言ったところで無駄なもんさ」 ジュリオが知った風な顔でルイズを押しとどめた。 『こちらも、得体にならぬ話をしに来たのではない。我らの聖なる焔で浄化するのだ! この キリエル人に逆らったという大罪をッ!』 豪語するとともに業火を放ってくるキリエル人。ルイズたちは慌てて逃れる。 「あいつ、一体何言ってるの!? さっきから訳のわかんないことばっか!」 「ルイズ、下がってろ! 危ないぞ!」 デルフリンガーを構えてルイズを守ろうとする才人に、ジュリオが告げる。 「いや、危ないのはきみだと思うよ、サイト」 「え? どういうこと?」 「だって奴の狙いは……きみ一人のようだから」 目を丸くしてキリエル人に振り返った才人は、その殺気が自身にのみ向いているようで あることに気がついた。 『我が炎によって消え失せよ、咎人よッ!』 「ええええーッ!?」 キリエル人の火炎弾から走って逃れる才人。それを追いかけながらキリエル人ががなり立てる。 『貴様、許さんぞ! あの時の裁きを受けよッ!』 執拗に狙われる才人にジュリオが言う。 「随分と好かれてるねぇ。きみ、何やったの?」 「知らねぇよッ! 今日初めて会ったよ!?」 全く呑み込めない才人だが、キリエル人はお構いなしで火炎を飛ばしてくる。炎はどんどんと 周囲に燃え移っていき、このままではルイズのみならず他の関係ない人たちも危ないだろう。 「くッ……ついてこいッ!」 『逃がさんぞ!』 咄嗟の判断で大聖堂の外へ向かって全速力で駆け出す才人。キリエル人はやはり彼を標的に して追跡していく。 「サイトぉッ!」 「行くなってルイズ! ここはひとまず彼に任せよう」 身を乗り出したルイズをジュリオが制止し、才人はキリエル人を引きつけながら大聖堂を 飛び出していった。 人気のない裏路地に入ったところで才人は立ち止まり、背後から追いかけてきていたキリエル人 へと向き直る。 「お前、何なんだよ! どうして俺のことを狙うんだ!?」 『とぼけるな! 我らは忘れぬぞ、あの時の屈辱をッ!』 問いかけた才人だが、キリエル人は怒りに駆られているためかその答えはまるで要領を得ない。 呆れ果てた才人は別の問いを投げかける。 「お前がどうして俺を目の敵にするのか、この際それはどうでもいい。けど関係ない人を 巻き込むような攻撃をするのはやめろ! お前の炎で誰かが重傷を負ったりしたらどうするってんだ!?」 しかし、キリエル人はそれに傲然と言い返す。 『そんなことは知ったことではない! 我らの焔は聖なる炎。このキリエル人を崇めず、 ただの人間を崇拝する愚劣の極みたる者どもの罪を焼却して救済することにもなるのだ!』 このキリエル人の言葉に、いよいよ才人も怒りが頂点に達した。 「ふざけんじゃねぇッ! 命を救おうとしない奴に、何が救えるんだ!!」 あまりにも身勝手なキリエル人を、もう許すことは出来ない。才人はウルトラゼロアイを 取り出して装着。 「デュワッ!」 即座にウルトラマンゼロに変身して、深夜のロマリアの市街の中心に立ち上がる。 『変身したか。ならば見せてやろう! 復讐のために、更に研ぎ澄ました炎と、戦の姿を!』 対するキリエル人も、立ち昇る煙の柱とともに姿を変え、ゼロと同等のサイズの怪巨人となった! まるで白骨がそのまま怪物となったかのような体躯に、顔面はひどく吊り上がっていて、 凄絶な笑みを浮かべているようにも見える。そして胸部の片側には、明滅を繰り返す発光体。 殺気に溢れたこの肉体は、キリエル人の戦闘形態、キリエロイドである。 『姿を変えたか! だが如何様な姿になろうとも、必ず抹殺してくれるッ!』 『訳の分かんねぇことばっかくっちゃべってんじゃねぇぜ! 降りかかる火の粉は払うだけだ! 行くぜッ!』 夜の街に突如として出現した二人の巨人に、住居も持たない貧民を中心としたロマリア市民が 大騒然となる中、ゼロとキリエロイドの決闘の火蓋が切って落とされる。 「キリィッ!」 先制したのはキリエロイドだ。風を切る飛び蹴りでゼロに襲いかかる。が、ゼロも迅速に 反応して回避。 「テヤッ!」 「キリィッ!」 着地したキリエロイドに横拳を仕掛けようとしたが、その瞬間キリエロイドが後ろ蹴りを 見舞ってきたので防御に切り替えた。交差した腕でキックを受け止める。 「キリッ! キリィッ!」 キリエロイドの勢いは止まらず、手技を織り交ぜた速い回し蹴りの連発でゼロを徐々に 追いつめていく。キリエロイドの高い敏捷性とフットワークの軽さから来る連続攻撃は、 反撃を繰り出す余地を与えない。 「デェヤッ!」 しかし格闘戦ならゼロにとっても得意分野。相手のキックを捕らえて上に押し返すことで、 キリエロイドを宙に舞わせる。そこを狙って今度こそ拳を打ち込むも、キリエロイドは即座に 受け身を取って拳を打ち払った。 「シェアッ!」 「キリィッ!」 ゼロは背後に跳びながらゼロスラッガーを投擲。それをキリエロイドは火炎弾の爆撃で はね返した。スラッガーがゼロの頭部に戻る。 『なかなかやるじゃねぇか……』 下唇をぬぐって精神を落ち着かせながらつぶやくゼロ。ゼロの宇宙空手の腕でも、キリエロイド との格闘戦は互角の状態だ。また、キリエロイドの攻撃の一発一発には重い恨みの念が籠っている ことにもゼロは気がついた。それがキリエロイドの技のキレも威力も増しているのだ。 ここでゼロは一瞬、周囲の地表を一瞥した。街のそこかしこに、まだ避難の完了していない 人間が大勢いる。ロマリアは人口密度がハルケギニアでも一位二位を争うレベルなので、その分 避難にも手間と時間が掛かっているのだ。あまり勝負が長引けば、彼らに危険が及ぶ恐れが 比例して高まる。 『とっとと勝負を決めてやるぜッ! はぁぁぁッ!』 ブレスレットを輝かせ、ストロングコロナゼロに変身。超パワーで格闘戦を決めてしまおうと いう魂胆だ。 「キリィッ!」 だがしかし、その瞬間にキリエロイドの肉体にも大きな変化が生じた! 『何!?』 みるみる内に筋肉が盛り上がり、肉体全体がパンプアップ。腕には刃が生え、より攻撃的な 形態となる。 「向こうも変身した……!」 大聖堂の外に出て戦いを見守っているルイズが戦慄した。ゼロのお株を奪うかのような 形態変化であった! 「キリィッ!」 『ぐッ!』 変身を遂げたキリエロイドが飛び込んできて、ストレートパンチを見舞ってくる。ガードした ゼロだが、盾にした腕がビリビリ痺れた。肉弾戦特化のストロングコロナの腕を痺れさせるとは、 よほどの重さだ! 「キリィッ! キリィッ!」 「セェェアッ!」 更にキリエロイドは腕の刃を武器にして斬撃を振るってくる。ゼロは両手にゼロスラッガーを 握り締めて対抗し、火花を散らして切り結ぶ。 一気に勝負を決めるつもりが、キリエロイド側の対応で依然として拮抗。だが、それでは 長期戦に弱いウルトラ戦士が不利となる。 『だったらこうだッ!』 そこでゼロは戦法を再度変化。ストロングコロナからルナミラクルゼロとなり、キリエロイドの 斬撃をかわしながら高空へと飛び上がった。接近戦が駄目なら、空中戦だ。 「キリィィッ!」 しかし、キリエロイドもまた再び変身。背面に巨大な翼を生やし、ゼロに向かって一直線に突貫! 『なッ!? うわぁぁぁッ!』 ジェット機をも上回るスピードで体当たりされたゼロははね飛ばされ、地表に叩きつけられてしまう! 「ゼロッ!」 思わず絶叫するルイズ。しかも追いかけて着地したキリエロイドが翼を仕舞ってゼロの 背後を取り、首に腕を回してきつく締め上げ出した。 「キーリキリキリキリ!」 『うッ、ぐぅぅぅぅ……!』 ゼロの苦しみを反映するように、カラータイマーが点滅して危機を報せる。しかしこんなに 密着されていては、超能力を発動する隙がない。ゼロのピンチ! 「何とかしないと……!」 ルイズが身を乗り出しかけたが、その時に後ろから誰かに呼びかけられた。 「待った、ルイズ! ここはぼくたちに任せてくれ!」 振り返るルイズ。そこに並んでいたのは……。 「ギーシュ! みんなも!」 ギーシュを先頭にした、オンディーヌの隊員たちである。ギーシュは胸を張ってルイズに宣言。 「ゼロには何度も助けられている。今度はぼくたちが彼を助ける番だ!」 「い、言うじゃないの! 見直したわギーシュ!」 驚くルイズ。こんなに頼もしいギーシュは今までにあっただろうか。 「それじゃあお願い!」 「ああ! 行くぞみんな、今こそ練習の成果を見せる時だ!」 「おおッ!」 ギーシュの号令により、オンディーヌが一斉に杖を高々と掲げた。果たして彼らはどんな 魔法を駆使してゼロを助けるというのか、ドキドキと緊張するルイズ。 「今だッ!」 そして彼らの杖の先端から同時に魔法の光が発せられ、ゼロの正面で弾ける! 現れたのは……光による、ハルケギニアの文字の列。 「えッ? 文章?」 呆気にとられるルイズ。反対側から見ているので文字が左右逆だが、ルイズはそれが「がんばれ ゼロ」と書かれていることを理解した。 オンディーヌが口々に叫ぶ。 「負けるなゼロー!」 「こんなことでやられるあなたではないだろう! まだやれるッ!」 「しっかりするんだ! ぼくたちがついてるぞー!」 わぁわぁと応援の言葉を叫ぶ、だけのオンディーヌにルイズがズルッと肩を落とした。 「ちょっとあんたたちぃッ!? 期待させといて応援するだけってどういうことなのよ! もっとマシなこと練習しなさいよッ!」 大声で突っ込むルイズだが、ギーシュたちは堂々と言い返した。 「何を言うかね! 所詮ドットかラインのぼくたちの魔法で、怪獣をまともに相手に出来る はずがないだろう!」 「勇気と無謀をわきまえて、出来ることをするのが戦場で生き残る秘訣だよ!」 「無茶をして命を散らす方が、ゼロの気持ちを裏切ることになるよ!」 「そ、それはそうかもしれないけどッ!」 「あはは、面白いね彼ら」 どうも釈然としないルイズの傍らで、ジュリオが噴き出していた。 しかしそんなルイズとは裏腹に、オンディーヌの作り出した魔法の光に照らされたゼロは、 胸の内に勇気が湧き上がってきた! 『あいつら……よぉしッ!』 気合い一閃、通常状態に戻ると同時にキリエロイドの腹部に鋭い肘鉄をお見舞いする。 「キリィィッ!」 キリエロイドがひるんで拘束が緩んだ隙に脱出。ゼロは体勢を立て直すことに成功した。 「ほら見ろ! ゼロが助かったぞ!」 「ぼくたちの応援が功を奏したんだ!」 「間違ってなかっただろう!?」 「え、えぇー……まぁ、そうかもしれないけど……」 喜ぶオンディーヌに、ルイズは反応に困った。 それはともかくとしてゼロは、スラッガーを連結してゼロツインソードDSを作り上げた。 毅然と構え、デルフリンガーへ呼びかける。 『行くぜデルフ! あいつらに応援された手前、あんま情けねぇとこは見せられないからな!』 『その意気だぜ! さぁ、おまえさんの本当の実力を見せつけてやんな!』 ゼロとキリエロイドが互いに肉薄。キリエロイドが腕の刃を振りかざして斬りかかってくる。 「キリッ! キリィッ!」 「シェアッ! ハァァァッ!」 しかしゼロはツインソードを閃かせて相手の刃を弾き返し、がら空きになったボディに 斬撃を仕返ししていく。 「キッ、キリィィィッ!」 大剣による連撃を入れられ、さしものキリエロイドもただでは済まずに大ダメージを負った。 そうして隙が生じた相手を、ゼロは思い切り蹴り上げて宙に浮かす。 「セェアッ!」 「キリィーッ!」 空中に舞ったキリエロイドへと、ゼロがまっすぐ跳躍! 『これでフィニッシュだぁッ!』 空にZ型の斬撃が刻まれ、キリエロイドは体内の火炎が暴走して爆散! 紅蓮の灯火を バックに、ゼロが颯爽と着地した。 「やったぁ! ゼロの逆転勝利だ!」 「練習の甲斐があったぜ!」 「うおおぉぉーッ!」 大空の彼方へと飛び去っていくゼロを見送りながら、一気に沸き立って大喜びするオンディーヌの 面々。その様子を一瞥したルイズは、ふぅと息を吐いていた。 「まぁ、勝ったし良しとしましょうか……」 キリエロイドを撃退し戻ってきた才人は、新しくあてがわれた客室でルイズを相手につぶやいた。 「それにしても、さっきの奴は何だったんだろうな。どうして俺のこと、あんなに敵視してた のかな……」 「やっぱり誰かと勘違いしてたんでしょ。そうでもなきゃ説明がつかないわ。あんた、あれとは 会ったことなかったんでしょ?」 「当然だよ。あんなけったいな奴、どこかで会ってたら忘れたりしねぇよ」 しかし、このハルケギニアに自分に似た人間などいるのだろうか? 人種から違うのに…… と考える才人だったが、キリエル人を撃破した今、真実を確かめることは出来なくなった。 「まぁいっか。それよりこれからのことだ。さっきのはガリアとは無関係だったみたいだけど、 三日後には必ずガリアが何らかの動きを見せるはずだ。きっとまた何か怪獣を送り込んでくる はず……。今度こそガリアをとっちめて、タバサを解放してやらなきゃ」 と使命に燃える才人だったが、そこにゼロが尋ねる。 『けど、いいのか才人? 本当にガリアと事を構えて。そう簡単には決着がつかないと思うぜ』 「もちろんだよ。何度も言ってるだろ?」 『けどな……せっかく帰れるようになったってのに。ズルズルとここに留まることになるかも しれねぇんだぜ』 今のゼロの言動に、ルイズは反射的に振り返った。 「えッ、今のどういうこと!? サイトが……帰れる!?」 『ああ。才人には先に言ったんだけどな』 ゼロがルイズに告げる。 『一度死んで、命の再生がやり直しになってた訳だが、思ったよりも早く完了してな。つい 昨日のことだ』 「命が再生したってことは……ゼロとサイトが分離できるってことよね?」 『そういうことだ。そいつはつまり、才人を地球に送り返せるってことだ』 少なくないショックを覚えるルイズだったが、話の流れはその方向に進んでないことに気づく。 「そ、それなのにサイト、まだこっちにいるつもりなの?」 才人はあっけらかんと答えた。 「ああ。だって今の中途半端な状況を投げ出すなんて、目覚めが悪いよ。最低でも、タバサを ガリアから完全に救い出して安全を確保する! それが済むまではな」 「で、でも……いいの? もう一年以上もこっちにいるじゃない。その……ご家族が心配 されてるはずよ。また危ない目にも遭うでしょうし……確実に帰れる内に帰って、後のことは わたしたちに任せるのだって……」 自らの負い目もあり、才人を説得するルイズだったが、それでも才人の気持ちは変わらなかった。 「いいんだ。そりゃあ本音を言えば、母さんたちの顔を見られないのは寂しいけどさ……。 でも、ただの高校生だった俺がウルトラマンだぜ? そして一つの星を救ったなんてことを 土産話にすれば、みんなひっくり返るよ! 母さんも、俺のことを誇りに思ってくれるはずさ! それまで我慢するよ」 その時のことを想像して瞳を輝かせる才人。そんな彼の様子にルイズは思わず肩をすくめた。 「もう、すっかり英雄気取りね。でも……」 ルイズは、いけないことだとは思いつつも、才人がハルケギニアに留まる道を選んだことに、 喜びと幸せが心の中に溢れて仕方なかった。顔がにやけるのを堪えるのが大変であった。 才人の家族には申し訳ないと思いながら、この時間が一分一秒でも長く続けばいいのに…… そんな考えまで抱いていた。 前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/9325.html
前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔 ウルトラマンゼロの使い魔 第九十九話「故郷の夢」 暗殺宇宙人ナックル星人グレイ 夢幻怪獣バクゴン 登場 「……はッ!?」 目を覚ました才人は、ベッドから勢いよく上体を起こした。しばしボーッとしていたが、 やがてつぶやく。 「……ああ、夢だったのか」 才人は寝ている間に見た夢の内容を、おぼろげながら振り返った。 (何だか変な夢だったな……。明日は来るんだろうか? なんて不安なことを夢の中で思って) 「ちょっとッ! やっと起きたと思えば、何黄昏れてるの!」 「おはようございます、サイトさん」 ぼうっと考えていたら、ルイズに強く呼びかけられた。シエスタは挨拶する。二人とも既に 着替え終えている。 「お、おはよう。……リシュは?」 「あんたが寝てる間にどっか行っちゃったわ。もう、こんな時間にようやく目を覚ますなんて、 リシュの寝坊癖が移っちゃったんじゃないの?」 嫌味を言ってくるルイズに、ポリポリと後ろ頭をかいた才人が弁解する。 「いや、どうも最近寝つきが悪いっていうか、変な夢ばかり見るから。それで身体のリズムが おかしくなってるのかも」 「変な夢? ……どんなの?」 何故か、ルイズはその部分を気に留めた。尋ねられた才人は詳しく説明する。 「毎度ほとんどのところは忘れちまうんだけど、確かなことは、舞台はいつも日本……俺の故郷で、 俺は自分の学校に通ってるんだ。でも、ルイズたちもそこに通ってるみたいで……一度や二度なら まだしも、連続で同じ内容の夢を見るなんて、普通はないよな」 と言うと、ルイズは何やら顎に指をかけて考え込んだ。 「あの、ルイズ?」 「……サイト、実はわたしも近頃、サイトのように同じ感じの夢を見てるの」 いきなり、ルイズはそう告白した。 「え? ルイズも?」 「ええ……。見知らぬ世界で、見知らぬ学び舎に通う夢。……それって、サイトが今言ったのと 似通ってるわよね。それにその世界の景色……一度だけ見せてもらった、あんたの世界の景色に 似てるような気がするわ」 才人はルイズの言に驚く。それはもしかしたら、ルイズが自分と同じ夢を見ているのかも しれない。だが、そんなことがあり得るのだろうか。 しかもそれだけではなかった。 「あの、少しよろしいでしょうか……」 話を脇から聞いていたシエスタが控えめに手を挙げる。 「シエスタ、どうした?」 「夢のことですが……実は、わたしも今ミス・ヴァリエールが語ったのと同じような夢を 連日見てるんです。平民のわたしが、サイトさんのいる学園に生徒として通う夢を…… それも、すごく現実感のある……」 「シエスタまでその夢を? どうなってるのかしら……」 ますます混迷を深める才人とルイズ。複数の人間が一つの夢を見合うなんてことが、 現実に起こり得るだろうか。 それと、同じ夢を見ている人はここにいる三人だけに留まっているのだろうか。もしかしたら、 他にもいるのかも……。 「ちょっくら、調べてみるか……」 才人は小さくそうつぶやいていた。 その後学院を回って聞き込みをした結果、「見たこともない場所の学校の夢を連続して見る」 という質問に肯定を返した人間は、才人の予想以上の数がいた。彼らに、通信端末に記録されている 日本の街の風景を見せると、そろってこんな感じの景色だったと答えたのだった。 これで、同じ夢を見ている人間が他にもいるのはほぼ確定だ。それも相当数。明らかに異常だ。 「まさか、こんなにも多くの人が同じ夢を見てただなんて……。何か、怖いな……」 独りごつ才人。もし全ての人間が同一の夢を見るようになったとしたら……その時は、現実と夢、 どっちが本当の世界か分からなくなってしまうのではないだろうか。考えが飛躍しているかも しれないが……そんな漠然とした不安を抱いてしまう。 そうやって学院の廊下を歩いていると、後ろから誰かが駆け寄ってきた。 「ああ、サイト! こんなところにいたのか」 「クリス? どうしたんだよ、そんなに慌てて」 クリスであった。彼女は軽く息切れするくらいに走り回っていたようだ。そのことを怪訝に思う才人。 「お前、色んな人にどんな夢を見ていたのかと聞いて回っているらしいな」 「あ、ああ。うん、そうだけど」 「何故だ? 何故、夢のことなど聞くのだ?」 妙に凄みながら問うクリス。その反応に、才人は彼女が何か知っているのか、と思い、 事情を打ち明けることにした。 「……なぁ、クリス。少し不思議なことなんだけど、真面目に聞いてくれるか?」 「当然だ。わたしはいつも、人の話は真面目に聞いている」 「あはは、そうだよな。それじゃ……」 そして才人は、奇妙な夢のことを洗いざらいクリスに説明した。 「……ってこと」 「なるほど、大勢の人間が一つの夢を……」 クリスは眉間の皺を一層深くする。彼女の様子を窺って、才人は尋ね返す。 「なぁ、クリス。お前にはこの事態に、何か心当たりがあるのか?」 「い、いや! これは……そう、ただの好奇心だ。サイトの様子が変だというから……」 途端に口ごもるクリス。ごまかそうとしているのは明白だった。 それに才人は些か機嫌を害した。デバンは、クリスが何かの使命を帯びて学院にやってきた、 必要だと思ったのならクリスから事情を話してくれると言っていたのに……自分は信用されて いないのか、と思ってしまったのだ。 「もういい。夢のことは、もう少し調べてから話す。クリスは何か隠しているみたいだし」 「え? あ、いや。隠してなどいない!」 「いいよ、話したくないなら無理しないで。じゃあな!」 少しきつめの口調でクリスから離れる才人。するとゼロが呼びかけてくる。 『おい、いいのか? 十中八九、クリスは何か知ってるだろうに』 「……どっちにせよ、クリスから話してくれるのを待つさ。友達相手に、無理に聞き出すこともしたくない」 冷静になってから、今の態度を反省しつつも、ルイズの部屋へと帰ってくる。 「あ、お兄ちゃん。お帰りなさーい!」 部屋にはデルフリンガー以外は、リシュしかいなかった。 「ああ、リシュ。ルイズとシエスタは?」 「知らなーい」 「さっき、おめえさんを捜しに行ったんだが、すれ違ったみてえだな」 リシュの代わりにデルフリンガーが回答した。 「ありゃ、そうなのか? まぁいいか、戻ってくるのはここだし」 畳に上がって腰を下ろす才人。それから夢の件を頭の中で整理するのだが、その最中に リシュが呼びかけてきた。 「ところでお兄ちゃん。お兄ちゃんは、自分の故郷に帰りたいって思う?」 「ん……? どうしたんだ、急に」 「いいから。……お兄ちゃん、こっちに来てから危ない目、苦しい目に遭い続けだよね」 リシュは、奇妙なことを話し出す。が、才人は徐々に意識が朦朧としてきて、反応が鈍くなる。 「ん……何か、妙に眠いような……」 「家族から、友達から、故郷から勝手に切り離されて、いつもいつも働かされ続けて…… ニホンに帰って、平和な世界に戻りたくはない? お兄ちゃんが危険な敵と戦う必要なんて、 ないじゃない……」 「おい、相棒! しっかりしろ! おーい!」 『才人! 目を覚ませ! こいつはやべぇぞッ!』 デルフリンガーとゼロの声もするが、才人は今にもまぶたが落ちそうで、鋭い反応を返せなかった。 「……何で? ここには敵なんていないだろ? リシュしか、いなくて……」 『目を開けろ才人ッ!』 寝ぼけ眼を支え、ようやくリシュを見つめ返す才人。 そこには、小さく幼いリシュの姿はなかった。代わりに、妖艶な大人の美女がいた。 ただし……角と黒い羽が生えている。 その頃ルイズとシエスタは、才人の戻りが遅いので学院中を捜していた。 「もう、ご主人様にこんな手間をかけさせて。世話の焼ける使い魔ね!」 「まぁまぁ。今日のサイトさん、どこか様子がおかしかったですし。もしかしたらわたしたちが 見た夢のことで、何か掴んだことがあるのかもしれませんよ」 ぷりぷり怒るルイズをなだめるシエスタ。二人はどうやら才人とすれ違ってしまったようだと分かり、 一旦部屋に戻るところであった。 しかし、どういう訳か今日はやたらとその道のりが長いように感じる。 「おかしいわね……。こんなに時間が掛かる距離だったかしら?」 「確かに変ですね……。何だか、同じところで足止めをされてるような気が……」 ルイズとシエスタがつぶやいた時、ジャンボットが叫んだ。 『気をつけろ、二人とも! 空間の歪みを検出した! むッ! そこにいるのは誰だッ!』 「えッ!?」 すると、廊下の暗がりから一人の怪人がぬっと現れた! 『あぁ~ら、バレちゃったわねぇ~』 「あッ! う、宇宙人!」 咄嗟に身構えるルイズたち。目の前に現れたのは明らかに宇宙人、それも見たことのある タイプであった。顔は違えども、タルブ村を襲撃した者と同じ特徴を有する……ナックル星人だ! ジュリ扇をはためかせて、低い声質なのに女口調のナックル星人へ、ルイズは杖を突きつけた。 「学院に侵入して、今度は何をたくらんでるの!? 答えないと、爆発を食らってもらうわよ!」 『あらヤだ、怖いわ~。そんなかわいい顔してカッカしないでちょうだい』 脅しても、ナックル星人はこっちを舐めているのか、おどけた態度のままであった。 『今日は何もあなたたちに危害を加えに来たんじゃないのよぉ。用があるのは、あなたたちの お友達の男の子の方』 「! サイトに何かしたの!?」 『してるのはアタシじゃないわよ。アタシのお友達! アタシはお邪魔が入らないように、 ちょっとあなたたちを足止めさせてもらっただけなのよ』 どうやらナックル星人には、他に仲間がいるらしい。それが才人を狙っているところなのか。 才人が危ない! 「今すぐわたしたちを解放しなさい!」 『言われなくてもそうするわぁ~。何故なら、もう十分時間は稼いだから! 向こうで何が 起きてるかは、自分の目で確かめてちょうだいッ! それじゃ、さよならッ♪』 ナックル星人は投げキッスと、毒々しいハートマークを飛ばすと、一瞬にして姿をかき消した。 それと同時に空間が元に戻る。 「ミス・ヴァリエール!」 「分かってるわ! 急ぎましょう、サイトのところへ!」 ルイズとシエスタは全速力で駆け出して、部屋へと向かい出した。 「……誰だ?」 いきなり現れた美女を見上げた才人の口から疑問がこぼれると、ゼロがそれに答えた。 『信じられないかもしれねぇが、そいつはリシュだ……! お前が背を向けてる間に、 大きくなりやがった……! いや、こっちが本当の姿なのか……』 「え? じゃあ、あれ、リシュ?」 『だんだん呑み込めてきたぜ……。才人、気をしっかり持て!』 強く呼びかけるゼロだが、才人の意識ははっきりしない。その間に美女――リシュが朗々と語る。 「うふふふ……。ねぇサイト、あたしはあなたを平和な世界に連れてってあげられるわ。 もう何にも苛まれることなく、楽しく生きていける世界にね……。あたしの力とあなたの 記憶が合わされば、無敵。誰であろうと邪魔はさせないわ……」 「……」 才人の催眠状態はどんどんと深くなっていく。意識が、リシュの方にしか向いていない。 『俺の声も聞こえてないのか……! くッ、こうなりゃ最終手段……!』 ゼロは強制的に意識を入れ替えようとしたが……ゼロの声まで急激に弱り出す。 『うッ、な、何だ……! 力が出ねぇ……! まさか、俺まで奴の術中に……!』 「……サイトの中にいるもう一人、ウルトラマンゼロ。あなたにだって邪魔はさせない。 命を共有してるからサイトと切り離すことは出来ないけど……代わりに、永遠に眠っててもらうわ」 才人に詰め寄ったリシュは、ウルティメイトブレスレットを手の平で抑え込んだ。同時に 怪しい力の波動が流し込まれ、ゼロはそれ以上言葉を発せられなくなる。 「ねぇサイト、平和な世界に行きたい?」 「……ああ、行きたい。平和な世界に行きたいから、俺は夢を見続けてたんだ……」 最早才人は、リシュの言葉を繰り返すレコーダーのようになっていた。 「うふふッ! 素直なサイトのお願い、聞き届けたわ」 「相棒! 起きろって! おーいッ!」 デルフリンガーが叫ぶが、動けない彼ではこの事態を止めることは出来なかった。 「ねぇ、サイト。あたしたちは、ずーっと一緒になるの。ニホンでね」 そしてリシュは、才人の顔に口を寄せて……。 「サイトッ!」 「サイトさん! ご無事ですか!?」 ルイズとシエスタが駆け込んだちょうどその時に、リシュは己の唇を才人のそれに重ね合わせた! 「えぇぇッ!?」 予想外の光景を見せつけられて仰天するルイズたち。そしてルイズは真っ赤になって怒り狂う。 「さ、サイトぉぉぉぉぉッ! 人が心配して駆けつけてみたら、わたしの部屋で知らない女と ななな何やっちゃってくれてるのよぉぉぉぉ~ッ!!」 思いっきり勘違いして杖を振り上げるルイズだったが……その手がいきなり凍りついたように停止した。 「えッ? な、何……? 身体が、動かない……」 「ミス・ヴァリエール……! わたしもです……!」 「うふふ。あたしを怒らないでサイトを怒るなんて、ほーんと、ルイズらしい」 全く動けなくなったルイズたち、特にルイズに笑みを向けたリシュは、急に表情を怒りに染めた。 「サイトをさんざん自分のもの扱いして、ひどい女。ああ、可哀想なサイト。だから…… サイトはあたしがもらってあげる」 「ま、待って! 何するつもり!?」 焦るルイズだが、どんなに力を込めてもやはり身体の自由は利かなかった。まるで自分の ものではなくなってしまったかのようだ。 『大変だ! こうなれば私が……!』 ジャンボットがここへ急行しようとするが、リシュは才人を引き寄せてクイッと顎を上げる。 「サイトはあたしの世界へ連れていくわ。そして……身も心もあたしのものにするの」 『くッ、間に合わん……!』 そしてリシュは、再び才人の唇に口づけした。 「んッ……ちゅ……」 その瞬間に、リシュと才人を中心にまばゆい閃光が発せられた! 「きゃあああッ!」 あまりにまぶしくて直視することが出来ず、目を閉ざすルイズとシエスタ。そして目を開けると……。 「えッ、サイト……!?」 「い、いません……! どこにも……!」 才人の姿は、リシュとともに部屋のどこからもなくなっていた。扉の前にはルイズたちが 立っているし、窓が開かれた様子もない。それなのに、完全に消えてしまっていた。 「デルフ! サイトがどこへ連れてかれたか分からない!?」 「わからねえ。相棒は女と一緒に、光の中で消えちまったよ。文字通りな」 「あ、あの女は何者なんですか!?」 問いかけるシエスタ。デルフリンガーはそのまま答える。 「ありゃ、ちっこいのだよ。ちっこいのがでかくなったんだ」 「な、何言ってんのよッ! ちっこいのってリシュよね? あれのどこがリシュなの?」 まるで体格が異なっていたのでルイズは信用しなかったが、ジャンボットがデルフリンガーを擁護する。 『いや、デルフリンガーの言う通り、あれはリシュだ。生体の波長が全くの同一だった。 恐らく、さきほどのが本来の姿で、外見年齢を変えていたのだろう』 「あれがリシュさんの正体……!? それにさっきのウチュウ人の言うことを考えたら、 リシュさんがあのウチュウ人の仲間……!? 何のためにわたしたちを欺いてて…… サイトさんをさらっていったんですか!?」 「そこまではわかんねえよ、本人に聞いてくれ。……って、もう消えちまったんだった」 デルフリンガーが息を落とした。 「一体、何が起きてるの……!?」 まるで事態が呑み込めず、ルイズは戦慄するばかりであった……。 そして才人が消失してからほどなくして、トリステインの各所で異常が発生していた。 その一箇所のこと。 「グアアァァァ――――!」 突然、どこからともなく、一体の怪獣が出現したのだ。顔面は般若のようで、右腕には 赤い蛇のような、左腕には緑の犬のような首があり、体色は異様にカラフルで非対称的。 およそ自然に生まれた生物とは思えない、奇怪すぎる容姿であった。 まるで、夢のようにデタラメな風貌の怪獣であった……。 前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/9397.html
前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔 ウルトラマンゼロの使い魔 第百三十三話「二冊目『わたしは地球人』(その3)」 地球原人ノンマルト 復活怪獣軍団 守護神獣ザバンギ カプセル怪獣ウインダム カプセル怪獣ミクラス 登場 精神を囚われたルイズを救うため、本の世界への旅に出た才人とゼロ。二冊目は地球防衛軍が 暴走してしまっているウルトラセブンの世界。その世界は現行地球人と地球原人ノンマルトの 対立の真っ最中であった。今の地球人が外宇宙からの侵略者の子孫だという証拠であるオメガ ファイルの開示を迫り、ノンマルトは怪獣軍団を差し向けてくる。セブンは地球人の手で真実を 明らかにし、今の地球人が地球に留まれる権利を与えるべく行動する。ゼロは彼の助けになる べく、それまでの時間稼ぎのために怪獣たちに立ち向かう。果たしてこの世界の明日はどの方向へ 向かうのであろうか。 「キイイイイイイイイ!」 ゼロを取り囲む五体の怪獣がいよいよ攻撃を開始してきた。一番手のエレキングが口から 楔状の放電光線を、ゼロの足元を狙って撃ってくる。 『おっと!』 飛びすさってかわしたゼロに向かって、ダンカンが前のめりに飛び出してきた。 「ギャ――――――ア!」 そのまま丸まって転がりながらゼロに突進していく。 しかしゼロはダンカンが迫った瞬間に振り返ってがっしりと受け止めた。 『そんな手は食らうかッ!』 遠くへ投げ飛ばして地面に叩きつけようとするも、そこにサルファスが硫黄ガスを噴出する。 「グルゥゥゥゥゥゥ!」 『うわッ!』 高熱のガスを顔面に浴びせられて視界をふさがれたダンカンを手放してしまった。更に バンデラスの全身がまばゆく発光し、強力な熱波を繰り出す。 「ウアアアア―――――ッ!」 『ぐッ!』 高熱攻撃の連続にうめくゼロだが、これを耐えてビームゼロスパイクで反撃。 『せいッ!』 「ウオオォッ!」 食らったバンデラスが麻痺して熱波が途切れた。今の内に反撃に転じようとしたゼロであったが、 「グオオォォォ!」 ボラジョが高速できりもみ回転して砂嵐を発生させ、それをぶつけてきたのだ。 『くぅッ!』 足を踏み出しかけたところに砂嵐に襲われ、踏みとどまるゼロ。が、砂嵐が収まった瞬間に ボラジョの蔦とエレキングの尻尾が伸びてきて、己の身体に巻きつく。 「グオオォォォ!」 「キイイイイイイイイ!」 二体の怪獣は拘束したゼロに高圧電流を食らわせる。 『ぐああぁぁッ!』 二体がかりの攻撃にさすがに苦しむゼロ。更にバンデラスの胸部に並んでいる球体から 撃たれる怪光線も浴びせられる。 『ぐううぅぅぅッ……! さすがに苦しいぜ……!』 五体の怪獣を同時に相手取るのはやはり、ゼロにとっても厳しい戦いだ。しかも怪獣たちは ノンマルトの現地球人に対する積年の恨みが乗り移っているかのように猛っている。その勢いは、 簡単に抑えられるようなものではない。 ゼロが手を焼いている一方で、ウインダムとミクラスもまたザバンギを相手にひどく苦戦を していた。 「グワアアアアアアア!」 「グアアアアアアアア!」 「ギャアアアアアァァァァァ!」 カプセル怪獣たちは同時にザバンギに激突していくものの、ザバンギの規格外の怪力の前に 弾き飛ばされてしまった。ザバンギはオーソドックスなタイプの怪獣であるが、ノンマルトの 守護神と称されるだけあって、その力の水準は通常の怪獣を大きく上回っているのであった。 「ギャアアアアアァァァァァ!」 ザバンギは倒れ伏したウインダムを、無情にも踏み潰そうと足を振り上げる。 「シェアッ!」 だがその時に飛んできたゼロスラッガーがザバンギの身体を斬りつけた! 「ギャアアアアアァァァァァ!」 ダメージを負ったザバンギは後ずさり、ウインダムから離れた。その間にウインダムと ミクラスは体勢を立て直す。 今のスラッガーはもちろんゼロが放ったものだ。彼はボラジョとエレキングに捕まりながらも、 カプセル怪獣たちを助けるために力を振り絞ったのだ。 そしてゼロの力はまだそんなものではない! 『あいつらが頑張ってるんだ! 俺がこんくらいで根を上げてちゃいられねぇぜッ!』 拘束されたままストロングコロナゼロに変身すると、跳ね上がった筋力により蔦と尻尾を 振り払った。 「セェアァァッ!」 「グルゥゥゥゥゥゥ!」 「ウアアアアァァァッ!」 自由になったゼロにすかさずサルファスとバンデラスが硫黄ガスと怪光線を放ってきたが、 ゼロはその身一つで攻撃を受け止めた。 『どぉッ!』 そして片足を地面に振り下ろすと、凄まじい震動が起こって周囲の怪獣たちのバランスを 崩した。戦いの流れを変えることに成功した! 「ギャ――――――ア!」 ダンカンが転がりながら突進してきたが、ゼロはカウンターとして燃え上がる鉄拳で迎え撃つ。 『せぇぇあああぁぁぁぁぁッ!』 燃える拳がダンカンを一発で破裂させ、遂に怪獣軍団の一角を崩したのであった。 『よしッ!』 ぐっと手を握り締めるゼロだが、その時に超感覚で防衛軍秘密施設の地下に潜行していった セブンの様子をキャッチした。 ゼロたちが戦っている間、セブンはオメガファイルの真実を確かめるため、棺が封印されている 最奥のシェルターに近づいていたのだが……その前に、最後まで抵抗するカジ参謀が兵士の一団を 引き連れてセブンの前に立ちはだかったのだ。 地球防衛にこだわりすぎて、あくまで強硬姿勢を崩さないカジは、兵士たちに攻撃命令を 下したのだ。 「目標は、ウルトラセブン!」 地球人から放たれる銃弾が、セブンに浴びせられる――。 『ぐッ……!』 それを感じて、ゼロは己が撃たれているかのように胸を痛めた。 超人たるウルトラ戦士にとって、地球人の携行火器など豆鉄砲にも劣る威力。……だが、 あれほど地球人を愛し、命を燃やして戦い抜いてきたセブンが、その地球人から攻撃される という事実……本人の心はどれほど痛いのだろうか。想像が及ばないほどであろう。 しかしゼロはセブンを信じ、セブンが信じる地球人の心を信じ、戦いに集中する。 『はぁぁぁぁぁぁッ!』 「グオオォォォ!」 ボラジョがまたも砂嵐を発してきたが、ゼロは力ずくでそれを突破。ボラジョに飛びかかって 鷲掴みすると、無理矢理地面から引っこ抜く。 『ウルトラハリケーンッ!』 竜巻の勢いでボラジョを頭上高くに投げ飛ばし、右腕を突き上げる。 『ガルネイトバスターッ!!』 灼熱の光線がボラジョを撃ち、空中で爆散させた。 「グルゥゥゥゥゥゥ!」 体当たりしてきたサルファスをいなし、ブレスレットからウルトラゼロランスを出す。 『どおおりゃあああぁぁぁぁぁぁぁッ!』 それをストロングコロナの超パワーで、サルファスに投擲した! ランスは頑強な表皮を貫いてサルファスを串刺しにし、痙攣したサルファスの眼から光が 消えて爆散した。 「キイイイイイイイイ!」 「ウオオオオオ―――――!」 エレキングの尻尾の振り回しをかわしたゼロだが、バンデラスの念力に捕まって宙吊りにされる。 『はぁッ! ルナミラクルゼロ!』 しかしゼロはルナミラクルになってこちらも念力を発し、バンデラスの力を打ち消して 自由になった。そして振り返りざまにエレキングへゼロスラッガーを投げつける。 『ミラクルゼロスラッガー!』 分裂したスラッガーがエレキングの角、首、胴体、尻尾を瞬く間に切り裂き、エレキングも たちまち爆裂する。 五体の内、最後に残ったのはバンデラス。ゼロは戻したスラッガーを手に握り締めると、 地を蹴って宙を飛行していく。 『はぁぁぁぁぁッ!』 そうしてスラッガーを構えて高速でバンデラスに突撃する。 「セアァッ!」 すれ違いざまに目に留まらぬ速度でスラッガーを振るい、バンデラスは全身が切り刻まれた。 更に着地したゼロが振り向くと同時にバリアビームを浴びせて、バンデラスを覆う。 内に秘めた太陽のエネルギーに引火し、凄絶な大爆発を起こしたバンデラスだったが、 覆われたバリアが衝撃を封じて被害は外に拡散しなかった。 『残るはあいつだ!』 五体の怪獣を撃破したゼロはすぐに駆け出し、ウインダムとミクラスの救援に回ってザバンギの 前に立ちはだかった。 「シェアッ!」 左右の手のスラッガーを上段、中段に構えてザバンギを威嚇するゼロ。ウインダムとミクラスも うなり声を発して、それに加勢した。 「ギャアアアアアァァァァァ!」 さしものザバンギも足を止めて警戒していたが、この時にゼロの意識にノンマルトからの テレパシーの声が響いたのだった。 『そこまでだ! 真実は白日の下に晒された。正義は我々にある! これ以上の戦いは、 宇宙正義に背くものとなるぞ!』 「!!」 振り向くと、ウルトラセブン……モロボシ・ダンが地上に戻ってきていた。彼はウインダムと ミクラスをカプセルに戻す。 「ミクラス、ウインダム! 戻れ!」 同時にザバンギも活動を止め、ダラリを腕と尻尾を垂らした。これを見てゼロも、一旦変身を解く。 「ジュワッ!」 才人の姿に戻ってゼロアイを外し、ダンの元へと駆けていく。 「セブン! オメガファイルの真実を確かめたんですね」 「ああ……疑いようのない人の口からね」 オメガファイルの棺の中身は……フルハシ参謀であった。ヴァルキューレ星人事件の際に 殉職したかに思えたフルハシだったが、彼を最も信頼できる証人として選んだノンマルトに よって、タキオン粒子に乗せられた情報体となって数万年前の地球に送られてそこで再生 されたのであった。 そしてフルハシは見届けた。かつて地上に栄えていたノンマルトを宇宙からの侵略者が 追いやり、その侵略者が徹底的に原住民族に扮して地球人として成り代わったのを。今の 地球人は、確かに侵略者の子孫だったのだ。 真実を知った二人の前に、ノンマルトの女が現れる。 「分かったか! 地球人は、侵略者だった。この地球は我々のものだ!」 そう主張するノンマルトに、ダンは訴えかけた。 「聞いてほしい! この星には、既に百億の民が住んでいる。彼らに、かつての君たちと 同じ悲しみを味わわせたくない!」 しかしノンマルトはダンの訴えを聞き入れようとはしなかった。 「セブン。地球人に味方をすることは、宇宙の掟を破ることになる。それがどういう結果に なるか、君なら知っているはずだ」 そう告げられても、ダンはあきらめずに説得し続ける。 「彼らを、許してやってほしい。彼らは悔い改め、今宇宙に向かって、真実を発信し始めた!」 地球人のために戦っているのは、ゼロやセブンだけではない。ウルトラ警備隊もまた、 上層部を説得してオメガファイルの情報を宇宙へ発信し、真実を受け入れて地球人を救う 行動を取っているのだ。 だが、ノンマルトの回答は、 「それは出来ない! 故郷に戻ること、それは、我々に認められた権利だ!」 頑ななノンマルトに、ゼロも説得に乗り出した。 「ともにこの星で生きていけばいいじゃないか! 地球人にも過ちを認め、平和を愛する 心がある。どっちかが星を去るとかじゃなく、同じ文明人として同じ土地で共存していく ことは十分に出来る!」 しかしそれでも、ノンマルトの姿勢に変化はない。 「滅びてしまった仲間たちは、もう蘇らない。彼らの無念を忘れ、地球人との共存など出来ない!」 「過去に囚われて何になる! 仲間の遺志を受け継ぐことも大切だ。けど恨みを継いでも、 何も得るものはない。虚しいだけだ! 本当に大切なのは、今を生きる人間がどうしていくか だろうが!」 精一杯の感情を込めて説くゼロであったが、ノンマルトは、 「我らが守護神によって、発信装置を壊す! そうすれば、地球人がオメガファイルを解放した 証拠は残らない!」 「ギャアアアアアァァァァァ!」 ノンマルトの言葉を合図とするように、ザバンギが再び動き始めた。その足が向けられる先は、 オメガファイルの情報を宇宙に発信しているパラボラ塔。 「やめろッ! それはもう正義じゃねぇ!」 「ああそうだ。復讐のための復讐は、宇宙の掟も許してはいない!」 ゼロとセブンでノンマルトに考え直すよう呼びかけたが、やはりノンマルトは翻意する ことがなかった。 「たとえ復讐であろうとも、我々は散った仲間の無念を、あの日の侵略者の子孫に思い知らせるのだッ!」 暗い情念に染まり切ったノンマルトの瞳を覗き見て、ゼロは理解した。ノンマルトは既に、 『人間』ではなくなっている。故郷を追い立てられ、滅ぼされた憎悪に取り憑かれた『怨霊』と 化してしまっているのだ。こうなってはどんな言葉が投げかけられようとも、どれだけの血を 吐こうとも、復讐の足取りを止めることはないだろう。 地球人を救うには、ザバンギを力ずくにでも止める以外はない。故にダンは宣言した。 「これ以上力を行使するなら、私はこの星の人々のために戦う!」 するとノンマルトが脅迫してくる。 「同じ星の民族同士の争いに介入すれば、全宇宙の文明人を敵に回すことになる!」 「……!」 それを突きつけられても、ダンの考えは変わらなかった。彼はフルハシと、己が守り続けた 地球人を信じてウルトラアイを取り出す。 その隣で、ゼロも再度ウルトラゼロアイを出した。 「セブン、あなただけに戦わせはしません」 「……下手をしたら、君まで宇宙の漂流者となるかもしれないんだぞ」 「承知の上です」 ダンはゼロの顔に振り向いて問う。 「どうしてそこまで……私の力に」 「……」 ゼロは何も答えないまま、ダンとともに変身を行う。 「「デュワッ!」」 巨大化したセブンとゼロ、二大戦士がパラボラ塔を背にして、ザバンギに対する盾となった。 「ギャアアアアアァァァァァ!」 ザバンギは二人を排除しようと肉薄してくるが、ゼロの横拳が返り討ちにした。 「ゼアッ!」 更にセブンのミドルキックが入り、ザバンギは後ろに押し出される。 「デャッ!」 「ギャアアアアアァァァァァ!」 セブンとのコンビネーションで、ゼロが一回転しての裏拳をザバンギに見舞った。 「ハァァッ!」 ノンマルトの守護神ザバンギも、さすがにセブンとゼロの両者を同時に相手できるほどの力を 持ち合わせてはいなかった。 だが、二人はなかなかザバンギにとどめを刺そうとしない。ノンマルトの代表たるザバンギに それをすることは……侵略者への加担を決定づけることになるのだ。そうなればもう言い逃れする ことは出来ない。 「……!」 しかしゼロはスラッガーを手にして、ザバンギの頸動脈に目をつける。そんなゼロを才人が 呼び止めた。 『待て、ゼロ! お前の手で決着をつけてしまったら、本の世界が完結しない可能性があるぞ!』 『古き本』を完結させる最低条件は、その本の登場人物によって物語に幕を下ろさせること。 ゼロが本来の主役を差し置いて最後の怪獣にとどめを刺すことは、それに反する行いだ。どうなって しまうものか、分かったものではない。 しかしそれを承知してなお、ゼロは迷っていた。 『けど、たとえ本の中の存在でも……あのセブンに、暗闇の中を歩かせるのは……!』 ゼロがセブンを、宇宙の全ての光から追放された身に落とさせることなど出来るものだろうか。 ……自分の父親なのだ。 『だから……俺はッ!』 ゼロがスラッガーを振り上げる! 『ゼロぉぉぉッ!』 「――デュワーッ!」 ゼロの手が振り下ろされるより早く……セブンの握るアイスラッガーが、ザバンギの首筋を 切り裂いていた。 『えッ……!?』 「ギャアアアアアァァァァァ……!」 裂かれた傷口から血しぶきが噴き出し、ザバンギはがっくりと倒れ伏した。そのまま胸の 模様から光が消え……絶命を果たした。 『セブン……どうして……』 ゼロは呆然としたまま、本物のカザモリをウルトラ警備隊の基地に返還したセブンに叫ぶ。 『どうしてそんなことを! これであなたは、宇宙から居場所を……!』 セブンはゼロに振り向き、答えた。 『いいんだ。私には、このことに関して何ら恥じるところはない。私はこの地球を、地球人を 愛している。愛する地球人のために戦った……何の後悔もない』 語りながら、目を合わせたゼロに告げる。 『君が私を守ろうとしてくれた気持ち、それだけで十分だ。私は心の底から嬉しく思う。 ありがとう。本当に、ありがとう……』 『息子よ』 最後のひと言に、ゼロはハッと息を呑み――。 視界がまばゆい光で覆われていく――。 ――気がつけば、才人は一冊目の時と同じように、現実世界に帰ってきていた。初めの時の ように、ガラQが元気のいい声を発する。 「オカエリー!」 「お帰りなさいませ、サイトさん! ご無事で何よりです!」 シエスタも安堵しながら才人に呼びかけたが、才人は立ったままぼんやりしている。 「サイトさん……? まさか、どこかお怪我をされたのでは!?」 シエスタ、タバサたちが心配すると、才人は我に返って手を振った。 「い、いや、怪我なんてどこにもしてないよ。大丈夫だ、ありがとう」 シエスタたちを落ち着かせると、才人はこっそりゼロに呼びかけた。 「ゼロ……セブンのことは助けられなくて、残念だったな。でも、最後にお前のことを……」 『……なぁ才人』 ゼロは才人に、こう言った。 『俺の親父は、本の世界でも偉大な人だった。……お前も見てくれたよな?』 才人は一瞬虚を突かれ、次いでやんわりと微笑んだ。 「ああ、しっかりとな」 こうして二冊目の『古き本』も終わらせた才人とゼロ。だがルイズはまだ目覚める様子がない。 残る本は四冊。まだまだ彼らの戦いは続くのだ。 前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/9413.html
前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔 ウルトラマンゼロの使い魔 第百四十話「五冊目『ウルトラCLIMAX』(その1)」 機械獣スカウトバーサーク 機械人形オートマトン 古代怪鳥レギーラ 超音速怪獣ヘイレン 登場 ルイズの記憶を取り戻すために、本の旅を続行する才人とゼロ。四冊目はコスモスペースの 歴史を元にした本であり、地球に訪れた最大の危機にゼロはウルトラマンコスモスとともに 立ち向かった。宇宙正義に則って地球のリセットを行おうとするデラシオンのリセッター ロボット軍団に、ムサシとコスモスが関わった人間と怪獣たち、そして真の正義に目覚めた ウルトラマンジャスティスと懸命に戦い続け、遂にはデラシオンの心を動かし地球を守り抜く という奇跡を達成したのであった。 だが本はまだ後二冊残っている。五冊目の本の旅を開始する直前、才人はルイズの診察を 行ったジャンボットと話をしていた。 「ジャンボット、ルイズの容態はどうだった?」 才人はシエスタのブレスレット越しに、ジャンボットに問いかけた。ジャンボットは 残念そうに答える。 『可もなく、不可もなくと言ったところだな。悪化する様子はないのは幸いだが、かと言って 依然として記憶中枢が快方に向かう兆しも見られなかった』 「そっか……」 やや落胆してため息を吐く才人。 「本は残り二冊まで来たのに、記憶は全然戻らないままか。やっぱり全部終わらせないことには、 ルイズは完全には治らないのかな」 『……そのことで、少し話がある』 ジャンボットは少しだけ重いトーンとなって告げた。 「どうしたんだ、急に?」 『リーヴルの説明では、ルイズは己の力を本に吸収されてああなったということだったが、 私はそれに違和感を覚えている』 ジャンボットの言葉に才人は面食らった。 「……具体的には、どういうことだ?」 『メイジの力は個人の脳の作用に由来しているのが分析の結果分かっているのだが、それは 記憶中枢とは直接関係していない。だから仮に魔力を奪われる……脳に干渉されることが あっても、記憶だけ失って他の脳機能は平常通り、というのはいささか奇妙だ。他の障害…… たとえば、感覚や運動機能の異常等を併発していてもおかしくはないのに』 とのジャンボットの説明を受けて、才人は腕を組んで頭をひねった。 「あー、それはつまり、何て言うか……今の状況は自然じゃない、ってこと?」 『簡潔に言えばそうなるな。自然に今の状態になったと言うよりは、何か恣意的なものが 働いた、というように思える』 ジャンボットに続いてシエスタが意見する。 「わたしは平民ですから、魔力のことなんて全然分からないですけど……一冊の本を完結するごとに ミス・ヴァリエールの魔力が戻ってるのなら、段階的に回復していくものじゃないでしょうか? わたしも、ミス・ヴァリエールの病状はちょっと不自然じゃないかって思います」 「そうか……。じゃあやっぱり、リーヴルが何かしてるのかな?」 『いや。ここに来てから絶えず彼女の行動をつぶさに監視しているが、怪しい動きは一度も 見られなかった。少なくとも、彼女自身が何かをしているという訳ではなさそうだ』 ここまでの話を纏めて、ゼロが声を発する。 『ってことはやっぱ、リーヴルの後ろには正体不明の誰かがいるって線が濃厚だな。そいつの 力のせいで、ルイズはすんなり治らないのかもしれねぇ』 才人はゼロに聞き返す。 「でも、その誰かっていうのは何者なんだ? タバサも探ってくれてるが、未だ尻尾も掴めてない」 タバサは昨日のリーヴルとの会話で、誰かを人質にされているのではないかと推測した 才人の頼みでリーヴルの周囲も洗ったが、特に誰かいなくなったという事実はなかった。 ではどうしてあんな話をし出したのか……皆目見当がつかなかった。 『確かに……。だが俺は、そもそもの最初の図書館に出るって言ってた幽霊がヒントなんじゃ ねぇかって考えてる』 「幽霊が?」 『まぁ勘だが、リーヴルは完全にデタラメを言ってたんじゃないと思うぜ。たとえば…… 実体を持たない存在っていう意味だとか』 「実体を持たない存在か……」 才人は夢の中に存在していた怪獣やガンQ、ビゾームなどを思い出した。 『はっきりとした実体を持たない生き物ってのも、広い宇宙にはいくつか存在してる。だが いくつかはいるから、それだけじゃ絞り切るのは難しいな……』 『そもそも、我々が知っているものとは限らない。そうだったら、事前知識は役には立たないぞ』 ジャンボットもそう言った。 結局今回の相談ではこれ以上の成果は出ず、五冊目の本の攻略を行う時間となった。 いつものように魔法の支度をしたリーヴルが、才人に尋ねかける。 「準備はよろしいですか?」 「ああ……」 才人はリーヴルの様子を観察するが、例によって淡々としているばかりで、その挙動から 考えを読むことは出来なかった。本当に彼女は何かを隠しているのか、背後に別の誰かが いるのか……今の才人では見通せなかった。 今の彼に出来ることは、五冊目の本を選ぶことだ。 『いよいよ後二冊だ……。次に攻略する本より、最後に回すのをどっちにするかって選択になるな』 ゼロは少し考えてから、結論を出した。 『右の奴は、少し込み入った内容になりそうだ。そっちを最後にしよう』 『よし。じゃあ、五冊目はこいつだな』 本の選択をして、いざ旅立とうとする。 しかしその直前、ルイズが才人の元に駆け込んできた。 「あ、あの!」 「ルイズ! 寝てなくていいのか!?」 「せめて、見送らせてほしいと思って……。どうか、無事に戻ってきて下さい」 必死な表情で頼んでくるルイズ。自分のために才人が危険な旅を続けていることに後ろめたさを 覚えているのだろう。 才人はそんな彼女を元気づけるために、力強く返答した。 「任せとけって! 絶対、元のお前に戻してやるからな!」 そして才人とゼロは、五冊目の本の世界に向かっていった……。 ‐ウルトラCLIMAX‐ ある晩、街を突如どこからともなく出現した奇怪な外見の巨大ロボットが襲った! ロボットは強固な装甲でDASHの攻撃を物ともせず暴れ、ダッシュバードを両肩からの 光線で返り討ちする。しかし墜落しかかるダッシュバードを、トウマ・カイトが変身した 赤き巨人が受け止めて救う。 「シュアッ!」 彼は異常気象により怪獣が連続して出現するようになってしまった地球に降り立ち、カイトと ともに数々の敵を打ち倒してきた光の戦士、ウルトラマンマックスだ! マックスはロボットと激しく戦い、最後にはギャラクシーカノンの一撃によって見事粉砕し、 街には平和な夜が戻った。 ……しかし巨大ロボットの正体は、戦った相手の能力を全て解析してどこかへと送信する 斥候、スカウトバーサークだった。本当の事件発生の前触れでしかなかったのだ。 そしてマックスがスカウトバーサークと戦った一部始終を、いつの間にか街中に現れていた 三面の不気味な人形、オートマトンが声もなく見つめていたのだった……。 そしてオートマトンはある日突然、一斉に口を開いてしゃべり出した。 『地上の人間たちに宣告する。今すぐ地球を汚す戦争を取りやめよ。化石燃料を燃焼させる 開発をやめよ。地球人類が、地球大気を汚すことでしか文明を築けないのなら、文明を捨てて 退化せよ。今から三十時間以内に、地上の人類が全ての経済活動をやめねば、我々デロスは バーサークシステムを起動し、全世界のDASH基地を破壊する』 オートマトンは世界中の至るところに出現していた。何者が、いつ、誰にも気づかれることなく 世界中に設置していったのだ? デロスの正体とは何か? バーサークシステムとやらが起動したら、 本当に全てのDASH基地が破壊されてしまうのか? デロスは、それほどの力を有しているというのか……? まだ何も分からないが、カイトは直感で今までの敵とは訳が違う相手であることを感じ取っていた。 地球人類は今まさに、最大のクライマックスを迎えようとしているのだ。 「……この世界でも、大変なことが起きようとしてるみたいだな」 本の中の世界にやってきた才人は、混乱に襲われて右往左往している街の人間たちの様子を 高台の上から観察しながら、ゼロに呼びかけた。 「デロスって何者なんだろう。また侵略宇宙人の類かな。それとも、ノンマルトやデラシオンの ような……」 『……それに関してはまだ何とも言えねぇ』 才人の問いかけに答えたゼロは、意識を足下に向ける。 『だが一つだけ確かなのは……居場所は頭上や地上のどこかじゃないってことだ』 謎の気配は足下……その更に深くの座標から感じられるのだった。 オートマトンの宣告から一時間後、ベースポセイドンが真下からの攻撃によって破壊された! しかし職員は、三十分前の攻撃予告を受けて脱出していたため全員無事であった。 更にヨシナガ博士がオートマトンを解析したことで、機械部分に地下八千メートルにしか 存在しない元素119が使用されていることが判明した。デロスとは地底人だったのだ! 更にデロスが地表とマントルの境目、モホロビチッチ不連続面の空洞に住んでいる種族だと いうことが突き止められ、カイトとミズキ両隊員が地上人代表として交渉の任に就き、地底へ 潜行することが決定された。……が、先走った某国の軍が地底貫通ミサイルを使用し、デロスへの 先制攻撃を強行しようとした! DASHはその凶行を止めようとしたが、それより早く、空を飛ぶ二体の怪獣が地底貫通 ミサイル基地を襲撃した……! 『キィ――――――イ!』 『グワァ―――ッ! キイィッ!』 ベースタイタンのメインモニターに映されたミサイル基地を、二体の羽を持つ怪獣が空から 降り立って襲撃。一体は明らかに普通の鳥とは全く違う肉体構造の怪鳥。もう一体は全身が 甲冑で覆われたような怪鳥だ。これを見たコバが叫ぶ。 「こいつら、前に出てきた怪獣だ! 確かレギーラとヘイレン……!」 「でもどうして今頃!? それに狙ったようにミサイル基地を襲うなんて……」 理解が出来ないミズキをよそに、古代怪鳥レギーラと超音速怪獣ヘイレンはビームを発射して 地底貫通ミサイルを片っ端から破壊していった。ヒジカタ隊長が思わず腰を浮かす。 「どうしてミサイルを率先して破壊するんだ!?」 その訳を、アンドロイドのエリー――の役に当てはめられたルイズが分析した。 「怪獣は、デロスによってコントロールされている可能性が78%」 「missile攻撃に対するcounterで送り込まれてきたってこと?」 ショーンが聞き返している中でもレギーラとヘイレンは攻撃を続けて、ミサイルを破壊し尽くした。 『キィ――――――イ!』 『グワァ―――ッ! キイィッ!』 しかし怪獣たちの暴力はそれで止まらず、周囲の人間にも襲いかかろうとする! 思わず 叫ぶカイト。 「大変だッ!」 「でも、今から飛んでいっても間に合わない……!」 ミズキが歯噛みした時、ココが電子音を発して何かをルイズに伝える。 「ミサイル基地上空より新たな生命反応」 「また怪獣のお出ましか!?」 コバの言葉を否定するルイズ。 「いいえ。反応のパターンは、ウルトラマンマックスと近似しています」 「マックスと近似って……まさか!?」 驚愕するDASH隊員たちの見つめるモニターの中で、怪獣たちの面前に青と赤の巨人が 着地して牽制する姿が映された。 誰であろう、ウルトラマンゼロである! 「新しい、ウルトラマン……!?」 「この状況で……!?」 カイトたちは驚きで口がふさがらなかった。 「セェアッ!」 人命を守るために駆けつけたゼロは一気に怪獣たちの間に切り込んでいき、ジャンプキックで レギーラとヘイレンを左右に薙ぎ倒した。 「キィ――――――イ!」 いち早く起き上がったレギーラが胸の二つの孔から大型フックを出し、跳びはねながら ゼロへと肉薄していく。フックをガチガチ鳴らして、ゼロを捕らえようとする。 「デアッ!」 だがゼロはフックをはっしと受け止めて、腕力を振り絞ってフックを引っこ抜いた! 「キィ――――――イ!」 武器をもぎ取られて後ずさるレギーラだが、すぐに大きく羽ばたいて突風を巻き起こし始める。 「グッ!」 建物もバラバラに吹き飛ばす風速にゼロは体勢を崩すが、どうにか踏みとどまった。が、 そこにヘイレンが素早い挙動で体当たりしてくる。 「ウアッ!」 さすがにかわすことは出来ず、はね飛ばされるゼロ。更にレギーラが胸の孔から拘束光線を 発射し、ゼロの身体に巻きつけて自由を奪った。 「ウッ……!」 「キィ――――――イ!」 「キイィッ! グワァ―――ッ!」 動けなくなったゼロに、レギーラとヘイレンはすかさず光線を撃ち込んでなぶる。合体攻撃に 苦しめられるゼロ。 「シェアッ!」 しかしウルトラ念力によってゼロスラッガーを自動で飛ばし、己に巻きついた拘束光線を 切断して自由を取り戻した。そして迫ってきた光線を打ち払って、スラッガーで反撃する。 「キィ――――――イ!」 「グワァ―――ッ! キイィッ!」 胴体を斬りつけられてひるむレギーラとヘイレン。その隙を突いて、ゼロは左腕を真横に伸ばした。 「シェアァッ!」 精神を集中し、放つ必殺のワイドゼロショット! 「キィ――――――イ!!」 レギーラは一撃で爆散せしめたが、ヘイレンは命中する寸前に飛び上がって回避した。 「トアッ!」 上空高くに飛翔したヘイレンを追って、自身も飛び上がるゼロ。しかしヘイレンは超音速怪獣と 呼ばれるだけはあり、音速をはるかに超える速度で縦横無尽に飛び回り、ゼロを翻弄する。 「グワァ―――ッ! キイィッ!」 「ウオアッ!」 背後から猛然と突っ込んでくるヘイレン。ギリギリでかわすゼロだが、猛スピードで飛ぶ ヘイレンからは強烈なソニックブームが発生しており、それを食らって弾き飛ばされる。 エネルギーが残り少なくなってきたのをカラータイマーが報せる。 空はヘイレンの領域だ。さしものゼロも苦しいか? 『何の! 負けねぇぜッ!』 ここでゼロはルナミラクルゼロに変身。超能力による加速によってヘイレンと同等の速度を出し、 ヘイレンに追いつくことに成功する。 「グワァ―――ッ!?」 「ハァッ!」 今度は逆にこちらがヘイレンの周囲を巧みに飛び交うことにより、ヘイレンを追い込んでいく。 そして機を見計らい、ゼロスラッガーを再度飛ばした。 『ミラクルゼロスラッガー!』 超能力によって増殖させたスラッガーにより、ヘイレンを滅多切りにする。 「グワァ―――ッ!! キイィッ!!」 それが決め手となり、ヘイレンは空中で爆発四散した。それを見届けたゼロが停止。 「シェアッ!」 そうして方向を転換し、海を越えて日本列島――東京湾に設立しているベースタイタンの 方角へ向かって飛び去っていった。 光となったゼロは、ベースタイタン付近の人気のない場所へと降り立った。才人の姿に 戻って着地すると、そこに走ってくる人影が。 「おーい! そこの君!」 トウマ・カイトだ。才人は振り向いて、カイトの顔を確かめる。カイトも才人の手前で 立ち止まって、真剣な面持ちで尋ねてきた。 「君が、さっきのウルトラマンだね?」 「ええ。ウルトラマンゼロ……平賀才人です。あなたがウルトラマンマックス、トウマ・ カイト隊員ですね」 互いの素性を確認し合うと、カイトが才人に質問を重ねた。 「君は、どうして今のこの星にやってきたんだ?」 「……そのことで、マックスとして地球を守ってきたあなたにお話しがあります、カイト隊員」 才人は険しい表情で切り出した。 「地中深くから、地上の人間に向かって警告と宣戦を布告してきてるもう一つの地球人の種族に 関することです」 その才人の言葉に、カイトもまた厳しい顔つきとなって生唾を呑み込んだ……。 前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔